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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

65 古歌-イニシエウタ-【三ノ歌】8/10 :2010/11/24(水) 22:51:48
 王は答えなかった。妻から、リサから子ができたと知らされたときの歓喜と、同時に身
をつらぬいた恐怖と不安がよみがえった。思えば遠い昔、かつての妻エリザベータは、そ
の身のうちにわが子を宿したまま死んだのであった。妻と子を同時に喪ったと知った自分
は神を呪い、策略を弄して闇の帝王となった。
 そのことはよい。自ら望んだことである。しかし妻がぶじ子を産み、その子を目にした
とき、彼は胸にこみあげる大きな愛情とともに、かつての自分の呪いが、すべてわが身に
はね返ってきたことを知ったのであった。
 わが息子、血をわけた愛しいわが子。しかしその血のために、子は望みもせぬのに人で
も魔でもないたそがれの生を歩むことになってしまった。人はおそらく、あの子を受け入
れまい。しかし闇に身を浸しきることもまた、なかばを流れる人の血が拒むであろう。そ
うしたすべてが、父たる自分のもたらしたことなのだ。父として祝福と愛を注ぐかわり
に、呪われたこの身が贈ったのは、闇にも光にもなれぬ幽明の生命とは──。
『我が主よ。どうぞご決断あれ』
「──あの子供は、人の子として育てる」
『なんと申された。御子息は闇の王の子。人の子などに身を落とす必要がどこにあろう』
「あれはリサの子だ。リサが人であるなら、その息子も人として育つべきだ」
 語気をつよめて彼はいった。
「余は父としてあれに生を与えた、だが、望みもせぬものまで与えてしまった。あの子が
成長し、みずから望んでそれを選ぶならばよい、だが、望まぬのならば、母と同様ひとと
して暮らさせてやるがよい。それが父の愛であり、せめてもの償いだ」
『償いとは、なんの償いか。御子息は闇の帝王の嫡子、望むなら、天地のすべてさえ統治
する御力をお持ちになろうものを』
「煩い、〈死〉」
 片手をうち振って、王はかたかたと音を立てる従者を払いのけた。
「余が決したことだ。主が余であることを忘れるな。さがれ、〈死〉。貴様の骸骨顔は見
たくもない。余はもはや血をすすらぬ。人の血はわが糧とはせぬ。妻と子とが人としてあ
るならば、せめてはこの身も、あらんかぎりは人としてふるまおう。たとえ餓えかつえよ
うとも、少なくともわが妻が人としての生を終え、息子がおのれの道を選ぶまでは、余は
ふたたび、人としてあれらの前にありたい」
『それでは御身が保ちますまい』


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