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皆鯖SS・イラスト投下スレ8

1名無しさん:2014/06/26(木) 14:02:01 ID:tAdvei/s0
このスレは「みんなでかんがえるサーヴァント」スレで作成されたキャラクターに関する
自作SSや自作絵を晒すスレです。
セリフ改変や本編とのクロスーバーなど、大ネタ小ネタ大歓迎。

2ストイシャVSギルガメッシュ:2014/06/28(土) 19:01:57 ID:.IJTh/6Q0
2体の英霊が向かい合う

1体は金色の鎧に身を包む黄金の騎士

英雄王ギルガメッシュ

この世の全てを得た王の中の王

対して向かいあうは優れた体格の英雄

第五次聖杯戦争のライダーのクラスに現界したセルビア民話の勇者・ストイシャである

「貴殿が前回の勝者にして聖杯の所有者に相違ないな?」

「誰に口を利いている。聖杯が我の、この世のすべての宝が我の財であることなど今更貴様に問われるまでもない」

英雄王の返答に対し、ストイシャはかすかに笑った

その表情に少しイラつきを覚えた英雄王はスレイシャに問いかけた

「貴様は一体なんのために聖杯を求める?我が財を奪おうとするからにはそれ相応の理由があるんだろうな?」

その問いかけに不敵に笑って返す

「俺が欲するのは聖杯ではない。そんなものはマスターにでもくれてやる。理想、悲願があるとすればそれを得る過程がすべてだ」

3ストイシャVSギルガメッシュ:2014/06/28(土) 19:07:32 ID:.IJTh/6Q0
「ほう。では、聞いてやる。雑種よ、貴様の理想、悲願とはなんだ?なにを掲げて我の前に立つ」

「俺はな英雄王よ。三匹の竜を倒して酒と飯を得た。そして、帝竜と戦い最高の兄弟を得た。
 そんでもって、三匹の竜の国を攻め落とし、竜に攫われた姉貴たちを取り戻したんだ。」

「なにが言いたい?言うならばはっきり言え」

「俺は戦って、戦って、戦った末に多くを得た。故にこの聖杯戦争にしてもそうだ。より強き者と戦ってこそ得る者は大きい!間違いなく貴殿は最強の英霊。
その上、聖杯の所有者ときている。最強の英雄に勝ち、得られるものは考えうる限り至高の宝、万能の願望器。これが笑わずにいられるか!最高の昂りよ!!」

「戦い得ること……それ自体が貴様の願望か……。ならば、戦いの中で願望を抱きながら……」

英雄王の周りの空間が歪む。その宝具、宝具群『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』こそ英雄王が最強たる所以

一つ一つが必殺の魔弾。くらえばひとたまりもない

「――散れ」

4ストイシャVSギルガメッシュ:2014/06/28(土) 19:09:50 ID:.IJTh/6Q0
ストイシャは放たれる寸前で『竜王の槌矛』を持ちあげ、放たれた直後に振るう。

魔弾を槌矛を使い撃ち落とし、受け流し、身を素早く動かして回避した。

「随分と芸達者なものだな。その槌矛も本来なら宝具に足る逸品なのだろう。だが……」

それだけのことを行っても、なお魔弾を全て回避することは出来なかった。

「手を尽くそうと、我が財の数を前にすれば手が足りないだろうよ」

肩を魔刃が裂き、背中には聖剣が突き刺さっている。

満身創痍、それが今のストイシャを表すにふさわしい表現だった。

5ストイシャVSギルガメッシュ:2014/06/28(土) 19:10:45 ID:.IJTh/6Q0
「宝具もなしに我が一撃を防ぎ切ったのだ誇れよ。せめて全身全霊を持って沈めてやる」

勝利を確信した英雄王の背後から現れる宝具群。その数は先ほどとは比較にならず、有に百を超える。

「なぁ、英雄王よ……一つ尋ねていいか?」

「なんだ?今更命が惜しくなったか?」

「貴殿には心を通わした友がいたか?」

途端に英雄王の顔から余裕が消え、表情は真剣そのものになる。

「何がいいたい?」

「俺は一国の国王になったが、貴殿のような財は持っていなかった。だが、それでも俺は満足だった。なんせ、兄弟がいたからな」

「ごちゃごちゃと雑種が……この世界の王たる我に自慢話か……」

「英雄王。俺は友情はどんな財よりも大切な宝だと思う……」

そんなことは英雄王自身も理解している。

唯一無二の盟友を失った時から

「なにを言うかと思えばそんな戯言で……この我の時間を奪うなど万死に値する――失せろ!雑種!!」

冷静さを失った英雄王の背後から百を超える魔弾の雨が放たれる。

6ストイシャVSギルガメッシュ:2014/06/28(土) 19:11:59 ID:.IJTh/6Q0
満身創痍の勇者に対してあまりにも絶望的な絶対的物量

こうなれば数発避けようが外れようが関係ない

だが、それでも勇者は笑う

「恐ろしい宝具だ。一人でこれを扱うとは……。俺達が倒した軍隊の兵とどちらが多いかな……。なぁ『兄弟』!!」


舞い上がる砂煙……。そこに立つものはいない。あれだけの宝具をくらえば塵一つ残らないだろう。

勝利を確信した英雄王がその場を立ち去ろうとする。だが、

「英雄王よ!まだ戦いは終わってはいない!!」

上空からの声に反応し、見上げるとそこには

竜に跨った勇者と空を飛ぶ竜帝

これこそ、ストイシャがライダーに現界した所以であり友誼を交わした義兄弟『劫炎帝竜(ムラデン)』

宝具でありながら、自由行使が出来ず、危機的状況でなければ召喚に限り応じる。

非常に使用しづらい宝具ではあるが、一度召喚すればこれ程強力な宝具はない。

ムラデンの火炎で王の宝具を焼き尽くし上空へと逃れたのだ。

ストイシャには英雄王ほどの財は無い。

しかし、かつて英雄王に唯一無二の盟友がいたようにストイシャにも頼れる『兄弟』がいた。

「この我を上から見下げるか、蛮行も程が過ぎるぞ雑種!!」

苛立つ英雄王に向けて勇者は帝竜とともに突撃する。

「さぁ、英雄王。第二ラウンドだ!至高の財と最高の友どちらを持った者が勝ち、その果てに何を得るか決そうではないか!!」

7僕はね、名無しさんなんだ:2014/07/01(火) 20:40:08 ID:uCLwpq3E0
オーマイガッ。新生皆鯖板の初SS投下をされてしまった。
負けずにがんばろう。

8名無しのSS屋:2014/07/02(水) 20:55:48 ID:TfTn.bdI0
皆鯖板が復活しましたね。ここらで私も長編の続きを投下したいと思います。
閑話ですので短いですが、ご用とお急ぎでない方はどうぞご覧下さい。

注意!!

あるサーヴァントがゲスト登場していますが、これでもかと言う程設定をぶっ壊しています。
この注意書きで不安に思った方はどうぞプラウザバックしてくださいませ。

9運命開幕・流星の英雄達 第閑話:2014/07/02(水) 20:56:57 ID:TfTn.bdI0
「お兄ちゃんー」
誰かが誰かを呼ぶ声がする。そう言えば、セイバーとランサーのマスターだった少女には、お兄ちゃんと呼ばれていたと頭の片隅で思った。
「お兄ちゃんー。起きろー」
悪いが、もう少し寝かせてもらおう。何せ投影の後で身体中が石になったように重くなったのだ。暫く休んでも罰は当たらないだろう。
……俺は何で投影なんてしようとしたんだろう。瞬間的に意識が覚醒した。
「そうだ!サーヴァント!」
目を見開いて飛び込んできた光景に、言葉を失う。

筋肉。
鉄のような筋肉が、巌のような筋肉が。大木のような筋肉がそこにあった。
「ちゅーしちゃうぞー」
筋肉質な髭面の見知らぬおっさんが唇を突き出している。その光景だけでも気が遠くなりそうだが、おっさんが着用している物体を見て意識の十分の九が幽体離脱した。

体操着である。
ブルマである。
公立学校からも私立学校からも姿を消した『遙か遠き体操着(ブルマー)』である。
その宝具がおっさんの下半身を包み込んでいる。ブルマの特性によって下半身の形状が浮き彫りとなり……

「武琉魔(ブルマ)のたたりじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

絶叫が呼び水になったようにもう一人の人物が出現した。
「ハラショーサンボ。セクシードージョーです。デッドエンドに愛の手を」
「タイガー道場ミナサババーション始まるよーハラショー」
胴着を着た何処かで見た人と、体操着とブルマを装備した見知らぬおっさんが二人して挨拶する。
「だっだっだ、誰だその人は?」
「もー、士郎ったら、人に指差しちゃいけないのよ。弟子二号だってば」
「ハラショー」
二号って事は一号も居るのか。まさか某ダブルなヒーローのように姿もそっくりとか……
「ハラショー。姉弟子は実年齢十八才以上の合法ロリでありまーす」
「そっちがよかったぁぁぁ!つか今すぐ代われぇぇぇ!!」
「いやー。ダメダメ。元々このネタやりたくて長編書き始めたようなもんだから」
「書いた人、何考えて生きてんだ!!」
「ハラショーサンボ!!私はイリヤー・ムーロミェツです。身長は192cm、体重はヒ・ミ・ツ」
「イリヤ違いぃぃぃ!?おそれイリヤのムーロミェツ!!」
「時間が無い!無茶した士郎を現実世界に戻すのだ弟子二号」
「ハラショー!!では同じくロシアン英雄にちなんでスクリューパイルドライバー!!」
やめてくれ!!と言う前に、不思議な夢は消えていった。これは夢だ。夢の筈だ。夢に違いない。うん。
……たのむからそうであってくれ。

10運命開幕・流星の英雄達 第閑話:2014/07/02(水) 20:57:39 ID:TfTn.bdI0
「うっ、う〜む……痛っ」
身体中が筋肉痛を起こした身体を更に酷使したように痛い。
「いい寝起きね。衛宮君」
……痛いのは身体だけじゃあ無い。視線が、遠坂凛の視線がちくちく痛い。
何で、仁王立ちして腕を組んでいるんだ。睨み殺すような勢いで睨んでいる。
「治療は済ませたわ」
「そ、そうか」
ありがとう、と言う前に、凛が口を開く。
「―――っ信じられない!普段使っていない魔術回路に無理矢理魔力が通った形跡があるわ。あれじゃ下手をすれば暴走をおこして死ぬ恐れまであるのよ!?何考えてんのよ!?」
「えっ、そうだったのか」
凄い剣幕で詰め寄る凛に対し、士郎は「ああそうか」とでも言うように頷いた。
「あなたねえ、分かってるの?例えていうなら何年も動かしていない機械の電源を入れて酷使させたようなものよ。私の治癒魔術が間に合ってなかったらどうなっていたか……」
ため息をつく凛の言葉に、今度は士郎が首をかしげた。
「ちょっと待ってくれ。俺が酷い状態になったっていうのは分かる。だけど俺の身体を治したのはキャスターじゃないのか?」
「ん、ああ。そのことなら―――」
「私が凛に頼んだのよ」
光の粒子が空気中で形作られ、それから現れた女性はいつも通りの様子で結論を述べた。
だが、士郎は何となくと言った様子で疑問を口にした。
「―――キャスターは治癒が出来ないのか?」
「できないわ」
一言だけで話を終わらせると、キャスターは間髪を入れずに口を開いた。
「もういいわ。士郎は起きているわよ」
途端に襖が開いて、三枝由紀香が入ってきた。氷室鐘と蒔寺楓も続く。楓が口を開いた。
「スパナさあ、大丈夫かよ。あの光る剣が消えた途端に倒れたんだぞ」
心配してくれているらしい言葉に、士郎も返した。
「上手くいったと思ったんだけどな。やっぱりまだ無理だったか」
「当たり前でしょう宝具の投影なんて」
キャスターの言葉に凛が再びため息をついた。
「はあ……それでアーチャーの目を誤魔化して何とかしようって事?まあ、結果的に成功はしたけれど、無理に決まっているじゃないの。投影なんて効率の悪い魔術でしかも英霊の宝具モドキを作るなんて」
「むっ、モドキじゃなくて本物に近い物を作ろうとしたんだぞ」
「余計無理に決まってるでしょうが」
呆れる凛の姿を見ている内に、士郎は違和感に気がついた。妙に、部屋が暗い。雰囲気は柔らかいが、これは光源自体が少ないというか……
「なあ、今何時だ?」
由紀香が無言で部屋の隅に置いてある目覚まし時計を見せた。既に時刻は夜半だ。

11運命開幕・流星の英雄達 第閑話:2014/07/02(水) 20:58:43 ID:TfTn.bdI0
「もうこんな時間かよ!悪い、三人とも。今から送っていくから「その必要は無いわ」……ん?」
「三人の家族には暗示をかけて、しばらくここに外泊するようにしたから」
キャスターはいつも通りの無表情でそんな事をのたまった。
一瞬、空気が強張り、固い口調で士郎が呟いた。
「……………………それって、洗脳」
幼稚園児とか小学生ならともかく、自分達の年齢はそれなりに年頃だ。外泊同居なんて絶対に認められない。
認めさせるには聖杯戦争の事まで話さなくてはならない。そんなことが出来るわけが無い。
だからこそ、士郎は自分の令呪を三人に譲ったのだ。
「しかたないでしょう。三人を守るならこれが一番よ。ご家族にかけた暗示は軽いものだから後遺症の心配は無いわ」
学校も休校状態だし、丁度良いでしょう。というキャスターに、それでも士郎は食い下がった。
「三枝達の意思はどうなるんだよ」
「あっ。私達なら大丈夫だから」
士郎の咎める言葉に、由紀香は手を振って大丈夫というジェスチャーを返した。
「色々考えたのだが、やっぱり相手が相手だからな。正直に言えば家族が襲われる可能性は省きたい」
続く鐘の言葉に、士郎は今度こそ何も言えなくなった。
血の繋がりを持つ肉親がいないせいか考えていなかったが、三人がそれぞれの家にいることで、家族や身内が襲われる事は充分にありうる。
それを考えればやり方はどうあれ選択としてはベストだろう。
「……分かった。だけど聖杯戦争の間だけだぞ」
「ほうほう。聖杯戦争が終わった後もいてほしいのかね?」
「なっ……」
チェシャ猫のような表情で笑う氷室鐘を前にして、士郎はようやく自分がからかわれたのだと気がついた。
「あのなあ「いいかバカスパナ!」」
ずおんっと擬音がつきそうな迫力で楓がにじり寄った。
「エロいことしたらぶちのめした後で人生を破滅させたあと、もういっぺんぶちのめすかんな!!」
「んなことするかっ!」
「いーや!この美脚を前にして何もしないわけが無い!男は狼なのよ!気をつけなさーい!!」
「俺は変態か!言っとくが俺は何もしないぞ!誰がなんと言おうが何もしないぞ!」
「女には何もしない……ハッ、イイ旅ホモ気分!会長との仲に関する噂は真実だった!!」
「なんでさ!!」
(主に楓が)わーわーと騒ぎ、それを士郎が否定するという漫才のような空間が出来上がった。
その空間を打ち破ったのはいつもの冷静なキャスターの一言だった。
「士郎」
「……むっ。なんだキャスター?」
「凛もここに住むそうよ」
「へーそうか……なんでさっ!?」
「私の家はもうマークされてるのよ。それに、アーチャーとの戦いでボロボロになっちゃったし……」
「だからって、何で俺の家に」
「……じゃあ、私が旅館か何かに宿泊して、そこが敵に襲われてもいいって言うのかしら?」
「それは……」
確かに、宿に泊まることで被害が拡大する恐れがあるのならば仕方ないかも知れないが。

「だけど、女の子達と同居かあ……」
何処の恋愛ゲームだろう。学校や近所の知り合いにでもばれたら大騒ぎだ。
……学校?
……知り合い?
大事なことを忘れているような感覚は、玄関先からの元気な声でようやくかみ合った。

「士郎、ただいまー!!お姉ちゃんお腹すいたぞー!!」

12運命開幕・流星の英雄達 第閑話:2014/07/02(水) 20:59:21 ID:G8XFcYLU0
衛宮の表札がかかった武家屋敷。
この家に来るといつも安心する。ついでにお腹が減る。
穂群原学園英語教諭。藤村大河はそんなことを考えながら玄関先に立っていた。
学校の不発弾爆発事件の事後処理に追われ、随分とこの家に来る事が出来なかった。と、言っても数日の話だが。
電話で桜ちゃんも誘ってみたが、何故か元気が無い様子で遠慮してきた。
「士郎がまた鈍感だからかな?むう。そうだったら必殺の秘剣で……」
その時、家の中から複数の人の話し声が聞こえることに気がついた。
「……頼む……隠れてくれ……」
「隠れろって……何処に……」
「そのフジネエ……って誰」
「あれー?士郎お客さんが来てるのー?」
ガラッと戸を開ける。

そこには2年A組の三枝由紀香、氷室鐘、蒔寺楓、遠坂凛がいた。


「がおー(訳:待てえぇぇぇぇぇぇ)」
「待つかぁぁぁ!!」
「がおー(訳:待たないと愛刀で痛く殴る。待ったら愛情を込めて殴る)」
「どっちにしても体罰だろ!教育委員会とPTAに訴えるぞ!」
「がおー(訳:ここは学校じゃ無いのでモウマンタイ)」
「この馬鹿虎あああああ!!!!!」

最早人語を話さなくなった冬木の虎こと藤村大河と衛宮士郎の追いかけっこは衛宮邸の庭でグルグルと周回しながら行われていた。縁側に座っている衛宮邸女性軍は、それを傍観するにとどまっている。
「藤村タイガーもよく回るよな。回りすぎてバターになったらホットケーキ作ってくれ。由紀っち」
「その絵本今は売られてないんだよ」
「いや、最近復刊されたと聞くぞ」
「何の話をしているのよ」
たわけた話をしながらお茶をすする凛達の前で大河がとうとう士郎を捕まえ、鬼ごっこは終わりを告げた。
野獣相手に人間では流石に敵わなかったらしい。
「さ〜あ、被告人衛宮士郎、君は完全に包囲されている。降伏すれば次第によってはお仕置きが重くなるかもしれん。さあ、無駄な抵抗はやめて大人しく自首しなさい」
「なんでさっ」
支離滅裂なことを言いながら鼻をぐりぐりと虎竹刀で突く大河に対し、士郎は反論の言葉を上げようとするが、完全な虎となった彼女にそれは逆効果だったらしい。肩を揺すられガクガクと身体がスイングした。
「だってだってなんでこんな夜更けに女の子がいるのよーう!?はっ、後輩巨乳美少女に、セクシー女教師だけでは飽き足らず、眼鏡ッ娘、ほにゃッ娘、貧乳ッ娘ツートップまでコンプリートする気かえー!?」

―――瞬間、空気が震えた。あまりの冷気に。

「あらあら、眼鏡ッ娘とほにゃッ娘は分かるとして、貧乳ッ娘とは誰のことでしょう?」

13運命開幕・流星の英雄達 第閑話:2014/07/02(水) 21:00:57 ID:TfTn.bdI0
「が……がお」
人間は一人で場の空気を冷却することができるらしい。ショックで再び人語を失った大河は、自分が滅びの言葉を口走ったことを理解した。
真っ黒な笑みを浮かべる遠坂凛から逃げようとする大河だったが、その身体を誰かが羽交い締めにした。
「がおっ!?」
「貧乳はステータスだ。希少価値だ。と言われつつも黒遠坂(冬木のブラックキング)が怖いので言い出しっぺの責任は取ってくれよ。G・T・O(グレート・タイガー・女教師)」
背中を拘束する蒔寺楓の存在によって機動力を損なった虎は、迫り来る冬木の用心棒怪獣相手に、弱々しく威嚇した。それしかできなかったが。
「が……お」
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「がお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!!!!!!!」


「やまもなく−、たにもなくー、なにもー、みえはーしなーい」
ブルブルと震えながら、何処かで聞いたような歌を口ずさむ大河は机に突っ伏していた。
「……分かったわよう。この家に住んでいいからもうやめてよう……ふふふふ言わないでえ……」
「ありがとうございます。藤村先生。衛宮君。これで私達は住んでいいそうですよ。これからよろしくお願いします」
丁寧に丁寧に猫を被り、こちらを振り返った遠坂凛は、まぎれもなく悪魔の顔をしていた。

あー、グッバイ憧れの遠坂凛。ハローあかいあくま。
遠坂凛に抱いていた幻想がブロークンファンタズムした士郎だが、それ故に忘れていた。
短期間だが同居する人物(正確には人間ではないが)が、もう一人いることを。

「大丈夫かしら?ほらお茶でも飲みなさい」
「うー。ありがとう……ギブミー水分……」
ぬるいお茶を一気飲みした大河の横に出現した美女は、無表情に夕刊を読んでいる。
「新觥のホテルで射殺された死体発見……世の中物騒ね……気をつけないと」
「うんうん。それがいいわよう。十年くらい前にもこの街物騒だったんだ……か……ら、もがっ!?」
「静かにした方がいいわ。近所迷惑よ」
人間の言葉が途切れ、それが虎の咆吼になる前にキャスターが口を直接押さえて制止した。手を振り払い、大河が半分パニックになりながら口を開いた。
「だっ、誰よう!」
「居候よ。約二週間で去るわ」
「ダメ!ダメ!ダメー!!どうせ士郎のことだからこの人が行き倒れたところを拾ったとかそんなんでしょ!」
「じゃあそれで、私は行き倒れたところを士郎に助けられたという設定で」
「設定?今設定って言った!?ちゃんと説明してー!!」

「―――仕方ないわね―――*<#++〜*」

キャスターが何かを詠唱すると、大河の身体が硬直し、気をつけの姿勢のままで寝息を立て始めた。
「とりあえずは眠らせたわ。後で認識を少々操作しましょう」
「は〜〜〜〜〜」
眠る大河と、術をかけるキャスターを前に士郎は大きくため息をついた。
この調子でいったら何人に暗示をかけなければならないのだろう。
これからのことを思い、士郎はますます気が重くなった。

「……それにしてもあの夢は、あのブルマは一体……」

14名無しのSS屋:2014/07/02(水) 21:05:58 ID:TfTn.bdI0
……書いちまったよ。おそれイリヤのムーロミェツ。
作成時に誰かがブルマンなネタを一レスだけ書いていたのが頭にこびりついて
離れずに、とうとう書いてしまいました。英霊プーチンの手先に殺されかねない
名無しのSS屋です。ちなみにこのネタを書きたいが為に長編を書き始めたというのは
ガチです。

何にせよ皆鯖板復活おめでとうございます。これからも長編完結目指して頑張りますので、
できればSSの感想をお願いします。それでは。

15名無しさん:2014/07/03(木) 22:36:15 ID:MEFpQri20
皆鯖復活オメ。そしてお久しぶりです。

今回は日常回で一休み。そして黒豹の貴重な虎への勝利シーン。
次回も楽しみにしております。

P.S. 先ほど軍服を着てトカレフを持った女性がそちらに行きました。ご自愛を。

16滅竜道場:2014/07/18(金) 19:21:17 ID:.Pmg46fw0
ストイシャ「慎二、 勇者は竜にしなくてはならないことがある!!」
慎二「ストイシャ様!!それはなんですかい」
ストイシャ「それは竜をSlayすることだ!」
慎二「スゲエ! スゲエよ ストイシャ様!」
ストイシャ「見本を見せてくれるわ」

ストイシャ「ファフニールなどスレイしてくれるわ!!」
ファフニール「アーーーーーーーーーッッッ」

ストイシャ「関羽などスレイしてくれるわ!!」
関羽「アーーーーーーーーーッッッ」

ストイシャ「ヴク・グルグレヴィッチなどスレイしてくれるわ!!」
グルグレヴィッチ「セルビアアァァァァッァァァァァァァッァ」

ストイシャ「応龍などスレイしてくれるわ」
黄帝 「イヤーーーーーーーー」

ストイシャ「蚩尤などスレイしてくれるわ」
蚩尤「アーーーーーーーー」

ストイシャ「エリザなどスレイしてくれるわ」
エリザ「イヤーーーーーーーー」

ストイシャ「アルトリアなどスレイしてくれるわ」
アルトリア「アーーーーーーーーッッ」

ストイシャ「ORTなど余計にスレイしてくれるわ」
ORT「アーーーーーーーーッッ」

慎二「出たぁ〜!ストイシャさんの竜種殺し(ドラゴンスレイヤー)だ!!」

17名無しさん:2014/07/18(金) 19:23:58 ID:.Pmg46fw0
初のSS投稿
たまたま「ドラゴンレイパー」に見えただけで思いついた小ネタ
でも、慎二×ストイシャは本格的に書きたいと思ってる

18名無しさん:2014/07/19(土) 05:56:10 ID:aQSaDDgU0
本当にここの慎二は誰かの舎弟になるなw

19木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:55:34 ID:q6uSoAFk0
 セイバーとは、数多の英雄豪傑が集う聖杯戦争において最優と称される剣士のクラスだ。
 というのも、神話や叙事詩に語られる英雄の武器として聖剣や魔剣の類がメジャーであること、そしてそれを持つ英雄は往々にして実力者であることが挙げられる。
 言ってしまえば、主役級の実力者が多く名を連ねるクラスがセイバーなのだ。

 例を挙げれば、聖剣エクスカリバーを持つアーサー王や、その部下である湖の騎士ランスロット、太陽の騎士ガウェインといった円卓の騎士たち。
 同様に、フランク帝国を修めたシャルルマーニュ帝とその部下であるパラディンたちのような、名のある騎士たちは枚挙に暇がない。
 神話に目を向ければ、悪竜殺しの魔剣使いシグルドや、メデューサ退治で名を馳せたペルセウスのような剣士たちもいる。
 他にも“諸王の王(シャーハンシャー)”キュロス二世、巨人殺しの闘士ベオウルフ、日本最強の神殺しヤマトタケル……
 ざっと思いつく名前を挙げていくだけでも、セイバーというクラスに該当する英雄たちのレベルの高さがよく分かる。

 それだけではない。クラススキルによって付与される高い対魔力も、魔術師の戦争である聖杯戦争において大きなアドバンテージとなる。
 どんな状況でも、どんな相手でも、そつなくその実力を発揮する英雄たち。
 故に最優。
 幾度となく行われた聖杯戦争で、常に最後まで勝ち残ったという実績も頷けるというものだ。



 だが――――それを知っているからこそ、バーサーカーは戸惑いを隠せずにいた。

 バーサーカーは、理性と引き換えにその力を引き上げた狂戦士のサーヴァントだ。
 故に本来、まともな思考は一切できなくなるのが道理。
 しかし今回の聖杯戦争でバーサーカーのクラスに収まったのは、ケルトの魔人クラン・カラティン。
 ただ『怪物である』というだけの理由で狂戦士の座に宛がわれた『彼ら』の狂化適性は非常に低く、多少劣化こそしているものの、正常な思考力を残していた。

 だからこそ、『困惑する』などという狂戦士にあるまじき現象が起きる。
 無理もない。彼らの眼前に立つセイバーは、あまりにも最優という言葉からは程遠い有様だったのだから。

20木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:56:16 ID:q6uSoAFk0
 ひとまず、背は高い。
 体格も良く、そこだけは戦士らしいと評価できる。

 だが、装備があまりにもみすぼらしい。

 体を守る鎖帷子は、まだ戦いも始まっていないというのに砕けている。
 無理やり体に巻き付けたそれは、その巨体の右半分しか覆えていない。

 右腕に握る剣は、もはや剣と呼んでいいのかさえ疑問であるほどの有様だ。
 なんと、錆びている。
 刀身全体が赤錆に覆われ、刃物としての特性を完全に失ってしまっているのだ。
 左手で構えた盾だけはまともな代物のようだが、他の装備がこれでは盾の性能も推して測れるというものである。

 そしてなにより――――この剣士からは、一切の覇気が感じられないのだ。
 戦士にあるべき力強さという物が、微塵も感じられない。

 体は大きい。大きいが、それはただ大きいだけだ。
 評するのならば、ウドの大木。
 ただ大きいだけの、あまりにもみすぼらしい剣士がバーサーカーの前に立っていた。

「おまえ」「おまえはセイバーか?」「本当に?」「おまえがセイバーなのか?」

 バーサーカーの体のいたるところに位置する28の口が、次々に疑問の声を上げる。
 まさに怪物としか言いようのない光景だ。
 頭から、腕から、足から、臍から、胸から、ありとあらゆる部位から様々な声色で喋るのだから。
 だが27人の息子を取り込み、その肉体を自在に操る異能を持つ彼にしてみれば、この程度は造作もないことである。

 肝は据わっているのか、それとも恐怖で感覚が麻痺しているのか、セイバーは黙って赤錆びた剣を顔の高さに掲げて見せ、振り払った。
 いかにも、この剣が証拠である――――黙したまま、セイバーはそう肯定したのだ。

「そうか」「セイバーか」「おまえが」

 バーサーカーが、28本の棘槍を構える。
 槍というよりは棘の密集体という方が正しいその武器は、それを握るバーサーカーの肉体をも傷つける。
 だがそれを微塵も気にすることなく、バーサーカーは血を滴らせながら臨戦態勢に入った。

「ならいい」「死ね」

21木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:56:51 ID:q6uSoAFk0
 もとよりこの身はバーサーカー。
 そもそも頭脳を働かせるような性質ではなく、その上劣化した思考でこれ以上考えてもしょうがない。
 相手が弱い分には問題はないのだ。
 ただ、万力をもって仕留めてしまえばそれで終わりなのだから。

 大地を踏み砕き、バーサーカーが放たれた弾丸の如く突進する。
 否、弾丸などという規模ではない。あらゆるものを粉砕するこの猛進は、大砲の弾とでも表現するのが相応しいだろう。
 自らの血を撒き散らし。28対の腕と28本の槍を持つ怪物が躍り掛かる。

 ―――――28閃、同時攻撃。

 その一つ一つが必殺であり、28を合わせて必中と化す。
 並の英霊では防ぎ得ない、怪物の一撃。
 28の群体ではなく、28の『個』による攻撃がセイバーに迫る。

 対するセイバー、鎖帷子で覆われた右半身を前に向け、剣の切っ先を地面に向けて迎え撃つ。
 盾を持つ左腕は、前に突き出しつつも腰の高さまでグイッと下げて。

 かわし得ない、防ぎ得ない。
 木偶のようなこの剣士では、神代の怪物に対抗し得ない。
 次の瞬間には、28の槍がその身を貫いて果てるだろう。


 ―――――――――――その、はずであった。


「――――――――――!」

 歌うような音と共に、無言の一閃。いや二閃。

 巻き上げるように剣で10の槍を払い、
 押しのけるように盾で15の槍を払い、
 体捌きによって帷子で3の槍を受け流す。

 僅かに2つ、帷子を切り裂いた槍がセイバーの身を傷つけるが、あまりに浅い。
 じくりとした痛みが――――恐らくバーサーカーの能力であろう毒がセイバーを襲うが、耐えられない範囲ではない。
 セイバーの顔が一瞬だけ激痛に歪むが、損傷らしい損傷と言えばその程度。
 毒であるのならば長時間放置するのはマズイかもしれないが、それでも今のところは戦えないほどではないのだ。
 木端のようにはじけ飛ぶはずのセイバーが、バーサーカーの必殺を退けている――――――

22木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:57:22 ID:q6uSoAFk0
「ばかな」「貴様」「ふざけるな!」「こんなことが」「ありえない」「そうだ!」「ありえない」「ありえない!」

 バーサーカーの慢心、それは間違いなくこの現状を生み出した一因ではある。
 だが、それだけでは説明がつかない。
 たとえバーサーカーが慢心しようと、仮にセイバーが守りに長けた英雄であろうと、この状況はあり得ない。
 故にバーサーカーは困惑する。
 狼狽を隠しもせず、口々に言葉を零す異形の戦士。
 その姿を見て、あまりに不可思議なセイバーは――――

「―――――――――――――――」

 不敵に口元を吊り上げ、嘲るような視線でバーサーカーを見た。
 どうした、こんなものか――――目が、口ほどにそう語る。

「――――――ッ!」「舐めるな」「舐めるんじゃあない!」

 バーサーカーはその挑発に耐えられない。
 強者としての自負、戦士としての誇り、そして狂化による短絡的思考。
 明らかな格下に舐められるという屈辱に、耐えられようはずもない。

「我らを!」「クラン・カラティンを!」「舐めるなよ、雑魚がァァァァァァァァァ!!」

 そして再び始まる、バーサーカーの猛攻。
 その攻撃は明らかに精彩を欠いているが、怪物の戦闘とはえてしてこう言うものだ。
 ただ圧倒的な膂力に任せ、28の槍を振り回す。
 槍がかすりでもすれば毒血による激痛が相手の肉体を苛み、それでなくても28の槍が同時に襲い掛かってくるというだけで十分な驚異足りうるだろう。

 ―――――――だが、それでも。

 かすり『しか』しないのだ、バーサーカーの攻撃が!
 その毒血は、確かにセイバーの体力を奪っているだろう。
 だがあり得ない。どう考えてもこの現状は起こり得ない。
 何十何百という攻撃を、この木偶が全て凌ぐなどという状況があり得ていいはずがない。

23木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:57:53 ID:q6uSoAFk0
 ――――理由はある。
 バーサーカーには何一つとして理解できない理由は、確かに存在する。

 怒りに我を忘れたバーサーカーの攻め手は乱雑に過ぎる。
 それもある。
 それこそ理性が剥奪される高ランクの狂化なら、また話は違っただろう。
 だが低ランクの狂化によって思考が短絡的になっただけのこのバーサーカーは、通常のバーサーカー以上に無駄が多い。

 そもそもセイバーが守りに長けた戦士である。
 それもある。
 彼の戦闘スタイルは、ジッと耐え続けて反撃の機会を伺うカウンタースタイル。
 低ランクとはいえ見切りスキルを保有していることもあり、戦闘が長引くほどその守りは堅固となる。

 そして、これが最も大きな理由。
 この期に及んで、バーサーカーはいまだにセイバーの実力を見誤っている――――
 ……セイバーの保有する固有スキル佯狂は、自らのステータスをEランク相当と誤認させる特殊スキル。
 怒り狂うバーサーカーがこの秘密に気付けるはずもなく、彼らは未だにセイバーを脆弱な木偶の棒だと誤認しているのだ。

 獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすという。
 だがそれは、兎を狩るための全力だ。
 兎と馬の狩り方は同じだろうか。いや、そんなわけはない。
 倒すべき敵には適切な倒し方があり、それを間違えている限り真の意味での全力を尽くすことなど到底できるはずがない。

 今のバーサーカーの状況はそれだ。
 敵を兎を見誤り、その兎を狩れぬことに怒りを募らせている愚かな獅子だ。
 これではセイバーを倒せない。
 荒れ狂う槍は無様に空を切り、吠え猛る咆哮は虚しく響くのみ。

「おおおおおおおおお!」「このッ!」「このォッ!!」

 28の槍が、思い思いに突き出される。
 幾度となく繰り返した、必殺の槍撃。必殺のはずの槍撃。

24木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:58:27 ID:q6uSoAFk0
 ああ――――なんと、哀れな事だろう。

 このバケモノは、未だにそれを必殺だと思わずにはいられないのだから――――!

「――――――」

 7の槍を剣で払い、
 12の槍を盾で払い、
 9の槍を紙一重でかわして見せる。

 ――――もはや、かすり傷すら拒絶する。

 またしても成らない必殺にバーサーカーは歯噛みし、殺意と憎悪の雄たけびをあげる。

「ああああああああああ!!」「なぜだ!」「なぜ当たらない!」「この!」「このクラン・カラティンの槍が当たらない!」

 苛立ち紛れに振るわれた追加の一撃。
 セイバーはそれもするりと剣でいなし、流れるように距離を取る。
 槍を払う時、剣が歌うように高い音を発した。

 直後、剣に集まる魔力。

「なっ」「これは」「貴様!」

 ―――――膨大な魔力は剣の錆を剥がし、純色の魔力へと変換して刀身に取り込んだ。

 ぱり。
 ぱり。
 ら、ら、ら。

 ―――――ただの攻撃ではあり得ない、膨大な魔力の奔流がセイバーの錆びた剣に注ぎ込まれている。
 
 ぱり。
 ぱり。
 ら、ら、ら。

 ―――――赤錆びた剣が、その真の姿を露わにする。歓喜の歌を歌いながら。

 ぱり。
 ぱり。
 ら、ら、ら。

 ――――――――――ぱり。

25木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:59:00 ID:q6uSoAFk0
「させ」「るかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 開けた間合いを詰めるバーサーカー。
 だが、遅い。
 どうしようもなく、遅すぎる。
 セイバーは不敵に笑い、あたかも弓を引き絞るかのようにグイっと剣を固く握りしめ、後方で構えた。

 剣――――――赤錆が剥がれ、美しき刀身を取り戻した魔剣を。

 毒血の苦痛に脂汗を浮かべ、しかしそれでも好機に笑う。

「――――――――――――遅いよ、バーサーカー」
「っ」「なに?」

 初めてセイバーが口を開く。
 沈黙を保ち続けたセイバーの言葉に、バーサーカーの思考が一瞬停止する。
 その一瞬の空白に、魔剣の歌声が滑り込む。

 それは魔剣。
 沈黙の王子が振るう歌う魔剣。
 そう、彼の名は沈黙の王子ウッフェ。
 そして、二人の戦士を両断したというその魔剣の名は―――――――――!



「歌え――――――――――――――――――『赤錆鞘翅(スクレップ)』!!」



 ―――――――――――――瞬間、世界が両断された。

26木偶の剣士は無言で歌う:2014/07/22(火) 02:59:32 ID:q6uSoAFk0
「が」「はっ」「くそっ」「畜生め」

 バーサーカーの数多の顔が、思い思いの悪態をつく。
 もう、彼にできるのはそれだけだ。
 どんな異形の怪物でも、真っ二つに斬られてしまえば死に至る。
 その宿命からはクラン・カラティンでも逃げられず、故に両断された彼は消え去る定めにあるのだ。

「―――――――――――」

 セイバーは、ウッフェは、再び口を閉ざして剣の血を払った。
 歌う魔剣は再び赤錆に包まれ、勝利を讃えるように短く歌う。

「ああ、くそ」「負けたか」「勝てなかった」「悔しいな」「悔しいよ」

 バーサーカーが光の粒子となり、消えていく。
 両断され、倒れ伏すバーサーカーたちは空を見上げ、あるいはどこか遠くを見据え、言葉が宙に溶けていく。

「セイバー」「なぁセイバー」「歌えよ」「歌ってくれないか」「我らに歌を」「それで送ってくれ」
「――――――――――――――――――」

 それが、最期の願い。
 吟遊詩人に謳われ続けたケルトの戦士の死に、歌が無ければ始まらない。終われない。
 だからバーサーカーは歌を乞い、セイバーはそれに応じるように剣を振るった。
 一閃、二閃、数多の剣舞。
 振るうたびに剣が歌い、勇壮な歌でバーサーカーを送り出す。

「ああ」「悔しい」「悔しいが―――――」

 いよいよ体が薄れ、バーサーカーが消え去る直前。
 28のクラン・カラティンは同時に目を閉じ、そして同時に呟いた。

「「「「「次は負けん」」」」」

 ひょう、と。
 錆びた剣が歌うと共に、神代の魔人が粒子に溶けた。

27木偶の剣士は無言で歌うの作者:2014/07/22(火) 03:02:17 ID:q6uSoAFk0
以上、前々から書こうと思っていたウッフェage。
ステータスなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。
でも普通にやり合ったらカラティンさんが圧勝する気がする。なんだ28対の腕で槍を振り回すって。

あ、それとsage忘れ失礼しました。

28名無しさん:2014/07/22(火) 19:47:00 ID:2zKMtbb60
乙でした
こういう他じゃあんまり見ない英雄の活躍はいいですねー

29名無しさん:2014/07/24(木) 00:25:13 ID:QimTW/UQ0
ウフェエエ!(叫び声)。投下乙でした。
まさにステータスは飾り。かっつええ

30名無しのSS屋:2014/07/26(土) 07:26:50 ID:1poTywZs0
今からSSを投下します。
安徳天皇様が出てきますが、性格や言葉遣いが以前書いたSSとは
違っています。キャラ設定が違うと考えてください。
思想的に天皇陛下を出すなんて許せない!と思われる方は、
出来るだけ早くプラウザバックしてくださいませ。

31兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:28:05 ID:1poTywZs0
冬木市郊外の森の中に、唸り声が響き渡る。
「■■■■■……■■■……■……」
着背長を身につけた武者がいた。
太刀を手に持ち、唸り声を上げるその姿は、正に狂戦士―――バーサーカーのクラスに違いない。
武者の足下の地面にぽつりと一滴の雫が滴り落ちる。
赤色のそれは、武者の両眼が『あった』場所から流れ落ちていた。
黒い二つの陥没。
眼球があったはずの場所からは滝のような血涙が流れ続けている。
鎧武者の表情には悲嘆があった。しかしそれ以上に何かへの怒気があった。血涙は―――止まる様子さえない。
「■■■■■■■―――!!!!!!」
火線のマズルフラッシュが殺到し、鎧武者の身体に着弾する。
銃撃に加え、放り込まれる物体が爆発し、轟音と振動で地面を振るわせる。
やがて銃口が沈黙し、投擲する手投げ弾も投げ尽くしたらしい男が姿を現した。
顔中に傷を持ち、英霊につきものの修羅場をくぐり抜けたある種の空気を身に纏うこの男も、流石に投げやりな調子で、目前で微動すらせず太刀を構える荒武者を見た。
「あの程度で死んでるわけねえよな……やっぱり」
銃撃の奇襲は蚊が刺した程度の効果しか与えていないらしい。
とどのつまり、神秘の密度が赤陣営のアサシンでは薄すぎるのだ。本人が死んで五十年も経過していないのだから当然だが。
「当然でしょ。何度も言うけどあんたの神秘は無いも同然なんだから、サーヴァント相手じゃ文化包丁で大木切り倒すようなものよ」
赤のアサシン、ラッキー・ルチアーノとそのマスター、遠坂凛は突進してくる黒のバーサーカーに向かって、ガンド撃ちとサブマシンガンの銃口を構えた。
「■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!」
「やかましい犬っころ!!」
トンプソンが再び火を噴こうとした時、

「お待ちなさい」

鈴を転がすような声がその場を制止した。突進していたバーサーカーでさえも停止する。


その御髪は夜の海のような黒、儚げな瞳も黒。
ただ束帯だけが春の海のような明るい水色に染め上げられていた。
その手には身の丈程の宝剣が握られている。
その横に立つ赤毛の少年は、遠坂凛とアサシンの無事を確認すると僅かに安堵したように表情をゆるめた。
しかし、その表情はすぐに引き締められ前方のサーヴァント、黒のバーサーカーを見やる。
「衛宮君、バーサーカー、貴方達じゃあいつの相手は荷が重すぎるわ」
「凛」
衛宮士郎が召喚した存在、この国最高の幻想たる存在だった赤のバーサーカーは、決意の表情を形作り、言葉を紡いだ。
「それでもやらねばならないのです。他でも無いこの朕(わたし)が、やらねばなりません」
「……済まん、遠坂。無茶は承知だ。ここは少しの間退いてくれ」

32兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:29:43 ID:1poTywZs0
「死ぬ気か?まあ、競争相手が共倒れしてくれりゃ楽でいいけどな」
ルチアーノの問いかけに、士郎は首を振った。
「死ねない。まだ死にたくない。でもあいつだけは俺達が倒さないといけない」
そこまで聞くと、ルチアーノは凛を担ぎ上げて戦場に背を向けた。
「なっ、ちょっとアサシン!?」
「仕方ねえさ。運があればまた会おうぜ。Arrivederci!!」
そう言い残し暗闇に消えたアサシンの主従を見送り、士郎とバーサーカーは黒のバーサーカーを前にした。

「■■……■■■……■■……」
唸り声を上げるバーサーカーも太刀を向ける。敵を見逃したところから見て、決して元の人格は非情な人物では無いらしい。或いは『仇討ち』のためにも無駄な力は使いたくないのか。
「救われなさ過ぎる……」
赤のバーサーカー、安徳天皇は、悲痛な表情でかつての臣下だった黒のバーサーカーを真っ直ぐに見た。

一門が滅び、主家が消滅しても敵将の首を一人取りに行った忠義の侍。

それが理性を剥奪された“彼”の姿だ。だが、安徳天皇も士郎も知っている。
“彼”のマスターを殺したのは同盟を結んでいた黒の陣営の別のマスターだと言うことを。
黒の陣営勝利のためにはバーサーカーの強化が必要で、支払うべき魔力も要らず、しかも強化できるメリットと、制御が殆ど効かなくなるデメリットが秤にかけられ、黒の陣営はメリットを取った。
そして黒のバーサーカーは仇を求める殺戮機械となった。

「……■■■■■……■■■……■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!」

狂獣の咆吼が響き渡り、太刀を大上段に振りかぶった荒武者が一足で安徳天皇の眼前に移動する。
「水天宮草薙剣(すいてんぐうくさなぎのつるぎ)!」
神話の一撃。水の蛇。
振り抜いた刀身から爆発するような勢いで噴出した鉄砲水が黒のバーサーカーに襲いかかる。その身の豊富な魔力を高い霊格を誇る宝剣に注ぎ込み、その全てを放水に利用する殲滅の斬撃。
並の英霊ならば塵芥となるのは確実であろうその攻撃に対し、黒のバーサーカーは―――耐えていた。
両脚で大地を踏みしめ、歯を食いしばり両目からは相変わらず血涙を流し続けている。
その貌は憤怒に染まり、太刀を振りかぶった。

両断。

紅海を割ったモーゼの如く、大水の攻撃は縦に切り裂かれ、バーサーカーのいる場所だけが真空状態となった。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!」
水蛇を切り裂き、道を確保した黒のバーサーカーは、そのままの勢いで突進した。
「!!」
安徳天皇も水の障壁を出現させ、正面から迎え撃つ。

一閃。

黒のバーサーカーの大太刀は暴風を巻き起こし、水の盾はその形を残したまま安徳天皇ごとその身を吹き飛ばした。
「言仁!」
その姿に士郎は思わず諱を叫んだ―――返事は返ってこなかった。

33兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:30:32 ID:1poTywZs0
上空でクルクルと木の葉のように舞いながら安徳天皇は思考していた。
強い。そう思った。戦いの最中に戦い以外のことを考える事は死に繋がると本能的に分かっていたが、それでも考えてしまう。“彼”の強さの源を。
それは力でも知略でも武功でもなく、精神にあるのだろう。
仕えるべき主を失い、一族が滅び、それでも鎌倉まで敵将の首を取りに行った彼の奥底にあったのは、怒りだ。
血涙を流し続けていることからもそれが分かる。怒りは悲しみを呼ぶものだから。
だが、その怒りを持続し続けたのは間違いなく彼のある種の心の強さだ。

それは主君を守れなかった怒りだろうか。

それは一族を守れなかった怒りだろうか。

考える。彼の怒りの対象は何なのか。
思考する。
「■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!」
その叫声は、あの壇ノ浦(せんじょう)で聞いた怨嗟の声と良く似ている。
彼等の怒りの対象は、敵であり、神仏であり、世の全てであり、そして―――
―――そして、安徳天皇は判った。判ってしまった。

「―――そうなのですね」

そして彼女は再び顔を憂いに曇らせた。悲しみが身を引き裂く痛みに耐えるような表情だった。


見えない。
何も見えない。
源氏に支配された世を見ないために自らの目を抉った逸話を保つ“彼”に視覚は無い、だが、“彼”にとってはこれこそが全盛期。
圧倒的な武力と戦績を持つ己にとって、目視が出来ぬ程度が何の不都合があろうか。
故に、太刀を振りかぶり―――

「もういいのです。景清。自分を怒らなくても」

―――凍り付いたように斬撃が止まる。

かつてバーサーカーだった英霊は全てを思い出していた。

34兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:31:20 ID:1poTywZs0
笑っている。

武士、公家、坊主、民百姓にいたるまで笑っている。

戦が終わったと、驕った一門が滅び、平和な時代がやってくると。

笑え、笑いたければ笑え。その平和は弑殺と戮殺の果てに手にしたものだ。

―――覚えている。例えその尊顔を拝謁する機に恵まれずとも、天から地に降りた太陽の威光、野に咲く名も無き花を育むが如き後光は、一門全てが知っていたものだ。
我等全てが共有した大義。それはあの光をお守りし続けること。

だが、全ては終わった。
最早あのお方は―――我等の天子様はいない。波の下の浄土において眠りにつかれている。

自分に剛力はあれど、将器は無かった。それがあれば、あるいは、あの波間に消えた一門全てを救うことも出来たかもしれない。
後悔があった。悲嘆があった。憎しみがあった。
そして怒りが生まれた。
一門全てが戦い抜いた結果のあの光景を自らのみで覆せると一瞬でも思った己の傲慢に。
怒る。
ただただ怒る。
怒りのままに太刀一つを身に帯び、逆賊の首をかっ切りに旅に出る。
そうすれば、この身を苛む灼熱が消えると信じた。
それは、既に単なる私心と私怨に過ぎぬと理解していながら足を止めることは無かった。
そして、失敗し捕らえられ、挙げ句情けをかけられる始末。
最早これまで。己にできる事は自裁しかなく、やがて全ては忘れ去られた。

己に怒り、世を憎み、運命全てを悲嘆した英霊は、どこでもなくいつでもない場所で声を聞く。
怒りに目を曇らせた者よ来たれ、気の触れた狂獣よ来たれと。
怒りしか無かった魂に、初めて歓喜が生まれた。いいだろう。この魂を掻き毟るが如き痛みを、世の全てに訴えることができるというのならば―――そして、自らが抉った虚ろな眼窩を剥き出しにした狂戦士が顕現した。

光無き暗闇に、日輪の如き輝きが生まれた。太刀を取り落とす。膝をついた。
「■……■■■……■■■……」
後光差し込むその姿はゆっくりと立ち上がり、何でも無いように微笑する。
「そなたは自分が許せないのかも知れない。ですが、それでも許します。朕(わたし)が許します。景清、もう怒らずともいい。貴公は紛う事なき一門の英雄なのですから」
「■■……」
一つ一つの言葉を噛み締めるように、安心するように、狂戦士の身体の震えが静かになっていく。
狂戦士の武者は面を上げ、一度も見せなかった静かな笑顔を見せた。
安徳天皇と平景清の間に、大戦中とは思えない程の静かな空気が流れ―――
「■■■???」
取り落とした太刀が拾われ、再び景清が吠えた―――だがその叫声は絶望に満ちていた。

35兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:32:03 ID:1poTywZs0
―――これでいい。
再び顔前の敵サーヴァントを攻撃するバーサーカーを確認すると、黒陣営の魔術師は結果に下衆な笑みを浮かべた。
その掌にはマスターを謀殺する前に取り去っておいた令呪があった。
都合良く三画全てが残っていたそれを、黒の陣営の魔術師は単純な使い方をした。
―――相対しているサーヴァントを殺せ。
令呪を用いた命令。これであの狂犬は誰かを殺すまで絶対に止まらない。
魔術師である以上、血も涙も無い行為が平然と出来ることが魔術師の強みであり―――そこが限界でもある。

「やっぱり近くにいたか。そりゃそーだ。あのサムライの攻撃の方向性をある程度操作するためには『仇』のテメーが近くにいないといけない筈だからな」

眼前に出現した男に慌てて魔術を行使しようとする。それよりも早く男―――ルチアーノの右手が一閃した。
ナイフで切り落とされた片手から鮮血が噴出し、周囲の木々を赤く染め上げる。悲鳴を上げる前に口を押さえ込まれた。
「相手が悪かったな。あの二人なら命は助けたかもしれねえ。俺のマスターなら再起不能にして死ぬより辛い目に遭わせただろうな。
だがあの二人はサムライとの戦いで手一杯、俺のマスターは家まで宝石を取りに行っている……つまりはそういうこった。運が悪かったんだよお前。さっさと舞台から退場しろや」
魔術師が最期に聞いた音は、ゴキリという自分の首骨がへし折れる音だった。

人の死体を塵紙を見るような目で、さっさと視界と思考の外に追いやったルチアーノは遠方を見る。
まだ令呪で操られた平景清は攻撃をやめていない。
ルチアーノはそのまま傍観を決め込むことに決めた。ファミリーの一員ならともかく、最近知り合った連中のために命を張る程清潔な生き方はしなかったつもりだ。大体自分が加わっても結果に大した変化は無いだろう。
「それに、だ」
現世で買った安物の煙草に火をつける。不味い紙巻きだが悪くない。紫煙を吹き出し、そのまま観戦と洒落込んだ。
「手え出しちゃいけねえ喧嘩もあるよな。せめて俺を魅せてくれや」

36兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:32:33 ID:1poTywZs0
「■■■■■■■■■!!!!!」
血涙を流しながら太刀を振り回す景清に剛力はあれどそれしかない。悲嘆と絶望の叫びを上げながら太刀を振りかぶる。
安徳天皇は、その姿を前に必死で攻撃を防ぎながら、それでもこちらから攻撃は仕掛けなかった。
「鎮まれ悪七兵衛!一門の武者よ!自らを見失ってはならない!」
「■■■■■■■■■!!!!!」
平景清は、全身を痙攣させ、ひときわ叫びを大きく上げた。

殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
……幾度も思い浮かべる。罪科からは程遠く、怨念を捨て去り入水したあのお方を。
世に平和をもたらすために自ら命を絶っていった一門の者達を。
落人に身をやっしたかつての仲間達を。
……死して尚、蔑まれる己自身を。
殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
意識が遠くなり、思考が殺意の命令で埋め尽くされる。この身は令呪などという痣一つにも抗えないらしい。
前におわす方の表情は見えない。だが、悲しんでくれているのだと思いたい。
せめて、できる事ならばその宝剣でこの身を引き裂いてくれればこれ以上の喜びは無い。
そんな愚考をしながら、景清は愛刀を突きの形に構えた。頭では拒否しても、肉体は首級を上げる事以外には動かない。踏み出そうとした瞬間。
「待てよ。テメエ」
最初に相対した時、サーヴァントの前に立ちはだかった少年が再び前に立った。


衛宮士郎が召喚したバーサーカーには願いがある。
ただ与えられた人生しか歩まなかった自分が何かを手に入れたという証がほしいという願いが。
勝てる。
勝つことは出来るのだ。
安徳天皇が最終宝具を使えば、黒と赤のサーヴァント全てを鏖殺し、そしてこの街全てを破壊し尽くして聖杯に手が届く。最後に令呪で正気を取り戻せば聖杯を手に入れることは出来る。

だが、そんな形での勝利を、子供を守る優しい神様は望まなかった。
自分の願いはある。だけど他の生きている人々を犠牲にしてまで願いを叶えることはできないと。
そしてバーサーカーは正義の味方を目指す少年と共に戦場を駆けた。一人でも誰かの涙を止めるために。
未熟なマスターと、基本ステータスが低い英霊では、戦い全てを収めることは出来なかった。
騎馬に追い回され、爆弾に吹き飛ばされ、銃で撃たれ、剣で切られた。
多くの人々が犠牲になり、不幸になっているこの聖杯大戦で自分達の為したことが大きな事だとは思わない。

それでも、魂喰いから何の罪も無い人々を助けることが出来た
子供を守るために命を張って死にかけた大人を助けることが出来た。
崩れた建物では二人して泥だらけになって救助を行い、ほんの少しだが助けることが出来た。

その小さな偉業は、確かに誇れる安徳天皇の掴んだ何か。

37兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:33:05 ID:1poTywZs0
そこまで優しく多くの人を助けた優しい神様を、よりにもよってかつて守ろうとしたお前が傷つけるのか。
それが勝つための正しさならば、俺はそんな正しさはいらない。誰かの味方にしかなれないというのであれば、

「俺は俺の相棒の味方になる……!!」

トレースオンの呪文と共に、利き手に宝刀が顕現する。
「士郎……その剣はセイバーの」
「あんたが止まれないのなら俺があんたの歩んでいる最悪の道を止める!俺達が止める!!いくぞ!」
「……わかった!一緒に征きましょう!」
宝刀の効力を目にしたことのあるバーサーカーは、士郎の為そうとしていることに察しがついた。
そのまま自らの宝具を『地面』に突き刺す。

「はあああああああ!!!!!!!!!!!!!」

気合いの咆吼と共に地面に八条の地割れが走る。それはすべて景清の足下に広がり、奇しくも八岐大蛇が獲物を喰おうとしている姿にも似ていた。
「■■■■■■!!」
景清が疾駆するために地面を踏み込む―――瞬間、白煙が周囲全てを覆い、足下から出現した水の流れが全てを呑み込んだ。
水天宮草薙剣(すいてんぐうくさなぎのつるぎ)の権能、水を操る力が、地中の地下水を爆発させたのだ。
景清が離れた瞬間、次に士郎が宝刀を振りかぶった。
それは、抜けば玉散る氷の刃、邪を退け、妖を治める天下の宝刀。

「村雨(むらさめ)!!」

斬撃と共に細氷が雪となり、そして全てを白く染め上げる。ことごとくを凍結させる閃光はそのまま体勢を崩した景清に襲いかかった。
「―――■■■■■■!!■■■■■■■■……………」
見る間も無く周囲の水分ごと凍結する身体は、それでも前に進み、進む度に身体の一部分が欠けていく。
その執念を前にした士郎は無理矢理強化させた身体で安徳天皇の前に立った。
「士郎」
「油断するな。こいつはまだ動いている」
「―――いえ、もういいのです」
静かに言う安徳天皇の前で、景清は唯一残っている無事な片腕に太刀を持ち、振り上げ―――


「……マジか」
この男には似つかわしくない呆然とした声色で、ルチアーノは眼前の光景を見ていた。
「……ったく。どうしろっつうんだよこの状況」
そこで再び紫煙を乱暴に吹き出した。
「似合わねえ、全然似合わねえ、殺し合いはもっと凄惨で、救いの無いもんだろうが」
そこまで頭をかきながらぼやくと、再び視線を『戦場跡』に戻した。

38兵共が理想(ユメ)の跡:2014/07/26(土) 07:34:01 ID:1poTywZs0
景清の太刀は自らの心臓―――霊核に当たる部分を貫いていた。血は流れない。死者に血は流れないのだから。
血涙は流れるのを止め、武者の貌はいまはただ静かな微笑を浮かべていた。
「景清……」
「天子様……」
景清の口からは流暢な言葉が出てくる。自決の一撃は狂気の呪いを打ち砕いたのだ。
「私は己が許せませぬ。主君を守れなかった無念と仇討ちも果たせなかった後悔、そして弱き自分に対する怒りが我が身を蝕み、とうとうこの身を狗畜生にまで落としました。しかしそうなって初めてここで天子様を拝謁できるとは……死した後に私心を越えた悲願が叶うとは……全くままなりませぬ……」
苦笑する景清に対し、静かに安徳天皇は未だに刀を握りしめている手を握りしめた。
「そなたの願いは」
「天子様に幸を」
生真面目に一言だけ願いを口にする景清に、かつての主君は困ったように微笑んだ。
「朕(わたし)は充分幸せです。死した後、時代を超えてまで思ってくれる臣下と、今の時代においても朕(わたし)と共に戦ってくれる相棒がいるのですから」
その言葉に、景清は安心したとでも言うように首を士郎の方へ向けた。
「少年よ……頼んだぞ」
「まかせろ」
迷い無く言い切った士郎の言葉を聞いた直後、景清の姿が透けていく。
死者があるべき場所に帰るだけの光景に、しかし光の粒子と成り消えていくそれは確かに美しかった。

「―――おすこやかに」

その言葉だけを残し、黒のバーサーカー、平景清は消えて失せた。
後に残された安徳天皇と士郎は、しばらく黙っていたが、安徳天皇が口を開いたことでその沈黙は破られた。
「―――行きましょう。士郎、まだ苦しむ民草はいます。非道な所業を行う者達もいるでしょう。私達は行かねばなりません」
そう言って、動こうとする安徳天皇の手を士郎が掴んだ。
「士郎?」
「……無理するな」
士郎は静かに、しかしはっきりと口に出した。そのまま安徳天皇の顔を身体で隠す。
「俺が隠しておくから、我慢はしなくて良い」
その言葉に、安徳天皇は戸惑いながらも答えた。
「……士郎は困った人です。これではやせ我慢などできぬではありませんか」
「良く言われるよ。言仁はよく頑張った。だからいいんだ」
彼女は顔を深く士郎の胸に押しつける。
「かげきよ」
散華した臣下の名前を呟き、安徳天皇の声が涙声に変わる。
「……かげ、きよ、朕(わたし)を知る人、それなのに、それなのに……うわあああああああ!!」
「良いんだ。泣きたければ泣いて良い。言仁は神様だけど人間なんだから、誰かのために泣けるのは優しい人間の筈だから、良いんだ」
幼帝と正義の味方、二人しかいない場所で、誰かのための泣き声はいつまでも響いていた。

「こういう結末か」
全てを傍観していたルチアーノは、短くなった煙草を地面に捨て、足で踏み消した。
「ジャパニーズはわかんねえなあ。まあ、わかりたくねえが」
だが、と独り言を区切った。
「悪かなかったぜ」
ルチアーノは夜空を見上げた。既に月は群雲に隠れていた。

39名無しのSS屋:2014/07/26(土) 07:38:24 ID:1poTywZs0
つい最近水天宮に行きました。やはり何か空気自体が違っているような、
『畏れ』を感じましたね。
皇室の方をサーヴァントとして書くのはやはり緊張しましたので、いい小説が
書けるように参拝しました。そのせいかスラスラ書けました。

それでは皆様よい夏を。

40名無しさん:2014/07/26(土) 23:35:52 ID:ggZVyRho0
>>39
東京の人形町にある水天宮(移転前)には私も行ったことがありますが、
色とりどりで普通の神社とは違った感じでした。

ともあれ、楽しく読ませて頂きました。お疲れ様です。

しかし、皆鯖源平合戦は源氏の方がずっと多くなってしまいますね。
今回出てきたお二方で平家陣営打ち止めなんですよね・・・

41名無しさん:2014/07/27(日) 09:09:05 ID:FNW1JcO60
乙でした
景清と安徳天皇はバーサーカーでも人気高い印象

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47名無しのSS屋:2014/09/17(水) 18:40:06 ID:fpXy6asM0
二ヶ月近くぶりでお久しぶりです。今から投下します。

48運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:41:31 ID:fpXy6asM0
鬱蒼とした森は、数十年に一度やってくる主しか招くことは無い。
森に張ってある結界を破れば別だが、それでは相手方に襲来を悟らせることになる。
そもそも魔術の知識に疎いライダーと、魔術師ですら無い慎二では結界を破れない。
「奇襲は意表を突き、なおかつ悟らせぬ事こそが肝要」
「……だからこその待ち伏せか」

森に入るための車道は、あっさり見つかった。森から遠い冬木市街に入るためには絶対に車を使っているに違いない。アインツベルン程の財力なら当然だと推測した慎二の眼は、草が刈り込まれ新しいタイヤ跡がある道を見逃さなかった。
「通り道に間違いないようだな。一通り森の周囲を回ったがそれらしいものは見当たらぬ」
そこでライダーはふんと鼻を鳴らした。
「敵に通り道を教えるとは愚昧なり。良将を抱えても、所詮は小娘か」

枯れ草が茶色く大地を覆っている。その中に慎二とライダーは身を潜ませていた。
草を編んで作った即席の隠れ家で、大陸最高の英雄と魔術師ですら無い少年は待つ間に会話をしていた。
「でも、良くお前承伏したよな」
「何がだ」
「マスター狙いだよ。お前ってプライド高そうだからそういう作戦とりたがらないかと思ってさ」
「たわけ」
一言で返すと、ライダーの視線は車道に戻った。
「弱所を突くことこそ兵法の基本、剣士と槍兵の弱点はあの小娘よ。何せセイバーを戦わせ、ランサーを傍に置いている時点で小娘は愚昧に過ぎる」
殺してやるのが情けだ。と言うライダーに、慎二が首をかしげて反論する。
「何でだよ。最優が前衛で戦うのは当然だろ」
「最初に手の内が知られてもか?戦えば自ずと明らかになる。おまけにあの剣士は弱点まで世に広く知れ渡っておるわ」
そこまで聞いた慎二は、ああ、と頷いた。
「……なる程。いいカードを最初に使い切る可能性があるってことか」
「分かってきたではないか」
そう言うとライダーは持っていた袋からあるものを取り出した。慎二も取り出して、口に運ぶ。
「……問題は」
あんパンと牛乳を装備した状態で、慎二とライダーは待ち続けるために身を潜めた。
「いつ通りかかるか、だよな」
「待つことも兵法よ」
林道は未だ静けさを保ち、誰一人として通りかかる気配は無かった。

49運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:42:10 ID:fpXy6asM0
遠坂の屋敷はあちらこちらが傷ついていた。外見に穴が無数に開いているだけにとどまらず、家を支える柱自体が歪む程に攻撃を受けている箇所も多い。
「下手をすれば家ごと建て替えないといけないかもしれないな」
士郎がそう言う程に屋敷の損傷は大きかった。おそらくアーチャーの襲撃はこの家を拠点として使えないようにする為の意味もあったのだろう。
「そうなるにしても、とにかく役に立つ物は全部持ち帰るんだから、協力して貰うわよ。みんな」
遠坂凛がそう言った先には軍手をはめて様々な道具を持った四人がいた。
「はい!頑張ります!」
「洋館というものは一度入ってみたかったからな。期待させて貰うぞ」
「先生!拾った物は持って帰っていいですか!」
「……面倒ね。全部焼き払おうかしら」
「三枝さんありがとう。無理はしないでね。氷室さん。悪いけど今の遠坂邸は見せられるような状況じゃないわ。
却下よ蒔寺さん。小銭一枚でも拾ったら家主の私に届けること。あとキャスター、そんなことしたら最初にあんたから聖杯戦争の脱落者になってもらうわよ!?」
一気に言い終えると、遠坂凛は家のドアを開けた。
「トラップは全部解除してあるけど、良く分からないところは私を呼ぶこと。いいわね?」

家の内部も、外見が語るように相応の被害を受けていた。
「あーあ、高そうなアンティークまでぶっ壊してる。英雄なら文化も大事にしろよなー」
蒔寺楓の言葉通り、テーブルや家具なども被害を受けていた。エーテルで構成された矢はその身を残さず、テーブル上の陥没だけがその破壊を物語っていた。
「むっ。しかし妙だな」
「何がだ?氷室」
「弓矢のことは分からないが、ああいう傷にはならないのではないだろうか」
氷室鐘の指差す先には大きく亀裂が走った壁があった。確かに大きく抉れた傷や裂傷は矢では説明が付かないだろう。同じような傷は屋敷のあちこちにあった。
「それは多分バーサーカーの仕業よ」
傷ついたテーブルを片付けながら、遠坂凛が毒づくように答えた。
「あいつお構いなしに戦うもんだから、あちこちが壊れたのよ……令呪で何か恥ずかしいことを命令してやろうかしら」
突然ぼそりと妙なことを口走る遠坂凛に、思わず士郎達の背筋が冷え込んだ。猫かぶりをやめたこの少女ならやりかねない。
「ブラックキングは冷凍怪獣じゃねえぞ」
「何か言った?蒔寺さん」
「蒔ちゃんは遠坂さんと仲良しになれて嬉しいんです。遠坂さん」
三枝由紀香は倒れた椅子を元の位置に直して、微笑んだ。
「え?」
「由紀っち?」
「こんな大変なことになっちゃったけど、遠坂さんの色んな表情が見られて私嬉しいです」
「あ、あのねえ。そんなこと言ってる場合じゃないと思うけど」
「だって、遠坂さん口調がいつもと違ってるから」
「……むう。猫被る私も結構お気に入りなんだけど」

50運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:42:43 ID:fpXy6asM0
「くるくる表情が変わる遠坂さんも私好きですよ」
そう言ってほにゃっと笑う彼女に対し、周囲の目は当然言われた相手を視界に入れた、
「なっ、なっ、なっ何言って「むっは〜!!由紀っちをたぶらかすかー遠坂!!ゆるさーん!!」」
「たぶらかすの意味も知らない癖にそう言うことを言うなー!!」
やいのやいの騒ぎながら攻撃してくる楓に対し、凛は中国拳法の技法で抵抗する。
そんな傍目から見たらじゃれあいのような姿を見ながら三枝由紀香は―――何かに気づいた。
それは違和感だった。それは25メートルプールの中に浮かべた一つのビーチボールのように、たいしたことのない、しかしどうしても感じる違和感。
壁の一部を払いのけ、しゃがみこんでテーブルの裏側に目を向ける。

「―――?」

テーブルの裏側には、セロハンテープで固定された黒っぽい機械が貼り付けられていた。
「遠坂さん。これ何だか分かる?」
蒔寺楓を必死で捕まえ、二の腕で拘束している遠坂凛にそれを見せた。
「捕まえたわよこのバカ豹!……何それ、私そんなの知らないけど」
「ぐぐぐっ……家電とかじゃないのか?」
捕まったまま口を開いた楓の言葉に、凛は首を横に振った。
「いいえ。私の家はそういうハイテクは極力排除されてるわ」
怪訝な物を見る目で、凛は眼前の小型機械を見つめていた。


「……盗聴器に気づいたか」
拠点にしているワンボックスカーの中で、アサシンは舌打ちするまでも無く受信機のスイッチを切った。
「遠坂邸に仕掛けた機械に気づかれたぞ」
その言葉に、バゼットは視線をアサシンへ向けた。
「これで、遠坂邸への“耳”は利用価値が皆無になりましたね」
助手席に座るバゼットの言葉にアサシンは軽く頷いた。
「状況は俺達にとって―――実に素晴らしい」
そう言うと、アサシンはサブマシンガンの弾倉をガチャリと装填した。
「連中は盗聴器を仕掛けられていると気づいてはいる。だがそれだけだ。ミスリードを誘うこともせず、警戒するにとどまっている―――連中が無能なのは大いに喜ぶべき幸運だ」
仮にだが、盗聴器の存在に気づき、こちらを誘い出す罠を張られたら厄介だったろう。
狂犬や魔術師に狙撃兵が正面から勝てる筈も無いからだ。
「彼等が他のマスターに情報を流す可能性は?」
「メリットは?」
「デメリットが大きいですね。いずれの陣営ともやがては戦わなくてはならないのに、貴重な敵の情報を流すことは無い。仮に流せば……」
「俺達を低く見る連中が出てくる―――まっとうな魔術師なら科学技術は使わない。使う奴は三流、そう思う連中が魔術師には多いんだろう?」
「ええ―――そして、私達と同盟を『結んでやろう』と考える連中が出てくる。そういうわけですが」
「労せずして間抜けな同盟者(捨て駒)が手に入る」
そこでアサシンは無表情な顔を、それでも引き締めた。
「だが、ただただ低く見られては共倒れになる可能性もある。適当な兵隊が必要だな」
そこでアサシンは幾つもある受信機のスイッチの一つを入れた。
「……そろそろキルスコアも必要だ」

51運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:43:20 ID:fpXy6asM0
「……どうしよう」
間桐桜は、衛宮邸に行く道を歩き続けていた。歩数的に言えばとっくに着いている。
そうならないのは桜が衛宮邸の近くに来ては、引き返すといったことを繰り返しているからだ。
公園での一件から、衛宮士郎とは会えなかった。連絡も取れていない。

……当然だ。自分で会わないようにしているのだから。

兄に暴力を振るわれ、魔術師同士の暗闘が行われている今の状態でも、桜は衛宮士郎に無事でいて欲しかった。
明日になればもうあの少年の生きている姿を見ることは永遠に無いかもしれない。しかも、それが自分が喚んだ英霊の手で為されるかもしれない。
……それだけは阻止しなければならない。だが、ライダーも兄も聞く耳を持たない。
いつもこうだ。何か持っていたら奪われ、何かを守っていれば汚され、逃げることも出来ない。
結局自分は諦めるだけなのかもしれない。だけど、今度ばかりは諦めたくないという自分がいるのも確かなのだ。
眼前に目をやると、曲がり角が見えた。あれを曲がれば懐かしい衛宮の屋敷に辿り着く。
そのまま立ち尽くした時に、突然に声をかけられた。

「あれっ、間桐?」

振り返った先には、蒔寺楓と氷室鐘、そしてキャスターのサーヴァントがいた。


商店街に存在する喫茶店、その一角のテーブル上では、心配する桜と、大丈夫だと返す二人、そして無表情で茶を飲んでいるキャスターがいた。
「それで、皆さんお怪我は無いんですね?」
「心配性だな間桐は。見ての通り怪我は無い」
「常識はドンドン削られていってるけどさ」
そこで楓は注文したコーラをぐいと飲んだ。
「あのっ、本当にすいません。兄さんがあんな事をするなんて」
たまらずに謝罪する桜に、楓がばつの悪そうな表情になって問を投げかけた。
「ワカメの奴はまだあたしらを狙ってるのか?」
楓の言葉に、桜が押し黙る。それだけで答が分かった。
鐘がううむと唸って頭を抱えた。
「まずいな……いくら衛宮に匿ってもらっているとは言え、このままで良いはずが無いしな」
「え……?」
鐘の言葉に桜の目が大きく見開かれる。
「ああ、騒動が終わるまで、衛宮んちに住んでるんだよ。あたしら」
楓の言葉に、桜は今度は身を乗り出した。
「そそそ、それって同せ「んなわけあるかあ!!この美身に汚れた毒牙は指一本とて触れさせん!!」」
「言葉の意味と使い方が間違っているぞ蒔の字……それに同棲と言うが間桐、君も通い妻をせっせと行っているのではないかね?」
「か、通い妻!?そ、そんなこともありますけど」
顔を紅くした桜に鐘はにやりとチェシャ猫のように笑った。

52運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:43:50 ID:fpXy6asM0
「ふむむ。興味深いな。なあ、間桐」
「い、いじめないでください……」
赤くなった桜は目を回転させながら懇願した。その顔色が徐々に戻っていくにつれて、ぽつりと言葉を紡いだ。
「あの……お聞きしたいことがあります」
「ん?なんだ」
「……衛宮先輩は私……達のことを何か言ってませんでしたか」
桜の言葉に、楓はああ、と頷いた。
「そーいや、衛宮がぼやいてたな。ワカメに電話が繋がらないって。家にも携帯にも。やっぱり知り合いだから心配してんじゃね?」
「そう、ですか」
ようやくそれだけを絞り出した桜は、頼んだカフェオレをゆっくり口に含んだ。
「桜、だったかしら」
その言葉は、今まで何も喋らなかったキャスターから発せられていた。
「は、はい」
返事をする桜に対し、キャスターは無表情に呟いた。
「我慢、ご苦労な事ね。でも現状は悪くなるだけだと思うわ」
「―――!?」
「キャスターさん、何を言って……」
「我慢しかせずに結局は破滅した人物を知っているわ……似ているのは雰囲気くらいで良いでしょう。何でもいいから抗うくらいはやってみなさい」
そこまで言うと、キャスターは持っていたカップをテーブルに置いて席を立つ。

「―――助けを求めれば応えてくれそうな相手はいるでしょう」

それだけ言い残すとキャスターは店外に出た。外では先程から降っていた雪が積もり、静かな銀世界となっている。
「キャスターさん、何言ってるんだ?」
「……なにやらいつもと違って積極的だったが……ん?間桐?」
桜からの返事はない。本人は目を落として俯いていた。
「間桐?」
鐘の言葉に身じろぎもせず、桜はテーブル上のカップを見つめ続けていた。
喫茶店から見える景色は、既に雪が化粧を施し、この土地には珍しい銀世界を作り出そうとしていた。

53運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:46:01 ID:fpXy6asM0
枯れ草が敷き詰められていた野原は今では銀世界が広がっていた。その中からカチカチという音がするが、それに気を止める人はいなかった。
寒さで歯の根を鳴らしながら、間桐慎二はアインツベルンの主従を待ち続けている。結果は出ていないが。
枯れ草を編んだドームにも雪風は吹き込み、震えながらも慎二は悪態をついた。
「ま、ま、まだこないのかよ畜生……」
「待つのも兵法じゃい」
事も無げに言うライダーは、携帯電話(勿論慎二の物)をいじっている。古代の英雄が現代の機械を扱う姿に思わず慎二は口を開いた。
「お前大昔の人間だろ?ケータイなんかいじって何が楽しいんだよ」
ライダーは携帯電話を慎二に返し、言葉もまた返した。
「本当に便利な時代だな。儂のいた時代では連絡手段は伝令かあるいは狼煙で伝えるぐらいしかなかった」
だが、とライダーは前置きする。
「それさえあれば命令が瞬時に伝わる。時間差による状況の変化で混乱する心配は無い。人伝による間違いも心配は無い。いくらでも状況の確認が出来るからだ」
「知ってるよそれくらい。通信機器の発達が戦争の形態を変えたってのはミリタリー雑誌だかで見たことがある」
ふむ、とうなずき、ライダーは携帯電話を見つめる。
「儂の仮初めの肉を動かしているのは魔の力だが、それを使えぬ人民が研ぎ続けた科学も侮れぬ」
そう言うと、ライダーは宝具である大刀を手に取った。
瞬間、斬撃が一閃した。
周囲の枯れ草と雪が一瞬で吹き飛ばされ、ライダーと慎二の姿が露わになる。ライダーの視線は車道に立つ人影に注がれていた。
白一色の服装に身を包んだ背が低い男に対し、ライダーは一瞬たりとも気を抜かない。

ライダーは大英雄である。
普通の方法では殺せない豪傑を相手にした敵はそれでもどうにか自分を殺そうと掃いて捨てる程多数の暗殺者を送り込んできた。一人も成功しなかったが。
その自分に対し、これ程の距離までに接近するという絶技を見せたこの男の力はどれほどのものか。
警戒しすぎてもしすぎることはない。
ライダーの緊張にあてられたか、慎二もライダーの傍らに立ったまま一言も口をきかない。
少しの間の沈黙は、出現したサーヴァントによって破られた。
「警戒しなくてもいい」
「それを判断するのは儂らだ」
「そうだな。なら言い方を変えよう。少なくとも俺に戦う意思はない。君たちに接触した理由は一つだ」
「……なんだよ?」
警戒する慎二に対し、白影のサーヴァントは理由を口にした。

「同盟を組まないか?」

54運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:47:06 ID:fpXy6asM0
衛宮邸のテーブルに、中央に置かれている小型機械があった。
それを凛は渋い顔で見ている。由紀香や士郎も難しい顔で機械を手にとって観察していた。
ふすまが開き、帰ってきた客人に士郎は目を向けた。
「おかえり。どこに行ってたんだ?」
「少しね、ところでそのカラクリに関して分かったことは?」
キャスターの後から入室した鐘と楓も、機械を囲むようにテーブルに座った。
「やっぱり、盗聴器か?以前見た映画でそんな機械が使われていた気がするけど」
「盗聴器か……遠坂嬢、聞くがストーカーに悩まされているといったようなことはないのかね?」
「そうだったらまだ安心できるけどね……」
凛は機械を指でつまんで親の敵でも見るように睨み付けた。
「明らかに聖杯戦争がらみよね。コレ、私の家を監視していたのかしら」
「だとしたら、一体誰なんだ?」
「暗殺者でしょうね」
士郎の疑問に答えたキャスターは、そのまま言葉を続けた。
「彼等は常に最新の技術を取り入れて仕事に当たるものだから」
そこでキャスターは出された茶を飲み、一息ついた。
「かつて砂の国の老翁達は呪術を扱ったそうだけど、それだけ扱っていたわけじゃ無い。使える物なら何でも扱うのが暗殺者よ」
「暗殺者って……あの時イリヤを銃で狙った奴か」
セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、そしてバーサーカーとキャスター、消去法でも残っているのは一騎しかいない。
「『銃』で、『暗殺』かあ……」
「盗聴器を平気で使えるアサシンって、誰なのよ」
「……そういうことか」
頭を抱える凛に対し、楓はふむふむと頷きながらビシッと人差し指を立てた。
「何よ。蒔寺さん」
「アサシンの真名が分かったぞ」
その言葉に、全員の目が楓を注視した。
「本当か!?」
「まかせたまへ天才工兵。アサシンの真名は―――リチャード・ニクソンだ!!」
「……根拠は?」
断言する楓に対し、鐘が尋ねた。楓はふふんと鼻を鳴らす。
「世界で最も有名な盗聴事件、ウォーターゲート事「銃を使う根拠は?」……む、わからんちんめ。奴は海軍に入り、戦闘要員とはならず補給士官に任命され、アメリカ海軍でも最高のポーカーの腕を……あれ、狙撃関係無くない?」
「機械を扱えるのだから、近い時代の人物だな……暗殺……リー・ハーヴェイ・オズワルドなどどうだ?」
「三枝さんは姿を見たのよね?どんな格好だったか覚えてる?」
「シカト?ひょっとしてあたしいじめられてる?」
楓は泣くぞこらー、といいながら、士郎に梅干し攻撃をしかけた。当然士郎は抗議する。
「イダダッ、なんで俺なんだよ?」
「遠坂は怒らせると怖い。メ鐘も怒らせると怖い。由紀っちも怒らせると怖い」
「消去法かよ。だからって梅干しはやめろ!それより他に意見は無いのか!」

55運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:47:36 ID:fpXy6asM0
その言葉に楓は攻撃を止め、うーむむ、と背伸びをして考えた。
「銃で暗殺……狙撃……狙撃兵ならいっぱいいるけど……」
「狙撃兵?特定できそうか?」
「できるわけねーだろ。第一次世界大戦の頃から数えてウィキっても著名な狙撃兵なんて、世界中で三十人以上はいるぞ」
「そりゃそうか……なあ、三枝が見た人影はどんな格好していたんだ?」
話を振られた由紀香は、思い出しながら口に出した。
「えーっと、何かこう、白っぽい格好していたと思う」
「白色?」
狙撃兵は隠れ潜むことが役目の筈だ。必然的に服装も目立ちにくくなる。だが、白などという光を反射しやすい色の服装をしていたら逆効果ではないだろうか。
「―――いや、ちょっと待て。由紀香。そいつは雪国の兵士かもしれない」
いつになく真面目な表情で、楓が口走った言葉に全員が反応した。
「蒔寺?」
「ちょっと待ってろ衛宮。今頭が冴えてるんだ。あんにゃろに呑まされた宝具だかの効果かもな」
「―――大丈夫か!?」
聞き捨てならない言葉に血相を変えた士郎に、楓は無言で頷いた
「頭が冴えてる以外に特に変わったところは無い。それよりキャスターさん、サーヴァントだかは基本的に服装は召喚された当初から変わらないんだったな?」
「ええ。アインツベルンのお嬢さんは従者に現代の服を着せていたようだけど、基本的な姿は変わらないわ……なる程、雪国なら白い服でも頷けるわね」
「北欧やロシアのスナイパーかもな。それも冬期迷彩が必要な程の極寒の戦場で名を馳せた英雄か……それならかなり絞り込める。あたしの推察によれば―――」
自身気に言う楓に、いつになく驚いた様子で鐘と由紀香が見ていた。
「凄い……蒔ちゃんが輝いてる」
「うむ。これが宝具の効果とやらかもな……いや、あるいはこれが蒔の字の本気……?」
驚く二人に対し、楓は再び力説する。
「つまり―――西から昇ったお日様が東に沈むのでこれでいいのだと言う訳だよ!」
「あっ、元に戻った」
楓はそこまでで、オーバーヒートをおこしたように、ぷしゅーと頭から湯気を出して机に突っ伏した。キャスターが頭に手を当て、納得いった表情で呟いた。
「宝具の効果で軍略に関する閃きと洞察力が強化されたようね。この様子だとあまり無理はしない方が良いわ」
「やはり宝具の力だったか……」
「普段使ってないだけあって、衛宮君の無茶より酷いかもしれないわね」
「言い方が酷いですよ……」
「俺さりげなく引き合いに出されてるし……」
「こ……これでいいのだはんたいのさんせい〜」
楓は反論する気力も無く、目を回しながら意味不明のうわごとを呟き続けていた。

56運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:48:11 ID:fpXy6asM0
曇天の空の下、森中に存在するアインツベルンの出城は、戦場となっていた。
「ッ!!!!!!!!!!!」
ライダー=関羽雲長が大刀を振りかぶり、霊馬の疾駆によってランサー=ブリュンヒルドに接近した。
美貌を曇らせるまでも無くランサーは槍を構え、吠える。
「させると思うか!」
「おうよ。できんでどうする」
大刀が横薙ぎに走る。直撃すればランサーの細い腰はあっという間に輪切りにされるだろう。
瞬間、虚空に炎が生まれた。それは空中をなめるように霊馬に騎乗しているサーヴァントと、その背後に捕まっている少年に向かっていく。
「どわちちっ!ライダー!」
「おっと、まずいな」
赤兎馬が後方に撤退し、火焔は地面を焼くに止まった。そのままライダーとランサーは睨み合う。
「何やってるのよ。ランサー」
僅かな沈黙はランサーの小さな主によって破られた。小さな頬を膨らませている姿は愛らしくもあり、微笑ましいとも言える。
「そいつは大した英雄じゃ無いわ。多分マスターが無能なんでしょ。ステータスは平均よりちょっと上回るぐらいよ」
「な、なんだとこのガキ「ほっとけ、油断させておけば楽で助かる」」
慎二をなだめるライダーの目は、イリヤスフィールの傍らに佇む青年に向けられる。
視線に気がついた剣の英霊は、怪訝な表情でライダーを向いた。
「何か用か?」
「いや、ようやく自分の弱さを理解したかと思ってな」
激昂は剣の英霊では無く、槍の英霊だった。ルーンが彫刻された大槍は神速の突きを持ってしてライダーの喉元を狙った。それをライダーは大刀で受け止める。
戦乙女は瞳を怒りに燃やし、ライダーとの鍔迫り合いをしながら気炎を吐いた。
「我が夫への侮辱は槍の一撃で返してやろう。ここでその小僧もろとも串刺しにしてくれる!!」
ライダーは無言で大刀に力を込める。ランサーが僅かに体勢を崩した瞬間、赤兎馬が跳躍し、更に後ろに下がった。それを見てランサーの瞳が嘲りの色に変わる。
「達者なのは口だけか!キーナの英霊!」
「やめるんだ。ブリュンヒルド」
挑発する戦乙女を諫めたのは少女に付き添う魔剣の主だった。
「そいつの言い分に俺は今何も返せない」
瞬間、セイバーの手が動き、中空を飛ぶ『何か』をつかみ取った。拡げた掌にはひしゃげた鉛弾が鎮座していたが、それはエーテルの塵に雲散霧消する。
「あの暗殺者の攻撃から俺はイリヤの側を離れない程度のことしか出来ない」

57運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:48:51 ID:fpXy6asM0
アサシンは間違いなく殺しに長けた英霊だ。そして殺されないことにも長けている。
数回の攻撃は数回とも失敗したが、発射した場所が判らないだけではなく、判ったとしてもセイバーには為す術が無かった。イリヤの側を離れれば間違いなくアサシンはイリヤを殺すだろう。あの飛翔によって空を切り裂く音以外何も感知できない弾丸は恐るべき脅威だ。
そして、イリヤを連れて探し回れば隙を見せた瞬間にイリヤを殺すだろう。こんな時程自分の獲物である帯剣を恨めしく思ったことは無かった。飛び道具ならばまだ戦い方もあったろうに。
セイバー=シグルドにできる事は、その身体を盾にすることだけだった。

「―――そんなこと「ハッ、ざまあないね。古代人の英霊ごときが調子に乗るなよ」―――!!!」
慎二の侮辱は戦乙女の炎を容易に燃え上がらせ、その槍はライダーの主従に向いた。
「こ、言葉に武器向けるなんて大人げないな。文句があれば口で言えよ」
「言葉が少ないのだ。何せヨーロッパとか言う化外の化外にある地の野人じゃからのお。顔は良いのに残念」
慎二の言葉に乗るようにライダーが侮辱し、それが更にランサーの怒りに油を注いだ。歯を食いしばって怒りの表情に変貌するランサーを前に、ライダーは鼻息も荒く言葉を出した。
「何か文句あるか?わしは当時から続く超大国で文化の中心、中国の英霊。お前らは洞穴で踊って生肉かじってたゲルマンだかフン族だかの英霊。高等文明人と猿くらい差があるわい」
長々としたイヤミに、慎二がとどめを刺した。ランサーをなるべく見ないようにしながらだが、

「や、や、や〜い。エテ公」

「―――いいだろう。肉片に変えてやる」
表情から感情の全てが欠落した状態で、ランサーが槍を構える。それは炎を纏っていた。
ライダーは一瞬後の攻撃を前に、少しも表情を変えずにこう言った。

「間抜け」

鉄板の上に無数の小石を落とすような音が響いた瞬間、幾多の火線が殺到した。
英霊にとっては豆鉄砲、しかし少女一人を殺めるには十分過ぎる攻撃に、ランサーはライダーへの攻撃態勢をすぐに解く事が出来ずに、自らの良人が身体でマスターを庇う光景を見ることしかできなかった。
「シグルド!」
思わず叫んだ真名に、セイバーは全身に銃弾を浴びせられながら笑って返す。
「この程度屁でも無い。それより、頭を冷やせ。まんまと乗せられてるぞ」
「―――」
その通りだ。返す言葉もない。火線の発射場所と思われる城の屋根の上には、撃ち手を失ったマシンガンとか言う現代の武器が転がっている。自分がライダーに乗せられている隙にいつの間にか城まで接近した暗殺者は、好きなだけ弾丸をバラ撒くと、さっさと撤収したらしい。

―――シグルドがいなければ、イリヤは殺されているところだった……!!

自らの醜態に自分自身に怒りそうになるが、その暇も惜しいとばかりにイリヤの位置まで跳躍し、槍を構えた。
「来るならば……」
来い、と言い終わる前に目を丸くした。敵である騎乗兵の姿は影も形も無い。

58運命開幕・流星の英雄達 第八 話:2014/09/17(水) 18:49:34 ID:fpXy6asM0
暗殺者が奇襲に失敗したことでさっさと退却した。
それだけの事だが、非常に腹だたしいことに違いは無く、溜め込んでいた剛力を、地面に鬱憤と共に突き刺す。
地面が陥没し、亀裂が放射状に拡がったところで、息をついた。ホムンクルスの少女に顔を向けた。
「すまないイリヤ、私の落ち度だ」
「気にしなくてもいいわ。どんな敵が来ようとセイバーとランサーの二人がかりに勝てる英霊なんていないもの」
事も無げにイリヤはふふんと笑った。
「それにしても中国最大級の英雄も本当に零落れたわね。鼠の攻撃が失敗したら簡単に逃げちゃった」
イリヤの言葉に、ランサーとセイバーは顔を見合わせた。二人とも怪訝な表情をしている。
そして、口には出さないが思っている事も同じだった。セイバーが口を開く。
「なあ、イリヤ。あいつらどうもあっけない割に手際が良すぎる。少し用心しておいた方がいいかもしれない」
「平気よ」
有無を言わせない調子で断言するイリヤは、二英霊への信頼で満ちあふれていた。
「悲願を叶えるのは私達アインツベルンよ」
でも、と句切る。
「城に居るのも飽きたわね」


「もしもし、あんたか?『仕込み』は終わったよ……本当にアレでいいのか?」
森林から脱出したライダーと慎二は、奇襲を『予定通り』に失敗した後で、アサシンのマスターである魔術協会の執行者に連絡をしていた。
携帯電話から聞こえる声はうら若い女性のものだがそれがかなりの武力を持つ存在であることをライダーはとうに見抜いていた。当然慎二にもその事は伝わっている。余程のことを除いては直接接触するべきではない。このような時に携帯電話とやらは非常に役に立った。
『協力感謝します。マキリのマスター、それでは次に備えて今は休んでいてください』
「OK」
そこまでで通話は終わった。携帯をしまいながら、慎二はライダーに話しかけた。
「あれでうまくいくと思うか?まあ、最優と最速を順当に始末するならあの方法が一番だとは納得するけどさ」
「今はあやつらの好きにさせておいてやろう。暗殺者の手練手管を見る事が出来るからな」
ライダーの表情には油断は欠片も無く、これからの作戦を確認し始めた。

59名無しのSS屋:2014/09/17(水) 18:51:02 ID:fpXy6asM0
……仕事や家庭の問題でSSがなかなか書く気力がおきず、これほど遅くなりまして拙作を読んでくれている方々に申し訳なく思っています。

それでは秋を楽しみましょう。お元気で。

60名無しのSS屋:2014/11/28(金) 20:30:45 ID:VvgFvbvs0
一個も感想が無いことにへこんでいる名無しのSS屋です。
関羽の問題発言やっぱりまずかったかなあ。挑発のつもりだったんだけど、
不快に思った人がいたのであれば、この場で謝らせていただきます。

気を取り直して嘘予告を投下します。

61Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:32:08 ID:VvgFvbvs0
「セイバー!!こっちこっちー!」
「ふっはっは。待つがよいイリヤスフィール」
雪の妖精のような少女を追うのはサーヴァント―――此度の第四次聖杯戦争で喚び出されたセイバーのサーヴァントだ。
能力バランスに恵まれた最優のサーヴァントでありながら鬼ごっこで子供に負ける姿は不思議としか言いようが無い。もっとも、セイバーの姿も少女そのままだが。
勝てないにもかかわらず薄い胸を張ってえっへんと咳払いした。
「余は歩兵のように走り回るのも得意だが、もっと得意なのが戦車で走りまくる事なのだ!」
「嘘つきー。そんなの見たことないもーん」
「むむむ。このガイウス・ユリウス・カエサルを侮るとはいけない子なのだ」
史実とは姿と性別が違うサーヴァントは、その腰に差していた剣を抜いた。
黄金の剣にはラテン語で黄橙色の死と彫刻されている。

ローマの英雄にして独裁者。皇帝の象徴。
多くの人々に愛されながら、最期は暗殺によってその生涯を終えた悲劇の偉人。
ガイウス・ユリウス・カエサルは剣を天に掲げ、魔力を集束させる。

「英霊の座にアクセス!イスカンダルよ。戦車と牛を貸してほしいの『ゴン!』だっ!?」

頭に落ちたゲンコツにカエサルはコブを押さえてうずくまった。その傍らには拳を握ったマスター。衛宮切嗣がいる。自分のサーヴァントを見る眼は限りなく硬い。
「……子供と遊ぶために宝具を使う馬鹿が何処に居る」
「ここにおる……って、キリツグのゲンコツは地味に痛いのだ!児童虐待なのだ!ドメスティックバイオレンスなのだ!余の素敵ヘッドが歪んだらどうするのだ!やーい。平たい顔族」
「……たのむからアホな真似はしないでくれ。頼む」
「いやなのだ」
「……令呪使うぞ」
「それ使い果たしたら困るのはキリツグなのだー。ぬふふ。余に頼み事をするときは面白い話をするか、美少女を愛人として捧げるのだー」
わははーとはしゃぐ自分のサーヴァントを見て、切嗣は本気で頭を抱えた。こいつは本当に歴史に名を刻む偉人なのだろうか?

アインツベルンが探し回ったカエサル由来の聖遺物で召喚を試みた結果、召喚は一応成功を収めた。
だが、ステータスは魔力と幸運を除いて軒並み最低クラス。おまけに宝具は使いにくい事この上ない機能であることを知った時のアインツベルンの落胆は大きかった。
だが、衛宮切嗣は道具の機能と性能の把握に努めた結果、ある戦略を考えていた。

「……面白い話をしてやる。作戦会議だ。来い」
切嗣の言葉に、はしゃぎ回っていたセイバーは表情に微笑を浮かべ、自分のマスターに向き直った。
「ようやくなのだな。イリヤよ。余達はこれから大事な話があるのだ。また後で遊ぶのだ」
「わかった。じゃーねー」
そのままセイバーと切嗣は城に入っていった。

62Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:33:17 ID:VvgFvbvs0
「それでね、セイバーと追いかけっこして私が勝ったんだよ」
「まあ、凄いわね。それからどうしたの?」
「セイバーと城の中に戻ったよ」
「そう。キリツグはセイバーと話をしていたのね」
部屋に戻ってきたイリヤの話に耳を傾けるアイリスフィールの表情には僅かな安堵があった。

『この聖遺物で喚ばれるのは確かにカエサルだ。戦争を繰り返した独裁者。僕が大嫌いな英雄様さ。とてもじゃないがまともなコミュニケーションはとれそうにない。馬鹿馬鹿しいことだけど、もしもの時はアイリ、君が仲立ちをしてもらうかもしれない』

召喚前に夫はそう話していた。
衛宮切嗣は効率よく動く殺人機械であり、故に自己の精神分析にも容赦は無い。
何の指示も無く駒を動かせば戦いにもならないことは当たり前であり、しかし指示をするには喚び出した英霊と最低限の会話をしなければならない。
だが、英霊と快楽殺人鬼を同様の存在と捉えている衛宮切嗣にとってそれは拷問にも等しかった……筈だった。

『わはははは。ローマは世界一!故に余は世界一の英雄なのだ!そんなサーヴァントがセイバーのクラスで参上なのだー!むむっ!?そこな銀髪の御婦人!お近づきの印に余の愛人となり膝枕しながら耳掃除することを許すのだ……ひでぶ!!』

喚び出した英霊少女に対し切嗣の第一声はアッパーカットの形で発せられた。

ようやくガイウス・ユリウス・カエサル本人である事が確認された時には、切嗣とセイバーはお互いの頬を引っ張りながら悪口を言い合っていた。切嗣最大の懸念は奇しくもサーヴァントの第一声で自然に払拭されることになったのだ。

(これでセイバーと切嗣の関係破綻だけは無くなったと思いたいけど……)
切嗣とセイバーが作戦を話している部屋のドアを見ながら、アイリスフィールは自分の腹部を撫でた。
泣いても笑っても切嗣は妻を失うことになるのだ。
後悔は無い。恐怖も無い。それでも―――

「お母様、どうしたの?悲しそうだよ?」
「なんでもないわ。それよりあっちで遊びましょ?」
「うん。お母様と遊ぶー」
はしゃぐイリヤの手を引きながら、アイリスフィールは思った。

―――それでも、この今が少しでも長く続いて欲しい。

63Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:33:57 ID:VvgFvbvs0
「お前の宝具はまともに扱うには莫大な魔力か或いは膨大な財貨が必要だ。これは間違い無いな?」
「そうなのだ。スキルにせよ宝具にせよ一度定着すれば、本来の担い手には及ばずともかなり扱えるのだが、それでもかなりの対価が必要になるのだ」
セイバーの言葉に切嗣は頷く。いくら資産家のアインツベルンでもセイバーを強化しようと思えばどれだけの財産が必要になるのか分かったものでは無い。
切嗣は自分の作戦を話し始めた。
「お前達英霊は相手の真名さえ分かれば宝具やスキルの見当はつくのか?」
「うむ。聖杯の知識のバックアップがあるからな。過去の英霊なら大体は分かる」
そうか、と切嗣は頷き、問いかけた。
「マンサ・ムーサ、マイヤー・アムシェル・ロスチャイルド、ジョン・ロックフェラーなどの人物達は英霊の座に登録されているか?」
いずれもその財力で余に知られる『英霊』の名を聞いて、セイバーが不敵に笑う。
「……なるほど、そうか。その連中なら確かに資産を膨らませる宝具ないしスキルを持っている筈なのだ」
カエサルを生かすも殺すも資金が問題だ。
だが、真性の黄金律を持てば?起業家にとっての『武器』であり『宝具』である『財産』を吸収すれば?

ただ一つの問題をクリアすればいくらでも強くなることがカエサルの強みだ。
最初に消費する財産を元手に、短時間で軍資金を増やすことも可能だろう。
「最初の資金確保はこちらで行う。お前は誰の力を借り受けるか決めておけ」
そこまで言うと切嗣は立ち上がり、部屋を出ようとする。

「それで、本当に構わないのか?」

かけられた問いかけに切嗣は振り返った。セイバーがいつになく真剣な表情でこちらを見つめている。
「……何のことだ」
「この戦い、勝っても負けてもお前は何かを失うのではないか?」
セイバーの言葉に切嗣は耳を疑った。このサーヴァントにはアイリスフィールの運命について何も教えていない筈なのに―――!?
「キリツグとアイリを見ていれば大体は見当がつくのだ。一応余にも願いはある。だが、それを棚上げして言おう。失う何かに得る何かはつり合うのか?」
セイバーの問いかけに、切嗣は表情を歪めながら答えた。歪みの原因は怒りでは無く悲しみだったが。
「……お前に何が分かる。戦争を繰り返して大勢の人々を悲しませた挙げ句、最期は人に殺されてくたばったお前に!!アイリの犠牲は全人類の救済に繋がる。間違っていない。間違ってなどいるものか。間違って……いない筈だ」
言い切った切嗣の答えは弱々しかったが、これ以上も無く重みを持っていた。セイバーは「そうか」と答える。
「キリツグは認めないだろうが、余もローマの英雄なのだ。見合うだけの結果は出そう。お前もやるからには徹底的にやれ……余のようにはなるな」
「当たり前だ。僕は失敗しない。アイリを犠牲にする。世界を救う。イリヤを迎えに行く。その心に嘘は無い」
迷いを振り切るように断言した切嗣は、そのままアハトの元へ足早に歩いて行った。
その姿を見ながら、セイバーは誰もいなくなった部屋で黙考する。
セイバーは聖遺物によって喚ばれた英霊だ。故に切嗣と精神的に似通った部分は無いと断言できるが、セイバーは切嗣と似ている人物を知っていた。

マルクス・ユニウス・ブルトゥス

セイバーが我が子のように愛した人物であり、ローマを愛した若者であり、セイバーを殺した一人だった。
暗殺団の大半がカエサルへの憎悪から剣を取った中で、彼はローマのために、愛する人々のために自ら汚れ役を買って出てその手を血と罪に汚した。
セイバーの最期が非業で終わったように、彼の最期も自害という結果に終わり、妻もその後を追った。
―――似ている。
信念そのものを指針として、それ以外の道を全く見ようとしない愚直なまでの危うさは酷似していた。
故にセイバーは、ガイウス・ユリウス・カエサルは衛宮切嗣を見捨てない。
私が愛した私を殺した人物と良く似ている彼を見放すなど、絶対に有り得ない。

―――再開しよう。世界に覇を唱える遠征を、世界を救うために、世界を燃やし尽くす程に。

64Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:34:34 ID:VvgFvbvs0
物事には予想外が付きものであり、それは大抵大事な場面で起こりうる。
だが、これは断じて自分の責任では無い。遺産管財課が持ち込んだ聖遺物が手違いであり、それによって招き寄せられた英霊―――違う。断じて違う。ただの亡霊を召喚してしまった責任は自分以外の全てにある。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはそう結論づけ、ソファに座って自分の武器である“銛”を手入れしている義足の老人を見やった。ランサーの位を得て召喚された老人もケイネスを見やる。
「どうした小僧」
「黙れ使い魔」
ランサーのサーヴァント、エイハブはケイネスの侮辱とも呼べる発言も気にした様子は無く、銛の手入れを続けた。
ケイネスが召喚を狙っていたのはスカサハ―――多くの若者を戦士に育て上げた、影の国と呼ばれる異界を治める女王であり、武芸と魔術に秀でた戦士でもある英霊だった。
その為の聖遺物の確保には難儀した。思えばコレが躓きだったが。
幻想種である海獣の骨、かの魔槍の原材料にもなったらしいそれを触媒に使ったはいい物の、ケイネスにとっては些細な、他人から見れば滑稽な見落としをしていたのだ。

海獣の骨に突き刺さっていた銛の破片を。

ケイネスは再び召喚したサーヴァントを見やった。
服装は薄汚れた漁師であり、顔つきにも気品など欠片も見られない。
忌々しい。全く持って忌々しい。貴族である自分のサーヴァントは自分に絶対服従し、その上で全ての有象無象を蹴散らす存在であるべきだ。外見にも霊格と神聖さが求められてしかるべきだ。
それだけではなく、このサーヴァントはケイネスにとってとんでもないことをしてしまった。
ホテルの一室。そこにはケイネスとサーヴァントしかいない。婚約者はもういない。
ケイネスが少し留守にしている間、ランサーが強引に国へ帰してしまった。
勝手な行動を罵倒するケイネスに対し、ランサーは一言だけ言った。

「女などいても役にたたん」

魔力供給者であるソラウはランサーに憤慨しながらも帰国したらしい。勝利の凱旋時には彼女を宥めるのが大変だろう。それだけではなく、魔力供給者がいなくなったためにケイネスは他のマスター達に対するアドバンテージが無くなり、更にケイネスにとってもっともたる理由が消滅した。何処吹く風と銛の手入れをするサーヴァントにケイネスは苦々しく言葉を発した。
「……ソラウに私の勇姿を見せる事が出来なくなった」
「そうか」
ランサーはそれだけ言うと、銛から目を離さずに手入れを続ける。
ランサーは何も気にしない。自らの願いである“白鯨との戦いの結末を教えること”を叶える以外には、何の興味も無い。故にケイネスの侮蔑心にも何も気にしていない。
ランサーとして召喚されていなければおそらくバーサーカーとして召喚されていたであろう船長は、銛の手入れを終えると立ち上がった。ケイネスは今もソファに座り込んで忸怩たる思いをしているようだが、ランサーには魔力タンクが無事であれば他に何の感慨も無い。そのまま霊体化する。
『俺は偵察に出かける。工房に籠もっていろよ。死なれると困る』
「貴様に言われずとも分かっているわ!愚か者!!」

65Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:35:12 ID:VvgFvbvs0
遠坂家はここぞと言うときにうっかりして失敗することが多い。
遠坂時臣はそういうことが少なかったが、彼の場合は人生を賭けた聖杯戦争の始まりにおいてそれが発動した。

「おー。うめえやこの酒。まほーつかいよお。つまみたのむ」
「……アーチャー、人の家の物を勝手に飲み食いするのはどうかと思うが」
第二次世界大戦時のアメリカ兵の軍装を身につけた男は、ガハハと笑うと、遠坂邸にあった高級酒をあおった。
「いーじゃねーの。俺はどうせ激弱英霊よ?明日どころか一時間後にも消えるかもしれんだろ。どーせならそれまでに楽しまねーとよ。おっ、そうだ。キャバクラ行くから金くれ金」
遠坂時臣は勝つ気すら無いサーヴァントに無言で財布の中から紙幣を出そうとする。だがその前にアーチャーは財布ごと引ったくった。
「じゃーな。危なかったら令呪で呼べよ。すぐに逃がしてやっからよ」
そこまで言うと図々しいサーヴァントは一瞬で消えた。足下の高級絨毯には妙な落書きが残っている。

『KILROY WAS HERE!』

台無しになった絨毯を見て、遠坂時臣は、はあ。とため息をついた。

第二次世界大戦時にあちこちで描かれた落書きは、都市伝説を生んだ。

―――キルロイという超人が存在している。

スターリンやヒトラーすら実在を信じた人物であり、万里の長城やエベレスト山頂、さらには月面にも彼の落書きは存在する。と言うのが都市伝説の内容だ。
勿論時臣は彼を狙って召喚したわけでは無い。本当は人類最古の英雄王、ギルガメッシュを喚ぶ筈だった。
だが、その為の触媒である世界で初めて脱皮した蛇の化石の状態が悪かった。
表面から見ただけでは分からない部分に、何者かが書いたらしい絨毯に描かれた物と同じ落書きがあることに時臣は気づかなかった。
「神秘の蓄積だけでは無く、もう少し調べておくべきだったな……」
悔やんでも今は遅く、あのアーチャーで戦うしか無い。
だが、彼の宝具は分身を無限に出現させるというものだ。しかも分身は発見されただけで消えてしまう。
落書きがある場所には無条件で自分が出現できるという利点があるにはある。
アーチャーの提案は分身をマスター殺しに専念させ、本体とマスターである時臣はいつでも逃げられるようにしておくという優雅さとはかけ離れた戦術だった。
当然却下すると、アーチャーは戦って生存することすら早々に諦めて自堕落な享楽にふけるようになった。
「……だが、アーチャーの実力ではマスター殺しがせいぜいなことも確かだ」
それに本来のアサシンである言峰綺礼の召喚したアサシンは当てにならない。
宝具は全く使えない。
役に立たないのでは無く、危険すぎる。
彼の宝具は神秘を衆目に晒しかねない危険なものだ。絶対に使用を認めないように綺礼には念を押したばかりだ。
……アサシンとアーチャーに手を組ませてマスター殺しを徹底的にやらせるか?
時臣は一瞬そのようなことを考えたが、すぐにその考えを振り払った。
「馬鹿な。何を考えている私は遠坂の魔術師だぞ」
いかなる時でも優雅たれ。その家訓を信条としている以上、野良犬のような戦い方を是とするべきでは無い。
弟子の綺礼も同じ意見であるはずだ。マスターを狙うのであれば、魔術師として誇り高く相手をする。
アーチャーとアサシンの二組を当たらせれば他のサーヴァントを食い止めることも可能だろう。
「その為にもまずは他陣営の情報を集めなければ」
時臣は宝石を利用した通信機に手を伸ばした。

66Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:36:55 ID:VvgFvbvs0
「いー天気だね。戦争なんて馬鹿馬鹿しいや」
アーチャーには願いがある。聖杯にかけなければ分からない願いが。

―――曰く、“キルロイ”について。

アーチャーは生前中国にもヒマラヤにも月にも行っていない……と思う。
当然“キルロイ”の落書きなど無い……筈だ。
自分の過去も良く思い出せないが、ごくごく普通の兵士で名前も知られず戦死したと思う。
そんな自分はいつの間にか名前がキルロイと同じだという理由で英霊の座に担ぎ出され、逸話によって不思議な力を持つに至った。
考えてみれば他人の勝手に英霊になったようなものだが、そもそも英霊は他人が勝手に英霊にするものだから、気にはしていない。
気になるのは、本当の自分である“キルロイ”の事だ。
家族はいたのか。フルネームは何か。好きな女優は、フットボールチームは何処のファンなのか。
“キルロイ”の全ては、都市伝説の厚い地層の中に埋もれている。
それを掘り起こして自分を思い出すことが自分の願いだ。だが、しかし。

「よくよく考えりゃ、他の英霊と戦って勝ち残れるかね」
いざとなれば逃げるし、それまでは諜報とマスター殺しに徹する。そういう自分の作戦は当のマスターに却下された。
誇りだの優雅だの何が何だか“キルロイ”には理解の外だが、分かったことは一つ。このマスターでは勝てない。
ならばマスターに反逆して新しいマスターを探すべきかとも思ったが、簡単に人を殺せる程、元の自分は悪人じゃ無かったと思う。
考えた結果、アーチャーは戦いを放棄して他のサーヴァントに殺されるまではひたすらに現代の生活を楽しむことに決めた。
幸いなことに自分の気配遮断スキルがあれば簡単には発見されないだろう。
まだしばらくは第二の人生を楽しめそうだ。
「まずはスシってのをかっ食らって、その後は姉ちゃんと遊びまくるかあ」
自然に“キルロイ”の足は歓楽街へと向かっていった。

67Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:37:27 ID:VvgFvbvs0
「はい導師。アサシンには宝具の不使用を厳命しております。ご心配なく」
そこまで話し終えると言峰綺礼は礼拝堂へ赴いた。その足取りはたった今嘘をついた様子など見て取れないほど悠然としている。

「アサシン。「名誉ある男」はどの程度まで増えた」
「そーさね。五十人ってとこかな」
席に座る顔中に傷痕を持つ男はマスターである綺礼の問いかけに答えた。
「アサシンに似つかわしくないカリスマを持つ割には遅いな」
「フジムラグミだったか?連中がきっちりしてる分入りたがるチンピラが少ねえんだよ。この街は。だがまあこれだけ頭数が増えれば後はかってに増えるだけだ。しかしいいのかよ?この抗争はパンピーに知れたらヤバイんじゃねえか?」
「構わん。時臣師の戦略では勝てない」
気配遮断スキルを持つアーチャーとアサシンを単なる足止めで使い潰す戦略をとろうとしている時点で言峰綺礼は遠坂時臣では勝てないと確信した。故の背信。聖堂教会からも魔術協会からも絶対のタブーとされる神秘の漏洩に繋がるであろうアサシンの宝具解放を許可した。

『我らのもの(コーサ・ノストラ)』

アサシンに心服したものをファミリニーの一員に加え、自由意思を持った使い魔に変える宝具。
その効果を聞いた遠坂時臣は神秘の漏洩そのものである宝具の使用を厳禁したが、多数の異端狩りに関わり、戦いを知っている言峰綺礼は、鉄砲玉を大量に生み出せるこの宝具は使い勝手が良いと結論づけた。
「私は衛宮切嗣と邂逅せねばならない。そして奴が何を得て何を失い何を見つけたのかを知る」
もとより何の願いも持たなかった男は、今確かに願いを得ていた。
ふと、その視線が自らのサーヴァント・アサシンに注がれる。その表情が怪訝に歪んだ。
「……アサシン、何故私はお前を召喚したのだろうか」
ラッキー・ルチアーノ。
麻薬ビジネスによって彼が不幸にした人間の数は、下手なシリアルキラーなど軽く越えているだろう。
ならばそのような“悪党”を召喚した自分は、何なのだろうか。
「しらね。案外似てたんじゃね?」
「ならば―――私は」
「言っといてやるが、『仕方なくこうなった』なんてもんはただの言い訳だぞ。悪党だろうが善人だろうがなるなら自分の意思で決めな」
アサシンの軽口に、綺礼は何も言わなくなる。
そう。たとえ本性がどうであれ、何であれ、罪は罪なのだ。考えるのと実行に移すのとでは違う。
それくらいは綺礼にも分かっている。だが―――。

(あの“背信”の味は……もう一度味わってみたい)

確かに言峰綺礼は高揚していた。

68Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:38:11 ID:VvgFvbvs0
銃口からは休み無く弾丸が吐き出され、それは蟲倉の壁に据え付けられた的の中心部を貫いた。
満足いく結果―――百発撃って百発とも的の中心に命中した。
間桐雁夜は自らの牙にして、自分が召喚したサーヴァントであるバーサーカーのグリップを握り、凄絶な笑みを浮かべた。

最初にサーヴァントの召喚陣に出現したこの銃を見たとき自分は絶望し、臓硯は嘲笑った。
だが、やけになってこの銃を手にした瞬間、信じられないことがおこった。

自分の身体が動くようになったのだ。
半身は麻痺し、後は死を待つだけの肉体が、生前と同じように動くようになった。
原因は自分の召喚した機械の英霊に他ならない。
これは雁夜が知る由も無かったが、この効果はバーサーカー―――AKの狂奔というスキルによるものだった。
人を戦いに狩り立てる能力は、人をバーサーカーにするも同じ事であり、結果的に雁夜の肉体に僅かながら力を取り戻したのだ。
当然、身体自体が治った訳では無く、サーヴァントから僅かに魔力が逆流し、動きやすくなったのみ。
いわば自らの身体を操り人形にしたのと同じであり、常人よりも戦闘能力は低いだろう。
そういう臓硯の見立てに対し、それでも雁夜は戦意を失っていなかった。
「それでも十分だ。まさかマスター自身が戦場に立つとは誰も思わない筈だ」
間桐雁夜は弱い。そんなことは百も承知だ。自分が弱いから愛する人を悲しませ、その人の娘を地獄に送り込む結果となってしまった。
だから、勝つ為に妥協しない。敵が潰し合って一人になるまでひたすらに逃げ隠れ続け、隙を突いて殺す。
本音を言えば、強力なサーヴァントを率いて遠坂時臣を擂り潰したかった。だがしかし。

「雁夜おじさん……終わったの?」
雁夜が振り返ると、そこには瞳を絶望に曇らせた桜がいた。
「ああ、終わったよ。桜ちゃんは……」
「お爺様がムシグラに来なさいって」
「……分かった。桜ちゃん、ちょっと話を聞いてくれるかい?」
桜は何のそぶりも見せず、雁夜の瞳だけを見た。
「おじさんはしばらくの間仕事に出なくちゃならないんだ。だからこうして桜ちゃんとお話するのもこれで最後だと思う。だけど、全部終わったら、きっと……」
きっと、君は幸せになる。とは言えなかった。万が一にも希望を与えてはいけない。今の桜に希望は毒と同義であり、心を守っているのは絶望だけでしか無い。
「ありがとう桜ちゃん。もう行くね」
そう言うと雁夜は歩き出した。桜は何も言わずにしばらく見送った後、蟲倉の闇に消えていった。

そう。あの少女の未来と比べれば、今から死んでいくつまらない男の怨念程度、軽いに決まっている。
勝利に向かって突き進め。どれだけ曲がりくねり、逃げ続けても最後に聖杯にたどり着ければそれで良い。
あの男が他のマスターに殺されるならそれでも良い。生き残ればこの手で隙を見て殺してやるまでだ。
―――敵を殺し尽くして国を救え。
―――人を殺し尽くして人を救え。
雁夜が辿り着いた思考は、奇しくもその手に持つ銃器が作られた理由と同じものだった。

69Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:38:50 ID:VvgFvbvs0
風を切る走りは山道上のこととは言え、確かな充足感をウェイバーに与えていた。
バイクは徐々に減速し、展望台がある辺りで停車した。ウェイバーは高台になっているその場所から街の様子を見た。
「あれが川であれが山、だとすれば地脈の流れが……」
高所からの偵察は、ある程度この冬木市のことを魔術的な面から推察することが出来た。
ふむふむと頷くウェイバーに対しライダーは何も言わない。喋る口など無いのだから。

ウェイバーをこの高台まで運んできたバイク乗りのライダーには首が無い。
聖遺物無しでの召喚を敢行した結果、出てきたのがこのライダーだった。
英霊では無く、亡霊。真名すら持っていない“首無しライダー”という都市伝説から生まれた異形が此度のライダーだった。ステータスは最低スキルであり、どう見ても強力な英霊では無い。

だが、ウェイバーはコレはコレで満足だった。
仮に強力な英霊を召喚し、勝ち進んだとしよう。だがそれはそのサーヴァントの力であり、ウェイバーの力では無い。むしろサーヴァントの弱さを補って結果を出せば、それは自身の力を周囲に認めさせるというウェイバーの願いを叶えることにもなる。
問題はライダーの非力だが、宝具や特性を利用した作戦も考えてある。
それにこのライダーは有益な特性を持っていた。

「……で、一通りこの街を見回ったけど、いままで捕捉したサーヴァントは歓楽街で遊んでいる奴、それから教会にいるらしい奴、マキリの奴は動いていないみたいだけど、近づきすぎるのは拙いな。ホテルにいる奴が出てくれば分かり易いんだけどな……」
地図を見て唸っているウェイバーに、首なしライダーは持たされたメモ帳に自分の考えを書いた。
『あと一人、おそらく地下にいる。そこから動いていない』
「そうか、もしキャスターだったら、陣地を強化していくだろうから時間がたてば立つ程厄介になるな。それでも、最終局面では陣地を出て出撃せざるをえないだろうけどな」
現在、多くの部下を従えているアサシンを除けば敵サーヴァントの正確な位置を大まかでも掴んでいるのはこのライダーだ。ライダーは頭部を欠損しているが故に触覚以外の五感を持たない。その代わり、周囲の物体、霊体の座標を正確に把握する超感覚を持つ。
敵サーヴァントと相対すれば自慢のバイクを使い全速力で逃げる。と、見せかけ、自らの宝具である『絡みつく首慾衝動(ワイヤード・ツーリング)』を発動させ、敵マスターの首をもぎ取る。
逃げと攻撃を同時に行うことが、ライダー主従の作戦だった。
それをスムーズに行うためにも、情報はいくらあっても足りない。
「よし。次はお前のバイク技術を見るぞ。この山道で走り抜け。これは全力を見るためのテストだ。遠慮はいらないぞ」
ライダーはウェイバーに、短いメモ書きを見せた。

『まかせとけ』

70Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:40:15 ID:VvgFvbvs0
下水道内部に銃声が何発分も響き渡る。時折悲鳴も聞こえるが、その大半は逃げ回る人々のものに他ならない。
「ヒ、ヒイ」
排水溝の入口から出てきたのは、銃を手に持った制服警官だった。
ふり返りざまに下水の闇に向かって銃弾を撃ち込むも、それは闇中から現れた1人の男に弾かれて床に落ちる。
驚くべき事にそれは手に持つ日本刀によって為されていた。しかし逃げ出した警察官は知っていた。
そのただの刀だけで十名以上いた警官隊は自分を除いて全員が惨殺されたことを。
「凄いっしょ。このポン刀キャスターの旦那が脚色してくれたおかげで鉄でも切り裂けるんだぜ」
殺人事件容疑者、雨生龍之介。ふとしたきっかけで警察にマークされた男だ。
殺人現場の家から出てきたという証言から、家宅捜索が決定し、捜査令状を携えて返事の無い実家に入った捜査員達が見たものは、土蔵の中にあった死後十数年は経過しているであろうミイラ化した遺体と、つい先程殺されたらしい雨生龍之介の両親の遺体だった。
即座に指名手配された本人が子供を連れて下水溝に入っていくという情報を手にした警察は、銃で武装した警官隊をもって根城にしているらしい場所に突入し―――
ゆっくりと、丁寧に解体されながら殉職する警察官は思った。

何処の誰がこんな奴に、銃弾を跳ね返し、一瞬で数人を斬り殺し、野獣のように動き回ることが出来る力を与えたのだ。


「旦那、終わったよー」
アートの材料にすべく死体を引きずる龍之介はにこやかに自分に力を与えた人物に呼びかけた。

「おう。どうだ?俺が創った宝具は」
龍之介が持っている日本刀は神話から抽出した構成要素で強化されたものであり、サーヴァント級に身体能力が脚色された龍之介が振るえば大抵の物はバラバラに出来る一品だ。
「刀って初めて使ったけど、割と上手くできたよ。一瞬で何人もズンバラリンにしてさあ、血煙が綺麗だったな〜」
「死を美しく魅せる事が出来たんなら結構。この天才リヒャルト・ワーグナーが創ったんだ。つまらねえ殺しなんざやったら許さねえぞ」
「凄いよ旦那はさあ、今の俺、漫画のヒーローじゃん誰にでも勝てる気がするよ」
そこでキャスターのサーヴァントとして召喚されたリヒャルト・ワーグナーは首を横に振った。
「馬鹿野郎。悪者の殺人鬼は最期に英雄に滅ぼされるんだよ。それがオペラだ」
「分かってるって。あー、俺を殺してくれる奴ってどんなサーヴァントなんだろ。それとも魔術師とかいう人かなあ。ズタズタにされるのかな、粉々にされるのかな、それとも綺麗に殺されるのかなあ」
初めてなった殺される立場というものにウキウキとはしゃぐ龍之介を見ながらキャスターは召喚当初を思い出した。

『んー、おめえが殺したのか……殺人鬼ねえ、おう。俺が初めて会うタイプだ。オペラの悪役に使えるなあ』
召喚者の精神に影響されたのか、それとも元々自分の創作活動以外には動じないタイプだったのか、キャスターは龍之介の凶行を咎めもせずに、龍之介を『悪役』としてスカウトした。
話を進めていく内に、龍之介はかなりマンネリになっていたらしく、それをキャスターなりに助言した。
『殺すのに飽きたんなら、いっそ殺されてみたらどーよ?』

71Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ:2014/11/28(金) 20:40:45 ID:VvgFvbvs0
そこでキャスターは自らの宝具で龍之介を強化すると、殺し殺されるために行動を開始した。
全ては最高のオペラを創るために、魂食いにも抵抗はなかった。
雨生龍之介は殺されるだろう。これまでの報いを受けて。そうすれば自分も消える。
それまでにオペラを書き上げる。テーマは『悪鬼を斃す英雄達』。
死んだ奴らには気の毒だと思うが、どっちにしろ人間はいつか死ぬのだからオペラの構成要素になって死んで貰うことにした。彼等の犠牲に報いるためにも、龍之介は徹底的に暴れさせて全ての英霊がこちらを滅ぼすように仕向けないといけない。
そのためにも、
「最期にブッ斃される悪者が弱いなんざつまらねえ。目茶苦茶に理不尽な強さを持つ悪役を斃してこそのオペラだ。英雄譚だ」
周囲の死体と死にかけから魂食いを行うと、キャスターは再び龍之介の強化につとめる事にした。
「でもさー、旦那ー。俺ブッチギリで強くなってるけど、俺が全部サーヴァントっての斃したらどうすんの?」
聖杯ってのは別にいらないけどさ。と尋ねる龍之介に、キャスターはふむ、と頷いた。
「とりあえずは受肉だな。そんでお前を世界最強の殺人鬼にする。そしたらお前の好きなだけ殺しまくれよ。軍隊と戦っても返り討ちに出来るようにするからさ」
「うーん。それって何かつまらなそうだなあ。マンネリになったら退屈で俺死ぬかも」
「安心しろ。人類滅亡させるつもりでいけば抑止力ってのがやってくる。そしたら流石にお前も殺されるだろ」
「そうだね。何にせよ。他のサーヴァントを全部殺らないと」
そこで龍之介は強化脚色された一本のナイフを見ながら、にんまり笑った。
「伝説の英雄って、どんな死に様晒してくれるんだろうなあ……楽しみだなあ……」

72Fate/zero ~アンビリーバブル・ウォーズ 解説:2014/11/28(金) 20:41:47 ID:VvgFvbvs0
セイバー ガイウス・ユリウス・カエサル。
基本ステータスが低い。セイバークラスにあるまじき低さ。幼女バージョン。
宝具が思いっきり使いにくい筈ですが、作中で述べたとおり、どうにかしてまともな黄金律を獲得できれば、あとは好きなだけ強化できるチート英霊です。
切嗣はカエサルのことは大嫌いですが、カエサルは昔の知り合いと重ねて見ているので、決定的な亀裂は避けられるだろうと思います。

ランサー エイハブ。
持ち味であるはずの敏捷ステータスが思いっきり低い。
本来は海獣の骨で別の英霊を喚ぶ筈が、刺さっていた鯨撃ち用の銛が触媒となって喚ばれました。
ケイネスとの仲は険悪ですが、これは別にランサーが嫌っているとかでは無く、白鯨との戦い以外何の興味も無いため、ケイネスにも関心が薄いことによります。
少なくともソラウを帰国させたあたりは、思うところがあったかも知れませんが。

アーチャー キルロイ。
ステータスが低い。しかし何気にアサシン並みの気配遮断スキルを持っている辺り、アポの二重召喚に通じていると思います。ミナサバーズの先見性は改めて本当に驚きました。
切嗣と組めばあっさり聖杯戦争終わりそうですが、時臣と組んでいるため暗殺や奇襲が出来ないために早々と勝利を諦め現世での観光旅行に精を出しています。

ライダー 首なしライダー。
マスター狙いのライダーという微妙な性能ですが、逃げと攻撃が同時に出来て、バイクを使うため神秘の隠匿がしやすいことなど、案外使いやすいサーヴァント。
それなりにコミュニケーションが取りやすい事に加えて、敵サーヴァントの位置が結構分かるので、逃げに徹していれば相当厄介なサーヴァントです。

アサシン ラッキー・ルチアーノ。
自由意思の使い魔を大量に作れるという性能ですが、神秘の隠匿が絶対に出来ないという魔術師という人種にとってはとんでもないハズレサーヴァントです。
でも言峰にとっては切嗣を問いただすことが最優先なので、さっさと背信して兵隊勧誘に精を出しています。

バーサーカー AK。
ステータスが無い。
超解釈で雁夜の身体を少し自由になる程度にまでは回復させました。雁夜自身弱さを良く分かっていることと、比較的冷静でいられたことから、奇襲や暗殺で仕留めようとする以上、最大の大穴ダークホースになる……かもしれない。

キャスター リヒャルト・ワーグナー。
そもそもまっとうな意味での魔術師ではない事から悪グナーとなって登場。
この嘘予告で文句なく今のところ最強の組。龍之介に英雄並みのスペックを継ぎ足すという最悪のケース。
ラスボスになりかねないものの、キャスター自身は悪は滅んでこそオペラになると思っているため、存外早くやられるかもしれません。

73名無しのSS屋:2014/11/28(金) 20:42:36 ID:VvgFvbvs0
『非力』な英霊を第四次のマスター達が喚んだらどうなるのか?
と思って、この嘘予告を書き上げました。書いて思ったことは、『非力』なサーヴァントはいても、『弱い』サーヴァントはいないということですね。
以外とキャスター組が一番強かったり、カエサルやAKを超解釈したり、書き応えがありました。
長編の続き書きたいんですが、結構上手くいかないですね。これからもボチボチ書いていきたいと思います。

74名無しさん:2014/11/29(土) 13:16:31 ID:HSEVxdQI0


75名無しさん:2014/11/29(土) 19:42:44 ID:fxobmq8A0


いやあ、これはひどいw
なにげに銃使いor銃そのものが3人も居るから、殺傷力自体はそこまで低くないのがなんとも。

76名無しさん:2014/11/29(土) 20:48:37 ID:7FtptDv20
もったいないなあ、キルロイは戦術次第で化けるサーヴァントなのに……

77名無しさん:2014/11/30(日) 01:26:10 ID:Zeujr7iA0

全体的にヘタなアサシン、キャスターの方がステータスも優秀、使い勝手もいいという恐ろしいメンツだ……
アーチャー、アサシン&兵隊、バーサーカー&雁夜、切嗣の銃撃戦が見どころだな!

78名無しさん:2014/11/30(日) 01:32:19 ID:OxBFRzNE0
非力はいても弱者はいない……至言に感じるな

79名無しのSS屋:2014/12/01(月) 20:04:49 ID:NHvfRqvg0
おお、こんなに感想が!!感謝感激雨あられです!!
ありがとうございます!!

80名無しさん:2014/12/03(水) 12:10:16 ID:rKljrtt6O
ワーグナーが書き上げて呼び出した海魔を、白鯨絶対殺すマンがぶち抜くところが見たいな

81名無しさん:2014/12/03(水) 12:38:26 ID:EQBSZhrw0
エイハブさんは水棲の幻獣、魔獣、魚類に対して限定とはいえ
獣殺スキルA+蛮勇スキルA+『我が人生の誉(モービィディック)』 で
2*2*2*2*2*2*2*2*2の512倍ダメージっていう瞬間最大火力持ちだからなぁ
型月的にはテュポーン並の化け物な白鯨とガチンコやっただけの事はある

82名無しさん:2014/12/04(木) 02:34:06 ID:GLj1Q80Y0
相変わらずアホすぎる倍率だな……w>512倍

83名無しさん:2014/12/07(日) 00:15:03 ID:dSGfZ/yY0
獣殺以外は倍とか書いてないのに何で掛け算してるんだ

84名無しさん:2014/12/07(日) 01:43:26 ID:Cd7SSGQw0
前スレからの流れ

85名無しさん:2014/12/08(月) 11:08:15 ID:74IHw9tEO
型月世界的に白鯨がテュポーン級のバケモノに設定されて相対的にタイマンやった船長の株が上がったのと
ゆで理論

86名無しのSS屋:2014/12/11(木) 21:10:06 ID:UUP6Tc.I0
問1。
冬木市における第五次聖杯戦争で、確実に優勝できると思われるサーヴァントを述べよ。

この前は第四次で非力(弱いという意味では無いのであしからず)なサーヴァントを召喚しての嘘予告を書きましたので、今度は私なりに『強力』だと思うサーヴァント達を出演させました。
ご用とお暇で無い方はどうぞご覧下さいませ。

87名無しのSS屋:2014/12/11(木) 21:11:24 ID:UUP6Tc.I0
「で、あんたが私のサーヴァントでいいのかしら?」
遠坂凛は瓦礫の中であぐらをかいて座っている人物を見やった。
美男子と言うよりは愛嬌のある顔をした中年の武将は、うむ。と頷く。
「アーチャーのサーヴァント徳川家康じゃ」
徳川家康。
江戸幕府開闢の祖にして、天下統一を成し遂げた戦国武将の中でも最も有名な人物。
凛は拳でガッツポーズを決め、小さく呟いた。

―――この戦い私の勝「まあ、お互い死なんようにボチボチ頑張ろうな」

思いっきり気の抜けた台詞に、凛は思わずズッコケかけた。
「あんたねえ……、サーヴァントとして勝利をもたらすぐらい言えないの?」
「わしゃあ、勝つのは得意だよ」
しかし、とアーチャーは言葉を句切った。
「負けるのはもっと得意だからのー」
「何言って……そうか。あんたの生涯って、平坦じゃなかったもんね」
歴史によれば、元々の家は弱小豪族であり、祖父は暗殺され、衰退。
幼い頃は今川やら織田やらで人質生活。
武田信玄と戦っては負け、有名なしかみ像と呼ばれる肖像画を残し、信長の死後は秀吉の台頭で住み慣れた領地を追われてまで秀吉に臣従する事になった。
関ヶ原では勝ったものの、圧倒的に兵力に劣る相手に対しギリギリの勝利だった。
大坂の陣では自決すら覚悟した。
常に上り坂の人生であり、忍従の人生であり、戦い続けた生涯を持つ英雄。
それが凛の召喚した徳川家康だった。
「だが安心せい。負け方を知っておる分、勝ち方も知っとるからな」
そして最後の最後で勝利した英雄。
凛は確信した。転んでもただでは起き上がらず、栄光を諦めないこの姿こそ彼が天下人にまでなった理由なのだと。
そして、自分もまた勝利に向かって突き進むべしと心に決めた。


「結界宝具に大砲の宝具持ちで接近戦もこなすか、籠城戦になりそうね」
「おう。物資は用意しておるか?」
作戦会議をしている中で、凛はふと疑問に思った事を尋ねた。
「ねえ、アーチャー。貴男はなんで私の召喚に応えたの?」
「そりゃあ、触媒があったからだよ」
アーチャーのその言葉に、凛は怪訝な表情をした。
「……徳川家康の触媒なんて用意していないけど」
凛のその言葉に、アーチャーは瓦礫まみれになった部屋の隅を指差した。
「ほれ、あれが触媒だ」
その言葉に凛が部屋の隅にまで歩き、アーチャーが指差した物を手に取った。
「これって、小学校の修学旅行で行った日光東照宮で買ったお守りじゃない」
「ああ。わしが神として祀られているところで買った守札なら、触媒として十分だ」
何せ、有る意味ではわし自身だからのう。と解説するアーチャーの眼前で凛はプルプルと震えだした。
「一千とんで六十五万四千三百九十円」
「ん?」
「この日に備えて最強の英霊を召喚するための触媒を手にいれる為に方々を探し回った調査費と購入費よ」
それでも結局偽物だったり、神秘が少なかったりで使えなかったけどね。
冷静に事実を述べる凛のこめかみはピクピクと痙攣している。耐えきれずウガーッと絶叫した。
「それが、存在すら忘れていたお守りで召喚されたですってー!?私の青春の時間と費用を返せー!!」
「お、落ち着かんかい!」
あかいあくまに喚ばれた狸親父は、これからの戦に一抹の不安を覚えながら必死に凛を宥め続けた。

88Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:12:14 ID:UUP6Tc.I0
「シンジ、酒だ」
「あ、ああ」
慎二が洋酒をつぐグラスは一つだけではなく、二十の数がある。
そしてそれを持っているのは此度の聖杯戦争でライダーとして召喚されたサーヴァントだった。
赤銅色の眼でつがれた酒の色を楽しみ、乱杭歯が生え揃った口で一気に酒精をあおった。くはっ、と息を吐く。
二十の腕を持つその男は人間では無い。
自らの首を切り落として火にくべる苦行の末、神々、ガルーダ、ナーガ、ヤクシャには決して殺されない身体を手に入れたラクシャーサ。
羅刹王ラーヴァナが彼の名前だった。

ラーマーヤナに関係あると言われていた。とある寺院に安置されていた宝石はマキリの手に渡り、彼は間桐桜の手で召喚されることになった。
当初はその威容に恐れを隠せなかった慎二も、伝説通りの彼の宝具を詳しく聞き出すと、進んでラーヴァナと共にいるようになった。半分は戸惑いもあるが。
慎二はニヤニヤと笑いながらライダーにつまみのチーズを渡す。高級な部類に入るそれは一瞬でライダーの口に消えた。慎二は咀嚼するライダーにもう一度尋ねた。
「お前の宝具、普通の人間からかけ離れた奴。つまりは神性を持っているサーヴァントには特に効果があるんだよな?」
「うむ。苦労して手に入れたとは言え、以外と退屈になったがな」
「凄いじゃないか!ギルガメッシュ、ヘラクレス、クーフーリン、カルナ、イスカンダル。大抵の強力な英霊は神の血を引いているかそれ並みの信仰を集めている連中ばかりだ!他の参加者が強力な英霊を喚び出せば喚び出す程お前の独壇場だぞ!!」
興奮する慎二に、ライダーはつまらなそうに答えた。
「そうなったらつまらなすぎていっそ死にたくなるがな……ダメか。吾輩も人間じゃ無いから首を切り落としても再生しちまう」
「……もう一度聞くけど、お前は殺し殺される『人間』との戦いを存分に味わうことが願いで、聖杯自体には特に興味が無いんだよな?」
「いや。今思いついたが受肉して人間相手にもう一度ラーマーヤナを始めるというのはどうだ?」
人間の軍隊と総当たりしてみるのも面白いかもしれぬ。と獰猛に笑う羅刹王に、慎二は思わず身震いした。
「お、落ち着けよ。お前の願いは多分、と言うか確実に叶う。お前のマスターが今のところこの本だって事は知ってるだろ?」
慎二は偽臣の書を掲げて見せた。
「ああ、知っとる。それで後の一席をどこぞの魔術師から令呪を奪い取った蟲の小僧が埋めるということもな」
マキリの怪物を小僧扱いするライダーに表情を引きつらせながらも、慎二は話を続けた。
「その一席はアサシンだ。そしてその英霊は……」
瞬間、ライダーが表情を喜びに輝かせ、問うた。
「もしや、モンスタースレイヤーか?」
怪物殺し。ヒトでありながらヒトの捕食種たる怪魔を滅ぼす力を身につけた者達。
ライダーが不死身の肉体を得て以来、感じ続けている『飢え』を満足させるかも知れぬ『人間』。
期待に胸を躍らせるライダーに、慎二は不敵な笑みを浮かべた。
「首尾良く行けばの話だけどな。そいつは純粋の人間で、日本で最も有名な侍だ。残りの五騎を叩き潰した後で、ゆっくり殺し合いなよ」

89Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:12:51 ID:UUP6Tc.I0
「せやから言うとるやろ。楽々に勝つにはマスターに令呪で自決させた方が効率的じゃい。サーヴァントの情報は分からんにしても、マスターの情報まで分からんてどういうことやねん」
関西弁で喋る鎧姿の男は間桐臓硯に文句をつけた。臓硯は何も言わない。
文字通り虫の息なのだから返事など出来る筈もないが。
召喚されたサーヴァント、アサシンは基本的に機能も性能も申し分ない英霊だった。
そして、ある程度の情報交換を行った後で、アサシンは知覚が不可能な程の速度で抜刀し、間桐臓硯を切り刻んだ。
そして臓硯は、無数の蟲はただ蠢くしかできないでいる。
数百年を生きた怪物は、蟲の一部に突き立てられた日本刀を見やった。
(ほ、宝具か!おそらくは―――!!)
不覚をとった。令呪さえあれば、或いは桜の命を人質にすれば何も出来ぬであろうと慢心した結果がこれか!!
やがて蟲の一部から必死に声が絞り出された。
「よ、よいのかアサシン。儂を殺せば桜が……」
「ん?三虫の一種やろ。要するに。その口ぶりからするとあの嬢ちゃんの中か」
アサシンは鎖に縛り付けられ全裸でただ黙っている少女を見ると、もう一振りの刀を抜いた。
アサシンがやろうとしていることを臓硯は察し、必死に縋るが如く止める。
「ま、待て。その娘は誰1人殺しておらぬ、弱民ぞ。それを殺すなど」
「それが?糞虫千匹殺すのに人一人の犠牲で済むなら安い買い物じゃ」
そう言うとアサシンは、身じろぎ一つしない桜の前で刀を振りかぶった。

桜は迫り来る死に何も思わなかった。
いずれ来る死であり、どうせ避けられない死であるのなら、せめて綺麗に終わらせたかった。
だから目の前にいるアサシンは自分にとっての救いであり、何も怖くは無い。
「あー、残念やー。こんな風に聖杯戦争が終わるなんて、むっちゃショックやー」
そう言って刀を振り下ろそうとする侍を前に、桜の口から一言言葉が漏れた。

「せんぱい」

瞬間、腹の底から何かがこみ上げるように、桜は口から全てを吐瀉した。
吐瀉物まみれで逃走する蟲は、逃げるよりも速く侍の刀で刺し貫かれた。
「やーっと出てきたかい。しっかしわしも相変わらず役者やの〜」
「ア……ァァ……」
ボロボロと壊死していく本体の蟲から、臓硯の声が聞こえる。
「……騙していたのか。すべて、芝居だったのか」
「お前かて人を食ってたんやろが。わしには分かるわい。まあ、運が悪かった思うて諦めい」
「た……すけて、死にたく、ない」
「あーそうかい。死にたくないのね。うん。せやけど―――」

お前はどれだけそう言う人間を喰い殺したんじゃ?

アサシンが慈悲の欠片も無く言い放った言葉を最後に、マキリの怪老は完全に滅び去った。

アサシンは呆然としている桜の前に立ち、今度こそ刀を振り下ろす。
ジャラジャラと鎖が地面に落ちる。断面はバターのように綺麗に切れていた。
「悪い悪い。怖かったなあ嬢ちゃん。でもあんなんきっしょい虫けらにいじめられても負けへんで強かったなあ、偉いなあ。嬢ちゃんは。立派やで」
侍は、にかっと笑った。悪戯が成功した子供のように。

90Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:14:26 ID:UUP6Tc.I0
「……つまり嬢ちゃんは闘いは嫌ちゅうことね」
そういうアサシンの手にはお銚子に入った日本酒がある。
それを受け取った桜は、身体の隅々まで洗われるような芳香を放つ酒を飲み干した。
もう大丈夫だとは思うが、念のためにこの神造の酒で消毒しとき、とはアサシンの弁だ。
その話す効果に嘘は無く、桜は体内の蟲が一匹残らず死滅していることに気がついた。
ほろ酔い加減で幸せな気分に浸りながらも、桜はアサシンの言葉にはっきりと返した。
「うん。殺されたくないし、人を殺すのはもっと嫌」
「まいったなー。わしも別段聖杯が欲しい訳やないしー」
頭をボリボリとかくアサシンに、今度は桜が驚く番だった。
「えっ、アサシンは聖杯が欲しくないの?だって願いがあるから戦争に参加したんじゃ」
「わしの願いはこの戦争で死んだり怪我したり泣いたりする連中が出んようにすること」
ほら、わしってこの国のサムライやし?他の連中が手段選ばない真似しくさるようやったらさっさと切り捨てる義務がありありな訳で。
などと言いながら蟲倉に散らばっている桜の服を拾うアサシンは、床に突き刺さっていた自分の愛刀を引き抜いた。
「まあ、とりあえず現世での人助け第一号は嬢ちゃんな」
そう言うとアサシンは抜刀と同じく目にもとまらない速度で納刀し、桜に服を渡した。
死にそうな人に手を差し伸べて、逆に手を噛まれても後悔だけはしない人。
桜はアサシンのその姿に、無意識で想い人の姿を重ねていた。自然と声が出た。
「アサシン、私―――「さ〜て、敵が出たらどういう方法でぶっちめたろうかね〜」へ?」
ケケケと笑うアサシンの表情は先程までの自分を安心させる笑顔とはうって変わって、テレビに出てくる悪代官のものに似ていた。あっけにとられる桜に構わずアサシンは喋る。
「まー、出ないなら出ないでこしたことないけどな、この時代の魔術師はさっきの蟲みたいな性根しくさった連中が多いらしいし、それこそ外道は掃いて捨てる程出るやろ。
今までさんざん人を踏みにじっていた連中が逆に踏みにじられることになったら、それこそ大爆笑もんやで。
おまけに卑怯くさい手でどん底に突き落とされたら、もうそいつらそれだけで血管ブ千切れてお陀仏じゃ。
あー、英雄ってたのしー」
さて、戦の前に作戦会議じゃ。こと戦は始まる前に戦って、終わる前に終わるもんやから。
そのままアサシンは蟲倉の階段を昇り始めた。桜は服を着ながら混乱していた。
(……ど、どうしよう。いい人らしいし、実際にいい人だと思うけど、私ひょっとしてそれ以上にとんでもない人喚んだんじゃあ……SOSせんぱい〜!!)
「じょーちゃーん」
混乱の中から自分を呼ぶ声に、はっとして意識を元に戻すと、こちらを向いたアサシンは言葉を発した。
「わし、源頼光。化け物退治の英雄やで。よろしゅう頼んます」
「え?」
「あら、ひょっとして今の時代じゃわしマイナー?あ〜、むっちゃショックやわー」
「あっ、そんなんじゃ無いの。ただ驚いて、私こんなに簡単に解放されると思ってなかったし、だから」
「ケケケ、騙されたな。嬢ちゃん!わしは人も化け物も騙すの大得意じゃ!!」
「あっ……もうっ」
頬を膨らませる桜に、笑っておちょくるアサシンは蟲倉の外へ、ねじ曲がった闇の外へと出て行った。
その後上階に上がったアサシンが、既に召喚されていたライダーと一悶着あったのは、また別の話。

91Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:15:04 ID:UUP6Tc.I0
あらゆる英霊にはえてして悲劇的な最期がつきものである。
クー・フー・リンにしても、ディルムッド・オディナにしても、ヴラド3世にしてもいずれも悲惨きわまる最期で有名だ。
そしてこの事実は聖杯戦争では現実的に深刻な問題となってマスターを悩ませる。真名が分かれば、同じような最期を『演出』されてしまう可能性もあるのだ。
「遠坂邸の結界は強化されていました。既にサーヴァントらしい気配もあります」
眼前には日本的な黒髪を持つ女性がいた。
甲冑に身を包みながらもその姿は美しい。持っている薙刀が導き出すクラスは一つだった。
ランサーのサーヴァント。木曾義仲が愛妾、巴御前。
宝具もスキルもステータスもよくまとまっていて、申し分ない。
バゼットはおおむね満足しながらもランサーとの会話に意識を戻した。
「なる程。その結界は現代の神秘によるものではなさそうですね。サーヴァントの一兵、キャスターならあり得るかもしれません」
「今夜から偵察をかけてみましょう。ところでマスター。例のあれは仕上がっております」
「貴女の宝具、マスター専用の宝具とも言える『縁紡ぎし忠義の印』ですか」
予想外どころかそれ以上にこのサーヴァントは有用だった。
本来三画しか配布されない令呪を作り出す能力は、用途が非常に限定されているとは言え、他の陣営には無いアドバンテージとして存在している。
そしてそれ以上にランサーにはある長所がある。
敗死した逸話が無いのだ。
木曾義仲と別れてからの記録が無い。尼になったとも言われているが、敗死の記録が無い以上、彼女の真名が知れたとしても滅ぼすのは至難の業だろう。どのような方法や道具を用いて殺せばいいのか分からないのだから。

「それからもう一つ聞きますが、貴女の願いは義仲軍の武将として最強を証明する為に参加することでしたね」
「はい。もはやこの世界に義仲様と仲間達の痕跡はありませんし、家系すら途絶えています」
だからこそ、とランサーは答えた。
「せめて過去には我等がいたのだと。将軍様と同じ夢を抱いた武者は確かに強かったのだと、証明したいのです」
「それならば、聖杯にかける願いは無い、と。それはそれでいい」
欲望は力になるが、強すぎる欲望は身を滅ぼす。少なくとも聖杯ほしさに血迷った真似をすることは無さそうだ。
「とは言っても、負けるつもりはありません。必ずや勝利を掴んで見せます」
自らに勝利を誓うランサーの姿は、確かに美しかった。

92Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:15:47 ID:UUP6Tc.I0
征服王イスカンダル。革命王ナポレオン。蹂躙王チンギス・ハン。魔王ヒトラー。
彼等は世界の領土を多く征服し、世界の王と崇められているが、それでも自分の敵では無いと彼女はせせら笑った。
少女は―――背格好がそう見えるだけであって、その実全てを包み込む母性と全ての息の根を止めることも出来る魔性は、まさに彼女が此度の聖杯戦争で召喚されたキャスターであることを証明している。
片眼に眼帯をはめ、手の指全てに包帯を巻いたその姿は見るだけで痛々しいが、彼女はかつて父親に潰されたその指を、愛おしそうに撫でた。
彼女がいる場所もまた、尋常では無い。
濃霧が立ちこめる海上。そこには港湾部に似つかわしくない“島”が存在していた。

『遊泳孤島(イマップ・ウマッソウルサ)』

彼女の子供であり城であり魔術師としての工房でもあるそれは、主の存在以外を認めない。主以外の人間を背に乗せればそのまま海に引きずり込み魚の餌にしてしまうだろう。
この大海こそ彼女の最大の武器だった。どんな英雄でもこの海を根城にする彼女には敵わない。
人間達は大海を制したなどとほざいているが、それは海面を浮遊物に乗って浮くアリが大言を叩いているのと同じだ。深海は未だ人間にとって未知の空間であり、完全に到達した人間はこれまでの歴史ではまずいない。
現在の人間達がそうである以上、過去に生きる英雄達も同様だ。彼女に言わせれば王達の覇道など、子供が砂場で遊んでいることと大して違わない。
今の時代には深海まで潜れる原子力潜水艦とかいう軍船があることは知っているが、彼女にとっては正しく玩具に過ぎない。少々水流を起こすだけで真っ二つにへし折れる小枝のようなものだ。
王と呼ばれる者達の中でも海を完全に征服したものはまずいない。
この星の多くを占める海はそれだけ懐が深く、そして無慈悲だ。

深海に潜った彼女は、自分の子供達である海獣達の頭をよしよしと撫でた。
フユキという土地の海中は既に彼女の世界だ。
討ち取るには海に潜って首を取るしか無いが、最優のセイバーであろうとも水中という彼女のフィールドで本来の力を発揮することは出来ない。動きは鈍くなり、そこを彼女の子供達の食事になるのが関の山だ。
「これで防御の態勢は整えたわね。あとは……」
そこに彼女の子供である魚が寄りそう。彼女は魚の姿を見るだけで、言わんとすることを理解した。
「そう。マスターの手足を完全に食いちぎったのね。美味しかった?みんないい子よ。マスターは戦いを怖がっていたんだから、私が守ってあげないと、そのためにも何処にも出しちゃ駄目。
ずっとこの深海で何処にも出さずに守ってあげる……始めましょう私達の聖杯戦争を。世界を私の憎悪(アイ)で満たすために」
寄り添う魚たちに話しかけるその姿は愛らしく見えるが、話の内容は残酷極まりない。
それはそうだ。彼女は海そのものであり、豊かな恵みを与え、時に荒れ狂い命を奪うそこにある存在なのだから。

93Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:16:19 ID:UUP6Tc.I0
サーヴァント七クラス中、三騎士クラスとしてセイバー、ランサー、アーチャーが定められている。
言うまでも無く、せいばーは刀剣を、ランサーは長柄武器を、アーチャーは長射程の飛び道具を扱う。
大事な点は三騎士全てが“武器”を扱う点である。人間の強さは乱暴に言えば扱う道具に左右される。

「……つまり、『武器』が一切効かない英霊をバーサーカーとして使役すればいいのです」
「だから、カフカスの半神?」
聞き返すリズに、セラは眼前でうずくまる8メートル以上の巨体を見た。
身体は金属のような光沢に輝き、時折熱風が吹きすさぶ。
その威圧感は、超人と言うより怪獣じみたものだった。
「Aランク以下の武器による攻撃は全てキャンセル。殺しきれるのはかの騎士王の聖剣程度でしょう」
「鍛冶の神に鍛え上げられた鋼鉄の身体だもの。アインツベルンに順当に勝つには、マスターである私を殺すぐらいしか無いわ」
得意気にイリヤも会話に加わる。

最強の防御力に加え、自力で真名解放ができないものの強力な攻撃手段をも持っている。アインツベルンが喚んだ英雄は、文字通り破格の存在だった。

ただ一つ、問題があるとすれば。

鍛冶の神に鍛え上げられた鋼鉄の肉体を持つ英霊―――バトラズは、時折唸り声を上げながらも動こうとしない。
その理由は、バーサーカーが僅かに身じろぎしたことで分かった。

ずぶずぶずぶずぶずぶ。

「あーっ!バーサーカーのおばかー!気をつけて歩かないと駄目って言ったでしょー!」
バーサーカーは体長8メートル以上、そして体重は100トンである。
狂化していても二足歩行することは変わらないので、身体の部位で接地面は足の裏だけになる。
100トンの自重が圧力となって、足の裏に集中するため……。

「おばか〜。こんなんじゃどうやって戦うのよ」
呆れるイリヤの眼前には、股下まで地面に埋まったバーサーカーがいた。
「もう、霊体化しなさい!」
かき消えるバーサーカーを見ながら、アインツベルンのホムンクルス達はため息をついた。
そう、このバーサーカーは重すぎるのだ。
屋内での戦いや足場の悪い場所での戦いは全く動けなくなる可能性がある。
霊体化している間は流石に平気だが、実体化して闘える場所は限られている。
強いが使いにくい駒。
それがアインツベルンのバーサーカーだった。
だが、このバーサーカーの問題はアインツベルン陣営にある変化をもたらした。

「それじゃあ、今日はバーサーカーが闘えそうな場所を偵察してくるわよ。いい場所を見つけたら念のため地面一帯に強化の魔術をかけておいてね」
イリヤは冬木市の地図を広げ、リズとセラに指示を出した。
「その場所で闘えない場合は、お嬢様を襲ってくる敵への対策が必要になりますね。マスター殺しを行うアサシン対策が必要です」
「そうね。今日は霊体化から実体化へのタイムラグを短縮させる訓練を行うわ」
「イリヤ。マキリとトオサカに使い魔飛ばした」

使いづらいバーサーカーを何とか使えるようにする対策、アインツベルンが作戦を立て始めたのだ。
強い武器、強い兵士、強いマスターを揃えるのは、正攻法を大黒柱としている戦争においては正道だが、それらを上手く使えなければ単なる宝の持ち腐れに終わる。
皮肉にも理性無きバーサーカーの存在が、イリヤ達に作戦と戦術の大事を痛感させ、僅かながらもバーサーカーは戦略的に、効率的な武器として使われることになった。

強い武器、強い兵士、強いマスター+事前の情報、適切な運用、的確な作戦。

それらがイコールで結ばれれば、出る答えは『無敵』である。

94Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:16:50 ID:UUP6Tc.I0
巨人。
巨大な人という意味以外にも、強力な国家などを指す場合がある。
そして巨人国家に怯まず戦い、ついには独立を認めさせた英雄。
人はそれをジャイアントキリングと呼ぶ。


英霊は成長しない不変の存在として世界に登録された者達だ。
これは聖杯戦争では重大な問題として立ち塞がる。例えばAという英霊がBという英霊と戦った場合、BがAより圧倒するステータスを持っていたら、Aは手も足も出ないという事になる。
勿論戦闘がステータスの比べ合いだけで終わることなどありえず、作戦次第で勝つことはあるが、それでも不利になることは変わりが無い。正攻法に勝る作戦は無いのだから。
聖杯戦争に参加するマスター達はこぞって強力な英雄を喚ぼうとするだろう。
強力な宝具を、強力なスキルを、強力な魔力を、強力な伝説を持つ英霊を。
おりしも冷戦中の兵器開発競争に似た思考の渦の中で、魔術師殺しと蔑まれた男は逆に考えた。
自分の他の六人六騎がいずれも強力であっても、勝ちに繋げることが出来る英雄。
例え本人が弱くても、強い英雄を倒すことが出来る英雄。
つまりは、とどのつまりは圧倒的に強い敵を退け、目標である民族の独立を成し遂げた反骨の英雄ならば、例え相手方のステータスが圧倒的でも、負けないための戦い方が出来る……と考えた。
隣国である軍事大国に対し卓越したゲリラ戦の技術を持ち、時局を見誤らない眼力を持って祖国を独立させ、王朝を開闢した平定王の聖遺物を、魔術師殺しは手に入れた。
結局喚び出す英霊は他の人物に決まったが、聖遺物だけはセーフハウスの一つである武家屋敷の土蔵に保管されていた。十年後に一人の正義の味方を目指す少年が偶然から件の英霊を喚び出す事は誰も予想できなかったが。


「セイバー、メシができたぞ」
「おう。坊やか。今日は何だ?」
異国の服装を着込み、背に大剣を背負った男に、未熟な魔術使いの少年、衛宮士郎はお盆の上に乗った料理を並べていく。
「ベトナムの麺料理、フォーだ。中華は苦手だけど、ベトナムと中国は違う国だから、うん。大丈夫だ」
「俺の国の食い物か……おお!いけるぞ!」
ずぞーずぞーと美味そうに麺を啜る男―――サーヴァント、セイバーは空になった丼を突き出して一言。
「おかわり!」
「はいはい」
新しくフォーを注ぎながら、士郎は偶然に召喚したセイバーを見やる。
普段は気のいい兄ちゃんと言った様子で、大凡英雄に見えない。だが、ここ数日の同居で外見だけが全てではない事を士郎は思い知っていた。

聖杯戦争の事をセイバーから聞いたとき、衛宮士郎は居ても立っても居られずにその被害を食い止めるために戦うことを決めた。その為なら命ですら投げ出しそうな勢いの士郎を、セイバーは冷静に落ち着かせると、自分の宝具やスキル、真名、そして基本的な戦闘スタイルなどを話し合った。

95Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ:2014/12/11(木) 21:17:45 ID:UUP6Tc.I0
「なあ、セイバーは真っ向から勝負するのは苦手なんだよな?」
「苦手じゃ無いぞ。趣味じゃねーだけで。まあ、得意なのは戦略的撤退と奇襲だけどな」
セイバーは冬木市の地図にペンで注釈を記しながら、話を続けた。
「この戦争考えた奴はよっぽどのアホかよっぽどの外道だ。強力な宝具を使う英霊なら、勝つ可能性は高くなるが、そいつらを喚び出した連中はそれを『いつ』、『どこで』使うのか失念してる。宝具やスキルがショボイ連中の方がよっぽど扱いやすいだろうに」
宝具の中には対軍宝具や対城宝具、はたまた対国宝具や対界宝具なんてものもあると士郎はセイバーから聞いている。住宅密集地域が多い場所でそんなもの使えば、大惨事どころの話では無い。
「下手に使えばドカンと花火大会だ。その点俺の宝具は退却が成功しやすくなるだけだから、周囲に与える影響は大して無い。使用に対して魔力の消費以外に懸念は無い。だから俺達の戦略としては序盤でできるだけ情報を集めて、危険な宝具を持っている奴には張り付いてぶっ放そうとした時にはバッサリ切り捨てる」
勿論、後ろから攻撃する。隙を見せたところを狙い撃ちにしてな。そこまで言うとセイバーは士郎の手に視線を移した。
「士郎、令呪は隠しているよな?」
「ああ。怪我をしたってことにして包帯巻いている」
令呪のある片手に巻かれた包帯を見て、セイバーは頷いた。
「それでいい。お前の今の力じゃ逃げ隠れしかできねえ。聖杯戦争終盤、あるいは終わるまでは力を蓄えておくんだ」
幸いなことに、士郎自身の魔力は微々たるもので、住居にも殆ど魔術の痕跡が無いに等しい。
聖杯から情報として与えられた『魔術師らしい』からかけ離れているのだ。
これは魔術師に気づかれにくいという強力な利点であり、攪乱と逃げ隠れをそのまま攻撃に繋げるセイバーの戦術にも寄与するところは大きい。
工房を城とすれば、守りを固めるのが普通だが、戦争全体に目を見回せば時には城を捨てることが正解である場合もあるのだ。尋常な魔術師では有り得ない『本拠地を捨てる』という行為ができることは美点の一つだ。
「……それしかできないのか?」
「正義の味方志望としては、納得いかねえか?」
そこでセイバーは不満げな表情をしている士郎に対し、真剣な表情になった。
「意気込みだけじゃどうにもならない現実もある。お前の命を消費しても変わらないものもある」
いつもは気のいいセイバーの冷厳とも言える事実を告げる言葉に、士郎も黙り込んだ。
「―――それでも、お前はこの街守りてえか?」
「……」
「死ぬ確立がデカイことは勿論、誰にも褒められるわけじゃねえ。報酬だって出ねえ。嫌な思いだってするだろう……逃げたって誰も責めはしない。それでもお前は他人の為に貧乏クジ引く度胸はあるのかよ?」
「セイバー」
セイバーの真剣な問いかけに、士郎はやっと声を絞り出した。
「俺は大火災の孤児だ。本当の両親の記憶なんて無いし、そんな俺がこの街を尊く思うのはおかしいかもしれない。それでもだ……爺さんに会えて、藤ねえや桜に会えたこの街が俺は好きなんだよ。この街に住む人達が泣きたくても泣けないような酷い目に遭うかもしれないのに、黙ってなんかいられない……俺のふるさとなんだ。守りたい」
衛宮士郎は空っぽな人間で、だからこそ、この街と住んでいる人達の価値も分かっていると思いたい。
士郎の無言の思いを瞳の中に見たセイバーはこくりと頷いた。

「人が戦う理由はそれぞれだ。利益のために戦う人間がいれば、誰かのために剣を取る奴だっている。自分の故郷を守るために戦うなんて理由なら、まあ上等な方だろ」
そこでセイバーは自身の剣を鞘から引き抜いて掲げた。
黄金色の輝きは、湖水に朝日が煌めいている様に似ていた。
「それじゃあ、開始しようや。俺達の戦争を。レ・ロイと衛宮士郎の戦争を」


―――今此処に、世界最小最大の戦争が開かれる。


•セイバー:レ・ロイ。
•ランサー:巴御前。
•アーチャー:徳川家康。
•ライダー:ラーヴァナ。
•アサシン:源頼光。
•バーサーカー:バトラズ。
•キャスター:セドナ。

96名無しのSS屋:2014/12/11(木) 21:20:14 ID:UUP6Tc.I0
•セイバー:レ・ロイ……ジャイアントキリング。
•ランサー:巴御前……負けた逸話が無い。
•アーチャー:徳川家康……負け続けても最後には一人勝ち。
•ライダー:ラーヴァナ……相手が強ければ強い程(神性持ちは大概強い)、有利になる。
•アサシン:源頼光……普通に戦っても強いのに、あえて手段を選ばない。
•バーサーカー:バトラズ……防御力は最強。
•キャスター:セドナ……人間が征服していない海では最強。

この中では誰が勝つでしょう。
ちなみに私はライコーさんが本命だと思います。なんだかんだ言って日本屈指の英雄ですから。
やることは鬼にも鬼畜呼ばわりされる(実話です)人間の味方で正義の卑怯者。
士郎は彼の姿を見て本気で悩むはず。
逆にこの面子でヤバイのはセドにゃんですかね。慢心しているところをバトラズが剣海に投げ込んでダイナマイト漁する未来が見えました。もっともそれ以外には殆どに勝てるでしょう。

やはり皆鯖は書きごたえがありますね。タイトルでちょっとミスりましたが、嘘予告タイトルは『Fate/stay night アンビリーバブル・ウォーズ』です。
皆さんの声援があるたびに筆がのります。皆さんの声援があるたびに筆がのります。大事なことなので二回言いました。
今年もあと僅かですが、皆鯖の発展を願いたいと思います。それではまた。

97名無しさん:2014/12/11(木) 22:54:47 ID:Z49QA4Dg0
乙でした
セイバークラスにしては凡庸なレ・ロイさんも戦略的に立ち回れば十分勝算ありそうなんですよねー

98名無しさん:2014/12/12(金) 08:59:02 ID:m9H8GmBkO
ライコーさんもあんだけ妖怪スレイヤーやって寿命で死んでるしなぁ
童子切りは戦えば戦うほど成長するし、当人アサシンな上に蜘蛛切りで奇襲防ぐし、
弱点は大砲が無いくらいだけど、初期同盟とフォローした上に連携攻撃スキル発動……
しかも源氏だから家康よりも格としては上か、強い


個人的にはライコーさん、桜、せどにゃんの絡みがみたいな
なにせ妹さんが丑御前になっちゃった過去があるし

99名無しさん:2014/12/12(金) 10:32:50 ID:MVn1XYrs0
乙ー

100名無しさん:2014/12/12(金) 15:57:52 ID:Teb64Rr20
人外が少ないせいか、ラーヴァナが割とはやめに退場しそう・・・・・・


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