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テスト

14小閑者:2018/10/11(木) 00:19:59
<SS2> 暗器


 なのはのキスがアリサのファインプレーで未遂に終わった後。
 無意識に行った自身の行為を自覚させられたなのはが熱病に浮かされたように真っ赤になって目を回していたため、危なっかしくて出歩けないという事で生徒会室で雑談を延長することになった。
 女が3人集まれば姦しいとは言うが、当然の様にはやて達も例外ではなく、恭也が居るという話題的な制約がありながらも途切れる事無くトークに花を咲かせていると、話題が変わるタイミングでふと気づいたといった様子ではやてが恭也に話を振った。

「そういや、恭也さんに聞きたい事があったんやった。
 なあ、恭也さんて服の上から見て、身に着けてる物の形や大きさが分かるんよね?」
「ん?・・・まあ、それなりにな」
「てことは、女の子のスリーサイズとかわかるん?」
「・・・え?」

 はやての言葉に反応したのはアリサだった。いや、声を出さなかっただけで、すずかも目を見開いて驚いている。

「バニングス、必要があって身に着けた技能だ。ゴミくずを見るような眼差しで俺を見るのは止せ」
「・・・本当に疚しい理由じゃないでしょうね?」
「疚しさで括られると、方向性こそ違うが公衆の面前で曝け出せるものではないと言う意味では同じになる。
 だから、止せと言うに。
 方向性が違うと言っただろう。性的なのものではなく暴力的なものだ」
「・・・暴力?」
「ああ。
 ・・・胡散臭そうに見るなよ。
 暗器、・・・ええと、拳銃やナイフと言った武器を隠し持っていないか、もっと言えば、何処にどれだけの数、何を隠しているか見破らなければ、自分自身と護衛対象を危険に晒すことになるからな。そのための技能だ」
「ふうん。
 ・・・まあ、非常識具合からすれば、確かにあんたならではの説得力はあるわね」
「・・・納得するのは兎も角、貶める必要はないよな?」
「ほんじゃ、どん位の精度か試してみよか」

 漸くアリサが矛先を収めたところで、ニヤリとした笑みを浮かべたはやてが再び蒸し返した。

「はやて、どう考えてもこの話題を掘り下げても誰も幸せにならんぞ・・・」
「まあまあ、ここはさっきの未遂事件のペナルティとしてなのはちゃんに尊い犠牲になって貰うちゅうことで、目測したスリーサイズをいざ発表!」
「!?!?」

 突然、人身御供に祀り上げられたなのはが真っ赤になりながら驚きのあまり声も上げられずに両目を大きく見開きはやての方を勢いよく振り向いた。しかし、そんななのはの慌てぶりを意に介さずはやてが笑みを崩す事なく視線を転じると、やれやれとばかりに小さな溜め息を吐いた後に委細承知と言う様に軽く頷いた恭也が口を開いた。

「そうだな、75・54・77、といったところか?」

 恭也の口から出てきた3つの数字に数舜固まった後、なのはは涙目になりつつか細い声を絞り出す。

「そ、そんなに大きくないかな・・・」

 静寂に包まれる部屋の中で『どうせ間違えるんなら小さめに言っときなさいよ!』と心の中でツッコみつつ静かに顔を逸らすアリサとそれに続くすずかとフェイト。そんな3人の視界の端に、赤面しつつ肩を震わせるはやての姿が。
 一瞬、笑いを堪えているはやてがなのはに追い打ちをかけようとしているのでは?という疑いが3人の脳裏を掠めるが、流石にはやての性格はそこまで悪くはなかった。というか、はやて的にはそれどころではなかった。

「ホンギャーーー!!」
「うわ!?
 ・・・びっくりした〜、はやて、いきなり・・・ああ、さっきのスリーサイズ、はやてのか・・・」
「芸人の振りを無為にする訳にもいかんだろ」
「だだだだからって、ドンピッ!?
 あ、や、いいいいくらなんでも寄せ過ぎやろ!?」
(ああ、ドンピシャだったんだ)

 恭也だったらもう何でもありか、と悟りを開きつつある3人と、敗北感に打ちのめされている1人と、自業自得ながらもパニックに陥る1人。
 そんな少女達から視線を外した恭也はポツリと独り言ちた。

「本当に適当だったんだが・・・
 信じないだろうなぁ・・・」

 その呟きは、誰の耳にも届かなかった。




おわり


※スリーサイズは資料が無いので、適当に開いたエロゲHPに載ってたヒロインから引用したものです。

15名無しさん:2019/05/01(水) 22:49:36
<SS3> カルチャーギャップ


「それじゃあ、実際に作る前にもう一度おさらいするぞぉ」
「5年生にもなればカレーくらい、そんなに念押ししなくても作れるんじゃない?」
「バニングス、それは作れる奴だから言えるセリフだ。年を取るだけで出来なかった事が出来る様になる、なんてことは有り得ないんだぞ?
 家庭科の授業は初めてだからな、家で料理したことが無ければ作れんだろう。
 そうでなくても、初めて経験することは何だって怖いもんだ」
「まあ、そうだけど・・・」
「そういや、肝心な事を聞き忘れてたな。
 そもそも、この中に包丁を扱った事のある奴は、・・・いや、この際、包丁でなくても良い。食事の準備を手伝った事のある奴は手を挙げてみろ」
「今更それ聞く?」

 教師の言葉にやや呆れつつも挙手するアリサに合わせて、はやて達も手を挙げる。だが、裕福な家庭の子女が通う学校だからなのか、単純に年齢的な問題なのか、アリサ達の他に手を挙げたのは数名だった。

「え、こんだけなの!?」
「毎年こんなもんだぞ?酷い年には全員未経験だったこともある。
 どっちかってーと、バニングスと月村が料理したことがあるってことの方が意外だと思うがな。高町に触発された感じか?」
「まあ、無いとは言わないけどね。翠屋の手伝いしてるなのは、楽しそうだし。
 でも、そういうのと関係なく、やれるようにはなっておきたいのよ」
「良い心がけだとは思うんだが、なんでまた?お前たちの家ならコックとかメイドとか居るだろ?」
「学校の教師が授業の意義を否定しないでよ。
 出来なかったら『やる』『やらない』が選択出来ないでしょ」
「流石はバニングス、ナチュラルに志が高いな。
 そう言えば、さっきはスルーしたけど不破が料理出来るってのも意外、と言う気がせんでもないな」
「そうね。あんたの事だから、『男子厨房に入らず』とか古臭い事言うかと思ったわ」
「酷い偏見だな。・・・まあ、確かに調理中に台所には入らせては貰えなかったが。
 一応言っておきますが、『料理』と言えるほど高尚な事が出来る訳ではありませんよ。せいぜい、食材を消化吸収出来る様にするための『調理』程度です」
「台所に入れて貰えなかったのにどうやって『調理』したんだ?」
「無論、野営です」
「・・・アウトドア、じゃあ、ないんだろうな」
「でしょうね。バーベキューとかキャンプが目的じゃなくて、修行とか潜伏とか襲撃とかって方がピッタリだもん」
「・・・見てたのか?」
「は?・・・図星?どれのk」
「はい、そこまで。
 えーと、不破が野営って言うと、罠とか仕掛けて狩りまでしてそうだな、はは」
「いえ、獲物が罠に掛かるまで待っていられませんから、大抵はとばr、あー、刃物を投げて仕留めてます。肉は熟成させると美味いらしいんですが、同じく時間を掛けられないので血抜きだけして内臓を・・・」
「うん、俺が悪かった。
 よ〜し、どう転がしても危なくなるようだから話を戻すぞー」

 目を泳がせる教師に注がれる生徒の『やっちまったなー』と言う生温い視線。
 恭也の常識外れな経験談は多くが笑いを取れるのだが、低確率で笑うに笑えない物が含まれているのだ。低確率なのは、勿論恭也の自主規制の賜物なのだが、規制のラインが甘いため今回の様に本人が意図しないところで地雷となることがある。
 クラスメイトも慣れたもので、こういった場合には全員一致で聞こえなかった事になるのだった。





「〜で、このまま暫く煮込む訳だ。ルーを入れた後は焦げ付き易いから、ゆっくりかき混ぜ続ける事。で、飯が炊けたら完成だ。
 手順は分かったかー?」
『はーい』

 前回の授業の復習として手順をざっくり説明した教師に生徒の復唱が返る。教師の要領が良いのか、生徒のメリハリのお陰か、紆余曲折する割にはこのクラスの授業の進行は悪くなかった。

16名無しさん:2019/05/01(水) 22:50:33
「よーし。
 じゃあ、後は・・・、ああそうだ。
 こいつも余談になるが、家で作る時は買ってきた食材はチャンと冷蔵庫にしまう事。特に近頃は暑くなってきたし、これから夏に向けて更に気温が高くなるから、食材も傷み易い」
「野菜もですかー?」
「そうだ、野菜もだ。暑いと野菜も足が速くなるからな」
「へぇ、収穫した後でも走り回るなんて、日本の野菜は活きが良いんだね」
「・・・えぇと、・・・え?スマン、ハラオウン、どういう事だ?」
「え?」

 フェイトが零した呟きに、聞き流す事も上手い反応を返す事も出来ずに教師が聞き返すが、聞き返されたフェイトも己の発言に疑問の余地など無いとばかりに首を傾げた。

「フェイト、その知識が漫画なのかアニメなのかは知らんが、どこの国の野菜だろうと走らんぞ」
「え、そうなの!?」
「マジか!?」

 素で驚くフェイトの様子に、恭也も珍しく本気の驚きで返す。
 フェイトの知識はアリサやすずかの薦める漫画やアニメを参照している事も多々ある(主に恋愛面)のだが、今回の誤解はそちらの知識ではなく、他の次元世界に走り回る植物があるためだろう。知識として存在を知っているだけであるため、普段の買い物で見る野菜が動いていない事に疑問を持ってはいないのに、それとは別に『足の速い野菜』と言われて素直に受け入れてしまったのだろう。
 恭也的にも、フェイトの持つ常識が日本での、或いは地球での常識と乖離している事があるのは承知しているため、ちょくちょくフォローを兼ねてツッコミを入れているのだが、今回の様に全く疑問を抱いていない様な反応は流石に想定外だったようだ。

「こっち来てから半年近く経っても疑問に思った事も無いのか?
 どこを探しても走行する植物は存在しないからな。勿論、歩行も飛行もしない。お前も何度も買い物について行っているから見ているだろうが。
 念のために言っておくが、あれは冷えている所為で休眠状態になってるとかじゃないからな」
「あ、はは、そうなんだ。
 売ってるのは確かに動きそうもなかったけど、どこかにはあるのかと・・・」

 涙目になるほど赤面した上、目を泳がせながら、絞り出すように答えるフェイト。どうやら、自分の発言が『知っていて当然』どころか『知らないと恥ずかしい』類の間違いだと気付いてしまったようだ。次元渡航者であることを公表出来ない以上は、地球の常識関連の知識に絡む失敗は全て単なる残念な子として周囲の人間に解釈されてしまうのだ。

「いやー、『足が速い』聞いて驚くどころか納得してまうとは、バーガーショップの店員やっとる魔王様より上行っとるな」
「・・・もう許して」

 はやてのフォローと言う名の追い打ちにフェイトが挫けた。
 フェイトとしてもこの手のミスは注意しているつもりなのだが、なかなか無くす事が出来ずにいるのだ。だから、こういった時にフォローしてくれる恭也やはやての存在は有り難いと思っている。思っているのだ。思っているのだが!
 そのフォローが、言い間違いだとか無かった事にするだとか言う方向性にしてくれれば良いのに、何故か、大抵の場合『間違った日本の知識を持った日本かぶれの外国人』なのだ。無論、フェイトの反応が楽しいからなのだが!
 毎回、律儀にも話に乗っかろうと頑張るフェイトだが、恥ずかしがり屋のフェイト的には正直言って悶絶ものであるため、二つ目か三つ目の受け答えで挫けるのだった。

 俯きぎみにした顔を両手で覆い僅かに覗く耳や首筋を赤く染めたフェイトがプルプル震える姿を見てほっこりするのが、このクラスの近頃の流行となっているのだった。




終わり


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