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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第三章

257明神 ◆9EasXbvg42:2019/03/10(日) 19:27:28
 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

前代未聞の大災害に見舞われ、死者こそ出なかったものの甚大な被害を負ったリバティウム。
ようやく復興が始まった街の中を、俺はしめじちゃんと連れ立って歩いていた。

「交易所も半壊かぁ。また遊べるようになるまでしばらくかかりそうだな」

ひび割れた石畳を張り替える石工たちが、移動屋台を呼び止めて昼餉を購入する。
俺たちもその行列に並んで、ワイルドボアの串揚げを買った。

「やっぱ脂の味しかしねぇなこれ。ちゃんとしたトンカツが食いてぇよぉ」

世界を救ったあと、俺はアルフヘイムに永住するつもりだ。
現実世界で仕事に追われながら細々と暮らすより、きっとこっちの方が面白おかしく生きられる。
だけど一つだけ悩みがある。俺は現実世界の、飯だけは好きだった。
なゆたちゃん達と別れたら、もう和食を食う機会はなくなると思うと、哀しみが心を覆い尽くした。

「さて、腹ごしらえも済んだことだし……そろそろ行こうぜしめじちゃん」

なゆたちゃん謹製の昼食を一食分断ってまで俺たちが街に出たのは、何も復興状況を眺めるためじゃない。
乗り心地の最悪な馬車を乗り継いで向かった先は、カジノ『失楽園』跡地。
その近くにある、路地裏だ。

そこには、しめじちゃんの背丈くらいある大剣が石畳に突き刺さっていた。
大剣の柄には、傭兵ギルドが構成員に支給する鎖付きのタグが引っ掛けてある。
タグは身分証と本人確認の役割を兼ねたものだ。例え死体が原型を留めていなくても、誰の死体か分かるように。
つまりこの剣は、傭兵の墓標だ。

――バルゴス。
カジノへ潜入する際に俺が懐柔し、そのまま行方知れずになったライフエイク子飼いの傭兵。
あれから傭兵ギルドがカジノの瓦礫の中から、血まみれの大剣と鎧、それからバルゴスのタグを掘り出した。

傭兵の姿が消えて、装備とタグだけがその場に残されている。
小学生だってその因果関係は簡単に結び付けられるだろう。
バルゴスは、バフォメットに食い殺されたのだ。

食ったのが二匹いるバフォメットのうちどっちだったかは、今はもう知ることはできない。
いずれにせよ、エカテリーナと真ちゃんたちが既に仇を討っている。
だから、俺たちが今からするのは弔い合戦でもなんでもなく……ただの墓参りだ。

墓には先客がいた。
名前は知らずとも顔は覚えてる。バルゴスと一緒に俺たちを尾行してたゴロツキ共だ。
ゴロツキは俺たちの姿を認めて一瞬身をこわばらせたが、すぐに緊張を解いた。

「薄情な連中だよ。この路地裏をシメてたのはバルゴスなのに、誰も手を合わせに来やがらねぇ」

ゴロツキは墓を見下ろして、寂しそうに呟いた。

「あいつ嫌われてそうだったもんな」

「ちげぇねえ」

俺は持参したワインを放る。ライフエイクのオフィスからくすねた高級品だ。
ゴロツキは苦笑しながらそれを受け取ると、栓を切ってバルゴスの墓に注いだ。


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