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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第六章

370embers ◆5WH73DXszU:2020/11/17(火) 00:44:11
【フラグメンタル・ライフ(Ⅴ)】

《ちょ、お師さん? 何ですのん?》
《予定変更! ジョン君の呪いは解けたんだろう? なら、エーデルグーテは一旦後回しだ! 
 君たちにはそのまま、風渡る始原の草原へ行ってもらいたい!》

「……なんだと?」

エーデルグーテは後回し――遺灰の男にとっては、願ってもない方針転換。

《ああッ、まったく! あいつめ、あれほどもう少し待ってくれってお願いしたのに!
 私は兄弟子だよ!? それが『元』であってもだ! 普通、もうちょっとこう……敬ってくれたっていいだろう!》

「……お前の尊厳なんてどうでもいい。それより――」

《お師さん、落ち着いとくれやす。そない言わはっても、うちらちんぷんかんぷんえ?
 エーデルグーテに行ってもらう手筈やったのに、突然風渡る始原の草原とか――…あっ!!》

「なあ。みのりさん、あんたまで一人合点してどうする」

《お師さん、まさか……!》

《そうだよ。オデットの他に、もうひとり。こちらの味方につけようとしていた『彼』が動き出してしまった。
 止めなければ……取り返しのつかないことになる!》

「……そっちで話がまとまってから、もう一度そのツラを見せるようにしてくれると非常に助かるんだが」

《失敬、取り乱してしまった。
 実は私とみのり君は来たるべきニヴルヘイムとの決戦のため、各国各勢力に同盟を持ちかけていてね。
 オデットに会いにエーデルグーテまで、というのもその一環だったんだが……。

要領を得なかった会話がようやく進む/次なる障害の名が明らかになる。
『覇道の』グランダイト――覇王を自称する十二階梯屈指の武闘派/過激派。

《十二階梯の継承者は一枚岩じゃない。アラミガといいオデットといい、中立を貫いている者もいる。
 グランダイトもそのひとりだ。彼は自分の欲望に忠実だからね……彼の望むものを与えれば、必ず手を貸してくれる。
 そう踏んでいたんだが……》

「お前、いい加減自分の目を疑うって事を覚えた方がいいと思うぜ。
 その魔法の得意な節穴が魔法以外で役に立った事ってあるのか?」

『シルヴェストルとグランダイトの軍が激突して、両方が損耗しないように。
 グランダイトの侵攻を止めるのが、次のクエスト……ね。
 その上で、あわよくばわたしたち『異邦の魔物使い(ブレイブ)』が両方と同盟を締結できれば、って感じ?』

「……バロールの尻拭いをさせられるのは不満だが、それを除けば俺に異論はない。
 マル様もアラミガも、その実力は、ゲーム内のそれよりも遥かに洗練されていた。
 奴らを自由に動き回らせると、厄介だ。グランダイトはきっといい抑止力になる」

遺灰の発言=あくまでも合理的な判断に基づいて――内心、胸を撫で下ろす。

『……分かった。じゃあ、進路を風渡る始原の草原へ。
 みんな、いい? 次のクエストは『覇道の』グランダイトとひと勝負よ!
 レッツ・ブレーイブッ!!』

「……レッツ・ブレイブ」

拳を静かに掲げる/微かに呟く――エンバースならば確実に拒んでいた振る舞い。
遺灰の動機=オリジナルへの反抗心/己の人生を持たぬ故の稚拙で機械的な模倣。
試しに取ってみたその動作は――どうにも場違いに思えて、しっくり来なかった。

それが遺灰の男にはひどく孤独に感じられた。


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