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TSFのSS「魔封の小太刀」

1 luci★ :2009/09/07(月) 20:07:03 ID:???0
 『昔々あるところに、とても腕の良い刀鍛冶がいました。
 ある日刀鍛冶は神託を得、魔を祓う太刀と小太刀を作り始めました。ところがこれに驚いた魔の者たちは、そんなものがあっては困ると刀鍛冶をころす相談をしました。
 けれども刀鍛冶には神がついています。魔の者たちは触れる事さえできません。色々考えた挙げ句、刀鍛冶の想い人を使うことを思い付きました。神の力のおよばない場所に誘き出そうと言うのです。

 ……斯くして、小太刀は完成しましたが、太刀は未完のまま刀鍛冶はこの世を去ってしまったのでした。』

* * * * * * * * * * * * * * * *

30 luci★ :2010/03/10(水) 12:48:29 ID:???0
(宝珠丸、聞きたいことがある)
『知りうる範囲であれば』
 俺は言葉を選んだ。
(俺たちは肉体の感覚を共有してるのか?)
『いかにも――それで?』
(お前の生きた時代の夢を見てる気がする。そこにはこの姿そっくりの女と刀鍛冶が出てくる……)
 俺は見たままを伝えてみた。しかし。
『ふむ、それだけでは何とも探りようがないのぅ』
(同じように夢をみてるんじゃないのか?)
『見る気になれば。無論お前の意識を探ることもできるが、今はしておらぬ』
(そうか……)
『まぁ、急いても仕方なかろう。吾はちと疲れた。もうよいな?』
 それきり宝珠丸は逃げるように意識を消し、返答しなくなった。
 宝珠丸は知らないという。しかし、何かがある気がしてならない。そう、何となく、宝珠丸には嘘があると思えてならない。
 俺の中に入っているんだ。夢も、俺の意識も、そう、こういう思考も分かっているに違いないのに。何故それを隠そうとするんだろう。知られたくない事もあるのは理解できるが、こちらばかり丸裸なのも嫌な感じだ。
 宝珠丸が当てにならないなら、自分で調べるまでか。といってもどうしたもんだろう?
 鬱陶しいくらい長い髪をかき上げながら、夢の内容をもう一度思い返してみた。
 城は山城だった。刀鍛冶の名前は、八郎太。女の、というか俺の名前は? 確か首を持ってきた侍が……そう、姫と呼んでた……。姫ってどこのだろう? いや、それ以外に聞いたような――あっ八郎太はお濃と。
 年代が分かりそうな情報は記憶になかったのは残念だった。しかし俺の中の何かが、これだけでもいいと、一刻も早く調べろと言っている、そんな気がした。

31 luci★ :2010/03/12(金) 14:44:35 ID:???0
「今日どこに行ってたんだ? 連絡取れなかったぞ」
 食事を取りダイニングの椅子で一段落取っているところに涁が話しかけてきた。正直言って、あまり話をする気分ではないのだけれど。おやじ殿はテレビを見ながら大笑いしている。
「それはすまなかったけど……実は、最近変な夢をみるんだ」
 俺は掻い摘んでお濃、八郎太、そしてその時の様子を話していた。
「――そうか。それで? 心理学の本でも借りてきたのか? それとも、前世とでも思ったのか?」
「どちらかと言うと後者。だから、図書館行ってこの辺りの歴史を調べてきたんだ」
 ちらっとおやじ殿を見ると、こちらには背を向けて頬杖をついている。涁は俺の隣に座って少し目を細めて俺をまっすぐ見ていた。何故前世などという言葉が出たのか、少し不思議だった。珍しくオカルティズムを刺激するような内容だったのだろうか。
「で、戦国時代くらいか、この辺りは後藤という家があったらしい。知ってる?」
 頭を振る涁に、言葉を進めた。
「後藤武篤、この人が家系図の最後に載ってる人物で、彼は三男二女儲けたらしい」
「なんでその時代、というかその後藤何某がいた時代が、お前の夢の時代と同じだって思うんだ? 仮に前世としても特定できないだろう?」
「それは……口伝があって、それに刀鍛冶の事が」
「それが八郎太だっていうのか? 馬鹿らしい。全然意味ないだろ。もっとこう――歴史的事象とか名称とか何か理由があるんだと思ったぞ。お前、そんな事に感けてないで直ぐ連絡取れるように待機しとけよ」
 文句だけ言うと、返事も待たずに涁は自室に行ってしまった。
 確かにそれが特定する証拠とは言い難いのは分かってる。でも、直感的にそう思った。この系図の女がお濃で、この口伝にある刀鍛冶が八郎太だと。
 涁には話せなかったけれど、もう一つ興味深い事も分かった。御厨は後藤家の家臣だった。それが後藤家が近隣の豪族に滅ぼされると権力を得、地域を支配したのだ。
 後藤が滅び御厨が台頭……それは裏切りのせい? ただの偶然? 
 もし、前世というなら、もし、御厨が後藤を裏切っていたなら、俺の姿がお濃と瓜二つというのは皮肉に満ち溢れている。或いは、何か作為的なモノがあるような気がするのだ。
「玲、その話面白そうだけど、この件が終わってからにしような」
「?!」
 突然耳元で囁かれ、椅子から立ち上がっていた。湧きあがる鳥肌と寒気に細い両肩を抱いていた。
「お、おやじ殿っ、変な事しないでください!」
「……ふふん、隙があるが悪いのだ。目の前の事に集中集中」
 笑い声を残して去っていくおやじ殿に、俺はやはり嫌悪感を感じずにはいられなかった。

32 luci★ :2010/03/16(火) 15:56:24 ID:???0
* * * * * * * * * * * * * * * * 

 それは、これまでと違って、夢の中で夢だと分かる不思議なものだった。自分の目に映っている筈なのに、どこかドキュメンタリー映画を観ているような感覚を覚えていた。
 
 俺は二人の男に腕を掴まれて、暗い廊下を歩かされていた。抵抗してもずるずると引きずられ、次第に大きくなる木組みの格子、恐らく座敷牢に恐怖を感じていた。
 自分の喉から高い声が辺りを劈く。
「貴様、裏切り者めっ。ええいっ放さんか! このようなところに閉じ込める気か?! 私を誰だと思っておる!」
 両脇の男たちはそれに答えず、俺は座敷牢の中に放り出されていた。
「目をかけてやったのに! その挙句がこれか?! あのお方を殺めたのも」
「あの二人を切ったのには理由がございますれば。姫、あなたはこの国の置かれた状況が分かっておりませぬ」
 廊下の奥から差し込む光が、答え始めた侍の背中を照らし、まるで後光が射しているように見える。これから言う事が正論であると言わんばかりに。
「今、姫が隣国に嫁がなかったら、我が国は滅ぼされてしまうのですよ。あの強欲で好事家の男に民も家臣も殿も蹂躙され何も残らなくなってしまう。それが分かっているのに一時の感情に任せてこの国を見捨てるというのですか」
「それは……しかし貴様も言っていたではないかっ、策があると! 助かる術があると!」
 格子を掴む指先が震え白くなった。
「如何にも、申し上げました。某が助かる、そういう策があると」
 策、その言葉が頭の中で響く。そしてそれが稚拙な言葉遊びの枠を出ない、騙りだと理解するのに時間はかからなかった。自分の愚かさに声までも震えていた。
「! きっ貴様! 最初からその心算で?!」
「勿論、姫も献上しなくてはいけませんので、それまでしばし御休息を」
 慇懃な態度でそう答えると、侍は踵を返し嘲笑だけを残していった。
「待てっ! 卑怯者! 許さんっ、決して許さぬぞ、御厨ああっ!」

33 luci★ :2010/03/17(水) 11:30:36 ID:???0
 そして自責と後悔に包まれ数日が過ぎた。
 怒号と煙が辺りに充満して、香ばしいようなそれでいて吐き気を催すような臭いが鼻をついた。そこへ、足早に御厨と呼ばれた侍が刀を四本持ち、前身ごろに血を付け姿を現した。
「姫、時が来ました。さぁ、参りましょう」
 牢の鍵を開けるとそいつは出るように促す。俺は沸騰しそうになる気持ちを抑え、睨んだ。
「二度とお前の言うとおりにはせぬ。勝手にどこへでも尻尾を振りに行けばよかろう。父上がいる限り、そうそうこの国も負けはせぬわ」
 にやりと笑う侍に、嫌な予感がした。
「殿は先ほどご自害なさったようですが。――さぁ、早く。火の手が速ようございます。某と一緒に来れば、何不自由なく大切にお暮らしいただけましょう。某も朽ち果ててゆく姫など見たくもありませぬ。さぁ、さぁ!」
「き貴様、それでも侍か?! 誰ぞおらぬか?! 裏切り者ぞ!」
 城を攻められ混乱の最中にあるためか、人が来る気配は無かった。しかし、侍は明らかに苛立ち、嫌悪の表情を俺に向け牢に入ってきた。
「……全く、某がせっかく姫の為を思ってしている事を……最期まで聞き入れぬとは……こうなったのも姫の所為なのですよ」
 蒔絵を施している鞘と柄を掴んだ。
 切られると思った時、牢の外に禍々しい気配が現れた。よく知った気配。けれど今は俺に向けて明らかな殺意を向けていた。侍もその気配を察したのか、視線を向ける。
「何だ? あれは」
 黒い影のようなモノがヒトの形となっていく。
「オノウ、ヒドイデハナイカ。コノヨウナトコロデオトコト……ヨクモヨクモウラギッテクレタアアア」
「――八郎太殿、違う、違うのだ。私は……騙されて!」
 問答無用とばかり、飛びかかってくる影。しかし、俺の体は動こうとしなかった。これでいいとさえ思っているように目を瞑ってた。
 と、獣の断末魔の叫び声かと思うような音が耳を劈く。目を開くと、よろよろとした影に向かい侍が太刀を振るっていた。
「小太刀は一度使ってみたが、太刀の方がやはり使いやすい。……一で「魔」の力を奪う、二で切り裂き、三でその地から別の世界に封印する、だったかな八郎太。では二の太刀」
 太刀は影を真っ二つに切り裂く。その間も「裏切り者」「赦さぬ」と言い続けるが、最初の禍々しさは殆ど感じなくなっていた。
「これで三つ目ぞ、八郎太。どこへでも封じられてしまえ。それっ」
 宇宙船に空間に切れ目ができ、内部のモノが真空中に吸い込まれるように、影は忽然とあっという間に姿を消していた。
「は、八郎太殿……」
 三分にも満たない、自分を殺そうとした存在にも関わらず、俺の心は溢れんばかりの悲しみと、そしてそれを覆い尽くそうとする憎しみで掻き乱されていた。
「貴様一度ならず二度までも――殺してやるっ」
 無手で帯刀している侍に挑みかかるが、自殺行為に等しい。侍は先ほどの太刀を振るった。
「?!」
 掠りもしていないのに、力が抜けていく。まるで、俺が賊に封魔の太刀を振るわれた時のように。
「魔に対しては使えるのでしょうが、人に対してはどうなのでしょう。姫、力が抜けましたか? それとも、愛しすぎて魔になってしまわれましたか?」
「赦さぬ、未来永劫赦さぬ! いつか必ず、貴様の一族郎党全て殺してやる! 八郎太殿の、父上の、そして」
 二太刀目が俺を襲う。切られたけれど痛くない。冷たい、いや、熱い? そんな感覚しかなかった。
 ただ、掴みかかろうとしていた腕は無かった。前のめりに倒れると、もう立ち上がれなかった。
 何もできず消えていく、それが悔しく、涙が溢れ、そして叫んでいた。
「絶対に、その太刀、御厨に連なる者には使わせぬ! 必ず私が殺してやる!」
 三太刀目が狂喜に笑う御厨に振るわれ、俺の視界は真っ暗になっていた。


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