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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

47 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】8/17 :2010/07/12(月) 22:29:37
 それでも、娘のもっとも根底たる部分は少しも変わらなかった。よく笑い、微笑み、嬉
しいことがあれば、素直な態度で率直に感謝した。彼が魔性の者であり、闇を統べる王で
あることも、ほとんど忘れられているようであった。丁寧な態度はつねに崩さなかった
が、そこには、多少のいたずらっぽさと、彼には理解できない何か、思いやりとも、同情
とも、つかない何かがあるように思えた。
 愛情、という言葉が脳裏をかすめたが、自らを嗤って彼は否定した。何の、人間の娘
が、魔物とわかっている暗黒の王に愛情など抱くものか。もし好意に近い何物かがあった
としても、それは気まぐれに生命を救い、人形のように自分を飼っている闇の王への感謝
と、おそらく畏怖、つきつめれば、恐怖にすぎない。
 いっそ、あからさまにおもねられたほうが楽だったかもしれない。そうすれば彼は躊躇
なく娘を捨てたろう。しかし娘はそんな態度を一度も見せなかった。彼が来ればよろこん
で出迎え、彼が与えた道具と種から育てあげた花園を、先導して案内するときの誇らしげ
な顔は、無邪気な喜びと誇りに満ちていた。
 幾度となく彼は尋ねた。もっと何か欲しいものはないのか。魔界の竜の額にしか生まれ
ない炎の宝石はどうか。いまだ人間の知らない技術で取り出された秘密の金属は。それは
どんな上質の糸より細くやわらかく、それで布さえ織ることが可能なのだ。地底の溶岩の
奥で生まれる炎の鳥の雛は。氷河の奥に眠る古代の幽霊船から持ち帰られた、ひと抱えも
ある珊瑚と金剛石の椅子は。
 いいえ、欲しくはありません、といつも娘はかぶりを振るのだった。それでも彼が言い
つのると、それでは、と代わりに持ちだされるのは、いつも拍子抜けするようなものばか
りだった。花園の手入れをするための剪定鋏。採れた香草や乾燥した花びらをしまってお
くための素焼きの壷。糸を紡ぐための紡錘と羊毛。紡いだ糸を布に織るための織機。織り
がった布を裁って仕立てるための裁縫道具と色糸。薬草や香草を煮つめたり、パンや菓子
を焼いたり、果物を砂糖煮にするための、小さな厨房と竈……


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