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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

58 古歌-イニシエウタ-【三ノ歌】2/10 :2010/11/24(水) 22:47:34
 外で雷鳴がとどろいた。雷鳴よりなおすさまじい、黒衣の男の叫び声であった。男は御
者席にあがり、外套をひるがえして鞭をふるった。蒼白い鬼火の光に、女はその手に人な
らぬ刃物のようなかぎ爪と、もつれた獣毛を見たと思った。
 しかし血色の眼の馬があがき、駆けだすと、もはや何も見る余裕はなかった。猛烈な速
度で馬車は迅った。雷鳴も嵐も、その速度には追いつけぬようであった。むしろそれ自体
がひとつの嵐であり、竜巻に運ばれる地獄の車であった。女は座席にうずくまり、震えな
がら、口中に必死に祈りの言葉を唱えつづけるしかなかった。
 どれほどの時間がたったのか、女は感覚しなかった。気がつくと、馬車は停まってい
た。扉は開き、黒衣の男が、その横に佇立していた。
「出ろ」唸るように男は言った。
「主は奥方様を案じておいでだ。行け。迎えが来ている。よいか、必ずやりとおせ。しく
じろうものなら──」
 頭巾の下で刺すような瞳が光った。その下で、突き出た口と牙が期待するように鳴るの
を見たような気がして、女は震えあがった。夜着の前を押さえ、神に助けを祈りながら、
今にも怪物の牙にとって喰われるにちがいないと信じて、鉄の馬車からおそるおそる足を
踏み出した。
 しかし、何も起こりはしなかった。そこは豪壮な城の門前で、荒々しい石組と高い尖塔
がいくつも夜の空を貫いているばかりだった。門は開いており、そこから、ひとりひとり
が高位の貴婦人のような装束を身にまとった美貌の女たちが、心配と気づかいを顔にあら
わして、流れ出るように現れるところだった。
「よくぞおいでくださいました」
 女の手をとり、彼女たちは口々に言った。
「さ、お早く。御子様はもうすぐお生まれになります」
 男と馬車はいつのまにか姿を消していた。女は侍女らしき美貌の女たちに、巻きこまれ
るように城内に連れこまれた。汚れた夜着を純白の麻の着物に替えさせられ、裸足の足に
やわらかい羊毛の靴が履かされる。
「お早く、お早く」と女たちはせかした。
「奥方様はお苦しみでございます。主様にはたいそうなご心痛。どうぞお早く、御子様を
無事に取りあげてくださいませ」


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