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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

67 古歌-イニシエウタ-【四ノ歌】14/1 :2011/03/28(月) 00:15:33
【四ノ歌】

 幸福な日々は河のようにすぎていった。闇に閉ざされた長い年月にささくれた王の心
に、なだめのさざ波のようにやさしく触れながら。彼は息子が成長するのを驚嘆の思いで
見守った。生まれた直後から驚くべき美しさをもっていた彼の息子は、日を重ねるごとに
ますます美しく愛らしさを増した。揺り篭で眠る赤ん坊は聖画の智天使の美をそのまま映
したように、完全で濁りがなかった。玩具のような手に触れ、その指の思いがけない力を
感じるとき、王は第一日目に感じたのと同じ驚嘆と歓喜を心中に抱くのだった。
 母親となったリサは乳母を使わず、自らの乳房を赤ん坊に含ませた。母の腕に抱かれ、
ふくよかな胸に頭を預ける子の姿は、大理石の聖母子像が生きて血肉を持ったかのようだ
った。しかしある日、息子が乳を飲むところに立ち会っていた彼は、眠り始めた子供を揺
り篭に戻し、服を合わせようとしている妻の胸に目をとめて驚愕した。
「血が出ている」
「はい」
 なんでもないことのように妻は答えた。小さな歯が開けた穴が乳首の周囲に点在し、血
がまだ糸を引いて流れていた。彼女は血を拭い、胸元のリボンを結んだ。
「この子は乳と血の両方を必要としています。ですからわたしはその二つを与えるので
す」
「しかし、おまえは傷ついている」
「母親とはそういうものです」
 親指をくわえて寝息をたてる息子のやわらかい髪に指を通しながら、妻は微笑んだ。
「子供の必要としているものを与えることができなくて母親と呼べますでしょうか。ご心
配には及びません、貴方さま、わたしはこの子のためならば、命も魂も与えるのです」
 吸血鬼と人とのあいだに生まれた子は、成長するためにもまたその双方の糧を必要とす
るのだった。妻のもとから自らの城に戻った王はうちしおれ、妻子をこのような運命に引
きずりこんだ自分の愚かさを、何度目ともわからぬほど呪った。そしてまた、どのような
運命が息子に用意されていようとも、母親がこの世にあるかぎりは人間として育てるのだ
という決意を新たにしたのだった。


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