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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第三章

258明神 ◆9EasXbvg42:2019/03/10(日) 19:28:09
「ロクな奴じゃなかったよ。ガサツで、傲慢ちきで、気に入らないことがあるとすぐ殴る。
 おれはあいつの腰巾着だったから、バルゴスを見る路地裏の奴らの目をよく知ってる。
 用心棒なんて気取っちゃいたがよ、おれたちゃ鼻つまみ者だったのさ」

注いだワインの残りを、ゴロツキは自分で呷った。

「だけど……それでも、俺たちの仲間だった。
 喧嘩にめっぽう強いあいつのおかげで、おれたちは他のチンピラに虐げられずに済んだ。
 曲りなりにもこの街を守ってた奴の最後にしちゃ、あんまりだよ」

バルゴスを喰い殺したのはバフォメットであり、それを使役するライフエイクだ。
だけど、奴がバフォメットと対峙する理由を作ったのは、俺だった。
俺があいつをこの件に巻き込まなけりゃ、バルゴスは死なずに済んだだろう。
言い訳のしようもなく、バルゴスが死んだのは俺のせいでもあった。

「……俺を恨んでるか?」

益体もない問いだ。ゴロツキが俺を恨んだところで、俺にはどうすることもできない。
しめじちゃんのようにアンデッド化すれば蘇生のメもあったが、バルゴスはそうじゃない。
あいつの死体は多分、バフォメットと一緒に消滅してる。
ゴロツキは、俺の目を見ることなく答えた。

「恨んでねえって言ったらあんたは心晴れやかにこの街を出ていけるのか?
 だったらはっきり言ってやるよ。――恨んでねえわけねえだろ。
 俺にとっちゃライフエイクもあんたも、同じだ。あんたらがバルゴスを死なせた」

「……そうだな」

悪い奴をやっつければ全部解決なんてのは、それこそゲームの中だけの話だ。
悪い奴が殺した人間は生き返らないし、壊した街は長い時間をかけて直さなきゃならない。
現実は、描写を省略してなどくれない。失った哀しみも痛みも、間違いなくそこにある。

吐き気がする。
誰かの死を間近で見たのも、それが自分の責任になるのも初めてだ。
どこかで俺は、『殺したのはライフエイクだから俺は悪くない』っていう、言質が欲しかったのかもしれない。

何の保証にもならない、吹けば飛ぶような"気の持ちよう"。
二度と会うこともない路地裏のゴロツキ共に、俺は何を押し付けようとしてんだ。
我ながら反吐の出る自己保身だ。

「気に食わねえな。何しおらしくしてんだ?」

ゴロツキは振り向いて、ワインの残りを俺に差し出した。

「おれたちは傭兵だ。金をもらって殺し合う、そういう仕事だ。
 バルゴスはあんたに雇われて、戦って、死んだ。珍しくもねえことだろうが。
 くだらねぇ哀れみを持ち込んで、これ以上バルゴスの誇りを穢すんじゃねえ」

「だったら!」

俺はたまらず反駁した。

「だったらどうすりゃいい。人を死なせるのは初めてなんだ。
 俺は前に進みたい。でも、バルゴスのことを忘れたくはない。
 あいつの死を忘れて、また誰かを死なせるのは、二度と御免だ」

ゴロツキは鼻で笑う。

「はっ、結局は自分が気持ちよく過ごす為かよ。良い人ぶってんじゃねえぞ。
 傭兵に弔いの作法なんてねぇよ。今てめえがそうしたように、酒でも供えて手を合わせりゃ良い。
 それで終いだ。済んだらとっとと回れ右して二度とそのツラ見せんな」

ゴロツキはそれだけ言うと、近くの木箱にどかりを腰を下ろした。
ここから先へ立ち入るなと、そう言外に示すのは……路地裏の門番だったバルゴスの遺志なのかもしれない。


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