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801リク投下用

117-801好きな少年漫画 G/S/美/神:2006/07/27(木) 22:37:42
手の平にこぼれ落ちた数枚の銀貨を見て、バイト君は絶句した。
「じきう、100、えんっ」
「そ。悪いねぇ、うちの店も不景気でさ、昨今」
扇子で口元を隠し、私はほくそ笑んだ。
不景気も何も、大嘘である。
最近歯医者の待合室で、ある漫画を読む機会があったのだ。
美人霊能者が高校生男子を色香に惑わせ、労働基準法
真っ青の時給255円でこき使いながら荒稼ぎをする、という
筋の話だ。うちは古道具を商う店柄、力仕事は必然なのだが、
あいにく私は色男なので力が無い。その点このバイト君、
若さに任せた働きっぷりは見事なもので、しかしこの頃少々
困るようなことになっていたのだ。

彼の目つきが何やら非常にモノ言いたげなのである。私に、
何やら非常に熱いモノを訴えてくるのだ。自意識過剰か、
それにしても身の危険を覚え、だが適当な言いがかりでクビに
出来るほど弁の立つわけでもなく、迷った末に天啓を得て、
この兵糧作戦だ。
もっと割りのいいバイトを見つけて、
「そうして諦めてくれればいいんだがねぇ」

しかし甘かった。甘かったのだ。兵糧攻めを開始して数週間の後、
へろへろになっているバイト君を、私は倉庫に呼んだ。
脚立の最上段に立って戸棚を探り、
「いいかい、上から渡すから、君は釜の尻を下で支えてくれ」
「分りました、店長」
「ギャー!誰が私の尻を触れと言ったよ!」
バイト君が切れた。触るどころか腰そのものにしがみついてくる。
「店長、オレ店長の側にいると、クラクラくるんです。恋してるんです」
いや貧血だろう、などと言ってやる間もなく、バランスを崩して私は
バイト君の上に倒れこんだ。バイト君はくるりと私を抱きかかえ、
そのまま床の上に押し倒す。
「ずっと前から、愛してましたー!」
「何を馬鹿なことを言ってんぐぼー!」
体全体で圧し掛かられる、唇を塞がれる!腕だけはバタバタもがいたが、
「ちょ、あれ、バイト君?」
そこまでが勤労青年の限界だった。興奮のあまり、気の毒にも
失神してしまったらしい。しっかり奪うものは奪ったのだろうが。
でかい図体をどかす力が有るでなし、私はバイト君を胸元に抱えたまま、
しばらくじっと天井を見上げていた。溜息をつく他、仕様がない。
そうとも、仕様がないではないか。

どうにも甘いと分っているのだけれど。
目が覚めたなら、一緒にご飯へ連れて行ってやろうか。
バイト君には、さっさと調子を取り戻してもらう為に。
私の場合はとりあえず、当面は抵抗できるような体力を付ける為に、かな。


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