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【原作】ドラキュラ・キャスバニ小ネタ/SSスレ【準拠】

25 Rhapsody in Blood 〜朔〜 2/6 :2008/04/05(土) 17:02:48
『また世迷い言を云いに来たか』

 肉声ではなく、部屋全体の空気を揺るがすような声にアドリアンが振り返ると、無数の
蝙蝠が玉座に集まり、その暗がりから父、ドラキュラ伯爵が現れた。
 闇の眷属であることを見せつけるようなその出現は、おそらく自分に同じ血が流れてい
ることを思い起こさせるためにわざと行ったのだろうと、アドリアンは思う。
 母を亡くして以来、父は吸血鬼としての本性を隠そうとしなくなった。自分の前では特
にそうだ。今も、母と共に在った頃には想像も付かなかった父の姿がそこにある。人と同
じ姿形を持ちながら、人ではないものなのだと悟らざるを得ない、冷たく凄惨な魔王の容
貌。こちらを見据える紅い瞳に、かつての情など欠片も見いだせはしない。
 それを寂しいと思ったこともあった。しかし今は、恐ろしいと思う。父がではなく、こ
こまで父を変えた絶望というものが。もしそれに侵されたならば、自分もまた父と同じ道
を辿るのだろう。だからこそ、母の言葉を決して忘れてはならない。
「何度でも申し上げます。無意味な虐殺などお止めください、母上は復讐など望んではい
ませんでした」
「幾度繰り返そうが無駄なこと。リサが何を望んでいたとしても、今となっては何の意味
もない」
 父の言う通り何度も同じ問答を繰り返すだけでしかなくとも、それを無駄とは思いたく
なかった。たとえ父に届かなかったとしても、語りかけることを諦めてしまったら父との
絆をも無くしてしまう。
「母上の望みを叶えることが、なぜ無意味なのです。何でも叶えてやりたいと仰っていた
ではありませんか」
 まるで揺るがないように思えたその瞳に、一瞬影が差したように見えた。
 そしてわずかの沈黙の後、唇を嘲けるように歪める。喉の奥で押し殺したような笑いが
響いた。
「そうだ、何でも叶えてやろうと思った。──その結果がこれだ!」
 玉座の肘掛けを叩きつけ、その勢いのまま立ち上がった。
「昼に出歩くのも、疫病に苦しむ人間に薬草を与えるのも、好きにさせた」
 ゆっくりと段差を降りこちらに向かって来る。全身から立ち上る激しい怒りと憎悪に気
圧されて、アドリアンは思わず後ずさった。しかしもともと扉の前まで来ていたのだ、す
ぐに背が扉に触れてしまう。
「それが仇になったのだ」
 徐々に距離が詰まる。背後の扉を開けて逃げたい衝動を必死に押さえ、目を逸らさぬよ
う自らを叱咤する。父を説得するために来たのではなかったか。たとえ何があろうとも、
逃げることはできない。自分から背を向けるようなことだけは、断じて。


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