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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第九章
608
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2024/01/30(火) 13:15:21
「僕がやったことに関しても、弁解するつもりなんてないさ。
僕がニヴルヘイムの軍勢を地球へ連れてきた結果、たくさんの人が死んだ。魔物も。
それが僕の罪で、償わなければならないというのなら受け入れようとも。ただ――
そんな時間はないと思うけど」
ミハエルは淡々と告げる。デュエルに敗れたことで自棄になっている訳でも、開き直っている訳でもない。
ただ――何か、此方の知らない決定的なことを知っている。そんなふうだ。
「君たちの質問に答えられる者がいるとしたら、それは……このワールド・マーケット・センターの外にいる。
此処に来るときには見えなかったかい? まぁ、僕との闘いで頭がいっぱいだったというのなら無理もないか。
でも、今なら君たちにも見えるはずさ……行って確かめてくるといい。
僕は……もう二度と見たくない」
ミハエルはそう言うと、思い出すのもいやだというように自らの身体をぎゅっと両腕で強く抱き締めた。
ブレモン絶対王者の金獅子を以てして『二度と見たくない』と言わしめる存在。
それは、いったい何か?
なゆたはミハエルの様子にただならぬ不安を感じたが、意を決して抱いていたポヨリンを足許に下ろし、拳を握り込むと、
「……みんな、行こう」
と切り出した。
マーケット・センターの外にいる者が何者であるにせよ、それがこの世界を崩壊へ導くローウェルに与する者だというのなら、
知らないふりをすることはできない。
リューグークランとの闘いでスペルカードは使い切っているし、体力だって減っている。
疲労はまるで回復しておらず、休息が必要なのは間違いない。
しかし、休んでいる暇はないのだ。今こうしている間にも、ニヴルヘイムの軍勢と地球の軍隊が戦闘をしているのだろう。
これ以上犠牲者を増やさないためにも、先へ進まなければ――。
そうしてミハエルを会場に残し、ワールド・マーケット・センターを出ようとエントランスホールまで戻ると――
「……ア……、アルフヘイムの『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』……」
低く呻く声が聞こえる。
なゆたたちがミハエルとの決戦にマーケット・センターへ突入する際、仲間たちと米軍との戦闘を止めるべく、
別行動したはずのイブリースが、広大なエントランスの中央で片膝をつき肩で荒い息を繰り返していた。
イブリースの全身は血まみれだった。暗黒魔城ダークマターでの『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』との闘いの後、
傷ついた肉体を回復させ全快したはずのイブリースであったが、再度瀕死の重傷を負っている。
鎧は各所が砕け、屈強な肉体の各所には穴が開き、二対の巨翼は襤褸と化して、負傷していない場所はひとつとしてない。
生きているのが不思議といった有様で、イブリースはなゆたたちを見た。
「イブリース!?」
なゆたは思わず駆け寄った。
兇魔将軍イブリースはニヴルヘイム最高戦力・三魔将のひとり。
いくら地球の軍隊の兵器が強力だったとしても、そうそう簡単にこれほどまでの重傷を負うとは考えづらい。
イブリースの前では、同じく血まみれになったエカテリーナとアシュトラーセが気を失って倒れている。
ふたりとも生きてはいるものの、見るも無残な酷い怪我を負っている。大賢者の弟子たる十二階梯の継承者、
傑出した実力を持つふたりがこうまで傷つくなど、俄かには考えづらい。
外で繰り広げられているニヴルヘイムと米軍の戦闘は、三魔将と継承者の介入さえ撥ね退けるほど熾烈だというのだろうか?
エンデが素早く姉弟子たちに回復の魔法を施す。息も絶え絶えといった様子でイブリースはなゆたたちを見回すと、
「……“あれ”は……。
“あれ”は、一体なんだ……?」
と、腹の底から憤怒を搾り出すように言った。
「“あれ”……?」
なゆたには、イブリースが何を言っているのか分からない。エンバースや明神たちにも分からないだろう。
しかし。
「最初は、我が同胞たちとミズガルズの者たちが戦闘をしているものと思っていた……。
ミハエル・シュヴァルツァーの連れてきた、ミズガルズを侵略しようとするニヴルヘイムの同胞たちと、
それを阻止せんとするミズガルズの者たち……。その両者が相争うのを止めようとしたのだ……。
だが……そうでは、なかった……」
そこまで言うと、イブリースは大量に吐血した。
「……ニヴルヘイムと……ミズガルズの戦争では、なかった……。
我が……同胞たちを、蹂躙し……ミズガルズの者たちを……殺戮、する……。
“あれ”は……いったい、なんな……の、だ……」
ぐらりと巨躯を傾がせると、イブリースは力尽きたようにずずぅん……と音を立てて倒れた。
なゆたは思わず息を呑む。――信じられない光景だった。
あのイブリースが、アルフヘイムの『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』全員が総力を結集させ、
やっとの思いで退けたほどの強敵だった兇魔将軍が、目の前で血まみれになって昏倒している。
それに、イブリースの残した“あれ”という言葉。
ミハエルが二度と見たくないと言った何者かと、其れは同一の存在なのだろうか?
不吉な予感に胸が締め付けられる。身が竦む。
けれど――立ち止まってはいられない。
「レッツ・ブレイブ……!」
己を鼓舞するように呟くと、なゆたはエントランスホールの出口を潜った。
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