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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

66 古歌-イニシエウタ-【三ノ歌】10/10 :2010/11/24(水) 22:54:04
「それが何だ? どうせこの身は不死なのだ。飢えようが渇こうが、人が食物をとらぬの
とは訳がちがう。そう、兎や鳥の血をすすってもよい。それなら人が家畜の肉を喰らうも
同じであろう」
『人の血は御身の単なる糧にあらず。そこに含まれる恐怖と混乱、憎悪と死へ向かう生命
の最後のひらめき、それこそが御身の御力の元なれば、獣の血では身の養いにしか』
「ならば力などふるうまい」
 なかば恍惚として彼はいった。
「余が望むのは永遠の中のただ一時、人としてわが妻と息子と暮らすことのみだ。力など
要らぬ、支配など望まぬ。余は喪ったものを取りもどした。今は少しでも、あの者たちと
ともに生きたい。欺瞞に過ぎぬとは承知している。だが、ひとときの夢を余は見たい」
〈死〉は何もいわなかった。
「余を裏切った神が、奪ったものをこの手に返してきた」
 うっとりと彼は両手をあげた。かつてそこから引きちぎられた、愛と幸福をなつかしむ
かのように。
「もう一度、あの憎悪と絶望の前にこの手にしていたものを、胸に抱くことを許された。
 哀れな子に黄昏の生を与えたのは、父たるこの身の罪だ。母が人としての死を迎えるま
では、あの子も人として生きさせよう。選ばせるのはそれからでよい。いずれ人とは生き
られぬ運命ならば、ただこの城でそばに置き、心のなぐさめともしよう。母に似た子だ。
やさしい心の子であろう」
〈死〉は姿を消していた。暗い玉座の間に、王は独り座していた。血の気のない両手は虚
空に向かって差しのべられ、離宮に眠る妻と息子を、いつくしむように抱いていた。


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