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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

68 古歌-イニシエウタ-【四ノ歌】14/2 :2011/03/28(月) 00:16:12
 子供の成長は、澱んだ時の流れに流れこんだきらめく清流のようだった。やがて乳離れ
した子供は揺り篭を出て元気よく床を這いまわり、目についたものをなんでも口に入れて
は、世話をする侍女たちと母親を笑わせた。夜ごとにやってくる父親にも無邪気にまとわ
りつき、膝に這いあがってまわらぬ舌で何事か話しかけ、黒髪の房を不思議そうに弄ん
だ。子供を抱く父の手は魔法の品物を抱くように恐ろしげで、怯えてすらいるようだっ
た。
「そんなに怖がらなくてもよろしいのです。子供というのは、意外に丈夫なものですわ」
 妻に笑われても、自らの息子というあまりにも小さく不思議な奇跡を目の前にすると、
これまで破壊と憎悪を無造作にまき散らしてきたこの手が、膝の上の愛くるしい子にまで
害を与えるのではないかと感じられてならないのだった。
 しかし、子供は臆することなく父親になつき、呼びかけ、体温を持たない青ざめた肌に
ふっくらとした頬をすりつけてきた。おそるおそる抱きしめると、細い骨とふっくらとし
た肉付きの下に、力強く脈打っている心臓と生命の炎が見えた。純粋な人間のものとは違
っていたが、それはまぎれもなく、自分と、妻との血と魂が混ぜ合わせられて生まれた
存在なのだということを実感させた。王は頭を伏せ、霞むような巻き毛になりはじめた息
子の銀色の髪に、祈るように顔を埋めた。
 赤ん坊は成長し、つかまり立ちを始め、やがてよちよちと歩き出した。静かな精霊界の
離宮の庭が、走りまわる子供のせわしない息づかいと笑い声に騒がせられるようになるの
にいくらも時間はかからなかった。子供は精霊の侍女たちや、翅をもつ小妖精たちを相手
に、人間の子供がけっして知ることのない奇妙で謎めいた遊戯をした。しなやかな手足は
日ごとに若木のように成長し、銀の髪は長くふさふさと伸びて、背のなかばを越すまでに
なった。
 薔薇と薬草の園の世話を母とともにするのも大きな楽しみだった。母は手作りの菓子や
飲み物を篭に入れて野に出、幼い息子にひとつひとつの薬草の名前や効力、組み合わせに
よって生まれるさまざまな薬効、毒であっても使用に気をつければ奇跡的な妙薬となる植
物のことを教えた。授業が終わると食べ物の篭を持って薔薇園に座り、侍女たちの給仕を
受けながら、母子二人で午後の茶会を楽しんだ。あたりには小鳥にまじって、小公子がす
っかり気に入った妖精たちが蝶や蜂の翅で群れ飛び、こぼれた菓子やパンの分け前を狙っ
ている。母子は笑い声を上げながら甘い蜂蜜菓子や砂糖煮の果実を手に乗せてさしだし、
取り合いの喧嘩を指先で引き分けて、仲良く分けて食べるようにいってきかせた。


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