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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第十章

264embers ◆5WH73DXszU:2024/08/02(金) 02:30:17
【ディスカース(Ⅲ)】

「ええと、なんだったっけな……そうだ。はだしのゲンだ。小学校の図書館で読んだ事ないか?
 なくても空襲とか無差別爆撃って言葉は知ってるよな?なんでそんな事すると思う?
 あの時代から――多分現代までずっと、この世界の戦争は国中で兵士を集めて、武器を作って、飯を掻き集めてするようになったから……らしい」

いわゆる国家総力戦――もっともこれはフィクションから聞きかじった程度の知識。
ジョンの前でこんな事を語るのは釈迦に説法だ。
いまいち決まりが悪い気分を振り切ってエンバースは続ける。

「要するに――全世界配信を通してバフをブーストするって事は、全世界が攻撃対象に選ばれる可能性を作るって事だ。
 全世界配信そのものを隠す事はかなり難しいし、配信とバフの強度の連動性も……ずっとは隠し通せないだろう」

全世界への攻撃――それが出来ない理由は、されない理由はない。
実際ローウェルは既に一度、ウィズリィ/みのりの援護をハッキング紛いの干渉で跳ね除けている。
今までも散々思い知ってきた事だが――ローウェルは手段を選ばない。

「一番良くないのは……俺達がバフ目当ての配信を始めた時点で、全世界への攻撃に合理性が生まれる事だ。
 配信される側に拒否権はない。どうせ世界が滅びればみんな死ぬんだから拒否権なんていらない。
 ――と言っちまえばそこまでだけどさ。そういう問題じゃないよな?」

それにローウェルとイクリプスが国際法を守ってくれる事も期待出来ない。
つまり銃後への攻撃には「効率的だが人道に反する」やり方がまかり通るという事。
例えば原子力発電所を不完全に破壊/侵食するとか、そうしたやり方が。

「それに――数の問題が結局解決してない。明神さんの煽りがクリティカルしたとしても……
 あのブレモン運営の新作だ。プレイヤーが減るにしたって限度がある。
 仮に超高出力のバフとお前の腹案がバチバチにハマったとしても、一人頭何人倒す計算なんだ?」

戦国無双じゃないんだぞ――冗談っぽく肩を竦めるエンバース。

「仮にニヴルヘイムの連中や――ヤツらと同じ要領でアルフヘイムの連合軍を引っ張ってきたとしても、かなり分が悪い戦いだ。
 元々「個」のスペックではイクリプスが圧倒的に上だ……その上どっかの誰かが、余計な事もしちまったし」

エンバース=やや気まずそうな素振り/しかし言葉は止めない。

「……それに単純な戦力差も問題だが、それだけじゃない。
 ゲーム攻略において数は正義だ。ヤツらはあらゆる攻略法を想定してくるだろう。
 とりわけ『安全地帯を失った民間人を攻撃してメンタルを揺さぶる』なんて陳腐な手はすぐに誰かが思いつく」

ゲームには役割分担がある。全てのプレイヤーが楽しい楽しいアタッカーを務める事は出来ない。
敵にボコボコにされるのが役割のタンクがいて、攻撃を避けられないアホを助ける為のヒーラーがいる。
そして――そうした役割が性に合っていて、好んで務めるプレイヤーもいる。イクリプス達だってそうだろう。

「俺がイクリプスならまずライブ会場を見つけ出して叩く。ここでやってくれるなら手間が省けるな。
 全世界配信に流血一つ死体一つでも映せばブレイブへの精神攻撃とバフの妨害が両立する。
 やれば出来る。それに効率的だ。ゲームの攻略ってのは、そういうものだろ」

エンバースはそこまで語ると項垂れる/右手を額に当てる。

「――最後の戦いが始まれば、俺達は全人類を置き去りにして戦場に向かう。
 逃げる事も、身を守る事も、戦う事も出来ないヤツらを。
 それを……そのままにしていくのは『いいこと』か?」

黒煙混じりの深い吐息。


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