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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

45 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】7/17 :2010/07/12(月) 22:28:29
 そう言って、また娘は鈴のような笑いを響かせた。
「起きてすぐに動きまわりたいわたしのような落ちつきのない娘は、このような簡単な衣
がいちばんよいのです。さいわい、こちらの大地に生える草は、これまで踏んだどんな布
より絨毯よりもやわらかくて、靴をはくなど勿体なくてとてもできません。そんなことを
すれば、このひんやりして心地よい露に濡れた草の感触をなくすばかりか、葉陰に隠れた
小さな花や虫を、うっかり踏んでしまうことにもなりかねません」
 そう言いながら娘はかがんで、下草の裏にかくれた小さな虫を見せた。金属質の輝きを
持つ緑色の甲虫は、一瞬透明な下翅を硝子のようにきらめかせて飛び去った。
「それで、そなたは何もいらぬというのか」
「生命をいただきました。それ以上、何を望めとおっしゃるのでしょう」
「それでも、何かあるだろう。言うがいい。なんでも叶えてくれよう。城から出すことだ
けはならぬが」
 彼は言いつのった。妻と暮らした日々ははるかに遠く、また、目の前にいる娘は確かに
亡き妻ではなかった。淑女としてきびしく育てられた彼女は、裸足で草の上に坐り、妖精
に囲まれて花を編むことなどけっしてなかったろう。彼は心底とほうにくれた。
「それでは、地面を少しくださいまし」
 しばらく考えたあと、思いきったように娘は言った。
「地面?」
「はい。それと、種と、苗、小さな鋤と、こてと、水やりのための桶と柄杓を」
 なんのために娘がそんなことを言い出したのか見当もつかなかった。娘はつま先だって
身を翻すと、踊るように周囲の草地を指さした。
「まだ両親が健在でしたころ、わたしの母は花や香草、薬草を育てて売っては、世過ぎの
助けにしておりました。わたしもそれを手伝って、植物の世話をするのが大好きになりま
した。こちらの世界では、草や花は人間の世界よりもずっと大きく、美しく育つとか。も
し少しの地面を掘りおこすご許可をいただければ、母のものと同じような、小さな花園を
作ってみたいのです」


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