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仮投下スレ

624記憶の中の間違った景色 ◆DGGi/wycYo:2016/03/15(火) 00:55:32 ID:4/9DJ61M0

「……千夜はどうしてるんだろう」

一人になった部屋で、リゼはボソリと呟いた。
千夜にとって、ココアは親友、シャロに至っては幼馴染だ。

たまにネガティブ思考になる彼女だ。もしかしたら。

「(考えないでおこう)」

今はしばらく、一人で居たい。


*   *   *


チノの向かった先は、リゼたちの居る部屋のちょうど真上――ココアの部屋。
息を切らせ、扉を開ける。

「ココア、さん」

誰も居ない。

「居るんですか」

ベッドが膨らんでいる。

「ココアさん、起きてください」

布団を捲る。

「っ……」

うさぎの人形が入っていただけ。

ガチャリ。誰かが入ってきた。

「居た……」

息を切らせて、彼女は入ってきた。
涙でぼやけた視界が、その姿を捉える。

「ココアさん、今までどこに居たんですか!」
「お、おい……」
突然チノに抱きつかれたココア――ではなく紅林遊月は、少し考えて、理解した。

自分が今着ている服は、ラビットハウスの色違いの制服。
バータイムの服を除けばチノの水色、行方不明のココアのピンク、リゼに借りている紫。
更に、自分の声は“保登心愛”と少し似ているとチノは言っていた。
まさか、私を“ココアさん”だと――?

「違う、私は“ココアさん”じゃない」
「今度は何の冗談ですか……私の部屋にリゼさんたちも居ます。早く会ってあげてください」

落ち着け、と言わんばかりにチノの顔を真正面から覗き、手をあてる。
私は紅林遊月だ。決して保登心愛ではない。

「私の顔に、何か付いてますか」
「付いてるも何も、私は……」

「その辺にしておいた方がいい」

開きっぱなしの扉の外から、第三者の声が聞こえた。

「ちょうど良かった。風見さん、チノが……」

焦る遊月を制止するように、雄二は言う。

「チノ、部屋に戻っていてくれ。彼女を連れてすぐに戻る」
「でも、ココアさんが」
「五分だ。五分だけ、時間をくれ」

彼がそう言うとチノは大人しく引き下がり、部屋を出た。
パタンと扉が閉まると、雄二は遊月に向き直った。

「遊月、少しの間でいい。チノに合わせてくれないか」
「……え?」
「何かおかしいところでもあるか」

おかしいも何も。
何故私がそんなことをしなければいけないんだ、というのが本音だった。
チノ自身に僅かな苦手意識を持ってしまっている私が。

「私に、ココアさんの代わりなんて務まらないよ」
「判っている。それでも頼みたいんだ」

冗談だろう、と言いたくなる。
だが、彼の目は冗談を言う人のそれではない。

「……もしかしてだけど風見さん」
「何だ」

今から思い返しても、何故そんな質問が出たかはよく分からない。

「風見さんにも、姉か妹、居たの? それに、入巣蒔菜って確か」

その質問に対し雄二は、と短く肯定した。


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