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TSFのSS「ターニング・ポイント」

1 luci★ :2016/11/01(火) 00:21:20 ID:???0
 そのニュースは大きくなかった。ただ、いくつかの共通点があって多少スキャンダラスではあったものの、海外と日本に渡るために次第に関心を失っていった。金持ちと呼ばれる人種が、数人死亡しただけの話だったのだから。

「ぷっ、ふうぅぅ――」
 高遠歩が培養機器から解放されると、まずはガラスに自らの姿を映した。そこに映る姿は、二週間前に培養機器に入る前とは大きく違っていた。
「……ん、成功、かな」
 長い睫毛を瞬かせながら、自身を見てみる。身長は160に満たないだろう。髪は肩に着くほどになっている。つんと上を向いた必要にして十分な胸。くびれたウェスト回りはちょっと腹筋が出ている。張った腰は女性らしさを強調していた。恐らく多くの男性が振り向くだろう容姿。自分の姿でありながら、高遠はすこし高揚した。
 とある生化学研究所の一研究室。そこには人が数人入れるほどのアクリル製水槽、培養槽と、それに繋がる様々な機器が所せましと配置されている。そこに割と小柄な、裸の女性が立っているのは少し奇異な感じがする。
 そもそも高遠は男性だった。ある遺伝子疾患を患っていたために、自分の研究を極める前にこの世からいなくなりたくなかった。彼は、自分の研究成果と既存の技術を用いて延命することを考えたのだ。
 その技術がトランスセクシャルだった。
 最近ではある程度の富裕層では、そういう遊びが流行っていた。無限増殖細胞を使用し、自らの性別を反転させ、反対の性別のセックスを楽しむ、そんな遊びだった。
 無限増殖細胞、言ってみればガン化した細胞を用い、性遺伝子を一気に書き換える。XYからXXに、そしてXXからXYに。もちろん、不道徳という観点から公にはなっていないが。そして危険も当初はあった。暴走すると一気にガン化して死亡に至った。
 しかし高遠の研究がそれを安全なものにしたのだ。
 そして今回自分に対して行ったものは、自身を実験台としてすべての遺伝子を作り替える、脳細胞までも。
「さて、まずは培養の経過、と、あれ?」
 機器に接続されているPCのモニターを見ると、予定していた日付と二週間もずれがあった。
「おかしいな、急速培養は二週間で終わるはずなのに……」
 裸の背筋をしならせモニターを見て、人差し指を唇にあて小首をかしげる仕草は、女性っぽいとしか言いようがなかったが、本人は気付かなかった。
 二週間も無断欠勤していながら、培養機器が放っておかれている状況は普通ではなかった。自然とデスクのある部屋へ行こうとした。けれど、時刻はすでに22時を回っている。不用意に裸で飛び出して警備員と鉢合わせになれば、自己の証明ができない。遺伝子を作り替えているとは言え、多くは元々の男性体から受けついている。指紋も同じであることは動物実験の段階でわかってた。わかっていたが、それでも。
 手近にあった白衣を羽織り、研究室の扉を開け、廊下に頭だけだして確認する。誰もいない。
 ひたひたと素足で走ると、胸が揺れて乳首が擦れる。あまりいい感じはしない、などと思いながら上階の自室へ至った。

2 luci★ :2016/11/02(水) 00:54:45 ID:???0
 高遠の自室―オフィスと言ってもいいかもしれない―は階段からすぐの所にある。その狭い廊下の奥にはプロジェクトチームのリーダーであり高遠の友人でもある渡瀬祐樹のオフィスとなっている。渡瀬のオフィスはリーダーにふさわしく近代的なガラス張りの部屋だったが、液晶を用いたそれは機密性も兼ねているため実験データをまとめたり論文を書く場合には都合のよい造りになってた。反対に高遠のオフィスはベニヤの扉ですりガラスが入っている、古い大学の教授室のような造りだった。
 廊下は非常灯のみ点いていて奥のオフィスからは灯りも漏れていない。もっともそれは渡瀬がいないという判断材料にはならなかったが。
 一通り見渡してから、高遠はいつも鍵を隠しているネームプレートをずらした。
(……おかしいな、鍵がない?)
 旧態依然とした扉ではあったが、さすがに研究内容も詰まった部屋だ。必ず施錠はしている。培養槽に入る前の記憶を辿ると、しかし覚えがない。時間的にはひと月の間隔があったが、言ってみれば、高遠からすれば寝る前の行動でしかないというのに。
 訝しく思いながらもドアノブをひねり扉を開けた。
(空気が、暖かい?)
 既に暦では初冬になる。ひと月も人が出入りしていなければ室内の空気も冷えている。ましてや夜半だ。それが、今まさに人がいた、そんな暖かさを持っていた。
「!」
 オフィスに入って見渡すと、一瞬、声が出そうになった。何かが腐ったようなきつい臭いが充満していた。そして何より、誰かが自分の椅子に座っている。椅子のシルエットから頭が出ているのが見えた。
 十秒にも満たない対峙に、相手はなんの反応もない。それどころか半裸の女性が入ってきたというのに身じろぎもしない。
 その態度に不信を抱いた高遠はゆっくりと近づいていく。それでもそれは動かない。もう一歩で触れられる所まで来たとき、わが目を疑った。
「まさか。そんな、私、か?」
 まるで鏡を見ているような印象だった。しかし今高遠は椅子に座っていないし、スーツも着ていない。そして、死んでいない。
「あ、ぅ、一体? これは……」
 自分の死体を見るショックはどれほどなのか。本当に第一印象通り、死んでいるのかと触れようとするけれど、伸ばした手は自然と胸元に戻ってしまう。ただ、見開いた目と舌を垂らした口、両手両足を椅子に縛り付けられたそれの腹は膨れていて、どう見ても死体、だった。
 意を決して頸部に触ってみる。脈はふれていない。ただ、まだ温かい。腐敗が進んでいるようだった。
 よく見れば両手の指が欠損していた。
「うぐっ」
 ショックと臭いで吐き気を催すが、寸でのところで留まった。そんな場合ではないと。
 オフィスに死体がある。それが自分であろうとなかろうと、まずい状況だった。そして自らは人体実験で性別反転させている。俄かには自己証明ができない。研究は続けなければ、自分がどうなるかもわからない。今この場に誰か来たら――高遠は若干パニックになりながらも緊急対応に迫られていた。

3 luci★ :2016/11/02(水) 00:56:12 ID:???0
「高遠先生いらっしゃったんで――うっ臭っ! あっ?!」
 背後からフラシュライトが照らされ、顔見知りの警備員の声がした。思わず振り返ると闇に慣れた目が光を拒んで自然と手で遮っていた。
「待ってくれっ、私は」
「そこっ動くなっ――警備室、高遠先生のところに侵入者だ、応援頼む!」
 とにかくこの状況を打破しないといけないが、狭い扉の前に警備員がいる。出口は窓を除けば一か所しかない。窓から飛び降りようにもここは四階だ。ただでは済まない。そんな逡巡をしているうちに、不用意にも警備員が近づく。
「やっと捕まえたぞっ最近うろちょろしやがって、この泥棒猫がっ。高遠先生ご無事で――ひぇっ?!」
 ライトに照らされた死体を見たのか、警備員がひるんだ。高遠はその隙に乗じて書類を投げつけ脱兎のごとく走り出した。
「あってめっ」
「うぁ?!」
 翻った白衣の端を掴まれ一瞬足が鈍る。が、大きめの白衣はするりと脱げてしまう。
「まてっ――ぐぎゃ」
 無様にもオフィスの書類に足を取られた警備員は派手に転んでいた。それをしり目に真っ白な裸体は闇に消えていった。

 階段側オフィスから、男の怒鳴り声と女の微かな声が聞こえてきた。それまで震えていた手がすっと自分の意志通りに動くようになった。男は汗の滴る頬に笑みを浮かべていた。

4 luci★ :2016/11/02(水) 00:57:54 ID:???0
 一難去ってまた一難だった。高遠は全裸のまま派手に胸を揺らして全力疾走していた。
(くそっ、なんだってこんな目に……全裸とかありえないだろうっ外に出られないじゃないかっ)
 男ならばまだ良かった。少なくとも股間だけを隠せれば何とかなりそうだった。しかし女ではそうはいかない。胸も股間も隠さなければ。そんなことが頭をよぎると、急激に羞恥心を煽ってくる。自然と歩幅は小さくなりスピードも落ちていく。
(どこかに、服っ)
 頭の中に施設図を展開するまでもなく、開けっ放しの自分の研究室を思い出した。もともと研究員たちが思い思いに白衣を置いて行っている。先ほどまで着ていた白衣もその誰かのものだった。
 既に二階まで降りていた高遠は踵を返して階段を昇って行った。

 全身を黒っぽい服装で統一した彼は、アユムタカトオの死体と白衣の女を確認した後、足早に研究室へ向かった。途中、人の気配を感じたような気がして非常階段を急ぐ。
 それまで厳重に閉じられていた研究室の扉は、指一本で開いた。闇に慣れた目は濡れた床をみとめて慎重に、しかし素早く室内を検索した。どうやら何かが培養機器から出て行った、ようだった。PCを見つけるとUSBメモリーを接続した。パスワード解除用のソフトウェアを起動させ、研究データのフォルダ階層まであと一歩のところで廊下から音が聞こえてきた。
 手早くUSBメモリーを抜き取ると机の下に身を隠す。同時にそろりと扉が開いた。
 ひたひたと彼の隠れた机の前を足音が通過する。
(――白衣の女?、やはりこいつ、んん?)
 丁度目の高さに股間があった。女の茂みが目に入る。少しだけ呆気にとられ見送ると椅子に掛けられた白衣に次々と嗅いでいく。三着目で納得したのかシュルっと袖を通した。
 そして女は机の引き出しから素早く何かを取った。彼は腰のナイフのハンドルを握り飛び出す瞬間を狙う。
「!!!」
 廊下の遠くで声がした。その瞬間、女は研究室を飛び出していた。
(ちっ)
 軽く舌打ちしてから、女を追うように彼も非常階段を降りて行った。

5 luci★ :2016/11/04(金) 23:46:20 ID:???0
 立ち入り規制用の黄色いテープに阻まれ、報道陣はその中に入れない。早朝であるにも関わらず、そのカメラとアナウンサーの数でどれだけスキャンダラスかが推し量れるといえる。それほど高遠の死は、世間の注目を集めていた。
 それは高遠がTSの技術を確立しただけでなく、新たな遺伝子疾患の治療方法を示唆していたことに他ならなかった。
 悲しみと、アイディアの喪失にマスコミは「憂い」の反応を大衆に示した。もちろん大衆はメディアの示唆した通りの反応を示した。
「――今回の件につきましては、警察に一任しております。早く犯人を捕まえていただくこと、そして我々は彼の遺志を汲み、一刻も早く全遺伝子の組み換えを厚労省に認可していただきたい、その助力は惜しみません」
 高遠の友人でもある渡瀬が神妙な面持ちで語っている。少し遠くから見ている人物がいた。
「なぁんかな、きにいらねぇよな」
「どこがです? 部下からするといい上司に見えますけど」
 無精ひげをじゃりじゃりと左手で撫で、斎藤昇司巡査部長は年若い巡査に語り掛ける。犯人のことなど二の次で、結局自分たちの利益中心の物言いだったが、斎藤も理解されなかったからといって、怒鳴ることも拗ねることもなかった。これは至極当然のことだ。
 既に高遠についてはある程度捜査が進められていた。そこには研究者としての表の顔と、私利私欲に走った裏の顔が見え隠れしていた。
 捜査本部の見解は、高遠が研究を秘密裡に売り渡し、その見返りとして金銭供与を受けていた。そして何らかの金銭トラブルにより殺害されたか、自分の研究の秘密を渡そうとしなかったからではないか――というものだった。
 確かにそうならば、高額な預金残高や拷問紛いの殺害方法―指を切り落とした上に自白剤の射ち過ぎによる心不全―も理解できる。しかし金銭がらみならいっそのこと、相手の企業なり研究所なりがヘッドハンティングした方がリスクが低い。現に捜査されているのだから。そして高遠の金の管理が杜撰すぎた。それが斎藤には腑に落ちないところだった。
 そして、重要参考人として浮かんでいる白衣の女。もしこの女が犯人だったとして、なぜ殺害後一週間も経ってから再び現れたのか。高遠の休暇が終わった翌日に来訪するなど、捕まえてくれと言わんばかりだ。
「誰なんすかね、その女。白衣の下って真っ裸だったらしいし」
「――そこは重要じゃねぇだろ。お、来たぞ――あぁ、渡瀬さん、わたしらこういうもんで。すみませんねぇお忙しいところ。ちっとばかりお話聞かせてください」
「ん、ああ、構いませんよ。場所を変えましょうか」
 渡瀬の部屋に通されると、斎藤達は一通りの話を済ませた。高遠との関係、高遠の研究内容、高遠の交友関係。もっとも研究内容は極秘ということだったが。それ以外はこれまで聞き込んだ内容を裏付けるくらいのものだった。
「いや、ありがとうございました。それじゃわたしらはこれで――何か思い出したら連絡ください」
「ええ、できる限りご協力します。必ず高遠を殺した犯人を捕まえてください」

6 luci★ :2016/11/06(日) 07:25:40 ID:???0
 着ているものは白衣だけ。持ち物は研究データの入ったUSBメモリーのみ。高遠は寒風吹きすさぶ真夜中、途方に暮れていた。
「うぅ、寒っ」
 だいぶ走ったとは言え、時折サイレンの音が近づき、離れていく。そのたびに暗闇の中に身を潜め肩を抱き小さくなる。そうすると一層自分が女性としての身体を持っていることが理解できた。培養槽から出てすぐに眺めた肢体は、自分でもゾクリとしたのだ。それが半裸でうろうろしていたら、いくら研究に没頭し世俗に疎い高遠でも理解できる。
 かれこれ二時間、彼というか彼女は比較的大きな病院の裏口近くに潜んでいた。ホテルや救急外来のある病院は、訝しがられても、入るなとは言われにくい。暖を取ることもソファで寝ることもやろうと思えば可能だ。ただそれも衣類を着ているならできたが、生憎の格好のため中に入ることはできなかった。それでも発動機やボイラーの排気など、暖かさを得られる場所があった。それが裏口近く、だった。
(同じところにずっと立っていられるなら暖かさも感じるが、こうも位置を変えないといけないとは。これじゃあ、休むこともできないな)
 救急車が来れば移動し、ドアから音がしても移動して、かなり疲労も溜まっていた。
(この状況をどうにかするには? というより寒い。くそ、誰かに連絡をと言っても……金もない)
 自分のスーツからせめて財布でも取ってくればよかったと、今更ながらに悔やむ。しかし次第に身体が思考を許さない状況に追い込んでいった。
(あぁ、やばいな。女ってこんなに近いのか? 膀胱が小さいからか)
 下半身を冷やした状態で数時間を過ごしている。寒さ以外でも震えがでてきた。
(もう、だめだっ。躊躇してる場合じゃない、恥ずかしがってる、場合でもない)
 高遠は研究一筋で女っ気がなかった。というよりも童貞だった。ホモでも興味がなかった訳でもない。ただ、機会と勇気がなかった。彼にとって女性とは高貴な存在であり、触れるなどもっての外だった。
 本来の実験では女性になった後、体力を整えてから速やかに男に戻る計画だった。疾患治療のための措置であり、ある意味、生まれ変わるための母体となるようなものだった。高遠歩が生まれ変わるために、高遠歩自身が高遠歩の母になったようなもの。
 その母体の神聖な部分に触れなければならない、それが半裸でいるよりも恥ずかしいことだった。
 けれども。彼女はゆっくりと立ち上がると、既に小走りにもなれず、病院の表玄関を下腹を抱えて入っていった。

7 luci★ :2016/11/08(火) 15:43:32 ID:???0
 照明を最小限まで落とした玄関は薄暗く、尿意でおぼつかない足取りによるものか、受付担当の警備員はあっさりと通してくれた。こんなことならもっと早く来るべきだったかとも思うが、今更考えても仕方のないことだ。
 高遠はトイレの前で一瞬立ち止まると、周囲を一瞥してから女子トイレに入った。もっとも、逡巡はどちらに入るのかではなく、素足でトイレの床を歩くことに抵抗があっただけだ。
 便座に座ると腰から暖かさが立ち上ってくる。「ほぅ」とため息がでると同時に下半身から力を抜いた。
「?!」
 勢いよく放出される尿は陶器をたたき、思ったより大きな音が響く。誰もいないと分かっていても、なぜだか恥ずかしさが高まり、早く終われと願っていた。
(ああ、だから流しながら放尿するのか。水の無駄と思ってたが……これは確かに恥ずかしいな)
 排泄行為自体は誰でもするが、音や臭いが不快にさせるかも知れないという心理からか、そこには羞恥が伴う。あるいは下半身を曝け出すために性行為自体を連想させるからか。
 し終わって、高遠は次のフェーズに移らなければならなかった。ロールペーパーを手に、次第に上半身が熱くなってくる。
(――女のあそこって、どこまで拭けばいいんだ?)
 構造自体は解っている。ただ広げて拭くのかどうか。周りを恐る恐る拭いてみると、意外なほど柔らかな感触が感じられた。それだけで更に熱くなる。
(中も拭いた方がいいよな?)
 自分の肉体を清潔に保つ行為なのに、誰かに許しを請うような自問自答に、さすがに苦笑いを浮かべた。上から見れば陰毛しか見えないそこに手を差し入れて大陰唇を開く。と、小陰唇も開いた気がした。そこにペーパーを充てると水分が浸透していく。
「ん――」
 手を引き上げる時に当たってしまったそこは、敏感で、男のそれとはまったく違っていた。思わず声が漏れた。
(これが、女、か)
 金持ち連中が夢中になるのも分かる気がするなどと思い始め、ちょっとだけ指先でクリトリスに触れる。
「はぁ」
 艶っぽい声がトイレに響き、高遠は真っ赤になりながら手で口元を押さえた。一瞬この快楽を貪りたいと思ってしまう。
(いやいやっ、こんなことしてる場合じゃない)
 大きく頭を振り立ち上がると、流してトイレを後にした。
 しばらく待合室のソファに座って、これからの行動を考えてみる。自分の部屋に行こうにも鍵がない。そうなると近くにいて頼れるのは一人しか思いつかなかった。
 しかし連絡をしようにも金もなく電話はできない。直接行って説明をし身分を証明するしかない。証明するならお互いの研究内容について語れば解ってもらえるだろう、と。
 時刻は二時を回っている。高遠は息を大きく吐き出すと、意を決して病院玄関を出て行った。

8 luci★ :2016/11/09(水) 00:08:20 ID:???0
 マンションの入り口に着く頃には、高遠の肉体も精神も疲労困憊だった。深夜とは言えエンジン音が聞こえれば手近な場所に身を隠し、人がいても同様だった。二十分も歩けば着くはずの場所に一時間近くかかっていた。
「はあっ、疲れた……もう寝てるか。申し訳ないが」
 煌々と照らされたロビー前には自動ドアがあった。鍵を持っているか室内からしか開けられないそこは、姿を認められやすい。高遠は素早く部屋番号を入力し返答を待った。
「……どなた?」
 聞きなれた、しかし不機嫌そうな渡瀬の声がスピーカーから流れる。
「夜分すまない。君の友人の高遠だ。俄かには信じられないかもしれないが、高遠だ。経緯は追って説明するから入れてもらえないか」
「――高遠だと? 馬鹿なあいつは」
「二週間、いやひと月前に君に伝えていただろう? 治療のために一旦性別を変えなきゃならんと。だから――」
「……まぁいい。入れ。そんなところにいられたら、マンションの評判が落ちる。リセールバリューが下がっちまう」
 ピピッと音がすると静かに自動ドアが開く。高遠ははだけた胸元を持ちながら素早く入っていった。
「まだ起きてたんだな」
 ウェットティッシュで足を拭き、居間に通された高遠はスーツを着込んだ渡瀬の姿に言葉が出ていた。
「起こされたんだ。これから出なきゃならん。で、お前は本当に高遠なのか?」
 コーヒーを差し出しながら、自らもカップをすする。
「ありがとう、説明する」
 高遠はカップを両手でもちソファに腰かけて、これまでの経緯とお互いの研究内容について語った。そこには二人しか知りえない内容が含まれ、渡瀬も流石に信じる他ないという表情を作っていた。
 そしてまじまじと頭の先からつま先までじっくり観察すると、渡瀬が口を開いた。
「お前が高遠として、ずいぶん小さくなるもんだな。実験動物では目にしていたが、人だとこうなるのか」
「まぁ、肉体の持つエネルギー源を活用して組織を入れ替えるからな。出来上がればどうしても元の肉体より消耗している分、小さくなるさ。君のしている研究、人の複製、が完成していたら、こんなまどろっこしいことをしなくてもよかったんだけどね」
「――ふん、そうだな、完成していたら、な」
 自嘲なのか侮蔑なのか、いやらしい笑みを口元に宿しながらカップを煽る。
「ところで高遠、お前これからどうするんだ。俺はこれから研究所に行ってお前の死体と対面して、事後処理もしなきゃならん。本当ならもう出てないといけない」

9 luci★ :2016/11/09(水) 00:09:42 ID:???0
「それなんだが、君が身元を保証してくる訳にはいかないか?」
「状況を考えれば、お前は限りなく黒だ。容疑者のお前を置いておくわけにもいかんぞ。立場的に」
 それでなくても、と続ける。
「研究自体、お前がいなくなると大幅に遅れる。それをスポンサーに納得させないと。ああ、マスコミ対応もあったな」
 言外に関わってる時間がないという渡瀬に、大方予想通りと高遠も納得していた。
「なら、すまないが少し金を貸してくれないか。暫く身を隠していれば犯人も捕まるだろうし、容疑者でなくなったら実験データを見せれば私が高遠だということも証明できるだろう? ついでにマスコミ発表すれば技術を売ることもできる……それは君の担当だけど」
「お前、簡単に――わかった。お前、しばらくホテルにいろ。いいか、俺が連絡するまで誰にも会うなよ。……ああ、それと」
 ごそごそと紙袋から投げて寄越したそれは、女性の衣類だった。
「なんだ? 女装の趣味があったのか、君は?」
「――この間別れた女が置いてったもんだ。捨てようと思ってたんだが、白衣よりましだろう? それを着とけ。サイズは知らん」
 ブラにショーツ、黒のストッキングにノースリーブの膝丈ワンピース。それにニットのタートルネック。おまけにショールとブーツまである。
「時間がないんだ。躊躇してる暇はないぞ? ああ? 着替え方がわからん? 手伝ってやるから早くしろ」
「いや、ちょっと待て、手伝うって君、それは意外と恥ずかしいぞ……」
 ぐずぐずしていると裸に剝かれそうだと感じた高遠は、ショーツだけは自分で穿いた。他人の穿いていた下着をつけるということに、多少の躊躇いはあったものの、冷えから脱する方が現実的にも優先だった。手に取ったショーツは新品と言ってもいいほどで、男性の下着からすれば華美ともいえる装飾が、高遠から見ても可愛いと感じる。
 穿き終わって白衣のボタンを外すとスルリと床に落とす。と、渡瀬が背後からブラのカップを持っていきなり乳房に被せてきた。
「君っ、いきなり」
「少しかがめ。――手伝うと言っただろう」
 ストラップを肩に通し、前かがみにされた高遠の胸をホックで止める。普段締められたことのない男性の胸は息苦しさを訴えた。
「渡瀬っいい加減に」
 乳房を手で包み、カップに慣れた手つきで納めていく渡瀬。他人の手で胸を触られるなど経験がない高遠は、真っ赤になりつつ目を白黒させた。
 形よくカップに包まれた乳房が自分は今女なのだと高遠に語り掛けていた。
「ふん、結構ぴったりだ。よし、あとは自分で着られるだろう? 着替えたら行くぞ」
「あ? ああ……」
 なぜか事後のような気恥ずかしさで、高遠は俯きながら渡瀬について部屋を後にした。

10 luci★ :2016/11/10(木) 20:57:13 ID:???0
 渡瀬の車は珍しい部類の高級外国車だった。それがどれほどの価値なのかは、研究以外に趣味もない高遠には分らなかったが、見たことがないというレベルではすごいのだろうと思っていた。
 革張りのシートは、この時期シートヒーターがないと冷たさを感じるものだ。しかし高遠がそれに乗り込むと肌寒さを感じなかった。まるで少し前まで暖房がついていたように。高遠はこの車が高級車だからそういうこともあるのだろうと思っていた。
 無言のうちに車を走らせる渡瀬の横顔から視線を外し、シートに体重を預ける。もともと研究内容以外で会話をするようなこともなかった二人だったから、この状況は必然だった。
 急激に瞼が重くなった高遠は、そのまま暖かなシートに包まれて寝息を立てていた。
「着いたぞ」
 渡瀬の声に高遠の身体が跳ねる。きょろきょろと周囲を見渡すとサイドウィンドーに見知らぬ女が写っていた。
「――あ、あぁ、そうか、そうだったな」
 小さく呟く高遠の声が聞こえたのかは分からなかったが、渡瀬はさっさと車から降りる。と、明け方近くだというのにバレーパーキング係員が駆け寄り、彼から小さな引換券を受け取っていた。置いて行かれまいと高遠も車外へ出て大股で歩こうとして足をくじきそうになってしまった。
(いてて……ヒールの高いブーツというのは女性が逃げないようにする拘束具じゃないのか?)
 膝を曲げながら歩く姿が玄関の大きなガラス扉に写っている。容姿と不格好な歩き方のちぐはぐさが滑稽に見えて、高遠は頬が熱くなるのを感じていた。
 フロントについた時には、渡瀬は既にカードキーを貰っていた。無言でエレベーターに乗り込むとカードキーを一枚差し出した。
「いいか、俺意外はドアを開けるなよ。俺はこれがあるから」
 二十階に降り立ちふかふかのカーペットを音もなく進み、いくつかのドアを通り過ぎてから渡瀬は二枚目のカードキーを使い開錠した。重そうな扉を開けると灯りが点り室内が広がった。
「俺はこれから研究所だ。お前は……まぁ少し休んでおけよ。戻ったら今後を話し合おう」
「ありがとう、恩に着るよ」
 短い言葉で別れ、高遠は「ふぅ」とため息を吐き、部屋を眺めた。身分不相応な広い部屋は五十平方メートルはありそうだった。そこに重そうなソファとテーブル、そしてダブルベッドがある。窓にはどうやって洗濯するのだろうと思いたくなるカーテンが、外部との接触を遮っている。
 空調は、普通なら丁度いい温度だろうが、冷え切った身体には満足とは言えなかった。
(まずは風呂でも入って温まろう)
 追われていた緊張感から解かれ、せっかく着た服をベッドに投げ出すと全裸で浴室へ入っていった。

11 luci★ :2016/11/12(土) 00:46:51 ID:???0
 捜査本部に寄せられる情報は様々だったが、今回は使えると言えた。犯行現場から半径五キロ圏内の市民病院に、昨夜未明白衣の女がいた、というものだった。残念ながら掴んだのは斎藤ではなかったが、午前中、渡瀬と話した後、一報を聞きつけ同僚の友田達と共に斎藤と二人は病院の監視カメラ画像を見た。
 そして昼前には、周辺の宿泊施設を虱潰しに当たっていた。
「どこか怪我でもしたんでしょうかね」
「いや、お前も画像見たろ? 救急外来に行った訳じゃない。便所だよ便所。駆け込んでしばらくしてから出て行った。あの格好で受診もしないってんだ、不審にも思うわな」
「まぁねぇ。この時期あんな格好じゃトイレに近くもなりますね」
 底の擦り減った靴で路面を蹴りながら、次の宿泊施設へと向かう。
「……女の粗い画像見せるのは解るんすけど、なんで渡瀬の写真まで見せるんすか?」
 白衣の女の足取りは病院から忽然と消えていた。捜索範囲を大幅に広げると同時に、各宿泊施設への聞き込みも同時に進行している。相手の格好から徒歩で無一文と思えるが、共犯がいないとも限らない。組織ぐるみの犯行なら当然、共犯の存在も視野に入れなければならない。そうなればすでに近辺にいない可能性も高くなる。
 しかし、と斎藤は思う。殺害した当日なら速やかに姿を消して当然だが、改めて来たとなると目的は別にある。目的を果たしていないなら、まだ近辺に潜んでいる確率も高い。そして気になることはまだあった。病院から渡瀬のマンションまでは徒歩圏内ということだった。これが何を意味しているのか。
「ま、なんとなくだな。いろんな可能性を潰していくってやつだ。俺たちゃ地道に行くしかねぇよ」
 既に数件の宿泊施設は空振りだったが、何か掴めそうな予感を斎藤は持っていた。
 業界の大手として名高いホテルチェーンの前に二人が立った時には既に昼を過ぎていた。高級店に似合わない二人を品定めしてやがる、というのは斎藤のひがみからかも知れない。
 大きな一枚ガラスの自動ドアをくぐると、擦り減った踵が埋まりそうな絨毯と、豪奢な調度品が出迎える。フロントには三人の男女がいた。その一人に声をかけた。
「ちょっとすみませんね、わたしらこういうもんで――いやね、人を探してるんですわ」
 粗い画像の写真を見せると、ホテルマンは眉根を顰めた。
「――申し訳ございませんが、これだけではちょっとわかりかねます」
「そうですか、いやいや忙しいとこすみませんね。それじゃ……あ、そうだ。この人はこの二三日で来てませんでしたかね?」
「はい? ……」
 渡瀬の写真を見て少し表情が変わった。斎藤はそれを見逃さなかった。
「来たんですね。いやぁ聞いてよかった。この人殺人事件の参考人なんですよ」
「ちょっと、斎藤さん」
 若い刑事が焦った顔で斎藤に言うが、当の本人は涼しげに言葉を続けた。
「で、いつ? 連れは?」
 殺人事件と聞き、ホテルマンも動揺が走ったような顔をしていた。矢継ぎ早できつめの斎藤の声色に言葉を返す。
「は? あ、本日の明け方、くらいでしょうか? でもすぐに帰られました――お連れ様は、女性がお一人でした」
「で、その女性は泊まってる、と?」
 ぐっと顔を近づけ睨みを利かす。
「……はい。お部屋は」
「■■■■号室ね。ありがとさん」
 急いでロビーを渡りエレベーターに乗り込む。と、若い刑事が斎藤に話しかけた。
「斎藤さん、渡瀬が参考人て、やばくないすか? 女だって渡瀬の付き合ってるひとかも知れないし」
「あほか。それを確かめるんだろうが。会って写真と違えばやり直せばいい。しかしビンゴなら、渡瀬は犯人と思しき人物を匿って、捜査を攪乱してるってことだ――参考人決定だろう?」
「いや、それって卵が先か鶏が先かって話じゃ?」
 最近の若いやつは根性が座ってねぇ、と思いながら目的階についたエレベーターを斎藤達は降りた。途中人影もなくひっそりしている廊下を音もなく進み、その部屋の前に立った。

12 luci★ :2016/11/12(土) 23:53:57 ID:???0
 風呂に入って温まったせいか、それとも疲労からか、湯船でうとうとした高遠は、ベッドに着くと泥のように寝入ってしまった。夢も見ずに目覚めたのは昼近くだった。
 裸でいても仕方ないと、着てきた服を身に着けソファに身体を預けた。上下左右に身体を動かす度に、あちこち動く乳房が少し邪魔だとも思う。浴槽でも乳房が脂肪の塊だからか、若干の浮力を感じた。男としては慣れない感覚だった。
 リモコンでテレビをつけると昼のワイドショーが始まろうとしていた。当然話題は高遠についてだ。
「……こうやって客観的にみると、ワイドショーというのは雑誌レベルで調べられる範囲しか出てこないな」
 高遠の人となりや研究内容については、概ね同じようなものだった。独り言の声が他人としか認識できず、そばに女性がいると思えてしまう。急激に興味が失せテレビを消すと、これまでのことを考え始めた。
(なぜ私が死んでいた? あれは本当に私だったのか? いや、それより、なぜ目覚めるのが遅かったんだ? 何を間違えた? 培養に関しては散々テストして失敗のないところまで来ていた。自分の時だけ失敗したのか? そんな筈はない。あれは、あれだけは失敗できなかったんだから)
 スカートのポケットに入れたUSBメモリーを握りしめる。瞬間、ソファから身を起こし額に手を当てた。
(ちょっと待て。失敗できなかったのは私の病気を治すためだ。しかし、何を使った? 性転換して遺伝子を入れ替える……ここまではいい、が、どうやって入れ替えた? ベクターだ、新しいベクターを、作った、筈――そのベクターは? どういうものだった?)
 これまでの研究内容なら、諳んじられる。複雑な化学構造さえ描ける自信がある。けれど、その記憶だけが欠落していた。
(そんな、馬鹿な? 転換して記憶障害が起こった? いや、そんな症例はないぞ? 新しい何かが新規の記憶をさせなかった? それは……ない。類人猿でテストした時だって直近で覚えたものを転換しても記憶していたぞ?)
 記憶に残っていないものを呼び覚まそうとしても答えは得られない。しかし高遠はストレスと焦りで堂々巡りをし始めた。
「!」
 その時、チャイムがなった。
 それまでの静寂の中での思考が中断され、鼓動がいきなり早く強くなる。それが高遠の耳に聞こえてくるようだった。
 胸に手をあて、逡巡する。ドアの外には渡瀬がいるのか、と。躊躇していると今度はドアを直接ノックする音に変わった。
『――すみません、突然。渡瀬の遣いの者です。実は渡瀬が事故にあって……あなたのお迎えを頼まれまして』
 聞きなれない声だったが、それよりも高遠には自らを証明してくれるであろう友人の事態に重きを置いていた。
(事故? もしかして事件の絡みで巻き込まれた? 渡瀬っ?!)
 暫しの思考の後、ソファから立ち上がると急ぎドアまで駆け寄り、ドアノブをひねっていた。

13 luci★ :2016/11/13(日) 22:56:14 ID:???0
「! 斎藤さんっそりゃいくらなんでもまずいっすよ。それ嘘じゃ」
「静かにしてろ」
 小声の会話が終わるや否や、ガチャっと金属音がしてドアが開いた。
(おおっと、こりゃビンゴだ)
 斎藤達の眼前には少し小柄な美人が眉根を寄せて立っていた。その背格好や髪型は「白衣の女」だった。ただ、年のころなら二十代前半、おぼこっぽいその表情は予想外だった。昨夜の行動を考えるともっとスレていそうだと思っていたからだ。そして斎藤達を見て一瞬たじろぐのを感じた。
「……渡瀬は、無事なのか?」
 高遠もまた、二人もいるとは思わなかった。それに、研究所でも見かけない、渡瀬が付き合っているとも思えない風体の二人。自分を見るその目が、何かを推し量ろうとしているように見えた。だから一瞬言葉に詰まったが、しかし、安否は気になる。漸く口を出た言葉だった。
「いやいや。単刀直入に聞きますわ。あんた、高遠さんが死んでた場所にいたよな」
「あ、え?」
 想定していた返答とは全く異なっていた。少なくとも渡瀬の安否確認を知っていなければこの二人がここにいるのはおかしい。疑問を胸に二人の手元と足元を観察した。繊細さとはかけ離れた殺伐とした手。そして薄汚れて摩滅している靴。およそ高遠の周りにはいない人種だった。ということは、生業が同じ渡瀬も接点がないはず。
(しまった……違う、この二人は――)
「僕たちはこういうもんでね、お嬢さん。昨夜の動向とかいろいろお話聞かせてください」
 若い男が斎藤の肩越しから手帳を見せる。と、斎藤が一歩近づく。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。私は確かに私の、いや昨夜研究所にいた。いたが、あれは、既に死体だった」
「まぁ、犯人だろうと誰だろうと、大抵みんなやってねぇっていうのよ、嬢ちゃん。あんたがどこの誰ちゃんで、なんの目的があってあの場にいたのか聞きたいね。時間はたっぷりあるからな」
 斎藤の武骨な左手が女の右手を掴む。と高遠の顔が歪み大きく息を吸った。
「痛っ、こんなの不当逮捕だろう? 大体任意じゃないのか? 私はやってないし、大体私が高遠歩だ。私の椅子で死んでたのは本当に私なのか? ここにいるのにおかしいだろう?!」
 大声で抗議する女は腕を引きはがそうとするが斎藤は力を緩めない。後ろから若い刑事が口をはさんだ。
「何、変なことを言ってる? その辺も含めて話は聞いてやるから」
 部屋から引きずり出されまいと腰を引きながら抗う姿は、まるで親が子どもをおもちゃ屋の前から離そうとするようでとても滑稽に思えるけれど、本人たちは真剣だ。
 そこに外から声がかかった。
『俺だ、渡瀬だ。開けてくれ』
 自分たちが吐いた嘘が本当になってしまったとばかり、斎藤達は顔を見合わせた。高遠も突然の状況に声を失っている。若い刑事がドアスコープから見るが近すぎるせいか耳と髪しか見えない。斎藤が頷くのが合図とばかりに、若い刑事はドアを開けた。
 予想以上のドアの勢いに高遠の身体がビクッと反応する。次の瞬間、ドアが開き切るか否かのとき、若い刑事の身体が崩れ去った。
 苦し気に喉を押さえている姿の上を、黒い影のようなモノが移動し斎藤めがけてきたのが見えた。
「ぅあっ?!」
 高遠の身体を斎藤が突き飛ばし、華奢な身体はベッドサイドまで飛ばされていた。
 低い体勢から、影は右手の喉輪を狙う。それに斎藤はスウェーバックしながら左手で払いのけ、右手で手首を極めつつ投げた、筈だった。
 影はその身をくるりと回転させ高遠のすぐ目の前に立っていた。
「仲間、か? まったく、国家権力にたてつくんじゃねぇよ」
 ちらっと若い刑事を見るが立ち上がる気配がない。同じ喉輪の攻撃をいきなり受けていたのかも知れない。
 心配しても仕方ないとばかりに斎藤が動く。数度の打撃を囮に相手の袖を掴んだ。
「ちっ」
 右肘を極められそうになる影の左手が不自然に動いた。
「ぐっがっ?!」
 一瞬高遠からは斎藤の身体が跳ねたようにみえた。それがスタンガンによるものとは分からなかった。いきなりの戦闘の影響で乾いた喉に唾液を送る。
「誰だかしらないが礼をいうよ。ありがとう? 痛っ」
 立ち上がり影に近づきながら声を出した。が、今目の前の影のような男は高遠の後ろに回っていた。右腕で首周りを羽交い絞めにして、左手にはいつ出したのかナイフで肋間を軽くえぐった。そのまま突き入れられれば、心臓まで届く場所を。その躊躇ない行為が誰が生死の命運を握っているのか、教えるに十分だった。
「黙れ。そしておれの言うとおりにしてついて来い」
 高遠は頷くと静かに影のような男に引きずられるように、部屋から出て行った。

14 luci★ :2016/11/16(水) 01:54:49 ID:???0
 腰が冷えて寒い、というのが高遠の感想だった。恐らくコンクリートの上に直に座らされている。そしてタイラップで固められた腕は、配管か何かに括り付けられ、腕は万歳するように挙げられている。下ろそうとしても留め具でもあるのか引っかかってしまう。
(――うでの感覚がなくなってきた……)
 どのくらい時間が経ったのかも分からず、そしてあの男の目的も分からず、高遠の耳には大きく鳴り響く自分の心音が聞こえるように思えていた。
 男は高遠を拉致してすぐ、ガムテープを渡し、高遠が自分から口を塞ぐよう指示し、マスクを着けさせた。そしてよくあるアイマスクで両目を塞ぐと上からガムテープを貼った。その上 濃いサングラスを着けさせた。こうすると外見からはあまり違和感がない。手首は男がタイラップで締め上げた。これで助けを呼ぶことも、安全そうな場所に逃げることも実質不可能になった。
 その高遠を小声で指示を出しながら誘導し、地下の駐車場まで連れて来ていた。
「これからしばらくドライブだ。後で着いたらじっくり聞くことがある」
 大きめのRV車の後部座席、の下、床面に高遠を突き飛ばすと、その細い足首をタイラップで締め上げた。そして数十分か数時間か。
(一体、私をどうしようっていうんだ?)
 拉致されるようなことはしていない。もちろん、人も殺していない。高遠にはこの二日、全く訳が分からない状況だった。
 真っ暗な状態は、気分を最悪なイメージへと誘っていく。もしかしたらここで死ぬのではないか、と。
「待たせたな」
 金属がさびて軋む音と共に男の声が耳に入った。その音に高遠の身体は驚きの表情を見せた。
「お前がアユムタカトオをなぜ殺したか。そして昨日の夜、研究室から何を持って出たのか。じっくり聞かせてもらおう……いや、今無理に話さなくていい。まずはこちらが質問する。お前は身体でそれに答えてもらおうじゃないか。――このくらいの訓練は受けてるだろう?」
 次第に近づく足音。それに高遠は恐慌状態に近くなっていた。
「――うぅぅあうう。ぉおうあ」
 じたばたと動くけれど、男の目からみた女の身体は髪が降り乱れるくらいで大して動いていない。
「ひっ?!」
 高遠は事態を飲み込めずにいた。なにがしかの拷問でも受けるのかと思っていた。痛いのは嫌だな、などと半分自分のことではないように思ってもいた。しかし、男の手が服の上から胸を触るに至って、漸く、自分の身にこれから何が起きようとしているのかは、徐々に飲み込み始めていた。
(気持ち悪い、私は男だ、ぞ――あぅ?)
 揉みしだく手が、その頂点にある乳首に攻撃目標を変えた。むず痒いような感覚が両方の乳首から下半身へ、そしてお腹の方へと流れてくる。
「んんんっ」

15 luci★ :2016/11/18(金) 13:21:49 ID:???0
 じりじりする感覚はまるで亀頭をいじられているようだった。身体を左右に揺らすが男の手は吸い付いたように離れない。
 これまで体験したことがない感覚に、高遠の目は宙を彷徨った。それを男はじっと見つめている。
(これは、すごい……女の方が快感が強い、とは、っきいて、いたが)
 男の頃も女を知らず自慰行為しかしたことがない。未知の領域に踏み入れてしまった高遠は、その波に翻弄され始めていた。
 次第に下半身がムズムズし、それを抑えようと腿をきゅっと閉じる。それでも収まらない快美感。
 男が口の端を歪ませた。
 渡瀬が用意したノースリーブワンピースは胸元がアンダーバスト辺りまで大きく開いている。その下にはニットのタートルネックセーター。男はワンピースの胸元にナイフを差し入れ、ウェストまで切り裂きそしてセーターをたくし上げた。
「うぁうう!」
 羞恥、かどうかは分からなかったが、高遠は瞬間的に手で隠そうとした。けれど拘束された手は動かず、白地にピンクの刺繡が施されたブラが丸見えになっていた。
 胸元は白い肌が赤く染まりブラがよく映える。男の手がブラと素肌の間に滑りこんだ。
「ぅんん!」
 捏ねられ揉まれトップを摘ままれると、これまで以上にもどかしさが募ってしまう。高遠はせめてもの反抗に上気した顔で男を睨む。しかし男は構わず行動を続ける。
 ゆっくりとしたリズムから徐々に乱暴な動きへ。いつの間にかブラもたくし上げられている。次第に息が荒くなる高遠の変化を観察しながら、男は次の行動へ移った。
 ちゅっと乳首を吸い、舌先で転がす。その粘膜の接触に高遠はつぶっていた目を開いた。
「ひぅ」
 自然と出てしまった変な声が室内に響く。それが自分が発した声とは到底思えなかったが、舐られる度に跳ねる身体と同調しているのだから自明だった。
(――気持ち、いいっ――わけないっ……あっ?!)
 身体の中から股間へ何かが流れる感覚があった。それが何か、知識としてはあったが、自分に起こるなど思う筈もなかった。ショーツが愛液で湿り気を帯び始めていた。
 それを隠すように、乳首から離れない男を排除するように、高遠は膝を引き上げ身体を丸めようとした。
 顕著な変化は隙を生む。男の手がワンピースのスカートの中へ伸びる。
「なんだ? 湿ってるじゃないか。訓練されてないのか?」
(こんなっ身体を弄られる訓点なんて、してるわけないだろう!)
 タイラップで足首を括られているために大きな反抗ができない。それをいいことに男の指は割れ目を撫でさする。
「! くぅっ」
 漏れ出る声は既に艶っぽい。腿は、その合わさり目から与えられる信号でフルフルと打ち震えて力が抜けてきた。そこに男の上半身が割ってはいると、高遠の下半身は男の眼前にあった。
 腿とショーツに男の息がかかると、愛液は気化して周囲の熱を奪っていく。ぞくっとする感覚だったが、高遠からは男が見えなかった。スカートの中に男は入り込んでいた。

16 luci★ :2016/11/19(土) 20:28:38 ID:???0
 腿を閉じようとしても男の身体、というより頭が邪魔になる。ざりざりとした髭の剃り跡が少し痛かった。それでも秘部をいじられまいと力の限り閉める。
「?!」
 高遠の身体がびくっと大きく跳ねる。その感覚が何か分からなかった。身体中を突き抜ける刺激。ぷっくりと膨れた肉の珠を指でつつかれたけれど、男の行動は見えない。それがかえって刺激を増幅させた。
(――い、今のは?)
「ぁえおー、うー!? ふっくぅぅ!」
 鞘ごと摘ままれいじられて、やっとそれが快楽なのだと理解した。身体を捩ろうとなにをしようと、男は嬲る。そして捩る度に男にはない穴から粘液が湧きだしてくる。息が荒くなり次第に鼻だけでは酸素が足りなくなってくると、高遠の身体は次第に動きを小さくしていった。
(こんなのは違うっ、感じてる訳じゃない!)
「お前は誰なんだ? 誰の命令でタカトオを殺った?」
 しばしいじるのを止め、男がスカートの中から問う。けれど高遠にはその回答はできなかった。無言でいるとそれを回答と思ったのか男は自分の腰に手を回した。
「!」
 ナイフの光が一瞬高遠の目に入る。抗う術などなく括られた腕を力いっぱい引き、少しでも男と距離を取ろうと身を固くした。
(……ああ、これが私の、最期、か)
 冷やっとする感覚が腿に当たると、高遠は目をぎゅっと瞑った。股間からナイフを突き入れられるイメージが脳内に広がる。しかし次の瞬間、軽い音と共に下半身を守っているはずの布地の感触が無くなった。
「んんおおおぁ!!?」
 腰が溶けてしまうような、下腹部をぎゅっと掴まれたような、快感が突き抜けていく。これまでとは比べ物にならない。視線は定まらず、乳房は大きく早い呼吸でふるふると揺れた。男は舌全体で膣口から小陰唇、クリトリスまでを舐めあげていた。
「ひぃいい?!」
 二度目のそれで何をされているか高遠はやっとイメージできた。じゅるじゅると音を立て唇でクリトリスを吸い上げた。

17 luci★ :2016/11/23(水) 01:16:15 ID:???0
 ペニスをいじるのとは異質な、ショーツの上からいじられるのとも違う感覚が、下腹部を襲う。きもちいいとも言えるし痛いとも言える。敏感さ故に判断がつかない。しかし高遠の脳はそれを快感だと判断したようだった。男の粘膜が嬲る度にびくびくと身体は跳ね、二つの粘膜で挟まれると息が止まる。それが数回繰り返された。
 そのたびに女のくぐもった声が喉から搾り出され、聴覚を刺激する。室内からの反響も入ってくるとそれが自分の声だとは高遠には思えなかった。
 男もその声に反応していた。拷問と言えば聞こえはいいが、タカトオを殺され自分の仕事がうまく行っていない、その意趣返しでもあった。嬲って、愉しんで、情報も得られるなら一石三鳥なのだから。
 気をよくした男は、唇で包皮を剥き、舌先を固くしてグリグリと張り詰めた肉真珠を潰そうとする。その度に女の身体は左右に暴れ、身を堅くし、柔らかな腿を押し付けてくる。そうする程、膣口からは粘液が漏れ出し男の顎を濡らしていく。
「そんなに感じてたら、仕事にならんだろう? 女は身体が使えて仕事になるんじゃないか」
(はぁふぅ……こんな、女になって、二日なんだ、経験なんてあるか――仕事? あうぅ?!)
 男の言葉が途切れ、自分が思考している最中、身体の中に何かが入り込む感触があった。高遠の虚ろな視線がスカートに阻まれた自分の股間を見つめる。身体は小刻みに震えていた。
「うぁ、んくぅ!」
 クリトリスを丹念に舐めあげながら、男の中指が襞穴へ差し込まれていた。男が坐剤を入れるのとも違う、中心を穿たれ内臓に入り込む感覚は、嫌悪感と同時に快美感を生み出す。
 その指を押し返すためか、それとも気持ちよさを与えてくれる褒美のためか、襞で詰まった穴がキュッと締まった。それに構わず男が指を進めると些か抵抗があった。
「ぃあっ」
 それが何か、男には理解できたようだったが、高遠には分からなかった。
 舌も指の攻撃も一旦止まり、男がスカートの中から顔を上げる。その口元には笑みがこぼれている。その表情に高遠はゾッとした。
 男の目が嬲っている女を観察していた。緊張と性的な高ぶりからか額には汗が浮き、そこに髪が張り付いている。口を封じられているために鼻からしか息ができないためか、少し鼻水が垂れているが、十分に鑑賞に堪える。早い呼吸で上下する胸は赤く染まり、ブラジャーで縊りだされた乳房がその動きで少しだけ揺れている。煽情的な眺めだった。

18 luci★ :2016/11/26(土) 00:33:55 ID:???0
 高遠の目に男が映る。狭い自分の足の間で膝立ちになった姿。ベルトを緩めジッパーを下ろして徐に下着も一緒にズボンを下ろした。肉の槍とも言えそうな異形のモノ。二十センチはあるだろうか。張りだしたカリの下には半球状のふくらみがいくつもついている。
(な、なんだ、それは――)
 女の快楽がこれ程と思っていなかった高遠は、殺されるくらいならば少しは未知の体験をしてもいいか、とも思っていた。それが自らの研究の成果の一旦でもある性別の転換ならば、体験自体がその検証でもあると、納得しようとしていた。しかし、目の前の異形のモノはそれを吹き飛ばしてしまった。それで身体を穿たれ、掘り返され、抉られる。自由を奪われされるがままに蹂躙される。これこそが拷問だと知った。恐怖に身が竦み腿を閉じようと再度試みるが、男の身体が邪魔をする。
 それまで上気していた女の顔から血の気が引くのを、男は見て取った。男の顔は益々酷薄な笑顔を見せた。子どもが虫をバラバラにして楽しむような。
「これがお前の中に今から入る。耐えてみせろよ、ここまで来たらな」
 男には既に、女が敵対勢力の人員ではないと解っていた。これ程初心な工作員などいやしない。本当なら今すぐ排除して次の行動に移るべきなのだが、何かが違うと囁いていた。相手を嬲り支配下に置けばその一旦が分かるかもしれない。
(……それに、処女にコイツをぶち込むのは初めてだからな)
 男が身体を前に倒すと、高遠の視界一杯に顔が広がる。男性にこれ程間近に迫られることなど経験はない。かと言って女性もないが。
(ち、近いっ。あっ)
 顔を背けた瞬間、スカートが捲られ下半身が空気に曝された。そして男の顔が離れる。
(! むり、無理だっ、そんなモノ入らない、入る訳が?!)
「んんん〜」
 拷問具の先端がくちくちと女の濡れた花弁を撫で上げ、頂上にある肉芽を嬲る。恐怖と緊張からか先ほどより感覚は鈍くなっていたが、それでもうめき声を上げるに十分な刺激。感じている訳じゃないと心で強がっても、身体はついてこない。
 息粗い女を見ながら、男は小さな襞穴に拷問具の狙いを定めた。女の目は見開き、その後の動向から離れないように見える。その姿が声を上げて笑いたいくらいの愉悦になった。
「あえお! んりっ、あいああい!」

19 luci★ :2016/11/27(日) 21:33:43 ID:???0
 大きな槍の先端が狭い肉穴にくちゅっとつつく。恐怖で反応する様が面白く、そして滑りをよくするために数回同じことをした。
「一気にいくか? それともゆっくりとがいいか?」
 その二択に明確な差異などない。何れも肉を裂き、割り開いていく。それに異様に巨大なのだから、通常の破瓜の痛みとは比べ物にならないだろうことは容易に想像できた。どちらも嫌だと高遠は首を振る。
「お任せ、か」
 そう言うと男はほんの少し腰を進めた。それだけで痛みが走り呼吸を止めてしまう。
(むり、痛いっ、入らない、物理的に無、ぅああっ?!)
 亀頭の半分だけ入った状態で一度静止し、そしてカリ首まで埋没させた。それだけで内臓が上に押し上げられる感覚があった。無理やり広げられた襞穴は、その折り畳みすべてを使っても切れそうな程に張り詰めている。
「あ、あ、あぅ」
「どうだ? 初めての男は。もう少し進めば処女膜も引き裂くぞ、もっとも既に遅いかもな」
 膣が引き裂かれたのか、処女膜が破れたのか、僅かな出血があった。しかし高遠からはそれは見えない。
 その言に高遠は男を睨んだ。が、それが合図とばかりにゆっくりとした挿入が再開される。
 ゆっくり進む巨大な拷問具は、膣を引き裂きながら激痛を高遠に与えた。それは皮膚をナイフで刺されるような熱い痛みではなく、内臓を破壊しているかのようだった。男が男に犯される精神的な苦痛を感じる暇さえない。ぎゅっと握りしめた手は爪が掌の皮膚を破っていたが、それさえも分からない。きつく閉じた目は暗闇の中で稲妻が走り、目尻から涙が出て頬を伝う。身体中の筋肉を収縮させて、男の拷問具に膣肉をぴったりとまとわりつかせてしまう。そしてそれがより一層、痛みを与えていた。
 どこまで入ってくるのか、痛い、と、それしか高遠は考えられなくなっていた。もう、声も出せない。
 半球状のふくらみが膣口をくぐる度に、女の身体がびくびくと反応する。結合部を見れば限界まで張り詰めた膣口は真っ赤になっている。それでも自身の肉棒と膣の密着度がありすぎて、破瓜の血は女の体外へ出てきていない。明らかな抵抗があってそれを破壊し進んでいるのだが。

20 luci★ :2016/12/05(月) 20:52:29 ID:???0
 襞壺より明らかに長い拷問具がゆっくりと突当りまで到達していた。異物感どころか体内の臓物が横隔膜に向かってせりあがってくるような感覚。それでも男の道具はまだまだ全て入り切っていない。
「どうだ、突き当りだ。何か言うことはないか?」
 一応、目の前の女が何かを吐くかも知れない体で尋ねる。が、息も絶え絶えにもかかわらず、睨み返してくる女に男の嗜虐心に火が付く。
(くぅうっ、痛いっどころじゃ、ない、なんて、屈辱的、なんだ)
 目の前の男は、自分に対する、というより女性に対しての暴力そのもののように思える。肉体的な暴力だけでなく、精神的にも責められている。この無力感や遣り切れなさが女性が感じているものなのか。高遠は我が身で感じて始めて、女性の弱さを知った。
 そんなことを一瞬考えていると、すっと男が腰を軽く引く。高遠の顔に少しの安堵が生まれた。けれど、それは早合点というものだった。
「! ふっんん、ぐっ、んっ」
 男が子宮口に亀頭がねじ込まれんばかりに急激な腰使いを始める。それまで埋没できなかった拷問具は、勢いに任せて全てが埋め込まれる。子宮ごと小腸や大腸、胃まで腹腔内を持ち上げていく。それを一気に亀頭だけ残して引き抜く。血と愛液が混じりぬらぬらした拷問具が顔を覗かせ、そしてまた突き入れた。
 襞は外へ内へとその度に掻き混ぜられ、突き入れられれば喉元から内臓が出てしまうのではと恐怖すら感じられる。内臓自体に痛みはないが、振動が胃を痙攣させ胃液が喉元に溢れてくる。酸で焼ける喉と鼻腔の痛みで涙が溢れてくる。
 無理やりに胃液を飲み込まないと咽てそれこそ生命の危機に陥りそうだった。さっきまで股間を嬲られていたような快感はここになく、本当にただ拷問を受けている。そこには「耐えよう」という意識しかなく、その他は思考に入ってこない。
 男は態と、高遠を「穴」として褒め、突き入れる。その度にそれがギュッと締まるのが面白くてたまらないのだ。言葉に反抗しようと身体を動かすからだったが、それすらも「感じている」と罵りの道具に使う。
 処女だった女の狭い襞穴は強烈に男を締め付け、やがて射精感が募っていた。

21 luci★ :2016/12/10(土) 23:05:23 ID:???0
 中で出す、という行為は男性にとっては征服欲を満たす、あるいはその行為の最終目標なのだろうが、女性にとっては屈辱的で、自らの存在価値を貶め、死にたくなるほどの嫌悪でしかない。
 では、性が反転している場合はどうなのだろう? 被征服欲が満たされつつ、至福なのか。それとも嫌悪と屈辱、そして被支配なのだろうか。
 それが何によって為されたのか、それにもよるし、自ら進んで性を反転させたかにもよるのだろう。
 高遠の場合は、何もできないとういう被支配と屈辱でしかなかった。男の拷問具を受け止める自らの身体すら呪いの道具としかならない。支配される屈辱。女性でなければそんなことは受け入れる必要さえもない。ただの屈辱感と嫌悪感。
 いきなり目の前の男がうめく。そして、自分の中の道具がより一層固くなったかと思えば、身体の中にビシャビシャっと何かが引っかけられる感覚が襲う。目の前の男の身体が、自分の胸元になだれ込み、身体の中ではしきりに痙攣している。それが何の意味があるのかは、高遠にもわかり切っていた。

22 luci★ :2017/07/01(土) 21:10:14 ID:???0
 男の上体が離れると、下半身で感じていた圧力も少しだけ減ったように思えた。それが男が萎え始めたからか、高遠の身体が弛緩したからかは判別できなかった。
 男は無言で高遠の髪を掴み、股間が見えるようにした。
「う、んん……」
 ヌルっと拷問具が出ていこうとするとそれだけで処女の残骸に引っかかり痛みが増した。
 血液と粘液でぬらぬらと光る男自身を眼前にし、呆然と犯された事実だけを感じていた。
「どうだ? 初めての感想は? えらく感じていたからな。よかっただろう」
 勝手な言い分に、息は荒かったが抗議するように男を睨む。それで力が入ったのか下腹部からどろりと何かが垂れてきた。
(う、これ、は――?)
 膣口から会陰を通って肛門まで垂れてくると、男が口を開く。
「お、結構出たな。処女喪失早々で、これは孕むかもなぁ」
 下卑た目つきでそれを眺めてから、髪を掴んだ手を自分に引き寄せ高遠の目を見て言った。
(はら、む? 誰が? 私、? まてっ確かに完全に女性だ。だからって、まだ生理だって――いや、排卵の後だから、いや、周期は? どうなって――)
 理論的には孕む筈ではあるが、それが自分に起こるとなると信じられない、信じたくないと思ってしまう。
 嫌悪と怒りを宿した目つきから困惑と焦りに色を変えた女の目に、男は愉悦と嗜虐心が煽られていく。少しばかり力をなくしていた肉棒に再び力が漲っていく。
「? !ぎっぃ」
 女の目だけを見ながら、男が突き入れ抜き出し、力の限り腰をぶつけていた。初めより自らの精液と破瓜の血で滑りがよくなり、狭い膣と相まって快感は大きかった。
 高遠はと言えば、終わったと思っていた拷問が再開され、今度こそ死ぬかもと思いながら身を堅くするほか術がなかった。


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