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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

78 古歌-イニシエウタ-【四ノ歌】14/12 :2011/03/28(月) 00:22:06
 気がやさしい素直なヘクターに、小さな公子はよく懐いた。手をつないで歩く銀髪の公
子とヘクターは、公子の髪が月光のように淡くきらめく銀、一方ヘクターは少し錆びた銀
という違いはあったが、実の兄弟のように仲睦まじく見えた。多少狷介な気のあるアイザ
ックの崇拝の対象は常に師であり、闇と魔術の王である魔王その人にあった。公子はその
師の息子であり、それ以上のの存在ではなかった。公子に対して大仰なまでにうやうやし
く接することで、彼は愛情の代わりに礼儀を払って公子に接した。
 午前中彼らは図書館で老爺の出す課題を解き、午後には精霊界の離宮の庭で、剣や組み
手の訓練をした。そして三人が疲れて空腹になると、いつも離宮から公子の母君が輝くよ
うな姿で進み出て、少し休憩になさいとやさしい声で呼びかけるのだった。侍女たちが五
人分の食べ物と飲み物を運び、行列の最後には、大きすぎる盆をかかえた小さなジュリア
が真っ赤な顔で身体をそらして、慎重に歩を運んでいた。
 ジュリアを含めたみんなが席についてしまうと、奥方は侍女たちを下がらせて、四人の
子供たちの本当の母のように菓子を切りわけ、飲み物を注いで、勉強の進み具合を尋ね
た。この菓子も飲み物もみんな、母上がご自分でお作りになったのだと公子は自慢げに言
った。ジュリアもよく手伝ってくれましたよ、と横から母がやさしく口を添える。みん
な、ほんとうによい子たち。アドリアン、スプーンで悪戯をしてはいけません。ヘクター
にアイザック、その果物を食べてしまって、もう一つケーキをお取りなさい。
 庇護者である魔王に強い忠誠と尊崇の念を募らせていたアイザックも、このやさしい奥
方に関しては特別な思慕を抱かずにはいられないようだった。公子を除いてここに集まっ
たのは、みな親のない子、親をなくした子、誰からも愛されず人から憎まれてきた子だっ
た。奥方の笑顔と隔てない愛情は、彼らの乾いた心に慈雨のように降りそそいだ。ジュリ
アが女主人を見あげる目は、まさに女神を見るようだった。剣の訓練でできたかすり傷に
やわらかい指で薬をつけてもらうとき、アイザックの尖った瞳は年相応にやわらぎ、魔王
に愛された女性の輝く顔を、あこがれの目で見あげた。
 そして夜になると、少年たちは城の一室に顔をそろえ、闇の王が現れるのを待った。夜
の訪れとともに目覚める王は、黒衣に暗い色の紅玉と黄金をきらめかせてゆったりと歩ん
でくるのが常だった。自らの息子とその二人の学友の顔をじっくりと見回し、前夜までの
課程を一人ずつ復唱させると、その夜の授業にとりかかった。どれをとっても人間のいま
だ触れたことのない秘密の扉が、少年たちの前で次々と開かれていった。水を吸いこむ砂
のように、少年たちは秘密の知識を貪欲に吸収していった。


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