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小ネタ投下スレ
523
:
名も無き黒幕さん
:2010/04/29(木) 23:09:28 ID:owUuycZo
負傷した左手から響く痛みを堪え、朱巳は大きく緩やかに呼吸する。
(この近辺にいてもおかしくない参加者として挙げられ、「見かけなかった?」って
尋ねられたということは――つまり、あいつを殺した犯人なのかもしれないわけか)
霧間凪の死に顔が朱巳の脳裏をよぎる。
(火乃香の態度から推測すると、黒に近いほどの灰色ではないんだろうけど……片方が
怪我してる二人組って微妙なところだし、なんとなく別の文化圏に属してそうな外見
だとはいえ、男の方はよく見ると混血児っぽいような特徴が多少なくもないし……
普通、躊躇なく声かけていい相手だとは思わないでしょうね)
連れの童女と故郷を同じくする親や祖父母が男にいたとしても、違和感はあるまい。
参加者名簿を見れば見知った名前が見つかる状況下の殺し合いだ。あの二人組はこの
島に連れてこられる以前からの知り合い同士であり、二人で他人を襲っているのでは、
と悪し様に疑ったところで誰に非難される筋合いでもない。
血まみれの人影は、血の跡が見て取れない路面に寝かされている。動く様子はなく、
息をしているようにも見えない。遺骸か、あるいは死体同然の物体だ。静かな微風が
鉄錆じみた生臭さで真実味を主張している。人影は水には濡れていないようなので、
路上の血が雨に洗い流されたのだ、とは考えにくい。事件現場は別の場所だろう。
(たまたま見つけた不幸な人から遺品を剥ぎ取ってる、って雰囲気じゃあない。なら、
二人組が知人をどこかに運ぼうとしている、って見方が正解なのかしら?)
日本人的な特徴を備えた犠牲者の姿には、男の方との共通点がそこそこある。
開会式以前からの知り合いがこの島に複数いる程度のことは、まったく珍しくない。
(さて、あの二人は殺人者なのかそうじゃないのか)
安らかに眠れそうな地点まで仲間の亡骸を送り届けようとしているように思える光景
ではあるが……死者を素材にした“人殺しの道具”を造るために人目のないところへ
隠れる準備中、などという事態もありえなくはない。
いつか見た、死してなお戦うビーグル犬を、朱巳は思い出す。
連想してしまった苦い記憶の群れを、彼女は一つ一つ己の内側へと吸収し直していく。
(そう――動く死体が襲ってくる程度の非日常は、御伽噺でも夢物語でもない)
傷物の赤は、胸の奥の今なお塞がらぬ古傷すら力に変える。
(それがどうしたって話よね。石橋叩く巧遅より、危ない橋へ踏み出す拙速が今は尊い)
付き合いの長い二人組なら、危険人物だとしても、問答無用の無差別殺人者ではない。
(知性を持った相手なら、どんな曲者だろうがあたしの敵じゃないのよ)
虎の威を己が威とする狐は、蛮勇を制する知恵ある獣なのだ。
羊だろうが羊の皮を被った狼だろうが、騙してしまえばいいだけのこと。
(じゃあ、せいぜい利用させてもらいましょうか)
朱巳の頬は、粉砕骨折の痛みに引きつりながらも笑みの形を作っていった。
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