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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

53 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】15/17 :2010/07/12(月) 22:33:16
「そのようなことをしてどうなりましょう。わたしはもう、あの村にとっては死んだも
の。幽鬼が薬を与えたとしても、信じてなどもらえません。聖母の奇跡と思ってもらった
ほうが、村人のためでもあり、わたしのためでもあります」
「薬を与えたとなれば、今いちど村に迎えられるかもしれなかったではないか。なのに、
何故戻った。ここは人食いの魔物の城」
「お約束いたしましたもの」
 握った手を、娘はそっと頬にあてた。吸血鬼の冷たい、血の匂いのする手を頬に当て、
安堵するかのように微笑んだ。
「必ず戻ると、お約束いたしました。それに、あそこではわたしは用のないもの。必要な
のは薬であって、わたし自身ではございません。ここには、わたし自身を必要としてくだ
さる方がおられます」
「余か」
「貴方さまです」
「口幅ったいことを。人間が」
「無礼と思われたならば、お許しくださいませ」
 闇の王の手を両手で包んで、娘は彼を見あげた。ああ、夏空の瞳、あの日の妻と同じ。
彼はふたたび混迷に落ちこんでゆく自分を感じた。
「貴方さまがわたしをなぜ救ってくださったのか、わたしの上にどなたを重ねておられる
のか、それはわかりません。けれども、わたしがここにおりますことで、貴方さまをお慰
めすることができるならば、わたしはそれでよいのです」
「余を慰めると?」
「はじめてお見受けしたとき、なんと悲しいお顔をなさる方だろう、と思いました。村人
が噂していたような、血に飢えた恐ろしい化け物ではなくて」
 冷たい手のひらにむかって、娘はそっと囁きかけた。
「そうして貴方さまはわたしを生きながらえさせてくださいました。さまざまなわがまま
も、聞いていただきました。わたし自身に目をかけていただけたなどとは、うぬぼれてお
りません。けれども、わたしが貴方さまにとって何らかの意味をもつのであれば、それ
が、わたしにとっては嬉しいのです。
 両親が亡くなって以来、よこしまな心でわたしに近づいてきた者はいくたりかおりまし
た。けれども貴方さまのように、まるで壊れ物を扱いかねる少年のように、こわごわとわ
たしに触れてくださる方はおりませんでした。貴方さまはあまりに長く孤独でいらっしゃ
ったので、ご自身のお心すら扱いかねていらっしゃるように感じます。それほど感じやす
く、さびしいお方を、どうしておひとりで置くことなどできましょう」


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