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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

63 古歌-イニシエウタ-【三ノ歌】6/10 :2010/11/24(水) 22:50:33



 女は自分の小屋の自分の寝台で目覚めた。朝の陽光が小窓から弱々しく這いずりこんで
いた。はじめ固いわら布団に背をもたせたまま、嵐の音で悪い夢を見たのかといぶかしん
だが、すぐに自分の身につけている真新しい麻の服と靴、そして、枕元に置かれた膨らん
だ重い革袋に気がつき、同時に、昨夜の恐ろしい体験がすべて真実であったと知って、恐
怖のあまり動けなくなった。
 しばしのち、勇気をふりしぼって革袋を開けてみると、名も知らず、読むこともできな
い文字で銘を刻まれた古代の金貨がざらざらとあふれ出た。また、荒い造りの皇帝や神々
の肖像を刻印された装飾品のほかに、鳩の卵ほどもある一対のエメラルドの裸石も含まれ
ていた。どちらも瑕ひとつなく、五月の木々輝きを内部に閉じこめたように鮮やかな碧に
輝いていた。
 女はこれほどの富と、それが想起させる恐ろしい一夜の記憶にほとんど押しつぶされそ
うになったが、与えられた財宝と衣服一式を持って外に出、村の教会に駆けこむことで折
り合いをつけた。教会の神父は要領を得ない女の話を辛抱強く聞き、それが悪魔のもたら
した財宝であるなら、神の家に納めることによって浄めることは自然であると教えた。女
は胸をなで下ろし、罪の赦しとひきかえに、莫大な財宝を神のしもべに渡した。
 ふたたび粗末な身一つになって足取りも軽く女が帰っていくと、袋を受けとった神父は
すぐに金貨を机の上に開け、存分にその輝きと手ざわりを楽しんだ。
 それから慎重に溶かして地金に替え、一部を自分用に取りのけておいて、黄金の十字架
を鋳造させて、教区の大司教のもとにうやうやしく送り届けさせた。一対の巨大なエメラ
ルドが、神を讃えるふたつの瞳のように上部に輝いていた。この贈り物を嘉納した大司教
は、神父をやがてもっと大きな教区の教会に転任させ、司教の位階を与えた。これには神
父がこっそりふところに入れた金の残りも大いに役だった。
 そして正直な産婆は変わらずつましい暮らしを送りながら、しばらくの間は悪夢にうな
される夜をすごしたが、それもやがて忘れっぽい人間のこと、異様な一夜は夢の奥に遠ざ
かり、忘れ去られた。


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