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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

131小閑者:2017/08/06(日) 23:57:39

「お前が時空管理局に所属している人物である確証が得られない。そもそも、俺の中で時空管理局と言う組織の位置付けが出来てない。
 高町とスクライア、会って間もないがテスタロッサの事も信用してやってもいい。だが、あいつらが所属しているからと言って、組織の全員が一枚岩だとは思えない。
 疑い深い性格だと言う自覚はあるが簡単に変わるとも変えたいとも考えていない」
「3人を知っているのか!?お前、まさか八神恭也か?」
「ご名答。無実の罪は晴れたか?」
「!…ダメだ。実証する術が無い。画像データでも受け取っていれば…」

 結界内で戦闘をしている2人は論外としても、内部で同じく書の主か4人目の守護騎士を探しているユーノを呼び出すのも避けたい。最優先はあくまで捜索だ。限りなく白に近いグレーのこの男に2人分の手を費やす訳にはいかない。
 任意同行に応じない事も責める気にはなれない。管理外世界において時空管理局など耳にした事が無くて当然なのだ。警戒されるのもまた然り。

「では、仕方が無いな」
「…残念だ。理性的な相手には話し合いで済ませたかったが、僕にも時間が無い」
「気にするな。選択を許さない状況などいくらでもある。今もその時なんだろう。そもそも勝てる積もりでいるのか?」
「無理だとは思わないが確かに勝つのは難しそうだ。だが、動きを封じる方法はある。この屋上をカバーする程度の閉じ込める結界なら僕一人でも張れる」
「やっぱりそう来るか。種明かししてるって事は準備万端だな?
 結局、本気になった魔導師には勝てないって事か。っくそ!
 ん?」

 クロノは恭也の台詞に言葉を返さなかった。上空に突如として発生した雷雲に凄まじい魔力が込められている事に気付き、それどころではなくなったのだ。
 あれはフェイトの扱うサンダーフォールの様に自然現象を魔法で促進させることで消費魔力以上の威力を発生させる天候操作魔法とは違う。落雷の形式を取っているだけで純魔力による攻撃魔法、分類するならサンダースマッシャーやディバインバスターといった直接砲撃魔法を遠隔地から放っている様なものだ。
 ただし、クロノが驚愕していたのは魔法の威力についてではない。下手をすればなのはのSLBと同等の威力の魔法を、恐らく守護騎士の最後の一人が単身で使用したと推測したからだ。
 その電撃魔法は、アースラの魔導師が総出で維持していた結界を破壊し、閉じ込めていた3人をあっさりと解放してしまった。




「次はぜってー潰してやるからな!」

 負け惜しみに近いその言葉をなのはに投げつけるとヴィータは身を翻して逃走を始めた。
 案の定、追い掛けようとしてくるが、典型的な射撃型であり、強固なバリアジャケットを身に着けているなのはは当然の弱点として、トップスピードに達するのに時間が掛かる。
 ヴィータは追いつかれることよりも遠距離からの射撃と他の管理局員の先回りを警戒しながら、シグナム達3人とは別の方向へ進路を取り、長距離転送を行えるだけの距離を取るべく飛翔した。
 いくらも進まない内に前方から魔力の残滓を感じ取った。視線を向けるとどちらも黒ずくめの似た背格好の2人の男がこちらに気付いて魔法杖を構えようとしていた。ここに居るはずの無い人物の事が脳裏を過ぎるが、アイツは魔法杖なんて持っていない、と自身に言い聞かせ、被弾しない様に最低限の注意だけをそちらに向けて飛翔を続ける。
 だが、2秒後には通過し、背景の一部でしかなくなる筈だったその2人に対して、ヴィータは無駄な接触を行う事になる。屋上にいるのが八神家ではやてと共に自分たちの帰りを待っている筈の恭也である事に気付き、動揺して飛行速度を落としてしまったのだ。
 一度は意識の外に置いた2人組みの内の1人が恭也である事に気付いたのは、屋上の中央で何の行動も起こさず立ち尽くしていた人物に不審を抱いて注意を向けたためだ。


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