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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

40 古歌-イニシエウタ-【二ノ歌】2/17 :2010/07/12(月) 22:22:29
 以前よりも鬱々とした日々を、男は過ごすようになった。無為に玉座にあって石のよう
に無感覚でいるよりも、はるかにつらい時間であった。目を閉じれば娘の澄んだ瞳と、輝
かしい金髪が細い肩をすべり落ちるようすが浮かんだ。それはまた、遠い昔、若い妻との
婚礼のおりに、彼が見ていとおしく思ったすべてと重なった。
 しかし、ああ、彼女は死んだのだ。自分が神の名のもとに異教徒を殺している最中に、
神と、その走狗である運命の手で、〈死〉の骨の手に渡されてしまった。
 であるのに、彼女はふたたびここにいる。温かい生きた血肉をまとい、あの日と同じ
若々しくなめらかな頬と、やわらかな唇を彩るほほえみを浮かべて。
 そして剣。かつて騎士マティアスと呼ばれた男のものであった。
 最後に妻を見たとき、彼女は目に涙をためながらも、あの剣を抱いて気丈に微笑んでい
た。そしていま現れた彼女も、同じ剣を抱いて、まっすぐにこちらを見つめていた。
 もう一度、あのまなざしにさらされるのが恐ろしかった。太陽の光に耐えられぬ身にな
ったと同様、あの瞳に見られれば、この身は存在することもできず蒸発してしまうのでは
ないか。そんならちもない妄想が、脳裏を離れないのだった。
 娘は彼の心臓に刺さった棘であった。動きもせず、傷つくことも永久にないはずの心臓
が、そのために痛み、びくつき、血を流して悲鳴をあげていた。彼女を監禁したのは彼で
あったが、いまでは、監禁されているのは彼であった。
 娘がいる精霊界の近くに、足を向けることさえ最近の彼は避けていた。にもかかわら
ず、毎日、娘はどうしているか、身体に障りはないか、傷ついたり怯えたりしている様子
はないかと、尋ねずにはいられなかった。
「娘は元気にしております」と判で押したような答えが返ってくるばかりだった。
「精霊界に住むのも慣れたようで、妖精どもとたわむれては、森を散策して草を摘んだ
り、踊ったり、歌を聴かせているようでございます。人間界の歌を」
「妖精どもは娘をきらってはおらぬのか」
「いえ、むしろ、たいそう好いておりますようでございます。世話につけました樹精や水
精の娘どもも、できるかぎりよくしてやろうと心を砕いております。どのような貴婦人で
さえ、あのように侍女をとりこにはしますまい。羽根ある小妖精どもなどは、娘が戸外に
いようがいまいが、蝶のようにあたりを舞って、いっときも離れようとせぬとか」
「何か欲しがることはないのか。欲しいものがあれば何であろうと言うがよいと申し伝え
てあるはずだが」


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