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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第八章

363embers ◆5WH73DXszU:2022/09/22(木) 08:19:56
【セーブ・ロード(Ⅵ)】

『カザハ、とりあえず話は後です! エンデ君! 時間が無いとは!?
 もしここが崩壊するとかだったら勿体ぶってないで早く教えてくださいよ!?』

「もう少しボリューム下げてくれ。そのバカでかい声が地盤にトドメを刺しかねない」

『エンデ!……説明。』

「それもいいけど、とりあえず出口を探さないか?オデットは……ガザーヴァ、お前が運べよ。
 ガーゴイルがいるだろ。乗せてやってくれ。嫌なら別にいいけど……俺もジョンも疲れ果ててる。
 断るなら、あのバカでかいおっぱいを王冠代わりに頭に乗せる名誉は――明神さんのものって事になる」

『地上に戻ろう』

「一応、隊列だけはしっかりしとこうぜ。ジョン、先頭と殿、どっちがいい?」

『ウィズリィちゃんにも『悪魔の種子』が付いてた。操られてたってことだ。
 こいつはかなりのっぴきならねえ。ローウェルは俺たちの人間関係を全部抑えてる。
 俺たちがこれまでの旅で関わってきた全員が危ない――』

「……けど、それにしてはやり方が手ぬるい」

『アコライトのオタク殿たち。マホたん。ポラーレやガンダラのマスター。
 それに……リバティウムのしめじちゃん。あの子が支配されたら……俺は多分、戦えない。
 クソジジイが次の手駒を思いつく前に、クソみてえなこの玩具を取り上げなくちゃならねえ』

「人質にすべき対象が分かっているなら、必ずしも悪魔の種子に頼る必要はない。
 ロスタラガムのアホでも差し向けて、ビデオレターでも作ればいい。
 とは言え勿論、楽観視していいような事でもないけど――」

ふと、明神が一歩、なゆたへ歩み寄る。

「……明神さん?」

『こんな時に言うことじゃないって分かってる。でも、はっきりさせておきたい。
 ……お前のことは、なゆたちゃんとシャーロット、どっちで呼べば良い』

真に迫る声音――エンバースが思わず溜息を零す。
はっきりさせるべきだとは分かっている――だが気が進まない。
エンバースにとって、この議題は他人事ではない――つまり、自己の同一性とは何か。

ハイバラはもう死んでいて、この時間軸には別のハイバラがいる。
遺灰の男とエンバースの記憶、より長い時間を帯びているのは当然、後者だ。
けれども――そのエンバースの記憶も、ハイバラだった頃の記憶に比べればずっと短い。

ならばエンバースはハイバラではないのか/遺灰の男はエンバースではないのか。
ハイバラとしての経験を最も長い記憶として保持するアンデッドは、何者なのか。

エンバース自身、それを論理的に言語化する事は出来ない――出来るのは、開き直る事だ。
いつも自分をその名で呼ぶ少女がいるから――いてくれたから自分はエンバースなのだと。

なゆたが与えてくれていたのだ――己を誰と言い切る事も出来ない亡霊に、自分をエンバースと認める道を。


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