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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

81618-179 冗談っぽく「好きなやついる?」 1/2:2010/01/14(木) 03:07:41

179 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01:51:55 ID:QSlQ0VRmO
冗談っぽく「好きなやついる?」と聞いたら真顔でうなずかれたorz

180 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01:55:04 ID:Gtr5sd23O
kwsk

181 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 01:57:13 ID:QSlQ0VRmO
こんな時間にごめんな、飲み会の帰りなんだけど、その飲み会の席で言われた
真顔だぜ真顔、俺も真顔で「うん…、上手くいったら紹介しろよ」とかどもっちゃったよ

スペックは当方フツメン、向こうイケメン。

182 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 03:30:55 ID:soHts4q1O
アッー?まだ起きてるなら相手が誰か聞いてもよくねとマジレス

183 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 03:35:23 ID:QSlQ0VRmO
起きてるよ、寝れるかチクショー!あと、うん、アッー!で合ってる
電話はどもる。メールなら出来る、文面どうしようか

184 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 03:40:41 ID:soHts4q1O
181へ
「好きなやつってもしかして俺?」

185 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 03:55:12 ID:Pisg7bweO
182ww
179まだ起きてるかー?www 上の送ってくれw

186 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 04:05:34 ID:QSlQ0VRmO
飲み直してたよ。明日あいつに代返してもらう
182送った

81718-179 冗談っぽく「好きなやついる?」 2/2:2010/01/14(木) 03:08:23
187 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 04:12:18 ID:Pisg7bweO
  送ったんかいwwwww

189 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 04:31:09 ID:QSlQ0VRmO
  意味不な返事が来た。「今ちょっとそっち行くから」
  ちょっと出迎えてくるww冗談が過ぎたかもしれんが飲み直してた俺に敵は無いぜwww

190 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 04:50:01 ID:soHts4q1O
  その相手のイケメンの好きな奴って口止めしたい奴だったりしたんかな

191 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 05:37:17 ID:ts2lt8ssO
  それ179可哀相過ぎないか
  好きな奴に好きな相手がいるって言われて口止めされるとか
  二次元嫁に置き換えてみたらなんかこうきゅってなった

192 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 06:03:28 ID:qBgr4xzO
  二次元嫁に置き換えるなよwwww
  ……彼女持ちの俺もきゅってなる

203 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 11:02:26 ID:Gtr5sd23O
  179ですが報告いいですか?

204 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 11:05:38 ID:ts2lt8ssO
  しむらー!ID!ID! 180?マジどうなってんの?

203 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 11:10:09 ID:Gtr5sd23O
  俺が酔ったときにここのURL教えてたのを失念してたらしい。馬鹿にされた
  書き込んだのもあいつだってさwwwww
  あと上手くいきました。すぐに報告できなくてごめんな

204 名前:相談したい名無しさん[sage] 投稿日:2010/01/14(木) 11:23:45 ID:Pisg7bweO
  相手も乙。とりあえず有休取った俺に長文で報告してくれるよな?

81818-230 うつらうつら:2010/01/28(木) 03:28:37
隣の席から、とんとん、と俺の軽く肩をたたきながら、
「おい、もうすぐ当てられるぞ。今、出席番号七番のやつが当たったから。」
と小声で囁く、上原の声がした。
「あー、ありがと。」
今の時間を担当している教師は、いつも出席番号順に生徒を当てて答えさせるやつだった。
つまり、俺は出席番号八番で、次に必ず当てられるのだ(後ろのほうの生徒はずるいよなー20番台のやつなんかぜんぜんあたんねーじゃん)
ただただ教科書を読み上げるだけの、つまらん上に受験勉強にもならない授業なので、みんな、当てられるとき以外は寝るか、内職している。
俺は前者の居眠り派だ。
いつも真面目な、この授業をクラスで唯一ちゃんと聞いている超優等生上原が隣の席でよかった。
当てられる直前に、ちゃんと起こしてくれる。
その時だけは起きてないと。…あのクソハゲ眼鏡教師は、教科書で生徒の頭をひっぱだいて起こすのだ。

そして放課後、同じ部活で、最寄の駅が一緒の小川と、駅で帰りの電車を待っていたとき、ふと、小川がつぶやいた。
「お前いいよなぁ。いっつも上原が起こしてくれて。俺なんか今週だけで4回も叩かれたし。」
「たまたま隣の席だからなーそれにあいついいやつだし。」
「でも俺、一学期、ずっと上原の隣だったけど、ぜんぜん、起こしてもらったことなかったんだけど…」
「え?そうなん?俺みんなのこと起こしてると思ってたんだけど、違うんだ?」
「うん。何でお前は起こしてもらってんだろうなーふしぎだよな。」
「確かに。何でだろう?」

81918-249 仮性包茎を気にするドSな上司:2010/01/28(木) 21:20:13
最初に思い浮かんだのはこちらだったんだけど、
どう考えてもSじゃない仕上がりになってしまったのでこちらへ供養させて下さい…
================================================================================

「毎回シャワー出た時からギンギンだったのって」
「言うな」
「おれのこと責めてる時に道具しか使わないのって」
「黙れ」
「っていうか日本人の6割以上がそうだって言いますし」
「馬鹿が。アレ絶対嘘だからな。
銭湯行ってみろどいつもこいつもズル剥けだろうが!
アレは世のホーケー共を哀れんだプロパガンダに過ぎん!!」
「いやー……
あっ、ホラ、ホーケーは銭湯行かないんですよきっと!」
「そんな『アイドルはうんこしない』話法で
誤魔化される俺ではないぞ……」
「っていうか課長、ベッドの上では王様のくせに
そこ指摘されると弱いんだからー。
でもそんな所が好きです!」

「だからおれのチンコがズル剥けで課長よりデカくても
気にすることないんですからね!」
「貴ッ様ァァァ!
覚えていろよ!!後で泣かすからな!」

82018-259 早漏改善合宿:2010/01/30(土) 21:26:05
普段いっしょにメシ食うノリで部屋に押しかけ、昨日の話の合宿だと言うと冗談だと思ったらしく
「そうかー、じゃ気合い入れて特訓しないとな!」
と笑った。その笑顔にむかつく。
入学して一年近く経つのに、昨日までお前の元カノ話なんか知らなかった。
親友とか勝手に思ってた俺馬鹿みたい。
何食わぬ顔でチビチビと、でも動揺をジョッキに隠しながら
上木モテモテだもんなー、今まで何人もスーパーテクでヒィヒィ言わせてんの、なんて露悪的にあてこすったら、
「いやー、なんか俺怒られるんだよね、痛いとか早いとか言われてさ」
と照れられた。なにその余裕。なにマジで複数かよ。
「早いのはいかんよー、上木、訓練、修行。特訓が必要なんだって。俺が教えてやる!」
って混ぜっ返したら、ジッと俺の顔見て「本当に?」とか言いやがった。
本当なわけないだろ、そんな方法知るもんか。腹立つからいじめてやろう……そう思った。

そばに人がいる、という状況が効果的なのだと説き伏せた。
「あくまでこれは訓練だから最終的には出すんだけども、そのことに集中しすぎないことが大切なんだ、
 一人っきりじゃないこのシチュエーションでは適度に気が逸らされていいんだよ」
俺の目の前でオナニーしろ、と言われて困る上木に内心ニヤニヤが止まらない。
「やり方は教えたとおり……
 早くフィニッシュしたくてガシガシこいてた若気の至りを改善すべく、
 ストロークは大きくゆっくり、柔らかい力加減で刺激を少なく、持続時間を延ばすことを第一の目標として行う。
 その際夢中になりすぎないように、具体的なオカズは用いず手だけを動かす。いいか?
 刺激に慣れること、緩やかな刺激で出せるようになることが大事だ」
『亜鉛を摂取すると男性の性的能力が向上する』とか言ってレバニラとカキフライを食べさせ、
『感覚を鈍らせリラックスするため』とアルコールをを飲ませたら、俺のでまかせをすっかり信じ込んだらしい。、
無茶ぶりに少々ためらいつつも、背中を向けてジッパーを開く。
優位に立つものをいじめるのは楽しい。内心のドキドキが止まらない。と思ったのに。
「ちょっと……あっち向いておけよ館野」
真剣に顔を伏せる上木に、ふと胸が詰まった。
こんな俺の騙りに騙されるほど深刻な悩みだったのかな、と思いあたったのだ。
本気で協力したくなった。シチュエーションは既に変だが、こうなったらとことん行ってみよう。
「そうそう……ゆっくりな、最初は起たなくてもいいからさ、気を楽に」
ハァーッ、と息を漏らす上木が可哀想になる。
「こっち向いた方がいいんじゃね?……俺の顔見た方が萎えて持続するかも」
言われて、振り返って上木が俺を見た。
俺を見ながら、上木の手がゆっくりと動くのが見えた。
「館野、館野……俺、なんかいつもより……無理」
急速に切羽詰まった上木の声に、俺の心臓も聞いたことない音を打ち始めた。

早い。駄目だ、改善できてない。5分くらいか。
まだまだふたりとも特訓が必要らしい。

82118-279 普段コンタクトの奴が珍しく眼鏡:2010/02/02(火) 03:53:08
「兄ちゃん…おかえり」
「おや、眼鏡なんだ?」
「コンタクト切らしちゃってて」

兄貴は荷物を解いているところだった。
分厚い本や、大学の意味のわからない講義テキストを、
小学時代から使っている古びた学習デスクの上に並べてる。
そんな重いもん、東京に置いてきてゆっくりすればいいのに。

使い捨てコンタクトを切らしたというのは嘘だった。
ただ、俺の持ってるのはギラギラのド緑の色したやつだし
くそ真面目の兄貴はそれが大っ嫌いでぐちぐち怒るから、
アレが帰省してる一週間は眼鏡っこぶろうというわけだ。ピアスも一個に減らした。

「…今日は先輩とメシ食う約束してっからまたすぐ行かなきゃなんねんだ。
 また帰ってからな」
「えぇ〜?久々に兄ちゃんカレー作ってやろうと思ってたのになんだよぉ。
 ってそんな格好で行くの? 外寒いでしょうが。ほらこれしていきな」
「いらねーよ…んなマフラー俺のかっこにも合わねーだろ」
「暖かければいいじゃない。早く帰っておいでね」
「過保護ヤロー」


結局、兄貴がひとりで家にいるってわかってるのに、
深夜になってもドリンクバーで粘っていた。

「先輩、なんで今日そんなに嬉しそうなの?」
「そんなことねえよ」
「ねえねえ、なんかあったの?」

先輩の前だと俺は変に浮ついたテンションになる。
女の子みたいで、自分でもキメェけど、なっちゃうものはしょうがない。
先輩はお洒落だしカッコイイし話も面白いから、遊ぼうといわれると嬉しいし、
一緒にいるとずっと帰りたくない気分になってしまう。
先輩が嬉しそうだと俺も嬉しいな。
それに、気づいてる。今日はいつもと違う雰囲気なこと。
グレイアッシュのカッコイイ目で俺のことチラチラ見てる。

「いやぁ、面白いこと思い出してよぉ」
「なに?」
「なんでもねぇ」

なんの期待というわけでもないけど、胸がドキドキ高鳴ってた。
浮かれてた。
だけど、俺の心の奥底は、嫌なうずきもしていた。

「つか今日お前眼鏡じゃん」
「…カラコンなくしてさ。ってか、え?今さら?」
「似合ってる。ずっとそれでもいいんじゃね? 黒い目もあどけなくてカワイーよ」

愛おしそうに言われると嬉しいけど、でもだんだん心がモヤモヤしてくる。
このモヤモヤは…。

「高校時代のスグル思い出すわ。
 こうして見ると、やっぱあいつと兄弟なんだなぁ」

ハイやっぱりきました。ですよねー。
こういう流れですよねー。ここから先ずっと兄貴の話題になるんだよねー。
高校時代ぜんぜん相手にされてなかったくせに。
チャラいし馬鹿だし乱暴だし、一番兄貴が嫌いなタイプじゃん。
もう名前すら忘れられてんじゃねぇの。

「あいつ今度いつ帰ってくんの?」
「いつだろ? 大学忙しいって言ってた」
「国立だもんなぁ。しかも特待だろ?すげーよなぁ。
 家計支えてるし俺には真似できねーよ。あいつは俺らとは違って…」

ああ、聞きたくないな。
いつも図太い先輩の自虐。

82218-299馬鹿が風邪ひいた1/4:2010/02/06(土) 06:08:26
吉田はバカだ。
もう中学生なのに、真冬でも半ズボンでTシャツしか着ない。
学校でも、体育の授業もないのに勝手に体操服でうろついている。先生も最近はほったらかしてる。
しかも体育があると、終わった後手洗い場で頭まで洗って、あちこちびしょぬれのまま教室に入ってくる。
去年幽霊の足跡だと思って廊下の水の跡を辿ったら、上履きの中ギュポギュポ言わせて歩いてる吉田でムカついた。
給食の時間は人一倍食べるし、余った牛乳は必ず吉田が持っていく。ゼリーの争奪戦にも出る。
吉田は雨の日でも傘を差さない。穴の開いたボロボロの運動靴で自分から水溜りに突っ込んでいく。

吉田はバカだからあんまり友達がいない。
俺以外の奴らとは喋るというよりバカにされてるか怒られてるかばっかりで、
それを吉田がいつもみたいにニコニコ笑って聞いてる所しか見たことない。(多分何言われてるか判ってないし。)
そんなだから、吉田が風邪を引いた時に家なんか知ってる奴がいなくて、なんか俺がプリントを持っていく事になった。

82318-299馬鹿が風邪ひいた2/4:2010/02/06(土) 06:08:50
実際に見るのは初めてだけど、吉田の家はあんまり綺麗じゃない。
詳しくは知らないけど大野とか村田が言うには貧乏だかららしい。

玄関から出てきた吉田の話では、今母ちゃんが丁度パートに出てるらしくて、その間一緒に遊ぼうと言われた。
風邪で寝込んでるのに、やっぱりバカだ。
お前今遊べないし、風邪が移るから嫌だと言ったけど、それでも「お願いやから帰らんといて」とか言って、
棚からたくさんお菓子やジュースを出してきてしつこく引き止めるんで、仕方がないから居てやる事にした。

ジュースを飲みながら対戦してたら、だんだん吉田がしんどそうにしだしたんで、無理矢理布団に戻した。
給食のゼリーがあったのを思い出して渡してやったら、またアホみたく鼻水顔で喜んでて、
それからずっと俺が一人でゲームやってる後ろから「藤田くん凄いなぁ!」とかニコニコしながら言ってた。

吉田のデータを勝手に3面くらい先に進めた頃、いつの間にかもう塾に行く時間になっていて、
俺が急いで帰り支度を始めると、吉田が慌てたようにまたお菓子や漫画を出して引きとめようとしてきた。
俺塾あるから帰らなきゃ、って何度言っても判らないみたいで、べそかきながら
このお菓子あげるから、この漫画あげるから、って言うんで凄く困ったけど、塾をさぼると母ちゃんが恐い。

82418-299馬鹿が風邪ひいた3/4:2010/02/06(土) 06:09:13
結局吉田は玄関まで追いかけてきて、泣きながら帰らんといて、帰らんといてとずっと言っていた。
靴も履き終わって、じゃあ帰るから。と振り返ったら、吉田が鼻水垂らしながら
「もう藤田くん僕の家来おへん?藤田くんまた来てくれるん?」
と言ってきた。「じゃあまだやってないゲームあるから来るわ。」と返すと、いきなり笑顔になって、
「来てな!絶対来てな!!」と鼻水まみれの顔のままでぶんぶん手を振っていた。
吉田は単純でバカだ。


なんとか塾に間に合って教室に入ると、大野に肩を叩かれた。
何かと思えば「ただの知り合いなのに吉田の家なんかに行かされるなんて、お前も災難だなあ」等と言われる。
確かに吉田の家は宅配係りをさせられる程近くはない。しかしそんなに損でもなかった。
俺は鼻で笑って、吉田の家でジュースとお菓子を貰った事や、散々ゲームで遊んだ事とかを大野に自慢してやった。
すると俺だけ得した自慢話にむっとしたのか、だんだん大野が不機嫌になってしまった。
ちょっと意地が悪かったと思って、帰り際の時に吉田に握らされたお菓子を一つやったら、なぜかもっと不機嫌になった。

82518-299馬鹿が風邪ひいた4/4:2010/02/06(土) 06:09:24
家に着くと母ちゃんがテストについて訊いて来た。
成績の話と塾と勉強の話をしたあと、いつものように「成績の悪い子とは付き合わないのよ」と言われる。
吉田の家に行った事は内緒にした。塾には間に合ったけれど、遊んでた事がばれたら叱られるから。
「クラスに吉田君って子がいるらしいじゃない?いつも言うけど絶対関わらないようにね?」「うん」
去年から吉田とたまに話す事があった事も内緒にした。

帰り際の吉田は、わんわん泣いたせいか顔が真っ赤になってたけど、よく考えたら
あれは動き回ってまた熱が上がってたんじゃないんだろうか。
吉田だといつまでも玄関前で手を振ってそうだけど、ちゃんとすぐ布団に入ったかな。
明日の給食は揚げパンとゼリーだから、両方持って行ってやろう。
バカは風邪引かないけど、引くと長引きそうだから。

82618-309 手袋 1/2:2010/02/08(月) 20:25:45
「なあ、頼むよ。この通り」
「頼むよってったってなあ……」

俺は困り果てた。
目の前には、フローリングに頭をこすり付けんばかりに懇願してくる男やもめがいる。
美人だった奥さんに先立たれて5年、当時産まれたばかりだった息子を抱えて
こいつは今まで本当に良くやってきたと思う。奴とは学生時代からの親友で、
そんな事になってから俺も出来ることがあれば今まで協力はしてきたし、
これからも望まれるならいつだって力になってやるつもりだ。
しかしこれは。

「頼む。俺、編み物できる知り合いなんかお前しかいないんだ」
「出来るって言ったって、俺も素人に毛が生えたようなもんだぞ……
 それに、そんなやり方でいいのかよ」

事の発端はこうだった。
奴が目の中に入れても痛くないほど可愛がっている一粒種が、
幼稚園で手編みの手袋を友達から自慢されたのだそうだ。
甲の部分にアニメキャラクターのワッペンをつけたどこにも売っていない手袋は、
小さな子供にとってよほど魅力的だったのだろう。そしてその日の晩から、
「どうしてうちにはお母さんがいないの」「僕もお母さんのてぶくろがほしい」という
こいつが最も恐れていた事態に陥ってしまった。
そろそろ考えなくちゃいけないってことは分かってたんだ、とこいつは言う。
幼稚園や小学校に進むにつれ、自分の家庭が周囲と違っていることに息子はやがて気がつくだろう。
その時、片親はなんと答えるか。非常に難しい問題だった。
そして今ようやく幼稚園を卒業しようとしている息子に真実を、「死」を説明しても、
彼には理解できないだろう。もっと色んな経験をつみ、色んなものを見て
自分なりの理解が出来る歳になるまで言わずにおきたいのだそうだ。
その気持ちは分かる。

そして、お母さんは今近くにはいないけれども、お前を大切に思っているんだよと。
その証拠に手編みの手袋を渡してやりたいんだそうだ。
何度も言うが、気持ちは分からないでもない。だがこんな生半可な嘘をついて、
大きくなったときに逆に傷つきやしないかと俺は心配なんだ。

82718-309 手袋 2/2:2010/02/08(月) 20:27:44
「だって、俺アホだから、こんな方法しか思いつかないんだよ。
 あいつに寂しい思いなんかこれっぽっちもさせたくない。だから頼む!」
「…………」

ほとんど半泣きで訴えてくる情けない親友の顔を見て、俺もなんだか情けない気持ちになった。

「……なあ、勘違いすんじゃねえぞ。たとえ俺が手袋を編んだとしてだな、
 お前がそれをお母さんからだよって言って渡したら
 その時点で偽物の愛情をあいつに与える事になるんじゃないのか。
 お前はあの子に偽者をやっていいのかよ。俺はやだね。
 それならぶすくれて駄々こねられた方がよっぽどいい」
「……お前…………」
「わかったか」
「……わかった。うん。俺ちょっと、周りが見えなくなってたみたいだな……
 悪かった。もう手袋編めなんて言わないから」
「バカ、誰が編まねえって言った」
「え?」

翌日、青や水色の毛糸とキャラクターのワッペンを山ほど持って訪れた俺に
昨日はぶすくれてリンゴのようだった坊主はうって変わって興奮しきりだった。
毛糸の色もワッペンも好きに選ばせて、目の前で小さな手袋を編み上げてやると
飛び上がって喜び、まだ片方しかないそれをはめて家中を駆け回る。

「ほら見ろ。変にひねくれたことするより、こういうのが一番だって」
「なるほどなあ。うん、母親がいなくたって、お前がこんなに愛情注いでくれるんだもんな。
 寂しがってる暇なんてないか。
 ……それにしてもお前、あれだな、これは今流行のツンデレって奴か」
「だいぶ流行から遅れてるぞ。いいから転んで流血しないようにちゃんと見とけ」
「らじゃ」

見るどころか、一緒くたになってはしゃぎ始める親子の歓声を聞きながら
俺はもう片方の手袋を仕上げてしまうと、また同じ色の毛糸を編み棒に巻きつけた。
幅はさっき作ったのの3倍。こっちには白いポンポンを付けてやろうとほくそ笑む。

828敬語紳士×ガテン系オヤジ:2010/03/06(土) 15:19:59
「アイツはなぁ、いいヤツなんだよぉ」
「ええ、分かりました、分かりましたから…」
「ぅ…ぐす…アイツは、アイツは両親事故で亡くしてな、それでも頑張って高校行ってなぁ…」
「ええ、本当に、頑張ったんですね」
 静かなジャズの流れるバーには、マスターのほかその2人しかいなかった。
 片方は細身にグレイのスーツ、オールバックの髪に細縁の眼鏡と、公務員のようないでたちで、シックなバーの雰囲気に溶け込んでいる。
 もう片方は連れ合いとは対称的で、髭面でさほど背は高くないが、ほの暗い照明にも薄いTシャツの下に逞しい筋肉が盛り上がっているのがわかる。アスリートというよりは、肉体労働で鍛えられたようだ、とマスターはグラスを磨きながら思った。ついでに、珍しい組み合わせだ、とも。その髭面が、顔中をくしゃくしゃにして泣いている。すっかり酔っ払っているのか、呂律も回っていない。
「なんで…なんでなんだよぉ…」
「鈴木さんにそこまで思ってもらえて、伊藤さんもきっと喜んでますよ」
 スーツのほうが、髭面の背を撫でながら慰める。1時間ほど前に店に入ってきてから、2人はずっとそんな調子だった。聞くと話に聞いていた会話で分かったのは、髭面の親友が亡くなったことと、2人が今日出会ったばかりだということくらいだった。
 髭面がびず、と鼻をすすった。
「いまさら喜んだって意味ねぇよ…」
「でも、俺は羨ましいですよ、伊藤さんが」
「…アンタいいヤツだなぁ…」
 酔眼でとろんと相手を見つめ、また涙ぐむ。苦笑して内ポケットからハンカチを取り出した。
「ほら、涙拭いてください。そんな顔で帰ったら、奥さんが心配しますよ」
「奥さんなんかいねぇよ」
「……え?」
 スーツのほうが一瞬手をとめた。それには気づかず、髭面が受け取ったハンカチで涙を拭う。そして照れくさそうに、小さく首を傾げた。
「それより、アンタはいいのか。こんな時間まで…」
 髭面の言葉に、マスターはカウンターの内側に置いた時計に目をやった。店の営業時間はまだまだあるが、終電がなくなってしまう時間帯ではある。そろそろお勘定だろうか、とマスターは音を立てずにグラスを置いた。
「俺も、奥さんいませんから」
 言われて、髭面はしばらく目をぱちぱちさせた。
「…だから、今夜は貴方につきあいますよ。今の貴方を、放ってはおけませんから」
 にっこりするスーツを見遣って、マスターは小さく微笑む。そして、友人の死に傷心している男のためにウィスキーの水割り一杯くらいサービスしようかと思った。

829828:2010/03/06(土) 15:21:26
名前欄ミスりました。
正しくは
「18-439 敬語紳士×ガテン系オヤジ」
です。

83018-449 照れ隠しで抱きしめる:2010/03/08(月) 13:52:33
あまりに関谷が俺を褒めるものだから、照れ隠しに抱きしめてみた。
関谷はぎゅむ、と声ともつかないうめき声をあげ、じたばたしている。
参ったか、これで黙らざるを得まい、どうだ俺の嫌がらせは。言葉にすればそんな気持ち。
とにかく、いつも生意気な後輩に一矢報いたつもりだった。

実のところ、逆襲の必要はもうなかった。
真面目だが一本気すぎて扱いにくいと評判だった関谷は、
一緒に担当した今回のプロジェクトを通じて、徐々に素直になっていたから。
鼻っ柱の強い後輩に認めさせる……先輩としての勝利だ。
だからもう気は済んでいた。まさか薬が効きすぎているとは思いも寄らなかった。
「いい仕事でした……加納さんの企画は的確だった。
 客も予測以上に入ったし……内容もよかった。ゲストも受けた。
 地味なテーマなのに満足度高かったですよ。取材も結構来ましたしね。
 加納さんの人脈があってこそでした。いや良かったです。本当にいいイベントになりました、大成功でした。
 加納さんは……すごい人だと、僕は思います」
饒舌というよりは訥々と、それでも心から思っているのだろう、何度も同じ事を繰り返す。
酒に弱い関谷は、褒め上戸だったのだ。
先輩冥利に尽きる。こんなに心酔されることなんてなかったと思う。
大げさに持ち上げられるよりじんわり気持ちが伝わってきて、嬉しいと同時にすごく照れた。
酒が入る直前まではいつもの落ち着いた関谷だったので、面はゆさに拍車がかかる。
最初は驚き、次第に苦笑い、ついには恥ずかしくていたたまれなくなった。
俺も酔っていた。冗談に紛らせて関谷を黙らせるつもりだった。
「お前の気持ちは分かった。俺も、お前がいたから今回頑張れたと思うよ!」
オーバーに叫んで、力一杯抱きしめた。

締め上げた、といった方が良いベアハッグだったから、息が詰まって関谷はあえいだ。
パッと離すと、顔が赤い。耳も、首筋まで真っ赤だ。
「感謝、感謝。もう、あんまりお前が褒めてくれるから感謝の気持ちね。
 関谷のこと俺、本当、愛してるから!」
テンション高くうそぶくと、火傷したように関谷の体がはねた。
……予想した罵詈雑言が返ってこない。急速に酒の力が抜けてくる。
黙ってしまった関谷に、俺はようやく何かいけないことをしたと……悟った。

83118-459 割烹着が似合う攻め:2010/03/10(水) 18:16:37
「おっはよー」
 朝っぱらからやたらテンションの高い声に起こされて不機嫌なところへ、はた迷惑な声の主の現れた姿にぎょっとした。
「…なんだ、それ」
「タクちゃんほんまお寝坊さんやなぁ。そんなんやとお仕事大変やん」
「いやだから」
「あ、この割烹着? 俺が東京出てきたときにオカンがくれたんよ」
 似合てるやろ、とくるりと回って見せる。
 顔はいいくせに妙に庶民的なせいか、似合ってはいる、と思う。
「…お前、料理できたのか」
「できるわぁ! 俺のたこ焼きは天下一品やったやろ!」
「ああ……そうだったか」
 そういえば、先日目の前の奴が押し掛けてきて作っていったたこ焼きは美味しかった。
 天下一品かどうかはともかく。
「タクちゃん、朝ごはんできてるで。俺桃子ちゃん起こしてくるわー」
「あ、ああ……」
 二階の子供部屋に上がっていく長身を見送ってから、顔を洗いに洗面所に向かった。
 冷たい水で顔を洗うと眠気も吹き飛び、漂ってくる焼き魚の匂いにいくらか心を弾ませながらダイニングに向かう。
 テーブルの上には、3人分の茶碗や焼き魚を載せた皿が並んでいる。
 そういえば昨日そんなものを買ったな、と3人での買い物を思い出しながら箸を並べる。
 朝食の見た目は悪くない。
 小葱の散った豆腐の味噌汁はほこほこと美味しそうな湯気を立てているし、皿のアジの開きもちょうどいい具合に脂が乗っていて、焼き加減も申し分なさそうに見える。
 なんだか少し照れくさい。
 こんなふうに朝食を作ってもらったのは妻が死んで以来だ、とふと思い出して、慌てて頭を振った。
「わぁ、お魚ー」
「そやねん、残したらあかんで?」
「残さないもん。桃子、ちゃんと食べるもん!」
「桃子ちゃんはええ子やなぁ」
 二階から降りてきた2人が、賑やかにはしゃいでいる。
「あれ、タクちゃんまだ食べてなかったん?」
「あ、ああ……」
「俺のこと待ってくれたん!?」
「え、あ…」
「嬉しいわぁ!」
 ぎゅ、と抱きしめられる。
 こんな愛情表現は少し苦手だ。
 距離を置かなければと思っているのに、心の枷を振りきってしまいたくなる。
「は、離せ……それより、食べないと遅れる」
「あ、そうやな…」
 慌てて離れ、少しうなだれるさまは大型犬のようで、なんだか微笑ましい。
「お前が作ってくれたんだ、ありがたくいただくよ」
 ぎこちなく微笑んで腰をおろし、味噌汁の椀を取り上げた。
 味噌の香りを吸い込んでから、口に含む。
「………!!!!!」
 とたん、吐き出した。



「あのときは、まさかお前があんなに料理が下手だとは思わなかったな」
「……なに、今さら?」
「あんな不味い味噌汁飲んだのは初めてだ」
「…そやから、もうたこ焼き以外作ってへんやん」
「ああ。けど、コーヒーくらいはもう少し上手く淹れられるようになれ」
「……努力します」
「…………不味いコーヒー飲まされるのは嫌だからな。俺も手伝う」
「!!!!」

83218-479 卒業:2010/03/16(火) 13:29:04
間に合わなかった…。供養させて下さい。

−−−−−−−−−−−−
「卒業式でー泣かないーと冷たい人と言われそおー」

 眼下に別れを惜しんで泣いている女子があちらこちらに見えた。
 屋上から下を見ながら、あいつは古い歌を歌った。

「女って浸るなあ。会おうと思えばいつだって会えるくせにさあ」
「いいだろ別に。それより卒業ソングだったらいくらでも他にあるだろ。
そんな昔の曲、チョイスすんなよ。」
「お袋の十八番だよ。いいだろ。わかるお前もお前だけどな」
 そういってあいつは笑った。
「お前、親とカラオケに行くのか。すげえな」
「俺しか相手いないじゃん。会社のストレス発散カラオケなんだから」
「それでも普通はいかねーよ」
 卒業証書が入った筒を手に持ちながら、なんとなくこの場から離れがたくて、
俺達はさっきからなんでもない話をしていた。
「歌詞なんかみないで歌えるぜ。でもー、もおっとー」
「うわー、やめろー、耳が腐るー」
 俺が耳をふさいごうとしたら、それを阻止するようにあいつに腕をつかまれた。
お互いに近くなった距離に気まずくなり、あいつの方が先に目をそらした。

 日が暮れて、さっきまで大量にあった制服の群れはまばらになっていく。 しばらく沈黙が続いた後、あいつがポツンとつぶやく。
「今日でもうここに来なくてもいいんだなあ」
「なにそれ、お前学校嫌いだったの?」
「嫌いじゃなかったけどさ。楽しかったし」
「まあね」
「でも、なんか苦しかった」
「そうだな」
「すごく苦しかった。やっとそれから解放されると思うと涙が出る」
 顔を下にいて俺に見せないようにしていた。
 もしかしたら本当に泣いていたかもしれない。

「お前、卒業アルバムに変なこと書いてたな」
「いい会社に就職して、結婚して、幸せな家庭を作るってどこが変?」
「当たり前な事を書きすぎて変だっつってんの」
「バーカ、今はその当たり前のことが大変な時代なんだよ」
「じゃあな」
「ああ」
 またなという言葉も喉の奥にひっかかった。
言えなかったのか、言わなかったのか、それは自分でもわからない。

 お互いの間に薄い壁を作ったまま、俺達はここを出る。
 こんな壁は簡単に崩せたかもしれないのに、俺達にはそんな勇気も、
こんなことはたいしたことじゃないと笑える飛ばせるほどの無神経さもなかった。

 毎日同じ場所に来れば会える。たわいもない会話で日が暮れる。
体に触れても何も不自然じゃない、そんな環境が今日で終わる。

 屋上から降りる途中の階段で、「女みてー」と同級生に笑われた。
そう言われて自分の頬が濡れているのに気がついた。

83318-589 盲目のご主人様:2010/04/05(月) 23:49:05
「今日の天気はどうだ?」
ベッドの背に寄りかかり俺の手を握ったままご主人様が聞く
今日の彼は機嫌が良さそうだ
「とても良い天気ですよ。ぽかぽかしていて、風も丁度いいです」
手を握り返して俺はそう答える
きっとピクニックをするには最高の天気だ
「そうか…そういえばなんとなく光が明るい気がする」
ふわりと笑う横顔が、俺の心を撫で上げる
貴方の目が見えなくなってどのくらいたっただろう
幼かった貴方は、今でも俺の顔を覚えているだろうか
「そういえばお母様たちへの手紙は出してくれたか?」
ああ、貴方はいつまでも無邪気なままでいて
握った手をそっと置いて俺は答える
「ええ、もちろんです。きっとまたすぐに返事が来ますよ」
俺の顔が貴方に見えていなくて良かった
「うん、返って来たらまた読んで聞かせてくれ。返事も僕が直接書けたらいいんだけど」
少し悔しそうに言う貴方の頭を撫でようとして、寸前で手を止める
「ご主人様の字はあまりきれいではないですから。目が見えていても私が代筆いたしますよ」
そうおどけて言うと、的確な位置にパンチが飛んでくる
「そうだ、屋敷中の窓を開けてくれ。たまには風を通さなくちゃな」
俺の方に顔を向けて無邪気な笑顔を見せて、貴方は哀しいことを言う
ああ、貴方はいつまでも無邪気なままでいて
何も知らずに、現実なんて知らずに、そのままで
「はい、今すぐに」
ベッドの横から腰を上げると、部屋の扉を開けて外へ出る
今日は本当に天気がいい
俺はポケットから一通の手紙を取り出して開ける
『お母様、お父様、元気ですか』
俺が代筆したその手紙に、返事を書くのは俺だ
貴方は、哀しい現実など知らないままでいて
目の見えない貴方に真実を隠し続ける俺のことなど、知らないままでいて
小さな小さなこの家で、窓などたった一つしかないこの家で
出すあてのない手紙を書きながら、返ってくるはずのない返事を読みながら
俺は貴方を守り続ける

83418-539 冷血なギャンブラー:2010/04/13(火) 18:40:19
伝説のギャンブラーがこのカジノに来ていると聞いたのは、数ヶ月前のことだった。
ブラックジャックしかしない。そしてめっぽう強い。だが、その程度なら伝説にはならない。彼が伝説になったのは、勝った金をすべて慈善事業に使うからだ。世の中には物好きな人間がいるものだ。あぶく銭なら俺みたいな男娼にもっと使ってくれればいいものを。
いつかはそいつを自分の客にしたいと思っていたが、彼はめったに来なかった。そして今日、はじめて俺はその伝説のギャンブラーに会ったのだ。
*****
わざと彼にぶつかり、酒をかける。古典的だが知り合うには意外と効果的だからだ。
「す、すみません! 大丈夫ですか? クリーニング代を…」
「いや。たいしたことは……。ああ、君か。見違えたな」
「え?」
「この間、同じ手で男をひっかけていただろう。どこのカジノだったかな。彼は僕の取引相手でね」
顔が赤くなるのが自分でもわかった。男娼であることがばれていたのもそうだが、使い古された手を使っていると笑われているようで恥ずかしかった。だが、致命傷じゃない。俺は戦略を変えた。
「恥ずかしい…俺の事を知っていたんですね…」
「この服は彼に? 彼はマイフェアレディが好きだから、さぞかし楽しかっただろうな」
「ええ、あの方は慈悲深い方で、俺に身寄りがいなくて、自分の身ひとつしかないからこの仕事をしていると言ったら、食事や服を……」
哀れな子供を演出したが、彼は笑いを堪えて肩をふるわせた。
「それで彼はだませても、僕は無理だよ」
「う……嘘なんてついてません」
「君は選んでこの仕事をやっている。そうだろ? 君はもっと強かだ」
真正面からきっぱりと言われて言葉につまった。カードが強いということは、人の心理を読むのが強いということだ。俺は演技をあきらめた。
「……ここは社会的にステイタスのある人間が多くて、金払いもいいし、病気のリスクも少ないから。はじめるのに元手もかからないし」
「悪くない選択ではあるけれど、もったいない。君は体よりも頭を使う仕事の方が向いていると思うけどね。あの男の要求をのらりくらりとかわして、自分のいい値で自分を買わせた手管には感服したよ」
「あなたは俺があまり好みじゃない?」
「いや、魅力的な子だと思うよ」
「なんでも言う事を聞くよ。今夜、俺を買ってくれない? 金がないんだ。これは嘘じゃないよ」
それは本当だった。この間の客から貰った金はすべて使ってしまっていた。
「なんでも?」
「ええ、なんでも」
「だったら賭けをしないか?」
「賭け?」
「一夜で終わるような関係じゃつまらないじゃないか。そうだな。マイフェアレディを僕もやってみたい。僕は仕事が忙しい。自分と同じ能力をもった片腕が欲しいんだ。探しているんだが、なかなか人材がいなくてね。君は僕と同じで場を読むのがうまい。君に教育をほどこしたらビジネスでも物になるかもしれない。僕に君を教育させてほしい」
「――物好きだね。俺が物にならなかったら、どうすればいい? 俺にかけた金がいくらになるのかは知らないけど、その時の俺に返せるかどうかわからないよ」
「君が物にならなかったら、君自身を僕にくれればいいよ」
「俺?」
そんな回りくどいことをしなくても、今夜誘っているのは俺の方なのに。訝しがっている俺に彼は笑って言った。
「君は自分の価値がわかっていないなあ。君を欲しいと思っている人間はこの世にはたくさんいるんだよ」
彼は俺の頬に手をやる。
「この肌。この瞳――――」
その手が下に下がる。
「この心臓……とかね」
「え?」
「僕がギャンブルで勝った金を、困っている人の為に使っているのは知っているだろう? おかげで僕の元には、失明した人や火傷をした人、心臓に生まれつき穴が空いている人とか、様々な臓器の移植を待っている人から助けて欲しいというメッセージがたくさんくるんだ。僕はお金を出せるけど、臓器までは用意できなくて」
彼の手が俺の体をなでた。
「君が勝ったら、君に投資した金は返さなくていい。君に会社のひとつも譲ってもいいよ。でも、もし君が負けたら、その体を僕にくれないか。それがこの賭けの条件だ」
まったく表情が読めなかった。
俺はこいつを見くびっていたのかもしれない。
「どうする?」
こいつはギャンブラーだ。とてつもなく強く恐ろしい魔物だ。

83518-639 顔が唯一のとりえだろ? 1/2:2010/04/16(金) 05:10:09
「貴様いい加減うっとうしいぞ」
今日も今日とて姿身の前に立ち、己の美しさを存分に堪能していたところ、
同僚であるむさ苦しい男が声をかけてきた。
彼は気品のカケラもない所作でソファに腰を下ろすと
眉間にしわを寄せてじろりとこの僕を睨み上げる。
ああなんと野蛮、なんと美しくないしぐさだろう。
彼をこのような人間に生まれつかせた神の采配が呪わしい。

「休憩室にでかい鏡なんぞ持ちこみやがって……」
苦々しげに、まるで独り言のような呟きを漏らす。
まったく、この僕と会話をしたいのならばもっと素直な言葉で話しかければいいものを。
とは言え僕はこの美しい外見にみあった広い心の持ち主なので
彼の心情を汲んで言葉を返してやることにしよう。
僕は、彼が美しくないからといって邪険に扱うような狭量な輩ではないのだ。
「休憩室とはくつろぐためのスペースだろう?
君の顔なんか見てても全く心安らがないからねえ。
加えて調度品もあまりに貧相で、心まで貧しくなってしまいそうだよ。
この部屋の中で美しい存在はたった1つ、この僕だけだというのに、自分で自分の顔は見られない。
君の目に美しさを提供してあげているこの僕が、美しくないものばかりを見て
休憩時間を無為に過ごすなんて、許されることではないと思わないかい?
鏡は必需品として認めるべきだよ」

「……もういい。貴様の話を聞いていると頭が痛い」
彼は額を抑えると、あろうことかこの僕の顔から床へと視線を落とし
僕の声を振り払うように頭を振る。
この僕が鏡を見るのをやめて、わざわざ彼の方を
振り返って会話してやっているというのに、だ。
「何という言いぐさだい?
この僕が、君の無粋な脳みそでも理解できるように
分かりやすく噛み砕いて説明してやったというのに……
というか僕の玉声を聞いて頭が痛いとは何事だ!」

83618-639 顔が唯一のとりえだろ? 2/2:2010/04/16(金) 05:10:47
俺は後悔していた。
こんな変人にわざわざ文句なんかつけるんじゃなかった。
まともに話を聞けば聞くほど頭痛がひどくなる心地がする。
「分かった……俺が悪かった。鏡のことはもう何も言わん」
だから大人しく鏡と見つめあっていてくれ、と胸のうちでつぶやいた。
しかし奴はなぜか鏡から離れ、俺の向かいに腰掛ける。
それから、珍しく殊勝な表情を作って口を開いた。
「分かっているよ、僕にもっと働いてほしいと思ってるんだろう?」
出鼻をくじかれ、口に出すことさえ諦めた俺の本心をずばりと言い当てる。
分かっているなら働け。
「けれど高貴な生まれであるこの僕は、君のような
下賤の者と肩を並べて働くのには向いていない」
「……」
「君が幼いころから長い時間をかけて身につけてきた能力にしたって、
僕は習得する機会も必要もなかったからね。
そういった素養のない僕が今さらながらに努力しても、能力の向上など微々たるものだ」
膝の上で手を組んて、悪びれた風もなく言い放つ。
「だから、この僕の唯一にして何物にも代えがたい長所である美しさに磨きをかけることで
君に至上の眼福を味わわせてあげようと思い、鏡の前で身だしなみの確認にいそしんでいるわけだ。
毎日僕の分までノルマをこなしてくれている君への感謝の証と受け取ってくれたまえ」
唯一の長所って自分で言いやがったこいつ、などと思いながら、
俺は長々と喋りつづける目の前の相手を何となく眺める。
休みなく言葉を紡ぎながら、落ちつかなげに指を組み換えるしぐさが妙に目についた。
そう言えば、以前はすべらかで傷一つなかったはずの奴の指先は
いつの間にかずいぶんと荒れていて、血のにじんだ切り傷が目立つ。

俺は奴の顔を見る。
その表情は、いつもの通り自分に酔いしれているようにしか見えなかった。
だから俺も、いつもの通り顔をしかめて無愛想に言葉を返すことを選んだ。
「……確認というか、心底自分に見とれているように見えたんだが」
「確認の過程でそういった事態が発生するのは仕方のないことだ。
何しろこの僕の美しさは――」
「それは分かったからいちいち説明するな」
「……分かった、とは?」
言葉を遮られていささか不満そうにこちらを睨んでくるが、
今日はすでに何度も長台詞を聞かされていい加減にうんざりしている。
だから俺は大した考えもなく軽口を返した。

「貴様のとりえは顔だけだということだろう」
そう言った途端、奴の顔色が変わった。しまった、と俺は思う。
本人が自分で口にしたこととは言え、他人が踏み込んではいけない領分というものがある。
俺はそれを侵した。
軽率だった。一度口にしてしまった言葉を取り消すことなど、誰にもできはしないのに。
奴は怒りに唇を震わせ、言葉をほとばしらせた。

「顔だけとは何だい!? この僕の体は爪の先、髪の一筋に至るまで全てが美の極み!
全身のバランスだって申し分ない! 神が生み出した奇跡とも言うべき存在だよ!?
断じて顔だけなどでは――!」
ああ、こいつの話を聞いていると本当に頭が痛い。

83718-649 チンコ見られた!:2010/04/16(金) 20:45:26
800 名前:801名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 04:07:51
   |
   |A`) ダレモイナイ・・ロシュツスルナラ イマノウチ
   |⊂
   |

         (  ) ジブンヲ
         (  )
         | |        +。
           * ヽ('A`)ノ *゚
          +゚   (  )   トキハナツ!!!
              ノω|

801 名前:801名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 04:08:01

<●><●>

802 名前:801名無しさん[sage] 投稿日:2010/08/01(日) 04:18:40
 ('A`) ミナイデェェェェ
 (ヽノ)
  ><



ごくごく普通のスレで、深夜にたまたまこういう流れに
なったのに遭遇して笑い萌えたことがあるw
たぶん最初に露出AA貼った人は

  _[警]
   (  ) ('A`)
   (  )Vノ )  ショデハナシヲキコウカ・・・
    | |  | |

こういうレスがつくのを期待してたんだろうに、
まさかガン見されるとはw

83817-499 指舐め:2010/04/22(木) 18:30:26
古いお題ですが、書いたはいいが規制にあって&未だ規制されてるのでここに昇華させてください。


僕が子供の頃、近所にケーキショップがあって、いい匂いをいつも漂わせていた。
甘いもの好きの僕は、毎日のようにショーウィンドウから店内を眺めていたものだ。
奥でケーキの飾り付けをしているのを見て、僕も将来あんな仕事につきたいと思ったのもこの頃。
飾り付けをしている人の指示で厨房をせわしなく動いている人がいる。
ああいうのはやだな、と子供心に思ったっけ。今だから分かるけれど、彼は見習いの若いパティシエだった。
ある日、いつものように店の前に行くと、その日は見習いの彼一人だった。準備中らしく、客もいない。
僕を見かけると、彼は微笑んで、おいでと言うように手招きした。
言われるままに店の中に入ったのはいいが、母親がいる時と違って一人なので少し心細くなる。
「君いつも見てるよね。ケーキ好きなんだ」
僕は答えに困った。もちろん好きだけど、食べるのが好きみたいに思われてる気がした。
そうじゃなくて、作ることに興味があるのに。子供だから上手く言えない。
「今誰もいないから、ちょっと待ってて」
そう言うと彼は、奥から大きめの瓶を持ってきた。琥珀色の何かが入っている。
ふたを開けて、指でひとすくいそれをとると、僕の口元に寄せた。
「ハチミツ?」
「メープルシロップ。それも極上の奴。昨日仕入れられたんだ。舐めてごらん」
少し行儀悪いな、と思いつつも鼻をくすぐる甘い香りに耐え切れず、彼の指を口に含んだ。
濃厚な甘みが口いっぱいに広がる。虫歯が痛んだけど、それも気にならないほど素晴らしい。
僕は味がしなくなるまでずっと彼の指を舐めていた。
「甘くて美味しいね。でも高いんだろーな」
「そりゃあね。でもいつも見にきてくれるから、特別に君だけ」
そして彼はかがんで僕の口に人差し指をあてた。
「誰にも言っちゃダメだよ。僕らだけのヒミツだ」
ヒミツという言葉が何となく大人っぽくて、嬉しくて頷いた。

今、僕はパティシエ見習いとしてその店で働いてる。
極上のメープルシロップの味を教えてくれた彼の元で、いろんな甘いものに囲まれて。

83918ー689 長年の同居人が人外だと今知った1/2:2010/04/23(金) 20:31:16

パキッ

猫缶を空ける音で、俺は目を覚ました。
窓を見る。きらきらと浮き上がる埃の向こうにやや傾いた日が見えた。
俺はひとつ欠伸をするとベッドを降り、よたよたとリビングに向かった。

「おー、起きてきた。食事の気配にだけは敏感なんだね」
「うるせぇ」
「今日はちょっと高いやつだよ、ほら」
「ほらじゃねぇよ。横着してないで皿に出せ」
「えー」
「缶のまま食うなんて畜生のやることだろうが。一緒にすんな」
「……それは俺に対する挑戦?」

そう言う奴の背後には、空になった焼き鳥缶とフォークが転がっていた。
俺はため息をつきつつ、奴の使ったフォークを再利用した。



「なぁ」
「ん」
「原稿どんくらい?」
「あとちょっと」
「人間って大変だよな。かまえよ」

机に向かう奴の背に、べたりと寄りかかった。
奴は器用に、後ろ手で俺の頭を撫でる。違う、そういうのじゃない。
俺は這うようにして、あぐらをかいた脚の間に上半身を割り込ませた。

「もうちょっと」
「お前のちょっとは長い」
「何百年も生きてたら大概のことは『ちょっと』にならない?」
「ならない」

奴はふっと苦笑して、俺の体を引っ張り上げた。ぎゅう、と抱きしめられ溶けそうな気持ちになる。

84018ー689 長年の同居人が人外だと今知った2/2:2010/04/23(金) 20:32:43

「よしよし」
「ガキ扱いすんな。お前の何倍生きてると思ってんだ」

こう言うと決まって、奴が困ったような顔で口をつぐむことを俺は知っている。
年功序列はこの国の守るべき伝統だ。人間の若造風情が少しでも調子に乗りそうな時は、こうしてぴしゃりと押さえつけることにしている。
が、今日は少し勝手が違っていた。

「じゅうぶんのいち、ぐらいかなぁ?」

奴が珍しくとんちんかんな答えを寄越してきたのだった。
冗談にしても悪趣味だ、何千年も生きるような人間があるか。

「は?何をふざけ」

ているのだ、とは続かなかった。
奴の目がやや獰悪な光を帯びながらにぃっと笑う様子に、感じたことのない躊躇をおぼえたからだった。

「今日でちょうど15年だし、そろそろネタバラシといきますか」

奴はそう言うと、すうっと息を吸い込んだ。
みるみるうちに奴の頭が狐の顔にすげ変わる。

元のままの声で「こん♪」とおどけてみせる奴に、俺はすっかり言葉を失ってしまった。

「おかしいと思わなかったの?人間ってもっと年取るの早いんだよ」

嘘だろ。

嘘だろ……

「ごめんね、年下をからかうの大好きなんだ」

ショックに垂れて震える耳を、奴の肉球がやさしく撫でた。

841萌える腐女子さん:2010/05/09(日) 20:51:29
新まとめスレへ移行します
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/13789/
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