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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

50 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】12/17 :2010/07/12(月) 22:31:25
「忘れたか、そなたは、あの村の人間どもから吸血鬼の餌になるがいいと放り出されて、
ここに来たのだ。そなたはあの村の人間に殺されかけたのだ、そんな相手をなぜ気にかけ
る? 放っておくがいい、奴らなど勝手に死ぬに任せよ。人間はどうせいつか死ぬのだ。
早いか遅いか、楽か辛いかなどささいな違いでしかない」
「それでも少しでも長く、健康に、しあわせに生きたいと願うのも人間です」
 闇の王の怒りに燃えあがる目に互して、娘の瞳も一瞬たりともゆるがなかった。
「わたしは確かにあの村の人々に捨てられました。けれどもわたしが生まれ、育ったの
も、あの村なのです。わたしの父の墓も母の墓も、あの村にあります。以前親しくしてい
た隣人たちもたくさん苦しんでいます。わたしは死ぬべき命を、貴方さまのお慈悲に救わ
れて、今このような暮らしを与えていただいております。それはある意味、彼らに捨てら
れたからこそ得られた幸運なのです。わたしは今、とてもしあわせです。ですから、彼ら
に恩返しをしたいのです。たとえ、その意図が間違っていたとしても、彼らがわたしを捨
てたことがわたしのいまに繋がっていることは間違いないのですから」
「心の寛いことだ。自分を放りだした輩に逆に感謝するとは」彼はあざけった。
「余の前で言葉を飾るな、娘。そなたは人間の世に帰りたくなった、そうなのだろう? 
血をすする怪物の人形として扱われ、篭の鳥として暮らすのが嫌になった、ただれそれだ
けのことなのだろう、それならばそうと言うがいい、人間め」
「いいえ、いいえ」
 跪いていた娘は、身を乗り出して彼の長衣の裾にすがった。身をちぢめている侍女たち
の間から恐怖の悲鳴があがったが、娘は怖れるようすもなかった。
「今の暮らしはしあわせだと申しあげました。貴方さまが与えてくださるすべてのもの
に、感謝していないなどとはけっしてお思いにならないでくださいまし。ただ、ほんの少
し、少しだけ、かつての同朋に救いの手を差しのべることを許していただきたいのです。
 用事がすめば、必ず戻るとお約束いたします。わたしは捨てられた身です、そのことは
忘れておりません。わたしを拾って、生かしてくださったのは貴方さまです、尊いお方。
わたしの居場所は、ここにしかありません。あちらでは誰ももう、わたしのことなど必要
としていないのですから」
「必要とされていない場所になぜ構う。ただ逃げたいばかりの口実であろうが」
「逃げなどいたしません。必ず戻ってまいります。貴方さまのもとに」
「余のもとに?」
 闇の王の笑い声をまともに浴びて、花園の花の一輪が耐えきれずに枯れ落ちた。


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