したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

59 古歌-イニシエウタ-【三ノ歌】3/10 :2010/11/24(水) 22:48:05
 いくつもの昏く、そして豪奢な部屋を通りぬけ、いつの間にか開けた別の宮居に連れこ
まれていた。それまで通りぬけてきた陰鬱な城とはちがって、そこは居心地よくしつらえ
られた、貴婦人のための住まいであった。
 これほど美しく、心をこめて仕上げられた室内を、女はそれまで見たことがなかった。
侍女たちのそよ風のような手に導かれて奥の間へと入ると、広い寝台の上に、あざやかな
金髪を枕の上に広げた、目もさめるばかりに美しい婦人が、出産の苦痛に汗をうかべて、
侍女たちにとりまかれていた。
 侍女たちひとりひとりも美しかったが、この婦人の美貌に比べては、みな太陽の前の星
にひとしかった。苦痛の中でも貴婦人はやってきた女をみとめ、涙ににじんだ目を微笑ま
せて、手を差しのべた。
「貴女がわたしに力をかしてくださいますのね」
 細い声で彼女は言った。
「どうぞ、お願い。この子に、生命を与える、お手伝いを」
 銀の糸をはじくようなその澄んだ声に、女の恐怖は一瞬にして吹き飛んだ。あまりに異
常な体験も、周囲の異様さもすべて忘れて、目の前の婦人の苦しみを少しでも軽くするこ
とでのみ頭が充ちた。「奥様」と思わず駆け寄って女は貴婦人の手を取った。
「どうぞあたしにお任せを。御子様は必ず、ご無事に生まれておいでなさいます」
 貴婦人は弱々しく微笑んで女の手を握りかえすと、ふたたび襲ってきた陣痛に、白い喉
をのけぞらせて悶えた。
 女は半白のもつれ髪をきりりと布で縛ると、周囲であたふたしている侍女たちに次々と
指示を飛ばした。熱い湯と布、舌を噛まぬように咥える手巾、御子が出てきた時に受けと
められるようやわらかな産着の用意。「ゆっくりと息をなさいませ、奥様、」と女は枕頭
に寄りそって励ましの声をかけた。
「御子様は必ずご無事にお生まれなさいます。元気にお生まれなさいます。もう少しのご
辛抱でございますよ、さ、息を吸って、吐いて、さあ」
 貴婦人は言われるがままに乱れる息をととのえ、しだいに間隔を詰めて襲ってくる痛み
に蒼白になりながらも、女の手に寄りすがって呼吸をした。
「さ、今でございます、奥様、力をお入れになって、そう、下腹にでございますよ、あ
あ、御子様です、御子様の頭が見えました、そう、もう少し、もう少し」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

悪魔城ドラキュラ Best Music Collections BOX(DVD付) / SMD



掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板