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オリスタトーナメントスレ

1 ◆aqlrDxpX0s:2014/10/05(日) 19:43:30 ID:loZhLKuE0
誰かが推薦したスタンドと、他の誰かが推薦したスタンドを、もう1人の誰かが戦わせます。
勝ち上がったスタンドはまた別の誰かが戦わせます。

どのスタンドが優勝するのか、最後まで誰にもわかりません。

926名無しのスタンド使い:2018/06/18(月) 19:18:14 ID:cXadlDtI0
マジか!嬉しい

927名無しのスタンド使い:2018/06/18(月) 23:01:30 ID:XIPW4GP.0
もう諦めていたけど…これは期待!

928名無しのスタンド使い:2018/06/19(火) 08:31:26 ID:zj9Als.g0
うおおおおおおおおおおお!
で、どうなってたんだっけ?と思って確認すると

【一回戦】
十兵衛きゅん vs 星司郎きゅん
悩み深きイケメン同士の対決は十兵衛きゅんの勝ち

璃乃さん vs 宝ちゃん
のほほん宝ちゃんあっさり悩み深き璃乃さんに勝利

ケンソー vs クリームさん
結構な死闘の末ケンソーの勝利だけど沫坂邪魔すんな

壮周 vs ウォーカーさん
激闘の末ウォーカーさん勝利もかふらさん歓喜

【二回戦】
ケンソー vs ウォーカーさん
なんかものすごいことになったけどウォーカーさんの勝ち

十兵衛きゅん vs 宝ちゃん ← いまここ

だな!
むっちゃ期待!

929 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 07:32:22 ID:kX0/olqg0
遅くなってすみません

十兵衛くん vs 宝ちゃん 今日中には投下できるように調整中です。
もうしばらくお待ちください。

930名無しのスタンド使い:2018/07/07(土) 14:03:34 ID:.1FkTdXc0
うおおおおおぉおおお!

931 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:47:31 ID:kX0/olqg0

「ごめんなさい…………ごめんなさい………………」

少女の亡骸に対して、八重神宝は謝罪の言葉を繰り返す。
泥の中を這いずるようにして、宝はその亡骸の元へと向かった。
握った手の平から伝わる冷たさを実感した宝は胸の奥からこみ上げてくるものをすべて泥の中に吐き出した。
ふと気付くと、すぐそばの泥の上に、見覚えのある封筒が浮かんでいることに気付いた。
震える手でその封筒を開くと…………

ジリリリリリリリ!

けたたましい目覚まし時計の音に八重神宝は目を覚ます。

「またこの夢か……」

そう呟くと、宝は汗ばむ自らの手のひらを見つめ、その温かさに現実を感じていた。

932 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:49:11 ID:kX0/olqg0

【ディメンション・トリッパー vs アルファベティカル26】
STAGE:冷凍倉庫

「さむっ!?」
重く堅い金属製の扉を開けると、とたんに冷気が全身を包み込む。
三船重兵衛は思わずその寒さを口に出す。
恐る恐る足を踏み入れると、背後の扉が大きな音を立てて勝手に閉まった。

「終わるまで出るな……ってことかな?」
重兵衛は大きなリュックを一旦その場に降ろし、目の前の机に置かれていたもはや見慣れた赤い封筒を手に取る。
そしてその封筒を開き、その中身に目をやる。

『三船重兵衛様へ。
優勝者トーナメント、2回戦への進出おめでとうございます。
それではこの試合の内容を説明させていただきます。
舞台はこの冷凍倉庫全域、勝利条件は相手を戦闘不能にすること。
途中棄権は認められず、制限時間終了までに決着がつかなければ引き分けとします。
それ以外に特にルールはなく、また勝敗が決するまで立会人が干渉することはございません。
尚、制限時間は…………』

重兵衛がそこまで手紙を読んだとき、机の隣に並ぶ冷凍庫の扉が静かに開いた。

「……グレッグさん!?」

重兵衛は手紙を落とし、慌てて冷凍庫から倒れ込んだ男性へと駆け寄る。
冷たい床に落ちた手紙。その文章の末尾はこう締めくくられていた。
『尚、制限時間は冷凍庫に眠る方の命が尽きるまで。
 それではどうぞ最後まで、凄惨な死闘をお楽しみください』

933 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:49:38 ID:kX0/olqg0

「まだ脈はある…けど…弱弱しい。体温も下がり切ってる……」

重兵衛は閉ざされた倉庫の扉に向かって拳を振りかざす。

「『砲弾(キャノン)』っ!!」

「ディメンション・トリッパー」の能力により加速された拳を、何度も、何度も、皮が裂け、グローブの内側で血が滲もうとも叩き込み続ける。

「開けろよ! 俺の負けでいい!! 早くここを開けないと、グレッグさんが!!」

しかし、堅く閉ざされた扉は微動だにしない。

「(立会人のスタンド能力か……? 何があっても棄権はさせないつもりか……!)」

そのとき、重兵衛に向かい、猛烈な勢いで近づいてくる巨大な影。

「……対戦相手か!?」

額に『WALRUS』(セイウチ)と印されたその巨体が、与えられた命令そのままに突進してきた。

934 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:50:08 ID:kX0/olqg0

もう一人の対戦者、八重神宝は倉庫の隅に乱雑に積まれた荷物の影で息を潜めていた。
これまで、宝はトーナメントの多くを変則的なルールの試合で勝ちぬけてきた。しかし、いずれも強敵たち。真正面からのスタンドのぶつかり合いでは勝ちの目は薄かっただろうと分析していた。

(私の『アルファベティカル26』は、応用力だけはたいしたものだと自負してるんだけどね……やっぱり近間での戦いとなるとどうしてもスタンド自体の脆さと、思考時間込みの遅さがネックになる……!)

アルファベティカル26は、確かに可能性こそ無限大ではあるものの、問題は『組みあがるまではなんの力も持たない』ということ。
発現し即攻撃、あるいは防御に移れる他のスタンドとは異なり、発現から単語として組みあがる行程を経て初めて有用な形を成す自身のスタンドでは、近距離での殴りあいは圧倒的に不利である。

(だからこそ、私はアルファベティカル26のもう一つの強みを活かす!)

それは『戦闘をある程度アルファベティカル26に委任する』というものである。
アルファベティカル26により発現した生物は、基本的には本体の言うことに従う。
逆に言えば、それらの知性はあくまで『高度に調教された生物』というレベルであるということだ。
他のスタンドのように自分の手足のように動かすことは出来ないものの、それゆえにある程度自身で判断し、攻撃、防御が可能となる。

(幸い、私のスタンドの射程距離は10メートルや20メートルじゃあない! 本当は熊さんやライオンさんにやってもらうところだけど……ここは冷凍倉庫。寒さに強い動物の出番!
『対戦相手を死なない程度に戦闘不能にする』って言っておいたセイウチさん
に任せて物陰から一方的に攻撃を仕掛けることだって出来る!)

アルファベティカル26の群生型としての本体へのダメージのフィードバックが少ないという特性と、生物を生み出したときのみ適応される自立行動型のような特性、そしてこの身を隠す場所が多いうえに冷気で相手の自由を奪える冷凍倉庫という環境が噛み合い、宝のこの戦法を可能としていた。

935 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:50:36 ID:kX0/olqg0

「それで…どういうつもりですか…『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』……?」

冷凍倉庫から遠く離れた高層ビルの屋上。
風を受け、一人で佇む紳士『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』に向かい、ある男が話しかけた。

「来ていましたか。『沫坂』さん……」

「この試合はすぐに中止にすべきです。貴方もご存じの通り、我々は既に目をつけられている。事実、第2試合の会場には敵勢力が現れたとの報告が……」

「関係ありません」

レッドミストモイスチャーはそう断言すると、沫坂へ強い視線を向ける。

「このトーナメントは何があっても完結させなければなりません…それが…『あのお方』の意思です。貴方もご存じでしょう?」

「……」

黙ってしまった沫坂へと畳みかけるように言葉を続ける。

「貴方も『あのお方』の意思によって、この世界へ帰ってくることができたのでしょう? 邪魔をすべきではない。今なら1回戦の身贔屓は不問としましょう……」

「……断る!!」
沫坂は自らのスタンドを発現し、勢いよく飛びかかる。そして、その拳はレッドミストモイスチャーの顔面へと叩き込まれる。

「それが貴方の答えですか……」

レッドミストモイスチャーがそう呟くと、沫坂は既にその場から消えていた。
殴られたはずの顔面にも一切傷はなく、まるで初めからその場にはレッドミストモイスチャー一人しかいなかったかのような静寂が訪れていた。

「残念です……沫坂さん……」

936 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:51:00 ID:kX0/olqg0

「(時間がない……こうなったら全力疾走で突っ走るのみ!!)」
決意を固めた重兵衛は、腰を低く構え、自らに迫りくるセイウチの巨体に相対する。

「『砲弾(キャノン)』っ!!」
セイウチの顎先を狙い、アッパーカット気味に下から拳を叩き込む。
その勢いに思わずセイウチも仰け反る。

「『連射(マシンガン)』っ!!」
そして曝け出された腹部へめがけ、拳いっぱいに握りしめたベアリング弾を投げ込む!
無論、そのすべてが「ディメンション・トリッパー」の能力により急加速されている!!

「『砲弾(キャノン)』、『砲弾(キャノン)』、『砲弾(キャノン)』っ!!」
ダメ押しとばかりに拳の連打を腹部へたたき込むと、セイウチの姿は消え、W・A・L・R・U・Sの文字列へと戻った。

937 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:51:25 ID:kX0/olqg0

「セイウチさんがやられたか……」

距離を取り、隠れていた宝がスタンドへのダメージを感知し、そう呟く。
敵の正体は掴めないが、恐らく『W・A・L・R・U・S』(セイウチ)が倒されたとなると、似たような特性を持つ冷気に強い獰猛な動物を呼び出したところで結果は変わらないだろう。

「(となると……)」

宝は即座に次の単語を思い浮かべる。
『W・A・L・R・U・S』をベースに、違う角度からの攻撃手段……

「……『V・I・R・U・S』(ウィルス)か」

ウィルスならば確実に対戦相手を戦闘不能に持ち込める。
その毒性によっては一瞬で死に至らしめることさえ容易だ。

「(これなら勝てる!)」
そう宝が思ったとき、その脳裏に浮かぶのはまた別のヴィジョン。

938 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:51:53 ID:kX0/olqg0

月明かりの下。泥にまみれた二人の少女。
「(いやだ…………死にたくない………………)」
宝は許しを請い、助けを求めようとするも、口から漏れるのは苦しい呼気のみ。
口の端から泡を吹きながら、宝は必死で這いずりながら後ろへ逃げようとするも、もう一人の少女はそんな宝の腹に容赦ない蹴りを受ける。
そして、その少女は宝へと向かうと、その首を両手で掴んで持ち上げた。
しかし、宝を持ち上げる少女の体の泥を雨が洗い流す。その無数の雨粒には『RAINS』の刻印が浮かび上がっていた。
宝は力なくすすり泣いている。
『RAINS』の文字列は『SARIN』へと変化し、少女の体を蝕み、そして、少女は毒に侵されて事切れていた。

939 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:52:18 ID:kX0/olqg0

「嫌だ!…嫌なんだぁ!!」
最早見慣れた、それでもなお忘れたい、いや、こんな事実は存在していない、ただの、そう、ただの悪夢。
その悪夢のヴィジョンがフラッシュバックし、宝は思わず大声で叫ぶ。

その声が消えたとほぼ同時、一つの小さな、小さな白球(BB弾)が彼女の額に炸裂し、宝は静かに目を閉じた。

「……『狙撃・改』(ニュー・オーダー・ライフル)……」
スコープを覗き、ボルトアクションライフル型のエアソフトガンを構えながら、重兵衛はそっと囁いた。

940 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:52:41 ID:kX0/olqg0

「結論から申し上げますと、リチャード・モイスチャーは『正規の』立会人ではありません」

コンクリートの壁に一人分の声が響く。
壁と、机と、黒電話と、幽かなノイズを発する蛍光灯しかない無機質な部屋である。
立会人の間で通称『電話室』と呼ばれるビルの一室であり、緊急の際に『運営』と連絡を取ることの出来る数少ない手段の一つでもある。

「今試合の立会人、リチャード・モイスチャー。試合では主に単純な武力による決着を好み、特に互いに死力を尽くしての死闘を好むため通称『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』などと呼ばれている人物です。ただ…………」

電話口から顔を離し、不安に脈打つ動悸を悟られないように一つ深呼吸をする。

「我々沫坂班が、秘密裏に調査していたところ、トーナメント運営記録に改ざんの痕跡が発見されました……極めて巧妙に隠蔽されていましたが」

一切のレスポンスが帰ってこない電話口に向かって、努めて平静を装い淡々と報告を続ける『正規の』立会人____濱修治(はま・しゅうじ)____はその袖口で静かに額を拭った。
脇の下に嫌な汗をかいているのを感じながら、修治は心の中で舌打ちをする。

(……しまった、『極めて巧妙に隠蔽されていましたが』なんて付け加えるとは、まるでガキの言い訳じゃあないか)

稚拙な報告に嫌味さえ帰ってこない無言の電話が、逆に修治の焦燥を煽る。

「…………えー、それによると改ざんは外部ではなく内部から行われており、15時間前に首謀者と思われる人物『リチャード・モイスチャー』が発覚しました。我らが班長『沫坂』氏がすぐに現場へ向かいましたが……」
修治は一息つけ、言葉を続ける。
「我々、実働部隊が現地に到着したときには既に勝敗は決しており、回収できたのは極度の体温低下によって瀕死の重体となっていたグレゴリー・ヘイスティングス氏と、頭頂部へ強い衝撃を受けて気絶していた八重神 宝氏のお二人。
勝者である三船重兵衛氏から聞き取り調査を行うも、現場には立会人リチャード・モイスチャー、沫坂班長ともに姿を見せておらず、現在行方を捜索中でございます」

冷や汗が頬を伝う。
この場所を教えてくれた先輩立会人の言によると、何かレスポンスが返って来るまで決して電話を切ってはいけないという。
電話を切るとどうなる? などと聞ける雰囲気ではなかったが、今それが分かった気がした。
電話を切ろうにも、あまりの緊張に受話器と手がまるで一体化したように、それを掴んで放せない。
それからどれだけ経ったのだろう。
老人のような、少年のような、奇妙な声色で電話越しにその相手は一つだけ尋ねてきた。

「…………『沫坂』とは誰のことだ?」

「はっ……? 我々の班のリーダーの……」

「君が『濱班』のリーダー、『濱修治』だろう?」

「……!? ……はい……」

「………………報告、ご苦労」

その言葉を聴き、ほとんど反射的に叩きつけるように受話器を置いた。
痺れ始めた手足だけが、時間経過を物語っていた。
何かに追われるようにそのビルを後にし、妙に興奮した感情を抑えようと街をそぞろ歩く。

「(忘れろ…深入りすべきじゃない。どうせ後1試合で、この企画も終わりだ……)」

そう自分を言い聞かそうとするも、なお、胸の騒めきが収まることはなかった。

【ディメンション・トリッパー vs アルファベティカル26】
STAGE:冷凍倉庫

勝者:ディメンション・トリッパー /三船重兵衛

941 ◆iL739YR/jk:2018/07/07(土) 16:55:31 ID:kX0/olqg0
以上です。

今回の試合はオリスタトーナメントスレ4より
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/14088/1407591903/

◆Zb4sdv40uw の作品を大幅に参考、引用、リメイクさせていただいております。

この場で深く御礼申し上げます。

このような形になった理由、そして、『私なりのトナメの答え』を次回の決勝戦にしたいと思います。

お粗末さまでした。

942名無しのスタンド使い:2018/07/08(日) 10:52:53 ID:nHsR4hlg0
うおおおおお!
トナメきたあああありがとうございます!
しかしここにきてまたも…沫坂の幻影!
こいつの影響力やべえッ
ミステリアスな展開で楽しく読めました!乙です!

943 ◆iL739YR/jk:2018/11/05(月) 07:44:57 ID:/6qXSx320
トーナメント決勝戦、まとめるのに苦労しております。
遅くなり申し訳ありません。
平成のうちには完結できるようがんばります。

944名無しのスタンド使い:2018/11/24(土) 00:24:43 ID:tTHr2Zjc0
そうか平成ももう終わるのか‥‥。オリスタ、来年で10周年‥‥

945名無しのスタンド使い:2018/11/26(月) 22:50:31 ID:pox8ZypY0
かつて大学図書館から避難所に書き込んだら同門オリスタ民とID被ったワイももう三十路間近です

946名無しのスタンド使い:2018/11/27(火) 01:27:02 ID:IEq4jy5o0
あったなそんなん
両者で会話成立してたんだっけ?

947名無しのスタンド使い:2019/05/16(木) 09:32:00 ID:sGi7qCgI0
波紋の力で高齢出産も余裕……だったのかな

948名無しのスタンド使い:2019/05/16(木) 09:32:22 ID:sGi7qCgI0
スレまちがえたァ

949 ◆iL739YR/jk:2019/08/15(木) 09:27:32 ID:/59WarvE0
大変ご無沙汰しております。

所用で手が付けられず、令和に突入してしまいましたが、
このお盆休みでなんとかトナメに一つの結末を迎えさせたく尽力しております。

もしまだ覚えている方がおりましたら、もうしばらくお待ちください・・・・

950名無しのスタンド使い:2019/08/15(木) 14:19:00 ID:2nOPZZDc0
待ってます

951 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:30:46 ID:2u1jVTF.0
とりあえず序盤だけまず投稿していきます

952 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:31:19 ID:2u1jVTF.0
それはどこかほの暗い地。
体躯の良い二人の男が対峙していた。

『……何故だ……何故こんなことをしたぁ!』
そう叫ぶ男の足元には老若男女問わず血を流し、肢体を切り刻まれた無数の亡骸が転がる。

『これは必要な犠牲なのだ、我が友よ……』

『こんなこと……許される……わけが……』
そうゆっくりと吐き出すようにつぶやくと、その男もまたゆっくりと地に倒れ込んだ。

『物事は円。回転したならば……友よ、また会おう……』

オリスタ優勝者トーナメント 決勝戦
【ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン】
開幕

953 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:31:44 ID:2u1jVTF.0
STAGE1:軍基地

「AOT部隊にアメリカ軍にトーナメント運営、それに歴代参加者たちの乱戦か……こりゃ酷い……」

乱入者たちを交えた混戦は米軍基地を壊滅状態に追い込んだ。
そんな暴挙を許すはずもなく、アメリカもいよいよ国力を上げてトーナメントに介入してきた。

「この状況では……決勝戦どころではないな」

死地と化した戦場。そこに両対戦相手が無事に生存しているかももはや定かではなかった。

【ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン】
STAGE1:軍基地

勝者:なし(両者生存不明)

954 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:32:08 ID:2u1jVTF.0
STAGE2:超高層ビル

「これで決める……ディメンション・トリッパーァァァ!!」

「望むところだ……ロォォォド・トリッピンッ!!」

高層ビルの屋上。加速する拳と拳がぶつかりあう。
その衝撃に立会人の視界も大きく歪み……後には何も残ってはいなかった。

「ふむ……純粋なぶつかり合いでもこうなりますか……」

【ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン】
STAGE2:超高層ビル

勝者:なし(両者消滅)

955 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:32:42 ID:2u1jVTF.0
ジリリリリリリリ!

けたたましい目覚まし時計の音に三船重兵衛は目を覚ます。

「またこの夢か……」

決勝戦を前にした重圧からか、重兵衛はたびたび悪夢を見た。
決勝の舞台で繰り広げられる激戦。
対戦相手の姿も細部の情景もはっきりとは見えないが、おぼろげには浮かんでくる。
米軍基地での乱戦、高層ビルを駆け巡るタイマン。
状況は違えども、いずれの結末も迎えるのは破滅のビジョン……

「僕に何をしろっていうのさ……」

重兵衛は汗ばんだ自分身体にこもる熱を、確かに感じていた。

【ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン】
FINAL STAGE:採掘場

「わたくし、今回の立会人を務めます『ブロンディ』と申します」

夜の闇に包まれた採石場。
その闇と同じほど深く黒いスーツに身を包む筋骨隆々とした男性が深々と頭を下げる。

その前に対峙するのは二人のスタンド使い。
星明りのみが彼らを優しく照らす。

もはや見慣れた柔道着とグローブの戦闘スタイルで構える青年
三船重兵衛/ディメンション・トリッパー

迷彩柄の軍服に身を包んだ黒人の男
デズモンド・ウォーカー/ロード・トリッピン

「勝負内容はシンプルにタイマンでのぶつかり合い。どちらか一方が戦闘不能になるまで勝負していただきます。なお、降参や敵前逃亡等、戦闘続行不可能な状況と判断した場合はその限りではございません」

一時の静寂が了承の印かと、立会人は言葉を続ける。

「それでは、勝負開始です」

956 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 10:33:44 ID:2u1jVTF.0
とりあえず景気づけの意味で投稿しました

今日中には完結できるように尽力します

957 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:14:06 ID:2u1jVTF.0
「それでは、勝負開始です」

黒スーツの男が静かにそう宣言した直後、二人のスタンド使いが揃って動き出した。

「拳銃(ハンドガン)!」
「しゃあ!」

二人の手から飛び出したのはベアリング弾。
かたや重兵衛の手からはディメンション・トリッパーの能力で加速されたもの、
一方ウォーカーの手からは指に走る滑走路に沿って加速されたものが、
どちらも真っすぐと夜闇を割いて飛んでいき、宙でぶつかり合う。

牽制の射撃の間を突くように、二人はまたも同時に飛びかかる。

「砲弾(キャノン)!!」
「おりゃぁ!!」

グローブごと加速された勢いで殴り掛かる重兵衛の拳と、滑走路を滑るように加速されたウォーカーが蹴り込んで来る脚が、骨肉を軋ませて激突する。

「おいおいおいおい、これってもしかしてよぉ〜」

「えぇ……どうやら、僕と貴方は……」

「「同じタイプのスタンド使い……」」

「俺もよ、これまでいろんなスタンド使いに会ってたけどよぉ、ここまで似たような能力にお目にかかるのは初めてだぜぇ〜」

「僕もです。まさか牽制手段のベアリング弾さえかぶるとは思ってもいなかった」

触れたものを加速する能力。
同じような能力、同じような戦略。
これまで何かを成し遂げようと精進してきた重兵衛には分かる。
同質だからこそ相手もまた精進し、鍛え上げられた力の持ち主であることが。

「(これは……楽な勝負じゃないな……)」

958 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:14:48 ID:2u1jVTF.0

*******************************

「探しましたよ…『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』……」

戦場から少し離れた岸壁。
夜風を受けて勝負の行方を見守る一人の紳士『血塵の(レッドミスト)モイスチャー』に向かい、ある女性が話しかけた。

「お待ちしていましたよ、『クリームヒルド』さん……」

「全てお見通しなら話が早い。説明していただけますね?」

「いいでしょう。どうやら我々程度の異分子の介入は『あのお方』の希望らしい」

レッドミストモイスチャーはそう呟くと、クリームヒルドへ視線を向ける。

「知りたいのでしょう? このトーナメントの目的……『あのお方』の意思……そして、『沫坂』さんがどうなったのか?」

「……ええ」

「沫坂さんは『あのお方』の意思によって、この世界へ帰ってくることができました。彼の力には『あのお方』も注目していましたからね」

「『あのお方』……とは、トーナメント運営組織のトップのことですね?」

「はい、これまでのトーナメントは全て『あのお方』の意思で開催されてきました。そして、今、やっとその目的が遂げられようとしている……」

レッドミストモイスチャーが光の球を一つ戦場へと投げ込んだのは、その言葉を発したのと同時であった。

*******************************

959 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:15:34 ID:2u1jVTF.0
激しく疲弊する二人の男性。
互いに手の内の似通った二人のスタンド使いの勝負は混迷を極めていた。
ベアリング弾の打ち合いで互いの衣服はところどころ裂け、激しく打ち鳴らす加速した打撃の応酬に肉体も悲鳴を上げていた。

「これで決める……ディメンション・トリッパーァァァ!!」

「望むところだ……ロォォォド・トリッピンッ!!」

切り開かれた採掘場の岩場。加速する拳と拳が最後の激突をしようと迫り合う。
そこに飛び込んできた一つの光球に二人は気づくことができなかった。

激突するのは拳同士ではなかった。
二人の間に割って入った一つの光球に、彼らの渾身の打撃の衝撃は吸い込まれていく。

「え……!?」
「What!?」

不意な介入によって加速を中断され、体制を崩してその場に倒れ込む二人。
そして、光球は吸収した加速の勢いをそのまま得たかのように激しく回転し始める。

「ふむ……やはり、この程度の介入が適切でしたか……」
回転する光球を見つめた立会人『ブロンディ』が納得したように言葉を発する。

960 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:16:06 ID:2u1jVTF.0
「素晴らしい……これでやっと私の目的は達成される……」
ブロンディの手の動きに合わせ、光球は彼の頭上へと高く上がっていく。
そして、光球は周囲の光を集め、回転を増し、漆黒の闇の中に、さらに一段深く暗い闇の穴を掘り込むように、その痕跡を刻んでいく。

「闇の流法(モード)……『重集開門』!」

「立会人さん……? いったい何を……?」
「俺らの決勝戦のための花火……ってわけじゃなさそうだな」

突如として繰り広げられる光景に、流石の二人も動揺を隠せない。

「お二人には感謝します。おかげで扉は開かれた。これで私はたどり着ける……」
ブロンディの身体はゆっくりと浮上し、回転する漆黒の孔へと近づいていく。

「なんかやべぇ!」
何かを感じ取り、思わずベアリング弾を射出するウォーカー。
しかし、その弾はブロンディへと届かず、虚空で静止する。

「その弾では、私の扉は通れませんよ。ここに至るまでにどれだけの時を要したことか……」

「……どういうことだよ」
「たぶん……加速が足りないんです。あの捻じれた空間に突入するには……」

「その通りです、三船重兵衛さん。貴方方には本当に感謝しています。せっかくですから説明してさしあげましょう。私の計画…トーナメントの目的を……」

*******************************

時を同じくして、レッドミストモイスチャーとクリームヒルドも同じ光景を目の当たりにしていた。

「時空の扉を開くのが目的……?」

「はい、失われた過去を取り戻す旅に出かける。それが『あのお方』の目的です」
空間が捻じれ曲がり、回転を続ける虚空の孔をレッドミストモイスチャーは見つめる。

「スタンド使い同士が切磋琢磨することで、優れた力をさらに高め、あの扉を開くこと……そのためにトーナメントは開かれました。あらゆる能力、あらゆる思想、あらゆる生命体……様々な可能性を試行するために」

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961 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:16:58 ID:2u1jVTF.0
「私はスタンド使いでもなければ、人間でもありません」
ブロンディは言葉を続ける。

「ときに『柱の男』と呼ばれる存在です。私には友ほどの力はなかったが、幸か不幸か生き延びてしまった。そして、幾順も回転する宇宙の流れの中で、力を高めることができた。それは重力を操り、ついには異なる世界の可能性を呼び込むことができるほどに……」

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「つまり、1回戦で貴方を助けた沫坂さんは別の次元から呼び出された存在です。彼の能力は『あのお方』の目的を達成する鍵となる可能性がありましたからね」

「私も含めて…トーナメント優勝者は不思議な夢をみることがある。まるで『本来経験していないはずの2つの決勝戦』があったかのような、そんな夢を。それもおそらくは……」

「ええ、『あのお方』が素質あるものの可能性を模索し、別の世界の時間軸を介入させた影響でしょうね」

「でも、その能力でできることは『今』の可能性の上書きだけ。時間を操り、『過去』を変えられるわけではない……だから……」

「そう、『あのお方』は加速したときの流れに乗り、『失われた過去』へと行こうとしているのです……」

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「僕たちの力を利用して、過去へタイムトラベルするのが目的……?」

「そうです。触れたものを加速させる能力をもったお二人が、この優勝者トーナメントの決勝という舞台にたどり着き、その能力をぶつけ合うことで高め合い、とうとう時の流れを加速させた…これこそが運命……我が悲願は達成される!!」

「そんなお前さんの過去の尻拭いのためだけに、俺たちはあんなトーナメントで戦わされてきたってのかい?」
ウォーカーは拳を握り、感情を高ぶらせる。

「大丈夫ですよ…『そんな過去』はすぐに無くなる……」
そう言うと、ブロンディは時空の扉の奥へと消えていった。

962 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:17:40 ID:2u1jVTF.0
「ウォーカーさん、たぶん…このままあいつを過去に行かせるのはまずい気がします……」
「あぁ、同感だね。おまけに発端が俺らのスタンド能力ってのが気に食わねぇ」
二人は互いにうなずき合うと、決意を固める。
これはとんでもない厄災だ。このまま野放しにしたら、きっととんでもないことが起こる。だから……

「……ディメンション・トリッパーァァァ!!」
「……ロォォォド・トリッピンッ!!」

発現されたスタンドヴィジョン。
そのラッシュで周囲の岩を砕き、跳ね上げる。
宙を舞う無数の瓦礫に沿って滑走路を展開し、一筋の道を切り開く。
それはまるで時空の孔へと続く岩の道。

「砲弾(キャノン)!」
殴り掛かる勢いでますは重兵衛。その後ろを追うようにウォーカー。
二人は天へと延びる滑走路に飛び込み、旅立った柱の男のあとを追い、時空の孔の先を目指す。……が……

「ダメか……」
先ほどのベアリング弾と同様に、捻じれた虚空の中途で二人の動きが鈍り始める。

「普通にスタンド能力を使っただけじゃ…『時の加速』にパワーが足りないのか……?」
重兵衛は必至に手を伸ばす。しかし、すぐそこに見える孔の先には届かない。

「どうしたら……」
そのとき、少しずつだが、重兵衛の身体に勢い戻りつつあることを感じた。

「え……?」
重兵衛は感じる。これが『時』に『触れて』、『加速する』ということなのだと。

「やった…これならいけますよ。ウォーカーさん!」
そう叫び、振り返る重兵衛の後ろには、ウォーカーはいなかった。
彼は一人、滑走路から降り、大地から重兵衛を見上げていた。

「ウォーカーさん!?」
「重兵衛…俺さ、気づいたのよ。俺らって似た能力なんだけどよ、一つだけ『決定的に違う』ところがあんだよ」
指を1本立ててウォーカーは説明を続ける。

「俺は触れたものを『加速させる』滑走路を造る能力。お前さんは触れたものを『加速する』能力…この違い、分かるか……?」
ウォーカーは、時空の孔へと続く滑走路に力を込める。
真っすぐ、強く、重兵衛を孔の先へと『加速させる』ために。

「加速する時を掴めるのはお前さん一人ってことさ。だから…俺のスタンドのパワー持っていきな!」
「ウォーカーさん!!」

やがて重兵衛の周囲の景色は歪み、ウォーカーの姿も見えなくなった。

それを下から見上げていたウォーカー。
彼の眼には、重兵衛が闇を切り裂き、確かに孔を潜る光景が映し出されていた。

「がんばれよ…重兵衛……」

他に誰もいなくなった戦場で、ウォーカーはそう呟くと、力を使い果たした疲労感から静かに倒れ込んだ。

【ディメンション・トリッパー vs ロード・トリッピン】
FINAL STAGE:採掘場

勝者:デズモンド・ウォーカー / ロード・トリッピン
(三船重兵衛の戦線離脱のため)

963 ◆iL739YR/jk:2019/08/16(金) 13:20:59 ID:2u1jVTF.0

以上が、私なりに考えたトーナメントの一つの結末です。
長らくお待たせしてしまいすみませんでした。

賛否両論あるかと思いますが、トーナメントという企画に対する答えとして
このような形を取らせていただきました。

これから先の話は、本来のトーナメントからかけ離れたものとなるので
また別の機会に単発SSとして書けたらと思っています。

以上、お粗末さまでした。

964名無しのスタンド使い:2019/08/17(土) 22:59:35 ID:RFviAB5w0
おお、ずっとお待ちしていました
なるほど…これも終わり方、というか1つの区切りなんですね 個人的にはとても好きです
私はまだ新参者でトーナメントをリアルタイムで追った経験は無いのですが、何か感慨深いものがありますね
そして単発ssも楽しみにしています 乙でした

965名無しのスタンド使い:2019/08/18(日) 04:43:07 ID:AlNl.WG.0
うおお……
なんかすごい展開のまま終わったというか
終わってねえ!ここからが始まりだ!だな!

実際こういう「なんとなくみんな意識したり妄想したりしてるトナメの開催目的や運営について」ってのは
誰かが「それはこうです」と断定してしまうのは一種のタブーというか、そこに触れるのを避けてたとこはあるし
その一方で、それぞれの書き手が各自それぞれ小出しにしてたせいで回を重ねる毎に書くのが難しくなってたのはあると思うんだよね

だからiL739先生が「私なりの」というのを繰り返してるのもよく分かる気がするし、そうしながらも敢えてそこに踏み込んだ勇気には敬意を表する!

乙でした!

966名無しのスタンド使い:2021/06/06(日) 13:52:48 ID:q52/VD2c0



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