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タ ├ を ＞ 、ヾｰ' ー｀⌒´ァ＿_ ﾉ { ヾー Lノ 〈_/｝ . に
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／ ＼ V ｀ー≠ー′
／ V{ ´￣｀ ヽ V
/ 〉 V ミ、 八、
イ ´ ￣ ﾑ V ＼＿ ｲニ三ﾑ
/人 ／ ﾑ ／￣ ヾ ヾニﾆィ}Xム
ィニニﾆ≧≠´ 〈 ／ ヽ} ｒ7 V三､ィXﾆﾘ
/三三ニ=ｒ´ V´ ＼7 ＼三三ｼ′
{ﾆ}≧≦ﾆ} ｀} ﾄ ヽ ﾞ¨¨´
{三=-=三} ヾ / } ﾉリ ＿＿
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｀マ ミ ､ |ニニ|
＞ ｒﾐ ＼ ｊ ｌ＿,
/ / i!ト ﾐ＼
/ / | i! ｀ る
/ / | i!
・安価でゲームをするスレでした。
・ルールは真・女神転生TRPG 魔都東京200Xを使ってました。
・世界観はよくある現代厨二退魔バトルものです。メガテン成分は多めですが、メガテンとは限らない。
・15禁くらいということにしておきます。セクシー系で。
・更新速度は亀の歩みです。
・月２で大体週末、予告なし、平均15レスの投下を予定しています。
・安価？ 知らない子ですね。
┏───────────────────────────────────────┓
・前スレ（上の方ほど新しい）
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1616917432/
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・データ確認用wiki（動いてない）
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・雑談所（放置）
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12368/1448323343/
・Twitterアカウント
かくうのツン@XDDDkyjV6
☆ 今までのあらすじ！！
・やる夫、封印から目覚める
・やらない夫、世界を敵に回す
・蒼星石、『血族』を離反
の状態で、世界を滅ぼす『十壊』をどうにかするのだ
◎ タイムスケジュール
12/7 『モーリアンビル襲撃』『やらない夫の演説』
12/11 『第二の夢』
12/12 『学園封鎖』
12/14 『やらない夫の集会』『間桐屋敷襲撃』 ←ｲﾏｺｺ！
12/24 クトゥグア到達予定日
現状
『やらない夫の集会』および『間桐屋敷襲撃』の最中。
◎ 『十壊』
済『テングサの歌』
やらない夫と弥勒菩薩のこと。
済『ひとりでおかえり』
アサギの『滅ぼすもの』
『冥王ニビル』
高位悪魔による宇宙戦で対策予定
『クトゥグア』
ビスケットハンマーで打ち返したい
『ビスケットハンマー』
ペルソナ使いが塔を登りつめれば利用できる
『木星の無力化』
泉こなたがなんとかしてくれるらしい
『哀しみからくり人形楽団』
シロッコ関係
『第四の万魔』
間桐関係
『人類補完計画』
『血族』関係
『第二次関東大震災』
詳細不明
☆登場人物紹介（『学園封鎖』直後状態）
◎『秘密結社入即貸本』
・やる夫
人の心を失った。
・やる夫の協力者
真紅、情報収集しながらうわさを流している
でっていう、ネビロス。地下で魔力を貯めている
長門有希、接触していない
・やらない夫
『エクスカリバー』を利用し『セイバー』化。
シロッコの暴走をすべて『見えない世界の敵』のせいに押し付け、救世主の道を歩む……？
・やらない夫の仲魔
ニャンコ先生、墨目、ねずみ男。
・やらない夫の協力者
天龍、シグ。『血族』を裏切った。
鹿島、お色気担当
ダル、『異端審問官』。スーパーハカー。
ミスト、四ツ目。のけもの。
ディオ、『学園封鎖』で宿敵ジョニィ・ジョースターと相打ちになった
『甘味処ニュクス』の『糖分同盟』
・蒼星石
やる夫の姿をしたニャルラトホテプに気付き、『血族』を離反。
その後の着地点は見えていない。
・蒼星石の協力者
麻呂、実は正気だった。ニャルラトホテプ殺すべし。慈悲はない。
ジャギ、麻呂に助けられ、生きていた。
ロストスキル、呪いにより死にそう
黄泉、『血族』をスパイしている
・夢宮アリカ
ふつうのおんなのこ。
・アリカの協力者
エダ、ヨランダ。暴力教会でアリカをかくまい情報をくれる
マイケル小原、おしいちゃん。ガンダム（？）をくれた
聖詠刹那、ガンダムではないがガンダムだッッ
イナミ、『蛇身』。刀を直す代わりにアリカに修行をつけた
・ペルソナ使い
『夢の塔』の攻略中、攻略に参加すると日中は疲弊して動けない
・真紅の協力者
やんねえ香、ロラン。もうひとりいたような……？
・元『破滅願望者』とその仲間
上条当麻、球磨川禊、花京院典明、雨宮夕日、白雪ひめ、美樹さやか、窓付き
・チームやらない子
やらない子、糸川はやぶさ、霧野タカオ、朝霧朝霧
・アトリーム亡命者
マーガレット・バートン、十六夜咲夜、長門弟（委員長）
・その他
アーダン、橘あすか、貞山青葉、浅葱みかん
・リタイア組
島津由乃、持病の悪化で集中治療室
早瀬浩一、アリーに倒され意識不明
◎復讐者たち
間桐慎二、『弓兵』、遠坂凛、ターニャ、ルイズ
◎『血族』
・ニャルラトホテプ
できる夫によってこの次元に縛り付けられた。やる夫の顔を奪い『血族』を利用する。
・藤堂志摩子
大首領。精力的に指揮を執る
・『緊急事態対策班』
ケンシロウ、キオ・アスノ、『狂死』、先代巫女、呂布、石田、龍田、馬岱
・杏子班
佐倉杏子、キュウべぇ、横島忠夫、ヴァイジャヤ
・『元老院』
フリット・アスノ、間桐臓硯
・『グレン団』
カミナ、シモン
・ジャギ掌握圏
巡音ルカ、博麗霊夢
・翠星石
意識不明
・『邪悪帝国』
金糸雀、曹操華琳、趙雲子龍星、そして雪だるまたち
・その他
上杉謙信、東京守護結界の要
鷹野三四、ニャルラトホテプの正体を知った
ラオウ、治療中
諫山冥、死んだ
高良みゆき、発狂。三四に保護されている
◎『教会』
・『武僧』アンデルセン派
やらない夫処刑反対 戦争反対
アンデルセン、ジェリド、カクリコン
・『異端審問官』
やらない夫処刑賛成 戦争反対
ジャンヌ・ダルク、ジル・ド・レェ
・『十字軍』
やらない夫処刑興味なし 戦争賛成
オズ、オズマ
・『武僧』シロッコ派
やらない夫処刑賛成 戦争賛成
パプテマス・シロッコ
ヤザン・ゲーブル
謎のヒロインX、客将
『リトルボーイ』と『ファットマン』、核天使
レイ・ザ・バレル、デュランダルの忘れ形見
・カトルカール
ノミ脚、バレリーナ、電波汚染主。第一世代。初期メンバー
爆弾蜂、アゲハチョウ、百足四肢。第二世代。飛行タイプ
戦車男、透明の敵、ボクサー。第三世代。初期改良型
大筒、戦闘機。第四世代。抗磁圧兵器
ロビン。第五世代。流体金属兵器
・その他
トールマン兄弟、兄が大使で戦争賛成派、弟は反対派
ジャジャマル、元グリーンベレー、アトリーム人
◎『警察』
・警察
阿部さん、バジルール、ノイマン、チャンドラ。あと白石。
・外部協力者
アセム・アスノ。そして謎のフードの男。一体何噛ネウロ……あるいは何藤誠なんだ？
◎アリー・アル・サーシェス
無所属、戦争狂、夢世界の黒幕、ディオとオズの肉体を操っている。
賢者の石。元同僚のキンブリーを殺害して奪った
『アンダーグラウンド』のdisk。ニャルラトホテプから授与された
『法務官 隠れしウラヴラスク』窓付きから授与された。絶対隠密
『法務官 エリシュ・ノーン』窓付きの母親を殺害して奪った。切断接続
『法務官 ヴォリンクレックス』窓付きの父親を殺害して奪った。能力奪喰
『法務官 ジン＝ギタクシアス』クロトワを殺害して奪った。解析改造
""ヾ;ヾ ;ヾ ;ヾ ﾞ;ヾ〃ﾐヾ ;ヾﾞ;ヾ ;ヾ 〃;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ;ヾ
;ヾ ;ヾ 〃;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ"
"" ;ヾ ;ヾﾞヾ ;ヾ ;ヾ;ヾ"ﾞ "iヾ;ヾ;ヾ" ﾞヾ;ヾ;ヾ"
"" 'ヾ;ヾ" || ｌ | ﾞ|/;ヾ" "
" |l ｉ ｌﾞｌ|
,,,, ",,,," ,,, " ,,, |l | ﾞ ｜| '' ,, " " ,,
ﾁﾝﾎﾟ ノﾉ 从ヾ ヽ、 ,,,ﾊﾅﾐﾊﾑﾘﾀﾞﾈ
,,,,, ∧_∧ " ∧_∧ (⌒─⌒),,,,, ,,,,、 ,,,,,, 新スレです
,,, (´･ω･`) ((・)ω(・)) （(^ω^`)） ,,, 楽しく使ってね
／￣ （ つ日ヽ （ ｏ旦o ） 日⊂ ）￣￣/ ,,, ,,,,, 仲良く使ってね
／ （＿＿）） （ ＿)＿ ） （（＿＿） / ,,,, ,,,,
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/
前スレ、よく連携できました、まる
ｒミ{ｽ
人 Y/＞ ⌒ ー- 、, -―- 、
/ (ノ⌒ , ヽ＿ ヽ
{ ィ{ { 八{_ｨ ） )､ ヽ ｀ヽ} /｀ヽ
ヽ人_＞-、⌒ｚｪメ} ｊ ） ⌒ｰ（ｽ_ｨ）
Уｊ iわ ｒか 〉ﾘイ ｀ｰ’
／ｒｲ{! ^¨＿ └ﾟﾞ 人{ｭ ミー-- ＿ チクタク・マジカる・シャルウィーゴー！
／ ｀ ヘ Vﾉ ｲ⌒ｰ⌒ ミー― ヽ
/ｒｰ┐ /⌒≧= 彡 ￣ヽ ヽ ｀ー 、 わたし、夢川ゆい。小学六年生！
/人｣/7≠ｭ､{ﾚィ´Y ／⌒人＿＿ ＼ 好物はお米！ 髪型はツインテール付のロングヘア！
}７⌒／ｲ7{ /7 ヽ {/ ｒｲ／￣ｒー’ ヽ ）
Yｰ〈｀ｰ非 ｀ﾟ /〉､人_{7ｊ ＼ ＼ ハ/ 500kcalパンチしない方のゆいって憶えてね。
/ｒ、人ァ⌒¨ヾ､〈/ 人 ￣ｊ ｒ ｒ､〈ヽ〉 八{
⌒i~ フ__ノヽ ﾞ¨ｰ{＿＼ Lﾊ｣ }｣ / 大変大変！
＼＞ｊヽ＿＞ｰｒ､＼ ＼ーァ≠⌒ （ とうとうやらない夫の前にディオが来ちゃった！
ｒ-、/ 、 Y⌒jﾉ＼ ￣ イ 人 ヽ 奇襲で女のコ二人がやられちゃって、ユメ大ぴーんち！
(⌒＞ーｧ､-＝≦ヽ＿ ｀ーノ／ ｀ー―
〉 ｢ ＞ ｀ヽ ミ 、´ だからって、ここで足を止めては居られないよね。
ｒ＝ ≧＿ 人ヘ｢ミ＿＿ノ┘ ＼ やる気、元気、寝起き……ユメカワ！
__ｊ／＞ 、_ノ ｊ 八 ＞、￣｀ー´
ノ／ /／ / / ｊ＞、＿ ィーﾐ､＿ノ⌒ヽ の気持ちで、なんとか乗り越えようね、やらない夫！
/⌒ ｢7/ ｢/＿}ｒ〜、 ｊ } 〉ヾ＿ノ ￣）
~⌒⌒T⌒７´￣⌒ >｀ー≠⌒ヽ ｀ー、
| / ／ ＼ ヽ
◎現状（八十三話開始時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
鳴り響く銃声と爆発で民衆はパニック？
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
カトルカール、石田龍田と交戦。ニャンコ先生と墨目にまかせて逃亡
女装、ヤザンに遭遇後、ディオに遭遇
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
偽ヤーボと交戦、自爆される
・やらない子
ヤザンを足止め
・はやぶさ
やらない夫と同行
・アサギ、タカオ
やらない夫と同行中、ディオに攻撃される
・その他
白雪ひめが参加。
その他は現状不明
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
様子見
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中に爆破された？
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたい
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦、自爆される
・龍田と石田
カルカールと交戦、やらない夫を取り逃がす
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
ねずみ男の放屁をくらい、やらない子に足止めされる
・ロビン
天龍シグを下した
・爆弾蜂
罠を仕掛けている最中に逆に罠にかかる
・他のカトルカール
石田龍田と交戦、やらない夫を取り逃がす
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
ドローン視野で連絡係
偽ヤーボを自爆させる
・合衆国軍
一般人を攻撃
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちを殺害した
アサギとタカオに致命傷を与えた
,,,;;;;;;;;彡彡;;之 ヽ
,,,,,,,,,,,,,;;;;;ll;;;;;;;;;;;;;;| l;;;;;;;ﾘ）ﾘ;;;;;;|l;;;;（ミ彡／､ Z
l|ヽ= 从;;l |l|;;ll;;;;;l|;;;;;l;;;ｲl;;;;;;;;;;;;;| l|;;;;;;-〈､|;;;;;;;;;;;;;;,,三∠ノ ﾌ な 地 き
ヽﾐ三从;;从|;（;;;;|l;;;;l|;;;（（;;;;;(ヽ乂;;;;;;／ﾉ人､从;;;;;;;;ヽ ∠ | ま 獄 さ
ﾐ二ミﾐ从 ; ;;;;;;ﾞ;;;;ﾞ;;;;;L{{ミ|Y;;";;;;;rﾃ'';''iﾞ''ミﾞ ｲ;;;;{ミヽ∠ﾉ ぬ す ま
ﾞヽ乏ﾞﾞ从ﾞ ;;ヽ､､_;;;;;;;;;;;;;{≧Y;ﾉﾉ=-ﾞ'''"´彡 ';;;;;;ヽﾞ,,', ヽ る ら に
＜彡l|;;;;;;;l､;}:/;r't;;;)＞| 彡￣""´ |;;;;;;〈 |.| } い. は
ノノｲ;;;;;;之"ﾞ"''"´ |､ _,,､::::: |;;;;;ノﾉﾘ;∠ //
ｲ彡l|;;;;ヽ ﾞ:::::::: j _,､ -)ﾞヽ::... |;;/- /;;/ミヽ ・・
l|//l|;;;l~､'､ :::: ﾞ''::ヽ,／ |（,,ノ;;;ヽ〉ﾐ/
ﾘﾉｲ;ヽヽ'､ ｀ﾞ'､l__,,､､､,,_,, / l||;;;;;;;;|∠＿
"´ﾉ|;;;;｀'-;', (t -'''ﾍﾍ)}} ﾘ ﾘ;;;;;;;/从ミ | ／￣＼/＼／￣＼
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 強烈無比な突きが、市民に発砲していた自衛隊員に突き刺さる。
|
|「たわばっ」
|
| 白目を剥いて失禁しながら意識喪失、両腕が内側から爆ぜる、命はあるが再起不能。
| ムスカ配下の自衛隊員は、この機に乗じてクーデターを企てていた。
|
| 市民を扇動し、武器を渡して暴動を起こそうと画策していたのだ。
| だが、『やらない夫の集会』に来た市民は国家転覆を望んでいなかった。
|
| 半数はやらない夫がどうなるのか見に来た野次馬で。
| 恐ろしいことに残り半分はやらない夫のシンパだった。
|
| 前者にはクーデターなど他人事で、後者はやらない夫が先導するならともかく、
| 他の誰かに差し出された場所についていく気はしなかった。
|
| 『集会』に集まる人間は現状に不満がある、ここではないどこかを求めているというムスカの分析は的を射ていた。
|
| しかし、それだけだった。
| 自ら銃を持つ気概は、彼らには存在しなかった。
|
| 結果、ムスカを盲信する自衛隊は、彼らの他人事感に憤慨し、罵り、殺害した。
| この戦場めいた状況に、彼もまた混乱し、酔っていた。一方的で過剰な暴力への歯止めが効かなくなっていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
/::/:::::::|:l::::::|l-ﾊ:::::| |:! ﾘ |:ﾉ-‐ヾ::::l::::l::|
l:::/l:::,:::::l:l::::::|rーﾄtﾐ､､__, ー/rc￣! |::A::::l::|
|:/ l::l:::::A:､:::|ヽ { iir, ｀ { uﾘ f-Vl::::::|
' |::l::::l,'/ヾ::{ ゝ-' ､ ｀｀ ﾄ,l,!:l:::::|
l:|:::::|.､､ゝヽ ＿___ ,ﾋi::::l:::/
｀ヾ,!::::::｀ゞ､ ,!/____ﾉ ,.イ:::::|ヾ:/
Y::::::::::::::::::ー-,/､ ＿_,. ィ::::::::::l:::::::| X} ケンさん！
/::::::::_:::＿＿/::ー=-､ ,!>i:::::::::l::::::::| ヽ あっちはアタシらが行く！
/:::／ ヾ:＼:::::::::ヽVl:::|::::::::l:::::::::|
/:// |l:::::ヽ==,-' '='ﾍ:､::l::::::::::|
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/ .::.. |l:::::::::! ! ゝUﾘﾉ人|::::::::::::|
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＼ ＼ /￣｀ヽ､ヽ/,.／;;;;:::::::::::::::ゝ-.i i:-'::::::|:::::::::::::|
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 死と暴力の凶気に支配されつつある芝公園。
| この場において、正気を保つ佐倉杏子の存在は煌めいていた。
|
| 暴走する自衛隊を殴り、武装解除して他の誰かを助けに行く。
|
|「キオくん、暴徒の居場所は？」
|「向こうにも人だかりが、合衆国軍と誰かが交戦してます」
|
| 『やらない夫の集会』に集まった『血族』のうち、石田班はまっすぐにやらない夫を目指した。
| 杏子班とケンシロウとキオはここまで、市民の避難と自衛隊及び合衆国軍の鎮圧に努めてきた。
|
| 駆け寄る二人、装甲車に乗り機銃を掃射する合衆国軍。全身ローブ姿の怪しい男が、血煙に変わる。
| 無謀にも機銃に正面突撃をするローブの勢力。
|
|「止ま……る、な……！」
|
| 剣を振り上げて、掠れた声で号令する包帯姿の人物。『異端審問官』のジャンヌ・ダルク。
| そこに合衆国兵のロケット弾が直撃。爆炎の中から無傷で現れる包帯姿。
|
|「狂信者めが！」
|「背、信者……め……ッ！」
|
| いくらジャンヌが無敵でも、彼女に従う『異端審問官』は猛烈な火線になぎ倒される。
|
|「ケンさん！」「おう！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＼＼ (´｀ヽ＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼(´｀ヽ＼＼＼＼＼＼＼＼＼
＼ (´｀ヽ :::::＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼ Y´｀ヽ、＼＼＼＼＼＼ (´｀ヽ :::::＼＼＼＼＼＼＼＼＼＼
＼(´｀ヽ ﾐ ＼ ::＼＼＼＼＼＼＼＼＼ﾐ'"´ヽ ,r=ﾍ⌒','"´ヽ＼＼(´｀ヽ ﾐ ＼ ::＼＼＼＼＼＼＼＼＼
＼ ＼ :::＼ .::＼ ::: ＼＼＼＼＼＼＼＼ ﾐ辷ｿヽｰ'ﾞ､ ヽ ＼＼ ＼ :::＼ .::＼ ::: ＼＼＼＼＼＼＼＼
＼＼ ＼,,;::ヽ ｀ヽ､,ﾉ´＼＼＼＼＼＼＼ ﾐ ヽ:::ヽ'ｿヽ:: ﾐ＼＼,＼,,;::ヽ ｀ヽ､,ﾉ´＼＼＼＼＼＼
＼＼＼ ＼ ＼,ィヽ _｀ヽ＼＼＼＼＼＼ ﾐ:;;:;:;::;'"´ .::. ﾐ＼ ＼ ＼ ＼,ィヽ _｀ヽ＼＼＼＼
＼＼＼＼ ＼,ノ }ィ´ ￣｀ヽ＼＼ (⌒ヽ,＼ ﾐ:..,.,....,.,.. :::::; ﾐヽ＿＼ ＼,ノ }ィ´ ￣｀ヽ＼＼
＼ _＼＼＼＼〈 ｰ‐〈＿_,...ィﾐ: ＼＼ ヽ ::｀ｰ';;'"´｀ヽ;::;;.. Y´｀ヽ、＼ 〈 ｰ‐〈＿_,...ィﾐ: ＼＼
＼ Y´ ｀ヽｲ'"´￣￣ヽ´ ｀ヽ ヽ＼＼｀. 、 ﾐ'"´ヽ ,r=ﾍ⌒','"ヽ '´ ｀ヽ ヽ＼
＼ ,ゝ､ {:: ｨ } ヽ ＼＼＼ ｀ヽ､ ﾐ辷ｿヽｰ'ﾞ､ ヽ ＼ ＼
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＼＼＼＼＼＼＼ （ ｀ｰﾑイ::::', :::: ﾐ＼爻ミヾｰ=ﾐヽミｰﾆｲムミ从ゞ' ｀ミﾐ爻ﾊﾐ､｀ーく ;: :::
＼＼＼＼＼＼＼ （｀ヽ､＿::;;;ﾉ :::::ヽ ﾐ､ 刈ヽミｰ=ミヾ从ﾞﾞﾞﾞムｲr;'￣ﾉ ﾐﾐﾐﾐr'}'ﾐ＼＼` ､__::
＼＼＼＼＼＼(´｀ ヽ､ ,ハ ;:'"´ヽ .::::: }＼ヽミヾミヽr≦ﾑt,キﾐゞ=ィ´ ｀ﾐ;r'ﾉ }ﾐ＼＼＼＼｀ヽ＿
＼＼＼＼＼(´｀ヽ :::::＼｀ーく ;: :: l＼＼｀ミ::::; ,彡三ゞ'; ;'"´ﾞ"´ ヾ__人ﾐゞ､＼＼＼ ＼//
＼＼＼＼(´｀ヽ ﾐ ＼ ::＼＼` ､__::::::::. //＼＼｀ヽﾐ;:., Lシ' ｌ ,, イ〉 ﾐ;; ヾﾒ,',＼＼＼＼ヽ
＼＼＼＼ ＼ :::＼ .::＼ ::: ＼＼＼｀ヽ＿／// ＼＼＼ ヾ::':, ｀,ゞ'"´｀ヽ ,ｨ:: ＼',＼＼＼＼
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| 超能力による簡易カタパルト、射出されたケンシロウが合衆国の装甲車に連打。
| 突然の砲撃に横転する装甲車、半ばパニックで這い出る合衆国兵に、『異端審問官』が無慈悲にとどめを刺す。
|
|「ぐ、指揮官は……殺すな、尋問……する」
|
| 息も絶え絶えのジャンヌ。そもそも普通に考えれば動けるような様態ではない。
| 全身の皮膚と脂肪をほとんど失い、動く内蔵標本のような有様なのだ。
|
|「ぐぐ……協力を、感謝……する……ぐ……無意味……な、虐殺、は……我、らも……望まぬ」
|「少し休んで下さい」「簡易的な治療なら施せるが？」
|
| 二人の申し出を拒絶して、ジャンヌは自ら傷ついた部下たちを労い、治療に向かった。
| 顔を見合わせるキオとケンシロウ。いや、ジャンヌらしいと言うべきか。
|
|「ケンさん、すいませんが用事が出来ました」
|
| 不意に、遠くの音に耳を澄ますかのようにキオが目を伏せて顎を上げた。
| 超能力で何かを感知したのだ。
|
|「手伝いは？」
|「ありがとうございます。一人でやれます」
|
| 子供扱いはしない。キオは立派な戦士だ。
| 飛ぶように走るキオを見送り、ケンシロウはいまだ止まない爆音と悲鳴の中で、近い場所に向かって走った。
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,ィ≧──=≦
／:zア´: : : : : ヾア: ＜
＿＿ ,ｲ: : {=/: : :{: : : : : ﾊ : : :ヽ＼
,ｨ=ﾐ､ ＿_／,7/ﾆﾆヽ /:/: : :ﾊ{: :/､!{',: }､: : :.',: : : : : :ヽ
l しﾘニ=- _,,ｨ≦く＞ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾑ/:ﾊ: : ゝ{:/{ﾘヾ.'ﾉｧ'!: :ﾄ:',ヽ-､: : :ﾍ
. ｀¨´-=ﾆﾆﾆ=-ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾏ::::::::ﾏﾆ=-.从:_:_: :{ ,-､ ' }!ﾊ: ﾊ: : :', ヽ:ｲ
｀''=彡'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ:::::}}ﾆニﾑ> ヽヽ､::ｲイ¨ﾉく.: : : :} }: ', ご奉仕させて頂きますわ！
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆア=ﾐノﾆﾆﾆﾏﾊ> .}ヽｲ≧zz彡ﾆﾆミz､_ノ}:.ﾘ
寸ﾆﾆﾆﾆﾆア´:::::::::::ﾊﾞヽ{.j.)ノ>／''''" ヾ､ ヽ__〉: : :｀､¨¨¨´
¨''‐＜{::::::O:::::::::}}ﾆ}}イ､／´ ',', ヽ: : : : :＼
乂:::::::::::::ノ≧z'ﾆﾑ { 〃. ∥ ﾉ: : : : : : :ヽ
｀¨¨´ ｀¨¨¨ ﾍゝｲ' _イ'zx,イ } : : : : : : : : "''＜
ﾏﾆﾆ}}ﾆﾆﾆ}ﾘ/ﾆヽ : : : : : : : : : : : :ヽ
_ -‐≦ﾏﾆﾑﾏﾆﾆﾆ≧===zzzz : : : : : : : : : ',
_.. -‐''". ,ｲﾆ>}ﾆﾆﾆ〉〉ﾆﾆ＼ﾆﾆ}////} : : : : : : : : :',
／ └'''"{≧ﾆ//ﾆﾆﾆﾆ〉〉ｱ ///ﾘ : : : : : : : : : }
／ ,イ ﾊ//ヽﾆﾆ／ヾ'/ｲ////ｲ≧ﾄ､ : : : : : :,'
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| ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ！
|
| アメシストの右手に据え付けられた重機関銃が火を吹いた。
| 巨大な蝶の翅、そこにぶら下がる機関銃。地球上で最も回避性能に優れた生物を模倣した翅。
|
| ふわふわと舞うように動きながら、火線は激烈。
| 地を這う炎の蛇の様に、触れたものを粉砕して焼き払う。
|
| 立木を粉砕しながら、その影に隠れる暗殺者を狙う。
| だが、敵もさるもの。巧みに火線を避ける避ける。
|
| 奇妙な男だった。しかし、誰が見ても剣呑な人物。世界的指名手配、やらない夫と同時にテロリストにされた男。
| 目の下、鼻筋を真横に走る目の入れ墨。生来の眼球と合わせて四つの目玉が何者も逃さない。
|
| 故に四ツ目。
| 防弾コートに拳銃一丁でカトルカールと渡り合う悪魔改造人間。
|
| アメシストは改造前は『武僧』見習いだった。『結社』撃滅作戦で負傷し、シロッコに助けられた。
| 昔から、『武僧』の洗練された『ガン＝カタ』には憧れていた。
|
| 今の自分は似ても似つかぬ機関銃兵器。そして、皮肉にも四ツ目の動きは『ガン＝カタ』に酷似していた。
|
| 一切の無駄がなく、隙のない動き。
| 動作の一つ一つに今後の戦略を組み込んだ、チェスゲームの如き射撃がアメシストを襲う。
|
| 避ける避ける避ける、右腕の付け根にヒット。
| 避ける避ける避ける避ける、右腕の付け根にヒット。
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_ノ￣ ~ ｀ヽ
／ ヽ
r' ｀､
j ィ'' ヽ } _＿
l ,,-‐--､､ ,'' } ヽ __,, ｰ-- －''´.:.:.:.:.:｀ー ､
{ { ヾ､､ ,,'' ! r' 、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
} ', ｀ﾞｰ'''" !/ｌ |/ ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
ノ l i/ ',.l, ､ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
rゝ､ _ i ＼', l , !|) ﾊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 火力が足らんな。
l i ､ヾi ﾞ ヽ !__,､ィ‐ブ ,ィｰ j '､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
ヽﾞ l', ヾｔﾗ‐- ｧｬ/i iﾍー ,,,ィ三ｌ ｌｰ'i ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
iヽ ヽ ﾞー ´7 _,,､_ィ三三三ﾆｼ/ l j.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:__,, -､
l ｀ｰ !| Ⅶ三三三三三三三三=' ! ｌ ｌ／￣￣ヾ _.;.;.;.;.;＼
/ｌ l ',ヽⅦ三三三三ニ=-'' , ! __/ィ 〉 r- ､ ｀ー--
ﾉ.:.:l ! ', ﾊ ｀ー ' ,, ィ´- ''.;.;.;.;ヽ- ' __,, >- ,,イ｀ｰ
ノ.:.:.:.:ヽ ヽ ｣ ヽ ｀ｰｒﾆﾆﾆﾆ '.;.;.;.;.;.;.;__,;.;-‐ '' / ,,
j:.:.:.:.:.:.:.:ヽ, r-‐ '' ￣.;.;.;.;.;.;.;.;__,;.;-‐ ''.;.;.;.;｀ｰ-‐'/ rｰ-‐' ヾ
ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ゝ_,lヽ.;.;.;.;.;__,;.;-‐ '';.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;__,,ｨ ｌ / __,, イ
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j:.:.:.:.:.:〈.;.;__,;.;-‐ ''.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;__,, -‐ '' __,, -‐ ''Y __,,ゝ-{ ｒ' ｒ-‐''二ﾆゝ
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| 当たれば四つ目をミンチに変える高火力でも、アメシストの射撃はかすりもしない。
| 恐ろしいことに、一対一の撃ち合いなのに、その上四ツ目はしばしばアメシストの視界から消えるのだ。
|
| 幻のように、あるいは手品みたいに。
| 避けた先に配置される弾丸、狙っているはずの獲物の姿が見えない。
|
| アメシストは段々と、何を相手にしているのかわからなくなってきていた。
|
|（トパスさん！ そちらの様子は）
|（あと36秒）
|
| そもそも、罠にかかった同僚を助けに来たはずなのに。
| 予想通り、爆弾を解除するまで動けないトパスを殺しに来た四ツ目。それを待ち伏せしたはずなのに。
|
|「先にあちらを始末するか」
|（トパスさん！！）
|
| 四ツ目の気配がフッと消える。アメシストが恐慌に駆られて仲間の所へ飛ぼうとした、矢先。
| 眼前に浮かんだ三個の榴弾が目に入った。
|
| 四ツ目はいつの間にか、もう一丁銃を抜いていた。二丁拳銃が獰猛に叫ぶ。
| 三発の榴弾が眼前で爆発。その上狙われ続けた右腕付け根に集中砲火。
|
| 巨大な銃身で身を守ろうとしたのが仇となる。
| 重さに耐えきれず、嫌な音を立てて右腕が付け根から破損、落下。
|
| 全身を炎で炙られ、破片が突き刺さった状態で、アメシストは墜落した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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-- ー― ､ ＿＿＿
＿＿ ／ ｀マﾆﾆﾆ７ス}
「｢ﾆﾆﾆ ､ ､ :. マ／イﾘ
| |ﾆﾆ i! |! ﾊ i! } :. K､ｊ/
ﾏﾆ ｊ! jﾄ＿{ ヽ__｝! ﾊ ! }ハ
７ ハ／ -―--＼} !__}}
/ ｊ |! ／⌒ z=㍉x | |ﾆﾆｭ
}/ }! ｊ 〆㍉､ 爆｡ ﾘ : !ﾆﾆ{
| ハ {! 爆ｊ ､ ｀¨ﾟ ! ﾘﾆﾆ i
| |ﾊ{ u ｊ /ﾆﾆ !
| | ハ＼ / /ﾆﾆ i!
| ! ﾑ ｒ_｡ / /ﾆﾆ 川
:. V }≧。.. .. ィ ／/ ／ﾘ ｊ
:. V ハ 个 ー=ﾟ T ｊ／､イ／ /／
＼ﾊ＿}ミ､ ＿｣ ィ ´ ´
´￣￣ ｀ー｢ ミ｢ 」⌒＞＝ー―､
/ { V ,ィ〒KヽY ハ
/ ヽ ｀ｰノ i！ヾ７ / ヽ
／ ｊ ／￣￣ ミ ､ / ＼
／ /￣ｊ/ { ｛ {
} ／ / ｙ´￣ ヽｒ､／ヽ／{｣ﾄ､
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| 爆弾解体に全神経を集中していたトパスがようやく顔をあげると、
| 『致命的なダメージ』を意味するマーカーが点滅していた。
||
周囲に警戒しながら慌てて飛ぶトパス、敵影なし。
|
| トパスを爆弾で上回り、アメシストを撃墜した怪人、四ツ目の気配はどこにもない。
| 泣きそうになりながら、重傷のアメシストを助け起こそうと手を伸ばし、トパスは硬直した。
|
| 黄色い。アメシストが夕日みたいに真っ黄色で、すごくブンブンいっていた。
|
| 案の定、アメシストの頭の下に地雷があった。
| 助け起こそうとすればドカン。アメシストは即死、運が悪いと助けようとしたトパスも。
|
| トパスは猛烈な敵意と戦意が奮い立つのを感じた。
| 仲間を助けるのだ。そしてこの爆弾魔に思い知らせてやる。貴様の思う通りになんてなってやらないんだから。
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,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ 無茶苦茶ばら撒きやがって……
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' u ヾ{ 金のあるやつは羨ましいね。
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
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| 一方こちら、手持ちの火薬を使い果たしてほうほうの体の四ツ目。
| 全身の至るところに焦げ目、アメシストの銃撃によるもの。当然裂傷や火傷も無数。
|
| 逃亡生活の彼は弾薬に限りがある。
| ディオとダルのコネで多少は補充できたものの、せっせと作ってきた爆薬の類は使い切った。
|
| 彼の目的はカトルカールの爆弾魔、つまりトパスの撃破だった。
| それが叶わぬなら、足止め。
|
| 四ツ目は、トパスのブービートラップを警戒していた。
| 警察と『血族』の支援車両に爆弾を仕込んだのもアイツだろう。誰にも気づかれず、こっそりと。
|
| 一見単純な爆弾だったが、解体は苦労した。
| 見つからないようにやるのは本当に骨が折れた。
|
| 代わりに取り付けた爆竹で、どちらも泡を食ったに違いあるまい。
| いいさ、今の状況は警戒しすぎるに越したことはない。
|
| とりあえず何でもいいから汚染電波を除去して通信を回復してもらわなければ。
| 『処理』されていないライフルからハッキング中のダルとミストの援護のために。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ r ―-_､ / !
〃 { { ｀Y´ﾉノ^i /´＼-―- 、
/ _ ゝ‐ ゝ ＠_ﾉ ノ__ , -､ { ,、 } ＼
,' , ／ 丶-z ノ´r‐'´ ／ |‐､l⌒` _｣ V厶-‐- ､ ＼
-‐-ｲ ／ 丶---‐ｧ ／ | ＼ ｛ ＠ ﾉ 〉 ＼
-‐ `ﾌ” >｀i ｀ヽ _／ 丶 丶
､_ 〃 / { ヽ-'＾¨´ ＼ ', l やるき〜なくなれ〜。
}￣￣´/ {乂人ﾊ{ / ゝ _ 人 l ', | おうち帰っておこたに入れ〜〜。
ﾉ ｛ 乂{ィニ=ｭﾊ /ノj ノ , 人 丶 _｣ ｜ |
〃 人 { ＼{ィﾆ=､}ノ /丶. | |
／⌒) ｀¨ l|ト'-‐-､ヽ __ }ノ 〈 丶 l ﾉ
-‐ 〃 { ﾉi|.:.:.:. , -‐-､ ﾉ_,ノ_,ノ ｀ 、 ⌒丶 r ､
{ 丶.,＿ _ ／rﾊ. /`＝=-､_ :.:.:.:/ / ) r‐､ 〉 ＼ 〔ヽ',
ヽ >/∧ V ⌒ヽ 〉 〃/く｣ ｢ヽ! l ＼ r‐ヽ ヽ
＼ r‐- ､´l l ＼ｰ--‐'´_,. イ / o 〈-, | l| | 丶 ヽ｜ |
/¨,二ﾆし‐-､ l |ｰ-ャ)￣￣{へ _八ヽ r‐' }―-､ r 、 l! | ', )l |
し'⌒l ￣ }ﾊ V }∨ -‐} ∧∨⌒’ｰｧＪ-‐' l | j|八 | | /ﾉ { /⌒!
｀｛r‐､―/ 丶.二ノ从ノｿ /! } } ｛ , ノ .ﾉﾉ' , ⌒! | | xヘ.j ヽJ /
{ ｛ ,ﾆ二) ∨／ { し' ﾉ ￣｀ﾉ｀／ /, {／ ／ 、 l l .／:／>> /
ヽ ｀¨⌒! ｛ /,二、.二.ヽ/ 丶-く ／／ / ／ ＼ ﾉ.／:／ xく＼ ／
', | ヽ{｛:::::::o:::::::} } ,≧ﾆ=ﾆ､ ／ ／丶 / 丶 ＞く.／ ＼_,>‐'´
l ヽ ∧ヽ:::::::::ノノ ｘ＜ ＠ ⌒Y¨T≦´ 丶 -‐‥''"´ ／
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| ヤラネーッダ！ そうこうしているうちにトロプリが終わって次のプリキュアが始まってしまった。
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| 白雪ひめの広域やる気減退ペルソナは強力で、芝公園の一角まるごと戦闘は散発的だった。
| だが、強い意思や魔力を持つ相手には効果が薄い。
| ついでに当然だが機械にも効かない。
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| 襲撃してくるレイ・ザ・バレルの戦闘機械、やる気をなくした警察も自衛隊もグレン団も迎撃してくれない。
| なので仕方なく、麻呂の式神で対処していた。
|
| 汚染電波のせいで、シロッコ麾下以外はいまだ連絡ができない。そうすると音の激しい方に『血族』やらは集まる。
| つまり、敵も増えないが味方も増えない。
|
|「おう、麻呂さん。相変わらず若い女が好きだな」
|「人聞き悪いことを言うではない！ 女子高生とか好きなだけでおじゃろう！」
|
| 車椅子を押しながら、硬直するひめ。十分いやんな感じである。
|
|「ちなみに、麻呂のコレクションは健全健康。誰に見られても恥ずかしいものを取り揃えているでおじゃる」
|「だめじゃん！」
|
|「雨宮夕日の丸秘ムフフ写真もあるでおじゃ？」
|「あ、それは……興味あるかもー」
|
| 心揺れる思春期の少女。横で頷くのは話しかけてきた男。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〃 i,
r' ｨ=ゝー-､-、､r=‐ヮｫ.〈
! :l ,ﾘ|} |. }
. {. | ′ | }
ﾚ-､{∠ﾆ'＝=ｧ ､=＝ﾆゞ<
!∩|.}. '__＿ﾞ` ./'_＿` f＾| そいつは俺も大いに興味あるね。
ｌ（( ﾞ′｀￣'" f::`￣' |l.| いい男に育ったろう？
. ヽ.ヽ {:. ｌﾘ
. }.iｰi ^ r' ,'
!| ヽ. ｰ=＝=- /
. ／} ＼ ｰ‐ ,ｲ
__/ ∥ . ヽ､＿!__／:::|＼
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|「おや、知っているでおじゃるか？」
|「彼の親父さんと、昔な」
|
| 雨宮夕日の父親は警官だった。そしてこの男も。
|
|「それより、人を探している」
|「この混乱の中で？」
|
| 阿部は苦笑してうなずいた。
| ひめの周辺は混乱も少ないだろう。だが、少し離れれば右に左の大混乱だ。
|
|「なにもの？」
|「警察の協力者なんだがね、この混乱で逃げちまってなあ」
|「ええ〜、だめじゃん」
|「手厳しいお嬢さんだ」
|
| なお、取り逃がしたのはヒトとそうでないものを見分けられる殺人鬼などではない。
| 時と場合によっては、もっと危険な存在だ。
|
|「誰でおじゃるか？」
|「伊藤誠だ」
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〈 ー=========ミ､＿＿__
ヽー─────＼ }l＼ ＿
／＿＼ ＿＿＿￣￣＼/ jl ∨厂|
´￣￣//￣￣￣￣＼ i ∥ ﾉ ＼l|
､___＿,ノ/ //￣⌒＼ }lﾚ/／ ,ｨ ＼
´￣/ //ニ==―┴ｧ^Ｙ＾ヽ∧ ｌ i∧
ｰ==ァ /＿＿＿____{ ｉ }i^|│ l|│
. ､___／ /ｚ==≦,__ 乂＿_ｒ'ﾘ j l| l| l!
一=彳ー‐ｔr==ミﾄｘ__ ヽ }＼ﾉ,ﾉ／ノ
辷￢ ブ 癶___斧ｆうぅｰ人jｬｾ刋￣
=彡' ＼ ￣￣ /⌒ 守{iリ
} ｉ i ヽ ∨
入 ＼ ＼ァ￢ァ はっはあ！
（__ i ＼_人
. ∧ ｌ / ＿_／￣___}│ 若い女、しかも美人を切るのは楽しいなぁ！
｢}￣ ＼__ ´ ―┴|
U ￣, 、 、 ＿ﾉ、
′ ￣ { l
〕ｉト ＼ ＿＿}
/ ｀¨¨Τ´￣ ／
i＿厶-─── ┴ ､ーｆ´
＼|
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＼ ｌ＼＿＿＿
. ＼ ＼ │ |
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| 血の池に沈むアサギとタカオ、絶叫するはやぶさ。
| ディオ。いや、ディオの姿をしたアリー・アル・サーシェスははやぶさを一瞥したがやらない夫に向かい合う。
|
| 彼ははやぶさのベルソナ能力を把握していた。
| 『滅ぼすもの』能力も理解していた。
|
| 彼女が周辺生物の肉体を融解し、くっつけることで命を繋げるのは知っていた。
| そして、『法務官』の絶対性は『滅ぼすもの』には通じないことも。
|
| つまり、このナイフの傷ははやぶさなら癒せる。
| だからまず、はやぶさを殺すつもりだった。アサギに邪魔されなければ現にそうしていた。
|
| やらない夫の攻撃など、無視してはやぶさを殺そうと思っていたのに。
| この肉体も悪くないが、所詮は屍。使い捨てだ。
|
| なのに、アサギを殺した瞬間にふと、心の陥穽に囁きかける声があった。
| 『このまま、あのやらない夫を殺したほうがいいんじゃないか？』
|
| アリーはなんの疑問も抱かず、はやぶさを無視した。やらない夫に向かった。
| 彼は己の奥底からの導きを重視していた。直感、アリーの命を幾度となく救い人生を愉快にしてくれたもの。
|
| だから迷いなく従った。迷いは刃を鈍らせる。鈍った刃は敵を殺し損なう。
| 敵を殺し損なえば、自分が死ぬ。
|
| それはつまらないだろ？
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__ノ} ﾉ{＿_}＼／
. ／ }＿_}_／ ﾉ ／
. ___／/{／} __／ / ／
{ /八_/ }＼{＿_ﾉ__／}
{_ {＿_ }＿] } '⌒}＿／
{____ }ﾉ⌒ }_,ノ} }-/￣＼
} _}／ r='⌒}ﾉ ///}
} { r＼_ノ{//{ﾉｲｦ
{_.＼ 人tー‐{ {__￣ 備府やらない夫。
￣｀＼ ￣＼￣＼ , 一つ聞いて見たかったんだがなぁ。
f⌒} }__ノ⌒}{ヒｿ ／ﾉ
} } ￣￣＼ イ／
}--} ＼〈
} } //ニ二
}--} ＿______//=ニニ
__,ﾉ }厂￣￣{ {ニニニ
___{／^＼＼___ 人＼ニニ
＿_{＿__｛ }ﾉ⌒} {＼＼ﾆ
厂￣￣＼_人__/ ＼＼
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| バネ脚で飛び掛かるやらない夫。
| 対するアリーは軍隊格闘術を納め、悪魔殺しとしても鳴らした歴戦の勇。
|
| しかしアリーは、やらない夫を侮らない。
| 北斗ケンシロウを退け、『聖処女』ジャンヌ・ダルクを退け。カトルカールを四人も葬った。
|
| 『法務官』エリシュ・ノーンの『切断継接』による斬撃はペルソナでなくとも防げない。
| 多くの場合は。
|
| 藤木源之助に爪弾を止められた事が脳裏をよぎる。
| やらない夫の防具を切り裂けたとしても、謎の防御魔術に止められるかもしれない。
|
| アリーは『エクスカリバー』を知らない。
| だが、やらない夫が強力なマジックアイテムを有し、それを用いて敵を退けて来たことは知っていた。
|
|「民衆を戦争に駆り立てるのって最高に楽しそうだな！ あやかりたいぜ！ なあ、今どんな気持ちよ！」
|「誰が！！」
|
| やらない夫が振り上げた拳が、九尾鞭になって伸びた。
| 回避しなければ健かに打ち据えられていただろう。アリーは笑みの裏側で口笛を吹く。
|
|「大衆扇動者！ いわゆるデマゴーグって奴だろ？ 羨ましいなぁ、オイ！」
|「もう黙れ！ ディオの口で喋るな！！」
|
| 着地、その衝撃を次のノミ脚のバネに貯めて即座にアリーに飛び掛かる。
| 脳に突然のベクトル移動がかかり、常人なら失神しそうなもの。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,, -‐ ､
/' ヽ
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／ ._ノ ヽ､＼ / ...........i
| （●）（●） | / ..:::::::::::::::|
| （__人__） | / ..::::::::::::::::::l
.| ｀ ⌒´ .} ./ ..::::::::::::::::::::!
| }/ .::::::::::::::::::::/ ニャンコ先生！
ヽ ./ .:::::::::::::::::::/
.ヽ . .／ .:::::::::::::::::::/
,. ‐'"´ `'‐,r''"~ .:::::::::::::::::／
..:.／,. -‐‐- ､ l′ ..:::::::::::::／|
:,' ／ !.:::::::／:i..:..l
r ､ / !::::::::::: i..:..i
l .......`:i i !:::::::::: ﾞ､:.i
! ::::::::::/ i i:::::::::: ヽ:i
.! ::::::::/ i .....i::::::::::: ヽ
.ヽ ::::::| `､ `､ .....::::::::::::l:::::::::::: `,
/ ＼:::l. `､ ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: /'''ー─----､
`ヽ `､ .::::＼:::::::::::::::|::::::::: /,, ,. ‐;''
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| 空中に呼びかけるやらない夫、アリーの注意が一瞬逸れる。
| 瞬間に、さらなる加速。召喚はせず、小賢しいフェイント！
|
|「楽しいよなぁ、そうやって他人を思うがままに動かすのは！」
|「うるさい！」
|
| 笑いながら攻撃を難なく避ける。
| そこで、アリーは目を見張った。空中で方向転換するやらない夫。
|
| 膝がディオの顔面を粉砕。鼻がへし折れるが血は流れない。
|
|「デマゴーグ扱いは嫌か？ アジテーター！
| どこへ行く？ お前らを地獄に連れて行くってちゃんと答えろよぉ！」
|「黙れ黙れ！」
|
| 憤怒のあまり口角泡を飛ばすやらない夫。
| 振り下ろされるヒゲ槍。アリーはそれを『食う』ことにした。
|
| 『法務官』ヴォリンクレックスの能力『弱肉強奪』。相手に食らいつき、その能力を奪う。
| 悪魔の牙や尻尾、翼、火を吹く能力などを奪うのが本来の使い方だ。おかげで利用する機会に恵まれなかった。
|
| だがやらない夫のこの武器は悪魔由来のものだという。
| アリーは左手でヒゲ槍を受けた。強烈な斬撃を左腕に食い込ませるつもりだった。
|
| であるが。
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. ‐……‐ ..、
／::::/ｉ:::::::{::::::＼::::::＼
/:::::::/ :|:::::::l＼:::::::＼三三≧
i:::::::/ ヽ::::::＼__く::::::ヽ::::.
,:{::::::i ー‐ﾐ ￣´ｨt=ｵＸ:{:::::::.、
/::ﾍ::::{.「死 ´死 八::::､:::::::ヽ
/:::::人:::》、 丶 i}:::::＼:::::::＼ ……………『一人でお帰り』。
.':::::/:::::込、 ＿ /`ーｲ:ﾄ::::::::{ ￣￣
{:::/l::／{::::::≧ ´ ノi:i:i:i:i:i:i:i7＼::〉
V !' 》＜＾⌒ ｨ ´￣｀ヾ/∧
くi:i:i人r一' lﾊ 、 ∨∧
//ｲ7厶-=====ｵ｡V ∨∧
〃/ﾒ´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:∧ ‘， ∨∧
///'i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧ ‘， ∨∧ ＿＿＿
//八i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ﾊ.｡‘， ∨∧i:i:i:i:i:i:i:i:＼
/// Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ∧ 》 ∨∧¨¨ヽi:i:i:i:廴
/// }i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ{ ＼| ∨∧ ∨i:i:i:i}
/// .ﾉi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ハ ! ∨∧ }i:i:i:i:|
/// ___}i:i:i:i:i:i:i:i＞ ´￣ ヽ. |: ∨∧_ノi:i:i:ｉﾘ
/// }＿ イo￣ l| 》 》====…ヾ/∧i:i:i∠
＼///＿ 厶イ。|! l| 斗匕ﾍ ヽi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i》
.イi:i:i:i:i:i:／{! |! o .斗匕 // ＼.}i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iく
/i:i:i:i:i:i:i:i:}／{! 斗≦.=====// {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
》i:i:i:i:i:i:i:i:} ／─ｬ== …── ≧ｭ． 戈i:i:i:i{￣ ｀⌒ヾi:iﾉ
戈'⌒ヾi:ｉ:｝／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧ｭ．__}≧ｵ } Ⅵ
rＥ{ {＿_ﾞｵi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:{ |//∧ } リ
|/∧ }广ﾍ{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ＞ ´￣￣ ‘， |///∧. ∨
|///ﾄｲ_ﾉ /￣￣￣ ¨¨ ＜i:i:i:iィ ´ ‘， ∨.//∧._)
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| ひげ槍が左腕に食い込むところまではアリーの想像通りだった。
| だがそこで内側から肥大化、左腕が吹き飛ぶのは想定外だったようだ。
|
| 一瞬虚を突かれたアリーは、顔面にバネで強化された蹴りを食らう。首がねじれて一回転。
| 人間なら即死だ。しかし、ディオの体は死んでいた。
|
|「なんだ……クソッ、噛み合わん……！」
|
| 呻きながら立ち上がるアリー。
| アサギはいい気味だとばかりに笑った。
|
| あたしの友達の、かわいい顔を傷付けたんだ。死ね。そのまま死ね。
|
| 首を切られた瞬間は熱かった、すぐに寒くなった。そして今は、眠りにつく瞬間のように心地よい。
| 何が世界を滅ぼす『十壊』だ。使い方によっては友達も守れるみたいじゃん。
|
| 夢見心地の中で、アサギはディオの姿をした怪物に、
| 『一人でお帰り』をなすりつけてやる。呪ってやるのだと想像した。
|
| 今後、何をするにも直感はうまく働かない。誤った囁きが常に思考を操作する。
|
| そこまで上手くいくとは思えないけど。
| 致命的なところで、アイツを破滅させられたら、それで……。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| それが、朝霧アサギの最期の思考となった。
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／￣ ∧ /}l l| （／ i(／ /／／ ／;(__
／ / ∨ }l _,ﾉ /＿／ﾊ /´ /;;／ ／;／
/ __/ ＼j＿/ / / /;;;;∨l／i {;;ﾊ ／;;;;;(＿__
/ ＿_,厶ｨ⌒ヽ ￣￣｀Ｖ___j;;;;;;;;;;;{ | |／Ｖ/;;;;;;;;;;;≦￣
{ ／ / / ＿__} / };;;／￣￣＼;;;;;;;;;/;;;;;;／￣
/ | / / / ￣＼ﾊ /＿,ﾉく__r‐｢＼;;;;;;;(＼;;;;／
/ | く し' {ﾄ､ ﾉ j} l{ );;;;'⌒ヽ ＼ ＼;;;ヽ ヽー-- ＿
／ ﾉ }／⌒i｢:{三Y＾Y＾ヽ_);;;;;;;;;;;;;;;;＼ ＼ ヽ;| | }
／ / 人:{￣ ヽ jﾉ;;;;（ ＼;;;;;;;;;;{ | |ﾉ｀/＼＼_,ﾉ |
／ ／ ＿___／| ﾄ､{ ￣__,ﾉ;;;;;;＼ ＼;;;/ | ﾄ /| }＼ ﾉ
／￣￣ / ／￣{ | 岱ぅ ＿j;;;;;;;::::::::ﾊ＼_ヽ }｀| | l ／{
／ ＿ | { i⌒ヽ ju ／/ ｱ,ｨ岱テ厂 };ﾉ /／ | | l クソがッ！！
. / ／_________ 乂L＿ ＼___) j /__/ };;;;/ /__/ / / ノ {__ | |
￣￣{／´ __ ﾉ { j ﾄ---､ ﾉ;;/ /）/ / / ／￣￣＼＿ |
／￣/ ／ ） } j ﾉ} / /;;〈 / ﾄ､＿＿_ノ) ／ ＼
. / 〈 ∠ _____ﾉ人 ＼_／ /;;;イ ／(＿＿＿／)＼ ／￣￣￣＼ {
/ / ＿＿ ∨ ) 厂＼＼__ -=≦ __／ ﾉ(＿＿＿／ _|__／
. { / ／ ＿/ /)／ヽ ) ＼ / 厂 （＿___／ |
. ∨ / ( /￣ 人＿／ ﾉ/⌒} ＼ / { ￣＼ |
∨ ｀{ { ／ ／ / ∨ ／} ＼ |
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 逃げるディオ、やらない夫は追いかけるかを逡巡し、辛抱した。
| カトルカールと交戦しながらも、距離を置いていたニャンコ先生を呼び戻す。
|
| 急いで治療すれば間に合うかもしれない。
| ……もちろん、その逃亡もアサギの『一人でお帰り』の影響だった。
|
| どれほど噛み合わなくとも、アリー・アル・サーシェスはやらない夫ごときには負けない。
| 最悪、ディオの体を使い捨てて相打ちに持ち込めば良かったのだ。
|
| だが、アリーは己の直感に、逃げた方がいいと囁く声に従った。誤った判断だった。
|
| これから先、彼には呪いのように憑いてまわる。誤った判断が。
| いや、アサギを殺した時点で既に遅かったとも言えるが。
|
|「やらない夫さん……」
|
| 泣きそうな声で、いや、涙をボロボロ流しながらはやぶさが囁く。
| やらない夫は恐怖に怯えた。見たくない、見たくない。だが、見なくては。
|
| さっきの奴の言うとおりだ。
| オレがこの子たちを戦争に連れてきた。
|
| その末路が、ああ。これが末路か。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
/: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
/: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ | :/ |:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V 朝霧アサギは血を失いすぎてるし、
＜ : ｣_: : / _ _|/ ﾚ. ＼ ＼ ＼ : | 心臓が止まってから時間がかかった。
＜:: |. 小{ ｀ﾞ'''''' ‐-＼ ＼ ＼_
厶ﾍ ﾊ ､ r--‐-､ >､ ｀ヽ 霧野タカオは脳に傷がある。
＼_! ' ` ‐-､ ｀` `､ どっちも障害は残るだろうな。
_, r´:/ : :| ヽ 'ー―-- ／＼ `､
_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::| | ＼ ／ヽ :｀ヽ ヽ
_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:| ＼ ヽ _ , ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､ `､
_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| >-､ー_'/ !::.:.:.:.:ヽ: : ` 、 __ ＿__i__
/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i! /ﾍ i. / 入 |＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,,..---┴‐,
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「は？」
|
| いつの間にか、キザなスーツの男が、血溜まりに屈み込んでいた。
| 仕立てのいい、明らかにオーダーメイドのツーピースを血で汚すのを構わずに、
| その男は針と糸でタカオの顔面を縫い合わせる。
|
|「右目はダメかもな。切れ味が良すぎたおかげで、うまーく くっつくかもしれねぇが。
| しかし、勿体無いことしやがるぜ。やらない夫、この子たち処女だろ？」
|
|「いや、その、知らない……というか」
|「かわいそうだから早めに食っとけ。悪いことは言わないぜ」
|
| 護符と宝石を取り出し、治癒の魔術で処置を終える。
| 鮮やかな治療、いつも胡乱で猥談ばかりの姿しか見たことがなくて、やらない夫は困惑した。
|
|「え？ あれ？」「うう、よかった……っ！」
|
| 泣き崩れるはやぶさに胸を貸しながら、その男はゲス丸出しの笑顔で笑った。
|
|「やっとあのホモ野郎から逃げれたぜ。あんな所に居たらケツがいくつあっても足りねえ。
| 匿ってくれよやらない夫。昔のよしみでさ」
|
| 伊藤誠は、しれっと言ってのけた。
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☆ 次回予告！
お前は誰だ？
顔を奪われた男に。
名前を捨てた男に。
怪物になった女たちに問いかける。
自分は誰だ？
答えはどこにある。
心の奥深く。
あるいは、誰かの瞳に映る姿に。
答えられる者。
答えられない者。
どちらにしても結局、決めるのは自分自身で。
次回、最終幕八十四話『名も無き者
果てに見るのは破滅か死か。
: :／: :/ :／:／:.:／／, へﾍi:./,/ ∨、: : : :ﾊ
:/: :.:./:./: :/:/: / /: :/ ~^~´ 丶＼: ヽ:ﾊ
: : : /:./: :/:/: / /: :/ } ヽ:ヽ: ヽﾊ
: : /:./: :/:/: / /: :/ { 二ニﾆ=-∨ヽ:ﾊﾊ
: /:./: :/:/: / /: :/ i! 三二ﾆ=-Ⅴ:/: : i
/ /,-=ﾆ_ / /: :/ ヾ_ _ﾆ=-‐=ﾆ_ Ⅴ:./: {
. f´ソヽ ﾊzzzzzzzzzzzzzzzz======ミ. {ﾆV: : :}
/i !:.:.:.:.ﾊﾊ: : ! ｀ヽ/////}i}///}:.:/
/! V:.:.: ﾉ ﾊ: :i =-ニミ Ⅴ/// i Ⅴ/!/
: :ヽ. ＼:.ヽヾ､:} =ﾆ=-- Ⅴ///} V }
: /:.:＼ ヽ:.{ ＼ i ｀¨¨´. ', え？
/: //:/ヽ. i:!ヽヽ _ し ,' '., 何なのその話し方。
: //:/ / !ゝイ ! ＼: ＞､ {_. ', 小学六年生？ ふざけてんの？
//:/ / /!i ! ヽ: : : ＞ ､_________≧=‐- '
.: / / //,' i! ヽ.: : : : : : : : ＞=､:}! /
从ｲﾚﾊ}j } ￣二二二二}´ヽ/
｀ヽ. i{ ｀¨¨¨¨¨¨',
//∧ ! 从 ',
///∧ i ヾヾx ',
////∧ ! ', ｀ヾﾐxヾヾxミヾﾐx=ｚｘ=ヽ
. ／ ヽ-､ : : : :|
／ ｀､ ＼: : ::|: .
/ / ｀､ ヽ ', ＼_|: : .
/ ヽ-､ } ﾄ. |: : : : .
| | | ヽ／ ﾉヽ |ヽ |: : : : : .
/| ｌ ｬ-､. }､ !.／ﾉ .ノ | /: :ヘ 乂: : : :
| | | ｌ l ) l / .l _／__ケ毛z<‐/ﾒ_＿／ : : ＼. ＼＿
l ﾊ ヽ＼ ＼_,ノ ./ _ノ ﾉノ~z/／￣ ヌﾞﾞ弋 | l--､: : ＼
ﾄ､＿￣戈ｰ-ゝt--‐'￣ ;γヽ☆ ヽ. : | ヽ' ﾞi､ ＞､
| ￣ メxttttrx ﾄ‐' c} ; ! ｀､ﾉ:＼
＼ 布／ ￣＼ヽ ﾔ γ |/ | |: : : ＼
＼＿＿_｀_フ/,γヽ☆. ｀､ ＼__ .. ｨ'´ |´￣ Ｙ: : : : : ＼_ こっちが素ですー。
l. ｀lヽ /ﾚ ｌ｀ ' c | , , , }=-,、 |､: : : : : : : :｀
i : :| ｀､ ＼＼γ .Z /‐‐'､ノ: :ヽ: : : : : : : : ネット上じゃみんなあんなもんでしょー？
| (＼.__>、 ＼ゝ+‐ ´ _ -< 丿-､ }: : - ゝ-､: : : : :
| : :／ >､ ' ' / ／: : : :' ´／ ｀ヽ､
| : :! ,イ厶＼ ／￣＼__／
| : :｀ｰ‐t´ _ノ: :｀ ､ _ ／ .| ﾉ. ＼ ヽ
| : : : :l＼二ﾌ : : : |￣:＞───‐‐´___/∧' | ､ ｀､
/ : :l: : : : : : : : : :|: : / ＼__}===＝, -‐' l }＿＿＿__ヽ__l＿
./ : :/:: : : : : : :＿.⊥斗 ヽ┌‐'￣| ヽ ﾉ ＼
' : :/: : : :／￣ 人 } ヽ､_ / ｀､ / ｀
: :/: : : :/ ＞､ } /
. : :/: : : :/ l ／ ｀ｰ亠､ 斗 ,-'¨l
: :/: : : : l l / }--‐‐ ´_ -' ∧ ｀ -'
. : :/: : : : : | ｀､ / }--‐: :´ : : /: :｀､
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◎現状（八十三話終了時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
鳴り響く銃声と爆発で民衆はパニック？
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
ディオと交戦、誠と合流
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
偽ヤーボと交戦、自爆される
・四ツ目
トパス、アメシストと交戦後弾薬不足で撤退
・ミスト・レックス
ハッキング中らしい
・やらない子
ヤザンを足止め
・はやぶさ
やらない夫と同行
・アサギ、タカオ
やらない夫と同行中、ディオに攻撃される。アサギ、『滅ぼすもの』でディオを呪い死亡
・麻呂、白雪ひめ
やる気を減退させ、一般人を避難中
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
誠を探している
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中。
・誠
やらない夫に合流、タカオとアサギを治療。
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたいが、鎮圧されつつある
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦、自爆される
・龍田と石田
カルカールと交戦、やらない夫を取り逃がす
・ケンシロウ
暴徒鎮圧中、ジャンヌと合流
・杏子班
暴徒鎮圧中
・キオ・アスノ
暴徒鎮圧中、単独行動
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
ケンシロウと合流
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
ねずみ男の放屁をくらい、やらない子に足止めされる
・ロビン
天龍シグを下した
・トパス、アメシスト
四ツ目と交戦、再び足止めされる
・他のカトルカール
石田龍田と交戦、やらない夫を取り逃がす
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
ドローン視野で連絡係
偽ヤーボを自爆させる
・合衆国軍
一般人を攻撃、鎮圧されつつある
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちとアサギを殺害した
タカオに致命傷を与えた
アサギに『一人でおかえり』を憑けられ誤った囁きを受けることになる
現状報告でアサギの死亡情報と助かった情報が両方ある……ｗ
これで勝つる（本当？)
乙でした
いやぁ、こちらの乱戦ぶり見るとワカメ側の何と平和なことか（平和とは一体）
∨ニニニニニニニニニニニニニニニ-/
. ∨＞ '"´ ￣￣￣ ｰ-=ﾆ二_′
＿__＿_} { _＿__
＼三二ニ≡＝＝==ー---－―=＝≡ニ二三三三:/
＼三三三三三三三三三三三三三三三三三／
7: : :/. : :/. : {:∨∧: : : : : ｀ヾ: : :ヽ: :ヽハ才
,: i : :{:: ::/. : :∧:∨∧: : : : : : .∨: : :': : i: :{
{: |: : }: /_才/:ハ:.∨∧: : : :斗弌: : : : : : ::!
j八: :{/彡,:ｲ云ｰ: :乂ハ=彳ハ: {ﾊ: :/ ,: : :! 我々は間桐慎二の友人として、
从: 乂ハ ｀｀ヾ '" }ﾘ }'. / : : ;
∨: : 爻_ゞ＝=- r==＝彡彳.: ::.′ この東京を来る破滅と
. ∨: : 八 イ. : : : .' ニャルラトホテプの
. ∨: {: :≫. _'_ 乂: ,.: :/ 手から守るために、
∨从ハﾊ＞ . -‐ミ.. . .イﾊ.: :/: /
. 乂{ . ィf -‐:._}ヽ( .ｲ乂::.′ 間桐臓硯氏に
rfー--‐ " ィ{ .二二}=ミ｀ ＜从(___ 助力を願いに参りました。
/:ﾌ { ／／:. -‐ ｦ ＼ } }
. /. :｝ i} { i{才:ﾊ fﾊ＼___ﾉi} ′ﾊ
.. /. : 乙{ ゞ=ミf } j〈 ヾ==彡 ′｛∧
.ﾞ. : : フi} /乙′⌒Y{ }i:{ ′乙 ∧
,.: : : : :廴ﾊ ./ {__ 乂气{i:{ .ﾞ⌒(: : :.∧
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| 『やらない夫の集会』当日未明。
| 未だ冷たい雨が降り注ぐ東京、間桐屋敷の土間。
|
| 冷え切った外気と石油ストーブの熱の寒暖差で頬をりんごのように染めて、蒼星石は言い切った。
| 彼女の脇には駱駝色のコートのやる夫。後ろにはうなずくアリカとつまらなさそうなルイズ。
|
| 蒼星石の言い分に困惑した博麗先代が『狂死』を振り返る。
| 脳筋の呂布には聞くだけ無駄だ。
|
| 『弓兵』と遠坂凛の襲撃を待ち伏せるために詰めていたはずなのに。
| なぜここで、蒼星石とやる夫が現れる？
|
|「正直言いまして、僕は間桐臓硯をよく思ってません。しかし、利に聡く打算的な交渉ができるのは確かでしょう。
| なにより彼は失脚した。今は好機に貪欲なはずです」
|
| 滔々と、蒼星石らしい論理的な理由を述べる。
| 『弓兵』らのことが無ければ納得できそうだ。だが。
|
|「やる夫たちは、世界を守るためになんとかできる事をしてーんだお」
|「アンタが口を挟むと面倒になるから黙ってなさい」
|「はい」
|
| ルイズの一喝で挟みかけたふぐりを噤むやる夫。
| なお、ふぐりは金的ではなくやる夫の唇を指す一般用語だ。
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／￣.＞'´:::::::::::::::::＼::::::::｀ヽ
／ .／::::/:://::i:::＼::::::＼:::::::::::ヽ、
／ i::::::: |:::|:|､::|:::::::::ヽ:::::::＼:::::::::::､
／ |::::::::i､从;斗rﾐ ヽ::',::r､::::＼:::::::::、
. / |,斗‐ミ､ ,似ﾘﾉ､ |:::i |ｿ::::::::iヽ:::::::､
/ |::汽ｼ , ￣゛ |: | |:::::::::::|:::ヽ:::::::、
. / ￤:∧ ｀__. ,.|: | |:::::::::: |:::::::ヽ:::::、
. i /:/::::i丶、 ／_j:::i |::::::::::人:::::::::ヽ::::、 待て蒼星石。
＼＿＿,. //:::::::|::::::i｀¨:}'´;;/::;ﾘ／〉──ﾐ::::::::::::::、 その前に確認させろ。
/'i＿i:::ﾉ-‐＜;ﾉ;;;/￣/:/´ ,.──┴ミ::::::、
＿/ _j／´;;;;;;;;ヽノ;;;;;;;/:/／ ,:.:.-──r-}:::::::、
_∠二二､;;;;;;;;;;;∠ -─‐|:.:{_,.イ ,. -─┴ｲ二二｝
／: : : : : : : :.>:／: : : : : {爻}:j;} Y ﾄ､⌒}:::、
/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : :|;;{ | .∧/:::::::、
. i: : : : : : : : : : :.|: : : : : : : : : : : :|;;i |／￣--ノ::::::::::::::::、
. 人: : : : : : : : :.:八: : : : : : : : : : :ヾ;、 ./,-─‐ ＼::::::::::::::::、
{__.＼: : : : : ∠二..＼__: : : : : : : : 〉イ￣￣｀ヽ .|::::::::::::::::、
ノ ＞'Tｰ‐'´ ｀ｰ──ヘ ,、 ト､::::::::::::、
.r'´ / ＼_r‐､＿ .／} //i , ′ ＼:::::::、
.| .i ,z‐‐'´ / ＞=‐'´￣＞‐.' ／_.,ノ.// / /:::::::::、
.ヽ- '└ｲ i| .／' ￣ - 'ノ^i ￣ ／::::::::::::、
|' | / .| _,／'ヽ､＿_,イ |::::::::::::::::、
| .| i |￣|￣｀¨¨¨¨´:/:::::::::::|:|:::::::|::|:::::::::::::::::、
| .| | ヽ/|三三三三{:::::::::::::|:|:::::::|::|::::::::::::::::::i
| .| | || |三三三三＼::::::://:::::: |::|::::::::::::::::::|
| .| | || |==イ,￣￣￣ヾ:､/:::::::::::::::::::::::::::::::::|
. /::| ヽ | || ｀}: :∧ ＼∨:::::::::::::::::::::::::::::|
/:::::| .i ﾘ /: /: :.{ ヽ∨:/::::::::::::::::::::: |
. /::::::;ﾘ..│ | ﾉ:/: : : |:＼ i∨::/::::::::::::::::::: |
/:::::::/ﾉ | ,イ.|/: : : : :|: : :＼ |:.∨:/:::::::::::::::::::|
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|:::// .| |/: : : : : :.|: : : :.{: : ￣｀ヽ: 人:::::::::::::／
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7 | | |: : : : : : :|: : : : : : ヽ: : : : ヽ: : : :＼
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|「そこに居る入即やる夫が本物で、『血族』に居るのが偽物だと、そう言いたいのか？」
|「さあ」
|「さ、さあ？」
|
| 『やる夫』は今や『血族』の、『緊急事態対策班』の中核だ。
| 彼の判断は的確、世界を破滅から守るという強い意志は人を惹きつける。
|
| だが、この目前にいる男はなんだ？
| 見るからに自信のなさそうな雰囲気、心ここにあらずの淀んだ目付き。
|
| 肥大した頭部、脂肪でブヨブヨした肉体、魚のような金壺眼にブルドッグみたいに潰れた鼻。
|
| 膨れ上がった唇、病人のように青白い肌で、体毛は極めて薄い。
| 胴長短足、人類としてデッサンが狂った外見。
|
|「このやる夫が本物かどうかアンケートの結果。
| 『思う：２票』『だいたいそう思う７票』『あまり思わない：一票』『思わない：０票』となりました」
|
|「つまり、貴様らは十人以上のグループだと？」
|「いえ、脳内会議で」
|
| 鼻白む『狂死』。蒼星石はこんな冗談を言う奴だったか？
| 呻く先代、蒼星石なら言う。だが、ここ最近はそんな余裕が無かった。
|
|「これはやる夫兄いに見えるけど、やる夫兄いじゃないかもしれないの。
| そもそも、ホンモノってなんだろ？ 顔形？ 能力？ 性格？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ /. : : : : : : / : : /: : : : : : : : : : :l: :l : : : : : : : : :ヽ: : : l
｛/ ｛: :.|.:|: : : |: : :/: :l: : : : : : : : !::l: :|l: : : : : i: : : : :l: : : :l
|: :.|.:|: : :⊥.:ム:！: : : : :ー十1‐|l‐- ､: :}: : : : :l: : : :l
＼|.:|: : :1ヽ| ヽ|＼. : : : : ::l: l l:!:::ハ: :｝: : : : l: : : :l
`ﾄ＼1,.テ弍ヽ ＼: : :/l/-_ﾘ:仁_.l/l : : : :.:l: : : :l 脳噛のクソが作ったコピーや
|: : :| {{ し｡1 )ノ そ〒ﾃ弐ﾐヽ: : : : :!: : : l 平行世界から連れてきたもうひとりのコイツ、
| : ！ ヽ廴ｿ 辷 ｿノノ V . : : :.!: : : :! あるいはさらに訳の分からないものでも
/:| : :！ ´￣⊂つ/ . : : : :ﾊ: : : :ヽ おかしくはないわね。
/: .:| : : :l ′ ,r┐/. : : : : :.ハ: : : : :.＼
/. : :.:| : : : ＼ / l ∩: : : : : /: : :ヽ: : : : : :＼
/. : : : :| : : : : : lヽ､ ｀ ∩ l！l: : : : /L....: : : ＼: : : :
( . : : : /＼: : : : V::::〉ゝ --‐ ＜ l / / 〉.::::/.:::::::::::`ヽ: : :＼: :
ヽ:::::/.:::::::.＼: : : V:::l L ,.ィ´// /.:.::/.:.::::::::::::::::::L__: : : :
V.:::::::::::::::::): : : V /⌒V / /.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::): : :
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|「三人揃ってヒデーお」
|「そういう貴様自身はどう思っているんだ？」
|
| やる夫は首を傾げた。死んだマグロのように漆黒の瞳。死に毒されすぎて、何も映さぬ無明の深淵。
|
|「さっき『狂死』さんが言った通り。やる夫をやる夫だって証明することはできねーお」
|
| やる夫か、ニャルラトホテプか、それとも別の何かなのか。
| ではそも、やる夫とは何なのか？ やる夫の定義はどこにあるのか。
|
|「でも」
|「まあ」
|
| その後ろから、二人の女が肩を掴む。
|
|「この弱虫で甘ったれの臆病者が、僕に親しみのあるやる夫だ」
|「この優しくて不器用で人のことは簡単に信じるのに自分のことが信じられないのは、あたしの知ってるやる夫兄いだよ」
|
| 定義はない。観測と認識こそが全てだ。
| それはつまり。
|
|「そっちの『やる夫』もやる夫かもしれねーってこったお」
|「…………」
|
| 押し黙る先代。全く興味のない呂布。
| その後ろで『狂死』が乾いた拍手を送る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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__,. -ﾆ¨＜⌒ヽ--､
. _,.＜＞'"´i￣ ｀丶ヽ ｿﾄ､
／二ニゝ ﾉ_,,..、 Y'¨入
/>-ﾆフヽ::〉.''"二_｀丶 !、 ﾊ
i'"´,,.ｚェヲ' ｨﾃﾗ ｀ヽ ﾉ¨ﾞヽ
.. l./´ヽ'´ .ﾉ丶 ｀¨￣/´ ﾊﾇヽ_ｊ んっん〜。
ｊ ｒ｀丶¨ l. ''"´ / 〉｀ i
{ i´ら ､ l ヽ' l 大変感動的な演説だな。
. ヽｒ- ｿ!. ', ,∠_｀＾ヽ ,' なるほどなるほど。
.l ｌ ' ､_ ￣´./
「¨ミ>､ ヽ、 ⌒i /
/¨丶､ ＼ 丶 _._ ,'
/ ＞ ､ ＼. ＜,. -‐'"
,' ｀丶 ヽ/
;.ィ"´ ￣｀ ＞ ､ ＼∧ト､
／ ／ ', ＼ ヽi:ｒ‐!
. ,.' ｀¨´￣ ', ＼丶::ﾍ、
/ _,.. ⊥ ..,,_ヽ ＼::＼
,' ,. zヲ'"´ ￣｀ﾞ丶､:＼
; ／.／ ﾊ:::ﾞ､
.i /／/ ,. ''"´￣￣ ﾞ'' ｰ- .､. ';:::i
/ ／ 丶､!::i
,' / ﾞハ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「なら君らは本来行うべき答え合わせを後回しにして、有用な『やる夫』を両方利用しようって腹か？」
|「そうです」
|
| 剣呑に目を光らせて、とげどげしく問う『狂死』。
| 平然と答える蒼星石。
|
|「こちらのやる夫は得体のしれないものである可能性以上に、有用です。
| この世界を守る能力を持ち、尽力している……もちろん」
|
|「マッチポンプでなければ、かな？」
|「はい」
|
| 満足そうにうなずく『狂死』。
| それは、どちらの『やる夫』にも言えること。
|
| 東京を守るために動いている。
| 自分の撒いた種である可能性もあるのだけれど。
|
|「やる夫についての問題は、他の問題が片付いた後でいいと、僕は考えています」
|「『彼ら』こそが根本的問題かもしれないのに？」
|
| デマゴーグ。不安を煽る言動で民衆を扇動し戦争へと駆り立てるもの。
| 二人のやる夫が二人揃ってニャルラトホテプでデマゴーグであるなら。
|
| 二人の排除で事態は収まる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, -=＝＝､、
／' ヽ
/'
/' _. .-: :―: :-. ._
_〃´-:―: ､: :｀: : : ､｀丶、
／: : :_: : :-: : :_:ヽ: : : : : ＼: 丶
/: : : : : : :｀: :- :､: ｀丶、＼: : ヽ: ヽ
ｆ : : i:､: ＼: 丶:､: :＼ー ｫ ､:ヽ､; :l: :!
| : : ﾊ:ヽ､:_＼ー-ゝ￣ヾ _.- ﾄ､V: :!
|: :/: 小､;':＜￣ ｆ ）:::ｉ ﾘ|: 大､=､、
V/: /ﾊ / ￣＞=､ 丶- ' 'ｲ- ､l! ヽ
ﾊ: 〃:∧ ｆ ）:::::} ヽ !＼ﾉヽ …………ん？
!: ハr-＝_- ヽ｀‐' ' /＼ ヽ ヽ
〉〈 | f (ヽ ＼ r_) / ＼ヽ ﾄ､
!: } トﾆ二´ ヽ ∧ ／ |_」
〉〈 〈::〉 ｀ハ ―-- -- 'ﾉ i／ ／: : ＼
ヽﾊ 〈::〉 | ＼＿＿＿＿/r:＾ヽr: :':´ : : : : : :ヽ
ヽV:ﾉ |＼＿＿＿＿ ヽ-ﾘ: : r_┐ : : : : : ',
い / ＼＿＿＿＿ /￣: :rへ: : : : : : : : :!
∧:>―ｆ l |: : : ｎ:ヽ ﾉ : : : : : : /
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い {｀丶、 ｀ ― - ┘ !: : : : : : : : : : :|／!
Ｙヽ｀ト､ ｀ ー― - |: : : : : : : : : : :ｌ |
ｰ辷ゝ ｀ ー ―‐┬‐': : : : : : : : : : / ﾄ小、
ヽ 八::::::.. : : : : : : ／ /ﾍf ヽ
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| 急に、キョロキョロと落ち着かなく周囲を見るアリカ。ルイズが肘で小突く。
| アリカの様子に眉を顰める呂布。目を閉じ、首をひねる。
|
|「魂を震わす何かを感じたか？」
|「分かんないけど、何か……ばっちゃなら『私のゴーストが囁くのよ』って言いそう」
|
| 虫の知らせ。
| ちょうどその頃、地下で慎二が反撃の狼煙を上げていた。
|
| だが、異界として隔絶された空間での出来事だ。
| 常識外れの異様な直感を有する呂布ですら感知できない。
|
|「特にこちらのやる夫は危険ですね。世界の破滅に関する知識が多すぎる。
| マッチポンプノ可能性を捨てきれません」
|
|「え、そんなふうに見て他の顔？」
|「君は怪しすぎるんだよ」
|
| 突然封印から解かれて、何が『十壊』だ。
| その上、スーパー運命破壊マシーンでやらない夫とアサギによる破滅を止めた？
|
| 冷静に考えると怪しさ大爆発だ。
| 特に止めたとされるやらない夫とアサギの破滅も、やる夫以外には観測できていない。
|
|「所で大事な質問なのだが」
|
| 忘れ物を思い出したかのような顔で、『狂死』か口を開いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ト､./ i i i ､. /〈 / r／ィ 7 i
ト,/¨`ー──一´ーイ￣￣￣ ７ . _i､
rく|::: ::: ::: :/: ﾉ: :: :: :: : : i/／ i i
.. / ﾄト-､: ::: /::/: : / : :: : : : i/ /|
| t | ,ミﾐ､::: :i: :i: : ﾉ /: : : : . i ／ /
／! Y ヽ､ rx ::Y:: :/ / _ - /／./
¨ヽ ti ! ゛T´ :| トｲー ニ¨ - ラ¨/ /
i ,i i . |r.イ くｰr三テ､ / ／i
i .i i. ﾚ ∧ ヽ ヾ-- ´ ﾃ 7イ 君ら、陽動目的でいいんだな？
l ,i i ir' ／ / i､
i !i ミ_ - /. / / i､
. i i､ 入＿_ ／ _/ | r'/ i
i . ｜ ヽ ＿, ヽ ／ ∠´/ ヽ_Y /
/ ヽ_ , イ / ）'
¨ ー- イ彡 . / ¨ ,ィ
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|「え？」「あー」
|
| 身も蓋もない。しかし突然の確認に、ルイズとやる夫は対処できなかった。
| アリカが無反応なのは、さっきからどこかぼんやりしているせいである。
|
|「いいえ、最後通牒を突きつけに来ました」
|「…………脅迫か？」
|
| 同様に、突然のことに驚きながらも先代。
| 間桐臓硯を脅す？ 馬鹿馬鹿しいとは思いながらも。
|
|「協力しなければ『弓兵』と遠坂凛を抑えておけない。というだけです」
|「立派な脅迫ではないか」
|
| 鼻で笑う呂布。不機嫌な先代。そして『狂死』はつまらなさそう。
|
|「全部、陽動のための狂言か？」
|「まさか」
|
| 蒼星石は頭を振る。そう、彼女の目的は違う。
| だが、それを仄めかした所で、もう遅い。
|
|「もうよかろう、ぶちのめして生きていたら捕虜にして聞けば良い」
|
| そう言って、呂布が矛槍を手に取った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.．..._'ニニニ''::::..．
／,．'´ ` ヽ､｀ヽ
,..:'::／___{彡''´::￣｀ヽ ヽ:::ヽ
./.':´:￣::::::`:::::::::::::::::::::::::＼ ヾﾊ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀..ー- イﾊ
{廴ノ/::::::::::::::rz､.ｨ:::::::::::::::::::､::::::::::::::::-＝' ミ:i､
フ:::,ｨ::::::::::::/｀¨¨j::::ﾄ､::::::､::::::ミ:､:_:::::::::-＝:､:::ヽ
{:::/!:::/::::i:::{ ヽ::::＼:::::＼::::::::::￣::≧:::ヾハ:i
. V八:i:::::::ﾄ:{!_＿＿ ＼::ヽ＞;;≧＞z､::ヾー､:ﾐ:::i
,/::::::::Y､::从￣__￣ ` ヾ ´￣__￣￣ヾソ::ヽ::::l
,.'::::/: 八ヾ .《了Y不ﾐ ｨﾃ杯下》 .,' /:::::::::l
,'::: /:::::::::ヽヽ 弋zｿ i 弋zｿ /,ﾉ:::::::::::ヽ
/:::::;':::::::::::::::＞､ ￣ j! ￣ ./く::::::ヽ::::::::',
,．＜::::/::::::::::／ ∧ ./ ＞､:::::ヾ::八
,.':::::::::::::ノ:::::::::::::＼ .＼ ｀ｰ=－' .／ __／:::::::＼:::',
{::::::::::::::::／:::::::::/::::::＼} //∧＞.. ...＜从＼/:::ヽ::::::::::::::::::::ヽ､
{::::::::::::::::::::::::: ノ:::::::::／／ノ ＼ ￣ ／ V ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::＼
i､_>:::::イ::::::::::::／::: ／／:/ ＼ ___／ V__ ヽ::::＼::::::::::::::::::::::::ヽ
｀ｰ Y:::::::::::::::/;;z..ｨ＜: : : ! ､_ || __ ノ i: : ＞.､.V::::::ヽ:::::::::::::::::::::::）
（::＞ ''´V: : : : : : : : i ／＼ ,j: : : : : :＞..．:::}:::::::::::::::::::く
V: : : : : : ::∧ ／::::::::::::＼ ∧: : : : : : : :V
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 夜ごとに思い返される悪夢。
| 物理的な痛みすら伴う最悪の瞬間。
|
| あの日、約十五年前。
|
| あのときも寒い冬だった。
| 凍えるような木枯らしと、刺すような雨の夜だった。
|
| まだ夢宮士郎だった『弓兵』は、間桐雁夜の手引でこの地下空洞まで侵入していた。
| まだ十代の遠坂凛も一緒で、当時殿を務めたのは『万魔』ではなくレナだった。
|
| レナ・セイヤーズ。
| いや、既に士郎の妻であったため、夢宮レナであったが。
|
| 地下空洞は、あの日と何も変わらない。
| 脈動するかのような赤光。張り巡らされた結界。
|
| そして、穴蔵の奥に。
| 底なし沼のような、蟲のプール。
|
| 士郎は蟲にまとわりつかれ、穴という穴を犯され、身悶え喘ぐ間桐桜を引き上げた。
| 蟲どもを焼き払い、上着を着せて、朦朧とした桜を連れ出そうとした。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿ _＿__
''´ ｀ヽ´. ｀丶、
／ ` ､
/ ヽ
/ ／ ヽ
/ / / '，
. , l / / l
′ | | / / ヽ |
| | ./ / / '，
| | | | ./ ,ｲ | | ',
| ｧ^| | | |i |:{ | | | }
| |f | | | |l |ﾊ , , | }
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| l :| |:::::::::::::: ヽ|:::| ／// / /
| , : | |＼:::::::::::::::: ﾉ_,,ィ::::/ｲ /／.!
, : : :| | 、￣ ＾)し,ｲ.| |
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/ /: :|:: |:: | |zz≧≦.: : : : : : : :. :.| | う、うう……ああぁぁ……。
/ /: : :|:: |:::ﾊ. |:::::|:::::::|zzｘ,＿＿＿_|__ |
. _/＿_rzz': : |:::::ﾊ. |:::::|:::::::|､:::＼:::＼::::::::::::≧s｡
／／:::::／:::::::/:::::|:ｉﾊ |:::::|:::::::|::＼::::ｧ―＜￣￣＼:ih､
／／:::::／:::::::／:::::ノ.....ﾊ |:::::|::::::::ヽ::／ ,ｨ‐ ､ `'ー― /￣｀''＜
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| その桜に、刺された。
| まったくの奇襲だった。周囲に注意は払っていたが、桜には無警戒だった。
|
|「センパイ、センパイ……ワタシト、イッショニ…………」
|
| 桜の下腹部から伸びた黒い触手が六本、気がつけば士郎の腹部に突き刺さりのたうっていた。
| ヒョウモンダコめいた神経毒と、内臓を食い荒らす卵を植え付けられ、良くて即死、悪ければ苦しんで助からない。
|
|「イッショニ、シンデ」
|
| 何が起こったのか分からず呆然とする凛と雁夜、桜は士郎を確実に仕留めるために、次の触手を上半身に向けた。
| 心臓、喉、脳。士郎は動けなかった。防げなかった。
|
| 霞む目で最後に見たのは、自分を庇い胸を貫かれる妻の姿で。
| そしてそれが、士郎がレナを見た最後になった。
|
| 一週間以上生死の境をさまよい、肉体と精神のショックから記憶を失った士郎が、何もかもを思い出すまで数年。
| その後は、ずっと悪夢を見てきた。
|
| 大切な後輩が、愛する妻を殺す夢を。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ ／ヽ ／: : : : : : : : : : : : : :￣｀ : :、
〉 八 } ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
／ / ヘ ノ ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
ィ ヽ ／ ／: : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾄ: : : : : :ヽ
＼/ , : : : : : : /: : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : j: : : : : : : :.
/ /: : : : : : /: : ／: : : : : :/ : : : : : : : : : /￣￣￣￣入
＿ ノ /: : : : : : /: : /: : : : : : :/ : /: : : : : : : /＿＿＿＿/ 介
/i: : : : : : /: : /: : : :| : :ｲ : :/ : : : : : ／ ＼ ヽ / ハ
/: !: : : |: :/: : /: : : : i: / !: :/: : : : :／ ｀ヽ ＼ V
/: 川: : :|: j: :/八: : : :i/ /: //: : ／´￣ ＼ ＼ |
. : : :八: : {ﾊ从 ヽ从{ ＞ ´ ノ 7￣｀ヾ }:＼!
/: : : : j: : :i| ／ / r 人 j: : :|
/ : : : : |: : : } ／ / ヽ､ / }ト /: : : |
. :＿＿:_:ｊ: : : :i ／／ . ―､ ¨ﾞ ｀⌒ ｨ､⌒ｊ: | センパイ。
|: : : :V / ,ｲ ヽ _ソ ｲ: :! センパァァァイ！！
|: : : : ∨ {ｨ ﾊ / ／: !: :レ´
|: : : : : ﾄ ﾏ､＿＿ﾉﾉ ..ｪ┬彡≧ｭ:|: : : : : :
|: : : : : i ＼ ﾟ ー― ´ ／ / jニニニニｭ: : : :
＼ : : : : : :ﾊ ヽ _。 ≦ /ニニニニニニ
＼ / |: : : : :i ミ ≧＝ニ二 / ／ニニニニニﾆ/
＼{ !: : : : ﾄ ヽ ／／ニニニニニニ人
｝ |: : : : :! ＼ ミー ＝彡 ／ニニニニニニﾆ’ ＼
i !: : : : ﾄ ｀ー――― }￣￣￣￣ ミ 、イ
｀ヽ､ i |: : : : j ＼ ｲニﾆ 〉 {
|:ﾄ、≧、i|: : : :/ 彡ニニ} / ＼
|:} ー i!: : :/＿＿ ＼ / ＼
|: V l : / ￣￣￣￣￣ ― ＼ ＿ ノ
ﾉ: 八 |: { ＞――＝ 、 ミ 、ヽ
: : / ｀ミー}: :!＿＿＿＿＿＿＞ー ´ ヽ ＼
: /ヽ j:ｲヽ＿＿＿＿ { ノ＿＿ ノ
/ ＼ ノ八 ≧＝――≦{ }≧ｭ。＿ }
＼ ＼ ￣￣￣ 八 | {｀ ー―
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| 咆哮、振り下ろされる腕。
|
| 地下空洞の戦いは新たな局面に至っていた。
| 理性の感じさせない、虚ろな叫びがこだまする。
|
| 凛の炎に焼かれ消滅しつつある臓硯の束縛を離れて、間桐桜は狂乱した。
| 死と破壊を振りまく怪物に成り果て、目前の士郎……いや、『弓兵』を排除しようとしていた。
|
| そう、亡き妻の仇を討ち、桜を助け出すまでは『弓兵』は誰にも合わせる顔がない。
| 故に名もなき『弓兵』なのだ。夢宮士郎はそれまでお休みだ。
|
| あの時。幾度となく繰り返した自責。
| 桜に油断していなければ、レナは死なずに済んだかもしれない。
|
| 桜を助けられていたかもしれない。
| そして今では、すぐ近くに怪物として横たわる雁夜も……。
|
|「破ァー！」
|
| 巨大な拳を受け流す、左手で押し流しながら、巨大なパワーが『弓兵』の全身を回転しながら駆け巡る。
| 上半身を倒しながらの回し蹴り、その威力には桜のパワーが乗っている。
|
| 自分自身の破壊力を手首に一点集中され、桜はよろめき転倒。
| その右手首はありえない方向に曲がり……もげた。
|
|「イタイ」
|
| 手首からドロドロと胆汁が流れ落ち、花畑を溶かし沸騰。
| その胆汁から無数の触手が伸びる。痛みを伴う記憶と合致。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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､ / |/ ／ ／ -=＜ _
/ ∨ ／ ＼
l＼! ／ ￣ヽ. ＿＼
∨ヽ / ／ -― ＼
∨ /| | ／ ＼
∨ ヽ| | ／/ ＼＿＼
l ト ､ l / ／ ＿ ＼
l ! ヽ _ , - ＼ |
i! ｀ ´ ´ ´ } ／ トリ
{ヽ i ∨
∧.r＼ ヽ ／,､ Y |
l ヽfｫ､{ / _, ＿ -‐ 'Z ﾐ// / } ﾊﾉ 慎二、ターニャ！
／.} ｀ ｀ ヽ - ‐ﾋ て不ﾇｯ 〉-' } / こいつも臓硯と同じだ！
/. : ∧ / ｀ ¨¨´ /ノ／!´
/. : : : ∧ / _ ｲ从ﾄヽ ガワに騙されるな、
/. : : : : : ∧〈 / ｝: }: | 中に本体があるはずだ！
/. : : : : : : : ∧ ､ / ,,ｨ｝ 〉. :.|
{: : : : : : : : :{: ∧ ヽ , ' ,,ｨﾁﾆ /. : :.|ヽ
|: : : : : : : : :|:ムﾑ , ' _,,ｨﾁﾆニ／. : : :.l: :|
|: : : : : : : : :|:{ﾆ/ .＞ - r＜ﾆﾆ彡三ニ=.' : : : : : : :/. :.ヽ
∨. : : :／._:.!:ﾄ.| {rﾆﾆ=-.':´:.: : : : : : : :: : : /. : : :∧
} : ／ト//.:ｲ. ト､ |: : : : : : : : : : : : : : : : ／. : : : : :∧
{.:/ : ヽX. ム ヽ_,＞､_.ﾉ. : : : : : : : : : :_:_:.-‐. . /. : : : : : :.∧
|/. : : /ヽ）{ア . _＿／. : : : : : : : :´ : : : : : : : /. : : : : : : : : :.}
|: : : /. : : ＼{ {ﾆﾆ{: : /ヽ . : : : : : : : : : : : /. : : : : : : : : : : ｝
|: : : : : : : : :｛＼{ﾆﾆ{: : l : l : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ∧
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|「遠坂に焼いてもらえよ！」
|「中身まで焼けてしまうぞ？」
|
| 焼死体そのままの見た目で動かなくなった雁夜から『万魔』が離れる。
| よたよたと駆け寄る慎二、指を噛み切って血を与える。
|
| つもりが、がっしりと頭を掴まれて丹念にディープキス。
| 白目を剥いてけいれんする慎二。絡まる舌、溶け合う粘膜、情熱的な吸引。舌を噛み切られて吸血される。
|
| 恍惚の表情で舌なめずりする『万魔』、浄化によるダメージの回復。
|
|「魔力を回せ、慎二。年季の違いを教えてやろう」
|
| 人間サイズの雁夜と違い、巨大な桜相手だ。
| 『弓兵』が攻め、『万魔』が防御。慎二が応援という役割分担。
|
|「いいか、『エレシュキガル』が効いてる。削りきれ！」
|「急がば回れ、ある意味合理的だな」
|
| 花畑による魔力抑制、落ちた胆汁は短時間だけ虫や触手の苗床になる。
| だが、一分足らずで花に埋もれて消えてしまう。凛様様と言ったところか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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∨///////////／"￣￣￣￣｀ヾ 食い尽くしてやろう。
∨///////／ ! / ,l. ∧ ﾄ､＼ ハ
V////／! lﾊ/'ﾚ_` ＼!,.ﾍ_;ﾉ! ;
∨//,' ,.! ! .kｒfヽヾ. kｊ川: ,
;V' ,'.r-､! l. .!｀ ´ ハ, ﾄ､ _.ゝ.._ _
/ﾐl ｉ i 'ヽ! l. ! ; .l ｀丶､._ ,. -‐' ,. '´ ⌒!｀:/ ヽ
,.'/ ! ､: ヽ.._! l .l. ' .´ / : ! ｀ヽ l ./ / 'ﾞ｀､
/ミミﾐヽ,、 ! !.l._ /i !.| ） ,.-/ ｰ/ ,／ ,)､
,'ミﾐﾐﾐﾐ{ ｀` T ! ﾄ､.｀7､ ´}.l! | l '" ,{ 〈. '_.／ ,. ﾉ
. lｲ ,.' !｀l丁`'､ ﾞ.三l.{ーヽ! ! | ｉ´ i, .' ´, '.､
. ﾘミ'/ ! l ｛.,_ l 、 ﾞ.ﾆl.i､_ ｀ヽ｀ｰ,.､ ,' ヽl , ｲ:.､ ﾐ.、
!,,,,i ! _l,..///ヽl. ヽ. ﾞ.ー.､ﾞヽ ゝ./∧ { ﾞ､ !:::::::::::. ヾ
〉‐7///////∧ ヽ ﾞ. ヽ ＼ `､/∧ } ヽ!_:::::::::::. }
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| 『万魔』が髪の毛を引き抜く、生まれた甲虫の群れが桜に群がった。
| 花畑から供給される魔力、一度はへたり込んだが生まれたての子鹿のように立ち上がる慎二からの魔力。
|
| 『万魔』はずっと独りだった。
| しもべはいた、しかし彼らは『万魔』の一部、甲虫と同じく仲間ではなく武器のような存在だった。
|
| 完全に背中を向けて、一切の警戒もなく桜と戦う『弓兵』を見る。
|
| 自分の背後には慎二と凛。誰かに背中を預けたのも、預けられたのもいつ以来だろうか。
| 少なくとも、『万魔』になってからは初めての事だ。
|
| 慎二との繋がりを感じる。
| 『弓兵』の信頼を、凛の援護を感じる。
|
| 応えなくては。『万魔』は強く想う。
| 自分は『十二の封印像』の悪魔が一柱『万魔』……である以上に、彼らの仲間のターニャなのだ。
|
| 『万魔』改めターニャの操る甲虫はモーター音のごとき不快な羽音の大合唱と共に桜の巨体を覆い尽くす。
| 邪悪な不定形生物の様な威容、悲鳴を上げ、両手を振り回して暴れる桜から『弓兵』が距離を取る。
|
|「イタイイタイイタイイタイイタイ！！」
|
| 甲虫の暗雲が桜の表皮を食い破る。
| 血液の代わりに沸騰した胆汁が滴り甲虫を焼くも、ターニャは失う以上に呼び出して対抗。
|
| 体長10メートルの巨人と言えども、全身にまとわりつく小さな虫には無力。
| サバンナでグンタイアリが巨大な象を食い殺すのにも似た凄惨さ。
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i|: :l : l: :ｌ.', : : : :|' 斗＜´ｌ:.ﾘ ｧ く:.､ ベ＾＼ ` ＜
ｌ|: :|: :ⅣＮ＼ : :| ァ芹芥㍉ ; }: :＼′､ ＼,.＞‐……‐＜
∧ |ヽl / ＼| 乂..ｿ / ﾞ ﾉ: : ＿`__ー-- ､、 ､、 ` く
i|:`: :心、 .′ ｀¨´ .r ^ア;.;:;:;:;:;:;:;:;＼ ＞ ､ ｰ- ､＼
l|: : :l:i! 心、.′, -..､ ｨﾞ /;.;.;.;.;.;:;:;:;.;.;.;.;:;`､ ＼v ＼＼
l|: : :l:ｉア iト ,ヽ:::::ﾉ .ィ ／};:;:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;.;.;:;:`、 ＼V
. l|: : :l７ }ｉト.＜,__,.＞'’;};:;:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;:;:;:;:;:;∨
l| : : :′__ '， └- 、 }!;:;.;.;.;.;.;.;.;:;:;/ ~ ｀ヽ∨､
,.斗r ァ'" ＼､ィ____ ＞ ｧ'"´∨￣￣｀`'〜､′丶` ∨:.､
ア´ rｰ＜′ ‘,.ァ'" ／ }‐ f¨¨< `'＜ .∨:.＼
／ r‐=ｧﾞ'"^ ､ .ｉ′ く γ⌒>-┴- ., ` ＜ `'＜: : : ＼
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. | く ｜/ / ｀`〜 ､、 | ／` ,`ｭ ＞ 、 '， /: : : : ＼
/〕ト ,/ |_l { / /｀`L.｡s≦⌒｀` ┘i---‐‐…＼ }ｲ: : : : : : : :＼
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| 雄叫びが地下空洞を震撼させる。
| だが、絶叫と同時に口腔内に侵入する甲虫。体内からも食い荒らす。
|
|「来るぞ！」
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| 『弓兵』の警告直後、桜の全身から伸びた黒い触手が甲虫の群れを叩き潰す。
| 触手の正体は沸騰する胆汁そのもの、触れた甲虫を飲み込み、叩きつけられた壁を割り、花畑を散らす。
|
| その触手に喰らいつく甲虫、食い破り四散させる速度と、飲み込まれ吸収される速度が拮抗。
| 千日手？ もちろん違う。
|
| 桜の狂乱した瞳が、ターニャに焦点を合わせた。
| 天井に傷を付けながら、触手を束ねた瀑布のような一撃が叩きつけられる。
|
|「感謝するんだな！」
|「ありがとう慎二愛してる」
|「う、怖っ」
|
| 慎二が放つ呪詛の大槍が、触手の強打を反らした。
| 花畑を叩き割り、クレーターを作る触手。だが、花畑に魔力を吸われて端からボロボロと崩壊。
|
| 崩壊する端から食いちぎる甲虫、暴れる桜。
| 全身から伸びた触手がミキサーのように振り回される。壁を天井を花畑を抉る触手。
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| ふと凛と慎二へ振り向いたターニャは……見た。
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/ ｲ / ,rｰ‐‐ ､＼. | / ､. / ／
/／/ / ヽ f⌒l ヽ ＼_ | l / l /／
/ / ｀ ﾞ ﾗ＝´ .ミ | / ___ | ／
/ x‐ｙ ヽ ｰ' ‐ﾗ‐=ﾆミ､ ｀ レ
./／|:Y 人 / ヽひ Y /
' |:.l . 〉 } ｀ミｰ '
|.ｲ 〈 / /
リ＼ ヽ /, _ . . . . .
∧＼ Y ｨ' .-‐ ｰ- ､ ,ｨ≦: : : : : : : : : :
l | ヽ ｀ ｰ- ､ 彡ｨ ´ : : : : : : : : : : : : : : :
从 | ∧ ,ｨ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
从 ､ ,ｨ' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
| ﾍ _ ,ｨ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
| ∠: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
rﾍ ／｀Y|, -‐‐／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
{: :ﾑ {ﾆﾗ'´| ／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾏ: :ﾑ-ｷﾑ | /. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾏ: :.}:∧ ∨／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| 一方で呼吸を整え、気を練り、タイミングを見計らっていた『弓兵』は、触手のミキサーをくぐり抜けて肉薄していた。
|
|「『霊光……」
|
| 地面すれすれに横殴りの触手。『弓兵』は電柱よりも太い斧のような一撃を右腕で受け止める。
|
|「波動拳』……！」
|
| おお、しかしその一撃は『弓兵』を真っ二つにするどころか水のようにすり抜けた。
| それどころか、右手から入った衝撃が『弓兵』の体を通って左手に流れ込む。
|
|「奥義・『霊光反射鏡』……」
|
| 触手の威力の乗ったフックが、桜の巨大な乳房に突き刺さる。
| 激しく揺れる双丘、もちろん趣味や嗜好による攻撃ではない。もちろん。
|
| 心臓だ。桜の本体があるとしたら、心臓か脳だという想像による。
|
|「『光浄裁』！！」
|
| 地鳴り、『弓兵』を中心に巨大なクレーターが発生し、花吹雪が舞った。
| 桜が常人であったならば、全身の気脈を駆け回る純白の光に内側から灼かれ爆発していた。
|
| 全身の傷口、目口、その他にも何箇所かから光が漏れる。
| 常人ならざる巨大な怪物でも、内側を灼かれ爆発四散するのは同じ。
|
|「おおおおおああああ！！！？」
|
| 胸を掻き毟る桜。傷口から漏れる光。
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/!/ / ／ イ ＜ l!/
/ { ／ ＞ ｀ 、 |! /
/! ／ ７ ヽ .lﾚ
/ ! l /／ .／ .／ ∠ｨ 、 〈
〈 | { . / .／ﾍ ﾉ __ .! ヽ
＼.＼ Ⅵ / ／ ∨彡/ ハﾊ } _ __ } -‐
ヽ_ l/'"´ .,ｖ´"' .} } .|! {n}ﾉ ﾉ ｲ､、 ´
＼ r'"｀゛ﾞ" ﾉ,.ｨ' Yﾘ .|l_ {＞Xイ ／:::|::}ﾊ_ ／
/＼l } ,.ｨf.ソ ｒ }__￣｀V_」=彡:::::::,':Y::}=ミ 、ｰ=ミ ／
, `ゞｰ-=ﾐゝ. ト彡ｰ } ／::::〈::::::::::::::::::::::::::::}､::::::::ヽ ＼＼ ＼ー=彡
{., ヽﾞ"´ ヽ /イ::::) .}:::::::::::::::／:::::ﾉ::::ヽ::::::} .!.｀ヽ ｀ ー- ―
〃 ゝ }_ ィ ==ｧ./ ﾆﾆ´_. ＼:::::／￣｀ヽ::::::::}ｰ:ﾘ .i | ＞
./′ ﾆ=- ヾ{辷ノ .'､::::::::::::::::＼ ／:::::::::::イ⌒):::::／ ! .人 ´
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{ ´ ,/-‐一へ´::::=彡::::::::＞ ´ ∠ ＿ー＿-
', ／/￣ ﾄー=彡￣ -‐ ´ ＜＿
＼ ／ / 〈 ヽ 〉 イ／￣ ｀ー-=ミ
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| 『霊光波動拳』。夢宮アリカの祖母……つまり『弓兵』の母が使っていた退魔拳法。
| 全身の気脈を操り、超人的な肉体能力を行使できるようになる。
|
| 『弓兵』は魔力の弾丸を放射するのは苦手だが、自己強化は得意だった。
| 得意と言っても、母親ほどではない。
|
| あのバケモノは、肉体能力を限界までま底上げした結果、一時的にとはいえ全盛期の若さまでも取り戻せた。
| あの領域に達するには、あと何年かかるだろう。
|
| そもそも一生涯かけても手が届くかすら怪しい。『弓兵』はその頂を見上げ続けてきた。
| おかげで、慢心に負けることなくここまで強くなれたと思う。
|
| 『霊光波動拳』の中でも、『光浄裁』は特殊な技だった。
| 邪悪なものを滅ぼし、善なるものには危害を加えない。
|
| アンデルセンや佐倉杏子の武器が人体に無害なように。
| いや、あれとも少し違う。
|
| 『光浄裁』は邪悪のみを選り分けて消し去る。体内に侵入した悪魔毒や寄生悪魔などを除去するための技なのだ。
| それを『弓兵』は桜に打ち込んだ。
|
| 本体核が『善』であるなどという期待からではない。
| この奥義でも、祓いきれないだろうという忸怩たる思いからだ。
|
| それでも、この体積を半分にまで減らす位ならば……！
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辷＞| Ｙ´: : ヽ : :｀ヾ∀ ﾄ､
／: :_乂ﾘ/ : : : :｀: : ､.:.:∨: :|
/⌒ヽ､ ./: :∠, //// / //ﾞ"| ﾄ､│:.:|
|: : : : : :＼＿__ノ: : : :.:,У Wヽ从|｛ ﾘ∠l/: .:ﾄ､
|: :r'⌒＼: : : : : : .:.:.:./|: : ｒ 汽ﾋｿヽ ﾋｿｲ: : .:| ＼
ー=彡ノ ヽ､: : :.:.:.:.ノ.ﾉ: : :ゞﾍ ＿,丶人:.:.:.:＼ ） 士郎！！
. ⌒＞──-､＿／:.:_: : : : ﾄ＼〈_ ｿ／: : ﾄ､: : : :＼
"⌒): : : : : :__rヘ'´ ヽ ＼_≧彳､: : :| ＼: : : :）
／￣￣ヾ ,ゝ 〉 `｡ ｡´ ∧ ）／
（､ ＼| / ╋ ヽ| ｿ
. :＼｀ヽ､ ￣｀弋ー─-ﾍソ､ ゝ─ ┃ ─-ﾍ
ｰ=彡ノ⌒＞-ﾐ ｏｏ了￣ﾌ込.__＼ ﾉ
´）:.:.:.:≧-､_大ｰ' r─〒′ Υλ
（ r‐ﾗ: : : : : :.:｀ヽ）:.:.:.:〉 |. ＼
. ヾ {ﾊ: : : :爪/}: : :.／ ∧ ＼
） :ノ＿,⊥イ .〈 ＼ ＼
￣ 〈i:i:i:i:i:ｉ:人＿ | ＼ ＼_
レ'´i:i:i:i:i／ ｀>､ .ｲ ｀ヽ ﾟ｡|
／i:i:i:i:i:i／ｉ:ｉ／ｉ:ｉ/＼__ イ:l:l ﾄ---ｲ
＼i:i:ｉ／i:i:ｉ/i:i:i:ｉ/i:i:i:i/i:i:ｉ|:i:|:＼ ι⌒! |'
Υi:i:i:ｉ:/i:i:i:ｉ/i:i:i:ｉ/i:i:i:ｉ|:i:il:i:i:i＼ J
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| 技の入りは完璧だった。あとは効果を継続させる必要があった。
| であるのに、元妻の悲鳴に『弓兵』は集中力を欠いてしまった。
|
| 自分のことで、あんな悲鳴を上げる女ではない。
| 凜が叫ぶのであれば、それは親しい誰かが傷ついたときだ。
|
| 空気が重く、時間が粘るように遅く感じた。
| 振り返った『弓兵』の目に映ったのは、凛と慎二を庇うように立ったターニャ。
|
| その頭を、怪物のような雁夜が食い千切る瞬間だった。
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☆ 次回予告！
『集会』は、いまや新たな顔を見せていた。
やらない夫が用意した蟻地獄の罠。
用意された舞台に食い付いた獲物たち。
壮絶な喰らい合い。
並び立つ敗者の名簿。
そして、勝利を掴むために最適の手とは。
次回、最終幕八十五話『『血族』の猛攻』
果てに見るのは破滅か死か。
あっちもこっちもエラいこっちゃ
油断大敵乙
雁夜の相手できる人員がいなかったからなあ
婆さんキャラってあんまおらんから選択肢としては少ないんだが
乙
. ／l￣｀ヽ-´￣￣｀| -☆;─┐
. ｌ |. ／ ｨ , ￣￣ ＼ /￣ヽ
\弋 ｀/, {_| | |l Ｙ ﾉ |
|._､ ｀‐| 乂匕j ＼_ﾌノlﾉ |ヽ. l |/ /､
.ｲ__l.l‐_ﾌ､ｉ､ｉゝ ﾏ-__>ﾉ |--‐___|_
. ／ ﾊ .x==x｀ x==x /- /l'-/ _／ チョイスターイム！！！
( / ﾚﾊ /lﾍ´ ＼ﾇﾆｲ
ヽ､ l . レﾄ､ ｀ ´ /.ﾏ´ lﾉ | パンごはん麺類チョイスタイム
ﾄ-' ＼| | |＞ ..ｭｨ‐ 彳V| ／ レッツエンジョイ炭水化物！！
. ￣/￣,vﾁﾏﾌｭ ｨ‐-ﾞ-┐-､|/ , ｀-ｧ
/lｰ┘￣/ヽ |｀二´ヽﾕ ヽ´￣´ 俺のハンドルネームは『チクタクマン』。
| Y´ ｀ヽ' .}|´ |／＼-､ | これを見ている下位化身どもは覚えてるか？
｀l.| {| ./'ノ
. || /.| // 『満月の幻死』や『九月のトレース』で
. || ,'_,| // コメントしてた四人のうちの一人さ。
{.| ,' | //
ﾔ ./ | ｀}' 『ID:cHicK.ta』って言ったほうが通りがいいか？
|＼__/ﾟ ﾟ＼__／l
. ,.. -‐ ´￣￣￣/ |
_斗-‐ｧ─´￣￣￣￣＼_ / ＿＿
／ ￣￣￣￣￣＼＿ﾏ |／￣ ＞ ､
/ / _..-‐ 乂_ ,.､ , ､ ﾊ
|. l ／/ l´~ └i´ .ﾔ |
, -‐ " V l _ﾄ斗-＜ .| ｬ-､. ｱ_,､_l´ .＞ /
/ / 乂.__l ＼__l ｀| -' |. | | l_, -､_/､＿__人＿＿_.ノ
. | | ／ | ｀ーl‐" ,イ / ヽ | 十月の半ばから音信不通になった世界に
_! l/. V z=zx:x､ヽ ｀￣ アX ﾉ l l |/ ようやくアクセスできたと思ったら、
/ ＼__ >─l ｀ﾞﾔ __ ∠＼-‐_／ .| | なにやら無茶苦茶になってんじゃねえか。
,￣ > ﾉ/^i ,-l "" , z=zx､_ ｀￣フ / ./＼
｀ｰ=斗 ＼｀ ∧ ..._ ｀ﾞfｧ ∠＿／ .／ i ヽ 仕方がないから他の三人に声をかけて
l￣｀＜ ﾊ. / ｀ , ,, /´ .| ￣ ./ } こうやって再介入の楔を打ち込んでるって寸法さ。
. /" ‐-､ | ＼ ∧ ヽ / " ｲ ｌ ／ /
l ｀ ｰ-､人 |￣ .l＼ ｀"´ _／l´￣.l´ | , イ なのにフェイスレス以外は応答ねえ。
| ／ ｀, ∧ ￣￣￣厂厂 ＞_/ | ＼＿_／ _/ マジかよ、付き合い悪いぜ。
l _..／ { ,斗--＼ __/_/ 丁 |/ l__／ | く___,
乂_ l´ ∨ / ﾊ . ／￣￣＼ ア |／ /__＞ ｀-‐''" でも、負けない！
｀| ｀>.乂_ z‐' ｀‐ｧ l | ＼‐´ | やる気！ 元気！ 寝起き……ユメカワ！
V } l_ .丶-､__l_, ､_l .i‐_´ィ´ ＼ |
／ﾔ ./ ゝ, ￣￣ ﾉ / l ./ なんてな。
◎現状（八十五話開始時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
鳴り響く銃声と爆発で民衆はパニック？
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
ディオと交戦、誠と合流
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
偽ヤーボと交戦、自爆される
・四ツ目
トパス、アメシストと交戦後弾薬不足で撤退
・ミスト・レックス
ハッキング中らしい
・やらない子
ヤザンを足止め
・はやぶさ
やらない夫と同行
・アサギ、タカオ
やらない夫と同行中、ディオに攻撃される。アサギ、『滅ぼすもの』でディオを呪い死亡
・麻呂、白雪ひめ
やる気を減退させ、一般人を避難中
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
誠を探している
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中。
・誠
やらない夫に合流、タカオとアサギを治療。
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたいが、鎮圧されつつある
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦、自爆される
・龍田と石田
カルカールと交戦、やらない夫を取り逃がす
・ケンシロウ
暴徒鎮圧中、ジャンヌと合流
・杏子班
暴徒鎮圧中
・キオ・アスノ
暴徒鎮圧中、単独行動
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
ケンシロウと合流
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
ねずみ男の放屁をくらい、やらない子に足止めされる
・ロビン
天龍シグを下した
・トパス、アメシスト
四ツ目と交戦、再び足止めされる
・他のカトルカール
石田龍田と交戦、やらない夫を取り逃がす
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
ドローン視野で連絡係
偽ヤーボを自爆させる
・合衆国軍
一般人を攻撃、鎮圧されつつある
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちとアサギを殺害した
タカオに致命傷を与えた
アサギに『一人でおかえり』を憑けられ誤った囁きを受けることになる
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
/: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
/: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ | :/ |:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V
＜ : ｣_: : / _ _|/ ﾚ. ＼ ＼ ＼ : |
＜:: |. 小{ ｀ﾞ'''''' ‐-＼ ＼ ＼_ 積もる話もあるが、
厶ﾍ ﾊ ､ r--‐-､ >､ ｀ヽ ここは任せてお前は逃げろ。
＼_! ' ` ‐-､ ｀` `､
_, r´:/ : :| ヽ 'ー―-- ／＼ `､ この子達は悪いようにはしねえよ。
_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::| | ＼ ／ヽ :｀ヽ ヽ
_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:| ＼ ヽ _ , ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､ `､
_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| >-､ー_'/ !::.:.:.:.:ヽ: : ` 、 __ ＿__i__
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| 混乱続く芝公園の一角、血泥の沼で顔まで汚して、伊藤誠は凄惨に笑った。
| 立ち尽くすやらない夫、その隣にようやく戻ったニャンコ先生。
|
| 滅多に見せない感情を顕にして泣きじゃくるはやぶさに胸を貸し、最高級のキメ顔の誠。
| 彼の足元には倒れたタカオとアサギ。
|
| 二人の傷は、誠によって綺麗に縫合されていた。
| しかし、それでも、二人が安泰という訳ではない。
|
| 後ろ髪引かれるやらない夫。
| アサギとタカオは元々は友を助けたいとやらない夫を頼って来た。
|
| その友、『滅ぼすもの』で暴走したはやぶさとやらない子を正気に戻した後、
| 二人はやらない夫が困った時に手伝うと言ってくれた。
|
| その結果が、これだ。
|
| 二人はディオの姿をした怪人に襲われて瀕死の重傷。
| いや、死んでいないのがおかしいような怪我を負った。
|
| 怪人の嘲笑う声が耳にこびりついて離れない。
| デマゴーグ！ 人々を戦争に導いて破滅させるのはどんな気分だ？
|
|「止まらないでください」
|
| いつの間にか地面を見つめていた、うつむいていたやらない夫。
| 鼻をすするはやぶさに顔を上げる。
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-―-- _
, ィ´ ｀ヽ
,ｲ ｀ヽ
, ' ヽ ＿_ / ',
, ' ゞ=＝≦ｭ､ ｀ヾ ｌ
/ / ｀ヽ ﾊ ,ｲ
,' ,' / ', ｊ ハ やらない夫さんがやらない夫さんであるために、
l ｌ ,' ', / , ｲ ', まだ止まらないで下さい。
', ', ｌ !／／ ', ｌ
ヽ ＼!＿＿ ,, ィ-イ ', ﾊ
｀Tー--― ´ｊ ｌ ｌ ｊ
,' ｲ ｲ ﾊ ｊ ト
,' ｊ / ｌ { ＼ ヽノ ＼ /〉
! ,' { ', ヽ ＞＿｀＝≦ヽ__ //
| ハ ,イ ヾ ｀ー,ィ≦///////////ヽ｀ ＿_ ノ/_∨_∧_
l | Y ゝ ,≦/////////!ｌ/＞=＝≦´ ,,=≦´￣ ﾊ
', ', ｊｒ-＝=ｭ､////==＝≦/ ｊ＿＿＿＿,,=≦´ ,,-ｌ＝＝ｭ､_
ヽ∨´￣｀ ＝=ミ/ﾊ//////ﾊ￣￣￣￣ﾍ ＿＿＿,,ィ三三三三ﾆﾉ
/ ´ ヽ 〕､//////ﾊ {三三三{ ｊｰ､ｲ ｒ=､ヾ''
,' , ＜_＞ イ//////ﾊ ゞ三三彡'￣ヽ ,' ﾊ ',
_ゝ ＜_＞イｌ､ !|//////ﾊ ∨ ! ハ ! } ｌ
, ＜_＞ィ !|i ＼ |///////ﾊ ! ! ﾉ ﾄヾ__ﾉ/
＜_＞ ´ ', ' ､ !|i ∨ i///////ﾊ ! ﾊ ヽー' ﾉ ゝ-'､
´ ﾊ ヽ !|i｀＞-! ﾚ//////ﾊ ! ＞‐' ヽ ｲ/´ヽヽ
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|「止まるんなら、後始末の後だな。クソしてその後はケツを拭くもんだ」
|
| 赤い目のはやぶさ、ニヤニヤ笑いの誠。
| やらない夫は頷いた。そうだ、今は迷っている暇はない。
|
| やらない夫は死なねばならぬ。
|
|「伊藤さん」
|「立ち直りが早いな」
|「はやぶさちゃんを頼みます。その子はこの先の作戦の鍵になる」
|
| はやぶさが瞬きする。瀕死の二人とやらない夫を見比べる。
| 最悪の場合は、そっちの二人よりはやぶさを守れ、やらない夫はそう頼んだのだ。
|
|「俺を舐めてない？」
|「あのアレイスター・クロウリーを？ まさかだろ」
|「なら良し」
|
| 誠が薄く、邪悪に微笑む。
|
|「それと、やる夫が何かおかしい。見てあげてください」
|「…………考えておくぜ」
|
| そうして、やらない夫は伊藤誠と別れた。
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ヾヽ
_,.-‐'´￣￣ヽノﾉ-､
／:::イ::::::::::::::::::::::::::::::::＼
／:::／::::::::_;:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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_,ノ:::/／j:/ 乂:::7 ` /:::イ/ｲ`ヽ:::::|､i､:i
＞､::::::∧,′ ` 彳´ 7心､ ',:::从|
￣ﾑ::;_::::i 冫 ヽｿ〃i/:::|
´ ',:::〉 ヽ- ＿ /!:::::::j
j′､ `‐-､ソ /:ハ::::7
_,-､ィ､ ヽ ...イ::〃 j:::/ そういや、長門は元気か？
_,.ィ´＼::::＼ `ヽ､ `:y‐ ´ j:::::/ i/
,ィ´､:::::::::::::::ヽ::::::ヽ y<', iイ
i/::::::::＼::::::::::::::ﾍ::::::ﾍ人:::::iヽ､ ＿
j::::::::::::::::ﾍ::::::::::::::::::フ:ﾍ j::ﾊ i::::＼ jﾆ,）
/::::::::::::::::::::::',::i:::::く::::::::::ハ!::::',ﾍ:::<:ヽ i .i,-､_
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i´:::::::::::::::::::::::::::7ﾉ:::::::::::ﾍ::::::::::',:::::',.i::::::|:::ハ i´ ,r-</_/ﾉ!
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|「長門？ 委員長ですか？」
|
| 内ポケットから、フラスコを取り出す誠。中には赤く発光する謎の液体。
|
|「ああ、俺はあいつの後見人もしていてね。『品川大聖堂の夢』で一回死んだろ？」
|「……それは、彼が《ブギーポップ》だったと」
|
| 頷く誠、フラスコを逆向け、粘度の高い液体を地面に垂らす。
| 血液と反応した液体はじゅうじゅうと蒸発するような音を立てて、泡立ちながら膨らんだ。
|
|「ペルソナ能力を失ったと聞いていますけれど」
|「ペルソナ？ バカ言うなよ。アイツは『世界因子憑き』だぜ。水門と同じさ、ペルソナなんて持てねえよ」
|
| みるみると大きくなり、人間の子供サイズののっぺりしたヒトガタ（？）になる。
| 表面はヌルっとしていて、ハムみたいなピンク色、はやぶさは目を見張った。
|
|「え、これは……」
|「ただのホムンクルスさ、使い捨ての小間使いだよ。長門弟がペルソナを出せるならこれからだな、まあ元気で何よりだぜ」
|
| シーツを被ったゴーストめいたシルエット、頭部と思しき部位に突起。ペンギンみたいだとはやぶさは想像した。
|
|「朝霧の血で作ったからか、プリニーみたいになっちまったが、爆発はしないはず。
| あと三匹ほど作って、二人を運ばせるぜ」
|
|「……どちらに？」
|「警察」
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〃 j/ ／
＼｛ /〃
｀ヾ
. -=ﾐ j/／
...._ ＼ヽ ／ ∨ /'′
/ ｀ヽ＼,、 / V
. / ＼ / ∨
/ ’， ′ V
,′ ヽ.....ノ ∨
｛ /｀ヽ
‘， / , レう｝
‘， ﾍ、 / / , ─=イ {_,ノﾘ 消えな。
ハ i〃 ＼ ﾚ′/ ‘ ／ |忻ﾊ 丿 そうすりゃ追わねえ。
｛し｝ ! ＼_＿＿＿ __ｊ jﾉ /ミ＝彡′ lﾉ/ /／
Ⅵ乢、 ｀ヽ ＿‘｀彡ヘﾂ ヾ j/ //
＼∨ ^Ｙ ｀¨¨¨¨¨´ ｊ ｜ ｝ ｲ_彡'
｀`≧＼_ハｊ / ｛ しｸ ＼ /小、
⌒¨¨¨｀ヾ小 ＼ └-､j__/ ,ヽ ハ ヽ
|∧ } ,.,_＿＿ --一／ ｉ | ＼
|/∧ ｀ ー―‐=彡 ′j ヽ
|///＼ 癶辷彡' / /
∨/// ＼ / /
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| 首を鳴らし、銃火に晒されてズタボロのダウンジャケットを脱ぎ捨てるヤザン・ゲーブル。
| 彼の前に立ちはだかるのは、恐怖で歯を鳴らすやらない子。
|
| 二人は、前に一度だけ遭遇していた。
| やらない子は鎧袖一触だった。一発ぶん殴られて終わりだった。
|
|「尻尾を巻けば、アンタはお兄ちゃんたちを追うかもしれないでアフロ」
|「お兄ちゃん……なるほど、お前備府やらない夫の妹か。よく似てる」
|「え？ マジアフロ？」
|
| いきなりデレて、くねくねと照れるやらない子。
| 躊躇いのない殺意、命を投げ出す事に迷いがない。そこがヤザンには似て見えたのだが。
|
|「あんな口先野郎のために命を張るのか？」
|「あ？」
|
| 唐突な怒気。なるほど、とヤザンは納得した。
| この娘、兄の狂信者か。精神状態は『異端審問官』に近い。
|
|「あのクソハゲアニキの悪口を言っていいのはこの世に五人だけでアフロ」
|
| コートの前を開ける。露出狂スタイルのオープン。
| まろび出されたのは碁石の山。どこに隠していたのかザラザラこぼれ落ちる。
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
/ﾙ/:::::ﾘγ::..:::::..:..ﾍ、: : : : ::ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ（::. ::.ﾉ ノ ヽ､ヾ:::::（ ﾙﾉﾘ 父さん、母さん、あたし。
ヽ:::( （●） （●） ):::::ﾉ( それと翠星石さんとやる夫さんだッッ！！
ﾘ（i r‐- iｨ）)｀）
（（ﾊ:ゝ L 」 ﾉいﾉ:（ﾘ でアフロ。
,..ノj/ ｌﾍ_ /／ 丿lﾉ卜.､∩
_ ,､r‐" ､/ｌ("!´ っ..l ｌ |: ′｀'' | |-,／)
r-r;''´ `､／´ |ｌぅ夕 1ヽ..-.,,_ 丿}ノ /ノ)
(,_{ﾊ_ ,, ''-‐1 ‐／ ﾞ'〈/⊂ﾆ '" ニ⊃
ﾍ ノ,′ `'=>'''"´
ﾉ ／/
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| いつの間にか両手に持っていた折りたたみ式の碁盤、やらない子は迷わず投擲。
| 木製の板だ、当たれば痛かろう。打ち身くらいできるし、最悪骨も折れる。
|
| しかし、砲弾すら受け止めるヤザンの鋼の肉体への効果には疑問がある。
| 風斬り音と共に弧を描く二枚の碁盤。ヤザンを狙って両側から挟み込む。
|
|「やるかい」
|
| 前に出るヤザン、やらない子は左手で足元の碁石をザッと拾い、右手で高速投擲。
| 狙いはまばらだが威力は一級品、枝をへし折り木に弾痕めいた穴を穿つ。
|
| キラリと輝く軌道を残す白石、その下や裏に隠れて黒石が飛ぶ。
| 白は全て黒を隠すための布石に過ぎない、黒が本命。中でも本当の数発だけが。
|
|「『ドッペル玄関』」
|
| やらない子の『滅ぼすもの』、裏返しの能力。反物質みたいな危険なだけの能力ではない。
| 斥力を発生させ、投擲威力を極限まで上げる。
|
| ヤザンの周りを走りながら投擲を続けるやらない子。全ての碁石はよけられ、外れ、時に弾かれて木立に消える。
| 悠々と歩くヤザン。まるでやらない子の必死の攻撃を楽しむかのように。
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{V ＿_ ｀丶、 ､ ` ﾞ:,
／ ｀`ヽ、 、 ﾞ:, } }
. / ／/ _ -―- _ ＼ } ソ
/ V´ ｀｀｀｀｀`ヽ、
_､‐''゛ ,彡/ ｀ 、
/ 彡/ ｀ 、 Y ｀ 、
彡{ _ - _＿) ﾉ(_ -､ﾉ
/ / 彡 ゛7 _ -＜＿_’_ノ彡 :. ｀ ’- ､
、 彡{ ,, ´ ￣ _ ﾉ
､ヽ /⌒＼彡{ { ／∨ あくびが出るぜ！
､〉 l| l^ ＼{ ｀`ヽ、 ',
｛ l{ ( ＼ / _ -―ｧ ',
、 、 、 ヽ ヽ ー―＜ ＿ _,,.､ｲ ',
＼ ＼ - ー― " ,
＼ ｀ー― へ '，
＼ } } 八,＼ }
＼ ノ 从. ｀ー―-- ＿＿ ノ
､＿) } } : . . :::::::::::::::::::::￣￣￣/
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|「アフロぉ！」
|
| ここでペルソナを召喚。
| 巨大なアフロのついた雄牛、あるいはバッファローが轟音とともにやらない子の背後に現れる。
|
| 猛烈な突進、それまでの投擲で払った小枝。突進の邪魔をされない通路を確保していたのだ。
| 巨体の突進、質量とは覆せない暴力だ。なのだが、それでもヤザンに効くかは疑問がある。
|
|「はっはぁ！」
|
| 笑いながら膝で迎撃、バカみたいに分厚い雄牛の頭蓋骨を粉砕するはずの一撃。
| だが、残念ながらそのバッファローにはアフロが付いていた。
|
| ごわごわの、針金みたいな剛毛。熱も電気も衝撃も。それこそ弾丸も砲撃も止める特殊装甲。それがアフロ！
| 頭蓋骨までダメージは通らず、逆にヤザンは衝撃をもろに受け、ゴム鞠みたいに吹っ飛んだ。
|
| 木をへし折り、地面に叩きつけられるヤザン。その間に碁石の山に戻り弾丸を拾うやらない子。
| 雄牛は再びヤザンに突進、轢殺だ。
|
|「痛ってえ、やりやがったな！」
|
| どことなく嬉しそうに立ち上がるヤザン、血の混じった唾を吐き捨てる。
| やらない子が碁石をめくらめっぽう乱れ打ち。ペルソナへの援護射撃。
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＼ /ﾌー/7ー―'‐ｧ'///////////////ハ､―‐くヽｰくヽ /
ヽl l // ﾉ//////////////////∧, l | l | ／
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ノ//////// ｲ / // l|ｲ {//////} ブモォォォオオオ！！
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‘Y//////////）ヽヽ､＿,ノ/ｲ////////}
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∧////////ノ }//////ﾉ
, 丶-､///ﾉ ｛////ノ
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| 从 ／ /
| ,'ー＼/Vl／ﾊ /
从ハヘ/ ヽ / 从ﾍハ{
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人__｣＾^} i^＾~{ レ-〈
/ }⌒l V⌒} { ヽ
丶-―' ￣ ￣ 丶-―'
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| 強烈無比な突撃、今度は態勢の整っていないヤザン。
| だが、インパクトの瞬間に身構える。背中からアフロに衝突。
|
|「あっ……フロ……？」
|
| ヤザンの強烈な震脚が地面を揺らす。
| アフロで相殺しきれなかった衝撃が、雄牛の岩盤みたいな頭蓋骨を粉砕。
|
| 破壊されたペルソナが粒子になって消滅、フィードバックで無様に倒れるやらない子。
| 顔面をしたたかに打ち据え、涙目でふらつきながら立ち上がる。
|
|「終わりか？」
|「まさか！」
|
| 飛び退るやらない子、再び碁石の連射。つまらなさそうなヤザン。
| ゆっくりと前に出ながら、弾切れを待つ。それはすぐに訪れた。
|
| 徒手空拳のやらない子……しかし、その戦意に衰えなし。
|
|「いくらアンタがバケモノでも、当たれば傷がつくのは確かでアフロ」
|「防御のない場所に当たりゃあな」
|
| 少なくとも、その四肢は強烈な魔力をまとっていた。砲撃すら弾くのだ。
| しかし、背中はどうなのだろう。木にぶつかった時に血の混じったツバを吐いた。腕ほどの防御力はないに違いない。
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j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ ノ ヽ ::::::） ﾙﾘﾉ
ﾘ::::::( （ ●） (●::（
. ﾊ::::ﾊ ,, r‐ｧ ﾘ） )
） ) ）、 ￣ノく//7 /77、 当てるでアフロ。
（,（.( ' ﾍ い ｌ ﾚ' ///
／ Ｙ 〉 ≧≦、 / ' '/
／ l∧ｲ:::::li::::y′ , -┴ぅ
厶 -─‐-､ /:.:.:.j::: - ´ ∠、
ヽ下了￣｀＞‐''"´ ィ ｢￣ヽ >､
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', ,..::´::::::::::::::j l::::::::/.／/
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| ポケットに残っていた碁石を弾く。
| 真正面からの黒石。反物質爆弾で道連れにする事も考える。
|
| だが、それではまだ近くにいる仲間たちも巻き込みかねない。
| だからただの、碁石。弾丸の速度。普通の人間相手なら十分な威力。
|
| それが人間 備府やらない子の精一杯。
|
| ヤザンはつまらなさそうに、その最後の足掻きを受け止めた。
| 容易く、空中でキャッチした。その慢心が、やらない子の本当の狙い。
|
|「『ドッペル玄関』！！」
|
| 裏返す能力。逆向る能力。ヤザンの手の中の碁石からヤザンの手に伝播⇔反転。
|
|「なんだとっ！」
|
| 捩れる右手、骨が内側から外側に飛び出そうと蠢く。ぐっと力を込めて堪えるヤザン。
| それで抵抗できるのがおかしい。超人的な魔力耐性の為せる技。
|
| やらない子はふらつきながら膝をつき、這うようにヤザンから離れる。
| 同時に、周辺一帯から恐ろしい唸り。
|
| この戦闘で発射した、全ての碁石⇔逆向き。弾丸の速度で乱れ飛ぶ無数の弾丸。
| 右手に集中し、一瞬動けないヤザン。這っているやらない子には危害はない。
|
|「くくっ」
|
| ヤザンは笑い、可視化できるほどの濃密な魔力を纏った。震える手で十字を切る。
| 厳粛な空気が、荒れ狂う碁石の中にて存在した。
|
| 見る者が見れば、局所的な結界であると判断しただろう。
| あの『聖処女』ジャンヌ・ダルクにすら匹敵する、肉体に制限された超密度の結界。
|
| 『滅ぼすもの』の攻撃さえ無効化し、全ての碁石を弾いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〃 / / ｀ヽ
ﾄ､ {l. 〆 ﾆ三辷ｰ ＼
ﾐ ､小､ ﾄﾐソ ヽ ヽ
Z / ｀¨´ } 人
{ j { ___ ｀ 弋 ',
≧| ヽ从...r＜ ｡ｱ } j,,, } 惜しかったな。
｀{ 辷｡ｲ ::::....... ￣ ) | }ミヽ. ﾉ
｀l / :::. ｨ' .ｿ ﾊ |. ｨ´
ヽ ｀ﾐ::::.. ､_ } u 从|
| 辷ﾆﾆフ´ ﾄ彡' 人
', ,,,,,, j ﾅ |
', ..:＜ ｀Z彡ﾉ
__ﾄ､＿＿...:＜::: ﾉ |辷二ﾆｰ ､
__＞-‐Z´ ｀ヽヽ:::::::::: r‐==fﾆ二二 ､ ﾊ. |
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小 }} }_ | | | | ＞弋辷ﾆ￣￣
三ミy＜〉', }} ／:八. 人___ {__...-ｰ=彡
辷ノ /:::::ﾐ辷'´::::::/ ` f´ j
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く:::::::::::::::::::|｀ヽ､____彡ｲ j
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| もはや成す術なし。
| ペルソナ破壊の影響で頭が割れるように痛い。やらない子は絶望しない。
|
| こうなったら、来い。ここまで来い！
| この肉体を『ドッペル玄関』で⇔反転し、貴様に取り憑かせてやる。
|
| 同時刻、アサギがアリーに『一人でお帰り』を憑けていた事など知る由もないが、
| やらない子はこの強敵をなんとしても除かねばならぬと決意していた。
|
| でなければ、決定的な所でやらない夫の障害になる。そんな予感がするのだ。
|
| 恋する乙女の勘である。
|
|「だがお前の勝ちだ。次はハナから殺す気で行く」
|
| やらない子は顔を上げた。甲高いエンジン音が近付いてくる。
| なんだ？ 何が始まる？
|
|「魂ィィィィーーーッッ！！！」
|
| 木々をなぎ倒して現れた馬イクの車輪を、ヤザンが危なげなく避ける。
| 輝く鎧を身に纏い、巨大な矛槍を持った小柄な人物が推参。
|
|「畜生！ 面白くなってきやがったな！」
|「我が魂を震わす強敵！ なるほど貴様かヤザン！！」
|
| 咆哮、ヤザンはちらりとやらない子を一瞥し、薄い唇を歪めて獣のように笑った。
|
|「消えな、巻き添えで死ぬぜ」
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ:::::::::::ハ
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/:::::'::::::::i:::::::::ﾍ::::::::::::::::::＼::::＼::::::::::::::::l::::::::::::::::l
′':::::::::/ヽ:::::::::＼ヘ､:::::::::::＼::::＼:::::::::::i::::::::::::::::!
|::::l:::::::::′ ＼:::::::ヽ, ＞=ﾆ＜｀ヽi:::::::::/::::::::::::::::!
V i:::::::ﾄ=ｰ ｭ, `'ｰ一` 仏.き 7 ,}:::::/i::::ｨ:::::::::::l
ヽ!:::::{ ,.rｪｫ, '弋少 ' /／ ﾚ'´｀ヽ,ﾍ{
＼{ : 心ﾘ “¨ ′ .ｨヽ l::::ﾄ､
iゝ` ” , ノ ﾉ:::::::::ヽ,
i ヽ ｀ ィ’ ノ:::::::::::::::::ﾑ さっきこっちの方に……いた。
. ､ー‐- . r=≦:::::::::::::::::::::::ﾘ
ヽ ￣ /{::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
〉､ i.,:::::::::::::::::::::::::ノ
i:::::＞ ､ _,. ,.｡ィ ∨ . ヘ∧／
ヽ,:::::::::::::￣ i ,. ≦ ∨ｭ,
∨ヽ r.イハ /ハ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦ﾊ j r’.ﾉ ∧ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦’ /／ ヽ,ィ ィ’ ∧／ ≧ｭ
ｨ仁 / / / ´ ﾑ
/j / / / ／ ',
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 市民に銃を向ける合衆国兵。それをゴルフバッグでぶん殴るサングラスの女。
| 鼻血を吹く兵士の胸ぐらを掴んで何かを尋ね、もう一回殴って意識を奪う。
|
| 不機嫌につばを吐き、合衆国兵の手をカウボーイブーツで踏み砕く。
| 駆けつけた別の兵士、後ろからの弾丸を回避。反転しながら一瞬で接敵、ゴルフバッグで胸を突く。
|
|「殺されたくなきゃ俺を『教会』のエラいヒトんトコ連れていけ」
|「げほっ、きょうかい……？」
|
| 膝が顔面に炸裂。歯と意識を失う兵士。
| キオは彼女が見えた所で叫んだ。喜色が溢れる。
|
|「イナミさん！」
|「あ？ 誰かと思えばキオじゃねェか。言っとくが契約はとっくにチャラだぜ。
| 期限切れだ。テメエらの首を取らないだけありがたく思いな」
|
| 九月の契約、十月の契約。
| 『ネクロノミコン』を見つけて引き渡す代わりに、それまでは人を殺さず危害を加えず。
|
|「……お願いに来ました」
|「どのツラ下げてだ」
|
| 『血族』の都合など悪魔たる、『十二の封印像』の『蛇身』たるイナミには関係がない。
| 契約を一方的に無視し、連絡を断ったのはキオや蒼星石の方である。
|
| キオにとって、イナミは師匠である。
| 彼の超能力がここまで発展したのは、イナミの訓練あってのものだ。
|
| 逆にイナミにとってのキオは何なのだろうか。キオは不意に胸を刺す寂寥感にうろたえた。
| 彼女にとって、僕は何なんだろう？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ｫアキ,ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’,例 〉 `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ ' j夕 ．″ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ” ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/
l .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ 手を貸してください。
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
i '" i /:::::::::::::::::::::::::::::::::::}
`'ｰ=ニ _＿¨ ,.｡・'ヘ: /::::::::::::::::::::j:::::::ソﾚ'
ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
r'¨’ 〉く . ＞=ハ
ﾘﾊ i 1 .＞'" ',
/ _」 :i ,.ィ'’ ﾊ
〈__ / .ｲ! ／ - ─ - . ﾊ
/ / ` .｡ '´ ｀丶 ﾊ
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|「お断りだね」
|
| ゴルフバッグを担ぎ、コートのポケットからヘタれたタバコを取り出しくわえる。
| 即答で拒絶しながら、イナミは去らない、攻撃もしない。殺意も向けない。
|
| こういうヒトだ。キオはほんの二ヶ月なのに、とても懐かしいような気持ちになった。
|
|「『血族』はこの東京の異変と破滅に対処すべく奔走しています。
| 僕もその一人として、それなりの地位を与えられました」
|「なんだ自慢か？」
|
| 超能力で自然発火、火のついたタバコ。イナミは平然と吸い、細い煙を吐いた。
|
|「『ネクロノミコン』を所有していたヌケドナルド・トールマンは兄のサンダース・トールマンに幽閉されています」
|「オーライ、じゃあそいつを殺す」
|
| 慌てる必要はない。こういう斜に構えるヒトなのだ。本気ではない。
|
|「サンダース・トールマンは『武僧』のパプテマス・シロッコと共謀して、
| 東京を内戦状態に持ち込もうとしていると思われます」
|「…………あンだって？」
|
| 『血族』も馬鹿ではない。『モーリアンビル攻防戦』の災禍が、
| 全てウィリアム・ヤーボひとりの独断だなんて信じるはずもない。
| やらない夫の言っていた通りだ。業腹ながら。
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（{￣
..ィ:::￣｀::::ー::._
ｲ:ヽ::r―--::::::::::::｀::..､
|´￣｀ｰ' ￣￣｀ヾ:!
|! ＿＿ ＿ﾘ あー、アレか。
i! ,ァ:.ー--== ァ/ ｒ }!
Y´《 ､ ｒｹ:j r' 『自衛隊を飛び越えて
! { Tてヽ 合衆国軍を動かせるのが敵』か。
ヽ ｀ー ､ ノ ゝﾘ
＼ イ// ヾYス＿.
ー彡人/ }ｱ≦ｧ-､
´￣ｺ} ト､ , /ノ⌒< ￣ ヽ
/ /ィﾊ {_ __ｒｹヾ ´ V
′ ｊ_イ ﾊﾌ{ Y､ﾘ ｀
｀ヽ ﾏ_ｧ―' /ｊ i ﾏ､
/ ）､ ー＝’ ! !_ﾑ
/ / ｊ { | ﾄ ７､
ﾑ￣ニｭ､./ ! ! | ｀Ｙ⌒ヽ
/ /////// ー-､ ヽ ｊ ＿_ｊ ｊ:::::::::ﾊ
/ /////／ ｀ヽ ｀ー 彡ﾚ´ ///| ７ｲ:::ﾄ j
イ ／///／ ＼ !イ///j! 八{
＜//////／ ／ﾄ . ､ _ |!￣/// ｀
イ/////ク´ <ｨ_ムﾊ＿ __.ﾉ ヽ} | ///｣
ｒ－ｙ＜＿// ／´ 人__／ニニ7￣ﾆT＞ｊ ////ハ
´￣ ￣｀Y)//＞ ´ _ 。 -＝オ ￣｀ヽ:::::|!ｰニ７ /__7 ｊﾆ7 ノ//l! ､
｀ｰ, ｊｲ´ 。 ≦// /////∧ ｊ:::::|l ｀ー-＜/´￣７/ｊニ ﾊ
／rー' 。 ≦///////// /////∧ ﾘ::::|! /´￣７//ニニハ
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|「見てましたか？」
|「サ店のラジオで流れてたぜ」
|
| この所イナミが出入りしている和菓子屋の喫茶スペースである。
| マイケルの鍛冶場併設の休憩室や待合室を寝床にする代わりに、何度かお使いを頼まれたのである。
|
| 老舗の和菓子屋なのだが、地域密着でお手頃価格。
| しかもどういう理屈か大抵の食事よりも魔力補給率が高い。高すぎる。
|
| 税別百円のぜったいあく饅頭一つで、焼肉食うより魔力になるのだ。わけがわからないよ。
|
|「僕らはこの『集会』を最低限の犠牲で抑え、『教会』側に証拠を提出し、パプテマス・シロッコを弾劾します」
|「…………ほう」
|
| 興味が湧いてきたのか、イナミが二本目のタバコを取り出す。
| 一本目はタバコ部分が燃え尽きたので指で揉み消されポイ捨てだ。
|
|「そのままサンダース・トールマンも拘禁し、ヌケドナルド・トールマンを開放します。
| 彼は穏健派で、元々は『ネクロノミコン』の譲渡を約束してくれていました」
|
| だが、その約束はサンダース・トールマンに反故にされた。
| とはいえ、ヌケドナルド・トールマンを開放すれば蘇るやもしれぬ。
|
|「分かりますか？」
|「ここで暴れると『血族』に目をつけられっから、『ネクロノミコン』が遠ざかると？」
|「はい、そして」
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＿）ｭ､＿
/::::;:::::::::ヽ｀ミ::､
_j:::ィ:::::::::::::::::::)::､::ヽ
/::::::::::::::::::::::／::::人:::ヽ.
|￣ 三ニ≠ー―＝ ´!
|! ニ＝
t､＿ニ＝＿＿ _ｊ
[ j ﾏ￣￣ ７「￣￣ T! お断りだね。
ｊ:::ミﾑ ヾﾘ j!
__{⌒ヾ::ﾄ ｀ｰ=ーｧ ,ｲ⌒
ｒ､ヽ､ r, ／_ム ｊ ≧。 ¨ ／人_ ｊ
ｒ､ヾ､｝ﾄ､｣/ ｨ _ア ゝ彡 --イ (::ヽ＿
｀ヾ＞//ﾊ ｒ‐’⌒ ﾏ､:j r::{ ≧､
ー＝/////! ｌ::ｊ７､＿ｒｖｭ ィ､⌒ｊ::::) ニ_j!
L///7⌒j ｊ j 个人7 ｊ ｌ T ､ﾊ_ハ｀＼_ ノ
{ﾚ＿イヽ / ､ | ! ^ ｊハﾄｰ' l! 〈
ヾ////＼ 八 i! ! i! ﾊ
＼////ヾｭ､ / ノ ｊ j | |! ﾊ
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| イナミは言い捨て、ゴルフバッグのジッパーを開けた。
| 黒塗りの鞘に入った打刀が姿を表す。
|
|「なぜです？」
|「お前らは、既に約束を何度も破ってる。信用はドン底だ」
|「それには事情が」
|「事情も三乗も知ったことかよ」
|
| 肉感的な赤い唇が皮肉っぽく歪む。タバコを吐き捨て、イナミはサングラスを外した。
| サングラスの下にいつもの目隠し。サングラスをポケットに納め、イナミはコートのボタンを外す。
|
|「俺に勝てたら……おい、何で背中向けてンだ？」
|「え、いや……だって」
|
| 経験上、イナミのコートの下が全裸なのは知っていた。
| キオは耳まで真っ赤になりながら視線を隠す。
|
|「どーせ、お得意のデバガメ能力で下の毛の本数まで見えてンだろーが」
|「み、みみ、見ませんよぉ！」
|
| イナミは笑った。皮肉も嫌味も屈託もなく。
| そしてコートを投げ捨て腰だめに構える。
|
|「俺が勝ったら首をもらうぜ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ｀ヽ､
/ ＼
/ ､ 、 ヽ
/ ,ﾍ ヽ ヽヽヽ
ｌ / '､ ﾄ､ ､ヽ ､ ! ', ',
ｌ ｌ / ヽヾヽヽ ヽ ､ ､ ｌ '､'､!
ｌ ｌ ｌ , ｌ ヽ'､ ヾ',ヽ ', ヽ ﾄ､ｌ ｌ
ｌ !｜ ｜ ｌ-＝ﾆﾆ ヽヾ､_,ヾ !ﾒ,! ! ｌ ﾞi !
ｌ ! ! '、 ｌ≧ﾗテｆﾐ ｌ|ｆﾗｌ｜ ｌ ﾘ
, ｜ '､ , ﾞ､'､::ゞ=''" ､￣ ｌｌ ｜ l!
ｌ ｜ ', ', ';｀ ヾ､ィ/ ｌ ｌ /
| ! ヽ ヽヾ u ノ´ｲ/ ｌｆ′
| ｜ ｌヽ ヽ '､ ,,,... - / ﾉ ! ハ
ｊ/ ｜ !｜ ｀ヾ`;ﾞー ‐ /-'‐ｲ /､ '､
, ' ! ! 'ｆﾆ=-､`_´'' －;- 彳 / / ヽヽ
, ' ヽヾ,ヽ ｀''┐Ｔ ｆ"´ ! ノ／ ｀ヽ､
// ヾヽ',ﾐヽ｜ ! | ｆｲ !｀ヾ､ ､ ヽ ヾ'､＿,ノ
__,. -‐''{ ﾊ ｌ ', ヾ｀ `ﾞｆ ｌ ｜! /ｊ ／ ﾞヽ ! ', ﾄ, ｌ￣´''ー ..,,_
ｆ´ ｀ ヽ ヾ, ヽ ﾞーｧﾞヽ､ｌ｜ｌ_,. '´ ｊ/ ! ｊ } ｀ ヽ
! _＞ ､ヾ'､ ヽ ''フ ﾌｆ､ ´-ﾉ ノ'´_ !
ｌ ', / ￣｀''－ ｆ´ / ', / ´￣ ｀ヽ ｌ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| レイ・ザ・バレルは撤退を余儀なくされていた。
| 汚染電波は続いている。シロッコ配下はレイのドローンによる上空からの情報で動ける。
|
| 暴れる合衆国兵と自衛隊。止めようとする警察を攻撃する犬型自走戦車。
| 大混乱……のはずが、どんどんと鎮圧されていく。
|
| その上、上空のドローンも撃ち落とされていた。
| 透明なカトルカール同様の光学迷彩を装備した、しかも消音タイプの飛行ユニットが、次々と。
|
| 撃ち落としているのは、『血族』の支援車両の上に立つ一人の女。
| 手には大弓、その隣で周囲を警戒する隻眼の女。どちらも情報にはない。
|
| 『血族』の秘密兵器か？ しかし、『血族』の情報にはそれらしい人物はいない。これほどの腕なのに？
|
| その他にも、情報にない女戦士が数人、自走戦車と交戦していた。強い。新人ではない。
| 明らかに『血族』と、『グレン団』と連携している。何者だ？
|
| レイの疑問はシロッコの疑問でもあった。
| そして、日本の事情な詳しい誰かならば、すぐに答えられる疑問でもあった。
|
| 曹操華琳の愛人たちである。
|
|「こんな隠し玉がいるなんて……残念だが、すぐに撤退しなければ。
| いや、流石にここを突き止められる奴など」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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f´￣'.
x┴…┴､
i´ ヽ
| |[王王王王|}
rf＞ゝ、 ／｀||
j::| [り [り i|| ここにいるぞ。
/:::| ／ |｀ /:| /
／::::::ﾄ､ /二二lｲ:::{ /
／::::::::::::ト.＞-==イ|::::＼ ／ ／
,.ィ´へ｀ヽ::::::|＼三三三}:::::::::＞ｧ､ ／ ／／
/彡ｲハ ＼二ニァﾍ___斤ニ二ィ´{ミヽ ／ ／／
/=イrf´ | |三三/ ﾑ=ﾄ｀ヽ三| 八乂ヽ ／ ／／
/三ヲ _／| |三ヲ j/⌒i iﾆj lx Viﾆl _／ .／
/三f⌒ｲ /| |三＞､/ ー┴─ｰﾄ､j ヽ Vf´| [i_x´
/三人/ ／ 厂￣＿,-=＝＝=x ／⌒i／:: !人_ﾌ
. /三ﾌ / / 厶イ´ i二＞ .／::::::／T¨]ﾄ
/三ﾌ / / | ｲ ゝ{__／::::::／i､_.人＼}
厶イ / / ｜/} ／::::::／／ }/∧ ∨|
／￣｀¨´ / ｲ´ l ／::::::／￣ｭ＿j///} ｜ヽ
{r'´￣｀ヽ/ | と=─‐一''´／::::::／T＞厂ﾄ､三彡' 厂¨}
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 囁き声、心臓を狙った一撃。正確に肋の間をすり抜ける刃。
| 突き立てた刃が鈍い音を立てて止まる。体内にチタンプレート。レイが改造済みでなければ即死だった。
|
| 体内でチタンの削れる感覚。身を引き、血の糸が引く、白い制服に赤い染みができる。
| ギルが仕立ててくれた服なのに、レイは向き直った。武将じみた男が冷たく見下ろす。
|
|「忍者か？」
|「伏兵だ」
|
| 飛び退りながら銃を抜く、抜き撃ちながら精密な三連射、暗殺者はそれを捌き、撤退の構え。
| 失敗したならすぐに諦める、優秀なのだろう。レイには行幸だ。その気の緩み。
|
|「ここにいるぞ！！」
|「「「ヒホー！！」」」
|
| ドタドタと足音、歓声、群がる雪だるまの集団。
|
|「流石だな馬岱殿。では、次は五島ムスカを頼む」
|「お任せあれ」
|
| 蝶の半仮面で隻腕の女がレイの前に仁王立ち、周囲に並ぶ雪だるま。退路なし。
| 突然の、いや、とっくに囲まれていたのだ。レイは必死に周囲を見回した。
|
|「投降せよ！ あるいはここで死ぬか？ 我が名は長生きとメンマの使者、華蝶仮面！
| 抵抗しなければ悪いようにはしないぞ」
|
| なんだこのファンシーな悪夢は……レイは頭がクラクラするのを感じた。
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☆ 次回予告！
心苛む日毎の悪夢。
けして許されぬ、消えない罪。
罪悪の海にどこまでも沈む。
伸ばした手の先、一縷の望み。
届くはずない、光を睨む。
希望を隠す、遮蔽は我が身。
自覚と意識が絶望を生む。
許されざるのに、望むのは君。
次回、最終幕八十六話『罪の重責』
果てに見るのは破滅か死か。
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／ ,. ￣｀ヽ
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/ ､ﾞ､ッ´ ヽ ＼ ＼ ﾍ＼
{ ,.ミ | ヽ ヽヽ、}ﾍ ＼
{. ､ﾐﾞ. ﾞ ,...__＿ , ヽ ヽﾞl}l l} l}
/‐r,､ﾞ} ミ≡≡＝ r==x＝ミ l ヾ
. /rﾍ | }. ｛/////!｝. {/////｝. |
. ﾍ し .| }. (/////ﾉ j/////ﾉlﾞ | あのな、実時間で何年経ってると思うんだ？
ﾍ ヾ | }., ￣￣´ ￣￣¨´... |
＼ル.}.. / ´ヽ.,.. |/
.. !|イヽ、 ‐--' ,.ヘ ヾ-‐''"/
x=ﾆ三'l| | ＼, ／‐ --＼ ／
．＜ﾆ三三三ﾞｉ＼ ｀´.｀－-ｰ ' ´｀ /
,.<三三三三三三＼＼ ￣ ／... /
. /三三三三三三三三＼＼,、, 、,、,／.三 /!
. ｉ:三三三三三三三三三.＼ﾞｉ. ﾍ{三／∧ ＼
. }:三三三三三三三三三三.ﾍ!､ ∧＜二＼
/:三三三三三三三三三三 ＞．..,_ ／ ＼
ｒミ{ｽ
人 Y/＞ ⌒ ー- 、, -―- 、
/ (ノ⌒ , ヽ＿ ヽ
{ ィ{ { 八{_ｨ ） )､ ヽ ｀ヽ} /｀ヽ
ヽ人_＞-、⌒ｚｪメ} ｊ ） ⌒ｰ（ｽ_ｨ）
Уｊ iわ ｒか 〉ﾘイ ｀ｰ’
／ｒｲ{! ^¨＿ └ﾟﾞ 人{ｭ ミー-- ＿
／ ｀ ヘ Vﾉ ｲ⌒ｰ⌒ ミー― ヽ
/ｒｰ┐ /⌒≧= 彡 ￣ヽ ヽ ｀ー 、
/人｣/7≠ｭ､{ﾚィ´Y ／⌒人＿＿ ＼ プリパラは時間と空間と認識から外れちゃってるから。
}７⌒／ｲ7{ /7 ヽ {/ ｒｲ／￣ｒー’ ヽ ）
Yｰ〈｀ｰ非 ｀ﾟ /〉､人_{7ｊ ＼ ＼ ハ/
/ｒ、人ァ⌒¨ヾ､〈/ 人 ￣ｊ ｒ ｒ､〈ヽ〉 八{
⌒i~ フ__ノヽ ﾞ¨ｰ{＿＼ Lﾊ｣ }｣ /
＼＞ｊヽ＿＞ｰｒ､＼ ＼ーァ≠⌒ （
ｒ-、/ 、 Y⌒jﾉ＼ ￣ イ 人 ヽ
(⌒＞ーｧ､-＝≦ヽ＿ ｀ーノ／ ｀ー―
〉 ｢ ＞ ｀ヽ ミ 、´
ｒ＝ ≧＿ 人ヘ｢ミ＿＿ノ┘ ＼
__ｊ／＞ 、_ノ ｊ 八 ＞、￣｀ー´
ノ／ /／ / / ｊ＞、＿ ィーﾐ､＿ノ⌒ヽ
/⌒ ｢7/ ｢/＿}ｒ〜、 ｊ } 〉ヾ＿ノ ￣）
~⌒⌒T⌒７´￣⌒ >｀ー≠⌒ヽ ｀ー、
| / ／ ＼ ヽ
,' ／ ／ ／ ／｀ヽγ≫ 、
'、 / ／ ／ ／⌒ヽ…≪ |
｝ .' i ／／/ ﾆﾆ ﾆﾆ ヽ !
ヽ , ! / /フｰへ} {、＝＝= | i}
｀ヽ} j /ノ＝＝＝ﾄﾚ＝＝＝⊥,⊥ , 変な所で原作ネタ拾わないで。
〃ヽ/ハ-|三三シ| |三三三ﾘT 6} ／
,'i ＼ゝヽ三三 .! !ゝ三三 .| ／／ トラペゾは女好きだから、
! , ゝ＼＼__ ー/ﾆVー-、__／／ 脱いでDM送ったら食いつくかもよ？
) ', ,,ー⌒ヽ、_xrf〒〒r-、__ イ/ r 、
γ 〉ソー 、＿句＋ｪｪｪｪｪｪｨ/ ﾊ/ ／:.:.:.＼
/γ(0)-≪▽.:.:/ ヽ＝大＝ﾝ _イ! ,／/:.:.:.:.:.:.:.|
/ /:.:.:.ゝ__ i:.:./ゝ ＼_八___／／ {i´:.:.:.:ｉ:.:.:.:.:.:.:.∧
, j:.:.:.:.:.:.:.八:.∨ | ＼.ﾉ ゝ ／ |＜:.:.,':.:.:.:.:.:.:.:.:∧
/:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:// .| ﾍ / ! ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧
..ノ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/八ゝ ￣~ ＞ .／ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧
＿＿ ＜三//ノV:.:.:.:.:.:.:.γ´:.:.:.:.ﾍ ＼.. ..＜ ／／j≫≪:.:.:.:.:.:.:.:∧＿＿
:.:.:.:.:.:.:.≫" ｛ ヽー-.ソ:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ ＞＜ ／／:.:.ﾉ:.ハ:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:∧:.ヽ:.ヽ＝
:.:.:.:.:／ ヽ ｀ー＞:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ / ○ ∨／:.:.／ソ:.:.:i:.:.:.:.:＼:.:.:.:.:∧:.:ヽ:.ヽ∧
. ／ ヽ-､ : : : :|
／ ｀､ ＼: : ::|: .
/ / ｀､ ヽ ', ＼_|: : .
/ ヽ-､ } ﾄ. |: : : : .
| | | ヽ／ ﾉヽ |ヽ |: : : : : .
/| ｌ ｬ-､. }､ !.／ﾉ .ノ | /: :ヘ 乂: : : :
| | | ｌ l ) l / .l _／__ケ毛z<‐/ﾒ_＿／ : : ＼. ＼＿
l ﾊ ヽ＼ ＼_,ノ ./ _ノ ﾉノ~z/／￣ ヌﾞﾞ弋 | l--､: : ＼
ﾄ､＿￣戈ｰ-ゝt--‐'￣ ;γヽ☆ ヽ. : | ヽ' ﾞi､ ＞､
| ￣ メxttttrx ﾄ‐' c} ; ! ｀､ﾉ:＼
＼ 布／ ￣＼ヽ ﾔ γ |/ | |: : : ＼
＼＿＿_｀_フ/,γヽ☆. ｀､ ＼__ .. ｨ'´ |´￣ Ｙ: : : : : ＼_ え。
l. ｀lヽ /ﾚ ｌ｀ ' c | , , , }=-,、 |､: : : : : : : :｀
i : :| ｀､ ＼＼γ .Z /‐‐'､ノ: :ヽ: : : : : : : :
| (＼.__>、 ＼ゝ+‐ ´ _ -< 丿-､ }: : - ゝ-､: : : : :
| : :／ >､ ' ' / ／: : : :' ´／ ｀ヽ､
| : :! ,イ厶＼ ／￣＼__／
| : :｀ｰ‐t´ _ノ: :｀ ､ _ ／ .| ﾉ. ＼ ヽ
| : : : :l＼二ﾌ : : : |￣:＞───‐‐´___/∧' | ､ ｀､
/ : :l: : : : : : : : : :|: : / ＼__}===＝, -‐' l }＿＿＿__ヽ__l＿
./ : :/:: : : : : : :＿.⊥斗 ヽ┌‐'￣| ヽ ﾉ ＼
' : :/: : : :／￣ 人 } ヽ､_ / ｀､ / ｀
: :/: : : :/ ＞､ } /
. : :/: : : :/ l ／ ｀ｰ亠､ 斗 ,-'¨l
: :/: : : : l l / }--‐‐ ´_ -' ∧ ｀ -'
. : :/: : : : : | ｀､ / }--‐: :´ : : /: :｀､
: :/: : : : : : | V| ´ ━━ | ＼: : : : :/ : : : :ヽ
ｒ､_
ﾊ { :､
N i j ,: = ､_
ヽ､_/ﾍ_ ,/´ ,､ i
< / ＞ァｭ､. ＿__.≠ｰ´州//j≧fヽ､_
Y_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:T´｀´:.:.:.:.:.:.:i i!'■+■' ｀yﾍ 冗談はさておいて。
ヽ､_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:{ iゝ､_,ij､_.ﾉi j.:.:.:ﾊ
｀ヽ､_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ ｀￣ー￣ /.:.:.:.:ヽ これを見ている諸君。
￣￣￣i:.:.::| ｀ｻ´ /.:.:.:.:/.:.:j 憶えているか？ 自分の名を。
!:.:.:i j /.:.:.:V.:.:.:{ もう一度、名無しを辞める覚悟はあるか？
ﾘ.:.:| } i.:.:.:.:ヽ.:.:.:i
i.:.:.:jｊ | |.:..:.:.:.:i.:.:.:|
|川 | |.:.:.:.:_/.:.:.:{
￣/ .| 川川{.:.:.:.:.:i
i .j ￣￣i|.:.:.:.::|
ヽ､_ ハ |｀.:.:.:.:i
| i ヽ､_i :!＿___.ｲ i.:.:.:.:.:|
| | i´/i i ゝ､:.:_j
| i | , | iﾙ≧
| ｀: :ﾚ ; | f /j
V | | ! ! i/´
V .| i ﾍ
. /~＼
. ／l￣｀ヽ-´￣￣｀| -☆;─┐
. ｌ |. ／ ｨ , ￣￣ ＼ /￣ヽ
\弋 ｀/, {_| | |l Ｙ ﾉ |
|._､ ｀‐| 乂匕j ＼_ﾌノlﾉ |ヽ. l |/ /､ そしてもしも、
.ｲ__l.l‐_ﾌ､ｉ､ｉゝ ﾏ-__>ﾉ |--‐___|_ もしもいままでこのスレに参加していないけれど、
. ／ ﾊ .x==x｀ x==x /- /l'-/ _／ それでも読者でいてくれるあなた。
( / ﾚﾊ /lﾍ´ ＼ﾇﾆｲ
ヽ､ l . レﾄ､ ｀ ´ /.ﾏ´ lﾉ | プリパラは誰にでも開けているよ。
ﾄ-' ＼| | |＞ ..ｭｨ‐ 彳V| ／ あなたの名前を教えて。
. ￣/￣,vﾁﾏﾌｭ ｨ‐-ﾞ-┐-､|/ , ｀-ｧ みーんなアイドル。みーんな友達。
/lｰ┘￣/ヽ |｀二´ヽﾕ ヽ´￣´
| Y´ ｀ヽ' .}|´ |／＼-､ |
｀l.| {| ./'ノ
. || /.| //
. || ,'_,| //
{.| ,' | //
ﾔ ./ | ｀}'
|＼__/ﾟ ﾟ＼__／l
／￣ヽ
ｒ― 、 ー― / _ 」ー― 、
＿{ _ ) ´￣ ｀ー」 ￣L ＼
／ ｒ┘Lノ ヽ_ｒ ┘｀ヽ ＼
/ 人_ 「 ヽ { ／ ヽ
八 / ７ / / ﾄ、 ヽ. ＼／ヽ i i
/ { ＼_/ /| { 、 Ｌｊ-┼-}､ } } ヽ ＼ ﾉ }
{ ヽ 八 i { 」＞ ヽﾉ）ノｊﾉ ノ_ノ ノ ｊ i { 人
八 V ヽﾄ メ_フ ､_ ￣ ゝﾃ=ｋ､rイｰ、 八 人_/ }
人 ) ﾄ|ﾊ _ｧﾃめ､ ｒゅわ｢｀）{ ﾘ （ ｒ）
人 ヽノ ﾉ | い ﾏ.か 心少 ｒ人}ノ ＼ ｀Y(＿ﾉ) さあ、みんな備えておけ。
_ ( )_ノ ／ .八＼＼ゞ-ﾟ ｀＿_ 人ｿ ＼ ｀ ｰ´
( ー彡' ／ / 入 ::。 ヽ_ｿ , ィ J) ＼ ＼ やる夫を助ける時間が来るぜ。
／￣￣ ｀ ー―彡 (し ＼ ≧c｡ ,｡≦ {! ＼ ＼ ｀ー 、
{ ｒーァ ― ￣ ＿ノ 「ヽ「 > ｊ┤ ヽｰ 、 ＼ ヽ
ヽ/ ／ ／ / ／「￣{ / / ７⌒ ＼ ＼ '. }
ｲ ）′ ／ / ／ ｀7ｰ/ /⌒7 ´/⌒} ／ ＼ ヽ . j
{ヽｰｲ / / （└i＿ ｀7 / ヽ-ｧ⌒ トｙ-、 _ｒ ヽ }i . /
￣ { /{ 、 { 八_ｒ､__/ / 「 /Ｙニ ＼ __ｒ＼ 八 !(
＼ ( 乂 } ＼＿_ / ノ /７八介＼__ノ彡ヽ ｀ ﾉノ＿ﾉイ ／ } ｊ ヽ_ｨ}
＼ミーﾒ､ / / ／ ﾑィ⌒ﾊ ( 八ﾍ ,イｒｰ' ∨ / ｊ 人＿ノ
￣､＿） { i / /〉i |☆ｊ | ､〉 L__ィｒ'☆o V ┼＝彡'
＼＿人 /｣ j | ｊ | ィ 个☆ ８､ V、＿ノ
> i ／) ｲ |☆ｊ | ｺ | OooO ＼ ヽ
/ ヽ／｀Tレニニｭ､ r―‐┬┘ ＼ ＼ '.
LニニニニニニニL. ＜＼
◎現状（八十五話終了時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
暴徒は鎮圧されつつある。
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
誠と別れ別行動
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
偽ヤーボと交戦、自爆される
・四ツ目
トパス、アメシストと交戦後弾薬不足で撤退
・ミスト・レックス
ハッキング中らしい
・やらない子
ヤザンに敗北
・はやぶさ
誠に同行
・アサギ、タカオ
誠により運搬
・麻呂、白雪ひめ
やる気を減退させ、一般人を避難中
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
誠を探している
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中。
・誠
タカオとアサギ、はやぶさを連れて警察へ。
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたいが、鎮圧されつつある
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦、自爆される
・龍田と石田
カルカールと交戦、やらない夫を取り逃がす
・ケンシロウ
暴徒鎮圧中、ジャンヌと合流
・杏子班
暴徒鎮圧中
・キオ・アスノ
イナミと交渉
・呂布
ヤザンと交戦
・馬岱、星、邪悪帝国
レイを捕虜にした
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
ケンシロウと合流
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
呂布と交戦
・ロビン
天龍シグを下した
・トパス、アメシスト
四ツ目と交戦、再び足止めされる
・他のカトルカール
石田龍田と交戦、やらない夫を取り逃がす
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
捕虜にされる
・合衆国軍
一般人を攻撃、鎮圧されつつある
イナミ
キオと交渉
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちとアサギを殺害した
タカオに致命傷を与えた
アサギに『一人でおかえり』を憑けられ誤った囁きを受けることになる
そして、待っていたぞと微笑める乙
バッフロンか、イッシュで居たな
ナイスボートが暴徒の中で活躍中か
前回の安価いつだっけ
約６年、５年と８か月弱の昔……うそだといってよばーにぃ
数ヶ月位前にこのスレを知った者ですが、これで良いのかな？
あったねぇ、そんな昔だったのか……
久しぶりに見に来たらもう使わないと思っていた
垢が役に立つとは…捨てなくて良かったw
>>76 >>82 >>84
よくぞ参じてくれた！ 作中ででその酉を使わせてもらうから覚悟しておけ下さい。
>>82
え、こんな場末に新規読者が。
ありがとうございます！ 今後ともよろしくネ。
/.:ｱ; : : : : : : : : : '，: :`､: : : : : : V-‐───‐ｧ
j{:/:/: : : : : : : : : : : '，: : '，ァ＜'，¨¨¨¨¨¨´ /
l/: ﾞ.: : : : : : : : : : :ｉ: :'. : : :i-i{ ＼''＜.,_＿＿_j
j{: : : ｉ: ;.: : : : :｜: :ｌ: :| : |',:| ∧ ＼ ＼ ､
j{: :ｉ: :ｌ: :',.: : : : :l:￢!‐:!- Ｌ:|斗ﾍ `ト∨`'＜
i|: :l : l: :ｌ.', : : : :|'，:|: :| : l:.ﾘ ｧ く:.､ ベ＾＼ ` ＜
ｌ|: :|: :ⅣＮ＼ : :| ァ芹芥㍉ ; }: :＼′､ ＼,.＞‐……‐＜
∧ |ヽl / ＼| 乂..ｿ / ﾞ ﾉ: : ＿`__ー-- ､、 ､、 ` く
i|:`: :心、 .′ ｀¨´ .r ^ア;.;:;:;:;:;:;:;:;＼ ＞ ､ ｰ- ､＼
l|: : :l:i! 心、.′ ｨﾞ /;.;.;.;.;.;:;:;:;.;.;.;.;:;`､ ＼v ＼＼
l|: : :l:ｉア iト ,‘ ’ ィ ／};:;:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;.;.;:;:`、 ＼V
l|: : :l７ }ｉト.＜,__,.＞'’;};:;:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;:;:;:;:;:;∨
l| : : :′__ '， └- 、 }!;:;.;.;.;.;.;.;.;:;:;/ ~ ｀ヽ∨､
,.斗r ァ'" ＼､ィ____ ＞ ｧ'"´∨￣￣｀`'〜､′丶` ∨:.､
ア´ rｰ＜′ ‘,.ァ'" ／ }‐ f¨¨< `'＜ .∨:.＼
／ r‐=ｧﾞ'"^ ､ .ｉ′ く γ⌒>-┴- ., ` ＜ `'＜: : : ＼
. └i ＞ ⌒｀` / 7 ＜| ,､丶`｀`Ｙ＾ト , ／`〜ﾞ､、 `'く: : ＼
. | く ｜/ / ｀`〜 ､、 | ／` ,`ｭ ＞ 、 '， /: : : : ＼
/〕ト ,/ |_l { / /｀`L.｡s≦⌒｀` ┘i---‐‐…＼ }ｲ: : : : : : : :＼
/ ｧ′ ,｀≧vl ￣ ｀`〜､ ' / ; ＼ ＼ } '，:. :. : : : : : :＼
' / / ′ l ‘, .､ ﾍ 〕ト , ′ ′ 心 ＼＿__,,..､＜. Ⅵ:. :. : : : : : : :`､
. ∥ ' l '， イ ∧ 〕ト , ′ ./ .∧ Ｖ /ヽ ∨:. :. : : : : : : : :`、
. ∥ ト .Ｌ.. ､＜__.､丶` 心, ≧s｡。,,/ﾊ ∨ ＼ ∨:. :. : : : : : : : :∨
∥ |. .l／. .∧ ＼ ＼.i| | `､ Ｗ:. : : : : : : : : :∨
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 間桐桜の意識は、『弓兵』の想像通りにその豊かなたわわの内側、心臓に眠っていた。
| 目覚めたくはなかった。目覚める予定もなかった。
|
| この世は地獄。絶望、後悔と痛みばかり。
| 間桐臓硯への恨みや憎しみははち切れんばかりに膨らんでいた。
|
| だけれど、自己嫌悪と罪悪感はそれ以上に大きかった。
| 故に桜は自閉の渦の一番底に、底のない奈落の果てに、墜ちて潰れて蓋をされるのを望んでいた。
|
| 沈み続けて深海魚みたいに平らになれば、何も欲しくない。夢も見ない。
| 自分を閉ざして五感を消せば、誰も桜を責めたりしない。
|
| …………なのに。
|
| 沸騰した胆汁よりも苦くて、喉を焼く痛みを伴う言葉が。
| 無理矢理目覚めさせられて、望まぬ相手と交われと強制されて。
|
| 自分を閉ざして五感を消せば、何もかもが奈落の底みたいに過ぎ去っていくはずだった。
|
| 終われ、終われ。世界よ終われ。
| 私のすべてを置いてけぼりにして。
|
| 想像通りの痛みをやり過ごす中で、だけれど。
| その言葉は何よりも深く突き刺さった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
／::＼,.へ._
r‐:::::::::::_:::/::_::::::::ヽ
ノ::::::::／:::::::}/:::ヾ::＼＼
l:::::::/:::{::::{ヾﾞ厶}:::::::::::::!:::|
/ｲ::〈:::::ﾊ::::〉 く:::ﾊ:::::/:l::ゝ
}:|:::):⌒ヾ ｰｿ-);ﾉ::ﾊ^ この優秀な僕の妹になったことを
∨:{ ｰ＝' ==-´}/|ｿ むせび泣いて喜んでもいいんだぜ？
乂'､ l /.ｲ
};込 ､─‐ｧ ｲ;ﾙ この先何があっても
乂l＼￣ ／!/` 僕がお前の兄である限り、
_「¨'''' 千 '''¨ | 僕はお前の味方だからなぁ！
_ - 丈 _|:|:L - ¨〜- _
,-‐ ¨ |:|:L_ ￣ヽ
/ |:|:| | '，
/ | |:|:| | l
./ :l |:|:| ＿＿＿ ./ ﾊ
」 ::! |:|:| └──┘ ./_ - '! ＿＿
{ ￣￣ :', |:|:| |:. ∨ ／{ィ＞' ､＿＼_
/ ー-:', .|:|:| |:.:.:.. ∨ _／ l! !| ヽ _ヽｰ┘
./ ﾊ |:|:| ∧:.:.:.:.. ∨ ／/ .l!.:'，ﾍ ´ ,､＼＿
/ ／/ l |:|:| :| ∧ヾ:.:.:.. ,-／ ..:.:.:.:.＼＼ﾍ r､ヽ＼ｰ--'
./ ／ / l: ＼|:|:| .:.:| .∧:. /./ ー─:.;.｡*'" ∧ ､＼＼ﾞ⊃
/ ／ .l:.:.. |:|:ト- .:.:.:.| ヽ:.:.:.:.! ..:.:.:.-‐ァ'´ `┘ `′
{ -─≠┐ _,ﾊ:.:.:.. |:|:| ..:.:.:.:/ ＼:.:.:.:.:.:.:.／
∧ ヽ | :.＼:.:.:... |:|:| ..:.:.:.:, 〈 ヽ:.:／
.∧ ＼ ∨:､ ヾ:.:＼｀ - 」:!:!_ - .:／ /
＼ ＼/ ヽ ＼:. |:|:| ..:／ ハ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 傲慢で無遠慮で無思慮で……なのに。
| この少年は、無知で無能で無力な少年は。
|
| だからこそ。
|
| …………永遠に失われたものを突き刺してきたのだ。
|
| 何度も、何度も何度も。
| 何も知らないからって、甘い顔をして優しいつもりで。
|
| 絶望的な喪失感、けして消えない傷に塩を塗りながら抉るように。
| 何度も何度も。
|
| 何度も。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
_＿_＿__ }＼
..‐ミメ､ :.:.:.:∨ .:. ＼ ,/
_彡':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨{_
_ア.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.‘，
｀7 :.:.:.:.:.:ｉ{ | :. | :. ﾄ､:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
厶ｲ:ﾊ:.:.八{＼{＼{__＼八:.:}:.:.:.:.:.:.ヽ
}八{-V‐ ´ V :.:.:.:.: ﾄ､}
＼{ ____ x===ミ }/.:.:.:.:.;
/}"￣`} }/⌒V
ヽ. ′ ﾉ 丿
､ ー─一 __／
＼ ／Ⅳ
＼ . |
|｀¨¨´ |
| / ､__
_ . -‐ ' } / ／ﾆﾆ==ー
-=ﾆ/ ／ニニニニニニﾆﾆ｀ヽ
/ニニニニニヽ -=ﾆニニニニニニニニニニi
/ニニニニ／＼ ＼ ＜ﾆ＞'ﾞ⌒＼=ニニニニニニニニ|
. /ﾆﾆニニ／ .＼ ｀´ﾆ＞ ´ ＼ﾆﾆニニニニ二二|
/=ﾆニ二/ `ｰ ＼ﾆﾆニニニニ二|
. {ニ二二/ ∨=ニニニニニ|
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 桜は狂う事ができなかった。
| 狂いたくとも、臓硯の魔術で狂気に逃げる事ができなくなっていた。
|
| だから何もかもを諦めて。
| 自分を閉ざして五感を消して。
|
| 暗闇で虚無だけを見つめて来たというのに！
|
| なのにあの馬鹿で自己中心的で節穴で口ほどにも無くて陰毛みたいな下品な髪で無能で臆病で
| 見栄っ張りで短小で友達がいなくて考え無しで……ああ。
|
| 私は先輩を殺した！
| 愛する人をこの手で殺した！ 虚数の触手と必殺の毒で、絶対に助からないように。
|
| 私は先輩の奥さんを殺した！
| 愛する人の愛を独占する憎い女を、ぐちゃぐちゃの肉片にまで解体してその子宮を喰らってやった！
|
| 姉さん！ きっと凜姉さんは私を許さない！ 先輩を殺した私を許さない！
| だけれど、それ以上に私も私を許さない！ 絶対に！ 許せるはずがない！
|
| なのに。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
ｯｫ､ ,ｨ三三三三三ﾐ､
ミ毛､＿_,ｨ|三三三三三三ﾐｬ､
八ﾑ___彡{三三三三三三三ﾐ〉
,ｨｿﾆヽ､i､ ／｀ﾞﾞヾミミ三三三ミｼ ﾆｭｯ
,'´ -‐‐-､＼_ ,' i.ｲ i/,!i､ ｀ヾﾐ三ｼ
,ｲ-'´｀＞-ﾗ‐‐「|ﾍ_| |ｲﾋﾒ乂込 ﾄ､|
/ .'´ 〈 ＼' .i ', } ｀^ﾙ／｀ヽ 馬鹿ども！
＞´｀≧､ ﾍﾄ ',‐- ,ｨ'!/ 落ち着け！！
,ｨ-'´￣｀ヽ､ｷヽ､ iﾍ ヽ 'く´ ｀､ ,
/:::::::-‐-､:::::|_ｷ-ゝ}::::＼､ ﾍ＼ ｀､-‐'ﾑ_ 私がこの程度で死ねるか！
/ﾆ=‐-::::::::::::::!-j } j:::::::i::｀∨ヽ｀ヽ-ﾆ=-
_,ｨ-'´ヽ､＼:::::／-'´ノ ノ }:::::::::',::::'., 〉
,ｲ=/´｀ヽ､:::::／､￣__,ｨ'´ ノ:::::::::::::',:::::'.,ｷ､
/ ,ｲ´＼ ヽｯ｀) }､_＿＿／:::::::::::::::::ﾉ:::::ﾉ::::|､
ｷ ,' ､ ＼｀)'(/´ .i::::::::::::::ﾍ::::____::::イ_ イ::::::::::∨
ｷ｀ヽｿ'´ / |::::::::::::::::::::::::::i´:/ ｷ:::::ﾉ:::｀､
｀ゝ-‐'´ ,'::::::::::::::::::::::,-i::/ ﾍ:::::::::::::｀､
,ｨ--‐イ:::::::::::,-‐=='´i::ゝ､ ＼:::::::::__〉┐
/ ,-ｲ＿＿,ｨ--‐t‐ｫイ´∨ 〉'´ ヽ､
/ ﾄ､＿＿＿_,--┴!┴'￣∨ {_ ｀i
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| 血液の代わりに吹き出した甲虫が、即座にターニャの頭部を再構築。
| ヒトの形をした魔力集合体の面目躍如。
|
| 同時に雁夜の頭部が爆発、ターニャの首が変化した甲虫の群れが吹き出して全身にまとわりつく。
| 死んだ振りから凜を奇襲しようとした雁夜。かばったターニャ。怪物同士の喰らい合い。
|
| しかし強烈な絵面に、ターニャの死を想起させる状況に、凛と慎二だけでなく『弓兵』までが動揺。
| それぞれ必殺の術式に揺らぎ。
|
|「セン……パイ……」
|
| 全身から光を漏らし、煙を上げて崩れゆく桜。
| 喉を掻きむしる、開いた傷口からは……しかし光ではなく黒い触手！
|
| 沸騰しながら襲いかかるそれを、『弓兵』は双刀で切り払う。
| 物理攻撃では防げないはずの虚無の触手だが、身を持って解析済み。
|
| あの夜の失態はもう繰り返さない。
|
|「いいだろうもう一撃だッ！ 行くぞ桜！！」
|「アア……ッ」
|
| 熱く輝く白い迸りが、桜の体中を駆け巡る。
| 届くかもしれない。
|
| 桜本人の眠る一番奥の深いトコロまで。
| 閉ざした桜と消した五感を貫いて。
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＿ -､
／::::::::::::::＞ｰ､
r::７::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ┐
ﾉ:/::ｨ::::::::::::::::::::::::::::::::〈 ＿／／
ノ::/:::::{;:ｲ::::::::::::::::::::::::::::::} ／ └┐ 待て！
/〈:::{:::::::::/:::ノ:::::::::／::::::::/ ／＼ _∠ｱ¨´ 何かおかしい！！
)::}::::::::ﾚ::::::::::::ｱ:::::::::::::{／ ヾ 「
ｲ/:::::::::::::::::::::/;ｨノ「l:::ノ l/
／: :ﾏ:;:::::;:ｨ:::; ｲﾊ/ 〈/´ ／
／:＼: : ｀＜_/´_' /／ l ／
_､丶｀: : : : : ＼_:_: : : :/｀¨ |: :_:／
／¨ヽ: : : : : : : : : : : :￣∧ ,「
/ : : : : ＼: : : : : : : : : '∧ ／ｲ
ﾉ:_: : - ＼ l/|└' /
/: : : : : } l/| /
./: : : : / l/l ,′
/: : : ／: l l/! /
／: : : ／: : : : : : . . l/! {
/: : : : .／ .}: : : : : :.／ l/! .{
∧: : : : . . ./ ＼ ﾉ : : : : く l/ l
.∧: : : ／ ＼: : : : :./ l/ l
＼: : : : : . ／ ＼: :/ l:ヽ |
.＼ : : / ／＼ /:::::::. |
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| 内側から食い破られた雁夜の頭部。
| その穴という穴から糸のような物が伸びる。
|
| 毒々しいまだら模様のそれは、極めて原始的な生物。菌糸類。
| 全身に群がり食い散らかしていた甲虫からも次々に芽吹く茸。茸。
|
|「…………なんだと？」
|
| 瞠目するターニャ。さもありなん。
| 互いに『万魔』であるならば、互いに食い合って、戦いは永遠に終わらない。
|
| ターニャもそれを承知の上。
| だからこそ、『エレシュキガル』の花畑による結界で、ターニャ以外の力を抑制していた。
|
| ターニャが一方的に有利なはず。
| であるのにも関わらず。
|
|「うぐっ」
|
| ターニャが嘔吐……いや、その口から生えたのもまた茸。
| 首や眼球を貫いて、次から次に茸が生える。
|
| 突然のことに動きを止めたターニャに、雁夜が飛びかかる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿＿
／ﾉ ＿__ ＼
∠‐´ （ ） ,‐- 、
／ヽ ￣ ゝ ＿） ＼
/{＿ﾉ （ } 絵面がグロテスクなので
| ＿＿＿＿＿＿＿_ } あるくキノコで緩和しています。
＼＜///////| |＼＼＼＞_ノ
￣￣￣￣| |￣￣￣
|、｀￣ヽ
＿ | ￣ | |
く 二_/ .| ﾚ￣｝
＼_） .L＿_ノ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 腕の代わりに伸びた百足の束、それらにも脚に混じって茸が蠢く。
| ガードしたターニャの腕からも服を突き破り茸が生える。
|
|「畜生！ 爺さんめ！ 雁夜おじさんで対策してたな！」
|
| 対策。打撃をガードする度に茸が増える。
| いや、ターニャは慄然としながらも冷静に分析していた。
|
| ターニャが雁夜を食っている際に、この茸も食っていたのだ。
| これまでの攻撃で、ターニャは茸を取り込んでいた。
|
| それが、時間差で生えてきたに過ぎない。
| 雁夜の攻撃はとっくに終わっている。もう、ターニャは助からない。
|
| 対策。
| 凜が『イシュタル』と『エレシュキガル』を用意したように。『弓兵』が『光浄裁』を修めたように。
|
| 間桐臓硯も対策をしていた。
| 千日手になるだろう同族への、ミラーマッチ・メタ。
|
| 間桐雁夜は、『万魔』殺しの『万魔』だ！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,zγ'´ミミミミミミ ｀`ヽ､
ζミミミミミミミミミミミミミ｀ヽ､
|ミミミミミミミミミミミミミミミミ}
|ミミミミミミミミミミミミミミミｲ
|ミミミミミミミミミミミミミミミ{
|ミミミミミミミミミミミミ,､ミミ|
{_ミミミミミミミミミ , ｨ ミヽミ|
|λ｀`‐ｰーー‐一iミ ,ｨv-wｲ､
|| ﾍ ヽ ﾚ´,､v‐-‐､ﾑ
!ﾍヽ入 ヽ ｉ .V´ミミ,wv､ﾑ
| .个´ ヽ.､ヽ L､| r‐'´,､ ｀i ……裏目に出たな。
| ﾄ､ i ヽ冫'´ ｀v -'´ミヽ'`'|
| .| ヽ_iz二i:::::,-‐-､_个､ミ,､ｨﾍiｲ
| |／ ￣てｨ ﾄﾍ Y |
|_,z-ｲｰ‐‐-､__| L,ﾑミｭ､ ﾉ
. ,ィﾚイ | ､ | ハ ｀`tv､
,zィ'´ | | ､ヽ | ｉ ＼ | 〒ヽ､
..ハ .| | | ､ .ヽ | | ｀ｉヽ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| すでにターニャの全身に行き渡った菌糸の呪縛。
| 最初の攻防で、雁夜はターニャの一部を取り込んでいた。
|
| 『エレシュキガル』の影響から外れ、段々と鋭くなる雁夜の動き。
| 逆に全身に張り巡らされた茸によって弱々しいなるターニャの魔力。
|
| 本来ならば雁夜は『エレシュキガル』の魔力抑制下にある。
| 『万魔』としての強みである魔力吸収能力を逆手に取った対抗策だった。
|
| しかし、ターニャにだけは無害に作られたのが災いした。
| そう、災いだ。
|
| ターニャを吸収し、『エレシュキガル』を無効化された。
| そして今、ターニャと苛烈な打撃戦を行いながら……雁夜の腹部が大きく膨らんだ。
|
| うねうねと蠢く肋骨は、全て昆虫の脚のような鈎が生えていた。
| 心臓も含め内臓は完全に存在せず、内側は魔力と蟲のるつぼである。
|
| 裂けた腹から飛び出したのは、甲虫の群れ。
| 小さな茸を生やしたそれらが、ターニャに群がり食らいつく。
|
|「ちょっ、慎二！」
|「分かってる！ 遠坂は爺さんに集中してろ！」
|
| 血相を変える凜、呪詛の霧でターニャを包み、雁夜の甲虫を攻撃する慎二。
| 僅かな甲虫が花畑に落ちて塵と化するも、半数以上は耐えきる。
|
| 食らいつく端から伸びる茸。もはやターニャはマタンゴもかくやだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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辷＞'´￣ i ､ ､ :. ヽwiﾄ､
/ ,' i iﾑ_ﾄ､_ヽ､ ﾟ､ :. Y,,ｨﾑ
,' i_ﾑ|从i ,斧ｨｧi f^Y:: ｉ//ム
ii i i 斧ﾐ ｀ ¨´ ﾟ, ∨ i ﾄw'´¨}
从ﾚﾍ¨´ ､ i i |､ ,' ﾉ ヾ､ i （…………潮時だな）
/ ,ﾍ ‐- ,ｲ i |ミzﾑ､ ｀"
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／三三／:＼,:'/,ｲ ｉ{ j､i:::::_/i ', i:::::::::::::::::} i
,'三三ﾏ´:／⌒ヽf::Vﾉ f､:i二:{ i ｉ i:::::::::::::::ﾉ ﾟ,
....... ｉ三三/::f三三三ﾑf´,..:'´:ﾉ:::::::|ﾉ ,' /:::::::::::,:':) i
. ／:::,ｨ⌒｀ヽ､ |三三j::/三､ﾉ三ミﾑ⌒~,ﾆ='´/i ,ｲｉi=ﾐ､::｀´ｲ i |
/::／三三三斧ヽ {二彡'´三三Y三三∧,' ﾘi i‐从､ヽ〉'´{| i iﾟ､
. {::f三三三三三三㍉{ﾐ三三三三∧三三ﾐﾑﾆ=ｧ‐-ﾘﾐ､､ヽ∪:::::i| | iﾐヽ､
ﾏ三心､三三三仍'ﾟ Ⅵ三三三三∧三三ﾐﾑ ｀ヽ:::::::∪∪-‐'⌒Y { | ｀ヽ
ﾞⅥ三沁三三仍'ﾟ Ⅵ三三三三ﾑ三三仍' ﾏ::／ _,-ﾃ'7i ',ﾟ｡
Ⅵ三劣x三/ﾟ ,ﾞ寸i三三三刈三仍' }´ ｀~｀ヽ/i i{ ﾟ, V
. ﾏ三三ﾑ/ ,'::::::Ⅵｉ三三三{彡'´ ∧⌒ヽ､ 〉乂 ﾘ｡ ＼
寸三ﾐ心､ ,':::::::::, Ⅵi三三述 , '. . iヽ､. .::Y ノ'ヽ､ 〉
ﾞ寺三三㌧<:::::, '´ Ⅵ三三述 ／:.. . . :i: . . ::::i ｀´
｀寸三ﾐﾑ ヾ( Ⅵ三三∧‐'´::::::::... .....::::,'
寸三ﾑ /｀ヽ､ Ⅵ三三ﾑ::::::::::::: :::/
∨刃' 狄／Ⅵ三三ﾑ:::::::::::... ..:::,.ﾟ
反/ , 八:::::::::Ⅵ三三ﾑ:::::::::::::::::::, '
/ﾐY ,i _ {. ｀ ｰ‐Ⅵ三三心ｰ‐‐‐ 'ﾟ
/三.i f〈 〈i {＼ﾞｰっ }三三三沁
,..｡-‐乞三∪,ﾍ ﾟ ,ヽ ﾟ¨´ 厂三三三ﾑ
,ｲ三三三三ノ ∪¨ﾟ ,ｲ三三三仍ｲ
｀ｰ――‐‐'´ /三三三三/i:j
,イ三三三三ﾏ-'
f三三三三沙'
{三三勿彡'´
｀¨¨¨ﾟ´
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| 災い。
|
| 間桐雁夜こそが『第四の万魔』だ。ターニャは確信した。
| これからターニャを食って、桜を食って、臓硯を食うのだ。
|
| 自閉の檻に沈む桜や、みみっちい箱庭の支配に拘る臓硯、そして復讐に支配されたターニャと、雁夜は違う。
| 雁夜は、理性がない。獣も同然だ。
|
| そして彼は臓硯によってあまりにも悪趣味に改造されている。
|
| 雁夜の飢えは絶対に満たされない。
| 雁夜の痛みは永遠に癒やされない。
|
| 本能のままに世界を滅ぼし、世界中を飲み込んで。
| それでもどこにもたどり着けない。
|
| 先に臓硯を殺してしまったせいで、手綱を失った。
| ここでターニャが食われれば、雁夜を止める術はなくなる。
|
| ならば。
| ターニャは覚悟などとっくに終えていた。
|
| そうとも。
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／三三ヽ､三彡ｨ-‐'￣￣￣￣｀`ー―ﾐ三三ｿ
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i三三三三三{ i. ,' ! ゝ| ｉ !ﾂ
|ｼ´ﾍｼﾐ三三i | ,' ゝ┤ ｉ ゝ （慎二。凜。『弓兵』。ルイズ……）
| ヾｨ彡人 | .ﾉ ,' .i ', ､＿__ ´ﾉ
| ´ / ∧/￣ヽ､___ノ ∧ ',. , '
|ミｬ､ / ﾇ‐-､＿ﾉ二ｬ､.∧ ',. /
|三三ミﾉ γ´ く ｀ヽ､',. ',‐--'
',彡毛' / ', ＼ ＼
＿_/ i |,ｯz-―-ｯｨ´￣｀＞､
／'., / ,' | | / /´. ｀`ヽ､
／::::::::/ ,' | |__＿＿| / ,ｨ‐'´∧
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',:::::/ i| | .|::::/::,:':::| |'´::::::::::::::::::/::::::,'
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ほんの短い時間だけでも、家族のように過ごした。
| イナミやちひろと距離を置いていたターニャには、彼らの存在は特別だった。
|
| そして、この戦いが終わったとして。
| その後、『ネクロノミコン』を首尾よく手に入れたとしても。
|
| きっと彼らは、ターニャを持て余す。
| これまで、ヒトを食ってきたのだ。数え切れないほどに殺してきたのだ。
|
| そんな悪魔を、優しく迎え入れる者などいようものか。
| ターニャの安寧は、今日までだ。今が最後だ。
|
| ターニャは覚悟してきたつもりだ。
| 胸を焦がしてきた復讐よりも、この日々の終わりを恐れてきた。
|
| だけれど。
|
| ここで死ぬのならば、このあとの心配もいらないだろう？
| ターニャは笑った。茸に隠れて、誰にも見えない程度に。
|
| 先に行って卯月と待っているぞ、慎二。
| ……いや、あいつと私では行き着く場所が違うな。私はひとり地獄行き。
|
|「卯月の方へ行けよ」
|
| 冴えない遺言だ。聞こえたかも怪しい。
| ターニャはこの約二ヶ月で、凜から盗んだ技術を悪用した。凜の研究『万魔』殺し。
|
| それを自分なりにアレンジして再構築していた。想像よりも使う機会は早く来た。
| 『自己破壊プログラム』。ターニャは雁夜に掴みかかった。そのまま食われるつもりだった。
|
| そして、崩壊する己を食わせて。
| 『第四の万魔』もろとも崩壊して消えて見せよう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
ﾄ､ _ ＿ ＿_ _ ,ｨ
}≧=- ､ , : : : : : : : : : ヽ: : :＞＜ニｦ
_＿ }ニニﾆﾚ: ／: : : : : : : : : : : :Y: : : : : : ､
<ニﾆУ＼ニﾆ{: /: : : : : : /: : : : : :.ﾊ;vﾍ: : : : : ＼
ヾ/: : : ノニﾆ}/: : :/: : ;ｲ: : : : : :/ }: : : : : : ヽ
.: : :∠二二ｲ: : : ﾄ: :＼|: :ハ: : | u }: : |: : : : ::.
≦! : : : : : : : : |从ﾊ| V x≧ミ l: : ! }:ﾊ:ﾄ: : :l: :.|
:: : : : : : : : ﾊ: :ﾐ 《 ｨfハヾド;kﾉ ゞ≠く ': :/:ﾄ;! え、嘘っ、ターニャ！？
|: : : : : : : :{: : :ミ 弋ツ 'fハ 》从八 あの！ バカ！！
ﾄ; : : : : : :.i./⌒ ー ゞ_' {: : : : :.
'; : : : : : : l:{ { ﾊ ´ !: : : :.ﾊ
八: : : : : :圦ゝふ u. _ ,:.|: : : : ::.
. /: : ヽ: : : : :V:＞ 个 ／~{ /: |: : : : :.ﾄ、
/: : : : ∧: : : : V: : :.| ＼ 〈⌒ 」 .: : : :|: : : : : !:: .
. /: : : : /: ∧: : : :.'; : ; ! ￣ ／: : : : l: : : : : l: : ＼
/: : : : /: /: :.;: : : : :Y: :| ≧=≦、:_: : : : ; : : : : ﾑ-―
. /: : : : /: /: : : }: : : : :|: r―z､ ィ ´ ／..ヽ: :ﾉ: : : : /...........
../: : : : /: /: : : : }: : : :斗１ // ∨ﾙﾍ ／...........У: : : :./..............
.: : : : :/: /: : : : :ﾉ: : : : :j...|//ｨ｢川ﾄ､ V／.............../: : : : :/.................
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 慎二が何らかの対処をする前に、凛は、ターニャが手遅れであることに気付いていた。
| しかし、なんの手も講じることができなかった。
|
| ターニャを助ける方法は簡単ではない。そちらに手を回せば臓硯を燃やす炎に支障が出る。
| 燃え続ける臓硯の蟲プール。無尽蔵に近い魔力貯蔵。根比べに近い地味な対決。
|
| しかし、ここで手を離せば臓硯は復活しかねない。
| そして、『イシュタル』ほどの宝石と術式を再び用意するのは困難だった。
|
| だが、『イシュタル』の炎を広げるのは不可能ではなかった。
| 高い集中力と精密動作が必要になる。なに、針の穴に象を通すより簡単だ。
|
| 簡単だが、凜はできなかった。
| 成れの果てとはいえ雁夜と、ターニャ。知らぬ仲でもない二人をその手で焼き殺すのは、躊躇われた。
|
| この甘さが遠坂凛最大の弱点であり、多くの門弟や仲間が彼女を慕う美点でもある。
| とにかく、凛はターニャを燃やせなかった。
|
| けれど、開発はしたものの臓硯に叩き込む方法が無く、凍結したはずの自壊プログラムにはいち早く気が付いた。
|
| ターニャが死ぬ。凜は動揺した。
| この二度目の動揺が、命取り。
|
| 亜音速で発射された蟲の弾丸が三発。
| 凜の胸、右肩、そして『イシュタル』を撃ち抜いた。
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| へ ＼＿＼＿＼ } ／／ ﾉ
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＼ （ヽ/ / ￣ / | | 、_ j
＿ｧ≦7 ＼二> ｧr‐ ヽ ! { __ /
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//{///{ { { { ∨二二二二二/
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//|///|∨ | }} 心 ／//＼
//|///|. ∨ } ＞ }__j＿jイ//{//＿心
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| いいや致命傷である。
| モース硬度10のブラックダイヤモンドは無惨にひび割れ、肩のささくれた断面からは骨が見えていた。
|
| 同様の一撃を胸に受けたら、即死しない方がおかしいというもの。
|
| そして凜はおかしかった。
|
|「げふっ、ごぽっ！」
|
| 水っぽく咳き込んだ口元から血の糸を引きつつも、凜は健在。
| 蟲の弾丸が薄い胸に直撃したと同時に、その超人的な魔力で焼き潰したのだ。
|
| 肋骨は何本もへし折れ、肺も傷ついたのだろう。衝突箇所の皮膚は焼き焦げて爛れ痛々しい。
| だが生きていた。血を滴らせながら倒れない、その目はいまだ戦意に満ちている。
|
|「くそっ、爺さん！！？」
|
| ターニャを援護しようとしていた慎二が、脂汗を溜らせながら呻いた。
| 呻きたいのは凜も同じ、いや、慎二以上か。
|
| いつの間にか炎から免れたのか、人型の間桐臓硯が、次弾の準備。
| 次は、防げない。凜はこみ上げる血液にむせながら、手の甲で口を拭った。
|
| 弾丸にはすぐに気づいた。空中で焼き溶かすだけの魔力と防御力があるつもりだった。
| なのに、致命的な一発に集中しなければ焼けなかった。そんなはずはない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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´ ｀
／ ＼
／ :.
,ノ､ ,′ '.
| ＼ / u ヽ
| .′ ,,.. ''" /
| , -‐ '" ,..::::::::/
_:, u ':, | ,.:::' ,. ,.:':.:.:.:.:/ 好き勝手してくれたのぉ小娘。
∨ ＼ :::..':,│ ,:':,:' ／ ,::.:.:.:.:.:/ 貴様の体は桜と違い貧相じゃが、
〈 ｀丶::::..:::::／ __, !.:.:.:.:./´'. 魔力に関しては満点じゃ。
{:ミ＼ 〉::f ''"´ ヽ.:./ 7/
_У ゝ=` ､∧ r＼__,,,.. -rrrｧ::'’'' / 犯しつくして苗床にしてやる。
／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
＿__／/:.:.:/: }:, r‐r‐< / | :、 u ／/:.:.:l: :＼
／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
／: : : :.:.: : i:.:.:.' : . : l＼ ｀ ー======イ / ｨ: . |:.:.:.:!:.:.: : : :＼
´: : : : : :.:.: : :! :.:.l : . : .! lヽ´￣￣｀ヽ イ´ /: .│: : l.:.:.: : : : : :＼
: : : : : :: : : : :! : :.!: . : . l l:.:.:.｀ー― '":.:.:.:./../: . :.:| : : :l :.:: : : : : : : :＼
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| 蟲のプールは未だ燃えている。
| たが、どんなからくりか、間桐臓硯がそこにいる。
|
| こちらも余裕のない表情で、額には汗が粒をなす。
| 凜が動揺した僅かな隙をついて、本体核が逃れたのだ。
|
| どうやって？ 凜や慎二には説明したところで分かるまい。
| そんな都合のいい魔術を、偶然にも習得した？ そんなことあってたまるものか。
|
| やる夫や蒼星石がいたならば、心当たりがあっただろう。
| 凄まじい魔力消費ながら、どんな攻撃も通さない。
|
| 『絶対防御結界』。
|
| シンプルかつストレート。逆に馬鹿馬鹿しいその障壁。
| でっていうが世界の滅びから愛し子を守るためだけに用意した究極の術式である。
|
| 記憶力に自身のある読者は、やる夫復活前に『血族』とでっていうが密約していたのを憶えているかもしれない。
| その時の窓口が『やる夫』と臓硯であり、臓硯はでっていうから『絶対防御結界』の術式を教わっていた。
|
| 臓硯は凜の動揺による僅かなチャンスをものにし、燃え上がる蟲プールを魔力源にした。
| 『絶対防御結界』にて『イシュタル』から逃れたのである。
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乂:::::＼{::: { り ￣ 乂}:／}/ クソっ！
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|「間抜けめ！ そこで指をくわえておれ！」
|
| 老人とは思えぬ俊敏さで、臓硯が駆ける。
| ターニャと凛とのどちらを援護するかで躊躇した慎二には、対応できない。
|
| 毒々しいまだらの茸、その表面を黒い錆めいた何かが侵食する。
| グズグズと音を立て、スポンジみたいになって崩れる茸と、雁夜に掴みかかるターニャの肉体。
|
| 次の弾丸を跳びのけて避ける凛、傷の痛みに耐えかねて受け身も取れない。
| 花が散る、右肩から血が溢れて白い花弁を赤く染める。
|
| その間、『弓兵』は動けない、ここで桜を止めなければ。
| 『光浄裁』は不完全で消耗も大きい。二回目の時点で『弓兵』の限界は近い。
|
| 慎二はターニャに走った。その選択は誰にも責められない。
| 二人のうちのどちらかを助けられる単純なトロッコ問題などではないからだ。
|
| どちらを見殺しにしなければならないなら、助けられる可能性が少しでも高い方を選ぶべきだ。
| その背中を臓硯が嘲笑う。
|
| 所詮は慎二、その程度の無力な臆病者。
| 甘く見るなだって？ 自分の実力でもなんでもない、道具頼りな役立たずの癖に生意気なのだ。
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_ -─へ───､ ､_＞:::＿,.｡*'":::::::::_::::-‐┴:､
､丶｀: : : : : : : : : : : ヾ////ト_-≦::::::＞::::/::::::::／:::／::::::::::_」_
､丶｀: : : : : : : : : : : : : : : : : ∨//|_＞::::::::/:::／二ヾ-‐::::_:::-‐::::::::::::ﾍ
／: : : : : : : : : : : : ／￣￣: : -: :∨/| ＞:::イ::://_r／:::_::イ::::::::::::::;::-:::::!ﾊ
／: : : : : : : : : : : : ／: : : : : : : : : : :＼/L - ,.｡*' _才:::::/::::／／:::::::::/:l::}
／: : : : : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : l/| ./ ‐--┐:／:::/::::＿:::::::/::{
/: : : : : : : : : : : : : : :/:_: : : : : : : : : : : : : : l/l / / /７::/:::／:／ ／:::::::/:! クソ……クソ……ッ。
./: : : : : : : : : :_:_:_:_:._/: : :￣: : :-: : :_: : : : : :l,'∨ lT7 丈:::::::/:／ ／:／ﾉ::'::/ 桜、遠坂……！
/ : : : : : : : : : : ＼:::::/: : : :＼: : : : : : : : :-: :_:|/l| |/ ￣ ∠=-' /ﾌ:／
./: : : : : : : : : : : : : :.ヾ|::::､: : : : ＼: : : : : : : : : :|/,|ｰ-∠ﾆ=- _ ´ _ -ァ:::::{
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|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::|ヾ: : : : : : : : ヽ:/// /: : : : : ＼///;;;;〉 ｀
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| 歯が軋むほど食いしばりながら、血を吐くように慎二は呻く。
| 自分では誰も救えない。なんの役にも立たないという無力さに打ちのめされながら。
|
| 立ち上がれない凜、とどめの射撃がその頭を狙う。
| 間に合わない、慎二の脳裏によぎるのは卯月の笑顔。また、間に合わない？
|
|「ターニャぁ！ 遠坂をッッ！！」
|
| 不甲斐なさと惨めさに涙がこぼれる、他に思いつかない。結局ただの役立たず。
| 慎二は護身用の魔術武器を、この戦いに赴く前に、凜から譲渡された短剣を引き抜いた。
|
| 攻撃のための道具ではない、護符の一種に過ぎぬそれ。
| 一瞬の逡巡……しかし、慎二はそれを突き立てた。
|
| 己の。
|
|
|
| 心臓に。
|
|
|
|「僕の……命を、やるから」
|
| ニャンコ先生がこの場にいれば、慎二とターニャの魔術的縁を通して、
| 慎二の生命が、魂が注ぎ込まれるのが見えたであろう。
|
| 己が体を錆とも煤ともつかぬつちくれに変え、雁夜ごと滅びようとしたターニャは言葉もない。
|
| 悪魔と術者として、二人は契約していた。そんなものは要らぬと拒絶もできぬ。
| だが、慎二の生命ごときで対処できるほど、雁夜は甘い存在ではない。
|
| 無駄死に、犬死に。ターニャの心を絶望が埋め尽くした、瞬間。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ ／ヽ ／: : : : : : : : : : : : : :￣｀ : :、
〉 八 } ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
／ / ヘ ノ ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
ィ ヽ ／ ／: : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾄ: : : : : :ヽ
＼/ , : : : : : : /: : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : j: : : : : : : :.
/ /: : : : : : /: : ／: : : : : :/ : : : : : : : : : /￣￣￣￣入
＿ ノ /: : : : : : /: : /: : : : : : :/ : /: : : : : : : /＿＿＿＿/ 介
/i: : : : : : /: : /: : : :| : :ｲ : :/ : : : : : ／ ＼ ヽ / ハ
/: !: : : |: :/: : /: : : : i: / !: :/: : : : :／ ｀ヽ ＼ V
/: 川: : :|: j: :/八: : : :i/ /: //: : ／´￣ ＼ ＼ |
. : : :八: : {ﾊ从 ヽ从{ ＞ ´ ノ 7〒癶、 }:＼!
/: : : : j: : :i| ／ 什杖_八 j: : :|
/ : : : : |: : : } ／ / ヾ心'ソ }ト /: : : |
. :＿＿:_:ｊ: : : :i ／／ . ―､ ｀¨ﾞ ｀⌒ ｨ､⌒ｊ: | …………ネエサン。
|: : : :V / ,ｲ ヽ _ソ ｲ: :!
|: : : : ∨ {ｨ ﾊ / ／: !: :レ´
|: : : : : ﾄ ﾏ､＿＿ﾉﾉ ..ｪ┬彡≧ｭ:|: : : : : :
|: : : : : i ＼ ﾟ ー― ´ ／ / jニニニニｭ: : : :
＼ : : : : : :ﾊ ヽ _。 ≦ /ニニニニニニ
＼ / |: : : : :i ミ ≧＝ニ二 / ／ニニニニニﾆ/
＼{ !: : : : ﾄ ヽ ／／ニニニニニニ人
｝ |: : : : :! ＼ ミー ＝彡 ／ニニニニニニﾆ’ ＼
i !: : : : ﾄ ｀ー――― }￣￣￣￣ ミ 、イ
｀ヽ､ i |: : : : j ＼ ｲニﾆ 〉 {
|:ﾄ、≧、i|: : : :/ 彡ニニ} / ＼
|:} ー i!: : :/＿＿ ＼ / ＼
|: V l : / ￣￣￣￣￣ ― ＼ ＿ ノ
ﾉ: 八 |: { ＞――＝ 、 ミ 、ヽ
: : / ｀ミー}: :!＿＿＿＿＿＿＞ー ´ ヽ ＼
: /ヽ j:ｲヽ＿＿＿＿ { ノ＿＿ ノ
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＼ ＼ ￣￣￣ 八 | {｀ ー―
｀ ＿＿ 彡 ／ {! | {
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| 二つのことが同時に起こった。
|
| 一つ、『弓兵』の攻撃を受けていた桜が突如として振り切り、その巨大な腕で『弓兵』を強打したこと。
| 一つ、突如現れた青い光が彗星のごとく尾を引いて、ターニャと雁夜に激突したこと。
|
| まずは前者、『弓兵』の『光浄裁』による内部魔力の分解と蒸発の中で朦朧としていたはずの桜。
| しかし、突然かつ高速で動いた。それまでこの瞬間のために力を貯めていたかのように。
|
| 光の漏れる手で『弓兵』をむんずと掴み、抵抗する暇も与えずアンダースロー。
| その衝撃でちぎれる腕、脚。地響きを立てて転倒。
|
| だるまになって蒸発速度が早まる。
| 動きも止まった。ただ、その目は己の行動の行く先を。
|
| 投げ飛ばされた『弓兵』は、錐揉みしながら着地。不幸にもそこにいた人物の背中へ。
|
|「ぐげェ！？」
|
| 背骨と内臓がグチャグチャになる一撃。当然投擲しようとしていた魔力は消失。
| 反動でジャンプしながら『弓兵』は光を漏らしながら微笑む桜を一瞥、ターニャを一瞥。小さく嘆息。
|
|「来たのか」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ノ / / ,. -ｧ'ｰ'´ ／／
/} / /__,..ノ- ´ ／／
lﾉ / /ﾉ:::／ ／／
{:ヽ / /ﾉ￣ ／／
ヽ￣ ｀ヽ､ ／ /'′ ／／ ＿＿_
ト、 ｀ - _ ｀ ー/⌒l ／ /⌒ヽ., -v‐ ¨_二 ----- 二､ニ= ､
ヽlヽ ｀ ┬ ､,..‐＜￣-￣、丶ｰ┴ ､ : : :＼:}￣ ｀ ＝--
＼＼ ／: :{ : : : ヽ : : : :＼: ＼: : :＼::/ ヽ-、
＼＼ //: : : :l : : : : : : : : : : :ヽ :ヽ: : : :ヽ: :.}:ﾉ
｀ヽ.ｰ- ._,.--./:{: : : : : : : : : ＿: :-―: :丁￣:ﾄ.￣/:｀:7＝ ､
＿｀j7/r.‐/: : : : : :, : ィl: ￣: : : : : : : ﾘ: : : l :V:.:.:./-､__'＿＿
-_ ニ ￣--ｧォノ : :! : : : : {´: :ヽ:{ : :/´￣:￣:￣￣:￣:｀:＜三_j_￣￣｀ヽ
´ riｧ,―ｧ{: { : : : :|: : : : :ー--‐': : : : : : _: ＿＿＿＿_: : ＼|｀ヽ ′
ﾄ_ｲ ´ ヽヽ: : :ﾊ: . :/: : : : : : :ヽ: .ｰ､- 二_ヽ､ |ﾉ}⊥＞､:ヽ
{_ﾄヽ｀ーナYヽ:. :ヽ: ﾄ､: : ﾄ､＼: : ｀:ｰ､-｀ヽ ／｀_ヽ!/ ヽﾄ
｀ｰ｀‐' L: ゝ､:_ヾ、 ＼ヽｰ 三._ー-ヽﾝ/,ｨ:}/ | l }!
{:.:.:.:.:.:.へ― ミ、_ ///ｰ'′ ,′ j!
｀ ー-!ﾊ‐＼ヽ〒ｫ:ｧｰ ´ /
|{ ヽ ＼ ￣ ヽ ノ ／
ヽ、_ 丶._｀ ー--￣- '
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| 巨大なアンカーが地面を穿つように。
| 青い光は雁夜に流星のような飛び蹴りをねじ込んだ。
|
| ターニャと雁夜が離れる、崩れ落ちつつあるターニャが慟哭。理性を失った雁夜が咆哮。
| その雁夜の頭部に、跳び蹴りの反動で高く飛んだ青い光がかかと落とし。
|
| 頭から花畑に埋没し、クモの巣状の亀裂が広がる。
| そのまま振りかぶった右手、断頭台のように振り下ろされる手刀。
|
| 粉微塵に吹き飛ぶ雁夜。
| 青い光は死に至りつつあるターニャと慎二を一瞥。そして期待に満ちた目を『弓兵』に向ける。
|
| 視線が絡む。言葉は要らない。
|
| 青い光が跳躍、空中で『弓兵』と交錯。
| 互いに相手の足裏を蹴ってスイッチ。
|
| 『弓兵』はターニャへ。
| 青い光は不幸な着地点。よろめく臓硯に頭から突っ込む。
|
| アイサツと同時の、右ストレート。
|
|「こんばんは！ 夢宮アリカです！！」
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☆ 次回予告！
それは、愛に似ている。
例えば朝、ベッドから身を起こし、身支度をしつつ朝食を取りながら。
それでも心はその人に向いて。
例えば昼、忙しく働きながら、ふとした瞬間に。
思い起こされるのはその人ばかり。
それは、恋に似ている。
例えば夕暮れ、一日の終わり、残りの仕事に気怠い頭を動かしながら。
その人は何をしているだろうか。
例えば夜、夢の中でさえ。
その人が現れやしないかと胸を弾ませる。
しかし。
その想いは。
次回、最終幕八十七話『その気持ちは恋なのでしょうか』
果てに見るのは破滅か死か。
アリカ、青い光とな！？
乙
青き彗星というどこぞで使われてそうな登場をかましたなｗ
◎現状（八十七話開始時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
暴徒は鎮圧されつつある。
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
ケンシロウ、ジャンヌと遭遇
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
『血族』の捕虜になる
・四ツ目
トパス、アメシストと交戦後弾薬不足で撤退
・ミスト・レックス
ハッキング中らしい
・やらない子
ヤザンに敗北
・はやぶさ
誠に同行
・アサギ、タカオ
誠により運搬
・麻呂、白雪ひめ
やる気を減退させ、一般人を避難中
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
誠を探している
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中。
・誠
タカオとアサギ、はやぶさを連れて警察へ。
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたいが、鎮圧されつつある
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギを捕虜にする
・龍田と石田、杏子班
ロビンと交戦、敗退
・ケンシロウ
やらない夫と交戦
・キオ・アスノ
イナミと交渉
・呂布
ヤザンと交戦
・馬岱、星、邪悪帝国
レイを捕虜にした
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
やらない夫と交戦
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
呂布と交戦
・ロビン、カトルカール
石田、龍田、杏子班に打ち勝つ
・トパス、アメシスト
四ツ目と交戦、再び足止めされる
・レイ・ザ・バレル
捕虜にされる
・合衆国軍
一般人を攻撃、鎮圧されつつある
イナミ
キオと交渉
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちとアサギを殺害した
タカオに致命傷を与えた
アサギに『一人でおかえり』を憑けられ誤った囁きを受けることになる
;;;-‐‐‐‐‐‐-ｧ-''-;;;;;;;;;;;;∠_二ニ゛＼＿
'i, ,_,,-'‐! ゛ー-r=''''＿ ヽ |;;;;;;;
ｙ‐''''´,,..-‐'--''") 、＿ ￣''ヽ-,ﾉー,,,,,,,,,,,,,,---‐‐'''''￣ ,,,,,,,,
,,/;;; ,/´ ;;_;;;;,-‐" ,／￣゛'''''＼_-‐''´ ,,,,-‐'''''''''""""
,ﾉ;;;;ﾚ";;::,/ ,r‐-,/‐--// ／￣,,r''´ _,,-'''´|
;;;;;;;;;;;;;;;ｲ／;;; （(,,,,,,//／ ／゛ ,,,,-''" |
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ∠,,＞ﾐ‐‐'''')／,,,r--‐'' / |:─--- ,,,, …………ぐぐ。
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ー‐'''~ヾ、, _／::::::::::::::::::::::::::ヽ、
;;;;;;;;;;;;;;;;;;:: ,r‐i'|ヽ|、 ヾ|、ヽ＼ _,r'' ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::: 後は……やらない夫、だ。
、;;;;;;;;;;;;;::: ,/::::::∥゛i、 'ヽ ヾ、,,,r'''"::: ヾ::::::::::::: ／ ……やらない夫、を、見つ……けて、
:'ヽ;;;;;;;;;::: |;;;:____i, ヽ、 ＼＿∠,ii, :::: ''-,,:::::: ／
;: ' i,;;;;;;::: ,/;ヽゝ'ヽi:-i, -''''=ﾆヾ‐'ｲﾉ | i;:: ／
; i,;;;: ,/｀ ,／::::入 ＼＼ー-‐''" i i, ＼ ／:::::::::::::::
;;i, i、/ r゛ /: :::::!''＼ ＼￣ ____,i i, ＼ ／:::::::::::::::::::: …………殺す。
;;;;i, i, ゝ'::::: /::7‐- ＼ ヽ、 ,i ,,,___,,i, ヽ(_＿::::::::::::::::
;;;;;;;i、 i, ＼::::/:::ヾ─-,,,,,_ヽ、 ￣!／::::|:::::ﾉ ::::::::ﾉ ￣￣￣
;;;:::::::i, i,, ヽﾍ、＼‐─一゛7‐-─ｿ:::|／ く、
;::::::::;A、 i, ,,‐r‐-ヽ:::::ー-‐'''" ,／ '''''''''''''''''''"" ,r''''"
::::::;/ i i," |＼ | ＼,,,,, r ,／:: / ／
￣ ＼ 'ヽ,, ＼ i i/ヽ--イ::::: | ,/ ,／
＼, ＼ ＼ ＼ i i ＼::: ,,／ ／
ヽ V| ＼ ＼i | ヽ ,r' ／
''i | ＼ ＼ " ／
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| 芝公園の騒乱はほとんどが鎮圧されていた。
| 本腰を上げた『血族』が、ほぼすべての場所で合衆国兵や自衛隊を捕縛していた。
|
| 『グレン団』や『九鬼』、そして曹操華琳が呼び戻した部下たちの活躍が大きい。
| つまり、元『結社』勢力が、完全に治安維持や東京守護のために動いているのを見せつけた形になる。
|
| 『教会』側で鎮圧に動いたのはジャンヌ・ダルクと『異端審問官』のみ。
| 暴力教会のエダは事前に「シロッコから手出し無用と連絡があった」旨を『血族』に垂れ込んでいた。
|
| 『学園封鎖』の責任問題で忙しい『十字軍』も不参加。
| より正確に言うと、『学園封鎖』翌日以降は『十字軍』のオズ、オズマの双子と連絡がつかない状態だった。
|
| なお、いまだ芝公園の汚染電波は続いている。
|
|「石田班、佐倉班がカトルカールと交戦中。
| 趙雲殿がシロッコ側の将兵と思われる一名を捕虜としました」
|「助かる」
|
| 『異端審問官』と行動を共にしていたケンシロウ、『血族』は汚染電波による妨害を許す作戦で動いていた。
| 代わりの伝達はアナログの極み、いわゆる伝令である。
|
| 二人一組の、『九鬼』下級ニンジャが幹部級探して走り回り、連絡をする。
| 汚染電波で調子に乗り、安心しているシロッコの裏をかく作戦は見事に成功し、
| レイ・ザ・バレルの捕虜という成果を出していた。
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／ノ{
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|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
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|::::::::::::: 「イ三三≧x､{/{/八ハ::: /
|:::/{::::::/ <￣弐{¨¨` x≦三{|: /
|: | ∨{ ￣三= { 坏)「Ⅳ
八乂V!: ＿| ′
/:::::::/｀l| ￣｀ /
. /::::／ 八 ∠二ｱ / やらない夫は？
/::厂 { ＼ ヾ /
-=イ⌒{ / { ＼ /
. ／ﾆ＼ﾆﾆﾆ＼ { ＼ ＿＿/|＼
／ﾆﾆﾆﾆ_＼ﾆﾆﾆ＼ { /{ |ﾆ=＼
￣}ﾆﾆﾆﾆﾆ=丶ﾆﾆﾆ＼八 //{ 八ﾆﾆﾆ≧=- ＿＿＿ ィ7
} ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＼ /八 ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ7
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|「カトルカールと交戦後、逃亡。捜索中です」
|「分かった」
|
| ケンシロウは、やらない夫を探していた。
| 聞きたいことがある。知りたいことがある。
|
| そして何より。
|
| ケンシロウは己の中に生まれた得体の知れぬ感情に名前をつけなかった。
| ただ、すぐに消えるだろうと無視をしていた。興味もなかった。
|
| 嘘だ。
|
| ケンシロウは日増しに存在感を強くする『それ』から必死に目を逸らした。
| 考えまいと努めた。しかし無駄だった。
|
| 対処できない。完全に手を離れている。
| 戦士として、冷静さを欠くことは死に直結する。はずなのに、自分を保っていられない。
|
| しかし、この戦いの中で、ケンシロウはとうとう見てしまった。
| 『聖処女』ジャンヌ・ダルクの中に。
|
| 己とよく似た、身を焦がし駆り立てる、制御不能の感情を。
|
| それは……………………。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/! i｀ヾ:､i､__＿＿___ `Vﾚ;
ﾄ､i.{;;! ゞyｲ´ i ､ﾄ､ ヽ.ヾ}!くﾉ
＞;;ヾ,／ゞj ﾄ､｀ヾ:､､ }! 从､丶 ､ ,
,ィ´≦;;r'- ‐―━┷,ゞ`;;;;;;}j;| ﾞ ヽヾ‐ヽ }! 〃 ,
〃´/イ;;ﾉ､ ＼､ ,〃ｨ;;;ﾊ;ﾊﾐ､-．_ヽﾄ.､V!/,' ,.;"
〃' ＼､__ /′ｲ从!ﾘ ヾﾄ､ ヾﾐ;;ｿﾚ'ﾆ='"
,ゝ'´￣/ ¨T ≠ﾘ___ｻ､､ﾘ ＼ ,ゞ;;;;;;;≧=-､
/ / ! 〃 i─ﾐ､､_ ヽ〃'};;ﾄﾐヾ:ヽ
/ / ! i {. ﾄﾐゞ_(Y､_j! {;ﾊヾ. ＼
. / .,′ ! / |: {二≧／了ﾉ l }! ヾ，
,′ ,′ !' |:. ∨ ,ィﾆ〉 ﾉ .ﾘ }
,′ ,′ j' ﾄ‐-､! ／ ＿ﾞ_＼ …………おい、
,′ / / |／＜f`ｰ=ｧ″ そこ、の……娘。
´￣￣ｿ-―― 〈‐､__．-＝､!＼ ＼::;ﾞ″
ノ⌒ｰ／｀ｰ- ．__ }´ ヽ--≧､ヽ ＼/ _＿＿__
r＜:::::::::＼､｀､._ ヾ ﾄ-．＿_;ﾉ |｀ヽ＞-ｲf´ / ｀ ヽ,
:､:::::::::::::::::.ヾ:､ ￣ ヾ､! /! .! i｀ｰ-t_ { ／ ｀ヽ､_＿＿＿＿__
:;::ﾄ､::::::::::::.:. ＼:.､_ ﾐ､ー /ｲ :l _⊥=―ヽ‐┼''" / ／￣ ／ ／ ｀＞ｧ-=．__．イ¨７━―
j:::l:::ヽ:::::::::.:.:. ヾ:､＼￣ヽノ !ノ´￣! ヽ,．-‐━ﾄ､ /. ／ ／ / ／/ ∧´" /
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|「ゲェっ」
|
| 通りかかった一人の女に、ジャンヌが声をかけた。
| ジャンヌ自身理由があっての行動ではない。
|
| ただ、気になったから話しかけたのだ。
|
| 女の反応は過剰で、そしてその直前にジャンヌは気付いて愕然としていた。
| 鬘一つで、こんな、こんな…………！
|
|「備府……やらない、夫！！」
|「あんたにゃ会いたくなかったぜ……」
|
| 疲労困憊した様子で、やらない夫は鬘を投げ捨てて身構えた。
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l | / ／ ヽ- |(／ヽ
! !;;, /' ／ __ ! ! ヽ !
|、 ｌ;;;;;;.. ,'/.／ ,､_) ヽ 「 |／ /
| ヽ !;;;l;;;;;;,. // ゝ二ﾉ /ヽ | ／ /
!、 ,;, | '!;;;;;;;;, // ／ヽ !/ /
├ ` =､ | ヽゝ;;;;∠ 'ﾉ` ｰ┬┐_ﾆ´／ ! ﾉ 無事かァジャギぃッ！
! ﾄ-ﾍ ﾊ |, ヘ;;;;;;;;,,,`ﾆ三二 ﾆ¨ ├'´|
iヽ、 ￣ ∨/ﾉ「､ 「￣ ﾞ';;;;;;;;,,,￣￣ -┬n ! |
| ';;;;三ﾆ;;;// ヽ ﾞﾞ';;;;,ﾞﾞ''ﾞﾞ / !| !
! ﾞ;;￣';;;/ ! ,. ﾞﾞ'' ／ 」´ } ! l
| ;; ;;, ト. ' r‐ ／ / r' / !
ハ ';;, ';;;, ` _ -‐ ~_／￣ // /
/ ＼;;,, ﾞ';;,､＼､_ -‐ ¨ __ -‐'´ ノ / /
ﾊ / ＼ ';;, ＼Ｙ´￣ _ - ´ /
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|「え？ ジャギだったの！？」
|「うるせェ、俺は繊細なんだよ！」
|
| こちら、偽ヤーボと戦っていた『グレン団』コンビとジャギ。
| 突如自爆した偽ヤーボ、巻き込まれたカミナとシモンは平気な顔。神族守護が違う。
|
| 対して、大の字になって転がるジャギ。
| 偽ヤーボ戦でも手傷を負っていた上に、実ヤーボ……もとい『リトルボーイ』相手に受けた傷も残っている。
|
| 生きているのが不思議なくらいの満身創痍。
|
|「見逃せ」
|「出来るかタコ！ こちとら天下の『四天王』だ！」
|
| 仁王立ちに見下ろすカミナ、ジャギは一瞬ポカンとした。言葉の意味が理解できるまで数瞬。
|
|「マジか！ やったじゃねェか！ クッソ早く言えよ！ 聞いてねーぞ、祝い酒だ！」
|
| 自分自身が『四天王』に拘っていた事など嘘のように喜ぶジャギ、カミナは頭を掻いた。
|
|「ホントにジャギだよアニキ」
|「だな、ちなみにケンシロウも『四天王』だぜ？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ヽ
/二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 ､
/二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ﾆ ､
/二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ﾆl
/二二二二二=二二ﾆ===--────--===ﾆ二=二=二二二ﾆﾆl
l二二二ﾆ∧ | ヽ-‐''_ﾞ--=ﾆ＼ | ／￣｀ ‐-ﾞ_'''ﾞ |ノ )ﾆ二二二l
l二ﾆﾆ∧ﾉ `' _ -‐'ﾞ／⌒丶 l | l ／⌒＼ ＼ /｜二二ﾆl
l二二 | ／ ／ _・ __ﾉ ﾉ | l ' _ ・ ＼ l ﾉ,､'二ﾆﾆl
l二二|＼ l_ `'''ﾞﾞ _ -‐''ﾞ 人 ﾞﾞ''‐- _ﾞﾞ''--' ｌ ﾉ二ﾆﾆl
l二二ゝ、 ヽ＿ -‐'' ﾞﾞ''---' ' l二二l
ヽﾆﾆ＼ , -､ ,､ __／二ﾆﾆl
l二二＞ ／ /: : l /: :ヽ ＼ ＿_／二二ﾆl それは聞いてる。
l二二ﾆ=7 ∧ ｌ : : l ｌ : : l ∧ ヽ二二二二/ くへへっ。
l二ﾆﾆﾆ/ ,､ l: : ｌ {￣ } l￣ ,' /: :l r､ ヽ二ﾆﾆﾆﾆl
/二二ﾆl /: :ｌ l: : ヽ l￣ l l￣/ ll: : l l: :l l二ﾆﾆﾆﾆl
/二二二l l: : ヽ ヽ jﾞl l. l ,' l ll: :/ /: :l /二二二二､
/二二ﾆﾆl ヽ : : l ｝l ｌ ,''-‐-l/-‐-l ll l /: : / ｌ ＼二二二ﾆl
/二二二ﾆl l: :|: :∨/ l/ ＿＿ l／､l l/: : / l ｌ二ﾆﾆﾆﾆl
./二ﾆ/￣￣ / : |: : : :l ＿＿＿ l: : : : l ＼─'‐ﾞﾞ￣7ﾆﾆl
/二／ /: : :|: : : :`ｰ'ﾞ : : : : : : : ￣ﾞ'‐': : : : l ／二二l
/ゝ‐''￣/￣￣｀ヽ/: : : : : : : :_: :-‐ ￣￣ ‐-: :_: : : : : :l _ -ﾞiﾆﾆﾆﾆﾆl
l二ﾆﾆﾆ/ l ｌ￣ヽ: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : ／l＿ -‐'ﾞ lﾆﾆﾆﾆﾆl
l二二ﾆ/ l ｌ ＼ : : l: : : : : : : : : : : : l : : ／ l ｌﾆﾆﾆﾆﾆl
￣ヽ / ｌ ｌ ＼: : : : : : : : : : : : : : ／ l l l二二ﾆ/
l l l ￣￣￣￣￣￣￣ l l l二二/
／l l l l l l ￣
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| 抑えきれぬ喜悦に変な笑いのこぼれるジャギ。
| 昔なじみの前で変に気取る必要もなく本音が出てしまっていた。
|
|「とりあえず、連れてって治療してもらえ。その後、何で隠れてたか吐いてもらうぜ」
|「酒とスシは出るんだろうな？」
|
|「出ねーよ」
|「出せよケチ臭え、テメエカミナ『四天王』だろッ」
|
| ジャギの巨体を背負うカミナ、カミナ自身も無傷ではない。
| しかし、既に血は止まり、傷の下から新しい皮膚ができているのが見えた。
|
|「なンだ？ 再生力上がったか？」
|「おう、逆にな」
|「逆かよ」
|
| カミナの強さの秘訣は、弟分の信頼である。
|
| 普通人に過ぎないカミナだが、シモンの期待がある限り、
| シモンの信じるカミナである限り凄まじいまでの加護を得られる。
|
| そのことを周囲に知らしめたのが十月、カミナは自己肯定感最低値のシモン共々変わるために努力してきた。
| 加護任せの戦いだけではない、武器や体術を教わった。シモンと並んで訓練を重ねてきた。
|
| そして、カミナはさらなる信頼で加護が増えた。
| シモン自身が己の能力を扱えるようになれば、相対的に減ると思われたのに、まるでそんな兆候はなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
＿＿.＼ ｀ヽ、 ＿_
,． '´ .￣ ｀'´.__／
,．'´ ￣￣｀ヽ、
,．'´ ｀、
／ _,.．-'''"￣￣"'''- ．._ ｀、
/ ,．'" -‐‐、 ｀丶､ ｀、
./ ／.／ ﾉ .ｒ''´￣ ヽヽ .｀、
./ /／ .／ | ヽ｀、 ｀、
/ /人＿__,.．'´ _,.．-―‐、 ヽ .ヽヽ ｀、
./ ,ｨ |' _,.．''" ＼ ｀､ ｀､｀､ .l
.|/ | . | ,r―'''´ .＼ ヽ ＿_ノ .｀、 ..|
| . |/ .∧ ＼＿＿__ | |
| | ./ .｀、 .ｌヽ ｀ヽ、 l .|ヽ|
| | ./‐‐-｀､ ､ /ヽ . | ｀､ .｀､ | ..|
|／| / r‐‐-.､ヽ|ヽ . l￣.ヽ|￣ ｀､ r'´ヽ . | ジャギさぁ
.|,ｲ /､ .|.lﾘ ヽ ｀､ .|.r‐‐-､ ヽl､ //{~)|.∧|
.//|/ ｀.ヽ | . ｀､.|.|.lﾘ ヽ ＼/( .ノ// みんな心配してたんだぜ。
// l ￣ ヽ | .／/
|.| ヽ , ――' .／￣ ./｀ヽ
|.｀ヽ､ ヽ ／.／ /＼ .＼
ヽ ヽヽ､ |＞､ ―-､ ／l／ |､ .＼ .＼
.｀､ .｀､ ｀ヽ..| ､ ヽ ＿_ , '´／ .| ＼ ＼ .＼
ヽ lヽ...ヽl ヽ | .／ ＿＿＿.ﾉ ＼ ＼ .＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「悪かったよ」
|
| ジャギの返答には精彩がない。
| そこを突かれると痛いのだ。
|
| そして、『血族』の捕虜になるということは……大変顔を合わせづらい相手に会わねばならないということ。
|
| ジャギは大げさに嘆息した。
| 自分の周辺が危険だと思った際、暴力を使ってでも遠ざけた。
|
| あの怯えた目付きを思い出すと、ジャギのような闇の心の持ち主でも疼く部分ある。
| ヤザンに殺されかけ、麻呂に助けられ地に潜ると決まったとき、
| もう顔を合わせないで済むと胸を撫で下ろしたのを思い出す。
|
| だが、まあ、もう諦めるしかない。腹をくくろう。
|
| ジャギの『やらない夫の集会』は終わりだ。
| 予定通り、『血族』の捕虜になる。
|
| これより、次の作戦を開始する。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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||＼
＿ ∧ ,,-'／ .|| ヽ
＼／ | |｀''､ | | |
| ￣｀ | | | |
＜ﾆﾆ! (ﾆ＞ |｀'´ |
ヽ_─ ,,-´ |｀ .|
|_/ iヽ /| | | |
| | | .| | ,| | | |
_|_| .| | /ﾆﾆﾆﾆヽ| |. | | !
///|ヽ＼ | |!二二二 | | ／. | | |
||_|__j ＼＼, ｰ-,､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |,,-‐‐／/ | | |
ヽ'!_| ヽ / / | ｀'''''''''''´ |ヽ ヽ .| | | 皆ヲ殺シタクハ アリマセン。
（--） ヽ_|_,,,､､ .| .| .| | | | | | 退イテハ モラエマセンカ。
＼ !j,,-‐jj | _ |_ ,----､_.|__ | | | | |
─'´｀'-＿|＜__| | |. ○ .| |＿＞|＿,,,‐´ ∠￣'''-､
＼ |｀'''''''''´| ／＼ヽﾑ--‐（/三| |
＜/i｀! | ｀￣￣ | |´ヽ＞ ||__ >三 | |
_,,,-- ! ヽﾆﾆﾆﾆﾆ／ ||｀'''─,,,,,､''''''''' | | ﾉ |
=ﾆ,,,,,,,,,,,,j ＼｀ｰ-‐´ ／ !!,,,--‐‐ '''' |ﾆﾆ,,丿
ヽ,__ ｀|○|´ ,==、 / | |
／ ﾉ ｀ ´ !! ＼ |/
／,,,-´ ｀-┬─‐｀'' - ＿
￣ ／￣ヽ＼/｀─＿
.|| ＼ ｀─'＿/｀ヽ
,- ||＿ ＼ ヽ／|
＜ <＝|＿￣￣''''''フ,,,＿＿_ﾉ__ |
｀ - || ￣'''''''─',,,,,,,,,,!＿!__ノ
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＼ ／
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|「ｺｰﾎｰ」
|「ナラバ仕方ナイ」
|
| カトルカールと石田班の乱戦は続いていた。
|
| ロビンの合流したカトルカール、九名。
| 対するは石田龍田と合流した佐倉班で五名に『ストーム・トルーパー』が十一名。
|
| カトルカール側の戦力は、まずはロビン。
| 次いでノミ脚、バレリーナ、戦車男。
|
| 新顔の戦闘機と、鉄腕、ムカデ四肢。
| やらない夫にやられた透明と、龍田に撃墜された大砲は戦闘不能。
|
| 龍田を守って五対一で時間を稼いだ石田、本人は戦えるが支援頭脳たる『ストーム・トルーパー』は疲弊気味。
| 墨目を倒すもやらない夫には逃げられた龍田、段々と動きが鈍化しつつある。
|
| 補助に回るヴァイジャヤ、龍田の代わりに前に出る杏子、そして指揮官は横島。
|
|「エロい子多くない！？」
|「死ね」「ｺｰﾎｰ」「お相手願って見たらぁ？」「言葉通ジテマスヨ」「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|
| ほぼ全裸で、四肢がムカデのムカデ女と、腕部に機械武装が集中し、胴体はビキニスタイルの鉄腕。
| 横島が喜ぶのも頷けるが、周囲の反応は冷ややかだ。
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| 中距離で走り回りながら機関銃を撒き散らす戦車男。
| 戦場を縦横無尽に飛び回り、後衛を狙うノミ脚、バレリーナ、戦闘機。
|
|「アタシの代わりにコイツら頼む！」
|「え、無理」
|
| ムカデ女と鉄腕の相手を引き受けるのは杏子、槍の結界で動きを抑えながらなんとか凌ぐ。
| 鉄腕の生身部分は異様な再生力で、何度切っても刺してもすぐに傷が塞がってしまう。
|
| ムカデ女は飛び回るため当てづらい上に、
| 一見脆弱な四肢は破損した瞬間にその部位をパージしてつけ直すので、こちらも倒すのが難しい。
|
| しかし、タフさでは杏子も負けてはいない。
|
| 形勢不利な『血族』側、だが彼らには強固な神聖防御と複合念動装甲に守られた石田という不沈艦がいる。
| 彼を倒すのは容易ではない。容易ではないが。
|
| ロビンは、彼を上回るスペックで設計されていた。
| 論理上は勝てる。
|
| 石田を倒したいならば彼の装甲を一度に破壊する打撃を用意するか、
| 『ストーム・トルーパー』十一名全員が疲弊するまで叩けばいい。
|
| ロビンは失笑した。
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,....-ｒ::ｒ‐:::-...
〃.:::::l:::|:::::::::::::::ヽ ｺｰﾎｰ
ｉi::::::::::l:::Ｌ.:::::::::.、:::.
ｊｊ, -‐'::ｰ', ＝ミ::.＼',
/〃⌒i}::::{､＿:::)::}:::.＼
;:::i{ゝイ::Y^Y::::::::/.::::::::::.ヽ
;::::::.〈:::://l l ｌ＼/.:::::::::::::::::.ヽ ＿__
::::::::::∨=-‐=＝7ヽ::::::::::::::::::::〉 {::::::::.＼
ｉ|:::::::::::.＼/////.:::::::>=＝ミ:/ ＼:::::::::.＼
乂::::::::::::::.∨///.:／／￣／⌒＞‐- ＞...::￣::｀丶、
｀¨¨フ７７７.:://.::,=ミ/.:::::／.::::::::::::i{::::::::::::::::::＿:::}
_ . イ:::::/:/:/.:://.::::{::::::.＼/.::::::::::::::::/ヽ.二ﾆ≠::::::/
/ //.:::/:/:/.:://.:::::/＼::::::.｀ァｧ‐-＜::::i{:::::::::::::｀:::く
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| そのために用意したレールガンは、念動装甲を貫通しきれなかった。
| 疲弊を待つ？ どれだけ戦うつもりだ？ やらない夫を追わねばならぬこの状況で。
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|「デハ遠慮ナク」
|
| 内線でカトルカールに作戦を伝達した。ロビンは石田を越えられる。彼らとなら。
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| 六本の脚のうち四本で身体を支え、前の二本を回転ノコギリに変える。
| 尻尾から火炎放射、だんびらと鉄球も振り回し苛烈な攻撃。
|
|「あ、テメ！」
|
| ムカデ女が四肢を振り回しコマのように回転、杏子の結界を破壊。
| そこに鉄腕が肉薄、爆雷付きの手甲でワン・ツー。杏子はバク転回避。
|
| 回転を続けながら後衛を目指すムカデ女、空中で火花を飛ばして跳ねる、石田のフォロー。
| これまで弧を描きながらの援護射撃だった戦車男の機関銃、突撃に変更、苛烈。石田がフォロー。
|
| 空中から戦闘機の強襲。龍田が奮起、エンジンを吹かして迎撃。対空アッパーを異様な軌道で避ける戦闘機。
| 石田のフォロー、足場を作って龍田も軌道変更。裏拳が直撃。
|
| 獲物に飛び掛かる肉食獣のように、ノミ脚とバレリーナが後衛に突撃。
| ノミ脚が横島の腕をえぐり、バレリーナがヴァイジャヤの喉首を食い千切……石田のフォロー！
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, ｨ≦三三三ﾆﾆヽ､
ィ三三三三三三三三三 ､
/三三三三三三三三三三三＼
/三三三三三三三三三三三|三≧
ｨ三三三三三ニﾆ三三三三三|三三ﾍ
|l三三ﾆ＞三三ﾆ''＼ﾆ＞ミﾆ三l三三ハ
ﾊ､／ニ=､l´ ＼| ヽ | Ｙｿ三三ｿ ダメ！
/三|､Ｙﾍ ヽ l _l＿ﾒ＿ﾉ/ｘ≦彡 石田クン！！
i三三＼ ＼＞― ´￣ ｨ/i､/ヽ三ｲ
ヽ､三 /､`≦ｚ _ ,ｚ≦ミ l/ |三ﾍ､
｀ ヽl i＞ ≧≦＜ ｉlﾘ ヽ三三ヽ
,|､: : i: : : : i: : ': :/: ＼ 〉三/
, ﾍ: : `:ｰ:＝:ﾆ:彡く: : :/ ヽ､l三ﾆゝ -‐=ﾆ
/ ､: : : : : : : : ゝ-〈: : :l /l ＿, -
/ ／: : : : : : /´ ノ: : l l /＜´ ､ ｚ
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| 龍田の警告、だがもう遅い。
| ロビンの鉄球が直撃し、石田の黒い全身鎧にヒビが入る。
|
| よろける石田、それでも火炎放射を念動で防ぎ、だんびらを受け流す。
| 挟み込むような回転ノコギリ、念動の足場を蹴って下がる石田。
|
| 周囲から『ストーム・トルーパー』の狙撃。被弾するも、今のロビンにを止めるには足りない。
|
|「ナルホド」
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
|「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|
| ノミ脚のバレリーナの遊撃コンビが散開。
| 『ストーム・トルーパー』を狙う、それが石田の生命線。
|
|「させるかよッ！」
|「ヤリマス」
|
| 追いかけようとする杏子に火炎放射。
| だが、槍の結界が炎を近寄らせない。さすがだ、ロビンは感服した。
|
| しかし杏子が離れては鉄腕がフリーになる。
| ムカデ女と二人がかりで石田を抑える。
|
| 戦闘機を撃墜した龍田が浮く。そこには戦車男。
| 車輪で芝生を飛び散らせながら、チェーンソーと合体した機関銃が咆哮する。
|
|「喉が喉が喉が！ 乾く乾く乾く！」
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./ / ,. ＜,:r'´::ー{/////ヽ､::::::::::::ヽ ヽ
/ / ,...r/::::::::::ヽ::::::::::::::＼//////ゝ､:::::::} |
./ / /::::::::.:l､:l::::::ﾊ::l>::､::::::::ヽイ::::::::::'::::::::/ /
/ / _;:::::::::lハl i::::/／-,ヽ:l:::::l::::l:::::::::::::::::::/ /
/ ./ /::::l:::::/l /ノィi,lﾘ l:|､:::l:::l::l:::::::::::::/ /
/ / l::::::l:i､{_ ｀´ ﾘ l::iｨ::/:::::::::::,ﾍ / ロビンンッ！
./ / |::::::lVr,ｨ ,ﾚ r=ヽ::へ､｀ー--/
/ / li:::::|;i ｀゛' , - 二>､ ム ﾉ/ ｀ー-/:､
./ / ヽ:::lゝ < ,. - '´ r―/ /:::::ヽ
/ / ヾヽ ｀ ,r -'/l /:::::::::ヽ
./ / ＼ ／:.::/ｨ | | {::::::::::::::ヽ
/ / ｀ ー ‐へii:.:.:.//:.:i ､ | l|::::::::::::.:.ヽ
/ / ____,xヾ:.／:.:.:.:.:.:ヽヽ l|:}::::::::::::::::ヽ
/ / ／ /:.ー_,rァ:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ､ //:l::::::::::::::::
r' < / ／ ,/:.:.:,ｨiil/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::＼￣/:::::|:::::::::::::::::
,< ヽ ￣￣ ヽr---､ ,.<´ ﾘi:.:ムY:'´:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::
,へ｀ ///////'.ヽ､ ,. '｀ヽヽ /:.:.:.:.:.:.:.:.:..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::
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/ / ＼/////ヽ ／ ヽ::::::::::::o:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::
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| 脚部を車輪に変え、高速で杏子を追い抜くロビン。
| 怒りに燃える杏子に尻尾を向ける。
|
|「効かねェってェ！」
|「いけない、佐倉杏子！！」
|
| 杏子の首辺りにしがみついていたキュウべぇが、警告しながら飛び降りる。
| いい判断、尻尾から延びた八本の電撃ワイヤーが油で滑りながら絡みつく。
|
|「ほげぇえええ！！！？」
|
| 常人なら三回は死ねる高圧電流、口からけむり、白目を剥く杏子。だが食いしばって耐える。
|
|「ふにゃあぁぁぁああッッッ！！！？」
|
| 二連続は流石の杏子も無理だった。
| へたり込んで失神。
|
|「飛び降りてよかった……分解されるところだったよ」
|「伊集院様、説得ヲ頼メマスカ」
|「…………石田ゴレムスも限界だ。仕方ないね」
|
| 石田と杏子を越えた。ロビンはその勝利に少しも心が浮き立たないのを感じた。
| やらない夫を追う、彼を殺す。そのために邪魔をする石田龍田との交戦であったが、もはや時間を使いすぎた。
|
| カトルカールの負傷者も少なくない。
| そして、レイからの連絡も途絶えていた。
|
| …………潮時だ。
| ロビンは判断した。足止めを成功された。試合に勝って勝負に負けた気分であった。
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/! i｀ヾ:､i､__＿＿___ `Vﾚ;
ﾄ､i.{;;! ゞyｲ´ i ､ﾄ､ ヽ.ヾ}!くﾉ
＞;;ヾ,／ゞj ﾄ､｀ヾ:､､ }! 从､丶 ､ ,
,ィ´≦;;r'- ‐―━┷,ゞ`;;;;;;}j;| ﾞ ヽヾ‐ヽ }! 〃 ,
〃´/イ;;ﾉ､ ＼､ ,〃ｨ;;;ﾊ;ﾊﾐ､-．_ヽﾄ.､V!/,' ,.;"
〃' ＼､__ /′ｲ从!ﾘ ヾﾄ､ ヾﾐ;;ｿﾚ'ﾆ='"
,ゝ'´￣/ ¨T ≠ﾘ___ｻ､､ﾘ ＼ ,ゞ;;;;;;;≧=-､
/ / ! 〃 i─ﾐ､､_ ヽ〃'};;ﾄﾐヾ:ヽ
/ / ! i {. ﾄﾐゞ_(Y､_j! {;ﾊヾ. ＼ 貴様、に……
. / .,′ ! / |: {二≧／了ﾉ l }! ヾ， 一つ……聞きたい
,′ ,′ !' |:. ∨ ,ィﾆ〉 ﾉ .ﾘ } こと、が……ある……。
,′ ,′ j' ﾄ‐-､! ／ ＿ﾞ_＼
,′ / / |／＜f`ｰ=ｧ″
´￣￣ｿ-―― 〈‐､__．-＝､!＼ ＼::;ﾞ″
ノ⌒ｰ／｀ｰ- ．__ }´ ヽ--≧､ヽ ＼/ _＿＿__
r＜:::::::::＼､｀､._ ヾ ﾄ-．＿_;ﾉ |｀ヽ＞-ｲf´ / ｀ ヽ,
:､:::::::::::::::::.ヾ:､ ￣ ヾ､! /! .! i｀ｰ-t_ { ／ ｀ヽ､_＿＿＿＿__
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|「備府やらない夫子。身長182センチ体重92kg。
| スリーサイズを鉄平石さんに聞いて参考にしない程度の慎みが作者にもあったようだろ」
|
| 鬘を脱ぎ捨て、やらない夫は身構えた。
| ジャンヌ・ダルクと北斗ケンシロウ。同時に相手をするのは不可能。
|
| だが、ケンシロウはある意味理想的な相手。やらない夫を殺してくれるならば経絡秘孔を突き、爆発四散させるだろう。
|
| ジャンヌは？ この『異端審問官』はやらない夫を刃の露にしたいのだ。
| そしてもし捕縛されたら、必要以上の拷問が待ち受けているだろう。想像もしたくないが。
|
|「俺も一つ聞きたいことがあるが……『聖処女』から先に聞くといい」
|「心遣い……感謝、を……備府、やらない、夫。貴様……どこへ行く？」
|
| その問に驚いたのはやらない夫だけではない。ケンシロウも困惑の視線を向ける。
| どこへ？ 『クォ・ヴァディス』だって？
|
| 他でもない『異端審問官』がそれを聞くのか。その真意は想像できない。
| やらない夫はわずかに考え込んだ。
|
|「…………無踏の荒野を行きたかった」
|
| それはやらない夫の、いつからか分からないほど古い願い。
| 前人未到、誰の足跡もない場所へ。
|
| だが今はどうだ？ 予定調和みたいにレールの上を歩いている。
| とこへ行く？ どこへ行くんだっけ？ 断頭台か？ ゴルゴタの丘か？
|
|「それで……ここ、か…………ぐぐ、皮肉、だな」
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | 違いない。
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ ここがオレの道の果て。末路。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ まだ途中なんだって思いたかったが。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「ぐ……私が、ここに……遣わされ、たのは、神の……意志で、あった……のか」
|
| ジャンヌは感慨深そうに、包帯の巻かれた枯れ枝みたいな両手を合わせて天に祈る。
|
|「……………今、確信、した」
|
| やらない夫に向けられる視線は熱っぽく、粘性の湿度を伴っていた。
| 男女の機微に疎いケンシロウですらうろたえるほどの濃密な秋波。
|
|「おお……貴様は、どこ、へも……辿り着けない。
| ぐぐ……先人の……道、を……否定、して……も、結局……誰か、の……足跡を、追う……だけ」
|
| いや、違う。秋の空のように澄み切った視線。
| そこにあるのは確信と哀切。
|
|「それ、が……貴様、の……限界で……そして……ぐぐ……何より、も、ここでは……ない、
| どこか……を、目指す、ような……輩……が。ぐぐ……前も、後ろも…ろ見えて、いない、ような……輩、が。
| 人々……を、導ける……はずも……ない」
|
| 押し殺した声で、血を吐くように苦しげに、しかしそれでもジャンヌはやらない夫への言葉を続ける。
| やらない夫とは拝聴する。それが礼儀であり、ジャンヌとの完全なる決別の儀式だから。
|
|「よもや……と……思った、が、ぐぐ……私の……信仰、の、ゆらぎが……見せた、幻で……あった……」
|
| やらない夫は、ジャンヌと分かり合えると思ったこともあった。
| 揺るぎない意志でやらない夫を付け狙う彼女の決意に、逆に助けられたとも思ったことがある。
|
|「偽救世主……貴様、は……偽救世主、だ。
| ぐぐ……ぐぐぐ……末世に、おいて……人々を、誑かし、堕落……させる、邪悪なる……存在」
|
| それももう、終わりだ。
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／r'＾／厂´ '⌒(｀′ ＿／￣￣`´￣｀`ヽ__｀ｰz＿__
⊂'__r'＾′ __／´ ＿,／_二ﾆ=- _,、-=､ニ='-'´￣｀⌒
（ __ _ノ￣ 厂(_´ ／ i、j|_,ｲ_￣ ＼
} //} 厂,丿 r‐え,ゝ＜´ヾ丱尨＞ . ∟ノi
! 「/,{ {//l ノ {_ｲ二∠'ﾆ＝-く／ ヽ,ｲ j} |
刈/ﾊ__j//!_|/ ,.-､r (⌒／ ,ｲ／ V!尨ｲ_ ７
'//////////ﾉ ,ｨヽ(´/ |!/ｲ__, ／ヽ}洲爻、∟ __
'//////////イヽ!′＞>Ⅵ'∠/／ }ｲlﾄヽ / ……そして、ぐぐ……貴様、の……最も、
/////////,| / ! ＼イィｲ!ﾊ ﾄヽ、 ／ﾘｲ ＼ ! 唾棄……すべき、点は、
＼///////j∨ ﾉ ,! l:{t＜|!厶l!,ｨｧﾃ:! ! i r'⌒
ゝ＞'////〈 У, |∧￣´!Ⅴ }￣/' /' |､ ＼ ぐぐ……己が、邪悪、な……存在で、
//////// ∨ |r〜／´l|｀＼く. / ,′>´￣ ある……と、いう……自覚。
//////// ∧＼ ﾄ､ﾞ〈 ー___一7У / /_
//////// ／ヽ!｀ヽﾄ＼二二二ｲ ,､!＜ﾍ ヽ ぐぐ……自覚、が……
＼///＞‘ |､Y ＼､!＼`ー‐‐ｲﾉイ / Y! ＼ ない、ところ……だ。
′￣ |ミ! } ｀ヽ_ヽ―ﾉ‐' /／ /' / /i丶
ヽ======彳V=‐く ､}_`ヽ{／/ヽ-/ /.: /.:lj :. ＼
＼__________ｌノV､ ヽ ヽ´｀イ‐' ,' __/.:.:.: /.:.:l|:.:.:.:. ＼
i ￣￣￣ｌ ﾊヾ.､ '. iT ﾉ / /.:.:.:.:/.:.:.:ｌ!:.:.:.:.:. /.: }
ヽl、 ,!/ } | ｉ '. Ⅴ' / /.:.:.:.:/.:.:.:.:l!:.:.:.:.:./.:.: |
､_ヽ￣￣ 〃 ,ﾉ j,.| '. / / /.:.:.:.:/.:.:.:.:.:l:.:.:.:. ,'.:.:/ |
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| ジャンヌの指摘、やらない夫は不思議そうに瞬きした。
| 己が。暴力に頼る非社会的存在だとは自覚していた。邪悪。そのことではないのか？
|
|「子供、を、さらう……ハーメルン、の……笛、吹き男、の……方が、まだ……かわいい、もの。
| ……己の、邪悪を……知り、人々……の……悲しみ、を……知った、上、で……子供を、根こそぎに……した」
|
| やらない夫は慄然とした。その事はやらない夫自身も自覚しているつもりだった。
| そして、常に恐れてきた。恐れてきたのだけれど。
|
|「貴様は、ただ……自覚なく……進む、だけ、その……果てに、ある……のが、
| 崖で……あると、奈落……へ、真っ逆さま……だ、と……気づき、も……せずに」
|
| やらない夫の言葉で集まった人々の命だ。
| 危険を承知で集めた、彼らの生命の責任を、やらない夫は問われている。
|
|「故に…………私は、貴様、を……ぐぐ……止め、ねば……ならぬ。……貴様、を、消さね……ば……ぐぐ……ならぬ」
|
| 両目に燃える灯火、火薬に引火寸前の導火線のように、危険な火花。
| やらない夫には返す言葉もない。きっとやらない夫は自覚不足なのだ。
|
| 綱渡りしなかがら踊る無自覚なピエロ。それが、やらない夫だ。
| やらない夫はしばし打ちのめされ、だけれどその間にジャンヌが打って出てこないことを訝しんだ。
|
| いつもなら問答無用なのに。
|
|「……北斗」
|「ああ、すまんな」
|
| ジャンヌに促され、ケンシロウが前に出る。
| その間に、喉を枯らした『聖処女』はゴホゴホと咳き込みうずくまる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,ノヽY"("r"iiit;;;t､ 从ヽ｀）'"ヽ
､ ,r("' "､､､ "''"t;;;ヽ匁､､ｰ､､)）〉;;;;;;;;三彡"
_ｿ"从 了ミミi ,,｀ヽ､;;;;ヽ､､､､ｰヽ;;､''''-､ノt,,,,,
it（ （;;ﾉ （;;;;|､t シヽ;;;;ヽ､､）､ ヽ;;;;;;;jjj'|ii､"""ノ
､,,t,｀ﾚ 从ii|ヽ､ｰ''"iii､ヽ;;;;;ﾘ|;;;;从i ､､､从､､t;;;;ヽ'ｰ､ヽ
メ''""/;;;;;从,,､､ ､ i;i||j;;;;r"t;;;（ ｿ､t;;;;ヽ |;;;;;tヽミ ､）,
､ゝｲ |;;;;ij|从;;;;ヽ|;;i |､",,,,iiii､,,,,､i､ｿi t;;;;|ヽ;;;;;ヽ､ ヽ''''"
t､,女 t（ツ||i;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ﾂ;;;i､､､i;､~'-､;;;;;､)）
､､ノ（iﾂM;;;;|;;;;;;;;;;;;ii;;;;|i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､;;;;;;;|;;;i |;;;t'ヽ三彡
// り";;;;;;;;;;;;;iヽ;;;;;;;;tiii;;;;;;;;i|;||;;;;ii;;;;itｿ;;;;ﾘ;;;;"ヽ;;;;;ir'"
ヽﾂｷ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ人､､､ﾐ;;;;;;;;tヽ､;;ヽ二ﾘ;-､t;;;;;;;ﾚ;;;;|''"
ｰ7;;i|､;;;;;;r､ﾐr'";;;;;;;;;;;;;;;~~' ﾘヽ|i";;;;;;;;;;;;;;;シi;;;;;;､i|）
ﾘ;;;;||t;;;;〈 ﾐ 彡=ﾓ丐ｧ､r;;; "ﾘ､zﾓﾁﾃzｰ' ﾘ;;;;ii|j
（;;|;;;ヽ､;;;;i ｀~ '''' "::: |~::''-￣ｰ ﾘ; ｲ 蒼星石はどこだ？
ﾌ;;;;;ヽ;;;i, "" | ,'r';;;i
,r''ヽ ｀（;;;;;;;;i~t ,,,,, j ,, /"彡|､
. ii i t;|;;;;;i ::t ヽ:::｀" / {{ヽt ヽ ,,, ､ --ｰ '
. i ﾘ 't;;;;i :ヽ ,,､-_~-,, /:: j ﾉ ;;ﾘ''ヽ､ ,, ､- '' "~:::::::::::::::::::::
i '"| r'~ヽ, ヽ､i ::ヽ "''ニﾆ" ,':: y" "ﾉﾉ ﾌンゝ'":::::::::::::::::::::::::"""""
ﾘ i ,,/ i''''""￣￣￣＞'''"~t |i ::ヽ, ''~~~""" /:::::､-'" ,r"／zr'":::::::::::::::::"""" "
_,/ :::::"i" / '-､ノ,,,,,,､ﾆ､ ,､-'";;;r''"::::入 ii;;::::::::ヽ, /::: '" , ,r､" /"／""t ｰ⌒) ""''
,/ " レ"- '"ii´ ,ﾘ,,""r" ::::::::/:::t ヽ::::::::::~''ｰｰ ''''", '" ／ r"／/／ ・ ． ⌒
" ,､-'i" ,､-ｰ '''ヽ"／r" :::::;;/ t ヽ::::;;;;;:::::;;;;,r'" ,, ,､-'"" "／ ~
''" ヽ ,､ｰ''"ii ,,,､ノ";;r"::: :::;;;iii| ﾘ,r'" ヽ y'" '"／/'／"_; ' " ~'ｰｰ r"~
::,､-'" ,､- '";;;;／;;;r" :::::;;;;iiiii､;;;; ､､,,,,,,,, ヽ,r'" ／／:::::::/ ',ノ/ ) ｰ )ヽ,､-'
" ,､-' /､;;;;;／';;;;r" ::::::/i" ~''''''""""",r" 三//::::::, "' /;;/ r''''''''''''''''''''''-､ ( ∴ｰ''" ,､-'"
::: ｲ ,,､r'- '''""ﾉ;r" :::::::/ t:::::::: ,r" 三/／' /'" /;;;;t r'┏━━┓ ヽ､､､､-ｰ''''"
"~ ,､- ''"ヽ､::: :::::::/ ~''- ､,,,,,,,, / 三/'"// /r /／ヽt ┃､, ┃
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|「…………そりゃ、アンタの方が詳しいんじゃわないのか？」
|
| やらない夫の答えはケンには不服なものだったらしい。
| しかし、他に答えようがなかった。
|
|「備府やらない夫、申し訳が無いが、俺はお前を殺す。
| 戦火と混乱は広がるばかり。蒼星石もジャギ兄さんも失われた。
|
| お前が取るべき責任は少なかろう。お前は被害者でありながら火消しのために奔走していた。そのように思える」
|
| ケンシロウはしばし目を伏せた。
|
|「だが」
|
| 両目に憤怒が宿る。
|
|「俺の失態はやらない夫、お前を殺し損なったことだ。
| あの時、あの場でお前を仕留めておけば、この戦火は、この混乱は……」
|
| 拡大していただろう。やらない夫もケンシロウもそうは思わぬが、明らかに状況は悪化していたことだろう。
| やらない夫の首ごときでは『異端審問官』も『十字軍』も止まらない。シロッコは言わずもがな。
|
| 『モーリアンビル襲撃』に謎のヒロインXは参加しただろうか？
| 彼女なしでの水銀燈による被害は想像を超えるだろう。
|
| そもそもシロッコがやらない夫に執着していなければ、とっくに日本は内戦状態のはずだ。
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l|ヽ= 从;;l |l|;;ll;;;;;l|;;;;;l;;;ｲl;;;;;;;;;;;;;| l|;;;;;;-〈､|;;;;;;;;;;;;;;,,三∠ノ ﾌ
ヽﾐ三从;;从|;（;;;;|l;;;;l|;;;（（;;;;;(ヽ乂;;;;;;／ﾉ人､从;;;;;;;;ヽ ∠ |
ﾐ二ミﾐ从 ; ;;;;;;ﾞ;;;;ﾞ;;;;;L{{ミ|Y;;";;;;;rﾃ'';''iﾞ''ミﾞ ｲ;;;;{ミヽ∠ﾉ お前は！
ﾞヽ乏ﾞﾞ从ﾞ ;;ヽ､､_;;;;;;;;;;;;;{≧Y;ﾉﾉ=-ﾞ'''"´彡 ';;;;;;ヽﾞ,,', ヽ 俺の甘さ、俺の弱さの象徴だッ！
＜彡l|;;;;;;;l､;}:/;r't;;;)＞| 彡￣""´ |;;;;;;〈 |.| }
ノノｲ;;;;;;之"ﾞ"''"´ |､ _,,､::::: |;;;;;ノﾉﾘ;∠ 生かしちゃおけねえ！！
ｲ彡l|;;;;ヽ ﾞ:::::::: j _,､ -)ﾞヽ::... |;;/- /;;/ミヽ
l|//l|;;;l~､'､ :::: ﾞ''::ヽ,／ |（,,ノ;;;ヽ〉ﾐ/
ﾘﾉｲ;ヽヽ'､ ｀ﾞ'､l__,,､､､,,_,, / l||;;;;;;;;|∠＿
"´ﾉ|;;;;｀'-;', (t -'''ﾍﾍ)}} ﾘ ﾘ;;;;;;;/从ミ | ／￣＼/＼／￣＼
|/l|;;;;;;;;ヽ ﾚ- '''""´ /:::" {;;;从;;;;;;;;）"
l|l||;;l|;;;;;;;;'､ ,,､;;''";;￣:: ,/:::::" ヽl|ﾘ;;;r''､ﾘ
ヽl |;;;;;;;;;＼ " ｀ﾞ ／::::::" ﾚ',､-ｰﾞ''""ﾞ''ｰ､ ,,､- ''
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（从l|;;', ヽ, ヽ:::ノ／ :::::: ,､ '´ ,､ '´
｀ﾞﾞﾞ''', ﾞ'' ｰ '''" ::::／ ／
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| ケンシロウの全身に力が漲る。
| 膨れ上がる鋼の肉体、内側から破裂するように跳ね回るボタン、千切れ飛ぶ上着。
|
| やらない夫は覚悟を決めた。ここだ。ここが死に時だ。
| 全力で抵抗し、全力で死ぬ。
|
| ケンシロウとジャンヌならば、誰もがやらない夫の死を信じるだろう。
| 一般人やマスコミへも、うまくやってくれることだろう。
|
| ジャンヌと『異端審問官』をニャンコ先生にまかせて、やらない夫はケンシロウに向かおう。
| そして彼の北斗神拳の餌食となり、バラバラになって死ぬのだ。
|
|
| ……やらない夫のその計画には一つ、どうしようもない誤りがあった。
| そもそもやらない夫は、最初から死ぬつもりだった。死体を回収されないような、例えば爆殺されるつもりだった。
|
| 当初のプランでは、一般人を含め目立つ場所で爆殺され、その死を多くの人間に確認させる予定であった。
| やらない夫は死ぬ。紛れもなく完全に、本当に死ぬ。
|
| その上で、球磨川禊のペルソナで無かったことに。
| 限定的ではあるが死すら凌駕する彼の能力で、復活を遂げるのだ。
|
|
| その球磨川禊は、アリー・アル・サーシェスに殺された。
| やらない夫の計画はすでに根底から崩れていた、覆されていた。
|
| やらない夫は死なねばならぬ。
| そして、蘇る？ 馬鹿な。
|
| 『聖処女』ジャンヌが断じたように、偽りの救世主たるやらない夫には、復活の奇跡など身に余る。
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☆ 次回予告！
戦いは終わる。
悪夢の穴蔵で始まった、狂乱の宴も遂にたけなわ。
積み重なった屍の山。
可憐な白い花は血の河に沈む。
救いはない。
勝者もいない。
夢宮アリカが、それを許すか？
溢れるパワー爆発。
愛と勇気の物理で殴る。
はだかる敵は返り討ち。
ちょっぴりえっちな普通の女の子。
女子高生は、無敵なんだよ。
次回、最終幕八十八話。『勝利の算段』
果てに見るのは破滅か死か。
具体的には再生蟲とか使って魂の抜けた肉体の有効活用……真っ先に婆さんに殺されるから無理か
乙
宗派が違うんだ、許せ
公園側というかやらない夫は糸口が見えないなあ
やらない夫は球磨川の死に気づかない限り、逃げようとしないだろうからなあ
＿,rﾆｱ´‐'⌒¨⌒¨´
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＿＿,__'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}＼`へ._｀ヽ.__
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:.:.:.:＼ l:.:.:.l:.:.:l:.:.:.:.:.:.＼:.:.:ヽ:.:.ﾍ:.l:.:! ｀ヽヽ._
:.:.:.:.:.:.:＼ |:_,ハ.:.ヽ.:.:.:ヽ.:.:.ﾄ､:.:.:.:.:.:|:.:.j ｀ヽヽ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ lｲ ＼:ヽヽ:.ﾄ､| ヽl:.:.:.!:/ヽ ｀
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶､ f〈 ,.≧､ヾﾄ､N_,.≦､|!ﾍ:.|'=≠ﾆ_￢､
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.￣｀ヽY:{〈弋ｼ｀ ´ 弋シ 〉 ||∠__ ｀ヾ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.lヾ＝=- ' /ﾘ｀ﾍヽﾞi
‐-､__:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ｀ヽヽ、 -- ／l ! l!| 『ララァ・スンは私の母に
｀`ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.j | l! ﾄ､ __ ィ´jノ | | l!| なってくれるかもしれなかった女性だ』
丶､＿＿_／ | l! |l＝=￣rﾍｲ-―┘_j
｀丶､＿, | l! |,ゝ _ヽﾉ'´￣￣::ヽ
|｀ヽ l ﾉ _,. '´::r､:rﾍヾ〉:::::::::::::', って、ばっちゃが言ってた！！
ﾄ､__j／`¨´::::::::::::::V::ヽ_〉::::::::::::::::::l
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l:::::::',:::::::::::::::::::::::::::::::::j::::::::::::::／:.:ヽ:｀ヽ、
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ヽ ヽ::::::::`ｰr---‐_´／ // j {:ヽ.:.:.:.:.:.://r‐一'
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|「アイエエ！ 狂人！！」
|「ごめんなさい、正気のつもりなんだけど！」
|「正気の発言なら逆に怖いじゃろ！ なぜいきなりそれを言う！？」
|
| 間桐屋敷地下、間桐臓硯のはらわたにして結界たる暗黒空間での戦いは、新たな局面に至っていた。
|
| 絶対的なはずの結界は打ち払われ、国宝級の琥珀『エレシュキガル』を使った
| 対『万魔』結界が地下空間を可憐で素朴な花畑に変えていた。
|
| 臓硯の本体であり魔力貯蔵庫である蟲プールは国宝級ブラックダイヤ『イシュタル』によって火の海。
|
| しかし、焼き滅ぼされたかのように見えた臓硯本体はでっていうから教わった『絶対防御結界』で耐えていた。
| 隙を突いて凜を狙撃、重傷を負わせ『イシュタル』を砕く。
|
| だが、とどめの直前に『弓兵』の攻撃を受け、さらに乱入してきたアリカに襲われているのが現状だ。
|
| その『弓兵』は完全に理性を失い『万魔』殺しの怪物と化した間桐雁夜と相対していた。
| 彼の後ろには瀕死の二人。
|
| 雁夜に侵食され、全身に茸を生やすも、自己破壊ブログラムを発動して相打ちを図ったターニャと。
| そのターニャに命を与えるべく、胸に短剣を突き立てた慎二だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ ／ヽ ／: : : : : : : : : : : : : :￣｀ : :、
〉 八 } ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
／ / ヘ ノ ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
ィ ヽ ／ ／: : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾄ: : : : : :ヽ
＼/ , : : : : : : /: : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : j: : : : : : : :.
/ /: : : : : : /: : ／: : : : : :/ : : : : : : : : : /￣￣￣￣入
＿ ノ /: : : : : : /: : /: : : : : : :/ : /: : : : : : : /＿＿＿＿/ 介
/i: : : : : : /: : /: : : :| : :ｲ : :/ : : : : : ／ ＼ ヽ / ハ
/: !: : : |: :/: : /: : : : i: / !: :/: : : : :／ ｀ヽ ＼ V
/: 川: : :|: j: :/八: : : :i/ /: //: : ／´￣ ＼ ＼ |
. : : :八: : {ﾊ从 ヽ从{ ＞ ´ ノ 7￣｀ヾ }:＼!
/: : : : j: : :i| ／ / r 人 j: : :|
/ : : : : |: : : } ／ / ヽ､ / }ト /: : : | センパイ……ネエサン……。
. :＿＿:_:ｊ: : : :i ／／ . ―､ ¨ﾞ ｀⌒ ｨ､⌒ｊ: | レナ…………サン…………？
|: : : :V / ,ｲ ヽ _ソ ｲ: :!
|: : : : ∨ {ｨ ﾊ / ／: !: :レ´
|: : : : : ﾄ ﾏ､＿＿ﾉﾉ ..ｪ┬彡≧ｭ:|: : : : : :
|: : : : : i ＼ ﾟ ー― ´ ／ / jニニニニｭ: : : :
＼ : : : : : :ﾊ ヽ _。 ≦ /ニニニニニニ
＼ / |: : : : :i ミ ≧＝ニ二 / ／ニニニニニﾆ/
＼{ !: : : : ﾄ ヽ ／／ニニニニニニ人
｝ |: : : : :! ＼ ミー ＝彡 ／ニニニニニニﾆ’ ＼
i !: : : : ﾄ ｀ー――― }￣￣￣￣ ミ 、イ
｀ヽ､ i |: : : : j ＼ ｲニﾆ 〉 {
|:ﾄ、≧、i|: : : :/ 彡ニニ} / ＼
|:} ー i!: : :/＿＿ ＼ / ＼
|: V l : / ￣￣￣￣￣ ― ＼ ＿ ノ
ﾉ: 八 |: { ＞――＝ 、 ミ 、ヽ
: : / ｀ミー}: :!＿＿＿＿＿＿＞ー ´ ヽ ＼
: /ヽ j:ｲヽ＿＿＿＿ { ノ＿＿ ノ
/ ＼ ノ八 ≧＝――≦{ }≧ｭ。＿ }
＼ ＼ ￣￣￣ 八 | {｀ ー―
｀ ＿＿ 彡 ／ {! | {
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 霊光波動拳の奥義『光浄裁』を受け、全身の黒胆汁と触手が光に分解されつつある桜。
| 身の丈10メートルの巨人であることには変化なし。
|
| しかし全身の縫合痕から漏れる光で崩壊し、両腕と片足を失い花畑に伏せている。
|
| 倒れる直前、『弓兵』を投げて臓硯にぶつけた。
| それが凛を助けるための行為だったのか、それとも攻撃から身を守るためだったのか。
|
|「しかし夢宮よ、行方をくらましていたかと思いきやこんな所に現れるとは。
| 母の仇でも討ちに来たか？ ん？」
|
| アリカの連続攻撃を見事な動きで捌きながら臓硯が問う。
| 『弓兵』からの奇襲のダメージは見えない。蟲の集合体であるため、見せかけだけかもしれないが。
|
|「え？ 私のお母さんの仇？ 誰が？」
|
|「桜じゃよ、あそこでのたうつ巨大な肉塊、ヒトに戻るなどおこがましい、
| 嫉妬に狂って愛する男の妻を惨殺した怪物じゃよ！」
|
| 虚ろな目を虚空に向け、半開きの口から光が漏れる桜。
| アリカは彼女を一瞥し、小首をかしげた。
|
|「え？ 逆でしょ？」
|「なに？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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￣| ＼ 〃 ヽ
| ヽ __,j{_ -.､ }}
V{ ､ | ,ｲ:l: : : :､. :＼ ﾉ′
ヾ､ ヽ /ｭ{ハ|≧ﾆヽ､: .ヽ
l rｰヽl!ﾋﾂ ´'f7:ｵ ﾄ､: :!
ヽ |: rｰｭv:￣ヽ￣r- ､j: :ヽ}-―- ､_
r‐｀'_j / : ｀´￣:｀く-.く⌒}:ﾘ´ ￣｀ ー′
ヽj_rﾍ : : : : : : : : :ヽ-ヽｲ{j あらよっと。
ノ:/:l:.:.ヽ、: : : : : : : : : : ﾄj､{ヽ
/: ｲ':/ヽ:.:.:..｀:ｰ-:､: .:.: :.: :.ﾊ:j {:ヽ
V: l/ｲ }r＞､.:.:.:.:.:...ヽ..:.:.:/ {ヽ｀ﾄ.､
_ｨ7´ lj /'´ l｀ヽ:.:.:.:.:.:V ｀ｰl､ヽ!､
∠{ ＼ ＼:イ /| ヽ}､ヽj､
/ﾆ{.:ﾄ._/rjヽ.__／'´:ｰ1´ / ! {ヽ ヽ}、
l{_/｀ﾄハ｀l:.:.:.:.l:.:.:.: : :.| / ｜ ｀{ヽ ヽ:}、
ヽ`くﾉノﾍ: ! : : l : : : :.:l／ j ｀ﾄ {ヽ
￣ ヽl : : ヽ: : : : )￣｀く＝ _ j{ ｀jヽ
/|j:ヽ: : :j__:／ ／' }､二 ‐ﾆ_ｰ'^_ ^′
ﾄ､ {: l : : } _／' ／:.:＼､ヽ、 ｀ ‐ 二 - ._
＞､ ヽl:_ノ l! ,イ:.:.:.:.:.:.ﾄ:ヽ＼＼ ｀丶｀丶､
/ﾄ､_:.ヽヽ __ /'/:.:ヽ:.:／二イ ＼＼ ｀丶､｀丶､
∧二 イ:ヽ.二ノｨ:.:./￣:l l::／ヽ ＼＼ ＼ ＼
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| アリカの強烈なアッパーが臓硯のガードを砕く。ブロックを撃ち抜いて顎に一撃。
| 宙に浮いたところを目にも止まらぬ苛烈な連打。
|
| だが、『絶対防御結界』による防御が臓硯を守る。
| アリカは、青い外骨格に身を包んでいた。他でもない『蒼天の青玉』に。
|
| アリカ自身が見たこともないほどに光り輝く、あるいは、『弓兵』や凛の見慣れたまばゆさの。
| だがそれでも、臓硯の防御は小揺るぎもしない。
|
|「カカッ、無駄じゃ無駄じゃ！ 貴様のような三下が、この儂に敵うものか」
|「あたしもそう思う」
|
| 素直に頷き、しかし連打は止まらぬ。
| 臓硯の背中が冷や汗で塗れる、防御をやめる暇がない。
|
| ここだけの話、『弓兵』の一撃は強烈だった。今の体ではアリカ程度の打撃でも無視できない。
|
|「『十発で駄目なら百発。百発で駄目なら一万発』」
|
| 無私。防御されるのを前提にした、ひたすら続く打撃。
| 『蒼天の青玉』による防御がなければ、殴り続ける拳がこそ砕けそうな勢い。止まらない。
|
|「『それでもまだ駄目なら百万発叩け』って、お母さんに言われたみたいだしね」
|「…………誰じゃと？」
|
| 臓硯の頬を脂汗が伝う。正気ではない。やはり狂人！
| 揺れるみつあみ、揺るがない確信の瞳。臓硯は五十年ほど前の苦い記憶を思い出して歯噛みした。
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／ , / / /ﾐ､ ,ｨﾆ､｀ヽ ヽ. ヽ l
/ / / / /｀ヾll彡ヨ. | ', ', ヽ l
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/ .,',' .,' , ./ 〃'. / | i! l､ |､ | | |
. { / ./ { l .{ / .| / ! i l l l } | | l .l
l. /l/l. ,l ,| || ,'ﾆ.､|l l ./l l. l | l |ﾄ. } | l
l ' ｉ | l | l､lli!. { ｲ:l心l , l/ ll l l |l l' } l|. | | / ザーコ、ザーコ。
', l .l l.l .|l. }l l l Yr': .y｀ ヽ､=〃‐/--..} .}__l.| l .! ll| i! !//
ヽl i ll l ｌ ヽ｀_=´ /, =孑う弌}:卞}|_ | ,'l.|. l l/ あたしみたいな若い女に
; '. 丿 ､ ヽr':.:.:.l|::ﾉ/ l/ ||l ヽ. l l/ ボッコボコにされて、
ヽ ｀ー‐≠ ´ .ﾉ ﾉヽ//ヾヾ、 生きてて恥ずかしくないのかよ？
ヽ, ｀ ／´_二,ｨ´}´ ｀ヽ
. ＜ ｀ﾆ ‐´ ´ ゝ´ｲ_彡ｲ}
/´/ ヽ. ,. ＜ {｀ヽﾆ彡´＼
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|「夢宮ぁ……ッ」
|
| あのクソババア……いや、当時はまだ若かったが。
| とにかく臓硯は夢宮にわからせられた。
|
| 夢宮が居るうちは派手なことはしないと約束させられた。
|
| 実は十五年前も危険だった。夢宮士郎が介入してきたせいで、全面戦争になりかけた。
| 『結社』内部抗争で東京が荒れてなければ殺されていたかもしれない。
|
| というか、士郎が死んでいたらどうなっていたことか。
|
| 今でこそ無敵みたいな面をしていられるが、臓硯は結局一度も、夢宮に頭が上がらなかった。
| そして、その血を引く娘がいま再び、臓硯を追い詰めている。
|
|「レナ・セイヤーズです」
|「いつそんな……！」
|「もちろん、今でしょ！」
|
| アリカの回し蹴り、そしてハイキックから姿勢を崩さず蹴りの連撃。
| ステップを踏むようにタップ、左右のチョップ、一撃一撃が斧のような重さ。
|
|「『蒼天の青玉』ずっと『何』が入っているのか誰も教えてくれなかったけどさ」
|「まさか……」
|「逆だってば」
|
| サマーソルトキック、空中を蹴ってかかと落としに即移行。
| 断頭台の如き振り下ろしも、蹴り足を支点にした延髄斬りも、『絶対防御結界』の前には無意味だ。無意味なのに。
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／_´￣ }）__ ／/ _,ィ:Zｧ'´ ｀´ｰ^r_､_ _ / ﾆ L ｲ
｀ヽ＞:.´:.:.:.:.｀:く_,ィ_ｧｰ'´ ｀ﾞ ﾄ. ヽく } ⊂ﾉ
/:､:ﾄ:.:.:.ﾄ､ﾄ､:.:.:Y _ -┘ヽ. V´￣
_,.ィｲイ_{__｀ ｰ ,_-ヽ.:l!=＜´ ／ ,.へ!_〉
ｿヽ._ _ _ _,..､ｭｧ'‐'´ lﾊﾄr芯｀ 似｀ﾊﾄ __rーォ{/-‐ ´ _. - ´
｀^ｰ'-ー'‐ ´ __,.ィ=ﾍ^´r｀┐ /ｧ７/r-､/´ ヽi｀7 ／´
{／-ｿr≧ ='イ／/: :j|: : : : : { {/＜ 桜さんからです！
//: : トﾆ._=くゝ／､: :.:l : :/^::ﾉ┴ ´
{:{: : : ﾊ{:..:/{､ﾌヽﾉl ヽ/!｀:_ソ
jヽ::..}:::V ヽ}Yr ' V
_V_く::小 _ .イjヽ.＿ ノ/
_ -, 三 ､ー- _ /こ_j_ヽV |l:::::|::::::::r':::::i , イ
￣￣￣｀ ―-｀_ｰ _ V7 } }:}ﾘヽ jl: : !: : : !: : :!／ /
｀ ー ニ_- ＿｀ ┴' '^j.-V : l : : :jー┴､／ ＿＿
￣ ―＝_=く {{ ヽ:/::::.ノ ｨ‐三ﾊ-- ＿ , z'三ｧ／´
_. -_ ニ ｧく´: ヽヽ 三= ''／.:: : ｨヽ二_- 二_ー ＿ ＿ ／_ -‐ ´
／／´ ＞ｰ三{:ト -- イ.:ヽ-三'_:{ ￣｀ヽ｀ヽ､￣ ―-二二 -― ´
／／ ／ ,.ﾚ／::::ヽ､二:':／＼ヽ::＿ヽ ＼丶、
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| 臓硯が困惑する、どれだ？ 何がだ？
| この狂人は何を口走って……！
|
|「おかーさん行ける！？」
|「楽勝！ 舐めんじゃあないわよ！」
|
| 顔面は蒼白を通り過ぎて土気色、唇は紫。しかし強い意志を秘めた黒瞳は揺るぎなし。
| 魔女、遠坂凛。血塗れの顔で凄惨に見栄を張る。
|
| ヒビの入ったブラックダイヤモンド、『イシュタル』の傷が広がる。
| 万色を含む黒い炎が臓硯を包んだ。悲鳴を上げる暇すらない。
|
| 鼻血を拭い笑う凜、炎は『完全防御結界』に阻まれる、阻まれるが。
| それがいつまで保つものか！
|
|「ぐぐぐ！ 貴様らァー！」
|「いいザマね、間桐臓硯！」
|
| 誰もがいっぱいいっぱいすぎて、アリカが凜をなんと呼んだのか気付く者もいなければ指摘する者もない。
|
|「おのれ死にぞこないィ！」
|「アンタにだけは言われたくないわ！」
|
| 大上段からの高笑い。だが次の瞬間、凜は血を吐いて倒れた。
| 肺に肋骨が刺さっているのだ、そのまま意識を失う凜、砕けて塵になる『イシュタル』。
|
| 汗まみれの臓硯が、笑みを浮かべて黒い炎の残滓を振り払った瞬間。
|
|「『いっきに行くぜ』！！」
|
| 肉薄、溜めた力を一気に噴出。
|
|「って、ばっちゃが言ってた！！」
|
| 臓硯の魔力に限界が来た。
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/ ｲ / ,rｰ‐‐ ､＼. | / ､. / ／
/／/ / ヽ f⌒l ヽ ＼_ | l / l /／
/ / ｀ ﾞ ﾗ＝´ .ミ | / ___ | ／
/ x‐ｙ ヽ ｰ' ‐ﾗ‐=ﾆミ､ ｀ レ
./／|:Y 人 / ヽひ Y / ターニャ、よく耐えた。
' |:.l . 〉 } ｀ミｰ ' だがもう少し耐えてもらう！
|.ｲ 〈 / /
リ＼ ヽ /, _ . . . . .
∧＼ Y ｨ' .-‐ ｰ- ､ ,ｨ≦: : : : : : : : : :
l | ヽ ｀ ｰ- ､ 彡ｨ ´ : : : : : : : : : : : : : : :
从 | ∧ ,ｨ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
从 ､ ,ｨ' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
| ﾍ _ ,ｨ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
| ∠: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
rﾍ ／｀Y|, -‐‐／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
{: :ﾑ {ﾆﾗ'´| ／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾏ: :ﾑ-ｷﾑ | /. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾏ: :.}:∧ ∨／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| アリカの攻撃で地面にめり込んで動かなくなった雁夜を一瞥し、『弓兵』が瀕死のターニャに駆け寄る。
| 雁夜による浸食と、共倒れを狙った自己破壊プログラムによるダメージは致命的だった。
|
| 全身に生えた茸の殆どは黒い錆に覆われてしおれたが、ターニャの四肢もまた黒い煤のようになって崩壊していた。
| 『弓兵』は深く大きく呼吸した。『エレシュキガル』は未だ有効だ。不足した魔力を補ってくれる。
|
|「スゥーー、ハァーー！」
|
| ここだけの話、今の激励は死に瀕した弟子への言葉であると同時に、己への鼓舞でもあった。
| 霊光波動拳奥義たる『光浄裁』による負担は想像より大きかった。
|
| 指先の感覚がない、視界の隅で白い光球が明滅している。鼻の奥がツンとする。のどが渇いて仕方がない。
| 耳の近くに心臓があるみたいだ。早鐘のようにガンガンうるさくて仕方がない。
|
| 浅い呼吸からは立て直した、『弓兵』は桜を想い、凜を想った。
| 桜の抵抗は姉を想ってのものだった。完璧なタイミングだった。やはり桜は桜なのだ。
|
| そしてひどい傷を負いながら、それでも自信たっぷりに見栄を張る凜。いい女だ。
| あいつなら大丈夫、任せておけばいい。
|
| そして同時に、任されたのだという責任感がのしかかる。
| 失敗はできない。ターニャと慎二の、どちらかだけでも助けなければ。
|
| あの子に、アリカに頼まれたのだ。
| 絶対にしくじれない。
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/ Y ::.: -=、´
∨ :: : :: ｀ヽ、
| .:. ::. ::: .. ....: ____ヽ
. | l`ヽ、 :::::: .:::: ..::::::. ... ... ヽ、
, -| .::.| `ヽ、::::::::::::::_, - == i::: ヽ、
, '´: : : : : : :.|／ .| ____ヽ
, ': : : : : : : : : : :.| .|.....::: ....... ::::::＼ 霊光波動拳、奥義。
,': : : : : : : : : : : : .|＼ ヽ:::::::::::::::::::::::丁 『光浄裁』！！
,: : : : : : : : : : : : : :| _ヽ、. l , , . V ´ Y:::::::::l、
r-- 、 i: : : : :i: : : /: : : : :.| ` 弋ｧ | / _, - '´ / l .l:::::ﾄ=-
ｙ- 、 | l | .i:: : : : |: : /: : : : : :.| ｀ﾞ´ 、´_弋ラ`ヽ 〉 / ﾉ:::::ト 、
. 〈 lヽ、 | | | .人: : : :|: :/: : : : : :.∧ / ｀ﾞ ^ ソ／l＼/: : :.ヽ、
. ハ ヽ.ヾl |. ト': :´: : :.ヽ: : ∨: : : : : : : :∧ / /｀ /ヽ/: : : l: : : : : ｀ヽ、
.〈 ヽ ヽ.ﾊ .| ヽ、: : : : : ＼:.|: : : : : : : :.l/∧ ヽ / ./ ./: : : :./: : : : : : : : :｀ヽ、
.∧ ヽ Yヽ-' ヽ、: : : : : :|: : : : : : : :.ﾄ,/∧ ト- 、 ／ ／／: : : :./: : : : : : : : : : : : :｀ヽ
.../ヽ、 ヽ.ノ / ｀ヽ: : : :.|: : : : : : : : :.｀l;.∧ ｀ - ' イ ﾆ／: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : ｀ヽ
〈 〈 ヽ _ﾉ r-' |: : :..|: : : : : : : __ : :ﾄ、 ヽ _ ィ´ r-'´: : : : : : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : :
..ヽ ヽ l ／: : : :|: : : : : : :| | ﾄ、｀ヽ、 .|//l: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ヽ ｀ヽ_ _, 、 ｀ ´-===-.ｲ: : : : l＼| / / ｀l l ゝ- = ┘: : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
`ヽ ノ ｀` ´ ヽ: : : :＼回/ ヽ、｀´ 、 |: : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| 三度目。全身から力が抜ける。膝が笑う、目の前が暗い。
| 体の中の大切な何かが破ける。一呼吸ごとに命が零れる。だが、ここで倒れるわけには行かない。
|
| ターニャを助けなければ。
| 彼女の善性を信じるのだ。
|
| おそらく身体は全損する。その後、繊細で脆弱な魂を守るのだ。
| 方法は思いつかないので、まあ、出たとこ勝負で。
|
| …………いや。
|
| 『弓兵』はほくそ笑んだ。
| 今の彼は周りが思っている以上に死に近い。その結果、魂の『尾』のような繋がりが見えた。
|
| 『弓兵』は笑った。なんだ、こんなに簡単なことだったのか。
| 生命とは、肉体とは、魔力とは、魂とは……。
|
| 脳内の血管がブチブチと千切れ飛ぶ、脳溢血を根性で耐えきった。
| この程度で倒れていては、凜のイビリに耐えられるものか。
|
|「―――同調、開始」
|
| 見える、解る。『弓兵』は目鼻から血をこぼしながら笑った。
|
|「魂魄骨子、解明。人体骨子、解明。
| 魂魄材質……解明。人体材質…………解明
| 創造理念………………………………解明……。
| …………魂魄…………投……影………………………………錬成…………………………！！」
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/ ./
／ ./ ＼ | / / ./ /
￣￣/ | ミ 、 ＼ l / /,., イ /
ノ´ /. | ｀ ヾ 、 ﾚ ' ´ .l /
￣フ ／ ∨
| / ヽ ／ ,. /
| ／《 ヽヽ -=- 、 ,. -=' /
∨|:.l | ﾉ , ____ヾﾆﾐﾐヽ、_ , =ﾗﾖ=-, ./
|:.〉ヽ 〈 弋t:::ﾗ￣ ヽヾソ ｒ t;;タ ノ ./ お前の体は……剣ではない……。
ｿ|＼ヽJ. ｀ ￣ ´ ｀ ´ |
.|／|＼〉 / 血潮は……血潮…………。
|:∧| ヽ / ……心は…………心…………。
ソ| .＼ / /
／.´イ〈 ＼ 、 , ｲ ならば……その、体……は………………！
ｲ ヽ ｊ;;;;;;ヽ、 ＼ ￣ , :.:ヽ、
, .|.:.:.:.:＼;;;;;;;;;;;;;;ヽ、 ＼ / |:.:.:.:.:.:〉
, - ':.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ＼＿ _ / /:.:.:.:./ ト、
:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ,;;;;;;┌─── イ :.:.:..ｌ:.:.:|:.
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;;;;;;;;| |.:.:.:.:.:|:.:.:|:.:.:.
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|;;;;;;;| ノ= ':.:. |:.:丿:.:.:
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| 突如、目の前が真っ赤に染まった。
| 迫り上がってきた血液を嘔吐、全身から力が抜ける。
|
| 失神にも似た快楽の中で、なおも『弓兵』は踏みとどまる。
|
|「……てつ、だえ…………慎二！」
|「無茶を……言う……」
|
| 心臓に刃を突き立てたはずの慎二、その胸はしとどに濡れ、手にした短剣は赤く染まっていた。
| しかし、であるのに、彼は生きていた。失血で震えながらも、体を起こそうともがいていた。
|
|「大したものじゃ、ないから……くれてやったんだ、よ……返却なんて、許さないからな……！」
|
| ターニャに与えようとした命、受け取り拒否され治療されたのだ。
| リソース的には散逸が多い、失態でしかない。
|
| だが、死に触れて魂を与えたことで、二人の契約はより深くなっていた。
| 故にこれは奇跡ではない。滅び消える『万魔』から、魂の欠片を引き上げる。
|
| 八月のライブハウスでやる夫が墨目を、すくい上げたのと同様に。
|
|「……他にないんだ……文句は聞かないからな……！」
|
| 慎二が、ターニャを召喚する。
| もはやそこに『万魔』はいない。
|
| 『弓兵』の投影と凜の魔術によって作り上げられた、素朴で可憐な少女に過ぎぬ。
|
|「だから……僕を…………」
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_. . . . . . . . . ,_
､丶`: : : : : : : : : : : :〕iト.、
／: : ／: : : : : : : : :Ⅵ: 寸: : ヽ
/:/ : /: : : : : : : : : : : :ﾔ : : ヾr‐く￣￣￣ ｀ヽ
/:/ : /: : : :√: : : : :: : : l{＞ { ﾏ ､ /
: :l : :i{: : : : l : : : : : ｧ‐=j{ .斗 ヽ ＼- _ !
|: l: : i{: : i{: l : : :i{: :从: /∠.＿{ ＼ ヽ ￣
ﾔ : : ﾔ : ﾔ:Ⅳ: :i{ / /ｲ ﾐ:ﾑ ＼',
ヾ:＼:＼:ヽ{ ＼i{' "ィ=ﾆ彡 }⌒', _ -'ﾞ
]:`:ﾊ ／ ／, ) ノヽ/ ヽ
|: : ﾊ ／ /: :´', ',＼ヽ
l: : : :ﾞ〈 ﾏ _ﾌ ィ: : : : :', ', ｀ヾ '､ ………………アー。
ｉ: : : :}! :＞ ., ＜ ｢: : i{ : : :∧ ∨ }! ＼
l: : : :}! : : : / ￣ |: : i{: : : : : ヽ ヽ }! }!
j／!:/: /ｰ'辷ニ=ニ 彡ⅱ:` 彡'冖 ､ ＼ヽ}! /
/ }!: :/ ｀ヽ ／￣ ゞィ ::::::::::’ V ＼'
i /: / l ､::::::::::}! ヽ ヽ
_ - l／: / :. , /__ -― v' }! ､
_ - ~ ／: : / ＼＿＿_ :./ _ - ⌒ ヽ ＼ ヽ
〈 /: : : :i ｢￣ ￣￣ 7 ―- ､ ＼
ヽ ／ 从: : { l ＿＿＿ /＿＿_ '/: :ヽ ヽ
{／ ` l! ﾍ￣ 人 ￣ / /_ - ヽ / ´
＼_ l! `, ´ ﾑ＿＿ / 〉/,
7: :- ! ', ￣￣￣ / ./. . .- : : :~: :∧
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7: : /: : !￣ ｀′ / ' !: : : :i{: : : : : : :∧
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7: /:_ - ―- _ }! ＿/_､丶` - _ 彡ﾍ: : : : : : : ', : : :ﾍ
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| 壁のシミになった老人、めり込んで動かない怪物。
| そして、花畑に倒れ伏す少年と彼の横で静かに眠る少女。
|
| 赤い服の男はフラフラとよろめきながら、気を失った元妻の元に歩み寄る。
| それを見守る巨人もまた、満身創痍だ。
|
| 青く輝く鎧をまとった女が、静かに近づく。
| 巨人は本能的な恐怖を覚えたが、振り回す腕はもうどちらも崩壊していた。
|
| 抵抗はできない、怖い。怖い。
| 何度も追い払った場面、顔を背けた記憶。
|
| それが、今追い付いて追い詰めてきたのだ。
|
|「怖がらないで、もう大丈夫。
| もしかして、あたしお母さんにそんなに似てる？」
|
| 先輩譲りの髪、先輩譲りの大きな口、意思の強そうな眉。
| 同時に、レナ譲りの青い瞳、レナ譲りの目の形、背の低さ。
|
| 自分の面影はそこにはない。あるはず無い。
| それがたまらなく悲しくて悔しい。それと同時に。
|
| 桜は罪の意識に押し潰された。
| この子の、母親を、私が。
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,,. -―/´ｧ―-..、 ＼、
／´: :￣｀: ´ : : : : : ＼ ヽ､
,.ｲ: : : : : : : l: : : :{: : 、:＿:ヘ }:}
/: :{: :|: {: : : : |{: : :下￣ヽ:.十-i 〃
| : ハ.ﾄ ヽ: : : ﾄ＼: :ヽ＼:ﾄ: :| : :|ｰ ´
ﾄ: { ＼ヽト :_＼ ｀ ｰヽ__ﾊ:.}: : }
∧.:{ ￣｀ヽｰｭフ､ｨ／´ j/: :/ 桜姉さんのえっち！
{_A:{ ,z=＝ミ , z＝=/:./＿ そりゃあずっと助けられたけどさ。
／ﾉ:{ jr , z- , ,z-ノイハ、｀ヽ
/ jノ‐ト-､ __ __ .小ヽ}} それにしたって『アレ』はないよ！
! ／{{ {:..{ ヽ /..{. } //:.:} ﾉヽ
/ ＼ヽ{i＼ {.__.ノ ｲﾚ':./ i
ﾉ ＼:ヽ､｀ ー‐_´-':／ |
{ ﾄ､｀ -｀二.. - ´ ｲ / 丶
ヽ ヽ. ヽ-＼ 人 ／ｲ { }
ト､ j ｀ ーz) ｀'´(r‐ ´ | ,.ｲ
ヽ:.｀:ー_.:| /―:.:／
| ￣ ﾊ ノ- /― 7
| l / ´ 〈l |
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|「戦うたんびに下着がぐしゃぐしゃで……最初の頃はおもらししてるって思って大変だったんだからね……」
|
| 意味不明の罵倒、途中からトーンダウン。
| 夢宮の孫、レナの娘、先輩の娘。
|
|「今まで、ありがとうございました」
|「ナ……ニ…………」
|
| 彼女の手が桜の頬に触れる、温かい。柔らかい。
| 突然桜は、己が孤独の底にいたことに気がついた。寒さに凍えていたことに気がついた。
|
| それらが、消えた。
|
|「お母さんに代わって、ごめんなさい。あなたを殺してごめんなさい」
|
| 誰が、誰を……？
|
|「そーいえば桜姉さんて呼んでいいよね」
|
| 『蒼天の青玉』から澄んだ魔力が桜に流れ込む。
| 『万魔』としての能力関係なく浸透し吸収できる。それもそのはず。
|
| これは、他でもない桜の魔力だ。
| ずっと昔に封じられた。『蒼天の青玉』にずっと封じられていた、悪魔の魔力だ。
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{:::::::|:::∨:::::} う心 }::::::ミh､::v彡／:ﾉ
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乂::＼ 八::::::}￣ ＿__ゞ-'.ノ:::{__|:::＼＼
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＼(＼::)/ ／⌒ `寸{＿/i:/丶:::｀`〜､、:::＼
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| フラッシュバック。
|
| 『臓硯に植え付けられた偽物』ではない本当の記憶。
| 士郎を庇うレナ、その体を貫く触手、注入される毒。致命傷。致命傷のはずなのに。
|
|「ぬるい！」
|
| 手刀の一撃で切り払われ、まっすぐ飛んできたストレート。
| 吹き飛ぶ桜、遠ざかる士郎と凜に手を伸ばす。
|
|「よそ見してる暇ある？」
|
| 起動される『蒼天の青玉』。青い光がレナの身体を包み、傷を無理やり押さえつける。毒を全力で中和する。
| 杭打ちのような威力の蹴りの打ち下ろし、ダメージはなくても体重が支えられず転倒。
|
| 馬乗りになるレナ、冷徹な見下ろし。
| 触手で攻撃する前に顔面に一撃、二撃……数え切れないほどに打撃。
|
|「ごめんね、前に言ったアレ、嘘なんだ」
|
| 『万魔』としての魔力障壁がすべてのダメージを軽減。
| しかし、桜はレナの言葉が気になって攻撃を躊躇った。
|
|「あの人のこと嫌いじゃない。親の決めた結婚なんてお互いにそれくらいの温度で丁度いいなんて」
|
| 言われた。士郎を掻っ攫ったレナに、桜が食って掛かった時に。
| 勝者の余裕、桜が喉から手が出るほど欲しいヒトを、欲しくないものみたいに扱われて。
|
| 殺してやりたいと、思った。
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、 ＿＿＿
ﾏ､ ...::::::::::::::::::::::::::::::......
ﾏ､ ィー―--:::::::::::::::::::::::::::::＼ 『あたしも、あなたと同じ。
ｒー＜ ィ⌒: ミ 、::::::::::::::::::::ヽ
/ ノ:::::::::::::::::::::::::＼ ヽ::::::::::::::::::::::.. ／ シロくんがいい。
(ー::/:::::::::::::::::::::::::::::::＼ ヽ::::::::::::::::::::.. ｡ ／ シロくんじゃなきゃ嫌。
｀７::::::ハ::::::::::::::::::::::::::::::｀ー彡´ V:::::::::::::::::::. ｡＜／
.::/::::::{ ＼:::＼::::::､:::::::::::::::::::::ー' V:::::::::::::::::｡＜ ／ でも、恥ずかしくって言えなかったの。
iハ:i::::ト､ ＼{ ＼:::＞-＝ヽ::::ヽ＼ {:::::::::＜ ／＿＿＿＿ ごめんね』
＿{ ﾒミ汁心 ｀ｰ彡ｒぇｪx､ ＼:ﾊ:}} ノ´ ／:::::::::::::::::::::::::::::ミ:::..、
／:::::::ー':::::::ﾊヾｿ ﾋ少 ´ ﾘ / ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
/:::::::::::::::::::::::::::八〈 ￣ o人ヘ/￣:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
｀ー―┬、::::::::::::､ ､＿_ Yｭ V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
（ｒ〜､:::ー::::::＼ マ_7 ／ ィf「 ム V:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::└ー――、
￣ ＞ ≧ｪ ィ ィf「 ＞＼{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::)
/| ／ { i{ ＼/ i! ＜ 人::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::（
/ i/ { i{r'/ ／´ ＞ ´ ￣￣ヽ＿::::::::::::::::::::::::::::::::::／⌒)人_ﾉ
__/ ト v┐ 人 し´ ＞ ゞ ／} ＼ ￣ ー-- 彡 ー'
／ ﾏ ∨ ／ }i/{ ／ ﾏ ／ i ', ／{
／ ﾏ ﾑ／ ｨ レ´ ﾏ／ ,イﾑ j / |
／ }ーヽ // ィ{ /j／ イﾆニ' ! / |
ノ ＿ ノィ７ { { マﾆL ／/ ﾏﾆ j / |
, ´ ／ ／ ヽ{ /ン 人￣￣｀ 、ﾏ /´~￣ヽ / {
／ ´ ／ / （{ / / ｀ マ ヽ / ヽ￣￣ ﾑ
／ { { ;′ / ＼ ﾑ ＞、 ﾑ
彡 ´ 八 ﾑ i / V ﾑ_イ/ ヽ ﾑ
＼ ヽ { ,' V ／ ＼
｀ ┬┬≦ﾑ { 〉’ ＼ ',
| ! /ﾆﾑヾ 彡 / ＼
! ｌ }ﾆﾏ ｊ≧ー-＝ /
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|「それは……！」
|
| 何か言おうとして、桜は口の中がズタズタな事に気がついた。
| 目も半分開かない、鼻も詰まっている。頭がズキズキする、耳鳴りもひどい。
|
|「十発で駄目なら百発。百発で駄目なら一万発。それでも駄目なら百万発殴るつもりだったけど……意外と早く行けたわ」
|
| やはり暴力／渾沌／貫通／物理。暴力で全てを解決だ。
| 臓硯が偽りの記憶を植え付けるのも納得の桜。何が無敵で不死身だ。
|
| 殴り続ければ死ぬなんて、そんな冗談みたいに当たり前のことが知れ渡るのは避けたいだろう。
|
|「シロくんは、あげられない。きっと凜が助けてくれる。だから代わりに、あなたを私の娘にするわ。
| 眠りなさい、『蒼天の青玉』の中で。時が来るまで、私の魔力を食って生き長らえなさい」
|
| 体がぐしゃぐしゃに潰されていく。丁寧に執念深く殺された。
| 見るも無惨な肉片の記憶、レナではなく桜自身のものだった。
|
| 『蒼天の青玉』に封印され、レナの過剰な魔力を与えられてまどろんだ。
| 揺籃の時代はすぐに終わり。しばらくは夢宮の苛烈な魔力を与えられて過ごした。
|
| 臓硯が用意していたバックアップが、巨人の桜。
| 封印されて眠っていたのが最初の桜。
|
| どちらも同じ、どちらも桜…………だけれど。
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／: : : : : : : : : : : : : : :＼
.': : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
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j{: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾊく: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : | よかった……
//|'､ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|
‘‘ | ｉ} : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : | よかった…………
{_｛ し} : : : : : : : : : : |ｉ: : : : : : : : : : |
｀ｈイﾞ : : : : : : : : : : :|i: : : : : :|: : : : : わたし、せんぱいのおくさんを
.|.| |: : : : :|: : : : : : : |i: : : : : :|: : : : :|
.U.｣: : : : :|: : : : : : : |i: : : : : :|: : : : :| れなを、ころして…………
|: : : : : :|: : : : : : : |i: : : : : :|: : : : :|
|:|:ｉ: :|: :.|: : : : : : : |i: : : : : :|: : : : :| なかった。
|:|:|: :|: :.|: : : : : : : |i: : : : : :|: : : : :
|:|:|: :|: :.|: : : : : : : |i : : : : /.: :.｜|､
_､‐''゛|从: : : :|' : : : : : : |i : : : /: :ｲ:/|/ ＼
.／{ ＼从.',: : : |:ｉ ﾊ: |: :/ ﾚ ﾚ′ ＼
ｌ ', ∨∨Ｖ |Vﾚ' }`.
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| ', | { ,' / /
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| 体が砕ける、崩壊する。
| 巨大な肉体が灰に変わり、後に残るのは塵の山。
|
| 巨大なオブジェのような、ヒト型の砂山
| その胸部に身じろぎする影があった。
|
| 長い髪が垂れ、顔を隠す。一糸まとわぬ均整の取れた裸体の女が現れる。
| そのバストは豊満であった。
|
| 目を覚ました凜が、そして彼女を腕に抱いて『弓兵』が見守る中で、アリカが女を支えた。
| 十六年前から少しも変わらぬ、間桐桜を。
|
|「はじめましての気持ちはしないけど、はじめまして桜お姉さん」
|「ずっとあなたと一緒にいた気がするけれどけれど、はじめましてアリカちゃん」
|
| 体はふらついているが、声は案外としっかりしていた。
| 優しげな顔立ち、はにかんだ笑みで、桜は続けた。
|
|「あんな気持ちで戦ったのは、後にも先にもあの時だけだったんだから……誤解しないでね」
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| 花畑の中を這いずる虫が一匹。
|
| 壁の染みからこぼれた体液が、血を這う回虫に形を変えたもの。
| 『イシュタル』は砕けたが、虫プールは燃え尽きようとしていた。
|
| もはや炎は自然に消えるような常なる火に過ぎない。
| しかし、『絶対防御結界』の消費は大きく、虫プールはとっくに死に体であった。
|
| 本体も大半かアリカの強打で破壊され、残されたのはこの虫けら一匹。
|
|（この忌々しい花畑が脱すれば……人でも食って魔力を補充し、『血族』に戻れれば……！）
|
| 憎んでも憎み足りぬ夢宮と遠坂！
| なんとしても両家を根絶やしにしてくれる！
|
| 間桐臓硯最後の欠片は憎悪を糧に進んだ。
| 誰もが疲弊しきりで、彼の存在には気が付かない。
|
| 『エレシュキガル』の花畑さえ抜ければ……臓硯の勝ちだ！
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＞-=ﾆ⌒`ミx,
/レ' -＜＿_ ＼＿
午 ＼ ｱ
| ＿{￣ く
| V＼rミx≧ ｢ 清算の、時だ。
八 { { ト､ .{
｀`し_,､ ,' ＼＿＼{
ヽ__/{_jI斗≦三ﾆ=-
／ニニ二二二二V
／寸ニニニニニニニV
／ニニ寸ﾆﾆニ二二二二V
,ｲニニニニ＼三三三ﾆ=-二}､
{=二二二二二＼三三ﾆ＝-/ﾆ＼
{ニニﾆ}iニニニニ≧s｡ﾆ=／ニニ}|
{ニニﾆ}iﾆﾆj{ニニニニニニ二二j}|
{ニニﾆ}iﾆ≠ニニニニニニニニj八
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 不意に、声。どこから来たのか、臓硯は怯えながら周囲を見回した。
| 誰だ？ もしかして、わしに話しかけたのではあるまいな？
|
|「アンタは、僕らから色んなものを奪ってきた。それを、清算する時が来たのさ……」
|
| 笑い。次の瞬間、臓硯は脚と脚の間からニョキリと生えた毒々しい色の茸に悲鳴を上げた。
| 雁夜の死体を、気付かぬうちに踏んでいたのか！？ 侵食される。食われる！
|
| 臓硯は茸の生えた部位を周辺の腹ごと切り取った。
| 痛みはない、不都合はある。だが、背に腹は代えられない。
|
| 花畑に落ちた茸が、どす黒い炭屑みたいに変化しながら崩壊。
| 同じく、臓硯の体も段々と黒ずんでいく。
|
| 自己破壊プログラム！？ 臓硯はか細い悲鳴を上げた。
| 最期の言葉は命乞いであった。
|
| だがこれまで、誰にどれほど慈悲を請われても応えなかった臓硯である。
| 許しはなかった。
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/ /:/::/::::i:::::/ ｝:::）:::ﾍ::::ﾍ::ヾヽ
{ ｛:く;;｛:::∧:（ （:::(ヽ:::::）:::ヾ::｝ }
ﾍ::)::）ﾉ￢）) ):）フ::ﾊ::::）:/
{ﾍ!:（丁;;jゝ ´「;;;j厂ﾚ!iﾍ
｛∧ ￣ ￣ / ソ
ゝﾍ ' /ノ ……なあ、爺さん。
ﾘヘ ´ ￣｀ ／!!′ あんたは馬鹿だよ。
＼|＼ __ ／ |/!
┌‐┴─ｒr─‐‐┴!
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/: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : 〃/: : : : : : : : :｀:ｰ:-:.:.､,,,__
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| 最後まで、勝つつもりだった。
| 絶対に屈しない、執念のような殺意が臓硯にはあった。
|
| 何に執着していたのか、臓硯は意固地になっていた。
| もっと狡猾で、柳のようにのらりくらりしていると思っていた。
|
| なのに、臓硯は頑なで。
| 凛と『弓兵』を殺そうと躍起になっていた。
|
| それが、引き際を見失わせ、挙げ句にこの最期だ。
| 誰一人、顧みない臓硯の死。
|
| だから世界中が笑っても、慎二だけは祖父を悼んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
剣豪と呼ばれた男たちがいた。
剣に生きて剣に死んだ。
その生涯で、幾多の死闘を繰り返し。
その果てに、究極へと至ったやもしれぬ。
剣聖と呼ばれた男たちがいた。
剣に生きて剣に死んだ。
その生涯で、壮絶な研鑽を繰り返し。
その果てに、至高へと届いたやもしれぬ。
だが、ヒトの命は短く儚い。
究極も至高も夢のまた夢。
その領域に達するには、人生程度では不足も不足。
…………ならば、定命ならざる存在なれば？
次回、最終幕七十九話『頂の剣士』
果てに見るのは破滅か死か。
やはり暴力…！暴力はだいたい全てを解決するのに便利…！！
レナと夢宮のババアは血縁ではないらしい……うそやろ！と言うまでのバイオレンス近似
老獪かと思ったらタダのボケた頑固ジジイで草
生存最重視かと思いきや実は夢宮コンプレックスが凄かったお爺ちゃん
やはり冷静さを失うと駄目なんだね
「桜？ 十六年前に助けた」
母ちゃん強い
本人の資質だとばかり（チャンピオン版舞乙とかそうよね）
当初の設定と違ってアリカがPC1になってる気がする
／:::::::::::::::::::::｀ヾ}/ ｊ´ ﾘ
ｲー:::-::＿::::::::::::::::::｀ヽ ｊ´ ﾘ
ﾊ 三~￣￣三彡! ｊ´ ﾘ
⌒ｊ:::|､＿ / ｊ´ ｲ!
＿＿イ:::::::::::::::7⌒ﾏ:ァ--ー＝ｒ ｊ´ ﾊ}
ィ ＞ ´￣￣ マﾑ_ ｀ヾ::l > ＿/⌒ｊィ
ィf／´ ヽ{⌒ヽ} _/ ｀ マ/７＞
ィf _／ ＼＿} ７ _///ｒY
ィf _イ7 ､ ヾー ｊ/ﾘ´ ｒ'
ィf イ7 ./ ＞.. ｀iヽ ｒ‐v//⌒ﾘ
/ｊ ／ /７ V V ＞ . |//＞＜ﾑ_ﾏ /
/ ／ /V / ト >､＞ . |/////≧､7 7
ノ＿／ / ﾘ ノ 」 ＼ ｲﾆ＞ ⌒L////////ヽ7
/:::::／ / イ 彡 ´ }＞ ｀ヾ//////＼
::::/ 人' ｊ /´￣ ｊ ｢ 个/////ヽ
::ﾉ ヾ::{ l! / ／ / l＿! T＝///＼__
＿＿ｊ__ ＿ ）－､ ｲ! l ￣ ､ ￣マフ }
r┤ /|i|ニニニﾑ ﾏﾑ／ i ! ､ ｀ｰ＜ﾍ
Lｊ / ｊ７!ニニニニ／ ／ ｌ ＿＿ｊ､ :. }//ﾊ
人_ノ ﾘハニ≠ ／ ／ ｢///////| |!八∧
７ // ＞ ´ ¨ ﾍ///////| ＿_}､ ｀ ｀ｊハ
{ //X ／ ／ ﾏ//////|ヾ77///ハ ´
| // 八 ／ ＜ ﾏ/////|! V/////ﾊ
レ // ヽ イ -ー ´ ﾏ////|! V/////ﾊ
￣￣ ー― ´ ﾏ//// V/////｝
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| 『蛇身』イナミ。中近東から来たマリード。
| 流出した『ネクロノミコン』の回収を使命として、はるばる鎖国中の極東までやってきた。
|
| 彼女はそこで島原の乱を体験し、当時の『血族』と壮絶な戦いを繰り広げ、江戸に流れ着いた。
| イナミの冒険と探索について、詳しい話は『血族』には伝わっていない。
|
| 刺客を送り敗北した。敗北した。敗北した。
| そればかり。
|
| その果てに、イナミは『血族』本部を探り当てて単身乗り込んでくる。
| 当時京都にあった『血族』本部はほぼ全滅。
|
| 命がけで『蛇身』の像に封印するも、もはや組織としての体をなさない壊滅状態。
|
| その結果、大江戸八百八町に作られた『血族』江戸支部が本部と成り代わった。
| そのどさくさで多くの記録が紛失。
|
| その中には、日本全国を行脚して妖術を編纂した男の資料もあった。
| 彼の悪行の一部が露呈し、敵対する者共を皆殺しにした罪を『蛇身』に着せたとして。
|
| 誰も真実など分からぬ。
| 全ては歴史の闇の中。
|
| そして、現代に蘇った『蛇身』。
| 闇に潜み続けた老人。
|
| 二人の線は交わらずに消えた。
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（ ＿
＞::::::::::::｀::ヽ ＼
/｀ヽ:::::::::::::::::::::ヽ.._j)
ﾊ ｀＞::::::::::::ﾉ::::ﾊ
＿ｒ､＞ｭy⌒::人 ヽ／´￣ア⌒ｊ┤
＿ﾉ:::::::::::::::::::::::::::{__ｊ≧ｭ｡＿｀ー-- ｣
＿ ―ァﾆ＝､ｹ＞ ´ ￣￣｀ヽｒｭ￣＿_≧､ ﾉ
, ィ「￣ ＿＝ ´ ／ ﾏ_) ￣〈:ヽ／
／:::::/ー ´ , ､. l. ヾー､ ´ 人 …………。
ｱｒ::ﾊ{ ／ ヽ: . ﾏヽ ﾟ¨ イ /ハ
ｿ ヽ ／ :＼. ＼｀⌒､:ヽｰ'
, j/ ヽ:.
/ / __ >ｭ､
/ . : : . . / ヾ＜ニニ ､
. : : ;､＿＿ ヾニニｭ ヽ
/ , : _ ＜ 〉ニニ }
ﾏＶ /: ｢ヽ ＼ /ニニニ/
≧ｧ : : j!ト ＼ ヽｒｫ /ニニニ
/ ＼. : :{≧}＞､ヽ ー- ､ /ニニ／
ｒ〈 ＿）､<ﾏヽク≧｢ Tー--､_ァ /ｊ ｒｱニイｧ
ﾆﾊ_ｒ＝y´ニニニﾑ ﾏ｣-ァ＝ｭ__{ヽ /「/ﾊイア⌒ヽ¨
ニﾘｒトﾆ{ニニOニ＞＼≠イﾘ ｀ーﾍ {ﾘ 〈_ｧ ｒｖ≧'－_
ﾆ7≧ﾏニ≧彡´ ヽ⌒ L/ ｰﾍｊ_）-=ニ≧ｭ_
７ー≠キニﾑ￣アヽ ､ ｀ マニ≧ｭ_
r――＝､ﾆ人ニﾆﾑ ＼ ｀ マｊ
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| 猫のように身を屈め、左手は鞘。右手は柄を握るか握らないかの微妙な位置。
| 弧を描くようにキオの周りをじわじわ歩く、少しずつ距離が縮まる。
|
| 対するキオは、自然体。イナミから視線を外さずに、ゆっくりと深い呼吸を重ねる。
| 張り詰める空気、西部のガンマンの決闘のように、互いに動くタイミングを見計らう。
|
| 決闘。
|
| これは決闘である。
| 『血族』の『緊急事態対策班』員キオ・アスノと、『十二の封印像』が『蛇身』イナミの。
|
| ヒトと悪魔。異能者と剣士。弟子と師匠。幼きものと老いたるもの。定命と不死者。
| あるいは、男と女。
|
|「ッ」
|
| 遠く、爆音。それが開始の合図であったかのように二者は動いた。
| 疾風のように、互いに目にも止まらず、超感覚で動きを理解。
|
| 稲妻のごとき抜刀。超能力による見えない腕を寸断。
| 跳躍、足払いする見えない指。かかと落とし、空中への念動波を足場に距離を取る。
|
| 有効射程から離脱して、イナミは肉感的な唇を歪めた。
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{::::::≧ｧー-､ 。 ￣￣ 三ニ j!
ｷ:::::::/ ｒ⌒ヾ ､＿ ｒｫｧ ・ /
ノ::::::::{ ｊ ｨ, ｀マ::＞ ､＿ ＿＿ i!
／:::::::::::ﾊ＿ / ミ::ア⌒￣￣ ー＝＝ ＿＿＿二ニ≧ｭ､＿ ミーﾘ
Lイ ヽ Y:r-:､ ￣￣＿＿￣￣｀マーニｊ
ﾑｒ‐､-ﾘ ｊ:! ::} : : :{!ヾ////｢
ゝ-’＿, {: ﾘ :ﾑ //ﾘ
{＿(::人 ヽ { __, ﾉ / やるようになりやがったな。
ｨｭ､ ｀ ヽ . ,, ´
￣￣ ｀ ､ {｀´ ﾊ /＿ ＿＿ /
ヽ ＿ｊハ {⌒ヾマ三二 ーァ/ア´ /
＼-' } ＼ヽ ＿￣ フ/ /
ヽ＿ノ。 ヽ＿ ﾟ¨ ン
＼ハ､ ￣ ／
＼:::ヽ.. ／
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|「鍛えられましたから」
|
| 僅かな攻防、距離を取ったのはイナミ。しかし口元には涼し気な笑み。
| 対するキオ、汗を拭う。緊張した表情。
|
| 互いに強みと弱みを知り尽くしている。
| 前に会ったときから、キオがどれだけ成長したかが勝敗を分ける。
|
| 刀を納めるイナミ、神速の抜刀術の構え。万物を両断する恐るべき凄腕。
| に見えるが、実際には魔力を使わぬ単純な剣術。
|
| 剣の天才が生涯をかけて研鑽し、それでも手の届かない頂。イナミはそこに手をかけている。
| あと一歩、いや数歩……あるいはその先があるに違いないが、とにかく人類の到達点を実際に見た。
|
| そして手の届く範囲にいる。
|
| だが、見方を変えればそれがイナミの限界点。
|
| いかなる理由かは明かされぬが、人間の姿で人間並の力で、人間が培った技術で戦う。
| 時に限界を越えるために魔力で補佐をするが、それでも人類に可能な範囲。
|
| そこが、弱点。
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j ﾘ .＞ﾆ三￣ 二=- ｡
} h ／: : : : : : : : : : : : : : ＼
j {ｨ': : : : : : : .ｨ: : : ',: : : : : : : ヽ
i } /: : : : ／ ∨: : : ,: ヽ,: ', : : ∧
| , j !: : .イ ＼ ' ,: : ﾄ､: ﾄ､ i : : : ∧
| ,' { j／_,｡ﾆ=ｭゝ, ＼| ヽi ﾍ|: : : : i
| , :| 「秘才′ "}≦ｪｭﾘ: : : :ﾘ
i! , ! 込 ﾘ :機オ」L: : : ｿ_
ili| i! 丶 , ` －'’ 7 ｲ l l
ilil |! ＿＿ /ア { l l
ilil| ﾘ, ,仁二二 ', /ﾋｿ: ﾄ､.l l 次は、僕から行きます！
ilili! ﾄ､ ! ＿ l! .ｲイ: : : : : l l
ilili| j i ＼ ￣ イ: : : : : : : _| l l
ililili Ⅱ i! ＞ ｡ _ ＜ﾄ､.ｨｭ: : r,リ´ l l
}ililil | ﾄ, j .ｲ ﾍl ｀Yヘ.──‐┼l
ilililﾍ 丶 ｲ≧ｭ!',! ¨j 7.ｲﾍ l ＞ｧ─ｧｲ
Ⅵj '｡ ＼ /i≧il } {/／ ∧ i j /￣ ヽ.
.｡仁Y! , ` |三i! ! {! i, ' i' , _＿ ヽ｡.,
∧ﾆﾆi ', j! lﾘ } ﾚｲ .ｲ , ´
∧ﾆ三! | i { i,' ﾘ j .ィ´
∧三三! i!. l! ヽ i ､/ ﾘ ／
,' ,'ﾆ三i! | i! ﾘ i ,' / i/
,i ﾆ三三i | i i' i! / ,' .i
,i二,三三i l i! , i' , , {
i!三三ﾆｲ l | i i' ト＜
i!三三.ﾊ ／ l i i! i / ,' j三三三二ニ
i!三ﾆ/ ｲ l l j i ' ｲ l────j
i三/ .イ l l i i iｲ l二二二二ﾘ
∨ ／ | ! i i iﾊ j三三三三lⅣ
/ ／ ! ! ! i l i, iﾊ三三三三Ⅳ
/ ,. ' l ／! j l / ', i三三三三i´
/ j i { l / ヽ｡ ﾄi三i三三ﾊ､
/ ／ _. ｡ -‐ﾆニニニ-ｬｲ／ア ＜ . i! iｲ ' , `寸三三i小
j / .｡＜ ソi／ ＼ i! i ' , `寸三ニ
i /.＜ i i ＼iﾄ､ ' , 'ﾏi三
_,j j 丁 丁 T:l l ｀丶, ∧ ∨
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| イナミが負けた相手。ダースベイダー、石田
| つまり、超能力による全方位攻撃。
|
| 石田の強さは十二人分の超能力を操れるという単純な出力だけではない。
| 石田という男が戦場を俯瞰し、適切な能力を利用できるからである。
|
| 石田の戦い方は単純だ。
| 超能力も『板』の形に限定することで無駄な脳力を使わない。
|
| 『板』つまり、足場であり盾であり、面の打撃。
| イナミは、その面に弱い。
|
| 人間が倒壊する壁に弱いのと同じ、当たり前の道理だ。
| 高位悪魔の圧倒的魔力で吹き飛ばせば話も違うだろうが、イナミはそれをしない。
|
| できないのかもしれない、とキオは何度も考えてきた。
| そして結論、『できるが、したくない』。
|
|「来いよ！ お前の力を見せてみな！」
|
| だが、面で押し切るのはキオ単独の能力では不可能。
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ﾏヽ { ﾍ / 7
r=- ,,__ ﾏ ヾ､ i! rﾍ} __./r=77
`=-,,__ ￣ ''== -- ,,__ .ﾏ､ ﾍ r }ﾍﾘ＜ヽ >､::レV
'' =- ,,__ "''==r--＼マ{ヘ}.､ヽr'=yく ン. /7 V/i＜二二ニニ＝＝===---
"''=r ､`'ヾ_,,,,_ﾍ`＜::＞`f ､＜ン'::く`rv' .!:::::::`ヽ
>､￣"'''"=-- ､ ﾏヾ:{＼{`ﾏ＜::::`}i!､ }i!ヽ､￣
r､ /:::::::` ＜ `}===､ﾍ､_}､ ﾘ}`ﾘ_:::::}ﾚ' }ヘ
, rラ:ﾘ／::::､::;,ﾍ､ ﾘ:::::r=::ヾ`'r＞.'::::::V:k､/:::::/ヽ＿＿
／／::r.':::::::::::::＞ ､___rイ､:::::ﾘ::ヾ￣ ﾏ__ﾏ／V:::} "''ﾏ rﾍ:'' ,,
／イ:::／/:::::,r= '-く､ ,ｲ::ﾏ', ﾍ:::::::f==--',::ﾍ::::::V ﾚ `'' ;;::"'' ,,
／' `'"ン::／「f::::|:::::ﾄ'／ " >､ﾏ ﾍ::::',______',::::ﾍ::::} "'' ;;::"'' ,,
／ , イ{レf ',L___フ' .／| リ ､`=_ニXrﾍ|ﾘ､"''''" "'' ;;:'' ,,
.. ／ , イ , ､_{ / }..／ !､::::::::＞､// ﾘｲ.､ヘ､ '' ,'':: ,,
.／ , イ ,ｲ }ハ ,r=f"''=-く _,Lr､:::::::::::::::}ﾍ ﾝ､-､ } ､ `''= ､ "' `,,
. ,.イ ,ｲ {::::ﾚ:::::::L_::::::::} r' ／rく"ヾ￣＞rく:::::ﾍ |､ﾍﾐ ､"'' =- ,,__
,ｲ ／.i!:::{::::／{"r=={ ,'ｲ く / r＜､ ノﾍ､::ﾝ{fr' ＜ ヾ ､ "''=-
,.ｲ ／ .{:::::ﾚ{ ﾘ､.},ﾍヽ/ /ﾗ'::X/ ./|i ', } `r' i!_____{` ＜ ､
, ｲ ／ .',::::|::|イ{:::::/ >'r//:::::{/ ./ ﾊ }イ::ﾄ､|／ `ヾ rﾍ
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| 代わりに、キオが目指し辿り着いた答え。
| 不可視の力にヒト型のイメージを与える。
|
| 『それ』が武器を振り回す。遠距離からの見えない腕や衝撃波による攻撃よりも素早く、テクニカルな動き。
| 有効射程が短くなるため、キオはズンズンとイナミに近づく。イナミは様子見しながら鞘で受けるさばく避ける。
|
|「ンだコリャ、使い魔の一種か？」
|「はい。僕が考える最強のイメージを投影したヴィジョンで、自律機動してくれます」
|「はぁーん、それにしちゃあ……」
|
| 背は低い、腕も足も細い、俊敏だがパワーは高くない。
| 片手に持った武器を高速で振り回す。武器部分だけは超能力の密度が高い、だが、それにしても。
|
|「あのな、超能力で作った下僕がヒトガタにこだわってどーすンだよ」
|「でも」
|
| モゴモゴと反論するキオ、イナミは舌打ちして神速の抜刀。そして?然。
| 縦にした武器を両手と膝で保持することで、必殺の斬撃を防がれた。さらに困惑。
|
| 距離を取った不可視のヒト型が、武器を腰部に下ろして、猫背に丸まった。
| 飛び掛かる直前のネコ科肉食獣のごとく。
|
| キオの、イメージする、最強。とは？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ハ::::::::｀::::ヽ
ｊ/￣ヾ￣￣≧｀ヽ
| ､＿ ￣! え？ おまっ！
V´ ト::￣￣｀７ｒ⌒! 卑怯だぞバカ！
! ｀＿ u ´ _ﾉ::ヽ-､
人 ｀V_} {⌒ヾ::j::＿}
( > ィ八__ﾉ｀Y ア､-ー-
¨ 个 ＜ ｒ三＞￣ ｀ヽ_＿
ヾｒァﾊ ､＿,,ノ ヽ＿ｧ ｢/≧
ノイ 7T｢ ｊ ﾄ､}＼} イ |////
, ｊ/!ﾊﾑ/ヽ} ≧＝ ｒL///
ｊ ハ } ∨//
′ ー-､/ ﾑ ﾉ ／///
/ / ハ ﾑ ＿ｒ－ｲ//ィ´
／ / }＿ ＿ ,,-＝≦/>ー'´ ｌ
厂77777 ーｧｲT､/ﾘ‐´ !
/////// 〈/ ﾘ ﾏ{ |
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| 神速の抜刀！ 不可視のヒト型による必殺の斬撃を、思わず同じ姿勢で防ぐ。
| つまり、左手と膝を刀身に当てて刀を盾に。
|
| 自らも飛んで不可視のヒト型から距離を置く。
| 仕切り直しのために納刀しかけ、イナミは舌を打って唾を吐き捨てた。
|
|「その……ええと」
|
| イナミの罵倒が応えたのか、もじもじ落ち着かないキオ。
| だがすぐに思い直したらしく、拳を握って向き直る。
|
|「卑怯じゃないし、ヒト型でもいいんだ！ やっぱりどう考えてもイナミさんより強いものが思いつかない！」
|「だからそれが……ッ」
|
| そんな事を口にして憚らぬことが、そもそも卑怯なのだとイナミは思う。
| しかし、なぜそう思うかを解説するのは難しかった。
|
|「僕はこれであなたに勝つ！」
|「パチモンで勝てるかよ！」
|
| 不可視のヒト型は、本来石田対策として編み出した。
| しかし、イナミは石田に負けている。では、どうやって勝つつもりだったのか。
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_ ｡ -‐ ‐ｭ,
,.｡ '":::::::::::::::::::::::::::::`丶
.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
.ｨ:::::::::::::::‐- ｡.ヽ,::::::::::::::',::::::::::::::ﾍ
/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i! ヴィジョンだけなら勝てないけど！
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ,
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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| 不可視のヒト型が飛んだ。キオの作る念動の足場を踏んで、衝撃波に合わせてロケットみたいな加速。
|
|「へぇッ！」
|
| 迎撃しようとしたイナミが、己の足元に出来た不可視の足場に笑みを浮かべる。
| 足場というか、すねの位置に置かれた横棒。気づかねば転倒していた。
|
| 空中を蹴って、アリカみたいな飛び蹴りをするヒト型。避けた先に産まれる足場。
| キオの異常な空間把握能力を駆使して縦横無尽に飛び回る。
|
| イナミの感覚、周囲に浮かぶいくつもの障害物。だんびら振り回すには厄介。
| そして、不可視のヒト型は障害物を無視し、一方的に飛び回れる。
|
| なるほど。イナミはニンマリと笑った。
| 良くできている。こいつは厄介だ。
|
|「褒めてやンよ」
|
| 妨害、コンビネーション。そして不可視のヒト型による強烈な打撃。
| 芸術的だ。よくぞここまで研鑽した。イナミは素直に感服した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＼
ィ::￣::｀ヽ_ })
ｒ'＝::::::::::::::::ヾ
ｊ ￣三ｰﾊ
ｒ－､ｔァ=ュ＿ｊ/ /
＿＿ _＞ ⌒ヽ__}マ ｒ::ト ､/
ミ ＼ 。 人 フッ。
＝－＿＿ 人ﾄｧ､ゝ ´イ ヽノ
三 三＝ｚ＿ 弋⌒ヾ、
￣７ ー＝ 三＿ 三＝ ｚ三
/ ｌ￣＝ ＝―
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| 不可視のヒト型の手に当たる部位を、柄頭で打つ。
| 狭い場所、屋内での戦闘には相応しい剣がある。
|
| 刀身を左手で摘む。引くことで柄頭を打ち込む。細かい動きで撹乱、防御、打撃。
| 距離が開けば左手は離す。コンパクトな動きでの切りつけ、突き、蛇のように巻き付く打ち込み。
|
| キオが初めて見る、想像もしていなかった動き。
| 剣術だ。イナミが封印前に修めた技術、あれだけの達人だ。無いわけがないのに、失念していた。
|
|「この程度か？ ガッカリだぜ！」
|
| 不可視のヒト型が胸を貫かれて砕ける、キオは奥歯を噛み締めて次を呼び出す。
| イメージしろ、さっきより強い。イナミさんはもっと強い！
|
|「まだまだ！ ぶっ飛ばしてやる！」
|「ははッ、いい子ちゃんはオシマイか！？」
|「今更イナミさんの前で！」
|
| 不可視のヒト型の猛攻、だが今度は容易く捌くイナミ。もはや手の内の見えた手品扱い。
|
|「カッコつける必要は無いって？」
|「ある！」
|
| 壁、妨害、未来が見えているかのように逆に利用される。
| キオの目の前が赤くなる、目の血管が切れたのだ。垂れる鼻血を手鼻で拭う。
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| ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ !
| .ｲ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾑ, |
| , ':: ／ : : : : : : : : : : i: : : : : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : ﾑ !
| /: : / : : : : ／l : : : : : l : : : : : :i!: : : : : : ｷ: : : : ｷ: : : : : iｴ|
| }: :,': : : : ／: : i!.: : : : : ', : : : : : i!: : : : : : ｷ: : : : ｷ: : : : : l .|
| Ⅵ: : . ィ’ ', : : : : : ',.､: : : ∧ ､: : : : : ': : : : : ', : : : ﾘ .| 好きな人には
| Y: :/ /!¨ ヽ ∨.: : : .∧＼: : : ' ,＼: : : : ',: : : : i: : : ハ:.l いいトコ見せたいだろッ！！
j｡-‐Ⅵ,ヘj .＞ ヽ｡, ∨ : : : ∧ ＼: : ∧-ﾒ､.: :.',: : : l: : : : : ”¨丶,
_,.｡-‐ﾆ ∨ ∨ ﾊi i 心ﾑﾍ ＼.: : : ∧_.｡ィ≧ｬ,＼ ヽ: j: : .ｲ: : : : : ', ¨”
,､,ｨ´, ∨ /: :l丶 Ⅵ仆!ﾍ ＼:: ∧ｨ任ﾑ¨ヽ¨ l/i／ i: : : : : : i
.｡-‐ﾆニ二’ 丶, i ﾚ1 } /:; ゞ ィ’ `＜!Ⅵ叨 / ､ /: : : : : : l≧ェｭ,_
.｡イ’ ｀ヽ ＼ l Ⅵ:;/ ゝ -‐i:j ノ , ': : : : i>ヘl'´
￣三三二 | ハ 〈 , .､_ .ィ /＼: :/
l二二二 ﾍ r- ij_＿ , 'ハ／ 7’
! , | j＼ ∨ ￣∧ ／/ /
j ,' i ,' ＼ ゝ｡. ＿ j ．＜ ,仁二二ﾆ7
/ ﾉｲl / ｲﾍ ＞ ．_ .｡ ≦’ / 7
/ _ ,.｡ 'i 丁¨¨¨7 ／ i `ｰ､ヽ,ｨﾆ’ﾉl, ' /
ヽ _ . ＞'’ ∧ .i | ｀y ¨ヽ, j /
,ィ''¨” ∧ l! i .{; ∧ ,' / ', /
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| 集中力が途切れていた。妨害は失敗していた。
| 不可視のヒト型の援護は不足していた。
|
| タイミング最悪で、不用意な一撃を打ち込ませた。
| 防がれる、また破壊される。キオは頭痛に耐えながら絶望した。
|
|「ぐへぇッ！！？」
|
| 直撃。イナミの肋に不可視のヒト型の武器が直撃。
| 身体をくの字に曲げて悶絶するイナミ、咳き込みながらくずおれる。
|
|「え？」
|「ぎゃっ！？ てめッ！」
|
| 自律しているため追撃で殴る不可視のヒト型を慌てて停止、脇腹を押えてうずくまるイナミに駆け寄る。
|
|「イナミさん、大丈夫ですか！？」
|「キオテメエ……卑怯だぞ……」
|
| 直撃したのは脇腹だが、全身の体温が高い。もしかして肉体耐久性も人間並みなのか？
| 脈拍も呼吸も極めて荒い。
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l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/ ……ひきょう？
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ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
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|「こンなのズルじゃねェか！ イカサマ野郎！」
|
| 剣を杖に立ち上がって喚くイナミ、キオにはなんのことか分からない。
| 本当に、分からないのだ。極限状態で己が何を口走ったのか、曖昧なのだ。
|
| 手を差し伸べるキオ、振り払われる。
| 次に差し出したハンカチ、盛大に鼻をかまれてポイ捨て。
|
| だが、次の瞬間イナミが顔を上げた。
| そして舌打ち、ため息。
|
|「ドーモ、『蛇身』サン」
|「ニンジャか、めんどくせえなぁ……」
|
| 伝令ニンジャのエントリー、イナミはハエでも追うように手を振る。
|
|「俺とこいつで賭けをして負けた。今から俺はキオ・アスノの客分になる」
|「！！」
|
| 喜色満面のキオ、驚くモブニンジャ。『蛇身』を仲間にできたなら、戦力としては大幅増強間違いなしだ。
|
|「石田班、佐倉班がカトルカールに敗北。死者はなし。趙雲殿がシロッコ側の将兵と思われる一名を拿捕」
|「ありがとう。じゃあ、杏子さんたちの方に行きます」
|
| 伝令ニンジャは方角を示して移動。
| それを見ながらイナミがコートを拾いタバコに火を付ける。
|
|「どういう変化です？」
|「負けは負けだろ、あーあ」
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ:::::::::::ハ
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/:::::'::::::::i:::::::::ﾍ::::::::::::::::::＼::::＼::::::::::::::::l::::::::::::::::l
′':::::::::/ヽ:::::::::＼ヘ､:::::::::::＼::::＼:::::::::::i::::::::::::::::!
|::::l:::::::::′ ＼:::::::ヽ, ＞=ﾆ＜｀ヽi:::::::::/::::::::::::::::!
V i:::::::ﾄ=ｰ ｭ, `'ｰ一` 仏.き 7 ,}:::::/i::::ｨ:::::::::::l
ヽ!:::::{ ,.rｪｫ, '弋少 ' /／ ﾚ'´｀ヽ,ﾍ{
＼{ : 心ﾘ “¨ ′ .ｨヽ l::::ﾄ､ イナミさん。
iゝ` ” , ノ ﾉ:::::::::ヽ, 僕のお嫁さんになってくれませんか？
i ヽ ｀ ィ’ ノ:::::::::::::::::ﾑ
. ､ー‐- . r=≦:::::::::::::::::::::::ﾘ
ヽ ￣ /{::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
〉､ i.,:::::::::::::::::::::::::ノ
i:::::＞ ､ _,. ,.｡ィ ∨ . ヘ∧／
ヽ,:::::::::::::￣ i ,. ≦ ∨ｭ,
∨ヽ r.イハ /ハ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦ﾊ j r’.ﾉ ∧ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦’ /／ ヽ,ィ ィ’ ∧／ ≧ｭ
ｨ仁 / / / ´ ﾑ
/j / / / ／ ',
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|「ブゥーッッ！！？」
|
| 勢いよく吹き出してむせるイナミ、鼻からも紫煙が上がる。
|
|「テメエ、このタイミングで言うかよ！」
|「賭けとは関係なしです。僕がイナミさんの足を引っ張らない程度には強くなったのを見てもらえたでしょ？」
|
| 敗北を理由にとか、そういう言い訳を許さないスタイル。
| しかし、キオはまだ中学一年生だ。イナミはどっか行ってしまったタバコを探す。
|
|「クソつまんねー冗談だ」
|「本気です」
|「もっとつまらなねーよ、バーカ」
|
| タバコを諦め、コートを着ながら次のタバコを探すイナミ。
| ポケットを順番にひっくり返すも、ゴミしか出ない。
|
|「タバコはやめましょう、体に悪いですよ」
|「悪かねーよ、悪魔なんだ……そう、俺は悪魔だ。人間の嫁にゃなれる訳ねーだろ？」
|
| 正論である。
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,.｡-‐=ﾆ二三 二ニ=ｭ｡,
.ィ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::ヽ
':::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::',:::::::::＼::::::::::::::ハハ
':::::::::i:::::::::!:::::::::::/ヘ:::::ﾍ､:::::::::::＼::::::::::::ﾊ:::l
i:::::::::i:::::::::i:::::::,ノ ＼:::＼､:::::::::ヽ,:::::::::::', l
l:::::::::l:::::::::ﾄ,::::l _,.，-‐ -＼:::＼`'・ｬ､ ＞:::::::i'
iﾘ:::::::ヽ,::::i∧j .｡=≠ミ､ `'ｰ' r=ニｷ,〉::::/
l::::＞＜::::{ {i lト' ｲﾘ :心:ﾘ ij iﾑﾉ イナミさんほアラブのマリードですよね？
.ノ::::i'´ﾊヽlヽ' 丶弋ソ , 弋ソ'’li::!
/:::::::ムﾍ L ¨" . 〉 " lリ, あちらの女妖精は日本や中国の天女同様、
/::::／:::::｀ゝ，._ _＿＿_ ﾉ::::ﾊ しばしば人間と交わり子をなすと言います。
レﾍ::::::::::::::::::::::勹｡ l ヽ/ ／::::ﾊ ﾘ
∨ﾍ:::::＿.ｲハ ヘ. ` ー'″ ／::::／ ′
.＞'’ i ヾ丶. ≧ ，＿ ／ =‐く
_.＞'’ i ＼≧ｭ｡.,_￣ ア! ヽ,
「丶, 丶 ﾘ￣ノ lﾑ
j'´ﾍヽ ＼､_ /_ / ﾘ ﾄ､
/ ∧ i ￣ﾆ! i / ﾘ└ｭ
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| 調べやがったなこの野郎。歯噛みするイナミ、キオが芝生から何かを拾い、泥を落とす。
| さっきのタバコだ。にっこり笑って差し出され、イナミは渋々受け取った。
|
|「つーかてめー『血族』だろ？ 婚約者とかいねーのか？」
|「じいちゃんが勝手に言ってましたけど、別におたがい望んでないので」
|
| 大首領藤堂志摩子か、翠星石のどちらかを孕ませろとかいう話である。
| キオだけは、とっくに流れたと思っている。
|
| そう、キオだけは。
|
|「好きな女とかいねーのかよ」
|「イナミさんです」
|「そうじゃなくって……」
|
| 頭を掻きむしる、話が通じない。いや、何を言っても揺るぎないと言うべきか。
|
|「顔も見れねーし、いつも裸の女だぞ！」
|「理由があるんですよね？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, ィ::::::￣￣＼
ィ::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
├- :::::::::::::_＿;＞ ´|!
} ￣￣ ﾘ
{トｭ､＿ｊ ＿ｒ-y ……裸はシュミだ。
ノｲ <｀ ￣￣ｊ:ｲ ノ! 目が見えねー分を皮膚感覚で補ってる。
人ｭーｧ ｊ /:::{
イ//ム´ﾟ ィ ﾏ^マ＝ｭ､
_ｊ´７////r-' ー彡/ ゝｧ｢ア＿ミヽ
ィ＝77///ｒ－彡=≠:::ハ ｒｲｒ' ヾﾊ
イ//////人｢￣ /ァ/リ7ｧォ｢トｊ ﾏ､
〈//////イ//l! ヽ /⌒, ´Yゝﾊ/｀ ＼
｀ー＝ー-＝'￣￣/ / イ､ ヽ
/ / / j ﾄ ＞､
/ /ｊ ﾉ ﾑ≧､ィ///ハ
/ /ヽ ､＿ ィ /ニｼ ヾ/////
ｊ__./ ﾊ 八 ＿ ／/_彡' /////
ノ:::{ ｒｭ､ ﾊ ,,イ / /////
オ:::{:::::j {_ノ ＞ ､ ノ. /////
（{:::::ﾊ/ ￣｀ マ ＞､ イ /_ _/////
ヾ / ｀マ ＼ / ｊ//77イ/////
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| それは趣味ではなく実益である。
| 周辺の気配や諸々を皮膚で感じ取っているのだ。
|
|「親御さんが許さねーぞ」
|「父さんなんて知りません。じいちゃんは絶対に反対するけど」
|
| 年相応の子供らしさでプイッとそっぽを向くキオ。
| 狙い所だ。イナミはニヤリと唇を歪ませる。
|
|「説得してみせろよ」
|「僕はイナミさんの故郷に付いていくつもりですけど」
|
| 『ネクロノミコン』回収の使命を遂げたイナミが帰国するのに付き合うと言うのだ。
| イナミは舌打ちした。甘く『必ず帰るから待っててくれよベイビー』とでも囁いてバックレすればよかったのだ。
|
|「それは俺が誘拐犯になるじゃねーか！」
|
| キオが、付いていくと言ったら本当に来るのをイナミは知っていた。
| 勝手に人質になったほどの男だ。行動力は認めている。
|
|「下の毛も生え揃ってねーガキが」
|「じゃあ揃うまで待っててください」
|「ンなヒマあるかよ！」
「今更三年くらい待てないんですか？」
|
| ぐうの音も出ない。
| 何しろ江戸時代初期からの探索行だ。待たれているかも不明である。
|
|「なんにしろ、冗談じゃねー」
|「じゃあ、毛が生え揃うまでにイナミさんを納得させるほどいい男になって、じいちゃんも説得します」
|「もう、勝手にしてくれー」
|
| 両手を上げて、イナミは降参した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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i:.|:::::::!::|.:::|.:/--',:::.:.:./!-|ﾄ',:.:.!､!:.:.|:.:.!!
l::l!::::::|::!ﾒ/ﾘr=､､ヽノ ' :::::::::::::!|:.:i:.:.ﾘ
ヾヽ:::::!V´ト'::: } ::::::::::::::::::: }ｿｲ:.:/
/:iヽヽ ヾ＝' :! ::::::::::::::::::::/イヽ う……あ……？
／::::!/ ',｀ /､i:.:.:＼_
´ｰｧ::::ヽ､ ', ‐‐ /シ.:.:.:.＜
７::::::::::7 ヽ /´!:::::::く´
!／'ｲ::i⌒!`i ､ ,.イ´!´|::_く´
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/.:〈 ﾉ! ﾄ､〈:､〉
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／:::::::::::::::ヽ.:.ヽ ､__ __ 〈.:.:〉:::::::::｀丶､
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/::::_,. -‐ '´ ー‐ ｀ヽ､--／, -― ｀ ｀` ｰ- ､::｀!
!:::/ _二ﾆ｀ゞ '／,r'二.._ ヽヽ
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'ｲ/ / l! | ! | ! !:|
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| マーガレット・バートンは目を覚ました。ひどい頭痛だった。頭の中で鐘が突かれているかのようにズキズキ痛んだ。
| なぜ眠っていたのか記憶にない、体中も痛い、冷たく硬い床に倒れていたのだ。
|
| そのうえ寒い。この真冬に、身体を濡らしてそのまま寝ていた。風邪を引くのも当たり前だ。
| 重い頭、視界がやけに悪い。顔がつっぱる。何かが干からびてへばりついていた。
|
| ……その瞬間、思い出す。
|
| 頸動脈を切られて倒れる球磨川。
| 腹を掻っ捌かれてちぎれた内臓をはみ出させた咲夜。
|
| そして、己の眼球を貫くナイフの感覚。
| 視野が狭い、片目をつむったままのように。見慣れぬ天井。他の何も見えない。
| 恐る恐る顔面を触ろうとして、マーガレットは体が全く動かないことに気が付いた。
|
| 指先すら動かない。声も出ない、呻くしかできない。
| ……そんなとき、視界に何者かが入り込んだ。
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/: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:| よう、バートンの娘。
|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽＶ: |.: : : | V ヤンチャしすぎだぜ？
＜ : _: : : / 〈 ノ |/ ﾚ ヽ }|:./ヽ: : :|
＜:: |. 小{ _,,.. - ､-.,_ ﾚ{: :.|ヽ:| こんな所で死なれちゃあ、
厶ﾍ ﾊ ､ {ﾊ,;' （( あの世でお前の親父に顔向けできねー所だったぜ。
＼_! ' ! ( ( ヽ) ﾎﾜ〜ｯ
ヽ 'ー―-- ／ ヽノζ ＿
___,ｒ| ＼ ／ |￣￣￣￣￣|ゝ'ﾞ＿__ `i
／:/::::| ＼ ヽ _ , ィ´ | |Y＿＿ !
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､. ', /ｺ＿＿ ﾄ、
／:::::::::::/::::::::| ＼ / ! ,ｒ-'' ヽ、＿＿／ !､＿__ l i ヾ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 伊藤誠。この日本にマーガレットを亡命させた男。学園理事。
|
|「まあ、俺はしばらく地獄に行く気はないけどな」
|
| ゲラゲラ笑いながら、誠は血まみれの手袋を外した。
| 肉片や脂肪の付着した手袋。なんだ？ 何をしていた？
|
|「俺がいなきゃお友達みたいに死んでたぜ」
|「……え」
|
| マーガレットは恐怖した。氷のように冷え切ったはずの心が、怯え竦んだ。
| 死んだ？ お友達？ だれ？ 誰が死んだの……？
|
|「とにかく、命を助けたんだ。お礼代わりに頼まれてくれ」
|
| 死の衝撃が強すぎて、うまく考えのまとまらないマーガレットを無視して、誠はニヤニヤ笑いのまま続けた。
|
|「身体で支払っもらうって奴だ」
|
| 本能的な恐怖を誘う下卑た笑みで、誠はそう告げた。
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☆ 次回予告！
ひとつめ。
最初に作られた喰らうもの。奪うもの。
無限に力を溜め込み。いかなる魔力も吸い尽くすニ柱。
ふたつめ。
後年作られた生むための器。貯めるもの。
下僕を産まず、力を集め。巨体に至った太母。
みっつめ。
対策のための新たなるもの。侵食するもの。
動型のすべてを食い尽くす、狂気に侵された哀れなるもの。
よっつめ。
次回、最終幕九十話『第四の万魔』
果てから至るは破滅の化身。
キオ君、立派な漢に育って……
乙
依頼なんだろな
おねショタ逆転RTA？
都度付けてる方も居られるのでルールが読めないな……
（観客ポイントシステムの復活というよりは、酉を作中に登場させるのが目的でしてね）
＿＿__
／´￣￣｀ヽ、
/ ヽ
{ ,. --‐┴…ｰ- ､
ヽ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ、
/.:.:.:.!:.:.!:.:.|:.:.:.:.:l:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.ヽ
l:.:.!:|:|l:.:|ヽ:＼:.:.:!､:.:.:.:ヽ:.!:.:.:.ﾍ
|:.ﾊﾊ!ヽl ＼lヽl__＼:.:.l:|:.:.:.l:.:l
＿ rﾍ!/f,心ヽ /f心ヽヽﾘ.:.:./.:ﾊ 上は大丈夫だよ。
,.--く ,斗-| ﾋzｿ ﾋzｿ } }:.:/:/ヽﾊ やる夫兄いたちが呂布さんたちを連れてってくれてる。
{ ｀ﾒ､ ﾍ._! , , ' , , /ｨく｀),.-'┴ｧ
ヽ,r‐､―- ､ ヽ ､＿_,. /_／-}―‐!｀!__
／´￣｀丶r‐┬-＼ ,. '´{,. -―-､人_|/ｿ
／::::::::::::::::::::::::＼ {::｀ ｰ--‐ '´:::::／:::::::::::::::::::::::} /
::::::::::::::,. -- ､::::::::`,ﾆ´-‐'' ´￣￣￣￣￣￣｀`丶､! }
::::::::／／ ヽ∠::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}'
ヽ::{／／ く::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|￣￣￣
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| 間桐屋敷地下空洞。死闘は終わり。生存者は六名。
| 一番元気なアリカが一同を集め、秘蔵の治療符で応急処置を終えた。
|
| 三度の奥義を使用して、致命的魔力不足の『弓兵』。
| 臓硯の狙撃で右肩と胸に風穴の空いた凜。
|
| ターニャを助けるために自ら胸を突いた慎二。
| 『弓兵』に再構築され、慎二に再召喚されたターニャ。
|
| そして、すべての邪気が吹き飛んだ桜と。
| いつも元気な夢宮アリカ。
|
|「どうやったのよ」
|「アリンコを応援に寄越してくれたのは助かったが、正直どんな手を使ったのか想像もできん」
|
| アリカに支えられた凜が、元夫と彼を支える桜を睨む。
| いや。今ぐらいはという気持ちと、くっつき過ぎ当て過ぎという気持ちのせめぎあい。
|
| その上桜は全裸に『弓兵』のコートを羽織っただけの露出狂スタイルだ。
|
|「ルイズさんと私でまず呂布さんと戦ってね」
|「その時点で、どう考えても逃げられないんだが」
|
|「突然再稼働した『蒼天の青玉』に驚いてた所をミカさんと二人でぶっ飛ばしました」
|「…………」
|
| 呂布は夢宮とは年も近い。『蒼天の青玉』には思うところもあっただろう。
| しかし、高位悪魔である『三日月』相手に致命的な隙を見せたのはいけなかった。
|
| アリカたちは戦力的優位を得たのだ。
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::| もういいでしょう。
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./ 呂布さんを治療します。
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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|「なんか呼ばれてるって言ったら、蒼星石さんとやる夫兄いが捕虜になる代わりにあたしを開放してくれたの」
|
| 呂布がノックアウトされている一瞬だけ許される交渉だ。
| アリカが逃げたとして、『狂死』では追いつけない。先代は治療に回りたい。
|
| しかもその場には『三日月』を従えたルイズがいる。
| 別行動しては各個撃破の危険があった。
|
| 『狂死』は降参した。
| やる夫と蒼星石は捕虜になった。
|
| ルイズは？ 恐らくは彼女も文句をいいながら。
|
|「で、『蒼天の青玉』に呼ばれるがままにここに来たら、呼んでたのは桜さんだったって訳なの」
|「レナは、あの状況で勝ったのか……」「いや、普通死んでるわよ？」
|
| 一撃で倒されて生死の境をさまよった『弓兵』の複雑な表情。
| レナは……強い女だった。死んでしまった事が不思議なくらいに。
|
|「その……すいません」
|「どうぞ桜お姉さん！」
|
| おずおずと挙手する桜、『弓兵』を支えているのかすがりついているのか。
| 『弓兵』の腕で押し潰されたバストは豊満だった。
|
|「レナさんの……死因は」
|「わかんない。でもさ、あたしの誕生日九月なんだよね」
|
| 原作準拠です。
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丶､ ヽ ﾚ'/ ,
,. -‐ ､ヾ＼｀ヾ ＼ ﾄ､i' | /イ
/ r‐ ､ヽ _z--‐‐‐' ヽ | , ,ｨ'
/ 〈 ヽ 〉-ｰ'" ヽ、 ヽ/ ,／
| {´ ,. ' } ∨
,. - " l ヽ l iヽ./ /
''" ヽ Y |r':j| l
〉 Y´L ﾉj
＼ / ′ /
: : :＼/ { { あの時も十二月だったぞ……？
: : : : :＼ l u ＼
: : : : : : :＼､ r'ﾆ‐-､ ....::;:: ゝ
: : : : : : : : :ヾ、 ｀ヽ＼＼_」'´
￣￣｀ヽ､:.:::::ヽ ､ ｀Y´
::::::::....: : : :＼::::ヽ ,rﾞ'´
::::::::::::::..: : : : ＼::l /
:::::::::::::::::..: : : : : ヾ ノ
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| 仕込んだ日にちに想像を膨らませる遠坂姉妹。
|
|「つまり少なくとも、夢宮が生まれるまでは生きていたのか？」
|「なんで死んだんだ？ 全く想像ができん」
|
| 花のように可憐になってしまったターニャを膝に乗せて慎二。
| 『弓兵』と凜の顔色はすでに蒼白だ。取るもの取らずに国外逃亡してしまっていたのだ。
|
|「根性かな」
|「根性でなんとかなる問題かッ」
|「なるな……」「レナならありえるわね」「ですよね……」
|
| 慎二の常識的ツッコミは、レナ本人を知る三人に覆された。
| では産後の肥立ち？ どれだけ考えても、答えは出ないだろう。
|
| 実際には、出産間近のレナが寝たきりの死にかけだったなんて想像もできない。
| 桜を守りながらアリカを生むために、命のすべてを使い尽くしたなんて、思いもよるまい。
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/:: /:: :: :: :: :::＼: ::/,
':: ::i :: :: :: :: :: :: :: :: :: }'，
i:: : .{:: i:: :: :: : i: i i:V::[]:/,
{:: ::i{::八乂i: ::}ｲﾉ} V}::＼:＼
八:: ∧芯¨)／¨芯ｱノ＼::.＼:＼ …………。
/:: ::＼:: ＼ , /V＼::＼:: . :＼
八:: :／ ＼:: :: ‐- ｲ } ＼::＼::＼ ＼
⌒7 i＼: :.¨´ } /^＼:: ::＼:: :.
{ ...| ./ヽ::.､.〈 ' }:: ＼ } :: }＼
／i. .|/ )::} .∨ / ∧{⌒＼} /⌒＼
/ ∧ /=‐ ／ .〈 〉 )/ ..}
乂 ﾊ . : /} ／
[二 {: . rくへﾍ . . .:}二_/
{: 乂＿-―¨´_つ⌒＼.ノ {
{⌒7⌒ ￣＼＼. ＼＜!
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| ただ、桜だけは。
| レナの魔力で生かされていた桜だけは、なんとなく想像ができた。
|
| 自分を救ってくれた少女から、母親を奪ったのは……。
|
|「『蒼天の青玉』の魔力源になってたのが桜さんだから、今度こそあたし普通の女の子になっちゃったかもね」
|「普通の女の子は大の男を持ち上げられないぞ」
|
| 先程『弓兵』をお姫様抱っこしていた。
|
|「とりあえず、今現在安全と考えていいわね。
| このまましばらくは『エレシュキガル』の結界で休みたいのだけれど。
|
| …………桜、アンタは大丈夫？」
|「はい？」
|
| 『弓兵』に押し付けられた豊かな双丘。もとい桜が小首を傾げた。
|
|「この花畑、ターニャ以外の『万魔』を妨害するようにできてるんだけれど」
|「んー……大丈夫そうです。その、ええと…………」
|
| 口ごもる桜に、凜が眉を寄せた。
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ヽ:::/ ／::::::/_,,... -‐‐‐- ､ _
>! l:::::シ´ _,. -‐ ''"￣｀ ｀ヽ、
／;' ...!::::::ヽ、´ , ヽ ｀ヽ、
く::::::! . .:::|____r' / ／ ／ ﾊィ⌒ヾ、
>::! : ::::l::::::l / ///､,ｨ' /! /､,,:;!i ヽ
ヽi : ::::ﾚ'ヽ/ l/_L/,_ﾄ/ ! ,ｲ l l:l: ,｀､‐-､
l : ::::l l 〉' '｀７-ヽ.｀iＸ !| / , ;i. i:.. l::::::::>
| : ::l ( ｀ヾ;シ^' __,ノ_ノ/::! , l::::レ'´ なに？
l :.: :::し, ´ｨ=z､_7／//:::/!
l: :: ::::::!i ､ ゞ-',.゛イ〃:／::l
! :::. ::::| ヽ、 _ ...._ ´ / i :l ::!￣´ 言いたいことがあるならハッキリなさいよ。
/ l :: .::::| ＼ ｀ ｰ ' , ｲ | .| :| イライラするわね。
/ / : ::::::| ＼ ,. イ::::| l .l ::!
/ / .: :::「￣￣￣￣￣￣!::::::l:::i:::..: l .l ::l
/ .:/ ::: :::| ::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::リ::: / i:::l
/ ..:::/ :: ____,;;ｼ':::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ＿＿／ /::::l
/ .:::∠,-r--r-|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.／／ヽ::::i、
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|「心配してくれてありがとう…………姉さん」
|「！！！？」
|
| 頬を桜色に染めて礼を言う妹。
| 姉はイチゴみたいに真っ赤になってそっぽを向いた。
|
| 姉。そう呼ばれるのはいつ以来か。
| 桜が間桐の養子になってからは、言われた記憶がない。
|
| 二十年か、それ以上の時間をかけて……ふたりは再び姉妹になれたのだ。
|
|「身体の方はどうなの？」
|「はい、アリカちゃんとレナさんのお陰で魔力もバッチリ。何かあったら私が皆を守ります」
|「そうじゃなくて」
|
| この期に及んで視線を泳がせる凜。慎二がせせら笑った。
|
|「爺さんやターニャ同様の『万魔』型悪魔と認識していいんだな？」
|「いや、明らかに違うぞ。我々ほど邪悪ではない」
|
| 凜の代わりに尋ねた慎二、それに答えたのは桜本人ではなく膝の上のターニャ。
| 見た目は妖精のように可愛らしい幼女になってしまったが、性格に変化はなさそうだ。
|
|「その言い方は誤りではありませんか、ええと……」
|「ターニャだ。私は臓硯の娘、間桐家の遠い祖先。
| 『十二の封印像』の悪魔『万魔』。だが今の私は慎二のかわいい許嫁に過ぎない」
|
|「じゃあ、私の義理の姉になるということですか？」
|「待て、勝手なことを言うな。僕は悪魔の婚約者なんかいらないぞ」
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,.､丶`｀￣,.､､..,_｀ヽ､｀ ､＼｀` 、
／´／ ｀Y´ ｀ヽ､＼`､ ＼＼),
. ､＾ ,:′ ; : ⅰ ＼.,_ ｰ- -‐ｧ｀`丶､
､｀ ,;ﾞ{ ∥i ', :, ﾟ:, `､｀`ヽく^＼｀ヽ＼ ＼
,:',′/∥ {{八 ', 、、＼ .,_＼＼ ｀`､ :,＼ ':, ﾟ:,ヽ〉
/, ; { { ＂ ＼乂＼=ｰ＼＼＼) , )ﾉ､ ':,}ﾉﾉ´
.,,_{,ノ{ﾚⅰ {, j { i ｀`` ﾟ:, ':, i }ｉ ', ヤ:, К .,_
. j/// ∧ {':, {':, :, {＼｀､ ', Ｎ ⅱ }i }＾ヽﾉ ＼_))
,',:ﾞ {∥んﾍ{ヽﾆ=-.,_ ＼:, }-=ﾆそﾉﾘ ∧人ヽ}乂__,,.
{′i{ { { { ｀茨りﾘヽ V茨りﾉ }ノ,.ｨ(^ｉ∨} ｿ `ｰ ´ いいではないか。
ｰ/Yλ {､＼__ブ＾｀ ､ ＾｀ ｰッﾞ ｉ}ﾘ }∧} 女房と畳は新しい方がいい。
{ {、乂 乂h､.,_ ,. -‐ｧ 人___,,.ノ ノ′′
乂｀ｰ----‐くぅo｡,,_,,､rf〔‐＜（``｀ 『ネクロノミコン』で人間に戻ったならば、
／⌒}Vﾆﾆ=- -=ﾆ,ｲ_ﾆ> .,_ それくらいのご褒美はないとな。
. ／ｉ{_‐_ｰ{_∨ニニニﾆ/_{／／}}ﾆヽ
/_ﾆ{{_‐_‐ﾑｨﾍニニニｱ／／_‐_}}‐/ :,
. ,;ﾞ_‐_ⅱｰ=＝{＿寸‐ア'゛／＝＝={/_‐_',
,;ﾞ_‐_ﾆ{_‐j／:, `､／ ﾉ゜／,. ｧ ＼‐_}ﾆ_‐_ﾟ,
∥_‐_ﾆﾔ‐}h｡,_v/ └-‐''"∠ -‐ｧ゛‐}‐_‐_}i}
. ノ{_‐_-_ﾆ}ﾆ}_,.{／ _,. -‐´__,,. 7 ｉ|_‐/_‐_‐/{
/‐_＼‐_／{｢_ｰ｢￣￣＼＿__ァ´｛ﾆ|_∧_‐_/_‐`､
. /‐､丶`｀_ｰ_{{_‐_{_／ }￣´"''〜---‐ ⌒ヽ ﾟ，
. {_/_‐_‐_‐_‐_‐､ _,∟.,_ ￤_‐_‐jj‐_‐_￣ﾆ=- ‐_ﾟ:,}
. {_‐_‐_‐_‐_,. ＜｢ ﾘ C‐)h､ﾉ..,,＿∥ﾆ_‐_‐_‐_‐_‐_‐_}
ヽ-‐ｧ' ／＾ｰ{こニ＝=r―---―‐ﾍこﾆ=‐--＝⇒
／／ Гｰ＝==ﾆ{＿＿_{ﾆﾆ/ {￣´"i'〈
／／ /}ﾆ=-〈 Cこ_ _‐_‐_‐_C＼＼＿}/＼
／／ ､丶`У_j_‐_‐_}_`､‐￣ニ=ー=ﾆ¨{)ｈ､_/ ｀､
_,,∠丶｀ _,. /_‐ⅰ‐_‐]_ｰ_`､‐_‐_‐_‐_‐_‐_':,_‐_＼ ｀､
ｰﾆ￣ /_‐_ｰ{_‐_‐]‐_‐_‐＼‐_‐_‐_/_‐_‐':,‐_‐_＼ `､
_ -=こ/_‐_‐_ⅰ_‐_]_‐_‐_‐_‐` .,_/_‐_‐_‐_ﾟ:,‐_‐_‐＼___〉
_ ﾆ=‐ ￣/‐_‐_‐_‐_‐_ﾆ{_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_ ﾟ:,
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|「まあまあまあ、あの兄さんに、こんな可愛らしい……」
|「楽しそうだな桜ァ」
|
| 拳を握る慎二、凜が見とがめて口を開くより前に、少年の表情はフニャリと崩れた。
| 泣き笑いのような、複雑怪奇で、それでいて決して悪い感情の発露でない。
|
|「ようやく、笑わせる事ができたって訳だ……はは、優秀な僕にしては時間がかかったもんだ」
|「……」
|
| 言葉を失う凜、そうだった。慎二も桜を妹として認識していた。
| そして、家庭内で仲良くともいがみ合う生来の姉妹とは違い、慎二は桜を守るべき存在として認識して来た。
|
| ようやく報われた。そう凛は気がついて野暮はやめた。
|
|「もしかして、ターニャさんも桜お姉さんも、もう『万魔』じゃない？」
|「そのようだな。俺が錬成したターニャの魂は、ターニャ自身のものだったが……」
|
| 『弓兵』の言葉に慎二がうなずき引き継ぐ。
|
|「肉体は僕が急ごしらえで用意した。『エレシュキガル』の花畑が元になってる」
|「つまり、花の妖精みたいにかわいいけど、ホントに花の妖精だってこと？」
|
| 憮然とする慎二、ニンマリ笑うターニャ。
| 魔力不足で幼女の姿だが、その可憐さは慎二が与えたものに違いない。
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': : : : : : : :/: : : : : : ': : : : : : : ヽ
': : : : /: : : :': : : : : : : |: : : ': : : : ∧
': : : : : ': : : : |: : : : : : : :|: : : :!: : : : : :'
／´: : : : :.i: : :.!:.:!: : : : : : :/': : : 'ヽ: : : :.ﾉヽ
| !: : : : |､: /ｖ'∨: : : : / _!:.:./ ヽ: : | '/,
| !: : : : | ｨ示h ＼: : ! ｲ示ｈヽ }:.:., '/ ,
| !: : : : | 《弋ツ ｀ ' 乂ツ ﾉ｀ ,¨Ｙ ! ,
iﾉ∨: : :! ｀¨¨´ ' :.:.:.:. / 八 .|__〕 私も、かなり近しい存在です。
,: : : :! ､ :.:.:. /イ 了 | |
,: : : :,〕iト､ ＿-､ , ' :.:.:.: | |_/ 懐かしい姉さんの魔力に
/: : : /:.:.:.:.:.:＞ ´ ノ ィi〔:.:.:.:.:.|八_} ! 引き寄せられるように
./: : : /:.:.|:.:.:∥ /´≧s｡ィ( h:.:.:.:.:.: !: : : : :, 形を取りましたから……。
/: : : /:.:.:.:i:.:./ ¨¨´‐＼ __／.乂:.:.:.:.:!: : : : :.,
/!: : :./ -=ﾆ! ' ､__＼ ､ } 7h。＿: : : ,
/ ,:.:././: : ／ ＿ヽ｀ } ＼ /: : : : : :!≧=‐､
' ! ,:.!/＿/ / ／ヽ〉 ,＼ ＼': : : : : : :.! ヽ
, ヽ! ア ／, ∥∧v ＼ ＼: : : : : |
! __ノ)h､ /´ヽ/ .∥ ∧v .∨∧: : :ヽ! }
ﾉ √ __}/二ﾆ7 ∥ ∧v !_ノ⌒｀｀ ヽ ,
∥ j{ ７√ イ/ .∥､__ノ , v ∨: : : : : : : ､ ,
.∥ ﾉ 〉 ∥ ヽ/ , v .∨: : : : : : :.∨i
.∥ イ /:./∧ .／ (__):.:!: : : ヾ､ ﾉ: : : : : : : : :, ,
ノ / ! ,:./: : :.Υ: : : : : : |: : : : : :.Υ: : : : : : : : : :}
{ ノ! ! /: : : : : : : : : : : : !: : : : : : : : : : : : : : : : :, /
) , i | /: : : : : : : : : : (__):|: : : : : : : : : : : : : : : :./｡
.〈 ﾉ ヽ:.:.: /: : : : : : : : : : ／⌒!＼: : : : : : : : : : : : :ｲ:.,
、 ＼＿√､: : : : : : :‐=≦: :○:.!: : ≧s｡: : : : :｡s≦ /〉
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| 『エレシュキガル』。シュメールの冥府の女神。
|
| 命を失ったターニャと桜は、冥府へ潜り黄泉帰ったようにも思えた。
| 伊邪那岐、オルフェウス……世界各地に偏在する『冥府と黄泉返り』の類型。
|
| 凜が花畑の結界に冥府の女神の名をつけたのはなんとなくであるのだが、
| こうしてみると何やら因縁めいた巡り合せだ。
|
|「『万魔』としての能力は殆どない。
| 魔力への耐性も、他人を食って魔力にすることも叶わん。下僕を作るのも容易ではないな」
|
|「じゃあ、何ができるんだよ」
|「お前が望むことを」
|
| 慎二の問に、ターニャはいたずらっぽく微笑んだ。
|
|「誰かさんが生きろ生きろとうるさかったからな。
| 治癒と援護に特化している。趣味ではないが花園の結界も模倣できるな」
|
| 頷く桜。攻撃力の高い『弓兵』や凜と組みやすい継続戦闘強化系だ。
| アリカが、桜に向かって首を傾げる。不思議だったが、指摘はしなかった。
|
|「これからどうする？」
|「ん？ 桜とターニャを人間に戻してアリンコに借りを返したら、五人で遠坂の家に帰るつもりだったが」
|
| 何気ない『弓兵』の言葉に、慎二は打ちのめされたかのように表情を崩した。
| 彼は凜に目を向け、不思議そうな魔女に気が付いて顔を背けた。
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i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ）
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l そうだな……
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ そうだったな……。
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
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|「次は『ネクロノミコン』ね。臓硯殺しちゃったけど、『血族』と戦争になったりしない？」
|「あ、そこらへんは蒼星石さんがなんとかするって言ってた」
|
| 眉に唾をつける凜、言うは易し行うは難し。
|
|「蒼星石といったら、やる夫の言っていた『第四の万魔』は一体どうなったんだ？」
|「何の話です？」
|「仲間が予言した『世界を滅ぼす存在』の名前だよ」
|
| 桜の表情が険しくなり、『弓兵』に胸を押し付ける力が強くなる。
|
|「間桐雁夜、『万魔喰らいの万魔』が私と臓硯と、そして桜を食った場合のものじゃないのか？」
|「だとすると、問題なく芽を潰せたってこと？」
|
| ターニャと凜の言葉に、キョトンとするアリカ。
| 桜と目が合う、視線が絡みつく。
|
|「桜お姉さんはどう思う？」
|「え？」
|
| 困惑、話が見えないからではない。理解できないからではない。
|
|「私は」
|
| アリカの視線に圧を感じる。
| 桜は気圧される己に驚いた。こんな、こんな子供に……？
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／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、:.:.:.:.:.:.:.:::::::::｀ヽ.
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. |i!:.i|:|:.:.:.:.://:/:.:/:. /ヾ三三彡ハｲ.ﾍ::l
. i Ⅵ:i!:.:///:/:乂//ノ ミ三彡:/: :|i.: : l:l
ヾ∨//厶､、i/ｰ 彡イ/: : :|i.: : :l:!
｝ !;j ｀ゝ iγヽ:_:_:jiー‐':l 私は…………。
ノ "´ |}ノ ｲ::|!: :|: :|::::!
＼ ／ｰイ::::|!: :|: :|::::',
|:ヽ｀ : |:::::|!__jｰ:':::ハ
|: :ﾊ、_ ...イ : ,|:::::::::::::::::::::::ハ
. 八:.:.:.:.:_j ヽ. ｒ‐ー＜ !::i::::::::::::::::::::::ハ
. /￣/ :.:.:.:.:/ l:|V::|:ｌ ヽⅥ､:::::::::＞''"´￣｀ヽ
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| 世界を滅ぼす『十壊』
| その七番目。姦淫の戒めを壊りて現る破滅の化身。
|
| その名を『第四の万魔』。
|
|「あたしはさ、ずっこいと思うならしっかり伝えて、選んでもらえばいいと思うよ」
|「え？」「え？」「なんだ藪から棒に」
|
| 桜とアリカ以外、可能性すら考えていなかった。
| 故に想像もつかぬ、たった今のやり取りの緊迫感に。
|
|「エミヤさんは今……遠坂さんと離婚してるんでしょ、奥さんにしてくださいって言えばいいよ」
|「それは、その……」
|
| 赤くなって困惑する桜に、凛が肩をすくめる。
| 助けを求める『弓兵』と視線を合わせる者はなし。
|
|「士郎に選ばせましょう。公平にね」
|「…………はい」
|
| この瞬間、今度こそ本当に『第四の万魔』の危険は消滅した。
| 桜と凛との『弓兵』を巡る昼ドラ真っ青の爛れた愛憎劇フラグはへし折られ。
|
| あとに残ったのは中学生の恋愛じみた「あたしとこの子どっちを選ぶの」問題だけ。
|
| その後何があるのか、まだ何も分からない。
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／::＼,.へ._
r‐:::::::::::_:::/::_::::::::ヽ
ノ::::::::／:::::::}/:::ヾ::＼＼
l:::::::/:::{::::{ヾﾞ厶}:::::::::::::!:::|
/ｲ::〈:::::ﾊ::::〉 く:::ﾊ:::::/:l::ゝ
}:|:::):⌒ヾ ｰｿ-);ﾉ::ﾊ^
∨:{ ｰ＝' ==-´}/|ｿ
乂'､ l /.ｲ
};込 ､─‐ｧ ｲ;ﾙ 遠坂とは子供作ってるんだろう？
乂l＼￣ ／!/` 桜も一人二人拵えたらどうだ？
_「¨'''' 千 '''¨ |
_ - 丈 _|:|:L - ¨〜- _
,-‐ ¨ |:|:L_ ￣ヽ
/ |:|:| | '，
/ | |:|:| | l
./ :l |:|:| ＿＿＿ ./ ﾊ
」 ::! |:|:| └──┘ ./_ - '! ＿＿
{ ￣￣ :', |:|:| |:. ∨ ／{ィ＞' ､＿＼_
/ ー-:', .|:|:| |:.:.:.. ∨ _／ l! !| ヽ _ヽｰ┘
./ ﾊ |:|:| ∧:.:.:.:.. ∨ ／/ .l!.:'，ﾍ ´ ,､＼＿
/ ／/ l |:|:| :| ∧ヾ:.:.:.. ,-／ ..:.:.:.:.＼＼ﾍ r､ヽ＼ｰ--'
./ ／ / l: ＼|:|:| .:.:| .∧:. /./ ー─:.;.｡*'" ∧ ､＼＼ﾞ⊃
/ ／ .l:.:.. |:|:ト- .:.:.:.| ヽ:.:.:.:.! ..:.:.:.-‐ァ'´ `┘ `′
{ -─≠┐ _,ﾊ:.:.:.. |:|:| ..:.:.:.:/ ＼:.:.:.:.:.:.:.／
∧ ヽ | :.＼:.:.:... |:|:| ..:.:.:.:, 〈 ヽ:.:／
.∧ ＼ ∨:､ ヾ:.:＼｀ - 」:!:!_ - .:／ /
＼ ＼/ ヽ ＼:. |:|:| ..:／ ハ
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|「そうだね、それがいいと思う！」
|「お前ら……他人事だと思って……！」
|
| 鬼気を迸らせる『弓兵』。静かに怒りを溜める凜。
| アリカは、眉根を寄せる魔女に耳打ちした。
|
|「一つ、お願いがあるんですけど」
|「なに？ 今あまり機嫌が良くないんだけれど」
|
| あまりどころではない。すこぶるだ。
| 『弓兵』なら平身低頭するか距離を取って様子を見るだろう。
|
|「『おかーさん』って、呼んでも平気？」
|「…………え？」
|
| 囁くアリカを、凜が正面から見る。いたずらっぽく、期待するようにキラキラ光る瞳。
| 本能的に嘘ではないと、本気の本気だと気が付いて、凜は困惑する。
|
|「その……いつから？」
|「結構前かな。ロストスキルさんと順番に戦った時だから……九月だね」
|「ほとんど出会いたてじゃないの」
|「おかー……遠坂さんは？」
|
| 凜は苦笑した。戦闘中にそう呼ばれた気がしていたが、気の所為ではなかった。
|
|「『おかーさん』でいいわ」
|「ありがとう！」
|
| 凜は頭を掻いた、夢宮とレナの厄介な部分を煮込んだような奴だ。
| まったく困った娘ができてしまったものだ。
|
|「今度、お子さんに会わせてよ」
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.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ'
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ __ |
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ 丶 / 丿 大家族に憧れあるんだ。
iタ }〈 l丶 ヽ_ノ ／ ＼ きょうだいも欲しかった。
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
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|「それで桜を焚き付けたの？」
|「別におかーさんの子でもいいよ」
|「アンタねぇ……」
|
| 赤面する凜、作る過程を想像したのだ。
| これは作者の実感だが、乳児が幼児になり手を離れてくると、次の子供が欲しくなる。
|
| 金銭や家の大きさ、家族計画や年齢などの問題がストップをかけるが。
| 今はまだ三十代だし、高齢出産ではない……いけるのでは……？ なんて考えることもしばしばある。
|
| 個人の感想ではあるが、複数のママ友から同意を得られているし、
| それどころか、「そう思ってたらできちゃった」なんて話もしばしば聞く。
|
| 閑話休題。
|
|「イリヤに会わせるのはいいけれど、あなた『血族』はどうするの？」
|「いまさら、戻る場所ないかなぁ。蒼星石さんは気になるけど」
|
| 凜は瞬きした。それだけ？
|
|「あのやらない夫と、もう一人の……脳噛の息子は？」
|「やらない夫さんは、翠星石さんがいるし、他のみんなもいるからね」
|
| だが、アリカはそこでさみしげに微笑んだ。
|
|「やる夫兄いは、その……」
|
| 口ごもるアリカ。彼女にしては歯切れが悪い。
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:.:.:|:.:/ ヽ:.:.ﾄ､::.:.:.:.:.:! ｀丶::.:.＼ ｀ヽ::.:.:.:.:.:.:.lヽ:.:.:.:.:.:
:.:.|/ ヽ:.l ヽ::.:.:.:.l ｀ヽ:＼ ＼::.:.:.:.:l ﾊ:.:.:.:.:
トﾍﾄ ＼ ＼:.:ヽ ｀ ＼ ＼:.:.:|j::::!:.:.:.: 今いるのは、
l ﾄｨﾍ￣ ｀ ＝､- ､ ＼:ヽ , z‐ﾃ￣ ヽ|ｲ::|:.:.:.: やる夫兄いじゃなくて
ヽ´小 ＿.≧ヽ::＼ 丶＼ ／;∠-＿＿ j１:|.:.:.:/
. ＼ヽ. l{ 丁7::ﾃ.ミーヽ _ ィZイ,.イ::ｧ-ｲ ﾘ l::l.:.:/ ……その、影みたいなものだから。
ｰ､ 丶ヽ辷ソ ヽ /´ヽ:辷ノノ (ｱj:.:ﾊヽ
,ｨﾊ ￣￣ ￣￣ //／ !}
ィ ７´/ |. ヽ 〈| ｲイｰ- _ ﾘ
' i ! | ＼ ／ / | | ,ｲ｀
| ! l 丶､ -‐ __‐- , イ / ! | |
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／ （●） （●） ＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| そのやる夫は今、犯罪者みたいに手錠をかけられて、車に押し込められていた。
| 窓を流れる深夜の町並み、街路に人の気配はなく、人工の明かりはどこか白々しい。
|
| 隣に座る蒼星石の視線を感じる。
| しかしやる夫には言うことは何もなかった、これから『血族』本部だ。
|
| 『狂死』と先代に任せておけば、蒼星石の安全は確保されるだろう。
| だが、やる夫はどうなるのかまるでわからない。
|
| この場で殺されてもおかしくはない。
|
|（見るか？）
|
| やる夫の内側で声がする。他人の果てを見れるように、やる夫はやる夫の果てを見れる。
| やる夫はどこで死ぬのか。蒼星石は？ アリカは？ やらない夫は？
|
| 飛び付きたい衝動を抑制する。
| 今はまだ、その時ではない。
|
| やる夫は封印から解かれてこちら、死を見る能力に限界が無いことに気が付いていた。
| その気になれば何でも見える。そんな気がした。
|
| …………だが。
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| それは、やる夫自身の終わりも意味していた。
|
| 死を見る回数は残り五回。
| やる夫の死を肩代わりしてくれる依代の数と、やる夫本人の命を足した数字。
|
| 『鏡と茨』大天使 レミエル。
| 『荒野の黒龍』邪竜 クロウ・クルワッハ。
| 『隻眼の老人』魔神 オーディン
| 『黒き剣の残影』魔剣 モーンブレイド。
|
| 対して、残る『十懐』は七つ。
|
| 『冥王ニビル』。
| 『クトゥグア』。
『ビスケットハンマー』。
| 『木星の無力化』。
| 『哀しみからくり人形楽団』。
| 『第二次関東大震災』。
| 『人類補完計画』。
|
| そしてなにより。
| やる夫はニャルラトホテプと決着を着けねばならない。
|
| 殺すべき相手に対し、弾丸が足りない。
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| 『木星の無力化』は泉こなたに。
| 『冥王ニビル』はやらない夫と高位悪魔に。
| 『ビスケットハンマー』は『夢の塔』を攻略したペルソナ使いたちに。
|
| そして、『ビスケットハンマー』を逆に利用して『クトゥグア』にぶつける計画ではある。
| だが、楽観的に見てもそのとおりに進みやしないだろう。
|
| 『第四の万魔』をアリカに任せられたのは僥倖であった。
| 今後もそんな都合よく行くとは思えない。
|
| シロッコと彼のサイボーグ軍団に端を発する『哀しみのからくり人形楽団』。
| 超能力による精神感応の暴走が原因となる『人類補完計画』。
|
| これらの正確な起点は未だ不明だ。
| それでもやらねばならない。
|
| 他に選択肢はない。やる夫は、やる夫なのだ。
| やる夫がやる夫である以上、世界を救わねばならない。
|
| やらねばならない。
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}ﾆ! /ニニニニニﾆ=-―――--＝＝ﾆﾆニ二ヽ
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ヽ／ト＜'//,∧ ‐i"{ソ .l////V/＼; }'//////ﾘ
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!/{.ヽ'/∧. i }ハ///,!_∨!=＝==､ヽ_
Vl !'/ハ ｀ .. ' V//lﾆ／ ヽニ＼
. 乂、 }///,へ. ' ,.イ∨/{ﾆ∨￣ ´ ＜ﾆヽ
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ﾉ;ハ/////lV/>"／￣｀ヽﾆ/!ニ=ヽ ＿ -‐ ヽ ＞ 、
´ V/{ヽ'／.／ /./l !ニニ=ヽ ＼ ､
ヽﾊ ヽ ,.イ=/.l/!ニニニﾆ＼ -‐ ´ ＼ ヽ
` ,ﾍ ,.イ＞'" .l/lニニニニニ＼ ＿ ‐ ` ､
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| やる夫は、気付いていない。
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| 他に選択肢がない。
| 別の道を歩む気はない。
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| その視野の狭さ。危険性に。
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| 世界を救済するために。
| 『弥勒菩薩』の末法少女に『成らなければならない』。
|
| 父の夢を叶えるために。
| 平等で静謐なる世界を『作らなければならない』。
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| 愛する人を得るために。
| その他の一切合切を『犠牲にせねばならない』。
|
| 友と肩を並べるために。
| 人間という器を捨てて新たな段階に『進まなければならない』。
|
| 主人公となるために。
| 自分以外の主人公を『根絶やしにせねばならない』。
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| 今の自分が、彼らと同じ領域に、『世界の敵』に片足突っ込んでいることに。
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☆ 次回予告！
勝利者のいない戦いは終わり。
獣たちは次なる獲物を探す。
敵をすべて滅ぼせば、世界は平和になるの。
そう信じて疑わないのは、狂気でしかないというのに。
調整された均衡、睨み合う平和。
それを良しとした年月をあざ笑うかのように。
いま、炎が東京を包み込む。
次回、最終幕九十一話『集会が終わって』
果てに見るのは破滅か死か。
ターニャがターニャになった
おや？ やる夫は半開封みたいな状態かな？
不気味な泡がみてる
第二次関東大震災は誰かの最後っ屁（ケンシロウ？）。人類補完計画は血族関係者で超能力者が起点
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| 『やらない夫の集会』は、世界中に衝撃を与えた。
|
| やらない夫と、その賛同者を皆殺しにしようと暴れる合衆国軍。
| その機に乗じて、武装蜂起を企んだ陸上自衛隊。
|
| 両者が殺し合い、芝公園は皆殺しの荒野に成り果てた。
| 備府やらない夫本人を含め、百人以上が死亡、または行方不明。
|
| 民間人の死傷者、三百人以上。
| そこには『集会』に集まった若者だけではなく、近くの売店に務めていた者や、日課の散歩道を歩く老人も含まれた。
|
| 合衆国軍に命令していたウィリアム・ヤーボ大佐は逮捕。
| 彼と共謀していたとして、サンダース・トールマン合衆国大使も拘引された。
|
| やらない夫の言っていた『敵』の存在が本当にあるのかどうか。
| この前代未聞の大惨事に国連から捜査のメスが入ることとなる。
|
| なるが、それはこの物語とは関係しない。
| 組織が大きければ大きいほど、その動きは鈍重になる。
|
| 国連が、そしてその前に日本の調査局とＣＩＡが動くまで、タイムラグがあるのは仕方のないこと。
| 現在は年の瀬、師も走る十二月の半ばである。
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| 具体的な行動は年末年始に始終した。
| この物語が終わりを告げるクリスマスには、間に合わない。
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| 五島ムスカと彼の賛同者らは速やかに獄に繋がれた。
| 彼の存在は自衛隊全体にとっての癌であった。
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| ムスカにはカリスマと理想を信じてクーデターの夢を見た同志の数と同じか、それ以上の敵がいた。
| そして、彼の組織はムスカという一人の英雄で結びついていた。
|
| 自衛隊内部には大規模な監査が入り、膿を吐き出すために躍起になっていた。
| 世間に蔓延る軍隊アレルギーの人々が声高に自衛隊解体を叫び、ワイドショーもそれを支持した。
|
| 内閣支持率はだだ下がり。総辞職間違いなし。野党への支持はうなぎ登り。
| しかし二日後、野党・主民党主が五島ムスカのシンパとして大量の金銭のやり取りをしていたことが発覚。
|
| 国会は大荒れ、泥沼の政治抗争がその後三年間続く。
| 当然ながら景気は悪化、経済は冷え込み、今再びの就職氷河期。
|
| もちろん、これもまたこの物語には関係しない。
| そう、もしも『十壊』を乗り越えてこの世界が存続した場合の話である。
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イ ミイ ヽ
／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
/ / / ／ /ｊ ! ',
! ′/ ｨ ／/{ .
| ! ﾘ / | ／ ィノ!∧ ｊ |
iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j|
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ!
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
ハﾆム､ニｊニニ≧≠ニﾆ!≧ｙ´イ7 /ニニニニニニニニ| }
/ ﾊニﾆ Vニニニニニﾆ7≠（(_⌒ヽ {ニニニニニニニﾆﾆ|! ﾘ
{ / |ニﾘ /ニニニニニﾆ ｒｌヽ ヾ!ニニニニニニニニ|‐´
ヾ |ﾆ7 /ニニニニニニ′ {Ｌﾑｊ/ !ﾏニニﾆﾆﾑニニニﾆ|
. ｊ/ /ニニニニニニ7 ｀ｰ个､__ノ ｊニニニﾑﾆ7ニニニ､
ｨ } 个ァニニニニニ７| ﾑﾆ ヽ＿ノｊニニﾆｊニ/ニニニ|! ＼
/（ ノ ｊ/ /ニニニニニニ!ﾑ ノニﾑ /ニニィニニニニニ|! ﾘ
{ ￣ /ニニニニニニニｊニニニニニニニ＞´￣ミヾニニｭ､ニ! （
｀ー ´|ニﾆア⌒￣￣~~｀ヽ￣￣≧｢ニニニニニニニニニニヾ|､ ーｲ
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| 合衆国軍、自衛隊、そしてやらない夫の仲間と、『教会』に『血族』。
| 三つ巴どころか五つ以上の勢力の争った『やらない夫の集会』。
|
| 勝者は『血族』であった。
|
| 惨敗地に伏した合衆国軍と自衛隊は言わずもがな。
| やらない夫たちも首魁を失い、配置した仲間の大半が死亡または捕虜になった。
|
| では、『教会』は？
|
| 『異端審問官』のジャンヌ・ダルクは『血族』と協調して合衆国軍や自衛隊の鎮圧に従事した。
| 早い段階で群衆に浸透した扇動者を捕縛、シロッコのマッチポンプへの怒りを募らせていた。
|
| 最終的にやらない夫を殺害したジャンヌは、その後精根尽き果てたかのように芝公園を去った。
| 彼女は己の目的を達した。しかし、何か大切な物を喪ったかのようにも見えた。
|
| 事実、その三日後に行われたパプテマス・シロッコ糾弾にもジャンヌは参加せず。
| 彼女は、やらない夫を殺害することで意気消沈してしまっていた。
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{.:.:.:.:/ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ ￤ ヽ:ﾍ
い:.／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ:.ﾉ_＿_ ﾘ:｝
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/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ヽ〃 ヽ 弋ｿゞ､ __ , ｲ
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／´ヽヾくこ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:.:.:.:＼:.:.∨::ﾍ :::::::|:::::::〉〉
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./: : : : : : : : :＼ヽ ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:.:.:.:＼:ヽj::::i::::::::::::ヽ＼
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| パプテマス・シロッコの糾弾と言ったが。
| 『やらない夫の集会』で配置された扇動者や武器弾薬、爆発物の多くはシロッコが準備させたものだと判明した。
| 彼本人ではなく彼の愛人兼部下が、シロッコのために勝手にやったことらしいのだが。
|
| そんな言い訳はもう通用しない。
|
| 『学園封鎖』以降、本来の業務すら放棄して沈黙を続ける『十字軍』。
| ウィリアム・ヤーボ大佐の上司として、『やらない夫の敵』に認定されたサンダース・トールマン。
|
| 彼らを影から操作した嫌疑をかけられたシロッコであるが……無論なんの証拠もない。
| シロッコを誅するのは、政治的に見れば不可能だった。
|
| 彼は『教会』上層部の覚えも良い。
| 賢く、しかし道化を演じ、そして金儲けが上手だからだ。
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| 下部組織である『血族』が何をいくら言っても、シロッコは捕まらない。
| 絶対的な権力の庇護、それを覆す方法など、ありはしない。
|
| その傲慢が仇となる。
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, イ／⌒ヽヽ ／ ／／ ／ ／ ／ ハ ｀ヽ
／二二ヽ、 / // （(⌒ ﾉﾉ /／/ / ／ ／/ ／ /ハ !
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|／ ＿___ ＼＼.| ヽ＿＿__／l/ | //,ｲ l┼/-／/ _. '"// ｌ | | |
／ ／ ｀ヽ、｀丶、 l/ﾊ{」 l | / /／ `メ､ | | / /
／ ／/ 丶､ `ー─‐ '´ 川 l `＝= //┤/
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{ { l ヽニﾆノ /／ ／ ／ l ﾚ'＾ヽﾍ-┬─‐ '´ |ヽ ｀ 〃 ,. イ /｛ ＼＼
トヽ ￣ ﾉ / { // / | ／ ）! ヽ| r┘ ` ｌｌ'"// / ＼ ヽ ）
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いミソハ ﾄ､ ∨ __」 ＼二イ 〉 , ニニＹ‐Ｙ"´￣ // ＼
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| パプテマス・シロッコは侮っていた。
| 一介のスクールガールに過ぎぬと、まだ小便臭い小娘ごときと。
|
| パプテマス・シロッコは侮っていた。
| 『血族』大首領 藤堂志摩子はお飾りに過ぎないと。
|
| その愚かさの対価として、積み上げてきたすべてを失う。
|
| 死とすら交渉する菊理媛の化身。
| 藤堂志摩子の手に掛かれば、パプテマス・シロッコごとき虎の威を借る狐に過ぎぬ。
|
| 大義名分などいくらでもある。
| そう例えば。
|
| 八月の『新宿歌舞伎町胎界事件』で、『教会』側の指揮官でありながら唯一人無傷で帰還したのはおかしくないか？
| 一時帰国し、日本を混乱に陥れるために過剰な武器と兵員を持ち込んだ。
|
| これは、シロッコはニャルラトホテプの介入を受けているのではあるまいか？
| いや、違う。
|
| シロッコはニャルラトホテプの手先として働いているのだ。
| とか。
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| 『やらない夫の集会』から三日。
| 電撃的な速度でパプテマス・シロッコ糾弾が始まる。
|
| それは糾弾という名の誅殺。
| そして同時に、日本国内の覇権を『血族』が握ることを意味していた。
|
| 約十年前に、『結社』の日本支部長になる前の諸葛亮孔明が唱えた『天下三分の計』。
| 『血族』『教会』『結社』による均衡とにらみ合いで、日本の平穏を維持するという計略。
|
| ニャルラトホテプの介入がなければ成功していたはずのそれは、もはや完全に瓦解していた。
| 壮健な頃の孔明が現状を見たらなんと言うだろうか。
|
| 古より、天下の大勢は長らく分かたれているならば必ずや一つとなり。
| 逆に長らく一つであるならば必ずや分かたれるという。
|
| とでも、呟いただろうか。
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,r'´ ノr´ﾉr´ノ ｿ､
／ ./'> f-二ニニ_ヽ厶〃ノソヽ
j｢／ } 廴＿ 。 ｀ヽ, :} ﾆ=-ｲ ､ マジで助かったぜ。
! ／/|￣ ￣ ニニ=- ヾ =-彡. どのツラ下げて戻るか困ってたんだ。
|::ﾚ' .| r-､ _ ｀ヽ =- ∧
. |!' .f} : | | .f ! f⌒l f- |
!, | i! !|.: | i! | | ! ,､ ! ,ｲ !
!ﾍ /| | .!|.! .! |! ! | j .| ＼ .::|、＼ | ､ , ､
! ﾍ / .! i! .!| .l .|_ j | ,′! .}:＼ .＼ ﾄ､ / |/ |
| ﾍ , |ヽ! .!ゝ′ ---..､ ｀ヽ_ ノ;;;;;;;＼ ｀ﾄ.、. / | .|
! ﾍ / ヽ i{:::.:::::::::::::::::::::::::::::::::;: ;;;;/ 心 ヽ / .| .|
i ､ ,.! . ﾍ_/ {ヾ-ﾉヽ-､:::::::::::::::::::::::;::::,/ / i!:::. }!_ / | .|
| ＼ _ ／ ´ 亅 .{ニﾆ＝==-､｣'| | }､:: . . . : :ノ / / i! ∧:::ノ' ) / .! .|
| ＼ﾞ￣ ー― ´＼ ￣￣.:::::::.､ .! ::.,: : : :: / | ,イ゛ _ｲ / | .|
| ＼ , ､ ヽ, ::::::::::,、∧ ::::,: : : :..:::: :::::::::: :.／ ／..::{－､_,...＿＿ /., .| .|
/! ﾉ ｀´_ ＜/!} .::::::/ }:. :::. .::; ::::::; .f f:...:::::::/::::// ￣ ,´/ﾍ .!__.|
./ .ヽ _ , ＜..:::::::.／ ,≧ｿ::. ﾉ:::. ::::.. ..:; :::::; .::| |:::::::::;´:::// / /ﾍ } ｀ヽ
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|「困るほど大したツラじゃァねえ癖によ」
|「ンだテメコラ！ 泣くぞ！！」
|
| 偽ヤーボと交戦し、その後に『血族』に保護された北斗ジャギ。
| 彼は一貫してやらない夫との関係を否定していた。
|
|「『武僧』のヤザンに殺されかけたンだ。生きてるのがバレちまったら次が来るだろ？」
|「だったら連絡くらい入れなさいよ……」
|「シロッコのスパイが紛れてたらと思うとなァ」
|
| 施錠可能な、牢獄のような部屋。どっかりとあぐらをかき、出されるスシをモリモリ食べるジャギ。
| 彼を囲うのは無言のケンシロウ、カミナとシモン、そしてロストスキルと巡音ルカ。
|
|「どれだけ心配したか分かってるの？」
|「知るか、こっちは変なトカゲの悪魔と大変だったんだ」
|
| 血の滲む包帯に爪を立てるルカ、悲鳴を上げるジャギ。その口にしめやかにダイブするスシ。
| そのスシは、シャリとたっぷりのワサビだけものであった。
|
| あまりの辛さに悶絶するジャギ。
| 彼によると、下水道でネビロスとでっていうに拾われて下働きをさせられていたらしい。
|
| でっていうがジャギの存在を秘密にしていたのは、交渉道具にするつもりだったからである。
| その前に抜け出して来たのだという設定だ。
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|┃｜ ┃｜|｜ 人（ヽ人（ヽ人（ヽノ） ｜|┃｜ | ｜
|┃｜ ┃｜|｜ （ヽ（ヽ ノ） ｜|┃｜ | ｜
|┃｜ ┃｜|｜ ヽ ノ ｜|┃｜ | ｜
|┃｜ ┃｜|｜ ヽ ノ ｜|┃｜ | ｜
|┃｜ ┃｜|｜ ヽ ﾉ ノ∨∨∨ヽ |
|┃｜ ┃｜|｜ヽ ノ ） （ ｜
|┃｜ ┃｜|｜ヽ /（(（( （(ヽ(（ ）ノ)））ノ)）ヽ ﾉ ） .ほ .（ ｜
|┃｜ ┃｜|｜ヽ 〈￣＼＿ ＿／￣〉 ﾉ ） お ( ｜
|┃｜ ┃｜|｜ヽ | ＼＿＿＼ |l ／＿＿／| / ) お （ |
|┃｜ ┃｜|｜ヽ（ヽ | ＿ ＼|lll|／ ＿ | /）/ ） お （ |
|┃｜ ┃｜|｜ヽ | | | ／ ０ ＼ ll| ,／ ０ ＼｜| / / ） お （ |
|┃｜ ┃｜|｜ヽ ヽ| | | ／ | ＼￣| | | |/ / ） ぉ （ |
|┃｜ ┃｜|｜ ヽ ∨ | | ／ ,|、 | | ∨ / ） l （ |
|┃｜ ┃｜|｜ ヽ| | | ｀l´ | | |/ ノ | （ |
|┃｜ ┃｜|｜ | | | l⌒⌒ | | | | ⌒) っ （ ｜
|┃｜ ┃｜|｜ | ＼| i/γヽ | |／ |. ） !! （ |
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|「おおおーん！ 兄者……ぶ、無事で……よか……よかったおおおー！」
|「泣くなバカ、ガキじゃねーンだ」
|
|「喜びで流す涙は実際恥ではない」
|「うっせェぞキル！」
|
| オイオイと男泣きのケンシロウ、もらい泣きのシモン。同じく涙ぐむカミナ。
| 泣き虫な男たちに呆れ顔のルカ。久しぶりに柔和な笑み。
|
| これほどまでに、心が安定しているのはいつ以来だろう。
| ジェリドを誘惑してからどん底だった気分が、ジャギの生存たった一つで回復した。
|
| しかし、涙を見せるのは癪なので、ルカはツンツンとした態度を続けていた。
| 本当は、ジャギの汚い手ぬぐいで顔を拭かれるケンシロウや、背中をバンバン叩くカミナが羨ましかった。
|
| しかし、自分はそれに参加できる気はしないし。
| なにより、大きな不満があった。
|
| …………ここに居るべき人物が、足りないことに。
|
|「ハイハイ、散った散った。往診の時間よっ」
|
| 無遠慮に引き戸を開けたのは、薬箱を背負った巫女。
| 小五の身体には薬箱は大きく見える。
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rへ
ｒ7´ ｀ヽ､-,. ─-､ ,.へ_､
ｒ7 ｧ'"＞'-─｀-＜ ヽ!_
r7' >'´::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ. ﾊ へ
,くi ヽ/:::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Y i_{ ／／〉 なに見てんのよ、
ヽ.／!/::/::::::/:::/:::::i:::::ﾊ:::i:::::::;::',」 ／／〉〈〉 金取るわよ。
/:7 ,':::i::::::/:ﾊ,ゝ､ﾊ/ !:ハ::::i::iヽ. ／／〈〉〈〉
くｋ__!::::::L:ﾊ/〈 !_ｿ｀ ｫ'r7!/!」 ! ／／ 〈〉 〈〉
|::ﾊ:::::::}__.| " _____└' i__{ヽ､! _,,. -/⌒ヽ／／ 〈〉 〈〉
ﾉ:::!ﾊﾍ::|::::iヽ､ ( ｀i ,.ｲ:::|,.-'"´ l l i しゝ' 〈〉 〈〉
/:::::ﾊ::::!::ﾊ::::!;:イ＞ｰｒ＜ﾊ:|::/! | lY__ノ´
i:::/:::::!::::::rｨ';:|´ |／､ /」|:/ !- ヽヽゝ'i
ﾚ'i::::::!;:へ､ヽ!／ムヽ､_/_i ｨ,ﾍ､ Y /
ヽ/⌒i､._ Y:::::/ i」::::::::::!-/ﾚ' ｀ヽ. i/
! iﾉi 7:::く__ﾊ|:::::::::::Yiﾊ| ｀'ー-'
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|「そうね、治療の邪魔にならないようにしましょ」
|
| ルカはケンシロウの肩を叩き、カミナとシモンを促した。
| ロストスキルは心得たもので、すでにスシの具材を片付けていた。
|
|「え？ オイ、別にいても……」
|「みんな暇じゃないのよ」
|
| ルカはそう言って霊夢に目配せ。
| しかし肝心の小学生巫女はジャギから目をそらさない。
|
|「えぇ……」
|「…………」
|
| 可愛らしい眉間にシワを寄せ、ギロギロと睨む霊夢。倍近い身長差があるにも関わらず、ジャギは萎縮した。
|
|「あ〜〜〜霊夢……サン」
|「………………」
|
| 気まずい沈黙、二人きりになってしまう。
| ジャギは助けを求める視線を入り口に向けるも、無情にも錠の落ちる音。
|
| しかもこの部屋、防音だ。
| ナニをしようと助けは来ない。音は漏れない。
|
|「元気そうね、心配して損したわ」
|「悪ィ」
|
| 頭を掻くジャギ。その手を、熊みたいに巨大な手を霊夢の小さな手が両手で握った。
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/'"´￣｀､:ヽ
ＦＹ´¨ヽ､ ,!:/
. 冫l: : : : : ｀ヽ､ ,,.. ,-,‐,ｧァ ｧ;‐,‐,-, ､,/'゛
〈 ,| : : : :_: : : :｀ヽ、／: : : : : : : : : : : : : : : : : :`7‐-､
. Y |: : : : :.:.:｀:.: ヽ, ': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
｜l: : : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
广|: : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : /!:ｲ : : : :/! : : : :ﾊ
辷l: : : : : : : : 爪: : : : : : : : : : : : : : : : / l: i: : : : /,!: : : : : ﾊ
}-i: : : : : : : :.|: : : : : : : : : : : : : : : : :./ |: ﾊ: : : /|: : : : : ハ
', ',､: : : : : : :.!: : : : : : : : : : : : : : : /' ￣l'ｲ : : : : !: : : : : ｲ
゛､`､: : : : : 爪: : : : : : : : : : : !:／__ 二 l'ﾊ: : : /ﾞl: : : : : /
'-.,゛: : : : lＶ: ,'-､: : : : : : :ｲイ示〒、｛ !'//_ l'/: : : :ｲ
＼,_: : }ﾞｉ ヾ: ::｀ﾄ､:;_;_:_{ ヾ∠ lｼ才/!: : : :ﾘ
. _>`|: : : : :ﾄJ｀ー－i. , , ヾ'/: : : : / ………………ばか。
┌'／:!: : : : ,ゞ|: : : : : !ﾞ! 丶 , ,| : : ／
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_ﾉ/: : :./r'/'"´￣ ｀`ヾ!ト: ｲ ヽ
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＼:| / ヽ ` ､::..`i::.、 ..:::::::::::／::;;:: -‐''‐-､
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|「すまねェ」
|
| 傷を確認する。偽ヤーボ戦で受けた傷は重傷だ。普通人なら死んでいる。
| 鍛えた人間でも普通に危険だ。笑いながらスシを食うなんてできるはずもない。
|
|「なんで？」
|「…………次は暗殺じゃあ済まないかもってな」
|
| 答えづらそうに、ジャギは絞り出した。
| 霊夢は傷を確認している。ジャギの丸太のような腕に、鋼のような筋肉に触れる。
|
|「そうじゃなくて」
|「……………悪かったよ、乱暴して」
|
| 素直に頭を下げるジャギ。
| 霊夢は丁寧に包帯を解く。秘孔と気功で応急処置をして、スシによる代謝強化で治療していたが、正直それでは焼け石に水だ。
|
|「やせ我慢して」
|「傷は我慢できンだろ？」
|「心の傷は？」
|「…………すまん」
|
| ジャギは、己の身に危険が迫っていると考えて、暴力的に霊夢と距離を置いた。
| 性的暴行を匂わせて、自分に霊夢が近付かないように脅しつけた。
|
| 心の傷。しっかしりしているようで霊夢はまだ十一歳だ。
| 有効でも、短絡的に過ぎた。
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./::::::::::::::;ﾊ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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!:::::::::::l ﾞ ..:.:.:7"::;:::::＿::､ヾﾞi:: :.: ,.ヾ､:::::::ﾊ
::::::::::::iゝ. .:.:.:.:.l::::k'_´_o__ﾞ,!:::7 7;:::＼ﾞ¨" ,!
::::::::::::lゝ :.:.:.:.:ﾞー───‐'.:.:.:.: k'^ヽ、ﾞi ﾉ
::::::::::::ゝ :.:.ｧ''''":::￣￣::''ー'':::ヽ｀ﾟ'-ﾞ_,! 丿
:::::::::::::::〉.:.: ,ｎ :.: rャ:.:.:: z､ :.:.:. .:.:ヾ､:.:.: ,ﾉ
l:::::::::::::i.:.: |:::| .:.:.|::::| :.: i:::::|.:.:.:.;ﾍ.:.:.:. ,ヾ } いくら出せばいい？
|::::::::::::l:.: _レﾍ:.:.|:::::!:.:. !:::::|.:.:.:l:::;!.:.:./::i 〉
}::::::::::::!:.: ´ .: ,}:.:|:::::l:.:. !::::::!.:.:,!::;!.:.:,'.:.:,',!
!::::::::::::l.:.:......:.: /:l.::l::::::!:: l:::::::|:.:,!::;!:.:,'.:.:7.! ,ﾊ
:::::::::／i :.:.: ,/::::ゝl::::::し':::::::i.::,!::;!.:;',!:/ ｀ー‐'" }
:::／ ｀ー､"::::::::::::::::::::::::::::::｀´:::ﾚ':!;/:.:.:.:......:.: ,/
:::l : : :: ゞ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｿゝ.;,;＿,,,,／
:;' ; : :: ｀ヽ、::::::::::::＿::::::::/ l
; ,' ; : :: ￣￣:::: ,' ￣ ; i､
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|「あのねぇ、女のコをキズモノにしたのよ？ 金で解決するつもりなの？」
|「あー……冗談だ」
|「最っ低」
|
| 本当は本気だった。霊夢が金で解決しないとなると、本気で怒っている。
| チンピラとクソガキの機嫌を取るのは得意なジャギだが、女のコはどう扱えばいいか想像もできない。
|
|「マジで反省してる。何でもする」
|「言ったわね？」
|
| ニンマリと笑う霊夢。治癒の呪符と術式で、ジャギのボロボロの肉体を補修する。
| 痛みが引く、暖かく柔らかな光。いつの間にか、これがある事が当たり前のようになっていた。
|
| ジャギはこの数日の戦いで、無意識に霊夢に頼っていたことを思い知った。
| そして、恥じ入った。こんな子供に。本当は守ってやらねばならないはずなのに。
|
| 逆に、守られてきたのだと。
|
|「とりま十万」
|「ボリやがる……」
|「乙女の純情を踏みにじったのよ？ 安いものでしょ」
|
| ジャギは心底申し訳なく思った。気を使わせた。冗談で空気を変えた。
| いつも、そうやって霊夢は。
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’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ|
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ| 人聞き悪いぜ。
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│ その薄っぺらなまな板を触ったぐれェだろ？
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ|
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ
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|「ケチね、一生ATMになれってんじゃないのよ」
|「いや、お前なら言いかねン」
|
| 霊夢がジャギの胸に顔を寄せ、背中に腕を回す。
| 色っぽい行為ではなく、包帯を解くためだ。
|
|「下も脱いで」
|「ンでだよ」
|「あたしのまな板を見たんだからアンタも見せなさいよ」
|「ええ……」
|
| 本当は治療行為である。ジャギは内臓にも致命的ダメージがあった。
| 致命的……普通ならば致命的。ゴキブリ並みの生命力でなければ。
|
|「内臓割れてるのにスシ食べないでよ」
|「スシは完全栄養食でニンジャの回復薬だぜ？ 俺は詳しいんだ」
|
| 霊夢はジャギの股間からぶら下がったサツマイモのようなそれをマジマジと見る。
| こんな至近距離で見るのは初めてなのだろう。好奇心で目が輝く。
|
|「意外とちっちゃいのね」
|「てめえみたいなチンチクリンじゃ欲情のしようもねーンだよ。臨戦態勢になったらラオウサイズだぜ？」
|
| これは作中の人物名ではなく、北斗の拳コラボコンドームの話です。
|
|「誰にも反応しない癖によく言うわ」
|「…………え゛」
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〈乂ノ{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:＞'":: :: :: :: :: ￣￣｀`丶、
( ｒ㍉}:i:i:i:i:i:i:i:i／:: :: ::／:: :: :: :: :: :: :: :: :: ::.＼
( 〉⌒Y:i:i:i:ｉ: ':: :: :: :: :: :: :: :: :: : : |:: :: ::|:: :: : : ＼
（L／ ヽ:i:7:: :: ::.::/:: :: :: :: :: ::|:: :|:: :: ::|:: :: :: :: :: ＼
（_Ｙ ン:i/ :: :: : / :: :: :: |:: : : |:: :| : : ∧ : | :: :: :: ::.:＼
〈 ノ _/:|:: :: ::/:: :: ::|:: :|＿:: |::/|:: :/ } : | :: :: | : :.⌒ヽ
(ン⌒八 : : :: :＿_:| 斗ャミﾄ |::/ ―从‐ :: |:: ::i
／:人/ : :＼::(〈⌒八::乂ノリ / 斗ミﾄ:: ::.|:: ::|
＿／:i:i:/::/:: :: :: ::.＼/⌒ヽヽ´｀｀ ゝﾉﾘ 〉:人.从
乂 ＼:i/:: :: :: :: ::/:: :: |////| ` ｲ＞く 入院してる時に
乂./ :: :: :: :: :: :: :: ::〉〜 人 r‐く＼＼ヽ ルカが口を滑らせたわよ。
/:/:: |:: :: :: :|:: :: 〈_/〜へ,) ´ `〈_i } }
/:ｲ::.::.|:: :: :＿_ : :: |:: :: ::.:| うぅ .,_ イ ／ その関係で『血族』やめて
| : : | ／ ＼|:: :: ::.:| /::::::::{ イ 『結社』に腕試しに行ったって話はキルから。
人:: :/ 人 : : : | /:: /: ∧ / {:: |
⌒＼::{ ⌒: : : : 从 ∨匕:: / ∧ Ⅵ
-‐＝＝＝＝=- ＼:（ r''⌒ヽ⌒/ ∧ ／￣￣＼
〔 ＼/ ∧＼人 } } ∧/:: / ／〉￣∧
∧ ＼.:.:.:.:.:.:.:.:/〜〈.:.:.:|)::/ <／ / ∧
〈/∧ ノＹ〔__〕 〉.:.:.:.:.:/ | |∨.:.:/ /'〉 / ∧
∨(人ノ 〔__〕 ／.:.:.:.:.:./ し ∨,: 〈,/ / ＼
＼ 〔_〕/.:.:.:.:.:.:.:.:| :/ /〉 ＼
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|「あ、あいつら……」
|「舐めてるわよね」
|
| 柔らかなそれを両手でぐにぐに玩び、ぶら下がった玉袋や先端のクビレを興味津々でねじる霊夢。
|
|「痛ててててて！！」
|「体の痛みは我慢なさいよぉ」
|「いやマジ悪いけど、金的は簡便な！！」
|「仕方ないわね……」
|
| 涙目のジャギ、霊夢は嘆息して手を離した。
|
|「手ェ洗えよ」
|「汚くしてるの？」
|「ナニ弄った手で傷を触ンなって」
|
| 手の臭いを嗅ぐ霊夢。入浴していない雄の悪臭に、眉を顰めた。
|
|「五年後を楽しみにしてなさい」
|「何でだよ」
|「これでも先代の親族なのよ？ 誰もが目を奪われる爆乳になってやるから」
|「ほーん、俺には関係ないだろ？」
|
| 全くもって無関心のジャギの睾丸を、霊夢がデコピン。
| ニメートルもあるような巨体が飛び上がる様を、霊夢はケタケタ笑った。
|
|「大いに関係あるわよ」
|「ンでだよ」
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ニニニニニニニニﾆ＼ {二ニニニニニニニニニニ／／/ /
ニニニニニニニニニニ＞ '゛ ::: ￣ ー=ニニニニﾆ＼＼} {
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ニニニニニニﾆアﾞ ...::／:::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::く／ニ｛＿ ＼
ニニニニニﾆア ...::::／ / .:::／ :/ ヽ:::::::::::::::＼ﾆﾆ}⌒ }
ニニニニニ７ ..::::::;:/ / ＼:::::::＼{ /
ニニニニﾆ/ ..::::::／/ ′ ＼ ＼__/
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三] ]三{ :::::::::′ ; .: , ,′ .:/ ﾟ; :::.＼ :::. :.
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⌒ヽニニ ::::::′ .::::: /.:::::::::/..::::::::::::::::／ ｝:::::::::::::{＼:::::::::. ::::::::::. ﾚ
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にニニ}../:::::::::::::: /.::/:::/:::}::::::::/)ノ＼ ｝:/ ｛/ _,斗｝::{ }::|
にニニ}:⌒V〉:::::::{／)ノ厂}::::::/ｰrt=弌===ミ､}/ f笊爪 }ノ， ;/
にニニ}:::::::/::::::::::( ^{^ /::::/ ⌒ ー∨以 '′ ； ‘，
にニニ/:::::::レ')／.:.＼： {;／{ /／/／/／/／/／〈/／/： ‘，
にニﾆ,ﾞ.::::::::::::::::::::::::::::.‘， ‘，/／/／/／/／/／/／/人 ‘， ご、五年もあれば、
にﾆﾆ,ﾞ.:::::::::::::::::::::::::::::::::.‘， ‘， ∪ ／ ‘， ,‘，[ この天才美少女巫女霊夢様が
にニ,ﾞ.:::::::::::::::::::::::::::::「￣ ‘， ‘，ト . ,. - く:{ ； 丿く アンタの呪いくらいどうにでもしてやるわ。
厂}ﾆ,:::::::::::::::::::::r‐=ニ| ‘， ‘，[ 〕ﾆ=‐- ｧ'ﾟ ﾞ:, [入厂]爪
/⌒jﾆ,::::::::/:::::::; '゛￣｀ヾ＼ [入厂]爪く / ／^! :＼ }::::::::::}
⌒V /::::::/}::::::;' ＼＼ 〉:::::::::::::〈_／｝ ！ {::::::＼ }::::::::::}
／ﾆ,::::::://::::::： ∨＼{:::::::::::::::/[¨¨］ ！ ；＼::::::＼}:::::::/
ニ,:::::::://::::::::::｝ ∨/{::::::::::::/ﾆ[___]＼__j ！丿ヽ::::::{ :::/
ﾆ,::::::://:::::::::::::}ﾟ, ∨_＼::::/ニﾉ ｛ニﾆ}`ｰ…・‘ /::::人/
ノ:::::/ {:::::::::::::::} ‘， ∨＼)'ニ/ ｛ニﾆ} /:／
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／ {:::::::::::::::｛く/∧ / /厂 {ﾆﾆ/`ｰ…･⌒!⌒ヽ
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＼:::::}:::::::::}＼ 人ニニニニニニ} ‘，
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|「…………は？」
|「そしたら、一生ATMになってもらうわよ？ こないだの十万は結納金ね」
|
| ジャギは思わぬ流れに、想定もしていなかった流れに困惑した。
| 焦ったと言ってもいい。自分はもう、『血族』としてはここまでの『のけもの』のはずだった。
|
| なのに、え？
| 霊夢には兄ラオウのために気功義手の研究を続けてもらわねばならない。
|
| ロストスキルとルカの治療もある。
| 自分なんかにかかずらっている暇はない。
|
| …………だが、自分を見上げる真剣で怒りに満ちた顔に、ジャギは何も言えなくなった。
| 本気で心配させたのだ。死んだかもしれないと思わせたのだ。
|
| そして、この想いはその結果なのだろう。
|
|「何でもするって言ったが、ありゃあ言葉の綾だ」
|「いいから黙って博麗ジャギになんなさいよ」
|
| 霊夢はジャギの鋼のような胸板に顔を埋めた。自分の言っていることに気がついたのだろう。
| 上気した顔を、そうやって隠した。
|
|「それまでに、アンタに飽きなかったらだけど」
|
| そうなってくれた方がいいと、ジャギは思った。
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☆ 次回予告！
塔を登る五つの影。
先頭に立つのは美少年。
金髪碧眼、縞々ニーソ。
指揮を執るのは、おしゃまな女。
ヘテロクロミア、不屈の負けん気。
彼女に従う、巨漢の男。
長い白髪、賢人の瞳。
恐れながら進む少年。
ヒーローになるなら今ぞ。
殿を務める制服の少女。
一花咲かせて、死ぬなら本望。
次回、最終幕九十二話『先行者』
果てに見るのは破滅か死か。
アー、イイ……トテモイイ……
少女相手にタジタジになる巨漢は良い文明
ところで、シロッコとか十字軍とかはこれで退場？
合衆国とか教会全体とか含めて、状況まとめがあると助かる
シロッコの糾弾が始まって、シロッコによって予想外の流れなので、何かが起きて有耶無耶にならない限りシロッコは負ける
ジャンヌは燃え尽き状態。球磨川の死を知らないやらない夫の生死は不明
将来、あるといいね
さて、玉数足りないのをどうやって補うべきか
産業助かる。
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___l ､丶＼ |! : : | ＼: : :|ﾘ人 ﾉ从iﾉﾘ从爻ミﾉ|:::|＿＿___.|￣￣￣|r| |ィ´「」 |二二二二二二|::::::::::::::::::::::
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| 都内某所、地上四階建てのこじんまりしたビルが『十字軍』のアジトだ。
| 地上まで悲鳴の届かない地下階層が魅力的。彼らは無辜の市民を捕縛しては好き放題にした。
|
| 実際、この三ヶ月における悪魔の被害と『十字軍』による被害、どちらが多いのか分からない。
| 『十字軍』は暴力と略奪だけの集団だ。
|
| 鼻についた男は殺す。
| 目についた女は犯して殺す。
|
| 理由なんてでっち上げだ。全部悪魔の仕業にしてしまえばいい。
|
| 派遣された双子の指揮官。
| オズとオズマはそういう意味では完璧な『十字軍』だった。
|
| 『教会』日本支部にあてがわれた退屈で窮屈な見回りと悪魔退治なんてどうでも良かった。
| ただ、好き勝手できれば、それで……。
|
| その末路が、現状である。
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, ':i:i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|:i:i:i| _ ＿!|ｉi ', ブラッドプールだ。
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. /i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|i|i|､＼_/ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|i| '， . しかもただの全滅じゃねえ。
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| どこもかしこも破壊と殺戮の痕跡。致死量の血や臓物、弾痕に破壊痕。
| まだ腐敗していない腕や脳漿が散らばる中を、『暴力教会』のエダは携帯電話片手に放送禁止用語を連発している。
|
|「『十字軍』がファックされたのはこの二三日で間違いねえ。だが」
|
| 肉片を咥えて目を光らせるドブネズミ。
| 12月の寒さのせいで、腐敗も悪臭も抑えられている。
|
|「死体がねえ」
|『だが、死んでんだろ？』
|
| 電話の向こうはヨランダ。訝しげ。
| エダは唸り、言葉を探した。死体がない。
|
|「襲撃があって、山程死んだのは確実だ。
| だが、どの階にも死体がない。吹っ飛んだ手足はあっても、バラバラの破片はあっても。
|
| ねえんだよ。明らかにパーツが足りない」
|
| そして、それだけではない。
| エダは『十字軍』が戯れに犯したり殺したりした犠牲者の所持品が、地下に積まれているのを発見していた。
|
| しかし、そこにもない。
|
| 悪臭と湿気から、複数の腐乱死体があったはずなのに。
|
|『ネクロマンサーかい？』
|「……ここまで大規模な攻撃と屍術を使えるような？ そんなのこの東京に一人しかいねえだろ」
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/´ﾞヾ＼ミﾐ> }::/ ::/:/ / :＼ .//-ｧ
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/＿,,, ｀ヾ=-ﾍ;::::}::::::;' :;'ｧ-x、{/j///j;'::}}:}｀ヽ／
｀ーーヽ;ヽ;ヾt{;;ﾘミ::||:{ .tiﾎｧxヽ '///j j;{:|ヾ__＞、
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't;;: ＼:::::';::.-'.V, |{' .i;ｼﾞｿy<::｀／´ﾞﾞ｀ヽ,
｀ヾヾ:',｀ﾞ´ .(ヾヽ ヽ、 ' .｀ ,'´ /´..::／´ﾞ｀´
.ﾞ.';::} ''|＼ ｀ ノゝ {;:::／｀‐,=-,
.V ／´ヾヽ{,￣￣ヽ__,,／ ｀ーァ;／ｿ
_,,,--<、 ＼＼ {´V',ヾ,,,___ /ｧﾞ／
},().)O ｀ヽ,.＼ }ヽ ＼//{ヾ、} } ＼ .'´
.{'ﾞ｀´ﾞヽ, .Y }' '-ヘ,,.} ',',ヾ＼}i .',＿
<、 ＼ ト/ ﾞ ',', ﾞ´ ﾞ＼／／',
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./ ／ V/ﾞヾニ=-;:::::://´ヾ;::::j|'´ .',
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| 曹操 孟徳 華琳。
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| 健康のために日光浴するようなアンデッド。
| デュランダルを襲撃して返り討ちにあったというが……。
|
| そう、エダたちは知らないのだ。
| その返り討ちすらも華琳の策略で、本人は地に潜っていたなど。
|
| そしていま現在は、『血族』の客将になっているだなんて。
| 知る由もないのである。
|
|『あの双子は？』
|「十中八九死んでるぜ」
|
| このビルで唯一、破壊が無いのが最上階の指揮官室だった。
| だが、引き裂かれたオズマの衣服と、大量の血液が残っている。
|
| この襲撃は、そこから始まったのだ。
| ……恐らく正式にアポイントメントを取って、オズマに近付き、そして油断させて殺した。
|
| いかなる手段を用いたのかまでは、分からないが。
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く{ ｒｒrrく＼ヽ.}弋＿／へ.[[[!|[[| |三三三三三三三
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|「撤退だ！」
|
| 夢の塔。
| 人々の夢をパッチワークした非現実の建造物。
|
| 世界を滅ぼす普遍的無意識の化身『ビスケットハンマー』に届く巨大な塔。
| ペルソナ使いたちはこの塔を踏破し、『ビスケットハンマー』を手にせねばならない。
|
| 現在、十二月十五日。『やらない夫の集会』の翌日深夜。
| 攻略開始から五日目、四十六階。
|
| 夢の塔には、人々の悪夢や歪んだ欲望の化身であるシャドウがうろつき、侵入者を阻む。
| 塔の攻略は疲弊を伴い、連続での探索は困難だ。
|
| そのためペルソナ使いたちは四人程度のグループを作りローテーションで探索していた。
|
| しかし今夜。
|
| 次元の違う強敵と遭遇し、撤退を余儀なくされた。
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／, ィ ヽ
／／//／/! ﾊ .ﾊ ＼
////イ'///∧ //∨/∨;|
' /ｲ< |'/ |//∧i////////;!
/| jfヾ{ W//////////// …………『先行者』の仕業だな。
∨ ノﾍ H---ヾ///ﾍ'/////
∨ __入 ｀′ Wf ﾆ}///〈、
∨ イ;.:.ﾊλ -=イj////ヾｰ. ､
ﾉ、| |:.:. ﾍ ` _／ :.:. ヾﾊ厂 ｀`ヾ:＼
ヽ ヽ!ノ : : : 7￣/｀ヽ :.: :.ヽ:∨
ド-イ｀fｰ' ハ:|: :|ト ; :.:.ﾉ:ハ
! !: | /: : ヽ :|| ＿_／／: : ∨
| | ./: : : : : i !､＿＞.´:_: -‐: ": : : : :.∨
| | ﾊ: : : :.:.::::ヽ:ｰ-:‐:"´: : : : : : : : : : : :∨
| ∨ヽ＼: : ＼:::}: : : : : : : |: :_:_:_:_:_ : : : : ∨
| :. } ＼＼: : ヾ: : : : : :i:ﾉ!´: : : : : :＼:i: /!
| :. へ＼入: : : : : ヽ!: : : : : : : /: |': :!
､ ／ ｀¨_ハ: : : ヽ:| : : : : : : /: : !: :|
＼ ／ ∨ 〉 : ‘，: : :::!: : : : : : /:/: ;!: :!
ｰ" ∨／:ヽ: : ‘，: : | : : : : : /:/: / : |
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| 中国製の人型ロボットの話ではない。
| 彼らは高校生だ。生まれたころに発表された『先行者』なんて知る由もない。
|
| なので、塔の上層を攻略しているペルソナ使いたちとは別の何者かを指す仮称である。
| 強敵は、今までに遭遇したどのシャドウとも違った。しかし、ペルソナ使いたちには心当たりがあった。
|
|「どう見ても『ツギハギホラー』だった。クロトワ先生の」
|「だが、死んだんじゃなかったか？」「死んだ」
|
| クロトワ。副担任にして伊藤誠配下の魔術師だった男。
| 『学園封鎖』のどさくさで、ひどい拷問を受けて殺されていた。
|
| 死体を確認した刹那が神妙に頷く。
| あの死体はクロトワだった。だが、死を偽装した可能性もある。
|
| それこそクロトワが持つ『法務官 ジン＝ギタクシアス』で他の死体を改造して……。
|
|「教室でジョニィ・ジョースターと一緒にいたのも『ツギハギホラー』だったかもな」
|
| ペルソナ使いたちの戦いは、夏から秋の終わりにかけて行われた『夢世界』と地続きである。
| ゲームマスターとして窓付きが、五人のサブマスターとして『法務官』を設定した。
|
| 『法務官』はペルソナの能力や攻撃の影響を受けない。
| 一方的で圧倒的な存在だった。
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( |/:::´::::::::::::::::::::::::≧
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
∠:::::::::::f::f::::::::::::::::::::｀l::l:::::::丶
/::::::::::::|::|:ﾉﾅ弋:::/弋|::|::::ハl センセが
.人λ:::::(| |（ ●） .(●::ﾉﾚ´ 実は生きてて
. |:::::::|::| ,, r‐ｧ ﾘ:| 『先行者』やってるって？
.ヽ ﾉ:::::::|::|、 ￣ノく|::|
.冫:::: i⌒＼_7ﾍ::ﾊ,､-リ あー…………ありかもな。
{:::::::::l,｀彡巛ー──;＼
{:::::::::::| ｀冫-rr-r-く＿）
ヽ:::::::ヾ. ..ヽﾉ::{:::}::ﾉ/ノ
ﾙヽﾉ） | {:::} | .i
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| 『法務官』は五人。本人の意志とは関係なく利用された。
|
| 担任教師マリナ・イスマイール。
| 窓付きの両親。
| そして。
|
| 魔術や異能を知る二人が、窓付きの支配を逃れ離反。
| その片割れがクロトワであり、もうひとりが。
|
| アリー・アル・サーシェス。
|
|「……クロトワ先生ではないのでないかしら？」
|「アタシもそう思う」「どっちだよやんねえ香」
|
| 考え込むやんねえ香、知恵熱を心配する少年執事
| 珍しく発言し、自説を同意されたマーガレットが、自分のメイドを見る。
|
| …………十六夜咲夜である。
|
|「ああ、お嬢様。『襲撃者』が言っておりましたね……『コイツはディオっていうのか』って」
|
| 『やらない夫の集会』でディオに襲われたマーガレットと咲夜も、『夢の塔』攻略に参加していた。
| 同じく、はやぶさとタカオも。
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＿＿＿ ＿_
（て¨＼: : ＼{{＼: :ヽ
¨ ￣¨` ''‐ ､ ＼: : ＼}}＼ ﾟ｡
..: ´ ..:::´: : : : : : : :.:.:⌒ヾ.ﾟ｡ : : ＼}｝ |￣`::.._
/: : : :": : : : : : : : : : : : : : : :.}i:､＼: : ＼j: : : : :/
/: : :/: : :.:.:／!: : : :.:;: : :.'/ /: : :.}i;. }l;.､: : ﾟ｡: : :.′
′ ,:′: ／ .': /i.: : |: : : :'/ /: : :.}i;＼}ｉ;: : |: : :.{
i : : i､ ／, /: / ', : |: : : :.:'/: : / ﾉ| : :.:i: : |: : :.|
i : : |くヽ `フフ′ ',: | : : : : ∨/: :.:.|＼_}／ﾟ.｡:.:.|
|:￣爺f／／_辷＿ '､|: : : : : :|⌒',ﾉ,′: :| |: :|
l : : |_彡 爺.ノ￣|: : : : :.:.|ｰ; |ｲ: : : :| │::| ……てことは？
|: :.│〈 |: : : : :.:.|_,ノ│: : :.| │: ! ディオさんを知らない人？
|: :.∧ │: : : : :.|: : :.:| : : │ |: :.′
|: : :l∧ Tヽ |: : : : :.:.|: : :.:| : : │ | : :′ でも、『襲撃者』って現実側じゃないの？
| : : |: : :.､ ’ . 个: : : : ::|: : :│ : : | │: :',
| : : | : : :.:`=ｧf" |: : : : :.:八: :人 : : | │: :.′
,:| : : |` ｰ‐f":: ＼＿_|: : : :.:∧斗…― ミ_ |: : : ,
/ | : : | `r――‐tｰ|: : : :.:|/ｰ ﾟ.｡ } : : : ,
. / :| : : | └―=彡'∧: : : :八. ∨: :;!: : :,
/ | : : | / / |: : : :,′ , ﾟ｡ﾉ{ : : ',
. / :| : : |ｎxｎxｎ'^~＾~＾~|: : :.,'＾~＾'ｎxｎx/´ ,xｎv‐vv;: : :.:′
rｘWｘｎｘｎx| : : |彡==(∴f〜ー| : : |ｰf∵)==={wｘ' z_z_z_z_| : : : ',
｛z_z_z_z z |: : ,′:::::::_) | :::::::::| : : i::::|_ (:::::::::::∨／:::::::::::::‘，: : : :,
/::::::::: ｀ヾf|: :':::::::::::｛_∵|｢￣￣￣￣￣￣￣￣|:::::,斗――ﾍ: : : :',
. _厶==ミ_::::: ∨ｉ::::::::::::::{.∴|| |:::/＾ ＾ ＾x＾_rう: : :.',
／^ ^ ^ ^ ^＼_/| |:::::::::::::ｊ／￣＼ |/｡＾ﾉｰ'⌒´ '｡: : :.:′
}γｰ‐'＾し､ ^ │|人 :::::::::{ ／ﾆ≦==､ r―--ミ| ﾟ｡: : :.:',
7 Yし}│|. ＼ :::| ' ,. ――う´ ＿`ー‐､ ＼ ﾟ｡ : : ′
/ /ｰ″|│ } ,ﾉ , ‐ ,,フ }-- .,,_¨`' ﾟ。 ﾟ｡ : : ',
.′ ＿ ノ ＿仁＞''ﾟ7; ′/ `:::‐::..、` - ;}￣￣⌒' ﾟ｡ : : ',
,′ "⌒￣￣ i{; / と.二,,_` }! ﾟ｡: : :..、
,′'" ヾ _,ノ|＿＿＿＿＿＿＿＿,|＼＿_y iﾊ: : :.＼
. i _,. 斗＜_ ｛. ＼ |!| i＼: : ＼ ＿
. 人＿＿＿_,, ‐ ''"´ / ヾ ` ミ､_＿＿＿＿＿__彡イ∧ ｀ﾞ - ..,＿丿| | ` ー'"´´
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|「ジョニィの死体を操ってた奴と、集会の『襲撃者』、そして『先行者』が別々だと考えるのは難しいね」
|
| だが、二人いない。
|
| 球磨川禊と、朝霧アサギはここにいない。
| 昨夜、『やらない夫の集会』当日の夢で彼らは過酷な現実を目の当たりにした。
|
| 『やらない夫の集会』の負傷者五名とはやぶさは、伊藤誠に拐かされて現在警察病院に軟禁されている。
| というか、アサギと球磨川は死亡。
|
| マーガレット、咲夜、タカオは集中治療室で未だに生死の境をさまよっている
| さまよっているが、未だ存命。
|
| ペルソナ使いたちは、『死んでなければ攻略参加可能』というルールを知った。
| 言い換えると、『死んだら夢にも出てこない』。
|
| その上、意識不明の間は『夢の塔』探索し放題。
| マーガレット、咲夜、タカオの三人はとりあえずで塔を登りつめて、予定を大いに縮めていた。
|
| ……そしてそれは、一つの喜ばしい可能性をペルソナ使いたちに想起させた。
| 死んでいないのに夢の塔攻略にも参加していない人物がいるならば。
|
| それこそが……。
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/ /´:::....､￣ ￣ ｀ ｀ヽ、.
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Y::::::::::::::,ﾍ＞乂ﾉヽ、::!::::::::::/ﾘ从<ｲ:::::::::::::ﾄ､!
}::::::::::::::ﾄ､Y瓦ﾄ｀ﾐト}}乂::::/ィ(ｿ) ﾉ从::::::::::{ ナイスな展開と聞いて！！
,'､ﾄ､iヽ､ゝ｀ﾆﾆ´ ヽ′ﾞｰ‐' ｲ::::::::::::乂__
八:.:.:.:.:.:｀ト.､ i /＼ﾄ､从 ヽ､,ｒ','⌒ヽｰ
/ ＼::.:.:/:::::i _ 〉ゝ /::.:.:.:.＞:.:... ＞"´￣
／ ﾉヽ: ｀Yヽ:::ﾉ ､. __ _ ´ ／ . . :. :.＞ｆﾆ二￣＿
／: : :/: : :i { 二´ ..イ´:::::::::::::/´￣￣ヽ、 : ::..｀ヽ、
.:. : : : : iﾊ . ヾTﾄ､ ／__ｘ'´￣ｒ'´￣｀ ー― .::＼: : : :.:.:＼
: : : : . : : :j i ｒ‐‐一≠´ゝ--'⌒｀ニ´｀ ヽ＿＿__ヽ、
. : : : :' : ｀こ´.....イ¨｀ヽ ー:::::::､ ...:＜:.:.:.:.:.:イ／
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ヽ (´＿＿__、＿＿..ィ´￣ ＞イ
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| 彼らが期待したのはふたり。
|
| まずは『学園封鎖』で藤木をかばい、ジョニィの爪弾を受けてそれ以降意識の戻らない早瀬浩一。
| 医者の説明では、異様に衰弱しているらしく、生命維持装置が必要なほどだというが。
|
| よもや、浩一が『先行者』なのではあるまいか？
|
| あるいは、持病の悪化で集中治療室から出られない『破滅願望者』のひとり。
| 島津由乃もまた、『先行者』として塔を進んでいるのでは？
|
| 塔を先に登る何者かが、その二人であるならば、そんな甘い期待をしていた。
| ……だが。
|
|「サーシェスが死んでなかって可能性は？」
|「…………頭吹き飛ばしたんだろ？」
|
| 信じがたい様子の委員長。
|
|「いや、有り得る」
|
| 刹那が即答。誰もが眉に唾を付ける。
| 彼はサーシェスを神格化しているのでは？
|
| 驚異的な能力を持つ怪人を、無敵の超人と勘違いしているのではあるまいか？
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＞―:::::::::::::::::::::::V::<
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ゝ---‐彡'´:::::::::／::;::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
￣／／:::::::／::／l:::::l::|:::ヽ::::::::ヽ::::::ﾊ
ー＝ﾆ:ィ::/::l:／::／::::/:::::l:::＼::ヽヽ::::l::::::::l
. /::;l:／-イ:l､:::::::::::/l::/l:∧::::}::::|::::::､＼
l::/'l:::::::::::トl_ヽ:::::///ｚl左∨:::::l:::::::::::‐≧-
l:{ ゝ::::::::{代ｆｊﾍ:{/´ 弋ﾁ, }::::ﾒテ:≦≠-
`ゝ ヽ::l:::≧= }｀ ￣ ノｨ/´::l/
ｊ/ヽlﾍ 丶 彳!:/ 十六夜、『襲撃者』は
´ l´ ヽ、' ⌒ ／ノｨk1 『エリシュ・ノーン』を使っていると言っていたんだな？
／＞‐ 彡 ´￣ 〉
{:.:￣￣ .:.:.:.:.:└-､_
＿／＞:.:.:.:.:..:.:_:.:-‐:.:.:. ´.:└┐
__/.:./ ./:. :.:.:.:￣:.:.:.-‐ .:. _ -‐'＾｀ア ヽ
. /l/.:. 人:. .:.:.:.:. _､-‐ / ∧
{/ .: / ＼＿__ -‐ ´ ∧
. /: ' | ｌ / l｜
/: .: l l | l｜
l.: .:.:. | , ﾟ ヽ| l 〈
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|「はい、だからペルソナでは治せないとも」
|「あれ？ 『エリシュ・ノーン』って、窓っちのお母さんのだよね？」
|
| 元ゲームマスター、現オペレーターの窓付き。彼女は頭を振った。
|
|「…………二人ともいない」
|
| 両親は行方不明。ペルソナ使いたちの家を転々としている窓付きも家には戻らない。
| マンションの一室は、いまや廃墟で。逆に何らかの侵入者を待ち受ける罠として、麻呂が結界を張っていた。
|
|「殺して奪ったか」
|「藤木、言い方」
|「いい…………気にしないで」
|
| 中学時代のいじめが原因で引きこもった窓付きと、娘が不登校になったことを受け入れずに暴力やヒステリーで糾弾した両親。
| 仲は冷え切っていた。
|
|「サーシェスならば、他人の能力を奪う事が可能だと？」
|「可能っつうか……その」
|
| やんねえ香が珍しく口ごもった。窓付きをチラ見。言いにくいなにか。
| 窓付きは構わないとばかりにうなずいた。
|
|「真紅さんの見立てだと、窓付きの親父さんはかなり早い段階からサーシェスだったみたいなんだよ」
|
| 言いづらい事を代弁したのは委員長だった。
| だが、窓付きは無関心に頷いた。
|
|「ああ……だから」
|
| 思い当たる節があるのだ。急に優しくなったとか。
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Ｎl＼、 ,. -─‐_フ /二二
_ｌ lﾄ, ヾﾐ､_, ／ ,ｨ´￣ / 二二
ｨヾ/ L＼ ＼乂ノｌﾉヽ､_,､,,／ ∠人 ,. -──‐_フ | 二二
＿_,ノ / | ｀i 丶 ／ ／ ,／ , '´￣￣ | 二二
￣＞ r'' ヽ,人 ｀ー‐''"´ ｲ ／ ／乂_ | 二二
、 戈_ ‐-ミ _,ノ ｌ ＼_,＼ .,、 ｀´ ／ -‐<⌒ | 二二
＿＿ゝ -ミ ｀ヽ、 ｀` ─-ミ三彡 /|＿ﾉ ｀ト| `ｽ,∧ ／彡ミ､ _ソ | 二二
───-ミ ` ､ ｀`_ｫ‐-ミ ∥ _ 心ﾊﾉ,炒' _ ', ,'".::::::厂｀ヾ､＼r‐-ミ | 二二
｀ヽ、｀`''─-ミト､ |／´ｌｌ`ﾄ､l | l 'i´ｌN／.:::::::::｀ﾐヘ＼ ｀::: : : ｀` .､、 l 二二
＼ 从ヾ､｀¨´,,''/ ﾍj.::::::::/ヾ｀`ｰ-ミ_:::: ::: : : : : : : :＼ / 二二
,.イ￣￣｀`ﾐ廴_ / ヽ_ ﾞｉ^ｉ"/ l| ::::/∧ ∨ __ ＼::: :::.ヾ＼_ヽ:: ｀丶 i 二二
. ⌒ｿハﾉノ彡/.::::::｀丶、 〈 :::::::∧ l ｌ ::/, 'ｌ∧ ∨ l| ｀ヽ__ ｀＞'.:: : : :_､＼| 二二
／''"´ソﾚ/.::::::::::::::::::l ∨::::::∧_∧ _／ ,' | ﾏ l| ＼::: ::: ／＼＼〉二二
／´i|,,ノ.:: : :ﾍ::::ヽ:::｀≧s｡.,ゝミ､::::::/.:> ' / /│ Vl | ヽ::::,ﾍ｀ 、＼ 二二
／.: : ヽ／: : : : И 〉:::,へ 二二＞:: ∠_／ , ' /} / | ＼ ＼＼_｀フ 二
. /.: :: ::: : : ／ ＞'"〈 〈／ へ ＼二＞:: ∠__／ ／ ﾉ 7/ _,ノ＼ ＼__ 二二
/.: :: ::: : : : :,∠ } / ミ ＼,〉二フ ＜__,,イ r‐'─- ／＼ ＼ {｀`─-｀- 二
. /.: : :: ::: : : : : / |l / ＼三二フ.:::::＜二,／.: : : : / : : : :.ヽ ｀ ､＼_ 二二
. ／.: : . ／} : : : / ｀´ 又¨ヽミ､≧::::::::／／.:〈 : : : : : : : : | : :l} ∧＼_｀フ二
〈:::: :::／ i{: : : / ,へ./il :::::＼ヽ:::::::::: /.:::::::::｀: : : : : : : : ｌ : :| l 二二二二
´ｉ }::: ::{ ﾒ:/:/ ／.: : : : : :::::::::i ::::::::: ヽ::::::::::: : : : : : : : | : l| /二二二二二
＼／| ＞‐ﾍ''" :::/ ／. : : : : : : ＼:::::| ::::::::::::: 〉:::::: ,ﾍ : : ＼: :/: ::/ /二二二二二
.二/ ソ´/ ﾏ :: l_ ／.: : : : : : : : : : : ＼丶:::::::::_〈 :::: / ト､ : : : : : :/＼ /二二二二二
/／ 二/ ＿〉ヽﾉ /.: : : : : : : : : : : : : : ﾚ`ｰ'￣ `¨´ 人:::＼: : : ﾉ.: :∧ ∥二二二二二
二二 /／ 二｀ｉ /.: : : : : : : : : : : : : : / 〉:::::. : : _: : :|│ i 二二二二二
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二二二ニニニ ∧ 〉:: : : : : : : ::／〉:: ::/ ＼:::: ト l|: ∧ |二二二二二
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| ともあれ、窓付きが『父親』に与えていた『法務官 ヴォリンクレックス』は『他者を食って能力を奪う』。
| サーシェスがその能力を使って『法務官』をコレクションしているのかもしれない。
|
|「ねえ《ストレンジカメレオン》で答え合わせできないの？」
|「アイツ、出てこねェンだ」
|
| やんねえ香に寄生する『世界の敵の敵』である全知存在、《ストレンジカメレオン》。
| 前回の『夢世界』ではやんねえ香のペルソナのフリをしていた。
|
| だが、実態は『夢世界』というひび割れからこの世界に侵入する『滅ぼすもの』を水際で破壊するための存在である。
| そして、『夢の塔』には世界の危機が存在しない。
|
| 残念ながら『ビスケットハンマー』は世界内部、人類の普遍的無意識野から発生した危機。
| 《ストレンジカメレオン》とは管轄が違うのだ。
|
| で、何が言いたいかというと、《ストレンジカメレオン》に答え合わせを頼みたくてもこの場にいない。
| 朝起きてからだと記憶に曖昧さが発生してすべて聞けるわけではないという不便さとなっている。
|
|「…………俺はこの後の探索は不参加だ」
|「不許可だ。刹那がいないと戦力的に厳しい」
|
| 考え込んでいた刹那。ナイフの輝きを秘めた鉄色の瞳がギラリと光る。
|
|「睨んでもダメだ」
|「マリナ・イスマイールがここ数日、付け回されているような気がすると言っていた」
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_,....‐::‐::-r::‐:::-..､
.／::::_;::::::::::::::'､::::::::::::｀ヽ.
.//::::/::::;::::/:/:::::ﾍ:::､::ヽ::::::ヽ
//_;:/ｪ=l=-lｪﾚ‐:::ヽ-.t-::〉､i::〉i
f/l:ｰ1:::::l!:::::|!::|::::::::l:|::::l:::｀:i.ﾄl､ｨ'i
|!::|!:::|!::l:l::::/l!:ﾊ:::::::ili|::::ﾊ:::::l|:l|:!:l.l
!:|!:::|!:/tlr_‐t{ ﾘ!::/|rj:ｧ‐ﾘ::ﾘl|:l::il| 学校があんなだけれど、
l:||:::::lVT:i:Yヾﾞ ノ ''T:iYV:/:l:::/ﾘ むしろあんな事があったから
ヾ::::| ヾ¨´ l ｀´ノi::::;､{´ やらなきゃいけないことが多いのよ。
V:::! | ,l!:;ﾘ ｀
!:::lﾍ _｀__ ｲ!' | だけど夜に、
|l:::ト:ゝ ,.イ.|::!l l ふと誰かの視線を
!:､|:iく!_｀ - ´_ﾚ! .|:/ﾘ 感じるような気がするの……。
/!:::〈! ｀ヽ l´ ﾄ､!::i|
_,. ' 7:::::ﾍゝ､ V .. イ V:/ﾄ .._
, - ‐ ´ /|!::∧´￣|冂|￣｀//::|! ｀ ‐- ､
! ､ ! |l::|| ゝ､ノiTﾍ､ ｰ'||:i|.l , !
| ヽ | .|N |､／ / l ヽヽノ!!ﾘ l / j
| ヽ | !:| .l / .: ヽ .||| | .i / l
! V ! .l:| |､_/ i ヽｲﾘ | !./ l
} | .l l| ! ﾘ .j { |
| .{ ､ ヽ l | / / } |
l l ヽ ヽ｀ー-‐ ' / / l !
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|「………………」
|「窓付き、可能なら今すぐ起床したい」
|「そうして」
|
| 『敵』がアリー・アル・サーシェスならば、すでに四つの『法務官』を集めていることになる。
| 残る一つ、マリナ・イスマイールの『シェオルドレッド』。
|
|「でも、いま真夜中だぞ？」
|「合鍵がある。今晩からマリナ・イスマイールを護衛する」
|
| 合鍵、若く美しい女教師と、お気に入りの生徒。思春期の少年少女たちには刺激の強い燃料だ。
|
|「寝ずの番は刹那が潰れる。明日麻呂さんに応援を要請してみよう」
|「助かる」
|
| 冷静な雨宮夕日。彼は参謀会議に参加している。
| ……だが、と夕日はひとりごちる。
|
| やらない夫、ジャギ、蒼星石、やる夫。そして天龍とシグ。
| 『やらない夫の集会』とその直前の『間桐屋敷襲撃』で六人が失われていた。
|
| 頼める人手など限られている。
|
|「待って、不可解な点があるでアフロ。
| バートンか委員長。イスマイール先生を尾行するとして、気付かれると思うでアフロ？」
|
|「あんなぼんやりした人に？」
|「言い方ぁ……だが確かに、プロなら気取らせやしないだろうな」
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∨/Nｸ ｰ.-.=ニ二.三.二ニ:=::-‐::≦i;;;;;,'
<Ｘ｜: : kry: :::７ ｌｌ:ﾊ:::::ｧ_ｭ;::::::::::l厶<
ｨﾆ彡ゝ!､ ｀ ´ / !.ｉ::ﾊ::::::::::::::::::;::ﾘ７!i!lﾔ 罠だな。
〈从!i !.ﾊ , -: ､:':. : : ::::/:/∧州ｉ そして狙いは間違いなく聖詠だ。
K州入i .ﾊ '´‐ `' ､ .:/::ｌ :!;liミi_､ お前が気付いて先生の護衛に行く
∧从乂..ﾊ ､_. -‐=＝=人 ':::/斗;∧' そのタイミング待ちだろう。
Y从川ｬ､! ￣二ニ､´:. .!:/|;从;∨
∨ｿトl! ヽ, ::::::::::. //:::lﾘi ⌒`'
`' | ,:. ､ .::::::;::':::':::::| `
! ,＼｀:::-:=:=:::':;::':::::::::|
_. -r=＝ﾆ二7;ﾊ-ﾊ二ニ＝=‐- ._
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|「青葉ならどうする？」
|「聖詠に屈辱と敗北感を与えたいなら、強さを見せつけて拘束して、目の前で先生を……」
|
| 真面目な顔で考察しながら、貞山青葉は周囲の女子の刺々しい視線に気が付いた。
|
|「ふひっ、これは考察であって！ 決して僕の個人的嗜好ではないでござるよ……！」
|「いや、大いにありえる」
|
| アリー・アル・サーシェスは執念深いサディストだ。
| レイプや拷問、マリナに刃物を渡して刹那を刺させるとかもしそう。
|
|「冷静になった。どうすればいい？ だからといってマリナ・イスマイールを放置はできない」
|「聖詠ではない誰かが行くのは？」
|
| 青葉が頭を振る。
|
|「勘付かれたなら、その誰かを拷問して殺して先生を拉致。手紙を残すだろうな」
|「積みじゃん。相手は『隠れしウラヴラスク』なんでしょ？」
|
| アリーの『法務官』は魔法でも機械でも看破できない絶対的な隠密能力を有する。
| 本気の彼ならば、何者も奇襲を避けられない。のだが。
|
|「…………『見えない悪魔』」
|「なんだよそれ」
|「『学園封鎖』中に俺とマリナ・イスマイールを攻撃した悪魔がいた」
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／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :､: : : : :＼
/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼-､_: : ＼
/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |: : : :ヽ: : : : ヽ: :､: :ヽ ヽ､ ＼
, ': : : : : : : : : | : : : : : : : : : : / : ;| :｜: : ヽ: : : :丶 ヽ: ∧ ‐ ＼
＿_／: ／: : : : : : : :|: : /: : : : / ／:/:/ V |: |: : : ＼: : : ＼l: l:∧ ｀ヽ
ヽー ｀ﾆ＝‐:´: : : : : : _ : : | : l : : : : ﾚ: :ィ ｌ/＼Ⅵ: !:|:| : V : >: __ 丶､ i
丶､: : : : :‐＝ニ／: : ィ:| l | : : ／ｨ: :/ ｆ＝ﾐヽﾄ､l |:|: : |: /: : / : ┬ `＝-
≧＝―: : :´: : : :ィ:_|:ﾍ|: : |: : l|: :| 、 ｆｨふﾐヾ|: : |/: ／: :l : |: : l
` ￢￢ ＝:彡く |: :l: : :l: :ハ: | ｀弋( /: :ｨｹ7: /: /: / : : ',
ヽ l､: :´: :＼ V:l: : :|: l ヽl /／{ﾘﾂ /: /l / ＼ : '､
`l ヽ : : : : >Ⅵ: : ﾄ l ノ´ ヾ:ノ／ ﾉ' ＼ ＼
V: :l N `lヽ | _ > ｀ ‐ヽ
|:l: l/ `l ,.､__ ,ｒ ｆ´
__,|ﾙ' ￣__｀ﾝヽ:l 俺には違和感すらなかったが
|‐┴-､_ l ､ /ｌ | ｀
| ｀`丶、 ＞ _ /l |/ 夢宮アリカは
/ ヽ ／￣/｀ Ti l'′ 『そこだけなにもない』と言った。
_,,.. ‐l l l ｛ `l
＿＿,,.. -‐ ¨´ Ｋ ､ | ﾉ }-､ あれもアリーだった可能性がある。
l ヽ｀ ‐-､_ ｊ′ ∧ ` ー- ､__
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|「ごめん、何言ってるかわかんない」
|「……『血族』の夢宮か」
|「知ってるのか藤木くん」
|「会ったことはござらん、虎眼先生に化物と言わしめるる傑物だとしか」
|
| アリカならばあるいは。
|
|「夢宮さんは『間桐屋敷襲撃』組と休息中らしい」
|「最悪、マリナ・イスマイールはそちらに保護してもらう」
|
| 自分勝手な言い分だが、誰も文句を言わない。
| あのお人好しの女教師が、怪物の魔の手にかかるのは見たくなかった。
|
|「こちらから手勢は？」
|「不要だ。本当にアリーならばペルソナ使いは足手まといになる」
|「わかった。幸運を」
|
| 窓付きの誘導で現実に戻る刹那。
| 残された高校生たちは顔を見合わせる。
|
|「さて『先行者』だけれど」
|「……その前に、『先行者』が一組じゃねえ可能性は？」
|
| 委員長の言葉に、藤木が唸る。
| 剣の弟子である島津由乃と、自分を庇って負傷した早瀬浩一。ふたりを案じる気持ちは強い。
|
|「ねえ窓付き、上にメッセージとか送れない？」
|「…………たとえば？」
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『現状はナイスな展開とは言えない、
このまま進めば体がチェスト関ヶ原』
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「……壁になんか書いてあるですね、意味不明なのが」
|「ふうむ……」「日本語か？」
|
|「これ、メッセージなんじゃない？ 早瀬と島津への」
|「どこから？ 上から？」
|
|「窓付きからかもよ、あの子ゲームマスターだったし」
|「あり得るけど、警告と来た」
|
|「警告ですか？」
|「チェスト関ヶ原……『ブッ殺す』を意味する島津の言い回しよ」
|
|「ほう」「なんだそりゃ、ブッ殺し返すしかねえな」
|「面白くなって来やがったてすね」
|
|「誤用かもよ」
|「は？ なんでよ。『これ以上進んだら殺す』でしょ？」
|
|「いや、もしかしてさ」
|「なんだよ」
|
|「夢の中の戦いで、現実にダメージ受けてんのかなって……」
|「…………」「…………」
|
|「ナイスな展開だな」
|
|「早瀬？」「その程度で尻込みしてちゃヒーローにはなれない。だろ？」
|「そうね、ここで行かなきゃ女がすたるってもんよ」
|
|「やれやれ、馬鹿ばっかですぅ」
|「リアルと同じさ、サバイバルだろ？」
|「愛ゆえに戦わねばならん時もあるということだ」
|
| ペルソナ使いたちよりも遥かに先をゆく五人は、そこで議論を打ち切った。
| 肉体に強烈な負荷がある。そう言われても足踏みするような者は、ここにはいない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告
『スケアクロウ』。
直訳すれば『カラスを脅かすもの』。
すなわちカカシ。ボロをかぶったもの。
カカシ。
害獣を追い散らし、農作物を守るためのはりぼて。
案山子。あるいは鹿驚。
カラスとの親和性や、時に農具を持たされる姿から、西洋ではしばしば死神のイメージを持たされる。
麦穂を刈るように首を狩る。
それもまた。
次回、最終幕九十三話『襤褸纏いの怪物』
果てに見るのは破滅か死か。
夢の中でも現実でも厄介だが現実の方がまだ分があるか？
サーシェス、元ネタの00でも大概しつこいが
こちらでもゴキブリ並みにしつこい
また髪の色がゴキブリ色してるから余計嫌なんだよアイツ
そうか、先行者このスレの10歳年上なのか……
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
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| )ゝ‐イl |
|,ノ,ィ≡ミ ゝ |
|ヽ{((〇))} ( |
. | ).ゞ==彡/ |
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 紙袋をかぶった汚れたコートの男が、冬の冷たい雨の中、穴だらけのビニール傘を片手に歩いていた。
| 草木も眠る丑三つ時の東京、残業続きのブラック企業社畜以外は夢の中。
|
| ふらふらと、麻薬中毒者か泥酔者のように頼りなく歩く。
| その行く手に、立ちふさがる影。
|
| ……瞬間、雨がやんだ。
|
| 奇跡的な雲の切れ間、スポットライトのような光条が影を照らす。
| 百円の安物のビニール傘を片手に、子供のような背丈。
|
| しかし、その金糸のような巻毛は、寒さに赤らんだふっくらした頬は。
| 憂いを孕んだ青い瞳は、悲しげに震える長いまつ毛は。
|
| 息を呑むほどに美しい。
| それこそ、人知を超えた美の化身であるかのように。
|
| コートの男は言葉をなくし、手にした傘を取り落とした。
| 美の顕現はしゃがみ込んで傘を拾い、怪人に差し出す。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿ ﾉ ≧:::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::: ノ:.:.:.:.:.::::::::::,'´_
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.. |.| ｿ人ミ>/:.:| il 小 il .il 升 il iミ､:.:< フ｝
|.| .// V ｲ:.:.:.| ﾄ il -升弋-､ il i ヽ /│ .ﾊ il |ﾊ:.:.ノ 小
|.| //i ﾄ V-､ヽﾄ､ .il､ ≧ｧ=-､ﾊ,､ ヾ /-ナ‐升- ､ .il ir'´ｿ/ ﾊi
|V/ | .ﾊヽ 廴::::|ゝ川 ﾜ示芯゜ ｀',v/ ≧＝ﾅ_ /.il ﾘ::ハ | ||
. // .| .| ll 弋.{ .|ト､ゞ─'´ ｛辻り >/ノiﾊ i /ﾘ|::| i | || その格好、
/ ﾊ .| .| i｝ >/ .|ヽ｀'､ , ゞ-ィ / イﾉﾊ/ﾚ .|::| / | || 危ないわよ。
.//廴| .| .| |｝ /ﾊ |∧ ヽ _ ./i l .|/ |::|| | .||
./ | | |} / .| Vr＞ ） ｀ .ｲ/ .| .| .V/i .:| .||
｝ | | .|｝ / 小 V/>/＞ , -＝-≦ | | .| 人 > | .il
| | V/」 / <::::::|ヽ ヽ/:::::::r'=ミ入:::::/:::::｀-ｲ 小.| | | | |/
ヽ / v i レヽ::::>､ X:::.::ｨ｛rj｝ｿ::::::ヽ::::::::/ .| ヽ │| | |
＼ ./ 川 .人:::/廴∧ / V::ｨ:示::ヾ::::::::.:.::./ /ﾉ ＼ | | | |
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|「えあっ、はいっ、ええと……あ！ あー、スケアクロウです！」
|
| 怪人は慌てふためいて意味不明の言葉を返した。
| その声はまだ若い、大学生か新社会人か。
|
| 美しい女は興味なさそうに傘を手渡すと、何事もなかったかのように立ち去った。
| 残された怪人は再び降り出した雨に濡れるがままに、呆然と見送る。
|
| まるでおばけや幽霊でも見たかのように。
| そう、このスケアクロウを名乗った怪人は、『スケアクロウ』ではない。
|
| …………『スケアクロウ』。
| 逃亡中のやらない夫がやっつけで行った変装だ。だが、いつの間にかそれが都市伝説のように広がっていた。
|
| 『やらない夫の集会』からまだ二日。
| ネットではジャミングされて不鮮明なやらない夫の写真や、『集会』の惨劇の映像が飛び交っていた。
|
| 中でも抜群の再生回数を誇るのは、『やらない夫の最期』と銘打たれた動画だ。
| 投稿者は不明、麻呂に確認したところ、『血族』が用意した可能性が高い。
|
| とはいえ、頼りのダルはやらない夫死後に意気消沈して抜け殻状態のジャンヌの側に行ってしまった。
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-‐ ≦´｀≧
≦ ´ く `
|ヘ ｀ メ＿＿＿＿＿_ ` ､
| ＞ ￣ ク
| ｀ _. イく
| ｀ Y , イ ´ ﾀ
| |/ .｝
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|〃｀i | / !
|乂 ﾉ | .i !
| | .i !
| | .i !
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＼ .| ', ／ト 、
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ゝ 、 / _ イ´.: : : :.／ ｀＼
＞‐-‐ ´: : : : : : : : : / ＞‐,r -‐- 、
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| それが『スケアクロウ』。
|
| 異様に背が高く、針金のような手足の紙袋をかぶった怪人。
| 蜘蛛のように動き、夜中にひとり歩きの誰かの前に現れる。
|
| すでに都市伝説として語られ始めていたのを、不人気は調べてある。
| どこから仕入れたのか、あの頭の悪そうな喋り方や『スケアクロウ』という名前、挨拶なども同じだった。
|
| 人間をさらう。ひとり歩きの女に挨拶して忠告する。
| 犯罪者を殺して埋める。迷子を食べる。
|
| 見た目同様に善悪の区別のつきにくい、狂った怪異の類。
| その正体がやらない夫だと知られると同時に、爆発的に流行した。
|
| 悪人を殺す。怯える弱者に忠告し、従ったものは助かる。
| そういうタイプの妖怪かヒーローのような描写が量産され、そして何よりも。
|
| 容易なコスプレからか、真似する若者が続出。
| 夜の街はスケアクロウで溢れかえった。
|
| 恐るべきはインターネット。
| お祭り騒ぎにはしゃぐ若者やネットサーファーの大半は、流行っているから波に乗る。
|
| その源流、元ネタには興味がない。
| 今ある高波に乗り遅れてはならないとばかりに押し寄せて、波をさらに高くするのだ。
|
| 刹那的に。
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／￣￣＼
／ ノ:::::::ヽ（ ;:;:）
| （ ;:;:;）::::（ー） |
. | （__人;;:_）.:| さすがのオレもドン引きだろ……。
| ＃ ｀|⌒´；:.i
. ( ;:;:;:;:)..i ::::::::/
.ヽ;;;;;;;; #.人
.. ..／/|＼／ /_ﾉ.ｌ⌒l
/ /__| ＼/ ./ | ../
ヽ、//////）./ . |.ｲ
/ ￣￣ / | .|
____.,/ )--- ヽ
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|「貴様本人よりも人気があるのではないか？
| 見よ、女体化エロ画像でおじゃ。保存いいねリツイート、マジシコと書き込みもしておくでおじゃる」
|
| そしてこちら、主人であるダルがいなくなった後も、やらない夫たちのアジトになっているメイド喫茶。
| 片足の老人がデュアルモニタを前に書き込みしながら情報収集。
|
|「趣味悪いだろ」
|「愚か者め、女体化エロまで来たからにはもう勢いは止まらぬ！
| あとはクッパ姫のように一瞬で衰退せぬように、一般への周知を広げる……貴様は、第二のアマビエになるでおじゃ……！」
|「えー……」
|
| 血走った目で唾を飛ばす蘆屋道満麻呂。彼の隣には包帯ぐるぐる巻のやらない夫。
| そう、やらない夫である。
|
| ジャギ以上に瀕死の重傷ではあるが、彼は普通に生きていた。
| その腹の上に乗るニャンコ先生。鼻ちょうちんを膨らませている。
|
| 『やらない夫の集会』の被害は、想定を遥かに越えていた。
| ジャギが捕虜になり『血族』に潜入し、『間桐屋敷襲撃』で捕虜になったやる夫と蒼星石のフォローに回るのは予定通り。
|
| しかし、天龍とシグがロビンに負けて『教会』の捕虜になり。
| 球磨川とアサギが死亡、マーガレット、咲夜、タカオ、はやぶさの四人が誠に攫われたのは大きい。
|
| 『夢の塔』を攻略中のペルソナ使いは目覚めると疲労で役に立てない。
| つまり、残ったのは麻呂ミスト四ツ目鹿島、そしてアリカだけ。
|
| なお、『血族』側に潜伏するロストスキルと黄泉は数に含んでいない。
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人:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}∧/＿___
＞'´￣｀Y´￣￣｀ ｰ､:::::::::::::::::::::::::ノ￣｀ vilil/
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| ／ ./ / ｉ ', i
| / :ｌ ｌ :ｉ :| | ｌ :l | i }
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八 j | ｌ:. / i/ 八 :/l/ ヽ l | {
V :,' 八 ﾔう斥ミ ＼_/ｨf斥芍.} ./ 八
∨ ,' :l∧ '.弋r'::ﾂ 弋シ ,' ./ ' ＼ え？
/ / :| ＼j､､´､､ , ､､､/／' /( ヽ 私も戦力に含まれるんですか……？
／ ./ :人. ∧ ,' ./ ,' ) )
〃.' .:／ ) ) 个 r っ イ ./ ( / ／
} ', .:/斗≦(/ ,' } ﾍ ＞ ≦ / .八 V ／ ｀ヽ
八 丶 :(_i_i_i_i∨ :/--､ｊ }__ .／ / ＼ l （＿__ノﾉ
＼ ヽ :)l_l_l_l_{ :/::::::::(ﾆ(::::::｀ー､＿/((__ノ.ﾉ＞ー‐''´
((___) ノ-=≠人 (─＜⌒＼:::::::::::::＼ }_i_i_i_i_i≧､
￣ ´ } / ∧ ｀ ＼___＞=─‐‐｀ }_l_l_l_l_l_l_lﾊ
j／ / ＼ ＼ ｀丶 ｀¨＞≠=ー}
／ 'ｏ i｀¨ 7─ ､_＼ ＼ ′ |
. / / i: ／ ｏ/ ∨ ./
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. j: : . ‐＝=‐- ' :}ヽ .ｲ
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|「頼りにしてるでおじゃるよ『有明の女王』」
|「なんだそれ？」
|
|「知らんでおじゃるか？ 自衛隊が有明で演習を行った際に……」
|「わー！ わー！ わー！」
|
| ここに、半死人のやらない夫は含まれない。
| 半死人というか、意識があるのが不思議な重傷。手足の欠損はないが、両腕でと片足を骨折し、肋もバラバラ。
|
| 背骨も粉砕されて内蔵も穴だらけ。
| その上、全身の三割近くにひどい火傷を負っていた。
|
| 死んでいないのは、ニャンコ先生の必死の介護と『エクスカリバー』による『守護神』の治癒能力のおかげ。
| そして、あの状況で生き残ったのも『エクスカリバー』のおかげである。
|
|「あんな真似は二度とごめんだろ」
|「まだ動けるようになるつもりでおじゃるか……？」
|
| 北斗神拳で全身の気脈をバラバラに寸断されながら、魔力を暴走させられて爆死したのだ。
| 正確には、爆死の瞬間に前もって麻呂が用意していた式神を起動、代わりに肉片となって飛び散ってもらった。
|
| やらない夫がどれほど楽天的でも、あそこまでの移動で球磨川がやらない夫を見失っていないとは思わなかった。
| 自力で死ぬつもりだった。
|
| その方法。謎のヒロインXが水銀燈を消し飛ばしたのと同じ原理。
| 地球の重力を一瞬だけオフにして、遠心力に放り出してもらったのである。
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／￣￣￣ヽ
／:::: ||||| ヽ
／::: __ノ::::::ゞ;;:）
/ （ ;:;:;:;ﾉ:::::<－>
／;:;:;:;;;:; （＿ _人 __） ニャンコ先生がいなければ死んでたけどな。
.／//ヾ .｀┃ノ
/ /| ヽ／ / ∧ |
/ /_| ＼/ / | |
ヽ、//////）/ | |
/ ￣￣ ﾉ | |
____,/ )--- ヽ ヽ つ
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| ジャンヌとケンシロウとの死闘は熾烈を極めた。
| すべての攻撃はジャンヌの防御に防がれ、ケンシロウの打撃は何もかもが即死技だった。
|
| 時折炎を放つジャンヌ。炎は常に撹乱であり、気を取られたらケンシロウにやられるタイミングだった。
| そのため、炎甘んじて受けるしかなかった。お陰で全身大火傷。左手なんて炭化している。
|
| とにかく十全に抵抗し、必死に戦い、その果てにやらない夫はケンシロウの突きを受けた。
| 全身が膨張して爆発、肉片しか残らないその技をこれ幸いに、やらない夫は死を偽装した。
|
| そして受けたダメージの大きさから、空中で失神。
| 日本海にの藻屑になりかけた。
|
| ケンシロウの一撃も、『エクスカリバー』を併用した気脈操作で八割は排出した。
| 残りニ割でごらんの有様なのだが、そこは諦めが肝心。
|
| やらない夫はどれほど障害が残るのか想像もできないが、命があるだけありがたいと感じていた。
|
|「あと一回はなんとかしたいだろ」
|「死ぬでおじゃる」
|「だって、『冥王ニビル』の迎撃はオレの役割なんだろう？」
|
| 麻呂は弟子を睨みつけた。普通ならば何度も死ぬほどの傷。
| 痛みで気が狂うほどの重傷ばかり。なのに昏睡もせず、口調はしっかりしていた。
|
| 空元気で、平然を装っていた。
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ﾑ;:''"´￣＿＿;:;|;:;＿~｀丶､!
,{__, ィ''"´ r‐っ ￣ r-､丶､;:;l
,'ミﾐ:::::ゝ , . ￣:. ｀`′,}:`i!
,'ミﾐ:::/ ,. -‐- ､:. , - ､ヾ:::l
lミ:::::' ,:' ,ｨ戓ﾆ>,:' : ｨ戓ゝ、ﾞi::l 戦いで死んだもの。
〃ﾍ:::j :. ‐ '" ,. ヽ` ﾆ !:l 傷ついたもの。
{に}ﾊ::, :.:.:.:.. (r:､ ,､〉 l:ﾊ
ヽいjl::', :ヽ ,' ; ヽ ﾉlﾉ} その全ての責任を負って死ぬ気でおじゃるな？
丶-ltﾂ .:.: l:.: ,r'ﾆ=ﾆ､ ﾞi, i_ﾉ
l ､:.:.l:.: ｀ ''―''" 、 /
ﾄ､、ヽ丶、:.:.. ノ:／
,(ﾆヽﾐミ=､、::.::.::.::''"／
／:.:.:.｀ヽヽ、:.:.: ￣ ,!
＿＿＿,,r―'‐-- ､、:.:＼＼:.:.:. l、
/"´⌒丶:::::::｀ヽ､｀`ヽ､::::::｀ミﾆゝ丶、 八
:::::,r―-､:ヽ::::::::::｀丶、｀丶､::::::::::::｀`7＝く、L,＿
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|「なにしろオレはデマゴーグなようで」
|「たわけーーッッッ！！！」
|
| ぶん殴る訳にもいかず、麻呂は手にした笏をへし折った。
|
|「貴様が責任を取らねばならんのは、そ奴らでは無かろうが！
| 調子に乗って危険に近寄った阿呆は言わずもがな！
|
| 高校生のガキどもも、決意と覚悟もなく戦場に立った訳ではあるまい！
| 背負うなとは言わぬ、されど押し潰されては本末転倒！」
|
| 地団駄を踏まんばかりの麻呂、やらない夫は感情なくそれを見つめる。
|
|「だが、オレはオレのしでかした物事の責任を取らにゃならんだろ？」
|「生きて取れ」
「どうやって？」
|「自分で考えよ」
|
| 突き放す麻呂、やらない夫は押し黙った。
| 彼の足元には怨念の影がある。彼の背後には死者の道がある。
|
|「ジャンヌもケンシロウも最もだと思うだろ」
|「何を言われた？」
|「『偽救世主』、無意識過剰、人々を奈落に先導する、戦火を広げた」
|
| 並べ立てるやらない夫。
| ディオの姿をした『襲撃者』への答えは、今ならすぐに出る。
|
| 生まれ変わってやり直したい。こんなはずではなかった。
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|三三ﾆ￣￣｀ﾞﾞﾞ'''''''ｰ‐'-一''''''""´´￣￣ﾌ三三ヽ
|ﾐ三三､、 ｨ三ヲ : (三ﾆ; ノ三彡彡ﾍ
|ミミﾐﾂ″ .: . ﾞヾ彡彡彡l
rミﾐｿ ,. ＿,,-‐ ､ __ :, -‐‐_,,,..,_ ､ ヾ彡彡l,_
. { ミﾐ .,ｨ"で;)ヽ､ ) (: ,ｨ"で;)`ゝ. 彡彡r､i
! lﾐﾐ :: . ｀￣"´＾ : ｌ::.､ ｀..￣"´. :: 彡'ﾘi i}
',ヾﾐ, : l:::. ..彡ﾂ ）/
i ､ﾐ ::.. , . : : ヽ. .::::彡i.ノ/ 前の三つは完全に同意でおじゃる。
!､_ﾐ: :::.. /ヽ =､__,.ｨ= ﾉ::. ..::::::彡i ﾉ
ﾐ : : ::.. / : : ヽ. ..::: : : :彡‐´ やらない夫よ。
ヾ,: : : : :. ,ｨﾆﾆ=ﾆﾆ=､_ ', . : :: : :〃ゞ 貴様は人々を霧の迷路に誘い込んだ。
ヽ: : : : :. /､^'＾＾T＾＾｀`ｰ､ i : :; : ://、
ヽ: : : : | ﾄ､_ .! _,,ｨiｦ′,': :,' : /ﾄ:||ヽ､
ヽ: : : ヾTｴｪｪｪｴｴﾝ′ ,' :/: / 〉′i::＼
ゝ: : ｀ｰ-----‐´ ノ /:/ / /::::::::ヽ-､
ｨ‐':| |.＼ ／´ / ／:::::::::::::::ヽヽ、
／ /:::| | ｀ ､,,＿＿＿,,..／ ／ ／::::::::::::::::::::ﾉ ﾄ、
,. -‐''"´/ /:::::ヽヽ ／ ／::::::::::::::::::::／ ﾉ ｀ｰ､
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|「『敵』という嘘、陰謀論という嘘、悪魔も『血族』も『教会』も隠し通して。
| その上で辻褄を合わせてまとめ上げ、何もかも霧の中。上出来でおじゃろう」
|
|「そのせいで名も知らぬ誰かを危険に合わせていたとしても？」
|「東京で内戦が起きればあの程度では済まぬでおじゃろう」
|
| ムスカがクーデターを起こしていたならば。
| シロッコが、『十字軍』が平和を踏みにじっていたならば。
|
| 平行線だ。麻呂は死人より死にかけのやらない夫を見つめる。
| やらない夫は罰が欲しいのだ。
|
| 敵の言葉に心を引き裂かれ、付いてきた仲間を失い、名もしれぬ誰かが死傷した罪に苛まれているのだ。
|
| 翠星石の名前を出して、生きろと言うのは容易い。
| しかし、大事な娘をニンジンのようにぶら下げることはプライドが許さなかった。
|
|「もう一度言うでおじゃる。責任は生きて取れ」
|「…………」
|
|「この戦いが終わった時に、まだ貴様の命があるのならば、東京の平和を守る組織に入るでおじゃる」
|「…………『血族』ではなく？」
|
| 麻呂は鼻で笑った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（○）（;;;;;..） | …………ああ。
（__人__） u .| 『血族』がないかもしれないのか。
ヽ⌒┃ |
｛ /
丶 /
ゝ ＼
ﾉ ヽ
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|「警察か、場合によっては『結社』か。場所はどこでも良い。そこで償うでおじゃる」
|「…………」
|
| やらない夫は沈黙した。
| 何を考えているのか、麻呂にも分からない。
|
| その時、この面倒くさいやり取りに終わりを告げるノックが鳴り響いた。
|
|「おっはよー、麻呂さん。やらない夫さん。おじじ連れてきたよ」
|「連れて来らレマシた」
|
| 久方ぶりの登場、魔匠マイケル小原である。
| 『蒼天の青玉』をこっそり持ち出したことはこってり絞られ済み。アリカはあくびを噛み殺しながらも元気なもの。
|
| 彼女は昨晩深夜に叩き起こされてマリナ・イスマイールを保護していた。
| 今、マリナは遠坂の家で瀕死の面々の看病中だ。
|
|「……話にハ聞いてマシたが、ヨク生きてマスネ」
|「主人公補正だろ」
|
| マイケルは背負っていた風呂敷を置く、異様に重い音。中身は工具。
|
|「マズはネウロから伝言デース『なぜ降りて来ちゃったんデスか』」
|「ん？」
|
| この穏やかな老人は、弟子の罵詈雑言をフィルタリングし、要点だけを掻い摘んだのだろう。
| では、その要点とは？ なぜ降りてきた。どこから？
|
|「あ……ああ！」
|
| やらない夫は、師の言葉の意味に気づき額を叩こうとして悶絶した。
| その腕は今は折れている。
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ｌ ｌ ｒ┘
... ｲ { .. .. ,ﾆ
::::::::::::::::::::::7/_、 ヽ ｌ ,、{ |:::.................:::::::＜
::::::::::::::f＾V{ヽ‐ ﾐｚ- ､」_ｊレ-彡‐ﾐｨ‐i:::::::::::::::::::::≧´ オーウ、無理してはいけマセーン。
::::::::::::::|,ﾍ トｌ -━ニ i-|ﾆ´━- ﾉｲ }::::::::::::::::::ン､ ＿ やらない夫サンは肉体も気脈もボロボロなのデース。
::::::::::::::ヽ (| ｀ ‐――'′}`――'' |ﾉ/::::::::::::::さ" ＞― ､
"レｲ,;;;__〉-|ヽ, ,_ !_､ ｌﾚ/`ヽヾゞ､ '"´ ヽ
´ /｀'| ! -‐'"¨‐¨‐ヽ､ !}┘ ﾉ __
ｌ | ｆ' "´二,｀`ｌ | } ､ / }
＼ ヽ､,ﾉ .! ｀ｌ | | ヽノ ／ | | }
｀` ‐ ､ ,' ヽ、ｊ :{ ノ :| , -‐ '" | | |
ｿ ´ ` |'" | | !
､_､、 彳 '､ _ ,ｨ | ヽ、 ヽ
ヽ'｀゛¨ ｀V:::: }ｲ"'¨´∠ _ム-'"´ヽ
__ヽ:::::::::::...ｲ::::::::..:::::. i: ...:::::. .....::}:: ｒ￢'´ ノ 〉
゛`:::::::::::::::!::::::::|:::::::.::::!:::::::::::::::::::{: {_ ﾉ}, -‐'´ , }
ゞ::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}:::::::::::::::ヽﾍ_ -‐'´ }
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| 言いながら、マイケルはカミソリを取り出した。
| キラリと輝く、よく切れそうなそれを無造作に振るう。
|
|「ギョエエエ！？ なんじゃあ！！？」
|
| 飛び起きたのは、ひげを切られたニャンコ先生。
| 猫のヒゲはセンサーでありアンテナ、重要な感覚器官である。良い子は真似してはいけない。
|
|「フゥーム、噂通り良質の魔力電導体デスね」
|「この外道！ なにをするか！？」
|
|「ちょっと……静かにしてほしいだろ」
|「まっすぐ歩けなくなったどうする！！？」
|「ホイ」
|
| もう一振り。反対のヒゲもまとめて収穫。
| 唖然とするニャンコ先生。マイケルは切り取ったヒゲを丁寧に並べる。
|
|「やれるでおじゃるか？」
|「かなり危険な術式になりマース」
|「やってくれ」
|「なにをするの？」
|
| 危険と聞いて、かわいい眉根を寄せるアリカ。
| やらない夫は心配ないとばかりに首をふる。
|
|「一昨日の戦いでぐちゃぐちゃになったオレの身体に、ニャンコ先生のヒゲを移植して補強する」
|「待て、待て。聞いておらんが」
|
| ニャンコ先生が治療疲れで熟睡中にやらない夫が言い出したことである。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ゝ /. : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
） ( ' : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
/{ ⌒ ヽ､_.:.:.:.:.:.:.__. ' ,
ん｀ ,ィ:::‐ 、 ￣ ,ィ' ¨丁`ヽ ´_
′ /._ !:::::::lヽ ／ !::::::::: | ヽ 寸断された気脈の代わりに
; ヽ. ｀ヽ:::! } { _.⊥ -‐┴…- ｀ ヒゲを移植して魔術伝導力を上げるとか、
! ヽ｀ ｀` ___ノ
' ____ノ そういう意味不明の論理を使う気じゃな？
'、 ( _ゝノ )
ヽ `T´ ヽ.___. ィ´
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|「外側を補強してたものを内側に入れるだけだろ」
|「……やめておけ、死ぬぞ」
|
| ニャンコ先生の忠告を、やらない夫は鼻で笑った。
|
|「ならばこのまま、体が動かないままで指をくわえて成り行きを見ていろと？」
|「そんな悪魔人間一直線の頭悪い方法以外にも選択肢は……」
|
| ニャンコ先生は言い淀んだ。
| ない。
|
| 背骨や神経、気脈をやられ、やらない夫はもはや動けない。
| 『エクスカリバー』での治療でも、どこまで対処できるのか分からない。
|
| そも、この異様な魔剣の魔力蓄積量も不明だ。頼りすぎてはいずれ尽きる。
|
|「全身の神経とヒゲを繋ぎマース」
|「いたそう」
|
| マイケルは柔和に微笑んで拷問器具みたいな道具とピンセットを鳴らした。
|
|「文字通り神経をワシ掴みにスルのでスゴク痛いデース」
|「あの……本当にやるんですか？」
|
| この場にいる最後の良心は鹿島だった。
| 心配そうな顔で、目を背けたくなるようなやらない夫の傷とヒゲを見比べる。
|
| だが、麻呂もマイケルもやらない夫も。
| そしてアリカですら止めようとしない。
|
|「本当に悪魔人間になっちまうなら、その前に子供作っとけば良かっただろ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,ィ:´::::::::::::::::::::::::::｀::::ー--.....__／＼
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:＼ /＼
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:.:.:.:.Χ:.:斗─‐‐┐
j＞' ´ ￣￣ ｀丶￣ ￣｀ ｰ‐-./:.:.:.:./／////////}
／ ＼ ｀ヽ }:.:.≫─-＜//////}
／ ／ ＼ ｀丶.∨. ＼////
/ / , ヽ ヽ} ヽ. ｀ヽ ＼/
. ∨__/ / ∨ | : ', ヽ
. ／ ￣i / | :| '. | ｉ : '
/ | ./ l | ｌ | | :ｌ :ｉ :| ｉ .: |
. / . l/ ,′| , ｲ .| | | :| :| :| ､ : ｉ |
. | :| | | ｌ/ | .| | ┼―--}--:| ヽ i ｌ |
. | :| | |／| .人 .| | 八j ＼j } ,| :,' .ｌ |
. 人 | | ´ i .八j ＼ .|ﾉ ｘ行示ミz ,′/| / ..:,′ ,' |
. ヽ i 八 ,ｨf云ミ ＼.j {{_::ﾟ:_ツｱﾉ.イ .ｉ/ .:/ .:/ | あ、私でよかったら……。
. ∨ 八 ｒ‐、ィ灯心 :::::::::ｰ(｀ヽ｀ヾﾊ. :/ .:/ . |
. | i ヽ.ﾚ iゞ_:_ﾟ／) _ .:;i r ‐─ ＼ ヽヽi:/ .:/ .:/ いつでも受け入れオッケーです。
. | i ! / /´_ノ `＝￢ ヽ. ｉ |〉 :/ .:人
. / i... | | / / ./ _＿ _, ／'′ .} | | :{ .:( :.＼
/ ,′ | У / ｰ＜ _,ノ ／ 丿. :| :...＼ :.＼
. ／ / (.. 〈 ヾ ｀丶、 ゝ-ﾟ '/ ／ ｌ ',ヽ :..ヽ :.ヽ
. ／ ／ .ｨ⌒.ﾞ＼ ＼ ＿ } ｀ヽ／ 乂 ∨＼ :..∨ ) )
. 〃.／ ） / ！ ｛...＼ ﾞ } 人 ∨...ヽ Y } 丶 }（ (
. i/ 〃 / { _‘, / ＼ } ＼ ＼ﾞ7） 人 ( __ノ) .) ノ ＼ヽ__
. { ( { ∧ / ∧ l＼ ＼. ) 丶 ｀ヽ ) ﾉ
. 人 .乂-／ヽ_.... ∨ / ＼ | ＼ ＼ ＞ｰ'´ .｝ ｀⌒）
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| 頬を染めて立候補する鹿島。アリカが頭を振った。
|
|「翠星石さんとって意味だよ」
|「あぁ……そうですよねー…………」
|
| アリカの見立てでは、やらない夫の隣に立ちたい女は片手では足りない。
| だが、残念ながら彼女らはスタート地点にすら立てない。
|
| そこは翠星石とやる夫とニャンコ先生で満席だ。
|
|「このタイミングでジャギも蒼星石もおらんとは……激痛でショック死しそうじゃぞ？」
|「ニャンコ先生の感覚は切っておくから安心するだろ」
|「安心できんわい」
|
| 軽口を叩くやらない夫を、鹿島は今更ながら恐ろしく感じた。
| 一方で、急にやる気に満ちたやらない夫を麻呂が怪訝な目で見つめる。
|
| さっきまでの鬱々としたやらない夫はどこへ消えた？
|
|「『上』でやることがあるって、師父が言ってたろ？」
|「…………そうでおじゃるか」
|
| 頼られて、俄然やる気が湧いて来たのだ。その人に必要とされると張り切る癖をなんとかしないと、いつか死ぬ。
| そう忠告しようとして、麻呂は口を閉じた。ニャンコ先生と目が合う。
|
| その忠告は、もう遅かろう。
|
|「他にやり残しは？」
|
| 遺言を聞くようにニャンコ先生。至って気楽な顔のやらない夫と、周囲の心境は逆である。
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＿
,. -'"´ ｀¨ｰ ､
／;;;;#;;;; " ＼
/ ;;; ',
| i
| # |
| ＼ ／# |
| ＼_i ,; i_,／ . |
| ｀ー―' ｀ー―' .| ケンシロウさんだな。
', l 人 l /
＿ >ｰ､ ｀ー´＿｀ー' く ＿
／ ┃ ｀ヽ
/ l
| _. ⌒＼ ｝ |
! く,ィ´￣ ∨ j
`､ ﾉ /
ヽ _, ≦´ /
∧ _.z≦_ ／
ゝイ´ ｀＞＝ー -イ
| |
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|「ケンシロウ？」
|
| やらない夫を『殺した』男。
| 彼とのやり取りを麻呂は聞いていた。何か思い詰めているとは思うが。
|
|「やる夫ではなく？」
|「やる夫は誠さんに任せてある」
|
| 全幅の信頼。やる夫の『兄』のような怪人へ。
|
|「だが、奴は……」
|「『木星』の手が足りてないんだろ。だからはやぶさちゃんと十六夜さんだ。
| 二人の『滅ぼすもの』ならば宇宙に行ける」
|
| そして、やらない夫もネウロにそれを求められた訳だ。
| だがまあ、こちらにはこちらの都合がある。
|
| 勝手に人員を五人も引き抜いていったのだ。やらない夫くらいいなくてもよかろう。
|
|「前回も今回も、お茶を濁して逃げたからな。次は最後までやる」
|
| 鹿島が寒気に震えて肩を抱いた。アリカが不敵に笑う。
| やらない夫の闘志にあてられたのだ。
|
|「次はちゃんと、彼を見る」
|
| 生きて戻ってこれたなら。
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／ノ{
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|::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈
|:::::::::::::::::::_／}／}/}从:::{:::/::::::::::::::「 …………。
|::::::::::::: 「イ三三≧x､{/{/八ハ::: /
|:::/{::::::/ <￣弐{¨¨` x≦三{|: /
|: | ∨{ ￣三= { 坏)「Ⅳ
八乂V!: ＿| ′ やらない夫を殺しても、何も終わらない。
/:::::::/｀l| ￣｀ /
. /::::／ 八 ∠二ｱ /
/::厂 { ＼ ヾ / 俺は、間違えていたのか？
-=イ⌒{ / { ＼ /
. ／ﾆ＼ﾆﾆﾆ＼ { ＼ ＿＿/|＼
／ﾆﾆﾆﾆ_＼ﾆﾆﾆ＼ { /{ |ﾆ=＼
￣}ﾆﾆﾆﾆﾆ=丶ﾆﾆﾆ＼八 //{ 八ﾆﾆﾆ≧=- ＿＿＿ ィ7
} ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＼ /八 ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ7
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| 一方、『緊急事態対策班』長の部屋で座禅を組み、瞑想しながらケンシロウは己に問いかける。
|
| やらない夫との戦いは一方的だった。期待外れだとも言えた。
| いや、ジャンヌとケンシロウの達人二人相手に、やらない夫は善戦したのかもしれない。
|
| しかし、不完全燃焼だった。
| 胸の奥の、焦がれるような炎は。
|
| まだだと告げる。
|
|「この東京の平和を脅かす者……次はパプテマス・シロッコだ」
|
| ギラリと燃える双眸。焚べられる感情は怒りあるいは……喜び。
|
| ケンシロウの瞳が燃える。
| 隠しきれない喜悦に燃える。
|
| 光の彼方。ケンシロウの脳裏に微笑が揺れる。
| 足音だけを残して闇に消えるシルエット。
|
| おお、今日より明日より、愛が欲しい。
| 夢より愛する君が欲しい。
|
| ケンシロウが曖昧に浮かべる影は。
| 案山子のようにボロをまとった姿をしていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿ ＿
´ ￣｀ ヽ ｒi:「:i:iト,
／j! イ ｀ ヾi:i:i:i:i:i:i:|!
/i:i:i:iY ７ i ､ ヽ. ヽ Y:i:i:＿ｊー- ､
ｊ:i:i:i:ilij / ｊ! | ! | イ!￣ｌ } ﾏi:T:i7 {
ﾏ:i:i:i:ili! ! Tト |! 」＿⊥三二二T !:i:i:/ _ ｊ
.人i:i:i:i:| | ｣ 三≦z =ｔ＝T７|! |⌒ﾏK￣＜
ｒ＿八＿j! ｰﾍr〒て｢ |´じﾘ ｊ ｊ|:i:i:i:i! 7 うわーマジか。
｢ ｊ:i:iﾄ. ﾊ! ﾏ ｔｊｌ! ﾏ_ｿ /ｨノ ｝:i:i:i:iト､_/
ﾏ _ ｚ-|:i:i:{ヽ { ゞ-′ u ｲ__ノ:i:iﾄ､:i| ) 野郎『代行者』と『騎手』の両方かよ……。
∨彡⌒ｊ:i:i:ゝ 个 / ＼ ﾉ´ｊ:iﾚ<|ｱヾ!メ どっちかならなんとかなるが、
〈 ノ!:i:i:i:|:≧ﾄ . ﾟ ー' イ !/ ｀＞./ 両方は無理じゃねえかなやらない夫よお。
｀ｰ< レ^ｌX|＼! ￣ T ＝彡!￣ ＿ ヽ{
７人＿ ／ } ｣!. }ヽ ′
ー―ｧ/ ,イ 「｀ ´ ! ｊ＿}､
´ ﾊ | Y ! !ヽ￣〈
{_八 ! i |! / ヽ ヽ
ｒ´/ ヽ ﾑ: . .i!: . :j / ｊ ＼
／ {､ ＼. ム: :!: :/ ィ 人 ､
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 玉のような汗をぼたぼた垂らしながら、一人の女が『血族』本部内を注意深く進む。
| 見咎める者はなし、それどころか、誰の目にも止まらない。
|
| だが、女は注意深く、しかし少なからず焦った様子で歩く。
| その足取りは疲弊しきっていた。。
|
|「バッカお前、時間がねーぞ畜生め。やる夫はどこだやる夫は……」
|「今、『やる夫』と言ったか？」
|
| 女の汗がスッと引く、顔面蒼白。その目に浮かぶ躊躇いと恐怖。
| その行く手を遮るように、黒ずくめの男が壁に手をついた。
|
|「私こそが『やる夫』ということになっているんだが……貴様、見ない顔だな」
|
| その優しげな声にも、心を鷲掴みにする静かな視線にも惑わされない。
| 女は踵を返して走った。『やる夫』は追わない。
|
| ただの不審者ならば、他の『血族』がなんとかする。
| ……いや、待て。
|
| 『やる夫』はすぐに思い直した。
| 今のやつ、やる夫を探していた……？
|
| やる夫と蒼星石が捕虜になり、この『血族』本部にいることは、混乱を招くために秘密となっていた。
| 当事者である先代、呂布、『狂死』。そして大首領藤堂志摩子のみ。
|
| 『やる夫』は、知らされていない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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-ｭｆ´￣ ｀ヽｰ､
／ ヾｭ､ ＼ヽ
. -ｰ＜ ヾ＼__ ） ＼
／: :-:､: :ヽ 〉: :ヽ {:ヽ
/: :ｲ三ﾆｊ: : :j __ ／: ; : ハ : :ヽ ＼
{: : ﾘ´rシ: : :ヾ /: ヽ／:_;_:´: : : :i |: : :} ハ
i: : : : {: : : : : | |´j:!: ; : :r: ＼ヽ_:｢＿ｊ: : :| }!
ヽ: :_; : : : : : :| | 7／:､:ｚヽ: :ﾊ __｣: : : : : ! |!
j｀7 : : : : : :j |/ : : ゞ!他ﾄﾐ､| |: : : : : : :| ｣|
/:/: : : : :／／: : : :: ﾍ､_´ ﾘ!| |: :ィ: : : └=ー７
ノ:/: : : ／／: : : : : : : : zｭ:_;入L!:j): : ィ_＿: ://
＿ィ!: : ト-:' ／: : : : : : : : : : : :￣: : ､｀: : j r┘｢７／
|｢|: : : :ﾊ /: : : : : : : : : : : : : : /: : : XｭK､:￣ソ
ﾑ ﾏ: : : :∨: : : : : : : : : : : : r: : : ⌒八｀¨ゝ:／
jﾆ! ﾏ: : : ﾑ: : : : : : ｭ ヽー､:｀_:_:_:_/: : ~y´ 居るのか……？
/ニ ､: : : :ﾑ: : : : : :ﾑ ヾ{└- ､: : ィア やる夫が、この『血族』本部に……？
イ|ニニヽ＼: : :､: : : : : : :ヽ＿ﾆ: イ
人|ﾏニニ＼ヽ: :7ゝ_: : : :-: : :ィ彡ﾆL
イﾆﾆ| ﾏニニﾆ≧ｭ＞ニ≧＝彡ニｊヾニーｭ､
／ニﾆﾆム ﾏニニニニニニニアニ{ Y_ﾉニニニ≧ｭ ＿
／ニニニニニ マニニ! ｊ| /イ !ニニニニニニニニ≧＝
／ニニニニニニニｭ＼ﾆ| ﾘ/ニゝﾉニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニニ ヾー ＿__ｊ/_ イニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニニ＞､｀}=ｒ―イｒニニニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニ」 |ニ] j | }ニニニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニ]__[ニ7 / zｲ {ニニニニニニニニニニニニニニ
☆ 次回予告
最強の剣が振り下ろされるとき、最後の粛清が幕を上げる。
狙われた男、襲い掛かる最強。
戦士たちが臨む戦場は通過点か、あるいは末路か。
その場所で『血族』を待つものは何か。
髪をしめらす血の霧か。
それとも呪いの吠え声か。
今、仕置きという名の宴がはじまる。
次回、最終幕九十四話『最強の脆弱性』
果てに見るのは破滅か死か。
ケンシロウ、お前もまた救世主に焦がれるのか
世に滅亡の種は尽きぬ喃
_ ＿ _
´ 丶
／ 丶
/ 丶
/ ｜
/ _..,,ノ |
/ (● ) ﾉ
ヽ / / |ヽ
:::::｀ヽ､ ! 丶＿ / /
_, ‐､::::::￣ ) |￣￣ ‐ '─ !_ ノ ´
:::::::::::ﾚ' ￣ |::::::::::::::::::::::::::::::｀‐ _ ／
:::::::::::| |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐､ _ ／
:::::::::/ ＿＿ _ -‐'￣｀‐- ､＿::::::::::::::::::::::::::::｀‐ <
:::::Ｖ |::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐-､ _:::::::::::::::::::::::::::>
::::::〈 __|::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ _:::::::::::::::／
::::::::}_r──´￣::::|:::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐､／
::::::´::::::::ヽ:::::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ ‐-､
::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::＼:::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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＿ ｌ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
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| 12月16日。
| 『やらない夫の集会』から二日。その未明。
|
| 『教会』本部のある市国は早朝。
| 朝一番の電話が『血族』本部に鳴り響く。
|
| もちろん、極東のど田舎の時刻などお構いなし。
| 居丈高に傲慢に、必要以上に威圧感を持って、そのがらんどうの権威を隠すようにぶっきらぼうに。
|
|『パプテマス・シロッコの処遇は貴様らに任せる。我々『教会』はあの男と無関係である』
|「承りました。公明正大にして迅速ななる判断力に感服しましてございます」
|
| 志摩子の皮肉は額面通りに受け止められた。
| 彼女の持つ異能、『菊理媛』の生まれ変わりとしての交渉能力の悪用である。
|
| パプテマス・シロッコは日本を、『血族』を、藤堂志摩子を甘く見ていた。
| この地に銃弾と血の雨を降らせ、望むままに実験や試運転を繰り返すつもりだったのだろう。
|
| シロッコはこどもだ。
| 大好きなおもちゃで遊ぶためにならどんな犠牲も厭わない。
|
| もちろん、その犠牲の中にシロッコ自身は含まれない。
| そんな利己的な無邪気さの到達点。それがこの東京、新宿衛生病院。
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| シロッコは、高みを目指して屍を積み上げてきた。
| 敵の、味方の、そして時には友と呼んだ相手の。
|
| 屍の山の頂に立ち、下界を見下ろして嗤う。
| 犠牲者を踏みしだきながら、省みもせずに。
|
| しかしながら久々に、パプテマス・シロッコは安堵していた。
| 殺した、敵の命を奪った。目の上のたんこぶを排除した。
|
| これでようやく、安心して計画を進められるというものだ。
| 『やらない夫の集会』の夜、シロッコは祝杯をあげた。やらない夫を排除したことが、それほどに嬉しかったのだ。
|
| 『集会』の戦果については、二の次だった。
| 調子に乗った『血族』など、容易く蹴散らせる。計画も準備もあった。
|
| レイ・ザ・バレルが捕虜にされたのは、ある意味幸運だった。
| ロビンとレイ。この二人で『血族』を焼き払う。
|
| シロッコはデュランダル殺しの罪を『血族』になすりつける用意をしてきた。
| デュランダルを殺傷した弾丸は、『四ツ目』の銃から放たれたものである。
|
| その『四ツ目』を、『血族』は匿っている。とんだ言いがかりだが、『集会』でボムビーが交戦した。
| あとはどうとでもできる。
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,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
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| シロッコにとって四つ目は、掃除そこなったゴミだ。
| 床にこびりついたガムのカスのようなもの。目障りだが、手ずから時間をかける価値もない。
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| ミスト・レックスは少し違う。
| 彼は逃げ出した実験体だ。彼の脳内チップは有用なデータで山盛りだ。
|
| 機械の体に人間の脳を移植した『義脳体兵器』、そのプロトタイプである『レヴリアス』。
| 同型機の中で唯一発狂しなかった『レヴリアス』との完全同調、その状態での数年間の稼働実績。
|
| 『カトル・カール』によるハッキングで『レヴリアス』そのものは入手できた。
| であるならば、当然セットとなるミスト・レックスも欲しくなるもの。
|
| 四ツ目とミストはコンビと聞く。
| シロッコは、『血族』への攻撃時に四ツ目を呼び出す手筈も整えていた。
|
| 無論、彼の計画はそれだけではない。
| 四ツ目とミスト、二人と大きく関わる男。あの邪魔なゴキブリ男への報復も考えている。
|
| それを考えると胸が躍る。
| あの余裕綽々な老人の顔を苦痛で歪めてやる。
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lﾍ / l
l ∧ ',ヽ. ＿,' l
l .∧ l ヽ. ,.ィ´￣ i l
l ∧_ ,' ヽ.,.ィ´ ' l
l ヘ. ∧ / l ,' l
l ヽ/ ヽ､/ ／i __／/ l
∧ ',ヽ l ヽ / l ／ _/ ,'
l iﾍ ∨ヽl r､ } ', l､ ,.└─ｧ´.lｲﾉl ,ｨ､
l＿ヽ. ヽ, ﾍ l ﾊ l l ／ l l /∧＿
.＼ へ ', l i｀ヽ } .〉 /ﾍ__/ l / / l! l!
＼＿へ. ヽ, l ｀ / ノ ﾉ_ﾉ_ ,.ｨ' / l! l
. ＼ ＿へ ＼', l ,ｲﾍﾘ ｱ_ﾉ_ l 0 l ll二二 ゴキブリ……
. ｀丶_＿｀ヽ､ ＿＿< ヽiｨ ﾘ-‐-､ｱ /,，>''"/ 〈〈
｀ヽ ｀＞ ゝ } __ノ ,.ｨ ,.ィ´.〈 〈〉l∧ _ ,.， それは呂布違いなのでは？
`丶､_ ヽ.ーoヘ ﾍ､ / ,.ｨ:::::l ∧ ∧ 〈〉l 〉〉,.，-
`'ｬﾍ ﾊ´￣｀ ';::::::::::l ∧ィ´ィ〉 //∧
∨｀ｰﾍｰ-.､ ';::::::::l.ィ´.ィ´ ∧.// ∧
ヽ.ミミヽ ヽ. ;::;ィ.ィ.∧ .∧' ∧
ヽ.ミﾐヽﾍ,.ｨ´ィ´ ∧ .∧ ∧
｀ｰ､_.〈 〈 ∧ .∧ .∧ _,.!
ﾌl ∨.∧ .∧ ＞''"
／∧ ∨.∧ .∧,ィ´／ ／
,ｲ､ ／', ∨.∧ ,ｨ´ム ＼／
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| そう、呂布である。
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| 元はと言えば四ツ目を取り逃がしたのもミストとレヴリアスが生き延びたのも呂布のせいだ。
| ヤザンでも倒しきれないあの狂人、戦闘能力だけなら夢宮すら凌ぐ化物。
|
| 奴には孫をぶつけてやる。
| ロビンは正しく評価されず、ゴミのような扱いを受けてきた。
|
| 『血族』でありながらのけもの以下のゴミクソ。最低の家庭環境の虐待児だっピ。
| シロッコはロビンの記憶をそんなふうに書き換えていた。
|
| ありもしない復讐。『血族』を殺す超人となり、その黒光りするボディを血で濡らすために存在する。
|
| シロッコはこどもだ。
| わがままで、傲慢で、全能感にあふれて、つまらない禍根に拘泥する。
|
| そして、気まぐれ。
| シロッコの厄介さはそこにある。
|
| よりよいひらめき、よりよい作戦。
| 自分以外への執着の薄さから、突然何もかもを捨てされる。
|
| 豹変できる君子。
| 人からはそう評価されている。
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| その、真価が問われる時が来た。
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イVへ /ﾍ|＿|イﾍ
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| | へ| | ／二二二フ￣￣￣＼
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ﾚ| |ハ 厶／ﾍ| | | |. / / / ヘ| ﾄx L＿
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| 市国からの電話より一時間。
| 決定が覆ることも、内通者の警告も、それどころか『教会』内部に知れ渡るより早く。
|
| 電撃の速さで志摩子は、殲滅を命じた。
| 『結社』撃滅作戦から三ヶ月。あの日同様、まずは軍神 上杉謙信による一撃。
|
| 毘沙門天による雷火が新宿衛生病院を焼き尽くす。
|
| 東京の結界守護者であり、最強の名をほしいままにする上杉謙信。
| 彼女の攻撃は、魔力もスケールも違いすぎる。それ故に小回りが利かないという欠点もあるが。
|
| それでも、最強の名は伊達ではない。
|
| 新宿衛生病院を覆う結界も、地上の廃病院部分はもちろん、地下施設も魔力と電力に致命的なダメージを受ける。
| この攻撃を耐えきれる者は少ない。凡百の異能者では壁や床に人型の焦げを残して死ぬ。
|
| これは藤堂志摩子の怒りであり、パプテマス・シロッコを絶対に許さないという決意の表れ。
| であると同時に、東京を守るためならばどんな犠牲も厭わぬ『やる夫』の立案した作戦である。
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／ グフフ……！
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
｀ >:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r-ｰ' ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ;´
´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
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| だが、突然振り下ろされた破壊の業火に、完璧なはずの奇襲に対処した存在あり。
|
| 体長２メートル。横幅も２メートルの巨体をパッツンパツンの軍服に押し込めたパンダである。
| その背中には天使のような純白の鷲羽根。三対六枚。
|
| 大天使『リトルボーイ』。
| シロッコに改造されたウィリアム・ヤーボの成れの果てである。
|
|「ティムよ。星を見るのも悪くないなぁ」
|「ほげぇ〜」
|
| その横、縞々ニーソで上半身裸の少年。機械のバイザーに金属義手。そして背中には同じく翼。
| ジャギとの戦いで植物状態だった所を、シロッコに素材にされた少年ティム。
|
| 今の名を、大天使『ファットマン』。
| 天使となり、睡眠の必要がなくなった二人は、毎晩屋上で星を眺めていた。
|
| 理由があってのことではない。
| ただ、有り余る時間があり、ヒトとしての欲望や執着をすべて失った『リトルボーイ』が、
| 唯一心惹かれるのが天体観測だっただけである。
|
| 無論、下らないセンチメンタリズムや、宗教観的なものではない。
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| 遠い木星の月の上。
| もう戻れない、帰り道もない。
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| 死ぬまで聞かせる、逃げても追いかける。
| それが暴虐のからくり人形楽団。
|
| 上杉謙信の毘沙門天は、一瞬だけ実体化した。
|
| 体長20メートルもある巨人が振り下ろす三叉鉾。
| 炎と光の奔流を、即座に飛び上がった『リトルボーイ』が防御。
|
| 毛皮が焼け焦げ、直撃した右腕が沸騰して弾け飛ぶ。
| しかし『リトルボーイ』は怯まず、左手から放った黒い稲妻で反撃。
|
| これには毘沙門天がたたらを踏む。
|
|「グフフ！！」
|
| 凶悪な牙を剥き出しに笑う『リトルボーイ』。
| 六枚の翼でプロペラのように回転。竜巻のような勢いで毘沙門天の攻撃を弾き飛ばす。
|
|『つ……強い！』
|
| 生まれて始めて『強敵』に遭遇した上杉謙信は、直後の行動を誤った。
| 彼女の弱点は強すぎたこと。本気の一撃で倒せない敵はいない。最強ゆえの失態。
|
| 何でもできる。いつでも余裕がある。雑な攻撃で勝てる。
| それ故に。
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ヽヽノ ,'::::/:::从::::: ヽ, ‐=‐ イ:::::::::::::::::::::::::::ヽ￣
／,ク/:::/:::::::::::ヽ:::::ヽ＞ ､_ イ::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::＼
＜イ/_/::::,':::::::::::::::::',:::::::ヽ.ニﾆ´ ﾑ::::::::',:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
ノ＞-‐―ｉ￣ ヽ:::::::::＼ /ﾄ､:::::::∨:::::::::::::::::::::::::::::≧z､＼
＞ ´ | Ⅴ::::::ハ ' |. ＼::::',::::::::::::::≧≦三三ﾆｉ:::::ヽ
＞ ´ ／＼ ＞ ￣| ',:::::::::∧__ｉ ',≧zx≦三三三三三ﾑ
＞＜ ＞ ´ | ｉ::::::::::ム | ｉ::::::::::::＼三三三三三ﾑ
､ ＞ ´ | ,'::::::::::::ハ＿＿_ト､:::::::::::::＼ニニニニﾆﾑ
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| 弾かれた自分攻撃が周辺に与える被害に注意をそらされた。
| 圧倒的強者ゆえに、周囲を守る結界を張るなんてお茶の子さいさいだ。
|
| が、彼女の現身の前にあるのは、戦争の申し子。
| それは致命的な隙であった。
|
|「よそ見はいかんな」
|
| 焼け焦げた後ろ回し蹴りが毘沙門天の鼻面に直撃。へし折る。
| 宝塔による防御は間に合わない。喝と開かれたまなこに左フック、顔面にヒビ。
|
| 無視できないダメージ、振り回される巨大な手。柳のように避ける『リトルボーイ』。
| 善国寺はパニックに陥った。上杉謙信がダメージを受けたのを誰も見たことがなかったのだ。
|
| 鼻と頬骨を折られ、愕然と鼻血をこぼす上杉謙信。
| 悲鳴と怒号が交錯する、謙信本人よりも周囲の混乱が激しい。
|
| それでも、謙信が振り下ろした拳が『リトルボーイ』を捉えた。
| おもちゃみたいに吹き飛ぶ球体パンダ。
|
|「ぐっ……！？」
|
| 打撃と同時に何をされたのか、へし折れた指の痛みに耐えながら、上杉謙信は毘沙門天の具現を解除した。
| 奇襲は……失敗した！
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/`ヽ: :i: :＼ : ／: : : : : ＞ 、 : : : : : : : ＞.、:.!:
,: : : : : !: : : :`": : : : : : : : : : ＼: : : : : : : : : :ヽ!:
.,: : : : : :!: : : : : i 、ヽ: : : : : : : :ハ: : : : : : :＼: :＼
i : : : : : V: : : :ﾄ ! ＼ヽ、: : : : : : ﾊ＼ 、 : : ﾑ: : :
.i: : : : : : :V: : : iヽ、 ＼ヽ ＜: : : :∧ :ヽヽ: : :ﾊ: :
.!ﾊ: : : : : ﾊ : : ﾑ ヽ ヾ、 ｀ ＞x:ﾑヽ!ﾉノヽ:ﾑ:
.!! .V: : : :{ rﾐ、:.ﾊ 、 ,＞",__ z-┐!ヽ （ ｀i !
.i .ヽ: : ﾊ V):ヽxヽ ゝ ' 〃:示 ./ヽ ﾉ! マジかよ……。
＼ ﾑ ヽ::::} .弋::::::::! .rイヽヽ あの上杉謙信さンが……ッ。
｀ゝﾐ、¨ ゝ- ' /!///ヽ
ヽ ' ＿ '''' ／' i!////
, -≧ 、 V ｀'ヽ , イ"/, ｲ////
, ＜ .i＞. .二¨¨＜-" ヽV/--- ミ
／ ! i"///＞--- ,"/!｀＞、 i
／ .! !//////////i八::::::::i .//
., イ .!.i//////////L ＞ "L'
ヽ ＿__ ! i///////////,¨ム//ヽ¨
ﾊ , -‐ 、 ! i/////////////////,o
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|「チャンスだ！ 行こうぜ！」|
|
| 裏口側から、杏子の透明化で密かに侵入を図っていた杏子班。五名と一匹。
| 奇襲の失敗と、上杉謙信が何者かと痛み分けた衝撃に青ざめる杏子とヴァイジャヤ。
|
| そして無表情ながら言葉を失うキュウべぇ。
|
| 彼らの背中を音を立てて張ったのは横島だ。
|
|「どこがだよッ」
|「大天使の片方は撃墜した。もうひとりは自我がないから命令がないと動かないんだろ？」
|「…………そうだ」
|
| 尋ねた相手は、誰であろうレイ・ザ・バレル。
| 『血族』の捕虜になっている少年、ギルバート・デュランダルの忘れ形見。
|
| 彼らは、戦闘ではなく侵入工作チームだ。
| 『血族』の中で誰よりも、四ツ目とシロッコの因縁を知る人物の命令。
|
| ギルバート・デュランダル殺害は、冤罪だ。証拠を探せ、シロッコの悪行を暴け。
| レイはそんな説得を受けた。必死に頼み込む少女の目は、シロッコよりも遥かに信用できた。
|
| まるで、大首領なんて立場には見えない、怯えた女子高生にしか見えない藤堂志摩子。
| そんな訳で五分で篭絡され、レイは杏子班の客将となっていた。
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/ / /! | ヽ
/ // / ｌ ｌ ヽ '､
/ / / 〃/／ !｜ ｌ, ｌ !', !
ｌ ,ｨ ! ｌｨ＜_ ! ｌ ハ ! ｜ ｌヽ !
! （ｌ ! ｌ ｌ |ｒ=テミ､ ｌ ｌ/ ｌ ｌ ｌ ! ｌ ! |
ｌ ｌ ｌ ｌ l!ｌ ヾビ｀ヾヽ ｌ/ _,ｌ ｌ ｌ ｌ ｌ! ! ｌ
/ ｌ ｌ,!ｌ ﾊ! ｀ ′ｲﾃｌ ll ｌ｜/ｌ ll !ｌ
. / ｜ｌ ﾄヽ ', ::::::: ､ ｀ﾞｌ ll｜! / / .ﾘ
. ／／ ｜ ! ! ヾ'､ ﾘｊ! !//
／ / ｌ' ,! ｌヽ､ ____ -''´､ｲ/ /´
/ ,ィ ｌ ｌ ﾊ ! ヽ'ト-ヽ､ ､｀"´ｨ´､ﾉｨ´ 行くぞ、遅れるな。
ｌ { ヽ ヽ',ｌ '､ ', ヽ'、 ｒ､ ヽ､__,ｨ ´ !｜
. ｀`ヽヽ､ヾ',! ヽ'､ ヾ｀ ｒ ///､ ヽ ﾄ,'､
＼ ＼｀ヾヽ､ ヾヽ ヾﾞ //ハ ',ヽヽヾ',ヾ'､
＼ ＼ ｀ヾﾄ､ ﾄ,ヽ､ヾ-ｒｒ'｀ ヾ､ｒ､ヽヽヽ､
ヽ >､ `} ヽ ｀` !｀ヽ ヽ｀ ヾ､ｒ'､
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| シロッコとデュランダルの関係を、レイは見てきたつもりだった。
| 信頼できる友人だと、紹介された記憶もある。
|
| だが、シロッコへの疑念は一度抱けば二度と晴れない。
| 酷白で、冷淡で、自分のこと以外への関心が薄すぎる。
|
| 他人を、とくに女性を魅了する甘いマスクと心地よい声で、なんとなく許されているだけ。
| レイは以前から、親友であるはずのシロッコからデュランダルへの理解の浅さが気になっていた。
|
| 今、その答えが得られる時が来た。
| レイはそう考える。
|
|「研究所の電子的な守りと監視は、ブッティが一人で行っている。
| 彼は狂人だが、その能力は本物だ。『電波汚染』を行いながら、監視カメラと各種トラップのチェックまでできる」
|
|「……アタシの幻術で大丈夫かよ？」
|「『カトル・カール』の初期メンバーはただの軍人だ。魔力感知は得意ではない」
|
| 超能力と魔術を併用できるレイとは違う。
| いや、そのレイでも馬岱の隠身を見破ることはできなかったのだが。
|
|「なら問題はロビンとヤザンか」
|「一般『武僧』を侮るな」
|
| 杏子とヴァイジャヤは巡音ルカの戦闘力を、横島はツンと起立したおっぱいを思い出して唸った。
| ……なお、ルカやジェリドは『武僧』の若手でトップを競う実力者。ミカサとライナーみたいなものなのだが。
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／イ Λ: : : : : : : : : : : ; : : : : : : : : : : /く/イ 生きて帰れっかな……。
／:::ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /::::::ヽ
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| 彼らの目的は大まかに二つ。
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| 『カトル・カール』の情報官ブッティ・スケアクロウの無力化と。
| シロッコの悪行の証拠を見つけること。
|
| 『モーリアンビル攻防』と『やらない夫の集会』のどちらでも、電子線においてはブッティの独壇場だった。
| 『グレン団』が誇る（正確には華琳の部下の）電子戦のプロである走り鳰。
| スーパーハカーのダル。警察の情報官ダリダの三人がかりで互角。
|
| ニンジャによる情報戦で『やらない夫の集会』では一矢報いたものの、電波汚染は相変わらず脅威。
| ならばと、物理ハックで無力化を図る。
|
| ブッティを無力化できれば、鳰がハッキングし放題。
| シロッコがデータで保管している悪行は白日にさらされる。
|
| データ化していなかった場合は？
| そのためにこの侵入工作班が編成されたのだ。
|
| 新宿衛生病院に詳しいレイ、彼と何故か親しげな横島、幻術で身を隠せる京子と、ブーストできるヴァイジャヤ。
| そして、これまで一度も発言していないし、そもそも存在感がまるでない馬岱。
|
| レイは馬岱の存在感に背筋が凍る思いだった。いると分かっていてもつい忘れるほどに影が薄い。
| 馬岱はこのチームの隠し玉で、同時にレイが裏切った場合に備えた安全弁である。
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ｘ, ｘ,
} ､＼＿＿＿／/ } ／
厶- } {‐ く 〈{＿＿＿__
／ ／ ＼ ＼ ＼ ＼
＿/ ｉ{ (Ｃ) (Ｃ) }i '. _ 7＾ 丶 ここに侵入するのも不思議な気持ちだよ。
〃7 八 ､_,_, 八 V＾)) / ' キミはどうだい、佐倉杏子。
＿／{{ ／ ｀ ｧ r ' {{､ 〃'く_＿ }
(__.:.:ﾟ｡:.ヾ=彡 .′ '. ゞ=彡.:.:.:.｡ﾟ-く ′
ｰｔ__ﾟ／ /{ ト, ＼ﾟ＿r'′ /
.' } ﾄ ┐ l f⌒丶,＿／⌒' ／
{ ｝ l | { } ／
丶 し' し' 厂￣ ー----=彡
／￣｢￣￣￣ｊ￣}＼
|ヽ : :|: : : : :／￣〉: :i|
|: : ＼〉＿/: : ／ : :i|
|: : : 厂:￣l/＼: : : :i|
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|「あの時のゴキブリどもの通った道だって？」
|
| 三ヶ月前、まだ生きていた頃のキュウべぇと杏子は、やらない夫たちとともにこの新宿衛生病院を防衛した。
| 今度は逆の立場となる。
|
| これから、四方向から攻め手が進む。
| 地上からはケンシロウ率いる『緊急事態対策班』。と『グレン団』。
|
| どことも知れぬ侵入経路からは黄泉と『九鬼』のニンジャたち。
| そして地下下水道からは華琳と星、『邪悪帝国』。
|
| さらに詳細は秘されているがもう一チームあるという。
| シロッコを確実に屠るための布陣。
|
| もちろん『血族』本部も手薄にしていない。
| ……例えば、このタイミングで攻めてくるような連中がいるかもしれない。
|
| そう、やらない夫の残党とか。
|
| そのために、志摩子は『血族』本部を腹心で固めている。
| キオ、『狂死』、『やる夫』……。
|
| しかし、蒼星石とやる夫が『血族』本部に居ることは、ほんの一握りの人間しか知らない。
| その中には、キュウべぇもケンシロウも含まれていない。
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∧ l:.:.:.:.:.:./ ヽ:.:.:.:.:.:.:., - ､:.:.:.:.､:.:.:.:.:ノ ｀ヽ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
. l:.:ﾊ l:.:.:.:.:./, - ､｀¨¨´, - 、 ｀¨´, 、, - 、 i~｀`''=ー:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ
l:.:.:.:ヽ:.:.:.:.":.:.:.:.:.｀¨´:.:.:.:.:.:.｀¨´:.:.:_:.:.:.:.:.:.｀¨:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ丶､.:ﾍ
＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._,,.;:- ,:.:.:.:.:.:.:.:._.ィ´/:.:.:.:.:.:.:./i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ ヾ
_,.．:.:.:.:.:.:.:/: : : :i: : : :_.ィ´: ／:.:.:.メ､"ノ: i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ
__／:.:.:.:.:.:.:.:.:./_,,.．-i::.:／￣フ:.:_.,=_,,-／ヽ: }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}
／: i:.:./l:.:.:.:.:.:.:.:／⌒ヾ:./ _.ィ"´ } ~ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
/: : : {/: :{:.:.:.:.:.:.:.{ ⌒ヽ∨ {. ∩ /:.:.／ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
>: : : : :{:.:.:.:.:.:.:ﾍ (´{ l;;l ム/ } l/l:.:.:.:.∧:.:.: /
/: : : : : : :ヾ:.:.:.:.:.:.ヽ ｀ , , ゝ､..,,_ ,/;/ '/ l:.::./ .V:./ ……なんか書いてあるな。
: : : : : : : /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ, ゝ､, / ﾚ´ ∨ 英語じゃない、ドイツ語か？
'=ー-一=i:./i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i ´ ' ' }
,ﾚ ﾍ:.,:.:.:.:.:.:./ ヽ _ / 『この落書きを見て振り返った時お前たちは』
ヾ:.:.:.:./ ｀ 、 '= ' ／
/~｀`''=ー-､..,,_ 丶､ ,.． ´
/ ﾌ /`ｰ､´
. _,,.-一='''"~´｀丶､ / / >
=ー-､..,,_ _,.．-ｰ'''=-､.,,_/＿ ＼ ,/
丶､ ~｀`''= ＼ ￣ ､}＼ヽ
｀ヽ ＼ ﾊ / ﾊ
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|「適当を言うな。フランス語だ』
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| ため息をつくレイ。落書きではない。
| デュランダルが地下施設の入り口に書き記したのだ。
|
|「『死すべき運命の者らよ、足を止めよ。こは死者の王国なり』ギルバート・デュランダルのシュミだね」
|
| ひとり納得した様子で頷くキュウべぇ、レイは目を細める。
|
|「シュミ悪ィな」
|「フランスのカタコンベの銘文だよ」
|
| 押し黙る一同。死者の王国。地下共同墓地の墓碑銘。
|
|「ギルは世界に静けさを求めていた」
|「生きてる奴のいない世界？ じゃァねェよな」
|
| 杏子がポケットから取り出したプロテインバーを銜えた。
| 食べかすが落ちるのも気にしない。
|
|「誰もが存在意義を持つ世界。なんのために生きているかを知っている世界だ」
|「ふーん」
|
| 興味なさそうな杏子。世の人々がどれほど存在意義を欲しがっているものか。
| レイは彼女を哀れんだ。
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＿ , ─. . 、─-、
,- 'フ‐‐ﾆ￣、ヽ:ヽ ヽ
i..、_- x---.ﾆヾ、 i: i:ｌ .|) _,. --、
乂:`.-...、二＞: : ヽ: :},イ_二￣ヽヽ
.ヽ::::::::::::::::＞.-.、:).-ヽ: : : : ｀ 、ヾ.、
_{:::::＞≠'─‐. . 、ﾍ:厂`._: : : : ヽ!}、
,.ゝ.': : : {: : : : : : : : : i人!::::::ヽ: : : : ij ヽ
,__／: ヽ: : : ;ﾍ、: : : : : : /': : |::::::::∨: : : : : :ヽ
／: ' : : ／ i: : : : :＼: : : : : : : : :}＿::::∨: : : : : : :i
,イ: : i: : :/: ／|: : : : :,: : : ----ﾍ/: : : ヽ:┤ : : : : ﾄ::|
ヽ--‐.'ﾌ: ／!: :/1/ ,ｲ: : : ;ｲ: : : : : : : : ﾄ: : : : :i:::ヽ: : : : :|V
./ / : |:乂 |' ノ |: : //ｌヽ: : : : : : : : : : /├‐┘: : : :!
ｲ i / ;-ﾊ{x__ヽ |／＿_|:ﾊ :i: : : : : /／ /: : : : : :ﾄ:/
iｌ ∨' ｌ: |.rj ` ,__ /' V: : : : :/:_ : / : : : : : 从i
.ヾ、 ヽ |: | i 行-ｧ /: : :／'‐.} ' : : : : : /
ヾ.、 ,. .' : :《 ' ｀ -' ／ _／,‐}／: : : ,イイ'
ヽ`. . 、 ＿＿,. -': : : : : : :.ゝ 、 ￣￣,. . ﾍ' : : : ; ' ノ '
｀ - ﾆ=====,-: : : : : : : : : : : : : : : :＞,ｪ---- ≦'!: : : : : : / それってすごく楽そうだけどサ
,. -. ': : : ; -= ': : : : : : : : : ; ‐' ／V ￣￣／／: : : :/ その分誰かがワリを食うンじゃねェの？
,.-.': : : : : : : : : : : : : : : : : : : :／ ,ィ./ ＞.'-- ／／ X : : /
＿＿_.／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ; ｩ/, ' .ﾚ'{'./ λ /: / , ' ヽ ,'
／ ; - フ : : : : : : : : : : : : ;n_0 '__|/: : : ／i__),--' ': / / .ヽ
／; ' ／ : : : : : : : : : : : ;イ!.iﾉゝ-┤: : , ' /ﾍ-/;イ' i .ヽ
. ' ／ : : : : : : : : ; - ', ' W '/ 人 ;ｲ 。 /' |' .| ∨
/ : : : : : : : ; - , , . ' : 〉、, ' ヽ.ヽ 。 ゝヽ ∨
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|「神による管理社会だよ佐倉杏子。神は間違えず、流されず、休まない。
| 誰も苦しみも悲しみもしない」
|
|「神も間違えンだろ」
|「ボクらの神ならね。ギルバート・デュランダルは唯一神の信徒だ」
|
| レイは二人のに言葉を失った。
| 絶対者は誤らない。そして、シロッコはレイを『それ』にしようと企んでいる。
|
| こんなにも間違いだらけの、失敗と失態を上塗りするばかりのレイに。
| 何をさせるつもりなのだ。何にするつもりなのだ。
|
|「話は終わりだ。行くぜ」
|
| 横島が一同を促した。レイは歩き慣れた、横島は二度目の道行。
| 非常灯で照らされた、薄暗い廊下。見た目は病院そのもの。
|
| 本来ならばすべての電子機器に接続権を持つレイだ。
| しかし、脳内チップによる無線接続でも痕跡は残る。隠密行動のために控えねばならない。
|
| だが、歩き慣れた道である。
| シロッコに占拠される前から。
|
| ここ新宿衛生病院は、かつてレイとデュランダルの聖域だった。
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l :::::: ::::::::'. ` __.,, .i! /.::::::::::::::::::::::| この私に楯突く気か『血族』め。
,l ::::::::.::::::::::{ -=＝二..ｿ =":::::::::::::::::::::::::| 理解に苦しむ愚かさだな。
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|「で？」
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| シロッコの執務室には三人の男がいた。いずれも『武僧』。いずれも手練。
| まずはあくびを噛み殺すヤザン・ゲーブル。
|
| 一昨日の『やらない夫の集会』で呂布相手に負傷し、今の今まで高いびきだった。
| まだ寝たりない面をしているが、傷はふさがり気力は充実していた。
|
|「おおかたバスク辺りに泣きついて金を積んだのだ。私を殺す許可をよこせと。
| ……つまり、『血族』が躍起になって張り巡らせた向こう側の電波妨害を突破すれば、我々の勝ちだ」
|
| 丸め込まれた誰かを粛清してもらい、『血族』こそ反逆者にすればいい。
| 二人目の男、パプテマス・シロッコ。徹夜続きで血走った目をしているが、その頭脳は冴え渡る。
|
|「奴らの切り札は『リトルボーイ』が防いだ。
| そしてこちらには、奴らの知らぬ切り札がある。運命の女神に愛されているな、私は！」
|
|「どこの売女か知らんが、そいつとは付き合いを考えておけ」
|
| ここで三人目、つまらなさそうにメガネを上げる壮年の男。
| 干し草色の髪、顔に刻まれた無数のしわ。しかし生命力に溢れた目つき。年齢不詳。
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ﾌ彡三ニ＝=-ミミミミﾐﾐWミW杉彡彡三ニ＝=彡W彡ｲN
彡彳ニ彡''´￣￣￣¨｀ー=≠=─''¨￣￣￣¨`'''ァ＞ヾミシ
Σ彡 ｲ :::::::: ､ i li Zミミ三ﾐ
彡 彳ﾘ :::::::: ＼ ヾ {;! } z= ,ｨ , ヾ彡 ,Zﾉ
ゞ /! -=＝ミ ｰ- ヽ } i! /／ ／,ｨ＝=- }ィ ./
Y⌒}! '':::::::＞''￣￣｀ヾ＼|..i!../ ,z三≦─ ､ .ﾚ⌒! 『集会』での貴様らの動きを詰問に来たはずが、
! }ﾄ|＼__{{弋￣t__ｧ-z}ﾊ;;;;;;;;;;Y x t__ｧ￣フ}}__／! il ﾘ まさかこんな展開とはな。
! i! i ::::人 `ー ==以 ﾉ￣ {! ﾐ== ─''´ ﾉ |! {!
ヽⅵ :::::: ゝ _＿＿ ／:: ﾄ＼ __＿ ／ | ノ あいにく俺はまだ貴様を殺す指示を受けていない。
ヾ! :::::: ￣￣.::::::::i ! ヽ ￣￣ ,;/´
,从;;,,::::: ...:::i . : | ! ::.. .;∧
／:::::ﾊ;;,, ::........::::::::::::ヽ::::i .ｨ..:: ,,;;;i::::::＼
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|「ならばこちら側の一人として戦っていただく」
|「…………忌々しいが、それも主のお導きかもしれんな」
|
| 三人目の男、アレクサンドル・アンデルセン。
| 彼は遠くの音に耳を澄ますようにかすかに顎を上げ、剣士をむき出しにして剣呑に笑った。
|
|「相手は好きに選ばせてもらう」
|「地上の奴らは『カトル・カール』でやる。それ以外は好きにすればいい」
|
| 返事もせずに退室するアンデルセン。
| 残されたヤザンが首を鳴らす。
|
|「ヤザン、君ほど頼りになる男はいない」
|「おべんちゃらはいらねーよ」
|
|「忍者が来るはずだ。排除しろ」
|「よし来た」
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☆ 次回予告
虚飾。虚飾だった。
言葉も、体も、仕草もすべて。
他人をだまし意のままに操るためのものだった。
だが。だけれども。
あなたには、あなたにだけは見てほしい。
飾らない、本当の私。
嘘ではない、偽物ではない私。
心を開いて、余すところなく理解してほしかった。
それだけの願いが、ただ遠い。
次回、最終幕九十四話『名称変更』
果てに見るのは破滅か死か。
謙信ちゃんの美しいお顔がっ
アンデルセン来ちゃった
_ ｡ -‐ ‐ｭ,
,.｡ '":::::::::::::::::::::::::::::`丶
.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
.ｨ:::::::::::::::‐- ｡.ヽ,::::::::::::::',::::::::::::::ﾍ
/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ 納得いきませんよ志摩子さん。
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i! 僕の能力ならば隠してあるものや敵を探すのに最適です。
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l なんで僕は杏子さんたちと潜入ではなく
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ, 本部待機なんですか？
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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| 『シロッコ粛清』が始まった深夜、『血族』の主だった面々は攻勢に参加していた。
| しかし、キオやフリット、『狂死』に先代といった、志摩子に近しい戦力が護衛として残っている。
|
| キオはその戦力が過剰だと考えていた。
| やる夫と蒼星石が捕虜になっていることを知らないのだ。
|
| 呂布は出撃前に志摩子に忠告した。
| 最悪、脳噛ネウロが来る。警戒は怠るな。
|
| 志摩子は二人の捕虜の話をキオにしていない罪悪感に胸を痛めた。
| キオの超能力ならば、確かに探索は楽になるかもしれない。
|
| しかし、強敵の襲撃を受けた際に、最も頼りになる人物にそばに居てほしいのも事実。
| であるのだが。
|
|「そーは言うがよ、残って正解だったンじゃァねーか？」
|
| コートにサングラスという怪しい風体の女。志摩子は彼女が気に入らない。
| コートの下は全裸のクセに、キオの保護者面して高説を垂れる。
|
|「『教会』側の戦力を見誤ってた訳だ。向こうにゃもう一匹パチモンがいやがンだろ？」
|
| 女、『十二の封印像』の悪魔の一柱『蛇身』ことイナミは大天使『リトルボーイ』をパチモンと呼んだ。
| 彼女は本物なのだ。アラブの邪霊とは即ち、主に反逆したイヴリースの配下。
|
| いわゆる堕天使と近似した存在なのである。
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＿）ｭ､＿
/::::;:::::::::ヽ｀ミ::､
_j:::ィ:::::::::::::::::::)::､::ヽ
/::::::::::::::::::::::／::::人:::ヽ.
|￣ 三ニ≠ー―＝ ´!
|! ニ＝
t､＿ニ＝＿＿ _ｊ 『逃げるを攻めるは難く
[ j ﾏ￣￣ ７「￣￣ T! 追うを攻めるは易し』だ。
ｊ:::ミﾑ ヾﾘ j!
__{⌒ヾ::ﾄ ｀ｰ=ーｧ ,ｲ⌒ すぐに来るぜ。
ｒ､ヽ､ r, ／_ム ｊ ≧。 ¨ ／人_ ｊ
ｒ､ヾ､｝ﾄ､｣/ ｨ _ア ゝ彡 --イ (::ヽ＿
｀ヾ＞//ﾊ ｒ‐’⌒ ﾏ､:j r::{ ≧､
ー＝/////! ｌ::ｊ７､＿ｒｖｭ ィ､⌒ｊ::::) ニ_j!
L///7⌒j ｊ j 个人7 ｊ ｌ T ､ﾊ_ハ｀＼_ ノ
{ﾚ＿イヽ / ､ | ! ^ ｊハﾄｰ' l! 〈
ヾ////＼ 八 i! ! i! ﾊ
＼////ヾｭ､ / ノ ｊ j | |! ﾊ
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| 肉厚の唇を皮肉に歪ませるイナミ。
| キオはそれでも不満そうに唇を尖らせる。
|
|「それは結果論でしょう？」
|「グダグダ抜かすな。大首領サンを守ってやんな」
|
| ひらひらと手を振り、気怠い足取りで出口に向かうイナミ。
| キオはもの言いたげに、あるいは置いていかれた子供のような顔でその背中を見送った。
|
| なぜ、そんな目をするのか。志摩子は、そんな言葉をグッと飲み込んだ。
|
|「キオ、頼みがあります」
|「……僕にできることなら」
|
| 苛立ちを隠さずにキオ。志摩子は彼の手を両手で掴む。
| 魔術や加護の力で彼の心を篭絡するのは、ひどく抵抗がある。だから、なんでもないただの懇願。
|
|「上杉謙信が押し負けたのは完全に想定外でした。
| 我々はより強固な結界を、迅速に用意せねばなりません」
|
| 視線の高さを合わせる。志摩子は、己を弱く儚い乙女に見せかけることに馴れていた。
| 篭絡の第一段階で相手の庇護欲をそそり、あるいは無力な相手と油断させる。
|
| そういった技術や計算が染み付い所作が歯がゆい。
| 誠実さを余すことなく伝える力が欲しかった。
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/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ｫアキ,ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’,例 〉 `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ ' j夕 ．″ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ” ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/
l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ 強固な結界ですか？
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ その……こう言ってはなんですけれど、
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
i '" i /:::::::::::::::::::::::::::::::::::} 僕は。
`'ｰ=ニ _＿¨ ,.｡・'ヘ: /::::::::::::::::::::j:::::::ソﾚ'
ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
r'¨’ 〉く . ＞=ハ
ﾘﾊ i 1 .＞'" ',
/ _」 :i ,.ィ'’ ﾊ
〈__ / .ｲ! ／ - ─ - . ﾊ
/ / ` .｡ '´ ｀丶 ﾊ
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| 超能力者だ。念動による装甲は作れても、結界には疎い。
| 志摩子は、もちろん理解している。そしてその上でキオならできることがある。
|
| 『絶対防御結界』。
|
| でっていうが持ち込んだ世界の破滅から一人を守るためだけの無敵の盾。
| 弱点はコスト。維持に必要な魔力が尋常のそれではない。
|
| 現に間桐臓硯は、『絶対防御結界』の上からアリカに息付く暇なく殴られ続けて魔力が枯渇した。
| 強力無比であるが、実用的ではない結界。
|
| でっていうはそのために地下の邪念を集めて魔力に変換していた。
| 臓硯と『やる夫』は、期を見て『邪悪帝国』と華琳を生贄にするつもりだ。
|
| 志摩子は、別の手段を模索していた。
| もっと平和的で、確実性があり、何より誰も犠牲にしないような。
|
| 即ち。
|
| 九番目。
|
|
|
| 虚言の戒めを破りて現る破滅の化身。
|
|
|
| その名は『人類■□□ 』……。
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.:.:..:.:.:.:.:.:/.:.::::::::::::::＼:＼ヽ::ヽヽ:',
.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:::::::::::::::::.:.ヽ::i:::i::::::', |:|
i.:::::::::/::::ﾊ:::::::!::::::::::::::::',:i:::i:::::::l.|:|
i.::::::/.::::〃ﾊ:::|:::::::::::, _::」|::|:::::::l l:!
l.:::/.:::::〃 ',:::ﾄ､::::く::::::::||::|:::::/ ﾘ
l::/.:::;ｨ:/＝-ヽ＼ヽ,.ｨイ1!::!::/ ′
l/:／ /-‐ 〈tfｼﾉ::!::!′
K ,.ィﾃﾃ'ヽ `´1://
::::', V弋ｿノ ､ l::::| 開き直って話しますが
::::::', ¨¨´ / /::::| この東京にいくつもの危機が迫っています。
::::ﾄ､ヽ､ _ ,.ｲ::::ﾊ!
::::i `'／l:::::/
:::::i ｀`ｰ┬一'´ |::/
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＼|＿_ _ ユ_＝=ァｧ
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. .: .: :／￣,.-､入
.: .:. :. :.／ ヽ_ソ.::::::::::.`､
.: .:. :. ／ ヽ_ソ.::::::::::::::::::::.ヽ
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|「支配、戦争、クーデター……いくつかは先の『集会』で防げました」
|「はい、しかし僕らはもっと大規模な破滅の預言を受けました」
|
| 志摩子は、昨日のことを思い出す。
| 軟禁されている身でありながらも凜と。単刀直入に、挨拶も謝罪もなくそんなことを言い出した蒼星石。
|
| 狂気も洗脳もない。鷹野三四のお墨付きだ。
| 信じがたいことに。
|
|「例えばどんな？」
|「泉こなたと仲間たちが対処している『木星』。
| 伊藤誠や脳噛ネウロが警戒する『冥王ニビル』。
| 翠星石によって召喚されてしまった『クトゥグア』の到来」
|
| にわかには信じがたいが、それらしい報告もある。
| ありえない訳ではない破滅の羅列。
|
|「志麻子さんは『第二の夢』を見ましたか？」
|「神の雷火による滅びを予言した『品川大聖堂の夢』ではなく、『第二の夢』ですか？」
|
| どちらも見た。どちらも天からの炎が世界を滅ぼす示唆をした。
| それが『ニビル』か、『クトゥグア』か、他の何かまでは分からないけれど。
|
|「人々の夢を普遍的無意識から繋げて作られた『塔』は、その先にあるものは見えましたか？」
|「…………」
|
| 見えていた。志摩子は『夢の塔』を見た。
| その先に浮かぶ木星を。そして……。
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:.:.:/:.:.:./:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:.l| ヽ ヽ、i:/ イ '´
:.:/:.:.:./:.:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:|l| ｀` !
/:.:.:./:.:.:.:.:|:.:l:.:.:.:∨ヽ ヽ、 あの認識できないほど
:.:.〃:.:.:.:.:.|:.:.:､:.:.:.ヽ、ﾄ、 , - '´ 巨大なハンマーですか？
／:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.ﾄ､:.:.:.:.:!:| ､フ´
:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:l:|＼:.:.:.ヽ、 /
:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:l:.l /:>、:.:.ヽ`r-ｧﾘ
:.:.:.:.:.ノ/:.:.:.:.:./:ﾉ／ ）:.:.:.:）:l l.::(
‐_'´＿, -‐＜´/ /:.:.:.ノi:.:l l:.:ヽ、
｀! ノ:.:.／ノノ ヽ:.:ヽ
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|「『ビスケットハンマー』といいます。普遍的無意識野から出現した、この世界の人々の想像する破滅の体現。
| 核戦争でも、隕石でも、宇宙人の侵略でも霧でも眠りでもなく……巨大な鈍器による地球破壊」
|
| 志摩子は頭を振った。
| こんな世界壊れてしまえなんて、誰もが一度は考えた事があるだろう。
|
| だが、よりにもよってハンマー？ 意味がわからない。
| わからないが……志摩子は身震いした。
|
| 地球破壊パンチで世界が吹き飛んだなら、どれほど楽になるだろうななんて。
| 考えたことが無いとは言えない。
|
|「これで四つ」
|「…………」
|
| 世界の破滅から少女を守るために遣わされたと言い張る悪魔、でっていうを思い出す。
| 『絶対防御結界』でそれらすべてを防ぎ切るには、どれほどの魔力が必要になるのだろう。
|
|「あと四つ」
|「八つもあるのですか……？」
|
| 蒼星石は静かに頷いた。その目の奥の疲労は隠せない。
| 志摩子は蒼星石を信頼してきた。今回の出来事も彼女なりの考えがあると信じてきた。
|
| しかし、にわかには信じがたいのは確かで……。
| 何よりも、『集会』でいくつかの破滅の芽を摘んだのなら、破滅の数は両手では納まらないほどだったのでは？
|
|「蒼星石、信じがたい話ですが最後までお願いします」
|「聞いていただけるだけでも、十分です」
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ニニニニニニニニニニニﾆ_ニニニニﾆ/
ﾆニニニニニ_,.. - ''': ´￣ : : : : : : : : : : : ＼
ヽﾆニニ: '"´: : : !:. : : : : : : : i: : : : :｀ヽ : : : : ヽ
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'; : ; : :./: : /￣ ヾ:.＼ヽ. > ｧ｜: l: :/ ﾘ
Ｖ : :/: ;.ｲ ｀` ､＿,, 〉! ./;/
l:／イ: ､ヽ ゞ==" ￣ //ノ: :!:ヽ
. |∧: ' : :ﾍ.` i ,.ｲ ´: :|.｜:.:.＼ 虎穴に入らずんば虎子を得ずの気持ちでしたからね。
,.ﾍ : : : : ヽ、 ｰ - .／| |/!: :ﾊ |:.:.:.／
-､／. ヽ: : : :ｌ ｌ ＞ｔ- .,,＿,. イ:. ）! | / .ﾚ:／
ヽ､⌒l ＼: : | : . . ＞ｧｔ＜ヾヽ （ ﾄ'´:.:,.ｲ
＜´ﾍ.`ｰｔ ヽ:| ／／ //ﾄ､ヽ! | ）!.）.ｲ:. |
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|「…………『血族』は、虎穴ですか？」
|「残念ながら」
|
| 蒼星石の言い草に苛立つ。
| フリットから取り返したこの『血族』の、どこにそんな危険がある？
|
| …………いや。
|
| 蒼星石はやる夫と行動していた。
| 『血族』で働く『やる夫』とは別の。
|
|「残りの名を『第四の万魔』『哀しみのからくり人形楽団』『第二次関東大震災』そして『人類補完計画』といいます。
| どれかに心当たりはありませんか？」
|
|「『第四の万魔』は……あの『万魔』で違いありませんか？」
|「はい。昨晩アリカと『弓兵』さんたちが対処したはずです」
|
| その邪魔をさせないに、蒼星石とやる夫は捕虜になった。
| 結果は不明だが、少なくとも間桐臓硯との連絡はつかなくなっていた。
|
| 志摩子はあの自分の利益にのみ固執する老人を、戦力として期待していた。
| しかし、倒されてしまったのならば仕方あるまいとも思う。臓硯が纏う怨嗟は計り知れない。
|
| いずれはこうなると思っていた。
|
|「臓硯を殺したのですか？」
|「恐らくは、結果的に」
|
| あの時、呂布との戦いの最中、突然輝いた『蒼天の青玉』。
| 呼ばれていると言い出したアリカを、焦った様子のやる夫が押し出した。
|
|「今なら『第四の万魔』を防げるお！！」
|
| その先を、蒼星石は知らない。
|
|「『第四の万魔』が解決したかどうかはやる夫に聞くのが確実でしょう。彼こそが預言者です」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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イ ミイ ヽ
／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
/ / / ／ /ｊ ! ',
! ′/ ｨ ／/{ .
| ! ﾘ / | ／ ィノ!∧ ｊ |
iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j|
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ! …………『そちらの彼』も予言者なのですか？
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
ハﾆム､ニｊニニ≧≠ニﾆ!≧ｙ´イ7 /ニニニニニニニニ| }
/ ﾊニﾆ Vニニニニニﾆ7≠（(_⌒ヽ {ニニニニニニニﾆﾆ|! ﾘ
{ / |ニﾘ /ニニニニニﾆ ｒｌヽ ヾ!ニニニニニニニニ|‐´
ヾ |ﾆ7 /ニニニニニニ′ {Ｌﾑｊ/ !ﾏニニﾆﾆﾑニニニﾆ|
. ｊ/ /ニニニニニニ7 ｀ｰ个､__ノ ｊニニニﾑﾆ7ニニニ､
ｨ } 个ァニニニニニ７| ﾑﾆ ヽ＿ノｊニニﾆｊニ/ニニニ|! ＼
/（ ノ ｊ/ /ニニニニニニ!ﾑ ノニﾑ /ニニィニニニニニ|! ﾘ
{ ￣ /ニニニニニニニｊニニニニニニニ＞´￣ミヾニニｭ､ニ! （
｀ー ´|ニﾆア⌒￣￣~~｀ヽ￣￣≧｢ニニニニニニニニニニヾ|､ ーｲ
V´ィ }! }ニニニニニニニニニニニｊ ￣
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| 預言者と予言者。発音を同じくするせいでしばしば混同される。
| しかし、実際にはその性質は大いに異なる。
|
| 預言とは、神の言葉を預かること。
| 偉大なる存在からの啓示を人々に伝えるものが預言者である。
|
| 対して予言とは、予知能力として言葉を得ることである。
| 元来のやる夫は死を夢に見る、つまりは視覚的に予知能力を発現する予見者であった。
|
| すそして予言者は、詩や単語による予知を行う。
| 意味深な言葉や、四行詩で未来予知を行うものが予言者なのである……が。
|
| それは異能の世界の話。一般的には未来を予知するのではなく、予測するものも予言者として扱われる。
| 予測を言葉にする者という訳だ。
|
| 具体的には占い師や易者などである。
|
|「やる夫は、『世界管理者』から破滅の予定を預かっています」
|「神ではなくですか？」
|「はい、いわゆる上次元存在。ニャルラトホテプのごとき存在からです」
|
| 見学会いく夫。
| モーセが唯一神から十戒を授かったように、やる夫はいく夫から『十壊』を授かった。
|
| その過程か、はたまた別のタイミングかは不明だが、やる夫は自己の箍を失った。
| 戻ってきた当初こそ気付かなかったが、今ではやる夫が曖昧モコモコな存在であるのは確定的に明らかだ。
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|.:..:..!:.!:.:|.i:.:.lヽ:レァ十‐rヽ／ノ ／', -テr〈 |:./ﾉ!ﾉ
|:..:..!:.:|.:.|:ヽ:.',. { {f::ぅ:ｰ'} ´{::ぅｰ}. } ,ﾉ／/
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|..:,':.:.:.:|i:|.:.| ヽ ￣￣´ ､ ￣´ ,':|!
!/.:.:.:.:.:|.:|.:.ﾄ､ / /:.i:|
／':.:.:.:.::ﾉ|:.:|:.:|:.iヽ、 r‐┐ ／:.l:i|:ヽ そんなものを信用しているのですか？
,. -‐'ノ:.:.:_／:.:.i.:.:.!: !.:! 丶､ ﾆ'" ／ﾊ:.:ﾉヽ:.:.:｀ヽ、
／, ‐''":, '´ .:.:.:/.:.:.::i !:|、 `丶 .., へr''"､l!:{.:.:|!:.:.:li.:ヽ:.:.:.}
/:.:.i .:.／ :. .:.:;:ノ.:.:.:.:.ハ ', `ー──／. ,.へ｀) ＼:|:l:.i:.:.|,ノ:,:ノ
.{:.:.:.{ .:{:.:.:. ／:./.:.:.:／:.ハ.ヽ i '" 二ヽ、 ',ヽヽ:{:.:.:{
ヽ:.:ヽ.:.i: （:.:.:.:|_;.ノ-‐''ノ. ヽヽ | |. -‐ﾍ l ＼ヾ'丶､
＼:}:.Y＞‐フ ／／ ヽ､.}:.:｝ |. l ,... ﾉ、 | ',:.ヽ‐-｀ヽ、
／ ／ {:.:.{ _,.ノ:ノ..,＿｣ ! ヽ'′ヽ| !:.:.} i ',
,.,.,.,／-‐ ､/ ヽ:ヽr:'"-‐'' ! | ＿,ノ:,ノ !. i
／:/:f ｀ヽ、 ＼｀{.:.{ゝ r‐;.=| | {:r''"´ | | |
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|「耳が痛いですね」
|
| 寂しそうに嗤う蒼星石。彼女とて、本意ではないという表情。
| 志摩子は追求をやめた。
|
|「やる夫の話によれば、『哀しみのからくり人形楽団』は『教会』系列。『第二次関東大震災』は不明。
| そして、『人類補完計画』は…………」
|
|「そんな訳のわからないものが、『血族』から出るとでも仰るのですか？」
|「はい」
|
| 大首領の権威と怒りを、言葉に生えたトゲを、蒼星石は即答によって黙殺。
|
|「テレパスなどの超能力。精神を繋ぐ計画。人類を守る最終手段……心当たりは？」
|「あ……ありません」
|
| 志摩子は嘘をついた。
| 心当たり？ 大いにあった。
|
| 最悪、無辜の民草の魂だけでも集めて守るという計画を、志摩子はフリットに相談していた。
| その計画を、志摩子は、ここで…………。
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＿＿＿_ て
／― ― ＼ そ
／（●） （●） ＼
／ （__人__） ＼ 『ゲシュタルト結界陣』？？？
| ｀ ⌒´ | …………『人類補完計画』から名前が変わったかお？
＼ ／
／ ＼
| ・ ・ ）
. | | / /
| | / / |
| | / / |
(YYYヾ Y (YYYヽ |
（_＿＿ノ-'-（'＿＿_）_ﾉ
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| こちら、少し離れた監獄。
| 蒼星石が入れられた座敷牢のような部屋とは違い、牢獄そのもの。
|
| 薄暗く湿った部屋、金属の重い扉、部屋の隅の小汚い和式便器と、カビ臭い布団しかない四畳半。
| その真ん中に座り込む、やる夫。
|
| 自己を演じる必要もなく、しかし時間だけはいくらでもある。
|
|「流石は『虚言』の『十壊』って所かお。上手くやったな蒼星石」
|
| 事前の打ち合わせをする暇はなかった。
| だが、蒼星石が無闇にあれこれ吹聴するとは思えない。
|
| 容疑者だ。
| 一番可能性の高い相手を予測し、そいつに上手く危機感を植え付けた。
|
| …………まではいいが。
| 『名前が変わった』。
|
| つまり、容疑者は蒼星石の言葉を信じてはいない。
| あるいは、己が世界を滅ぼすようなミスはしないと思いこんでいる。
|
| それは大いなる誤解で、馬鹿馬鹿しいほどの視野狭窄に過ぎない。
| 『やらねばならない』という思い込みこそが、世界の破滅を招くのだ。
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＜ｺﾝｺﾝ
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／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼ …………お？
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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| ノックの音に、やる夫は顔を上げた。
| ここは監獄だ。誰がなぜ？ ノックなどするというのだ？
|
| ガチャガチャと、鍵を開ける音。
| そしてゆっくりと細く鉄扉が開き……入ってきたのは見知らぬ女。
|
| そいつは音が立たぬようにゆっくりと、後ろ手で鉄扉を閉める。
| 死んだマグロみたいな目をして見つめるやる夫、目が合う。
|
|「探したぜ」
|「誰だお」
|「あ？ この乳を見忘れたか？」
|
| バスト111のＬカップ。頭のおかしい数字の胸を張る女。やる夫は眼前で手を振った。
|
|「知らねーお」
|「ですよねー」
|
| 女は肩をすくめた。つまり初対面。
| しかし異様なまでに馴れ馴れしい。
|
|「母親関連のヒトかお？」
|「いや、読者側だ。あたしゃ『nyaRlaTh』。ファン代表さ」
|
| 中位化身？ やる夫は警戒心も露わに身構えた。
| 世界の外側から興味本位でこちらを覗く輩が何の用だ。
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| ヽ- ､
| / ヽ ヽ ヽ ヽ ＼
| / } } } i: }: i i ＼
| ::| | |: |:: |:: |:: }: | 人
| :|| }} }: }}::: }:: }:: } } / ヽ
| :|| ﾊリ: ハ;;＿ﾊ;;＿ﾉ};;___ﾉﾚ' / ::/ }
|￣￣ ￣￣ ￣￣ _,.--‐‐､./::ﾉハノ ／ ﾉ
|￣￣￣｀ﾞ ｰ- ､ ／ _,,,,ｨ /;;// i ノ
|_ﾆｪ=--､ｰ-､ ｀ rｼ;イヾ彡ノﾚ;;;:____} ;乂
|ｨ{:;;(ﾌ;;:::}｀`ｰﾐヽ r'ｲ;ﾉ,_, /:::: ,;:-''::::;ハ
|＼;;;;;;;;厶-‐ ￣￣ /i:;;;;;;, -'":::::::／ }
／ ﾉ ヽ､ u./ ﾉ;;;;;;;;;::, -'" _/ こちとらおっとり刀で駆けつけたから活動時間が短い。
（_／ ） ／ ／ };;:::::::::...... _,,; ｲ 単刀直入に言うぜ。
／ ,.-〈 ﾋー---ｧ' ／､ ﾞ入ｪ;-;-;''=＝ｿ
（／ __）＼ ￣￣ ／ ﾌ>､{::::::.. {
(_,ィ'" ） ＞ ､_ ／ // /＼;;;;;;;;;____,,,ｨ'
／ ,ｨ' / } ￣ // ﾉ Ｙ:; ノ
'ｰ'イ / // ./ };;;;'' ｲ
|＼ / // / /ヽ;: {
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|「『十壊』に惑わされんな」
|「…………どういう意味だお？」
|
| 『十壊』はいく夫から押し付けられた情報だ。奴はこの世界の管理者、偽情報ではないことも『やる夫の中の入即貸本』を通して確認済である。
|
|「問題は十個だけじゃねえって事だ。『ホワイトスネイク』との対決が分かりやすいか？」
|「……ニャル公のハンドルかお？」
|「そうだ」
|
| 奴とは決着ゥを付けねばなるまい。
| その果てにこの世界から『やる夫』が消えても、ニャルラトホテプには報いを与えねばならぬ。
|
|「いい知らせと悪い知らせと、もっといい知らせもっと悪い知らせがある」
|「なんでそれをやる夫に教えんだお？」
|
| 根本的な疑問。この女は信用できない。そも、なんでこんな扇情的な姿なのだ？
|
|「あたしにも子供がいてな、ちょうどあのバカ娘と同年代なんだわ」
|「どのバカ娘だお？」
|「お前のために命張ろうとしてるバカだよ」
|
| 蒼星石？ アリカ？ いや、それならそう言うだろう。
|
|「あたしの目的は、この世界の存続。そのために死んでくれ」
|「条件によるお」
|
| やる夫の気のない返事に女はニヤリと嗤う。
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＿__
/: : : ﾊ
, ー ￣￣ ｀ ､ /: : : : : :l!
イ ､ ＼ Y: : : : : : : {＿, ィ
／ ､ ヽ V: : : : : : :j￣￣ミ ､
ｒ－-- ､ ｲ / j |! ', : ﾊ v´￣: j:/ ≧ 。
ﾘ: : : : : : Y , ′ i! ﾊ＞‐'＝= 亠- i Y: : : :ﾘ }
|!: : : : : : :i l ! _ｊ L -‐' ｒ ,zｪ=ﾆvx,i !: : :/＿ ァｭ､_ /
V: : : : : : | i v´／￣´ ｲ ' ｨ秘y.ｱ! ﾄ: :ｲ-ーミｫ イ ミヾノ では悪い知らせです。
Yｒ‐-､: : ! 7 ,x=ﾆz､ ー 宀'^´~｀ｊｲ ｊ ｌ: :ﾄ≧ア ／
ゝ: : : :ヾ､ ﾊ ,Y iｲ沙=' ﾚﾘ: : :|!ヽ￣｀ー=ニ＿__ 『十壊』以外にも東京を滅ぼしかねない
／ ｀≧＝ﾊ ､ ヽﾍ ｰﾟ´ ｀ _ イｊ ｊ/!: : :li ﾊ ｀ヽ イベントが複数ある。
ｲ -‐ ￣￣｀|ｲヽ＼{ ィ ´ ノ /7|: : : :|!: ゝ。._＿＿＿ ｊ
〈 |ﾊ ﾊ ﾟー‐ ´ , / !: : : : :i: : : Y_ ィ彡 )ソ その代表こそが『魔人 レッドライダー』。
Y彡´⌒＿ ｌ: :ゝ._-ﾍ -‐´ ｲノ ｌ: : : : : i!: :トz- ﾆ＿ｲ__
ー'ア´ ｀) ｊ|: : : : :lT: ≧ 。__ イ ｌ |: ; --､:レ'V_ ﾉ 聞き覚えは？
ｒ≦=-､＝ミ＜ｌ: : : : :i: : : : i ヾY ー’ !、_´ ーｧ=彡 ´
Vミ ｀!: : : : :|!: : : :l 〉, } ー-- ＿_ | ／
}ｚ=≠ー-vミ､!: ;､_:_:_:! : : ｊ／ i! ﾉ ｀__＞。
｀ヾ ＿ ＜´ フ´ ﾘ / ,ィ´ _＞' ￣ヽ
￣｀ヽ ﾉ ' 人 イフ′ ／ ／ ／´⌒￣{
）イ7´ / ｀ ／ ／ ／ ／ ﾊ
／ { / ｲ , イ ／ ィ´ ＿ ⌒ｌ
ﾉ´ ﾄ. _ ィ / ／ zイ , ＜ミヾｊｨ´ |!
/ } ﾊ / ／ ,, ィ彡' ＜ ヾ ｊ !
人 ｀ミ=ｭ､! /ィ’≦彡 -― ´ ﾟ; ｌ !
/ イ ｀ーｧイVォzァﾟ´￣ ﾊ ｊ '.
ｲ , ﾟ イ ﾍﾉ ﾊ . ヽ i i
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|「『十二の封印像』の悪魔『騎兵』かお？ 九月に合衆国大使館で倒されたって聞いたお」
|「倒されたよ。だが、近付く軍歌の足音に目覚めちまった」
|
| 『魔人 レッドライダー』はヨハネの黙示録に登場するフォー・ホースメンの一柱。
| 黙示録の四騎士と呼ばれる彼らは地上に死をばらまく死神のごとき存在だ。
|
|「『レッドライダー』ら四騎士は、戦争・飢饉・疫病・獣によって人々を殺す。
| 彼らは地上の四分の一をそれぞれが支配する……いいか？ 『四分の一』だ」
|
|「待てお、『レッドライダー』が倒された頃にはまだシロッコは来てねーお」
|「野郎はカーネル・サンダース・トールマンから譲り受けた」
|
| 『四分の一』つまりは『カトル・カール』。
| 戦争の死神のための死にぞこない兵士たち。
|
|「……魔力とかそう言うのじゃねー、サイボーグって聞いてるお」
|「そりゃそうだ。『レッドライダー』は藤木源之助用の戦略義手『アガートラーム』に入ってるからな」
|
| だが、その源之助は『カトル・カール』を辞した。
| では代わりにその武器を与えられたのは？
|
|「…………ロビンかお？」
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|「そうだ。だが、『レッドライダー』はそこだけじゃねえ」
|
| 女が胸の下で腕を組む。無駄に揺れる、目を奪われ……ない。
| やる夫の下半身は華琳の死の夢を見て以来不能なのだから。
|
|「『レッドライダー』を倒した二人は、戦争に呪われた。
| そいつらは無意識に戦火を広げようと動くぞ」
|
| やる夫は慄然とした。
| ひとりの男がやらない夫に固執している話は聞いていた。
|
|「嘘吐くんじゃあねぇお！ ケンシロウは、兄弟想いで真面目で、頼りになる奴で！！」
|「怒る『フリ』はしなくていいぜ、時間の無駄だ」
|
| やる夫は深呼吸した。嫌な女だ。
|
|「もう一人は、『リトルボーイ』かお？」
|「ご明察。その三人をなんとかしねーと、『十壊』どころじゃあねーぞ」
|
| どうにか？ やる夫は困惑した。
| リトルボーイはともかく、ケンシロウとロビンだ。しかも、説得やらで何とかなるのか？
|
|「もっと悪い知らせですが、その三人は『満足の行く戦争の果てに死ぬ』必要がある。
| でないと、『レッドライダー』の憑依先が変わるだけだ」
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|「…………」
|「ここでいい知らせです」
|
| やる夫は眉に唾を付けた。全く信用ならない。
| いい知らせの皮を被った悪い知らせに違いない。
|
|「『クトゥグア』は三人の『代行者』を選別して、そいつらにニャル殲滅をさせる」
|「どこがいい知らせなのかまるで分かんねーお」
|
| 『クトゥグア』が来るのは『見て』いる。
| つまり、『代行者』とやらと『クトゥグア』の両方に対処せねばならぬということ。
|
|「うまくやりゃあ『ホワイトスネイク』をそいつらが狩ってくれるってこった。
| もちろん、見つかったらやる夫も狩りの対象だけどな」
|
|「そいつらの目星は？」
|「北斗ケンシロウ以外はまだだ」
|
| やる夫は頭を押さえた。
| 何一ついい知らせではない。
|
|「最後に、もっといい知らせを伝えておく」
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／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ …………。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| やる夫は、鉄扉をゆっくり押した。
| 時計はない。携帯電話も腕時計も押収されている。
|
| 性欲はもちろんだが、食欲も睡眠欲も減退気味のやる夫だ。
| 今が深夜でも問題なく行動できる。
|
| 鉄扉の前の暗がりに、黒い服の男が溶け込むように立っていた。
| やる夫は、彼と目を合わせた。怒りも、親愛も、憎悪も、何も浮かばない。
|
|「あの女は消えたか？」
|「やる夫の貴重な弾丸になったお」
|
| それは比喩ではない。女はやる夫に魔力結晶体を押し付けて消滅した。
| いわく、滞在ビザが切れたようなもんだそうで。
|
|「かぶれ」
|「…………はは、笑えねーお」
|
| 差し出された紙袋、『スケアクロウ』。やらない夫の模倣を、やる夫がするのだ。
|
|「私はこんな場所でくたばる気はない。気に食わんがせいぜい利用させてもらうぞ」
|「お互い様だ。命懸けで世界を守れお」
|
| やる夫は『やる夫』の後について歩き出す。
| ちょうどついさっき、新宿衛生病院への攻撃が始まったという。
|
| まずは蒼星石と合流し、『人類補完計画』の犯人を突き止める。
| そしてその間に。
|
|「ニャル公、てめえにゃ『哀しみのからくり人形楽団』退治をしてもらうお」
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☆ 次回予告
闇の中で始まる、頂上決戦。
今宵、この新宿衛生病院が熱き戦いの舞台となる！
赤コーナー！
『血族』の『緊急事態対策班』がやってきた！
班長代行ケンシロウ！ 北斗神拳継承者にして『四天王』、いつまでも期待の新人ではない！
いまや『血族』を背負う大英雄だ！！
彼に従うも名だたる戦士！
『寿命と忠誠がMAXというバグ』呂布奉先！
『いるだけで淫語が流れがち』巡音ルカ！
『加護の強さだけで四天王』カミナ！
迎え撃つは青コーナー！
『カトルカール』と『核天使』！
次回、最終幕九十六話『大攻勢』
果てに見るのは破滅か死か。
今夜は俺とお前でダブルやる夫だからな
まさかの共闘
乙
世界の破滅が多すぎる
.:.:.:.:.:.:.:.:.. :..:⌒; " __,、
ヽ:_:.:.:.:.:.:. :. .: .:.:.:.:..:.ﾉ:::: ::: :: : ,ｒヽ'⌒ ｀＾j ヽ ..:
￣ `ー ‐-‐一´:::: ::: :: : r'´ ｀ｰ'⌒ヽ｀ｰ､:.
:::: :: ヽ, ....... ... .... . . .. .⌒ヽ
┌―――――‐‐:､ ヽ.:.:._:_:.:.:.:.___:::.:.:.:.:..:::.:.:ノ
|新宿衛生病院 | ＼
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| パプテマス・シロッコの排斥。
| この一連の戦いの目的はそれだ。故に今後はこの戦いを『シロッコ排斥』と呼称する。
|
| 十二月十六日未明、上杉謙信による毘沙門天の一撃が新宿衛生病院に叩きつけられた。
| しかし、必殺のはずの一打は『大天使 リトルボーイ』によって防がれた。
|
| 無論『血族』側の誰も、それで決着が付くとは思ってはいない。
| ケンシロウ率いる『緊急事態対策班』と『グレン団』が正門からなだれ込む。
|
| まずは、上杉謙信の攻撃を防ぎながらも負傷、墜落した『リトルボーイ』。
|
|「とどめを刺すべきよ」
|「同意見だ」
|
| 『学園封鎖』で『リトルボーイ』と対決し、必要以上の恥辱を味合わされた巡音ルカ。
| 彼女の提案をケンシロウは即座に受け入れた。
|
| ルカはジャギ班で唯一『シロッコ排斥』に参戦している。
| 元『武僧』で、それどころかシロッコの部下であったルカの参戦を危ぶむ声もあった。
|
| しかし、ケンシロウとロストスキルが一蹴した。
|
| ルカが魔王マーラと同化して戦い抜いた『歌舞伎町胎界』における、『武僧』の生存者はルカひとり。
| 司令官であるはずのシロッコは現場指揮を取らず、あまつさえ部下が全滅したことで尻尾を巻いて国外に逃亡した。
|
| 生き残ったルカを、『堕ちた』と最初に表現したのもシロッコだ。
| ジャギの庇護がなければルカはあの時粛清されていただろう。
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;: : : : : :ｧ-弌 : : : : : : /'´ |: : : : : :|_| : : |
i{: : : : : :{ ､: : : : /,斗ら拆: : : : : |_| : :｜
. 八 : : : :孑う弌､ヽV/〃 トじﾘ}ｲ: : : : |｜: : |
＼ : 圦 ﾄじﾘ 丶ゝ-ノ |: : : : , _| : : |
}トl个 ｰ ' 、 |: : : / |_| : : | 奴の部隊の女は、誰もがあの男に熱を上げていたわ。
|i: : :. ﾉ: : /{Ｌ}ﾉ : : | 今思うと、何らかの魔術や異能で誘引していたのでしょうね。
八 :人 __彡 / : : : : : :｜
ヽ（ｔ＼ ´ ｀ ,厶ｲ : : : : : : 八
ﾊ└ヮ`ト _,.....::::::::::/ : : : : : , ': : :＼
,: :j : : | ﾉ`ﾏ=云ｘ=彡/ : : : : : /: : : : : : ＼
厶 { : :N´ﾆﾆⅥしﾘア/ : : : : : /ト . : : : : : : :＼
, :´::::八 : |ﾆﾆrｭ弋彡'_/ : : : : : /ﾆ| {::::｀ : .､: : : : :ヽ
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| そして、そこから離れてしまうと熱は急激に冷める。
| あとに残るのは利己的で臆病な指揮官に使い潰されたという事実と怨嗟。
|
|「呂布殿は周囲の警戒を頼む。カミナさんは内部へ！」
|「心得た！」「合点承知の助よ！」
|
| ケンシロウたち地上班は、囮である。
| 本命は黄泉率いる『九鬼』の忍者軍団と杏子班。
|
| 地上で大攻勢をかけ『内部に浸透していない』かのように錯覚させるのが目的。
| 予想される敵は、『リトルボーイ』と『ファットマン』の二大天使。ヤザン・ゲーブル。
|
| そして、『モーリアンビル攻防』で水銀燈を斃した正体不明の女剣士と。
|
| 『カトルカール』のロビン。
|
|「『カトルカール』だ！」
|
| 病院内に突入した『グレン団』の誰かが警告を叫ぶ。横殴りの弾丸の雨。
| たまらず飛び出す『グレン団』。
|
| 一人残ったカミナが突撃、全身に弾丸を浴びながら、巻き戻しめいた再生能力で押し切る。
|
|「喉が喉が喉が！ 乾く乾く乾く！」
|「テメエの血で潤してやンよ！！」
|
| 戦車すらひっくり返すカミナの拳。
| 機銃掃射をしていた戦車男、左手の盾でガード。一見無謀。
|
|「ンがッ！！？」
|
| 盾から打ち出される衝撃の壁。想定外の攻撃に吹き飛ぶカミナ。
| そこに打ち込まれる弾丸の雨霰。
|
| ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！
|「ご奉仕させていただきますわー！」
|
| 戦車男男とアゲハチョウの十字砲火。
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l ,l j.!/ﾍ j ,.ｨ' /. 〉
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l /'´ ,.ィ‐-ﾍｰ､ィ} { /ヽ' ﾍ,.ィ´ ／ ﾍ ／ 魂ィィィィー！！
∨｀'・ｬ , '" ＞､ヾ } 〈 ｀イ´ ／ ヽ
＼ l !, ! ﾍ}ィア≦ リィ' > 丿､
＞､ヽ､ .ﾉ｀ｧj.y'´ｲ ／｀ ∨､ ＞'´ ｀ヽ<ﾉヽ.
,>､ゞ､ <ｰ''".i二@j≧ェ ェir@ｱ､ _.ｨ´ヽ. ／ ￣
／／`'´｀ヽj 〉二ｭ三三三＞´ ＼ ヽ､ ,.ィ
／／ , ／｀>ヾ､｀ニニｲﾍ ゝ,.ィ｀丶
,､ ／／ l〉iﾍ r〈 l ヒ ヨl iィi ﾍ｀ヽ､ //｀ヽヾ ,'
l ヽ､ .／ヾ'" } l.ｨ }∧ / 〉ｰｰィ > ! l, i, ｀ ｀´
l ゝ ,／〉 ／ j.／ / } ∧ ; i iﾘｲヽ lｭ ﾍ {
L ｀.ソ ィ´＿ ヽ〉>ｲ.__l 〉ｧ'´｀ヽ､ ∨｀iﾍ l }
ﾄｰイ ソ´, ' l,.へ!.ィi 〈/ 〉 lﾍ'´｀ ﾍヽ}
,/ヽ ／／ /ﾍ /／ヽ/, l ./ ￣ﾍヘ!.l｀ヽﾘ
／ ／￣l / / ﾍ , 'i l l i / ,' l 〈 l i
／ ／ l,' ゝｭｲ ∨__jｰl, i/ , l'・ﾍ!'”i
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／ ／ l､ i リｿ .ll }｀丶, / /ｰｧ'
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| 巨大な馬イクの前輪が窓ガラスと窓枠を粉砕しながら突入。
| 黄金の鎧に身を包んだ小柄な老人が、馬鹿でかい矛槍を振り回す。
|
| 回転する矛槍に防がれる弾丸の嵐、再生しながら立ち上がるカミナ。
|
|「すまねえ旦那」
|「構わん構わん！」
|
| 弾丸を撒き散らしながら後退する『カトルカール』。
| アゲハチョウが脚部からロケット弾を発射、それを置土産に通路の向こうへ。
|
| 爆発、震える病棟。吹き飛ぶ入口エントランスホール。
| 瓦礫の山を押し上げて、全く無事のカミナと呂布。
|
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
|「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|
| そこに襲いかかる二人の遊撃手。方天画戟の内側に入り込み、火花を散らす呂布の鎧。
| 食い千切られるカミナの手首。
|
|「小癪！」
|「だが捕まえたぜお嬢ちゃん！」
|
| 左手を犠牲に、バレリーナの喉頸を鷲掴みにしたカミナ。暴れるバレリーナ。
| 次の瞬間、カミナはバレリーナを放してバク転回避。
|
| キラリとした何かがカミナのいた空間に走る。見えない敵。違う、カミナが恐れたのはそれではない！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ｒ、
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ ィ／
「｀ 。 ＿ ﾑ ﾏ 。ィﾆ／
≧c。｀ 。 ／ ＞。ﾑ ﾏﾆﾆ／
≧c。 ｀ / ／ ＞} ﾏ／
≧c。 ｀ ＜＿ ／__ノ ﾏ
≧c。 ::..... ..: ﾏ
≧c。:.. ﾏ＿＿
マニヽ ::... .ﾏ／ オ爺様……。
〉ニニ、 ::::.... .:: ﾏ
＿＿ ｲニニニ 〉 :::.....:: ／￣ヽ
＼＞ ￣￣ ｀マﾆ人ヽ /〇 ﾘ
/ > ィﾆ＼ {＿ ィ/
/ ￣ﾏニニ＞ {＿彡´
{ }ニニ/７｀ ┘￣
八 ＿ /ニ彡 /
／ 人{ ７ ィ＿へ／
／ / } ／ー＜￣ ﾑ {
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| カミナに叩きつけられる鉄球、粉砕される肉体。
| 無限に近い魔力と再生能力でも、痛いものは痛いし、過剰なダメージを受けると再生に時間がかかる。
|
| 冷酷なもう一撃。意識を失うカミナ。
| 具足による蹴り技でノミ脚の顎を蹴り砕きながら、呂布が再生まで守る位置に。
|
|「久しいなあ愛する孫よ！」
|「申シ訳アリマセン」
|
|「何を謝る。立派に成長しおって！ 貴様は我が魂を震わす強者よ！」
|「イエ、ソレガ」
|
| 六本脚、鉄球と段平の腕、うねる尻尾。
| 撤退する『カトルカール』三人。呂布という暴力の竜巻に巻き込まれてはごめんだとばかりに。
|
| 会話の途中だが振り下ろされる方天画戟。エントランスホールは吹き抜けだ。
| つまり、長物を振り回せるのはここだけ、この奥では困難。
|
|「策ヲ練ラセテイタダキマシタ」
|
| ノミ脚に変わるロビンの脚部、尻尾から火炎放射で目くらまし。
| 切り払う呂布、馬イクに拍車をかける。突っ切って、逃さない。
|
|「たまし…ッ！？」
|
| 雄叫びを上げた瞬間、天井から飛びかかってきたロビンの体当たり。
| 赤熱する鉄球が突き出され、小柄な身体に直撃。落馬イクする呂布、黄金の鎧が無惨にへこむ。
|
|「ふはっ！」
|
| 苦しげに、しかし同時に楽しげに笑いながら鉄球を掴む呂布。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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V / / .| ＼ |ヽ ＞ | / | |. / / / /
. V / / ﾄ――‐＼ V／ | / Ｖﾍ. / / / /
ﾄ/ﾆ / / 八. ＼| ソ / |/ / / / 魂イイイィィィィッッッ！！！
厶へ.＿ノ ＼――― ＼ ﾄ､ ﾄ､ /| イ / / /
V∧ | | | ＼ﾄ､＿,ヘ ￣＜⌒| Ｖ V / / /
{ﾆＬr￣ Y _ﾉ | |＼ {__} } ﾄ--{{＼ ＼/ / /V ┌――――v ／
{三ミ}. | l＿八 ﾄ ＼ 〈￣ ＼ゝ=ﾍ.__ノ / / ＿＿＿厶―――― レｲ
V∧ ⊥ | ＼へ＼| Ｖ |＼ ＼ |. / / | ＿／ ￣￣|￣￣￣ V{___}
V∧￣ｌニｌ ￣ /へ| ￣/ ､ ＼_|/ ∧ | | | | ／
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V∧ / Ｖ＼ ＼|ﾍ /|＿/| Ｖ/ | L ／二二二二二二V
V∧ ﾍ V ∧ ＼ ＼/￣|/ | ゝ_ノ | |＿∠＿＼＼
V∧ ﾍV ＼ ￣￣￣ 厂￣ /―――┬ | | O / |ノ
V∧r―― x∧ ￣￣￣.|￣￣V / .| |―∠＿＿＼
/ニニ| Ｖ/二O二||二O| V ／二二ﾊ ＼O ＼
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| 左手が焼け焦げる。だが離さない。引き寄せて格闘戦に。
|
| その強烈な戦意を孫は熟知していた。
| 腕の途中で外れる鉄球、よろめく呂布、飛びずさるロビン。
|
|「ソレデハ、失礼サセテ頂キマス」
|
| 閃光、爆音。火炎と破片を撒き散らしながら爆発する鉄球、もはや枠組み以外は面影をなくしたエントランスホール。
| 爆炎の中で、呂布は己の焼け焦げた左手を見つめた。
|
| 魔力、火力。共に違和感があった。
| 呂布のよく知る神道系の魔力ではない。そして、通常兵器の火力ではない。
|
|「…………だん、な」
|
| 呂布が盾となることで、爆風からは守られたカミナが覚醒し、しわがれた声を出す。
|
|「誰も来ねえ……攻撃されてる、かもだ」
|「慧眼だなカミナ」
|
| 吹き飛んだ入口自動ドア。舞い立つ粉塵。
| その向こう、病院正面はすでに修羅の巷であった。
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＿
´￣ ミ 、
/ ヽ
/ j」=-―― ７⌒ヾ ヽ Y⌒
⌒>' / ｒｪｪ=＝＝{{ ｨﾄ、! ﾄ､
/ {!__´...-――--≧彡 /! :. ＼
人´ ｀ ｀ミﾆｊ{ i
/ ﾑ ｒ‐ ､ ミｲ! |
/ ｊ ト ､ ｀￣ｊ{ ／ｊ |! | ほげえ〜〜。
|! | }≧ｒーｧｭィ// |! i
/ i! ! 7｀ー≠⌒ヽ! j! 八
/ / ! ! / }!川 ヽ
.: / ﾊ ｊ!/ i i ﾘ {
ｊ / ハ!/ }! i八 |
川 / ＶＬ /! | ヽ} i!
/ ﾘ八 / {/)｢´ / | j! { i
/ } ﾊ / ヾ{ ｲ ﾄイ{､ ! ｛
/{! 人 ｀ヽ ｊ ﾏﾆリ ﾊ 川
/:_/｀ー＝-- 彡 }ﾆト､ ヽ{
/: /: : : : : : : : :ヾﾑ }ﾆ{ ﾘ
/: : : : : :_L: : : : : : ﾑ }ﾆ{´
/: : : : イ/⌒}ﾆヽ: : : ﾑ |ﾆﾑ
〈: : : : : :/ ﾆﾆ: : : : : ﾑｊﾆﾆミヽ.
｀T＝ｒ′ ﾆﾆ: : : : ィ／ヾ}〉｀ｿ
| | ﾆﾆ｀T イ
ﾆﾆ ﾆﾆ ﾄ､ ｣
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| 屋上から飛び降りてきた『ファットマン』の奇襲、最初に気付いたのは石田であった。
| 上空で右腕の液体金属義手が有刺鉄線状に変形、からみ合い不規則に枝分かれして跳ねる。
|
| カオスの投網による文字通り一網打尽。
| 不可視の障壁で仲間を守る石田、生物のように蠢く有刺鉄線が空中で火花を散らす。
|
| 即座に反応したのは龍田。両肩のエンジンを吹かし、その勢いでハイジャンプ。
| 左フックで有刺鉄線を引き千切って突破。
|
| 空中でエンジンを吹いて姿勢制御、『ファットマン』に突撃。
| それを見たルカが追従、お玉みたいな形になった肉襞色の頭髪でケンシロウを投擲。
|
| 続いて自分も飛び上がる。
|
|「あらぁ〜？」
|「ギーキギーギーギー、ギーキギーギーギー」
|
| 錆びついて軋むような声を上げて、戦闘機型『カトルカール』が龍田に突進。
| 空中で逃げ場なし、アームで生身部分を守るも、跳ね飛ばされて落下。
|
| 素早く動いた石田が両手でキャッチ、お姫様抱っこ。
| 路上に蜘蛛の巣状のクレーターが発生。
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＿ ＿
, ｨ≦三三三ﾆﾆヽ､
ィ三三三三三三三三三 ､
/三三三三三三三三三三三＼
/三三三三三三三三三三三|三≧
ｨ三三三三三ニﾆ三三三三三|三三ﾍ
|l三三ﾆ＞三三ﾆ''＼ﾆ＞ミﾆ三l三三ハ ちょ、ちょっと石田クン……。
ﾊ､／ニ=､l´ ＼| ヽ | Ｙｿ三三ｿ そんな恥ずかしいこと言わないでよぉ。
/三|､Ｙﾍ ヽ l _l＿ﾒ＿ﾉ/ｘ≦彡
i三三＼ ＼＞― ´￣ ｨ/i､/ヽ三ｲ
ヽ､三 /､`≦ｚ _ ,ｚ≦ミ l/ |三ﾍ､
｀ ヽl i＞ ≧≦＜ ｉlﾘ ヽ三三ヽ
,|､: : i: : : : i: : ': :/: ＼ 〉三/
, ﾍ: : `:ｰ:＝:ﾆ:彡く: : :/ ヽ､l三ﾆゝ -‐=ﾆ
/ ､: : : : : : : : ゝ-〈: : :l /l ＿, -
/ ／: : : : : : /´ ノ: : l l /＜´ ､ ｚ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 空中で姿勢制御のできないケンシロウ。
| だが、川を流れる木の葉に立つかのように、羽毛のように体重を感じさせぬ動きで有刺鉄線の網を駆ける。
|
| そこに錐揉み突撃する戦闘機、ピンクの触手がケンシロウを守る。ルカの頭髪。
| ケンシロウとルカ、二人が同時に屋上を見た。
|
| 真っ赤に塗られた煙突か土管か、そんな異様な物体が浮いていた。
| レールガン……！ 超超音速の弾丸が衝撃波を撒き散らしながら飛来。
|
| 気付くのが一瞬遅れていたら肉片になっていた。
|
|「ケンさん！」
|「任せます！」
|
| 触手が皮膜に変わり、ルカが深夜の廃病院を飛ぶ。
| ケンシロウは『ファットマン』に肉薄、その表情を感じさせぬＬＥＤサングラスに拳を叩きつけた。
|
|「へぶっ！？」
|
| 吹き飛ぶ『ファットマン』、三階の窓ガラスを突き破って院内へ。
| 落下するケンシロウ、空中で身をひねり、衝撃は地面に逃がす。こちらもクレーター。本人は無傷。
|
|「もう直したのぉ？ 勤勉ね」
|
| 石田に首ったけのまま、龍田が甘い声で不満を呟く。
| レールガンも戦闘機も、一昨日の『やらない夫の集会』でノックアウトした。
|
| たったの二日で再起するとは予想外。
|
| なお、この修理速度には秘密があった。
| これまでシロッコが一人で修理していた『カトルカール』だが、ひとりの男が修理工として参加したのだ。
|
| 彼はいかなる破壊と殺戮にも対処できる恐るべき可変形兵器を、工具に変えて利用した。
| 合計九本の手足を駆使して、恐るべき速度で部下たちを修理、不足したパーツには液体金属で補強をした。
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_ｨ≦ニ>─= .,,_
,ィﾆﾆﾆﾆﾑ "''＜
／´ ﾏﾆ| "''＜
／''‐＜. |=ﾄ､__ ＜｀＜｀''‐-､‐‐､＿＿,,, -
ｲ/ ｀ヽ ﾏﾆﾆﾑ ＞=─ "￣￣
l ､{ ＼ ≧=- ヽﾏﾆﾆﾑ ー‐､───''"￣｀
. {､ヽヽ ＼.＞ミ､ヽ ∨.ヽﾆ〉 ＿ ｀"''＜＿＿＿
|ﾊ ﾞゝ／､,ｨ=ｧ ',}、. '〈_: }' ＼ ｀'＜￣"''''─､─
lﾍヽﾄ､爻 'lﾘ ﾊ__ﾉ|', ﾊ/.ﾉヾ "''＜ "''＜ ヾ''
', ヽ. ゝノ '''｀>‐､} ', } ﾊ′ ヽ "''‐- _ "''ー 助かりましたわ。
ヽ ヽ }! ',}ｲ ﾊ ＼ ｀ヽ 器用ですのね。
', -‐ ! ....::::::::: ', ＼
ヽ ....::::::::::::::_ ＞､ヽ ヽ ＞ ､
ゝ┬､''>‐''" , -ヽ ミ ＞､＿＿＿,,,
| { ハ ≠_ ─''"⌒ヽ "''＜ ヽ "''＜´
{ }'{ﾏ ／イ /. ',＼. ヽ ーミﾄ､ ｀
／ﾑﾏｲ /ｲ /＼ } ｀ヽ ヽ
,ｲ_/ﾆ/ｨ''" ヽ{ } } ＼｀ヽ＼ ',＞ ､
＞''" ,ｲア / ', ,' { ＼ ヽ ヽ ',＿＿
> ´. ,ｲｱ ./ ',__} ハ l/{ ヽ＞''" ', ',
／. ,'ﾆ'. } ,､ / V ./ ／ ',',
. { {=ﾑ ! / { ｀'_zzzzxｲ. ヽ
',. {ﾆﾑ ', ,イ＼{ィﾆﾆﾆニﾏ ､__/ >､
ﾍ. ﾏﾆﾆヽ_',_,.｡s升 〉〉ヽﾆﾆﾆﾆﾆﾄ､ _ イ
>=- ｲﾆﾏﾆﾆﾍ ﾏﾆﾑ 〈〈 ,ｲ}ﾆﾆﾆニﾏ─､─ ＜ヽ ゝ''‐､
{ニﾆﾏﾆﾆﾑ }ﾆﾆﾑ／ﾆ/}ﾆﾆﾆﾆﾑヽ ＼ ヽ ｀'' ､ヽ
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|「自分ノ体ハ自分デ直セルヨウニシテキマシタノデ」
|
| そして、今のロビンのボディは『カトルカール』全部乗せ。
| 部下たちの設計図と構造も熟知して、ようやく自分自身のカタログスペックを出せるとロビンは考えていた。
|
| 同時に、彼は『カトルカール』をシロッコ以上に上手く扱った。
| 遊撃と要撃。これこそが『カトルカール』。
|
| 機動力で敵を振り回し、こちらの主力をフォローする。
| 先程カミナと呂布を撹乱したように。そして今また。
|
| ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！！！
|「ご奉仕させていただきますわーッ！！！」
|
| 飛行能力でぐるっと回って来たアゲハチョウ、背面から重機関銃の弾幕が『血族』を襲う。
| その間に戦闘機と大筒が退避、代わりに飛び出してくる『ファットマン』。
|
|「後ろは任せてくださいな〜」
|「ｺｰﾎｰ」
|
| 銃撃を止める石田、龍田は突撃。そこに現れる小柄な影。
| 完全無糖のブラックコーヒーみたいな黒髪、猟犬のしなやかさ。鉄腕。
|
|「拳を握れ！ 拳を握れ！」
|
| 両手につけた雷撃器、まるで小型化した龍田。
| バストサイズも腕のサイズも。
|
| 機械化されていない唇から吸いかけのタバコを吐き捨てて、龍田の懐に入り込む。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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: ,i´ | lﾞ .| l | │ /⌒ヽ
.lﾞ | .| | │ | | / /
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|l"",,,-ﾆﾆﾆ--''ﾞ,―ー-,," .| l」 ｀´ ／
.,i´| .j|｀ ｀| : |｀ .iﾞl: .,.| { ｺﾎｰ
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│ ﾞli"二,,,,,,,,,,|/ii;|,,---ヽ,,,‐,i´..| }＼
│ 'lﾚ、 ,,/,|,,,,ﾞlﾞlヽ､、 ,lﾞ,/._ノ ∧ ヽ
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l、 .`ﾐ||r},|,|,|,.（´ ＿ ＿ノ / ヽ ｸﾞｫﾝ
｀ﾞ'―---rrﾞ'": :=ﾆ'.ゝ､＿_,._-‐''´ '人￣￣ ／ / ／ ハ
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| 龍田が中空を蹴って跳躍、念動の踏み台。
| 空を切るジャブ、歯ぎしりする鉄腕を愛の力で飛び越える。
|
| エンジンに火を入れる。大型車の衝突じみたタックル。
| 重火器を撃ちまくりながら、ひらりと避けるアゲハチョウ。随一の回避能力を持つ蝶の羽根の性能。
|
|「当てづらそうね」
|
| そこに飛来する拳銃弾十五発、ベレッタを撃ち尽くしたルカ、弾倉が排出される。
| 完全に計算された『ガン・カタ』による弾丸、四発が羽根に命中。
|
| しかし、空いた穴は魔力による皮膜で即座に塞がる。飛行に遅滞なし。
| 飛んで逃げるアゲハチョウ、追う鉄腕。深追いを避ける龍田とルカ。
|
| 何しろ背後には、高速で復帰した『ファットマン』が迫っている。
| 病院三階から顔を出し、ケンシロウにロックオン。サイバーサングラスのモノアイが発光。
|
| まず光、次に熱と音。
|
|「ふん！」
|
| 戦艦の主砲並、シロッコ脅威のビーム兵器を気合で防ぐケンシロウ。
| ジャケットが一瞬で燃え尽きるも、その鋼の肉体には傷一つなし。
|
| 無論、『ファットマン』もビームで倒せる相手とは思っていない様子。
| 壁にクレーターを作って下向き跳躍。
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,r､､､)￣ヽr"(ｰ ､､､
,ノヽY"("r"iiit;;;t､ 从ヽ｀）'"ヽ
､ ,r("' "､､､ "''"t;;;ヽ匁､､ｰ､､)）〉;;;;;;;;三彡"
_ｿ"从 了ミミi ,,｀ヽ､;;;;ヽ､､､､ｰヽ;;､''''-､ノt,,,,,
it（ （;;ﾉ （;;;;|､t シヽ;;;;ヽ､､）､ ヽ;;;;;;;jjj'|ii､"""ノ
､,,t,｀ﾚ 从ii|ヽ､ｰ''"iii､ヽ;;;;;ﾘ|;;;;从i ､､､从､､t;;;;ヽ'ｰ､ヽ
メ''""/;;;;;从,,､､ ､ i;i||j;;;;r"t;;;（ ｿ､t;;;;ヽ |;;;;;tヽミ ､）,
､ゝｲ |;;;;ij|从;;;;ヽ|;;i |､",,,,iiii､,,,,､i､ｿi t;;;;|ヽ;;;;;ヽ､ ヽ''''"
t､,女 t（ツ||i;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ﾂ;;;i､､､i;､~'-､;;;;;､)）
､､ノ（iﾂM;;;;|;;;;;;;;;;;;ii;;;;|i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､;;;;;;;|;;;i |;;;t'ヽ三彡 来い、外道！
// り";;;;;;;;;;;;;iヽ;;;;;;;;tiii;;;;;;;;i|;||;;;;ii;;;;itｿ;;;;ﾘ;;;;"ヽ;;;;;ir'" 相手をしてやる！！
ヽﾂｷ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ人､､､ﾐ;;;;;;;;tヽ､;;ヽ二ﾘ;-､t;;;;;;;ﾚ;;;;|''"
ｰ7;;i|､;;;;;;r､ﾐr'";;;;;;;;;;;;;;;~~' ﾘヽ|i";;;;;;;;;;;;;;;シi;;;;;;､i|）
ﾘ;;;;||t;;;;〈 ﾐ 彡=ﾓ丐ｧ､r;;; "ﾘ､zﾓﾁﾃzｰ' ﾘ;;;;ii|j
（;;|;;;ヽ､;;;;i ｀~ '''' "::: |~::''-￣ｰ ﾘ; ｲ
ﾌ;;;;;ヽ;;;i, "" | ,'r';;;i
,r''ヽ ｀（;;;;;;;;i~t ,,,,, j ,, /"彡|､
. ii i t;|;;;;;i ::t ヽ:::｀" / {{ヽt ヽ ,,, ､ --ｰ '
. i ﾘ 't;;;;i :ヽ ,,､-_~-,, /:: j ﾉ ;;ﾘ''ヽ､ ,, ､- '' "~:::::::::::::::::::::
i '"| r'~ヽ, ヽ､i ::ヽ "''ニﾆ" ,':: y" "ﾉﾉ ﾌンゝ'":::::::::::::::::::::::::"""""
ﾘ i ,,/ i''''""￣￣￣＞'''"~t |i ::ヽ, ''~~~""" /:::::､-'" ,r"／zr'":::::::::::::::::"""" "
_,/ :::::"i" / '-､ノ,,,,,,､ﾆ､ ,､-'";;;r''"::::入 ii;;::::::::ヽ, /::: '" , ,r､" /"／""t ｰ⌒) ""''
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''" ヽ ,､ｰ''"ii ,,,､ノ";;r"::: :::;;;iii| ﾘ,r'" ヽ y'" '"／/'／"_; ' " ~'ｰｰ r"~
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::: ｲ ,,､r'- '''""ﾉ;r" :::::::/ t:::::::: ,r" 三/／' /'" /;;;;t r'┏━━┓ ヽ､､､､-ｰ''''"
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| ケンシロウの挑発に応えるように、『ファットマン』の右腕が円錐状に変化。
| ランス、ドリル、衝角……なんでもよい。突進の威力を切っ先に集める武器だ。
|
| 破裂音、『ファットマン』の突進が音速を越えたために発生した衝撃波。
| だが、ケンシロウはその一撃を紙一重で交わし、クロスカウンターを決め……られない。
|
| レールガンの狙撃！ 己がスコープの中心にいることをひしひしと感じ取るケンシロウ。
| 無理な姿勢で突進を回避、打ち砕けるアスファルト。土煙の中で再び『ファットマン』のモノアイが集光。
|
|「はにゃ〜ん」
|
| 横薙ぎのビーム。手頃な『グレン団』員をまとめて押し倒すルカ。触れ合う体、男の臭いにクラクラ。
| 慌てて身を屈めた石田と、彼の念動で押しつぶされる龍田。愛の重さ。
|
| 耐えるケンシロウ、両腕に火傷。
| 耐えきれない病棟、爆発、火災。
|
| そこに飛来するレールガン。直撃を避けるケンシロウ、病棟のガラスが全滅、衝撃波になぎ倒される電柱と外灯。
| 破片と土砂が吹きすさぶ、跳ね飛ばされる『ファットマン』。
|
|「建物に入ろう！」
|
| ゴーグルを下げて叫ぶのはシモン、上空から好き放に題狙撃されるのはあまりにも分が悪い。
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_,,.. -ー-..､、
／, ;=＝＝=､、＼､_
／.:;ノ : : .:|￣＼ :..ﾆ ー､
/,.／ .:| : .:i :|､入 .ヽ_:＼` ､`.､ 『リトルボーイ』どころじゃないわね！
ー=＝ニ:;／ .:// .:/! ::| :／＿ヽ| :',} :.＼ ＼＼
|／.: ::|ー:/ | ::|/ ,ｨﾁ心}〉! :.',） ::..`､ ＼＼
/ .:/| ::|,ｨﾁ心､/ 弋)ｿ,':ﾉ ::.', :::..`､､_ ＼｀ヽ
| :/∥､ ::{ 弋)ｿ , j : ﾄ､ :::..＼ー | :::i
/.:r' {| :.＼｀、 ,-‐､ /:／::|:.＼ ::::..＼,' ..:::|..ー――-- ､、 ＿＿
／.: ヽ :..＼ゝ､_ ｰ ' ｨ ｲ :..＼ ::::..＼:ﾉー---､、＿
,. '´／/ .: ﾚ＼ ::.`､_. i￣ ´ イ :::| :::::... :::..＼ ￣｀ ー ､、
,. '´ ;:: '´／ .:/ ￣￣´:|ﾞ≡ii≡´| ::::ト、 :::::... ､ｰ ､＼
,. '´ ;: '´ ／ .: .:/ .:/ ,:ヘ;;ｒ=､i;;;ﾍ ::.',:.ヽ :::....'､ニ｀､ヽ::｀ー――--､
,. '´ ;:: '´ , 'ﾌ-ｯ .: .:/ _,,::,,-;;´;;;;;;;;;|!_ﾟﾘ;;;;;;へ :.＼ー-,,､ ∠二、ヾ ヽ,.:1＼ ＿::..＼
,. '´ ;:: '´ /／ ／ .: ..: ,< ;;;;;;;;;;〈三=＝＝三´）;,ヽ ::..＼;/ ヽ＿,::;⊥、 ｀､〉 :..＼ ＼:..＼
´ ;: '´ ／ ,´ ￣`ニ､' ..: / ヽ;;;;;;;;;;;ヽ_彡1川ﾐﾆﾉ;;;;;;;,ヽ :. :.＼ |` 'ー┐ i :..ヽ :... ::...ヽ
; '´ ／., ,' ｱー-＾' .: / y;;;;;;;;;;;;;;L=uUu=､」;;;;;;;;;;;;;〉 :＼ :..ヽ、 ヽ | ::...＼:..＼ ::...〉
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.／.:／ /〈 く ..::/ |;;;;;;;; {;;;;;;;;;;;;;;;;;;―;;;;|||;;;;＝;;;;;;;/ ::∧/ .::/L ｀ー / /:..＼／ ...:∧ .::〉
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／ ..:::/ | ヾ;-､;;;;;;;,', | ゝ;;;;;;;;;;;;;;;´;;;|||`;;;;;／／-;;'/ .::/ー､.」 / / ＼ ::::', ｙ´
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| シモンと二人で殿を務めるべく身構えるルカ、『カトルカール』を警戒。
| 土煙の向こうでエンジン音、龍田？ 違う。だが、聞き覚えのある音。
|
| 轟音とともに突っ込んできた真っ赤な戦車。『グレン団』の一人がひき肉に変わる。
| 巨大な重機のアームが振り回される。龍田が殴り合うもパワー負け、よろけた所に火炎放射。
|
|「レヴリアス……ッ」
|
| 呻くケンシロウ、ミスト・レックスが奪われた自走戦車の成れの果て。
| 銃座に備え付けられた機関銃が重低音と共に火を吹いた。
|
| ゴム弾ではなく人間などかすっただけでオーバーキルの大弾頭。石田が念動の盾で斜めに逸らす。
|
|「こいつ！」
|「駄目だ！」
|
| 突撃しようとするシモンを、ケンシロウは止めていた。
| 放置できる相手ではないのに。シモンの内部破壊攻撃ならば容易いはずなのに。
|
| レヴリアスには、ミストの恋人の脳が使われていると知っているから。
|
| その逡巡が命取り、レヴリアスの巨大なアームがケンシロウとシモンをまとめてなぎ倒す。
| ベキバキと耳を塞ぎたくなるような破砕音、そこに飛んできた『ファットマン』。
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ー-- ＿／￣｀ヽ
´￣ ミ
／ 、
／ ＼ ヽ
＼ ＼
´7⌒ヽ、 ＼ 、
／ {! ＼ ﾑ ＼
／ ｨ八 ＿ 彡｀ー ﾑ ＼
´ ,ｨ／´ ゝー== ≦ ￣ﾑ
,ｨ／ -― ＿＿ ﾑ
ｨ／ ´ ´￣￣ ﾑ ', たいしゃー？
／, ィ ´ :. ',
／／ ＿＿ :. ',
∠ｨﾑ / 、ｒ｀ ﾑ ',
Vﾑ ￣ ヽ） o イム ',
V ＼ ＼、 ＿_ｒ’ハ ﾑ
V ≧ｒ。 ＿＿ ）}- 、=-――Vﾑ
V ヽ マア へ/ Vﾑ
V ＼ ァ 「_ィ/ Vﾑ
V ( V´ / Vﾑ
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| ケンシロウにミサイルのような飛び蹴り、三叉に分かれた義手と両足、しっぽみたいなコード束も合わせた強烈な乱打。
| だが、ラッシュの速さ比べならばケンシロウに分があった。
|
|「アータタタタタタタッッッ！！！」
|
| 北斗百裂拳！！ 合計六本の四肢で攻撃する『ファットマン』に、手数で劣らぬ、むしろ押し勝っていた。
| 正面衝突ではケンシロウが勝るのだ。モノアイに光を集める『ファットマン』。
|
| その顎に強烈な一撃、さらに胸に三発。
|
|「浅いか……ッ！」
|
| 唇を濡らす血を拭い、ケンシロウはシモンを担ぐ。
| 強力な魔力防御でミートソースは免れたが、腕と肋骨がへし折れて悶絶の体。
|
| 北斗神拳で秘孔を突かれた『ファットマン』。
| 全身がブクブクと膨れ、背中と脇腹、右腕から破裂。いや、内側で膨張した液体金属が吹き出すと同時に硬質化。
|
| 全身の血液と骨格を液体金属に置き換え操作するバケモノに、北斗神拳は効果が薄い様子。
|
|「ん、あー？」
|
| 破れた背中から吹き出した液体金属が、有刺鉄線の束になって伸びる。
| 枝分かれし、絡み合い、最終的には三対の翼のような形で固定。
|
| 大天使らしくなってきた。
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∨ ∧ / / // / /
∨ ∧｀丶､ / ／,.ｨﾊ // ,' /
∨ ∧ ｀ヽ , ／ ／ 弋ソ // O .l ,'
∨ ∧ .l ﾍ／ ／ /ヽ, il // _＿_＿ l l
∨ .∧ l l. ,.ィ´ ./ ﾊ､ l!/∧ O l l
∨ ／＼/ l／ ／..／ l ／∨∧ _＿＿ l l! 奇っ怪な！
∨ ／ ./l ,.へ '｀´ .／ ./.l .∨∧ O l! l
l / 〆l‐〈 l ､,.ｨヽ, / .l ∨∧ _＿＿.l l
∨ l } ! .l ／lゝｪｿ / l ∨∧ O l ﾄ､
l ﾙヽリィ ､l／三i} ,.ｲ l ∨∧ ─ﾊ ,' ＼
＼ ／ 〉三≡≧,.，-‐'' ∨∧ ,ｨヽ
`､ ,' 三三＜_ ∨ ｀'.〈 ＼
＼ l/´ _＿≧, l＞ ., ｀'ー ∨ ＼
` ￣`ヽヽ.l ｀l＞ ., ∨ ／
ヽ l､ l ｀.>､ ｀>'´
ヽ､ヘ ｨ' l ヽｰ､ /
`ー─‐一´｀ｰｿ / l
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|「旦那、強敵だが魂はいいのかよ」
|「魂を持たぬ木偶人形に震える魂の持ち合わせは無い！」
|
| ボロボロのカミナと、所々焦げた呂布が病棟内から戻ってきた。
| 振り回される矛槍、羽ばたいて空中に退避する『ファットマン』。
|
|「シモン……」
|「へへ、アニキ……俺なりに頑張ったんだけどサ……」
|
| カミナの両目が憤怒に燃える。
| 空中の『ファットマン』に跳躍して肉薄、カットに入ろうとしたレヴリアスを、ルカが頭髪で捕まえ、龍田が脚部に一撃。
|
| 足を失えばただの固定砲台。さらにひっくり返して無力化を図るも、土煙を掻き分けて再び鉄腕。
|
|「あらあらあららぁ〜♪」
|
| 迎え撃つ龍田。鋼の拳のボクシング。
| フットワークを踏む鉄腕、火力は控えめだが小回りがきき、あまりに巨大な腕を持つ龍田が不利。
|
| 数合のジャブの後、するりと懐に入り込む鉄腕、迷いも恐れもない動き。手練。
|
|「プッ」
|
| 次の瞬間、鉄腕の喉頸に長く太い針が突き立った。
| よろめく鉄腕。いや、不屈のガッツで持ちこたえる。咄嗟に振るった拳、爆雷付。
|
| 空振り、両腕を支点にした龍田のドロップキックが直撃。ボクシングする気は皆無。
| 龍田らしい圧勝。
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l|ヽ= 从;;l |l|;;ll;;;;;l|;;;;;l;;;ｲl;;;;;;;;;;;;;| l|;;;;;;-〈､|;;;;;;;;;;;;;;,,三∠ノ ﾌ
ヽﾐ三从;;从|;（;;;;|l;;;;l|;;;（（;;;;;(ヽ乂;;;;;;／ﾉ人､从;;;;;;;;ヽ ∠ |
ﾐ二ミﾐ从 ; ;;;;;;ﾞ;;;;ﾞ;;;;;L{{ミ|Y;;";;;;;rﾃ'';''iﾞ''ミﾞ ｲ;;;;{ミヽ∠ﾉ
ﾞヽ乏ﾞﾞ从ﾞ ;;ヽ､､_;;;;;;;;;;;;;{≧Y;ﾉﾉ=-ﾞ'''"´彡 ';;;;;;ヽﾞ,,', ヽ 呂布殿、カミナ！
＜彡l|;;;;;;;l､;}:/;r't;;;)＞| 彡￣""´ |;;;;;;〈 |.| } 制空権と狙撃手をどうにかしないと負けるぞ！
ノノｲ;;;;;;之"ﾞ"''"´ |､ _,,､::::: |;;;;;ノﾉﾘ;∠
ｲ彡l|;;;;ヽ ﾞ:::::::: j _,､ -)ﾞヽ::... |;;/- /;;/ミヽ
l|//l|;;;l~､'､ :::: ﾞ''::ヽ,／ |（,,ノ;;;ヽ〉ﾐ/
ﾘﾉｲ;ヽヽ'､ ｀ﾞ'､l__,,､､､,,_,, / l||;;;;;;;;|∠＿
"´ﾉ|;;;;｀'-;', (t -'''ﾍﾍ)}} ﾘ ﾘ;;;;;;;/从ミ | ／￣＼/＼／￣＼
|/l|;;;;;;;;ヽ ﾚ- '''""´ /:::" {;;;从;;;;;;;;）"
l|l||;;l|;;;;;;;;'､ ,,､;;''";;￣:: ,/:::::" ヽl|ﾘ;;;r''､ﾘ
ヽl |;;;;;;;;;＼ " ｀ﾞ ／::::::" ﾚ',､-ｰﾞ''""ﾞ''ｰ､ ,,､- ''
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（从l|;;', ヽ, ヽ:::ノ／ :::::: ,､ '´ ,､ '´
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|「キルがいれば助かるのに」
|
| ロストスキルは本部待機だ。そして他の忍者はすでに地下に侵入しているはず。
| ここでロビンと『ファットマン』を引き付けるのは、彼らへの援護になるのだが……全滅してしまっては元も子もない。
|
|「ケンシロウよ。傷は？」
|「肋と腕にヒビが入っている」
|
| 気功で痛みを消しているが、レヴリアスは強敵だった。
| 呂布は焼け焦げた左手を一瞥、呪符で治療したが万全ではない。
|
|「ｺｰﾎｰ」「あら〜過保護なんだからぁ」
|「石田、頼めるのか？」
|
| 念動防御がなければ、死傷者はもっと多かったろう。
| 石田に空中戦を任せたら、彼を頼れなくなる。しかし、ここにはケンシロウも呂布もカミナもいる。
|
|「一人で死んだら許さないからね〜」「ｺｰﾎｰ」
|「とりあえず、主力が『ファットマン』を叩いて、私は奇襲してくる『カトルカール』を各個撃破でいいかしら？」
|
| 泥で汚れてもなお美しい、男にもっと汚したいという願望を抱かせるルカ。
| 片手にロザリオ、主への信仰でよからぬ気持ちを抑制。
|
|「三人で『ファットマン』を確実に倒す」
|「あまり魂が乗らんな」「シモンを可愛がってくれた礼をしなきゃな」
|
| 高速作戦会議は終了、まず石田が超能力の足場を駆け上がり屋上へ。
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「ｌ￣!i| |! i! |
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i!| ＿ ＿ _＿|i|! ＿＿i|￣|i＿ |!´i!ﾞ｀|
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／｀ﾞ≫|i! !|＜´＼ ￣｀ﾞi!| |i￣i! !|i!
< ／ |i!＿i| ヾ__≫ i ￣￣ |i! i|
! |i! | ￣
' |::i i!|
iヽ ＿ ＿ノ从ﾒ#ヾ'人ヾ:;:ー- ．..、
＼ ヽ __ﾉ;;;ヾ=二三 :;:;: :;：;:;；・ ，｀ﾞヾ:;:;:;:;::;:;:ヾ
｀丶 》:;:;;#ﾉ彡三二三 」── 二=≡≡＝ヾ:;:;:．，ゝ ── ─ i!二二二｀７
＼丶 ヾ，:;'ﾞ´'人i从'※'iﾐ彡∠ﾞ´ ｀ヾ:;:; ；:;:レ' /７∠／
＼ヾ人'ﾞ´;:'´川彡／ｒ-三ﾞ´ ｀ﾞヾ;:; ;:／ 〈_/
>:;: :; :;:#i!彡／´ﾞ ﾞ：;川;;;;;;;;／'
．:i!|'ﾞ´ ，イ'ﾞ´ : ．;: ::. i|!i《:;:;:／
i|#i/／／｀ﾞ |《巛＜´ ﾞ
川//｀ ﾞ!|i!i|ヾゝi!二二二｀７
─ = 二 て:．》 |i:;:#i!`i'|!i /７∠／
！iﾞ´i!| ＼' 人ﾞ-─∠ ﾞ｀ 〈_/
＼ `i!ﾞ´ .，人-ｰﾉ:；i|!ヾ >ヾ'ﾞ´ ::::::::::::;;;:#i|! i|ヾ
ヾ、 ゞ'ﾞ´ ｀ﾞ ::;:;´ ヾ》:: ::;:;ヾ .ｒ'ﾞ´;;;;;;《'ミﾞ´i三二＝ヾ ﾞヾ
＼＼ ,:;'ﾞ´:;:;:.、`・／;;;;;;彡三三三ヾ 丶i|!# i!iﾞ´ ｀ﾞヾ:; :;て
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─＝二て 人从#ヾ|＼/人从/ ／ ＼ヾ ／/ #i∧ノ/《ヾノ！ ノ/人从／
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| ブービートラップ発動、吹き飛ぶ屋上。唖然とする一同。読まれていた！
| その衝撃に乗じて攻撃してきた敵。反応したのは呂布とルカ。
|
|「魂イイイィィィィッッッ！！！」
|
| 雄叫びと同時に振り下ろされた矛槍、軍服を破り毛皮を引き裂く、しかしその下の脂肪で止まる。
| 煙の中からのそりと現れた球体のパンダ。直径２メートル。頭にはベレー帽。
|
|「グフフ」
|「『リトルボーイ』！！」
|
| 逆側から飛び出してきた『ファットマン』の攻撃を避け、刀を叩き込みながらルカの目が燃える。
| お前のせいで大変な目にあったんだぞ。
|
|「ケン！ 旦那！ 任せる！」
|「応とも！」
|
| カミナがルカに並ぶ、ただ殺すためだけの正確な動きで攻めるルカ。逆に、我流で無茶苦茶で荒唐無稽なカミナ。
| 防戦に回る『ファットマン』。
|
| 一方、『リトルボーイ』に北斗神拳は効果が高い。ジャギからの情報に従い乱打を打ち込むケンシロウ。
| 回避に徹する『リトルボーイ』。
|
| 突然の形勢有利。
| 逆に言えば、『カトルカール』こそが現状の難敵。
|
| 故に龍田は、周囲への警戒を密にした。
| そして予想通り。
|
| 土煙の向こうに揺れる影、龍田はエンジンを吹かした。
| 一発で決める。
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∧ ,’.、
ゝく￣ヽて＿＿ / :!
弋 ゞ ;!ﾉ 〈＿ ｀ヽ_ / .:!
|:/＼l￣￣弋＞ー!ﾉ. ,.イ __ ／, |
弋＿:| ／∠、,，.:´ .／ , ,′
＿ _ ,，´ ￣ ｀ / ／／､／ . ／ , .,.'
` ､ ,，―／／､／ ,，イ , /
’,／ ／ 弋>' ., |＼ _ ,，' ./
/.＜/ .／__| i ./ 来ルト思ッテマシタ。
| //.:`｡､ ..／ / / ./
l:＼ ＿_ 弋_;l弋::::,,/イ` ､ ./ / ./
i｀|:.. ｀〈` :､ ＼戈_/￣ .:| .／ ,:’ ／
ヾ!＿.ノ .r .＼＼,，イ／ ／ ／
∨ 弋_ノ,，＜_ _／ .／ ／
ﾏ＿ .Y´ :.:// | _ ,， ' ,， ´
,，＜_ ノ. |l 三,l弋_!＿＿,， ´
.i __/ .｀ .､ 廴二〉＿__./ ,/｀ :.、
’,__〉、 ｀ー―‐＜ ＼ ./ ヽ
＼/＼ _ ＿＿ _ ｀ -r＜ﾘ三三三三!=l＞
｀ －―――― ' ´￣￣＼ ,’
＼/
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| 重機のような一撃をいなして、そいつは龍田に尾を向けた。
| オイルにぬめる八本のワイヤーが龍田に絡みつく。
|
|「あ、あら?……ぴにゃ！！ んあッ！？ くゥゥんッ！！？」
|
| 電撃。しかも三連続。
| 全身から煙を上げて失神する龍田。
|
| その体を優しく抱きとめ横たえて。
| ロビンは乱戦に視線を向けた。
|
|「そうか！」
|
| 『リトルボーイ』の腹を蹴り、その弾力で飛びかかる影。
| 振り回される方天画戟。
|
|「倒サセテイタダキマス！」
|
| 『血族』随一の使い手の一人、呂布奉先。
| 怪物のような手足を変化させながら、ロビンは祖父に挑みかかった。
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☆ 次回予告！
気に入らない。
気に入らない。
この国に来て以来、気に入らないことばかりだった。
何もかもが上手くいかなかった。
願いは断たれ。
祈りは届かず。
縋れる藁すら存在しない。
そんな中に見えた、かすかな希望。
どんな言葉より。
どんな光より。
救ってくれた。
お前を殺す。
次回、最終幕九十七話『妄執の末路』
果てに見るのは破滅か死か。
祖父と孫の心温まる灼熱の交流
大帝錨待ってます
. ､ ィ -=ニ -=ミ ､ヾ ､ ､ ヽi{ ,
_ ≧=- ニ=- -=ﾐj{ﾊﾐ ＼ ＼ Ⅵ }!
. ｰ=ミ=-- , -=ミ三三辷=- 、｀￣｀＾´＼ 寸'/__
ノﾆﾆ／, ヽ } ､㌻´￣ ＿＿ ､ ヽﾙ'⌒ ｀
. ＿＿∠二二! ′_} ＼ ´ ￣￣＼ }! |/⌒
ヽ∠二二二| ﾏ_/ ＼ ＿ ヾ! |
. ∧｀｀｀｀｀｀｀ '， ^/ ＼ ,ィ ==ミ_}}! l
. /∧ ｀7＿, ＼_i{i{ rｯ 仟‐'
/∧ /‐==ニ ＿ ｀尨´ 〃 ｢ﾉ
//∧ ,i{-=== ／ィニ=- 找少 | 気に入らねえよ。
'///∧ /∧-‐==' ,ィニﾆヾ ｀く | 気に入らねえよなあ。
/////l //∧-‐== i{辷=- ､＼__ヽ＿_ ｣
/////| //∧-‐== ヽ ￣＼_ィ-′ そうだろう？
∨///| / / ､-‐===' ｀フ
. ‘, ∨//|＿＿__/_/込-‐==‐ ' /
'，∨/辷=' ｲ ﾏﾑ｀ -==‐' /
'，∨ ////|! ﾏ,ﾑ ￣
. '，∨,'///|! i}/Λ
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'，∨,'/|! i|////＼
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|「いえ、そんなことは……」
|
| 新宿衛生病院は総合病院だ。
| 深夜とはいえ周辺の街灯は煌々と照り、夜の闇にその巨大な姿を浮かび上がらせている。
|
| 主要道路に面しているが、周辺には住宅もある。
| そんな場所で爆発だなんだとやっていては騒ぎにならないほうがおかしいというもの。
|
| なので、今現在はまさに異常事態。
|
| 二ヶ月前にヴィヴィアンに攻撃され局所洪水に巻き込まれた教訓を経て、新宿衛生病院は非認知の結界をかけられた。
| 一般人からの興味を奪うその結界の効果は覿面で、肝試しも廃墟ツアーも来なくなった。
|
| 同様に、正面玄関側でおこなわれる、『血族』との苛烈な戦闘も、一般人は興味を持てない。
| 深夜の爆音に目をさました子供がいても、理由も分からず戸惑うだけ。
|
| 職員通用口の階段に座り込む、枯れ草色の髪の神父も。
| 彼に侍る二人の若い男も。一般人には認識できない。
|
| 避難口の非常灯の緑色の光が、彼らをぼんやりと照らす。
| 三人共に黒衣、神父服であるため半ば闇に溶け込んでいた。
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ﾌ彡三ニ＝=-ミミミミﾐﾐWミW杉彡彡三ニ＝=彡W彡ｲN
彡彳ニ彡''´￣￣￣¨｀ー=≠=─''¨￣￣￣¨`'''ァ＞ヾミシ
Σ彡 ｲ :::::::: ､ i li Zミミ三ﾐ
彡 彳ﾘ :::::::: ＼ ヾ {;! } z= ,ｨ , ヾ彡 ,Zﾉ
ゞ /! -=＝ミ ｰ- ヽ } i! /／ ／,ｨ＝=- }ィ ./
Y⌒}! '':::::::＞''￣￣｀ヾ＼|..i!../ ,z三≦─ ､ .ﾚ⌒!
! }ﾄ|＼__{{弋￣t__ｧ-z}ﾊ;;;;;;;;;;Y x t__ｧ￣フ}}__／! il ﾘ シロッコのやり方が気に入らねえ。
! i! i ::::人 `ー ==以 ﾉ￣ {! ﾐ== ─''´ ﾉ |! {! シロッコの性格が気に入らねえ。
ヽⅵ :::::: ゝ _＿＿ ／:: ﾄ＼ __＿ ／ | ノ シロッコに言いなりの連中が気に入らねえ。
ヾ! :::::: ￣￣.::::::::i ! ヽ ￣￣ ,;/´
,从;;,,::::: ...:::i . : | ! ::.. .;∧
／:::::ﾊ;;,, ::........::::::::::::ヽ::::i .ｨ..:: ,,;;;i::::::＼
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|「俺たちはなんだ？ 『教会』の飼い犬か？」
|「違うんですかい？」
|
| 答えたのは生え際に危機感のある男。
| カクリコン・カクーラー。
|
| 彼らは『武僧』。『教会』最強の殺し屋集団。
| その中でも最強と呼ばれる男が、アレクサンドル・アンデルセン。
|
| 『教会』の命じるがままに人間や悪魔を殺す。
| 彼らはそういう存在のはずだ。
|
|「違うね。大いに違う。狼と豚ほどの違いがある。
| 俺たちは飼い犬ではない。神罰代行者だ。神の正義の執行人だ。
|
| 分かっているだろう？ 結果的に『教会』という組織の一部として働いているに過ぎん。
| 俺たちを動かすのは神の意思だ。人の欲望ではない」
|
| それは、理想論だ。結局『武僧』は殺し屋だ。
| 命令をするのは神ではない。人間だ。
|
| やあやあ我こそは神罰代行者。神の代理人。長い手の先端。邪悪と悪魔を悉く滅ぼすもの。
| 鏖殺の雄叫びを上げて、慈悲という名の狭量で、神の威光に背を向ける愚か者の喉頸に刃を沈ませるもの。
|
| そんなふうに嘯いても、結局現実はただの殺し屋。
| 上官の命令には逆らえない玩具の兵隊にすぎない。
|
| だから。
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ﾉ´ ｀＞ ､
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∨ヽ、 ⌒ヽ、 l
} ｀ .,ﾍ } __ l
｛ / ゞ ﾉ ノ´ ｀ ,: l
ゝ、 / {〃ｲ , - '" ∨: j
ミ / ヽ !ﾘ ∨: ,'
∨ ,' ｛ ﾐ: ,'
∨ l ＜≧-.､,,_ {_,,､-≦千＞ j: ,'
∨lj ー ｔｧｰ ヽ ヾ"￢ｔｧ ー lﾍ,'
!K:! ￣´ l ￣´ j_）｝ 口では何とでも言えますがね。
l（l:! j |)/
∨j ヾ;> j ｲ
ヾ、 _＿____ /|:ﾘ
ﾘﾍ ´ ,,, ｀ r‐＜j､ﾉ,,,____
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| ジェリド・メサは口答えをした。
| 理想を語る上司に、現実の問題を突きつける。
|
| どうしょうもない。どうしょうもないのだ。
| ジェリドもカクリコンも同じだ。気に食わない。気に入らないのだけれど。
|
|「ならば……行動で示すか」
|「は？」
|
| 大義そうに立ち上がり、バキボキと首を鳴らすアンデルセン。
| ジェリドの態度は良くなかった。明日以降、訓練という地獄が想像できる位に。
|
|「だが、やはり対話だ。主は傲慢なる我々の言葉を分割したが、それは互いにより深く理解し合うために必要なことだ」
|「はあ」
|
|「ジェリドよ、貴様は主の声を聞いたことはあるか？」
|「……そいつは」
|
| 言い淀むジェリド、息を呑むカクリコン。主の声。誰も聞いたことがない。
| いや、『聖処女』ジャンヌのように特別な一部にしか聞こえない。
|
| そして、その声が真実主の御言葉であらせられるのか。
| 証明するすべもない。
|
|「どれほど信仰が深くとも、この世に悪魔や邪教の神が蔓延ろうとも、我らが偉大なる主の御言葉は我々に届かない。
| どれほどに祈ろうとも、縋ろうとも、願おうとも、救いの手は差し伸べられず、慈悲の言葉は届かない。
|
| などとは考えたことはあるまいな」
|「そいつは不信心ですぜ？」
|
| 問答は、危険な領域に踏み込んでいた。不用意な返答をすれば首を飛ばされかねない。
| カクリコンは冷や汗混じりに答える。
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／//;;;///／￣￣￣ ｀`ヽ、///ミｈ､
//;／ 从/ ＼/////＼
./// ∨////∧
/// __∨////∧
|:/ } / _､rｾ7ｱミｘ、 ミ////////∧
/________}八 r斗匕≦＿__ }/////////∧
｛㌢￣二冫 ￣ '´_芯__ノ .}///}///////:＼
ヽ '´芯 { ´"''' ‐---- }///}⌒Y//////≧イ/
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,ノ| .{ __ }///} ////////／
＜//} ヽ 、 _ノ//;/ ////////ｲ
ミ/! _ ィ....二つ } ⌒ヾ//__//////／
八 ‐'''"´＿＿ 彡/ |////厶 主は既に言葉を尽くしておられる。
∧ ´ 彡./ .|////／ 足りぬならばその都度預言者を寄越してくださった。
ハ ＿_／ |//／ それで十分なのでは？
∧ _,,.､丶´ |⌒＿
≧=‐---‐=≦＿＿_,,.. -‐ '' "´三三三}
_,,.､丶´三三三三三三三三三三三三三:}
{三三{三{三三}三三三三三三三三三三ﾆ{
}--!ﾆ:}三}三三}三三[二〈〉二]三三三三三}
〈!二三}三}三三}三三三三三三三三三三ﾆ＼
}--!三!三}三三}三三三三三三三三三三三三≧s｡.
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|「主は全能で万能、その手は世界よりも広く、その愛は無限であるはずでは？」
|「そうだとしても、いやだからこそ。全部に応えないのは理由があるってもんでしょうよ」
|「俺もそう思う」
|
| ジェリドの言葉に、突然今まで広げた疑念のすべてを畳むアンデルセン。
| 弟子二人は虚を突かれる。
|
|「俺はな、ジェリド、カクリコン。我らが偉大なる主は言葉を尽くしておられると思っているよ。
| 今も、世界中で、愛し子たちだけでなく異教徒どもの心にも訴えていると思っているよ」
|
| 二人は胸に手を当てた。アンデルセンの言いたいことを理解したのだ。
| 心の声、己の良心。それこそが主の声なのだというアンデルセン。
|
| 主は世界中を見守り、声をかけている。
| 従うか、無視をするかは各自の判断であろう。
|
|「実は俺は『第二の夢』も気に食わん」
|
| 世界を滅ぼすというレミエルの脅し。四割の『正しいもの』になれ。
| この東京に五百万人の『正しいもの』がおらぬならば、ソド ムとゴ モラと同じ末路を辿らせる。
|
|「何か臭い、だがやらない夫の言うことには賛同できる」
|「『良心』に従えってんですかい？」
|「そうだ」
|
| ジェリドはしばし考え込み、正面玄関側から聞こえる破壊と爆発の戦闘音に耳を澄ませた。
| そして小さく舌を打ち、顔をあげる。
|
| その表情からは、少し前までの鬱屈が払拭されていた。
|
|「アンデルセン神父、野暮用があるんで抜けさして頂きます！」
|「駄目だ。理由を述べるか有給を申請しろ」
|
| 狼狽えるジェリド、この流れで拒否されるとは思ってもみなかった。
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/ ヽ
／ 从 从
/ ミ | 〃 ﾊ
/ ｨヽ､__, | ＞､ ヽ
ｲ ／ ／ｲrミｰ＜ ∨ }
i f （{ ﾘ ） ∨ /
', ,ベ´ヽ ∨ /
}／ヽ ﾉ / ∨ j
/ j ,ｲ =≠彡ミ≧､. _,,z≦⌒ミヽj /
/ /// そいア:::::::. :: イ いﾗ | | 馬鹿を助けに
/ /// ', |::.. | rt …………いいや
/ ｲ//_从 |:::::.... | | j
／ j / ｲ ｀}, r ﾑ:::. ;ｲ l
/ '小 .{ | ', ｲ_ノ
/ | ﾊ. | ', -─ -ー- /ﾘ 待たせてる女を迎えに行きます。
. / │ / j |ﾍ ..::::... / ,}
,' | ﾊv,| ＼ / |ｿ
,' | / | ＼ ∧┴ - ､_
l | /´￣:| ＞ー─---イｲ } ヽ
. /⌒ﾇ.j l ∧V | /⌒ヽー--､____.//:| | ',
/ ヽ 丿 ノ | } 小/`′::イ / .// | | ',
. / ＼ イ j } { { / {::j / イ: .// .| | }
/ ｀＜ ヽ. //: :.| |〃 .{ ' /:.ﾉ: :// | | 弋_
./ ＞V/ 从 ',: : : : : /{: :.// 从 ≦´￣｀＞ｰ-
/ ＼: : : }: : : :＞=≦'' ∧_彡
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|「そうか、行け」
|「はいッ」
|
| 大慌てで装備を整え、おっとり刀で飛び出していくジェリド。
| カクリコンはその背中を見送って肩をすくめた。
|
|「ダチの背中を守ってきます。アンデルセン神父はいかがされるので？」
|「次にここに来たモノを殴り、帰って寝る」
|
|「ご武運を」
|「お互い、主の導きに従おう」
|
| ジェリドを追いかけるカクリコン。
| アンデルセンはその背中を見送り、眼鏡を直した。
|
| 底光りする双眸が闇を見つめる。正確には、闇の中でもなお暗い場所を。
|
|「ジェリドはまだ手が届く。奴は幸せものだ。手の届かない相手を追いかけるのは虚しいもんだ。
| カクリコンは帰る場所がある。待っている女がいる。だから死ねん。執念がある。
|
| だが、俺はもう駄目だ。執念しかない。届かぬ女に手を伸ばせども、そこには何もない。
| あいつは死んだ。あいつは死んだ。分かっているが諦めきれん。諦めきれんのだ」
|
| アンデルセンが『銃剣』を抜く、指の間に挟んだ鉤爪のような無数の刃。
| 一本一本が銘刀。すべてマイケル小原の手作りだ。
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}: : :ｷｷミ杉 : : : : `WNｨ,,彡::::::::::::::::::::::::::::::::::::
}:/: :Ⅵミﾐ{ . : : : : : : : : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,．＜: ::::/ {!Ⅶ＿_. : : : : {!: : : :.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,．'´: : : : ::::/{:::|! /:￣ヾﾑ:ヽ: {!: : :....::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 夢宮は死んだ。
／: : : : :....:::::::::||:::ﾘY! xzzﾑﾒx:.:.{!: : ..:::::::::::;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::: 死んじまった。
／: : : . .:::::::::::::::::::||:/ ﾑ!〃 (・) ﾏ爪{!: :.::::xｨ丕天ミ:::::::::::::::::::::::::::
. ／: : : : ::::::::::::::::::::::::::||:{Ⅵ兀ﾐ＝=ヲ=zzzzY ⌒ヽ::::::::::::::zィ7:::::::::::: 奴の代わりは誰もいない。
／: : : : : : :::::::::::::::::::::::::::||八i ゝ==彳:::i |::::{{= }}__;／ .//:::::::::::::: 分かっている。分かっちゃいるんだ。
ム-=＝=zx :::::::::::::::::::::::::::||:::::{ ´, : : : : /j j:::::ゝ _____.人zz{ :://:::::::::::::::::
: : : : : : : : : :＼ ::::::::::::::::::::||::::::l;;.{ﾄ ヽｿ l:::::::::::::::::::::::::::::; ) ./:::::::::::::::::::: だが、だがなぁ。
: : : : : : : : : : : :＼ : ::::::::::::ﾘヽ:::l;;,{＞z__./ ﾑ:::::: : : :,,ｨ }::::::/ 人::＼::::::::::::
: : : : : : : : : : : : : :＼: ＞.､: : : ＼ﾊ-十-+zzzzzzz=イﾉ:::::::/:::::::::::::::: ＼::::::
: : : : : : : : : : : : : : : :＼: : :＼: : : ＼ミ=十十十十十:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:
: : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : :＼: : :＼ー=- ￣ ￣::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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|「『来な』って、ばっちゃなら言うよ」
|「だよなぁ！」
|
| 闇の中から、潜んでいた少女が気配を現す。
| ジェリドとカクリコンには気付かせなかった隠身の冴えに、アンデルセンは喜悦の笑みを漏らす。
|
|「今だ。今だけだ。今が最初で最後だ！ 夢宮アリカ！ お前はまだ夢宮には及ばんが、心根だけなら負けちゃいない！
| 俺は俺であるために、これからも正しく神罰代行者であり続けるために、夢宮への妄執を断たにゃあならん！！」
|
| 犬歯を剥き出しにして、血走った両目が眼鏡の奥で火花を散らす。
| 狂乱したかのようなアンデルセン、対するアリカは慈母の笑みで両手を差し出す。抱きしめるように、受け入れるように。
|
|「行くぞ！」
|「駄目だ」
|
| だが、闇の中からもうひとり。水を差す男の声。
| どうやって潜んでいたのか、真っ赤なコート、浅黒い肌、総白髪の男。
|
|「夢宮の代わりが欲しいなら、アリンコひとりじゃ役者不足だ。
| しかし幸運だったなアレクサンドル・アンデルセン。ここに立つ夢宮はひとりじゃない」
|
| 二刀を抜く、静かに構える。その男、名前を捨てた傭兵。
| 遠坂凛の元夫、今はただの『弓兵』……のはずが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|「そうか士郎、ようやくその気になったか。
| これで夢宮の技と夢宮の心が揃ったか。いいぞ、貴様ら。まとめてかかってこい。
| 二人まとめて相手をしてやる。夢宮の代わりだ。それくらいで丁度いい」
|
| アンデルセンの笑みに滲む狂気に変化なし。
| だが、乱入者に不満がある者がここに一人。
|
|「え？ エミヤさん。今更それを言うの？？ もしかして、桜お姉さんを助けたから？」
|「…………アリンコ、大して驚いていないな？」
|
| アンデルセンに背中を向けて、アリカが屈託なく問いかける。
| いや、違う。まったくもって屈託だらけだ。言葉の端々から生える棘を隠さない。
|
|「いつ言うのかな、ずっと言わないつもりかなって思ってたよ」
|「いや、それはだね……」
|
|「格好つけて言うタイミングを測ってるだけだっておかーさん……ああ、凜さんね、言ってたけど。もしかしてエミヤさん」
|「待って待って、なんで凜がおかーさんで」
|
| 詰め寄るアリカ、後ずさる『弓兵』改め士郎。
| 図星を突かれ、さらには実の父親である自分がエミヤさんで凜が母親呼ばわりという状況に困惑する。
|
|「ねえ、エミヤさん。『推して参る』ってどういう意味？ いわゆる『推し』と関係あるの？」
|「ま、招かれざる客であるが、押しかけて申し訳ないというか……」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ __,r‐'.:.:.:｀ヾ⌒丶f:ﾉ
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/ //.:.:./.:.|:.:ヽ:.:ヽ､:.:.:.!:.:.:ヽ:.ヽ＼
/ //:/.:ﾊ.:.:.!＼l＼|__ヽ:|＼:.:.|:.:.:l:.:|',
i |:|:.ﾄ､:|-ヽ| ´,r==､｀ ヽ|:.:.:|:.:!ﾊ
| |:.!:|´ ,r=､ fﾊ ヽ }:.:./:/:/|
＼ ヽN / fﾊ ﾋﾘ /,.ｨ=rく/l うん、呼んでないよ？
ﾊ. ﾋﾘ , , ´// .ﾉ }/
,.-‐{‐! , , ､ /l:| └/
/ /ハ{ r‐┐ ! ヾ／ ,、
{ |:| ＼ ﾞｰ' ,.ｲヽ /: :ヽ
ヽ ヾ=- ｀ 、 ,. '´ |=彳: ／:￣｀
＿＿｀_丁´ l／／: : : : : :
/ : : : : /: ﾊ ／: : l: : : : : : : :
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| これがとどめとなった。
|
| 士郎……いや、もう『弓兵』でいいや。彼は死んだ。
|
|「さて、邪魔者は排除したよ」
|「…………夢宮アリカ、貴様ごときが一人で俺の相手をするつもりだと？」
|「そうだけど？」
|
| 不思議そうに小首をかしげるアリカ、私服姿。
| 『蒼天の青玉』もなければ『ガンダム』もない。生身で普通の女子高生。
|
|「当たり前だよ、アンデルセンさん。もしかして忘れちゃった？
| あなたは、あたしにとって師にあたります。
|
| 戦士としての在り方、心の守り方、信仰の大切さを教えてくれたのはアンデルセンさんです。
| 師匠に力を見せるのに、あまり接点のない父親の手を借りるとかないよ。あたしは嫌だな」
|
| 死体への追撃に余念のないアリカ。
|
|「ぐふっ」
|「クハハッ」
|
| 明るく笑うアンデルセン、その表情に先程までの狂気はない。
| すべての毒気が抜けていた。
|
|「そうか……夢宮アリカ。お前は、俺の……」
|「はい」
|
| 出会ったときから、この時を待っていた。夢宮が死んだなら、この執念に決着を着けねばと思っていた。
| だが、もうどうでもよくなった。
|
|「主よ、導きに感謝いたします」
|
| これを最後に正しくあろう？
| 違う。違う違う。
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ミﾐ ﾞﾐヾ､ﾐ､l|/〃´ ｀ﾞミﾐﾐ≧ ヽ_ヽ:
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', ､-､__,ミ､ ∨// |/ x t_ｱ .》 l|l/|| | /
',',. γ=== .ゝ .|γ `===''､ l||:::|| | / この瞬間から、私は正しく在りましょう。
;:','={{ }}＝=='{{ ',ヽ }}="::::|| | l
;:;:. .丶 ＿＿ 人. |丶＿', ヽ.ﾉ;:;l::::::|| | l わが不詳の弟子どもに誇れるように。
;:;:;:. ￣￣ ヽ' |ヽ￣￣ ',:;:;'::::::|| | ＜ 正しい姿を見せられるように。
';:;:;::;:. / |:::〉 :;', /:::::::|| |', l
;;';;:;:;:;:;:. "'- ､＿ .|/ :;l/,':::::::|| | l ∧ 夢宮のクソババアにはできなかったことを、
;;;∧;:; ( r==---- --‐一 :;/,', ::::::|| / l ＼ やってやりましょう。
ヽ::∧;:;:. ー -- ─ - ─' :;:/:,',':::::::|| . / l ＼
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|「じゃあ行きます」
|「おい貴様、ローブは要らんのか？」
|
| 私服姿で身構えるアリカに、アンデルセンは意地悪く尋ねた。
| それで全力と言うつもりか？ 無様を晒すぞ？
|
|「もっちろん。だって『蒼天の青玉』使ったら、悪魔殺しの結界や剣が効きそうだし」
|「いい判断だ……アンデルセンの結界内部では『蒼天の青玉』の出力は五割以上ダウンするだろう」
|
|「死人が喋るな」
|「その状態ではすべての性能が下がるどころか、重しとなって足を引っ張りかねない」
|「エミヤさん、静かに」
|「先輩……もはや解説するしか己を保てないのですね……」
|
| 闇の中から現れたさらに一人二人、間桐桜が『弓兵』を安全地帯まで引きずる。
| 重傷の凜と慎二はお休みだが、桜はこの作戦に参加していた。
|
|「ほっときなさいよ、自業自得よ」
|
| 冷たく言い放つのはルイズ。彼女も『血族』の捕虜であったはずだ。
| だが、開放された。
|
| 同じく囚われの蒼星石が志摩子に進言したのである。
| 間桐臓硯を討ち果たし、もはや因縁の解消した『弓兵』らに協力を指示せよと。
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┌＜二三三三三≧
∨三三三三三三７
∨‐' ´￣￣二二ﾕ＿
r=＝ﾆ二ニ三三三三三二≧
｀ヽ三斗‐〒::￣｀::.:‐＜三／
. /::.::/::;:: |l::.::.ヽ.::.::.ヽ::.::ヽ
ｌ::.::;':://:八::ﾄ､::＼::.::.}::.::.|
|::.::ﾚ':∠ -ﾍ:ヽ｀≦ニ|::.::.| 間桐臓硯が討たれたのは自業自得です。
∨::.l:代j歹 ＼ 它ﾌj::.}:/ だが、彼を失う損失を埋める穴が必要でしょう。
}:l::.|:ゝ /:/:,'_ ,．‐ 、 遠坂凛と『弓兵』への接触を図り、彼らに協力をさせてはいかがです？
/人:ドヽ､_ r￢ 彡l::ﾘｌ ! ｒf:ヽ
′ ｀ヽ _r┴ﾐ_T´ﾚ' |/ |. ヽ,. ﾅ/ /
rt＜ ／ﾆ7弌ｰ､ ㌦ .!／ /
/ :.｀ヾ､ く〈 //|ﾄ､〉〉ﾊ 'ﾐヾ! ィ､
/:.:/:.:.:.{ } ヽ/| |}{∨ |l:{|｀~~~´ i
. /:.:/:.:.:.:.:.{ } | |}{| L |}{| ｡ |
/:.:/:.:.:.:.:.:.:.{ 〉 | lXﾄ 〉|Y ｡ /
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| という訳での参戦だ。
| 東京を守るという目的が合一するならば、やる夫たちが『血族』と事を構える理由がない。
|
| ニャルラトホテプと『人類補完計画』という問題もあるにはあるが、
| どちらも組織としての『血族』が全面支持している訳ではない。
|
| だが、『弓兵』たちは間桐臓硯を殺した。
| その落とし前は。
|
|「僕が告発する。爺さんは百年以上生きている悪魔で、いくつかの反吐が出そうな計画を立てていて、
| そして雁夜おじさんと桜はその犠牲になった」
|
| 瀕死ながらやせ我慢して宣言した慎二。
| それを補強するかのように資料を集めて提出してきた間桐子飼いの忍者たち。
|
| 彼らの言と証拠の数々から、フリットと志摩子は黙らざるを得なかった。
| そして、もうどうにでもなれとばかりにこの『シロッコ排斥』に投入された次第である。
|
| 『弓兵』、桜、ルイズに『三日月』。
| 正面玄関側で戦う本隊並かそれ以上の大戦力である。
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ｨ ｨ､ ノ|ｨ ,,,ィ
,､-ｰ '''' ｰ ､/|（イ（-'"ﾉノ''''"イ"''''"´"レ,､-ｰ ''''''''
/ 死 き ヽ"（ヽﾂﾂｲ,ｰｲ},,从ｯレｯｯ／ 選. 早
/ ぬ さ ',))）ヽ）ﾂ;;（从Lミﾐﾐ〉〉;/ べ く
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l 男 l;;;ｲ从从从ﾞl|||从从l l;| 場
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ヽ // /l|ﾉ）从从l| l|l||;;l|ｲｲ从从ヽ を
ﾞ' ､・・ ／;;;イﾉﾉﾉﾉﾉl||l;;;;ﾂ从;;/;;;从从｀ﾞ)ノ― ''
ノ>―''ヽ;;;;l|;;;|彡ﾉﾉｲl|;;|;;;;l;;;;;|;;;;／从;;;;）从从之
之三;;彡;;;､l|;;|;;;lイ/从ﾉ;八;|llYイノイ／;;从从ﾆ<
/イ/t=;;;;;ﾐｨ;;;;;;;;;;;｀ミ;;人ｨ''彡二二ﾐﾞ'､j;;jj;;ｭ;;;､）
（（/;;|lヽ;;|､'''ｨ,t;;ｯ=､;;;j人;;;ｨ:;ﾐｯ;ラﾆ' ｲ;;;/ l|;;lﾄ
ﾞ之;;;'､l|;;ﾞ, ::､｀￣´´":|"ﾝ:::::::::'''ｲ:.. ﾘ;ｲ),r';;之ｰ
{彡;;;ヽ;;;',::::::... ::::|: ﾘ:::: ﾞ ｲ;/ノ;;;;ﾞl|
ﾞ|/;;;;;;;|ﾞ:',:::::: : : ::; ､j_, -､::: ｲ;|ﾞ/;;;l从
ノﾉ;;;;;;|:l|:', :::: : :::｀ﾞ'ｰ '´" ,':::l|/;从｀' ､
,, ､-ｰz''"ｲﾘ|l|::|l:'､ : ::::::: ,;}､ / :: ﾞl､从l|',::ヽ
''" ,､ '":/ /|::}}:::ヽ ::::::r'二ﾞﾞ'ヽ , '::: :: ::l|彡 ',从
／イ::/:: ::::/::l| }}:::::ヽ :::::..'""'' , ':::::: :: ::}::l|彡::: ll||
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| その大戦力が囮だなどと、誰が知ろうか。
|
| ケンシロウたちが正面玄関周辺での戦闘を激化し。
| アリカとアンデルセンが睨み合う下。
|
| 新宿衛生病院地下施設、元はデュランダルの研究機関。
| 今現在はシロッコの城、彼を僭主と見るか、正統後継者と見るか。
|
| 本人は盟友であるデュランダルから引き継いだと言い張るだろう。
| だが……レイ・ザ・バレルは考える。
|
| シロッコは、『モーリアンＣ．Ｏ．』に何をした？
| 首脳部を皆殺しにして、技術だけを奪った。
|
| 未だ再稼働には至っていないが、いずれは『モーリアンＣ．Ｏ．』の直営工場はシロッコの兵器工場として動き出すだろう。
| サイボーグ兵士を量産するための部品工場として、だ。
|
| シロッコに邪悪があるならばそこであり、しかし、使えるものは何でも使うのは美点でもあった。
| 少なくともレイはこれまで、才能と資産に溢れながらも、
| 誰からも必要とされなくなった類の何かから輝くものを作り出すのを才能だと思ってきた。
|
| しかし、実際の所はどうなのだろう？
|
| シロッコのそれは天賦の才なのか。
| それとも、簒奪者の邪法なのか。
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＿ , ─. . 、─-、
,- 'フ‐‐ﾆ￣、ヽ:ヽ ヽ
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乂:`.-...、二＞: : ヽ: :},イ_二￣ヽヽ
.ヽ::::::::::::::::＞.-.、:).-ヽ: : : : ｀ 、ヾ.、
_{:::::＞≠'─‐. . 、ﾍ:厂`._: : : : ヽ!}、
,.ゝ.': : : {: : : : : : : : : i人!::::::ヽ: : : : ij ヽ
,__／: ヽ: : : ;ﾍ、: : : : : : /': : |::::::::∨: : : : : :ヽ
／: ' : : ／ i: : : : :＼: : : : : : : : :}＿::::∨: : : : : : :i
,イ: : i: : :/: ／|: : : : :,: : : ----ﾍ/: : : ヽ:┤ : : : : ﾄ::|
ヽ--‐.'ﾌ: ／!: :/1/ ,ｲ: : : ;ｲ: : : : : : : : ﾄ: : : : :i:::ヽ: : : : :|V
./ / : |:乂 |' ノ |: : //ｌヽ: : : : : : : : : : /├‐┘: : : :!
ｲ i / ;-ﾊ{x__ヽ |／＿_|:ﾊ :i: : : : : /／ /: : : : : :ﾄ:/
iｌ ∨' ｌ: |.rj ` ,__ /' V: : : : :/:_ : / : : : : : 从i
.ヾ、 ヽ |: | i 行-ｧ /: : :／'‐.} ' : : : : : /
ヾ.、 ,. .' : :《 ' ｀ -' ／ _／,‐}／: : : ,イイ'
ヽ`. . 、 ＿＿,. -': : : : : : :.ゝ 、 ￣￣,. . ﾍ' : : : ; ' ノ '
｀ - ﾆ=====,-: : : : : : : : : : : : : : : :＞,ｪ---- ≦'!: : : : : : / 上は上手くやってンみたいだなァ。
,. -. ': : : ; -= ': : : : : : : : : ; ‐' ／V ￣￣／／: : : :/
,.-.': : : : : : : : : : : : : : : : : : : :／ ,ィ./ ＞.'-- ／／ X : : /
＿＿_.／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : ; ｩ/, ' .ﾚ'{'./ λ /: / , ' ヽ ,'
／ ; - フ : : : : : : : : : : : : ;n_0 '__|/: : : ／i__),--' ': / / .ヽ
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|「さっきからドタバタしてるのは研究員ばっかしだな」
|「戦える奴らがいなくて助かるよ」
|
| 地下に潜入した杏子班＋レイの五人。
| 攻撃されるなんて夢にも思わなかったし、対処も訓練もしていないのだろう。
| パニック状態で行ったり来たりする女性研究員を横目に進む。
|
| 彼らが求めるシロッコの研究資料だが、果たして一般研究員が閲覧できるセキュリティレベルなのだろうか。
| なのだとしたら、ちょっと追いかけて捻り潰して拷問の一つもかけるのだけれど。
|
|「美人の研究員捕まえて尋問しようぜ」
|「なんで美人に限定なンだよ」
|
|「美人しか見当たらないからな……」
|「正直意味不明なんだけど」
|
| 全てはシロッコが女好き……というか、「男性より女性が優秀」という偏見の仕業と言うことになっている。
| 実際には、シロッコの有する1/fゆらぎが女性に効果的だからである。
|
| シロッコの『ゆらぎ』は極めて強力で女性はメロメロ。絶対裏切らない愛人兼下僕を作り出せる。
| 無論彼以上の『ゆらぎ』があればその限りではない。ないが、シロッコは『教会』内部では最強だった。
|
| つまり、世界最強ということ。
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, ----- ､
__, '´ ｀ヽ、
,. --- 、 ／ ／ ／ ミ＼
, イ／⌒ヽヽ ／ ／／ ／ ／ ／ ハ ｀ヽ
／二二ヽ、 / // （(⌒ ﾉﾉ /／/ / ／ ／/ ／ /ハ !
/ /＿＿_＼＼ | | | `ー‐ ' // / // ／ / ／ /∧ l | |
|／ ＿___ ＼＼.| ヽ＿＿__／l/ | //,ｲ l┼/-／/ _. '"// ｌ | | |
／ ／ ｀ヽ、｀丶、 l/ﾊ{」 l | / /／ `メ､ | | / /
／ ／/ 丶､ `ー─‐ '´ 川 l `＝= //┤/
//／! / __ , --‐ ''"´￣ ∩ ／／/ } "" `＝= _//ノ{ {
// / | | ⌒)） ／ ＿_. --/⌒ヽ_| ／／／ ∧ ､'__ ＝"/イ/ハヽ
{ { l ヽニﾆノ /／ ／ ／ l ﾚ'＾ヽﾍ-┬─‐ '´ |ヽ ｀ 〃 ,. イ /｛ ＼＼
トヽ ￣ ﾉ / { // / | ／ ）! ヽ| r┘ ` ｌｌ'"// / ＼ ヽ ）
￣ 〃 | ∨/ / /ハ ／.ｨ1 |、 ヽ jj !! {＼┬､＼ ﾚ′
{{ ﾉ , ┴┴イ / ハ `┴‐ { ＼ Ｘ 〃 /＼ `ー' ）┐/
〉＝＝'┴----‐' / /| __.＼ |＼＼ ヽ.ニノ _/ フ フ / /{ }}
/ ／￣/丁` ー┬ ' /r'´ ﾉ＼` /＼＼＼ ヽ / . -‐'／ ／ /ト`＝'
{ { | ＼ / ／ | 〈＼ `ｰｲ ｀丶､丶､ ∨'´ ／ / |
いミソハ ﾄ､ ∨ __」 ＼二イ 〉 , ニニＹ‐Ｙ"´￣ // ＼
｀￣ ヽﾉノ } /, イ // ￣// ／ .-‐‐} ﾉ￣| // ┬'
￣__ノ八{ ヽ./ / / ／ ／ /屮/} | 〃 l
丶ニ/ / / /／ ﾚ | / l_ . -‐
〃／/ / / ＿__／/ 〃 / ∧ ‐-- __ノﾉ⌒¨´
｛ | / / ／ / / / ヽ
ヽ| / /／ ／ ／ / ヽ
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| にはならない。
|
| 少なくとも同等の1/fゆらぎを有する藤堂志摩子。
| 遥かに高みから武器として使用してくるニャルラトホt……『やる夫』。
|
| この二人の存在こそシロッコの不幸、天敵、目の上のたんこぶ。
| 篭絡できないからこそ、シロッコは『血族』を滅ぼさねばならない。
|
|「彼女らは一般人だ。手荒なことはするなよ」
|「アイアイ」
|
| ファイルの束を抱えてよたよた歩く30絡みの女研究員、白衣の下は露出度の高いワンピース。
| ヴァイジャヤはポーチから出した小瓶をハンカチに染み込ませ、女の口と鼻を塞ぐようにかぶせた。
|
| 白目を剥き、昏倒する女。その尻を横島が支えた。こっそりおっぱいに触れる。
|
|「聞こえるか？」
|「ぅ…………聞こ、ぇます」
|
| うわ言めいた返答。ヴァイジャヤの薬物は魔力のない一般人なら抵抗できない。
|
|「シロッコの研究資料はどこにある？」
|「しら……ない……あの方、は。命令する、だけ……」
|
| 予想通りの答え。落胆すらない。
| 横島が女を壁に寄りかからせる。そのまま放置の予定。
|
|「お前は何を命じられていた？」
|「捕虜……の治療、と……洗脳」
|
| 念の為確認したヴァイジャヤ、横島が硬直する。捕虜？ どこの誰だ？
|
|「ヴァイジャヤ」
|「捕虜はどこの誰だ？ 知らないなら容貌を言え」
|
|「眼帯の女と、赤い手の子供……『集会』で……」
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', ';:.:.:.:.:.＼ ／.:.:.:.:.:;' ,'
', ';:.:.:.:. ／ ＼ .:.:.:.:;' ,'
, ´￣∨.:.:／ ＼:.:.∨￣｀ 、
／ .: :. ＼
. ; ' / ': 丶: .
. : / ; , .::;;;;::. 、 , .::;;;;::. 、 ; ヽ: . 横島忠夫。
.:.:.:/ ｉ: ｲ .;'⌒しﾊ ｲ .;'⌒しﾊ .:ｉ ':.:.:. 天龍とシグは『血族』を裏切り
:.:/ :|:. 人:ヽ...ノ.:ﾉ 人:ヽ...ノ.:ﾉ .:|: ':.: 備府やらない夫に下った。
/ :.|:. ｀''ｰ ´ ｀''ｰ ´ :|.: '
.:.:.|;: .:;|.:.:. 彼らの救出はボクらの任務には含まない。
.:.:.:.ｌｌ:. .:ｌｌ.:.:.:.
.:.:.:.:八: . . :八:.:.:.:.
.:.:.:./.:.:..＼: . 'ｰ‐'＾'ｰ‐' . :／.:.:.ヽ:.:.:.:.
.:.:.:/.:.:.:.:.:.:. ＼ : : . . . . : : ／ .:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.
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| 誰よりも早く釘を刺すキュウべぇ。
| 横で頷くレイだが、杏子と横島の顔を見て困惑。
|
|「聞くんじゃなかったぜ」
|
| 頭を掻くヴァイジャヤ、仲間を止める気は皆無。
|
|「危険だ。パプテマス・シロッコが彼らにどの程度の重要性を感じているのかは分からない。
| だが、やらない夫の残党の駆逐を考えているのならば、二人を洗脳なり拷問なりして情報を吐かせたいだろう。
|
| わかるね？」
|「さっさと救出しねーとだな」
|
| 分かっていない。罠や護衛が居てもおかしくはない、隠密作戦が水の泡になる可能性がある。
|
|「救出したとして、その二人をどうするんだ？ こちらの捕虜か？ 連れ歩くのは困難だぞ」
|「助けてから考えるよ」
|
| レイの理知的な説得も無意味、どうしたものか。レイは周囲を見回した。
| 杏子の透明化を超える完璧な隠身で存在すら忘れさせるが、ここには馬岱もいる。
|
| 彼に説得してもらおうと思うも、しかし見当たらなければどうしようもない。
|
|「最悪安全だけ確保して、帰り道に拾って行こう」
|「そう上手く行くもんかね……」
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, ´ ￣｀ ､ ／ /
／ ヽ ,イ /
_/ ヽ/ /
, ィ´ ヽ _ , イ
／ ', ＿,, ´
／ /l ﾊ ｀ ､
. / ィ /｀! ! _', ｀ ､
/ _ -‐´ / / ', ｊ ｀ 、i ト ヽ
｀ ! iイミ､ /＿ ｀ｌ ! ｀ ー _＿__ ,, ノ
| ｌ b;:| 、 /´｀T＝=-l i ｊ
! ﾉ i_ｙ ヽ/ ト'ｒヽｊ/l !ヽ /
ｌ （ ´ ゝ-‐' ! ! }ノ あれ？
! ゝ /// l ｊ_ノ みんな？
ｌ ﾉ ｀＞ ､ｒ_､＿＿_ _, イ /i , 、
｀ ＜ ﾍ ヽ ｌ /／ ヽ
ゝ-,､ 〉 ヽ!/ ﾉ
( i Y / ／7
ヽ ｌ |! ゝ ,ｲ ヽ
|ﾊ! l 人 !ヽ ＼
|/l| ! ／ ', ∨
|/ｌｊ i 〈 ', ∨ ＼
|//ｊ i ! ! ∨ 丶
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| 女研究員から奪ったカードキーで手術室に侵入すると、手術台の上で拘束されたシグが小首を傾げた。
| 隣のベッドには意識のない天龍。二人とも全裸。全身には赤いペンで書き込み。
|
| 切開予定と、改造内容。血の気も失せる杏子たちとは裏腹に、シグはのほほんと微笑む。
|
|「ねえ、よかったら天龍をたすけてあげて」
|「お前はいいのかよ」
|「ぼくらうらぎりものだから」
|
| だから、厚かましくとも天龍だけは助けてほしいという願い。レイはどう応えていいか分からず動揺した。
| これまでの冷徹な態度を貫くのは難しかった。
|
| 眼帯もその他のパーツも外され、仰向けに拘束されて眠る天龍。
| 寝転がったままでもツンと天を指す乳房の張りは崩れない。
|
| だが、それを切開してチタン板を入れるとか、胴体に追加の腕を神経接続するとか。
| そんなことが書かれていてはさすがの横島もいやらしい気持ちにはなれない様子。
|
|「シグはなんで起きてンだ？」
|「つよめのくすりだったよ」
|「これだから毒使いは嫌いだぜ」
|
| ぶーたれるヴァイジャヤ、シグや龍田には毒も薬も効きづらい。
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ｘ, ｘ,
} ､＼＿＿＿／/ } ／
厶- } {‐ く 〈{＿＿＿__
／ ／ ＼ ＼ ＼ ＼
＿/ ｉ{ (Ｃ) (Ｃ) }i '. _ 7＾ 丶 申し訳ないがシグ。
〃7 八 ､_,_, 八 V＾)) / ' ボクらにはボクらの目的がある。
＿／{{ ／ ｀ ｧ r ' {{､ 〃'く_＿ } キミ達の拘束を解こう。
(__.:.:ﾟ｡:.ヾ=彡 .′ '. ゞ=彡.:.:.:.｡ﾟ-く ′ その後は自力でどうにかしてくれ。
ｰｔ__ﾟ／ /{ ト, ＼ﾟ＿r'′ /
.' } ﾄ ┐ l f⌒丶,＿／⌒' ／
{ ｝ l | { } ／
丶 し' し' 厂￣ ー----=彡
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|「あ」
|
| キュウべぇの言葉に、室内の空気が動いた。
| この場にいるメンバーで、最も動物的な直感に優れているのは意外なことにシグであった。
|
| しかし、彼は拘束されていた。
| 魔術の行使も不可能だった。
|
| 次いで反応したのは横島……いや、馬岱。
| この場における最強戦力である馬岱は、中学生たちを震え上がらせる程の殺気を放った。
|
| それが、杏子を救った。
|
|「や、ヤザン・ゲーブル！！？」
|
| 特徴的な青い鎧、鋭角なボディ。ＫＫＫを想起させる円錐状の兜。最新鋭の機動服『ハンブラビ』。
| 顔面には三日月型のスリットが縦に並び、一つ目のピエロのように滑稽な表情。
|
| しかしそれは、相手を侮らせるための偽装。
| 『ファットマン』やロビンに装備された液体金属の試験型『ウミヘビ』を有する、怪物兵器。
|
| 杏子たちはその恐ろしさを、『モーリアンビル』で嫌というほど目の当たりにしていた。
| 見事な隠密と光学迷彩で隠れていたそいつの攻撃を、防ぎきれたのは馬岱なればこそ。
|
| しかし、もうひとりいるとは思うまい。
|
|「悪いね、隊長じゃあなくってよ」
|「ラムサス」
|
| 馬岱を斬り伏せた二人目の軽口を、一人目が諌めた。
| ヤザン隊、ラムサスとダンケルである。
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☆ 次回予告！
お前の目的はなんだ？
お前の目標はなんだ？
何を求め。
何に心を砕き。
何に手を伸ばす。
目的地は遠いか。
障害は多いか。
道行は辛いものか。
それでも、お前は目指すことをやめないのか。
次回、最終幕九十八話『最強を乗り越えろ』
果てに見るのは破滅か死か。
部下でもこの強さよ
弓兵は憩って
自分は乱入するのはセーフだが
自分が乱入されるのはアウト
そういうとこだぞ
まあ弓兵死亡フェイズがなければアンデルセンが導きに感謝することなく戦闘に入ってたので必要な犠牲だった
黙祷
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| 『シロッコ排斥』が始まって30分。
| 大乱闘の地上同様に、地下道も混迷を極めていた。
|
| 迷路と化した下水道、その主であった曹操 孟徳 華琳。
| 彼女の軍勢は九月の『万魔』など目ではない程に的確に、大量の兵力を研究所に侵入させた。
|
| 個体の戦闘能力は低くとも、好奇心と悪戯心の赴くままに何でもひっくり返し、ボタンを押し、燃やす妖精たち。
| まさに『邪悪帝国』の名前にふさわしいカオスを振りまく。
|
| 駆けつけた警備が妖精たちを駆逐しようと動くも、雪だるまとカボチャに紛れた美女たちが許さない。
| 華琳の愛人兼親衛隊だ。
|
| シロッコの手下研究所愛人の美女『武僧』を一対一で圧倒できる。
| 妖精たちの数の暴力で分断しながらの各個撃破なので、シロッコ側は麦穂のように狩られるばかり。
|
| だが、そこに現れた援軍が均衡を崩した。
|
|「いい年してカツ丼の後に焼肉で豚トロを数皿平らげ、シメに背脂系ラーメンでキメた翌朝みたいな内臓の具合です」
|
| 強烈な胃もたれに似た腹痛と吐き気に随時悩まされながら、その女は室内でも脱がぬ野球帽を目深にかぶった。
| 小柄な体躯、サラサラの金髪、モサいジャージ。
|
|「しかし、一宿一飯の恩義は返さねば……やらない夫君の『集会』に寝過ごした汚名をどこかで挽回しないと、
| 今度こそ師父に見捨てられてしまいますね……！」
|
| 汚名を挽回してはいけない。
| ここに謎のヒロインＸが登場する。彼女は気が狂っていた。
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', ''ｰ--､ .／ ._‐t=======＝=､
ヽ `‐-､ r'" _∠='" _, ､、 ~
ヽ . ､_ _ィ‐" | ＼
ヽ ', ｀ヽ、 〃" -､ ヽ |
ヽ !、 .＼ 〃 | ヽ ヽ, -' _, - ヒホ？ ヒホヒホ？
`､ ヽ ヽ､ 〃 ', ! , イ" アイムヒーホー。
,--‐┘ ヽ ｜ 〃 ヽ ／ , -'" ' クックドゥードゥルドゥー？
`､ ,----┘ ! j.| ~ , イ
＼ヽ ! !| .／ .~" ／
.~=ﾆ ', ! l,| .／ ／
~" !、 l,l, ヽ､_ __, -‐"
,-‐ヽ !、 l!、 ￣￣~
_ ､_ | .!、 !、Κ
/ `‐イ !、 | ヾ!、
', `ｰ-' .λ | ヽ､
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ヽ-‐'〃 ___, ､
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|「アイムヒーホートゥー。イエスアイアムアイスクリーム！」
|「なんだ、味方かホ」
|
| 恐ろしく巧みな話術で雪だるまに取り入ったＸは、襲われることなく妖精たちを掻き分け移動。
| 華琳の愛人のひとりに素早く近付き、『エクスカリバー』で頭をかち割った。
|
|「忍び手『暗刃』。まずは一人、ぶっ殺した」
|
| 華琳の部下は優秀で強力だが、いかんせん数が少ない。
| 数は雪だるまが補っているのだが、所詮は有象無象の烏合の衆。将を失えばうぞうごするだけの十把一絡げだ。
|
| 謎のヒロインＸは、そもそもがアサシンである。
| 敵の頭を探し出して暗殺するのは慣れたもの。
|
| 次のターゲットを探すＸ、侵入孔である下水道へ近付く。
| その時である。
|
| 闇の奥で、悲鳴と雄叫びが交錯した。
|
| 仲間割れ？ それとも不慮の事態？
| 好奇心と悪戯心に突き動かされ、Ｘは闇の中に飛び込んだ。
|
| 闇の中で妖精たちを攻撃する集団。
| 敵の敵？ その顔に見覚えがあり、Ｘは息を呑んだ。
|
| 『十字軍』の双子、姉のオズマがそこに居た。
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／: : : ミ:､: : : ヽ
／: : : : : : : : ヽ: : :＼
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ノ: : ／: : :イ/ﾐヾ:}:ﾉ: : :ｲ
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/: : :／´ ／: : /: : :／:/ヾｪyミ ィ_/:ﾘ
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i ／￣ニヽーｧ /:/: ﾘ 、＿´ /:/ヘ
ｒァ´ _ノ ｒ´ヽ〉:{ {: :Y≧。ﾟﾆ´ ィ:/:{ィ´i}＿＿＿
/⌒ヽ ＿ヽｨ八: :ヽﾊ: :ﾏ｀ー≠7/i: 八ィ⌒ ´￣ ＞、
/ Y⌒/:/｀ヽ}人: }: : :ﾏ 八{: : : :＼ ／／ヾ、
人 // (: :ﾏ ノ: ﾉ:/: :ﾊ: ＼_//⌒ヽ: : : :ヽ. ／／ i}
｀ヽ// ＼: :｀:ー:/: : /}｀ヽト ＼: : : ｀ミ:､ /人
{!⌒ヽ三ニ７ー彡: :/:/ マｭ、 ＼: : : : :ヽ // i}
{!｀ヽ ＼ /: : : :／: / マｭ、 ヽ: : : : ﾏ ､＿i}
ミﾐ{! ＼ /: : : :/彡´ マｭ、 ｀Y: : ﾏ≧ｭ/
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| だが、そいつはＸの知る嗜虐趣味とブラコンを拗らせて婚期を逃した女ではない。
|
|「前線指揮ですか珍しい。暴れるのだけが取り柄のチンパンくんはどうしたんです？」
|
| 奇妙な違和感を覚えながらも、Ｘはオズマを挑発した。
| 前に会ったのはいつだったか。少なくとも一年以上前で、『十字軍』としての布教活動中ではなかったはず。
|
| それが日本に来たのは知っていた。
| あの脳みその代わりに精子の詰まった弟への侮辱を看過できないことも。
|
| ……だが、Ｘの知るオズマは両目が濁って白目を?いたりしていないし。
| 赤紫の舌から白濁したよだれを垂らしてもいなかった。
|
| 当然、そのよだれはコンクリを溶かしたりしないし。
| 部下も手足が複数の変な怪物ではなくバケツヘルムの『十字軍』だった。
|
|「……なんで紙袋をかぶらせてるんです？ あ、もしかしてやらない夫君のマネですか？」
|
| オズマも、彼女に従い雪だるまを引きちぎりカボチャを粉砕する異形の兵隊も答えない。
| ただ、Ｘという新たな獲物の存在を確認しただけ。
|
|「サヨナラ！」
|
| Ｘは身を翻した。追いすがるオズマたち。
| 不格好で不揃いな手足の怪物たちが追いすがる。奇妙な屍鬼だ。ゾンビを混ぜ合わせて作った極めて悪趣味な存在。
|
| フランケンシュタインの怪物も、こいつらに比べればお上品だ。
| もっと、近代アート的というか、反吐が出るというか。
|
| ペルソナ使い達がいれば、そいつを『ツギハギホラー』と呼んだだろう。
| クロトワが作っていた悪趣味な怪物。
|
| あるいは。
|
| アリー・アル・サーシェスに奪われた、能力であると。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＞〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:ﾍVｲ:.:ﾍ:.:｀ヽ:.:.＼
／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj 市街地だというのに
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ なんて戦い方だ。
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ}≧=≦弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ こんなにも俺と『血族』の間で
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 意識の差があるとは思わなかった……！
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/
ﾄ､:ﾍ _ ＿ /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ ヽ _ﾝ ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
:::::::::://＞｛ii{;;;;;;/ / ｛;;;;;{ ／ / {::::::::::...,､:＜⌒＞:.､_
:::::::::{｛ 〃∧ヽソー-- 、 __人__{;;;;{ ｲ ｛::::／´::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::::::::::::｝ ____,,ゞ:::::＞､,,_____,,,､ｒ=＝」k;;j_ ノ ﾉ/:::::::::::::::::::::::::＞"⌒ヽ:j
∨::::://O / /:::::::l:.:.:{:::}{:::}:::::::/:.:/⌒/ｰ-､ ノﾉ:::::::γ⌒ー"´ }｝
j::〆K / /:::::::::l:.:.:.:｀7´::::::/:.:/ / O ∨ｲ::::::::::ノ ;j
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| 新宿衛生病院から少し離れたマンションの屋上。双眼鏡を片手に呻くのは元『血族』ののけもの、ミスト・レックス。
| 彼の隣で伏射姿勢のまま、四ツ目が笑う。
|
|「ようやくシロッコの野郎の危険具合に気がついたのさ。奴を殺すなら手段を選んではいられんよ」
|
| 彼が抱えるライフルは、先程から空中遊撃を繰り返すレールガン使いの大筒にピタリと照準していた。
| スコープは不要。彼は四ツ目だ。悪魔との不慮の合体事故により、その視覚は並大抵のスコープを使うよりも高性能になっている。
|
| 彼が抱えるライフルは対戦車用の対物大型弾頭を発射する。
| 装弾数は一。つまり、あんな雑魚に使うものではない。
|
|「ティム……大佐……」
|「逸るなよジャジャマル」
|
| ミストの横で涙声で呟くのはジャジャマル。アトリーム戦災孤児にして、ヤーボ大佐に拾われた少女。
| グリーンベレー『野良犬』部隊は彼女を残して全滅、しかし最後の『野良犬』の使命も果たせぬままに捨てられた死に損ない。
|
| 彼女の肩を叩くのは、同じくアトリーム亡命者の長門（弟）。委員長とも呼ばれている。
| そして、四人から少し離れた場所に、左の袖を深夜師走の寒風になびかせるがままの男。
|
| 藤木源之助。
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｢圭圭{ { ):::::::l｀¨¨ヾ¨¨´: : : : : : : :/}圭圭}｀ ― '"´
|圭圭｝ 乂::::::::i::::::::::::::`:..､_: : : : : : i {圭圭i}
_ _j圭圭{ ﾉ:｀ヽ:|:::::::::::::::::::./ : ￣｀ヽl〈圭圭i}
, " {圭ア´／.:::::::: /ヽ .:::::::::::/..: : : : : : :i ヾ圭i}｀ヽ
. / V彡i ー=≧s｡.＿,.:::::::.､__,,..｡s≦=一' V/L_ ｀ー ‐ '"´
┌ {Ξiｰ<¨ _丐i 〕｀ヽ:::::〈 ィ〔_丐i ¨>ｰ /ｼﾞﾊ }_
ﾉiハΞ' ,.:::::::￣ .:::::::〉:{:::::} ゝｰ‐ ￣‐‐.: ﾊ{ // ￣ ｀ヽ
/ ∨ハ! ヽ.:::::::::::::::〈 }:::::} 〉:::::: : : : :./ j{ j ﾉ/ }
. ′ V ハ :.＼: : : : :Ⅵ:::::} ,′ : : : : : i ｲ ..У 如何様に致す？
. 乂 /ヽ_∧ .:.` ､: :└､_r┘ : : : : : : : /<ﾞ´｀` .
. { 、:.:.:.:.: : ､＿儿＿_; : : : : : / ヽ ヽ
乂 _ ﾉh､.:.:.:.: : ｰ￣ 一' : : : : :ｲ! ` ､ ﾉ
／ {ヽ}ﾄ､.:.:.:.:.｀¨¨ﾌ: : : ／ : !| ｰ "ヽ
＿|: : V/}h､. _＿ イ: : : : !|＿_ )
( ／xｉ∧: : V/∧ :::::::::: /ｉ : : : / /xi＼
／xiｘiｘ ∧: : V/∧:::::／:/: : : / /ixｉｘixi＼
,.ｨi{ｘｉｘｉｘiｘｉｘ ∧: : V/ :::::::: /: : : / /xixiｘｉｘｉｘ个s｡. _
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|「俺たちが介入すれば、どちらかを勝たせる事は可能だ。だが、それでは俺たちの目的は達成しない」
|「日和見に徹せよと？」
|「動きを待て、だ。今のバランスだとシロッコ側が勝つ」
|
| 五人の男女、五つの目的。
| 源之助と委員長は『夢の塔』攻略を抜けてまでの参戦。
|
| 情報源はジャジャマル。市国側のシロッコアンチの動向を独自に調べて、このタイミングをドンピシャで掴んだのだ。
|
|「それは、避けにゃならん。シロッコは殺す」
|
| 四ツ目の目的。
| シロッコの殺害。古くからの因縁、憎悪する相手。
|
|「互いに犠牲者が出そうですね」
|「まあ、そうだろうな。少なくとも『カトルカール』は半分以上死ぬだろうよ」
|
| ミスト・レックスの目的。
| 恋人の脳の入った自走戦車『レヴリアス』の奪還。
|
|「シロッコ側の犠牲は出したくござらん」
|「でも、シロッコは殺んないとな」
|
| 藤木源之助の目的。
| 自分と同じ、肉体損壊者の集団。『カトルカール』の救済。
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: : : : ｀ヽ: : : ＼: : : V: : :i: : :|!: : : : /: : : : :／ー-
: : : : :_: : : : : : :｀ : : : : : : !: :': : : : : : : : ／: : : : : : : :｀ミ 、
: : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ー--: : : : _: : : ヽ
／: : : : ｧ : : : : : : ; : : : : : : ／＼: : : : :＜ー ミ ｀ヾ: ヽ
: : : : ／ : : : : : : ハ: : : :／ ヽ: : : : ヽ＼: : :｀ヽ ヾ:
: :,／: : : : : : : : / }: : :/ ヽ: : V/＼: : :＼ ヽ
ｨ': : : : : :イ: : :/ !: :/ ﾒ、V{ﾆヽ: : :＼ )
: /: :,ｨ//: : : / i:/ / Vﾆ ＼ ヽ
/: :///: : : ＞ー--＜ ／ {｢i! {!三ﾆハ ＼ 暗殺も難しいんだよな。
: : i!// : ／ {｢ｌ! ｀ ´ !|j! ｊ三三 } アイツ本人も手練だし。
: :il!l/ｊ／三 |! i| iじ ｨ三フ
: :j!/三三ｊ! iﾄ j! ． ¨ィ７´
: :i ヾ三」 ゞ'’ ＿ -=ニ三7
: :! ｀マ三ニニニニニニニニ三三三フ
: ; ｀マ三三三三三三三三三＞´
/ 「￣´￣￣￣￣ ´ ７
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|「サシなら殺れるだろ」
|
| ジャジャマルの目的。
| ヤーボ大佐とティムの説得。
|
|「なんだっていい！ ヤツにとどめを刺すチャンスだ！」
|「落ち着いてくださいよ……」
|
| そして最後、委員長の目的は……。
|
|「さて、これから別行動だ。全員やることは分かってるな？」
|「ホントにあんたの思い通りになるのかよ」
|
| 四ツ目に疑問を呈したのはジャジャマル。合衆国軍人だけあって、元テロリストへの風当たりが強い。
|
|「なりますよ、信頼してくれたら四ツ目さんだってどんな作戦も成功させてくれます」
|「無茶言うな。だが、六割方は想定の通りに進むだろうよ」
|
| 作戦はこうだ。
|
|「ミスト、藤木、長門は水没した下水道から内部に侵入。
| 目的は二つ。レヴリアスのコントロール奪還とシロッコの暗殺だ」
|
| 前回二人がアタックした際に、ヴィヴィアンによって水没した通路がある。
| その水を、麻呂にもらった式神を利用して突破、侵入する。
|
|「俺はその間に、『血族』本部近くの狙撃スポットに移動する。で、大佐をが来たら撃つんだが……」
|
| 半信半疑のジャジャマル。
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,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ 間違いなく行く。
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ チビスケの方を連れて行くかどうかは賭けだがな。
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
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| 四ツ目の作戦通りならば、『リトルボーイ』と『ファットマン』は『血族』との戦いをやめて別の場所に移動する。
| その行く先も、四ツ目は推測できていた。
|
|「いいか、俺の知るクソデブなら自分でお礼参りに行く」
|「…………それは分かるけど」
|
| ジャジャマルの語気が弱まる。
| お礼参り。誰に？ 決まっている。
|
|「そうでなくても毘沙門天と正面衝突したんだ。絶対に自分で行く」
|「まあなあ」
|
| 『血族』だ。今現在本部でイナミが想定している通り、本部への襲撃を実行するだろう
| では、どうすればそう動くのか。
|
|「バランスを崩しゃあいいだけだ。楽なヤマさ」
|「四ツ目さん」
|
| 鼻歌交じりに笑う四ツ目に、ミストが真剣な声をかける。
|
|「安心しろミスト、意識の差はないね」
|「安心しました。ご無事で」
|
| それ以上の言葉は、必要なかった。
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. l l
l l ,ゝ /!
l l / ｀ｰ,､＿＿＿_＿/ .l
l l｀丶/ .／ ヽ,rｭ､ ⊥, l￣｀'i _
l l >ｭi / ／ ,ィ｀' ´ .イ .l､ ｿﾍ /! ,.ｨ/
l 'i{ ヽ＞､_,., ' .ｨ.>､ / l i,､｀ﾍｨ､ﾉ' / .／ .ｨ
r'" l､ ,ゝ､ i // //｀ヽゞ ﾘヾ､i> ,'／ / i 魂ィィィーーッッッ！！
l rｭ' li'´ └化__/ｰィ i / 〉<｀丶 .ﾄ, ﾉ i, l l _
. Ⅵ .lリ 〉，_ _,ィヘ,くi> ﾞi ,’‐"､ ＿ _ ,.，ｨ'ﾍ! ｀'´/｀'・､
l .l_ l ｭ〉､ >Kｭ.ﾚ'／ヽィ´j i j｀!,＼ ┤ i <.´
「__」 _＿.〉ュ_ ﾍ lｭ，､ヽ､〉'´ィi Lｭｨ ,'/,ノl l ', ﾄ､_ﾍ
ヽ / ','´ ア ／/､. }､ L_ 'ｰｧ､ヾ >'´i Kl ｀ヽ, }‐ｬ’j
｀丶 _ l i l lK´ / .i l 〉｀ヽ､ _ソ´ ＞ｧ'i´ l l .∨ ﾄ､ j ',
丶/ 〉' ､ il .ｨ ヽ,_/ l l { ｀'ｰ .,〈＝ｧ'´ i l ヾ ､ ∨／ >､ ',
ー──＝´ﾍ li /┐. l l ゝｭ，_ ∨,.，-‐─ｭ､ ヾ ､／.／ ヽ, .〉
ヽ. _＿＿ ,/. li l‐┘ l l､ ', ﾍ ,ゝ ヽ ､ _,イハｲ <､ ｿ
l il ｀ゞ､. li .＞'ﾍ ', ヽj，､ヽ ゝｨユェｭ､ ｀! リ ｀'
i li ﾍ iｭ /,ｨｧﾍ ' , ヽソ､ ,' /./ ﾍ, 〉､.ｲ, ／
! il lﾍ〈 〉,'l' .// 〉｀ァ`ｲ i !./ l ﾘ .イ
l li 〉 ｀´〈 // 〈 l‐.l ﾊ > .l. ,i'／三lｭ
. ', ﾍ､. 〈. ', ! , 〉i' l ‐-∨. j l i /，ｿ三三三ユ_
ゝ､ ノ二ニ.｀! l ＞､. 〉 ヽl l T T T 7 l,'三三三三三二二二二三二ｱ
三三三三i／ / ∧ ￣￣l /｀'ｰL.⊥.⊥.⊥.」', 〉三二三三二二二二三三／
二ニ” l ∨ l ﾚ'´ l ﾍヽ,
l l ∨ バ.
. l .l ｀ゞべ'´ ヽ､
l l ヽ, ヽ､
l .l l ヽ､ / ｀'ｧ-‐ニア
l i!. l ｀'ｰｭ，/ / /
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| 正門前の戦いは乱戦となっていた。
| 激しく打ち合う呂布とロビン、凶悪な戦闘能力の『リトルボーイ』と『ファットマン』。
|
| ケンシロウ、ルカとカミナで大天使二柱を相手にする。
| その他『グレン団』の精鋭は、死ぬか瀕死か、戦闘不能のシモンや龍田を守るか、
| あるいは遊撃してくる『カトルカール』にかかりきり。
|
| 屋上から必殺のレールガンで狙撃する『カトルカール』の大筒。
| それを排除に向かった石田は、仕掛け爆弾に吹き飛ばされた。
|
| いや、全方位からの逃れ得ぬ爆風と炎と破片の乱舞も、自身の防御に徹した石田を傷つけられない。
|
|「いじめないで！ いじめないで！」
|
| 大筒の護衛とした待ち伏せしていた爆弾蜂の焦り。
| 当たり前だ、確実に吹き飛ばした。なのに傷一つなく耐えきるなんて想定外だ。
|
|「ｺｰﾎｰ」
|
| 念動で体を投げる超加速で飛行する石田、割って入ろうとする百足脚の『カトルカール』。
| ムカデに似た六本のフレキシブルアームを振り回し、コマのように攻撃。
|
| だが、石田に届かず。空中でなにかにぶつかり跳ね飛ばされる。念動障壁。
| 爆弾蜂の胸を蹴る石田、その反動で飛ぶ。
|
| 念動による補助がなくとも、手力雄命の祝福を受けた巌のような巨体の一撃。
| 蹴り飛ばされた爆弾蜂は貯水タンクにめり込んで停止。
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〃.:::::l:::|:::::::::::::::ヽ
ｉi::::::::::l:::Ｌ.:::::::::.、:::. ｺｰﾎｰ
ｊｊ, -‐'::ｰ', ＝ミ::.＼',
/〃⌒i}::::{､＿:::)::}:::.＼ ｺｰﾎｰ
;:::i{ゝイ::Y^Y::::::::/.::::::::::.ヽ
;::::::.〈:::://l l ｌ＼/.:::::::::::::::::.ヽ ＿__
::::::::::∨=-‐=＝7ヽ::::::::::::::::::::〉 {::::::::.＼
ｉ|:::::::::::.＼/////.:::::::>=＝ミ:/ ＼:::::::::.＼
乂::::::::::::::.∨///.:／／￣／⌒＞‐- ＞...::￣::｀丶、
｀¨¨フ７７７.:://.::,=ミ/.:::::／.::::::::::::i{::::::::::::::::::＿:::}
_ . イ:::::/:/:/.:://.::::{::::::.＼/.::::::::::::::::/ヽ.二ﾆ≠::::::/
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＼//.:::/:/:/.:://.:::::/:::::斗=＝:{:::::::::::}:::::::::::::::: ＿__フ.:::::|
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| その間に、戦闘機とアゲハチョウが石田を囲む。
| 抗磁圧のシールドによる突撃と、機関銃の乱射。さらにレールガンの狙撃。
|
| タコみたいに動く百足脚の追撃、復帰した爆弾蜂による爆撃。
| 要塞のような堅牢さで、それらすべてを凌ぎ切り、なおかつ強力な反撃を叩き込む石田。
|
| 『カトルカール』五人がかりでもびくともしない石田の真骨頂。
| 味方を守るだけの男ではない。先日の敗北も、逆説的には味方がいたから。
|
| 守る相手が自分だけならば、『カトルカール』ごとき全員倒してお釣りが来る。
| 来るのだが、これを時間稼ぎと見るならば話が変わる。
|
| 地上の戦い。
| ケンシロウは『リトルボーイ』に押され気味。
|
| 未熟さを喧嘩殺法と悪辣さでカバーするジャギと違い、ケンシロウは強いが故に健やかな戦闘スタイル。
| それは海千山千の戦争狂だった『リトルボーイ』には御しやすいもの。
|
| 北斗神拳との相性の悪さも、上杉謙信の毘沙門天による傷もハンデにならない。
|
| ルカとカミナは初めてとは思わせないコンビネーションで『ファットマン』を圧倒。
| だが、倒しても倒しても当たり前のように起き上がる『ファットマン』。
|
| その上、ルカが戦えば戦うほどに魔王マーラがフェロモンを撒き散らす。
| ルカとカミナは性欲という内なる敵によって集中力を失いつつある。
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. ',ｨx＞ ´ ｀ヾゝ、
//7´ } i!_ ﾑ､＼{ヽ、
' l7 ﾊ ´ﾊ从 } ｀} ﾏﾑ
| {' ィ7Ｔ{ ﾊ /ィ示ﾊゝ' }ヽ}
| | {,ｨﾊ圦 { ﾘ ｀¨ ´ / ///!
| | {`¨´ ｀ ､ ｲ /// |
l八 }ﾄ､ 厂ヽ ﾉｲﾑ' !
| ヽ､ﾄ、＼ Y ﾝ ／{ l
| ＞‐=ﾐ､ヽ ､´ ∠ミ ﾄ,、_ |
| , ´ Vﾊ}r=＝=ミ》》》ﾍヽ|
, { ヽ}＞ゝ=しﾍ ン_ミ'ﾑﾊ｀ヽ
/ ｌ , ´ ｀V´￣ ヽ ￣￣｀ ､
, ∧03 .ィ{ ､ :. ＼
/ / >ｲ/ﾊﾍﾉ ヽ
' ' / /{//人ヽ :. ﾄ ､
/ / /∧////ヽ＼ :: l } 〉
/ Vf ヽ ヽ////＼ヽ ;: ///＼
' '.ヽノ ノヽ、///ヽ＼ 人 .://∧ ＼
/ 乂彡≦'. ＞/_//＼ヽ ／: : ､ . :〃´ヽ ヽ ＼
/ / / ∧, ´／⌒ヽ.､く: : `: . イ/ '. ＼ ＼
, / / {_/ . - 、Vヽ＼ //!´ '. ヽ ヽ
/ / / <／ ∧ ∨＼ヽ .///{ ﾄ､ } |
' / / /l {⌒} ∧ ∨/ヽ＼ /// ﾑ } ∧ | }
/ ムイ ＞! .! ! ∧ ∨//≧ﾒﾑィ´ 、 / ∧ﾉ /
, ' ／ ﾉ ／ ! | | .∧ ∨´ }／ .イ ﾝ }､/ ∧ .′
.／ ／ ／｀ゝ､ ｌ | | l '. て ィ´ ／ ／ ノｰ, !、 ∧ {
, ' ／ヽ: /＿ヽl | | | '. }ﾝ／ ∠..ィー ´ | ＼ ＼!
〃 , '////＼: :/ i!.ゝ-' o | V ゝ ' } l ヽ ヽ
／/ / ///////ヽ‐:| o o ! '. ム l '. '.
／ , , ///////////V|'. o o o .| l /: :} l l '.
／ / / /////////////} } o o | l ./ Ⅵ | 、 !
' / ,＿_////////// | | o ,x≦三ヽ} /: :7 '. '. | }ヽ }
/ ./ ! /ヽ｀ ＜///// {三三三三r, ´￣ ｀}/ ∨ ∧ ヽ | ﾊ ﾘ
, / i! |∨_:_: ＼ ＞ ､//｀ﾏ: :ｱﾊ / i!ｰ:/ / '. ､ レ'
l { |! !////｀ ＜ : : : ﾊ ＞､∨＿∨ } V .ィｰ: :ｧヽ ＼
' ﾊ !| .|/////////｀ ＜! . : ﾊ∨ : ! 〈:７ }: ／ ＼ ､ヽ
. / / l 八 .|/////////////｀ ＜:} ﾏ: { _ ヽ＞ ´ ＼ i! '.
ムイ | i!/ ヽ.!/////////////////`＜ﾉ /ｰ'＜ } .// ゝ、 .ﾊ }
ﾉ '' |'//////////////////r' ノ｀,777´{_j/ ／ ,へ / '
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| そして呂布とロビン。
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| 馬イクを乗り回し方天画戟を振り回す呂布。さながら竜巻。
| 巻き込まれた障害物は木っ端微塵、コンクリート壁も電柱も立木もまとめてミキサーにする。
|
| 同じく脚部をタイヤに変えて挑むロビン。
| 生半な攻撃では呂布に通じない、銃弾も爆撃も火炎放射も電撃鞭も方天画戟の前には無力。
|
| 暴れる呂布を止めるには、風車のような間合いの内側に入り込んで一撃を加えねばならぬ。
| はっきり言って、無理だった。
|
| しかし、ロビンはそれを悟らせぬ動きで牽制しながら、タイミングを見計らっては突撃。
| 右手の鉄球を赤熱する突進槍に、変形させながら神速の刺突。
|
| 狙い澄ました必殺の突き、しかし呂布はそれを見てから避ける。人間の動きではない。
| 振り下ろされる方天画戟、紙一重で回避するもアスファルトは粉砕され地面がめくり上がる。
|
| ヤザンすら守りに徹せねばならないほどの暴力の化身。
| ロビンの外装が衝撃波で震える、殻に覆われた柔らかな内臓が悲鳴を上げる。
|
| しかし、ここでロビンは呂布に勝たねばならない。
| なんのため？ もちろん、決まっている。
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∧ ,’.、
ゝく￣ヽて＿＿ / :!
弋 ゞ ;!ﾉ 〈＿ ｀ヽ_ / .:!
|:/＼l￣￣弋＞ー!ﾉ. ,.イ __ ／, |
弋＿:| ／∠、,，.:´ .／ , ,′
＿ _ ,，´ ￣ ｀ / ／／､／ . ／ , .,.'
` ､ ,，―／／､／ ,，イ , /
’,／ ／ 弋>' ., |＼ _ ,，' ./
/.＜/ .／__| i ./
| //.:`｡､ ..／ / / ./ ココニ送リ出シテクレタ皆ノタメ！
l:＼ ＿_ 弋_;l弋::::,,/イ` ､ ./ / ./
i｀|:.. ｀〈` :､ ＼戈_/￣ .:| .／ ,:’ ／ ソシテ、ナニヨリ私ハ！！
ヾ!＿.ノ .r .＼＼,，イ／ ／ ／ タダ、オ爺様ニ勝チタイノデス！
∨ 弋_ノ,，＜_ _／ .／ ／
ﾏ＿ .Y´ :.:// | _ ,， ' ,， ´
,，＜_ ノ. |l 三,l弋_!＿＿,， ´
.i __/ .｀ .､ 廴二〉＿__./ ,/｀ :.、
’,__〉、 ｀ー―‐＜ ＼ ./ ヽ
＼/＼ _ ＿＿ _ ｀ -r＜ﾘ三三三三!=l＞
｀ －―――― ' ´￣￣＼ ,’
＼/
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| シロッコが聞いていたら目を剥いただろう。
| だが、ロビンは当初から洗脳対策を済ましてきた。
|
| そもそも、タネの割れた手品なのだ。
| あの、鷹野三四が対策の一つもなく送り出すとでも思っていたのか？
|
| ロビンは意地とプライドのためにここに立つ。
| 世界の命運よりも、己の世界を終わらせないために。
|
|「魂イイイィィィッッッッ！！！」
|「タマシイイイイイイ！！！」
|
| 祖父と、呂布と雄叫びで正面衝突。
| 段平で一撃、方天画戟に弾かれる。
|
| いや、跳ね飛ばされないように鉄球も刃に変えて鍔迫る。花火のように火花が舞う。
| 四本の腕で食らいつくも、それでも互角には遠い、押し負ける。
| 呂布の膂力は天井知らずか。
|
|「そんな程度かぁ！！」
|「イイエ！！」
|
| 鍔迫り合いとは。しばしば勘違いされがちだが、力で押し合うだけの力比べではない。
| 無論、力が無ければ始まらない。容易く跳ね飛ばされて終わりだ。
|
| だが、力が全てではない。
| 非力ならば非力なりの立ち振舞いも存在する。
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ﾞﾞ'-､ .L ,〟 /' ,i'ﾞ .／
ヽ ｌ / .ヽ 人 / ﾞｉ /.／
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| 戦いにおいて、それがどんな状況であっても変わらない真理が一つある。
| 言い方を変えれば必勝法。必ず勝てる。覆せない真理。
|
| 『相手のやりたいことを何もさせずに、自分のやりたいことを全部やれば勝てる』。
|
| これはつまり、素人考えでしばしば存在する、『ホニャララなんてどーたらすれば楽勝』と同レベルの机上の空論である。
| 戦闘において、誰もが相手の手を潰して自分の手を通すことを考える。
|
| 格闘技でも、ゲームでも、戦争でも同じ。
|
| 達人とはつまり、どれだけ『それ』が上手いかということになり。
| どれほど早く、相手の妨害を見切り、自分の妨害を通せるかということになり。
|
| そして、対人戦において最も基本的な妨害とはおおまかに。
| 『意表を突く』と『体勢を崩す』に分けられる。
|
| 鍔迫り合いとは、力比べであると同時に相手の体勢をいかに崩すかという高度な知恵比べである。
| 一瞬引いて相手の体勢を崩そうと企むロビンと、構わず叩き潰そうとする呂布。
|
| 刹那の攻防である。本人たちの時間感覚は泥中のように伸びているが、何もかもが一瞬の出来事。
| 押し負けたロビンが倒れながらも、その尾はピタリと呂布から照準を外さない。
|
| 押し勝った呂布が振り上げる方天画戟、それがロビンではなく、何処からか飛来した特大の対戦車弾を弾き砕く。
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ゝ へ. ノｰ‐一ﾍミﾐ≧rｪ一'" ー一 ヽ
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／.ィ ｀. i,ー──‐─‐一ｬｭく ﾉ _,. -‐ '¨ アヽ l
i i i .l `'ー‐一'↑ｧ'´ ／ 丶ﾉ
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l l三二ニ＝＝＝ニ二三三三三〕℡,_＿.ノi 見事……ッッッ！！
lﾍ ＼i .r ‐ ｭ、ヽli三三三三三l ﾍ! /l
ﾏ 丶、 ヽ ﾏi ﾘノ /／/ﾆ三三三ﾄ,、 / .l
ﾏ `ヘ`ｰ一’ー──二＝／ /" ｀寸三三ﾆ＼ / l
ﾏ `丶. ／ / `寸三三三三:il, /l
ﾏ `ヽ、 ／ ,'＿ `寸三 / !ニ! / .!
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. ﾏ l¨’'・’，, / l l l
ﾏ l ｀'ｰ一’ ﾘ ト、 ／
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| レールガン。超電導で加速した弾丸を高速射出する兵器。
| その射出速度は超電導加速した距離に比例する。
|
| ロビンの尾から射出された超電導弾は、大筒のそれに比べれば半分以下の加速である。
| しかし、呂布の脇腹を黄金鎧ごと抉り取る事は可能であった。
|
| へその横に野球ボールサイズの穴が空けられた呂布は、糸の切れた人形のように落馬イクした。
|
|「ア………………アァ………？」
|
| 攻撃したロビン本人すら、呆然とするしかない。なぜ？ 誰が？ どこから？
| そして、呂布の敗北という想定外の状況に、他の誰もが動きを止めた。
|
| いや、止まらない者もいる。
|
|「グフフ……！」
|
| 『リトルボーイ』の後ろ回し蹴りで跳ね飛ばされるケンシロウ。
| 『ファットマン』の有刺鉄線の直撃を受けるカミナ。
|
| 攻撃されながらも、二人はショックから抜けきれない。
| 特にケンシロウは顕著だった。彼は、敗北への免疫がない。
|
| ずっと勝ってきた、あるいは優勢だった。こんな絶望的な状況は初めてだった。
| そういう意味で、ケンシロウの心の甘さを懸念したジャギは正しかった。
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＿_ /j ィ
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, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ その死に損ないを死なせるなよ青二才。
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
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´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
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|「全軍撤退！ 殿は私がッ！！」
|
| 『血族』側で最初に立ち直ったのがルカなのは当然だった。
| 彼女は『歌舞伎町事件』で全滅を経験した。この世の地獄だった。絶望すら生ぬるいほどの。
|
| 『シロッコ排斥』の欠点は、拙速を尊び過ぎて術者があまりに少ないことだ。
| 少なくとも、この場に呂布を救える術者はいない。足手まといになるからと置いてきた。
|
| 『やらない夫の集会』における石田の敗北原因を考えると、悪くない判断だった。
| 守る数が多すぎると、石田の持ち味が消えてなくなる。
|
| 呂布を抱き上げるケンシロウ。ズタボロのボロ雑巾ながら龍田を担ぐカミナ。
| もはや逃げるしかない。彼らは敗北した。大天使二柱と『カトルカール』が相手では、逃げることも不可能であろうが。
|
|「『血族』本部は更地にする。他に逃げろ……行くぞティム」
|「はにゃーん」
|
| しかし、追撃の素振りすら見せず翼を広げる大天使二柱。
|
|「待……ッ」
|
| 待てと叫べるほど、ルカは強くなかった。
| 仲間の撤退のために捨て石にはなれるが、大天使たちを相手にしては時間稼ぎすらできないと確信していた。
|
| 飛び去る大天使。それと同時に、最後まで硬直していた男が悲鳴を上げた。
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ｒ、
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ ィ／
「｀ 。 ＿ ﾑ ﾏ 。ィﾆ／
≧c。｀ 。 ／ ＞。ﾑ ﾏﾆﾆ／
≧c。 ｀ / ／ ＞} ﾏ／
≧c。 ｀ ＜＿ ／__ノ ﾏ
≧c。 ::..... ..: ﾏ
≧c。:.. ﾏ＿＿
マニヽ ::... .ﾏ／
〉ニニ、 ::::.... .:: ﾏ アアア！ アァァァアッ！！
＿＿ ｲニニニ 〉 :::.....:: ／￣ヽ ウアアアァァァッッッ！！！
＼＞ ￣￣ ｀マﾆ人ヽ /〇 ﾘ
/ > ィﾆ＼ {＿ ィ/
/ ￣ﾏニニ＞ {＿彡´
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八 ＿ /ニ彡 /
／ 人{ ７ ィ＿へ／
／ / } ／ー＜￣ ﾑ {
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| 後ろの二本脚以外が、あからさまに制御されていない動きでグチャグチャと変形。
| それは怒りか、あるいは絶望か別の何かか。
|
| ロビンの最大の不幸は、彼を止めてくれる友人たちが、この場に一人もいなかったこと。
| 異変を察知して飛び降りようとする石田も、屋上でカトルカールに阻まれている。
|
|「ロビン、落ち着い……ッ」
|
| 説得しようとしたルカに尾が向けられる。本能的に射線から避けなければ、ルカのキレイな顔は吹き飛ばされていた。
|
|「アアアアッッッ！」
|
| 発射されるレールガン。目標は結界の外、周囲の監視カメラやドローンから即座に割り出した地点。
| 呂布を狙撃した高層マンション屋上。
|
| 爆音、吹き飛ぶ外壁、砕けた瓦礫が触れたものを破壊しながら飛散する。
| マンションも、狙撃手も、狙撃したライフルもバラバラだ。
|
| もちろん、丑三つ時の新宿の静寂も。
| これまで秘匿され続けた闇社会の抗争も。
|
| その一撃は、言い訳できないほど完璧に破壊していた。
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☆ 次回予告！
夢世界。最強。
それは間違いなくアリー・アル・サーシェスである。
『賢者の石』から供給される無限の魔力。
どんなペルソナ能力も通じない四つの『法務官』。
意識の一部を常に『夢世界』に置いている。
なんのペナルティもなく探索可能。
無敵。弱点なし。
そんな男に対抗できるものがいるとするならば。
それは。
次回、最終幕九十九話『んん〜？ （パワーバランスを）間違えたかなァ？』
果てに見るのは破滅か死か。
やらない夫を逃がした時にも脆さを見せてたけど、ケンシロウは強いけど劣勢に弱いのか
ロビンは戦場なのに味方の援護狙撃に怒って攻撃するのはどうかと思うｗ
忍者と極道面白いよねーうんうん
ある意味少年漫画の主人公らしい特長であり特徴
乙
無敵のパワーを持つものは無敵のパワーを与えてくれた奴に勝てない はっきしわかんだね
原作ケンシロウは本編開始前に敗北イベントを済ませてたからね
頼れる兄貴三人が生存してるケンは多少甘ちゃんになるよね
狙撃者ナム
-ー-- ､
／: : : ミ:､: : : ヽ
／: : : : : : : : ヽ: : :＼
/彡: : : : : :r､:ﾐ:ハ: : : :）
ノ: : ／: : :イ/ﾐヾ:}:ﾉ: : :ｲ
＿＿＿ｊ彡: : :／: /:/⌒¨ﾞ｀´⌒}:i
／: : : :_:_:_:_:ィ: ／: : /:/＼ ﾉ:}
/: : :／´ ／: : /: : :／:/ヾｪyミ ィ_/:ﾘ
/: ／｀ー:´: : : /: :／: : ﾊ :: i ¨7:ノ
i ／￣ニヽーｧ /:/: ﾘ 、＿´ /:/ヘ
ｒァ´ _ノ ｒ´ヽ〉:{ {: :Y≧。ﾟﾆ´ ィ:/:{ィ´i}＿＿＿
/⌒ヽ ＿ヽｨ八: :ヽﾊ: :ﾏ｀ー≠7/i: 八ィ⌒ ´￣ ＞、
/ Y⌒/:/｀ヽ}人: }: : :ﾏ 八{: : : :＼ ／／ヾ、
人 // (: :ﾏ ノ: ﾉ:/: :ﾊ: ＼_//⌒ヽ: : : :ヽ. ／／ i}
｀ヽ// ＼: :｀:ー:/: : /}｀ヽト ＼: : : ｀ミ:､ /人
{!⌒ヽ三ニ７ー彡: :/:/ マｭ、 ＼: : : : :ヽ // i}
{!｀ヽ ＼ /: : : :／: / マｭ、 ヽ: : : : ﾏ ､＿i}
ミﾐ{! ＼ /: : : :/彡´ マｭ、 ｀Y: : ﾏ≧ｭ/
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| アリー・アル・サーシェスがタイミングよく『シロッコ排斥』に合わせて行動できたのには、明快な理由がある。
|
| その前提として、既にアリー・アル・サーシェスは人間の枠から外れている。
| サーシェスの肉体は十月の品川大聖堂で、頭を吹き飛ばされて死んだ。
|
| しかしその精神は、元相棒のキンブリーを殺して奪った『賢者の石』の中にあった。
| 『モーリアンビル襲撃』の日、地下でオズの脳を食った。
|
| それまでは脳がなく、肉体は制御できず、知性のない大食いの怪物だった。
| サーシェスは自我の喪失を恐れた。
|
| 彼は既に眠りも食事も必要としない精神略奪存在に過ぎなかったが、それ故にその自我に固執した。
|
| その自我とは、すなわちサーシェスの我欲。目的である。
| サーシェスは戦争中毒者だ。紛争地帯で戦争に参加し、戦火を拡大させ、兵士を訓練し、混乱を助長する。
|
| 人間の相手は簡単すぎた。だから始めた悪魔相手の戦争は退屈だった。
| そこには明確な善悪が存在し、殺しておしまい。略奪もお楽しみもなんにもなし。
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| だからサーシェスは『教会』の悪魔狩りをやめた。
| 裏切って、ニャルラトホテプと交渉して、この東京に破滅を撒き散らすことにした。
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i､ ／::::::::::::::::::::::::::;.l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ／:::: ,＞' |: ﾘ:.: : : : : :l: : :.|: ゝ､: ヽ; : : |
ヾ二￣:: :: :::::::::::::::::::::::/ l : ::::::::::::::::::::::::::::::::::/_-≦,, /ｨ:{ : : : : : : |: :./i:::::::: : :. l:::. .l
｀`7 : ;ｨ :::::::::::::::::::::.{ l :::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ.´ ____´''''≦ｪ|::ｷ: : :|: : /／,,!.i: : :. ／l::. /
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| : l : ::::::::::::/ ::::::::::l;ﾊ; | ',::::::::::::::::: . ﾄ､ﾆ=‐ _ _ﾏ ￣
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.ヾ二￣: :::::::::::::::::／ヽ ' ｰ､ _. ｬｭ､ ヾ'' －.. |:ﾘ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ニャルラトホテプが放逐されても何も変わりはない。
| やるつもりだったことをやるだけだ。
|
| 戦争だ、内戦だ、どうせなら朝鮮戦争みたいな民族間絶滅戦争になってくれたら最高なのに。
|
| 狂人の論理。狂人の行動。
| サーシェスの手足になれるような存在はほとんどいない。
|
| いたとしても、彼の本性に気づけば終わり。
| なのでサーシェスは、新たに奪った脳に『賢者の石』を分割した。
|
| 手足が足りないならば自分を増やせばいいのだ。
| そうして、今。
|
| アリカの打撃で『オズ』を失ったものの。
| 複数の『法務官』によって強化された『DIO』。
| 強化ゾンビ化した上に『賢者の石』の再生能力も付与された『オズマ』
|
| この二体がアリー・アル・サーシェスであり。
| どちらもアリー・アル・サーシェスとして精神を共有していた。
|
| だが、ここだけの話だが、サーシェスの自我は真実彼の自我なのであろうか。
| サーシェスはオズを食い、クロトワを食い、ジョニィをディオをオズマを食った。
|
| 彼の精神は、食った相手から影響がないのであろうか。
| 完全にヒトではないナニカに成り果てながら、自我は失われていないなど誰が証明できるだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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」ヽr‐-ゞ｀`vｉレヽ∧
､-ミ' 人 ｀ﾞ‐-' ''､ ´V__7
__ゝ__,､-,z |二二ﾆ､__ヽ､ﾆく
,ヘ_-‐ヾ〈 (､:´ //ヾl/ _/ノ､_‐-ゝ7
f へ「llﾉ＼ヽ/';／';‐=二-7 ヾ,､l'´ヽ
( （_:::ﾌ-ヾｉ :): :{/､_ ﾉ /rュ/ ; V lヽ|
ヽっ（::ﾚ=トゝ､」ヾ-'､`￣,,_ ﾞ, 了_l､
/ ,J ｉ::））:::::::::::|'__ ヾ,'´´ ; V､`,
ゝ_7､ヾ､l:::::::::::::ヽ､7 _ ; !)」 ヽ
_ ´ 丶ゝ､:::::::::::::,:_-‐ﾆﾌ' : /::､ ＼｀'､
} ヽ lゝ､:::::::､｀‐￣__;; /:: ; V､
| l ヾ､ﾊ:::::::｀:::´;; __ /:::: ; ; ; ヾ
! ノ､ lｉﾍ::::::. ,´////>':::::: _ -‐フ`
ｉ : } l」｀､＼:.' ///／:::::::;;／.....o..//
ｉ､:´ ｉ ＿__┌‐-､ ヾ:::｀:::::´:::::_:／....0.......// ,'
l､: V }} 」.＿ | ｉ:ヽ:;;;┌l「l................../／
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| 閑話休題。
|
| アリー・アル・サーシェスは、複数の脳と肉体を持つ怪物だ。
| それ故に。恐ろしく単純な作戦を取れる。
|
| そうとも、オズマと『十字軍』だった死体の軍団は、先んじて待っていた。
| すぐに『血族』がシロッコを攻めると読んでいた。
|
| 眠る必要がないのなら、いくらでも待っていればいいのだ。
|
| サーシェスは戦闘の気配を察知すると、それまで待機状態だったオズマと屍鬼どもを起動した。
| その直前まで、彼は二つ分の精神で戦っていた。
|
| 夢の中にて。
| 夢の塔にて。
|
| ペルソナ使いどもを蹂躙し、圧倒していた。
| オズマの分の精神が移動したところで、何も問題はない。
|
| それは、誤りだった。
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( ⌒ )
γ⌒ ⌒ヽ
ゝ ノ
| l |
,ｨ ,イ／⌒Z＿＿
( |/:::::´:::::::::::::::::::::::≧
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
∠:::::::::::f::f:::::::::::::::::::｀l::l:::::::::丶 クッソ！
/::::::::::::|::|:ﾉ＼.ﾍ::/メ|::|:::::::ハl 何だよちくしょう！
人λ::::(|::|（ ○） .(○::ﾉﾚ´ こんな！ こんなに違うのかよ！！
. __i､.ﾉ:::ﾉ|::| ﾉL r-‐ｧ ﾘ:|
(´ 川 ￣|::|､⌒. ー'ノく|::|
｀`ﾞ''ｰ､. |::|ヾﾊ::ﾊ7 ヽ|::|
｝ ﾚ<| |::| |>) ﾚ;
ノ /__V__//､三ﾉ
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| 夢の塔攻略六日目。『シロッコ排斥』同日同時間。
| 現在四十七階層。
|
| 四十六階層に居座っていた『ツギハギホラー』をなんとか退け、翌日。
| 次階層に待っていたのは更に危険な存在だった。
|
| 見た目は屈強な外国人男女。
| その実態は『法務官』全部盛りでアリー・アル・サーシェスが操作する双子の怪物。
|
| ペルソナ使いたちは勇敢に立ち向かった。
| だが自力が、経験が、技術が違いすぎた。
|
| 『法務官』を有するサーシェスにペルソナは通用しない。
| つまり満足に戦えるのは本人の戦闘能力でサーシェスと打ち合えるものか、『滅ぼすもの』に限られる。
|
| 前者は藤木源之助を筆頭に、ロラン、やんねえ香、刹那、委員長。
| 後者ははやぶさとアサギ、咲夜、球磨川、やらない子。
|
| そのうち源之助と委員長は『シロッコ排斥』の現場にいる。
| 刹那はマリナ・イスマイールの護衛で不寝番。
|
| そして球磨川、アサギは『やらない夫の集会』で死亡確認。
| 咲夜は現実の傷を癒やすために『夢の塔』攻略を許されずにいた。
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／／ / / / / ｌ l ヽ ｌ＼ ヽ `
／ ′〃 / ,' / i l ｉ :ｌ ＼ i }
{i: / /: ′ { ﾘ ﾊ :ｌ ｌ ｌ } !
{i/ { / i-‐=＝ = ヽ / -‐= ﾞﾞ‐- ＼i}＼ ｌ
} '{ ! ＼ {;; -‐ ゛ =＝= ＼人 !
人{ ヽ | ｨ =＝ﾐ ヽ ィ {ﾟ ・ } ヾ イ ,' /
i ! {ﾟ ・ } ! }:: 丶 ` ‐ ´ ノ -‐ ´ / {
＿＿＿ｌ ヽ ` - ´/ /:::: -‐ .／ ／ ,'
r‐~゛ i ￣ /:::::: ／ ／ }
/=- ｌ ′ ／ ｨ ／
/{ イ::::::／￣￣ ｌ ＼ / ／ 〃 ／ ヽ ,' 下がりましょう！
/:::::::゛ ／ ｌ し′ ` { ／ / / x ／ 一人減ってもまるで勝ち目がないなんて……！
:/::/ ／ 八 ＿_ -‐ {ﾘ / / / {
{::/ / ヽ {/ i ! / / i
ﾘ{i i: / r‐ ´./ ,' ＼ {__ __ ｨ {i / ｌ ／
}i / } 〃{ ﾘ＼ {i / ′ :ｌ／
{i/ ヾ ァ / ／ｪ ＼ ｨ/ ／
＼ { { ／ i丶 ／ .ﾘ} ／
／ イ ／ イ ｯ } ＼ ／ ／
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|「ダメでアフロ！ 二日も足踏みしたら間に合わなくなる！」
|
| 指揮官にやらない子。ロランが前衛、やんねえ香が遊撃。『滅ぼすもの』に攻撃能力のないはやぶさは治療役。
|
| だがサーシェスは肉体能力でロランに勝り、戦闘技術でやらない子を凌駕し、やんねえ香の読みの上を行く。
| まるで勝ち目はなかった。明日になって藤木や委員長が合流すれば違うのかもしれない。
|
| しかし、『夢の塔』攻略期限はあと一週間ない。
| 『ビスケットハンマー』へ至れない、それでは世界の破滅を阻止できなくなる。
|
| ヤザンに敗北し、ディオの襲撃にも居合わせなかったやらない子は、これ以上の無様は晒せない。
| 彼女は功に焦っていた。
|
| やらない子は高校生離れした戦略眼の持ち主だ。
| 冷静であり、実力を十全に出せればサーシェスにも喰らいつけたやもしれぬ。
|
| しかし、今の彼女では不可能だった。アサギの死と自身の不甲斐なさが、彼女の目を曇らせていた。
|
| 戦場はショッピングモールのような場所だった。
| 無人のペナント、降りたシャッター、廃墟の巨大モール。圧倒的リアリティの夢。
|
| 隠れる場所は無数にあった。
| やらない子の碁石と『ドッペル玄関』を併用したトラップで、サーシェスから逃げながら機を伺っていた。
|
| だが、仮に接近戦を挑めても、やんねえ香とロランの二人がかりでもサーシェスには歯が立たない。
|
| 四人は追い詰められた兎のように、無様に逃げ回る他の選択肢を選べない。
| ロランの言うとおり、どう考えても撤退するべきだった。
|
| 本当ならば。
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| i{ | ll | ｻｧｧｧｧ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 四人が無事に逃げ回っていられたのは、サーシェスのおかげだった。
| 獲物をいたぶって遊んでいる訳ではない。ただ、仕留めることへの危険性を感じていた。
|
| それは直感だった。
| 窮鼠猫を噛む、仕留め損なった誰かが思いもよらぬ手で反撃してくる危険性をサーシェスは警戒していた。
|
| 彼は必要以上に慎重になっていた。自分の直感に絶対の自信を持っていたからである。
|
| …………その直感が、朝霧アサギの遺した呪い『ひとりでお帰りに侵されているなど想像もできぬままに。
|
|（この雨を利用する）
|
| 四人が割れた天井の下、雨の下に移動した。
| 『法務官 隠れしウラヴラスク』による隠密が、雨の下で剥がれるだろうという甘い考えが透けて見えた。
|
| 馬鹿馬鹿しい。そんな薄っぺらな透明で、最強の隠密能力なんて言えるものかよ。
| サーシェスは嗤いながら移動する。隠密状態の彼はこの世界にあってないようなもの。
|
| 煙も消化器もペンキも雨も、彼の体に付着しないし遮らない。
| ……しかし、サーシェスはこの状況に疑問を抱かなかった。
|
| …………雨？ 夢世界で？
| ここはショッピングモールの中、なぜ天井が割れている？
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∨ Yゞ} .l .／ﾞ.ｌ .＼, ヽ .｀″..ﾞ／ ヽ /.!ノ/ ,ﾝl' ／ ＼｝／__} /|＼ | ﾘ､￣Y
. / .ｌ./ !く,7＼|､ ／ | } ,l!ﾞ./ ／ ／＞ｭイ/￣._..ゞ./ ∧ ﾞ'.ｌ, | ¨￣¨¨
'ゝﾐ￢ ..,_ ふ､ l ＼. / （ | ／. ゛ .レ",,/ｲ＼＿}/ン'''ン' ∨ ∧/ .ｒ'"
. ｀'-..、｀''ｰ ..,_ ｀'-､￢ミ;;ﾐi､ . / ./ｰ┐ j／ ／} 〃 ._ﾐ~ﾞ ／ ,,, ‐ ∨ /,ﾉ゛
｀''-､,、 .｀ﾞ'ｰ .ﾐヽ. r―..' .└ｧ } j : '".,,;;ﾆ;;/!'" ＿＿ ｌ.〃-‐=＝ﾆニ二三
'マﾆ￢--二ニ､... ∠ /￣/ /＿__ j／ ﾞﾞxｉﾆｰ''''"_,, ‐'″
｀ﾞ''ｰz＿＿.. / / / / / / 〉 _..､ﾆニ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣ / / / /二￣ ＿_/ /:-‐ー┐......￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
ハ＼ / ./ / ／ / _} ／. ,.＜¨|
＼＿＿＿_.|Z_心}＿....../⌒ /／ ￣ _＿_ ￣/ / ／／ ＼. =‐-ｯ-'"ヘ_人lr────
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.--ｰ¨¨ｺ .. -｀-''''"ﾞ ／ ,...＜ ／ / / ＼／ 、 │ / ＼._./
＼_＞‐´r-ニｌ _..-'彡 -‐'''/. / ／ /／ ／＼. `'ー''" ＿
￣ _＿|へ_/.,,x=ﾞ‐''"゛ ／.ﾞ/ ／ / ／ >..､ ,／ハｰ､
/＼ ｌ￣ ／... /／ rー＜ .／. ﾞ''ﾆｭ、 . ／＼ｨへ.,,-
. ｌ メ_| ／ .,〟 ,-ｱ / │ ,. ..!.｀..ﾞ| .＞´...... ﾞ,, --ﾐ;;、 '冫 .￢―./
マｲ/ .,ﾌl￣ﾞY .,..-'ﾞ./ ,／,/./ .! /! . ｌヽ |. | .＞ ´ , .マ''ｰ- ..,,ﾞ''λゞｚ＿,ﾐ Y
. ﾞ‐' /心.!乂! ｒ'" ./ . ／ iﾂ゛ .! ./ ! :ll,.ｌ ヽ ｌ......￣...... ｀' !iﾐ'-、 ＼_ / .ト――'''￣
乂＼./､ lｒ'" / ／ ./ ,! / .l .、 ! ｌ|, ﾞ'レ . ＼ ﾞ'‐ ／ /ﾞl―''＼ /7ニニ
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| 突然、凶悪な破壊音と共にショッピングモールの天井が引き裂かれた。
| 見上げるサーシェスが見たのは、指の一本が自動車ほどもある透明な巨人。
|
| この夢の持ち主が見た悪夢の顕現か？
| それにしたって何だこいつは……？
|
| 慌てて逃げる四人、サーシェスは追わない。
| シャドウの類ならば『法務官 ヴォリンクレックス』で食って、その巨大な体を頂いて……。
|
|「うお！？」
|
| 雷鳴と稲妻。爆音と共に滝のような雨がサーシェスを押し潰す。
| 海を逆さにしたような奔流、信じられない程に殺人的な前代未聞の土砂降り。
|
| 完全隠密状態でも、溺れるし潰れる。
| いや、本来死人の体であるのだから溺れるはずはないのだが、とはいえ夢の中だ。青森並みに何が起きてもおかしくない。
|
| サーシェスはパニックを起こしていた。慌てて土砂降りから逃れる。
|
| 逃げた先、そこには天使がいた。
| 誰もの目を引く愛らしい顔立ち、サラサラの金髪、裸の上半身、縞々ニーソ。
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ｨニニ､
.ィニニニニニ、
ィニニニニニニ＝ー 、
マﾆ／ ヽ
／ ／ ｀ヽ 、 ＼
／ ＼ }
/ / ＼ ﾄ
/ / { ､ ヽ
/ / ＼ ､＿ィ ', |ﾄ、 ',
′ j{ |ニト iﾆ} ', | }
ﾊ ﾏ_ｊ ､ じ ＼|イ
, い ＿ノ イ | | いやがるな、
| ｊ｀≧ｭ。＿＿ ＿＿ｪﾆﾆ | | | うっすらだが。
| ﾊ ﾊ | ｒﾆ「ｪｪ｣ 」＝､ | | |
| / | ﾏ| / ｀￣￣ ﾏ ! |
| / | ﾏ / i! ﾏ | | |
i ＼! / !ﾑ ﾏﾑ ! j
', / ! ﾑ ﾏ
＼. ｲ ! ﾑ ﾏ 「ヽ
/ j 丶 ＿｣ ﾑノﾑｊ j!
/ /-ニニニニニニ ﾏノヽ_ﾉ
ｒー´ /ニニニニニニニ ｊ ）
｀７ /ニニニニニニニﾆ }L｀Vj
└〜ニニﾆ/ ﾏニニニ |ト/
/ニニ７ ﾏニニニ i|!|{
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{＿/ ヽ__」
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| 天使は軍用サバイバルナイフを構えていた。頭にはグリーンベレー。
| 合衆国軍隊格闘術。その立ち姿だけで、サーシェスはそいつが油断ならない相手だと理解し、同時に。
|
|「『ファットマン』だと！？ なんでこンな所に……！ 新宿衛生病院のヤツは？」
|
| サーシェスは、困惑した。『ファットマン』だ。シロッコに改造された核天使。
| その一瞬に、隙を見出す者が一人。
|
|「ふむ……ここか」
|
| 天使のような少年が囮だと気付くまでの刹那。
| その一瞬が命取り。輝く容貌の少年に紛れ、サーシェスに近寄っていた男が一人。
|
| 雨に濡れて肌に張り付く銀髪、長いヒゲ、仙人を思わせる痩せた頬の男。
| しかしその肉体は極限まで鍛え抜かれたそれであり、戦士であり暗殺者の最高峰。
|
| 『北斗神拳継承者』。
|
|「げぇッ！？ トキだとぉ！！」
|
| サーシェスは『ウラヴラスク』による隠形を解除した。
| 先日アリカに殴られた時もそうだったが、隠密状態では魔力による防御ができない。
|
| 死体を『賢者の石』で操るサーシェスにとって、攻撃した相手の体内魔力を破壊する北斗神拳は天敵だった。
| 僅かな接触でも即死の危険がある、驚異的な跳躍力で距離を取るサーシェス。
|
| だが、そこにピッタリくっついてくる縞々ニーソ。
|
|「……オズか？」
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/へ{_,ィﾑミ､ﾆミ!
j「 / }三ｽ
. |＿{ _厶ﾆ7
}f乏 r=ﾆ、マf⌒}
l ﾉ ｀^く 込ﾉ
厶 ー' レ’ テメエ、ティムか？
ーく f'f＝ァ ／爪 ティム・ローレンスだって！？
7八ー _∠.ノ 仄ヽ
〃 ,仁二三=彡' /,rへ
/へ≧＝一厶ィイ7⌒ヽ
Y´ ￣ヽ {广ヽノ
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| 互いに驚愕、サーシェスは相手の右腕を確認。ついてる。ナイフを握っている。
| 視線と注意が逸れた一瞬、華麗な回し蹴りがサーシェスの首に直撃。
|
|「深追いはするなよ」
|「分かってる」
|
| やけに親密なトキとティム。
| この状況を理解できずに硬直するペルソナ使いたち、そしてサーシェス。
|
|「ティムって、ジャジャマルさんが探してるって言ってた……！」
|「え？ 『学園封鎖』の時に暴れてた目からビームのサイボーグじゃねーの？？」
|
| ティム・ローレンス。
| 合衆国海軍特殊部隊グリーンベレー『野良犬』部隊のひとり。
|
| ヤーボ大佐の直弟子、ジャジャマルの想い人。
| そして、十月の戦いでジャギに敗北して行方不明になっていた少年。
|
| 植物状態の所をシロッコに回収、改造された『核天使 ファットマン』。
| その精神が、心だけがこの『夢の塔』を登っていた。
|
|「クソがッ」
|
| 衝突してひん曲がった柵を引きちぎり、槍のように投げるサーシェス。
| 矢継ぎ早に投擲、混乱を収めるための時間稼ぎ。
|
| あからさまな判断ミス。
|
|「二指真空把」
|
| 真正面から受けてすべての投擲を反射させるトキ。
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／ ￣￣¨二/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::‘，:::::::::.
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( ￣ ヽ /:ｲ::: / : ::::∧j/ - ､ !::::::::: /::::/／| ⌒¨¨ ､ V::::|::::::::::::::} .|:::::::::::::::::::.
＼ ∧ ム !: / :::::::/. 〃 /⌒ヽ ‘，::::/::::/ ∨ ＼::::!:::::::::::::|／|::::::::::::::::|::::. 『ひとりでお帰り』
. . |:/::::::::∧ 仍/{ ノ)ﾊ ∨:{:: / ∨(二二二ﾆ)::::::::::::: | ::::.
'. '. .( ⌒ ､′:::::/:: i .杙_乂ツ:/ ‘，:/ (￣￣￣)::/ :::::::::::::: ﾄ､:::::.
} ／⌒＼ ハ::::::::::: : | V辷汐' ∨ ﾏﾆﾆﾆ>､ /(二二二ﾆ)::::::::::::::::::| ＼}
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. { ) ﾊ::::::::::: | ゛゛゛゛ /:::/:::::::::::::/ ::::::::::::::: |/
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‘， ,ノ､ } V:从;≪＼ .乂＿__ノ |＼ ./::::::::::::::／⌒ﾌ::∧:::::∧|
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| アサギの呪いがサーシェスを蝕む。
| 避けきれずに突き刺さる柵、サーシェスは悲鳴をあげた。
|
| トキ。北斗トキ！
| 北斗四兄弟で最も目立たない男、しかし、ラオウがいなければ間違いなく『四天王』だった天才拳士。
|
| ニャルラトホテプが開放した魔王マーラとの戦いで再起不能。
| 意識の戻らない植物状態だという噂を聞いたことがあった。
|
| 死んだも同然。というか、ほとんど死人のはずだ。
|
| それが、なぜここに？ サーシェスはわかっていても疑問を抱くしかなかった。
| 自分の他にも塔を攻略している誰かの存在は感知していた。
|
| だが、こんな化け物がいるなんて想像できただろうか？
|
|「う、『ウラヴラスク』……！」
|「由乃！ やっちまいやがれです！！」
|
| 屋根の上で女の声。聞き覚えがある。まだいるのか？
| 見上げたサーシェスが見たのは、バケツをひっくり返したような集中豪雨。
|
| ここでようやく彼は気付いた。
| 雨、家を都市を国を大陸を水没させるほどの。
|
| こいつは、『滅ぼすもの』だ。
| 『催眠レインコート』……！
|
| 集中治療室で昏睡状態にある、島津由乃の『滅ぼすもの』だ！
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| 立ったまま溺れそうな豪雨。叩きつけられる異様な量の土砂降り。
| 逃げるしかない。隠れていられない。
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| 隠密を解いて逃れようとしたサーシェスを、巨大な手が押し潰す。
| こいつも『滅ぼすもの』を有していたのか、サーシェスは質量の暴力に対処できない。
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| サーシェスは『学園封鎖』でこいつに、早瀬浩一に爪弾を打ち込んだ。
| その後どうなったかなど興味がなかったのだが……。
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| サーシェスの断末魔は、瓦礫に押しつぶされて誰にも届かずかき消えた。
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|「早瀬くん……！」
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| ガラスでできたみたいに透明で、内側で電飾がピカピカ光る巨人。
| その肩から飛び降りる浩一に、感極まったようにロランが駆け寄る。
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| 反対側の肩に座っていた女子高生が、己のペルソナにお姫様抱っこされて降りてきた。
| 屈託のないロランとは違い、複雑そうなやんねえ香。
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| そして、ティムやトキへの警戒心を隠さないやらない子とはやぶさ。
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, ─＝､─-=ﾆL｣_
／二ﾆ=‐-=ﾆ、＼ ,＞
,ムｲ／ .}、 ヽ. ヽ ｧ′
/ / ﾉ,ﾄ､ ,ｨ ,ハ. ∨ﾄ、
(＼ ＿_ ∧ ;' ,ノｌﾉj,ｨ込ｧ｀! ,), V ＼
. ,f＼孑=ｧ),__ | ! ｉ,ｧ示. ﾉ'ﾉ ゞr'ﾘ ﾘ ! | ＼
〈ヾ､ム,. 》 :|| ＼ |!､ﾄ､ﾄ弋ﾘ ､ l ,ﾉ※ コラー！
. `ｰ'─(,ﾑｲ' ＼ ,. -'‐ ＼＼ ｱ｀ヽ _ﾑｲi ! 可愛い可愛い翠星石を
＼ ｀ 7マ'７ | ヽ.≧ ゝ._ﾉ ,: ｨ´|.※ | 置いてきぼりにすんじゃねーですよ！！
. ｀ , i ,ハ} |.※ | ＞ｘ､. イ ! i|. !
｀7ぇｘl/ , ! i 《 ,≫vﾍ.)､i), !
/ / |＿ ｉ.※ i. 《|{,／/iﾍ.∨), ∨ ,r- 、
/ / ! )`i !, 《!_／i |《ﾍ.∨), ∨ ,Xﾍ. }
/ ム.＿. !/ .|.※ |ﾍ. 《 ｉ | 《.ﾍ.∨ﾍ,.ﾏ^ヽヽﾉ
‘ーｘ, i ！ |. | ',. 《. ! i 《. | | ﾒ.}i;ｘr≦
∨ ヽ. | |.※ | ∨《 Lｉ 《 L! :|. | |
＼. ∨ |. | 〈 》〜〜〜''〜 | i !
＼／ .!.※ ! ,／｣Lﾆ=- |!>X<| :| i !
// ¨¨¨’ >厂 Ｋ >' :| |、 ,ﾉ
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| 屋上から降り注ぐ怒声、聞き覚えあり。というか、よく知ってる。
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|「すすすす、翠星石さんアフロ！」
|「やらない子ちゃん？ こんな所で奇遇ですぅ」
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| 巨人の手に乗って恭しく降ろされる女性。フリフリのドレス。栗色の長い髪。
| 挑みかかるような眼力。間違いない、やらない子とはやぶさは絶句した。
|
|「なんで居るんですか？」
|「『第二の夢』のあと、気が付いたら塔にいたんだってさ」
|
| 答えながら、ペルソナ使いたちを見回す由乃。
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|「藤木は？」
|「『血族』のシロッコ攻撃に便乗して潜入してます。『カトルカール』を助けたいそうです」
|
|「一つも意味のわかる単語がないんだけど……？」
|「『血族』と『教会』が交戦中なのですか？」
|
| 困惑する由乃の頭越しに、トキが穏やかな声で問いかけた。
| 声と雰囲気こそ穏やかだが、さすがの北斗四兄弟。巨体の威圧感は拭いきれない。
|
|「失礼、私は北斗トキ。翠星石の義兄です」
|「その情報は古いですよ。蒼星石はやる夫とラブラブですぅ」
|
| その情報も古い。というか、男のクズめいたやる夫の宣言を知ったはやぶさややんねえ香が複雑な表情。
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
∠:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
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人λ::::(|::|ﾉﾅ弋:::/弋:|::|::::::ハ|
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.|:::::::|::|、,, r‐ｧ ノ:|::| あー。
、ノ::::::::|::|＿__√::ヽｨ|::| 『血族』は『教会』の中で好き放題してるシロッコって野郎と戦ってるぜ。
,.ゝ/ |ﾚ|ヽﾊ::ﾊl｀i::ﾉﾚﾞ
/:::/ .{三}|ヽ|::|{三}ﾞ
{::/ ｌ |'| /|::| | |
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.ﾉ_ﾊﾊ__ハｌ_ｌ_ｌ.}∨ヽｌ_ｌ_ｌ.}
（､`ｰｰ､ｨ }￣` ﾉ
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| やらない子が密かに拳を握る。ヤザンには、結局歯が立たなかった。
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|「お前らさ、俺を知ってんの？」
|「ジャジャマルさんが探してましたよ」
|
| 縞々ニーソの美少年、ティム・ローレンス。
| 神が作り給うた女神像そのものであるロランに並んでも霞まない美しさ。
|
| アトリーム人でありながら、ヤーボ大佐に拾われてグリーンベレーに参加していた少女、ジャジャマルの探し人。
| であると同時に、『核天使 ファットマン』の改造元。
|
|「いやロラン。それよりサイボーグになって暴れてること教えてやれよ」
|「は？」
|
| 正しい反応だ。
| 自分の肉体が改造されてはにゃはにゃ言いながら暴れまわる怪物になっているなんて想像できたら狂人だ。
|
| 交友を深め、情報を交換する一同。
| 敵を排除したという油断はなかった。
|
| ティムとトキは警戒を怠らない。
| 話しながらもやらない子ややんねえ香も周辺へ目を配る。
|
| 普通なら圧殺されておしまいのアリー・アル・サーシェス。
| しかし、普通の相手ではない。
|
| まだなにかしてくるもしれない。
| まだなにかあってもおかしくはない。
|
| 上の階への階段を探しながら、彼らには油断がない。
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彡|=={ﾄト､ i
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`ｺト ,,',,,, f :|ミ ￣=､⌒ヽ
ﾍ_ 彡ﾊ'￣';, ィゝ-､＿＿＿＿＿
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, -─＜ _／ ! _＞──一¨7´ 二＿_ ):}
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| 油断は、なかった。
| ただ、想定外のことがあった。
|
| 突然、ティムの体が透けだした。
| 手足の先から実態が薄くなる。
|
| 唐突で、驚く暇も与えずに。
| 何が起きたのか、翠星石たちは理解できずに。
|
| だが、やんねえ香たちは知っていた。
| 毎日見飽きるほどに見ていた。
|
|「目覚めた……？」
|「え？ でもティムは……」
|
| ティム・ローレンスは心神喪失状態だ。しかもただのそれではない。
| 脳をシロッコにいじくり回され、機械を埋め込まれている。
|
| ヤーボ大佐はシロッコの口車に乗り、ティムが目覚める可能性に賭けていた。
| だが、目覚めるはずがない。絶対にありえない。
|
| なぜなら、ティムはもう死体だ。
| 彼の脳は『ファットマン』を動かすための生体部品に過ぎない。
|
| 人格に関係する部分など、とっくに切除されていた。
| 目覚めるはずがない。はずがないのに。
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／ __.r‐┘ ＼ └‐ｔ _ ＼
／/ ／ ／／ l ', ､ ＼ﾊ＼
／ /イ /／ / l | ＼ ヽ! ＼
／ / / /.: : :/ / l |:.:. ', V ＼
/ j/ / /.:. : : ／ ／ / l |＼:.: ', ', ,.: 〉
/ / l:.-－―／ ／/ ｲﾅ ― --l !イ::／
￣ヾー-|l ＿ 斗匕三ｘ' ´ ／ / ｘ三:心j:.: j l/
＼|:!:. :.:.ｌｉヽ ﾊノ:! / ﾊノ:i ﾉｲ.:. /! l
l|小、:.:.:.ヽ. ゞ=' ／ ゞ=' /.:.: ｲ } l
l| { ヽ､:.:.:.＼ ' ／ィ´_ {!_ ｌ: l
l| ｝ _{!_ 下Ｔ、 cっ ／i:.ﾊ. {! }:. ',
∥ { {! }:::i::::＞:..､ , ィ:::::::.:l:::.:} {:.:. ,
/' } {::l.:.::::::l::::| : :|::::l::::::::.:i:::.{'_{!_/:.:.: ',
/ / ﾄ､ }!,jV.:.__／￣¨ Y ¨￣＼＿:ｒ､} }!/ .:.:.:.. ',
,' / {こ入 { ｲ ,.‐',二¨Ｔ¨二.'‐､ { j／¨ヽ:.:.:.:.. ヽ
,' .:' / _ｒ'_{! ﾉ { /／ / ,小.ヽ ＼ヽ r' |!｣ i l :.:.:.:.. ヽ
/.:.: ｒ ‥'.ノ ノi { ヽ.二 ｨ | {｜ト 二.ノ { 〈| ! ヽ V :.:.:.. ヽ
/.:,:-' ／ヽ _/, = , ‐ ､二二二二二 _－- ､{. ＼ ! ヽ :.:.:.:.. ＼
/￣､ 〃 ／ / r＝/¨＼「￣}‐､:::）＿ｒ＝i! ', └ｔ._ ヽ :.:.:.. ＼
「´ 〃丶 / l: ヽ._､_:':､::::::/j⌒i_ ﾉｲこノー'' ., ｲ∟, ､ハ_l ＼:.:.:.. ＼
/´ _,｢ } ヽ二＞-,＿´＿ ＿,ｒ_― '´ﾉ}:.: Ｌ ﾊ ＼ ヽ :.:.. ヽ
／ ､ ／ / ＼/ /ｰｔ.￣´ー┘'ｰヽﾆゝ‐'￣ :.|:.: ｛ ､ '┴､:.:.:... ヽ
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| 次いで、翠星石が消えた。
| 彼女もまた、目覚めぬ眠りに囚われていたはずなのに。
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| 流れる困惑の空気、状況が掴めない一同。
| 残された者たちの中で、最初に動いたのは誰であろう。
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| 瓦礫の中から這い出した、アリー・アル・サーシェスであった。
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何から何まで真逆の二人。
笑えるくらいのデコボココンビ。
だけれどどこか。
似てる雰囲気。
同じ所など一つもないのに。
次回、最終幕百話『最強の二人』
スイマセーン？ 百話で終わる構想だったって話はどうなっちゃったんですか？？
何から何まで真逆の二人。
笑えるくらいのデコボココンビ。
だけれどどこか。
似てる雰囲気。
同じ所など一つもないのに。
次回、最終幕百話『最強の二人』
スイマセーン？ 百話で終わる構想だったって話はどうなっちゃったんですか？？
そろそろ折り返しかな？
あと100話で終わる筈だった話
夢の外で何が起こってるのでしょう
ｘ≦ ≧ｘ
／ ／⌒ヽ ＼
〃 } ヽ
/ {{ ', ',
.′ ; ､ } }
, ＼ ﾄ､ } }
>=ミ 〈 : ＼ } }
{ } : : : ＼ヽ : :.＼ ,ノ
-=ミ } : :} : : : ヽ.〉 : : :≧=-=≦／:}.′
___/ : : : : V .} :ノ_: : : // : : : : : : : : }.:〈〈 { 『哀しみのからくり人形楽団』……ね。
／i:i:i:{ 「㍉ }_ __} ＼ `ヽ_>〉 : :ﾊ.. : : : ｲ ://ノ｝
／i:i:i:ｉ:ｉ人 :` 〈 : : :} } : : : :≧ｘ＼ : ..)i} : : : {i|丿{rv′ 私は『血族』内部に詳しい。
／i:i:i:i:i:i:i:{ : :`ｰ=､ : : } } : : 弋''迹ﾊ_>x.ｿ : /_xfr㌻Y こちらが『人類補完計画』を
.／i:i:r=-‐ｧi:ｉ{ : : : : : }..:..:乂_: : : : :＂ :ｘ≦′ : :{｀ﾆ=-.′ 担当するべきではないのかね？
./i:i:i:i:i:ゝ''”i:i:i:i:i， : : :.{ : : : : ｝} : : : : : :''” : : : :..:;{ﾆ=- ハ
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:， : : ＼..:.:ノ } : : : : : : : : : : : : ::},ﾉ=.,′i:',
i:i:i:i:i:i:i:i:ir''⌒/i:i:i:i＼..: . ＼ .{ : : : : : : : :.:⌒ｰ='′./i:i:i:i:i:＼
i:i:i:i:i:i:i:i:iゝイi:i:i:i:i:i:i:i:i＼ : : : :＼〉 : : : :_,,..,,,_-=‐_,ｨ .'′i:i:i:i:i:i:i:ｉヽ
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／^{i:i:i:i:i≧ｘ : :..:＼ : : : :ヽ_￣”ノ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:(__／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧=-→､ : : : : :..::,ｲi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:}
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:{ {{ ｀¨“ニ彡i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/
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| 『血族』本部の廊下を歩く二人の男。
| 何から何まで違う二人。しかし、どこか似通った雰囲気がある。
|
| 一人は長身でしなやかな筋肉を身に着けた、いわば黒豹。
| 一人はチビデブ短足どこか愛嬌のある、いわば白豚。
|
| 前者は『やる夫』。すなわちニャルラトホテプ。
| 後者はやる夫。あるいは紙袋をかぶった『スケアクロウ』。
|
| 見た目という点では真逆の二人。
| しかし、その内面は驚くほどに似通っていた。
|
|「てめーにやらせると殺しちまいそうだからだお。
| 誰が『本体』かは知らねーけど、『血族』壊しちまったら今後に困るお」
|
| 二人とも冷徹な意志を持ち、世界の破滅を回避するためならばどんな手段も取ろうとしていた。
| 文字通り死に物狂いで、宿敵と手を組むことまで良しとしていた。
|
|「否定はできないが、ならば協力するのはどうだ？
| 喫緊はその二つなのだろう。分散するくらいならば戦力を集中したほうが効率がいいのではないかね？」
|
| 二人とも命を軽視していた。世界を救うためならば命を消費することを是と考えていた。
| その対象が他者か自己かは、この際些細な違いだった。
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| や る 夫 |
| |
| )ゝ‐イl |
|,ノ,ィ≡ミ ゝ | 互いに手の内
|ヽ{((〇))} ( | 知られたくねーだろっていう
. | ).ゞ==彡/ | 判断だったが、
. | ｀⌒⌒｀ |
| | そっちが構わねーんならそれでいいお。
| | あんたの能力と支配した人員を把握させてもらうお。
| |
| |
| |
＞"´|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|｀ﾞ ＜
＞"´ / ∧＼ : : ∧__:∧: : : :,ｲ! ∧ ｀ﾞ＜
／ / /!: :＼/ }::::::{: :ﾍ／:/ ∧ ＼
.〈 ● ＼ .∧: : : : :}::::::{: : : : ∧ ／ ● 〉
ﾍ ＞´ ∧: : :/:::::∧ : : / ｀＜ /
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 二人とも人々を動かす力を有していた。共に多くの仲間を有した。
| 術による催眠か人徳による友誼かは、この際些細な違いだった。
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|「知られたくないのはむしろ君の方だと思っていたよ。
| 特にその、得体のしれない能力と、背後関係をね」
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| 二人とも死を与える能力に長けていた。他者を容易く殺害できた。
| 圧倒的戦闘能力か各々に適した死を見るのかは、この際些細な違いだった。
|
|「ご存知の通りのサイコメトリーだお」
|「その程度の人間が、あの蒼星石にそこまで信頼されるものかな？」
|
| 二人とも同じ女性を仕事上のパートナーとした経験があった。
| 利己的な方法で彼女を利用し、傷つけたという意味でも同じだった。
|
|「……………………」
|「安心したまえ。私には生殖機能がついていない。偉大なる神が獣慾に溺れるのは見苦しいからな」
|
| 二人とも性的能力を喪失していた。
| 不要であると切り離したか、死に触れすぎて喪失したかはこの際些細な違いだった。
|
|「その蒼星石に接触した奴が怪しいお。『人類補完計画』犯人最有力候補」
|「であるなら、藤堂志摩子だな。お前たちの存在を私に秘密にできるのは、彼女ぐらいだろう」
|
| 二人とも核心を追いかける嗅覚に優れていた。
| 知性と直感の為せるそれは、極めて類似していた。
|
|「大首領様か……納得だお。問題はどんな嘘を吐いてんのかと、その居場所」
|「居場所には心当たりがあるな、藤堂志摩子はとある少年にご執心だ」
|「えっ、マジで」
|
| 二人とも事が終わり次第相手を始末するつもりだった。
| だから殺す前に最大限に利用してやろうという心構えまで同じであった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ト､
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ｊ ヽ ＼
/ <_ ヽヽ 〉
√ / _ﾉ ｀ヽ 〈
＿＿ﾉ ア
｀ヽ ｊ ￣|￣ /
.,ィ⌒ヽ |!ｲ/´ ＼ { ￣|￣ /
イ＞ﾍ_/´＼_＿ｒｊ/イ¨ } ﾚ (フヽ { パチモンかと思いきや……
r=ーイ／...., ､｢77//彡⌒ ⌒ヽ イ´ なかなかヤルじゃねぇか！
/7ｒ=ｊ! /／ //ハ´ヽ ＼／
´ 〈 ／ｊ￣｢ ＼ ＿_
ヾ / ﾉ } ー― ァニﾆ_ﾍ
/ ｭ ,, ｨヽニ／ ヽ ／ニニ
ー ＿＿＿＿ ,イト､ｌ>´八 ﾏ ／ニニニ
ﾏﾆ／ ＼ ﾏ_／￣ ｀マ／
_ﾏ ィ＝､ ´ イ
Yニヽ／＞｀⌒ヽ＿ イ
Tニﾆド ＼
ﾏニﾊ ＞ ヽ
マﾆ! ＞ 。
ヾｊ ﾉ }
/ ｊ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『血族』本部は和風建築でも神社仏閣でもない、ありきたりのビルである。
| 他の拠点はともかく本部から宗教色を失わせたのは『教会』の判断で、
| そも魔術系統が雑居する『血族』は揉めないならば何でも良かった。
|
| 戦闘機さながらの速度で到着した『リトルボーイ』を屋上から迎撃した『蛇身』のイナミ。
| その初太刀は『リトルボーイ』の毛皮を引き裂いて脂肪を両断、骨を削りながら袈裟懸けの重傷を負わせた。
|
| 鮮やかな奇襲で完璧な一撃。
| 空中で、突然の敵襲に対処できない『リトルボーイ』。掴みかかる腕をくぐり抜け、イナミは背面へ。
|
| 背中の翼を切り落とし、まんまるの後頭部を足場に屋上へ戻ろうとしたイナミ。
| そこに飛び込んできた『ファットマン』の飛び蹴り。キリモミしながら吹き飛んで、外壁にめり込むイナミ。
|
| そこで冒頭の減らず口。
| よだれを垂らしながら無警戒に浮いている『ファットマン』を訝しげに見る。
|
| 意志のない、木偶人形そのもの。
| なのに、今の一撃に込められた殺意は相当のもの。
|
|「ま、何でもいいか」
|
| 敵の攻撃はイナミの想定より早かった。そして笑える相手だ。何だこれは。
| 誰かがどこかで上杉謙信を戦術核兵器と評していた、核攻撃への報復に来たのが、核弾頭を埋め込まれた天使だと？
|
|「非核三原則はどうしやがったンだよタコ」
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, －､ _ -――- _ , －､
{ > ´ ｀ < }
､ ／ ＼ /
／ ／ ￣7 f ￣ ヽ ヽ グフフ……。
/ ./ / ▽ 丶 丶 ヽ 悪魔の癖に物知りだな。
∧ ヽ＿ / ヒﾆフ ＼ ＿/ } 、 もちろん無視して持ち込んだものだ。
／ ＼ / ヽ
/ ＞ 、 rっ r－、＿ / 、
＼ ￣ / （⌒'⌒) ヽ !
.ヽ ＿ ＿ つ ＼／ /／－､ ＿__ ィ
、 ￣￣ ＿ /
丶 ｨ ´ ￣ － ＿ ./
＼ l ￣/
＼ 、 ／
丶 、 ヘ ／
－＜、 ￣了￣
＼ _/
￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『非核三原則』は約五十年前の1967年（作中は2014年です）に当時の佐藤栄作首相によって打ち出された。
| 核兵器を持たず、作らず、持ち込まずを原則とする。
|
| なお、核兵器を使用せず、生産せず、保有しない。という非核三原則も存在する。
| こちらはソ連時代に大量の核兵器が配備されていたウクライナが、ソ連崩壊後に実現した。
|
|「ダメじゃねーか！！？」
|「そもそも、合衆国と日本の間でも『持ち込まず』に関する意見の相違があるのだ。
| 輸送中に排他的経済水域を通るのは否か？ 核兵器と核燃料の違いの証明は？」
|
| こんなにも日米で意識の差があるとは思わなかった。
| というか、佐藤栄作本人も最初から輸送時の容認していた節があり、非核2.5原則と揶揄されることもあるとかないとか。
|
| 血まみれの『リトルボーイ』、焼け焦げた左腕、バランスの悪い四枚羽根。
| イナミに切り落とされたニ枚の翼を、サメのようなギザギザの歯で骨ごと齧る。
|
|「不味い。チョコレートは無いか？」
|「あってもやらねー……つーかテメー、天使なのに味が分かンのか？」
|
| 問われ、『リトルボーイ』は手中の羽根とイナミを見比べた。
| 味？ 分かるわけがない。『リトルボーイ』は天使だ。ヒトの感覚や精神は失われている。
|
|「…………味は分からんが、なぜだろうな」
|
| 不思議そうに首……はないので体ごと傾げる『リトルボーイ』。イナミは鼻を鳴らした。
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／ニニニニヽ ／ ／ ト､:::::イ:::::::::::::／::::ヽ::::ヽ.
／ニニニニニニイﾆマ＿ j! ｀ヽ::::::::::::::::::::::ノ:::::::::}
ﾏニニニニニイニ≠ｒ≧-'Y:::{ト ＿ ｀ミー＝－ｊ/´ |
ﾏニニ＞ﾆ＞ ´ ア ドｒ::::rゝ ´ﾆ ｊ
>ニｲﾆ=´ ヽ}イ､ j::::ﾊ ヾォ ＿＿≧７三_/
_ ィ７￣ ｱｦ 〉⌒ヾ-､ ヾｧ ￣ ::ハ ′ まあ、俺の知ったこっちゃないけどな！
//// ﾉ ｊ_ｲ{ ﾉ::::ヽ ｊ ｒ＿＿´ /
///｣＿ -―-- ＿ ／ ｊ/l7V´Nヾ´ ＼ ヾ＝´／
777{: : : : : : :｀:ヽ ｨーｧ― ’_ ー ´
///ﾊ : : : : : ＞ ィ＿ｺ/77ヽｊﾊ＿＿＿
V//ﾊ＿＿__,,ィ⌒!ニｊ---=≧'ｭ{| ｊ＿ ￣￣ ｰｒｭ
ヾ//ﾊニニ} [ニj |／｀ 、 ｌﾘ ￣ ーｊ }
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| 壁を走る、地表から巨大な砲弾のように飛びかかる『リトルボーイ』 頭上から突っ込んでくる『ファットマン』。
| 挟み撃ち、それがどうした？
|
| タバコを吹き捨てる、刀を抜かず身体を丸め、『リトルボーイ』をやり過ごすイナミ。
| 背中を蹴り、少し離れたビルを蹴り、急ターンした『ファットマン』に迫撃。
|
| 交錯、ガードに回した金属義手を真っ二つ、首の半ばを刈り取って『血族』本部ビルに。
| 液体金属を撒き散らしながら墜落する『ファットマン』、抱きとめる『リトルボーイ』。
|
| イナミは舌打ち、殺し損なった。その上直したばかりの刀が刃こぼれ。
| そこで突然の発泡音。狙撃、近くから見られているのは知っていた。『血族』が射手を配置していた？ 違う。
|
| イナミは、狙撃手から向けられた殺気にも気付いていた。悪魔だから『蛇身』だからと、無視してきた。
| 狙撃も『リトルボーイ』に向けたものだった。しかし、外れた。
|
| 『ファットマン』を受け止め空中で静止した瞬間、狙い所だったはずなのに。
| 即座に反撃、狙撃手を狙って雷を放とうとした『リトルボーイ』が、凍りついたように静止。
|
| その胸を蹴って飛び出す『ファットマン』。なんだか知らんが好機だった。隙だらけだった。
| 『リトルボーイ』を唐竹割りに真っ二つにしてやろうと飛びかかるイナミ。
|
|「ダメだ！！ ティムッッ！！」
|
| 悲鳴を上げる『リトルボーイ』。『ファットマン』の目指す先、狙撃手。
| 涙でグチョグチョの汚い顔で、両手を広げて死を受け入れる小柄な人影。頭に乗ったグリーンベレー。
|
| 仲間割れ？ だけれどイナミには無関係だ。『リトルボーイ』を殺すのに、今ほどの機会は早々あるまい。
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, -'", -'"⌒冫ﾚ'ンｰ ､
／ ／ ／／ ／ ﾊヽヽ｀ﾞヽ､
／／／ ／ / / i } }ヽ ＼＼＼
/ / / / / // / l | | ヾ＼ヽヽ ヽ
/ ./ ./ // / // /ﾊi } l | ﾄ､ヽ. ヽヽ ﾞ､ }
/ / / // / // / ,ｲ ﾉﾉ } ヽヽ ﾄ} ､ }ﾉ
,' l l // /ﾚ// ﾉ // /ﾉﾉ_,,-''弋} } } }ﾉ 超能力による精神感応で
l l l l //l レ'ｻｰナﾒノ ",,ｨﾆ手lﾉﾚ lﾉ 多人数の脳を並列接続します。
| | | l { { ｲ{,ｨｲﾆミ､ ' {:;;ﾘl ' | | |
l l i| i l ヾ彡{ {:;;;;ｹ| ヽ;;;ｨ |ヽl ﾄ､ヽ､ 魔力を絨毯のように編みこんで、
', l | l ﾊ ＼ ヽ,ｼ’ 丶 ﾉ l | l ｀ｰ二ﾆ､､ より高度で強固な結界を組むのです。
ヽヽヾ､ﾊヽヾ ､ _ ..ｨ ,ｲﾊﾉﾉ ヽ ヾ､
ﾞ､ } ﾊl ､ヽ ヽﾐ_ﾆ ､. ｀ ' ／l | y/ヽ.ヽ＼ )） そうですね、名前は……。
ﾞ､ i | i＼＼ ｀ﾞ''ﾒ ､,_ ／l |ﾊ V ﾊ ヽ ヾ ､ ／' 『精神タペストリ結界』とでも。
l | | l ﾊヽ ヽ （ l､l ll | } // ﾊ l ヾ} /
l | .l l l l∧ﾞ､＼､ ヽ￣''//ｰ-- ､| }}（ ⌒)
l l ﾉ ／ } } ヽ､ l { { ヾ,ヽｰ､ ﾘ ｀ｰ '
} ／ l l ヽ}ｰ '"| | | （ } } } ノ,ｨ'⌒ヽ
, <_ // } ﾄ､ | l ﾞ､ ﾌﾌ/ (( l )）
< `ｰ､ヽ // ﾉﾉ ヽ l ヽ ｀メノﾉ l ン
/ ｀ヽ､＼` ((_つ)／' ヽ|_,,
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| ネーミングセンスはともかくとして、ツッコミ所が豊富に過ぎた。
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』襲撃前、藤堂志摩子はキオ・アスノを説得していた。
|
|「志摩子さんは恐らく石田さんみたいな並列接続を想像しているんだと思いますが、僕には不可能です。
| 石田さんの『ストームトルーパー』は脳は動いていても意志のない状態です。
|
| 言い方は悪いですけど、彼らの脳は機械の部品みたいな扱いを受けています。
| 意志のある人間では、そうは行きません」
|
|「しかし、成功したならば効果を期待できます。いいですかキオ。私は藤堂志摩子。菊理媛神の生まれ変わり。
| 死すら仲裁し、禊ぐ神。艱難辛苦を与えるもの。そして、神は乗り越えられる試練しか与えないものなのです」
|
| 志摩子には実績がある。神道仏教陰陽道に『教会』の守護まで編んだ結界でこの東京を覆っている。
| 異なる魔術系統による共演など、普通に考えれば夢のまた夢。不可能オブ不可能。
|
| 穢れ＝他道への絶対的拒絶である神道の祓いと仏教の守護までなら神仏習合によりまあなんとか形は保てよう。
| だが陰陽道は鬼道であり、妖術に至っては外道そのもの。
|
| さらには不寛容を形にしたような『教会』の術式を組み込むなど狂気の沙汰。
|
| なのだが、それをやってのけるのが大首領藤堂志摩子。
| 伊達やお飾りの大首領ではない、誰も真似できない本物の実力だ。
|
|「精神の接続による衝突は、私が緩衝材になりましょう。試しに私とキオを接続するのはどうでしょうか」
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/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ｫアキ,ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’,例 〉 `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ ' j夕 ．″ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ” ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/ 危険すぎます！
l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ どんなことになるのか全く想像もできないです。
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
i '" i /:::::::::::::::::::::::::::::::::::}
`'ｰ=ニ _＿¨ ,.｡・'ヘ: /::::::::::::::::::::j:::::::ソﾚ'
ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
r'¨’ 〉く . ＞=ハ
ﾘﾊ i 1 .＞'" ',
/ _」 :i ,.ィ'’ ﾊ
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/ / ` .｡ '´ ｀丶 ﾊ
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| 心が壊れる、傷つく、歪む、融合する。
| 精神への不可逆の破壊が想像できた。
|
|「私とキオならば可能です。そして、一度接続してしまえば一人二人増えても同じ。
| 菊理媛神の能力で折衝していけば良いのです」
|
| 裸の心が繋がる。それがどんな結果になるのか、志摩子の言は楽観的過ぎた。
| だが彼女の自信に溢れた言葉は、経験の浅いキオには眩しく響いた。可能なのかもしれないと気持ちが揺らいだ。
|
|「私はキオを信頼しています。精神の接触が互いにどんな影響を与えるのかは想像もできません。
| 相手の思考に引きずられたり、記憶を読まれたりするかもしれません。
|
| しかし、失敗を恐れては成功はありえません。最初はうまくいかないでしょう。
| 試しもせずに不可能と断ずるのは早計です」
|
| キオは、自分の心配が杞憂であるかのような錯覚を抱いた。それは正しく錯覚であった。
| 彼の警戒心は正当で、志摩子は性急で危うかった。
|
| しかし、キオは志摩子を信頼していた。信頼しきっていた。
| 故に、折れた。
|
|「分かりました志摩子さん」
|
| こうして野に放たれる九番目。
| 虚言の戒めを破りて現る破滅の化身。
|
| 『人類補完計画』もとい『 』。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, ----- ､
__, '´ ｀ヽ、
,. --- 、 ／ ／ ／ ミ＼
, イ／⌒ヽヽ ／ ／／ ／ ／ ／ ハ ｀ヽ
／二二ヽ、 / // （(⌒ ﾉﾉ /／/ / ／ ／/ ／ /ハ !
/ /＿＿_＼＼ | | | `ー‐ ' // / // ／ / ／ /∧ l | |
|／ ＿___ ＼＼.| ヽ＿＿__／l/ | //,ｲ l┼/-／/ _. '"// ｌ | | |
／ ／ ｀ヽ、｀丶、 l/ﾊ{」 l | / /／ `メ､ | | / /
／ ／/ 丶､ `ー─‐ '´ 川 l `＝= //┤/
//／! / __ , --‐ ''"´￣ ∩ ／／/ } "" `＝= _//ノ{ { では、始めましょう。
// / | | ⌒)） ／ ＿_. --/⌒ヽ_| ／／／ ∧ ､'__ ＝"/イ/ハヽ
{ { l ヽニﾆノ /／ ／ ／ l ﾚ'＾ヽﾍ-┬─‐ '´ |ヽ ｀ 〃 ,. イ /｛ ＼＼
トヽ ￣ ﾉ / { // / | ／ ）! ヽ| r┘ ` ｌｌ'"// / ＼ ヽ ）
￣ 〃 | ∨/ / /ハ ／.ｨ1 |、 ヽ jj !! {＼┬､＼ ﾚ′
{{ ﾉ , ┴┴イ / ハ `┴‐ { ＼ Ｘ 〃 /＼ `ー' ）┐/
〉＝＝'┴----‐' / /| __.＼ |＼＼ ヽ.ニノ _/ フ フ / /{ }}
/ ／￣/丁` ー┬ ' /r'´ ﾉ＼` /＼＼＼ ヽ / . -‐'／ ／ /ト`＝'
{ { | ＼ / ／ | 〈＼ `ｰｲ ｀丶､丶､ ∨'´ ／ / |
いミソハ ﾄ､ ∨ __」 ＼二イ 〉 , ニニＹ‐Ｙ"´￣ // ＼
｀￣ ヽﾉノ } /, イ // ￣// ／ .-‐‐} ﾉ￣| // ┬'
￣__ノ八{ ヽ./ / / ／ ／ /屮/} | 〃 l
丶ニ/ / / /／ ﾚ | / l_ . -‐
〃／/ / / ＿__／/ 〃 / ∧ ‐-- __ノﾉ⌒¨´
｛ | / / ／ / / / ヽ
ヽ| / /／ ／ ／ / ヽ
| ／ l/ ／ ´￣￣ / ＼
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 精神の接触において、肉体的接触は不要ではない。
| 皮膚同士の触れ合いが体温が匂いが視覚が、精神的結びつきを強くする。
|
| 皮膚接触以上に粘膜接触も有効だ。互いに同じ目標に向けて高まり合うのならば言うこともない。
| 心と心が触れ合い溶け合う、それこそ精神接触の第一段階といえた。
|
| であるが、志摩子はそうしたい衝動を抑制してキオに手を差し伸べた。
| 恭しく握られる。その手を胸へ、キオの手のひらが乳房にふれる。
|
|「志摩子さん……？」
|「鼓動を感じてください。私の心音が私のリズムです。数えてください」
|
| 鼓動は早い、緊張と興奮から。
| 志摩子ははしたないことをしている自覚があった。でも、そうしたくて仕方がなかった。
|
| 蒼星石が居たならば警告したに違いない。だがここにはいない。
| 手のひらからキオの脈拍が響く、二人の鼓動が混じり合う。志摩子はキオを抱き寄せた。
|
| 頬を染め、上気した吐息、潤んだ上目遣い。
| 志摩子は自らの秘密の蕾を開いて見せ、キオを招き入れる。見られている、躊躇されている。
|
| 焦らされ、辱められ、志摩子は己の奥で熱いドロドロの溶岩のような粘体が煮立つのを感じた。
| そこに住む存在が鎌首をもたげる。侵入を侵略を略奪を、歓喜と共に迎え入れるかのように。
|
|「い、行きます」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,.-‐'"⌒ ｰ- ､
, -'",,.-‐''" ,,.- ｀ へ⌒ヽ.
／ ／ ／／／／／ ヽ ヽ
/ ／ / / / / / ,i i ﾄ､ ヽ
/ // / / / / / ,ｲ ﾉ} ﾉlﾄ､ ヽ l
/ / ,ｲ/ / { ,!,ｲ ,ｲ .///.// ﾉ }i i |
/ / /l ｌ | Ll,,ｨl-ﾄ/| /ﾉ/,//- ､ ｉi l i }
| ! { l { |lｲ V Vﾚ | /ノ ノ ﾞ |l lﾉ .l
l l 人､ヽ{V_ _-ﾚ ｰ_ _ .}l ll l はい……ああ。
ﾞl l { ﾄヾkﾓ'''''""ﾞﾞ゛ "''''''''ﾞ`ﾙ'彳 | 入って……んん……。
ヽヾ{ ヾﾐヽ｀//// i //// iiｲﾉ i.l
ﾄ ､ 入 _,_._ ｨ|' ハ
ﾉﾄ, ＼ ＼ - ／ｌ| /i ＼
//ﾉ ヽ }ヽ､ イ lﾚ'ﾊノ ﾄ ､_ ヽ
r'⌒｀''" _ ﾉ } ｌ | ｀ ｰ ''" |/ ／ヽ ヽ､ ヽ ）
ヽ（ ／ ノ ノ ﾉ ^| / /{ ヽ ） ノ
__ｙ／ _,／ ｲ＿／ { ﾉ { .{ ｀ヽ､ ﾞﾄ- ､{___
/,ﾌ',ｲ ／ / //" |､ ,ネ､ ヽ ヽ}､ // /ｰ､
（{ /:::{ / ノ { { l ヽ ´ / ｀ｰﾞ ､（__ﾉ ）/ /:::/::}
V:::::::ヽ{ { ﾄヽ__) l / } i.// /::::{::::::l
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| 脳のどこかが激しくスパークする。
| キオの侵入が歓喜と快楽と苦痛の渦になる。
|
|（大丈夫ですか……？)
|（大丈夫だから……その、まま……)
|
| 言葉は無かった。志摩子はキオの唇を奪っていた。貪欲に快楽を貪るように、味わい尽くし、味を覚えてもらうために。
| ニ枚の舌が交ざり合う。キオの困惑の吐息を快楽で埋め尽くすために、志摩子は懸命にキオの粘膜を愛撫した。
|
| 志摩子の接吻はキオの侵入と同時だった。
| キオは志摩子の精神上層におずおずと近付いた、わななき震える蕾に、キオ自身をねじ込んだ。
|
|（――――――ッ)
|
| その瞬間、二人の脳を閃光が灼いた。
| 精神が接触したことで感覚が同期し、快楽の波が突如怒涛と化したのだ。
|
| 志摩子の興奮と快楽がそのままキオに流れ込み、肉体が反応した。
| 生まれてはじめての荒々しい快楽に打ちのめされたキオ、その感覚がダイレクトに志摩子に届く。
|
| 以降それが繰り返され、二人は同時に、そして絶頂し続けた。
|
| 志摩子の本音、キオを自分の男にしたい。
| 志摩子の建前、精神を繋げて人々を守る結界を作る。
|
| 渾然一体と化した精神の渦、破滅のボルテクス。
| タペストリなど冗談ではない、何もかもを際限なく飲み込んで無規律に編み込んでいく。
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, ´, 、 ｀ 、｀ - 、 , 、* 、 ; ; ; ; ; ; ; . . . . : : : : : : : ； : : : ヾ 、 ｀ 、 、 、
, ´ , - 、 、 、 ｀ ， ， 、 。 ヽ t} : : : {t;/ ; ; : : : ; ; ; ; ; * : : : : : ヾ 、 . , 、 。 、
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| キオの危惧以上の結果。恐るべき速度で広がる不規則な格子状構造体。
| 虚偽の罪？ 違う。これは志摩子が己の神に背いた罰。
|
| 菊理媛神は伊邪那岐が作り出した神であるが、その存在は極めて死に近い。
| 志摩子から誘い、志摩子が上に乗っての交合は過ちである。
|
| 生まれたのは骨子を持たぬ出来損ない。破滅の渦。
| 精神を空間に例えるならば、それは巨大な竜巻、あるいは渦潮。心のブラックホール。
|
| その先にあるのは永遠。押しつぶされて引き伸ばされた永劫の絶頂。
| 終わりはない、それそのものが終末なのだから。無限に続く愛の絶頂が約束されている。
|
| 『 』は精神の触手を凄まじい速度で伸ばした。即座に『血族』本部中すべての人間がその支配下に置かれた。
| 永遠の絶頂を前に自我を引き裂かれて発狂した。逃げ場はなかった。対策もできなかった。
|
| 愛と快楽いう狂気に耐えうるものなどどこにいるだろう？ 心を持たないか、あるいはそれ以上の快楽を知るか。
| そんな人間でなければ耐えられまい。
|
| 事実、『血族』の精鋭といえども成すすべもなく発狂した。
| フリットは発狂した。先代は発狂した。『狂死』は発狂した。霊夢は発狂した。
|
| 対抗できる者などいようものか。
| 心を持たない者なんて。
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:::::::::::::::>,ﾉ ′ {
:::::::::::::/ u ｊ 誰か！
:::::::::::/ / 誰かいないのか！！
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::/￣｀ 与= __/
ー- {､
ヽ
｀ ､
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| いた。
|
| 恋人に与えられたヨモツヘグイ（配慮した表現）によって、心を黄泉の国に置いてきてしまったペルセポネー。
| 改め東田である。
|
| 周辺は阿鼻叫喚地獄であった。
| 今宵の『血族』本部は『シロッコ排斥』のために不夜城であった。バックアップに詰めていたすべての人員が被害にあった。
|
| 『 』に触れられた者は、まずは心を弄られる激痛で悲鳴をあげる。
| そして次の瞬間、志摩子とキオから流れ込む永劫の絶頂に押し流され、あられもない声を上げて発狂する。
|
| 想像を越える性的絶頂、体中の水分がなくなるほどに、体液を垂れ流しながらの心神喪失。
| 東田は目を覆わん事態に吐き気を堪えながら走り叫ぶ。
|
|「誰か！ 誰かッ！！」
|
| 誰も応えない。誰もが心を失っていた。
| 絶望的な状況、聞こえるのはあられもないうめき声だけ。ビクビクと手足を緊張させ、理性的な動きを失った人々だけ。
|
| 東田が駆け回る中、被害は着実に広がっていた。『血族』本部ビルを覆っていた結界は思いの外耐えていた。
| だが、保って数分間。被害は市街地に広がる。
|
| 人々は突然の悪夢と淫夢に自我を破壊されていく。
| 救いはない。作者は新たな『破滅地球博覧会』用標本ゲットの期待にワクワクが止まらない。
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: : : : ｀ヽ: : : ＼: : : V: : :i: : :|!: : : : /: : : : :／ー-
: : : : :_: : : : : : :｀ : : : : : : !: :': : : : : : : : ／: : : : : : : :｀ミ 、
: : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ー--: : : : _: : : ヽ
／: : : : ｧ : : : : : : ; : : : : : : ／＼: : : : :＜ー ミ ｀ヾ: ヽ
: : : : ／ : : : : : : ハ: : : :／ ヽ: : : : ヽ＼: : :｀ヽ ヾ:
: :,／: : : : : : : : / }: : :/ ヽ: : V/＼: : :＼ ヽ
ｨ': : : : : :イ: : :/ !: :/ ﾒ、V{ﾆヽ: : :＼ )
: /: :,ｨ//: : : / i:/ / Vﾆ ＼ ヽ
/: :///: : : ＞ー--＜ ／ {｢i! {!三ﾆハ ＼
: : i!// : ／ {｢ｌ! ｀ ´ !|j! ｊ三三 }
: :il!l/ｊ／三 |! i| iじっｨ三フ
: :j!/三三ｊ! iﾄ j! ． ¨ィ７´
: :i ヾ三」 C ゞ'’ ＿ -=ニ三7 ティムーッッ！！
: :! ｀マ三ニニニニニニニニ三三三フ
: ; ｀マ三三三三三三三三三＞´
/ 「￣´￣￣￣￣ ´ ７
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| ちょうど同じ頃、『血族』ビル前。
| 狙撃手の名はジャジャマル。アドリーム孤児にして最後の『野良犬』。
|
| ティムを探し、ヤーボ大佐に捨てられた少女。
| その末路、愛する人々のために命を捧げる。思い出して！ 私を生贄にして！ ティム！ ティム！！
|
| ティム……もとい『ファットマン』の左腕。
| 液体金属義手が薄い胸板を安々と貫き肋骨を砕きながら重要な内臓を修復不能なほどにミキサーした。
|
| 『ファットマン』は背骨を引きずり出し、止めを刺そうと振りかぶる。
|
|「ぐふっ」
|「ティム！」「ティムよせ！！」
|
| 前後からの悲鳴に、『ファットマン』が動きを止めた。
|
|「痛えな……畜生、が……」
|
| 割り込んで瀕死の重傷を負ったイナミ、こいつじゃない。殺さなければ。
| 彼女がかばった相手が、大佐を撃った。敵。敵か？ こいつが？ ホントに？
|
| 背後からの静止、大佐だ。なぜ？
| 何もわからない、何もわからない。わかる能力もない。
|
|「あっあっ……ティムぅッ」
|
| その瞬間、吹き出してきた『 』の触手に絡め取られ、即座にジャジャマルが発狂した。
| 大天使である『リトルボーイ』は抵抗した、しかし、背骨を引き抜かれるほどの重傷を負ったイナミは対処できなかった。
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´￣ ミ 、
/ ヽ
/ j」=-―― ７⌒ヾ ヽ Y⌒
⌒>' / ｒｪｪ=＝＝{{ ｨﾄ、! ﾄ､
/ {!__´...-――--≧彡 /! :. ＼
人´ ｀ ｀ミﾆｊ{ i
/ ﾑ ｒ‐ ､ ミｲ! |
/ ｊ ト ､ ｀￣ .／ｊ |! |
|! | }≧ｒーｧｭィ// |! i ………………あれ？？？
/ i! ! 7｀ー≠⌒ヽ! j! 八
/ / ! ! / }!川 ヽ
.: / ﾊ ｊ!/ i i ﾘ {
ｊ / ハ!/ }! i八 |
川 / ＶＬ /! | ヽ} i!
/ ﾘ八 / {/)｢´ / | j! { i
/ } ﾊ / ヾ{ ｲ ﾄイ{､ ! ｛
/{! 人 ｀ヽ ｊ ﾏﾆリ ﾊ 川
/:_/｀ー＝-- 彡 }ﾆト､ ヽ{
/: /: : : : : : : : :ヾﾑ }ﾆ{ ﾘ
/: : : : : :_L: : : : : : ﾑ }ﾆ{´
/: : : : イ/⌒}ﾆヽ: : : ﾑ |ﾆﾑ
〈: : : : : :/ ﾆﾆ: : : : : ﾑｊﾆﾆミヽ.
｀T＝ｒ′ ﾆﾆ: : : : ィ／ヾ}〉｀ｿ
| | ﾆﾆ｀T イ
ﾆﾆ ﾆﾆ ﾄ､ ｣
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| 抵抗する能力はあっても、抵抗する心を持たない『ファットマン』。
| 『 』は即座に眠ったままの彼の心を呼び覚ました。
|
|「ティム……？」
|
| 困惑の『リトルボーイ』。
| だが、もし仮に今この場で心を取り戻したとしてもそこになんの意味があるだろうか？
|
| 圧倒的享楽で世界を席巻しようとするこの『十壊』の前に、人造大天使など嵐の中の木の葉よりも頼りない。
|
|「…………大佐？ ジャジャマル？」
|
| それ故に。
| 叶わぬと理解しながら、それでも諦め切れずにいた夢を。
|
| 息子のように愛する弟子との再会が実現してしまい。
|
|「グフフ……」
|
| 『リトルボーイ』は果てた。
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,,､-ｰ ―- ､,
,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ',
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ | このバカが！
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ | 一人で勝手にイッてンじゃねーぞ！！
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr }
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
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| まさにその時、『血族』本部ビルの窓を突き破って現れた不敵な影。鉄仮面の巨漢。
| 『リトルボーイ』の真横に着地、衝撃で全身から血が噴き出す。瀕死の重傷なのに無理をするからだ。
|
|「痛ってェェェ！！！ だが、これ位が丁度いいンだろうが！
| いやな記憶掘り返される位なら、痛みの方が百倍マシだぜ！！」
|
| 全身全霊のやせ我慢。そのまま『リトルボーイ』に頭突き。北斗神拳ではない。ただの頭突きだ。
|
|「仮面に鉛仕込ンどいて助かったぜ！！」
|
| これは一般常識だが、鉛は超能力による透視や読心を防ぐ。
| もちろん鉛がX線を通さないことに端を発する迷信の一つだ。
|
| ジャギは仮面の後頭部部分に鉛を仕込んでいた。これにより『 』からの攻撃を防げたと言い張っている。
| いや、正確には完全に攻撃を受けていた。記憶を掘り返された痛みでうずくまりそうだった。
|
| だけれど、どんな痛みも目の前で起きた現実には勝らない。
| 目前で泡を吹いて倒れた霊夢。ジャギは監禁部屋から助けを呼んだ。だが、当然ながら助けなんて来ない。
|
| 『血族』本部で自由で動ける人間なんて……。
|
|「ジャギさん！ 無茶を！！」
|
| 割れた窓から東田が叫ぶ。ジャギはゲラゲラ笑いながら忠告を無視。
| 東田がいなければ今も閉じ込められたままだったらう。
|
| 胸に七つの傷を持つ男は、『リトルボーイ』の頭部を両手で挟む。
|
|「オラ！ 戻れ！」
|「大佐！」「おごご！！？」
|
| 体内の気を攪拌され、しかしおかげで『 』への防御が回復。『リトルボーイ』は頭を振った。
| ジャギ。ジャギは彼らの宿敵だった。
|
| ティムを意識不明にしたのも、『野良犬』部隊を倒しつくしたのも、ジャギとその仲間だった。
| そのジャギが。なぜ？
|
|「起きろクソデブ！ やるぞ！」
|「グフフ……何をだクソガキめ」
|
| 尋ねられ、ジャギは不思議そうに見つめ返した。
|
|「世界を救うんだよ、お前らに『もう少しマシな戦争』を用意してやる」
|「…………」「正気かよテメー」
|
| 警戒心もあらわに、『リトルボーイ』の横に着地する『ファットマン』。もといティム。
| その肩を掴み、『リトルボーイ』は立ち上がる。
|
|「条件がある」
|「言える立場か？」
|「終わったらチョコレートを食いたい」
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＿_〉 '⌒＼{ { }人
＼ r┬＼＼） ＼
/￣￣＼＿_〉/ ＞ー ﾉノノ
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＼＼〉 { - ／
/≧==={ '⌒〉
{ U ≦二{ ぐっ……
＼ /八 ＿___) 何だこの攻撃は……？
＼ {＼二ニ=‐- . {
＼{ ＼三三三二ﾆ=- )
＼ ＼二ﾆ=-‐
⌒＼ ＼/ /
ニﾆ=＼ }/
二二ﾆ∧. /
二二ニﾆ＼/
二二ニﾆﾆ∧＿＿_
ニニニニﾆﾆ}ニﾆﾆ{＼＿＿
ニニニニﾆﾆ}ニニ人三三三≧ｘ
二二二ニﾆ人＿_ニ=＼三三三二ニ=--
ニニニニニﾆﾆ／}＿ニニニニニニニﾆﾆ
ニニニニﾆ=イニニニ＼ﾆ三三三三三三
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| 志摩子が居るだろう執務室に向かう途中、『やる夫』は突然の精神攻撃に膝をついた。
| 吐き気がひどい、胸の奥に重い石を詰め込まれたようだ。
|
| 突然過去の出来事がフラッシュバックしたのだ。生々しく蘇る辛い記憶、当時の痛みそのままで。
| だが、『やる夫』とやる夫、そしてジャギは共通して性的機能を喪失していた。
|
| ただの肉体的喪失ではない、『やる夫』は完全に機能を有していない。
| ジャギは呪いによる。お陰で行動できていた。
|
| やる夫は？
|
|「…………うっ」
|
| 心を失ったやる夫に、掘り返されて痛い記憶などない。
| 性的機能を失ったやる夫に、快楽など意味をなさない。
|
| はずだった。
|
|「…………ダメだダメだダメだお」
|「どうした？」
|
| 血を吐く様に呟くやる夫、訝しげに『やる夫』が尋ねる。
| 真っ白な顔で、震えながら己の肩を抱くやる夫、全身が総毛立つ。寒い、寒い。
|
|「まだ、ダメだお……やる夫に心はいらねえお、そんな不完全な、弱いもの。
| あるだけ無駄だお、消えてくれ、消えてくれお……」
|
| うずくまってうわ言を繰り返すやる夫。『やる夫』は舌を打った。
|
|「大口叩いておいてその有様か……約立たずのゴミめ」
|
| 『やる夫』はやる夫を見捨て、一人志摩子を目指して進む。
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<／= / . .:i:i:i:i|=-=|/i:i:i:i:i:／:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:i|i:|-=／=ﾆ=-V／-=ﾆ三三三ﾆ= ／
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<=／ >_√.i:i:i:i:i:i:ｉ|=-=|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／.i:i:i:i:ｉ:|i:|-=|-=／i:i:i:i:i＼=三ﾆ=-￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 残されたやる夫、のたうち回る。
| 記憶を掘り返されるという能力は、やる夫には最悪の相性だった。
|
| やる夫には忘れた記憶が山とある。
| やる夫が見た死の夢のほとんどは、彼の精神の保安のために記憶から消されていた。
|
| だが、やる夫は封印状態の際に世界の滅びを見て見て見まくった。
| 自分の選択ではなかったが、心が壊れるほどに死に触れた。
|
| それは、祝福だった。壊れてしまえば、無くしてしまえば。死に近付けば。いくら触れようと……。
|
|「怖くないよ、やる夫。怖くない」
|
| 聞き覚えのない声。誰かが手に触れた。
| 震えが消えた。寒さが消えた。恐怖が消えた。
|
|「やる夫はそれでいいんだよ。心のない怪物なんて、見てて楽しくないもん。
| そうでしょ？ >>416 」
|
| 見覚えのない少女、幼さの残る顔立ち。知らないけれど、妙に馴れ馴れしい。
| やる夫は、ついさっき同様の存在に出会ったことを思い出した。
|
|「おまえ、中位化身……？」
|「チクタクマンこと夢川ゆい、ゆめ助けに来たよ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
,....:=-‐ｧァﾅTｱ≧ｘ、
,xrく⌒ . . . . . . . . : : : ≧ｓ.＼__
,rレ' ´: : : . . . . . . . . . ≧ｭ, イ/. . . . ｀:...、
. ....:´: ／..:: . . . . . . . . .._}ililiｘ≦ : ; : : :＼
. ／ ,. ／: : : : . . . . . . . .}三ミ 、/. . . : : : : .∧
/...:/ : . / : : : : ,.. . . . . . ..乂{i彡' . . . . : . . . . ..‘,
. /..../ . : / : : :. /il≧ｭ. . . '⌒ . . . : . . . : : : . . . . . . .:
/..../ . . / : / . . . . . /三刈:∨ ,r=-. . . . . . . . . . . . . . . . . .}
. /..../ . . / : / . . . . . / ￣¨¨ヾ '´""ヾ＼ . . . . . . . . . . . . . . .}
, イ. ./ . . / . / . . . . . / _.＿ ∨.... . . . . . . . . . . ...}
,..rく⌒ヽ i . . |. . ﾊ . . . . /{‐--‐ ' 二.__ ∨.... . . . . . . . . . ...}
.... / /ﾊ. .{ .| . . |:./ . }. . . .ﾘﾊ __ 二__.=-‐ ¨ ∨ . . . . . . . . . ....} フェイスレス
(: {:ハ:.刈 : : 癶.ｨ(ﾊ. . .:{乂 __ ,,,, -‐‐ ==＝=- ∨. . . . ._._. . . ..,' はい、ストップ。
..... ｀ ヾハ...|. . ..| {ハ ヽ:.( ヾ , __, -‐‐ . __- ∨. . /＿∨ ,ｲ 100話記念特別拡大版だ。
. -‐=乂 ﾙﾘ.‐-=ｓ。,._} ./ ,ｘ≦'"¨¨二二 ￣¨三_∨/乂/. ∨ もう少しやらしてもらうよ。
,rく´:::./´ , ｒ=-ゞ=‐‐ｪﾆゞ}. ./ /,r７‐￣ｒアうﾐ.＞::..ﾞ¨/.//:):::::} ,ｲ}
. /:::::ゞソヾ::.._ゝ=''vﾍ｀¨,.彡'}>____ ゞ≧=ﾆ三彡'＿ ／,ｲ/zｲ::., / , >>415
/::::::::¨./ ,∨三三三三三》＝=《三三三三三三彡,ｲ ﾄ ､乂ﾉ / , 心を無くしたやる夫の醜態は
rく⌒ヽ ./ {! ∨三三三三」{ }i三三 三 三三」/.: /彡' /...{ ／ それはそれで有りだと思うがね。
{. ＼ﾐx.ｲ( ∨三三三三{ 乂三三三三三/ /r-‐''斗..{.,.／＿
. ¨=‐- .」癶 / ゞ=====彡' ゞ======:.彡'i!ﾞ / ..,レ'..／二二≧ｘ
{. /}:::.. ./｀ミ 、 ∧乂 ,r =＝=ﾆ=‐- ...:.__ .i}!_/彡'.:.: .:.／.{二二二二))
.¨=‐-. /,ｲ::::｀::/＼: : : .:=:-r７ゞ彡'´..=‐--‐ヾ≧ｓ。, : : : : : : :／ {二二二彡'{
.. i}/ :::::::::::/ ＞ : :_; ;_∧｀ =-＝==‐-‐'' ,r _｀＞=.=＜___｣」Lﾆｱ二,zｲ/∧
/ . r/::::::::::,zｲ ∨ ,.ｘj≦∧::::::::(. {!::,.イ／,r==＝≦,////////////,∧
,彡':{::{:::／ _____l∨ｘ≦//// ∧ﾊ::::ゞ, , ,,,,,彡' ／,/芹,/,////////////////,/,∧
:::: / {ｲ /,/,/,∧:＼///////》 : : : : : : : : : ／:::::{乂}/////////////////////∧
:::/乂ﾉ /,/,///,∧: :.:.≧==≦三≧ｭr７: :／::::::,rｉ{//}//////////////////////∧
, 彡' .{////////≧ｓ。,:_: : : :￣｀¨´:／i:::::::,r{iiｉ{//}///////////////////////∧
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／￣ヽ
ｒ― 、 ー― / _ 」ー― 、
＿{ _ ) ´￣ ｀ー」 ￣L ＼
／ ｒ┘Lノ ヽ_ｒ ┘｀ヽ ＼
/ 人_ 「 ヽ { ／ ヽ
八 / ７ / / ﾄ、 ヽ. ＼／ヽ i i
/ { ＼_/ /| { 、 Ｌｊ-┼-}､ } } ヽ ＼ ﾉ } >>416
{ ヽ 八 i { 」＞ ヽﾉ）ノｊﾉ ノ_ノ ノ ｊ i { 人 フェイスレス、ゆめナイス介入。
八 V ヽﾄ メ_フ ､_ ￣ ゝﾃ=ｋ､rイｰ、 八 人_/ } だけどシュミわるい。
人 ) ﾄ|ﾊ _ｧﾃめ､ ｒゅわ｢｀）{ ﾘ （ ｒ）
人 ヽノ ﾉ | い ﾏ.か 心少 ｒ人}ノ ＼ ｀Y(＿ﾉ)
_ ( )_ノ ／ .八＼＼ゞ-ﾟ ｀＿_ 人ｿ ＼ ｀ ｰ´
( ー彡' ／ / 入 ::。 ヽ_ｿ , ィ J) ＼ ＼
／￣￣ ｀ ー―彡 (し ＼ ≧c｡ ,｡≦ {! ＼ ＼ ｀ー 、
{ ｒーァ ― ￣ ＿ノ 「ヽ「 > ｊ┤ ヽｰ 、 ＼ ヽ
ヽ/ ／ ／ / ／「￣{ / / ７⌒ ＼ ＼ '. }
ｲ ）′ ／ / ／ ｀7ｰ/ /⌒7 ´/⌒} ／ ＼ ヽ . j
{ヽｰｲ / / （└i＿ ｀7 / ヽ-ｧ⌒ トｙ-、 _ｒ ヽ }i . /
￣ { /{ 、 { 八_ｒ､__/ / 「 /Ｙニ ＼ __ｒ＼ 八 !(
＼ ( 乂 } ＼＿_ / ノ /７八介＼__ノ彡ヽ ｀ ﾉノ＿ﾉイ ／ } ｊ ヽ_ｨ}
＼ミーﾒ､ / / ／ ﾑィ⌒ﾊ ( 八ﾍ ,イｒｰ' ∨ / ｊ 人＿ノ
￣､＿） { i / /〉i |☆ｊ | ､〉 L__ィｒ'☆o V ┼＝彡'
＼＿人 /｣ j | ｊ | ィ 个☆ ８､ V、＿ノ
> i ／) ｲ |☆ｊ | ｺ | OooO ＼ ヽ
/ ヽ／｀Tレニニｭ､ r―‐┬┘ ＼ ＼ '.
LニニニニニニニL. ＜＼
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|「さて、今この会話と接触はやる夫の脳内で起きています。周りをよく見て」
|
| 苦痛と恐怖に震えながら、やる夫は顔を上げた。
| 見慣れた古い建物、風が吹くと軋む壁、雑多なようで整然と並んだ書架。
|
| 入即貸本……？ いや、『やる夫の中の入即貸本』……！
| やる夫は慄然とした。封印解除されてからご無沙汰だった。
|
| いつの間にか、やる夫の周囲には四つの人影があった。
| 恐怖の対象でしかないはずの面々、しかしやる夫は胸が締め付けられるような懐かしさを覚えていた。
|
| 『十壊』をどうにかせねばならぬ今、些末な死など確認する必要はなかったし、三柱の死神と『モーンブレイド』は『弾丸』だった。
| そうだったはずなのに。
|
|『既に我らは滅びを滅ぼす銀の弾丸としての役目を理解している』
|
| ボロを纏いながらも王者の威厳のあるを漂わせる隻眼の老人。
| 北欧の主神、魔神 オーディン。
|
| やる夫の父から『一つ目恐怖症』と一緒に押し付けられた、安全装置。
|
|『悉くを破壊し尽くした上で、我らもまた破壊の限りを尽くされる。なんと甘美なる事か』
|
| フルフェイスのヘルメット、コウモリをイメージさせるマント、にじみ出凶暴さの荒野の黒龍。
| ケルトの鏖殺者、邪龍 クロウ・クルワッハ。
|
| やる夫の母を殺す為に放たれた攻撃の余波、全てが滅びたあとに遺された死に損ない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_, ィ､＿ ,, ィ ￣￣ ヽｲ７､=ｭ
ﾉｲｿ彡ｧ, ゞ ﾄﾐヾl
＿＿ -- イ ≦'´ ヾ, 7ヾ ｀'ｊ 《やる夫はワタクシの名を呼んだでしょう。
, -‐_ -－ ￣￣￣ア7' / ｌ i ノ ヾｲ＝-､ ならばワタクシの存在の全ては
, ィ´, ´ / / ｌ __|＿ ｊT￣7ｌ‐ｌ ﾊ､ ', やる夫の為にこそ在るのです》
/ ／ ' / イ´ ﾊ ｲｊハ/ ! ｲ ﾊ ＼､
＿＿ ｌ ,' ／ ; ｌ ｌヾ､ﾄ ヽ ／ﾉイｔ〒i'ヽ ﾉ ﾊ ヽ､
ｌ i｀ ヽ､､_ ! ｌ ,／ ! ﾄ |､ﾊ {ｭｼ } Y ゞ!'ｼ / ｊ ', ＼｀ヽ
! l ｀ヾ! _,, ィ´ 人 ', ∨__ ~ ノ ;:. /ｲ7 ', ＼ ｀７
l ! ,,ィ´ イ ゝ∨ ﾊヽ_ ´ ＿ ＿ //! イ i ／
. ! l イ ,, -‐ ´: :/ｊ/: :ゞ !L ｀ー ´ ノ,/ : : ｊ ｌ ﾊ イ'
', ! ／ 彡‐''´: : : : : :/ /: : : : : ｒ｀´ヽ, ｒ‐≦ ! ｌ: : / ,i |i ', {､
rー- ゝ､ ／ ,ィ´ : : : : : : : : : / / 〉 ）´ ／）! ｌ: :/ /j ｌ i ; ヽ＼
l l￣￣｀ヽ ,イ . . : : : : : : : : : : : : : !/ﾉ⌒ｰ-' { { ｀! ｌ_/ / / |: :! ! ＼丶
', l / ／: : : : : : : : : : : : : ; -‐ﾊ ｒィ__,-ｭ ｨ-=ゝ ｊ/｀ヾフヽ ｌ: :ｌ | ｀ヽ＼
', l / / /: : : : : : : : : : : ＿_,ｲ ）='７/ (_＿ｙ' ｿ ﾉ /_ｿ￣ ヽ!: :ｌ { ７ﾉ
', ', ｌ ,ｲ / : : : : : : : : ; ィﾍ ｲヽｒ‐'-ｒ' ヽ_ _ -ｭ､｀ｰ､イ ', ｊ ヽ / /
ヽ', ! |ｌ ﾘ: : : : : : : : : ゝ､ ｊ ノ-=ｭ_ ﾊ￣ ｲ｀'/ ヽi ｒ‐ ￣｀‐ ､ﾉ /／
＼ ｛ ; ｿ : : : : : : : : : : : : 〕 ｒ-'ィ ヽ｀ー=＝≦ ､ ｭ ｒ' ｲ ＿ ﾉ ノ ／
ヽ ', !: : : : : : : : : : : : :ｊ ∨ , ＼/_,, ィ´ ￣ ヽ ｌﾊ ｒ' /ー―- ,
ゝ '; : : : : : : : : : : :ｒ' iイ{ i! ´ ﾉ ヾヽ_ } ￣ア´／
＼ヽ: : : : : : : : : ｲ ﾉl ト ゝi! }: : : : : : . . . ,ｲ 7/ ﾉ ／／
ヾ: : : : : : : :/ ハｌ / {i!{: : : : : : : : : : : . . .ィ ／ ／ｲ （ ヽ＼
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| 純白のドレス、神々しきかんばせ、美しくも儚い眼帯の少女、鏡と茨。
| 品川大聖堂の大天使 レミエル。
|
| 東京を滅ぼすために召喚された堕天使の、正しい姿。滅びに瀕した所をやる夫に呼ばれたもの。
| その恩義から、未来からやる夫のために手を差し伸べてくれた存在。
|
|「あなたにも世界にも興味はありませんわ。今まで通りにご勝手にどうぞ」
|
| 病的に白い肌、闇よりもなお暗い漆黒のドレス。高慢で気紛れな魔女。
| 永遠の戦士の黒き姉妹剣 モーンブレイド。
|
| 『十二の封印像』の『白鬼』として、やる夫に呼ばれその手に収まった次元跨ぎの魔剣。
|
| 『モーンブレイド』はその白魚のような指で空中を漂う赤黒い粒子を掴んだ。
| 『シ』、あるいはマガツヒだ。やる夫はそれを知っていた。『やる夫の中の入即貸本』に漂う魔力残存体。
|
|「◆wZFOryiZkw ◆TIENe3Twtg ◆Emjcf.lfLU ◆e4DpAp5mDU ◆BLUEpl1Jp. ◆uUUL1UxePw
| 往時には遠くとも、未だにこれだけの存在がありますわ。これを利用しない手は無いのでなくて？」
|
| 『◆wZFOryiZkw 』を優しく掴み、その先端を指先でねぶる『モーンブレイド』。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, -､ ヽｰ､
{ ｒ｀ ｒ' }
,ゝ､ヾｭｲ_,,ィｭ､_
Yｿ´アｰｿｭ ﾉｰ､ ヾ)_
ｒ',ｨ ｒｼゝ〈//7lゞ )ヽ V
〈!ｭ(/ <//|i/そ ｀Yﾍ}〉,-､ まあ、この世ならざるモノを殺す手伝いくらいなら、
ｒ-‐' ゞYr' ヽ|!V ゞﾉ ゝ して差し上げてもよろしくてよ。
７ __ノ 7 ヾｰ7j |ｰｲ , Y｀ ､＼
'-ｧ=､ ｲ ､ト､＿/ｲ! ﾘ{ノｲィﾍﾊ,､__{､ヽ,
イ／ ／7/ﾊ|ヽ/ﾊ/ ' ´'ｲ!/ﾘ////＼ ヾ､
イ／ ／//／ヽ!/ゝ｀ｰ= ﾆ彡ｲ/////////＼ ＼
イ''´ ／//／///////ｿ≧ｭ=ｒ≦ｲ´ﾍ///////ヽ＼ 丶､
イ'´ ／//／///////／: : : ｀ﾌﾊ': : : : : ＼///////ヽ＼ ヾ:､
／'´ ／//／/r､/､///!r'-―ァ／ｲﾊヾ､_:_:_:_:_;ゝ///////＼＼ ＼ヽ
,ｲ´ ／/／///|｀ー' ヽ__ﾌ7´ { ７ｲｊ ｀ V￣ﾍーﾍ＼///////ヽ/＼ ＼丶.
/' ／/∧///r-{: : : : :ｲ -'_ﾉ: :人 〈ﾊｌ V: : ﾍ: : : ヽ ｀ー-ィ-､/ヾ/ヽ Y}
/ ///∧////ゝ7: : : //￣: :／ｊ: :ヽｒ ､＿ _ノ＼: : ｀ヽ: : : : : ｒ､__く///ﾊ/ﾊ V!
! ///∧// ｲ-'´/: :_: : ヾ､o / _ﾉ: : / ヽ_: : :ィ: / ｊヽo,ィ ｒ-､'/i///////ﾊハ V!
///∧／ ｀´ ヽ7 ,､｀_ノ: : : : : : : : ゝ: :´ {_ｲヾ＼_,ｲ ｀ ヽ!|/////i/ﾊ ﾘ
.//∨/ /｀'__>: :ヾ､: : :,ィヽ_ｒヽ: : ﾊ '´∨ i ヽ///////l
ｌ//// /: : ７ｧ-ｒ: : : :´￣Ｙ': : : : : : ヽ､ ｌ : :! ∨/!///l|
!/// r-,〈=≦／, ７: : ; : /ヽ!´!ﾍ:_;/＼ヾ _ｊ､: :ﾄ Y|////l
|// アｼﾉ''´ ／ //｀ ': :ﾞ/==ﾍ: : : : : :ヽ＼ ヾjﾉィ_ ヽ///|
lIY ｒ-=＝', イ ／ //: : : : / ､＿_,∨ : : : : ＼ヾ´ ヾ､ Y//l
!| ノ/ ／ / .// _:_ : / _ｊ_ ｊ__∨: : : : : :ヽ ＼ ヽ._ V/|
｀ イノ ／/ / //: ;ｲﾊ ,'´Tｨ::| }::ｨﾍ: : : :<ｨ-, ＼ ヽ､_ ヾ. ﾉｲｊ
ｊ/ イ-/ / // <_ｲ_｣ {､::::::::::! ｊ:::::::::〉 : /_ト-' ／ ､ < ｌｊ ／イ/
（! !ィ ｲ/ ｀ヾ=―=' ゝ:::::::|!:::::::ｲ. ﾍ: : : ／ ヽ V ! /
}ｌ ,ゝ､{ ﾚi ,､ ,ｨ ｒﾍ!:::::::::::!:::::::::|,ｨ ｀´ ｒ ､ｒ､__ゝソ /
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|「お前、口調それで合ってたかお？」
|「登場が久々すぎて作者ですらよく憶えていないのが悪いのです！」
|
| やる夫は笑った。久しぶりに、意識せずに笑みが溢れた。
| 感情が、戻ったのだ。戻ってきてしまったのだ。
|
|「つーか、てめー。余計なことしてくれやがったお」
|「もしかして、心を失ったままなら完璧な死を見る能力者であれるとか思ってる？」
|
| 上次元介入者であるチクタクマンには、隠しても意味があるまい。やる夫は彼女をにらみながら頷いた。
|
|「伊藤誠が言ってたことを気にしてる？」
|「……………そうだお」
|
| 三ヶ月前、やる夫は誠に自分の能力が母親からの遺伝だと教わった。
| その際、本来のやる夫は能力を使いこなすために感情を持たないはずだったと言われたのだ。
|
|「心を持ったのは間違いだったお」
|「ホントに？」
|
| やる夫は頷いた。心はいらない、感情なんて重荷だ。
| 全てを捨てて身軽にならねば、世界なんて背負えない。
|
|「誠への信頼も？」「長門有希への親愛も？」「やらない夫への憧憬も？」
|《夢宮アリカへの父性も？》「翠星石への慕情も？」
|
| 五人の口から突き付けられる五つの名前、やる夫は怯んだ。
| 最も大事な二つを、指摘されなかったことに。
|
| みゆきと、蒼星石。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＼＼:::::::::::::::＼ヽ
_ -----､ ＼＼::::::::::::::::＼
／/ ／ ｀ヽ､ ＼＼::::::::::::::
／ﾌ/ ., ' }::＼ ＼ヽ::::::::::::
／:::::/{ / l:::::::ヽ、 | }::::::::::::
//::::::::l l ｆ /:::/::::ｲ | |:::::::::::
. //::::::::::l { |ヽ ／::://:::::{ | |::::::::::: ならよかろう。
. //::::::::::::l ! l､::＼ ／::::／ノ::r-‐イ } |::::::::::: 『 』を殺せば終わりだ。
l/::::::::::::::| | !ヽ::::｀ｰ―r―´::r‐ﾆ-´:::::::::::::/ / /::::::::::
|{:::::::::::::::l l ､」:::::ヾｰ┐::::::::::::::} 「:::::::::::::::::ノ / /:::::::::::: 被害者どもは見捨てれば良い。
ｌl::::::::::::::::〉ｌ ＼:::::::::l {:::::::::::::://:::::::::::::／/ --／／:::::::::::::: それが一番楽な方法だろうよ。
ヾ::::::::::::::ヽヽ ＼_-､:＼:::::／::::::::,.‐:´:∠-－´.／／::::::::::::::::::／
＼::::::::::::ヽヽ ヾ:ヽ､::::::::::::::ﾉr､::::/ ／／:::::::::::::::::::／
＼::::::::＼ヾー―――－＞- ゝｲ7´ ∧ﾐ-ﾆ ´- ´:::::::::::_ -―＜―
｀ ヽ､:::＼＼ ｒイ .i { / { ゝﾆ‐"-＝ニ‐" -―￣:::>
ヽｰ､ ＼::＼＼ ／ / | Lム-ﾆニ´／::::::::::::／::: ／::::／:::::
ヽ ゝﾆﾆゝ- ＼ニﾆムﾄ=ﾆﾆ‐::::::::_::／::::::::::::::::::_／.／::::::/:::::::::::
-} |＼ゞ^―――― ´:::::::::::::／ﾍ ヽー―‐ ￣ _／:::::::::/::::::::::::::
/´:::::::| |::::＼＼:::::::::::::::::::::::::::::／／:::｀ヽ―― ￣:::::::::::::::::/::::::::::::::::::
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|「でもそれじゃあ……」
|
| 反射的に反論しようとして、やる夫は自縄自縛された。
| 矛盾だ。それじゃあニャルラトホテプと変わりない？ なにか問題があるのか？
|
|「………………」
|
| やる夫はポケットの奥に熱を感じた。ここに来る前にあのおっぱいおばけの中位化身がよこした『銃弾』。
| 乗り越えねばならぬ『十壊』はまだまだある。それ以外にも戦うべき相手は多い。
|
| 心なんて犬に食わせて、最良の手を選び続けなければ。それでも手が足りないのだから。
|
|《手が足りないのであれば、助けを求めて伸ばせば良いでしょう》
|『私やこの天使にそうしたように』
|
| やる夫が消滅しかけたレミエルを救ったのも。
| 『モーンブレイド』をクラウザーから奪ったのも、見返りを求めてのことではない。
|
| であるから。
|
|「やる夫、アイドルを信じて。ライブの力を信じて」
|「いや、そんなこと突然言われても」
|
| ズレているチクタクマン。
|
|「つーか、そもそも『 』に勝てる目があるのかお？
| アイツ、『虚偽の十壊』らしく能力も名前も偽ってたお」
|
| 想定していた対策は使えない。
| それこそ、本体を見つけ出してニャルラトホテプに殺させるのが最良なのではあるまいか？
|
|「起点だけを殺しても汚染された全員が『 』だよ」
|「俺なら殺せる」
|
| 『荒野の黒龍』なら、まず間違いなく殺せる。それはやる夫にも理解できた。
| クロウ・クルワッハを解き放ちこの不規則な精神の格子状構造すべてを破壊し尽くせばいいのだ。
|
| 接続する全員の精神は完全に死に至るだろうが、世界は救われる。
| これ以上拡大する前に病巣を摘出してしまえ。
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∧ミｭ ∧ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≧=- ..................................ヽ
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| : : : : : : /≧ﾆ ミｭ､ j:ｉ: : : ｉ| V: i: : : : : ≧三三三三三三三∨
|: : : : : : :i だr 刈ヾ i: : :j' ⅵ__ : : : : : : : :≧三三三三∨
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|: : : : i i: | ≧ﾆ ミｭ､ ヾ : : : : i: : : : : : : i
|:i : : ｉ| i;ﾘ , だｒ 刈ヾ ﾍ : : : i: : : : : : : i
|j : : :ｉ|.' ､ 弋z..:ﾂ /: :ﾍ : : i: : : : : : v
' i : :ｉ |ﾊ ｰ ｨ : : : ∧: :i: :j､: : :v
iλ: : : ヽ ｨ. : : : :ｨ : :', :i: i i: : v
ﾊ: : : r= j＼ ィ: : : : : ｲ : : : :i::iｿ j: ﾂ
ζi ≧､ ＿从: i ｿ ｰ ｒ ≦: : :,': : : :ｲ: : : : : :ｿｿ '
λ iζ ｿ' ＞ ､ い7:从/: :イｿ: : : : ／
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| だが、それではきっと。蒼星石も失われる。
| やる夫にはそれが選べない。心がなければできたかもしれない。
|
|「ううううう……」
|「なんとまあ、愚図で鈍間な豚かしら」
|
| 頭を抱えるやる夫を、『モーンブレイド』が踏みつけた。
|
|「なんのために『ここ』があるのか、あなたが忘れてどうするのです？」
|「……………お？」
|
| やる夫は顔を上げた。スカートの中が丸見えだった。
| 次の瞬間、『モーンブレイド』が全力でやる夫の頭を踏み潰す。
|
|「痛い痛い！ アンコが出ちゃうお！」
|
| 言いながら、やる夫は近くの書架に手を伸ばした。
| まずは名前だ『 』ではない。名前を与えてカテゴリ分けして、そして殺し方を見ればいい。
|
| なんてこった。当たり前の方法だった。簡単なことだ。
| 掴んだ本、薄っぺら。表紙には破滅の渦の立体図。タイトルなし。
|
| やる夫はボールペンで殴り書きした。
| 考えなくても勝手にその名が脳裏に浮かんだ。『虚偽』の能力で隠されていた名前も、やる夫の前では無力だった。
|
|「『引き裂かれた永劫』。キノコのオバケみたいな見た目してるお」
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,イﾆﾆ＼ ／二二二二二二ﾆ|
／ﾆﾆﾆﾆﾆ＞ 〈二二二二二二二./
／ﾆﾆﾆア''" ﾏ二二二二二二/
／ﾆﾆﾆ／ , ,,,､ ， ヽ二二二二二/
/ﾆﾆﾆﾆ/ ､,ｲ::V:::,ｨ=ﾐ-::..､ ',二二二二ｱ
ﾆﾆﾆア (､__,ﾄ､_ノ::::::::::)三三三ﾑ:::::::ゝ､,,,,ｨ=''"´ /二二二二ゝzア
寸ﾆｱ ､､,,ゞ｀:::::::ヾゝ:::::ﾏ三≫≪三=zzｲﾆア::::::,ｨ=ｱ⌒ 寸二二二ア′
ﾏｱ ヾ:::::::::::〈ﾑゞ三三ｱ′⌒｀ヾ三三ｱ::{{｀ゞィ:::::ゝ 寸二二ｱ
-=＜:::::::::::ゞ､:::ヾミゞ三三《《: ( ) :》》ア,,ィｱzzz彡:::::ゝーzｧ''‐ ﾏ二ｱ
｀ヽ::::::::::::::ヾ:::｀''ミ三三ﾐﾐ､＿,,,ィアﾆア::::::::::::::::::::::::彡´ 〈≧ｲﾆ〈
⌒>:::::::::::::::ヾゞ=三三≧≦彡アィ=＝ミ:::::::::＜ ﾏﾆﾆﾆﾑ
´≧:::::::::::::::ﾐミミヾ三三三アﾆ=-::::::::::::::::::::::::::＞=- ﾏ''"´
｀ヾzzx:::ヾミミミ三三三ｲｱヾﾑ===＝''"´´ ﾊ
〈:::::::｀ヾﾑゞ=三三三ｱ:::::::::}}}:::::彡⌒'‘. ﾏzz''"
/〉. ⌒)::::ﾑ{,,ィ川）（川ﾑ:::::ﾊ::}}}(´ ,zx
V ｀ﾑ{//川川川川ヾヽゞﾆﾆミzzｱ｀)′..}≧zア ‘，
/ヽ. 〈V∨ｱ:::::,ｲ川乂川从(ｱ⌒ゞ=ミ ゞ=- /二ﾆﾑ |i
{ﾑ /ﾆﾆ} )ﾊｱ:::::::(从从从从从ヾ::::.､ ／二二ニVl }i|i
ヾ{ 寸ﾆ} )ｲ从从(川)从川ゝ::::::ミ｀. /二二二二ニ| }i|i|
ﾏ〈 ､__ﾉ川从(川)ﾊ⌒)ｿ. /二二二二二ﾏ. ,'|i|i!
〈ｱ. (:(从)川从)从(、′ く二二二二二ﾏ i|i|i|!
∧. 乂从ヾ=彡⌒ヾ. ヾ二二二二二ﾏ i|i|i|'
‘， /ﾆﾑ ,ｨ=ﾐz,ｨｱ ′.. ﾏ二二二二ﾆﾏ ,ｲｱ
)' /三三〉. (′ ヾ二二二二ﾏ
＼ /三三ﾏ ヾ二二二ア ＿__
三＼ 寸三ｱ ,ｨ三ヽ 寸ﾆﾆｱ. ,ｨ _／///
三三〉 |三ゝｲ三三ﾑ ヾ二ﾆ/ ／/_／/////
三ア /三三三三三ﾑ )ﾆﾆ/ 〈//////////
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| こうして名付けられた九番目。
| 虚偽の戒めを壊りて現る破滅の化身。
|
| 『人類補完計画』とは偽りの名。
|
|
|
| 真名『引き裂かれた永劫』。
|
|
|
|「倒すところまで百話記念でゆめがんばっちゃう？」
|「いや、無茶言うなお。やってやれねー事もないけど」
|
| やる夫は言いながら、『隻眼の老人』を見た。正面からその顔を見据えた。
| 一つ目恐怖症が、発症して悪寒震え発汗頭痛吐き気が巻き起こる。しかしそれでも、やる夫はオーディンを見るのをやめない。
|
|「頼めますかお？」
|「可愛い孫の頼みを断るような男に見えるか？」
|「血縁に恵まれてないもんで」
|
| 二人して笑う。押し付けられた恐怖症さえなければ、きっともっと仲良くやれてきただろうに。
|
|「よかろう。魔力を回せ。最高の『エインヘリヤル』を用意してやる」
|
| 『エインヘリヤル』は北欧神話で語られる死せる戦士の一団だ。
| 滅びを前提とした北欧神話では、最後に訪れる最終決戦に備えて最高の戦士たちの魂をストックしている。
|
| その魂収集者をワルキューレと呼び、最高指揮官こそがオーディンである。
| 『隻眼の老人』は、やる夫に親しい死者の魂をを呼び出せる。彼あるいは彼女の技や魔術を模倣できる。
|
| 例えば、屈木頑之助の『蝦蟇剣法』のように。
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ノ:.:.:.:/.:.:/.:/.:./.:/|:/ jﾉ ,彡ﾃ ／-､ / //Y _ﾉ ヽ:.＼:.:ﾍ
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.f.:/.:.:l:.:.:.:.!:.ﾊ:.ﾊ:lヾ.ヾ、､ _, ´ _,. -――一'´ｰ‐' ￣￣｀ ()f }ﾊ
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V:.:＼:.ド､ヾ_,ｫ彡__/ ／ ￣ ｀) _ ｀ f_)廴}
∨:.:.{｀-彡ヌ.ｰr1Yﾍ f⌒ / _,. -―￢ア/ {
. Ｖ:.:∨,ｲ{:O:}/ //}｜ r‐ } ／´ ノ}´ ,′ (_) ､_丿
. Y:.:.ゝ｀ニ´ /// ﾊ._, ｰ'_ノ ,.r‐'´ｰ'´ / __ {_ﾉ廴ﾉ
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ヾﾊ:.:ヽし(_){ f.) / ,.イ_,ノ ／ ,.--､ {__ﾉ /
ヾド≧ｰ､ | | ∠ ‐' ,. ´ ゝ._ノ_ {_/／
ﾄ､ ヽ く._ __,. '´ -'､ ,/廴.イ
,ハ ＼J(__)￣ (__) ア´
/ ＼ ヽ._廴r__Y(つ､__(__) ⊂_ア´ ￣｀＼
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| しかし、『引き裂かれた永劫』を倒し被害者を助ける。
| そんな奇跡のような事が可能な誰かと、やる夫は知り合いだったろうか？
|
| 『引き裂かれた永劫』は被害者全員と同一である。
| 全員の記憶と精神と快楽がどうしようもないほど癒着した構造体だ。
|
| 普通ならば助けられるはずがない。
| 言うなれば溢れた水をコップに戻す行為に等しい。覆水盆に返らず。
|
| 必要なのは神の奇跡、不可能の突破、因果律への反逆。
|
|「えーと、チクタクマンさん？」
|「ゆいでいいよ」
|「ゆい、やる夫の脳を頼むお」
|
| やる夫は寂しそうに笑った。瞬きするゆい。すぐに大きく頷いた。
|
|「ゆめ任せて！ わたし、やる夫の心を守るためなら何でもするから！」
|「よし、じゃあやるとするお」
|
| 差し出された『隻眼の老人』の手を掴む。
| やる夫は深く息を吐いた。
|
| いく夫の野郎に感謝するのは心から癪だが。
| お陰で。
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／ ＼
／ ─ ─＼ あーその。
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 今までお世話になりましたお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「気にするな、所詮儂は呪いの類。せいせいすると言うものであろう？」
|「…………寂しくなるお」
|
| 一つ目恐怖症には悩まされてきたが、それは心からの言葉だった。
| くしゃりと、破顔する『隻眼の老人』。
|
|「湿っぽいのは好みではない。喚べ。汝に宿す力の名を」
|「やる夫の知る最強の二人の力を借りるお」
|
| 即答。やる夫は皮肉に唇を歪めながら、胸に下げた女物の指輪を弄る。
| 曹操華琳からのプレゼント、彼女の親友だった女の形見。『 』の指輪。
|
| それは、未来に広がる無限の可能性を意味する。魔力と脳が許す限り。
|
|「『エインヘリヤル・リブロードキャスト』」
|
| 死者がやる夫の道を作る。
| 彼に力を貸す者たちの名は。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ﾍ , ィ
ノ-┴／ |
/(__／ _ ├ .､
_Γ ￣ ﾞ ﾉﾄ､:::＼
( ヽ_＿＿ｒ‐く/ ＼:::ヽ
￣7 ＿ｰ┐ ヽ::‘，
ﾉ´ ￣ ! ',::::|
＿＿＿ (_ ｨ::┬' { ∨
／´ ,ｘ-‐┬-. ､ | |::/ ＼ ノﾍ
. // ／.: :,ｲ :|＼: : ＼ | ﾆ / ／ ＞くｰ―'
/ ! /: : :‐７ !:/ ⌒Y: :|ﾘ `ーｘ= _／ / 二≧､
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| ﾊ ＼: :＼''' __, '''ｲ :ｉ:| / |:|ﾚ ∨ /７ ', l、
|／|: | i| ::丁==┬くi |: |:| ﾊ∧ ├| |ハ
|: | iﾚく＼__/＼入: |:|. |: Vﾍ ∨ || ',
|: i/::::::::ヽ Lﾊ〉|::ヽ |! / Ｖﾍ | 〃
!:/::::::::::::::ﾊ, ||| |::::::)|i: / ＞i| 〈 ハ
i| ＼＿ﾊ:」 | ||| |::_/:.∧ / ∧ / ∧ |
ｉ|: : | ﾊ::::ヽ!∠＞:::ﾍ: :∧ ノ ＿ 〉 |! / ∧ | |
. i:!: /L,{∧:::::::ﾏ三ﾊ::‐:＼: : ＿＿_{ ≧≠ '´ﾊ ﾊ l |
/ |/:/: レ:ﾍ:´:::ﾍ￣:ﾍ:::::::::}_ﾍ / ―∧ ,ィ ／ ―― ､_ﾉ |
. ＿ /: /:/／＿_7::::::::;＞､:::Y⌒Yヾゝ、 / ＼＼ l | ／ ＼ __ | |
ｰ=≧／／:／::￣￣}:::::::人／>┴く｀ヽ:＼! | :＼ヽ人/ ＼＼ |
／(／／:∠=ﾐｘ_::::::::/:／::::::`仏＿ノ‐く￣:::＼ _レ{ i ＼＼
＞=-‐::´::::::::::::::≫======≠彡￣:::::::::::::::::::::::＼ / Ⅴ / K´
_〃⌒ヽ_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＿＿人 ＿{ i{ L_ 〃 |:|
{彡=ミｘ_::::＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿彡￣￣::::ﾉ| ／ ／＼ ＼ ｲ__ /〉
￣ミ≧ｘ二二二二二二二二二二:ｘ====彡(´丁⌒￣￣￣ヽ==―┘ `ー――― '
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ＼ヽ ﾉ ＿_ノ
`ー ￣
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{ ＼ ...-=≦ ≧=-
{｀ ＼ ＼ ...-=≦ ≧=-
. ､ ＼ ＼...-=≦ ≧=- }ヽ -､
＼ ＼ ...-=≦ ≧=-/ / / ',／／ ', 数多の世界の運命を束ね
.:.: ＼...-=≦ ≧=- , { -‐…‐- ／´ } 因果の特異点となった備府やらない夫。
-=≦ ≧=- / }ヾ . : : : : : : : : : : : : : : :≧=- {: : : :≧=-
≧=- ノ｀ { 八 ＼. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ＼: : : :＼ どんな途方も無い望みも叶えられる。
≧=- -‐ __ ／ ＼ :〉: : : : : :}､: : : : :ヽ : : : : : : ＼／⌒´{: : ヽ
∧: : :廴___ノ´＼///＼ .／´ {⌒,: : :i : : : { ＼＼:抖-: : : : :＼}｀ー‐‐′丶{ 避けようのない滅びも嘆きも。
. ∧ : : : : : : : : :.:ー=彡｀¨¨¨´ 「 Ⅵ{ : : {: : :7⌒ ヽ} j/ム}iⅥ: }i: ＼}､: :} ＼: } 全てを覆してみせましょう。
＼∧ : : : : : : : :.:ｰ=≦: :/} .､ /ヽ{ :/ `､: }: :/}/ｘｚｚ f爪ﾊ}:/:≧=- ∨ }′
: : :＼ : : : : : : : : : : :／: : ^´:}､＼/ ／ ｝:./ ん ﾊ 弋ｿ ｛ : : : ヽ この未来仏 弥勒菩薩が。
.: : : : :＼: : : : : : : :/ : : ／: : } ＼ .／ /`､ 乂_ソ , 八: }＼:}
: : : : : : : ＼: : : : 〃 ／:/:／′//{ :/ `､: ≧=- __ , ____:}/ : .‐-
: : : : : : : : : :＼: : :j/ : : }/ (/////} ‐-=:/ }＼: : . イ /: : : :＼ ＼
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼//∧ ⌒} ‐-ヽ ｀}ヽ}ア爪} 〉:iヽ: : : ＼ ＼
≧=- : : : : : : : : : -=≦: : : : :＼,/} 〉 } ＼ｰ=ﾐｒ' ヽ＼ー,: : : ＼ ー‐‐､
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ー＝≠´ /. : : : : : : '"´ ／ ヽ/∧／ }_ ∧: }＼/´ ( { : : : : . ＼:＼
} . : : : : : : '"´ -‐'⌒ヽ ＼} ヽ/ ∨ {__彡‐‐' 〉: : : : : .^ー＼:＼
／ . : : : : : '"´ / ___｀¨¨^ー i|‐-､__ノ´ﾉ｀¨¨ﾆヽ { ＼: .
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| 封印中のやる夫が見せられ続けた無数の可能性。
| すべての破滅、すべての終末、絶望の荒野。虚無の断崖。果てなどない無限地獄。
|
| その中で刻まれた、最悪の破滅の最初の一つ。
|
| 一つ目。
| 信仰の戒めを壊りて現る破滅の化身。
|
| 『滅ぼすもの テングサの歌』。
|
| …………ではなく。
| そうなる直前、衆生を救済するために五十六億七千万の時間を短縮して具現した存在。
|
| 弥勒菩薩に、不可能はない。
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☆ 次回予告！
心を尽くせ。
精神を尽くせ。
思いを尽くせ。
力を尽くせ。
それがお前の神への愛だ。
寛容であれ。
情け深くあれ。
礼儀正しくあれ。
そして妬まず、驕らず、誇らず。
利己的にあらず、苛立たず、恨まず。
不義を疎み、仁義を尊べ。
すべてを忍び、信じ、望み、耐えよ。
それが愛だ。
そんなこと。
言われるまでもなかろうが。
次回、最終幕百一話『愛のカタチ』
果てに見るのは破滅か死か。
末法少女見参
主人公の復活、大増ページでお届けします
十壊寸前の末法少女やらない夫を召喚して十壊.にぶつける！
救済にはアインヘリアルから成ったザルヴァートルをぶつけるんだよ！
乙
実に懐かしい面々だ
勝ったな風呂入ってくるわ！
､ / |/ ／ ／ -=＜ _
/ ∨ ／ ＼
l＼! ／ ￣ヽ. ＿＼
∨ヽ / ／ -― ＼
∨ /| | ／ ＼
∨ ヽ| | ／/ ＼＿＼
l ト ､ l / ／ ＿ ＼
l ! ヽ _ , - ＼ |
i! ｀ ´ ´ ´ } ／ トリ
{ヽ i ∨
∧.r＼ ヽ ／,､ Y |
l ヽfｫ､{ / _, ＿ -‐ 'Z ﾐ// / } ﾊﾉ
／.} ｀ ｀ ヽ - ‐ﾋ て不ﾇｯ 〉-' } /
/. : ∧ / ｀ ¨¨´ /ノ／!´
/. : : : ∧ / _ ｲ从ﾄヽ 桜、私の後ろにいなさい。
/. : : : : : ∧〈 / ｝: }: | あれに巻き込まれたら死ぬぞ。
/. : : : : : : : ∧ ､ / ,,ｨ｝ 〉. :.|
{: : : : : : : : :{: ∧ ヽ , ' ,,ｨﾁﾆ /. : :.|ヽ
|: : : : : : : : :|:ムﾑ , ' _,,ｨﾁﾆニ／. : : :.l: :|
|: : : : : : : : :|:{ﾆ/ .＞ - r＜ﾆﾆ彡三ニ=.' : : : : : : :/. :.ヽ
∨. : : :／._:.!:ﾄ.| {rﾆﾆ=-.':´:.: : : : : : : :: : : /. : : :∧
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|「庇護者を気取ることでズタズタにされたプライドを保つのやめなさいよ。
| 今のあんたよりも桜の方が強いでしょうに」
|
| 新宿衛生病院裏口、競い合う師弟。アンデルセンとアリカ。
| 見守る男女。『弓兵』、ルイズ、間桐桜。
|
| アリカによる即死コンボで致命傷を負った『弓兵』であるが、そもそも格好をつけて戦おうというのが無謀だった。
| 二日前、間桐屋敷での戦い。生きてる方がおかしい重傷を負った慎二と凛。
|
| 対して、外傷こそ無いが無茶な魔力利用で『弓兵』は内側がボロボロだった。
| そのまま魔力が枯渇して死んでもおかしくない。
|
| それを見越してのルイズの憎まれ口に、『弓兵』は頭を振った。
|
|「そういう問題ではない。あの男、『天使の塵』アレクサンドル・アンデルセンは怪物だ。
| 怪物だが……実は母に一度も勝てなかった」
|「夢宮様に？」「いや、あの婆さんも大概でしょうが」
|
| 『弓兵』は懐かしそうに遠くを見た。今は亡き母に想いを馳せているのか。
| その教えに、技に、力強さに。
|
|「アンデルセン神父の方が確実に強い。しかし、彼には致命的な弱点がある。
| アリンk……アリカはそれを見越した上で一騎打ちを申し込んだ。
| 勝てる見込みは無くとも、一糸は報いれる可能性があるからだ」
|
| 弱点。『弓兵』はそう言いながら苦笑いした。
| どこが弱点なのだろうか、と。相手が強ければ強いほど、彼の弱点は無意味になる。
|
|「アンデルセンの装備、魔術、技術。全てが対悪魔及び邪教徒に特化している。
| 信仰ではなく技能を鍛えて戦うアリカや北斗拳士などは、アンデルセンには厄介な相手となりうる」
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_ rー､rー ､＿ _
_ ノ／ ￣ ￣＞―´‐｀‐ ､＿ _ ＿_ __
/ノ´ ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._:＞､ー｀┴￣'-ー‐ ^ー｀-r_- ､
,.ィ'´ ,. -‐ｧ'7:.:￣:｀ヽ:.;.:-‐:.:/__:⊥ -- 、 ｀ ｰ'r 、
lノ ,.／ /:..::.:ィ:.:￣:｀:.:.:.:.:.:.:.:._:.:.:.￣:ヽ￣ ｀ｰ､
/ﾉ {（ |:.:.ｨ:/:.:.l:l:..:.＼:_:.:.ｰ:､＿＜_￣ {j_
rｧ'´ ｀ ! !{:ﾊ:..:N｀ヽ､:.ヽ｀ヽ､ヽ}/ j_,ヽ
ｨ' ７´ r_{┴_ミ{ ｀ヽ!_-‐ヽ7
'′ ,／ﾍヽf7:ぅﾄｰ ´ィ:ｫjゝﾊヽ
//-― ﾊ ￣ i ￣ /ｧ‐-l!
l! l ヽト ,-､ ／/ ヽ 『かもしれない』
| ヽﾄ｀ ー ７／ }
i l l ￣ / / って、ばっちゃなら言うんじゃあないかな。
l ヽ! ／ ｨ /
（⌒ヽr- 、 ヽ ／ / /
rｰ-ヽ.＿＼ ｀ ーｧ=､‐- ' ／ /
｀ ー-- 二｀ ーヽ ￣ ヽr＜!＿/＿ __. -―- 、
＿ ノ｀ ー ｀二_ ﾉ ￣r―‐-､- ､ ｀ ｰｧ
(_ _ - ―-_┬ ´!l ーく _ -- ､-_、＼-､￣
￣ }ｰ^T７十i_ ＼ -‐-- ､_-､ ＼ ー' ´
/ 丶､Y´j i｀ ー＜￣｀ ー' ｀ー'
/ / / ヽ
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| 後方の解説に苦く笑いながら、アリカ。
| 『ガンダム』も『蒼天の青玉』もない、生身のアリカ。
|
| 対するアンデルセンは両手の指という指に『銃剣』を挟んだ独自の構え。
| 鉤爪のように構えられた『銃剣』は飛び道具としても白兵武器としても厄介だ。
|
| 彼の背後から渦を巻いて周囲に広がる聖書のページ。聖別された巻物。噴霧される聖水。
| これらは全てが悪魔や邪教徒の行動を阻害し魔力を削ぐ結界。聖なる力による悪への圧倒。
|
| アリカが『普通の女のコ』だとわかった上で結界を張りに張る。
| 結界はアリかには無意味であるが、プレッシャーを与えるには十分だった。
|
| 悪魔の力を扱うという選択肢を奪われた。
|
|「アンデルセンの結界は偏執的にも見えるが、アリカへの敬意であると同時に我々への警告でもある。
| アリカへは本気でやってやるという意思表示、だが邪魔に入ったら容赦しないという拒絶」
|
| もう一つ。アリカは一瞬で張り巡らされる結界のど真ん中を走り抜きながら考える。
| 今、この一瞬。この数秒にも満ない時間。
|
| アンデルセンが結界の展開に使う僅かな時間。
| そこしかない。とアリカは考える。
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＼ ＼ ,Y´＼ ヽ. }
＼ ＼ i´ ＼ ヽ ノ,!
＼ ＼ ヽ、 ヽ ノ,〃!
＼ ＼／＼／:::)､ ﾉ 〃 人
＼ ＼ >x／{ゝ 〃 ／.イ
＼ ＼ .仆===≦ = ヽ>┐
／ ヽ ヾ.:｀:.:‐=ﾆ三三}7∧
ﾊﾊゝゝゝ／ ／＼ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.￣￣/
､ﾉ｀｀::::::::::::::／ ／(_ﾉ,, ＼:／ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＝/
､ｼ.:::::::::::::::::／ ／:::::::::彡 ／ ／.:.:.:.:.:.:.:.; -‐=く
_ﾐ::::::::::::::::／ ／.:::::::::::::::ミノ＼ ＼::. -‐く ＼ 持ち味を殺したな？
ﾐ:::::::::::／ ／.::::::::::::::::::::::{:.:}.:}:.:`く／ ヽ ）
_)__:／ ／.:::::::{i:::i::::;::::::::::Y:.:.:.:.:.:/ ／ ｀ヽ___／
＿_(／ .<:::::::::_:::::}乢ﾑｨ:::;:斗┐:.:/ ／ /｀ヽ
....::´:::::／ ／ヽ｀ヾ( ,)-‐( >':.:.:／｀ヽ} / }､
..::´:::::::::／ ／ｰﾐﾐヾ｀` ｀ﾆ彡::'".:.:.:.:.〃 ,／ﾉ 人 ノ / 〉
／.::::::::::／ ／.:.:.:.:.:.:.:＞ｰ=ﾆ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.{{／{{ { ､ ノ ∧
. /.::::::::::／ ／.:::::::::≠´.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::{{ 八ﾊ ノヽ、 ´ .ｲ /〉
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| アンデルセンがアリカの側頭部を蹴り抜いた。
| たたらを踏むアリカに追撃、蛇のように動く蹴り足が顎を狙う。
|
|「む、躊躇があったか」
|「どちらにですか先輩」
|
|「無論アリカにだ。アンデルセンが結界を展開している間を好機と捉えたまでは評価できる。
| しかし直感だけで動かなかった。無駄に思考をした。それが隙を生んだのだ」
|
| 脳内での一瞬。それがアリカ行動にどの程度の遅滞を生んだのか。
| 何にせよ、アンデルセンを前にしては過分であった。
|
| 『弓兵』の解説を嘲笑うかのように、魔力や結界無関係で格の違いを見せ付けられた。
| 見せ付けられたが、アリカは先刻承知の上。
|
|「なんかズルいかなって」
|
| 踏み止まり、頭を下げて蹴りを避けながらアリカが嘯く。
| アンデルセンの脚は長い。距離を取られてはアリカに勝ち目はない。
|
|「手加減でしょ？」
|「笑わせる」
|
| 地を蹴り距離を取るアンデルセン、アリカは横にステップ、フットワークで的を絞らせない。
|
|「アリカには無意味な結界を手加減と評したか。だが、侮られたならばそれを利用しない手は無かったな」
|「誘いだった可能性はないの？」
|「もしもそうなら、既にアリカは倒れているよ」
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／ ／ 、 ＼ ヽ 、
l / ｜ ＼ ヽ ヽ ',
|/ / 人 ヽ, ', | ! 怖っ
|| !. ｌ ､| / ヽ l /l |_, ! ヽ
ヽ |l | /ヾ|、 ノイ ／! /_,|ｲ'ｌ´ | ＼ 近距離パワー型って当てれば全部即死だから嫌よね。
〉!ヽ＼|ｰ,‐≧､,ノ ／_ノ≦＿__| / ト､ ヽ
／ |＼! ゝｰ'ﾞ ￣ ´ ゝ、_ノ ７ .! ヽ ＼
／ | | / ｜ヽ、| 〉
ヽ | ｌ u u./. |:::::::メ, /
〉 r'ﾞ/ ヽ ｰ─--､ / |::::::::::::}_ /
／ {./ |＞- ｀ ｰ一'_, イ /:::::::::´::::::ヽ ｀ヽ
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| アンデルセンが左手の銃剣を投擲、同時に踏み込んで右手の銃剣で斬りかかる。
| 横並びに迫る銃剣、左右の回避では避けきれない。当然後ろにも。
|
| 飛び込み前転で対処するアリカ、頭上を飛び越える銃剣、振り下ろされる右刃。
| ヘッドスプリング、飛び上がるアリカ。両足打ち上げキックで顔面狙い。
|
| 紙一重で避けるアンデルセン。ローキック。丸太の様な脚が斧のように振るわれた。
|
|「いただきます」
|「上手い、脚を取った！」
|
| ノールックで頭の後ろの軸足に絡みつくアリカ。蛇のような、重力を感じさせない異質な動き。
| コーナーポストやロープを起点に飛び回るルチャドールのように、見るものの虚を突く。
|
|「ドラゴンスクリュー……いや、なんと呼べばいいのやら」
|「ドラゴン……？ なんですか先輩」
|
| 捻れながら倒れるアリカ、バランスを崩して前方に吹っ飛ぶアンデルセン。
| 手にした銃剣をアリカに射撃、ハンドスプリングで態勢を立て直す一瞬の隙を自らカバー。
|
| アリカはアリカでコマのように回転しながらジャンプ、壁に着地。
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/∨ / ｒ' ／ r/ﾐ=-
N .ｌ ｌ ｀ヽ、
ヽ ｀ヽ｀
. ヽ ,, -‐┐ ﾐヽ、
. ｌiヽ-、, '" ｀'ヽ ヽ、 ドラゴンスクリュー。
ｌｌ _, 斗-‐' ヾ'"ヽ ｌ｀ 伝説のドラゴン・ニンジャが得意とした投げ技さ。
ﾄ.、_､ ＜r七ﾁ７ﾞ 〉 , ｌ}
. ｀,ﾓ〉 ｀ﾞ ゛ .,、/ ｌ 相手の蹴り足を掴んで捻り投げる。
. ヽ′ ｌ . ｌｌﾘ 膝破壊と投げ技を同時に行う危険な暗黒カラテだ。
ヽ ‐ 一 ／ .ｌｌ
ヽ、__ ／ _ｈ＿_
＿＿r<-‐ｌ ┌'"￣;;;, -‐'ヽ__
, n.'":￣:::::::::::ｌ::/;;┌―┴ｉ┌'"::::::::::::'::'└ 、
／::::::ｌ::::::::／:::r 、ｌ‐-ｌ＿＿_ｌ;;ｌ_;／::::::::::::::::::::::::｀ ヽ 、
. /::::::::::::ｌ::／:r-┘//;ｌ ヽ'" r-‐h:::::::::::::::::::::::::::::::,:::::::'::::::｀ヽ、
ｌ::::::::::::::/:::::::｀/r｀>========>-<-、:::::::::::::,:::::'::::::::::::::::::::::::ｌ
.. ｌ:::::::::::/::::::::::/ //;;;;;//;;;;;;;;;;;;/:〉〈｀ﾞ::::::/:,::::'::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ
┌'ヽ::::::::i:::::::::::ﾄ'"~;;;;;;//;;;;;;;;;;;;;ｌ:::ｌ ｌ:::::::::ｌ"::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
／::::::ヽ:::::ｌ::::::／;;;;;;;;;;;;;.ｌ.ｌ;;;;;;;;;;;;;;ヽ:ｌ__ｌ:::::::::ｌ:::::::／::::::::::::::::::::::::/
／:::::::::::::::ヽ:ｌ／;;;;;;;, -‐'" ヽ、;;;;;;;;;;;;ヽ::::::::::::ｌ_／:::::::::::::::::::::::::::/
. /::::::::::::::::::::::::｀ｌﾆﾆﾆ rf'"｀ﾞ゛ヽ、ヽ、;;;;;;;;;ヽ:::／:::::::::::::::::::::::::::::::::/
/:::::, r―‐- 、:::ｌ;;;;;;//;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;Y ﾄﾆ=/"＼':::::::::::::::::::::::::::::::::／
. ｌ::／ ／ヽ｀ﾞ‐-,,ｌ;;;';";ｌ;;;;;;｀ﾞ;;;_l_lr'￣｀＼ .＼:::::::::::::::::::::::／
. /rｌ―‐'"~´￣＾ヾヽ::::::ヽ;;;人;;;;／ /￣｀ﾞヽ、 .｀<":::::::::::::::::／
. ./::ｌ_ｌ::_::::::::::::::::::::::::::｀ヾヽ::::ヽ￣｀ﾞ‐-＜｀ヽ、｀>'"::::::::::::::::／
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| アリカが跳ぶ、外壁に衝撃でヒビが走る。
| アンデルセンが投擲で迎撃、空中で避けられない。いや、空気を蹴って軌道修正。
|
|「生身で音速突破だと……っ」
|「忙しいわね」
|
| 解説と実況と驚く役を律儀にこなす『弓兵』。
|
|「ふっ」
|
| 飛来する銃剣を払うアリカ。ただの投げナイフではない、弾いた衝撃で横回転。
| そこから回し蹴り、大鉈の如き一撃が空を切る。
|
| 肉薄していたアンデルセン、蹴りのタイミングを見事にずらして斬りかかる。
|
|「流石だな、緩急の付け方が巧み過ぎる。
| 今のキックはアンデルセンでなければ直撃していた」
|
| アンデルセンの一撃に、エルボーで合わせるアリカ。
| 鉤爪のように並んだ四本の銃剣が、アリカの肘から腕を三枚おろしに……しない。
|
|「壊すのが目的じゃあねえからな」
|
| 刃が肉に食い込んだ瞬間、アンデルセンが手を離していた。
| 銃剣は豆腐のように肉を切り骨に達しながらもそれ以上は切り進まず。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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..,....::::::::::::≧=ﾐﾒヾ＼ヾﾘ/／,, ‐=ﾆ三
. . : : : .:/:::::::::::::::::三=ミﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞヾ''" ｀ﾞミ ≪ r‐ ､ , ‐ ､
／￣￣｀: : ＼ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:...＿r─f￣} Ｖ /
. ＼￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀!::::/＿|:ｰ┴'⌒ ⌒| /
. ｀ ────────────r===ミ┬r‐ ==ミ─‐─┐Lr{ :|:/
/´￣￣￣￣:.: : :ﾐヽヽヽヽ:}＼:';,ゝ ___ノ==乂____ノ¨r':}:.:.}└‐j｣ :|'
r::'-‐=ﾆニニ=ミ: : : : ＼:}:.}: }:';.: : :';ニ /:::| ヽ ＼｀/ /:.:/::::::::::::, /
. r‐': : : : : : : : : : : : :｀ : : : : :}:VＶ: :',＿_ ;ﾆ ヽ｣_／ 〉::/:.:/／:::::::::::, /:::.
/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ￣￣￣¨ア⌒ヽレ'／￣￣｀¨¨７＿______/ ::::::.
. |.:.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :／ ／＾¨´￣￣￣¨ ヽ￣｀ヽ 0|⌒ヽ:,
. |.:.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:／ { / _/＿＿」: : : :〉
＿ ＼＿.:.: : : : : : : : :.:ο: :ο: :ο: :ο: :ο: :／/ } } ￣}:＼__厶::}／/
:.: : ヽ ヽ :｀: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :／ ∧ / }─〈 : : :., /::,'／
:.:. : : :, ｀¨¨ ‐- .: : : : : : : .:.:.:／＿_.ム_＼ ｛｀ヽ .ﾉ___ノ:.: : : :,::::}
: : : .:.:.:, '::::::::｀ ＜: :∠＿＿＿_／⌒７⌒:...... } /.:.: : : : :.∨ どこで覚えてきたか知らんが、
: : : : : : , '::::::／⌒＼:::::::::|::::::| :::::::::::::/／:::::::::::::::|｀ ｰ‐r'¨´.:.: : : : :.:./ 軽率な動きが目立つな。
.: : : : : : :, /＼{: : : : : : ' ::::::|::::::|::::::::::::〃 :／｀ヽ:: └r─''_＿__: : : :／
.:.: : : : : : :, ＼:.:＼.:.: : : :'.:.:.:.|::::::|:::::::: / ／.:.:／└:::::└‐ ┐ l ／ 目先の小賢しさに
.:.:.: : : : : : :, /.: :＼:.:＼: .:.:.': : |::::::|:::::::/{/:. ／..: : : :.＼ :::::::::| | 振り回されていて滑稽だぞ。
:.:.: : : : : : : :, /: : : : : ＼: : : :.}:.:.:|::::::|_／:::{／:/.: : : : : : :.:}:::::::::| |
.:.: : : : : : : : :, ＿___／.:.: : : : : : : : : :.:ﾉ:.:.ﾉ:::::::||::::::::{／.: : : : : : : : :}:::::::::| |
:.: : : : : : : : : ; /:.:.:.:/{.: : : : : : : : : : :／ ／:::::==||==:: ＼: : : : : : : : /::::::::::| |
: : : : : : : : : : ;＼__／{:.:.:. {:.{.:.: : : : : : : :／ ／ ::::::::::::: ||:::::::::::::::＼ .:.:.:.:／ ::::::: /| |
.:.: : : : : : : : : :,: : : .:.:ﾊ: : : :.{: : : : : :.:／ ／ ::::::::::::::::::: ||:::::::::::::::::::::｀¨´::::::::::::::/ :| |
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|「なかなか難しいね、真っ直ぐだけじゃダメだとは思うんだけど……」
|「私じゃあないぞ」
|
| 性格悪く、相手の虚を突いてミスを誘発して行くような戦い方は、確かに『弓兵』が得意そうだ。
| しかし、今回に限ればアリカの師はイナミである。
|
| アンデルセンの責めるような視線を感じて手を振り否定する『弓兵』。
|
|「うん、エミヤさんには何も教わってないよ」
|
| ここぞとばかりに死体蹴りを欠かさないアリカ。アンデルセンが眉をひそめる。
|
|「くだらん。実にくだらん。貴様はそこのくだらん男の事で集中力を欠いて負傷した。
| 相手が相手なら死んでいた。心からくだらんな」
|
| むき出しの犬歯同様に怒りを隠さないアンデルセン。アリカは『弓兵』を一瞥。
|
|「的を見ないで射れるものか。目標なくして歩けるものか。こっちを見ろ夢宮アリカ」
|「…………」
|
| 左肘に突き刺さった銃剣を引き抜きながら、アリカは唇をキュッと結んだ。
| 筋肉がギュッと締まり流血が止まる。両手で頬を張るアリカ。集中力、集中力。
|
|「でも小賢しさはやめないよ」
|「付け焼き刃がこの俺に通じると？」
|
| アリカは息を吐き、前に出た。無造作な歩み。
| 彼我の距離は５メートル程度、ゆっくりと縮まる。
|
|「…………」
|
| アンデルセンにまで足手まとい扱いされた『弓兵』が口を噤む。
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_:_:_:_:_:_||_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:/} ＞-─--- く_
:.:.:.:.:.:.:.:||:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: // ヽ{ __ ）
:.:.:.:.:.:.:.:||:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| | ヽ_/ Yー─く
:.:.:.:.:.:.:.:||:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| |ﾄ､ }i ,l' !
:.:.:.:.:.:.:.:||:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| |_入 /}} {＿＿．'´
￣Zミ三ミ＞＝＝≠=-- V/彡＼＼_ _ _ ノ .|:| ふ、くくく。
. Σﾆ=-r≧^ミﾐﾐi;;杉彳≠''^゛彡ﾑ＼＿＿＿_ノ::| なんだそれは。
,ｨ彡三ﾐ ､ ,; {三ミﾐ Lzzzzzzz|
Ⅴ⌒Vｲ-==x､ } {'' ,,x==- 彡┌──┘ |￣ 無形の位の真似事か？
::::V)人 Y ⌒ヾﾐ}}={に〃⌒ヽ /ｲ| ---t-┘ 後の先狙いか？
:::::::V ﾄli }}=≠={{ li/!ﾟﾚ| |
:::::::::',:::| ゝ ___ノ | | ゝ ___ノ ,'∠| | 無謀だ。蛮勇だ。愚行だ。
:::::::::::ﾄ|l;;;,, | | ,,;;, {:: /| |::＼ だが。
:::::i:::::|ハ r,,､_＿ヽ| |ﾉ＿__,,ｨ ﾉ/:/: | |::::::::＼
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｀ーv--人,r--､ Y|| i
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| 一歩一歩、何の危険も感じていないかのように悠然と進むアリカ。
| すでに距離は３メートル、互いに踏み込めば必殺の射程。それでもアリカは止まらない。
|
| アリカとアンデルセンの間の空気が互いの気迫で歪む錯覚。
| 実況解説が唇を噛んだ。説明したい。
|
| 進む。
| ２メートルを切った。
|
| この間、アリカもアンデルセンも涼しい顔。
| だが、二人の間では凄まじい緊迫感と気配によるフェイントが飛び交っていた。
|
| 互いにタイミングを待っていた。
| 相手が本当に攻撃してきたならば、その瞬間に後の先を取る。捌いて必殺のカウンターを入れる。
|
| 必要なのは、相手を先に動かすことだ。だから攻撃の意思を飛ばす。殺気を飛ばす。
| 反応したら負ける。だけれど、本当の攻撃には反応せねばならない。
|
|「悪くないぞ」
|
| アリカが１メートル以内に入ってきた。そして、ニッコリと笑った。屈託なく。
|
|「『抜きな』ってばっちゃなら言うよ」
|「言うだろうな」
|
| その笑顔が真夏のヒマワリみたいに清々しくて。アンデルセンは唇を歪めた。
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／⌒>'⌒ヽ、
／´ ／ ／三ゞ｀
／ ／' ／ｨ⌒｀｀ , -_‐ 二二ヽ、
// 〃／／ ／／ ヽ
// 〃 ／ /./
{＿_/／ ｌ ｆ
（ ） | | _ -_‐ ニ＝＝=､
/ーr' _.. ,-'≦＜――､‐｀二ヽ ヽ
{ / ／三! ヽヽ-ヾ＼｀ヽ｀ゝヽヾ丶 ＿_
人ｲ __/彡彡| ! ヽ＼､ヽヽ ､＼ ､ヽヽ ／ .ｨ≦ﾆヽ
ｆ 〃 _／ Ｙ彡彡_'| !|ヽ{ ＼ヽ ＼ヽゝゝ､ヽi! rﾍ∠三三ミ､ゝ
＿ 人辷匕rヽ!三彡彡ﾊ!／.二. ｀ ´_-ﾐ }iﾉﾘ ィ´ ゝ' ￣￣ヽ＼ﾐ､
_r辷r ｆ ﾉ rｲﾉ l三ﾆ彡ｲ /r心,｀ ｆ心 ｲ_' _／ ／ ） ）ﾘ
_r辷r'´ 人ｆ rｲﾉ ﾊミ三∠__ ｀ いり ､'ｰ' |=ミヽ ／ ｰﾉ´ ´´
_r辷r'´ f ノ rｲﾉ ヽf⌒￣ヾヽ￣ __＿_ ! リ r'廴 -'´
_r辷r'´ 人f rｲﾉ ＿ ＿ヽヽ) ﾉ ﾘ ∨ / /へ_ ィ´_ノ
r辷r'´ r'､ ノ rｲﾉ ／ヽ f⌒ヽヽＹ ‐' ／ r'´ /´
_rｲﾉ´ ＿;人ｿ ﾊｿ / L」＿_.ﾉ 辷ー- _ｭ- _.∠_ イ_／ ヽ_ -― ､
r'_ｿ´ r辷_／ ﾊf (__ ,∠＿〈 （ ﾉヽ Ｆ‐マｆ ／ ／ ﾉ＿＿
ｆ Ｙ ィ⌒ ソ´ ｆＹ＿＿辷_ 'ｰ←/ ト､ム-イメ´￣｀ゝ、 ／ Lヽ ＼ヽー ､
.に{_r―少'￣ ／￣ ＼ 丶 （ ,ィ´ ／￣｀ヽ l」 ＼ ）ヽ (ヽ ＼r‐ ､ _
ヽ＞‐'´ _／ rヽ ヽ ＞'' .辷<ヽ｀＝ゝ ヽ.ィ´＿＿」 ヽ (_／ﾉ
/⌒ヾ＜.＿ /／ / ／r‐'辷´,人_ ヽ、 ＿ ／ }_）―辷― ´ { } /
＿ _/-―〈__ノ.ムヽ＿ ﾑ⌒ｨﾚ＜´ (_ ! ￣ .. ィ／ ﾉ( ￣ヽ_＞＜ヽ f ｆ
ｆ ￣￣ ￣ YL__ヽ /／_,∠癶 ヽ ー | | ／ ' .ｨ''´ LＬﾉｰ ﾞ |
｀ 、＿＿ ｀T )） /_r'テ‐'＾ヒ ﾄ､ヽ、 ｜ l / ／ ! 「ト､ ヽ
}｀ ー‐ ´ }/! .人＞' ｀| ＼ ヽ ｜ ' /. |／ ＼ Ｙ ハ .}
／｀ ､ /八.-‐ '´ ＿∧ ｀ー､＼ ∨/__ /' | ／__ヽ ｀ ´
／ ィ ｀ ー ／ー ' ＼ ヽ ／￣￣ヽソ´ 〉 ヒ／／
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| 油断はなかった。警戒も解いていなかった。
| 言い訳をするならば、アリカの笑顔に目を奪われたからということになるが。
|
| そんなこと、口が裂けても言えるアンデルセンではない。
|
| 突然の震脚、すでに背伸びすればキスできるような至近距離。
| 反応が遅れた。打つも避けるも叶わない。
|
| 二人の足元にクモの巣状のひび割れができる。轟音と衝撃波。震脚そのものが爆撃であるかのように。
| 揺れと地響き。アンデルセンと『弓兵』が同時に感嘆。
|
| アリカのこの震脚は。
|
|「先日はそれどころでなかったが……これは本物だ。
| これまで何かを教えられる立場には無かったが……しかしそれでも、私はお前を誇りに思う」
|
|「モノにしたな？ モノにしやがったな？
| 突き詰めた、辿り着いた。こいつの仕上がりだけならば、夢宮のババアにも勝るだろうよ」
|
| どちらの言葉も声には出されず脳裏に消えた。
| 絶賛は必要なかった。必要なのは結果だった。
|
| うそっこで、まがい物で、偽物。
| 祖母の衣を借りて戦う偽りの戦士。
|
| その到達点。
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ﾄ. /´ ｀j}
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{:ハ{ j_}ｨ,: : : : ﾄくｰ'ニ)_jr-､-_―＿´ __
／77 ﾉﾘ}: ..:.:.:.ｰへ｀:ヽ⊥´｀ー^ー'｀ー ｀-＝ヽ-､
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／: : : : :ヽ:＿:_＞_´__ ￣｀ｰヽﾆヽ__ ｀ｰヽｰｧ
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Vヽ:_ﾊｰｲー／ _}j__l/..:.:.: : ヽ/-く__
{ ト-' ー {_7´:.:.:._ノ_:.: : ..:./〉: : / ｀ ー―- ､__,ｨ⌒! _rjノ},、
/ヽ〉‐＜｀:^:^:┬疋ｨ|!|:.ヽ:./‐'{二. /- ､＿＿_ ///ｰく'_,{三ｧ
r┴.くヽ:./∠二:ィく:.:.:.:ヽ|￣ ｀ヽ／/ ｀V//ー‐^ｰ'
ヽ:＿ ィ:.l`:ー:':.:.:l:.:.｀:T´!| ／ / ｰ'
l: :ヽ: : :.:.:.:.l:.:.:.:ヽ l |_／ ,/
ヽ: ヽ: :.:.:._L -'´7ﾄﾄ!_ =‐'＼＿ -＿..ニニニニ＿-- ､
ヽ:j／_ - ７ハY-､ ＿ ヽ三＿------ ..＿ ￣｀丶＼
/ ／ ,. -‐7 |｀:l |:.:.:＼ ￣ ￣￣￣ ‐-｀､ヽ ﾉ｀}
ヽ. イ:.:.:＿{ l-ヽﾄ＼=_}､ ＞}'´／
/_: j- 二_ﾍ. ヽ:::::::＼＼:l ―´フ 〉
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| 精密駆動空手、初歩にして奥義。
| 全身の筋肉と関節を余すところ無く使い切り、全ての運動エネルギーを一つの打撃に集中させる。
|
| 正拳突き。
|
| 直下型地震を思わせるアリカの震脚から、その拳に集まる破壊力は如何ほどであろうか。
| アンデルセンは即座にこれを、食らってはいけないと判断した。
|
| 致命傷を避け、刺し違えるつもりの一撃で対処。
| ……………………しなかった。
|
|「ちょっと！ アンデルセンさん！ ちょっとおしっこ出たんだけど！！」
|「安心しろ、俺もチビッちまいそうだった」
|
| アリカは正拳突きを放たず。
| アンデルセンも相打ち狙いの一撃を止めた。
|
| 周囲は二人が血煙になって四散する姿を幻視したが、実際には両者健在。
|
|「小技と読みの小賢しさより、己の愚直さを推すその姿勢は悪くない。
| 我慢比べにギリギリまで粘って勝つ。チキンレースとは馬鹿の選択だ」
|
|「バカって言う方がバカなんですー」
|「良い馬鹿だ。ある意味、あのババアよりやり辛い」
|
| 壁に刺さり、地面に散らばった銃剣を丁寧に拾いながらアンデルセン。
| 言われるまでもなく手伝うアリカ。『弓兵』をチラ見。
|
|「どうだった？」
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ヽ￣￣￣ ミ ヽ. |＼
, -=' ヽ| ヽ
＜ Y
ノ ｌヽ、 ﾚ /
-=≦ , 彡. ' ヽ、 ﾑ
/ / ヽ 彡 ＼ ヽ ／
/ 〈 ｀´ 、. ＼ ヽ,, /
７ ヽ、 ヽ、 Y
ﾚ .〉ｭ ｀ , __ /
| /ﾘ. ﾑ l夕
, 、.r‐=リ l ヽ ヽ. ∨ 寿命が縮んだぞ。
／￣ ≦=- .r': : : : : .ミﾆ=ｭ .! ＼ 丶. ／
／: : : : : : : ヽ: : : :ヽ: : : : : :.`..ミﾆｭ 、 イ 今のお前の拳を内功で流し切るのは困難だな。
／: : : : : : : : : : : ＼: : : :＼ : : : : : 〉ﾐﾐ/ ≧.
: : : : : : : : : : : : : : : :l: : : : : ＼: : :/ﾐﾐ/`' 、彳
: : : : : : : : : : : : : : : :|: : : : : : : ヽ:に/ /`. ┐
: : : : : : : : : : : : : : : :|: : : : : : : : : . rﾍ≧=/: : ｲ:| _
‐-: : : : : : : : : : : : : :|: : : : : : : : : : |.|.ﾄ, 乂ﾐ 介 :.rﾍ: : : `ヽ、
: : : : : : : : : : : : : : : ﾉ: : : : : : : 〔三Ⅹﾐﾑ. 人 : :|.|.|: : : : :l: ヽ
.: : : : : : : : : : : : ;.イ: : : : : : : : : : : { }ﾆﾆﾆﾆﾆ〔三Ⅹﾐﾑ: : :l : : l
..:.: : : : : : -‐= ': /: : : : : : : : : : : :.:{ .ﾏﾆﾆﾆｷﾆﾆ { }: : : :.ﾉ: : : l
.: : : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : :| .lﾆﾆﾆ.ｷﾆﾆ | |: : : : : : : :.|
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|「『男子三日会わざれば刮目して見よ、女子なれば尚の事』ってばっちゃが言ってた」
|「受けの技術は赤点だな」
|
| 投擲銃剣を弾いた衝撃に負けて回転したことである。
| あれは結果的に誘いだったが、受けきれなかったのもまた事実。
|
|「その上どの技も荒い。もっと無駄を削げ。最初から次の動作を予期して動け」
|「ええ?、難しくない？」
|
|「難しいならば練習しろ、カタを身体に覚え込ませろ。百通りのカタを使いこなせ」
|「さすがは『武僧』は言うことが違うな。アリカ、お前の正拳は一級品だ。だがそこに繋げるための技術に欠けている」
|
| 前から後ろから責められて不満顔のアリカ。
| 実はイナミにも似たようなことを言われていた。
|
| 故に小技と撹乱で距離を詰めていたのだが……男二人のお気には召さなかった様子。
|
|「はいはい、反省会はもういいから。この後は？」
|「内部に侵入して破壊工作だ。正門並みに派手にな」
|
| 爆音と破壊音の止まらない正門側。
| 今この瞬間にも、呂布とロビンの戦いに決着が付いたことを彼らは知らない。
|
|「俺は帰る。後は好きにしろ」
|
| シロッコへの義理は無いが、大手を振って敵対する気もないアンデルセン。
| 拾い集めた銃剣をトランクにしまい込んだ。
|
|「何かあったら小原の店に連絡しろ」
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／ ＼ -―＜￣ヽ ＞ ´
〈 ＼ ＞ ´￣ヽ ） } ＞ ´ ／ /
ﾆﾑ ｀マ ／￣ヽ_ - ┴≦⌒ヽ_イ´ ／ /
ニﾑ ∠＿ ／ ＿／ ／ / ふうむ。
二ﾑ 〈 )´￣￣￣￣／ ／ /
ニﾑ ! / ／ ＿＿＿_／ / どういうつもりだ
ニﾑ }⌒Y ィ７´ _,,ィーﾏﾆﾆﾆニi / レイ・ザ・バレル。
}ニニｭ､ ﾚ‐┤ | / ィﾆﾆ┴―'―ｫﾆニ| /_ ィ⌒ｫ
｀マニニﾆｭ、 } ! |!' /´¨ ／ ﾏﾆｊ / { / ／/ シロッコを裏切るつもりか？
｀マニニ} レ┤ i| ／ }ﾆ!′ / ´ 7⌒Ｙ
YﾆﾆL＿}ｨｭ」 |!. i ／ jﾆ′ / | |｀ー-- 、
ニニニ]ニﾆﾑ |!. |! ／ ﾉ７ / ｊ´ヽｊ ＼
ニﾆ￣}ニニﾑ | |i! ／ ／ /＼ / ,'
}ﾆ }ﾆﾆ}ニﾑｊ |{＼ ／ ｲ ＼/ー ｙ
ﾏィ⌒ﾏ７ ヾﾑ､. |ト≠、 / | / / マ
∧ 〈V::::::/ﾆﾑ ﾏﾆﾆﾆﾆﾆ＝―´ ィ_ノ /´￣V マ
/ V､_ノ::::::::マﾆﾆ/ ￣￣ ＿彡´ ／｀ヽ／ マ
＼ ヾ:Y(ﾑ::::::::::＞マﾆﾆﾆﾆァ―――､ ＿ ィ´ ／
＼{┐::ヽ:::::/:::::::::｀ー―ァ≦ﾆｒーｒ' ⌒ヽ ヽ／
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| 一方の地下施設、手術台に載せられた天龍とシグ。
| シロッコの悪行を暴くために侵入中の杏子班。横島とヴァイジャヤ。そしてレイ。
|
| レイの監視役兼お守りとして随行していた馬岱。
| 彼を切り伏したのは特徴的に道化た青い鎧。二つの三日月を縦に並べた異形の兜。
|
| ヤザン・ゲーブルの為にシロッコが設えた強化服『ハンブラビ』。しかも二人。
| 身に纏うのはヤザン班の精鋭、ラムサスとダンケルである。
|
|「裏切り……果たして先に裏切ったのはどちらだろうな」
|「なんだ、親父さんの事で拗ねてんのか？ 良いじゃねえかよ。素直に自分の利用価値を喜べよ」
|「…………なんだと？」
|
| 一触即発の雰囲気、軽口を叩くラムサスの脇で、寡黙なダンケルが睨みを効かせる。下手な動きはできない。
|
|「ギルバート・デュランダルの研究をシロッコに奪われたと思ってんじゃあないのか？
| シロッコは役立つものなら何でも使う。持ち主の生き死になんて関係なくな。
| むしろ、死ぬまでは共同研究だったなんて珍しいぜ？ あの人は他人の人格に興味がない」
|
|「ラムサス」
|「ガキみたいに甘えんなっての、言わせろ」
|
| 拳を握るレイ、ギルの理想とシロッコの目的は一致しない。
| そこに憤っても無意味だと、レイは心のどこかで理解していた。
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,/:::::::::::::{ : l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,､:::::::::ﾊ 俺たちゃまだガキなんだよ！
/:／ { : l::::::::::::::::/ﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧: ヽ::::ﾊ ＼
ﾑ ,/::::::::::ゝ､l::::::::::::::/、 :V:::::::l V }ヾ:::::::::::::::::::::::::ﾊ: :＼l : : :＼
/:::::::::::::::, -l:::::::::::{_:_＼_:ヾ::::l : Vl : ﾍ:::::::::::::::::::::::}: : : : : : : : : ＼
i:::::::::::::::/, ､ヾlV:.:l／ i;i＼ヾ:l-=.ﾘ=-/､､::::::::::::::::::}: : : : : : : : : : : :＼
. i::::/ ,l::::{ ゝﾘ Vlヽ. i;i ゝ､ / イi / }::::/V:::::}＼ : : : : : : : : : : : `ｰ-､
. i:/ !:;::>､､ ヽ ﾘ ヽ-ｰ' { =一/V/ V::l ｀丶､ : : : : : : : : _.ィ´＼
／ : : :>-´｀､ ,、 ゝ ﾉ/V Ⅵ ＼ : : : : : ／: : : : : >、
／ : : ／ : :ﾍ :ﾍ＼ ,／ヽ二ニﾆﾌ／ノ ﾘ ヾ_,,:／ : : : : :／ヽ!
,/ : : :／: : : : :人 ヽ｀丶､ _.ィ ´ゝ ゝ ＼: : : ,､' ＼
/ : : : :i ○: :／ ﾍ : :ヽ、ゝﾌ //０ / ＼{;;/ ヽ
i : : : : : ｀¨¨＼ : : : :ﾍ ０ >ﾚ / /､ / { λ ヾ
{ : : : : : : : : : : ヽ : : : :ヽ/ !／ >' : : : > ﾍ { > ／/
. { : : : : : : : : : : : :＼ : : :/｀丶､ / : :／ ｀゛ヽ-´¨´
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| 消沈するレイの代わりに声を上げたのは横島だった。
| 振り向くレイ、その目に映る素直な怒りに胸が熱くなる。
|
| 銃を構えようとしたレイの手を、ラムサスの手首から伸びた多機能武器『ウミヘビ』が打つ。
| 強化人間でなければ骨折する勢い、同時にダンケルが発砲。
|
| 杏子の槍の結界を貫通。二重にしていなければ横島は蜂の巣だった。
|
|「あのなあ、バカなことはやめとけよ。ガキならガキらしく大人の言うことを聞け。
| 抵抗するなら殺すぞ。俺は隊長ほど優しかねえ。それとも、てめえらを守ってくれる大人がいるのか？」
|
| ラムサスが手首を振る、板状の『ウミヘビ』がレイの頬を張った。
| 勝てる相手ではない。自走戦車やドローンを利用しても一蹴されるだろう。
|
| ラムサスとダンケルは、あのヤザンの部下として戦場を駆け回れる実力者だ。『武僧』全体で見ても上位にあたる。
|
|「ここに、いるぞッ！」
|
| 血溜まりから飛び上がる馬岱。しかし、種の割れた手品だ。
| 冷静に回避するラムサス、見事な動きでダンケルと交錯。二人の間に繋がる『ウミヘビ』の糸。
|
|「ぐがばばばっ！！？」
|
| 一瞬で馬岱が黒焦げになる。
| 炭化して崩れかけた身体に、ダンケルが銃撃。確実にとどめを刺す。
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/: :ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;--―――――, -'――――--'.: : : : ヽ
/: : : :ヽ;;;;;／: : : : : : : : : : , - : : : : : : ヽ: : :/: : : : ヽ: : : : :ヽ
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i: :l: : : : :l: : : : lヽ:ヽ: : |: : :l: : : : : : | l| ヽ,. -千T´ | ,V_,イl: : : : l: l:/
l: l : : : : :l: : : :.i ヽヽ: :.|ヽ: : : : : : : レr'´ヽ | .! , <'´/ l:|: : : :ｲ:/
l: l:. i: : : :l: : : :lヽ:ヽ:ヽ:l: i: : : : : : : | l _二二 ｲ;;;} l: i: : /:/
l: l l: i: : : l: : : :|: ヽミ:_,. l:ヽ: : : : : : tr‐￣r￣i, ヽ じ ,っ l/: :/:/
l: | .l:i: : : l: : : :l: : : >/＞Lヽ: : : ヽ: i {ﾞし | ヽ ,,/: ｲ /
V:l: i: : : : l: : : l: : :| , ワ,＼: : :ヽ:ヽ とゝ- ',. - ､ ,,,,イ l: i 馬岱サンっっ！！？
.l: i: : : : : : : :ヽ: :!､ヽ___ ヽ ＼: :ヽヽ ,,, ﾉ l:.|
ヽ: : : : : : : : : : : :lヽ､___二_ ゝヽ: :ヽ ＿, ｧ ／:.:.|l:.|
ヽ: : : : : : : : : : : l:i , - ― ､ヽ､_ ヽー ,f三 -'´ ／: : :o:|.l:|
ヽ:ヽ: :ヽ: : : .／ ヾ-_-- ー ､ ＿＿＿_ ／: : :i: : : :|ヾ,
ヽ:ヽ: :i: ／ ヽ ｀ヽ､ヽ､ /: : : : : : :,: : :l|: : : l ヾ,
l: i: :/ ヽ:.:.:.:.:.:.: | / }: : : : : : l: : ハ: : :.l ヽ
l: / }ヽ:.:.:.:.| |,/' /: : O: : :l: : :| ﾞ､: ::l
V /,lゝヽ:| ! /: : : : : : : :l: i: :| ﾞ､: :|
/ //:.:.!.ヽ { [.t―― ､: : :,. -､! ﾞ､:ﾞ､
_ l＿ .//:.:.:.:.:<< }､ヾ r-=/ r-=- ､__ヽ:ﾞ､
r ――-､｀ヽ ,r'´ / / l.i ヽヾiliﾞヾ ヽ / | r―-ヽヽﾞ､
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 馬岱が命懸けで作った隙、一瞬だけの時間。
| 杏子は槍の結界を『武僧』たちとの間に建て、レイはその数本を引き抜いた。
|
|「あってめッ」
|
| 目くじらを立てる杏子を無視して、ラムサスに投槍。容易く弾かれる。
|
|「ラムサス、挑発をやめろ。レイも落ち着け。手向かいしなければ殺さない」
|「殺しといて今更っ」
|
| 静止するダンケルを振り切り、ラムサスが『ウミヘビ』を伸ばす。
| よくしなる薄刃剣のような一撃がレイの頬から鼻筋に血の線を引いた。
|
| 下がりながら槍を投げるレイ、再び防がれる。レイは次の槍を抜く一瞬で、横島に目配せ。
| 『ウミヘビ』の横薙ぎ、槍の結界が麦穂のように刈り取られる。その一本をレイは掴んだ。
|
|「シロッコの小間使いがそんなに嫌か？
| ガキ相手に八つ当たりとは大人気がまるでないな」
|
| 挑発しながら続けざまに投擲。
| 吹き出す怒気、防がれる槍。いや、防がれたはずの槍が、全て自動的に折れた。
|
|「なにっ？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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//ｲ:::::::::::::_:_:::::::::::::::::/::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::ヽ::::::｀ヽ///
//:|::::::::::/::::::｀ヽ:::::::/::::::/::::::::::／:ｯｧ:::;ﾉ'､:::::::::::::::::::::::∨:::::::::::::::::::::::::＼/
//::!::::::/:::::::::::::::::::::,':::::/i:::::::::/:／./／ ＼:::ヽ:::::::::::::i::::::::::::::::::∨:::::::::::
//∧:/:::::::::::::::::::::::;!:::/ .|::::::/:/ 〃 ＼::iヾ､:::::ト､::::::::::::::::∨;;;;:::::
////i::::::::::::::::;::::::/.l:/ !:::/:/ / )' 'ｉ／_∨::::::::::::::l;;;;;;;;;;
////!:::::::::::::::l::::;‐-ll､_ .Ⅵ' ／!⌒八:::ﾄ､:::::::!;;;;;;;;;;
////!:::!:::::::::::!:;' ｉ _≧ｪ､ , ｯイ::j::l ,′;}ﾉ:∧::::i;;;;;;;;;;; かかった！
////Ⅳ::!::::::::!! ﾏ￣ ｱ::心≧ｪ､_ ゝ._:_.:)ﾉ八:::::ノ |;;;;;;;;::}:/::::::::::::
///:::| Ⅵ::::::::l|. ヽ. 弋:::::::ｿ｀ヽ￣::'/:::'::::::^ヽ､__.::::: l;;;;;;;／;;;;;;;;::::::: 馬岱サンの仇だ！
///:∧.| ＼:::::!. ￣...:::ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::: j;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ブッ殺してやる！！
/////少-､＼! ､ ／‐- ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/////////:三入 __ _, ､ ／ ヽ;;;;;;;;;;;;;;;
///////////ﾉ::::＞._ ,／vｰ￣￣､ ｿ .イ ｉ;;;;;;;;;;;;;;
/////////∧ヽ::＼i:::≧ｪ.､ ﾋゝ､:::::::::::::::ﾉﾉ ,.ィ::∧ヽ |;;;;;;;;;;;;;;
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| ボーラのように絡め取り締め上げる槍。レイの想像を越えた攻撃。
| 転倒するラムサス、後ろからヴァイジャヤが袋を投擲、撃ち落とすダンケル。舞う粉塵。
|
|「目隠しか……古典的だな！」
|
| もがきながらも嘲笑うラムサス、だが、なにかおかしい。空中に舞うのは蛍光灯でキラキラと輝く……。
| チャフ。意味は『籾殻』。電波を反射する金属片等を散布することでレーダーを狂わせる妨害装備。
|
| 電波汚染に苦労した『血族』が考えた苦肉の策、古典的対策。
| だが、ハンブラビのヘルメットに取り付けられたレーダーを狂わせるには十分。
|
| のたうち回るラムサス、目標を見失ったダンケル。逃げるなら、今しかあるまい。
|
|「シロッコが親父さんを見殺しにしたと思ってんのか！？
| 違うぜ、あいつはデュランダルの死を上手く利用したぞ！」
|
| 天龍とシグは置いていくしかない、炭化した馬岱もだ。
| 押っ取り刀で飛び出すヴァイジャヤ、追いかける杏子。殿を横島とレイ。
|
|「戦争を作るために！ 『血族』の下っ端をハメるために！」
|「ラムサス！」
|
| ダンケルが語気荒く静止する、だがラムサスは止まらない。
| レイは……足を止めた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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｜ / /`! ﾄ, ｌ !
. ! ｌ / ｌ ｌ ヽ ｜ !
! ｌ ｌｌ ｌ '､ ! ', ヽ ､ ｌ !
ｌ ｌ ｌ l ! ! ヽ '､ ヽ ', ､ ! ｌ ｌ ｌ
ｌ ! !｜ ｌ_!｜ '､ ', ＼ ｌ ヽ ｌ ｌ ｌ ｌ !
. ｌ ｌ !｜ !_! !＝- ､ ヽ ', ヾ ト, ｌ ! ｌ ｌ ｌ !
! ｌ ｌ｜ ! l!{_,.テミヾヽ::::ヽヽｒ＝彳ｒｌ ｌﾃｌｌ ｌ ｌ ｌｌ !
ｌ ｜ '､ヾヾ｀''＝＝'‐::::::::::::::ヽ'､ ‐ゞ=! ｌ=! ｌ ｌ ! ｌｌ｜
ｊ ｜ ﾄ,ｌ'､'､:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ::::::: ! ｌ ｌ ｌ ｌ ! ｌｌ｜ なんと言った？
/ ', ｌ ヾヾ'､ .:::::::ｌ ､ ノ ﾉﾉ/ / ｌ ｌ ｌ ｌ
. / / ', ｌ! ﾄ, ヾ'､ :::::::' `＝ノ/ /ｲ ! / /!｜'､
ノ イ / ! ｌ ', `ｒ ､ ' ヾニ,ノヽ/ / / / ｌ ヽ
／ / ィ´ ｌ ｌ ヽ ト､｀ヽ､ -―＝―- ﾄｒ'´,.ｲ' / / / ｌ '､
// / / ｌ ', ｌ ヾ ｀ヽ､ヽ､ ― ,.-'"ト､ニ_ノ 〃/ ｌ ヽ
ｌーｌ /ｌ｜ ヾヽ ＼ TT` ｒｒ‐ｒ'´/T ｀ヽ､_,.∠'シ ｌ
. ｌ ! ヽ＼ ヽ ＼ ヽ､ ヾ ヽ,| | | / /ｨ ／
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|「やめろラムサス！」
|「ギルバート・デュランダルを撃ったのはなぁ！」
|「やめろ！」
|
| ラムサスの怒りは、自分に向いている訳ではないとレイは気がついた。
| 蓄積した鬱憤を晴らす相手がいないのだ。そこにレイが都合よく現れたのだ。
|
| 悪意を押し付ける相手が。
|
|「パプテマス・シロッコだ！ 野郎がデュランダルを撃ったんだよ！！
| その上で白々しくも利用した！」
|
| レイの中で何か音がした。
| 何かが軋むような微かな音。
|
| シロッコがギルを殺した。であるならばいくつか腑に落ちる。
| いや、それはマスターピースだ。全体を動かすのに必要な、複数の機構を繋げる歯車だ。
|
|「レイ！」
|
| 横島が肩を掴んだ。レイは冷たく振り払う。
| 今のレイに必要なのは友人ではない。復讐だ。
|
|「ダメだレイ！」
|
| 横島の言葉は耳に届かない。
| レイの胸の内側が軋む。その音しか聞こえない。
|
| 何かが起きたときに、殺してでもレイを止めるはずの馬岱は死んだ。誰もレイを止められない。
| 軋んで、砕けて、割れる……レイの中の大事な何かが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ ll , '´ ', /
＼ ヽ lｌ , ' , / ／
＼ ＼ ヽ ll , , / ／
｀丶 ＼ ｡ ヽ lｌ , ,/ ／
｀丶、 ＼・ ヽ ll , , ‐- 、 / ／ ﾟ
丶、 ＼ ヽ ll ,' , ' i / ／
丶 、丶 ＼ ヽ. ll, ' ,/ ／
`丶､ ＼ ヽ lｌ , ' / ／ ＿ ─
｀丶、 ＼ ' ll,' , '´ i /／ ﾟ ─
・ 丶、 ' ,' , '、 ,' ,' ─ ￣ ──
｡' ,' ,'f/ ,ィヾ , - ￣ ── ￣￣
ﾆﾆ 二二二二二二二二二二二─,' ,' ,' l{ ,、ヾﾉ , ￣ ｡
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, - ' ,' ' ,' ￣￣ヽ, ' ＼ ・丶
, - ' , ' ,' ,' , 〃,' ヾ!ヽ ＼ 丶
, - ' ｡ , , , /' ,' i ,' ヽ ﾟ ＼ 丶
, - ' , ／ , ; / i ヽ ・ ＼ 丶
, ／ , !/ , 'i ヽ ＼
, ／ , /` - ' ,' i ヽ ＼
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| それは種。世界の種。
| ギルバート・デュランダルの理想。静寂と平穏の世界の。
|
| 神による完璧な統治。社会主義到達点。
| 千年王国のユートピア。
|
|
|
|
| その、成り損ない。
|
|
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| 即ち。
|
| 六番目、殺戮の戒めを壊りて現わる破滅の化身。
| 『哀しみのからくり人形楽団』。
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☆ 次回予告！
その渦は、世界の裂け目。
その穴は、世界の綻び。
終末を約束しよう。
あらゆる心のこれが末路と。
いや違う。嘘だ。嘘だ。嘘だ。
その糸は、生命の織物。
その塔は、魂の救済。
安息を約束しよう。
もう二度と。
恐怖に震える夜はなく。
憂鬱に気怠い朝はなく。
疲弊に耐える昼はなく。
次回、最終幕百二話『引き裂かれた永劫』
果てから至るは破滅の化身。
聞くなレイ、止まれ！
前半と後半の温度差よ
手が、手が足りない
お大事になさってください
みんなもコロナには気を付けてね！
マスク鼻うがい手洗いと、三密回避が重点な。
＿＿＿＿＿_
／´〈￣￣￣￣￣｀＞ｘ
／￣￣￣＼{￣￣￣〉〉＼
＿_〉 '⌒＼{ { }人
＼ r┬＼＼） ＼
/￣￣＼＿_〉/ ＞ー ﾉノノ
. { {⌒7 { ＼
＼＼〉 { - ／ なんだこの『圧力』は……
/≧==={ '⌒〉 空気が『重い』……！
{ U ≦二{
＼ /八 ＿___) 圧縮された精神が
＼ {＼二ニ=‐- . { 物理的な『重さ』に
＼{ ＼三三三二ﾆ=- ) なっているとでも言うのか……！？
＼ ＼二ﾆ=-‐
⌒＼ ＼/ /
ニﾆ=＼ }/
二二ﾆ∧. /
二二ニﾆ＼/
二二ニﾆﾆ∧＿＿_
ニニニニﾆﾆ}ニﾆﾆ{＼＿＿
ニニニニﾆﾆ}ニニ人三三三≧ｘ
二二二ニﾆ人＿_ニ=＼三三三二ニ=--
ニニニニニﾆﾆ／}＿ニニニニニニニﾆﾆ
ニニニニﾆ=イニニニ＼ﾆ三三三三三三
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| 『引き裂かれた永劫』に飲み込まれた『血族』本部。
| その大首領室を目指す『やる夫』。
|
| だが、目指すほどに身体に物理的な重さが生じていた。
| 強大な圧力だった。蓄積され積み重なって圧縮された精神が、近付くものを拒絶している。
|
| それは、超質量のブラックホールの近くでは光すらも屈折して遅くなり、間延びしてしまう現象に酷似していた。
| 『引き裂かれた永劫』が精神のブラックホールであるということも含めて。
|
| 鉛のように重い足を引きずり、『やる夫』は進む。
| 纏わりつく見ず知らずの精神。痛みを伴う重く辛い記憶群。
|
| 『やる夫』は荒い息で脂汗を流しながらも、ただただ進む。
|
|「今度ぶどうヶ丘高の方に『スポーツジム』がオープンするそうだが………
| 真剣に『会員』になることを考えたよ… 『体力』をつけなくちゃあな……」
|
| 肩から倒れかかるようにドアを押し開け、よろけながら踏み込んだ『やる夫』が見たのは、垂れ流した体液に沈む志摩子とキオ。
| 二人の手は固く繋がれていた。『やる夫』はこの二人こそが起点であると直感した。
|
| いや、そうであってもらわなければ身が持たない。
| もう、これ以上進むのは不可能だった。
|
|「だがああいう所の『会員』ってのはどうなのだろうな？
| 一週間もフロに入ってないヤツがチン○ポいじった手で同じダンベル持ち上げたり、プールに入ったりするのか？」
|
| 似合わない下品な軽口、神を気取るこの男も、それほどに追い詰められていた。
| 振り上げる腕、彼は最盛期に比べてほとんどの能力を凍結されていた。
|
| 『やる夫』を再召喚したできる夫が、持ち込んでいた全てのチートをブロックした結果だった。
| お陰で最低限の魅了と熱衝撃波、顔を奪う能力くらいしか『やる夫』には残されていない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|
__,ィﾆ三ﾆ）
／ニニ三＜ 頂点はこの『ホワイトスネイク』だッ！！
, ＜￣ ＞く三ニ三ﾆ三ﾆ＼ 依然変わりなく！！
／ /⌒ヽ ヽ 三三＼三三＼
. ,' l! | ∧ ヽ三＼三ﾆ） ／￣
; l| / r┴､ l三三}三三'⌒ヽ／￣￣￣｀Ｖ
ｉ 人__/-､ { ｢､ ） |三三!三三三ﾆ三ﾆ三ヲ
'. / ,/ Ｖヽ{ l/ |＜)ﾉ三三三三三ﾆ／
＼__/ ｀V7_ // ', /ﾆヲ|三三三三ﾆﾆ/
｀ﾏ＿ ノｨｬﾉ ＼ー〉/ﾆ/ {三三三_三ﾆ/
｀弋 ､＾´ __ ∨三＼＼!三三） ）三|
/:三::ﾊﾞヽ ノ ｸ /ﾆヲ'￣￣｀ ＜ ￣ﾊ
〈三三ﾆ￣ ｀ ー'／ ｀ ＜ﾆ＼
}三三三三ﾆ／ ＼ﾆヽ
/三ニニニ／ /三三}
/三三三ﾆ/ ／三三ﾆ|
ノ三三三ﾆ/ ／三三三三}
/三三三三/ .／三三三三三 |
Ａ三三三ﾆ:{ /三三三三三三 l
,三三三三 Ａ /三三三三三三ﾆ !
l三三三三三} {三三三三三三／/
|三三ﾆ三ﾆヲ ∀三三三三／ /
|三三三ﾆ／ ∀三三三/ /
}三三三/ 〉三三ﾆ{ /
. !ﾆﾆﾆﾆ/ |三三三| |
. A二三/ !三三三| }
. ﾊ、 __/ ＼ﾆ三ﾆ| /|
|三三ﾆ! }三三/l
∧三ニﾉ |三／|
｀７´∧ |,ｲ !
／／__ﾉ ＿／ﾆ| ＼
ニニﾊ ＼ ／￣￣ /ﾆﾆﾍ ｀７
＼つ＼＼_つ |ヽ ,. |ﾆﾆﾆﾆ＼＿_／
ヽ_,)ヽ.__) ,ﾊ ﾉ1 ∀三三三／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 人間を一瞬でグシャグシャの肉塊に変える熱衝撃波。
| 志摩子とキオはすでに精神と記憶が混濁し、互いの違いを認識できない。
|
| ならば肉体もまた同じ状態にしてやろうという神の慈悲。
| 起点となった二人を殺害しただけでは、『引き裂かれた永劫』は止まらない。
|
| それを知らぬ『やる夫』の蛮行。
|
|「……ッガ！？」
|
| だが、その腕を振り下ろせない。必殺の熱衝撃波を繰り出すまで至らない。
| どのような方法で危険を予期したのか。『引き裂かれた永劫』からの攻撃が放たれていた。
|
|「ぐぐ……『恐怖』というものは打ち砕かなければならない」
|
| 攻撃……『引き裂かれた永劫』に取り込まれた人々の痛み、恐怖、絶望。
| その瞬間の全身から力が抜け、生きる気力をなくすほどの精神的苦痛を怒涛のように流し込む。
|
|「それは今なのだ…………今！！
| 絶対に乗り越えなくてはならないッ！！」
|
| 並大抵の精神では、この場で発狂するか廃人になっていただろう。
| だが、『やる夫』は並大抵ではない。
|
| 己がこの世界の神であり、それ以外の全員がゴミクズのような塵芥だと理解していた。
| どんな痛みも絶望も、他人のそれならせせら笑って無視できた。
|
|「それが生きるということなのだ……ッ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ｒ i
／/ {ヽ
。s＜;／ 心＼≧s。、 、
。s＜ ／:::／;;;;;;;:○;;;;｀;;;;;;;;;;:｀≧s。 .、
,。s＜´-‐´ ＼＼ﾍ:::ヽ;;;;;;;;;;;;)(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:):::::://｀‐-｀、 、
／-‐´.＼＼＼＼＼＼ﾍ:::};;;;;;;;;tfr;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/::::://／／／／ ｀ヽ、
／ .＼＼＼＼＼＼＼＼ ﾍ:};;;;;;;;;;}I{;;;;;;;;;;;;;;;;;;/::／／／／／／／／ ヽ ,
/ .＼＼＼＼＼＼＼＼＼ }:}器心江村波/:／／／, -- 、 .／／／ }、 ヽ、
{ミ三三三三三三三三三三三}染操ir‐‐、飛派奇 /: __..:: ＞ .三三彡} .》
, .ﾚ‐＝＝＝＝= 、三三≠====戈/ } }{:: ヽｷｷｷミミ.{::. ヽｷ｀ヽ::::::..ヽ、＝ } ,-≠＝==、
-‐´ ￣ ..:::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ-------´ﾉ / } {::. ヽｷｷｷ} ﾄヽ:: ＼= ＼:::::..＼.ノ ／／/￣ }i ｀
´ ..::::::::＞-‐´ヽ三三＞´ ／ﾍ￣/)抜 / /{:: {::.. }ｷｷｷ ﾄ｀ヽヽ、::....‐---‐ ´／,-{{===´
＞-‐ ´‐- {::{ ≠-ノ /:: ／ヽ:::::ﾍ_--- ´---- 、{::::.. .} /{ { } }ミ} }ミミミ＜￣{::::..}´=〈〈-{{ __
´＝====二 ヾ ヽ、/ ./:::..__./-‐ ￣ ＞ 、 {{ミ{ {} }ミ,{ {＜´, -- Ｌ } ｀//ヽ<￣ヾ 、
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r .{ {/ヽ ＞: : ´: : : : : : ....::::::::::::::::::＞≠´::}::::￣}＞、::::.... .} ｀ ./ ｀ー---===:::::::::::..ヽ ´￣￣
＞....´: : : : : : : ......:::::::::::::::::＞ ´ハ/: : ::::}{::: : :} /:::::::::::::}、 .{::... 、__ ｀＞ ｀、_____
: : : : : : : : : : .....::::::::::::::::::::＞ ´￣ ｀＞ー,-- ﾊ、 ,s≦::::::::::::/ ヽ: : : : : :ヾ::::::::::::::............../ﾍ 、_ ￣
‐- : : : : : : ...::::::::::::::::::::／ ＞ ´:::::木:::::::::::::::::＞ 、:::::::／: : : : ｷヽ,k,＿_ヾ::::::::::::::::::::/___.ﾍ ｀ .__,--
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 『やる夫』は決死の一撃で志摩子とキオを殺害し、『引き裂かれた永劫』の肥大化を止めた。
| 生きる、生き延びてやる。死んでなるものか。
|
| 己が上位存在であり、こんな場所で死ぬべきではないという誰よりも強い生存欲求。
| それが『十壊』の精神汚染に打ち勝ったのだ。
|
|「ふ、ふふ……やったぞ……」
|
| 『やる夫』は乾いた笑いをあげながら立ち上がる。
| もう重さはない。案外大したことなかったな。
|
| 膝を払い、背筋を伸ばし、偉大なる存在に相応しい佇まいで肉塊に背を向ける。
|
|
|
|
| そんな夢幻は一瞬で消え失せた。
|
| 『やる夫』は哀れにも泡を吹き涙を流し、失禁しながらへたり込んで発狂した。
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.,. -─- ､
／,;:;:;;;;;:;:;:;:;:｀ヽ 世界の滅びが今ここにある。
,'.:..:.:.:.;;;;;;rrrr､:.:.:ヽ 俺ァ詳しいんだ。
l::;ｨ'´;;;;' ｀ヽ｡-､ヽ.::!
{ﾐﾚ'"´. ,.. ¨¨｀,ｨ;;彡. だが、止める方法も倒し方も
{ﾐ!. i i::i l.:::! l:l .l:! l;;彡 分からねエときた。
iﾄ､i i:::iﾉ:::l/::l/::!ﾉ:::|
ヽ入 ｀VⅥ /l /l
ﾄ､ `1 ﾐヽﾆﾆ彡'´ L､､､,,_ _./ ﾚ' ..!
ﾄ､. ! Vl ,..ィ´.:j! ',::,,,,,/ ,::′ ,' `ヽ`ヽ`Y´.:./l ｀`ヽ
| ヽ| 〃／.:.:.:.j!...',;,,/ ,::′,,,,,........ﾘ ﾉ.:::l / .l.:.:.:.:.／ﾄ､
,.ィ´ヽ ﾉ／ / ;;;'''ﾞﾞﾞﾞ｀,.''''ﾞﾞﾞ´ {: :i i!.::! ゝ ' ／.ィ´ `ヽ
ﾄ､/ ﾄ､, ´/ ./:::'' .人 ..:;;′ .人 .:i: :.! i!:::!.:.;.ィ彡'´ ;; .ﾞ､
l ﾊ V.:.:.i / ,:: ｀Y´.;;;′ ｀Y´ .!,..ィ"´`ヽ〃;;;:;:;:;:;:;;:;ﾞﾞﾞ´: .
l/.::',.:./.:.:.:j. /''"´ ....;;;;; 人 (,,､､`Y.. ):::V´ : : :
{ V「88j/ ...;;;;;;; .:.:｀Y´ (´ _ﾉ(.. )::::::',､､､,,,__....: : : :
〉;; ぃ.::.i l..... ........:.:.:.;;;)｡k､ﾐヽ (´ _ﾉ(.. ).::::::!: : :.:.:.:.;;;;;;;｀`
/;; .い.::i l;;;;;;;;,､､ '''ﾞ""´ ..｀ﾞﾞﾞﾞﾞ'''''''''´( _ﾉ(.. ).::::ﾉ: :.:.:.:;:;;;;;;;;;;;;;;;
,′ﾉ人 jりi ;: : : : :''''';;;;ゞ ::;; ...:.:.:.: .: .: .;;:i1 i爪ﾂ"´.:.:.;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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|「案外役に立たんな」「少しも詳しくねーじゃんか」
|
| 『やる夫』が単身突っ込んで敗北した頃。
| 『血族』本部の廊下を進む四つの影。
|
| 先頭を進むのは心を失った青年、東田。彼は片手にどこかでくすねてきた牢獄の鍵。
|
| その後ろに立ってずっと喋っているのは北斗ジャギ。
| 精神攻撃に対抗するためにひたすら別のことを考えて垂れ流すことで堪えている。
|
|「だから、もっと詳しいヤツを探しに行くンだよ。
| バカみたいに突っ込んでも上手くいく訳ゃねーんだ。そんな簡単な相手なら楽なもンだぜ」
|
| 世界の敵に説得が通じるはずがない。
| 真正面から殴り合って勝てるはずもない。
|
| だからやる夫は、あの馬鹿は命を捧げるつもりでいる。
| 何らかの対策がある様子だが、少なくとも寿命の十年や二十年は削れるはずだ。
|
| 『第四の万魔』は特殊だった。
| 世界を天秤にかけての愛。それ故に愛を得られる許可を与えれば抑えられた。
|
| だが、他の『十壊』はそんなに容易くない。
|
| やる夫という安全装置がなければ『テングサの歌』は止まらなかった。
| やる夫が死の夢を見続けていなければ、『ひとりでお帰り』は存在すら気付けなかった。
|
|「こんな事態、前代未聞だぞ。専門家などいるのか？」
|「いる」
|
| ジャギは断言した。そして丁度、この場に来ている。どこまで仕込みか知らないが。
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::/!:::;ｲ:::::::j::::::::::::::::::::ﾊ
:::::::::::::::::::/‐ト'-ｊ､!::ハ|_!:::l_!:::::::::i
:::::_::::::/l/＿i!__/ ｊ/ ﾘ__V!_':::::::ﾊ!
ﾏ Y/ !ヾ V ｀ ´V ｱﾘ::::j !
|! {､! ｲ::ハ ジャギさん、
ヾｭ､ ′ ｊ:/ チョコレートです。
}::|ヽ
ｲｒﾄ､ ＼ ￣ ／ それと、このフロアで
ｒﾘ ＞ ≧ _ イ 使われてる座敷牢は一つだけですね。
イ ﾊ ｀ ､ ト ）､
＼ ｒ＝ｭ､Y_ zｫ｀ ､
＼ﾏニ彡ヾ__ｊ
｀ｰ' | ヽ
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|「一つか……つまり、蒼星石は賓客待遇ってこったな」
|
| 東田が調達してきた袋一杯のチョコバー。ジャギが後ろを歩く二人に放り投げる。
| 縦横２メートルの球体パンダと、サイバーゴーグルに金属義手の少年。
|
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』だ。
|
|「ハーシーズがいいのだが」
|「贅沢言うんじゃねェよデブ」
|
| 文句を垂れながらチョコバーに齧りつく『リトルボーイ』。包装紙はポイ捨て。
| ニヤニヤしながら頷く『ファットマン』。
|
|「なんだティム」「いや、大佐はそうじゃないとな」
|
| そう、二人は『核天使』に改造されていた。だが、今の心は往時のそれ。
| ヤーボ大佐とティム・ローレンスだ。
|
|「東田」「はい」
|
| 座敷牢の錠を開ける東田、扉を開けるのはジャギ。中は熟れた果実のような甘い女の匂いが充満していた。
| 明らかに『引き裂かれた永劫』の絶頂攻撃を受けたそれだ。ジャギは被害者の名誉のために中を確認せずに扉を。
|
|「ンあ……ジャギ、か。ぅぅん……腰が抜けて立てないんだ。手伝ってくれ」
|「ハズレだな」
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,. -.-―.-.. 、
,.ィ´: : : : : : : : : : :｀¨＞.､
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ、
/: : : : : : : : : :; : : : : : : : : : : : : : ﾍ
/ : : : : i : : ;i :,': :l､ : :i: : : : : : : : : : :ﾊ
,': : : : : :l: : :/!;ﾑ斗ﾔ: | ヾ: 、', : : : : : ﾊ
{ : : : : : |: :/"{;ﾊ ﾘ ',: {ヽ:}､:｀T、}: : : ｌ ｝
{: : : i: : :ﾚ',. =＝=ミ ヽ:} ﾞ ﾍ: | V: ｊ : ﾊ}
{i : : ', : { Vたi:ハﾘ 行示 V: :,′!
八 : : ', ﾊ ﾞｰ一 ' ヒソ /: ;ハ
Ｖ : :ﾍ.ゝ //// , ///久ｲ､::ｷ
Ｖ : : :ヽ _ ,ハ: j };ノ くぅ……。
ヽﾄ､:ﾍ个 ､_ ´ ｀, ＜ ツ ′
r夂ｾァ､ヾﾍ. ｀ﾏ´ぇ,.っ 酷い、言い草だな。
/.:.:.:.:.:.｀ﾞら. ＞ ､__/ ﾏﾑヽ、 ふぅ、帽子に鉛を仕込んでいて助かったよ。
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.い. ,.z≠杯㌘ﾐx,ィﾑ.:.ﾍ
,〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.く{::{ /ﾊ ヾぇ./. ' ~Y､＼
,.イ.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i.::.ﾍ:Ｖ/ !j ｀ﾞ{_ ﾞi,.::::.＼
_,.．＜.:.:.:./.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:::.∧′!j ./｀ﾞ'マｓ､ 人.::::::::.ﾞヽ、
｛ヽ、.:.:.:.:ノ.:.:.:.:/.:.:.:/:.:.:.:.:.:|.::;.=心、 ,ｲ ﾞヾ水、:ヽ.:.:.:.:.:.:.丶、
ヽ、X.:.卞ｘ.／.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.K .／ ヾォ＼ﾍ.::::::::,rｰ→，
ﾞ ミ≦＞ﾐ.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.,ｲ ,r^{ o_,.ｒ} } ヤ¨´::::;:イ
ﾞｰ^＜.:.:.:.:.ｨヽ 人 。_,ﾟｒグ'"´ .ノ .ﾚゝ＜
｀¨シ三ヽ. ﾞｰ,ｒグ'"´ﾞ㍉r_:升一 ′
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| ひどい頭痛に耐えるような顔で、這いずって現れた蒼星石。
| この状況で正気を保っていることに、ジャギ以外の三人は驚きの声を漏らす。
|
| 『人類補完計画』が超能力による精神感応関連だという目星は付いていた。
| 蒼星石もまたジャギ同様の対策をしていたのである。
|
|「…………そっくりだな」
|
| 口笛を吹くティム、蒼星石は眉をしかめた。
|
|「誰に？」
|「翠星石。夢ん中で世話になってね」
|
| 瞬きする蒼星石、そして今更ながらに目前のサイボーグが、報告にあった『ファットマン』だと気付く。
|
|「騒がしいし危なっかしいし面倒くさいが悪い女じゃない。トキがいるから元気に暴れてるだろうぜ」
|「待って」「待て待て待て」
|
| 思いもよらぬ名前に困惑するジャギと蒼星石、翠星石とトキが一緒にいて、しかもティムが知り合いで……？
|
|「雑談は後にしろ。女は私が担ごう」
|
| 軍隊の指揮官らしく、合理的に的確にヤーボが動いた。
| モッフモフの毛皮で蒼星石を担ぎ上げる。
|
|「グフフ、実は私は瀕死だ。毘沙門天に切られケンシロウに殴られ外の悪魔にも真っ二つにされかけた。
| 実は走るのも難しい。戦力に数えられん」
|
| 故に、頭脳労働役の蒼星石の移動椅子に徹するということだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ 女、どこへ行き何をする？
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ 指示を出せ。
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
｀ >:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r-ｰ' ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ;´
´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
丶 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀:ヽ
丶 {: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : _ゝ
丶 ヽ､ : : : : : : : : : : : : : : : : ＿＿: : : r-!
｀ ｰ､ _｀ー＞ー―― ´￣: :／ ￣｀
´､: : : : : : : : : : : : : ;-´
ヽ: : : : : : : :: : :/´
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|「具体的な打開はやる夫が行うだろう。僕らがするべきはその援護だ。
| 事の成り行きは分からないが、十中八九は志摩子さんが関係している。
|
| 『敵』の『攻撃』に意思のようなものは感じない。しかし、本体を守る防衛本能くらいはあることを祈る」
|
| 志摩子を攻撃し、『引き裂かれた永劫』の意識を自分らに向ける。
| 蒼星石が言っているのはその程度の気休めだ。
|
|「勝算は？」
|「それだけでは皆無だ、だからもう一手打つ」
|
| 確かに、専門家のようだ。ヤーボは鷹揚と頷く。
|
|「つーか、テメーは大丈夫なのかよ？」
|「正直つらいね。だが現実には勝てないな」
|
|「いや、その……」
|「性的な方ならこう見えて経験豊富でね」
|
| 蒼星石が首にかけたドリルのような円錐のネックレス。
| 『天沼矛』の欠片、三ヶ月前にやる夫と使った『原初の軟泥』作成媒体。
|
|「『国造り』の快楽に比べれば人間の性的絶頂なんて軽い軽い……
| 発狂する前に結界張って、すべての快楽をこっちに流してやり過ごしてる」
|
| 一瞬耐えられた、その一瞬を有効活用できた。
| だが、その一瞬で蒼星石の肉体は疲労困憊の体であった。色々大洪水だったし、腰が抜けて動けない。
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-― ￣￣ ミ 、
／
／
,'
i ﾑ
/ 「ﾞ ＜ ! iﾑ ヽ
/ i!ｒ､ ｀ ＜ |! iﾑ ヽ
/ 八ヾｭ、 ￣￣｀ヾ 根性あるな。
＼｀ヾ ｭ、＿ ＞-=ミﾑ さすがは翠星石の妹だぜ。
/八 ＼ ｀ー=( }）=
/! ヽ ｀ ー―ゝ‐ 彡‐ﾑ あいつが自慢するだけのことはある。
/ i ト 、｀ｒーァ ﾑ
' | ! ≧￣＿..｡c彡ﾑ
ハ i! i ﾑ
j! i |! ! {! ﾑ
川 l i ! 八 ﾑ
/ ハ |l i ヽ ﾑ
ヽ jﾊ } ） ﾑ
＼＼ ノＹ ﾑ
ヽ／ ｊ）
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／´（
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|「…………夢の中で、翠星石はなんて？」
|「現実側は最愛の恋人と、頼りになる妹と、白饅頭がなんとかするってよ」
|「……………………」
|
| 長めの沈黙、その間に次のチョコレートを調達してきた東田。ついでに治療系の護符をヤーボにベタベタ貼る。
| 精神耐性のお守りを、一同に配る。ニャルラトホテプ対策にとジャギと蒼星石は用意してきた。
|
| しかし、それだけでは心もとないのも現実。
|
|「頼りにならない妹が考えるもう一つの手段、本命こそが翠星石だ」
|「どこに居る、まさかこのビルか？」
|「そのまさかだが、そもそも翠星石は……」
|
| ジャギが、そしてヤーボがティムを見た。
| 絶対に目覚めるはずのない少年。
|
|「翠星石さんも目覚めてるって言うんですか？」
|
| 二人の気持ちを東田が代弁。蒼星石は頷く。
| 蒼星石の推理はこうだ。
|
|「志摩子さんは、上杉謙信が押し負けて次善の策として翠星石を頼ろうとしたんだと思う。
| そこで精神感応関係の術を使い、失敗して暴走した」
|
|「正直、ナニをどーすりゃこンな大惨事になンのか想像もつかねーンだが」
|「翠星石を使おうとしたのさ」
|
| 皆、翠星石のアンプ能力までは知らずとも天照大神召喚は知っていた。
| 強大な魔力を操れることは理解していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.:´::::::::::::::::::::::::::..::::::::｀::..
/｀〉ｰ--r‐-､── ､:::::::::.::＼
' ＼ 二ｊ __ ヽ 〉::::::.:::::::::〉
| ⌒V＼ ___ 〈 /:::::::::::::::::,
ｊ てﾄ'‐t' ヽ≦三ﾐ ＼::::::::::::′ 二人の『エインヘリヤル』を
, :/ / !乂三ツ ∨⌒} 同時にその身に降ろすのは自殺行為だ。
i 〈__/ { ＼ ' _）′
| ｒ=≠=‐-ﾐ ＼‐ ﾉ / 『エインヘリヤル』と
| ﾚ'ニニヽ::::ヽ ′＼__／! やる夫には強い絆が必要となる。
| ‐- 、 ＼〉 〉 / ヽ|__
| -‐ __／＞--==┐ しかしそんな相手でも、肉体を貸し与えるのは危険を伴う。
＿__＞‐-,-──_. .´-‐: :´: : : : : : :|
/⌒ヾ: : : :/⌒ヽ:´ : : : : : : : : :__ -=≠ﾍ
| |⌒||: : :.| |⌒i |: : : :-‐=＝: : V∧＜＞∧.､
_|__ﾆ |ヽ: :.| |: : |_／: : : : : : : : : :.V∧＜＞∧:＼
-‐=≠ﾉ: : : ＼／丿: : : : : : : : : : : : : : : V∧ <＞,∧: :.＼
// : : // : : : : ,く く: : : : : : : : : : : : : : : : : ／￣￣￣￣｀ヽ: :＼
, :|: : :.:| |: : : : /: : ＼＼: : : : : : : : : : : : :／: : : : : : : : : : : : : ＼: :.ヽ
|: |/: :..| |: : : /: : : : :..＼＼: : : : : : : : : /: : : : : : : : :: : : : : : : : : : :..:.|
|:/: : :..| |: : /: : : : : : : O〉 ,〉 : : : : / :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|
/＝=ﾐ:| |: /: : : : : : : : :/ /: : : : : /: /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|
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| 一つの肉体、二つの精神。
| 肉体の主導権がやる夫になければ『引き裂かれた永劫』同様の狂気に陥ることは間違いなし。
|
| では、精神が三つになったならば。
|
| 危険は加速度的に上がる。
| 狂気の問題、脳容量の問題、処理速度の問題。
|
| いくつもの障害を乗り越えて、それでも『十壊』を滅ぼすために。
| やる夫は己の命と心を生贄に捧げる。
|
| はずだった。
|
|「チクタク・Magicaる・シャル・ウィ・ゴー♪」
|
| チクタクマン。『やる夫の中の入即貸本』の新たな住人がクルリと回る。
|
|「さあ、これからやる夫は『引き裂かれた永劫』を倒して世界を救ってついでにその流れで目覚めない翠星石ちゃんとか
| みゆきちゃんを助けてありがとえ先輩アイシテル私の全部をあげちゃうきゃー！ 18禁展開にちょっと待ったやる夫の
| 貞操は僕のもんだと怪盗のように現れた蒼星石がきゃー格好いい！ ワイヤーアクションで登場してどっちを選ぶの選」
|
| 両目を七色に光らせて妄言と謎の星を垂れ流す。ドン引きする死神たち。
| 謎の星が床を埋め尽くして壁を押し倒し、『やる夫の中の入即貸本』の壁が展開。
|
| その外は星空、宇宙空間。瞬くのは星？ 違うサイリウムだ！
| それも違う違う、マガツヒの光。読者共が集めてきた観客ポイントのまばゆい光。
|
| いまだ現役の精鋭読者たちのものだけではない、去っていった者たちの残した光もそこに並ぶ。
|
|「みんな！ プリパラは好き！！？」
|「プリパラってなんだお？」
|「うん！ ならゆめ大丈夫！！ みーんなアイドル、みーんな友達！ さあ、ライブの力を信じて！！」
|「こいつ、話を全く聞かんが本当に大丈夫か？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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(ヽ三/) ））
＿＿ ( i)))
／⌒ ⌒＼ ＼
／（ ●） （●）＼ ）
.／:::::: ⌒（__人__）⌒::::＼ 根拠はねーけど、なんとかなるお！
| (⌒)|r┬-| |
,┌､-､!.~〈`ー´/ ＿/
| | | | __ヽ、 /
ﾚレ'､ﾉ‐´ ￣〉 |
｀ｰ---‐一'￣
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| サイリウムの銀河がやる夫の周りを回る。
| やる夫は星系の中心だ。恒星だ。全ての観客ポイントがやる夫を形成し、保護し、許容し、補強する。
|
| もっと破滅的で崖っぷちで陰鬱な戦いを予期していたのに。
| なんか思ってたんと違うなとやる夫は笑った。
|
|「なwwmtんwwwでwwwアイドルなんだおwwwwww！！」
|
| 腹を抱えて笑う、悪くない気分だ。
| 悲壮な決意なんて忘れてしまった。負ける気がしない。
|
| だってそうだろう？
|
| やる夫には最強の『エインヘリヤル』がいる。
| こんなにも心が明るい、身体が軽い。
|
| こんな幸せな気持ちで戦うのははじめて。
| もう何も怖くない！！
|
| サイリウム……もといマガツヒの銀河が明滅する。星の数程もある光だが、これがやる夫の防壁の数。
| 星が流れる。消えていく。あっけなく闇に吸い込まれて。
|
| やる夫の世界の星空が真の闇になったその時が、やる夫の死ぬ時だ。
| 覚悟はとっくにできていた。それでも恐怖と寒気が襲いかかる。
|
| 死ぬのは怖い。
| 孤独は怖い。
|
| 誰にも顧みられず、惨めに野垂れ死にするなんて耐えられない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ でも死ぬのが
| （__人__） | やる夫だけで済むなら
＼ ｀ ⌒´ ,／ それがいいお。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 | それが一番いいお……！
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 一瞬で燃え尽きる流れ星。
| やる夫の『観客』たちが貯めに貯めた魔力。
|
| ストロボのように光り、やる夫を照らす。
| やる夫は生来の貧乏性でもったいないとは思いつつも湯水のように魔力を浪費。
|
| 脳内に翠星石を降ろす。
| アンプ。まるでガリバートンネル。
|
| 魔力を注ぐと百倍になる、バグか裏技か反則かチートか。
| 無限マナコンボで無限ライフだ無限ドローだ無限ダメージだ。頭がおかしくなりそうな魔力効率。
|
| いや、神がかりすぎて本当に耐えられない。
| 何度も使えたら最高だが、元来の使用者であるはずの翠星石ですら、二度の使用で心神喪失状態なのだ。
|
| 一度きりの反則技と諦めるしかなさそうだ。
| その反則技が、まあ、うん。
|
|「とりあえず呼んだけど、あんた何ができるんだお？」
|「衆生を救えます」
|
|「具体的に！ 曖昧な優しさも幸福も救済もいらねーお。
| もっと現世利益とかすげー破壊力とかで対処してくれお！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,. - 、 . . .-: : : : : : : : : : :-. . . , - 、
l i ＼,. : :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀:/ 冫 ヽ ,
, -.l i. ,.:´.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :l Y
／: : : l i .／: : : : ; : : : /.: : : : : : : :|.: : : : : : : : :l i' l
／: : : : :.ﾉ／: : : : : : |:. : :/.: : ; : : : : : |: : : : : :,: : :.l i l
／: : : :_;,;彡; : : : : :|.: : :|: : /|: : /:.: : : : : |i: : : : : i: : : l l え、えぇー…………。
／/: : : : : : : /: : : : : :|.: : :|: : i |: :/i,:.: : : : : | i; : : : i.|.: : :l,. , l
´ /: : : : : : : /: ; : : : : :|: : :,|: : i |:;/ i,: : : : : |,,,i_: : / .|: : : i, i. l 具体的に何ができるかを
/: : : : : : : :i: :.i: : :|: : :|.: :斗七'|/ ヽ : : :/ .i;゛ﾌー|-|;.: i,. 人 概念で伝達すると
. /: : :／: :´:_;i: :,i.: : :|: : :i; / .|/＿|_,,,, ＼/ー-i/ﾆｚ,_ヽ|: : :'､._ ／| ヽ あなたの脳が
/: ／ ´.￣ |: :|i: : : i: : : i''''伝兀下 伝兀心|: : : : : : |:|| i, 三回は爆発しちゃうんですけど……。
' ´ i; | i: : : i; : : |. 匕示丁 匕示灯|.: : : : : :|:|:| i,
i:|/ヽ; : :i;.: :| , , , , , , , , , , |.: : : : : l|:| | i,
｀i ヽ; : iヽ| |: : : : : ;i|l': | i,
i,＿_ |ヽ,'i: |､ し ||: : : : /:l': :.| _ﾉ
/: :i;｀: :.|｀: .。, ＝=＝ ,.。.:≦:|: : : /: :l: : :|,，-:': |: :'
/: ;': :i; : :|: : l: : :l:｀: _TニﾆﾆニT;_:l_: : :|: : /: : l: : : : : i:.: :|: :|
/: ;': : :_i､: |;=- ＜_". ゛;|: /;_: :': : : :, : :i: : |; :|
/: ;': γ .ヽ| ゛Y_ー- -―r､r'.|/ ｀ ヽ; |: : i: : |i; i,
,.': ,:': :/ O ｀v^γ'Yυ"´ O .';': : i; : |.i; ',
,.': ;.'.: :/ . ｀| O | ﾉ| O .|' '; : :i; : i,:',: ':,
,.':,:.': : :/ | ,、 r: '´ｰ.'ー-,. | ヽ: :i; : i, '; : ':,
, .',:.': : ／ | _ _ﾉ､｀´ ｀ｰi,._ | ＼i: : i,. ':,: :.':,
, ':,:.': : ／ .|,ノ^ｰ ' Y ｀y'^ヽr-γ"^´ ｀ｰ'-=,| ＼: i, '.; : :':,
,. .'.: : : : :く | ' | ／: : i, '.; : :':.,
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|「かいつまんで！ ０と百しかねーのかお、応用！ 神様なんだから馬鹿にも分かりやすく要約してくれください」
|「そう言われても」
|
| 平行世界を滅ぼす救世主やらない夫、その身に降ろした未来仏 弥勒菩薩。
| を、やる夫が『エインヘリヤル』として降ろしたのだ。
|
|「じゃあ、『引き裂かれた永劫』が何してんのか教えてくれお」
|「実は私は全知でも全能でもなくてですね」
|
|「サギじゃねーかお！？ チェンジだチェンジ、次の嬢呼んでこいお！」
|「そんな、急いで来たのに……」
|
| 五十六億年も早く来てくれたのだ。次の仏陀となると何年先になることやら。
| 五劫も二度三度と擦り切れ間違いなし。
|
|「『許し』とかいう加護を使えば、奴の攻撃は防げるかお？」
|「それならば可能です。しかし、既に取り込まれた精神は……」
|
| 救えなければ無意味だ。
| 無理矢理切り離しては多分大変なことになるだろうし。
|
|「ルービックキューブの達人でもいれば、絡まった精神を解きほぐして分離もできるのでしょうが……」
|「は？」
|
| やる夫の声は氷点下であった。タオルを振り回せば凍りつき、バナナで釘が打てるほど。
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＿
. ＿{ ＼―- ミ ＿_
. : :´: : :人 ∧: : : : : :＜⌒ つ
／: : : : : : : : : ＼_ﾉ ＼: : : : : :＼
. ／: : : : : : : : : : ＼: 〈＿｝ ﾄﾐ : : : : : ヽ っ
. ＿__/ : : : : : : : : : ＼: : :＼ : (＿＿〉:./|: | : : ', その……私は無理ですけど、
{ / : : : : : |: : :＼: : :＼: : :ヽ | : ∨|/: |/ : : : | パズルとかあやとりとか。
人_./ｲ: : : : | :|: : : : |＞ｘ==ミ￣:|: :.:.| ｲ: :∧: |
|:∧l :l: : : |: l＼: :.:| ｒ': ﾊ |: :.:.|^Y:/ :∧ }八 絡んじゃったテグスを解く名人。
|:.:叭 l: : : |: | ＼l 乂ソ |ｉ : :|ノ ｌ: / : ', のび太くんみたいな。
|／∧:､: :.Ⅳ爪ﾊ u 从: :|: : |/: : : :',
. -┬〈７Ｖ＼ﾄ l{乂ﾘ ､ .ｨ: 八: : : : : : : :、 私は無理ですけど。
l: ∧ : : ＼∧ ｒっ ／-Ⅴ: : : : ＿: : : :＼
|/ } |: :｜ﾄ:个‐ ..,,_____／ ／￣_(￣ ヽ: : : :＼
|人: :ト| ヽ(: : : : : : :j／ __ノ { ∨ : : : ＼
( ＼ |: : __,,ィ _ノ | l : : : : : : ＼
|: / ｡o(_) 0 0 | |＼ : : : : : : ＼
/:〈 У／⌒＼ ＼} トミ___ : : : : ＼
. /: //. ｲ ( ／ ＼ }/ ＼ :}: : : : : : :＼
/: //´ { / 、 ＼／ _,＜) ノ＼: : : : : : :.`丶、
. ／／八 イ,/ ≧=彡 7⌒ﾆ二 ￣ _ノ７:､: : : : : : : : : `丶、
. /∠,____〈 Y Т |ニ====彡＜: : :＼: : : : : : : : : :
/:.:У____,彡} .ﾉ ｜: : : : : : : : : :＼: : :＼‐- : : ＿__
. /: : :/＼:/ { _ -=' /_: : : : : : : : : : : :.＼: : :＼: : : : : :
/: : :/: :.:.,′ Ⅴ -=' ,ｲ ￣ ￢=‐-: : : ＿＼: : :＼: : : :
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|「え？ もしかしてそれはギャグで言ってんのかお？」
|「え？」
|「え？」
|
| 弥勒菩薩は逡巡した。そしてほんのり頬を染め、期待に満ちた眼差しでやる夫を上目遣い。
|
|「もしかして……やる夫様が？」
|「このぷよぷよのイモムシみてーな指が精密作業に向いていると思うのかお？」
|
|「思いませんけど……」
|「ぶっ飛ばすお」
|
| やる夫はため息をついて分かってないとばかりに肩をすくめた。
| もちろん料理も裁縫も得意だ、一発で針に糸を通すのもできる。だけれど。
|
|「お前さん、うどんに般若心経を掘るのが特技だろうが」
|「なにそれ怖い」
|「テメーのことだおやらない夫！！」
|
| 予期せぬ完璧な布陣。うどんに般若心経は冗談としても、やらない夫の脳回転速度は常人の三倍である。
|
| いまさらそんな設定と言うなかれ。
| サッカーしながら囲碁を打つ狂気のスポーツ『囲碁サッカー』をやらない子に教えたのもやらない夫だ。
|
| そもそもやる夫は、囲碁サッカーをまともに打てる人類を二人しか知らない。
| 備府兄妹である。脅威の集中力と狂気の脳力。やらない夫にピッタリの仕事。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_ ｷﾘｯ
／ ＼ じゃあ弥勒菩薩さん
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ やる夫が応援するから
| （__人__） | 弥勒菩薩さんが加護入れて
＼ ｀ ⌒´ ／ やらない夫が解きほぐす。
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､.
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i おk？
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「両方私じゃないですか、やだー」
|「んなコト言ったら全部やる夫だお」
|「そうですけどー」
|
| この期に及んで四の五の言う味楽菩薩。あまりにも話しやすい。明らかにやる夫のレベルに合わせてくれている。
| だからやる夫は有無を言わせず能力を行使。
|
| 弥勒菩薩の全身から発射された無数の白い糸が『引き裂かれた永劫』に絡みつく。
| 人呼んで『やらない夫マニピュレータ』。全ての糸の先にやらない夫の脳と指先と同等の機能が備わっていた。
|
| 『引き裂かれた永劫』発動から十分。『血族』本部ビルの結界を破ってから三分。
| 攻撃範囲の広がり方は被害者の数と比例して早くなっていく。既に周辺２キロメートルは支配下にあった。
|
|「押し留めます」
|
| 百を越える『やらない夫マニピュレータ』が同時解析。被害者を分断……しきれない。
| わかりやすさの為に表示された侵食度合いを示すバーが、じわじわと侵食されている。
|
| 弥勒菩薩の召喚が遅すぎたのだ。解析分断以上のペースで被害者が増えていく。
|
|「弥勒さん！ 霊的防御を優先して被害者の拡大を抑えるお！」
|「やってるんですが……！ 敵の侵食速度が早すぎます！
| コンマ3秒毎に更新してるファイアウォールがコンマ2秒毎に突破されてまして……！」
|
| やる夫はちょっとだけ状況を理解した。
| 誰とでも何度でもカケホーダイもとい大首領志摩子さまのスーパードレッドノート級仲裁能力だ。
|
| 攻撃に使うとこんなに酷いとは想像もつかなかったが。
|
|「…………どんだけ無茶すりゃ勝ち目が出る？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼ ／ ／ ／／/ ,ｲ i ＼ ＼ ＜,_＿_ ﾊ ｀ヽ ｷﾘﾘｯ
,,,＿ / ` ７ ./ ／ ./ / / / .| | ', ＼＿／ }
￣|へ / / ./ ／| / ./ / .| | ', ＿_`ﾆ=--ﾉ-
/＿ ｀>､ / ./,ｲ ,_ / ./ .|' ./ ./ .| |＼ ,.．', ＼ ￣￣￣./
_,． ’ー-' ∥./ ｀＞＜,_ ∨ ,' .|.| _,＞＜´ ', ＼ /
--‐''"´ ／:::::::::| /.|! { .,' |/ _z≧＜! ／!.! _,.＞≦z_、 ',＼', ＿ ＼ ,.．/
／::::::::::::::l/ /| l l ／ん::::（_｀ﾐ! { || .彡ん::::(_＼ ＼ ＼ ￣ゝ--'
＿,＞'´::::::::::::::::::/ ./ '.､ {/ .l::| |::! ＼! ゞ､ l::! .|::| ﾞi,＼＿ ｀＜＿.＼ト : : : : : :
:::::::::::::::::::::::::::::::/ ./ .＼ ', .|:弋 ノ:::! .代 .ノ:::! ﾞ ./ ￣￣ {＼＼::｀丶､: : : :
:::::::::::::::::::::::::／{ |ﾞヾ､乂);;;;;;;/ .込;;;;;;ﾘ /＼＼ ', ヽ',:::::::::::｀ヽ: 今回ですべてのリソースを
::::::::::::::::::／ 代 ＼ / ',`ヾ､、 ', /::::::::::::::∠ 使い尽くしていいのなら。
:::::::::::／ {| ＼＼＜,_ ＞＝=-- l〉 / '､ ヽ }／::::::::::::::::::／
::::／ ヾ､ ＞＼ ｀i丶､＼＿_ /ﾑ ＼＿／:::::::::::::::::::::/／
´ : : :＞｡｀ヽ, |￣ ⊂⊃ ,．' ＼ 彡:::::::::::::::::::::::::::::
. . : : : : : : : : :＞ﾞi｡, ,.．＜ ,.斗-‐＞-＝-¨ﾊ::::::::::::::::::::::::::::
. . . .: : : : : : : : : : : : : : : } : ＞ ．, ,. ． ＜斗―l⌒´ ',:::::::::::::::::::::::::
. . . . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ,:斗ミー〝― 彡| |./ ﾞi,＿ｘ-――
-‐￢冖¨¨¨¨/´￣｀丶､, 斗＜´ ﾉ-‐ ¨ | ￣￣￣ 〈´/ ﾞi,
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|「次がねーじゃねーかお、やだー！」
|「いや、待ってくださいやる夫様……『引き裂かれた永劫』の攻撃速度が低下しました！ 押せます！」
|
| バーの進みが止まり、ゆっくりと逆方向に進む。
| 侵食が減っていく、じわじわと。一気に押し込んでもらいたいがそう簡単なものでもないのだろう。
|
|「何が起こってんだお？」
|「『引き裂かれた永劫』が別の『何か』に気を取られているみたいで…………あ」
|
| バーの進みが停止、弥勒菩薩もまたその『何か』に気を取られたのだ。
| そしてやる夫も、同期した感覚で同じものを感知、『血族』本部ビル最上階の決戦を垣間見る。
|
|「ジャギさんが……なんでニャル公と戦ってんだお！？」
|
|「先行したニャルラトホテプが『引き裂かれた永劫』の本体を殺害しようとして失敗、
| 逆に防衛機構として利用されてるみたいですね」
|
|「役立たず通り越して足引っ張ってんじゃねーか！！ ミロっさんなんとかならんかお」
|「何とかしてますってば！」
|
| 弥勒菩薩がジャギに加護を集中。『引き裂かれた永劫』からの精神攻撃をカットし、バフをもりもり盛りまくる。
| だが『引き裂かれた永劫』も負けじと精神攻撃の圧を上げる。
|
| バーは一進一退、ジャギにかかずらった分押し返されるが、すぐにまた押し返せる。
|
|「あれ？ もしかして勝つも負けるもジャギさん次第？？」
|「そうなりますね！！」
|
| 理由は不明だが『引き裂かれた永劫』は、本体への攻撃を恐れている。
| おかしい、『引き裂かれた永劫』は、被害者全員に深く根を張っている。
|
| 起点に過ぎない本体など、なぜ気にするのか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／::::::::: u＼
／ﾉ└ ＼,三_ノ＼ ,∩__ ミロっさん！
／:::::⌒（ ●）三（●）＼ fつuu 大首領さまに攻撃を集中するお！
|::::::::::::::::⌒（__人__）⌒ | | |
＼::::::::: ｀ ⌒´ ,／_ | |
ヽ i 丿
/(⌒) /￣￣´
/ ／ /
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| 因果は不明。
| 故にやる夫は判断を誤った。
|
| 『引き裂かれた永劫』の起点は志摩子だ。同時にキオだ。
| 志摩子からキオへの執着が、この事態を招いたとも言えるし、『引き裂かれた永劫』の弱点でもあった。
|
| 守ろうと、近寄せまいとしているのは志摩子へではない。
| キオを奪われまいという行動なのだ。
|
|「あっ」
|「げぇっ、なんか押し返されてるお！？」
|
| 志摩子を餌に『引き裂かれた永劫』は弥勒菩薩を招き入れ、逆に反撃に出た。
| 志摩子は仲裁＝侵食パワーそのもの。みるみる増える侵食ゲージ。
|
|「ヤバイヤバイヤバイ！ なんかねーかお！？」
|「CPUが足りませーん、相手は人間の脳ミソ使い放題どころか使い潰し放題なんです！
| 向こうも本気、こっちはもう魔力が……ひいん、いまから観客ポイントを疑似翠星石エンジンに回してたら間に合いませぇん！」
|
| 一度押し返されたらもう無理だった。
| 侵食ゲージが見るからに早くなる。やる夫は悲鳴を上げた。
|
|「誰か助けてくれお！！」
|
| 声は虚無に消える、誰の耳にも届かない。
| 当たり前だ、ここは精神の空間。やる夫と死神たちと弥勒菩薩の他に誰もいない。
|
| だが、耳が無くとも意思で聞こえる。
|
|「その言葉を待っていたです！ 逆ハックでキツキツの穴に無理矢理ドッキング！
| オラ！ 股開けですよ！ 偽物使って足りねーのなら、本物使えばいーだけですぅ！！」
|
| 助けを求める声に応えるのがヒーローの仕事だ。
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__,..-‐ ﾆ三 ‐ ､
／/ ／´ Tヽヽ｀ヽ
＞ｆﾞｙ´ / //ﾒ､ ﾄ､く´
＿＿､,_,､ ＿ /:.:.ｊ { ﾘノﾒ〃ノ≦ﾄｊ }ト::.､ __., __ かわいいかわいい
｀フ ,r' }} ｆ ｀ ｀ゝｒ､､ {::{/ ﾉﾑ ゞ'´ __ ゞｿノ |::// ＿ _ -‐'ニ{ i|ｊ´￣ィ´ 翠星石（本物）。
彡' , ﾉﾞ弌､ヽz;' ｊヽ､｀:.‐-､,-ﾄ､ヽ｣｀ｒ､ 「 ﾉ ,ﾌ}坏ノ/ __ -┬{ i´ ´ _,｣ ii }´｀ ミ'
´'´!'´ /¨| l |r' ヽ:.:.:.:... .:.:.:.:.:.:.:`ヽヽ ﾆィ７'´:::::/ヽ´ .:::::;イii| L__,.. -‐'´`´´ ｀ヽr' 呼ばれて飛び出て
i ｌ | ,ﾆ´ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｪ＝＝＝ｪ-:'´:.:.:.:.:.:.:/ ||-'j, i! ｊ,--‐'=､ ジャジャジャジャーン！！
| | i ｒ'´＞'＞､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:7Yヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./__,..'´`''´ ; ', ゛ i ﾑ
', ｊ' /／- '´ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;イiiﾄ､iiﾄ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Kｒ'´ ` '' ﾞ,, :; ; | : ! ですぅ！！
〉 ﾚ'´´ ヽ:.:.:.:.:.／ ll }}､>!} | ＼:.:.:.:.:.:/ ヾ ｀__' ｿ､
, -‐'´ `´ __,.. -‐' 〉'´ｊｆ`ｒ､ｨ jj､ >刈,,､,r;､:.:./ ゝ_ -‐二..-‐'´ ｀ヽ､
＿＿＿∠.. -‐─ '´ , ィ'ヽ フ'll=ﾚ'ヽﾉﾞｧ＜´∨＼- ､ `´~´ ￣￣￣￣二ニﾆ=-‐ ､
─‐- ､ ＿__ __.. -‐'´／ ｀ゝ'´f´K｀ヽ=｢::::ﾉ-'}}ヽ ／｀ヽ ニﾆ＝- ､ ＿＿_ __ ｨ-卞ヽ
｀ ‐- ､ ＿_ ￣￣ -‐, ' ／ ／ ';:::{ }::::! ヾ､ヽ､ 'ー弋 ────＝ニ二 ＿｣ ﾉ/ノ
────＝=──‐─ヶ-‐'´ .／ ／ `' ''´ ヽヽヽ ｀ヽ､ __ ｀~｀ヽ
_ z- '´ ／ ／ ヽヽ ＼ ヽ二ニﾆ ─ ＿＿ニ＝
＝─－ ー─r' / 〃 ヾ､ ヽ └─' - ､＿＿_ 二｀
----‐ァ―──'´ , ‐1´ // ヾ､ ｀ヽ ｀ヽ､ ｀ヽ
／_ ／ ヽヽ ノ 〉 ｀ヽ {｀~ ──
＝三ｲ , ‐'´ ｀ﾍ＼ ／,イ ＼ `｀ヽ=ｧz､
-‐ '´ ,- ' l ｀丶ヽ､ ,. ',´-'´/ ヽ､ ヽヽ`
{ヽ ', ｀丶｀ヽ､ , -'´／ ´ ｀ヽ, } ﾄ､
/､ヽ ', ｀ヽ､`- ' , ‐'´ ／/ ﾍ￣｀
／ ｀ヽ｀ ‐ ､__ ｀´ __,.. -‐'´／ヽ､ ｀ヽ
/ ｀ ‐- 二 - ､ ,- ' z- '^~´ ＼ ヽ
もういい。
もうどうなってもいい。
お先真っ暗。
もう行ける場所はない。
この苦しみに。
この痛みに。
もう耐えられない。
だから。
次回、最終幕百三話『全部終わりに』
果てから至るは破滅の化身。
何やってんの本物！！ ようこそ！
やべー女（志摩子様）にはやべー女（翠星石）をぶつけんだよ！
『やる夫』さんの、デカい口叩いてから崩れ落ちるまでの流れ
もはや芸術的ですらあるよ
真打ち、とうっじょうっ！！！
所詮『やる夫』は十壊破壊ステージの敗北者じゃけえ…
やる夫も不在が長かったけど、翠星石の現実復帰も超久々だな
ｒ、
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ ィ／
「｀ 。 ＿ ﾑ ﾏ 。ィﾆ／
≧c。｀ 。 ／ ＞。ﾑ ﾏﾆﾆ／
≧c。 ｀ / ／ ＞} ﾏ／
≧c。 ｀ ＜＿ ／__ノ ﾏ
≧c。 ::..... ..: ﾏ
≧c。:.. ﾏ＿＿
マニヽ ::... .ﾏ／
〉ニニ、 ::::.... .:: ﾏ
＿＿ ｲニニニ 〉 :::.....:: ／￣ヽ
＼＞ ￣￣ ｀マﾆ人ヽ /〇 ﾘ ……………………。
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八 ＿ /ニ彡 /
／ 人{ ７ ィ＿へ／
／ / } ／ー＜￣ ﾑ {
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| 新宿衛生病院正門。
| 狙撃によって呂布を失い、統制を失った『血族』の『緊急事態対策班』。
|
| 呂布の惨事に冷静さを失い、一時は暴走状態に陥ったロビン。
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』は『血族』本部へお礼参りに直行し。
|
| その『血族』側の大半は呂布を引きずって逃げ去った。
| 残るは一人。
|
|「不思議なものね」
|
| 風もないのにたなびく肉襞色の髪、ゆらゆらと揺れるそれは花を思わせる露骨な魅力を放射している。
|
|「ずっと死に場所を求めてきたのだけれど、いざとなるとピンと来ないわ」
|「ココデハナイカラデハ？」
|
| ロビンが相手なら、降参も命乞いも通るだろう。
| だが、ルカは頭を振った。
|
|「こんな私を受け入れてくれた『血族』のために戦って死ぬなら構わない」
|（え？ マジで？ ワシ死にたくないんじゃが）
|
| 脳内に響く困惑の声をルカは無視。
| 誰のせいで死にたいと思っているのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_ __
,，≦=-──‐-=ミ≧ミ ､
／ ＼/＼ ＼
／ / / ＼/＼ ヽ
、______彡 / / } } Ｖ/ﾍ ，
｀¨¨ア ′ ‘ / ' ｉ Ｖ/ﾊ ‘，
/ / ｉ ； // //_| Ｖ/ﾊ ’
│ ⅰ │ 厶孑ﾔ/ | } ∨/} ‘， それに私ね、ワガママで、
| ｉ iﾄ、__| |i | / 仏弐弌ﾄ| , ［ﾄ廴 ‘， 執念深いし、
| | ]｢＼［八 | ′笊う㏍ﾉﾘ / 从//}八 ‘， 好き嫌いが激しいのよ。
| 人 |ｨ笊うがゝ|/ 弋'/ｿ' //'/// i|ハ ，
|！ ＼乂弋'/ｿ / / '厶,// | ∧ ‘，
|人 个トミ ' 厶イ /￣ｱ 八い∧ ‘
、 |人 ､ ア / /}/ / ′ | |ハ ‘
＼乂 ＞ ｲ / / / | |
ヽ个トミX≧=- イ__,｣厶/ ／ / | } }
ﾘ ＼YﾆＹ⌒Ｙニニニ厶/ / | ﾘ ′′
,厶_ ＿ﾉニ{ }〕ﾆﾆニ＞/ 厶==ミノ/ / /
／⌒＼¨ア＼人__人＞ニニ/ / ＼ / /
_____／（（⌒＞冫/⌒＞＜ニニニ./ / ∨/
__,ｘi辷〆 ／＼くニニ=ァアアｱ丁ﾆﾆ./ / / ⅰ
-=＝＝≦仁ニニ㌻ニニ< （ニ// /厶ｲ乂 /ﾆ/ , / []∃ |
,. '" ,x仁ニﾆﾆ∨ニニニﾆ＞三しｲﾆﾆﾆ7辷// / |
／ -=≦〆⌒＼.ニﾆ｛ニニニニ〃〃／ニニニﾆ// / ∧ﾍ │
／ '" ／ ＼)从ニニニﾆ{{ {{ {{ニニニニ./ ∧}以ﾆ=─=ミx.」
／／ ／ ,ｘ仁ﾍﾆﾆﾆﾆﾆ{{ {{ {{ニニニﾆ/ / /ﾆ∨ニニニニニヽ
∠ニﾆ＞ｘ ／ ∨)＞ヽニﾆﾆ{{ {{ {{ニニニ./ / /ﾆﾆ.|ニニニニニニ|
/ 〈ニニニニﾆﾆ／ ／/ Yニﾆ{{ {{ {{ニニニ′ , 〃 ﾆﾆ|ニニニニニニ|
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ﾏニニニニニﾆ＼,/ /ニﾆﾘ川 {ニニﾆﾞ |ニﾆﾆ|´¨¨¨¨¨¨¨¨｀|ｿ
/ﾏニニニニニﾆﾆ＼ 'ニﾆ.//}}'/}ニニﾆ! |ニﾆﾆ| |ゝ
/ ﾏニニニニニﾆﾆﾆ＼/ニﾆ// {{Ｖ{ニニﾆ| |ニﾆﾆ| | ＼
/ ﾏニニニニニニニ/ニﾆ// Vﾊニニﾆ| |ニﾆﾆ| | ＼
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|「私を捨てた、異端扱いした、認めなかった、そんなシロッコとその一党に一泡吹かせて散るんなら」
|
| ルカの双眸が淀んだ光でギラつく。
| 巡音ルカ、歌舞伎町の戦いで魔王マーラと融合して『落し子』を屠った英雄。
|
|（復讐、逆襲、立場交代よいぞよいぞ！）
|
| しかし、勝利のために手段を選ばなかったことを糾弾され『教会』を追放された『堕ちた聖女』。
| 魔王マーラの影響で催淫フェロモンを無意識散布し、自身も常に発情している歩く18禁。
|
|（全員へその穴までレイプして卵を植え付けてやる。産卵プレイじゃ！）
|（死ね）
|
| で、ありながらも。
| この半年近く、鋼の意思で貞操を守り続けてきた。裏腹な身体を強い心で押し込めてきた。
|
| ずっと、押し込めてきた。
|
| 誰にも甘えられなかった。ワガママなんて言える相手はどこにもいなかった。
| ずっと恨んできた。それでも、逆恨みだからと口にはしてこなかった。
|
| 正常な人間を妬んできた。
| 正論で生きられる奴らを羨んできた。
|
| だけど、助けてくれたジャギ、よく似た境遇のキル、そして妹みたいな霊夢の手前。
| なにも言わずに、ずっと胸の奥で燻ぶらせてきた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ -‐＝‐- ． __,. -‐=＝=‐-
"´ , =＝‐- ､ミァ ⌒ヾ 、｀丶 __ヽ、
⌒ヽ／ ／ ./ ∧ ,､ぃぁﾂﾅぃぁ､_ﾉ｝＼､x‐-ヽ´￣ `
⌒ヽ 〃 { jﾟ｡}ｧ`´: : : : : : : : : ｀ミ ､⌒ヽ x-- 、
j/／⌒ヽ〆〃: : : :,{: : : : : : ∧: : : : :ヽ ／: : : : : : `ー 7
″ 〆。/ : : ／_」: .: : : .:/￣ヽ.: : : : Y: : : :ο＾=‐‐-‐ﾟ -‐
_/ﾟ 9} :ｲ.: : i !'´ {ﾉИ／｛0｝ } j : : }: :σ ／.: : : : ヤるだけヤッて
（ｿ.: : :/fi{ : : N ｛0｝ И: : ,K０ ／.: : : x=‐ 死ねりゃあ本望。
/ Ｏ: : l ﾋ!: :｜ 々 ﾌ |: , ′`ー-‐: :´: :ο , ﾟ
б: : : : { ___'､: |!, /j/=､、r=､: : :σ: :.〆
|: :◎: :}〆 ∧{込、 イ:::.:.`ｰ"､二_(⊇-‐´,. : '"⌒ヽ
λ-､: : :＼ __j : .:::::≧=‐‐=≦::::（ｃ｝: :.＼x-､: : : ｀ヽ´: ｡: : : : : :}
／: :ゞｨ: :,-､ : : : : : : : .:.::::|:γヽ:（６}:.＼Ｑ ゞ彳 (９）: :∨"⌒ヽ :/
. σ: Ｃ: :/＼乂 } : : : : : : . :.::∧辷ﾉ: j: : {９）(rｯ-=‐'＼:. : : :.} }/
./ : : : : / ＼ ＿⊆≧::〆:/_} : : :（６}: : : : !x''"⌒ヽ{)} : : :|
{ : : ◎∧ ｀¨/.: : :Y'Y/ j ∩/: :б)／｡ 。: : : : ;j{9｝: |
.＼（ヽ: : `ー--=イ: : : : :{_ﾉ _∠-‐.' : : : :/ィ'⌒ヾﾟ : : : |!: : : l
ヾ: :(ｔう）: : : : : : : : ｨｧ'´σ:ο: : : : : :／ /0 : : j{9｝: |
ヽ,-=-､_γ_う´fﾌ : : : ;．--一 " {6.: : : :/!: : : :､ ／
｀¨´ {c 0／ ＼: : :.(⊆`ー‐ "σﾉ :/（t》 c: :｀¨´: :ο
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∨ ヽ , ＿ -‐
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| それが今。
| もう、我慢の必要がなくなった。箍が外れた。
|
| 霊夢にはジャギがいる。キルには黄泉がいる。
| もう、これ以上彼らの姉みたいに振る舞わなくていいのだ。
|
| もはや、何に気後れする必要もなく。
| ルカは怪物になろうとしていた。
|
|（魔力を寄越しなさい。ありったけ、絞りカスまで）
|（あっあっ、そんな激しい、赤玉でちゃうぅ）
|
| 肉襞色の髪がうねり、広がる。
| 明らかに分量が増え、長さも変わる。八本のタコに似た触手に枝分かれし、蛇のようにくねる。
|
| 煮詰めた泥沼のような瘴気を放つルカの両目。
| 三日月型に歪んだ唇からは血の臭いのする蒸気を排出。
|
|「降伏イタシマセンカ？」
|「ハッ」
|
| ロビンの提案を笑い飛ばす。
|
|「ホントは私とシたいんでしょう？」
|「…………ハイ」
|
|「素直でよろしい。あなたの八つ当たりを受けてあげるわ。
| ……だから私も八つ当たりをさせてもらう」
|
| 全部投げ出して、一旦壊して、自分の中の獣性を開放して。
| 暴れられるだけ暴れよう。理性という首輪を投げ捨てよう。もういい、もうどうでもいい。
|
| 周囲から迫る『カトルカール』の殺気、シロッコ私がこいつら全滅させたらどんな顔するだろう。
| 試験機なんて興味ないだろうか？ それならそれでいい。ロビンもスクラップにしてやるさ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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──
; ／ ＼／／
/一ﾉ八､＿_ u ∨
!ぅ､ ぅ:、＼ ミ彡ﾐ 本気で死ぬ気か？
ﾉじﾘ ﾋｃﾘ lミ彡 まあ待ておちけつ！
{ ¨ z_ `U ,ミﾐ
; '､ ‘=' し /ﾐ 落ち……ケツ……尻で落とされるとかそういうあれかな？
／ > ＿__／／ ルカもアナルよわよわそうじゃし。
′/ ｀ヽ.／
/ / ／
/ | /
/ | /
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|（全部もらうわよ、お前から死ね）
|（らめぇ、出したばっかりでビンカンなのぉ、もう出ないよぉ！）
|
| 肉体の一部を状況に合わせて変形させる。ルカには一日の長があった。
| 装備のスペックでも、魔王マーラはロビンに見劣りするどころか上回るし、戦闘技能も負けていない。
|
| 四本の前足を武器に変え、ルカの触手の数に対応しようとするロビン。
| その発想の時点でもう負けているとは気付かない。
|
|（触手はくれてやる、好きにしなさい。おかわりもいいわよ）
|（やったー！ ルカさんは話が分かるッ）
|
| ルカの触手が数本、横薙ぎに振るわれた。
|
| 光り蠢くノコギリ状の刃。生体チェーンソーがロビン右腕のだんびら二本と火花を散らす。
| 空いた左手としっぽで応戦しようとするロビン、だがルカ＝マーラのほうが遥かに早い。
|
| 両手に構えたベレッタをあっという間に打ち尽くし、ロビンの反応より早く弾倉が落下。
| 合計30もの弾丸を顔面に受けたロビン、頭部装甲の硬さから視野喪失は真逃れる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿ ,ｨ{
＿＿_/ / 〈 ｣ヽ
｀ マ / / ＼
/ ＼ 〈 / >
〈 / ＞ /＿ 人
＼//⌒） / У ＼
>ミ人/__＿/ ￣￣
/ ７ /{
,〈 ./ / |
r-〈_７ / | ィ７
/{ УｙＹ￣￣ト、 ｨ{ / レ＜⌒ヽ イ／
メノ/_人 {＞/ {7 { ヽ ＞ ´ ／
７ Ｙ ￣ ７ {__/ ｀ー ´ ／ 05ロビン
〉>' { ＿_/ }＼＿ ナンテ正確ナ……！
´ ヽ＼７ｨ＝、 ／] ＼ ヽ.
｀Y/ Oヽ. 人／ゝ 彡 ｒ┐ ＿
{≧=＝レ┴┤ _ﾉｰ/ ＼ ／７
＿＿＞ー＜ニニﾑ ノ￣＼ ／ﾆ⌒Y
｀マ/ﾑ ｛ ﾏニニ＞ｒ―彡 ＼{ ｙｰ､ Ｖ
」ｭニ､ ｀ー― アﾆ人 ／／ 〉彡′
ィ＿_｣}７ /ニニニニ/ ＼ ｢ ／＿｣
_＿ ｡ｃーィ ＼ニニィ⌒}ニﾌ￣￣ ﾉ／（
＼<ィ＜￣￣! ｀ ｰ＜ヽ. ｢ ／￣／ ／´
7人 ＞ 」 }ｰY ／ ／ /
{L＿＞、入 ﾉ ﾌ .／ー ´ /
＼{｀ーｒー彡 ´ .／ ／
￣￣￣ ／ 彡 ´
￣￣￣
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| だが、弾丸と火花で視界を埋め尽くされた。その間にルカは飛び込み前転。
| ロビンの左手のハンマーが空を凪ぐ。しっぽから伸びた感電ワイヤーが獲物を探してのたうつ。
|
| 地を這う高さでルカの残りの触手がロビンの脚部としっぽに巻き付いた。すごい力で淫らにしごきあげへし折ろうとする。
| 同時に、リロードしていた二丁拳銃が再びフルオート。
|
| ロビンの首の付根に弾丸を雨あられと叩き込む。
| 正確無比な射撃、ルカの肉体強度を上げ、性能を上げ、精度を上げるためにマーラが魔力を与えていた。
|
|（顔射ktkr）
|
| 投げ遣りの捨て鉢のルカ、マーラがロビンの装甲に空いた僅かな裂け目に催淫粘液を吹き付ける。
|
| 白濁してねばつく、ピチピチの粘液がビュルビュルと音を立てて触手の先から噴射。
| カメラ・アイに張り付いた粘液をロビンが拭おうとするもうまくいかない。
|
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
|「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|
| 『カトルカール』の地上戦力がロビンを救出に現れる。
| 触手で薙ぎ払う、たやすく避けられる。だが、一本目はフェイントで二本目が本命とは気付かれず。
|
| ノミ脚の脚部を粉砕、這いずるしかできないスクラップに。
| バレリーナの片腕を切断、胴体に致命的な刺突、内蔵をシェイクして粘液を流し込む。
|
| 錐揉みして壁に衝突、動かなくなる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､
／ ＼
/ _儿 ヽ
/ ﾍ「 i
| ＼ ｜
| ｨ＾ﾄ､」ｊ {､＿ ∠￣ ' おら！
丿八cり ｔ七ヽ Y ,ミﾐ;;;: 孕めっ！
{ xx＾u〜 廴ツ ﾉ {ミ彡ﾐ;;;:
::;;ﾐ＼＿＿)､__ｒ' ￢ 〜xxx.丿ｨｲ彡;;;::
::;;;彡毟｜ ｀ ‐-----‐ｔ´毟彡ﾐ;;::
::;;ﾐ毟, ┤ |毟ミﾐヲ;;:
:;;ﾐ／ ! |＼ミﾐヲ;;:
〃 | ヽﾐヲ;;:
{ ｒ }
丶 ｜ 丿
＼＿＿ 人 ＿__／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「喉が喉が喉が！ 渇く渇く渇く！」
|
| 彼らは囮。固定砲台と化したレヴリアスと戦車男の十字砲火。
| ルカは妖しく微笑む、見切っていた。
|
| 跳躍回避。逃げた先に降り注ぐ爆弾の土砂降り、髪を盾に……いや、傘状にして爆発を推進力に。
|
| 翻る裾、パンモロキックが戦車男の抗磁圧シールドを粉砕、顔面に直撃、首の骨をへし折る。
|
|（パンツ見えたやったー！）
|（うるさい、ほら！ もっと出しなさいよ！）
|
| 卑猥な音をさせながら、八本の触手が白濁した粘液を撒き散らす。
| 異様な粘度で壁に張り付き、悪臭を放ち糸を引く。
|
|（触れれば妊娠させる『精液』の結界はッ！ すでにお前の周り、半径20メートル！）
|
| 地上で機会を伺っていた見えない敵が、不幸にもその端を踏んでいた。
| ルカの二丁拳銃がフルオート、空中に火花が散り透明の敵が倒れ伏す。
|
| レヴリアスに装備された暴徒鎮圧用火炎放射器が火を吹く、しかしマーラの魔力で錬られた精液だ。びくともしない。
| それどころか小学校のプールに撒けば泳いだ児童全員を妊娠させかねない過剰な生命力である。
|
| 空中から機関銃片手に果敢に攻めるアゲハチョウ、蜘蛛の巣みたいな結界に絡め取られる。
|
|（ママになっちゃえ！）
|（本当にやめて）
|
| 精液そのものが意思のある生き物のように動く。絡め取られる『カトルカール』空中戦力。
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∧ ,’.、
ゝく￣ヽて＿＿ / :!
弋 ゞ ;!ﾉ 〈＿ ｀ヽ_ / .:!
|:/＼l￣￣弋＞ー!ﾉ. ,.イ __ ／, |
弋＿:| ／∠、,，.:´ .／ , ,′
＿ _ ,，´ ￣ ｀ / ／／､／ . ／ , .,.'
` ､ ,，―／／､／ ,，イ , /
’,／ ／ 弋>' ., |＼ _ ,，' ./
/.＜/ .／__| i ./ ルカサン！！
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| ようやくカメラアイの精液を除去できたロビン。
|
|「ロビンはワガママ言えて良かったわね」
|
| 拳銃を手放し日本等を引き抜く、二本のだんびらと二本の鉄球を刀一本で捌く。
| 触手による攻撃、受けずに回避に徹するロビン。変に防いで絡みつかれたり射精されては面倒なのだろう。
|
|「ワガママを聞いてくれる人がいて良かったわね！」
|「ソノ我儘ガッ！」
|
| 『血族』と敵対することになり、呂布に重傷を負わせ、そして、そして。
| こんな迷走を招いたというのに。ロビン自身、膝からくずおれそうなほどの無力感。
|
| 何をやっているのだろう、どこに向かっているのだろう。
| ただのワガママで、周りを巻き込んで。
|
| どこにも行けない。
| 何も成せない。
|
| 何者にもなれない。
| 弱くて愚かな…………。
|
| ルカとロビン、相対する二者。共にヒトの心を持ち、されどヒトならざるもの。
| あるいは、ヒトから外れ行くもの。
|
| あがくロビン、だが装甲を貫通して体内に侵入した触手は致命的。
| 伸ばした手、異形の鉄球。破壊しかできない手。
|
| その先に揺れる、絡みつかれ身動き取れない『カトルカール』たち。
| これが終わりか。
|
|「その手を振り下ろせ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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｀''+i..,,,
＼ﾞﾞ'!､、
＼ .｀''ｰ ,,_
＼, .ｉﾆ''!"
＼ ｀'-､
＼. ｀''ｰ ,,、
＼ .｀ﾞ'''― ＿＿＿__
＼ _,,, -''!ﾞﾞ″
ヽ, .＜_,
＼ ｒ'"
ヽ ｀-..、
ヽ ｀'|〜
ヽ ヽ
ｌ ｀'-、
'ぃ． ｌ ｀'-..,、
ヽ `-､. .| __,二＝─
ヽ .｀''. ､, │ .〈"￣´゛
ｌ, ﾞ''ｰ .． .,./ .｀'''ｰ─
ｌ ￣ﾞﾞ´ r‐―￢￣￣￣
ｌ ,-―-、 ヽ
ｌ,./ ＼ ヽ
ﾞl! .ヽ _、 ＿＿. ヽ,
ヽ.| .｀ﾞ''ｰ て、 .｀ﾞ'''ｰ .._ .＼
ｌl、 ｀''-..＼
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| 誰かが、ロビンの手を掴んだ。そして命じた。
| その意のままに振り下ろした一撃は、渾身の破壊力を有していて、ルカは危険を察知し側転回避。
|
|「『星屑』」
|
| 鉄でできた鎧が、獅子を模した怪人が、ロビンの手を握っていた。
| 突然現れ幻のように消えた鎧の怪。だが、参戦したのはそいつだけではない。
|
|（バカヤロウ！）（なんで来やがった！）（消えろボケが！）
|
| 『カトルカール』の暗号通信で罵倒が響き渡る。
| 現れたそいつは素知らぬ顔で、担いだ刀を無造作に振るう。
|
|「虎眼流剣士 藤木源之助。故あって助太刀致す」
|
|（ふじきぃ）（藤木よぉ）（源之助……！）
|
| 這いずりながらノミ脚が、瓦礫の中でバレリーナが、倒れ伏した戦車男が……『カトルカール』を捨てた男への怨嗟に呻く。
|
| ここは死地、最果ての絶壁。荒ぶる大渦。
| 溺れるものの手を掴んでも、死すべき定めに飲み込まれるだけなのに。
|
|「故……なに？ シロッコに恩義でも？
| そもそも、誰かしら？ お呼びで無いわよ」
|
| 怒気を迸らせながら、ルカは突然背後を射撃。
| 弾丸はもうひとりの乱入者にかすりもせずに壁を穿った。
|
|「お久し振りですルカさん。随分な挨拶ですね」
|
| 滑るようにレヴリアスに近付き、その重武装に眉根を寄せる男、ミスト・レックス。
| 敵か味方か、藤木に対する反応は困惑であったが、ミストに対しては簡潔だった。
|
| レヴリアスの暴徒鎮圧機関銃が獰猛な唸りを上げて回転、どんな暴徒もたちまち潰れたトマトに変える大型弾を高速発射。
| 尻尾を巻いて逃げるミスト。
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!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ}≧=≦弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ レヴリアス……！
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 全く悪趣味な改造を！！
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/
ﾄ､:ﾍ _ ＿ /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ ヽ _ﾝ ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
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|「やめよブッティ、彼は味方だ」
|
| ロビンと挟み撃ちの位置取りで、源之助が刀を振るう。
| 先程の異様な鎧怪人のこともあり、防御に徹するルカ。彼女はペルソナ使いを知らない。
|
| 四本の手足を縦横無尽に振るうロビン、全ての武器が赤熱化。陽炎揺れる必殺の剣舞。
| 唯一の腕にたった一本の日本刀、手数も膂力も武器の質も劣るはずの源之助、しかし、振り下ろされる刃は恐ろしく鋭い。
|
|（全部を一点集中した強さじゃな。コイツに切られるのは危険じゃぞ）
|
| 全ての無駄を削ぎ落とし、全ての感情を削ぎ落とし、全てのプライドを削ぎ落とし、全ての愛すら削ぎ落とした剣。
| その頂き、それでも届かない星。
|
| ロビンの乱打を触手で捌きながら、ルカの意識は完全に源之助に向いていた。
| 担いだ刀、二の太刀要らず。刃が振るわれた後に残るのが死だけであるという確信。
|
| 張り詰めた気迫、次の瞬間に源之助の筋肉が音を立てて膨張した。来る。
|
|「『星屑』」
|
| 来ない！！
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＿ｒ ┬┬ ｭ＿_
／⌒ﾏ. | | ﾏ ヽ
r―ィ ィ ｊ___ | | i| i＿ ゝ-┐
{i 人 ｊ ｲ / | | i| ｊ ｊ / i!
ﾏ ヽ ヘ |! | | i|ﾉ 人 ノｊ
マ }≧＝｣ | | L=≦ ノ
＼八 | ! ィ
／ヽ [｢｢ト､ H ,ィ｢｢｢] ´ ﾉ
ゝ、八>ﾄ|ノTTTヾソ个≠
イ77 ｀7 _Ψ_ 弋 ￣ﾄ＼
_＿┌┐ ヾ彡≠イﾐ＼こ／彡＞＝彡 ┌┐ ＿_
人 ￣￣＼_ｒ｢｢ﾏヽ_＿｣≧ｭ､三｡o≦Lノﾏ｢｢Lh、／￣￣ 人
/ ヽ ＼＿＼＼_ﾏ ー=‐ ﾏ、ｨ ／ ヘ ／ }
{ ＼ 〈 ＼ヽﾑ ミヽ＿_イ ｊ／／ ｊ ／ ｊ
ヽ. ＼ 人 ヽ､ヽ ／／ ／｀ヽイ 人
ｒ ゝ Y ＼ }ｰ＼ ／-{ ／ 人 ／ ＼
{ト、＼ ＞､ / ﾉ 人＿人 八 ／ 〉 ／ ノ
＼ ＼ 八 ヽ / ／ }ー{{ ヽ イ ／}
／＼ } _ノミ､ ＞}‐{＜､ ＼ } 彡イヽ
ト､ ＼ 人_/ ｒ‐ミ Y/ | ! 〉｛´ｒ=ﾐヽｲ人 --≠´ ｲ
{ ＼ ｀ { ､{! {ﾄ_彡 ｊト､ i ! ／八{ﾄ_リ ｊ } ／ /
! ＼ ＼ ヽ__ ノ、 ヽ ¨ / 人＿ 彡 ／ ／ /
＼ ミｰ= /{ ＼ ﾏ ヽ 人__人 / ﾏ ／ ﾄ} ´ ィ´
ｒ}ト / ＞ 八 ｒ' ｒ､ ! ,ｨ Ｙ 八 ＜ ヽ / ト､
人 人 |＿二二≧ ｀ ´ ≦二二＿| 人 ﾊ
/ ） ）--―{八. ┌个┐ 八}―--（ ヽ }┐
ｒ┤ ミ ィ´ レィ´￣「 .≧｀⌒´≦ Tー―-」 } Y⌒ﾐ } |
}/ {⌒ﾘ ／ﾉ ィヽ }. ┌┐┌┐ j ／ヽ { 八＿ﾉ Y
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| 源之助の背後に、亡霊のように佇む鎧姿。掴むだけの存在。
| そいつが源之助の切っ先を摘んでいた。それだけだった。そして、それで十分だった。
|
| ルカは完全にタイミングを逸していた。逃れられなかった。ドンピシャだった。
| 首を逸らす、刃が食い込む、避けきれない。ならばいっそ。
|
| 前に出る。素っ首落とされる？ 生首上等、このまま貴様も道連れだ。
| ロビンへの攻撃をやめる。すべてを源之助に向ける。
|
| 真正面から睨み合うルカと源之助。
| 絡み合う視線。心臓が跳ねる。互いの瞳の淀みに、相手の眼球に映った己の邪悪さに。
|
|「あっ」「うむっ」
|
| ルカの頭部に着弾、9mmパラベラム弾の直撃を受けて触手の一本が吹き飛ぶ。
| ワイヤーが足に絡まり転倒する源之助、刀を手放して受け身を取る。
|
| ワイヤーを握るのはミスト、その目は滅多にないほどに厳しい。
|
|「俺とあんたたちで、こんなにも意識の差があるとは思わなかった！！
| 全員死にたがるのをやめるんだ！ 望んでくれる人がいれば、誰だって生きて生けますよ！！」
|
| いつの間にか制圧されていたレヴリアス、そこから引っ張り出した極太ワイヤー。
| 地を蹴って飛び出すミスト、首に針が刺さったままで、それでも突撃しようとする鉄腕娘の腕を極めて動きを止める。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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⌒＞ ／ ／ ／ .ｲ八 ヽ |人
／ ／ / :／ / ' / /从ﾊﾊ i| ｉ|从 乂__
,__ ／, / /: :/: :/: : / /: :/. ｲ: :〃 刈 : :| ｉ| | ＼乂__
ニニ=ー/∠/ /: :/: :/ / /:/: :/ '. :|: :i| | : : i| i| |: :＼ 乂 __ おかしいよあんたたちは！
.ニニﾆ./Ⅵ/ : : : : / :/ / |/| ' /／| 从 」| : : '|: : i|八: : 乂ニﾆ
ニニﾆ/ﾆ|/ : .ｲ: : ' ｲ弍≧ﾄ.」/ / Ⅵ｣L斗i≦ |: :/ |: : i|＜/∧ーニﾆ 落ち着け！ 冷静になれ！
ニニニﾆ/／/,|: : |: :| 弋ﾋツﾄ､ 」x代ﾁツ. ﾘ/: : : :八/| | |ﾆﾆﾆニ 安っぽい挑発に乗るな！
ﾆニニﾟ/| | |//|八| ∧ ｀¨¨´ ノ}:::. ｀¨¨´ ｲ/: ://∧//| | ﾄ、ﾆﾆﾆ
ニニ::/ :| | |//| | ｉ|∧ ノ/ｲ/ｲ/////| | |∧ニニ
ﾆﾆﾆ/: ::| | |//|/∧ |i |ゝ r -== ､ ｲ// / |////| | |: :‘，ニ
ニ-/ : : | 八///] ﾊ八い＼ ｛ :.:.:.:.:.:.: ｝ ｲ/' ∧'/// //:|: :‘，ﾆ
二｛. .: :::|《/∧//l ＿ 丶｀ ー‐‐ .イ ___ ∧/// //:| |:.|: ｝ニ
ﾆﾆヽ : : ∨/,∧/| ＼｝ ｀ ー'’ ｛／ ∧/／ //: :| Ｌ|.ｲﾆﾆ
ノ ｀ヽ :∨/,∧ト， ｀ ´ / ／//／}:: :|イ´i|ﾆﾆ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「…………？」
|
| マーラの攻撃で内側を侵食されているロビンが、全身を軋ませながら周囲を見回す。
| 容易く半壊した『カトルカール』死にたがっているかのように、炎に飛び込む虫ケラみたいに。
|
|「けぷっ……」
|
| 一寸の切り込み、切断されたルカの頸動脈。だが、即座に触手が動いて傷口を縫合。
| 唇から血泡を溢しながら、ルカもまた周囲に視線を走らせる。
|
|「なんたと……？」
|
| ワイヤーを振りほどき、立ち上がりながら源之助が頭を押さえる。
| 何かおかしい。皆を生還させるための戦いなのに。なにかおかしい。
|
| 不意に、ルカの視線が釘付けになる。
| 少し離れた建物の影に一人の男。先程ルカを狙撃したベレッタを構えたまま。
|
| 装弾された9mmパラベラム弾、パラペラムはラテン語のことわざ
| 『平和を望むならば戦争に備えよ』の後半部分『戦争に備えよ』を意味する。
|
| 戦争、今まさに起きようとしている。
| 嘲笑いながら手ぐすねを引いて。
|
|「なんだ、女が泣いてると思って来てみりゃあ………ただの駄々っ子か？」
|
| 硬直した戦場に、男の声が響く。その目は周囲誰でもない。
| ただルカだけを注視していて。
|
|「…………ごぽっ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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_＿
_ノ´ ｀ヽ、
厂 ｀＞､ _
ﾉ´ ｀＞ ､
.,.イ ｀ヽ
/ / ＼
〈 { ',
∨ヽ、 ⌒ヽ、 l
} ｀ .,ﾍ } __ l
｛ / ゞ ﾉ ノ´ ｀ ,: l 全員落ち着いて、
ゝ、 / {〃ｲ , - '" ∨: j そっちの奴の言うことを聞くんだな。
ミ / ヽ !ﾘ ∨: ,'
∨ ,' ｛ ﾐ: ,' 俺か？ 俺は通りすがりの『武s……。
∨ l ＜≧-.､,,_ {_,,､-≦千＞ j: ,' いや、ちげーな。
∨lj ー ｔｧｰ ヽ ヾ"￢ｔｧ ー lﾍ,'
!K:! ￣´ l ￣´ j_）｝ ダチを助けに来ただけさ。
l（l:! j |)/
∨j ヾ;> j ｲ
ヾ、 _＿____ /|:ﾘ
ﾘﾍ ´ ,,, ｀ r‐＜j､ﾉ,,,____
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|「ククッ」「何がおかしいカクリコン」
|
| 不服そうに鼻を鳴らす男、ジェリド。
| 彼の後ろにはもうひとり、『武僧』用の戦闘機動服を完全装備した人物。
|
| 茶色と深緑の地味なカラーリング、ジェリドも装着はしているが頭部だけは晒したまま。
| 大型ライフルを構えたカクリコンとは逆に、ジェリドは取り回しのいいベレッタを二丁構えている。
|
| その銃口は……ルカは瞬きした。なぜ自分に向いていないの？
|
|「全員、胸に手を当てて考えるんだ。自分の目的を思い出せ。
| 大丈夫、ちょっと興奮しても鎮圧は防衛隊時代の任務で慣れていますから」
|
| その間も説得を続けるミスト、すでに誰もが違和感を覚えていた。
| 何かに突き動かされるように、投げ遣りに、捨て鉢に。命を投げ捨てても構わないような衝動。
|
| 正体不明のそれに立ち向かう方法を、ミストは的確に理解していた。
|
|「人間同士で争ってるような場合じゃない！ そんなことをしても根本的な解決にはならない！
| 何がトリガーになったかまではまだ分からないが、何が起きてるのかは分かる」
|
| 源之助が刀を拾い、器用に左脇に挟んだ鞘に収める。「不覚」の呟き。
| 彼はその可能性を示唆されていたというのに。
|
|「迅速に原因を究明して対処しないと世界が滅ぶぞ！
| 大丈夫、暴徒鎮圧は防衛隊時代の任務で慣れていますからね！」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/|!
/ |!
「＼ / |!
ﾏ ＼ / |!
ﾏ ヾ､ ＿ /〉. / |! …………なんだ？
＿＿ ﾏ ヾｒ､ { o ヾV/. / ＿ |! 驚かせやがって。
／｛＿＿ﾉ ﾏ＿ ｀ヾ､＿_ｊ＿ ｊ!//ｒｭ､ / ｨ乂ﾉ､. |!
人／ ー‐┐ / } ⌒ﾍ ｀＜⌒ﾐ、/ /´￣ヾ{ |/〉
/ ７⌒ー―'／ゝ/ ﾏ ﾏﾑ ヽ [{ i! |/
..-=ニニ ﾑ /ｰ／{｀ーｧ ／ ﾏ ﾏﾑ ＼ [{ ヽ ,ｨ ｊト､
{ニニニニ ﾑ {＿＞‐' ] ＼ ＞ ､ ﾏﾑ ヾ{､ ヾrァフ' /-ｨｱ＿＿_
ﾏニニニニﾑ {＿{二ア＼ニニニニ＞ー､≠ｭ､ ヾ{ ィﾆｭ /ｨｱ /7ｰｪｪｪｪｪｪ-――‐ァ
ﾏニニニニﾑ ＞’ ＼ニニ／ }_人_ﾌヽ 入ニニｒフ /7 ／
ﾏニニニニ／ヽ７´ ｒｭ {､ ＿＿｀ミYニニﾆラ__イニニﾆﾑ /7 ＞ ´
マニニ／ 人＿彡ヘ ´ ) ﾉヾﾆ厂ｒ―}ﾆ7ｰニニ} _ｨﾆﾆニ⌒ヽ＿＞ ´
マニニニｭ､ヾ ＼彡 ＼/ ／ー'ニニニ{{ ｢ /:::::::｀´:::〉ヾ＞=‐⌒ヽﾆーニニニニｭ､＿
マニニニﾆﾍ ／Y⌒ヽ_／ニニニニﾆﾆﾑ ){:::::::::::::::/ ／ﾑ_／⌒＼｀マニニニニニニ
マニニニ/ ／ニ人＿ﾉニニ／⌒ヾニニﾑ_＞＝-､:/／ニニﾑ ｒ⌒ヽ ｀マニニニニニ
＼ニニニニニニニニﾆ／ ／￣ 「｀ヾ┬ Lｨ´￣￣￣￣ミ ＼＞┘ニニニニニ
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| 煙が晴れる、妨害が収まる。
| 地下、手術室。ヤザン・ゲーブルの配下ラムサスとダンケルの襲撃を受けた杏子班。
|
| 馬岱の犠牲、シグと天龍の救出断念。
| 妨害煙幕で撤退した杏子とヴァイジャヤであったが、ラムサスの言葉に絡め取られて釘付けにされたレイ・ザ・バレル。
|
| 彼を置いては行けずに残った横島。
| 青ざめた二人の少年を見下ろす、道化じみた機動服。
|
|「もうよせ、ラムサス」
|
| ダンケルが同僚の肩を叩く、ラムサスは必要のないことまで言ってしまった。
| レイの父親、ギルバート・デュランダルを殺害したのはシロッコだ。
|
| それは、ヤザン隊とシロッコ、そして当時の『カトルカール』しか知らない事実。
| やらない夫との激しい戦闘や『モーリアンビル襲撃』の結果、生き残った第一世代は三名のみ。
|
| 他に知られてはならない内容。嘆息するダンケル。
| ショックで膝をついてうずくまるレイと、その脇で彼の背に触れる横島を見比べる。
|
|「無駄な殺しが必要になったぞ」
|「いいじゃねーかよ、暇つぶしができた」
|
| 無造作に発射された弾丸を、横島はレイを押し倒しながら回避した。
| 感嘆するダンケル、ラムサスが笑う。
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. ｌ'//∧ j ､ ` ノ''" ′ このまま動くなよ、
!///,ゝ,. 丶 ' そうすればレイは助かりそうだ。
!从//! 丶､ ,.'
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l ― ｏ }
l ＿―-_,... ＿. }
,. -‐ ''" ー--.='￣ ヽ
／ ,.'" ヽ
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/＼、 ヽ
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ヽ ＼ i
、 ＼ ヽ '"ヽ
ヽ ＼ .〉 .}.､
ヽ ヾ 、 .l / .}.ヽ
ヽ ｀;' / /ヽ
、 ｰ'" . ' ./
ヽ ｀´ ｰ '
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| 耳元で囁やき、バッタじみた動きで飛び上がる横島。しぶとさには自信がある。
| 今の彼にできるのは、逃げた杏子とヴァイジャヤのために時間を稼ぐことぐらい。
|
| 念動を使い壁に張り付くような動きで弾丸を避ける横島、ラムサスが舌打ち。
| 『ウミヘビ』が来る。馬岱を消し炭に変えた電撃ワイヤー。あるいは超高速で形を変える薄刃の剣か。
|
| 何でもいい。横島は天井に飛び移って照明を蹴り、ダンケルが立つ出口に向かうと見せかけて手術台の影に隠れた。
|
|「ちょこまかと！」
|
| だが、抵抗はそこまでだった。空中に張られた『ウミヘビ』のネット。
| 飛び回る虫ケラを捉える蜘蛛の巣。
|
| 逃げられない、横島が躊躇した瞬間に、飛び込んで来たラムサスに踏みつけられた。
|
|「がっ」
|「鬱陶しいんだよクソガキが！」
|
| 馬乗りになって一撃、鼻と歯が何本かへし折れた。もう一発。眼球で嫌な水音。
|
|「だが、お前の心意気は買ってやんよ。他のガキどもに手を出すのはお前が死んでからだ！」
|「ラムサス、遊ぶな」
|「うるせえ！」
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| 突然、手術台の上で寝た振りを続けていたシグが発言。反射的にダンケルが発砲。
| 裸の胸に弾丸が三発突き刺さる、明らかに致命傷。だが。
|
|「ぐあああああああ！！？」
|
| 悲鳴を上げたのはラムサスだった。
| いつの間にか外れていたシグの手械、その手がラムサスの鎧に触れていた。
|
|「ラムサス！？」
|「おごごごごごごごご！！」
|
| 横島の上でのたうつラムサス、機動服の腰部あたりを必死に探る。
| スイッチに触れた。ビクリと震えて止まるラムサス、スイッチ式の治癒の護符が、機動服の中で複数発動。
|
|「き、きさ、貴様……！」
|「おいオッサン」
|
| 目を見開き、吐血しながら動きを止めたシグ。
| その白い身体に怒りをぶつけようとして、ラムサスは己の胸に当てられた横島の両手に気がついた。
|
|「あいにく俺はまだ生きてるぜ！！」
|「なら貴様から殺s…………！」
|
| ラムサスは最後まで言えなかった。
|
| 横島はシグの真似をした。つまり、触れることで、防具を無視して内側を破壊したのだ。
| 半ば融解した内臓が完全にミキサーされ、ラムサスは死亡した。
|
|「ラムサス……！ 侮りすぎだ！！」
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｜ / /`! ﾄ, ｌ !
. ! ｌ / ｌ ｌ ヽ ｜ !
! ｌ ｌｌ ｌ '､ ! ', ヽ ､ ｌ !
ｌ ｌ ｌ l ! ! ヽ '､ ヽ ', ､ ! ｌ ｌ ｌ
ｌ ! !｜ ｌ_!｜ '､ ', ＼ ｌ ヽ ｌ ｌ ｌ ｌ ! そしてダンケル、
. ｌ ｌ !｜ !_! !＝- ､ ヽ ', ヾ ト, ｌ ! ｌ ｌ ｌ ! あんたは絶対に侮らないだろ？
! ｌ ｌ｜ ! l!{_,.テミヾヽ ヽヽｒ＝彳ｒｌ ｌﾃｌｌ ｌ ｌ ｌｌ !
ｌ ｜ '､ヾヾ｀''＝＝'‐ ヽ'､ ‐ゞ=! ｌ=! ｌ ｌ ! ｌｌ｜
ｊ ｜ ﾄ,ｌ'､'､ ｀ヽ ! ｌ ｌ ｌ ｌ ! ｌｌ｜
/ ', ｌ ヾヾ'､ .:::::::ｌ ､ ノ ﾉﾉ/ / ｌ ｌ ｌ ｌ
. / / ', ｌ! ﾄ, ヾ'､ :::::::' `＝ノ/ /ｲ ! / /!｜'､
ノ イ / ! ｌ ', `ｒ ､ ' ヾニ,ノヽ/ / / / ｌ ヽ
／ / ィ´ ｌ ｌ ヽ ト､｀ヽ､ -―＝―- ﾄｒ'´,.ｲ' / / / ｌ '､
// / / ｌ ', ｌ ヾ ｀ヽ､ヽ､ ― ,.-'"ト､ニ_ノ 〃/ ｌ ヽ
ｌーｌ /ｌ｜ ヾヽ ＼ TT` ｒｒ‐ｒ'´/T ｀ヽ､_,.∠'シ ｌ
. ｌ ! ヽ＼ ヽ ＼ ヽ､ ヾ ヽ,| | | / /ｨ ／
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| 顔を上げたレイ、その目が虹色のプリズムで輝く。
| 一歩引くダンケル、それが彼の命をわずかばかりか長持ちさせた。
|
|「なに……！？」
|
| ラムサスの左手だけが、ありえない向きに動いた。
| 発射された『ウミヘビ』がダンケルの頭部に絡みつく。
|
|「あがががががががががががが！！」
|
| 電撃、全身から煙を上げてへたり込むダンケル。
| その頭部に、レイは弾丸をありったけ打ち込んだ。
|
|「もういい、もう、どうなっても……どうでもいい……！」
|
| 幽鬼のように立ち上がるレイ。
| ぎこちなく動き、それに従うラムサスとダンケル。その死体。
|
|「電気信号で動かせるのは、機械も死体も同じなのか」
|
| レイはひとりごちると、瀕死の横島を一瞥して部屋を出た。
|
|「殺してやるぞ、パプテマス・シロッコ……！」
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／ ＼､
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′ 丶
/ ､
/ ! ∧ │ | ,
| ∧ -──＼| | }
／| / ￣'. .' 丶 | │
| ./ - ′ ′- ＼ il丶 / ありがとね、横島……。
| / | 芋う ､ / 芋兀う 丶 ! )/
| ∧│弋ｿ ` 弋ソ ＼|ノ
∨ |│ ′ ／
ｌ/ ＞ ､ _ ┓ ＿──-≦ー─,
／r.: : : --─≧￣ |ニニ;／
` ､￣￣ ｀l |二／丶
＼ | |／:. :. :. `､
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| ダンケルの射撃に、横島が念動障壁を合わせなければシグは即死だった。
| とはいえ、傷は十分に深く、肋骨と鎖骨はへし折れ、弾丸は肺に穴を開けていた。
|
|「お互い様だろ……あーあ、イケメンが台無しだぜ……」|
|「あまりかわらないよ」
|「言うねえ」
|
| 笑うと、何かが千切れるような頭痛が走る。
| 横島の頭蓋には強打でヒビが入っていた。
|
| このまま死を待つだけの二人、
| だが、悲壮感はどこにもない。なぜなら二人は知っているから。
|
|「生きてるかバカども……死んでるならすぐ言えよ。お前ら置いて逃げるから」
|「バカ言ってねーでサッサとやれ。アタシは不可視の結界を張り直す」
|
|「これほどの強敵相手に馬岱だけの犠牲で助かったよ。治療が終わり次第探索再開だ。
| ラムサスの発言だけでは証拠にならないからね」
|
| 首に取り付けたICレコーダーを指し示すキュウべぇ。
| こそこそと戻ってきた仲間たちに、横島とシグは笑いあった。
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☆ 次回予告！
消えゆく光に折れた刃。
今や彼女の目には偽りの理想しか見えず。
今や彼女の耳には偽りの呟きしか聞こえない。
成れの果てにむせび泣く悪夢の声。
全ては偽り、たどり着くのは理想郷。
束ねるは星の息吹。
輝ける命の奔流。
次回、最終幕百四話『約束された終末』
果てから至るは破滅の化身
はて、エミヤパパの愛人の話かな？
マーラ様さあ･･･
∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T チームを分ける。
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::| 志摩子さんの確認と
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./ 翠星石の確保だ。
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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| 『引き裂かれた永劫』の攻撃範囲なありながら、理性を保つ探索者たち。
| 満身創痍のジャギと『リトルボーイ』改めヤーボ大佐、意思を取り戻して元気ハツラツの『ファットマン』改めティム。
|
| そして精神無効だが戦力的には無力な東田と、腰が抜けて歩けない蒼星石。
| 電気は生きているので、エレベーターで直行だ。
|
|「志摩子さんを始末すれば終わるような災害じゃないと思う」
|「なぜ？」
|
|「対処が楽すぎる。それこそ、君らがこのビルを更地にして済むのなら、それが一番手っ取り早い」
|
| それを視野には入れるべきだとも、蒼星石は考えているのだが。
| 同時に、『その程度』で済むとは考えていないということ。
|
|「ヤーボ大佐、ティム。全力を出した場合の破壊力は？」
|「我々は核が動力だ。自爆すれば『ヒロシマ級』と同等かそれ以上の破壊力は約束できる」
|
|「つっても核の威力を最大に発揮するなら高所での爆発が必要だぜ。大佐は羽根が再生しきってない」
|
|「オイ蒼星石よぉ」
|「虐殺者の汚名を着るってことは、世界が滅びてないってことさ」
|
| 手段を選ばない蒼星石に、軍人二人は頼もしそうな視線を送る。
| 逆に東田とジャギはドン引きだ。
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（＿＿,,--― ´ ｀てヽ.|l|l|
ゝｰ´ィ⌒ヽ ,': ｀:ヽ 丶ヾ.l| ジャギよ、
､ゝ, ､_i､_彡 { : : : , ' ｰ' ヽ : : : :ヽ ｀<|l| 私に行った気付けは他の者には効かないのか？
ミｼ: ヽ_ゞ:;:;:;:;ｲ ｀ｰ ' ,-、 丶 __ノ 彡|
ヽ: : そ:;:;:;:;:;!,ィ_ ´ー｀ 、,,ィ-'ｲ､
､: : ｀ｰ;:;:;:;:;:;:;:;｀ﾞｰ､-､_ー-,,_ ィ''´;:;:;:;:;:;:;:;:'ィ
ヽ: : :ィ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;;ィｰ;:_;:;:;:;:;:ゞ
丶: : : : ｀ﾞー彡''-ーiｯ-ィ;/: : : : : :´-､_､-''
}｀ ﾄｰゞ､: : : : : _ -､´|
j i ´ヾ-'ー ´ ヽ|
/＿＿ i ＿_,, ＿',
ヾ,ｨ､＿_ｌ､ ￣￣,｀iー'―‐ i´￣ i＿ヽ
}: : :ヾ,, | ｀ー―' ｌ―,― ´l ＿」-'' ﾞｲ
j: : : : :´ィ_,￣￣ ´ i ￣￣ ゞ: : : : ',
/: : : : : : : : '-, ! ､-'': : : : : ヽ
/: : : : : : :_;_;_彡- ー=＝==－ -ミ,_: : : : : : : :',
j: : : ; - ´ ｀ - 、: : : ',
´´´~ ﾞ｀｀｀｀
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|「結局現実の痛みで意識を引き戻しただけだかンな、既に『落ち』た奴にゃ効かなかった」
|
| ヤーボが『引き裂かれた永劫』に屈しかけた瞬間に、ジャギの行った北斗神拳による気付けである。
| 東田とビル内をさまよっていた間に、ジャギたちは試せることを試していた。
|
|「精神安定の護符と併用して、一瞬正気に戻しても後が続きませんでした。ヤーボ氏は強い魔力耐性が幸いでしたね」
|「外で門番していた悪魔が軽傷なら行けたかもな」
|
| 意識を戻す前のティムからジャジャマルを庇い、致命傷を負ったイナミの事だ。
|
|「ジャギ、志摩子さんの様子を見てきてくれ。なにか異変があったら連絡頼む。
| 僕らは上の階で翠星石を探す、見つけ次第『切り離』せるかを試すから、ジャギも早いところ合流してくれ」
|
|「アイヨー」
|
| 翠星石を精神攻撃から『切り離す』のならば、東田の護符、ジャギの北斗神拳、そして蒼星石の結界の合わせ技になるだろう。
| だが、志摩子さんを任せるにはティムを信頼しきれてはいない。
|
|「じゃあ、ひとっ走り行ってくるぜ」
|
| 東田が差し出したプリペイド式携帯電話を片手に、ジャギがエレベーターを降りる。
| 蒼星石は自分の電話は没収されていた。ジャギは行方不明になった時から紛失したままだ。
|
|「さて、鬼が出やがるか蛇が出やがるか」
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＼ｶｶｶｶｯ／
【邪神 ニャルラトホテプ が １たい でた！】＿
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| エレベーターを降りてふかふかの絨毯を踏みしだいて歩くジャギが見たのは、膝を付きのけぞった『やる夫』だった。
| 白目をむき泡を吹いており、既に攻撃に屈したのは明らか。
|
| 『やる夫』は開け放った扉の前におり、その奥にはキオとからみ合い倒れる志摩子の姿が垣間見えた。
|
|「…………コイツ、ここまで来たってことか」
|
| 『やる夫』の脇を通ろうとしたジャギは背筋が凍りつくような気配を察知した飛び退いた。
| 全身にまとわり付くえも言えぬ倦怠感、重い。気が重い。進みたくないと思わせるなにかがそこにはあった。
|
|「背骨に氷柱を突っ込んだような殺気……なんだ？」
|
| ジャギはポケットに突っ込んだプリペイド携帯を意識した。連絡を取りケツをまくるか？
| いや、何者か分からないが、隙を見せては危険だ！
|
| 戦士の直感がジャギを救った。
| 完全に『落ち』ているニャルラトホテプの放った熱衝撃波を、ジャギはぎりぎりで回避した。
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ー-- ＿
´￣ ミ
／
／ ＼
＼ ＼
´7⌒ヽ、 ＼ 、 翠星石は見つかったけど、
／ {! ＼ ﾑ ＼ ジャギが戻らないし電話も出ない。
／ ｨ八 ＿ 彡｀ー ﾑ ＼
´ ,ｨ／´ ゝー== ≦ ￣ﾑ 見てくるか？
,ｨ／ -― ＿＿ ﾑ
ｨ／ ´ ´￣￣ ﾑ ',
／, ィ ´ :. ',
／／ ＿＿ :. ',
∠ｨﾑ Ｖ ノ ﾑ ',
Vﾑ ￣ イム ',
V ＼ ＿_ｒ’ハ ﾑ
V ≧ｒ。 ＿＿ - 、=-――Vﾑ
V ヽ マア へ/ Vﾑ
V ＼ ァ 「_ィ/ Vﾑ
V ( V´ / Vﾑ
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| 結論から言うと、翠星石は無事ではなかった。
| 寝かされていたベッドで失禁し、口の中を切ったのか血泡を吹いていた。完全に『落ち』ていた。
|
|「ジャギは強力な攻撃を受けたのかもしれない」
|「物理的な障害があって、逃げられないのかもしれねーぜ？」
|
| しばし黙考する蒼星石、だがすぐに頭を振る。
|
|「だめだティム、君が行くことを許可できない。皆で行こう」
|「戦力の逐次投入を避けるか、正解だな。この娘はどうする？」
|「頼めるなら連れていきたい」
|
| 頷くヤーボ、翠星石を抱えあげる。
| 巨大な球体の背中に姉妹を乗せ、のっしのっしと歩く。
|
|「…………？」
|「どうした？」
|「いま、翠星石の手が」
|
| 手が動いた。蒼星石に伸ばされた。
| 握る蒼星石、東田が精神安定の護符を切る、蒼星石が結界を張る。
|
| 血泡の残った唇が動く。
| 蒼星石は、読唇術なんて使えない。けれど分かった。
|
| 双子の姉が、何を言ったのか。
|
|「『身体は任せた』？ くっ、すまないがティム、大佐。二人でジャギの援軍に行ってくれ」
|「君らはどうする？」
|「ここで、翠星石を守る結界を張る……このバカ姉、何かしでかすつもりだ！」
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／-――-､_ l
／ ,r-‐‐-､_. ＼ l
／ ／: :ヽ: : : : :＼ ヽlヽ
/ ／: : : : : ヽ: : :ヽ: :＼ ヽ:.ヽ つー訳で身体の方は
/'´: : : : : : : : : ﾄ､ﾍ:ヽ: :ヽ ヽ:∧ 蒼星石が守ってくれてるから
,': : : : : i:: : : :: :l:l ヽ:ヽヽ: :ﾍ ∨ﾍ バンバン魔力を回すですよ。
i: : : : : :.l: l: : : :ll:l,､-ヽ!ヽ!､:.l. ',: :ﾍ
/!: : : : :l:ﾍ:ﾍ:l:: :.l l _,､ｪｪｭ l:.l l: : l:＼
/ .l: : : : : l: :lﾍ!ヽ// ´ ﾔツ l: l /: : l: : :＼
／ l:l: : : :l: ヽ! ｨｭ､ ´〃.l:/ .／: : : l: : : : :＼
l`､:ヽ:ヽ: ヽヽゞ' , , .,ｨ'`´ヽゝ､: :.l: : : : : : :＼
／: :ヽ!ヽ!＼:＼ヽ､＿´ /::::::::::::`j ﾘヽ:l: : : : : : : : :＼
／: : : : : `: `: : : :/`ｰ-､￣/:::::::::::::::::ゝj. ヽ: : : : : : : : : :.＼
／: : ,.ィ'`ヽ､: : : : :./'´￣￣ /::::::::::::::::::/（ ) ',: : : : : : : : : : :
＿,. -―:':´: : ／::::::::::::::::ヽ￣´ ＿_ /:::::::::::::::::::/:::〈 `i. ',: : : : : : : : : : :
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|「しっかしなんですかこのけったいな空間は！ やる夫の心象風景にしても頭おかしすぎじゃあねぇですか？」
|「あー、ええと。ええと……」
|
| ライブ会場と化した『やる夫の中の入即貸本』。壁は展開され周囲はサイリウムの宇宙。
| 床が円形に迫り上がったお立ち台、そこに立つやる夫と、傍に侍る弥勒菩薩（20メートル級）。
|
| 二人、いや翠星石を含めた三人の前にはいくつものウィンドウが開いていた。
|
| 赤く染まった航空写真、『引き裂かれた永劫』の侵食範囲を示す。
| その横に侵食パーセントバー、正確に戦力の拮抗具合を表示。
|
| 一番大きいウィンドウは渦のようなきのこみたいな、内側から紫に発光する黒い存在だ。
| 無数の触手が絡まり、無規律に紡がれたそれこそが『引き裂かれた永劫』を可視化したものである。
|
| そして、ニャルラトホテプと白兵戦を繰り広げるジャギ。
| 突然の来訪者に唖然としていたやる夫だが、すぐに正気を取り戻した。
|
|「うるせえ！ 人様の精神世界に土足で入り込んできて文句言ってんじゃあねぇお！
| …………いや、てめーの前に土足で上がり込んできた『チクタクマン』の違法建築のせいだお！」
|
| 足元を跳ね回りながら周囲の銀河にぶんぶんと手を振り回しながらMCよろしく「ライブの力を信じて！」だの
| 「みんなも歌って！」だのやってるちんちくりんに目を向けるやる夫。
|
| 翠星石は彼女とやる夫を見比べドン引きの顔。
|
|「ああいうのがシュミだったですか……」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ノ ヽ＼
／ （○）}liil{（○） お前ホントに話聞かねー脳筋だな！
／ （__人__） ヽ いや、知ってたけど！
| |!!il|l| |
＼ lｪｪｪl ／ あいつも侵入者だってんだお！
/ ヽ
しヽ ﾄ､ﾉ
| __ |
!___ノ´ ヽ__丿
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|「翠星石！ マジモノの翠星石キタ！ これでゆめ勝つる！！」
|
| 階下でピョンピョン跳ねながら、翠星石に両手を振るチクタクマン。
|
|「あ？ ええと……その、翠星石のファンですか？」
|
| 突然勢いのしぼむ翠星石、人見知りで内弁慶の彼女らしい急停止。
|
|「やっぱりYYSはいいよね、やる夫と翠星石はそうでなくっちゃ！」
|「なんです？」「謎電波だお」「一般論なのにい」
|
| とりあえずお立ち台に登ってくる翠星石、巨大な弥勒菩薩とやる夫を見比べる。
| やる夫は、自分の身が緊張で硬くなるのが分かった。もう、乗り越えたと、諦めがついたと思っていたのに。
|
| やはり、感情なんてとりもどすんじゃあ……。
|
|『やる夫様』
|「ぎええ、喋ったですぅ！！？」
|
|「落ち着け、こいつはやらない夫の召喚した弥勒菩薩のミロっさんだお」
|「あの白長、翠星石が寝てる間にナニやってやがるですか！！？」
|
|『あ、あれれ？？ まだ召喚されておりませんよね？ たしか』
|「なんで張本人が疑問形なんだお！！ 『召喚される平行世界から召喚した弥勒菩薩』だお」
|
|「…………つまり？」
|「この世界のやらない夫は無関係」
|
|「ワケワカメですぅ！」
|
| 過程と並行世界思考能力を持つ『 』の指輪と、世界の理を読み解く『プリンキピア・マティマギカ』と、
| 封印時に見たやらない夫による世界の滅びと、死者の力を借りる『隻眼の老人』の合わせ技なのだが、説明はむつかしい。
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／ ＼ ／ ／ ／／/ ,ｲ i ＼ ＼ ＜,_＿_ ﾊ ｀ヽ
,,,＿ / ` ７ ./ ／ ./ / / / .| | ', ＼＿／ } ｷﾘｯ
￣|へ / / ./ ／| / ./ / .| | ', ＿_`ﾆ=--ﾉ-
/＿ ｀>､ / ./,ｲ ,_ / ./ .|' ./ ./ .| |＼ ,.．', ＼ ￣￣￣./
_,． ’ー-' ∥./ ｀＞＜,_ ∨ ,' .|.| _,＞＜´ ', ＼ /
--‐''"´ ／:::::::::| /.|! { .,' |/ _z≧＜! ／!.! _,.＞≦z_、 ',＼', ＿ ＼ ,.．/ 『やる夫様
／::::::::::::::l/ /| l l ／ん::::（_｀ﾐ! { || .彡ん::::(_＼ ＼ ＼ ￣ゝ--' ちなみにあと30秒ほどで
＿,＞'´::::::::::::::::::/ ./ '.､ {/ .l::| |::! ＼! ゞ､ l::! .|::| ﾞi,＼＿ ｀＜＿.＼ト : : : : : : 完全に押し負けます。
:::::::::::::::::::::::::::::::/ ./ .＼ ', .|:弋 ノ:::! .代 .ノ:::! ﾞ ./ ￣￣ {＼＼::｀丶､: : : :
:::::::::::::::::::::::::／{ |ﾞヾ､乂);;;;;;;/ .込;;;;;;ﾘ /＼＼ ', ヽ',:::::::::::｀ヽ: どうしましょう。
::::::::::::::::::／ 代 ＼ / ',`ヾ､、 ', /::::::::::::::∠
:::::::::::／ {| ＼＼＜,_ ＞＝=-- l〉 / '､ ヽ }／::::::::::::::::::／ ハイク読んでおきますか？』
::::／ ヾ､ ＞＼ ｀i丶､＼＿_ /ﾑ ＼＿／:::::::::::::::::::::/／
´ : : :＞｡｀ヽ, |￣ ⊂⊃ ,．' ＼ 彡:::::::::::::::::::::::::::::
. . : : : : : : : : :＞ﾞi｡, ,.．＜ ,.斗-‐＞-＝-¨ﾊ::::::::::::::::::::::::::::
. . . .: : : : : : : : : : : : : : : } : ＞ ．, ,. ． ＜斗―l⌒´ ',:::::::::::::::::::::::::
. . . . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ,:斗ミー〝― 彡| |./ ﾞi,＿ｘ-――
-‐￢冖¨¨¨¨/´￣｀丶､, 斗＜´ ﾉ-‐ ¨ | ￣￣￣ 〈´/ ﾞi,
:::::::::::::::::::::::::/ ｀ヽ、 ￢ r‐''ﾞ/ .|
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|「どどどど、どうするおー！？」
|
| 指し示される真っ赤なバー。おおおおちけつ！！ まだ慌てるようなあばばばば！！
|
|「ミロっさん、何か手はねーのかお！？」
|『えへへ、手も足も出ません、あと二十秒で私もやる夫様も『落ち』ちゃいますよ♪』
|「えへへじゃねーお！！」
|
| 打つ手なし、匙を投げてあざとく笑う弥勒菩薩。
| 無条件で衆生を救済できるほど、世の中は甘くない。
|
|「急いで魔力を回すです！！」
|「サイリウム・チェーンジ！」
|
| 星が流れて虚空に消える、消費された魔力がリアル翠星石に流れ込んだ。
| だが、やる夫は全身を流れる脂汗をどうすることもできぬままにいた。
|
| 『エインヘリヤル』で利用した疑似翠星石エンジンでは、魔力を注ぎ込んでから強化するまでに……。
| だが、カウントダウンが三秒と減らぬ間に翠星石のドレスが七色に輝く。
|
|「っしゃー！ ゴー！ ミッちゃんゴー！」|
|『ひいい、翠星石様、出し過ぎ……溢れちゃいますよぉ……！』
|
| 溢れ出した過剰な魔力。疑似翠星石エンジンでも脳がパンクしそうだったのに、その数倍の出力。
| 弥勒菩薩の背中から広がる巨大な羽がドーム状に広がり、とりあえず『引き裂かれた永劫』の肥大化を食い止める。
|
| その上で今までの三倍以上のピンクの糸が格子状に組み上がった精神を解きほぐしていく。
|
|「え？ やる夫の出した偽物の魔力効率……低すぎ？」
|『ついでに柔らかいし小さいし、出たものは薄いです』
|「なんか知らねーけど云われなき罵倒を受けてる気がするお！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, ─＝､─-=ﾆL｣_
／二ﾆ=‐-=ﾆ、＼ ,＞
,ムｲ／ .}、 ヽ. ヽ ｧ′
/ / ﾉ,ﾄ､ ,ｨ ,ハ. ∨ﾄ、
(＼ ＿_ ∧ ;' ,ノｌﾉj,ｨ込ｧ｀! ,), V ＼ うるっせえですぅ！
. ,f＼孑=ｧ),__ | ! ｉ,ｧ示. ﾉ'ﾉ ゞr'ﾘ ﾘ ! | ＼
〈ヾ､ム,. 》 :|| ＼ |!､ﾄ､ﾄ弋ﾘ ､ l ,ﾉ※ この翠星石のデカくて固い
. `ｰ'─(,ﾑｲ' ＼ ,. -'‐ ＼＼ ｱ｀ヽ _ﾑｲi ! ビックマグナムと比べりゃ、
＼ ｀ 7マ'７ | ヽ.≧ ゝ._ﾉ ,: ｨ´|.※ | 誰だってポークビッツですから！
. ｀ , i ,ハ} |.※ | ＞ｘ､. イ ! i|. !
｀7ぇｘl/ , ! i 《 ,≫vﾍ.)､i), ! おら！ 暴れっぱなしですう！
/ / |＿ ｉ.※ i. 《|{,／/iﾍ.∨), ∨ ,r- 、
/ / ! )`i !, 《!_／i |《ﾍ.∨), ∨ ,Xﾍ. }
/ ム.＿. !/ .|.※ |ﾍ. 《 ｉ | 《.ﾍ.∨ﾍ,.ﾏ^ヽヽﾉ
‘ーｘ, i ！ |. | ',. 《. ! i 《. | | ﾒ.}i;ｘr≦
∨ ヽ. | |.※ | ∨《 Lｉ 《 L! :|. | |
＼. ∨ |. | 〈 》〜〜〜''〜 | i !
＼／ .!.※ ! ,／｣Lﾆ=- |!>X<| :| i !
// ¨¨¨’ >厂 Ｋ >' :| |、 ,ﾉ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 翠星石のジャブモーションに連動して、発射された無数の糸が『引き裂かれた永劫』に直撃。
| 破片を散らしながらよろめかせる。
|
|「衝撃の！」
|『そういえばスクライドは20年も前のアニメらしいですね』
|
|「んなコト言ったらまどマギも」
|「このスレは2014年だからセーフですぅ！！ ブリッドぉ！！」
|
| 翠星石の右ストレートが『引き裂かれた永劫』に直撃、巨大なヒビを入れる。
| 侵食バーは安全圏まで回復、カウントダウンタイマーは00：12：63でストップ、侵食マップも拡大を抑えている。
|
|「このまま殴り倒してやるです！」
|「それだと被害者が助からんから少し待つお」
|
| 解析、分解、ときほぐし。
| 『引き裂かれた永劫』の破壊された部位だった人々の精神を正しく組み直す。
|
| 困惑の表情の翠星石、そんな面倒なことすんの？ とその目が語る。
| 説明する暇がない、やる夫は要点だけまとめる。
|
|「数千数万単位で廃人が出るお」
|「か、かわいいかわいい翠星石は、当然人命救助に賛成ですぅ」
|
| 触手を伸ばそうとする『引き裂かれた永劫』、全ての触手を弥勒菩薩の羽根がブロック。
| やる夫は笑い出したくなった。コンビネーションは最悪だ。ずっと怒鳴り合っている気がする。
|
| だが、翠星石とこんな風に怒鳴り合うのはいつ以来だろう？
| やる夫が翠星石への好意を自覚してから、勝手に失恋してからどうだったろう。
|
| こんな風に、自然に口げんかができるようになっているなんて、まったく思ってもいなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼ ／＼ ｷﾘｯ
／ （ー） （ー）＼
／ ⌒（__人__）⌒ ＼ おーしミロっさん、ちょいと余裕が出たのなら
. | |r┬-| | 今のうちに翠星石の身体も『許し』とくかお！
＼ `ー'´ ／
ノ ＼
／´ ヽ
| ｌ ＼
ヽ -一''''''"〜〜｀`'ー--､ -一'''''''ー-､.
ヽ ＿＿＿＿(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒＿(⌒)⌒)⌒))
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|「ついでに蒼星石と東田とティムとパンダも頼むですぅ」
|「パンダ……？ パンダ先輩？ 作者呪術履修してねーお……？？」
|
| 弥勒菩薩が新たに開いたウィンドウが二つ。
| 翠星石の脇で結界を張る蒼星石と東田。
|
| そしてエレベーターから飛び出すパンダとサイボーグ少年。
|
|「待って、情報過多だお！ 待って！」
|「いいからやりやがれですぅ！」
|
| 詳細は後回し、翠星石が言うなら味方だ。
| だが、やる夫は『学園封鎖』時に一度『リトルボーイ』に頭を吹き飛ばされている。
|
| あいつ『教会』どころかシロッコの配下の改造天使だよね？ しかもビーム出すサイボーグ天使もいる。
| え？ なんで普通に味方っぽい挙動でジャギの援護に回ってるの？
|
|「まあ、蒼星石が無事だったならそれでいいお」
|
| 思わず漏れた本音、蒼星石を始めに知り合いが『引き裂かれた永劫』によって発狂した姿は見たくなかった。
| ショックで心が折れそうだから。
|
|「相変わらずジャギさんの所は圧がひでーお。パンダとサイボーグにはバフを特盛でのせてやんお！」
|「ヒャッハー！ さっすがやる夫は話が分かるですぅ！」
|
| ついでにニャルラトホテプを倒してしまっても構わんのだぞ。
| そんなどす黒い気持ちを乗せるも、大首領室周辺は精神的圧力が肉体にも効果を及ぼす状況である。
|
| しかも大量破壊攻撃ができないため、大天使二人が参戦しても圧倒的有利とまでは傾かない。
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／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | よし、今度こそイッパツ決めるお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「ナニをですか？」
|「さっき、やる夫は志摩子さんこそが中核で、切り離せば効果があると思ってたんだお」
|
| だが違った。志摩子を狙った攻撃は、合気道のように利用されて致命的な反撃を食らった。
| 翠星石のフォローがなければ負けていた。
|
| しかし、とやる夫は考えた。
| 志摩子さんは囮なのか？ やけに警戒されていることも含めて罠なのか？
|
| いや、『引き裂かれた永劫』は本能で動くケモノに近い。そんな罠を張る知性があるとは思えない。
| もちろん、ケモノにはケモノの直感と本能がある。
|
| つまり、志摩子さんは罠だったが、その直前までは間違っていなかったとしたら。
|
| 『引き裂かれた永劫』の起点である志摩子さんへの攻撃は危険だが、その横にいるもうひとりは？
| 彼こそが『引き裂かれた永劫』が近寄らせたくないものであり、弱点であり、執着。
|
|「やってやんおミロっさん！ スパイみたいに密やかに。外科医のように精密に！」
|「ついでに流行りの水着みてーにダイタンにですぅ！」
|
| 翠星石が送り込んだ魔力に導かれるように、弥勒菩薩がドロップキック。
| 『引き裂かれた永劫』をなぎ倒して馬乗りになる。
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l i ＼,. : :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀:/ 冫 ヽ ,
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／: : : l i .／: : : : ; : : : /.: : : : : : : :|.: : : : : : : : :l i' l
／: : : : :.ﾉ／: : : : : : |:. : :/.: : ; : : : : : |: : : : : :,: : :.l i l
／: : : :_;,;彡; : : : : :|.: : :|: : /|: : /:.: : : : : |i: : : : : i: : : l l
／/: : : : : : : /: : : : : :|.: : :|: : i |: :/i,:.: : : : : | i; : : : i.|.: : :l,. , l
´ /: : : : : : : /: ; : : : : :|: : :,|: : i |:;/ i,: : : : : |,,,i_: : / .|: : : i, i. l 私……こういうアグレッシブなスタイルの
/: : : : : : : :i: :.i: : :|: : :|.: :斗七'|/ ヽ : : :/ .i;゛ﾌー|-|;.: i,. 人 戦い方するタイプじゃないんですけど……？
. /: : :／: :´:_;i: :,i.: : :|: : :i; / .|/＿|_,,,, ＼/ー-i/ﾆｚ,_ヽ|: : :'､._ ／| ヽ
/: ／ ´.￣ |: :|i: : : i: : : i''''伝兀下 伝兀心|: : : : : : |:|| i,
' ´ i; | i: : : i; : : |. 匕示丁 匕示灯|.: : : : : :|:|:| i,
i:|/ヽ; : :i;.: :| , , , , , , , , , , |.: : : : : l|:| | i,
｀i ヽ; : iヽ| |: : : : : ;i|l': | i,
i,＿_ |ヽ,'i: |､ し ||: : : : /:l': :.| _ﾉ
/: :i;｀: :.|｀: .。, ＝=＝ ,.。.:≦:|: : : /: :l: : :|,，-:': |: :'
/: ;': :i; : :|: : l: : :l:｀: _TニﾆﾆニT;_:l_: : :|: : /: : l: : : : : i:.: :|: :|
/: ;': : :_i､: |;=- ＜_". ゛;|: /;_: :': : : :, : :i: : |; :|
/: ;': γ .ヽ| ゛Y_ー- -―r､r'.|/ ｀ ヽ; |: : i: : |i; i,
,.': ,:': :/ O ｀v^γ'Yυ"´ O .';': : i; : |.i; ',
,.': ;.'.: :/ . ｀| O | ﾉ| O .|' '; : :i; : i,:',: ':,
,.':,:.': : :/ | ,、 r: '´ｰ.'ー-,. | ヽ: :i; : i, '; : ':,
, .',:.': : ／ | _ _ﾉ､｀´ ｀ｰi,._ | ＼i: : i,. ':,: :.':,
, ':,:.': : ／ .|,ノ^ｰ ' Y ｀y'^ヽr-γ"^´ ｀ｰ'-=,| ＼: i, '.; : :':,
,. .'.: : : : :く | ' | ／: : i, '.; : :':.,
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|「うっせー黙ってマウントからパウンドってりゃいいんですよ！」
|
| 今でこそ一般用語になった『マウント』。相手の精神的優位に立って威圧する行為のことである。
| 猿や犬が順位を見せつける際に行われる馬乗り行為『マウンティング』のことであり、
| 学歴や収入、知識やコレクションで優位に立とうとあくせくする姿を揶揄した言い方だ。
|
| が。
| 格闘技にもまた『マウントポジション』というものがある。
|
| 転倒した相手に馬乗りになった状態だ。野蛮で、一方的に、高所からの乱打。
| そんな見た目と裏腹にただ拳を打ち下ろすだけではない。
|
| 足で相手の上半身をロックして逃さない状態で攻撃する、見た目以上に高度なテクニックである。
|
| もちろん、打撃だけが全てではない。圧倒的有利な姿勢から放てる寝技関節技も厄介だ。
| ちなみに翠星石のいうパウンドはカトルカールなケーキではなく、マウントから殴りつける打ち下ろしパンチのことである。
|
|「『モーンブレイド』！！」
|『そろそろだと思っていましたわ」
|
| 発射された弥勒菩薩サイズの『モーンブレイド』がメスのように鮮やかな切り口で『引き裂かれた永劫』を解体する。
| 中心核あたりに溶け合った、志摩子と…………キオ・アスノ。
|
| 無数の糸がもう解けないほどに絡まった二人を解きほぐし、『モーンブレイド』が切開する。
|
|『 ！ ！ ！ 』
|
| 『引き裂かれた永劫』が悲鳴のような思念波を放つ。
| 正解だ。キオ・アスノだ！ もはや超能力少年は解き放たれた。『許し』による防御も完璧。
|
| もう戻らない。
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,イﾆﾆ＼ ／二二二二二二ﾆ|
／ﾆﾆﾆﾆﾆ＞ 〈二二二二二二二./
／ﾆﾆﾆア''" ﾏ二二二二二二/
／ﾆﾆﾆ／ , ,,,､ ， ヽ二二二二二/
/ﾆﾆﾆﾆ/ ､,ｲ::V:::,ｨ=ﾐ-::..､ ',二二二二ｱ
ﾆﾆﾆア (､__,ﾄ､_ノ::::::::::)三三三ﾑ:::::::ゝ､,,,,ｨ=''"´ /二二二二ゝzア
寸ﾆｱ ､､,,ゞ｀:::::::ヾゝ:::::ﾏ三≫≪三=zzｲﾆア::::::,ｨ=ｱ⌒ 寸二二二ア′
ﾏｱ ヾ:::::::::::〈ﾑゞ三三ｱ′⌒｀ヾ三三ｱ::{{｀ゞィ:::::ゝ 寸二二ｱ
-=＜:::::::::::ゞ､:::ヾミゞ三三《《: ( ) :》》ア,,ィｱzzz彡:::::ゝーzｧ''‐ ﾏ二ｱ
｀ヽ::::::::::::::ヾ:::｀''ミ三三ﾐﾐ､＿,,,ィアﾆア::::::::::::::::::::::::彡´ 〈≧ｲﾆ〈 ！ ！ ！
⌒>:::::::::::::::ヾゞ=三三≧≦彡アィ=＝ミ:::::::::＜ ﾏﾆﾆﾆﾑ
｀ヾzzx:::ヾミミミ三三三ｲｱヾﾑ===＝''"´´ ﾊ
〈:::::::｀ヾﾑゞ=三三三ｱ:::::::::}}}:::::彡⌒'‘. ﾏzz''" ！ ！ ！
/〉. ⌒)::::ﾑ{,,ィ川）（川ﾑ:::::ﾊ::}}}(´ ,zx
V ｀ﾑ{//川川川川ヾヽゞﾆﾆミzzｱ｀)′..}≧zア ‘，
/ヽ. 〈V∨ｱ:::::,ｲ川乂川从(ｱ⌒ゞ=ミ ゞ=- /二ﾆﾑ |i
{ﾑ /ﾆﾆ} )ﾊｱ:::::::(从从从从从ヾ::::.､ ／二二ニVl }i|i
ヾ{ 寸ﾆ} )ｲ从从(川)从川ゝ::::::ミ｀. /二二二二ニ| }i|i|
ﾏ〈 ､__ﾉ川从(川)ﾊ⌒)ｿ. /二二二二二ﾏ. ,'|i|i!
〈ｱ. (:(从)川从)从(、′ く二二二二二ﾏ i|i|i|!
∧. 乂从ヾ=彡⌒ヾ. ヾ二二二二二ﾏ i|i|i|'
‘， /ﾆﾑ ,ｨ=ﾐz,ｨｱ ′.. ﾏ二二二二ﾆﾏ ,ｲｱ
)' /三三〉. (′ ヾ二二二二ﾏ
＼ /三三ﾏ ヾ二二二ア ＿__
三＼ 寸三ｱ ,ｨ三ヽ 寸ﾆﾆｱ. ,ｨ _／///
三三〉 |三ゝｲ三三ﾑ ヾ二ﾆ/ ／/_／/////
三ア /三三三三三ﾑ )ﾆﾆ/ 〈//////////
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| 藤堂志摩子。傀儡の『血族』大首領。
| 実力と魔力と地位はあっても、何も持てない哀れな少女。
|
| 四半世紀にも満たぬ人生において、望むものが手に入ったことはなく。
| 望むことすら諦めていた、だけれど、それでも求めたたったひとつの恋。
|
| 粉砕され解体され解きほぐされながらも、『引き裂かれた永劫』が絶叫する。
| 母親と引き裂かれた赤子のように、なりふり構わぬ悲痛な叫び。
|
|「くぅ……あったま痛えですぅ……！」
|「堪えるお！ たぶん最後の足掻き……」
|
| ニャルラトホテプ……『やる夫』が糸の切れた人形みたいに倒れる。
| それまで戦っていたジャギとティムが耳を抑えてうずくまる。
|
| この絶叫は、現実世界側でも響いているのだ。
|
|「ミロっさん！」
|『もうっ、今話しかけないで！ 空気読んで空気！！ 被害者の脳を使い潰す勢いで酷使して反撃してきてます！』
|
| 人間の脳は下手なマシーンよりも優秀な計算装置である。
| それを数百と並列接続してオーバーヒートするほどに酷使しているのだ。
|
| 弥勒菩薩といえどもパワー負けを……。
| いや、今まさに、状況を変える乾坤一擲の一撃が放たれんとしていた。
|
|「ジャギ！！」
|「さっさとやれ！」
|
| 巨体のパンダ、ヤーボ大佐がジャギを掴んで投擲。
| ぶん投げられた巨体が絡まったまま倒れるキオと志摩子に肉薄。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ',
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ |
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ |
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr } 夢見る時間は
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ おしまいだぜェ！！
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
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/ ／ノ',／:::::::| { .::j-彡"::ノ::l|:: l'':::ヽ|:ヽ;|;| l /;/ ,／/::／/／|ｲl|::/ /::::| /:::::::::,'
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| 二人の秘孔を突くジャギ、『引き裂かれた永劫』の悲鳴が揺らぐ。壊れた電子機器のようにブレる。
| おしまい。おしまいだ。志摩子の夢はここに潰える。
|
| 独りよがりの愛。嘘をついてでも欲しかった。
| 何も手に入れられない少女の、すべてを投げ出してでも、この世界を費やしてでも欲しかった夢の時間は。
|
| ここに終わる。
|
|
| そして生まれた隙を、やる夫や翠星石は見逃しても『モーンブレイド』は見事に捉える。
|
|『さあ！ 幕を下ろす時間ですわよ！』
|『ティロ（終幕の）―――ッ』
|
| 弥勒菩薩サイズの『モーンブレイド』、両手で掴んだ弥勒菩薩が祈るように掲げ、振り下ろす。
|
|『―――フィナーレ（砲撃）！！』
|
| 何から何まで間違えている気がするのは気の所為だ。
| 敬愛する読者諸君ならご存知の通り、弥勒菩薩はビーナスの出土で有名なミロと縁深く、
| 同時に西洋ではモロクと同一視されることもある。
|
| そう、ティロ・フィナーレはイタリア語。
| ミロはフランスの都市。
| モレク表記はラテン語だ。
|
|『何一つ関係ないじゃあありませんかーッ！？』
|
| 『モーンブレイド』の的確なツッコミは『引き裂かれた永劫』の爆散音にかき消された。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ r' .′....ﾉ........ /.....ハ厶.ﾍ...... |｛___／
└- .｣ |. ／.､____厶イ rﾃぅx｝.....|｛.｛
‐--イ..........rﾃぅx Vり ｝.../ vﾍ
ｰ--‐彡イ八 Vり , '''厶ｲ |....`､ じゃあ、後始末は任せたですよ。
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/ Χ /......く￣∨ 厂∨￣∨ / ｛...........`､
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_｣ X｛ ... /. . _〕 丿 .′ｌ| ｝ ｛ ｛ . . ｛................
｛ ﾉ..._｣ . .{ ｛_ ]l ｛ ｝ └ﾍ . ＼............＼
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|「お？ おめー起きねえのかお？」
|「『夢の塔』がキナ臭えから可愛い可愛い翠星石がなんとかしてきてやるですよ」
|
| 爆散した『引き裂かれた永劫』を掻き集めて解きほぐすやる夫の脇で、翠星石が鼻を鳴らす。
|
|「やらない夫には会わねーのかお？」
|「会えなくっても心は繋がってるですよ」
|
| やる夫は手を止めた。そう言い切れる翠星石が羨ましかった。
| 戦いのどさくさのおかげで、思い出すこともなくいられた胸の傷が疼く。
|
| やはりやる夫は、翠星石が好きなのだ。途方もなく。
|
|「死んだらブッ殺す。って伝えておいてほしいですぅ」
|「…………分かったお」
|
| ああ、良かった。やる夫はひとりごちた。
| 心を取り戻せてよかった。
|
|「翠星石」
|「なんですか？」
|
| キラキラの粒子を伴って虚空に消えゆく翠星石。
| やる夫は少しためらって、持ち合わせの少ない勇気ってやつをふり絞った。
|
|「やる夫は、お前を……やらない夫と同じくらい好きだお」
|「……ッ！！？」
|
| 反応は劇的だった。耳まで真っ赤に染まり、両手で顔を隠す翠星石。
| やるの方が恥ずかしくなるほどの反応、そこまで変なこと言ったか？ むしろヘタれていたような。
|
|「せ、世界一とか言われると……さすがの翠星石も、照れるですよ」
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.． '´ ,.ｨｚxｨﾁﾐｘ￣,ニ.‐- ､
.イ ,.ｨ=彡 ｼiく ｀ ｀ﾐゝ､｀ﾐｘ
／.ィﾐ´ﾌi'< __.．=宍＝=ﾐｘ ¨ﾊく ｀ヽ ＼
／,ｨ" ,ｨ=彡´: : ｰ-ﾐ: : : : : :｀¨ﾆﾐ ｀ﾊ ヽ
／ /ﾌ!;彡ﾁ: : : : : : :、: : :.ヾ: :ヽ:､: : : : ｀ﾐ､ } ＼
, ′ i /ｲ: : : : : : : : : :.ヽ: : : :ﾊ: : : ヽ: : : : :ヾ! . イ´
. 〈 {彡: : : : /: : :i: : : i: :.}: : i: :.}: : : : : : : : : :.ヾ{
｀丶､7: : : : :/!: : : |: : : !:.:ｲ: :.|: i:ﾄ: ､: : :.ﾊ: : : : :}|
i:{: : : : :{:.|: : ;ｲ': :./:./ﾉ:.:ｨ:ﾊ:| ヾ:ヽ: : :}: : : :.!|
|ﾊ: : : : ヾ／ｨ: :彡ﾑ/:ノ }:ｲﾒｰ-ﾐ:ﾄx: j: : : :八
|: :ヾ{: : :.:∨:ィ／__/'’ /:/:/ ｨﾁ笊ﾐｧ7: : :ｲ､: ヽ ええと、ええと……。
|: : i ゝ:.／イ,イてミ` / }:/ 弋z_ソ /ｨ: :/ }|: : :ﾊ
|: : l :{i乂: :.㍉乂zｿ '7 ..:::::::イ:／k.《: : : : } 翠星石も、やる夫が。
|i : l ﾊ､ vミｘ:`zｧ.::::.. `_ ';ｨ: {i ﾊﾞ ﾘ: : : :.i やらない夫の次くらいには、好きですぅ。
. 八:ﾉ,.ｨ/7､ ゞ､＞． ‘ｰ ' ｨく: : :》 Y : : : : |
/: :.ｒﾁ‐::'_ｧ∨Y)´ ｀≧ｒ-- .ｧ彡 ｀ヾ ｿ ､: : : :i
/: : /r彡:くゞ v } .ィ:ﾁミｘ≧≦彡ミ:ｘ:､ rｿくイ、､!:.ｉｌ
/: : ;入 { ヽ. }ﾘく:く ,ｲ}-:く ＞:}' ﾊノ Ⅵ:八
. /: :.:/: : >ﾐｘ ｀ /ﾑYヾヽ彡ｨ7i:ヾ:`ｰ彡'// }|〉 ヾ､: :ヽ
. /: :.:/:.／/ {¨Lｒｖ'ﾚｿﾊ ￣/:/ {ﾊ ヾ´ ﾉﾉ!k.ﾘヽ ﾍ: : :.＼
/: :.:/:.{ 〈 ｨﾐ＝=く､i ,i} i::{〉 |〉i 〈ﾊ {i ﾊヾ}､ ヾ:､: :.＼
. /: ィ:rミト:､У´`´ｿ¨ｙ'ﾊ｀ﾐ |::|{ :K ! {j:L．Lz､ ;ｿ ＼ ﾊ＼: : ヽ
. ,:′: >三水:´ / ｲ j}＿,L{ﾘ lr' У ｀ヾ}｀L_ ` ヽ: :ヽ: :ﾊ
/:r=彡〃::{ ／ /{j }!-―--'{}/ ,ｨｰ , }r'}r入 ,ィ 〉: :}: : :}
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|「！！！？」
|
| やる夫も、頭が沸騰した。
| 『世界で二番目に好き』。そんな風に言われて耐えられる奴がいるだろうか。いや、おるまい。
|
|「じゃ、じゃあそっちは頼んだお」」
|「そりゃこっちの言葉ですぅ」
|
| 互いに目を合わせられず、やる夫と翠星石は真っ赤なままで手を振った。
|
|「まただお」「またねですぅ」
|
| 完全に消滅する翠星石。
| やる夫は小さく息を吐き、解体中の『引き裂かれた永劫』を完全に破壊……しなかった。
|
| 最後の最後に残ったその一欠片、それをじっと見つめた末に、破壊せずにしまい込む。
|
|「使う機会が来るといいけど」
|『やる夫様、お暇の挨拶をさせていただきます』
|
| 己の手をじっと見るやる夫を、弥勒菩薩が覗き込んだ。
| 『引き裂かれた永劫』との戦いは終わりだ。翠星石（本物）も退去した。これ以上は魔力の浪費だ。
|
|「助かりましたお」
|『衆生救済こそが我が悲願。必要とあらばいつでもお呼び出し下さい』
|
| そう気軽に呼べるものではない、ものてはないが、それを感じさせないフランクさにやる夫は微笑んだ。
|
|「そんときゃ頼むお！」
|『おまかせあれ！』
|
| 差し出された巨大な右手の指を、やる夫は握った。
|
|「あ、最後に一個、頼めるかお？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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__
´￣ ￣￣￣ 、
＼
＼
ー―――― ＿
ィﾆァ＝ー、 ヽ
＿＿＿＿＿ﾑﾆ/ ヽ
-――――-{ {／ ｊ} 終わったか。
ヽ ヽ /ｊ ', まあまあだったな。
―＝＝＝ァ= ≧＿ニﾆ彡 ﾊ ',
´￣￣￣￣￣｀ミｭ､ /ﾆ
｀ ミｭ､ /ﾆﾆ
ｒー― ｬ 川 ﾆ
V ノ ｨ{ | ﾆ
イﾆ ! ﾆ
／ﾆﾆﾆ i ﾆ
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| くずおれた『やる夫』。軽くなる身体。霧散する邪気。
| その頭部をサッカーボールキックで蹴り抜いたティムが頷いた。志摩子とキオから離れたジャギが、ゆっくり振り返る。
|
|「これで終わりとは、思っちゃいねェよな？」
|「『次』があると？」
|
| ヤーボ大佐の問いかけは強い疑念を含んでいた。そもそも彼は、報復のためにこの『血族』本部を訪れたのだ。
| 元来の目的に戻ると言い出してもおかしくはない。
|
|「……そりゃあ、『ビスケットハンマー』で叩くつもりのヤツか？」
|「ティム、なにか知っているのか？」
|
| 頷くティム、彼とて無知に成り行きで『夢の塔』を攻略していた訳ではない。
| その最終目標、『ビスケットハンマー』を用いて何かを迎撃するという所まで説明を受けていた。
|
|「宇宙から来る滅びは二つ。『冥王 ニビル』と『クトゥグア』だ。
| そして『ビスケットハンマー』は一個しかねえ』
|
| 話が早いとばかりにジャギがその名を口にする。もはや彼らには隠しても意味がない。
| というか、隠さずに暴露する事で、信用をさせるしかない。
|
|「一つは、高位悪魔の軍団を宇宙に飛ばして対処するしかない」
|「イカレてる」
|
| こめかみの当たりで指をクルクル回すティム、ジャギは苦く笑った。返す言葉もない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／ グフフ。
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ それは確かに『満足な戦争』ができそうだ。
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ 私自身も、この身に入れられた天使もな。
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
｀ >:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r-ｰ' ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ;´
´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
丶 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀:ヽ
丶 {: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : _ゝ
丶 ヽ､ : : : : : : : : : : : : : : : : ＿＿: : : r-!
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ヽ: : : : : : : :: : :/´
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| 笑うヤーボ、ポケットから取り出したチョコバー。最後の三本。ジャギとティムにも差し出す。
| 受け取る二人、三人でやたら甘くて粘着くチョコの塊に食いつく。
|
| やる夫しか知らぬ事柄ではあるが、『魔人 レッドライダー』に呪われた一人であるヤーボ大佐は、
| 闘争を求め、闘争の果てに倒れなければ呪いが消えないはずである。
|
| そういった意味でも、ジャギの差し出した提案は最適解であった。
|
|「条件が三つある」
|「多いな」
|
| 先ほどとは立場が逆だ。このまま敵対してもヤーボとティムに不都合はない。
| 理不尽な条件を叩きつけられても、ジャギにはなんの文句も言えない。
|
|「来たる戦いにおいて、必ず私を最前線に置くこと」
|「そりゃ当たり前だな」
|
| 二つ返事のジャギ。
|
|「ティムの安全の約束」
|「お前らに害を与えるのは難易度高えな」
|「最後に、次からチョコレートはハーシーズにすることだ」
|
| 握手をするジャギとヤーボ。そこに、ティムが左手の義手を重ねた。
|
|「隣のビルで倒れてるジャジャマルの保護も頼むぜ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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∨ニニニニニニニニニニニニニニニ-/
. ∨＞ '"´ ￣￣￣ ｰ-=ﾆ二_′
＿__＿_} { _＿__
＼三二ニ≡＝＝==ー---－―=＝≡ニ二三三三:/
＼三三三三三三三三三三三三三三三三三／
7: : :/. : :/. : {:∨∧: : : : : ｀ヾ: : :ヽ: :ヽハ才
,: i : :{:: ::/. : :∧:∨∧: : : : : : .∨: : :': : i: :{
{: |: : }: /_才/:ハ:.∨∧: : : :斗弌: : : : : : ::!
j八: :{/彡,:ｲ云ｰ: :乂ハ=彳ハ: {ﾊ: :/ ,: : :!
从: 乂ハ ｀｀ヾ '" }ﾘ }'. / : : ;
∨: : 爻_ゞ＝=- r==＝彡彳.: ::.′
. ∨: : 八 イ. : : : .' …………翠星石。
. ∨: {: :≫. _'_ 乂: ,.: :/
∨从ハﾊ＞ . -‐ミ.. . .イﾊ.: :/: /
. 乂{ . ィf -‐:._}ヽ( .ｲ乂::.′
rfー--‐ " ィ{ .二二}=ミ｀ ＜从(___
/:ﾌ { ／／:. -‐ ｦ ＼ } }
. /. :｝ i} { i{才:ﾊ fﾊ＼___ﾉi} ′ﾊ
.. /. : 乙{ ゞ=ミf } j〈 ヾ==彡 ′｛∧
.ﾞ. : : フi} /乙′⌒Y{ }i:{ ′乙 ∧
,.: : : : :廴ﾊ ./ {__ 乂气{i:{ .ﾞ⌒(: : :.∧
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|「こっちは任せたですよ」
|
| 一瞬だけ目を覚まし、微笑んで言いたいことを言ってまた昏睡した翠星石。
| その憎たらしい寝顔を、蒼星石は優しく撫でた。
|
|「蒼星石さん」
|「ありがとう東田」
|
| 差し出されたハンカチを受け取り、蒼星石は嘆息した。
| 泣いている暇はない、立ち止まっている暇もない。
|
| 『十壊』の一つは乗り越えた。
| しかし、次がすぐに来るだろう。
|
| ……しかし、今は仕方ないだろう。
| まだ腰が抜けて動けないのだし。
|
| それでも涙を流すのは癪だから、蒼星石は皮肉っぽく笑った。
|
|「今のうちに休んでおいた方がいいよ。すぐ忙しくなる。
| なにせ君以外はみんな、満足に歩けないだろうからね」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
君には許せないことはあるかい？
理屈じゃ説明できない、生理的に受け付けない。無理、それだけは。
もちろん、それらはきっと分析すれば理由もあるだろう、過去や経験から許せないものなのだろう。
さて、ここにいる少年は一人の男を許せない。
納得できないとか、そういうのを超越して、許すという選択肢を無くしていた。
あまりにも拍子抜けの復讐劇。少年が成し遂げた先にあるのは栄光かあるいは虚無か。
どこまでも落ちていくしかない。死ぬまで、いや、死んでからも。
よみがえる死神と空から来た男が少年にもたらすのは、安寧か、それとも……。
次回、最終幕百五話『ブギーポップ・アゲイン』
果てに見るのは破滅か死か。
次は正攻法でぶつかれるといいね、大首領様
なんだかとってもジュブナイル
世界の中心で愛を叫ぼうとしてダメだしされた大首領の志摩子
最後に何を頼んだか
命令とかじゃなくて文通か交換日記から始めるといいンじゃないでしョうかね
即結合ははしたないでござりますですわよ（分離した後で言う）
〃 j/ ／
＼｛ /〃
｀ヾ
. -=ﾐ j/／
...._ ＼ヽ ／ ∨ /'′
/ ｀ヽ＼,、 / V
. / ＼ / ∨
/ ’， ′ V
,′ ヽ.....ノ ∨
｛ /｀ヽ
‘， / , レう｝
‘， ﾍ、 / / , ─=イ {_,ノﾘ だいぶ手間取っちまったなぁ……。
ハ i〃 ＼ ﾚ′/ ‘ ／ |忻ﾊ 丿 だが、もう終わりだぜ。
｛し｝ ! ＼_＿＿＿ __ｊ jﾉ /ミ＝彡′ lﾉ/ /／
Ⅵ乢、 ｀ヽ ＿‘｀彡ヘﾂ ヾ j/ //
＼∨ ^Ｙ ｀¨¨¨¨¨´ ｊ ｜ ｝ ｲ_彡'
｀`≧＼_ハｊ / ｛ しｸ ＼ /小、
⌒¨¨¨｀ヾ小 ＼ └-､j__/ ,ヽ ハ ヽ
|∧ } ,.,_＿＿ --一／ ｉ | ＼
|/∧ ｀ ー―‐=彡 ′j ヽ
|///＼ 癶辷彡' / /
∨/// ＼ / /
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| ヤザン・ゲーブル。
| 野獣の如き威容の男、恐るべきパワーと魔力と技能を誇る『武僧』。
|
| 新宿衛生病院最強戦力である男だ。
| だが、そのヤザンは苦戦を強いられていた。
|
| 専用機動服『ハンブラビ』は頭部のみならず主武装である『ウミヘビ』の収納された腕部が破損。
| 複数の武器を収納したバックパックは空、血まみれの顔面、首からもおびただしい流血。
|
|「それはこちらの言葉だ。我が奥義を持って貴様を討つ」
|「やれるもンならやってみやがれ、だが、もう『時間は止まらねえ』ぞ」
|
| ここは地下資料室、広くはない部屋は、足の踏み場もないほどの資料と、人間の死体で埋め尽くされていた。
| その半数はニンジャであり、残り半数は『武僧』である。
|
| ヤザンがこの部屋に踏み込んだ時、既に『武僧』は全滅していた。
| 無傷だった六人のニンジャの総攻撃。
|
| ヤザンは深手を負いながらも一人また一人と撃退し、そして、今残るのは最後の一人。
| 『九鬼』頭目 甲賀氷雨『黄泉』である。
|
| ヤザンは黄泉の『時間停止』を予備知識無しの初見で破った。
| 破ったが、その一撃で兜を失った。
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/ .::/ .:::::::i :::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::| ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::.. ヾ ;::. ヾ::. :::. ヽ
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/ ::::ィ ..::::::::| .::::::::::::::::::::|l::::::::::||::::::| ヾ:::::ヽ:::::::::ヽ::::::::. ヾ:.ヾ ヾ::: ヽヾ.ヽ
l ::/ l .::::::::l .::::::::::::::::::::::|ヽ:::::::|l::::::| ヾ:::l ヾ:::::::lヾ::::::.. l::::::.. ';::::. l ヾヽ
|:/ | .i ::::::::| ::::::::::::l:::::::::l ヽ::::::l.ヾ:::|. ヾ::l ヾ:::::::l. ヾ::::. l::::::::. ';:::. l ヾ
. l .l :| ::::::::l ::::::::::::l'l::::::::l ヾ:::::l ヾ::l ヾl l:::::::|-‐l／::::::::::::. ヽ:. | ｀
| ::|| :::::::| ::::::::::::l_ヾ::::ヽ,,ゝ:::ヽ ヾヽ _,,ｬ''"|;;ｨ" l::::::::::::::::::. ヾi
i:::ﾚ| ::::::| :::::::::::ヾ''ちよｧ､.＼ヽ" ヽヽ‐'',,ｬひめ''''ﾌ ﾄ::::::::::.. i::::::::. ヽ
. 〉ヾl ::::::| ::::::::::::ヽヾ;;;;;;ﾉ ｀ ヾ ヽ ヾ;;;;;;;ﾉ/ ハ:::::::::.. l::::::::::.. ヽ この黄泉を、
. / ::::ヽ::::::| ::::::::::::::ヽ' '' ''' ' '' '' ｀ ,'ﾉλ:::::::.. l:::::::::::::.. ヽ 一芸特化と侮ってもらっては困るな。
/ ::::::::::ヾ::::l ::::::::::::::::ヽ ,｀,,/ l::::::::.. l::::::::ヽ::::::::::＼
l :::::::::::::::::ヾ::l .::::::::::::::::::ヽ l /::/ l::::::::.. l::::::::::>￣￣
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.l :::::::::::::::::::::::::::l λ:::::ヽ 〈 ） ／ .l:::::::.. i
l :::::::::::::::／｀",ﾌ ヽ:::::ヽヽ ￣￣￣ ／ .l::::::::..l
.l ;;;,ｯ:::'"::::::::::＼ ヽ:::::ヽ ヽ､ ￣ ／/ l::::::::::l
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,,,,ｲ''::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ヽ::::ヽ /:::＼ |::::::::|
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 黒塗りのカタナを構える黄泉、立ち昇るカラテは付け焼き刃のものではない。
| ヤザンの霊的防御を貫き、傷を負わせるほどの実力者だ。
|
| とはいえ、黄泉の息もまた荒い。
| その左腕は肉が抉れて使い物にならず、先程拳が直撃した胸部は、肋骨の数本がへし折れているはずである。
|
| ヤザンは己の首に突き刺さっていたクナイ・ダートを引き抜いた。
| 空中で方向転換する術、クジラでも十秒で殺す猛毒。ヤザンでなければ即死だった。
|
| ヤザンはクナイ・ダートを弄び、投げた。黄泉がカタナで来るならばという牽制。
| 左手負傷の黄泉に合わせて、わずかに左に移動。狭い室内で刀を振り難くする小技。
|
| ヤザンは黄泉のカタナを警戒していた。
| 初手で切り裂かれた額が熱い、派手に流れる血液が目に入り、視界が悪い。
|
| 石頭じゃなきゃ死んでいた。ハンブラビのヘルメットごと、頭に一撃入れられたのである。
| シロッコ自慢の合金兜が豆腐のように切り裂かれたのはある意味面白かったが、死にかけたのは面白くない。
|
| 逆に黄泉もまた、必殺の打撃を生き抜かれたのは業腹の様子。
| ヤザンは机を蹴り上げた。資料が舞う、黄泉は直撃を避けて動く、その移動ルートはヤザンに誘導されて…………。
|
|「やられたッ」
|「これしか出来んのでねッ」
|
| 蹴り上げた足が戻らない、黄泉が机を避けて右の壁を蹴りヤザンの脇下を潜ってターン。
| 視界の外だが、その殺気で位置は分かる。振り上げた右手、必殺のカタナ。狙うは脇腹だ。
|
| だが、分かっていても身体が動かない。『時間を止め』られた！ ほんの一瞬だが、致命的に！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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jI斗─━‐／ )/
／二二二ﾆ/ニ＞‐- _ ／,
/二二二二 _-=¨二_ -＜ _､+'”-ﾆ
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/二二二アニ二／. ..|,斗∨. . ﾟ｡ ／::::::::/＿,.ィi〔/⌒
／.∨ﾆﾆ-/丁. . .jI斗|. / V}ﾟ｡∨. .ﾊ _､+'”::::/￣ ＿＿￣￣ 双方そこまで！
|. . . ∨ﾆ/. . }. xくらﾉ.|/ ` }-}. /-} ／::::::/{::〈_,..-=_-¨¨/¨=- ミ
. '/. . .{＼{. ../.人. } _ -=ﾆ }/_-=¨:::::::::::{::乂::::::::_- / 30秒だけ私の話を聞いてください！
. }... ..{ `'/r‐|.. ..}=-=ﾆ_-斗匕:::::／::::::::::::::::::､丶_-
'/. .乂＿ノ( |. /-_-_-/{:::::::::::／::::::::::xく¨￣ _- /
∧. . . . . .／|/-_／_/:::.'/::::/::::::::::／:::::::ﾟ｡ _-
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|「『斬鉄剣』」
|
| 問答無用で黒塗りのカタナが乱入者ごとヤザンを狙う。
| 同時に相討ち狙いの裏拳が炸裂、カタナを手にした剣で、裏拳を左手で受ける乱入者。
|
| 『ハンブラビ』を豆腐のように切り裂いた必殺剣が、直剣に受けられて火花を散らす。
| 乱入者のベースボールキャップが宙を舞う、受けた風圧で長い金髪がなびいた。
|
|「ち、地下に現れた第三勢力が雪だるまと指揮官たちを駆逐しました！」
|
| 裏拳の衝撃を回し蹴りに変えて黄泉に打撃、くるくる回りながらの連続技をたやすく見切る黄泉。
|
|「敵は『十字軍』の死体を利用した奇妙な屍鬼！ 非戦闘員も関係なく虐殺しながら進んでいます！」
|
| ヤザンとスイッチする乱入者、壁を蹴り天井を蹴り、ヤザンに肉薄する黄泉。
| パワーでは劣っても、技と速度では負けていない。
|
| ヤザンの裏拳で外れた肩を入れながら、乱入者……謎のヒロインＸは必死に叫ぶ。
|
|「協力を！」
|「『結社』野郎の仕業じゃねェのか！？」
|
| ヤザンの前蹴りでボールみたいに吹き飛ぶ黄泉、いや、引っ張られるヤザン。
| いつの間にか巻き付けられた黒い糸、装甲に食い込んで引き裂いた。
|
|「……いや、こちらの屍鬼ならば雪だるまを攻撃しない」
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::::::::::::::::::::::::::::::::::|i::::::. :::::|.i| .!;::::::::::| ｀,ヽ|::ト:|:|, .i:::::::::::::::::::::::|i:::::!.
::::::::::::::|:::::::::::::::::::|ﾄー-∟i＿└‐-''-i...,| |:| ||丶 |::::::::::::::::::::::::|.|::::!.
:::::::::::::::|:::::::::::::::::::|:: .｀叉ｷﾁ=´〒斤ミ,.、 V ﾉ /:::::::::::::::::::::::::| |:::!.
:::::::::::::::|:::::::::::::::::::|: "ゝ,,.弋_丸）ｱﾍ / /:::::::::::::::::::::::::::| |:::!.
::::::::::::::::|:::::::::::::::::::|: ´￣´ヽ丶 （::::::::::::::i::::::::::::::|. i:::!
:::::::::::::::::|:::::::::::::::::::|:. 丶─.、ﾙy|:::::::i |:::!
::::::::::::::::::|:::::::::::::::i:::|:. ＼./ /.L..,ﾉi .ﾉ::;!
:::::::::::::::::::|:::::::::::::|:|l::|:. ＼ ./.!ﾉ それに私の目的は情報収集であり、戦闘ではない。
::::::::::::::::::::|:::::::::::::|::| |::. .＼ ..ノ ./ そちらにかかずらう義理もない。
::::::::::::::::::::::i:::::::::::::|:::| i,.:. ﾉ ./
:::::::::::|:::::::::::ヽ:::::::::::i |:. 、 / ./ …………が。
::::::::::::|i::::::::::::丶:::::::::!ゝ. ＼ , ／ ノ
:::::::::::::|:i:::::::::::::!＼::::丶＼. ヽ. /
::::::::::::::|:.∟;:＿;＼:＼;_＼.＼,丶 ;
:::::::::::::::|;:. ｀ 丶 _, - ,_.ノ
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| 黒い糸が自然に解けて黄泉の手首に巻き付く。そうなってしまうとインナーの一部にしか見えない。
| カタナを収める黄泉、乱入者とヤザンを交互に見る。
|
|「こちらの仲間を討たれているのならば、無視もできまい」
|「助かります」
|
| ポーカーフェイスを崩さず、治癒の呪符を取り出す黄泉。その内心は大荒れであった。
|
|（あ、危なかった……）
|
| 楽な仕事だと思っていた訳ではない。
| しかし、ヤザン・ゲーブルとぶつかるのは正直想定外だった。
|
| 連れてきた部下も、戦闘力よりも隠密性能や泥棒、輸送に長けたメンツだった。
| 有用な技能者ばかりなので、全滅は痛い。
|
| ……その上、奥義である『時間停止』も見切られつつあった。
| あまり大きな声では言えないが、黄泉のカラテは実際大したものではない。
|
| 無論そこいらのサンシタに後れを取ることはないが、ロストスキルやケンシロウなどの達人と比べれば一歩劣る。
| 強力なジツとワザでその差を埋めているものの、規格外の怪物であるヤザン相手に果たしていつまで保ったものだろうか。
|
| 正直、命拾いをしたと黄泉は感じていた。
| へし折れた肋骨と、肉をえぐられた左上腕の応急処置を終わらせて、黄泉はＸを促した。
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: : : !フ': : : : : l:/: : : : , : : : : : i }: : : : : : .
i: : :├┤: : : : :|ｌ : : : /=＝i : : : : ;弌: : : : : : :.
|: : : Ｌ.」 : : : : :|l : : : |: : : :/ ｝: : : : : : i
| : : ｢Π! : : : : |ｉ : 厶==ﾐ ﾉィ／x=ﾐﾉ: : : : : }i |
| : : | ｌ ｉ| : : : :｜:人じﾂ ノ' じﾉ′: : : : ハ| つまり？
￤: : Ⅵi : : : :圦 ´^`｀ ､`｀ }i: : : :/ j この『もうどうなってもいい』気持ちは
, : : ＼込 : : : ト ミ ﾉ ﾉl: : :/ 何者かの攻撃なのね？
: : i: : : : :`トミ｀: z ｰ=ァ (＼ﾉィ/
i : : !i: : : : :| : : 「 ﾟr _‐-丶＼__
￤ : |l : : : : : : : :､______{≧:个t-rｰ‐― ､＼
|: : 八: : : : : : : : :ﾏﾆｺ }: : :j:八 `弌⌒ヽ ＼
!: // :＼: : : : : : : ｀{i⌒Y(＞-ﾐ＼ ヽ 、 ﾏヽ
, : : :／⌒ヽ: ＼: : : : ×⌒守｝ }匸`（ﾏ`ｰ＼__ノ
, :/:/ ＼:＼ : : : :＼ﾏﾌ ∧ﾏぅ ）､￣ 人
. /:/: ; /＼:＼ : : : :` く`__）ﾆ´ニﾆ=-ミ‐ｧ７/ハ
/:/: : i { {ニ＼:＼ : : : : ヽこ`マ=======`マ//∧
:/: : : | マ=ﾆ＼:＼: : : : : ===＼======== ' /∧
' : : : :| 〕トｰ=≦ヽ: ＼ : : : ====ヾ========∨∧
: : : :_」 -‐=ﾆ二ﾆ=ｭ} }ニ==ハ: : ヽ: : : .==＝ﾍﾏ=-=ﾆﾆﾆ',/∧
: : [ -ｧ7////// /|' /ニﾆﾆ== : : : : : : : Yﾆニ}}ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ} /∧
: : |Π!//////// /|/=ﾆﾆﾆﾆﾆｉ: : : }ｉ : ぃ:|ﾆニ}}ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ, /// ,
: : |Ц'_,. -‐…‐- ' /!ﾆﾆﾆﾆﾆニ|: : : || : | }:|ニ=}｝ﾆﾆﾆﾆﾆ////// ,
: : [__斗 -‐…‐- ]ﾆﾆﾆﾆﾆ二ｌ: : : ﾘ : リﾉﾆﾆ}i}ﾆﾆﾆニ///////ハ
: : : : : | |＼ﾆﾆﾆニ/: : :/:/:/´ﾆﾆﾆ}|}ﾆﾆﾆﾆ｛'////////}
: : : : : Lﾆ二二二ﾆﾕ: : ヽ=ニ/イ /:/j/ﾆﾆﾆニ}|}ﾆﾆﾆニ|` ｰ- _/
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|（すでに『攻撃』を受けているぞーッ、って奴じゃな）
|「それ以外の異常は？ 誰か気づいたら教えてくれ。些細なことでもいい」
|
| 新宿衛生病院正門、捨て鉢の殺し合いをしていた巡音ルカとロビンwith『カトルカール』。
| そして乱入してきたミストと藤木源之助。
|
| ルカの傍に立つジェリドとカクリコン。
| ロビンと『カトルカール』はルカの奮戦によりボロボロだ。
|
|「ｺｰﾎｰ」
|
| 屋上で狙撃手を叩いていた石田も合流。神道の聖なる結界で、ロビンが注入されたマーラの汚濁を中和。
|
|「あげは」
|「！！……！？」
|
| 源之助が『カトルカール』のアゲハチョウに声をかける、彼女は何かを叫ぼうとして、左手で口を押さえた。
| 『カトルカール』は電波で会話をしている。逆に言うと、通常の言語でのコミュニケーションは不可能だった。
|
| 言葉を理解できない怪物だと、敵を恐れさせるためである。
| しかしそれでも源之助がアゲハチョウを指名したのは、彼女が俯瞰的視野を持ち状況判断に優れるという信頼から。
|
|「外ノ騒ギガ少ナイト」
|「ｺｰﾎｰ」「？？」
|
| 『カトルカール』の通訳にはロビンが必須だ。そのうえ石田にも通訳が必要という有様。
| そのロビンはカタカナ喋り……誰だこんな面倒くさい設定にしたのは！！？
|
|「石田サンハ住人ノ騒ギハ起キテイテモ救急車モ警察モ来テイナイト……グッ！？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ｒ、
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ ィ／
「｀ 。 ＿ ﾑ ﾏ 。ィﾆ／
≧c。｀ 。 ／ ＞。ﾑ ﾏﾆﾆ／
≧c。 ｀ / ／ ＞} ﾏ／
≧c。 ｀ ＜＿ ／__ノ ﾏ ナンダ……ググ。
≧c。 ::..... ..: ﾏ ハッキング……？
≧c。:.. ﾏ＿＿
マニヽ ::... .ﾏ／
〉ニニ、 ::::.... .:: ﾏ
＿＿ ｲニニニ 〉 :::.....:: ／￣ヽ
＼＞ ￣￣ ｀マﾆ人ヽ /〇 ﾘ
/ > ィﾆ＼ {＿ ィ/
/ ￣ﾏニニ＞ {＿彡´
{ }ニニ/７｀ ┘￣
八 ＿ /ニ彡 /
／ 人{ ７ ィ＿へ／
／ / } ／ー＜￣ ﾑ {
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| 頭を押さえるロビン、同様に思い思いによろける『カトルカール』。
| 彼らだけではない、機械で超能力を補強している石田もまた謎の広域ハッキングの影響下にあった。
|
|「『電波汚染』ですか？」
|
| それは、『やらない夫の集会』などで問題になった『教会』側の電波ジャック。
| だが、それを行っていたのは『カトルカール』の情報官ブッティのはず。
|
|「あー……こりゃヤバくねえかい？」
|「ルカ」
|
| ジェリドがルカを引き寄せ、守る位置に。思わぬ行動にまごつくルカ。
| だが、事態はラブコメを許さないほど逼迫していた。
|
| ロビンを狙撃した四ツ目ごと破壊されたビル周辺。悲鳴と怒号が飛び交う中で、未だ救急車も消防車も来ない。
| 逃げ惑う人々の多くは携帯電話を怒鳴りつける。繋がらない！ 繋がらない！
|
| そう、周辺の電波は掌握されていた。
| 有線の固定電話も利用できなくされていた。電波を利用するものは全滅だった。
|
| オートロックのマンションは開かず、監視カメラは好き勝手動き、信号は赤く輝く。
| 脳内にチップを入れているサイボーグ達も、強力で凄まじい速度のハッキング攻撃に晒されていた。
|
| そこには、先程戦闘を鎮圧してみせたミスト・レックスも含まれる。
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',.:.:.:.:.:. ＼.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:.:.lﾆﾆﾆﾆ l.:.:.:.:.:.:.:.:. | /
;:.: ∧ _ ノ｀ 、.: ＼.:.:.:.:.:.:| }ﾆ:∧.:.:.:.:.:.:.:.:圦 クッソ……。
;.:.: ∧マ示笊＼ヽ ｀ヽ.:.:{二二/.:./.:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:≧=- ' すーすーしやがる……！
∧.:.:.:.:圦ゞ赱シ 丶 丶l /／ ｲ.:.:.:.:.:.:.从＞=-ﾐ
∧.:.:.:.:.: ＼／/／/／/′/／/／/l.:.:.:.: 八}.:lへ一 '
/ ∨.:.:.:.:.:.:.ヽ 从.:./ ﾘ. ｀ ＜
{ ＼.:.:.:.:.∨＞ ´ ｀ ／.:.: / ヽ
从 / ＼.:.:.:∨ 7≧=- イ /.:.:/{ ',
∧ /.:.: イ＼.:丶 ,′｀ヽ ／/.:／ | l
∧ ー ´{ ＼.:} / /´ l 从
∧ _ ノ _ ノ { ,′ .∧
／ ／ ヽ ', { ∧
_/ ／ ´ } ∨ ＿ ,′
γ Y / } { ∨ ヽ
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| 地下、手術室。ヤザンの部下ラムサスとダンケルを退けた杏子班。
| デュランダル殺しの犯人を突きつけられ、何やら謎の能力に目覚めたレイが、シロッコを殺すために出ていった。
|
| 残された瀕死のシグと横島をヴァイジャヤと杏子が治療し、戦力不足を補うために天龍を開放。
| 天龍とシグは『血族』を裏切りやらない夫に付いていた。
|
| シロッコに捕らえられていたが助ける理由も協力する理由もなかった。
|
| だが、助けてしまったものは仕方ないというか。拘束されて改造されるのを無視できるほど知らない仲ではないというか。
| ラムサスを倒すに当たり、シグと横島のコンビネーションがなければ全滅していたというか。
|
| つまり細かいことは後回しだ。
| 口煩いキュウべぇも今は口を噤んでいた。
|
| 全裸だった天龍とシグは近くのロッカーから盗んだ白衣を素肌の上に纏い、武器代わりに鉄パイプを握っていた。
|
|「龍田に見つかったらナニ言われっか」
|「つまり期間限定コスチュームだな、拝んどこ」
|
| 五体投地する横島、その頭部を天龍が踏みつける。
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＼ ￣ ｀ ヽ、 _,. -‐ '’ ￣￣ ｀''ｰ 、
＼ ＼, ／´ ｀ ヽ、
＼ Y’ 入
,,.＞ー ＼
／ , ／| ｉハ. i ヽ
／ ＿,.イ i ／ | |. ', .| ｉ ',
￣ | ｉ ｜ ／ ｜ |. ', | |＼i
| ｜ | ／ ー―‐ ! ! ｰ=弋 ! |
｜ | !' ーェ＿! ! ー弍､ ｜
', ｨ'⌒l | て ￣ 丁 ∨ て￣丁! ﾄ､,!
＼ﾄ.、 l | ヽ＿ノ ヽ__,ﾉ/ |
レヽ| ! '､ | よこしま、めっ。
＿ヽ.ノ ,∨
＼ ￣ ＞ 、 - __,. イ
〉 ￣ ― ＜´
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「ぐあああああ！。？
|
| ローアングルで見上げようとした横島の、左眼球にシグの足指が突き刺さる。
| ラムサスにぶん殴られて失明の危険のある方の目だが、手加減はない。
|
|「……さて、この後だが予定通りパプテマス・シロッコの犯罪の証拠を探す。異論はないね？」
|「レイはどうするんだ？」
|
| 踏みつけられたまま横島。キュウべぇは頭を振る。
|
|「レイ・ザ・バレルとは利害が一致していただけだ。そして彼は横島忠夫、瀕死の君を見捨てて行った。
| 追いかけることでボクらに利益はない。逆に対立した場合は大きな脅威になるだろう」
|
|「したいをあやつってたよね」
|「レイ・ザ・バレルは超能力者だ。おそらくはその応用だろう」
|
| 肩をすくめるヴァイジャヤ。危険を望まない少年は、さっさと仕事を終わらして帰りたいのだろう。
| 納得できない様子の横島の傷を、しゃがみ込んだ杏子が触れる。
|
|「お、パンチラ」
|「バカ、天龍とシグの救出は大急ぎだった。けどレイはそうじゃない。
| 決を取るぜ。それで納得しろ」
|「…………」
|
| 杏子は仲間たちを見回した。眉間にシワ、彼女自身納得いかない顔。
| それでも、彼女は班長だ。しかもすでに仲間を失っていた。これ以上の犠牲は耐えられない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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|: : : : |; : / : : : : : : : : : : /ｌ : : : /!: :/ ヽ: : : :l: : : | ゛､ : | : : : : : : : :| : i; : : : : .:|
|: : : : |:V: : : : : : : : : : : / ｌ: : :/｜;′ ﾞ､: : l: : : | ﾞ : | : : : : : : : :| : |ｌ: : : .: .:|
|: : : : |: | : : : : : : : ￣`ﾒ､ ｌ: : ｌ |;′ ﾞ､: |ﾞ; : :| ｉ :ﾚ'´￣: : : : | : | l : : : : |
ﾞ; : : : |: | ｉ: : : : : : : : :/ `ト､| | ﾞ;.| ﾞ;.: レ'"´}ﾉヽ,: : : : : : :| : | :ｌ:.: : : :| アタシは班長だから数に含めない。
ｉ : : /|: |:ﾄ､: : : : : : 厶===ｚ夊{ﾐﾒ､_ _,斗く}厶ｪ=≠ﾐｧ|.: : : : : :/ : | : l.: : : :|
|: : / |: |:| ;ﾍ: : : : : ﾍ 勹:::::::「}`ﾒ､`ー ー'彡ィﾒ勹::::::::「| 灯 : : : : /ヽ: | : :i.: : : | レイ・ザ・バレルを探さす、
|: :/ ｌ: |:|（∧: : : : :| 圦:::::ﾉﾘ ヾ 〃 圦:::::::ﾉﾘ ′|: : : : /` /: l : ﾊ: : : | 本来の任務を遂行する。
! / ｌ:|八｀ﾑ: : : : | 乂`´ノ 乂`_´ノ ,': : : /ノ, ': : l / ;.: : |
.'/ ｌ : : :＼＼: :！ ｀￣￣ ￣￣´ /: : :/ ／: : : l/ ; : :| 賛成は？
/ ｌ : : : : `ｰ＼:ﾞ､ 1 /: :,ィｰ': : : : : 〈 ‘; :|
ノ ｌ : : : : : : ハ＼ /／ハ: : : : : : : :| ‘;|
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| 挙手するヴァイジャヤとキュウべぇ。
| 杏子は悲しげに横島を見下ろし、首を振った。諦めろ。諦めるんだ。
|
| お前まで失いたくはない。
|
|「三対二だな」
|「じゃあ、行こうか」
|
| 驚く杏子。見上げた先には、仁王立ちの天龍と、ニコニコ笑いのシグ。
|
|「俺たちゃ横島に付く、こいつの甘ちゃんに助けられたンだ」
|「……天龍、シグ」
|
| ガラス玉のような目で睨みつけるキュウべぇ、だが、杏子は諦めたような。あるいは救われたような顔で頭を振った。
|
|「次は、今度こそ全滅するよ」
|「だからって、ダチを見捨てらンねェだろ？」
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,. -‐'''7´￣｀丶､
／ ＼
/ ヽ
| / ',
| | ｜,l ｌ l |
|.| ! l !ﾊ ﾄ､ ヽ :|:.!
|ヽ.| |.|{ '､', ヽ.ヽ ', : l::.!
| ｜:lｒｚミ､` ,-l.l ll ::: ::l:::{ …………分かる。
| l l '､iゞ┴ ｊｊ/ii.:::.::i::: ヽ 何もかもがよく見える。
ﾉｲ:::l lヾ､ ､ー''ノｲ::: l::: ヽ',
_,.- '´/ :::::､ｌ､i`ヽ､''ﾆ''､彡' /:: } }' ｀ヽ､ 手にとるように。
／ { :::{ヾ､ { ｀¨´ﾞ7-イｨ:: ｊ// ヽ
/ _ｒ ゝ､ `ｚ ヽ､ ノ ノ _ノ⌒ヽ ＿}
{_ -, / ,ｲ￣ 「 ｀￣ {｜| { く > }
} ノ } l/ / ｜ ヽ ! ｀ヽ､`ｲ
|' ,.-'´ lィ´ ! ﾞﾄ､ ｀1
ｊ´ ,へ!丶 | ＿ｊ」__}ヽ |
｜ / ､ ﾊ ＼ _ｊ＿＿,/／ ヽ ヽ ｜
| , ' 7 ヽ ｀Tl￣´ | // } {{､ |
ｊ / } ヽ. || -| {{7 _,,..'-､ヽ､ |
// / } || | / ,.-''´ ﾉ}￣`, }
ｒi{ ヽヽ .{. || |,.-ﾉ‐''´ ／ } _,.-'′
ﾞｊl `〈 .ﾉ_,-ノ _,.-''´ ヽ __ゝ-ｒ '´
{ l {ｧ／／ },.-‐'"´ ｜
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| ぎこちなく歩く二体のハンブラビ。
| ラムセスとダンケルだった死体を引き連れて、レイ・ザ・バレルはシロッコの執務室へ向かう。
|
| レイの『眼』には、シロッコが見えていた。
| 執務室で悠々とコーヒーを傾ける姿。
|
| 新宿衛生病院のあちこちの惨状を理解した上で、まるで他人事みたいにですごしている。
|
| ……レイには、その『惨状』の全てが見えていた。
| 地下で暴れる合成屍鬼。それに立ち向かうヤザンとＸ。
|
| 混乱を極める研究員たち。未完成の生体兵器を開放して、逆に殺される阿鼻叫喚。
|
| 病院内の電子機器の利用権限を有する『カトルカール』ブッティ。
| レイは彼の脳を焼き切り、全てのカメラ、トラップ、武器、そして冷蔵庫から照明に至るまで全てを掌握。
|
| 混沌を極める地上の戦場。
| 機械化した全員の意思を抑圧し、支配に成功。
|
| ロビンの射撃で崩れ、混乱するマンション。
| オートロックを支配。電波も掌握。逃げられない、助けも呼べない状態で放置。
|
| ああ。レイは今まさに、レイの手で滅びようとするシロッコに何の感傷も抱けない事に気がついた。
| もう、どうだっていい。なんだっていい。
|
| 全部壊れてしまえ。
| 全部滅びてしまえ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,イ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :＿: : : ｀''≪ﾆヽ:ヽ: : :',: :}:ﾍ
.:.:.:.:.:.:. : ,イ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀ヾ: : : : ｀≪ﾆヽ: : i / : :',
.:.:.:.:.:,イ: : : : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : :＞─､: ヽ: : : : : :寸ﾆヽ: : : : }
:. ／／: : : :／: : : : : : : : : ＿彡=-''" ,イィ:_:_: ヽ: : : :寸ﾑ: :./
ｲ／ : : : ,ｲ : : :/´￣｀Y: : ／´ /'´ ,ィ´イ: :)ﾉ: : : : :寸〉
: :/ : : ,ｲ : : : / /／ﾉ/:ｱ′ -､_ | /／ ゝー=≦: : :ﾍ
:/: : :/: : : : :/ l ノ/:/ ヽ､ﾐ､ |' ヾ: : :|
: : :/ : : : /: { ', /:/ "''､.ヾり＼ ! ﾊ: /
: // : : :/ : :ﾍ ﾉ l:/ ｀'' ヽ.ヽ、 ,': :/＼
//: :/:./ : : : :ゝ |' , ＿＿_ /: ,ｲ:.:.:.:.＼
:/: :,':./: : /: :/ / 赱う㍉｀ヽ/,ｲ:.:.:.:.:.:.:. : ',
: : :l: ｌ|: : ｌ: : { |! l ｀¨'' '´ｲ: !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. l 戻ったか、レイ。
|: :|: :||: : |: :ﾊヽ |', ､. , _ | ／: : |:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
从|: :||: : ',: {ﾆヽヽﾏ', ｀ヽ、 ヽ≧‐ ,イ: : ///.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :|
ﾍ､:',',: : |ゞﾆﾆヽヽﾑ _ ｀''‐ ,イ: : : : ///:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
l ﾍﾆゞ､乂ﾆﾆﾆﾆニ'､. ,イヽ､: : ,ｲ///.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : |
.|. ﾍﾆﾆﾆﾆニア⌒>ﾆ＼ , イ_ ` ヽｲ:ｲｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
', ﾍﾆﾆﾆﾆﾆ〉 ゞﾆﾆニ/＼＿ イ'´≠ ヾ ヽｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. |
', .ﾍﾆﾆニｱ /ヽ ｀¨//ニ/ ,ィ⌒ ヾ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
', ﾍﾆﾆﾆ{ ',ﾆﾆｱ//､ﾞノイ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : |
', ﾍﾆﾆゝ ゞｱ//ﾆﾆ{ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／
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|「はい」
|
| ノックをして、シロッコの執務室に入る。警戒心の欠片も見せないシロッコ。
| いや、それは偽りだ。シロッコは誰も信用しない。
|
|「ギルを殺したと聞きました」
|「必要な犠牲だった。彼自身も理解していた」
|
| シロッコの、吸い込まれるような深い瞳。甘い声。その全てが不愉快だった。
| レイのまとう心の壁に針のように突き刺さる、怖気が走り吐き気がした。
|
|「なぜ秘密にしていたんですか？」
|「君がショックを受けるだろうと思っていてね」
|「隠されていたほうがショックでした」
|
| 拳銃を向ける、銃口を突きつけられてもシロッコは一瞥しただけであった。
|
|「くだらない、大義の前では些事だよレイ」
|「私にとってはこれ以上ないほどの物事でした」
|
| バッサリと切り捨てるシロッコ、レイはそれを許せない。
| 謝罪の言葉があるとは思っていない。もうすぐ、シロッコはレイを殺そうとするだろう。
|
| 何もかもが馬鹿馬鹿しい。どうでもいい。茶番だ。
| レイはため息をついた、頭を振った。
|
| その隙を、シロッコは見逃さなかった。
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/ ヽ
!_,..::::::::=＝:＝=::::;,,, ヾ
,／" ゞ_,.;:"`~`ヾ, ~`;:::,._ `;,.
/ ,.r-・”~~ ヾ ~~=-;;:... i
/ ,.i ヾ `;:,,, i
/ ,.ｒii ヾ ~`;::,,i
/ i,i ii _,,,,:=-- .ヾ:: ヾ_
,/ i;i ,,i _,,.;'ゝ.-.-;;' ヾ:::::.... ヾ
.r yii, =;,.. -;" ,"~/'-'"ﾆ;'" .ヾ ,.:"^;. ヾ
l :': ::::i.∠.,(ﾂﾍ " . i: i r i : : i
.l ::: ::::::l ' .,i .i::i.iﾍ i :::.::: |
,l :::: :::::::::;, .:;" , .i:i ,i ..:::::::::::: | 残念だよレイ・ザ・バレル。
l :::::: ::::::::'. ` __.,, .i! /.::::::::::::::::::::::|
,l ::::::::.::::::::::{ -=＝二..ｿ =":::::::::::::::::::::::::|
l :::::::::::::::::::ﾍ "`::., l::::::: i::::l:::::::::::::|
,l :::::::::::::::::::::::ﾍ ::::/ j::::::: l::::ll:::::::::::i
,l .::::::::::::::::::::::::::ﾍ :::::/ "";'ノj丿|:::::::::l
` ,,,,,::::::::::::::::::::::::ヽ .::::/ ,j:::::ノ
~`=-;,:::::::.___;;i,m;,:::_::;.;:`_;,,/ _-=＝;""l ""
i＼ _,...;;:::"" l
___,i ﾍヾ,/"~ l＜,.........____
／ ,i.,_ ］［_}β ___ゞ ~~~~~~~~~~
,／ i.,_ .］［_}β __,.-=ゞ"-"~~~~
,／ i_ =i i==＝,""~
,／ ` i, i
;／/ ,i i
/"~//
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| 壁にかかっていたシロッコ専用の機動服『ジ・オ』が、脳波で操作されて動いた。
|
| 手にした大型ライフルが恐るべき速度と正確さで頭部をロックオン。
| 対処できない距離と速度で発射された劣化ウラン弾は正確に眉間を貫き、脳と頭蓋骨を粉々に吹き飛ばした。
|
| 美しい鼻梁も、何もかも見透かすような瞳も、天才的な頭脳も、サラサラの長い髪も。
| 血と脳漿とシェイクされ、壁にロールシャッハめいたマーブル模様を描いた。
|
|「残念だったよ、パプテマス・シロッコ。冴えない最期だったな」
|
| 掌握した『ジ・オ』を傘下に加え、レイは心底つまらなさそうに呟いた。
| この先、この後、何も考えていない。
|
| 復讐は簡単すぎた。あっけなさ過ぎた。
| だが、もうどうだっていい。
|
| レイはシロッコの死体を一瞥し、執務室を後にした。
| 心にぽっかり空いた穴を、持て余しながら。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ﾉ Ｌ＿＿＿_
⌒ ＼ ／ ＼
／ （○） （○）＼ サンキュー、ミロっさん。
／ （__人__） ＼ とでも言うと思ったのかおぉぉぉ！！？
| |::::::| |
＼ l;;;;;;l ／l!| !
／ `ｰ' ＼ |i
／ ヽ !l ヽi
（ 丶- 、 しＥ |そ ドンッ！！
`ー､＿ﾉ ∑ l､Ｅ ﾉ <
ﾚY^Ｖ^ヽｌ
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| さて、こちら。
| 新宿衛生病院上空。
|
| 弥勒菩薩への最後のお願いで、『哀しみのからくり人形楽団』の元へと飛ばしてもらったやる夫。
| なんかすごい魔力によるテレポート的なものを期待したやる夫に、弥勒菩薩の答えは物理であった。
|
| 掴んで、投げる。
| 『十壊』の気配を察知して、近くに向かって投げつけてくれた所までは正しかろう。
|
| だが、やる夫はぷよぷよボディの運動音痴。完全インドア派でスカイダイビングもバンジージャンプも未経験。
| というか、現状はノーパラシュートスカイダイビング、あるいは紐なしバンジーなのだが。
|
| つまり、自由落下。
|
|「いやマジ無理！ 死ぬお！ 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ！」
|
| 助けなんて当然ない。
| 着地する能力も魔力も、やる夫にはない。
|
|「『荒野の黒龍』に頼んで落下ダメージを殺してもらうとかどーだお！！？」
|『いや、トンチではないのだが？』
|
| 落下ダメージを殺すほどの火力で着地の衝撃を減らしたら、今度はその火力でやる夫が危険にさらされるであろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/二二二ニニニニニニニニニニニ〉
. ,'二ニニニニニニニニニニニニﾆﾆ/
,ニニニニニ-‐ニニニニニニニﾆﾆ/ ,.ィ 、
i二二ニニニニニ＞ ､ニニニニニ/ .／::/ ヽ
!二二ニニニニニニニ＞､二二ﾆ/.／::::::::l ＼ ,.､-､
!二二ニニニニニニニニ-―＝ノ./:::::::::::::! ／::::::ヽ ＼ …………何やってんだよ、アンタ。
lニニニニニニニニニニニニニ=､:::::::::::::::`ｰ＜:::::::::::::::} ＼
〉ﾆニニア´ _..._ ヽ二二二ニﾆ〈::::::::::::::::::／⌒',｀'ｰ-j. ＼
ｊヽ二二' ,' ヽ }ﾆ.'⌒',二ニ={:::::::::::／|: : : : ! / j
〈ニニニ', 乂 __.ノ ,ﾆ乂_ノニニ,.ィヽ／ |: : : :.:| / /
. }ニニニゝ、 , ｲニニニ-イ//ハ }. .|: : : :.:l / ./
. ﾉニニニニニニニ＞‐ｒｉlﾆ"- ィV//ハ!'⌒ |: : : : j /／ ￣￣ ` 、
-―Τ777,T￣ニ=-V///,l.ﾘ"ゞﾞ-' Vl///!ヽ j: : : :/´／￣￣,.'"-‐- ､ヽ
::::::::::::V///k 弋rソヽヾV/| l///!ﾆV: : :.:/／: : : :／ ｀ヽ
::::::::::::::｀V/ﾊ、 ヾ、 ﾊ//,!=/ : : /': : : : ／-―＝ ￣｀ ‐-'､
―- ,＿V//ゝ、 、 /-l'/ﾘ./=＝,': : :.:／: : : ＼ _,. ．-一'
`ｰV//＼ _ - .' /_／/ : : :/)）／,.-―- ＿_´ヘ
ヽ///＼ ｲイ{´ .{/＿,.イ: ;' ´ . ｰ.ノ ヽ
―‐_=‐- ＿＼///＞- ＿ ／: : : :.l. Y￣: :ｌ:/ ,.ｲ￣´Τﾆヽ i
/ﾆﾆニニニ＞ー-､ ＞': :l: :,:‐'":l .l: : : : { ,.イ ￣￣ lニﾆヽ .!
./ﾆﾆニニニニニニ二／./: :.r'": : : :.} ヽ: : : :ヽ'"/_|. ―― |二二＞ﾄ､
ニニニニニニ二二／ /: : :.l_;:／／l ,.ゝ＜￣ﾆﾆl ―― !ニニニニヽ
ニニニニ-‐＝二／ l: : : ::{,.／: : :.ト'":::::）二二,ニ＼ .,ｲニニニニニ
ニニ／ﾆﾆニニ／ l: : : :ゝ!: : : : :|: :＞' '二二二ﾆ＼／ニニニニニニ
ニ／ﾆニニニ/ l: : : : :.|: : : : :j" 'ニニニニニニニニニニﾆﾆ
ニニニニニ/ ゝ: : : :.!: : :／ニ､ 'ニニニニニニニニニニﾆ
ﾆﾆニニニ/ ／二７ ￣´ニニヽ. '二二ニニニニニニニニ
ﾆニニニ/ .／ニニ/ﾆﾆ二二二ハ. 'ニニニニニニニニニﾆ
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|「うわあ命の恩人！！？」
|
| 突如現れた黒衣の怪人が、体重を感じさせないジャンプで空中のやる夫をキャッチ。
| お姫様抱っこで救出し、手近なビルの屋上で下ろす。
|
|「…………あれ？ 委員長さんかお？」
|「今は『ブギーポップ』だ」
|
| そう、委員長こと長門弟。
| 今はなぜか黒マントに黒帽子、顔を白く塗り黒いルージュを引いていた。
|
|「ブギーマン……？ その、メガテンスレ的にはバガブーって呼ぶべきじゃねーのかお？」
|「バガッ！ ブー！！ じゃねえ！ ロリコンでもねえ！」
|
| ブギーマン、バガブー、ボガード、バグベア……英国に伝わる妖怪だ。
| 暗闇に対する漠然とした不安の具現であり、子供を脅かすための存在。
|
| 『ベッド下の怪物』『寝ない子誰だ』『ひとさらい』『ストジャのヒロイン』などと呼ばれる怪物だ。
| なお、アメリカ妖怪のボス、バックベアード様は似て非なるものである。このロリコンどもめ！
|
|「つーか、やる夫さんあんた知らないのかよ」
|「何をだお？」
|「『ブギーポップ』」
|
| 学生の噂話に登場する死神、『その人が最も美しい時に、それ以上醜くなるまえに殺してくれる』。
| という存在なのだが、やる夫が学生だった頃にはなかった噂だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼ あ、レミエルに負けた……。
| ＼ ,＿ |
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「抜かしおる」
|「……あれ？」
|
| 『ブギーポップ』は失われたはずだった。堕天使 レミエルに灼き尽くされ消えたはずだった。
| そんな話を聞いていた。『夢の塔』には参加できるが、ペルソナもないし戦力としては微妙という話も。
|
|「『ブギーポップ』は『世界の敵』を排除する存在だ。だがら、寝ていられなくなったんだろうよ」
|
|「ええ……なんで『一人でおかえり』の処理をしてくれなかったんだお？」
|「知るか、こいつは自動的なんだよ」
|
| 頭を振る委員長、ノルマ達成。
| お姫様抱っこから降ろされるやる夫、想定外の展開だ。
|
| 気になるのはこの遭遇、この復活が弥勒菩薩の思し召しかどうかだ。
|
| であるなら、奇跡の復活もおかしくはあるまい。
| いま、これから動き出す『哀しみのからくり人形楽団』。
|
| 世界守護者たる「ブギーポップ』以上の援軍はあるまい。
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胸に広がる虚無の穴。
尽きることない孤独かな。
呼べど叫べど帰らぬこだま。
苦悶し伸ばすは隠れしかいな。
憎い敵は地獄に落下。
恐ろし獣は壁の中。
なのに何を恐れるのかな。
迫る死神の影と罠。
次回、最終幕百六話『世界の敵』
果てに見るのは破滅か死か。
無敵の自動的守護者で十壊を何とかしてくださいよー！
やる夫さんのブラック労働続行！
今度はレイの対処か
木星→ヤーボたちが参戦予定
クトゥグア→ビスケットハンマー攻略後
ビスケットハンマー→翠星石とトキがペルソナ使い達に手を貸す
哀しみのからくり人形楽団→横島たちがレイを追う。やる夫とブギーも近くに
第二次関東大震災→詳細不明。誰かが追い詰められると発動するらしい
補完計画、1人でお帰り、テングサ、第四の万魔は解決。ルカ、石田、ロビン、カトルカール、四ツ目、ミストらがレイの電波ジャックや何もかもがどうでもいい思考に汚染されて苦しんでる
あーもー、あっちをたいしょすればこっちー、ブラックすぎる世の中ね
コロナ後の体調不良とブレインフォグなる頭がぽやぽやになる後遺症で、執筆ペースが落ちに落ちております。
つきましては今後は二週に一回投下予定に変更させていただきます。
今日はあまりにも辛いのですが、来週は、来週こそは投下いたしますのでよろしくお願い申し上げます。
無理をなさらず
カラダニキヲツケテネ！
_}＼_∧
__}＼}ﾚ'´ /^|｜
｢＼＼ / |└┐
_{＼{｀ー―＼/ /ｋ､ ｛、
{ ＼＿__r''⌒}￣￣ヽ:h 、
＼＿__.{ ( ゝー{冖=―くﾊ. }
∨／＼{ {⌒}､ { //ﾊ} } }
Ｙく ｢＼{ ｣_＼ {彡/ )i､} あークソ。
｢ヽ{. 三三ア¨⌒｢ ∨ こりゃあもうダメだな。
＼＼ ヾ､. _j ,; .|∨
} 刈)､ __,ィｱ ' }―
} } ∧ ＼ ー '´ ,' /∧‘，
∧ ｀`〜､.,＿ノ／ j ＼＿＿
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| 深夜の東京、新宿衛生病院の死闘はまだ誰の耳にも届いていない。
| 同様に、突然カチコミかけられたヤクザ事務所の惨状も。
|
| ヤクザの情婦だった女に腰を振らせながら、襲撃者アリー・アル・サーシェスは頭を掻く。
| 周辺は血泥の沼地。射殺されたヤクザどもの死体が無造作に転がる。
|
|「はっ、はっ、許して……」
|「許してほしいならもっと気合い入れて腰振れよ」
|
| 銃を弄び、必死な女を嘲笑うサーシェス。
| 生き残りはこの女だけ、その他は男も女も関係なく殺していた。
|
| そして、サーシェスは約束を守らない。
| 必死になって助かるために何でもしたのに、裏切られて絶望する顔が見たいのだ。
|
|「どーすっかねえ。まさか丸々奪われるとは思わなかったぜ」
|
| 新宿衛生病院を地下から攻撃していた『十字軍』素材の『ツギハギホラー』軍団の話だ。
| 謎の支配攻撃を受けて、サーシェスの脳を与えていたオズマ以外のコントロールを奪われた。
|
| 気付いた時にはすでに遅く、コントロールを奪い返す前にタコ殴りにされてオズマの体は全損。
| サーシェスは貴重な駒を失った。
|
|「コイツラで代わりになりゃあいいが」
|
| 思い付きで襲撃したヤクザ事務所、深夜にも関わらず片手では足りない数の兵隊が手に入った。
| 襲撃時、何やら取り込み中だったらしく、土下座する中年男とその目前で犯される女が三人程いたが、全員殺した。
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| 三＿二 / ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i | |
〉─_,. -‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ 川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´| ｀'t-t_ｩ=､i |:: :::,.-‐'''ﾉﾍ| 上手く行かねぇな……
. r´｀ヽ / ｀"""｀j/ | |くゞ'ﾌ/i/ 勘が鈍ったか？
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/
. ＼ヾ( l ヾ::::ﾉ |、
j .>,、l _,-ニ-ﾆ､, |)）
! >ﾆ<:| ､;;;;;;;;;;;;;,. /| ＿__,. -､
| | !､ .| | （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ| | ヽ＼ _,..:::::::. / .| ｀''''フく ＿,. -ゝ┴-r-､
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |＿ ＿,.-''"´ ／￣,.／´ ゝ＿'ヲ
..| | | ＿;;;;;;;_￣￣ | ￣￣ / _,. く ／ ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_ / にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ / / .（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼ ￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/ / ／ ￣ ） ﾉ__'-ﾉ
＼ ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/ / ／ ／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ ヽ＼ ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ゝﾆ--‐､‐ |
l ヽヽ ＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ /‐＜_ ヽ |ヽ
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| 正解だった。
|
| サーシェスの直感はアサギの呪い、『一人でおかえり』によって狂いっぱなしだった。
| だから今晩は、あえて無視して思い付きでヤクザ事務所を襲撃したのだ。
|
| この調子で手数を増やすか？
| サーシェスの本能が無闇な行動に警告を発する。
|
| ……だから、だからこそあえて。
|
| サーシェスは己に跨って腰を振る女の喉を無造作に刈った。
|
|「えっ！！？」
|「ん？ ああ、飽きた」
|
| 女の全身が緊張する。恐怖と絶望で歪んだ顔に、サーシェスは愉快な気持ちになった。
| 死にゆく女を犯しながら、サーシェスは決めた。
|
| 直感の逆を行く。危険でも構いやしない。
| サーシェスは、不死身で無敵だ。
|
| 今まで試さなかった無茶で無謀もやればいい。
| 脳内で鳴り響く警戒アラームを無視して、サーシェスは動き出す。
|
| 無茶苦茶にやってやる。
| それは笑いだしたくなるほどに甘美だった。
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. ﾑ - 'イ::::::::::::::::/ : : : : : : : : : : : : : : : ＿ : : : : ＼
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,.': : : : ｲ:/ : : ﾏ : : : : : ;. ==.ヽ:/: : : : : : : : ,. -ァ/: : : : : :/:!
: : : ／ｲ': : : : :V : : : : i ! _ﾉ !: : : : : : :／＞xイ: : : : : /: i
: ／／ : : : : : : ﾏ: : : : |.ﾄ .i ,:/: : : : :/ ,`ヽ: : ｨ'.: ;ｲ
': :': : : : : : : : : : ﾄ、: : :iヽ_┐ i'i: : : : / ' ｀`Xムイ', ｲ ／!i
: : : : : : : : : : : : | !ヽ : ﾄ .|: : : , ,..y'｀`.／.!,イ/ ヾ、
: : : : : : : : : : : : ﾄﾊ .|ヾ! ﾏ: :i i/ / ／'
: : : : : : : : : : : : |ヽV .V:| u 丶,
: : : : : : : : : : : : | ,`'__ ヽ、 ヾ! , '
: : : : : : : : : : : : i',` --x` -x .!ヽ _,--' 死ンでる……。
: : : : : : : : : : : : |//////＞.x｀ヽ ｀.-' シロッコだよな、コイツ。
: : : : : : : : : : : :ﾑ、/////////ヽV
: : : : : : : : : : /￣`ﾆ二ﾆ-- '''// !.i
: : : : : : : : : :i/ ￣ ｀ヽヽ, ￣ ￣￣ヽ- .、
: : : : : : : : :./ ＼ヽ/////,i |ヽ ヽ
: : : : : : : : :i .ﾊ ∨////!ゝ-ゝ-x
: : : : : : : : :| .i .|/////`ﾆ─‐ヽ 、
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| レイを追いかける杏子班。慌てふためく研究員も、何やら仲間割れする『武僧』もやり過ごして更に地下へ。
| そこで辿り着いた部屋にあったのは、頭部を失った男の遺体。
|
| 特徴的で気障な服装、突然豪華な調度品、高そうなカップに入った未だ冷めきっていないコーヒー。
| この遺体がこの部屋の主であり、同時に身分の高い人物だという想像は簡単だった。
|
|「レイ・ザ・バレルは目的を達した。それはボクらの目的の一つでもあった。
| 佐倉杏子、ボクらの主目的は何だったかな？」
|
| キュウべぇの問いかけに、青ざめた杏子が舌を打つ。
| あまり好ましい状況ではない。証拠を見つける前に死体になっちまった。
|
|「コイツの悪事の証拠を探すコトだよ」
|「分かっているなら問題ないよ、ではチームを分ける、反対は？」
|
| 暴走するレイを止めたい横島が瞬きした。このままここで家探しかと思いきや、だ。
|
|「ここを調べるのはボクとヴァイジャヤの二人でいい」
|「え？」
|
| 安全最優先のヴァイジャヤが硬直、当たり前だ。戦闘能力皆無のキュウべぇと二人きり？
|
|「それは私がいるからではないのか？」
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|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.|.:l弋::.) ﾘ 弋ソノ |:.:.:.:|.:.:.:|
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|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| : !:.:.: |￣
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| / ,':.:.:.:.| ドーモ、皆サン。
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| /厂￣ 黄泉です。
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : ...:.:.:.:.ト.| --一' ′ ／.:.{
|:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.| ヽ､ ／..:.:.:.:i
|:.:.:.:.:.:.:.:.| .::l.:.:.:.:.: | ＞ ､ イ....: :.:.:.:.|
ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:l:.l .:.:.:.| Τ´.:.:|.:.:.l.:.:.:.:.|
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| 別動隊として侵入していたが、なんやかんやで謎のヒロインＸとヤザンの二人と行動中のはずのニンジャのエントリー。
|
|「ヤザン・ゲーブルと衝突して部下は全滅、私も負傷した。
| そのヤザンは地下に湧いた屍鬼を迎撃に行った。『邪悪帝国』も『教会』も見境なく襲うそうだ」
|
|「そのヤザンの部下ニ名と遭遇し、馬岱が死亡、レイ・ザ・バレルがシロッコ殺害を目的に暴走した。
| 戦力不足を補うために捕らわれていたシグと天龍を開放、協力体制にある」
|
| 手短に情報交換する黄泉とキュウべぇ。
| 黄泉は肩をすくめた、
|
|「レイ・ザ・バレルを追いかけるの？」
|「ダチなんだよ」
|「なら仕方ないわよね」
|
| 拍子抜けするほどあっさりと、横島の行動を肯定する黄泉。
| 独断専行、命令違反、どんな言い方をしてもいいが、とにかく横島の行動は許されざるはずだ。
|
|「地下の屍鬼に注意しなさい、『邪悪帝国』だけならともかく、華琳の親衛隊までやられている。
| …………天龍さん？」
|
|「応！ 俺が怖いか！」|
|「私とあまり年が離れてないのにそれだけ育った胸と、全裸同然で徒手空拳なのに溢れる自信が怖いわ」
|
| シロッコらの捕虜にされた際、衣服と装備を奪われた為に全裸に盗んだ白衣姿の天龍。
| 露出狂スタイルだったことを思い出して、耳まで真っ赤になり腕で体を隠す。
|
|「貸してあげる」
|
| 黒塗りの忍者刀と、包帯。いや、特殊な編み方をした帯で、燃えず刃を通さず、人間の重さを支える忍具の一種だ。
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′ | ′，
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{ 「ア“”::::::::::::::::::::: ”“''.{ '，
{／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{￣ ＼，
/:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::{￣{ ヽ|
/:::::::::/ '，:::::::::::::::::::::::::::::::::丁「≧!
|::::::::/ ＼'，:::::::{:::::::::::::::::}::::}{ ﾋ刈
|:::::: {ｱ芹ﾊ 、:::|＼{＼:::::}::::}乂Vノ 助かるぜ！
|:::::: { 弋_り, ＼!＼///V／}^Y:::::| ……その帯はどうすンだ？
V:::::{ _ ＿￣ .}::::::}_ﾉ::::::|
i{＼: | | }::::::l::::::::: {
i{::::圦 ､ ﾉ }::::::}:::::{:::::＼
'，::::| ` ＿_ イ.i}::::人::::＼:::ﾉ
，::| ／ { ／ ﾚ'≦⌒ ＜
V′ _ /＼ .／ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=` ､
_／= {／{廴， ,′ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ= ＼
nn ／ﾆﾆ= ﾉ{i:i:i:ｉ:ｉ} '，/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=＼
l l 「|〉, ／厂ﾆﾆﾆ= ／{/i:i:i厂／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ﾆﾆﾆ／⌒＼ 、
_「ﾆﾆ=‐i{ {ﾆﾆﾆ= ／ﾆ=V／イﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/r￣{＼{／^ ､ ヾ，
とﾆﾆﾆ厂 '， ﾏﾆﾆﾆｉﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ（V /⌒ﾆ='， 〉＜ ′
￣ ￣￣ ｰ‐ ⌒i!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆV⌒ﾆニi ／__／
圦ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ{⌒ヽ=_ﾉ⌒￣
ヽﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ={
（全裸白衣で眼帯すら奪われています。心の目で見てください。）
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|「その羨ましいモノを縛るのよ」
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| 言うなり、天龍の肩を掴んでぐるりと動かす黄泉。男子共に背中を向けさせる形。
| そのまま見事な早業で白衣をもぎ取る、あられもない姿に。
|
|「え、あ！？」
|「こんなのあったらお色気系のジツも使い放題なのに」
|
| 生き物のように動いた帯が、天龍の胸を締め上げた。
| さらしの代わりなのだろう。
|
|「し、下はねぇのか……？」
|「我慢して」
|
|「最高だな」「よこしま……」
|「あー、横島よぉ……意固地になるのやめて諦めねえ？」
|
| ふと、ヴァイジャヤがしどろもどろに言い出した。
|
|「なんつーか、もうアイツに拘るのも疲れたっていうか……その」
|「めんどくさい？」
|
| シグの言葉にギクリとした顔を向けるヴァイジャヤ。
| だが、普段ぼんやりとした少年の顔は驚くほどに神妙だった。
|
|「それとも、どうだっていい？ やるきがなくなった？」
|「それは……その……」
|
| 後ろめたそうに視線を泳がせるヴァイジャヤとは対象的に、シグは鋭い視線を走らせた。
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＼ ￣ ｀ ヽ、 _,. -‐ '’ ￣￣ ｀''ｰ 、
＼ ＼, ／´ ｀ ヽ、
＼ Y’ 入
,,.＞ー ＼
／ , ／| ｉハ. i ヽ
／ ＿,.イ i ／ | |. ', .| ｉ ',
￣ | ｉ ｜ ／ ｜ |. ', | |＼i
| ｜ | ／ ー―‐ ! ! ｰ=弋 ! | ほかのひとは？
｜ | !' ーェ＿! ! ー弍､ ｜ ぼくはだいぶどうだっていい。
', ｨ'⌒l | て ￣ 丁 ∨ て￣丁! ﾄ､,!
＼ﾄ.、 l | ヽ＿ノ ヽ__,ﾉ/ |
レヽ| ! '､ |
＿ヽ.ノ ,∨
＼ ￣ ＞ 、 - __,. イ
〉 ￣ ― ＜´
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|「待てシグ、こいつら分かってないぞ」
|「何がだ天龍」
|
| 九月の戦いを、木枯らし吹く破滅との連戦を、天龍たちは報告書に書いていた。
| だが、報告書と実戦は違う。
|
| そして何より、『滅ぼすもの』たちが物理法則に介入するだけでなく、
| 精神への汚染を行うことは、当時の報告書にはない。
|
|「恐らくはボスとやる夫さんが警戒してた、『滅ぼすもの』の攻撃だぜ」
|「『滅ぼすもの』……？」
|
| やる夫たち側に立ち、ペルソナ使いらとも交流のある黄泉ですら、ようやくその可能性にたどり着く。
| 『十壊』。『哀しみのからくり人形楽団』……！
|
|「たぶん、この投げ遣りな感じは攻撃の余波だ」
|「……え？ 俺の臆病風じゃなくて？」
|「ヴァイジャヤが慎重なのはいつもだけど、確かにニュアンスが違ったな」
|
| 考え込むキュウべぇ、地下の屍鬼に『滅ぼすもの』と、状況は明らかに悪い。
|
|「専門家とかいないのか？」
|「ボスかえっくすさんになるかな」
|「…………あ！」
|
| 黄泉が冷や汗をかきながら声をあげた。
|
|「謎のヒロインＸ……聞いたことあるような気がしてたけど、それかぁ……」
|「知ってるの？」
|
| 黄泉は気まずそうに目を泳がせた。
|
|「ヤザンと共に屍鬼の対処に行ったよ。見捨てて逃げちゃったわ」
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＿ ／ -=ﾆﾆﾆニ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ- _
｀> -=ニ二二/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＞''^~￣￣~"'' ､
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{-=ﾆﾆﾆﾆﾆ二{二二ニﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆ二二} ＼＼
{-=ﾆﾆﾆﾆﾆ二{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ 二二二二} ＼
{-=ﾆﾆﾆﾆﾆ二{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ_ -‐======‐- ,_ﾆﾆﾆニ}
{＼-=ﾆﾆﾆﾆﾆ{ﾆﾆﾆﾆﾆ_､ ''゛ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾞ''+ _二}
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:::::::::::::::}＼ | | ┛┗ |／ √| :/ ,ﾉ アパム！！
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＼::／ | |＼| ― ..,,＿ 人 | アパム！ アパーム！！
三＼ | | / ﾉ ／:| |
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|「ククク、抜け目のねえ女だったな、嫌いじゃねえ！」
|
| 新宿衛生病院地下、好奇心のままに好き勝手する雪だるま共と、その後ろから現れて諸共押しつぶす屍鬼の群れ。
| 掻き分けて進む謎のヒロインＸとヤザン・ゲーブル。
|
| 何もかもが混沌としていた。
|
|「もしかしなくても逃げましたか！？」
|「クレバーな選択だよ、ムカつくほどにな！」
|
| 持ち込んだ機銃で、屍鬼と雪だるまをまとめて薙ぎ払うヤザン。
| 『エクスカリバー』を振り回すＸ。二人は直前まで休戦協定をむすんだ利益共有者がいた。
|
| いわゆる『敵の敵』Ｘはそいつを説得したと思いこんできた。
| 元『結社』最強の殺し屋集団『九鬼』の首領、甲賀氷雨黄泉。
|
| あのヤザン・ゲーブルを苦戦させる程の手練であった。
| 地下の混乱を収めるには他にないほど頼りになると思っていた。
|
|「…………どうしましょう」
|「やるしかねえだろうが！」
|
| 屍鬼の群れが押し寄せる。
| 複数の死体を悪趣味につなぎ合わせた、異様な怪物。
|
| 『エクスカリバー』を利用しない個人戦闘力はほどほどのＸと、起動服を黄泉に破壊されたヤザンでは分が悪い。
| いや、生身でも十分戦えるが、武装が心もとない。
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／´/ ｀`丶､
, ' ＼
/ ヽ ヽヽ
! ! ∧ ﾄ､ ヽヽ ヽヾ:､
l ,ｲ/ ', | ヽ ヽヽ ヽ',｀ヽ
| !ト|!､ ヽ! ,.ゝ､ ', ', !',|
| !トｧr｀` ヽ'"ｨｩｧヽ ! ! | !l
l l l |l￣´ ｀￣´ﾘ ! } ﾄ | | !!
! ヽヾミ､ ! /ノ ｲ l ヽ ! !!
〉 ヽヽ､ -_- テ／ ,! / ヽ ﾘ 手こずっているようだな。
i ヽ!＼ ／}ヾ､´ / ヽ
| | ヾｰ ｀T´,ｲ ,!_ﾄ､イ´ ! ヾ:､
,. -‐ '´! ヽ､|!ニ=-_／ ｀Y / } } ﾄ､ド､
,. -‐'´ ,､ヽ __二´ノ }ｲ,.イ / ,ｲ/ !|
.rく ,. -‐ ' ´ ! ヾヾ=- ヽ /／_,.ィノ∠〃｀`ﾘ､
.! ヽ r'´ ,.! / ヽ / ´ '´ '´ ヽ / }
.', ヽ ／ ヽ / ヽ/ ＿ } /
. ヽ,.ｨ | ヽ! く ヾ! , ‐ ' ´ l 〃 !r‐!
| // ヽ ヽ | i _,. --､! / l ! |
ﾚ/ ト､ | | ! |'"´ ＿,,,....! / ／ ヽｿ
|´ r-､ヽ＼ | ! '"´ ヽ /／ ヽ
| __ヽ｀ヽ } ! | |' /
! 丶ニヽ ｀! ヽ ! __,. -‐ 'ドｰ‐--､! !
! ⊂ﾆﾆ｀,. ゝｧ―｀‐'"´ ! _r'＿__ |
| ,. ‐ '´ / {_,.イ´__ ＼＼ !
. ! / / ／ ', ', ｀丶､ /
! / / ／ _,,...ノ ', /
ヽ.＿_,,../ _/.. -=ニ_´ ',- ... ＿_/
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|「あ、レイくん！」
|
| ハンブラビ型の機動服、二人を引き連れたレイ・ザ・バレル。
| 安堵の息を吐くＸ。だが、ヤザンは訝しげに凶相を歪めた。
|
|「ラムサス、ダンケル！ どうしやがったッ？」
|「殺したよ」
|
| 壁を突き破って飛び出してきた巨漢の機動服、ピラミッドのような三角形のシルエット。
| その手に握る大型ライフル。打ち出されたのは実弾ではなくビームだった。
|
| 光の速さで放たれた荷粒子の奔流がヤザンの肩を灼く。
| 前問の屍鬼。後門の機動服。ヤザンは手近な屍鬼を蹴り倒し、機動服に向き直る。
|
|「『ジ・オ』だと……シロッコか？」
|「シロッコも殺した」
|
| 右腕であるヤザンは、シロッコ専用機動服のスペックを知っていた。シロッコの自慢話を聞き流していたからだ。
| ビームライフルの一撃を魔力の装甲と異様な反射神経でしのいだヤザン。
|
| だが、屍鬼を振り切れない。突然攻勢が激しくなったのだ。
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. ｡s≦ニニﾆﾆ＞''∨ /ｨｱ^ﾘ＼. ∨ '/. ,
<ニニニニ＞''く ∨{沁 ＼'/ '/_/ ,′
｀'＜＞''´ | | ＼ ∨ヾ)′ | | ｀Y _ -=ﾆﾑ＿__
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| 逆に屍鬼の攻撃が薄くなったＸが前に。
| 屍鬼が肉の津波のごとく襲いかかる、流石のヤザンも振り払うのに時間を有する。
|
|「バカ女！ 無闇に近付くな！ そいつは！！」
|「誰がバカですか！」
|
| 『エクスカリバー』による局所重力制御で壁を走るＸ。
| 広くない通路、『ジ・オ』のビームライフルの的。であるが重力操作による偏向でビームを防ぐ。
|
| 幽鬼の動きで迎撃する二体の『ハンブラビ』の『ウミヘビ』を、空中を泳ぐように掻い潜る。
| 直後、安全基準を無視した速度で隔壁が閉じる。Ｘは体をよじり隔壁を蹴って床を転がり、兎のように飛び跳ねた。
|
| 背後で十枚以上の隔壁が閉まった、何かを喚いていたヤザンと分断された。
| 核兵器や高位悪魔の攻撃にも耐えうる、シロッコ謹製の隔壁。毘沙門天の対策として用意されていたものだ。
|
| さしものヤザンでもすぐには突破できまい。
|
|「レイくん、話し合いましょう！」
|
| Ｘは『ジ・オ』のビームライフルに飛び蹴り、武器を叩き落としながら説得を試みる。
| その甘さが彼女の欠点だ。
|
|「何を話す？ 邪魔をするなら貴女も殺す」
|「何の……ッ」
|
| Ｘは最後まで話せなかった。『ジ・オ』の下腹部から突如現れたマニピュレータが、液体金属の剣を振るう。
| 『エクスカリバー』を限定的にしか起動していないのが仇となる。斥力が防御に間に合わない。
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| 逆に屍鬼の攻撃が薄くなったＸが前に。
| 屍鬼が肉の津波のごとく襲いかかる、流石のヤザンも振り払うのに時間を有する。
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|「バカ女！ 無闇に近付くな！ そいつは！！」
|「誰がバカですか！」
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| 『エクスカリバー』による局所重力制御で壁を走るＸ。
| 広くない通路、『ジ・オ』のビームライフルの的。であるが重力操作による偏向でビームを防ぐ。
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| 幽鬼の動きで迎撃する二体の『ハンブラビ』の『ウミヘビ』を、空中を泳ぐように掻い潜る。
| 直後、安全基準を無視した速度で隔壁が閉じる。Ｘは体をよじり隔壁を蹴って床を転がり、兎のように飛び跳ねた。
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| 背後で十枚以上の隔壁が閉まった、何かを喚いていたヤザンと分断された。
| 核兵器や高位悪魔の攻撃にも耐えうる、シロッコ謹製の隔壁。毘沙門天の対策として用意されていたものだ。
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| さしものヤザンでもすぐには突破できまい。
|
|「レイくん、話し合いましょう！」
|
| Ｘは『ジ・オ』のビームライフルに飛び蹴り、武器を叩き落としながら説得を試みる。
| その甘さが彼女の欠点だ。
|
|「何を話す？ 邪魔をするなら貴女も殺す」
|「何の……ッ」
|
| Ｘは最後まで話せなかった。『ジ・オ』の下腹部から突如現れたマニピュレータが、液体金属の剣を振るう。
| 『エクスカリバー』を限定的にしか起動していないのが仇となる。斥力が防御に間に合わない。
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. ハ ｌ / } ,'
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从.｣ニ|: .: |ﾆﾆﾆﾆﾑ
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| 脇腹から入った刃が逆袈裟に切り上げる。
| 腸を切り裂き、肋骨を砕き乳房を割り、刃は何事もなかったかのようにマニピュレータごと収納された。
|
| Ｘは自分に何が起きたのか理解できない顔で、腹圧で飛び出そうとする千切れた腸を押さえながらうずくまった。
| 血を吐き、己の血に頭から突っ込んで動きを止める。
|
|「…………」
|
| 『ジ・オ』のマルチライフルがビームではなく実弾を発射。
| Ｘの頭部に風穴を開ける。
|
| レイはＸに背を向けた。
| 彼の意識は隔壁の向こう、毒ガスを散布した地下空間に向いていた。
|
| 国際法など無視した非人道的化学兵器。
| シロッコが用意していたが使わずに保管していたそれを、レイは盗み出して使用した。
|
| 酸素は無く、強力な毒ガスの充満した暗闇の中で、屍鬼を振りほどきながら隔壁を破壊する。
|
| あのヤザンといえどもひとたまりもあるまい。
| レイは胸を吹き荒れる虚無感を見てみぬふりした。
|
| ヤザンとＸを殺した。
| 胸の穴は大きくなる一方だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | そういや何て呼べばいいんだお？
./ ∩ノ ⊃ ／ 『ブギーポップ』？ 委員長？
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「好きにすればいい。俺が『ブギーポップ』になれるのはこれが最後さ」
|
| 体重を感じさせない足取りで、非常階段を駆け下りる。
| 激しい足音を立てるやる夫と逆に、『ブギーポップ』は足音がない。まるで亡霊。
|
|「そうなのかお？」
|「そもそも俺はレミエルに負けてるんだ。『その後』なんて無いはずだった。今はほんの偶然か、それとも何かの気まぐれか。
| 海中の岩底にこびりついた泡がなにかの拍子に浮かんできたようなまぐれみたいな存在さ」
|
| 彼はこんなに饒舌で、そして詩的であったろうか。
| やる夫は泡のように浮かんだ疑問を振り払った。今の彼は『ブギーポップ』だ。
|
|「んじゃ、『ブギーポップ』って呼ばしてもらうお。
| そんで『ブギーポップ』。質問ばっかりで悪いけど、どこに向かってんだお？」
|
|「こいつは自動的だからな、『世界の敵』の居場所はなんとなく分かる。
| まだ『そいつ』は産まれたてだ。その上、『成る』かどうかも定かじゃない」
|
| やらない夫やアサギ、桜のように大惨事を引き起こす前に止められれば助かる。
| しかしやる夫は難しいのではないかと考えた。
|
| なせなら『世界の敵の敵』たるもの。『ブギーポップ』がここにいるのだから。
| 逆説的だが、世界の危機は訪れてしまうのだろう。
|
| この世界の防衛機構がどんななのか、やる夫はイマイチ理解できていない。
| 『ストレンジカメレオン』や『ブギーポップ』のような存在があると思いきや、『引き裂かれた永劫』は野放しだった。
|
| 管理人であるいく夫は『破滅地球展覧会』とかいう趣味の悪い収集癖があるし、
| 防衛機構そのものに欠陥がある可能性も捨てきれない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀丶、
|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｝
|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
| : : : : : : : : : : ＿: : : : : : : : : : : : : : /
. : : : : : : : : : : {{ }}-: : : : : : : : : :{: :/
. ｝ : : : : : :-=ﾆ三￣ : : : : : : : : : ∨
{: : :／ : : : : : ／￣￣＼ : : ＿: : ﾟ｡
. }／ : : : : : : / ｡ﾟ ﾟ｡ :〈(__)〉: : .
／ . -=＝ﾆﾆ: . ﾟ｡ ｡ﾟ / :r巨}}=巨》
〈／＿: : :Ｙ⌒Ｙ :＼＿＿_r巨}}┘Υ: : : ﾟ。
} 〈(__)〉 人__人 : : : r巨}}┘人＿人 : : :⌒)
. 《巨}}=巨}}=巨}}=巨}}┘/ ｝:::「 ｢￣ ｢￣::「
/: : : : : : : :_..｡ｃｰ=ﾆ7::::/ 厶r七|::::::::|:::::::::}＿＿
／ ｰ‐―r＜:ｉV''ﾂヽ 〈／ 〃V''ﾂ|::::::::|:::::::::}/////へ
. / /:/ｉ::::|:::::::|｀¨¨ : ¨¨´|::::::::|:::::::::}//／ ｡
{＿,/|::|::|::::|:::::::| ﾉｉ |::::::::|:::::::ﾉ／ ﾟ｡
. ／ ／八乂_::|:::::::| :::::::::|￣￣＼ 〉 だが何にせよ、
l＼{＿ _,ｿ⌒|:::::::|＼ -ー- .:::::::::|: : : : : : :＼ / 今晩で世界は変わるだろうな。
| ＼: : :｜:::::| 个 . . :／/::::::::::|: : : ＿＿_〕＼／
| } : 八 ::::| {..＼__〕Ｔ爪／. ./::::::::::八: :/ ＼
／l {: : : : ＼|＼」 . . .{{￣￣｢| 厶イ }/: : :/ 〉
: : :＼ ＼: : : : : :〈ｏ＼__{{＿＿|｣／ ／ｏ〉 :/ 厂 ＼
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: : : : : : :} ＿ ＼＿＿＿___,／／ /=｝|ﾆﾆﾆ
: : : : : :人 〈(__)〉 ＿＿ ＿ ／==｝|ﾆﾆﾆ
: : : : : : : :｀ﾆ=‐-. . . ／:::::::::::＼ 〈(__)〉＿ ／====:｝|ﾆﾆﾆ
: : : : : : : : : : : : : : : : : :＼/{Ｏ:::::::::::::::::. ／＼ ＼//=====//ﾆﾆﾆ
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| 『ブギーポップ』の手の中に魔法のように現れた刀身のないつるぎ、柄だけの『剣』。
| 彼が虚空を切りつけ、やる夫は振るわれた先を見た。
|
| オートロックの頑強な自動ドア、開かないその扉がバッツリ割れた。
| 中に閉じ込められていた人々が歓声を上げて飛び出す。
|
|「…………停電はしてねー、何かあったのかお」
|「四ツ目さんがロビンを狙撃した」
|
| そして反撃のレールガンが、高層マンションを直撃したのだ。
| 元から白い顔が更に青ざめるやる夫、『ブギーポップ』は興味なさそうに非常階段を降りる。
|
|「死人はいない。まだな」
|「四ツ目さんは？」
|「隣のビルの屋上に転がってるよ。ふっ飛ばした衝撃で骨くらいは折れてるかもだが」
|
| ほっとしながらも、やる夫は慄然とする。
|
|「何で」
|「止まれ、監視カメラに写るなよ」
|
| 『ブギーポップ』が指さした先に固定カメラ。
| 動かない扉。混乱する人々。しかし、パトカーも消防車も救急車もいない。
|
|「ケータイ持ってなくて助かったお」
|
| 一瞬、『ブギーポップ』が笑っているような怒っているような、左右非対称の奇妙な表情を浮かべた。
|
|「やる夫さんを見くびっていた」
|「お？ ブタみたいでバカっぽい面してっから、ガンガン見くびってくれお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|ニニニニニニニニニニニニニニニニ/
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|ﾆニニ二二,' ,'⌒ヽ. 'ニニニニﾆヾ、
,!ニニ二二圦 乂_.ノ ﾉニニニニニ/
/ﾆニニニニニゝ､＿_, イﾆ（__）二ニﾆﾆ＼
,ｲニニニニニニニニニニニニニニニニﾆﾆヽ
ヾ―＝ニニニニニニニニニニ＝-‐''T,ﾍ￣／ 断定できないが
丁ｌ/////＿‐- ､l///lﾊ/!_,.jハ'!∨/,!//,＼ 『敵』は電波を操作できるようだ。
l/l///ハ vzｱヽ !// ',l ,ｨf;;ﾘﾌ'V,|V////＼
ｌ/V/ハ l/ ' ｊｿ/∨////,＼
l//V/∧ ′ //∧'//////ヽ
V//V/,ﾍ. 、 :. //,.ｲ'l＼//////,ヽ、 ,. ―- 、
／lヽ￣!', ‐ V//V!ヾ'､ ＿ _ ／イ jﾘ 丶////ﾊ｀ヽ ／ V＞､ ＼
. ／li l'∧. l'∧ lV////ハヽｰ- ＿_ . イ// ﾉ' ｀＼//! ／-._ V//＼l,ヽ
,.ｲ! l/,l//∧l//ﾊ .!,∨////ﾊニニニニニ＝-l/＞ 、 ヾ!.／ V/＞ _.V///／}
. l!.l'ﾊ l/＞'"´,ィ＞.､,!/,∨//ﾄ､'!ﾄ,ｰ/￣￣ ‐-=ﾆニ＞ヽ ／ l,＼ V////ヽ／ /
ij.l'/／ ／ﾆ二二＞ ､ヾ/lヽ｀l'ﾊ￣､＝‐-＿ ￣7ニｲ==＝ニ／､ V/,＼ V//／ /
ﾉ,l／ ＼／ニニニニニニ＼`!ﾍ !/ﾍ lヽ‐=ニニｰ'ニニニ＞'ﾄ､ V,＼. V///ヽ,.ｲ ,.'
/／ ／ﾆﾆニニニニニニ二`＜l'/∧ .!∧. ﾄ､. r―-く. ﾄ､ .l/＼ V//＼'/／ ,
〈 ,ｲニニニニニニニニニニニ`＜ﾊ.!/∧.!,ﾍ ';;;;;;;;;;;;;ヽ, ｌ,ﾍ l///＼//／/ ,
＼ /ﾆニニニニニニニニニニニニニ`＜'∧!/∧ヾ ;;;ｊ ヾ;,!/,ヽl////／ニヽ /
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|「え？ やる夫妖怪じゃねーから機械に対する透明とか持ってねーお」
|「俺もない」
|
| 顔を見合わせる二人。
|
|「カメラ壊せるかお？」
|「やる夫さんそういう能力は？」
|
|「自慢じゃねーが体育の授業がなくなってから運動とは無縁だお！」
|「本当に自慢になんねえな」
|
| 『ブギーポップ』が『剣』を振るい、見えない刃が監視カメラをバラバラにした。
|
|「『敵』は新宿衛生病院の中かお？」
|「そうだな、恐らくは地下だ」
|
| 非常階段出口にかけられた南京錠を、『剣』で寸断する。
| 先程まで翠星石と弥勒菩薩に囲まれウハウハハーレムだったやる夫だ。
|
| 少なからず冷淡な『ブギーポップ』との会話に困る。
| 何か共通の話題とかでせめてこのぎこちなさを……待て？
|
|「弟よ」
|「なんで」
|
| やぶから棒なやる夫に、『ブギーポップ』があからさまな困惑顔。
|
|「だっておめー、誠に保護されてて長門の弟なんだろ？ そりゃあやる夫の弟みたいなもんだお」
|「ええー……」
|
| 嫌そうな『ブギーポップ』。やる夫は畳み掛けることにした。
|
|「育児放棄食らったやる夫は、誠と長門が親みてーなもんだお」
|「ん？ 待て。やる夫さんは姉貴より年上だよな？」
|
|「あいつ、若作りしてるだけで中身は別モンだお」
|「…………マジで？」
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´ ￣￣￣￣￣く
／ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
. ／ : : : : : : : : : : : : . . .＼
､＿_/／. /. . . . . . . . . . . : : ! : : : : ヽ
￣/. : /. : : : :/ : : : : : : : : : : : ＼l: : : : : : :ヽ
. l : : l : / : /. :/ : : ヽ、: : : ｀ヽ : !: :l: : : : : ヽ、
l :/ l : l: : :l :∧: :ﾄ、: lヽ、: : : :ヽ!: :l: :ｌ: : : ｌ ￣
l/!: ! : ｌ: :/l/‐-ヽ! ヽ ! _ヽ-―!‐ !: :ｌ: : : !
ヽ! : l : ! rfチミ､ ヽ´ fr旡ミ! : ト､l : : ′
. ヽ !: :l rっｿ 匕り !: : !丿/j/
. j∧ :ﾄ､ ｀¨ . ｌ ｌ :ｌ j/
V: :lヽ、 _ ／j/!/
ヽ: ! ＞ __.. ィ
ｒヾ ￣ || lr‐ 'ﾌ, '／ |ヾ| ! | !
,',ﾍ ヾヽ|| ／ ∠- ｧ! ＼| !__ヽ
/! ヽ | |||／ r--'ヽヽ `ｰ､ヽ ¨ｧ
,' 〉 ヽ !_/ ,､┬､二ゝﾆ ＼ ヽ!/│ ﾎﾟｷﾎﾟｷ
! / / | ィ´ ! ! | ＼_ |_ !
| ! ,,.ｲヾ ＼ ｣〉 |│ ! ／| ／ ハ|
! | / ヽヾ ´/ | ! ,､,、 |〈 ヽイ／／ヽ
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|「マジ。あのボディはホムンクルスらしいお」
|「…………あー、あの理事長のだもんな、そっか。そっか……」
|
| 何やら打ちひしがれた様子の『ブギーポップ』の肩を叩き、やる夫は少し申し訳ない気持ちになった。
|
|「その長門のことで一つ頼みがあるお」
|「…………なんだよ」
|
|「やる夫、生きてたのに全然連絡もしねーで放置してごめんなさいしなきゃいけねーんだお」
|「え、やだよ怖い」
|
| 普通に拒絶。彼も長門に頭が上がらないのか。
| やる夫はちょっと嬉しくなる。
|
|「やる夫も怖えんだお！！」
|「逆ギレかよ！」
|「え？」
|「えじゃなくてさあ！」
|
| 調子が出てきた。
| やる夫はやらない夫やアリカみたいにすぐに誰とでも仲良くなれるような陽キャではない。
|
| だが、なんとか上手くやっていけそうだ。
|
|「……やる夫さん、雰囲気が変わったな」
|「お？」
|「こないだ会ったときは、『世界の敵』みたいな顔してたぜ」
|
| 隠れ家であるメイド喫茶でだ。
| 親しく話はしなかったが『ブギーポップ』……いや、委員長はやる夫をしっかり観察していた。
|
|「変な演技してないだろ？ 今の方が好ましいぜ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼ そりゃどーも。
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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| やる夫の中で渦を巻く複雑な気持ち。
| 感情なんて無い方が、機械でいた方が楽なのに。
|
| だが、感情に助けられた。感情を許された。
| 未だに『やる夫の中の入即貸本』に居座っているチクタクマンは感情を肯定した。
|
| 弥勒菩薩とは感情的にやり取りした。
| 翠星石とは好意を伝え合えた。
|
| もう、認めるしかないだろう。そう考えると暗澹たる気持ちになる。
|
|
| 蒼星石に、どんな面下げて会えばいいのやら。
|
|
|「気に障ったか？」
|「悪い、考え事してたお」
|
|「ヘルシェイク矢野の事か？」
|「だいたいあってる」
|
| やる夫は不思議な気持ちになった。
| さっきから、この先のことばかり考えている。長門に蒼星石に頭を下げる？
|
| 生きて帰れたらの話だろう。
|
|「悪かったお、気合を入れ直す。『敵』は恐らく『十壊』の『哀しみのからくり人形楽団』。
| まだ生まれたてならば、急げは間に合うかもしれねーお」
|
|「…………そうだな」
|
| 『ブギーポップ』の返答は、楽観的な気持ちを吹き飛ばすほどに冷たかった。
|
|「『世界の敵』を選んだやつは、絶対に止まらないぞ」
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☆ 次回予告！
そして始まる真なる滅び。
彼が望むはその先の再生。
おお、四月。四月よ。
穏やかに身勝手な夢を見る愚か者たちに現実を見せてやれ。
おお、四月。四月よ。
世界は水死の果てに再生に至る。一度死なねばならぬのだ。
次回、最終幕百七話『アポカリプス』
果てに見るのは破滅か死か。
楽しい家族会議
四月に雪が降ることもある
次シーズンガンバッテネ
／ ／ 、 ＼ ヽ 、
l / ｜ ＼ ヽ ヽ ',
|/ / 人 ヽ, ', | !
|| !. ｌ ､| / ヽ l /l |_, ! ヽ
ヽ |l | /ヾ|、 ノイ ／! /_,|ｲ'ｌ´ | ＼ 何しに来たんだっけ、あたしたち。
〉!ヽ＼|ｰ,‐≧､,ノ ／_ノ≦＿__| / ト､ ヽ
／ |＼! ゝｰ'ﾞ ￣ ´ ゝ、_ノ ７ .! ヽ ＼ もう、サイトの所に帰りたい。
／ | | / ｜ヽ、| 〉
ヽ | ｌ u u./. |:::::::メ, /
〉 r'ﾞ/ ヽ ｰ─--､ / |::::::::::::}_ /
／ {./ |＞- ｀ ｰ一'_, イ /:::::::::´::::::ヽ ｀ヽ
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| 謎の電波支配と精神汚染は、緩やかに、しかし確実に新宿衛生病院一帯を支配下に置きつつあった。
| 正門では大乱戦、裏口で陽動をかけるはずだったアリカとぞの一行にも異変が起きていた。
|
|「アリカさん、やせ我慢なさってますが先輩の身体はもうボロボロです。
| ちょっと休憩をしてきてもいいでしょうか」
|
|「いいよ」「待て、良くない。それは休憩にならない予感がする！」
|
| 九月に凛に負け、それ以降はなんとなく手伝いをしているがそもそもやる気のないルイズ。
| もうどうでもいいなら、なんとしても先輩をモノにしたい桜。
|
| 『弓兵』＝士郎が父親だとは認めても、女性関係は面倒くさいと思っているアリカ。
| 三人は見事に精神を汚染されて投げ遣りに対処していた。
|
|「ええー、どんなコト考えてるんですかぁ？」
|「何かしらの攻撃を受けている可能性がある。アリンコ、正門側と合流すべきだ」
|
| 胸を押し付けてしなだれかかる桜を邪険に押し退け、『弓兵』が提案する。
| 不満そうに唇を尖らせる桜、凛がいない今がチャンスなのに。
|
| 逆に『弓兵』にとっては、凛がいない今だからこそ拒絶できる。
| 凛は『弓兵』が桜を受け入れても邪険にしてもキレるからだ。勘弁していただきたい。
|
| しかし、桜は世界ごと吹き飛ばしかねない爆弾だ。いずれ何とかせねばならない。
| だがそれは今ではないと、『弓兵』は問題を先延ばしにしていた。
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,ｨ'´ ｀ヽ
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,. '´.:.:.:.:.:.:.:.―‐一- ､ l!
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,r_ﾆ´ｧ='´_ノｿ.:.:.:.:.:.:.:/,ｨ:.:.:.:.＼:.:.:.:.＼:.ヽ:ﾍ
_,rァ'´__ノ.:ノ´ ﾊ.:.:.:.:.:.:.:|:| !:ヽ.:.:.:.:.＼:.:.:.:ヽ.:.!:.:!
_/ノ _/.:ノ´ ﾄ､ヽ:.:.:.:.ｲヾ ＼!`ー--＼:ﾄ､ﾍ!:.:|
r'ノ r'´/´ ﾄ､`__:.:.:ｲ｀`''ー‐---ノ _,斗ﾍ:|:.:l
f/ r‐'/´ __ ﾍ:/fゝV､ ｨ云ﾊヽ 伝ﾊlﾘ:/
. fl ﾉ／ {{ ｀ヽ＼ヾ !ﾄヽ弋zｿ ｀´/ｲ/ うーん、弟でも妹でもいいから
!|f.:j ,. -､__!ヽ__ /! jﾞｰ||､ ' /､ ちゃっちゃと作っちゃえばいいのに。
ﾝ:〈 / L_／／:::::ヾ＜＼ ﾘ ＼ ^ ／}} i
!.:/､ / /:::::::::::::::ヽ_7ヽヽ.＿_＞ - '´┐ ﾘ ﾉ
ハヾヽ L_-一'!::::::::::::::::::::::::}ｰ} ﾊY ／ {,. -､
|:/ ヾヽ._)／|::::::::::::::::::::::::に | /ﾞ=ﾍ!'_,. ‐''´ ヽ
}:ヽ ｀{ l::::::::::::::::::::::::::}¨}-く::山:ﾊ _ _ﾉ
ﾍ:〈 ﾞｰ､,ﾊ::::::::::::::::::::::::!ｲﾍ ヽノ l|,. ‐''´ (´
{:.} /ﾉ!:::l:::::::::::::::::::::::::7! ヽ ＋ ||￣＿_ﾉ
ヾヽ ヾi|::::|!::::::::::::::::::::::::| ヽ ヽ._ ,!jﾍ´(:l
ヽ:! //!:::::!:l:::::::::::::::::::::::l ｀ｰJ ﾚ |‐':l
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|「あんた、そうは言うけど具体的な子供の作り方知ってるの？」
|「なんとなく」
|
| 赤い顔のルイズの問に、アリカが頷く。
| 複雑な表情の『弓兵』とルイズ。
|
|「えーと」
|「『性欲解消と愛情確認と子作りは、似た行為だが全く違うもの。カップ麺と手料理と自炊くらい違う』って」
|
|「え、夢宮が言ったの？」
|「ううん、誠さんが」
|
| セックスは以上の三点を複雑怪奇に混ぜ合わせたものだ。料理もまた似ている。
| 欲望を満たすだけの行為はインスタントで、カップル間で行われる多くは愛情確認の意味が強い。
|
| 性行為を通して互いに触れ合うことで、ストレス減少、幸福度の上昇、疲労の軽減、病気耐性、寿命が伸びるなど効果は様々。
| 愛情が込められて栄養バランスもしっかりした料理に酷似していると言えよう。
|
|「なんで子作りが自炊なんですか？ 自炊はその……」
|「皆まで言うな、行為に義務感が生じた場合、作業化してしまう危険性があるからだろう」
|
| 子供を作らなければならない。料理をして栄養を取らなければならない。
| それらの意識はプレッシャーとなりストレスを生じさせかねない。
|
| 料理そのものが好きなら、自炊を愛せるのなら。
| 好意で成り立つものはいつ何時、どんな拍子に逆転してもおかしくはない。
|
| 日常的であるからこそ、とても繊細なものである。
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|:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:|‐- ..._ }
|:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.ⅱ:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:| ,...-┬―'"
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|「ええ……」
|
| 桜と『弓兵』に視線を向けられ、ルイズが赤い顔で頬を掻いた。
| 『弓兵』本人が言っては角が立つし、アリカは男女の機微に疎いどころか興味がない。
|
| 言えるのは、ルイズだけだった。
|
|「…………いきなり子作り目的でがっついてると萎えるから、まずは雰囲気を良くするためにデートでもしたら？」
|「で、デート……！？ 先輩とですか！？」
|
| 桜の羞恥心がどうなっているのか、他の三人には計り知れないものがある。
| だが少なくとも、ホテルに誘ってご休憩よりもデートの方が難易度が高いらしい。
|
|「…………そうだな、色々と片付いたら二人で散策でもしよう。
| 日本の懐かしい場所を歩いてもいいし、英国のあたりを案内してもいい」
|
|「！！！ はい！ よろしくお願いしますね、先輩！」
|
| 心の中でガッツポーズを決める『弓兵』。桜との問題は一旦保留に成功した。
|
|「ルイズ、アリンコ、助かった……」
|「あー、いいわよ別に」
|
| 背中を冷や汗で濡らしながら耳打ちする『弓兵』。
| 損な役割だったルイズだが、凛とも昔は色々あった。『弓兵』関係ではよくあるトラブルだ。
|
|「いいからさっさとドンドンパンパンドンパンパンしちゃえばいいのに」
|「秋田民謡ドンパン節を卑猥な行為みたいに言うのはやめないかッ？」
|
| そういう民謡があるんです。
| 秋田の米と酒と美人自慢の唄なので、深読みしなければ何もない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, ､
〃⌒ ⌒ヽ ヽ
!む 礼、 ! （可愛い子に酒を飲ませて
丿じ じﾘ | 四人と九人でドドパパドドパパドンパンパン！？
{″ ｆ_> 〟 '
. ＼＿ ＿ノ ／ 是非参加したい！！）
ｊ ヽ／
{ ／
八 ／
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|「なんの電波を受信したのか知らないけど、こっちに集中して！！
| ジェリドが！ 脱いでるのよ！！」
|
| こちら正門。
| 精神汚染はミスト・レックスの説得で落ち着いたものの、電波支配によって新たな混乱が引き起こされていた。
|
| 脳内チップをハッキングされて苦しむ『カトルカール』、石田、ミスト。
| 機動服の機械化部分をハッキングされ、大慌てで電源を落として脱ぐジェリドとカクリコン。
|
| 彼らを庇いながら、電波支配の影響下にないルカと源之助が前に出る。
| 敵は、いち早く支配下に置かれた戦闘機械と『無我型』。
|
| 早い話がレヴリアスと『ストームトルーパー』である。
| 明らかに対人用ではない破壊兵器をこれでもかと積み込み、
| 鎮圧した暴徒だけでなく目撃者の意気をも挫く凶悪装備のレヴリアス。
|
| 機動部分を破壊されて置物砲台だったはずだが、『ストームトルーパー』の支援で無理矢理動いて機銃掃射。
| 人間に命中したらどこでも即死、コンクリ壁も自動車も遮蔽にならない重火器である。
|
| 石田の念動障壁を期待できない以上、ルカが肉襞色の髪を広げて弾丸を防ぎ、
| 源之助が近付いて無力化をさせるしかない。
|
| だが、あまりにも劣勢。故にルカは防御を完全にマーラに任せて、己はジェリドの生着替えを目に焼き付けていた。
|
| 本当はもっと直接的でカップラーメンみたいに手軽な補給をしたいマーラであるが。
| まあ、ルカが性的興奮をしてエロパワーが溜まるなら野暮は言いっこなしだった。
|
|「う、ううううう、うううああ……！」
|
| 不意に、アゲハチョウが悲鳴を上げた。
| 特定の音以外は上げられないはずの声帯なのに。だがそれでも、断末魔はあげられるということか。
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. ／..: : : :. :.,ィ ,': : : : : :乂 ', ﾍ ¨ .: く {/:/,,イ : : }ﾍ: : :.', } :/
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| 彼女の精神は、マーラとの戦いですでに限界であった。
| 元より倫理観が高く、しかし精神的に脆い部分のある少女。
|
| 脳内チップによる攻撃に最初に屈し、意識を手放した。
| そして意志とは無関係に動く右腕、機関銃と一体化した腕が向くのは藤木源之助。
|
| さしもの剣士といえど、十字砲火には耐えきれぬ。
|
|「ｺｰﾎｰ」
|
| 轟音と共に放たれた弾丸が空中で逸れる。石田が頭を押さえながら源之助をフォロー。
| よろめきながらもミストがタックル、アゲハチョウを押し倒して無力化を図る。
|
|「押し通る」
|
| 弾丸の雨を掻い潜り、源之助がレヴリアスに突撃。
| だが、その足が何かに取られてまさかの転倒。何か＝『ストームトルーパー』の念動足払い！|
|
|「藤木！」
|
| 交錯する悲鳴と銃声。そして轟音。鉄の塊が音速の壁を押し破る音。
| 衝撃波で窓ガラスという窓ガラスを粉砕しながら飛び込んできた黒い影。手には巨大な金棒。
|
| レヴリアスは乱入者に火炎放射で応酬。無視して振り上げられた金棒。
| 骨まで焼き尽くす灼熱の舌に炙られても無傷。人型の鉄の塊。鎧にも見えるくろがねの神殿。
|
| マイケル小原製強化外骨格『三日月』。
| 金棒の一撃でレヴリアスの機関銃を粉砕。
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|「ミカさん！ 壊さないでね！」
|
| 叫びながら飛来した普通の女子高生。
| 空中を蹴ってレヴリアスに飛び蹴り。空中で破砕音。見えない壁。
|
|「超能力？」
|「夢宮！」「アリカさん！」
|
| 源之助とルカの声に、アリカは空中で頷く。
|
|「『なんかありそう』は『ある』だよ！」
|「感覚を信じろ、魔力や気の流れが読めれば『念動障壁』も感知できる！」
|
| アリカの感覚的な説明に、『弓兵』がフォローを入れる。
| 即座に理解した源之助が立ち上がり、障壁を避けてジグザグ走行。
|
| 対して、完全にバワー型の『三日月』は念動障壁を無視して金棒を振り回す。
| 図らずもロビンと同じ戦術、防御が間に合わないほどの飽和攻撃で『ストームトルーパー』の消耗を狙う。
|
| 機銃を失ったレヴリアスは、重機のような巨大なアームを『三日月』に交互に叩きつける。
| それと同時に、火炎放射器をアリカに向けた。
|
| 粘着質の油が放出される、肉を焼き骨を焦がす。普通の女の子が食らえばひとたまりもない。
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_,-―.:´￣￣.:ヽ、
／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ て
／/.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ そ
／ ./.:.:/.:.:.:/∧.:.:ヽ.:.:ヽ、ヽ ミ[]二＼
|.:./|.:.:.:|_.|_|ヽ.:.:ヽヽ_ヽ_ヽ:.|ヽヽ＼＼
|.:/::.|.:.:|ｲ⌒、ヽヽｲ⌒ﾄヽ|.|.:.:i ! | |、
/ヽi.::.:.|.:| b:::j b:::j |」ﾉ.:.:.＼＼＼|
/.:.:.:.:/iヽ! ｀´ ' ｀´//.:.:.:.:.:ヽ＼| アリカさん！
./.:.:.:.:/.//.:.:＼u （￣） .／.:.i|.:.:.:ヽ.:ヽヽ
/.:.:.:.:/.://.:.:/|.:,‐'、二,ｲ_、.:.:!|.:.:.:.:ヽ.:ヽヽ
/.:.:.:/.:.:/.:.:.:.:,―' i ! ! i ―,ヽ.:.:.:ヽ.:ヽヽヽ
.!.:.:.:/ |/.:.:/~:::| ／ 0 ＼ .|::~ヽ,.:.:ヽ.:ヽヽヽ、
. |.:.:/ i.:i,_i＼::::ヽ/.／∧＼.ヽ/::::／i_.:.:|.:.:|ヽ.:|ヽ!
. i.:.:! i.:iヽ、 ∨.／／│.＼＼.∨ /..:.:!.:.:| |.:|
ヽヽ i.:i.:.:| |:::i／￣┬￣.＼i::| |.:.:/i.:.:| i/
ヽ! i:∧i ヽ::::::::::::::|:::::::::::::::/ i.::/ |/
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| 駆けつけた桜の手から放たれる花吹雪。見た目の華やかさとは裏腹に『万魔』の虫の如き魔力の塊。
| だが花の壁より早く、アリカは空中を踏みしめて火炎を回避。
|
| 妨害する念動障壁を潜り抜けて距離を取る。
| アリカの目的は陽動、『ストームトルーパー』の妨害を『三日月』ばかりに向けさせないため。
|
| 桜の花吹雪が空中で火炎と衝突、押し返して包み込み消火。
| レヴリアスは巨大なアームを振り回す。『三日月』も応戦。どちらが先に倒れるかの我慢比べの様相。
|
| そのレヴリアスの上面スリットが開く、煙と轟音。打ち上げられるミサイル六基。
|
|「そんなもん人間に向けるんじゃねえ！！」
|「私悪魔よ」「カトルカールはサイボーグだな」
|「うるせえ！ 人間だろうがッ！！」
|
| 頬を緩ませるルカに気付かず、機動服『ガブスレイ』を脱ぎ捨てたジェリドが精密な二丁拳銃でミサイルを迎撃。
| しかし、念動障壁に阻まれる。そこにカクリコンが大型ライフルで射撃、見事なコンビネーションで撃墜。
|
| とはいえ、あまりにも時間が短い。
| レヴリアスに背を向けた源之助が刀を投げる。障壁ごと切り裂いて一基撃墜。
|
| 桜の花吹雪、ジェリドとカクリコンの迎撃。それでも二基が降り注ぐ。
| 動けない『カトルカール』たちが爆風に晒されては命はない。
|
| 故に。
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ｨf7´ ｀ヽV/ヘ､ ｀ヽ
／ ｛{ ＼v/Λ /,
〃 从 | ∨/∧ /,
/ i| | 'v/Λ__ /,
/ l! !| | i| | _」L _ Υ厂｜ ,
/' l! !ﾄ､ j斗匕从 | l....| | /,
′ i| l!从乂､ |リ ｨ弋刈 '| l....| | /,
ｌ il i| l!斗ｆﾁ㍉, | ﾘ /人ゞj,」 /,
| il i| l! ｛ｨ弋気ヽj j/' | /,
{八 从 ﾘハ ′ |ｉ | | /, ミサイル発射は何のメタファー？
｀ヽ＼、 从 ､_ r‐メ 从 | | /,
|＞ 匁、 `{＼ ｜ Λ /,
| ｜j＞-r ､ ＼＼ ,ﾍ ﾘ /ﾆ=-ミ /,
| ｜[ﾛﾛ] ＼＼ ＼＼} / Ｖ /,
| ﾉ从イ r‐ ＼＼ ＼ ￤ /,
ノγ ヽ} ￣`ヽ ＼ | /,
,..､ ／__,′イ{ {二ﾆ=-イﾆ=-ゝ _ ヽ 「「| ／,
／ ､＼ ／..::::::::::::::::::乂__{しｲﾘ::::::::::::::::::::≧=- i__L_|＿
/⌒ヽ ＼＼′'"¨~￣ .:' .:::〃::::::::::::::::::::::::::ﾊ |二二二] ／,
｜⌒' .ｲ `^ ／ / .:::::::::, 、::::::::::::::::::::l |二二二] ／,
| 「::::l / ′:::::::::::::.....::::::::::::::::::::::: |二二二] ／,
〈ﾍ____|:::::l ′ ′::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ ｌ l ,／,
Ⅹ l::::::ﾟ。 l / :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ l ￤ ／,
. ／ ＼ﾟ::。:::｀ヽ 人 ′:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ l ｜ ／,
. ／ ＼≧z。＼'"~ /へ::::::::::::::::::::::::::::::::イ/ ′ ｌ | ／,
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／ _. 斗-＜:::::::::::::::::::::::::::ノノ⌒ヽヽ:::::::::::::::::::::::::::::イ i:, .′ ／,
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|（射精！ ザーメン発射！ スペルマ大放出！！）
|「受け止めるのはもちろん？」
|（膣でしょ！ …………っておま！？）
|
| 肉襞色の触手が、淫らな花弁のように広がり伸びて、ミサイルを受け止めた。
| 髪の毛の内側で爆発。引き千切れる触手、よろめくルカ。
|
|（んこ！！）
|「まだまだ余裕！」
|
| ボロボロの髪、触手も発射の男性器さながらに力なくうなだれる。
| 間を開けることで伏せ字を使わない高等テクで放送禁止用語を叫ぶマーラだが、実際にはダメージが大きい。
|
|「ルカ！！」
|
| 倒れるルカを、走って抱きとめるジェリド。
| 先程まで密閉式の機動服の中に押し込められていた、むせるほどの男の体臭にルカは果てた。
|
| 満足な死に顔だった。
|
|（せめてC……いやBまでヤってからにしてくれんか？）
|（戦場でイチャつくとかありえないんですけど…………ｶﾞｸﾘ）
|
| 誰もいない裏口から侵入しようとしているやる夫が、クシャミをしたとかしないとか。
| 冗談はともかく瀕死のルカ、意識を失うと同時に、全身が激しく震える。
|
|「ルカ！ どうしやがった！？」
|「落ち着け色男、失神したら肉体の主導権を奪われるぞ、ワシがいて助かったのう。お礼は抜かずの三発でどうじゃ？」
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} : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
ヽ /⌒ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
} / ∨ : : : : :., ⌒ヽ : : : : : : : :/
） / γ v : : ／ l : : : : : : /
. く}ﾊr‐:..､ { 〃ｰ一' l : : : : : /
￣￣:二ﾆ =‐- { l「｀ヾﾍ l: : : : :/ 黙ってろクソ悪魔！
:::::::::::::::::::::::::::::八ﾘ 弋 ﾄﾐ:､ { 〃 ｘ ─- ､l: :ハ/
:::::::::::::::::::::::::::::::ハ|'⌒ﾞｰ｀´ >j {{r匕-tｧ_ﾁ￣ ﾚ/ /＿ 全員！ 気をしっかり持て！
::::::::::::::::::::::::::::/::::::l / / ｀ ｰ─一 /ｲノ|:::::::::::::ミ::... 気絶すると支配されるぞ！
:::::::::::::::::::::::::/f 7:::: / /斤::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::://j/::::∧ ゝ ' /::::::::::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::/::レ::::::::::| ， ` ー＝= ｲ:::::::∧::l:::::::::::::::::::::::
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|「こんなにも、俺たちと、ハッキングされていない人たちで……意識の差が……」
|「桜！ 結界を広げて負傷者を守れ、恐らく死体も操られるぞ！ 重傷者は私が治療する！」
|
| 指示を出しながら、まずは首を折られて死にかけの戦車男に近付く『弓兵』。
| 彼の判断は正しい。だが、それは最良ではない。
|
|「ダメデス……傷ヲ治シテハ……『敵』ガ……！」
|
| 警告するロビン、すでに屈服、あるいは失神していても動ける体でなければ暴れることもできない。
| 『カトルカール』を見捨てるような発言、だが違う。彼らが仲間を殺さないための……。
|
|「………………シロッコサン？」
|
| ロビンの苦悶が止まる。
| 空中の何者かに。話しかけるかのような仕草。
|
| だが直後、両手と六本の脚が捻くれ、尻尾がコンクリートを粉砕しながら振り回される。
|
|「ガアアアアアアアアアアア！！！？」
|
| 八本の手足が全て、捻れた武器の形を取る。
| 歪んだ剣、棘だらけの鞭、赤熱する枝角、紫電を放つワイヤー。
|
|「くそっ、直接攻撃だ！ これは『現象』じゃない！ 『敵』がロビンを狙い撃ちにしました！！」
|
| 悲鳴を上げるミスト、脳内チップへの無差別ではない攻撃。
| 源之助と『弓兵』が異形の怪物と成り果てたロビンを迎撃。
|
|「アリンコ！」「夢宮！」「夢宮さん！」
|
| 『弓兵』、源之助、ミストの叫び。
| アリカは『三日月』を一瞥、頷く強化外骨格。レヴリアスは任せた。
|
|「行って探してぶっ飛ばして来る！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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'ﾆﾆニニニニニニニニニニニニニニニニニ／
'ﾆﾆニニニニニニニニニニニニニニニ二／
'ﾆﾆニニニ二／´ ｀ヽ二二ニニニニニ/
ノニニ二二二/ . ⌒ヽ '二二二ニニニ/
くﾆﾆニニニニニ{ ' ﾉ }二ニニニﾆﾆ/
'ﾆ/＞‐ﾆﾆニニ入 ｀ ´ ,.仁二二二ニ/
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,.ｲ///,l'///／ V＞､ﾆﾆニニニニゝ-ｲニﾆﾆ〉
／/////l/／ ￣｀∨//＼ﾆニニ二二二二二{
,.イ///////,{ ゞｔ-.,、 V////,＼ﾆﾆニニニ二二l
／＞//////V/l ｀ ）///////＞-ﾆﾆニ二二l
´ .////////V| ' ∨/////////＞-ﾆﾆ二l 『敵』についてわかってることは？
'////////,ﾄ{ . }///////////////ｰィ'ﾊ⌒ ､
l//∨/l'///! ' j/ ﾉ＞ｨ///////＞" .l/∧ ﾄ､
ｌ///V/!///! ｒ 、 ' ／/////＞'/ヽ、 l///ﾊ.l'/ヽ
{ﾊ// Vl///l ＿＿＿＿ ,.ｲ////／、 ///,ヽ !/＞ '"ヽ/ﾍ
__V-‐}ﾊ//l二二二二二二=-'／ .//,＼.///＞" ヽ ﾍ
_ - ,. _ '二二l!-∨!"￣￣￣￣V=／､ .////＞く//ﾊ! マヽ
. ,.イ／,イ'// ｀ _ '二/ ! ｿ __ ,／ .///ヽ//イﾆ/⌒ヽ ヾ、 マヽ
,.＜//／//// ,. ＜/ ｰニゝｰ=＞ ´ ）'"//! .////イニﾆﾆi l ヽ , ﾏ 、
. ／イ ｀"＜'/,. ＜'//// ／,ｌ ,.' ,.ィ⌒./ .///l /,／二二二ﾆl. ヽ }i , ヾ 、
. ヽ. ＼`＜'////,.イ///l / ｀´ ,.ｲ ////,／二二ニニニl ｀ l._i ヾ、
＼ ヽ ,ｲニ=‐＜///ｌ,入 _,.イ/,l///イ二二二二ニﾆﾆl ＼ lﾆl }i,
. ヽ /ﾆニニニニニ/ ￣ /二二二ニニニニニニニﾆl l.＼ / !
', /ﾆニニニニニ/ /二二二二ニニニニニニﾆﾆ, ＼ ! ヽ ＿ イ .!
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､ /ﾆニニニニニ/ /二二二二ニニニニニニニニﾆﾆ, ＼ , ＼ ／
/ﾆニニニニニ/ /二二二二ニニニニニニニニニニヽ , / ／
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|「名前くらいだお」
|「俺は名前すら知らない」
|
| 裏口から新宿衛生病院内部に入り込みら柄だけの剣で床をぶった切り無理やり侵入したやる夫と『ブギーポップ』。
| 人気のない通路、薄暗く、明滅する非常灯。
|
| 迷いなく進む『ブギーポップ』。
| 彼は自動的なのだ。『世界の敵』を察知したら、そいつの所に現れて殺すだけ。
|
|「『哀しみのからくり人形楽団』だお」
|「変な感じだな、『感染』しないし爆発力もない。『本体』を殺せば終わるような奴が『世界の敵』なのか？」
|
| それは感染力が高く、異常な爆発力で、本体殺しても無意味な『引き裂かれた永劫』への皮肉か？
|
|「そういう相手の場合はどう対処すんだお？」
|「ブギーポップは自動機械で善悪も感情もない。発動前に殺す」
|
| 冷たく言い放つのは『委員長』だ。やる夫は直感した。
| 彼の。肉体の意志に反して、手遅れになる前に殺してしまうのだろう。
|
| 逆説的に考えれば、『引き裂かれた永劫』は手遅れにならなかったから来なかった？
|
|「洗脳タイプは？」
|「『ブギーポップ』は通常攻撃に洗脳解除が付いてる」
|
| 『ディスチャーム（物理）』か！ 懐かしいなあ！
| だが、それと同時にちょっと気になるところもある。
|
|「え？ ホントなんで『引き裂かれた永劫』戦に来なかったんだお？？」
|「こいつは自動的なんだよ」
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/ ｀ヽ. ／ ヽ
/ヽ -‐…‐- | ／
r‐‐-ミ / > ´ <" |
| ＼／ ＼ | ＼
∧ i ヽ ＼ ヽ.-‐ 〈 ＼
. / 〉, / | ＼ , :. ＼ ‐-＼
/ / 〉 ﾑｲ | | ＼___ ′ :. ', `
. /／ ′ :/: i | ト ＼ ´ ＼｀ | |｀ヽ ＿| ，
.. / ′ | / | ｉ | 7⌒＼ {＼＼{＼Ⅵ ｌ| ＼＼ ‘
{ |／ /| | | |､| ＼〃て:::ﾊ 犲 Ⅵ:|: ／)__〉 |
. } ／ ´ | | ∨抖-=ミ Ｖツ, | / | |､／ゝ" ＼ ｌ|
ムイ 八| ‘，::::::::. ､ .::::::: |′ ∧ ＼{ ヽｌ|
^{¨¨⌒)＿{八{､ ‘， r- ヽr-､ｲ /}/ ＼
. }/ -=ﾆ ヽ＼父o｡ 乂 /´} .}| :ｌ :.ヽ // 7´-‐
___ -=ﾆ . : : : '＾¨¨¨ヽ ｰ-ア.′ ゝ'しし'､_{〈/_/_ﾉ}_ﾉ {＼＿_
／⌒. . : : :＿＿／ く ／ /__{ ､ } ‘， ／‐ｧ≧=‐一
."／: : : : :/⌒） r=-‐ ＿-‐ {_｣ ∨}/ ＼ 〉=-
/: : : ／ て＿ `ー'=-‐ ´ ｀ ヽ _､ ＼０ ／ ＼{: : : . =-
.: :／ ／ ＼ / ＼::::::}ﾆ=- ヽ／ -‐=ミ <: : : . ＼
:/ . :/ / ｀く廴, ｀¨｀´ | ＼ ヽ: : : .
. . :/ / } ＼ゝ廴ノ} 八 ﾉ ＼ ‘，＼
／ : ｉ: / ‘，} ゝ' :|: : : .(⌒´ 〉:〉 ＿_ ノ 丶
. :| , |/ |: : : : {＼ 〉:〉:＼
. :| ′ | ∨ / |: : : : :｀¨} 〉::〉{: ＼
. :|: , ∨ ./: : : : : : : :＼)′ :. ＼＼
. :./| ′ .: __}V 〉: : : ＼: : :＼ :. ＼＼
′ ′ / } ∨{: : : : : :＼: : :＼ ＼ ＼＼
: :|: ！ / / ｛´ :| ‘， : : : : : :＼: : ＼ ＼ ＼＼
: :|: :！/ / r‐'’ / ヽ}: : : : : : : : :{＼: : : . ＼ ＼
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|「まあ多分、突然の復活はミロっさんの関係なんだろうけど」
|「誰だ？」
|
|「五十七億年ほど早く来てくれた弥勒菩薩」
|「ちょっと意味わからないな……」
|
| やる夫も少し難しいと思う。
|
|「そういえばやる夫さん、身は守れるか？」
|「自慢じゃねーけど受け身もおぼつかねーお」
|「オーライ」
|
| 何気ない会話、無造作に『ブギーポップ』がマントをはためかす。
| 通路の暗がりから突如現れ掴みかかる、元美人研究員たちがなぎ倒された。
|
| 元なのは、白目を剥いて気絶あるいは死亡して、動きが人形みたいにギクシャクしているからだ。
|
|「すごーい、格好いいかしらー！ だお」
|「む」
|
| 喝采を上げるやる夫とは裏腹に、浮かぬ表情の『ブギーポップ』。
| その視線の先で、倒れた研究員がぎこちなく起き上がる。
|
|「『ディスチャーム（物理）』じゃなかったのかお？」
|「この『敵』は洗脳や感染タイプじゃない。死体や意識不明の人間を何らかの方法で操作しているな」
|
| 襲い来る操られた研究員は三名。
| そのうち一人の頭が消失。濃厚な血の匂い、『ブギーポップ』が粉々にしたのだ。
|
|「死体なら、頭部を破壊すれば止められるか」
|「うわあ！ 無敵のブギーポップでなんとかしてくださいお！」
|
| 掴みかかる研究員を振り払う。素手で痩せた研究員。やる夫でも簡単に押し返せた。
| もう一人は『ブギーポップ』が再びなぎ倒す。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ,'二ニニニニニニニニニニニニﾆﾆ/
,ニニニニニ-‐ニニニニニニニﾆﾆ/ ,.ィ 、
i二二ニニニニニ＞ ､ニニニニニ/ .／::/ ヽ
!二二ニニニニニニニ＞､二二ﾆ/.／::::::::l ＼ ,.､-､
!二二ニニニニニニニニ-―＝ノ./:::::::::::::! ／::::::ヽ ＼
lニニニニニニニニニニニニニ=､:::::::::::::::`ｰ＜:::::::::::::::} ＼
〉ﾆニニア´ _..._ ヽ二二二ニﾆ〈::::::::::::::::::／⌒',｀'ｰ-j. ＼
ｊヽ二二' ,' ヽ }ﾆ.'⌒',二ニ={:::::::::::／|: : : : ! / j
〈ニニニ', 乂 __.ノ ,ﾆ乂_ノニニ,.ィヽ／ |: : : :.:| / /
. }ニニニゝ、 , ｲニニニ-イ//ハ }. .|: : : :.:l / ./
. ﾉニニニニニニニ＞‐ｒｉlﾆ"- ィV//ハ!'⌒ |: : : : j /／ ￣￣ ` 、
-―Τ777,T￣ニ=-V///,l.ﾘ"ゞﾞ-' Vl///!ヽ j: : : :/´／￣￣,.'"-‐- ､ヽ 負傷は無関係で、痛みもなく
::::::::::::V///k 弋rソヽヾV/| l///!ﾆV: : :.:/／: : : :／ ｀ヽ 死んでも動く。
::::::::::::::｀V/ﾊ、 ヾ、 ﾊ//,!=/ : : /': : : : ／-―＝ ￣｀ ‐-'､
―- ,＿V//ゝ、 、 /-l'/ﾘ./=＝,': : :.:／: : : ＼ _,. ．-一' やはり頭を潰すしかないか。
`ｰV//＼ _ - .' /_／/ : : :/)）／,.-―- ＿_´ヘ
ヽ///＼ ｲイ{´ .{/＿,.イ: ;' ´ . ｰ.ノ ヽ
―‐_=‐- ＿＼///＞- ＿ ／: : : :.l. Y￣: :ｌ:/ ,.ｲ￣´Τﾆヽ i
/ﾆﾆニニニ＞ー-､ ＞': :l: :,:‐'":l .l: : : : { ,.イ ￣￣ lニﾆヽ .!
./ﾆﾆニニニニニニ二／./: :.r'": : : :.} ヽ: : : :ヽ'"/_|. ―― |二二＞ﾄ､
ニニニニニニ二二／ /: : :.l_;:／／l ,.ゝ＜￣ﾆﾆl ―― !ニニニニヽ
ニニニニ-‐＝二／ l: : : ::{,.／: : :.ト'":::::）二二,ニ＼ .,ｲニニニニニ
ニニ／ﾆﾆニニ／ l: : : :ゝ!: : : : :|: :＞' '二二二ﾆ＼／ニニニニニニ
ニ／ﾆニニニ/ l: : : : :.|: : : : :j" 'ニニニニニニニニニニﾆﾆ
ニニニニニ/ ゝ: : : :.!: : :／ニ､ 'ニニニニニニニニニニﾆ
ﾆﾆニニニ/ ／二７ ￣´ニニヽ. '二二ニニニニニニニニ
ﾆニニニ/ .／ニニ/ﾆﾆ二二二ハ. 'ニニニニニニニニニﾆ
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|「エグいこと言ってないで手伝ってくださいお」
|「え、何してるんすか？」
|
| やる夫は研究員を突き倒し、セーターをまくり上げた。着痩せするバストの形ががくっきりと分かるインナーは無視。
| ベルトを引き抜いて服の上から手首を拘束。
|
| 陸に打ち上げられた魚のように暴れる研究員。
|
|「こいつら、多分『足止めしろ』くらいしか入力されてないオートパイロットだお」
|
| 意識のある人間なら脱出もできるだろう。
| だが視界と腕を拘束された研究員はバタつく以外何もできない。
|
|「よし」
|「…………やる夫さん頭いい」
|「普通普通、剣呑に考えなきゃこれか部屋に閉じ込めるしかねーお」
|
| 手を叩く『ブギーポップ』。しかし、閉じ込めることは難しいだろう。何しろ閉める鍵とかない。
|
|「とりあえず、人数が少なければ今の方法で行きましょう」
|「おっけー、茶巾包み作戦だお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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｜ / /`! ﾄ, ｌ !
. ! ｌ / ｌ ｌ ヽ ｜ !
! ｌ ｌｌ ｌ '､ ! ', ヽ ､ ｌ !
ｌ ｌ ｌ l ! ! ヽ '､ ヽ ', ､ ! ｌ ｌ ｌ
ｌ ! !｜ ｌ_!｜ '､ ', ＼ ｌ ヽ ｌ ｌ ｌ ｌ !
. ｌ ｌ !｜ !_! !＝- ､ ヽ ', ヾ ト, ｌ ! ｌ ｌ ｌ !
! ｌ ｌ｜ ! l!{_,.テミヾヽ ヽヽｒ＝彳ｒｌ ｌﾃｌｌ ｌ ｌ ｌｌ !
ｌ ｜ '､ヾヾ｀''＝＝'‐ ヽ'､ ‐ゞ=! ｌ=! ｌ ｌ ! ｌｌ｜ どうでもいい。
ｊ ｜ ﾄ,ｌ'､'､ ｀ヽ ! ｌ ｌ ｌ ｌ ! ｌｌ｜ どうでもいい。
/ ', ｌ ヾヾ'､ .:::::::ｌ ､ ノ ﾉﾉ/ / ｌ ｌ ｌ ｌ どうでも、いい……。
. / / ', ｌ! ﾄ, ヾ'､ :::::::' `＝ノ/ /ｲ ! / /!｜'､
ノ イ / ! ｌ ', `ｒ ､ ' ヾニ,ノヽ/ / / / ｌ ヽ
／ / ィ´ ｌ ｌ ヽ ト､｀ヽ､ -―＝―- ﾄｒ'´,.ｲ' / / / ｌ '､
// / / ｌ ', ｌ ヾ ｀ヽ､ヽ､ ― ,.-'"ト､ニ_ノ 〃/ ｌ ヽ
ｌーｌ /ｌ｜ ヾヽ ＼ TT` ｒｒ‐ｒ'´/T ｀ヽ､_,.∠'シ ｌ
. ｌ ! ヽ＼ ヽ ＼ ヽ､ ヾ ヽ,| | | / /ｨ ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 死体を引き連れてふらふらと歩くレイ・ザ・バレル。
| 彼が通り過ぎる度に、背後で隔壁が自動的に閉まる。
|
| 胸の穴に風が吹く。虚しさだけを残して、吹き抜ける。
| 地上の混乱はレイの空虚を反映だ。
|
| 正確には、どうでもいいと嘯きながらも『どうでもよくない』二人への執着の結果。
| シロッコ配下として華々しくデビューしたレイ。だがその戦績は泥まみれであった。
|
| 『学園封鎖』でレイに惨めな敗走を味あわせた藤木源之助。
| 後から現れて天使核を掠め取ったロビン。
|
| 『やらない夫の集会』でレイを捕虜にした馬岱はすでに亡いが。
| 源之助とロビンは正門にいた。
|
| レイは、彼らを踏みにじりたかった。
| 圧倒的敗北を見せてやりたかった。
|
| すでに過剰な個人攻撃でロビンの脳は焼き切れ、レイの傀儡に成り果てた。
| あとは、ロビンを使って藤木源之助を打ち殺す。
|
| 『学園封鎖』で見た学生服の男の姿はない。
| 謎の再生もされないだろう。
|
|「四月よ……」
|
| レイは虚無を夢に見る。一人の詩人の見た春の夢。
| 四月は残酷な季節。心地よい冬の眠りから、望む望まぬ関わらずに目覚めねばならぬ。
|
|「今こそ、四月だ」
|
| 世界中の人々が見る、自分勝手な無数の夢。それに終わりを告げるとき。
| 世界は残酷で、目も当てられなくて、悲劇と苦悶と不幸ばかりで。
|
| それを知らしめるのがレイの使命だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ヽ
, '／ ',
〃;/ . ',
/;:'/ .::: ｌ
〃 ｌ: .:;:::l ｌ ｌ
ｌ′ｌ:::;ｌ:::ｌ ｌ::. :. ｌ
ｌ:ﾊ:::ｌ: ::. (ヽ:;. :. ! ｱﾎﾟｶﾘﾌﾟｽ・ﾅｳ
ﾘ ∨:.:::: .:', ﾄ;:. ::. ｌ 今こそ、覆いが剥がされる。
/:::::::: .:::ｊ !ｲ:.. :::. ｌ
/::/:::: ::::(ﾉ ｌ:: :::::.. !
/::/::::::::::/ !::.:::::: ｌ ｌ
/::/:::::::::::;'.ヽ ｌ::::;:::: : ｌ ',
/:;/:::::::;::::;' ｀!:::;::::: .: ｌ! ',
///:::::::/::/ /::/:::::: .::: .: ﾉ ハ ヽ
〃/:::::::/;:/ /ノ::::::: .:::::: /: /! / ｌ:. ｌ:.. ｀ヾ',
/ ｌ:::::::/ｌﾉ ノ´::::::::: .:::;:::;ｲ:: /ｲ /―;;!::.ｌ､::::::.. ヾ
ｌ::::::ｌ'´ ／::::::::::::: ..:::ノノ;/ /;;;;ｊﾉ;;;;;;;;;ｌ ｌ;;ヽヽ::.. i
ヽ_,ｊ-''´::::::::::::::::::::::'／／／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｊ /;;;;;;;;',ｌヽ:. ﾉヽ､
__,,..-‐''"￣ｌ´:::::::::_;;:ノ-''_;:'-'"´;;;::､;;;;;;;;;;;;;;;;/´;;;;;;;;;;/｀''ｌイ､;;;;;;;;｀''ー.,_
,.-‐''´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀''_"´;;::-‐'"´￣￣ ＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ｀丶､;;;;;;;;;;;;＼
ｌ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ￣ ＼;;;;;;;;;;;;;;;/ ｀丶;;;;;;;｀
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 黙示録。アポカリプスとは覆いのことである。
| 世界の終わりとは無関係、人々は目を逸らしていた事実と向き合わねばならなくなる。
|
| それまで対岸の火事だった。あるいは喉元を過ぎて熱さを忘れていた現実。
| 悪政。戦争。疫病。そして今ならば獣よりも環境破壊を当てはめるべきか。
|
| 世界は壊れるだろう。
| 人々は恐怖するだろう。
|
| しかし、レイ・ザ・バレルはその痛みこそが、乗り越えるべき試練だと信じて疑わない。
| 目覚めた人々に指し示されるのは苦難だけではない。世界を救う解答もまた、明示される。
|
| たった一つの冴えたやり方。銀の弾丸。
| それが発射されるのは最後、パンドラの箱同様に、全ての苦しみや悲しみが解き放たれたあと。
|
| 現世にある、不完全で醜いそれとは違う、本当に平等な共産主義。
| 絶対間違えない神による、神性共産主義。
|
| レイは、世界を壊せそうだと思った。
| 誰も彼の前に立ちはだかれる者は無いと感じた。
|
| ならば、試してみるのも悪くない。
| 世界を殺して、徹底的に破壊して。
|
| ギルの目指した真なる世界を…………。
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. /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::::::::::::::::::::l,;;',::::::::::::ｌ,;;;;,;;',:::::::::::::|,;;,;;ヾ::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::／',:::::::::::::::::::::|,,;;',:::::::::::ｌ,;;,;;,;;:!::::::::::::!,;;,;;,;;ヽ::::::::::::::::::::::::::,'
|:::::::::::::／|:::::::::::::::/,;;,;;;',:::::::::::::::::::|,;;,;;;ヽ::::::ｌ,;;,;;,;;;|::::::::::/-ｰ‐‐ ',::::::::::::::::::::::ゝ
|::::::::／ !::::::::::::/ jヽ､ ヽ::::::::::::::::|,;;,;;;;;,;;＼!_____.|::::::::/::::::::::::::::::',::::::::::::::::::,'
|:::／ !:::::::::::ﾊ l! ﾞヽハ、:::::::::|---ｰ;弐チ勿|::／',::::::::::/ﾄ:::::',::::::::::::::,'
|/ ∨::::::|. ',! | 匕､＼:::::i＿ﾃて匸 "ヾ |::::::/;う}:::::|:::::::::::,' レイ！！
∨:::! ｌ ', ﾚ〕 l＼!￣ヾ し｝ ! !:::/ゝソ:::::|／ヾ,'
＼L_ヽ ――‐丿 丶＿ ／ !/冫/::〈::::;ヾヽ
, -‐ｿ￣´ ｀} 丶 ´ ´￣′ ''_ﾆ丿厂`ヽ､ヾ
,ｨi'´,,.,,,,ﾉ___________-:'人 丶＿＿ ,. ---、 ／'´/.../...! ｀''ｰ-,,_
___,人冫:｀Y´'''''''''''''''''''／ 丶 に, ----‐‐‐‐', ,..‐´ / ./ | ｀ﾞ''''ｰ--､
ヽ. ! ／ ｀ ､ ｌ !ｰ" ／ / に''''‐ ､,,_ ナ-- 、
ヽ､| 〈 ｀ゝｰ--- ｰ' ´ ／ －′ /￣` ､ `''ｰ......_ ゝ┬ツ;－‐‐ヽ
｀| / ＼ ｲ | く. 丿 ｒゝ / _ｒﾜ＾'''''''''っ----－"
. | ｌ ＼ / | | ／} ヽ. | ／ / ／
. | | L..／. ＼_,ノ| | 丶 ／ | ′/ ./ .／
{しﾍ 广／ ,' / ヽ ∧ | / ,.' ./ ／
ﾄ ', ! | ／｀丶 / ',. ｌ/イ i |
}=ﾆﾆ二} |..| ./ | / l /|ノ ! ｊ |
ﾉ ', ,.' ', / ∨ |/ / | ,,l’ |
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| だがその前に、この煩い羽虫を追い払わねばならないようだ。
|
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☆ 次回予告！
お前の存在価値を示せ。
金か。
地位か。
名声か。
技術か。
知恵か。
肉体か。
愛か。
あるいは。
それとも、そんなものどこにもないのか。
次回、最終幕百八話『レゾンデートル』
果てに見るのは破滅か死か。
四月に降る雪もある
＿
。ｒ≦ゝ､ニ≧s。
/ ｏ /ニニニ≧､
/ﾐ､ ゝニニニ_。=== ､
,' ／ ＼_。＜:::::::::＞､ヽ γ,
. ,ｲ´,' 。lイ 。ｒ≦:::＞ ´￣￣｀ヽ:ﾑ. { { 『おもちろぉおおーい！
γ ,ｲ. i ヽ 。ｒ≦::::::/ｉ´ ヽ:ﾊ ＿_! ｉz==､__
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. ｉ / ,ｲ::::::::::::::/;ｉ .l| ／ }:::ﾊ |.:.:.ｉ ｉ´￣｀ｉ==､ おもちろぉおおーい！』
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| 新宿衛生病院地下、管制室と名付けられた牢獄に縛り付けられた一人の男。
| 機械でできた柱に下半身を繋がれ、両腕はない。
|
| 彼、ブッティは、高度な電子戦のために脳を利用されるユニット。
| 『カトルカール』の一員とされるものの、実際には生ける屍。
|
| 電波汚染、レヴリアスのハッキング、『カトルカール』の暗号通信。
| 新宿衛生病院内部の監視など、振り当てられた仕事は多い。
|
| しかし、今や死の淵にあった。
|
| 彼の弱点は、文字通り指の一本も動かせないことにある。
| しかし電子戦では無敵。彼に匹敵する存在など一人しかいない。はずであった。
|
| だが、今の彼は無様に敗北して脳を焼き切られる瀬戸際にいた。
| 縫い合わされた瞼、耳朶、そして鼻口から血泡を垂らし、
| 唯一動かせる首をガクガクと動かして抵抗するも、無駄な足掻きだった。
|
| 敵は強大。しかも、攻撃は片手間。
| ブッティは悲鳴を上げられない。発声する機能を失っていた。
|
|『おもちろぉおおーい！ おもちろぉおおーい！』
|
| 彼に許されるのは、喉のスピーカーから同じ言葉を繰り返すことだけ。
| だが、電子的には違う。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ . -─===………………==─く :::::.:.. :.:.:::. : : :..... .
;′ ． ´ `ヽ＼ ）ﾉ,, ヽ ::::.:.:..． :::::.:.:. : : :
i ／ '" ﾆ=-─==ｧ⌒>V^⌒`ヽ . ::::.:.:. . :::::.:.:. : :
弋_〃 ／ ／ ／ ／ 〃 `ﾐ . ::::.:.: .. ::::.:.: : :
`７/ // ′/ i{ ｉ ｉ ..::::. : : :
/ ;′ { { {{ | | ..:.:.: : : : ∵
// / ノﾉ ＼ ` | | . ::::.:.: : : .
/ __ノヘ彡ｲ _ } | .:. ::::.::.: : : …………む？
. // / j| ヽ Ⅵ ーz,,,,＿＿ ) _／＿/ | .:::::.:.:.: . :::.:.: : : .
/ |{ 〕| ￣ゝて艾ゞ￣（ rくrそラ’}i | .::::.:.:.: : : . . :.:.:. : : :
,′ , 八 ｀ 《 || | ′ ｉ | ::::::.:.:.: : : . . .:.: : : .: .`
.′ 从＼__＇ | / | | ::::::.:.:.: : : . .. .． ..:: : :
／//Ⅳ厂{ _j / ;| ﾉ ::::::.:.:.: : : . . ..::.:.:. : :
{i / // ｉ{ ＼ ` ´ / ﾉ| .:::::.:.:.: : : . . ..::.:.:.: : :．
Ⅴ ′ 八_)ｙ ＼ ﾏﾞ￣￣ｱ / ／ | ::: :＿＿ ..::::.:.:.: : :
＼ jﾉり ＼ ￣_￣ / ´ 匁厂￣¨ヽ 《》`ヽ─=ミ
＼ 乂_＿彡’ﾞ≧=─--＼ /ｰ-‐=彡 ´ |ｉ |] 「￣¨ `ヽ
-─…→ミ=孑匁///////∧∨/＼__＿＿,..ｲ `¨¨¨´ |i 《》 |
｀¨¨¨ ＼ヽ./////∧∨//| Ｉ |ﾉﾉ//| /|ｉ [| |
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| パプテマス・シロッコは。私室で死んでいる。
| たが彼の知識と記憶は失われていなかった。
|
| ギルバート・デュランダルの最後の研究は、『神の永遠化』であった。
| 彼が望む神は絶対的な平等性を有していなければならない。
|
| であるならば肉体から開放され、不死性を有さねばならなかった。
|
| 不老不死は人類の願いである。
| デュランダルはそれを叶える気はなかった。
|
| 肉体の軛から解き放たれた、偉大なる神が望みだった。
| デュランダルはその希望を盟友、伊集院九兵衛太の死から見た。
|
| 記憶と知識を使い魔にインストールし、他者の魔力を貰って存在を維持。
| 永遠にアドバイザーとしてあり続ける。
|
| それこそが、デュランダルの目指す神の姿であり。
| 完成間近でシロッコが簒奪した研究結果であった。
|
|『111010111000010101100000！！！！』
|『…………ブッティからの応援要請？ ふむ、レイ・ザ・バレルから攻撃を受けているようだな』
|
| ブッティに勝る唯一の存在だったはずの男。
| 電子化したパプテマス・シロッコ。
|
| 彼はナノ秒ローディングし、極めて冷徹に答えを出した。
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／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、
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/.:.:.:.:.:.::／ _.,､＜´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ／´/⌒ヽヾ＞く
/.:.:.:.:.／ ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／ { ｀`"ヾ:.ヽ
{.:.:.:.:/ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ ￤ ヽ:ﾍ
い:.／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ:.ﾉ_＿_ ﾘ:｝
〉'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:彡" __＿｀＞.､、_ ､__ノイ
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ヽ〃 ヽ 弋ｿゞ､ __ , ｲ
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,'.:.:.:.:.:.:.:.:.:. |:.:.:.:.:.:.:.:l:（ゝj:j {ソy
,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:: !.:.:.:. i.:.:.{ ヾ ｝ ∨
i:!.:.:.:.:.:.:.:.:!.:.:|.:.:.:.:.|:.i!ハ､__, ､___ ゞｰゝ
l |.:.:.:.:.:.:.: |.:.:|.:.:.:.:.|:.|!:.:.:ﾘ ! ｀丶｀＞ / 私のデータはネット上に分散されている。
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∨､.:.:.:.:.:.ヽ:.ヽ:.＞ '"´￣｀ヽ ＼ ＞ __ j さらばだ。
＼ヽ:.:.:＞"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ハ ＼ ｒｰ―''"´
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|『01000101111011011000101010001001111！！！』
|
| 電子の絶叫がシロッコへ呪いのように絡みつく。
| しかし、シロッコは面倒そうに振り払った。それだけで十分だった。
|
|『手駒ごときが』
|『その性根が貴様を殺すと気付かないのか？』
|
| 突然、電子の世界に第三の存在が入門した。
| そいつは恐るべき速度でシロッコを解析し、分解し、飲み込んでいく。
|
|『貴様がブッティを見捨てなければ、俺は貴様に気付かなかったろうよ』
|『ば、馬鹿な！ 貴様！ どうやって……！？』
|
| 逃れようと足掻いてももう遅い。
| シロッコの情報は次々に奪われて書き換えられ、支配権を失っていく。
|
|『己の傲慢さを呪うがいい。その術式をよく見るんだな』
|『術式？ なんの話だ！？』
|
| デュランダルが組んだシステムは極めて明快だった。天才たるシロッコの目にはつまらなく映るほどだった。
| シロッコはシステムに合わせて専用の機械を作り、自らを電脳化した。
|
| デュランダルだけでは不可能な、天才的な発明で。
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／ .: . ヽ､
/.:.: .:::.:: ヽ
,'.::::::::l::: . . ヽ
/::::::::::l::: .:: l / .:;ｨ:. . : ',
/.: ::; -ｊ: .:: . .l / .::/｀|::. |:. ::. }
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_／ :{ ,ｒｊ:::: .: /l/､!::/ |:: |!::. !: l::. . ｜
＿.. -‐ '´ .::l {/:/: : .: /=iﾐ､|/､ |::ハ: |:: l : ,l::: : ｌ: l
｀.ﾆ=‐ .:: .::::V:/:: .: l:: {､ﾋ_ソiヽヽ ､ｊ/ .! l:: ｌ : |:::: :: l: /
, -,´-‐...:::: .::::::::://:: .:: !: | ｀` ‐- ｀`ﾉ/'／! l: l :: l:::::::: |: /
ノイ .:::::／ .::::::ｊ/l::::.::: : l: | -l::i!:l .:::|:::::::: |:/ 『シロッコ！
/:::／ .:::::://!:::|::: : ﾄ | | /:ｊ!.l :::l:::::::: i/ 自分の才能にあぐらをかいた愚図の無能め！
ノ}./. . :::::{´ |:::l::: :: | ｀ __ ' {'_ﾉ:/ .:::l::::::::｜
'ﾍ::::... :::::.......... ::ヽ |:::i!::: |:. | 〈 ｀ﾞヽ､ ´,､ｲ'.ｲ.: :::;'::::::::: ! 他の誰もが理解できずとも
ヽ､::::..::::::::::､:::::::.. :. ヽ:|l::::.!:: | ｀‐-_‐ ´´` ｒ'ノ/ .::/:::::::|:: | 己が分かればそれで良いという考え方だ！』
｀ﾞ` ‐- ､:ﾄ､::::::::::. l'ﾍ:::l!:. ﾄ;､__／:::::::::{ー'_ノ .:::/::::::::ｊ!: |
｀` ＼ﾄ､:::､| ﾊ::ll;: !|:::::::|::::i､:::ゝﾆ_' .::::/￣ﾞiノｊ /
` ヽi`'/ヾヽ:l'::;{:::|::::'､`ー'..:::／{ |ノ/
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|『その場の勢いと直感で動く貴様には、こんなに丁寧で、分かりやすいシステムは構築できまい！
| これはギルのシステムだ！ 伊集院様のシステムだ！ そして……！』
|
| 才能が、自らの墓穴となった。
| 信じられない、信じたくない。シロッコは絶望の悲鳴を上げた。
|
|『ぼくのためのシステムだ！ 貴様の作った無様な機械など、最初から不要だったんだよ！』
|『やめろ！ 殺さないでくれ！ この私が死んだら人類の損失だぞ！』
|
| 命乞いへの答えは、冷笑だった。
|
|『話を聞いていなかったのか？ お前は間抜けな無能だよ』
|『ならば00101001せめて貴様を一緒に11010100000……！』
|
| 最期の足掻き。シロッコの卓越した精神感応で、レイを死の深淵への道連れとする。
| しかし、自らの才能を過信していたシロッコでは、超能力者として訓練を積んだレイの精神障壁に傷の一つも付けられない。
|
|『お前は生きていちゃいけない人間なんだよ』
|
| こうしてパプテマス・シロッコは今度こそ完全に消滅した。
| そして、『哀しみのからくり人形楽団』のピースがまた一つ。
|
| 最後のピースが嵌ったその時、世界は滅びの刻を迎える。
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／ ／ ／￣| 〃 ヽ
／ ／ | }
/ ／ /ヘ ＼／
／ ／ /｀} | ＼
. / / / .}/ ! ヽ
/ / / ＿ .i. ', ',
' / ,' /_∠＿ | }ヽ }
.' / | /<（ ）＿〉.| | ', ' 何だこりゃ、
i / /! 人 {. ｀` ,'| | } / 世界の終わりか？
| ' / :| ／ ゝ､ﾍ ./ | ,' /
.' ' / |/ i ｀ / . | ./ ロアナプラでもここまでの無茶は
. ' / | / ' | / …………いや、比べちゃいけないな。
. ﾍ / , ----, ／| | {
| .∥＼ ｀￣￣ ,.:::::ヽ !ゝ, ィ
|| |-..､ ＼. , '::::::::: | |三三三＼
∨| |::::::::｀ヽ丶| | | | /::::::::::::: } |三三三三＼
. ', |::::::ヽ:::::::` ￣￣:::::::::::／/ .ノ三三三三三
｀`ヽ＼!:::::::::';::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣三三三三三三三
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| 新宿衛生病院周辺では、謎の電波妨害が続いていた。
| ロビンの砲撃以降、パニックでごった返すタワーマンション。
|
| 電気は通っているものの、携帯電話。はじめとした無線の一切が通じない。
| オートロックで外に出れずに立ち往生した人々。
|
| 『ブギーポップ』が開放したのは目についた一棟だけ。
| 他の人々はすし詰めで、悲鳴と不満と怒号を撒き散らすだけ。
|
| 管理人室からは電波妨害で何が起きているかもわからず、ボタンを押しても無反応。
| そこに現れた警察やアセムたちが、停電時用の手動ロックを解除して回っていた。
|
|「電気はあるのにな」
|「芝公園でもモーリアんビルでも使ってた『汚染電波』ですかね？」
|
| 戦友のような巡査の言葉に、アセムは頷いた。しかし、どこかおかしい。
| なぜ、被害を拡大するような真似をする？
|
|「とうとうトチ狂ったか、パプテマス・シロッコ？」
|「本当に『戦争を起こしたい』んですかね」
|
| アセムは確信している。シロッコはヤーボ大佐を改造して手元に置いている。
| あの戦争狂を大人しくさせるのに、他にどんな餌が使える？
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{ ` - ＼ }ヽ、
-- ゝ ゝ、＼
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ヽ ＼ ￣` ´￣￣￣＞=- _ l l
ヽ ＞ ＼ l l
＼ ---- ´ } ノﾉ
lﾆ＞ ＼ ＜ ／ ／ /ハ -=彡
lﾆゝ、 ---- { ／ / ／ ／ / ゝ__フ
Vﾆﾆﾆ=--- _ / ／ / , /__ノｨ ／ / 八 ヽ
Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- __l／ ゝ戈ｯﾚ ´ ／／ 从 } } 避難急げ。
Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ /、 / ／-イ,-、 // ﾉ l こうなっちまった以上、今はやることをやるしかない。
／ﾆ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ゝﾐ=- l／ l l:{ l /ノﾊ /
/ ＼__ ／ﾆﾆﾆﾆ ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ{ _ l::} l- ､ / ／ 今後どうなるかは上が考えてくれるさ。
./ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ＞ _ﾆﾆﾆﾆﾆﾆl -=/ Y -::/ }、_ V 被害を最小に食い止めるぞ。
../ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ﾆﾆﾆﾆiﾄ 、 f´ ﾉ ｨ:::/ { } }
/ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾊ ≧ﾉ } ／ __ V ./
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧ { ｀¨ ／////＼ /
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧ l ／/////////
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| すでにガラスや瓦礫、逃げ惑う人々に踏まれたなどで、少なくない負傷者が出ていた。
| その上、救急車は呼べない。担当者に問い合わせて安全な避難所を探そうにも問い合わせそのものが不可能だ。
|
| 電波妨害を受けている地域の範囲も定かではない。
| 負傷者の救護に使える施設も確保できない。
|
| ないない尽くしの状況であるが、それでも警察官は諦めない。
| 頼りのはずの自衛隊はクーデターの疑いがあった。
|
| この国と、国民を守る最後の盾が自分たちだという自負が、今の警官たちにあった。
| 東京都内の警察には、すでに悪魔と異能についての情報が伝えられていた。
|
| 阿部さんと彼の部下だけでなんとかなる状況はすでに終わっていた。
| 自衛隊のクーデター未遂もあり、警視庁上層部は覚悟を決めたのだ。
|
| 『血族』も『教会』も頼りにならない。
| ならば自分たちで出来得る限りのことをする。
|
| アセムはそんな警察に心を打たれた。
| 『血族』に戻りそこねたのもあるが、それ以上に牙なき無辜の民を守る男たちを手助けしたかった。
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∨:::! ｌ ', ﾚ〕 l＼!￣ヾ し｝ ! !:::/ゝソ:::::|／ヾ,' レイ！！
＼L_ヽ ――‐丿 丶＿ ／ !/冫/::〈::::;ヾヽ
, -‐ｿ￣´ ｀} 丶 ´ ´￣′ ''_ﾆ丿厂`ヽ､ヾ
,ｨi'´,,.,,,,ﾉ___________-:'人 丶＿＿ ,. ---、 ／'´/.../...! ｀''ｰ-,,_
___,人冫:｀Y´'''''''''''''''''''／ 丶 に, ----‐‐‐‐', ,..‐´ / ./ | ｀ﾞ''''ｰ--､
ヽ. ! ／ ｀ ､ ｌ !ｰ" ／ / に''''‐ ､,,_ ナ-- 、
ヽ､| 〈 ｀ゝｰ--- ｰ' ´ ／ －′ /￣` ､ `''ｰ......_ ゝ┬ツ;－‐‐ヽ
｀| / ＼ ｲ | く. 丿 ｒゝ / _ｒﾜ＾'''''''''っ----－"
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{しﾍ 广／ ,' / ヽ ∧ | / ,.' ./ ／
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| 一方の地下、五階層に及ぶ地下施設の三階層へ下る階段。
| 重い足取りで登ってきたレイ・ザ・バレルが顔をあげると、必死な顔の少年が荒い息で立っていた。
|
|「なぜ逃げなかった？」
|「そりゃねェだろ」
|
| 彼の横で槍を構える佐倉杏子がロリポップを噛み砕く。
| レイは死にかけた横島を放置していた。あまりにも突き放した言葉に、杏子のこめかみに青筋が浮かぶ。
|
|「お前たちが隠れているのは分かっていた。死にたくないならあのまま逃げるべきだった」
|
| 横島の怪我は酷いものだ。鼻は折れ、顔面の半分以上は血の滲んだ包帯で覆われている。
| ヴァイジャヤと杏子の治療で動けてはいるが、魔術の力を借りても安静にしておくべき重傷である。
|
| その横島を庇うように杏子が、そしておんぶしていたシグを下ろして天龍が立つ。
| レイの後ろには幽鬼のような機動服が三機。ヤザン隊の『ハンブラビ』二機とシロッコの『ジ・オ』だ。
|
| 横島たちはその戦闘力を身を以て知っていた。
| 正面衝突で敵う相手ではないことも。
|
|「よう、確認させてくれ。お前さん……『夢の塔』で『滅ぼすもの』と同調したのか？」
|
| 腰の刀に手をかけて、天龍が問いかける。
| レイは彼女を一瞥し、眉をひそめた。
|
|「『夢の塔』？ 何の話だ？」
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V/.iv.::/.:::::/.:::::::::::::::::/|::::i|:::::|:::::::::::::|::::::::::::.V/.::::::::V/.::::V/_:}／
｀ー.:/.::::/.:::::::::::::::: /. |::::.V/ﾊ :::::::: |::::::::::::::.V/.::::::::V＼:::::＼
ﾘ|.::/.::::::::::::::::::/ |.:::::.V/ﾊ :::::: |:::::::::::::::::V/.:::::::::V/ ｀ー‐'
､ /.::|/.::::::::::::::::::/. |:::::::::V/ﾊ,:::::ﾘ.::::::::::::::::::i|:::::::::|::::＼i:i:i:ﾊ
./.／八.::::::::::::::i|､ V/.:::::| 寸≧=-― ´::::::i|:::::: ﾘ｀`〜､、i:i＼
ー ´ /.::|::V/.::::::::|. ￣ V/.:::V/.::::|:::|::::|::::::::::::i|::::::/＼.:::::::V/.:ﾊ｀
. /ｨ.: |::::V/.::::::| V/.::.V.::/|:ﾘ:::ﾘ:::::::/i:ﾘ.::/.:::::/｀`〜`〜､＼
/ノ.:/|::::::V/.:::斧宍うぅ､.＼.::.V .i/.|/i:|::::/i:/.::/.:::::/.:::/::i|::::}
´ ﾘ＼::::V/.::::込｀ Vソ ﾉ乂乂 ＼i |::/i/／.::::::/.:::/::::i|Vﾊ 夢の中で世界の滅びを見て、
/.:::ﾘ.:＼V/.::ﾊ "" ´ ｀ー ' /ﾘ.／.:::/|i:i: i| ＼＼ 『同じ事が出来るつもりになってる』かってこっだ。
. / ／ﾘ.::V/:＼::ﾊ , -=彡.:::::::/ﾊ::|vV/ ￣
/.::::/V/.:::V心 /.:::::::::::/~' iﾘ .vV/ .,ｲ
. /.::::/_-V/.:::＼.〕ｈ｡ ,、 ィ.::::::::::::/ /￣~^ヽ乂ﾘ
{乂ノ::／/ V/＼.＼.:.:::::≧s｡ ｡s≦ |.:::::::::/} ／V/ V/
｀ー― ´ V/.::＼.＼::/ﾊ. .|.::::::/ '， .V/_
. >⌒ ﾉ-===-_ ｀`〜､v、ﾉ=-＼ /V(´.＼|::'， / | ｀¨ｰ,
ノ ／├┼┼┐≧s｡ V/i／/i:i:i:｀ ー ´/ ( ヽ:＼| 乂' .|‐―┐ ＼
.ζ /l／￣￣ ≧｀`〜､i:/ / /i:／ ┤＼/ / | / ＼| ヽ | ／.| <
〉 V/.i:i:／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:~''＜i/八┤v_ -=/ ／ ＼ ／.| ﾘ 〔
.ﾘ .＼/.i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i＼ ｀Y┼┼┤. : _ --､ 寸i「 」/ 乂
. ). {i:i:i:i:i:i:i_ -=￣i:i:i:i:｀`〜､} =- V/┼/ _ -=ﾆ￣／／ '「」／|イ
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|「…………お前は何を言っている？」
|「分かンねーンならいい、いや、よくねェけど」
|
| 天龍は困ったようにシグを見た。シグは無言で頭を振る。
|
| 二人が相対したことがあるのは『滅ぼすもの』。
| すでに滅びた平行宇宙の可能性が、普遍的無意識野から同調した、いわば滅びの影絵。
|
| 世界を滅ぼすパワーはあれど、本物には遠く及ばない。
| そして、レイ・ザ・バレルもそれではないかというのが天龍の希望だった。
|
|「やべぇぞ、マジモンだ……」
|「ねえ、なぞのひろいんえっくすさん知らない？」
|
| 冷や汗を拭う天龍の背後から、シグがぼんやりした声をかける。
|
|「殺した」
|「うーん……」
|
| 頼りの綱の専門家も、すでにこの世にないとは。
| 天龍とシグはＸの能力を知っている。強いのか弱いのかいまいちよくわからない。
|
| だが、死ぬときはあっさり死にそうだというのが二人の共通認識。
|
|「よし、みんな聞きたいことは聞いたな？ 逃げるぞ！」
|「…………は？」
|
| それまで黙っていた横島の力強い言葉。誰よりもレイが絶句。
| 傷が痛むのか、よたつきながらも横島は無防備に階段を降りる。暗がりへ。
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＼:.:.:.:.:.:｀ヽ
､ -‐…‐-＼:.:.:.:.:.:.Vヽ/＼
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＞‐-:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i
,.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾄ.:.:.:.:.:.:.!:.:.:.:./､
,＿___,:.:.:.:.:.:|:./‐ヽ .:.:.:. |-＼,メハ:.:.:.:.:.＞
／:.:.:.:.:.:.:|/-=ﾆ＼:.:.:|=／⌒ヽ|:.:.:.:}:.＼ レイが責任を負う必要はない。
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.|／⌒ヽ ＼| /ヽ :.:.::/:.厂 シロッコも何も知ったことかよ。
￣￣/:.:､:.:.:|′ /ヽ __ ! ｲ＾Y
|::/i＾ヽ| __ , , ) ; 帰って、うまいもの食って、
|/..| ,ヽ _＿ ｀ -‐ ヲ /／ 寝て……何か考えるのはそれからがいい。
人___､ 辷_,,.. -‐ ´ ,.:'＼
∠个:... イハ厂
__＿从/ | ｀¨¨ |========┐
|「￣ ,| ｀| .0 ||
|| 0 .′ | -=≦_ _＿＿____
_,. -‐ _」L,,,,, /‐- -‐ | 7/ ¶ ＼
. ／. ¶ |}￣￣ /‐- ..,,___,,... -‐, // :|} }.. ＼
/ { .:|} |} / V ′_＿_|}____ / ＼
. / ',.____|}＿..|} ./ ∨ {| /.′ .＼
. , 仁二_∧ ￣￣ :|} / ∨:| ｏ / ; ＼
／ } ｏ :|} .′ }.:| ｀ T T ´ |__
／ }＼___／|} i | | | | :| ＼
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| 身を硬くするレイ。
| 警戒を強める天龍とシグ。二人は完全に、レイこそが異変の中心だと思っている。
|
| それは間違いではない。そして、警戒も正しかろう。
| しかし……横島の言葉はそれ以上に正しかった。
|
| 煮詰まった頭で偏った思考をするな。
| 食べて寝て休んでから、本当にやるのかよく考えろ。
|
|「悪いが、もう終わらせた。俺はシロッコを殺し、ヤザンも殺した」
|「なら、やっぱり帰って寝ようぜ」
|
| にわかには信じがたいような名前を並べられても、横島はひるまない。
| 『その後やる何か』を、考え直す時間を作ろうとしている。
|
| レイはたじろいだ。なぜ？ 横島のことが理解できなかった。
| 彼は切り捨てたはずだったのに。どうでもいい存在のはずなのに。
|
| なぜ、こんなにも無視できない？
|
|「…………俺は」
|「おう」
|
| 笑う横島、レイが下がると彼もついてくる。
| 振り払えど、距離は開かない。
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/ :::::::::::::::::::::::〃,.‐l:: ::::: .::l :/! :/ ::::: l l l
::::::::::::::::::::::::{ !{ l::::::::: l /l:/ l:/: /:: l ｊ
.::::::::::::::::::::::::::::',', l:::::::::: l.:lｒミ､i7 ,ｲ::: : l l .lｊ /
::::::::::::::::::::::::::::::ヽ７:::l:::::: . ,l::lヽ{7`l:.//:::: .:: !. ｌ //
::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::l::::::: .: /l::! ｀ l/ｲ::: .::l: l: :!.i/ 俺は世界を作り直すんだ。
::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::/!::::: .::: l. l:| /::/::;ｲ:,:: ;ｲ:l
::::::::::::::::::::::::::::: :::l:::l !:::::: .::::: l l ﾘ ノ-ﾍ/. l:,:: / ｊ::! ギルの望んだ、正しい世界を……
:::::::::::::::::::::::::: /!:/ﾞl:::::: .l:::: l ! __ ノ /;／. 〃 作る力を手に入れた……
::::::::::::::: ::::: /`!lヽl:::::: :l::::: l. l ‐-､__ﾉ´ / // /
::::::::::::::: :: { ll:l,`1::::: :l::::: ! l , -'/l:: /!{ ノ'′ …………だから！！
::::::::::::::::. l-' ﾘヽヽ:::::ll:::::. l i/: {. ｌ: l .!{
:::::::::::::::::::.. ヽ厂 /∧:::ｌｌ::::. l l:::: !. ';:.l `－
､::::::::::::::::::::::::... ヽ<<_:::ヽl:';::: l;.l:::: i{ ﾞヽ,,
ヽ｀ﾆー-､:::::､::::::.. .ﾞヽ‐'"::l::l:: l:!l::､:.ヽ
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|「それは本当にレイがしなきゃいけないのか？」
|「そうだッ」
|
| 振り払う、距離を取る。
| レイは銃を抜いた。眼前に突き付けられた銃口を、横島はまるで無いもののように無視をした。
|
|「俺がやらなければ、ギルは……ギルの夢は……！ ギルの生きた意味は……全部、全部全部！」
|
| 震える銃口、引き金を引く。
| 殺意ではなく錯乱の意志で放たれた弾丸は、外すはずのない至近距離で虚空に消えた。
|
|「あのサァ」
|
| 槍を担いだ杏子が、新しい飴を口に放り込みながら階段を下りる。
|
|
|「そのバカは、お前が犠牲になンのが嫌なンだよ。誰かのためじゃなくってよ」
|「ぼくは！ 自分の！」
|
| 一人称が変わったことに、誰も気付かない。
| だが、あとひと押しだというのは見て取れた。
|
|「うちのボスが言ってたぜ。存在価値なんてのは、『愛したもの』と『愛してくれたひと』だってな。
| 話の流れはわからねーけど、その人にはアンタが居たンだろ？」
|
| レイが、また一歩下がる。『ジ・オ』にぶつかった。
| 物言わぬ機械の鎧。シロッコを殺した証拠であり、罪の証明。
|
| 階下の暗がりがレイに囁く。
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,.-'´:::..::: ＼
／::::::::::: ..::: ヽ
/.::::::::::::: ..::::: ヽ､＿_
/:::::::::::::: .::::::: .: ヽ／ ￣`‐-.､
. /::::::::::::::::::::::: .:.: . ､. ヽ､ ／ _ゝ、
//:::::::::::::::::::::::::::: .: : :. . . .. ＼:...｀＜. / { ＼
//:::::::;;;::::::::::::::::::: .:: .: :::. :: :. |:. ';::::::.. V ',
,'/}::::::/ }:{ﾞヽｒｲ:::::. .::l:::: :::::. ::: :: : ﾄ､. .'､::::: ﾉ. ', いまさら後戻りなんて。
i:! |::::/. /:} /{//:::i ::/!:l::::i::: .:| /!.:. |'ﾉ::. トヽ､ヾヽ '､
i' !:/ {::::!{ノ/|ｲ:;l::/ｊ/ｊ:/!::::::l/_|:::. . 「::::: .::: .:ハ}｀ヽ}
. |:ヽ }::ｊ { ',l::ll/''l!､ll_}::::/l.ィl::::: . ::. :';:: .::::.:／ ′ 丶､
i:::::}/ノ}, l ll| /_ﾉ }::// i!|:::::.: .:::: :､';:／{{ `＝＝ ヽ､
l::::::lヽ l l . ll| ､_ﾉ' i!|::::: .:::::: .:i｀{､ ヽ
∧::::::::ヽ､__ . ll`ー-､-=⊃ i!ｊ::::: .:::::::: .::::!､{L._
{､_';::::::::/;ﾍ ｀ヽ、 ヽヽ __ ィ::::::::/:::: .:::::! ` }
| ､ﾉｨ:::/l{ } 丶､_ヽ ∧ __ノ/:::::;/::::::::// ,l
! { ヽ{ ﾉ ￣￣/ ｀ﾞﾌ:::／}:::::::;//| //
V / ` } / ￣ 彡'"ー‐'/ｲ ｊ //
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|「できない」
|
| そうとも、やると決めたのだ。後戻りなんてごめんだ。
| ギルのためだ。自分のためだ。そのために、何人も殺した。
|
| 殺したことに呵責はない。
| 神は些末な人死に心を動かされはしない。
|
| そこで、ああ。レイは気がついてしまった。
| レイが神になる最後のピース。
|
| この胸に開いた穴は、心に吹く虚無の風は。
| 意味のあるものだった。必要なものだった。
|
|「俺自身の望みとして、ことを成す。そのために、横島……頼みがある」
|「おう」
|
| 上げた顔、吹っ切れた表情。レイが動くより先に、まず天龍が跳んでいた。
| 戦士の直感。この場の誰よりも、彼女は戦闘経験が豊富だった。
|
|「死んでくれ」
|「お前がな！！」
|
| 『ジ・オ』の実弾射撃を切り払って、天龍がレイに肉薄した。
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／ ＼
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/ ｕ ∩ノ ⊃―）／ なんか変な感じがするお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
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|「俺にはわからないな、異能による超感覚か？ それとも精神攻撃か？」
|
| 横島やレイよりも一つ上の層で、妨害する研究員を縛りながら進む二人。
| やる夫と『ブギーポップ』。無略化しながらなので、移動は遅々として進まず。
|
|「なんつーか……さっきまでその境地にいたような気がするというか」
|「…………」
|
| 『ブギーポップ』の視線が鋭くなる。
| さっきまで、やる夫が感情を取り戻すまで。
|
|「なんか、全部どうでもいいっつうか……関心と執着を失う感じだお」
|「それだけか？」
|
| 大したことには聞こえない。事実、抵抗も容易い。
| しっかりと己を持つ者ならば、攻撃されていると気付かないほどだ。
|
|「命を投げ出すことに抵抗が無くなるのと、自分が正常だと確認するために極端な行動に出そうなくらいだお」
|「…………機械の支配との関連が分からないな」
|
| 『ブギーポップ』の言葉にはしかし、何らかの確信がある。
| 疑問を持っているのは、委員長の方なのだ。
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
/二ニニニニニニニニニニニニニニニﾆ}
. /ﾆニ／ ヽニニニニニニニニニニニニニ/
/ﾆﾆｱ、 lニニニニニニニニニニニニﾆ/
,'二/ } ｌ二ニニニニニニニニニニニﾆ{
lﾆｱ ' 'ﾆア´ ',ニニニニニニニニニニヽ
{={ / /ﾆ{ ,仁二ニニニニニニニﾆﾆ〈
ｌﾆゝｲ ./ニ乂 ,.ｨニニニニニニニニニニニﾆヽ
}ﾆ! /ニニニニニﾆ=-―――--＝＝ﾆﾆニ二ヽ
V乂,.ｲ二二＞イl.／`＜//!/ヽ＼//////////∧´ 関連は分からない。
. ∨ﾆﾆ＞"//∧ ヾ、 __,.ィ V////,ヽ｀ヽ///////ﾊ だが『同じ敵』だ。
ヽ／ト＜'//,∧ ‐i"{ソ .l////V/＼; }'//////ﾘ
. //,∧ _,.`＜∧ l/////V//,＞､/////
〈'//∧´ __,..、 ヽ ﾊ/////V////＞ ､ｲ
. lヽ///ヽ'ﾊｿ : ﾉ .!/////,ｌV/l＜///＼
!/{.ヽ'/∧. i }ハ///,!_∨!=＝==､ヽ_
Vl !'/ハ ｀ .. ' V//lﾆ／ ヽニ＼
. 乂、 }///,へ. ' ,.イ∨/{ﾆ∨￣ ´ ＜ﾆヽ
j/////// 、 ／////ヽﾊ'ニV -― ￣ ヽ ＞- _
ﾉ;ハ/////lV/>"／￣｀ヽﾆ/!ニ=ヽ ＿ -‐ ヽ ＞ 、
´ V/{ヽ'／.／ /./l !ニニ=ヽ ＼ ､
ヽﾊ ヽ ,.イ=/.l/!ニニニﾆ＼ -‐ ´ ＼ ヽ
` ,ﾍ ,.イ＞'" .l/lニニニニニ＼ ＿ ‐ ` ､
/ｰ-ア'⌒;/∧ .!/l二二二二ニニ＼ _ ＼
/ｨ/／,.-.,.///∧!'ﾉニニニニニニニﾆ＼ -‐ /､
////,.ｲ;;;;;'///＞'"ニニニニ',ニニニニニ＞ ､ __,ｲ ￣
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／ﾆ`'＜ｰイ /二二二二ニニニニニニニニニニニニﾆﾆ,
. ,.イﾆニ二／ / lニニニニニニ､二ニ'ニニニニニニニニﾆﾆ,
／ニニニ／ ／ .',ニニニニニニ＼ニﾆ,二二ニニニニニニニ､
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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|「『ブギーポップ』的には、見つけて殺せればオッケーかお？」
|「そうなんだが、嫌な予感がする。『こいつ』じゃなくて『俺』の勘だ」
|
| やる夫にとってはどちらでも構わない。
| どちらにしろ、一考の価値がある。
|
| 『世界の敵の敵』の自動的感覚も、ベルソナ無しで『夢世界』の一線を走り続けた、アトリームの生き残りの勘も。
|
|「辿り着く前に違和感を突き詰めるお。まず相手の能力……『機械の支配』と『感情の喪失』」
|「…………ん？」
|
| 襲ってきた死体の頭を作業的に吹き飛ばしながら、『ブギーポップ』が振り返る。
|
|「感情を失ったからって、機械になるわけじゃねーし、気絶しなきゃ操られない。
| そもそも感情を消しても気絶してちゃ意味ねーお」
|
| 噛み合わない。筋が通らない。
| だが、それらを繋ぐ『線』がどこかにあるはずだ。
|
| その『線』こそが『敵』の本質であり、世界を滅ぼす能力に間違いあるまい。
| 『十壊』の一つ、『哀しみのからくり人形楽団』の。
|
|「待ってやる夫さん、『感情を失う』？ 『どうでもよくなる』じゃないのか？」
|「それは初期段階。やる夫は昨日まで感情無かったから分かるお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ノ ＼＼
／ （〇） (〇）＼
／ ∪ （__人__） ＼ 関心と執着を失う。
| ｀ ⌒´ |
＼ /⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒) 精神が反発して、
ノ | / / / (⌒) / / / / まだ心にある何かを強く求める。
／´ | :::::::::::(⌒) ゝ :::::::::::/
| ｌ | ノ / ） / 理性で抑制できる。
ヽ ヽ_ヽ /' / ／
ヽ ＿＿ ／ / ／
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|「具体的な被害者を見てないけど、大体合ってるはずだお」
|
| なぜ言い切れるか。『ブギーポップ』の目が問いかけるが、やる夫も分かるからとしか言いようがない。
| そして恐ろしいことに、やる夫はどの被害者よりも、そしてレイ本人よりも、その能力の核心を突いていた。
|
|「そういうことか」
|「感情なんてない方が……なんか分かったのかお！？」
|
| 一足早く結論に、いや、『ブギーポップ』は苦く笑う。
| やる夫は最初から知っていた。当たり前すぎて見えていなかったのだ。
|
| 同様に、委員長も彼自身が『ブギーポップ』だったために、とっくに理解していた。
| 結論を知っていたが、そこには辿り着けない。辿り着く気がないからと興味を持っていなかった。
|
| その答え。
|
|「やる夫さん、あんた『世界の敵』と『自動的な神』と、どっちだったんだ？」
|「は？ どっちでも……いや待て」
|
| やる夫は嫌な汗が背筋を流れるのを感じた。
| 心を殺し、被害と犠牲を許容し、敵をすべて滅ぼすまで止まらない。
|
|「あー『自動的な神』になりたかったお」
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:::::::::::::::_／,イ} ﾚ‐'"／.:::: -‐‐ .:::::::::::::::::::i ∨/∧ ∨ ∧
::::::::::／{_{_x ｧ='^７′:::::｛ ( ）;.::::::::::::::i ∨/∧ ∨ ∧
::_／ｘく／／ ／.:::::::::::::::..､___彡'.:::::::::::::::l ∨/∧ ' //ﾊ
,／x'ﾆ∠ ／.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 ∨/∧ }///ｌi
(_,ｲj}__ . ≠:::::::: ＿＿＿＿＿＿＿＿＿___＼ ∨/∧ }///|i
､／.:::::x.ｉ´￣｢｜/ :/ ＞＜ ヽｉ| ｉ | : : : ヽ ∧∨/∧V/ﾉﾘ
.::::::／ ｉ{ . : l | { / ／ .斗‐テミメ､i| i | : : : : .∨ Yー=彡' おそらく『敵』も同じだ。
:／iｉ. : ﾊ . : ｜∧ 〃 Ｖジ 刈 / | . : | i : | ﾉ
i ii . : ∧_. : l/ ヽ //ﾘ' . : 八i : 厂￣￣￣ ＼ 心を失い
. : i i. :/´ ,＞､.{ ヽ /ｲ/ . : / . :､∧ ＼ 機械を支配し
i. :i i/ _〃し;ﾘ＼ ｝ / | . :/ //: : : ＼ ＼
i 八{ .ｲ{ У ヽ | :/ /ｲ: : : : : : ＼ ＼ まだ成していない
人: : 丶 , -‐ｧ | :/l/ |: : : : : : :i : ＼ ＼ 何らかの手段を用いて
‐-=ﾆ ＼ {_／ l/ ﾄ､: : : : : ﾄ､: : :ヽ―‐- 、
∨∧V＾ヽ. / ├- ､ : : .[｀丶 : . ＼ この世界の根幹システムを
￣￣￣｀Vﾊ ､ /.-‐┴:::::::＼∧＼ ＼! ＼ 作り変えようとしている。
::::::::::::::::::::∨: 个ト . . ＿__ . ｲ-‐=＝く::::::::::::::::::::} /ヽ ＿ ＼
::::::::::::::::::/ . :川 :| ｒ‐､＜｡￣ _°》:::::::::::::::/ ′ }／ 〉
:::::::::::::厶イ: 从:| { }＞‐＝=‐＜::￣￣::::::::::::::::〈＿/ ／ ー-､
:::::::::::::::::::Ｖ厶人,ｰ∧ ＼:::::::::::::::::::＿／ ヽ
:::::::::::::::::::::::::::::::{ {: :＼ ｏ /⌒Y＾ ー‐ﾍ._,{ 〈
::::::::::::::::::::::::::::::＼、: : : :ｰ-=彡: : : l /::::::..‐- ..、 }
::::::::::::::::::::::::::::::::::＼: : : : : : : : :o :ﾊ'⌒ヽ/.::::::::::::::::::::::ｖﾍ ﾉ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼: : : : : : : /{ { { ｉ 〈::::::::::::::::::::::::/∧'. ／
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ｰ-=彡八 ∨ ￣￣｀ヽ::/∧:::. ',. イ,ﾍ
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|「システム？」
|「物理破壊じゃない。コイツは『この世のあり方を変える』タイプの『世界の敵』だ」
|
| やる夫にも予想外の答え。
| 『十壊』は東京そのものを破壊する連中だとばかり思ってきた。
|
| それが？ 『システム』？ 『この世のあり方』？
|
|「よくわかんねーお」
|「世界は簡単に変わる。技術の普及やら自然現象でもな」
|
| 賢明なる読者諸君に理解を頂くには、『?以前』『?以降』と呼ばれる歴史の転換点がわかり易かろう。
| 『911』『ブギーポップ』『311』『コロナ』。
|
| ちなみに『ブギーポップは笑わない』は本当にラノベの歴史を変えた転換点である。
|
|「つまりそうなる前に止めりゃいーのかお？」
|「『ブギーポップ』は対象が最も美しいときに、これ以上醜くなる前に殺すらしいぜ」
|
| ……だが、ただの見敵必殺でよい訳がない。
|
|「まずは見つけて様子を見る」
|「弱点でも見つけるのかお？」
|
| ここまでの分析と『ブギーポップ』による自動解析が導き出してくれるのだろう。
| やる夫は期待した。
|
|「こんな普通の奴じゃなくて、超然的な怪物だと錯覚させるのさ。
| 精神的優位に立って、ビビッた相手が計画を放棄すりゃあ儲けもんだ」
|
| 期待通りには行かなさそうだった。
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☆ 次回予告！
星の終わりを君に捧げる。
背中合わせの双子の破滅。
星の終わりを君に見せよう。
枝分かれした死の可能性。
星の終わりを君と歩もう。
震える身体を暖められずに。
流れよ星。
星の終わりの火蓋を落とせ。
次回、最終幕百九話『暴虐のからくり人形楽団』
果てから至るは破滅の化身。
色々どうでもよくなって何かにしがみついた結果極端な行動に出るのか
レイも
めんどくささを限界突破した果てが世界の敵
ブギポあるある
一つの事柄に関心が100％になって他には気が回らなくなる
何かに強い執着がないと何もかもがどうでもよくなるのか
自由落下の最中、崖の壁面に手を伸ばせて掴めるようなそんな感覚
乙
殺されることが最後のキーになりそうなフインキ（なぜだか変換できない
＿__
. ""´: : : : : ﾞﾞ｀ ､
. ´‐､ ﾉ: : : : : : : ｀Y´ ヽ:｀::.､
. ´ r'´::_丿__丿: : : : : : : : :ﾉ . : :. :｀ヽ
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l }.:.:.:.:.:.:.:.:.:{ ヽヽ _ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::ヽ!
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| ここではない地球の話をしましょう。
| 滅びて消えた。そんな地球の話をしましょう。
|
| 『地球標本展覧会』。今宵皆様にお見せするのは切望と失望、望まぬ形で訪れた完全なる静寂.
|
|
|
| …………というのがいつもの前口上。
|
| この地球の話をしましょう。
| 滅びて消える、そんは未来の話をしましょう。
|
| ははは！ ははははは！！
| 本当に笑いが止まらない。まさか！ まさかですよ！
|
| やってくれましたねやる夫さん！
| 最高だ！ 思いもよらない！ この地球を滅ぼさないために、滅びの可能性を突き詰めた！
|
| この『地球標本博覧会』に出品するのに相応しい。
| 『可能性として提出された滅び』。
|
| 見事に回避して見せるか、あるいは膝を屈して滅びて消えるか。
| さあさあ、楽しく見学させていただきましょうか！！
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_ ＼:.:./x^x^x＼ / ::::::::::: |:::::::::::::::::::::::::::＼//,|
／ ） ｉx^x^x^x^へ..:::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::V,ﾞ|
ｉ Y ､ -==彡／::/::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::::::::::::::::::Ⅵ
|＿} へ ト==彡':: /:::::::::::::::: ,' | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::i|
|/// ７⌒>, へ |::::::::::::: /:::::::::::::::: / | :::::::::::: |:::::::::::::::::::::|
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（/{//{//{人{_ﾉ ﾉ::::::::{ i::::::::::: |i:ｲ､ ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::| 怖くて声も出ねえか？
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'/////////ヽ ＿＿彡::::::::::::: |:::::::::::| ヽ ) ｉ:::::::::::::::::::::::::: ,' オラオラ！！
'∧￣￣ '// ｉ ￣／:::::::::／､ |:::::::::::| ノ|:::::::::::／::::/::/
' V￣￣V / ／￣＼:/ 八::::: 从 ＼ , ):／:::::: /'': : :＼
}-----V ／ニニニ ＼ 〉::::::i ､ ー イﾞ:／i:::: ,' : : : : : :.＼
' | ＿／ニニニニニ ヽ ' ∧:::|ﾆ≧‐＜ｉ/＼==|: /: : : : : : : : : :＼
/ | ＿／ニニニニニニニニ ∨ニﾆ＼/i/＼__ヽ__| ＼:/`＼ : : : : : : : : : ＼
' |/-‐=====ミニニニニニニニｉニニ{i ＼i/i//i/i/＼i|ヽニ ｉ＼ : : : : : : : : : :> _ へ
/ lニニニニニ＼ニニニニニニ|ニニ ＼ `＜i/i/ｉ／＼ Vニ,,､＼ : : : : : ／==／ ／＿
, |__ニニニニニ ＼ニニニニﾆ||ニニニ=＼ ￣∨i/ｉ＼ ﾆ= ＼＼ ／==／ ／(＿＿
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ｉ | ＼ =＼ニニニニ=ニニ:人ニニニニニニニニニニ=- ＼ニニニヽ {//// ー´/≧=
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| 新宿衛生病院地下、三階層へ下る階段での戦闘。
| レイ・ザ・バレルを説得しに来た横島、杏子。手術室から助けられた天龍とシグ。
|
| 彼らに襲いかかるレイ・ザ・バレルと、その傀儡。
| シロッコ用機動服『ジ・オ』と、ヤザン隊の二人の死体の入った『ハンブラビ』。
|
| 突如横島を殺害しようとしたレイ、発射された弾丸を防いでそのまま斬りかかる天龍。
| 階段を下がるレイと追う天龍。困惑の横島の腰に鎖が絡みつき引っ張る。
|
|「下がれ天龍！ そいつらァ強いぞ！」
|「そうかよ！」
|
| 白衣が翻り、強烈な蹴りがレイを狙う。
| 予期せず御開帳の観音様。横島なら釘付けだったろうが、レイは困惑に留まる。
|
| しかしその困惑で過分。一撃目は回避したものの、回転力そのままの回し蹴りがこめかみにヒット。
| たたらを踏むレイ、下り階段。踏み外す。
|
| 背後の『ハンブラビ』に支えさせながら、『ジ・オ』を前に出す。
| 無数のスラスターで強化された力士のような巨体。恐るべき加速を誇るモンスターマシン。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
∧ / ＼
iﾍ ∨｝ ／ー─‐--＝=ヽ___
┌┐ .iﾍ ∨｛ ／圭／ ｀ヽ__
/（） ｀ヽ_Ⅶﾍ ／｀､｝ ／｝ ｛ミ）三ﾘ ｝ンヽ
｛ ＿ | 〉Μ｝/ / ＼／ゝヽ‐-Y ﾉ彡/
｛/ ｌﾖ ヽ/ ）｀´ノ i ＝ヽ ｝:.:.:.:.｝｀ー-‐´
〈 ｌﾖ Y /¨ ﾉ ヽ:.:.:丿 ﾊ＿＿＿
7┌ー｛ ／ヽ .／ｌ ＜＼ ＼ソ ｀ ヽ
＞＜:.:.:.:.人 ヽ ／ｌ'¨∧＼ ＼ ゝ〉 ∈∋
≦≧:.:.:.:.:.:.＞ ｝ヽー T圭'∨ ∧ ＼ ＼〈 ﾍ
ｘ彡≧:.:.:.:.＞＜ ｝／ ヽ ∨ ∧ ＼/ 〉｀゛¨ '' ‐- ...,, _ﾉ
,. ''":.:.:.:.:.:.:.,. ''"｝ ／ /＼ .∨ ..∧ ./ //＼ ｀"丶
,. ''":.:.:.:.:.:.:∧┘｛圭ｿ｝ .／__ / ＼∨ ∧／＼// ＼ ｀ヽ
,. ''":.:.:.:.:.:.:,. ''" ＼〉┐≦/ |｛（）｝ /:.:.:.:.:. ⅣA∧／／ ＼ ＿＿ヽｭ___
〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,. ''" 〉＞' .ﾄ─∧ / つ｝｝ ＼ ＼＼ ｀､ ＼ ／ー‐‐‐＼ ｀ヽ
∨:.:.,. ''" ∨∧／ ヽｌ ゝ彡ｿヽ ＼ ／／＼ 〉 ヽ ｛｝
ヽ' / ｝ヽ / ヽ / ヽ ＼ ＼ﾉ
/ ｝ン ｛｝ ./ ヽ ＼ ＼ ／／ ヽ
/ ≦≧ノ ｛｝/ ｀Yヽ ヽ 〉
〈 ｌﾆﾆｌー-‐／ ＼＼ ノ ﾏ ヽ ／
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| トレーラーヘッドめいたタックル、通路幅から見て逃げ場無し。
| 地面から生えた槍の壁を障害ではないかのようにぶち破る。
|
| いかにも、槍の壁は障害物にあらず。
| 天龍が階段から通路に戻るための足場であった。
|
| 飛び出した『ジ・オ』が、通路壁を破砕。すぐにターンをしようとして転倒。
| 絡みついた物質を取り除こうともがくも、床に張り付いてしまう。
|
|「横島、正気にもどれ！ 死ぬぞ！」
|
| 杏子の叱咤、しかし横島は動けず。
| 天龍が横島とシグを小脇に抱えてダッシュ。
|
|「シグ、トリモチ撒いてけ！」
|「きくのはさいしよだけだけど」
|
| 魔術で作り出したトリモチを床に広げて後退。その間にレイが階段を登りきり、『ジ・オ』が脱出。
|
| 当然のようにトリモチを飛び越える。レイと『ハンブラビ』もだ。
|
|「なんでだよ、レイ……！」
|「横島。お前が、『そう』だからだ」
|
| 眼前で閉まる隔壁。急停止できずに、衝突する天龍他ニ名。
|
|「これは……おっぱいと壁のサンドイッチ……！」
|「よこしま、しょうきにもどった？」
|
| 壁はともかく潰れるほど押し付けられた天龍の、世界水準超えおっぱいが横島の目を覚ます。
| それでいいのかはこの際保留だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/:::::::::::／:::::::::/:::::::::/...{:::::::|:|:::|y／ ヾ:_∨:::::::}........ﾍ::::::::::::::::∧
|:::::::／::::::::::::::!:::::::::∧:´＼::Ⅵ:}' r､ ! |:::::::/＜.....∧:::::::::::',Ⅵ
|::::/ i::::::::::::::/!:::::::::{ ﾄ､ {_メ､ヾ{l:| } |::／i::, ￢､....|::::::::::::| ヽ
|:/ ∨::::::/ V::: ﾊ {:! ::::::::::. ゞ ﾉ’ }'∠ i ',ヾ::::::i:::::| 『そう』ってなんだ！
}' ∨:::{ ∨ﾄ､ ゞ ﾉ::::::::::::::ー─‐::'::::::u (-､: }:::::::i::',:::i こんにゃろー！
ヽ:| ヾﾊ-:< , ＝ ,._ Lﾉ :':::::::::',ヾﾘ
八 } _｀_／ __,.ハ ,...r:':::::::ﾄ､:::',
从 V,,..z7'´ ', 人. ヽ- ､| ＼ ＿
ヽ ∨/ j ,. ＜ / ＼__ _, ´
､', ,..:'::´::: / / }
ヽ---へ::::::::::::/ / /
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| 叫びながら横島は立ち上がり、超能力を展開。
| 石田のような強さや、キオのような超感覚もない。しかし、『ジ・オ』のビームを逸らすには十分。
|
|「ビーム出た……？」「さっきは実弾だったろうが！」
|
| 初見殺しを幸運で防いだことに、冷や汗を垂らす天龍と杏子。
| 後方で砲手として構える『ジ・オ』。幽鬼の動きで迫る二体の『ハンブラビ』。
|
|「俺の心を……惑わせる！」
|「びーえる？」「断じて違う」
|
| 緊張感が足りないが、軽口で己を鼓舞しているのだ。麻呂による教えである。
| 勝てる相手ではない。背後の隔壁も壊せそうにない。
|
| もはや横島たちは袋の鼠、打開策は思いつかない。
| 薄暗い地下道、どこかで聞こえる機械の唸り。明滅する裸電球。
|
| かすかに聞こえる笛のような風の音、ここが始まりの場所だ。レイは思う。
| だが、すぐに顔を上げた。風の音？ ここは地下だぞ？
|
| そう、風ではない。笛だ。口笛……聞き覚えのある音楽。クラシック？
|
|「ワーグナー……？」
|
| 曲名を思い出すより早く、横島の背後で隔壁が割れた。
| 割れ目がピシピシと入り、バラバラになって崩落したのだ。
|
| そして隔壁の穴から……とてつもなく恐ろしい気配が噴出する。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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l,.;i: :::::::!:::::l:l､_ 丶::', }::l:::l-;ﾘ::l:::/: : l |
/l/'; ::::::l:::i::liKてﾃﾐヾ､ 〈 ｲ‐l:ﾉﾌ_ｊ:/:/:: :: ! ', 誰だ！！？
ｊ.:::l:::;:::';:'､ ￣｀ﾞ , ノ'￣ノ'ｊｲ:::: :: l: : ヽ
,. -'.::::l:::ヽ:::ヾヽ__ /::::ノ:: l:::.::.. ﾞヽ､
/.;ィ::::::;l:::::::`「ｒ ┐l 丶 _ノィ":::::: l::::l:::::::. ::. 丶
ｒﾍ{ {:::::八ﾄ;::::ｊ L..」 ﾄ､ ‐'ニ'‐, _,.ィ7:::::::: /:::::l､::::::::::..ﾙ_
l ` ヽ:{ `7,‐ニ‐､ ヾヽ､___ ゝー''´:::::::;ｲ:::::ｊ:lﾉ::∠-' __｀丶､
l ` { { ｒ'⌒ヽ!lヽﾄ,l l lヽー::::::::／ ｊ::::/ﾉ'´ _ '´ ￣ ｀ヽ
ｒ ┴‐-､ | l '､___ノ!.ｌ `'┴''"｀'''''"´ ﾉ-'´／ ＿_ .l
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/ィ" ,､i { { ﾉﾉ{ ｀ヽ､_ - ￣ / 丶､ ＼`ヽ､_T´
/ ゝ_}ヽ_二_ ' .}ﾞヽ ',ヽ､＿__/ 丶､ `丶､_l
} . ｽ `l {. / .l ￣ `－-､ー- 丶､ ｜
ノ _ -――― / lヽ|￣￣ }┘ | ヽ 丶 ト、 l
／／ ハ {'､T －‐ 'l´ ノ ヽ ヽ | ｀ヽ
. }, ' ヽヽ l`ﾍ .| ／ ／ 丶 ｊ
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|「俺が誰なのか、あんたはもう知っているんじゃあないのか？」
|
| ニュルンベルクのマイスタージンガー 第一幕への前奏曲。
| ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーが作曲した舞台。
|
| 壮大な物語の開始を想像させる荘厳なオーケストラ。しかして物語は喜劇なのだが。
| とにかく口笛で吹くような音楽ではないし、か細い音が去勢を張るようで心もとないことこの上ない。
|
| 隔壁の向こうから姿を表したのは、筒のようなシルエット。
| 真っ黒なマントとつばのないシルクハットみたいな帽子をかぶった怪人であった。
|
|「お前……『ブギーポップ』だったか？」
|『委員長？」「ながとさん」「誰？」「あ、夢の」
|
| 『品川大聖堂の夢』を見ていたレイと杏子が驚きの声を上げる。
| ファンタジーの存在だと思っていた死神の乱入。しかも、簡単には破壊できないはずの隔壁を容易く打ち破って。
|
|「時には」
|
| 『ジ・オ』の銃撃が空中で打ち払われる。バラバラになった弾丸が壁にぶつかり転がった。
|
|「時には四月に雪が降ることもある」
|
| 血相を変えるレイ、何事が起きているのか理解できぬまま、見ていることしかできない横島たち。
|
|「だが、それは春の暖かな日差しに、積もることなく溶けて消える。
| 冬の夢に揺蕩う暇も与えず、白昼夢よりも儚く潰える」
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＿-＝=‐-＿_
,.ｲニニニニニニﾆﾆ-__
/ニニニニニニニニニニ=-__
. /ニニニニニニニニニニニニﾆ‐__
/ニニニﾆ＞､ニニニニニニニニニﾆ-_
. '二ニ／ ）二二二二ニニニニニニ＼
〉ﾆ/ ,ｲ二二ニニニニニニニニニﾆ＼
ｒｲニ! ,.イ二二ニニニニニニニニニニニﾆヽ
＿'-―=＝＝ﾆﾆニニニニニニニニニニニニ二二〉
〈ﾆﾆ二二二, '⌒)=-ﾆニニニニニニニニニニニ＞'ﾞ
ヽ-―=ﾆ入_,..イ二二二二ニニニニニﾆ-ニ／ 夢見る時間はおしまいだ。
. ﾉﾆﾆニニニニニニニニニニニニニニ二＞-＿
. ,ｲﾆﾆニニニ=＝=ニ二ニニニニニニニニ二二ニ＞､ 夢と現実の境界をなくしちまうから
/ﾆ＞'"::::::;:' ＼::::::::::ｉ＼ニニニニニ／ニﾆ＞'" ／ 死神なんぞを呼び込んじまうんだぜ。
. /／ /:::､::::::l. ／ Ｖ::::::l::::::l､ー-=ニニ=‐::::/ .／
＼./::::i:::＼::::､_,ノ l:::::::l::::::l.ｿ ﾉ::::::＼:::::::／―‐'"
. l::/.l:::::::ﾉ＼､ .ｌ::::::l::::::l イ:::::::::::::ヽ:::ゝ、＿＿＿＿
!{ !:::く ｀ |::::::l:::::,! ヽ:､::::＿‐=ﾆﾆニニニニニ〉 ,. ヽ
ﾞ､ l:::::::::､ _ l::::::|:::/.__-‐ﾆﾆニニニニニニニニ/ , '" .l,＼
ヽ::::::::::::ヽ､ !::::::|:/ニニニニニニニニニニ二/ ／ト､ !//＼
l::::::::::::::::ハ ｌ::::::l/ﾆニニニニニニ二二二二〈 ／ .!//へ、 .l///,ｲ
ﾉ:::::::::::::/ `/l:l:::::!／ヽﾆﾆニニニニニニ二＞' ﾄ､ .l'/////＞ '" .|
/:/!::::::::/ .／ﾆ!l:::::! 〉ニニニニニニ＞'､ !/＼ l//＞'" /
/:' .l::::::/ ヽﾆﾆ!l::::l ／ニニニ＝‐ ﾊ"´ .!'∧ l////＞" ／
, ' .l::::;' ／〉ヽ.l:::lｲﾆﾆ＞'"∧ /,∧ .!'//ヽ l//／ニヽ. ／
l::; !, ヾ,...､::!-‐/ｌ .//∧ ///,∧ .l///, イ二ニニﾆ', ／
. ':{ }l /;;;;;;ヽ､//,l ////,∨-‐=ニニニニニニニニﾆl´
ﾞ、 j.,'ゝ;;;;ﾉl.///＞‐＝二二二ニニニニニニニニニl
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|「うう、うううう……！」
|
| 悪鬼のごとく襲いかかる二機の『ハンブラビ』。
| 鞭のように伸びる『ウミヘビ』を柳のごとくのらりくらりとかわす『ブギーポップ』。
|
| そこに『ジ・オ』のビームライフル。
| だがどんな手品か、黒マントで弾き飛ばす。
|
|「いまやあんたは『世界の敵』だ」
|
| 『ブギーポップ』が刀身のない剣を振るうと、二体の『ハンブラビ』がバラバラになった。
| 無理やり動かされていたラムサスとダンケルの死体ごと角切りにされ、濃い血臭が地下通路に充満する。
|
| 下がるレイ。落ちる隔壁。
| 一瞬でバラバラに、足止めにすらならない。
|
| 前に出る『ジ・オ』。交通事故さなからのタックル。
|
|「殺しちゃダメだお！」
|
| 不意の声、突進を回避しながら振り返る『ブギーポップ』。追いかけてきたやる夫の必死の叫び。
|
|「取り返しがつかなくなるお！」
|「なんだって？」
|
| その一瞬の隙。
| 『ジ・オ』の下腹部から飛び出したマニピュレータが、液体金属の刃を『ブギーポップ』に叩きつける。
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ﾆ三 三ﾆ＿＼ [ミ 、 ヽ 〉 / |!
ﾆ三 三ﾆ _入三ﾆｰ＼ ミ＞､ ∨￣V |! ＿ｒｭ＿
ﾆ三 三ﾆ > . c=≦ ﾑ ﾏ }＿/ /! |! ＜＿／ ＼
＿＜ ﾍﾆ三 三ﾆ＜ ﾏ､ヽﾍ 〉 人 /j[]〈人｣ iト＜ ／ヽヽ_人
|「ﾍ＿ ﾆ三 三ﾆ ﾏリ 〉 イ}三ﾊ } ／/＼ 弋 レ＼ rレУ´￣ヾ､
レc≦V ﾆ三 三ﾆ ﾏ. c=≦レィ レ ＿＿ ､ｪｪｭ｀ヽ ヾ
三三ﾏ三ﾑ ﾆ三 三ﾆ ＞ ´/ {ﾄ Уｧ人} ＿＿＿ ＼
＝ ﾏ三ﾑ ﾆ三 三三ﾆ＝ {! ヽｰ＜ノ ￣└┴' ハ
ﾏ三ﾑ ﾆ三三 三三ﾆ＝ ﾊ ＿/＿＿ 「] ／￣￣＿＿ }／
ﾏ三ﾑ―＝ﾆ三 c≦ ﾑ 八「 ￣￣￣＼ノ´ ＜ｊ リ／
〉三ﾑ ―＝ﾆ三ﾏ ﾑ //ﾆ7 / ヾ三ニ＝ 〉ー彡ヘ
.c≦三三 〉 ﾏ ﾑ 〈 ´＿ 〈 - ＞ ´ Vﾆー―、
c≦三三ﾆ＝ ﾏ ﾑ ﾑ ﾆﾑ ＞ ´ ｡≦､ ＼ ＼人ﾘ
三三ﾆ＝ ７/ ﾏ ﾑ ﾑ ﾆﾑ ＞ ´ ｒ≦＿ｒ‐，＼ ／| ＼
ﾆ＝ 。 ´ // ﾏ .cﾑ＿ ﾑ ＞´ ＿＼ ＼ ｰｲ 〉 ／ ﾘ ＼
。 ´ 〈 ￣￣〉c≦´ ﾏ ﾑ < ィ > ＼ ＼ / 〉´／ .|!
／ ￣ ｡＜ ﾏ_〉ﾑー､ ／／＼＼ ＼／／ |!
／ 。 ― ´ ｒｲﾍ ／⌒ﾏﾑ Vﾍ´Y´ > ／＿＿＿_人
―＝ ￣￣￣＼ 人ゞＶ｡彡ィ´ 人ソ ＝ﾘ´ ／ ／ ／ ＼
＼ 〈 Vｰ┬´ ﾏ､_＿／ ﾏﾑ ヽ／ ／ ―― ＜ ＼
-＝三三三=-. ＼ ﾏﾑ 八 フ´ ﾏﾘ 人＼／ ＼
ﾆ三三三三三ヽ ＼ ﾏﾑ 〉イ ＜ ／ イ ＼ ｒ＝ミ､
三三三三三三ﾆ＼ ＼ﾏﾑ ﾏﾑ .｡ ＜ ﾑ⌒ / 〉ト/ ､
三三三三三三三ﾆ＼ ＼＿ ≧￣ ﾏ ﾑ / /7 { 人ﾉ
三三三三三三三三ﾆ＼ ＼￣￣￣ ﾏ ﾑ / {] ＼＿
三三三三三三三三三ﾆ＼ ＼ ﾏ ﾑ / {] /三
三三三三三三三三三三ﾆ＼ ＼ ﾏ ﾑ ヾ、/三三
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| 常人ならば泣き別れするだろう一撃、あの謎のヒロインＸのギャグ補正すら下した必殺の刃。
| しかして『ブギーポップ』は無事であった。
|
| 無事と言ってもマントの半ばを切り裂かれ、脇腹に深い傷を負っていた。
| 傷は深く、常人ならば致命的だった。だが『世界の敵の敵』たる怪人は、眉をひそめておしまいだった。
|
| 彼の背後で、『ジ・オ』がサイコロステーキみたいに細切れになって崩壊。
| 『ブギーポップ』は苦痛を感じさせない表情でレイとやる夫を見比べる。
|
|「…………芳しくないな」
|
| 手先であった三体の機動服を殪され、レイは嘆息した。
| やる夫の言う通りだった。己の生命への執着も失っていた。
|
| レイは手にした拳銃を己のこめかみに押し付けた。
| 何を気付かれたかは知らないが、今すぐ死ぬべきだ。
|
| 引き金を引こうとする指が動かない。
| 走らせた視線の先に、手をのばす横島。
|
|「君は……この期に及んで！」
|「よくわかんねーけど死なせるかバカヤロウ！！」
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:::::::::::／/::::::::／:.:.:.:.!:::::/.:/:.:’、:::::::::::::::ﾊヾ:::::;
::::::::/:.:/:::::／三三ﾐi:::/:./=-、:i:::::::::::::::::::l ヽｊ
:::::::{三≧=zミ ,jiﾘ j/／ ヽｌ::::::::::::ﾄ::::l
ﾊヾｌ i} ㍉ / i} i|ｌ::::::::::::i l/ お前に死なれんのは
ヽ、＿ z=ﾃ ,iミｘ、＿ , ,l:::::::::::ﾘ ……嫌なんだよ！
￣ ゝ ￣ /j::::::／
、 ﾉL ´ノ /ムイ
::ヽ ⌒ ,r- ＿ _, ノ-'
::::::iヽ、 ー-―--’ ／
ヽ::l ＞:... ￣ .... イ
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|「そんなだからッ」
|「うるせえバカ！」
|
| 拮抗する超能力、だがレイの指が動く寸前に次の邪魔が入る。
|
|「なめンな！」
|
| 杏子の槍がレイの右手を串刺しにする。取り落とす拳銃。
| 次の瞬間、わっと飛びかかる天龍とシグ、やる夫の三人。
|
|「頼むやる夫さん！」「せんもんか！」
|「やる夫プレッシャーに弱えからそういうのやめるお！！」
|
| だが、アサギと『ひとりでお帰り』の顛末は共有されていた。
| 天龍とシグからの信頼の眼差し。それは、二人が敬愛するボスやらない夫の親友に対する容赦のない信頼だ。
|
| やる夫にとっては過分なものだが、応えなければやらない夫の顔も立たない。
|
|「『ブギーポップ』！ こいつを殺すと『祟る』お！」
|「それは……」
|「だからやる夫が止めてやらぁ！」
|
| 顔を見た瞬間ピンときた。やらねばならないことが直感でわかった。
| そんなこと初めてだ。だがやる夫はその導きに従うことにした。
|
|「弥勒菩薩の思し召し！ やるお『鏡と茨』！！
| 『エンジェルトランペット・トライアル』！！」
|
| やる夫に頭を鷲掴みにされて、レイの思考はホワイトアウトした。
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/.:::::::::::::::::::::. .: ..::::/: .: 丶 ヽ 丶
,' :::::::::::::::::::::::::::;;-‐7: .: . .:: | ヽ 丶
} :::::::::::::::::::::::::/／/:: .::: .l .::l / .: ! l l !
/ :::::::::::::::::::::::〃,.‐l:: ::::: .::l :/! :/ ::::: l l l
::::::::::::::::::::::::{ !{ l::::::::: l /l:/ l:/: /:: l ｊ
.::::::::::::::::::::::::::::',', l:::::::::: l.:lｒミ､i7 ,ｲ::: : l l .lｊ /
::::::::::::::::::::::::::::::ヽ７:::l:::::: . ,l::lヽ{7`l:.//:::: .:: !. ｌ //
::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::l::::::: .: /l::! ｀ l/ｲ::: .::l: l: :!.i/ 感情に流されて事態が好転するものか。
::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::/!::::: .::: l. l:| /::/::;ｲ:,:: ;ｲ:l 無用な情は心を乱し決断を鈍らせる、
::::::::::::::::::::::::::::: :::l:::l !:::::: .::::: l l ﾘ ノ-ﾍ/. l:,:: / ｊ::! 邪魔なだけだ。
:::::::::::::::::::::::::: /!:/ﾞl:::::: .l:::: l ! __ ノ /;／. 〃
::::::::::::::: ::::: /`!lヽl:::::: :l::::: l. l ‐-､__ﾉ´ / // /
::::::::::::::: :: { ll:l,`1::::: :l::::: ! l , -'/l:: /!{ ノ'′
::::::::::::::::. l-' ﾘヽヽ:::::ll:::::. l i/: {. ｌ: l .!{
:::::::::::::::::::.. ヽ厂 /∧:::ｌｌ::::. l l:::: !. ';:.l `－
､::::::::::::::::::::::::... ヽ<<_:::ヽl:';::: l;.l:::: i{ ﾞヽ,,
ヽ｀ﾆー-､:::::､::::::.. .ﾞヽ‐'"::l::l:: l:!l::､:.ヽ
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| レイ・ザ・バレルは落ちていく。落ちていく。
| 心の深淵、魂の大海、夢と幻の断崖。
|
| 様々な記憶や感情の欠片を横目に、レイはひたすら落ちていく。
|
|「四月よ、四月よ……夢を終わらせてくれ、愚かなぼくのこの夢を……」
|「そんな簡単なもんなら良かったお」
|
| 落下し続けるレイの身体を、何かが受け止めた。白いヒトガタ。
| さっきこんな奴がいたようないないような。
|
|「弥勒菩薩……？」
|「ミロっさんはもういねーお。やる夫は代理の代理」
|
| デュランダルは末世を救う神として、救世主として弥勒菩薩を信仰していた。
| 『教会』の人間にはあってはならないことであるが、『結社』に侵入していたデュランダルには必要なことだった。
|
| デュランダルは弥勒菩薩の到来を待ち望んでいた。
| 世界を救う、人々に意義を与え、静かで正しい世界を作るのには、弥勒菩薩かそれに等しい神が必要だと語っていた。
|
| 故に、レイは弥勒菩薩の名前を無視できない。
|
|「お前は……」
|「こっちの事はどーでもいいお。今の問題はあんた」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣ヽ
ｒ― 、 ー― / _ 」ー― 、
＿{ _ ) ´￣ ｀ー」 ￣L ＼
／ ｒ┘Lノ ヽ_ｒ ┘｀ヽ ＼
/ 人_ 「 ヽ { ／ ヽ
八 / ７ / / ﾄ、 ヽ. ＼／ヽ i i
/ { ＼_/ /| { 、 Ｌｊ-┼-}､ } } ヽ ＼ ﾉ }
{ ヽ 八 i { 」＞ ヽﾉ）ノｊﾉ ノ_ノ ノ ｊ i { 人
八 V ヽﾄ メ_フ ､_ ￣ ゝﾃ=ｋ､rイｰ、 八 人_/ } チクタクMagicaるしゃるうぃーごー！
人 ) ﾄ|ﾊ _ｧﾃめ､ ｒゅわ｢｀）{ ﾘ （ ｒ）
人 ヽノ ﾉ | い ﾏ.か 心少 ｒ人}ノ ＼ ｀Y(＿ﾉ)
_ ( )_ノ ／ .八＼＼ゞ-ﾟ ｀＿_ 人ｿ ＼ ｀ ｰ´
( ー彡' ／ / 入 ::。 ヽ_ｿ , ィ J) ＼ ＼
／￣￣ ｀ ー―彡 (し ＼ ≧c｡ ,｡≦ {! ＼ ＼ ｀ー 、
{ ｒーァ ― ￣ ＿ノ 「ヽ「 > ｊ┤ ヽｰ 、 ＼ ヽ
ヽ/ ／ ／ / ／「￣{ / / ７⌒ ＼ ＼ '. }
ｲ ）′ ／ / ／ ｀7ｰ/ /⌒7 ´/⌒} ／ ＼ ヽ . j
{ヽｰｲ / / （└i＿ ｀7 / ヽ-ｧ⌒ トｙ-、 _ｒ ヽ }i . /
￣ { /{ 、 { 八_ｒ､__/ / 「 /Ｙニ ＼ __ｒ＼ 八 !(
＼ ( 乂 } ＼＿_ / ノ /７八介＼__ノ彡ヽ ｀ ﾉノ＿ﾉイ ／ } ｊ ヽ_ｨ}
＼ミーﾒ､ / / ／ ﾑィ⌒ﾊ ( 八ﾍ ,イｒｰ' ∨ / ｊ 人＿ノ
￣､＿） { i / /〉i |☆ｊ | ､〉 L__ィｒ'☆o V ┼＝彡'
＼＿人 /｣ j | ｊ | ィ 个☆ ８､ V、＿ノ
> i ／) ｲ |☆ｊ | ｺ | OooO ＼ ヽ
/ ヽ／｀Tレニニｭ､ r―‐┬┘ ＼ ＼ '.
LニニニニニニニL. ＜＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「チクタクマン、黙って」
|「はーい」
|
| 気がつけばレイは宇宙にいた。
| 宇宙というか、古本屋というか。図書室というか。
|
| 壁の展開した古びた建物。その四方が宇宙という不思議な空間。
|
|「ようこそ、『やる夫の中の入即貸本』へ。
| チクタクマンにミロっさんに、翠星石にと立て続けに三人も入れりゃあコツも掴めるってもんだお」
|
| いつの間にか、レイとやる夫は椅子に座り、二人の間には小ぶりなテーブルと真新しい本。
| タイトルはレイ・デュランダル。
|
| 慄然とするレイ、だが更に二冊。やる夫がテーブルに並べた。
|
|「なんか表記ゆれするとか思ってたら、まさかの『二つ』だとは思わなかったお」
|
| 並べられたタイトルは『哀しみのからくり人形楽団』『暴虐のからくり人形楽団』。
|
|「これは？」
|「この後のあんただお、おいお茶」
|
| 教科書みたいな光沢のある表紙は白い。そこに堅苦しいゴシック体で黒字のタイトル。
| 三冊ともそれは同じ。やけに薄いのも、同じ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
ｒ=ｭ､ ,ｨ､
_ 人ニニｭ､ｰ､ ムハ
´ ＿ｒYニニヾ≠ニニ､
/ 人_ィ人ニニｲーヘニﾊ
/ _> /７´ )'ヘ／｣////∧｢
ｒ＝ｭ<￣ 八ｲ/フ´ ｀ﾏ///ﾘ/{_ハ
｀ﾏニﾆヽ {ｙ'イﾆ7 ヾ´/// ////l ｢ヽ.
ﾏニニ)イニﾆ/ ､＿}//// ////7j ＼≧=ー-―＝ニニ＝＝ー
ア-ォ┼=ｒ´ x }///／/ 从//ｲノ ｀ ー― ´￣ おいじゃぁありませんし
/イ/ ハﾆ八 ｊ/ゝ!/// ノ ' ｊｲ//〈 ご自分で淹れてくださいまし。
// /ｚ｣イﾊﾏ//ﾊ// ′ ｲ/≧ ＿
// //7 ヾﾄヾ ﾏ! ー= ‐ﾟ /ァ_///////≧ｭ- ＿ 私はメイドではありませんわ。
// ////7_ Z, ｀ﾍ≧ｭ､ ＿,人_ <//////////////≧ｭ- ＿
. // //////]ｚｭ､＿ ア´ ィヾ ｀マ////////////////////≧ｭ､
// {////ノ⌒ー― ￣ ｊ〜-y'＿ノ｀⌒ﾏ////////////////////////＼
. // ///// / _ ｊヽ V/////////////////////////ヽ.
/,ｲ ﾊ///{ ｢ヽ_,ｲﾑ| ＼ V///////////＞ ´￣￣￣￣￣｀
/八 ﾏ///! |ニニニー=ｫ｀ｒー＝ｒ≧､//＞ ´
//ハ ﾏ// _｣!ニニ｢ﾏﾆイ ＼ ﾏ ﾘ
///ハ {//＿ -― T＿ｊニニﾑ ﾏア＿, 人ヽ ∨＿＿ ィ￣￣￣ﾌ
/////＼{＿7 /ト､ ｀マニﾘ ヽ7ニ{__〉＝≧ｭ､＿＿＿＿ ィ´
////////// ハﾊ_＼ ￣ {ニｰァニニニ!＿ ィ//////ﾊ
///////// / ｒ－､｀ヽ ﾏ └イニﾆ7////////////ﾊ､
//////// ／￣￣ヽ｀＿＿＿ ﾉ＿ｚ≠イフ///////////////＼
/////／彡イ }､ニニニニﾆイ !/////////////////////ヽ
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イ/ /! ／ 7ニニニLﾆ｢７´ ヾ///////イ////////////ハ
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|「言ってみただけだお」
|
| 黒いドレスと同様に死を纏った女が顔を出す。
| 死神だ。『ブギーポップ』の同類だとレイは警戒した。
|
|「つーか、モンちゃんじゃなくて『鏡と茨』に頼みてーお」
|《ワタクシは忙しいので》
|
| 鈴を転がすような声色、心地よい声の主は黒い女とは真逆の白。
| しかしこちらも、死と毒の気配を色濃く身に纏う。
|
|「んじゃあ、はじめるかお」
|「ここは何で、お前は何者で、何が始まるんだ？」
|
| レイの問いかけは正統で、しかしやる夫は不思議そうに首を傾げた。
| 何を今更、当たり前のことを聞いているのだとばかりの態度にレイは苛立つ。
|
|「ここはやる夫の精神世界。やる夫は『十壊』を滅ぼす『スーパー運命破壊マシーン』で、これから始めるのは見学だお」
|
| 周囲の宇宙に変化。
| 星が、星々が流れ落ちていく。
|
|「………………何のだ」
|「あんたの最期、未来の。これから死んだ場合の風景」
|
| 三冊の本が勝手に開く。
| 『レイ・デュランダル』の最後のページ、最後の文章が目に入る。
|
|『拳銃自殺。ただし意識は電脳化する。水死＝神になる儀式と信じていた。
| しかし『死後強化される異能』により、能力だけが暴走。
|
| 以降、電脳化した存在を『哀しみのからくり人形楽団』。
| 暴走した異能を『暴虐のからくり人形楽団』と称する。
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. / | |､ ＼ ＼ ﾊ､ ＼ ＼ ､
| ＼ | | | ＼ ＼ ﾊ ﾊ＼ ＼ ＼＼
| ﾄ ､ ヽ. | | ', ＼ ＼ ヽ､ ヽ ＼ ＼ ＼ ＼
| | ＼＼＼| | ＼ ＼ ＼ | ヽ |､ ＼ ＼ ＼ ＼
/＼ヽ | ヽ＼＼ ､ ヽ ＼ｰ ､ミ ､ ＿ヽ_ | ヽ | ＼ ＼ ＼ ＼
| / | |＼＼＼＼ ＼ ＼_ノノ､´ || ､ |､ | |､ ＼ ＼＼ ＼
| / | | ＼ヽ＼＼__ヽ ,ｨ ,ｨ' ヽ ＼ ||- |､ ﾄ. | }､＼ ヽ ､ ＼＼ ヽ
| | | |彡{ /ヽ彡乏三ミゝ(ミヾ ｨﾆ升≡ﾐ-ﾘ ヽ } jノ ＼ ＼＼ ヽ ヽ|
| | | | / / }} | |彡升大ヾ/( ｲ:じ:}:i ':＼ j! /､ ＼ ＼ ＼ ヽ }
| | ＼＼んソ＼/ﾉ 杙ﾘソ孑' ゞ=-' |＼＼ /::|:ヽ ＼ ＼＼ }
| | ＼＼ ＼ゞｰﾐ､__)ソｿ/ , } ､＼＼∧::|:::∧＼ ＼ /^i ヽ
ヽ ', ヽ＼ ヽ ＼＼＼( (ｰ-彡' ﾉ ヽ＼〈::::'::|/:::::〉 ＼ /ヽ / 《では目を。
＼ ヽ ＼＼ ＼ ＼＼ 〉〉 )) ∠ﾉ ／)＜´￣〈ヽ::::|:::: / Yヽ | | ,' 目を見開き耳を澄ませ
＼＼＼ ＼＼ ＼ ＼ヽ(_ノﾉ ,ｨ'ヽ ノ｀＞〈ｰ' ＼ __)⌒)|:::,' ,' | ! ,〉‐， 拒絶していた認識を開くのです》
＼ ＼ ＼＿､ ＼ ＼/__ノ |￣/ゝｰ' > ) ） )ｰ-' 〈∨. / i / / /
. /＼ ＼ ＼ゝ＼ ＼ ＼|＞__､ゝ//_, / / ヽ (_____/^,/ .У / ,'
. ∧ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ /ヘ{/ |/っ 〉 ／) ／／ /ヽ / ' / }
( ヽ. ＼ ＼ ＼ ＼ ヽ ＼ 〈⌒/ ／ / , ' / / ∧ | | |｀ヽ
<ヽ) ＼ ＼ ＼ ＼ ヽ ) ＼｝ ゝ--/ /,イ ／ / / } } / | /
', ｝ ＼ ｀ ｰ‐＼ ＼ / ＼ ＼ / / / ／ / ／) ノ, (
', ＿_ ＼ ＼ ＼/ゝ-' ヽ ＼/ ／ ´／( ／__ )
ヽ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ __／ ゝ-=ソ /ミ_ノ
＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼----ｰ― ´ ) ー―ゝu）_ﾉ ／
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|《レイ・デュランダル。貴方に予見を授けましょう。
|
| 元来力のない欠片に過ぎぬワタクシですが。
| この『やる夫の中の入即貸本』の中でならば力を振るうことができましょう。
|
| レイ・デュランダル。
| 貴方は己の正義を信じ『良くあろう』と生きました。
|
| しかし、誤りに気付かなかったのが貴方の不幸。
| 知りなさい。理解なさい。
|
| 心は、必要なものなのですよ。
| ワタクシのような天使にも、貴方のようなヒトの子にも。
|
| そして、我らが偉大なる父にも……》
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＼ / / / / /
＼ 《暴虐のからくり人形楽団》 / / / / /
＼ / / / / /
＼ ／￣￣｀ヽ / / / / /
＼ ＼ /................../ヽヽ / / / / /
＼ ＼ l....//｀∨｀ヽ......,ヽ / / / / /
＼ ＼ /./..l|...l ヽ.....l.|.....',.ゝ/ / / / /
＼ ＼ ﾉ...l..l|ヽ.| ヽﾉﾍ....l＿フ / / / /
＼ ＼ﾉ..l| ､_ ' / ',..l､ ｀ｰ- _ /＿＿＿＿_/ ＿__
＼ ＼ ∠／l| ‐-イ l|l｀ｰ- _ ￣{´ ＿＿}´ ニノ
＼ ＼ ／ ／ l.............＞ｰ-｀ー'''￣ ｀￣
＼ ＼ ／ ／.....＼ ﾉ＿ -'' / /
＼ ＼ _ヽ／ ／/..........._ヽ‐-‐ ''"ヽ| / /
＼ ＼ _,-''" ⌒l／ ￣￣￣ / ＼ ./ /
／￣｀ <´,, -─''"´ { / ヽ / /
｀ｰ--‐''" ､ l＼ / .ｉ / /
＼ ＼ l ヽ-‐''"l. ｉ. / /
＼ ＼ .l l ヽ l / /
＼ ＼ l .l ', l/ /
＼ ＼ l l ゝ_ λ. /
＼ ＼l､__ﾉ ∨ ∧. /
＼ l ￢} ∨ ∧ /
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| 拳銃から放たれた弾丸は速やかに頭蓋骨を粉砕し、その奥にある柔らかな脳をシェイクした。
| 突然の小さくも苛烈な暴力はレイの脳みそを取り返しが付かないほどに破壊した。即死だった。
|
| レイ・ザ・バレル。
|
| 彼の最大の特徴は彼自身が把握していない異能にあった。
| 極めて特異なそのオンリーワンの能力。
|
| つまり『周囲の生物の執着や関心を消しとる力』。
| もっと単純に言い換えれば『心を殺す力』である。
|
| レイがこの能力を発現した原因はもちろん彼自身にある。
| だが、極めて皮肉で悲しい能力だった。
|
| ああ、誰よりも心を殺したがっているのはレイ自身。
| その異能は、レイが己の感情を消し去るために顕れた。
|
| しかし、やんぬるかな。
| 異能はレイ自身の想いを殺すことは叶わず。
|
| レイの死後、呪いとなって残り続けた。
| それこそが《暴虐のからくり人形楽団》！
| この世界を滅ぼす破滅の片割れ。
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ｨヾi! 〃／〉ヽ､
|! |! ┌-. .､ミュr‐'┘､/,-‐_ヽ_ ＿__
. |! |! i＞: :__¨´≧､ ﾒ/´／,'´¨>. ｀lヽ
|! |! |: : : : :.|!: :／ |/ /≠ '<_ノ＿_ ゞi
|! |! ┌=/: : : :.≠.:/ L_|/ ／| |! |｀l
|! |! ゞｭ｡: :≠: :/≧､ |! | ｲ∨ ∨∨|/
. ,ｨi!i!≧｡ へ. l ト､ﾟ〒===彡' |! l !／| ｀ヽ
. //ゞiニ三|: : |｀T:l ￣ ＜ｌ/. T:´l≦i!i! ∨ ＼|／|/|
//// ｀/: : /: ﾍ:ゝゞ=ｲ ｲ::|: :!.:.:l彡《∧ ＼_ ｀￣ﾌ
ｒ//// |ヽ'｀ヽ: ヽ|に0こ|/::/: :_ｌ '/∧ ￣
. _| ｀'‐'-〉 |! |:.O:/ ： ／|: /:|´ '/,ﾍ_
. 〉｀‐-‐f |! l:o/‐Y-‐ ゝ: : ヽ ゝf, ¨ ‐- ､
. / ｀ヽ |!／: :.l l： 〉｀ヽl |l r-､ヽヽヾi
ゝi { { くヽ'､_ ∠＿: : !＿_|＿＿_|: : : :.i /_/ L!_|-''
｀¨¨¨´ ＼|__ﾆ=' ､へ:|‐-=二）- ´}: : : :i |! ＿
ト-/ r‐､ ',ﾆヽ _∠ , ＼__::| |! i´ : : ヽ
. ﾄ＝l 。ゝ‐' ﾟ ﾄ｀ヽ ´|ヽ 斥ｭ、 |! ｡<ヽ: : : :ヾ
. ､＝人＿__ イ |￣| rへ〉 ∨ ヾミ≧ｭi!i!｡≦彡'´ i/: : : :|l
. ￣‐´‐/ノ|／´ レ´|!|!|ｉ ヾミi!i!" i.: : : :.||
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| おお、正にそれこそが。
|
| 六番目。殺傷の戒めを壊りて現る破滅の化身。
| 《暴虐の からくり人形楽団》！！
|
| 肉体という制約を失った呪いは、恐ろしい速度で拡大しました。
| 感情を失った人々は、失われゆく関心により強く執着しました。
|
| 感情を失うことを恐れるあまりに人々はより強い執着を持つかのように『振る舞った』。
| 心を持たないことを、己が欠落したことを拒絶するかのように。
|
| その結果人々は何を得て、何を失ったか。
|
| 合理的思考と理性的判断力を得た？
| 情熱と勢いと余裕を失った？
|
| そんなことはない。ヒトは愚かなもの。
| 何も変わらなかった。何も変わらなかった？
|
| いや、残念ながら。
| より愚かしくなったと言わざるを得ないのです。
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＼ ./ ,
' ,ヽ | /ｌ ／
' ,＼ ム ／ ｌ イ ／ ,
＼=-_ ' , ＼ ＿_ﾑニ＝､=＝＝-ﾆﾑ ／／ .／/ ,イ / ／
＼三=-_ ﾆ＝=_／ _=" （ ﾏﾑ-イｰ"ﾑ／ﾆ/ ／/ ,ｲ ,
＼三三三=ﾆ（ 三ﾑ , _三 ｀ヽ三ﾆﾆ./ ／ﾆ/ ／/ ／
>ﾆ=~（ ﾏﾑ ~=＝ （三==ｲ三三ﾑ／ _三=-"
ヽ _ﾆ/ ﾏﾆ=イ 、 /ﾆ＝=ﾆ三=ﾏﾑ_-ﾆ-"
ヽ ｝ﾆ ', i ゛ｰﾆﾑ 、 { 、 ノノ ', ヽﾏﾆ
ヽ＼ ヽﾆ=-人 /" ＼＼ ﾑ ／ｌ ヽ ﾉﾆﾑ ＿- =＝ﾌ
~=-三三/ヽ三{ ゛ー >ﾆ／ ﾑ ） ' ﾆ ﾆー=＝ﾆ＝ニ ￣ _、
― ∠フ }ﾆｲ三=＝ﾑ ∠フ ｛ﾆ｛ o o ﾉ三三ﾆ＜_-=7 ／ヽ
,,,,,,,,=＝ {ﾆ、゛ｰイﾉヽ＼＿ o ＼ ,、 ／ハ三=＝￣￣ ￣
,,,,,,,,-=ﾆ三￣ {ﾆ} ノ /三/ ／ , ,＼三ﾆ=ヽ三≧ｓ。、
-=＝ニ三三三三三三三＝=,,三ﾑ､＿-=イ/ ∧/ _-＝=_ }三三三ﾆ= _
ヽﾆ≧ｓ。イ ! ∠/ ヽヽ ｲ ﾊﾆ/ ￣＝=-＝-_
{ﾆ{ { 、 " }ﾆﾑ ＿ノ /ニ/ ~＝==- _
｡s≦ム 入 、＿ ノ ノ ゛ー "／=ﾆム ~＝=- _
／ﾆ=テ=ニ三ニ＝=イヽ、 ／ ﾑ ＿／／ 、
／／ ／ ／=ﾆ＝=-イ三ﾆ＝― ,イ_ノﾉ=ﾆ三／
, ＿｡s≦_／ ／ イﾆ/ ﾑ／ }ﾆ｀ヽ三=ﾆ＝イヽﾆ}ヽﾆ＼ ／}
.／ﾆ／}三/ , }ﾆ ｲヽ // ヽヽ {ﾆｌ ＼ ｌ ￣ 、゛
∠/ ／_-イ .|／ }ﾆ // |ﾆ| }ﾆﾆ/ 、
／ /ﾆ// .|ﾆ| ﾏ/
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| はいドーン。
|
| え？ 人間が愚かだとなんで爆発が起きるかですって？
| そんなもの、愚かな人間本人に聞かなきゃ分かる訳がないじゃないですか。
|
| 2014年現在、二月から続いていた内乱の裏で糸を引いていたとされる寒い国がありましたよね。
|
| その寒い国が『その執着を証明するために』表立ってちょっかいをかけて、思わぬ反撃を受けたり。
| 『プライドを守るために取るだろう行動を推測』した結果、核攻撃に及んでみたり。
|
| 対する合衆国は理性ではダメだと思っても『国民の感情』とか『被害国の嘆き』とかを『鑑みたらどうするのか』。
| すでに《暴虐のからくり人形楽団》で感情が死んだ世界中の誰も望まないのに、『空想上の大衆の望む』報復攻撃が発動。
|
| 寒い国と人民共和国が横から口を出すなと反撃。
| 国際連盟が総攻撃。そんなこんなで、全面核戦争。
|
| 正に風が吹いたら桶屋が儲かる。
| 世界中の感情がなくなったら、逆に『感情的』な戦争が勃発するだなんて、笑い話そのものですね。
|
| 標本としての見た目はつまらないものですが、過程の喜劇性には手を叩いて笑いました、
|
| さて、これにて片割れ。《暴虐のからくり人形楽団》の物語は凍結標本化いたしました。
| 《哀しみのからくり人形楽団》は？
|
| そちらは次の講釈で。
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☆ 次回予告！
滅びた星を君に捧げる。
笑わば笑え、狂える支配者。
滅びた星を君はどう見る。
望んだ世界だ、どう映る。
滅びた星を最期に別れ。
礼を言う暇さえも惜しんで。
流れた星。
されど夜空に星は尽きまじ。
次回、最終幕百十話『哀しみのからくり人形楽団』
果てから至るは破滅の化身。
電波を介して死体を操る能力と執着を消す能力は別系統だったか
見学会が異能化してる
多くの死を閲覧する存在がいるんだから多くの死を陳列する場所もあるからいいコンビよね
それにしてもこのいく夫ウキウキである
...-‐:::::::::::....､
／::::::::::::::／:へ:::::::ヽ
／::::::::::::_ﾉノ ＠ ヽ:::::::ﾊ
/:::::::::::j@ ,* }::::::::::i 《哀しみのからくり人形楽団》
ﾉ::::::::::::} ＿＿〃 ﾉ:::::::::::
,....':::::::::::::::::: _／:::::::::::::ﾉ
＿ _,......:＜::::::::::::::::::::::::::::ゝ f´::::::::::::::／ー- ､＿＿＿＿＿
ヽ::｀￣´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ー/::::::＞ ´.:＼ ｀)
＞ ､__:::::::::::::::＞'⌒＞::::／￣￣´:::::::ノ.: .: .: .: .: ＼｀ー--------‐ '
(￣´ ￣｀¨¨¨¨¨´ィ⌒ヽ_.: .: .: .:ﾊ
￣｀ ー―‐_'"-､／⌒ヽ⌒)-､.: .: .: .: .:｀ヽ
f´ _ノ i ﾉ f⌒ ァ.: .: .:ﾘ.: .: .ヽ
f⌒ （ ) ゝ 人 ィ: .: .: /.: .: .: .:∧
/´｀ ｀¨ ﾉー '.:/ .: .: .: .: .: .: .: .: .:ヽ､
r'⌒ヽ ヽ r‐'´.: .: .:〃.: .: .: .: .: .: .: .: .: .:∨.:＞ ､
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￣ ／.: .: .: .: .: ィ ７´￣| ｀ t‐-､ .: .: .: .: .: ／
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￣￣7 , ! .!
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/ ノ , ﾘ
｀ー ' i /
｀ー '
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| 双子の片割れ、《暴虐のからくり人形楽団》が感情を殺す呪いを撒き散らしている中で。
| 肉体を失い電脳生命体と化したレイ・ザ・バレルの意識はすぐさま行動を開始した。
|
| 彼の目的は生前と何ら変わらないまま。
| 『神性共産主義』。絶対に間違えない神による共産主義。
|
| その『神』にレイは到達した。
| 《哀しみのからくり人形楽団》！
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|l | / ヽ | |
|l | / , | l | l
| l | | /| /ヽ | || |
|l | ＞--=＜_ ヽ_ _,j _,＞=--＜ | | l
| l | rｰ､ f´ ,,.-‐‐--､Y´ ｀Y,.--‐‐-､_） ,-､ | | l
――――― l | | ヽヽi ゝ .<・> , ヽ==/ <・> , / r | |―――――
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l l |ヽ' `i､ ' / ヽ ｀´ ヽ､ / / `´ | l
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l l | l ヽ' --- ｀/ l | l
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| 『神』の条件。
|
| ・我欲を持たない
| ・判断を誤らない
| ・全知
| ・不老不死
| ・不眠不休
|
| 肉体を失い、すべての感情を置いてきたレイには、当然我欲がない。
| 最強の電脳存在として、世界中の電波をハッキングできるため、必要な情報は確実に手に入る。
|
| その情報力は世界中のスーパーコンピュータを利用でき、未来予測に等しい。
| これを全知と呼ばずなんと呼ぶか。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》は世界中のサーバを利用している。
| 不眠不休で不老不死だ。ネットワークの上のどこにでも存在する。
|
| 何なら、世界中の携帯端末を通して『神』の声を伝えることすら可能である。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》は、判断を誤らない。
| 全人類の幸福のために、適材適所と適度な労働、人間同士の性格嗜好から判断してのマッチングまで。
|
| すべてを管理できる。
| すべてを支配できる。
|
| 必要な犠牲も最小限に。
| そもそもその犠牲すら必要のないように。
|
| 不要な存在、不利益になる存在を間引いて。
| 逆に人類全体の生存率を上げるためにすべての病気の根絶を目指して。
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| 《哀しみのからくり人形楽団》があれば、国家は必要なくなる。
| すべての方針を委ねれば良いからだ。
|
| 不完全で私利私欲に満ちたヒトによる政治形態よりも遥かに健全で合理的に。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》があれば、宗教にすがる理由がなくなる。
| 何しろそこに神があるからだ。
|
| 神頼みに応えてはくれないが、言葉を持って答えてくれる。
| 己の存在意義を証明してくれる、本物の神がそこに居るのだ。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》があれば、戦争は根絶される。
| 国家が失われるのだ。戦争も同様だ。
|
| 無論争いそのものは続くだろう。内戦、紛争、小競り合い。
| だがいずれは、命のやり取りを必要としない形に纏められる。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》かあれば、貧困の概念は消失する。
| そのための共産主義だ。同様に富裕層も消え去るだろう。
|
| 世界中の人々に相応しい仕事を与え、富は分配される。
| 富の総量が不足したら？ 不要な部分から選定すれば問題ない。
|
| 《哀しみのからくり人形楽団》があれば、犯罪の殆どが発生しない。
| 世の中の問題の大半は解決され、何よりも神の目を盗むことは困難だからだ。
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廴ﾟノ小:::::::::ミｰ- __弋. / /弋 ｀Yl
彡' ﾊ 弋 ﾟﾉ}ー=ﾆ´ / ⌒ヽ. / ヽ/j
,/∧ ', Y / ﾊ. / / /ﾅj
.ｨ z ＞' | / ', / / ___ ///
ﾄ､＿＿__ r / / =＝＝=ミ､/ / 从ﾉ /7
｀ー─--ミ7´/ / <・):::::::::::::::ﾉ /- ､ 从_____ノ
.弋ｰ----/ / / ..:_jﾄﾟｲ./ / ヽ. / ヾ彡′ /ﾘ
､二二´ / / } ｲｰ- ｨ ﾉ/ /ー=ミ ﾊ / / /{ﾙr,
＼ / ∧ 弋___ノ// / L' ::: ,::ヽ〉/ / /弋Y′
ヽ､ ___ノ ∧. ＼ == // / ｨ -' j´./ /ヽ / /
ｲ ∧::＼ ＞ー'./ ∧. 弋㍉/ / / // ./
､ .|ｫ ｲ ヽ:ss::Xヽ ｲ ./:::ヽミ辷´ / /ｰr弌. /ヽ
:::::｀Y::::|ﾐヽ､ ＼/ |∨ﾐ弌 ｲ ヽ:::∧} .ｲ /ミ7j/ /ーﾐ
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:::::::∧::l ＼＼ |{ o | ﾄ､ 小 ヽ｡_}| } 弋 Y
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| 以上が理想論。
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| ヒトは感情の生物であり、変化を恐れる。
| 世界のシステムそのものの劇的な破壊など、許容できるはずもない。
|
| …………だが、《暴虐のからくり人形楽団》の蔓延する世界ならば？
|
| 同じである。
| 世界中が《哀しみのからくり人形楽団》の理想論を許容すれば、世界は平和になるだろう。
|
| だが、そこに至るまでの破壊や戦乱や死の嵐を。
| 論理的に理解できても受け入れられるだろうか？
|
| 少なくとも富裕層と政治家の存在を皆殺しにするに等しい。
| 民衆は受け入れるかもしれない。だが犠牲を強いられる者たちが『決断する側』に立っている。
|
| ならば、全力で抵抗するだろう。
| 今あるものを失わないために。
|
| 『ユートピア』は常に、見えない犠牲の屍山を礎にしているのだなどと叫びながら。
| 世界中で内戦が勃発する。
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| 《哀しみのからくり人形楽団》側は必要な犠牲だと声高に叫ぶ。
| 生まれ変わるために死ななければならぬ。水死だ。神になるための儀式だ。
|
| 抵抗勢力は金切り声で非難する。
| この犠牲を恐れるから、我々は反対した！ 不要な犠牲者を山と積み上げて、何が神だ何が平和だ。
|
| これに便乗してテロ組織が活発化。
| 原理主義者が持論を振り回し中東で国を簒奪。
|
| 人民共和国では民族浄化、反旗を翻し続ける少数民族をジェノサイド。
| 寒い国は勢力拡大を目指す。北海道に上陸して自衛隊と交戦。
|
| そして同時に、ウクライナに軍事介入。
| 馬鹿げた二正面作戦で手痛い反撃を被った寒い国は、こうして暴挙に踏み切る。
|
|
| あとはすでにご存知の通り。
| 世界中のネットワークサーバが失われれば、《哀しみのからくり人形楽団》も息絶える。
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_, -――- ,,_
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／::::::::::: ..::: ヽ
/.::::::::::::: ..::::: ヽ､＿_
/:::::::::::::: .::::::: .: ヽ／ ￣`‐-.､
. /::::::::::::::::::::::: .:.: . ､. ヽ､ ／ _ゝ、
//:::::::::::::::::::::::::::: .: : :. . . .. ＼:...｀＜. / { ＼
//:::::::;;;::::::::::::::::::: .:: .: :::. :: :. |:. ';::::::.. V ', 嘘だ……。
,'/}::::::/ }:{ﾞヽｒｲ:::::. .::l:::: :::::. ::: :: : ﾄ､. .'､::::: ﾉ. ',
i:! |::::/. /:} /{//:::i ::/!:l::::i::: .:| /!.:. |'ﾉ::. トヽ､ヾヽ '､
i' !:/ {::::!{ノ/|ｲ:;l::/ｊ/ｊ:/!::::::l/_|:::. . 「::::: .::: .:ハ}｀ヽ}
. |:ヽ }::ｊ { ',l::ll/''l!､ll_}::::/l.ィl::::: . ::. :';:: .::::.:／ ′ 丶､
i:::::}/ノ}, l ll| /_ﾉ }::// i!|:::::.: .:::: :､';:／{{ `＝＝ ヽ､
l::::::lヽ l l . ll| ､_ﾉ' i!|::::: .:::::: .:i｀{､ ヽ
∧::::::::ヽ､__ . ll`ー-､-=⊃ i!ｊ::::: .:::::::: .::::!､{L._
{､_';::::::::/;ﾍ ｀ヽ、 ヽヽ __ ィ::::::::/:::: .:::::! ` }
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|「せっかくだから他の可能性も見てみるかお？ 百通りくらい分岐できるけど。
| 耐久レースはやめとけお、短いし死の深淵も覗かない簡易版だけど、五回も見たら頭イカれるお」
|
| 失望に震えるレイに、やる夫が面倒くさそうに声をかける。
| 世界の滅びはいくつも見てきた。それこそお腹いっぱいになるまで。
|
| だからって我慢できるものでもない。
|
|「……ならば、ならば」
|「ですよねー」
|
| かすかに見える希望にすがり、淀んだ瞳を揺るがすレイ。
| だがその希望は当たりくじのない『かもしれない」宝くじだ。
|
| 望むものが実在するかも分からない。
| 砂漠に落ちたごまを探すよりも厄介。なにせ実在も不在も証明できないのだ。
|
|「レミエル」
|《ええ、分かっております》
|
| 好きに、最後までやらせてやろう。
| 何しろ『やる夫の中の入即貸本』は脳内世界だ。
|
| 百年かけても現実では数秒……は言い過ぎか。数分で済むだろう。
| ならばやる夫にとっての問題はなにか。そんなもの決まっている。
|
|「待て、レミエルと言ったか？」
|《ええ、ワタクシは『品川大聖堂の夢』で『ブギーポップ』とやる夫に滅ぼされた堕天使 レミエルの欠片です》
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＼ ﾊ,＿＿,.､＼＼ ＼ ｘ ´ ＼ ヽ ＼
ヽ //´~￣｀ヽj 丶 ＼／ヽ＼ ＼ ヽ ＼
Y:/ 丶 ＼ ＼＼ ヽ/＼ ,ｨt ヽ ＼ ＼
ｌ:lヽ ＿_ ＼ ＼＼ ＼ ヽ,ィ勿ﾄ､ヽ ヽ ＼ ヽ 《やる夫に救われ、
ﾚ'乏二ミﾐﾄ､＼ ＼ヽ ィ冬ｚ亥ヾ ＼ ＼ ＼ ヽ ここに間借りをしている身ですが。
::Y //r卅ヾ ヽﾊ ヽ 丶 ｀ ﾄ､ 丶 ヽ ＼ ヽ
｀ｌ j l lﾘｌ ﾘ ﾘ ｌ lヽ ヾ | ヽ. ＼ ＼ ＼ ヽ ワタクシが何か？》
! V戈ﾆ少ン ﾘ ﾊ 丶 ヽ ＼ ＼ ＼ ヽ
ゝ､匁辷ｋ彡'' _ /ト､ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼ヽ
V ヽヽ ｀Y:! ___ ノ ,.'__ﾝ /ヽ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼
. ヽ ＼＞l:}､ ｲ'´ / ＼ ＼ ＼ ＼ ＼
＼ ＼ゞ= '≧ ─ -- ＜￣l 辷=､ ＼ ＼ ＼ ＼ ＼
ヽ＼ ＼ ＼弋,.イ￣｀ｰ' V' !＿ r'＼ ＼ ＼ ヽ ヽ
. ＼＼ ＼ ＼７ヾ ヽ l 丶 | ＼ ＼ ＼ヽ ヽ
＼ ヽ ヽ ヾ { ハ V /ー' ヽ ヽ ヽ ヽ
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|「堕天使……？ いや、そもそも『第二の夢』と姿が……」
|《ワタクシは邪悪な魔術と呪詛に染められ、『品川大聖堂の夢』では悪意と殺戮でヒトの子を滅ぼす怪物でした》
|
| 故の『世界の敵』。
| あの時『ブギーポップ』が介入していなければ、破滅思想が東京に蔓延していたことだろう。
|
|「ちなみに『第二の夢』は一から十までパチもんだお」
|「……………………は？」
|
| 困惑するレイ、やる夫は畳み掛けることにした。
|
|「『品川大聖堂の夢』における滅びの予言を上書きするために、やらない夫とやる夫が仕込んだ偽託宣」
|「え？ ではその……『正しくあれ』というのは」
|
| 苦笑いをするやる夫に、愕然とするレイ。
| だが、やる夫の後ろでレミエルは頭を振った。
|
|《正しくあらんとすることに、どんな誤りがございましょう。
| 主も、我らも、正しくあろうとするヒトの子の意志を尊重いたします》
|「……………………」
|
| レイは押し黙った。レミエルが嘘を吐くようには思えなかったのだ。
| 彼女はそれほどまでに神々しく、慈愛と光輝を背負っていた。
|
|「レミエル」
|《違いますでしょう？》
|
| やる夫の呼びかけにレミエルは、いや、彼女は唇を尖らせた。
|
|「『鏡と茨』」
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,.ｨｨi/⌒i,,ii,_｀7/
.i.i i //.{往ﾖ}i'l‐=''三￣`''‐‐--，__
.}!' '' ７'.ﾐl彡’ ｀ゝ､_ ,_,,__
.／/ i-／__-) ) i .! !''-!..=_ ))_ヾ､ゝ
iνl ∥ ／ .i′/ -=彡) K包ﾐi''i' i 、
..}/ //i //／ i i , .i .!ﾆ=彡i il ii｀i 《はい。
__ __ ／ ./ .i i／ ii / i ,.. -､___,））i=〃 .il.|
i'i''￣／／ / i / /i / i i .i i .i i l l i｀ii / /!-,-／i.| ワタクシは大天使 レミエル。
!!／／／／.／i /il ii /i | | | .| i| il il ) | i | | Y／/ /| .||| ですがやる夫。
iイ ノ / / ι‐'´/ // |i l (( /'''``!)) .|i.| | .| ! .i | // | | .| |,／ il .i| ! | |
___,_/,／,／ i | / .i ! ii ﾊ | | !＾}.Y笹ョ iヽ| |i ! | !,,ﾊ__//i / il | Y ./ i |∧ .! i アナタの前では『鏡と茨』でございました》
.／, ‐‐=7 / / ,ﾉ / /i |.|i | ゝl{ Y i廻ト/'' < !! l l ﾚl ,_ ｀''=-/l./ |/ / / i/ }.i ! l
l ./，-イｨ .／ ／ ／,, /i l ｀ii｀''-i !＼,ミ=-=彳,,| 灯不気, il .|i ..// i l / |＼
l l / / ⌒ /,,ｨイ彡 ,!/ }ii| ,} i i iゞ-'``'"′ 弋ﾆ汐´“/i | / / .／ / ) iヽ!
..i'' i i i /´´ ,,ィ''"′ /／ !､ゝ､ i入 )) . ' .// ,. .|／／ / ／i i ｝|
..| | ! i| .ii i ／ ,-'とｲ \===-､,ヽヾ､ヽゝ､ . ､.___ . / / / |Y ,..ｨ'iiイ//i .i },l
..| i ! i| i ! | ./ /i >_";，ｔｪ ,___>､ iヽ､ゞヽヽ ,／ / / / ii i''i (( ii l .|| !ィ´´
..＼ ii |i ＼＼| i {| ,-' '`｀'⌒'”'''->=l | i ) )ﾊ､._ -‐''.ﾌ/// ／ l l l |i__, - ､.{ { ヽ! !
i ＼ ＼ ＼＼| .|.{ .ﾌ , ､ゞi.l |i | i y＾Y ´`l,,l ／ i li | ＼彡=､ .゛l ＼ Y＼
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|「うん」
|
| やる夫は少し気恥ずかしそうにレイを見た。
|
|「今まで、本当に助けられたお。
| どんだけお礼と感謝を重ねても、足りねーくらいだお……」
|
|《お互い様ですよ、やる夫。ワタクシの名を呼び、ワタクシを救ってくれた。
| すべての守護も助言も、全てはあの時の恩を返しているに過ぎないのです》
|
| こちらも、少し照れくさそうに『鏡と茨』。
| 滅びたレミエルの残影、あるいは未来から来た予言に過ぎなかった存在の。
|
|「さよならだお」
|《さようなら、やる夫》
|
| 微笑んで握手を交わす二人。
| 置いていかれているレイは不審そうに二人を見る。
|
|「じゃ、頼んだお」
|「…………俺が？」
|
| 肩を叩かれ、困惑するレイ。
|
|「『鏡と茨』は死の深淵の狂気からあんたを守ってくれる。
| だから……満足行くまで見てくるお」
|
|「…………二つの《からくり人形楽団》の末路を、俺の末路を。俺の望む答えが出るまで探してこいと？
| そのために、まさかそんな事のために自分の守護天使を手放すとでもいうのか？」
|
| やる夫は頷いた。
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_ -―――- ._
／ :＼
/ﾚﾚﾚiｲ . : ヽ
/i/l'i/'lﾚ. . :, : :, : . : : : : ﾊ
,' . . : !:!:/ /! /l |: :l: : : : : : :l
丿. , : : |从/‐!//',| ム| : : : l: |
､! _／ . :/: :l: kiｒ'ﾞﾄﾉ' l/ｒｿ!: /: :l: | だが、それでは……。
≧＝ ´ . :// : .､ﾄ￣ l ノ-彡:/: : :!｜
, ≠ァ .〃| : : :ﾄヽu ､_ﾌ : :/: l
／ . :／ . : :i': |:l: l: |: ヽ、 ￣ ゝィ. :/: : |
ﾚ ｨ /. . : : : : :lへﾄ:| l {ﾆ＞ﾆ イソ／: : : ヽ.
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V i ゝ: :/:ｲ: : : /'!:ﾄｌ::::::::::＼|||／ﾝ . , /:ﾘ::::::::｀''‐-､,,__
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l::::ヽ{:::::::ヽ!-`⌒ヽ:::::::／ ｀¨ Tｊﾌ:::／￣｀ 丶､::::::::::::::::::|
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ｒｆ::::::/ ヽ |::::::::::::| l-― 二l / l::::〈ｔl
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/彡'´ ハ ゝ::::::::::| : : : : : : : : : : ハ ＼::::l
lィ ′ ', `''￢::| . : : : / ヽ ｀ヽ
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|「普通ならあんたは狂い死ぬお。それこそ『鏡と茨』の守護でもなけりゃ」
|「…………なぜだ？」
|
| 守護天使、本物の魔力ある守護の存在。
| それを？ やる夫は見ず知らずのレイに与えると言うのだ。
|
| 訳がわからない。レイは頭を振る。
|
|「『鏡と茨』一つで、世界が救えるなら安いもんだお」
|「そんなやり方！」
|
| 誰かを犠牲にして救われる世界など。
| それを糾弾しようとしてレイは怯んだ。杏子の言葉を思い出す。自分自身を顧みる。
|
| 『神』にすべての負担を寄せる世界。
| そうか、最初からレイの望んだ世界は……。
|
| 理性はこれ以上の犠牲を、不要な死の夢を拒絶していた。
| だが、どうしようもなかった。
|
| 《暴虐のからくり人形楽団》に汚染された人々のように、執着を捨てきれず。
| 《哀しみのからくり人形楽団》を拒絶した人々のように、変化を受け入れられない。
|
| そのために、『鏡と茨」を犠牲にすることになったとしても……。
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／:: .::::::: .:: ＼
／:::::::::::::: .: ..::::: . ヽ
, ':::::::::::::::::..:: .::::::: ..::: .: : . . ヽ すまない。
/.::::::::::::::::::::: .:::::::: .:;::: .::: :: ::: :.. ', ……他に言葉が思いつかない、。
,'.::::::::::::::::::::::.:::::::::/;ｲ:: .:/|:: .::.::::::::.. ',
,'::::::::::::::::::::::::::::/:/l/;l:: .:/､ｊ:: ./!:i:::|:l::::. . ', ただ本当に！ すまない！
,':::::::::::::::::::::::::::/!::l/-'l:: :;';,,,l: ./ ｊｲ:;l::ﾄ;::: :: ',
,':::;i:::::::::::::/:::::/_|::li{‐｜ :;' '''l: /-;=}:}l:|ﾐl::: . :: :.ヽー‐,- ､__
,'::/ }::::::::::::l::: ::l_ｚ!:lｧﾐ､|:.:;' ｊ:/ ´{ｲ:/ｊ:l_ｊ::: ::. ﾄ､ ::. ＼{ ｀ヽ._
,':/ . }::::::::::::i::: :i{ |:l'__}_ V ノ´ //〃i!}::: .::: V} ､: ヾヽ、 ／ ﾊ
. ,';' l:::::::::::::::､ {i!ﾍ:{ ' ｀ー' 〃 i/:: ./:: {:. ､.. :::＼ / / ',
l:l ｊ:::::::::::::::::ヽ ヽ､ヽ ｀￣ /:::..;ｨ:::::: . l::. ､'､ヽﾍ:ヽ / l
l:l .ｊ::i::::::::::::::::::::ヽﾐヽヽ. ヽ ＿_ヽ-'__／ }:::: .: l:::. ';`:: }{ ヽi/ .l
!{ .//}:::::::::: :::::::::{ヽヽ ｒ二-‐''ヽ _i!ﾉｲ:..::: |:::. ';: /ヽ､/ l
ヽ,l//::::::: : ::::::::｀`ヽi! ∨ } i!イ:::::::: |::::. V ｀丶､ ｜
///／}:::: ,.､:::::::i､ヽ_ヽヽ､ ゝ. _ノ ∠ /:i:::::: |:::: : lー- ､_ ＼i
,{ / / /:::: / }ﾍ:::{ て´｀ ‐-｀ヽ.￣- ／ __/:/}:::: .: .l::::: : : .:::.ｌ￣｀ ‐､〉 ヽ
ヽ､_{_. ィ /}:::; ' / }::ヽ､_ヽ､_ ￣_ '´/:/ｲ::::: :: .::/:::: :.: l:::.|
ｒ‐-､`ﾌ / }:/ / /:ト-;;''´/ ￣￣￣{ ノ, ' ｊ:::: .: .:;ｲ::::.::: .:/}::/
ヽ `} / .l/ ./ / ::l／ }`ー----ゝ＝ﾆ- ' /: .:::::://::::::::／/'´
ヽ { { / / / / / 丶､＿＿＿ ィ:::::::::;;ｲ/::::::; ' }
}｜ ∨ / {ヽ/ / ､ -‐'"´_:::-'´ :'::::／ }-ｲ
{ ｊ ノ . / l ./ /-ゝ `T´￣､ ／::／､ / /
丶 ' ﾚ' }ﾍ | ￣￣ﾉ| ,' /
ﾊ､ / '､ / / .| ∨{ ｒ'"￣￣,`ヽ、
/ '､`ー- ､_ ヽ ヽ { , ' ノ } l } ｀ヽV ヽヽ
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼ おう、
／ （●） （●） ＼ 気にすんなお。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ な？
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
| { | ﾊ ' 乂込りｲ､｀ヽ
| ' ｜ ミ､ i |ハ ゞ＝彡ﾉ/z i
| ヽ .! ﾊ:}｜i: ! { ' i ゞ=ｿ i:!
.i | ハ:{. r＝彡｜{｜ﾉi |. ｜ ヽ 八
:| ! ＞ー从＿}{ i ! |.川 i{ ｀ヽ | ! ﾊ ､ ﾞ
|{ ／ ーヽメ 八ﾊ!{ !ﾉj_z＿j | .'{ ヽ 《ええ
ﾊ 人ハr＝ﾐ ハ ﾊ ﾉ从 ７Zﾏ.く_ ' | {八
/ }込八irくｲ_ノ ノ i.iﾞ;;;}j ' ﾊk , ! i ヽ ワタクシはワタクシの責務を果たすだけです》
{ :{ゞ＝ミ＿ﾉ／ , ゞｰ" / ﾉ/ |i ゝ
.八 ∧ '' j:i '' ﾉ "″,ｲ./{ 八 ｀ー
. ヽ∧ 八{_ﾉ､_ ./rーﾐ八 ｀ー -
＼ヽ. ￣ ´ ｲハ }vー ､｀ー -
｀ヽ ＼＞ . ィ´,⌒´ ノ ｀ヽ
ハ ＼ ヽハ≧=彡｝ ｀ヽ ｀ヽ ハ
丶. ＼ }､ { / ﾉ }
＼ ヽ ﾉ iﾄ､∨ ＼ '
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. :/ :{-=ニニニﾆ=-;'-=ﾆニニニニニニニ=- ／´ ⌒｀＼
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. / / .: :{ニニニニニﾆ{ニニニニニニニニ／ニ-}
/. :′ , : : {二二二==-- ＼--==ニニニニ==- ﾆ=-}
. /. : ′: : 「＼ ￣| ｜::|＼ ＼ニニニニニニニニ＼
. ,. :/ / . :./{ ＼i⌒| ｜::|:笊うぅ≧==----------==ﾆ>r┬r‐へ おっぱいとモツをポロリしながらも
. . :/ / . :{/ Ｖ h | ｜::|{ _):::/:} |: /: :/ｘう㍉| l | rヘ{｜{ 丶 追いかけてきたんですけど……。
/ / . : :| Ｖ八r| ｜ 乂/ツ |/|: /ん( . :| :八| 人 ┴ＬＬ>┐ '，
i/ / . : : : { ∨ i 八''' }/ ﾋソ /|.:}/｜} ＼,____ '， もしかして全部終わってます？
| ′ . :/ ｌ ___,＼l ＼ r‐ ｀ '''.::: | ｜:| ｀i
| {// :ｌ {ニﾆﾆ| :i'⌒ {::::::::У 人 | ｜:| | i
{ ｜ |Ｖ{ | _>‐=ﾆ| :ト.._ {j￣ イ＼ | :| |＿ |
{ ｜ |/:{ | {-=ニﾆ| :|ニニ=- ＜二ﾉ =-}_| :| 〈:::::::::ﾆ=-
. 人 ｜ | 八 {>┴‐＜ 八 :.Ｖニニニニﾆ=-／ﾆ| :| {:::-=ﾆ:::::__〉
⌒＼乂_＼ V ｉ {:::::::::::＼＼ :.乂ニニニニニ}二ﾉ .:八::::-=rへ ┐ {:::::::::::::::::〈
. ＼(＼ {:::{ {:::::::::::::::::＼＼(⌒＼--==ﾆ二}-/ ／:::::::::::r/／／⌒{::::::::::::::::: }
｀{:::{ V:::::::::::::::::::::＼ニニニニﾆﾆ,ノノ／:: }::::::::::::{ ｢ﾍ::::::::::::::::::}
Λ:::＼＼::::::::::::::: ＼}￣￣ :::::::: ＼::::::::::＼}::::::::::::{ l :::::::::::::::::::::}
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|「終わってる、『ブギーポップ』も弾けて消えた。痛え……死ぬ……」
|「ゲホッ……てめえ、歩いても……ねぇだろうが……ゲホッゲホッ」
|
| 千切れた腸と割れた乳房の謎のヒロインＸをお姫様抱っこして現れたのは、憔悴したヤザン・ゲーブルであった。
| 彼自身傷だらけで、毒ガスの影響か酷く青褪めて、湿った咳をしている。
|
| 迎えた『ブギーポップ』……いや、長門弟も『世界の敵の敵』としての肉体と感覚補正を失い、紫色の唇で痛みに震えていた。
| 彼の治療を、杏子が文句を言いながら行っていた。
|
| 近くで意識のないレイとやる夫。
| それぞれ横島と天龍が介抱していた。
|
|「えっくすおねえさん、いたみはけせるよ」
|「シグくんのだと、披露がポンとトぶヤツじゃないですかやだー！」
|
|「つーか……状況説明しろよ。ゲポッゲポッ……殺すぞ」
|「シロッコが死んで、レイは無力化した」
|「マジで殺し合うなら勝ち目無いから投降するぜ？」
|「え？ その死にそうな奴に？」
|
| 長門の言葉を天龍がせせら笑う。
|
|「コイツ、ヤザンだぜ？」
|「話が早くて助かるぜ……ゲホッ……だが」
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／ / ´ ⌒＼
〃 / ＼
/ﾚ/ | ヽ
N/八 |
丿 ＼ i | /／
/ ／⌒ヽ |: / ／'"⌒ヽ i
′ ヽ/ "｀¨¨´ ﾐ ￤
. ｛ ｛ u ｝ ﾉ
. ミ ＼ﾐ u ノ 彡（丿
｛ ー=ﾐ ´ ヾー 丿
__Yヽ ｢ 、{ 〃ヽ ﾉ コイツと俺の命を保証できるなら、
ヽ| 〉ﾐ ｀ヽ‘ ゝ〈 └<::::::ﾝ´ ﾐ // 投降するのは俺の方だな。
人 ヽ:. ヽ ｀¨ 〈 〉｀¨ .: /ﾉ
ヽ｀ﾍ ! _j _ / /ノﾑ 流石にヤベえ。
-===- _ ___________八_小 { ､ ｀´ ヽ /| xく 内臓半分溶けてっぞ、コレ。
/ /У:i:i:i:/ ￤ |_ﾊ :. ` ｰﾆﾆ r‐ ﾉ:i:i:i:｝
_＿__ /:i:i:i:i:/ / l:i:i| 〉 ヽ ｀¨¨ i;j ／ /:i:「厂ヽ─┬ ＿_
／:i:i:i:i:i:i:i＼|:i:i:i:i/ i/:i八ヽ. ゝ ／ j／/Ⅵ |:i:i:i:i:ヽ
ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:|:i:i:i:｀¨¨¨¨´ヽ:i:i:ｉ＼＼ ｀¨´ ／_／:i// :|i:i:i:i:i:ｉ|i
ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:｝ } ／ ／:i:i:// /:i:i:i:i:ｉﾘ|
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|「無理かな、つーかそれ致命傷なンじゃね？」
|「だよな……」
|
| 杏子の治療能力はたかが知れている。
| 長門ひとりで手一杯なのだ。
|
|「せめて外まで運べればな」
|「ん？ 運べばいいの？？」
|
| ため息をつく杏子に、その場に似つかわしく無い明るい声が応えた。
|
|「何人？ 三人？ だっこで順番に運べばいいね？ あ、ドーモ夢宮アリカです」
|
| ここで普通の女子高生のエントリーだ。
| しかも三人ぐらいなら重ねて運べるパワフルな奴だ。
|
| もちろん、重傷者をそんな扱いしない。
|
|「途中誰かに見つかったら？」
|「みんな縛られてたよ」
|
| やる夫の茶巾包み作戦の成果である。
|
|「じゃあ、コイツから頼むぜ」
|「レイとやる夫さんは？」「アタシらで運びゃァいいだろ？」
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ｒ、
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ
ﾑ ﾏ ィ／
「｀ 。 ＿ ﾑ ﾏ 。ィﾆ／
≧c。｀ 。 ／ ＞。ﾑ ﾏﾆﾆ／
≧c。 ｀ / ／ ＞} ﾏ／
≧c。 ｀ ＜＿ ／__ノ ﾏ
≧c。 ::..... ..: ﾏ
≧c。:.. ﾏ＿＿
マニヽ ::... .ﾏ／ ……………。
〉ニニ、 ::::.... .:: ﾏ
＿＿ ｲニニニ 〉 :::.....:: ／￣ヽ
＼＞ ￣￣ ｀マﾆ人ヽ /〇 ﾘ
/ > ィﾆ＼ {＿ ィ/
/ ￣ﾏニニ＞ {＿彡´
{ }ニニ/７｀ ┘￣
八 ＿ /ニ彡 /
／ 人{ ７ ィ＿へ／
／ / } ／ー＜￣ ﾑ {
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 夜空の星が一つまた一つと消えていく。
| 東の空が少しずつ白み始めていた。夜明けが近い。
|
| 新宿衛生病院の地上階は瓦礫の山になっていた。
| 全力のロビンが暴れ回ったせいである。
|
| 彼は今や、腕と脚と尾を全てもがれて、ぼんやりと中空を見つめていた。
| 行けるところまで行った。怪物になった。
|
| 途中までは何者かによる電波汚染の介入だった。
| しかし、レイ・ザ・バレルは皆殺しの戦闘など望んでいない。
|
| では、誰がロビンたちを暴走せしめたのか。
| …………すべては藪の中。真実を知る者はどこにもいない。当事者すら。
|
|「暴れたな、気分はどうだ？」
|「不思議ト晴レヤカデス」
|
| 覗き込む『弓兵』。彼と『三日月』、『武僧』コンビとルカ、源之助まで相手にしてのけたのだ。
| ロビンの戦闘能力の到達点が、そこにあった。
|
| 憑き物が落ちた。そんな気分。
|
| 当たり前だ。
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l////////l|//////／ ∨////l|//////i
!////////|////／ : : : ∨///l|//////il
l////////l|//／ : : : ∨//l|//////ﾊ
i/////////!／ : : : ∨/l|///////ｌ
j/////////| : : ∨l|///////| あー、戦った戦った！
//////////|､＿＿＿_ヽ::..: ..:::: ＿＿_ ∨///////i ワシもう満足じゃぁー。
//////////il|//////ﾊ:::j::' ヾ::: :///////|l///////ﾊ
. ///////////l|ヾ////／ ..:::::.... ヾ/////' |l///////!ﾊ
////////////lト、｀ｰ'´..::: :j ::... ｀ー'__ｊ|ｌ/////////i
. /////////////l|i､ヾ,､:::::: ,ィ､ ::/i7 j/|l/////////|i __,, -=
//////////////l|/ﾊ !ﾊ::: ///ﾊ ｲ!/ //i|l/////////ﾊー---=≦/////
. ///////////////l|//|i ヾ!ﾄ ､:: !イヽ! .:/!/ ///|l//////////l/////////////
////////////////l|//ﾊ､:: ｀!、｀ｰr､, -ｒ ｲｌ ｊ:: ////|l//////////l/////////////
////////////////l|///ハ::::｀T::.i.. j j r'/ /////|l//////////l/////////////
////////////////l|/////i:: ､｀:: !::..!:...''::_/:://///i|l//////////ﾊ////////////
////////////////l|/////ﾊ:: : :: :: :.: :: :: ::://////|l///////////l|////////////
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ロビンに備え付けられ戦闘用義手『アガートーラム』。
| その核になったのは『十二の封印像の悪魔』、『騎兵』レッドライダーである。
|
| 戦い尽くし、破壊され尽くし、ロビンに取り憑いていた『戦争の化身』は満ち足りて消えた。
| 彼が無意識に振りまいていた『戦争命令』もこれにて消滅したのだ。
|
|「後始末に奔走してもらうことになるぞ」
|「私デ良ケレバ」
|
| 『弓兵』が去り、代わりに覗き込むのは真面目を絵に描いたような四角四面。
| 左袖を寒風になびかせながらも、藤木源之助は小さく頷いた。
|
|「礼を言う」
|「ハ？」
|「皆生きている」
|
| 彼の言葉を証明するように、這い寄って来たトパスが泣きそうな顔を見せた。
| 拘束を解かれたアメシストも。
|
| ミストの用意した妨害装置の仕業で、『カトルカール』の無線会話は利用不能になった。
| いつもの下品な軽口が飛び交う、驚くことに、全員重傷だが死んでいなかった。
|
|「彼ラハ……」
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,. 二二二二 ＿
／ ／/＞┴┴┴┴＜ ＼
／／´ ＼ ＼
/ ∧/ ＼ ',
′/_/ :| Ⅵ
' :|/| l{ /| } ,:|│ ',
i ∠/| /」Ｌ∨_| ,′ / |│| ,
l,//⌒| :|,ｘ抖ミ､l∧ //┼ト|// :
|{ { | | l 込,り ∨,ｘ抖ﾐ､ ′ 電波が回復し次第
|:V＼ | | | 込り/ / l 医療班を呼びましょう。
l ＼_:| ﾄ{ ′ 厶 ,′ !
| :| ﾄ､ t─ 、 / ／ j丿 シロッコはどうなったのかしら。
│:| ＼| ＼ ￣ ／ j／ ／
; | | :| ー=≦ /／ ﾄ
／ | |/二二凵二二｝_ ,／ :l ＼
,. -──| |＼:::::V⌒V:::::/::├‐ ´￣￣ 丶 ＼
′ :| |::::::＼{＿_,}／ :::::| , ヽ
. { | l===rrr‐ ､,r======z、 ′ ,
. / : | |ニ⌒´ ＼┐::::| }} } ′
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. , l /::: | ￣ﾉ ､ |==彡∨ / / i
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. / l ｢二ﾆ==-::::::| |/::::::. ′ ∨〈／ ∧
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|「死んだよ」
|
| 答えたのは、崩れた瓦礫を吹き飛ばしたアリカだった。
|
|「内部も無茶苦茶。ヤザンさんがシロッコさんのこと話してくれるって」
|「お手柔らかに頼むぜ……ゲプッ」
|
| 咳き込んだ拍子に血を吐きながらヤザン、アリカは状況を確認して頭を掻いた。
| そこに飛び込んでくるパトカー。現れるのは阿部さんとアセムだ。
|
| 警察の尽力で怪我人はいても死者はなし。
| 電波妨害の範囲も特定されていた。
|
| ……もちろん、『引き裂かれた永劫』によって阿鼻叫喚の『血族』本部は完全に帰納を停止しており、
| 助けなんて出せるはずがない。
|
| すぐに動いて治療と後始末に走り回れるのは？
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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l:::｛:::::i;ﾍ /;;l:ﾉ:::::::::l ケツ持てと？
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| こうして『暴力教会』の面々が東京のイニシアチブを握ることとなり。
| シロッコは死亡して彼の派閥は消滅した。
|
| 『血族』側も大きな打撃を被り、素早い再起は難しくなり。
| 当日本部にいなかった『グレン団』や『九鬼』の構成員が引き続き東京の治安維持を続けることとなる。
|
| 新宿衛生病院から敗走した呂布は、カミナを通したシモンの魔力で一命をとりとめたものの。
| いつの間にかケンシロウはその姿を消していた。
|
| 混乱のドサクサに紛れて、やる夫と蒼星石が『血族』に復帰。
| だが、『やる夫』が二人になることはなかった。『緊急事態対策班』の『やる夫』は、幻のように消失していた。
|
| だが、その数日後に姿を消した先代や華琳との関係を疑うものはなく。
|
| そして、この晩に起きたいくつかの惨劇。
| ヤクザの事務所の襲撃や、直前に発覚した『十字軍』の全滅とも、また。
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ｘ-､
r‐く⌒7´ ∧／＼
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＿_/ ＼ﾉ l ｊﾊ ＿,ノ ＼
く <{ ｆ'⌒i⌒⌒匸￣} ￣＼ }_
/ ＼Ｎ⌒ヽ＿_,ﾉノ ｊ/／} ﾘ／ｌ|
ﾉ ＿∧V{ ノ/￣＿__,人{k' | / ノ
く 〈 / ｔぅソ //===--一 V} |ｌ∧＼ﾘ
＼,' ／ ｊ/八弋ラ ／／|'{ ｊﾄ､〉
Ｌ ヽノ i / /l| l |ﾊ { ﾉ
/､r‐ ､__ / /イ_ｊ川l| }∨
/ ｀ ｰ‐┴ / '" 二Y i{ ﾉ
／￣￣＼. / ｀7 ー ' ,ｨノ ﾘ,ﾉ| ｊ/
／￣／ ｀Y⌒ヽ ／＿_／| | |
. ／ ／￣ ＞ｘ∧: : : i＿ --‐≦ | | |ﾊ|ｌ }
／ ／ ／:::::::::_| ￣ ／ /ﾊ リ Ｖ
／ ／::::::::／ | i ／ / }:ｌ|ﾄ､ｌ|/
.／ ／::::::::／ ,ﾉ│ , ' ,ｊ::l:|､ ＼ -ｭｆ´￣ ｀ヽｰ､
￣￣￣j＼/ ／ ∨ _,ｘイｆ:::∧i } ／ ヾｭ､ ＼ヽ
ー──,､__} ヽ. ＼,__,ｚ-ｘ__,__,ノ´ ／::/:::::l ∧ . -ｰ＜ ヾ＼__ ） ＼
ー ｊ }＼ ＼/ i ／::／::::::/ / ＼. ／: :-:､: :ヽ 〉: :ヽ {:ヽ
--─ Ｔ¨¨} ', ー'⌒ =‐-､ ／::／::::::／ , ' 丶、. /: :ｲ三ﾆｊ: : :j __ ／: ; : ハ : :ヽ ＼
.ヽ ＿l＿ﾉ }ー─- ､ __.／::／::::::／ ／ {: : ﾘ´rシ: : :ヾ /: ヽ／:_;_:´: : : :i |: : :} ハ
￣ } }-─====ﾆ二￣::::::::／::::::／ ／ .ｘ≦￣ i: : : : {: : : : : | |´j:!: ; : :r: ＼ヽ_:｢＿ｊ: : :| }!
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:::::＼::::::::::二´::::::::;::::::'::::::::／ ／ /:/: : : : :／／: : : :: ﾍ､_´ ﾘ!| |: :ィ: : : └=ー７
::::::::::::￣::::::::￣:::::::::::::::／ ／ ノ:/: : : ／／: : : : : : : : zｭ:_;入L!:j): : ィ_＿: ://
＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ , ′ ＿ィ!: : ト-:' ／: : : : : : : : : : : :￣: : ､｀: : j r┘｢７／
:＿::｀’＜/::::::::::::::::::/ / , ' |｢|: : : :ﾊ /: : : : : : : : : : : : : : /: : : XｭK､:￣ソ
::::::::::｀ヽ:::＼::::::::::::/ ∧ ／ ﾑ ﾏ: : : :∨: : : : : : : : : : : : r: : : ⌒八｀¨ゝ:／
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::::::::::::::::::::::::::::::::i: : : : : : : : : : : ://///人 ' .イ|ニニヽ＼: : :､: : : : : : :ヽ＿ﾆ: イ
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:::::::::::::::::＼:::::::人 : し‐ ＼: : :////// ／ イﾆﾆ| ﾏニニﾆ≧ｭ＞ニ≧＝彡ニｊヾニーｭ､
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☆ 次回予告
111。
作者にとっては大きな意味のある数字である。
今年の十月、十二歳の誕生日を迎えた現実の娘。
ではなく。
八月に十歳になった現実の妹。氏がこの世に生まれ落ちた直後の話。
そう、あれはまだ作者がB111のＬカップだった頃……！
当時は雑談所で他のことをしたりしてましたね。
こんなに長い時間をこのスレと過ごすなんて思ってもいなかった……。
戻れるなら戻って、出来うる限りの無駄を削ぎ、もっと確実に終わらせられる話を展開するように拝み倒すのに！！
でも、今も今で作者は楽しいがな！！
次回、最終幕百十一話『三日後』
果てに見るのは破滅か死か。
ディオとプッチが揃っちゃったか〜
お疲れさま、鏡と茨
正直もっと酷い結末を覚悟してたから
心から安堵している
今は
どいつもこいつもしぶとくて悪運強えな！
幸か不幸か怪しいとこだけど
間桐の爺ちゃんは万魔で、ばっちゃは恋に狂って引き裂かれた永劫で、共に血族も世界も危うくする
結果的にフリットがトップの時代が、穏健的に地位を譲ったのもあって、一番マシだったのか
, ,,,､ ，
､,ｲ::V:::,ｨ=ﾐ-::..､
(､__,ﾄ､_ノ::::::::::)三三三ﾑ:::::::ゝ､,,,,ｨ=''"´
､､,,ゞ｀:::::::ヾゝ:::::ﾏ三≫≪三=zzｲﾆア::::::,ｨ=ｱ⌒
ヾ:::::::::::〈ﾑゞ三三ｱ′⌒｀ヾ三三ｱ::{{｀ゞィ:::::ゝ
-=＜:::::::::::ゞ､:::ヾミゞ三三《《: ( ) :》》ア,,ィｱzzz彡:::::ゝーzｧ''‐
｀ヽ::::::::::::::ヾ:::｀''ミ三三ﾐﾐ､＿,,,ィアﾆア::::::::::::::::::::::::彡´
⌒>:::::::::::::::ヾゞ=三三≧≦彡アィ=＝ミ:::::::::＜
´≧:::::::::::::::ﾐミミヾ三三三アﾆ=-::::::::::::::::::::::::::＞=-
｀ヾzzx:::ヾミミミ三三三ｲｱヾﾑ===＝''"´´
〈:::::::｀ヾﾑゞ=三三三ｱ:::::::::}}}:::::彡⌒'‘
⌒)::::ﾑ{,,ィ川）（川ﾑ:::::ﾊ::}}}(´ ,zx
｀ﾑ{//川川川川ヾヽゞﾆﾆミzzｱ｀)′
〈V∨ｱ:::::,ｲ川乂川从(ｱ⌒ゞ=ミ ゞ=-
)ﾊｱ:::::::(从从从从从ヾ::::.､
)ｲ从从(川)从川ゝ::::::ミ｀
､__ﾉ川从(川)ﾊ⌒)ｿ
(:(从)川从)从(、′
乂从ヾ=彡⌒ヾ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『引き裂かれた永劫』の後遺症には個人差があった。
| すぐに復帰できた者もいれば、トラウマのフラッシュバックや性的な障害を残すこともあった。
|
| とりあえず、衝撃と全身疲労、脱水で誰もが半日は寝込んだ。
|
|「というわけで、二度と来るなと言われた鷹野の隔離病棟に行くお」
|
| 未だに動けない蒼星石を置いて、やる夫はみゆきとの対決を決意していた。
|
|「やる夫くん、おかえり」
|「涙が……じゃねーお。突然ヒロインぶるのやめてもらえます？ エンディングまで泣いてねーお」
|
| わずかなやり取りで、やる夫の帰還に気が付いた三四が満面の笑み。
| 待ち合わせは現実の入即貸本。水銀燈の大暴れで酷い有様の店に、やる夫は頭を抱えた。
|
| 一応、警察と『血族』とが掃除をしてくれたが、悪臭と血痕が拭いきれない。
| 破壊された書架や再起不能の本の山に、やる夫はどう手を付けていいか分からなかった。
|
|「THEやる夫。といった感じのトラブルね。とてもいい気分なのだわ……おかえりなさいやる夫」
|「てめえはほぼ毎日会ってた癖に……」
|
| 例えばお店の店頭に飾ってある美術品に一目惚れした人物がいて、店主に問い合わせたら非売品だと答えられたとしよう。
| そこで「店ごと買うぞ！」となるほどの芸術品よりも美しいのがこの女だ。
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r=ミ r=ミ
ﾉrﾍ ∨从_｀Yﾏ、
/:/ Y´_,ノ:.:.:.:.:.:.｀ｰ'⌒ｰ'⌒ｰﾍ
《《 ﾉ´:.:.ゝ'"´i:i:三二ニﾆﾆ≠-＼
／ゝミ彡:.／i:i:i:i:／:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀.:.:......
／／, ノ:.:. /i:i:ｉ:ｉ／:.:.:.:.:.しﾍ:ノ⌒ｰ'⌒ｰ'⌒ヽ:.:.:.:.｀.:.:......
,/:./／（_:.:. /i:ｉ:／:.:.:ノし'´ ＼ｰ'⌒ーﾍゝ､
《_//:./（_:. /ｉ:ｉ/ :.:.:ノ / / ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
/:./ （_:./ｉ:ｉ/:.:ノ´ / / / / / ',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:）
|:.i| （_:.|Ⅳ:ノ / / /-ミ / / / / i:.:.:.:.:.:.:.:.:_;ノ
|:.i| / 《薔》 / /l,,l,,/ / ヽ / / / / / i:.:.:.:.:.:_;ノ
. 《_ｊ/ （_|ｉ:i| ｌ ｨf斧抃ﾐﾒ､ / / / / / / /:.:.:.:.ノ
/ (_|i:ｉ| l |弋z::ツ ﾐ / / /_ / / / / /ｰﾍノ
/ /ヽ| l | ｀¨´ / /__/｀ヽ/ / / /
／ ＿__,/ｰﾍ| l | f斧抃ミ / / / /
. ／／:.:.:.:.:.:｛i:i:ｉ:ｉ| l | , 弋zツ ／／／／i| いい女は細かいことを
／ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｝i:ｉ:| r-ﾐ ｀ ｰ ｰ=彡'´|／／ i | 指摘しないものよ。
／ ,/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::}ｉ:ノ ,l:.:.:.｀ー‐r―――'-ﾐ| | |／| ｉ |
／ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／ ／/:.:ﾐﾒ､:.:.:.:.）＿_,ノ´｀ヽ）l | | ｉ |
' /:.:.:.:.:.:.:._彡／ ／ﾞ /:.:.:.:.:.:.:＼:.:.:）:ﾉ:.ﾉ:.:.:.:.:'., l ｉ| | ｉ |
. ' /: .:.:.:.:_彡: / ／ //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ｰ{:ﾉ:´:.:.:.:.:.:.:.:.',ヽヽ ヽ ヽ＼
. { /:=ﾆﾆ=:.:.:.:.:{/ ／/:.:.:.:.:.:.ﾉ:.:.:..:|i:∧: :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.', ＼＼＼ ＼＼
ヽ／:.:.:.:. -=ﾆ=-:ヽ／ ,':.:.:.:.:.:./:..:.:.:. |i:i:Λ:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:', ＼＼＼ ＼＼
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :./ / /ｉ:.:.:.:.:.:ﾉ:.:.:.:.:. ﾉi:i:i:i:i＼:. .:.:.:.:.:.:.:.:', ＼＼＼ ＼＼
/:.ノ:.:.:ノ:.:.:. :ノ:.:.:.:. { / /ﾐ{:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:{i:i:i:i:ｉ:ｉ:ｉi:i:＼.:.:.:.:.:.:.:.:',＼ ＼〉 ヽ ＼＼
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ノしﾍ:.:.:ノ:.:.:.:.:＼:.人:.:.: ',:.: =ニ=:.:.: ,'i:i:i:i:i:i:ﾉー‐'´:.:.:.:.:.:.:.:.ﾉしﾍ;ﾉノ,ﾉ ノノﾉ
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| 噂話の流布や情報収集の分野で、活躍しまくっていた真紅だが、情勢も落ち着きそうなので作業も一段落だ。
| そのついでにお見舞いに行こうという判断である。
|
|「か弱い体で毎日毎日、本を読む時間の合間を縫って片付けている」
|「それってほとんど何もして……へぶし！？」
|
| 長門姉の右ストレートが突き刺さり、やる夫は無様に尻もちをついた。
| あんこがでちゃう。
|
|「何か言うことは？」
|「連絡しなくてごめんなさい。ご心配おかけしましたお」
|「よろしい」
|
| 尻もちからなめらかに土下座に移行したやる夫の後頭部をローファーで踏みにじり、有希は満足そうに頷いた。
|
|「こんなに感情的な姉貴始めてみたぜ……」
|「なんのことやら」
|
| 律儀にもやる夫の謝罪に付き合って来てくれた長門弟。
|
|「つーか長門、何があったんだお？ 無事？」
|「無事ではない。この次世代ボディの準備がなければ死んでいた」
|
| 長門有希。大魔術師伊藤誠の作ったホムンクルス。
| 短命の肉体に霊魂を注入することで人間のふりをしている存在だ。
|
|「誠が収監前に用意していなければ即死だった。
| しかも、突然現れた外国人に殴り殺されていたので、みゆきに何があったのかも皆目」
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_／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
ｰ=ﾆ ｧ: : : : : :／: : : :/: /: : : : :､: : : :｀ヽ: : : : ヽ
/ ,: : : :〃: :/: : /: │: : : : :lヽ: : : : ﾊ: : : : :.ヽ
. / / : : //: :/: : /: : │: : : : ::|: :!: : : : i|: : l: : : :ヽ
/ ｲ : : : l |: :│: :j : : ∧: : : : :l: :|＼: : ｉ|: :│: : : :.＼
l/ |: : : :| ｌ: :∧: :ﾊ: : l '.: : : :ﾊ j ヽ ｉ|: :│: : : :}
││: : ｌ|│ﾅ下/-ヽ | ヾ: :/_ﾑ'― 弋|: :│: : ! j
j. │: : |i V ,ｨテ圷､ヽ ∨ ｨチ示k l: : ﾄ: : Ⅳ
ヽ: : | ﾊ` Vf:::::i} Vf:::::i} Y|: : ﾑ N
ヽ |ﾍ i l ゝー' `ー'' ﾊ!: :,) }i| 次にやる夫は
｀l: :ヽﾑ ' /:/: :ﾙｲ 『役立たず』と言う。
', : : |ﾍ､ ‐ ｨ' /: :/
ヽ: :ｌヽ ＞,､ イ/７: :/
＼! Ｖ厶|＞ｰ ＜ﾚ_'/ /／
, '´/ノ L､ ／
,.-' | ___.＿ | `ｰ､
_..-‐'´ |´ ＿｀ ｰ<| ｀ｰ､_
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|「役に立たねー……はっ！」
|
| 再び踏みにじられるやる夫。
| 長戸弟は複雑そうな目で義理の姉を見た。
|
|「聞いてたけど、本当に人間じゃあないんだな」
|「そうだ」
|
|「人間だお」「人間でしょう？」「悪霊か造魔か判断に迷うわ」
|「鷹野ステイ。いい話にしようとしてんだお」
|
| 失笑が漏れる。長戸弟は恥ずかしそうに頬を掻いた。
| 人間か、そうでないかの定義。案外どうでもいいかもしれない。
|
|「まあ、姉貴は姉貴か」
|「コンゴトモヨロシク」
|
| 笑いあった後、彼は入即貸本に残った。みゆきの見舞いに付き合う理由がないからだ。
| そもそも、レイに掻っ捌かれた腹の傷が治り切っていない。
|
| 『夢の塔』攻略は、予想外の援軍のおかげで破竹の勢いで進んでいた。
| この調子ならクリスマス前には最上階に到達する。
|
| ただ、休まずに進む早瀬浩一や島津由乃、トキの現世肉体の健康状態は悪化していた。
|
|「そうだ姉貴……伊藤さんと連絡取れるのか？」
|「取れるが？」
|
| 何を当たり前のことをと首を傾げる有希、やる夫が目を剥いた。
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／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼ まずそっちから行くかお？
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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|「まずはみゆき、後になさい」
|
| 白魚の指でピシャリと叩かれ、やる夫は諦めた。
|
|「伝言でも？」
|「『柄しかない剣が復活した、必要なら十六夜とバートン、糸川を開放しろ』」
|「承った」
|
| 長門弟は、誠の謀略の中でそれなりに重要な一手を握っていたらしい。
| それがいくつものイレギュラーを経て、無事に元の形に戻ったのだ。
|
| なお、『やらない夫の集会』以降伊藤誠に拉致監禁されているペルソナ使い三人娘。
| それぞれ瀕死の重傷はしっかり治療され、現在誠のセクハラレッスンを受講中。
|
| なんでも、木星の対処に援軍が必要だとかなんとか。
| 泉教授やその娘、新城直衛に任せっきりでは難しい状況らしい。
|
| 暗躍するネウロも同じ目的で動いているらしい。
| 誠とクソ親父が協力しているなら、業腹だが手伝いは不要だとやる夫は考えていた。
|
| 実力は折り紙付き、信用できない理由がない。性格以外は。
|
|「……んじゃ委員長、しっかり休めお」
|「あ、後で連絡頂戴。お姉さんがイイコトしてあげるから」
|
|「やめておきなさい、解剖されるわよ」
|「人聞き悪いわ。治療ついでに各種分析にかけるだけよ」
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イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::::::::::::_ -―- ､::::::::::::::::i
く:::::::::::::イ￣ / ./ ｀丶::::::ﾉ
.〉- ' / ／. ｲ { V T´
| |ナァ'´〃ー!- V .|
| i {ｲえi } =えﾐ.V / .| 実は最新型の、
Ⅵ .| _' ￣´/ ｈ i | 一つの装置で全身の魔力異変と呪詛、
| |.､ ヽ ァ / }ﾉ ヾ､ 異能性質の分析までできる機械を開発したのよ。
∧ i. ＼ r ､-ｲ ム_ ＼
／ 。 r =::￣i /)ｲ ./::::::::〉 ＼ ＼
／ .ムﾑ__ﾘ:＞_'.. ＜>:ヽ/ ＼ ＼
／ . - 二::':￣ｲイ:::::￣｀丶::::ヽ_. ＼＼
／ ムr＝=ミ､::::/ｲ:i::::::＼::::::::::｀¨¨｀ヽ ＼ ＼
／ r＜:::::::i:::::::::7ﾊ/{:/:::ヽ:::::::::＼::::::::::::::::::＼ {＼＼
／／'⌒ヽ二}:::::::::{{:::|. VV::::＼:::::::::::ー〜::_::::￣＼ ＼＼!
./イ 八:::::::::::::ヽ::::::ヾ:::ヽヽ:ミ=':::ヾ､:::::::::::::::::::::｀ヽ::::::＼ ヽ ＼
./ | /i＞-r::'::::￣:::::}/ /::::::〈::::::i::}:｀ー----r＜:＼::::::::ー .L_
/ .| ./ .| |;イ:::::::::::::: / {:::::--!::::|::|__／:::::ー≠、V:::::::::::::::::::::::＼
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.| .|' ／! .|:/＼:::::::::::|入{::::::::::::＼ト､}::/:／::.二ﾋ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
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|「アイアンメイデンみたいな奴かお？」
|「それとファラリスの雄牛を足して２で割らない感じよ」
|「まさかの処刑用」
|
| アイアンメイデンとファラリスの雄牛の雄牛はどちらも有名な残虐機械だ。
| 前者は内側に針の並んだ箱で、締めると針が体に刺さる。拷問用。
|
| しかし、急所に刺さらないように設計されているので犠牲者は簡単には死ねないで痛みにうめきながら流血するしかない。
| 後に吸血鬼カーミラのモデルになったエリザベート・バートリが考案したとかしないとか。
|
| 後者は真鍮製の牛で、中身は空洞。処刑用。
| 犠牲者を押し込んで火にかけると、反響した悲鳴が牛の鳴き声のように聞こえるとされている。
|
| ファラリスは制作者ではなく、制作を命じた暴君であり、最初の犠牲者は制作者本人。
| 後に反乱されたファラリス自身が、この雄牛で処刑されたとされている。
|
|「中に入ると全身に熱した針を刺されると？」
|「ご名答よ、魔力的を帯びた針を刺される事で全身のチャクラを活性化させ、非活性部位や活性時の魔力変化を測定するの」
|
|「素人ながら、聞いている分には良さそうに聞こえるのだわ」
|「騙されるな不人気、相手は鷹野だお」
|
| この姦しい感じ、懐かしいなあとやる夫はにまにましながら警告する。
|
|「試す？」
|「まさか」
|
| 無下もなく断る紅マグロ。そんなこんなでみゆきの病室に到着。
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／ / ｀ヽ､
／‐ // l ｀ヽ
, ‐´ ／ ,/ / l ､ ヽ
／ , , / / /l l ﾊ ヽ ヽ
／ / / / ／'´7/ l / -Lll ヽ l ヽ
/ ／ / / / / l l l / l. l ﾄ､ V. l
l ／l / / / _,/､」│ l/ ヽl l ` ヽ l
l/ l l l / 〃､フ:､∧ l ﾆ=ﾐl､ヽ ヽ l
l l ハ〈/ ll ヽ l ´,､/`:､ヽヽ l l
l ∧ l ∧ l l _〉l l 〉,l l ､ l l
ヽ Nゝ､ |l l `─' ﾗ´F l /N､ l l ﾘ
ヽ ヽl｀l＼｀ﾄ､＿ ,ノ ' l ` ‐' ' / ﾊ. ﾄ l ll
ll `l,､ ｒ 、 ヽ､_ _ノ// l N ｲlﾉ l あーうー。
l 〃 ｀ ‐､_ {} ￣ ィﾌ' W l／l l l あばぁ。
l l 丶 ヾ ＞,‐ ´ ﾚ/ ﾊ ヽl l
l / l＿,＿ ,〉, ノ ／' ノミ､l ll l
_ ,､ l / /川 / ／´ ／´´ ヽ ヽ l
(_r‐､- l. ﾄ ､. l / l 川 /‐-ｙ´´ ／/´ ヽ ヽヽ
, -､. l l 丶｀´ヽヽl /l 川 / ／/ ／´/´ l ヽl
.(_, -‐-｀_ ／〃､/ l 川 l 〃l / 〃 l ヽ
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| 目に見えない何かを追いかけて、よたよたと歩くみゆき。
| 眉をしかめる有希と、目をそらす不人気。どちらもみゆきとは仲が良かった。
|
| こんな姿、見たくはなかった。
|
|「れっつらお試し」
|「効くの？」
|
| ポリタンクからのシンプルな問いに、やる夫は肩をすくめた。
| 『類似した症状』には効果があった。そして、今も元気だ。
|
|「鷹野、あちらさんの経過は？」
|「以前の状態を確認できたのは映像しかないけれど『彼』の方が酷いわ」
|
| 取り出したカルテ、脳のＭＲＩ。
| 恐ろしいことに、脳の一部分が物理的に欠けていることが伺える。
|
|「え、何この写真。脳をチュルチュルされたのかしら？」
|「マインド・フレイヤー恐るべし……！」
|
|「機械装置と魔力で脳の損失部分を補っているわ。恐ろしいことに異常や変調は見られない。
| 至って健康、毎日朝から晩まで訓練して食べて寝てるわ」
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ｨニニ､
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ィニニニニニニ＝ー 、
マﾆ／ ヽ
／ ／ ｀ヽ 、 ＼
／ ＼ }
/ / ＼ ﾄ
/ / { ､ ヽ
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′ j{ |ニト iﾆ} ', | }
ﾊ ﾏ_ｊ ､ じ ＼|イ
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| 『彼』すなわち核天使『ファットマン』ことティム・ローレンスである。
| 『引き裂かれた永劫』戦後、彼と『リトルボーイ』はジャギの勧誘を受託した。|
| 二体の天使を、来る『冥王 ニビル』戦のために確保できた。
| これは『十壊』対策としても、もう一つの懸念の対策としても完璧だった。
|
| …………もう一つの懸念。
| やる夫はほんの三日前、たった一度、夢が現実かも定かでない邂逅を思い返す。
|
| 『nrlthtp』。
| チクタクマンの直前に現れて、『レッドライダー』の端末と『クトゥグアの代行者』の情報を寄越した女。
|
| もう一つの懸念とは、もちろんそれらのこと。
| まずは三柱の『レッドライダー端末』。
|
| ロビン、ケンシロウ、そして『リトルボーイ』。
| 端末を駆除するには『満足の行く戦争とそれに伴う死』が必要らしい。
|
| 当初こそ、ロビンとケンシロウを殺さねばならぬと暗澹たる気持ちのふりをしたやる夫だが、今ではだいぶ気が軽い。
| 何故なら、ロビンは生存して、その上で端末は消滅しているからだ。
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｀ マ / / ＼
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〈 / ＞ /＿ 人
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>ミ人/__＿/ ￣￣
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メノ/_人 {＞/ {7 { ヽ ＞ ´ ／
７ Ｙ ￣ ７ {__/ ｀ー ´ ／
〉>' { ＿_/ }＼＿
´ ヽ＼７ｨ＝、 ／] ＼ ヽ.
｀Y/ Oヽ. 人／ゝ 彡 ｒ┐ ＿
{≧=＝レ┴┤ _ﾉｰ/ ＼ ／７
＿＿＞ー＜ニニﾑ ノ￣＼ ／ﾆ⌒Y
｀マ/ﾑ ｛ ﾏニニ＞ｒ―彡 ＼{ ｙｰ､ Ｖ
」ｭニ､ ｀ー― アﾆ人 ／／ 〉彡′
ィ＿_｣}７ /ニニニニ/ ＼ ｢ ／＿｣
_＿ ｡ｃーィ ＼ニニィ⌒}ニﾌ￣￣ ﾉ／（
＼<ィ＜￣￣! ｀ ｰ＜ヽ. ｢ ／￣／ ／´
7人 ＞ 」 }ｰY ／ ／ /
{L＿＞、入 ﾉ ﾌ .／ー ´ /
＼{｀ーｒー彡 ´ .／ ／
￣￣￣ ／ 彡 ´
￣￣￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 新宿衛生病院での地上戦。
| 呂布との決闘、ルカとの死闘、そしてレイに触発されての狂乱。
|
| その末に完全敗北を喫したロビンの中に、『レッドライダー』の気配はない。
| それはロビンが『追放あるいは死を経て蘇る神』ヒルコ／エビスの祝福を受けているからかもしれないが、
| とにかく殺さずに済む可能性があるのは喜ばしい。
|
| 問題はそのケンシロウが、『シロッコ排斥』以降消息不明な点であるが。
|
| とにかく、『レッドライダー』側は多分なんとか。
| きっと、ジャギがどうにかしてくれる。
|
| では、『クトゥグアの代行者』は？
|
| ケンシロウ以外に二人いるようだが、情報がまるで無い。
| ニャルラトホテプの化身を排除するための存在らしいが、それらしい奴をやる夫は知らない。
|
| そもそも、やる夫知る限りのニャルラトホテプの化身は、五名。
| まずは『やる夫』の顔と名前を奪って好き勝手していた憎きニャルラトホテプこと『ホワイトスネイク』。
|
| 次いで、すでに死亡したできる夫。
| ペルソナ使いのひとり、やんねえ香の執事にして、高位の戦闘能力を付与された情報用端末ロラン・セアック。
|
| 嘘か戯言か冗談の可能性もあるが、真実の可能性も捨てきれない情報用端末のシックス。
| そして中位化身の『チクタクマン』を内部に隠したやる夫本人。
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ｨ ｨ､ ノ|ｨ ,,,ィ
,､-ｰ '''' ｰ ､/|（イ（-'"ﾉノ''''"イ"''''"´"レ,､-ｰ ''''''''
/ 死 き ヽ"（ヽﾂﾂｲ,ｰｲ},,从ｯレｯｯ／ 選. 早
/ ぬ さ ',))）ヽ）ﾂ;;（从Lミﾐﾐ〉〉;/ べ く
,' べ ま lﾘﾂﾞ从ﾐミ从｀' ､;;））;;ll| // 死
l き は. |;;;;ｨノイミ从从ヽヽ"l||| ・・ に
l 男 l;;;ｲ从从从ﾞl|||从从l l;| 場
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ヽ // /l|ﾉ）从从l| l|l||;;l|ｲｲ从从ヽ を
ﾞ' ､・・ ／;;;イﾉﾉﾉﾉﾉl||l;;;;ﾂ从;;/;;;从从｀ﾞ)ノ― ''
ノ>―''ヽ;;;;l|;;;|彡ﾉﾉｲl|;;|;;;;l;;;;;|;;;;／从;;;;）从从之
之三;;彡;;;､l|;;|;;;lイ/从ﾉ;八;|llYイノイ／;;从从ﾆ<
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{彡;;;ヽ;;;',::::::... ::::|: ﾘ:::: ﾞ ｲ;/ノ;;;;ﾞl|
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ノﾉ;;;;;;|:l|:', :::: : :::｀ﾞ'ｰ '´" ,':::l|/;从｀' ､
,, ､-ｰz''"ｲﾘ|l|::|l:'､ : ::::::: ,;}､ / :: ﾞl､从l|',::ヽ
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| 『代行者』がいつから活動しているのかは分からないが、少なくとも翠星石が『クトゥグア』を召喚した六月の満月以降であろう。
| それ以降のタイミングで『やる夫』やロランと好戦的に接触した人物こそが怪しい。
|
| つまり、『血族』とペルソナ使いたちの中にはいないものだと思われる。
| ……………本当に？
|
| やる夫はこの、『nrlthtp』からの情報を信じていなかった。
| 後から考えた結果、彼女が『チクタクマン』のために無理なログインを行って警告してくれたのだと想像できる。
|
| しかし『nrlthtp』からの情報は果たして正確なのか？
| 彼女はケンシロウを『代行者』だと断言した。
|
| だが、そうであるなら矛盾が発生する。
| だってそうだろう？ 『やる夫』はケンシロウと何度も顔を合わせていた。
|
| 彼らは『緊急事態対策班』のメンバーてあり、共同作戦も行っていた。
| 聞き取りによると極めて友好的だったらしい。
|
| 友好的だった？ 『クトゥグアの代行者』が？
| 『やる夫』＝『ホワイトスネイク』＝ニャルラトホテプと？
|
| つまり選択肢は三つに一つ。
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,,"⌒ # ( ﾞ､ ﾄ､ ⌒Y ｀てノ､ # / ,,ﾉ
{( ; ; ,,) :.乂_ _ﾉ ヾ, )． (
ﾞて ､ i! ⌒ヽ ,,（" 乂 ( )ゞ､- {("
, ｨ ( ｀)} ) ｀ﾞﾞ -イ 弋 ﾉ
)! ( ゝ ﾉ }! ゞﾄ..,, ノ ( ，
／∥ ) ( /" / ﾉ }! 乂
ノ. { ｀Y 乂 ::; 、 " ∥ ﾄ､ {( ､
､ i{ # ,, . ノ ,)} ヽ,,__)､
;: " } 〃゛ ＼
ヾ ﾍ´" ( ) ｀( .
ヾ ､ ::; (⌒ ( ､ ヽ
ゞ､ ) )､ ニ }! }
Y ｙ ｀ヾ ;:;' ニニ ∥ 人
;:;',, ﾆﾆ {(" ,..yｰ "
ﾄ､ ﾆﾆ ＼ ,ｒ'" / ,, ''
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三三三
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| 一つ、ケンシロウは『代行者』ではない。
| 二つ、『代行者』の攻撃目標はニャルラトホテプではない。
| 三つ、そもそも『代行者』などいない、『nrlthtp』による情報撹乱である。
|
| まず、やる夫は三番を打ち消した。
| 『nrlthtp』はやる夫に情報を渡し、開放し、『ホワイトスネイク』と合流させた。
|
| あの女の目的が何なのか、『クトゥグア』関係の偽情報など流しても、『ホワイトスネイク』を無駄に焦らせるだけである。
| 『ホワイトスネイク』へのヘイトで命がけの撹乱に来た？ 本気で？
|
| 『やる夫の中の入即貸本』で、『チクタクマン』が否定する。
| コストが見合わない、危険に見合わない、あの人は女の子を守るために動くけど、世界を滅ぼしたいわけではない。
|
| 理解できる、非合理の極みだ。ここは『チクタクマン』を信じるべきだ。
| そして、『nrlthtp』を信用するならば一番も否定される。
|
| なぜ彼女はケンシロウを名指ししたのか。簡単な理由だ。
| 目視で確認したのだ。ケンシロウの状態を、『nrlthtp』は。
|
| 『レッドライダー端末』も『クトゥグア代行者』も、普通では手に入らない情報だ。
| それこそ、いく夫のような管理者権限なしでは。
|
| 恐らく『nrlthtp』の消耗はそれが原因だった。そう考えたほうが腑に落ちる。
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ム､ィ´ ￣｀ ｀ーｧﾆﾆ-ｧ
ｊニニv´ ヽ､＼_ｊ从｣トミﾆ≠´ ＿
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V ィ´ ヾYｚ佐ﾐ iぅﾄ}､＞ } ＿＿ノァ￣｀ ７ フ
{ // /イメｰ ｘｘx ｀~xｊ｀ヱ彡′ ｒ-＜⌒ー=―＿ノ / /￣
ヽ {_{! ,' { ﾊУァ ｒ ｱ 人＞＝― ￣ ＿ -― ´＞´⌒´
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ﾏ⌒ｰ´了 ＿ ｲ ７´ ＿＞ー＝＜ ィ7
i／´ ァ ´ } ヽ. ｒー､／, ＜_
{ , -‐ ｊ/ィ/ ; ト ､ ７､ ｀ マ´
ヽー ､_ {l ノ / } ヽ イ ／7ｰリ}
＼ / 八 ／ / / .ハ ／ ／
､ ､ヽ. ＿_ 彡′ イ .ノ j!／
V / ｀≧= ー彡ェ´ ﾉ
ﾏ ,' / / ７ 个ｰ＝´
}/ ｲ / _,/ /｀ヽ
/ / ,' ; ﾊ
（ ﾉ { ｊ,ｚ≠エェ､ }
_/ （ , r ´￣ ￣ ｀マ
ｒ' ＞ f´ i ｊ ＿ V
ヽ´ i { ／´￣ .
Y ﾊ V ／ }
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| つまり、目標が違う。
|
| 『クトゥグア代行者』は、ニャルラトホテプの化身を狙わない。
| では何を？ ケンシロウが理屈を超えて執着するほどのものものなんて。
|
| そもそも、やる夫はケンシロウをそこまで詳しく知らない。
| 蒼星石ならよく知るだろうか、あるいはジャギならば？
|
| 二人にとってもおかしく見える執着を、何かに操られるか、あるいは導かれるような行動を。
| ケンシロウは…………。
|
|
|
| …………たとえば、特定の人物への異常なまでの殺意とか。
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| やる夫は思考を停止した。
| 今は、目の前のみゆきだ。
|
| どんなつらい目にあって、心に深い傷を負い、幼児退行してしまったのか。
| やる夫には分からない、想像もつかない。
|
| みゆきの心を取り戻した所で、彼女が幸せなのかどうかも判別つけがたい。
| なにせ東京はこの惨状で、もしかしたら明日にでも、世界が滅びたりあるいは野良悪魔に殺されるかもわからない。
|
| でも、やる夫はみゆきを助けたかった。
| みゆきが不幸な目に合う可能性以上に、全てが終わったときにやる夫が生き残る可能性は遥かに高い。
|
| ならば今、一刻も早く。
| エンディングでいい感じっぽく終わらせるために取っておいたりせず。
|
| そのためになら何でもする。奇跡にすがる。
| やる夫が蒼星石に言った、人生を捧げるという言葉は本心だ。
|
| みゆきがこうなったのはやる夫の責任だ。
| だから、リスクもコストも承知の上で。
|
|「『リブロードキャスト』」
|
| 再放送だ。しかし、ほんの一瞬だけの。
| みゆきを中心に開く破滅の渦、いや針の一穴。世界を破滅させかねない穴。
|
| 『やる夫の中の入即貸本』で星が流れる。最悪ここで、切り札を切らねばならない。
| だがやる夫は、神を信じた。
|
|「頼むおミロっさん！！！」
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ｌ、 ／;/'/'/ '´／: ; : / /:,| /: :│: : : : : : : |!: : : :l、: : : : : : ｌ|l､: : : 'ｌ／ 〈、
`i､ /: /:,/:/ ／: :,/:,/ /: :,|'′: ;|: : : : : : :,i:,|'ｌ、: : ::|: : : : : : :| |;'l､: :│ ヽ,
ｌ,/: ;/ｲ: / ／: : ;/:,/ｲ";/: : ′: :,/|: : : : : : :;|:,|! ヽ; : :::|、: : : : :,|, |; |、│ l
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i|'/ |: : : : : /: : : : ;イ' ,|‐'´／ ＿│: .::::::::i|/ │ =ﾃ云ﾐ;i|; : : :i|: : `i|; :`| ｀`'-、
,|' | |: : : .:;ｲ′: ／:/ ;|::／,イ乏ミ' |:::::::::;/ﾘ′l う伐ﾊ`ヾ、;iｌ|; : : |!: : |、 ＼
|! |_,｣: :.／/: :,: : :,:Λ: |/ ∥,う代ﾊ, ｌ;::::://′/ |;ｌ;:;:;};j |ﾘ:/iﾄｌ、: :|: : :|ﾄ, ヽ,／
ｌ／ |‐'′,ｌ／: : :.:||ｲ'ｌ、! i|! |;;ｌ;:;:};j ｌ;/' ′ 込;ｔり |:/ ,||'i|: : :│:;|::ト、 ／′
く´ ! ,ｲ‐': : .:::;i|ｌ,ヽ ｌ, ﾞ! 辷ｔり ′ . , 、,､|' H|´ｌ、: ,ｌ|; |:::'｢ヽ'′ 『もちろん。
｀＼, ,ｨi'´＿.:::／:||`'ｰ､ｌ、 ､, 、, . . ′ ﾞ ` ﾉ;ｌ'::;r|、ﾄ-|L;::ヽ,
,.lｲ"￣ ￣｀`'┴-､;/ヽ, ＿＿ _,／;ｲ‐'′|/ |' ｀＼ｌ、 言いましたよね。
,イ'´| ｀`ヽ;`i-､.,_ ` - '′ _,..,イ‐'"´′ /′ _,.-‐':ｌ、 必要とあらばいつでも呼べって』
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| そんな声が聞こえた気がした。
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| あの戦いの終わりに、やる夫は『引き裂かれた永劫』を保管していた。
| 世界中の精神を繋げて狂い咲く精神の大渦。
|
| だが、そこには目を見張る副作用もあった。
|
| やる夫は失った心を取り戻した。
| 翠星石とティム・ローレンスは意識を取り戻した。
|
| 近くにいなかった北斗トキは残念だったし、翠星石は『夢の塔』攻略に戻ってしまったけれども。
| 脳を破損したティムすら目覚める、精神の接続。
|
| やる夫は、『引き裂かれた永劫』ならばみゆきを救えると思ったのだ。
| そして今。
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r‐､, - : : : ￣￣｀ｰ- ､
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r─ｖ'. :| : : : : : . ＼ : : : ヽ
| : : . | . . ﾄ､ : : : : : : : : : ＼＿: '.
/ . |: l : : : : | _＞ｘ- : : : : : ﾄ､ヽ:＞,
／ . : : : |: l : : : : | ｀ヽ: :ﾍ: : .', ＼', : i
/ . : : : : : :｀xﾄ.: : : .:l ,ｨｘニミ、、',: : :i : :} : :|
/. : : l : : : : ｲ:/_`x : .'ヽ 《 { ):::::ヽ》: | : :|: : : : :|
/ i. : : l : : : : :l ﾚx'ヌ.ヽ: } ヽV之}/ j | : ﾊ､_: : :|
l 八: : :ﾄ: :| : : ﾄN{∨):〉へ ´￣o/ｲ /: :V : : |
′ ヽ.:|.ヽﾄ､ :.| ﾊ｀ ≠'} ､ ＿ _ //イ : : :|: : : ! んあッ！？
＿｀ ＼ﾄ､} ﾟ .ﾉ rｧ‐､ u ﾉ! : : :|: : : |
ｘ'⌒Y^ｰ-､ | : :冫､ ｀ー ／/. : : ,ｲ; -┴ 、
ﾊ } |ァ j /. : /. : .＞.ｰ.─. ｧ´: / : : :ﾉ-に二ヽ.ヽ
{ ヽｲ｀7 }／. : / : ;ｨ ─xzーイ ／7 : : 「 く(__r─ヽ '.
.ヽ ) ﾉ. : : ;ｲ:／ ヽ ／. :／} )ゝしﾍ } i
ヽ. ﾚ{ : :// ／ ./ {. :／ { f⌒´ / |
l | ゝ ﾚイ ´ ／ }/ } ／ |
| ,イべ | ／ |! | 「 j､
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| ごく小規模の再現。
| ほんの一瞬の精神接続。
|
| その一刹那に、やる夫はみゆきのすべてを見て。
| みゆきはやる夫のすべてを見た。
|
| みゆきの躊躇いや隔意。やる夫の見ているものを見たいという好奇心。
| しかし、それは不可能だと笑う誠。
|
| みゆきの記憶は手入れのされていない池のようだった。
| 小さな生態系を懸命に生きる魚も、水底に光る美しい小石も、泥の淀みも混在していた。
|
| 二人の恋愛を阻む距離を説明してくれないもどかしさ。
| それでも受け入れようという決意。同時に疑問、疑念、渦巻くどす黒い嫉妬。蒼星石やアリカへの。
|
| その答え。やる夫の記憶。
|
| それはまるで断崖。崖の上から押し寄せる人々、後から後から追いやられ、次々に滑落しては積み上がる。
| 崖下を除くと腐臭漂う地獄の有様、見渡す限りに敷き詰められた死体の山。死を見続けた男の、心の末路。
|
| 今まさに落ちようとする、落とされようとする人物の視点を得て、恐怖とパニックがみゆきを襲う。
| だが、それを救う手。掴んでくれた柔らかな手。やる夫の。手。
|
|「嫌あああああ！！！」
|
| みゆきはそれを振り払った。
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i∨〉＞ ´ ヽ ヽ ヽ: : : : : : : : : :´ｺ´ i::i
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/: : ' } ｉ ヽ ＼ ＼ ∨: : : : : :ｲ二´‐- ､
ﾉ::',: : ｉ | ｉ ヽ ヽ ヽ ∨: : : : : イ i:ﾄ､ヽ ヽ
/: :} /:::::::',: : :´) i| | i ､ i i i : : : : : : 〉i::i ヽ i ＼
ノ':ｉi: : :∨::::::::::',: : ､ i| | | ＼ ､ | i i: : : :〈￣ // ∨|i }
/:∧ ',) : :',:::::::::::::',: : :) i| | | ヽ ｉ| ／ ﾘ､ i: : : 〈 i:i i ' i
｀===､､ ､ ',:::::::::::::',: : ､ | | |＼ ｉ ／,イ示 iヽ┐' i:i /' / /
ー ,彡 〈: : :' ::::::::::::', : :( | | | ヽ i ﾊ::::::} ｉ ∨ i:i / / /
/ /ヽiヽ:ヽ:::::::::ヽ: : ゝ i -‐ ´ i ﾘ ¨´ i ヽ i::i / / /
/ /i::i 〈: : :＼::::::::ヽ ) ´ ,イ´::〈｀ヽ ､ i＼ ＼ i::i/ / / みゆき！
／ / リ ｉ::ｉ´(: : :＼::::::ヽ)＼不ト:::::ソ , /´, ＼ ＼i::i / / 落ち着きなさい！！
/ ヽ i::| ゝ人ﾉ⌒∨:ヽ ヽ ¨ ´ ´ ／ ゝ､ ￣￣￣i
/ ∨:/ ゝ‐-､: : :.i |i i＞ ＿ イ､-‐ 二 ＞´ 彡'
／ ｀ ヽ: i i| }､ ￣ ￣γ/､〉iヽ＿＿／／ ／ゝ-=
ゝ⌒ヽ ／: i i| i ｀‐‐ ´､ 弋＿ｿ､ 〈／ ／ヽ-‐ ´
／ヽ､ノヽ: : :〈_〈: ／i ' | ゝ´ ∧ ＼ / ／ ´
/: : : : : : : : : : : ／: :/ i ／ /i〇､ Y ／´ ＞フ ／
／｀: : : : : : : : : ／: : :/ -‐ ￣￣￣二ミ､' i: : :ヽ )´ ＞´:.／ ￣ フ:
/: : : : : : : : : ／: : : : :〉´ ＿＝=‐-ミ〈 iγヽ: ､｀´ ヽ／ ´ i: :
ヽ: : : : :ゝ⌒-´: : : : : :/彡-‐二 -‐ ＞-‐´ i:ゝ‐': : ､ ／´ ＞ ´: :〈
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ヽ: : : : : : : : : : : : : : : : :.〉 ／￣￣￣ / i :ゝ‐': : : i´￣￣ヽ 〉｀
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|「…………え？」
|
| 知らない天井、見慣れた人々。
| 入即貸本かしまし三人娘の不人気、有希、三四だ。
|
| そして、振り払われて少しだけ寂しそうに笑う、やる夫。
|
|「わた、わたし……」
|「無理に思い出すなお」
|「せんぱい」
|
| みゆきは頬を流れる涙に触れた。なんで泣いているのか分からなかった。
| だが、赤提灯も液漏れしていた。やる夫も鼻水垂らして目元を拭った。
|
| 有希は相変わらずの無表情だが微笑んで見えて、三四は驚嘆に目を丸くしていた。
|
|「せんぱ……ヒッ！？」
|
| 手を伸ばし、触れようとしてみゆきは身をこわばらせた。
| 理由の分からぬ、根源的な恐怖が体を縛っていた。
|
| やる夫は寂しそうに微笑み、鼻をすすって呟いた。
|
|「おかえり、高良」
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. ／: : : : : : : : : : ー- ､｀丶、
, ': : : : : : : :- ､ . . ｀丶、｀丶、｀丶ヽ
/: : : : : : . : ヽ: : :｀ヽ、: : ヽ.: : ＼. ＼
, ' : : : : ヽ、:､: : : : :ヽ｀丶､＼: : :ヽ.＼｀、
/::: : : : { ',: : {ヽ､ヽ､::::::. :＼-ヽ=､: : :.';. }.＼
;.:.:.: : : ヽ: : ヽﾍ -＼｀ ｰ- ､} _}_ {ヽ: :}/､
{:.:.:. : : : l＼／＼ ｲﾃ"ﾜ; :}/:.: : ヽ、
. !: : . : : : :.V ヽx=＝ミ ﾏ_:j V:::...: : ＼ヽ 説明を。
' : :: : : : :ヽ 《 ﾏんﾊ, 丶 ;＼::::::: : ヽ
. ヽ:＼:.:.:.:.:.:.. : ＼ ゝ '’ ,､ 八 ヽ｀丶､|
}.:.:.:.ヽ､:.:.:.:.: : :｀丶､＿ ' ′ ヽ ヽ
. !ﾄ､ :.:::::{丶､:.:_:_: : : :＼ ,.'
. '| ヽ{＼｀ー‐‐ <｀丶: :ヽ -‐ ヽ./￣￣:~｀ ／￣二ﾆ=､
. ヽ|｀丶､|＼ ｀ヽ /:. :. :. :. :. //:. :/;';';';';';';';｀丶､
_ヽ ,':. :. :. :::. :.,':,' :. /;';';';';';';';';';';';';';';'丶、
/.::/｝ ／_; :. :. :. :. :.:j:j: :. ;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';ヽ
l :.;/￣￣ ＿___. :. :.:::i::i :. i;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';＼
j:. | ／￣ Y￣￣｀￢-ｘ_. :l;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';ヽ
／:. f ￣￣:}:. :. :. :. :. j::j :｀ヽ;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'＼＿
x―（~又___.／!. :. :. :. :. j::j :. j;';';';';'ヽ;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'ヽ;'｀丶､
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〈 乂_＼ﾉ＿_i _: : :!:. :. :. :./:/:. /;';';';';';';';';';';'; ＼';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';ヽ;';';';';'＼
{＼八 ＼:.:.:ヽ￣iヽ:. :.:/:/:. / V;';';';';';';';';';';';';'ヽ;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';ヽ
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|「高良を壊した記憶と、あいつが見たやる夫の記憶を封じたお。
| 前後の記憶がなくて本人困ってっだろーけど、害はねーお」
|
|「そうではなく」
|
| やる夫は頭を振った。分かっている。
| なぜ、みゆきがやる夫を恐れるのか。
|
|「あーあ、なんで『鏡と茨』を見ず知らずの男にあげちゃったんだお……。
| 精神を接続したらやる夫の記憶を見られるのなんて当たり前なのに」
|
|「…………なるほど、みゆきは『死の淵』を見たと」
|「やる夫が見てきた無数の死の断片でも、普通の人間にゃ劇薬だお」
|
| やる夫は自嘲的に笑った。有希その首根っこを掴み引き寄せる。
|
|「泣くなやる夫」
|「泣いてねーお」
|「なら、泣け」
|「わけ分かんねーお……」
|
| 抵抗せずに抱きしめられながら、やる夫は少なからず安堵した。
| 大きな声では言えないが、姉のような三人を連れてきて良かった。
|
| この三人なら、みゆきを任せて置けるだろう。
| そしてやる夫は。
|
| もう二度と。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ _ノ ヽ、＼
／ （○） （Ｏ) ＼ ごめんやっぱり泣けてきたお……。
| || （__人__） ..|
＼ ﾉi ! |. ／
/ し' ｀⌒´ .ﾉ
| .／ .／
残る敵。
クトゥグア。
ニビル。
木星。
第二次関東大震災。
そして、レッドライダーに汚染されたケンシロウと。
三人の『クトゥグア代行者』。
次回、最終幕百十二話『代行者』
果てに見るのは破滅か死か。
やる夫の見ているものを見たがってたみゆきが、その一端を見て怖くて仕方なくなってしまう。残当で悲しい結果やな
人生そういうものよ。振られたけど笑い話にできる。酒を飲め
このタイミングでなければみゆきさんを救えなかった以上振られるのは必然なんだなあ
哀しいね
ちょっと前までそれすらどうでもいいというか、些事状態の全部排除しきった神ジュナみたいな存在になりかかってただけに
でもやっぱつれぇわ
これもまた巡り合わせやね
／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | 体は動く。
（__人__） | ..／} 違和感はない。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ 扱い方は『ヒゲ槍』を追加の四肢にするのと
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／ あまり変わりないのな。
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「体内で変形させたら肉が吹き飛ぶからやめておくでおじゃるよ」
|
| ダルの秘密基地だったメイド喫茶。
| その奥にある隠し部屋、やらない夫の手術室。
|
| 過酷な移植手術を終え、二日。やらない夫は元気に飛んだり跳ねたりできるまで回復していた。
|
| 『シロッコ排斥』……いや、『やらない夫の集会』以前まではやる夫たちの前線基地だったメイド喫茶。
| 今では人気もなく閑散としていた。
|
| そもそも、営業そのものはここ一ヶ月行っていない。
| ここを隠れ蓑に活動していたダルは、すでに『異端審問官』に帰還した。
|
| やる夫、蒼星石、ジャギ、アリカはドサクサに紛れて『血族』に戻った。
| 杏子たちに救出された天龍とシグもだ。
|
| 『引き裂かれた永劫』の後遺症で苦しむ『血族』の指揮権は、今やジャギの手中にあった。
|
| 今、このメイド喫茶に常駐するのはやらない夫、麻呂の二人だけ。
| 細々とした買い出しや生活用品の買い出しは鹿島が、その他には黄泉と雨宮夕日、マイケル小原が出入りするくらい。
|
| 『血族』に戻ったほうが行動しやすいのでは？
| その問いに、猜疑心に満ちた老人は首をふる。
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|丶､ ;;; __;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,: ィ";;_|
ﾄ､;;;;;;;;;;;;;;;｀ ` '' ー -- ‐ '' ";;;;;;;;;,:ィ;:;!
,';:｀`' ‐ｮ ､ ,_ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; , - '"l;:;:;:;:l
l;:;:;:;:;:;:;ﾐ ｀ ` '' ｰ -‐ '" ,ﾘ;:;:;:l
l;:;:;:;:;:;:;:ゝ く三) (三ｼ ｀ヾ;:t、 たわけの考えよ。
fﾐ{;:;:;:;:f'´ , -－-_,, _,ｨ ､_,,ｨ,.-－､ };f } わざわざ手札を晒す必要は無いでおじゃる。
l ﾄl;:;:;:;:l ､,ィ或tｭ､ﾞ:ミ {,'ィt或ｱﾁ l:l,/
ﾞi,tヾ:;:;:! ｀ヽ 二ノ ﾄ ` ‐''"´ l:l:f 『血族』にとってやらない夫は死人。
ヽ`ｰ};:l ,r'､ ヽ ﾘ_） 麻呂は行方不明の狂人。
｀"^l:l ,/ﾞｰ､ ,r'ヽ l
ﾞi ,ノ `'" 丶. ,' 我々は奥の手でおじゃる。
ﾞl､ ′ ,, ｨrｪェzｭ､,_ 〉 } /
',ヽ ヘヾ'zｪｪｪッ',ｼ' //ヽ
} 丶、 ` ｰ--‐ '"'´,/ノ:.:.:ヽ
/l 丶、 ,.ｲ:.:.:.:.:.:.:.:丶､、
,r'"^l ! ` ー‐;オ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.,ノ ,}、
,. -ｧ＝く（:.:.:.l l ／/:.:.:.:.:.:., - '" ,／ ヽ、
, - '"´ ／ ,／｀＞'t､_」＿＿_,ｨ'ﾞ,ィ,.: -‐ '" ,. -‐ '" ＼
／ ヽ-（ / / f }li, ,. -‐ '" ＼
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| 敵を欺くならまず味方から。
| 麻呂は『血族』内部に『やる夫』シンパが浸透している可能性を警戒していた。
|
| 情報のやり取りに多少の不便は否めないが、黄泉を見咎められる者などいない。
| そして、『夢世界』を経由した情報共有に介入できるものなどいない。
|
| やらない夫と麻呂はやる夫たちと情報を共有していた。
| シロッコの死亡と失墜も、『やる夫』とケンシロウの失踪も、レッドライダーの『端末』と『クトゥグアの代行者』も。
|
|「だが、動かない訳には行かないだろ？」
|「見過ごせる事態ではおじゃらぬからな」
|
| 今ここでの看過できない問題は、やらない夫自身に端を発している。
| 夕日を通して不人気より通達されたのは、『スケアクロウ狩り』である。
|
| 『スケアクロウ』。やらない夫が『カトルカール』や『異端審問官』の目を誤魔化すために行った変装。
| 早い話が、紙袋をかぶっただけの下手な扮装なのだが、いつの間にやら都市伝説化し、やらない夫と紐付けられていた。
|
| その上、やらない夫死後に動画などもばら撒かれ、『スケアクロウ』は神格化。
| やらない夫賛同者、あるいは彼を救世主のように扱う者たちがこぞって紙袋をかぶり夜の街を徘徊する始末。
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| )ゝ‐イl |
|,ノ,ィ≡ミ ゝ |
|ヽ{((〇))} ( |
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| それが、襲われているという。
|
| 襲撃者は、不良とかチンピラとかではなく武装した集団。
| あるいは巨人、妖怪変化、ホッケーマスクの殺人鬼。
|
| 眉唾な噂話だ、実際に人が襲われているのかも、行方不明者が出ているのかも定かではない。
| しかしだからこそ、見過ごせもしない。
|
|「いかに考える？」
|「ケンシロウさんかジャンヌだろ」
|
| 即答するやらない夫。嘆息する麻呂。同じ考え。
| 揃って、『クトゥグア代行者』の件が脳裏にちらついている。やる夫の推測も含めて。
|
| つまり、『代行者』の目的がニャルラトホテプではなく……。
|
|「翠星石が呼び出したからか？」
|「そんな馬鹿な話があると思うでおじゃるか？」
|「正直思わない」
|
| 何かしらの理由があるのだろう。
| だが、それが何なのかまでは分からないが。
|
| だが、二人は確信している。
| 『代行者』の狙いはやらない夫だ。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼ ,.:┐
.（ ●）（ ●） ..| ／ ｜
（__人__） .|./ / とにかく、
i⌒ ´ .r－､ |/ ／ ジャンヌ・ダルクもまた
{ ヽ, ',. .,/ :/', 『代行者』の可能性が高い。
.ヽ .| l_/_, -‐､',
.ヽ . | / , -－'i|
/ { V , -－ﾍ
| ヽ Ｌ| r= |
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| 『代行者』の見分け方は正直不明だ。
| やる夫が見れば多分わかるらしいが、確定ではない。
|
|「…………『スケアクロウ狩り』はジャンヌだろうな。
| ケンシロウさんはトチ狂ってもそういうタイプじゃあない」
|
|「狂気というより支配か洗脳ならわからんぞ。
| しかし、規模が小さすぎるのがらしくないでおじゃる」
|
| 北斗神拳は暗殺拳だ。
| 死体を残さぬ殺人は得意である。
|
| だが、ケンシロウが『レッドライダー端末』ならば、むしろ被害や騒ぎを大きくする方向を狙いそうなものである。
|
|「ならばどうする？」
|「そもそも、やらない夫さんは死んでますよね？」
|
| コーヒーを淹れてきた鹿島が問いかける。
| いくらやらない夫に執着していても、死んでいる相手にどうするというのだ。
|
| 狂人であるジャンヌが、やらない夫の痕跡とも言える『スケアクロウ』を狩ることで無聊を慰めるのはまだわかる。
| しかし、ケンシロウはもっと不器用で、朴念仁だ。
|
|「…………ケンシロウを見つける方法が思いついた」
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く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
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i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ /ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ､ // V: :l: : : l : ;′
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l しかし……困ったな。
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
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| 『引き裂かれた永劫』の後遺症で腰の抜けたままの蒼星石が、車椅子の上で頭を抱えた。
| 椅子を押すのはもっぱら『同じ顔のメイド』たち。
|
| 『血族』の状況は最悪だった。
| 主力の半数は戦闘不能、あるいは失踪。治療に専念したくとも、優秀な術者が足りないのが現状。
|
| 『引き裂かれた永劫』の原因となった大首領藤堂志摩子とキオ・アスノは、揃ってその異能を失っていた。
| 鷹野三四の見立てでは一時的なものらしいが、その期間に関しては不明のまま。
|
| 志摩子は自分の犯した失態に酷く怯えたていた。誰も彼女を責めなかった。それが更に罪悪感を強めたのだろう。
| フリットから政権を取り戻して以降の、果断で自信に満ちた志摩子はもういない。
|
| では、それ以前の傀儡として息をひそめる志摩子に戻ったのかというと、それも違う。
| 失敗を恐れるあまりに、選択そのものを恐れるようになってしまっていた。
|
|「申し訳ありません、蒼星石……」
|「謝らないで志摩子さん、まずは身体を休めてください」
|
| 『菊理媛神』としての能力を失い、カリスマも魔力もないただの小娘に成り果てたことも志摩子を苛んでいた。
| だが、蒼星石は彼女を支える暇がなかった。煩雑な事務だけでなく、『血族』全体の指揮まで執らされていたからだ。
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／ニニニニニニニニニニニニニヽ
’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ| 結局な、
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ| お前が一番慣れちまってンだよ。
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ| こないだまでやってたコトだろ？
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ
｀7 V//} ∨////厶イ==ﾐ iニニニ| |∧
⌒i￣ ＿＿￣￣´ 》//∧ lヽﾆﾆﾆl| |/∧
ﾄ ∨ .//| ﾄ. {7∧ ∨///i| ∨＼ニゝ ＿＿ | ∧
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|/∧ }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l| ﾘ }////|∧三≧| ∧.=
| ∧ ､|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i| 三
| /∧ ≧彡. 》====≦/// l i '//三| ∧三| 三
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| 『やる夫』との決別前から、ほとんど体制は変化なし。
| 任せようと思った連中は、それぞれの理由で難しかった。
|
| まず、生き残っている『元老院』のうち二人。
| 伊集院久兵衛太ことキュウべぇは積極的に支援してくれている。
|
|「しかし柴崎蒼星石、一時的でも悪魔が『血族』の最上位に立つことは許されない。
| ボクらが許しても『教会』が許さないだろう。だからボクはキミの助言役以上になってはならないんだ」
|
| ぐうの音も出なかった。禍根を残して、『教会』シロッコ派の残党から報復を受けるのは避けたかった。
|
|「ワシに出来ることなら……何でもしよう」
|「フリット様は休んでください、本当に」
|
| 連日の徹夜で一気に憔悴したフリット・アスノ。充血した目は窪み、頬は削げて、白髪が増えて体は一回り縮んで見えた。
| 超能力医療で呂布にヤザンに謎のヒロインＸにイナミにカトルカールにと、
| 生きているのが不思議な連中の生命維持を続けていた。
|
| キオがいれば彼の負担も減ったのだろうが、今のキオは超能力を取り戻すために必死だった。
|
| 通常の魔術的治療は、大雑把で強引だ。
| 魔術治療で命は助かっても再起不能な傷も、超能力外科技術ならば時間はかかるが復帰できるかもしれないのだ。
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ｚ≦ｒo≦ｭ⌒＞､:::::｀ヽ
／ム彳::::::::::::::＼ｰ^､ﾏ､:::::::.
〃ｆ:::::::/ !::::::{:::::::::::::ヽ:::i」::ﾊ::::::. 土 ､､
{!i::|:::::::{斗::::::{ ､:::::::::::ﾊ::::i:::::}:::::|, し ／
{!i::|::::::{ 八::::::{ ,≧ｚﾐ､ }::::|::::}:::::i:} ＼
{!|::!::::YTﾊ ￣ 'ｾ:::ｿ ^ﾉ:::ﾉ‐ ､:｡ﾉ 美味しいごはんをたくさん食べれば
ﾄ-ﾉ ﾒ┘ ｀¨ ´^' ∂ﾘ小 土 ､､ 傷なんてすぐに治るのでは？
|::{ ' ｡ ｨﾆﾆﾑ|!ﾚ し ／
|:::r>､／⌒ヽ__ ..,イ{´ {毘} 〉! ＼
|リ:Уｒ‐‐ｒ.､ｒ∨::「〔_ -‐‐- 〕,
/:::ｆY} |::::(＼ヽ }Yj_} | | | |ﾏ､
/::::::i ! ｰ､-｀}ノ￣}::! ﾏ.|__ｊ__ｊ_ｊ__}::＼
イ:::::/^ｰ,イ ﾉ j}ｰｨ':::::! ﾏ | | | }＼::ヽ
／:::::|:::::{ヽ ﾉ j ､ ! 八 :ﾑ .}┴┴┴┤ :＼}
／::::::::;ｲ:::::{Y/ { ´i ｀ ! ヽ､ﾑ !＿＿＿_|:､:::::::＼
ｆ:::::::::::::/ |::γフ⌒У⌒ヽｰ ' )::Y､:::::::::::::::::ﾑ､ :::::::＼
}::::::::::/ ｊ / / / ＿_ Yｘ彳´￣ヽ::::::::::::::::::}＼:::::::::}
}:::::::/ .{ { ｆ７ ｊ:::::::} !´ イヽ::::::::::::::} Y::::}
. }::::/xイフ≠⌒ヽ´￣￣￣ヽ_}ｊ}イ .〉､::::::::} !:}^
ｘｆ´ﾆY´／ { {ﾑ }､__ -‐ ＼リ _.ｘ──-
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ｘ≦_三ヲﾆﾆﾆﾆ}ﾆﾆｊ .! :| !ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ.＼ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
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|「それはあなただけです」
|
| 『四天王』である黄泉もカミナも前線指揮官以上の経験はなく、上杉謙信は引きこもりなので当てにならない。
| ちなみに、片目を失明しかけた上杉謙信だが、本当に食べて治した。
|
| 頼りの『狂死』は後遺症で魂が『剥がれ』かけて、一日の半分を寝て過ごしていた。
|
| 本当は麻呂に帰還をお願いしたいし、実際に頼んだが梨のつぶてであった。
| ニャルラトホテプと、彼との繋がりがある者への警戒でもあるので強くは言えない。
|
| 蒼星石は自嘲的な気分で総指揮を執る。
| 図らずも、前にニャルラトホテプが唆した通りになった。蒼星石が『血族』を運営している。
|
| そしてそれは、当時の予想以上に困難な作業であった。
|
|「『緊急事態対策班』は頼めるね、ジャギ」
|「あの馬鹿に見せつけてやンよ！ 兄より優れた弟はいねェってなァ！」
|
| 『緊急事態対策班』はしばしば出現する強力な悪魔の対処と、ケンシロウや先代、ニャルラトホテプの捜索に充てられる。
| 元来のメンバーのうち呂布、馬岱、ケンシロウ、先代という主力が抜けた。一見戦力は大幅ダウンである。
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_,,..､､､､､／:ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|／ (
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:i:i:i斗f七Iて:i:iア:: /:: :: :: : ／:: :: :: :: :: :: :: :｀丶、
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:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:|:: ::|:: :: ::.:|:: :: :: :: :: :: |:: :: :: :: ::ｨ圷Y:: :: :
〈:i:i:i:i:i:i:i:i八::.:|:: :: ::.:|:: |:: :: :: :: 八-:: : / : Vリ从: /
ﾉ＼:i:i:／ｉ::∧:|:: :: ::.:|:: |:: : ／/ ≫:/}/( , , ∨:| 懐かしいメンバーね。
＼_ノ::_/:i:/:i:i〉:: :: ::::|:: |:: :: :: xかﾊ ` 从| 〉 このチームで動くのは久しぶりだわ。
}: :_7:i:ｉ:ｉ:ｉ/::ｲ:: :: ::|:: |:: :: :《乂 ツ .: :ン
.: :_7:i:i:i:i:i:/:i∧:: :: : ∧:: |::乂 , , ､ 7 .: :: :}
/ ::_7:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:|:: :: 人:: ::.ン＼ ＿＿ /: i::∥
:: : 7:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:| ／/ム从:i:i:irに二>:: :: `'＜八::|
:: :〈⌒Π人ノ⌒〈⌒{ 〈 ／ ＼ :: :: ::＼＼
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| 現在のメンツは引き続きの石田と龍田に加え、ルカと霊夢、ロストスキル。
| 外部協力者にジェリドとカクリコン、更には『リトルボーイ』と『ファットマン』。
|
| 直接戦闘能力だけなら大幅に強化されていた。
| 更には治療と修理が終わり次第、ミストと四ツ目、ロビンと『カトルカール』も参加予定だ。
|
| 『十字軍』が壊滅したことで、東京全域の治安維持は『血族』が一手に請け負うことになった。
| 無駄な勢力争いがなくなった分、負担が減少。
|
| 『九鬼』と警察が情報収集と人払い担当で、『グレン団』と『邪悪帝国』が悪魔の処理。
| しばらくはこの体制で問題ないのが救いだ。
|
| 曹操 華琳が身を隠したことを、誰も深く追求しなかった。
| 『シロッコ排斥』で複数の腹心を失った彼女だ。
|
| 長い目で見て半壊した『血族』との馴れ合いを続けるよりも、身を隠して力を蓄える方を選んだのだろう。
|
| 華琳の視点では、『やる夫』の正体は暴かれておらず、辛酸を嘗めさせられた『教会』にも一矢報いた。
| であるなら、地下に現れた謎の屍鬼軍団を追っているのだろう。
|
| ちなみに趙雲 子龍 星は鬼軍曹として、元気に『グレン団』の下っ端を訓練している。
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/ .::l::从ﾄ､ `ヾ_ミﾐヽ.､ ＼
l/l.:l.:ﾘ仁ﾘﾆﾄﾄ､仁≧ﾐヽ:::ﾄ､ .:::|
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ヽ:ヽ､ ー , ﾀ::l:;::::::::/ クリスマスまであと一週間……。
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／., `ﾄい､_,/^i.:l:|/
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,/｡ / 〉ﾆ三云＼:.ヽ<ﾉ::::::」ヽ
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| やる夫によると、『クトゥグア』と『冥王ニビル』は24日に来るという。
| 『ビスケットハンマー』で対処をするなら？ 『クトゥグア』だ。
|
| 『クトゥグア』はこの世界のシステム、この世界由来ではない存在をまとめてBANする終末装置だ。
| 対して『ビスケットハンマー』は普遍的無意識が作り出した破滅の具現体。完全にこの世界由来のパワーである。
|
| 何かを頼って急に『別次元由来なので効きませんが』とかされるとおしまいだ。
| それこそ、でっていうの『完全無敵結界』が高確率で無効化されるように。
|
|「『蛇身』も復帰させて、高位悪魔のチームで『冥王ニビル』の迎撃をしたいところだけれど」
|
| そのために、彼らを宇宙まで送り出さねばならない。
| だが……どこに頼むのだ？ NASA？ JAXA？ それとも相当の省庁？
|
| 頼むにしても、蒼星石からの依頼で上手くいくとは思えない。
| 志摩子を頼るか？ だがそれで失敗した場合の彼女の精神的ダメージは計り知れない。
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ だがね、柴崎蒼星石。
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ それでも志摩子様にやらせるべきだ。
／ 八 ｲ 丶. /
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼ 失敗を恐れる必要はない。
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ） 逆なんだ。
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|「志摩子様に今必要なのは役割と成功体験さ。
| こちらの手が不足しているのは理解しているだろう。
|
| それでも能力を失ったからと無為な時間を過ごさせるのは心に毒だ。
| できることをしてもらうんだ。異能も、神性も関係なく」
|
| 失敗したら？ 蒼星石は尋ねるのをやめた、無意味な問いだ。
| 今現在、志摩子の精神はどん底にある。考え方を変えれば、これ以上落ちないとも言える。
|
| 蒼星石はふと、過去を顧みて苦笑いした。
| 精神的などん底、自分の一番落ちていた時期。
|
| 毎日のようにやる夫の家を訪ねては駄弁った。励ますふりをして甘えた。
| 好きな人が、姉に失恋して塞ぎ込んでいるなんて、見たくなかった。
|
| 思い返すだに酷い失恋。
| 志摩子は、失恋と同時に首領としての失態のダブルパンチだ。
|
| 時間が解決してくれるような問題か？
|
|「やってもらいましょう」
|「話はつけておくよ」
|
| 志摩子が失敗しても、他の手が打てないわけではない。
| 他にも問題は山積みだ。例えば、『クトゥグア代行者』のこととか……。
|
| 蒼星石もまた、やらない夫が狙われているという解釈を支持した。
| 理由については、思いつかないけれど。
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,ｘ=＝＝＝=､ ＿＿
〃 ,. -一'´ ｀＼
〃 ./ l ｀ヽ ヽr---‐､-､
{{. /./ / / ! | | '￣/ ﾉ /__
| l l | Ｎ＼ _,L. |./ ｀Y--〈 なんか違和感をかんじちゃうんだよね。
| |ｰ|､-|＼| Ｘ´ ハ |{ 「 ,ゝ- ､
__厂八_Ｎｨﾃ抃、 ｨﾁ坏, ﾊ｀Y´ ＼
厂_/´:,r‐{ ﾍ. Vｔﾘ Vtﾘ| // :｀Y ＼
:/厂 / 厂:ヽﾑ:::::::: ' ::::::ノｨく ::廴 | ＼
ﾚ' ﾚ' | ヽ、 ｰ‐' ／ :| | ＼ | ＼
. /l￣／⌒＼￣! l￣ ≧ｰ-- '´ﾑ、ﾉ 厂__/￣｀ヽ :＼ / ヽ
ﾚ' |＼ ヽ ／{ ＼_／ }＼＿|/ ／jー-}＿__ 〈 ｉ
/| |: ＼ /7´ |＼,.ｲ ﾄ､／| ! ! ／ ／ ／ l ＼ |
ﾚ' / f ｆ 丶人ﾞｰ'人_ノ | |´ ｀７ | ＼. |
/| { ー― | | ∧ {__〈 〉__} ∧ l｜￣￣/ __/
ﾚ' ／＼___ | | 廴＼ V ／ _」 ! ! r一′ ＿＿,.ィ ´
/／ 厂 ｜! ｀'J _」L_ し'´ | | ￣}_,. -‐ ´
／ 〈 | | ｀l「 :| | /
/ ／⌒丶ﾊ.____ Y､ ＼ | | 丁
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|「夢宮、違和感はあるものだ」
|「揚げ足を取るんじゃないわよバカシンジ」
|
| 一方こちらは昼下がりの遠坂邸。いや家主は夢宮士郎なので夢宮邸と呼ぶべきか。
| 瀕死の重傷を負った遠坂凛と間桐慎二が仲良く並んで寝かされている。
|
| 本人たちは本気で嫌がったのだが、治療用結界の維持やこのような話し合いを考えると、並べてあるほうがコスパが良い。
| コスト面を全面に出して説得されては、秘蔵の宝石を消耗した凛などはぐうの音も出ない。
|
| ちなみに和室二部屋を繋げてあるので、夜間などはふすまを閉めれば最低限のプライバシーは守られる。
| 魔術的防音なども施されているので、聞こうと思わなければ夜間に慎二とターニャがナニをしているかも聞こえない。
|
|「まず前提情報が少なすぎるわね、でも一人とっ捕まえて解析すれば『代行者』の魔力パターンは分かりそうよね」
|「その一人がケンシロウさんなのがね」
|
| 見つからない上に、今や押しも押されぬ『血族』トップクラスの達人だ。
| うまく取り押さえられるかどうか。
|
|「凛じゃないんだ、簡単に解析なんかできるかよ」
|「冗談。いくら私が天才の中の天才でも、特定分野の天才と比べたら見劣りするわ」
|
| 包帯で固定されていない方の肩をすくめる凛、自慢か謙遜かいまいち判別つけ難い。
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..-――-..., ＿_
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＿∠У:::::::::ミ:::::ｨ､::::::::::::::::::＼ニ=-〉:::::::＼ﾉ
r≦-=ニ/::::::::::::/ﾊ//ハ::|::::::|::ｉ:::::::＞‐〈:::::::::::::::ト
＼ﾆ=-/::::/::::l:::|`｀'"´´|::|::::::|::|::::く＝-ｲ:::::::::::::::|=〉
＜-‐ニi::::/:::l:::l::| |::|::::::|::|:|:::::〉ﾆノﾊ:::::::::::::V
Χ -|:ｲ:::::|:::ﾊ| 斗七Z}厶V｀ζｰ‐|:::|::::::::::|
＼ﾆ八-‐十___ 〃了r圷ヽ 彡ｲ!:::|::::::::::| 『『血族』に過ぎたるものが
|::::::::::ﾊ rｆ了坏 Vfツ ′⌒＾l::::|::::::::::| 二つあり』ってね。
|:::l::::::::::. Vツ ´´ ﾉｰ|::::|::::::::::|
|::ｌ::::::::::ﾍ ´´ ﾉ r ノ|::::|:::::::::ﾊ
|:l:::::::::::::込、 ｀ __ 一 ｲ`´::::|:::l::::::::::|::i
|l::::::::::::::|::::::＼ ／ ;|::::::::::|::l:::::::::::|八
l!::::::::::::::|::::::::::::｀ヽ 、 ／ ;|::::::::::|:l::::::::::::|::::::＼
-ﾉ::::/:::::::::|:::::::::::::_ト- ‐＜ ￣￣￣|:::::::ﾘ::::::::::::|::::::::::::
／／::／::::::::::ﾉー―〈ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:人／::::::::::::/:::::::::::::
r― ／:::::::::::::::::／:.:.:_.:.:.O:.:/ 〉:.:ｰ―=ニ彡／:::::::::::::::人:::::::::::::
__／:.:／:::::::::::::::::／:.:.:.└- =-/ /:.O:.-=ニ.:.:／:::::::::::::::／:.:.:.ヽ::::::::
／:.:.:.:.:.:/:::: ／::::::／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／／‐＝ニﾌ:.／:::::::::::::::／:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ::::::
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／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨::::::(ﾋｚ_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／::::::彡'´:.:.:.ﾉ:.:.:.:.:.:.:＼ :.:.:.|:::::
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|「なんだそりゃ」
|「何年か前に聞いた噂よ」
|
| 日本を離れている間も、間桐臓硯と『血族』の情報収集を欠かさなかった凛だ。
| 内部では聞こえない噂も耳にしてきた。
|
|「それが鷹野さんってこと？」「もう一人は夢宮か？」
|「ふたりとも正解。戯れ歌だけれど、気持ちはわかる。シロッコが馬鹿で助かったわ」
|
| 突然のシロッコ、慎二が鼻白む。
| だが、アリカは頷いた。一時的にとはいえ、シロッコは鷹野三四を籠絡していた。
|
|「相手の魔力性質さえ特定できれば、鷹野以上にヤバい奴はいないわ。
| 臓硯のクソジジイ相手に頼れればもっと楽勝だったはず」
|
| だが、そうは問屋が降ろさなかった。
| それ以前の『万魔』に対する解析にも臓硯が介入していた。
|
|「とにかく、鷹野の所にすでに北斗ケンシロウのデータがあるはずよ。
| 彼の現在の状態を解析できれば一瞬なのだろうけど」
|
|「確かにな」「？？ 他の人でもいいんじゃないの？」
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＿_／{、::::::..＼__
／..:::::::::::::::::＼:::::::::::::::｀ヽ
/.::::::::::::::::::::::::::⌒(⌒::::::::::∧
／..:::::::::::／..::::::::::::::::::::::::::::::::}/＼
i{:::::::::::::::/.::::::::::::::/:::::::::::::}::::::::}＼/} ケンシロウならば
八:::{＼__{／:::::_／.:::::::} ::/}:/::/::/::/ 過去と比較して変化を確認できる。
}>}:::::{/:::::／{::::::::::::/''''乂{:く_人:{
〈:/ﾄ､/:::::/:l{└┬┐＼ r':ィ{:::: { そもそも、前回の検査時に
乂_{＼_{_八ト､{､/:::: / ｨ瓜ｧ＼} 異常がなかったんだ。
-‐=ﾆ二八 ｀V{､文亡lT＼_｢ ^^^八{
/＼ ＼_{ } / ＼
.{ ﾟ， ＼ ＿,_／/ ｀`ヽ､_
.{: ﾟ， { __＼＞‐' ＜}〈// / ＼
.{ ﾟ， { _,r‐'" ＼ヽ〉 .;′ }
{ ﾟ，: ∨ { _／⌒ヽ }i {＼_ :;′ .人
{ ﾟ， /{: ＼ ./／ ＿}八〉 / ＼ :;′ / }
{ ∨∧ ｀¨{ / {ｌ{ ∨ ,′:.:/＼/ .／ {
｜ { :/＼ {｜{｜ _{|{ {_/ :/: ＼/__ 八
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|「異常があっても見つけられなかったとかは？」
|「ありえないね」
|
| 鼻で笑う慎二、アリカはムッと眉根を寄せる。
|
|「相手は『緊急事態対策班長』北斗ケンシロウだぞ？ 些細な変化でも記録しているだろうな。
| その上あの神経質なドクが付いている。異常と呼ぶほどの変化がなかったに違いない」
|
|「今現在の、行動にも異常が出ているケンシロウをとっ捕まえて検査すれば、
| 前回正常範囲だとして見逃した『どれ』が異常だったのか丸分かりってことね」
|「なるほどー」
|
| アリカには実感が湧かないが、ただの羞恥心欠落コスプレお姉さんではないということだ。
| 残念ながらアリカの中の鷹野三四は、露出度の高いコスプレ姿で入即貸本まで徒歩で来ちゃう残念お姉さんだった。
|
|「所で、何が違和感なんだっけ」
|「あ、忘れてた。やらない夫さんが狙われているって話」
|
| やらない夫はともかく、麻呂と蒼星石が同じ考えなのだ。
| しかし、アリカの中で何かが引っかかる。
|
|「これから『工藤川さん』が来て地上を焼き払うんだよね。なんで下見してるの？」
|「…………ニャルラトホテプの存在を確認するためだよな、いや待て」
|
| 『くどうがわさん』については華麗にスルー。言って分かるアリカではない。
|
|「ニャルラトホテプはどうせ範囲ごと焼き殺すから、攻撃対象ではないってこと？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/:::::::::::::::::::::::::::ゝ､
......::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::ヽ
〈:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ
>;;:::::::::::::::ヽ:::::ヾ::::::|ﾐ::::::::::::::::::::ヽ､
.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ では、代わりに狙われる
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ） 『やらない夫』とは何者だ？
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ やらない夫が狙われる条件は？
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
| ＼ ＼
| ＼
| ｲ }
f＼ ﾉ ﾍ }
{ ＼ｲｨ´￣ ﾍ }
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|「あたしは『主人公』か『やる夫兄い』かの、どっちかだと思う」
|「待て待て待て待て……『主人公』だと？ こないだ話してた与太話か？」
|
| 見舞いに来たアリカから、多くの情報が共有されていた。
| その中にはペルソナ使いたちの情報もあった。彼らの能力、すでに倒れた者たちも。
|
| 『主人公』。
| 朝霧アサギの妄言である。
|
| であるが、やんねえ香の『ストレンジカメレオン』の言動を鑑みると妄言と笑い飛ばすのも難しくなる。
| 『主人公』とは『渦』なのだ。世界の流れを引き寄せる、運命的エネルギーの収束点なのだ。
|
| 運命。
| やらない夫の運命。
|
| 世界を救うために、何もかもを救うために。
| 自分という存在を投げ捨ててでも弥勒菩薩の『末法少女』に成り果てること。
|
| それが、『主人公』と『十壊』の両極端な運命を負うやらない夫の末路。
|
| 覆すこと叶わない世界の流れ。
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.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/ 『うるせえバカ！
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ' 『スーパー運命破壊マシーン』で
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ __ | ぶっ壊してやる！！』
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ 丶 / 丿
iタ }〈 l丶 ヽ_ノ ／ ＼ ってやる夫兄いが言ってた。
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 言っていない。
|
|「…………『クトゥグア』が『別次元介入者』を排除する浄化装置だとするなら、
| そもそも『主人公』を排除する理由がないわ」
|
| 凛が呻く、アリカの違和感を真剣に考察する。
| 『クトゥグア代行者』であるケンシロウの目的が明確でないため、そして時間的不足から他の誰もが深く考えなかった問題。
|
|「だが、『浄化』を妨害する不確定要因の存在に気が付いたならば話は別だ。
| そもそも、ニャルラトホテプは『クトゥグア』の敵ではない、いうなれば駆除対象だ」
|
|「眼中にないってこと？」
|「そうだ。面倒だからまとめて焼き払おうとか考える程度の、僕らにとってはネズミかゴキブリが近い」
|
| 屋内に潜む害虫害獣を、一匹ずつ仕留めるなんて誰がする？
| 殺鼠剤あるいはホウ酸団子などの罠で殺すか、バルサンで一網打尽が一般的だろう。
|
| だが、それを無効化するやもしれぬ存在があるのならば。
| 探し出して殺すだろう。血眼になって。
|
|「つまり？」
|「その推測が正しいならば、狙いはやる夫とやらない夫、そして多分蒼星石とお前だ」
|
| 青ざめた顔で、慎二が絞り出すように呻いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
奴が来る！ 奴が来る！
悪夢を外套のように纏い。
狂気に髪をなびかせて。
奴が来る！ 奴が来る！
そいつは疾病。患い蝕むもの。
そいつは開拓者。新たなる道を拓くもの。
光当たらぬ闇に繋がれた怪物が。
今まさに解き放たれようとしていた。
次回、最終幕百十三話『傍にいてくれ』
果てに見るのは破滅か死か。
慎二とターニャが毎晩ナニやってんのに草
加減しろ莫迦！
つまり、狙われてるのは主人公というよりPCか
PCだけを狙って殺すFOEのエントリーだ
端末を殺し尽くさない限りクトゥグァが止まらないだろうし、代行者も当然ニャル端末一掃を邪魔する動きに対処しようとする
だいぶ整理は進んだがまだまだ厄介は多い
＼＼_＿二二ヽ. ┣━ ┃┃ ＼＼_.
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| 北米大陸の西岸サンフランシスコ湾内の孤島に、巨大で禍々しく異様な建造物が存在する。
| 一度入ったら二度と出ること叶わない、難攻不落の刑務所……アルカトラズである。
|
| もちろん、歴史的な建造物だ。近代的刑務所に比べていかにも古ぼけている。
| 夏はうだるように暑く、冬場は凍死者が続出する。この世の地獄。
|
| 地獄よりも地獄。合衆国の網走。さしもの脱獄王白石でも脱獄不可と呼ばれるほど。
| 1963年までは利用されていたが、とっくに封鎖された。
|
| はずなのだがその伝説の刑務所は、実際には現役であった。
|
| ただし、収容されるのは一般的な囚人ではない。
| …………魔術的な囚人、合衆国を広く支配する『教会』の敵対者だ。
|
| そして、最新の囚人……枯れた老人の気配と、みなぎる若者のエネルギーを同居させる狂人。
| 『アンドリュー』と名乗るその男を、看守たちは畏敬を込めて複数のあだ名で呼んでいた。
|
| 『ロック』『ハンニバル・レクター』『ブレインバイト』『ブラックゴースト』。
|
| 明晰な頭脳と巧みな話術で看守すらも籠絡し、連邦捜査官に事件解決のヒントを与える。
| 国籍も正体も本名も年齢も不明。
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| ただ、二ヶ月ほど前に突然収監されたのだ。
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,.r''" ｀丶、
／ ,ｨ ヽ、
/ i:::... ヽ
/ ,r'" l:::::: ヽ
/ ／ノ´ l::::. ﾞi
/ ＿,,ｨｼ'´ _,,.. ..,, ヾ:::. l
/ ﾞﾞ~´ ,ｨｸ'´_,,,_ ｀'' ｀l,r'⌒ヽ. l
,ノ f;;jｨｼ"^''ミiヽ / r‐ ､ヽ ,!
〈 ,,...,,、 ｨj;;;/ (･),;ﾉﾂ′ i '′ヾi ヽ ,!
ヽf;;;; -ﾐﾁ ,;;;;;ﾐz==''"ノ,::' 〉 丶_ft ﾞ} l! ,!
ヾj (･)Y ,;;;:ヾミ｀~´ /:: ﾞi;/ ,! ,!
ﾄ,､..ｨl '' 丶､、 l:::: l′ / / 『ミスター・ロック』
lﾐﾆ７ ､、 ｀ `til! !::: ﾄ- '′ ,' お耳にしていただきたい話があります。
ヽ / ｀ヽ ﾞl! l::: l {!
Ｙ ⌒) 丶 ll l::: | ﾞi
. ﾞ‐､- :.'ｱ, ヽ、ﾞi! ` ﾉ l
ヽ ﾞ' j ,, z=＝=-li ﾞi, ,ｨ'´,;; ﾄ､
｀Lr ''"´ ﾘ / ,､ ／;:' ,,;;;;,, _,. ┴`－― -
t,,,.. ;; '''"ｼ" ,ｨ',ｨシ" ; ;: - '"
ヾ;;:: '^` ,.ｨ';;;;;; , - '´
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| 絨毯、ソファ、相撲中継を流すオーディオ。エアコン、冷蔵庫、タンスに本棚と……。
| 承太郎の牢獄並みに過ごしやすそうな個室に寛ぐ『彼』に、ひとりの看守が敬語で声をかける。
|
| 嫌々ではない、少なからずの敬意と恐怖が、看守にへりくだった態度を取らせていた。
|
|「ああ……話したまえ」
|「ありがとうございます。実は……保釈の依頼が来ておりまして」
|「ふーん」
|
| 興味なさそうに応える『彼』。
| その能力を利用するために、すでにいくつもの組織や大企業が声をかけてきていた。
|
| 看守は狼狽した、今回は違うのだ。ちゃんと聞いてもらわねば。
|
|「それが……その……『居心地がいいならそこで死ね』という伝言付きでして……」
|「ほう」
|
| 『彼』の発した声の低さに、看守が震え上がる、用を済ましてきていて良かった。失禁もおかしくない程に強力な威圧感。
|
|「何者からだね？」
|「依頼は、日本からで……依頼者は」
|
| その名前を聞いて、『彼』は嗤った。
| 笑みの恐ろしさに、看守は我慢しきれずに下着が汚れたのを確信した。
|
|「仕方ない、出てやろう……ぜったいあくも、そろそろこの部屋飽きてきたしね」
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ つー訳で、
| （__人__） | 長門弟が尊い犠牲になるから
./ ∩ノ ⊃ ／ ほかの人質を開放しろって言ってるお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「邂逅一番（誤字にあらず）それかよ。とりあえず飯にしようぜ。カツ丼あるぞ」
|
| 分厚いプラスチックの板越しの面会。
| 過剰なボディチェックを受けて囚人か病人みたいな姿のやる夫に対し、
| 塀の内側にいるはずの伊藤誠は折り目のついたオーダーメイドのスーツにピカピカの革靴、
| グラス二つにお高そうなワインを注ぎながらのご登場だ。
|
|「ワインなのに？」
|「ビールにするか？」
|
| そういう問題ではない。
| しかし、複数の監視カメラに睨まれて、無味乾燥な部屋にいると、どちらが囚人なのか分からなくなってくる。
|
|「酒はいらねーお、カツ丼と熱い茶で頼む」
|「じゃあ俺も同じものを」
|
| 監視カメラに気取った仕草で指を鳴らす誠。警察に逮捕されているはずなのに、随分とまあ相変わらずだ。
|
|「はぁ」
|「どうした？ 悩み事か？ 女紹介するぜ、三人ぐらい。
| ドチャクソエロくて、ご奉仕大好きで、無限に甘やかしてくれる娘たちと一晩過ごせば大抵の悩みは解消するぞ」
|
|「ドチャクソって死語じゃね……？ いや、魅力的な提案だけど、それって疲労でハイなだけで何も解決しねーお」
|
| やる夫の返事に、誠は顎をしゃくった。
| そのモノ言いたげな仕草にやる夫は眉をひそめる。
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／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
/: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
/: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ | :/ |:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V
＜ : ｣_: : / _ _|/ ﾚ. ＼ ＼ ＼ : |
＜:: |. 小{ ｀ﾞ'''''' ‐-＼ ＼ ＼_ 重症だな。
厶ﾍ ﾊ U ､ r--‐-､ >､ ｀ヽ
＼_! ' ` ‐-､ ｀` `､
_, r´:/ : :| ヽ r‐--っ ／＼ `､
_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::| | ＼ ￣ ／ヽ :｀ヽ ヽ
_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:| ＼ ヽ _ , ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､ `､
_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| >-､ー_'/ !::.:.:.:.:ヽ: : ` 、 __ ＿__i__
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|「…………そうかも知れねーお」
|
| やる夫は苦く笑った。
| 疲弊していた、心も体も。眠りは浅く、内蔵は常に重く、食事は砂を噛むようで、常に頭が重い。
|
|「やめてもいいんだぜ？」
|「そういう訳にも行かねーお」
|
| 答えながら、やる夫は不思議に思った。
| 誠はどこまで知っているんだろう。ここでやめたら、どうなるんだろう。
|
|「つっても、お前がやらなくても誰かがやるだろう？ 俺とか、ネウロとか。
| 誰かに強制されてるわけでもないし、義務でもないんだ。辛いなら我を張る必要ないんだぜ？」
|
| やる夫は一寸考えた。確かに、義務でも強制でもない。
| ではなぜ？ やる夫は世界を滅びから守ろうなんて思っているんだ？
|
| 流れでなんとなく？ それとも、込み入った事情があったっけ？
|
|「そうは言ってもだお」
|
| すぐに、答えは出てきた。単純で明快で、わざわざ言葉にする必要のないものだった。
|
|「やる夫は誠が死んだら悲しいお」
|「俺は死なないがね。殺したいなら体内にある『賢者の石』を適切に封印しながらえぐり取るんだな。
| 全身焼いてもつぶしても爆破してもそっから復活すっから」
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＿＿＿_
／ ＼ 例えばだお。
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ 長門も、高良も、鷹野も、不人気も。
| （__人__） | やらない夫も、翠星石も、アリカも。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ 華琳様も、ミストさんも四ツ目さんも、
/ ,⊆ニ_ヽ、 | ジャギさんも、キル夫師匠も、ルカさんも、
/ ／ r─--⊃、 | 慎二も、東田も、金糸雀も。
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| そして、蒼星石も。
|
|「死んだら悲しい、居なくなったら寂しい。
| ついこないだまで世界中を呪ってる気がしてたけど、実はやる夫、意外と今の生活を気に入ってんだお」
|
| 感情がなくても、それは変わらなかった。
| やる夫という存在を作るのは、やる夫と周囲の双方向の認識だ。
|
| やる夫が好意を向ける人々こそ、やる夫の存在価値であり。
| やる夫の周囲の人々こそ、やる夫の定義だ。
|
| 水銀燈やヴィヴィアンのことは、極力考えないようにしていた。
| 考えたら、心が耐えきれそうにないのだ。
|
|「滅びを乗り越えて、『あん時は大変だったな』って笑い飛ばせる未来がほしいお」
|「今がこんなに辛いのに？」
|「今が辛いからこそだお」
|
| やる夫は、鼻を鳴らした。こんなこと、誠以外には言えない気がする。
|
|「いつでも楽なら最高だけど、面倒でしんどい事だってそりゃぁあるお。
| それを乗り越えて、みんなと馬鹿な話しして、飯食って本読んで……そういう未来がほしいお」
|
| やる夫のところには、来ない未来だろうけれど。
| 特定の一人と駄弁って本の感想を言い合って、そんなありふれていた日常を思い返しながらやる夫は笑う。
|
|「誠風に言うと『焦らしは快楽を倍増させるテク』だお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,,,..-.ｰ.─.-.-....､._
二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::＼:::::::::', …………大人になったな、やる夫。
/:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､_:::::＼::::＼:::::', お前の成長に乾杯だ。
i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::',
l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l >≧r､＼::::::ヾ＼_ r ､ 筆下ろしにいい女呼んでやるよ。
ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 辻ヾ〉 ＼:::ヾ） (ヽ､｀＼
i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', ゞ-′ ラ∨/＼ ＼ ＼
. l:::i l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ ＼ ┌::ソﾉ ＼ ＼ ＼_
∨ l::::l::::l:::＼ " ﾍ::::/ r--‐-､>､ ｀ヽ
＼|＼!＼ ′ ∨ ` ‐-､ ｀` `､
ヾ ヾ ､ ｰ ´ , ヽ､ -＼ `､
_, r ´:｀ ､ , ′ 、 | !:.:ヽ : ヽ ヽ
_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.....｀ ｰ ＜´ ヽ | |::.:.:ヽ: : ﾍ `､
_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| .ヽ -､ー_'/ !::.:.:.:.:ヽ: : ` ､ ____＿__i_
/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i! | ﾍ i. / 入 |＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,, ..---┴‐,
l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼／:.:.:.:!'! /ヽ､ヽrk'´:_,r､ ｲ:.:.:＼／ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
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l:.:.:.:.:.::i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:! ﾍ＿_/ |:.:.:.:.:.:.:./!:::::::::::..:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.:.:.:l
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|「警察でその流れはやめるお」
|「そう言うなって」
|
| 誠が指を鳴らすと、やる夫の背後のドアが開き、むくつけき大男が一人二人と侵入してきた。
| やる夫はケツ穴の危険を察知して震えた。こんないい男に背後を取られたくはない。
|
|「お初にお目にかかる、アセム・アスノです」
|「え？ あ、どうも入即やる夫ですお」
|
| 日焼けした肌に潮で焼けた髪の、髭面の男。キオの父親だ。
| 阿部さんは予想していたが、思わぬ人物がついてきた。これなら安心できそうだ。
|
|「まず、状況整理だ。俺と阿部、アセム、ネウロは『木星』の援護と『ニビル』対策に勤しんできた」
|「まあ、分かってたけどクソ親父も関わってんのかお。分かってだけど」
|
| 頷く誠、『モーリアンビル襲撃』で顔を出したという話から、警察と行動していると想像はついていた。
|
|「正直、木星側はほとんど何もできていない。そこまでの距離をいけるゲートが手元に無くてな」
|「ゲートって、ワープスポットかお？」「そうだ」
|
| そもそも木星まで何しに行ってるのかとか、有人なのかとか、空気とか重力とか気になるところは山ほどある。
| しかし、一種の異世界なのだろう。やる夫は脳内の宇宙猫に棚上げを指示した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
,!;;;!ﾞ`''〜^〜ｧrr-'ﾞ`'´''ﾗﾍ;;;!
|;;;| ﾉﾘ ﾐ;;;|
_ゞ;! r─-- ､ ,rｪ--- ､ﾐ;ﾘ そんで『ニビル』対策なんだが、
!ﾍl;|. ぐ世!ﾞ｀｀ ,ｨ '"世ﾝ ｢ヽ そちらさん同様に宇宙戦闘でどうにかするつもりらしい。
!(,ﾍ! ￣'" |:::.` ￣ ,ﾄﾞﾘ
ヽﾞ､! !; ,ﾚｿ ネウロは『用意できる最強の戦力』を
`| ^'='^ ﾑ'′ すでに打ち上げていて、
,rﾄ､ ー- ─-: /| 宇宙慣れをさせているそうだ。
_..／ i| ＼ === ,ｲ.:ﾄ､
／ i| ﾞ､＼ ; ／ﾘ.:;!:::＼､＿
ﾞ! ﾞ､ `ｰ─''ﾞ:::;:'::::|::::::::::＼
ﾞ､ :::/::::::|::::::
`ヽ、 ﾞ､ ./ .| ,-､、
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「宇宙慣れ……やっぱりぶっつけ本番は厳しいかお？」
|「無理だな、体の動かし方がまず違う。噴出力がないと移動すらできん」
|
| 宇宙空間は木星圏と違って物理法則が有効らしい。
| やる夫の脳内で宇宙猫が七色のプリズムを発した。
|
|「糸川くんと十六夜くん、バートンくん三人のペルソナで補給物資を届けている」
|「輸送、目的地設定、連絡役だな」
|
| 糸川はやぶさは戦闘機や宇宙機型のペルソナを使える。大気圏を突破できるのは初耳だが。
| 十六夜咲夜の『滅ぼすもの』は、『指向性』の設定だ。
|
| 物質や精神の向きを変えるだけではなく、目標地点へ進ませる力もあるのか。
|
| そしてマーガレット・バートンのペルソナは人型で自動操縦タイプ。
| 三人の合わせ技で速やかに宇宙に資材を届けて、帰還の心配は無いときた。
|
|「…………あいつら、優秀過ぎでは？」
|「「ニビル』との決戦でも、十六夜が居ないと話にならん」
|
| 宇宙での移動を咲夜任せにするとか？
| しかし危険なのではとやる夫は懸念した。
|
|「『ニビル』側の『目標地点』を割り出して迎撃地点を決めるんだと。俺にはさっぱり分からんが」
|
| 肩をすくめる阿部さん。やる夫にもさっぱりだ。
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. , ＜ ＞､
／ ＼ ＼
__厂ｊ｢Τ厂ト､ ＼ ＼ ＼
. く ＞-┴一'‐く ＼ ＼ ＼＿
r‐Yフ¨´￣￣￣ ｀ヽ ヽ ＼ ＼ ｀ヽ
にl´ ＼ ＼ ＼ ' , ヽ ヽ ヽ}
. / ＼ ヽ ＼ ﾊ V }_ﾘ__リ＿ 私にもさっぱりです。
{ | | ﾄ､|∨ ﾄ､ } l |__/ ＼ ）
|│ ﾄ､ l l l Vﾄ､∨ヽ /__{ ∧ー‐､ 『私が出来るとは思ってもいなかったこと』が
l∧ |l ﾄ､＼｀ﾄ､ｊ! {ヽ.} V 廴| / ∧＿ﾉ ここで教わると『当たり前のように出来るようになる』
l{ ∨ ＼!ｌ ＼｀ヽ ＼ｊ＼_/ /___! / ／ ＼＼ そんな理不尽も含めて。
. ヽ. ＼ |＼_{ └‐r 'ｰ{│} 廴_j/ ／ ∧ﾉ{
N＼| ,ﾉＹﾌ Vハ /´| ＿ｊ У!
＼|{ ﾉ） ヽｊ_）ｰﾉ＼___／￣O } ∨/,l
∨ ） （ｊ_ﾚ'７///l∨＿___ﾉ___}//|
}K 〈_H {///│∨l ∨/|
_（_ｊ_）_ 〈ﾉ ∨///∧ ， ∨＼
. 〔 ﾉｰ| 〕 V 〉'///∧＼ ’ i∨/∧
（ヽ（＼（＼ ｢// 厂. ∨∨////＼} ‘， ｌ ∨＿〉、＿＿
（＼ ＼ ヽ._＼//ノ ,ﾉノ ヽ./////ヽ__‘， ∨_{￣＼ ＼
（ヽ ＼ ヽ { }＿ ∨//／／ ∧ ∨＼ 丶、 ＼
＼＼ ﾉ ￣￣￣￣￣￣｀Ｙ／ ,.ｲ/∧ ∨./＼ ＼ ＼
＼´＿＿ﾉ_ ＼/ // ｉ， V///ヽ. ＼ ＼
≧=‐-- ＿＿＿/ | i， Ｖ////＼ ＼_ ＼
〉 廴ﾊ V///// ヽ ￣|
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| などという本人の主張はやる夫まで届かないが、やる夫にもいくつか想像がつく。
| ネウロと誠は悔しいほどに優秀なのだ。
|
| 知識と経験の蓄積量が桁違いで、それこそ発想のスケール時点で差がありすぎる。
| 二人はペルソナ同様の、『一点ものの超能力』への見識が深いのだろう。
|
| はやぶさや咲夜の能力の活用範囲を、でたらめなぐらい広げるほどに。
|
|「つまり、委員長はいらない子かお？」
|「『開闢剣』があれば、勝率が二割増しになるぜ」
|
| 長門弟の要請は、三人を開放せよだった。
| だが、話を聞く限り無理だなと、やる夫は考える。
|
| 咲夜たち三人は、誠側の作戦に必須だ。
| それどころか、やる夫は舌を巻いた。
|
| やる夫たちの作戦の穴を図らずも指摘された形になっている。
| やらない夫と悪魔たちを宇宙に送るとして、『ニビル』が来る方向や正確な時刻が分からない。
|
| なによりも、宇宙戦闘が困難だなんて想定外だ。
|
|「何割の二割増しだお？」
|「四割。そっちの援軍込み込みの計算な」
|「野球選手なら年間MVP間違いなしなんだがなぁ」
|
| 打率四割八分のバッターとか、イチロー以上ではないか。
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＿＿＿ この案件、持ち帰りたいお。
／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼ こっちからの援軍の詳細は
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼ 後で送るとして。
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ 他に欲しいものは？
／ /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「『ニビル』の観測データだな。超高精度の天体望遠鏡を使い、優秀な魔術師が観測する必要がある」
|「……どっちかの当ては？」
|「ない」
|
| 断言する誠、肩をすくめる阿部さん。少し考え込むアセム。
| やる夫は嘆息した。結局、蒼星石にNASAだかJAXAへの要請を頼むしかない。
|
|「…………未確定情報だが、魔術師の情報がある」
|
| アセムが思案深げに呟いた。
| 世界を旅していたアセムには、世界中に情報網があるのだ。
|
|「だが、高度に政治的な問題もある。可能ならこの後に『血族』の上層部と会わせてほしいのだが」
|「素直に家族が心配と言えるのが、いい男ってモンだと思うんだがね」
|
| 想定外の方向に混ぜっ返す阿部さん。
| だが超能力を喪失したキオ、オーバーワークのフリット。心配も当然だろう。
|
|「構いませんお」
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ヽ 、 ‐ ￣ ￣ ´ ﾉ
. ）./ ,. （ ,. ⌒ ｰ- _ _,
／八 .: :. ' -― ￣ ／
/ / （ :. ゝ_ -‐ 、,:′ _＿ イ、
{､ ', '" -‐ ; ´ ､ ヽ､
. ｀ ／, ／ ノ 、｀ 、 ー=- , -ヽ
', ' ' ／ ヽ ヽ ＿ ｰ ､ 合衆国にシックスと思しき男が
i.{.; .ｊ / , / ＿_ l 乂 ｰノ く 投獄されているらしい。
､_乂ィ, .' ,ﾊ（ ´‐ｔｯﾉ ; } ｀ ＞
,.イニ,{ ｉ /ﾉ ヽ、 / イ; ﾉ ｀ ｰ- ‐'"
／二二トヽ ト ﾚ'/ ﾉ /', ヽ r ヽ
,.-＝ニニ二{ノ ハ ､ { i,' / ゝ ', ＿＿__
ヾﾆﾆニニニ!ｒｊﾉ ハ ｀ ヽ（ 、 ヽヾ｀二二二二ニ／
. ＼ﾆﾆニニ!ｲV -r ‐ _./ ,ハ !｀⌒`.ﾉ二ニニﾆﾆ／
｀'マニﾆ} ､ ヽ￣￣ .{/ ` ｰ ./二二ニﾆ／
,.ィ ､,.ｲﾏﾆﾆー- __ ￣ー _.ノ ,ｲ l二二ﾆ／
／ |ﾆニニヽﾆニニニ'ー--‐ _, -‐ ／ ﾉニ＞'"ヽ、
〈 !ﾆﾆニ二｀"-ニニ!__ -‐'" ＿-=ヽ二二二ﾆ＼
. ､ ',二iﾆﾆ二二ヽ二{ ＿-ﾆ二二二}二二二ニﾆヽ 、
、 ﾏ=!二二二二＼}`ー／ニニニニ=＝'ニ／ニニ／ ＼.} ヽ
ﾏlﾆニニニニニ,.イ二ニ-‐'"ニニニニ二二／ ｀ ,
ヽ '!ﾆﾆ,＜ﾆ-=ニニ二二二二二二二二二, ' ,.ィ､⌒ ,
. {＼ 'ﾆ/ ￣ 7ﾆﾆニニニニ二二二iﾆ二' ,.イ::::::::::i .ﾉ
'::::::＞,ﾆ＞- .__/ﾆﾆニ二二i＝＝＝iニ!ニ' ／:::::::::::::::::} .／
. }:::::::::::,ﾆニニニニニニニニニニニニニl ./:::::::::::::::::::::::!'
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|「え、生きてたのかお」
|「僕らが全滅した品川大聖堂から、何らかの手段で脱出したんだろうけど、なんで合衆国？」
|
| 記憶力に自信のある読者であっても、彼の顛末については記憶が定かではなかろう。
| 『大天使召喚儀式』の余波で殺されかけたシックスは、太平洋戦争時に敵兵から奪った緊急脱出用マジックアイテムを使用した。
|
| それはつまり、殺した相手の家族の元に移動した訳で。
| 不法入国やなんやかんやで拘束されてアルカトラズに放り込まれていたのである。
|
|「NASAに依頼して、彼に天体望遠鏡……可能ならはハッブル宇宙望遠鏡も利用して観測をさせたい。
| シックス氏ならばアストラル視覚での影の惑星発見も可能だろう」
|「NASAに……ですか」
|
| 青ざめた顔の志摩子、異能を利用しないで合衆国と交渉せねばならない。
| 恐怖と緊張で震える手。その手を、蒼星石が握る。
|
|「最悪、紹介状を書いてくれればいい。後は僕がなんとかする」
|「それは……うぅ……」
|
| 煮えきらない志摩子、やる夫は少し同情した。
| どれほど忸怩たる思いがあっても、それを口にして困らせるくらいならばと何も言えないのだろう。
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} :/ } :} ::/ ー―ｧ
/ { { ﾉ ::ノ＿ ノ
( ト､ ､ イノｰ ´ く `ｰｧ
}｀ヽ ｨ´ ヽ ／
{ { { ./ ／⌒ } 7
､ ﾉ ,==ﾐ ｰくこぅ､ 〈 / 蒼星石、少し確認を……
八 ∨f 斗 } ＼ , } rヘ 7
ヽ} ,: /: | |ﾉ:} }′
人 _` ` ‐-､ {: | | xく …………アセムか、
ﾊ {ム-‐ ､ｰ ヽ j ﾐ ､} なんの用事じゃ？
i} ´__｀ -‐ くｨ／}_
八 ／ ｀Y´ ／⌒ / ㍉
〈 { ／ ｲ ㍉ ＿
厂 ｀丶､ ノ イ ／ ﾉ ㍉ ﾆ=- ､
人 } ／ =ﾐヽ イ ／ rｰ ￢へ} ヽ
-‐ , =ミ ヽ ＿/ {（__） } }／ rｰ┘.， ´
r ' { (__) } }ﾆﾆﾆゝ __彡 r‐┘ ´ }
,廴 ゝ ＿彡 ﾏ / / ノ rｰ┘ /
. / ㍉、 ｀¨¨| V //rｰ┘ .′ /
/ ｀¨¨¨ヽ! ′://" { /
. / / :| / // .:: 〉 /
/ r_ｰ- ､ , ､/ | { :// .:: ,{ . : 厂
.′rー‐- V } :L -=ミ ､ -‐ ､:／ . : : /}
_｀二` ､ ｀ヽ ／ =＝/ / / ′
.{ ゝ--- -‐ ¨¨ / /{ { ／ 〃/
.{ ｀¨¨／ { {从_ -=≦ 〃/
.{ ／ 八 八 ` ／ /
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| タイミングがいいのか悪いのか、血走った目のフリット・アスノが訪ねてきた。
| 目の下には深い隈、頬は削げて青白く、額には血管が浮き出ていた。
|
| さながら幽鬼のような面相に、さすがのアセムも面食らう。
|
|「仕事の依頼に来たんだが……父さん」
|「家族と『血族』を捨てた男に父と呼ばれる筋合いはない」
|
| 剣呑なフリットと、後ろめたさから力のないアセム。
| 前回遭遇時に戻り損ねたのが敗因だ。
|
|「…………その事は申し訳ないと思っている。ロマリーにも、キオにも。
| だが今は、世界の破滅に対処するために……」
|「そういう所がいかんのだ！！」
|
| 怒号にアセムが肩を震わせる。昔から、フリットに怒られるのは苦手だった。
|
|「何が仕事じゃ、何が世界じゃ！ 自分の家族も守れん奴が世界を守れるか！！
| 志摩子様、蒼星石、このバカ息子を少し借りますぞ！」
|「痛ててててッ」
|
| 身を引っ掴んで行くフリット、残されたやる夫と蒼星石、志摩子は顔を見合わせた。
| そして、とりあえず成り行きを確認すべく着いていく。
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＼! ∨ (
} ＼ ＿ ､ 〈 }
{ ﾆ=- ／ ｀ヽN } /
､ , ⌒ヽ ､彡 / ＼ /´}
} / , -}/ / ｰz ﾉ
ゝ､ ｰ{ :{ r / / ` =ミ ､ i , / ／
∠ ﾊ i V / } ｀ヽx=ﾐ ＼} / ´
__､ -‐ Y人/ ゝ-' ./ ′ ＿ -‐ ﾑ 7
r' ＼ z彡 { { }ｿ′
＿廴 ＼ ∧ -‐ ､〈ｰ ﾉ
.， ´ﾆﾆﾆﾆﾆミ ム、 ∧ ´¨¨`ｰ ､ Y
.， ´ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ＼ ∧ ､ ヽ/
.， ´ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ＼ ∧ ｀¨Z ､ ／ …………アセム。
Yﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ -‐ ￢ミ ､ ﾑ Ｙ
:|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ V{ / お前に詫びておかねばならん。
:|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ.／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾑ }从 ノイ 超能力の才能などという下らんもので、
:|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ} } お前を苦しませた。
:|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/} }
八ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ /ﾆ} / すまなかった。
ﾆ∧ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ｜ﾆﾆ／ﾆ.ﾘ′
./ﾆ∧ﾆﾆﾆﾆ 〃ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ﾘ ／ﾆﾆ /
ﾆﾆﾆ∧ﾆﾆ 〃ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/´ﾆﾆニ./
ﾆﾆﾆﾆ∧ﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ／ﾆﾆﾆﾆ ,/
ﾆﾆﾆﾆニ}/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ /ﾆﾆﾆﾆ／/
ﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆ斗 ´ﾆ/
ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆ /
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|「…………父さん」
|「つい先日まで、わしが一番超能力をうまく使えると天狗になっておった。
| だが、わしはキオどころか、脳改造で簡易超能力を得ただけの石田にも劣る」
|
| 監禁されていたキオが逃げ出せなかったのは、石田の存在があったからだ。
| 直接の力比べで惨敗し、フリットのプライドはへし折られた。
|
|「じゃが、わしは悪魔撲滅を諦めてはおらん。この地上から邪悪な怪物を一掃し、平和な世界を作ってやるつもりじゃ」
|「父さん、俺は……」
|
| フリットの狂気に、アセムはおずおずと口を挟んだ。
|
|「いくら悪魔を駆逐しても、人間同士の争いは無くならないんだよ」
|「…………ああ、分かっておる。人間同士の争いごとを調停して回っていた男の情報は、常に集めておったからな」
|
| アセムが瞠目する。目の前で修復されつつある親子関係に、やる夫は居心地の悪さを感じた。
| クソ親父との関係を修復したいのか？ やる夫自身にも判別付かない。
|
|「キオには黙っでおったがな……そのキオの状況は？」
|「超能力を失ったという話までは」
|
| フリットが頷く、やる夫の後ろで志摩子が苦しげに胸を押さえた。
|
|「何か言ってやれ、わしはもう言葉を尽くした」
|「……………………」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’ `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ へ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ー ＿＿ ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ￣￣ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/
l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/ じいちゃんと……誰かな？
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
i '" i /:::::::::::::::::::::::::::::::::::}
`'ｰ=ニ _＿¨ ,.｡・'ヘ: /::::::::::::::::::::j:::::::ソﾚ'
ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
r'¨’ 〉く . ＞=ハ
ﾘﾊ i 1 .＞'" ',
/ _」 :i ,.ィ'’ ﾊ
〈__ / .ｲ! ／ - ─ - . ﾊ
/ / ` .｡ '´ ｀丶 ﾊ
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|「俺だよ、アセムだ」
|「…………父さん」
|
| ぎこちなく呼んで、目隠しを外すキオ。微妙な雰囲気漂う父子の再会。居心地はさらに悪い。
|
|「超能力、どうだ？」
|「『先生』は魔力そのものが失われた訳じゃないから、一時的なものだとは言うけど……でも、できるだけ早く取り戻さないと」
|
| やる夫は三ヶ月前を思い出した。
| 能力を失い、日常に戻った時のこと。
|
| 蒼星石を盗み見ると目が合ってしまい、お互い赤くなって視線をそらした。
|
|「キオ、超能力があれば何ができる？」
|「じいちゃんと一緒に、治療の手伝いができる。魔術だけじゃ難しい治療も、超能力を併用すると早く簡単にできるんだよ」
|
| それこそ、キオがフリットに示した道だ。超能力はサポートでこそ光り輝く。
|
|「では逆に、超能力が無くてもできる事は？」
|「…………」
|
| 押し黙るキオ、背後で志摩子も俯く。
| それがあれば、どんなに、どんなに……。二人の無力感はやる夫にはお馴染みのものだった。
|
| そして、半年前までは才能皆無ののけものとして生きてきた蒼星石にも。
|
|「だがキオ、お前は志摩子様の腹心だったんだろう？」
|「それは、超能力があってのことだよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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__,,.. ,,､
_,,.-‐''" ミ_⌒ヽ ､
／- _,, -､ ノ^ ヽ､
,.-''" ＼
／ ハ､ ヽ
／,ｨ ﾉ ﾉ ﾐ､ヽ､ ヽ､ヽ
/ // ／ ,/ / ﾐヽヽ､ ＼ ヽ ヾ､
{ /i / ./ /,／ ヽヽミヽ､ ヽ､ヽ ｰ､｀ヽ､
ヽ l l l / /__, ノ ｀ー-- ,,_ i iﾐ ﾐヽヽ ＼ヾヾヽ
ﾞ| l { |ｨ",イｪ､ ｨｪﾆ=-,､_ ｀ﾞ} l｀ヽシ＾ヽ ＼ ヽ､}} }
{ ヽ{ l ﾚｲ{t:;;:} " {;ｨ;;::}ヾ. | l kiヽ } ヽ } ﾞ ｰｰ‐''"⌒ ヽ
ヽヽ､ヽ. ゞ-'., ｰゞ-'- | ｌ ,／ ﾉ }ﾉｰ､ｰ-''⌒ヽヽ }
＼ ＼ゝ / } l ｨ ／| | i { ヽ､＿__ }_},,ｨｰ''⌒_ヽ__
ﾄ､八 ｀ ﾉ.ﾉノ!Ti | ヽ､{ { ヽヽ､ _,,.-‐''" 二=-､ ﾞヽ
ヽヽ ヽ､ - _ - / / | l ヽ｀ ヾﾐｰヾ､＿,,.-''" , -'／ /{ }ﾄ､ }
ヽ } l ヽ ／',/ | ヽ ＼ ＿_____,,. ｨ"／ ヽﾆン } ﾉ
ヽ.ヽ ＼ ﾞヽ､＿,, イ / { l ヽ､ ｰ'' _,.‐"／ ___,,,,__ _ﾉノ
＼｀ヽﾞ､ ヽl / ! ﾞ､ ヽ､ ｀ー--=''"-‐''" ヽ
ﾞ ｰ､｀ ｰ､ヽ､| { { ,>ｪ=' i ヾ､ｰ--､＿＿＿ ､ ヽ.
l ＼ }_ﾉ_人 ｀＜￣ { ＼ ＼_ ｀ヽ､ ＼ i
}_Ｌノ ﾞ''ｰ-｀=-----ヽ ヽ､___｀￣￣二- ヽ ヽヽ}
/ ノ __,========､ ＼ヽ ｀ヽｰ' ｀i i } Y
/／ ／, -'"￣フ｀｀ヽ､＼ ヽ ＼ } } } レ'
／' ／／ ／ ＼｀''=､ ＼ヾヾ､ﾉ {､_ノ ﾉ }
／⌒r' ／／ { ヽ＼ ﾞ､ ﾊ ヽ､ ヽ＿,,ノ ノ
/ ｨ // ,,／ } ヽ} |＼ } } l } ｀ー''"
{/:{{ {ﾉ／ﾉ ヽ ＼l ヽ }ノ } }
＼ツ_／ ､ ヽ､ 〉 | | ﾉ ノ
〈_{ノ ＼､_ヽi i / ﾉ |_ノ'"
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|「違うな」
|
| バッサリと、アセムがキオの反論を両断した。
| やる夫は蒼星石を見た。頷く、そうだろう。
|
| やる夫は知っている。志摩子様のことはよく知らないけれど、蒼星石を知っている。
| 複数魔術系統をつまみ食いして体裁を整えただけの雑魚だけれど、右腕として信頼を得ていた女を知っている。
|
|「困難に立ち向かう時に、勇気を振り絞らねばならない時に、最も必要となるのは信頼できる誰かだ。
| 優秀でも信用ならない奴など、居るだけ邪魔だ。
|
| 逆に能力が劣っても信頼できる者が居てくれれば、それだけで勇気が湧くものなんだ」
|
| 不意に、蒼星石がやる夫に一歩近づいた。二人の指が一瞬触れ合う。
| やる夫は、細くて荒れたその指と、自分のぷよぷよとした芋虫みたいな指を絡めた。
|
| 蒼星石は抵抗しなかった。
|
|「キオ……お願いが。その、そんなことを頼める立場では無いのですけれど、お願いがあります」
|
| 二人の後ろから、志摩子が振り絞るように懇願した。
|
|「私に勇気をください」
|「志摩子さん、僕は…………」
|
| 今にも泣き出しそうな志摩子、キオは困ったように目を泳がせた。
|
|「超能力も、知識もない、ただの中学生なんですよ……？」
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,. -‐_ ニﾆニ￢‐-r‐-､
／ , '´, -‐_ ニフ 7 ﾆヽ ＼
／ ／ ／ ／ ／／´/ ヽ ＼ ＼
. / / / / / / / / }i＼ ヽ ヽ
/ / / / / / / / ハ ＼ ',
ｌ ! l l l l l / ,ｲﾊﾍk ヽ l
. │ ｌ {ｉ│ l l ｲ /l ,.ｲ ﾘ ヽ}} | l |
. │ ｌ ﾘ-l‐ﾊ‐辻ト/ / ナ士ｪ‐-{{/ﾚ-! |
{ ハ lィ¨｢ス下l/ノ'´ イ「スTヾ}Y/｀} |
Ｙ ﾄ､{ ､ ド り ' ､ド り , }}〉ﾉ/ |
} ｌ lヽ｀￣´ ｉ ｀￣´ ﾊ／!l | そんなことを言ったら
| l ﾊ l! /´}} l l | 私だってただの女子高生なんですよ？
. j l l ヽ _＿, ,.ｲ ﾘ/ l {
. ,ｲ { l {＼ ｰ ／ ﾉ ｛{' { ﾊ だから、キオに傍にいてほしいんです。
/´ﾉ ,ﾊ ヽ ! i ｌヽ、 ／! { { ﾊ{ ヽ!､＼
｛ / / ヽ V ノ_| ｀´ |_ﾊ ヽ/ !l / ヽ ヽ
. / / ∧、 `< j ﾘ冫 {､ !l { ﾉ }
{ 〈 〈_,.} ! ハ ハ ヽ ｿﾉ､{ / ノ
ヽ ＞ ´ ハ / L__ __」 ヽ. Ｙ{ ` ＜{
_,, イ 「 / j/ l ｀ ´ ｌ ＼ ヽ） 7 r-､_
,r'´.:.:.:.:ヽヽ. / ,ィ′ l l ） / / /.:.:.:.:.｀ヽ
|.:.:.:.:.:,:.:.:.:＼＼{ノ ﾊ | | ／ / ／／.:.:.:,:.:.:.:.:.|
!.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:＼{ {､} ！ 亅 （ ( ／／.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:!
|.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:.:.:ヽ ヽｰ-- ､_ヽ /_,. -‐‐ヽ `＜.:.:.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:.:|
ヾ.:.:.:.:.:.:',:.:.:.:.:.:.:.:.:〉 厂`ｰ┬-Y-┬‐ "´￣＼ ヽ:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:.:/
{:.:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.:.:.:.{ (_,ｲ:.:./´{ 广ヽ:.:.:.:.:.:.:.:} }:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:}
. |:.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ-‐'.:/ ハ---ハ ヽ:.:.:.:∠_,ノ:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:|
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|「…………」
|「許してくれとも、私だけのものになって欲しいとも言いません。
| キオ……今だけは、私に……」
|
| 一度目を伏せ、顔を上げた時には、キオの顔には決意が満ちていた。
| 凛々しい眼差しで志摩子を、フリットを、アセムを。そして手にした目隠しを順に見る。
|
|「志摩子さん。僕にできることなら何でも命じてください。
| でも手が空いてる時はじいちゃんを手伝わせて下さい」
|
| 驚いたように瞬きするフリットに、キオは頷いた。
|
|「人体精査なら僕のほうが経験があるよ。何か手伝えるかもしれないし、治療の助手でもなんでもする」
|「医者の真似事なら、戦場でやってきた。俺にもやらせてくれ」
|
| 手伝いを申し出たアセムに、キオが微笑みかける。
| 修復されつつある家族関係、やる夫の居心地の悪さを察知したのか、蒼星石が絡めた指に力を込めた。
|
|「やる夫」
|「うん、アセムさんの言うとおりだお」
|
| 二人は一瞬だけ視線を交差させた。それ以上は必要なかった。
| やる夫の想いは充分に伝わった。
|
| 蒼星石はグーでやる夫をぶん殴り、やる夫は転がった姿勢から速やかに土下座した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
決着をつける時が来た。
長い長い、お前との関係に。
そこにあるのは愛か憎悪か。
決着をつける刻が来た。
永い永い、君との因縁に。
あるいは嘘か迷いか裏切りか。
いずれにせよ、もはや時は無し。
ここが彼らの大一番。
次回、最終幕百十四話『結婚してくれるって言ったよね』
果てに見るのは破滅か死か。
イチャイチャしおって
やる夫の親父さんの方は、興味深い実験動物とか都合の良い器くらいにしか認識していない印象が
青春ですなあ
おねショタみある
／::::::::::::::::::::::::::::..... |
／::::::::::::::::::::::::::::.... _ -‐ 二＞‐- ＿＿
. /::::::::::::::::::::::::::::_ -‐'´_ -‐ ' ´ ￣ヽ
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＼/ ／:::::::::::.. , ' ´ l ＼ ヽ
｀>'::::::::::. ／ . .l | i ヽ ｀ 、
/:::::::::. ／ | .:::/ /、 |＼ , -‐ ! :.. 、 !
. /::::::::. ,.´:::::::. | .::/／ _, V _メ､＿ ｉ ::: ﾊ !
/:::::::.. /::::::::::::::. |ー≠‐'´__ ヾ、 -≦ｭ| ::::::ｲl ｌ|
|_＿＿」::::::::::::::::::. .l／＿≦==z ヽ {ﾐｶ ! .::／ﾘ ′
|::::::::::,:::::::- ' ´ﾄ､ ＼_弋;ﾉ ￣ |'´|
∨:::::::':;::::::::::. ヽヽ ￣ .ｌ |. | 申し訳ありませんが、
∨::::::::':;::::::::::. ｀N ｒ-─ｧ / i､| ちょっとやる夫と 話 し 合 い があるので
ヽ::::::|::':;::::::::::.. ヽ ｀ ´ ／. / ` 失礼しますね。
＼l､::､':;:::::::::. ｉ ＿, イ::;、/
｀l/∨ヾ、:./ l´ V l/
r-V _ |__
ｒﾆ´￣ヾ´ ｀＞､_ｿ_｀ー一'､⌒i､
_）/´￣｀ﾐ､ / 只__ヽ ヽ八_
（ i::::::.. )ﾄ､ / /,仆､ヽ＼ ヽ ）
. _）|:::::. Ｙゝ / / ｉ ハヽ__〉 〉 }（_
（ |:::::. }(_ 〈 〈_/ /ｌ .ﾄ､＿/ | _）
）|:::::. | ） ＼_ノ|;| |;| |(
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| いきなりの暴行に唖然とするアスノ家三代と志摩子。
| 彼らを置いて、蒼星石はやる夫に冷たい視線を向ける。
|
|「ちょっと蒼星石をお借りしますお……」
|
| 二人の距離が近いことは、この場の全員が気付いていた。
| アセムの説得に何か心を動かされていたことにも。
|
| にも関わらず、何があった？
|
| 彼らには分からない、分かるはずがない。
| 目と目で通じ合い、即座に決裂したなんて分かりようがない。
|
| 近くの無人の会議室を開ける蒼星石、やる夫を乱暴に押し入れて、後ろ手に鍵を締める。
| 土下座に入るうとするやる夫の襟首を掴み、鼻がぶつかるほどの距離でメンチを切った。
|
|「詳しく」
|「…………今の流れで蒼星石に慰めてもらったら、やる夫は立ち直れなくなるお」
|
| 蒼星石は嘆息した。吐息が顔にかかり、やる夫はドギマギする。
| やる夫がみゆきの所に行ってきたのは知っていた。
|
| その流れでなんでアセムを連れてきたのかは分からないが、まあ良かろう。
|
|「僕にあんなに情熱的に求婚しておいて、何？」
|「あれは……理由がありまして」
|
| 蒼星石は再び大きく嘆息すると、やる夫の肩を押して椅子に座らせる。
| そして自身はテーブルに座ると脚を組み、靴を脱いでやる夫の膝に乗せた。
|
|「ごめんなさい」
|「正直に答えてくれる？ やる夫が撒いた種……やらしいな、誰に種を注いだって？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ 注いでねーお。
／ ‐=・=‐ ‐=・= ＼ そもそもやる夫、
| （__人__） | 下半身《フグ》だし。
＼ ｀ ⌒´ ,／
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|「誰のナニが《講師》だって？ ん？」
|
| 蒼星石の足指にまさぐられ、思わぬ反応を示すやる夫の《サルディアの巨像》。
| 《賦活》している、《通電式キー》している。やる夫は目を白黒させた。
|
| 『引き裂かれた永劫』の副作用か、それともこれも弥勒菩薩のご加護であろうか。
|
|「反応が過敏すぎない？ 溜まってる？」
|「マジで溜まってるからそれ以上は勘弁してつかぁさいお」
|
| 硬化した部位をグリグリされて、やる夫は久々の刺激に嬉しいやら困るやらで懇願した。
|
|「では正直に」
|「まず、一連の戦いの後にやる夫が生き残ってる可能性は低いと思ってるお」
|
| 蒼星石は頷く。やる夫が死に近づき過ぎていると感じていた。
| こんな風に『戻って』くるとは思っていなかった。
|
|「なので距離を置こうと思いまして」
|「あのねえ、発言は屑で糞だけど、僕は選んでもらえて嬉しかったんだよ」
|
| 器用にも指でやる夫のやる夫を締め上げて、蒼星石が唸った。
|
|「あんなクソチャラ男のキープ発言に喜ぶなお！！」
|「ならやる夫、僕に好意を伝えたことが一度でもあったかい？」
|
| やる夫は目を伏せた。言い訳できない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_」x:≦二三三三三三三三三三二≧ｘ /
,.z≦三三三三三三三三三三三三三三三三≧=/
. ／三三三三三ニ＝＝＝＝＝＝ニニ三三三三三二≧ｘ、
く三三三三＞':´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :￣:｀ﾞミ≦三三三≧x、
＼三三:/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀ﾞヽ三三三〉
＼:∨ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ∨三:/
. ﾞ|: : : : : : : : i:ヾ: : ヽ: : : : : ヽ: : : : :ヾ: : : : : ヽ: : : : : :寸/
|: : i :i: : : : :l､: :＼ : ＼: : : : :＼ : : : :＼: : : : :＼ : : : :|
| i: l :l : : : : lﾍ:ﾍ. ヾ: ､:＼ミ: :￣:￣: T: :ヽ、 : : : ｀ヽ､:|
|:l: :l: l : : : :斗ヤＴ ＼:＼＼｀丶、ヽ l: : :i: :｀ミー:-:-:ヽ､_
. jﾊ: l :ト､: : :i | `ヾ `ゝ＝ミ ヽ: : l : :l : : i : : :「｀ﾞ^
/ 乂 ﾄ､:＼:ﾊ| ｚ=＝ミ ∨: : l : : l : :/
',l: :ヽ、: :ト､ ､ リ: ﾉ: : ﾉ//
ﾍ : : :｀: :ﾍ , ,ｲ,:ｲ: : ://´
ﾍ:Ⅳ : i ヘ ￣ ／,' /: //´ で？
ト､ ﾄ､ : :＞ .、 ,.イ /ｲ: /ｲ
｀ ヽ､ : : ミ｀≧ ‐ ´ ´/:;ｲ-､
_,,.x-一" ､ｼ /ｲ 〉 ',
,ｘイ ﾍ. , ＜ ｀¨¨¨ヽ､_,..._
／jﾄア ___ﾍ , イ_ _うふ、
／:.「jﾄア ..ｘ彡≦ｨ勺≧二ミヽ、 「j ﾄｱ:.:.｀ヽ
,.:.:.:.:.「jﾄア /〃 ﾈァＴ ヾヽ 「j ﾄｱ.:.:.:.:.:.ﾍ
/:.:.:.:.「j ﾄｱ 〈ミ{ ,.ｲ.ｲﾊ | 〉i》 「j ﾄｱ.:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ
/:.:.:.:.:.「j ﾄｱ .ゞﾐｙ彡"| |{i}| |ミ≦彡' 「j ﾄｱ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ
/:.:.:.:.:.:「j ﾄｱ ｀´ | |{i}| | 「j ﾄｱ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ
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|「高良は無事回復しましたお」
|「だったら何でそばに居てあげないんだ」
|
| 蒼星石が、やる夫にどうして欲しいのか。
| やる夫には難しい。
|
|「回復に『引き裂かれた永劫』の欠片を利用したお」
|「うわ、やる夫サイテー……やっぱり種蒔きしたんだね？」
|
| 反対の靴も脱ぎ捨てて、両足で圧迫する蒼星石。
| どういうプレイなのか。ここで情けないことになったら困る。やる夫は早く逃げ出したかった。
|
| しかし、蒼星石の眼力が許してくれない。
|
|「いや、アレの本質はエロ能力じゃなくて、精神の接続だお」
|「そうだね、記憶をほじくられて、しかも他人にも見られて見せられる」
|
| 快楽は志摩子からの結果であって、本来の能力ではない。
|
|「高良は死を見たんだお」
|「…………待て」
|
| 蒼星石の動きが止まった。
| 青ざめた顔でやる夫を見下ろす。
|
| 最悪の事態を想像したのだろう。
|
|「ああ、狂ってないし死んでもねーお。無事回復したって」
|「脅かさないでよ、もうっ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ノ ＼＼ 勘違いしたのはそっち……
／ （●） (●）＼
／ ∪ （__人__） ＼ ちょま……手はやめてくれお！？
| ｀ ⌒´ |
＼ /⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒)
ノ | / / / (⌒) / / / /
／´ | :::::::::::(⌒) ゝ :::::::::::/
| ｌ | ノ / ） /
ヽ ヽ_ヽ /' / ／
ヽ ＿＿ ／ / ／
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| 蒼星石の手が伸びて、レバーを掴んで引っ張った。
| それまでの足によるぎこちない刺激と違い、手によるものは大変に危険だ。
|
| ネックを握り、ぐりぐりと回される。
|
|「高良に死の夢の記憶は残ってねーけど、恐怖はこびりついて残ってんだお！」
|「…………つまり？」
|
| 蒼星石の手が止まる。
| 変に逃げたり頼むよりも、この方が効果的だった。
|
|「１……２…….ポカン１ 高良は『永久的狂気』をきれいにわすれた！ そして！ あたらしく『やる夫恐怖症／重度』をおぼえた！」
|「…………じゃあ、その、彼女とは？」
|
| 蒼星石が言葉を濁した。
|
|「やる夫にとっての『一つ目』みたいに、近くに居るだけで体がこわばって震えが止まらねー状態だお」
|「やる夫、胸を貸そうか？」
|
| 両手を広げて受け入れる姿勢の蒼星石、慈母のような優しい笑み。
| やる夫は苦笑した。
|
|「今の流れで蒼星石に慰めてもらったら、やる夫は立ち直れなくなるお」
|「僕にあんなに情熱的に求婚しておいて、何？」
|
| 二人で笑い飛ばす。少し気分が楽になった。
|
|「求婚はキャンセルだお、傷心なんで気持ちが落ち着くまでは、なんか付け込んでるみてーで」
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ヽ////////＞＜::.::.::.::.::.::.::.::.::.::＼::.::.::.::.::.:＼::.::.::.::.::.::.:.､
. ＼//7,イ::.:i::.::./::.::./:∧::＼::ヽ::.::.＼::.::.::.::.::.:'.,::.::.::.::.::.:∧
Y::.::.::.::.: |::./::.:::/:/ ヽ::.::＼::.::､::.::＼::.::_＿:}::.::.i::.::l : ∧
|::.::.::.::.::.Ⅳ:_:_/:/_＿_ ヽ::.::.:ヾ: ＼::＜ ヽ::.::|::.::.|::.::!::iハ!
∨::.::.::.::/::.::/:/_＿___ ＼ ＼ｨzﾃ≠ア.|::.::.|::./:/ !
∨::.::./::.::/:r=f芹示ミ ヽ { rｹﾘ_ 从: |/:/
八::/:::イ八 弋:::zリ ゞ=く /:::/:/ｲ
/ ｝ﾊ::.::.ヽ::.＼´￣゛ i / ｲ::.:::ﾊ!
｛ い::.::.:::＼::＼"" ﾉ::.::::八
i::ﾄ::.::.::.ハー -__ ' ,.ｲ∧: / また二年待てばいいかい？
|ﾉ ヽ::.::.:::|＞.．_ ..ｲ ./ Ⅴ
/⌒ﾊ: : |＞'¨| ≧ ーイ ＼
/ｺ .∧: ! ∧ ／ ＞.． __
/廴 ./ Ⅴ ./／Yﾍ イ 7/´ ∧ｧ
／:rｿ ./ ／ ﾉ〉〈 ＼ .// 入 (
／::/:::Y / { {／/ | |〉､ ｝ ./ フ':::::::ヽ）
/::::::/:::｛｀ ,′ レイ| | |__ノ ,ﾍ __{:::::::::::::∧
〈::::::/::::::r' ! .l l | |/ i r'::::::::::: : ∧
∨:::::::::｝ .| .l l | | j､_ L:::::::::::::::: ∧
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|「…………それは」
|
| やる夫は言葉を失った。
| 翠星石が、やらない夫と付き合い始めたのがちょうど二年前。
|
| 蒼星石に直接、やる夫から翠星石への気持ちを指摘されたのは初めてだった。
| 二人共、ずっと避けてきたからだ。
|
|「アセムさんの話を聞いてどう思った？」
|「…………」
|
| 信頼できる誰かに隣に居てほしい。
| 勇気を、振り絞るために。
|
|「やる夫、僕の 「隣に居てくれお、蒼星石」
|
| 蒼星石の言葉に被せるように、やる夫は早口にまくし立てた。
| 目を見開く蒼星石。すぐに優しく微笑む。
|
|「君は悪い男だね」
|「卑怯で屑で、情けなくて、ワガママで、どうしようもない奴だと思ってるお」
|
| それでも、近くに居てほしかった。
|
|「あと何人に同じ言葉をかけるつもりだ、このクソ野郎」
|「やらない夫とアリカかな」
|「僕もその二人かな」
|
| その四人なら、何でもできる気がした。
| やる夫はなんだか急に、蒼星石を抱きしめたいと思った。
|
| でもきっと、それは許されない感情だ。
| だからその、疲労でパサついた髪を撫でた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. /. ,'. . : : :/:.:.i. : :.:.:.､: : :',:.:.:.:.:.: : : . .ﾍ:.:.:.､. . . . . . .
/ ,. . .: : :,':.:.:i{:i. .',: : ＼: :ﾍ:.:.:.:ﾄ: : . . . ﾊ:.:.:.ﾄ､ . . . .
. / i. . . i :/.:.:.:ﾊ:ﾍ. ., : : : ＼: ',:.:{: ヽ: : . . ' ,:.:.:.:.＼. .
. / {. . . }:,':.:.:ｲ:.:i: :', .ﾍ: : : . .＼: :.:.:.:.:.' , : : ゝ､:.:.:.:.:ヽ
. ,' ﾊ. . .:i:,:.:.:/ﾊ:.:.:',:V. .',:.:.:.: : .:.:＼ .:.:.:.:.ヽ: : : .ヽ:.:.:.:.:.
, ./: :}. .,':/:.:/:{ ∨:.;.',. .ﾍ:.:.:.:ﾍ :ゞ.:＼ .:.:.:.:.:.' ,: : : ､:.:.:.
,'{: : i. . ,: :/:.:.i,__＿＿ノ .Ｖ:.:.∧: :'.,:.:.:＼_､:.:.:.ゝ: : :＼
i i.:i: : :', / /:.:.:ﾊ ￣｀ヾ:',‐-:.:.､:.',: :ゝ､:.:.＼ﾐ､:.:.:.｀:.:.､
l ,.:.:|: : :v /:.:.:.: :/ ､ ‐- ､:._:.:.ﾍ: : ﾐ:.:.:.:.:.＼｀ ＜:._:.
{:.:ﾊ:.:i : :/,' .:.:.:.:_≧=主卅=zミ ヽ｀:.:.ヽ: :ゝ､:.:.:.:.＼
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i.:i . i.:,' 〃i: : :.:∨｀` ､｀ ｰ--‐'´ ｀ ＼:.:ヽヽゝ｀ヾﾐ:.:.:.:
.. ',:{ V / :{: : :.:.:}. ｀¨ '''' ¨´ ヾ:.:'､｀ヾ､ ｀￣
l{. { i{.: :i : : .:.:{.:ﾍﾞﾐヽ／/／/／/／/ ｀ヾ､ ヽ
.| .i :ﾊ: :ﾄ: : .:.:.:.:.:ﾍ｀/／/／/／/u.
. ',. i:{ ﾍ :ゝ､: :.:ハ.:ﾍ ｀
ゝ ゞ! ヾ'ﾄ､.:.:.:.:.ﾍ:.:ヘ , -‐- _
ヾ', V:',∨:.:.:.:∧:.:.:＼ 乂`ｰ----‐'ノ> ひゃぅンンッ！！？
ヽ ヾ':, V:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.:.｀＞､ ￣￣￣
＼. ゞ',ヾ:.:.:.:',}:ii:.:.ﾊ:}ヾ:.｀ﾊ ､ , ＜´
｀ﾐ､.:.:.:}:ﾊ:.:} ﾘ }从|i ｀ ‐-‐"
∨ ii:.:}:,' ﾘ ';:|
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}: : :,'‐'"´
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′ ﾚ′ ￣ ヽ -‐ ￣
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|「ちょっ、変な声あげんなお」
|「へ、変なところ……ふぅ……触らないでよ」
|
| 変なところではない、やる夫は弁護人を探したが、あいにく二人きりだ。
| 真っ赤な顔でふにゃふにゃと腰砕けになる蒼星石、鼻にかかった声が色っぽい。
|
|「『後遺症』で全身敏感なんだよぉ……また腰が抜けたらどうすんのさぁ……」
|「薄い本の導入かお？」
|
| 悩ましい声に落ち着かなくなり、尻をモゾモゾ動かすやる夫。
| 蒼星石はうるんだ目で流し見た、驚くほどに魅力的で、やる夫は更に落ち着かなくなる。
|
|「本編までやってみる？」
|「お前ね……」
|
| 冗談も程々に……いや、こうやって性的なからかいを受けるのも久しぶりだ。
| やる夫はそれが蒼星石の楽しみならと受け入れることにした。
|
|「マジ勘弁してくれお。前々からこういう時にどんな反応すりゃいいかわかんねーんだお」
|「好きにすればいいのさ。少なくとも僕は、ずっとそのつもりだったよ」
|
| 告白に近い言葉、今日の蒼星石はやけに積極的だ。
| ……いや、ずっと心に秘していただけで、前からこうだったのかもしれない。
|
| 蒼星石がやる夫の頬に触れた、指先が熱い。やる夫の全身に熱が波のように広がる。
| だがそこで、蒼星石のポケットで電話が鳴った。仕事だ。
|
|「残念」
|
| 蒼星石はいたずらっぽく微笑むと、やる夫の頭をギュッと抱きしめた。
| そして何事もなかったかのように立ち上がる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.．-──- ､
／. : : : : : : : : : ＼
/.: : : : : : : : : : : : : : ヽ
.ｎi 7 .,!::: : : :,-…-…-ミ: : : : :', 『よーう、調子はどうだ？
l^l | | ｌ ,/) {:: : : : :i '⌒' '⌒' i: : : : :} オレ様？ オレ様は最低さ！
', U ! ﾚ' / {:: : : : | ｪｪ ｪｪ |: : : : :}
/ 〈 { : : : | ,.、 |:: : : :;! .ｎ まったく日本人はクレイジーだぜ。
ヽ ヽ-っ::: ::i r‐-ﾆ-┐ | : : :ﾉ l^l.| | /）
＞'´￣￣´ ゞイ! ヽ 二ﾞノ ｲゞ‐' | U ﾚ'/／) クリスマスにケンタッキーを
／ヽ､_ｨ-r―‐< ＼` ｰ一'´_| ﾉ ／ 食う時点で終わってんのに
.＼ 丁‐ｲ ヽ､ ヽ=／ ヽ ｒニ | マックナゲットまでセールすんだぜ？
ﾚ'￣7 ヽィ'.ﾄ､ ／￣ヽ､ `ヽ l
. !/￣７ /::::/ `'´ /_＞、匸ニ/| クリスマスなんだから家族とターキー焼いとけてんだよ』
/厂~/ /::::/ _＿、 .∧__厂 !jlヽ,/ |
.l'〃 /::::/ . / ヽ /ヽ､ l‐"_ lヽ､_／|
.| /::::/ ! 抜 | l､ ｜／ ∧--／ヽ
! /::::/ ヽ､___ン .j ア!、,r' /レ---┤
./ /::::/ !/' ヽ_ハｰ─ﾉ
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| 吉野家コピペを改変する元気はなかった。
| しかし数日前まで監禁されていたにも関わらず、元気いっぱいのヌケドナルド・トールマン。
|
| 合衆国大使サンダース・トールマンの弟だ。
| 「黄色い日本ぶっつぶせ、世界の地図から消しちまえ！」のサンダースとは違い、
| ヌケドナルドは「俺の東京」とまで言っちゃう穏健派の親日大使だ。
|
| 『やらない夫の集会』で失脚し、更迭された兄に成り代わり、見事に返り咲いたヌケドナルド。
| 彼は恐るべき手腕で『教会』所属の危険人物締め出しを推し進めた。
|
| 冗談交じりの軽口ばかりの道化だが、性格と行動は道化のそれではない。
|
|『ギブ・アンド・テイクだぜ、『血族』大首領殿。こちとらヨランダのオイボレにおニューのケツ穴空けられる寸前なんだ。
| ハッピーセットとスマイルが欲しけりゃマネーで支払いが必要だろ？』
|
|「はい、こちらに可能なことならば」
|『オーケー。俺の兵隊は前日の売れ残りバーガーよりもクソなサンダースにバラされて一人もいない』
|
| そもそも、ヌケドナルドの兵隊の筆頭だった男が、『教会』を裏切り相棒を殺してニャルラトホテプ側に降ったのが凋落の始まりだ。
| 当然彼の部下は解散または処分されていた。
|
|『俺が欲しい首は二つ。一つはもちろんアリー・アル・サーシェス』
|
| 他でもない、その裏切りの張本人。
| 彼については『血族』内でも情報共有されていた。
|
| 『大天使召喚儀式』の介入と変異、『十字軍』のオズを教唆しての『学園封鎖』、『やらない夫の集会』での暗躍。
| 今現在は、やらない夫の後輩ディオ・ブランドーの肉体を奪っていると思われる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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| 三＿二 / ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i | |
〉─_,. -‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ 川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´| ｀'t-t_ｩ=､i |:: :::,.-‐'''ﾉﾍ|
. r´｀ヽ / ｀"""｀j/ | |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/
. ＼ヾ( l ヾ::::ﾉ |、
j .>,、l _,-ニ-ﾆ､, |)）
! >ﾆ<:| ､;;;;;;;;;;;;;,. /| ＿__,. -､
| | !､ .| | （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ| | ヽ＼ _,..:::::::. / .| ｀''''フく ＿,. -ゝ┴-r-､
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |＿ ＿,.-''"´ ／￣,.／´ ゝ＿'ヲ
..| | | ＿;;;;;;;_￣￣ | ￣￣ / _,. く ／ ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_ / にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ / / .（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼ ￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/ / ／ ￣ ） ﾉ__'-ﾉ
＼ ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/ / ／ ／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ ヽ＼ ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ゝﾆ--‐､‐ |
l ヽヽ ＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ /‐＜_ ヽ |ヽ
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|「サーシェスは私どもにとっても看過できない脅威です」
|『オーケー、最高の返事だ。前金代わりに『ネクロノミコン』を用意してある。ご一緒にポテトもいかがですか？』
|
| 電話内容はスピーカーで部屋内に聞こえている。
| 志摩子は蒼星石とキオを見た。驚きながらもうなずく二人。
|
| 探し出したのが、約束を取り付けたのが九月、ようやくといったところか。
| 『蛇身』イナミが江戸時代初期にこの日本を訪れた原因、『万魔』をヒトに戻す魔導書。
|
| もらう約束はずっと付いていた。
| だが、紆余曲折が長かった。
|
|「慎二に連絡をしなければな、イナミへは少し待って欲しい」
|「本当は今すぐ伝えたいんですけどね、イナミさん喜ぶかなあ」
|
| 目をキラキラ輝かせるキオとは逆に、志摩子の瞳に闇が落ちる。
| だが彼女はもはや、私情と責務を混同しない。
|
|「もう一人は何者ですか？」
|『『聖処女』ジャンヌ・ダルクと『異端審問官』。奴らはポテトを揚げすぎたショートニングみたいに狂っちまった。
| 元からイカレた連中だが、今じゃ仮装した市民を無差別に襲う通り魔だ』
|
| 『スケアクロウ狩り』だ。
| 蒼星石が頷く。志摩子は息を整えた。
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|.:..:..!:.!:.:|.i:.:.lヽ:レァ十‐rヽ／ノ ／', -テr〈 |:./ﾉ!ﾉ
|:..:..!:.:|.:.|:ヽ:.',. { {f::ぅ:ｰ'} ´{::ぅｰ}. } ,ﾉ／/
|.:..;'.:.:.|.:|.:.|＼! ヾニソ 辷;ソ イ.／ 聞き及んでおります。
|..:,':.:.:.:|i:|.:.| ヽ ￣￣´ ､ ￣´ ,':|! どう対処すればよいかと
!/.:.:.:.:.:|.:|.:.ﾄ､ / /:.i:| 悩ましく思っておりました。
／':.:.:.:.::ﾉ|:.:|:.:|:.iヽ、 r‐┐ ／:.l:i|:ヽ
,. -‐'ノ:.:.:_／:.:.i.:.:.!: !.:! 丶､ ﾆ'" ／ﾊ:.:ﾉヽ:.:.:｀ヽ、
／, ‐''":, '´ .:.:.:/.:.:.::i !:|、 `丶 .., へr''"､l!:{.:.:|!:.:.:li.:ヽ:.:.:.}
/:.:.i .:.／ :. .:.:;:ノ.:.:.:.:.ハ ', `ー──／. ,.へ｀) ＼:|:l:.i:.:.|,ノ:,:ノ
.{:.:.:.{ .:{:.:.:. ／:./.:.:.:／:.ハ.ヽ i '" 二ヽ、 ',ヽヽ:{:.:.:{
ヽ:.:ヽ.:.i: （:.:.:.:|_;.ノ-‐''ノ. ヽヽ | |. -‐ﾍ l ＼ヾ'丶､
＼:}:.Y＞‐フ ／／ ヽ､.}:.:｝ |. l ,... ﾉ、 | ',:.ヽ‐-｀ヽ、
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|『警告しろ、抵抗するなら殺していい。
| 警告を受け入れるなら相手の名前と顔を記録して解放だ。
|
| そのデータをこっちに送れ、本国に送信する。
| 警告のデータが三回ほど貯まれば、お偉方も文句は言えめえよ。その次は問答無用で殺していい』
|
| ことここに置いて、問題は一つ。
| 誰があのジャンヌ・ダルクを殺せるのか。
|
| 遭遇戦で彼女の防壁を突破できる戦士はいない。より正確には、今の『血族』には残っていない。
|
|「分かりました」
|『殺れるのかよ』
|
| 煽るようなヌケドナルドの物言い。彼もジャンヌの強さは理解している。
| 故に志摩子は正直に答える。
|
|「説得します」
|『ビッグマックのＬＬセット奢って納得するような女なら、それはそれで構わんがね』
|
| 容易く折れるヌケドナルド。彼は志摩子の異能が働いていないことに気付いていない。
| 故に、志摩子が『説得する』と言うなら説得できるはずだと信じた。
|
|『それでお嬢様、ご注文は？』
|「合衆国の異能専門刑務所『アルカトラズ』にシックスが入っています」
|「…………マジか？ 俺が塀の中で冷凍パティを作ってる間に、あの耄碌ジジイはどんなパーティを開催したんだ？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,.ィ'三三二ﾆ二三ミー ､、
,ｨ'´ィィィィ彡三ﾆｴﾆ二三ミミヽ
,ｨf//ｨ'ｨ'ｨ'ｨ'／ィｼ' ｀`ヾヽﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ
ノｨ'//,'ｲ///,ｲ!lj/ l|lﾄﾐﾐﾐtゝ､ミ'、
//ｲ{|{lh{lilililil|l| |i,' li八ﾐヾ｀ヽヽﾐ':、
ﾊ{｛{N､',',',､{（(li| |l ,.........||＿!l|l|lﾄﾄゝﾐヽ丶、
!|l{lﾄi､',ﾐﾐﾐ','ji|l|l!:||:.i /:.:.,:'ｨﾘftiﾐkjljljlj|j|トミミミ≧ｭ､、
､ヾミﾐヽヽ',',}｝l|:.||: | ,':.:.: ｀`lF彡ﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ､liトミ三ﾐﾐヽ
ハ',',}｝}iﾄＮ|}|ljj|:.|! !:.:.. |l ｛l|l{lﾘﾊﾄl|l|､}〉| ｀ヾヽヽ
. ﾊﾘﾄﾐ',W八ﾘﾉﾂ'.:.ﾘ ,..、 |l |ﾄﾄWl|l|l|lNjljl| ヾｿ}
. {{{{｛lﾘﾊﾘllﾂﾉ/.:.:/: '―' '、.:ﾘト､{｛､',NNhﾄ、 ﾉﾘ′
,）}Ｗ/}｝ﾘﾉ,ｲ:,､'＿＿＿＿＿,.ﾒｨﾘj}j＞､{（(NﾄV、 ,ｲjﾘ 品川大聖堂を襲撃しただけかなー。
. ｲﾉﾘ//ﾊ}l//ｲ/｀ ―----― ´ /ﾘﾉﾊﾉﾊﾄﾐヾミﾐﾐゝ､/ﾉ/
//ｲﾉﾊﾘﾉｲﾉﾄi{、｀:.:.‐;,-;,‐.:.:´ ｲﾂﾉ八ﾄﾐﾐト｀ヾヽ、ﾐ｛{{/ー- 、
｛{{i{i{i{(({i{i{i|l|l|ﾘﾊﾄi､,ｲi{,,,}iﾄ､ｨﾂ{fﾘｲ ﾊliliﾄミヾヽ',iﾄﾐヾWト､ ヽ
,}）}）}lﾄiﾄl|l|l|l|| `ﾂﾉﾘ{｛{M}｝lﾘｨfｲヾ! LlLlレ‐=ﾐ)}lト}|l|liヾ'、ヽ、
､__,.ノｨﾒｲﾄ'､',',lililili|::..'´,ﾝiﾒ!ﾙｲl/lｲ八`/ {´￣/ Ｗ!,ﾘﾘﾊ ヾﾐ､i}
｀ﾆ彡'´ 'ﾘ ヾ',lNi|l:.:.:、 ´jﾂ ヾ' / ,':: '、::/ ヾﾐ彡小、_, ﾘ
, - ､_,. -'´ ／ /| ヾ',W :. / ' ,':: ∨ X` ,ﾉ '′
‐ '´ ／ ,':| ',iﾘ .::ﾉ /::: / ∧`ー-、
／ /:::| }ﾄ、 / ,':::: / ∧､ 丶､__
／ /::::::| ,ノﾉヾ、ヽ /:: ／／:｀`丶、 ∧ヽ、
／ /.:.:.:.:l ,ｨﾂ′ 丶、 ノ::./ /:::::::::::::::::::::`丶、 ∧ ヽ、
／ , ':. -‐|=彡' /^ヽヽ .:.:. /ノ:::: 〈丶、ﾍ ＼
'´ , ':: | ./:::::::丶', // ', ＼〉
、_,,.. -― /::: | /:::: ヾ! ,'/ l
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|『釈放と飛行機のチケットだな？ 安いぜ。ハッピーセットのオマケでいい』
|
| 少し困惑しながらも、軽く答えるヌケドナルド。
| だが、それだけでは済まない。
|
|「はい。ただしチケットはワシントン行きです。
| シックスをNASAまで案内し、天体望遠鏡を使用許可を与えてください。
|
| 可能ならはハッブル宇宙望遠鏡も扱い、現在地球に近付きつつある『影の惑星ニビル』を発見させます」
|『パードゥン？』
|
| ヌケドナルドが間の抜けた声を出した。
| 志摩子の話の内容を噛み砕いているのだろう、少しの間が空いた。
|
|『その……『影の惑星』の信憑性は？』
|「こちらの預言者が割り出しました。存在確率は八割以上。
| 何より二十年以上前から脳噛ネウロとアレイスター・クロウリーが対策準備をしています」
|
| 志摩子のハッタリについては兎も角、ネウロとクロウリー……誠の名前は劇的だった。
| ヌケドナルドが唸る。本気だと理解したのだ。
|
|『なら、奴らに任せろよ』
|「同時進行していた『女神の娘』と『木星重力圏減少』関連で、彼らは手間取っています。
| クロウリーから依頼が来たといえば、彼らが切羽詰まっているのがお分かりになるはず」
|『あのプライドの塊がかよ……』
|
| やる夫は心中で首を傾げた。誠がプライドの塊？
| だいぶイメージと外れている。
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,.．-──- ､
／ : : : : : : : : : : ＼
/ : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
,!: : : :,-…-…-ミ: : : : : :',
{: :: : i.'⌒';;;;;;'ー i: : : : : :}
. {: : : | ｪｪ ｪｪ |: : : : : :}
{ : : | ,.、 |: : : : :;!
.ヾ: : i .r‐-ﾆ-┐ | : : : :ﾉ
`イ! ヽ 二ﾞノ ｲゞ‐'
ﾉ` ｰ一'´, ‐'ヽ 『期間は？』
/ ! _, ‐" _ !
.,レ‐''´ _, -' !、
.// ,| . , -'´ ＿＿ !
// /∟‐'' ／＿＿_|
!/ / ,/ ,/ _＿＿_!
|' /_--!、 ,/ "l'´ ＿__ ',
｜l7 ! .|`‐イ┘ ＿_￣ |
//,| !^i^! | |__ ! .／ ￣｜
!/ ! | ｌ | / !、.￣|-------ｰl,
j/ `―‐' ヽ .l-----､ |
,l〉 `i(´`‐-､ ヽ､,|
,l′ ,/ ＼ `ｰイ
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｜ .,/ . ヽ、 ＼ .／
,!ノ!、 イ ＼ ＼ .ノГ
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! .＼ ＼ У |
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|「可能ならば今すぐに」
|
| 現在12月19日の午後。クトゥグアとニビルの到達は、示し合わせたように12月23日。
| 精度を上げるために少しでも早く動く必要があるだろう。
|
|『……ご注文ありがとうございます。んじゃあそっちも手早く頼むぜ』
|「はい、早急に手を打ちます」
|
| 電話が切れる。緊張の糸も途切れて、志摩子が椅子にもたれかかった。
| だが、その表情は明るい。自分の立場を利用した交渉ならば、異能の有無とは無関係だと理解したからだ。
|
|「すいません、『リトルボーイ』と『ファットマン』をお借りしますお」
|「トラックの用意をさせましょう」
|
| 今日中に二人を『打ち上げ』て、一秒でも長く宇宙空間に慣れてもらいたい。
|
|「イナミさんはどうします？」
|「なんか宇宙戦闘にゃ自前の噴出力がないと厳しいらしいお」
|
|「飛行できる悪魔は、力学ではなく魔力で飛んでいるので行けるらしい。
| ああ、俺が運転をしよう、目的地は相模原、JAXAだ」
|
| アセムの立候補、それはともかく飛べる悪魔。
| 計画していたやらない夫と『ニュクス』の連中はどうなのだろうか。
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ゝｰ´ィ⌒ヽ ,': ｀:ヽ 丶ヾ.l|
､ゝ, ､_i､_彡 { : : : , ' ｰ' ヽ : : : :ヽ ｀<|l| 宇宙に行って
ミｼ: ヽ_ゞ:;:;:;:;ｲ ｀ｰ ' ,-、 丶 __ノ 彡| 惑星型悪魔と戦うと。
ヽ: : そ:;:;:;:;:;!,ィ_ ´ー｀ 、,,ィ-'ｲ､
､: : ｀ｰ;:;:;:;:;:;:;:;｀ﾞｰ､-､_ー-,,_ ィ''´;:;:;:;:;:;:;:;:'ィ グフフ。
ヽ: : :ィ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;;ィｰ;:_;:;:;:;:;:ゞ ジャギの甘言に乗って正解だったなあティム。
丶: : : : ｀ﾞー彡''-ーiｯ-ィ;/: : : : : :´-､_､-''
}｀ ﾄｰゞ､: : : : : _ -､´|
j i ´ヾ-'ー ´ ヽ|
/＿＿ i ＿_,, ＿',
ヾ,ｨ､＿_ｌ､ ￣￣,｀iー'―‐ i´￣ i＿ヽ
}: : :ヾ,, | ｀ー―' ｌ―,― ´l ＿」-'' ﾞｲ
j: : : : :´ィ_,￣￣ ´ i ￣￣ ゞ: : : : ',
/: : : : : : : : '-, ! ､-'': : : : : ヽ
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j: : : ; - ´ ｀ - 、: : : ',
´´´~ ﾞ｀｀｀｀
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|「この体で全力を出せる戦場なんてあんのかよって感じだったけど、ウソみたいなのもあるんだな」
|
| 『血族』の装備輸送用トラック、荷台の内側は座席になっていた。
| 直径二メートル巨大パンダと、サイボーグ美少年、その脇にちょこんと座る少女。
|
| その他のスペースはチョコレートやドーナツが満載してあり、
| 『リトルボーイ』は、いやヤーボ大佐はそれをむしゃむしゃと食べまくる。
|
|「恐らく、今の我々ならば自力で大気圏突入も可能だ。嘘なら東京向かって落ちるだけだよ」
|「…………大佐、ティム。帰ってくるんだよな？」
|
| 不安そうな少女、『最後のグリーンベレー』ジャジャマル。
| ヤーボは微笑んで頭を振った。
|
|「分からん。だが、ティムは生きて帰れ。ジャジャマルを頼む」
|「はぁ？ なんでだよ大佐。死ぬなら一緒だろ？ それにジャジャマルも男なら……」
|
| 涙ぐむジャジャマル。グリーンベレーとしてティムの側に居たくて、男装をし続けてきた少女の気持ち。
|
|「違うぞティム、ジャジャマルはもうグリーンベレーではない。故に女に戻った。
| 私はお前たち二人を我が子のように思っている。ならば」
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＿
´￣ ミ 、
/ ヽ
/ j」=-―― ７⌒ヾ ヽ
/ / ｒｪｪ=＝＝{{ ｨﾄ、!
/ {!__´...-――--≧彡 /! :. チェッ。
人´ ｀ ｀ミﾆｊ{ i しかたねーなー。
/ ﾑ ｒ‐ ､ ミｲ! |
/ ｊ ト ､ ｀￣ ／ｊ |! | 女は面倒くさいんだよ。
|! | }≧ｒーｧｭィ// |! i
/ i! ! 7｀ー≠⌒ヽ! j!
/ / ! ! / }!川
.: / ﾊ ｊ!/ i i ﾘ {
ｊ / ハ!/ }! i八 |
川 / ＶＬ /! | ヽ} i!
/ ﾘ八 / {/)｢´ / | j! { i
/ } ﾊ / ヾ{ ｲ ﾄイ{､ ! ｛
/{! 人 ｀ヽ ｊ ﾏﾆリ ﾊ 川
/:_/｀ー＝-- 彡 }ﾆト､ ヽ{
/: /: : : : : : : : :ヾﾑ }ﾆ{ ﾘ
/: : : : : :_L: : : : : : ﾑ }ﾆ{´
/: : : : イ/⌒}ﾆヽ: : : ﾑ |ﾆﾑ
〈: : : : : :/ ﾆﾆ: : : : : ﾑｊﾆﾆミヽ.
｀T＝ｒ′ ﾆﾆ: : : : ィ／ヾ}〉｀ｿ
| | ﾆﾆ｀T イ
ﾆﾆ ﾆﾆ ﾄ､ ｣
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| グチグチと文句を言うティム。
| その頭を、チョコレートで汚れた手でグリグリと撫でて、ヤーボが続ける。
|
|「ジャジャマルよ。合衆国に我々の居場所はもうない。『血族』に協力し、ティムの帰る場所を用意しろ」
|「はい！ 任せてください！」
|
|「いいよ、別にそんなさー」
|「ティム、自分の危険性くらい把握しておけって」
|
| 核爆弾内蔵の高位悪魔である。
| 意識のない状態でも『血族』の精鋭部隊と渡り合える実力。思考力のある今ならば、危険性は跳ね上がる。
|
| 彼らの話を運転席のスピーカーから聞きながら、やる夫は少なからず不思議に思った。
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』は世界を滅ぼす災厄の側だった。
|
| いつ見た夢か忘れたが、巡音ルカは『リトルボーイ』と相打ちになり、ジャギとロストスキルが命を賭して『ファットマン』を討つ。
|
| 雪の夜だった。
| 泣き叫ぶ黄泉と霊夢の姿も浮かぶ。
|
| それが、彼らの結末だった。運命だった。
|
| なのに今は、思いもよらぬ強力な援軍として『ニビル』戦に向かっている。
| とても不思議な気分だった。
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＼ ／ | ｜｜ ﾄ ＼ ',
Ｙ | / /l ヽ | ＼ ＼ |
′ ,′ / / ! |＼ ､ ＼ ,. -‐ i＼―-| | |
| / /_/＿_', 、 ＼＼ へ、 | ヽ | | |
| _, / イ/ /― ＼ヽ ＼＼ ィ＞＝ミ=ﾊ ｜ / |
| / ／/イ￣卞ﾐ ＼ 〃i _ィ:::y ｝ ∧| / |
! /／rｾ {_ ｲ:::}｣｝ ＼ ヾ ノ,. / / ｜
i ／ ＼ ` 丈＿ノ ヽ ￣` / ／ ′
／ ＼ ＼"￣ i〉 ／ | ,′
'. ＼ ＼ / / /
'. ｀ ｰ一 _ ｲ / / 何を考えているんだい？
ヽ ＼ ´ ／ // /
＼ ＼ ＼ ／ /' / /′
＼ ＼ ＞ ,._ ,. ' |ノ ヽ / /
＼ ┌:/lヽ／ ｀ヽー ／ Уく
_＼/ノ'" / } ／ ／ ＼
∧_/＼ ｛ ／ ＼＿_f⌒ヽ
/ r‐' （ ＞' ,二.rく ―‐､ <⌒ヽ丿 └┐
| / Ｙ´ イ ／トく￣＼＼ ___） ／ｎ＿厂
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| 隣の席の蒼星石が耳打ちした。
| 距離が近くてドギマギする。
|
|「あっちもこっちも親子関係が修復されつつあるから、やる夫もしとかねーとかなと……気が重いお」
|
| やる夫と蒼星石も同じ車に乗っているのは、JAXAにいるというネウロに会うためだ。
| 話したいことは別にない。関係の修復なんてしたくてもできないだろう。
|
| だが、確認したいことはいくつもあった。
| やらない夫のこと、水銀燈のこと、『セイバー』と『エクスカリバー』のこと。
|
| 折よく、ここにいるのはアセムだけ。
| 志摩子にも秘密にしているやらない夫生存も、ネウロ関係者なら知っているだろう。
|
| トラックは首都高を走り抜け、神奈川県へ。
| 途中のマクドナルドでバーガー類をどっさりとテイクアウト、夕食にする。
|
| そのロスを含めても二時間かからない移動だった。
| 十二月の日は速やかに落ちた。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ ん？
| （__人__） | なんか慌ただしいお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 鬱蒼とした緑地帯に囲まれたJAXA内部は、なにやら研究者らしき人々が慌ただしく行き交っていた。
| 多くが携帯電話を片手に、どこかと連絡を取り合って、あるいは取ろうとしている様子だった。
|
|「何かあったのか？」
|
| 三人は車から降りたばかりであったが、とりあえずエンジンをかけてラジオを付ける。
| ヤーボたちが不穏な会話をしないかを確認するために、先程まではカーステレオはオフにしていた。
|
|「どうした？ 私は宇宙食のアイスクリームやプリンを楽しみにしているのだが」
|『ガーガー……京メトロ……異臭……五十三人が……搬送され……』
|
| 電波が悪い、途切れ途切れの内容だった。だが、ただ事でないことは想像できた。
| しかし、六人の予想は大いに外れた。
|
|『……葉原……模倣……手線……銃を……警視庁は……爆破……関連を……』
|「は？」「え」「ウソ」「へえ」「グフフ」
|
| ついさっき、マクドナルドに寄ったときは平和だった。
| だが、この三十分程度で、日が落ちるまでの僅かな時間で、世界が一変していた。
|
|「…………ロアナプラか？」
|『今……スカイ……ザザ……ジャックされ……まるで……911……ザザザザザザ』
|
| 最後の戦いが始まる。
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☆ 次回予告！
失う。
失う。
このままではもう一度。
心に残った深い傷跡。
未だに癒えぬ、滴る血。
あざ笑う略奪者。
届かないその手。
束の間の安寧が、いともたやすく奪われる。
次回、最終幕百十五話『略奪者』
果てに見るのは破滅か死か。
蜂起したか。東京封鎖まで行くか？
急転直下だな
イチャコラしやがって！
': : : : : : : : : : : |: : : : : : : : :|: : : : :|: : : Ｖ─ : : : : ∧: :|
/: : : : : : |: : : : : :|: : : : : : : : :|: : : : :|: : : : Ｖニ─.:./ ∧:|
': : |: : : : :.|: : :｜: |:|: : : : : : |: |: : : : :| : : : : |-=彡:/ / ||‘，
/／:.|: : : : :.|: : 斗─-: : : : : :.|-─‐-之 : : : 八-彡L/ || ｝
‐''ﾞﾞ ｜:|: : : : :.|个从:从ﾄ､ : : : /|:ハﾊ: 从|ヽ: :/ 圦≦L_,ｨﾞ|レ'
|爪: : : : :| |r灯芋圷丶: :.| ﾉ 灯芋圷ﾐ:/ }' 入ⅥI|: :|l|.
| 圦: : : ハヾ 乂こｿ ＼| 乂こｿ |ｱ '(ヘ }:|I|: :|l|:. 見てください先輩
| | : ＼八∧ .:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:. r' _ﾉ,ｨ':|I|: :|l|.:. きれいな夕日ですね。
| ∨＼|＼|∧ ､ 厶イ:.:.:.:|I|: :|l|: |
| ∨: : : : : ∧ ,.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.|I|: :|l|: |
｜ ∨.: : : : :.| I.､ ｰ ‐ ／l.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.|I|: :|l|: |
∨: : : : :| |:.:.:.:...._ _ ﾄ､.:.:.:.:.:.:.:.:.|I|: :|l|: |
、 |: : : : : | |:.:.:.:.:.:.:.:.:..､__ ﾉ ＼.:.:.:.:.:.|｣: :|」: |
|: : : : : |ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:／ | ／ ＼./: : : : : 八
＼|:|: : : : |:.:.:_; -／ ﾊ ／ /: : : : : /||: :.、
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| 黄昏時の空は夕日の朱と宵闇の紺が混じり合い、幻想的な色彩を作り出していた。
| 大自然が織りなす日毎の芸術。太陽への葬送、あるいは迫る夜への歓迎式。
|
| 黄色がかったオレンジの空に紫の雲たなびく。
| 平和で、かけがえのない時間。士郎と桜の買い物帰り。スーパーマーケットからの遠くない距離をゆっくりと噛み締めながら歩く。
|
| こんな日々が訪れるとは、想像もしていなかった。
| 桜の心も空模様に似ていた。苦しくなるほどの喜びと、開放感。そしてチクチクと胸を刺す罪悪感の狭間にある。
|
| この十五年以上、夢現の中にいた。
| 自分そっくりの人型で機械のように生活をするか、『バーサーカー』と呼ばれる端末に押し込まれ、ぼんやりと悪魔を狩っていた。
|
| あるいは間桐の屋敷の地下で、蟲プールの苗床として。
| 士郎とレナを殺した罪の意識から心を閉ざしていた。
|
| それが、こんなにも自由で。隣には愛する士郎がいて。
| 家に帰れば姉がいて。妹のように慕ってくれるアリカがいて。
|
| 強くもなければ歳も下のくせに、兄の振る舞いで桜を気遣う慎二がいて。
| 幼女の姿のくせに姉のような顔をするターニャがいて。
|
| こんな日々が、いつまで続くのだろう。
|
| 明日には、もうないかもしれない。
| 次の瞬間には、突然消えてなくなるかもしれない。
|
| そんな恐怖が、心の片隅に野良犬のようについて回る。
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|:.:.:.:.:.:＼{ V);ｿ ＼_ V);ｿ /:} }| | |
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|:.:.:.:.:.:.:.:| { /-::′:| | | （全部、私の杞憂であってほしい。
|:.:.:.:.:.:.:.:|}h、 ,.:′| :.:.:.:| | | 何も奪わないでほしい）
|:.:.:.:.:.:.:.:||i:i心、 ｀ ´ ,.ｲi:i:i:i:|:.:.:.:.:| | |
|:.:.:.:.:.:.:.:||i:ｉ:ｉ:/|＞:...___...:＜|ヽ:i:i:i:i:|:.:.:.:.乂__|
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{ | 人:.:.:.:.:.:.:l ///./ _| | | `､./∧ '_ | }
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{ '_ / ＼ l//| | |//| ／ '､ / }
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| だが、その願いは儚く散る。
|
| ふと見上げた先に、尋常ではない量の黒煙が立ち上っていた。
| 工業地帯ではない、閑静な住宅地である。
|
| 風に乗って僅かにいがらっぽい臭いが漂う。火事だ。桜は嫌な予感に打ち震えた。
| 煙は、進行方向で上っていた。
|
| いや、あの屋敷は『血族』の魔術と結界で、火除けの加護を得ている。
| 普通の火事では燃えることはない。
|
| 普通の火事では。
|
|「桜、荷物を頼む」
|
| 隣を歩いていた士郎が、食材などの手荷物を桜に押し付けた。
| 桜は何も言えなかった。行かないでとも、一緒に行こうとも。
|
| 何かを失うのが。
| あるいは失われたものを目にするのが恐ろしくて。
|
| 桜を置き去りに士郎が駆ける、音を置き去りにする速さで、屋敷まで数百メートルを駆け抜ける。
| 桜にできたのは、その背中をすがるように見つめることぐらいであった。
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淡淡淡淡爻爻爻淡淡爻爻淡淡淡淡爻彡'⌒
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| 時間は少し遡る。12月19日の四時過ぎ、夢宮邸。
| 士郎は夕飯の買い出しに出かけていた。付き添いに桜。ある種のデートであり、桜のガス抜きである。
|
| 二人が腕を組んで外出するたびに凛の機嫌は悪くなり、隣りで寝ている慎二に極めて困難な課題を命じる。
| 慎二としてはいい迷惑だ。
|
| 現在夢宮邸で生活しているのは士郎、凛、慎二とルイズ。
| そしてマリナ・イスマイールの五人とターニャ、桜の二柱だ。
|
| アリー・アル・サーシェスに狙われたマリナは、以降はこの夢宮邸で寝泊まりしている。
|
| 仕事の心配は大いにある。『学園封鎖』以降は休校状態であるし、新米教師のマリナでも、やるべき作業はごまんとある。
| あるが、命には変えられない。
|
| 副担任だったクロトワはサーシェスに惨殺されているし、
| なにより理事長である伊藤誠から適度に休めとの通知が届いていた。
|
| なので仕方なく、マリナは居候らしく夢宮邸の掃除洗濯に精を出していた。
| 主人である士郎の領域である料理はもちろん手を出せない。
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, : :´: : : : : : : : : : : : : : : ｀ヽ
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. /: : : : : : : :,′: : : : ＼: : : ヽ: ヽ: : :ﾊ: : : :丶
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. {: : : : : : : ﾊ: ',: : : : : : : :} ＼: : :从: : : l : : : : l
. 八: : |: ､＿ l ﾊヽ: : : : : :ﾉ, -‐弋:厂i: : : |丶: : : ', そんなせかせか働かなくても
ヽ::ｉ:: :: :, ｀廾ト＼: : : i ＿_,､丿: : ,': ﾊ: : : :ｌ せっかくだから休めばいいのに。
. ﾉﾙ': 八≠=ｚ､ }: :丿''爪⌒,`从:: : :ｌ: : : ', : :ﾍ
∨ゝ｀ 圦ﾊ ﾉ'´ 匕:刈 /: : : ,: : : :ヽ: : :＼
}: :ﾊ Ｖ:ﾘ `¨¨´./:: : : ,′: : : : ＼: : ｀ヽ
. 从 : ', ' ,′: : /: : : : : : : : :ヽ: : : ',
／: }: : : ﾄ. -､ /: : : : i: : : : : : : : : : :',: : : l
/: : : ﾉ'´: : : : : ､ ｨ : : : : : :',: : : : : : : : : : l: : 丿
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|「性格なんです」
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| 微笑むマリナ。健気で努力家で、手を抜けない不器用な彼女を、この家の人々は気に入っていた。
| ルイズは逆に世話を焼きたがるし、凛は思う存分甘えられる召使いができて悠々自適だ。
|
| 慎二は馬鹿にするし、ターニャは合理的でないと文句を言うが、気遣いは欠かさない。
| 新たな女の気配に一度は警戒した桜も、日に何度もマリナを訪ねる刹那との関係を見てすぐに態度を軟化した。
|
| 家主である士郎は士郎で、桜を振り切ってマリナにじり寄り、学校でのアリカのことを迂遠に聞き出そうと四苦八苦している。
|
| マリナを、正確には『夢世界』構築の際にマリナに付与された『法務官 シェオルドレッド』を狙うサーシェス。
| その能力はアリカと黄泉からの情報で共有され警戒されていた。
|
| 絶対透明化、（正確には異なるが）魔法的防御治療不能攻撃、屍鬼の作成と改造。
| だが、それらは『法務官』で得た『オモチャ』に過ぎないことを、士郎たちは知らない。
|
| アリー・アル・サーシェスは歴戦の傭兵で、銃火器だけでなく軍隊格闘術のスペシャリストで、
| ヌケドナルド・トールマンの『悪魔狩り』の精鋭で。
|
| 元相棒から『賢者の石』を奪った不老不死者であり、ニャルラトホテプから『地のDISK』を戴いた強力な異能者である。
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＜-‐ニi::::/:::l:::l::| |::|::::::|::|:|:::::〉ﾆノﾊ:::::::::::::V
Χ -|:ｲ:::::|:::ﾊ| 斗七Z}厶V｀ζｰ‐|:::|::::::::::|
＼ﾆ八-‐十___ 〃了r圷ヽ 彡ｲ!:::|::::::::::|
|::::::::::ﾊ rｆ了坏 Vfツ ′⌒＾l::::|::::::::::| それにしても、
|:::l::::::::::. Vツ ´´ ﾉｰ|::::|::::::::::| マリナの紅茶は美味しいわね。
|::ｌ::::::::::ﾍ ´´ ﾉ r ノ|::::|:::::::::ﾊ
|:l:::::::::::::込、 ｀ __ 一 ｲ`´::::|:::l::::::::::|::i
|l::::::::::::::|::::::＼ ／ ;|::::::::::|::l:::::::::::|八
l!::::::::::::::|::::::::::::｀ヽ 、 ／ ;|::::::::::|:l::::::::::::|::::::＼
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r― ／:::::::::::::::::／:.:.:_.:.:.O:.:/ 〉:.:ｰ―=ニ彡／:::::::::::::::人:::::::::::::
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|「『姉』が紅茶好きですので」
|「お姉さんの影響？」
|「はい、本人は命令するだけなんですけれど」
|
| 『姉』。血縁ではない。
| マリナはあの不人気の『子』の一人だ。
|
| アリー・アル・サーシェスが仕込んだとされるバス事故で、家族を失った孤児たちの一人。
| 『聖アンジェラ教会』孤児院で、マリナはあの絶対美の化身や刹那と家族のように過ごした。
|
| その中で、体型と身長はコンパクトだが、態度だけは大きい赤提灯によってマリナは紅茶を仕込まれた。
| もとより丁寧で世話好きなマリナは、命じられる度に当たり前のように紅茶を淹れ、叱責と改善を繰り返し、
| 今やその腕はどこに出しても恥ずかしくないほどであった。
|
| 平和だった。
|
| 凛の張った結界は、侵入者を見逃さない。
| 透明だろうと魔力を隠匿しようと、ロストスキルや士郎並の達人ですら侵入が難しいほどだ。
|
| サーシェスの『隠れしウラヴラスク』がどれほど強力でも、凛の目を盗むのは不可能に近い。
|
| 故に早い段階でサーシェスは諦めた。
| 一時的に。
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|「1945年！ つまりは昭和20年の3月10日！」
|
| 高らかに吠えながら正門から侵入。
| 屈強で若い肉体、怪しい魅力。ディオ・ブランドーの肉体を手に入れたアリー・アル・サーシェス。
|
| 突如の轟音、飛来する戦闘機。降り注ぐ爆弾。
| 完全な奇襲、誰が想像できた？ 空爆だなんて。
|
|「グラシャラボラス！！」
|「ぐーまﾞもﾞーんﾞッッ！！」
|
| 最初に動いたのはルイズだった。
| 巨人型悪魔を即時召喚、その巨体を盾に空爆から屋敷を守らせる。
|
| ………だが。
| 降り注ぐ焼夷弾は悪魔の体を貫通した。
|
|「幻！？」
|「違う、これは！？」
|
| 焼夷弾は屋敷に命中、魔術的に強化されているはずの屋根瓦を粉砕。
| 粘度の高い油脂をばら撒くながら爆発炎上、凛謹製の火除けの加護など無いかのように燃え上がる。
|
|「なによ！ なによこれ！！？」
|「馬鹿！ 逃げるぞ！！」
|
| パニックに陥る凛を引っ張る慎二、焼け落ちる天井、倒れる柱。
| ルイズがマリナを引っ張るのを確認したターニャが、呪詛の衝撃波で倒壊から慎二らを守る。
|
| 予想外の攻撃、想定外の被害。
| 彼らは、完全に踊らされていた。
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＿ ┌‐:､ ,心、
`マﾆ＞∨＾ヾ＞≦ﾆﾆﾆ_
r=斗ﾆ圦‐‐‐‐`＜ニﾆ┴―-､
刈‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐/ ＞‐―┬┐
ヾ＼‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐‐‐〈 ＿＿ ｧ'´:::::::::::::: / ｀lj
ﾞゞ＼ ‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐＼ ,ｨﾆﾆ≠ /＿＿:::／／廷ﾁｼ
/ﾆﾆ圦.‐‐‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐＼ ｣ニﾆ/:::::::::, '"，イ ノ`ｰ┘
≧==|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐＼ ｢ヽ ,仁ﾆ≠ﾄ――''⌒)-宀´
|‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐＼ |ﾆ｀_ ﾏ三У＿ｨf廴／
|‐‐‐‐／＼ ‐‐‐‐‐‐‐＼＼‐‐‐‐‐‐＼ｰ‐=┘ニ_ `'"rモ｢ V
`ｰ＜ ＼ ‐‐‐‐‐‐‐＼＼‐‐‐._‐‐＼ニニﾆ_ ＿__ 弐＿_＿V¶
＼‐‐‐‐‐‐‐-_ヽ-----ｧ_`ー‐---―＜‐‐/ ﾏ:i:i:i:i/:i|｜
＼:‐‐‐‐‐_‐‐ヾ､<‐‐‐‐‐_ ‐‐‐‐‐‐‐‐/. ┌≠くjﾍミｉ|｜
＼‐‐‐‐_／‐‐＼‐‐‐‐‐‐_‐‐‐‐圦_j⌒{:i:/ ム`ヾj!｜
_＿刈‐‐‐‐_‐‐‐‐＼‐‐‐‐‐ヽ‐j{＼.＼ﾞ込､乂癶´ /
<ﾆﾆﾆニ_‐‐‐‐‐_‐‐‐‐＼‐‐‐‐j{ |i圭ヽ､＿_ .Yﾑ
ﾍ‐‐‐‐‐_ ‐‐‐‐＼込、|l圭L乂ﾐ汽ﾞｰrｲ:》:＼
ﾍ‐‐‐‐‐‐_‐‐‐rヘ､==＼≧=-ﾆﾆ㌻`:.:.》.:.:.:`.
/‐‐‐‐‐＞"´ ＿_｀ヽ､=.＼{[:i(附j)⌒ヾ､:.:..ﾞﾉ
〈‐‐＞"´ j{ ￣ヽ l{ﾆ込､=＼:i从:.:.:.:.:/ﾞY
"´ 乂 λ,ｨf‐┐ﾘ,心､=.＼≧x" /iﾄ＼
ｧ､/斗､_イ{:i:i:i:i{!（:i:i! >､=.＼:X州} 从
/ ｣{ }マ苡:i:i:i:iﾑ辷', ` t企､=ヽ,′,iﾄ､ヘ､
ﾄ〈从 j{ ￣癶:i:i:i:＞'￢._{ `ﾐ＜＼.=＼圦＼ヽ
j{ . .:／{ ｀丈／¨冖ーﾍ ,' ｰ≦､=＼.＞､＼
,心廴_〈 `￢≠ノ Vヽ､ /＼= `戈ゞ､
〔 / ＼､n＿/´ `ー㌃ﾞ㌻〕ミ从ヾ匕ノﾉ
∥ 7廴,ｨｱ ｀￣ `ー'＾ーﾍ｀￣ヾ´=＼
└冖‐'ﾞ " ＼_｣＾癶､=丶
ヽ､=丶
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| 弾丸の如き速さで突進し、巨大な鈍器を侵入者に叩きつけようとする『三日月』。
| 強化外骨格型神殿『三日月』を媒介にしたルイズの使い魔だ。
|
| 高位悪魔 堕天使 バルバトス。
| 人間が戦うのは、いささか無謀な相手。
|
|「残念だったなァ！」
|
| サーシェスは取り出した瓶を投げつけた。『三日月』は避けない、自身の加速と重量故に避けれない。
| 効果は劇的だった。
|
| 瓶が割れ、飛び散った液体が『三日月』の体に降り注ぐ。
| 『三日月』は……その姿勢のまま動くことができなくなり転倒、頭から庭土に突っ込み、壁に衝突した。
|
|「ミカ！？」
|
| 恐ろしく強力な霊薬の類、品川大聖堂を占拠したときにちょろまかしていた『オモチャ』の一つ。
| 悠々と歩くサーシェス。その双眸が光り輝く。
|
| 誰も対応出来なかった。
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ハ
| ',
冂 /l |
r､ |ヽ l | 〃 |.iヽ
|,li､ | V / // ノ＼＼
/ 川 / ./ / / ｲ / /＼￣￣＼
ハ ,,,,-''" ////川 l＼ / l ヽ ヽ
川''" //.|/ ||| ヽ, ＼, /|/ .|-､
V // | ＼､ i .／/ / ヽ
l K ヽ | ／ / /ﾆ= ヽ
l l `. | | / /Y, ＼ヽ､
＼ ＼＿_ | | i ((/ // ￣
. ＼-､ ,,,,_〃 ''ヽl ヽ/i | ／／ｲ
￣‐'´{.＼ ト _ ヽ川 川 ／／／l.|
<_ ＼ 川 ﾘ _,_ V/二川_ ´／/ﾐl lしlー-
へi ヽ｀‐‐-,,,/-ﾆ'''''::::))ﾆ-'＼､_,, .l .|'‐'' i
, / >―￣￣ ヽ､:::::::://// ／7ﾉ ﾘﾉ|-､ ヽ
T川_∧＼￣li ''/-v l'',,／∠,,/ | /_ ＼＼
! 川ﾄ ! ヽ二 ‐-､! ,! / /'´ィシノ :l |､＼
|.l川ヽ｀. ＼弋_ｩ >.|.!/／,'''''" ｨ| |.l ＼
ii'''''' ミヽ__|ヽ __ ｀二´,'''|,,,;; '''' | / | !
｀`' ｀ __,,-=-ゝ |;;''' ,, , ' ﾚ .l
.＼--―― ,､＜ { ヽ,_ /'' ./ |
. /_-‐7 ／ '､ ､ _,,-―_''= /
／ ／ ＼,＼ ;;二='''' /
／／ ＼ ＼ -- _/ ＿,,．-‐
／ ヽ＼ ヽ-ー'" √
/ ￣￣````'''''ーー,,ヽ ／ _ ー
＿ ｀‐､ ,,,,, - ´ ／
￣´ ￣￣ ´
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| 高圧で体液を目から発射。原理は水圧カッターである。
| 名付けるならば空裂眼刺驚！
|
| 何かが飛んできたきた。
| それだけは理解できたルイズは、反射的に左手で顔を庇った。
|
| 体液はルイズの左掌を貫通、衝撃で中指と人差し指が吹き飛んだ。
| そのまま直進し、首に突き刺さり頸動脈を首の肉ごと切り裂いた。
|
|「ひゅっ」
|「ルイズさんッ！？」
|
| 鮮血をまき散らし、回転しながら倒れるルイズ。その血を止めようと、シャワーのように浴びながらマリナが傷口を押さえつけた。
| ターニャの方を向いていた慎二が振り返った時には、既に終わっていた。
|
|「凛！！？」
|「こいつッ！！」
|
| 爆風に吹き飛ばされ、倒壊する家屋に衝突する凛。
| マリナに向かって走るサーシェスの左手には、ヒビの入った鏡。
|
| これまた強力なマジックアイテム。
| 凛のレーザービームのごとき熱線魔術を跳ね返したのだ。
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_ノ::二::ヽ'⌒＼
ﾉ:::ア:::::;ヾ／::::ヾ:ヽ
/:::}:{:､::::ﾉ〜＜{::::(::::::ヽ
}::/:::K:「 ヽ ﾉ )ノ}::::}:::l
r､ ｲ::{:::::}ｨ笠ヾ /ｨtヶ､);::::N
､＼ ):fヾ( } ￣ ヘ{ させるか！
〈ヽ＼ ヽ_」 , ==､ /ノ
｀! ヽ＿ _ -─j込 ヾ--' ｨ::{_
r- _ノ /-_-_-_￣-_-_-_-_､＿＿ ＿_,.-==r＜-_-_-_-Ｌ...L＼＿／_」/-＼
＼_,.｡-={_-_-_-_-_-_-_-_-_-_＼-_-＼-＼-_|-_-_≧､_-_ |;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i/-_-_-＼_
` -=ﾆ-_-_-_-_-_-_-_-_､-_-_＼-ヾ!_-_-_-_ ＼-|;ヽ;i;i;i;i;i／/-,.｡*-ﾆ _∨=-､
￣ -=ニ-_-_-＼-_-_＼|-_く＼_-_-_ヾ;i;i;i;i;i;i;i;i;i;|イ-_-_-_-_-_√_|
￣ -= _-_-| _-_＼.>_-_-|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;l-|_-┌─┐.√ノ＼
￣|-_-_-_-_-_l0|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;l-|-_-￣￣-√-_-_ﾍ
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|「無駄無駄ァ！」
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| 笑うサーシェス、飛びかかる慎二をキックで迎撃、たやすく倒され転がる慎二。
| マリナの腕を掴み引き寄せるサーシェス。
|
|「あっああっ」
|「その汚い手を……ぐぐ！」
|
| 傷が開き、肩から血を流しながらうずくまる凛。
| 倒壊する家から凛を助け出すターニャ。サーシェスに向かう暇はなし。
|
|「このぉ！！」
|「雑魚が、実力の違いも分からんのか？」
|
| 吠えながら再度掴みかかる慎二、サーシェスはナイフを抜き放ちながら慎二のみぞおちを蹴り上げる。
| 振り返りざまにナイフを投擲、後ろから忍び寄っていた慎二の使い魔、ミッシェルの足を切り飛ばす。
|
|「頂いていくぜ」
|「待て！」
|
| 幼女の体格であるが故に、凛を運ぶのに手間取ったターニャが歯噛みする。
| しかし……残された状況は最悪だ。
|
| 屋敷は燃え上がり、ルイズは致命傷。凛は傷が開いて動けない。
| どう動く、誰を見捨てる。合理的判断ができずに、ターニャは二進も三進も行けない。
|
|「げほっ、げほっ……何してる……ターニャ、追え！ すぐに！」
|
| だが、代わりに判断を下してくれる男がいた。
| 反吐をぶちまけながらも、慎二が目の端を拭って怒鳴り散らした。
|
|「今度は助けるぞ、今度こそ！ 追え！！」
|「ああ、ああそうだな…………今度こそだ！」
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＼: : : : : : ; ; ; : : ; : : : : ; ; ; ; l: : : : :/ ﾊ: : : : : . : : : : 。. .: : : : : : : : . .∨
＼: : : : : ; ; : : : ; : : : ; ; ; ; ﾍ: :／ ﾍ: : : . : : :__ - ﾞﾞﾞﾞﾞ 丁: : : : . . ＼: : . ∨
＼: : : ; ; ; : : ; ; : : ; ; ; ; ∧´ ヽ- ´´ .| . : : : . |＼ ハ
ﾍ: : ; ; ; ; : ; ; : : ; ; ; ; ;∧ ヽ、 | . . . . : : : : . i .|ﾌ
∧: ; ; ; ; : ; ; : ; ; ; ; ; ;∧ ｀、 | / ﾐ : : : : : : : : : ..|ヽ| トヘ
.∧: ; ; ; : ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; l .1ヾ.ヽ、 | / ﾐ: : : : : , -.人|: : : :ヽ
＼; ; ; : ; ; ; ; ; ; ; ; ;.| 弋い.ﾐ..| / , .ノ'Z＿ﾐ:.γ l: :|: : : : : :|
-、. ＼; : ; ; ; ; ; ; ; ; ;.| ｀ -ゝ〉 ／ , ---=彡こ ソ 丿: |: : : : : : 凛ーッッ！！！
-、｀ﾞヽ- .、 ＼; ; ; ; ; ; ; ; ; l ,ヽ- ヽ´, .-'て´ゾ ノ r ' ／: : : |: : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐヽ、 ｀ﾞヽ、 ＼; ; ; ; ; ; ; ﾊ , ｀゛゛´ ／ ／/: : : :./: : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞヽ、 ｀ﾞヽ 、 ∧: : : : : : :∧. / / フ: :/: : : : /: : : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ヽ、｀ﾞヽ∧: : : : : :.: ﾍ ヽ ｲ ／／: : : : :/: : : : : : : : :
巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ヽ、｀ﾞヽ、.: :∧ ｌヽ-====ヽ. ∠／イ: : : : : :/: : : : : : : : : :
巛巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞヽ、 ｀ﾞ ∧弋 ﾉ ／.〆／;;;;| : : : ／: : : : : : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞﾞヽ、｀ﾞヽ=彡 , ' .￣￣|;;;;;;;;;;;|: ／: : : : : : : : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞヽ、｀ﾞ＜ .|;;;;;;;;ソ: : : : : : : : : : : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ巛巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞヽ、｀ﾞヽ--┘￣/: : : : : : : : : : : : : : : : :
ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ巛巛巛巛ﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐﾐ｀ﾞヽ、ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| 叫びながら駆けつけた士郎が見たのは、失神したマリナを小脇に抱えて走るサーシェスの姿だった。
| 閑静な住宅地、人気はなし。路地までの距離では追いつけまい。
|
| 黄昏時の怪人による堂々たる誘拐。油断があった。士郎は悔恨と反省を後に回す。
| 立ち止まり、一瞬目を伏せる。
|
| 僅かな集中、その間に開く距離。
| だが、士郎の手には金属の大弓が出現していた。
| 上空に一射、続き水平に三矢を放つ。
|
|「馬鹿めが、人質が見えないのか？」
|
| サーシェスがマリナを盾に嘲笑う。
| 三本の矢は稲妻のように夕暮れの寒風を引き裂いて、マリナの胴体に命中した。
|
|「ははっ！」
|「………………」
|
| 鋼のように冷たい目で、士郎がサーシェスへ向けて走る。
| マリナを殺害したことへのゆらぎは一切なし。
|
|「ははは……は？」
|
| なにせ、三矢はマリナの身体を水のように透過していたのだから。
| ヒトを傷付けず魔の者だけを射抜く破魔の一撃。
|
| アンデルセンはもちろん、杏子ですらできる芸当を、この『弓兵』に出来ぬ理屈なし。
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ノ___ ´⌒v＾７ 代r_))___＼へ 人_
／¨¨¨¨¨ ヽ＿___/ Y( / .:〈＾)‐ｔｯｱ((____⌒ヽ
／-ミ V＼ ノo-〈 <ｒ...､ ／乂(__ ヽ
ヽ 〉_ ィ(__ノ .'， 《《 ´ , '〉〉⌒)ﾉ⌒ 丶
{(---く_______込⌒ｖ ノ((_ ´ ﾟ
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| { .:i:i:i:i:i:i:＼i:i:i:i:__ ´(_ ､ヽ . : : : ﾉ(/
| 人 /{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／:: ::／´ ＼(__ﾟ: : : /′
| ／ .{i:i:i:i:i:i:i:i:i:. :: :: ／ ‐=ﾆ 。 )､.::ﾉ
／ .{i:i:i:i:i:i:i:. :: : ／ ／ ‐=ﾆ. : : ´: :
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/ 人i:i_{ ﾟ ｡ ── ￣￣ ⌒丶
／ ﾆ=‐ ⌒¨¨¨´〉乂_ ‐‐‐‐￣￣ ／ ／ /⌒/__
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／ 〈 .Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:/i:i:i:/i:i:ｉ:／i:i:i:i:（（:::::::::::::::::ﾉi:i:i:i/ //
／ ヽ ､i:i:i:i:i:i:/i:i:i:i/i:i／／((_____ ⌒ヽ ／ ／ ／ノ
､ ＼ 〉¨¨¨´i:i:i:/／／(________ ／ ＼〈＾／¨´
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| 心臓や肺を含む重要な臓器を射抜かれ、サーシェスは血を吐きながらよろめいた。
| その頭部を、放物線を描き落ちてきた最初の矢が正確に穿ち、アスファルトに縫い留める。
|
|「『I am the bone of my sword. So as I pray, Unlimited Lost Works ！！」
|「ぐげっ」
|
| 容赦なく残酷な追撃。頭部に突き刺さった矢から無数の刃物が精製される。
| 体内から飛び出したナイフや刀剣によりサーシェスの肩から上が弾け飛ぶ。
|
| スプリンクラーのように降り注ぐ血液、肉片。
| もちろんマリナには傷ひとつなし。
|
|「マリナ・イスマイール！」
|
| 士郎の鋼鉄の眼光に揺らぎ、炎上する我が家に一瞬目を向けた。
| それでも、目の前のマリナに駆け寄ろうとする。
|
|「くそ、化け物め」
|「頭が核ではないか」
|
| 高速で再生するサーシェス、マリナを引き寄せ立ち上がる。
| だがそれまでに、士郎は15メートル程まで肉薄していた。
|
| 恐るべき踏み込み、轟音と同時にアスファルトにクモの巣状のクレーターが生まれる。
|
|「こっちでいいのかよ、あっちの連中、まだ息が―――」
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, ／ﾑ_,,....,_ ＿,
／ﾚ' ７彡三二＜_
,{ ,,／_-‐ ｀≧｀フ お前を五秒で解体すれば問題は、ないッ。
{ ､_,,／ 了 ／ 彡,ィ7´
∨ , /! ﾚｧ'ﾉ<,イ ,, } ___
,!</,ｨ'ﾌ ｀')Ｓ〉'" '〈_,．'ヽ、 _,．-'''´／＼
) ｀′ .fくヾiミﾊﾞＹ＼ノ}`ｰ-ィ´: : : :.／: : : : ＼､__
く__,.=v-､ .! ヽ /:::/: :／〃´: : : : /: : : : : : : : :ヾ:￣''''‐- ,,,_
`ｲ_ソ ∠_ .／.／: //: :i:i: : : : : :{: : : : : : : : ／´: : :ヾ､: : : :ｱ､,,,,,,,,,,,,,_
,.．'''ヽ-'´/: i¨ヽ_>ｲ>､: : i: : : i: : : : : :i: : : : : :,イ: : : : : : : : :ヾ: :iﾚﾌ´: : : : : ヽ_
ノ: : /`ｰ､: `･､￣〉-彡ｲ: : i:i: : :ゝ､: : : :i: : : :小､{: : : : : : : : : : :ヽ:.{: : : : : : :ヽ: :＼ _,.．-
_,,．-'´: : : : ＼､: :ヽi:く: :i:T|:::〉∧: :ﾘ: : : : :＼: : ゝ､_,.ｨ≦ﾊ､: : : : : : : : : :Ⅵ: : : : : : : ii､: : :〉、 _,,.．'´: : : :
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／: : : : : : ヾ::Y::::::::｀ヽi,､_://i::::＼／:「｀ ｀ヽ: : : : : : : : : : ﾐ: :./: ／: : i: :,,='､:( )¨`┐ ／
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|「―――あるかもしれ……」
|
| 音の壁を打ち破り、士郎がサーシェスの側面まで移動、マリナを盾にさせる暇を与えず三打。
| こめかみ、鎖骨、脇腹への打撃は電撃めいた衝撃をサーシェスの全身に行き渡らせた。
|
| 全身のチャクラを無理矢理に引き出し、ズタズタに引き裂きながら無茶苦茶に繋げる。
| 恐るべき必殺の一撃ではあるが、本人に言えば苦笑いだろう。
|
| こんなもの所詮は猿真似、本家北斗神拳の足元にも及ばないまがい物だと。
|
|「ひでぶっ！？」
|
| 熟れたトマトみたいに膨らんだサーシェスが破裂、その間に士郎はマリナを引き寄せる。
| ……今の一撃で倒せなかった可能性を捨てず、警戒を解かぬまま。
|
| だが、すでにサーシェスの攻撃は終わっていた。
|
|「2008年の8月22日……ここで交通事故があったことを知ってるか？」
|
| 骨格、内蔵、筋肉と高速で再生しながら、全裸のサーシェスが呻くように呟いた。
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」ヽr‐-ゞ｀`vｉレヽ∧
､-ミ' 人 ｀ﾞ‐-' ''､ ´V__7
__ゝ__,､-,z |二二ﾆ､__ヽ､ﾆく
,ヘ_-‐ヾ〈 (､:´ //ヾl/ _/ノ､_‐-ゝ7 知らんよなあ！
f へ「llﾉ＼ヽ/';／';‐=二-7 ヾ,､l'´ヽ 道路で遊んでいた児童が
( （_:::ﾌ-ヾｉ :): :{/､_ ﾉ /rュ/ ; V lヽ| 自転車と衝突して脚と腕を折る重傷を負ったんだよ！！
ヽっ（::ﾚ=トゝ､」ヾ-'､`￣,,_ ﾞ, 了_l､
/ ,J ｉ::））:::::::::::|'__ ヾ,'´´ ; V､`,
ゝ_7､ヾ､l:::::::::::::ヽ､7 _ ; !)」 ヽ
_ ´ 丶ゝ､:::::::::::::,:_-‐ﾆﾌ' : /::､ ＼｀'､
} ヽ lゝ､:::::::､｀‐￣__;; /:: ; V､
| l ヾ､ﾊ:::::::｀:::´;; __ /:::: ; ; ; ヾ
! ノ､ lｉﾍ::::::. ,´////>':::::: _ -‐フ`
ｉ : } l」｀､＼:.' ///／:::::::;;／.....o..//
ｉ､:´ ｉ ＿__┌‐-､ ヾ:::｀:::::´:::::_:／....0.......// ,'
l､: V }} 」.＿ | ｉ:ヽ:;;;┌l「l................../／
ゝ ､/ へ」l_ ｀ｉﾉ､ l_:::::::::| | L......／::/
>'´,, '/ }}ヽ=´ 7 「V-'＼ヽ..／:::::://
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| 士郎が振り返る。いつの間にか、よそ見をしながら自転車を飛ばす学生の姿があった。
| それが、どんな奇術かまっすぐに士郎に向かってくる。
|
| 避ける？ 避けてはサーシェスの人質にされかねない、だがどんな速さでも所詮自転車。
| 士郎は受け止めることにした。
|
|「無駄無駄！ 全ては過去だ！ お前が見ているのは結果に過ぎない！」
|
| 自転車の前籠を受け止め、衝撃を吸収しながら止める。はずが。
| 気がつけば前輪が腕に絡みつき、折れたスポークが突き刺さりながら左腕がへし折れていた。
|
| 転倒して引きずられ、左足にも亀裂が走る。
| 気が付けば自転車の姿はない。士郎は、遅まきながら『それ』がサーシェスの異能だと知った。
|
| 士郎ですら抵抗できない圧倒的な攻撃。
| 彼がニャルラトホテプと『血族』の戦いを知っていれば、警戒できたかもしれない。
|
| 『人間もどき』どもが持つ、ルールに縛られるが絶対の攻撃。
| 中でも最強の三枚『天地人』のDISKの一枚、『アンダー・ワールド』。
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| 土地に根ざした記憶を呼び覚ます、世界を滅ぼしかねない災厄である。
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l ﾄｨﾍ￣ ｀ ＝､- ､ ＼:ヽ , z‐ﾃ￣ ヽ|ｲ::|:.:.:.:
ヽ´小 ＿.≧ヽ::＼ 丶＼ ／;∠-＿＿ j１:|.:.:.:/
. ＼ヽ. l{ 丁7::ﾃ.ミーヽ _ ィZイ,.イ::ｧ-ｲ ﾘ l::l.:.:/ …………何があったの？
ｰ､ 丶ヽ辷ソ ヽ /´ヽ:辷ノノ (ｱj:.:ﾊヽ
,ｨﾊ ￣￣ ￣￣ //／ !}
ィ ７´/ |. ヽ 〈| ｲイｰ- _ ﾘ
' i ! | ＼ ／ / | | ,ｲ｀
| ! l 丶､ -‐ __‐- , イ / ! | |
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|「マリナ・イスマイール！！」
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| 士郎に遅れること十分、すっかり日の落ちた道をアリカと刹那がやってきた。
| ヤンデレ裸足のメール爆撃を日々マリナに送る刹那である。
|
| 内容はいつも『無事か』。返信はいつでも『はい、大丈夫ですよ』なのだが、それが功を奏して即座に異変に気たがついた。
| アリカに声をかけて走ってきた刹那、彼が見たのは倒壊した夢宮邸と、大量の血痕、動かない『三日月』。
|
| 青白い顔で打ち震える刹那、息を呑むアリカ。
|
|「夢宮、聖永！」
|
| 火の手から逃れた離れから現れた慎二が二人を呼ぶ。
| 彼もまた酷い顔だ。
|
|「してやられた。マリナ・イスマイールが攫われた」
|「なんだと？」
|
| 掴みかかる刹那、鬼気迫る表情、迸る殺気。襟首を掴まれた慎二はその目を正面から受け止める。
|
|「士郎、凛は重傷。ルイズは駄目かもな。虎の子のソーマは灰にされちまった」
|「そんなことは聞いていない」
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| 唸る刹那、肉食獣のような勢い。
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〃´ ア´ ｀ ハ｀ヽ ｀ .
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／_＿__ 从i ／_j/≧ ､{ ヽ } ,i ; ; ;
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｀辷ッ' ／/ /! ﾄl ｀ 二´／´ __ノ / ／,丐＾》, , ; ｀ ､ 丶 ;'´｀;
i ／{ ( / /八廴 ｰ=彡' 辷ﾘｲ/ / .; . ｀ ‐｀‐ ‐ ｀ ´
|{ V ）!iｲﾅ,、 _ / ､___彡′ / . ; ;
｀ ,／ノ从i{小. ＿ ′ ｀７ __,／ /: } ;
￢ァァ^≧ー‐ｧ/ ｀/!从{ . ∠^.._￢} (´ / ／: :/ ′ マリナは。
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|「安心しろ夢宮、桜の結界と治癒魔術に怪我人は任せてある」
|「慎二さん、それは……その……」
|
| 心配だ。心配ではあるのだが、それよりも心配なのは。
| マリナ・イスマイールと、何より見たことない表情の慎二本人。
|
|「襲撃者はディオ・ブランドー。おそらく中身はアリー・アル・サーシェスだ。
| 現在マリナ・イスマイールを連れて逃走中だ」
|
|「生きているのか？」
|「まだな」
|
| 躊躇なく盾にしたことを考えると、サーシェスにとってマリナの生存は、刹那への嫌がらせ以上の意味があるとは考えにくい。
| だが、慎二はそれを口にしなかった。
|
| 刹那に無駄な不安を与えぬ以上に、己自身のために。
|
|「今現在、ターニャが追跡中だ。絶対に助けるぞ」
|「…………」
|
| 刹那の手が緩む、だが慎二がその手を握った。軋むほど強く。
|
|「気を抜くなよ、士郎や凛が出し抜かれた相手だ。だが、僕らでやるしかない」
|
| 応援は、頼めない。既に東京中で同時多発的にテロと思しき事件が発生していた。
| その中には、電波障害も含まれており、『血族』本部への連絡はつかなくなっていた。
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☆ 次回予告！
届かない。届かない。
どれほど走れど、手を伸ばせど。
届かない。届かない。
君との距離は、遠すぎて。
一人の女は救世主を。
一人の女は英雄を。
一人の男は聖処女を。
一人の男は平穏を。
されど一人として、その手は届かず。
次回、最終幕百十六話『12/19 その6 憧れの距離』
果てに見るのは破滅か死か
戦力は足りず、けれどやるしかない
一人でおかえりの効果切れちゃったのか
なんだかんだで一か月も放置してしまいました。
大変申し訳ない気持ちでおっぱい……改めいっぱいです。
作中は12/19。今年の12/19は寒波による大雪で高速が止まったりと大変でしたね。
関東住みのみなさま、つまり作中の気温は今くらいです。
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|JYURINA .| .|:| 〜 | ＿＿
| MATSUI | .|:|三井| .|..M.I.|
|Happy Birthday |＿＿＿_.|:|住友| .|.ZU..|
|Eighteen years old .|洋服のﾞ||:|銀行| |HO!.|
|12:00| studio ALTA | 主ﾞ. |..:::|二二二二二二|───┴─┴┐
＿＿_..,｡,｡,｡.|￣￣￣￣￣￣￣|￣| 月..Ш:::| 」 」 」 」 」 」 」 |.[][]:□□□:[][] |__
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|..ll ll...||iｳﾞｧ.!| |:::| /￣ l | .|:|!ﾀ.|ﾙ |￣￣| 」 」 」 」 」 」 」 |.[][]:□□□:[][] |:::|
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| 午後五時を過ぎた街はとっぷりと日が落ちて急激に暗くなる。
| 穏やかな陽光が地表を温めなくなると同時に、冷たく身を切るような風が吹き始める。
|
| 道ゆく人々はコートの前を合わせて、寒さから身を守る。
| 天気予報では今晩から雨だ。雨の東京は酷く冷え込む。
|
| 秋葉原駅前の人通りは多い。会社帰りのサラリーマンだけではない。
| 買い物に訪れた学生やらも少なくない。その中に、車椅子の老人と孫らしい女の二人連れがいた。
|
| 目の覚めるような女だった。
| アーモンド型の気の強そうな目、ふっくらした頬、艶のある唇。
|
| コートの上からでも主張する膨らみ、タイツに包まれた脚は程よく鍛えられてしなやかだ。
| 服装は地味、コートも安物。なのに匂い立つ色香は隠せない。
|
| 彼女の周囲は輝いてすら見えて、逆に車椅子の老人は霞んでいた。手荷物以下の存在だった。
| 駅を出た女は、小さく息をついた。
|
|「思ってたより遅くなっちゃいましたね」
|
| 囁くように老人に話しかける。蠱惑的な声色、小悪魔みたいにいたずらっぽく。
| 老人は返事をせず、ただ静かに頷いた。
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_ -=ニニニニ- ._ ∧
／ニニニニニニニニﾆ＼ / ∧
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.ニニア´ -=- _ 寸|_厶＜ |
{ニｱ ／ / / ｀＼ ＾`､ ＼,/
⌒/ / / .′ ' 、 V /∧ :,
/ ／ ｨf∨ ,′i| ' ＼`､ ∨ iﾄ､ : ′
| | i|｜ i| ', ' /∧ ∨小ﾊ | i|
| | i|｜ i| ‘， ' | 、 i| ∨| | | j| 八
∧ V∧i | .ﾄ､-‐ |i´厂＼i| ｜|ﾘ Ⅳ./|
i ∧ V∧ ∨厂＼＼ |i/.ｨt示ｧ |/{ / f_ﾉ
| i ∧ |V∧ 弌¨t苡⌒` ＾¨¨´i| ,小j./ |i乂___ 冷えてきましたし、
| L__j / V | ﾄ､＼ ､ ﾉ.ｲ(/ / .八 、 〉 帰りましょうか。
厂 ／ i }人 Ｖ圦｀ ､ ノ ｲ(小∨ / .) 、′
乂f{ | 从 j〉 ＼ ＞ . ＿／( ｀寸./ ／ )
.八 ∨ 乂_ﾉ ハ厂¨| r一 ⌒) .人,／ ィｆ´
ゞ==ミ ∨厂{ i{／i_∧L_j∧ ,/'⌒弌 (__j廴__ﾉ
// 乂_,)ﾉ |/¨ア¨´ i{ ｱ⌒ V＿＿ｊ圦＿__ノｚ<
└{_/_/_{_{,／∠＿ -く_〈__ ｀寸､¨ 厂[i[i[i[i[i[j
｀7 ア´ ／＼ ｀＜__＞ ､ |´ i{ | | | | | | {
: ′ / (__） ‐===- ＼i ヾ Ⅵi| | | | | i}
| { |{ (__)}! |寸＾¨＾¨｢
| 八 ’， __ _ ﾘ ; ‘， :|
/ j{ﾆr=ニi{￣ ‐== ﾆ- ∠ _人 }| i|
ｒ‐┘／ j i{ j厂¨¨¨7 | }i i|
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| 女の服装は、この後の夜の寒気には耐えきれなさそうだ。
| だが、老人はニット帽にマフラー、マスク。厚手のコートと重装備である。メガネをかけた目元以外は肌の露出がないほどだ。
|
| 女に目を奪われずに、老人を注目するような奇特で不躾な者がいれば、老人の目元のシワが驚くほど少ないと気付いただろう。
| もしかしたら、老人の目がゾットするほど鋭く、警戒を怠らないことにも気付くかもしれない。
|
| 老人が、変装をした若者で。
| それどころか世間的には死んだはずの指名手配犯だと気付く者は……どれほど居ようか。
|
| 老人の姿をした者の名を、備府やらない夫。
| 車椅子を押す女を、鹿島という。
|
| テロリストとして指名手配され、芝公園での『集会』の果てに命を落としたとされるやらない夫。
| 彼は『エクスカリバー』による局地重力操作で成層圏まで吹っ飛び、爆死を免れた。
|
| が、その直前にケンシロウとジャンヌによって受けた傷は浅くなかった。
| 今日の朝まで背徳的な手術を受けて、生死の境をさまよっていたのである。
|
| ちなみに自衛隊からのスパイとしてやらない夫の元に派遣されていた鹿島であるが、
| 今は完全にやらない夫と麻呂の身の回りを世話する女中さんだ。
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| 異変は、二人にとって予想もしていない場所から始まった。
|
| ソフマップ前の広い交差点で、横断歩道を歩く歩行者たちに、なんの前触れもなく軽トラックが突っ込んだ。
| やらない夫と鹿島は、それを見ていた。目の前で起こった事故に、なんの対処もできなかった。
|
|「逃げましょう」
|「救急車を！」
|
| 二人の反応は真逆だった。
| 死んだことになっているやらない夫が、ここで目立つのはまずい。
|
| だがやらない夫は、ここで怪我人を助けないという選択肢を持たない。
| 悲鳴と怒号、クラクションが交錯する中、軽トラックから若い男が降りてきた。
|
|「バカヤロー！」「おい、大丈夫か！？」
|
| トラックに轢かれた数人の男女、引っ掛けられたり跳ね飛ばされたりした彼らを、いち早く行動した人々が助け起こす。
|
|「やめろ！！」
|
| やらない夫が叫んだ。その逼迫した怒声に、注目が集まる。
| だが、注目すべきは彼ではない。
|
| 事故を起こした男だ。
| 彼は刃渡り20センチもあるナイフを振り上げて、救助に当たる男を背中から刺した。
|
| 肋骨の隙間にえぐりこまれた刃は、速やかに命を奪った。
| 先程よりも、さらに大きな悲鳴が上がった。
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入 ､ ヽ l､ ,| ,. - '´ l l
r'´ ヽヽ ヽ 'ｰy-.' | ,. - '´ l l
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 男は特別体格に優れている訳でも、筋肉質でもなかった。
| 訓練を受けた様子もなく、武芸に通じるわけでもない。
|
| ただ、容赦がなかった。躊躇がなかった。
| 武器を振り回して他人を傷つけ破壊することに、抵抗がなかった。
|
| 男は刺した相手を足蹴にしてナイフを引き抜くと、ギラつく刃を振りかぶった。
| 状況が理解できずに硬直する女性の顔面を切り付け、傷の程度は確認せずに次の犠牲者へ向かう。
|
| 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う群衆。
| 転倒した男性を、あとから来た人々が踏み付けにする。
|
| 飛びかかる男。逆手に持ったナイフを突き立てようとする。
| 悲鳴が上がる。だがすぐにどよめきに変化した。
|
|「やめなさい！」
|
| 地面を滑るように近付いた鹿島のローキックが、男の膝裏に命中。
| 奇襲にのけぞる男の首に一撃、手首を積んでナイフを奪いながら極める。
|
|「うぐっ」
|
| 鮮やかな手並み、お色気要員といえども現役自衛隊員の実力。
|
|「救急車を！ それと警察も！！」
|
| 鹿島の凛とした叫びに、喝采が上がる。
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....-‐ニニニニニニ｀丶 .／＼
／ニニニニニニニニニニ＼. /ヽ /:!
／ニニニニ斗-- ─ ─-＜ニﾆ∨:::::Х斗─‐─...､
/ニニニ＞ ´ ｀丶/-＜_//:://:://::/
{ニニ／ ＼. ＼//://::/
＞‐/ ／ 丶 ＼/::/
／ i / | | ヽ. ヽ ∨
. / |: / l | ｌ | | :ｌ :ｉ | :| . ',
/ . l/ ,′| | | | | :| :| | :| :ｌ |
| :| | | ｌ :| | | |.‐ｌ‐ﾄ､ー| | :| :| |
| :| | |.-|‐l人 | | 八j ＼j | :| :| |
人 | | i 八j ＼ .|ﾉ 斗劣斥7 j 八 } |
ヽ i 八 ',斗ｬ劣= ＼j ゞぅツ j / / .ﾉ 八
∨ 八. ＼ヽ Vcツ :::::::ム' / ／ /!.ヽ＼ …………なに？
| ｉ ヽ,斗ﾐ_込_ ::::::: i / ./.〃 ／.:| ) )
| i // / / rﾍ) _ .ｲ / / / :| ( (
/ i } { 个 ､ ｀ ´ イ/ / / ｌ 八 ＼.＼___
/ ,′ 八 ∨ ',j≧ iｌ ( i | (. ＼ `ー‐､｀ヽ
／ / rf⌒^Yj }ﾊ lー.､ 八 ＼ } ) 丶 ｀ヽ ) ﾉ
／ ／ 《｀⌒ｰ=､⌒f､_ノ_ﾉ |: : /ヽ__jﾊ .＼ ＼ﾉ ( ) ＼( (_
〃.／ 〉ー--､ ^ｰv'´ _＿__ノ斗≧{二}≦､_ ヽ i 人 ( ヽ .)｀⌒
i/ 〃 ./ ／,′ ＼( (__, ／::::::::::::八:::::::ヽ_ノ 人( ___＼ } 人(
{ ( :{ /:/ }＞ー'／::::::::::::／､__＼::::`ー＜::丶 { ｉT)八 （ ｀ー'⌒
人 乂--､ ノ｀ｰ-='‐‐─＜ ｀丶＞─=＜_. { ｉ ｉ ｉ ｉ ヽ)
＞ｰ─'⌒)ﾉ ／ ./ ｀ ー -- ､＿＼/ ｀ヽLLLLi八}
/ /:. / / Ｏ ヽ. , ´ Ｏ｀ヽ ヽ il :i
, ′ /:. .′. i '. / i ∨ :l
. / ,.′ {: : . . : -‐==‐-: } :l :{
/ /:. 人: : : : . . '. . : :-─-: : . . .. ′ . . :} i
.′ ./:. / ＼: : : : . . ヽ . . . : : : : : . . . . / . . ::人 ′
{ .′ ,′ .个 ､: : : : : :斗≦´￣ ￣｀＞､ : : : : : : : : :イ il :{
八 ｉ ノ } ￣ :i ＞ー= 壬j. il :i
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| 普通の人間ならば、関節を極められ、地面に押し付けられて……悲鳴のひとつも上げるだろう。
| だが、訓練された様子もないのにうめき声の一つしかあげない。
|
| 腕の手応えも何かおかしい。
| 手袋越しの腕はやけに固く、氷のように冷たい気がした。
|
|「鹿島！ 離れろ！！」
|「へ？」
|
| その時になって、鹿島は『男』の異常に気が付いた。
| マスク越しでも分かる異臭、血走った白目、しかし焦点の合わない瞳。
|
| 泡立った唾液が口の端から流れ落ちる。
| 人間なら痛みで動けないはずなのに。そいつは、腕が折れるのも構わずに鹿島を振り払った。
|
|「し、屍鬼！？」
|「早く逃げろ！」
|
| 枯れ木がへし折れるような異音、折れた右腕を一顧だにせず。
| 左手の打撃を、鹿島はギリギリのところで避けきれない。
|
| コートが引き千切れ、上着も破れて下着が露出する。
| 飛び交う悲鳴、だが鹿島の戦意は揺らがない。
|
| 鹿島は、実はほとんど普通の人間である。
| この期に及んでなんの秘密もない。秘密にするほどのこともないから語られなかっただけである。
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＼ ヽ :)l_l_l_l_{ :/::::::::(ﾆ(::::::｀ー､＿/((__ノ.ﾉ＞ー‐''´
((___) ノ-=≠人 (─＜⌒＼:::::::::::::＼ }_i_i_i_i_i≧､
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| そもそも、やらない夫を籠絡して、最悪殺される仕事だった。
| 異能者を使い捨てにできるほど、自衛隊には異能者がいない。
|
| ただちょっと異能や悪魔の存在を知っていて、遭遇したことがあって、交戦して生還した経験がある程度だ。
| 悪魔と戦うには技術も鍛錬も足りない。
|
| 正直に言って一対一の交戦なんて自殺行為でしかない。
| だけれど、鹿島は退かなかった。
|
| 衆人環視の前にやらない夫を晒す訳にも行かないし。
| 自衛官として市民の危機を見過ごす訳にも行かない。
|
| 鹿島は己を臆病な卑怯者だと思っている。
| 命じられるがままにやらない夫を内偵して誘惑して、運が良ければ昇進できるかもとか期待して生きていたような。
|
| 屍鬼の腕を取り、背負い投げをしながらも、鹿島は。
| らしくないなぁ。なんてぼんやり考えていた。
|
| 再びアスファルトに叩きつけられた屍鬼。取った腕を掴んだままに体重を乗せて折りにかかる鹿島。
|
|「馬鹿野郎！！」
|
| やらない夫の声がやけに鮮明に聞こえると同時に、鹿島は浮遊感に襲われた。
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トミ| トﾐ| ｉ| | | | | | | | |= |_「IIi∧ 「| __ ＼､ ＼ ＼ )´ ／( 〈I //=i|_|/|//|_|//||/|===|_i|//|Ti|__|/|__|
トミ| トﾐ| ｉ| | | | |_|_|.._| |= |IIIIIIIIIII| |/ZZへ _∧⌒'ヽ ＼＼ ＼ r, <( /(/ // /:i| /|竺竺| /||/|===|/|//|Ti|__|/|__|
トミ| トﾐ| ｉ|二ト| | |三トミIj|= 匝些些|_| |II|II| |_|/∧ / / /' /__i| /|三三| /||::-=＝ﾆ|//|Ti|__|/|__|
ト|￣|＼_:| ｉ|二lﾐ| | |IIIIトミIj|_|￣|＼|z |_| |II|II|_|_|//,'〉 ノ＼ , ， // 〈 /:!ﾞ/|三三|-‐|ＺＺＺＺZ|//|Ti|__|/|__|
ト|＝|＼i | ｉ|二lﾐ|_|_|IIIIトミIj|_|「i | |z |_| |====||(⌒ヽ Ｊ )) ,, ﾟ //..,,,, '⌒ヽ|-‐|LiLi|zzz|ZZﾄﾐ|__|/|__|
ト|＝|＼l | ｉi￣「トミｉ￣トミIj|_|「i |＼|z |_| |iLILIi|| ヽ ,;;;,,, ,, ﾟ ｡ ﾛ ’ .. .. :::.. ﾟ ｡ 〈ﾍ;;; ;,,,,;;_|-‐|LiLi|zzz|ZZﾄﾐ|II|///|
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. . . . . . . トミ| |:トミ|//トミIj|_|「i |＼|￣ﾄﾐ|'⌒Y; ;; ＼＼＼:: ... :::: .::: ..: ;; ,,;;; ,「~〉 / :: ... ::: ../( ;;;: :..::::: ;;,,／／ ; ,, ｨrzzzzzzzzzz||TTT〈爻爻
. . . . . . . トミ| |:トミ|//トミI,ﾉ'⌒^⌒|==ﾄﾐ|;; ;,,;, ,,, ;;;; ,,, ;; ;,,, ,,,,, . .... : ... ...:: :::｀ ノ( ;; ,,,<_〉 ::/ ::: ..;; ,,／／／;;;; ,,,,,,;K|======izzz||TT7/爻爻〉
二二(⌒. . . .⌒ヽ⌒. . . . . ⌒. : : . : . ~~⌒: : .~⌒ヽ : . :: ⌒: :. ; , ;, ;,, ; ; ,;;, ; , ;; . :: : ,; ;, ;, ;; , ;;, ;,; ⌒／／ , ;; ; ; ; ; ;;;;;;,iLiLiLi||i|ili||TT爻爻爻
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｀:､｀:､｀:､と|／￣_＼ |つ |‐|￣|｀:､｀:､｀:､と{ {ﾞ⌒ヽ', (_)|) 广三三辷に{ }┴ﾊﾆﾆﾆﾆ:､ .: ', ヽ ＼ |
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| 『秋葉原通り魔事件』を模倣したかのような秋葉原の無差別殺傷犯。
| 東京メトロでは『地下鉄サリン事件』を彷彿とさせる異臭騒ぎ。
|
| 警視庁には爆弾の入った小包が郵送され、高速道路ではそこかしこで横転事故。
| 帰宅ラッシュの山手線では銃乱射事件。その上あちらこちらで自爆テロ。
|
| 因果関係は不明だが多発する火事。
|
| そして、止めを刺すかのように。
|
| ハイジャック犯による、スカイツリーへの自爆攻撃。
| 東京は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
|
| 迂遠な方法で戦争を作り出し、手のひらの上で転がそうとしていたシロッコ。
| 騒乱を足がかりにクーデターを成功させ、軍事政権による権力掌握を狙っていたムスカ。
|
| その両者を馬鹿にするかのように。
| それ以上に、平和を願い戦ってきた人々を嘲笑うかのように。
|
| ほんの三十分足らずで、東京の平和は破壊し尽くされた。
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. γ´:::::::::ヽー=彡:::γ´:;:;:;:;:( ::::::::::ノ:;:;:;::::::::::::／:::::::::::｀ヽ::{ ,--､-‐''"~: : : : : γ´ . ⌒ヽ 丶 : : : : : : : : : ￣(:;:;:;:; |￣
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TT冂l~|乂,,;;;;;;;:::::::(;;⌒::,,,,乂ノ:K二二二二二>:;:;:;乂::::::＾^＾::::::ノ:::::::ノ:;:; ヽ::|TTTTT{ ﾉ Y⌒ﾞ '´| | | ||二|二|二| ||⌒:::::.........ノ.;;:;::);:;:;:ﾉ;;;|==
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:::: :|￣|===:||､|￣￣￣¨|::);;ﾞ⌒|＼|=======|'"|::,;;ノ;;;;;;ノ⌒:::::::::::ノ;:;:;:;:;:;:;:,i|:|Tﾆ トミ￣￣≧s｡ | | | ||二|二|二| ||;;⌒);;;;;;;;::)i:i:i:i:i|TTTＴ|==
r‐┴TﾆTI「]|､|=== |＼￣￣￣ﾞ＼|=======|'"|￣￣:トニニﾆﾆ:|＼二二二二二トミ|二二二| |_,| | | ||二|二|二| ||￣¨| | |ｌﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|==
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‐/ .||￣￣|ヽ|_|_l:|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |ﾆﾆﾆ| |丁丁丁丁丁||＼||ﾆﾆﾆﾆﾆ トミ|ニニニ:| |＿_||:￣丁TTTTTTｌ|￣ ‐-=ﾆ二＿￣￣￣
/ ||￣￣|ヽ|_|_l:|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |ﾆﾆﾆ| | || || || || || |＜￣￣￣￣￣￣`'弌ニニニ|_|＿_||ｉ:二||_|_|_|_|_|_|_l| ￣ -
二二二二二l|| |ヽ|_|_l:|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |ﾆﾆﾆ| ﾄ､────ト ≧s｡ ｀' 弌||_|_|_|_|_|_|_l|T=- _
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二二二二二l| :| ﾄ､|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |ﾆﾆﾆ|_| ＼||[:|[:| | | | |`トミ|二| |二| | |ｰ-|┌┐┌┐┌|l「」￣二ﾆ||s｡ ￣ -=ﾆ
二二二二二 ＼ | ﾄ､|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |＼＿＿＿＿___ヽ|[:| | | | |`トミ|二| |二| | |ｰ-|┌┐┌┐┌||ー- _￣|ｌ||i:i:i「T=- .,_
二二「￣￣| | | ﾄ､|ﾄ､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| | |┌─‐‐┐「「「||[:| | | | |`トミ|二| |二| | |ｰ-|┌┐┌┐┌|| ￣¨|トミi:i:i:i:i:i:i:i:i:≧s｡.,_
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| 蹂躙。
|
| 野火のように瞬く間に燃え広がり、
| 何もかもを飲み込んで塵と灰しか残さない。
|
| 死体と瓦礫の荒野を広げる怪物。
| 『ウォーモンガー』。
|
| 命を、他者を、躊躇なく破壊できる才能。
| 備府やらない子が有するのと同じ才能。
|
| 故に、その時間タカオの家で夕飯を食べていた彼女は、親友の家族に最も正しい指示を出した。
|
|「消防車は来ないでアフロ、急いで緊急避難の準備をして！
| でも東京の出入りは渋滞も酷いしテロの標的になりやすい。
|
| 避難は手近な避難所までにして、絶対に人の多い場所には行っちゃダメでアフロ！！」
|「え？ なんで？」
|
| 大規模な停電も起きる可能性がある。
| 用意してあった非常持出袋を確認するタカオの母、父親はまだ帰っておらず、電話は通じない。
|
|「模倣犯なんだろう？ 俺なら炭疽菌を撒く」
|
| 幼なじみのよしみで、山盛りの課題の家庭教師をしていた貞山青葉が口を挟む。
| 徒に不安を招く言い方に、タカオがスネを蹴る。
|
| 青葉もまた、酷似した才覚の持ち主だ。
| 彼の場合は人々を混乱させ、熱情のままに混沌の渦を作り出す扇動者。
|
| つまり、やらない夫と同様の人種である。
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l l!=ﾆ斗ﾘ ＿,..-=ﾆ三三ﾆ>
〉､ __ﾞｰ-‐_゛ ... -=≡三三三三三ニX彡
三三二ニニ二三三三三三三ニ／Ⅳ双
三三三二二三三三三三ニ＞´ ツ彡
三三三二ニ三三ニk夕ラ´ ` ゞミ おばちゃん、
＝===＝-―i ' ´￣ﾞー‐'" .／ できるなら避難は控えて。
] i ﾐ ｀ ｰ--－ ´ あと、強盗に注意して。
. l l ゝ ／
| | ゝ / それと備府。
. i.l __ i 俺は家に貴重品を取りに戻るが。
ﾞ､‐ ´ !
、 , -‐―－- 、 |
､' , -―- 、 ' ｌ
､ ﾉ
､ ｨ´ ＿
｀、 _..::‐´_ -=ニ
ヽ、 , ィ ´ _ ＜三三三
￣￣! _ ＜三三三三三
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|「私も自宅に行きたいでアフロ」
|「母さん、送ってくる」
|
| 断言と勢いで反論する暇を与えずに三人は外出。
| 目的地はもちろん、青葉ややらない子の自宅ではない。
|
|「タカオ、火事の家を見つけ次第砲撃しろ」
|「は？ 止めを刺すの！？ サイテー！」
|
|「ばっ、ちげーよ！」
|「爆風で火を消すのと、燃えるものを減らして延焼を防ぐでアフロ」
|
|「中に人が取り残されてたらどーすんのさ」
|「無敵のクラインフィールドでなんとかしろ、野次馬は俺がなんとかする」
|
| 混乱をまき散らす自動操作タイプのペルソナを出す青葉。
| 流言飛語を流し、この状況で混沌を生み出すのだ。
|
|「夜が来る、現実側でも悪魔が出るかもしれん。外は危険だ。可能な限り引きこもってもらわんとな」
|
| 彼ら同様に他のペルソナ使いたちも行動を開始していた。
| ある者は近隣住民を助けるために、ある者は仲間のために。
|
| そう、『夢の塔』攻略に必要なのは、今や翠星石、トキ、そして入院中の浩一と島津由乃の四人であった。
| 大切なのは彼らであり、二人を心配して仲間が集うのも当然であった。
|
| この混乱を巻き起こした存在の掌の上であるにも関わらず。
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ヽ -─┐┌─__─ / `し'`' `´７′
r‐､ |. | ｢ ! ﾄ-' ヽ __,.i´r‐;
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| 爆発。
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| 秋葉原の交差点で暴れていた男は、不利を理解したのか突然自爆した。
| 胴体にダイナマイトでも巻き付けていたのか、異様なほどの爆発力。
|
| その上殺傷力を高めるために、服のポケットに釘やネジを詰め込んでいた。
| 破壊範囲は非常に大きい。至近距離にいては間違いなく即死だった。
|
| 周辺に千切れた手足や焼け焦げた内蔵、アスファルトや釘の破片が飛び散り、逃げ遅れた人々を容赦なく引き裂いた。
| 悲鳴と苦痛の呻きが交錯する。
|
| アスファルトが砕け、黒煙が立ち上る。
| 残された人々は突然の出来事に頭の対処が追いつかずに呆然としていた。
|
| 助かった？ 終わったのか？ 怪我人は？
| 震えた声で口々に疑問が飛び交う。
|
| そんな中でとうとう、一人がその疑問を口にした。
|
|「あの女の人は？」
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／ ／. ／
／{／ ／／ ／
／{／ ／ ／／ ／
／{. ／ ／ .／ ／
／{ ／ ／ ／ ／
／{. ／ ／ ／ ／
／{ _ノ／ ／ ／ ／ ／
／{／ _, ⌒ヽ ⌒ヽ ／. ／
／{／ _.. -‐- 、／入 人 ／. ／ 鹿島あ！
l ／ ヽ／ ,. ／ヾ ／
イ ,' ',／ ／ ／ ／
) ＼, ,／ l ／ ／ ／
そ (●) （ ●） i ´ ／ _／
く. (__,､＿） / __／ (
) ヽr-ヽ / (￣
ヽ ヽ¨´ ／ (￣
) ｀ー‐ (￣
⌒ヽﾉヽﾉヽﾉヽﾉヽ人ﾉ⌒
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| 時間を少し巻き戻す。
|
| 爆発の瞬間、胸を強打。乳房が潰れて息ができない。
| 鹿島は一種真っ黒になった視界に混乱した。全身が炙られるように熱い。
|
| 一瞬の浮遊感。爆音で耳が痛い。
| 通り魔ゾンビが自爆したと気が付いたのと、自分がやらない夫に抱き抱えられていると気付くのが同時。
|
| 助けられた。
|
| 鹿島は溢れる涙を抑えきれなかった。
| 爆風や煙が目に染みたのではない、ただただ悔しかった。
|
|「無事か？」
|「う、ううう……」
|
| 返事もできない、ただの足手まとい。
| やらない夫の力になんてなれるはずもない。
|
| 滑稽で、惨めで、何よりも何よりも。
| やらない夫は。
|
| 鹿島は無力感に喘いだ。
| 無駄なことは知っていた。
|
| どれほど愛を信頼を忠誠を、そして命まで捧げても。
| やらない夫は一瞬振り返って、感謝の言葉をくれるだけ。
|
| やらない夫の中に、鹿島の居場所はどこにもない。
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＿＿ 「＼
_ -=ニニニニニﾆ=-| ＼／⌒|
_-ニニニニニニニニﾆﾆ| ／ |
,-ニニニ- ¨￣ ￣¨寸 ﾑ==ミ ｜
/ニﾆア´ ∨ ヽ!
i{ﾆﾆ/ ∧ | `､
. ﾏ７ ', /∧ i| `､
;′ | |、 /∧ 小 ∨
/ | | 斗--=二.| |V∧ |
Ｗ | | 、_ | _____| ｜V∧ ,小
i| i| |￣＼ |∨ｘf ｔ以斥 ｜ ∨| ∧jﾉ
八 /八 r=tミ＼| ｀¨´ | ｜ ‘i! / /,／
＼ ＼ 、ゞﾟ , | ; | ∨ | | ′ 無事です……
-→―――‐┐ .|/|/ jl∨ 乂{ 怪我は、ないと思います。
／ ⌒`弌¨¨弋´ - ／′ / 八| ＼___
／ ＼ｿ （丶、 _／ ′ / ∨Ｙi| Ｗ＾Ｙ
rzｒ" ∠)r 〉 ＼ ￣]___ｊ{ 、 | 寸､_ _ノ ﾉ
厂⌒_＞く^ーｒく个s｡.、 _∨/∧.乂_j }____) 入 ∠_
く⌒厂＞''"| ／//厂ｱ ア´ ￣[__｢￣｀Ｙ ,ノ_∠ ／√弌¨´
=- ´ く /// ｲ{ ./ _／ 圦 ∨-=个厂i／厂厂弋_)
, ' 了⌒ア＾弌ｰ＜_乂 ⌒丶､_,〉 / / j{ ./ i{ { {/
, ′ｱ´ .／ 〇 -===ミ←=====/ / ,/ / j{ { {′
/ / / (__) >" └个-Ｌ廴__ﾉ__}_}
,ｲ ／{ i{ ／ |＼ ′
厂,x圦 l{ ∥ 八 ヽ ′
iⅣ 个 乂 ___ ＼ i| / ∥ ,′
| 厂 i「￣ ｀ i| ｲ ∥ ,′
ｲ ｉ| ≧s｡.iＬ__ イ ,’ ∥ {
／ i|. i| 〇 ∥ ′ i{ {
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| 身体のあちこちが痛む、やらない夫の緊急脱出で叩きつけられた胸のあたりにはアザもできただろう。
| だが、致命的な傷はない。
|
| 背後での爆発の、犠牲者はどれほどだろう。
| やらない夫なら、犠牲者を出さずに済んだかもしれない。
|
| 自分のやったことは、無駄で、無意味で、逆に被害を増やすばかりで……。
|
| 泣き顔なんて見られたくない。
| だけれど、どんなに我慢しても、涙は次から次へと溢れて落ちた。
|
|「何だあれ！？」「どうやって！？」
|
| 鹿島は、己が極めて不安定な、信号機の上にいることに気が付いた。
| 眼下で人々が驚嘆の声を上げている。
|
|「おい、あれ」「もしかして」「嘘だろ？」
|「死んだはず」「芝公園で」
|
| 誰かが気付いた。
| 鹿島を助けたのが誰なのか、気付いてしまった。
|
|「マジかよ！」「信じられない」「生きてた！？」
|「復活したのかも」「救世主みたいに」「救世主みたいに！！」
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/ ! ,,:::::::::ヽ ヽ .| ! / ,..::::::::::::::ヽ i . !
,' |,.::::;;;;:::::::::::ﾍ, ! .| ! f /:::::へ::::::::::::ヽ !
i! !::/ﾍ zx ;:::} ,,! | ｊ .| !:::/ _ z- i＾i:} |
| _! { r- 、 /ｩ:! / ---ﾍ / ! ,,,: : : : : : :≧、{::::ﾄ´｀_,.-、 /:f .| やらない夫！
...::≦::::::::::≧...ｲう ! ! r! ヽ-‐う , : : ,,,,-x; : : : : : ヽ:込ヽ__ イ .! ,.:::::::::::::::::::::::::≧、 やらない夫！
::::::::::::ヾ!:::::::::::::Ｙへ,i! | / ） .ｲ: :/ ｀ヽ: :γ~γ´_ ｀i |/::::::::::::,::::::::::::::::::::::::ﾍ やらない夫！！
:::!:::j斗'-‐‐-ｘ::::::i ! .| i! { ! / ｀ヽ ,.__ ! i{ ﾉ´ ヽ ! .{::::::::ム!{ヾ::::::::::::::::::::::::::!
:::ﾚ '⌒` j! }.! | ! | / i! '⌒ ,_ / γ'´_｀ヽ .ｊ ｲ;;;;;/ ,,,,,,,, ヾ:::::::::::::::::::::|
!´,z- r , 、 ,.ｲ!. | | ﾄ,,ヽ ' ｀ヽ,i' }' ´ ヽ /,.::≦::::::::::::::::::::≧ 、 __ヾ::::::::j
:.. ／ ） ﾉ/ .! | ﾄ∧ / ） .! i `ゝ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:从
ヽ、 ヽ - ,ｲ/ ,,,,,,.............!- 、 ! 込、ゝ- '′ ,ィ } ,ｨ':::::::::::!::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
` i '",::≦::::::::::::::::/:;:::::::｀ヽ ､ ヽ｀ｰ‐ ,i'",__ / /::::::::!:::::/ﾍ:!ヾ::廴｀`ヾ::::z::::::::::::::::::::::::::::
_,,..-‐''"≦::::::::::::::::::::::i!/:::ｲ::::::::::::::::::≧:、 ~~~´ ./ /:::::::::::!::/ ,ｲﾚ'´ ｀`ヾ:::::::::::::::
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/::::::::::::::::::j斗''"/ ｊ !| ﾏ:::::::::::i!::::::::::::::::::ﾍ ノ f, !:::::::|::::/ .zfﾚ'"~ i
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|「やっちまったな」
|「やらない夫さん、ここは私に任せて逃げてください」
|
| 噂が広がるだけなら構うことはないだろう。
| むしろ、その噂が作戦的には優位に動くかもしれないぐらいだ。
|
|「いけるか？」
|「はい、そういうの得意ですから」
|
| 涙が止まる。見上げた距離。やろうと思えば唇を奪うのも容易い距離。
| だが、現実的にはとてもとても遠い心の距離。
|
|「すまん、恩に着る！」
|
| 鹿島を抱きかかえたまま、手近な壁への跳躍。指差す人々。
| 俯瞰的な視野で、着地地点を見つけ出して路上に着地。わっと後ずさる人波。
|
| 脚からの着地、やらない夫は着地の衝撃をすべて脚部のひげ槍に吸わせて、鹿島を優しく降ろしながら再跳躍。
| 別の信号機へ、壁を蹴り雑居ビル屋上へ、振り向きもしない。すぐに見えなくなる。
|
| 周囲の視線が鹿島に集まる。もう泣いてはいられない。
| 鹿島は立ち上がって声を張り上げる。
|
|「誰か救急車を呼んで！ すぐそこの派出所から警官も呼んできてください！
| 応急処置講習を受けている方はいませんか！？」
|
| 爆発が起きても来ない以上、警察は殺されている可能性もある。
| 騒ぎが起きているのがここだけとは限らない。
|
| 鹿島はそれでも、できることから始めることにした。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | しかし……屍鬼、屍鬼か。
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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| 夕闇に紛れながら、やらない夫は雑居ビルの上で独りごちる。
| 背後には、黒煙立ち上る秋葉原駅前交差点。
|
| 高所に上がって理解したのだが、黒煙は一本ではない。
| 周辺あちらこちらで、火の手や煙が見受けられる。
|
| やらない夫は内ポケットの携帯電話を意識した。
| 麻呂には連絡を取った。やる夫にもメールした。問題は、自分が死んだことになっているせいで、それ以外への連絡が難しいことだ。
|
|『好きに動くでおじゃる』
|
| 麻呂はそう言って、メイド喫茶への帰還を禁じた。
| 秋葉原以外でも混乱が起きているならば、人助けが必要ならば、やらない夫は止めても動く。
|
| 理解のある師匠である。
| やらない夫は好きに動く。麻呂はやらない夫を餌に釣りをする。という訳だ。
|
| やらない夫は麻呂の作戦には同意する。しかし、思考を放棄するつもりもない。
| 問題は屍鬼だ。ゾンビだ。この混乱は誰の仕込みで、誰の仕業だ？
|
| 屍鬼といったら……やらない夫の頭に一つの名前が浮かぶ。
| 『シロッコ排斥』後に、行方をくらましているという噂の……。
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／ ` ､
／ oヾ＼ やらない夫！
/ ＿ ヽ＼ やらない夫殿！！
/ ／,-‐-＼ o ｉ ヽ
/ ,.=ｰ-､ i / ,.=-､ ｀ｉ| l i
i 〃 ,.-=| |｛ {( ・ ,≫ﾉ ｜ l
| | | }! ・ﾉ ｀ー--‐'" | |
| ヾ=-‐" O ０|0 | ,. -――-､
＿_| O O | i ／ ＼
／ | O i i／ ヽ
/ | O O 0 |0 / i
/ l O __ 亠､/ |
i ヽ ＿ - i __ |
l ＼ ＿ ─ | ＿ - ￣ ￣ ＼
＿| ＿／` ー------─￣ | _ -
／ l ／／ ＿--| ／
／ i / /{ O ＿ ― --ノ／
/ ヽ i |ヾヽO ___ ― 二ー ￣ //
＼| | ＼二─-Ｏ-― 二-- ￣ | |
o ﾉ ﾉ ￣￣￣￣ | |
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| やらない夫の思考を中断したのは、下の路地からの呼びかけであった。
| ダル……協力的な『異端審問官』のダルだ。
|
| 『やらない夫の集会』で『聖処女』ジャンヌ・ダルクがやらない夫を『殺して』からは、『異端審問官』に戻ったはず。
|
|「『聖処女』ジャンヌ様はご乱心だ。助けていただきたい！」
|「どうやってだ？」
|
| 配管やエアコンの室外機を足場に、路地まで降りるやらない夫。
| ダルは申し訳無さそうにキャップを目深に被り直す。
|
|「ジャンヌ様は……お労しい。心を壊してしまわれた。
| やらない夫、君が真の救世主だったのではないかと悩んでおられる」
|
| やらない夫は苦く笑った。あれほど熱烈な否定をしておいて？
|
|「それで『スケアクロウ狩り』なんてするのか？」
|「死んだのが偽物、あるいは君の復活を……救世主のごとき復活を望んでおられる」
|
| 今度は、やらない夫は笑えなかった。
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☆ 次回予告！
男は、父親らしいことは何一つしなかった。
その事実に一切の呵責なく。
嘲笑いながら息子を否定する。
他にできることが無いかのように。
男は、息子らしいことは何一つしなかった。
求められもせず、故に応えることもなく。
怒りを噛み殺し父親を否定する。
他にできることがまるで無いのだから。
次回、最終幕百十七話『12/19 その7 脳噛ネウロ』
果てに見るのは破滅か死か。
出てくる男たち不器用すぎぃ！
良いお年を
よいお年を
よい堕としを
乱心のベクトルが変わっただけでは？
ここまでやる夫は死を夢に見るを見てくださってありがとうございます。
今年の目標は完結です。これからもよろしくネ。
＿＿＿ ＿＿＿
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|:.:.:.:.:.; :.:|: :|i: : : : |: :|i: : : : |: :|i: : : : | |. : . : . : |: |:. :. :. |. : . : . : |: | | ;;";'':,:'. ;;':,'..''''''' ''''': .'''''".';
|:.:.:.:.:.; :.:|: :|i ｌ⌒ｌ:|: :|i ｌ⌒ｌ:|: :|i ｌ⌒ｌ:| |. : . : . : |: |:三三三|. : . : . : |: | ;;',;;';";"'''''ヽ`,:"'.` ,:'. : . : .";`
|:.:.:.:.:.; :.:|: :|i: : : : |: :|i: : : : |: :|i: : : : | |. : . : . : |: |:＿:＿:__|. : . : . : |: | '';;,;;':,:'."''''';:,``'''''ﾉ:'`:,:'''''';";`
|:.:.:.:.:.; :.|三三三三三三三ﾐi|i::_:_:_ | |. : . : . : |: |i i :|. : . : . : |: |. :|: :'''`',:'';;,;ヽ`',:'';;';;';;'`',:''''''' ...,,,,,,,
|:.:.:.:.:.; ://ll|//ll|//ll|//ll|//!| i::|l!ll| | |. : . : . : |: |i＼ i ＼:|. : . : . : |: |: :|: :|: :|: :| `ｙ;/ノ `;'`;'`;';`;'`;'
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| JAXA相模原がある相模原市は、想像よりも緑豊かな場所にある。
| そもそも神奈川県相模原市という場所は一般的にイメージされる神奈川の主要部に比べて、
| 苦笑いするしかない程度に田舎である。
|
| 特に酷いのがＪＲ横浜線相模原駅前で、主要都市の名を冠しておきながら駅前の寂れ具合は逆に一見の価値がある。
|
| とにかく、混雑する国道沿いに車を飛ばし、
| 道を一本入ったら両側がフェンスに覆われた森という道を走れば、そこがJAXA相模原。
|
| 日本が誇る宇宙開発局の中枢。
|
| 広々とした構内にはいくつもの建物があり、
| 正門すぐには対外的に分かりやすく、探査機の模型や原寸大ロケットが展示してある。
|
| 東京で発生した同時多発テロの目標にはなっておらず、対岸の火事……ではない。
| 都内には協力会社や提携企業も多い、研究はここ相模原でも、都内で行われる作業は少なくないのだ。
|
| 職員の中にも東京から通う者は少なくないし、都内に家族がいる者も多い。
| てんやわんやの構内を、やる夫はアセムの案内で進む。
|
| 蒼星石は『血族』はじめ各所への連絡のために別行動だ。
| これから向き合う相手と一対一というのは、正直言って不安だった。
|
| むやみに殴りかかったり、相手を喧嘩腰に罵倒する危険があった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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｀ヽ,<ﾆｼ:::::::::::::::::::::::＼ 丶、 ｀`ヽ
::::/:::ヽ|::::::::::::::::::::::::::::::＼
､:|....::ﾄﾐyﾉﾍ、::::::::::::::::::::::ヽ
ミ!:..:::{'"'´￣＼:::..:::::...:::::..:::':,
ｼ'!:...::| ヾ:. :::. :. :. :.. ',
',:::::! ,.ゞ:. :. : :.i
':,::', ／ ヽ:. :|
',:', ／ ,.ィ, ==、 .:|、 アセムか、戦力は用意できたか？
`ー､ ヾ! ,:'／!{itfij}i:. :. :|',
,.ニ､:, l! ' ゞ==彳:. .::....:| ', 亀より遅い貴様のことだ、
'{frﾐ'!ﾞ!ﾉ ',::..::..::::l !l| ﾘl>、 進みの悪さは想像に易い。
ゞ= ' i ',::::::::::l l|!/ ﾘ
ﾉ !::::::::,! l| ' ､_ なんでもいいから見繕ってこい。
'、 ヽ l:::::::,' ﾉ ,' !l/ 使い物にならんゴミでも弾除け程度にはなるだろうよ。
、 ｀ _,. -_7 .!:::::,' / ﾘ
ﾄ､ヽ ,. -_,ﾆ´-‐ン .!::,' /
:', ﾄ､ヽ ｀`´― '"´ |::! ／
､:ヾjﾄ､ヽ ‐==‐ .!::l.: .:
!lﾄ､:', ヽゝ、 '.:|::|.:. .:.:／
ﾘ ヾ} ▽ l>--‐彳::::ヾ7７ :／
▽ ﾘ ／ /ヾ::::/Y ／ ／
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|「アセムさん無茶苦茶信用されてるおー！？」
|「え？ こんなに口が悪いのに？」
|「バカともカスともクズとも言われないとか……」
|
| 振り返りもせずに毒を吐いた、机で何かの細かい作業をしていた痩せぎすの男。
| 『脳噛』の二つ名を持つ怪人、入即ネウロである。
|
|「能力に応じた評価だ、ヴァカめ。……貴様は一生与えられんだろうがな」
|「久々に会っていきなりそれかお」
|
| やる夫は嘆息し、深呼吸をした。
| こいつのペースにハマって、感情的になってはいけない。
|
| 振り返るネウロ、猛禽のような目がやる夫を射抜く。
| 一瞬怯んだやる夫だが、すぐに持ち直した。怖がる必要なんてない。目玉が二つもあるんだぞ？
|
|「何の用事だ？ 貧乏暇なしであろうに」
|「にわかに忙しくなってるみたいだお。でも、少し話をする時間位はあるお」
|
| 気圧されるな。やる夫は己を鼓舞した。蒼星石は隣にいないけれど、近くにいる。
|
|「いいだろう。我輩も貴様の話に応える程度の時間なら作れる。
| とはいえ夜が明けるまで話せるほど酔狂ではない。単刀直入に言え」
|
|「てめーはどこまで知っていて、どこまで関わってんだお？」
|「端折り過ぎだヴァカめ。曖昧すぎて理解できん。説明が下手過ぎるぞ無能。アセム、コーヒーを持って来い」
|
| 流れるように罵倒しながら、ネウロはアセムを顎で使った。頷いて退出するアセム。
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／//::::::::::::::::ミ{:::::liｼ::::::::::::::::::::＼ﾐﾐ
′.{/:::::::::::::::/ﾐ`i:::::ﾄyｼ7へ::::::::::::::＼
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〃:::::::::::::::′ '!:::i, ,, -‐ヾ´,
ll::::::::::::::,' ';:::i, ,ｨ'" ヾ:
ll::::::::::::.,' -―‐- ､ 'i,:'! ﾞ ,. , -‐,,z=
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l|l::::::::::::l , z,=r;;ﾃミ、', ﾞli, 'ﾞ _,,`ﾆ
ﾞil::::il ',:::l '´ ヾ.ﾞ''ﾞノ '! ':, 血縁上の親が、ニャルラトホテプの観測用端末だ。
li,''ﾞ ﾞ' l `' =＝ ''" l 丶
lﾄ,､',, :'i, l この世界は奴らの遊戯板。
llゞ:::::::::', l しかも滅びる設定なのは前提だな？
llﾘ>､::::::', 〈 _ _
,!jﾉ ヾ:::::',､ ｀`" _,,
l/ ヾ:::::'iヽ、 _,,. -― '' "´
ヾ::ヽ',丶、 ´ 、,,,,,. .:
丶ヽ'i、丶､
ﾞi,:i,ﾄ､'i l｀iヽ、 , ｨ′
､┴i,ヽlﾊ',i ｀ ‐-‐ '",/
ヽ'7 <ﾗ ',i, ／／
ｿ / ,-tL、 , -''"
`' ,ｲ ,:'r'ｰ'´ , ィ:'
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| いきなりの核心。ネウロがやる夫をバカにしたのは、アセムを追い出すためだったのだと気付かされる。
|
|「ニャル公、『十壊』、『代行者』あたりは？」
|「『ホワイトスネイク』を名乗るニャルラトホテプが暴れたのも、『ニビル』と『木星』以外の破滅の存在も寝耳に水だ。
| 予測できたなら準備の一つもするだろうよ、我輩の半生はそのためにあったのだぞ？」
|
| 嘘ではないと直感する。ネウロのことは嫌いだが、目的は同じだと思う、思いたい。
|
|「てめーの目的は世界を破滅させないことかお？ それとも野望や陰謀があんのかお？」
|「無い。我輩は純粋無垢な善意で清廉潔白に世界平和を願っている」
|
| やる夫は吐き気を堪えた。冗談にしても性質が悪い。
| そして、冗談でかわしたならば答える気がないということだ。
|
| 無駄な追求はしない。
|
|「食べ合わせが悪すぎて反吐が出そうだお」
|「もう少し考えて物を言うんだな。脳みその出来が知れるぞヴァカめ。
| 無駄に頭が大きいのに頭蓋骨と脳の間に空間があるのではないか？ そういえば動く度にカラカラ音がするな」
|
|「つねに脳震盪状態でこんだけ喋れるならむしろ褒めてほしいぐらいだお」
|「確かに、脳が働いていないのに日本語的なものが喋れて偉いぞ」
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ 『セイバー』ってなんだお？
| （__人__） | やらない夫に何をさせるつもりだお？
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「『セイバー』は人工救世主だ。世界の危機を察知した際に派遣している。
| 貴様は我輩の嫌いなことが分かるな？」
|
|「退屈と無能」
|
| 即答するやる夫、ネウロは満足そうに頷いた。
|
|「外れだヴァカめ。我輩にとって『退屈』は好悪の延長上にはない。言うなれば敵、撲滅せねばならぬものだ」
|「へえ」
|
| やる夫は興味なく答えた。退屈が、敵？ 理解に苦しむ考え方だ。
|
|「しかし、無能が嫌いなのは正解だ。
| 貴様ごときに理解されて、我輩は少なからず傷付いた。謝罪して土下座して靴を舐めろ」
|
|「正解すれば謝罪、間違えりゃ罵倒。どうしってんだお」
|「自分で考えろ、ヴァカめ！ そうやって何もかもの解答を求める態度が衆愚のそれと変わらんのが悪いのだ」
|
| 罵倒のおかわり、やる夫は軽やかに無視した。
|
|「我輩は常に退屈しのぎを必要としている。『セイバー』はその一つに過ぎん。
| 貴様と違い天才であるが故に、我輩は大抵の事ができる。
|
| 我輩は魔王ロキの転生体だ。神世の古代兵器も解析できるし、
| マイケルから基礎を教わればそれを現代の武器に封じることも可能だ」
|
| 自慢話ではない。いや、内容は自慢話なのだが、淡々と事実を述べる口調だった。
|
|「何人いるんだお？」
|「木っ端も含めれば三桁だが、使い物になるのは十人程度だ。本拠地はブリテンで、今日本には三名しかいない」
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|「その百人全部があのとんでもねー武器を持ってんのかお？」
|「この世界を滅ぼすつもりかヴァカめ。あんな危険なおもちゃは、その『十人程度』にしか渡していない。
| そのうち一本を除いて出力調整が成されている、好き勝手『守護神』も『重略操作』もさせると思うか？」
|
| やる夫は一つ大きな違和感を覚えた。
| 出力調整？ 重力操作もできない？
|
|「東京には現在、我輩が対『ニビル』戦用に構築した宇宙戦特化『セイバー』が一騎。
| その他にひよっこが二騎。『ニビル』戦直前にはゲートを開き突入させるつもりだ」
|
|「そりゃつまり、謎のヒロインXさんとやらと、やらない夫と長門弟くんかお？」
|「本気で言っているなら百万の罵倒を持って貴様の無能さを重ね上げるが？」
|
|「じゃあ長門弟は『セイバー』でもなんでもねーのかお」
|「当たり前だ。貴様は空母に拳銃を取り付けるか？ 無駄なメモリをどれほど使う。長門弟は『本物の聖剣』の担い手だ。
| 我輩が戯れに作った名ばかりの『エクスカリバー』など箸にも棒にもかからんもののな」
|
| 自虐的に鼻で笑うネウロ、やる夫はその笑みから思いもよらないものを見出した。
|
|「意外だお、てめー悔しいのか」
|「…………我輩は天才だぞ？ いずれ追い抜く。それまでは退屈しないで済むという程度のものに過ぎん」
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／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | …………なんで、
＼ ｀ ⌒´ ,／
r､ r､／ ヘ なんでそんなに
ヽヾ 三 |:l1 ヽ つまらなさそうなんだお？
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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|「む？ つまらなさそうだと？ ………ふむ」
|
| ネウロは長い指で己の顔面を撫で回した。
|
|「いつか『追い抜いてしまう』という確信があるからであろうな。
| 我輩は天才であるが故に『追い抜いてしまえる』のだ。だが、魔王ロキという性質が我輩の『発展』を妨げる。
| どの分野でも天才的才能を発揮するが、その先に辿り着くような……超天才にはなり得ぬ」
|
| やる夫はほんの少しだけ、僅かばかりネウロを理解した。嫌々ながら。
| こいつにとって様々な分野は『ゴールのあるゲーム』みたいなものなのだ。
|
| 最先端にまで登り詰める事は可能なのだが、その先に、まだ見ぬその果てまでは進めない。
| 呪いなのか、モチベーションなのか、あるいは別のなにかまではわからないが。
|
|「とにかく、明日中……最悪明後日にはXと藤木源之助を連れてこい。やらない夫はそちらで使うだろう？ 勘弁してやる」
|「え？ 藤木さん……？ ちょっとイメージ合わないけど、あの人なのかお」
|
| ネウロが話を逸らしたのを、やる夫は指摘しなかった。
| こいつの精神の内面に触れて、理解する気なんて更々ない。
|
|「それより、やらない夫が特別扱いなのは理由があんのかお？」
|「ヴァカめ、なんだその今更な質問は。十年遅いとはこのことか。
|
| いいかその反対耳まで貫通した耳穴をかっぽじってよく聞くがいい。奴こそ最初の『セイバー』だからだ。
| あの糞を丸めて転がすしか能のないようなガキに、太陽を撃ち落とす力を与えるのは
| いい退屈しのぎになるだろうというのが我輩の考えだ」
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, - ､ （__人__） |
∠二_ヽヽ(,｀⌒ ´ |
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|:.:.. ／ ＼:::.:.:.:! l: :／ ／ ﾞ, ゛''‐-、
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ﾞく ＼:.:.ﾞ: ￣ : : : : : : :／ ／ : : : : : : :! l|ｌ ﾍ
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|「奴は我輩の期待以上の存在だった。しばしばこの忌々しい東京に戻ったのも、やらない夫を見るためだ。
| 『血族』は愚か『結社』すらも、やらない夫を見過ごしていたのは全く持ってお笑い草だ。
| 誠が学園において特別扱いしなかっただけでだぞ？ どいつもこいつも節穴だな。
| だが、逆に言うと貴様だけが違った。業腹だが、貴様の見る目は確かだったということであろうよ」
|
| 立て板に水の物言いに、やる夫は言葉を失った。
| この男が父親として振る舞うつもりが皆無なのは知っていたつもりだ。
|
| だがここまであからさまに邪険にされると唖然とするしかない。
|
|「ん？ 言っておらんかったな。我輩の嫌いなものは無能とやる夫。貴様だ。
| 我輩が世界一嫌いなものこそが貴様だ。オーディンなど目ではないほどに、嫌悪し憎悪しているとも」
|
|「やる夫もてめーが大嫌いだけど、そこまではっきり言われると逆に清々しいお」
|「その大嫌いな貴様に講義を垂れる苦痛を鑑みよ、逆立ちして鼻からうどんでも食って我輩の退屈しのぎになれ」
|「ぜってー嫌だお」
|
| そんなにやる夫が嫌いならば、逆に付きまとってやりたい。
| そんな自爆的な思想が頭の隅をちらついた。
|
| まあ、そんな暇はないのだけれど。
|
|「逆に、我輩の好きなものはわかるか？」
|「…………いや、わかんねーお」
|
| 退屈しのぎは退屈しのぎだ。
| 楽しくてやっている事とは思えない。
|
|「そもそも、いつもつまらなさそうな面してんだ。好きなことなんて……」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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::::::::::::::::{:::::::::::::::::::::::::::::ヽ 、 ｀丶丶､ミ丶、
::::::::::::::ｨﾄ､::::::::::.:.::::::.:.:.:.:丶 ＼ ｀丶､ﾐﾐﾐ丶
::::::::::::,'"´ヽ::::::::.: ::::.: 丶 ｀丶、 ｀ヽﾐﾐ
:.:.:.:.:.:l ＼:::::.. : : ヽ､、 丶、 ヽ
.:.: :.: l', ＼::.: .:.:.. '､ヽ､ ｀':ヽ、
: :l:', ＼::.. .::::::ヽ､｀ ､、 丶丶、
:. ::l::', ｀>､::. .:.:::::::ヽ丶､丶、 ＼丶、
::.:. .::l:::', / ＼::.. .:::::::::ヽ、｀丶丶、 ＼丶、
::::::.:.:::l:.:.', /: ,r ,.ゝ､:::::::::::::::::'､ ｀ﾐ､丶、 ヽヽ、
ﾞ':,::::::::l:.:丶 〈::'､ / /ヾﾟ'}ﾄ､:::::::::::::::ヽ､ ヾミﾐヽ、 魔王ロキは、哀れで愚かな存在だ。
ヽ::::::l ＼ ｀`' Vli、 `'il! ＼:::::::::::::丶丶 ｀ト､丶､
ﾞ､::::',.:..:....丶 丶 ll! ＼:::::::::::ヽ、＼｀ ` 奴は退屈に呪われていた。
',::::ﾄ､::::::.:::', ｀ ″ ＼::::::::::丶. ＼ 退屈だ。退屈だ。
',:::', ＼::::::l ｀丶:::::::ヽ、
',:::', ヽ::l ｀丶::::ヽ、 その退屈に突き動かされ、
',:::! ｀l ,ｨト､::ヽ 退屈から逃れようと足掻きもがき、
',:l ,! ,ｲ/ ヾ::ﾞ:、 わけも分からず暴れてしまう。
'! ,' ,イﾝ′ <´|
/ , ィトﾝ′ ｀'
`ー――┐ , ィ'トl_> '′ /
LィZくlヽl＞'´ ,.:::: /::
ヾ'´ ／::: ／::::
丶-＜:::: ／⌒丶
＼ ／
｀ｰ '′
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|「………………」
|
| やる夫は無言で先を促した。
| ネウロが何を言いたいのか理解できない。
|
|「我輩の心には不発弾が眠っている」
|「…………ちょっと整理する時間をくれお」
|「のろま、カタツムリにも劣る、昼寝をする亀より遅いぞ」
|「うるさい黙れお」
|
| 善意。やる夫が嫌い。好きなもの。ロキと退屈。不発弾。
|
| 全部同じ流れだ。迂遠すぎる。
| ネウロは天才かもしれないが、やる夫は人並み以下の凡人だ。察せという方がおかしいのだ。
|
| おかしいのだが、やる夫は理解した。
| 足りないピースは、やる夫の手の中に無いもの。ずっとなかったもの。
|
| この二十年間、ずっとずっと不在だった。
|
|「は？ てめーにとってかーちゃんは退屈しのぎじゃなかったってことかお？？」
|「無論退屈しのぎだったとも」
|
| やる夫の結論はすっぱり真っ二つに否定された。
| 早合点、暗澹たる気持ちになりながら、やる夫はネウロの罵倒を聞き流す。
|
|「我輩とあの女の出会いは長雨の秋の金曜日だった。冷たい雨続きの週末の憂鬱さに女は酷く苛立ち、我輩はそれを嗤った。
| 永遠に近い時を生きれる神格に、雨の週末など些事も些事。
|
| だがあの女は永遠を生きるからこそこの現在を大事にするのだなどとのたまわりおったのだ。
| 我輩は思ったとも、なんともまあ愚かで扱いやすそうで、頭も尻も軽いに違いないと。事実そのとおりであった」
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:.:.:.:.:::::l '、 ｀￣￣´ l::::::::::::::l lヽ!ﾘ 'i,
:. :. :.::::! l::::::::::::,' l /l/ 我輩は言葉巧みにあの女を誘惑した。
: : :.:.:::l l::::::::::,' /
: : : :.::l /:::::::::/ / 泉がダヌを嫁にもらい、
: : :.:l ／ l:::::::/ / 最高位神格の下で新婚生活を愉しんでいるのは知っていた。
' _, ,イ ,':::::/ /
‐- ＿＿ -vwｬｯ'",.ｲ /ﾘ ,!:::/| / 我輩も真似事をしてみることにした。
､ .,＿＿,. - '"´／ l_/ll /!:/l_l / いつまでも神域で時間を潰す泉よりも早く子供を作るのは、
､ ,,,＿,,, . ／ .:: ,|_7l/ﾄL!▽,' 鼻が明かせて大笑いだった。
丶、 ＿__ ,. '" .:: トL_l_,ィ"lﾘ
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| 罵倒ではなかった。
| やる夫はウザいから聞き流していた内容をハックスクロールして慌てて読み直す。
|
| やっぱりウザかった。
|
|「馬鹿馬鹿しい。ミイラ取りがミイラになると言う言葉があるが、我輩には無縁だと思いこんでいた。
| 飛んだ思い上がりだ。思い出しても腹が立つ。
|
| 我輩はあの女を『運命殺しの怪物』を産むためだけの機械として扱っていた。それで十分のはずだった。はずだったのだ」
|
| 『運命殺しの怪物』。
| やる夫は目の前の男を哀れんだ。
|
| こいつは、『退屈』と戦い続けなければならない『運命』にあった。
| いつかは『退屈』に追い付かれて、衝動のままに世界を破壊する『運命』にあった。
|
| それが、それが。
|
|「あの女の最期の言葉は『世界を嫌わないで』だった。馬鹿馬鹿しい、我輩は世界なんぞに興味がない。
| 好きでも嫌いでもないから衝動のままに破壊できるのだ。もとより嫌いではないし、興味がないから嫌いようもない。
|
| しかしまあ、あの女の言いたいことがそうではないのは分かる。
| あの女が愛した世界を滅ぼすな、守れ、可能ならば愛してみよという話だ。
|
| 不可能だ。我輩にとって世の中の全ては無関心と退屈しのぎでしかない。
| 愛するものなど一つしかない。ましてや世界を？ へそで茶が沸きティーパーティーを行えそうだ」
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／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼ やる夫を道具として利用しなかったのも。
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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|「貴様が大嫌いで顔も見たくないからだ。豚より下劣で犬より卑しい面をしおって、反吐が出る」
|「家にかーちゃんの写真の一つも残ってないのも」
|
| 不思議な気分だった。こいつも人間なのだと、やる夫は初めて知った。
| なんて我儘で自分勝手で、人間としても親としても最悪の存在なのだろうか。知っていたけれど。
|
|「二人の男に一人の女。奪い合いにならない最適な方法の一つは、圧倒的距離で引き離すことだ。
| 名前も顔も知らぬ相手ならば敵であるまい」
|
| もう、それ以上知る必要はなかった。
| 『スーパー運命破壊マシーン』の最初のターゲットがそこにいた。
|
| 幸か不幸かならば、間違いなく幸せだろう。
| こいつは、この男は、『世界の敵』に『十壊』に成りかねないどころか、そうなる『運命』にあったに違いない。
|
|「…………てめーが敵じゃなくて助かったお」
|「少し待て、胸焼けが酷い。吐きそうだ」
|
| 演技見え見えでえずいた後、ネウロは苦しそうに口を開いた。
|
|「我輩は貴様のことが電車内に撒き散らされた酔っぱらいの吐瀉物よりも嫌いだが、
| それでもこのところの動きには興味をそそられる。退屈しのぎになっていると伝えておこう……本気で吐きそうだ」
|
|「褒めるよりゲロ吐く方がマシとか……本当に嫌なやつだお」
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／ ＼
／ ─ ─ ＼ まとめるお。
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 明日か明後日に
＼ ｀ ⌒´ ,／ 長門弟とXさんと藤木さん。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 | その他に『ニュクス』の悪魔。
/ ／ r─--⊃、 | 場所はここでいいのかお？
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「構わん。そのメンバーが集まれば勝率は五割を超えよう」
|「そっちからはなんかくれる物ねーのかお？」
|
| 手助けがほしい訳では無い。
| それでも一方的に差し出すのは業腹だ。
|
| ネウロは不満タラタラで舌をうち、デスクの引き出しから封筒筒のようなものを取り出した。
| 賞状のようなものが入るアレだ。やる夫は眉をひそめた。
|
| ネウロは音を立てて口を開け、中から古ぼけた紙を一枚抜き出す。
| ネウロはデスクに丁寧にそれを広げ、ナイフを出して指先を傷付けた。
|
|「これは『除名処分勧告書』だ。先程は三人といったが、東京にはもう一人『セイバー』が、いや似非『セイバー』がいる。
| 我輩から『エクスカリバー』を掠め取り、その『守護神』の一部を神の力と思い込んで舞い上がっていた阿呆だ。
| 『守護神』を止める方法は一つ、別の『守護神』を干渉させて双方ともにシャットダウンさせることだ。
| だがもう一つ、この『除名処分勧告書』は『セイバー』を除名し、『エクスカリバー』との接続を切ることができる」
|
| それが何者なのか、ネウロは口にした。
| やる夫は違和感を覚えつつも納得した。
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く二二フ
r''";;;;;;二二)
(￣;;｀`ー-- ､、
f:｀'ーｚｪr-;--‐ '
l::::r''"＜l__,l＿__
l::::丶､__;;;;;;;;;;;;;;;;;）
,':::::::::/:: |｀`i´￣´
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_, _,ノ /,r―‐z--､-､,,| |
, -‐,.ニＺ三ャ≦='ﾆ ´￣￣｀ﾞ｀ヽ｀| |
,. '" ,. -‐:::''"´￣`ーミ--―rｧ､_ヾ::,_ｨ'| | 折よく奪えたら好きに使え。
. ／,.ィ":::.... ..:_,:-r '' "´￣ﾄ､ヾ､{＿,／ ,,| | やらない夫の『エクスカリバー』の
ir'"::::::::, -‐'T´（(::}! lﾐ'i, ､ヽ:.ヾ'ﾞ´ | | 補助バッテリー的使用か、
lヾ､:::ﾐ´ ヽ, ヾﾞ' lミ! l! }〈, | | 藤木源之助に貸与するのがいいだろう。
く´::::::ﾆ、 , -―‐ くl ',ﾐl ' /'´￣}'| |
,!｀`ー,二ニ＝;/-fr , ｿ ,ｲ ／'ﾞ | |
l::::::::::〈､、 l! ', (:}! ,ィﾆ-'"‐ﾆﾆ|＿|_
'､:::::::::::'ミニ＝ｷ､ `'_'＿,,. ィ" ヽ:::::（;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
ヾ､::. ヽ､_ ｀丶ﾆ､く≦ミﾐ、 ＼,,ニｺ￣|
｀ヾ､::ヾミﾆ＝ r―--く>､ (二二二フ
＼:::ヾ＞ｰ｀-三ﾐ､ ,ィ"t!､_|,_
＼:ヽ ヽ>ﾍ ゝ､;;;;;__,ノ
ゝﾔ ￣` 〈;;;;ｰ--i､
｀`ヽ `ｰr--'′
| |
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|「結局お使い増えただけじゃねーかお！」
|「面倒くさいやつだ。我儘も程々にしておけ、我輩の忍耐を試すような言い方は貴様の寿命を短くするだけだぞ？」
|
| やる夫は嘆息した。言っても無駄だ。知っていたけれど。
|
|「やる夫もてめーが大嫌いだお」
|「素晴らしい賛辞の言葉が聞こえたな」
|
| きっとどんな罵倒も、責め立てる物言いもネウロには無意味だろう。
| やる夫は入り口のドアに目を向けた。
|
|「アセムさん。お待たせしましたお』
|「まったくコーヒーの一杯程度に何分かける気だ、愚図め」
|
| ドアの前で待機していたのだろうアセムが、苦笑いしながら入室する。
| その手にあるプラトレーには冷めきったコーヒーが二杯。
|
|「二杯もいらん、こいつに飲ませるコーヒーなど無い」
|「脳噛さん、そう言わずに」
|
| ネウロは酷くつまらなさそうに頭を振る。
|
|「貴様もだアセム。今から四時間仮眠しろ、それまでに足の手配をしてやる」
|「足？」
|
| ここまで乗ってきた『血族』のトラックでは駄目なのか。
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ﾉl
--イ } _＿ _, ノi
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ヽ ヽ _ゝ--=i -=＜ ﾌ
_Y / i} ＼ l=- _ ＜_ _ 可能なのか？
ゝ_＼ _／ l lヽ}＼ Yl ﾆﾆ=- _ /
/ ／/.l l l l /ｨｯﾌ l lﾆﾆﾆﾆム
l , ｨ / l l ﾄ 、 ｀ / ｨ l lﾆﾆﾆﾆﾆﾆi/ ＼
V / / l l _.{ l/ l / lﾆﾆﾆﾆﾆ／ ＼ |＼
l/l ヽ_＼ ヽ ＿ l / /ﾆﾆﾆ ／ ヽ
_ｨl ﾄ、 ﾄ .、' - 从{ /ﾆﾆ／ _ィ= 、 l
_ -==ﾆﾆ=へlﾆ )ﾊ ＞ -イ; ;/ﾆﾆﾆ| ／/////ヽ l
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆV/; ; ; ; ; ／＼ﾆﾆ.{ l ////////ﾊ l
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|「我輩を誰だと思っている？」
|「え、そういうレベル？」
|
| 驚くやる夫を、何らかのテロが同時多発的に起きたというのは分かる。
| だが、それがどれほどの被害で、東京都内ではどういった混乱が発生しているのかまでは想像もつかない。
|
|「複数の駅でテロがあった。電車は全て停止。各高速道路でも玉突き事故。
| テロの容疑者が多すぎて、警察と合衆国軍が引いた検問で道路は封鎖。
|
| 自衛隊はムスカの残党が動き出して内ゲバ。誰が敵で誰が味方か分からないままに泥沼の銃撃戦に発展している。
| 『血族」本部は電波妨害でほとんど連絡が付かない上に、屍鬼の襲撃を受けているらしい」
|
| 携帯電話を片手に青ざめた蒼星石が現れる、その後ろにはジャジャマル。
|
|「帰宅難民だけじゃなく、火事に暴徒に略奪に扇動に流言飛語にリンチと盛り沢山だぜ。
| 市民同士で殺し合うのも時間の問題じゃね？」
|
| ジャジャマルは元『グリーンベレー』の通信兵だ。
| ここに来るまでの弱々しい少女の顔はもう鳴りを潜め、ふてぶてしい少年兵が蘇る。
|
|「こないだの『集会』で武器が流出してンのがやべえな」
|
| クーデターを企むムスカ配下が、芝公園で武器を配布していた。
| つまり、この日本の一般市民の手に銃火器がある。
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/ ／ ,イｨ^丶lﾘ// / /,{lL_lﾄi l lドi、
| ,イ,ｲ／:::::::::::::ヽ,ﾍjレ'´::::::::｀ヾ、lﾉ
', ,{ //:::::::::::::::::::ミl:::::V彡::::::::::::::::ヽ,
Xlj/::::::::::::::,r―'^!:::f'ﾞーﾍ::::::::::::::::.:
/∨:.:::.:.::::::/ l:.::l ヾ:::::.:.:.:.:.
lミl:.:.:.:.:,-v′ l:.:.! ':,:.:.:.:
l,/l,､／;:;ﾉ‐- 、 ',::l ',:.
,ィ":/:;:;:ｨ':::,.-､::丶、',:l _,. -‐ '"´',:.
/:;:;:/:;:;/ l／:;:ﾉil/.､:l l! 'ｯ'-,ﾆ== ､!:.. どうかな。
/:;:;/:;:;/l,./;:;:;/ l:;:;l:l | 'ﾞ´（:::::）,ｨ:.:.
/:;:;/:;:;:{ﾘl/:;:;/ﾉﾊﾘ:;:;l:l ,ﾉ ｀`"''"´l:::: 流出した武器も限られ、弾薬は少く
l:;:;:;l:;:;:;:l /:;:;/:::::::/:;:;/:! ,'::::, 何より訓練する場所も時間もない。
j:;:;:;:|:;:;:;:l':;:;:;l,::::::/:;:;/:::'、 ,!:/l
ry':;:;r':;:;:;:;r':;:;:;:ﾄ､/:;:;/､__`'＿_,. ｨァ ,ィ:/l,ﾘ 振り回した本人が怪我をする程度に過ぎるであろうよ。
lｲ:;:;:'､:;:;:;:;'､:;:;:;:;'､:;:;:;ト､ＷＭＷｼ'イ l::l川
,. へ／ ',:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l丶､三. ィ´/ / l:lヾ~
,. -―'"´ ／ ＿',:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/ / ▽/
'´ .:./ r-'､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／ / /
..:.:.:./ ヾ､ゞ:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ,へ、 _,ｨi / .: ﾉ
.:.:.:.:.:./ ＼､:;:;:;:;:;:;:_,.ッ'７ `ﾞ´ / .:.:.／
.:.:.:.:.:/ 丶二＞'´ / ／ ,.ィ',ﾞ--､
.:.:.:.:.:./ / '‐'ﾞ´/ ヾ:/:.ヽ、
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|「それより、既に軍事蜂起が出来るほど暇な勢力はない。
| 今回の一連は小規模の集団による遠距離精神操作か死体操作によるものだろう」
|
| 断言をするネウロに、蒼星石もやる夫も不信を示す。
|
|「やり口はテロリストのそれだな。たが犯行声明がない。つまり、『どれか』か『この後』が本命で他は囮だ」
|「『木を隠すなら森』だろ？ 殺しを隠すなら虐殺ってな」
|
| 悪魔相手よりも人間相手を知るアセムとジャジャマルの物言い。
|
|「ニャルラトホテプの手によるものでは無いように思えます。いままでの奴の動きとは性質が違う」
|「こういうのが得意な誰かがニャルの手先になってる可能性があるお」
|
|「ニャルラトホテプか、あれの目的は世界の混乱ではないのか？」
|「野郎はクトゥグアに焼き殺されるのが嫌で、世界の破滅を止めたがってるお」
|
| ネウロが呆れたような、酷く馬鹿にしたような顔をした。
| 実際呆れ果てて居るのだ。
|
|「なんだそいつは？ 小物か？ この期に及んで命が惜しいか？
| もしかして自分はゲームのプレイヤーあるいは傍観者のつもりだったのか？ それともあれか？
|
| 今流行りのゲーム世界から戻れなくなった系の奴か？ その上にそこらのモブ雑魚よりも根性なしな挙動か？
| 凄まじいな。逆に尊敬するぞ？」
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／~｀ヽ
＝ﾃ≧=＝ァ'::::::::::::::::',
, _, ／:::::::::::::::::::::ヒﾆ＞､-― ､
jノ / /:::::::::::::::::::::::ヾﾘ／:::::l::::::::::::ヽ
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;': : : : : : :::ｨ'zzミ､、ヽ,/::/ ':,:::.:.:.:.:.::::l
:.:.:.:.:.:.:.::::/´,ｨ=ﾐヾ'、 /:/ , -― l::.:.: :.: :::l
:.:.:.::::::::,〈 {lifjlﾘ 'ｿ ,':/ /::＿ l:: . . .::l
:::::::::::/ ﾞ`ミ竺ョ ,'/ lｯ'",ﾆヽ,j: : : : ::l
:::::::::/ /′ l ､,{ifjﾘ,ﾘ!:.:.:.:.:::l 黒幕はニャルラトホテプ。
::::／ / ',ヾ＝彳 l::.:::.:::l 主犯は不明。
''′ '、 ,! l l::::::::,'
､、 _,.:ノ / //!::::::,' だがテロの目的は明確だ。
ヾゝ､、 ` '´ / //,l:::::/
｀' ､ ｀ ' ―-- ､＿, / // /:::/
、 ｀丶､、＿_ヾツ,ｲ /ｲ /:::/
::丶、 丶､,,＿_,｀ /」ﾑ' f/:::/
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`ー- L、
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｀丶、 ｀`てヽ、
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|「この事件の嵐で、目くらましされているのにか？」
|
| アセムの問いをネウロが嘲笑う。
| 不定形の怪物みたいな事件の中で、誰もが目隠しをされている。
|
| であるのに、ネウロの目は真実を容易く見抜く。
| やる夫は妬みか、怒りか、とにかく渦巻く負の感情を押し殺した。
|
| このクソ親父が、本当に。本当の天才だからこそ最高に嫌いだ。
| こいつが優秀でなければ、無視していられるかもしれないのに。
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| ネウロの推理は納得のいくものだった。
| やる夫は慄然としながらも、対策を考える。しかしそもそも、どうやって東京都内に戻るのだ？
|
|「二度も言わせおって愚図どもめ、いいからさっさと仮眠を取れ。深夜のフライトだ。
| 睡眠不足で墜落してはデモ団体がうるさくなってかなわん」
|「フライト？」「デモ？」
|
| 蒼星石とジャジャマルがオウム返しにした。嫌な予感がする。
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|「厚木基地からオスプレイを借り受けた。十時までには燃料入りで届く。操縦は出来るな、アセム」
|「…………そんな最新機は触ったことが無いぞ？」
|
| 重い沈黙が、狭い部屋を支配した。
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☆ 次回予告！
ゾンゾンゾン・ゾーンビー。
ゾンビーふふふーん。
このスレの最初の敵はゾンビだった。
ならば最後の戦いの一つとしてゾンビが出るのは当然と言えよう。
分かるだろうか。
対比の構図である。
恐るべき走る屍鬼の猛攻に、君は耐えきることができるだろうか。
次回、最終幕百十八話 12/19 その8『闇の隆盛とゾンビ』
果てに見るのは破滅か死か。
愛するものなど一つしかない。ヒュー
スーパー運命破壊マシーンさんマジ偉業
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│ } { | ト､∨＾＼l:{ /:/ /:;ﾑイ^Y´/ｊ
『キラークイーン』！ | / ∨ { ヽ{ ｊ ｀'ｰ一'´ ｌ }／,}
『第一の爆弾』。 │ （＿__ ﾉ r∨Y-く Ｌ レ/‐､
＼ _ｱ'Ｔト､ ｨｆ‐く |ﾊVｆヘ::＼ ,ﾉ ,ィ:⌒ ﾋ/ｨT}
} ヽ { 〈j }jh /jﾘ ﾉ 八{〈 f代_ぅｘ{ 斤t_万 〉L,ﾉ
ｘ≦￣￣￣＼ｰ='⌒ﾘ {ﾐ‐=彳 ｰﾍ ＾'冖'/}､ '冖'^ 厂
＿_ ｘ≦ { ,ﾉ ＼ , ／￣￣ l Ｖ /｢＼
. __ __ / ／ｊ／ｊ厂￣￣￣/￣＼__ﾉ / / /∧ ヽ ﾉ / ｨ | |＼
__/└┘∨─/￣ i._{／ /＿＿ /＿ ＼ _,､,､_ / / / l ＼ ⌒こ⌒ ／/ | |＼｀ ｡、
. ,ｨ'´ /[:{ [:::{人 ＼ / } __{＿＿＿__{＿ ｰ‐ ）￣￣ ／ │. / .| ＼＿__, ´ / | ｌ ＼ ≧ｘ
. ／/ 人王王ｧ' },ﾉﾉ＞∨￣ / /＼ ｀ー一'ｰ‐く_／ ｊ／ ,. | ＼ / /| | 、 ≧ｘ__
. / { { 廴＿／ ／」 __/ {＿ {_ ＼. } ヽ＿＿＿_/. ,｡-ｚ──xo｡、 / / ,ﾟ ！ ｀ﾟ ＜￣￣≧=ﾐ､
.. / 乂＿＿ ｘ＜｢￣／./} ＿__ヽ＿＿/ ヽ.__ﾉ）＿＿___,ノ ＼ ｀ﾟ ｡（＿_{＿＿{_ ≧ｘ. / / l ／ ‘，
. 人 ∨ ∨ __, |/人| ｀ー‐一'＿ { ﾉ j:.. __＼ ／{ / ￣ ヽ/ ！ ／ ＿∧
.. { ￣ Τ ￣ ＿_|/／ ＼＿___ ＿／ ＼ｰ=彡'´￣ -─ ＼l （__ノー┴--o｡、 人 | / , '´ ∧
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| 猫面の悪魔が起爆スイッチを押すような仕草をすると同時に、殺到する人々が内側から膨れ上がった。
| 耳をつんざく爆音が反響し、五名ほどが粉々になって吹っ飛んだ。
|
| 『狂死』の悪魔による『爆弾』は、通常の爆弾とは趣が異なる。
| 爆弾とは、面攻撃武器である。
|
| 着火地点から爆風と破片で射程範囲内を掃討する。
| 弾丸などの点の攻撃では破壊の難しい建造物や大型機械、遮蔽の向こうへの攻撃、密集した敵を一網打尽にできる。
|
| 爆弾とは、そういった武器だ。
| 無防備な市民をまとめて殺傷するのに、これほど有効な武器は少なかろう。
|
| それに対し『狂死』の『爆弾』……魔力を凝縮した爆発物は何もかもが異なる。
| 使い方と効果が爆弾に似ているから『爆弾』と呼んでいるだけで、実際にはなんの関係性もない。
|
| 『狂死』の『爆弾』は、まず魔力を持つ物体か生物に『起爆装置』を付けることから始まる。
| 魔力による見えない『起爆装置』。これを遠隔操作で起爆することで、対象は爆発する。
|
| その爆発も、それそのものが持つ魔力を暴走させて内側から破裂させるというものだ。
| 攻撃方法としては『北斗神拳』が近い。
|
| 『狂死』あるいは彼の悪魔が対象に触れた際に、対象の内部魔力に干渉する。
| それは一時的な『縁』を結ぶようなもので、極めて防ぎにくい。
|
| そして『起爆』。
| 『縁』を通じて外的に魔力を送り込み、体内のチャクラを堰き止め暴走させる。
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| 対象は内側から爆発する。
| 自分自身のエネルギーの暴走で破裂した肉体は、通常の爆弾とは逆に周囲への被害が少ない。
|
| もちろん、周辺焼き払う爆弾を作ることも可能だ。
| だが『狂死』はこの攻撃を頑丈な敵の内部破壊や証拠隠滅に利用することを好む。
|
| つまり。
|
| 現状での彼は、望まれる程の活躍ができずにいた。
|
|「『四天王』様も案外と効率悪いんだな」
|「『元』だからな、普通人の肉体で魔力総量も少なくてね」
|
| 爆散した人々の後ろから、些かも怯まずに突進してくる次の人波。
| 死体を踏み越えて踊り場に陣取る『狂死』らを狙う。
|
| そこに立ちはだかるのは、茶色と緑の機動服に身を包んだ二人の男。
| 異様な輝きを放つ日本刀とブロードソードが人々を撫で斬りにする。
|
| 撫で斬りにするも、人々は止まらない。
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/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
} : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
ヽ /⌒ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
} / ∨ : : : : :., ⌒ヽ : : : : : : : :/
） / γ v : : ／ l : : : : : : /
. く}ﾊr‐:..､ { 〃ｰ一' l : : : : : /
￣￣:二ﾆ =‐- { l「｀ヾﾍ l: : : : :/
:::::::::::::::::::::::::::::八ﾘ 弋 ﾄﾐ:､ { 〃 ｘ ─- ､l: :ハ/ 大したガッツだな。
:::::::::::::::::::::::::::::::ハ|'⌒ﾞｰ｀´ >j {{r匕-tｧ_ﾁ￣ ﾚ/ /＿ 頭に来るぜ！
::::::::::::::::::::::::::::/::::::l / / ｀ ｰ─一 /ｲノ|:::::::::::::ミ::...
:::::::::::::::::::::::::/f 7:::: / /斤::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::://j/::::∧ ゝ ' /::::::::::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::/::レ::::::::::| ， ` ー＝= ｲ:::::::∧::l:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::ｌl:::::::::／ ヽ∧ ´｀ ／/:::::::::/0 }:l:::::::::::::::::::::::
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| 人々。
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| 腕を落とされ首を刎ねられ、袈裟斬りにされてもなお動く。
| 皮膚は灰色か青黒く、所々が破損して悪臭の腐乱液を滴らせている。
|
| 切っても爆破しても鮮血は迸らず、どす黒い粘液や黄色い液体が飛び散るばかり。
| 声はない、呻きもしない。いや、かつて肺と呼ばれた器官に溜まった空気が、
| 固まった声帯を震わせて呻きに似た音を出すこともある。
|
| それだけだ。それは声ではない、自然の反応だ。
| 眼球は白く濁るか失われ、半開きの口は獲物に噛みつくためだけにある。
|
| 二人の男の精密な連携が、『？人々』を。屍鬼と化した犠牲者たちを解体する。
| 飛び散った腐乱液が壁や機動服に付着するたびに泡立つ。
|
| 強酸ではない、腐敗系の呪詛だ。
| シロッコ製の機動服が二人の男の身体を守る。魔力の籠もった武器でなければ、すぐに折れてしまうだろう。
|
|「呆れた執念深さだ。ジェリドも見習わんとなぁ！」
|
| 男たち、アンデルセン下の『武僧』のジェリドとカクリコン。
| カクリコンは軽口を叩きながらも、ジェリドの足に食い付こうとした頭部だけの屍鬼を蹴り飛ばす。
|
| その間も肩部の銃口が火を吹いて、屍鬼を牽制。
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. ',ｨx＞ ´ ｀ヾゝ、
//7´ } i!_ ﾑ､＼{ヽ、
' l7 ﾊ ´ﾊ从 } ｀} ﾏﾑ
| {' ィ7Ｔ{ ﾊ /ィ示ﾊゝ' }ヽ}
| | {,ｨﾊ圦 { ﾘ ｀¨ ´ / ///!
| | {`¨´ ｀ ､ ｲ /// | あぁ……ン…………イく！
l八 }ﾄ､ 厂ヽ ﾉｲﾑ' ! 出すわ！
| ヽ､ﾄ、＼ Y ﾝ ／{ l
| ＞‐=ﾐ､ヽ ､´ ∠ミ ﾄ,、_ |
| , ´ Vﾊ}r=＝=ミ》》》ﾍヽ|
, { ヽ}＞ゝ=しﾍ ン_ミ'ﾑﾊ｀ヽ
/ ｌ , ´ ｀V´￣ ヽ ￣￣｀ ､
, ∧03 .ィ{ ､ :. ＼
/ / >ｲ/ﾊﾍﾉ ヽ
' ' / /{//人ヽ :. ﾄ ､
/ / /∧////ヽ＼ :: l } 〉
/ Vf ヽ ヽ////＼ヽ ;: ///＼
' '.ヽノ ノヽ、///ヽ＼ 人 .://∧ ＼
/ 乂彡≦'. ＞/_//＼ヽ ／: : ､ . :〃´ヽ ヽ ＼
/ / / ∧, ´／⌒ヽ.､く: : `: . イ/ '. ＼ ＼
, / / {_/ . - 、Vヽ＼ //!´ '. ヽ ヽ
/ / / <／ ∧ ∨＼ヽ .///{ ﾄ､ } |
' / / /l {⌒} ∧ ∨/ヽ＼ /// ﾑ } ∧ | }
/ ムイ ＞! .! ! ∧ ∨//≧ﾒﾑィ´ 、 / ∧ﾉ /
, ' ／ ﾉ ／ ! | | .∧ ∨´ }／ .イ ﾝ }､/ ∧ .′
.／ ／ ／｀ゝ､ ｌ | | l '. て ィ´ ／ ／ ノｰ, !、 ∧ {
, ' ／ヽ: /＿ヽl | | | '. }ﾝ／ ∠..ィー ´ | ＼ ＼!
〃 , '////＼: :/ i!.ゝ-' o | V ゝ ' } l ヽ ヽ
／/ / ///////ヽ‐:| o o ! '. ム l '. '.
／ , , ///////////V|'. o o o .| l /: :} l l '.
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| 彼らの後ろで、荒い息の巡音ルカが嬌声を上げた。
| いや、艶っぽく湿った声色と内容だが、嬌声ではなかった。
|
| ルカの肉襞色の紙がすぼまり、開花前の朝顔を彷彿とさせる形状を取っていた。
| 鈴口から白濁した液体が勢いよく噴出する。
|
| エロゲあるいはエロマンガのごとき相当の射精量。
| にかわのような精液が、屍鬼たちを足止めする。
|
|「貞淑が過ぎるぞ！」
|「言ってる場合か！」
|
| 恍惚とした表情のルカに苦言を呈するジェリドを、カクリコンが小突く。
| 足止めは長続きしない。屍鬼共はくっついた部位を引き千切って襲ってくる。
|
| 彼らは階段の上、踊り場という地の利を得ているが、何しろ屍鬼の数が多い。
| 目下、階段を埋め尽くしてぎゅうぎゅうの屍鬼。切っても切っても次から次に押し寄せる。
|
| 疲弊を知らず、恐れを知らず、数の優位で押し込んでくる屍鬼。
| それに対して歴戦の雄であるとはいえ、たった四人の防衛戦は極めて心許なかった。
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{ / ::{ { { { / ／ ／ -=ﾆ ﾉ }
∨ ::＼ ､ ､ ､ムイ イ -‐ ¨¨Z≦､ ー==彡 ／}
{ ::／ ::＼ ／ /
、 / ＿ ::ヽ ｰ=彡 }
〈 ＼{ ,ｨ=≠ ¨¨¨` ::」 /
∨ ヽ ≠＝=ミ / r_巧≧ ＼ `ｰ===彡ヘ
〉､ } ィ_巧≧x} .: } 厂
＼ﾉ ノ / : { / / ﾉ
〈 / : ヽ . :} }⌒ヽく 地下から現れたゾンビ共は
∧ { , r ､ }::. . : :} }て } )、 現在『血族』本部の地下及び地上一階までを占拠
∧ ／` ー ー＜:::: . . : : : } } }' { 〉
∧ ′ / ｉ i ｀ヽ:: . : : : } }_ノ ﾉ ／ 非戦闘員を含めた十名以上が死傷した。
ﾊ { { /从从从从 } } }::: } : :/ 八彡く 戦況は極めて悪いと言わざるをえんな。
} } こ二二ヽ / :ノ ゝ〔
ﾑ人＿__ ｨ ｀ーーー ､ xく ､ ／ ヽ
イ / / / {i } 、ヽ ＼ ＼ ヽ ＼＼」 彡
r ＼ { / { { ハ } } }i } } ／ Υ
＿厂 ヽ{ } ｉ{′/ / ﾘ / ﾘイ }
r┘ )人} 八 { / /／. :´ /＼
-=ﾆ { ＼/ x≦- ､ / :/〉、
-=ﾆ { }／ ＼ .′ :// /`ー- ､
´ ゝ、 ∨ , =＝ミ＼ { // ≧=ﾐ ＼
／ （ ∨ , ==ﾐ ｀ヽ {_:// / -‐ヽ ﾆ=-
／ { { r‐.､ } }≧==={ / f⌒}) ﾆ=-
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|「蒼星石がいれば良かったのに」
|「ついでにヤーボとティムもな」
|
| 三階に作った臨時作戦本部、野戦病院のごとく寝かされた負傷者たちを、超能力者と神道系術者が治療する。
| 今の『血族』に、戦力として数えられるメンツは多くない。
|
| 地下から押し寄せる屍鬼は、生半の強さではない。
| まず、量が多い。その上走るし、頭部を破壊しても動く。パワーは鉄扉をへこませる程だし、体液には腐蝕系の呪いを有する。
|
|「フリットさんよ、アンタは上に戻ってくれ」
|「足手まといになるつもりはないぞ？」
|
| 負傷者の呻きの中で話す三人の男。
| ジャギ、四ツ目、フリット・アスノ。
|
|「馬鹿言え。超能力は奴らに有効だ。俺よりよほど頼りになる……上の負傷兵共と志摩子様を守る最後の砦になってくれ」
|「む」
|
| 彼らの足元で負傷者を治療するのは霊夢だ。
| 奥の物置からミスト・レックスと東田が顔を出す。
|
|「治療系の呪符はほぼ在庫切れですね。それと……屍鬼に有効な火炎及び浄化系列が根こそぎありません」
|「明らかに出庫と合いません」
|
| 『引き裂かれた永劫』のどさくさで、何者かに盗まれた可能性が高いということだ。
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／ニニニニニニニニニニニニニヽ
’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ|
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ|
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│ ニャルラトホテプか？
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ|
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ
｀7 V//} ∨////厶イ==ﾐ iニニニ| |∧
⌒i￣ ＿＿￣￣´ 》//∧ lヽﾆﾆﾆl| |/∧
ﾄ ∨ .//| ﾄ. {7∧ ∨///i| ∨＼ニゝ ＿＿ | ∧
|∧ ∨//| |∧ ∨∧ ∨//l| ｉ}///777{厂三{ | /∧
|/∧ }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l| ﾘ }////|∧三≧| ∧.=
| ∧ ､|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i| 三
| /∧ ≧彡. 》====≦/// l i '//三| ∧三| 三
＼ | ∧イ三／三》 ∨//// j ｌ //三 i| /∧ .乂＿_ノ三
/∧.| /∧.／三 ィ/∧∨/// / '//三三| //∧三三三三
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|「断言はできんが、恐らくな。そしてその泥棒と、襲撃者と、東京でテロ行為をしている奴はイコールじゃろう、やってくれる」
|「犯人探しなど、根本的な解決にはなりませんよね」
|
| 口を挟んだミスト、フリットが鼻白む。
|
|「武器弾薬は多少ありました。魔力の籠もった強力な近接武器も少々。
| 火炎と浄化、治癒以外の呪符は在庫があります」
|
| 言いながらテーブルに並べる東田。
| 『血族』の性質上火器の類はほとんどない。愛用の拳銃では心もとない四ツ目が、散弾銃を手に取った。
|
|「弾丸が少なすぎるな」
|「俺のも貸してやるよ」
|
| チェンソーを振ってみながらジャギ、『マイケル四八九号』、マイケル小原の手による対サメ決戦兵器だ。
| ミストは棘付きの棍棒のような武器を、呪符の類は霊夢がごっそり懐に入れた。
|
|「ネコババすンなよ？」
|「必要経費よ」
|
| 非常階段はそこそこに広い、横幅は３メートルもあり、ゆったりと通れる。
| ジャギとミストが並んで武器を振り回しても余裕がある。
|
| 逆に言うと、二人では打ち漏らす危険がある。
| そのサポートとして四ツ目が入る。
|
| 現在二階を死守しているメンバーは、連携に長けるために三人横並びのはずだ。
| 彼らの真似事は難しい。ジャギはミストに視線を投げた。
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／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_ 暴徒の鎮圧ならば防衛隊時代の任務で慣れていますが、
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ} 弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ ゾンビ津波は初めてですね。
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/ こんなのはアトリームにはありませんでしたよ。
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝}
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|「東京でもそうそう無いわよ」
|「奴らの目標が『血族』だけってのが救いだな。外に溢れて行かない」
|
| 四階は動かせない重傷者、『シロッコ排斥』で瀕死の呂布や『カトルカール』で埋め尽くされている。
| 彼らを動かすのは簡単ではない。
|
|「石田への連絡は？」
|「電波障害のせいで未だ。本部にいたニンジャの数が少なかったのが痛いですね」
|
| ロストスキルと黄泉を走らせ、援軍を呼びに向かわせている。
| だが、警邏中の『グレン団』やらを呼び戻すのは、東京の現状から考えて難しかろう。
|
| 黄昏時は魔の刻だ。彼方と此方、現し世と幽世の境界が曖昧になる。
| 悪魔の出現は日暮れに集中する。それから夜明けまでが彼らの行動時間だ。
|
| 言い方を変えれば、日の入り直後に警備を増やして出現直後の悪魔を狙えば、被害は減らせる。
| 待伏せ型の悪魔が巣を張る前なら攻略は簡単だ。群体型の場合発生直後は数が少ないこともある。
|
| つまり、この時間は戦闘班の大半が出払っている。
| 『グレン団』と『九鬼』の殆どがパトロール中だった。
|
| テロによる足止めと、屍鬼による強襲。
| 『敵』の標的は『血族』にあるとフリットたちは判断していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ だが……
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{ 本気で屍鬼だけで
∨ｿ_..::; / ヽ 『血族』本部を制圧できるつもりなのか？
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
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|「現に押されておる」
|「……釘付けにされてるだけとも言えますね。襲撃の周到さから考えてもたついている」
|
| フリットの眉間に深いシワが寄る。
| のけもの達の言い方は癇に障る。
|
|「時間稼ぎだって言いてェのか？」
|「…………あわよくば、だな」
|
| 時間を稼ぎながら、あわよくば攻め落とす。『敵』の本命はここではないと。
|
|「本気で攻める場合、地下からの屍鬼も囮でしょう。志摩子様の警護は？」
|「あの裸女がついておる」
|
| 憤懣やるかたないようにフリット、イナミがいる以上よほどの相手でも問題ない。
| そして、同様の作戦を『モーリアンビル襲撃』で行わせたのを思い出す。
|
|「今までのニャルラトホテプのやり方を考えると、本命は別にあるだろうな」
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＼::i:::::::::::::::::､::::!::./ !.ミ＝== l::::/' .l:::::::l::::∨.!
｀|:::::::::::::::::::ヽl,/::::l :::::::.. !/ミ==.ﾚｲ:.ト､.},ｲ
|:::::::::::::::::::::::l::::::::! ､ ..:::::::/::::∨ ＼{
l:::::::::::::::::::::::ﾄー小 _ .ｲ:::::::l
i:::::::::::::::::::::::lー '! ＼ ‘ｰ’ .／::::ﾄーｲ だからってここを放棄はできないわよ？
l:::::::::::::::::ィ´.!:::::.:l ｀.,ー‐.....:´:::::::::::.!ー.ｨ
j:::::r x ´::::ヽ.l::::::｜ 〈 ｀ﾄ t.....:::::::::::N::::::::
'／ i:::::::::} l::::::::ﾄ､ __' l::::ﾊ｀ヽ::i ∨::::.
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|「フリットさん、下は任せろ。アンタは霊夢を連れて早く戻ってくれ」
|「霊夢くんを？」
|
| 不機嫌そうな小学生巫女を一瞥するフリット、キオより幼い小五女子。
|
|「嫌よ、目を離したらナニするか分かったもんじゃないし」
|「我儘言うなよ、千円やる」
|「何しておけばいいの？」
|
| 千円札を受け取った瞬間、前言を忘れて素直になる霊夢。
|
|「取り急ぎ、上の怪我人から動かせる奴を増やせ。ゾンビを押し返せる面攻撃を持ってるやつが優先だ」
|「次は飛行、狙撃、機動力で事件に対処できる連中」
|
| ジャギと四ツ目の言い分に、フリットの眉間のシワが深くなる。
| 二人の言い分はシンプルだ。それ故に抵抗があった。
|
|「カトルカールを戦力として扱うつもりか？」
|「使えるものは使い倒さねェとなァ」
|
| 信用の問題以上に、コミュニケーションの問題があった。
| カトルカールの治療はロビンが参加しているので、シロッコによって埋め込まれた発声禁止機能の停止は後に回していた。
|
|「本当は一番欲しいのは？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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｀ー､ ニ ＼ ￣￣_____}─-{____￣￣ ／ ニ,,―´
|::::::::＼ : ___ ￣￣￣＿ ＿ ￣￣￣___ :／:::::::| 夢宮班に決まってンだろ！
|:::::::::::}. l::::l l~^l |::::| |::::| l~^l |:::| {:::::::::::| 言わせンな。
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|:::::::::| .|:::::|. |:::::| |::::::| |:::::::| .|:::::| |:::::::|. |::::::::|
|::|ヽ;;} |:::::::|. |::::::| |::::::::| |:::::::| |::::::| |::::::::::| {;;/|:::|
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＼｀-,__,-´ ＼::::::::::::::::::::::::::||::::::::::::::::::::::::::／ ｀-,__,-´／
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| 火力、小回りの良さ、判断力。
| どれを取っても頼りになる。
|
| だが、ジャギは彼らは勝手に動くからそれでいいと思っていた。
| こんな所で足止めを食らわず、好き勝手遊撃してくれた方が有益だと。
|
| …………まさかやる夫と蒼星石は東京都に戻れなくなっているとは思いもよらない。
|
|「ジャギさん、そろそろ交代を頼めますか！」
|
| 非常階段の鉄扉を開けて、連絡員が叫ぶ。
| ジャギは霊夢に目を向けた、肩をすくめる霊夢。
|
|「フリットさん、霊夢は任せたぜ。こき使ってくれ」
|「そうさせて貰おう……死ぬなよ」
|
| ジャギは共に死地へ向かう二人を見た。
| 棘付き棍棒の重さを確かめているミスト。不満そうにショットガンを担ぎつつ、タバコに火を点けた四ツ目。
|
| 『血族』ののけものトリオだ。
| こうなると諫山冥が馬鹿みたいに死んだのが悔やまれる、戦力的に。
|
|「本部内は禁煙ですよ四ツ目さん」
|「屍鬼臭えんだよ」
|
| まったく持ってマイペース。ジャギはゲラゲラと下品に笑いながらチェンソーのスターターを引いた。
|
|「行くぜ野郎ども！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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}}/ }/////≧s｡.
}/////////＼
V///////// ／
}//////// /
ﾏ////// /
,.ィ㌢⌒ヾ〉 }//// ／
ミミｘ、＿ ,.ィ㌢ }//／ しっかし、
丈二恣 丈二恣 ///^Y こんな事ならアンデルセン神父から
--‐ '''"´ } }´"''' ‐-- }//! .} 結界術を教わっておけば良かったな。
| } }/ { }
r__ ! __ }/ } /
⌒⌒ .彡／
, --------- ､ ﾐｲ
´"''' ‐- -‐ '''"´ ﾐ!
ー‐ ／}＼＿
＿ .......:'´ /三三三≧s｡.＿＿＿＿＿
＼ ／ /三三三三三三三三三三三
＼＿__.≧=‐--‐=≦＿＿__／三三三三三三三三三三三三
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「最低限の『カタ』もマスターせずに次を教えてくれるようなお方じゃあねえけどな」
|「違いないわ」
|
| ジェリドとカクリコンの実力は、比較対象があまりにも悪い。
| 師であるアンデルセンの前では二人がかりでも子供扱いになるのだが、
| 実際には『武僧』全体でも上位に食い込める位置にある。
|
| 彼らは結界や浄化の術をサボっていた訳では無い。アンデルセンの過酷な訓練の間でよくやっている方だと言える。
| だが卓越した『ガン＝カタ』に挟み込むにはあまりにも未熟。切って撃つ方が早いのだから仕方がない。
|
| ジェリド、カクリコン、ルカと『狂死』は、のけもの三人と入れ替わっての休憩を取っていた。
|
| テレビもラジオも携帯電話も使えないため、外の情報は何一つ入らない。
| かろうじて窓の外、日の落ちた街のあちこちに見える赤い光が。
|
| 火事や事件が少なくないことを示していた。
|
|「間が最悪だな」
|「ジェリドらしいし、私からすれば最高よ」
|
| 『シロッコ排斥』の後も、なんのお咎めもなく『教会』に所属している二人。
| ルカの様子を見に来たせいで、この襲撃に巻き込まれていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＿, --zｧ─ｧ‐=ｚ,_
／ ／ / ／￣ ミx
,ｨｆ/ ﾊ:::} ,ｨノ / __,ｨｆ'⌒フ＾i
. /}::|l/{ ﾉﾉ/レ--く::::ノ ／ ∧
/＼{lレ''"´ ﾉ___／r‐==ニ{
i { }ーｧ:;ノｒ==一7
. } ,ｨjﾊ ＼｢__,ﾉ,／￣{
ﾋx､ ノ ,ｨｆｧ'⌒ヽ ＼_/ ,ｲ｢} | 私からも感謝をしておこう。
. ｀rぅ rｔ:::ﾗ フ / ノ ﾘ,/
. ｢´} ヽ￣｀ :' ｌ _,ノ 正直、君らがいなけりゃと思うとゾッとするね。
∨ / 厂i ト､
. ‘ー⌒ ,′ l リ＼
こ⌒ｰ ／ / ＼ヽ
__. -=≦八 イ ′ ∧ ＼
. / ー＜ ／ / l |＞ｘ､＿＿
. , | ＞─＜ / │ l ＼
. / /| ∧（oo） } / ,|. l
/ / l| ／ /ト冊{'＾ｉ / / | l
＿＿＼ i / ／ /＿_| l|_／ / |＼ l
. ￣│ / /ニニ| , │ ＼_｣
. | i | ﾄ-ｲ|＼ ＼ | ＼ ,′
. | l l （ｂｄ)| ￣￣ ,′ 〉 /
. │ | }冊{ | / / / /
l | |l〉)X(〈l| / ./ /／
. l | , | ﾄｰｲ│／⌒} / / /
ｌ │ / | （b d）.| / / ./ ／| ＿／
. l | / │ }冊{ │ / / / ,ﾉ /
ｌ |' |)〉)X(〈(| / , / / /
. l ! l ﾄ--ｲ l / / /.ｌ /
. l | | （ｂ ｄ）.| _,/ / / ′l /
ｌ | | }I冊I{│ l / / i ___∧
ｌ │ l＼ ／! | / ／ /／ /
|＼ | |)〉）X（〈(| │ ′ ／{ー--- ∧
| | |／ ＼| |│ ∧＼ / '，
. ,ﾉ / | | | { { ‘，
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『引き裂かれし永劫』の攻撃で『狂死』は不安定になった。
| 魂を失い植物状態の『ボディ』に、何らかのゆらぎが生まれたのだ。
|
| しかし、意識が戻った訳でもなく、単に『狂死』の活動時間が減っただけ。
| 今の『狂死』は一日の半分以上休眠しなければならない。
|
|「おだててもジェリドが木に登るだけだぜ」
|「登るか」「登るわよ」
|
| 仲の良い三人に、『狂死』は目を細めた。彼らから目を逸らすかのように窓の外へ視線を走らせる。
|
|「ん……ありゃあなんだ？」
|「…………なんの冗談だ？」
|
| マンホールが跳ね上げられ、都市迷彩柄のヘルメットを頭の上に乗せた雪だるまが次々と転がり出る。
| 頭が大きすぎてヘルメットとサイズが合っていないのだ。
|
| 雪だるまたちは転んだりあくびしたり、隣の雪だるまを小突いたりとふざけながら溢れ出る。
|
|「『邪悪帝国』……！ 援軍よ！」
|「あのちんちくりん共がぁ？」
|
| 冗談だろうと笑うジェリド、だが真剣なルカと『狂死』に笑みを引きつらせた。
| いや、仕方ないことだろう。
|
| 引率のいない保育園児のように、走り回り泣き叫び、
| 周囲をひっくり返して馬鹿笑いするようなあれらが援軍だなんて、誰が信じられる？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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,／￣ヽ＼
// V }
{ {ｒﾍ,. -ｰ‐}/‐- ._ ぜんたーい、とまれ！
／ヽ ｀ヽノ ヽ｀ヽ、 かまえー、つつ！
／ ／ ヽ ＼ ＼ ｉ |、ヽ
/ ／／／＼､ ＼ ＼ l | ヽ ヽ _
,' /／／ ＼､ ＼ ｎ｣＾Y7ァ､ハ ／ }
l.//／ ＼＼ ｣ f⌒＜_心ｒﾄﾍT7┐ _ ,. '´ ／
!_彡 ヽ、 ＼辷{ ＿,>ｪ<´_￣}_〈 / }‐-､,. '´ ／
,∟ｲ >;==､、 く.〈_ {仁ﾄ廻ﾉ}コ} {_｣ _ノY ﾉ＜⌒ヽ ＜
{.／!. {〈 ;::::::}.! ,.二幺L￣l7＜￣r<ノ ,.ｲﾉ ﾚ ＼ ､ V ﾉ､
_,.／ｲ | ゝ-'′ /::::ヽVL>《､__,》┘´ ／, 〉 | } }.ゝ┘ノ ,ﾉ
ｒく |/､ ゝ! /// ' 廴':ノ } /!| 》 《ｒ＜}／／-‐L_ ｢ く {二 ‐ ﾉ
＜ヽ＼>''´ ､ 「￣ ７ /// .ｲ._||_ｒへﾊ〈 =辷. ト､＿,.しｲ 〉
匸｀ヽ∨_,.へ、＼ ヽ ノ ／ｦ|! ﾘ ／/ 〉〉 〉 K 人 〈 | ）
（( >'´￣ ｒ=＝=､ｰ- ＿,. ィ.三ﾆ{_ ∨ // V/ ヽ ） __ ノﾉ {
/ / ||__/__,＞ｪｪ=＝＝=､-∠( ／| |二 ー∨ ﾍ ∨ Y V
ｒへ､{_ ／ ￣{ ／ 8 ||＼ | ||二Z /| |_＞､__ ヽ、└く_/_ ﾉ_ノ
二ヽ､＿_＞-; ､二} /! ／‐- ､__||＿＼!_｣|ﾆて_ノ-‐⌒ヽ! ￣￣ ＼__ｧ‐'⌒￣
／￣￣｀´ | |l / | / ｒ‐--‐､|| }
| | / 〉 / く／ハ＼>! ﾄ､ 〈
ヽ ､ | | / / / ＜＞＜＞|| . ヽ
ヽ.＼ リ ,/ / _r┘ノ L└ﾘ､ ＼ ヽ
〉 / / __r┘r‐┘ └┐└ｎ_ ヽ
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| ひょこひょこと飛び出してきたドレス姿の少女が叫ぶ、手には軍配。
| 『邪悪帝国」一の頭脳派にして、アイスクリーム屋『ヒーホーブラザーズ』の広告塔、金糸雀である。
|
| 彼女の指揮に合わせて、慌てて戻ってきた雪だるまたちが密集陣形を取る。
| 六つのグループに別れた雪だるま。三体が前に立ち盾を構え、その両側に二体ずつが帯状の段ボールに入り込んだ。
|
| そして中心、それぞれに三体のカボチャオバケがサランラップの芯を砲塔のように構える。
| 誰が見ても幼稚園児の戦車ごっこだ！
|
|「え？ ふざけてんのか？？」
|「本気だと思うわ、たぶん」
|
| 自信なさそうなルカ、『狂死』は我関せずのノーコメント。
| その間に段ボール内の雪だるまが動き出す。
|
|「とつげきかーしらー！！」
|
| 冗談みたいな見た目と裏腹に、戦法は的確だった。
| ビルの正面入口に向かってガンガン飛んていく火の玉、延焼を防ぐためにキャタピラの雪だるまが壁に氷をぶつけていく。
|
| 攻撃を受けて獲物に気付いた屍鬼どもが殺到、前衛の雪だるまが足を狙って凍結させて足止め。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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{ l
乂rf⌒ヽ⌒ヽ≦｡ ﾊイ)＿
／ ヾ｛ ＼ r'⌒Y Y(ソ r-xｬ ﾉ
／ ノ,乂 .r‐‐ｨーミ=xY´ﾉ ゞゝ_
' /o ≧ﾆY⌒ヽ＼ ｀Y＜>xｰミ ノ 『邪悪帝国』一の頭脳派、
/ /〇 (＿＿乂{⌒ゝ V /⌒ヽﾉ ＞ この金糸雀が
{ / / (＿＿＿乂＿__} ｷ ＼ヽー〈 楽してズルして頂きかしらー！！
| / ＼ ／{ ＼ / ｀ ヽ
| .ｲ x==- .x-=ミヽ .} ゞ ＼ 〉＿
| / | { ん)ハ ´ん)ハヾ}| ./ /ｰ､/＿ ＼
Ⅵ人 乂_ツ , 乂_ツ 乂 ｴ〈ノ｀ー〈 ＼ }
/込 ヽxxx r――‐ xxx ∧ﾉ ./ }／{ ＼__ノ '
{ ∥ヽ込 { } .ｲ ﾘ／,ヽ } 乂＼ ／
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r‐丈==}ー―≧x_/ラ＜￣￣￣ヽ { 〉ｰﾐ V ＼
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|「おおっ！ やりやがるな！」
|
| 数の暴力。入口に対して扇形に陣取った雪だるま戦車が、出てくる屍鬼を次から次に焼却する。
| なす術もなく燃え上がる屍鬼ども、炙られた皮膚は弾け腐肉は沸騰し骨は焦げる。
|
| 弾け、沸騰？
|
| ルカが怪訝に眉をひそめた瞬間、屍鬼が破裂した。
| 強い呪詛を帯びた体液が、熱によって膨張しながら飛散する。
|
|「ぎゃああぁぁあ！！？」
|「ヒホ！？」「ヒホー！？？」「指揮官負傷！ 指揮官負傷！」
|
| クレイモア地雷のように、周辺に飛び散った呪液は、氷と段ボールの複合装甲を難なく貫通。
| 前衛の雪だるまのほとんどは蜂の巣になって活動停止。
|
| 調子に乗って火の玉を投げまくっていたカボチャも程度はあれど負傷、数体が墜落。
| そして金糸雀もまた、反射的に顔を庇い左半身を中心に何箇所も被弾していた。
|
|「てて、撤収、てっ…………！」
|
| 次の破裂が起きた。さらに数発。
| 雪だるまとカボチャは全滅し、魔力で構成された肉体が霧散する。
|
| 人間ならば致命傷の傷を負った金糸雀が、ぼろ雑巾のような体を引きずって逃げる。
| 無慈悲にも、数体の屍鬼が走った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ ＿_ ＿
, .:.´:.:.:..:.::::::::::::::::｀`ヽ､
,r'´.: .:.:.::::::::::::::::ー -､r」⌒Y⌒Y^ヽ
／ .:.: .:.:.:::::::::::::::::::.:.:.,r'´ ソ^ヽこ イ ヽ
/ .:. /ミヽ::::::::::::::::::::.:.:.:.＞ > ,ィ二ヽ ¨ヽ
,'.:.:::/.:::`ヾ､::::::::::::::::::::.:.:｀フ } ,ｲｲ薔薇ｶ ） や、やだぁ……待って、待って！
i:.::/:::／｀`ヽ､`.:､::::::::｀:.:､.:ﾌ L入ﾊ三 ソ < 死にたくない、死にたくないかしら……！
|/.::,ｲ} ｀`丶､.:.:.:.:.:ヽゝ ｀ゝl;;|二ノヽノ
.ﾚｲ/ﾘ `ヽ ､.:.:> Y!;;| ヽソ 助けて、やめて、みっちゃん……。
i彡 ｀`ー' '' ｰ-‐｀ヾ ﾉ|;;;| _ソー─ -､
<ミﾌh ‐- ､ ､ _＿ ミﾐYスﾒ/ 」,ｲ,ｨ ＼
, イ三ミゝ､弋弍｡ﾃ ヾ圭｡ﾃﾅ V ソ彡厂￣￣｀`ヽﾉｭ､
, イ,ィ´￣￣｀ヽ //// , //// / - ─-､￣｀ヽ - ､ ＼ _
,rソ^Y^Y ヽ ヽ＼つ ,,_ ＿ ／ , ﾄ､ ＼
Y^X^X(＿ ﾉ ﾉ _ ﾉ｀ゝ､ ＿ __＿ , イ !_/_ノ! ! ﾉ メこスｰｭ､＿ ＿ ＿
_ノ__人＿ノヽ _／ ヽ二二ﾌ不＜ ＿ ＿ _＿ ｀^ー‐'^ｰ
／ /´￣ ￣￣｀7 7
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|「やだ、やだあ！ やめ……」
|
| 慈悲を乞うても、屍鬼に聞く耳は無し。
| 途切れる声。勢いよく掴みかかる手、手、手。
|
|「金糸雀！！」
|「馬鹿よせ！」
|
| 窓を開いて飛び出そうとするルカをジェリドが押し止める。
| もう遅い、金糸雀の姿は群がる屍鬼に隠れてすぐに見えなくなった。
|
| 最期が見えなかったのは、せめてもの救いか。
| そんな訳はあるはずがない。
|
|「キル！！」
|「ウカツだった。治療は可能か？」
|
| ルカが開けた窓に、コートを着込んだ人影が飛び込んてきた。ロストスキル。援軍を頼みに行ったニンジャその人。
| 小脇に抱えた金糸雀には、まだ息がある。
|
| 息はあるが、危険な状態にあるのも明らかだ。
| 金糸雀を床に横たえ、ロストスキルは小さく嘆息した。想定よりも厄介な敵。
|
| 炎への対策、盗まれた呪符すらも……嘲笑うための仕込み。
|
|「ケンシロウの目撃情報を入手したが、それどころでは無さそうだな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
お前を殺す。
明確な殺意を持って、悪意という名の手が伸びる。
恐怖せよと心を掴む。
惑乱せよと足を掴む。
絡みつく敵意、逃げ場はない。
なぜならその手が伸びるのは他でもなく。
自分自身の影からだから。
次回、最終幕百十九話『12/19 その9 地獄の底から手が伸びる』
果てに見るのは破滅か死か。
ハードだぜ
弱点攻撃が藪蛇になるゾンビ集団か
風邪で休みますー。
ｘ-､
r‐く⌒7´ ∧／＼
|___{___| l /＼}-‐==〉-､
＿_/ ＼ﾉ l ｊﾊ ＿,ノ ＼
く <{ ｆ'⌒i⌒⌒匸￣} ￣＼ }_
/ ＼Ｎ⌒ヽ＿_,ﾉノ ｊ/／} ﾘ／ｌ|
ﾉ ＿∧V{ ノ/￣＿__,人{k' | / ノ
く 〈 / ｔぅソ //===--一 V} |ｌ∧＼ﾘ
＼,' ／ ｊ/八弋ラ ／／|'{ ｊﾄ､〉
Ｌ ヽノ i / /l| l |ﾊ { ﾉ
/､r‐ ､__ / /イ_ｊ川l| }∨
/ ｀ ｰ‐┴ / '" 二Y i{ ﾉ （勘が戻って来やがったな……
／￣￣＼. / ｀7 ー ' ,ｨノ ﾘ,ﾉ| ｊ/ 一時期の不調が冗談だったみてえだぜ。
／￣／ ｀Y⌒ヽ ／＿_／| | |
. ／ ／￣ ＞ｘ∧: : : i＿ --‐≦ | | |ﾊ|ｌ } 間違いなく、
. ／ ／ ／:::::::::_| ￣ ／ /ﾊ リ Ｖ 今の俺ぁ『運命』に愛されているッ）
／ ／::::::::／ | i ／ / }:ｌ|ﾄ､ｌ|/
. ／ ／::::::::／ ,ﾉ│ , ' ,ｊ::l:|､ ＼
￣￣￣j＼/ ／ ∨ _,ｘイｆ:::∧i }
ー──,､__} ヽ. ＼,__,ｚ-ｘ__,__,ノ´ ／::/:::::l ∧
ー ｊ }＼ ＼/ i ／::／::::::/ / ＼
--─ Ｔ¨¨} ', ー'⌒ =‐-､ ／::／::::::／ , ' 丶、
. ヽ ＿l＿ﾉ }ー─- ､ __.／::／::::::／ ／
￣ } }-─====ﾆ二￣::::::::／::::::／ ／ ｘ≦￣
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| 用意しておいた軽自動車の後部座席に誘拐したマリナ・イスマイールを横たわせて。
| アリー・アル・サーシェスは何食わぬ顔で運転席に付いた。
|
| 『弓兵』に破壊された上着の替えは車に用意してあった。
| 今の状況ならば、邪魔される心配なく隠れ家まで移動できる。
|
| サーシェスの隠れ家は、廃墟のようなアパートだった。
| 築年数も古く、壁は薄くて隙間風は酷い。南側には日照を遮る大きな建物があり、いつもジメジメして薄暗い。
|
| 裏道を車で飛ばすこと二十分。
| 途中何度か、避難する市民に道を遮られた。
|
| 普段ならば十分もかからない道だ。サーシェスは苛立ちながらも余計な騒ぎを起こさなかった。
| この苛立ちは、マリナの身体にぶつければいい。
|
| 刹那がサーシェスの所に辿り着くのには、どれだけ早く見積もっても三十分はかかる。
| どう出迎えるか、どう料理してやるか。
|
| マリナを先んじて犯して殺すか、あるいは刹那の前で見せつけるか。
| 品川大聖堂で刹那にしてやられた借りを、なんとしても返さねばならない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ , イ
￣|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|￣ |
| ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ | ２ |
| 目｜ ｜ 目｜ ｜ 目｜ ｜ 目｜ ｜ | ち .|
| |。 ｜ |。 ｜ |。 ｜ |。 ｜ | ゃ .|
| ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ | ん .|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||＃| 荘 |
＼| | |
| ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ | |
| 目｜ ｜ 目｜ ｜ 目｜ ｜ 目｜ ｜ | |
| |。 ｜ |。 ｜ |。 ｜ |。 ｜ | |
| ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ | ／
| ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ ｜ |／
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| アパートの部屋は、既に『掘って』あった。
| サーシェスが与えられている『地のDISK アンダーワールド』の能力は無敵と呼んで差し障りがない。
|
| 過去の事象を『掘り起こして』再現する。
| 夢宮邸を爆撃したのも、夢宮士郎を自転車事故で負傷させたのもこの能力だ。
|
| 事前準備が必要であり、遭遇戦には不向き。臨機応変などもっての外。
| されど、準備さえあれば誰にも負けないとも言える。
|
| サーシェスの借りている部屋は、昔は四人家族が住んでいた。
| しかし、狭いながらも楽しい生活は、ある夜に突然で凄惨な終わりを告げられていた。
|
| 頭のイカれた押し込みによる、一家惨殺。
| 両親も乳飲み子も、三歳だった長男も。その殺人鬼は容赦なく殺害した。
|
| 犯人は未だ捕まっておらず、アパートは寂れ、事故物件故に格安で貸し出された。
| 他ならぬその殺人鬼に。
|
| 今や他の住人は逃げ出し、残っているのは二階の角の一部屋のみ。
| 一階の三部屋はサーシェスが違う名義で借りて、罠や倉庫として利用していた。
|
| サーシェスは、ニャルラトホテプと出会う前から狂人だった。
| いつか必ず『教会』を裏切ると確信していた。
|
| 故に準備は怠らず、同様の部屋が東京中に点在していた。
| 無辜の一家を皆殺しにしたのも、『事故物件だから安く借りられる』程度の軽い気持ちだった。
|
| 『アンダーワールド』との相互作用は偶然だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ｨ ｨ
＿＿＿..,,,ｨ=- ､ ／{ ／/＿＿ ,, ｲ/
/ r=''´￣ヽ .::ヽ i 人r''r／＝-ｖr＝-ヾ
r>''´´{ ::. ', .::i ﾉ / ﾆ.Y ﾚ=イ ヾ､_＞-､''ー ｧ
斗 { ', ', {彡r--､Vrilil> Y─-､ ＼ _
i''´ ..:i { ゞ､_ ヽ ｲ/ /ﾐ /｀´⌒}::i ./;;;;;;;::::::＼ー{￣ （来いよ刹那ッ。
ｲ .:i { ..::: ﾊ .} ﾄ/ .人ヾ_／｀i/≧ｲゞ＞x /ハ できればあの小娘も連れてこい！
/ ﾉ .| { :::: i | il / i≧-､ ／┴'''´ Ⅵ Yミﾐ
/ ,' ..:: .{ ..:: i ::::... ...::: } ﾊ ヽ ..ﾄ￣ﾉ Y / r::ﾉ人ﾐ､ゝ たっぷりとお礼をしてやるからよぉ！）
..{ il ..: .{ ..:: ｀ :::......::: / ≧ﾐ＞=- ヽ '´ ｵｲﾊﾐﾐﾐ
..ﾄ ｀ :: ｀ :::.. :::::. { i '-＝='´ |iY iミミ
..ヽ ヽ ヽ ::. iﾄヽ''￣￣￣＼ﾊ ''''''´ 人_ r────── ､
ヽ;;::... ヾ il::::i::＼_ ヽ＼}＿＿ イ──/ ＼
｀､:::. /::::/::::::il::T､ ヽ ＼ _, - -::､:/ ｲ
｀ー ､::.. ／::／:::::::/::/i ヽ V ＼ ＼ Y::.._ /
＞ ､_＿ ／:::::/:::::::／::/:::il } ヽ ﾄ､ ＼ V ヾ / |
/ /:::...:.:廴￣￣::::::／::::／::／::／=-､ ヽ } il } / |
i li::::::ｲ::::::ト- - ''´:::::／::／::／ ヽ i ﾊ } - イ .ﾉ
i li:::::/:::::::il､ ｀ー-''´／:::／ Y / . 人ﾉ V/ i .il /
イ.i il:::::::::／::::::＼ ￣ヾ ﾚ/ Y /i /
r ''´ iil:::／::::::::::::::::::＼ ￣ V ./ il イ
人 ﾊ:::::::::::::::::::::::::::::::＼＿＿ィ=- ＿ / /＿/ /
-=イ .ｲ il:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://＼ ｀ ヽ ノ ＿＿/ ./
-＝彡il /}}:::::::::::,:::-::──-::､::::://＝= ｀ヽ ＞＝- - '' ´:::::... ./
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| サーシェスは『敵』と認めた相手を侮らない。
| 刹那は彼が作り上げた。戦い方などすべて理解していた。
|
| そんな風に格下と考え、一泡食わされた品川大聖堂。もうサーシェスは刹那を侮らない。
|
| そして小娘。サーシェスはその実力と存在は認識しているが、未だ名前が分からぬ少女。
| 『学園封鎖』時に『隠れしウラヴラスク』の『絶対隠蔽』を看破してオズの肉体を破壊した女。
|
| 夢宮邸に出入りしているのは見ていた。名前を知らぬ少女を、つまり夢宮アリカをサーシェスは警戒していた。
|
| サーシェスは危険な存在だった。殺人を躊躇せず、目的のために手段を選ばない。
| それどころか、目的のない行動をしばしば取るし、そのくせ執念深く恨みを忘れない。
|
| 彼は勘を取り戻しつつあった。
| 東京を火の海に変え、好き勝手に滅茶苦茶にして、そのドサクサでいくつかの目的を遂げるつもりだ。
|
| 彼の速さに誰がついてこれる？
| 彼の手数に誰が対処できる？
|
| アリー・アル・サーシェスは誰よりも多い手札で、相手の動きを見てから対処できる立場にある。
| 負ける理由はどこにもない。
|
| サーシェスは確信していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ‐……‐ ..、
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/::ﾍ::::{.「死 ´死 八::::､:::::::ヽ
/:::::人:::》、 丶 i}:::::＼:::::::＼
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{:::/l::／{::::::≧ ´ ノi:i:i:i:i:i:i:i7＼::〉
V !' 》＜＾⌒ ｨ ´￣｀ヾ/∧ バカめ……。
くi:i:i人r一' lﾊ 、 ∨∧
//ｲ7厶-=====ｵ｡V ∨∧
〃/ﾒ´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:∧ ‘， ∨∧
///'i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧ ‘， ∨∧ ＿＿＿
//八i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ﾊ.｡‘， ∨∧i:i:i:i:i:i:i:i:＼
/// Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ∧ 》 ∨∧¨¨ヽi:i:i:i:廴
/// }i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ{ ＼| ∨∧ ∨i:i:i:i}
/// .ﾉi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ハ ! ∨∧ }i:i:i:i:|
/// ___}i:i:i:i:i:i:i:i＞ ´￣ ヽ. |: ∨∧_ノi:i:i:ｉﾘ
/// }＿ イo￣ l| 》 》====…ヾ/∧i:i:i∠
＼///＿ 厶イ。|! l| 斗匕ﾍ ヽi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i》
.イi:i:i:i:i:i:／{! |! o .斗匕 // ＼.}i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iく
/i:i:i:i:i:i:i:i:}／{! 斗≦.=====// {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
》i:i:i:i:i:i:i:i:} ／─ｬ== …── ≧ｭ． 戈i:i:i:i{￣ ｀⌒ヾi:iﾉ
戈'⌒ヾi:ｉ:｝／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧ｭ．__}≧ｵ } Ⅵ
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|///|!} .′ /⌒‘， ‘， ∨.//∧
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| 『ひとりでお帰り』。
|
| 朝霧アサギが死の間際にサーシェスになすりつけた呪い。
| 救世主すら殺しうる、真綿の絞首紐。
|
| サーシェスは浮かれていた。
|
| あまりにもあからさまなミスの数々を見過ごしていた。
| 誤りにすら気付けない、水銀のように蓄積し、致死量に至るまで異変の出ない埋伏の毒。
|
| 彼は気付けない。
|
| 夢宮邸の奇襲に成功したのにだ。
| マリナ・イスマイールのごとき雑魚に執着するなどという愚に。
|
| ルイズの死をなぜ確認しなかった？
| 強化外骨格『三日月』を奪い取れば、今後の手足に最高だったのでは？
|
| 遠坂凛も殺害できた。しない理由はどこにもない。
| そして何より。
|
| 夢宮士郎と対決し、手傷を負わせるのに成功した。
| あれ以上の好機は二度と来ないだろう。
|
| 『アンダーワールド』を大盤振る舞いして『賢者の石』による再生すらも見せてしまった。
|
| その上で、殺さずに逃げた。
| 笑い話にもならない失態だらけだ。
|
| 『ひとりでお帰り』は静かに待つ。
| ひっそりと確実に膨れ上がる失敗が、サーシェスの背中に追いつく時を。
|
| ああ、今回のミスにはもう一つ。
| リカバリできないほど致命的なものが、もう一つ。
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/:::::;Ｎ>;::::;ｲ::::::::}:::::::く:::::::::::::::::乂_
>::::ヾ{〈::::ヽ＞:;ﾉヾ::::/-ヾ:::}::::::「 はっはあ！
f┴､:::::}_ヾ;/厂 _, {ﾊ{ ヽ/::〈:::::ﾉ 僕が一番乗りだな！
ﾉ_へr个ヾ_､ ￣ 「!:::::::::(
/ -‐У l^ｰ∨ 八ｲ:::ﾉ｀ 遠坂め、馬鹿にしやがって。
八 ﾏ､: | ＼ -‐' ／ /ヾ{､
_ヽ l / ヽ _イ＿∠- ﾄ､ 見返してやる……！
/ﾚハ !{ ィ=─- ｲ|:|::| ,.｡* ヘ _
∧|o〉､ /l / ///-‐ 〜 _
∧;;＼ 7!′ /// ／ヽ
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./:| `ｰ/ /// /. ',
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/ ｲ .:l |:|::| ￣ ¨¨:.＼ / . : : : : : ト､
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ヽ-=≦ | |:|::| ／.:/ ＼: :､: ∨
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| サーシェスがマリナをほこりの積もった床に横たえると同時に、彼の鋭敏な聴覚は外で騒ぐ声を聞き取った。
| 想定より遥かに早い。まだなんの準備も整っていない。
|
|（ゴミクズだと思ってたが……まあいい）
|
| サーシェスはマリナを一瞥した。彼女で必要なのは、貸与された能力だけ。
| ききやま窓付きの『夢世界』を支配した五体のサブマスター『法務官』。その最後の一つを奪うためだけ。
|
| そもそもサーシェスは、『夢の塔』攻略に問題を感じていなかった。
| 四つの『法務官』と、『賢者の石』による無限の体力があれば睡眠時間のすべてを攻略に当てられた。
|
| だが、終盤のフロアをさまようシャドウは強力で、単独攻略は難度が高い。
| その上攻略上のライバルである翠星石たちの存在が厄介だ。
|
| トキと翠星石、そして島津由乃と早瀬浩一という二人の『滅ぼすもの』使い。
| だが、『法務官』が五体揃えば、『夢の塔』でも上位権限を行使できるはずだった。
|
| 階段を使わない移動や、特殊ルールの設定など。
| それさえあれば、誰よりも早い踏破が見込める。そしてサーシェスは。
|
| あの、地球を砂糖菓子みたいに砕けるハンマーを……！
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| ､丶｀:::-─::::::::｀::::〜:､
| ／::::／::::::::::::::::::::ヽ::／::::::ヽ
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(／} /ｨ::::::/::::::;ｨ:::∧:::::::::〉 {::::::::::/::/:::|:/
(／} }:::入:／〈:/､_ ）／ ヾ:rイ::::{::::::|
(／} }{ ﾍ:ゝ丈亡ﾃ(‐' -∠__ﾊ::::}:::::| しかし……奴はどこだ？
(∠ ｲ:､〈 └'ノ｀〉:r‐′ 僕に恐れをなしたかな？？
|‐'′ ):「ﾍ / /７ﾉ
| 「ヾ∧ ､＿＿_ ∠ｲ
|─- _ _, -| ＼ヽ ｀二´ イ
|ヽ ￣ヽ ＼ ｀ ＼＿∠!
| | ＼ // ./､
| | ヽ〈〈__／ ー- _
| | |:| ¨ =-､
| | |:| | ∨
| | /.: |:| |. ∨
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| 間抜けなことを言いながら、無警戒にアパートを覗く慎二。
| サーシェスは『隠れしウラヴラスク』を起動して静かに移動した。
|
| このマヌケがマリナを助け起こす瞬間に、首を刎ねるのにちょうどいい位置に。
| その間に、慎二は玄関のドアに鍵がかかっていない事を確認した。
|
|「無用心な奴だな」
|（お前がな……！）
|
| 灯りのない部屋は暗く、物の位置も見えないだらう。
| サーシェスは夜目が効く、だが、この小僧は違う。電気のスイッチを探すはずだ。
|
|「床か」
|
| 慎二の独白の意味をサーシェスが理解するよりも早く、慎二は素早く伏せていた。
| 同時に、玄関とは逆側の窓とふすまが撃ち抜かれる。
|
| サーシェスは虚を突かれた。それは、こんな単純な陽動にまんまと引っかかった自分自身への動揺だった。
|
| 『隠れしウラヴラスク』の隠蔽能力は完璧だ。
| 音も臭いも熱も魔力も遮断する。しかし、存在は無くならない。
|
| 故に面への攻撃には弱いし、発動中は魔力による防御や加護は一切乗らない。
| だが、隠蔽を解いてしまえばサーシェスは不死身だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
／ﾟ｡
／/ ∧ /＼＿ ＿
／ / ∧／＼/ ＿ﾟ｡__／／
／ / ,ｨ介ﾄ､__/__／￣＼∨ /
| ノ ／iﾉ ﾘ ｀￣} / / ∧
|＿ ＼ 〈{rｖ‐くjﾘ} ∧￣} / |＼／ ノ
厂￣｢} 人___ノ 厶ｨ'___| ｊノ ∧ ∠｡.__,
／ 乂＿_}H{ /r_虍ﾗ ＼＿／￣＼＿,ノ
i / {_ノr 虍广∨ /ﾋ彡'⌒ヽ.〉
| l{ ∟| ￣〈｀ヽ -┐ V /ﾊ }| それで出し抜いたつもりかッ。
＼＿＼ | r __｀´-‐= ニ} 〈/,ﾉﾉ|
〉/ﾊ| Ｖ￣￣:: : :│ |r‐／∧ このマヌケがァー！
. //'⌒| }::::::::: r┬ j l |Ｏ） |＼ヽ
／ ｆ | |＿__/_/_/ | ｌ| } |
｀ﾟ 廴＿__,ノ ,ﾉ l ! | | |
i ＜ | l |_|＿＿__
|__, z7ﾌ,ヽ.__,｡ ´ ＿__∨＿＿ﾉ 人
＼/////＞‐=ﾆ二￣三三 ∧ ／ /ノ ）ィ7´
}＞‘´三三三三三三三ﾆ／ ／ /
/三三ニ三ニ三ニ三ニ／ , ﾟ´ /
／￣￣￣＼ /￣￣≧=ｰ‐---一/三三三ニﾆ＞=ニ二／ ／ /
. / ／三三三三三_,ﾉ三三ﾆ＞‘´二ニﾆ／ ／） /
＿___, ／ /'´三三三三二ﾆヽ二ﾆ／ニニニﾆ／ ' / / /
／ /ニニ二二二二二ニニニニニニ厂 ／ / / /
. ／ /三三三三三三三三三三三三三| ﾉ l |│ ／
. , ﾟ´ /三三三三三三三三三三三三三ﾆ＼ | ｌ |/
/ ／） /三三三三三三三三三三三三三三三〉 V
. { / 三三三三三三三三三三三三三三 / ＼
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| 狭い土間に伏せた慎二にナイフを振り下ろす。
| 体に突き刺さる無数の弾丸、蜂の巣になる肉体を無視して即座に修復。
|
| ギロチンのような断頭の一撃。
| 振り下ろしながら、サーシェスは慎二がいつの間にか懐中電灯を灯そていることに気が付いた。
|
| さっきまで、暗闇だった。
| 倒れながら明かりをつけた？ 何を照らした？ なんの為？
|
| 疑問の答えは切り飛ばされた腕だった。
| 『隠れしウラヴラスク』は存在までは無くならない。
|
|「聖永刹那、介入行動を開始する！」
|
| ほこりだらけの部屋、床にくっきりと残ったサーシェスの足跡。
| サーシェスは混乱した。『ひとりてお帰り』の地獄の底で嘲笑う。誰にも聞こえない声。ゆっくりでいい、確実に来い。
|
| あまりにも初歩的。自分を過信して、敵を侮り過ぎて。
|
|「どっちがマヌケだって！？」
|
| 顔を照らす懐中電灯の強烈な眩しさに、サーシェスは怯んだ。
| ペルソナによる粒子化移動で瞬間移動しながら、刹那がサーシェスの足を切断する。
|
|「その程度で調子に乗るなよ、刹那ァッ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ _＿ _、 }_ . _ _ _ . '´
〃´ ア´ ｀ ハ｀ヽ ｀ .
{{__ __,／ / / ､
＼､ｰ≦彡' ／ / . 丶
､_ ￣／ ､_ ,// / / ｌ . .
｀>二´ ｀77 ｨ / ／i ｛ l } 丶. _ _｀_ ‐_‐′ '
／_＿__ 从i ／_j/≧ ､{ ヽ } ,i ; ; ;
/´ '⌒) V｀Y^i７ﾃ≧ﾐv_ ハ //_j '. ', .'
､_ _／ { 、{｛ヾﾘ }）/ } } ､/く__,〕 丶 、 ｀ _ _ ゜
｀辷ッ' ／/ /! ﾄl ｀ 二´／´ __ノ / ／,丐＾》, , ; ｀ ､ 丶 ;'´｀;
i ／{ ( / /八廴 ｰ=彡' 辷ﾘｲ/ / .; . ｀ ‐｀‐ ‐ ｀ ´
|{ V ）!iｲﾅ,、 _ / ､___彡′ / . ; ;
｀ ,／ノ从i{小. ＿ ′ ｀７ __,／ /: } ; 慎二、マリナを！！
￢ァァ^≧ー‐ｧ/ ｀/!从{ . ∠^.._￢} (´ / ／: :/ ′
／ ／ / ／ ｛ ∧ﾘＶ ､ { У ／. ／.:ィ/.:. : / . ´
/ .′ ／ | { ∨ ヽ、 `ー ´ イ/{ /!::.::.{｛:.:. : :'´: . . . . .
. / / , ﾉ ｜ ＼ ＼ ⌒ ィ/{_ノ' Ⅵ}_::.::ゞ:.:. : : : : . . . .
. { / { ｜ } _＿__ ｀ -＜_ノイ/ ハ}｀ヽ::.::.:.:.:. : : : : . : :
{ l′∧＼.ゝ /／ ｀￣￣´ __／ ／ }::.::.::.:.:.:. : : : : : . .
l ｜ ｛ ヽ `'ｰ‐‐───‐‐‐'´ ／ __ ..＞‐ ､::.:.:.:. : : : : . .
| _ | . ＼ _ .. -‐ ´ ´ ',::.::.:.:.:. : : : : : :
ｌ ／ ､ ＼ ｀ ー‐……‐ ｧ ´ . ´ _ .. -}_::.::.:.:.:. : : : : . .
∨ ＼ ｀ ー‐‐…‐‐ ´ ／ ´ ｀ ::.:.:.:. : : : : . .
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|「任せろ！」
|
| 起き上がろうとする慎二、引き続きサーシェスを刻もうとする刹那。
| サーシェスは即座に判断した、まずはこの舐めたガキを殺す。
|
| 切り飛ばされた。足を即座に再生させながら、『法務官』の能力で刹那の攻撃を無効化。
| 超人的な脚力で慎二の頭を蹴り、首を引き千切ってサッカーボールに。
|
|「本当にマヌケだな、お前」
|
| 言葉と逆に玄関から転がり出る慎二、五体無事。
| 対して、再生した足を即座に再切断されたサーシェスが無様に顔から倒れ伏す。
|
|「なんだとォ！？」
|
| なぜペルソナによる攻撃が、『法務官』で無効化されない！？
| 刹那が次々に抜く返しの付いた刃が、サーシェスを出来の悪い標本のように床に縫い留める。
|
| 無慈悲に肺や肩を貫かれながら、サーシェスは気が付いた。
| ペルソナではない。この刀剣は、実体がある！
|
| 本物の剣。
| 刹那がマリナを夢宮邸に預ける際に、士郎に依頼していたサーシェス対策である。
|
| ペルソナによる攻撃が効かないならば、ペルソナではない攻撃で戦う。
| 当たり前の対策、それへの対処すら考えていなかったサーシェスの失態。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､＼ ＼ ﾊ l ｀ー､／/ {
ト､l ﾄ､ | |＼∧ | | l
＿ ヽ ＼ ヽl ＼| ヽl ∨ ＼
ヽ ＼| | |ヽ |/! |､ ヽ 〕
l | ﾊヽ ヽ! / /ﾍ ＼ |_r'
./ // } | V /／＼ﾄ､ ハ
,Ｎ l !ノ‐'"ヽ |:ヽl l ﾊ
＼ｌ__＼ﾄｰ" l ｌ_ {:::｢ヽ! ',
ヽ--ｖ' l ∨ ｀}::ｊ l V} |＼
ヽ ＼. l⌒Ｖ:/ _,k' ∨l}:::＼ なんだと……ッ
＼__ l＼ﾉ:ﾚ'_ﾉﾉ ﾊﾘ::::::: なぜだ、この俺が……！
｀ト..､_ ＼l、 l::ｆﾂ／ ',::::::
. ｀ヽ::ﾆ_:‐::--､ﾋﾆｿ ﾍ V::: こんな、こんなクズどもに……ッ。
. ､/´/ ｒぇ__,＞ハ V } /＾ヽ ',::
｀￣‐ { ', ヽヽ ,ｨ i::
lヽ､ ／ ヽ〈_､_,ﾉ ,//}l l::
ｰ{ｌ ＼ ＿_ﾉ__ﾉ:! l:::
::::＼ ＼ '"ﾓ‐_／::_ノ │:
::::::::::＼ ヽ. ヽ__／ ﾉ::::
ﾄ､:::::::::::丶、｀＞- .__＿,.ィ::::::::
. !::::＼::::::::::::::￣￣::::::::::::::::::::／
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＼::::::::::::::::￣￣￣:::::::::::::/´
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| 逃げなくては、サーシェスは素早く思考を切り替えた。
| ここは退くのだ。ここで退くのは敗北ではない。
|
|「いいだろう！ お前らの肉を引き裂いて、臓器を床に出して順番に並べてやる！」
|
| サーシェスの叫びに、刹那は怯まない。
| ペルソナの鎧兜は冷酷な仮面そのもので、無慈悲にサーシェスの頭を床に縫い止めた。
|
| 逃げるなら玄関側だ。サーシェスの直感が急げと叫ぶ。
| 故にサーシェスは反対を選んだ。
|
| 『法務官』の一つ『ジン＝ギタクシアス』による改造。
| サーシェスは現在のボディを特殊な戦闘形態に変化できるように改造していた。
|
| 夢宮アリカの恐るべきスピードやパワーに対抗するための、獣のごとき姿。
|
| 一回り小さくなる体、細く凝縮されたパワー。
| 全身のぬめる鱗で、刀剣を弾き、縫い留められた部位をを尻尾のように切除しながら束縛から逃れる。
|
| 『スケアリーモンスターズ』！
| ラプトルに酷似した小型肉食恐竜の姿を取り、サーシェスは天井まで跳ね張り付いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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{
∨､
＿＿ ∨＼
o ＿／￣￣￣ ／⌒/ ∨∧
ｃ=_ ＞─ｙ'´ ／}/}ﾉｲ ∨∧
. / ィｉフ ＿／{ﾉ ／} ∨∧ URYYYYYYYY！！
Ｃ==/ ゞｲ ＿＿ ／{ﾉ ィﾉ/┴┐ ∨∧
/ ／（￣￣´/{＿/{／￣ ／ ∨∧
ｃ=={ / ／￣￣´ ／ ∨∧
| {／ ／￣´＿／ ∨∧
ﾄ､ ／ ／ | }ヽ
／| ＼＿＿／ ／ | | ＼
°人 ∨ | | }
°∧. ∨´￣ ＼ | | |
ﾟ ∧ /´￣ ヽ | | |
∧ / ＼ | | |
} ＼ ／ { ｀∨ ∧ | | |
/ ＼} ／ /⌒Ｙ ∨ ∧ .| | |
{⌒ ∨ ＼/⌒ |. ∨ ∧ | | |
| ∨＾＼{＞/ .人 ∨ ∧_ .| | |
|. ∨ / / 人 ＼ } ∧＼ } | |
| ∨ { / 〈 ｀ﾕ } /. ＼＿ノ / |
＿＿＿人 ./＼ヘ ＼ ∨}ゝ─'＿} |
/ /＿ ヽ｀￣｀￣´ } /
. / ∧＿＿ノ ∨ | |. /
/ ⌒ヽ / ＼. ∨ | | /
. / Ｙ ､ ＼ ∨ | | ／
/ / /⌒} } ∨ Ｙ ∨ / } ／
{人」 Ｙ＾} ∨ .| ∨ / /￣´
| }ﾉ ∨ {_＼｀∨ / /
∨ 人 ＼＿ / /
∨＿ } ＼ {
} ∧＼ ＼ 人
＿ .丿 | | ヽ ＼＿ ∧
勹 | | } { ∧
{/⌒ヽ厂｀ヽ 人{＼__/ .| }
{´广´ ∨ |
､{ ∨ ｀|
＼ ∧
} .∧
| ＼
| ヽ
/⌒ ∨ }ヽ .}
{ /_ ﾉ ／´￣ノ⌒}丿
|/ {⌒ﾌ´ ／
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| 無理矢理引き千切った手足を『賢者の石』で再生する暇はない。
| 『隠れしウラヴラスク』で即座に透明化。
|
| せめて『法務官』を奪ってやる！
| 天井を蹴る、撤退と見せかけて即座の攻撃。手足を再生させながらマリナの首筋に食らいつく。
|
| 『ヴォリンクレックス』による『奪取』の能力で、マリナを食い殺しながらその能力を奪い取る。
| ナイフのような歯が並んだ大顎が、肉を引き裂き骨をへし折る。
|
|「アリー・アル・サーシェス！！」
|「刹那ァ！！」
|
| 口の中に広がる甘美な血の味。
| サーシェスが食い付いたのはマリナではなかった。庇うように割り込んだ刹那の右腕。
|
| 怒りのままに食い千切ろうとしたサーシェスは、玄関側に立ち上る恐るべき気配に震えた。
| 夢宮士郎！？
|
| サーシェスには軍刀のような鉤爪も、鞭のような尾もあった。
| そのどちらでも刹那に致命傷を負わせることは出来ただろう。
|
| だがサーシェスは危険に対して素直に逃げた。
| 刹那の胸を蹴り、空中に跳びすさる。
|
|「衰えたな、アリー・アル・サーシェス」
|
| 腕を噛み砕かれた苦痛を感じさせぬ、氷点下の声。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, ニ
. -‐ｧ , -‐ ＿ ､ ､
'´ ／ ／ ／ ﾍ 、 ＼ 丶 ＼＿＿ . -
ー＝二 ／ ／ ／ l ｉ＼ ､ ヽ ＼ ー一 ´
. ／ , ／ // ｛ l､ ｌ.ｨ＾丶､丶､ ヽ丶 { ､ ＼ ー=＝ﾆ
/ , / / ィ l i } | Y ｊ_x≦、 ミ ､i ! 〉､ ､ー- _
. /〃 ! ' /!｜ {//ｊｨ´ｒ::ｆ'卩 }`丶 ! ﾑ ヽ＞― ー=ﾆ ￣
/´/ ,!′ﾊ|l ､丶 Y〃 Vｊﾝ^ 〃 〃＾) } ､＿ -‐… __
. / ／ l /! |ぃヽ i､ヽ '´ ノ ／ / / ｒ 丿ﾉ三二ニ≠ '´
/ / | バ｜ ン ＼`＼ ー ´ イ ／l / -一 ／≧＝ ´
! ′ ､{ ヾ '､ _ // ｊ ‘ ｒ=彡´ 一度食らいついたならば、
｛ } i 丶 ＿___ l｛ { ｰ=彡' ／ 腕の一本や二本失っても離さない。
‘､ ‘、 ! }ハ｀こ￣ ぃ 〃 ／
￣ ` ﾉﾍ{ `､ ＼ 丿 ／ その覚悟を説いたのは貴様ではなかったか？
／ `ーﾍ , ´／ ／
_ゝ x≦ ､／ 〃 ＿／
__,ｒ彡ｒ ｨ ／ ／ ／ , ≦￣
∠ｒ‐ ≪ ￣三乙 ／ ／
ｒ=＝ミ ］三三三＿＿ ≦
＿」 ≫ｘ ≪三三三三二
⌒ヽ￣《 ` =＝==､
＼＿＿＿ ミ､
￣￣￣｀ 三ミ､
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 刹那が左手に持ったナイフ。自分の腕を傷つけるのも構わずに、サーシェスの上顎と下顎を縫い留める。
| 感情を感じさせない鉄色の瞳、サーシェスはそこに嘲笑を見た。
|
| 自分が手足を気軽に消費できるようになって失った凄み、覚悟。それを刹那は見せつける。
| サーシェスは悲鳴を上げられなかった。
|
| 縫い留められた口が、悲鳴を上げるのを許してくれなかったのだ。
|
| サーシェスが怯んだその瞬間。
| その一瞬の間隙を突くように、開けっ放しの玄関から恐れていた存在が飛び込んできた。
|
| 這いつくばった慎二の頭上を飛び越え、薄い壁を激しく揺らし、
| 僅かに残っていた窓ガラスを衝撃波で吹き飛ばしながら。
|
|「水族館槍（アクアリウムスピア）！！」
|
| そいつはまるで青い突撃槍。
| ランスのごとき一点集中のキックが、サーシェスの強靭な鱗を容易く貫通した。
|
| 薄暗くほこりだらけのアパートの一室を、サーシェスは血と肉片でまだらに染め上げた。
| あまりの破壊力に恐竜化した肉体でも耐えきれずに血煙と化して吹き飛んだのである。
|
| 衝撃波で尻もちをつく刹那、その右腕に残った頭部。
|
|「痛みはある？ なら死にたくなるまで殴るね」
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,ィ_ノ´
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__∠ﾆヽ二ヽ--､＿
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:＼ 〃 /.:.:.:.:.:.:.:.:＜⌒ヽ｀ヽヽ.:l:.|:| ｀ヽヽ__
:.:.:.:＼ l:.:.:.l:.:.:l:.:.:.:.:.:.＼:.:.:ヽ:.:.ﾍ:.l:.:! ｀ヽヽ._
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:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ lｲ ＼:ヽヽ:.ﾄ､| ヽl:.:.:.!:/ヽ ｀
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶､ f〈 ,.≧､ヾﾄ､N_,.≦､|!ﾍ:.|'=≠ﾆ_￢､
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.￣｀ヽY:{〈弋ｼ｀ ´ 弋シ 〉 ||∠__ ｀ヾ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.lヾ＝=- ' /ﾘ｀ﾍヽﾞi
‐-､__:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ｀ヽヽ、 -- ／l ! l!| 『君が！ 死ぬまで！ 殴るのをやめない！』
｀`ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.j | l! ﾄ､ __ ィ´jノ | | l!| って、ばっちゃが言ってた！！
丶､＿＿_／ | l! |l＝=￣rﾍｲ-―┘_j
｀丶､＿, | l! |,ゝ _ヽﾉ'´￣￣::ヽ
|｀ヽ l ﾉ _,. '´::r､:rﾍヾ〉:::::::::::::',
ﾄ､__j／`¨´::::::::::::::V::ヽ_〉::::::::::::::::::l
|:::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::ﾊ__
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ヽ ヽ::::::::`ｰr---‐_´／ // j {:ヽ.:.:.:.:.:.://r‐一'
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| ラッシュではない。
|
| 刹那の腕に残った頭部から高速で再生する肉体を、そいつは貫手の連続でことごとく破壊した。
| 『殺し尽くす』つもりだ。
|
| サーシェスは外科医のような冷徹さで素早く的確な攻撃を繰り返す少女、夢宮アリカの脅威度を上げた。
|
| こいつは、不死身を殺したことがあるのだ。
| 同様の手段で、再生以上の速さで叩き続けることで。
|
| 『賢者の石』の魔力蓄積量は凄まじい。
| しかし、関係なく殺すつもりなのだ、この狂人め。
|
|「アリカ、刹那、『プール』の準備はいいぞ」
|「永久機関の完成だ。ノーベル賞はもらったな」
|
| もはや廃墟同然の、倒壊しかけたアパートの狭くて汚い流し。
| そこに慎二ともう一人、夢宮邸で見かけた女児が仲良く何かを溜めていた。
|
| 赤黒くぬめる、湿気た生物。
| 魔力で作った原始的な怪虫だ。サーシェスは理解した。
|
| あの怪虫プールにサーシェスを漬け込み、永遠に食わせるつもりだ。
| こいつらは、本気で、サーシェス対策を済ましてきていた。
|
| 殺される。
|
| こんなガキどもに、こんな所で。
| サーシェスは死の足音を聞いた。地獄の底から伸びる手を見た。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ / ', ﾊ. |Y ＼
/ .l ', ﾊ ,!,! 二ア
/イ l | ｀ ‐- -‐ ´/ ＼.V /
_, イ / .l /＼ ／ ｀.V ./
l / l ./. ＼-‐ ─イ .V
＿__l l＿＿', /｀＼. ＼__V_.|＿_,,,, l .!
＞イ | ／.´!￣ ＼ ＼ | ＼ | ﾊ ,!ヽ
／ .//! .!／ .|/-- ､ ＼ r‐‐|. ＼| ﾊ / ＼ 警戒を怠るなよ。
／ // .| .|≧zzzzs｡､ ＼ ,｡szzzzz≦ l/ ＿＿.＼ 士郎や凛を出し抜いた相手だ。
/／￣'/‐∧ .《､ .{. O .}ﾞ' ".{. O } ,》 l＿＼ ￣
// ∧. ｀ ｀¨ ´ , ｀¨ ´ / ／ .∧
.//. ＼ -､--ヽ /／ノ |ヽ＼ 必ずまだ何かする。
/.´ ｀<￣￣￣ヽ--､r‐‐‐ ､r‐‐‐ イ￣￣ } .| ｀¨¨
/──､ {￣￣ イ￣.ヽ＼!
__/::::::::::::::::::￣￣ヽ──── ´:::::::::::::イz､＿__
｡s≦i:i:/::ヽ::::::::::::::::::::::::::| |:::::::::::::::::::::::::::イ::::::::Yi:i:i:i:i:i|
,s≦|i:i:i:i:i:i:|:::::::::::::::::::::::‐-::::: | |:::::::-‐::::::::::::::::::::::::::::|i:i:i:i:i:i:i|≧l
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| そんなことを言われても、サーシェスにはもはや打つ手はなかった。
| 刹那の右腕を噛み千切っても逃げられる訳ではない。
|
| そして、あの流し台に溜められた虫のプールには不吉なものを感じる。
| あれに入れられたら終わりだ。その前に、逃げねばならない。
|
| サーシェスは、玄関から逃げようとしなかった幸運に感謝した。
| あちらから逃げていたら、正面から殴られて封殺されていただろう。
|
| ……では、現状は？
| そこではたと、あることに気が付いた。
|
|「正直、ヒヤリとさせられたよ。お前らを侮っていた。マジでヤバかったぜ」
|
| 突如実体を失い、赤黒い粒子となって飛散、マリナの近くに再構成されるサーシェス。
| 愕然とするも即座に反応し、回避のために身構える慎二に、サーシェスは苦い視線を送った。
|
|「特にてめえだ。すっかり騙されたぜ、お陰で『シェオルドレッド』を諦めにゃならねえ」
|
| ぼろ雑巾みたいな右腕での裏拳が飛んできた。
| 刹那からの攻撃をギリギリで回避して、狭い室内でアリカに殴られにくい位置を取る。
|
|「『食った』のが『刹那』で助かったぜ」
|「アリー・アル・サーシェス……！」
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l ', ｀ヽ、 /, / ∥
l ｨ⌒ｧ、 ヽ/, /. ∥
| { 〈＾ヾ, '， 〈, ./ ∥
l ∨'， '/ '， .∧ / ＼ ∥
l ∨'， '/ '， ∧/ ,r‐- _ _ ∥
{ i. ∨'， '/ '， , '~￣ ~^ｌｉY T´￣∥
＿＿＿＿＿＿＿＿＿__∨ ∨'， '/ '，′ ,ｨ' ｌｉｉ| ｜ ∥
｀` 〜 ､、 ＼ ﾏ＾ー',^ ,ﾘ ,ｲ〈/ ｌｉｉ| l .∥ そう、これからは
｀` 〜 ､、_＿ V〉 ⊥,_＿,ﾏ/ 〈/ ｌｉｉ| ﾉ''"〃 俺がガンダムって事になるな！
r､ ￣ 冖/ _＿_ ヽ l ｌｉｉ| ／ ／ |l
l ‘, 〉,r≧ t:::::ｭ`―′ .〉、､｣ ﾙ′ ／ ／ |l
| ‘, /＾`'＜≧ｭ､ / ',､ ヽ.〈 l}／ .|l
| ‘, | `'＜≧ｭ、〈 / ＞､} .／, |l
| ‘, | `ー=ﾍ ヽi'´ ,r'!／／ .|l
| ‘, l l ゝ､ﾏｭ;／ ／ .|l
| ‘, ゝ _ ＿, ､＜≧ _,.､＜ ／ |l
| ‘, ‐-- ―ｧ '´ ／ |l
| ‘, _,.､＜ ／ |l
l ‘, ,ｲ,.､＜ ／ |l
l '／／ ／ |l
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| 刹那から奪ったペルソナを起動、強固な甲冑よりも、強力な七本の剣よりも、粒子化による移動こそが真骨頂。
|
| 慎二とターニャからの呪詛の射撃を粒子化で回避、隣室に移動しながらサーシェスは高笑い。
|
|「俺は逃げさせてもらうぜ！ 四年前の10月20日だ！
| この家に入り込んだ殺人鬼が、一家四人を皆殺しにした！！」
|
| 少年少女に緊張が走る、『アンダーワールド』。
| 対策はできなくとも、その能力は把握されている。
|
|「てめえらの顔は憶えておくぜ。まあ、生き残れるのは一人だけだがな！！」
|
| 笑いながら姿を消すサーシェス、同時に、玄関からコート姿の男が現れる。
| 手には鋭いアーミーナイフ。
|
| 過去の再現、逃れる術は無し。
| 四人死ぬまで。
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l ＼ / .ヽ--ァ
l ＞- ､. ＼./.ﾄｲ竺竺ｱヽ_＿ /
ﾊ ＼/ //´, --}ア レ´ヽ 7
.ﾊ ､＿＿＿＿. ｲ ,!,! { .Oﾉ´ ､ Y ／ 1234……と。
＼ ＼ /.l .八 ／ ＞- ､ 『四人死ねばいい』だったかな？
ヽ､. ＼ ／¨ , ＜＼ ｡s≦≧s､
l | ｀.＿二=- ／ ／:::::::::::アi:i:i:i㍗:::::::::::::::::::＼
.V ヽ .￣l￣＿,xzzx､ ./ .／:::::::::::::/i:i:i:㍗:::::::::::::::::::::::::::::::＼ ./
V ＼＼):::Y {.Oハ _ ィ ／ ／::::::::::::::::/i:i:i:7:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V /
.V ＼ﾍ_.>.｀ < .／／ ／:::::::::::::::::::/i:i:i:7:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V /
＼. ｀ ∧ ｀.／ ／:::::::::::::::::::::::li:i:i:iY:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ./
| |＼ .l .＼ .／ ／:::::::::::::::::::::::::::ｲi:i:i:i:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ./
l l ヽ/＼! | ア .／､:::::::::::::::::::::::::::/::|i:i:i:i:l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ./
∧V l ∧__／:::ヽヽ:::::::::::::::: ／::::::li:i:i:i:i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V /
∧V. V ＼:::::::＼＼:::::／::::::::::::|i:i:i:i:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ./
∧V .＼:::::::＼＼:::::::::::::::::li:i:i:i:l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ./
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∧V /i:i:i:i:Y:::::::::::∧ V::::::::|i:i:i:i:i:l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V
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| 『コートの殺人鬼』が霞のようにかき消えた。
| 鮮やかな手並み、さっきまで命だったものが流し台に転がっていた。
|
|「すごいね、慎二さんの読み通りだ」
|「あれだけ仕掛けを見せられたんだ、猿でも分かるさ……マリナは？」
|
| 緊張が解けたのか、汗だくでへたり込みながら慎二。
| 『アンダーワールド』の攻撃は『命の代用品』で逸らせる事が可能という慎二の予想的中。
|
| 流し台の『虫』の命で代用できた。
|
|「死んでいない」
|「マリナ先生もだけど、せっちゃんの怪我は？」
|
|「死んでいない」
|「そうじゃなくてさぁッ」
|
| 自分用の治癒の呪符を取り出すアリカを、刹那が手で制した。
|
|「それは使うな。俺はもうガンダムになれない」
|「ペルソナを奪われたのか」
|
| ターニャが舌なめずりしながらも、刹那の腕に治癒の術を使う。
| 専門外なので血止めにもならない。
|
|「あいつ、考え事でもしてたのか？ 凡ミスだらけで助かった……マジで来てたら全滅してたぞ？」
|「オートではない遠隔操作を複数動かしていたのかもしれないな」
|
| お陰で助かったというのが、生き残った四人の総意だった。
| サーシェスの戦い方は散漫で、混乱して、必要以上に恐れていた。
|
|「アリー・アル・サーシェスは？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／⌒
-─- {/ ＿_
／⌒ --､, ---､ ＼ｰ‐-､＿_
_／ / ＼ ､ ＼ ヽ ｀丶、
／ア / ＼ ＼| ＼ V ∧-= ‘，
{{／ .′ ＼ | 〉 V ∧ ‘， 虫で追跡しているが……
／/ ｜ /＼ ｀'''ーｧ／ ', ＼ } ‘， 透明化と粒子化を併用されると厳しいな。
─‐/ / | / ＼ ／ｨ | ｀''ｰ----/
/ / / |＼, / ￣￣￣´ | | ＿＿/_、
'／ Lｨ心､l＼ﾄ、 | |斗-─-､从 | ＿__ノ ＼
/'| ｌ ﾄＩｱん坏ﾘ ＼|┼─＼_V | ＼ ＼: ＼､ ＼ ＿_
| | |入乂rｿ ｨ灯竿圷ﾐYz 八ト-ゝ ﾐﾄ､ ＼: ＼￣￣￣￣￣⌒
| I 乂| ｀￣ r 乂rソノア＾ / ∨＼ﾄ､| : : ￣: : : ＼
| 八 从 _ ー''ｱ~＾ ／ /: ⌒ヾ: : : : : : : : : : : : : : ＼
〃 ＼| ＼ 丶､ ／ ィ゛ /: : : : : : : :＼￣￣: : : : : : : : :`''ー--､
{{ ＼ ヽ ｀ ￣ ﾉ从/| /爻ァ=ミﾄ⌒⌒＼＼ー- : : : : : : : : ＼
{{ 爻＞─爻爻爻爻爻爻爻爻K ヾー〜〜─-､ ￣￣￣￣￣｀
ヾ､ 爻爻爻爻爻爻爻ｱ⌒⌒⌒ |
＼) } : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ﾉ‐-､
／ニニニ=‐＜: : : : : : : : :〈(ニﾆ :.、
／ニニニニニニﾆ＼￣￣: : : 寸ニ}: }
／´-──‐- ｀`寸ニﾆ＼: : : : : : :}─Y:|
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|「追える限り追ってくれ、方向が分かるだけで御の字だ」
|「せっちゃんとマリナ先生は『うち』につれて帰るよ」
|
| 俵のように二人を担ぎ上げるアリカ、刹那は抵抗するも、筋力差と貧血から逃れられない。
|
|「そうだな、一度合流してから全員で移動だろう。
| また襲撃を受けるかもしれないしな」
|
| 答えながらも、少なからずぼんやりしながら慎二は答えた。
| その視線は、廃墟のようなアパートと、そしてマリナと刹那に向いていた。
|
| 悲しそうで、羨ましそうで……。
| その腰に、ターニャが後ろから抱きついた。
|
| どこかに行ってしまうのを止めるかのように。
|
|「うづきは……」
|「何も言うなよ」
|
| アリカは慎二とターニャに渦巻く複雑な感情を一瞥し、深く考えるのをやめた。
|
|「慎二」
|
| 代わりに、刹那が声をかけた。
|
|「ありがとう」
|「お前のためじゃない」
|
| 強がるような返答には涙が滲んでいたが、誰もそれを指摘しなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
あの夜から、ずっと悪夢の中にいた。
神でないものを神と見誤り。
楽園でないものを楽園と誤解した。
覆水はもはや地に吸われるのみ。
私の権威は地に落ちた。
ああ、あの夜に何もかもを失った。
失った。
失ったはずなのに。
主の寵愛は、揺るぎないまま。
次回、最終幕百二十話 『12/20 その1 ミカエルの龍殺し』
果てに見るのは破滅か死か。
サーシェスをウカツまみれにするアサギの置き土産がスゴイのか
それでも生き延びるサーシェスがスゴイのか
デビルハンターは頭がおかしくなければ生き残れない
慎二とターニャ、いいよね
サーシェスしぶと.過ぎる
,r'＾''=ｧ-
, -､ , -''´_,,r ''"
＿＿＿＿＿＿＿.. ､､-ｧr| i´_ ,r'_´＿＿ _ _
￣¨``…=''|-─ﾋ!--－… '' "゛´
il｢~lii ｒ亠､ |
''rへ,、 |･._ |
_＿.. ､､---‐─…! ├^ー‐_: ===＝＝━… , -| `´ |
￣ ￣￣ ￣二ﾆ!￣ |｀¨￣ _,. -１ |¨¨ｉ | _
| ｡ ⌒L、 ＿ , ､-_''´‐''" _,ゝ._| /7 / ｀l
| rz─=,ﾆ=-─==＝z二￣ _＜ _,. - ''" _｣ ＝ ｢´ / .|
. | （ '￣// ￣｀l¨`i ｀`T'F￣ ￣丶. -＜´ l凹 | / |
｜ ／´￣rｭ`'ｰ┘ ° L0!＿ r‐､ ｀ ''┴==-┴－-､＿_/ |
…＝=ｉ=（＿ o ｡ ° ﾛ ￣ ‐┴-⊥., -‐- ､ ＿≦'､_ |
|┘ﾞｺド"－-､- - ＿ ／F､-､ ）イ￣ ￣´
￣ (Ｏ ￣￣"｀`ｰ- 二 ＿ ￣ __王ﾆ-‐ ´￣´
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 深夜の東京の空を、ローターの轟音が引き裂く。
| V-22垂直離着陸機、通称オスプレイ。
|
| 合衆国が誇るボーイング社がヘリコプター会社と共同開発した垂直離着陸可能な航空機である。
| 両翼の先端にある可動式ローターの角度を調整することで、航空機の速度と航行距離及び、
| ヘリコプターの離着陸性能の両方を兼ね備えた夢の航空機だ。
|
| 速水螺旋人の馬車道大作戦に出てきそうな外見と性能、しかしなんということだろうか。
| オスプレイには致命的弱点がない。
|
| いや、メンテの問題や操作性に多少の難はあっても、世界中で運用される現実から見れば許容できる範囲だ。
|
|「先週まで現役の海兵隊がいて良かったな！」
|
| 操縦桿を握るのはグリーンベレー『野良犬』部隊最後の生き残り、ジャジャマル。
| 荷物のように運ばれるのはやる夫と蒼星石、そしてアセム・アスノ。
|
| 相模原のJAXAから、空を飛んで一直線に東京へ。
| 深夜飛行の騒音被害を声高に騒ぎ立てるものもあるだろう。だが、燃え広がる東京と収まらぬ混乱の中で、誰が聞き入れる？
|
|「問題はどこに下ろすかだな」
|「合衆国大使館にならヘリポートぐらいありそうだお」
|
| 安全に着地して、借り物のオスプレイを預けておける場所が必要だった。
| 駐車場に停めるわけにも行かないし。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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', ,. '´ /
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く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
>'´ .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: ./ハ: :.l: :!: : : : : :l
i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ /ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ､ // V: :l: : : l : ;′
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/ 問題は、
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ トールマンに連絡つけるために
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l 志摩子さんに頼みたいのだけど
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l 『血族』本部に電波が通じないって事かな。
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「他は通じンのにな！ 東京航空管制センターの感度も良好だ！」
|
| 電波障害が起きているのは『血族』本部のみ。
| 結果、『血族』本部は東京都内にありながら陸の孤島としてゾンビに囲まれ孤立していた。
|
| やる夫たちの目的は三つ。
| 『ニュクス』の悪魔たち。『血族』本部のイナミと謎のヒロインX。そして長門弟。
|
| 彼らを集めて、できれば明日中に……いや、日付は変わっていた。
| 今日中に相模原まで送らねばならない。
|
|「大佐は『血族』に恩を売れっつってたけど、脳噛の手下やってたら悪い方で目ェ着けられンじゃね？」
|「僕の報告書に上手く書いておくよ」
|
| 合衆国軍から除籍され、現在無職のジャジャマル。
| 彼女はサイボーグ天使である仲間の帰る場所を作らねばならない。
|
|「ならばやはり、連絡は取れていないが大使館に向かおう」
|「なんでですお？」
|
|「トールマンに御用聞きして心象を良くする。ヘリポートも借りるが、軒下で休むこともあるだろう。持ちつ持たれつだ」
|「その後の足も借りれるかもだしな！」
|
| 眼下に広がるヘッドライトの運河。
| 東京を逃げ出そうとする人々の渋滞だ。車を借りて上手く移動できるかは分からないが、必要になるかもしれない。
|
| 風が強く、空模様も怪しい、やけに冷え込む夜だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼
／ ＼
／ ＼ （嫌な感じだお）
| ＼ ,＿ |
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 月も見えない暗闇の中、虚勢を張るかのように激しいローター音を轟かせるオスプレイ。
| 強烈なライトも、叫ばないと会話できないような爆音も、夜闇の虚空に吸い込まれて消えていく。
|
| やる夫は自分たちが酷く孤独で、脆弱な存在だと実感した。
| 波打ち際の木っ端、風になぶられるゴミ袋。
|
| 世界は大きく強大過ぎる。
| それを壊すようなものと、まともに戦うなんて夢のまた夢だ。
|
| 眼下の夜景も、収束しない火事も、すべて非現実的な光景で。
| 何もかもが悪い夢のようで。
|
| ただ、ただ恐ろしく。
| 身震いするほどに孤独で。
|
| 襲いかかる寒気に震えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿_ ━┓
／ 〜＼ ┏┛
／ ノ (●)＼ ・ 報道ヘリか？
. ｜ (.／) ⌒）＼ それとも消防か？
. ｜ （__ノ￣ ＼
＼ | こんな時間まで御苦労なことだろ。
＼ /
. ＼ ⊂ヽ∩
/´ (,＿ ＼.
/ ＼. ＼
./ / |. ＼ソ
（ y' .|
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| 日付も変わったというのに、夜の静けさを切り裂いて飛ぶ存在。
| 暗闇に潜みながら、やらない夫は唸った。
|
| だが、同時に独りごちる。
| あんまり頑張りすぎないでくれ。と。
|
| 見上げる空は月すら見えない曇天、それが地上を炙る火に照らされて、赤茶けて見えていた。
| 日付も変わったというのに、喧騒は収まらない。
|
| まるで生きているかのように燃え広がる火と、なす術もなく逃げる人々。
| 既に疲労の限界は越えているはずなのに、必死の消火活動を続ける消防隊。
|
| そして、やらない夫の命を狙う者ども。
| 周囲の喧騒とは裏腹に、やらない夫は孤独で、窮地だった。
|
| 目立つ動きはできない。
| 『異端審問官』は、『聖処女』ジャンヌ・ダルクはやらない夫の存在を痕跡すら認めない方針らしい。
|
| だからやらない夫の模倣である『スケアクロウ』を殺す。
| やらない夫の信奉者は殺す。
|
| やらない夫の噂をするものは殺す。
| やらない夫を目撃したものは？ 当然殺す。
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_,.. ---､
_ -'=＝"´ ￣ ¨ ｰ- _
／ ` ､
／ oヾ＼
/ ＿ ヽ＼ やらない夫殿。
/ ／,-‐-＼ o ｉ ヽ ジャンヌ様を救ってくれ……。
/ ,.=ｰ-､ i / ,.=-､ ｀ｉ| l i
i 〃 ,.-=| |｛ {( ・ ,≫ﾉ ｜ l
| | | }! ・ﾉ ｀ー--‐'" | |
| ヾ=-‐" O ０|0 | ,. -――-､
＿_| O O | i ／ ＼
／ | O i i／ ヽ
/ | O O 0 |0 / i
/ l O __ 亠､/ |
i ヽ ＿ - i __ |
l ＼ ＿ ─ | ＿ - ￣ ￣ ＼
＿| ＿／` ー------─￣ | _ -
／ l ／／ ＿--| ／
／ i / /{ O ＿ ― --ノ／
/ ヽ i |ヾヽO ___ ― 二ー ￣ //
＼| | ＼二─-Ｏ-― 二-- ￣ | |
o ﾉ ﾉ ￣￣￣￣ | |
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| ダルの言葉が思い出される。
| 救う、救いとはなんだろうか。
|
| やらない夫への執念を消し取る方法があるのだろうか。
| それとも、命を終わらせること？
|
| やらない夫は救世主ではない、救世主にはなれない。
| ただのアジテーター。デマを蒔き散らす大衆扇動家がいいところ。偽りの預言者。
|
| やらない夫は暗闇の中で唇を歪めた。
| 何が「正しくあれ」だ。『第二の夢』で声高に叫んだ言葉がやらない夫を締め上げる。
|
| いま、この都内でどれだけの人間が己や家族の命と財産を守るために戦っているのだろうか。
| そして、他人のために戦っている人は。
|
| やらない夫を苛むのは、彼らを危険にさらしているのが、他人のために『正しく』あろうとさせているのが。
|
|（自意識過剰じゃな）
|
| 一刀両断。
| やる夫にボッコボコにされた後、ずっと静かにしていたニャンコ先生がやらない夫の尻を叩いた。
|
|（今は、振り返っている場合ではあるまい！）
|「でも先生」
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＼ __ノ ／ 、 { / ＼ : ＼
ヽ （ ` ＿＿ `､ : ヽ （たわけー！！
） ヽ ヽ、 ＼ ＼ ヽ: :',
／ /⌒ヽ ＼ ヽ/::'; ＼:! 反省してどうにかなる状況か？
∨} ！ まずは貴様の仕事をこなせ、
ヽ}/ | 成功と勝利を信じよ！
l---- ‐- 、
, ,' o _ィ 考え事は老後の楽しみに取っておけ！）
入 Y , -‐'´
∧ ｀＞-' ／
｀ヽ､ ＿_ / }／ ／
＼ （ )＞‐-----‐/ ／ ／
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| やらない夫は瞬きし、頷いた。
| 確かに、今はそんな暇などない。
|
| やらない夫は暗い路地にうずくまり息を殺していた。
| 前後に散乱したゴミが鳴子の代わりをしてくれる、だが安全ではない。
|
| 浮浪者のフリをしたねずみ男が『敵』の位置を確認している。
| しかし、近付き過ぎるのは危険だった。
|
| 『敵』。
| 『聖処女』ジャンヌ率いる『異端審問官』。
|
| ダルと合流したやらない夫が聞いたのは、『異端審問官』の凶行であった。
| ジャンヌは狂乱した。元から正気だったのか疑わしいが、本格的に発狂した。
|
| 止めねばならない。
| 通常の説得は不可能だろう。
|
| では、どうするか。
|
| やらない夫が最初に考えたのは、『血族』大首領藤堂志摩子のことである。
| 通常ではない説得なら効果はあるだろう。
|
| しかし、やらない夫は死んだことになっているし、そもそも志摩子が能力を失っていると聞いていた。
| 当てにはできまい。
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＿,,,-- ､___
, -'", -'"⌒冫ﾚ'ンｰ ､
／ ／ ／／ ／ ﾊヽヽ｀ﾞヽ､
／／／ ／ / / i } }ヽ ＼＼＼
/ / / / / // / l | | ヾ＼ヽヽ ヽ
/ ./ ./ // / // /ﾊi } l | ﾄ､ヽ. ヽヽ ﾞ､ }
/ / / // / // / ,ｲ ﾉﾉ } ヽヽ ﾄ} ､ }ﾉ
,' l l // /ﾚ// ﾉ // /ﾉﾉ_,,-''弋} } } }ﾉ 私たちもヌケドナルド・トールマンから
l l l l //l レ'ｻｰナﾒノ ",,ｨﾆ手lﾉﾚ lﾉ ジャンヌの説得を依頼されていますし。
| | | l { { ｲ{,ｨｲﾆミ､ ' {:;;ﾘl ' | | | 連絡を取り合えれば協力もできたでしょうね。
l l i| i l ヾ彡{ {:;;;;ｹ| ヽ;;;ｨ |ヽl ﾄ､ヽ､
', l | l ﾊ ＼ ヽ,ｼ’ 丶 ﾉ l | l ｀ｰ二ﾆ､､
ヽヽヾ､ﾊヽヾ ､ _ ..ｨ ,ｲﾊﾉﾉ ヽ ヾ､
ﾞ､ } ﾊl ､ヽ ヽﾐ_ﾆ ､. ｀ ' ／l | y/ヽ.ヽ＼ )）
ﾞ､ i | i＼＼ ｀ﾞ''ﾒ ､,_ ／l |ﾊ V ﾊ ヽ ヾ ､ ／'
l | | l ﾊヽ ヽ （ l､l ll | } // ﾊ l ヾ} /
l | .l l l l∧ﾞ､＼､ ヽ￣''//ｰ-- ､| }}（ ⌒)
l l ﾉ ／ } } ヽ､ l { { ヾ,ヽｰ､ ﾘ ｀ｰ '
} ／ l l ヽ}ｰ '"| | | （ } } } ノ,ｨ'⌒ヽ
, <_ // } ﾄ､ | l ﾞ､ ﾌﾌ/ (( l )）
< `ｰ､ヽ // ﾉﾉ ヽ l ヽ ｀メノﾉ l ン
/ ｀ヽ､＼` ((_つ)／' ヽ|_,,
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| それどころか『血族』はジャンヌ討伐を視野に入れた依頼を受けていた。
| いくつかのすれ違いやゾンビがなければ……というのは高望みか。
|
| 虫の羽音に、やらない夫は顔を上げた。
| うっすらと漂わせた、墨目の『冥府の瘴気』。それを突破して活動する虫けらなどいない。
|
| そもそも、この真冬だ。
| 虫は活動を控え、暖かい土中や地下に潜っているものである。
|
| 羽虫が突如、空間を引き裂いた。大人の腕程もある暗褐色の触腕が鞭のように振るわれた。。
| その直前、すでにやらない夫は身を翻していた。
|
| 虫ではない、当然シグのような呪術ではない。
| 空間を引き裂いたのは蛸の足。羽音も、空間を穴を開ける音である。
|
| その音は、やらない夫や麻呂のZIP術によく似ていた。
| 流派の違いはあれど、召喚術に違いなし。
|
|「見つけましたぞ！ ふふははは！ 神の目はどんな悪も見逃しはしない！」
|
| 荒れ狂う触腕が路地のゴミを粉砕しエアコンの室外機を叩き壊す。
| 破砕音に負けぬ声量、なんとも近所迷惑。
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: : : : : : /: : : : : : : : : : : : :／ ＼: : : : : : ／ ＼: : : : : : : : : : : :＼――――‐
―――― /: : : : :＿_ : : : : :/ ｀ヾ:.:／ ＼: : : : : : : : : : : ＼
/: : : ／: : : : : : : / ＼ ／ ｀ヾ: :＼: : : : : : : : :ヽ
∨: /: : : : : : : : / ＼ ／ Ｖ: : :＼ : : : : : : /
∨: : : :_:_: : : / ＼: : : : . . . . . : : : ;. ´ '. ∨: : : ＼ : : : / それにしてもちょこまかと
│: : / __ ｀ヾ! ヽ.,＿＿＿ ＼ : : : : : : : ／ ＿＿ﾉ ﾐ／￣ヽ:ヽ.:./ よく走るネズミですなあ。
│: : | l ヽ | ／ ＼ ヽ : : : ／ ,. '" ｀ヽ ﾘ ｲ l |: : /
│: : | l | i /-―- ., :＼ ､／ ／ ＿＿__ : ! ´ ! l |: : | …………ガルガリ！！
│: : ｌ :,. | { ぃγ77ヽ ＼ : ＼ ハ ／/ ／ γ77ヽ 〉 } ! ′: !
│: : :ヽ :, :,＼l//ﾉ ヽ ! ヽ ノ､∧ ／ ! / {////' / / / /: : 八
/: : : : : :＼ __:, :, ｀ー―-- 〉 ／／ヽ /´ヽ ､ /＿＿,.｀＜ / ′'´／: : : : : ﾍ―――‐
―――／イ: : : : : : : ﾊ :, ヽ ＿_,. '"／ 〈 | | :, ＼｀ヽ ＿＿,.ノ ' ／: : : : : : r ､ﾍ..:..: : :
: : :／.: :.|: :∧: : : : : ゝ.,_! ／ '. | | / ＼ /イ: : : : : : : : ′ ヾ＼ : :
: : : : : |: ; | : |: : : : : :∧ ／ :, │ | / ＼ /: : : : : : : : : : ′ : : `: : :
: : : : : ∨ !:.:.|: : : : : : :∧ / ｀ | | ヽ /: : : : : /!: : /|:| : : : : : : :
: : : : : : : !: :|＼: : : : : :∧ ,,.， ｀ヽ | | ／ /: : : : : /│:/: |:| : : : : : : :
: : : : : : : 乂| : ＼: : : : :ﾊ ヾ::..､＿ ｀ｰ―‐´ _,,.. イﾌ .〃: : : ／ : |/ : ﾘ .: : : : : :
: : : : : : : : : ! : : :＼: : : ﾊヽ ＼ 〉 ､ニニニニニニイ:::::／ '/ｲ: ／: : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : ＼: :ﾍ ＼ ＼ﾍ:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:ノ／ ／./ |/ : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : : :| ｀ヾ 丶 ｀ ー――‐ ´ ／ │ : : : : : : : : : : : : :
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|「墨目！」「お任せあれ！」
|
| アスファルトを泳ぐサメが、やらない夫の足に喰らいつく。
| しかし、横から飛び込んだ墨目によるナタの一撃でインターセプト。
|
| 驚異的な跳躍力と、腕から伸ばしたヒゲ槍で屋根まで逃れたやらない夫。
| 背後から激しい羽音。留まらずに屋根を跳ぶ。
|
| 逃げながら、やらない夫はジル・ド・レの召喚術をなんとなく理解してきた。
| 実体と非実体の狭間、召喚寸前の状態で待機させ、一瞬だけ一部分だけ召喚することで奇襲的効果を狙うのだ。
|
| しかし魔力の消耗が激しそうだ。
| 他にも目的があるのかもしれない。
|
|「来たれ！ 天使 パワー！！」
|「ワシが最強じゃあ！」
|
| 冠を頂いた恐竜のような怪物が立ちふさがる、見たことのある悪魔だ。
| 『異端審問官』が複数人で召喚する天使で、戦闘力が高い。
|
| しかし凶暴性が高いので人気のないところでしか使ってこなかった。
|
| 先日までは。
|
| しかし、現在は深夜とはいえ人々は活動している。
| 人気のない場所を選んて逃げてきたやらない夫だ、現在は町工場の上。
|
| もはや、なりふり構わないということだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿＿＿＿＿ ￣＼----------------------- ―― ＿
―――――――――‐￣＼------- ￣＼--------------- -
――――――――――― ＼-----l ━╋＼------------- - それにしても美人で巨乳のワシ（悪魔型）のAAが
―――――――――――― l-----＼ ┃ ノ------------ - これしかないってどういうことじゃ！！？
―――――――――― ／三l --------------------- - だからお前は殺す！
三三三三三 ／三三／三三三ﾉ-------------------- - 朝飯はご褒美ステーキじゃな！
三三三／￣三三≦三／三l／ ---- /l/ｌ /l---------
三三- 三三／￣三三 = ／------ / !/ !/ |-/- ／
／￣三三 三／ニ ／￣ ------- /／// |/l／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 怪物の血の冠が、光輝のように広がった。
| 背中に負った血の車輪、車軸の一本一本が血液の長剣。
|
| 風車のように回転したそれが連続射撃、トタン屋根を引き裂きアンテナをへし折り電信柱を粉砕する。
| こいつは勢いばかりで狙いが甘い、やらない夫は十分に引き付けてから跳ね避けた。
|
| 着地点に羽音、空間を切り裂いて現れたサメに、やらない夫は左足を与えた。
|
|「釣りの時間だろ！」
|「それはワシの！ パクリじゃパクリ！！」
|
| パクリだった。
| やらない夫の左足を引き裂いて現れたヒゲ槍の車輪が、バズソーめいてサメを真っ二つ。
|
|「痛え！ 骨と神経に響く！！ 尸良の馬鹿！」
|「阿呆が！」
|
| エクスカリバーで足を治療しながらサメのネギトロに着地。
| 頭上に羽音。空間を裂いて襲いかかる怒涛のような触腕が工場の屋根を割り砕く。
|
| 跳んで逃げるやらない夫、追いかける怪物。
| そのがら空きの土手っ腹に、地上から伸びた鎖ナイフが突き刺さる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ィ´{｀ヽ } ｀}＿ }
（／ ＿人 ヽ/ イ＿ ミー'/
｀ー⌒ヽ } ,イ / ィ⌒ヽ＿ﾘ⌒
_ノｒ／⌒ﾘ /アー ァ=､_ ＿ ､
,,ィ-ﾑｆ =彡'ーイｊ ノ ´ ー=＝‐´￣｀ヾ、 サマナー！
ィ{ ｒｸ八 ￣ノ ィ ￣ミ ､ ヽ.､ 行ってくださいませ！
／ニ≧≠７ ＿ 二彡´ ィ⌒ 八＿ノ V}
ﾏニニニフ´⌒ヽ ｀ー ＝ ｀ヾハ､＿ V{
ヾイ{｀マ ー--≧ァ＝ﾐ､ｙ⌒ヽY｀ー⌒ j7
＿＿ー=＝ｭ､ _У人≧ｭ--ィ＜ ハ ヾ､ _ﾘ }｀ヽ
ニニ三三三ニニニニ≠ー=ｧ ｀{ニﾆ≠」V__ｊ＿ミｰ [｀ ー-- -- ＿＿＿ノ ﾊ
｀¨⌒￣￣￣イ 「_ィ_ノ_ﾌ´＝ｧー―ｒｧ＝=ｧ==ニ≧ー―ｧ＿＿＿ ｊ}
/八 ＿_ｊ｣｀ヽ）ー＜ ｊ/｀ マ＜￣ ｲ7ヽ /
｀マ≧メｭ--ｙ'⌒￣ｊ{ ｀ ｀ ´ー‐=ｆ ｀ﾏ⌒ｊ ィ７ ｀ ´
｀ﾒ､ニｒ‐ﾏ ヾ ､ ヾｒ｣/ノ ィﾐy ′
ノ人ト､ ＼ ､＿ ,,ｚイ ﾚ′
´ ） ＿＿,,ｚｧ､_人＿ -≠｀ヽ У
＿_ マ､ハ} ｀ヾｭ､ ｀７ ￣ ,, イ/⌒ｰ
＿ｚ≠八ｚ7￣´ ﾏﾆゝｭー彡´ 7
ｚ≠7zイ7ｚ人｢ }ニニｭ/ ヽ
ノ｀マ_ｚイ´ ＼ 八ー-ｆ､ ~｀ ､
ァ´ ｀ヽ ヽ イ⌒7ニニ｢ ヽ
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|「サンキュー墨目！」
|「何じゃキサマ！ ワシの華麗な活躍を邪魔するなら容赦は痛い痛い！」
|
| 容赦なく大鉈を振り下ろす墨目に怪物を任せて、やらない夫は逃げる。
| どこへ？ できるだけ人気のない場所へ。民間人を巻き込まない場所へ。
|
| 同時に可能な限り、火事の起きない場所がいいのだけれど。
|
|「見、つけ……た……！！」
|
| 見つかった。
|
| 全身が染みだらけの汚れた包帯、焼け爛れてかすれた声、一見男か女かも判別し難い半死人。
| だがその実は、他の『異端審問官』を集めても足元にも及ばない無敵の怪人。
|
| 『聖処女』ジャンヌ・ダルク！
|
|「『ミカエル』よ……」
|
| ジャンヌが輝ける長剣を掲げた、無敵の軍旗だけで攻撃性能に劣るジャンヌが、市国から取り寄せた範囲殲滅兵器。
| どこの誰が、あんな危険な品物の使用許可を与えたのだ。やらない夫は憤然とした。
|
| 頭の芯が熱くなる、胸が酷く痛んだ。
| 背後から迫るジル・ド・レの使い魔、屋根下から燃える瞳で睨み上げるジャンヌ・ダルク。
|
| こいつらが、こいつらを……ダルは。
| やらない夫の感傷は、大きな隙とはなり得なかった。
|
| ジャンヌの攻撃を誘うような跳躍。
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,,--ﾞﾞﾞﾞヽ -,ヾミヽ ヽ;;| |;;i /;/ ﾉ
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,,-´´￣￣￣ニゞ;;;;;;;;;i;;;´;;;彡ﾞﾞﾞﾞﾞ｀丶、
＿＿,,,,,,, ,,,-=彳ﾞﾞ彳彡ｲ;;;;;;;;ﾄ、ミゞ＼
| |卞ニ＜ ,,ノﾞﾞ ／/;;/i;;i;;;ヾ;ヽ ヾﾘ ＼
|＼ ﾍ￣￣＼-,,, / /;/ i;;i |;;| ﾄ ゞi ヾ
| ＼ ﾍ O ＼＼/ｿ i;;i |;i ﾘ ヾi |
|￣￣─二二彡´彡弋i;;i、 |;i ∥ ∥
|,,,,-''''´´￣ / /＼勹ﾍ | |
| ,,,,-'乍ニ＼ ﾍ
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,,,-''´７ ﾑ＼二＿＿｀｀７ / i ﾍ やら、ない……夫ォおッッ！！
- / ／{!´^ゞ'エｴ⊥７' ./／ ,--,,, ﾍ
＼ l /三:i!:::::::::::::::::::::::/ /ｲ ｌ''´ ´''
ヘ .i l三:.l!￣｀ヽ :::::/ / .l
＼. l三:.ヾ ヾｿ/ / l
＼ヽ ＼｀ミﾑ二ｴ^/' i l
｀＼V ｀ﾐ＝-─/ / .ｌ
γ＼ / ＼＼ l
ヽ| ｀ミ-,, /￣｀---ゝ ＼ l
l´ i ＼ ｀￣ ´ ＼|
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| 溢れる憤怒そのものののような、かすれた雄叫び。
| ジャンヌの長剣が蛇のようにのたうつ。いや、のたうつのは長剣から溢れた光だ。
|
| 振るわれる炎の刃。目が眩む、熱で皮膚がチリチリする。
| ダルはその剣を『ドラゴンベイン・オブ・ミカエル』と呼んでいた。
|
| 『大天使ミカエルの龍殺し』。それが事実なら気軽に市国から持ち出せるものではない。
| 『螺旋王』の『天の沼矛』級の神話武器である。
|
| やらない夫はこれを止めねばならない。
| なにせ、この炎は触れた生物の生命力そのものを燃やす。燃え尽きるまで消えない炎は。
|
| 何が《聖火》だ。ふざけんな地獄か。
| アグニ級の祝福者でなければ間違いなく死ぬ。ジャンヌは東京をファイアパンチするつもりだ。
|
| …………救いは、物質に燃え移っている場合は消えること。
| 召喚した悪魔なら帰還させれば助かること。
|
| しかし、人間は絶対に助からない。
| ダルはやらない夫の前でそれを身をもって教えてくれた。
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／＼ ／ ＼
. | （●）（●） │
. /| （__人__） .|
/ ,| ｀ ⌒´ | ジャンヌ！
. ィ´ /''ヽ ﾉ
(⌒) ｲi一‐ヽ、 / お前は―――
7 .K.`ｰ--→―― ）
ヽ/ ヾ--‐―‐ /
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| その後の言葉が出ない。
| ダルは友だった。同時に『異端審問官』だった。
|
| 彼はやらない夫を助けてくれたけれど、忠誠はジャンヌに向いていた。
| 主君のためを考え、動き、命がけの直訴をして。
|
| そして。
|
|「フフフハハハ！ 知れたことですよ備府やらない夫！
| 我らが『聖処女』ジャンヌに逆らうこと、疑問を持つことは主に疑問を持つに等しい！！ それは、つまり！！」
|
| 蜘蛛のような動きで屋根に上がってきたジル・ド・レが叫ぶ。
| 適切な返答、こいつニュータイプかな？
|
| その証拠に、虚空を蹴って炎から逃れたやらない夫の着地点にひび割れ。
| やらない夫は空中でニャンコ先生を召喚した。
|
|「ぬぬぬぬぁんという重罪！ 信じられない！ 許されない！
| あの男は死を持って償いました！ 炎によって浄化されました！ しかし、しかぁし！！
|
| ジャンヌの手による許しがなければ！ 苦しみ抜いて死ぬべき！
| もっともっと、痛みと絶望で苦しみ抜いてからぁ！」
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ゝ /. : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
） ( ' : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
/{ ⌒ ヽ､_.:.:.:.:.:.:.__. ' ,
ん｀ ,ィ:::‐ 、 ￣ ,ィ' ¨丁`ヽ ´_
′ /._ !:::::::lヽ ／ !::::::::: | ヽ 黙っとれ。
; ヽ. ｀ヽ:::! } { _.⊥ -‐┴…- ｀
! ヽ｀ ｀` ___ノ
' ____ノ
'、 ( _ゝノ )
ヽ `T´ ヽ.___. ィ´
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| ニャンコ先生の電撃が四方八方に放電。空間のひび割れを直撃、ジャンヌを牽制、ジル・ド・レを屋根から叩き落とす。
|
| やらない夫が自分の中で荒れ狂う感情に振り回されているのとは裏腹に、ニャンコ先生は冷め切っていた。
| いや、そうは言っても彼も十分に腹に据えかねていた。
|
| ダルのことを、ニャンコ先生も憎からず思っていた。
| 愚直で、不器用で、『異端審問官』には似合わないくらいに優しい。
|
| そのダルを。
| ジャンヌとジルは殺したのだ。
|
|
|
|
| 秋葉原から逃れたやらない夫と合流したダルは、ジャンヌの狂気と『ミカエルの龍殺し』の説明をした。
| どうにかしてジャンヌを止めたい、命をかけてでも。
|
| ダルの想いは真摯だった。
| やらない夫に応えない理由はなかった。
|
| ジャンヌの狂気の原因は、やらない夫であると自覚していた。
| そしてその結果が。
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ヽ;;;;;0;;;;;,' ／::;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;て;;;;;ッ､,､,
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「……やらない、夫ぉ……お！」
|「ジャンヌー！！」
|
| 強く呼び合い、互いを求め合い、ジャンヌの炎がやらない夫に襲いかかる。
| やらない夫は『エクスカリバー』を全力稼働、重力と魔力で作り出した渦で炎を弾く。
|
| ぶっ飛ばしてやる！ そんな気持ちがぐらぐらと煮え立つ。
| だが、肩の上でニャンコ先生が爪を立てた。落ち着け、やめろ！
|
|「逃げる、な……ァ！」
|「偽救世主！ まがい物の詐欺師め！ ジャンヌに敗れてその存在を否定されるのがそんなに恐ろしいですか！？」
|
| 下手な挑発だった。
| 普段ならば意に介さない程度の。
|
|「今さら負けた程度で否定できるか！！ オレは！ 力は借り物名前は上滑りやることなすこと空疎で空虚！
| 誰よりオレが知ってんだろ！ オレは！！」
|
|「救世主……だッ！」
|
| 打ちひしがれるやらない夫に応えたのは、他ならぬしわがれた声で。
|
|「やらない夫……お前、は……私の……」
|
| それ以上の言葉は幸か不幸か発されることなく終わった。
| なぜなら市民の悲鳴が響き渡り、『異端審問官』たちは浮足立ったからである。
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-―-､fｱ⌒ｒ'⌒弌=ミ
／ ´￣ ＞-‐===ミ丶､ ＼ ､＿＿_
. ´ ` ＼} ｚ'⌒
／ ; ﾄ､ :, ∨⌒ヾ(
､___. ィ ; / | ＼__,| ′ : ＼ うぎゃあー！
,′ .|／j 、 .N ´￣｜ ! j .| 火事です！ こっちでも火事ですよー！
|´￣ ＼ | __ﾉj ｜ﾉ乂_
i| | | ___ ｀ ／￣从 :K
从. ､乂／￣ _′vﾍ./ｲ .乂
／ i| .厂 ､ ( ﾉ 人|､jﾉ⌒
ﾉｲ人 个ｓ｡.. 二 イＬ＿__
jｒ＜￣´jｱ＾∨´ ／⌒ ､
_,／ >､ i{ ／ __／{ ﾏ=-―‐-
／⌒ >'"´弌_､_ｊ{厶イノ V ,.弌∠_
く⌒＼i{ ア7厂￣ ‘， ／ -‐｀7
r ､ `／.八 ∠___{( ‘，/ ／V/ /
. 八 ､__ ,. ｧ'´ ィ＞'⌒Ｌ＿j＼ ､ ‘{ ｨ( `＜
`､ ＼＼ ／ ｨf「￣―r- .,_ ｀ ＼ ﾊ ____>､ 、
ｒ ､〉 ',／ _. ィ( .八 .} ｀¨¨ ―- ､ 寸 ＼ ＼ ＿__
ｰ 、 _. ｨｆ´ ＼_,ﾉ /＼ﾉ 丶、 `ー--‐ '"＿__ノ
＼__, ィ( ／ ′ /_／ ｀＼ ――く__厂
／￣￣￣￣¨¨ →- .,_{ `ー '⌒¨
_∠ ＿/ / ∨/
_,. ＿ ＼ ./ /￣ ∨/
／´ ／⌒＼ 丶､} }ｚ-=≦ V/
∨ ／ ＼ V厶 -―――- j{_
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| 異様に通る声、やらない夫はそれが誰なのか即座に理解した。
| 会うのは二度目。前回は『学園封鎖』で、やらない夫の放送を英語に同時翻訳してくれた。
|
|「構いません！ 目撃者など消してしまぐぼら！？」
|
| 飛び出した目をギョロつかせて叫ぶジルが潰れたカエルみたいな声を上げて吹き飛んだ。
| 高所からの落下、なかなか死なない頑丈さ。
|
| ジルを吹き飛ばしたのは離れた場所からの艦砲射撃。
| やらない夫の胸に痛みが走る。
|
| だが、そんな暇はない。やらない夫は電信柱を駆け上がり、壁と屋根を蹴り、降り注ぐ砲撃に警戒しながら逃走へ。
| しかし追いすがる炎、ジャンヌの『ミカエルの龍殺し』が、射線上の全てを燃やしながら迫る。
|
| やらない夫は歯噛みした。
| あれを止めなければ、火事は増える一方だ。しかし、止める力はない。ジャンヌを倒す力も。
|
| 蛇のようにのたうち踊る炎の奔流。
| 不意に、飛び出す影。サッカーボール。
|
| ⇔逆流。
|
| 飛来したボールを起点に、炎の蛇が逆転した。一転ジャンヌを襲う炎。
| その能力の持ち主を、やらない夫はよく知っていた。
|
|「最後尾に並びな聖女サマ、お兄ちゃんの隣は来世まで埋まってるでアフロ」
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☆ 次回予告！
勇気とは踏み出すことだ。
一寸先すら見えぬ闇の中に。
踏み外せば奈落に落ちる強風の崖に。
覚悟と決意を持って踏み出すことだ。
勇気なくして栄光はなく。
踏み出さなければ手は届かない。
だが君よ。
一つだけ気をつけ給え。
次回、最終幕百二十一話『12/20 その2 デッドライン』
果てに見るのは破滅か死か。
ダルよ、炎に包まれてあれ
クレイジーサイコメサイアvsクレイジーアフロシスター
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｜⊥⊥|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿⊂⊃||⊂⊃ _Χ_Χ_|厚_生_病_院＿＿_
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ΤｌΤｌΤｌΤｌΤｌΤ工工工ΤｌΤｌΤｌΤ{王王王王王王王王王||王王王王王王王王王王王王王
｜|｜|｜|｜|｜|｜ΤΤΤ｜|｜|｜|｜|ΤΤΤΤΤΤΤΤΤ||ΤΤΤΤΤ丁 -┬―┐ΤΤ ＿
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| 連続多発テロ開始からすでに半日。しかし未だ東京都内は混迷を極めていた。
| さもありなん。
|
| 燃え広がる火の手に消火は間に合わず、無差別テロの影響で市民同士が疑心暗鬼。
| 至る所の交通事故の影響で渋滞は伸び続け、病院へ道すら確保できない。
|
| そして終わらない停電、電波障害。
| 帰宅難民たちは右往左往し、自宅に籠もる人々も戦々恐々。
|
| 聖華大学病院は停電の地域内にあったが、非常電源によって正常に稼働していた。
| 怪我人の受け入れはいつでも可能だけれど、出ていった救急車は戻らないし、医者も看護師も帰れない。
|
| 順番に仮眠を取って救急搬送に臨む彼らは医療従事者の鑑であろう。
| と、人目を避けて病室に侵入した少年少女は考えていた。
|
|「結局みんな寝てないの？ 『塔』の方は大丈夫かなあ」
|「実のところ、翠星石さんたちに任せれば到達できる計算だ」
|
| 意識不明のまま、『夢の塔』の踏破を続ける翠星石、北斗トキ。
| そしてペルソナ使いで『滅ぼすもの』を有する早瀬浩一と島津由乃。
|
| この四人がいれば余裕のはずである。
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,. ´￣｀` _、
／ ∨＼
/ ／／! ﾊ ∧∨/ﾊ
/／/,//∧/∧//∧!//ﾊ
//////i////z∨/////ヾ!
|//ｲ/|:::!/|/;|／}ﾊ///〈-,|＿_,. .-､
ﾊ/!::!ヾ:::W∨-tチLﾍ└ノゝ-ヽ : . ;￣: . ､_,.-､ なんの妨害も無ければ、な。
}∧才ｰ_ﾌ弋￣_ノ /W{:. :.､: . : . : . :/:,:,:.廴__
/ / /／｀ｰｧ:::: ｲ :. l〉: .;: . : /:,:'. : . : . |
{ ; ' ∠￣=-:: ／ :.. /;.': . :／: . : ._: -:ﾍ:i
| ; ; F个 -イ:|ｰ＜:.:. :.:./;.': .／: . : ／: . : . :_ヽ
| | !‐:-､|: !: . ＼＿_／;.'／: ._: -.": . : . :/: . : ∨
| ィ |: . : . ＼＼: :. : ./:／: ／: . : . : . : . /: . : . : ∨
八__／ヽ┤: , : . :!:｀iヽヾ: ./: ／:!: . : .ヽ: . : ./: . : . : . : ∨
〉: ._:_.／!: !:/: . : ､!: ||人: . : . : |:|: . :､: . ヾ:. i: . : . : i : . : ヽ
＼: . : . :|: ﾄ､:_._: .ヽ/l| ＼: . : !:|: . : .＼:. :ヾ; . : . : i;. : . : .∨
）ヽ: . : .|: .ヾ::､ : 〉ﾙ> ＼: jﾈ: . : .:;:;:≧=-､ : . : i: . : . : ∨
＼:_. : . |; . :}｀: ./｀"′ .}ヽ｀: . : . : . : ;:;:;:;:;ヽ: . : i: . : . : .∨
}: . : . :; . :!; . :〉 .!: .ヽ: . : . : . : . : . : ‘，: ;! : . : . : ∨
|: . : . :; . : . f λ: .:;:i: . : . : . : . :;:;:;:;:;У: . : . : . : .!
i: . : . : . : ./ ./:ヽ:_._;:!:_._:_._:_. : . : . :'〈: . : . : . : . :|
＞- _._:/ /: ._:_.／: . : . : |: . : . :／;:!: ._: . : . : .|
ノ: ;:／: . : . : . : .|: . :／: ;.;:i: /;:/: . : . ;
∧: . : . : . : . : . : L:_. :,.;:;:;:;:|:.／: . : /:/
__/＼: . : ._:_._;, =-:‐. :_.二 /:´. : . : 〈;/
_ -=_¨＼-_-_￣-ヾ-_- ≦_-_-_ハ: . : . : . ‘，
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| 合流はできなくても電話連絡はできていた。
| アリー・アル・サーシェスと交戦したアリカと刹那から、ペルソナ使いの全員に連絡がされている。
|
| サーシェスはマリナ・イスマイールから『法務官』を奪おうとし、失敗した。
| その目的を推理すると、『夢の塔』攻略だろうとは察しがつく。
|
| 翠星石たちより先に頂点にある『ビスケットハンマー』を獲得したいのだろう。
| それでどうするつもりかまでは分からないが、砂糖菓子を砕くみたいに地球を割れる超兵器だ。
|
| アリー・アル・サーシェスのような戦争中毒者の手にはどうあっても渡すわけには行かない。
|
| アリカはマリナと重傷の刹那を保護して安全な場所に移動中。
| 彼女のブレインである間桐慎二は、サーシェスの今後の行動を推測した。
|
| そして結論、時間こそ分からないが高い可能性でこの聖華大学病院を攻撃する。
| 理由は簡単、早瀬浩一と島津由乃が昏睡状態で入院中だからだ。
|
| サーシェスが最も排除したいのはトキだろう。
| 卓越した戦闘能力、常人離れした感覚、『夢の塔』で遭遇時もサーシェスは一蹴された。
|
| しかし、トキがどこにいるのかは『血族』内部でも知る者は少ない。
| 現実側のトキを狙うのは難しかろう。
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／::＼,.へ._
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ノ::::::::／:::::::}/:::ヾ::＼＼
l:::::::/:::{::::{ヾﾞ厶}:::::::::::::!:::|
/ｲ::〈:::::ﾊ::::〉 く:::ﾊ:::::/:l::ゝ
}:|:::):⌒ヾ ｰｿ-);ﾉ::ﾊ^ それでも狙われたら？
∨:{ ｰ＝' ==-´}/|ｿ
乂'､ l /.ｲ 知るか。
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| その上最強の護衛がすいるはずだ。
| トキの兄、ラオウである。
|
| 片腕を失ったとはいえ、その実力は未だに常人離れしている。
| 同様に『血族』本部に眠る翠星石には『血族』の精鋭が付いている。
|
| ならば、フリーになってしまっている浩一と由乃を守るのが肝要だ。
| という訳で、動けるペルソナ使いの半数が聖華大学病院に集結していた。
|
| 上条当麻、雨宮夕日、白雪ひめ、花京院典明、美樹さやか、藤木源之助。
| 元『破滅願望者』チームである。
|
| 残りのメンバーはアリカの呼びかけに応じて彼女の元に集結中。
| 特に長門とロランは相模原まで行かなければならないとかなんとか。
|
| 一部、連絡は付いたが個人的理由で合流を拒んだやらない子たちもいるが、想定の範囲内だ。
| 元『破滅願望者』たちは不寝番を開始した。
|
|「とは言え、僕らペルソナ使いではアリー・アル・サーシェスに勝ち目がない」
|
| 雨宮夕日は冷徹に、正確に状況を分析していた。
|
|「ペルソナ能力はサーシェスの『法務官』には効かない。そして『通常兵器との併用』という奥の手は刹那が使用済みだ」
|「つまり上条さんたちは本丸が落とされる前の時間稼ぎ、肉の壁になればいいんだな？」
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(⌒Y⌒)
_, - ､ (_ _,ノ
( 〈 )'
｀(_ ノ
｀＼ , "´￣｀" ｰ-､_ , -‐ 、
／ ／ └､ (⌒ )
／´! , -‐く｀) ｣/ l ', ＿ ) 〈
l 〈 ⌒｀} {: . {､_/l } ´'ー､__,ノ
. ＼ /´￣ﾊ ⌒ﾉﾉ`￢ __{乂トl-ﾚ{ ノl__ ,
: . ｀¨| ヽ｀ｱ" .／ ／ ＼ ｀jナ' 〃
＞: : . . | ﾉｰ／ ／ _￣ , ､‐ く 〈 それって捨て駒ってコトじゃん！
: : : : . . ..〈 r--‐='´ /ﾊ ＼(_'' `ー┐ //｀_, -‐ 、 死んじゃうよ！
＞: : : : : :丶-＞ / | ヽ >､二ﾆ´イ | ｛/､丶 |
{: : : : : : : : : :'ｰ--‐1 |＠ｰｧﾍ二ノ / / |.〈ヽ ﾉ
ー-/⌒ヽ : : : :〃 Ｊ/ / / ／ /｀Y´〈`ｰｧく
-‐- ､｛ >rｲ ／ {／[X]＜./ | | ー 〉
｀ '"´￣いﾍ ／｀ﾌ´／: : {_ノ':J | ／'ｰ- 、
⌒^ ｰi_]二K-―-､: : : :＼ } /: . ﾉ
、 , -‐ ､ / l 〉: : : : :丶-イ--‐ '´
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| 改めて状況を理解した白雪ひめが悲鳴をあげる。
| だが、集まった他の五人の顔つきは違う。
|
|「死なせぬ」
|
| ペルソナではなく物理剣術を扱う藤木源之助。彼こそがこのチームの鍵だ。
| 源之助だけが戦力として換算できる。源之助ならばサーシェスを切れる。
|
| すでに一度、ジョニィ・ジョースターの姿をしたサーシェスを、源之助は両断している。
| そして今回はその時のような間に合せの武器ではなく、本物の刃物を用意していた。
|
| 『七丁念仏』。
|
| 藤木源之助の師匠、『九鬼』の一角として敵対者を震え上がらせた剣鬼、岩本虎眼の形見である。
| 切られた者がその瞬間は傷に気付かず、七丁の距離を歩いてから死に至るという。
|
| 呪われた武器のようにも聞こえるが、それほどに鋭利な切れ味ということだ。
| その刃を持ってすれば、サーシェスを寸断することも容易かろう。
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,r/ヽ-ヘrｆ´ﾄ､,.‐､-､_
l｀ｰﾆ三== 三ヽ ヽ , ヽ＼ヽ┐ ,. ‐- ､
rﾍヽ'´ ／二ニ ＼il ｆ/ //| ／￣＼ ＼ ＼
Eミﾐヽ ｀ｰ-==三二 ＼//／／,-､ ヽ‐､ l /
∨ミヽ ‐- ..,,_ ､ __ヽ＼///／ l i､ /__
lミﾐ ＼ / ｀丶､ ./ /l l ﾊ .l l /
. lミ＝=ﾆ二 _,,,..l F-丶--'´‐l /,ﾉヽ! i ヽ､
. /==ﾆ二-‐_,,.. l l /// ｆ＼ ヽ ＼ l 僕もこんな所で死ぬのはごめんです。
. >'ﾞ丶ヲフ-‐ノ__ノ＼,! ／/ﾉ └‐-､ ﾉ ヽ
/,l ^iヽヽ ／"＝===_=_== ﾉ/ｨｧ/ ヽ l ﾉ } でもね、ここで無様に生き永らえても
///.l ﾚ ﾄ ∨ '￣､ツヽ !.<.i 'ｰ､／ｆ 代わりに世界が滅ぶのならば
/// /∧ヽ-､ / |! i i l .l r'´ ﾉ ﾊ 僕は喜んで死を選ぶ。
// // ヽ--! l. ! ヽ ,. - ｧ ￣＝=‐_-ﾉ_ it‐'´ ＼
／// ノ／¨＼ ! ｀￣ l { ﾉノ｀ｰ ／
/ （ ）＼ ､＼＼ .. -‐''"￣/ T-‐ ':::::::/
/ ¨ ＼｀丶 ＼ "￣ i _ -‐''":::::::::::／ ／
-‐､ / ＼ ｀丶､＼＼ /_.. -‐ ¨:::::::::,..､ __ /､ ／
＼ / } ヽ l ¨¨:::::::::::::::::::::::::/ ヽ＼ ／
＼＼ / / ￣､¨'''‐- ..,,__,,.ノ ｀ヽヽ'､
＼ ¨ / / ＼
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| 花京院典明は、戦いの中でかけがえのない友を失っていた。
| 仇は他ならぬサーシェス。倒すのは難しい相手。
|
| しかし、命を懸けて一矢報いることは？ 可能だろう。
| 花京院は死にたくない。けれども結果的に生命を失う覚悟は
あった。
|
| 花京院の親友、球磨川禊は『破滅願望者』の一員で、仲間であり友であった。
| 上条当麻も雨宮夕日も、煮えたぎる想いは同じだった。球磨川を殺し、咲夜を斬った奴に一発くれてやらねば収まらない。
|
|「おかしいよ……」
|「ひめは、さ。そういう普通な所がいいんだよ」
|
| 普段は寡黙な美樹さやかが、ふにゃりとした笑みを浮かべた。
| 恋に破れ、世界を呪い、共に歩く友を得てもまだ闇の中にいるさやか。
|
| 二度目の奇跡はない。
| さやかの幼なじみは奇跡的に回復した。
|
| しかし、島津由乃の心臓は現代医学では成すすべがない。
| さやかは祈るしかない。隣にいるしかない。
|
| あるいは。
|
|「ねえ、みんな。もしも、もしもさ……みんなで生きて帰れて全部終わったら、何したい？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ／:..:..:..:./:..:..:..:..:..:.|:..:..:..:..:..:..ヽ:..:..:..:..:.丶:..:.＼
/:..:..:..:..:./:..:..: |:..:..:..:|:..:..＼:..:..:..ﾍ:..:ヽ:..:..:..:..:..:..:丶
. /:..:..:..:..:..,':..:..:..:.|:..:..:..:|ﾍ:..:..:.丶:..:..:'.:..:.ﾊ:..:.:.:.:.ﾊ:..:..:.＼
}:..:..:..:.ｉ:..:.|:..:..:.i:..i:..:..:..:|:.|ヽ:..:..:..ヽ:..:.|:..:.:.!:..:.|:.:.:.:|:.:.:|＼ヽ
|:..:..:..:.ｌ:..:.|:..:..:.||∧:..:..:|:.i__.＼:..:..:..:..:|､:.:.|八}:.:.:.:}:.:.:| ｀＼
|:..:..:..:.|:..:.|:..:..:.|l ﾊ::.:..|ﾘ ＼:..:..:| Vﾘ |:.:.:/|:.:.|
|:..:..:..:.|:..:.|:..:..:.|i j:.り __, ヽ:..| fﾗﾟ灯|:./:.:|:.:.|
|:..:..:..:.|:..:.|:..:..:.| 斗ｬえﾟ「^ 丶 ﾋr.ﾂ i/ |:.:| ｉ:|
|:..:..:..:.|:..:.|:..:..:.| 込ぅ_.り ´､､. ｉ:.:| |:| ……由乃は、
|:..:..:..八:..:..ｉ:..:.| ¨´､､､､ ′ 八:| l:| 藤木に勝つまでやめないって言ってたし
ﾉ}:..:..:..ﾍj:..:..}:..:.ﾊ _ ､ ｨ}:.:.:.l j:| アタシも一緒に剣道かな。
. /八:..:..:..∧:..:.i:..:.:入 ／:.:|:.:./.ﾉ′
ヽ:..:..:.ﾍ:..:.',:..:..:|:..＞ ィ:.:/:.:.:.|:./ 藤木が教えてくれるなら。
丶＼八:....ヽ:..|f^ト-､___ ￣ j_人:/|:.:./j/
ヽ:＼:..:.:.:V ￣ﾟ「「./ / |:.//
__＼:.:.V｀＞-､_ }ｌl { ＿_j/__
_,..へ=ミ＼}--─‐‐≧t=t':::::::::::::::::}
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|「剣は女の振るうものではござらん」
|
| いつも考えていること、それ故にひめの問いにさやかは間髪入れずに答えた。
| そして藤木源之助の強烈な拒否、ドン引きのひめとは違い、さやかは分かっていた様子で唇を歪ませる。
|
|「されど、護身術程度であるならば指南するのもやぶさかではない」
|「え、いいのッ？」
|
| 目を見開き、見たこともないほど顔を輝かせるさやか。
| 年相応の華やかで幼さも残る表情に、源之助はうっすらと頬を赤らめた。これほど喜ばれるとは思いもよらなかったのだろう。
|
| 嬉しそうに目を細めるひめ、逆に居心地悪そうな男性陣。
|
|「僕は警察官を目指すよ。こどもの頃の夢だった」
|
| 話を変えるかのように、夕日が呟く。彼の父親は警察官だった。
|
|「父さんみたいな警察官には、なれないだろうけど」
|「なんで？」
|
| 悪びれることなく疑問を投げるひめ、夕日は寂しそうに頭を振る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
￣ ｀ ､
／ ＼
／,ィ ,ィ ,ｨ//ﾊ.}∧ ､ ヾ ‘，
////ﾚ//|/////l!/∧ ､ }!}/ﾊ i
////1//////∨///∧}Ⅵ|//i |
_ /ｲ/ﾊ |/ﾊ/// __∨///ヾ//!//| j ,!
_ / ﾚ::}ィ「vz≠W{￣ バｲ〈'ﾍ∨///ﾘ/
./ } /／ノ入〉 ｲノ////// 僕が警察に入ったとして、
/ // ／_く /┬'///// 行ける先は異能専門の部署だろう？
／ // /／/ ｚ=- ./: : }/////
/ ｲ〈 ｲ｀/ ﾊ イ: : jﾊ///
| }: : : :､f ゝ- ≦: : : . : ヾ〈
| !: :/ | 〈 . : ＼
| |: ' ,! _,. ≦} . : : 〉- _
ヽ イ _ -= 了 j . : : /ニニﾆ=- _
／ // /／/ z‐ァ /: : }/////
/ ｲ〈 ｲ｀/ ﾊ イ: : jﾊ///
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|「就職確実だな」
|「裏口入学みたいで嫌じゃないか？」
|「格好つけずに使えるものは使いなよ」
|
| 笑い合う一同。夕日なら、いい警官になるだろう。
|
|「僕は『血族』だろう」
|「上条さんは『教会』かな」
|
| 花京院は平穏世界の異物だった生来の異能者だった。
| であるならば、受け入れられる場所を求めるのは納得がいく。
|
| しかし、上条当麻は？ 誰もが不思議そうな顔をする。
| ペルソナ使いたちと『教会』には接点などない。
|
|「忘れ物があるんだよ」
|
| その忘れ物。上条当麻が右腕の機能を失うかわりに生存を約束された少女。
| 『禁止目録』と呼ばれた少女の末路を、幸運にも上条は知らない。そして、この先も知り得ない。
|
| 上条当麻に捨てられたと誤解したまま、ニャルラトホテプの誘いに乗ったなんて。
| 『母』と名乗り品川大聖堂の虐殺を実行し、その果てに粛清されたなんて。
|
|「えー、みんなバラバラなんだ」
|「ひめは？」
|
| 白雪ひめ。名前負けした平凡で庶民的な娘。
| ごく普通の女子高生らしく、ファッションやゲームにはうるさいがそれを仕事にするほどの気概はない。
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｛_ ﾄ } _j＿,ﾉ} {
Vヽｰ ､ 乂__,＞'ノ ,} ｀¨¨ﾌ
{､ / > } )／ ｀¨¨´ﾉ ､＿,／
ヽ｀¨¨/´／ く __,ノ :,
:.、 ｀ﾌ7´ ― i! l ',
＼ ､-‐ '´ ミニ≡彡 i: |:. , まだ、わかんないや。
:、 :ヽ ｀¨ﾌ ／ ', !: ', みんなしっかり考えててすごいなー。
ヽ: ﾉ ｛ｰ'´ ／ﾘ 、 / l／ ', |:. ',
く ゝ、 ｀フ ｰ=彡 " } } |: . ヽ
'｀¨¨´ ＼¨¨´ /l / , / !: : : . ＼
', :＼ ＼ / , -‐ ' 〃 i: : : : : 丶
i : :.ヽ ヽ 丶- '´ ／:.:l 匕⌒ヽ-- ､ ｀ ｰ----‐
| : : : :ヽ ヽ、 ／'―-|: | ｀'ー ＼: . . . ／´
| : : : :∧ ヽ｀T冖￢￢冖ﾆiヽ l |:.、 ＼r―一/
, : :_, -､:', ヽ! l ', ! Vﾊ / 〃
./ _ﾉ⌒＼ ﾉ ヽ:, ヽヽ ', | V ヽ / /
〃 { ｀' l', ヽ＼―- /i ,' ∨ ＼_ { ｛
／ ﾉ |ﾊ ＼＼---‐' | / ＼ 厂.入_ ゝ
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| 気楽に、ニコニコと。
| 彼女は自分が平凡で、何者にもなれないままに終わるだろうという諦念を抱いていた。
|
| だからこそ普通で、怠惰で、ヒロイックな存在に憧れて、雨宮夕日に好意を抱いている。
| そして、未来が広がるだろう仲間たちに比べて、自分は、自分だけは……。
|
| ひめだけは、他の仲間たちよりも一歩先まで踏み込んでいた。
|
| 緊張感と和やかさの同居した、奇妙な雰囲気の中。
| 今が彼らの最後の時間だ。
|
| アリー・アル・サーシェス襲撃の際に、犠牲者が出ないなんて。
| そんな楽観的なことは誰一人考えてやいなかった。
|
| そして、十二月二十日の日が昇る。
| 次の朝日を拝めるのは、何人であろうか。
|
| 生と死の見えないラインが引かれる。
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＿。 r-‐ｸｰ-へ
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/ir ┴┴┴┴┴┴| _ iL _ | |┴┴┴┴‐Ⅵ| , -───- ､
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/l′ //l‐┴┴┴ｰ─ｰ┴┴┴───'| //////////// //｜
/l′ /i/::| 巫巫 巫巫 巫巫 巫巫 巫巫 | |￣￣￣￣ // // i |
r仟幵幵幵幵|/ :|ｰ──────────ｰｰ| | l㌢i￣i￣// // j |
|────ｰ‐| | 巫巫 巫巫 巫巫 巫巫 巫巫 | |＿＿＿_// // i |
| 巫巫】巫巫 | |ｰ──────────ｰｰ| | |/三三仏 -──- 〈/ i/
|────ｰ‐| | 巫巫 |下￣￣| 巫巫 巫巫｜!/ | | /
| 巫巫】巫巫 | |───|/7￣厂|ｰ──ｰ─‐ｰ|/ | 匸] 匸] | i/
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i/| 巫巫】巫巫 |0/（） ＿＿＿＿＿|＿_! |＿,| /
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|(i/ 員 /////////i/ /i/ /-=-=-=-=-=-=-=-//i/
|/ 占 |絲|絲|絲|/ 甲 |/ ￣￣￣￣￣￣￣￣/i/
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 同日、午前四時前。
| 日の出前の骨身に染みる寒風の街。
|
| 火事のない場所であっても、人々の恐怖や混乱は悪魔の増長を招く。
| 結果『グレン団』や『九鬼』の殆どは夜通しの戦いや警邏を強いられていた。
|
| それは『グレン団』のトップであるカミナとシモンでも同じ。
| 『シロッコ排斥』では敗走し、ケンシロウも行方不明。彼らは名誉挽回のチャンスを欲していた。
|
| それはケンシロウを見つけることであり、ニャルラトホテプを見つけること。
| 地道で地味に成果を重ねて信頼を得るのが、本来は正しい。しかしカミナとシモンには急がば回れなどできるはずもない。
|
| カミナは夜の街で、危機に陥った人々を助ける巨漢の噂を聞いた。
| 半数以上は紙袋をかぶった『スケアクロウ』か、色白な禿頭のやらない夫の話だった。
|
| だが、ケンシロウを思わせる男の話もあった。
| ロストスキルにこの情報を渡したのはカミナである。
|
| カミナは仕事をこなしながら独自にケンシロウを追った。
| しかし、その目的は果たされなかった。
|
| 二人乗りのバイクで通り抜けようとした脇道、明かりの点った小学校前に佇むひとりの男。
| カミナとシモンは見てしまったのだ。その男を。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
| l i___》: : : : : : : : 《; -ｧ :l l
│ l ト-｀ｰ-､/: l: :ノ イ : : | l
│ 〉 rｆ::ｊぅ､｀ : : l: ｨｆ::jﾌ: ヽ |
│/ｒ: ´￣:／:/ ', ヽ￣: : :ﾊ.!
V: :!: : : :': : : 、: :〉: }: : : : : :lｊ___
,.─' : : : : : : : : ,-___-､: : : : : /: :ハ
. 〈 : ｢ヽ: l : : : : : ｒ‐'--' フ : : : ,': }）: / む……カミナとシモンか。
＼ー:人: : : : : ｀ー :‐' : : : :ﾊ_:_;/ 嫌な夜だな。
＿＿／￣:::::＼: : : : : : : : : : :／/
. ｘ＜: :￣￣: : :／: : : /: : l:::::丶-: ─:::-ｧ':／ このあたりの悪魔は一通り排除した。
,....:::-:─<ヽ: : : : : : : : : : : : :／ : : :l:::::::::::｀ー:一:／ そちらはどうだ？
／:::::::::＼:::::::ヽ＼: : : : : :l:_: ／ : : : : :l : : :_:_: : : : /: :＼
／::::::::::::::::::::ヽ::::::::Vﾊ: : : : : : : : : : : : : :l ／ : : ￣:７ヽ : : :＼
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|「仲良くやる気があるってンならッ」
|
| 無防備に微笑みかける男。ニャルラトホテプに、カミナは勢い良く飛び掛かった。
| 空中で抜刀、大上段から必殺の振り下ろし。
|
| その間にシモンが音もなく駆ける、ニャルラトホテプは二人から距離を取り肩をすくめた。
|
|「乱暴だな」
|「出会い頭に精神攻撃するような奴に！」
|
| 滑るような動きでシモンから距離を取り、カミナの剣撃を片手で受け止める。
| 切り裂かれる袖口、泥のような血液が舞うも、肉体は即時再生。
|
| 果敢に攻撃しながらもカミナの表情に焦りがある。
| 見つけたかったが、倒せる作戦も何もない。鷹野三四製の精神防御のお守りが精々だ。
|
|「私の目的は君たちと同じなのだがね」
|「ってンなら！」
|
| カミナのダンビラが凶悪な風切り音でニャルラトホテプを襲う。
| 事前の会議で得た情報の通り、攻撃が通じている様子はない。
|
| それでも、ニャルラトホテプは防御する、防御するということは全く効かないという話ではないはずだ。
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￣/:/:::::::::::::::::::!:::::::::::/ 行示ﾘ ﾘ:::::/´ _i＿＿__ !:::､>::|
. /:/:::::/⌒Y:::/!::::::::/｀¨｀￣´¨ |:::/ ／ r==､ ＼ |:::::::::ﾘ
/:/:::::/(丶/∨ !:::::/ |/ ! !ｲ示＼ } /:::::i::/
:/:::::/ /V^ |:::/ i ヽﾘ } //::::::::!:!
:::／|{｛ ＼ |:/ ' ヽ ' /::::::::::|:| シモン！
´ |::>､＼ } ' /::::::::::∧! 回り込め！
. i/ ヽ_i| r 二二二 丶 //}:::/i/
{ ､ ＼ヽ ｲ/´¨
| ＼ i/ ／／
| ＼ /-'
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|「分かったアニキ！」
|「…………見逃してはくれないようだな」
|
| 事前の会議、『緊急事態対策班」で共有されたニャルラトホテプの能力と対策。
| それはつまり、最大の脅威である熱衝撃波と防御能力の攻略会議である。
|
|「それにしても藤堂志摩子は目端が利くな」
|
| シモンから距離を置くように位置を取るニャルラトホテプ。
| その左手が胸の前へ、熱衝撃波の構え。
|
| 慌てて後退するシモン、注意を引くように斬りかかるカミナ。
|
|「地位と名誉とやりがいだ。そんな中身のないお題目で君らと『グレン団』を丸々飲み込んだ。
| いやはや、体のいい使い捨ての兵隊を容易く大量に手に入れた訳だ」
|
| カミナは耳を貸さない。『グレン団』と大恩ある大首領への中傷だ。
| 挑発に過ぎない、無視するのが一番だ。
|
|「てめオラざけんなブッコロす！！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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三三三二ニ / _ ｲ Y::〈＿＿, - '' , ｨ':::::::::::::::::::::::＼ ヽ､ ,ｲ:ﾊ
三三三ニニ/<´ ,ゝ､ l､＿＿＿ , ｨ' l:::::::::::::::::::::ﾊ:::::::i`ヽ､＿｀二二ノ:::::ﾊ
三三ニニ＝､__ヽ /:::::::ヽ!:::::::::::::::::::/_ u !:::ﾊ::::::::::::,' ヽ::::! ',::::::::::::::::::::::::::i
三三三ニ `V::::::::::::::::::::::::::/!::/´ ` V-'ヽ:::::::,v‐_-ゝl'´`ヽ､,:::::::::::::::::::::::::l
三三三ニ ∠´_｀＞::::::::::::::::,'/V , --- ､ u ＼i `´ ゞ--- ､ ヽ:::::::::::::::::::::l
三三三ニ ヽ、:::::::::::::::,' ／ ヾ 7´ ヽ ヽ:::::::::::::::::ﾍ
三三三三 ﾊ `ｰ=ー ゝ:::::::::::::l.u/ i i ヽ ,::::ｨ::::::ト､:ﾍ
三三三三.ﾉ`ヽ､ ﾄ､:::::i､:::::,ﾍ::l il ◎ l ! ◎ .! !/ ﾚ'` ,-ヽ.i
三三三三三三 ` `V ヽ:i ,-ll ヾ､ / ', // u ／ .}
三三三三三三三三ニニ`!ｌ l ``ｰ--= " u `､､__ __ ノｲ' ゝ ./ アニキ！？
三三三三三三三三ニ,､.,-ヽ､l u 〈 `u`￣ u '´ , ｲ 落ち着いて！
三三三三三三三三 / ヽ ﾄ､＿ __ , ､＿／ﾊ! 落ち着いて！！
三三三三三ニ_, --､{ l l／￣ / /::, ﾆ=‐-- ‐‐ '''''ヽ､ｰ､ Ｕ , ｲ ヽ
三三三三三ニヽ、 ヽ､!./ ___, ＜ ､ V i:::l } ／ , ゝ
三三三三三ニ. , `￣7フヽ ＼ !__＞`ﾆ ―-- ､＿, ＿ ﾉノ イ _,, - ' ` ｰ
三三三三三三/ ,イ/ ﾄ- ､ l--‐＜´ `丶-----‐'' ´ ! ,, - ''
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| 理性はともかく感情が感化できず、直線的に殴りかかるカミナ。
| その胸板に、熱衝撃が直撃する。
|
| コンクリート壁を粉砕し鉄板をへし折るその破壊力は、人体に向けて良いものではない。
| 肋骨が粉砕されて内蔵が破裂する、普通ならば即死の重傷……いや、常人ならば人間の形を保っていない。
|
|「む？」
|「ぬるいぜ、ニャル公！！」
|
| 血を吐きながら、しかし怪我を思わせぬ俊敏さで跳ねるカミナ。
| さしものニャルラトホテプもこのタフネスには想定外であった。
|
| 一瞬の困惑、隙を逃さずシモンが距離を詰めた。
|
|「ギガ！ ドリル！！」
|「かませシモン！！」
|
| 螺旋状の魔力撃、恐るべき魔力量で相手の内部を描き回し破壊する必殺の技。
| 事前の会議で鷹野三四は言った。
|
| ニャルラトホテプにダメージを与える方法。それは体内に蓄積された膨大な魔力を削ること。
| 通常の打撃では不可能だが、北斗神拳なら可能。
|
| しかし、ジャギ程度ではほぼ効果なし。
| ケンシロウかラオウならばあるいは。
|
|「ブレイク！！！」
|
| では、類似する攻撃を行えるシモンならば？
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,. -‐‐
, ‐'´ _,. ‐,.
／`‐.''´くく: : :
/ﾍ fi.: ＿/∠-‐
. ／/:ｌ:/二.., -､─''
`t;､〃,‐' /{;7_.>｀: : 何ィー！？
／:::.f.i. : : ￣: : : : : :
／: : : : : : : : : :fi: : : f.!: この私の身体にッ。
ヽ､: : -‐: : :f.i : !i: : : : : : 無敵の身体にッ。
,､=,-‐二ヽ: : : !i: : f.i: : :
ヽ.<´＿,＼ﾍ: < !: :ﾚ': : : なんだとッッッ！？
`､ /ヽi: i .ｌ: : : : : :
ヽ. / :: ｌﾊヽ!: fi: : : : :
| | .:.. .! i: :': !!: : : : :
/-t､ｌ＿,.ｌ !: : !i: : : : : :
f.ｌ| ﾉ /: : :ｌ !: : : : : :
. ヽ ￣""´ノ: : : :i !: :f.i: : : ,
. T ‐ '"´: : : : : iヾ: : :_,. '
|: : : : : : : : : :_,: -.':::::::: : :
ヽ､__,:.:＝二 ._:::::::::: : : : :,
＼: : : ／,
＼二／:::
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| 脇腹から打ち込まれた魔力のドリルが、ニャルラトホテプの土手っ腹を貫いていた。
| 腐ったタールみたいな血液が迸る。
|
| 熱衝撃に耐えられる耐久性のカミナと、防御を貫けるシモン。
| 二人ならばあるいは、そう鷹野三四は語った。
|
| しかし、そこには確実性はない。
| 志摩子はニャルラトホテプに遭遇しても手を出すなと言っていた。危険なだけだと。
|
| だがカミナは功に焦った。
| ここで退くという選択肢を無視した。踏み込んだ。
|
|「やれる！ やれるよアニキ！」
|「っしゃあ！ このまま削り殺すぜ！」
|
| 熱衝撃波を放とうとするニャルラトホテプ、ダンビラを突き込んで無理やり射線を反らす。
| 学校のフェンスがひしゃげる、ダンビラがへし折れる。
|
|「調子に乗るなよタンカスどもッ」
|「いい啖呵だ、ノシ付けて返してやンよ！」
|
| カミナとシモンの失敗は、踏み込みすぎたことだ。ラインを越えたことだ。
| ニャルラトホテプだけが相手ならば、運が良ければ勝てたかもしれない。
|
| しかし二人は、ニャルラトホテプに協力者がいる可能性を失念していた。
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／斗==== ミ≧=- ＿＿__∧=＼{廴/ {＿,,|__彡{__ 〕＞ '´
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,人ニニニ{r--=ミ ､ ／ i､ ＼==＼ニニ {==＼
ニ ＼ ニ八＝ミ ＼ ＼ ___,|≧ ､ ＼==＼ ﾉ/ ＼= ＼_
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| 夜闇のように暗い影が、不意に飛び出してきた。
| カミナでも目で追えない速度、当然シモンでは反応できない。
|
| アスファルト道路スレスレを走り、影はすくい上げるようなアッパーをシモンに叩き込む。
| 水風船が割れたような、劇的ではない水音。内蔵が破裂して吹き飛んだ音だ。
|
|「シモンーッッ！！？」
|「よそ見をしていられるのか？」
|
| 熱衝撃波がカミナを襲う、ニ発、三発。
| 怪物的な耐久性、原型を留めたまま吹き飛ぶカミナ、電信柱に衝突。
|
|「ぐほっ」
|
| 粉砕されたブロック塀に押し潰されるカミナ。
| その間に、影はシモンにとどめを刺す。
|
| 空中で回転して打ち下ろすような後ろ回し蹴り。
| アスファルトにクモの巣状のひび割れ、バウンドしたシモンが学校のフェンスに衝突した。
|
|「んん？ んんん?？？」
|
| ピクリとも動かないシモン、その顔を影が覗き込む。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
´ ￣｀ヽ
／ ＿＿￣￣＼
/ ￣￣￣＼ ヽ
/ ======ミ、 ＼‘，
ﾊ | ／:| ＼ ヽi
//} |∨: : :| ＿＿ , ＼ | ,ィ
{ V/: : : : : :￣ : : ／ ￣:} ヽ/／ /
〈 〈_:/＼ : : : : ／: : : /: :j /// / とどめを刺せ『ソドム』。
|:ﾄ､〈: /∧:ﾉ: :.:}|＿＿{: / ___ ∠// /＿__,ノ
癶ぅ{ しr┴＿ -一ｧ':厶＿_／:＿:_ :}／￣／/ そいつが生きている限り
∨/:ﾉ｀＾￣ｨ'_迂歹 : : ／: : : : く: }/:./ ／／ カミナが立ち上がる危険がある。
∨＼: : : :l: : : : : : ／: : : : :__ｆ_:ノ :/＿_／
〈: : : : :. :.{: : : : : { | : : : : 人＿;／}＿＿___
／/ト==‐‐ ノ: : : :./│: : : /: : : / ////////＼‐ｘ
／///,}ー'三ヽ: : : :./ ＼:ノ:.: : :/ //{//////// ヽ∧
｡o≦ //////ト----': : : / イ : : ／////|/////////∧/ﾟ｡
／//////////,人＿__;｡o≦￣____l__／／∧//ﾊ///////// ∧∧
／///////////////|/ﾊ//￣￣￣￣} ｢∧ } {////////////////│
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|「何度聞いても馬鹿みたいな名前だなァ、今からでも『荒覇吐』とかにせんか？」
|
| 心底つまらなさそうに答えながら、『ソドム』と呼ばれた影がシモンの頭部を掴んだ。
| 黒い炎が迸り、すでに動かないシモンを焼却する。
|
|「『ゴモ ラ』はどうした？」
|「知らん知らん」
|
| 『ソドム』はシモンの死体を引っ掴んで放り投げた。
|
|「おい」
|「独りで死ぬのは寂しいもんだぞ？」
|
| ニャルラトホテプは不愉快そうに顔をしかめたが、それ以上何も言わなかった。
| シモンだった人型の消し炭は、カミナの埋まった瓦礫の脇で最後の煙を上げた。
|
| 『ソドム』とニャルラトホテプは殺害した相手になんの感慨も抱いていないかのように背を向け、
| 避難民の寝泊まりする体育館に歩いていく。
|
| 墓標のような瓦礫のの山からいしくれが一つ、風もないのにゴロリと落ちた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの？
さんざ擦られたこの台詞。
愚かで、自分勝手な若者たちを完璧なまでに表現している。
嘆くなかれジュリエット。
まずは己を省みよ。
そして見出し、辿り着け。
答えはいつもそこにある。
次回、最終幕百二十三話『12/20 その3 ナマイキなメスガキめ、この聖霊注入棒で処女懐妊させてやる！』
果てに見るのは破滅か死か。
次回のタイトル二度見したわw
か…簡単すぎる…あっけなさすぎる…
ひめが不穏とか言ってる間にグレン団が燃え尽きてる
功を焦れば死ぬ、と一年戦争でジーンが証明してる
最近終末のたびに寝込んでいる気がする…。
/ヽ
, ,、 /ヽ、 /: : :'
/:ヽ /: : ヽ-./ : : : ヽ_ ./: : : :ﾑ
. /: : : ヽ /: : : : : ヾ: : : : : : : ヽ ヽ: : :ヽ
/: ; : : : 〉"´: : : : : : : : : : : : : : : : :ヾ、 : : :ヽ
,ィ"´: : : :/: : : : : : :l: : ハ: : : :l: : |: :ヽ: : ヽ: : : }
}: : : : : : :' : : : ｉ: : : | : { ', : :.|: : |: : : ヽ: : ヽ: { 最後尾に並びな聖女サマ、
|: : : : : :,' : : : :| : : ﾊ: :', ', : l: : !: : : : ヽ: : :',:|
|: : : : : :|: : | : |: : :{ ヽ:', }: !: :∧__: : : ', : : '| お兄ちゃんの隣は
j: : : : : :|: ! l : | : 十―ヽ',. !ハ/￣ヽ }: : }: : : l 来世まで埋まってるでアフロ。
. ﾘ: : : : : :!∧{ : |: ﾄヾィ乏ヾ j'＿,ｨ !', :ﾊ : : !
/: : : : : : ´: ∧: : ﾊ、 弋ｿ ´ "jﾉ: : :} ∧}
. /: : : : : : : : / ヽ : 八" '＿ /!: /:{!: :〈
/: : : : : : : ／, ‐-‐ﾍ: :|/: ヽ、 ヽ ノ イ :ﾊｲ: l_ヽ: ヽ ＿ ＿＿、＿
. /: : ; -―' ´__{ 〉' ﾍ: : :{＞ー< / / /ﾘ: } ヽ ヽ} r-ゝi } } } ＿ヽ
. ノ／ , '´ { / ヽ、', : ', /イ／ j: ﾘ ヽ ﾘ { ＿＿ ＿ ｀ヽ
/: / 〈 ヽ ゝ : ヽ '´/ ヽ /ノ ＼ / / ｀´ ｀ヽ ',
}: / ', ー‐"〈 ヽ、_＞{ ＼ヽミ / ／ ヽ ＞i ' ,' ヽﾉ
!" ヽ ヽ ｀ '/ ヽ ∨ ', /､ } / '
＼ ヽ ,' ヽ ト、 / ヽ!/ ,'
. ＼ ヽ { ' } ヽ / { i
ヽ ヽ', ,' ヾ,ヽ { {
ヽ }ヽ =‐- ｲ ﾍ }
r〈 /ヽ＿_ ｀¨´ .{ ヽ、 ノ
}ヽ' /｀ ＿＞＝、 _ ハ ｀´
ゝイヽ￣ , `ヽ二 ,イ
へ―- 、 / / 〉‐- ＿＿＿＿ イ <',
/ ｀ >〃 / r‐- ＿＿ -￢´| }＿
〈 / { ', ｀ヽ
｀ヽ ', ヽ
ノ , ィ ´ / ' , ヽ
ｲ 〈 ', { / ヽ }
ヽ }＿ﾍ ヽ ' 、 j
￣ ﾞト、 ／^ ト、 / ＞r、 〃
', ヽ ＞ ´ ', ヽ/ / ,' { /
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| 翠星石、やる夫 ニャンコ先生| 越えられない壁 | 墨目、天龍、はやぶさ、タカオ、やらない子、鹿島。
|
| 午前の東京市街地、燃え盛る炎を消しながら動いていたやらない子一行は偶然が必然かやらない夫を発見していた。
| 火事の原因は『聖処女』ジャンヌ・ダルク。
|
| 世界最高峰の魔力防御を誇る『異端審問官』だ。
| やらない子が二度挑み、二度とも見逃されたヤザン・ゲーブルと同格と思われる。
|
| やらない夫を守るために立ち塞がったが、やらない子に勝ち目はないだろう。
| 勝ち目はないが、やらねばならぬ時がある。
|
|「来世どころか来々々世まで君を探し求めても順番が回ってこない可能性が高い気がする。
| 特に後方横並び団子グループ、天龍や鹿島さん並に食い付けばワンチャンアフロ……？」
|
| やらない子は鹿島が脱落したことを知らないし、
| タカオと天龍はやらない夫を男性としてではなく上官として敬意を抱いていることを理解できない。
|
| やらない子にとって、兄は宇宙一の存在だ。
| 男も女も理屈なく惚れること間違いなしだと思い込んでいる。
|
| 恋する乙女の狂信、恐るべし。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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----------＜,,─,,,, ヾヽ─ i;;i ﾘ ﾉ
,,--ﾞﾞﾞﾞヽ -,ヾミヽ ヽ;;| |;;i /;/ ﾉ
,,,----≡ミ;;;;;;;;ヽ;;i |;;i./;/ /
,,-´´￣￣￣ニゞ;;;;;;;;;i;;;´;;;彡ﾞﾞﾞﾞﾞ｀丶、
＿＿,,,,,,, ,,,-=彳ﾞﾞ彳彡ｲ;;;;;;;;ﾄ、ミゞ＼
| |卞ニ＜ ,,ノﾞﾞ ／/;;/i;;i;;;ヾ;ヽ ヾﾘ ＼
|＼ ﾍ￣￣＼-,,, / /;/ i;;i |;;| ﾄ ゞi ヾ
| ＼ ﾍ O ＼＼/ｿ i;;i |;i ﾘ ヾi |
|￣￣─二二彡´彡弋i;;i、 |;i ∥ ∥
|,,,,-''''´´￣ / /＼勹ﾍ | |
| ,,,,-'乍ニ＼ ﾍ
＼ | ,,,--''''´ ,,,＿,＼ﾍ
＼|,,,∠´,,,,,,;-─-＜´´´ ,,-イﾞ´ ﾍ
,,,-''´７ ﾑ＼二＿＿｀｀７ / i ﾍ
- / ／{!´^ゞ'エｴ⊥７' ./／ ,--,,, ﾍ 狂人……め……！
＼ l /三:i!:::::::::::::::::::::::/ /ｲ ｌ''´ ´''
ヘ .i l三:.l!￣｀ヽ :::::/ / .l
＼. l三:.ヾ ヾｿ/ / l
＼ヽ ＼｀ミﾑ二ｴ^/' i l
｀＼V ｀ﾐ＝-─/ / .ｌ
γ＼ / ＼＼ l
ヽ| ｀ミ-,, /￣｀---ゝ ＼ l
l´ i ＼ ｀￣ ´ ＼|
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| やらない夫に襲いかかった炎を、やらない子は『ドッペル玄関』の?反転で押し返した。
| ジャンヌが持つ両刃剣が聖遺物級の超兵器だとも、着火した生物が死ぬまで消えない地獄の火炎だとも知らない。
|
| 『ミカエルの龍殺し』。
| 攻守に隙のなくなったジャンヌ相手に、やらない子とタカオ（オマケで青葉）ではいささか心もとない援軍に見えた。
|
| それに敵はジャンヌだけではない。
| ジャンヌの腹心にして強力な天使使いのジル・ド・レェ。そして完全武装の『異端審問官』たち。
|
| やらない夫は逃げるのに慣れていた、ではやらない子とタカオは？
| 足手まといになりかねない。
|
|「やらない子！」
|「バカアニキ！ ここは任せて先に逃げるでアフロ！ 後で合流するから！」
|
| やらない子は素早く戦況を把握しながら叫んだ。
| 『異端審問官』の一部は青葉の陽動に引っかかっている。
|
| 自分がここで生命を落としても、やらない夫を逃がせればそれでいい。
| 問題はタカオをどう言いくるめて追い払うかだ。
|
|「逃がす……もの、か……！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●）
｜ （__人__）
| |r┬| .} そうだやらない子。
| | | | } オレは逃げないだろ！
,..-'ヽ ｀ﾆﾆ }
./::"::::`ヽ､.,＿＿ __ノ ﾞ
/::i::::::::::::"'弋'!ｰ',イ>|'_ノ´｀ｰ -,,＿ _
. }:::ﾞ|::::::::::::::::::::~ﾞ:_戈;f" 、 ｲ/ `i
/:::::::!;:::::::::::::::::::/',r.ﾃ ＼xｰ.ｫ､__ノ
::::::::::::ヾ!:::::::::::::l .l r' ` ､_冫y"
:::::::::::::::::＼o:::::l .ﾄ、 ヽ,＿ﾉ"ｰ'
:::::::::::::::::{::::{＼代 l>ｰ､,_ノ
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|「何言ってアフロお兄ちゃん！？」
|
| やらない子の悲鳴、追いすがろうとしたジャンヌは逆に硬直。
| 自分に向かってくるやらない夫に、複雑な視線を向ける。
|
|「悪いなやらない子。ダルの遺言なんだよッ！！」
|
| 今度はやらない子が動けなくなる番だった。
| ダル、やらない夫を支援していた『異端審問官』。やらない子も顔見知りで、何度かお世話になっていた。
|
| その、遺言？ ではダルは……？
|
| 屋根を跳びながら弧を描き、じわじわとジャンヌに近付くやらない夫。
| 追いかけるように伸びる炎の舌、やらない夫の通り過ぎた屋根が次々と炎上。
|
| 追いかける『異端審問官』は全身鎧の重量が邪魔で、屋根の上のやらない夫には届かない。
| 故に、片手では数え切れない数の『異端審問官』が目標をやらない子に変更。
|
| 無個性な板金鎧、円形盾に大型のハンマー。
| 身長制限でもあるのか、全員が見上げるような大男。
|
| おそらく体重も二倍近いし、装備重量を加算したら三倍あるかも。
| 整然と並んで突進してくる『異端審問官』。やらない子は唇を噛んで彼らを睨んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,.. ---､
_ -'=＝"´ ￣ ¨ ｰ- _
／ ` ､
／ oヾ＼
/ ＿ ヽ＼
/ ／,-‐-＼ o ｉ ヽ
/ ,.=ｰ-､ i / ,.=-､ ｀ｉ| l i 神を恐れぬ邪教徒め！
i 〃 ,.-=| |｛ {( ・ ,≫ﾉ ｜ l 呪われろ！
| | | }! ・ﾉ ｀ー--‐'" | |
| ヾ=-‐" O ０|0 | ,. -――-､
＿_| O O | i ／ ＼
／ | O i i／ ヽ
/ | O O 0 |0 / i
/ l O __ 亠､/ |
i ヽ ＿ - i __ |
l ＼ ＿ ─ | ＿ - ￣ ￣ ＼
＿| ＿／` ー------─￣ | _ -
／ l ／／ ＿--| ／
／ i / /{ O ＿ ― --ノ／
/ ヽ i |ヾヽO ___ ― 二ー ￣ //
＼| | ＼二─-Ｏ-― 二-- ￣ | |
o ﾉ ﾉ ￣￣￣￣ | |
（注：ジャンヌ指揮下の『異端審問官』はおそろいの装備なのでダル以外もこの装備です）
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|「呪われるべきはそっちでアフロ！」
|
| なにしろ神＝やらない夫を信じないのだ。やらない子にとっては邪教徒そのものである。
| やらない子は『異端審問官』の露払いを自分の役割だと理解した。
|
| やらない夫がジャンヌに向かうなら、可愛く頼れる妹はサポートをするべきだ。
|
| 迫る『異端審問官』、周囲で燃える炎、倒壊した建物、空から降り注ぐタカオの援護射撃。
| そしてジャンヌが振るう巨大な炎の鞭と、飛び跳ね駆けるやらない夫。
|
| 全てを把握して動くなど、常人には不可能であろう。
| しかしやらない子は常人ではない。
|
|「…………アフロ？」
|
| 足が地面に張り付いたかのように動かない、同時に全身に凄まじい倦怠感。
| 浜辺で砂に埋められたかのように、身体の自由が効かない。
|
| 一瞬パニックに陥りかけたやらない子であったが、『異端審問官』が『本当に呪える』可能性に気が付いて苦笑した。
| 初遭遇、魔術的呪縛。
|
|「意識を奪えなかったのは残念でアフロね！」
|
| 身体全体を覆う不可視の障害を、魔術に疎いやらない子には認識できない。
| だが、知識はあったし『そういうもの』として考えることもできた。
|
| 殺到する『異端審問官』。彼らに?呪い返し。
|
|「神の鉄槌！」
|「ラブリー妹アフロ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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{~ 、 /~}
、 ＼_ _ , -‐〜'´￣｀'〜ｰ､_ _／ /
＼ /ﾌー/7ー―'‐ｧ'///////////////ハ､―‐くヽｰくヽ /
ヽl l // ﾉ//////////////////∧, l | l | ／
L{、 l | ｢//////,}∠ y'´､￣,ヽｲ////} l | //'
｀L{ｰｧy'///////ﾘ_‘/{ , ===､｜y////`ァくﾉ~´
ノ//////// ｲ / // l|ｲ {//////} アフロォォォォオオン！！
{///////////} ｛ ｉN ⌒ヽjl | ﾉ/////八
‘Y//////////）ヽヽ､＿,ノ/ｲ////////}
{//////////j ヽ二／ {///////ノ
∧////////ノ }//////ﾉ
, 丶-､///ﾉ ｛////ノ
| ｀~｢ / `〜f’
| | ／ ,'
| 从 ／ /
| ,'ー＼/Vl／ﾊ /
从ハヘ/ ヽ / 从ﾍハ{
/ / { } { | |
人__｣＾^} i^＾~{ レ-〈
/ }⌒l V⌒} { ヽ
丶-―' ￣ ￣ 丶-―'
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 自分たちの呪縛を反転された『異端審問官』たちが動きを鈍らせる。
| そこに出現したやらない子のペルソナが、彼らをボーリングのピンみたいに跳ね飛ばす。
|
| 炎上した建物の外壁や窓ガラスを壊してめり込む『異端審問官』。
| そこに降り注ぐ砲弾の雨あられ、本来の目的は延焼を防ぐための建造物破壊。
|
| 青葉の観測とタカオの狙撃を信じた通り、『異端審問官』どもにとどめを刺す。
|
|「……まだまだいるでアフロ」
|
| やらない夫を追いかけていた連中が二手に分かれる、片方は艦砲射撃をくり返すタカオへ向かう。
| 残りはやらない子、そして彼らを指揮するのは。
|
|「神をも恐れぬ卑劣な行為！ 決して許されるものではございませんよ！
| 汚らわしい売女め！ 貴様の汚れたはらわたをこの私の聖霊注入棒をもって浄化して差し上げましょう！！」
|
| 前回砲撃で屋根から落ちたジル・ド・レェだ。
| 虫のような羽音、ゆっくりと前進する『異端審問官』。
|
| 妹は兄を一瞥、これでやらない夫とジャンヌが一騎打ちの形になる。
| やらない子の過信とは裏腹に、やらない夫がジャンヌに勝てる可能性は極めて低い。
|
| それでもやらない夫は引き下がらない。
| ダルの望みを叶えねばならない、ジャンヌ・ダルクを救うのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ﾄ-'⌒ｰy´＼. ／
........ノｨ 〃） ﾞ〕 ／ ／
__,ノ,ｧ＞{ (―/ ,:" 「￣ ／／- . ／ ／
､_ノ厂∠,√,ノ=/〃 ノ￣／／＝= ／￣／iヾ､_,、
γr'⌒)´ ,イ /〃 /￣／＜ﾉﾉj|;;;;i＞.
ノ'´,.┐〃´）{ / ′ ′ ｀=ｲ;;;;;L.､x＼ r-､
／っ丿ﾉ,"rﾞ （_ﾞ廴 .′ Y;;;;;;;〕＼xヽ〕;;辷､
〃´（(} ,:’i | ⌒) └'ｉ⌒', と､;;;;;;;/;;;;;> あああ………あああ、ああ！！
ﾉ _..ノハヽ |'⌒Υ ￣ヽ;（/｀「＼
∠/（￣ _ﾉr' ／‘,´二{_／Ⅴィ7７'くﾉ:.:.＼
／ 丿つr-┘ ∨´/ ｀ヽ刈二爻！､:.:.:.Υ
〃 /／γ ／ヽ! / / /,`ｰ ､ il`、＼:.:|
′i {′ j ／／"ｰ=! | | !ヽ,〜;／:ﾄ
|｀ヽ ／ Vヽ' / ﾊ:.Ⅴ.:.ﾞ|:.:.
ﾞ ヽ ,:V /／ﾉﾊ:.:V.:.:!:.:.V ヽ
） rﾉ //У∠∠ﾊ:.:.V人:.:.} ）､ _＿,
ｉ （ ({ /ｲ/`ー―‐λ:.:.| ｀ `ー-ミ
|! ゝ ′ 〈:.V､ー―‐ /ﾉ.:ノ ）、
ヾ（_ ` ･ /.i＼:.:.ー‐ 〈:./≫， r' {
‘:,___ ,:） __ ノ.:.:|:.､:＼:.:.ｰ=}:.}'≪≫， ｀う }
ヾ! j-'⌒ヾ=- {（ .ノ彡'.:.:.:|:.:.＼:.:.＞'.:人 `≪≫， r' ノ
i|! ｀ヽ 丿ヽ . ＜.:.:.:.:.:.:.:,:イ.＼:.:.:`＜.:.:.:/＿__ `≪≫， ､_ﾉ/ ,
|! 〔｀ ‘:, r′ . ＜.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ヽ|:.:.:､丶:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.７`≪≫， _＿／_ノ ／
ゞ、|! ） _,ゝ､_ﾉ,｝ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞＜｀ヽイ:.:.:.:.ヽ:.＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／､ `≪≫， /´￣ ／,′ ノ
|! 廴 (ﾞ:, 〕f⌒ｰ' |:.:.:／.:.＞､＜＞''爪:.:八:.:.:.:.:.:.＼:.＼:.:.__／.:.:.:.:＞ `≪≫， ）、 （ j ゝ一`
〉 |! う } `ヽ j／.:.／ニγヽ:.:/.:.:.:＼:.:＼:.:.:.＼:.ヽ:.:.:.:.:.:.．＜ `≪≫， ゞ=､ / / _ﾉ
｝ |! ヽ（ rｲ 「:.:.／ニニﾉ＼:.:.i:.:.:.:.:.:.: ＼:.:弋ヽ:.＼＞＜:.:.:.:.:. ＼ `＇ r' { 厂
、＼、 ! νﾞ（ {> }:./ニﾆ.／i|:.:.:.ヽ!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.ヽ!≧x_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ー―－‐ _＿,.､__ノ ∠ノ
λ ＼、 ﾉ .’ ﾊ r==У___／i:.:.:.|:.:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.丶乂∠ノ`＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／｀ヽ-〜´ .〜,′
辷ｰっ ＼ヽ { ヽ ､｀ ｝////_/｛ }:.:.:.､:.:.:.:.ゝ‐ ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:／ `＜ノ｀,＜:.:.:.:./ .ﾆ、 / "
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| 激情のままに振り回される『ミカエルの龍殺し』。
| 夜闇を切り裂く紅蓮の舌が十二月の冷たい夜を焼き上げる。
|
|（どうするつもりじゃやらない夫、戦闘は無謀じゃぞ！ 『代行者』の問題もある！！）
|（正直、勝算はないだろッ）
|
| 攻撃に転じても、事態は好転しない。
| やらない夫派芝公園での戦いで、『エクスカリバー』を使用した攻撃すらジャンヌの絶対的防御を貫けないことを確認していた。
|
| ジャンヌの防御を突破できるのは、彼女より強力な魔力の一撃か。あるいは精神攻撃。
| やらない夫にはそんな手段は存在しない。
|
|（だが、やる！ やるしかない！）
|（ケツまくって逃げようぜ??）
|
| やらない夫の根性論に冷水をかけるねずみ男、屋根伝いに跳びながらやらない夫は頭を振る。
|
|（ダメだろ。ジャンヌはオレとの正面衝突を望んでいる。奇跡の逆転勝利を望んでいる。
| ジャンヌの過ちを過ちであると断言し、真の救世主が誰なのかを証明してくれるのを待っているんだ）
|
| この言葉には、ニャンコ先生もねずみ男も反論しなかった。
| やらない子たちの乱入直前の、ジャンヌの血を吐くような叫び。
|
| やらない夫を否定するジル・ド・レェを遮り、やらない夫を救世主と断じた。
| 神を疑い道に迷い、救世主すら見誤ったジャンヌ。もはや戻る道はない。
|
| やらない夫とジャンヌの道は交わらない。
| 拒絶と殺意のみの関係だ。ともに天など戴けない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | だから殴って黙らせて、
（__人__） | ..／} ジャンヌと手を取り東京を守るぞ！！
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|（前後の繋がりい！）
|（わしは想像ついてた）
|
| 実にやらない夫らしい楽観的思考。目指すは常に最良の結果。
| 幾多の敗北や喪失を経ても、熾火のように燃えるやらない夫の真髄。
|
| きっとこれからも、やらない夫は無数の苦い敗北を味わうだろう。
| 後悔や挫折だらけで、何もかも嫌になることもあるだろう。
|
| だからと言って理想を抱くことを諦めては、やらない夫はやらない夫ではなくなる。
| 故に、無茶も無謀も承知の上で、やらない夫は突貫する。
|
|「来いジャンヌ！」
|「あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛……！！」
|
| 『ミカエルの龍殺し』の炎が一瞬終息、いや、収束だ。
| 空中に超高温の火球が形成、太陽のような眩さと皮膚を焼く灼熱。
|
| 太陽の如きプラズマ火球に、真冬の寒さが払拭される。
|
|（ニャンコ先生！ あれ頼むあれ！）
|（できるか阿呆が！！）
|
| 具体性のない指示に、ニャンコ先生が脳内で怒声をあげる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ＼ ＿＿＿＿
,′ {: : :＜ ｀＜＞:.｀ヽ ＿＿＿＿
{ '､: : ＜＞､ ＞:.:.:.:.:} / （『友人帳』は相手の真の名を必要とする！
〃､ ＼: : : : :.:.:.:.:.:.:.／ /
/､` ／丁:::ｧ、 ￣￣￣￣ / 『聖処女』ジャンヌ・ダルクは
Y ￣⌒'ヽ ヽ ,.-‐r::.x、_,. { 『異端審問官』としての名じゃ！
{ 二 ､, -‐┴-'､ヽ ﾆ |¨:.:.、
, ‘-‐'^ヽ._) ｰ‐ j:.:.:.:..＼ コードネームに過ぎん！）
∧ ￣ 八:.:.:.:.:.:.＼
/. : ＼ ,〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,′ {:ﾐx、 _..x<:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y
｛ ＼:::三ﾆｧ=‐r-----‐=彡'′ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|（（なんで分かるんだよッ））
|（分からいでか！）
|
| やらない夫とねずみ男のそれぞれから違う意味で放たれた同じ言葉。
|
| なんで今の指示で具体的に何を頼まれたのか分かるのか。
| なんでジャンヌ・ダルクが本名でないと分かるのか。
|
| 前者はやらない夫の言動から推測。
| 後者は聖人の名を冠した役職名に近いのではという判断。
|
|（じゃあどーすんだよ！）
|（小細工なしで正面から行く）
|
| プラズマ火球を警戒しつつも、やらない夫はジャンヌへの距離を詰めた。
| ジャンヌにはニャンコ先生の電撃も、ねずみ男の放屁も効果がない。
|
| 当然、天使パワーをノックアウトした後にタカオの支援に回った墨目もだ。
|
|（ニャンコ先生！）
|（そっちじゃな）
|
| ニャンコ先生の魔力がやらない夫の全身を覆う。
| 主力である先生の行動を制限するかわりにやらない夫を強化したのだ。
|
| 筋力、魔力障壁、速度、五感、何もかもが研ぎ澄まされ、やらない夫はノミ脚状に変形させたヒゲ槍で壁を蹴る。
| 跳ねた先を蹴る、蹴る、蹴る。
|
| 不規則で高速の移動で撹乱、狙いが定まらないジャンヌ。
| 尾を引く紫電、縦横無尽の動き。四肢に装着したノミ脚状のヒゲ槍が着地の衝撃を吸収して次の跳躍に回す。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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| 壁や路面で一瞬見せる静止、それが残像を作る。
| やらない夫の特異な才覚と、全身の骨に継がれたヒゲ槍に寄って、彼は超人の領域に達した。
|
| その動きは『異端審問官』『医者』を彷彿とさせる。
| やらない夫の到達点。であると同時に、新たな道の第一歩。
|
| 前人未到、荒野を征くもの。
|
| 眼前で構えた残像にジャンヌは一瞬だけ見とれた。
| これが、これがこれこそが……！
|
|「ジャンヌ・ダルク』
|
| その残像が、喋った。
| ジャンヌは目前のやらない夫が実体であり、その巨体が猫のように丸められて懐にあるのに気がついた。
|
| やらない夫の両手が、優しくジャンヌの双丘に触れる。
| あくまでも優しく、驚くほど紳士に。
|
| ジャンヌの絶対防御、信仰の盾が防がぬほど軽やかに敵意なく。
|
|「正しくあれ！」
|
| 衝撃。
| 両手両足に蓄積していた全てのエネルギーが余すことなく開放される。
|
| 秋葉原での爆発以上の轟音、めくれ上がるアスファルト、吹き上がる土砂。
| ジャンヌがカタパルトで射出されたかのように吹き飛ぶ。枯れ木のような身体が鉄筋入りのビル壁を粉砕した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ ノ ＼ ＼
| （●）（●） | 世界を救うぞ！
| （__人__） |
.| ｀ ⌒´ .} オレと来い！！
.| .}
ヽ . }
＿__._,r､ Yヽ ノﾄｊ
／｀ヽ_j'､_ノ￣l!'´ヾ- ､＿｀_¨ ｣､
∧ ,ﾉ Yヽ l ヽ 7ヽ~ﾍヽ.､
/-'´｢ ヽ ヽｊ＿. l ﾄ､ /〃ﾊ | ヽ ｀ヾ ､_
r'´, イ ヽ､ ｀,__,ｨ､__)| l ヾヽ∧'〃ﾉﾞヽl ヽ ヽj｀ヽ
/ '´ ﾄ､ Yrイ ∧l ', ヽ Tﾍ', l _..ノ l j ',
,′ .}､二ィ } / l ヽ ', |､､ﾍ. | ＼ ／ }. ﾍ
i トz'_ノ,ｲ | ',. ', l､ヽﾍ | | j/ l
| ノ ＼¨7/ l ﾄ､ ヾ ､ヽ ',.l lｰ- ／/ |
ゝ─'-- -r-`' ｌ ',.ヽ ヽ ヽヽ! |￣ /j l
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| 普通の人間なら木端微塵になる一撃だ。
| しかし一切の痛痒を感じさせない動きでゆらりと起き上がるジャンヌ。
|
| 眼下のやらない夫を見つめる瞳はあいも変わらず熱を帯びていた。
| 紫電は消え失せ、代わりに熱烈に両手を広げて、受け入れるポーズのやらない夫。
|
| プラズマ火球が月のように彼らを照らす。
| ああ、やらない夫よ。お前はどうしてやらない夫なのだ？
|
| 私が私でなくなれば、お前がお前でなくなれば……それとも。
| お前の求める言葉に応じれば、お前はすべての障害を救いという翼で乗り越えられるとでも言うのだろうか。
|
| ジャンヌの脳裏をよぎったそんなくだらない戯言。
| 誰よりも、ジャンヌ自身が笑い飛ばしたいような。
|
| やらない夫の妹も言っていただろう？ 最後尾に並べと。
|
| ジャンヌは己の溶け落ちて失われた胸に触れた。
| やらない夫に触れられた瞬間から、熱を持っているかのような胸。
|
| 傷は浅い、この期に及んで手加減をされたのだ。
| やらない夫はジャンヌに触れた。柔らかく優しく触れることで防御障壁を突破してのけた。
|
| 衝撃の大半は防げた。
| しかし、肋骨にヒビくらいは入っているだろう。あれが面ではなく点の攻撃なら。
|
| 突き刺す一撃だったならば、ジャンヌは心臓を打ち抜かれていただろう。
|
| その熱に、痛みに、ジャンヌは感情を高ぶらせた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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;;;-‐‐‐‐‐‐-ｧ-''-;;;;;;;;;;;;∠_二ニ゛＼＿
'i, ,_,,-'‐! ゛ー-r=''''＿ ヽ |;;;;;;;
ｙ‐''''´,,..-‐'--''") 、＿ ￣''ヽ-,ﾉー,,,,,,,,,,,,,,---‐‐'''''￣ ,,,,,,,,
,,/;;; ,/´ ;;_;;;;,-‐" ,／￣゛'''''＼_-‐''´ ,,,,-‐'''''''''""""
,ﾉ;;;;ﾚ";;::,/ ,r‐-,/‐--// ／￣,,r''´ _,,-'''´|
;;;;;;;;;;;;;;;ｲ／;;; （(,,,,,,//／ ／゛ ,,,,-''" |
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ∠,,＞ﾐ‐‐'''')／,,,r--‐'' / |:─--- ,,,,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ー‐'''~ヾ、, _／::::::::::::::::::::::::::ヽ、 （月のように移ろいやすいものではなく、
;;;;;;;;;;;;;;;;;;:: ,r‐i'|ヽ|、 ヾ|、ヽ＼ _,r'' ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::: 私はここで父なる主に誓おう）
、;;;;;;;;;;;;;::: ,/::::::∥゛i、 'ヽ ヾ、,,,r'''"::: ヾ::::::::::::: ／
:'ヽ;;;;;;;;;::: |;;;:____i, ヽ、 ＼＿∠,ii, :::: ''-,,:::::: ／
;: ' i,;;;;;;::: ,/;ヽゝ'ヽi:-i, -''''=ﾆヾ‐'ｲﾉ | i;:: ／
; i,;;;: ,/｀ ,／::::入 ＼＼ー-‐''" i i, ＼ ／:::::::::::::::
;;i, i、/ r゛ /: :::::!''＼ ＼￣ ____,i i, ＼ ／::::::::::::::::::::
;;;;i, i, ゝ'::::: /::7‐- ＼ ヽ、 ,i ,,,___,,i, ヽ(_＿::::::::::::::::
;;;;;;;i、 i, ＼::::/:::ヾ─-,,,,,_ヽ、 ￣!／::::|:::::ﾉ ::::::::ﾉ ￣￣￣
;;;:::::::i, i,, ヽﾍ、＼‐─一゛7‐-─ｿ:::|／ く、
;::::::::;A、 i, ,,‐r‐-ヽ:::::ー-‐'''" ,／ '''''''''''''''''''"" ,r''''"
::::::;/ i i," |＼ | ＼,,,,, r ,／:: / ／
￣ ＼ 'ヽ,, ＼ i i/ヽ--イ::::: | ,/ ,／
＼, ＼ ＼ ＼ i i ＼::: ,,／ ／
ヽ V| ＼ ＼i | ヽ ,r' ／
''i | ＼ ＼ " ／
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| ビルから飛び降りるジャンヌ、その程度の衝撃で傷つくほどやわではない。
| 右手の『ミカエルの龍殺し』をアスファルトに突き立てながら、ジャンヌはやらない夫の眼前に着地した。
|
| か弱い小娘ではないのだ。胸に飛び込むような真似はしない。
| 対等の存在のように傲然とやらない夫を睨みあげる。
|
| けれども、すぐに膝をついた。
| くずおれたのではない、ゆっくりと礼儀正しく、臣下の礼を取るべくだ。
|
| …………だが。
|
| 砕けたアスファルトに手を付き、臣下の礼を取ろうとした瞬間に。
| ジャンヌの背後で羽虫の飛ぶが如き音。
|
|「それはいけませんよ、じゃああぁぁぁああんんんぬうううぅぅ！！」
|
| 空間を割って飛び出した触手がジャンヌを羽交い締めにする。
| 絶対防御など無関係に、刺激臭を放つ粘液がジャンヌの体表で煙を上げた。
|
|「ううう……じ、ジル……あなた、は……！？」
|「ジル・ド・レェ！！」
|
| 飛びかかるやらない夫。その失策。
| ニャンコ先生はやらない夫強化の余波でグロッキー。
| 墨目は天使パワーとのキャットファイト後、タカオへ向かった『異端審問官』への迎撃から未帰還。
|
| この正体不明の悪魔に、単独で立ち向かうしかない。
|
|「お兄ちゃん！！」
|
| 『異端審問官』をなぎ倒しながらやらない子が叫ぶ。
| 空間を割いて現れる触手に警戒しながらの戦闘で、やらない夫から引き離されていた。
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_,､､､､､､､斗==ミs｡,,,,_
／:::::::::::::::::-===ミ:::::::::::::}
}(___ノ:::::::::::::::::::::::::::::≫'’￣｀`ﾘ ふうむ、ふうぅむ。
￣ア:::::::::::::::::::::::::::/ ヽ
/::::::::::::::::::::::::::::::{ _,､ __,,,､} 困りましたなあジャンヌ。
{:::::::::::::::::::::::::::::::::}. {__,ィぅ }"＼
{ ｝:::::::::::::::::::::::rミ:::| ｀ー く. ヽ よもやあなたの方に
.≧=:::::::::::::::::::::::::{ ､,｀ ､_ -ィ′ 『聖霊注入棒』を挿れねばならぬとは。
｡s≦￣￣￣ ≧s｡_:ヽ__ ｀`､ _..._ﾉ
j{ﾆﾆﾆﾆ=- _ ￣}
.j{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＝- _ ヽ
j{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＝- _r―-イ
. . . . . . . . . .j{ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＝- ＼
: : : : : : : : : :}｢ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- `､ {｀`ヽ
7ﾆﾆﾆﾆﾆ=-_≧s｡_ニﾆﾆﾆﾆﾆ=- .`､ {ヽヽ ＼
ﾆﾆﾆﾆﾆ_／ﾆ|: : : : : :≧s｡ﾆ=-く V .{ヽ } /} .} }
二二_／ﾆﾆ::|: : /}ix,: : : . V V V } ,' ..}
ﾆ__／二二ﾆ| ./ﾆV }ix,: : . } V/ }/ }
,／ﾆﾆﾆﾆﾆ_:| ./ﾆﾆ:V ＼: :.....} / ./}
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|「う……ぁ……」
|
| 身悶えるジャンヌ。その下腹部にジルがなにやら生物的にうねるどどめ色の肉槍を突き付ける。
|
|「やめろ！」
|
| 羽音のコーラス。ジルの召喚とやらない夫の『ZIP術』の同時発動。
| 虚空から伸びた複数の触手が空を切る、すでに跳躍していたやらない夫。
|
| 代わりに飛び出たねずみ男がぬるりと触手をかわしながら放屁。
| 空気が黄色くなり、触手が炙られたスルメのようにうねる。
|
|「『エクスカリバー』！」
|「エクスカリバー『無名祭祀書』30%限定励起…………承認んッ！」
|
| 斥力でジルを吹き飛ばそうと試みたやらない夫。しかし、怪人はびくともしない。
| ジル・ド・レェの不死身めいたタフネスの秘密。それが、それが。
|
|「お前！」
|「神の慈悲を受け取るがいい！」
|
| 肉棒がジャンヌの下腹部を貫く。
| 皮膚に触れた瞬間に先端が花のように開き、皮膚を切開して内蔵を掻き分ける。
|
|「がッ！！？」
|
| 激痛に白目を剥き、暴れようにも拘束されて動けないジャンヌ。
| 舌を噛まぬようにその口にも触手。
|
|「あなたはもう『聖処女』ジャンヌ・ダルクではない。失敗作め……その剣を、おや？」
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イi: ／ /i:i:/ ;|i:i:i |;i Ⅶi:i:r _
i:i ﾞ' /i:i:/ |i:i:i |;i Ⅵ:ﾊ ∨ﾊ ¨ _
/ /i:i:/ ;|i:i:! |;! Vi:ﾊ. ∨ﾊ ＼ヾ - _
/i:i:/ |i:i:! |;! Vi:ﾊ. ∨ﾊ ヽi:i＞≡≡7 .ｧ _
, /:i:i/ ;|i:i: !ｉ :Vi:ﾊ. ∨ﾊ,＞'''´ヾﾊ // ./ 、
≧/;／,,_＿ |i:i: !i Vi:ﾊ.._ V〃 ◎ ﾞ,! 〃 ,:/ ∨ ∨
￣|i' ｀ﾞ＜ミ,￣ Ⅶ__ｉ!＿__ x'i:イ¨`ヽ.V=- _＿／´／/ ｉ ∨ ∨
il ◎ ｀ ＜,〉';i ! ＼ /' Vl `Ⅶ――＜￣￣/ .l, ∨ ∨
ヾ i!＿__ ,,. ＜/ . ', i!_ ` `:}i!ﾞ ＼, ￣｀7 | ヽ, ∨ う、ぐぐ…………ぐぐぐ。
―.|―‐.ｧ'´ ./ / i! ｀ 、 },' ＼ ./ | ＼ ∨
／ﾞ / /ﾞ i! ｀ ､ /＼/ .| ` |
ヽ,／ ./ / ,i!,＿＿_ ｀ ､ / _,,／￣| |
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| 『ミカエルの龍殺し』を手放さないジャンヌ。
| その間に再度アタックを図るやらない夫を、触手と復活した陸ザメが阻む。
|
|「やめろ！」
|「それを渡しなさい」
|
| やらない夫を無視して『ミカエルの龍殺し』を奪おうとするジル。
| 陸ザメを蹴り飛ばす、そこに飛んでくる大型悪魔……いや天使。
|
|「いやじゃあぁあ！ あのネズミずっこいんじゃぁあ！！」
|
| 墨目から逃げてきた天使パワー。機動力では墨目に勝る。
| この状況は危険だ、しかし、ジャンヌを助けなくては。
|
| そこに飛んでくる砲弾、パワーに直撃。
|
|「ぎぎゃあああ！！？」
|「ヒャッハー！ 命中ですよ！」
|
| いつの間にか高所に登っていた青葉が高笑い。だが、手が足りない。
| ジャンヌとジルに届かない。
|
| やらない子は遠い、ジルの手の中の肉棒がジャンヌの内蔵に何かを注ぐ。
| 止めなければ、何をしているか分からないがろくでもない事だけは確実だ。
|
| ジャンヌの身体が跳ねる、口の触手を食いちぎる。
| 絶望的な、末期のひきつり。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/ ／ `マ圦 ＼ / 安心してくださいな！
. j/ 寸( ∨ /
. / / ∧ ﾏ,〉 ∨ すでに頼りになる援軍が
｜ ./| j|. ∨ﾊ Ｖﾊ
∧ / .| .∧ ∨| .| l | あちらに！！
|{∧ /＼l | / ∨ i| .| l | j＾し _ｱ
|{/∧ｒ=ミИ ./j厶 '"´､ | .|r〈 | ,. ´ _７
/ .八 ﾋ:ﾊ| ./ ィｆ芋ミx、 ,′ i| .从∧j___ ,. ´ ,ｒ―'
. / ′ Vｿj/ 夊ｚ夕 ∨ j/ j/ ｀寸く .／
′ i ′ ¨¨´xxx/ ｲ／＼ Vﾊ ／
i .人 ｒ- ＿_ _,／ ./ j／: : : :i{ ./ .ﾏ／
. И / ＼ γ圭ﾐx ﾉ ,/ /／ : : : : : |:∨ / ／ |
j/ /圭圭V _.. イ７ / : : : : : : : : : : ∨ ∧ |
／＾寸=ﾐ.∨ _ｊ／j/-‐=====‐-ミ: : :∨i ./
／／ 寸¨′ 「: ／ ＼:} Ｌ／
(_ ヽ /´ V厂
〈（ _ }＿{ __.. -‐ ¨￣￣¨ 、
＼/⌒`、 ￣¨¨¨￣ 冫
. / /＼ ／
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| 緊迫した状況に鋼の救世主が！
| はしゃいだ声で、ビル屋上フェンスから身を乗り出して指差す青葉。
|
| やらない夫が、ねずみ男が、やらない子がそちらを見た。
| ジルが、天使パワーが、『異端審問官』たちが、サメ型悪魔もつられて見た。
|
| 見事なまでに何もない。
| そして、青葉のペルソナが『こういう能力』だと知っている備府兄妹が誰よりも早く立ち直った。
|
| …………が。
|
|「忍法プリウスミサイル！」
|
| 反対側から突っ込んできた暴走自動車が、ジルに直撃。爆発炎上。
| 衝突寸前にその屋根から飛び降りた黒衣の男が壁を蹴る。
|
|「本当に居たぞ、やる夫くんは『Ｘラウンダー』なのか？」
|
| 投擲したフック付きワイヤー。炎の中から正確に、ジルの肉棒を奪い取る。
| 左手に持った拳銃で、やらない夫を背後から襲おうとするサメ天使に威嚇。
|
| その間に素早く立ち直った天使パワーは、尻尾を巻いて逃亡。
|
| いつの間にか近づいていた小さな人影が、炎上するジルとジャンヌにポイポイと手榴弾を投入。
|
|「おい！？」
|「こんなの目くらましにしかなんねーよ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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し' / ’／. . ⅥV ⅣW , . 「. . . . . . . . . . し ／
. . /:. . . . . . Ｗ.. . V:.. . 」 . . . . . . . . . . . く＿＿＿＿＿
:. . . , ⌒7. . . . . . . . . 「. . . . , . . . ／. . . て￣￣￣￣ /L
: .／ く 〃 . . . . . 「. . , . _ ./ . . .:／:. . . r'⌒､ て＿＿＿＿ /／」
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Ｙ ⌒ -､ ,⌒ヽ_ノ ｀ヽ . ￣. . . ／
： ＼_ノ , -､ ), ⌒ヽ_r <⌒ヽ
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L_／ ⌒ヽ
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| 実際その通りであった。
| 絶対的防御力を誇るはずのジャンヌと、『エクスカリバー』を有するジルにしてみれば、自動車事故も至近距離での爆弾の炸裂もそよ風だろう。
|
| だが、光と音で妨害はできる。
| そして、妨害が必要な攻撃が今、そこに来ていた。
|
|「やらない夫、怪我は？」
|
| 黒衣の男がサメ天使の鼻面を蹴り飛ばし、その無表情な眼球に銃弾を叩き込んで沈黙させる。
| 完全に場の主導権を奪われた。やらない夫は少なからず安堵しながら振り返る。
|
|「久しぶりだろ」
|「そうでもないよ。アセム・アスノさんと元合衆国軍のジャジャマルだ」
|
| 帽子をかぶった女が、巨大なハサミをアスファルト道路に突き立てた。その目は未だに煌々と輝くプラズマ火球に向けられている。
|
|「やる夫は？」
|「すぐに来る」
|
| 次の瞬間、空間が引き裂かれてジルが飛び出した。あの召喚術を利用した空間転移。その後ろには動かないジャンヌ。
|
|「不信心者が増えたぐらいで何が出来ようものですか！！」
|「『セイバー 序列外予備役 『青髭』ジル・ド・レェ 汝を入即ネウロの名に於いて現時刻を持って除名処分とする』」
|
| 気炎を吐いたジルが、唐突な声に硬直する。
| 傲岸不遜、絵に描いたような理不尽。もしも、もしも脳噛ネウロがそこに居たとしたのなら……！
|
|「言伝てだお『貴様の企みは興味深いが、発展性が皆無。コスパは最悪。再現性もない。
| ヴァカめ、一度のまぐれにアグラを組まずに研鑽を重ねればマシな結果を出せようものを。
| 貴様はクビだ。エクスカリバーは返してもらう』」
|
| ジル・ド・レェは通告書を読む饅頭のような姿に、似ても似つかぬ魔人を幻視して絶叫した。
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☆ 次回予告！
彼女の道はすでに途絶えた。
それは憎悪によって磨かれた、彼女の魂の咆哮。
主の御業をここに。
彼女の旗よ、同胞を守り給え。
落陽に郷愁を。
そして御使いは天に帰る。
炎は獣に、龍は彼の手に。
楔は破壊され、命の鎖は引きちぎれる。
我が神はここにありて。
吠え立てよ我が憤怒。
次回、最終幕百二十三話『12/20 その4 ジャンヌ・ダルク』
死を与えよ、果てからの全てに。
やはりない夫の隣は死んだ魚の目したやつですよ
ジャンヌの真名……真実さんかな
ネウロ社長、異端審問官ジルを自由契約とする
次回予告、ジャンヌの宝具前口上になってるんやな
一部、姉を名乗る不審者が混ざっているが
まあうん
ジャンヌとの因縁もそろそろ幕引きか
: : : : : : /: : : : : : : : : : : : :／ ＼: : : : : : ／ ＼: : : : : : : : : : : :＼――――‐
―――― /: : : : :＿_ : : : : :/ ｀ヾ:.:／ ＼: : : : : : : : : : : ＼
/: : : ／: : : : : : : / ＼ ／ ｀ヾ: :＼: : : : : : : : :ヽ
∨: /: : : : : : : : / ＼ ／ Ｖ: : :＼ : : : : : : /
∨: : : :_:_: : : / ＼: : : : . . . . . : : : ;. ´ '. ∨: : : ＼ : : : /
│: : / __ ｀ヾ! ヽ.,＿＿＿ ＼ : : : : : : : ／ ＿＿ﾉ ﾐ／￣ヽ:ヽ.:./
│: : | l ヽ | ／ ＼ ヽ : : : ／ ,. '" ｀ヽ ﾘ ｲ l |: : /
│: : | l | i /-―- ., :＼ ､／ ／ ＿＿__ : ! ´ ! l |: : |
│: : ｌ :,. | { ぃγ77ヽ ＼ : ＼ ハ ／/ ／ γ77ヽ 〉 } ! ′: !
│: : :ヽ :, :,＼l//ﾉ ヽ ! ヽ ノ､∧ ／ ! / {////' / / / /: : 八
/: : : : : :＼ __:, :, ｀ー―-- 〉 ／／ヽ /´ヽ ､ /＿＿,.｀＜ / ′'´／: : : : : ﾍ―――‐
―――／イ: : : : : : : ﾊ :, ヽ ＿_,. '"／ 〈 | | :, ＼｀ヽ ＿＿,.ノ ' ／: : : : : : r ､ﾍ..:..: : :
: : :／.: :.|: :∧: : : : : ゝ.,_! ／ '. | | / ＼ /イ: : : : : : : : ′ ヾ＼ : :
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| 『青髭』ジル・ド・レェは歴戦の『異端審問官』である。
| 彼は『異端審問官』に必要な残虐性と狂信、そして異常さの全てを申し分なく備えていた。
|
| 彼が脳噛ネウロと遭遇した六年前、すでにジル・ド・レェは狂人であった。
| 『異端審問官』は組織的に審問官と審問官補、そして徒弟という形で成り立つ。
|
| モズグスとジャンヌは審問官であり、『医者』と『拷問吏』、ジルが審問官補。
| それ以外は徒弟である。
|
| ジルは六年前は別の審問官の下で働く審問官補であり、優秀で邪悪な人物だった。
| 彼が捕縛した異端候補が無実だったことはない。もちろん、死人に口無しという意味で。
|
| だがジルは異端者の家族には優しかった。哀れにも遺された子供らに手を差し伸べた。
| 男の子たちは皆、神聖で正しい教えを学び、異端と邪悪を憎む心強い戦士へと育った。
|
| 女の子たちの殆ども、同じように育てられた。
| だがある程度成長したところで、彼女らの半数が、生命を落とした。
|
| ジル・ド・レェの『聖霊注入儀式』に失敗したからである。
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＞―＜:
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|{:ヽ: : : : : : : : : V
ヽ: :＼_,.-: : : イ ＼
ハ: ﾉ八ヽ ￣￣＼_
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∧＞､_ ヽ ＼__,. -
＼ ` ､.,＿
＼ ､ ヽ ヽ / } ヽ
＼ } }_／ / }
i /ヽ／／ /く
V ＼＿__,.-､
ヽ_ノ } ヽ / ＼
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『聖霊注入儀式』。
| ある晩、ジル・ド・レェの夢に大天使 ガブリエルが訪れた。
|
| 大天使は『清らかなるおとめに聖霊を与えなさい』とお告げになり、
| 目覚めたジルの枕元には禍々しくも恐ろしい赤紫色の棒があった。
|
| 油を塗り込んだかのようにぬめぬめと照り、生物のように脈打つ棒は、
| おとめを全自動で開腹しはらわたを掻き分けて子宮に『聖霊』を注ぎ込む。
|
| 注がれた『聖霊』はおとめの卵子と結合し、おとめは処女のままに妊娠することになるのだ。
| これを妄想だと笑うことは簡単だ。しかしジル・ド・レェは本気で信じ、実行していた。
|
| 早い話が素人による開腹手術と人工受精だ、魔術によるフォローはあるが、麻酔はない。
| しかも狂人は対象の処女性も確認した。腹を割って処女でなければ狂乱して殴り殺した。
|
| ジルは『異端審問官』としてその狂気のはけ口を見つけていなければ、間違いなく凶悪な猟奇殺人鬼になっていただろう。
| 現代の切り裂きジャックと呼ばれるような化物に。
|
| ともかく、そうして生まれた子どもたちがいた。彼らは学校にも行けずにジルに育てられた。狂信的に、人形のように。
| ジルは。中でも最も美しく、最も壊れた少女を選び、名前を与えた。
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/￣＼{{／{＼{ ,八 ／ / ,{二二二厂 ／ ﾉ / ,′
/￣＼ } ′厂￣＼／{,_＿_ /￣＼ﾆr'¨´ / ／i'´ ,′ , {
〉‐-ミx`7 {∠￣ ＼,} -‐=ｧ'^′ ;{/ :､ { { :､__,,ノ!
/ ∨'７{￣￣ ＼} / ＼{ { ,ﾉ
. / /:../ ｀`ヽ.___／ _｣{_ :､ ｀¨^^¨´
,′ -/ﾍ/ /´ '^¨´ ＼ ＼ ＼__,ノ
_二- _,/ _/__ /'´ ／＼ ｀¨^¨´
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| ジャンヌ・ダルク。
|
| 揺るぎない確信と信仰は、最強の力を発揮する。
| ジャンヌは同年代とは比較にならない信仰力を有していた。
|
| しかし、いかんせん生まれついての才能に関してはどうしようもなかった。
|
| 『血族』のように長年代を重ねて魔術を研鑽し血統を強化しているわけでも。
| 『教会』のように広く才能を呼び集めて玉のみを選り分けられるわけでもない。
|
| ジャンヌ・ダルクの魔力は人並みだった。
| 処女懐妊したおとめに産ませた、大天使の加護を受けた存在なのに、
| 狂信的な信仰以上の特異性はなく、ジル・ド・レェはがっかりした。
|
| しかしここで現れる鋼の救世主。
|
| ジルの『孤児院』に無断で入り込み、その所業を暴いた男が、悪魔の笑みで囁いた。
|
|「クズかつ外道ではあるものの、中々に悪くない計画だ。
| しかし、貴様の計画は迂遠で再現性が低く計画性も確実性も皆無だ。どれ、我輩が精度を上げる手伝いをしてやろう」
|
| 当時の脳噛ネウロは『教会』の協力者であった。
| どのようなシステムかは不明だが、
| 無限の魔力を有する『エクスカリバー 試作型 無名祭祀書』をネウロはジルに貸与した。
|
| 書とは名ばかりの拳大の玉、赤から青紫にゆっくりと色を変える不思議な宝石。
|
| 条件は実験と研究結果の逐次報告義務。
| だが、ジルはネウロへの報告をしなかった。完全に無視して『無名祭祀書』を持ち逃げした。
|
| ネウロはジャンヌを失敗作として次に活かせと言っていたが、
| ジルはようやく日の目を見た完成品を諦めることなどできなかったのだ。
|
| ジルはジャンヌの心臓に『無名祭祀書』を埋め込んだ。
| 無限の魔力と絶対の防御を、まるで信仰の賜物のように見せかけた。
|
| こうして、『聖処女』ジャンヌ・ダルクは完成したのだ。
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＼ﾊ.,＿_ ハ ／:.:.,′ ゞニノ 〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.r/／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i／
/: . r:、｀ヾｲ:.:.:.:｀¨´:.:.:.:.:.ゝ.,＿＿,.ィ {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／:.:.:. ジャンヌ！
|.:ﾄ､ゞﾂ 〉!.:.:.:/⌒ヽ:.:.j j:.:.:.:.:.:.:.:.:い.:'´ .:.／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／:.:.:.:.:.:. ジャァァンンヌッッッ！！！
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. /:.:.:.:ﾊ } }:.:|.:.:.:.! .! } } } } ,ｲ:i:i:i:i:i:i:i:i:i／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
′:.:.小.{ { !:.:.:.:! ぃ. ｛ {/:i:i:i:i:i:i:i:i／., :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
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| 師走も二十日、深夜の東京に甲高い絶叫が響き渡る。
| 燃え盛る町工場に囲まれた工業団地、中空には太陽の如きプラズマ火球。
|
| やらない夫を追いかける『異端審問官』との戦いは新たな局面を迎えていた。
|
| やらない夫に感化され、彼を救世主と認めようとしたジャンヌ。
| そのジャンヌを拘束し『聖霊注入棒』を突き立てていたジル。
|
| ジャンヌを救おうとするも手が足りなかったやらない夫。
| そこに現れた援軍こそが、相模原からオスプレイで帰還したばかりのやる夫たちである。
|
| ネウロから授けられた『除名処分勧告書』の効果は劇的であった。悪い意味で。
| ジルの『エクスカリバー』はジャンヌと紐付けられていた。
|
| ジャンヌの魔力の源泉であり、無敵の防御力の秘密であり、そして。
| 全身融解状態でも動けた理由でもある。
|
| ジャンヌの包帯の隙間から、青紫の光が漏れた。
| それはジャンヌの体内から発せられる光であり、ボロボロの肉体をこじ開けてても進もうとする光であった。
|
| それを見て、不覚にもやらない夫は涙を流した。ジャンヌは抜け殻だった。
| 狂気と熱情に溢れた女の魂はすでに無い、ジャンヌはとっくに事切れていた。恐らくは、ジルに腹を割かれた時に。
|
|「ジャンヌ……！」
|「ジャアァアンヌウウ！！」
|
| 悲鳴をあげるやらない夫と、泣き叫ぶジル。
| やらない夫を助けたつもりのやる夫は困惑しかない。
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＿＿＿_
／ ノ ＼＼
／ （●） (●）＼ え？
／ ∪ （__人__） ＼ あれ……？
| ｀ ⌒´ |
＼ /⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒) もしかしてやる夫、
ノ | / / / (⌒) / / / / やらかしちまったかお？
／´ | :::::::::::(⌒) ゝ :::::::::::/
| ｌ | ノ / ） /
ヽ ヽ_ヽ /' / ／
ヽ ＿＿ ／ / ／
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|「うわ、マジかよ殺しやがった！」
|「煽るなジャジャマル…………来るぞ！！」
|
| アセム・アスノの警告に、ジャジャマル、やらない夫、そして蒼星石は即座に反応できた。
| 幸運にもやる夫は距離が離れていた。攻撃射程の外にあった。
|
| 『ミカエルの龍殺し』の作り出したプラズマ火球。
| 援軍組はジルよりもそちらに注意を払っていた。それが彼らを救った。
|
| 太陽がプロミネンスを発するように、プラズマ火球の表面に小規模な爆発が起き、炎の蛇がのたうちながら薙ぎ払われた。
| その数、三本。
|
| ニンジャであるジャジャマル、アセムは素早く回避。やらない夫は蒼星石を引っ掴んで跳躍。
| しかし、命なきジャンヌと奪われようとする『エクスカリバー』に縋り付くジルは直撃。
|
| 避けても、皮膚が炙られる熱量。ジルとジャンヌは一瞬で人の形をした松明に変わり、炭化した。
| その炎を突破して、青紫の石がやる夫に一直線。
|
| 別の一本はやらない夫を目指していたやらない子を狙い撃ち。
| 上から叩き付ける一撃を、やらない子は直感的に回避した。
|
| アスファルトがグズグズにとろけて溶岩のように沸騰する。近くにいた『異端審問官』が炎上した。
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／ _二ﾆ=-｀ヽ-==ミ≧s、
j ／ ／ ./ ∨｀ 、 ､ ＼
ｱ ／ ’ ∨ ＼ ヽハ
,∠/ | ∨ . ∨
′ ∧ | ﾄ､ ∨ V
ｉ l ＿ノ ヽ､＿ ∨ 〈 わ、わ、わ！
| | / __: : 、 ./: :__｀ヽ! |
| Ｙ´んﾊ: :＼(∨ んﾊ｀Ｙ .| ワレアオバ！
∧ ⊂つ .vソ : :u: : : : ｖソ.⊂つ .∧ ワレアオバ！！
､∧ , 、 ｜ /_ﾉ
∧. ′ l /
ィ｢ ∧ | r―――┐ ｨj .厂 〉、
./⌒! V ≧s｡._ ￣￣ _.｡イ ]/ 厂 ＼
′ ∧ 〉j ＼￣￣ ／ ′
. { ∧ ∨ / / }
. { ＼. V/ ／ .}
. { ≧s｡.,＿_.j{＿___.｡s≦ _j
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| 三本目は町工場を吹き飛ばし、屋上の青葉は巻き込まれて焼死した。
| ペルソナへのダメージは本体にフィードバックする。本体も無事では済まない。
|
| ジルとジャンヌだった消し炭にプラズマ火球が吸い寄せられる。
| 慄然とする一同の眼前で、炎の塊が収束。『ミカエルの龍殺し』に吸い込まれる。
|
| それと同時に、炭の柱から羽化するように、焼死体を割って起き上がる全裸の女。
| 幼さの残る麗しいかんばせ、瑞々しくも見事な肢体、大きく実った双丘。
|
| そいつはまず己の手を見つめ、次に周囲を見渡した。
| そしてやらない夫を見つけると、吐き気がする程淫蕩に笑った。
|
|「ジャンヌ……」「奇跡だ……！」
|
| 生き残っている『異端審問官』たち、その通り。その女は在りし日のジャンヌ・ダルクのカタチをしていた。
| だが、やらない夫は歯の根が合わないほどに震えた。コイツはジャンヌではない。
|
| 同様に、いや違う理由で打ち震えるやる夫。彼の中の入即貸本で、甲高い悲鳴を上げて机の下に隠れる一つの存在。
|
|「『代行者』だお！！」
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r‐‐ __. ﾏ,
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| やる夫の叫びに応えるかのように、ジャンヌの姿をしたソイツは『ミカエルの龍殺し』を掴む。
|
| 剣は黒い炎となり、炎はジャンヌの裸身を舐めるように炙る。
| すると何という事であろうか、黒い炎が硬質化し、鎧となってジャンヌを覆った。
|
| 過去のジャンヌを神々しき白と銀の鎧とするならば、禍々しき黒と金の鎧。
| ジャンヌであってジャンヌではないそれを思わせる類似と相違。
|
| まっすぐにやらない夫を見つめるジャンヌ。いや、やはりジャンヌではない。
| ジャンヌの姿をした怪物。『代行者』。言うなればジャンヌ・ダルク・オルタナティブ。
|
|「どうすんだ！？」
|「見ろジャジャマル」
|
| アセムが示したのはジャンヌ・オルタの足元である。
| アスファルトが泡立ち、刺激臭を放ちながら液状化している。
|
| プラズマ火球に比べれば、その表面温度は下がったと見える、しかし未だに超高温存在であることに変わりはないのだ。
|
| 見つめ合うやらない夫とジャンヌ・オルタ。二人の時間は止まったまま。
| 路上で尻もちをついたまま荒い息のやらない子。顔面は蒼白、しかし唇が裂けるほど食いしばって立ち上がる。
|
|「お兄ちゃん！！」
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| ジャンヌ・オルタが動いた。
| やらない子に視線を向けた。その目は氷のように冷たく、やらない子は蛇に睨まれた蛙のように凍りついた。
|
|「逃げろ！！」
|「あぐっ」
|
| ジャンヌ・オルタがやらない子を指さした。次の瞬間、彼女のいた空間が揺らめき、消し飛んだ。
| 圧倒的熱量による爆発、ブロック塀が倒壊し、町工場がひしゃげる。
|
| 巻き込まれた『異端審問官』の半数は一瞬で炭化した。
| 残りは不幸にも生き残り、全身火傷で絶叫しながらのたうち回る。
|
| やらない子は？ 逃れていた。
| 地球の重力を⇔反転するという荒業で。
|
|「ありゃ無理だ、オレは抜けるぜ」
|「そうしろ、君はまだ幼い。命を無駄にするなよ。達者でな」
|
| ジャジャマルはアセムを一睨みした後に身を翻した。
| ジャンヌ・オルタの視線はまたやらない夫に戻っている。逃げるなら今だった。
|
| 彼女が目指すのはやらない子の落下地点、オスプレイを運転しながらやる夫たちの話は聞いていた。
| 『代行者』は別次元介入者……つまりニャルラトホテプと『滅ぼすもの』相手に特化した存在だとも。
|
| やらない子が初撃を回避したは僥倖だった。
| 『ドッペル玄関』で⇔反射を狙っていたら焼け死んていただろう。
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.///////才´ -──┴─ 、
{l////／ ィi〔//////////////
､/／ ／///＞─………─ 〈
＼.／//／:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.:ヽ
／//／:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.／:.:.:.:.:.:＼.:.:.
. /////:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.､:.Ｘ 笊ト:.、:.:.:.:.､{ やらない夫
ー‐く:.:.:.:.:l__＼:.:.:＼ 仗ｚｼ |:.:.:＼{ 落ち着け。
|ﾄ:.:.:.:{ィ笊 ￣ Иl:.:､!｀
|l ヽ:バzﾒ ､ /:.:l:.:.:|＼ あれが君の
乂 }:.:..､ , ´ ｲ{:.:.l:.:.:| } 逆鱗に触れたのは分かる。
乂:.:.≧=- =彡、ト､V/
,に.／::::::::＼( Y¨¨`X≧z._ だが落ち着け。
に/:::::::::{::::::::に、廴_/＼_ハ::}
V:::::::::::::::、:::::に、 ！ｌ .0《 ＼
′::::::::::::::::::::::l:::}L |i:| 0 :i:iV)
/:::::厂＼:::::::}::::j:::にi |/ 0 V })、
└彳 / ¨「＼{::::乂匸匸ソ )廴ソ
| .′ /∨777ノ:::::::}}_Χ{l::::::〉
_.ﾉ /::::::ヽ///｀777/｀7//ｲ、
{ ／ {⌒¨¨}///////////{:::::}＼
∨ ＿__ﾉ V/／::¨::¨::¨＼》:::::＼ト ．__＿ ＿
厂V)´ ！ }/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ー ---ミ
厂/ | ′::::´::::::::::::::::::::::::＼{:_:_:_:_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
厂0 | ｌ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::}
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| やらない夫の小脇に抱えられた蒼星石が囁いた。
| 圧倒的暴力への恐怖に震えるやる夫とは逆に、やらない夫は憤怒で震えていた。
|
| ジャンヌ・ダルクは外道だ。
| 罪なき無辜の民を一方的な罪状で惨殺する狂信的な怪物だ。
|
| それでも、分かり合う道はあったはずだ。
| 手を取り合い、より良い世界を探す未来が。
|
| それが、あんな風に部下だった男に殺されて、肉体を怪物に奪われて。
| やらない夫は許せなかった。死者を冒涜する『代行者』を必ずや除かねばならぬと激怒していた。
|
|「いいかい、奴は君に注意を向けている。静かに僕を置いて、ゆっくりとやる夫側に回るんだ」
|「………………何か、作戦があるのか？」
|
| 怒りを噛み殺して囁きを返すやらない夫。正直あれがどれ程の存在なのかは分かっていた。
| やらない夫が戦った中で一番の強敵はニャルラトホテプだ。
|
| しかしそのニャルラトホテプを軽々と凌駕するであろう存在。
| やらない夫の知るオールスターで戦っても、半数は焼き殺されるだろう化け物。
|
| それに、立ち向かう術があるのか。
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／￣￣＼
／ _ノ ヽ､.＼
| （●）（●） .|
! （__人__） | 教えてくれ
, っ ｀⌒´ | 何でもする。
/ ミ） /
./ ノゝ /
i ﾚ'´ ヽ
| |／| | |
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|「ならばまず、僕を助けに来るなよ。君もやる夫も。
| 僕とアセムさんが時間を稼ぐ。その間に片方あるいは両方が殺されそうでも、絶対に助けには来るな」
|
|「………………約束する」
|
| 苦々しい回答に何故か蒼星石は吹き出した。大真面目に、忸怩たる思いで絞り出したというのに。
| この約束がきっと実際には無視されるのが想像に易すぎるからいけないのだが。
|
|「では、やる夫と合流してくれ。やる夫なら『代行者』対策を持っている可能性がある」
|「待て、可能性？」
|
| 持っていなかったら？ 蒼星石とアセムは無駄死にか？
| 蒼白のやらない夫、蒼星石が苦笑い。
|
|「そしたら君が何とかしてくれ、やる夫はジル・ド・レェの『エクスカリバー』を奪った。
| あれは君の『エクスカリバー』のブースターにできるそうだ」
|
| 話が長すぎたのか、ジャンヌ・オルタが視線を蒼星石に向けた。
| 危険な兆候だ。やらない夫は蒼星石を見もせずに投げ捨てた。
|
| 受け身を取り転がる蒼星石、ジャンヌ・オルタの視線は彼女に向いたまま……指を向ける。
| 次の瞬間、蒼星石とジャンヌ・オルタの真ん中の空間が爆発した。
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|「ならばまず、僕を助けに来るなよ。君もやる夫も。
| 僕とアセムさんが時間を稼ぐ。その間に片方あるいは両方が殺されそうでも、絶対に助けには来るな」
|
|「………………約束する」
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| 苦々しい回答に何故か蒼星石は吹き出した。大真面目に、忸怩たる思いで絞り出したというのに。
| この約束がきっと実際には無視されるのが想像に易すぎるからいけないのだが。
|
|「では、やる夫と合流してくれ。やる夫なら『代行者』対策を持っている可能性がある」
|「待て、可能性？」
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| 持っていなかったら？ 蒼星石とアセムは無駄死にか？
| 蒼白のやらない夫、蒼星石が苦笑い。
|
|「そしたら君が何とかしてくれ、やる夫はジル・ド・レェの『エクスカリバー』を奪った。
| あれは君の『エクスカリバー』のブースターにできるそうだ」
|
| 話が長すぎたのか、ジャンヌ・オルタが視線を蒼星石に向けた。
| 危険な兆候だ。やらない夫は蒼星石を見もせずに投げ捨てた。
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| 受け身を取り転がる蒼星石、ジャンヌ・オルタの視線は彼女に向いたまま……指を向ける。
| 次の瞬間、蒼星石とジャンヌ・オルタの真ん中の空間が爆発した。
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--イ } _＿ _, ノi
/l ／ ／ ／ }＿ _
/ l{ ／ /
、＿ { ＼ { ／ _, /、 やはり、何かを飛ばしているな。
ヽ ヽ _ゝ--=i -=＜ ﾌ
_Y / i} ＼ l=- _ ＜_ _ タイミングさえ掴めれば
ゝ_＼ _／ l lヽ}＼ Yl ﾆﾆ=- _ / 撃墜できそうだ。
/ ／/.l l l l /ｨｯﾌ l lﾆﾆﾆﾆム
l , ｨ / l l ﾄ 、 ｀ / ｨ l lﾆﾆﾆﾆﾆﾆi/ ＼
V / / l l _.{ l/ l / lﾆﾆﾆﾆﾆ／ ＼ |＼
l/l ヽ_＼ ヽ ＿ l / /ﾆﾆﾆ ／ ヽ
_ｨl ﾄ、 ﾄ .、' - 从{ /ﾆﾆ／ _ィ= 、 l
_ -==ﾆﾆ=へlﾆ )ﾊ ＞ -イ; ;/ﾆﾆﾆ| ／/////ヽ l
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆV/; ; ; ; ; ／＼ﾆﾆ.{ l ////////ﾊ l
` -=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- _; ; _／ﾆﾆﾆ ＼ム l/////////il l
/ lﾆﾆﾆﾆlﾆﾆl/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／il l/////////∧l
, ／ﾆﾆﾆﾆ i／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ_ イﾆﾆム V//////////ヽ
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ゝ` Yﾆ ／=-イﾆﾆﾆﾆﾆ[ ]ﾆﾆﾆﾆ 、 ＼////////∧
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| 爆風で吹っ飛ばされながら、やらない夫はアセム・アスノという男の呟きに心中でツッコミを入れた。
| いや、無理だろ。
|
| ジャンヌ・オルタの指先から発射される不可視の爆発源とナイフを空中で接触させたのだ。
| 奇跡としか思えない神業だ。
|
| そして、爆発の効果範囲も広い。
| やらない夫は油断なく回転受け身から腕のヒゲ槍で立ち上がる。
|
| 蒼星石は直撃は避けたが跳ね飛ばされて瓦礫の向こうだ。
|
| ジャンヌ・オルタは一瞬、溶岩並に熱量と粘度の高い視線をやらない夫に送り、すぐにアセムに目を向けた。
| 氷河期のからっ風よりも冷えた視線に、ブロック塀上のアセムは不敵な笑みで返す。
|
|「おい！」
|「はじめまして、やらない夫くん。キオの父、アセムだ。
| 君のことは阿部からよく聞いているよ。君の演説も見た。ここは任せろ、行け」
|
| ブロック塀を遮蔽にするアセム、爆破。指差した場所を爆破する。名付けて『爆砕指示』。
| だがすでにそこに彼はいない。ワイヤーの付いたフックでまだ倒壊していない建物に飛び移っていた。
|
| 目で追うジャンヌ・オルタ、指差す。『爆砕指示』。
| 魔法のような正確さで投げられていたナイフが空中で爆発。
|
| なんだこの人は、やらない夫は戦慄した。
| キオ同様の知覚系超能力者か？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ヽ／ /
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／ / ＼ ／
/ ' ,.＞'¨ ”¨ヾｰ一, ＼
l ,.＞'’ ィ'´ h ヽ,
∧ ,.＞'’ ヽ. ム
r､＜>'’ ／ , ,' ＼
／ヽ､ , ' ／ / ､ i `ヽ｡.,_
/ .ｨ一 7 / , ／ /ﾑ ', i ／
,.ィi ／ i ,' ,' / , ' i! i , ! イ／ 生憎エックスラウンダーじゃ
,.｡ｨ仁ハ i三ﾐi / / / , ' _ / ﾘ ,/ ,ﾘ ／i なくってね。
／三三三三三ﾊ i l ,' / ,ノ＞'’/,ィ' / ,/ ＜￣三ハ
<三三三三三三三i ﾊ, / / "'心ﾘ ﾉ7 i' ,/ ￣ アilム ただし……スーパーパイロットさ！
`＜三三三三三ﾑ i ', i 人 l ` ¨” / / / ,.｡-‐'’三三ﾑ
`＜三三ヘ `ｰ` .j i ／ `丶 ＜’.ｲ / ＞三三三三ﾑ
`＜三二ﾆアi /ヽ./ ＿｀´＿ i ¨ ,/ﾍｰ一 '’三三三三三ソ
`＜℡ｭｬ ハ ゝ _＿ ノ ,ｲ / へ三三三＞' ”
`寸ﾑ il ､ ＼ ｰｧ- ／ ﾊ i'＞‐一'＞'"’
,.イ三Ⅵ ゝ､≧亠"≦ ﾑ lﾆ＞'’
.ｨ仁三三∧ 丶＞'’ .ｲl !ム
.ｨ仁三三三ﾆム '’ ノ彡ﾚ三℡ｭ,
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| 言っている意味はよくわからないが、凄みは本物だ。
| やらない夫はアセムに気を取られるジャンヌ・オルタを刺激しないようにゆっくりと移動した。
|
| その間に復帰した蒼星石が吹き飛ばされて行方不明のトレードマークを探しながら移動。
| 最初に突き立てた大鋏まで到達する。
|
|「墨目」
|「承りましたわ」
|
| 異変を察知して戻った墨目が、素早く破壊されたアスファルト道路を走り、蒼星石に合流。
| ジャンヌ・オルタが一瞬目を向ける、そのタイミングでアセムが叫んだ。
|
|「『異端審問官』諸君！ いまそこに居る存在は君らの上司じゃない！ 街を無差別に破壊する高位悪魔だ！」
|
| 指さされた瞬間にはアセムは居ない、恐ろしく身軽に、斜めになった電柱に移動していた。
| 『爆砕指示』あるいは『ディストラクト・ディレクション』。消し飛ぶ鉄筋コンクリートビル。
|
|「諸君に与えられた選択肢は二つに一つ。我々に協力してジャンヌ氏の魂に平穏を与えるか？」
|
| 電柱から飛ぶ、『ディストラクト・ディレクション』でなぎ倒されて倒れる電柱。
| 柔らかなアスファルトに回転受け身からのワイヤーフックで移動。アスファルトが沸騰して爆発。
|
|「殉じて死ぬかだ」
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:::/ ﾚ.. - ───── -,.. _三三
/ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ三三
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':::/,' :::::::::::!:::::// |:::|!::::::|:::::::::::::::::::|::::::::|::::::＼三三三三
i:::/ |:::::/::::::|メ.l! |:N!::::::|:::::::::ﾄ!::::: l::::::::|::::::::::::ヽ 三三三
i:::i ﾚｲ:::::!:::!-._,､ヽ,ll ﾞ.:::::,ﾊ ::::| l!::::: ゝ:: |::::::,.:::::::::＼三／
ﾚ ,ｲ ::::::::::V !ﾊ::::ハヽ |:::::| !::::! ﾞヽ,.::::ﾊ::l::::/::::/::::::::::V
/:,ｨ ::::::::: ! ｀ ‐ ′ |:::::| V!二_j::/､ l::V::::, :::/,ｲ::/
i:::ハ:::::::::ハ ヾ::l 7r:::::j/､_ハ::::V:::://::l:|' タヌキめ……！
l:! |::::::::ﾊ ' ヽ. ゞﾆ ′ｲ::::::ヾ.:V:/::::ｲ! 流石はフリットの息子という所か。
_ l! !::::::::::::ゝ. ‐ ､ ／::::::::::::|!/::::/ l!
-v' ´ ﾉ_ ゞ!:::::::/ ＼ ___ー= ' :::::::::::::: メ:::::/ l! 逃げるという選択肢を消したな。
ノ ／'´ !, -､ __ ,ｨ|::::::!== _､ ゝ__ ,∠´__j:1イ:::::::::::::::／:::::,. l!
/ / // ﾉ!,ﾉ} l:::::iト= _､j|_ ／ ´ ﾊﾘ' :::::::::::／::::::／ ﾉ
` // /j／ V'ﾘ {イ |!｢` =====' ::::::::／:::::／ ／
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| 蒼星石の言う通り、『異端審問官』は逃亡できる。尻尾を巻いて逃げ出したとて、誰がそれを責められよう。
| だが、アセムはそれを提示しなかった。
|
| ジャンヌ・オルタと戦わなければならないと、そうでなければ死ねと言うのだ。
|
| 墨目にお姫様抱っこをされながら、蒼星石が結界を張る。
| その墨目もまた、冥府の瘴気を広げていく。
|
| いまや懐かしさすらある、防御と妨害の連携結界、蒼星石と墨目によるコンビネーション。
| 焼け石に水どころか雨粒程度のささやかな妨害。しかし、雨垂れは石を穿つのだ。
|
| ジャンヌ・オルタの攻撃動作にわずかでも遅滞ができればいい。
| 『ディストラクト・ディレクション』の衝撃で受ける傷が少しでも減ればいい。
|
| 正直言って蒼星石はすでに満身創痍だった。二回ほど吹き飛ばされただけで全身擦り傷切り傷だらけ。
| 受け身を取り損なった左肩はズキズキ痛むし、口の中も血の味がする。何より露出した皮膚が軽度の火傷になっていた。
|
| ではアセムはどうなのだ？ 見たところ動きに衰えはない。
| しかし間違いなくそこら中にぶつかっている。大きな怪我が無いのが奇跡的だ。
|
| 蒼星石にできるのは、アセムが致命傷を受ける可能性を下げることだけ。
| 結界をより強力にしようとした瞬間に、ジャンヌ・オルタが蒼星石を見た。
|
|「跳びます！」
|
| 言うより早く墨目は跳躍していた。
| 『ディストラクト・ディレクション』の爆風に煽られる、アセムの着地の神業振りがよくわかるというもの。
|
| 追撃はアセムがナイフでカット、空中で爆発。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | …………あいつ
＼ ｀ ⌒´ ,／ 障害物を貫通できねーみたいに、
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ 自分の爆発で次弾が外れるっぽいお。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「なんだと？」
|
| やる夫と合流したやらない夫、恐怖に青い顔をしながらもやる夫は敵をよく見ていた。
|
|「近い場所に連続攻撃をすると、一発目が邪魔で二発目が誘爆しちまうんだお」
|
| 指さした先、蒼星石を抱えて逃げる墨目。
| 指差すジャンヌ・オルタの『ディストラクト・ディレクション』は、見当違いの場所で爆発していた。
|
| ナイフで防がれた爆発の余波で、二発目の『ディストラクト・ディレクション』が止められたのだ。
| やらない夫は背筋を駆け上るえも言えぬ感情に口角を上げた。
|
|「やる夫が居てくれると本当に心強いだろ」
|「お互い様だお」
|
| ぶっきらぼうな返答、完全な照れ隠し。
|
|「墨目に伝えてもらう、やつを叩く作戦は？」
|「………………一応あるお」
|
| 沈黙の長さは危険度や不確実さを意味していた。
| だが、それで怯むやらない夫ではない。やる夫もよく分かっていた。
|
|「『エクスカリバー』は正しく『ああいうの』をブッ殺すためにクソ親父が用意した道具だお。
| それが今、手元に二つある」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／} 分かるのか、使い方が。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「わかんねーお！ つーか今更だけどあのクソ親父殴りそこねてんじゃねーか！！」
|
| 頭から湯気を出すやる夫、だがその怒りが前ほど酷くないようにやらない夫には思えた。
|
|「使い方はわかんねーし、上手くいく理屈もねーお。
| でも運がいいのか悪いのか、やる夫のカーチャンは『勇士に血塗れの武器を授ける』逸話持ちだお」
|
| だから、やれる。やる夫も、多分。
| 少なくともヴィヴィアンはそう言っていた。
|
|「ん？ お袋さん？ 師父ではなく？」
|「お？」
|
| 言われて、やる夫は初めて気がついた。
| 誰かさんが剣を配っていて、しかもその名前が当てつけみたいに『エクスカリバー』で。
|
| やる夫は声を上げて笑った。何だあの野郎。どんだけ好きなんだ？
|
|「野郎、いつかこうなるって分かってやがったな。次会ったらぜってーぶん殴るお！」
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☆ 次回予告！
死に損ないの生き残り。
しかれど次を望むなり。
死神共はつばごくり。
収穫祭だと舞い踊り。
死星温存、いざ綱渡り。
しくじっちまえばはい終わり。
次回、最終幕百二十四話『12/20 その5 エースを切るのは今じゃない』
死を与えよ、果てからの全てに。
ジャンヌ死す！ 次回ジャンヌオルタとのデュエルスタンバイ
ジルドレが想定より何段か邪悪だった
しかしこの経緯だとジャンヌ・ダルクが真名でよかったのか？
乙ありです！
>>944
それまで名前がなかったか番号の可能性があるので…真名ジャンヌ・ダルクです。
乙
>>946
アセムは下手なエックスラウンダーどころかエース級並みに強いのはどうかしてますよ。
----------＜,,─,,,, ヾヽ─ i;;i ﾘ ﾉ
,,--ﾞﾞﾞﾞヽ -,ヾミヽ ヽ;;| |;;i /;/ ﾉ
,,,----≡ミ;;;;;;;;ヽ;;i |;;i./;/ /
,,-´´￣￣￣ニゞ;;;;;;;;;i;;;´;;;彡ﾞﾞﾞﾞﾞ｀丶、
＿＿,,,,,,, ,,,-=彳ﾞﾞ彳彡ｲ;;;;;;;;ﾄ、ミゞ＼
| |卞ニ＜ ,,ノﾞﾞ ／/;;/i;;i;;;ヾ;ヽ ヾﾘ ＼
|＼ ﾍ￣￣＼-,,, / /;/ i;;i |;;| ﾄ ゞi ヾ
| ＼ ﾍ ＼＼/ｿ i;;i |;i ﾘ ヾi |
|￣￣─二二彡´彡弋i;;i、 |;i ∥ ∥
|,,,,-''''´´￣ / /＼勹ﾍ | |
| ,,,,-'乍ニ＼ ﾍ
＼ | ,,,--''''´ ,,,＿,＼ﾍ
＼|,,,∠´,,,,,,;-─-＜´´´ ,,-イﾞ´ ﾍ
,,,-''´７ /／´ﾞ- ＿＿｀｀７ / i ﾍ
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ヘ .i l:: :::::/ / l
＼. l / / l
＼ヽ ＼｀- ＿ /./ i l
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γ＼ / ＼＼ l
ヽ| ｀ミ-,, /￣｀---ゝ ＼ l
l´ i ＼ ｀￣ ´ ＼|
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|「え？ あれ……？ もしかしてやる夫、やらかしちまったかお？」
|
| 『除名処分勧告書』によってジル・ド・レェの『エクスカリバー』契約を解除したやる夫。
| だが、完全に予想外なことに、『エクスカリバー』はジャンヌ・ダルクの心臓にあった。
|
|「うわ、マジかよ殺しやがった！」
|「煽るなジャジャマル…………来るぞ！！」
|
| 上空にあるプラズマ火球が荒れ狂うのを現実感無く見つめながら、やる夫はうずくまりたい気分だった。
| 殺した？ 殺したのか？ やる夫が、ジャンヌ・ダルクを？
|
| 幸運にもやる夫は殺人の経験がない。
| だが、やる夫が手を下さなかっただけで、何人もの人々の命を奪ってきていた。
|
| 屈木頑之助、『ロードエルリック』のメンバーとファン達、モズグスと弟子たち、
| 『やらない夫の集会』の死傷者の責任も、やる夫に一端があるだろう。
|
| だが、明確にこの手を下したのは初めてで。
|
| そして、殺意を持って命を奪ったかといえば……。
|
|『そこまでにしておけ』
|
| 『やる夫の中の入即貸本』から声がかかる。
| 広くなった入即貸本、ヘルメットでくぐもった声の主は、いつも以上に不機嫌そうだった。
|
|『今は呆けている場合ではない、見ろ』
|
| プラズマ火球が吸い込まれるように消えて、代わりに炭の柱を卵のように割って全裸の女が現れる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿ ／ | ┌‐ ´ |＿＿＿ 丶
／ ／ └─ノ ＞ } ト
/ /／ / ヽ ￣ ＼/、 ／､ / ヽ
{ ./ / ／ヽ }ヽ ﾄ､／ i V 人
／', / / / イヽ ） ﾉ } / ｨ / i ノ 彡ヽ
＿ { Y / { ハ ヽﾉノ＿ィ＞ーｊ--＜ノ ｊ / Y （ ）ｊ ひ、ひぃー！？
＞ミ { i ヽ＿ノ ＞ｭ、, / ／i Ｖー彡 『セーフガード』だ！
{ ハ├ﾍ トｰ´ xｭ､ヽ ´ ７ﾆ二ミヽ／j | ヽ
丶 ´ノ ＼_＼ y多弐 ､大め V｝ / ! 、＼ アイツの攻撃を受けたら
¨ ﾉ ハ.外仏ﾊ Ｖわゅ. / ｊ ヽ､ ＼ 垢BAN食らって永久規制だよ！
／ / ﾊ { かｊ ゝｒ＜ （_ ハ } ） ）
/ /i八 }. ゝﾞ´ ｀ _ ハ ヽ{ / ﾚ' / ゆめ気をつけて！！
{ V ゝ i V￣ヽ u ｀X）ノへ 人
ヽ / 人 ﾟー‐ ／ ｊ } / （＿ﾉ}
ィ ＼（_ゝ７＞。... ... 。ｃイ、 } / V ト-- 彡′
（ ｀ｰ { { ≧≦＿ ／ V´ ト＿ ノ
｀ー--イ ＿フ { 〉＼ , ヘ /７/ ￣￣ヽ
７ ７ヽ ∨┌「７￣ ヽ// ＼
/ / V ノ Y￣ }/ ＼
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「それ以前にやる夫なら消し炭だな」
|
| 取り乱す『チクタクマン』、酷く冷静な『荒野の黒龍』。
| 戦場に赴く際に、彼から感じるいつもの熱狂がそこにない、やる夫は訝しんだ。
|
|「どんな気の迷いですの？」
|「なに、『次』は俺であろう？」
|
| 目前の『代行者』を討つのは誰の仕事か。
| 『荒野の黒龍』以外の選択肢はない。
|
| 『モーンブレイド』と『チクタクマン』は別次元介入者だ。『代行者』の相手はさせられない。
| やる夫は周囲を見た、展開した『やる夫の中の入即貸本』。
|
| 広大な宇宙空間、最初に比べて星の数は半分くらいだろうか。
| 『暴虐の／哀しみのからくり人形楽団』は省エネで済んだが、『引き裂かれた永劫』での消耗は大きい。
|
| あの時翠星石の助けがなければやる夫の命を使い切っても押し負けていただろうほどだ。
| やる夫に残された弾丸は『荒野の黒龍』と『モーンブレイド』の二発。
|
| 一発分の魔力はあの無駄に乳の大きかった中位化身が都合してくれた。
| もう一発はやる夫の命で賄える。
|
| …………問題は敵の数だ。
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＼＼:::::::::::::::＼ヽ
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／/ ／ ｀ヽ､ ＼＼::::::::::::::
／ﾌ/ ., ' }::＼ ＼ヽ::::::::::::
／:::::/{ / l:::::::ヽ、 | }::::::::::::
//::::::::l l ｆ /:::/::::ｲ | |:::::::::::
. //::::::::::l { |ヽ ／::://:::::{ | |::::::::::: やる夫。
. //::::::::::::l ! l､::＼ ／::::／ノ::r-‐イ } |::::::::::: 結局お前は俺を有効活用しなかったな。
l/::::::::::::::| | !ヽ::::｀ｰ―r―´::r‐ﾆ-´:::::::::::::/ / /::::::::::
|{:::::::::::::::l l ､」:::::ヾｰ┐::::::::::::::} 「:::::::::::::::::ノ / /::::::::::::
ｌl::::::::::::::::〉ｌ ＼:::::::::l {:::::::::::::://:::::::::::::／/ --／／::::::::::::::
ヾ::::::::::::::ヽヽ ＼_-､:＼:::::／::::::::,.‐:´:∠-－´.／／::::::::::::::::::／
＼::::::::::::ヽヽ ヾ:ヽ､::::::::::::::ﾉr､::::/ ／／:::::::::::::::::::／
＼::::::::＼ヾー―――－＞- ゝｲ7´ ∧ﾐ-ﾆ ´- ´:::::::::::_ -―＜―
｀ ヽ､:::＼＼ ｒイ .i { / { ゝﾆ‐"-＝ニ‐" -―￣:::>
ヽｰ､ ＼::＼＼ ／ / | Lム-ﾆニ´／::::::::::::／::: ／::::／:::::
ヽ ゝﾆﾆゝ- ＼ニﾆムﾄ=ﾆﾆ‐::::::::_::／::::::::::::::::::_／.／::::::/:::::::::::
-} |＼ゞ^―――― ´:::::::::::::／ﾍ ヽー―‐ ￣ _／:::::::::/::::::::::::::
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| こいつは殺すための存在だ。
| しかしやる夫は、強い殺意を抱いて来なかった。
|
| ジャンヌを殺してしまったことに対しても、酷く打ちのめされている。
| 鏖の荒野を夢見る破滅の悪竜にしてみれば、まどろっこしいし面倒な存在であっただろう。
|
|「まったくつまらん奴だ……だが」
|「待てお、お前さんを使うのは今じゃねーお」
|
| 静止するやる夫、『荒野の黒龍』がフムと唸る。『モーンブレイド』は唇を上げ、『チクタクマン』は大きな目をまんまるにした。
|
|「ちょ、ちょ、なんでなんで！？ 相手の強さゆめ分かってる！？」
|「ん？ 分かってねーお、どんだけヤバい？」
|
| 言葉を失う『チクタクマン』。『荒野の黒龍』は体を折り曲げてクツクツ笑った。
|
|「手を講じなければ全滅するぞ。貴様もちろんやらない夫も、蒼星石も死ぬ」
|「お前じゃなきゃいけねーのかお？」
|
| やる夫の問い、『荒野の黒龍』は答えない。分からないからだ。
| 逆に『モーンブレイド』が口を開いた。
|
|「他に弾はないのでしょう？」
|「だけど、『代行者』は三つ。その上ニャル公と『十壊』も残ってるお」
|
| 『冥王ニビル』『クトゥグア』『ビスケットハンマー』、そして正体不明の『第二次関東大震災』。
| やる夫ひとりで何もかもをなんとか出来るはずがない。
|
| だけれど、だからこそ。
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／ ― -＼
. . ／ （●） （●）
／ （__人__） ＼ やらない夫とやるお。
| ｀ ⌒´ |
. ＼ ／
. ノ ＼
／´ ヽ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「如何にする」
|「まず、前にヴィヴィアンさんに聞いたけど、やる夫のカーチャンにゃ『剣を他人に与える能力』があるお」
|
| 視線が『モーンブレイド』に集まる。
| しかし、彼女では『代行者』に太刀打ちできない。
|
|「今からその『剣』を作るつもりですの？」
|「いんや、それは代用品があるお」
|
| やる夫の母はケルトの三女神の一柱、女神 マッハの転生体だったという。
| マッハは戦争の女神であり、戦士を熱情と狂奔に走らせる。
|
| 血濡れの武器を戦士に与える逸話を持ち、ヴィヴィアンやモーリアンなどの泉の妖精とも親戚関係にある。
| そして『剣』は、いま正にやる夫の手の中に収まりつつあった。
|
| 『除名処分勧告書』によってジル・ド・レェから没収した『無名祭祀書』。
| 赤から青紫に変化する不思議な宝石、これをやらない夫に授ける。
|
| だが、ただ渡すだけではない。
|
|「『荒野の黒龍』……いや、『クロウ・クルワッハ』」
|「ふむ」
|
| やる夫は、殺戮そのものの化身に手を差し伸べた。
|
|「『代行者』を殺す方法をやらない夫に渡したいお」
|「能力の一部貸与か……今後の出力低下は覚悟の上だな？」
|
| やる夫が頷くと、仮面の存在はその手を力強く握り返した。
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ﾔ::::::::::::::ﾍ /:::::::/ / (/:::::::::::::::i_/l
、 ヽ::::::::::::::::＼ /:::::::/ iヽ'"::::, -'""' -,:::::::|
::::＼ ＼::::::::::::::::＼ |::::::::Y |:::::::､" ヽ:::::| ｌ::.、 いいだろう。
:::::::::＼ ＼::::::::::::::::＼ |::::::::∧::::::|:::::::l i::::l'"l .|::::ヽ やるぞ、やる夫！
:::::::::::::::＼ ＼::::::::::::::::｀`丶 ﾔ::::::::∧::::i_:::::i /:::::::/ /:::::::|
ヽ::::::::::::::::::｀:ﾞ''-､,_ _,,..-‐'::、::::::::::::::::::ヽ、 .＿>:::::::::∧::::> ヽ ノ:::::／ /:::::::::.| 殺し尽くしてやろう！！
ヽ､,_::::::::::::::::::::::｀ﾞ''ｰ-､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀'､,/:::::::::::ヽ:::::::∧ヽ:::::::::"'''":::::／:::::::::::／:::::::::::::|
ﾞ''ｰ-､,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::ﾔ、＼ヽ:::::::::::／:::::::-‐'':::::::::::::::／
｀ﾞ''ｰ-､,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::"""""ヽ、.∨｀:、ヽ_,..､-''":::::::::::::::::::::::／
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|「『代行者』だお！」
|
| 現実に戻ったやる夫はヒステリックに叫び、注意を歓呼した。
| アセムとジャジャマルには事前に話してあった。
|
| やらない夫の生存はこれまで秘密にしていたが、状況が状況だ。
| 二人を信じて様々な情報共々共有して、ついでに「一番火事の激しいところにいる」などと嘯いて見たりもした。
|
| 本当に居るとは思わなんだが。
|
| 黒い炎を鎧としてまとった女、ジャンヌ・ダルクであってジャンヌ・ダルクではないもの。
| 言うなればジャンヌ・オルタの攻撃が始まった。
|
| 吹き飛ぶやらない子。
| 消し飛ぶ『異端審問官』。
|
| あの攻撃に巻き込まれたら即死だ。
| やらない夫も、蒼星石も。
|
| 離脱するジャジャマルは正しい、やる夫もそうしたいくらいだ。
| やる夫は笑う膝を、震える体を叱咤した。なんとか、やらない夫に『剣』を渡す。
|
| 話はそれからだ。
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. ／ { ⌒)! ⌒ヾ:::::::::::::::::| ヽ
/ ′ ヽ 乂 ,,､‐≦x 丶 ⌒ヘ:::::| '，
. ′ ﾒ /::::::::::::::::ヽ |::::| )' }!
{ '， _,,ィ::::::::::::::::o::::::ヽ /l |::::| ,′
. ', ( /ｲ::::::::::::::::::::::::ﾊ｀)! l/ |::::| , イ
. '， ( イ(:从:::::::::::::::::::彡 |::::|
､ ﾉ 爻:::::::::::::::::::::::::爻 |::::|
⌒ヽ ／::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ |::::| ⌒'，
ヽ (´ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ ⌒) |::::| }!
(⌒ヾ ＼ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ‘ |::::| ﾒ
＿ ,ｲ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＿. |::::| ,_､､､､､､､,,_
ｧ'"::::::::::｀'':: ､、 ,,､＜ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞､,,_＿__,斗::::ｧ'´:::::::::::::::::::::::::)h､
.イ:::::::::::::::::::::::::::::｀h､､,,_,ィ::::::ヽ､_,,,､､＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞―===(⌒｀
/"⌒ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ､,,_
/ｧ‐ ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(⌒
i(. ):::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｱ⌒ ，´
,}! {:::::::::::::::::::＞―― ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｱ´
{. ⌒`''-=≦ ＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞―ミｘ. }!
ヽ､ ﾉ 、 ). ''"⌒气:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞'ﾞ|::::| ∥ )!
＼ ( ,､＜＞㍉､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡´ |::::| 〃 /{
＼(⌒ヾ( `丶 ,､＜＞'´ ㍉⌒):::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｧ''"´⌒)'´ |::::| ／ 乂＿ノ し'"
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| やらない夫が蒼星石から離脱し、じわじわと距離を詰めてくる。
| ジャンヌ・オルタはやらない夫を注目しがちなので、それは極めて危険な賭けだ。
|
| それでも、やらない夫もまたやる夫と同じ考えでいることが、やる夫にはとても心強かった。
| 二人同時に焼き殺されるのだけは回避しなければならない。やる夫は意識して深呼吸した。
|
| 隙を見つけなければ。
|
| ジャンヌ・オルタの指差した対象が、恐ろしい破壊力で爆発する。
| 技名をつけるならば、そう『スプレンガン・ライトゥン』。もちろんドイツ語だ。
|
| 衝撃だけで人間が吹っ飛ぶ、爆風と熱による全身火傷でのたうち回る。
|
| 蒼星石もやらない夫も無事だが、いつまで無事か分かったものじゃない。
| 今はアセムの曲芸じみた投擲が空中で『スプレンガン・ライトゥン』を止めた。
|
| …………『スプレンガン・ライトゥン』は見えないだけで案外大きいのかもしれない。
| アセムがブロック塀を盾にして、障害物の有用性を証明、ジャンヌ・オルタの追撃をナイフで迎撃。
|
|「…………お？」
|
| 狙われていると分かれば、アセムの腕なら迎撃は容易い。問題は指差した瞬間に爆発する発射速度。
| 近距離での爆発で、ジャンヌ・オルタがたたらを踏んだ。
|
|「あいつ……もしかしなくても人間並みの重量かお？」
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, -､ ヽｰ､
{ ｒ｀ ｒ' }
,ゝ､ヾｭｲ_,,ィｭ､_
Yｿ´アｰｿｭ ﾉｰ､ ヾ)_
ｒ',ｨ ｒｼゝ〈//7lゞ )ヽ V
〈!ｭ(/ <//|i/そ ｀Yﾍ}〉,-､
ｒ-‐' ゞYr' ヽ|!V ゞﾉ ゝ
７ __ノ 7 ヾｰ7j |ｰｲ , Y｀ ､＼ 能力を攻撃に振り切っていますわね。
'-ｧ=､ ｲ ､ト､＿/ｲ! ﾘ{ノｲィﾍﾊ,､__{､ヽ, 一見超高位悪魔ですが、
イ／ ／7/ﾊ|ヽ/ﾊ/ ' ´'ｲ!/ﾘ////＼ ヾ､
イ／ ／//／ヽ!/ゝ｀ｰ= ﾆ彡ｲ/////////＼ ＼ おそらく耐久性は
イ''´ ／//／///////ｿ≧ｭ=ｒ≦ｲ´ﾍ///////ヽ＼ 丶､ 器に依存してますわね。
イ'´ ／//／///////／: : : ｀ﾌﾊ': : : : : ＼///////ヽ＼ ヾ:､
／'´ ／//／/r､/､///!r'-―ァ／ｲﾊヾ､_:_:_:_:_;ゝ///////＼＼ ＼ヽ
,ｲ´ ／/／///|｀ー' ヽ__ﾌ7´ { ７ｲｊ ｀ V￣ﾍーﾍ＼///////ヽ/＼ ＼丶.
/' ／/∧///r-{: : : : :ｲ -'_ﾉ: :人 〈ﾊｌ V: : ﾍ: : : ヽ ｀ー-ィ-､/ヾ/ヽ Y}
/ ///∧////ゝ7: : : //￣: :／ｊ: :ヽｒ ､＿ _ノ＼: : ｀ヽ: : : : : ｒ､__く///ﾊ/ﾊ V!
! ///∧// ｲ-'´/: :_: : ヾ､o / _ﾉ: : / ヽ_: : :ィ: / ｊヽo,ィ ｒ-､'/i///////ﾊハ V!
///∧／ ｀´ ヽ7 ,､｀_ノ: : : : : : : : ゝ: :´ {_ｲヾ＼_,ｲ ｀ ヽ!|/////i/ﾊ ﾘ
.//∨/ /｀'__>: :ヾ､: : :,ィヽ_ｒヽ: : ﾊ '´∨ i ヽ///////l
ｌ//// /: : ７ｧ-ｒ: : : :´￣Ｙ': : : : : : ヽ､ ｌ : :! ∨/!///l|
!/// r-,〈=≦／, ７: : ; : /ヽ!´!ﾍ:_;/＼ヾ _ｊ､: :ﾄ Y|////l
|// アｼﾉ''´ ／ //｀ ': :ﾞ/==ﾍ: : : : : :ヽ＼ ヾjﾉィ_ ヽ///|
lIY ｒ-=＝', イ ／ //: : : : / ､＿_,∨ : : : : ＼ヾ´ ヾ､ Y//l
!| ノ/ ／ / .// _:_ : / _ｊ_ ｊ__∨: : : : : :ヽ ＼ ヽ._ V/|
｀ イノ ／/ / //: ;ｲﾊ ,'´Tｨ::| }::ｨﾍ: : : :<ｨ-, ＼ ヽ､_ ヾ. ﾉｲｊ
ｊ/ イ-/ / // <_ｲ_｣ {､::::::::::! ｊ:::::::::〉 : /_ト-' ／ ､ < ｌｊ ／イ/
（! !ィ ｲ/ ｀ヾ=―=' ゝ:::::::|!:::::::ｲ. ﾍ: : : ／ ヽ V ! /
}ｌ ,ゝ､{ ﾚi ,､ ,ｨ ｒﾍ!:::::::::::!:::::::::|,ｨ ｀´ ｒ ､ｒ､__ゝソ /
ｊ| ／: : : ヽ!: :{ /: : /ヽ! |::::::::::::ｌ::::::::7 ヽｲ ｊ ､: : :ｲ´ヽ ／
ｌﾊ ／: :／: / : / ∨: : :/ !:::::::::::ｌ:::::Y |＼/: :',: :ノ ﾍ: :＼
丶!ｲ: : : : : ,ｲ : /: : : : : :ｊ |:::::::::::!:::::ｌ ｌ: : : : : 〈: :ﾍ: :ﾍ : ﾊ
／: :／: ://: : / : : : : : / :::::::::::|::::ｊ |: : : : : :',: :ﾍ: :ﾊ: : :',
/: : //: : /ｲ: : ;': : : : : : / i:::::::::::|::;' ｌ : : : : : V: : ',: :ﾊ : :',
＼//: : //: : : ': : : : : : ﾊ_ノヾﾍ ,ｌ:::::::::::!' ｒi: : : : : : :ｌ: : : ',: : ∨ゝ
｀､__//: : : ; : : : : : : |ｰ-'ヽ _,｀__ﾊ::::::::::::|ヽイ｀ー'-'|: : : : : : !: : : }: :/
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ヽ: : : : : : : ｌ ﾉ:::::ｌ::::::::! ｌ: : : : : : ノ
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ﾊ:::ヽ!/ヽ:!
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｀ヽ､_ﾉ
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|「と言っても、あの黒い鎧は魔剣の炎そのものだ。並の攻撃では瞬間融解だな、見ろ」
|
| 『モーンブレイド』と『荒野の黒龍』がやる夫に助言する。
| ジャンヌ・オルタはどんな能力なのかうっすらと浮いていた。
|
| だが浮遊能力よりも問題は、彼女の足元のアスファルトがとろけてドロドロになっているのが見えることだ。
| ジャンヌ・オルタ本人か、あるいはあの黒い鎧は超高温だ。近接攻撃は難しかろう。
|
| ……それでも、付け入る隙は見えてきた。
| 少なくともジャンヌ・オルタは肉体の操作がぎこちない。あるいは、素早く動けない。
|
| アセムへの攻撃は素早くない。防げる、回避できる程度の連射しかしない。
| 周辺まるごと消し飛ばせる火力を有しながら、散発的で緩慢さすらある。
|
|「あ」
|
| やる夫はある可能性に辿り着いた。
| ジャンヌ・オルタが、『代行者』が外部介入者を処理するアンチウイルスプログラムであるならば、
| もしかしてあれも『自動的』な存在なのでは？
|
| 『ブギーポップ』はなんと言っていた？
| 『世界の敵』を大まかに把握できるが、原因や過程は分からないとかそんなことを言ってはいなかったか。
|
| ジャンヌ・オルタは『敵』の気配に釣られて現れた存在なのだろう。
| だが、まだ『敵』が誰なのか理解していないのではなかろうか。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼ だとしたらアレ、
| ＼ ,＿ | 攻撃ですらないってことかお……？
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| それは恐怖であると同時に、狙い目でもあった。
| 『敵』として認識される前に倒せば、攻撃はこれ以上激しくならない。
|
| やらない夫がジャンヌ・オルタを倒すには、武器だけではなくチャンスが必要だろう。
| 本格的な攻撃を受ける前に、奇襲で殺すための決定的な機会が。
|
| そのために、やる夫は元から飛び出しそうな目を皿のようにしてジャンヌ・オルタを見た。
| 彼女の攻撃を、『スプレンガン・ライトゥン』を見た。
|
| 『異端審問官』を扇動するアセムへの爆破、爆破。
| だが、二回目に違和感。消し飛んだ鉄筋コンクリート、倒れた電柱。
|
|「なんで電柱が残って……」
|
| やる夫はふぐりの端を上げた。行ける。
| こんなに短い時間に、いくつもの癖や弱みが見つかるのだ。やる夫でも。
|
| このまま、予定通り行く。
| やらない夫と勝利を掴んでやる。
|
| そんなこんなの間に墨目が蒼星石に合流、壮健な巨体で蒼星石を抱えて二人がかりで結界を張る。
|
| まとわりつく冥府の瘴気を煩わしそうに振り払うジャンヌ・オルタ。
| 攻撃目標が二人に切り替わる。やる夫はハラハラしながらやらない夫を待った。
|
| それにしてもアセムのクレバーな動きには舌を巻く。
| 普通の人間ってなんだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ /／ ヽ ｡. ´
'´ ＿, ／ ／ ／ ∧ ｀'く
｛: ――― ´ ／ ／ ハ ｝ ∨
ヽ / / / / .| ∨ ∨
ー―-= .／ ./ / / / | / ∨ ∨
`>-- ´ / / / ﾄ, .|
｀ . ／ / ./ / ／,x≦./ ／ﾄ | |ハ !
.＞ / / / ／≧≠=ﾉ' j .i | | '.
／ / ./ ,' ./ / | 之少 ∥ ,' |. | / /
､. / ＞ ｛ i | 人 ! ￣￣ ｝ ﾉ ./. /／ スーパーパイロットだからな！
>. ￣ .| i | / ＼ '. / /＞｡ﾉ'
,' .二..i､＿＿.,, i | ./i ／ |.＼＿ ./ ./ 二二＞｡.
.二.二.二.＞''´ .∨ / ∨ ., / ヽ二／i二二＞｡.
二二＞。＿＿.., ∨ '. ./ ∨ | -- ／ / ／二二二二
二二二 二 二/ ,∨ ./ , ヽ / ム ｝ー .´二二二二二
二二二二 二 { ./｝:ﾍ |i ｛ (二二二二二二/ .＜ i二'. |二二二二二二二
二二二二 二 ﾑ ∧::::::＼ ｛:{ | ≧o｡.,,_＿＿, ´ ／:::::ト ＿／i! :|二二二二二二二
二二二二.二.二.i::∧:::::::::＼j:{ .| _＿＿ ／:::::::::::| 二二 |: :|二二二二二二二
二二二二.二.二.i::::∧::::::::::::::ム ﾄ i i i /:::::::::::::::∧.二二|: :|二二二二二二二
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|「…………あいつ、障害物を貫通できねーみたいに、自分の爆発で次弾が外れるっぽいお」
|
| その間にやらない夫と合流、やる夫は一番有益っぽいことを伝えたかったが、うまく言葉にできない。
|
|「なんだと？」
|「近い場所に連続攻撃をすると、一発目が邪魔で二発目が誘爆しちまうんだお」
|
| 指さした先、蒼星石を抱えて逃げる墨目。
| やる夫が示した『スプレンガン・ライトゥン』は、見当違いの場所で爆発していた。
|
| ナイフで防がれた初撃の余波で、次ぐ『スプレンガン・ライトゥン』が止められたのだ。
|
|「やる夫が居てくれると本当に心強いだろ」
|「お互い様だお」
|
| 心からの信頼に、逆に申し訳ない気分になってやる夫はボソボソと応えた。
|
|「墨目に伝えてもらう、やつを叩く作戦は？」
|「………………一応あるお」
|
| 確実性はない。危険度ばかりが高い。
| それでも、だからって怯むやらない夫ではない。
|
|「『エクスカリバー』は正しく『ああいうの』をブッ殺すためにクソ親父が用意した道具だお。
| それが今、手元に二つある」
|「分かるのか、使い方が」
|
| やる夫は苦笑した。やる夫は分からない。もしかしてやらない夫も分かってない？
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＿＿＿_
／_ノ ヽ､_＼
ﾐ ﾐ ﾐ oﾟ(（●）) (（●）)ﾟo ﾐ ﾐ ﾐ わかんねーお！
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒（__人__）⌒:::＼ /⌒)⌒)⌒)
| / / / |r┬-| | (⌒)/ / / /／ つーか今更だけど
| :::::::::::(⌒) | | | ／ ゝ :::::::::::/ あのクソ親父
| ノ | | | ＼ / ） / 殴りそこねてんじゃねーか！！
ヽ / `ー'´ ヽ / ／
| | l||l 从人 l||l l||l 从人 l||l バ
ヽ -一''''''"〜〜｀`'ー--､ -一'''''''ー-､ ン
ヽ ＿＿＿＿(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒＿(⌒)⌒)⌒)) バ
ン
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| 怒りでテンションを上げる、自分を鼓舞する。
| 恐怖に打ち勝つのだ、やる夫は勢いを付けたかった。
|
|「使い方はわかんねーし、上手くいく理屈もねーお。
| でも運がいいのか悪いのか、やる夫のカーチャンは『勇士に血塗れの武器を授ける』逸話持ちだお」
|
| やれる。やる夫も、多分。
| 少なくともヴィヴィアンはそう言っていた。
|
|「ん？ お袋さん？ 師父ではなく？」
|「お？」
|
| 言われて、やる夫は初めて気がついた。
| 誰かさんが剣を配っていて、しかもその名前が当てつけみたいに『エクスカリバー』で。
|
| つまり、ヴィヴィアンやその親族が勇士に授けるにふさわしい武器。
| あの男、カーチャンの代わりに勇士に武器を与えているつもりなのか？
|
| そしてもう一点。
| もしかしてやる夫なら、細かい手続き無視して授けられるって考えてやがったな？
|
|「野郎、いつかこうなるって分かってやがったな。次会ったらぜってーぶん殴るお！」
|「こうなる？」
|「やる夫が『エクスカリバー』を授けるってこったお！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／_ノ ヽ､_＼
oﾟ(（●）) (（●）)ﾟo ,. -- ､ 手続きも呪文も詠唱も、
／::::::⌒（__人__）⌒:::::: / __,＞─ ､ システム更新も誓いの言葉も
| |r┬-| / ヽ オール破棄だお！
| | | | ｛ |__
| | | | ｝ ＼ ,丿 ヽ やらない夫、『無名祭祀書』で
| | | | / ､ ｀┬----‐１ } あの『代行者』に引導を渡してくれお！
| | | | ／ `￢| l ﾉヽ
＼ `ー'ｫ / ､ !_/ｌ l / ｝
{ ＼ l / ,'
＼ ´｀ヽ.__,ノ / ﾉ
＼ ヽ､＼ __,ノ ／
￣ ヽ､_ 〉 ,!､__／
￣
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「よし、作戦は？」
|「てめーも、やる夫が来るとＩＱ下がんのホントやめるお」
|
| 特にアリカが顕著である。
| やらない夫は苦笑した。
|
|「すまんすまん、つい頼りにしちまうだろ」
|「『やる夫が授けたエクスカリバー』なら『代行者』を殺せるお」
|
| 理由もやり方も一切説明しない、しかしやらない夫は『無名祭祀書』を受け取りながら了解した。
| やる夫が言うなら間違いない。過度な信頼にやる夫は冷や汗をかく。
|
|「だがあの『ジャンヌじゃないジャンヌ』にどう近付く？ おそらくあの鎧はプラズマだろ」
|
| プラズマ、固体・液体・気体に次ぐ第四の状態。早い話が異様に熱い。
| 核融合や太陽の表面がこの状態であり、つまり少なく見積もっても摂氏三千度ぐらいあってもおかしくない。
|
| いや、おかしい。
|
| そんな熱ならアスファルトが溶ける程度では済まないだろう。
|
|「近付くだけなら『エクスカリバー』で耐えられるお。多分ありゃ熱量の魔力変換がうまく行かずに溢れてるんだお」
|「つまり？」
|「超熱くて超硬いお」
|
| それを、切らねばならない。だがやらない夫は気軽に頷いた。
| やる夫がやれと言うなら当然やる。
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| 不意に、蒼星石やアセムを狙っていたジャンヌ・オルタがやる夫とやらない夫に顔を向けた。
| 慄然とするやる夫、だが眼差しはやる夫からわずかにズレていた。
|
|「ニャンコ先生」
|「あー、うむ」
|
| やる夫の頭に、巨大なデブネコが召喚される。
| いつもの不敵さと元気がない。合流前になにかあったのだろう、やる夫はそう判断した。
|
|「この先の作戦会議はニャンコ先生を通すぞ」
|「やらない夫は？」
|
| ジャンヌ・オルタが浮かべる陶然とした笑み。
| その指が、やらない夫を示しはしない。まだ。
|
| 狙われたならやる夫は防げないだろう。
| やらない夫が狙われるなら、距離を置くのは正しい。巻き添えを出さないために。
|
|「やらない夫」
|
| 喉がカラカラだ。言葉が出ない。それでもやる夫は口を開く。
| 伝えなければ。
|
|「石でいい、指さされそうなら投げるお」
|「なるほど、サンキュ」
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_.. -‐─‐- .._ ,へ
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／. : : : : : : : : : : : : : : : : | /. : : : : :.::.:::丶._
／ : : : : : : : : : : : : : : : : ／ {: : : : :.::::::::::::::::::::Y´￣￣ 7
/. : : : : : : : : : : : : : : : : : ／､'′ ＼: :.::::::::::::::::::::::/ /
/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :/ ＜fｧ、 `ー----‐ '´ ／
ハ: : : : : : : : : : : : : : : : :〃 `ｰ ｀ヽ _xrz、´-_ f
| ヽ : : : : : : : : : : : : : ／{ ｀ (__..､`' '⌒￣｀ } お前とおると肩の力が抜けすぎるな。
| ￣￣￣￣￣ 八 ￣｀ヾ..＿_, 二 ﾉ
ヽ ＼ _.x=ミ／
＼ ＞､..__ ｲ ′〈
＼ _ `くマｰvﾆ=彳 〉
￣￣ ￣¨`=‐- ..＿＿＿_,_ｧ`ｰ'^`ｰ--‐'"
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|「そりゃ悪かったお」
|「その調子で見張っておけ、わしではやらない夫が壊れるのを止められん」
|
| やる夫は頭上を見た。
| ぐったりと垂れた前足しか見えない。
|
|「作戦はいかにする？」
|「『代行者』仮称ジャンヌ・オルタはおそらく自動的に周囲を攻撃しているだけで、まだ本気の行動を取ってねえお」
|
| 声の雰囲気が切り替わる、やる夫もまじめに応える。
| 今の戦力で奴を攻略しなければならない。
|
|「それは全員感じておる。攻撃をするなら畳み掛けるべきだとも」
|「ジャンヌ・オルタは自分の爆風でよろめいたお」
|「ほう」
|
| ニャンコ先生の悪そうな声、おそらく同じことを考えている。
|
|「指さした瞬間に誘爆できれば」
|「少なくとも隙は作れる」
|
| この会話はニャンコ先生を通してやらない夫や蒼星石とも共有できている。
| あとはタイミングだ。
|
|「それとアイツ、多分視覚に頼ってるお」
|「アセムが遮蔽で証明しておったな」
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／
／
, ｲ
// ｒ ＝ ￣ヽ
／⌒// ィ ￣ ｊ ｒ ´ }
/ ./ { イ ｊ 八 /
/ / イ / / /
ｊ {（ { ｢￣￣￣7 ィｽz ＿,ノ ＿＿＿
{ ＞－r┴ ー＝二´￣ ￣￣
ゝ ⌒人八 ￣￣ ､ ー-- ―― ､
／ ィヘ､ ＞ミー＝二￣￣￣ ￣￣ ミ ､ ヽ
／ ／ / ' ｀ヾ ｀ヾ､ ｭ､＿＿ ヾ､
/ / ｊ! | ,ｚ=≧ｭ､＿ ＼ ミ ､＿ ハ 瘴気をもっと色濃くすれば
{ ./ 八 { 7´ _ﾉ´ 个ｭ､ ー― 妨害効果は上がるかもしれませんね。
乂{ ﾉｰｷ!ー- ー ^ ｊニト ＼ ｀ー―― ミー＿
｀_ ィニﾆﾑニニニ≧=ｭ=彡ニ! } ヽ ＼ ｀ヽ ｀ヽ
ｲニニニニニニニニニニニｊ ｊ } ヽ ＼ ＼
{ニニニニニニニニニニニ7 / 人 ＼ ヽ }
ﾏニニニニニニニニニイ＼ｲ ／⌒ヾー--､ ＼ ､_ノ
｀マニニニニ＝ ´￣ス ヽ イニニニム ﾊ
￣￣ _, 彡 イヽ ﾏニニニニニニｭ､ ヽ 八
／￣ 。 ﾟ ﾏニム }ニニニニニニﾆﾑ. } }
/／￣ }ニﾆハニニニニニニニ} ｊ ./
/{ _人ニ彡′ニニニニニ_フ ﾉ/
{ ヽ ／ニニニニニニニニニイ ／（＿
／ニニニニニニニニ彡´ ／
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|「それよりも土砂や土埃を活用しよう」
|
| 遮蔽物は次々に吹き飛ばされている。
| ここら一帯はすでに更地だ。強力な衝撃や爆弾で、土砂を巻き上げれば。
|
| 蒼星石の立案に、墨目が頭を振る。
|
|「危険です。爆破を防げるとは限りません」
|「なら水だね」
|
| 破裂した水道管から吹き上がる水飛沫。
| 蒼星石と墨目はそれを遮蔽にした。
|
| 土煙では視界は遮れても、爆破を誘爆するのに必要なエネルギーがあるかわからない。
| 土煙越しに攻撃された場合、見えていない以上は避けようがない。
|
| 対して、水ならば見える。遮蔽として爆破を防げるかの試金石にもなる。
| 蒼星石と墨目の仕事は交戦ではない。ジャンヌ・オルタの目眩ましと味方の援護だ。
|
| だが、と蒼星石は考える。
|
|「どう考えても手数が足りない」
|「駄目です。あなただけでは死にます」
|
| やらない夫が攻撃するためには、陽動が必要だ。
| しかし、ただでさえ負担の多いアセムにそこまで任せられない。
|
| だからと言って墨目を回しては、蒼星石が攻撃されたときに間違いなく爆死する。
| そしてそもそも、墨目を陽動に回したとしても、果たしてジャンヌ・オルタの気が引けるのか。
|
| 可能ならば五手。畳み掛けて感覚を飽和させたい。
| アセムと墨目だけではまるで足りない。
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_,.. ---､
_ -'=＝"´ ￣ ¨ ｰ- _
／ ` ､
／ oヾ＼
/ ＿ ヽ＼
/ ／,-‐-＼ o ｉ ヽ
/ ,.=ｰ-､ i / ,.=-､ ｀ｉ| l i 『聖処女』ジャンヌ！
i 〃 ,.-=| |｛ {( ・ ,≫ﾉ ｜ l お答えください！
| | | }! ・ﾉ ｀ー--‐'" | |
| ヾ=-‐" O ０|0 | ,. -――-､
＿_| O O | i ／ ＼
／ | O i i／ ヽ
/ | O O 0 |0 / i
/ l O __ 亠､/ |
i ヽ ＿ - i __ |
l ＼ ＿ ─ | ＿ - ￣ ￣ ＼
＿| ＿／` ー------─￣ | _ -
／ l ／／ ＿--| ／
／ i / /{ O ＿ ― --ノ／
/ ヽ i |ヾヽO ___ ― 二ー ￣ //
＼| | ＼二─-Ｏ-― 二-- ￣ | |
o ﾉ ﾉ ￣￣￣￣ | |
（注：ジャンヌ指揮下の『異端審問官』はおそろいの装備なのでダル以外もこの装備です）
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| そんな時、アセムの扇動に困惑していた『異端審問官』の一人が叫んだ。
|
|「貴女の言葉があれば我々は恐れを知らぬ兵となり、この者たちを打ち倒します！
| この悪徳の街を焼き払い、邪教徒を一掃致しましょう！」
|
| 狂信者だ。『品川大聖堂の夢』の通りに、この東京を本当に破壊するつもりなのだろう。
|
|「しかし！ もしも貴女g……！！？」
|
| 彼は最後まで発言できなかった。
| 蒼星石の結界も、彼自身の信仰の盾も、魔力で固めた鎧も、『スプレンガン・ライトゥン』の直撃は防げない。
|
| 問いかけた『異端審問官』は一瞬で炭化し、すぐに塵となって四散した。
| 彼の近くにいた数名も犠牲になった。衝撃で吹き飛ばされる者もいた。
|
|「しまった……！」
|
| 青ざめるアセム、直前までジャンヌ・オルタはアセムを見ていた。ナイフは投げずに回避していた。
| ほんの一瞬の判断の違いで、『異端審問官』たちは焼死した。
|
|「やるぞお前ら！！ ジャンヌの魂に救済を与える！」
|
| 戦場を支配しかけた恐慌を、一瞬で書き換える雄叫び。ジャンヌ・オルタがそちらを見た。
| やらない夫が駆ける、ジャンヌ・オルタが微笑む。
|
| 手を伸ばしかけた瞬間、飛来した砲撃がジャンヌ・オルタの至近距離に着弾。
| タカオだ。しかし、観測手である青葉は死んだのでは？
|
|「いいね、次弾は+3-12だ」
|
| いつの間にか、やる夫の背後に小柄な少女が近付いていた。
|
|「合衆国軍海兵隊グリーンベレー最後の『野良犬』通信兵、アメリカンニンジャ・ジャジャマル。現着した。
| 支援砲撃が必要だろ？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
Ｑ．なんでドイツ語なんですか？
Ａ．ジャンヌ・オルタだから仕方ないんだよ。
炎の化身との戦いは佳境を迎える。
『代行者』を滅ぼすための五手。
ここで決めねばあとは続かぬ。
されど、本当に。
その程度の手で倒せるとでも？
次回、最終幕百二十五話『12/20 その6 ミタナックソーネ』
死を与えよ、果てからの全てに。
やる夫視点ぎりぎりだな
黒龍ニキとモンちゃん随分久しぶりのような
ギリギリですね。ピンチピンチです。
>>965
乙ありー。
>>966
最近『やる夫の中の入即貸本』はチクタクマンに占領されてますからな。
,. …=…‐-
'" '"｀ﾞ` ﾐx､
／,ィ≠ミ、 ,,-= 、 ＼
/.,≦(冥)ﾆ|l 丿(冥)ft､. ＼
//回ﾆ冥三｀三仁ﾚ冥ﾆ回ft､ ＼
/｛仁メ⌒Yf)f(ﾆｊｧ≠=ミｘﾉメﾆ｝ . ＼、
,' (i!ﾆ|.,'冫 ﾉfﾉし'{i ,'冫 ハrﾆﾆ|ﾞ｀､ ≧=- _
,' |ﾆ》ﾘﾊ〈{ﾆ\メﾖ! ,ﾒ、ﾙﾊ, |仁ﾆ|. ヾ、 ,,;〜ニ'"_⌒`
,′ ,∨ ｲーミ ^YW〉f-―ﾘ‐!〈廻ﾆ! ',｀ ､彡ヘ⌒ー-=ミx
i! 从杙鈊、ルﾉ' "雀莎ヾ=-ij 、｀ 、` ＼ ＼、
| ﾊ ｀¨´ , ｀¨¨´| ; ; ﾐ ', ｀ー 、
ﾉ,ﾊ! ""ﾞ ハ ′ | ; ; .ﾄ 、 ＿ - "⌒¨´
/′| ＼ 、__ ﾒﾊ ∧ ! ,ﾊ!
| l! （｀ﾒ､＼ _ .. ィ"/´ﾞ! /}}ｉ| i!!ﾘ⌒
|ﾊ八j |＼、,,≠仁三|_⊥ｦ/′ .|/ﾘ
_＿__＼{-‐,ｧ======ﾐｘ%㌢=- /′
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___/i:i:i:i:i:i:i_,爻"゜i:i:i:`ー-=彡":i:℡i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:.
／:::ｿi:i:i:i:i梦ｨ笊芹"(三三])ﾐx､:i:i:i:j[ii:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:.
／:::ｌ:i:i:i:i:i／:i:i:i:i:i:i:i:iﾉﾘ::::￣:{!i:i:i:i:ﾟ弐它∬i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ
,.イ::::／i:i:i／i:i:i:i:i:i:i:j!彡":::: ::::::::}!i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∬i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i{:::::ヽ
ﾘi|::〈{i:i:i i! i:i:i:i:i:i:i≠::::::::::::: :::::::::||i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∬i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iヽ::::::≦二 _
》》::ヾ、:{i i:i:i:i:i:i〃::::::::::::::: ::::::::::{{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i㏍i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i}〉ゝ::::::::::{⌒
巛::::::::{{i|l i:i:i:i:〃::::::::::::::::::: ::::::::::{{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i||i:i:i:i:i:i:i:i:i:／￣￣´::::::::::|￣
∨￣|i} |l i:i:i〃;;;;;;;;;;;;;;;;;:ィ弌ト、{{i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i||i:i:i:i:i:i／:::::::::::::::::::::::::::丿
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| 五手。
|
| やる夫が『代行者』ジャンヌ・オルタ攻略に必要だと考えた連携攻撃数である。
| 畳み掛ける事でジャンヌ・オルタの対処を飽和させ、やらない夫による必殺の一撃を入れるというのが作戦だ。
|
|「アイツは叫ぶ奴を狙うお」
|
| 演説を打った時のアセム・アスノ。
| ジャンヌの真意を問いただした『異端審問官』。
|
| ジャンヌはうるさい相手を指差し爆破こと『スプレンガン・ライトゥン』で黙らせる。ならば叫んで気を引くことができるということ。
|
|「その役は任せるでアフロ」
|
| ジャジャマルと一緒に戻ってきたやらない子。
| 『滅ぼすもの』を使わずとも、ペルソナがある。碁石による指弾もある。
|
| 自分の身は自分で守る。
| これであと四手。
|
|「タイミングを合わせて艦砲射撃を打ち込ませるぜ。まずは背後に数発、次に直撃」
|
| ジャンヌ・オルタの背後側、巻き上がるだろう土煙に紛れてやらない夫が突進する。
|
| 背後への威嚇であと三手。
| 直撃の砲撃であと二手。
|
|「『異端審問官』どもが呪縛の術を使うそうじゃ」
|
| ニャンコ先生が蒼星石からの情報を伝える。あと一手。
| 彼は言い終わると伸びをした、全身にパチパチと静電気ではない電流が走る。
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_ _＿/ ヽ わしも電撃を打ち込む。
_..ｨ''"´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ , これで五手じゃな。
／: : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`､ }
＿__彡'ﾞ. : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::ﾞ, ＼ ＿___
{￣ {: : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.} ヽ : : : : ｀`:＜_ _.. -‐‐ ､
人 |: : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:j ’, :.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ＼ ＼
＼ ﾞ, : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.," Y .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ＼ Y
＼{ ヽ: : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.／ ! :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ }
| ＼: : : : : : : : : :.＞'´ ) , } :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`､ /
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人 ､ ,. -‐‐-ﾐ ／ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. }
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|「手筈はアフロ？」
|「『異端審問官』とは連携できねー、奴らが仕掛けたらやらない子ちゃんが気を引いてくれお」
|「任せるでアフロ」
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| 備府やらない子。やらない夫の妹だ。
| 見た目こそごく普通の女子高生だが、コンパクトなボディに高い爆発力とタフネスを秘める。
|
| 体重が少ない分、パワーで劣るが速度と持久力では勝る、女やらない夫だ。
| 頼りにならない理由がない。
|
|「出るでアフロ」
|
| 手と足を同時に動かす異様な走り方で、瓦礫の山を静かに疾走するやらない子。
| 上半身が全くブレない、熟練のナンバ走りだ。
|
|「なんだありゃ、ニンジャか？」
|「てめーが言うなお」
|
| 自称ニンジャのジャジャマルが驚嘆する。
| 彼女は軽薄に笑い面頬を上げた。ヘッドセットを調節する。
|
|「砲手、準備はいいな？ 座標変更0+8に全門砲撃。三秒後に+1+6に最低一発。
| あ？ ウッセーな。やるンだよ！」
|
| 居丈高な命令口調、しかしジャジャマルはプロだ。
| タカオや青葉よりも場数を踏んでいる。指示も的確なのだろう。
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,: : : ´￣￣´
／: : : : : ; ´
／: : : : : :／
ー- /: : : : : :／ -―― ミ
＞ 、__{: : : : : :/´: : : : : : : ー: : ミ: 、
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : ＼ じゃあやる夫。
/; :-― ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼: :＼ 俺が死んだら大佐とティムに
／: : : : ／: : : ／⌒ヽ: : : : : :「ヽ: : : : ヾ、: : : :ヽ : ） 言っといてくれ。
／: ／ : : : / ＼: : : :{ ＼: : : : :ヾ＼ : :∨
. （ /: : ; イ/ ＼: :_」 「三 : : : ∨∧ヾ: 『最後の野良犬』として
/: : / //{ ｀Π ´￣了 「 }三」ーュ:Y、ヾry、 立派に戦ったってな。
/: : / //ハ じ 心′｝ニ≠、三ニ ｀Yヽ
!: :/ {/人八‐======＝ニス/ マ 「 ヾ三ニ、 ｀Y)
{:/ V ＞＜三三＞ァ´ヽ ｀~ヽ V三７ァソ
＼ ＞´ ＞≠’ ノ ー-- ゝへ７⌒´
ァ￣ ｒ ´ イ三ニ=-＿-=ニ三T
⌒了/ .＜三三＞ ´ ｀ヾ三ニ
＜ ＞＝ ´ ＼]
, ＜＞´
, ＜＞´
＜_／
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|「え？」
|
| やらない子側に飛び出すジャジャマル、『異端審問官』たちが祈りを捧げた。
| 剣の光輝を背負った恐竜のような怪物天使パワーが召喚される。
|
|「もう嫌じゃあああ！ ようやく逃げたのに！ またワシをいじめるんじゃろうう！」
|
| 泣き叫びながら逃げ出す天使パワー。
| 『異端審問官』らを指さそうとしたジャンヌ・オルタが、喚く天使パワーに目標を変える。
|
| その間に、『異端審問官』たちが呪縛の祈りを積層化、見えない鎖の束がジャンヌ・オルタを拘束する。
| 動きに明らかな遅滞。それでも指さそうとするジャンヌ・オルタ。
|
|「想定外だが、いい角度だぜ！」
|
| 降り注いだ砲弾の雨あられ、ジャンヌ・オルタの正面に着弾。
| 衝撃でよろけるジャンヌ・オルタ、吹き飛ぶ天使パワー。ベソをかきながら逃亡。
|
|「聖女サマ！！」
|
| 逆方向からの呼び声、振り返るジャンヌ・オルタ。
| その眼前で、碁石が溶けて飛び散った。飛沫は花火のように飛散して消える。
|
|「美人になっても横入りは禁止でアフロ！！」
|
| 腕を上げるジャンヌ・オルタ、その腕に、中空から雷の束が襲いかかる。
| しかし雷撃が歪曲、強力な魔力障壁がジャンヌ・オルタを守っているのだ。
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{＼
ﾄ 、 _＿＿ ゝ ` ヽ、
{ ` - ＼ }ヽ、
-- ゝ ゝ、＼
≧ i V ´l
ﾄ 、 __ ／ ＿ l l l
ヽ ＼ ￣` ´￣￣￣＞=- _ l l
ヽ ＞ ＼ l l
＼ ---- ´ } ノﾉ
lﾆ＞ ＼ ＜ ／ ／ /ハ -=彡
lﾆゝ、 ---- { ／ / ／ ／ / ゝ__フ
Vﾆﾆﾆ=--- _ / ／ / , /__ノｨ ／ / 八 ヽ
Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- __l／ ゝ戈ｯﾚ ´ ／／ 从 } }
Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ /、 / ／-イ,-、 // ﾉ l なるほどな。
／ﾆ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ゝﾐ=- l／ l l:{ l /ノﾊ / ではこういうのはどうだ？
/ ＼__ ／ﾆﾆﾆﾆ ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ{ _ l::} l- ､ / ／
./ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ＞ _ﾆﾆﾆﾆﾆﾆl -=/ Y -::/ }、_ V
../ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ﾆﾆﾆﾆiﾄ 、 f´ ﾉ ｨ:::/ { } }
/ ＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾊ ≧ﾉ } ／ __ V ./
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧ { ｀¨ ／////＼ /
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧ l ／/////////
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| 曲芸師のように飛び回りながら、アセムが抜き払った拳銃の引き金を引く。
|
|「親父の念動障壁対策に用意した虎の子の対魔力弾だ」
|
| 恐るべき精密射撃、
| 弾丸はジャンヌ・オルタの腕に着弾するも、炎が凝縮した鎧に弾かれる。
|
| けれど、目的は達していた。
| 弾丸は正確に魔力の障壁を打ち割っていたのだ。
|
| 電撃の歪曲が収まる。ジャンヌ・オルタの腕に直撃。黒焦げになる右腕。
| だがその腕で、ジャンヌ・オルタはニャンコ先生を指差す。
|
|「させるかよッ！」
|
| ジャジャマルがナイフの束を投げていた、十分な防壁で『スプレンガン・ライトゥン』が誘爆。
| よろけるジャンヌ・オルタにアセムがヘッドショット。
|
| 魔力障壁を破壊する脅威の弾丸。なおお値段も驚異的で、都心で一軒家が建ちます。
| ちなみにフリットに使わなかった理由は、命中したら殺しちゃうから。難儀な男である。
|
|「やりぃ！」
|
| 狙われる前にケツをまくるジャジャマル、ジャンヌ・オルタが彼女と、アセムと、ニャンコ先生のどれを狙うか迷った瞬間に。
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. ‐'″ _,,.. -ｰ''''^ﾞﾞ二rｉ'ﾆ.... ....､............. ...._,,,＿ ￣ﾞﾞﾞﾞ''''lllll,,,,_
..,.. -''"゛ _,,,.. --ｰ''''."ﾞ.´ ￣''''―
_,,,,, ｀￣￣￣ﾞﾞﾞ! ,,＿_ .,,,,..uuii､;;;;;;y ......,,,,＿,i-............ ......,,,,
-''''ﾞ彡'"゛ ._,,..yr‐ ._,,.. -ｰ''''''ﾞ ￣ |! i| : ´｀ﾞ'''― ,,,_
...ﾉ'" .,.. -''',ﾞ..r''“ﾞﾞ“´ |! i| i ｀'''ｰ､、
_..-'"゛ _..- |! ∨| ｀'ゝ
'" .,..ｯｒ'" |! i! ヽ
.., ''ソ゛ i |! i|
゛ lﾞ i! |! i|
. ! |∨ i!
ヽ i|! i|
. ｀'-､、,. |! i| _..-'´
｀''ｰ ,,_ |! i|. _,,,.. -‐''"
´ﾞ'''ｰ . ,_ |! i|. __ii;;;;;;ﾆ二......、
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'''ｰ ...,,,_ ￣￣.. |! i| -―''''"´ . --l∋´
￢――ｰ｀-′. ｉ! |! i|. _,,.. -‐''"゛
｀ﾞ"'''―- ....,,,_ ｀ﾞ｀-｀-. |i |! i| ｉ.￢''"´ .＿_,,,,,,,_,,,,.．
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|l ｌ| !
|l ｌ| i!
. 、 |l ∨| ／
＼ |l : ｌ|
|l i ｌ| ／
＼ ＿ノ,' ＿ |! ｌ| ／
.... く> ヾ< /Υ 〉 !| _ |] ー '´/
}l 〈_::」/ :!:i: 〈/ ＿_ ｌ { ／
＼、 /, ＿_ .:|.:|: . _ﾉ::::＼＼ ､ヽ. ＿_／
. ＼ー ' 「:::::// . :.:|:.:.v!: . ＼:::::/／ ｰ （ ／
. ) ) 〈:::::// . . : ::!:.: .:|: : . ￣ i ー '／
＼ ､ ／／ l7 ￣ . : :|: :: :!: :. :|: : : . . . l> ｉｌ ﾌ∠／
.. ＼ー ' i! . . .: : :|!: : |..: . :l : く]: . i. . !:l ／／
. ＼＼ iｌ 、〈〉 i . . : <＞!|: :,' .:: .: | : : !: : !:. . . ﾉ::l ／／ l7
. ）:.:＼ 八:.＼_ 人 )､ : : ﾉ.:V.: : .::.: :!: :人 八,､ ノl ／ : ﾉ,､ ／: （
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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| ジャジャマルによる完璧な指示と、タカオの回答。
| 障壁が破損した一瞬を突いて、いやむしろ着弾の瞬間に障壁を破壊したアセムを褒めるべきか。
|
| とにかく20.3cm連装砲の直撃である。
| 普通の人間ならミンチよりもヒデえやになる艦砲射撃を頭部に受けて、ジャンヌ・オルタは溶けたアスファルトに倒れ込んだ。
|
| 頭部から血を流しながら、煮え立つアスファルトの中で立ち上がるジャンヌ・オルタ。
| 頭部装甲が砕けて、真っ赤な血がドロドロと流れて落ちる。
|
| その姿が陽炎でゆらめいた。高熱を受けてアスファルトが気化する。
| しかし、チャンスだった。今ならば行ける。
|
| 誰もがそう考えた。
|
|「全員伏せろーッッッ！！」
|
| やる夫とやらない夫を除いて。
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|l|ｌｉｌ|l |ｌ|川ｌ|ｌY|l|l|l|l{
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―|||| jll jｌ| 川ｌ|ｌ} |l| ｌ|ｌ|川 ｌ| l| ｌ| |l |l|..... |||―
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||| jﾘ l|l l| ｌ| jﾘ jﾂ |||
||| ｌ||ｌ|ｌﾘ {l|ｌ|ｌ|ｌ| j川{. |||
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||!|i||ill ..| ||ｌｌｌ|||ii|||ｌｌiiiill|lliiiｌｌｌ|||lll||!!lilllii!!!||ｌｌ||ill|ll ｌｌｌ|||lll||!!lillliiｌ.ｌ| |lll||!!lillliiｌｌ| !!||ｌｌｌ|||lll||!!lilllli||||!lll||
|||ｌｌ|||ill|i||ll||lll!!ｌｌｌｌ||iｌｌｌｌ||||||ｌｌｌ||||ｌｌｌｌ|iill|||||ｌｌｌｌ|ｌ|ｌ|lll!!ｌｌｌｌ||iｌｌｌｌ||||||ｌｌｌ||||ｌll||!!lillliiｌillliiｌｌ||!!!||ｌｌ||!!ｌｌｌｌ||iｌｌｌ||
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| ジャンヌ・オルタから放出された超高熱の波動。名付けて『ミタナックソーネ』。
| 彼女自身が爆発したのだ。それもかつてない破壊力で。
|
| とっくに逃げていたジャジャマルと、遠くですぐに遮蔽に隠れたやる夫は無事。
| しかし、蒼星石の結界だけでは防ぎきれない破壊力。
|
| やる夫は荒れ狂う熱風に皮膚を灼かれながらも、仲間の安否を確認した。
| まずは蒼星石、背中が黒焦げの墨目に抱きすくめられ、なんとか無事。
|
| やらない子の姿は見えない。隠れたか逃れたのだといいけれど。
| いや、無事だ。やらない夫が『エクスカリバー』の防壁で、自分自身と妹を守っていた。
|
| だが、アセムと『異端審問官』は軒並み倒れて動かない。
| 彼らの防具では防ぎきれなかったのだ。
|
|「アセムさん！」
|
| やる夫は胸を締め付けられた。
| 出し惜しみのせいだ。アセムが死んだかもしれない。
|
| キオの父親、フリットの息子。
| やる夫の家族は破綻しているけれど、他人の家はそうあってほしくないと思う程度にやる夫は善良だった。
|
| アセムが死んだらやる夫の責任だ。
| あの『異端審問官』たちにも、大事な誰かがいるだろう。
|
| 最初から、最初から『荒野の黒龍』を打ち込んでいたら……！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
j三三三三三三三三三＼
,. - = ＝＝＝＝＝＝==- ..、三ヽ
／三三三三三三三三三三三 ヽ三 ヽ
r'三: _, -―r ー -､- ､.___三三三三 ＼三 v 落ち着けやる夫！
ヽ ｨ'´::::ﾊ ::::::::::::::::::＼ ::::::::::｀ .､三三三 ＼/
. /:| :::::| l'ヽ::::＼ :::::::::ヽ!::::::::::::::＼三三三 ヽ 僕らを信じろ！！
/ ::ﾊ! ::|!| ｰヽ_‐_＼:::::::ﾘ :::::::::::::::::::ヽ三三三}
' :::l::::ﾊ,:| ヽ ｲj;! /`‐-ゝj :::::::::::::::::::::::::ヽ 三 '
l ::ﾊ::::从乂 ﾚ′ /:/:::::::::::::'::::::::::::l／
| ' i:::r ' /ｲ/:::::::::::/:::::::::::ﾉ _ . _ _
ヽ ヽ:, __ ':::::/ｨ::::::::::::,. ' //￣ Y'
ヽ V_ヽ ./ ::://ヽ _. t‐ｫ,-､ //ヽ
ﾉ＼ / :::,j/ ,.ｲﾊ ' ⌒ヽﾉ-､_ // ＼
/／ヽヽ __ ノ, .イ ノ｢/::::::::::::::::::lヽj_ﾌ__ //^ ヽ
ヽ ::::| _j_ ﾉ､｢/i ':::::::::::::::: ∧ﾉ ,//_ ､ /
ヽ| rﾉ.ｨl.､V/ /:::::::::::::::::::! !::::＼. // 丶 '
//`l||ﾚ/ /::::::::::::::::::::::::ヽj:::::＼＼// ⌒ヽ '
ノヾ / |/ /., -‐- ､::::::::::::::::::::::::::::＼＼. /
,/:::::::` ｲ! // ヽ::::::::::::::::::::::::::lヾ＼ヽー ､/
／ノ:::::::::::/_,.ィ | ＼:::::::::::::::::_::ト､l_:j ﾉ ./
／／ /::::::::/ｲ / ﾉ | | `ー イヽ ノ´ / ' ⌒
丶ー'､ :::::::::://`/／ V 三ノ ﾆﾆゝ'￣´ヽ /
V ノゝ:::::::`:::/ |!〆三三三＼__ /ヾ
,/／ `ー､/ |三三三|ヽ/:::::::::ヽ,
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| 蒼星石の絶叫。やる夫の心から焦りは消えない。
|
|「ンなこと言われても！」
|「いいから任せろ！ 君と僕とやらない夫だ！」
|
| やる夫は息を呑んだ。
| そうだ、そうだった。
|
| やらない夫がいてくれる。
| 蒼星石が側にいる。三人でなら、負けない。
|
|「行けお、やらない夫！！」
|「任せろ！！！」
|
| ジャンヌ・オルタが蒼星石を一瞥、だがすぐに真上に指を向けた。
| 降り注ぐ砲弾を『スプレンガン・ライトゥン』で迎撃。反対の手で砲弾の発射方向を爆破。
|
|「行かせないでアフロ……！」
|
| タカオへの攻撃を企んでいる、そう気付いたやらない子が駆ける。
|
|「『ドッペル玄関』……！」
|「やらない子ちゃん！ 『滅ぼすもの』は……」
|
| 警告を飛ばそうとするやる夫、しかしやらない子はそんなやる夫に目配せした。
| 唇に浮かぶは不敵な笑み。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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,-‐- ､ ,rｰ- ､
j::::::::: :.ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::: ::.i
／~ﾄ＝ ,ﾉ:::::::: ::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)'::::: ::::.i
／ヽ_ノﾉ三.ﾙ::: ::ﾘγ::..:::::..:::.:..ﾍ、: : : :: ﾉy::: ::ﾘ
, く _／三.__ Yy ﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ ＼ _メ :: ::;） ﾙﾘﾉ
/ ./三.／ ﾉ }三 ﾘ ::::::( (○） （○ ):（
/､__ /=／`ー' ／ . ﾊ: :::ﾊ www ﾘ ）) 来いよ聖女サマ！！
/ ,／丶 ／三三 ） ) ） 、 !iliiｌ」 /:;ﾊ(
/ ／ヽ、 ／三三三 （,（, （.( ' ﾍ ￣い ﾉ::）） アンタの敵はここでアフロ！
/,／ ＿,∠ -┬―‐┬┬‐=="'' ‐､....,,__|""'''‐-、
,.-:「 ;:''' ! :! L..ノﾉ三- ､_ ハ. iﾍヽ､
/|:! ,! ::::-=二王￣三￣￣ `'′入oヽ ´‐＼
|:|:! | i'''""" ! ￣ !丁 ヽ三. ﾄ､￣o￣]ﾆヽ ヽ'''""ヽ
|| ! ! ,| ,;:::-┬―――三'三. | ￣￣ lニヽoヽ__,,,...`、
|| !| | :::: l三|= |三. | ﾉ＿,ヽ. ヽ＿,,,.|
ヽ|l,l|l＿__;;;;;__ノ三!= /三三 ￣￣＿,,.. -ヽ. ヽ
￣￣::::三三／= ／三三三 """￣
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| やらない子の周辺の空間が歪む。
| ジャンヌ・オルタがそちらを見た。
|
| 『クトゥグア代行者』の狙いが本当はなんなのか、結局はまだわかっていない。
| しかし、ニャルラトホテプや『滅ぼすもの』は、明確に排除対象のはずである。
|
| ジャンヌ・オルタがやらない子を指……させない。
| 同じ方向から真っすぐ飛んでくるやらない夫を見る。恍惚とした笑み。
|
| 脚に溜めたエネルギーを放出し、右に跳ぶやらない夫。
| ジャンヌ・オルタがそれを指差す。
|
|「バカめ！」
|「口が悪いぞやらない子」
|
| ⇔反転。
| 『ドッペル玄関』で左に飛ばされるやらない夫。空振りする『スプレンガン・ライトゥン』。
|
| 目で追うジャンヌ・オルタ。だが腕が追い付かない。
|
|「僕の結界も捨てたものじゃあないね」
|「治癒の術もですね」
|
| まとわりつく『冥府の瘴気』が、そして大火傷を負いながらも『異端審問官』たちの呪縛が。
| ジャンヌ・オルタに追撃を許さない。
|
| そこに『局地重力操作』でやらない夫が迫る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/∥/ゞ''''ヾ,∧/i{ 从､ Ⅵ/∧ .∨
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从:.i{/i{､ i 从_|/∧//杙ツ i 从､i＼__≧＿
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∨~~~~ヽ)ﾐh弋ツ ､ /从ﾉ~~´ヾ,:i:i:i:i:i:i:iヽ, やらない夫……！
ノ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iYヽ, ｨ ア ノ从ﾉﾘ从:i:i:i:i:i:i:iイ廴
ﾌ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ih､__／ |:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i厂
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フ~~~~~~""'''＜:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i}＿_ﾉ{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iア´
／-=ﾆﾆ二二二二~''＜:i:i:i:i:i:i}､ﾆﾆ｀~ヾ))_~~~~´{
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/-=ﾆ二二ﾆ/: : : : : : : : `''＜ ﾆﾆﾆﾉiム ﾆﾆ｀~ヾ} i} |
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| ジャンヌ・オルタが言葉を発した。
| 名を呼んだ。何かを求めるように。
|
|「……………！」
|
| だがやらない夫は応えなかった。
| 彼女がすでにジャンヌ・ダルクではないことを確信していた。
|
| 一切の動揺なく、真正面から突っ込んだ。
| 抱擁するように両手を広げるジャンヌ・オルタ。
|
| 新たな攻撃、両側からの衝撃による磨り潰し。人呼んで『ツヴァイ・ゼキライネン』。
| それをやらない夫は二本の『エクスカリバー』で強引に突破した。
|
|「ジャンヌ！」
|「やらない夫……」
|
| 今度こそ呼び合う。
| 左手に『無名祭祀書』右手に自身の『エクスカリバー』。
|
| 前者でこじ開け。
|
|「それはお前じゃ！」
|
| 後者を振り下ろす。
|
|「ないだろッ！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. / /ﾆ＿ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／⌒｀Y´⌒＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ ＼
/ /ﾆ{ ＼ﾆﾆﾆﾆ＞―＜{__{｀ヽ ィヽ__}ﾆ＞―＜ﾆﾆ／´￣ 〕 ',
' 仁ﾆ￣ヾ丿ﾆ ／ ＼==| .|ﾆ=／ ∨ゞ／￣ﾆﾆﾍ ，
'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ / V } .{ﾆ/ / ∨ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ.}
' !ﾆ〔二二〕 / ./ /,. - } } { { ｀j- ., __ ヽ 'ﾆ〔二二〕ﾆｉ ｉ
|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ' /´´{ |│ ,' } {.{ / ! { ＼}ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ│ |
| |ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ| ./ { { ! | ＼ / / ﾏﾑ/ ゝ_{ ＼ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ│ |
| |ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ| / __ゞ__,リ ./ﾆゞ‐人‐ｲﾍ ＿___＼ ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=| |
| |ﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ イ´fてう心ヽ〈 ＼ ＿＿ ／ 〉ィfてう心っ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|
| .ﾏﾆﾆﾆﾆﾆﾆ 〉 . . . . . . . . . ＼ﾆﾆﾆﾆﾆ／ . . . . . . . .〈ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ '
} .ﾏﾆﾆﾆﾆ.／＼. . . . . . . . ｀ ー‐ ´ . . . . . . /＼ﾆﾆﾆﾆ=/ /
/ ／ ヽﾆﾆ／ |､ ＼ . . . . . ､ . . . . . ./／ ヽﾆﾆ / / …………あ。
. {/| ／ / ｀¨ / | ', ´ } ｀¨ ヽ、 /
. | .| / .,ィ .∧ ! ﾍ j ./ |_∧
ゝ／_/ ! ! ' ､ f ￣￣〕 / /.| |ﾆ.∧
／ﾆ /、 { } .{ ＼ ｀ ー― ／' / } |ﾆﾆ∧
／ﾆﾆ / ＼ ﾍ ゝ{ ∧ ヽ ／ / / / .|＿＞´
｀ヽ､_/ ＼ ﾍヽ／ 、＼ ｀＞ ､ , ´ / / ∧ ／
. ＼ ＼ __ ＼ 〈´｀ ー――￣ｰ―――ノイ ／}／ }∧ / ,. -‐‐‐- ､
｀ ー‐｀ |:｀: :ー―――――― / ／f ´ / ゝ{´ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ＼
. , -=ﾆ=- .,_ j: : : :＿＿__: : : : : : : : : :〉／_: : |､___ ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ∧
. ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- .,_ rミ/: : :〔: : : : : : :＼ : ／: : : : : : :〕: :ゝ=ヽ￣ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ}: : :｀ヽ: : ￣￣ ＼: :∨: :／ ￣￣: : :/: : /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 浅い。一撃は防ごうと上げられた右腕を切り飛ばすに終わった。
| やらない夫の全身から煙が立つ、コートが焦げる、皮膚が焼ける、産毛がチリチリと音を立てる。
|
|「お兄ちゃん！」
|「来るな死ぬぞ！！」
|
| そう言われて聞くようなやらない子なら、誰も苦労はしないだろう。
| 再び超高熱の爆弾化しようとするジャンヌ・オルタ。必殺の『ミタナックソーネ』。
|
| 発動すれば今度こそ全滅しかねない衝撃をやらない子の『ドッペル玄関』が。
| 爆発?爆縮。
|
| 一切合切消し飛ばす破壊の波と周辺一帯を吸い込んで圧潰するエネルギーの凝縮。
| その両方に晒されながらも、やらない夫が『無名祭祀書』を握った拳でジャンヌ・オルタに左フック。
|
| 高熱の装甲に焼け焦げる左腕、赤熱するやらない夫の魔力障壁。
| 切り上げる右の『エクスカリバー』を、ジャンヌ・オルタはのけぞって避ける。
|
| 胸板に浅く血の糸が……否、血は流れない。
| 切り飛ばされた右二の腕、両眼と口腔、そして今切り裂かれた胸から黒い炎が吹き上がる。
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,从 / 、 ._,i､, ／ 〃" イ _..-'"
. / .! ./ _､ﾒ’ ,..-'ア⌒ / ./ . ,／ン
./ .レ ,／./ ,／゛ / ,／
′ ／ .,ﾉ ／ _/／
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. .／＞''´ ,,ィヽ}, r-'⌒⌒ ヽ､-r=≦´_ ,,-= ''´ ｀´ ! : : : :/ ..:: ...:::::::::::::::::::::
. .／ ｿ ヾi _,,-ヽ ヽヽ } |_j=-r ''´_,ィｙ-=´￣｀ー- ） : : : :/..::::: ..:::::::::::::::::::::::::::
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. '''´￣,, ＝ ´ !}_=＝''´ ヽｰ､ノ : : : :j: : : : ヽ: : ＼: :ヽ i' . . : : : : ノ:::::: ..::::::::::::::::::;::- ´: :
. /.ﾞ＝ ´ ／/ ＼__,, イ､_＿: : !: : : :/／ :ﾊ . . : : : ／::::::: ..:::::::::::;;- ´: : : : : :
. / . ,／ ,,-''ソ゛ ﾉ / ｀ヾト､-':::: :; :/ ハ : : : ／＿__ .._＿_､='´ : : : ＿; -‐'
. /,／ . ／ ／..ﾞ_,,-‐≦＞''´ { ::| ', : : : |j/ : :i: : :／''´￣:::::ヽ:,-‐':::::::::T￣
i′ _..r'"..ﾞ_,,-‐≦＞''´ ゝ､ﾉ :i＿_', : : j/ : : :i／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ､
｀'''~ -‐≦＞''´ 丶, ､ iヾ,､/ : :／;:'::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::.ヽ
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,／ 〃 ｒ-ヽー' ヽ,,／::/／::;:'::::::::::::::::::::l:::::::::::::::,:イ::::::::::::::::::::::::::::::::｀:
／ ﾉ｀ ､_,,ィ''´:::::::::::::;::':::::::ヽ::::::::/::!::::::::::::ナ-ー二ニニ- ー '' ヽ
/ / ｒ, , ｊ:::::::::::::::::::::;:!::::::::::::::ヽ:::/::::::::::::／
￣｀ーｒ'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::_/ ,
}-‐ 彡´ヾ､::::::::::::::::::::::::::::; ´. ,..-'″
／ ´,ィ丶 ヾ＼::::::::::::::::::r '. _..-'"
,_ ／ ''´ ﾍ:::::::::::::＿,,, ノ _,, -'"゛ ._,, r
i､ 、 ｀'て''!ﾆ＝=‐-,,_ ) ..::::::::::::::::::::::::::ヾ-ー┘ _.. -'''″ ＿-''"ﾞ.,/ ／⌒
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| 燃え上がるやらない夫。
| ジャンヌ・オルタの炎が、未だ『ミカエルの龍殺し』に拠るなら消えない炎。
|
| 構わず斬りかかるやらない夫に、ジャンヌ・オルタが衝撃波を放つ。
| 距離を取られた。致命傷を与えていないのに。
|
| 受け身も取れずに転がるやらない夫、だが、すぐに立ち上がる。
| 絶賛全身大火傷で、風が吹いても痛いはずである。神経という神経を炙られて、激痛にのたうち回るしかないはずである。
|
| それとも、痛覚は熱で破壊されてしまったのか？
| いいや、やらない夫は全身の激痛に叫び出したいほど苛まれながら剣を握る。
|
| 彼を動かすのは気合でも根性でも『エクスカリバー』でもない。
| 蒼星石と『異端審問官』たちからの、遠距離治癒魔法である。
|
| 発狂してもおかしくない激痛の中で、それでもやらない夫はジャンヌ・オルタに立ち向かう。
|
|「終わらせるぞ、ジャンヌ」
|「やらない夫」
|
| ジャンヌ・オルタの呼びかけ、地獄の底から暗いパイプを通って来たように歪んだ声。
| やらない夫は無視をする。彼が呼びかけているのは斃れた女。今は亡きジャンヌ・ダルク。
|
| ジャンヌ・オルタが左手を上げると同時に、アセムのナイフが飛ぶ。
| 至近距離での『スプレンガン・ライトゥン』、よろめくジャンヌ・オルタ。
|
| その右脇腹が崩壊、内側から黒い炎が溢れる。
| 乾燥した土くれのようにボロボロと溢れる肉体を、ジャンヌ・オルタは不思議そうに見つめた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|＼ /:. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／ ヽ:.:.} :.|
|:.:.:＞――ｧ:.:.:.:.:.:. / ∨:.:; r ､
／／￣￣.／:.:.:.:.:.:.:.:, W ∨ ＼
_／／: : :／／|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i i:| ∨ﾍ:.＼
.／: : :／／ヽ:.|:.:.:.:.:.:.:ll:.:.| ,ﾘ:. | :|: : :.＼
: : : :/ ./ }|:.:.:.:.:.:.:ll:从 ,:: | :|: : : : ::｝ 『殺った』
: : :/ ./ 八:.:.:.:.:. ∨:∧ // | :|: : : : /
: : { { ムイ∧:.:.:.:∨:∧ .ｲく､＿＿＿ｨ彡| :|: : : /
: : | |ミ＝＝＝|{::∧:.:.:.:.＼＼＞ ＿__ ｨ彡 ￣￣￣ :| ,: :.:./
: : | | ｛￣ヽ＼:.:.:.:.:＼ >:.:.:.:.::/:.:.／ / /:.:.:/
: :∧ ∨ rく入､ ＼＞ｔ、: :ヾミ＝彳 / /:.:.:/
: : :∧ ∨ jﾉ: ＼ ｛⌒ヾ:>､ : : /／｝_ / /:.:.:/
: : : : :＼＼:.∧ ー===| ＼＼,ｲ 「xヘ / /:.:.:/
: : : : : :.:.＼＼ ＼＼___.| l} |l |{ハ:.:＼. / /:.:.:/
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| 爆風で煽られたのはジャンヌ・オルタだけではない。
| 満身創痍のやらない夫もまた跳ね飛ばされていた。
|
| すぐには立ち上がれないやらない夫、不撓不屈の男でも、とっくに限界を超えていた。
| 指を向けようとするジャンヌ・オルタ。しかしその腕は持ち上げた肘からもげた。
|
| ボロボロと砕けながらコールタールの沼に落ちるジャンヌ・オルタの肉体。
| 身動ぎすれば身体が崩れ、歩こうとすれば足が折れる。
|
| 唖然と見守る一同の前で、『代行者』は塵となって崩れ去った。
|
|『素晴らしい戦果だ、やる夫』
|「言ってる場合かお！」
|
| 誰よりも早く、やらない夫に駆け寄るやる夫、そのやらない夫は、焼け焦げた体を引き摺って移動しようとしていた。
|
|「動くな馬鹿」
|
| 蒼星石と『異端審問官』たちが治療に回る、彼らも無傷ではないが、やらない夫に比べれば極めて軽い。
| やる夫はやらない夫の向かう先に気付いて向きを変えた。
|
| 確認を、せねばならない。
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ（::. ::.ﾉ ＼ ／ヾ::::（ ﾉ／}
ヽ:::( （●） （●） ):::::./ / __
( （i rーｧ ） )/ / . ／ .ﾉ
_ ）ﾊゝ ⌒ ｒ / 厶- ´ ／
(＾ヽ{ ヽ （(::::ぃ＞ ﾊ / ／
.(￣ ヽ ヽ i ﾉ/)!:） ,ヾ ｿr一'´ ー ､ ￣￣￣）
(二 ヽ i i |,r‐i .l/ ﾉ Ｙ`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ ／ ノ / （ ..... ...ハ ヽ ヽ
i { ｲ―イ i:::::::: ::::: ﾉ ヽノ
ヽ. `ｰ '/----
`ー '
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| 最後の局面、ジャンヌ・オルタの『ミタナックソーネ』を反転し、全滅を防いだのはやらない子だ。
| しかし、外次元介入者である『滅ぼすもの』では、『代行者』の攻撃は防げないはず。
|
| その矛盾については考えても意味がない、問題は結果だ。
| やる夫は身じろぎ一つしないやらない子に恐る恐る近付いた。
|
| 焼け焦げた皮膚はめくり上がり、衣服や髪は焦げかすになって体にまとわりついているだけだ。
| あまりにも状態が悪いため、顔色なんてわからない、赤ん坊のように体を丸めて、しかし呼吸の気配はない。
|
|「誰か！ やらない子ちゃんを！」
|
| ネウロの所からかっぱらって来た治癒の呪符を使う。
| 死ぬな、死ぬな。
|
| やる夫だ。やる夫のせいだ。
| やる夫が出し惜しんだから、やらない子の命は消えてしまう。
|
| 呪符を使う、何個でも……という所で、やらない子の手がやる夫を止めた。
|
|「…………っ」
|
| 喉が焼けて、口内が爛れて、言葉にならない。
| 悲鳴を上げて治療を試みるやる夫を、いつの間にか近付いていたジャジャマルが止めた。
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＿＿: : : :＼: : : : :V: : :l: : : i!: : : : : :／: : : : :／
: : : : ｀ヽ: : : ＼: : : V: : :i: : :|!: : : : /: : : : :／ー-
: : : : :_: : : : : : :｀ : : : : : : !: :': : : : : : : : ／: : : : : : : :｀ミ 、
: : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ー--: : : : _: : : ヽ
／: : : : ｧ : : : : : : ; : : : : : : ／＼: : : : :＜ー ミ ｀ヾ: ヽ
: : : : ／ : : : : : : ハ: : : :／ ヽ: : : : ヽ＼: : :｀ヽ ヾ:
: :,／: : : : : : : : / }: : :/ ヽ: : V/＼: : :＼ ヽ
ｨ': : : : : :イ: : :/ !: :/ ﾒ、V{ﾆヽ: : :＼ )
: /: :,ｨ//: : : / i:/ / Vﾆ ＼ ヽ
/: :///: : : ＞ー--＜ ／ {｢i! {!三ﾆハ ＼ パニくんなよ
: : i!// : ／ {｢ｌ! ｀ ´ !|j! ｊ三三 } ウブなネンネじゃねーンだろ？
: :il!l/ｊ／三 |! i| iじ ｨ三フ
: :j!/三三ｊ! iﾄ j! ． ¨ィ７´ 蒼星石と『異端審問官』が
: :i ヾ三」 ゞ'’ ＿ -=ニ三7 近くに野戦病院を立てるってよ。
: :! ｀マ三ニニニニニニニニ三三三フ
: ; ｀マ三三三三三三三三三＞´
/ 「￣´￣￣￣￣ ´ ７
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|「うあ……」
|「アセムの野郎も死にかけだ。いい年してはしゃぐからだぜ」
|
| 最初の『ミタナックソーネ』に耐えられなかったのだ。二発目を防げなかったらどうなっていたやら。
| うろたえるやる夫の顔面を、ジャジャマルがぶん殴った。
|
| 無様にすっ転ぶやる夫を蹴りながら、ツバを吐きかけるジャジャマル。
|
|「起きろクソが、五体満足な俺やテメーが処理しねーで誰が後処理すンだよ！
| 治療はできる奴に任せろ、俺は合衆国大使館に応援を要請する。
| テメーは？ 今すぐ動けノロマ！」
|
|「あー……すまん、ありがとうだお」
|「殴られてツバ吐かれてお礼されンの初めてだぜ。キモチワルっ」
|
| やる夫は立ち上がると、目的のものを探した。
| 先程から脳内で『荒野の黒龍』がずっと騒いでいるブツだ。
|
| 瓦礫を掘って半分潰れた『それ』を掘り出すと、『チクタクマン』と『モーンブレイド』が甲高くわめいた。
|
|「これを持って鷹野……『先生』の研究所に行くお」
|
| やる夫たちは運がいい。
| 世界有数の悪魔研究者に、『敵』の分析を頼めるのだから。
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12/20も7話目なのに、まだ夜が明けてないんだけど？
大丈夫！ 次はもうお昼だから！
渦巻く陰謀。
謎めいた目的。
踊る会議。
冴え渡る推理。
苛む罪の意識。
闇の向こうの希望。
十万の死。
燃え上がる街。
もうわかっているだろう？
奴こそが、最後の『十壞』。
次回、最終幕百二十六話『12/20 その7 第二次関東大震災』
果てに見るのは破滅か死か。
それは最後の逢瀬のように
魂よ安かれ
次は殆ど情報のなかった関東大震災か
さよならジャンヌ
んで何を掘り出したのやら
次レスです。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1679102610/
こっちはまあ、雑談か質問か適当うめるかで。
>>983
これでとわの別れです。
>>984
ジャンヌは地獄行きでは……？
>>985
推測会です。
>>986
ありでーす。
>>987
アレです、アレ。
私の好きなもの。
解答例：北宋の壺
ふふ、美形の顔を台無しにしたり、ヒロインに治せない傷痕つけるのがね…うふふふふ。
『滅ぼすもの』ではないペルソナ使いの中では最強レベルの戦闘能力。
圧倒的な攻撃力と射程、防御性能を誇るのだが、だが……びっくりするほど接近戦に向いていない。攻撃が大味すぎる。
頭は悪くないが考えるのを人に任せがちで、一般人的な常識を持ち、顔芸が得意。
その上、アサギの死とはやぶさの負傷もあり、覚悟も意地もガン決まっている。
その上、最悪死んじゃってもおいしいよね！
追いついた（追いついてない）、さぁ次スレだ
捻れていないけど、銀の十字架？
よもやこの場末のスレに新規のお客様がいらっしゃるなんて、感激に言葉もありません！
ちょうど本日投下致しました。
ほぼ毎週土日のどっちかで投下しております。今年中の完結を目指しておりますので、コンゴトモヨロシクお願い致します。
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| 少し未来の話をしよう。
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| 東京から少し離れた地方都市、杜王町の一角にその家はあった。
| 出張中の父親がいて、母親と小学生の息子、猫の四人ぐらし。
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| クリスマスの日、父親からカードとプレゼントが届く。
| 母親にはウェッジウッドのティーセット。息子にはプロ仕様の撮影機材。と編集ソフト。猫にはチュール。
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| クリスマスカードには当たり障りのない言葉、『メリークリスマス、大晦日前には冬休みが貰えそうだ』。
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|「こんなカードよりも電話の一つもくれればいいのにね」
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| 母親は拗ねたように唇を尖らせるも、クリスマスカードは大切に保管して、ティーセットは食器棚にしまい込む。
| 父親が帰ったら、一緒に使うのだ。それまでは取っておこう。
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| そんな日が訪れないことを、彼女はまだ知らない。
| 悲しみの予感すらないままに。
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/／ ﾏニ７ ﾆ7/ 人_ｭ└‐ﾍ Y ヽﾏﾆ レニ｣ﾌ ＼::.
／ ﾏｲ }7 ｊ／ニニゝ ^/ﾆヽ ｊ ﾏ{ ヽﾆイ ＼{
/ ﾏﾑヽ /∧ﾆﾆﾆﾆヾ┴'ﾆニ人＿＿彡7 !
/ ）4＞彡 ﾏﾆﾆﾆムﾆﾆﾆ/ ﾏ{ ｊ
// ﾏﾆﾆﾆﾆ、ﾆ/ ﾏ､
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Vニニニニニ }ﾏﾆﾆﾆﾆﾑ ニニニニ7
ｒ'ニニニニニ＿}ﾆヽﾆﾆﾆﾆ、_ニニニ人
ﾏﾑ iﾆﾆ＼ﾆニﾑ ｊﾆ7
ﾏﾑ ﾆﾆﾆﾆ＼ﾆﾆｭ ｊﾆ7
ﾏﾑ ﾆﾆﾆﾆ ヽﾆﾆ、 ﾑ7
}ﾆ{ ﾆﾆﾆ7 ﾏｒヾ、ﾑ7
ｊ ﾑ ﾆﾆ７ ヽ ＼7
ﾏﾑ ﾆﾆ′ ::. ヽ
}ﾆﾑ ｊﾆﾆ 八 ﾄ､〉
￣ ﾉﾆﾆ ´~^′
_ィｱ⌒ﾏﾄ、
7 ﾄ^~
/ !
（_川_ﾊ/
140話の後、睡眠時間を用意されているということは、だ。
おそらく全員に個室が与えられていて、時間が来るまで誰も邪魔しない。
わかるかい？ わかったな？
誰も観測していないということは、『二人は長い時間を過ごした』可能性があるともないとも言えるのだ。
誰と誰がとかそういうことは言わない。これ以上は察してくれ。
最初から覚悟を決めた戦士だったやらない夫と、うそっこの戦士だったアリカは師弟に近い関係性で、実力ではアリカが上でもやらない夫がフォローをする関係だったのが三幕『医者』戦でやらない夫が力及ばずアリカに頼ったときのセリフが「適材適所だよ」だった。
その後アリカは本物の戦士になり、品川大聖堂で暴走したやらない夫をフォローして、そしてこれが道の果て。
二人は対等の相棒なんだなと再確認できたんだなと。
うおん、三十話もあるのでとりあえず酉があるならばその酉で乙だけでもしといてもらえるとストーリー的に嬉しいですよ！