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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

35 古歌-イニシエウタ-【一ノ歌】4/7 :2010/06/23(水) 23:01:45
「余がこの城の主である」
 彼は告げた。普通の人間であればそれだけで恐怖に凍りつく声だった。
「汝はいずこより参り、何のためにここにいるか。申せ。返答次第で汝の処遇は変わる」
 娘は身じろぎし、視線をあげた。面紗におおわれた下から細い顎がわずかに見えたと
き、彼は奇妙な胸騒ぎをおぼえた。人であることを捨ててから、絶えて感じたことのない
ものであった。娘は裸足で、粗末な白い服を着せられ、あたかも犠牲の仔羊のように小さ
く、無垢に見えた。
「わたしがいずこから参りましたかはもはや申しあげても意味のないことでございます、
尊いお方」
 細いが、涼やかな声で娘ははっきりと答えた。ふたたび強い胸騒ぎが、魔の血に浸され
て揺り動かされることなどないはずの心臓が、絞り上げられる心地すらした。
「わたしは家をなくし、家族をなくしました。友もおらず、支えてくれる者とて誰ひとり
おりません。金でわたしを買おうという者もおりましたが、そのような身に自分を置くこ
とは父母の教えに反すると感じて、断りました。すると彼らはわたしを捕らえて、こちら
のお城の門前に置き去りにしてゆきました。それがすべてでございます」
「その膝に持っているものは何か。剣ではないか。余をそれで討とうとでもするか」
「いいえ。ただの人間の女にすぎないわたしに、どうしてそのような大それたことができ
ましょう。これはわたしの亡き父母が唯一遺してくれた形見、わたしの家系に伝わる、か
つて名高い騎士であったお方の持ち物であったという剣でございます」
 娘は包みから布をすべり落として、中身を差しだした。男は低くあっと声をもらして、
われにもなく後ろに身をそらした。娘は気づかず続けて、
「そのお方はたいそう知略と知謀にたけたお方と伝えられておりましたが、聖地を奪回す
るための長い戦に出るおりに、奥方様のもとに遺してゆかれた剣がこれだと聞いておりま
す。それ以来、この剣はわたしの家の女の護り刀として、代々受け継がれてまいりまし
た。けれども今では、わたしがただ一人残るばかりです」
「汝──いや、そなた、名は」
 彼の言葉はほとんどあえぐようであった。
「エリザベート・ファーレンハイツと申します、尊いお方」


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