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優良の探偵物語

1優良の探偵物語1:2017/09/18(月) 15:36:19
 ある初夏の昼下がり。
 小野田優良は繁華街の雑踏を硬い表情で歩いていた。
 表情は曇っていても、端正な美貌と抜群のプロポーションにすれ違う男たちは次々に賛辞と羨望の視線を投げ掛けてくる。
 でも今は、そんな視線が心底煩わしくて、足早に人混みを掻き分けていく。
 やがて優良は、繁華街の一角にある古ぼけた雑居ビルの前に到達する。
 ここの三階にある「丸岡探偵事務所」が優良の目的地であった。
 しかし、いざビルの前に立った途端、優良の心に再び迷いが芽生えはじめていく。
 (やっぱり、真さんと話し合ったほうがいいのかしら・・・それに興信所を使って調べて、もし私の勘違いだったら・・・でも、このままにはしておけないし・・・)
 数分ほど悩んだだろうか。
 やがて、優良は意を決すると硬い表情のままビルの中へと入っていった。 


 話は一週間ほど前に遡る。
 その日、真は深夜になってようやく帰宅してきた。
 しかも、一人では歩けないほどベロベロに酔い潰れていたのである。
 玄関で大の字になって寝てしまった夫をなんとかリビングまで運び、鞄を取りに戻ったところで今回の事件の幕が開いた。
 鞄に無造作に詰め込まれていたネクタイを片付けようと引っ張り出した瞬間、数枚のカードが床に散らばったのだ。
 それらをを拾い集めつつ何気なくカードを見た途端、優良の端正な美貌は瞬く間に硬く強張りはじめた。
 同時に手足も震えはじめ、せっかく拾ったカードが再び床に散らばっていった。
 (嘘、こんなの嘘よ・・・)
 真の鞄から出てきたカードはCMでもお馴染みの消費者金融のカードであった。
 それも一枚、二枚ではない。
 出てきたカードは全部で六枚あり、その全てが会社こそ違えど全部サラ金のものであった。
 真が多重債務者?
 優良には到底信じられなかった。
 自分が専業主婦でいられるのも真の稼ぎがいいからである。
 夫は酒は弱いし、タバコもギャンブルもやらないし、他の女の影も見当たらない。
 金遣いが荒いわけではない真と消費者金融が、どうしても優良の中で結びつかないのだ。
 結局、誰かの落とし物を拾ったのではないか、と強引に結論を下した優良は、カードを鞄に戻し何も見なかったことにしたのであった。


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