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バズーカ服部 作品

1同居人募集中。。。:2005/06/06(月) 12:42:49
確かに松浦は可愛いと思うよ。クラスのみんなが騒ぐのも判る。
でもさなんかいっつもニコニコしててつまんない。
ピンとこなかったんだよなボク的には。

んで、昨日の話。
担任が新人でさ、仕切り悪くてモメだした時の話だ。
つまらないきっかけなんだよ。修学旅行の組み分けがどうたらこうたらってさ。
担任がハブられてる奴の気持ちを考えろみたいなの事を遠回し遠回しにいいだしてさ。
当事者の後藤なんて窓の外みてて無関心なのにさ。
担任一人でファビョっちゃってて。
案の定、女子がブーブーいいだして、結構露骨に反抗しだしたもんだから、担任、眉をハの字にしてオロオロしだしてさ、うんうん確かに確かに、とか理解示しつつ、でもでもな、とか、グタグタでさ。もう長引きくの確定。バカみたいだと思ってた時、オレは確かに聴いたんだ。

ったく、ビビってんじゃねーよ
そう隣の松浦が呟いたのを。

・・・確かにこの時、ボクは松浦を好きになっていたのかもしれないかも。

つづかない

5同居人募集中。。。:2005/06/07(火) 08:50:44
後藤の部屋の前。ノックするが反応はなかった。まだ帰ってないみたいだ。
仕方ないんで、ドアの前にカバンを立てかけることにする。
階下に降りようと階段を二歩三歩、そん時、ちょうど後藤が帰ってきてた。
んで、あいつも階段を登ってこようとしていた所で。要するにつまり鉢合わせで。
かなり狭い階段だ。二人同時には無理だった。
まあ、後藤もオレも固まってはいたが、理由はもちろんそれではなくて、ハードだった一日のせいだろう。
別に元々親しい訳じゃない。ギクシャクと時間が流れる。
オレは観たままを口にする。
「鏡、みてないだろ、ひどい顔してるぞお前」
その顔に、涙の跡が、ついていたから。
うっ、とだけいって後藤はババッと腕を上げ、両肘で顔を隠した。
それがなんだかかわいくて、オレの緊張が緩んだ。くくく、と思わず笑ってしまう。
そして、うっかり、
「泣くくらいなら、喋った方が楽だろどう考えても」
なんてこともいってしまった訳で。
そんなオレの言葉をきいた後藤の反応は素早くて。

「うるさい!」
顔隠したままそう叫び、ダカダカッと強引に駆け上がってきやがった。

あっというまに目の前に。
「まてまてっ、下がるからオレがっ」
といったって聞かない。身体をねじ込んできた。
低い姿勢で、腕を上げていたオレの脇の下を潜って、突破しようと肘を張る。ああ張らないで。
ごりごりっ、と、かわいそうに、オレのあばらが悲鳴をあげた。
あだだ、あだだだだっ、とオレ、マジ絶叫。
いーーーっ、と後藤は細く長く声を絞り出し、とうとう無理矢理突破した。

6同居人募集中。。。:2005/06/07(火) 08:50:57
・・・参った。
「ず、随分と、元気じゃねーか」
あんまりにも予想外で、オレは、苦し紛れにそういのが精一杯で。
後藤はオレに背を向けて、階段の先を見ている。そしてそこには上手い具合に窓があり、そこから空が広がっていた。
なんだ気づけばよく見る風景だ。しかし後藤はこんな姿ばっかりだな。
そんなに窓が好きか、いやこの場合好かれてるのか、とあきれた。
後藤は、口の中でなにやら呟いたみたいだが、ちょっとよく聞き取れなかったので、え? 、とオレが聞き返すと、
「なんか今、ちょっと、すかっと、したかも」
といった。
あーそー、とうんざりした返事をオレは返す。
後藤は、抜け殻のような、投げやりな言葉を吐き始めた。
「カバン、なくしちゃって。もう、だから、学校にいかなくっても、いいよねぇ」
「勝手にしろよ。好きにしろ。でもカバンはオメーの部屋の前においてあるよ」
「・・・なんだ、あるんだ。じゃああ、いかなくっちゃあ、いけないよ、ね」
「知らねーよ、好きにしろよ。いこうが辞めようが窓の外観ようが泣こうがオレのあばら破壊しようとしようが、お前の勝手だろ?! ・・・誰もみてねーし、おめーなんか」
「そうか、みてないか」
「みてねーよ。つか、おめーだって窓の外しかみてねーだろ」
「そだねぇ。見てないかも。え・・・でもそれ、なんか悲惨じゃん」
「・・・さーねえ。でもオレなら耐えられないね」
「そっか・・・ごとーは、悲惨じゃん、悲惨なのか」
「・・・おい、泣くなよ」
そうオレが声をかけた時、少しだけ、後藤はこちらを向こうしたような気がしたが、気がしただけかもしれない。
「もう泣かないよ。そうきめたから」
決めて涙がでねーなら世話ないよ、といおうと思ったが、やめた。この時だけ、後藤の発言に幾分気合いが入っていたような、そんな気がしたから。
「そかー、カバン、あるのかよー、学校、いかなくちゃあいけないねえ」
そんな言葉を最後に、後藤はゆらゆらと階段を上がり切り、オレの視界から消えた。

7同居人募集中。。。:2005/06/07(火) 08:51:12
次の日、朝、教室での話だ。
ホームルーム間近で騒がしい。
チャイムが鳴ったと同時くらいに後ろの扉がガラッと開いて。
その瞬間、一瞬静まり、そこからざわめきが広がって、大きくなってった。
後藤がそこに立っててさ。
ショートの黒髪は、一晩で金色に変わってた。

つづかない

8同居人募集中。。。:2005/06/09(木) 12:39:42
後藤は、ちょっと怯んだように入り口で立ちすくんだ。
明らかに注目を浴びているのに気づいたのだろう。
クラスは金髪にしてきた後藤に戸惑っていて、その戸惑っているクラスに後藤は戸惑っている。
そんな感じに見えた。自分で金髪にしといてその態度、うーん意味が分からない。
とりあえず泣いて以降、こいつはかなりおかしい。
ありえない、予測不能な行動の数々だ。オレのあばらはまだ痛い。
だけど、だからこそ、オレは予感がしたんだ。
そして、ようやく後藤は、なんかふわふわと自分の席に向かっていく。
少なくとも雰囲気が、いつもの学校での後藤ではなかった。
醒めてて無関心というか無視、そんな後藤ではなく、昨日の下宿で、あけすけに脱力した、あの時の雰囲気に近いように、オレには見えた。

後藤っ、と彼女が席についた瞬間、オレが声をかける。大きな声で。
そしてその瞬間は訪れた。
あ、ふりむいた・・、クラスの誰かがそう呟いた。
その、反射といい表情といい、まるで危機を察知した小動物みたいでさ。

んで、後藤の後ろの藤本が、シャーペンをくるくる回すのを止めて
「げ、マジ奇跡・・」とかいって。
後藤は、えらい勢いで真っ赤になって、自分を取り戻そうとするように窓を見た。
でも、こうなったらもう止まらない。
「ねえ、もしかして見せびらかしてる? 」と藤本がいった。
確かに、こっちから見たら全部金髪になる。
後藤はあわてて、反対を向く。
すると藤本が「また振り向いたよマジ奇跡」とかいって。
そして、今、後藤の視線の先には、にやにやしているオレと松浦がいるはずだ。
後藤は困った。困って仕方なく正面を向いて、そして俯く。

9同居人募集中。。。:2005/06/09(木) 12:40:04
そん時後ろから、逃げる金髪を、細い指が追っかけてきて、そっと触った。
「髪痛んじゃうよ? なに使った?」
柔らかい笑みを浮かべて、藤本はそういった。
「・・・・・・・・・・オキシドール」
後藤はやっとそういった。
「へー・・・・そんな声してんだ後藤さんて」と楽しげにいう藤本に、
後藤は「・・・そだよ」と鼻声で答えたんだ。

朝のHR後、松浦が「ぶっちゃけ意外かも、思い切ってキャラ変えたんだあ」と松浦らしい感想をいって。
オレは、なるほどそういう考えもアリか、と納得したが、
「お前と違って、あいつは多分天然じゃないか? 変えたとしても無自覚のもう直感で」
と本心を正直に打ち明けたら、
「なにじゃああたしが計算だっていう訳?」って絡まれて。
だって兄さん男前ですやん、と言い訳しようとした時、校内放送で生活指導から後藤を呼び出す放送が流れて。
後藤はオレ達から拍手で送り出されてった。
みんなおもしろがっちゃって、後藤はいきなり人気者。
それは、主役が恥ずかしそうに耳赤くして俯きながらの、パレードだったよ。

一ヶ月前、下宿に、両親もつれずに引っ越してきた女の子。
転校生として担任に挨拶を促されても、決して喋らなかった女の子。
複雑な彼女の雪解けは、こうして果たされたわけで。

学校から帰ったら、オレの部屋のドアの前に缶コーヒーが一本。メモを押さえるようにして。
メモには、カバンアリガト、と書いてあった。
オレはちょっと照れて、イヒヒ、と笑って、プルトップを開けた。
一口飲むと、後味が残って。あまったりいなーコレ、とオレは笑った。

つづかない


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