したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

41 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】3/17 :2010/07/12(月) 22:26:12
「それが、何もほしがりませぬ。陛下のお与えになった衣装も装身具もほとんど手も触れ
ず、ここに来たときにまとっていた白い衣と裸足のまま、青草を踏んで歩くのが好きなよ
うに見えまする。端女どもが宝石や黄金を並べ、鮮やかな衣装に袖を通すように勧めて
も、それでは歩いたり走ったりするのに不便だから、自分はこれがよい、と。衣装の織り
手の空気の精たちは嘆いておるようでございますが」
 男は黙りこくった。報告者の小妖は、主の機嫌をそこねたのではないかと、はや戦々
恐々として身をちぢめていた。
 かなりの時間が経ったあと、はじめて男は、小妖がまだそこに縮こまっていることに気
がついて、そっけなく、去れ、と命じた。心底ほっとした様子で報告者は消え失せた。
 ──主よ。
「呼んではおらぬぞ、〈死〉よ。何用か」
 ──あの娘に、何ゆえ口づけを与えられませぬ。
 男は無言であった。広間の暗黒からにじむようにわいて出た黒衣の骸骨は、巨大な鎌を
肩にしながら漂うように玉座のかたわらに依った。
 ──あの娘がお気に召したか。ならば口づけを授け、側女となさるがよい。ほかの女に
したのと同じく。あの娘がかつて主の妻であった魂を持つならば、まして、そうなさるべ
きであろう。主はわれ、〈死〉の手に愛するものを渡さぬとお誓いなされた。主が口づけ
なさらば、あの娘は主と同じく、永遠の生を得よう。
「死者の生をか? 血に飢えた怪物の生をか?」
 苦々しく男はののしった。
「〈死〉よ、余は確かに汝の手から生命の与奪を奪うためにいまのこの身となった。だ
が、わが身に使用した法はただ一度のみ、ほかの者には使えぬ。汝の進言のとおり、娘に
わが口づけを与えたならば、なるほど、娘は永生を得よう。しかしそれは歩く死者の負の
生命だ、血を求めて飢えかわく悪鬼の生命だ。そこに人としての魂は一片として残らぬ。
そのことを知らぬ汝ではあるまい」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

悪魔城ドラキュラ Best Music Collections BOX(DVD付) / SMD



掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板