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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

38 古歌-イニシエウタ-【一ノ歌】6/7 :2010/06/23(水) 23:03:54
「この度は許さぬぞ、〈死〉よ。あの娘に手出しはさせぬ。わが配下の魔ども、闇に棲む
すべてのものにも伝えよ。あの娘の身に毛ほどの傷を与えること、髪の毛一本なりとも損
なうことがあろうものなら、余がじきじきに、永劫続く苦痛をその者に与える。娘は安全
に護られねばならぬ。完全に。完璧に。聞こえたか、〈死〉」
 ──主の言葉である。われは従う。
「ならばゆけ。よいか、娘を傷つけてはならぬ、一指すら触れてはならぬ、ことに汝は
だ、〈死〉よ。汝は一度わが妻を奪った。同じ魂を持つものを、二度までその貪婪な鎌の
もとにさらす気はない。娘の世話は選べるかぎり快い姿を持つものに命じよ、娘が怯える
ことのなきよう。精霊界への扉を開けよ。城の瘴気も、あの地までは及ぶまい」
 ──人には寿命のあることを忘れてはならぬ、主よ。
 影のごとく漂いながら、呟くように〈死〉は告げた。
 ──娘はなるほど美しい。確かにかつてエリザベータと呼ばれたものの魂の姿を受けつ
いでいる。しかしまったく同じではない。時が経てばいずれ老いて醜い老婆となり、死
ぬ。それは主であろうと止められぬ。娘が人である以上は。われは主との契約に従うが、
自然の法則においての死は、枉げることができぬ。
「そのようなことは判っている。行け、今は汝の骸骨の顔など見たくはない。欲深な、く
だらぬ奴隷め、行け。行かぬか」
〈死〉は姿を消した。玉座にもたれかかり、男はいまだ受けとめかねる衝撃と立ち返って
きた記憶の渦に、身じろぎもできぬまま翻弄された。
 泣けるものならば泣いていた。だが人でないものに泣くことはできぬ。身も心も凍りつ
かせたまま、男は、暗黒の城の玉座で、とつぜん舞い込んできた輝く髪の娘を想い、ひと
り胸をとどろかせていた。


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