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試験投下スレッド
490
:
十叶詠子の人間試験
:2005/07/22(金) 17:57:48 ID:pBSSTsig
「もうすぐ四時四十四分。放課後の怪談の時間。ねぇ、君は不思議だと思わない?
時間なんて本当はどこでも同値だよね。十時五十二分も八時時十七分も区別がつかないはずなのに、何故四時四十四分なんだと思う?」
「不吉な数字てのは明らかに後付だよな。あれだろ。薄明、誰彼、逢魔ヶ時てのもあったな。柳田國男だったか? まぁいいや。
とにかく山とか海に入った人間が帰ってこなくなる時間だ。『はないちもんめ』や『かくれんぼ』の最中に消えたりな。
ようはさ、昼から夜に変わる中で『違う世界につながっててもおかしいねぇ』て感覚がどっかにあるからじゃねぇの?」
魔女は彼の身体を鏡へ寄せる。死体は力なく姿見にもたれかかった。
「そうだね、最後のチャイムを聞いた人は、夜の学校に入ってしまう。黒板に円を書くと四次元の世界に連れて行かれてしまう。
山に遊びに行った兄弟、兄は帰ってきたけれど、弟は帰ってこなかった。
ほとんどの物語が『連れ去られる』『帰ってこない』で終わるのは、人が『違う世界』との繋がりを見出してるから
私は鏡の世界にこの子を送るの。見立ては好きじゃないけれど、この子が望んだことだから、私はこのコを物語にする」
欠陥製品のヤローも物語とか何とか言ってたな、人識はそんなことを思い出す。
「そして死後の世界は虚像の世界、鏡像世界は冥府の姿。狭間の時間、もしも彼女が鏡を見たら、そこにはきっと彼が映っている」
魔女は呟く、四時四十四分。
空気が変わる。よどんだ鉄錆の臭い。腐った水の臭い。
零崎が注視する中で、肢体はそのまま、ずぶりと沈んだ。
波紋のように波立つ鏡面が腕をひたし、肩を飲み込み、首までつかる。
彼女はもはや手を離しているのに死体はゆっくりと鏡の中へと落ちていく。
気がつけば、あれほどの雨音が消えていた。
世界にあるのは扉だけ。何もない空間に、ただ水底の闇がぽっかり口をあけている。
こんなにも異常な世界で二人だけが変わらない。
「すごいね、君はもう『合格』してるわけ……」
瞬間人識のの右手が閃いた。
「悪いな、どっかの誰かのせりふとあんまり似てたもんだから」
一筋の亀裂が世界に走る。
「殺しちまった」
砕けた。
ガラスの破片は水しぶきのように、光をばら撒き、床で弾ける。
人識が覆った目の向こうで、反射光が世界を隠し、水音が世界を満たす。
目を開ければ、全てが現実に帰還していた。
割れた窓からは雨が容赦なく降り注ぎ、床は水とガラスで一杯だ。
蛍光灯の明かりの下でそれらは無機質に光を反射し、空白の足跡がくっきりと玄関のほうへと続いていた。
時計を見れば長針は、まだ行儀よく真横を指している。
全ての異常が終わったことを知り、零崎はそれらをただ一言で締めくくる。
「ま、退屈はしなかったな」
【残り69人 】
【C-8/港町の診療所/一日目・16:45】
【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:出刃包丁/自殺志願
[道具]:デイバッグ(地図、ペットボトル2本、コンパス、パン四人分 保存食10食分、茶1000ml、眠気覚ましガム、メロンパン数個
消毒用アルコール、総合ビタミン剤、各種抗生剤、注射器等の医療器具)
包帯/砥石/小説「人間失格」(一度落として汚れた)
[思考]:電波だったなぁ、
[備考]:記憶と連れ去られた時期に疑問を持っています。
雨が止んだら港を見てまわってから湖の地下通路を見に行きます。
【C-8/港町/一日目・16:45】
【十叶詠子】
[状態]:全身ずぶぬれは一応ふき取りました、衰弱、肺炎、放っておくと命にかかわる
[装備]:魔女の短剣、
[道具]:濡れた服
[思考]:1.悠二を物語化。
2.物語を記した紙を随所に配置し、世界をさかしまの異界に。
[備考]:服は全て脱いで、診療所にあった患者用のガウンを着用しています。
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