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尚六SS「永遠の行方」その2

1名無しさん:2017/11/16(木) 20:24:16
シリアス尚六ものです。オムニバス形式。
というか「永遠の行方」本編の続き用です。

2永遠の行方「終(10)」:2017/11/18(土) 11:19:39
 鳴賢と楽俊がむせかえると、六太も風漢同様の気楽な調子で「お菓子は寒
天寄せなんだ。羊羹でできた小魚が中で泳いでて、涼しげで可愛いの」との
ほほんと言った。
「へ、へえ。そう、なんだ」
 鳴賢は冷や汗をかきながら、袋を開けた姿勢のまま硬直していた。だが受
け取ってしまったものは仕方がない。さっさと風漢と六太に始末させて証拠
を隠滅したほうが良さそうだ。そもそも蟠桃のような高級な果物は、名前は
知っていても食べたことなどなかった。第一傷みやすいので、産地以外の者
が食べる機会はそうそうないと聞く。おそらく献上元の地方から騎獣で迅速
に運ばれてきたのだろう。
 だが鳴賢が逡巡しているうちに、風漢はさっと腰を浮かせるなり長い腕を
伸ばして袋の口に手を突っこんだ。蟠桃を取り出し、ひとつずつ鳴賢と楽俊
に押しつける。ついで六太にも渡すかと思えば、座りなおして六太の体の前
に両腕を回した姿勢のまま皮をむきはじめた。鳴賢らが見るともなく見てい
ると、素手で器用に皮をつるんとむいたあと、懐から小刀を取り出して果肉
を切り取り、小片を六太の口に入れた。六太のほうも待っていたかのように、
口元に差し出されるなりぱかりと口を開けた。
 鳴賢はしばらく無言で凝視したのち、ぎこちなく首を動かして自然と楽俊
と顔を見合わせた。それから何となく手の中の蟠桃に視線を落とす。
「……柔らかいのか?」
「身はわりと固くしまってるが、皮は手で楽にむけるな。なかなか濃厚でう
まい。食え食え」
「そっか……」
 鳴賢はとりあえず相手の行動を見なかったことにして、袋を臥牀の空いた
場所に置いてから蟠桃の皮をむきはじめた。楽俊も黙ったまま同じようにむ
いている。蟠桃の甘い香りが室内に漂う中、風漢を真似て小刀で切り取って
口に入れた。確かに少し固めかもしれないが、それだけに却って旨味が凝縮
されている感じがして美味だった。
 その間、風漢は小片を切り取っては六太の口に入れるのを繰り返していた。
しかもやけに優しい声で「ほれ」「どうだ?」と声をかけたりしている。
 房間に入る際の六太は身軽だったし、別段足元も危うい様子はなかった。
だがまだ体が万全ではないのだろうかと鳴賢は戸惑った。

3名無しさん:2017/11/18(土) 21:28:01
更新ありがとうございます!ついでに青姦話もありがとうございます!ラブラブな尚隆ってほんっといいですよね〜〜…☺️

4名無しさん:2017/11/18(土) 23:15:13
青姦ごちでしたー!
更新待ってます!!

5永遠の行方「終(11)」:2017/11/19(日) 13:08:10
「その……。六太の体調は……」
「うん。もうへーき」
 六太がほわんとした笑顔で答えた。おやと思ってよくよく見れば、どこか
夢見心地というかふわふわしていて、今までになく柔和な雰囲気だった。気
づいてみれば声音すらも柔らかく優しい。こんなふうにあどけない表情でに
こにこしているのでなければ、熱でもあって頭がぼんやりしているのかと
思ったかもしれない。別に元気がないわけではないが――というより――。
 風漢は六太に蟠桃を食べさせ終わると、鳴賢が先ほど臥牀の上に置いた袋
から、今度は菓子の箱をひとつ取り出した。蝋引きした厚紙製らしい箱の上
蓋のほうを下にして持ち、そっと底面を持ちあげて箱をはずす。中にあった
のは周囲を半透明の薄紙で包まれた、箱の形そのままの寒天寄せだった。注
意深く薄紙がはがされると、六太が言ったとおり、透明な寒天の中で小指の
先ほどの小魚の群れが泳ぐさまが現われた。高度な技法で着色されているの
か、魚たちは話に聞く南国の海のように色とりどりで、想像していたより
ずっと可愛らしくも美しい情景だった。
「……匙。要るか?」
 六太にかぶりつかせようとしていた風漢に鳴賢が尋ねると、「ああ、頼む」
という答えが返ってきたので、作りつけの棚を漁って小匙を取り出して渡す。
さすがに崩れやすいのか、今度は六太が自分で匙ですくった。ただし箱の上
蓋を皿のようにして持ったままの風漢の掌の上から、だ。
「甘い〜うまい〜」
 匙を口に含んだまま、六太はにこにこしている。風漢も上機嫌で「おまえ
らも食え」と促すので、鳴賢も袋から箱を取り出して同じように寒天寄せを
出した。匙ですくって口の中に入れると、ひやりとした柔らかい触感が心地
よい。ここに持ってくる直前まで、氷室かどこかで冷やされていたのかもし
れない。
 食べながら、なんだろう、と追いつかない思考で疑問に思った。これまで
六太がこんな表情を見せたことがあったろうか。市井の普通の男児のような
悪戯小僧のにんまりした笑みではなく、おっとりと柔らかい雰囲気をまとっ
ているというだけで別人のようだ。普段はあまり六太の容貌を気にしないが、
こうして見ると華のある美しい少年であるのがよくわかった。

6名無しさん:2017/11/19(日) 17:45:00
うわ〜、ありがとう姐さん、幸せだよ!幸せだよ!!

7名無しさん:2017/11/19(日) 20:20:21
六太…六太、幸せなんだね!😭

8永遠の行方「終(12)」:2017/11/20(月) 19:45:41
 そんな六太を腕に閉じこめていろいろ食べさせている風漢の姿を見るのは、
なぜだかとても気恥ずかしかった。無心になろうとしても、何せ狭い房間の
上に目の前だ。意識からふたりの様子をはずすのは難しい。
 風漢は決して六太だけにかまっているわけではなく、楽俊に仕事の様子を
聞いたり、鳴賢に学業のことを聞いたりしてきた。それでも彼らだけの特別
な世界にいるように見えた。
「あの。遠出してきたって、どこへ?」
 ふと思い出して問うと、風漢はうなずきながら「あちこち、だな」と答え
た。
「まあ、旅行だ。二十日ばかり、こいつと羽を伸ばしてきた」
 既に六太に食べさせ終えていた風漢は、六太の腹のあたりに腕を回した状
態で手を組んでいる。まるで母親が、幼い息子を膝に乗せて抱いているよう
な。ただ、母子ならほほえましいで済むが、これは……。
 あまりにも親密で甘い雰囲気は、先日の訪問の際とはまるで違っていた。
あのときも風漢は大事そうに六太をかかえていたが、六太のほうはむしろど
ことなく居心地が悪そうな印象があった。少なくとも今のようにすっかり相
手に身を委ねている感じではなかったはずだ。幼い子供のように扱われて不
快だったのかとも漠然と思ったのだが。
「その。六太はまだ自分で座れないのか?」
「ん? ああ、これか」
 風漢は一瞬だけ視線を下に落として六太を見てから鳴賢に目を戻し、にや
りとした。
「うちの麒麟は、ちょっと目を離すとすぐどこかへ飛んでいってしまうから
な、目を離さぬことにしたのだ」
「そ、そう、か」
 もはや突っこみようもない。先ほどから楽俊が黙ったままなのは、賢明な
のか何なのか。
「酒のほうは、ちと酒精が強いがなかなかうまかったぞ」
「あ、うん」

9永遠の行方「終(13)」:2017/11/21(火) 19:40:13
 ただうなずいて、鳴賢は戸棚から今度は小杯を取り出した。酒瓶の木栓を
抜くと、とたんに芳醇な香りが立ちのぼる。酒精が強いとのことなので、人
数分の酒を少量ずつついで、風漢と六太にもそれぞれ手渡した。口をつける
と、意外にも口当たりは甘く飲みやすかったが、飲み込むとすぐに喉がカッ
と熱くなった。だが確かにうまい。
「なんか……これも高そうだけど……」
「酒など、うまいかそうでないかだろうが」
 風漢は気楽に笑い飛ばした。彼の腕の中では六太が、どこかふわふわとし
た幸せそうな雰囲気のまま、なめるようにちびちびと酒を飲んでいる。
「そ、そうだ。台輔、これ。母ちゃんからもらった饅頭です」
 楽俊が先ほどの饅頭を荷物から取り出して六太の手にひとつ持たせた。六
太はふわりと笑って「ありがと」と答えた。
「あー。俺、ちょっと厠へ……」
 鳴賢はそんなことをもごもごと言いながら、ほうほうのていで房間から逃
げ出した。いや、実際、厠へ行きたくなったのだが。
 先日のこともあり、今回の彼らの訪問が敬之たちにばれないよう注意しな
がら厠へ向かい、少し頭を冷やす。幸い、親しい友人たちには会わなかった
ので、出すものを出してすっきりしてから房間に戻ると、楽俊がちょっと恨
みがましそうな目を向けてきた。
「俺も、厠」
 六太が風漢の服の袖口を指先でつんつんと引っ張って甘えるように言うと、
風漢は「おお、そうか」と応えて臥牀から立ち上がった。まさかそのまま抱
きあげるんじゃ――と、動揺のままに思わず凝視した鳴賢だったが、六太が
普通に床に立ったので何となくほっとし、ついで手をつないで仲良く房間を
出て行く様子に、あんぐりと口を開けた。
「あ、あのさ。できれば敬之と玄度には見つからないでくれよ。こないだは、
あとで質問攻めに遭って大変だったんだから」
 あわてて風漢の背に声を投げると、風漢はちらりとこちらに目を遣って
「おう」と応えた。応えたが、大して気にしていなそうだったので、鳴賢は
がっくりと肩を落とした。

10永遠の行方「終(14)」:2017/11/22(水) 20:03:43
 ふたりが出ていって扉がぱたんと閉まるなり、鳴賢と楽俊は同時に大きく
溜息をついた。鳴賢が「なんだかなあ」とぼやく。
「なんか……。見てて、すげー恥ずかしかったんだけど。いったいどうした
んだ、あのふたり」
「さあ」楽俊も戸惑ってはいるようだったが、どこか諦めた風情で酒杯に口
をつけている。「おいら、あのかたたちに何か言っても無駄だってさんざん
学んだからなあ」
「過保護――とはちょっと違うよな。でも、さすがにまずくないか」
「何が」
「だって六太は麒麟だぞ。それも他国じゃない、この国の台輔だ。風漢は日
頃から好き勝手やってるようだし、ある程度は大目に見てもらえる官位なん
だろうけど、あんなふうに台輔をわがもののようにしているのが他人にばれ
たら、さすがに立場が悪くならないか?」
「さあ」
「というか、二十日って言ってたっけ? そもそもよくそれだけ六太を連れ
回せたものだ。それでも以前なら一日二日ならごまかせたかもしれないけど、
あんな事件が起きて、やっと解決したあとだろ。なのに半月以上、六太を連
れて遊び回るなんてさ。六官はもちろん、何より主上がお怒りにならないの
かな。だって風漢が王だってんならまだしも――」
 そこまで言って、鳴賢は何気なく口にした自身の言葉にぎくりとした。同
時に楽俊が酒にむせて小杯を膝の上に取り落とし、床に転がり落ちる前にあ
わてて拾い上げた。
 狭い房間に、しばらく沈黙が落ちた。意図せずして自分の口から飛び出し
た言葉に、鳴賢自身が呆然としていた。激しい混乱のままに楽俊の顔を見る
と、すっと目をそらされた。
「え。……え、え……?」
 動揺は激しかったが、それでいて鳴賢はいきなり目の前が晴れた気がした。
なぜなら――いちいち腑に落ちるのだ、風漢が王なのだとしたら。

11永遠の行方「終(15)」:2017/11/23(木) 08:31:25
 そういえば彼を呼ぶとき、六太はたまに別の名で呼ぼうとしてあわてて言
い換えることがあった。もしそれが単なる渾名のたぐいではなく、うっかり
本来の名かあざなで呼ぼうとしたのだとしたら。
 晏暁紅の邸で六太から聞いた、王の素行の悪さも風漢なら納得だ。王と相
思相愛だと思っていた宰輔がそうではないと知ったとき、ただの主従関係に
過ぎないと六太に言われたとき、鳴賢はどこか寂しい気がした。麒麟は「王
を慕う」生きものだと聞いているし、それが単なる敬愛にせよ、慕う相手に
ただの一臣下として扱われるのはどういう気持ちだろうと思った。
 だが確かにあのふたりなら、事件の前まではつかず離れずという感じだっ
た。かと言って仲が悪いわけでもない。互いに遠慮のない物言いは、主従と
いうより盟友のようなものだったのかもしれない。
 だが風漢はともかく、六太はそれでいいのだろうか。少なくとも麒麟に
とって、王は唯一無二の存在、生命さえもつながっている特別な相手のはず
だ。自分もそんな相手の特別になりたくはないのだろうか――。
「あ」
 大きく鳴った鼓動とともに声が漏れた。楽俊が問いかけるような目を向け
てきたが、そんな反応も気にならないほど鳴賢はさらなる動悸に襲われてい
た。六太の真の望みとはそのことだったのではと思いついたからだ。
 かつて想い人がいると告白されたとき、鳴賢は無条件で相手を女だと思っ
た。しかしよくよく思い返してみれば、六太は性別を語っていなかったはず
だ。六太の想い人について風漢に語ったあれこれは、ほとんどが六太の様子
から鳴賢が推測した内容にすぎない。
「あれも……あてはまる……。あれも、そうだ……。あれも風漢のことなら
……」
 鳴賢は何年も前の六太の言葉を必死に思い出しながら、これまでの出来事
を心の中でひとつひとつ数えあげ、無意識のうちにぶつぶつとつぶやいた。
恐ろしいことに、風漢が王で、かつ六太の想い人なら、どれもまったく矛盾
しなかった。
 同性ではあるが、庶民の間では王と麒麟の結びつきは神々のこととして不
思議には思われていないから、鳴賢としても心理的な抵抗はない。しかし実
際には風漢は女好きで、以前はよく色町で見かけられていた。どう考えても
麒麟を特別に愛していたふうではない。

12永遠の行方「終(16)」:2017/11/24(金) 08:39:21
 しかし今や風漢が六太を見る目には愛情があふれているし、何よりも先ほ
どの六太はとても幸せそうな顔をして、満ち足りたふうに優しく柔らかく
笑っていた。風漢が手ずから果物や菓子を食べさせる様子に気恥ずかしさを
覚えずにいられなかったのは、ふたりの間には誰も入れないという感じだっ
たからだ。
「だって――そうだ、だって六太の呪は解けたんだ……」
 治まらない動悸のままに、重要な事実を思い出す。思えば、大司寇からの
報せを受けたときは六太の目覚めそのものが嬉しくて、そこに至るまでの経
緯は気にならなかった。それで漠然と冬官やら他の官やらの尽力が実を結ん
だのかと思ったものだが。
 ならば。六太の願いは叶ったのだ。
「……そっか」
 どこか泣きたいような思いを感じながらも、鳴賢は自然と口元に笑みを浮
かべていた。
「ええと?」
 首を傾げた楽俊が遠慮がちに声をかけてきたが、鳴賢はただ首を振った。
今のところ憶測に過ぎないし、何より口にして良い内容かわからなかったか
ら。
 そうこうしているうちに厠からふたりが戻ってきた。鳴賢は相変わらず六
太と手をつないだまま笑顔で話している風漢を凝視したが、本当に王なのか
確信が持てず、かと言って問うわけにもいかず、逡巡を示すようにいたずら
に手を握ったり開いたりしていた。
「なんだ。どうした、鳴賢」
「あ、いや、その」
 どこかそわそわしている様子に気づいたらしい風漢に問われ、鳴賢はあわ
てて首を振った。この場にいるのが六太だけなら聞けたかもしれないが、さ
すがに当人に面と向かって尋ねる勇気はない。
 そんな鳴賢を風漢は片眉を上げて見たが、それだけだった。ついで彼は傍
らの六太の頭をいとおしそうになでながら窓の外を見やり、「そろそろ帰る
か」とつぶやいた。

13永遠の行方「終(17)」:2017/11/25(土) 10:26:50
「さすがにあんな事件があったあとで、二十日もこいつを連れ回していては
官がうるさい」
 ――いや、今さらだろ。
 これまでの調子でうっかり突っこむところだった鳴賢は、かろうじて言葉
を飲みこむことに成功した。
 風漢は閉まっていた窓を開けると指笛を吹いた。いくらも経たずに先刻の
騶虞が飛来し、窓のすぐ下にぴたりとつける。風漢はまず六太を騶虞に乗せ
てから、自分も窓から身を乗り出した。
「あの」次に会えるのはいつかわからない。鳴賢はためらいを覚えつつ、そ
れでも最後に何か聞けることはないかと考えあぐねながら口を開いた。「主
上――」
 そうして無意識にこぼれてしまった呼びかけに、自分で驚いて咄嗟に口を
押さえた。当然手遅れだった。
 風漢はいったん騎乗の動作を止めて振り向いたが、特に驚いたような顔は
しなかった。
「そういう無粋な呼びかたをせんでもらえるとありがたいんだが。おまえに
『主上』などと呼ばれると体がかゆくなる」
 鳴賢は驚愕のままに目と口を限界まで開いた。
「しゅ、主――」
「風漢でいい。何なら『しょうりゅう』でもかまわんぞ。こいつもそう呼ん
でいるしな」
 そう言って彼は手を伸ばして、ふたたび六太の頭をぐりぐりとなでた。
 鳴賢が言葉をなくして呆然としている間に、風漢は「ではな」と言ってひ
らりと騶虞にまたがり、飛び去っていった。鳴賢は彼らの姿が視界から消え
ても、その場で立ち竦んでいた。
 ずいぶん経ってから、「しょうりゅう……?」とつぶやく。しばらく空気
に徹していた傍らの楽俊が心得顔で説明した。
「ご本名を小松尚隆とおっしゃるが、名をこちらふうに『しょうりゅう』と
お呼びするほうが多い。文字は同じでもあちらとこちらじゃ読みが違うんだ
な。というか蓬莱じゃ、ひとつの文字に幾通りもの読みかたがあるんだと」

14名無しさん:2017/11/25(土) 12:13:59
のどかな一コマだなあ…ほくほく( ´ ▽ ` )

15永遠の行方「終(18)」:2017/11/26(日) 09:20:26
 鳴賢も学問の徒だから、そんな話を振られたらいつもなら興味がわいたか
もしれない。しかし今はそれどころではなかった。
「おまえ……。いつから知ってたんだ?」
「いつって……。そのう、最初からだ」
 険のある顔つきになっていたのだろう、迫られた楽俊はぺこりと頭をさげ
て「すまねえ」と言った。
「最初から、って」
 さすがに絶句した鳴賢だったが、言われてみれば六太のことも最初から麒
麟だと知っていたと、そういう出会いだったと、以前明かされたことを思い
出した。
「ああ。前にも言ったと思うけど、海客の女の子を連れてきたことで畏れ多
くも知り合いになれてな。大学を受験するときも力になってくださったんだ。
お節介というか何というか、やたら面倒見の良い方々なんだよ」
 楽俊をまじまじと見た鳴賢は、やがて、はあ、と大きく息を吐いて脱力す
ると、ようやく窓を閉めた。無造作に椅子に腰をおろし、小杯に残っていた
酒を一気にあおる。そうして少し気持ちが落ち着いてから、ふたたび窓の向
こうに視線を投げた。
 ふと鳴賢は、六太が呪にかけられる前に頼まれた言伝のうち、いまだに自
分ひとりの胸に納めている内容を思い出した。六太はあの言葉を風漢に告げ
ただろうか。
 ――もしいつか――町中で王に会うことがあったら伝えてくれ。『雁を頼
む』と。それから『おまえは雁を救った。感謝している』と。
 ――俺、ほんとはあいつと一緒にいられて楽しかったんだ……。
 言ったかもしれない、言っていないかもしれない。もしどこかで風漢とふ
たりきりで会う機会があったらさりげなく伝えてみよう。それで自分はやっ
と六太との約束をすべて果たすことができる。
 鳴賢は、こちらの様子を窺うように髭をそよがせながら床几に座っている
楽俊を見やり、口元に意地の悪い笑みを浮かべた。
「おまえ、もう秘密はないだろうな?」
「え、え?」
「どうなんだ、まだ内緒にしてることはあるのか?」
「え、いや、そう言われても……。どうだろう……」
 本気で首を傾げるさまに、鳴賢は思わず声を上げて笑ったのだった。

16書き手:2017/11/26(日) 09:25:04
これで鳴賢がらみのエピソードは全部終わりです。
ちまちま投稿して時間を稼いだにも関わらず
帷湍たちの話がまだ書きあがっていないという……。
そのため次の投下までまたしばらく間があきます。

17名無しさん:2017/11/26(日) 11:49:03
更新ありがとうございます!三官吏達の話を心待ちにしております!( ´ ▽ ` )

18名無しさん:2017/11/26(日) 13:56:21
六太の願いが叶ったと分かって泣きそうな思いになる鳴賢はやっぱいい奴ですね
第三者から見たラブラブな尚六、ごちそうさまでした(´ ∀`)
次も楽しみにお待ちしてます!

19永遠の行方「終(19)」:2017/12/13(水) 00:12:33

 六太の回復の報せを受けた光州侯帷湍が玄英宮を訪れたとき、季節は既に
秋だった。当初はもっと早い段階での上洛が予定されていたのにここまで遅
れたのは、肝心の王と宰輔がしばらく行方をくらませていたため、日程の調
整が保留になっていたからだ。
 だがそんな王の振る舞いに、少なくとも冢宰白沢と大司寇朱衡は不満を表
わさなかった。「しばらく見逃せ」と、あとから思えば予告らしきものをめ
ずらしくしていった上、その頃の王の様子がどこかおかしく、少々心配して
いたのが帰還後はすっかり調子を取り戻していたからだ。
 しかも六太との仲がやたら親密で甘やかなものになっていた。ははあ、こ
れは、とさすがに察した六官らは困惑しきりだったが、昔から王と麒麟がそ
ういう関係になるのは、どの国でもままあることだ。何百年もつかず離れず
だった主従なので意外性はあるが、関係が良好である以上は問題ないはずだ
と、すぐに気持ちを切り替えた。それにあのような深刻な事件があったあと
なのだから、王が麒麟に対して深い感情を向けるようになること自体は自然
ではあった。
 その日の夕刻、既に一般の官がほとんど退庁していた中で執務を続けてい
た朱衡は、光州侯来訪の先触れを受け、その場にいた下吏ひとりを伴っただ
けでみずから帷湍の迎えに赴いた。
 雉門で久しぶりに顔を合わせた帷湍からは、やはり以前の覇気は感じられ
なかった。引き連れていた従者ふたりも神妙な顔をしている。
「こんなところまですまんな。おまえのことだから、この時間はまだ仕事を
していたのではないか?」
 妙に気遣いを見せる帷湍に、朱衡は大仰に溜息をついてみせた。
「気分転換の散歩のようなものですから。しかし禁門使用の特権を取り上げ
られたわけでもないのに、わざわざ雉門からいらっしゃることもないでしょ
う」
「だがな……」
「主上も台輔も、あなたを咎めるおつもりはないとわかっているでしょうに」
「いや、これもけじめだ」

20永遠の行方「終(20)」:2017/12/13(水) 00:17:08
「あいかわらず頑固ですねえ」
 朱衡は肩をすくめ、それから帷湍と連れだって雲海上への道を歩きだした。
「いちおう掌客殿の房室の準備はさせましたが」
「いや、いつもどおり、おまえのところでいい。人数もさほど連れてこな
かったしな」
 うなずいた朱衡は自分の下吏に指示して、帷湍の従者たちを先に官邸に向
かわせた。それを見送った帷湍は懸念もあらわに「台輔の体調はどうなの
だ?」と尋ねてきた。
「半月以上も尚隆が下界を連れ回していたということは、もう完全に良く
なったと思って良いのか?」
 文(ふみ)で状況を報せてはいたものの、やはり六太とじかに接する機会の
ある相手から直接聞きたかったようだ。朱衡は問われるままに六太の近況を
伝え、黄医の見立てと併せて何の心配もいらないと断言した。それで帷湍は
ようやく安堵したらしく、わずかに残っていた顔のこわばりが取れた。
 王は既に本日の政務を終えて正寝に戻っているが、もちろん帷湍は正寝へ
の昇殿を許されているし、来訪したらすぐに来て良いと、あらかじめ王に許
可されてもいる。
 朱衡は路寝の手前で天官に案内を引き継ぎ、帷湍と別れて大司寇府に戻っ
た。しかし中断した執務の続きに取りかかるのではなく、残っていた官をす
べてさがらせると書類を片づけて退庁の準備を始めた。そして彼の予想通り、
半刻(一時間)もしないうちに帷湍が困惑顔で執務室を訪れた。
「いかがでした? 主上は咎めるどころか歓迎なさったのでは?」
 ひとり待っていた朱衡がとりあえず椅子と茶を勧めると、帷湍は「ああ…
…」と気もそぞろな様子で応じたあと、座りながらちらりと正寝の長楽殿の
方角を振り返るような仕草をした。だが何やら言おうとした言葉をいったん
飲みこんだらしい。腰を落ち着けて一呼吸置くと、「ところで女官がな」と、
明らかに違う事柄を口にした。
 聞けばこちらに来る途中、なかなか女官に王への取り次ぎをしてもらえず、
待ちぼうけを食らっている高官たちの姿を見かけたのだという。
「いや、そこを何とか」

21永遠の行方「終(21)」:2017/12/13(水) 20:50:00
「台輔に献上品がありましてな。範から取り寄せためずらしい――」
 少なくともある程度の場所まで昇殿資格があると思われる高官らはそう
言って粘っていたが、対する女官は「主上はただいま台輔とおくつろぎで
す」と冷たく告げ、けんもほろろの扱いで門前払いしていたらしい。それを
聞いた朱衡は微苦笑を浮かべた。
「お知らせしたと思いますが、台輔がなかなかお目覚めにならないことで宮
中が沈んでいたころ、官の中に台輔を見捨てるべきだと言っていた者たちが
いましてね。もちろん国を憂えた台輔ご自身の意向を汲んだという体(てい)
でしたが、明らかに大半は、いいかげん台輔を捨ておきたいだろうとの、主
上のお気持ちを見誤った上でのへつらいだったのです。その身勝手さにか、
当時の仁重殿の女官たちが憤りまして。
 ところがその後、景王のご助言がきっかけだったとはいえ、主上はみずか
ら台輔を長楽殿にお連れになり、今に至るまで起居をともにすることになり
ました。それで台輔を見捨てるような素振りをしていた一部の官に対して、
おもに仁重殿から正寝に移った女官たちは溜飲が下がる思いをしているらし
いのです。そのため主上にお目通りを願おうとしても、彼女らの気に障るよ
うな言動をしていた官にちくちくと嫌味を言うのを忘れないし、あなたが見
かけたように取り次ぎさえしないこともあるようです。まあ、女を本気で怒
らせると恐いということでしょう」
 こともなげに笑う朱衡に、帷湍は驚いた顔をした。
「そりゃ、まあ、気持ちはわからんでもないが。おまえがそのたぐいの勝手
を黙認するのはめずらしいな」
「もちろん重要な用件であれば冢宰や大宗伯が叱責するはずです。しかしあ
なたも見たように正式な謁見の申請ではなく、単に保身から主上や台輔にご
機嫌伺いをしようとしている官を冷たくあしらっているだけなので、しばら
くは彼女らの好きにさせていてもかまわないでしょう。おそらくはさんざん
待たせてから、やっと主上にお伺いを立てるのでしょうが、少なくとも本日
はもう遅いのでそれもない。まあ、一過性のものですから、ためこんでいた
うっぷんが晴れて女官の気が済んだら元に戻りますよ。何しろ主上も苦笑い
しておられましたので」

22永遠の行方「終(22)」:2017/12/13(水) 22:52:54
「まあ……そういうことなら」
 うなずいた帷湍は、いったん沈黙するとまた思い出したように長楽殿の方
角を見やり、先ほど飲みこんだらしい内容をようやく口にした。
「その。台輔にも会ってきたんだが。というか件の女官が言ったとおり、尚
隆と一緒にいたからな」
「はい」
「あれは……」言葉を探すように口ごもる。彼にしては、いつになく歯切れ
が悪かった。「随分、雰囲気が変わったような……。ずっと伏せっていたの
だから、当たり前といえば当たり前かもしれんが」
「たいそうお美しくおなりかと」
 しれっと口にした朱衡に、帷湍は絶句した体で目を大きく見開いた。
「もともと見目良いおかたではありましたが、ずいぶん艶っぽくなられまし
たね」
「……おい」
「先ほど申しましたように、主上は景王のご助言のままに台輔を長楽殿のご
自分の臥室にお連れになりました。以来、いまだに共寝していらっしゃいま
す」
「いや、そりゃ……。さすがにそろそろまずいんじゃないか? 当初はちゃ
んと納得できる理由はあったわけだが、今やそれがなくなったわけだし」
「王と麒麟がむつまじいのは国の安寧の印。けっこうなことではありません
か。うちは、王と麒麟を必要以上に引き離そうとする慶とは違いますよ」
 帷湍は腕組みをすると、眉根を寄せて「しかし、だなぁ」と唸った。
「こういっては何だが……。その、台輔は普段は悪童以外の何者でもないが、
しばらく伏せっていたせいなのか、元がいいぶん妙に色気が出てきたという
か……。尚隆のやつは節操がないだけに、いつ良からぬことを」
「蓬莱には、『人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死んじまえ』という
物騒な言葉があるそうですよ」
「なんだ、そりゃ」
「ですから、そういうことです。あなたも馬に蹴られたくはないでしょう」

23永遠の行方「終(23)」:2017/12/13(水) 23:49:00
 いったんぽかんとした帷湍は、しばらく目をしばたたいてから、ようやく
思い至ったらしい。愕然とした表情で「まさか」とつぶやいた。朱衡がただ
微笑していると、他に誰もいないというのににわかに声をひそめ、「……台
輔も合意の上なのか?」と尋ねてきた。
「誰がどう見ても、相思相愛だと思いますよ。実はもともと台輔は、昔から
主上をお慕いしていたようなのです」
 にっこりして答えた朱衡だが、すぐに表情を引き締めると、言葉を失った
帷湍にこう告げた。
「あれで台輔は非常にうぶなかたですからね。しかも官と異なり、仮に王の
不興を買っても遠ざけるわけにはいかない存在。その台輔を寵愛なさるとい
うことは、終(つい)の伴侶だと公言したも同然です。それでてっきり覚悟を
決めて、他に目移りしないという意味で背水の陣を布(し)かれたのかと思っ
たのですが、主上にお尋ねしたら、先のことは知らん、とこともなげに言わ
れました。単に可能性の問題として、物理的にであれ精神的にであれ、また
台輔と引き離されることもありうるわけで、そのときに台輔に手を出さな
かったことで後悔したくなかっただけだと」
 それを聞いた帷湍は頭をかかえた。
「まったく、あいつは。台輔はともかく、自分が心変わりしたら、という想
像をせんのか」
「万が一そうなったら、台輔にはつらいことになりますね。それでも台輔の
ことですから、耐えてしまわれるのかもしれませんが」
「うむ……」
 暗い表情で黙りこんだ帷湍に、朱衡はなだめるように続けた。
「ただね、今まで尚隆さまは盛んに遊びはしても本気にはなられなかったか
たですからね。やっと本気になられたのだとしたら、それはそれで良いので
はないかとも思うのです」
 はたして宮城は主君の「家」たりえているのか。それはこれまでも朱衡が
折に触れ考えてきた事柄だった。しかし愛する者とともに暮らす場所なら、
そこはもう「家」のはずだ。
「まあ……今まで、少なくとも女官に手を出したことはないようだし、後宮
にひとりの女人も入れなかったのは確かだが」

24永遠の行方「終(24)」:2017/12/14(木) 22:53:09
「問題は、距離が近くなるぶん逆に、痴話喧嘩の収拾をつけるのが大変にな
るということぐらいですか。実際、むつまじいのは確かなのですが、逆に派
手な喧嘩も頻繁になさるようになりまして。昨日などは台輔のあまりの剣幕
に、近習の女官たちがおろおろしていました。何しろこれまではあんなふう
に遠慮のない喧嘩をなさることなどありませんでしたからね。さすがに物を
投げあうようなことまではありませんが」
 昔から何かと言い合いをしてきた主従とはいえ、結局は尚隆が六太を適当
にあしらう構図だった。六太にしても不機嫌になるのがせいぜいで、一方的
に捨て台詞を吐いて立ち去るならまだしも、本当の意味で派手な言い争いに
発展したことはなかったはずだ。
「いったい何が原因だったんだ?」
「昨日の喧嘩でしたら、台輔が楽しみに取っておいた菓子の最後のひとつを、
主上が勝手に食べておしまいになったとかで」
「……おい」
「四日前のほうでしたら、朝、主上がなかなかお起きにならなかったため、
台輔が先に内殿に出かけておしまいになったのが原因です。自分を置いてい
くのかと、主上がそれはそれはお怒りで。ただしその仕返しか、その日の夕
餉は台輔を待たずに主上がさっさと召してしまわれたそうで、今度は台輔が
お怒りでした」
 さきほどとは違う意味で、帷湍は頭をかかえた。
「阿呆か、あいつらは。いったい何をやっとるんだ」
「まあ、いつも翌朝にはおふたかたともけろりとしておいでなのですから、
気にすることはありませんよ。牀榻を一緒にした甲斐があったというもので
す。そのうち他の官も慣れるでしょう」
「あのなあ……」
「そもそも一部の官の間では、これまでもひそかに『熟年夫婦』と形容され
てきたそうですよ。実際には新婚としても、まあ、大丈夫でしょう」
「夫婦って……」朱衡がこともなげに口にした言葉に、帷湍は本気で呆れた
顔になった。

25永遠の行方「終(25)」:2017/12/14(木) 23:12:05
「なんでも、互いに余計な干渉をせず、それでいていざというときは息が
ぴったりというところが、熟年夫婦のようだとか」
「それは単に、脱走するときの阿吽の呼吸のことじゃないのか?」
「そうとも言えますね」
 朱衡がくすりと笑って見せると、帷湍はようやく諦めたらしい。それでも
しばらく口の中で文句らしきものをつぶやいていたのを、朱衡が「さて、本
日の執務は終わりましたので、こちらへどうぞ」と促し、自分の官邸に招い
たのだった。

「帷湍、昨日はあまり話せなくてごめんなー。わざわざ来てくれたんだし、
ほんとは夕餉を一緒にどうかと思ったんだけど、何しろ夜は尚隆が俺にべっ
たりでさぁ」
 翌朝、ちょうど帷湍が朱衡と朝餉を終えたところに六太が朱衡の官邸を訪
れ、あらためて挨拶をしてきた。みずみずしい果物を盛った籠などを持参し
ており、帷湍へのお詫びを兼ねた礼だという。光州で留守を守っている帷湍
の妻子へのみやげも、帰還の頃に用意すると言った。
「ほら、かなり心配かけちゃったからさ。尚隆もいろいろ用意してるらしい
けど」
「ああ、すまんな。助かる」
 王や麒麟からの直々の贈りものだ。これで今回の事件で肩身が狭い思いを
した光州も息をつけるというものだ。
 昨日知った尚隆との関係のこともあり、帷湍はつい、にこにこと上機嫌な
六太の様子を窺うようにして見た。朝のすがすがしい光のせいかもしれない
が、昨夕のどこか艶めいた雰囲気はまったく感じられない。それでいて何か
が決定的に違うという気がした。
「その、聞いていいのかわからんが。おとといだか、尚隆と派手な喧嘩をし
たとか……。菓子が、どうとか」
「え? ああ、あれ」いったんきょとんとした六太は、すぐ不満そうに唇を
尖らせた。「朱衡から聞いたのか? ひでーだろ。あの栗饅頭、うまかった
のに、最後の一個を尚隆が勝手に食っちまったんだぞ。臣下の物をかすめと
るなんて、ひでー王だ。あれで俺に惚れてるなんて、ぜってー嘘」

26永遠の行方「終(26)」:2017/12/14(木) 23:30:47
 ぷりぷり怒ってみせてはいるものの、本気で憤慨しているわけではないの
は明らかだった。何しろすねている感じの口調には、甘えたような響きさえ
混じっている。それだけに、今までにないほど子供っぽく見えた。
 呆気にとられた帷湍に一方的に尚隆への文句をまくしたてた六太は、その
尚隆が待っているからと「またあとでなー」と手を振って元気良く去って
行った。「もう勝手にのろけていてくれ……」と肩を落として疲れたように
つぶやいた帷湍を、朱衡が「まあまあ」となだめた。
「大目に見てさしあげなさい。今はおふたかたとも、相愛になったばかりで
浮かれていらっしゃいますからね。そのうち自然に落ち着きますよ」
「しかし昨日おまえが言ったことはわかった。確かにあれはもう放っておく
しかなかろう」
 今までの尚隆と六太も遠慮のないやりとりをしていたが、それでいて互い
に距離を置いているところもあった。だからこそ、これほどくだらない理由
で喧嘩をするようになったというのは驚きだった。六太だけならともかく、
尚隆さえもが似たような状態だというのだから。
 朱衡はふふと笑うと、最近では六太に教わったらしく、たまに尚隆が現代
の蓬莱の歌らしきものを口ずさんだり鼻歌で歌っていることもあると明かし
た。それを六太が傍らで「似合わねー」と笑い転げているのだとか。夫婦仲
が良好で何よりだ。
「他にも以前と変わったことがありましてね。これまでですと主上は、官に
何か命じはしても、その深い意図まではほとんど明かされませんでした。し
たがって官の側で慮るしかなく、特に政(まつりごと)に絡むことですと、台
輔には何も言わないも同然だったものです。ところがどうした心境の変化か、
最近では台輔にいろいろ説明なさるようになりまして。私もたまたま耳にす
る機会が幾度かありましたが、主上の目が、一歩先どころか官より常に十歩
も先をごらんになっているのを知って驚きました」
「ほう。そりゃ……」

27名無しさん:2017/12/15(金) 12:43:46
続きが!ありがとうございますありがとうございます!!とっても仲睦まじい様子で嬉しいです!(〃ω〃)

28永遠の行方「終(27)」:2017/12/15(金) 23:28:25
「これまでは、ずいぶんあとになってこちらがなるほどと思い当たる構図ば
かりだったでしょう。しかし主上は頭の中でいつもこれほど考えておられた
のかと、今さらながらに感服いたしました。既に足元が盤石の今ですらそう
なのですから、登極当時の政情不安のころはいかほどだったのだろうと。さ
すがに台輔も、そこまで説明されればご下命の内容に不満があっても言い返
したりはなさらず、『なんでそうやっていつも説明しないんだ』と、そちら
のほうでなじっておられました」
 それに対して尚隆は、命令に一言も言い返せずにうっぷんがたまるような
ことをしたいのか、と逆に問うたらしい。命令が不条理だと感じれば、それ
はそれでうっぷんがたまると思われるのだが、尚隆は、主君が何もかもを見
渡しているとばかりに安心し、官が自分で考えることをやめてしまっては困
ると笑ったという。それに命令を受けた官の不平不満や諫言を出すままにし
ておけば、もしかしたらひとつくらいは尚隆の見落としがあるかもしれず、
その確認にもなると。
「あいつは昔から命令するだけして好き勝手やってきたからな。だがそれで
も台輔には説明するようになったのか」
 今では帷湍も尚隆の目を信じている。が、官にいちいち説明してこなかっ
た理由のひとつは、単に面倒だっただけだろうと今でもひそかに思っている
し、それが当たっていると確信してもいた。
「それだけ台輔を特別扱いなさっているということなんでしょう。いずれに
せよ今の時代、主上が直接仕切らねばならないほどの大問題はほとんどあり
ません。大半は本当に官にまかせきりですから、われわれが主上のお考えに
接する機会そのものが減っているわけで、それだけに台輔に説明しておられ
る内容はこちらも勉強になります」
「そういえば昔、尚隆には常に、明確な優先順位となすべき事柄が頭にある
とか弁護していた官はいたな。確かに今にして思えば、治世初期、特に最初
の二、三十年はそれが顕著だった。ただ往々にして俺たち凡人の想定とは異
なっていたものだから、当時はてっきりやつが怠け者なだけだと思っていた
が」
「実際はご自分の頭の中だけにある計画にそって、やるべきことはすべて
ちゃんとやっておられましたねえ」
 朱衡も遠い昔に思いを馳せるように、しみじみと言った。

29書き手:2017/12/15(金) 23:35:22
これで朱衡&帷湍の話は終わり。
次は尚隆と六太の話(シリアス)に戻り、
それでやっと完結です。

何とか年内に片付けばいいなあ……。

30名無しさん:2017/12/16(土) 00:10:32
連日の投下ありがとうございます!
夫婦喧嘩は犬も食わないと言いますが、尚六の痴話喧嘩はたいへん美味しいですねえ(*´꒳`*)
完結間近なのが楽しみやら寂しいやら…

31書き手:2017/12/16(土) 20:15:49
>尚六の痴話喧嘩はたいへん美味しい
そうなんですよ!
だから想像するだけで楽しくて楽しくて♥

32名無しさん:2017/12/17(日) 14:40:52
推しカプの痴話喧嘩いいですよね〜(〃ω〃)
もうすぐお終いだなんて楽しみ半分悲しみ半分です…こんな精密で濃厚な尚六小説を他で読めないもの…

33書き手:2019/05/11(土) 10:05:47
随分ご無沙汰してましたが、ちまちまながら投稿を再開します。
ちょうどもうお一方の連載も完結したようなので、タイミングも良いかな、と。

あとは六太視点の話で締めるつもりでしたが、
せっかくなので今のところ投稿予定のない旅の間の話からエピソードを簡単に見繕って
尚隆視点の話も入れることにしました。

34永遠の行方「終(28)」:2019/05/11(土) 10:07:56

 尚隆が六太との「新婚旅行」から無事に帰城してしばらくした頃、天官長
太宰から尚隆に内々の打診があった。いわく、後宮に入れる女性の推薦が高
官から何件も来ていると。
「なるほど。搦め手で来たか」
 尚隆は書卓の上に届けられた書面の束を一瞥したが、苦笑しただけで手に
取ることはなかった。
 六太を実質的な伴侶としたことについて、尚隆は公的な文書として布告し
たわけではない。折を見て大公に据えるつもりでいるが、今のところはあく
まで日々の態度で示しているだけだ。そのため徐々に広まった噂に、そろそ
ろ眉をひそめる者が出てきて、何とか女性に目をそらせないかと考えたのだ
ろう。法的な婚姻が男女間のみで結ばれるものであるため、一般的に同性愛
は倫理に反すると認識されているからだ。天綱で戒められてこそいないもの
の、いずれどこかに障りが出てくるのではと憂慮しているのかもしれない。
何しろ三公六官も、今回の事件の経緯に詳しいだけに過保護の延長と見たの
か、特に反対しているわけではないが、大司馬などはかなり困惑した様子を
しているくらいだ。
 尚隆の場合はさらに、六太の容姿が幼いままという理由も大きいと思われ
た。もちろん聖獣たる麒麟に対する性的な寵愛が失道を招くのではという懸
念もあるかもしれない。他国を含め、歴史上、性的な意味で美男美童を寵愛
する王の存在自体はめずらしいものではないし、男女ならば、漣のように実
質的に王と夫婦関係にある麒麟も現在いる。しかしながら公的な関係ではな
いだけに外向けの記録には残らず、その辺の事情に詳しくない者は抵抗を覚
えるのだろう。
 もっとも元は人とはいえ、神となった王はいわば超法規的な存在。国をう
まく治めているかぎり何をしようととやかく言われる筋合いはない。
 市井の民の場合は完全に宮城と隔絶されているとあって、五百年の長きに
渡って君臨する王を高貴な幻想のままに留めているから、只人とまったく異
なる存在であるとして市井の常識を当てはめようとはしない。だが宮中にい
る者、特にそれなりの官位を持つ者は比較的王と身近に接する機会がある上、
いろいろとやらかしてきた尚隆の「前科」もあって、あまり神という隔絶し
た感覚をいだいてはいないはずだ。その結果、今回玄英宮を駆けめぐってい
るらしい六太との噂に良い顔をしない者が少なからず存在するということな
のだろう。

35名無しさん:2019/05/12(日) 00:36:30
こぼれ話?を投稿してくださるのですね!?ありがとうございます!!また尚六話が読めて嬉しいです!そうですよね、尚隆普通に見た目適齢期男子ですよね。六太と夫婦同然でも誤解招きますよね…

36名無しさん:2019/05/12(日) 22:55:09
お久しぶりです、姐さん!
続きが読めて嬉しいです(*´∀`*)

37名無しさん:2019/05/12(日) 23:23:39
ああ、アップされてる…!お待ちしておりました!!
本人達視点のらぶらぶこぼれ話、めっちゃ読みたいです。まずは推薦してきた
官相手に思いっきりのろけてほしいです。尚隆の半身はろくたんしかいない!
いつまででも待ってます、姐さん!

38名無しさん:2019/05/13(月) 04:28:59
ちょーどのぞきにきたらあげたてホヤホヤに出会えて嬉しすぎる��
こういうなんとなく仲をつつかれるのも萌える
秘密の関係が一番萌えるので両片思い編も萌え萌えでしたが、楽しみ楽しみ

今年はついに公式で動き出しそうだし、わくわくしますなあ!小野主上にも永遠姐さんにも感謝して楽しみに更新まちます

39書き手:2019/05/13(月) 18:20:07
>>35-38
ありがとうございます。
随分放置してしまったので、頑張って完結させますね。

推薦した官吏の半分は「下界で女遊びが激しいと聞いたのにずっと後宮を空にしていた王が、
何を血迷ったか麒麟に手を出した! 失道の前触れか!?」と焦り、急遽女性を用意したとか何とか。

なお恥ずかしがりのろくたんと違い、尚隆は政務の途中、書類に筆を走らせながらさりげなくのろけ、
淡々とした口調と所作に普通に聞き流した六官が一瞬後に我に返り、
「……は?」と二度見することもある模様。

40永遠の行方「終(29)」:2019/05/13(月) 18:25:28
 これまで六太が自分の想いを秘めていたのは、そういう風潮のせいもある
だろうと尚隆は分析していた。そしてしばらく不安定だった六太の精神を落
ち着かせるためにも、別に恥ずべきことではないのだと、尚隆は堂々と六太
を寵愛していた。
「内容的には問題ありませんでしたので、奏上をさせていただいた次第です。
それに良い機会ですので、この際、はっきり主上のご意向を確認させていた
だこうと」
「ふむ。女を推薦することで、権力を蓄えようとしている者は?」
「むろんそういう者もおるでしょうが、当人なりに国を憂えるがためという
者もおるようで。いずれにしても調べたかぎりでは女のほうに問題はなく、
とりあえずその違いを気にすることもないでしょう」
「なるほど」
 尚隆はにやりとすると、来年早々、六太を大公に据えると告げた。新年の
祝いの中で、さらなる慶事として発表すると。
 大公はもちろん王の――正確には女王の伴侶に与えられる位だ。太宰は虚
を衝かれたように目を見張ったあとで、ひとつ溜息をついた。
「ではこれらの奏上は破棄するということでよろしいですかな?」
「のみならず、以後この手の推薦は不要であるとして徹底させろ。特に六太
の耳に入ることのないようにな。しばらく不安定だったのがやっと落ちつい
たのだ。なのに波風を立てられてはかなわん」
 王や麒麟の世話をする天官の長たる太宰は、六官の中でもっとも六太との
あれこれを把握しているはずだ。彼はやれやれと頭を振った主君に微苦笑を
もらし、「御意に」と頭を下げた。

 このように最初から堂々としている尚隆と異なり、六太自身は関係を大っ
ぴらにしたいとは思っていなかったらしい。特に「新婚旅行」に出かける前
は、顔を合わせる官によってはいたたまれないような表情をすることさえ
あった。おまけに、どうやら過去に尚隆と関係した女たちに悋気も覚えてい
るようなのだが、尚隆と同性であるために引け目に感じているという理由も
大きいのではないか。

41永遠の行方「終(30)」:2019/05/13(月) 18:33:05
 そもそも六太とこうなるまで尚隆自身は同性に興味を覚えなかっただけで、
尚隆が生きた時代の蓬莱では武士の男色はよくあることだった。それゆえも
ともと偏見は持っていない。その意味では六太よりもずっと自由だった。
 それに、と尚隆は考える。六太の性格か麒麟の特性か、ここに至っても、
自分の気持ちより相手のことを第一に考えてしまうようなのだ。民の生活に
影響する政務のことや、食べものの好みのように害のないものなら、以前と
同じように好き勝手言うようになったが、恋愛のような純粋に互いの心情に
のみ立脚する事柄についてはいまだに及び腰になるらしい。おそらく尚隆が
女を抱いたとしても、六太はそれを知っても衝撃は受けるだろうが、尚隆を
責めないのではないだろうか。だが悋気を起こさないのではない。それを責
める権利などないと、自制して内にこもってしまいそうだった。
 物わかりの良すぎる伴侶も考えものだ、と尚隆は思った。もしそれが麒麟
という生きものの性質なら、恋の成就も関係の持続も難しいだろう。恋人を
得たり関係を持続するには、時には強く出たり、相手にすがったりすること
も必要なのだから。
 だから、と尚隆は思う。六太にできないなら自分がすればいいのだと。六
太が常に笑って過ごせるように、喧嘩をしたとしても他愛のない内容で済む
ように、恋愛に関しては尚隆が心を配り、親鳥が雛を守るように、自分の翼
の下で守ってやればいいのだと。
 旅に出ていた間もそうだった。尚隆は遊びに出たいのだと思いこんでいた
六太は、尚隆がひとりで出歩くのを勧めさえした。どうも妓楼に行くはずだ
と決めてかかっていたようなのだ。
 何とかなだめて、ようやくのことで六太から本心を引き出し、その勢いの
まま舎館で一泊して睦みあった。それで一件落着と思いきや、翌日、六太の
市井の知り合いを訪ねたあと、何度か敵娼(あいかた)となった妓女およびそ
の妓楼の女将と行きあってしまった。
 荒れた国では人身売買まがいのことをして女を集める妓楼もめずらしくな
いが、雁、特に首都たる関弓ではそのようなことがないよう厳しく取り締ま
られている。そのため動機はさまざまながら、自分の意志で妓女になった者
ばかりだ。したがって妓楼内に閉じこめられるようなこともなく自由に出歩
いているのだが、何度か客になって馬鹿騒ぎをしたたため覚えられていたの
だろう、すれ違いざま、明らかに水商売とわかる美しい女に「あら? 風漢
さん?」と呼び止められたのだ。

42永遠の行方「終(31)」:2019/05/15(水) 00:03:39
 尚隆が好むような気の利いた妓女なら、外でたまたま客と行き会っても声
をかけるような無粋な真似はしない。その女もそういうたぐいだったはずだ。
だがちょうど色街に近い繁華街だったのと、六太と左手をつないでいたのだ
が、雑踏の中、反対側からすれ違ったので見えなかったらしい。
 まずい、と思ったときには、華やかな様子の女にびくりと震えた六太が、
反射的にだろう、尚隆の手から自分の手を引き抜こうとした。とっさに強く
握り込まなければ、動揺がぶり返した六太は身を翻してどこかに駆け去って
しまったに違いない。
 その様子を見ていた妓女が、ぱちりと目を瞬かせた。
「あら……ごめんなさい。お子さんとご一緒――いえ、弟さん?」
「いや。こいつは俺の伴侶だ。最近娶ったばかりでな」
「え」
 妓女と傍らの六太から同時に驚きの声が上がった。「なぜおまえも一緒に
驚く」と尚隆が六太に突っ込む傍ら、取り入るような愛想笑いを浮かべてへ
りくだる態度を見せた女将とは逆に、妓楼の売れっ子である妓女のほうは美
しい眉をひそめた。尚隆の顔をじっと見つめ、冗談を言ったのではないとわ
かったらしい。
「風漢さん。ご存じないのかもしれないけど、雁ではたとえ本人が希望して
も、未成年者が身を売ることは禁じられているの。それにその子、男の子よ
ね?」
 六太の外見が明らかに年端の行かない男児であるために、許嫁や婚姻相手
とも自由な内縁関係とも思われず、違法な男娼だと考えたらしい。それを尚
隆が身請けでもしたのだと。確かにこの状況と色好みの尚隆の返答を併せれ
ば、一番それらしい推察ではあった。
 華やかな顔立ちの女だが、尚隆に向けた視線の厳しさとは逆に、六太に対
しては本気で心配そうなまなざしをしていた。いい女だ、と内心でひとりご
ちる。
 妓女の物言いにあわてた女将が、謝罪するよう彼女を小声で叱ったが、当
人が平然としているのは売れっ子という強い立場のせいだろう。さてどうす
るかと、尚隆があいたほうの手で顎をなでていると、成り行きにぽかんとし
ている六太に、妓女が優しく話しかけた。

43名無しさん:2019/05/15(水) 03:29:27
めちゃ素敵な妓女さん!風漢わかるよーw

44永遠の行方「終(32)」:2019/05/15(水) 21:19:24
「ねえ、ぼうや。もしかして親御さんに借金があったり誘拐されたとかで売
られたりしたの? それなら府第に届け出ればちゃんと保護してもらえるわ」
「え。え?」
 六太はあわてたように、妓女と尚隆を交互に見上げた。その有様は傍目に
は、下手なことを言えば傍らの男からあとで折檻されると懸念している哀れ
な子供に見えたかもしれない。
「心配しないで。事情があればちゃんと聞いてもらえるから」
「ち、違――」
 わたわたと首を振る六太。尚隆は妓女に向けて、すぐそばにある甘味処に
顎をしゃくった。
「こんな往来で立ち話も何だ。あそこで茶でもどうだ」
 そう言って、六太の右手をしっかり握ったまま、さっさと歩き出す。
 そうして四人で店内の席に腰を落ち着けて甘味を注文してから、「ちと用
を足してくる」と言って自分だけ店の外に出た。ここは尚隆が席を外した上
で、「被害者」である六太自身に自由に語らせるのが一番だ。妓女は逃げる
のかと責めるように強い目を向けてきたが、六太を保護するのを優先させた
いだろう彼女は引き留めなかった。
 しばらくぶらぶらして適当に時間をつぶしてから店に戻る。あらためて隣
の席に着いた尚隆を見た六太はほっとした様子だったが、いったいどのよう
に説明されたのか、妓女のほうは何とも複雑そうな表情を向けてきた。
 尚隆の席には白玉の入った小ぶりの漆器が置かれており、六太の目の前の
器は既に空だった。「これも食うか?」と六太に問えばうなずかれたので、
甲斐甲斐しく互いの器を入れ替えてやる。向かいに座っている妓女と女将の
前にも甘味の小皿と茶が置かれていたが、こちらは手をつけられていなかっ
た。
「あの。俺が官吏の家族枠で仙籍に入ってて、年齢的にはとっくに成人して、
たぶんこの姐ちゃんより年上で、しょ――おまえとほとんど歳が変わらな
いってことは言ったから。それと……あの、おまえとは普通に、こ、ここ、
こ、恋人同士、だって」
 耳まで赤くして目を泳がせてはいたが、六太ははっきり言い切った。その
様子を見守っていた妓女が、ひとつ吐息をもらしたあとで、尚隆に向けて丁
寧に頭を下げた。

45書き手:2019/05/15(水) 21:22:17
ろくたん、鶏になるの巻

>>43
件の妓楼ではこの後尚隆の性的嗜好に関する噂が広まりそうw
わきまえているこの妓女はしっかり口をつぐむけど、
女将のほうが陰では口が軽そうなので。


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