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10
:
名無しさん
:2015/08/29(土) 03:11:15 ID:9RS1rY/60
>>9
馬は倒れたが、少女は直前に脱出していたようだ。あわよくば倒れた馬に巻き込ませて足を潰そうと思ったが、なかなかに戦い慣れているらしいことを察する。
しかしそれは彼も同じことだ。二発の銃弾は、馬を斬ると共にその場から離脱して回避。残る5発の銃弾は、鎌と鎚を交差させて防ぎきる。聖遺物でなければ破壊される心配はない。
彼はその防御で自然と象られたソビエトの紋章を解き、顕となった少女の右手を睨んだ。
「鉤十字(スヴァスティカ)……ファシストの証を彫るか、反動者め」
スウェーデンやナチス・ドイツの紋章。最終的に勝ちはしたが、大いに苦しめられ、また多くの同志を失った憎むべき標に、彼は自然と忌々しそうに凄んだ。
ソヴィエトにとっては悪運の証。彼は忌々しいとばかりに、すかさず少女に飛びつき、右手を切断してやろうとしたが……
展開されたもうひとつの世界に押しのけられるように、彼は吹き飛ばされた。
「ぬうっ!?」
突然の環境の変化に、彼は腕で顔を覆う。そして再び目を開けた時。
そこには白銀の、そして確かに覚えのある世界が広がっていた。
彼はジャミングされた視界を見回し、全方位に注意を払いながら、ピリピリとした感覚に駆られていた。
「ああ━━━━━━感じるぞ、4000人の同志たちの勇気が……恐怖が、怒りが!」
「ここが戦場だ、白い死神(ベーラヤ・スメルチ)!我らは今、怒りに燃えているぞ!」
彼は頭へ飛んできた銃弾に対し、首を曲げて避ける。肩をかすめて、一筋の血が流れ出る。
どこに居るのかわからなければ……彼は聖遺物を赤熱させ、空へと上げて交差する。
そして二つの聖遺物は、ひとつの紋章となり……彼はそれを掲げたまま、声高らかに宣言する。
「格差は資本の下に!平等は社会の下に!」
「我らはソヴィエトの旗の下に!手を取り合って立ち上がれ!すべての場所で讃え歌うのだ!」
「首都よ!ウォッカよ!革命の灯火よ!」
「赤き祝祭(クラースナヤ)!!」
頭上に作られたソヴィエトの紋章が、突如赤い光を帯びる。
次の瞬間、ひとつの聖遺物は……鮮烈なまでの炎の波を、あらゆる方向へと広がらせた。
それは雪を溶かし、吹雪を燃やす。進むほどにその炎は弱まるが、少女をあぶり出すには十分だろうか。
11
:
アウラ・Y・ミューリライネン
:2015/08/29(土) 23:24:38 ID:joo1aeEE0
>>10
幸運の証、ハカリスティ―――――――――――― それが、アウラ・ミューリライネンに勇気を与えていた。
例え目の前の敵が圧倒的な存在であろうとも。ソビエト人民そのものであろうとも。その右手に宿る英雄達の力が、アウラに戦う力をくれていた。
「くぅ、うぅッ!!!!」
吹き荒れる熱が、白銀の世界を溶かしていく。真白の雪を溶かしていく。平等を謳い、燃やし尽くそうとしていく。
鎌と槌とを重ね合わせた、紅く燃え盛るかのような旗。七十年前、自分が産まれてすらいない祖国が戦った国と同じ。
けれども、アウラ・Y・ミューリライネンの右手に宿る英雄たちは、全員がそれらに勇敢にたたかった者達だ。赤色の旗に、幸運の鉤十字を掲げて立ち向かった者達だ。
ならば、ここで自分が負ける訳にはいかない。アウラはそう思っている。だから全力で―――――――――――― 走った。
モシン・ナガンを握り締め、溶けようとする雪の向こう側へと駆けていった。聖遺物は焦りを齎す事は無かった。ただ、その心が逸脱するのを留めていた。
―――――――――――― 自分なら、出来る。過剰な自信でも何でもなく、これは、自分の明確な意思として。
「何が共産主義よ。結局のところ、上の方が美味い汁啜ってただけで、下の人達は貧しいままだったじゃない」
「少なくとも、アンタ達の手の中に!! 本当の平等なんか有るわけないのよ!!!」
モシン・ナガンの引き金を引いた。彼の左側頭部を狙って銃弾が飛んでいく。
この殺戮の丘で戦った、白い死神の加護がアウラ・ミューリライネンにはあった。それはこの吹雪の中、視界を遮るそれらを物ともせずに、雪を砕きながら飛んでいき。
そして、それを投げ捨てた。もっともっと、決定打が必要だ。この雪の中でなら―――――――――――― 英雄達が、その力を貸してくれる。
何も恐れる事など無い。戦争に負けたとしても、結局のところソビエトは滅んで、スオミは生き残った。それが事実だから―――――― 何も、恐れることは。
「何が平等よ、何が社会よ! アンタ達のそれは平坦にしようとしてるだけじゃないッ!!」
「そんな事でこの世界が続くかぁッ!!! 一回失敗してんでしょ!! それで納得しなさいよ!! この――――――――――――ッッ」
そして、駆け抜けた。今度は前に前に、明確な敵へと向けて。サーベルを鞘から引き抜いて白刃を晒した。
形振り構わず走り抜けた。もうこれ以上、何がどうなろうと知った事では無い―――――――――――― 例え全てを焼き尽くす焔にだって、英雄の心は負けたりしない。
雪を思い切り踏み締めて跳んだ。大上段に、サーベルを掲げ――――――――――――
「分からず屋のアカ共ぉっ!!!!!!」
アウラ・ミューリライネンは―――――――――――― 彼の、背後から斬りかかっていた。
思い切り飛び上がって、自分の体重と、落下速度を併せた重い一撃。文字通り全身全霊を賭けた斬撃。
無論、その姿は隙だらけではある。あるが―――――――――――― その一撃自体は、少女が今まで放ってきたどの銃撃よりも重いものである。
/遅くなって申し訳ないです……
12
:
名無しさん
:2015/08/30(日) 09:49:18 ID:.CrNSHCI0
>>11
「見つけたぞ(リージョ)」「敵の(ヴラージェスキィ)」
「狙撃手(スナイペェエエエエエエエエル)!!」
彼は吹雪の向こうから突っ込んでくる少女を、喜びの笑みと叫びでもって迎え入れる。
その声は、まるで複数人のように聞こえた。
冬の戦争。殺戮の丘、"彼"が殺した戦士たち。その恐怖と嘆き、そして憎しみの応報は今、それを体現する少女へと向けられていた。
彼は紋章を解く。溢れ出る熱は静まり、再び冬が訪れる。
「「大いなる平等」……そのためには、一人だけが力を持ってはならん」
「だが、それを制御する者は━━━大いなる力を持つ必要があった!」
彼は空へと槌を振る。潰れた鉛玉が雪へと埋もれ落ちた。
「それは今も同じだ、フィンリャンディヤ!ソヴィエトは世界を懲罰する!世界に名だたるこの強国は、恭しき挨拶を捧げるのだ!」
「消えてもらうぞ白い死神(ベーラヤ・スメルチ)!大袈裟な伝説も今日で終わりだ、完全なる"平等"のためにな!」
彼は二つの聖遺物を握りしめる。赤き炎を加熱させ、頭上を駆け抜ける少女を迎え撃とうとする。
そして━━━━━━━━━━
「ぐ━━━━━━━━━━」
次の瞬間。彼の背中には、少女の白刃の傷、フィンランドの英雄たちの結晶が、深々と刻まれていた。
「━━━━━━━━━━これ……は……」
彼は目を見開き、その場に立膝を付く。
流れ出る血と、強烈なまでの痛みが、彼を襲った。普通であれば、もう動けない程の傷の深さだ。
だが彼はゆっくりと、その場から起き上がる。強化された身体でさえ、その足取りは限界が近い事が見て取れる。
今彼を動かしているのは、ただ一つ。ソヴィエトへの信奉、忠義、そして執着だけだった。
その紅き瞳は一層に輝いて見える。70年間にわたって積み上げられてきた、人など簡単に蝕んでしまう、「意志」という呪い。
彼は彼女の言葉を反芻する様に、静かに語り始めた。
「……ここに極まれりか……資本主義者め……結果しか、見えていないのだ……」
「СССРに公用語はない……ファシストから世界中のすべての労働者を護り……救い……助けるためにな!」
彼は立ち上がったのち、ゆっくりと体勢を立て直す。
次第にその声量は大きくなる。しかし背中の出血は、未だ止まってはいない。
彼は再び、二つの聖遺物を重ね合わせる。傷は彼にダメージを与え続けている。次なる彼の攻撃は、最後の一撃となるだろう。
「重要なのは過程だ!人々が立ち上がり、団結し、世を打ち倒す革命だ!」
「今一度、そこで見ているがいい。貴様の遺物が小賢しいフィンの魂なら、これは我らソヴィエトの魂だ!」
彼は交差させた聖遺物を、頭上へ思い切り掲げる。
赤い炎がゆっくりと収束していく。彼の信念と、亡国の強固な意志。それが生み出す革命の炎━━━━━━
彼は先程とは異なり、昔を懐かしむかのような母国の言葉で、優しく静かに、しかし確かな語調で宣言した。
「Пролетарии всех стран, соединяйтесь(万国の労働者よ、団結せよ)」
「……Красная(赤き祝祭)」
充填された炎が解放される。
ゆっくりと、だが激しく、確かに対象を焼き尽くしてゆく炎。
広がる火はフィンランドの異空間を再び蝕む。彼はその中心で、糸が切れたように両膝を付いた。
今の状態なら、攻撃はたやすい。……360°に拡がる炎を、かい潜る余裕があるならば。
/いえ、こちらこそ予定が合わず申し訳ない……
13
:
アウラ・Y・ミューリライネン
:2015/08/30(日) 22:46:50 ID:8bbWws/U0
>>12
「はぁッ……はぁ……」
それはまさしく呪いだ。自分が今、勇気を貰っているそれとは違う。自分の物が正であるならば、それは負だ、と。
ソビエト人民の呪い。机上の空論を真実と崇めた労働者たちの怨念。殺戮の丘の怨嗟。それが、その男を支配しているのだろう。
刃が食い込み、鮮血が噴き出し、倒れ込もうとしていた筈だ。それだと言うのに、動かしているのは、信じられないほどの執念、執着。
お互いに。ソヴィエトなんて経験していない年齢である筈なのに、彼の意思は蝕まれている。最早問答など無意味であり。どうしようもない"怪物"だ。
だから、ここで打ち倒さねばならない。これはフィンランドの敵だ。これは――――――――――――今を生きる全ての人民の、敵である。
「だからそれは……失敗したって言ってんでしょうが……」
だから前に進む。この、焼き尽くす焔の前に、退く訳にはいかない。ソヴィエトの支配を、もう一度再現する訳にはいかない。
サーベルを握り締める。白刃より滴る鮮血を振り払う。古いフィンランドの大地に、露西亜人の血が点々と鮮やかに映える。
今度こそ、完全に叩き切ると心に決めた。逃げる事は出来ない。雪原は溶けていく、自分の体を覆う吹雪たちは、共産主義の焔に溶かされていった。
これ以上、小細工は出来ない。真正面からいくしかない。大丈夫、この雪原は―――――――――――― 白い死神が戦った殺戮の丘、英雄たちが立った大地。
「行くわよ、クソったれな平等主義者!!! 幻想に倒れた、バッカみたいな共産主義者ぁ!!!!!」
そして、駆け出した。其処にいる彼らを、"今度こそ斬り捨てんと立ち向かっていった"。
頬を焼く焔。圧倒的な焔。亡国それ自体の意思。ほんのちっぽけな少女の身体で対抗するには、余りにも膨大過ぎる熱量に。その歩みは、ゆっくりと落ちていった。
髪を焼いて、服を焼いて、剣を焼いて。肌を焼いて、肺を焼いて、一瞬で、其の身体は限界にまで追い込まれていた。そこで斃れる、はずであった。
彼と同じく、聖遺物で強化された身体でも耐え切る事の出来ない焔に、焼かれて死んでいく。その運命は決して変わる事は無いと言うのに。
「……負け、るかぁ」
「アンタ達が台頭したら……またみんな、貧しい思いをしなくちゃならない……そんなのは、駄目なのよ……」
「私は、聖遺物を持った、エリートだ……聖遺物部隊の……特務大尉……誰にもできない事を、私がする……私がやらなくちゃいけない事を……」
「私がぁ……守るんだぁ!!!!」
立ち止まった。けれどその顔は前を向いた。見開かれた瞳は焼かれながらも爛々と輝いていて、男を睨みつけていた。
剣を、振り上げていた。決して彼に当たる距離では無いと言うのに振り上げて――――――――――――全身全霊の力を籠めて、その剣を彼へと投げつけた。
最後の足掻き。気力だけで振るった……正真正銘、アウラ・ミューリライネンの、命を振り絞った一撃だった。それが、彼へと突き刺さるかどうかは。
「……ちく、しょう」
アウラ・ミューリライネンは、見届ける事は叶わなかった。
フィンランドの大地に倒れ伏す。そうすれば、アウラの意思と聖遺物によって成り立っていたこの世界は終わりを迎える。
全身を負った傷は、確かに致命傷であった。そしてその通りに――――――――――――アウラ・ミューリライネンは、振り絞って、最後にそう呟いて。
その動きを、止めた。
14
:
グスタフ・E・アバルキン
:2015/08/31(月) 16:13:30 ID:0qL03RZw0
>>13
「…………」
銀の白刃が、白銀の世界に一際輝く。その後、ドスリと鈍い音が、モスクワの街に響き渡った。
少女の最期の一撃。真の全霊の剣。それは聖遺物を持ったまま、最早動かぬ彼の心の臓を、完璧に貫いていた。……即死だった。
彼は目の前で倒れ伏す彼女の近くに、同じ様に斃れた。既に彼から命の灯は消えていた。
━━━━━━だというのに。彼の右目の光だけは、未だに消えていなかった。
「━━━━━━━━━━━」
彼は倒れたまま、目の前の少女の右手を掴む。まったく生気のない腕、しかしそれと対照的にギラギラと光る右眼で、炙られた十字の紋章を見……笑った。
彼は既に、剣に貫かれ絶命した。それなのに笑い声を上げた。何千人分とも思えるほどの、大きな笑い声を。
彼を蝕む呪いはあまりにも大きかった。グスタフ・エフセエヴィチ・アバルキンという人物は、ずっと前に殺されていたのだ。
彼が聖遺物を手にしたその時から、意思も肉体も、存在すらも、そのすべてが聖遺物(ソビエト)に取って代わられていた。
あの力は、共に戦った戦士たちに。その思想は、理想を夢見た人民たちに。そして彼の存在理由は、その実情に。
人の皮を被ったСССРの意志は、仕留めた青十字を見るや、歓喜の笑いを上げていた。
「ハハハハハハ!」「ハハハハ!」「ハッハッハッ!!」「ХАХАХАХХАААА!!!」
「掴んだぞ」「フィンの愚か者め」
「同志の仇を!」「粛清だ」「粛清だ」「粛清だ」
「粛清だ!」
赤き瞳の輝きは最高潮に達する。それぞれ違う声が、口も開かぬ彼から響き渡る。
ソビエトを形作った者たち。一人一人の怨念は集積し、彼という殻を被って、そして次なる世界を作ろうとしていた。
彼は少女の右手を掴みながら、鎌を持つ彼の腕を動かし、憎き十字紋章を抉り取ろうとする。
「Это(我等)……」「…… наша(の)」「победа(勝ちだ)!」
しかし、それは叶わなかった。"意志"の力のみで、生命活動を停止してなおその殻を動かすなど、いかに強大な呪いと言えど、長く続きはしない。
右目の光は、次第に弱まっていく。鎌を持った手から力が抜けていく。
人の皮を被ったソヴィエトは代弁者を失くした今、ただ意志として散りゆく最期に、この世への執着を呟いた。
「……馬鹿な━━━━━ここで━━━━終われるものか━━━━━━」
「━━━━━━━まだ━━━いけるだろう━━━━」
「━━━━━ルーシに━━━━━━━━━━━━平和を━━━━━」
やがて右目の光は消え、その声は鎌へと吸い込まれていく。意志は鎚へと飲み込まれ、彼は今度こそ、少女の右手を握ったまま、「ロシア」の大地に命を散らす。
その手から、呪われた遺物がこぼれ落ちる。その鎌と鎚は、かつての労働者たちの団結の証。かつての戦士たちの勇気の証。そして、ねじ曲がった狂気の証だった。
モスクワの空。飛び交う軍用ヘリコプターの一機。"それ"は、この戦いのすべてを映し出していた。
その映像はロシア政府の本部。聖遺物を知る、政治の最高官たちの部屋へと繋がっている。
『……終わったか』『……見込みはあったのだがな』
『まあいい。また新たな"殻"を着せてやればいいさ……"あれ"にはな』
『……代わりを探すのは、骨が折れるがね……』
このロシアの中心に渦巻く、聖遺物を巡ったどす黒い陰謀。ソヴィエトから続く暗い謀略の下で、亡国の意志は再び崩壊する。
首都の中心。屍と化した彼を弔うかのように、ソヴィエトの象徴は静かに燃えていた。
/これで終わりでしょうね、お疲れ様でした。
/長らくお付き合いさせて申し訳ない
15
:
ロエディア・シャーロット
:2015/09/01(火) 00:43:14 ID:I6PhUV7I0
――――20XX年A月B日 日本。
ガコン、ガコン、と砂利道を揺れる大型トラックの荷台に乗る少女。
頬を刺激する冷たい秋風に思わず不機嫌そうな表情を浮かべた。
彼女の名前は、ロエディア・シャーロット。純粋なフィンランド人であり、聖遺物と呼ばれる兵器めいた遺物を扱う人間の一人だ。
【→荷台に乗っているシャーロットだが、バックミラーに姿が写らない様に姿勢を低くしている。それから察するにどうやら、無断乗車中のようだ】
「――――っとやっと着いたわね」
どうやら目的地に到着した様で、シャーロットはこっそりと荷台から飛び降りた。
ズシャッ、という砂利を踏んだ音が響き思わず大型トラックに目を向ける。
運良くトラックの運転手はこの音に気が付いていない様でそのまま先へと進む。
【→周囲一帯は不規則に生い茂った雑草と砂利だらけ。人が住んでいる様な建築物はない。それどころか建築物すら見当たらない】
「たまーに、こんな辺境の地に嫌な施設やらなにかがあんのよねぇ……」
水色の髪をかきあげると周囲を見渡しながら、足を前に運んでいく。
どうやら、此処にやって来た目的は聖遺物関係の嫌なタイプの施設があるか若しくは、聖遺物関係の嫌な人間がいるかどうかを探りに来たらしいが――――。
【→シャーロットの目には未だ其れらしき人間や施設は確認されていない。
取り敢えず人間ならば、話し合い。施設ならば進入といった計画だろう】
16
:
アウラ・Y・ミューリライネン
:2015/09/01(火) 00:55:14 ID:aBJGlet20
>>14
それは正しく狂気であった。それが最初のどんな感情を以てして翳されたのかは、今となっては知る由も無かった。
だが、今ではそれは狂気だった。狂気へと変質した、ただの狂気であった。滅びた今も、世界に食い込み続ける呪い以外の何物でもなかった。
一人のフィンランド人の少女は、その炎に焼かれて息絶えた。最早その狂気に抵抗する事も出来ず―――――――― しかし、それはきっと幸運だったのだろう。
掲げるハカリスティは幸運の証であり。それは少女を、救った。危うく、千切れかけた糸を、ほんの僅かな部分で留まらせた。……確かに、それは繋がれていた。
「……う、ぁあ」
その少女は、確かに一度死んでいた。けれどもフィンランドの英雄がその命を繋ぎとめた。三つの旗の下に戦った、一人の英雄の聖遺物が、少女を救った。
顔の右半分が焼け爛れていた。白かった服はボロボロに焼け焦げて、下に見える肌も酷い火傷を負っていた。だが、そこに致命傷となりうる傷は存在しなかった。
否……再生、されていた。ほんの僅か、命を繋ぎとめるだけの再生。立ち上がる事は出来ないが、生きることは出来るだけの。
右眼の視力は失っていて、左眼を細めて転がる死体を見つめた。血だまりの中に倒れた男は、アウラの手を握り締めたまま死んでいた。
剣は突き刺さっている。この聖遺物を抉り出そうとしたのだろうが、よくもその状態でそこまで出来たものだと、アウラは関心すらしてしまった。
聖遺物がそこにあるのは、見えていた。だがそれを回収するのは、余りにも恐ろしかった。それに触れたらどうなるか……自分も、それに呪われるのではないか。
「……と、に、かく……こ、こから……離れ……スオミの……回収……を……」
ずるり、ずるりと身体を引き摺ってその場から脱する事にした。
ソビエト・ロシアの聖遺物……ロシア側から何も説明が無い辺り、それにはきっと現ロシアの陰謀が大いに絡んでいる。
そのままそこに倒れ続けていたら、いったいどうなるか分かった物では無い。機動部隊も信頼できない以上、フィンランドの回収部隊が来るまで隠れるしかない。
這いずり、路地裏へと入り込む。ゴミ箱の横に背を預けて、其処にアウラは一旦留まる事とした。
「ソヴィエト、ロシアの聖遺物……亡国の、意思……。
一体、ロシアは……何を……考えているの。何か……恐ろしい、ことが……」
あの聖遺物の性質が、自分が感じたとおりならば……いずれ、"彼"の代わりが現れたとしてもおかしくは無い。
何か、恐ろしいことが起きている、と思った。馬鹿げた話、映画や何かの中の話を再現するような……例えば、あの社会主義国の再建なんて、大それたことがあるとしたら。
だが、それ以上の事を考える余裕は無く。其処でアウラは、意識を手離した。
数分後、アウラ・Y・ミューリライネンと共にモスクワへと入国していた特務部隊がアウラを回収し、速やかにフィンランドへと帰国した。
ロシア側からのアウラ、およびフィンランドへの説明はされないまま。その謀略を、アウラは、今はまだ、歯を食いしばって見つめるしかなかった。
/絡みありがとうございました、お疲れ様でしたー!
/こちらこそ長引かせてしまって申し訳ありません……楽しかったです!
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