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*(‘‘)*楽園を目指して泣くようです

100ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 22:44:34 ID:OicLGdWM

*(--)*「んん…」

*(‘‘)* パチッ

夜中突然目が覚めてしまいました。
温かい毛布。適切な室温。なんの問題もないはずなのに、なんで起きてしまったのか。

うろうろと周りを見渡していると、突如ピカッと室内が光りました。
次いでゴロゴロという、お腹の奥に響く音。
なるほど、カーテンを閉め忘れていたです。そこに更にこの音。目も覚めるってものです。

*(-‘)*「まったく…」

だるい体を動かして、のろのろと窓に近づきます。

*(‘‘)*「…ん?」

私の部屋は二階なのですが、玄関のすぐ上にある場所です。
なので、窓から下を覗くとダイレクトに玄関が見えるわけですが…。

こんな夜更けに人だかりが出来ています。
何やら言い争うような声も、窓を閉めているというのに聞こえます。
玄関のうすぼんやりとした光で確認できた人は、おかみさんとご主人さんと、その他おおぜい。

夜中に泊めてくれという団体客が来たのかと思いましたが、どうもおかしい。
こんな雷雨の中、部屋にも入らずなぜあんなところで人だかりを作っているのでしょう。

*(‘‘)*「…あらら?」

そのうち人だかりは、おかみさんとご主人さんを連れて足早に去ってしまいました。

はて。何なのでしょう。ご両親が夜に家を開けるだなんて、ビロードもいるでしょうに。

101ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 22:49:19 ID:OicLGdWM

それから、玄関に駆け寄る小さな影が見えました。
小さな影がふと、こちらを見上げました。ばっちりと目が合います。

*(‘‘)*「あっ、ぽぽちゃんではないですか」

ぼんやりとした光の中なので憶測も混じりますが、随分険しい顔をしていたように思うです。
ぽぽちゃんが勢いよく玄関に飛び込んだのを確認して、私は何か騒ぐものがおさまらなくて、胸を押さえました。

どたどた、と急くような大きな足音と共に、部屋に飛び込んできたぽぽちゃんはそのまま私にすがり付いたのです。

(;*‘ω‘ *)「へ、ヘリカル! ビロが…、ワカが、それでっ、」

(*;ω‘ *) 「うっ…」

ぽぽちゃんは嗚咽を漏らし始めました。
最初のときといい、説明能力がないのですかね?
けれど、最初と違って何が何やらさっぱりというわけではありません。


ビロ。ワカ。そしてせいぜい数時間の仲の私にすがり付いたこと。


私にとってはあまりにも早く、彼女たちにとっては「とうとう」、それが起こってしまったのだろうと。

雷が私たちを照らしました。
私は何を言っていいか分からず、そのまま立ち尽くすだけです。

102ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 22:55:16 ID:OicLGdWM

数分間嗚咽だけを漏らしていたぽぽちゃんは、やっと少し落ち着いたのか嗚咽混じりに語り始めました。

(*;ω; *)「ワカ、見つかったんだっぽ」

*(‘‘)*「…でしょうね。先ほどビロードの両親が連れていかれたのもそれですか?」

(*;ω; *)「そうだっぽ」

*(‘‘)*「ふむ…しかし何故です? あんな変わったところ、誰も来ないのでは?」

(*;ω; *)「……ワカ、優しいから…」

*(‘‘)*「?」

(*;ω; *)「優しいし、何も知らないから、だから…」

また戻り始めた嗚咽に言葉を引っ掛からせながら喋ります。

私はそれを見て、悲しいんだろうなぁと漠然と思いました。
他人事のように漠然と。
同情したりするものなのでしょうか?
不思議と、そんな感情は抜け落ちたみたいに湧いてこないのです。

(*;ω; *)「だから、忘れていったサッカーボール、持ってきちゃったんだっぽ」

103ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:00:39 ID:OicLGdWM

ぽぽちゃんが詰まりながら話した経緯はこうです。

まず、ビロードはサッカーボールを忘れていってしまった。確かに、私と一緒に歩いていたときボールを持っていませんでした。
ぽぽちゃんも、てっきりビロードが持っていったものだと思って忘れていったサッカーボールにも気づかなかったのだそうです。

ただ一人、ワカ君はサッカーボールに気がつきました。
しかし、もう二人とも帰ってしまった後。

それで、ワカ君はサッカーボールをビロードに届けようと、こっそり夜中に街へ忍び込んだのです。

*(‘‘)*「わからないですね。別に明日渡せば良かったではないですか」

(*;ω; *)「よくないんだっぽ。とくに今日は」

*(‘‘)*「今日は…?」

(*;ω; *)「…別に、ヘリカルたちのせいにするわけじゃないけど。今日は誰もくるはずのないあの空き地に、
    誰かが来たっていう、普通じゃない日だったっぽ。
    ワカ、たぶん、絶対に誰もこない場所じゃないんだって、思い知ったと思うんだっぽ」

*(‘‘)*「はあ」

(*;ω; *)「ワカ、優しいから、自分は最悪、別に見つかってもいいって言うと思うっぽ。
    でも。あのサッカーボールがビロードのものと知れたら…」

*(;‘‘)*「! なるほど…自分が見つかっただけなら、ビロードや君との関連性はバレないわけですね」

(*;ω; *)「そう、私達と遊んでるの、誰も知らないっぽ。でも、サッカーボールからバレる可能性はあるんだっぽ。
    私達があれだけ必死に隠してるんだっぽ、多分、バレたらどうなるか、ワカもなんとなく解ってたと思うっぽ」

104ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:09:50 ID:gm29UX8o

*(;‘‘)*「でもやっぱり、それなら尚更サッカーボールを町まで持ってくるのは危険すぎるのでは?
   持ってるところすら見られるのはまずいのに…」

そう問うと、ぽぽちゃんは「多分だけど」と推測を話始めました。

たぶん、ワカにとっては『あの場所にある』ってだけで居てもたってもいられなかったんだと思う。
最低でも町の近くに転がしておけば、ただの忘れ物だと思われる。
『ワカのいる場所にある』ってことがきっと問題だったんだ、とのこと。

自分を犠牲にしてでも守りたいと思っているなら、無い話では無いような気がするです。


しかしこれはあくまで推測。

ついつい色々引っ掛かって聞いてしまいましたが、直接見たわけではないのです。確証などありません。

今大事なのは、ワカ君が見つかったということ、そして──

*(;‘‘)*「そして、その自己犠牲もむなしく、ビロードとの関連性がばれてしまったわけですよね」

(*;ω; *)「!! そう! そうなんだっぽ!!」

ぽぽちゃんは叫んでからえづきました。
とりあえず落ち着けです、と背中をさすります。
ぽぽちゃんは息を整えきるより前に、それこそ「居てもたってもいられない」という雰囲気で言いました。

(*;ω; *)「ワカは…上手くやったんだっぽ。サッカーボールはワカとは遠く離れて転がってたらしいっぽ。
     でも、ワカ自身は見つかったんだっぽ…」

105ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:20:58 ID:OicLGdWM

ここは何より「普通」が大事で、「変」はこの上なく迫害される。
だから勿論彼女たちの危惧ど かし、そこまでならワカ君も想定内だったのでしょう。

ぽぽちゃん曰く、この町で重罪である「変わったこと」が起きた場合、
多少変わっている程度なら役人がその場で裁いて終了、ということもあるようです。
しかしワカ君は「変わりすぎ」でした。

こういう場合は町中の人たちで、どうするかを決めるために召集がかかるそうです。

当然、こんな夜中ですがビロードの家にも召集がかかったのです。

(*;ω; *)「ビロード、バカだから、ワカのことだってわかると、暴れて暴れて…」

*(‘‘)*「そう、でしょうね」

(*;ω; *)「役人さんのところまでまっしぐらだっぽ。バカだっぽ、ほんとに、バカだっぽ…」

*(‘‘)*「……」

彼女たちは昼間言っていたです。
変わってたら殺される、そうでなくてもひどい目に合うと。

じゃあ変わってるやつをかばうヤツは?

たぶん、変わってるやつをかばう変わってるヤツになるのでしょう。

そうだとすると、ビロードは…

106訂正:2014/06/30(月) 23:22:01 ID:OicLGdWM

ここは何より「普通」が大事で、「変」はこの上なく迫害される。
だから勿論彼女たちの危惧どおり、ワカ君も捕まってしまいました。
しかし、そこまでならワカ君も想定内だったのでしょう。

ぽぽちゃん曰く、この町で重罪である「変わったこと」が起きた場合、
多少変わっている程度なら役人がその場で裁いて終了、ということもあるようです。
しかしワカ君は「変わりすぎ」でした。

こういう場合は町中の人たちで、どうするかを決めるために召集がかかるそうです。

当然、こんな夜中ですがビロードの家にも召集がかかったのです。

(*;ω; *)「ビロード、バカだから、ワカのことだってわかると、暴れて暴れて…」

*(‘‘)*「そう、でしょうね」

(*;ω; *)「役人さんのところまでまっしぐらだっぽ。バカだっぽ、ほんとに、バカだっぽ…」

*(‘‘)*「……」

彼女たちは昼間言っていたです。
変わってたら殺される、そうでなくてもひどい目に合うと。

じゃあ変わってるやつをかばうヤツは?

たぶん、変わってるやつをかばう変わってるヤツになるのでしょう。

そうだとすると、ビロードは…

107ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:28:34 ID:OicLGdWM

*(‘‘)*(どいつもこいつも、自己犠牲が好きですね)

哀れだとか。怒りだとか。
そういうものはモノクロのお姉ちゃんのときと同様、ちっとも湧いてこないのです。
変わりに浮かんだのはそんな冷めた感想で。

*(‘‘)*「…君は、ビロードよりバカではないのですね」

(*;ω; *)「……」

ひゅっと息を吸う音が聞こえて、ぽぽちゃんがぴたりと泣き声を止めました。

*(‘‘)*「暴れたり、飛び出したりしないですから」

うなるような声がぽぽちゃんから聞こえるです。
唇を噛んで、戻して、また噛んで、それからぽぽちゃんは小さな声で言いました。

(*;ω; *)「…私は最低だっぽ」

*(‘‘)*「さいてい、ですか」

(*;ω; *)「と、友達、なら。ビロードみたいに一も二もなく飛び出すのが『ふつう』なのに。
     こ、こ、怖くて、私、怖くて」

(*;ω; *)「うちのお父さんやお母さんが、ビロードがそんなことになったって聞いて、私のほうを見たっぽ。
     仲良しで、いっしょに遊んでたから、お前も関係あるんじゃないかって」

(*;ω; *)「私、もうどうしていいかわかんなくて、私…。
    ヘリカルにこんなこと、言ったって何にもならないのに、さいていなのに、それでも何かしなきゃって。
    あ、頭の中、ぐちゃぐちゃで…」

108ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:36:08 ID:OicLGdWM

*(‘‘)*

*(--)*

私は、着ぐるみ糞野郎との会話を思い出しました。

彼女たちの幸せは、隠して隠して隠し通した先にある。

私が救うのは、ワカ君だけじゃない。


──非力な者には、逆らいがたいルールが存在するのでしょう。

どうしてそうなのか、を知ることすらできないまま、無抵抗に従わざるを得ないルール。
「周りがそうしているから」。そんな理由で、何となく従うルール。
きっとどこにでも存在するルール。

言ってしまえば、前のモノクロのお姉ちゃんだって、町の色というルールに無抵抗で従っていました。

大人になって、抵抗する力がつけば。
この場合、はっきり言うとこの町を出ていってしまえば、多少は逃れることはできるのでしょう。

でも彼女たちは子供で、非力だった。
無抵抗でルールに押し潰されるのが当然のところで、彼女たちは踏ん張っていたのです。

*(‘‘)*(…さて。それで私は、どうしよう?って感じですね)

109ブーン系の名無しさん:2014/06/30(月) 23:38:44 ID:???
支援!

110※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/06/30(月) 23:43:10 ID:OicLGdWM

この肝心なときにいない着ぐるみ糞野郎は、例えば何て言うでしょう?

「君がワカ君を町から連れ出してやれ」と言うですかね?
…いいや。それはないです。
前もそうでした。与えるんじゃだめなんだって。
ていうか、今審議に掛けられて死刑にされそうになっているであろう修羅場から連れ出せる気がそもそもしないです。

*(‘‘)*(それに…そうです、「私はどうしよう?」じゃないです。
    こうなると「私はどうしたいか?どうすべきか?」でしょうね)

どうしたいか。
どうすべきか。
どうしたら、自分が納得するか?

私は…私は。ワカ君には死んでほしくありません。
ビロードにだって死んでほしくありません。
当然、ぽぽちゃんだって。

死にはしなかったとしてもひどい目に会うのなら、それはそれで由々しき事態です。

*(‘‘)*(それはどうして?)

…どうしてって。
……だって。


.

111※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/06/30(月) 23:50:05 ID:OicLGdWM


私はその答えを二、三度考えて、それでも全部同じ答えに辿り着くのを確認すると、
すがり付いているぽぽちゃんをなるべくゆっくり引き剥がしてから走り出しました。
そうと決まればこうしちゃいられないからです。

ぽぽちゃんは制止の言葉を言いかけて、そのまま固まりました。
ちらっと振り返ってみれば、少しの安心と強烈な後悔が混ざった顔で口を半開きにしています。

きっとこうなることくらい、彼女も予想はついていたのでしょう。


.

112※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:04:23 ID:e6.XqA/s






   ***

(#><)「ワカ君を離してください。ワカ君は悪くないんです!」

僕は何度目か解らないことを大声で言いました。

暴れているのに、僕は大人たちに押さえられています。

僕が暴れているのを見て、お母さんがとても悲しそうな顔をするのもとびきり良くありません。
いけないことをしてるんだって、嫌な気持ちが吹き出してきます。

ワカ君は僕とは違って暴れたり叫んだりしていません。
…もっとも、口が無いのだから叫ぶことはできないんですが。

ただ大きな目でじっと、僕のほうを見つめています。

気持ちはあまり読みとれませんでしたが、しいて言うなら悲しそうな感じがしました。


雷雨が僕たちの体を濡らしていきます。

ピカッと辺り一面が光って、役人さんとお父さんが話し合っている間で、ワカ君がきっぱりと見えました。

http://livedoor.blogimg.jp/colored_pencil/imgs/0/1/0163c364.png


.

113※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:12:47 ID:e6.XqA/s

周りでは僕を放って、この「へんないきもの」をどうするかを話し合っています。

ちらほらと刑を軽くしてもいいんじゃないかという声も聞こえますが、やはり死刑という方向が強いようです。

そして、僕の処分に対しても話されています。
耳を塞ぎたくなるような言葉ばかり。
僕は歯軋りをしました。


変わってるから。
変わってるから。

普通じゃないから。
理解が及ばないから。

理解が及ばないことは、怖いから。


当然といえば当然なのでしょう。
たとえば、僕はお化けが怖いけれど、
お化けがなんてことない普通の自然現象なんだ、と、もし解っていればそれほどは怖くないでしょう。
たぶん、そういうことなのだと思います。


怖いことは不幸だ。
怖いことは普通じゃない。
普通じゃないと、幸せになれない。


今までも──そして今ですら、疑うことのできない真実です。
事実、「普通じゃない」ことをしてしまった僕は、今とても悲しいのですから。

114※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:17:01 ID:e6.XqA/s

( ><)「ワカ君は…ワカ君は…」

(。><)「…ワカ、君」

でも、でも、どうしても納得できないんです。

普通が幸せで、正しいことだってわかってるのに。
でも。

だってワカ君、悪くないんです。
ワカ君、何も悪いことしてないんです。
ただちょっと変わってただけなんです。

嫌がらせをしようとか、そういう意味で変わってるわけでもきっとないんです。
最初からそうだったんです。

( <●><●>)「……」

ワカ君を見るみんなの目は、驚くほど冷えきっていました。

ワカ君ほど変わった存在じゃなかったけれど、こうした審議に参加したことはあります。
そのとき、僕もこんな目を向けていたのでしょうか?
何だか、自分が恐ろしくなりました。

115※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:25:44 ID:e6.XqA/s

( ´_ゝ`)「どーする、このヘンテコ。村のやつらは死刑って方向の声が強いが」

(´・ω・`)「しかし、強く反発してるヤツも一人いるじゃないか」

/ ゚、。 /「しょせん一人だろう。それも子供。わけがわかってないに違いない。
       大人数と、たった一人の子供。普通、どっちの意見を通すかね」

( ´_ゝ`)「普通、大人数だな」

/ ゚、。 /「そうだろ。決まりだ。…子供の処分は、あとで考えよう」

役人さんたちが話し合います。
僕の手の届かないところで、どんどん話が進んでいきます。

僕はまた暴れて、言葉にならない叫びを上げました。
音量としてはとどいているはずなのに、ちっとも届く気がしません。

涙やら雨粒やらで、顔をぐちゃぐちゃにしながら、悔しさと絶望の中役人さんの声を聞きました。

( ´_ゝ`)「皆、聞け! 処分内容を確定するぞ。こいつの処分は──」

116※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:29:35 ID:e6.XqA/s



「──待つです! ここにも反対してるヤツがいるですよ!」


.

117※途中で投下が途切れたら多分寝落ちです:2014/07/01(火) 00:34:05 ID:e6.XqA/s

僕は素早く振り向きました。

みんなの視線もそちらを向きます。

審議の人だかりから少し離れて、ぴんと背筋を張った小さなシルエットが、雷の光で浮かび上がりました。
その後ろの、とても見覚えのある女の子も。

*(‘‘)*「間に合ったですね。あぶねーあぶねー、です」

(;*‘ω‘ *)「……」

(;><)「ぽぽちゃん! ──ヘリカルちゃん!」

ぽぽちゃんは控えめに縮こまっていました。
お父さんとお母さんも驚いて目をみはります。

/ ゚、。 /「…椿ぽっぽと、誰だ?」

( ´_ゝ`)「うちのじゃないな」

*(‘‘)*「ヘリカル、ですよ。しがない通行人です。ちょっと、そこのワカ君と関わりがあるだけの」

118ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 05:21:48 ID:CB6mwMH2
思ったより早く寝落ちてしまったorz
今夜21時ごろから再開します。途切れ途切れですみません

119ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:10:27 ID:2aMVxAPc
再開します

120ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:14:34 ID:2aMVxAPc

/ ゚、。 /「要するによそ者なわけだな? 一体何をしに来た」

*(‘‘)*「異議を唱えに来たです。ワカ君を殺すとかチョー意味わからないですからね」

/ ゚、。 /「…よそ者のくせにうちのルールに口を挟む気か? それは…」

/** 、  /( _ゝ )「"変"なことだな」(´ ω `)

役人さんのぞっとするような低い声に、不安と恐怖が噴き出します。
ぽぽちゃんもびくりと身を震わせていました。
当のヘリカルちゃんは平然とした顔で「そうですかねぇ」なんて言って、こちらに向かってきます。

*(‘‘)*「いきなり現れていきなり異議を唱えるのは変かもしれないですが、でもね、役人さんとやら。
   私とワカ君、ビロードもですが、友達なので。
   友達が殺されそうだったらそりゃ反対するのが「普通」ではないですか?」*鼹*

( ><)「とも、だち…」

*(‘‘)*「ええ、友達ですよ」

ヘリカルちゃんがあの鋭い目で僕を見つめて言います。

*(‘‘)*「一緒に遊んだではないですか。違うのですか?」

へらりと口元は笑いながら。

121ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:21:47 ID:2aMVxAPc

*(‘‘)*「それに、もうあの場所は私の楽園です。楽しい場所です。
   前のモノクロお姉ちゃんのときも、いっしょに遊んでいっしょに楽しくて…あそこも私の楽園でもあります。
   私の楽園を一つとして欠けさせるわけにはいきません」

/ ゚、。 /「何の話だ?」

*(‘‘)*「すみませんです。今のは意味がわからなくても結構です」

( ´_ゝ`)「やっぱり変なヤツだな」

場は、突然の見知らない乱入者で騒然としていました。

あれは誰だ。ヘリカルとかいうらしい。知らない名だな。よそ者か。あの宇宙人を連れ込んだのもアイツか?

そんな憶測が飛び交います。
役人さんが声を張り上げて一旦場を沈めました。

( ´_ゝ`)「みんな、静かに! 一つ一つ整理していこう。まず、この変なやつはヘリカルというらしい」

/ ゚、。 /「ビロードの知り合いらしいな。一緒に遊んだとか言ってる。まことか?」

(;><)「…うん」

(´・ω・`)「変なやつは集まるものなのかね。やれやれ。親は? 反応していたが、知っていたのか?」

お父さんとお母さんが、うちの宿にとめたという旨を伝えます。
まさか宇宙人と三人で遊んでいたということは知らなかったとも。

122ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:30:16 ID:2aMVxAPc

(´・ω・`)「ふぅん、嘘ではなさそうだ。そうなるとやはり変なのは宇宙人、ビロード、それに一人増えるというわけだな」

( ´_ゝ`)「ヘリカルだったか? お前がこの宇宙人を連れ込んだという可能性は?」

*(‘‘)*「ここで初めて会ったですよ。証拠はないですが、嘘はつきません」

( ´_ゝ`)「ここで初めて…? おいお前、わかってるのか? コイツを庇ったらお前もただじゃ済まないんだぞ」

*(‘‘)*「あのですねぇ、傷つこうとしてる友達救うのに、私だけ無傷でいられるなんて思ってないですよ」

ヘリカルちゃんは相変わらず淡々と、スッパリ答えます。僕のように暴れるでもなく。
冷静というよりは、僕の目には何かが足りないように見えました。
焦りとか、怒りとか、恐怖とか。そういうものが抜け落ちているような、そんな印象です。

(;´_ゝ`)「おいおい、正気かよ。ここで初めて会ったやつのために命かけるってのか? ほんとに変だな!」

*(;‘‘)*「あーもう! 普通だとか変だとかうんざりなのです! ぶっちゃけそんなもん心底どーでもいいですよ!」

*(‘‘)*「私はただ、自分が納得いくように動いてるだけです!」

命知らずに感じるくらい、役人さんに啖呵を切ってヘリカルちゃんは胸を張りました。

123ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:38:53 ID:2aMVxAPc

/ ゚、。 /「それはわかったが、それで、どう異論を唱えるつもりだ?」

*(‘‘)*「ワカ君わるくない。何もしてない。見逃せです。こんなところでしょうか」

(;´_ゝ`)そ「ビロードと変わらねぇ!」

(;><)「一気にカッコ悪い!」

*(‘‘)*「いやー、でも真理ですし」

古い漫画のように、ずっこけてしまいそうになりました。

ヘリカルちゃんは曖昧に苦笑いしています。いや、わらってる場合じゃないんです。

/ ゚、。 /「何も悪いことしてなくはないぞ。うちでは普通じゃないとダメなことを分かりつつ、不法滞在していたんだ」

*(‘‘)*「あの、それずっと聞きたかったんですけど。その普通ってなんですか?」

/ ゚、。 /「…は?」**

ヘリカルちゃんは役人さんに問いかけてから、僕のほうを振り向きました。
僕は大丈夫だと頷いてみせます。
たぶん、「失礼だから否定しないでくれ」と言った件でしょう。
最早こうなっては、失礼だとか言ってられません。

ヘリカルちゃんは僕が頷いたのを確認すると、また前を向きました。

124ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:47:00 ID:e6.XqA/s

*(‘‘)*「さて、もう一度問いますね。基準は何ですか? 姿かたちですか? しゃべり方ですか? 出身ですか?」

/ ゚、。 /「…決まってるだろ。全てだ」

ヘリカルちゃんがしかめっ面をします。
あからさまに納得いっていないようです。

*(‘‘)*「全てとは曖昧な。誰の基準なんですか?」

(´・ω・`)「誰のって、みんなのだよ。みんなが変だっていったらそれは変だろ」

( ´_ゝ`)「変なことを聞くんだな」

当然といった顔の役人さん。
周りのみんなも深く頷いています。
僕も少し前までは、同じようにしていたのでしょう。

ヘリカルちゃんはそんな圧倒的な多勢に無勢でも、ますます顔つきを険しくしてみせました。

そして、口を開いて。
ため息をつくときと同じように、一息にこう言いました。


*(‘‘)*「そうですか、では、「変」が殺されるほど悪いことだっていうのは「普通」ですか?」


( ´_ゝ`)「……そんなの、決まって、」

役人さんが言葉尻を引っ込めました。

ヘリカルちゃんの発した言葉は、水に投げ込まれた小石のように波紋を作って、僕らの価値観を揺らしました。

125ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:53:12 ID:e6.XqA/s

(´・ω・`)「わ…悪いことに、決まってる、だ、ろ…?」

歯切れ悪く役人さんが返します。
すかさず、ヘリカルちゃんは突っ込みました。

*(‘‘)*「なぜです? 私、モノクロの町に行ったですけど、いろんな人がいましたよ。
   モノクロの町に住んでるくせに、モノクロが嫌いな人もいました。でも悪いとは誰も言わなかったです。
   ましてや殺すだなんて、誰も」

(;´・ω・`)「それは…その町の価値観が変わってるんだ。そもそもモノクロなんて変だろ?」

*(‘‘)*「モノクロであることと、価値観に何の関連性があるんですか?」

周りのみんなにも動揺が広がります。
急に投げ込まれた矛盾に戸惑っているのでしょう。

殺されるほど悪いということが普通かどうか、言われてみれば考えたことがありませんでした。
ただ、変だと殺されるというルールが当たり前にあっただけです。

当たり前と普通は、似ているようで少し違います。
当たり前は、普通かどうか疑う間もなくそこにあるものだからです。

*(‘‘)*「まぁ、変なやつは嫌われるってならわかるですよ。人間は変なやつを嫌うものです。
   でも、だったら殺していいですか? そんな極端なこと、聞いたことないですよ」

*(‘‘)*「私は変とかよりも、変だということによって正当化された殺しのほうが、悪いことのように思えます。

126ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 21:58:21 ID:e6.XqA/s

役人さんは渋い顔をしています。

混乱した場に、弱々しく声が上がりました。

(;*‘ω‘ *)「わ、私も…変っていうのが殺されるほど悪いことだと思えない…っぽ」

ずっとヘリカルちゃんのだいぶ後ろの方で、縮こまっていたぽぽちゃんでした。

ヘリカルちゃんは進んで反論しにきたので止められなかったけれど、ぽぽちゃんはその気がないようなので、
巻き込まなくてよかったと密かに思っていたのですが…。

(;><)「…ぽぽちゃ、」

止めようとして、言葉を飲み込みました。

ぽぽちゃんは明らかに震えていました。
ここで自分も反論したことがどういうことなのか、誰よりもわかっているのでしょう。
でもその震えからは覚悟も感じられました。
これだけ怯えていてもなお、異議を唱えたのです。

今さら僕が止めても意味はないでしょう。
どれだけ押さえつけられても、暴れるのを止めなかった僕のように。

(;*‘ω‘ *)「へ、変は、悪いことなのかもしれないっぽ。でも…どうして殺されなきゃならないんだっぽ」

(;*‘ω‘ *)「わ、わ、私も、ワカと遊んだっぽ…たの、楽しかった。楽しかったんだっぽ。だから、ずっと頭のなか、ぐちゃぐちゃになりそうだった」

(;*‘ω‘ *)「変なことは悪いこと、っていうの、私には否定、できないっぽ。昔からそうだったから、今さらできないっぽ」

ぽぽちゃんは雷雨で濡れたパジャマの端を強く掴みながら、声を絞り出しました。

127ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 22:07:01 ID:e6.XqA/s

周りはさっきまでがウソのように静まり返っています。
まだ反対者が出てきたことに驚いているのか、それともその言葉を聞き入っているのかはわかりません。

ただひとつ、ぽぽちゃんは今までのどんなときより必死でした。

(;*‘ω‘ *)「で、でも、悪くっても仲良くすること、できるんだっぽ。殺さなくても、悪いの、どうにかできると思うんだっぽ。
     殺さなくても、もっと良い方法があると思うんだっぽ」

だから私は、ワカを殺すの反対だっぽ。

最後に呟くように異議を唱えて、ぽぽちゃんは俯きました。
ぽぽちゃんのお母さんがどうして、と顔を覆ったのが見えます。

僕は複雑な気持ちになりました。
ぽぽちゃんが僕の味方だとはっきりわかって嬉しいけれど、
まるでさっきまでの僕を見ているような気分だったんです。

( ><)「…ぽぽちゃん」

何を言えばいいか解らなくて、僕はただ呼びました。
ぽぽちゃんは俯いていた顔を上げて、口だけで笑いました。
震えていて、ひどく歪だったけれど。

そして、もう何人か震えている人がいました。
ぽぽちゃんとはまるで違う理由で。

128ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 22:19:47 ID:e6.XqA/s

:/; 、  /:「何でだ、おかしいだろ、変だろ…」

*(‘‘)*「…役人さん、今の彼女の言葉に反論できるですか?」

:(;´ ω `): 「う、…うるさい」

*(‘‘)*「あなたたちよりもずぅっと、私ですら年が下の、こんな幼い女の子でも解ることが解らないのですか?」

:(; _ゝ ):「黙れ…黙れ!」

役人さんたちが爆発寸前といったように震えていました。
この村の中でも特に、村のルールを重んじてきた人たち。
一際矛盾を感じているようです。


*(‘‘)*「ちゃんと、答えるです!」


ヘリカルちゃんが焦れったそうに言ったその瞬間、それは爆発しました。

129ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 22:32:12 ID:e6.XqA/s

( ゚_ゝ )「ダマレダマレダマレェェェェ!! ヘンナモノはヘンなんだヨォォォォォォォォォォ!!!!!!」

役人さんが狂ったように叫びだしました。

とっさに、僕は一歩後ずさります。
いいえ、僕だけではありません。
その場にいた人は、たった一人を除いて全員後ずさりました。

ヘリカルちゃんだけは険しい顔で役人さんを見つめています。

その姿からはやっぱり、恐怖などは感じられません。
余程肝が据わっているのでしょうか。

(´゚ω `)「ナニガヘンナコトはコロサレルほどじゃナイダヨォォォォォォ!! キベンをツカイヤガッテ!! ヨソモノガァァァァァ!!!!」

/ ゚д  /「ワルイコトニきまってるダロォォォォォ!! コロス!!! コロセェ!!!!!」

*(‘‘)*「…話にならないのです」

130ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 22:40:20 ID:e6.XqA/s

ワカくんは狂ったように叫ぶ役人さんを見て、困ったような目をしました。
ワカくんにもよくわからないのでしょう。
僕にだってよくわかりません。


(´゚ω ` )「デシャバッテンジャねーぞこのヨソモノのクソガキガァァァァァ!!!」

*(‘‘)*「……ハァ…この町のみなさん、こんな人たちを今まで信用して審議を任せていたんです?」

/ ゚д  /「コロス!!! コロス!!!」

(;><)「…頭がおかしくなりそうなんです」

(;*‘ω‘ *)「私はぐちゃぐちゃだった頭が一周回ってすっきりしてきっぽ…なのにさっきより震えが止まらないっぽ…」

変なヤツが悪いのは、理解が及ばなくて怖いから。
そうさっき、僕は考えました。
でも今は、この何よりも普通だと思っていた役人さんのほうが、ワカくんより理解が及びません。

呆然とする僕らの前で、役人さんは更に理解が及ばない行動に走りました。

( ゚_ゝ )「ヘンナヤツメ! コロス!!!」

/ ゚д  /「コロス!!!」

(´゚ω `)「コロス!!!」

役人さんたちが、懐から短剣を取り出したのです。

131ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 22:51:09 ID:e6.XqA/s

(;><)「っ!?」

そのままヘリカルちゃんのところへ向かっていきます。
妙にくねった動きです。暴走した感情のままに走っているような。

止める間もなく、ヘリカルちゃんの至近距離に三人の大人が詰め寄りました。
短剣を向けられた彼女は、ひょいと首をかしげて見せました。

*(‘‘)*「私を殺すですか」

/ ゚д /「ヘンダカラコロス!!! バをミダス、ケシカランヤツ!!!!」

(´゚ω `)「イノチゴイをしロ!!」

対照的なほどにヘリカルちゃんは平然としていました。

ハッとして僕はヘリカルちゃんの元へ走り出します。こうしちゃいられません。
ぽぽちゃんも一歩遅れて走り出しました。
僕を押さえつけていた手は、役人さんの変貌ぶりでもう力は抜けていました。

*(‘‘)*「私を殺したって、何の解決にもなりませんよ!」

突き抜けるような声でヘリカルちゃんは叫びました。
役人さんはかき消すように、だまれ、とまた叫びます。

132ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:01:56 ID:e6.XqA/s

短剣がヘリカルちゃんに牙をむきました。

(;><)「ヘリカルちゃん!!」

僕が伸ばした手はずいぶんと遠く届かず、牙はヘリカルちゃんにむかって一直線に襲いかかり──

*(;‘‘)*

.

133ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:05:58 ID:e6.XqA/s

「それ」に気がついたのは、しばらくたってからでした。
具体的に言うと、ずいぶん遠く届かなかったはずの僕の手がヘリカルちゃんに届いた時です。

( ><)「…あれ?」

ヘリカルちゃんは僕が触れたときにゆっくりと振り返りました。
そして一言、ぽつりと呟きました。

*(;‘‘)*「……とまってる、です」

ヘリカルちゃんのほんの目の前、その位置から微動だにしない短剣と──時が止まったかのように、凄まじい表情のまま固まった役人さんを指差しながら。

いいえ。時がとまった「かのように」ではありません。

僕は周りを見渡しました。
雷雨の雨粒が空中で止まっています。

時が、止まっているんです。


***

.

134ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:15:59 ID:e6.XqA/s


(;><)「うわぁぁぁぁぁぁっ!? なにこれ!!!」

*(;‘‘)*「ここで尋ねるのもアレですが…これは普通ですか?」

(;*‘ω‘ *)「んなわけねぇっぽ!」

私ことヘリカルと、ビロードと、ぽぽちゃんと、今のろのろとこちらへ歩いてきたワカ君。
それ以外のものが全て止まっているです、私でもさすがにこれは驚かざるを得ません。

とりあえず短剣から離れるです。ていうかこの凄まじい表情の役人さんずっと見てるの不快です。
命拾いというものですかね。

『全くさ、ヘリカルを殺そうだなんて身の程知らずにも程があるよね』

わぁわぁ騒ぐビロードとぽぽちゃんの声の合間から、糞ほど聞き覚えのある声が上空から聞こえました。

( ・∀・)『それはこいつらには決められないことなのにさ。思わず止めちゃったよ』

*(;‘‘)*「! 着ぐるみ糞野郎!」

( ・∀・)『やぁ「ヘリカr…えっ何そのいきなり辛辣な呼び名』

木の上から現れたのは、あの野郎でした。
肝心なときに全くいなかったあの野郎です。

135ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:24:42 ID:e6.XqA/s

*(;‘‘)*「おいお前、口ぶりからしてお前の仕業ですか、これ」

( ・∀・)『まぁ、そんなところ。ヘリカルを殺すとかバカなこと言ってたからね。さすがにそれはダメだからね』

*(;‘‘)* 「いやだからって、どうして時が止められるですか」

( ・∀・)『この世界の大きな一部だからね』

*(;‘‘)*「せ、説明になってねぇです!」

( ・∀・)『どうどう。まぁ今はそれよりすべきことがあるでしょ』

*(‘‘)*「すべきこと?」

( ・∀・)『こいつらは僕がなんとかすらからさー。そっちのワカ君たちのことどうにかしなよ』

*(‘‘)*「どうにかって」

役人さんの手を逃れ、自由になったワカ君。
ビロードやぽぽちゃんは、現状はとりあえず置いといて三人で抱き締めあっています。

*(‘‘)*「この隙にワカ君をこの町から出せってことです?」

( ・∀・)『近いね。えっとね、僕の知り合いに、ワカ君のこと預かってくれそうな人がいるから。どうするか聞いてほしいんだ』

*(‘‘)*「……」

( ・∀・)『なに?』

*(‘‘)*「いや、矛盾してるなと」

( ・∀・)『何が?』

136ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:31:59 ID:e6.XqA/s

*(‘‘)*「まず、最初からそうしろです」

( ・∀・)『だから、全部与えちゃ意味がないんだって』

*(‘‘)*「もうひとつありますよ。これは与えるのに値しませんかね」

( ・∀・)『するね。でも全部じゃない。彼らはもう十分悩んだだろ。ヘリカルも救ってた。
       こいつらも、なすすべがなくなってた』

結果的にヘリカルにその矛先が行ったんだけどね。バカなやつ。

そう独り言を言うように着ぐるみ頭は言いました。

なんででしょう、こいつらが私を殺しそうになったという話題になるといきなりこいつすごい威圧感あるんですが。
前の目を持ってかれそうになったときはそうでもなかったくせに。

( ・∀・)『もうこのままじゃヘリカルが殺されることでしか収集つかなそうだったからね。やむなしだよ』

*(‘‘)*「…私、救ってたですか? 救いきれてない気がしますけど」

( ・∀・)『九割がたできてたよ。少なくともビロードだけじゃワカ君はもう殺されていただろうし、
       ぽぽちゃんも勇気づけた。ワカ君も味方が増えてすごく安心してるよ。
        ワカ君、耳は聞こえるけど口はないからさ。みんなの心無い言葉を聞くことしかできないんだ。
        だから些細なことでもすごく救われるんだよ」

137ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:41:22 ID:e6.XqA/s

着ぐるみ頭は相変わらず、全てを知っているような口ぶり…いえ、本当に全てを知っているのでしょう。
見透かされたような言い方が少しだけ癪にさわるです。

*(‘‘)*「…あとの一割は?」

( ・∀・)『今からするんだよ。ほら行っておいで』

ぐいっと押してくる手を払い除けながら、私はワカ君たちの方へ歩きます。

*(‘‘)*「ワカ君、ビロード、ぽぽちゃん!」

笑いあっている彼らに声をかけると、三人とも同時にこちらを向きました。

( ><)「あ、ヘリカルちゃん」

*(‘‘)*「意外と平然としてますね、君たち」

(*‘ω‘ *)「驚きがカンストしてもう全部放り投げたんだっぽ」

( <●><●>)ノシ

( ><)「それで、何ですか?」

*(‘‘)*「着ぐるみ頭から聞いたんですけど、ワカ君を預かってくれそうな人がいるらしいんですよ」

( <●><●>)"

138ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:48:31 ID:e6.XqA/s

( ><)「預かってくれそうな人…」

(*‘ω‘ *)「それはどこにいるんだっぽ」

*(‘‘)*「あー、それはまだ聞いてみないとわかりません。アイツの知り合いらしいです」

(;><)「はぁ」

*(‘‘)*「その人に任せれば、少なくともこの町ほどびくびくしなくて済みます。最低限の平安も保証されるでしょう。
   アイツも、酷いようにするつもりはないと思うのでそこは信用していいです」

*(‘‘)*「君たちが大人になって、ルールにきつく縛られるようではなくなったら、町を出て会うことができると思うです。
   でも、逆に言えばそれまで会うことはできません。何年も何年も、君たちが大人になるまで」

( ><)

(*‘ω‘ *)

( <●><●>)

*(‘‘)*「近くにいないと、色々薄れていくものです。何年も経ったころ、そっくり今のままとは限りません。
   …君たちはどうしたいですか?」

139ブーン系の名無しさん:2014/07/01(火) 23:55:30 ID:e6.XqA/s

三人は顔を見合わせました。
ワカ君が二、三度瞬きをします。

( ><)「…そんなの…」

(*‘ω‘ *)「ねぇ…」

( <●><●>)ノ

ぼそぼそと囁きあってから、三人はすっくと立ち上がりました。
そして、ワカ君を前に持ってきます。
ちょうど私に渡すように。

*(‘‘)*「…本当にそれでいいのですか?」

( ><)「…遠く離れても、何年経っても」

(*‘ω‘ *)「姿形が変わっても。ワカがワカであるかぎり、私たちは友達だっぽ」

( <●><●>)σ

( ><)「そうですね、ヘリカルちゃんも」

聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフを言ってのけました。
私は頭を掻いてから、わかりました、と短く返しました。

140ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:03:52 ID:WSbLzXAo

*(‘‘)*「着ぐるみ糞野郎、聞くまでもなかったようです」

( ・∀・)『そうみたいだね。その呼び名やめて』

*(‘‘)*「そういえば役人さんたちどうしたんですか」

( ・∀・)『ああ、それなら、この町全体の記憶を昨日に戻しておいたから。
       このままこっそりワカ君を連れ出して、知り合いに会いにいけばいい』

さらっととんでもねぇこと言ったですコイツ。
そうでした、まだ問題は山積みです。
コイツについて結局、何一つわかっていません。

私は着ぐるみ頭の腕を掴みました。そのまま近くへ引き寄せます。
いつものように、のらりくらりと避けられないように。

*(‘‘)*「一つだけ聞いておきたいことがあるです」

( ・∀・)『…何かな』

*(‘‘)*「お前、何者ですか」

三人がこちらを見ているのが背後の視線でわかりました。
ビロードが「確かにこんなの変わりすぎってレベルじゃないんです…」と呟いたのが聞こえます。
普通と変わっているで判断するあたりは、もう癖みたいなものなのでしょう。

141ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:12:50 ID:WSbLzXAo

( ・∀・)『何者?』

きょとんとした声音で着ぐるみ頭は首を傾げました。

*(‘‘)*「ええ。時を止めるとか、記憶を戻すとか、正直言ってもう「そんなこともあるんですね」で済まされるレベル超えてるです。
   答えろです。お前は何者ですか?」

( ・∀・)『何者…何者か』

まるで咀嚼をするようになんどもおうむ返しをします。
少し間をあけてくすくす、と笑い声。

( ・∀・)『僕が何者かだって!?』

着ぐるみ頭は芝居じみた仕草で片手を広げて見せました。

( ・∀・)『そんなの、君が一番よくわかってるはずじゃないか!!』

*(‘‘)*「…!?」

142ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:17:51 ID:WSbLzXAo

それからあっさりと私の腕を振りほどくと、素早く私と距離を取りました。

( ・∀・)『でもね、「ヘリカル」は知らなくてもいいんだよ。それでも知りたいなら…南へ行くといい。僕の知り合いもそこにいるはずだ』

( ・∀・)『それじゃあね、「ヘリカル」。もう会うことはないかもしれないな』

*(;‘‘)*「は? ちょ、待っ──」

( ・∀・)『ばいばい』

手を振る彼が見えるのと、目の前が雷でぴかっと光るのは同時でした。
そのまま視界はホワイトアウトして──

143ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:22:02 ID:WSbLzXAo

*(--)*

*(‘‘)*

──目覚めたときには空き地でした。
宿屋に置いていたはずの荷物もすべて傍らにあって、それから。

( <●><●>)ノシ

ワカくんが心配そうに私の頭を擦っているのも見えました。

*(‘‘)*

*(--)* ハァ

*(‘‘)*「…嫌な夢でも見たような気分です」

( <●><●>)「?」

*(‘‘)*「何でもありません。行きましょうか。あの着ぐるみバカと、その知り合いの元へ」

私は、嵐のような、無くなってしまったであろうあの夜のことを思い出しながら、
なんとなく痛む頭を擦って、宇宙人と南へ歩き出したのです。


(最終話へ続く)

144ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:24:41 ID:WSbLzXAo
途中着ぐるみ頭が普通にヘリカルと呼んでいますが「ヘリカル」に変換お願いします
あと**みたいに文字化け?してるのがありますがただの空白のはずです…

次回投下はいつになるかわかりませんが百物語までには完結させたいと思ってます
昨日支援してくださった方ありがとうございました

145ブーン系の名無しさん:2014/07/02(水) 00:39:53 ID:???
どうするのかと思ってたが( ・∀・)無双だったか
勇気振り絞ったぽぽちゃんカッコ良かった
二日間おつ

146ブーン系の名無しさん:2014/07/07(月) 21:36:22 ID:h4nuy1CM
おつ
まっすぐでいいなあ

147ブーン系の名無しさん:2014/08/03(日) 23:46:25 ID:???
まだ未完成な感じで申し訳ないのですが、まとめましたという報告に伺いました
http://snowed.s601.xrea.com/library/paradise/

一つ質問なのですが、サブタイトル前の(話数後の)記号は表記揺れでしょうか…?
TOPでは削ってしまってるのですが意図があるものでしたら土下座しながらすぐに差し替えます
最終話投下楽しみに待ってます

148ブーン系の名無しさん:2014/08/10(日) 01:13:12 ID:???
百物語始まっちゃったぞー

149ブーン系の名無しさん:2015/02/19(木) 02:09:51 ID:???
おっわっらっなっいっでー

150ブーン系の名無しさん:2015/04/27(月) 03:13:10 ID:???
続いてーー))


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