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ぷちます!いじめ・虐待専用スレの避難所 八匹目

1名無しさん:2015/02/25(水) 07:59:50 ID:GC2b2zK2
ぷちますキャラ(ぷちます版アイドル・P含む)の精神的・身体的・性的ないじめ、虐待、陵辱、拷問、虐殺、四肢切断、スカトロなどなど、
本スレ、キャラスレ、エロパロスレに書けないような妄想を垂れ流す隔離系スレッド(通称:ぷ虐スレ)の避難所です。

虐待以外のぷちますSSは事前にスレ住人と相談の上で投下の可否を決めてください。
虐待ネタが嫌いな方は見ないで下さい。
気に入らないネタがあっても非難せずにスルーしてやって下さい。
ぷちます以外のアイマス系いじ虐の話題は別スレで。

盗作君が出現しているのでSS作者はトリップ推奨。
書き溜めは可能な限り。他人の投下中の割り込みは避けましょう。


ぷちます! 隔離スレ・SSまとめwiki
ttp://putimaskakuri.wiki.fc2.com/m/

ぷちます!隔離スレ まとめwiki (更新停止中)
ttp://putimasisolation.wiki.fc2.com/

本スレ
ぷちます! いじめ・虐待専用 十五匹目 [転載禁止]���2ch.net (dat落ち)
ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/motenai/1416056096/

個別スレ
ゆきぽ いじめ・虐待専用スレ 二匹目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/16471/1419767659/

前スレ
ぷちます!いじめ・虐待専用スレの避難所 七匹目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/16471/1415378166/

899長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:11:21 ID:eR8vRGhI
美城「私からは以上です。後は△△と交渉をすすめて下さい」

このままだと思い切り足下を見られた交渉になりそうだ。

P「そうですね……まず、961プロ様の書面ですが、内容に関しては事実です。アイドル達が肝心のアイドル活動に支障をきたすレベルでその奇形生物達に入れあげた結果、ゴタゴタを招いてしまいまして……961プロ様にもご迷惑をおかけしました。そこで今回の契約では、その生き物絡みで私どものアイドルが346プロ様側に何かご迷惑をおかけした場合、そのアイドルとの契約は解約、私どもは解約違約金として1000万を支払わせて頂く条項を盛り込む、と言うのは如何でしょう?今回の交換トレードを呑んで頂いた場合に限りますが」

ヒソヒソ……

美城常務と部長が何やら話している。社長は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見ている。そんな顔しないで欲しい。

△△「なるほど。それならば、万が一何かあってもウチが損をする事はない」

これで少しは、交渉がしやすくなるはずだ。

P「それともう1つ。先程美城常務は『契約満了を待ってフリーになってからオファーを出せば良い』と仰いました。それはその通りですが、恐らくどの事務所も同じ事を考えるでしょう。競合になったら取りはぐれる可能性はあります。しかしこの交換トレードならご所望の人材は間違いなく手に入りますよ」

美城「成る程、△△部長、競合になりそうなアイドルは?」

△△「高槻やよいは競合になるでしょうね。あと、三浦あずさも競合になるかと」

美城「確かに確実に欲しい人材が取れるのは大きいな……」

これで何とか交渉のスタートラインに立てそうだ。

900長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:14:07 ID:eR8vRGhI
P「ちなみに、今回交渉が成立した場合にウチが御社から頂けるアイドルは……」

美城「このリストの中からお気に召された者を。詳しい資料は交渉成立後に」スッ

100人近いアイドルの名と簡単なプロフィールが入ったリストを渡された。これでも所属アイドルの半分程度なんだろうな。

P「じゃあ社長、目を通しておいて下さい」

品定めは社長に任せて、交渉を続ける。

P「ちなみに346プロ様側は、何対何のトレードをお望みでしょうか」

△△「2対2で。相手は高槻やよいと三浦あずさを希望します」

やっぱりか。俺が芸能統轄人事部が食いついて来ると踏んだのは、この二人がいたからだ。とは言えまずいな……五人が余ってしまう。

正直俺も最初はその二人との2対2で交渉して、他の者については適当に移籍先を探す予定でいた。しかし黒井社長の手が回ってしまった今、この五人を受け入れる事務所は、まずないだろう。

『もし一ヶ月後に移籍が叶わなかった者で、まだ芸能活動を続けたい者がいた場合、私の方で移籍先を探す』と社長は言った。
社長の言葉を嘘にしたくないし、何より所属アイドルを放り出したとなると、765プロの名に傷がついてしまう。

『長靴をはいた猫』としては、ここで何とか五人をねじこまなくては。

P「理由をうかがっても?」

△△「高槻やよいは『ゴールド伝説』がありますしね。タレント事業部で力を発揮してもらいたい。三浦あずさは写真集の売上げも好調でしたし、ウチのモデル事業部でも面白い」

理由も俺の想像通りだ。346プロは間口が広い。事業内容は多岐にわたっている。アイドル事業部だけではないのだ。

だからこそつけいる隙がある。

901長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:15:24 ID:eR8vRGhI
P「なるほど。ちなみに他の五人ですが、まず如月千早、彼女はもともと歌手志望なので、そちらの歌手事業部ならきっとモノになると思いますが……菊地真は運動神経が良い。ダンスも上手いし、歌声も中性的で個性があります。ステージ映えするタイプですね。秋月律子は、元々はプロデューサー志望です。プロデューサー候補としての能力は私が保証します」

△△「確かに如月千早は歌手事業部なら活きるかも知れない。秋月律子も女性Pとしてなら、魅力的ではありますね」

美城「菊地真は気になりますね。女性ファンも付くタイプなのは大きい」

P「萩原雪歩は自分に自信を持てないところを克服すれば一皮むけるでしょう。天海春香は『トップアイドルになりたい』と言う強いモチベーションを持っています。今でこそ燻っていますが、環境が変われば、またその情熱を取り戻すはずです」

……正直この二人にはセールスポイントがない。こう言うのが精一杯だった。

△△「うーん、では、5対5では……美城常務、どうでしょうか?」

美城「アイドル事業部的にはマイナスが大きい」

やっぱり雪歩と春香には魅力を感じてもらえなかったようだ。取り繕おうともせず5対5の提案をする△△部長と、それを渋る美城常務。
確かにアイドル事業部で使えそうなのは真くらいだからな。346プロ的には5対5でも、アイドル事業部的には1対5になってしまう。

そこで、だ

902長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:16:59 ID:eR8vRGhI
P「いえ、当初の話し合いの通り、2対2で話を進めましょう」

全員「!?」

「奇形生物絡みのトラブルでの解約違約金1000万、交換トレード要員は2名、ウチから萩原雪歩と天海春香、交渉成立のあかつきには、オプションとして他五人の独占交渉権、765プロは以上の条件を提示致します」

△△「なっ……」

美城「ほう……」

雪歩と春香がおまけなら、『要らない』で終わる。だがウチからの交換要員として使い、他の五人をオプションに回せば話は別だ。この二人を取らないと他五人の交渉権を得られなくなるとなれば、取らざるを得ない。いわゆる『抱き合わせ』と言うやつだ。春香と雪歩は五人の、言わば『引換券』と言う事になる。
苦肉の策だし、勿論つっぱねられても仕方がない案だ。だが

P「これが一番誰も損をしないかたちでの契約だと考えます」

一番丸くおさまるのも、この案だ。

△△「確かに……タレント、モデル、歌手、企画の人材が手に入るのはありがたい」

美城「アイドル事業部から二名入れ替えで菊地真が手に入るのか……3対2なら数の上での損はない。悪くない話だ」

P「ウチから346プロに行く人間も自分の持ち味を発揮出来ますし……」

(しっかり在庫処分もできるしな)

高木「ウチにも新しいアイドルが来ると。346プロに良し765プロに良し、全部良し、と言う事か」

美城「……はははっ、これはお見事。1本取られたようですね。成る程、高木社長、悪知恵のはたらく部下をお持ちのようで」ニヤリ

美城常務がニヤリと笑う。今度は△△部長がそれを見て鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。そのリアクションを見るに、普段は笑わない人なのだろう。

903長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:18:25 ID:eR8vRGhI
美城「では△△部長、取り急ぎ契約の用意を」

△△「宜しいのですか?」

美城「私は気が長い方ではない。取り急ぎ話を進めて下さい。高木社長はそのリストから二名を選び、△△部長へ報告を」

高木「ええ、数名気になった人物はいますね。詳しい資料を見たい。図々しいお願いで恐縮ですが、出来ればレッスンをしているところも」

美城「アイドル事業部から詳細な資料をこちらに届けさせます。レッスン場へは、後で係の者に案内させましょう。後の事はお二方にお任せしますので。その間に……Pさん、少し貴方と話がしたい」

交渉の詰めを社長と△△部長に任せて、俺と美城常務は別室へ。


美城「なかなか見事な手腕をお持ちのようですね」

P「とんでもない。たまたま死中に活を見出だせただけです」

美城「それが出来る人間は、そう多くはない」

P「畏れ入ります」

美城「765プロはこれで水瀬伊織を除く全員が移籍。この経緯について詳しく尋ねたい」

俺はほぼ全てを話した。

美城「成る程、高木社長の理念にそぐわなくなった事務所を、ほぼ白紙に戻したと言うところですか。私も自分の理念にそぐわない全ての企画を、進行中のものを含め全て白紙に戻しました。その考えは良く分かる」

確かあのプロデューサーも、ちらっとそんな事を言ってたな。

美城「それに伴い、優秀な人材は大歓迎。そこで、こちらからも交換トレードを持ちかけたい」

「貴方と高垣楓のトレードは可能でしょうか?」

高垣楓と言えば346プロでもトップクラスのアイドルだ。765プロに入ってくれたら大きな戦力となる。
それに、俺にそこまでの価値を見出だしてくれたのは、素直に嬉しい。だが

P「そのお言葉はありがたいのですが……私は765プロの『長靴をはいた猫』ですので……」

さっきはあえて話さなかった、社長を口説いた話をした。

美城「成る程、ウチの『シンデレラ』と言い、この業界は何かと童話に縁があるようです。他の物語の登場人物を欲しがるのは無粋ですね。分かりました、先程の話は忘れて頂きたい」

……

904長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:19:41 ID:eR8vRGhI
その後も美城常務と暫く話をした。俺がここの社員ではないからか、かなりぶっちゃけた話もしてくれた(他言無用の条件つきだが)。

美城「私はただ、かつての芸能界に見られたようなスター性、別世界のような物語性を確立していこうと考えているだけです」

社長も自分の理念の為に765プロを白紙に戻した。破壊なくして創造はないのだ。

その後、レッスン場までお邪魔して、社長がティンときたアイドル二名と765プロ七名の交換トレードが成立。

契約の細部は後日詰めると言うかたちとなり、何とか346プロとの交換トレード交渉は、無事終わった。

会社間で合意に達し、1週間後、つまりあの騒動のちょうど1ヶ月後、今日交渉したこの部屋で、七名の移籍契約の説明を行う事になった。

その日の夜

伊織「プロデューサー、一つ頼みがあるの」



第二部 終わり

905長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 03:40:24 ID:eR8vRGhI
再三の寝落ち、すいません。

続きは近日中に

906名無しさん:2015/09/13(日) 06:20:59 ID:VF3CeXgk
乙です
346プロとはデレマスの事務所ですかね?
以前みなしごさんがまゆ?とかのキャラのぷち物を書いてくれましたが
また新しいぷちが出てきても面白いかもしれませんね

907名無しさん:2015/09/13(日) 07:03:44 ID:hmJ2ewjI
おつ
デレマスの誰が出てどんなことを言うのか
展開が楽しみだね

908名無しさん:2015/09/13(日) 10:12:28 ID:0.6x6vKw
おつです
久しぶりの力作SSだ

909名無しさん:2015/09/13(日) 13:06:45 ID:U8xSJ5WE
乙です
なんという心理戦。ぷちどるがでてこないのにここまで面白いとは・・
あと、2部の登場人物全員がジョジョにでているという・・
(ホルホース、ミスタ、リサリサ、ポルナレフ、DIO、SPW財団員

910名無しさん:2015/09/13(日) 13:51:59 ID:O0Cj/4aE
おつおつ
思わず見入ってしまうぜ
君の作品が多くの読者に影響を与えることだろう
ぷ虐もまだまだ終わらないってことを実感させてもらったよ

911長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 22:56:53 ID:eR8vRGhI
第三部投下します。デレマス勢で登場するのは、名前だけ出た高垣楓と、最後にちょっとだけ、あるアイドルが登場します。

912長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 22:58:19 ID:eR8vRGhI
1週間後

高木「しかし解約違約金1000万とは……ウチにしてみれば大変な金額だよ?」

あの状況で形勢を立て直すには、ああ言うしかなかった。100万単位では形勢は動かない。億単位では支払い能力を含め、かえって嘘くさくなる。

P「ご心配なく。細部までキチンと抜かりなく詰めてますから」

契約違反をさせないようには手をうった。

今日は七名の契約説明の日。346プロの一室を借りて、これから説明会を行う。

P「御無沙汰しております」

もうコイツらとは他人だ。他人らしく接しよう。

七名「……」シーン……

P「皆さんはこれから346プロ所属となる訳ですが、契約内容について、少し説明を……まず一点、ぷち絡みで346プロに迷惑をかけた場合、即解雇。一人が迷惑をかけても七名全員が連帯責任で解雇対象となります。まあ注意するのは如月さんと菊地さんだと思いますが……」

ザワッ……!

契約条項に連帯責任を追加した。ウチに居た時はぷちの所業に関してはみんな『連帯責任放棄』だったからな、さぞかし面食らっただろう。連帯責任があれば、迂闊な事はまずしないはずだ。

千早「迷惑をかけなければ問題はないと?」

『迷惑をかけなければ連れて行ってもいい』などと考えているのか?

P「貴方達の常識と一般常識には乖離があると自覚して頂きたい。言うまでもなく、ぷちを事務所に連れて行くだけで解雇の対象になります」

ザワッ……!

……おいおい、何でそこで『ザワッ……!』なんだよ……
……頭が痛くなる。

P「貴方達の現在の認識を改める為に、知っている方もいらっしゃるとは思いますが、先日四条貴音さん達が解雇された961プロからの書面のコピーを頂いてきました。目を通してみて下さい」

資料にある961プロの書面に目を通す七名。みんな神妙な顔をしているが、驚いている様子はない。おそらく美希あたりから話は聞いているのだろうか。
貴音の軽率な行動で、美希と響が巻き添えをくった事を知っていれば、真も千早も軽率な真似はしないだろう。

真「で、でもまこちーには僕がいないと……」

P「貴方は職場でまこちーといると解雇になりますよ。他の六名も道連れにしてね」

千早「私が仕事の時、ちひゃーはどうすれば……」

夢の世界は崩壊した。現実の世界はいつも、誰にでも選択を迫る。

P「仕事と、貴方のペット、どちらを取るかは貴方次第です。どちらかを諦める事になると思いますが」

ザワザワ……

『職場にペットを連れて行ってはいけません』

小学生でも分かる事だ。俺はザワつかれるような事は言ってないぞ?

律子「……あの、本当に連れて来ちゃダメなんですか?」

高木「いい加減にしなさい」

シーン……

913長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 23:00:16 ID:eR8vRGhI
出た、有無を言わせない声色。社長も今のやりとりが相当頭にきているようだ。

P「今までのように仕事とあの生き物の世話の両立など……いえ、もともと両立など出来てはいなかった。可愛がるだけ可愛がって、面倒事や損害には見て見ぬふり。仕事先にまであの生き物を連れて行き、迷惑までかける体たらく。仕事も世話も両方メチャクチャだった事、理解できていますか?それとも今まで両立できていたと勘違いでもしていましたか?」

七名「……」

高木「おまけに、それを何とかしようとしたPくんを排除しようとする始末。もう一度961プロからの書面を見てみたまえ。

『プロ意識の欠片もない』

『職場と遊び場の区別もつかない』

『途方も無く愚か』

これが、第三者的視点から見た君たちの印象だ」

七名「……」

閉じられた世界では、時に外から見たらとんでもない非常識がまかりとおる。
第三者の目から見て指摘されて、はじめてそれが異常だと気がつくのだ。

P「まあ、如月さんがこの先どうするかは、ご自分で決めて下さい。ただ、先ほどの961プロの書面は他の芸能事務所各社にも届いているようですので、芸能活動を継続できるのは、今回の契約が実質ラストチャンスと思って頂いて結構です。勿論、他の皆さんも」

七名「……」

そう、他の事務所に悪評が晒された今、他の事務所はまずコイツらを取らない(やよい、あずささんは別だろうが)。

契約か、引退かしかないのだ。

P「続いてもう一点、皆さんは346プロ所属になる訳ですが、所属部署はそれぞれ別になります。秋月さんは企画部、三浦さんはモデル事業部、高槻さんはタレント事業部、如月さんは歌手事業部、残り三名はアイドル事業部に所属となります」

千早「私はいいですけど……」

律子「あずささんとやよいはアイドルを目指してたんですよ?それはいくらなんでも……」

あずさ「いいんです」

やよい「プロデューサーさん、ごめんなさい。私はみんなが間違ってるの知ってて……でも、止められませんでした……」

あずさ「私もです……年長者の私がしっかりしていれば、こんな事には……だから、最後はプロデューサーさんが決めた事に従おうって、やよいちゃんと話していたんです、だから……」

ザワザワ……

P「そうでしたか……」

この二人が自分で移籍先を探さなかったのには、そう言う理由があったからか。
この二人がその気になれば、どこかの事務所に移籍してただろうな。
そうなったら今回の交換トレードはなかった。二人には感謝すべきだろう。

それに、この二人も間違いに気がついていてくれた事、周りに他の皆がいる、この状況でそれを口にしてくれた事が、俺は素直に嬉しかった。恐らくこの二人にとって、それはとても勇気がいる事だから。

914長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 23:01:26 ID:eR8vRGhI
この二人が『同調圧力に屈した』と言う見方もできなくはないが、同調圧力をはね除けた伊織の方が稀有な存在なのだ。俺が逆の立場なら、この二人のように同調圧力に屈していただろう。

P「所属先で一定の成果をあげた上で、もし本人がアイドル活動をしたいのなら、アイドル事業部に移籍できるように話をしておきます」

……

一通りの説明、質疑応答が終わり、それぞれの部署の担当者がこの部屋にいる人員を迎えに来る。

社長はウチに移籍するアイドルを迎えにいく為、一足先にこの部屋を後にしていた。

一人、また一人とこの部屋から人が消えて行く。

最後にやよいだけが残った。

P「高槻さんには最後に挨拶がある者がいますので……」ガチャッ

俺は部屋のドアを開ける。

やよい「伊織……ちゃん?」

伊織「……元気だった?」

P「……私は外で待機していますので」ガチャッ

先日の伊織の頼みは

『やよいにどうしても最後にお別れが言いたい』

だった。その伊織の頼みを叶える為、タレント事業部の担当者には少し待ってもらった。

サプライズ気味なのは、他の者がいるとどうしても険悪なムードになりそうなので、全員がいなくなってからの方が良いと判断したからだ。

……

10分ほど経って、ドアを内側からノックする音がした。タレント事業部の担当者に連絡を入れ、ドアを開ける。

目に涙を一杯に溜めたやよいと目が合った。伊織は壁の方を向いている。耳まで真っ赤で、身体は小刻みに震えていた。触れたら崩れそうなくらい、弱々しい背中だった。

P「担当者がすぐに来ますので」

やよい「わかりました……最後に、プロデューサーさん、本当に、本当にごめんなさい……」

「すいませーん、タレント事業部のものですが」

迎えが来た。随分と早いな。

P「はい、こちらです。高槻さん、私からも最後に」

「頑張れよ、やよい」ボソッ

最後の最後、この時だけは他人ではなく仲間として、やよいと別れを迎えたかった。欲を言えばあずささんともだったが……

やよい「……!」ポロポロ

伊織「やよい……元気でね」

こちらに背を向け、震える声を絞り出すように伊織が呟く。

やよい「プロデューサーさんも、伊織ちゃんもお元気で。今までどうもありがとうございました。二人と出会えて、私は幸せ者でした。さようなら」ニコッ

915長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 23:02:41 ID:eR8vRGhI
泣き笑いだったとは言え、やよいとだけでも笑顔で別れを迎えられたのは救いだな。……最後は正直、俺ももらい泣きしそうだった。

P「じゃあ、戻ろうか伊織」

伊織「……ええ、帰りましょ」

伊織は目こそ少し腫れていたが、後はいつもと変わりのない感じだった。が

伊織「これでやよいの無人島ロケにつき合わされなくて済むと思うと、嬉しいけど、少し寂しくなるわね……」

そう呟いた時の顔は、少しどころか、とても寂しそうな顔だった。

P「伊織……」

伊織「心配そうな顔しないの。……こうなっちゃったのも、運命なのよ。きっと」

伊織が、社長と音無さんが決別した時と同じような事を言った。

人は辛い別れの時、『運命』と言う言葉を使うのだろう。

……

交換要員の引き渡しが終わり、765プロに戻ると、社長と346プロから移籍して来た二人のアイドルが先に事務所に着いていた。
個性豊かな346プロのアイドルの中では埋もれてしまってはいたが、素材は良い。後は俺次第だ。何よりこの二人は移籍話に即答してくれたらしい。新天地での意気込みは並々ならぬものがある。

高木「私と○○さんとぴよぴよ君は自己紹介を済ませた。君たちも」

伊織「はじめまして。水瀬伊織です。『伊織』でいいわ」

「はじめまして、伊織さん」

「よろしくお願いします、伊織さん」

P「俺はこの事務所のプロデューサー、俺の事は……」

伊織「『猫ちゃん』でいいわよ、にひひっ」

P「おいおい……」

伊織は俺の後ろて悪戯っぽく笑って言った。

「猫ちゃん……ですか?」

「本名が『猫田さん』とか?」

伊織「それはね……」

P「待て待て、話せば長くなるからいいや。……『猫ちゃん』でも『プロデューサー』でも好きに呼んでくれ」

あまりそのエピソードは聞かれたくない。黒歴史と言ってもいいくらいだ。

「えー、気になりますー」

「猫要素ないですよねー」

ワイワイガヤガヤ……

別れの悲しさを紛らす為か、新人の緊張をほぐす為の気遣いか。恐らく両方だろうな。

人の前では目一杯強がって、家に帰って一人、部屋で別れに泣く。水瀬伊織とは、そう言う気高い子だ。

先ほど親友との悲しく辛い別れをすませたとは思えないほど伊織は屈託なく笑い、新人二人も良く笑った。

新しい765プロのスタートだ。

この三人を見て、俺はある考えが浮かぶ。

916長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 23:03:39 ID:eR8vRGhI
その日の夜

高木「新しい二人はどんな売り出し方を?」

P「伊織をセンターに据えて3人のユニットを結成しようと思っています」

高木「いきなり総力戦かね……確かに、当たればでかいが」

P「伊織とあの二人なら大丈夫です。俺は伊織とあの二人の可能性とそれを見抜いた社長の慧眼を信じます。ですから……」

P「なるほど。では私も君を信じよう」

こうして三人はユニットで売り出していく事になった。

三日後

今日はアイドル3人は完全オフ。俺は比較的自由に動ける。

午前中はずっと事務所で新ユニットの曲を考えていた。昼食は気分転換に近くの公園で食べよう。天気も良いしな。

おにぎりやお茶をコンビニで買って公園へ。奥の大きな木の木陰のベンチに腰掛け、お茶を一口飲む。

P「ふぅ……」

考えが煮詰まったりした時、俺は決まってこの公園のこの場所で過ごす事にしていた。こうしていると落ち着いた気持ちになれる。最近忙しくてなかなか来れなかったからな。

ワイワイ ガヤガヤ

今日は土曜日という事もあってか、子供たちが沢山いるな。

P「……ん?」

子供たちの声に、異質な声が混じっているのにふと気がついた。

耳をすましてみると


ぱうー!ぷいー!ぽえー!


聞き覚えのある、ぱ行三段活用が聞こえた。



第三部 終わり

917長靴をはいた猫:2015/09/13(日) 23:04:40 ID:eR8vRGhI
今日はここまで。765プロに来たアイドル二人は悩んだ末に決めきれませんでした。誰が良いかは読んで頂いた方それぞれのご想像にお任せします。第四部は明日投下します。

918名無しさん:2015/09/13(日) 23:15:29 ID:O0Cj/4aE
乙でした!

919名無しさん:2015/09/13(日) 23:35:45 ID:Cd0JD1/s
気になる引きでクソモグラ登場
おつです

920名無しさん:2015/09/13(日) 23:41:29 ID:8XLrTr6I
乙!

やよいと伊織の別れはグッときました

そしてぱ行三段活用をひっさげて全ての元凶が!

もう今晩投下して下さい。。

921名無しさん:2015/09/14(月) 14:04:23 ID:r.JYD08w
乙です
キングオブ害獣の無惨な最期を期待してドキがムネムネしっぱなしです!

922長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:10:31 ID:zfO45wa6
第四部投下します。お付き合い頂いた方、ありがとうごさいました。

923長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:12:27 ID:zfO45wa6
ぱうー!ぷいー!ぽえー!


声のした方を見ると、子供たちが何かを引きずり回していた。よく見ると茶色い髪が見える。先ほどの声は聞き間違いじゃなかった。あれは、ゆきぽだ。

P「しかし、何故ここに……?」

いや、捨てられたのは間違いない。だが、亜美たちの家からは少し離れているこの公園に、何故?

ここに捨てたら765プロの関係者が拾うと思ったから、ではないだろう。

P「……あ、分かった」

答えは簡単だ。俺も子供の頃、野良猫を家に連れ帰り、飼わせてくれと両親にお願いした事がある。周りにもそんな経験を持つ者はいたが、大概は断られていた。その時の親の台詞は、決まってこうだ。

『元いたところに戻して来なさい』

恐らく、真美がゆきぽを拾って来たのがこの公園だったのだろう。

P「……」キョロキョロ

あふぅの姿は見当たらない。もしかしたら亜美があふぅを拾って来たのはここではないのかも知れないな。

しかし子供たちが今、虐めているのはコンクリートすらぶち抜く化け物だ。怪我人が出る前に止めなくては。

ベンチから立ち上がり、子供たちの元へ向かおうとした、その時

「こいつ何でパンツ一丁なんだ?」

「変態だ変態!気持ち悪りぃ」

その場に立ち止まりゆきぽの姿を今一度見てみる。

P「パンイチじゃねーか……」

当然、スコップも持ってはいないだろう。

服はスコップを取り上げる際に脱がすか破くかしたのだろうか。ある意味、最も無責任で無慈悲で残酷な捨て方だ。犬で言えば爪と牙と身体の毛を全部取り上げて放り出すようなものだ。

残るは怪力だが……

924長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:14:33 ID:zfO45wa6
「そらっ!おらっ!」ドスッ ベキッ

「いっちょまえに髪生やしてやんの」グイッ!

「何だこのほっぺ、きめぇ」ムギュウゥゥ……

ゆきぽ「ぷひいっ、ぽやあっ!ぱうーーーっ;;」バタバタ

……問題ないか。こいつの怪力が発揮されるのは何もしてこない物限定だ。何かしてくる物に対しては、無力に近い。

しかしパンイチのこいつは本当に醜いな。大方、こいつは765プロで飼われていた時のように可愛がって飼ってもらおうと、子供たちに甘えてすり寄ったのだろう。服を着てない自分の醜さなど、考えもせずに。
こんなパンイチの醜い化け物が甘えて近づいて来たら不快になるのは当然だ。それで今、叩きのめされているのだろう。
ちなみに俺がパンイチのゆきぽを見て真っ先に思い浮かんだのは『土偶』。それも、とびっきりの悪ふざけで作られた『土偶』。

『甘えてすり寄れば可愛がってもらえる』

『泣いたら何でも許される』

『要求は全て通る』

これが765プロでこいつが学んで来た事だろうか。


だけどなゆきぽ、その765プロは、もう、ないんだよ。


子供に虐められて泣かされる、こんな矮小な生き物たちのせいで、みんながバラバラになり、伊織とやよいは涙を流した。何ともやるせない気分になる。

その一方で、こいつもまた、被害者だと言う気持ちもある。甘やかされる毎日から一転、ゴルフクラブで殴られ、檻に閉じ込められ、人間に都合が悪い物を全部剥ぎ取られ、捨てられる。
その恐怖と絶望はどれほどのものだろうか。勝手にチヤホヤされて、勝手に疎まれて……怖かっただろう。そして、訳が分からなかっただろう。

P「止めなさい」

俺は子供たちを止めた。子供たちはビックリしたような顔をしていたが、そのうちみんなゆきぽの周りからいなくなった。

ゆきぽ「ひぅ〜、ぱうぅ……;;」

ボロボロになったゆきぽを見下ろす。

ゆきぽ「ぐすっ、ぅぅ……ぽ、ぽっ?」

ゆきぽが俺に気づいたようだ。ボコボコになった顔に笑顔を浮かべて走り寄って来た。

925長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:16:11 ID:zfO45wa6
ゆきぽ「ぽえ〜♪」トテトテ

P「近寄るな」

ゆきぽ「ぱう……」ピタッ

P「お前を助けるのは、これが最後だ。今から俺が言う事を良く聞け」

ゆきぽ「ぷ、ぷいぃ?」キョトン

「もう人間には近づくな。お前は、人間のためにならない。分かったな?」

俺はそう言い残して踵を返す。

ゆきぽ「ぽ、ぽぉー!」トテトテ!トテトテ!

俺を追いかけているようだ。俺は歩みを速める。

ゆきぽ「ぽっぽっ!……ぽびゃっ!」ベチャッ

短い叫びが聞こえた。転んでしまったのだろう。俺は振り向かずに公園を後にする。

……ぱぅぅぅ…ぱぅぅぅぅ…!……

悲しげなソプラノの泣き声が俺の背中に響いた。

スコップが無いのなら、人間の生活圏を脅かす心配はない。人間に近寄らずにひっそりと暮らせば、幸せに、とはいかないまでも生きてはいけるはずだ。忠告を守ってくれれば良いが……

……

俺の忠告も虚しく、ナイフでメッタ刺しにされた謎の生き物の死体がニュースで取り上げられたのは、それから数日後の事だった。
ゆきぽを知っている者がニュースを見たら、その謎の生物が何なのかはすぐ分かる。

○○「この近くですって。怖いわねー。何か特徴がぴよぴよちゃんに似てるわね。貴方も気を付けないと……」

偶然、虐待愛好家に見つかってしまったのか?それとも、ナイフを持ち歩いているような輩に不用意に近寄ってしまったのか?分からないが、多分後者だと、俺は思う。言っても聞かないし、聞くつもりもないヤツだったからな。

ゆきぽを殺したのは、どこかの顔も名前も知らない誰かだ。だが、ゆきぽが惨たらしく死んだ原因は765プロにある。

面白半分で拾って来た真美、飼うことを承諾してしまった俺と律子、優しさと甘やかすのをはき違えたアイドル達、だんだん増長して人の言う事を聞かなくなったゆきぽ、それが間違っている事に気がついていても何もできなかったあずささんややよい、そして、最後に無責任かつ残酷な捨て方をした双海姉妹……

みんなに原因がある。これは起こるべくして起こった事だ。

もしも、もしもだが、俺が躾を諦めて、律子たちが俺を排除しようとしなかったら、みんなバラバラにならなかったかも知れない。みんな幸せだったのかも知れない。

だがそれは、いつまでも続かないだろう。あの日々は『幸せ』ではなく、『快楽』だったのだから。『快楽』は堕落を生み、やがて破滅へと突き進む。それは事務所の終わりを意味するのだ。

926長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:17:32 ID:zfO45wa6
「ぴぃ……」

そんな事を考えていた俺の顔を、心配そうにぴよぴよがのぞきこんでいた。
俺はそんなに深刻そうな顔をしていたのだろうか。

P「ん、何でもないよ。ちょっと新曲の件で考え事」

ぴよぴよ「ぴっ」カタカタ

『あんまり無理はしないて下さいね』

ぴよぴよは俺のパソコンに、そう打ち込んで自分の席に戻った。

実際には新曲はほぼ完成していた。ぴよぴよが家に来てから、家事なども手伝ってくれるので楽になった。その分俺はプロデュースに力を注げていた。

あの『快楽』の日々に一つだけ意味があったとすれば、それはぴよぴよとの出会いだろう。

拾われたり、付いてきたぷち達と違い、唯一この子だけが、この事務所に自分から来た。他のぷち達に引き寄せられたように。

これも『運命』だったのだろう。

『運命』とは、出会いや別れにかかる枕詞なのかも知れない。

927長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:18:42 ID:zfO45wa6
一年後

三人のユニットは想像以上の成果を挙げた。先週のアリーナでの単独ライヴも大成功と言えるものだった。
募集中だったアイドルも三人加入し、やっとアイドル事務所らしくなってきた。

○○「猫さん、346プロの常務さんからお電話です」

美城常務から?

P「はい、お電話かわりました、Pです」

美城「美城です。御社のユニットが大きな会場でのステージを無事に努めあげたとの事で、一言お祝いを、と思いご連絡を」

P「これはわざわざ、ありがとうございます。高木の方におつなぎは……」

美城「いえ結構。私は貴方と話がしたい。今、時間は?」

正直時間はあまりないが、無下にもできない。

P「ええ、大丈夫です。話とはどのような……」

美城「あの交換トレードで御社からウチに来た七人の近況報告を簡単に」

P「お聞かせ頂けるのであれば、是非」

ここのところ新ユニットの件で頭が一杯だったからな。気にはなっていたが……

美城「では、最初に……」

あずささんとやよいは期待通りにやれているとの事。
この二人に関しては心配していなかったが、改めて聞くとホッとする。

美城「次にアイドル事業部の3人ですが……」

「既に全員、契約を解除しました」

ホッとしたのも、束の間だった。

928長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:21:50 ID:zfO45wa6
P「……詳しく聞かせて下さい」

その後の話によると、春香は歌唱力が346プロの水準から著しく劣っていたとの事。

美城「トップアイドルを夢見るのは結構。だが、夢を叶える努力を怠っていたのは明らかでした。一人だけ明らかに劣ってたので居づらくなったのでしょう。半年前に自ら契約解除を申し出てきました」

……ぷち達が来てから、トップアイドルは春香の中で『叶える夢』から『見る夢』に変わってしまっていたからな。周りは春香がぷち達と戯れている間にも、夢を叶える為にレッスンを重ねてきた者ばかり。差があって当然だ。

雪歩はやはり、メンタル面がネックだったらしい。
アイドルに向いていないと判断されたようだ。

美城「『気弱で臆病な自分を変えるために、アイドルの道へと進んだ』との事でしたが、ウチはそういう施設ではありません。引退を勧告し、彼女もそれを受け入れました」

……厳しいようだが、その通りだ。765プロのような弱小事務所ならともかく、200人近いアイドルがいる346プロなら、代わりはいくらでもいる。そんな考えの者は正直、邪魔でしかないだろう。加えてこの美城常務、気の長い方ではない。

美城「菊地真はレッスンに身が入っていませんでした。何か気掛かりがあるのか、いつもソワソワしていて。レッスンが終わり帰る頃になると元気になったり、いわゆる『新型うつ』のような状態でした。我々も彼女には期待していたのですが……そのような者を置いておけば、全体に悪影響が出る。二ヶ月前に話し合いを持ち、契約を解除しました」

……まこちーが側にいないと、駄目になるのは真の方だったか……真も貴音と同じで、ぷちで身を持ち崩してしまったな。

それにしても、少し決断が早すぎる気がするが。

美城「10代の一年はとても貴重なものです。先が無い者には早目に引導を渡して本人の貴重な時間を浪費させない事も私の努めだと考えています」

それは、まったくもって仰る通りだ。

美城「346プロのアイドル達は、御社に移籍した二人のように切っ掛けさえあればブレイクできるように日々レッスンを欠かしていません。それが間違いではないと言う事を、今回の貴方がプロデュースするユニットに証明して頂いた。ウチのアイドル達も大いに刺激を受けています。その点では感謝したい。……トレードではアイドル事業部の一人負けのかたちですが……」

……何て答えたらいいんだろう。何を言っても嫌みになりそうで怖い。

P「えー、残りの二人は……」

とりあえず話を変えてみた。

美城「私の担当ではないので、伝聞で恐縮ですが……」

ちゃんと調べてくれているあたり、印象よりも冷たい人ではないようだ。

律子は芸能界での経験はあるが、社会経験が不足している為、社会経験を積ませる意味で地方の子会社に出向させているとの事。

美城「頭は良いが人間的にはまだまだ社会人未満だと企画部の部長は話していました。まだウチで仕事をするには早いとの判断のようです」

……確かにその通りだ。言われて見れば、その『社会人未満』の律子がウチの中心だったんだよな。765プロが分裂したのは必然だった。

俺が躾をしなければならなかったのは、ぷち達ではなく、まず事務所の人間だったのかも知れない。

ふと、そう思った。

話によると、出向期間は三年、場所は九州のローカルアイドルを手掛ける事務所との事。美城常務がわざわざ企画部に問い合わせてくれた。
律子にとって実りのある三年になる事を祈ろう。

929長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:23:51 ID:zfO45wa6
美城「さて、最後に如月千早ですが……」

真と並んで心配だった千早だ。

美城「歌手として最近、声に深みが出たと聞いています。歌手事業部の部長の話だと、『何か大きな別れや喪失を経験したような変化』との事です。歌声には人生経験が反映されるとの話ですが……」

P「……!」ハッ

別れや喪失。恐らくだが、千早は、ちひゃーと別れたのだろう。
里親に出したのか、捨てたのか、殺処分したのか、それとも自分の手で……その別れ方までは分からないが……

千早は、歌一本で生きていく決断をしたのだ。葛藤、覚悟、喪失、悲しみ……それらを乗り越えた事が最近の歌声に反映されたのではないだろうか。

何故そう思ったのかと言うと、俺は他にもう一人、辛い別れを経験した人物を知っていた。そう、伊織だ。
その伊織の歌声がある日を境に大人びてきた気がしていた。
伊織くらいの年だ、思春期の影響だとばかり思っていたが……
伊織もやよいとの辛い別れを経験した。その結果声に深みが出たのではないか?千早もそうだと考えると、辻褄が合う気がした。

美城「以上が、トレードの近況報告です。そちらの報告は結構。充分聞き及んでいます。……今回の交換トレードの勝者は、御社です」

俺は1000万の解約違約金や独占交渉権、アイドル達の他部門への適性などをちらつかせ、最後に『これが一番誰も損をしないかたちでの契約』と言って、今回の交換トレードを実現させた。

『長靴をはいた猫』がオーガを言葉巧みに操りネズミに化けさせて飲み込んだように。

あの交渉は弱小765プロが芸能総合商社の大手、346プロに仕掛けた、乾坤一擲 の大博打だったのだ。

結果は大成功だった。ただ、今回の成功は俺だけの力ではない。

P「高木の目利きあってこそです」

美城「高木社長の慧眼には、私も感服しております。考えてみれば、私はアイドルの数や損得などしか考えていなかった。アイドルそのものを見ようとしなかった。トレードの明暗を分けたのは、私と高木社長の差です」

P「結果は時の運ですが……私を見出だしてくれたのも、多勢に無勢の私を救ってくれたのも高木でしたから。それに応えるべく全力で励んだ事が、今回運良く結果につながったのかと……」

美城「成る程、高木社長には貴方の『カラバ侯爵』である器量があったと言う事ですか」

そう、『長靴をはいた猫』に、主君の器量は不可欠なのだ。

美城「今回の交換トレードは双方得るものがあった有意義なものだったと思います。アイドル事業部も、貴方のユニットから努力するモチベーションを与えられたと前向きに解釈するとしましょう。……長々と申し訳ありませんでした」

P「とんでもない。私から伺う訳にもいかないお話でしたので、お心遣い感謝致します」

美城「最後に。もし貴方がまた、765プロから排除されそうになった場合、その時は迷わず346プロを選んで頂きたい。優秀な人材は大歓迎です」

P「はは……」

美城「では、失礼を」ガチャッ

……

930長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:26:26 ID:zfO45wa6
交換トレードから一年、変わった事が二つある。

一つは、765プロが『理想のアイドルを世に送り出す』事務所に、少しだけ近づいた事。会議室のホワイトボードには、中央に

『めざせ!トップアイドル!!』

と大きく書いた周りに、アイドル皆の名前と意気込みを書いてもらっている。

もう、二度と初心を忘れる過ちを繰り返さない為だ。
今は6人だが、このホワイトボードにもっと名前と意気込みが書かれるように頑張っていかなくては。

もう一つは

伊織「猫ちゃん?電話長過ぎよ!早く準備しないと遅れちゃうわよ」

「猫さん早くー」

○○「猫さん、戻って来たら書類の確認お願いします」

「猫さーん」

……

……俺=猫が定着してしまった事だ。社長以外はみんな俺の事をこう呼ぶ。ぴよぴよもパソコンで意思疏通する時、たまに『n』と打って慌てて『Pさん』と打ち直すくらい定着している。
まあ伊織以外のみんなは理由までは知らないみたいだが。仕事先でまでたまにその呼び方をするのはやめて欲しい。

この間は大西由里子と言う346プロのアイドルに

「プロデューサーさん、さっきネコって呼ばれてましたよね?もしかして、『受け』なんですか?」

等と訳の分からない事を熱っぽい目で言われた。

……アレは一体何だったんだろう。

ともあれ、親しみがこもっているので悪い気はしないし、そう呼ばれると、『長靴をはいた猫』として、もう少し頑張らないと、と言う気になる。

……

『長靴をはいた猫』のラストシーンは

『カラバ侯爵』がお姫様と結婚して、猫も貴族の身となって、鼠捕りは趣味でやるだけになった。

というものだ。カラバ侯爵が社長だとしたら、お姫様はトップアイドルだな。

今事務所にいる誰か、もしくはまだ見ぬ誰かをトップアイドルとして社長に巡り合わせるその時まで、俺は『長靴をはいた猫』でいなくては。

俺は改めて自分に、そう誓った。



長靴をはいた猫 終わり

931長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 20:27:54 ID:zfO45wa6
以上です。長々とお付き合い頂きありがとうごさいました。しばらく一読者に戻ります。ssがもっと増える事を願っています。また、妄想駄文書きとしては、スレッドの書き込みがもっと増える事を願っています。ちょっとした書き込みが妄想のヒントになる事も多いので。

それではまたいつか、別の作品で

932名無しさん:2015/09/14(月) 21:15:23 ID:1F9zp69M
素晴らしい力作を乙でした。
小鳥さんがどうなったのか気になるけど事務の仕事で再就職かな?

933名無しさん:2015/09/14(月) 21:44:12 ID:BeoXHPP6
おつです
久々にいい話を読んだわ
アラサーにして事務所をクビになった小鳥さんカワイソス

934長靴をはいた猫:2015/09/14(月) 21:47:37 ID:zfO45wa6
小鳥さんについては触れようか迷ったんですけどね。こんなかたちで退社した765プロに近況を報告するのも、ちょっと不自然な気がしたので

935名無しさん:2015/09/14(月) 22:05:56 ID:9UNFtrFI


ネット上で久しぶりに「小説」を読ませてくれたことに感謝したい
力量があるのだから長編に挑戦してみるべきだと思う

936名無しさん:2015/09/14(月) 22:17:00 ID:IyCytX3E
おつです
きっちり作りこまれていると面白いし、ぷちだけなのも良いですが
アイドルが絡んでくるssはより面白いですな

またここが盛り上がってほしいですね。過疎ってくると共にネタも考えなくなったんですが、こうやって良いssが投下されると
眠っていたぷ虐心が目覚めます。自分は「ぷちどるいじめ」から興味を持ち、ここが出来るまでしい虐、ゆっくり、実装石など見たりしましたが
やっぱりぷ虐が一番好きです。

ぱうー!ぷいー!ぽえー!

本当作者はいいキャラを生み出しましたよね♪(拳を握りしめる)

937名無しさん:2015/09/14(月) 22:34:30 ID:1F9zp69M
妄想のヒントになれば良いけど…
原作では儲けてると言ってたけどそれでも事務所の修繕費で支出がデカいから、株主総会で株主達から追求されまくったりする話や事務所が何回も派手に壊れた事があるので、警察や東京都からの行政による指導もしくは処分でぷち達の立場や環境が変化する話などはどうでしょう?

938名無しさん:2015/09/14(月) 22:35:12 ID:yxv/LeMw
乙です。
素晴らしいものを読ませてもらいました!

939名無しさん:2015/09/14(月) 23:32:19 ID:BoJKAjFk
まぁ小鳥さんは職歴あるし再就職は可能だろう

面白かった!

940名無しさん:2015/09/15(火) 00:22:20 ID:SzovUfwI
乙です!

内容はもちろん、話の随所の表現が秀逸

裸のゆきぽ=土偶とか

ぷちます世界=幸せではなく快楽とか

『タチ、ネコ』と『攻め、受け』を絡めたネタも好きです

第三部投下時の『最後にちょっとだけ、あるアイドルが登場します。』は中西由里子だったんですねw

完結まで書き溜め済みと言う事で、未完を気にする事なく素直に楽しめました

楽しい4日間、ありがとうごさいました。次回作も楽しみにしています

941名無しさん:2015/09/15(火) 21:11:15 ID:RrIPo7lc
ssの未完作品は多いからね…

過去作品から新しい作品が出るのはいいですね。ぷ虐というジャンルが成熟してきた感じがします

『罪と罰と愛』とデレマスアニメ化、この二つが作者さんの手で化学反応を起こしたような傑作でした

終わってしまったのが寂しい… 少し『猫ロス』状態です

942名無しさん:2015/09/16(水) 12:56:49 ID:VeGWML/Y
たまには貴音が救済されるのも読んでみたい…可愛がった末とかフラグあったけれど

未完になってしまいましたし

943名無しさん:2015/09/16(水) 20:51:16 ID:GQGL4GTY
あふぅにはマタタビとか効果あんのかな
ラリリながら発情する金髪毛虫は相当キモいだろうな

944名無しさん:2015/09/17(木) 01:14:01 ID:CwqvvWRM
ゴロゴロ喉を鳴らしながらうっとりとすり寄ってくる金髪毛虫・・・

945名無しさん:2015/09/17(木) 03:16:45 ID:HW/fkdps
乙っ!
双海姉妹の最後の善行はゆきぽから武器を奪ったことだな、それを残酷だ、なんて…恐怖の野良ゆきぽを知らないな?

946名無しさん:2015/09/17(木) 08:29:15 ID:uVpxcLhU
もはや不潔で髪ボサボサがデフォルトのあふぅだが、もしも金持ちに飼われている個体がいたら

ヨークシャーみたいにサラサラ直毛ででっぷり太った腹を引きずって歩く
鳴き声も野太い
遊び相手に飼われてるゆきぽ(品種改良済)をいじめ殺す
こんな感じかな?なんとなくセンスの悪い成金とかに飼われてそう

947名無しさん:2015/09/18(金) 19:54:40 ID:mtgMyXJE
まとめの『な行』が充実してきましたね

1年くらい前は『た行』と『は行』の谷間的な感じだったのに

『長靴をはいた猫』と『二匹のレジスタンス』が揃ってるのが壮観

948名無しさん:2015/09/19(土) 01:57:25 ID:c20aIQII
は行のSSと小ネタのカオス具合が好き

949名無しさん:2015/09/19(土) 04:41:10 ID:.srnebMc
どの行にも必ず名作があるから何回も読み直してしまいますね。

もし『逃走中』のテレビ番組にぷち達が参加したら最後まで逃げきれそうなのは、ぴよぴよとみうらさんくらいですかね。
自分に文才があればこのネタでSSを書きたいくらいなんですが•••

950名無しさん:2015/09/20(日) 02:10:22 ID:v9rzGm1g
ぷちますのゲームでねかな〜?

こいつらがゲームに出てきたのって確か、アイドルマスターSPでの衣装扱いぐらいだし
一式衣装コンプリート購入のプレゼントでそれぞれもらえるけど
ぴよぴよだけは、なぜか単品販売(200円

ただソシャゲとかの有料ガチャで引き当てた日にはキレそうになるかも

課金P「諭吉を溶かして早速回すぞー」

(ゆきぽ水着バージョン)
(ちひゃー 演歌熱唱バージョン)
(あふぅ お昼寝バージョン)
等など
課金P「あああああああああああああああああああああああああ!!!」(精神崩壊

951名無しさん:2015/09/21(月) 00:02:16 ID:t0B97AAM
今度プライズで、手のひらサイズのぷちどるぬいぐるみが出ますね。
これは今まで出たぬいぐるみとあわせて、いろいろなベビぷちの妄想が捗るんじゃないの?

952執行人 ◆jcMzNHW8Yo:2015/09/21(月) 21:34:25 ID:mGMrDGl.
スレも終わりが見えてきたので、埋めで小品投下。


隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』


大量発生したぷちどるを有効活用できないか、人々は今日も考える……。

ノンフィクションの記録映像をお届けする、ケーブルネットワークチャンネルです。
今回の特集は、労働力として使われる世界各国のぷちどる達の様子です。
早速見てまいりましょう。まずは私達の身近にもある光景から……。


――どの業界でも人手不足が叫ばれる昨今、ある程度の知恵と体力があるぷちどる達は、
穴埋めや代わりとして人間と一緒に働いています。

ちっちゃん「めっ、めっ!」カタカタ ぴよぴよ「ぴー!」カタカタ

頭脳労働のできるぷちどるは、現在この二種に限られています。
言語の乏しさから、人を相手にした営業・接客はさすがに無理ですが、
パソコンや書類と睨めっこする仕事なら、任せておけば処理してくれます。

ちっちゃん「めっ!」トントンカンカン

ちっちゃんの方は機械の修理・メンテナンス等もこなせます。
ぴよぴよはあくまで事務型であり、エンジニアとしての能力は身に着けていないようです。

ぴよぴよ「ぴよっ!」パタパタ

しかし彼女は、実は肉体労働にも使えます。空が飛べるので、高所での作業ができるのです。
高層ビルの窓拭きなど危険な仕事も、ぴよぴよなら安全に従事できます。

ぴよぴよ「ぴっ、ぴっ、ぴーっ!」フキフキ

953隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:35:35 ID:mGMrDGl.
ただし、建物の建築や解体は力仕事過ぎるので、ぴよぴよも嫌がります。
こうした状況では、より適したぷち達が使われることになります。

まこちー「まきょ!」 ゆきぽ「ぽぇーっ!」

二匹とも怪力を誇るぷちです。まこちーは建築に、ゆきぽは解体や取り壊し作業に使われます。
役割が分かれる理由は、知能は同程度でも理性や分別でゆきぽに問題があるためです。

ゆきぽ「ぽえっ、ぽえっ♪」ザクザク

目を離せばすぐ穴を掘り、壁をぶち抜いてしまう習性がゆきぽにはあります。
ぷちが労働に使われ始めた頃、工事現場では組み立て中の建物をゆきぽが破壊する事例が相次ぎ、
それと同時に怒った作業員がゆきぽを殺してしまいました。

大工「建てたばっかのフロアに穴掘って寝てましたからね……」

ブンッ、ドカッ、グシャッ!!
ゆきぽ「ぽぎゃあああああああああああっ!?!?」
※スコップ(人間用)で殴り殺されるゆきぽ

悪癖が知られ、ゆきぽはもっぱら破壊に特化した工事で使われるようになりました。
コンクリ崩しの他、地中から束石や柱を取り出す作業にも活躍中です。

ゆきぽ「ぽえええええっ!!」ドガアン

この力を工事以外でも使えないかと、北国や雪の降る地域では、ゆきぽに除雪も行なわせています。

シンシン……(降り積もる雪)
ゆきぽ「ぽぇ……ぽぇ……」ザクザク

変わったところでは、北海のカニ漁船がゆきぽを連れて出航しています。
極寒の海では、波しぶきまでが凍り、船に数トンもの氷として張りつきます。
氷を打ち壊す作業に、ゆきぽが利用されたわけです。

※ベーリング海のカニ漁船
ゆきぽ「ぽぇ〜……ぽぇ〜……」ガンガン

954隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:36:20 ID:mGMrDGl.
氷は石のように硬いですが、ゆきぽにとっては土と変わりません。
また、航路を阻む流氷の除去にもゆきぽは使われます。

船員「おら、行ってこい」
ゆきぽ「ぽぇ〜……」サムイヨー

ゆきぽに限らず、ぷち全般は寒さに弱いため、こうした環境では長生きできないようです。
もっとも、船員は使い捨て承知で連れて来ているのですが。
しかしゆきぽは、さらに大きな問題も抱えていたのでした。

船長「冬には『三割増しで雑』になるんだってな。どこまでもふざけた奴だぜ。
甲板に穴あけられたり、船べりをぶっ壊されたこともあって、たまんなかった。
そういう時は、冷たい海に沈んでもらったがね」

ゆきぽ「」ブクブク

この厄介な習性は、労働に際して想像以上に不利益をもたらします。
ただでさえ難ありな生物なのに、厳冬の季節にはそれが30パーセント増しになるからです。
よって、前述の除雪作業もずさんになることが多く、結局住民に始末されたりします。

住民「雪下ろしに使ったら、屋根を壊しやがったんですよ……」

ガロロロロロロロ、ブチュブチュブチュ!!
ゆきぽ「ぽびぎいいいいいいぃぃぃぃっ!!」
※除雪車に轢き殺されるゆきぽ

……と、こうした結果になりがちなので、ゆきぽに労働をさせる場合は冬の時期を除く、
あるいは年中暑い地域で働かせるケースが増えてきました。

ゆきぽ「ぽぇっ、ぽぇっ……」ザクザク

寒い国から一転して、ここはアフリカ。ダイヤモンド鉱山です。
採掘に当たり、ゆきぽの穴掘り能力は重機並みの効率を見せています。

作業員「仕事を取られるから、現地の連中も歓迎はしてないんだけどね。
それでも命に関わるような危険な場所には、まずこいつを向かわせるよ」

955隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:37:26 ID:mGMrDGl.
ゆきぽを使えば、わざわざ大きな坑道を造らないで済みます。
そもそも鉱山というのは暗く狭く、そして暑くて息苦しい所です。
落盤の恐れとも隣り合わせの中、スコップで内部を掘り進んで行きます。

ゆきぽ「ぽふっ、ぽふっ!」ゴホゴホ

大量のほこりも発生します。目と気管を侵され、肺が蝕まれます。
日本でも、江戸時代の佐渡金山の様子は「地獄」と、はっきり記録されています。
じん肺や事故により、当時の鉱山労働者の寿命は、30歳程度だったそうです。
技術の進歩や普及が遅れた国では、その状況とあまり変わりません。

モワ〜〜〜〜ン……
ゆきぽ「ぽ?」

まだまだ危険はあります。有毒の天然ガスの存在です。
うっかり掘り当ててしまうと、トンネルがそのまま自分の墓になります。

ゆきぽ「」アッテムト

これほど過酷な労働であっても、その報酬は微々たるものです。
ゆきぽの好物であるお茶とたくあんは日本でなければ調達が難しく、
入手できたとしても設備がなければ保存もできません。

作業員「奴らは宝石の価値をよくわかってないから、盗まれる心配もない。
人間だと、盗掘が原因で殺し合いまで起きるんだ」

最近では犯罪防止のため、国の政府が鉱山を直接管理するようになってきました。
そうした場合でも、ゆきぽは採掘の尖兵として使われています。

ゆきぽ「ぷいぃぃぃ……」

暑い地域といえば、砂漠も外せません。油田の調査・開発にもゆきぽは駆り出されます。
砂漠は、実際には硬い地表が大半を占めており、掘るのは大仕事です。
そんな中、ゆきぽのドリルスコップは、ボーリングの代わりになります。

ゆきぽ「ぽぇぇぇっ!」ガリガリガリ

956隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:38:45 ID:mGMrDGl.
上手いこと油の泉に辿り着けば、儲けものです。けれども、この採掘にも危険はいっぱいです。
そのまま油の中で溺れ死んでしまったり、随伴ガスによって中毒死したりします。
先ほどの鉱山の光景と一緒ですね。

ゆきぽ「」チーン

加えて、言うまでもなく砂漠は過酷な環境です。寒いのはダメだけど、暑過ぎるのもダメ。
心身が消耗し、最後は衰弱死するゆきぽがほとんどです。

ゆきぽ「ぽぇ……ぽ、ぇ……」

なまじ馬鹿力であるがゆえに、とことん利用されてしまうゆきぽ。
いっそ、あふぅやちひゃーのような無能であったら、ここまで酷使はされなかったでしょう。
他のぷち達も、その特殊能力でハードな仕事をやらされたりします。
カンボジアでは、分裂はるかさんを用いた地雷処理作業が注目されています。

「どーん」「ヴぁーい」「どーかーん」「がっかぁ」
※『ぷちの愛でも地球は救える?』より

最初から死を強要した酷な仕事ですが、当のはるかさんはよくわかってないようなので、
まあいいんじゃないでしょうか。

はるかさん「かっか?」

しかし性質が害獣であるぷちの扱いは、どれも家畜以下となります。
ちっちゃん達と比べれば、ゆきぽらの境遇は悲惨なものです。

やよ「うっうー!」ζ*゚ヮ゚)ζ

やよもまた、ゆきぽと同等に見なされているぷちです。
優れた聴覚と嗅覚を持つので、警察犬の代わりを期待されましたが――、

やよ「うー……」ζ*=o-)ζ スンスン

チャリーン……
やよ「うっう〜!」ζ*^ヮ゚)ζ ダッ

仕事そっちのけで銭や食べ物に飛びつく習性は、矯正できませんでした。
しかも甘ったれで労働を嫌がるので、やよを利用する時はよく鉄拳が飛びます。

ボゴオッ!
やよ「う゛ぅ〜〜っ!!」≡つ:)゙p゙)ζ,';,:'

957隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:41:08 ID:mGMrDGl.
こうして言うことを聞かせます。逃げられないよう首輪と縄もおまけです。
海外では、やよを食材探しに使う地域があります。

やよ「うぅー……」ζ*TO゚)ζ

ここはイタリア。世界三大珍味の一つ、トリュフが採れる地方です。
香りを辿って、やよがキノコを探し出します。

やよ「うっうー!」ζ*゚ヮ゚)ζ ココホレワンワン

より高級な白トリュフは、地中に埋まっています。香りの強い貴重品です。
本来これを見つけ出すのは犬の役目でしたが、やよでも可能なことが証明されました。

やよ「うっう〜♪」ζ*゙ヮ゙)ζ ポワーン

食べ物への執着心が強いせいか、トリュフを抱えてよくトリップしています。
掘り当てたら、さっさと取り上げるようにします。

やよ「うぅ〜〜!?」ζ*T0゚)ζ

犬も白トリュフが好物なため、見つけた際には人間と奪い合いになったりします。
よって作業者は噛み傷だらけ、なんてことが多かったのですが、やよならその不安も薄いです。
しつこく離そうとしない時もありますが、容赦なく殴って振りほどきます。

バキィッ!!
やよ「ぇう゛ぅぅぅっ!!」≡⊃:)TQ゚)ζ,',:'

キノコといえば、違う仕事もあります。新種のキノコが、毒キノコかそうでないかの判別です。
動物的感性に期待され、やよがこれらを食します。

やよ「うう〜〜♪」ζ*゙〜゙)ζ ムシャムシャ

が、実は野生動物も毒キノコを見分ける能力なんぞは持っていません。
やよも例外ではなく、毒であっても美味なキノコはそのまま食べてしまいます。
※ベニテングタケなどは、旨味成分の強い毒を持っているという。

やよ「う゛ぅ!? ぅう゛う゛う゛う゛!!」::ζl゚'O゙)ζ::

958隔離スレチャンネル『世界で働くぷちどる達』:2015/09/21(月) 21:42:42 ID:mGMrDGl.
そしてその後で地獄を見ます。まるでロシアンルーレット。
まあこの役目は、やよでなくとも無能なぷち達にも務まるので、それらも使われます。

あふぅ「ナノ!」 ちひゃー「くっ!」 こあみこまみ「とかー!」「ちー!」

料理すれば、大抵のキノコは食べられそうに見えるものです。
何も知らないぷち達は、意地汚く完食してゆきます。

あふぅ「ナーノ♪」メッシメッシ ちひゃー「くっく〜♪」パクパク
こあみこまみ「とっかとっか!」「ちっち!」モグモグ やよ「うっう〜♪」ζ*^〜^)ζ ハムハム

――1時間後。

あふぅ「zzzzz」(セーフ)
ちひゃー「ぐぅぅぅぅぅん!! ぐぅぅぅぅぅん!!」ゴロゴロ(腹痛、下痢)
こあみ「ときゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ♪♪♪」ヒャッハー(ワライタケ)
こまみ「ちー……ちー……」ユラユラ(朦朧)
やよ「うぴぃやぁあああああああああああああっ!!」::ζli 。Q゚)ζ::(発熱、嘔吐、失禁、悪寒、中枢神経障害、筋肉痙攣、内臓疾患、多臓器不全、幻覚、せん妄、etc)

もはや労働というか単なる実験です。モルモット。
それでも人間にはできない〝仕事〟であり、取れたデータはしっかり記録されます。
ぷちどる達の血と汗と涙は、人間社会で確かに役立っているのです。

やよ「」ζ#;゙p。)ζ


いかがでしたでしょうか。今回紹介したぷち達の労働模様も、ほんの一例です。
隔離スレチャンネルでは、これからもぷちどるのドキュメンタリー映像を放送してゆきます。
それでは次回まで、さようなら。

たかにゃ「『再見』」

終わり

959執行人 ◆jcMzNHW8Yo:2015/09/21(月) 21:54:28 ID:mGMrDGl.
一スレ埋まるのに半年以上か……。ぷ虐の高度成長期(二年ぐらい前)が懐かしいです
まあ最近の作品の方が、完成度は高いと思うんですけどね
wikiでは現在、「ま行のSS」が狙いどころ

960名無しさん:2015/09/21(月) 22:09:17 ID:9QiTGoHQ
おつおつ
最近昔のスレを読んでるんだが複数のssが1日に投下されたりしててすごく懐かしくなった
今ののんびりしたスレも好きだが寂しくはあるよねえ

961名無しさん:2015/09/21(月) 23:03:44 ID:nkrW.DN.
執行人さん久しぶりですね、乙です

ピークの時は一日に250以上の書き込みがあって、三日四日で一スレ埋まってたからな〜
ssは今でも投下されるけど、絵師さまの作品はしばらく見てないですね
自分がリクエストした絵を書いてもらったのは、いい思い出です

962名無しさん:2015/09/22(火) 00:35:54 ID:pqtSajHw

原作の新刊がでればまた違うんでしょうけどね

963ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 00:49:21 ID:QJ/Cg0Vo
矯正部長&現場取材編1

南方氏に訊かれるまでもなく、次の取材先は矯正部だ。私は少し腹立たしくなったが、表には出さない。
私は研究部を出る際に、残っている飛鷹氏に再度来るかもしれない旨を伝えたが、飛鷹氏はあまり期待しない方がいいですよと返してきた。
研究部を出ると、南方氏は私を矯正部に向かうのを急かすかのように進む。その様は先方が待ちくたびれていると言わんばかりだ。
私は南方氏の行動に辟易しつつ、ついて行く。
矯正部の前に着くと、南方氏は所長室や研究部と同様の行動を取り始めた。しかし、南方氏が扉を開けようとしたところで扉が開き、1人のスタッフが出て来た。

スタッフ「待ってたよ。南方君。其方が取材に来た迫さんだね?」

そのスタッフの開口一番の言葉の内容から、石越矯正部長と推定出来る。そして、スタッフの次の言葉で、それは確定に変わった。

スタッフ「迫さん。お待ちしておりました。私が当矯正収容所矯正部長の石越です」

石越部長は挨拶もそこそこに、私に提案をする。

石越「中田、米山の順で来たのでしょうから、此方でウチ(矯正部)の組織について説明するより、現場を回りながら説明した方が良いかと思うのですが…如何でしょうか」

石越部長は続けて提案理由を言う。

石越「此方で私を取材した後は現場に向かわれるのでしょう?しかし、現場のスタッフは相手が相手ですから、全てが迫さんの取材や質問に応じられるかどうか…」

私は暫く考えた後、石越部長の提案に乗る事にした。

石越「有難うございます。最初はみうらさんの現場に行きましょうか。失礼ではありますが、行きがてらウチの組織について説明致します。御承知下さい」

石越部長はそう言うと、みうらさんが収容されている現場に歩を進める。私と南方氏はそれについて行く形になった。
石越部長の説明では、矯正部は矯正課と庶務課があり、矯正課の下には、ちっちゃんとぴよぴよを除く各ぷちどるを担当する班と処理班で構成されている。
ぷちどる担当班はそのぷちどるの矯正プログラムを実行する他に、プログラム実行外の時間帯では、そのぷちどるの世話も行うそうだ。
また処理班は、残念ながら裏から出て行くぷちどるの対応の他、特にこあみ・こまみとはるかさんの「処理」を行っているという。
庶務課は矯正部に関係する雑務を一手に引き受けている。

964ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 00:58:03 ID:QJ/Cg0Vo
尚、研究部へのプログラム効果報告に関しては、矯正課が行っているとの事。
私は処理班がこあみ・こまみとはるかさんの処理を何故に行っているのか気になり、石越部長にその点を質問した。
石越部長は不思議そうな顔を見せ、

石越「中田から聞いていませんか?」

と逆に訊いてきた。
その一言を聞いて思い出した。
中田所長はこあみ・こまみをはるかさんの食料に、はるかさんは家畜として扱うと言っていた事を。
つまりは、そういう事だと理解した私は
石越部長に詫び、質問を取り下げた。

石越「お分かりいただければいいんです」

石越部長は柔和な笑顔を見せたが、それも一瞬の事で、真顔に戻り、

石越「そろそろ、みうらさんの現場です」

と私に伝える。その直後、みうらさんについての説明を始めた。
石越部長の説明によると、現在、矯正収容所に収容されているみうらさんは、およそ90体。30体を1つのグループとし、3グループに分けているとの事。また、みうらさんの特徴的行動は矯正プログラムによる矯正は不能の為、それに代替するモノとして、有益性を高める為の教育をみうらさんに実施しているという。

石越「言い換えると、それが矯正プログラムと言ってもいいかもしれません」

更に、みうらさんに関しては、教育の進度に応じて色別にスカーフを渡しているそうだ。
収容されたばかりのみうらさんには青。
教育の第一段階をクリアしたみうらさんには黄。
教育の第二段階をクリアしたみうらさんには赤。
教育の第二段階をクリアし、かつ、教官としてスタッフに抜擢されたみうらさんには紫。
尚、赤のスカーフをしているみうらさんは何時でも表から出られるそうで、また、紫のスカーフをしているみうらさんはみうら教官と呼ばれ、ある意味後輩と言えるみうらさんに教育を実施しているとの事。

石越「そうした形をとるようになったのは最近です。みうらさん同士なら、理解も早まるだろうという判断からです。また、みうらさんにはスカーフを絶対になくさないよう、口を酸っぱくして言っています。スカーフをなくした状態で此処に収容されれば、また1から教育を受けて貰う事になりますし、それを特に収容された事のないみうらさんに使われては洒落にならない事態が生じないとは限りませんから」

石越部長の説明が終わって間もなく、『みうらさん担当班』と書かれたプレートを掲げた扉の前に着いた。

965ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:04:37 ID:QJ/Cg0Vo
石越「迫さん、みうらさんの現場に着きました。まずは担当班のスタッフに会いましょう。」

石越部長はそう言うと、扉をノックし、

石越「道明寺(どうみょうじ)、入るぞ」

と言って扉を開け、中に入って行った。
続けて私と南方氏も入る。
中はそれ程広くはなく、入口から見て奥に1つ、両脇に4つのデスクがあり、また、両脇のデスクの上にはそれぞれ小さなデスクがある。奥のデスクにスタッフがいるが、そのスタッフが道明寺氏であろう。
道明寺氏は顔を上げ、石越部長を認めると立ち上がり、敬礼する。

石越「道明寺、此方が取材にいらした迫さんだ。」

石越部長の言葉に道明寺氏は此方に顔を向けた。

道明寺「これは失礼しました。私がみうらさん担当班長兼教官の道明寺です。お話は伺っております」

道明寺班長は私に挨拶し、続けて班員の紹介を始めた。

道明寺「今は時間帯なので不在ですが、当班には、私の他に、一之瀬(いちのせ)、来栖(くるす)、西園寺(さいおんじ)、早瀬(はやせ)の4名が教官を勤め、各々に教官付のみうら教官がいます」

道明寺班長の話を聞いて、両脇のデスクにある小さなデスクはみうら教官用だと理解した。

石越「道明寺、厳しいならいいんだが、迫さんのこの現場での取材が終わる迄の間でいい、時間を貰えないか?」

石越部長の依頼に、道明寺班長は少し考えたようだが、

道明寺「分かりました」

と応じた。
石越部長は此方に顔を向け、

石越「以降の説明は道明寺が行います」

と言った。

道明寺「部長、私が応じなければ部長が説明なさるつもりだったのですか?」

石越「その通りだ」

道明寺班長は軽く頭を振り、

道明寺「そういう事でしたか…。迫さん、まずは講義室の前に参りましょうか」

と言って、移動を始めた。私はそれについて行く。
尤も、講義室は道明寺班長がいた教官室(私の便宜上の表記)の隣にあり、3室ある。道明寺班長の説明によると、1室当たりの収容数は40だという。
石越部長からの説明ではみうらさん30体で1グループと聞いていたので、その差を尋ねてみた。

道明寺「30体で1グループとしているのは、学校教育に於いて、教諭1人に児童生徒は30人で行うのが理想だという話は聞いた事があるかと存じます。ウチはそれを踏襲する形になっています」

966ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:11:56 ID:QJ/Cg0Vo
道明寺「講義室の収容数との差は、みうらさんへの教育課程に関わるのですが、稀に段階をクリア出来ない個体が出ます。クリア出来なければ、その段階に留まらなければなりません。つまりはその受け皿です」

みうらさんはどういった教育を受けているのかは分からないが、躓く個体もいるとは…。

道明寺「其処の覗き窓から、中の様子を御覧いただけますよ。通常は私や石越が様子を見る為に使用しています」

道明寺班長が指したところに取っ手の付いた小さな扉が見えた。それを開くと、講義室内全体を見渡す事が出来る。
時間帯という事もあり、30体ほどのみうらさんが皆、教官から講義を受けている。此方から見て左手には、講義をしているみうらさ…教官がおり、右手には教官たるスタッフがいるのが確認出来た。
室内に30体のみうらさん。壮観に思うのは私だけだろうか?
よくよく見ると、講義を受けているみうらさんの頭にはヘッドホンが掛けられ、首には黄色のスカーフが巻かれている。この講義室にいるみうらさんのグループは、第二段階に入っているグループだというのは分かるが、ヘッドホンを掛けているは何の為なのか?
私はよく分からないまま、覗き窓の扉を閉めた。
道明寺班長はそれを待っていたかの如く、私に訊いてくる。

道明寺「ところで迫さん。みうらさんへの教育課程等については、石越から説明を受けていますか?」

私は石越部長から受けた説明を話した。

道明寺「うーん…細かい話になりますから、その時点では、石越は其処を説明していなかったのでしょう」

道明寺班長はそう言いつつ、まずは教育課程の説明を始めた。
第一段階はみうらさんの基礎知識や人間への基本的な接し方等のルールといった、生きていく為の土台を築く事を中心としている。また、第一段階は二期に分け、みうらさんの基礎知識が中心となるモノを前期、人間との接し方等のルール類を後期に配している。
第二段階は、みうらさんの特徴的行動を悪用されない為の知識を叩き込む事が主だという。
第一段階の前期、同じく後期、第二段階の各所定の課程を満了すると、次の段階に進めても(第二段階に関しては表に出しても)良いか否かの試験がある。
大抵の個体はパスするのだが、稀にパス出来ない個体がいる。その個体は、各段階でそれぞれ最大3回迄同一段階を再び受ける事が出来るが、それでもパス出来なかった場合は、裏から出て行って貰う事になるとの事。

967ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:19:01 ID:QJ/Cg0Vo
道明寺「いかに人間に害を与えないみうらさんとはいえ、悪用しようとする人間の手に渡さない為にも、我々は泣いてその個体を裏から出す手続きをとります」

そう話す道明寺班長の表情は曇っていた。
実際に裏から出て行った(この場合は裏から出て行かされたと言うべきか)みうらさんがいるのだろう。
直後、道明寺班長は頭を振り、教官についての説明を始める。
担当の教官はグループ毎に決まっており、第一段階の前期に担当した教官とその教官付が、そのグループのみうらさんが赤のスカーフを得る迄担当する。つまり、一度教官が決まれば、試験にパス出来なかった場合を除き、教官が変わる事はないという事だ。

道明寺「それ故、私は勿論の事、各教官・教官付全員がみうらさんに教育しなければならない知識等に欠落があってはいけないのです」

道明寺「みうらさんの教育課程等の説明は以上になります。引き続き、みうらさんの収容室に参りましょう」

道明寺班長は再び移動し、私はそれについて行く。
みうらさんの収容室も、(教官室や講義室から)それ程離れていない所にあったが、其処に行くには格子戸を通らなければならない。

道明寺「みうらさんの特徴的行動から考慮すると意味はありませんが…」

収容室は5室あり、1室毎の収容数は40。うち3室は教育を受けているみうらさんの各グループが段階別に収容されている。
他の2室はそれぞれ赤のみうらさんと、教育を受けられないみうらさんを収容している。

赤のみうらさんを収容?教育を受けられない?

私の疑問に気付いたのか、道明寺班長は続けて説明する。

道明寺「先ほど収容と言いましたが、此処にいる赤のみうらさんは、教官の素地があるという判定を下されています。現在は14体の赤のみうらさんがいます」

道明寺「しかしながら教官の枠は限られていますので、赤のみうらさんは収容室限定のスタッフとして扱っています」

赤のみうらさんは主に、時間帯では各収容室や(収容室のある)区域内の清掃等の手入れが中心であり、時間外では区域内の管理を行っているという。
その説明を受け、私は先ほどの格子戸は区域をはっきりさせる目的が主だと推定した。
続けて道明寺班長は教育を受けられないみうらさんの事情を話す。

968ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:26:23 ID:QJ/Cg0Vo
現在は収容所側の事情により、あるグループの教育を開始する前に第二段階のグループが赤のスカーフを得た後でなければ、そのグループは開始出来ない状況にある。その対策として施設や人員を増やす案が出ているが、教官適性のあるスタッフがなかなか見つからないのと、以前はグループの個体数が1桁の時もあった為、難しいとの事。
故に、教育を受けられないみうらさんのグループは、第一段階前期が開始出来る迄の間、「建前上」収容室区域に幽閉される形になる。
みうらさんの特徴的行動を考えれば「建前上」と言うのもむべなるかな。

道明寺「出来る事なら、そうした事態は避けたいのが本音ですが…そうもいかないのが実情です」

道明寺「また、赤のみうらさんや教育を受けられないみうらさんに関しては、石越は無論の事、中田も許可しています」

これに関しては、石越部長からの説明では触れられてなかった部分であったが、把握しているのだろうか?後で訊いてみる事にしよう。

道明寺「今なら、赤のみうらさん達がこの区域内を清掃していますから、会いますか?」

道明寺班長が私に提案するが、当の赤のみうらさんからならまだしも、手を休ませてしまう気がして乗り気にならない。
丁重にお断りした。

道明寺「分かりました。では戻りましょうか。お尋ねになりたい点がありましたら、どうぞ」

私はこれ迄に訊きそびれた所を訊く事にする。
講義室にいるみうらさんはヘッドホンを掛けているが、何の目的でそうしているのか?

道明寺「講義内容を聞く他に、外部からの音による特徴的行動を防ぐ為です。尤も、ハウリング等、ヘッドホンを通じての音はやむなしとしていますが、極力生じないよう、させないようにしています」

道明寺「尤も、そうした事態になっても、みうらさんが自身の意思で此処へ帰ってくるよう教育はしています」

みうらさんが自身の意思で帰ってくる、とはどういう事か?

道明寺「此処は説明していませんでしたが、当収容所で『収容』しているみうらさんは、青と黄のみうらさんだけなんです」

道明寺班長のその回答を出来る限り纏めると、
みうらさんはこの収容所の中では最も脱走し易い(と解釈出来る)ぷちどるであり、またその脱走先も把握出来ない。故に収容所側が連れ戻す事は難しい(T市内に限っては、T市民の協力もあって戻って来る事が多いという)。

969ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:34:06 ID:QJ/Cg0Vo
しかし、逆に考えれば収容所に戻るのも容易である筈。「収容」されているみうらさんが脱走した事実が確認されてから、翌日の朝迄に戻ってくるなら不問、戻って来なければそのみうらさんをグループから抹消し、以降に戻って来ても第一段階前期からやり直しという措置をとっており、第一段階前期開始時にその旨を伝えている。
尚、収容所にいる赤のみうらさんはそもそもが表に出られる為、問題ではなく、また、教育を受けられないみうらさんは「預かり」の状態で、まだ「収容」されていないという扱いにしている為、問題にしないとの事。

教官は貴方を含め5人いるが、教育を受けているみうらさんのグループは3つある。貴方は別としても、1人余る格好だがその教官は何をしているのか?

道明寺「担当のない教官は、各グループで機材を用いた講義を行う際の設置・撤収作業や、あるグループの担当教官の不在時の教官付の監督、又は担当教官・教官付が共に不在の際に代わって講義を行って…」

?「あらー」

みうらさんの声したと思ったと同時に、私の質問に回答中の道明寺班長の頭上に何かが乗った。私が視線を上げるとみうらさんが2体いる。また、どちらがしているかは分からないが、紫のスカーフ見えているので、1体はみうら教官で間違いない。
道明寺班長は慌てる素振りもなく、頭上にいるみうらさんを1体ずつ掴み、床に置く。そして、紫のスカーフを首に巻いているみうら教官に顔を向け、

道明寺「早瀬付のみうら教官。『また』連れて来たのですか?」

と問う。

みうら教官「あらー。あららー」

道明寺「このみうらさんが街中にいたからといって、人間と接触したという確証はないのですよ」

みうら教官「あらー、あらー」

道明寺「…人間の役に立つみうらさんを増やしたい、と言うあなたの考えは分からなくもありません。しかし、何度繰り返しているか分かっているのですか?」

道明寺「このみうらさん自身が此処へ来たならばまだしも、正規の手続きを経ない預かり・収容をスタッフたるあなたがしてどうするんですか?」

みうら教官「あらー…」

道明寺「『せめて今回は…』ですか…。次に同じ事をしたら、前々から出ていた早瀬の要求を呑みますよ。いいですね?連れて来た以上はやむを得ませんから、そのみうらさんは例の収容室に入れなさい」

みうら教官「あらー」

みうら教官はみうらさんを連れて収容室区域内に消えて行った。

970ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:39:39 ID:QJ/Cg0Vo
私は道明寺班長とみうら教官のやりとりをただ黙って見るばかりであった。

道明寺「失礼しました。先程の質問ですが…」

私は道明寺班長の言葉を遮り、

教育を受けられないみうらさんの多くは、ああいう形で来るのか?

と訊いた。

道明寺「最近は、という但し書きが就きますが、あの早瀬付のみうら教官が連れて来るのです」

道明寺「早瀬も『何で連れて来るんだ』としきりにボヤいて、私に教官付の交代を要求しています」

道明寺班長は苦々しく言う。

教官付の交代が生じた場合、交代させられたみうら教官はどうなるのか?

道明寺「赤のみうらさんに戻り、限定スタッフとして留まるか、表から出て行く事になりますが、今の早瀬付の場合は後者になるでしょう」

私はこれを最後と断った上で訊く。
みうらさん担当班の教官は全員ぷちどるの言葉が理解出来るのか?

道明寺「そうです。ぷちどるの言葉、少なくともみうらさんの言葉が理解出来なければ、ウチに配属される事はありません」

道明寺班長からその回答を頂いた直後、教官室の前に着いた。
私は道明寺班長に感謝の意を示した。
同時に、教官室から石越部長と南方氏が出て来た。説明を道明寺班長にバトンタッチしてからずっと教官室にいたのか…。

石越「迫さん、みうらさんの現場は終わったようですね。道明寺、有難う」

道明寺「いえ…それでは私は失礼します」

道明寺班長は教官室に戻る。

石越「次ははるかさんの現場に参りましょう」

971ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 01:44:00 ID:QJ/Cg0Vo
今回の投下分は此処迄です。
今後はぷちどる毎の投下になるかな…。

972名無しさん:2015/09/22(火) 09:37:45 ID:2nuc8vT.
>>961
ほぼ雑談だけでスレ消費した時は尋常じゃないと思いますた
あの頃の作者さん達は、今どれだけ残ってるのか

973名無しさん:2015/09/22(火) 09:44:06 ID:j.rnSZpw
虐待じゃないんだな

974名無しさん:2015/09/22(火) 15:28:12 ID:e2b8hXs2
ぷちますのアニメはまだ見たことないんですが、原作のクズな行動や無能さは改変されてたりカットされてるんですよね?

975名無しさん:2015/09/22(火) 16:11:35 ID:2kuyoqIo
>>974
ずいぶんと前なのではっきり覚えてませんが、原作と比べるとそうですね
途中オリジナルの話もあったりします。まあ、動くぷち達を見るのは
良くも悪くも面白いですよw

976名無しさん:2015/09/22(火) 17:42:09 ID:zFF6o5tI
>>974
ゆきぽが壁をぶち抜いたり、プールの底を掘ったり、いぬ美相手にスコップを構えたりするシーンはない
一期は原作準拠、二期はアニメオリジナルが多い(二期はなぜかやよの出番が多い)
ぷちどるがとてとて歩くのを見て色々な感情が沸き上がってくることはまちがいなしだ

977名無しさん:2015/09/22(火) 17:45:47 ID:zFF6o5tI
新スレたてた

ぷちます!いじめ・虐待専用スレの避難所 九匹目
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/16471/1442911462/

978名無しさん:2015/09/22(火) 18:27:01 ID:fzPOFDck
>>971

乙です。

みうらさんが収容所を脱走しても自分の意志で戻って来る理由がイマイチ分からないんですが……

979ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 19:33:58 ID:QJ/Cg0Vo
>>978
有難う御座います。
本文中の理由では弱いという事でしょうか?

980名無しさん:2015/09/22(火) 19:36:20 ID:iH0ZTCDs
>>975 >>976
情報ありがとうございました。
ゆきぽの場合はカットされる場面が多いとアニメから見た人は原作を読んで驚きそうですね•••
連休中なのでアニメ見てみます。

981名無しさん:2015/09/22(火) 20:12:12 ID:fzPOFDck
>>979

戻るメリットがみうらさんに無いと言うか……

自分がみうらさんなら収容所に戻らずに気ままに暮らすでしょう

戻るメリットが何なのか、そう言う風に教育されたから、では弱い気が

982ぷちどる矯正収容所:2015/09/22(火) 20:34:33 ID:QJ/Cg0Vo
>>981
なるほど。しかしながら、赤のみうらさんになれば、なおのこと気ままに暮らせると思いますが、それはそれとして。

赤のスカーフを得ずに収容所に入る事三回目で、

無条件に裏から出て行く事になる

というのがあるならどうでしょう?
どうやって三回目と確認するのだ?というのは目を瞑って。

983名無しさん:2015/09/22(火) 20:39:28 ID:pqtSajHw
そこまで細かく考える必要ないと思います
書きたいように書けばいいのだ

984名無しさん:2015/09/22(火) 22:20:06 ID:tTKULpQk
765プロ自体そんなに広くないから
ぷちどるが5〜6匹ぐらいうろうろしてたら邪魔でしかない

985名無しさん:2015/09/22(火) 23:52:12 ID:lFNjIoXk
メガネを忘れた律子がぷちどるを思いっきり蹴飛ばすor転んで怪我するとか面白そう
他のアイドルとかになじられて逆ギレして泥沼に…

986名無しさん:2015/09/23(水) 00:00:42 ID:pdWfFiVA
>>982

ありがとうございます

脱走しない方が得だと思えるくらい収容所の待遇が良い、との解釈で良いのかな?

あんまりしつこいと嫌な気分になる人もいるので、これで終わりにします

987名無しさん:2015/09/23(水) 13:06:16 ID:VelAWDVw
うめ

988名無しさん:2015/09/23(水) 19:15:58 ID:q9pbUZvo
最近のssの完成度が高くなってる事が、逆に新規の作家さん候補には敷居の高さみたいなものを感じさせているのかも

もちろん良い作品を書いてくれる作者さんが悪い訳じゃないけど…

989名無しさん:2015/09/23(水) 19:50:45 ID:IUFUJe/s
御三家(ゆきぽ、あふぅ、ちひゃー)は、その行動から虐待しやすいけど
SSの数が増えてきて違う意味で難易度が上がってきていると思われる

逆にこいつら以外は、強力な能力や、割といい子ちゃんなので処理が大変という・・
しかし、御三家の今までの死亡した個体数で霊園作れる勢いだな

990名無しさん:2015/09/23(水) 20:47:21 ID:q9pbUZvo
ジョジョのスタンド的な進化をしてる気がする

初期はシンプルな虐待、次第に複雑な(ストーリーが)虐待になっていった、みたいな感じ

最近だと『ちっちゃんだけが知っている』が昔ながらのストレートな虐待って感じで印象に残ってます

991名無しさん:2015/09/23(水) 22:16:09 ID:./bFBZBo
ここで書かれてぷちの新たな魅力(ぷ虐)が目覚めるってあるからね
正直原作にお馴染みの三匹が出てこなくなっても、ここがなくなるまで虐待されるだろうな

自分からしたら三賢以外は虐待対象ですわ。いい子だろうと知ったことではないし

はるかさん かわいい!でも色々問題起こすから殴りたい!
いお ビーム撃つし、でこは伊織だけで間に合ってる!
ちびき 詐称キャラ、泣くと怪獣呼ぶし嫌い!
たかにゃ 三賢に劣る、無駄飯食らい、意外と泣き虫とか無個性アイドルを超えるあざとさ、二言しか喋れないとか意味が分からない無駄さ、なのに鳴き声はしじょっ!

992名無しさん:2015/09/23(水) 22:41:39 ID:VelAWDVw
虐待理由はささいなことで良いのだ

内容はライト、ヘビー問わず虐待することを止めなければいい
虐待する楽しさを忘るんじゃない

993名無しさん:2015/09/23(水) 23:56:06 ID:IUFUJe/s
ここで、ぷちどるたちが虐待され
原作ではPが虐待をうける(アイドル&ぷちどるから

994名無しさん:2015/09/24(木) 00:58:57 ID:EB3bP.5Y
原作みて改めて思ったのが
甘やかされて育った輩には、ろくなのがいないということ
双子しかり、ゆきぽしかり
こいつら泣けば許してくれると思っている甘ちゃんだから

995名無しさん:2015/09/24(木) 02:19:47 ID:sMQCGahs
ゆきぽ ..................(ザックザック)

996名無しさん:2015/09/24(木) 22:52:40 ID:UTm/uvPg
ぽやぁん!!

997名無しさん:2015/09/25(金) 01:31:51 ID:e8aXReAM
ぽんごぉおおおおおおおおおお!!

998名無しさん:2015/09/25(金) 02:48:52 ID:Mz/ap5co
ゆきぽ ばっばっ(手旗 ※「オナカスキマシタ」




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