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152
:
エンジェル・ハウリング(弱虫の泣き声)
:2009/03/19(木) 00:45:49 ID:Fc72kk0o
「なっ、おい!」
「彼の加勢に回れば全員が死ぬ。とりあえず君の応急処置が先決だ」
「そんな冷静な判断は――」
反論を許さず、足が傷ついていることを感じさせない速度でメフィストは瓦礫の切れ目に到達していた。
治療の出来る場所を探し、視線を走らせる。
だがその前に、目に入ったものがあった。
それはすぐ目の前にいた。血塗れの少女。ベルガー達の背後にいる巨人を呆然と眺めている。
ベルガーは面食らったが、それでも彼女は被害者だろうと判断した。声を掛ける。
「見れば分かるだろう? ここは危険だ。とりあえず逃げろ――」
「危険なんて無いよ」
血塗れの少女はそう呟いた。その声音は透明で、感情が一切含まれていない。
訝しむ間もなく、少女はベルガーに焦点を合わせた。
その顔に張り付けられた表情に、思わずゾッとする。少女はどこまでも壊れた笑みを浮かべていた。
「だって、私が壊すんだもの」
奇妙な白一色の眼球に映し出された自分の顔を、メフィストに抱えられたベルガーははっきりと見ていた。
変化は一瞬だった。彼らの眼前に、突如例の巨人が出現する。
「な――」
振るわれた拳を、慌てて“運命”で防ぐが、巨人の一撃で体ごと吹き飛ばされる。
抱えられている不安定な姿勢だったため、ベルガーとメフィストは転がるように吹き飛ばされた。
落下の衝撃でまた肺が痛むのを自覚しながら、それでもなんとか地面に埋もれていた瓦礫を取っ掛かりにし、ベルガーは回転を止めた。
(まだ、だ。まだ死ぬわけには――!)
向こう見ずな少女。呪いに犯され、大切な者を殺され、泣きそうだった顔が脳裏を掠めた。
救いたい人がいる。そのためにダウゲ・ベルガーは立ち上がった。
だが運命は彼の前にあった。強臓式武剣ではない。逃げられないほど近くに――死という運命が。
ベルガーを追撃してきた銀の巨人が、再び拳を振り上げた。
反射的に黒刃を構えようとするが、手の中にはない。先程の一撃で吹き飛ばされた!
(糞っ垂れ――)
罵っても時は止まらない。救い手も顕われない。
最後の感覚は肺の痛みと網膜に焼き付く光、そしてブツリという奇妙な音。それらを感じながら、ダウゲ・ベルガーの意識は途絶えた。
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