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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

71 古歌-イニシエウタ-【四ノ歌】14/5 :2011/03/28(月) 00:17:59
 それではここが、噂に聞く吸血鬼の魔王の城なのか。男は総毛だったが、目の前に腰か
けて顔を俯けている貴婦人の優美な姿と声から、とうてい離れることはできなかった。
 あなたが辛い暮らしをしていることは知っています、と貴婦人は続けた。家族に着せる
布一枚ないこと、食べさせるパンも、麦も、水一滴すらないことも。絶望してこの闇の森
に入ってきたことも、わかっています。
 もし、あなたがこの城に来て、わたしとわたしの夫を助けてくださるのならば、城はあ
なたと家族の暮らしを支えることを約束します。住む場所も、着る物も、食べ物も、必要
なだけ与えましょう。畑を作って、自分たちの食べる分だけの作物をこしらえることも許
しましょう。ただ一つ、ある義務を果たすことだけを約束してくださるならば。
 その義務とはどんなことでございましょうか、奥様。
 月に一度、と貴婦人は、いくらか悲しげに目を伏せて言った。
 月に一度、盃に一杯の、血を絞ってわたしの夫に捧げてくださるならば、あなたの暮ら
しは必ず守られましょう。これは魔法や魔術ではありません。また、いかなる闇の契約を
も意味しません。わたしはただ、夫を、そしてわが子の父親を愛する人間の女として、あ
なたにお頼みしているのです。
 貴婦人はひたむきな眼差しを男に向けた。その瞳はドレスと同じ、明るい五月の空の色
だった。
 血を捧げたからといって、闇に対する忠誠を求められることはありません。もしそのつ
もりならばミサを唱え、聖なる方への信仰を維持することもできます。血はただこの城に
とどまり、生活を支えるための代償であると、そう考えてください。あなたの生活を食い
荒らし、水の一滴からまで貢ぎ物を搾り取ろうとする領主や聖職者のかわりに、わたしが
求めるのは夫のための血をほんの少し、それだけです。
 男が答えられないでいると、貴婦人は微笑を浮かべて、もちろん、強制するつもりはあ
りません、と言った。
 あなたはいつでもここから出ていっていいのです。考える時間もあげます。これをおと
りなさい、と差しだされたものは、摘み取られてまだ間もない、朝露に濡れた一輪の白薔
薇だった。


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