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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

43 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】5/17 :2010/07/12(月) 22:27:17
 また奢侈に慣れ、媚をうるような娘も見たくはなかった。そうなれば自分は娘を殺すだ
ろうという予感もあった。しもべにするのですらない、ただ、もっとも醜く下賤な虫けら
を踏みつぶすがごとく殺すのだ。自分の前から消してしまうのだ。この夜の王の心を惑わ
せた罪、かつての幸福のまぼろしとなって現れた罪、愛するエリザベータの思い出を汚し
た罪、さまざまの罪をもって、娘は消し去られねばならぬのだ。
 王の通過は城のあちこちに台風のような効果をもたらした。彼の通りすぎたあとには震
えあがった妖物や、あまりの恐怖の圧迫に自ら潰れた小妖の死体が散らばった。多少なり
とも知恵のある魔物は息をひそめて主の精神の嵐が過ぎるのを待ち、さして賢くない妖獣
は、蛇の尾を股のあいだにはさんでこそこそと汚泥の中にもぐりこんだ。
 そうした嵐をあとにひいて、彼は娘の居所と魔城とをへだてる扉に近づいた。彼自身が
ほどこした封印がちりばめられた、重い扉であった。手をかけて、押すのにはいつもより
力がいるように感じた。細くあいた扉の隙間から、精霊界の微光と、楽しげに笑いあう振
鈴のような声が流れこんできた。


「ああ、尊いお方」
 娘は聴かされた通り、白い衣に裸足のままで、青草の上に座りこんでいた。跳ねるよう
に立つと、やわらかな金髪が翼のように宙を舞った。
 周囲で同年代の娘のように笑って花飾りを編んでいた樹精や水精の侍女たちが、あわて
て立ちあがって礼をとる。珍しげにそばにとまったり、あたりを飛びかっていた羽根ある
小妖精が蜘蛛の子を散らすように逃げ散る。輝く鱗粉がこぼれて木々や下草に飛んでい
き、いくつもの小さな頭がおそるおそる様子をのぞいた。
「ようやくいらしてくださいましたのね。お待ちしておりました。もしかして、お怒りに
なっておられるのではないかと、そればかり心配しておりました」
「余が?」
 ようやく、彼はそう言った。スカートを払った彼女ははじめてやってきた日と変わら
ず、明るくまっすぐな瞳をしていた。
 夏空の瞳。自分が二度と見ることのかなわぬ色。彼はまるで人間のように目まいをおぼ
えた。その瞳が、彼にむかってほほえんでいた。


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