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このスレは？
・安価でゲームをするスレでした。
・ルールは真・女神転生TRPG 魔都東京200Xを使ってました。
・世界観はよくある現代厨二退魔バトルものです。メガテン成分は多めですが、メガテンとは限らない。
・15禁くらいということにしておきます。セクシー系で。
・更新速度は亀の歩みです。
・月２で大体週末、予告なし、平均15レスの投下を予定しています。
・安価？ 知らない子ですね。
┏───────────────────────────────────────┓
・前スレ（上の方ほど新しい）
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1548538375/
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・データ確認用wiki（動いてない）
ttp://www35.atwiki.jp/siwoyumeni/
・雑談所（放置）
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12368/1448323343/
・Twitterアカウント
かくうのツン@XDDDkyjV6
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☆登場人物紹介
『秘密結社入即貸本』
【 閉鎖しました。長年のご愛顧ありがとうございました 】
『やらない夫と愉快な仲間』
テロリストとして国際指名手配されているのだが、元気です。
・やらない夫
『エクスカリバー』を利用し『セイバー』化。
弥勒菩薩の末法少女を目指し衆生の救済を目論む。
・仲魔
ニャンコ先生、墨目、ねずみ男。
・部下
天龍、シグ。『血族』を裏切った。
・監視役
鹿島、自衛隊の五島ムスカから派遣された。
・合流できていない女子高生たち
やらない子、はやぶさタカオとアサギ。ここに含まれるが謎のヒロインＸは女子高生ではない。
『ケンシロウの参謀』
ジャギの行方不明後、『血族』の手足をほとんど奪った。
・蒼星石
身を隠し、世界破滅に立ち向かう。
・ニャルラトホテプ
できる夫によってこの次元に縛り付けられた。蒼星石を利用し破滅に立ち向かう。
・同じ顔の複数のメイド
ロージェノムの遺産、蒼星石に従う。戦闘能力は皆無。
『夢宮アリカ関係者』
これからどうしたらいいんだろうね。
・夢宮アリカ
普通の女の子。
・暴力教会
エダとヨランダ。アリカの存在を秘匿。
・中立
マイケル小原と、入りびたるネウロ。
・『武僧』アンデルセン派
アンデルセン、ジェリド、カクリコン。謹慎を命じられているので勝手に動いている。
・イナミ
『蛇身』。柳生のクソガキからもらった刀を直す対価として、アリカに修行をつける。
間桐臓硯を殺すべきか殺さぬべきか。それが問題だ。
・間桐慎二
桜を助けたいが、臓硯は殺したくない。
・『万魔』
臓硯を殺し、人間に戻りたい。
・遠坂倫、『弓兵』
臓硯を殺し、桜を助けたい。
・ルイズ（ｒｙ）、『ミカヅキ』
凛にケンカを売り、敗北し、協力を強制されている。
・島村卯月
一般人、慎二と心を通わせたが、『異端審問官』に殺害された。
『監禁中』
主にフリットによる。
・キオ・アスノと藤堂志摩子
フリットに監禁されている。
・翠星石
品川大聖堂『大天使の夢』以降意識不明。
・博麗先代とラオウ
治療中という名目で監禁されている。
『ジャギ掌握圏』
東京の治安を守る『血族』の現場労働者たち。
・ジャギ
何者かに暗殺された。死体もない。
・『九鬼』
『ロストスキル』、黄泉など。
・『グレン団』
カミナ、シモンなど。
・巡音ルカ
『堕ちた武僧』。
・博麗霊夢
ルカや『ロストスキル』の主治医。小五ロリ。ジャギと仲違い後『十字軍』といざこざがあり入院。
夢世界の戦いは終わり、解散しました。
・真紅
悪魔や魔術に『接触できない』異能者。雑誌記者。
・仲直りした
ロラン、やんねえ香。
・まだ決裂中
刹那
・？？？
もう一人いたような。
・『破滅願望者』
『ロストマン』率いるペルソナ使いグループ。学園内に蔓延する麻薬を探っている。
・活動中
『ロストマン』こと上条さん、雨宮夕日、球磨川、花京院、白雪ひめ。
・入院中
島津由乃と付き添う美樹さやか。
・学校に通いだした
窓付き
・敵か味方か
クロトワとディオ。
『アトリーム関係者』
偶然集まった亡国の少年少女。東京を故郷と同じ目にあわせないために暗躍を始める。
・ミスト・レックス
元『血族』ののけもの、レヴリアスを『カトルカール』に奪われ、『四ツ目』にも見限られて街をさまよっていた。
・長門弟
委員長。元『ブギーポップ』。
・マーガレット・バートン
狂人、『ペルソナ使い』。
・十六夜咲夜、
マーガレットのメイド。『ペルソナ使い』にして『滅ぼすもの』【私でない月の私】
・ジャジャマル
米軍グリーンベレー、最後の『野良犬』。
フリットのせいで頼りにならない『血族』の代わりに東京の治安を守る。
・警察
阿部さん、バジルール、ノイマン、チャンドラ。あと白石。
・外部協力者
『狂死』、アセム・アスノ。そして謎のフードの男。一体何者なんだ。
『血族』
フリットが牛耳ってるけど、すでに瓦解寸前なのでは。
・フリット・アスノ
簒奪者。『血族』を『教会』に売った。
・ダースベイダーとストームトルーパー
超能力を利用した十二人で１セルの群体小隊。
・間桐臓硯
『元老院』。
・ケンシロウ
『四天王』に格上げ。やらない夫に逃げられた。蒼星石を匿っている。
・上杉謙信
『四天王』。
・鷹野三四
もはや幹部。
・佐倉杏子
班長。『四天王』入りも近い。メンバーはロビン、横島、ヴァイジャヤ、『バーサーカー』。
・芦屋道満麻呂
ボケた。片足なのに強靭な足腰で徘徊しながらやらない夫への呪詛をまき散らしている。
・諌山冥
死んだ。
東京を好き放題仕様としてるよね。
・ヌケドナルド・トールマン
背任罪で逮捕された。
・サンダース・トールマン
邪魔な弟を排除した。部下に米軍。
・『武僧』
パプテマス・シロッコの派閥。東京を実験場にして強化人間『カトルカール』のテストをしている。
・『カトルカール』
シロッコのサイボーグ兵団。藤木源之助がスカウトされている。
・『異端審問官』
やらない夫への復讐に狂ったジャンヌ。ジャンヌがいればどうでもいいジル。ほかに龍之介やら雪ダルさんやら。
・『十字軍』
オズとオズマ。
・『野良犬』
グリーンベレー、ジャギらと戦い壊滅状態らしいが。
その他
・『邪悪帝国』
雪だるまども。曹操華琳、カナリア。『新宿駅大迷宮』に潜んでいる。
・シックス
『大天使召喚』に居合わせ、緊急脱出した後行方不明。
・プリキュア
キュアモーリアン水銀燈とキュア・ヴィヴィアン。やる夫の名を騙って『いいこと』をしている。長門（姉）もいる。
・甘味処『ニュクス』
当分同盟と趙雲子龍。
・できる夫
の代わりに下半身もげて死亡。ニャルラトホテプをこの世界に呪縛して殺そうと企む。
・でっていう
ふめい。
・みゆき
『十字軍』のオズに乱暴されかけて（水銀燈のせいで）発狂。入院、ニャルにより精神のとどめを刺される。
.∧_∧
(´ ･□･`) (⌒─⌒)
∧_∧＿ （つ旦と)＿_ ((´^□^))
( (・)□(・)) ＿旦_＼と ヽ
/ .⊃※＼＿＿____|i＼＿＿ヽ._ノ .
（＿_（. .＼ ※ ※ ※|i i|.====B|i.ヽ .＜新スレです
~~＼`ー──-.|＼.|___|__◎_|_->. 楽しく使ってね
.￣￣￣￣| .|￣￣￣￣| 仲良く使ってね
.＼|＿＿＿＿|
もう１０年か……
殺された可能性が高いではなく、暗殺確定か
.:.:.:.:.:.:.:.:.. :..:⌒; " __,、
ヽ:_:.:.:.:.:.:. :. .: .:.:.:.:..:.ﾉ:::: ::: :: : ,ｒヽ'⌒ ｀＾j ヽ ..:
￣ `ー ‐-‐一´:::: ::: :: : r'´ ｀ｰ'⌒ヽ｀ｰ､:.
:::: :: ヽ, ....... ... .... . . .. .⌒ヽ
┌―――――‐‐:､ ヽ.:.:._:_:.:.:.:.___:::.:.:.:.:..:::.:.:ノ
|新宿衛生病院 | ＼
| | ｜ o
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTﾈTTTiヽ､
￣￣￣￣￣|￣|l￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|＼
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二二二二二| |l二二二二二二二二二二二二! |
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二二二二二| |l二二二二二二二二二二二二! |
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二二二二二| |l二二二二二二二二二二二二! |
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 新宿の外れにある廃墟のような病院。
| 先月、謎のガス爆発と水道管破裂事件があった心霊スポット。
|
| 新宿衛生病院。
|
| 『結社』の幹部でありながら『教会』の内通者だった男、ギルバート・デュランダルの根城だった場所だ。
| デュランダル本人は故人である。
|
| 曹操華琳の死病の呪詛で衰弱していた所を暗殺された。
| 下手人は『四ツ目』という事になっているが、彼はデュランダルまでたどり着かずに撤退した。不明である。
|
| この病院もほんの二ヶ月前までは賑わっていた。
| キュウべぇが入院していたのも新宿衛生病院であったし、他にも一般の患者も多かった。
|
| なにより、ニャルラトホテプとの戦いで多数の死傷者を出した『新宿胎界事件』の再起不能者たちを入院させていた。
| ……突然廃院になり、彼らがどこへ行ったのかは杳として知れぬ。
|
| まだここにいるだなんて。
| 地下の秘密実験施設にいるだなんて。
|
| 誰も知らないはずであった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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∧/:::::::::´::::::,.rt_::::::::::::::::::::::::::::::::￣￣｀ヽ
/::::::::::::::＜二､ ￣ヽ-‐｀ヽﾍ::ヾ､:::::::::::::::∧
/::::::::::::::::::::::::::::::￣”ー-=〜'￣｀:::::::::::::::::::::::::',
〈:::::::::::::::＿＿__::::::::::::::::::::＿_:::::::::::::::::::::::ヽ､::::::i
ヽ:::::::::Ⅵ三=/:::::::::_＞'"三/::,∧::::::::::::::::::::!＼|
/:::::::::::廴三/::::::／三三,ｨ/／i/:::::::::::::::::::/ ﾘ
|::::::::::::/＼: 入/ 孑ｧt-､_／ノ7,刀 〉::::::::/
|::/!::::::i〈ゞfｿ / {:ｿ/／,.彳 / l ::::／
ｿ 从_ ﾍ .リ U. 廴 ＿/::::::〈＿,ｨ i／
＿才ノ｀ー',:::::: ￣ ／ / …………普通の教会の地下施設とかだと
_ -‐/´ イ ＼ u ＿ ／､ 手も足も出ないけどな。
_,ィ ´ ∧: :.:∨ ;;;;;｀ヽ､＿_／ ヽ
"´ ﾍ : : ', ;;;;;／.i l ∧
', : :ヽ ＿ ,ｨ |: | ﾍ
＼ ﾍ､ ヽ : :.:＼ ヽ ＿,ｲ ﾉ ∧
ゝ, ヽ ＼ : : ｀￣ _. :イ / ',
i ｀ー-‐' ´ / ＼
| i ＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 横島忠夫がこの新宿衛生病院に侵入するのは、深い理由があるわけではない。
| 『教会』関係者の秘密施設跡地であり、同時にこの近くでは悪魔関連の事件が『起きていない』からというだけだ。
|
| いかにもな場所なのに、幽霊騒ぎや噂はあっても実際にはキレイなものだ。
| 霊能者である横島には、新宿衛生病院がどれだけ魔力的に特殊なのか見て取れた。
|
| 人がたくさん死んでいる。
| 悪霊が蔓延りそうな雰囲気と噂はある。
|
| しかし、大掃除のあとみたいにピカピカなのだ。
| まるで誰かが浄化したかの様に。
|
| 横島はカバンからシガレットケースを取り出した。
| ヴァイジャヤから貰ったハーブを噛み、香を焚いて煙を吸う。
|
| 五感を鋭敏にし、集中力を高める。
| 地下施設が生きているなら、侵入は危険であった。
|
|「……龍田」
|
| だが、行かねばならない。
| 先日遭遇したカトルカール、戦闘用サイボーグの中に友人がいた。
|
| てっきり死んだと思っていたので、生きていたのは嬉しいが様子がおかしかった。
| まるで横島のことに気が付いていないかのようで。
|
| 動きもギクシャクしていたし、意識がない可能性もあった。
| 龍田は……横島にとって大事な人間だ。
|
| 恋人とか、そういうものではない。
| 言うなれば……その……。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|ミﾐ:::l r‐‐ｧ r‐‐ｩ _」 三|
|ミﾐゝ' .￣ ￣ {,,,､ 三|
i´lﾐ: ! _,,.-_- .-_､ :i 三|
|:|ﾐ::ﾉ .,,ｨ'r｡ｧ`ｭ ｨ"r｡ｧヽ, | :ﾆ/i｀l
.!ヽ:l ｛::::::. i~ / ::. 弋''-‐.'｀ |. ﾉi !;ﾉ
i 'ゞl:::. ヽ:: /; ./ :: .ﾞ‐- i::l,,i /
l ..|:i:::. ／⌒iノγ :: i, | |';.ﾉ
~ゞ::／ ／ ''〈〟 _〟}:: ....... |├'
／ :／::::.. ) ( .::::::::. ﾉ:ﾉ
/ .（::::::::::...._,,...____ ..:::.:::. ﾉ/_
/ ⌒＼.{〉ﾍ,__,ﾞiq ／!1l
| 〈.:.!⌒!⌒!./ / ;;r' .i ヽ
| /iヾ|. │ │ﾉ / / / ｀!_
| ;;'､ ､ヽ___丿 ' ／ .ﾉ ./ -〒ヽ
| /ヽ . ヽ..,,＿＿ ／ ／ ./ ノ }
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 愛娘の麻呂絵、一番弟子のできる夫。
| 親友の子で、娘のように扱っていた柴崎姉妹。
|
| そしてやらない夫と石田と龍田。
| 愛するものを失いすぎて狂気に陥る前の蘆屋道満麻呂が、横島の恩師だった。
|
| 横島が『血族』と遭遇したのは二年前。インチキ霊能者のおじに誘われて心霊スポットに行ったときだ。
| おじはインチキだったが、最低限の能力を有していた、そして霊能力で女の子にモテモテだと横島に囁いた。
|
| 結論から言うと、横島は保険だった。
| 自分よりも魔力があるこどもを囮にすれば、危険な悪魔から逃げられるというおじの算段だった。
|
| なんにせよ、無意味な作戦であった。
| おじは悪魔に殺されかけて恐怖で老け込み、横島は『血族』に助けられた。
|
| 助けた『血族』は横島をスカウトした。すでに霊感を有し、果敢に逃げ回りおじの命を救った横島。
| すぐに訓練施設に送られたが、横島は不満タラタラだった。
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{ ／}ノ く ｰ=彡 / }
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「ヽ { ＼ , - ､ / }
＼ . { ゝ ／}/ /＾ ∨/_
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{, -=ミ } {′ ／ ｀ヽﾍ ／| | ） ' /_
〈 ＿ ＼{ { 〃 . ´ ｀ヽ } 〉 ｜ !i′ /ヽ}, Y´ この子は素晴らしい才能がある。
ム-=ﾐ｀ヽ{`ー―{ / ィ⌒ヽ ､ .} |Y ! | / ヽ} .| キオとも年が近い。
/ '⌒ヽヽ }｀¨¨¨´V{ 弋___ノ }ﾉ ノ ! |ｰく ､,/ ﾘ
八弋___ﾉ ﾉﾉ ゞー==彡" /｜ |/ )ﾉ/ /
`ー=彡 | ￢ { .| ゝ彳/ /
xく /＼ / } ｲ、 ＿_ 、 } ﾘ ノ/ /{
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ノ ､_} / ﾊﾉ , , , ､__､___､__､__､ヽ} / /／ 〔
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| ガキのお世話と訓練の毎日、キレイなお姉さんの姿などどこにもない。
| そんな時に割り込んできたのが麻呂である。
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|「同年代の子供で今の内から戦闘班を想定したチーム訓練をしたいでおじゃる」
|
| そんなことを言いながら引き抜き。
| 白塗りのオッサンに横島のやる気は皆無と……いや。
|
|「お主ら六人には麻呂絵を、あるいは似たタイプの術者をリーダーにした班を作ってもらう。
| まずは連携を学ぶでおじゃる」
|
| 麻呂は放っといて、優しくて清楚で教え方が上手くて、何より距離の近い麻呂絵！
| そして、同年代とは思えない発育でセクシーダイナマイツな天龍と龍田！
|
| 麻呂教室の訓練は地獄だが、悪くない場所であった。
| そして、一緒に訓練をする連中。
|
| 見た目も性格も幼いシグ。
| 寡黙どころか一言も喋らない石田。
| 明らかに機械なロビン。
|
| 最初横島は三人を侮っていた。
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| 極度の引っ込み思案だが、友達想いの石田。
| 横島の無茶をたしなめながらも付き合ってくれる。
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| 巨体に見合った戦闘能力に、神道系の術まで使いこなす文武両道の優しい巨人。
|
| 皆から一歩引いた位置に立ち、自分に自信のないロビン。
| 同年代の友人が少ないらしく、気がつけば誰よりも喋る仲に。
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| 機械のエキスパートであり、一歩引いた俯瞰の視点で状況を把握できる鉄の指揮官。
|
| 見た目も性格も幼稚園児で、虫以外には心を開かないシグ。
| こっちが興味を示してやると嬉しそうに話して、気がつけば懐いていた。
|
| その実、呪術と使い魔にかけては年齢以上の腕前で、横島では手も足も出ない一線級の達人術者。
|
| コミュ力に関しては圧倒的な横島だったが、異能に関しては足手まといもいい所だった。
|
| 剣術一筋のため、単純な立ち会いなら負け知らずの天龍。
| 搦手や奇手に長け、撹乱で格上をも倒せる龍田。
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| 全員の能力を把握する頃には、横島は自分の無能さに唖然とするばかりだった。
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l::l 丶､:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_,. -r=＝ﾆ二三三 }
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|| ヾ三) ,ィ三ﾐｦ ｀丶三三三三三ん',
lj ﾞ' ― '′ ヾ三三三ﾐ/ ）}
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| fr‐t-､ヽ. .:.:. '",二ニ､、 三三ｼ,rく /
l 丶‐三' ﾉ :ヾイ､弋::ノ`:.:. 三ｼ r'‐' /
', ﾞ'ｰ-‐' ｲ: : 丶三-‐'":.:.:.. 三! ,' /
', /.: ﾐﾂ/ー'′ 想像以上の才能でおじゃったな。
', ,ｨ/ : .:'^ヽ、.. jｿ,ト､
',.:/.:.,{、: .: ,ノ 丶:::.. -､ ,ﾊ l、
ヽ .i:, ヽ､__, イ _｀ﾞヾ ﾉ / ,l l:ヽ
,.ゝ､ト=､ェｪｪェ=テアヽ } ,/ l l:.:(丶、
_r/ /:.｀i ヽヾェェシ／ ﾞ' ／ ,' ,':.:.:｀ヾヽ
_,,. -‐ '' " ´l. { ｛:.:.:.:', `.':==:'." ／ / /:.:.:.:.:.:.} ト―-- ,,＿
一 '' "´ ',ヽ丶:.:.:ヽ、 ⌒ ,r'" / /:.:.:.:.:.:.:ﾉ,ノ | ｀`丶、
ヽ丶丶､:.:.ゝ､ ＿＿_,. ｲ / /:.:..:.:.:.,ｨｼ′ |
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| 自分は場違いなのではと麻呂に相談した横島への回答は、満面の笑みであった。
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|「横島よ、貴様以外の五人はいずれも血筋と才覚に優れ、いずれは『血族』を背負って立つこともあり得る人材でおじゃる。
| しかして、彼ら共通の弱点はなんだと思う？」
|
|「コミュ力でしょう。天龍ちゃんも含めて」
|「完璧（パーフェクト）でおじゃる」
|
| 無闇矢鱈と刺々しい龍田と、人懐っこい大型犬か、あるいは性別的な垣根を持たない天龍。
| コミュニケーションという意味では天龍は過剰なくらいに見える。
|
|「五人の連携、円滑な人間関係。そこに必要なのは彼らを理解して受け止められる器の持ち主でおじゃる。
| ギャルゲの主人公もかくやというハーレム構築能力の高さなど……純粋培養の『血族』のガキには不可能でおじゃ」
|
| 過剰な期待だ。横島は辟易した。
| この白塗りのジジイは、ただのエロガキに何を求めているのであろうか。
|
|「横島貴様は、彼らの持たない明るさと強引さとへこたれない雑草根性がある。
| それと同時に、他の五人に対する冷静な評価とリスペクトもあるでおじゃる」
|
| 違う。
| 横島は彼らについて行けない、彼らのいる場所に辿り着く頃には、とっくに先に行っている。
|
| もう無理だ。頂きが遠すぎる。
| 知れば知るほど遠くなる。何もかも投げ出したいのだ。
|
|「じゃが、彼らは貴様を好いておじやるぞ？」
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::::::::::::::ヽ-',: : : : :. .::':, i: `ヽ､__, ': :,:::::i:::::i:::::::::/
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::::::,ｲ〃: : : : :ヽ ＿ ,'イ〃 /:ｲ |::,'
-ｲt ::＼ `ヽ二ﾆユ ,ｲ '´ ./´ .ﾚ ………………は？
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|「シグもロビンも石田も、確実に前より丸くなった。貴様といる時だけは笑う」
|「……そんなことをはないっすよ」
|「いや、ある」
|
| 麻呂は真顔で断言した。
| しかし、横島はその三人が談笑している姿を見たことがある。何度も。
|
|「貴様を通して彼らは真に知り合った。それまでは仕事相手の顔見知りで、雑談などしなかったでおじゃる」
|「……そうなんすか」
|「うむ」
|
| 麻呂は鷹揚に頷く。
| ロビンが機械をいじる横でシグが虫の話をするのも、石田が世話を手伝うのも、当たり前ではなかったのか。
|
|「という訳で次は難敵、龍田を攻略するでおじゃるよ」
|「え、無理」
|
| 天龍とのコミュニケーションは、龍田という邪魔がなければ円滑となる。
| 言い方を変えれば、龍田を攻略すれば天龍も着いてくるのだ。
|
|「この後デートに誘え」
|「俺、殺されるんじゃ」
|
| 麻呂は笑って頷いた。死んでこいということか。
|
|「Ｇでおじゃる」
|「…………？」
|「龍田のバスト」
|「このエロジジイ！」
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｀ -=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=-_.ｨ:≠ミ､
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/:::::::::::::{::::|::＞-‐≠ ´ ﾄ､::::::::::::}:∧
.′::::::::::::lｲ:|´ __|{ V:::::::::|:::∧
.′i:::::::::::::||::レ -‐- ´ || }:::::::::|:/::::'.
./{/i:|:::::::::::::||::| .|| |:::::::::|:::::::::}
〃|:::::l::::::::::从Y! .ｨ ≠ﾄ::::::::|》::::::| あらあら?、
{{ l|:::::|:::::::::::{ V{ ..ｨ≠ミ .乂:::::::::|::::::::ﾊ 脳の病気かしら？
|| l|:::::|:::::::::::|人| ' }::::::::八::/:::}
八 V:::|:::::::::八>ヽ __ ｧ l|::::::/::::/::::ﾘ 頭を開いて切開しますかぁ？
ヾ{::八:::{:::V::::}＞ ｀ - ' 八::/::::/:::/}
＼::V乂{-≠=- ≧ _. イ:::::/::::/´
.ｨr=ミ､:人 _＿ .〉 ∧ / .ﾉ:_/／ ＞- ―: .､
/ : {: : : : :｀¨ : } V } { __ ノ ｀丁´ : : : : : : : ﾊ
l{ : 八: : : : : : :.ﾘ .＞「」＜ {: : : : : : : : :/: :}
八: : ∧: : : {: :./ 〃/ハ{ヽ |: : : : : : : :/: :.ﾘ
V: /: ヽ: :|:_ﾉ .//// {{ ＼ .ゞ､{ : } : ｲ: : /
V: : : : :ノ {:{//}l０.{{､ }} ｀ヽ/ : : : ′
}: : ／ |ノ{=ﾄvｲ }}ヾﾉ ＼: : :{
》:/ =-|| .}::|::{ || .V/
// .-‐|l/::八:V} ∨
{:′ ／::/:∧V＼ .}
∧ .／::／ノ::|::ヽ｀:::＼ .八
./::个:.， ｒ＜:::::::::::´:／ ＼:::::::::::::｀ヽ_ イ: : :}
.V/´:::ｨ{/乂::_:::::イ´_:::Y´_::ヽ、:::::::::ﾉﾊ､: ｀ヽ Y
乂:/ 乂/ノ､: {￣: : : : : : ￣:｀:7<_／} ヽ: :}: }
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| デートのお誘いは上手く行った。
| 正確には、シグたち三人とホームセンターに行くから一緒にどうかとお茶を濁すことで一命を取り留めた。
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| ホームセンターが嫌いな男子はいないし、ホームセンターが嫌いな女子もいない。
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| 本気のデートの場所としては不正解だが、みんなでワイワイ買い物に行くなら最適解である。
| まとまって行動して、欲しい物を買い物かごに入れていく。
|
| 工具、お菓子の大袋、虫の餌や土、モルカー、ゼリー飲料、照明器具、お香、軍手や安全靴。
| とりあえず道場に戻って戦利品を確認しながらお菓子開けて、横島は過ちに気がついた。
|
|「自分ノ事ハ気ニシナイデシナイデサイサイ」
|
| ロビンは通常の食べ物を口にできない。歯が無いのだ。
| そもそも、機械の外骨格に隠した異形の肉体を見せたがらない。
|
| だが、ストローで水分は取れる。
| コーラを飲みながら、いつもは控えめなロビンも一緒に楽しんだ。
|
| その後も同様に、六人で何度も出かけた。休みを合わせてディスティニーリゾートにも行った。
| 龍田とも冗談が言い合える位に仲良くなったし、皆のことも深く理解できた。
|
| もちろん、麻呂からムフフな情報や、隠し撮り写真を頂戴した。
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. {::::::::::::::::::::::::'´） }::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::: ＼
、::::::::::::::::::／ '―-、r―-uヽ、ヾ:::::::::::::ヽ￣ ヽ
ﾄ、、::::::::::::::::⌒ー:::::―-,r'´￣ヾ::::::::::::::::::::::::＼
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':;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、:::::/ （あれはいつだったかな）
＼ﾊ:::::::::::::::::::::::::::::ﾄ、:::::::::::::::::::::i、:::ハ:::/
,ィ!ヽ〉::::::::::::::::::::::::::', ヽ:::::::::::::::::::l_ソ :;:;ｿヽ
／:;:;:ﾊ ヽ:::::::::iヽ、::::::::::}―＼:::::::: ;ｨ';:;:＼;:;:;:;:;:ヽ、
:;:;:;://:;ヽ_〉、::l￣ ＼::{ﾘ ｊiﾂ iﾊ:::/ﾉ:;:;:;:;ヽ＼:;:;:;:;:ヽ
:;:;:;:;＼ 、 ;:;:ヽト `,_ ´ __、 ﾚｲ:;:;:;:;:;:;: ／,:;:;:;:;:;:;:}
:;:;:;:;:;: //:;:;:;:;/、 ＞ ￣￣, イ |;:;:;:;:;:;:;:< :;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
:;:;:;:;:;//:;:;:;:;/＼＼ ￣.／／ヾ;:;:;:;:;:;:;:＼ ;:;:;:;:;:;:;|
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| 巧妙に隠された秘密階段を下りながら横島は考える。
| 麻呂から貰った龍田の水着写真を、石田に押し付けたのは。
|
| あの寡黙な大男が、毒の針で武装した蜘蛛みたいな女を見ていることは、横島には自明だった。
| 横島は石田のロッカーに写真を入れ、そして石田はそれを発見するも誰にも何も言わなかった。
|
| その石田は、今では何故か顔を隠してフリットの親衛隊で。
| 龍田は『教会』のサイボーグ暗殺者だ。
|
| 息を殺し、気配を殺し、横島は人気のない通路を歩く。
| どこかで空調の振動音がする。明らかに廃棄されていない。もしかしたらもしかする。
|
|「………ろ」「だが…………」
|
| 会話する声。盗聴を心配しない、普通の声量。
| 横島は壁に持参したコップを当てた。これで驚くほど明瞭に声が聞こえるものなのだ。
|
|「『ムガ』タイプは危険性の方が高いな」
|「『ストームトルーパー』と何が違うんだ」
|「しかし事後洗脳するのか？」
|「長時間『ヨーラン』状態にして自己認識を高める必要があるな」
|
| 『ムガ』『ヨーラン』。後者は分からないが前者は無我夢中の『無我』だろう。
| その上洗脳？ ろくでもない話なのは確実だ。
|
|『おもちろぉおおーい！ おもちろぉおおーい！』
|
| 突然、幼児の声真似をした電子音声が耳に飛び込んできた。
| 横島は飛び上がった。室内もざわつく。
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|:/ ∨::::::/ V::: ﾊ {:! ::::::::::. ゞ ﾉ’ }'∠ i ',ヾ::::::i:::::|
}' ∨:::{ ∨ﾄ､ ゞ ﾉ::::::::::::::ー─‐::'::::::u (-､: }:::::::i::',:::i やべっ、バレたか！？
ヽ:| ヾﾊ-:< , ＝ ,._ Lﾉ :':::::::::',ヾﾘ
八 } _｀_／ __,.ハ ,...r:':::::::ﾄ､:::',
从 V,,..z7'´ ', 人. ヽ- ､| ＼ ＿
ヽ ∨/ j ,. ＜ / ＼__ _, ´
､', ,..:'::´::: / / }
ヽ---へ::::::::::::/ / /
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| 念の為、ホッカムリで人相は隠していた。
| おそらくは魔術による感知か監視カメラの映像だ。
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| 今まで見咎められなかったのは……横島はこの施設の警備がザルだと理解した。
| 出入りする人間が多すぎるのだろう、不審な挙動をするまで、不審者だと気づかれなかったとは！
|
| 横島は躊躇なく身を翻し、出口に向かって走った。
| ろくでもない事をしている秘密施設、見つかったら捕まって拷問もあり得るだろう。
|
| 運が良ければ即射殺だ。
| 横島の最悪は何もできないどころか他の皆に迷惑をかけることであった。
|
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
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| 小気味良いステップ音と不愉快な雄叫び。
| 何かが背中から迫るのを感じて、横島は飛び込み前転で緊急回避。
|
| 尖った何かが背中を引裂き、魔術で強化された防寒具を貫通して鍵傷を作る。
| 構わず走り続ける横島の前に、何かが落ちた。
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| 一見すると手榴弾。だが、横島はそれを見たことがあった。
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| 『カトルカール』のガス弾！
| 大当たり！ 天井の配管孔から顔を出す軟体男。
|
| こいつがここにいるなら、龍田もいるに違いない。
| しかし、喜ぶ暇はどこにもなかった。
|
| 噴出するガス。横島は呼吸を止めて目を閉じて突っ切る。
| と見せかけてスライディング！ 頭上を通り過ぎる影、空を切る鉤爪。
|
| だが、さらに立ちふさがる異形の影、後ろからも吹き付ける殺気。
|
| どれほど楽観的に考えても理解できる。
| 一対一でも勝てない相手、室内戦のスペシャリスト揃い、勝てない。
|
| 足元から、凍てつくような絶望が這い上がる。心臓を恐怖が鷲掴みにした。
| 絶叫を上げて狂気に走り、そのまま死ねたらどれだけ幸せだろう。
|
| …………ああ、もう終わりだ。
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〈:＼ -=──-､＞:::::::::::::::::::::::::i!::::::ヽ
､::::ゝ ―ゝ::::,z-‐＝─ﾆヽ::::::::::::::::::::::Ⅵ
＼::::::::::::::ィ‐､/´::::::::::::__:::::::":::::::::::::::/
＞::::::::::::::::::/圭{::::::!圭:::／:::::::::::/
/"::::::::::::／=へ=＝＼|=／ヾ:::::/ゝ::ヽ
!／l:::::::::i! ¨ﾘ≧＼;;;;;／ ◎ ∨|!:::::::::ゝ
彳:{:::::|l!＿_ﾟ_＿};;;ヾ＿__＿＿|!ｬ､|
〈::ｲヾ:|彡=≡ﾐヾ ｡ ≠ニ三ミ:}:∧} 諦められっかあぁぁあっ！！
从:::::∧`ｰ=＝ﾆニ二三.ノ// //
ヾヽﾍ∨|i!il!!l!|li!i!lili! ∨/, イ
ヾ_∧∨|!!il!!l!|li!i!lili!/::::::/
'.∨i!/＾/＾ヽl!/／i/
'.∨ｪｪノヽ:/:| ,
∧＿ , イ |＿__,..イ/
／::::::l : : ／ :|:.:.:.:.:.:.:/
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/⌒ヽ:::::::::::::::::::＞ .ﾄ-‐──一7/l /l }.:|
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|「童貞のまま、死ねるかよ！」
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| 光刃を散弾のようにばらまきながら突貫、途中不可視の衝撃波を混ぜ込み牽制。
| 超能力による不可視の鎧、念動装甲のようなものを脚部限定で起動。
|
| 空中に足場を作って敵を飛び越える、加速してやり過ごす、滑り込んで背中を押して起き上がる。
| 能力の酷使に脳内で血が沸騰する。鼻の奥がツンとする。喉の奥から胃の中身がせり上がる。
|
| でも走る。
| 使い捨ての呪符で煙幕、火炎、爆発を乱射。
| 腹の内側で水風船が破裂したような感触、撃たれた。回復を惜しみなく使う。
|
|「うぉぉん、ううぉぉん」
|
| 全てを突っ切って、突進してきた敵。
| いや、違うんだ。敵ではない。
|
|「全部終わったらそのおっぱいを好きにさせろ！」
|「！？」
|
| 放水の呪符、鉄の拳で粉砕される壁、飛び散る瓦礫が体に突き刺さる。
| 別の追手、不可視の壁で時間稼ぎ、逃げる。どこまで？ 外に行ってもすぐに追いつかれる。
|
| だが知るか。
| とりあえずここを凌がなければ。
|
|「天龍のもだ！」
|「うぉぉん！ ううぉぉおん！！」
|
| 連携を無視して突貫してくるエンジン拳。幼稚園の頃に女子二人に将来結婚してよと言われたのを思い出す。
| 人生最初で最後のモテ期の走馬灯だ。諫山冥はこれを食らってミートソースになったらしいし！
|
| だが、確信とチャンスのビッグウェーブの到来だ。
| このカトルカールは間違いなく龍田で、そして、挑発すれば連携を崩せる！
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_,,,...._,.-‐''"￣｀ 丶 ､
, '´ ＼
／ ＼
. / ヽ
. / ,| | ',
/ ハ ! '､ ､ !
ｌ / / ｌ ト､ヽ ', ｌ
| ! / ', ｌ '､ヽ ', ｌ !
| | ｌ / ヽ ! ヾ｀ ｌ ｌ | ｌ
| ｌ ｌ ! !|＝－‐-､ヽ '､ ｒ弌', | ｜ ｌｌ
ｌ | ｌ ｌ ｌイテミT｀` ヽ',´ ,ｨﾃ! | ｌ ｌ !
| | ｌ ､ !┴―'- ｀ ゞ‐ｌ ! | ｌ !
ｌ | ! ヽヽ :::::: ｌ ｊ｜ ｌ ｌ ｌ
| ｌ '､ ト'､ .:::::: ' _ノ 〃 ｌ ｌ ｌ
! ｌ ｀ｒ､'､ ; ｀ﾞブ / /｜
. ｊ ｌ ｌ ､ヾ'､ヽ、 _,:::::,_ ‐'＝ '7 / !
ｌ ｌ ! ｌ ｌ ヽ ヽ ｀` ´ － ｀ ｒ､ト‐;'_, / !
ｌ｜ ! ヾ､ ｌヽヾヽ ＞ニ,,..／ ｌ ｌ
ｌ ｌ ! ｀ｒ､'､｀‐‐､ヽ､＿,.／-‐'' 7 / ｌ
. ｌ ! ', ヽヽ ヾ'､ ト､｀|｜|´,ィ ｌ/ ｌ
/ / ヽ＞､'､ ｀ >! |｜| 〉! ノ / / ｌ
/ ｌ ｒﾄ'､ ｀ヽ`ヾ ｜|｜ﾚ'‐='-ｸ / ｌ ｌ
_,,../-‐'､ ､ ヽ、 ｀ヽ､ |｜| ／_ノ_,ノ ,ィ /‐ゝ､
'" ＼｀ ､＿,.ゝ 7￣|´ ｀ﾆフ ／/ノ ｀''－- _
_＞ｒ‐`- / !｀＝―‐''´ ´ ｀丶､
-‐''"´ ｜ / ｌ /｀ヽ､ ｀ｌ
! / ', / ｀''－- ､ ｌ
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| 目が覚めると夜空を見上げていた。
|
| 星は雲と大気汚染でほとんど見えない、薄雲のかかった三日月がうっすらと夜闇を照らす。
| ぼんやりした月明かりに照らされて、サラサラ金髪の美少女が、憂いを帯びて寂しく佇む。
|
|「お前、伊集院の部下だな？」
|
| だが、声が男はだった。
| 横島はガッカリした。とてもとてもガッカリした。
|
|「アイツに免じて見逃してやる……今日見たものは忘れて、二度と新宿衛生病院に近づくな」
|「お前、名前は？」
|
| 美少女改め美少年は不審そうに眉をひそめた、だがすぐに、複雑そうに微笑んだ。
|
|「『セカンド』……いや、『ザ・バレル』だ」
|
| あからさまなコードネーム。美人の姉か妹さんがいないかなと横島は期待した。
|
|「『ザ・バレル』さん。助けてくれてありがとよ」
|
| 横島の言葉に『ザ・バレル』が驚き、当惑し、はにかむのを横島は見ていなかった。
| 全身の傷と失血で彼の意識は混濁していた。話せたのが不思議なほどの重症だった。
|
|「レイでいい」
|
| 最後に、そんな声が聞こえた気がした。
| そして次に目を開けたとき、見えたのは見知った病院の天井だった。
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☆ 次回予告！
やらない夫に襲いかかるさらなる刺客。
救世主になると誓うその身にも。
敵は一切の容赦をしない。
苦戦と苦難の道の途上。
差し伸べられた新たな手。
そいつは、懐かしい声をしていた。
次回、最終幕三十五話『だお』
果てに見るのは破滅か死か。
横島忠夫は男の子！
そしておいたわしくなかった頃の麻呂……
相変わらず過去ばかり振り返りたくなってしまうぜ
この話の横島は男にももてる
（ （ ( ＿＿＿___
） ） ﾉ ＿ノ..::::.::::::::::::.:.: : :
r=＝==＝ﾐ、 ノ:.:. ::. : .:::::::::::.:.: : : :
____.彡个=‐----‐个‐- ..＿ : :. .::.: : :
____..ノ￣ ＼ / {: : : : : ::::::::::} ､／
,r-┘ / ` ､_____,.. ノ ‘、 ＿＿＿
: : ::.: : : 7 `,.-_t:r、 ,.ｨｯ- ､'' } : : .::.::.: ::.:
r┐ :::.:.: :. '‐------`'--------‐' : :.: .::
ﾉ:::t ::::.: :. : : ,.‐ 、° : : :.:.:. :
＿{Ξ}r=ｯ__ :::.:.:.:. :. :. . `¨´ .. . ... ... .. __
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| フェンリル狼を名乗ったことがある。
| その時の契約者の義兄弟が、不敬罪で投獄されて拷問を受けていたと知った時だ。
|
| 契約者はヒゲ槍（当時は燃え上がる剣だった）を振り回して神々を殺して回った。
| 圧政者に目にものをみせる、あれは爽快だった。
|
| だが、皆殺しの荒野でひとり、孤独に嘆く契約者。
| 親を殺した。友を殺した。義兄弟は死んだ。別の義兄弟は殺した。
|
| 何もかもを燃やし殺した。
| 見渡す限り屍の荒野で、契約者は最期まで後悔しながら墓を掘った。
|
| 地平線の果てまで続く墓塚と、ひとつだけの野ざらしの死体。
| あの風景を見ながら彼は誓った。
|
| 武器であることはやめよう。
| 主を守る獣であろう。
|
| ……なによりも、主の心を守る、獣であろうと。
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／ ￣-―- ｀ヽ
/ ／´
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{ ﾚ´ｒｚ≦ニーミヽ
＿ゝ-ｭ､ ´￣⌒ヽ､
z'-ィ≦ヾ/ム ー､ヾ ＼
,,ィ≦ニ=‐´￣ ﾏ/ﾑ ﾊ ヽ､＿
r'/////ム 彳⌒ﾐｧ/ﾑ ヽ ＼
|///////ﾑ ゞ‐ ｨ＾!//}⌒ ￣ｱ､
∨///////ヽ. ´ ｊト/ｊ ｒ了 /
｀マ///////ﾊ ｒ-〈 ﾉ' ﾊ￣ ヽ あのまま、
｀ー＝ニ彡7Y { ＼ ＼ サマナーが虚無感に屈していたらどうしていましたか？
ｒ'ｰ≧=､ ヽ. / ｲ } ヽ ヾ､
/´ ,ィ､} レ'ﾍ_八 〉. ﾊゝ､
,,ィヾｭ.＿＿ ﾏ/≧ｭ ィ }ｌ ハ_ j,,ィ
ｒ=＜ ノ≦=////r'/////77ｭ_､ﾘz≦/////
,人 ７´////////人////////////／////
__/´ヾ＼{///////／ ヾ＿＿///ィﾍ´⌒､///
.ｒｱ､ ＼ゞ////// , ア>､ ﾒ X ハ//
,ﾉ7 ＞=≦7个/､//7 / ｨﾍ∧ X ｲ ﾒ l}ﾏ
ﾏ⌒ヽ イ }/////ﾑ { , ィ´＞´ Y ｀メ. ﾉ!ｆｶ
ﾄ､_ ヾr' ´⌒}///ム-ゝ_＞イ ＞＜ { ,ｲﾊゞ
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|「喰ったであろうな。そういう契約じゃ」
|
| やらない夫がやらない夫で無くなったとき、その魂を頂く。
| ニャンコ先生とやらない夫はそういう関係だ。
|
| 組織に縛られず、規律に縛られず、己の信ずるままに邁進するやらない夫。
| その心が折れたとき、やらない夫が自分を諦めたとき、ニャンコ先生は彼を殺す。
|
|「もうすぐ喰えるかと舌なめずりしておったのじゃがな」
|「ふふ」「ケケケ」
|
| ニャンコ先生の負け惜しみに墨目とねずみ男が笑う。だが、みなまでは言わぬ。
| やらない夫が折れたとして、ニャンコ先生はまず彼を叱咤するだろう。
|
| 虚無に屈することなど、ニャンコ先生は許さない。
| きっと守る、やらない夫の心を。
|
| ……じゃが。
|
| ニャンコ先生はひとりごちる。
| 救世主になるのはどうなのだろうか。
|
| 遥か遠く、記憶の彼方。ロキを救うと言い放った『トール』の苦渋に満ちた顔が脳裏にちらつく。
| やらない夫は、同じ表情をしてはいまいか？
|
| もしも……もしもやらない夫が救世主となる事で。
| 彼が『ナザレの大工』のように全ての罪を背負わされ。
|
| 苦悶の中で自罰的に生きなければならぬのなら。
| ならぬのならば。
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ○）（○）
. | Ｕ （__人__） 五人揃っていたら負けていたかもな。
| Ｕ |r┬-| 彡 鹿島の犠牲は無駄にしないだろ。
. | ｀ ⌒} 彡
. ヽ }
ヽ ノ
／ ＼
/ /＼ /￣＼＿＿＿＿l⌒l
| | ＼ / ヽ ＼_＿＿＿＿|
Σ(⌒ノ ゝ ＼＿_）
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| 『血族』からの第二の刺客、シックスの『五本指』との戦いは熾烈を極めたものであった。
| が、『木』のヴァイジャヤがおらず、そして天龍と鹿島の助けもあってやらない夫は辛くも勝利した。
|
|「ああ……死ぬかと思いました」
|「ボス！ 鹿島さん生きてるぞ！？」
|
| 放水の直撃を受け、濁流に消えたはずの鹿島が、ドロドロのビショビショで立っていた。
| 上着や靴は失ったが、目立った怪我はない。ただし、木枯らしに吹かれて歯を鳴らしながら震えていた。
|
|「それにしても、ダイジェストにするには惜しい強敵でしたわね」
|「全員病院送りで、もう二度と登場予定が無いからじゃね？」
|
| 授乳淫……もといジェニュインは再登場の可能性が残る。
| しかしそれ以外のメンバーは恐らくもう出番はあるまい。
|
|「とりあえず、鹿島は脱げ」
|「え？ え？」
|
| 秋も深まる深夜のストリップ要請。
| 頬を染める鹿島であったが、やらない夫は真剣そのもの。
|
|「下着もだ、急げ！」
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＿＿ 「＼
_ -=ニニニニニﾆ=-| ＼／⌒|
. , -‐､_ﾞ-ニニニニニニニニﾆﾆ| ／ |
〈У / 〉､ﾞニ- ¨￣ ￣¨寸 ﾑ==ミ ｜
. ／ ﾚ^i ∨ ヽ!
. / / ∧ | `､
/ .イ. ', /∧ i| `､
. ' l ／.,ｲ. !、 /∧ 小 ∨
' ｌ‐ｧ‐'' . | `┼--=二.| |V∧ |
' l. | | 、ノ .| _____| ｜V∧ ,小
' l.. i! !￣＼ !∨ｘf ｔ以斥 | ∨| ∧jﾉ
' l /八 r=tミ＼| ｀¨´ | ｜ ‘i! / /,／
' l＼ ＼圦 ゞﾟ , ::::::: | ; | ∨ | | ′ うう……。
i l. ）＼ ﾊ:::: |/|/ jl∨ 乂{
i l ( ＼ﾍ ⊂つ ／ -‐‐-.八 ＼___
| |.. 丶 个s｡ ＞ ''"´ ｀ヽ. Ｗ＾Ｙ
| ＿｣. -┴=＝ ￣. (￣ _ノ ﾉ
| ´ i 入 ／
| |
| ＿ .. -‐―=＝ﾆヽ l
`ー┬=＝ニ.／￣ ／ '
| _..ィ , ' / /
`￢ ( Y ｲ
､ | |
|
丶. 、 ,. ′ |
｀ ‐=个 . ＿__ . イ ﾄ､
! ＼ ヽ ｌ ＼
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| 満更でもないように見えるのは天龍の気のせいか。
| 濡れて肌に張り付く衣服をノロノロと脱ぐ鹿島と、脱いだ衣服を受け取り、手際よく畳んでズタ袋に入れるやらない夫。
|
| 頬を羞恥に染め、一糸まとわぬ姿になる鹿島。
| やらない夫は彼女を一瞥し、最後にショーツを丸めて袋に入れると、それを濁流に放り込んだ。
|
|「あぁ！？」
|「ヒデェ」「うわ」「ボス！？」
|
| ドンブラコと流される鹿島の服と荷物。
|
|「カトルカールだけでなく、『血族』の追手も待ち伏せてくる。この状況が始まったのは？」
|
| 鹿島が来てから確実に襲撃が増えた。
| 彼女、あるいは上司であるムスカが情報を流していると考えるのが妥当であろう。
|
|「今なら間に合うが、荷物を取ったら振り向くなよ。その時は攻撃の意思があるとみなす」
|「やらない夫さん、私は……」
|
| 突然のシリアスに戸惑いながら、しかし鹿島は拳を握り、決意の眼差しで局部を隠していた手を離す。
|
|「すでに二回死にかけてんだ、今なら戻っても言い訳が聞くだろ？」
|
| 濁流に流されてはぐれたと、言い張ればいいのだ。
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-‐ニニニニニニ｀丶 .／＼
／ニニニニニニニニニニ＼. /ヽ /:!
／ニニニニ斗-- ─ ─-＜ニﾆ∨:::::Х斗─‐─...､
/ニニニ＞ ´ ｀丶/-＜_//:://:://::/
{ニニ／ ＼. ＼//://::/
＞‐/ ／ 丶 ＼/::/
／ i / | | ヽ. ヽ ∨
. / |: / l | ｌ | | :ｌ :ｉ | :| . ',
/ . l/ ,′| | | | | :| :| | :| :ｌ |
| :| | | ｌ :| | | |`^'''ﾄ､ー| | :| :| | いいえ、
| :| | |,ﾑイ人 | | 八j ＼j | :| :| | 鹿島はやらない夫さんについていきます。
人 | | i 八j ＼ .|ﾉ 斗劣斥7 j 八 } |
ヽ i 八 ',斗ｬ劣= ＼j ゞぅツ j / / .ﾉ 八
∨ 八. ＼ヽ Vcツ ／／／ム' / ／ /!.ヽ＼
| i. ／ヽ. 込／／／ ' u / ./ / ￣｀ヽ ) )
| i.／ .） l ∧ （￣つ / / / ‘，....(
/ .ノ 丿 个 ､ / / / ‘，...＼___
/..{ ／ ,ｨ ≧=-=≦ { ( i. u `ー‐､｀ヽ
／....ﾊ. ( (. ＼ ／､ ヽ. } ｀ヽ ) ﾉ
／ ／ | ヽ } ＿_ ＼_／. ） ノ / ' ＼( (_
〃.／ ） | .／ ヽ ／ (´ { ﾉ ヽ .)｀⌒
i/ 〃 / . | ' ｡ ､: :./ ‘， / 人(
{ ( { / y { 从 （ ｀ー'⌒
人 .乂...{ ,' i. ', .!ノ ｀ヽ)
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|「よし分かった。とりあえず風邪引くからこれを着ろ」
|
| それまでの辛辣な雰囲気から一転、二つ返事でコートをかけるやらない夫。
|
|「鹿島の用意した車とセーフハウスはもう使わない。
| 諫山さんの車も放棄だ。天龍、ニャンコ先生、荷物をまとめろ」
|
|「私の服は……？」
|「我慢しろ、鹿島はシグを頼む」
|
| 戦闘能力を期待されない鹿島に、怪我人を任せるのは当然だ。
| しかし、直前までスパイを疑っていたのに、仲間の命を容易く預けていいものなのか？
|
|「直接の害意があるならとっくにやってるだろ？」
|「それもそうだな。シグを頼んだぜ！」
|
| 速攻納得の天龍、話が早くて助かる。
|
|「でも、どこに行くんだ？ 鹿島でなくても風邪引くぜ？」
|
| 一同泥水塗れでびっしょりだった。可能ならお風呂にも入りたい。
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／￣￣＼
／ _ノ ヽ､.＼
| （●）（●） |
| （__人／,〉.|
{ ´フ´ ./._ } 汚れてれば年もごまかせるし便利だぞ。
ヽ .／,二ニソ} 少し離れた橋の下まで歩いて、火を起こす。
_ヽ/ ,-― ､}ﾉ
／:;:{' ノｰﾍJ:;:;ヽ
／:;:;:;:;:;| _,イ{:;::;:;:;:;l:;:;}
/:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＿/:;:;:;::;:;i:;/＼
{:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;〈:;:;:;:;:＼
ﾍ:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:＼:;／ヘ、
￣￣7:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l;:;::;ゝ、`ｰj
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l:;:;:;:;:;:＼~
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|ヾ:;:;:;／
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|「わ、私はいつまでこの格好で……？」
|「明日ニャンコ先生に変身して買い物させる」
|
| それまではブカブカのコートを開けたら全裸という露出狂スタイルである。
| 鹿島は涙目でコートのボタンとベルトをギュウギュウ締めた。
|
|「まずはシグだな。ニャンコ先生は天龍と一緒に、ねずみ男は一人で空いてる橋の下を探してくれ」
|
| 空いている、つまり他の浮浪者のいない場所である。
|
|「任せろ！」「あるといいがの」「それより一杯引っ掛けてぇなぁ」
|「墨目、鹿島を頼む」「はい」
|
| 素足の鹿島を墨目がお姫様抱っこ。
| 全裸コートをおんぶするのは露出的に危険だからだ。
|
| やらない夫はヒゲ槍を車輪にした。
| 高速走行でシグを迎えに行く。
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＞ ｀ v ´ .ィ ´ ｀＞
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／ ｀．＞ ― --- ― ＜
/ ．
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| . i
｜ ﾄ ; !
| ﾄ 、 | ＼ i 、 i ;
| ｜ ヽ 下示入子. i. ﾄ.､ ,
| ｜ 入 j U::: ∧ﾄ ｜ i. ヽ / さようなら……ぼくのゴキブリちゃん。
. | 小く. ヽ!'ー‐' ＼. | ,::. } /
. |／| ＼ ＼ ｜ / ノ ,
| ､ ＼| /＜ _ ,．
| 入 ＿z ―― z イ| ./ ￣ヽ
、 イ ￣ .| / }
｀ ヘzx彡彳" | ./ ,,〉
ﾏ | /z-- 、 ｲ
ム、 _,. イ ＼ ／
ｲ / ￣￣ / ∧
｜.' / ,: ´ ｀.↓
| ｉ / i ﾍ
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| 甲虫なら何でもいいのか、捕まえたゴキブリを可愛がっていたシグであるが、隠れ家を放棄すると聞いて泣く泣く開放。
| 身震いする鹿島。やらない夫は慣れたもの。
|
|「鹿島、サンダルで我慢しろ」
|
| やらない夫はサンダルを鹿島に渡し、毛布でくるんだシグをおんぶ。
| その間鹿島はすっと墨目の腕の中だ。
|
|「私、こっちに来なくても良かったのでは……？」
|「すまん鹿島！ 薄い本展開がご希望だったか！」
|「ええええ！？ まさか！」
|
| 鹿島ならホームレス集団の前でコートの下の全裸を露わにし、穴という穴を埋められることになりかねない。
| 実際には無いだろうが、鹿島からはそうなりかねない雰囲気があるのだ。
|
|「とにかく移動するぞ」
|
| まだ良い場所は見つかっていなかった。
| しかし、この場所は危険かもしれない。骨の折れたビニール傘でシグを雨から守る。
|
|「ごめんね、ぼす」
|「回復したら見張りに結界、索敵にと大忙しだぞ。今の内に休んでおくだろ」
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,，-――‐ ､ ‐､‐- ､
,≧=‐---- '--'-=≦、
/￣ ヽ ΧΧ県警察＼
,，-‐_=＝ァ＝=､ｰ､‐=＝＝＝＝＝=ｰ ､、
,， ´,.ィ"´ ∥ ＼＼ 丶､ｎ
_,， ´ ／∥ ∥ r‐- 、＼＼__,,. ---―‐ヽｰ- ..,,_ ＜ｷｷｰｯ
,∠´―‐ f ´二ニﾆニﾆ7ニﾆ└‐ｭ｢ﾆﾆ〉=―_--￣ ..,,_‐- __ __ ノ::::.ｰ-..,,_｀丶､、
{／‐-.....⊥⊇Χ_Χ_県|⊃警_察 | ￣ ヽ、二ﾆ=ｰ､::г_==__＝_≡∨｣、
{:::::::::::::;ｘ=-.､::Р:Ο:Ｌ::|Ι:С:Ε:::￣Τﾆ=:;ｘ=‐..､-‐.:｀ー―‐┘:::＼-_-{※}‐_┤::::}
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ゞ=_彡'ノ ゝ-‐ '′ ゞ=_彡'ノ ゝ--‐ '′
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| 夜闇と雨に紛れて駆けるやらない夫の進路を塞ぐように、一台のパトカーが止まった。
| 狭い路地を完全に塞ぐ、しかしどこもこすってすらいない完璧なドライビングテクニック。
|
|「タクシーは必要かな？」
|「それと安全で暖かい屋根のある場所も」
|「ノイマンさん、阿部さん！」
|
| やらない夫は僅かに逡巡、彼らを信じたい。
| だが信じていいのかわからない。
|
|「向かう先は秋葉原、ホストはディオ・ブランドーともう一人いい男さ」
|『そういう、期待を煽る言い方はやめてほしいお』
|
| 無線から返答、やらない夫は瞬きした。
| まさか、思いもよらぬ天の助け。
|
|「その声は……まさか！」
|『詳しくは会って話すお』
|
| 即断、やらない夫はシグと鹿島をパトカーの後部座席に押し込み、自分も乗り込む。
| シートが泥で濡れるのは仕方ない。
|
|（ニャンコ先生、予定が変わった。天龍と後で合流してくれ）
|
| 逸る心を抑えながら、ノイマンのパトカーが夜を走る。
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-‐‐ ‐ ‐‐-
／ ｡;ﾟ ＼
,:' く ｒ_> ﾞ:,
l r;. ｡ ､ l｣］ , ;´ l
| ｡.;_) ﾟ =-‐‐‐‐- |
ｌ( | , : ´; ,;゜ ＿＿_ _ ｀ヽ._| _ _ノ)__
__｣ ヽ､ _ _し' ｘ＜,,,,__ __,,,,＞ｘ |: : :_:_:＜
＞ : :_:_:ノ八_／fr ぞﾃY}‐‐frぞﾃ Y}`ｰ'ﾞ: :_:_:ノrく_ 話し方で期待させて悪かったお。
_ﾌ:´:_: :_: :_:_ぐｰ ﾞ'ｰ‐一'ﾞ〈{_ ﾞ'ｰ‐一'ﾞ ):ﾉ):_: :_: :_:_:ノ
`ーぇ: :_:_ﾉV(:_:＞ ^ r ^ 〉: : : : : : く
厶: : : : : :＼ _j __ 厶ｨ:ﾉ)ﾉＶ⌒
ﾉＶ(ヽ(＼:_＞ ´ ／´ ＼_
_／ ｀ . _＿＿_ _ . ´ ／⌒＞: ._
_／⌒＞‐- ... ___________ __ _ _ _ ... ´ ／ ⌒＞: ._
. :＜⌒＞‐- .... _______________ __ _ _ _ .... ´ ﾟ;｡, ⌒＞: ._
. :＜⌒r;, .;_) ,; , :'⌒＼
／⌒｀ヽ、 ﾟ｡ ｀ヽ ｰ_-_- r;. ; , ／ ﾞ:,
,:' ＼ , , ;; r;. ｡;ﾟ , ／ (_;.ﾍ
/ ｀ヽ、 , :' (_;. ; , .;ﾊ
| r;, ／ / ,.;ﾟ ＼ |
| ｀ヽ、Ｙ´ (_;. .; -_-_Y_-_ r;.,, 。;゜ |
| ｡.;_) ﾟ;. ,;-_-l_-_ ,; '｡ ; .; l |
| ｌ r;. ; , l , ; .;_) |
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|「雪ダルさん！」
|
| 大喜びで抱きつくシグ。
| 秋葉原のメイド喫茶を隠れ蓑にした『結社』の秘密基地。
|
| 持ち主が撃滅作戦で死んだそれをディオが掠め取り、偶然知り合った雪ダル氏と利用していたのだ。
| ちなみにお忘れの読者も多かろう。
|
| 雪ダル氏は『教会』の『異端審問官』である。
| ジャンヌ・ダルクの信者の一人で、仮面と鎧で身を覆い、名前と個性を捧げた兵士であったはず。
|
| やらない夫班の監視を半月ほど勤め、信頼関係を築いていた。
| ジャンヌがやらない夫の要請で『滅ぼすもの』探索を手伝ったのも、彼の口添えがあったからであり、逆に言うとジャンヌの転落のきっかけを作った男である。
|
|「なんで漏れを信じてくれたんだお？」
|「ジャンヌの部下に姿が見えなかったからな……それに」
|
|「ぼすがわるものにされた時、雪ダルさんはぼくらをたすけてくれたんだ」
|「おっおっお」
|
| ジャンヌに抗議してやらない夫班の中学生たちまで指名手配されるのを防いだという。
| そして。
|
|「漏れは『例の夢』を見てないけど、見た奴らはみんなおかしいお……聖処女ジャンヌも含めて」
|
| 故に、『異端審問官』の行動を諌めながら、解決法を探しているのだという。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ -‐―――‐- ､
＞'´ ｀＜
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/ Yﾞ7Y´ ＼
./ r'tfii| '.,
i _≧‐≦__ ',
| _ -‐'´￣ ｀` ‐-､_ .|
|( ｲ-‐ _二ﾆ-‐―‐-ﾆ二_ ＞､_ | ,
＼＿ﾄ:｀フ" _,-‐二ﾆ≧､__, ､_＿_,ﾆ≧､ ｀ヽ､_. j ,ｲ でも合衆国軍は麻薬をバラまくし、
＞-: : ｀ー':{ｰ|｢てﾓ･ﾃ"Y＝=fr‐ﾃt･ﾃ＝Y≧､＿＞'`ﾚ´: ﾆ=-‐ 『異端審問官』はシリアルキラーを雇うし、
／´7: : : : : : :ミ└------ｲ !L__________jj ノｨ: : : : : : : : :弋＿_,ｨ 『十字軍』は暴力レイプ好き放題だし、
_＿_/: : ;ｨ: : : :ﾄﾐゞ i 7ｨ: : : : : : : : : : : ／ 『武僧』はサイボーグを暴れさせるしで手が足りねーんだお。
｀￣´7ｨ: : : : { ゝ-.､ ´/: : : : : : : : : ≦
-=彡ｫｨ: : ﾄ､ : -=彡i: : : : : : : ﾇミヽ
'´7/|'^ ､ _ ＿ノ;ｨ: :/ : : t_＼｀
/ ゝ､ └` __ラｲ:/ﾍN',| ￣｀
,ｨ´ ｀ヽ､ _ -‐'´ ﾘ ﾍ
,ｨ＜´ゝ､ ｀ ‐- ＿__ -‐＜´ ＼
,ｨ＜´ ＼. ＼ ) i｀ヽ､
-‐ ＼ ＼ ノ ｀ヽ､
＼ ｀ヽ､ ._ -‐'´
｀ヽ､ ｀ ‐- ＿＿＿＿ -‐ '´ =‐'´
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| その上、雪ダル本人は顔見知りが多いため表立って動けない。
| そのため、偶然知り合ったディオと『四ツ目』に動いてもらっていたのだという。
|
|「二人とはどうやって？」
|「ディオ殿はやらない夫くんに教わったお店で紹介されたお」
|
| 甘味処『ニュクス』である。
| ディオは『糖分同盟』からいくつかの隠れ家を教わり、雪ダルはここを拠点にした。
|
| 別の隠れ家に潜んでいたのが『四ツ目』である。
| ディオは危うく殺されかけたが、利害の一致で手を組んだのだという。
|
|「利害？」
|「ふたりとも、『武僧』のシロッコと因縁があるらしいお」
|
| ディオは、正確にはシロッコの使い走りのジョースターにだが。
| ちなみに、さらに別の隠れ家にはディオが保護した高校生たちがいるのだが、やらない夫とは無関係だという判断で伝えない。
|
|「雪ダルさん」
|「ダルでいいお、みんなにはそれで通してる」
|「ダル、あんたは『夢』でおかしくなった連中を助けたいんだな？」
|「そうなるお」
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／＼ ／
／/ ｀×／
＼／ / ／／ ＼
／ ＼/ ／／ ＼
<-‐= ) ＞＝─‐‐-->
＼／ .へ ＼ .／
／ヽ ﾍ. ＼＼ ／
| ／／ ＼ > ＼ |_
hr──t. ＼／ ＼丶 { |
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| 堕天使レミエルが見せた滅びの予言。
| 一般人には終末思想を植え付けて、『教会』関係者を狂わせている。
|
| 『夢』見ていないやらない夫やダルには何があったのか理解できない。
| だが、『夢』見た『教会』関係者はあれこそが主の意志だと信じて疑わぬ。
|
|「夢の専門家を探すといいだろ。つい先日まで夢の世界を探索してた連中がいる」
|「……探してみるお」
|
| やらない夫が伝えたのは不人気の情報で、ダルも自分が保護している高校生たちがまさか関係者だとは思いも寄らない。
|
|「それと、ダルには悪いがオレは救世主になる予定だ」
|「どういう意味だお？」
|
| 『教会』関係者には難しい話題である。
| 貴様は『彼』に成り代わるつもりか？
|
|「『弥勒菩薩』を身に降ろす」
|「何十億年も後に来るとかいう仏教の神かお？」
|「『未然形の神』だ」
|
| 未だこの世に顕れざる救世主。
| 弥勒菩薩、あるいはノーデンスを発露となりて、衆生を救うことをやらない夫は決意していた。
|
|「聞きかじった情報だと、『教会』は東京を滅ぼさなきゃならないと考えてるみたいだよな」
|「そうなるお」
|
| 警戒心を隠さずに、ダルは頷く。
|
|「それがそちらの『神』の意志なら、覆す方法はあると思うか？」
|「…………」
|
| 悪魔は神の言葉を真似ることがあるという。
| だが信仰深ければ見抜けるとされている以上、全てが妄言と言い張るには信じる者が多すぎる。
|
| 彼ら全てを節穴と笑うことができるだろうか。
| いや、握り潰されてお終いだろう。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／} だから、この国らしく行くだろ。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「どういうことだお？」
|「『血族』の神が衆生を救えば、『教会』も判断を覆せるんじゃないのか？」
|「それは……」
|
| 違うとは言いけれない。
| だが、邪教徒の神の召喚を快く思わず、逆に暴れるものもあるだろう。
|
|「だから弥勒菩薩なのさ」
|
| ぐうの音も出ないほどに完璧な救世主。
| だれも見たこともない、新しい救いの形。
|
|「やらない夫殿は、『それ』が見えているのかお？」
|「なんとなくだがな」
|
| その確信に満ちた口振りにダルは慄然とした。
| シグはわかっていないだろうが、ニャンコ先生は不安にならないのか？
|
| やらない夫が言うことは途方も無いことだ。
| 一生をかけても可能とは思えない、世代を重ねて研鑽を積んで積んで積んで、ようやく1%の確率が生まれるかもしれないような行動だ。
|
| 狂気の沙汰だ。
|
|
| だが、だけれど。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/ ﾐ \ ヽ
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{_, '´ ィ≦ﾟ―ﾞ≧z､ ｀ヽ j
ﾄ≧彡､／!rｪｫ }=={ rｪｭ }ｿ､ﾉﾐ≦イ やらない夫殿なら
,ゞ孑从弋ﾄ￣￣'j__ ￣￣'7ｲ从尨≦ﾆ できる気がすんのが不思議だお。
´丁从ジつ ｀l ´ ｲﾉﾘ从爻く.
ク´__／ﾐｰ -―‐- ラィ从夊（｀
_/"二ヽ＼＞- _＿__ -‐ﾉ'ヘr､
,．＜/ j､ 〉.〉丿＼､ ヽу /／__ ノ ﾉｹヽ._
'´ / Yﾞ‐'/､｀＞―---―＜´_. ィ〃 ¨ ―- ．
キ /´､_＿ﾉィ´＼ ｀＞―--―＜／" у 〃ヽ
.／ 〃/´ ｀ヽ / ／ // ､ ≠ ',
. ,′ /" ｀ヽ / ‘,
; ′ ∨∠ ',
! __＞―__二￣￣ ｛彡' ‘,
! ＿．＜ У ',
ハ ｀ ＞ . ＿ ／ｲ ＿＿＿ﾐ__‘,
/`ー ´／ {__ ．-――-､}
／ ┤ |
__／ ｀ヽ! ,゜
{ } ,゜
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| 滑落。
| 足を踏み外して斜面を転がり落ちるような錯覚。
|
| ダルは何か取り返しのつかない失敗をしてしまったような感覚を振り払った。
| そしてやらない夫の無謀に対する不安感だと、自分に言い聞かせた。
|
| だがそれは、神がかり的な直感であり、未来を暗示していた。
|
| ダルも、彼の信奉する聖処女ジャンヌも、転落死のように突然破滅する。
| 彼はいま、崖っぷちで踊る自分に気付いていない。
|
| タイトロープで片足立ちして。
| 滑って落ちて。さようなら。
|
| 未だ名前のない怪物の供物になる定め。
| 深い奈落から、そいつが這い上がるための、足場になる。
|
| そんな運命。
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☆ 次回予告！
天才を天才足りうるものは何であろうか。
知性、閃き、回転速度？
あるいは努力、執念、不屈の熱意？
その男は、それらの全てを備えていた。
謙虚さも、自信も、客観的な視点も備えていた。
それ故に、己の誤りを修正できる。
天才であるが故。
次回、最終幕三十六話『トライアンドエラー』
果てに見るのは破滅か死か。
最終話後半まで寝てる主人公みたいな称号を手に入れそうなヤツが出てくるかと思ったけどそんなことはなかったぜ！
確かにちょい役にしては印象的だったが
血族もやらない夫のせいでどんどん戦力が削られてきたな
,. -: :':´: : : : : : :丶、
／: : : : : : : : : : : : : : :.:ヽ
,.: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.ﾍ
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,: : : : : : : : : : : : :'; : : : : : : : : : :.:.
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. ′: :′ : : : : : : : : | : : : : : : :.i : : : :i
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ノイ : :.ト:､ : : : : : : : 八: : : : : : :!|:.:.ｉ.:从
|:!:ｉ :|ヽ:У: :ヽ: ノ :/ : i: : : : :八: | :i ヽ
. 从ﾊ:ﾄ､ヽ: : : ﾉ:.:.:j/}:.:/|: : : /:.:.:./}八
ヽ ／: :くゞ' / }/ ,: :／i:.／ /
. 〈: : : :ノ￣￣￣／￣￣}
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／ ﾉ｀: :く￣￣￣／ ｀ヽ、
′ ヽ: : :ノ ―＝´ ‘，
ｉ i /: :ヽ ‘，
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| あれは、誰だったのだろう。
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| ショッピングセンターの地下フードコートは、無料で水を飲み、充電もできるのが最高だ。
| （いいこは真似をしないでください）
|
| 不人気は収集したうわさ話を分別してまとめながら時計を見る。
| 約束の時間までは30分ある。彼はいつも15分前には来た。つまり、15分は作業にあてられる。
|
| 不人気がパソコンを使うのはもっぱら会社と家だ。
| 小柄で非力な彼女は、重い電子機器を持ち運ぶ体力がない。
|
| 小さく分厚いメモ帳に、細かく執拗に書き連ねていく。
| メモ帳はカラフルな付箋だらけで、ポリタンクは付箋の色でメモの種類を把握していた。
|
| その内の一つが『都市伝説としてのやらない夫』。
| 超美形とか仮面の戦士とか尾鰭背鰭ついてて大変笑えるが、今日は確認しない。
|
| 今見ているのは『新種の都市伝説』と『夢のうわさ話』である。
|
| 前者は『人面犬』や『口裂け女』に代表される現代の怪談である。
| 後者はまな板が仲間たちを援護するために集めてきた夢関連が、ここ一月でガラリと変わった問題だ。
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／＼ ／
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＼／ / ／／ ＼
／ ＼/ ／／ ＼
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＼／ .へ ＼ .／
／ヽ ﾍ. ＼＼ ／
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| 約一ヶ月前、東京中の人間が見たとされる『大天使による滅びの予言』。
| 人によって記憶していたり曖昧だったりするが『その時間に眠っていた』全員が夢見たらしい。
|
| それに関連するのか、隕石の夢と炎の夢が異様に多い。
| 恐竜を絶滅させたような巨大隕石や、聖書に出てくる硫黄と炎の雨により滅びる世界。
|
| それらは同時に巨大なキノコ雲であったり、天使による終末の招来であったり、巨人による火炎地獄でもあったりする。
| 神と悪魔の最終戦争、ラグナロクの再来。なぜ北欧の神話を参照するのやら。
|
| 次いで多いのが木星の夢。
| マーブル模様の重金属の海。雷光走るオーロラの空。美しくも人知を超えた風景。
|
| それが『失われる』夢がまことしやかに囁かれる。
| 太陽系の守護神、地球を目指す大小様々な天体を、その巨大な重力圏で絡め取り吸い寄せる絶対の盾。
|
| 不人気が面白いと感じるのは、隕石と木星の夢を別の人間が語るところである。
| 両方を語るものは未だいない。つまり、こうやって夢のうわさを集めた不人気だけが、『木星が失われるから隕石が地球に到達する』という筋書きが見えるのである。
|
| どちらも複数の人間の口から同様の話を聞くことができた。
| その事実だけで特集記事が書けそうなもの。
|
| だがここで、もう一つ複数の口からのぼった夢の話がある。
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く{ ｒｒrrく＼ヽ.}弋＿／へ.[[[!|[[| |三三三三三三三
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 地上から雲の上までを貫く超超高層建造物。
| バベルの塔、あるいは軌道エレベーターを見上げる夢。
|
| その構造物は人の夢を、夢の世界を重ねに重ねて作られている。
| 遠くから見たら灰色だが、近づくと悪夢や希望や混沌のパッチワークとなっている。
|
| 夢見た人間はその何処かに自分の夢があるのは分かるが、どこにあるかもどうやって行けばいいかも分からない。
| 『自分には塔を登る資格がない』そう言った男性がいた。夢を渡る力もないと。
|
| ある女性は『木星まで手が届きそうな』と表現した。
| その女性はしかし、『木星の夢』を見ていない。なぜ彼女が木星と思ったのか、彼女自身も分からない。
|
| しかし、と紅マグロはひとりごちる。
| この三つの夢が、そして大天使の夢が繋がっているのなら……話は変わる。
|
| 宇宙からの飛来物で東京は滅びる。
| そのために、塔を登って木星を……。
|
|「聞いたことがあるわね」
|
| 夢の塔、ほんの一ヶ月前までは彼女は夢世界の探索を援護していた。
| 夢世界で迷宮を走破した場合、世界を滅ぼすことができたという。
|
| 夢の塔。
| 類似している。
|
| しかし、夢世界の仕掛け人であるアリー・アル・サーシェスは死んだ。
| そして核であった窓付きは現在普通に登校中のはず。
|
| こんなに早く、新たな術式を用意できるものだろうか。
| やる夫という情報源を失った不人気には判断材料が不足していた。
|
| では学園内、窓付きに異変が？
| 感情の機微に疎いやんねえ香では分かるまい。
|
| こういうとき、 が居てくれたら……。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,.＿
, -ｲ'´ ｝
, =' r‐､ノ しﾍ
／ _ j 丿
／ 「 └'／ └ i
/ r:ﾉ -=― - . ｣
__ /｀=へ／! Ｌｲ ､ 丶 {._
l￣｀ヽ! /.:::/ __〕l ｜ ! ヽ. ＼ _｝
／l二二lツ ｰｌ.::::l /! ノ: l ! : Y
ヽ /／|_ l:::::{ ' L}｜ l |! l! l |
ヽイ ｌj｣ !:::::l ｒ ｿ !-―l:. lｽ ﾉ｣ ﾉ!' ？？？
/' | ｌ|_ l::::::', ﾊﾉヽlゝ.:ｫｔ￢ﾐ ヽ'ｨｫ!ｲ 誰ですって？
,ｲ , l|::!.j iｲﾊﾇｌ_） :l ゞ= ' ヾｉ l
l::| / :/!:| ヽﾍゞこｿ:::i l:!、 _,' ! ',
ｌ::|' .:l |｣ l::ﾄ､ー'ヾj l ｌ:＼ ´ /ヽ i
ヽ! ｌ｜ l_j! lｰ-/ l≧:::::V:ｚ.--イ＼|ヽ:
/ , l | :l ｉ. /.::::|::::::::::{kﾁ}::::::::.ヽ |
/ , ,: / :l/｣ /､:::::.ヽ:::'´::'tｲ:.'::::::::/__, へ:-―- ､_
/ ,: l , ／ / Ｌ. ヽ::ｔ:_｝::::::::l|::::::::.ｲヽ, ｒ' ｀'ー'-ｰ_､
/ /! ｌ j/ _ 二＞｀二. ７.／.ｌト､:/ー=ゝ /￣ ト--ｔZﾌﾉ┘
/ , ｉ l ＿, -i' ｀丶- '´／‐'´l.:::::::iヽ/ 〃 '´＿｣.｣
// ,' l | _/ └ｧ ﾑ::::::.∨ / i |ヽﾉ
// l ｌ| !、 /ー､ ｢´ , ´￣! /ノ
/' / l: i ￣ヽ、l＿､__i i:| ／i / l' ｲ´入
,ｲ l l ! i ´ ｌ i : ﾌ´ l ヽ二ノ _, ∠.こノ
/i l ｌ: ｌ＿__.|＿ l! ヽ!/ ￣´｀丶､＿, ｲ--‐'′
: / /| l:: ! ,Y´￣ |:
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| 自分自身理解できない思考をかなぐり捨て、不人気は別のことに意識を向けた。
| 都市伝説である。
|
| 『かるとる』。
|
| 全身包帯のミイラ男が、使い物にならない自分の手足の代わりを探して夜中徘徊している。
| 彼は欲しい手足を見つけたら「貸して、貸して』と寄って来て、返事をすると『取るね、取るね』と『刈取って』しまうのだ。
|
| ここまでならば、『交通事故で手足をなくした幽霊』『整形手術に失敗した女』など似たパターンが存在する。
| 『かるとる』のオリジナリティはこの先だ。むしろ、『かるとる』本体はさほど恐ろしい相手ではない。
|
| 『かるとる』は、手足を失い暴れる被害者に、新たな手足を『仮の手足を取り付ける』。
| その上脳も改造され、『かるとる』の奴隷になる。
|
| 奇妙なツギハギ怪物として『かるとる』のために新たな犠牲者を探して捕らえて『狩り取る』のだ。
|
| 死体のツギハギ、犠牲者が次の怪物になる。
| フランケンシュタインの怪物や吸血鬼のモチーフを組み込んだ新たな都市伝説である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ｨ彡三ﾐヽ ｀ヽ l三三三三三三三三ﾆ|
彡'⌒ヾﾐヽ ｀ー j三三二二ニニ二二三|
ヾ､ _,.-‐"＿,,,..-=ｮｮｮｮｮｮｮｮｧ-ｭｭｭ|
＿ ｀ー―' ／_,-‐",iｌｌｌ!" ｀ﾞﾞﾞ"""´: : :ｌｌｌｌｌl|
彡三ミﾐヽ ｌ／::::::::,iｌｌ!' . : : : : : : : : :!ｌｌｌｌｌ|
彡' ヾ､ ＿,ノ `‐::;_::::ｌｌｌ! . : : : : : : :,,,-‐'ﾞ!ｌll|
｀ー ' ｀`ｌｌ ､ 〈 ‐=ｭ=‐" ﾞｌl|
,ｨ彡三ﾆﾐヽ ＿_ノ jｌi､___,,, 〉ゝ- _,,,.........|
彡' ｀￣ (《ｌi`''"´ ,'" (::ｌ::),-|
＿ ＿＿ ノ ﾞ)》ｌi､ _,,.,__ '"""´´ | （ちなみに鬼滅の刃の鬼も
,ｨ彡' ￣ (《ｌｌi'´(::ｌ::) /(| 共通点が多い）
ﾐ三彡' ／⌒ ﾞ》).ｌ'"´ノ (|
ｨﾆﾆ=- ' (《､ｌ `ヽ " |
,ｨ彡' 》 '､ ____,,,,,__ |
// ／ （ ＼ ￣ .|
彡' ＿＿,ノ ＼ |
／. ヽ､___,,..-''"|
ノ ｀i､ .|
ｨﾆ=-- '" ,ｨ| ｀,ｨill|
／ ／ ,ｨill〃llllllllll|
ノ ＿／ ,illl∥llllllllllllll|
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| なお、吸血鬼と狼男には類似した特徴が多い。
| この辺りは深く調べると大変興味深いので、賢明なる読者諸君の好奇心にお任せする。
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| 詳しくは『月刊 妖』の特集記事を読もう。
| なおこれは自発的な宣伝であり、筆者は不人気から一切の賄賂も接待も受けていないことを明言しておく。
|
| とにかく、『かるとる』……初期では『かりとる・かりる』だった都市伝説は、現在まことしやかに拡散中だ。
| ネットの噂でも『長い棒きれをクモのように手足にする』『下半身がバイク』などの書き込みがある。
|
| 目撃情報は『かるとる』と『かるとるの怪物』の両方がある。
| 不人気は、両者が同時に目撃されない事から、最悪二つは別の怪異なのかもしれないと想像した。
|
| その他に目撃される、人間サイズのネズミや全裸目隠しのパルクール女。死神。正義の味方。夜の高速道路を走るトナカイ。地下道の泥人間。新宿駅の裏側にある迷宮。などなど。
|
| そのうちいくつかは同じもので、あるいは同じと思われているだけで別のものなのかもしれない。
| 不人気は考えながら密かに笑う。
|
| そんな考えは、『実在する』と確信した上でなければありえないのだけれど。
| まな板本人は、伝聞はしていても結局見たことがないのだけれど。
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r=ミ r=ミ
ﾉrﾍ ∨从_｀Yﾏ、
/:/ Y´_,ノ:.:.:.:.:.:.｀ｰ'⌒ｰ'⌒ｰﾍ
《《 ﾉ´:.:.ゝ'"´i:i:三二ニﾆﾆ≠-＼
／ゝミ彡:.／i:i:i:i:／:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀.:.:......
／／, ノ:.:. /i:i:ｉ:ｉ／:.:.:.:.:.しﾍ:ノ⌒ｰ'⌒ｰ'⌒ヽ:.:.:.:.｀.:.:......
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|:.i| （_:.|Ⅳ:ノ / / /-ミ / / / / i:.:.:.:.:.:.:.:.:_;ノ
|:.i| / 《薔》 / /l,,l,,/ / ヽ / / / / / i:.:.:.:.:.:_;ノ
. 《_ｊ/ （_|ｉ:i| ｌ ｨf斧抃ﾐﾒ､ / / / / / / /:.:.:.:.ノ
/ (_|i:ｉ| l |弋z::ツ ﾐ / / /_ / / / / /ｰﾍノ
/ /ヽ| l | ｀¨´ / /__/｀ヽ/ / / /
／ ＿__,/ｰﾍ| l | f斧抃ミ / / / /
. ／／:.:.:.:.:.:｛i:i:ｉ:ｉ| l | , 弋zツ ／／／／i|
／ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｝i:ｉ:| r-ﾐ ｀ ｰ ｰ=彡'´|／／ i | それで、どういう態度がお好み？
／ ,/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::}ｉ:ノ ,l:.:.:.｀ー‐r―――'-ﾐ| | |／| ｉ |
／ /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／ ／/:.:ﾐﾒ､:.:.:.:.）＿_,ノ´｀ヽ）l | | ｉ | ビジネスでいいのかしら？
' /:.:.:.:.:.:.:._彡／ ／ﾞ /:.:.:.:.:.:.:＼:.:.:）:ﾉ:.ﾉ:.:.:.:.:'., l ｉ| | ｉ |
. ' /: .:.:.:.:_彡: / ／ //:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ｰ{:ﾉ:´:.:.:.:.:.:.:.:.',ヽヽ ヽ ヽ＼
. { /:=ﾆﾆ=:.:.:.:.:{/ ／/:.:.:.:.:.:.ﾉ:.:.:..:|i:∧: :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.', ＼＼＼ ＼＼
ヽ／:.:.:.:. -=ﾆ=-:ヽ／ ,':.:.:.:.:.:./:..:.:.:. |i:i:Λ:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:', ＼＼＼ ＼＼
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|「あらありがとう。助かるわ)
|
| 手帳を片付け、待ち人のスペースを空ける。
| ツンツン髪に三白眼、どこか斜に構えた少年の顔を不人気はまじまじと見た。
|
|「何スか？」
|「いいえ、なんでも……なんでもなくはないわね。
| まずはあなた達を手足のように扱い、刹那の悩みもロランの悲しみも見て見ぬ振りをした事を謝罪するわ」
|「……」
|
| 待ち人、委員長と呼ばれる少年。
| 彼の名前を、今ならば『認識できる』。
|
|「長門さん。あなたにも聞きたいことがいくつかあるのだけれど、それは報酬という形でいいかしら？」
|「構いませんが、でも、答えられることか分からないので先に教えてもらってもいいっスか？」
|
| 不人気は静かに微笑んだ。
| 雲間から光が差すかのような、見る者の心を救いかねない笑み。
|
| 長門は密やかに警戒した。この女は、自分の容貌の強みを利用する。
| 同時に、無意識でも使うからつよい。
|
|「長門有希とは親戚かしら？」
|「義理の姉です……これは、秘密にすることでもないので」
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rｰ-ｖ一'⌒ヽノj:.:.: , イ ￣￣｀ ＜三三三ﾆ）
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／人/:.:.:.:.:.:.ﾊ７:.:.:.:.:.〈 ′ ､ ヽ三ﾌ
＼V{:.:.:.:.:. /ﾆ7.:.:.:.:.:_:ﾉ, l | ､ヽ ヽ ∨ 〉
└う:.:.:.:.{三{:.:.:.:.:.:ヽ ｌ | lﾄ､＼ヽ ヽ｀ 、｀､Vﾆヽ、
／ {:.:.:.:.:.|三|:.:.:.:.r‐'∥ ｌ | ',丶 ｌ 川 l | ｌ | ! ヽ＼
// ∧:.:.:.:.ｌ三l:.:.:.:ヽ |ヽ｣斗-ﾍ }ノ,ｴZ{ノ/リﾍ＼ ＼ヽ
. | l / ヽ、:.:Vﾆヽ:.:r个ﾄ,ｨfｌ圷 ｀ 化ﾉｹハ ｀ヽ＞└′
ｌ｜,' 「ヽ{ｌＨｌﾘ:{ 小 ` ゞ ′ 八ヽ＼
｜V ,' l| | ｀ ＜7/ | lヽ､ , .′, 仆 ヽ ＼ヽ 正直なのね。
｀７ / ,ｲ | l├ヘヽ―ﾍ、__,.:'⌒ヽ ｀､｀､ ヽ＼ 貴方の美点なのだわ。
/ / |｜ | |:.／ヽ＼::.::rﾍ::.::.::.::.::＼ヽ ＼ ＼ヽ
,' ′ / /|｜ ／ヽ＼::.::.::.) ）{廴r-､__::.:rく ＼ ヽノ /
/ / /ﾊ !／:.:.:._:_;＞=≠-‐､::.f‐ﾐ ヽV ＼ } 〉 /
. / / / 'rﾍヽ:.:.:. ヽ二ﾆ＝=､ ｝:｢｀{ ,ゝ､＿Ｖ_/∠＿
/ , / ,':.:.:.:.ヽ＼:.:.:.:.:.: r‐彡ィ´:::|::.::>‐':.:.:.:.｀)ー‐r≠ﾆ ｝
./ / / /:.:.:.:.ノ:.＼ヽ:.:.:.:.:.ヽ＞:l ::.::|::└r1 :.:.:.:.:.ヽノ/_／ く
／/ | / /:.:.:.f⌒ヽ:.:.ヽ｀､:.:.:.:.:{{ヽＬ 厶-‐'/:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.人 ヽ
. / l | /ヽ､:_＞ｸ^ヽ:_:＼ヽ:.:.:.:｀T￢ー‐く丶:.:.:.:.:.:.:.:!:ハ ｀ヽ ＼
,′ | | / /:.:.:.:.:.:.:.:/〉､＼:-勹::-‐￢__〉:ヽ:.:.:.:.:.:}ヽ ＼ ＼ ヽ
ｉ ｌ/ /:.:.:.:.:.:.:.:〃:.:.:＼ヽく_:_:_:_j-‐个､:.:.:.:.:./ / ∧ ヽ、 ｀､
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| 欲しかった情報の殆どはこの時点で手に入れたことになる。長門少年が正直にすぎるのだ。
|
|「……引っ掛けましたか？」
|「いいえ、私は『記憶にない少年』だと本気で思っているだけよ……詳しく聞くためには、貴方を満足させるような情報を用意しないといけないわね」
|
| 悩ましげに眉を寄せる長門少年。
| 彼は、蘇芳が《アトカタモナイノ国》を発動させて親しい誰も彼もの記憶から消えた時、『ブギーポップ』だった。
|
| 《滅ぼすもの》能力を使い、彼女がこの世界から消え去ったのは認識していた。
| しかし、蘇芳の存在は誰の記憶にも残っていない。
|
| 誰よりも親しかったはずの不人気すら忘れている。長門は一度はそれを憤ったが、実際には彼以外の誰の記憶からも消えていた。
| 痕跡すら残っていない。それを、どう説明すればいいのやら。
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|「それで、私に調べてほしいことは？」
|「一つは真紅さんの得意分野、もう一つは人探しです」
|
|「それは探偵ならざる私には荷が勝つのだわ……何処の誰？ できるだけ詳しくお願いね」
|「名前は、伊藤誠」
|
| あ然。不人気はぽかんと口を開き、宝石のような目を瞬きさせた。
| そして精緻な細工のような睫毛を震わせ、鈴の転がるような音色で笑う。
|
|「貴方の義姉に聞くべきだわ。彼女は誠の腹心なのよ」
|「え」
|
| ここで長門少年が困惑したのは、今の情報に頭が追いつかなかったからである。
| 腹心？ あの何を考えているのかいまいち分からない女子高生が？
|
|「……最近、家に帰ってないのでして」
|「入即貸本が閉鎖されてからは私も会っていないわ」
|
|「つーか、真紅さんは、その……あの男とどんな関係なので？」
|「友達の友達で、ビジネスパートナーよ」
|
| 大人が異性をファーストネームで呼ぶのは少なからずの関係だ。
| が、実際にはやる夫が誠呼びだから、入即貸本の客のほとんどは彼をファーストネームで気安く呼ぶ。
|
|「もしもし、有希？ いま大丈夫？」
|『真紅か。問題ない』
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l::i::|..!......l!..7‐ｩ.､x'´!::.../ !.:,/__!:...ｲ::. : :!:: : .|ヽ!
l::|..::!.ﾍ....!,r≠､. !./ /./ l.` | i: : :|::!:: :| |
!!i: :|: ::`.!'i゜::::.ｊ` '´ '´r≠ヽ、 |:::::/::!i:::/
!ﾍ..!: : ::|.廴;.ﾉ {゜::::::ｿ イ/:::/ !'
ﾍ!.i: :.l ! ー' /: : ; :/
!.!: :ﾄ __ /: : /!/ やる夫の居場所を探している。
l.ﾄ､|..＼ ／.!: / |' なにか情報は？
ﾍﾍl.ﾄ..| ヽ , r‐,'イｲ:/ '
,ゝti ￣ |./､' ｿ
／:::r'´ └､:＼
_, r'´:::::::|＿ __,,..,,_ ＿ |::::::｀ヽ､_
, ｨ:´|: : : : : : : レ'´: . : . :｀ヽ､|: : : : : : : |｀jヽ
r'|: :!:::::i: : : : : : :|:_;. -‐' '‐- ､;:!: : : : : : : l:::l : :ﾄ､
!::::|: :|:::::|: : : : : : :`l _r-‐- ､ /: : : : : : :/::/: :/::::|
|:::::::!: :l::::::l: : : : : : : |´: : : : : :/: : : : : : :/:::/: :/::::::`i
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|「無いわ。こちらは誠を探しているのだけれど、そちらの義理の弟さんのお願いで」
|『誠を？ 警察に捕まったがどこにも収容されていない。暗殺されたのでは？』
|
| まさかの即答。他の面々が影すら踏めなかった誠の足取りを、即座に発見。
| 思いつかなかった自分に呆然とする委員長。その間にも不人気は電話を進める。
|
|「有希、貴女は大丈夫？」
|『問題ない。水銀燈を窘めながらやる夫を探している。彼女のやり方はとてもユニーク』
|「なら良かったわ。また何かあったら連絡するわね」
|「構わない。情報も歓迎する」
|
| 長門少年は、こんなにも多弁な義理の姉の声を初めて聞いた。
| 必要な事しか喋らない、機械のような人物だとずっと思っていた。
|
|「この先は期待しないで頂戴」
|「いや、十分……」
|「もしもし、阿部さん？ ご無沙汰しています、真紅です」
|『おや、珍しいな。いいのかい？ 俺みたいな男にホイホイ電話かけてきちゃって』
|
| 間髪入れぬ電話。相手は不明。
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／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
/;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
,!;;;!ﾞ`''〜^〜ｧrr-'ﾞ`'´''ﾗﾍ;;;!
|;;;| ﾉﾘ ﾐ;;;|
_ゞ;! r─-- ､ ,rｪ--- ､ﾐ;ﾘ
!ﾍl;|. ぐ世!ﾞ｀｀ ,ｨ '"世ﾝ ｢ヽ
!(,ﾍ! ￣'" |:::.` ￣ ,ﾄﾞﾘ やる夫のことかな？
ヽﾞ､! !; ,ﾚｿ それとも入即貸本のことかい？
`| ^'='^ ﾑ'′
,rﾄ､ ー- ─-: /|
_..／ i| ＼ === ,ｲ.:ﾄ､
／ i| ﾞ､＼ ; ／ﾘ.:;!:::＼､＿
ﾞ! ﾞ､ `ｰ─''ﾞ:::;:'::::|::::::::::＼
ﾞ､ :::/::::::|::::::
`ヽ、 ﾞ､ ./ .| ,-､、
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|「伊藤誠はどこにいます？」
|『ヒュー』
|
| チャラい口笛のはずだが、いかにも決まっている。
| この電話先の男は相当な伊達男なのだろう。
|
|『言えない』
|「関係者が困っているので早く開放してください。具体的には有希とその弟さんよ」
|『なんとも言えんね』
|「ありがとう、頼んだのだわ」
|
| 全く噛み合わない会話。いや、長門少年は舌を巻いた。
| 『言えない』とか言われたら、彼や仲間は噛み付いてしまうだろう。だがこのまな板は水のごとく流した。
|
| 『言えない』＝『知っている』なのだ。
| ということは。
|
|「誠は警察の監視下ね。協力しているのか監禁されているのかは不明だけれど。
| 開放できない理由があって、明言もできないのね」
|
|「なんとかなりませんか？」
|「あら、『見つけた』のよ？」
|
| 悪戯っぽく微笑む不人気、洗濯板より平らな胸なのに、妖女のような色気が漂う。
|
|「私の立場じゃ警察は動かせないわ。有希経由で根回しはするけれど……おそらく別のコネから動かすのは危険かも」
|「なんでです？」
|「警察は、誰かから誠を隠したいのよ。切り札として」
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/: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
＜ : _: : : / 〈 ノ |/ ﾚ ヽ }|:./ヽ: : :|
＜:: |. 小{ _,,.. - ､-.,_ ﾚ{: :.|ヽ:|
厶ﾍ ﾊ ､ {ﾊ,;' （(
＼_! ' ! ( ( ヽ) ﾎﾜ〜ｯ
ヽ 'ー―-- ／ ヽノζ ＿
___,ｒ| ＼ ／ |￣￣￣￣￣|ゝ'ﾞ＿__ `i
／:/::::| ＼ ヽ _ , ィ´ | |Y＿＿ !
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､. ', /ｺ＿＿ ﾄ、
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| 『誰か』。
| 長門には心当たりがあった。
|
| アトリーム亡命者会議でジャジャマルが言っていた。
|
|「『教会』と合衆国軍スか……？」
|「だとすると、やはりエダは頼れないわ」
|
| 逆に不人気は『誰か』に確信が無かった。
|
|「……それじゃあ、もう一つの依頼だけれど？」
|「あ、はい。噂や民衆の気勢を知りたいッス」
|
|「普段どおりの仕事ね。具体的には？」
|「厭世観、破滅的思想、クーデター」
|
| アトリームの破滅が操作されたものであるなら、東京の破滅もまずは民衆の操作から始まるだろう。
| 爆発直前まで不満をため、暴動から虐殺を引き起こす。あとは泥沼修羅の巷。
|
|「ふふっ」
|
| 笑みが溢れる不人気。確かに、街頭で終末思想を叫ぶ輩は少なくない。
| だが、世界は滅ぶからどうというのではない。
|
| 彼らの論調は救世主の到来へと繋がる。救世主を信じよ、偽りの予言に惑わされるな。
|
|「ネットでも街頭でも、世紀末思想とモラルの低下を喚く連中を、救世主願望と助け合いの心が封じ込めているわ」
|
| 記事にならないのでまとめていないが、炎上案件よりも優しい世界がもてはやされる。
| ざまぁよりも癒やしが求められているのが現状だ。
|
|「……原因は明確ね」
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／ ＿＿＿＿_｝｝:::::::）
／ , '"´￣￣￣￣ ￣｀`ヽ、
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／ ／ r屮⌒ヽ::::::::::}
/ ＿_.. -‐'´ 〃{{ |::::::::::j
/ /^Ｙ | - ､ u ! | u |::::::::/
/ 〈 Y1 || zｕ‐ミ､__j _,. -‐/:::::/ 備府やらない夫……！
/ / ヽ )| ﾘ ￣ {ゞ┴'/:::r'′
/ 〃 ﾄ| ト-!{ | u /::::| 貴様のような小物がこの私の計画の邪魔になるとはな。
| | {{ | ト1 i ' ‐' /::::::|
| | !! Vヽ ＼ -=＝' /:::::::{{
ヽ | !! ∧＼ ヽ､ ´ 〃:::::::::||
, --rメ77───一ゝ┴一1ﾊ ＼｀Y--`ー----' ト- ::::::|
／ 〈 ヽﾄ､ | l二二二フ /〉 ｀` ──---rrく^ｽ
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| 六本木の自室で百万ドルの夜景に目もくれず、バスローブ姿のパプテマス・シロッコは毒づいた。
| 高級酒を水のように無感動に煽り、シャワーを浴びるべく立ち上がる。
|
| キングサイズのベッドからは、気怠げな女の声が複数あがったが無視をする。
| 一人になりたかった。
|
|「認めないわけには行くまいな……己の過信と傲慢を」
|
| 『カトルカール』。シロッコの虎の子サイボーグ部隊は想定されたスペックを発揮していない。
| 彼らは拷問・暗殺・誘拐・脅迫をこなすための集団だ。しかし実際にはその内の一つも満足にできていない。
|
| シロッコは彼らを作りながら、自分の思いつく限りの新装備を積み込ませた。
| そして悪夢のような外見を取らせて、わざと民衆に恐れられるようにした。
|
| 当初の計画では、カトルカールは目撃者を誘拐し、拷問し、秘密にするように脅迫するはずだった。
| 東京にばら撒く不和の種の一つとして、恐怖と謎を提供するはずだった。
|
| にも関わらず……実際にはやらない夫一人すら満足に暗殺できない。
| 研究所に忍び込んだネズミも捕まえられない。挙句の果てに、ただの高校生すら取り逃す始末。
|
| 個性と試作にこだわり過ぎた。
| やり方を変える必要がある。
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,....-ｒ::ｒ‐:::-...
〃.:::::l:::|:::::::::::::::ヽ
ｉi::::::::::l:::Ｌ.:::::::::.、:::.
ｊｊ, -‐'::ｰ', ＝ミ::.＼',
/〃⌒i}::::{､＿:::)::}:::.＼
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::::::::::∨=-‐=＝7ヽ::::::::::::::::::::〉 {::::::::.＼
ｉ|:::::::::::.＼/////.:::::::>=＝ミ:/ ＼:::::::::.＼
乂::::::::::::::.∨///.:／／￣／⌒＞‐- ＞...::￣::｀丶、
｀¨¨フ７７７.:://.::,=ミ/.:::::／.::::::::::::i{::::::::::::::::::＿:::}
_ . イ:::::/:/:/.:://.::::{::::::.＼/.::::::::::::::::/ヽ.二ﾆ≠::::::/
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＼//.:::/:/:/.:://.:::::/:::::斗=＝:{:::::::::::}:::::::::::::::: ＿__フ.:::::|
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| 業腹ではあるが……シロッコは『血族』に押し付けた『失敗作』を思い出す。
|
| 脳死状態の兵士ユニットを中心となる個体に接続し、小隊を群体として運用する。
| 『ストームトルーパー』システム。
|
| 中心となる個体への脳負荷が大き過ぎ、言語野だけでなく複数の障害が発生したので廃棄した。
| それを『超能力』とかいう未完成の異能で持ち直したフリット・アスノ。相性の問題だろうがシロッコはプライドが傷つけられた。
|
| 次はもっと上手くやる。
|
| シロッコは亡き盟友デュランダルの遺品を利用することとした。
| 生まれつき、並列思考に特化したデザインチャイルド、コードネーム『バレル』。
|
| 彼を中心にし、『ストームトルーパー』を凌ぐ群体システム『ドラグーン』を構築中だ。
| 二者の最大の違いはユニットの内容だ。
|
| 画一した装備と能力の『ストームトルーパー』と違い、『ドラグーン』は複数の兵科を同時に操る。
| 歩兵を中心とした『レジェンド』と、機体を操る『プロヴィデンス』。
|
| 特に期待が大きいのが、鹵獲した自動戦車を解析し、蓄積されたデータを元に生産中の各種軍用機体である。
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γイ__ ￣ " ＜: : : . . ｀: .､
ノ⌒: : : : ｀ヽ ヽ: : : : : : : . 、
. イ才⌒ヾ:. . : ＼ ＼: : : : : : :.､
（ ;/′ ∨ : . : :＼ ＼: : : : : ﾍ
. / ∨ . . : : ＼ ＼: : : : ',
.′_ ..イ￣￣`ヾミ辷彡 . : :ヽ ∨ : : i
〉´¨fｿ￣｀ ﾍｒ＝､ . . .: : :ﾍ ∨: :.'
. / l :!,ィ、} ＼ : : : : :Ｖｿ､:/ 成功すれば世界が変わる。
/__ l: !ろ ﾘ ∨: : : :.∨∧ いや、私が変えるのだ……！
└ 一 ソ´ ｲ ',: : : : :.i!.: :ﾍ
〉 /ｰく: :! i: : : : :.ｉ!: : :.',
. i イ ｿ八 / /: : : : : ﾘ: : : :!
. ヽ、. ＜ _／ ｰ=彡ｲ:.:／ ｲ: /: : //: ;′/
__j __ .... -ｰ=＝＝＜: ／/ :/: :/
（( Y´ :） ) ｀ゞミ辷彡′
ﾉv/ .. イ :/ .:|
从/ ﾉ／／ __＿_;ゝ､
__＿＿....ｲ_Ｙ と ´ ﾆニ二￣ ｀ ．.
／ , ' ／ __＿＿＿｀7ムﾑゞ､、
─ - ､｀ヽ/ .:/ .:/__＿＿ ---- ￣￣＿＿＿＿_/ム/ /⌒ヽ､
. ＼ __＿＿ ----イ / /==/_/
｀￣´ ／／ 7 / /
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| カトルカールは使い潰す。
| だがその前に必要なデータを回収しきってからだ。
|
| 特に大事なのは無我タイプの自律行動とシステムと、暴走について。
| これを解明しておかねば後々重大事故に成りかねない。
|
| それとは別に、強力なユニットの戦闘データ蓄積も必要だ。
| 特にコードネーム『フリント・アロー』。無改造であれだけ戦えるあの男をどうにか改造できないものか。
|
| あるいは、先日拾った脳死状態の少年。
| 彼の戦闘技術を引き出すことができるならば。
|
| 熱いシャワーで汗を流すと、シロッコは体から不要物をこそげ落としているような気分になる。
| 不要物。人間を人間の形にしている様々な部位。
|
| これらを、生まれつき持たない者はいないものか。
| それはつまり、どんな部位でもどんな機械でも自分の体の一部のように扱える異能になり得るのだ。
|
| 戦車や戦闘機すら己の肉体だと認識可能な脳……それがあれば、『プロヴィデンス』はより完璧に近付けるのに……。
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／￣￣＼
／ ／ ＼
_ （●）（● ） |
(＾ヽ{ ヽ （__人__） |
(￣ ヽ ヽ i ||:::::::::| |
(二 ヽ i i |,r‐i.{｀⌒´ |
ヽ ／ 丿{ /
i { ｲ―＼ /
ヽ. `ｰ '/ ヽ. r‐､＿_
`ー ' ￣ i .',｀´ ┬┤
l i _匸}
} ├ﾞー '
} │
/' l、
／ ＿ ヽ
／ ／ ヽ､ i
／ ／ ノ ／
_/ / / >_
／ ヾ } ´ ｀ヽ
{ 〉 〈 〉
ヽ＿＿＿ ｨ ー‐'｀ー―一'
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| シロッコは知らない。
| 己が目の敵にするやらない夫こそが、『その訓練』を乗り越えた狂人であるということを。
|
| そしてもう一人。
| レヴリアスのデータを元に、機械の体を自己と認識する男がいることを。
|
|
| しかしシロッコは天才であった。
| 故に、無いなら作ればいいと考えた。
|
| カトルカールはもう要らぬが、彼らを作るのに必要とした機械義肢の企業に悪魔が関わっているという嫌疑があるらしい。
| 渡りに船だ。もっと技術が必要だった。
|
| モーリアンＣ．Ｏ．を攻略し、略奪し、その技術を知識を奪い取る。
| そして、犠牲者を新たなサイボーグの素体にすれば良いだけのこと。
|
| まさに、一石二鳥であった。
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☆ 次回予告！
彼女の使命は殺すこと。
奪われしものを取り返すこと。
二人の女はよく似ていて、どちらも人知を超えた殺し屋で。
しかし一人は愛に惑い。
さらに一人は友を得て。
いや、それらすら。
お互い様か。
次回、最終幕三十七話『蛇身殺すべし』
果てに見るのは破滅か死か。
ロビンが理想的なのか？
でも別のボディにいれたら混乱しそうだし、やっぱり四肢が増えても適応できるやらない夫が異常なんだな
} :/ } :} ::/ ー―ｧ
/ { { ﾉ ::ノ＿ ノ
( ト､ ､ イノｰ ´ く `ｰｧ
}｀ヽ ｨ´ ヽ ／
{ { { ./ ／⌒ } 7
､ ﾉ ,==ﾐ ｰくこぅ､ 〈 /
八 ∨f 斗 } ＼ , } rヘ 7 ……ふぅむ。
ヽ} ,: /: | |ﾉ:} }′
人 _` ` ‐-､ {: | | xく
ﾊ {ム-‐ ､ｰ ヽ j ﾐ ､}
i} ´__｀ -‐ くｨ／}_
八 ／ ｀Y´ ／⌒ / ㍉
〈 { ／ ｲ ㍉ ＿
厂 ｀丶､ ノ イ ／ ﾉ ㍉ ﾆ=- ､
人 } ／ =ﾐヽ イ ／ rｰ ￢へ} ヽ
-‐ , =ミ ヽ ＿/ {（__） } }／ rｰ┘.， ´
r ' { (__) } }ﾆﾆﾆゝ __彡 r‐┘ ´ }
,廴 ゝ ＿彡 ﾏ / / ノ rｰ┘ /
. / ㍉、 ｀¨¨| V //rｰ┘ .′ /
/ ｀¨¨¨ヽ! ′://" { /
. / / :| / // .:: 〉 /
/ r_ｰ- ､ , ､/ | { :// .:: ,{ . : 厂
.′rー‐- V } :L -=ミ ､ -‐ ､:／ . : : /}
_｀二` ､ ｀ヽ ／ =＝/ / / ′
.{ ゝ--- -‐ ¨¨ / /{ { ／ 〃/
.{ ｀¨¨／ { {从_ -=≦ 〃/
.{ ／ 八 八 ` ／ /
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| 先日の夜襲の後、フリットは『蛇身』の居場所捜索に総力をあげてきた。
| しかし、その足取りは一向に掴めぬまま。日本刀をぶら下げた全裸の女子高生など、すぐにでも見つかりそうなものなのに。
|
| もちろん、見つかるわけがない。
| コートを着て目隠しをサングラスに変えた『蛇身』は、ビックリするほど普通の女の子になってしまう。
|
| その上、フリットの命令を素直に聞く部下がいなかった。
| ケンシロウの『参謀』も、『グレン団』も『九鬼』も、真面目に捜索なんてしなかった。
|
| 真面目にやっていれば、『全裸パルクール女』の噂からアリカまでまとめて釣り上がっていただろうに。
|
| とにかく、『蛇身』をどうにかしたい。
| キオに悪影響を与えた諸悪の根源、なんとか殺して首を刎ね、塩漬けにしてキオに見せつけて己の間違いを理解させたい。
|
| 狂気じみたフリットの妄想。
| それに応えるかの如く、『蛇身』の居場所の情報が届いた。
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/ /.:::;′,.::/.:.::://.::l::i .:.:.:.:::::::::::i:::i .:.:.:::::::.:.`ヽ __／
,' /.:.:;′/:/.:.:::/:/!::::|::ﾄ､ .:.:.:.:::::::|::|::i .:.::::::::::::::.:「
l/.:.::;'.:.:/./.:::ノ::/ |:::::|::ﾄ､ヽ.:.::::::|:::|::|::| .:.::::.:::::::::::|
|:l:::::l::::|:::ﾚ':ﾅナヽ|:::::l::l＼ヽ.:‐:十:|十!、.::::::::::::::/
lハ::l::::|:::ﾚ'´ ‐- |:::/l/ ＼::::::|:::|::|::| .:.::::.:::|:./
',l::::|:::| ＿ |/ ｀` ｀`7!.:.:::::.:::|/ 『モーリアンＣ．Ｏ．なる企業に
ﾄ､ﾄ::ﾄ､´￣`ヽ ‐＝=ﾐ､ ./:!:.:.::::::::| 悪魔が関わっている疑惑あり。
ヽ:|:::|::! /./.:.:::::::::;′
`l:::|::ﾄ､ _｀_ /::/.:::::::/l/ 『蛇身』はそれを頼り匿われている模様』
|:::!.l.:::>､ ｀ ,..イ::/::::::::/
|.::::::/:::/ﾆ＞.--‐ ＜ﾆ7⌒:::::/ _ ＿
,r‐r‐- ､|::::/´l/ L_ / |::/￣`ヽ ｀」
ﾉ:いぃ￣|:/ヽ `ｰrrrt7′ l/ V￣｀`
ﾚ'⌒.:いﾊ｀ヽi ノﾉ只〕ﾄ､ i ‐1⌒
/.:.:.:.:.:.:Ｈ.::〉ヽl 〈:::(ﾉ八ヽ)::〉 l ‐|.:.:.:
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| もしも無辜の一般企業であったら？
| フリット・アスノはそんな事を考えた。
|
| 今では彼を窘める『螺旋王』もシックスも伊集院もいない。
| 悪魔を駆逐してやりたくても、考えてから動かねばならなくなった。
|
| だが、今回に限ればすぐに解決した。
| 『武僧』のシロッコが同じ企業を悪魔の巣窟として掃討すると連絡を寄越したのだ。
|
| ついては、援軍を要請するとも。
|
|「どんな裏がありおるか」
|
| 『十字軍』や『異端審問官』、他の『教会』関係者ではなくフリットに援軍を頼むのだ。
| 『教会』関係者には見られたくないものでもあるのやもしれぬ。
|
| しかも、それは『血族』には理解できないと踏んでいるのだ。
|
|「こういう時に頼りになる駒が足りなすぎる……」
|
| 戦力としてはダースベイダーを派遣すれば十分だろう。だが、奴は言葉も喋れぬ人形だ。
| となると……。
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/:.:.:.l:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:./:ｲ ヽ:.l:.:.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.',:.:.l＼
/:ｲ:.:,:.:.:.:.:.l:.ﾄ:.:.:.ll:.{ ',:ﾄ､:.:|ヽ:.__l:.:.:.:l:.ヽ
l:l:.:.:ｲ:.:.:l:.:|_| ',:.:.|ﾘ ﾘ ,斗!´ ﾘl:!:.:.:.|､:.:..
|:./人:.:.:.:|ﾘ ﾄ-!､ ,ｨ示オ!:.:.,:.lヽ:.
|/ｲ:.:.:､:.:.|下示ォ 込j |:.:./､!:.
､:|:l,:.:,ヽ:.:. 込ｿ , |:./ｲ/:.,
l从l:.l,ゞ,ミ､ /,-':.:.:.:,
'，:ｰ-`､ vっ ,.ｲ:.:l:.:.:.:.:.:. 『武僧』の指揮下で悪魔の巣窟を掃討だってサ。
l:.:.:.l:.:l:.＞ . _ ,.イ:.:.:|:.:.:.,:.:.:.:.:.:. どー思う？
|:.:.:.|:.|:.:.:.:.:.:lr,l ￣ !ﾆヽ､:.:.l:.:.:.:.:.:.
|:.:.:.|, -r''"´ { _ ,- / ｀ｿ｀ヽ､:.:.:.
|:.:,ｲ | ,＿_｀_＿,/ / /｀ヽ:.
,:.:/ l､ ､ l::::::::::::::::/ ／ ／ / ､.
,:.:.ﾄ, ＼ ＼ ,:::::::::／,. -´, - ´ / ,:.､
/:.:,' Ｙ ｀ヽ､ﾍ::::/イ_, - ´ l l ,:.:.
/:.:., l' ｀ ij￣ |,! ､:.:.
,:.:.:.:l | 〈 ',:.:.:､
/:.:.:.:l ､ _,ノ l ゝ ､ ､:.:.:＼
,:.:.:.:.:.| } ､ l, ,:.:.:.:.:.
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|「フリット・アスノが佐倉杏子、わざわざキミをご指名なのは理由があるのだろうね。
| キミに箔をつけたいのか、はたまた他に手駒がいないのか」
|
|「あるいはキュウべぇの知恵が借りてーのかだな」
|「それはどうだろうね」
|
| 生前から親『結社』派だったキュウべぇと、フリットの折り合いは悪い。
| だがこの所、フリットの態度が軟化している。頼れる先が他に無いからかもしれないが。
|
|「やらない夫が絡まないんなら行く必要ねーッスよ」
|
| 拗ねたように言うのはヴァイジャヤ。彼は仲間であるシックスの五本指がやらない夫に病院送りにされたことを恨んでいた。
| 杏子班がやらない夫討伐を請け負うことを切に願っている。
|
|「ナラバコソ、実績ヲ積ンデ力ヲ示スベキデハ？」
|「……まーな」
|
| 窘めながら、ロビンが横島に目を向ける。
| ある日突然大怪我を負い、しかしなんの説明もしない横島。
|
| 完治はしていないはずだが、必要以上に明るく行動的になった。
|
|「横島？」
|「誰が参加するんだ？」
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ フリット・アスノ側近の『ストームトルーパー』部隊と、
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ 『武僧』だね。
／ 八 ｲ 丶. / 連携が取れるかが課題になりそうだよ。
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ）
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|「『カトルカール』は？」
|「シロッコ主導だからね、味方として行動するだろう」
|
| 横島が目を見開く、そして右手で口元を覆った。背中が震える、堪えきれず。
| 笑っていた、溢れる感情に堪えきれず。
|
|「やろうぜ」
|「大丈夫カ？」
|「ん？ ああ、正気だよ」
|
| 横島は、どこかに踏み込もうとしている。
| ロビンにはそれが切なくも恐ろしい。自分も連れて行ってくれと言えないことがもどかしい。
|
| その横島の頭の中は『カトルカール』と『ストームトルーパー』で一杯だった。
| どうにかして二つを、二人を会わせるのだ。
|
|「『ストームトルーパー』が来るってんなら、あの黒ずくめにも会えるってこったろ？」
|
| 戦意溢れる杏子。彼らは一度、フリットのマンションに侵入しようとしてダースベイダーに見つかった事がある。
| そのリベンジをご所望だ。
|
|「でも本当に、『カトルカール』と連携なんてできるのか？」
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〃 j/ ／
＼｛ /〃
｀ヾ
. -=ﾐ j/／
...._ ＼ヽ ／ ∨ /'′
/ ｀ヽ＼,、 / V
. / ＼ / ∨
/ ’， ′ V
,′ ヽ.....ノ ∨
｛ /｀ヽ
‘， / , レう｝
‘， ﾍ、 / / , ─=イ {_,ノﾘ
ハ i〃 ＼ ﾚ′/ ‘ ／ |忻ﾊ 丿 結局どうなんだ？
｛し｝ ! ＼_＿＿＿ __ｊ jﾉ /ミ＝彡′ lﾉ/ /／ やれんのか？
Ⅵ乢、 ｀ヽ ＿‘｀彡ヘﾂ ヾ j/ //
＼∨ ^Ｙ ｀¨¨¨¨¨´ ｊ ｜ ｝ ｲ_彡'
｀`≧＼_ハｊ / ｛ しｸ ＼ /小、
⌒¨¨¨｀ヾ小 ＼ └-､j__/ ,ヽ ハ ヽ
|∧ } ,.,_＿＿ --一／ ｉ | ＼
|/∧ ｀ ー―‐=彡 ′j ヽ
|///＼ 癶辷彡' / /
∨/// ＼ / /
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|「やれまする」
|
| 『教会』の食堂、隻腕の剣士藤木源之助に相対するのは野獣のような大男、ヤザン・ゲーブル。
| 未だ未改造の源之助であるが、インカムを使った連携は経験済みだ。
|
|「『結社』崩れは信用できませぬか？」
|「いや、別に」
|
| 大盛りのスパゲティを豪快に頬張る。跳ねるトマトソースに、源之助は眉をひそめた。
|
|「そもそも誰も信用なんざしちゃいねぇよ。後ろから切られるなんてザラだろ、この業界じゃあ」
|「…………」
|
| 同門の裏切りで、師匠と仲間と想い人を失った源之助は耳が痛い。
|
|「特にアイツの周りはヤベえぜ」
|「シロッコ殿の？」
|
| ヤザンはスパゲティを飲み物みたいに飲み干して、鷲掴みのペーパーナプキンで
乱暴に口を拭きながら頷く。
|
|「アイツは人たらしだ。しかも人徳じゃねぇ、異様な眼力でたぶらかす。
| こないだ連れてきた女には会ったか？」
|
|「いや」
|「おや、私の話をしてましたか？」
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､rｾ7ｱ刀刀ｱ7ｧ｡, ,,｡s≦=_=_=_=_=_
, ィi〔///////////////)h､⌒ヽ ／=_=_=_=_=_=_=_=_
//////////////////////∧: : ∨=_=_=_=_=_=_=_=_.／:
x───＜///////////////////∧: : ∨＞''"￣￣￣ ／: : :
/／⌒l777ﾊ ＼//////////////////ﾊ: : : ＼ ／: : : :.､
/´ |/_｣Ｌ｣_////////////////////j{: : : : : ＼＿_／: :､丶`
_,,.. -─=ｧ///////〕iト//////////////八: : :＼｀`````｀
／ ¨¨77_｣Ｌ｣_/////////＼///////＞''":j{: ＼: : :＼ …………セイバーの気配は無し。
／ ` 〉|: : : r‐r‐ﾐ＜/////／:￣ : :|: : : : :./^＼: : : : : :｀`〜､、
,ﾟ ／辷ﾉ |: :. :.ヽ Vｿ ＼`'＜fうぅk: :. :.|-ﾐ: :./ ＼: : : : : : : : :.＼ ドーモ、謎のヒロインＸです。
_,’ j |〉: :ﾊ , )/ Vソ |: : : | }∧ ｀`〜､、: : : : } 食べないなら頂きますね。
|＼＿/{ ＿__/: : : ::. j:. :../／=_=_＼＿ ＼: : :}
. ／/////∧////|: : : //＼ /: : /=_=_=_=_=_〉=_≧s｡..乂＿__): /
八////／//〉///|: : //}=_=)h､`__ ｡o/: : /=_=_=_=///∧_=_=_=_=＼:_:.／_, ィi〔
{//／///〈///,∧: {/∧=_=_=_=_=_=/: :／=_=_=_=/////∧=_=_=_=_=_=_=_=､丶`
{//////〈/////,∧{圦∧_=_=_=_=_/:／=_=_=_=／//////∧≧=─ ‐=≦
{/////〈//､ヽ` ＼＼_=_=_/'=_=_=_､+'” /////////∧
≧=‐=≦ ｀ｱ≧=‐‐=≦////////)h､/////∧
/i:i:i:i∨/≧=‐〉 〉‐=≦'///心'////∧
}i:i:i:i:i:i∨//// ////////,／ハ/////}
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 挨拶から0.2秒。Ｘは二人と相席していた。
| そして源之助の前にあった和風定食のトレーが魔法のように移動、鮮やかに彼女の口に消えていく。
|
|「私の師父は『教会』系列の零細組織所属なので、裏切りとかではないのですよ？
| シロッコさんとは利害の一致です。一宿一飯の恩義に報いる為とも言えますが……あ、おかわりいいです？」
|
| あまりの食いっぷりに唖然とするヤザンと源之助。
| Ｘは平然とヤザンの前の分厚いビフテキを箸で摘んだ。
|
|「あ、テメエ」
|「ごちそうさまです」
|
| 血の滴るレアなステーキを、健康極まる前歯が食い千切る。恐るべき咬合力。
| その間にも左手はステーキの鉄板と皿を引き寄せて、人参やほうれん草のバター炒めも手中におさめた。
|
|「俺のだぞ！」
|「かわいい女の子に取られたんだから笑って済ますのが紳士ですよ？」
|
|「ヤザン殿」
|「藤木もコイツの味方かぁ！？」
|
| 拳を握るヤザン。人間の頭骸骨を豆腐のように握りつぶせる膂力を、Ｘは知らないに違いない。
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/ // ' ＞≦ -―
/ { { / ヽ ｀ ＜ ／/ /
/ ∨/― l ＜/ {
＼＼/ j ／/ {{ﾐ
{ ミ/ / /／, ＜￣}/ /
∨ﾐ / // ｨ j／ /
ﾏﾐ ='' f ￣／ j
../ ヽﾐ ¨¨ i
.i ﾏi ,,,,, i この女は化生の類に相違ありませぬ。
i ヽ =-”ィ ヾ¨j ヽ i 自分がヤザン殿の分まで代わりを取りに参りましょう。
i } ､ f ゝ-' .i
i マ´ l r
l ∧ ｀―' ヽ-､ ＿
l ＼ , ／
l ヽ f ￣
l i ｀ ､
l i ｀ ､ ノ
､ ヽ =--= ∨
ヽ .l lヽ
＼ j l }i
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イ l
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|「ありがとうございます。じゃあラーメンとレバニラ定食とモツ煮込みとチャーハンも追加で」
|「誰がテメエの分まで用意すると言ったぁ！」
|
| 憤然と立ち上がるヤザン。
|
|「藤木がそんなに持てるか！ 自分の分は自分で持ちやがれ！」
|
| 椅子を蹴り倒し、気の弱いものなら失神するほど強い視線で周囲を睨む。
| ヤザンの蛮行に文句を言える命知らずはここには居ない。
|
|「ホコリを立てないでください、食べ物に入るじゃあないですか」
|「誰のせいだ！」
|
| 居た。
|
|「まあ、そう怒らずに。お近付きの印にステーキを一切れ差し上げましょうか？」
|「俺のだろうが！」
|
| ヤザンは、平等主義者だ。
| 女も子供も容赦なく殴るし殺す。
|
| 礼儀を知らぬ女が二度と食事を楽しめなくなるようにと。
| 下顎をえぐり取る殴打。手加減なし。
|
| 女人を伊達にするのは気がひけるのか、源之助がヤザンの一撃を払い上げる。
| 空気を引き裂く異音だけでも威嚇効果は抜群だろう。
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jI斗─━━‐ ミ
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, ィi〔:.. :. :.＼////////////////////∧: : : : :＼ ／!
／´ ￣￣∥〕iト＼'///////////////////’: : :. :.＼:｀`〜､、 _､+'”=/＿＿
jI斗‐=ﾆ二ﾆ=‐-////_///////////∧: : : : : :＼: : : : :.￣二ﾆ=─”=_=_=_=､+'”
／/＼//////////////////≧=─‐=≦: : : ＼: : :｀`〜､、_､+'”_=_=_=__､+'”
／'///: : :`''＜////////＞''"}/: : :〉:_:_: : :.∧: :/: : ＼: : : : : : ｀`〜､、_､+'” 確かにおっしゃる通り。
⌒＼/: : :. :.|‐-≧=‐=≦ イ芒ﾐk|: : : :〉 }:../ ∨:./: : : :＼: : : : : : : : : :＼ ではこの席は奢りにしましょう。
{:..:. :. :.|r┬ﾐ＼(＼( らj ﾉ '|: : : : ∨:/ ∨:/｀`〜､、: : : : : : : : : : ＼
{: !: : :∧ Ⅵ ｀´ |: : : : :.|/／ﾟ，/_}/_=_=_／^｀`〜､、: : : : : : ＼ シロッコさんの。
∧| 〉/: ∧ 丶 j∧: : : :＼_={_=_=_=_.／ ~"''〜､、: :＼
. / /: : :/:込 ノ ／=∧: : : : :＼=_=〉＜＿＿＿＿＿＿＿_,,.. -‐_=_=_=_
/: : : : : | ` ￣ ／_=_=_=＼: : : : :.＼_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_=_
,: : : : : : :| ＞ く_=_=_=_=_／'＼(⌒`〜､-‐=＝=‐-‐-＝====＝-‐-‐=＝=‐
{从: :|＼: ', /=／_=_=_=_=_／_=_=／_=_／ /////＼
. ヽ| )/ ∨_=_=_=_=_／_=_=／_=_／/////＼＼/＼
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| ヤザン、源之助。ともに再びの唖然。
|
| 源之助の払いを箸で止め、ヤザンの殴打を手の平で受け止めた。
| 同時に、Ｘの長い髪が翻り、ベースボールキャップが吹き飛ぶ。
|
| 二人分の打撃を暴風にして後方に逃したのだ。
|
|「くっせ」
|「ちょっ、それじゃあ私がすごいオナラをしたみたいじゃあないですか！」
|
|「そうだろ？」
|「違いますう、美少女はオナラをしませんん！」
|
| なぎ倒された椅子や机を直すＸ、ヤザンがキャップを拾って手渡す。
| いまので実力を認めたのか、野獣のような大男にはもはや屈託など微塵もない。
|
|「Ｘ殿も今回の作戦に？」
|「ええ、客将として参加させていただきます」
|
| ハットを目深に被り、Ｘは不敵に笑う。
|
|「本当は早くやらない夫くんを狩らなければならないのですけれど」
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⌒ヽ.:::::} ∠二二三三＝'' ∠二二＝
´'ﾊ i:: | '´て"ｱヾ´ i"てj"ヾ,′
.r‐ﾉ レ' ￣￣ | ´￣ l
.{ i､ l |
､ ` | | フリット・アスノは
ヽ､ `i ,-､ ノ l やらない夫を狩るのを諦めたのかな？
:::| ` ｰ, ´ ,'
/ ､ ,,．- -‐─ ､ /
ヘ __＿__ /
ヘ ｀~"´ /
', ＞ /
', ≫... _ '
', .:.:.:.: T＜
', .::.:.| " ‐- ,
￣" ‐-
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|「優先順位を変えただけでは？」
|「そうだろうね、だが……」
|
| モーリアンＣ．Ｏ．への襲撃をするのは勝手だ。
| しかし警察に協力を求めるのはおかしい。
|
| いや、それ程までに兵力が逼迫しているのか？
| 周辺封鎖と一般人の誘導などは請け負うが、戦闘参加はできないと返事をしながら、阿部は苦い顔である。
|
|「どうされました、警部」
|「フリット本人は出てこないが、奴の側近は戦闘に参加する」
|「それが何か……？」
|
| 聞き返しながら、ナタル・バジルールはある可能性に気が付いた。
| あまり、想像したくない。言うなれば最悪に近い……。
|
|「アセムさんには？」
|「もう伝わってる」
|
| アセム・アスノ。フリットの実の息子。
| 父親を殺す為に帰国した、海の匂いのする朗らかな男。
|
|「止めなければ！」
|「もういない」
|
| そして、昔の馴染みだからとアセムを匿っていたのは阿部だ。
| 今更フリットに警告も難しかろう。
|
|「思い直してくれればいいんだけどな」
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、_ ／ ﾉ -- - ' }
ヽ ＼ ／ ／ i
/ l --ｲ- _ _
/ l /
/ l _,,. -= ´) - ┐ /
{ ／ ´ /_ /
／イ / Y ＼＼
/ /__ ,／ ﾊﾍ ゝ_＼
／/＼_, ／ / / / l l //＼ 止まる気は無いが？
／////l / / / l ./／_, l/l l 、 /////＼
<////// l /i , l l ｲ ,ｨ莎ﾌ ; / l l _／////////>
/V_, ＼//////il、 l / l ／ヽ{ ` i/ l l/////////／
l＼ / V//＼/////ﾊ l l l / _ , _ｨ / {////// イ/＼／ |
l V///＼/ﾄ-' ヽﾄ、 l ,Vr ﾆﾆﾆ ＼ l / l、_＞ ´////＞´ i -┐
l ＼//// ゝ -=ｲ N ／l -- _ ＼Y / ﾄ _{///////／ l
, l ヽ V////ゝ__ ﾉ l／;;;;;l ＿ ＼ ヽ}＼}//＼//// ィﾊ l
ヽ l// ＼ l///＼/l_,,,,イ;;;;;;;;;;;;;} ＼l;;;ヽ };;-';;;;;,,,,_//／// ／////l /
/////∧ L_／ l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ r-、 Y└';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l- , / ／///////ﾚ
///////∧ l;;;;l ',;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ／ (__ノ、＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;' l //////////ﾊ
/////////∧ ／i;;;;;, ' ,;;;;;;;;ノ_-イゝ_Tﾆﾆﾆ＞ _y;;;;;;;;;;;;;;,,, ,;;;i＞ l //////////∧
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|「止める気も無いな」
|
| アセム・アスノの運転する車には、『狂死』が乗っていた。
| 家族にメールをした後に、携帯電話を内ポケットにしまい込む。
|
|「フリット・アスノを排除して志麻子様を復権させるのが手っ取り早い」
|「…………」
|
| 利害は一致していた。
| フリット・アスノを暗殺する。突然戦力が二人も減って阿部には迷惑がかかるだろう。
| だが、これ以上の好機はもはや訪れまい。
|
|「嫌な感触はある。誰かの手の平の上にいるような不愉快な歩き心地だ」
|「だとして、誰の？」
|
|「ジャギを殺した奴か、あるいは……アセム、できるだけ殺すな」
|「それが出来るほど可愛げのあるジジイならやりようはあるんだがね」
|
| 念動装甲と、見えない手、ESPによる知覚。
| 超能力者を殺さず捕らえるのは難しい。不可能だとも思える。
|
|「だがまあ、やれるだけは試してみるさ」
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／ ヽ
,/ ／ ヽ ヽ
/ ./ ／ | ヽ ヽ
// ./ / l ヽ i
. i / /./ ／i .ｌ i l
| i i / ／ / /l ｌ |
. | | l/ ／ / / |.| | |
| | / ー- ､／ / ./ l l .| l
ｌ .! i _ ／_`ヽ /./ l .|i i | |i
. i |l .| ヽ戈ゥ,ミ ./／ '''ーl､|.i. | ! .|l
i l.l l / ー―'／ '`ヽ i iヾ､ .| .| | l
. li .i |/ﾊ ／ i ´弋ｚ､ヽ＼.| | |l i
| i ﾊ ./ ＼ﾆヾヽl l l l ｌ
ヽ ﾊ. ヾ| ` / | | 今の所、全部予想通りなのかしら？
>i ＼ ､ | / .| |
/´ | ＼ ` ー-- | ./ | |
/ | i |.＼ ,, - | /ヽ .| .|
. i .| .| | //|` -､'' l / ヽヽ、 i i
l | | |// | i´|＿,,,,-l / / ヽ､ヽ i i
| | | |l .i .| ／!/ ｌ / / ＞-､ i i
| l li | .| |.／i i | l | /／ ／ ` ､ i i
| .|| i | i|/ i i | l .| /´ ／
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| 虚空への問いかけに答えはない。
| 鷹野三四は『参謀』の正体を知らない。
|
| だが、なんとなく予想はついていた。
|
| フリットをモーリアンＣ．Ｏ．に。
| そして間桐臓硯を邪悪帝国に。
|
| 特に後者、『参謀』は間桐臓硯に『新宿駅地下迷宮』の情報を流した。
| これは誰とは言わないがよほど詳しい人間でなければ分からないのではあるまいか？
|
| 曰く、邪悪帝国の雪だるま共が『万魔』と手を組み雌伏している、と。
| 臓硯はすぐに手を打った。
|
| ケンシロウと『九鬼』を中心に、『教会』にも援軍を要請した。
| 『万魔』がいようといまいと、殲滅するつもりの陣営だ。
|
| 『参謀』はどういうつもりなのだろうか。
| 『新宿駅地下迷宮』は難攻不落のダンジョンだ。
|
| そこに潜む限り雪だるまどもには手が出せないはずだった。
| だが、あえてそこを攻めるという事は……。
|
|「勝算を提示したのでしょうね。恐らくは……」
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＼:::;イ ' ､ ヽ ｀ヾ;:;:;:;:;:;:;.ヽ
／ , :!:i ﾄヽ､ ｀ヾ.､ __.. :. V ::::V;:;:;:;: 〉
, ' .:' .;' :ﾊﾄヽ｀ヽ｀z≦=ァ ::::l :::::V ／
. /ｲ.:i :/::ﾒ､_! ＼ ´'ﾄｆj ｌ ｀Y :::l :. :::::::｢
. ' l.::|ﾚ'.:ｲrfij.! ヽゝ‐' ! ::;' ::::i::::::} もちろん、ケンには邪悪帝国へ辿り着けるルートを教えたよ。
Xイ ::ﾊ ゝ'､ /,:ｲ ::::|:::::j 『九鬼』は周到で用心深い。
ヾ V! , - = ｦ'' '´}:::! .::::;':::/
｀Tﾄ. ｀ ｰ ' /;ｲ .:i::/ﾚ' だが、『教会』の連中はどうかな？
|i ＼ '´7 .:::ﾙ′
l :::::>､ ＿_. ! ::/'´ヽ.＿ ,ﾍ__..ｨ､
ﾘ! ::::i::ﾊ:! _! ／ｌ:/ r-' /-!/｀ヽ
. ', :::ｌ' ｢ ﾚ' !' _〉､/ _ﾉ,:,:,:,:,:
ﾊ::::! ,ｲ!｢jト}!＼ !_ / 7,:,:,:,:,:,:;:
ハjzY/ / { iﾄ､ ＼ ﾍ/ Y´,:,:,:,:,:,:,:;:
r' V/ / {｀i´} ﾊ 〉 ,'´_j,:,:,:,:,:,:,:,:,:;:
} ﾊV/ {｀i´} ヾ＝' ! r',:,:,:,:,:,:,:,:,:,:;:
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| 『参謀』は笑う。邪気に満ちて。
| 『異端審問官』には参加を拒否されたが、『十字軍』と『教会』日本支部は『新宿駅地下迷宮』に攻め込む。
|
| どれだけが帰ってくるだろう。
| どれだけが迷宮に飲まれて野垂れ死ぬだろう。
|
| 臓硯の手の内が見れないのは残念だが、奴らを削れるのは喜ばしい。
| 特に、治安悪化に一役買っている『十字軍』を排除できるなら。
|
| とはいえ、懸念材料がない訳ではない。
| 奴らの本命、『蛇身』と『万魔』がどこにいるのか。
|
| 未だに水銀燈が邪悪帝国にいてくれるのか。
| 行方不明のアリカはどうしているのか。
|
| 攻勢が緩んだ隙に、やらない夫が体制を整えてくれるのか。
|
| ……いや、不確定要素を並べ立てても切りがない。
| 今はやるべき事をやるだけだ。
|
| この街の未来と、やる夫のために。
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, - ' ´孑ヌ -｀ : ､
／j⌒__{ 辷杉'r'￣ヽ-ヽ
,:'イ ,:: r--t____, ､ t::.. ﾍ
/i , _r'￣ ゝ'´Y `Y
_,.--}〃/ ' /!' }| !廴ヾ｝
Y::>'´ィ:::}| | { i / }|.| ., /}| /ｲ } }:ヽ
_ zV/:/:::/.{ i ===x. j |/ｲ.x===/ ﾘ::::ﾊ おかしいわ。
r≦´＜.／`/:::/ 八 Vi {ﾟ::ﾘヽ '´{ﾟ:::ﾘ〃 .／::_:::/
彳 ／ /´ ! | ＼ﾍ ｀¨ , ｀¨厶イ/{:{ヾ.', なんでやる夫さんの名前が
, ' ≠/ { {', ヽ , 、 / { i:| |:| , 大人気にならないの……？
/ ／' ハ ヾ､ {:＞ . . ＜:{∧{ i | | ∧
/ ／／ / ∧ V＼ V:ﾉヽ 孑 'ﾊ_,､!:::ﾍ-:| | ',､ }',
/ ／／ / 〈 ヽ ∨ ＼ ／ j}､ヽi}⌒ｲ :り!∧V} ',
./／／ ,:' ./ {_, : ´ ＼ Y{ ヾ:/>＜ﾆﾆﾆ≦ } ',}.ﾄ, ',
/,'／ ィ' ./ ／ r ∨{r===t_j⌒ー'´ヽ＞ﾘ Vﾊ
.{,'＜ / /./ 〈 , -- ､_:. ::{ ７､ ヽ 〈薔〉 }｛ﾍ! }
| ./ /./ ヽ r==x i Y__,.､ V 7 /_ノﾘ }7
./ / ,′ , ｲ ／ﾌY T ー─-vィ ／ ／∧
7 ,' { ,:'./ , '〈:/ }::', |ﾍ -:::::::::::::' r≦::::ヽ: } i .∧
| ' ｜ ' / / ﾉ／}/ ! j:ヽ ヾ≠i∨',::i | }
|,′ .!/ i / r彳 //! |//Y r/ };i ',:ヾ:/! .'
| | j / ヾ' ! | {_j ヽ// /
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| そしてこちら、自分の関係者に迫る危機など欠片も知らない水銀燈。
| 街で正義の味方まがいの行動を取り、やる夫の名前を出していたのだが……。
|
| 賢明なる読者諸君とて気付いている方は少なかろう。不人気の調べた噂話においてもやる夫の話題は一切出ていない……それは何故か。
| しかし、『突然の過剰な暴力を持って困っている人を救う』という噂になら聞き覚えのある方もおられるのではあるまいか。
|
| そう、やらない夫の噂である。
|
| いかなる運命の悪戯か、まずやらない夫の噂話が流れ、そこに現れた水銀燈。
| 彼女の過剰な暴力と救出は噂で聞くやらない夫そのものであり、パニック状態の被害者は人心地着いた後でふと腑に落ちるのだ。
|
| あれが、やらない夫だと！
|
| え？ やる夫って名乗ってる？ 恐怖で覚えてないんですよ。
| そんな訳で水銀燈は図らずもやらない夫救世主化の一助を担っていた。
|
| 行動を共にしている有希も思う所はあっても口出しはしない。
|
|「水銀燈、信頼できない筋からリーク情報が入った」
|「なぁに？」
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|:! .|::::::l::__;;;|_ l:::l｀ヽヽ;:::l ヾ;ﾚ‐'''ﾞﾞ´＼ :::::| ::::::::::::::::l:::::
l! .|:::／ ___ノ,ｨ'ﾄ|''=ﾐ､ ヾ! ,r-=fニﾐ;;弍;;| :::::::::::::::l~ﾞ'i 貴女の仲間が経営する企業が『教会』の攻撃を受ける。
l/ ,/ﾄ､::lﾞ__ﾞヾ::ii::|ヽ ,/ .|:::illi:::ﾞii/ |:::::::::::::::j¨ﾞ l
/⌒ヾ､|/`fﾄ l ﾞK);j .l'⌒''h. K);;;;ｯﾘ l:::::::::::::/ .ﾉ
/‐-､ `iﾉ /'ヽ|､ ノ ヾ､ ,/ |:::::::::::/=7ﾞ
./ ､. ヽ |ﾞV,_ l:::i､￣ 丶 ﾞ''ｰ-‐'' ,l::::::::::/|:;/
i 'ﾞヽ_j-' .|::::|.＼ ‐- ,,ｲ::::::::/ ,l/
ヽ ヽ jl:::::l. ヽ､ , ''ﾞ /:::::::/ﾞ｀ヽ､
ヽ､. /ヽ::::| ,,｀=ｰ '''i´ /:;/ﾚ'〉;:;:;:;:,.,＼
/ /. ヽ:| ,,r''ﾞ,.;:;:;r''ﾞ~ﾉ /ｲ /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
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|「信頼できないのよねぇ？」
|「しかし情報内容は信用に値する」
|
| 水銀燈はしばし考え込んだ。
| 正直彼らは神格としての大本が同じなだけで、派遣された目的が違う。
|
| 何が何でも助けなきゃならないという相手でもない。
| むしろ、入即貸本での失敗を活かすなら、ここで暴れては誰かの迷惑になるかもしれない……？
|
|「所で、誰からの情報なのぉ？」
|「誠」
|
| それは人間的信頼は皆無だが、情報内容は確かであろう。
|
|「なら、ここで一旦お別れね」
|「何故か」
|「また貴方を死なせるのは寝覚めが悪いわぁ」
|
| 有希は瞬きし、親しい者だけがなんとか理解できる程度に口角を上げた。
| 微笑み、そしてゆっくりと頷く。
|
|「無事の帰還を座して待つ」
|「任せなさぁい」
|
| それが叶わぬ約束とは露にも思わず。
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☆ 次回予告！
回り出した歯車。
撃滅作戦の再来。
モーリアンＣ．Ｏ．に。
新宿駅地下迷宮に。
そしてエックスラウンド研究所に。
荒れ狂う死の嵐。
いや、そうはさせじと勃ち上がる男一匹。
迫りくる破滅を、逃れられぬ死を。
止められる者を見つけ出す。
次回、最終幕三十八話『阿部貴和の決断』
果てに見るのは破滅か死か。
城之内死すみたいな一文がつけられてるやんけ！
この状況で阿部さんに打てる一手、果たして
フリット襲撃：アセム、狂死
邪悪帝国襲撃：ケンシロウ、九鬼、十字軍、教会
大乱戦になりそうだな
完璧な総括だ。ありがとうございます！
_ -――-
_-ﾆﾆ ｀丶、
ﾆﾆﾆ- ＼
-┤ﾆﾆ- _＿__ 丶
／: :/ 八ﾆﾆ ／====〉
__ノ: : : :|: : : :＼/=====/ |⌒＼
⌒7: /: : |: : :＞┴ミ =／ﾆ_ _-ﾆﾘ : : : |
: : |: : : :Y´: : : : : : ＼三ﾆ=----=ﾆ三/:| : : : |
|: :八: : 八: : : : : : : : :∨Ξ三Ξ三_／: :|: : : :j
|: i: : :⌒ヽ:＼: : : : : : : :ﾏ=――=彡: : : ﾘ : : /
}八: : :ト､: : : :ヽ: : : : : : :|: : ＼: : : |: ／/: : : |
＼|怺Y|: : : : : : : |: : | : : : ｀ﾆ水: :/: : : : |
. 丿vﾝ |: : :ﾊ: : : :l: : :| : : : ー/-:ｲ: : : : : |
_＿_ ＼ "厶イ: |: : :/: :.八: : : :, ﾞ／: : j : : :八 他に服はないんですかあ?？
|￣ | 人r‐､ﾉ: :|:／: : : : :|＼:/: : : : :/ : : : : : ＼
. ∩. ∨〉 ヽ彳:彡: : : : : : :|／｀Y: : : :{: : : ∧: |⌒
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｀、 j{ / / / ∧::|: |: :/:::| |::::| || || || | || ||
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|「おっおっ、よく似合ってるお」
|「隊服より似合ってるんじゃないのか？」
|
| メイド喫茶なのだ、コスプレ服の予備があるのは当たり前である。本当はメイド服が良かったがサイズが合わなかった。（よいAAがなかった）
| おろしたての服に袖を通したはいいものの、異様に短いスカートの丈が気になる鹿島。
|
| それもそうである。
| 彼女の下着はまとめて川に捨てられた。ノーパンノーブラのミニスカ店員という風俗店もかくやの装いだ。
|
|「本当に鹿島が居てくれて助かる。このスレは読者サービスが足りなくてな」
|「俺とやらない夫さんの間でこんなにも意識の差があるとは思わなかった」
|
| ダルの隠れ家で天龍達を待つやらない夫。
| だが、彼女よりも早く訪れたのは、胡乱極まる改造人間であった。
|
|「ミストさんお元気そうで」
|「やらない夫くんは痩せましたか？」
|「かなり」
|「そりゃそうだ、一般人がいきなり指名手配生活だもんな」
|
| ディオ共々ダルの協力者になっていた四ツ目。
| そして、ディオに拾われた上条たち経由で接触を取ったミスト。
|
| レヴリアスを奪われて虚脱し、見捨てられて以来である。
|
|「四ツ目さんはお元気そうで」
|「そういうミストはやる気になったか？」
|「お陰様で」
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,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ なら、いい。
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
<´o ' , ' , ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
｀）0 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
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| タバコを咥える四ツ目の少なからずニヤけた口元を、やらない夫は見逃さなかった。
| なんだかんだで仲がいいのだ。
|
|「そういえば、冥さんが死んじまっただろ」
|「なんだあのアバズレ、お前に色仕掛けでもしたのか？」
|「それは死にますね」
|
| やらない夫をなんだと思っているのか。そして冥の死になんの感慨もない二人。
| その奥で、色仕掛けの経験のある鹿島が青ざめる。あれって命の危険の伴うものだったの？
|
|「つーか、なんでお前ガキのお守りなんてしてんだ？」
|「彼らは俺の同郷と……なんでしょう」
|
| 一同に会している訳ではないが、『破滅願望者』五名とアトリーム亡命者四名、ディオにのけもの二人、やらない夫と『血族』足抜け二人。ついでに鹿島。
| ダル含めて十六名、一気に大所帯になったものだ。
|
| 一旦情報を集約することで、いくつかの手間を省く。
| 特に道が開けたのは『破滅願望者』であり、誠の居場所からジョニィ・ジョースターの背後に『教会』がいることまでまるっと判明した。
|
| 彼らの目的は流通する麻薬の差し止め。
| アトリーム勢は東京に故郷の轍を踏ませたくない。
|
| ディオはジョニィを排除したくて。
| のけもの二人はシロッコへのリベンジに燃えていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, -‐ ￣￣ ‐- ､
／ rn ヽ
/ }ｲ i
| .=-‐斧‐-､. | ,
ﾄ､_|､_.レ-＜二-‐――-二ﾑi__ノ|＿, 情報を統合すると、
≧: : : : : :ﾄ{fﾓﾃ")厂frﾓﾃ")}': : :´≦､ シロッコが麻薬をばら撒いているのは確実だお。
-=彡,: : : : ﾐ辷￣￣ .i￣￣フ; : : : :ヽ=ｨ
'´|ｲ/: :ﾄゝ ｀i '´ﾉｨ: : ﾇ'≦ 目的はアトリームの再来、
'リ7､ ∠〉 彳ヾ`｀ 大規模な新兵器実験環境作成の下準備と見ていいお。
_/ ｀ ‐- __＿_, ＜´ ∨
,=イ´ ゝ､ 〉ヽ､
ｨ＜ ｀ヽ､二‐- ､＿＿＿, -‐'´_ノ´ `ヽ､
-‐'´ ｀ゝ――――‐'"´ ｀ ‐-
／ ＼
/ ､ ヽ､
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| そしてシロッコの手下にジョニィがいる。
| 集まったメンツの目的は驚くほどに一致していた。
|
|「ボス以外はな」
|
| 合流した天龍が鼻を鳴らす。
| 彼女もシャワーを借りてメイド服に衣替えだ。
|
|「天龍、あしくまないよ」
|「なんだよシグ…………あー」
|
| マイクロミニなスカートを引っ張ってはみ出しそうな尻を隠す。
| 天龍もまたノーパンノーブラであった。
|
|「今度下着の換えも仕入れておくお」
|「ありがとうございます」
|
|「やらない夫くんの目的はなんですか？」
|「ん？ 弥勒菩薩の『末法少女』に成って衆生を救済することだろ」
|
| 気まずい沈黙が流れた。
| そんな中で、果敢にも挙手をするメガネが一人。
|
|「はじめまして、『破滅願望者』の雨宮です」
|
| 難しい話を理解できて、無闇に混ぜっ返さないからという人選である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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_ - ￣｀ 、
「 | ／//ﾚヾ､ ､ ﾄ､ ＼
_l | __ //'!//,L｀∨/////∧
ィ〈_f｀ L/ / /ｨt､W、 厂ヾヾ{ﾍl//ﾄ
.}_ﾄ┘/ ´ / 八ﾉ ｀¨´ f､///| 『末法少女』ってなんですか？
! ｀ _ノ {｀ rｭ /;Y//ﾊ!
`ト ;:「 L ﾊ _ -'" ,:' 从{
,斗≦ニf ｀¨i ,:' __L..._
!ニニニ| , -:┤.; ,:'. ハ: : :L_
|ニニニ! _ . . ハ: :/ ﾞ ,:'. |: : ヽ/: : :＞ ._
|ニニﾆ.| ＿ . . -=: : :i : /／∨、:. .::ノ: : : : : : : : : : : :＞,､
|ニニﾆ.! ＿ ィ┐i : : : : i: : : l! : : : //ﾆ≧≦| : : : : : : : : : : : : : /: i
|ニニニニニニﾆﾆ!:| : : : : l!: : :l!: : : !:/ニニニ.!: : : : : : : :i: : : : : /: : !
|ニニニニニニﾆﾆ|:|: : : : : l: :!:.!: : : |:|ニニニﾆ!: : : : : : : l!: : :|: /: : : ﾄ､
.!ニニニニニニニj:j : : : : : l!:!:|!: : : |:|ニニニﾆ|: : : : : : : :i!: :l:!/: : : : !:‘，
ヾニニニ=- ￢//: : : : ､: :l!: l!: : : !:|ニニニﾆ| : : : : : : : i:! |/: : : : :.i: : :＼
￣￣￣ ｀ヾ: l!: : : !:|ニニニﾆ|: : : : : : : : :i:.|: : : : : :.l!: : : : 〉
j: :l!: : : !:|ニニニﾆ|: : : : : : : : : i:!: : : : : :i:!:_: イ
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|「良い質問だ」
|
| その場の人間のほとんどが抱いた疑問である。
| 聞きづらいことを聞いてくれた少年に感謝と尊敬の視線が集まった。
|
|「具体的には説明がむつかしい。すごい神さまと契約して力を借りるすごいそんざいだ」
|「あやふや」「すごいそんざい」「むつかしい」
|
| 場の知能指数が加速度的に下がる。
| そんな中で、ダルの膝の上のシグがぼんやりと口を開いた。
|
|「いじゅーいんさまはげんせをまっぽーであることをぜんてーにして、
| でもみほとけはしゅじょーをおみすてにならないというかくしんをもっててね」
|「待って待って待って」
|
|「末法は釈迦入滅後千五百年で訪れる、『誰もが正しい教えを守らない世界』だ。
| 『それでも御仏を信じる』とアピールして、通常の加護以上のパワーが得られるんだぜ」
|
| 突然頭が良くなった感じのシグと天龍に、周囲の困惑が色濃くなる。
| だがよく考えれば、この場で『血族』魔術の専門家はシグ一人であり、天龍に至っては『末法少女』そのものである。
|
| そもそも天龍は、釈迦によって教化された神々、『天竜八部衆』及び河川から名を頂いたいわばリングネームである。
| 天龍と龍田の姉妹は八部衆の中でも龍、つまりはナーガの『末法少女』だ。
|
| 河川や雨、毒蛇を司る神格である。
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/ ′ { Vﾊ '，
/ / }]=-‐￢宀冖=‐- Vﾊ '，
/ / ]=‐￢ : : : : : : : : : : : : : Vﾊ／￣￣￣ '，
. / / ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :〈>､／￣￣￣ ，
/ 、∨: : : : : : : : : : : '， : : : : : : : : : : Tヘ、 }
＼У: : : : : : : : : : : : : '，: : : : : : : : : : :＼ ヽ ＿ ′
〃: : : { : : : : : : : : : : : '， : : ＼ : : : : : : :＼＿_ .ィ
{: : : : : ＼: : : : : : : : : : :ﾄ､ : : : }＼ : : } : : : : : : : :
{: : : : : /ｰ＼: : : : : : : : :!＿.､: :}___ ヽ/: : : : : : : : | 召喚や神降ろしとの違いは、
〈: : : :∧＿ ＼l＼ : : : 「///V//| | }: : : : :／: : :, なんつーかな、『自分だけにピントを合わせてもらう』っつーか。
. 〈 : /:.狄¨灯う ､: : |//////_| | }: : :／: : : :/
V|: : : l 夊り ＼}二二「＞く厶イ : : : :./、
'，:从 ヽ ￣￣ ＼}: :/: :/ : / : ＼
､: :＼ /: : : / : / ￣￣
＼: : >. ー‐‐ ’ ./: : ／}／_ --=ミ
}＼: : 〕=／⌒＼=≦ 厶イ-=≦ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼
}/}ノ^`く_ -‐ ヽ ﾏ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ'，
x==(_ -‐ '，_ノ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=ｉ
/ﾆﾆ=(_ -‐ }__ ,‐=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ!
{ﾆﾆﾆ={ ｰ 、 Ⅵ /ﾆﾆ|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=|
{ﾆﾆﾆﾆ≧= ヘ ＼／ﾆﾆﾆ!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=!
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「神の愛は平等で限りないものなのではないのですか？」
|「ダルさんのかんかくでいうと、しゅごてんしをえらぶのにちかいのかな」
|「なるほど」
|
|「その感覚だと、弥勒菩薩は難しいのでは？」
|
| ちんぷんかんぷんながらも話に食らいつく雨宮。
| 弥勒菩薩は未来仏。未然形の衆生救済者、神格はとても高いはず。
|
|「だが、『いつ来るかいまいち分からない』『未だに存在していない』という特殊性がある。
| 十分な魔力と人々の願いとかがあれば行けんだろ」
|
|「ミスト、言ってやれ」
|「俺とやらない夫さんの間でこんなにも意識の差があるとは思わなかった……」
|
| とは言え、現在この東京に「救世主願望』の機運が高まっているのは見過ごせない。
| やらない夫が何故か都市伝説的ヒーロー化されているのも散見される。
|
| ネット界隈では寺生まれのＴさんやコブラめいた鬱ブレイカーとして大喜利のネタにされ。
| ネタキャラとしての地位を築きつつあるほどだ。
|
|「つまり、必要なのは魔力と知名度なんですね？」
|「アマミヤくん……理解力高いな」
|
| メガネを光らせながら上げる雨宮。メガネキャラの面目躍如といったところか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
_ -─‐- _
／, ィ ヽ
／／//／/! ﾊ .ﾊ ＼
////イ'///∧ //∨/∨;|
' /ｲ< |'/ |//∧i////////;! 確実ではありませんが、
/| jfヾ{ W//////////// お手伝い出来る事がありそうです。
ノﾍ H---ヾ///ﾍ'/////
__入 ｀′ Wf ﾆ}///〈、
イ;.:.ﾊλ -=イj////ヾｰ. ､
ﾉ、| |:.:. ﾍ ` _／ :.:. ヾﾊ厂 ｀`ヾ:＼
ヽ ヽ!ノ : : : 7￣/｀ヽ :.: :.ヽ:∨
ド-イ｀fｰ' ハ:|: :|ト ; :.:.ﾉ:ハ
! !: | /: : ヽ :|| ＿_／／: : ∨
| | ./: : : : : i !､＿＞.´:_: -‐: ": : : : :.∨
| | ﾊ: : : :.:.::::ヽ:ｰ-:‐:"´: : : : : : : : : : : :∨
| ∨ヽ＼: : ＼:::}: : : : : : : |: :_:_:_:_:_ : : : : ∨
| :. } ＼＼: : ヾ: : : : : :i:ﾉ!´: : : : : :＼:i: /!
| :. へ＼入: : : : : ヽ!: : : : : : : /: |': :!
､ ／ ｀¨_ハ: : : ヽ:| : : : : : : /: : !: :|
＼ ／ ∨ 〉 : ‘，: : :::!: : : : : : /:/: ;!: :!
ｰ" ∨／:ヽ: : ‘，: : | : : : : : /:/: / : |
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|「町で噂話を広げるとかか？」
|「確かにそれは四ツ目さんにはできませんよね」
|
| 鼻筋を一文字に入墨が入る四ツ目は、そのイカツイ見た目も合間なり近づき難さが抜群だ。
|
|「機材が壊れるから発砲すんなお」
|
| 表情を変えずに突き出された拳銃。四つ目はそれを無言のまましまう。
|
|「僕らペルソナ使いは『夢世界』で戦ってきました。そして僕らの仲間には『そこ』を構築した能力者がいます」
|「そいつに、大規模な夢を作らせるのか？」
|
| 天龍の問に、雨宮は遠慮がちに頷いた。
| 規模が違う、人数が違う。だが、希望がない訳ではない。
|
|「『品川大聖堂の夢』に、クラスメイトが……ペルソナ使いの一人が出ていたそうです」
|「あー、一撃でやられた子ですか？」
|
| 現在のメンバーで、その夢を見ていたのは鹿島一人である。
| 広瀬浩一、印象は薄いが確かにそこにいた。
|
|「それは、僕らの『夢世界』と『品川大聖堂の夢』が類似している可能性を示唆しています。
| そして、一からの構築は難しくとも、何らかの方法で再利用ができれば……」
|
| 雨宮の論理は説得力があった。これは以前花京院や球磨川と煮詰めたものであるのだが。
| 説明役が自分で良かったと雨宮は嘆息した。球磨川は誠実さに欠けるし花京院はあまり表に立ちたがらない。
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／￣￣＼
rヽ ／ ノ ＼ ＼
i ! | （●）（●） | となると問題は
r;r‐r/ |. | （__人__） | 『夢世界』の魔術構築論理のすり合わせか？
〈_L (｀ヽ .} | ｀ ⌒´ ﾉ
l｀ （ ｀`/ . | }
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
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|「…………詳しい者は、今ジョースター側に付いてまして。ジョースターを排除するか理事長が見つかれば」
|
| ここで誠が立ちはだかる。
|
|「だがそいつを消すのはディオの目的でもある。早いとこやっちまおう」
|「『教会』と繋がりがあるなら危険ですよ、機会を伺わないと」
|
| 事実、ジョニィ・ジョースターは『カトルカール』を派遣してきた。
| 本人の能力はともかく侮れる相手ではない。
|
|「じゃあ誠さんか」
|「警察に拘留されているらしいですね」
|
| 不人気からの情報は委員長経由でアトリーム亡命者に伝わっていた。
|
|「一応阿部さんに電話をしてみよう」
|「ほいこれ」
|
| ダルが差し出したのは、ゴツい機材のついたプリペイドの携帯電話だ。
|
|「逆探知対策済みの携帯だお」
|「すごいなダル！ 伊達や酔狂でスーパーハカーのＡＡじゃなかったんだ！」
|「褒めても何も出ねえお」
|
| ちなみに、雪ダルさんは登場時モブだったし、あだ名をつけたのは偶然だし、現在の姿はノリと勢いの産物だ。
| と、ばっちゃが言ってた。
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,,..イ |
l _,,,...イ´ | |
ヽ、ヽ ＿_,,..-t''"´:::::::::::| l |
| ヽ:::::::::::::ノ / .|
ヽ、 ￣ ／ | 私は衆生救済機関『ヤルカイダ』の戦士だ。
｀ | 日本政府に対する我々の要求は一つ、
| 偉大なる指導者伊藤誠の解放である。
.:::::...｀` ‐┴----_以ヘ‐-､ |
:::::::::::::::::::::::::::::::::;/ｲ ´..:::::::::.ヽ、 .|
::::i;_;:_:::;_:::;, ィ'¨´::::::i:::;ｿ :::::::..＼ |
,r'-‐‐::'::::::::::::::::::::::::;ｙ' .::::... ｀¨`' ､. |
:::::::::::::::::::::::;:／ ..::::::::::::::￣｀ヾ､_ ｀'ｰ- .|
. ..:::::::::::::::::::;ィ'´ ..:::::::::::::::::::::::::::::::::::...`丶、 .＼_`マ
.::::::: ;:__;斗＞'´ ..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾ
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|「え」「え」「え」
|
| 電話がつながると同時に威圧的な声でやらない夫。
| 突然の蛮行に異口同音で青ざめる雨宮、鹿島、ダル。
|
| 対して、全く動じないシグと天龍。
| 四ツ目とミストは意地悪な笑み。
|
|『条件がある』
|「本場の『我々はテロリストには屈しない』が聞けると思ったのに」
|『警察はテロリストとは交渉しないぞ？ テロリストとはな』
|
| 面白がるような返答、阿部らしい余裕。だが、その裏に滲む普段にはない色。
| 焦りか、疲労が声に出ている。
|
|「誠さんを隠しておきたいならそれでいい。魔術の専門家の手助けを頼みたい」
|『…………』
|
| スピーカーの向こうで、誰かが息を呑む。阿部か、あるいは警察の誰かか。
|
|「ちなみに、情報源は真紅さんだ。彼女に誠さんの情報を求めた人間はオレの協力者でね」
|『魔術の専門家なら他にもいるのでは？』
|
|「世界を救う魔法を使いたい。
| こんなバカみたいな誇大妄想を現実にできるのは、大魔術師伊藤誠かうちの師匠しかいないだろ？」
|
|『確かにな』
|「それで、条件ってのは？」
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:::::::::::::::| ' ;!ﾞ {,
:::::::::::::::| i
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⌒ヽ.:::::} ∠二二三三＝'' ∠二二＝
´'ﾊ i:: | '´て"ｱヾ´ i"てj"ヾ,′
.r‐ﾉ レ' ￣￣ | ´￣ l
.{ i､ l |
､ ` | |
ヽ､ `i ,-､ ノ l 『教会』と『血族』との戦闘行動だと言ったら？
:::| ` ｰ, ´ ,'
/ ､ ,,．- -‐─ ､ /
ヘ __＿__ /
ヘ ｀~"´ /
', ＞ /
', ≫... _ '
', .:.:.:.: T＜
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￣" ‐-
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|『彼らがある場所に共同で攻勢をかける。それに横槍を入れてくれ』
|「それは……」
|
| まるで、『結社』撃滅作戦ではないか。
| スピーカーから聞こえる声に、一同の顔に緊張が走る。
|
|「失敗してテロリストが東京で暴れる流れか？」
|『確信は無いが、陸軍と合衆国軍はウォーミングアップを始めてるぜ』
|
| 鹿島の顔が青ざめる、無意識で腰のポーチを探すが、陸将五島ムスカへの連絡手段は失われていた。
|
|『興奮しすぎて先走りが大洪水、本番前にイッちまいそうな程にな』
|「マッチポンプかクーデターか……穏やかじゃあないだろ」
|
|『で、それが一区切り付くまで貸し出せない」
|「なら、横から殴って流れを変えるさ。参加するグループは？」
|
|『『武僧』と『超能力者』だ』
|
| 『武僧』……一同に緊張が走る。
| パプテマス・シロッコだ。それはつまり。
|
|「シロッコの方か？ アンデルセンさんとぶつかるのはゴメンだろ」
|「シロッコだ。『カトルカール』の相手はお手の物だろう？」
|
| それはつまり。
|
|「渡りに船とはこの事だろ」
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＼、__ﾄ.、
,､r=＝＝＞:.｀ヽ｀ヽﾄ、
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ）:.:.:i:.ﾚｰ-
. _＿,.､＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノヽ:.:.:ノ:.:.:⌒ヽ､
＞〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:ﾍVｲ:.:ﾍ:.:｀ヽ:.:.＼
／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≠x､lハｊ _,,ﾘ≠￢ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ィ＝ｭ} ｨ＝zﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ アトリームにも空き巣狙いがありましたよ。
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/ 我々とは比較にならないほど巨大な規模のね。
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
:::::::::://＞｛ii{;;;;;;/ / ｛;;;;;{ ／ / {::::::::::...,､:＜⌒＞:.､_
:::::::::{｛ 〃∧ヽソー-- 、 __人__{;;;;{ ｲ ｛::::／´::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::::::::::::｝ ____,,ゞ:::::＞､,,_____,,,､ｒ=＝」k;;j_ ノ ﾉ/:::::::::::::::::::::::::＞"⌒ヽ:j
∨::::://O / /:::::::l:.:.:{:::}{:::}:::::::/:.:/⌒/ｰ-､ ノﾉ:::::::γ⌒ー"´ }｝
j::〆K / /:::::::::l:.:.:.:｀7´::::::/:.:/ / O ∨ｲ::::::::::ノ ;j
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| そう、『カトルカール』が出払うならばその隙をつかない訳には行くまい。
|
|「狙いは？」
|「新宿衛生病院だな、なにかあるのは調べがついてる」
|「同時にこちらも動きます」
|
| 雨宮たち『破滅願望者』によるジョニィ・ジョースターの裏取りだ。
| 恐らくは彼が根城にしている生徒会室の家捜しとなる。
|
|「阿部さん、詳しい相談はできるか？」
|『手が空き次第向かう』
|
| ダルの元にやらない夫を導いたのも阿部だ。この隠れ家は知っていた。
| そしてそのダルは渋い顔である。
|
|「大規模な攻勢なら我々『異端審問官』にも声がかかるはず」
|「シロッコの独断の可能性は？」
|「ありますね、ジャンヌをないがしろにするとは許せん。調べます」
|
| 『異端審問官』としての重々しい口調に戻っている。彼の動揺が見て取れた。
|
|「そうだやらない夫さん。一つ確認なんですが」
|
| ふと思い出した様子で雨宮。少しいいにくそうに口を開く。
|
|「やらない子さんに何か伝えますか？」
|「あー」
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、 人
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i て
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i そ
ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ ＼_ _ノ ::::::） ﾙﾘﾉ 『こっちは問題ないから『破滅願望者』を手伝え。
ﾘ::::::( （ ●） (●::（ 馬鹿な真似は絶対するなよ。これはフリではないからな？』
. ﾊ::::ﾊ ,, rーｧ ﾘ） )
） ) ）、 ー' ノくﾊ（ あのクソアニキ！！ アフロ！ トーヘンボク！
（,（.( ' ﾍ い ﾉ:::））
ノ/）` ヾ ｿ￣（( 、
,' ﾉ Ｙ Y
l: （ ...... ..... i
lヾ. .. :::::::: ::::: .ノ
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| 外から見ると怒りで血圧が上がっているかのようだが、実際には兄の安否確認と直筆の手紙に大興奮の妹である。
|
|「……こんな主人公野郎を信じるの？」
|「でもこれ兄貴の筆跡アフロ。においもする」
|
| かばんから取り出したジップバッグに手紙を保管するやらない子。
| 戦術指南役、貞山青葉の席を占拠するオタクに理解のない四人のＪｋ。
|
| 備府やらない子。朝霧アサギ。糸川はやぶさ。霧野タカオ。
| やらない夫を慕う（？）彼女らは、号令がかかるのをずっと待っていた。
|
|「でもどうすんの？ あたしら破壊工作しかできないけど」
|「色仕掛けは？」「ウケる?」
|
| このクラスはレベルが高く、容姿に関しては整った女子が多い。
| 中でもはやぶさとタカオはどこに出ても恥ずかしくない。というか、雑誌や事務所から誘いが来たとか来ないとか。
|
| だが、容姿に関してはどれほど良くても、このクラスの女子は過激である。
| 中でもこの四人は無思慮に大量虐殺や無差別攻撃を選択しそうな雰囲気があった。
|
| 地下駐車場爆発事故？ ジャンヌ融解事件？ やらない夫と無理心中未遂？ なんのことやら。
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_ -‐ ￣｀ ､
／ l＼ヽ
//／//／∧∧ ﾄ､!//∧
///ｲ////_∨/∧}/////ﾊ
/// /ｲ//´＿}//////////へ
/ｲﾊ､Y' /∠_ }ﾊ////丈二 i /7
ﾍゞｿz{ ､り二_j__∨!/∠-┐| /
{〈 ヽ＿ノ￣ jﾌ_厂 ! !' 破壊工作しかできないなら
∧ __ __ノ{ﾉ' / 陽動に回すよ。
∧ ｰ｀ ..イ ／ /
ーt≦::::::: ∧ ｲ
_ -=ニ才ﾍ 、 / /;: !、
／ニニﾆ〈＿ }ヾ ./ / ,: !=＼
/ニニニﾆﾆ.＼＼ _'-/ ,: .!ニﾆ.＼
/ニニニニニﾆﾆ.＼_ イ/ iニニﾆﾆヽ
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/ニニニニニニニニニニ./ |ニニニニﾆl
/ニニニlニニニニニニﾆﾆ/ !ニニニニﾆj
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./＼ニﾆﾆ!ニニニニニニﾆﾆ.: | .:∨ニﾆﾆ/
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|「それより『マークされていない』ならその利を活かそうぜ。
| 色仕掛けは冗談にしても、平和的に呼び出せるんじゃねぇ？」
|
| 不意に、それまで女子に囲まれて縮こまっていた貞山青葉が小さく発言した。
| 視線が集まり、ゴニョゴニョ言いながら尻すぼみに目をそらす。
|
|「平和的にって、とうすんの？」
|「手紙で呼び出すなら……ら、ラブレターとか？」
|
| 声を裏返しながら青葉、ラブレター。ギャグの類いか？
|
|「やらない夫さんでおびき出せない？」
|「『備府やらない夫の妹から、彼のテロリストを匿うように頼まれた。友情もあるので警察も頼れない』」
|
| 一転とことん悪い声で青葉がスラスラと文言を口にする。
|
|「『噂ではジョースターさんは有力な方々と繋がりがあると聞きます』」
|「『犯罪者の手助けはゴメンなので処理してくれないか？』」
|
| 悪い顔の雨宮と、固く握手する青葉。
|
|「奴のプライドを刺激する文言を入れなきゃな」
|「あとは、早くしないと手柄に逃げられるという雰囲気を忍ばせよう」
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! ! | ; ./////// ,イ/////////////////////ﾊ
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／ -─┼|┼‐-､, |//ｉｌ/// |///| ＼////∧///// |//ｉ∧
.／ .／／￣ ! ! |｀ヽ |//|ｌ//| ⌒ |///| ⌒ ヽ////ヽ////|//|/∧
/ . ! ! | |//|ｌ//l |///| ﾞく==== ＞、|//|/// とりあえず待ち伏せて殺すのは任せてよ。
r‐-､ |┴| |//|ｌ//l |///| {＼／／/≧=､/// あいつ主人公だし。
ト-ｲ /＾Y´＼. |//|ｌ//lｚ=ミ|∧/l ,ｘ===ミ |> .くy─‐r一7//
|-‐!/o/´＼o＼ |//|ｌ//| V 〈／//| .ｨ//!///
入 /o/ ＼o＼ |/////{ "" ′＿ ""|////| //|//|///
_（ /＼/＼ 入o＼ |/|////ゝ． V ） |////|ｨ //!//!/∧
（ ＼__）／`ｧ─‐' /＼/. Ⅵ/////ｉ//＞ ﾆ´ ..斗＼|////|￣И／ﾚ::::::
（`ー-r'ヽ / r‐' ∨//ヾ!「≧ トへ._/ !////! ./:::'::::/:::::::::
`r‐‐' _/ ∨7:::／ ／ ＿__}＼|////|/::::::::::'::::::::::::
＼ ／＼ 厂:::::〉 / ＼::::::::::|////|::::::::::::::::::::::::::
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|「仲良くなれそうだよ貞山さん」
|「青葉でいいッス」
|
|「詳しくは球磨川と詰めよう。言葉で人を操るのはアイツが断然上手い。青葉も手伝ってくれ」
|「うぇひひ……任せてくだちぃ」
|
| アサギの妄言は完全にスルー。
| トントン拍子で話が進む。
|
|「あんたの幼馴染、役立つでアフロ」
|「でも悪党面が過ぎるのよね、もうちょっとスマートなやり方なら……」
|
| 誰よりも上手に自分を『操作』してくれる人物を求めるタカオの嘆息。
| 今の所筆頭候補は備府兄妹だ。
|
| だが、その備府妹やらない子は浮かない顔だ。
|
|「アイツが出てこなけりゃいいでアフロ……」
|
| 異能も、《滅ぼすもの》の能力すらも通じない圧倒的な暴力の化身。
| ヤザン・ゲーブル。その力を思い出してやらない子は身震いした。
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☆ 次回予告！
始まる前から混戦の様相を見せるモーリアンＣ．Ｏ．討伐戦。
同時進行だけど始まる前から敗戦濃厚な『邪悪帝国』殲滅戦。
『新宿駅地下迷宮』に踏み込む者に救いはないのか？
ない。
東京の地下に巣を張る女王が。
自らの道を定めた少女の拳が。
蘇るガンダムが。
彼らを地獄に叩き込む。
次回、最終幕三十九話『お前まで失うなんてごめんだ』
果てに見るのは破滅か死か。
さすがは邪悪帝国一の策士かしら〜？
> 東京の地下に巣を張る女王が。
> 自らの道を定めた少女の拳が。
> 蘇るガンダムが
ついにアリンコがシャッフルジョーカーを襲名するのか
モーリアン襲撃：カトルカール、杏子チーム、ストームトルーパー、X、警察（やらない夫に情報提供）→やらない夫らの横槍予定
フリット襲撃：アセム、狂死
邪悪帝国襲撃：ケンシロウ、九鬼、十字軍、教会
新宿衛生病院への空き巣狙い：
生徒会潜入でジョニィの裏取り：DIOら、破滅願望者
既に5つ盤面が出来上がってるのかな
HAHAHA 誤読しちまったぜ！
/ ＞ 、 / ／
./ ＞ 、 ,..:.:::..... / ／
/::: ＿_ ＞ 、 ,;::.;:::.;:::.,;:::,;:... . / ／ , ィ ´￣￣
|:: ／: _ ｀ ヽ ＞ -―.::‐;‐:;‐:.――――-. ／ ￣￣￣
|:: ,'::::: : ｀ 、 ｀ 、 .／ '::;:.:,;:.:,;:.; ; ＼／
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| 東京の地下には、迷宮のような下水道が蜘蛛の巣もかくやと張り巡らされている。
| それらを完全に把握していた曹操は『結社』撃滅作戦以降は姿を見せない。
|
| ほんの数ヶ月前までは、下水道は屍鬼がさまよう地獄の様相であった。
| 『万魔』台頭後はその屍鬼と屈強な下僕が喰らい合い、泥沼の戦いを繰り広げていた。
|
| だが、『万魔』が『邪悪帝国』に破れ、曹操が身を隠してからは地下道は放置されてきた。
| 『教会』も『血族』も、下水道探索に回せる人手がなく、『新宿駅地下迷宮』を得た『邪悪帝国』には不要の長物だったのである。
|
| その地下下水道に、一人の女が歩を進めていた。
| プラチナブロンドに青い瞳、感情の一切を合理性で覆い隠した冷徹の魔女。
|
| 『万魔』その人である。
|
| 勝手知ったる下水道を歩きながらも、『万魔』は隠形を解かない。
| ビリビリとした緊張感が張り詰めていた。
|
|（野良悪魔の巣窟となっているかと思いきや、これは……）
|
| 行き場をなくした思念体の凝りや、巨大な白いワニなどの悪魔がちらほら見えるのを想像していた。
| だが、『万魔』はここまで悪魔の類に遭遇していない。
|
| それはつまり、この下水道構内を『掃除』している輩がいるという事。
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ﾍ三三三三三三三三三三三三三三三|
∧三三三彡"ﾞ´￣ ヽ､￣ｉ￣゛`ヾミ三}
.}三彡'´ ｉ ∧ .|＼__ﾄ ｉ .ｉ λ
∨ ｉ λ .,' 入|'´＿ﾚ,' | .ﾄ-､ ',＼
| .∧ ハ | 代ひｦﾉﾚ.| .|´}.| .',ミ｀ｬ､
', 代牟ﾕ､| ｀‐´ | |ﾚ.ﾉ |ｯ ミヽ､
. Y .Kじﾉ | |イ , /ｼミ彡 ミ （一匹……いや、二匹以上）
| ｉ 〈 | | //三ミ ミ
| .ﾍ ｀ | .|ｼヘﾞ´ ｼ彡
| ヘ ' ￣ | |:::::::ｿ＼ミ三彡
| ｀ゝ､ ｀ ,ｨ行 |彡――-t､三
| .| ＼__ ｨ'´,,ｨ-‐| | | ',
ﾉ .| ＞'´ﾞ|:::T::::::::::::', ', ,ｨ-ﾗ┴―
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| 目を凝らし、魔力の痕跡を感じ取る。
| 凛や『弓兵』に感謝せねばなるまい。
|
| 彼らの教えを受けて、『万魔』は魔力の扱い方を心得てきた。
|
|（私に言えたものではないが、異様に『混ざった』奴がいる）
|
| そいつは知性がないのか、死にかけなのか、自身の肉片と魔力を落としながら動き回っている。
| 他の悪魔を食い散らかしながら力を蓄えているようだ。
|
| 名を仮に、『大食らい』とする。
|
| もう一匹は、死霊や思念体を集めている。軍団を構築していると思われる。
| 『万魔』や曹操のように、ここで旗揚げをするつもりなのだ。
|
| そちらを仮に、『レギオン』とする。
|
| 『万魔』は再びこの下水道内部で力を蓄え、間桐臓硯殺しに備えようと画策していた。
| であるなら、他の連中は全て邪魔者である。
|
| 『レギオン』の勢力がどれほどかは分からないが、いずれ衝突する時には面倒な相手だろう。
| だがそれ以上に危険なのは『大食らい』だ。
|
| 恐らくはこちらの想定できない動きをする。合理性など一つもないような輩に違いあるまい。
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_// /仏/.ｨ/ _ ｀ ､::::::::::::/
,勹{/ /｀攵ｧ,/／ }ハ ＼:::::/
,仍ｿ/ / , 7友|/ }:/
j幺》/ / _ ′ ｀'/ /'′
／´￣ ＼/ 厶 _丶 ./ /
/ ヽ 厂｀＼ _ イ /
. / ｝ |￣＼ ﾞ＜´ / ′ （この先に、私の『巣』があったが）
.' ＼ | ! ) 〉 / /
/ ｰヾ_从｜ / / ′/
/{ 八 { / く / /
. / / / ＼ ＼ V ,
, / /::. 0} ノ /
. // /:::. 乂彡'
} } /:::::::::::.. ∨/
,ｸ′ /::::::::::::::::::::::. j〈
{ く::::::::::::::::::::::::::::....ﾉ }
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| 下僕を量産していた時に、住居の代わりにしていた場所だ。
| スプリングの壊れたベッドがあるだけの場所。
|
| 『弓兵』にあてがわれた屋敷の部屋に比べると、殺風景どころか何もないがらんどう。
| すでに屋敷の部屋を懐かしくなっている自分を嘲笑う。失ったものを惜しむのは合理的ではない。
|
|「おや珍しい、客かね？」
|
| 思考は沈んでいたが、隠形は完璧だった。
| にもかかわらず、ベッドの脇に机と椅子を置いて何かを書き留めていた悪魔は顔を上げた。
|
|「それとも前の持ち主かな？ 家具を置ける空間は貴重でね。使わせてもらっているよ」
|「…………ッ」
|
| ボロボロのコート、血の滲んだ包帯を巻いた顔や手。
| その隙間から滲み出る死臭、そして、小柄な肉体に押し込まれた強大な魔力。
|
| 『万魔』は即座に回れ右をした。こいつは『レギオン』だ！ しかも、その首領！
| 死霊や魔力のゴミカスみたいななりそこないをこねくり合わせて怪物を作っている。
|
| そしてそれを、装飾品みたいに身にまとっている。
| 最悪、『大食らい』というのはつまり……！
|
|「礼儀を知らないお客さんだ」
|
| 『レギオン』が机に向き直ったことにも気付かずに、『万魔』はひたすらに距離を取った。
| 一目散に逃げるその最中に、突然立ちはだかる影。
|
| 背後ばかり気にして、前方が不注意だった。『万魔』は臍を噛んでそいつに向き直る。
|
|「うう……お前は！」
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く ／ .|__| ＼ > .／￣￣￣￣￣￣￣／| | | | i| | ‘， ＼ ／ /ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾ;:
ｆ二二二二二二i ＼／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_／ | |、 | | 匚] ＼ ｀ ── ' ／ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:
x┴x─‐、|__|x‐┴x‐‐､_|￣￣￣￣￣￣ | | | ＼──‐:| | .| | ≧=‐ｒｒｒ‐=≦爻ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:
｀{'⌒ヽ} :::: }:|__|{'⌒ヽ}::::::} | 匚] ￣|`ｰ| |,,_ ＼＿__| |'， | | ミﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;| | |ﾞ;ﾞ;ﾞ;爻ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:
‐乂__ノ___ノ |__|乂__ノ__ノ :| , | く＼／>､＼ | |∧／ ﾞ| |、 ミﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;| | |ﾞ;ﾞ;爻ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:;||;:ﾐ:ヾ;:
─┘ |´￣ |'.￣￣｢「 l :| 匚]匚] 爻ﾐ‐┴-くｘヘ > ｀ﾞｉ :| |ｰ:., | | ＼ ミ';'|¨¨¨¨¨| | |¨¨|ヾ;:ﾐ:ヾ;:ミヾ||ヾ;:ﾐ:
|＿__,|_',＿___Ｖ_| __,| 爻ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ| |ﾆ|‐- ,,_| :| | | | | |ﾍ ｘミﾞ;ﾞ;| 危,| | |険|;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ||====
====ｉｉ | __|__l‐┘| | | | 爻ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ(◯)‐|(◯)ﾉ"´| l丁 __| | |: |--ﾐﾞ;ﾞ;ﾞ;'ミ| :| | | |ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ﾐ;;||ΧΧ
ΧΧ|| | :|:::|__|￣ | | | 爻ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐミ| |ﾆ| |ﾞ;ﾞ;ﾞ;';'| | |＿|_,|| |＿|_,| |￣￣.:| 高電,| | |線|丁"""""" ||ΧΧ
ΧΧ|| |_,|,,,|__|＿＿＿|_|_|＿＿＿＿爻ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ミ;| |ﾆ|===ｎ￣| |￣| | | ｎ====ｎ | 制限,| | |高|└─── ||ΧΧ
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| 夕暮れの住宅街を、二つの影が寄り添い歩く。
| 一つはマリナ・イスマイール。高校の新任教師。
|
| もう一つは聖詠刹那。その生徒。
| であるが二人には別の、秘密の関係があった。
|
| ……そう、同じ事件で家族を失った孤児である。
|
| 二人は共に、約十年前のバス事故で悪魔に家族を食い殺された。
| 二人は『聖アンジェラ教会』孤児院で育ち、マリナは巣立っていた。
|
|「最近、元気がないのですね」
|「マリナほどではない」
|「学校では先生って……今は違うからいいかしらね」
|
| 上品に微笑むマリナの顔には、疲労が色濃い。
| 学校内のゴタゴタ、特に理事長の行方不明と教師陣の勢力争いだ。
|
| なんの因果か非行に走る生徒も飛躍的に増え、新任教師はてんてこ舞いである。
| 受け持つクラスでも何人かが連続して無断欠席したりしている。
|
|「もういいのですか？」
|「どうだろう。戦いのどこかで、オレはガンダムの記憶を全て失ってしまった」
|
| マリナもまた、『夢世界』の戦いに関わっていた。
| 彼女は、ペルソナの上位互換体を付与され『夢世界』の維持に利用されていたのだ。
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Vﾍ:.:.＼:.:.:V从ミ､:.:.:.ﾄ! V´ヾtツ´ |:.:.:.:.:.:.:.:.l//.:.:i:.:.:.:∧ それなら、
＼Vト斗ヾtツi＼| |:.:.:.:.:.:.:.:.|ｲ:.:.:.|:.:.:.:.:∧ もう危険なことはしなくていいと思います。
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|「あなたが無事でいてくれたらって、思い続けるのは辛いわ」
|「マリナ・イスマイール……」
|
| 女は嘆息して空を、黄昏時の黄色い空を見上げた。
|
|「では、逆に幸せとはなんだ？」
|「今ですよ」
|
| マリナの即答、少し寂しげに微笑みながら。
|
|「刹那が無事、危険は終わって、多くはないけれど一緒の時間を過ごせる。
| そういうあなたの幸せは？」
|
| 見上げた刹那の目に映るのは、慈母のような笑み。
| 夕日に照らされて黄金に輝く。
|
|「マリナ・イスマイール。あなたが笑ってくれることだ」
|
| それが、意図せず漏れた本音であることは、刹那の目を見れば明らかであった。
| 愛の告白めいたそれを口にした直後、少年は自分が何を口走ったのか認識して目を泳がせた。
|
|「いや、違うのか……？ なにか、もう少し」
|
| 刹那は瞬きしながら何かを考え、ゆっくりと唇を震わせた。
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／:::／:::::::::::::::::／:::::::／:::::::／::::::::::::::::::ヽ::ヽ
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/:::イ::/:::::::::::::::::/:/／:::::::／:::/:::/:::::ヽ::::::|::::::::::l:∧
/::/./:/::::､＿＿_l／＿::イ:::::::/:::/!::::::::∧:::l:::::::|:::V∧
. |:/. ':::|:::::::::￣￣「:Ａｌ‐Ⅵl::::::::!::/_ｊ:ｨ／―Ⅵ::::::|::::::V::`ー マリナ・イスマイール。
. l:| |::ｌ|::l:::::::|:::::::::ﾄｌ万汀lﾍ::::::|::|´ﾅ万ﾃ汀ﾘ:::::::'::l::::::::`=≦ あなたが悲しい微笑みを浮かべないことだ。
. `l ⅥⅥ::::::Ｖ::::::| ､)ｔ乏 ヽヽ:|::| _)ｔ乏ﾉ/::::::/:;:ト≧z―‐ 幸せな笑顔を向けてくれることだ。
｀l Ⅵ:::::::V:､:ヽ ,|Ⅵ ／:::／/:ｌ:|
`l::::|::|:ヽヽ:＼_ {| , ‐彡 ｧｌ::::/l/l′ そして同様に……。
ｊ::∧ﾄ､:､:::≧￣ _ _ ／:/l::/ ′
/´ l ヽA::::ｌ>、 ´ － ｀ ｲl:.从ｊ/
ｒ‐┤ ヽ!＼ヽ､＿ ィ／_!'⌒ｌ､
＿ｒ‐/ , 人 ＞┴‐┴＜ ∧＼― ､
_／ , / l∧ ＼ ／ lﾉ ) ＼
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|「オレたちのような目に合う子供がいなくなることだ。
| 理不尽で突然の暴力で、人生を歪ませる子供がいなくなることだ」
|
| 突然、熱に浮かされたように。
| あるいは水門が開いたかのように、勢いよく、とめどなく。
|
|「牙なき無辜の民が暴力への恐怖に怯えないことだ。
| 繰り返す悪夢によって、子供が夜中に目覚めないことだ」
|
| マリナはそんな刹那を見て、何かを悟ったかのように目を伏せた。
|
|「思い出したのですね」
|「いや、依然としてガンダムが何なのか、全ては霧の中だ……ただ」
|
| 刹那は己の手のひらに目を落とした。
| 見慣れた手、指紋、手相。これが自己。
|
| そして同様に、これまで曖昧だった目的が明確になる。
| 内側から溢れ出てくる切ないほどの願い。ガンダムを失ったことで、覆われていた自己。
|
|「ガンダムであろうがなかろうが、オレはオレに変わりないということだ。
| これがオレだ。この祈りを、オレはガンダムと呼んでいたのだろう」
|
| マリナは諦めたように息を吐いた。
| そして、これまでとは違う、晴れ渡るような笑みを浮かべた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/:::::::/::::::::::::, ‐| :::::::::::|:::::ﾊﾉ八::ﾉﾉ}:::ハ｀::/:::::|:::|
. /:::::::/::::::::::::〈 | :::::::::::|ヽ{斗≠ミ /ノ,,xl:::/:/:∧ﾉ
. ／:::::::/ :::::::／ ::ヽ,| :::::::::::| '´ { |/ノノ
. ／:::::::::::'::::::／ ::::::::::::.| :::::::::::| 丶|:::::::.|
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. ／::::::::::::厶‐─- 、 :::::::::::::∧:::::::::::| ｰ= ' ｲ :|::::::::| これからまた心配をかけるのでしょうけれど
:::::::::::::／ : : : : : : : ｖ≠-‐'′!:::::::::::|,` ´/:::::/! ::::::| やっぱり刹那は、そういう顔の方が素敵だわ。
:::／∨: : : : : : : : : : Vﾊ l ::::::::::|｀＼｀:ー:::´::／|:ｌ::::::::|
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| 指が絡まる。
| 少し荒れたマリナの指が、秋風で冷えた刹那の手を取る。
|
|「綺麗だな」
|「え？」
|
| 触れ合った手と手が、互いに冷えている筈なのに恐ろしいほどの熱を持つ。
|
|「最高の笑顔だ、マリナ・イスマイール。真紅よりも綺麗だ」
|
| 自分の知る世界で一番美しいものを比較した刹那だが、マリナはちょっと驚き、小鳥のようにクスクス笑った。
|
|「その比喩は、他の女の子にはしない方が良さそうよ？」
|「？？？」
|
| 理由を理解できない刹那、おかしくて仕方のないマリナ。
| 二人はそのままマリナのアパートまで手を繋いだまま歩いて行った。
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. /ヽ ＼} |ヽ ヽ＿ , V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| | .| { ヽ }ヽと`ｰ 〉: : : : : : : : : : : : : : : : : :
| | ! ! V（ﾉ {: : : : : : : : : : : : : : : : : : わー、
{ { ＼ / ／j j: : : : : : : : : : : : : : : : : : 『教会』と『血族』が手を組んで
. ＼ ヽ ＞､ ／ ./ ./{: : : : : : : : : : : : : : : : : : 『新宿駅地下迷宮』の雪だるま共を攻撃するってよー。
. ヽ ／.ｒ､)`ｰｒ-‐' ./: :| : : : : : : : : : : : : : : : : :
{ { ｨ ィヽ /: .: :｀､: : : : : : : : : : : : : : : :
〉 ヽヽｰ} .／: : : : : :ヽ : : : : : : : : : : : : : :
V ヽ | ／: : : : : : : : : ＼: : : : : : : : : : : : :
V ヽ _／: : : : : : : : : : : : : ＼ : : : : : : : : : :
V !ヽ￣￣ヽ : : : : : : : : : :.＼: : : : : : : : :
／ ＿＿ _ |: : : : : . ＼: : : : : : : : : : :＼ : : : : : : :
／ ﾉ: : : : : ／ : : : : : : : : : : : :. :＼: : : : :
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| アリカに聞こえる大きさで、エダがビールを片手に騒いだ。
| 面倒くさいから回りくどいことは無し。
|
| 直球で聴かせる。
|
|「『十字軍』が出てくるってことはもしかしたら、一般人にも被害が及ぶかもしれねーなー」
|
| さすがのエダも、異界化したダンジョンではなく、
| 現実の駅で銃器を振り回して大量殺人が発生する可能性は想像していなかった。
| だが、相手が相手なので何をするか分かったもんじゃないというぐらいであった。
|
|「エダちゃんも参加するの？」
|「日本支部は窓際だから、手柄にならない雑務ばっかで現場出れねーんだー」
|「へえー」
|
| エダのびっくりするほどの白々しさに、一切疑問を抱かないのか。
| あるいはわかった上で無視しているのか、普通に接するアリカ。
|
|「そーいや、こないだマイケルに発注した戦闘服の試作が届いたんだけどな」
|「うん」
|
|「胸のサイズが合わねーからやるわ」
|「え、いいの？ ありがとう？」
|
| 突然の話題変更。いや、違う。
| 「それを使え」というストレートな指示である。
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| ここだけの話だが最初からアリカ用を発注。サイズもピッタリ。
| しかも覆面まで用意してくれたので正体がバレる心配は……アリカだからなぁ。
|
|「詳しい日付は後で教える。あと、もしも介入するにしても正体はバレるなよ？
| バレたらしかたねーけど、ウチで匿ってることは絶対秘密だかんな？」
|
|「はーい」
|「それと、他の奴を誘うにしても顔は隠せよ」
|「ええと」
|「裸目隠しは却下だかんな！」
|
| そんな訳で。その晩声をかけたイナミは鼻で笑った。
|
|「俺は辻斬りだが、そりゃあ『ネクロノミコン』を探してのことだ。ママゴトはてめえでやってな」
|「うん、見つかるといいね」
|
| 愛刀の修理を終え、師弟関係はこれでおしまいである。
|
|「もし『ネコロビミカン』見つけたらどうやって連絡つければいい？」
|「鍛冶屋の所は中立地帯だろ？ あそこに伝言を頼むわ」
|「顔を見せてくれたらマイケルのおじじも喜ぶと思うよ
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|! ニ＝
t､＿ニ＝＿＿ _ｊ
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ｊ:::ミﾑ ヾﾘ j! じゃーな。
__{⌒ヾ::ﾄ ｀ｰ=ーｧ ,ｲ⌒ 死ぬなよ。
ｒ､ヽ､ r, ／_ム ｊ ≧。 ¨ ／人_ ｊ
ｒ､ヾ､｝ﾄ､｣/ ｨ _ア ゝ彡 --イ (::ヽ＿
｀ヾ＞//ﾊ ｒ‐’⌒ ﾏ､:j r::{ ≧､
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|「イナミさんも」
|
| 結局『蒼天の青玉』は直っていない。
| アリカは普通の女の子のままだ。
|
| イナミの訓練でアリカは『新しい眼』を開いた。開いたが、抜本的に強くなったとかそういう訳ではない。
| 『教会』の『十字軍』と戦うとして、その理由はなんだろう。アリカは考える。
|
| 顔見知りの雪だるまたちのため？
| 『秘密結社入即貸本』の仲間だから？
|
| 何かが違う気がする。
|
| やる夫の顔を思い浮かべる。次いで『弓兵』を、そしてアンデルセンを。
| ああ、そうか。そうなのだ。
|
| 平和を脅かす、人々を傷つける悪魔は退治して然るべきだろう。
| だけれど。東京には、人間と共存している悪魔がたくさんいる。
|
| 『邪悪帝国』もそう。『糖分同盟』もそう。
| アリカにしてみれば彼らもまた東京の一部なのだ。
|
| 『ばっちゃが守ってきた東京』の一部なのだ。
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:./ﾄ ヽ!ヽ::.:.:.:.:.:.:l ｀丶ヽ ＼::.:.:.:.:ﾄ::::.:.:.:
ﾄﾍﾄ ＼:::.:.l:.! ｀ヽ ＼:.:.:|ﾊ:.:.:.: 『あたしの』街で、
l ﾄｨヽ ―--､-..､_ ＼:{:{ _ ..-zｧ=― ヽ.|ｲ:|:.:.:. 好き勝手なんてさせない。
ヽｰ r ｀丶､ミ:.､＼、 ／;:∠´ ｀! |.:.:
. ＼ヽ ｀ ｰ｀ヽ ‐´二´ ﾉ /}:l./
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| 掴んだ。
|
| 拳を固める。両手を打ち付ける。
| これだ。これがあたしだ。
|
| 夢宮アリカだ。
|
| だからなんか無茶苦茶やる『十字軍』や『異端審問官』は許せない。
| ニャルルンは追い出さなきゃならない。
|
| 普通の人たちの普通の生活を。
| 守るのだ。夢宮アリカが。
|
| 借り物の武器を持ったうそっこの戦士ではない。
| 普通の女の子の。
|
|「夢宮アリカ」
|
| 決意を新たにするアリカの背に投げかけられる声。
| 振り向かずとも誰なのかわかった。そして彼も、何かを掴んだと確信できた。
|
|「一緒にこの東京を守ってくれる？」
|「ガンダムならぬオレだが、精一杯頑張ろう」
|
| それ以上の言葉は、無用であった。
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入_ Ｌ. ＿ ヽ 厶 ´ ￣｀ヽﾊ
/ヽ ├‐= ´￣| | , ‐ﾆ￣ ヽ!
/ ＼ ｜ _｣ r' _ -＜二ニ_」
/ /ヘ、 | _／´ ! レ' _ﾆ_卞Fr-､|
// ＼ 「 _ ｌ } _,frﾟ彡Z二`ｰ<! 随分とまあ、汚い街だ。
＼ 〃 入 l _ﾆ-┤ [>匕trriｴｴ7ｧY|
｀く / ＼ ├テ´ ﾍ レII ト＜rｪｪｭ」jﾄ､
ヽ ／ ＼j ／ ∧」＞‐ ニ-‐ T ￣＼
＼ 〃 ﾉ ' ／ 弌 ┼ ＼─- ､ _
く ／ ／ 入 十 ＼ ｀ ＞
７￢─- ﾄ､ _ ,／＿ ノ ／ ヽ＿＿＿⊥ -‐ _二) ／
/ / ／／ ／ 弋ｧ─‐ァ￢ 二厶-ゝ=,ニ __‐─‐ｧ
/ / ∠／ ィ /＾Tｰ= ７￣ / / ヽ ￣_＞‐-､
ァ‐-┬ ' ／ ／/ | 〃 ｌ|l ,′ 〃 | _ 斗‐ ´ / , |
| 〃 ／ / ! {! 川 l | {i| _,. - ´ | // ヽ
j} / ／ / j} ,ｲ! ｌ | _ ィ ´:.:.:.:.:.:.:..:.:| 〃 ＿ ゝ
ヽ / 〃 / / / |! Lﾉ＜_/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..! ∧ ｀ｰ ＼
Ｌ.人__ ／/ / / / l{ ＿／:.:.:.:, -- ､.:.:.:.:.:.:.:.:.:..| / ヽ
| l ｀ く／ ,′ / / _／:.:.:.:.:.:.:.:.:.{:.:.:.:.:.:}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:! / ヽ
｜ l ヽ ＼ ／ / _ノ─‐ァ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ー‐´:.:.:.:.:.:.:.:.:..ｌ / |
､ ﾄ､_ヽ ｀く ＿＿ 厶r ' ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ / L
ゝ ト- ゝｧ‐＜／ / ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l/ 「｀＼
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| きらびやかな地上と比例するように、どす黒く淀んだ思念や欲望が地下に溜まっていく。
| 汚いものから目を背けている人間そのもので、嘲笑すら生ぬるい。
|
|「でもまあ、そんな街が好きなんだがね」
|
| 彼は、堕天使ネビロス。
| 『入即貸本』の客の一人、紳士ウェルバーの従者として暮らしてきた男。
|
| 彼は今、地下の魔力を収集している。
| 魔力と聖地と媒体。この三つが揃えば高位悪魔でも案外容易く召喚できる。
|
| ネビロスはすでに聖地には目星をつけており、媒体は用意してあった。
| 残るは必要な魔力をかき集めること。
|
| 懸念材料は、彼同様に地下道を根城にする怪物だ。
| ネビロスが『頭欠』と呼ぶそいつは、複数の異能と超強力な魔力結晶を抱えた知能のない殺戮者である。
|
| 奴を倒せれば目標魔力に手も届くが……いかんせん、あまりに強力で手が出せない。
|
| 知能がなく、痕跡だらけでウロウロするくせに、狩りのときの隠密性能には度肝を抜かれた。
| 先程の女に気付いたのも、ネビロスが忍び寄る者に対して神経質に防御を固めていた結果である。
|
| 『頭欠』を最後に確認したのは新宿地下……しばらくこちらに来ないと助かる。
| あとは、まあ、先程の女が襲われないといいなとかそんなぐらいか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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∨二二二二＞ { ＼二二|
∨二二ﾆ／ ／ ∧ l ＼ ＼二,
∨二ﾆ/ / / ／ ', :| / ＼ ∨〉
∨ﾆ/ / 厶イ ｜ /! | | ＼ ',
{_/ |: / ―― 、 l /｜ ::| | トミ=- |
,．'´ :|/ ┬―==ミx, ﾉ 八 :|＿|＼ | |
,．'´ . :/l ｛ / ハ ｢ ＼{＼{ヽ ∨ / /
,．'´ . : :/{ | 乂ツ /⌒丶 ∨ / /
￣￣´ . : ／', | / ハ ＼, / /-<
,．'´ . .. . : :／ 八| / 乂ツ ノ/ /´ ｝
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. : : : : : : : . . : :，'’ ＿_从 ／ /__／
: : : : : : : : . : : : ::，'’ ／ .:.:.:.:.沁. r― 、 ＿.,．'´ /: : | お、お前は……！
: : : : : : : : : : ::，'_. ┌‐┘.:.:.:.:.:.:.:〈沁. ￣｀´,．'´ /: : : |
: : : : : : :.:／:，'’ ＼ |.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. l.:./＼ ,．'´ . : :／: : : : |
: : : : : ／´/ ／⌒L__ .:.:.:.:.:.:.:.:.: |/＼__> '´ . . : : ::／^Y: : : :人
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| 『万魔』は金縛りにあったかの様に動けなかった。
| 敵を前にしていたなら致命的な隙であった。
|
| 立ちふさがる人物は下水への不快感かひどい顔色だった。
| への字に曲げた口、青黒い隈、脂で固まった髪、泥と下水と得体のしれぬもので汚れたコート。
|
|「ヒッデェ臭いだな、お前の息よりくさいぞ」
|
| そいつは手を差し伸べた。ぬめぬめしたもので汚れたゴム手袋。
| すぐに気づいてそれを外す。
|
|「さ、最近は人を食ってないからマシになったろう」
|「うるさい、口答えするな！」
|
| 怒声に、『万魔』は萎縮した。こんなにも弱っちくて、去勢を張るポメラニアンみたいなのに。
| 叱られることが怖かった。
|
|「お前までいなくなったら僕が困るんだよ！
| 何がよろしくだ！ 契約中なのに勝手にいなくなりやがって！」
|
| 拳を振り上げるそいつに、『万魔』は成すすべもなく狼狽えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ノ::二::ヽ'⌒＼
ﾉ:::ア:::::;ヾ／::::ヾ:ヽ
/:::}:{:､::::ﾉ〜＜{::::(::::::ヽ 早く帰ってシャワーを浴びるぞ！
}::/:::K:「 ヽ ﾉ )ノ}::::}:::l
r､ ｲ::{:::::}ｨ笠ヾ /ｨtヶ､);::::N 臭いが抜けたらどっちがくさいか確認してやる、
､＼ ):fヾ( } ￣ ヘ{ 覚悟しとけよ！
〈ヽ＼ ヽ_」 , ==､ /ノ
｀! ヽ＿ _ -─j込 ヾ--' ｨ::{_
r- _ノ /-_-_-_￣-_-_-_-_､＿＿ ＿_,.-==r＜-_-_-_-Ｌ...L＼＿／_」/-＼
＼_,.｡-={_-_-_-_-_-_-_-_-_-_＼-_-＼-＼-_|-_-_≧､_-_ |;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i/-_-_-＼_
` -=ﾆ-_-_-_-_-_-_-_-_､-_-_＼-ヾ!_-_-_-_ ＼-|;ヽ;i;i;i;i;i／/-,.｡*-ﾆ _∨=-､
￣ -=ニ-_-_-＼-_-_＼|-_く＼_-_-_ヾ;i;i;i;i;i;i;i;i;i;|イ-_-_-_-_-_√_|
￣ -= _-_-| _-_＼.>_-_-|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;l-|_-┌─┐.√ノ＼
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| 掴まれた肩。そこから全身に甘い痺れが駆け抜ける。
|
|「だが、私の目的上、貴様らとの行動は合理的では……」
|「人間に戻りたいんだろうが」
|
| 見透かされていた。
| 触れた部分からも心音と今の思考が筒抜けなのではあるまいかと、『万魔』は高鳴る鼓動を必死に抑えた。
|
|「人間に戻って、じいさんも人間に戻せば、十年もしないうちにあっちはくたばるだろうよ。
| 機械につながって哀れな姿を晒すじいさんを一緒に笑うぞ」
|
| 十年後も、一緒に？
| 思考回路はショート寸前、ハートは万華鏡。
|
|「帰るぞターニャ」
|「……………………うん」
|
| 名を呼ばれ、『万魔』はもう耐えられなかった。
| 手を繋ぎ、下水道の出口に向かう。
|
| 彼を独り占めできる。そんな今が永遠に続けばいいと、少女は願わずにはいられなかった。
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☆ 次回予告！
こ、今度こそ始まる殲滅戦！
師走の乾いた風が血を乗せ吹き荒ぶ。
黄昏時、逢魔が刻。
人と魔と、そしてどちらでもない者たちの宴が始まる。
そしてそれは、これ以上ないほどのチャンスの到来を意味していた。
血しぶきと硝煙の中で、手を伸ばし叫ぶ。
愛するその名を。
次回、最終幕四十話『世界の中心で愛を叫ぶ』
果てに見るのは破滅か死か。
慎二や万魔達は教会・血族の作戦に乗じて動くかどうか
他勢力がそっちに戦力をつぎ込むので、爺に何か仕掛ける隙もありそうだけど
あ、あまーい
なんか今までのメンツだとやらない夫が一番不安に駆られるゾ……やる夫ー！早く来てくれー！
何のチャンスだろうか……
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, 'ﾆ￣ﾆヽ
（ 二ニ ﾆ）
／~＼ ヽﾆ＿ﾆノ ,／⌒ヽ
＼ 〜 ､ ／⌒ヽ,, ／ ＼ ／ ^ヽ､
ヽ,,,／ ＼_ ,,,,,／ '''' ＼,,,／ ＼ ／
~ ー '
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田 田 |:::..| ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ |.::::| 田 田 田 田
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田 田 |:::::| | ＿_ ＿＿＿＿＿_ ｜ | |:::::| 田 田 田 田
|:::::| | |//| |//////////| | | |:::::| 日
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| モーリアンＣ．Ｏ．への攻撃の開始時間は平日の16時半であった。
| 一般企業は定時直前、気の緩むタイミングという判断だ。
|
| モーリアンＣ．Ｏ．の本社ビルは五階建てで、案外とこぢんまりしていた。
| ここでの業務の殆どは管理と事務であり、工場やプログラ厶業務は別の場所で行われていた。
|
| これはモーリアンＣ．Ｏ．を略奪すようとするシロッコには極めて都合のいい話で、
| 火器を用いて本社を制圧、現場は残して業務不能の状態にするつもりだ。
| 頭だけ潰して手足を奪う、そう都合よく行くとは限らないのだが、そこは天才がやれると言うならやれるのである。
|
| 『教会』所有の大型トラックが数台、やけに静かに停車する。
| 中から現れた揃いのボディスーツの女『武僧』達三十人あまりが静かに動いて周辺200メートルを封鎖。
|
| 『血族』から派遣された杏子班も封鎖を手伝う。警察はその外、一般人を避難させる。
| その間に、別のトラックから現れた十二人の白鎧の兵士が、隣のビルに侵入。
|
| 『ストームトルーパー』。ダースベイダーの手足であり補助脳である群体を配置。
| ダースベイダー本人は超能力で空中歩行、音もなくモーリアンビルの屋上庭園に着地した。
|
| 見下ろす窓の下、大型トレーラーがウィングを開く。
| 思い思いの奇声を……上げずに、真っ赤な怪人共が行動開始。
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| 空中戦力であるため、待機状態のオニヤンマと爆弾蜂。
| その横に、巨大なアゲハチョウの羽根の女が一人。
|
| 戦車男と女トナカイ、エンジン拳が先頭。正面突破の構え。
| 怪我の治ったバレリーナと露出狂、そして軟体男とノミ脚が続く。
|
| 最後に、黒豹を思わせるしなやかさで、隻腕の男がゆっくりと歩む。
| 総勢十一名。情報戦に特化した一名を除く総戦力である。
|
| そしてその情報戦タイプは遠隔ハッキングした自走戦車レヴリアスで裏口を詰める。
|
| 趣味の悪い真っ赤に塗られたレヴリアスは、ゴム弾を実弾に、放水を火炎放射器に、
| 対人ネットは超強力な電磁ワイヤーに差し替えられていた。
|
| 他にもクローには雷撃器が据えられ、榴弾砲に対空ミサイルも完備。
| 暴徒鎮圧どころか一台で戦争ができそうな姿に成り果てていた。
|
| 時間ピッタリ、『カトルカール』が先陣を切る。
| トナカイと戦車男が正門のガラス張りの自動ドアを突き破る。問答無用の機銃掃射。
|
| エンジン拳が爆音と共に自分を射出、二階の窓から突入。追従するアゲハチョウ、その右腕に生えた大型機関銃。
| 見える範囲の動くものすべてを破壊する勢いでダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ！！
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。ｒ≦≧s
／> ´￣ヽﾆ.}
,ｲ／ }ﾆ|
. ,'/ /ﾆ/
{,' ,ｲﾆ/ ＿
| ./ﾆ./ 。ｒ≦￣￣＞/=/ カリカリガリガリ！
/ﾆ/ 。ｒ≦.:.:＞ﾍ ´.:.:.,ｲ=./ カリカリガリガリ！
/ﾆ/ _, -- ､‐ヽ.:.:ヽ>´.:.:.:.:}／ /=.{
/ﾆ/ .,ｲ(::::::::,ｲ､ ﾔ.:.:.}.:.:.:.:,ｲ 〉 ｉ￣￣.:／
,ｲニ} { ｀￣--.´ｉ ',.:.|.:.:./ ,ｲ ./.:.:.:.:／
. /ﾆニｉ_ ﾏイ/;;;/ｉ ｉ ,' ヽ / ／ .／￣／ヽ/__。=､
/ニニニ≧====ｉ;;;(ゝ---ｲ .,ｲ／ > ´====' ｉ.:.:.:.:.:.:Y､
｀＜_ニニニニﾆﾆゝ;)ニニ /.,ｲ ／ニニニニニゝ__ｉ､＿ ノヽ ≧=-
｀ ミ==､ニニニニ＞/ 〆ニニニニニニニニニ／＿ ＼＼ ｀≧ｓ。
ゝ､ﾆ／/./ / イゝニニニニﾆ',ゝ､ニニニニ＞=--､ヽ ヽ ｀ヽ＿＿
// ,ｲ .}ニニニニ〆 ｀￣￣￣ ｀ ＜ ＼ ヽ ヽ
. //./ .ｉニニニニニ≧s。_ ｀ ＜ ヽ ＼
,ｲヽ/ {ニニ＞========ﾆﾆ} .ヽ ｉ---'
{ ノ≧s ｀ ´ ／ﾆノ } } ｉ
yゝ-ｲ／ {´ﾆ <､ ,' .〉}
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ｉ ,' ! ヽ }
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| 正門から四名が突入。
| 室内戦に馴れた連中が生き残りを確実に殺戮。
|
| 一般人も悪魔も、この会社の者も訪問者も区別なく、全員を殺す。
| 躊躇いも容赦もなく。
|
| 突然の出来事にまだ混乱は起きない。
| あっという間に血のプールになる一階守衛室、持ち込まれた機材を繋げられ、電子的ハックを開始。
|
| その間に二階で暴れるエンジン拳と、外から掃射するアゲハチョウ。
| 砕けるガラス、何も理解する暇もなくバラバラになる社員と事務用品。
|
| 階段を登ってきた露出狂が股間に生えたコンドーム付き散弾銃をしごく、運悪く出会ったサボりのＯＬを射殺。
| 破裂するコンドーム、意味不明。
|
| 地下駐車場に侵入した爆弾蜂が各通路とエレベータにトラップを設置。
| その間にトナカイが次々に車に突進、力技でぶっ飛ばして出入口を封鎖。
|
| 屋上から侵入したダースベイダーは、出会う相手を超能力の壁で殴打。
| 人間は気絶させて一箇所に、抵抗する悪魔は外に配置した『ストームトルーパー』の狙撃と連携、確実に撃破。
|
| そうこうしているうちに混乱が発生。
| エレベータに殺到する人々、トラップ爆弾でまとめて吹き飛ぶ。
|
| 羽の生えた悪魔化して飛び出す者たち。
| オニヤンマと『ストームトルーパー』によって次々に撃墜。
|
| 変身しながら階段を降りてきた二人の男。
| それぞれ手には刀。露出狂とノミ脚が迎撃。
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| 数合で決着、ノミ脚の片腕が切り飛ばされ、露出狂は局部切断！ 返す刀で首が飛ぶ。
| だが、仲間を失いながらもノミ脚の鈎爪が敵の一人の胸を抉った。
|
| 普通ならば致命的な傷でも相手は悪魔、まだ動く。
| 階段の壁を跳ね回り撹乱するノミ脚。そこにゆらりと現れた黒豹の如き隻腕。
|
| 担いだ軍刀が円を描き、敵の一人をなますに変える。
| 恐るべき手練の出現に、手傷を負ったもう一人がたたらを踏む。
|
| さらに戦車男とバレリーナが登場、撤退する悪魔。追う『カトルカール』。
|
| 二階の掃射が終わったアゲハチョウが三階に移動。
| しかし窓際が危険と悟った人々は窓から見えない場所に身を潜める。
|
| そこに投げ込まれる毒ガス。
| 排気口を通ってきた軟体男が三階をガス室に変える。
|
| 逃げた悪魔も三階は諦めて四階に。
| 上から来た女と合流。水塊を従えた女は滝のような水流を放射、『カトルカール』を押し流す。
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ゝ / ヽ
／⌒¨´ ／ | ﾍ
./／イ / | /ﾄ、 L＿_,,.イ
i/ /／| /. / .| .| ﾍ ヽ､ ｀ﾄ、 ,r′
./〈 ノ / ｲ / ', | ﾍ、 ヽ､ ｀ヾ, ／
ﾚ´ | /. ｜| Ｗゝ ', ヾ ﾍ. .| ＼ヽ.ヽ｀ヽ ∠＝=‐ｧ
| / |T /ﾑ ハ ′ /:::::::ﾍ | ＼ | ゝ | ￣￣´
__ノ / / ハ /:::::ﾑ.ハ 从:::::::.:ﾍ |＼ ﾊ｀ヽ |
｀--ｯ │ ﾄ､ / |メ==≠ﾘハ ﾄﾐ≠==ﾍ|==ヽ、｀ヽ ﾆﾆ==-
ー'-‐´ | ﾊ. | ≦==,.:::::::::::ﾊ .ﾍﾐ ≦＝=ﾍ、匕 ヽ / _ミ=‐ｧ
｀ヽフ N ﾊ |／ ｏ ｀ヽ:::::::ﾊヽ ﾍｿ/ ｏ ヽ 'ト / -‐''"´ はーいこんにちわ。
（ /l /＾ﾘ∨八ミ=＝＝彡'′::::ヽヽ ﾍヾ-=＝彡'′.| /⌒ヽ ＜´ モーリアン分霊の銀ちゃんです。
!/ .| .|に N::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾ N:::::::::::::::::::::::::ﾚ´Yに } ｀ヽ
／ ∧`-ﾍ､ ＼ヽ |ト､ } ﾆ==‐‐｀ そちらがどこの誰だかは知らねえが、
｀￣/ソゝ(ﾍ | ﾌ 何してくれてんですかねぇぇぇぇっ！
ヾヽ - ' ﾚソ
／／｀ヽ ，r---────--ｲ ｀ ./从＼＼
／／///| ﾍ ｨ´￣￣￣￣￣￣´ﾉ / （///＼＼
／／/////| １ヽ `ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ´. / /N/////＼＼
／／//////.ﾉ从|:::::ヽ、 ー――― ／∨/////////＼＼
≦／／.//////////N.:::::::::::ヾ、 ／:::::ﾍ////////////＼＼
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| 数合で決着、ノミ脚の片腕が切り飛ばされ、露出狂は局部切断！ 返す刀で首が飛ぶ。
| だが、仲間を失いながらもノミ脚の鈎爪が敵の一人の胸を抉った。
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| 普通ならば致命的な傷でも相手は悪魔、まだ動く。
| 階段の壁を跳ね回り撹乱するノミ脚。そこにゆらりと現れた黒豹の如き隻腕。
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| 担いだ軍刀が円を描き、敵の一人をなますに変える。
| 恐るべき手練の出現に、手傷を負ったもう一人がたたらを踏む。
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| さらに戦車男とバレリーナが登場、撤退する悪魔。追う『カトルカール』。
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| 二階の掃射が終わったアゲハチョウが三階に移動。
| しかし窓際が危険と悟った人々は窓から見えない場所に身を潜める。
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| そこに投げ込まれる毒ガス。
| 排気口を通ってきた軟体男が三階をガス室に変える。
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| 逃げた悪魔も三階は諦めて四階に。
| 上から来た女と合流。水塊を従えた女は滝のような水流を放射、『カトルカール』を押し流す。
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/ ／二,.ｨ'´／／:/:',:.:＼ヽヽ:.:ヾ',ヽ｀`ー､
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:! {:.:.／:!:〃,ｲ__i__!_:./!/ !:| || !:!:| ',__!_',__:ﾄ､!:.!ヽ､:.:.:!
{ ｰ--ﾉ//i:/ ﾘ ﾘ ｱ｀ﾝｰi| | ｀ﾘＴ´ｿ ﾘ ',| iノﾄ､,. -'´
｀ゝ--i'''"´ lヽ:| ,r'⌒＼ ﾘ ／⌒ヽ､ ﾘ |ﾉ! ｀`',ｰ＜
/.:.:.:/| ﾄ__! {´ （::） （::） } !､| !.:.:.:.:
.:.:./,.ｲ { ､', ＿＿ ＿＿ /､ i-―-'ヽ:.:
::〃/ ー―''ヽ (', ＿＿_ /) / ヽ:.:.ヽ か、『カトルカール』？
〃:| ヽ='､ ｜ ｜ /- '´ ヽ:.: 銀時さん、こいつら『カトルカール』です！
!:{ ＼ ! | ／ ヽ
ヾ､ 丶､ l＿＿_! ,. '´
, -| ｀ ｰ-‐ '´ﾄ､ ……お礼参りですかぁ！？
,. '´ !'! !ｧ ｀ヽ
_,. -‐'´ ', ､ _/ 丶､_
_, イヽ:ヽ ',｀｀` '´/ ｀丶､_
i:::::::::＼ヽ:ヽ ', / ／／／ﾞｰ-
!:::::::::::::i丶ヽ::ヽ､ ', / _,..::'::／／::::::::::::::
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| 新宿衛生病院にカチコミかけた経験のあるヴィヴィアンが青くなりながら。
| もはやこの非常階段以外に通路はなく、四階以外は制圧されていた。
|
| そもそもこちらは一般企業である。戦闘能力のある悪魔はヴィヴィアン含めて三名だけ。うち一名は先ほど討たれた。
| そしてヴィヴィアンは補助特化、高所の利があるからしばらく足止めは可能だろう。
|
| だが挟撃には耐えられまい。
| 全滅は時間の問題だ。
|
|「せめて、銀ちゃんが居てくれたら……
|
| 一方、外で封鎖を手伝っていた杏子班の面々も青ざめていた。
| 響き渡る銃声、爆音、断末魔。『カトルカール』の容赦のなさは恐怖すら呼び起こす。
|
|「あー、悪いちょっと野暮用で……」
|「何言ってんだ横島」
|「あっちの『武僧』の姉ちゃんと合コンのセッティングしてくる！」
|
| いきなり、無茶苦茶な言い訳とともにビルに駆け込む横島。
| 超能力の足場を作って二階へ。エンジン拳の後を追う。
|
|「あンのバカ！」
|
| 慌てて追いかける杏子とロビン、ヴァイジャヤ。振り返るキュゥべえ、目を逸らす女『武僧』たち。
| ビルの中は危険地帯だ。命の保証は何もない。
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ｘ, ｘ,
} ､＼＿＿＿／/ } ／
厶- } {‐ く 〈{＿＿＿__
／ ／ ＼ ＼ ＼ ＼
＿/ ｉ{ (Ｃ) (Ｃ) }i '. _ 7＾ 丶 佐倉杏子、同士討ちに気をつけるんだ！
〃7 八 ､_,_, 八 V＾)) / '
＿／{{ ／ ｀ ｧ r ' {{､ 〃'く_＿ }
(__.:.:ﾟ｡:.ヾ=彡 .′ '. ゞ=彡.:.:.:.｡ﾟ-く ′
ｰｔ__ﾟ／ /{ ト, ＼ﾟ＿r'′ /
.' } ﾄ ┐ l f⌒丶,＿／⌒' ／
{ ｝ l | { } ／
丶 し' し' 厂￣ ー----=彡
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| だが、一階にはもはや危険＝『カトルカール』の姿はない。
| 同時に動くものも何もない。スタイリッシュにデザインされたであろうエントランスは血と銃弾で無残に蹂躙されていた。
|
| 原型を留めた死体もなく、真新しい傷跡ばかりが自己主張。
| あまりの惨状に杏子が口元を押さえた。
|
|「いじめないでー！」
|
| 非常階段から声、連鎖する爆音。地下から。
| 身構える杏子たちの前に、姿を表したのは……『カトルカール』のトナカイ女だ。
|
| だが、その表皮は無残にただれ、生体部分と機械のつなぎ目を露出させていた。
| 頭部でうねり光る男根にも力がない。
|
|「こいつ……！」
|「いくよいくよ……」
|
| 白濁した両目、血泡に汚れた口元。傷口に群がっていたハエが一斉に飛び立つ。
| 怯むヴァイジャヤ、駆け寄ろうとする杏子。その両者をロビンが押し留める。
|
|「やらない夫サンガ来テマス！！」
|
| 地下から飛び上がってくる爆弾蜂、下半身のハニカム状スカートもまた酷くただれている。
| 火炎放射を突っ切って突撃する影、爆弾蜂に一撃、胸を裂かれて落下。
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/｛'，
Ａ {_」 ，
{］A_,,..-‐―‐.{]_＼ ，
{]_ｱ::::::::::::::＼廴{⌒ ，
V:::::i{:::::::＼:::::::::{]冖|
|::::::{^ ､::::: }，::}:夊ノ
_j:::狄芯＼ﾉ‐V:::/ﾉ 残念、オレだよッ！
八::::::> r= ､/::/::{
＼:{ト ｰ厶イ⌒ヽ
/⌒}「/ﾆﾆﾆ=‐}
__／/厶ィﾆﾆﾆﾆﾆ/
n r≦ﾆ{Xア／ﾆﾆﾆﾆ ／′
k^ぅｰ‐ilﾆﾆﾆ{７_/ﾆﾆﾆニ／=/ _
⊂=┴‐ 圦ﾆﾆ厂⌒＼= ／==/ _ - /
` /__ ＼= =/_ - /
/⌒ヽ厂￣ﾆ=‐
/ /^ﾆ=‐ ／
/ /／ ／
／＼ィｱ ／ｉxｉ＼
／／￣ ／ixixixixixヽ
／／ ／ixixixｉxｉxｉxｉ/
＼| ／ｉxixixixｉxixixｉx{
| ／ixixixixixi／'⌒ヽ{
| ／ixixixixixi／ '，
l ／ixixixix≫''´ -=ﾆﾆ，
､＿＿ イixi／⌒^ﾞ^ ､ﾆﾆﾆﾆﾆ=‐，
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| 次の瞬間、注目が集まったタイミングで天龍の眼帯が閃光を放つ。
| 古典的で原始的な手段、ゴーグルをかけている『カトルカール』には効果が薄いが杏子班には抜群だ。
|
|「杏子サンハ結界！ ヴァイジャヤハ下ガッテ！」
|
| 唯一閃光防御ができたロビンが指示、術者から倒すのもセオリー。
| ヴァイジャヤを守りに行くも墨目が足止め。
|
|「お邪魔しますわ」
|
| 両手のナタ、丸太のような足技、そして尻尾の先の鋭いナイフ。
| 竜巻のような連撃に身動きが取れないロビン。
|
| その間に天龍がヴァイジャヤを打撃、目が見えないからってパンツの見えそうなハイキック。
| 涙を流しながらしばたかせる杏子の視野が復活すると、その前には汚いケツ。慌てて退避するキュゥべえ。
|
|「へへっ、お目汚しをっ」
|
| ねずみ男の放屁を至近距離で直撃、あれは辛い、ロビンでも機能停止する。
| 杏子は立ったまま失神、ヴァイジャヤもノックアウト。
|
|「クッ……」
|「ろびん、ごめんね」
|
| さらに現れたシグが腐食の呪いを脚部に集中砲火。
| 成すすべもなくやられる、ロビンは覚悟をした。そして自分のふがいなさを嘆いた。
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_ -‐= ﾆニ イ´(ヽ ／／ ／／
,／二二二二/ , イ´＿＿ ｨ―- ／／ ,,_／／_
iﾆﾆﾆﾆ=､テﾆﾆ/二＞ｔ― ､ヽ / i l, ｊ 〈ﾐ/,､ 'i
＼へン´二ー=ﾍ/／､ , ィ､ノ//,| ｀ ／／ .l ／ソ
￣ イ´三三≦ﾐ///／l |/／i≧＞‐- ／／ニ-l／／ おおん、うおおおん。
ﾆﾆﾆﾆ7/￣ヽ三ﾆ' /ィ: :＼/: : l |/ l i ` ｲ i` ／ヽ
￣ ーi ,ﾏ: :`,: :':_:_: : ヽｲil l///l ,l ＼ l ヽ.ﾉ i
,-,|､-‐i‐ｌ: : : : ／ ヽ＼: i: :ｌ ∨/＞ー=ﾆニ＿ |
ｒ―､―,､/ / ∨:ヽ: イ=ー'=二4: : :.i ∨＞､ `ヽ≧ｚﾆ二 |!.＿
ヽﾆﾆ`ーl／ ／: : : : ＼ , ､ i: Ｙ: i l/:／: : ＼＞､ ＼ /＼ー l
／／:l / /: ー､ : : : : ＼ `i: : ／: : : : : : : :＼ ヽ ﾍヽ Ｙ 'ﾊ
| i:／: ＼ /: : : : :ヽ: ､: :ヽ:.:', ', /: : : : : : : : -‐': : :ﾍ ∧ヽ // ｉ/
／: : : : : : l: : : : : : : : : ＞ﾃ/ . ゝ＼: : ／: : : : : : : : :ﾍ ∨∧∨/ /
ｲ : : : : : : : /: : : : : : : : l´; ／ --ｚ ≦ 彡ヽ〈: : : : : :_: イ: : : :ﾍ i//i///
.//: : i: : : : : /: : : :: : : :_:_i／三三三三三彡' l,＼:ィ:": : : :,,:ｯ､: : : i i/|`"
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.//: : : /:￣: : : : : : : ／ ￣｀ﾞ`＼ // l/＼: : : :_: _＞''" 〉 〉'
ヽ:､: :/: : : /: : ;: : ／ _ -‐ ´ ＼ｨ//Ｙ///77〈 `ｰ'"
｀ ﾍ､: ／: : /:／ -‐ ＼l |/////∧
｀＼メ ｲ ／ ＼i//////ﾊ
/ , ＼//////ヽ
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/ / ヽﾆ//// ﾍ
/ / ＼ヽ///ハ
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| 誰もいない二階をよたよた歩くエンジン拳ことランブラー・シャンブラー。
| 駆け寄ってきた横島を一瞥するも、敵味方識別がうまく行っているようで完全無視。
|
|「龍田！！」
|
| 駆け寄った横島が肩を掴む。しかし質量が違いすぎて振り向かせることも叶わない。
|
|「おい！」
|
| マイクロビキニで留められた乳房を鷲掴みにする。えもいえぬ柔らかさと弾力、しかし無反応。
| 横島は臍を噛んだ。
|
|「石田が来てるぞ！」
|
| それどころか天龍まで来ていて、麻呂教室の六人が勢揃いなのだが……それは横島の知らぬこと。
| そして彼は痛みを堪えるかのように拳を握り顔を歪ませた。
|
|「おおおん、うおおおおおん？」
|
| 石田の名前には反応するのだ。やはり、アイツだ。俺じゃだめなんだ。
|
|「連れてくるから待ってろ！」
|
| とは言え、非常階段を駆け上がる勇気は横島にも無かった。
| 窓際に駆け寄り、超能力の足場で上の階を目指す。
|
| 次の瞬間、背後で龍田……いや、シャンブラーが床を打撃、粉砕した。
| 爆弾蜂の応援に向かったのである。
|
| そして、横島を見咎めて飛んできたアゲハチョウとオニヤンマ。
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/i/:.:.:.:.:〃:,-=ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.´:.:.:.:.ヽ、
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./:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ
l:.:.:.:..:.:.r-====ｧ:.:.:.:.:.:,-＝┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、:.',
ヽ:.:.:.:..:{三二ｦ:.:.:.:.;ノ＝=-j:.:.::/l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i .ヽｊ
/:.:.:.:.:..:｀＝=l:::::.／-==-ノ::／./:.:.:.::.:.:.:..:/
7:.:.:.:.:.:/｀ヽ::{:::(／｀ヽ、--ｧﾌ_,,ノﾊ:.:.:..::,'
l/|:.:.:.:.i l ﾍ ﾘヾl .∥厂´イij //l:.:／
′ヾ,,::ヽ,、{ j ヽ、__,,ノ ;;;;;;(__,,ｨ ノ´ ………………何だアレ。
_,,-=_y´ヽﾍ "´ ／ .ﾉ
_,, - イ く ｀ヽ、u ___ ／ヽ
_ -=''´ ｀ヽ:::::', ｀;;;ヽ 、__ ／ ハ
'ﾟ ,i::::::i ;;／ |::| ,ﾄ、
.',:::::', ＿ .,-ｲ:::l .lソ,
＼ ヽ、 ＼::::＼ ｀ _,,ノ:::ﾉ .l l
＼,ﾊ ｀ヽ、::｀=''´::::''"´ / i
| ヽ-''"´ / ＼
i .l´ .＼
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| 空の彼方から黒銀色の塊が高速接近、はっと振り向く『カトルカール』。
| 路上の『武僧』たちが射撃で応戦。
|
|「なによこれぇ！！」
|
| 困惑の声を上げながら飛来した美女、世界中の美の概念をこねくり合わせて作ったかのような存在。
| 黒い翼の天使だ。襲われる側でなければ横島は拝んでいたかもしれない。
|
| とにかく振り上げた剣の一撃を、アゲハチョウはふわりと、オニヤンマは高速移動で回避。
|
|「ドキドキしてきたー！」
|「ご奉仕させていただきますわー！」
|
| たちまち始まる空中戦、オニヤンマがドッグファイトをしかけ、離れたタイミングでアゲハチョウがフォロー。
| 流れ弾に当たったら横島は爆発四散間違いなしの大口径だ。
|
| 三階の原型を留めたデスクを盾に身を伏せる。
| 闖入者は『死鳥』だ。『封印像の悪魔』の一柱。その畏怖すべき美は報告書にも書かれていた。
|
|「なめんじゃ、ないわよ！」
|
| 『死鳥』の黒い羽が広がる。翼が龍の頭部を思わせる形になり、オニヤンマに食らいつく。
| トンボの羽根が持つ世界最強の機動能力で回避、回避、回避。赤熱したブレードで切り払う。
|
| その間もアゲハチョウがダダダ、ダダダ、ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ！！
| ダンスのように優雅に避ける『死鳥』、三次元的高速戦闘の目まぐるしさに横島はついて行けない。
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/ r i〔 ィチﾆﾆ＞≦ニ＞､
メ __∥__r i〔 r :/ニニ／‐=≦ニニニ'＼
＼{____＞≦ ∥ﾆ／-‐= ___ ヽ ｀ -=ﾆﾑ ドーモ、謎のヒロインＸです！
＼____ノ ,:ｲ,／ｲ／ﾚ〔茫ぅﾊﾉ ′＼:ｦ
/⌒＼__λ､ﾉ /}N ｀´ フ_ノｲ! , }! _
r‐､ . / _r==≦ ＼_ヽﾉ∥ミ ￣ 乏' ′,′ } :} r
| ∨ r=========≦_r≦ﾆミ｀___´ ノ':ミN __ /_ノﾚ¨＼, ,/ :i ﾉ ,' ＿
ヽ ヽ. ! {: : : : :_:r≦: :⌒ヽ: : : :}: : }}:: : : ::| !_ ィ〔イ､ :＼ ⅴ /i_／／､｡ r ≦＞¨´
r= ミ ゝ= v i＞≦: ､: : :}: : : : :∨: :!: : }}: : : : | ≧=- フﾉ_ 以 ∨≦: :=-ﾉ ¨´
ハ _ ｀ ﾐ __} ∨ ￣ヽ: :∨:' : : : : : :_ノ: : :ﾊ ､: : -=≦r ≦ ≧弍 :}､ヽ.ノ{´
ミ≧ ､ ｀: : :入 :∨:}!:／:_:r ´-=≦ _. . -=≦＼: :}! :! } ﾔ
(⌒ ‐‐ ￣ y . . . . .: :v ´-=≦ _ . . ‐=≦: : :} }: ヽ: : :∥ ∥ } や
｀ ==彡/￣ -=≦ _ . . -=≦: ヽ: ; ; ; ; ; ; ;ﾉ /; ; ;}!: : ≧r'ヽ{ミ_ 彡
_ -=≦ _ -=≦ ＼: :ハ: : : ≧; ; ;≦′/ ; ; ∥ :_: : : : : }≧=≦
ィi〔 _ -=≦ ＼ ﾊ: : : : : : : : :ﾊ ﾔ: : }{ ≧s｡:_:ヽ: : : :}!
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ヽﾘ: : : : : : : : :ﾊ :} : : : }!
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r=-ミ ノイ: : : : : : : : : : i :ﾔ: : ヾ
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|「え、ヒロイン？ ということは世界の主人公に違いないやる夫さんの！？」
|「誰それ」
|
| 輝く剣を背負ったジャージの女が空中を駆け上がる。
| 空気を踏んで落ちる前に次の足を出してるとか、超能力の足場とは違う不思議な動き。
|
|「では小手調べをば、『銀河流星剣丸秘奥義』天に還れ！」
|「あっぶな！」
|
| 地面に固定されていない無数の死体やトラックが吸い込まれるように天空めがけて落ちていく。
| 本人達以外は理解できない現象、『重力遮断』。
|
| これを食らった物体は高速で移動回転する地球から弾き飛ばされスペースデブリに成り果てる。
| 一撃必殺技。別名『ラミア消して』。即死技である。
|
|「コーホー」
|「待て石田！ 龍田がいる！」
|
| Ｘの援護に向かおうとしたダースベイダーに、横島が叫ぶ。空中で振り向くベイダー、横島は必死に手を伸ばす。
|
|「龍田も生きてたんだ！ だがアイツはお前が生きてるのを知らない！ 理解できない！」
|「コーホー」
|
| 呼吸音に変化も異常もない。
| だが横島は縋るように続けた。
|
|「俺じゃ無いんだ！ 俺じゃダメなんだ！
| 俺じゃ龍田を連れ戻せない！ 意識を無くして操られてるアイツを助けられねえ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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､
, ィ─--､ゞ｀ヽ､
∠二＿ ＼∧
y'"￣ .:::.................:::::.... 〉
/ , .:: ∧ Y Ⅵ ヾﾍ Ⅵ
. /イ ./=三ヾ/｀ヽ､:::::i ,ﾉ だから石田ぁ！
〈 i ﾊ //＼ゞ i ° }ﾍﾉ､才´ お前がアイツを助けてやってくれよ！！
ヾﾍ! !{ ﾟ },. ｀ー‐' u.}ｿﾍゞ
｀ ＼l｀ｰ'",ノ￣ヾ /从 ｀
. _,y入u {＿＿ﾉ／ヽ ｀ー─‐-､
人 .l ｀＞‐-‐'"::::::l l /´ ヽ
／ { l l {-､| y-::i l .i ./ i .:::|
. / ヽ＼i__| ヽ､＿_,＞´ l〈 / ..::∧
. ,/ ＞´ーヽy─‐-､ ゞﾑ-‐､..::::∧
. ／ , イ´ l"二ニ.} ＼ 廴| ￣|フ
〈 ry .! .iノ二ニ´ ｀ー─┴‐-､ .|
ゞｿ,ﾉ {二二＿ ノ
￣￣￣￣￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 逡巡。
|
| ダースベイダーはフリット・アスノに命を助けられた。
| 故に彼に忠義を尽くす。
|
| 躊躇。
|
| 空中でぶつかり合う黄金と黒銀の光。
| 余波で吹き飛ぶ街、墜落したアゲハチョウが弱々しく天を仰ぐ。
|
| 困惑。
|
| 四階はかなり堅固だ。挟撃を、ベイダー隊の到達を待っているのは明らか。
|
| 混迷。
|
| だが、だが。
|
|「バッカヤロウ！ 惚れた女より大事なもんがあるかぁ！！？」
|
| 単純に、明快に。
| 拳とともに言葉が飛んできた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
その男を支えるのは憎悪。
その火をけして絶やさぬ為に、人生をすべて焚べてきた。
夢も。家族も。仕事も。命も。
そしてその正気に至るまで。
だけれど彼はもはや理解できない。
自分が一体、なにを憎悪しているのやら。
すべてを焚べてしまったのだから。
その憎悪の根源すら。
彼はきっと。
もはや永遠に。
次回、最終幕四十一話『憎悪の果て』
果てに見るのは破滅か死か。
>>135のつぎがこちら
＿＿＿＿
,...-‐:::::::::::::::::::::::::‐-.....、
/::::-‐ ￣￣￣ ‐- ､:::::::ヽ
/／. u l l ヽ::::::`､
.//. l､ l＿_ . l＿_/l_ 〉 ト､::ｌヽ
l l二二lメヽー‐l`､ 7l / l 〇〇ヽ
l l ﾄ l/l ヾヽ､. l V‐ﾚ-､l u ｌ/＾` ヽ ぐぇっ！
l l. l`ヽ-‐ u `､l ｒ'⌒､`l l lヽ ヽ
.l 〉`lV`ｒ'⌒､ !l!lll!! ゝ--' l ﾉl. ｌ l ヽ
l l`ヽヽゝ.-' u ﾉ/.l ﾉノ. ヽ
l l. ヽ＼u -‐―‐-､ u.// ／::フ､ ヽ
ヾ l､`‐ _ `―一 ´-‐//::::ヽ `ｖ lヽ.ヽ
ヾ_l､lヽ l フ`ニ>'￣ｙ/::::::::::::ゝ ‐-l ､､`､
`､ﾆハУ::::::::::〈./::::::::::::__::::〈 >-‐ ' ヾ
l`- .>::::::::::::::::::::::::::::l ヽ:::ヽ l
､二く. /::::/l:::::::::::::::::::::::l. ヽ:::＼∠＼
.／L/::::/ l::::::::::::＿_,､::l >::::::ゝ l￣
∠:::</::::/,‐ﾚ＾ﾏ／ ）(〈＾7::::::／l ﾉ
￣〈:::〈lて π`Z 〈. /::::::< ﾉl l
ゝ:::::"ｖl＞＜l`‐'´`´:::::::::::`‐､iﾉ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 次の瞬間、『死鳥』が何かに頭をぶつけた。
| 攻撃が緩む、涙目で頭を押さえる。
|
| 五階の窓を突き破り、ダースベイダーが飛びかかる。超能力の足場を『死鳥』の移動先に置いたのだ。
| ベイダーの一撃を回避した『死鳥』、だがその動きはアゲハチョウに読まれていた。
|
| 容赦ない乱射が『死鳥』の胴体に叩き込まれる！
| 人間なら一発でバラバラになる大口径、それを十発以上食らっては、さしもの大悪魔も負傷を避けられない。
|
| 衣服は弾け、腹から胸に風穴を開けながらも、『死鳥』は止まらない。
| 口と鼻から血の糸が引く、凄惨極まる姿だが、それでも未だ美しい。
|
|「石田ぁ！」
|
| 横島が叫ぶ。『死鳥』が黒い羽を無差別に射出、横島はベイダーを守る位置に衝撃波の盾。
| ひらひら避けるアゲハチョウ、避けられぬと悟ったか突貫するオニヤンマ、手負いとは思えない速度で逃げ回る『死鳥』。
|
| 路上の『武僧』たちが火器を構える。
| 次の瞬間阿鼻叫喚、『死鳥』のばらまく羽が物理装甲も術的防御も関係なく周辺一帯を貫通破壊。
|
| 同様に、オニヤンマも空中でバラバラのブロック肉の雨になる。これまでは手加減していたのか。
| 仲間の死にも臆さずに、アゲハチョウが果敢に射撃。
|
| 横島は無傷、ダースベイダーのフォーローによる。
| 逆にベイダーは防ぎきれず負傷。すぐに傷口を超能力で止血。
|
| と、路上の一角からも火線。
| 生き残った……いや、守られた『武僧』からだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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メ __∥__r i〔 r :/ニニ／‐=≦ニニニ'＼
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＼____ノ ,:ｲ,／ｲ／ﾚ〔茫ぅﾊﾉ ′＼:ｦ
/⌒＼__λ､ﾉ /}N ｀´ フ_ノｲ! , }! _
r‐､ . / _r==≦ ＼_ヽﾉ∥ミ ￣ 乏' ′,′ } :} r
| ∨ r=========≦_r≦ﾆミ｀___´ ノ':ミN __ /_ノﾚ¨＼, ,/ :i ﾉ ,' ＿
ヽ ヽ. ! {: : : : :_:r≦: :⌒ヽ: : : :}: : }}:: : : ::| !_ ィ〔イ､ :＼ ⅴ /i_／／､｡ r ≦＞¨´
r= ミ ゝ= v i＞≦: ､: : :}: : : : :∨: :!: : }}: : : : | ≧=- フﾉ_ 以 ∨≦: :=-ﾉ ¨´
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|「え、ヒロイン？ ということはやる夫さんの！？」
|「誰それ」
|
| 輝く剣を背負ったジャージの女が空中を駆け上がる。
| 空気を踏んで落ちる前に次の足を出してるとか、超能力の足場とは違う不思議な動き。
|
|「では小手調べをば、『銀河流星剣丸秘奥義』天に還れ！」
|「あっぶな！」
|
| 地面に固定されていない無数の死体やトラックが吸い込まれるように天空めがけて落ちていく。
| 本人達以外は理解できない現象、『重力遮断』。
|
| これを食らった物体は高速で移動回転する地球から弾き飛ばされスペースデブリに成り果てる。
| 一撃必殺技。別名『ラミア消して』。即死技である。
|
|「コーホー」
|「待て石田！ 龍田がいる！」
|
| Ｘの援護に向かおうとしたダースベイダーに、横島が叫ぶ。空中で振り向くベイダー、横島は必死に手を伸ばす。
|
|「龍田も生きてたんだ！ だがアイツはお前が生きてるのを知らない！ 理解できない！」
|「コーホー」
|
| 呼吸音に変化も異常もない。
| だが横島は縋るように続けた。
|
|「俺じゃ無いんだ！ 俺じゃダメなんだ！
| 俺じゃ龍田を連れ戻せない！ 意識を無くして操られてるアイツを助けられねえ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､
, ィ─--､ゞ｀ヽ､
∠二＿ ＼∧
y'"￣ .:::.................:::::.... 〉
/ , .:: ∧ Y Ⅵ ヾﾍ Ⅵ
. /イ ./=三ヾ/｀ヽ､:::::i ,ﾉ だから石田ぁ！
〈 i ﾊ //＼ゞ i ° }ﾍﾉ､才´ お前がアイツを助けてやってくれよ！！
ヾﾍ! !{ ﾟ },. ｀ー‐' u.}ｿﾍゞ
｀ ＼l｀ｰ'",ノ￣ヾ /从 ｀
. _,y入u {＿＿ﾉ／ヽ ｀ー─‐-､
人 .l ｀＞‐-‐'"::::::l l /´ ヽ
／ { l l {-､| y-::i l .i ./ i .:::|
. / ヽ＼i__| ヽ､＿_,＞´ l〈 / ..::∧
. ,/ ＞´ーヽy─‐-､ ゞﾑ-‐､..::::∧
. ／ , イ´ l"二ニ.} ＼ 廴| ￣|フ
〈 ry .! .iノ二ニ´ ｀ー─┴‐-､ .|
ゞｿ,ﾉ {二二＿ ノ
￣￣￣￣￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 逡巡。
|
| ダースベイダーはフリット・アスノに命を助けられた。
| 故に彼に忠義を尽くす。
|
| 躊躇。
|
| 空中でぶつかり合う黄金と黒銀の光。
| 余波で吹き飛ぶ街、墜落したアゲハチョウが弱々しく天を仰ぐ。
|
| 困惑。
|
| 四階はかなり堅固だ。挟撃を、ベイダー隊の到達を待っているのは明らか。
|
| 混迷。
|
| だが、だが。
|
|「バッカヤロウ！ 惚れた女より大事なもんがあるかぁ！！？」
|
| 単純に、明快に。
| 拳とともに言葉が飛んできた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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!::.i∩,ヽ '',ﾞ^ﾞ￣´゛ |i;:;:;:: : : : : :;:;:.:ヽ: : :::ヽ ああ、そうだな。
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| ぶん殴られた顔面よりも、殴った横島の手が破れて血まみれだ。
| 癒やしの術で、横島の傷を癒やす。そもそも、こんな虐殺は石田の好みではなかったのだ。
|
|「コーホー」
|「は？」
|
| 石田の言葉に横島が目を白黒させる。
|
|「いや、お前それはいきなり思い切り過ぎなんじゃね……？」
|
| 嘆息、両手を頭の後ろで組み、横島はどこか嬉しそうにニヤニヤ笑う。
| まだ何も解決していない、それどころか石田の言葉は無茶苦茶だ。
|
| だが、それでもなんとかなる。
| 二人でなんとかする。そんな気持ちになっていた。
|
|「じゃ、まずは龍田。次は志麻子様とキオな」
|「コーホー」
|「杏子ちゃんたちも来てくれりゃ……つうか、さっきのに巻き込まれてないよな？」
|
| ビルの外では『死鳥』とＸの怪獣大決戦が続く、横島の独走がなければ杏子班はあの死屍累々の一部であっただろう。
| 二人は顔を見合わせて仲間を探した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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| ぶん殴られた顔面よりも、殴った横島の手が破れて血まみれだ。
| 癒やしの術で、横島の傷を癒やす。そもそも、こんな虐殺は石田の好みではなかったのだ。
|
|「コーホー」
|「は？」
|
| 石田の言葉に横島が目を白黒させる。
|
|「いや、お前それはいきなり思い切り過ぎなんじゃね……？」
|
| 嘆息、両手を頭の後ろで組み、横島はどこか嬉しそうにニヤニヤ笑う。
| まだ何も解決していない、それどころか石田の言葉は無茶苦茶だ。
|
| だが、それでもなんとかなる。
| 二人でなんとかする。そんな気持ちになっていた。
|
|「じゃ、まずは龍田。次は志麻子様とキオな」
|「コーホー」
|「杏子ちゃんたちも来てくれりゃ……つうか、さっきのに巻き込まれてないよな？」
|
| ビルの外では『死鳥』とＸの怪獣大決戦が続く、横島の独走がなければ杏子班はあの死屍累々の一部であっただろう。
| 二人は顔を見合わせて仲間を探した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
その男を支えるのは憎悪。
その火をけして絶やさぬ為に、人生をすべて焚べてきた。
夢も。家族も。仕事も。命も。
そしてその正気に至るまで。
だけれど彼はもはや理解できない。
自分が一体、なにを憎悪しているのやら。
すべてを焚べてしまったのだから。
その憎悪の根源すら。
彼はきっと。
もはや永遠に。
次回、最終幕四十一話『憎悪の果て』
果てに見るのは破滅か死か。
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,..-'": : : ｀ﾞ'''ｰ..、
／: : : : : : :::::::＼
/: : : : : : :::::::....＼
/: : : : : : :::::::...ヽ
/;:;: : : ._,,,,,,,,_, : : : ::::..!
i" .,,...-..,,, .´ﾞ"''ｰ- ..,,,_ ::: : : :::: .!
／..,ﾐ..-´::::: :::::::.｀'-、: : : ´ﾞ'‐､:::、::: ::: .l
ｒ'"^ﾞ'":::::: ::::.,.. --..,,_ ＼: : : ｀''-:::、::: ::│
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!:::: :::.!l│ .! 'ﾆﾆル ヽ. ヽ: : : ｀'､::::..|
!:::: ::::ヽﾞ,､ .! ＼ ." _.::::" ,.ヽ: : : : : :ヽ.!
!::: ::::／ ﾞ''ｰ-.........-‐″;:;: : : : ヽ: : :::.ヽ
!::.i∩,ヽ '',ﾞ^ﾞ￣´゛ |i;:;:;:: : : : : :;:;:.:ヽ: : :::ヽ ああ、そうだな。
!::.lﾞ| .ヽヽ,｀＼:: . .|!;:; : : ,／,: : ;:;:;:ヽ: : :::ヽ
!::.|/:::: ヽ,ヽ, ::::｀､ |_::,..／: : : : : : ;:;:;,ヽ: : :::ヽ
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| ぶん殴られた顔面よりも、殴った横島の手が破れて血まみれだ。
| 癒やしの術で、横島の傷を癒やす。そもそも、こんな虐殺は石田の好みではなかったのだ。
|
|「コーホー」
|「は？」
|
| 石田の言葉に横島が目を白黒させる。
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|「いや、お前それはいきなり思い切り過ぎなんじゃね……？」
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| 嘆息、両手を頭の後ろで組み、横島はどこか嬉しそうにニヤニヤ笑う。
| まだ何も解決していない、それどころか石田の言葉は無茶苦茶だ。
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| だが、それでもなんとかなる。
| 二人でなんとかする。そんな気持ちになっていた。
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|「じゃ、まずは龍田。次は志麻子様とキオな」
|「コーホー」
|「杏子ちゃんたちも来てくれりゃ……つうか、さっきのに巻き込まれてないよな？」
|
| ビルの外では『死鳥』とＸの怪獣大決戦が続く、横島の独走がなければ杏子班はあの死屍累々の一部であっただろう。
| 二人は顔を見合わせて仲間を探した。
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重力が遮断されている！
子供工場から出荷されてそうな奴らが居たな
やる夫と親しい水銀燈と、やらない夫のシンパに近いエックスと、横槍で来てるやらない夫
めっちゃ混沌とした戦場になってるな
ベイダーと横島が杏子班やエンジンの元に向かう。フリットやシロッコに背く気満々。エックスは密かにやらない夫にも通じてる。
モーリアン襲撃側の戦力が、今回だけでかなり削られてるな
:| { ヽ / | / / /
丶 ﾘ ; ﾐ, / 八 / / /
＼ ﾚ! ﾉ u `, / 〈 ゝ-彡 ' /
ヽ ￣ 厶 l ; ヽミ ,厶,,_
＼_ ／‐=ニニﾆヽ { ﾉ, ／ 二ﾆ=、 } _,／ , ´
ﾐ, } { ／,≫＝ミゝ_,｝〉 {《___ノｧ=≪ ＼ | 丿
＼ｒ‐┤ | ／ め ｀`〈 ﾉ め ＼ ､ ｜|>―､彡 何ということだ……！
ﾉ Ｊ | ミー==彡ゝ i へ ﾐ= ___,,. |｜/＾ i
} ノｌ ! へ,,__ ／ } ＼ ノ＾' } ｊくl ;
{ { l| ! _,／ `ｰ u ; ｌ| ﾉ 八
八 ﾘ ‘ / ﾘ /
＼‘ ゝ ﾉ ＿＿_ュ__ｒュ＿＿_ 丶 ,ｲ { ,〈
＿ゞ, い, l ／ ＼ } /ﾉ ,厶ハ,
／ ハ ! ｌ V , ,___ｔ___人__ｘ,__､ ､ Ｖ // { V└―ｘ、
__」 / '，l ` '⌒了___ｧ………=ｔ__T＾ﾞ⌒` ′ l }／ ⌒ ＼___
ミ〈 い、 弋く >ｿ ; l ‘ ｀ ,
》 ﾉ ＼ ヽ辷ｰ─一少 ﾉ 〈 乂 |
〃 く, ＼ ,,.二二.,, ／ ゝ ﾏ └ｭ_
ヘ ＾气 ￣乙 ィ／＼ ､__,z―=彡 厂 ﾉ ＼
〕ﾄ 厶 ´ ﾉ ｀ゞ ,厶 ／ ヽ
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| モーリアンＣ．Ｏ．本社ビル襲撃開始から30分足らず。
| 状況は混迷をきたしていた。
|
| 四階に立てこもった敵の掃討で作戦は終了するはずだった。
| だが外部襲撃者により展開していた『武僧』は壊滅、『ストームトルーパー』とも佐倉班とも連絡がつかない。
|
| ビル内部だけで済ますはずだった攻撃は、最初の時点で無茶苦茶だ。
| ばらまかれたアゲハチョウの流れ弾がそこら中を穴だらけに、
| 東京のど真ん中に突如として紛争地帯が現れたかのような有様だ。
|
| 連絡のつく手足がいない。
| 情報は警察が流してくるが、こちらの命令には応えない。
|
| 何を間違えたのか、もうもみ消すのも不可能であろう。
| 各マスコミは緊急のニュース特番を流しているし、それによると自衛隊が動いているとの話があった。
|
| 何が起きて、フリットは何をしてしまったのか。
| 全身から脂汗がにじみ出て、腹に石でも入っているかのように重く苦しい。
|
| どこで間違えてしまったのだろう。
| どこで間違えてしまったのだろう。
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V i:::::::ﾄ=ｰ ｭ, `'ｰ一` 仏.き 7 ,}:::::/i::::ｨ:::::::::::l
ヽ!:::::{ ,.rｪｫ, '弋少 ' /／ ﾚ'´｀ヽ,ﾍ{
＼{ : 心ﾘ “¨ ′ .ｨヽ l::::ﾄ､ 最初からだったんじゃないかな。
iゝ` ” , ノ ﾉ:::::::::ヽ,
i ヽ ｀ ィ’ ノ:::::::::::::::::ﾑ
. ､ー‐- . r=≦:::::::::::::::::::::::ﾘ
ヽ ￣ /{::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
〉､ i.,:::::::::::::::::::::::::ノ
i:::::＞ ､ _,. ,.｡ィ ∨ . ヘ∧／
ヽ,:::::::::::::￣ i ,. ≦ ∨ｭ,
∨ヽ r.イハ /ハ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦ﾊ j r’.ﾉ ∧ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦’ /／ ヽ,ィ ィ’ ∧／ ≧ｭ
ｨ仁 / / / ´ ﾑ
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| 突然、音もなく、魔術と科学で複合的に防御締ているはずの部屋に他者が出現した。
| 慌てて立ち上がるフリット。眼の前にいる孫は、本物か？
|
|「キオ……！ お前どうやって！？」
|「いや、普通に出てきたよ。じいちゃんだってできるでしょう？」
|
| フリットは困惑した。
| 外から鍵のかかった部屋だ。どんな手品を使ったのだ？
|
|「錠前なんて、ESPで見てシリンダーの形にした『手』を入れるだけじゃないか」
|
| 何だその、生米に文字を書くような精密作業は。
| キオはいつの間にそんなことができるようになったのだ？
|
|「話を戻すけど、じいちゃんの間違いは超能力に固執したことだよ。
| これは信仰も血もいらないかも知れないけれど、代わりに大切なものが足りない」
|「な、なんじゃと……！」
|
| 突然の言葉。リットの誇り、フリットの積み上げてきたものを砂上の楼閣と罵られては頭に血が上る。
|
|「信仰と血だよ、じいちゃん。『血族』は選民意識で血を重ねているんじゃない。
| 信仰と血の重みで魔力の比重を上げてるんだよ」
|
| 完全なる否定に、フリットの眼の前は真っ赤になった。
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＞=弌 ,小 ::{ .:/
'⌒ヽ ＼ { ::、 .::/ -――- ､
八 } -=￢ニ ‐- ヽ.. /::; , ≦三_￣￣￣｀`
＼ ,込 ,＞ミ 、 い. ﾍ .::::ﾉ ／／二二二¨￢
⌒{ 丶 , ´≫=＝ミ; 、ヽﾉ:::∨::く:乂＿__／／,ｧ'~￣￣¨ ミx、
人 、ﾊ _ノ 〃 __＼＼廴＿__::::＼ゝ─ﾁ::イ ｨぅぃ ≫- お前に何が分かる！！
ヽ＼′￣__ =ｔう) 冫ｼ:::ｱ⌒¨＾:::::::::::彡::::´==ミ___ヒソ／ノ
人 ﾏ ＼^'ー--‐=彡＾>:〃⌒ヽﾐ::「`＜￣二 ｰ- ,,__ " ノ`
ー〉 ､ ｀ ￣ ／::::: ヽ| ｀丶:::... _,／
' `ｰ ／⌒〉::l ｀丶:::...
{ ／ .:::::; :.. ｀ ｰ- ,,__
l.:::::| ヽ:.､
＼ l::::::| 人::＼ ‐-
＼ ﾉ 丶入 ／ ￣ ¨ ミ ､ 丶、
_ｒ'⌒ヽイ厂介x 〈 , イ ⌒T ´ ＼ 丶 ｲ
_,ｘ┘ ／／ 八い, ∨ >､＼ ､ ＼ ′ |
┘ ／／ ）八 { _彡′ ￣｀￢ミｰ-=ミ l | {
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| 荒れ狂う嵐の様な衝撃波で、部屋と調度品が……何も起きない。
| フリットの癇癪を、キオは指先すら動かさずに抑え込んだ。圧倒的な超能力で。
|
|「この程度なんだよ」
|「ううっ」
|
|「志摩子様に張ってもらった結界で、僕の用意しておいた防御で、簡単に防がれちゃう程度なんだよ。
| 超能力の攻撃は遠回りで、おおざっぱで、軽い」
|
|「黙れ！」「聞いてよじいちゃん！！」
|
| フリットの怒号は、超能力の攻撃は、すべて拡散して消えた。
| 見えない手で肩を押され、フリットはへなへなと座り込む。
|
|「超能力で戦おうとするのが間違いなんだ。超能力だけで！」
|「だが、わしは、わしは……！」
|
|「ベイダーさんをよく見てよ！ 神道系の強化を超能力の補強でより効率的に動かしてる」
|「な、なんじゃと……？」
|
| ダースベイダーが？ あれはこちらの命令に従うだけの人形ではないのか？
| 効率的に動かすためにエックスラウンド領域を開発したが……脳死しているはずなのでは？
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_ ｡ -‐ ‐ｭ,
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.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
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/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i! ベイダーさんは超能力で意識を取り戻した。
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ あの人は時間を見ては『ストームトルーパー』の人たちと
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l 翠星石さんも同じようにできないか試してる。
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ,
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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|「し、知らんぞそんな事！」
|「じいちゃんには秘密でやってきたし」
|
| 忠実な傀儡だと思ってきた怪人の行動に、フリットは裏切られたような気持ちになった。
| ならばアイツは、ずっとわしを嘲笑って……！
|
|「ならばここにいるのは奴の手引き……！？」
|「まさか、ベイダーさんがいたら出れないよ。あの人はじいちゃんに恩を感じてる」
|
| つまり、キオを閉じ込めてきた牢獄は鍵ではなくダースベイダーそのものだったということ。
| シロッコの要請だったとはいえ、彼を派遣したのがこの事態を招いた原因となる。
|
|「とにかく、超能力はそれだけじゃ弱いんだ」
|「うぐぐ……」
|
| キオは嘆息した。
|
|「でも、他の異能や魔術じゃできないことがたくさんできる」
|「…………ん？」
|
| 論調が変わる。キオの口調は厳しいままだ。だが、何かが確実に変化した。
|
|「周辺の探査、透視、精密作業、音や気配や匂いの遮断」
|
| ESPやちょっとした超能力でできること。
|
|「足場の作成、壁による被害拡大防止、空中戦支援、即席トラップ。ほかの魔術と干渉しない防御」
|
| フリットもベイダーも行う、不可視の障壁による戦闘術。
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iﾘ:::::::ヽ,::::i∧j .｡=≠ミ､ `'ｰ' r=ニｷ,〉::::/
l::::＞＜::::{ {i lト' ｲﾘ :心:ﾘ ij iﾑﾉ
.ノ::::i'´ﾊヽlヽ' 丶弋ソ , 弋ソ'’li::! 探査と援護。
/:::::::ムﾍ L ¨" . 〉 " lリ, そこに特化した超能力はものすごく役立つ存在になる。
/::::／:::::｀ゝ，._ _＿＿_ ﾉ::::ﾊ
レﾍ::::::::::::::::::::::勹｡ l ヽ/ ／::::ﾊ ﾘ
∨ﾍ:::::＿.ｲハ ヘ. ` ー'″ ／::::／ ′
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_.＞'’ i ＼≧ｭ｡.,_￣ ア! ヽ,
「丶, 丶 ﾘ￣ノ lﾑ
j'´ﾍヽ ＼､_ /_ / ﾘ ﾄ､
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| フリットもキオも知らないが、横島こそがこれに近い。
| 麻呂に陰陽術の基礎も叩き込まれて、かなりなんでもできるサポーターだ。
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|「じいちゃんはすごく若くて『元老院』になれるほど、頭が良くて話も上手いんだ！
| 最初から戦うだけの力じゃなくて、助け合う力として超能力を育ててたら……！」
|
|「こんな事にはならなかったと……言いたいのか？」
|「まだ遅くはありませんよ」
|
| キオがここにいるなら、当然。
| 『血族』大首領藤堂志摩子も自由の身の上。
|
|「わしは簒奪者ですよ。今更どの面を下げて」
|「そんなこと、なんとでもします。東京と人々の平和のために働く気は無いのですか」
|
| 大首領の威厳を持って、自嘲するフリットをピシャリと叱る。
| フリットは自然と頭を垂れていた。完敗だった。キオの言うことはぐうの音も出ないほど正論だった。
|
| しかし、モーリアンＣ．Ｏ．への攻撃作戦は現在進行中で大混乱だ。
| もはや成すすべは……。
|
|「大首領藤堂志摩子の名にかけて、事態を沈静化してみせましょう」
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/ ! j}/ ,zｭ辷辷ュ._ 二ﾆ=ー彡′／ ／ ￣二
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/ ／ /{ ＼ﾊ ＼-} ﾄ､! ハ⌒) ', 〃 ／ /
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／ ＿ア _,彡 !l ﾄ､ヽ.＼＼ |!≧ . 厶ｲハ/| l/ ヽ. / ∧
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{ { ￣} く. __rヘ_j ＼//《-=）_ 圦〈￣∨ :!∨
ヾ.=- ﾌ } [￣{￣＞ト､＿ ~辷弋'¨¨テﾊ.／! ! ! ! ￣￣¨¨ﾌ
-=彡'⌒}下= 〉'=- ｊ＿,＞下/〉弌 '⌒廴人ﾘ | ！ /
／ 〔＿{_ ／ﾊ＿彡'{//∧人／〃V/廴| ', ＼＿ __／
-=彡'⌒{ {. 厶}／ ∧イ/}／廴/ （/l 7 | , ＼
∨⌒)'／ム／公／＜／/ﾊ//＼{_ 丁 '. ＼. ＼ ヽ.＿＿＿
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／ /ﾊ ／ ,′ ∨＼ ﾘ ＼
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| 『死鳥』こと水銀燈と謎のヒロインＸの空中戦は熾烈を極めた。
| というか、基本逃げ回り隙を探すＸと、負傷してドバドバ血を流しながら雑に追いかけ回す水銀燈である。
|
| 戦闘は恐ろしい勢いで周辺を巻き込み破壊した。
| 地上からミサイルで援護射撃したレヴリアスも、反撃が苛烈すぎて手を出せない。
|
| 途中まで必死に食いついていた『カトルカール』のアゲハチョウも、嵐のような羽の乱舞に回避しきれず撃墜。
| 路肩まで這いずって力尽きていた。
|
| 我先にと現場に飛び込んできたマスコミのヘリコプターは、先頭の一台が撃墜されてからは遠巻きに見ている。
| しかも、カトルカールの妨害電波とハッキングで何も映せない記録できない始末であった。
|
| この混沌の仕掛け人は、パプテマス・シロッコだ。
| 彼はあからさまに苛烈な攻撃作戦を立てたにも関わらす、涼しい顔で火消しの真似事をしていた。
|
| 今日この日が、東京の破滅へのプロローグとなる。なるのだが、まだシロッコは本性を表すべきではなかった。
| 『血族』とは友好的な顔をしておくべきであった。
|
| その判断は正しい。
| シロッコの時代の流れを見る目は常に驚嘆すべき正確さであった。
|
| これまでは。
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ＴＴ| | | | | |‐_冂^|＿|-_-_-_冂TTﾆＴＴﾆ|￣:|丁Π|T| |TTiＴＴiＴＴi| |丁| |Ｔ_Y_Y丁二TﾆＴﾆ| ::| |ﾆ]ﾆ|ﾆ|===|‐|丁|⊥____| | |丁
ﾆﾆ|_|_|_|_|_|二|⊥||======|ＴﾆＴﾆＴﾆＴi|¨| |ﾆＴﾆＴﾆＴﾆＴﾆＴﾆＴ|¨:|├ｉＴﾆＴﾆＴﾙilﾊ |￣|丁「「| ::||￣ |丁|ﾆ|===|‐|::|::|ｉ|::|:::| | | |⊥
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工|ΞΞ| |／ |ﾛ「|-ﾆ|__ｒ‐Ｔﾆ冂丁「_丁|_:|⊥:| :| |三|丁丁TT_「｣_|⊥⊥∟|《iV'⌒Vi》￣|￣￣丁丁「￣|ﾆT庁叩卩卩叩п「|丁T⊥
｜|ΞΞ| |／ |ﾛ卩［［]⊥⊥[]凵⊥-┴淡淡淡i| |三|;';';';';';';'//;';';';';';'∠ZZヽ;';';'∧∨_[|￣￣￣￣￣|丁|＿|┬|─‐‐三三三ＬＬ」＿
二|ΞΞ| |／ |､ｘＸ淡淡淡TTｘX淡淡淡i淡i淡| |三|;';';';';';'//￣/==TＴﾆﾆT===∧ﾏﾆﾏﾆTTニニTﾆT‐‐弍⊥|_|＿_|三三| ＼二|＿
／|ΞΞ| |／ |淡淡=‐_‐淡淡淡∠二二二二二二二二7ヘ∠ﾆﾆTﾆﾆTﾆﾆT￣￣'∧ﾏﾆﾏﾆｖ|＼￣￣＼_____,|｀ｉﾆﾆﾆﾆﾆﾆL＼|. |＼__
／|ΞΞ| |／ |__,／|─ＴＴＴ‐／￣￣￣|￣￣￣|￣￣￣＼/|＿,|ＴＴＴ7ﾆﾆ|Π─ｒﾆﾆﾆ|￣|ｉ|ﾆ|＼|ﾆﾆﾆﾆL~¨¨|: |<二二二二く二|＼|
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┐┌┐┌┐ |／ |/|￣|=|/::::|ニﾆ|／|_／￣￣|冂 |鬥|/二/ﾆＴ|/￣「|二| |￣|二| ∧| |｀|∨二二∧「| | |二| ＼/＿_|¨¨¨|TTT
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| 東京スカイツリー近くに止まった大型トラックには、どこの所属も会社名も書かれていなかった。
| 中には完全武装で顔を隠した外国人が２ダース。素人ではない動き。
|
| 一人だけ、狭いトラックに押し込められて汗をかきかきフウフウと息の荒い肥満漢がいた。
| 体のサイズも頭のサイズも規格外で、ヘルメットも目出し帽もつけられないのか素顔のまま。
|
| ハーシーズの板チョコをバリバリ齧る。前ボタンの閉まらない軍服。勲章がズラリ。
| 階級は大佐。彼こそが誰であろう、この東京に存在する合衆国軍を牛耳る男。
|
| 合衆国軍特殊部隊『グリーンベレー』のヤーボ大佐である。|
|
|「グフフ」
|
| アルミホイルと包み紙をクシャっと潰して床に投げ捨て、ベロベロと指についたチョコを舐める。
| 誰も注意しない、不快感も見せない。
|
| そんな事できる相手ではない。
| ヤーボ大佐は数々の真偽不明の武勇伝を持っていた。ぼんやりしたその容貌からは想像を絶する類の。
|
| 最初はみんな疑う。
| ヤーボ大佐の実物を見て、笑う。
|
| そしてすぐに、笑えのをやめる。
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У: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :)（ : : : : : : 楽しい楽しい戦争のお時間だ。
/: : : :ﾘ: : : : : :| l l: :＿＿＿＿＿: : ⌒: : : : : :
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| ヤーボ大佐が立ち上がる。
| それだけでトラックが傾いた。異様な重さの肥満体なのである。
|
| ヤーボ大佐以外の特殊部隊は、念の為所属に関係するものをすべて外している。
| 大佐を先頭にトラックから出る。目標はスカイツリー電波塔。
|
| 彼らの目的は明快にして単純。
| テロリストに扮して電波塔をジャックすること。
|
| そして暴れに暴れ、殺しに殺して死ぬことだ。
|
|「殺れるだけ殺りまくれ」
|「はっ！」
|
| これをもって彼らは特殊部隊ではなくなり、ヤーボとは無関係のテロリストになる。
| 死地に向かう部下の見送り、感傷的で無意味な行為……ではない。
|
|「熱い魂の鼓動を感じるぞ。覚悟を決めた戦士の魂だ」
|
| 待ち伏せ、バイクにまたがる小柄な男。コートに帽子で顔は見えない。
|
|「ほう、一人か。どうやってこの作戦を知った？」
|「魂が俺を呼んだ！」
|
| 小柄な男がコートを投げ捨てた。
| 黄金の鎧、道路標識よりも巨大な矛槍。どこから出したのか？ 難しく考えるな！
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<´｀i ﾊ/ {
ヽ,}' l l
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〈l l〉､l.
l〉l'. /!, ! ,/!
l l l l, . ,!!, / .l
l l ∨ヽ. / ﾍ ／ /
_|ｲ｀ﾞ>､ ＼ ヾヽ'.∧ .ﾋィ´ ／. / 7
l__,ｲ´ヽ,rヽ､ヾ, 〉)｀ﾍ /ｨ ヒｧ ﾍ _,.ｨ' ィ
l i{ ,ｨ .＞'`ﾍ ﾍ､.Y .ｱ ﾘ./.､ｿ｀'ｬ .ヾ ｀´_つゝ､
l l｀ト､ / i≧r､∨ィｿ'´i i｀ｰ､ }￣_つ ＼
l l ,. ＜ r'Oィァエ ｧ‐ｦ, ゞ， _｀ｱ㌔.ァ､ /ヽ 魂ィィィィイーッ！！
,. ＜´////へ､_√! Y ／ｴj',ヾ､ｭィ '´ ＼ ´ ｀ヽ／｀ヽ!
／///////////,ﾍ 〈三三i!ｨ‐´､＿/ ｀丶／ヽ
∨////////////,i≧! ＿＿ /片!ｭ､ ￣
∨//////,.＜￣ ア￣ ￣', J, i ｀ヽ､
∨///／ .イ/ ', >､ヾ,.ュヽ
,.ｨ'´ /ヘ´／/ ヽ'´￣￣￣ ｀ヽ. ヽ／ヽ'´＼
/ L/.／ ,ｲ'´ ,.ィァ＝＝ｭ､ ∧ｨ´>ュヽユ `
i／ ’!コｭ,/.ヘ / i! ﾍ /ﾍ ﾍｰ､_ .>ィ´ア
/i ／ '! ! ,1 ｀ヽ/´､￣ ＿',／
l ／ i Y l ／ ， ￣
/ ｀'・ 1 i .l ､.／ ∧
／ ｀ゝ､「i∨ ∧ l } ∧
,'.ヽ, ｨ l, ∨ / ', .l i ∧
/ ｀'・､ ／ ', ! ∧' ＿.1､iﾍ ∧
l '／ 1 ﾍ/ ﾍ 二 l l}!∨ ｒ''´ ' , 〉
/｀'・､ ／ ', .∧ ',一,' l l ´・j. ﾍ
/ ｀'/ i ∧,_､ヽ/ ,ｨ j ', _ ∧
/ / ﾍ ∧ ヽ,j､ｨノ!.} ∨´ ｀i,ｨ
/ ／ ヽ.i ｀`i! i ﾘ ﾄ､ ,.ィ i,
／｀'・､／ ﾍ i i! l ', i,
／ , ' i ) ', ',
/ｿ ﾍ／ ｀丶､／ i _ ﾕ,
/ l y'´ ヘ
｀'ー一''´ j´ ',
｀'ー─一’
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|「りょ、呂布だァーッ！！？」
|
| 巨大な矛槍の一撃で、特殊部隊員十人がおもちゃみたいに吹き飛んだ。
| しかし、流石のグリーンベレーというべきか、生存者は即座に散開して応戦。
|
| ばら撒かれる弾丸、駆け抜けるバイク……？ いや、バイクに擬態していた馬だ！ 馬イクだ！
| こいつは夢宮のババアと並んで悪名高い『血族』元『四天王』、呂布トールギス奉先のクソジジイである！
|
|「テメエ、チベットの方はどうした！？」
|「新たな戦場が俺を呼ぶ以上、手早く鎮圧してきたわい！」
|
| 飛びかかる百貫デブ、踏んだ先からクモの巣状にひび割れるアスファルト。
| 避ける呂布、金田なドリフトターンで特殊部隊をぶっ飛ばす。
|
| ヤーボ大佐が電信柱を引っこ抜く、矛槍に対抗する巨大武器として叩きつけた。
| だが異様な機動力の馬を捉えられない、次々に吹き飛ぶ特殊部隊。
|
|「あ」「あ」「あ」
|
| 千切れる電線、一斉に発生する停電。
| スカイツリーを確保しなきゃならんのに、停電はまずい。
|
|「隙き有りィィィーッ！」
|
| 路駐の自動車を豆腐のように切り裂きながらの一撃がヤーボ大佐の腹に突き刺さる。
|
|「ぐぇぇええ！」
|
| だが脂肪を貫けない、無傷！
| いや、ミサイルの直撃みたいな一撃に、さしものヤーボも青い顔。
|
| 路肩にチョコレート色のゲロをばらまく。
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∨ ∧ ,ィヽ l ' l / .l
∨ ∧ l l _ ﾘ / l! / '
,∨ ∧´ ／ ヽ/. ' ／. / _
／ ∨ ∧ l丶i丶ｲ ,ｨ. ハ ／ , ' ／ l
< ＿ ∨ へ´ ゞ/ l´ >〉ｨ´ ／ ／ .／
/￣ l ‐ﾍ ゝ 〈 !コ! ,ｨ.´ L ＞´ ＿＿＿_ / O l
,ｨｭｲ l l､ {.r‐- ，< > l 〈 ｲ / 0 l l lｰ'´ ／
/ ｀ﾕｭ´ l l ﾄ ､:::::｀丶ｰ‐ｧ!.ィ /￣￣￣￣￣￣￣} / 甘いぞ若造！
,.ィニｧヘ/ ',｀ｭ∨ l レｨ､ヽ::::::;ｨ´/ //.l 「￣l￣￣l￣ ￣l l‐'
/.l ヽ､_,ｨ冫´二 ｱヽ / .l lﾍ. ', {.ﾍ｀ v'./l /' yl .l l .l l l
l l ／ ｀丶´.ﾄ､ .l .lヽ._l__ﾍ >､ ﾍ仁二ﾍl_.l / l ∨ ,l l l l
l l ／ ｀丶 ,ｨ´ l ｀! l, l l ,ｨェ仁二二二仁ro l l .O l‐┴.‐─.──‐l
l l 〉 ､｀丶 / l! ､ﾉ l 〉 l仁＿o_＿ 〉 l ｀ー┴──┬┬─┤
l l ' , ! ,.ィ´ l ', ノ/ lﾄ､ ｀ｰ<──〈 _＿ l .l Oへ
l ﾄ､ ヽ／ ,.，ｨ´ } ﾉ / ＿l lー─‐一'´ >￣ _≧ィ､｀丶､. ｀.! l .l ヽ.
∨ｬ､ヽ l,. r''" _j ,ィ ./￣ ,'ﾍー─‐ァ ''´,ヽ￣ ' ∧ ヽ l!. l .l O ヽ.
l yｰ!─┴ｨ''" ! iヒ} l ,.イ! l ＞ ( ,ｨ ﾍ ', l l l´ l .l ｀丶､ __
∨丶! / ｲ ソ､ 二二イ , '.´,.ｨ´.ﾍ´,.ｨ´ ',l! l l. ﾘ l .l O 〉 〉､
i ヽl ' /ｬソ二', ,，'´,ｨ'´ l二 .ﾍ ,.ｨ´, l ,ィｰ=＝ﾉ ﾘ ' , ヽ､_ ,. '´ィ´ ヽ
l! ､! ﾑ // 二二 >'´,ィ´ ／ ヽ､ーゝｪ≦二二 ィ´ ,ィ´ユ ヽ ィｰ<二ﾆィ´ ｀ ヽ !
「 ､ _,ィ´￣o二ニニﾆｨ'´ ,.，-‐=‐- ，､ l `ｰ一〈 ヽ.__l ＼ ', `
l!､ ,. / l＿＿＿ﾑ､,ィ´ ヽ. .> ─┘ l ﾊ ∧ ヽ.｀丶 ._ ＼!
｀ー＝=-‐/ l ,' l l l .／ ／ｭ､ヽ. /─､ ﾍ ∧ ∨∧ ｀丶､
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,' ! ﾄ──〈 l / /二ﾆ/ ∧!─〈 〉 l∧ l_＿_lﾍ ヽ ｀フ
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|「ぐぐぐ、クソジジイめ！」
|
| 呂布のくせに忠義も寿命も超高い、まさに看板に偽りだらけの御老体。
|
| ヤーボは手を上げ生き残った特殊部隊に指示。
| 銃撃がやみ、速やかに撤退が始まる。
|
| いくらヤーボが足止めしても、呂布は自動車より早い馬、すぐに追いつかれて全滅するだろう。
| ならばと、速やかに作戦失敗を判断。
|
|「グフフ」
|「去るものは追わん、尻尾を巻いて逃げるがいい！」
|
| 余裕のニヤニヤ笑いを浮かべるヤーボ、だが直截的な呂布の態度に青筋が浮かぶ。
|
|「いつまでも余裕でいられると思うなよ？」
|「百年も待てばお迎えが来るだろうな」
|「あと百年も生きるつもりか！！」
|
| 力でも口でも惨めな敗北をさらし、ヤーボ大佐と特殊部隊は敗走を余儀なくされた。
| 残された呂布は矛槍を亜空間ポケットにしまい込み、コートと帽子で鎧と馬を擬態。やれやれと嘆息した。
|
|「老骨に鞭を打ちおって……さて、我が孫はどこかな？」
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| その孫は、無力さに喘いでいた。
| 多脚でありながら、その一本でも破壊されると移動が困難になる仕様も、
| 脆弱性が指摘されている鼠径部関節も、元仲間のシグは当然知っていた。
|
| あまりにも素早く、容易く無力化された杏子班。
| やらない夫たち相手に、もはや動けるのは『カトルカール』の爆弾蜂のみ。
|
|「イジメないで！ イジメないで！」
|
| しかし彼女の主兵装である蜂の巣型爆薬庫はほとんどが腐食し、使用不能。
| 右手の火炎放射器は天龍に切られて破損。
|
| 飛ぶことはできても攻撃できない。
| それでも、あるいはだからこそ、残された腕でロビンを抱えて逃してくれた。
|
|「逃ゲテクダサイ」
|「イジメないで！ イジメないで！」
|
| 『カトルカール』が一つの単語しか口に出来ないのはわかっていた。
| あからさまに困惑する爆弾蜂。
|
| やらない夫が何故、どうやってこのビルにたどり着いたのかは分からない。
| ……だが、逃げるものは追い掛けてまで殺さないという信頼があった。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ よう、押し通らせてもらうだろ。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「あ、あの、自衛隊が『鎮圧』に来るかもしれませんので気を付けてください！」
|
| 上の階を目指すやらない夫を、シグをおんぶした鹿島が追いかける。
| 殿は天龍、どことなく不満そうな顔。
|
|「横島は？」
|「上だよ、僕らは彼を追っていた」
|
| 巻き添えにならないように隅に隠れていたキュゥべえが顔を出す。
|
|「遭遇戦じゃなかったらな」
|「敵を容易く無力化できたんだ。自分らの強さを誇るべきだよ」
|
| やらない夫を追いかけようと振り返る天龍。
| ほんの僅かな会話。それが彼女の明暗を分けた。
|
|「うおおん、うおおぉん！」
|
| 突然崩落する天井、鉄筋の入った床を砕いて飛び降りてくる機械の腕の怪人。
| とっさに動けたのは天龍、墨目、そして爆弾蜂。
|
| 前後不覚の杏子を庇ってコンクリ塊の直撃を受ける天龍。
| シグややらない夫を守る位置に立ち、襲撃者を受け持つ墨目。
|
| そして、再びロビンを抱えて逃げる爆弾蜂。
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/7 /三=- _ ＿/ /
/7 /＿_7三三7７/ /三三=┐ おおん、うおおん！！
/ 人_/三三三三7// /三三三j{ー、
ｊ７ ﾏーｧ三三７//ゝｲ三三三j!{0oﾆ>
/7三三≠三三７//ゝ-人ｰ三三ji{ｒ―´ _＿ -＝ヘ
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‐=ﾆﾏ┐､ j/三三三＝－//三 ﾝ 人_ 三7///////ー―＜＿＞´￣≧=－ ＿
__,イ二二ﾆﾑ ﾏ ｒ=={{三三三三三7/三ﾑ＿」三三=７ ////////ー≠//////////////////
[二二二二「7フ二二ﾆ＜ ム､ヾﾍ＞三三三三7/三三三三三三7 //////////rー＝≠￣￣￣￣￣￣￣
┌―――‐[二スニニﾆメ､ ＞ﾍニ}} o}八三三＞⌒ マ三三三三７ ////////////////////////////////
￣￣￣￣￣{ｊ三マス ＼＞′ ﾉ oﾊ//｀＞=ﾏニニニニニニ＞´ ////////////////////////////////
{{三三＞ｰ´ニ}ﾆフ oﾊ/_{//////ヾニニニニニニニニ= ////////////／´￣ ￣￣￣￣￣
＿＿＿＿ﾏニニﾆ＞=マ､__｀マ/八__)/////ﾉ マニニニニニニニニ=-//////////
ｒ┴┬─ｒ’ 三三三{ニニニYﾆﾆﾏ////{ ／¨ }}ﾄ､⌒ー＝＝-ニニ7///////// {
ｒ┴ ┬─┤三三三三ﾍ0ニニムﾆﾆゝZZノ⌒ ﾏ//ヽ ｀ マ/////////八
└─┴─┤三三三ｒ≠ニニイニニﾆ／ 〉 八 ´ ，ｲ////ヽ ヽ///////// ＼
└―三三ｊニニﾆﾆ}｢ニニﾍ_／ ヽ _ノ／￣￣｀ﾏ} ＼/////////＼
ﾏ､ ムニニﾆ人ニイ /｀７77==‐ リ ｀マ/////////ヽ.
ﾏ二ニﾆ´7/! j/ { ///////ﾑ／ マ//////ﾉ
}ニﾆ７///j! / 7///////// ￣￣
ム⌒ヾ,//// / ////////／
／//ハ }//// / /////￣￣77=- _
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| 雄叫びを上げて墨目に殴りかかる乱入者。
| エンジン拳／ランブラー・シャンブラー／龍田。
|
| 無我状態での数度に渡る暴走を見咎められ、さらなる改造を受けた個体。
| その脳は現在揺籃状態であり、悪夢に魘され視界にある全ての適性体を殺戮するように設定されている。
|
| 仲間の『カトルカール』の指示が無い限り。
|
| ここにいる『カトルカール』は二人。シグの呪術で死亡したトナカイ女と。
|
|「かふっ」
|
| コンクリ塊の直撃を受けて頭部ヘルメットが破損、流血しながら壁に叩きつけられた、爆弾蜂。
|
|「おおん、うおおん！」
|
| 殺戮者は拳を握らず、何かを探るようにその巨大な指を動かした。
| 反射的な動き、無意識の動き。
|
| それが何なのか墨目が理解するよりも前に、そいつは突進してきた。
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惨劇は終わらない。
破滅は止められない。
命を燃やして戦う美神。
だが、願いは届かず。祈りは通じず。
戦いは終わらない、しかし作戦は完遂する。
女神の命を奪うことで。
次回、最終幕四十二話、『前作からの継続キャラが死なないなんて誰が言った？』
果てに見るのは破滅か死か。
フリットじいちゃん、お孫さんは立派に育ちましたよ！
え、ここに息子が？
フリットがあっさり屈服したな
ダースベイダーの離反で引導を渡されるかと思ったら、それを知らされる前に降伏か
有用性と発展性を示唆されれば転べる程度には柔軟な人間だったってとこか
乙
志摩子さんどうするんだろう
>>165
全ての適性体を → 全ての敵性体を
>>170
うおん、ありがとうございます！
/
i| | /i
＼ i| |i / i
＼ i| |l / .i
＼ ヾ､i| ゝ∨i_/ i
＼ ） ヽ人／} ｨ彡
｀ミヾ ／/!i丶- ､/ ｊヽ
ゝｒ'´ ヾ､､_, i'::::|!
ゝ-'ヽｪイ !／ l::::i|
|!^´i|i|ij ! イ ::::l:|
|!ｪｪｪｪ/ j / ;;ﾄ＼,
ｊヾ=＝' //ﾊ |i ', ヽ ｀ｰ､､
ヽ＿_／､y' ｲ ! i )ヽ', ,, -＝≧＝=ー- ,,､
ノ｀ー-イ { ｌ （∧´／､＿＿ ｀ｰ ヾ ヽ ｀ヽ
ィ´メ ｌヾ;;:::: ヽ! i__;; -‐´／;; ィヽ ｒ-‐ ノv､_ヽ ヽ
,,''´ ,-､_ゝ ヽ;:::::::}/ ）ｒ ´-‐´ ｀メ ,, ´:::::::; :::::
i' / ﾍ ‐､_ _ );!,ィ ('´ヾ _ノ !__ ／_ノ:::::::::', ::
{ ﾒ ｊ ::.. !:::| ⌒ヽ ..:::/ ィ' :::
} ::::{ ::::: ｀:: ヽ､;;::::i|:: / ｲ ィ´ヽ::::
!| ´::;;!| ::::: /:/::.. ノﾉ::::ヾ;ノ/ r' ソ､_;; ::::
!ミｰ､;;lﾄﾞ,､ :: ｊ:::{:::::::::..... ｀ｰ ｏ .....::::::::〉ｲ..::: / ｀ヽ
ﾄ ﾉ{ミﾞ､｀ｰ::´:::|iﾄ ::::::::::::::::::::::::::::::::／/j |i / ;. ::;
/_ ノ{ :::ﾊ ヾ::::;,ィ ''｀~｀ー--;;＿::::::／ヽ{/ ,ｨ ｊl ::
{ |! ハ,, }、ｒ‐' i| ::::....､ヽ_ヾ,,!|l! （ ハ :
ヽ ｀;:: j|l|lヾ｀ ヾ ､ ＼ ﾞ=〉!l|l } ／∧ ::/
} {::::ミil|l|l|i,,＼ _ _/ ヘ∧::::::';:::!|l||;;;l|// : :' : ﾞ :/:
/ |l ヾ､;:j､ヽ｀ゝ::ﾞi|l|ﾞ´'' ｀ﾞ ';::!|l|l|iﾚ/., . : : : } /::::
/ !| }i ヽ､ﾊ ', 〉|l|l彡''ハ: : : : /::::::}
{ i ヾ,, ﾊ ﾞ!| ';. ｀ヾ __, -／/ｨ__ノ '' メ :/::::::::!
i| | {r Y ノ:ﾊ }/: : : :｀ : : :r´/ i/(__, ..::: ｀´::::::::|j
!| l /::;;|l| i|::::::j} /j: : : : .::::.: : l/ /j ﾉ::::::::::｀ :;!::::::jﾉ
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| 心技体という言葉をご存知だろうか？
|
| 精神、技術、肉体のバランスが整っていることである。
| である、であるが。勘違いを散見する。
|
| バランスとは、三つが均等に育っていることではない。
| 心技体のいずれも的確な状態。不調のないコンディションにあることである。
|
| 『結社』や『血族』でもこの言葉はよく利用される。
| 精神の安定。技術の安定。肉体の安定。どれかが崩れては死に繋がるからだ。
|
| 以上を踏まえた上で、狂気に陥る前の蘆屋道満麻呂が戯れに教えた言葉がある。
|
|「心技体とは魔力・テクニック・フィジカルのことでおじゃる。
| 魔力で勝てぬならテクニックで切り抜けよ。
|
| テクニックで劣るならフィジカルで押せ。
| フィジカルに差があるなら魔力で押し潰せ。
|
| 個人で全てを持ち合わせるのは不可能でおじゃろう。
| 故に貴様らはチームを組み、短所を補い合い、長所をさらに伸ばすでおじゃる」
|
| これに対し「全てで負けていたらどうするのか」と問いかけた生徒がいた。
| 麻呂は「ホホホ」と笑ってごまかした。
|
|「諦めて死ぬしかないでおじゃるな」
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. |////; |＼ :!" ノf汽Ⅵ: | ^∨ j ＼
. └─‐{V |-‐'＼| 弋jｯ' |: | ;) }:. / ∥ /,⌒ヽ
{ ∨ |ィf笊 |: |__ノ / /, か、勝てる気がしないんですが……！
! ∨ﾊ 乂ｿ u /:: |: / ,:’ /,
|/ハ ｀ /'^}: /|∨ ／/ j
| 分 ⌒ ／-/ /:/-ミｈ､| / 八
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| 腹に風穴を開け、血と臓物をボタボタこぼしながらも……その悪魔は圧倒的だった。
| 『死鳥』水銀燈。脳噛ネウロを殺すために派遣されたモーリアンの戦闘用代行分体。
|
| 恐るべきパワー、無尽蔵の魔力、連発する初見殺し。
| 『エクスカリバー』の局所重力制御とセイバー忍法がなければ15分足らずで両手で数えてもお釣りが来るほど死んでいた。
|
| 謎のヒロインＸはハイランカーのセイバーである。
| それは彼女が肉体的には特筆できなくとも、魔力操作と攪乱戦術に抜きん出ているからである。
|
| つまり、今の相手ように会話の通じないガチンコは大の苦手。
| 水銀燈の魔力切れを狙って遅滞戦術に専念しているが、大規模攻撃を連発しているのに魔力の衰えは一切ない。|
|
|「これは何かカラクリがありますね……！」
|
| そのカラクリの予想もできていた。
| 最悪の可能性は、魔力のコスパが異常に良いこと。
|
| 『武僧』を壊滅させ、トラックをスクラップに変え、ビル街を世紀末に変えたあの攻撃。
| 『カトルカール』のオニヤンマはブロック肉になって飛散、アゲハチョウは路上で停止、戦車は沈黙。
|
| Xも幾度となく殺されかけた、両の翼から飛ばす羽の竜巻。
|
| あれは魔力による破壊現象ではなく、触手や巨大な腕みたいな、悪魔特有の肉体器官の一部なのではあるまいか？
|
| だとしたら、向こうは必殺技でもなんでもない強パンチの連発をしているだけということになる。
| 魔力が切れる前にＸの命運が尽きるのは確定的に明らかなのでは？
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:.! ヽ /:,:.! ヽヽ＼:.:.!:.:.: ..:.:./:./: ./.:.:
ヽ. ゝ l:.// トゝ.ヽヽ:.:. ..:.:.:.:///l:rｲ':´ ,:
ヽ ､ヘ ｰ' ヽヽ':.:.:.:／/イ'T, !:.: ..:./:
｀ -丶-_-- ――-_- ヽ',:／ ／,ﾘ ,ｲ/:.:.:／／
ヽ ｀￣ ￣｀ '′/' '' //:.:／/´:
ヽ:＼ l`￢'イイl:.:./:.:.:
＼ ヽヽ ', ,'.: | !:/:.:.: ちょこまかとぉ！
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丶､:...ヽ､ ,. '´ , ':.:.: /:.: /
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ヽ二...__‐..二!／ ,.ィ:´:.:!:.:!:.:-'‐:.´ l |
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| 水銀燈を倒すのは、不可能ではない。
| 『エクスカリバー』の残存魔力とセイバー忍法の合わせ技で、
| 地球の重力から切り離してしまえば衛星軌道までひとっ飛びなのだ。
|
| だが、初手で放ったその奥義は強大すぎる魔力量に阻まれた。
| 高位悪魔はこれだから始末におけない。
|
| 実を言うとＸは、この戦いに興味はなかった。
| パプテマス・シロッコとかいう女たらしにも、食べた分程度の義理しか感じていない。
|
| しかし、その過程で遭遇した一人の男。
| アイツは危険だ。最悪の相性だ。
|
| 今目の前にいる水銀燈よりか戦闘能力では劣るだろう。
| だが危険度は遥かに上｡
|
| 奴をどさくさに紛れて排除しておきたい。
| そう考えて参加したが……これは生きて帰れても排除するだけの力が残ってないのでは？
|
| いやそもそも。
| 生きて帰れるのか？
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ヽ ＼｝: : ヾ:::::::::::::::::| : : : :／ ニﾆ、ー―‐-＼ }: : : : : :｛/::::::::::::::::::／ ／ ￣_二ニ＝ー-
:::::＼ く : : : :ｌ:::::::::::::::::＼／ ／:::｛〈匀}｝:::::::::::::::::::::::＼ : : : : }::::::::::::::::::/／ ´
―‐-＼＼ : |:::::::::::::::::::/ ／:::::::::::＞＝′￣￣`ー-､:::ヽ : /:::::::::::::::::/´ ／
ー -- ＿_ ＼:::::::::::::::: ′ /::::::::::／ / l l '. ヽ ＼:∨::::::::::::::::/ ／ ￣_二ﾆ=‐-
￣ ＿― -- ＼:::::::::::| /:::::::／ ' | | | ｜ |l ﾄ|:::::::::::::::/ ／ -‐ ￣
＿〈匸＞―一ｧ 二＞=､l:::／ l| ｌ | | |l ハ／ |／ 二二 ＜ オラァ！
ｰ‐／::::::::::::::://::: 〈〈_//イ ｌ| | | // | |ｊ厶ｲ|ｌ //::::::::::::::::::::::::＞－――-､
／:::::::::::::::::://::::::::::＞ｲ | | ｣_八ｌハ 〃 lイ以_ || |::::::::::::／￣＿ -――― ､ ＼
:::::::::::::::::::::〈｛ ::::::く/´:::ｌ | ∥ |/ 二≧ﾍ / ｀" ﾘ |:::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ヽ, -――――‐-､
::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::| | 八 |l＜__以｀ ＼/、 / / ::::::/ /::::::::::::::::: -――――ﾍ/:::::／￣￣￣`＜:::ヽ
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l＼ |人::::く￣ト-个ーｆ⌒ｰ勹::::::::レ ′/＾/ / ヽ （ / ／|::|
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|「へぼしっ！？」
|
| 羽のハンマーで殴られ、吹き飛ばされる。
| 急ブレーキは体に負担がかかり過ぎる、緩やかにブレーキをかけながら移動。
|
| 離れた位置で封鎖していた警察車両に突っ込み、横転させる。
| 蜘蛛の子を散らすように逃げる警察たち。正しい判断。水銀燈の無差別攻撃に巻き込まれたら死ぬ。
|
|「すいません、早く逃げて！」
|
| だが、その中にひとり。微動だにしないフードの男。
| Ｘは舌打ち、死にたいのか、早く逃げろ！
|
| 振り向いて、Ｘは思考停止した。
| 空中で静止して、大きく目を見開いたまま金縛りにあったかのように動かない水銀燈。
|
| 視線が向くのは自分ではない。
| すぐ近く、別の誰か。
|
|「何をしている間抜け。せっかく作った隙を無駄にしおって。前から言っているが貴様は注意力が散漫すぎる。
| 反応も遅い。ゾウリムシと競争しても負けるグズが。言葉を理解するまでに何秒かかるのだ？
| お前は何だ？ 氷河期を生き延びたブラキオサウルスか？」
|
| 立て板に水の罵倒。
| 想定外の人物にＸは完全に思考停止していた。
|
|「し、師父ーっ！？」
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| 『カトルカール』のフリント・アロー。
| というコードネームで部隊を指揮する黒豹の如き隻腕の男。
|
| 早い話が藤木源之助は攻めあぐねていた。
| ここに残った『カトルカール』は負傷したノミ脚、バレリーナ、戦車男の四人。
|
| 四階に立てこもったモーリアンＣ．Ｏ．の生存者は、先頭に立つヴィヴィアンの水の壁で寄せ付けない。
| 非常階段と高低差を利用した放水は相性が良く、接近戦は困難であった。
|
| エレベータシャフトを登るか？ だがあそこで放水を受けた場合は20メートル近い垂直落下だ。
| 隻腕の藤木にはクレイジークライマーは難しく、これ以上仲間を失うのも避けたかった。
|
| 三階を制圧した軟体男を通気孔越しに動かす。
| 彼のガス攻撃であぶり出すことができればあるいは……！
|
|「よう藤木、手こずってんのか？」
|
| ふと、階段を登ってきた者が声を上げた。
| 複数の足音、肩の尖った威圧感のある鎧と、ＫＫＫを思わせる円錐型の兜。
| 独特なインパクトの威圧感ある怪人。ヤザン隊だ。
|
|「ヤザン殿……」
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/⌒V
/ V
/ V ＞／
/ ｨﾆ>、 V ＞ ／,ィ スクラッチャーがやられてんのか。
fて`c､ f /⌒ヽ〉 V ＞' ／ / :l よし、俺たちでエレベータから奇襲をかける。
l ＼〉 ＿ f=lィ ヽ. γ⌒ヽ r' ／ / :::|
| / `寸ｌ=|:ﾄ､_＿_ ィ ／x仏 Y^ｰrく ' ::::::|
| | ｌ=ﾄ〉x込_乃'’ xｍ､x今' j |::::::::|
＿∧ ', ∧=V ＿（__.x全川y´rﾍ彡r' ,'_＿,'‐-x之___
| :::::::∧___＿rﾍ_＿乃У{:::::ｘ'´ﾄ!__k'＿乃!＼} r'ーx.＿/ :::::::::::::::::::::::::/
| ::::::::::::::::::::::::r┴ｘー《::;ｘ'´ ＿jrｰく／ `ﾄ､_j_j,斗'´;::::::::::::::::::::::::::::::::/
|:::::::::::::::::::::x'⌒マjr'x'´ _,斗少‐‐‐句_＿,x＜ : :::::::::':::;:::::::::::::::::::::::/
l::::::::::::::::::fr―‐くｘ'´ .ｘr久_r‐=ｨ ,ｲ￣｀Vム . :::::::::::::::::::::':::;::::::::::::::/
∧ ::::::::::::::,ｨ==ィ´x今x_〈 i rｰ句 V:ム . :::::::::::::::::::::::'::;::::::/
ﾍ::::::::::: ,ヒ亥ｘ今/〉../∧ i j´r' Ｖ:ム:::::::::::::::::::::::::::::::Y
`寸'´ x少x／〉/{￣ji∧_ｊ_j┤___,ｨﾆニ、V::ム:::::::::::::::::::::::／
＞'´,.x少ｘ／ .〈//fｸ j 厂 `水《〈_〉__rくV:::ム::::::::::::::／
f＾_y'´ r'ヤ / ｡! {::f 《｀ヽ.〉‐-xﾑ;斗＜
｀´ ／ / / ｡! `!〈￣Vﾑ ｡ ＼
く_〉升‐く rﾏ |`ﾄ! _Vﾑ o ＼
,r' ノムx, ___ク |/ `ﾆ二仆､O ／
ｘ＜ ___,,xr≦二 | f升ﾍ ﾏx／
｀¨´ |x'ﾄ､ ﾍニﾄ､
＞x, V
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| ノミ脚男ホッパー・スクラッチャーは、狭所戦闘の達人だ。
| 彼が負傷していなければエレベータからの挟み撃ちを決行していた。
|
|「敵は滝のような水を呼び出しまする」
|「戦場じゃあビビったヤツから死ぬンだよ」
|
| 武器や器具を使わず、素手でエレベータのドアを開くヤザン。
| 続く彼の部下。
|
|「……申し訳ございませぬ」
|「陽動任せるぜ、いい所奪って悪ィな」
|
| ヤザン隊の鎧には、『ウミヘビ』と呼ばれる多機能鞭が収納されている。
| ワイヤー、打擲棒、電撃鞭として使い分けられ、ガラスのように透明。
|
| 利用したワイヤーアクションやトラップで、敵を撹乱しながら叩き潰すのがヤザンのやり方だ。
|
|「…………」
|
| 毒ガス男を四階に移動、同時に戦車男を突撃させる。
| ガス弾を放り込むのと同時に、戦車男が機関銃をフルオート。間髪入れずに戦車男に叩きつけられる激流。
|
|「喉が喉が喉が……！」
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
|
| 壁を蹴って襲いかかるノミ脚も押し流される、源之助本人も壁を走り、水に気をつけながら上階を目指す。
| 高さの利がなくなれば放水攻撃にも対応できるのではという考え。
|
| その間にガス弾が炸裂、悲鳴を上げる生存者。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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} V´ ´ /'⌒／-/,ィ7 , ｨ
,ｨ }V /／ /
{ V -＜＿
{､乂 ＜_ 何やってやがりますかァァァァ！！？
＿_､ ＜⌒
＼_ , / | ､ ＼ ＜
/イ ,: , /{ | { l{ { ヽ ＼ ヽ <⌒｀
r ⌒ヽ＜⌒>}ｲ , / /{ Vl V ∨V､ ∨,-､ﾊ}__,.≧=-｀⌒＼----
'⌒ ｀ ー {/ｲl//{＼{∧ {､ },斗}＼}V- }≧ニﾆ
/ ＞- ､ 从{{ 下 t､V/ｲ ｨ tｫｱ }' ﾉ//ニﾆ} |
> ⌒}/ r--- ､ |=ﾑ ｀¨ |::. ｀ ¨ },'//ニニj! }
／,.: : :/ー ¨´ ＼}ﾆﾆ ､ ｰ'_＿,.、 ///ニﾆﾆ/ j!
／: :/ : :/ 乂ニﾆ ､ヽニニ' ｲ//ニﾆﾆ/ /
, : : : :/ : :/ ＼ﾆ{{ ＞- ＜,_〈〈ニﾆﾆ/ /
,: : : : :/ : :/ ∨￣￣＼ﾆ}｀V〉ﾆﾆ,' '
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{': : : : : :＼ ∧ ＼ニニV'| /
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| 打突音、信号が途切れる。
| 壁越しの一撃で、軟体男が絶命した。
|
| 源之助跳躍、奔流を叩き切り、術者に肉薄。
| だが、『一手』足りぬ。
|
| 刃は届かない、片手では切り返す膂力が足りない。
| 他のありとあらゆる、左腕があれば可能な攻撃方法が脳裏をよぎった。
|
| 夢世界で高校生共と戦ってきた間は忘れていた感覚、強敵。
|
| 左腕があれば。
|
| 切っ先が術者、ヴィヴィアンの細く白い首をひっかく、皮膚が破れて血が飛沫く。
| それまで、命までは、頸動脈までは届かない。
|
| 押し流される源之助、踊り場の壁に叩きつけられる無様。
| その時、エレベータの扉がぶち破られた。
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i` 、
l 、 rt .r-、
. i| ヽ.', ', ┝┥. __
,ｨ- 、. li '｡, ., t__ﾉ ；_j テメエら！
{、 ,`、 ,'|l '｡ ,. i .i .i__| 雑魚には構うなぁ！
Y V´ｨ-、 、 , l|i '｡; ,-|__| ﾄｲ ,.｡_*''"≫＞＞
'｡ ',。',::::`y＞-y:::i| `t<、.,＞、 i .| /´Yィ´_,。ィ´ ﾉ＞s。。____
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人。ゝ,ｨ＞ィ_ﾌj:::... ',,ィ´,ィ´,ィ´,ィ´ i＞ィ゜ 〕-__＞、ヾ。ヾﾊｲ>
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 壁に木刀を打ち込んだ銀髪和服の男に躍り掛るヤザン。
| 三合でへし折れる木刀。
|
|「オイィィィィ！？」
|
| 天井にワイヤーでぶら下がり飛び退くヤザン、二人の部下が脇を駆け抜ける。
| 二人の間に光る電磁ワイヤーが和服の悪魔に巻き付いた。
|
|「銀さん！」
|
| ヴィヴィアンの悲鳴、始まる乱戦。
| 殺到する『カトルカール』、起き上がる源之助。
|
|「おっと、やらせねぇよッ！」
|
| 水で『カトルカール』に対処しようとするヴィヴィアンの腕に、ヤザンのウミヘビが絡みつく。
| 電流を流そうとするも、逆流。焼け焦げて煙を上げるヤザン。
|
|「この人……？」
|
| 人間なら死ぬはずの高圧電流、しかしヤザンは煙を上げながらもウミヘビを手繰り寄せた。
|
|「やるじゃねぇか！」
|
| 魔力ではヴィヴィアンが圧倒するが、体重ではヤザンに分がある。
| 引っ張られたヴィヴィアンの脇腹に拳が突き刺さる。
|
|「ぐぇえっ！？」
|
| 激流で距離を取ろうにもウミヘビが離れない、丸太のようなローキック。ヴィヴィアンは堪らずくずおれた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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: :/ /: :/ / : :ﾊ :l : l : :|: : : !: : ! : : :l : :!: : l:ﾍ: :'; : :ヽ::＼::::＼
: : /: :/ // : :! | l: :l: : :l: : :.|: : |: : : :! : | : :ｌ :l: : l : : :.ﾍ::/:::::::/
`/ｰ- ､ /ハ | l l: :l : /!: : :l: : :l: : : ﾊ: :!.: ::|: |: :.|: :l: : :!:::::::::/、
/ /,,,- ﾆ=ｘ- ､_|: :l: / | : /!: :/! : /｜:l _; +十':!l: :! : :l==イ : ヽ
''" ／ :;;r jヽ `!７|/ |: / | /｜/,, +＝､ .| :|: :||: :!: : :}::::::l: : : :ﾍ
/:::::;;;;;;;:`::::::l !/ l/ / :;;r ヽヽ:∧八∧ :/:::::ﾉ: : : : ﾍ
|::::::::;;;;;;;;::::: l ｌ:::;;;;;` ::| ｌ / }/=イ.: : : : : : l
'､:_ '''' ノ l '''' ﾉ } / |: : : : : : : l うう、このぉ！
::::::::.. ￣ ` ー ' ,' |:ﾊ: : : : : :.}
:::::::::::: , ..::::::::::::..l }' .}: : : : :.,'
:::::::::: :::::::::::::::::::| / /': : : :./
::::::::::::::: l /' : : ／
/ ／: : ／
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| 水浸しのヤザンを冷却、氷のオブジェの出来上がりだ。
| ウミヘビを振りほどき、フラフラと立ち上がるヴィヴィアン、その間に和服の悪魔は『カトルカール』を千切っては投げる。
|
| しかし、源之助の一撃が彼の足首を切り飛ばす。
| このままではなぶり殺しだ。ヴィヴィアンは治癒の魔術に集中を……。
|
|「よそ見すんなよ、テメエの相手は俺だぜェ！」
|
| 再び巻き付くウミヘビ。
| 氷漬けにしたはずのヤザンが自力で氷を割り脱出、魔力では圧倒している？ 違う！
|
|「なんなの！？」
|「ただの『武僧』だよッ！」
|
| そう、『武僧』だった。
| ヴィヴィアンが発射した多段式高圧水流カッターをたやすく見切り、
| ヤザンは踏み込み、跪き、祈祷と格闘を完全無欠に融合した打撃を放つ。
|
| 腹で爆発が起きたような衝撃。目視では間に合わない速度、訳のわからない威力の炸裂。
| 力や技術は当然だが、頼りの魔力ですら敵わないとは。
|
| なんだ、何なんだこの人間は。
| こんな奴が存在していいのか！？
|
| へし折れた背骨、髪と指先が粒子となって拡散し始める。
| 魔力で構成した肉体が今の一撃で破壊されたのだ。致命傷。ヴィヴィアンは冷たくそれを認識した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. :;′ / ∧V⌒ヽ㌧..__ .::.:::∠._ .:／ ／ .::ﾞ .::;:: ：
: ::′ ｛／ﾄ､{ Ⅳ ＾ ｀＾ ￣｀>ｯ=＜__彡'′_..ｨ::: .:ノﾉ.:: }
: :j ！ : :｛ 〉 Ｙ/. }㍉ ￣__ノ.::_彡ｲ.:.:: ／.: ,
: :i{ ﾞ, : ::. ヽ f ､{ / ￣ _.ﾆ厶ｨ'ﾞ.: 人
: :{㌧_ ' :::ﾄ、｀ ｀`''＜ / ﾊ! _ノ.: ／ |
: :ヾ ￣ Y / `1 / / /‐=彡イ , …………ぅあ。
: :`=‐- j/ ﾞ''ｰ ,: : . ﾚ'＾ヽ/
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｀ .._ : : : :＼ ′ ､ ｒ っ 人 : : : : : :|
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| 言葉は出ない、代わりに血の塊が迫り上がった。
| ヴィヴィアンは最後の力を振り絞って激流を放つ。残された時間は無きに等しい。それでも。
|
|「あン？ ……とと」
|
| ヤザン目掛けてではない、別方向へ。
| 絡みついたウミヘビに指を食い込ませて離させない。勢いによろめくヤザン。
|
| 油断したな？
| ヴィヴィアンは凄惨に笑った。
|
|「何ィ！？」
|
| 明かり取りの窓を突き破る、四階の高さ。心許ないが、せめて。
| 道連れにしようというヴィヴィアンの執念に、兜の下でヤザンが笑った。
|
|「いいぜ女！ 嫌いじゃねえ！！」
|
| 水を通して電撃、凍結。
| 受け身なんて取らせない、死ね、一緒に死ね。
|
| 落下までの一秒と少し、ヴィヴィアンは急激に薄暮の空に浮かぶ一柱の悪魔に気がついた。
|
|「ぎんちゃん……？」
|「……ゆみ？」
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/ ./:::::::;'ﾞ;''::::;' ;' /;' .;'::,' ,':::;' .;':;' ;.'./:::;::| ;i. ;l .iﾞ; ;ﾞ, ',.',､ﾄ-､;;;-､. ',
,､ , ':::::::::;'::;!l:::;' .! i::! ;'.i:::! ,':::,' ,,':::! ,'',/.l:::l:::; ;':!.,', ,':', .;:', , ﾞ,',ﾞﾞ,`:､`"~ﾞﾞヽ,
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/:,/ ,' ,,' ,,",'ﾞ,::::::::::l::ﾞ､ﾞ､:l'､.',',i"ﾞ､! ﾞ ﾞ',`､:',",',::l ﾉ"j/''/-','_':/!',,'::;' ;',':l ,':::/::::::::/" / `､
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..;' .,' ,l ,' ;' .,' ',::::::r'λ|ﾞ､ '' /ﾝ''ﾉソ:::/lﾞ''''--'''~~::', ﾞ,
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| なんだ、来ていてくれたんだ。
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| なにか伝えなきゃ。
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| ああ。
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|
| でも、もう…………
|
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/: |::| |::ﾄ､∨| | ｜| | ｜ | l | l| | j l | |::ﾄ＼
:/ |::| |::| |::|∥｜ |人 |＿j_| 斗 卜 ⊥」|_| / ′ | |::| ヾ:l
|::| |::| |::|八 、 |￣ヽ＿｜ l | 厶八 厂/ / | |::|__ｊ::|
ニィ トごﾉ ＼ヽ|〆 二、ヽ | /ｌ ｲ 二 ｀ヾｲ／ | トr―'
|::| |::| |〃 ｛ ０｝ ＼ / | ０｝ }ト､ | |::| ああ、ああぁあ…………？
|::| |::| ヽ |ヾ ヽ/ ﾘ// /｜|::|
ﾚ′|::| | ＼ 、ヾ三￣ ￣三‐'// ／ l､ﾚ′ ／ あああッッッ！！！？
__/ ヾ | ＼ ＼ | ／ ／ , ＼ ／/
-､＼ | | ￣ ∠ イ / /{__／∠
＿＼＼l＼l | 、 -- ､ ／ | / 厶≦三三
三≧ﾄ ＿_| | ＼ ´￣ ／ , /∠二三三二
ﾆ二三三三l | | ` 、 イ / /三三三三二ﾆ
三三三三三ｌ l |::::::::::::＞ ＜:::::::| / /二三三三三三
ﾆ二三三三ﾆl ｌ／::::::／／|::| |::ト＼::＼_/ 厶 -―＜三三三
ア´::/￣￣＞ﾍ l＼:::: ヾ 二ｲ| ﾄ ニノ:::: / ／::::::::::::／＿_＼三二
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| 落下、光の粒子となって拡散するヴィヴィアン。
| 氷漬けのヤザンがアスファルトに叩きつけられる。人形みたいにバウンド、鎧の隙間から血が漏れた。
|
|「うそ、うそよぉ！ 嘘だと……！」
|「『銀河流星剣』」
|
| 今再びの奥義炸裂。
| 肉薄したＸが『エクスカリバー』を振るう。
|
| 固定されていない死体やゴミ、壊れた自動車が空に『落ちていく』。
| 今度は水銀燈もその例外ではない。
|
| 友を失った衝撃、精神のバランスを失ったその瞬間。
| 両目と耳から赤黒い血を流しながら、Ｘが衝いた一瞬だけの勝機。
|
|「かはっ（吐血）」
|
| 魔力を使い果たし、頭からアスファルトに落下するＸ。
| それを見下ろすフードの男。
|
|「貴様にしては上出来だ。やればできるではないか」
|
| かくして、水銀燈は星になった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
時は来た！
時は来た！
この国を壊す。
この国を変える。
徹底的に破壊して。
全て一から作り出す。
革命だ。革命だ。革命だ！
正しく美しい世界を作れ！
徹底的に壊したら再建できねえよｗｗｗといつもおもう
カトルカールは、4人が死亡して二人が戦闘不能で、残りも多くが負傷。ヤザンも負傷
この状態でやらない夫達と、残存戦力の戦いになるのかな
戦況がぐっちゃぐっちゃでござる
乙
力には技、技には魔法、魔法には力ではないのか……
これの後始末誰がすんの？シロッコくんがんばって
やっちゃうのか、くぅでたぁ
至言よね
ttps://livedoor.blogimg.jp/saviour01/imgs/2/d/2dd87580.jpg
謎のヒロインXつおい
そういうネタがあったのか。
知ってたらそっちにしたんですがね……。
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ヽ､ヽ ヾ , ./ ,!/
ゝヽ /ｨ
`､λ_ i `､‐- __ /ノ
`〉 i `‐- 二_=‐-, ｒ' 事を急ぐと元も子もなくしますよ閣下。
! `､ __⌒" /
! λ ,'´
! ヽ i
-! ヽ ﾉ
ゝ'´ ! ,ｒ‐‐--､、`ー-､___,＿_____,ｨ'!ー､
λ ! /,ゝ `ー‐--､＿＿___⊥‐' ）_
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| タワージャックに向かう途中のヤーボ大佐にそんな助言をし、電話を置いてから一秒。
| 自衛隊のムスカ陸将は子飼いの部下に指示を出していた。
|
|「善良な一企業を攻撃する不逞の輩を排除する。
| これは先日可決されたテロリスト対策法に明記された特殊事例による出動だ！」
|
| 完全武装の自衛隊員を満載した装甲車輌がモーリアンＣ．Ｏ．目指して発車する。
| 本当ならばヘリコプターや戦闘機、戦車も出動させたいが、それは流石に難しい。
|
| だが、ここでマスコミと共にあのビルを攻撃する『教会』の邪悪さを世に知らしめる。
| そして奴らを糾弾して日本から追い出してやる。
|
| ムスカの目的のためには、善良な市民が何人死のうが知ったことではない。
| むしろ必要な犠牲だと思ってすらいる。
|
| 惰弱なこの国を正常に戻す。
| 合衆国に媚びへつらう犬ではなく、独立した狼として立ち直らせねばならぬ。
|
| そのためには革命が必要で、革命には痛みが不可欠だとムスカは信じていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／ , ＼
／ / l ヽ
,r' / ヽﾞ,､ ﾞ,
. / ｲ/ ` ` ､ }
{ i | ﾞ ､,,`' ､ , j
ﾚ'､, | ,:r'"''‐ `'ﾞ、 ,､‐‐､ l
ゝ」､ ､ , ,､‐''ﾞﾞ､ﾞ'､-――t'''/ ／ l | 正義は我らと共にある。
,ゝ‐､_,',. ' ,O 〉 V .( ﾞ, j i ……犠牲はやむを得ない、最小限で済ませろよ。
',.ヽｿ. '､,,､ -'" / / j
'‐ﾚﾞ .,r' ノ
l` ` ､ i'" ﾞヽ､,／
. ﾞ､ ,,､ -‐'" ﾉ ヽｧ､
ﾞ､'´ .. ,rﾞ ノ ヾ＾ﾞヽ、
. ﾞ, ./ ,､ｒ' ／ ＼
!、 ／ ,､ｒ'" ／ /`'ｰ-
`'''"入￣ ,､r ''" ,､／ ／
く .Y'" .,､r'"／ ／
/" ` ､', ,､r''" ／__＿＿＿／
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| この曖昧な命令が、彼らの命運を分けることとなった。
| 後の先を取り、漁夫の利を掠めようなどというずうずうしい考えがそもそもの間違いだったのだが。
|
| 市ヶ谷からの道路は帰宅ラッシュだけでは説明できない異様な渋滞が発生していた。
| 最初から準備万端だった合衆国軍と違い、ムスカはギリギリまで動かなかった。
|
| もちろん、自衛隊内部での問題や、他の組織との折衝もあった。
| しかし動き始めれば何者も邪魔できないなどと高をくくっていたのは確かである。
|
|『第一小隊、渋滞から抜け出せません！』
|『第ニ、第三もです！』
|
|「ば、バカな……！」
|
| 平和な日本で発生した突然の市街戦のニュースに、誰もが我先にと逃げ出そうとするのは想像できた。
| ならば、向かう方向は逆なのに。
|
| なぜ、なぜこんなにも……。
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__,,.. ,,､
_,,.-‐''" ミ_⌒ヽ ､
／- _,, -､ ノ^ ヽ､
,.-''" ＼
／ ハ､ ヽ ありがとうございますカミナ様。
／,ｨ ﾉ ﾉ ﾐ､ヽ､ ヽ､ヽ
/ // ／ ,/ / ﾐヽヽ､ ＼ ヽ ヾ､ 私が不在の間も、よくぞこの東京を守ってくださいました。
{ /i / ./ /,／ ヽヽミヽ､ ヽ､ヽ ｰ､｀ヽ､ あなたと『グレン団』は、この東京の守護神です。
ヽ l l l / /__, ノ -‐-- ,,_ i iﾐ ﾐヽヽ ＼ヾヾヽ
ﾞ| l { |ｨ",イｪ､ ｨｪﾆ=-,､_ ｀ﾞ} l｀ヽシ＾ヽ ＼ ヽ､}} }
{ ヽ{ l ﾚｲ{t:;;:} " {;ｨ;;::}ヾ. | l kiヽ } ヽ } ﾞ ｰｰ‐''"⌒ ヽ
ヽヽ､ヽ. ゞ-'., ｰゞ-'- | ｌ ,／ ﾉ }ﾉｰ､ｰ-''⌒ヽヽ }
＼ ＼ゝ / } l ｨ ／| | i { ヽ､＿__ }_},,ｨｰ''⌒_ヽ__
ﾄ､八 ｀ ﾉ.ﾉノ!Ti | ヽ､{ { ヽヽ､ _,,.-‐''" 二=-､ ﾞヽ
ヽヽ ヽ､ ｰ _ー / / | l ヽ｀ ヾﾐｰヾ､＿,,.-''" , -'／ /{ }ﾄ､ }
ヽ } l ヽ ／',/ | ヽ ＼ ＿_____,,. ｨ"／ ヽﾆン } ﾉ
ヽ.ヽ ＼ ﾞヽ､＿,, イ / { l ヽ､ ｰ'' _,.‐"／ ___,,,,__ _ﾉノ
＼｀ヽﾞ､ ヽl / ! ﾞ､ ヽ､ ｀ー--=''"-‐''" ヽ
ﾞ ｰ､｀ ｰ､ヽ､| { { ,>ｪ=' i ヾ､ｰ--､＿＿＿ ､ ヽ.
l ＼ }_ﾉ_人 ｀＜￣ { ＼ ＼_ ｀ヽ､ ＼ i
}_Ｌノ ﾞ''ｰ-｀=-----ヽ ヽ､___｀￣￣二- ヽ ヽヽ}
/ ノ __,========､ ＼ヽ ｀ヽｰ' ｀i i } Y
/／ ／, -'"￣フ｀｀ヽ､＼ ヽ ＼ } } } レ'
／' ／／ ／ ＼｀''=､ ＼ヾヾ､ﾉ {､_ノ ﾉ }
／⌒r' ／／ { ヽ＼ ﾞ､ ﾊ ヽ､ ヽ＿,,ノ ノ
/ ｨ // ,,／ } ヽ} |＼ } } l } ｀ー''"
{/:{{ {ﾉ／ﾉ ヽ ＼l ヽ }ノ } }
＼ツ_／ ､ ヽ､ 〉 | | ﾉ ノ
〈_{ノ ＼､_ヽi i / ﾉ |_ノ'"
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|『あ、いやその……そう言ってもらえてありがてえッス』
|
| 受話器越しでもかしこまってカチコチのカミナが想像できた。
| いつもあんなに反抗的な男を一瞬で、フリットは舌を巻く。
|
| これ以上戦況を悪化させないために、志麻子が打った最初の手はこれであった。
| 次いで、三人ほどに指示を出す。その内一人は呂布で、フリットは彼が帰国していたことをそこで初めて知った。
|
|「『敵』は東京を危険な地域だと見せたいように思われます。フリットさん、次の目標はどこだと思われますか？」
|
| 軍の出動、マスコミの利用。
| ただ攻撃するにしては消極的だ。
|
|「セオリーならば無差別攻撃なのですが、要人暗殺でしょう。穏健派の与党議員や大臣、総理……」
|
|「それと、あなたもです」
|「じいちゃんも？」
|
| 驚くキオ、だがフリットは納得した。
| 彼がいなくなれば『血族』側で火消しをする者がいなくなる。臓硯は期待できない。
|
|「無差テロであるなら、新宿駅が」
|「……『グレン団』や『九鬼』の指揮はジャギですか？」
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{ ` ｰ- ＼ } ヽ
}＼､ ﾐZ⌒ヽト :} / }
′ 丶 ` ｰ- ／ ｀ヽト､ :} / /
{ ＼ ｲ ／ ＼ムイ 〃 ｧ
､ , =ﾐ r彡 r==ミ ､ j ／ ／
､ｰ＼ / ヘ} { -‐＼ ､_ } / { 彡
} { { | | 仗__〕 ｀¨ ム-=＝!
. 八 く| | :} 仗¨〕／
>、 ﾊ `.! | :} -‐ ¨ ﾄ、 } いや、奴は行方不明です。
／ｲ r'人 j / } }: ﾉ 今はケンシロウ殿が。
∧{ﾊ、ﾉ z彡 {､ r , -‐￢‐=ﾆ ノ ／
rｰ{ ＼ く、 ＼ / ｨ ,__,_, ｀V
rｰ┘ ㍉ ＼ ム、 ＼ ＿｀ `Wj
rｰ┘ ㍉ ﾆ=-＼ ｰz ィ , ﾍ / ≧=- ､
_rｰ┘ ㍉ ﾆ=- ､ ゛{ }
{ ㍉ ／⌒ヽ 从, =ﾐ /
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|「では、ケンシロウさんを指揮しているのが蒼星石です。
| モーリアンＣ．Ｏ．での戦闘行動激化はともかく、仕掛け人の一人は彼女でしょう」
|
|「なんですと……？」
|「ダースベイダーを私達から引き離した、それ以外にも私を救出する手を打っているはずです」
|
| 蒼星石、翠星石の妹、姉に才能を吸いつくされた絞りカス。
| 特筆する所のない術士だと記憶していたが、それの手のひらの上で踊らされていた？
|
|「忸怩たる思いはありますな……蒼星石が関わっているなら新宿駅は手を打っているはずじゃと？」
|「そう祈ります……ですのでキオ、私とフリットさんを護衛してください。『血族』本部に向かいます」
|
| 自宅に一人でいるよりかは安全なはずである。
| フリットはカーテンを閉めるべく窓際に寄った。
|
| その瞬間に、窓ガラスにクモの巣状のヒビが入り崩落した。防弾ガラスを突き破る大口径の弾丸が打ち込まれたのだ。
| フリットの膝を食い千切らんと殺到した弾丸は、しかしキオの『見えない手』に掴まれて回転を止めた。
|
|「なにィ！？」
|「じいちゃん、こっちに！」
|
| 一瞬遅れて銃声、音よりも早く弾丸が届く位置からの超長距離狙撃。
| 恐るべき凄腕の暗殺者。
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j ﾘ .＞ﾆ三￣ 二=- ｡
} h ／: : : : : : : : : : : : : : ＼
j {ｨ': : : : : : : .ｨ: : : ',: : : : : : : ヽ
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| , j !: : .イ ＼ ' ,: : ﾄ､: ﾄ､ i : : : ∧
| ,' { j／_,｡ﾆ=ｭゝ, ＼| ヽi ﾍ|: : : : i
| , :| 「秘才′ "}≦ｪｭﾘ: : : :ﾘ
i! , ! 込 ﾘ :機オ」L: : : ｿ_
ili| i! 丶 , ` －'’ 7 ｲ l l
ilil |! ＿＿ /ア { l l
ilil| ﾘ, ,仁二二 ', /ﾋｿ: ﾄ､.l l 志摩子様、じいちゃんを頼みます！
ilili! ﾄ､ ! ＿ l! .ｲイ: : : : : l l
ilili| j i ＼ ￣ イ: : : : : : : _| l l
ililili Ⅱ i! ＞ ｡ _ ＜ﾄ､.ｨｭ: : r,リ´ l l
}ililil | ﾄ, j .ｲ ﾍl ｀Yヘ.──‐┼l
ilililﾍ 丶 ｲ≧ｭ!',! ¨j 7.ｲﾍ l ＞ｧ─ｧｲ
Ⅵj '｡ ＼ /i≧il } {/／ ∧ i j /￣ ヽ.
.｡仁Y! , ` |三i! ! {! i, ' i' , _＿ ヽ｡.,_
∧ﾆﾆi ', j! lﾘ } ﾚｲ .ｲ , ´ ￣二ニ=-ｭ _.｡-=ﾆ二ﾆｬ,
∧ﾆ三! | i { i,' ﾘ j .ィ´ ''”￣ ﾊ_
∧三三! i!. l! ヽ i ､/ ﾘ ／ ,.｡-‐ｧﾆ二￣￣＿≧ｭ,
,' ,'ﾆ三i! | i! ﾘ i ,' / i/ .ィ ＞ '’ ｀' ・ ｡.,
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| どこも見ていない瞳、高層マンション屋上階の突風にさらされながら、キオが飛び出す。
| 狙撃を意識したギザギザ移動。
|
| 空中に置いた見えない障害物を見えない手で掴んで飛び回るため、軌道を読むのは至難の業。
|
|「志摩子様、こちらへ！」
|
| フリットが手を引き、エレベータへ移動。
| 地下駐車場まで直行、車の前で一旦停止。
|
|「爆弾の類は『見え』ません、乗ってくだされ！」
|
| 後部座席に志摩子を座らせ、フリットは念動の鎧を車全体にまとわせる。
| これで下手な装甲車よりも頑丈だ。
|
| 発車、シャッターを開けて路上へ。
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「ｌ￣!i| |! i! |
_ ＿＿i!| |!＿ L__!i__i|
i!| ＿ ＿ _＿|i|! ＿＿i|￣|i＿ |!´i!ﾞ｀|
￣￣｀ﾞ!|i i! i!|￣￣ ＿￣L__!i__i|
／｀ﾞ≫|i! !|＜´＼ ￣｀ﾞi!| |i￣i! !|i!
< ／ |i!＿i| ヾ__≫ i ￣￣ |i! i|
! |i! | ￣
' |::i i!|
iヽ ＿ ＿ノ从ﾒ#ヾ'人ヾ:;:ー- ．..、
＼ ヽ __ﾉ;;;ヾ=二三 :;:;: :;：;:;；・ ，｀ﾞヾ:;:;:;:;::;:;:ヾ
｀丶 》:;:;;#ﾉ彡三二三 」── 二=≡≡＝ヾ:;:;:．，ゝ ── ─ i!二二二｀７
＼丶 ヾ，:;'ﾞ´'人i从'※'iﾐ彡∠ﾞ´ ｀ヾ:;:; ；:;:レ' /７∠／
＼ヾ人'ﾞ´;:'´川彡／ｒ-三ﾞ´ ｀ﾞヾ;:; ;:／ 〈_/
>:;: :; :;:#i!彡／´ﾞ ﾞ：;川;;;;;;;;／'
．:i!|'ﾞ´ ，イ'ﾞ´ : ．;: ::. i|!i《:;:;:／
i|#i/／／｀ﾞ |《巛＜´ ﾞ
川//｀ ﾞ!|i!i|ヾゝi!二二二｀７
─ = 二 て:．》 |i:;:#i!`i'|!i /７∠／
！iﾞ´i!| ＼' 人ﾞ-─∠ ﾞ｀ 〈_/
＼ `i!ﾞ´ .，人-ｰﾉ:；i|!ヾ >ヾ'ﾞ´ ::::::::::::;;;:#i|! i|ヾ
ヾ、 ゞ'ﾞ´ ｀ﾞ ::;:;´ ヾ》:: ::;:;ヾ .ｒ'ﾞ´;;;;;;《'ミﾞ´i三二＝ヾ ﾞヾ
＼＼ ,:;'ﾞ´:;:;:.、`・／;;;;;;彡三三三ヾ 丶i|!# i!iﾞ´ ｀ﾞヾ:; :;て
＼ヾﾐミi!#ﾞ─＜#i!`|ﾞ´三二＝─-.，.、＼ ;:;!ii .::'ﾞ｀ ﾞ::.、 i|!ﾐ ／
ヾ:;i!iﾞ´'ﾞ´:::;;;:》i|!iﾞ` ヾ;:そi|:;：;．， : : ヾ:;．、て
─＝二て 人从#ヾ|＼/人从/ ／ ＼ヾ ／/ #i∧ノ/《ヾノ！ ノ/人从／
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| 対戦車地雷でも踏んだのか。
| 乗用車が跳ね上がり、横転するほどの爆発。
|
| フリットは念動の鎧で志摩子を包み彼女への衝撃を和らげる。
| タイヤは吹き飛んでいたが車は原型を留めていた。
|
| 念動装甲がなければ即死だった。
|
|「クソッ、敵ばかりか！ 味方はおらんのか！！」
|
| いや、いるはずがない。
| 自業自得の穴の底で、フリットは自嘲した。
|
| だがせめて、志摩子だけでも守る味方がほしい。
| そんな者は……。
|
|「ここにいるぞ！」
|「誰だ！？」
|
| 突然現れた人物が、空中に剣を振るう。
| 空気が爆発！ 爆弾使いの次なる攻撃。
|
|「お前は……誰じゃ？」
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＿)
)
＿) い こ
f´￣'. ) る こ
x┴…┴､ ＿) ぞ に
i´ ヽ )
| |[王王王王|} )
rf＞ゝ、 ／｀|| ／⌒ヽ (
j::| [り [り i|| Y´￣｀Y´￣｀Y´￣｀Y⌒ヽ
/:::| ／ |｀ /:| /
／::::::ﾄ､ /二二lｲ:::{ / 元『結社』、『五虎将』の一、
／::::::::::::ト.＞-==イ|::::＼ ／ ／ 馬超の従兄弟の馬岱と申します。
,.ィ´へ｀ヽ::::::|＼三三三}:::::::::＞ｧ､ ／ ／／
/彡ｲハ ＼二ニァﾍ___斤ニ二ィ´{ミヽ ／ ／／ フリット殿から志摩子殿を救出するように、
/=イrf´ | |三三/ ﾑ=ﾄ｀ヽ三| 八乂ヽ ／ ／／ 主から言われて来ましたが
/三ヲ _／| |三ヲ j/⌒i iﾆj lx Viﾆl _／ .／
/三f⌒ｲ /| |三＞､/ ー┴─ｰﾄ､j ヽ Vf´| [i_x´ ……情勢が変わったようですね。
/三人/ ／ 厂￣＿,-=＝＝=x ／⌒i／:: !人_ﾌ
. /三ﾌ / / 厶イ´ i二＞ .／::::::／T¨]ﾄ
/三ﾌ / / | ｲ ゝ{__／::::::／i､_.人＼}
厶イ / / ｜/} ／::::::／／ }/∧ ∨|
／￣｀¨´ / ｲ´ l ／::::::／￣ｭ＿j///} ｜ヽ
{r'´￣｀ヽ/ | と=─‐一''´／::::::／T＞厂ﾄ､三彡' 厂¨}
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|「え、本当に誰ですか？」「知らんぞ」
|「今は上杉謙信様に命を拾われて禄を食わせて頂いておりまする」
|
| よほど記憶力に自信のある読者でも、彼を覚えてはおるまい！
| 『結社』撃滅作戦で上杉謙信を暗殺せんと潜伏、衛国寺に潜伏し斬りかかるも返り討ちにあった男である！
|
| その後その胆力と実力を上杉謙信に称賛され、彼女の目として耳として隠密の真似事をして来たのだ！
|
|「なんにせよ味方が増えるのは心強いです。よろしくお願いいたしますね」
|
| 手を握り微笑む志摩子。
| これで、本当の暗殺者でも味方にしかねないのが空恐ろしい。
|
|「では、『本物の暗殺者』が来る前に移動致しましょう」
|「……本物？」
|
| フリットと馬岱が首をひねった。
| 普通の人間ならすでに二回死んでいた。
|
|「『狂死』、護送を頼めますか！？」
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┐┐){[__{[_{[__r
. ∧|／ﾆﾆニ二二＼{＼
. /＼}{⌒〉厂}/⌒}==={r
{∧/^＼}ﾉ t=ﾆﾆ〉＞=| 志摩子様はお元気そうで。
{r=ニ} ｀¨¨´ }＼ｌ|__
{ ￣＼ / fﾀ }
∧ _r=ミ }___ノ
. {l∧ て 厂/}＼
￣＼ ／／/} }
{＼ =イ／／./. }＼＿＿＿＿_
. ／{=ﾆ＼/／ / ∨ ／⌒＼
／ ∨{苦::/＼//} ∨ / ∧
＿∠__ / /}= /./ /// ＿__} / ∧
／⌒ __,ノ / //ニ{/ /// ￣￣} / 〉
｛ }. / //苦〕} /// / ｛ /
. {∧ 〈 } / //>＜.//// / ｛ /
(＼ V∧ ﾉ / }//[苦〕 }///. / { } /}
＼＼V∧__ ∩｛∩ { }/ﾆ{U}=/// / { / //
{⌒}＼＼∧} |_厂)}/ / }＼__／}// ／ {／ }
{＿}／￣￣｀¨´／ } { /／^＼ﾆ/ ／ / }
/⌒ _,厂}厂}く_／ {. {ﾆ[苦〕=/ ／ / /
. / /_}_ノ / ｝ { ∧ {＼{U}ノ{ / / /
/ /{__}￣￣厂 { } {／ﾆ＼.{｛＿_ / /
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| 物陰から姿を現すスーツ姿の男。
| 油断のない視線でフリットと馬岱を睨む。
|
|「まさかあなたがその話を聞かない男の説得に成功するとは思ってもおりませんでしたよ」
|「だれがじゃ」「フリットさん、そういう所ですよ」
|
| 右から左から針の筵のフリット。
| 馬岱はノリについていけずに無言を貫く。
|
|「説得をしたのは私ではありません。
| キオが言葉と力でフリットさんをねじ伏せて下さいました」
|
| とても喜ばしい事のように、はにかんで微笑む志摩子。
| 対して『狂死』は驚いたようにまばたき。
|
|「キオ？ フリット・アスノに洗脳されたり悪魔に洗脳されたりと忙しいあの小僧が？」
|「だれがじゃ」「あなたですよフリットさん」
|
| だが、『狂死』の顔がみるみる曇る。
| そしてインカムに向かって警句を放つ。
|
|「しまった！ アセムダメだ！」
|
| だが、もう遅かった。
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.｡= 二 ￣ 二ﾆｭ，
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.ィ’::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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j::::′::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
}::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
Ⅵ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i あせむ？
Yﾍiy::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
i ｿ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ ……まさか、父さん？
y':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ム
ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
j::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
｀'＜,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j:iノ
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|「もしかして……お前、キオか？」
|「うん、でも……こんな形で会いたくなかったよ」
|「俺もだ」
|
| 仕掛けたトラップも攻撃もフェイントも無線操作の攻撃も何もかも見切られて、アセム・アスノは這いつくばっていた。
| 背中には馬乗りのキオ。超能力の重圧で押さえつけ、後ろ手に縛っていた所である。
|
|「口惜しいな、親父に超能力の非力さを見せつけてやるつもりだったが……」
|「大丈夫、やっといたよ」
|「え」
|
| しかも、力で抑えつけるだけではない。
| 相手を称賛し、プライドを傷つけすぎない程度に妥協できる代案を出す志摩子仕込の説得付きである。
|
| 本気の殺し合いに発展しかねない親子に比べてなんと平和的。
| だが父親のプライドはズタズタだ。天を仰ぎ、嘆息するアセム。
|
| キオはその背中から降りて手を差し伸べた。
|
|「父さん、東京を守るのを手伝ってくれる？」
|「元よりそのつもりさ」
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, : :´: : /: :ヽ､:ｰ:､: : : :｀ヽ＼
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/ ; :´: : : : : :,: : : : j: : :ﾊ}: : : ､: : :ﾄ: : ､
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!: : |: : V:´{: : : ヾ_ヽj´弋ｔソ:! ｒｆ }: :,: : : :i: : !
': : ﾊ: : ﾄ､:ry休ー‐ヽ :j ｲ_ﾉ: : '; : : !: :j
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ヽ: : : ミｰｧ ヽ :l ′: :/ : : j: i八: ﾊ
｀T:T￣ゝ. -= ﾟ´ :ﾚ ∨: : : :': :|: : ､: :ヽ.
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/:/: j: :/: :j: :｣_}. ヽ. ,' : : / ￣ ｀ ､ミ､: : :ヽ
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{ 八 ／ｒ-=－￣ ノ ﾘ ｊニヾ{ニニニニニニ/ニニニニ
个= ≧－'イニヾ′ニ≧＝ｒ ァ´ ｨ´ /ニニニニ≧=ｭニフニニニニｊ
ゞ≧=－彡ニニ≧ｭ､ニニL＿ｲ ／ニニニニニニニニ｀ヾニニニｲ
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| 『血族』大首領、藤堂志摩子の帰還は、大々的には発表されなかった。
| 対外的には今まで通りフリット・アスノが指揮を執る。
|
| 間桐臓硯は今まで圧政に苦しんていたかのような口ぶりで志摩子の帰還を大げさに迎え入れた。
| そして、これに伴い軟禁されていた先代巫女や、蒼星石の謹慎も解ける。
|
| 更には呂布とアセムの帰国、『狂死』の復帰により不足していた戦力も補充された。
|
| モーリアンビルの混乱に乗じて謀を企んでいた合衆国軍や自衛隊は押え込めた。
| しかし、発端となったモーリアンの激戦と新宿駅についてはもはやもみ消しは不可能となっていた。
|
|
| 故に。
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:.:.:.:./:.:.:l:.:.l:.:.|:.:.:.l:.:.:l! ゞヾ ! y'´ /::!ゞﾘ／／
:.:.:/:.:.:./:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:.l| ヽ ヽ、i:/ イ '´
:.:/:.:.:./:.:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:|l| ｀` ! 残念ですか、フリットさんの策を引き続き利用します。
/:.:.:./:.:.:.:.:|:.:l:.:.:.:∨ヽ ヽ、
:.:.〃:.:.:.:.:.|:.:.:､:.:.:.ヽ、ﾄ、 , - '´
／:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.ﾄ､:.:.:.:.:!:| ､フ´
:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:l:|＼:.:.:.ヽ、 /
:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:l:.l /:>、:.:.ヽ`r-ｧﾘ
:.:.:.:.:.ノ/:.:.:.:.:./:ﾉ／ ）:.:.:.:）:l l.::(
‐_'´＿, -‐＜´/ /:.:.:.ノi:.:l l:.:ヽ、
｀! ノ:.:.／ノノ ヽ:.:ヽ
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| 世紀のテロリスト、備府やらない夫に責任を押し付ける。
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|三三|. | |ヽ_,..| .|::: |::三三三三三三三三三三 |(ﾟ-ﾟ,|
|三三・SHINJUKU・:三三三三|| //|| //|| //|| |(//.|
|三三三三三三三三三三三三三三三三三三|∪〈|
|三三三三|| ! ゝ─-/ ヽ. ::||三┌─┐三| /ヽ!
|三三三三||. / . :||三三三三三|///|
|三三三三|| i ´｀ ´｀ . :::||三┌─┐三|///|
|三三三三|| i ー * ||三三三三三| 〜.|
|三三三三||__ヽ＿＿＿＿＿＿__||三┌─┐三|::::::::|iヾiヾ
|＿＿ JR 新 宿 駅 ￣￣￣￣￣||￣||≡≡
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--´￣￣`--､ ヽヽ (ｺ｀ ) ) ,､,､
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| 時間は少し遡る。
|
| …………モーリアンビル攻撃と同時刻。
| ケンシロウ班、『九鬼』の忍者十人、そして『十字軍』による『邪悪帝国』への進軍が開始された。
|
| 『新宿駅大迷宮』に繋がる人気のない通路に集まった一同。
| 上記の順で進軍開始。
|
| のはずが。
|
|「よ〜し、お前ら命令を復唱！」
|「駅構内に潜む悪魔を一匹残らず殲滅します！」
|
|「人間に見える悪魔は？」
|「悪魔が化けているだけです！」
|
| 『十字軍』のオズと、彼の部下１ダース。いずれも拷問や強姦、虐殺が好きな狂人揃い。
| 下卑た笑みを浮かべながら、悪魔相手には心許ないはずの武器を大量に装備。
|
|「よし、この駅内の奴らはくれてやる！ 好きにしろッ！」
|「さっすが?、オズ様は話が分かるッ！」
|
|「待て！」|
|「誰だ！？」
|
|「ばっちゃが……違う違う。おばあちゃんが言っていた。俺は天の道を往き、総てを司る……」
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, ＜ /
"ー､ ./r-､
∨ ヽ ﾍ＿＿
∨ >─ ､ ヽ
ﾊ / 丶 ∧
ｌ Ⅵ }__ム} ガンダムです。
', Ⅵ＿_,, -く::::r､ﾊｌ
ゝィﾏ､ /ヽゝｌ::ｌｌ
ヽ } }-､/::::::/｀ヽｌｌ
ゝﾏ≦＞' ,r＝ニヽ､ r＝ニ＝r-､
r ､ ／ ﾍ|─､＿ノ |:ﾑ
, イ￣// .ｌ＿＿ }::::ｌ
, ィ／ ,-─､ﾆ二￣￣￣ヽ|:::::::::::ヽ ﾏ:::ｌ
／ / , ‐<＿／ ￣ヽr─‐､::::::::::＼＼ ゝ!
ﾊイ/ ／ ／ |ﾆ| ｌ |::| ヽ::::::::::∧ ヽｌ
| ／ヽ／ |ﾆ| l .|::| ∨:::::::∧ ﾑ
ｌ//::::::ヽ |ﾆ,r=､ニ二二ヽ＼ l∨:::::::∧ ﾑ
//::::::::::∧,r=rイ /{ {::::──-､ヽ::::＞ ､!.∨:::::::弋＿|
//, -─ｧィ{ {:://::::ｌ ｌ::─--､ノ:::::::::::::::::ｌ ∨::::::::::::::{
fて ＿_∧:::ヽ ヽ-'::::::ヽ-'￣ヽﾉ::::::::::::::::::::ｌ }:::::::::::／｀ヽ
ヽ／::ヽヽヽヽ::>イ￣￣:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ .ｌ:::::::::ﾑ ｌ
| }:::::::::::::ヽ／ |,r-＝＝ヽ_ｆ{r─ ､ ＝＝ｆ｀ヽ ｌ:::::::::::ﾑ ｌ
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|「え」「え」「え」
|「ちなみに隣の彼もガンダムです」
|
|「俺はガンダムにはなれない……だが、だからこそ俺がガンダムだッ！」
|「え」「え」「え」
|
| 推参者は二人、俺とお前でダブルガンダム。
|
|「とにかく話は聞かせてもらった。貴様らは、この世界の歪みそのものだ……。
| ダブルオークアンタ、目標を駆逐する！」
|
| すぐに鳴り響く銃声のオーケストラ、怒号、悲鳴、うめき声。
| 十二人のリックドム……もとい『十字軍』は三分保たずに再起不能。
|
| だが、この戦闘に気づいた駅警備員が駆けつける。
| その間に二人のガンダムは姿を消していた。
|
|
|
|「ううっ、クソ！ なんて俺がこんな目に！」
|
| いち早く逃げ出し、無傷のオズは地下下水道をさまよっていた。
| 吐き気を催す悪臭と、べたつく汚物に悩まされながら。
|
|「何だあいつら、クソ！ 殺す！ 絶対殺す！」
|
| 背後に忍び寄る、頭のない怪物に気づかぬまま。
| オズは最期の瞬間まで悪態を付き続けていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
あの撃滅作戦で、彼らは様々なものを失った。
だが今度はこの作戦で、抱えられる限りを取り戻す。
彼らの腕は大きく。
力強く。
求めれば求めるだけを抱え込めるかもしれない。
だが今は。
腕の中は愛する一人でいっぱいだ。
次回、最終幕四十四話『ケッコンオコトワリ』
果てに見るのは破滅か死か。
乙津
モーリアン、新宿駅、フリットの拠点、病院調査、裏取りのうち、フリットの拠点編が終了か
指輪の準備は十分か？
ならば全ての責任と悪の象徴となったものもまた
乙
ィ´{｀ヽ } ｀}＿ }
（／ ＿人 ヽ/ イ＿ ミー'/
｀ー⌒ヽ } ,イ / ィ⌒ヽ＿ﾘ⌒
_ノｒ／⌒ﾘ /アー ァ=､_ ＿ ､
,,ィ-ﾑｆ =彡'ーイｊ ノ ´ ー=＝‐´￣｀ヾ、 やはり……こいつは！
ィ{ ｒｸ八 ￣ノ ィ ￣ミ ､ ヽ.､
／ニ≧≠７ ＿ 二彡´ ィ⌒ 八＿ノ V}
ﾏニニニフ´⌒ヽ ｀ー ＝ ｀ヾハ､＿ V{
ヾイ{｀マ ー--≧ァ＝ﾐ､ｙ⌒ヽY｀ー⌒ j7
＿＿ー=＝ｭ､ _У人≧ｭ--ィ＜ ハ ヾ､ _ﾘ }｀ヽ
ニニ三三三ニニニニ≠ー=ｧ ｀{ニﾆ≠」V__ｊ＿ミｰ [｀ ー-- -- ＿＿＿ノ ﾊ
｀¨⌒￣￣￣イ 「_ィ_ノ_ﾌ´＝ｧー―ｒｧ＝=ｧ==ニ≧ー―ｧ＿＿＿ ｊ}
/八 ＿_ｊ｣｀ヽ）ー＜ ｊ/｀ マ＜￣ ｲ7ヽ /
｀マ≧メｭ--ｙ'⌒￣ｊ{ ｀ ｀ ´ー‐=ｆ ｀ﾏ⌒ｊ ィ７ ｀ ´
｀ﾒ､ニｒ‐ﾏ ヾ ､ ヾｒ｣/ノ ィﾐy ′
ノ人ト､ ＼ ､＿ ,,ｚイ ﾚ′
´ ） ＿＿,,ｚｧ､_人＿ -≠｀ヽ У
＿_ マ､ハ} ｀ヾｭ､ ｀７ ￣ ,, イ/⌒ｰ
＿ｚ≠八ｚ7￣´ ﾏﾆゝｭー彡´ 7
ｚ≠7zイ7ｚ人｢ }ニニｭ/ ヽ
ノ｀マ_ｚイ´ ＼ 八ー-ｆ､ ~｀ ､
ァ´ ｀ヽ ヽ イ⌒7ニニ｢ ヽ
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| よろめき歩く『カトルカール』ランブラー・シャンブラー。
| いや、龍田だ。龍田なのだ。
|
| 天井を砕き、敵味方に被害を出しながらも意に介さずに襲い来る怪人。
| 揺らめく足取り、だが、前に見た緩慢さとはあからさまに違う、
|
| 不器用で今にも転びそうだが、ステップを踏んでいる、幻惑するフットワーク。
| 蛇のように静かに緩やかに冷酷に、必殺の間合いへと詰めてくる。
|
| 半開きな右手が空中を手繰る、あれは。あれは槍を手繰っているのだ。
| 眠るように無意識ながら、それでも戦い方が染み付いている。
|
| シャンブラーの右フック／薙ぎ払いからの二連右ジャブ／突き。
| 間合いを読まない大ぶりが台風のように空を割る、いずれの打撃も大質量の巨腕による。命中したら危険なものだ。
|
| 次、大きく踏み込んでの左フック／石突。
| 脛を狙った一撃は、距離を修正してきた。
|
| 夢遊病患者を思わせる無茶苦茶な動きだが、静観できる相手ではない。
|
|「おおん、うおおん！」
|
| ここでまさかのドロップキック！
| 槍を支点にそういう動きをしていたかも、墨目は蹴りを受け止めよろめいた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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.:::::_ __ __ __::::::::::＼ おおおん！ うおおおおん！
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LV:::(￣｀ヽ＼___r┴┘ ＿＿ ／(） ／()_
└_|＿＿}_[____｣__}─‐- ／|:::::::::l／(_／l／(_／:::|
. ()＼ ()＼ {二二二二}__ ￣￣／::::::|:::::::::|__／:::::|__／::::::::|
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＼_)ヽ＼_)ヽ /:::::/:::::::::::::::::::＼‐---‐／:::::::::::::(__〕::::::::: {＿＿|:::::::::::|::::::::::::::::::::::::::／(_) ::::| ／(_)
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. /￣￣￣￣￣ /￣￣￣￣￣ |::::::::::::::::::::::| V:::::∨:::::|:::::::::::::::::::::|＿|:::::::::::::|＿|:::::::::|＿〉 _,ノ:::: |
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. (_)_(_)_(_)二二二|::| :::::::::::::::::::::::::: ／:::::::::::::[__〕 [＿_／/￣￣￣￣￣￣￣｀丶、 :::::::::::::::: |//∧:::::::::::|
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| 倒すか？ だがこいつは龍田だ。
| 墨目は両目から冥府の瘴気を放つ、これで動きを鈍くできれば。
|
| しかし、残念ながら今の龍田は『カトルカール』のランブラー・シャンブラー。
| 機械部品内側に刻印された祝福が邪悪な気配を寄せ付けない。
|
|「厄介ですわね！」
|「墨目さん！」
|
| 階段側から鹿島の警告、やらない夫とニャンコ先生が散開しながら近づく気配。
|
|「まずは負傷者の退避を！ 今の彼女は何も見えておりませんわ！」
|
| 天井崩落に巻き込まれた天龍、彼女の下敷きになった杏子が呻く、キュウべぇが走りよりその頬を叩く。
| ヴァイジャヤは位置が離れていた。ひとまずは安全だろうと放置。
|
| 脚部を破壊されたロビンが這いずって、自分を助けて頭から血を流す爆弾蜂ごと龍田から距離を取る。
| 射撃はできるが軽快な移動できない今の彼は戦力外だ。
|
|「墨目！」
|
| 左フック、裏拳、エンジンが火を吹いて、空気の壁を撃ち破る勢いの右ストレート。
| 避ける、防ぐ、くぐり抜ける。タイミングを見計らい、龍田の肩めがけて一撃、武器である両手を破壊できれば無力化を……。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ァ´/￣ミ≧ｭ､
／ァ y′/ ／￣￣ ミ、
イ / / ′´ ィ´￣ー＝ ､
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/ / { 八 ! j ィ´７￣￣ アー＝ヽ
' ア⌒ミ､ ヽ ﾄ､｀ヾ / ／＿ ＼ ｀
ｊ/ ＿＿ﾊ Y ／ ｒ､ ',
/ /_＞-＝777ニﾑ ｊ≧､ ｒ ､ﾉ Y￣7 ｊ
{ i j/´≠‐⌒|///| ｨ ⌒ヽ ﾑ ヽ ｊ / .ハ …………不覚！
人 | { ≧Zｚ ｊ///| { ｊ ﾘ ﾉ ｊ´ / ＼
ﾄ､川 ､ ',＿-＝77￣77ー ｀ー､_）/ z ｲｭ､{＿ ヽ
イ Y| |ﾊ V //////j ///////77{ ヾニニニニヽ
ｒ＝≦三三ﾑ |/ヽ_∨////// ////////ﾌ≧､ ｀マニ／ヽ ＼
人三三≠￣/从人//////// ///////イXXXX＞－ マ {
/ ／ｨ｀⌒/≧=ｭ＿//＝－ァフ´ V､ミ＿ ＿彡′ ヽ ヽ.
ヽ ＿ ィ´￣￣｀ー八｀ヾニニニニ彡´ ｲxハ＜ ＼ ＼
//ﾊ ｀マニフ ｲXX_ﾘ ヽ 八 ミー ＿ ⌒ヽ
{///ヽ、 ､ , イXXX７ ／:i｀ミ､＼ゝ ＿＿
ゞ////＞ｭ､八 ｆXXXXX７ ｨヽ:i:i:i:i:i:i:i:ヽ<
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| 反撃より一瞬早く、龍田が大きく口を開いた。
| 異様に白い肌とは異なり、やけに赤くヌラヌラ光る舌が垂れた。
|
| 毒針、龍田必殺の隠し武器。
|
| 完全に目玉を田楽刺しにされるタイミング、墨目はそれでも身をよじって避けようと試みた。
|
|「あﾞ」
|
| 龍田の喉が鳴る、しかし毒針は射出されず。
| 墨目は転がって距離を取った、まさか攻撃されないとはそれこそ不覚！
|
| 追撃せんと振りかぶった腕めがけて、黒紫の靄がまとわりつく。
| トナカイ女を惨殺したシグの呪術、腐食の霧。
|
| だが、龍田には効果なし、シグをおんぶした鹿島が不服の声を上げるも、シグ本人は冷静。
|
|「龍田だもんね、ごめん、ぼくはやくにたてない」
|
| シグ同様の毒使い。であると同時に、連携のためにシグへの耐性が極めて高い。
| 毒霧を突っ切って攻撃できるのだ。しかも、趙雲子龍星から頂いた宝珠の魔力を毒に特化もしていた。
|
| 今の龍田を傷つける毒を作るとなると、周辺への被害も少なくない。
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| 咳き込み、涙を拭い、杏子が頭を振りながら立ち上がる。
| 明らかに自分を庇って傷ついた天龍、暴れる龍田。
|
|「誰かが天龍殴って龍田が怒ってンのか？」
|「それならどれほど安心できたか。佐倉杏子、推定龍田が天井を破壊して、君を庇った天龍が負傷した」
|
| 杏子は眉をひそめ、天龍と龍田を見比べた。
| そして、立ち上がり挑みかかる墨目とやらない夫も。彼らが、自分を庇う位置にあることも。
|
|「やらない夫は通せねェ、でも天龍にゃァ借りができたッ」
|
| 槍を床に突き立てて結界を張る。
| 槍の茨が龍田に絡みつき動きを阻害、ブチブチ引きちぎられる。凄まじい膂力と魔力。
|
|「起きろチー坊！」
|
| 天龍を担ぎ上げてヴァイジャヤの位置まで退避、治癒の魔法の準備。肩に乗るキュウべぇ。
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／￣￣＼ ,..:::'´::::::::／
／ ノ ＼ ＼ ／::::::::::::::／
| （●）（●） | ／::: ＿:::／
| （__人__） | ／::::::::／ ／
| ｀ ⌒´ ﾉ . ／::::::::／ ／
| } / :::::／ ／
＿＿ ヽ ,/:::::: ／ サンキュー杏子ちゃん！
／/:::::,∠⌒ヽ /:::::::/ /
／／:::／^⌒＼⌒＼ヒL/::::|::::::/ /
／／;::／／⌒ヽ | ＼ イ＾|::::::| /
／／:::／ ...::: | | ::; ＼}〕|::::::| j
/／⌒ヽ＿_. |::: .| ＼|::::::| |
/ ／＿＿:::::...＼;:: | | ::.::::::. | |::::::| |
/／ ...............￣⌒＼}:::: | .{ j!::::::{ {＿
/...::::: ＿＿＿ ＼＿ノ:::::::: ＼＼/ヽ |!:::}ｒ ﾆ⊇┐
| , - ´￣ `――――⌒/ |＼ゝ┘ノノ斤＝}
{／i ､＿＞-‐イ`＜ヽ}ノ
〒三二＞＿＿＿ ＿ ――――――､＿ノ＿」┴┘＾
ノ ⌒‘ :::::::::::::::＼⌒/ ⌒/ /｝ノ＾〕ヾ
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| 今日までの龍田／シャンブラーの攻撃は大振りで隙だらけだった。
| なのに、今日の動きは少し違う。槍を扱うかのような動作、緩急付けたコンビネーション。
|
| 今までは、味方の作った隙を突いて破壊的な一撃を放つフィニッシャーだった。
| なのに今は、一人でやらない夫と墨目を圧倒する！
|
|「おおん、うおおおん！」
|
| 両肩のエンジンが吠える、体ごと飛ばすロケットパンチではない。
| 一瞬だけロケットを吹かして超速の強打を放つ、元から超質量超パワーなのだ、かするだけでも致命的。
|
|「サマナー、下がってください！」
|「いやいや無理だろ！」
|
| 殺さないようにとか言っていられない。
| 防御に専念し、必殺の一撃を叩き込むのを待つしかない。
|
| 墨目の危険をやらない夫がカバーし、やらない夫を墨目がフォローする。
| それでも押されるパワーと手数。
|
| その時である。
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|::::/ i::::::::::::::/!:::::::::{ ﾄ､ {_メ､ヾ{l:| } |::／i::, ￢､....|::::::::::::| ヽ
|:/ ∨::::::/ V::: ﾊ {:! ::::::::::. ゞ ﾉ’ }'∠ i ',ヾ::::::i:::::| 龍田ぁ！
}' ∨:::{ ∨ﾄ､ ゞ ﾉ::::::::::::::ー─‐::'::::::u (-､: }:::::::i::',:::i
ヽ:| ヾﾊ-:< , ＝ ,._ Lﾉ :':::::::::',ヾﾘ
八 } _｀_／ __,.ハ ,...r:':::::::ﾄ､:::',
从 V,,..z7'´ ', 人. ヽ- ､| ＼ ＿
ヽ ∨/ j ,. ＜ / ＼__ _, ´
､', ,..:'::´::: / / }
ヽ---へ::::::::::::/ / /
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| 天井の穴から飛び出してきた横島ともう一人。
| 黒衣の怪人ダースベイダー。
|
|「コーホー」
|
| 左手の動きに合わせて龍田の体が見えない掌に掴まれる。
| フォースグリップ！ 思わぬ援軍に身構えるやらない夫と墨目。
|
| というか、ダースベイダーとは一度交戦経験があった。敗北の記憶が蘇る。
|
|「石田！ そのまま離すなよ！」
|「コーホー」
|
| 横島が龍田の頭部に衝撃波を叩きつける。鉄塊みたいなヘルメットを攻撃して、外せば何とかなるかもという考え。
| 脳に直接電極が刺さっている可能性は想定外。
|
|「石田……痩せたな！」
|
| ダースベイダー＝石田という事実を即座に受け入れて、ヒゲ槍を腕の根本に突き立てるやらない夫。
| 武器を封じる作戦。エンジンに火が入る、超能力の束縛から力尽くで逃れようというのだ。
|
| 杏子の茨が緩まる、引き継ぐように墨目が瘴気で妨害。
| シグの呪術が呼び出した虫の群れが機械の隙間に入り込む、配線を切ろうと試みるも、入り込む端から乾燥して死んでいく。
|
| いかなる攻撃に転じるつもりか、踏み込む龍田。その足をロビンの矢が撃ち抜いた。
| 抑え込めてきた、やらない夫が横島を見る、頷く。
|
|「超能力で脳に呼びかけれりゃ……」
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/|!
/ |!
「＼ / |!
ﾏ ＼ / |!
ﾏ ヾ､ ＿ /〉. / |!
＿＿ ﾏ ヾｒ､ { o ヾV/. / ＿ |!
／｛＿＿ﾉ ﾏ＿ ｀ヾ､＿_ｊ＿ ｊ!//ｒｭ､ / ｨ乂ﾉ､. |! なんだコレ、どーなってやがる？
人／ ー‐┐ / } ⌒ﾍ ｀＜⌒ﾐ、/ /´￣ヾ{ |/〉
/ ７⌒ー―'／ゝ/ ﾏ ﾏﾑ ヽ [{ i! |/
..-=ニニ ﾑ /ｰ／{｀ーｧ ／ ﾏ ﾏﾑ ＼ [{ ヽ ,ｨ ｊト､
{ニニニニ ﾑ {＿＞‐' ] ＼ ＞ ､ ﾏﾑ ヾ{､ ヾrァフ' /-ｨｱ＿＿_
ﾏニニニニﾑ {＿{二ア＼ニニニニ＞ー､≠ｭ､ ヾ{ ィﾆｭ /ｨｱ /7ｰｪｪｪｪｪｪ-――‐ァ
ﾏニニニニﾑ ＞’ ＼ニニ／ }_人_ﾌヽ 入ニニｒフ /7 ／
ﾏニニニニ／ヽ７´ ｒｭ {､ ＿＿｀ミYニニﾆラ__イニニﾆﾑ /7 ＞ ´
マニニ／ 人＿彡ヘ ´ ) ﾉヾﾆ厂ｒ―}ﾆ7ｰニニ} _ｨﾆﾆニ⌒ヽ＿＞ ´
マニニニｭ､ヾ ＼彡 ＼/ ／ー'ニニニ{{ ｢ /:::::::｀´:::〉ヾ＞=‐⌒ヽﾆーニニニニｭ､＿
マニニニﾆﾍ ／Y⌒ヽ_／ニニニニﾆﾆﾑ ){:::::::::::::::/ ／ﾑ_／⌒＼｀マニニニニニニ
マニニニ/ ／ニ人＿ﾉニニ／⌒ヾニニﾑ_＞＝-､:/／ニニﾑ ｒ⌒ヽ ｀マニニニニニ
＼ニニニニニニニニﾆ／ ／￣ 「｀ヾ┬ Lｨ´￣￣￣￣ミ ＼＞┘ニニニニニ
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| 不意に、入り口から吹き付ける灼熱の殺気。
| ひび割れた青い鎧、隙間から垂れる血の糸。
|
| ＫＫＫを想起させる尖った兜に刻まれた二つのスリットは、上下に置かれた向かい合う三日月。
| 邪悪に笑う一つ目の道化がごとし。
|
| 『教会』の『武僧』。ヤザン・ゲーブル。
| 四階から氷漬けになりながらも落下したくせにピンピンしていた。
|
| 『血族』の誰とも面通しをしていないため敵とも味方とも分からぬ。
| いや、ただ一人を除いて。
|
|「『武僧』のヤザン・ゲーブル、ボクらは『血族』佐倉杏子班だ。
| 地下から現れた備府やらない夫と交戦中に暴走した『カトルカール』が乱入した。
| 彼女を止めるために一時共闘の形になっている」
|
| バッサリ要約したキュウべぇ、ヤザンは首をバキバキ鳴らした。
|
|「ならやらない夫をブッ殺して、次にそいつを止めるとするか」
|
| 発射される伸縮型多機能鞭・ウミヘビ。
| 飛び退くやらない夫、天井に張り付く。
|
|「サマナーは龍田さんを！」
|
| 墨目が冥界の瘴気全開でヤザンに突進、巨体のネズミ忍者の肉薄に、ヤザンは無造作に前蹴り。
| フェイントを織り交ぜての突撃なのに、警戒もしていたのに、なぜか眼前に足の裏。衝突する墨目。
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／´ ノ
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／´ ￣ ｀ヽ
/ ､ _＿ノ
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l ∧ ,ｲ＜ ＼ . i_ /
| Vtｯ∨ ≧≦、 | Y
ﾚヘ 辷ツ.ヘ_|r' そっちの人なら……！
∧ｰ只―イ六
＼＞ ! ./ 〉
. ∧ ＿_,.ｲ| V _/ .ｲ丁 ,.ｨ
〈 ', ヽ_ﾉ |.| | /Υ｜ ト､＿,／ |
. ', ＼_ _入_| | |. | | ﾊ ∠＿
｀・､_ ￣ ￣ノ|｜｜./ | 六≧ ／ )
￣￣｀ｿY＿乂＿上下､￣￣フ ／
∧ｲ 〉￣〉 r ＼￣丁／
/ .ﾄり_くイ)_,ｲ、 / /
. /ｰ-ヘ/-く | ＼入_テ
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| シグの毒の霧が鎧の表面を泡立たせる、だがヤザンは物ともせずに墨目に打撃、巨体が宙に浮く。
| ノミ脚を真似て撹乱しながら近づくやらない夫、容易くウミヘビに捕まる。流れる電撃、ヒゲ槍を切り離して緊急回避。
|
| ニャンコ先生が雷の束を投擲、避けきれずに脇腹を電撃が貫通。しかしヤザンはケロッとしていた。
|
|「ヌルいぜ備府やらない夫！」
|
| そして突然、魔法のように銃を抜いた。気がついたら小火器を握り、弾丸が尽きるまで打ち終わっていた。
| 最高峰の『ガン＝カタ』により効率化された動作は、しばしばこのような状況を作り出す。
|
| 六発の弾丸は墨目の瘴気を容易に突き破り、彼女の肉体を完膚無きまでに破壊した。
| 残りのうち四発はニャンコ先生を穿った。三発は回避したが、それでも十分な結果を出した。
|
|「ぐっ、ぬう……！」
|
| 血と魔力を撒き散らして墜落するニャンコ先生。悪魔を殺すための弾丸、慌ててやらない夫がフォローに走る。
| しかし、進行方向に貼られていた透明なウミヘビ。絡め取り、流れる電流。
|
| 瀕死のニャンコ先生が放つ電撃を横っ飛びに回避。
| 排出される空弾倉、着地点先に『置いておいた』弾倉を装填、乱射。
|
|「がっ……ばか、な！」
|
| 全弾命中、破壊されて消滅するニャンコ先生。
| 怪人、ヤザンの圧倒的戦闘能力。
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ｰ==冖rｰ==.し'し'／）⌒冖=- /} ':::::::／,:::::::::::::::::::::::::::}::::::::{[に可} ああ……ああチクショウ！
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}≧==彡_}_}冖=- __ {:::::::{ \ぅ＼::::::::ハ:: /:::::／:::T お前は、お前はホントに……！
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{ |V {ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=人 ｛ ／{ ＼ ￣冖=ミ ＼/ﾊ
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| 一方で、やらない夫の抜けた穴を埋めたのは天龍であった。
| 杏子の治療で目を覚ました彼女はすぐに突進、妹の前に立ちはだかる。
|
| 同時に前に出た杏子は一瞬で死にかけて後退、現在はヴァイジャヤの治癒に。
| 直接戦闘能力において、天龍は杏子に劣る。やらない夫にも劣る。
|
| だが、龍田と過ごした時間なら誰にも負けない。
| 生まれる前から一緒の相手だ。十年以上殴り合ってきた相手だ。
|
| 癖なんて全部分かってる。
| 涙で見えなくったって防げるほどに。
|
|「石田ァ！」
|「コーホー」
|
| 走りながら衝撃波を投げる横島、反対から切り込む石田。シグは懲りずに虫と毒で少しでも妨害を狙う。
| 大技を待ち伏せ、打たせない狙撃に専念するロビン。
|
|「すっげェな」
|
| 五人のコンビネーションに舌を巻く杏子。個々相手なら勝てるつもりだ。
| だが、チームになっては手も足も出る気がしない。部下として死線を潜ってきたはずの横島すら、いつもと動きが全く違う。
|
|「天龍、三秒下がれ！」
|「合点！」
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/i/:.:.:.:.:〃:,-=ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.´:.:.:.:.ヽ、
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l:.:.:.:..:.:.r-====ｧ:.:.:.:.:.:,-＝┐:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、:.',
ヽ:.:.:.:..:{三二ｦ:.:.:.:.;ノ＝=-j:.:.::/l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i .ヽｊ
/:.:.:.:.:..:｀＝=l:::::.／-==-ノ::／./:.:.:.::.:.:.:..:/
7:.:.:.:.:.:/｀ヽ::{:::(／｀ヽ、--ｧﾌ_,,ノﾊ:.:.:..::,'
l/|:.:.:.:.i l ﾍ ﾘヾl .∥厂´イij //l:.:／
′ヾ,,::ヽ,、{ j ヽ、__,,ノ ;;;;;;(__,,ｨ ノ´ 右腕だ！
_,,-=_y´ヽﾍ "´ ／ .ﾉ 止めろシグ！！
_,, - イ く ｀ヽ、u ___ ／ヽ
_ -=''´ ｀ヽ:::::', ｀;;;ヽ 、__ ／ ハ
'ﾟ ,i::::::i ;;／ |::| ,ﾄ、
.',:::::', ＿ .,-ｲ:::l .lソ,
＼ ヽ、 ＼::::＼ ｀ _,,ノ:::ﾉ .l l
＼,ﾊ ｀ヽ、::｀=''´::::''"´ / i
| ヽ-''"´ / ＼
i .l´ .＼
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| シグの作った粘性のある魔力が龍田の『足』を掴む、石田の超能力が動きを更に阻害。
| その瞬間にロビンの乱射が着弾、右手で防ぐ龍田。
|
| そこにさらに横島の衝撃波、防ぐために上げた右腕に、回り込んだ天龍が一撃。
| 着実に削る。
|
|「うおおおん！ うおおおおおん！」
|
| エンジンが火を吹く、懐に踏み込んだ石田が光の刃を正面から突き立てる。
| 龍田の腕は大きすぎて、抱き着くほどの距離では殴れない。
|
|「コーホー」
|「バカバカのバカ！ 違うだろッ！」
|
| 右腕を破壊するべく出力を上げた石田に、横島の罵声がぶつけられた。
|
|「抱きしめろボケ！ 男だろ！」
|
| そこで初めて、石田はその距離に気がついて怯んだ。
| 鯖折りを狙う龍田、その腕にしがみつき邪魔をする天龍。
|
|「それだ！ へし折れ石田！」
|
| 違う、そうじゃない。
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／￣｀ヽ
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!, -=メ.⌒ヾ`､ l´!/)
l ゝ-'ハ¨´ ヽ ＼ ! j つ
l! ハﾉ笊ヽノ≠＝- ､ .ノ) ヽ ｿ コーホー
l＿_l-‐/ﾉ／/ ＿ヽーヽ-彡'ヽ
／ / l/ l!,,/-''// ゝ _,イ
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j ヽ! ]´ ＿＿_l ゝ / l
／ l!´ 下 ＼ ヽ / l!ヽ
_ ／ ｲ l! /＼ .＼ l! ./ l! ﾈ､
／ミｰ-' ＞' / /l { ＼ ヽl! ／ ﾉノ !｀ヽ
＼彡＿}_ィ' /／ ゝ-'l ヾ У ／ ノ ! ＼
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| 石田の両腕が、龍田の大顎を思わせるヘルメットをかき抱いた。
| 超能力による脳への干渉、脳死していたはずの石田の自我を取り戻した『エックスラウンド領域』の開発。
|
| フリットのように上手くは行かない。翠星石やストームトルーパーたち相手に何度も失敗した。
| だが、今度は失敗する訳には行かない。救うのだ。龍田を。龍田を！
|
|「コーホー」
|「焦るな石田、いつも通りだ。どっしり構えてろ！」
|
| 横島が、龍田の背中にへばりつく。
| 驚くほど優しく丁寧に、二人の間を取り持ち繋ぐ。
|
|「チームのチューニングが、俺の仕事だろッ……いつものお前でいろ、その方が龍田も安心できる」
|
| 龍田の腕から力が抜ける、事ここに至ってようやく天龍も何をするのか理解した。
| いや、正確には横島も今の今まで奇跡とか勢いでなんとかすると思っていたのだが。
|
| 支えきれなくなった両腕がひび割れた床を砕く。
| 脱力する肢体を、石田が抱きしめて支える。
|
|「龍田！」
|
| 横島ごと後ろから抱きつく天龍、横島の集中が乱れる、背中に押し付けられた弾力あるたわわに意識を奪われる。
| いや、大丈夫。だいじょうぶだってば！ それでも横島仕事に集中！
|
|「龍田ぁ」「龍田サン！」
|
| 鹿島の背中のシグがもがく、ロビンが這いずって手をのばす。
| 仲間の声が、眠る龍田の脳に…………届かぬ。奇跡は起きない。
|
|「うおおん、うおおおおん」
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|.:.ヽ|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼、.:..ヽ、
ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:___／.:.:.:_／7.:.:.:.:.:.:.:.:.}.:.:.:ﾊ.:.:.:.:.:.:.＼＼ｌ
,,>.:.:.:.:.:.:/三/.:.:.:／三/.:.:_,,メ、／|.:.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,,=-ｧ'´.:.:.:.:.:.:.:/-‐:|.:.:/ ￣フ, '=--く｀ヽ,/.:.:__/.:.:ﾊ.:.:.:.:.:.:| ダメじゃない。このまま行く。
＿ノ;;;;;;;| /|.:.:.:.:.:.://^l i / r'/l / /.:.:,,ｲ.:.:..::.:|.:.:.:.:.:/
ヽー-ｧ;;;;;;;j|.:.:.:.:.| i´j i/ ! ﾄｊ /,,イ |,〉.:.:.::ｽ.::.:.:./
/;;;;／;;ヽ.:.:.:ヽ、ヽ ヽﾚ＿ ./i/ / .|.:.:/ l.:.:/ もっとだ、
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｀ー-=..l /i、.:.:.:.:...>、 .／j
y ｿ|.:.:.:.:/ ＼ ⊂ｧ ﾉ
/｀ヽ=/、_ ヽ、 .／
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r=--=''´ ヽ、 ∥ ./ /
,,=-'⌒｀''ヽ、_=ﾆ=＜、 ∥＿ ＼./_
..／ ＼ ヽ ＼ヽ | >ﾊ
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|「コーホー」「龍田！」「たつた！」「龍田サン！」
|
| 届かないなら、繋げればいい。
| 仲間の調整役こそ横島の役割だ。皆の声を超能力で直接脳に叩き込む。
|
| このチームを仲良くするのに比べたら、大した仕事とは言えない。
|
| 奇跡ではなく、技術と積み重ねてきた実績で押す。
| だが足りぬ……薬物と魔術で自我を奪われた龍田には僅かに届かない。
|
| あと一歩、ほんのひと押し。
|
|「聞こえてンだろ？ 帰って来いヨ……そこは、寂しいぜ」
|
| 不意に流れる妙なる調べ。
| キンナリーの『末法少女』てある杏子鳴らす楽の音が、鋼の揺り籠の中で眠る女の魂に届く。
|
| 最後に背中を押してくれたのは、新たな仲間の手伝い。
| ヴァイジャヤのとっておきのオイルも撒かれる。集中力と魔力精度を上げる効能。
|
|「う……あ？」
|
| ひび割れた、しわがれた声。だが確かに、『カトルカール』としてではない声。
|
|「コーホー」「龍田！」「龍田！」「たつた！」「龍田サン！」
|「わ、たし、わた……し……？」
|
| 次の瞬間、絶叫。抱きしめる三つの体を振りほどかんと振り回される巨大な腕。
| だが誰も離さない、必死にしがみつく。
|
|「コーホー」
|「は？」
|
| 動きが止まった。
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, ィ ´￣ ｀丶
/ _＿ _ヽ コーホー
l_ - ￣ r= ､l!_
/ / ｰ ') )
/__ ＿＿＿ ＞_／/´!
/′ﾉ ＼ ￣｀7＼l!
У´ ＼ /-‐t- r┐
／ ＼./＿_ﾉ i｀i ノ ﾉう
／ 「 ｀:. l ゝ‐'' ./' ノ
/ l! ', __,,,,r ﾄ ／
/ l!＼_＿,,, x ´ ヽ ／
/ l! / ＼ Y
./ l! ＼ ／
/ ', _ ,, X´
,' ヽ_ ,, -''
l ＼j!l
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|「こんな時に……ナニを、言って……」
|「コーホー」
|
| 石田の珍しい冗談に、仲間たちは微笑んだ。杏子とキュウべぇ、ヴァイジャヤは置いてきぼり。
|
|「コーホー」
|「だめ……私、人を……」
|「コーホー」
|
| 『カトルカール』として、人を殺した。
| このビルでのように、他の場所でも作業的に何度も殺した。
|
| 東京を守る『血族』の一員でありながら、牙なき無辜の民を殺した。
| 無慈悲に、無惨に。
|
|「コーホー」
|「私……たぶん体のほとんどが機械で……」
|「コーホー」
|
| ロビンが肩をすくめた。石田が黒いヘルメットを外す。
| 村正／村雨によって焼けただれ、ジャギよりひどい顔が顕になる。
|
|「ばか……」
|「……」
|
| もはや言葉は無用であった。
| 天龍と横島が身を引き、残ったのは抱き合う一組の恋人。
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☆ 次回予告！
己が血反吐に身を浸し、這いずり逃げる敗残兵。
怯え竦んで涙を漏らし、果ては孤独と泥仕合。
遅く失した決意すら無視、早く逃げねば自分も死体。
恩義も恨みも今や形無し、墓の招きを退けバンザイ。
周囲の全てが。
屍山と血河。
勝者のいない荒野のフーガ。
次回、最終幕四十五話『負け犬たちのサーカス』
果てに見るのは破滅か死か。
よかった、よかったなあ
(一方そのころやらない夫チームは瀕死！)
／￣￣￣ヽ
／:::: ||||| ヽ
／::: __ノ::::::ゞ;;:）
/ （ ;:;:;:;ﾉ:::::<－>
／;:;:;:;;;:; （＿ _人 __）
.／//ヾ .｀┃ノ
/ /| ヽ／ / ∧ |
/ /_| ＼/ / | |
ヽ、//////）/ | |
/ ￣￣ ﾉ | |
____,/ )--- ヽ ヽ つ
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| やらない夫は目を覚ました。どれぐらいの時間失神していたのか分からない。
| ヤザンの電撃は『エクスカリバー』で防御して即死は免れた、だが次の瞬間肉薄していたヤザンに殴られたのだ。
|
| 斥力障壁とか、ヒゲ槍の盾とか、全部紙切れみたいに引き裂かれた。
| やらない夫は天井にぶつかり床に跳ね返り、また天井に衝突するような打撃を受けた。
|
| 前にケンシロウに吹っ飛ばされたジャギを見たときは、自分も同じような目にあうことになるとは想像もしていなかった。
| 全身に骨折、内臓に損傷。死んでないのが不思議なくらい。
|
| 『エクスカリバー』が自動的に肉体を補修している、ひどい吐き気、目が回る。体が動かず立ち上がれない。
| すると目の前に、ピエロみたいな先の尖った靴が現れた。
|
|「運の無い奴だなァ」
|
| ヤザン！ 体が恐怖で竦む、ニャルラトホテプとは違うタイプの超存在。勝てる気がまるでしない。
|
|「見逃したろ、アレ」
|
| 静かに抱き合う石田と龍田。
| 周りに集まる四人の仲間、麻呂教室の同窓会。遠巻きに見守る杏子班。
|
|「やったのか……！ 石田！ やったな！！」
|
| 思わず喝采を叫ぶやらない夫。
| 見下ろすヤザンはヘルメットを脱ぎ、折れた歯と血の混じった唾を吐き捨てた。
|
|「腕と足、折られてんだよなぁ、上にいたアマに」
|「……？」
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／ ｀ ー―=ﾐ
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／ . . : : :、
／ . . . . : : : : : : : : :}
〃 . : ⌒Y7'"´￣｀ヾ : }: : :/
{ { . : ⌒"7 ∨彡′
{ { . . . : : :{、 '.
い . : :〃⌒ヾ》 ､__ 〉
{＼ . : : :{ /灯,;j ｀’｀ヽ, 〈 さっさと行けよ、上も片付いた。
', . : : :{ {^Y 、 ｀¨＾ ',
｀ミ . : :八｀ヾ :} ヽ 何しに来たかは知らねえが、
｀Y . : : :〃^┐ :} 'ｰ ､__ ﾉ¨¨´ 無駄足……いや。
ｰ=彡 . : :ﾉ{{ 、 ..,,j
､__ ノ . :爪'"^ヾ ＼ {
⌒ミ辷彡′_＿_＿__ ＼ }
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| ヤザンは抱き合う恋人たちを見つめて頭を掻いた。
|
|「あれが目的だったんなら、邪魔ァしたな」
|「…………」
|
| やらない夫は応えず、よろよろと体を起こした。
| ヒゲ槍を杖にして非常階段までたどり着き、嬉し泣きの天龍ともらい泣きする鹿島を見る。
|
| シグと、そしてロビンと目があった。
| やらない夫は静かに首を振り、地下へと下る階段に足を向けた。
|
| 闇への階段を下る。
|
| オレは失敗した。オレは敗北した。
| 阿部さんの期待に応えられなかった。
| ヤザンが見逃してくれなければ死んでいた。
|
| やらない夫自身だけではなく、仲間である天龍とシグ（ついでに鹿島も)まで。
| 無力感に打ちのめされながら、やらない夫は来た道を戻る。
|
| 下水道へ下り、ひとり隠れ家を目指す。
| 魔力と体力を回復させ、ニャンコ先生と墨目を再構築しなければ。
|
| 頼りの『エクスカリバー』でもヤザンには敵わなかった。
| いや、頼りすぎていたからか？
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/ ハ__ｖ ｀r≦〉/⌒〉⌒､丶`⌒“''*､ ＿ ／ はははは（乾いた笑い）
〈 ( 〈:::::::::＞''"´ -=≦⌒ "''＜ ＿＞''"
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＞''"Ｙ: : ＼ 《: :＼__､丶`: : : : : : : 〉
_ ‐=‥^´ 》{: : : : :＼ ≧=-ヽ⌒: : : : :／
／--ｧ γ ￣￣￣≧=-─‐ ＼ (: : : : : : :.＞''" /
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| 謎のヒロインＸは、要所でのみ『エクスカリバー』を使っていた。
|
| 彼女の底の知れなさをサポートする道具として、利用していただけではなかったか？
| 対してやらない夫は、身の丈に合わぬ武器を己が実力と勘違いしてやいなかったか？
|
| 懐で携帯電話が振動する。
| ダルにもらった追跡回避済みの連絡用端末だ。
|
|『破滅願望者失敗負傷3死亡0
| のけもの失敗負傷0死亡0』
|
| 画面を確認すると、そんな結果だけが書かれていた。
| 死者はいない、安心の息をつく。
|
| だが、どちらの作戦も失敗。それはやらない夫の慢心と油断が招いた失態のようで、やらない夫は小さく唸った。
|
| 『カトルカール』が出払っている隙に、ジョニー・ジョースターを誘い出して調べる予定だった『破滅願望者』たち。
| 他にも護衛がいたのか、可能性はあったのに考慮から外していた。
|
| 同じく新宿衛生病院を探索する手はずのミストと四ツ目。
| こちらは単に空振りだっただけかもしれないが。
|
| なんにせよ、最大のチャンスを棒に振った。
| 今回ほどの機会はそうそう訪れないだろう。
|
| やらない夫が失敗した以上、伊藤誠の貸出も難しいかもしれない。
| 明かり一つない地下下水道よりも暗澹とした気分で、やらない夫は歩みを進める。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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:.:.:./＼ }!:.＞.. |＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_} ∨
:.:./ ＼ }!:.:.:.:.:.:.＞ |:.:.:.∧ ./＼、‐-..... _ ∨ V
＼:.. ＼:.:.:.:.:.: ∧ ＞ |:.:.:.. ∧./::::::::＼>､:::::::::¨::...‐-.... _ ∨ V
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` - :.:.:.:.:/＼ :. ∧ | ∧::::::::::::::::::＼＞―` l |. V
＿＿＿＿＿／ .:./￣ `∧ ∧ ＼::::::::::::::::::} .l | ＿}ヽ＿__V ぐ……ぐぐ……。
／ ヽ:.:/: : : : : :∧ ∧ ＼／￣ |-＜ いたな……備府、やらない夫…………！
＿＿／ /.:/: : : : : : : :∧ ∧ 7＿＿＿＿ .|: : : ＼
/￣￣ . . :/: : : : : : : :/: ∧ ∧ ./: : : : : : : : ／.:￣: : : : : :＼
.:.:/: : : : : : : :/: : : : ＼ ∧ /: : : : : : : ／: : : : : : : : : : : : :＼
´￣￣ . .:/: : : : : : : :/: : : : : : : :￣￣￣: :／: : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : :＼
..:.:.:／: : : : : : : :/ : : : : : : : : : : : : : ／: : : ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼＿
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| 怨嗟にまみれた声が、下水道の闇から響く。
|
|「きっと……この、近くに……来るのでは……と…………！」
|
| 完全防護の『異端審問官』四名を引き連れた、包帯女。
| 聖処女ジャンヌ・ダルク。
|
| 大型サーチライトがバチンと音を立てて照射、惨めな負け犬の姿を照らし出す。
|
| …………しまった。
| やらない夫は戦々恐々としながらも、それを顔には出さなかった。
|
| ニャンコ先生と墨目の再構築は済んでいない。
| ヒゲ槍の大半はヤザンに壊されて予備は僅か。
|
| 助けになる仲間は……いない。いないのだ。
| ねずみ男は最終手段。というか、防護服の相手には無力だ。
|
| やらない夫は『エクスカリバー』の存在を意識し、手を延ばさないように自分を律した。
| 今は使いたくない。
|
| 命がけの意地だけれども。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〃 , -‐‐- ､ ﾊ
|i i !! i iﾊ
|i _ｌ｣L =-‐ __ヽrﾍ、 コーホー。
. //´ ヽ.____ , '´ f ｒｖ'´)
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/厶 -‐=≦､_ `く ｨ凧
｀,ﾆ=‐ ､ ｀ _≧=‐'
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/ /i ﾄ､ l ! ヽ.ヽ ',
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/ /＼i l lヽ!__,ノ^| l_l |
ム /ハ＿__l__j_, イｌ |
├'∨ﾊ i_j＿j＿j＿j_! ! Ｌ.. -‐'77´￣ ｀二二ﾌ
i i l⌒ヽ_j__i＿j二ニ=-┴ '´ // }
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|「今から龍田を連れて逃げる。その足でフリットのマンションを襲撃するってよ」
|
| 覚醒の影響か、脳改造の副作用か。力尽きた龍田をお姫様抱っこする石田。
| 脂汗をダラダラ流し、恐ろしく具合が悪そうながらも機嫌は最高でゴロゴロ甘える龍田。
|
| 二人を横目に横島が肩をすくめる。
| 先程の戦闘、思いの外負担は大きかった。垂れてきた鼻血を袖で拭いた。
|
|「馬鹿なの？ 死ぬの？」
|「『ストームトルーパー』の方がフリットより強い。奇襲効果も高いし負ける理由がないね……だが」
|
| 呆れるヴァイジャヤにキュウべぇが解説。その口調はひどく険しい。
|
|「アタシらァ、そのフリットの手先なンだぜェ？」
|
| 溶けたキャンディみたいに甘ったるい声ながら、杏子に漲る殺意は鋭い。
| 『教会』の兵士を奪い、『血族』に牙を剥くなら容赦はしない……戦士としての責務が少女を動かす。
|
|「…………つっても、志摩子様を助け出すってンなら話が変わるよなァ」
|「行方不明だった『血族』の戦士が『教会』に改造されていたことについての抗議の準備も必要だね」
|
|「え」
|
| 想定外の方向にやる気満々の二人に怯むヴァイジャヤ。
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＿＿ / .}
, ＜ ＞ ､ ./ ｉ ｀ヽ、
／ ＼ , ＜ { | ＼
/ , ｨﾆﾆﾆﾆ= ､ ∧, ´／ ∨ | ＼ 私ハ説明のタメニ残リマス。
- ､ ｉ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾑ ／ / ＼ 」 ∧ 足モダメデスシ。
｀ヽ { ｉﾆﾆﾆﾆ γ‐‐ ､ﾆﾑ / { ー--‐ ´ ∧
ｉ {ﾆﾆﾆﾆ .{ }ﾆﾆ} / ｉ ∧ 彼女ノ治療モシナケレバ。
{ ｉﾆﾆﾆﾆﾆ`== 'ﾆﾆ.ｊ ／ | ∧
／￣､ ﾏﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾉ .ｉ ∧
..／ ヽ` ､ﾆﾆﾆﾆ＞ '´ ∨ ,ｨﾆﾆ＞､ ｉ
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＼ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ } ｉ
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| 失神した爆弾蜂までは、治療が間に合わなかった。
| なんにせよ、龍田が移動する前に彼女を回復させるのは都合が悪い。
|
| ロビンは彼女を『カトルカール』か『教会』の責任者に受け渡し、礼を言う必要があった。
| そしてもう一つ、相談もあった。
|
| 人に近い姿に拘り、脚部を破損して役立たずに成り果てた自分。
| 人の姿を失いながらも、変わらぬ愛を貫く石田と龍田。
|
| そして、怪物めいた体を自在に操る『カトルカール』。
|
| 横島はすごい勢いで、手の届かない所まで駆け抜けて行ってしまった。
| 今度は自分が、一歩踏み出すべき時だ、ロビンは感じていた。
|
|「ン」
|
| ロリポップを咥えて、ロビンの別行動を許可する杏子。
| 上着のポケットから携帯端末を取り出した。
|
|「ンンン？」
|「上杉謙信より通達だね。
|
| 杏子班は『ストームトルーパー』を指揮下に入れ、今回の作戦であぶり出された反社会勢力の鎮圧に移るように。
| この命令は藤堂志摩子及びフリット・アスノの連名である」
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{:::::::::::::::::::::::::::/_ｰ: V:::::i: : : :＼:::::::|:- :i:::}_;|:::::/::::: |＼}
｛::::::::/::: |::::::::::{ ＞､＼:::,-----V::} へi:/ :}:::/:::::::::| え？ 石田脳内に無線あんの？
V:::/{::::人:::::::::V ＼＼ ／ jﾍ /ｨ:/^i::::::{
V{ v:::::/^ - :」 「!} ’ ´ 「!} }' }' }/ゞ
{ ﾏ::{ { ｉﾍ { ゝ ､ ゝ /ﾉ /
_ -= ＼ ‘, ー─‐ :〈 ー‐一 /_／≧=- ＿＿
_ -=≦ ＞-, u / ∧ ￣￣二ﾆ
／ / ∧ ｒ っ ／:{ .∧
｛{ / ∧ト., ,. ＜::::::} ∧
/ / ハ ＞-＜:::::::::: / 〉
,ｲ 〈＿＿_ } / ＞ ´
γ´ ∧ {≧sﾊ { ,イ
／ ∧ ∨ { ｝ |
／ } ＼ ∧ ／ ／ |
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|「で、同じ内容がキオから送られてきたのか……つまり？」
|「逃ゲ回ル必要ガナクナッタ」
|
| 一同は顔を見合わせ、即座に撤収を始めた。
| 『カトルカール』や『教会』に見咎められる前に龍田を連れて逃げねばならない。
|
| ビルから出て、ガクンと顎を落とす杏子、キュウべぇ、ヴァイジャヤ。
| 戦争の後のような光景。無事なものは何一つない。
|
| 警察が生き残りを発掘している、その中で、いつの間にか後方に移動されていた杏子班の４ＷＤ。
| 奇跡的に無事。いや、よく見ると傷だらけ。
|
| 車内に置いてきぼりの『バーサーカー』のおかげ。
| 横島を追いかけていなければどうなっていたのだろうか。飛散する『武僧』の死体、崩壊したビル、横転して炎上する車。
|
|「『血族』から連絡が来ています。ここの後処理は我々がやりますので、急ぎ本部へ」
|
| 泥と汗まみれの警察官に促され、杏子たちはモーリアンＣ．Ｏ．本社ビルを後にした。
| この戦いで何が起こっていたのか、自分たちが何に加担してしまったのか。
|
| 今更ながらに恐れながら。
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ﾊ:＼::::::::∠＝ ､:::::::/
ﾊ::::::::ヽ:::::::::ー:::::／
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| 十二人の『カトルカール』のうち、この戦いで倒れた人数。
| だが、この他にも外の戦いで撃墜されたアゲハチョウと、やらない夫と交戦した爆弾蜂。
|
| そして新宿衛生病院地下で侵入者に逆ハックされウィルスを流しこまれた十二人目が重傷だ。
| 源之助は無意識に左肩の付け根を探った。
|
| もはやつるりとした肉に覆われた傷跡。
| 失われた左腕。あれからずっと、塞がらない傷がある。
|
| その傷も左腕であり、傷跡からは常に冷たい風が流れ込む。
| 虚無の風。虚ろな音を立てて源之助の心臓を冷やし、心を冷やす。何もかもが虚しい。
|
|「…………」
|
| しかし、藤木源之助は武士である。
| 寒気と恐怖に怯えることは許されず、伸ばせる手もまた……。
|
|「随分とまあ半端な奴を遺してくれたな、虎眼め。あの耄碌ジジイ。
| 正気かどうかあれほど確認したというのに、女を見る目だけでなく弟子を見る目まで曇っていたか」
|
| どこの誰ともしれぬ男が、突然の罵声を投げつけた。
| 不甲斐ない自分だけではなく、偉大なる師への侮辱。源之助は考える前に軍刀を振り抜いていた。
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′.{/:::::::::::::::/ﾐ`i:::::ﾄyｼ7へ::::::::::::::＼
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〃:::::::::::::::′ '!:::i, ,, -‐ヾ´,
ll::::::::::::::,' ';:::i, ,ｨ'" ヾ:
ll::::::::::::.,' -―‐- ､ 'i,:'! ﾞ ,. , -‐,,z=
. ｌ!::::::::::::! ._,,,＿' ,ヽﾞi,:i, ｼ',r'"{:.`''′
l|l::::::::::::l , z,=r;;ﾃミ、', ﾞli, 'ﾞ _,,`ﾆ
ﾞil::::il ',:::l '´ ヾ.ﾞ''ﾞノ '! ':, 殺意と腕だけは本物か。
li,''ﾞ ﾞ' l `' =＝ ''" l 丶 だがそれだけでは三流以下のミシシッピアカミミガメ……。
lﾄ,､',, :'i, l
llゞ:::::::::', l いや、アカピッピミシミシガメに過ぎん。
llﾘ>､::::::', 〈 _ _
,!jﾉ ヾ:::::',､ ｀`" _,,
l/ ヾ:::::'iヽ、 _,,. -― '' "´
ヾ::ヽ',丶、 ´ 、,,,,,. .:
丶ヽ'i、丶､
ﾞi,:i,ﾄ､'i l｀iヽ、 , ｨ′
､┴i,ヽlﾊ',i ｀ ‐-‐ '",/
ヽ'7 <ﾗ ',i, ／／
ｿ / ,-tL、 , -''"
`' ,ｲ ,:'r'ｰ'´ , ィ:'
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| 男は首筋の血を指で拭った。
| 確かに首を刈れる速さと間合いだったはず。斬られると分かっていたのか？
|
|「心も体も鉄屑以下、心技体の技だけでそれほどの剣力なのは認めてやろう。だがそれだけだ。見る価値もない。
| 何が才においては伊良子を凌ぐだ。
|
| 戒名を超銀河爆発居士にしてやろうかあのボケ老人め。虎ではなく猫だったのではないか？」
|
|「カリカリガリガリ！ カリカリガリガリ！」
|「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|
| 剣呑な気配に、『カトルカール』が散開する。
| 男は彼らを侮蔑的に鼻で笑った。
|
|「鉄屑に守られて鉄屑の王様気分か？ そいつらにも貴様の半端な剣を教えているのか？ あの女どものように」
|「貴様！」
|
| 何だこの男は、島津由乃と美樹さやかを知っている？
| 軍刀を担ぎ、踏み込み、必殺の一撃を放つ。
|
| 腕の一本でも奪い、無力化し、詳しく話させるつもりだった。
| しかし、思わぬ邪魔が入る。Ｘだ。血と泥に汚れたジャージの謎のヒロインＸが源之助の剣を受け止めた。
|
|「ヴァカめ。寝ていろ、死ぬぞ」
|「かはっ」
|
| 血涙流しながら喀血するＸ、くずおれるのを男が支えた。
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-‐=＝= ､ ＿,, .. -―- ､、
三三ミﾐ 彡=三 ,ニミ 丶､、
―-､ ,/^ヽ , ｨ"::::::::｀丶、｀丶、
:::::::::｀Y:::::::::l,_,ィ":::::::::::::::::::::::ヽ ＼
::::::::::::::l:::::::: ', ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ＼
:::,ｨミ､:ﾊ:::::::::V彡ゝ:::::::::::::::::::::::::ヽ丶、 ヽ
/^''`'ｰ'ﾍ:::::::::',"''"ﾞヽ::::::::::::::::::::::::ヽヽ、 ヽ
',::::::::l ヽ::::::::::::::::::::::ヽヽ、 ',
',::::::l ヽ::::::::::::::::::::::',ヽ丶 ',
',:.:.:;! ヽ:::::::::::::.:.:.:::',ヽヽ. l
! .:,' ':,:::::::::.:.:.:.:.:.:', ', ', l
l.:/ ',::::.:.:.:.:. :::lﾄ.', l
!;' _,, 」:::. :. ::l', ', l
,ﾘ _, - '"´ ',::. ::l'､', l
- 、 il' r_,:''" ',:: ::l i,', i l 思い出せアカピッピ。
::::::＼ ll .. :.:_, -_,, z=＝キ:. .:l l, l ',
::::::::::ヽ l! '彡'"´{三三} ,}:.:.. ..:.:.!、l l ﾄ､', 貴様の剣を。
:.:.:.:::::::l l ､,_廴ニﾉ ｨｼ!:.:.:.:.:.:.:.l ﾄ.l l l ヾ 『セイバー』にもなれるとあの虎眼が太鼓判を押した気高さを。
:.:.:.:.:::::l '、 ｀￣￣´ l::::::::::::::l lヽ!ﾘ 'i,
:. :. :.::::! l::::::::::::,' l /l/
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: : :.:l ／ l:::::::/ /
' _, ,イ ,':::::/ /
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|「は……？ マジですか？ じゃあ殺さないと……」
|「寝ていろ」
|
| 支えていた手が放される。なすすべも落下。足蹴にされて動かなくなるＸ、それはともかく源之助は混乱していた。
| この男は何を言っている？ 『セイバー』？
|
| ｾ ｲ ﾊﾞ ｰ
|「『世界を救う者』だ、ヴァカめ。
| 『エクスカリバー』を手にしてこの世界を破滅から守る存在、私利私欲や雑念を捨てて英雄として死ぬことを受け入れた捨て駒だ」
|
| 源之助は、ぎりりと歯ぎしりした。
| こいつが何を言っているのかはどうでも良い。だが、少なくとももはや源之助にとって。
|
|「世界など……！」
|「『貴様の世界』だヴァカめ。『貴様を取り巻く世界』だ。
| 貴様自身の心を救い、貴様の友を救う、それすらできぬミシミシガメを『セイバー』などにするものか」
|
| 鼻で笑う男、源之助は軍刀の柄を強く握った。
| それが……それができるものならば。
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｀ヽ,<ﾆｼ:::::::::::::::::::::::＼ 丶、 ｀`ヽ
::::/:::ヽ|::::::::::::::::::::::::::::::＼
､:|....::ﾄﾐyﾉﾍ、::::::::::::::::::::::ヽ
ミ!:..:::{'"'´￣＼:::..:::::...:::::..:::':,
ｼ'!:...::| ヾ:. :::. :. :. :.. ',
',:::::! ,.ゞ:. :. : :.i
':,::', ／ ヽ:. :| ペルソナを受け入れろ。藤木源之助！
',:', ／ ,.ィ, ==、 .:|、 夢の塔を上り詰めよ。影を滅ぼせ。。
`ー､ ヾ! ,:'／!{itfij}i:. :. :|',
,.ニ､:, l! ' ゞ==彳:. .::....:| ', 鉄屑どもの王様でありたいのなら好きにするがいい。
'{frﾐ'!ﾞ!ﾉ ',::..::..::::l !l| ﾘl>、 だがまず、その地位を奪わねばならぬだろうよ。
ゞ= ' i ',::::::::::l l|!/ ﾘ
ﾉ !::::::::,! l| ' ､_ そのうえで、今度は簒奪者となれ。
'、 ヽ l:::::::,' ﾉ ,' !l/ 貪欲に奪い取れ。女も、鉄くずも。
、 ｀ _,. -_7 .!:::::,' / ﾘ
ﾄ､ヽ ,. -_,ﾆ´-‐ン .!::,' /
:', ﾄ､ヽ ｀`´― '"´ |::! ／
､:ヾjﾄ､ヽ ‐==‐ .!::l.: .:
!lﾄ､:', ヽゝ、 '.:|::|.:. .:.:／
ﾘ ヾ} ▽ l>--‐彳::::ヾ7７ :／
▽ ﾘ ／ /ヾ::::/Y ／ ／
{! ／ / ノ::: ﾉ ／ /
' ／ /∨::::, へ./ /／
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|「ペルソナまでも……何奴か！？」
|「元『血族』四天王にして、元『結社』日本支部首領補佐、脳噛ネウロ」
|
| 知っていた。その名前は聞いたことがあった。
| 『血族』を出奔して『結社』内紛に油を注ぎ、日本から逃げ出した扇動者。道化師。
|
|「貴様の働き次第では、貴様の女に医者を紹介してやる。
| 上条当麻の右腕から『幻想殺し』を抜き取った名医だぞ？」
|
|「そ、それは……！？」
|
| 病院で、日々衰弱しつつある島津由乃。
| その横で見守り微笑み続ける美樹さやか。
|
| 二人を救えるのなら。
| 藤木源之助は。
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'， ／ ，: : : : : : : : : : : : : ＼
∧ {_／^，: : : : {: : : : : : : : : : .，
/: : ／／⌒'， : : ﾊ : : : : : : : : : : '，
j{: : :Y fこ丁 }:{: :/ '，: : : : : : : : : : ，
j{: : : 乂こ ノ:.{V ＼'， : : : }: : : .､: :'， 何やってんだよボス！！
}: : : : : {: : : : : { 笊>、‘， : : }: : l: :}＼}
}: : : : : :'，: : : :{弋ツ＾ﾞ ＼: :}: : l∨ ＿＿ __ ＿_
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厶イ|／＼: ＼:」 , - 、 ﾊ:/_|/|=「 l し!_jニ=‐ ￣
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| 眼帯を暗視モードにして暗がりから接近、奇襲の一撃で『異端審問官』を斬り伏せる。
| いや、一太刀では倒れない。立ち上がろうとする相手を蹴り飛ばし、天龍は無慈悲にとどめを刺した。
|
|「逃げるぜ！」
|「天龍……なんで来た！？」
|
| てっきり、龍田と一緒に行くものだと思っていたのに。
| 五人がかりで襲われて、なぶり殺し直前のやらない夫は鼻血を垂らしながら呟いた。
|
|「あ？ ざけんな！」
|「ぼすこそ、なんでひとりでいっちゃうのさ！」
|
| 『異端審問官』たちの顔面に虫が群がる。
| 術的防御の高さからか、ジャンヌに触れた虫はその瞬間に蒸発したが、他の『異端審問官』はそうも行かない。
|
| 防護マスクを食い破られて、突然下水の悪臭にさらされた『異端審問官』が身悶えする。
| 隙を見逃さず、天龍が次々に切りつけた。
|
|「私（の境遇）をムチャクチャにした責任、取ってもらいますからね！」
|「ぐぐ、ぐ、貴様……他、の、女（の人生）……まで……！」
|
| 誤解されそうなことを叫んだ鹿島が、ジャンヌの対応に頬を染める。
| 対する聖処女は狂人の直感で行間をお見通しだ。
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γ´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀i//／-‐ フ
ﾔ::::::::::::::::::::::::__:::::::::::::::::::::::＞ -＜////／
＞'ゞ''´ ￣ γ´ ｀ヽ
／ ｀''＜ -‐ / ` ∨
/ ｀ヽ ＼ .＞''´ｌ ＼ ﾔ
ｲ ,′ .＼ ヽ ゝ ヾ ヽ!
. ､ﾉ｀ ., |i ヽ ∨ ﾍ ', ､ヽ
) ! ､.i ＼ ヽﾍ ﾔ／ ヽ ｌ ﾍ ＼､
/i i .ｌ￣_ -ｰ―',. ', ',r ヽ/ﾍ ｌ ﾉ )
' ', |i ',. ', ｨzz≠- i i ｌ/ｌ ｌ/ } ,' ,' ゝ／ え、え？
ﾍ! ヾﾍ.ﾔ´ :/:/:/: ｌ ｌ ｌ/,ｲ , / , イ もしやモトカノ？？？
ノ r ´ ` :/:/: i ,' .ｌ´ / i / , ｲ どういう関係ですか？
／ ｨrﾍ_ u ｌ/ ,' ./ .ｌ ／i´ｌ ゞ
. / ／,'/´, -ヽ ! , ' i ／ ﾍ }
{ {i ヽﾍ ''´ヽ _ ,'／ , / ', ﾔ ヽ ,
｀ヽヽ ) .ﾄ ´_ ノ／' / , i ヽ ｀ ￣ ｀ヽ
､- )ﾉi fﾔﾍ `,) ''´ ／/ ｌ､ ＿ ｀ )/
￣ }ｌ::ﾍ::｀ヽ´ /＞i''´ゝ, ｌ ｀ ／
ゞfヽ::::::｀i ／{／i i !､ ) ノ ｨ
,' ` ｌ ゝイ i ｌ | )ｲ i i イ´ ｌ
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|「ぼすのたのみでたたかった相手がつよくて、からだがとけちゃったの」
|「え……」
|
| それって逆恨みとは言い切れないのでは？ 鹿島は訝しんだ。
|
|「ジャンヌ・ダルク、正直あんたには悪いことをしたと思っているだろ」
|「ぐ……なら、死んで…………ぐぐ……詫びろ……！」
|
| 聖なる炎で燃え上がる聖ミカエルの剣、下水道の暗闇と、そこに溜まった邪念を浄化する聖なる力がやらない夫に襲いかかる。
|
|「いや、オレは東京を救わなきゃならん」
|「…………な、に？」
|
| やらない夫の蹴りがジャンヌの胸に炸裂、どんな攻撃も絶対に通さない無敵の魔術装甲。
| しかし、ジャンヌ本人の体重まではカバーできず。衝撃にふらついた。
|
|「オレは衆生を救う神を降ろす」
|「に、偽救世……主……ぐぐっ！？」
|
| 世が乱れた時に、人心が乱れた時に、偽りの救世主が。偽物の預言者が現れる。
| 子羊のように語る竜、本物の救世主を殺すための刺客。
|
| 人々の信仰を試す存在、だが、誰よりも強い信仰心で身を護るジャンヌから見れば。
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/ / ｌ l;;i l;;l l;;;;l ∥l;;l、 ／::::::::＿＿--く ,,,==三彡ミミヽ
∥ ﾘ / .ll／-l;l l;;;ト l;l ＼::::／ ｒ-、 ＼＼,,,,, r;;| |ヾ ヾ;;ヽ
ﾄ / ／::/￣｀＼::::l;l ト-イl,,, ヽミニニ─く:::::ハ ＼,,,|;;|. | ヽ ヾヽ
三三三ミ災什───/::::/ (｀ソ 彡 ソ丨| ｀-,,, ｀｀-ニ￣壬-| ; i;;| l i ヾi
／巛＼ 丿＼:::::::彡彳´ / /ﾍ ｀-,, ｀-,, ｀-,,, | ; |;;ﾄ | i i
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// |;;;| |＼/ i ／ ／ / / ｀´ ＿ ｀ヽ ヽ | ∥ ﾐヽ
/ |;;| |／｀ / / ／ ／｀ニ´---ニゝ、、＼ ヽ | ヽ ヽ＼
∥ |;;|／ i / ／ .〃/´´エエエエエ､ ﾞヾ,| ＼ | ヽ ヽ うう、ううぐぐぐ……。
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／ / i i / V,i!´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ | へ弋 ﾍ
/ / ヽ ﾍ ｌ ﾞl!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l!! l | |、| ／ / ﾍ
ﾉ i / ﾍ l l!::::::::::::::::::::::::::＿〆｀ヽl!! l | | |／ｲ´V / ﾍ
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| ジャンヌはうめき、よろめいて後退った。
| やらない夫は危険だ。偽物だ。
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| ヒステリックに自身に言い聞かせながら、ジャンヌは身を翻した。
| 倒れた部下を見捨てて、一目散に下水道を後にする。
|
| 残されたやらない夫たちには僥倖だった。
| 彼らはジャンヌの装甲を破れない。
|
| ヤザンとは逆の意味で勝てない相手だ。
|
|「……すまん、ありがとう」
|「いいってことよ」「ですね」「もうおいてかないでよね」
|
| やらない夫は殴られて腫れ上がった瞼を手の甲で拭った。濡れたのは血なのか涙なのか分からないけれど。
| 今まで、こういう時にやらない夫を追いかけて来てくれたのはいつでもやる夫だった。
|
| そのやる夫は、もうこの世界には存在しない。
| でも、もしももう一度会えたら、やらない夫は親友に自慢したい気持ちになっていた。
|
| オレに、やる夫以外の友達ができたよ。
| 事実はともかく、やらない夫はそう感じていた。
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☆ 次回予告！
はい、どーも『国際的テロリスト』の備府やらない夫です。
これまでの経緯についてはリンクを貼っておきますので初見さんはあらすしだけでも確認してくれると嬉しいです。
さて、本日は『モーリアンビルにテロ攻撃を仕掛けてみた』ということで。
これからそこに至った過程と、主張についてをお伝えしたいと思っています。
モーリアンビルがテロ攻撃を受け、民間人がすごい人数亡くなったことはニュースでバンバン流れてますよね。
では、なぜモーリアンビルなのか。
そして、実行犯の主張はなんなのか。
今回の主題はこの二つになります。
次回、最終幕四十六話『チャンネル登録お願いします』
果てに見るのは破滅か死か。
カトルカールは、戦車、バレリーナ、ノミ脚、隻腕が健在。情報、蜂、アゲハ蝶が重傷or死亡。残りがロスト死亡（エンジンは正気に戻って離脱）
モーリアンが壊滅。武僧、十字軍は毀滅。エックス、ネウロ、ヤザン、杏子班は健在。志摩子の復帰で、新宿地下攻略部隊は多分途中で撤収
ヤザンがクソ強かったな
線香のやらない夫
／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | はじめまして、
（__人__） | ..／} 備府やらない夫です。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「ニュースでモーリアンビルの破壊行為はオレのテロ攻撃だと流れておりまして、
| せっかくだからとこういう形で声明を発表することにしただろ」
|
| 荒い映像、無料動画サイトに同時にアップされた同じ内容のひとつ。
| 薄暗い部屋、打ちっぱなしのコンクリート壁。
|
| 錆びたパイプ椅子に腰掛ける、汚れたコートの男。
| 異様に青ざめた頬、深く刻まれた眉間のシワと目の下の隈。
|
| 長細い頭部に、禿頭。
| 一度見たら忘れられない、個性的な容姿。
|
| 間違いなく備府やらない夫本人。
|
|「気軽な内容だ。だが興味があったら最後まで聞いてほしい。
| はとんど雑談みたいなものさ。オカルトか、ファンタジーの類いだと笑い飛ばしてくれりゃいい」
|
| 屈託なく笑う。
| 膝の間で組んだ指、リラックスした態度。
|
|「オカルトっつったら、『品川大聖堂の夢』は見たか？
| 残念ながらオレは見てない、その時間仕事だったんだ。
|
| おかげで、呼ばれたらしいが返事の一つもできやしない。
| 残念で仕方ないだろ」
|
| やれやれと肩をすくめて首を振る。
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／￣￣＼
／ _ノ .ヽ、＼
| （●）（●） |
. | （__人__） .| もし同じような夢があったら、
| ｀ ⌒´ ﾉ 今度はみんなで呼んで欲しい。
. r─一'´￣`＜ヽ }
. `ー‐ｧ , ) , -'~⌒ヽ、
ノ {. ,ﾍ ,l. ゝ、_ .'ヽ).
. ／, ､ _ /. | . ', . .. .ヽ、
（／ / // / / ...| ...|＼..＼＼ ＼_)
/ // / / . . ＼_＼_)､_）
ｰ' {_/ノ ."´
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|「そしたら今度こそ聞こえるかもしれないし、行けるかもしれないだろ？」
|
| 冗談めかしてウィンク。
| よく通る聞き取りやすい声と気さくな態度。
|
|「助けを求めてる、その人の所にさ」
|
| 急に真剣味の増す表情。
| 仮面を脱いだかのような豹変、しかしすぐに気さくに笑う。
|
|「ちなみに仕事っていっても『品川大聖堂』の人たちを殺して回ってた訳じゃないぜ。
| 警備さ、ごく普通の。どこに勤めてたかは迷惑になると悪いから伏せとくが」
|
| 趣味の悪い冗談みたいに含み笑い。
|
|「そうとも、オレは『品川大聖堂』に行ったことがない。
| そして、あそこて事件を起こした奴の手助けなんてしたこともない」
|
| 肩をすくめる。伊達な仕草。
| 芝居じみた動作なのに演技臭くないのが不思議なほど。
|
|「所で、話は変わるがテロの定義を知ってるか？
| オレも今まではなんとなくしか理解してなかったからな、調べてみた。
|
| ざっくり言うとテロリズムは暴力を用いての政治的主張や脅迫の事らしい。
| ああ、本当はもっと複雑怪奇で定義付けは困難らしいのだが」
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.／￣￣＼
.／ _ノ ⊂_ ‐-' ＜ 『品川大聖堂』で誰が何を主張した？
| （ ―） λ ヽ
,ﾍ__| （__人） ヽ ',
__,/ ｀ ＜ ⌒ﾉ . ｒ'-‐￢
／---‐――--.､ゝ＼ ノ 」-‐＞ヽ
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／⌒ヽ. ´_ノ / ´ l
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ ／´ ｀ヽ ヽ. , , .!
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ ／ ヽ l｀ / / /!
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／ ./ ＿ __ヽ-､ !/. ,' l !
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|「テロ攻撃は主張だ。自分たちがやったと声高に叫ばなければ意味がない。
| なぜやった。なんの為にやった。だから何を要求する。それが必須だ。
|
| 調べても『品川大聖堂』のテロ攻撃は、主犯こそ出てきても主張が見えない。
| 揉み消された？ 馬鹿な！」
|
| やらない夫は鼻で笑う。
| 嘲笑するとその顔はあまりに凶悪に見えた。
|
|「テロリストがよほどの馬鹿でなければ警察、政府、そして各種メディアに声明を送る。
| この映像も、動画サイトだけでなくそれらにも送信した。
|
| 全部が全部揉み消されるってのは一体どんなヤバい内容だ？
| 想像できるか？ オレにはできないね。
|
| 狂人の戯言なら一笑に付して終わりだろう。
| 秘密を暴くような類なら、マスコミが放って置くまいよ」
|
| この間、やらない夫は立ち上がりカツカツと靴音を立てながら歩き回る。
| カメラは動かない。固定されているのだろう。
|
|「諸君は、二つのテロ事件の現場は見たか？」
|
| カメラアングルの外から、不服そうなやらない夫が顔を出す。
|
|「ああ、調べないほうがいいぞ。グロ画像のオンパレードだ」
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∧＿∧
∧＿∧ （´<_｀ ） うわ、流石に引くわ。
（ ´_ゝ`） / ⌒i
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＼/＿＿＿＿/ （u ⊃
ｶﾞｶﾞｶﾞｶ……
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|「ノルマンディー上陸作戦とまでは行かないが、コロンバイン以上の死体の山だ。
| しかも、明らかに対人用の銃器じゃない。
|
| 爆弾や大口径の弾丸でホラーやスプラッター映画顔負けの大惨事だ。
| 原型を留めている死体の方が珍しい」
|
| やらない夫は顎をしゃくり、首を傾げる。
| 不思議そうに、答えを求める視線を視聴者へ向けた。
|
|「なんだコレ？」
|
| 椅子に戻る。錆びたパイプ椅子が軋む。
| 足を組み、リラックスして話を続ける。
|
|「人間相手に使う武器ではない。だが執拗な攻撃。
| 軍隊同士の戦争みたいな火力を用いて、一方的に虐殺する。
|
| それらが二つの現場で共通している。
| 同一犯だから？ どっちもオレがやったんだろうって？
|
| 『品川大聖堂』はともかく、モーリアンビルにオレがそれだけの火力をどうやって持ち込むんだ。
| 一ヶ月以上逃亡生活を余儀なくされてるんだぜ？」
|
| やらない夫が声のトーンを落とす。
| カメラに近づき、秘密を打ち明けるように囁いた。
|
|「オカルトさ、ファンタジーさ。
| 信じるか信じないかはあんた次第だ。
|
| 世の中の隠された真実か。あるいは狂人の戯言」
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ヽ / / |ヽ
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_, ‐､::::::￣ ) |￣￣ ‐ '─ !_ ノ ´
:::::::::::ﾚ' ￣ |::::::::::::::::::::::::::::::｀‐ _ ／ 『陰謀論』の時間だろ。
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:::::Ｖ |::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐-､ _:::::::::::::::::::::::::::>
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|「オレは、真に恐ろしい何かから目を覆うための生贄に過ぎない。
| あそこで殺した。あるいは殺された存在を秘密にするための分かりやすい答え。
|
| 木を隠すなら森の中。
| 死体を隠すなら死体の中。
|
| 事件を隠すならもっとセンセーショナルにすればいい。
| 一つの殺人理由を隠したいなら百人殺せばいい。
|
| 目くらまし。巨大で、人の命をなんとも思わない組織とかシステムによる。
| それがオレだ。体のいいスケープゴート」
|
| 笑わない、いつの間にかみなぎる緊張感。
| カメラ越しに、その巨大な何かを睨むかのよう。
|
|「それが誰なのか。あるいはどこなのか。何なのか。
| なぜなのか、何を隠しているのか。
|
| どうしてオレなのか。名前を挙げられた他の三人との共通点は？
| 分からない事だらけだ。そんな中で、オレは気になっていることがある」
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／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ オレは何番目だ？
| ,.<))／´二⊃
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
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:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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| 目が合う。
| 視聴者の目と心を釘付けにする強い視線。
|
|「こうやって生贄にされるのは、オレが最初だなんて信じない。
| やり方は稚拙だが、あまりにも唐突だった。
|
| 気がついたらオレはテロリストだった。
| それは、それだけ『慣れている』ってことじゃないのか？」
|
| 立ち上がる。コンクリの壁に手を触れる。
| そこにある暗いシミ、亡霊のようにも見えなくもない。
|
|「ナチズムは選民思想と敵の選出で成り立った。
| 君は特別だ。この棒を使っていい。
|
| そして敵はあいつだ。いくらでも殴っていい。
| 芸能人の炎上事件と同じ流れだろ。
|
| 正義の力で悪を倒していい。
| それを国家が認めたのがナチズムだ」
|
| 細かいことはすっ飛ばした解釈。
| 詳しくは専門家に聞こう。学ぶスレを探そう。
|
|「オレの存在も同じだろう？
| 作られた敵に意識を向けることで。内包された問題や危険から目をそらす。
| 目隠しの為の生贄さ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼ これまでオレは目をつけられ、
| （ ー）（ー） テロリストの烙印を押されても
. | （__人__） 仕方のない生き方をしてきた。
| ｀ ⌒´ﾉ
. | ｎｌ^l^l 暴力の行使をためらわなかった。
. ヽ | ﾉ
ヽ ヽ く
/ ヽ ＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「昔、言われたことがある。
| 『剣を収めなさい、剣を持って生きるものは剣によって死ぬのが定め』
|
| だからこう答えたよ。
| 『では、剣を持たずに生きるものが、剣によって死ぬのは見過ごせばよいのか』」
|
| やらない夫は肩をすくめた。
| 悲しそうに、寂しそうに。
|
|「その人はこう言った『イエスはそれを受け入れられた』
| ユダに裏切られ、縛を受けた際に暴れる信徒を止める言葉だったんだから。そうだろうよ。
|
| でも、オレには受け入れられない。
| だってそうだろう？
|
| 被害者に、泣き寝入りをさせようとしているんだぞ？
| 神の子は受け入れる徳もあるだろうさ。
|
| だが今まさに虐げられ、拳を握って抵抗しようとする弱者を。
| 今まさに、剣によって殺されようとする牙なき無辜の民を」
|
| 突然、やらない夫が右手をコンクリート壁に叩きつけた。
| 堪えきれぬ憤怒の発露、擦り切れて傷ついた手から血が滴る。
|
| それを他人事みたいに一瞥して、やらない夫は何でもないかのように続ける。
|
|「オレは剣によって滅びるだろう。構わない。覚悟はできてる。
| だが、剣を持たぬ者を剣を持って脅かす輩を、オレは許せない。
|
| そうやって生きてきたんだ。
| オレの番が回ってきた。それだけの事なんだろうよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
／ . ＼ だが、
／._ノ三ﾆヽ、＼ これまで殺されてきた者たちと
| （⑪）（⑪） .｜ これから殺される者たちの事は許せない。
. | （__人__）.. |「ｒｰ＿＿ヽヽ
| ｀ ⌒ | .＼ ＼┌ｰｚ＿_ ┐７
. ヽ , ィ==‐､/ /￣￣乙/ ／
ヽ ﾉ⌒) ∨/ ／￣￣／|
/ (_￣__／￣`く.＿ __∠ -┘｣
| /〃 ＼ '" ＼ -┘
| ./¨＼ ＼,_ ｀`ヾ}
. 人''" ＼ ､__ ｀ ､_/ ﾉﾉ
〈 " ＼ __.ヽ ヾ､._,)'´
／,ﾊ. ヽ. ､__｀ン{ 〃
く / ∧ !､_ ｀'_,／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「オレみたいに分かりやすい理由ではないかもしれない。
| 次に選ばれる生贄がどこの誰なのか見当も付かない。
|
| だが少なくとも。
| オレを殺す輩はこの後も、生贄を捧げ続けていくだろうよ」
|
| 傷ついた右手をポケットに隠し、やらない夫は左手の人差し指をカメラに向ける。
|
|「それは、君かもしれないし、君の家族かもしれない。
| まあもちろん、全く知らない赤の他人である可能性のほうが高いのだろうが」
|
| ヘラヘラと、無責任に。
| 他人事のように笑うやらない夫。
|
|「そういえば『やった奴』は誰なんだろうな？
| やり方が日本人的じゃ無いとオレは勝手に思っているけど」
|
| ふと思いついたかのようにやらない夫が漏らす。
|
|「日本人が最初に思いつくテロ事件ってなんだろうな。
| 『911』？ オレは『地下鉄サリン事件』だな。
|
| 銃もハイジャックも、馴染みがなさ過ぎる。
| ラッシュアワーに毒をまくほうがイメージしやすい」
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. ＿＿
.／::::::. ＼
/::::::ヽ;;: ＼
. （:::::（::::冫 |
. （:人;;;） . | ターゲットを確実には
r‐-;::::::. . | 狙えないがね。
（三））:::::.. . |
>::::ﾉ:::::::::. /
/::: / ヽ;::::::::: /
/::::/ ⌒ヾ:::::::::::.〈
（;;;;__ゝ:;;:::::＼／:::::）
. |＼::::::::::::;;:1
. |:::::＼;;／:::|
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|「『やった奴』と『隠したい奴』が『奴』なのか『奴ら』なのか。
| 『別』なのか『同じ』なのか。
|
| 規模も人種も分からんが、何もわからんそんな奴らに、
| 何もわからないままに殺される。
|
| オレが。
| そしてその次は別の誰か。
|
| あるいは君が」
|
| 画面を睨む、指を突きつける。
| 視聴者に紛れている、『そいつら』に食らいつくような目。
|
|「それか嫌な奴はオレと共に『そいつら』と戦ってくれ。
| 探す必要はない。武器を持つ必要もない。
|
| ただ、忘れないでくれ。心しておいてくれ。
| そして見て、声を上げてくれればいい。
|
| オレがどうやって滅びて行くのか」
|
| やらない夫が画面の右に消える。
| カメラが追う、ズームアップ。
|
|「来週の日曜日、芝公園にオレは行く」
|
| 手書きのポスター。『12月14日、午前10時。芝公園に集合』の文字。
|
|「警察に囚われるか、あるいは『そいつら』に殺されるか見に来てくれ」
|
| 近づくやらない夫。カメラを覗き込み、優しく微笑む。
| そして暗転。映像終わり。
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息つく暇を与えぬ敗北者の一手。
行く着く先は次なる虐殺。
本気になったやらない夫。
誰も手の届かない、最下位確定のランナーの逆走速度。
世界を破壊せんとする、そんな無敵の放送に。
君は、どう動く？
次回、最終幕四十七話『判断が遅……（くはないがとりあえず平手打ち）』
果てに見るのは破滅か死か。
理不尽天狗！
ｒ――――――┐
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| モーリアンビルの攻防戦から一夜明けた早朝、午前四時。
| 日本の、都内で発生した未曾有のテロ事件の余韻も冷めやらぬ。
|
| 死者、行方不明者は百名を優に越す。
| 周辺の被害総額も目玉が飛び出る程となる。
|
| ニュースてはテロリスト備府やらない夫によるものだと連呼していた。
| 警察に止められ、遠巻きに撮影された穴だらけのビル。
|
| そして不穏な黒い煙。
| 現場で怪物を見たといういくつもの声、一方で新宿駅で行われた闘争には誰一人言及しない。
|
| 不安と恐怖、そして得も言えぬ高揚と期待に満ちて迎えた朝。
| 日の出前、真に暗き時間にネットにばらまかれた一つの動画。
|
| 眠れぬ夜を過ごした人々は疑い半分で。
| 番組編成で夜を徹した人々は面倒くさそうに。
|
| その十分足らずの動画を見て、狂乱した。
| 不意打ち。誰も予想だにしなかったタイミングでの『犯行声明』。
|
| ネットは一瞬で沸騰。お祭り騒ぎになって動画サイトのサーバがダウン。
| メディア関係者は即断、他社の様子を見ては置いていかれる、こぞって朝のニュースで放送。
|
| 日本中が。いや、世界中が備府やらない夫を知ることとなる。
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', ＼ ／ -‐=ﾆV: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
',ヽ ＼＼＿＿＿＿＿V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
. /ヽ ＼} |ヽ ヽ＿ , V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
/ ＼ { ／ ＿＿＿＿＿_ V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
. / ／ / | _/／ _,丐￣￣￣￣ V: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
/ /| /{ .| { ノﾔノ V: : : : : : : : : : : : : : : : : :
| | .| { ヽ }ヽと`ｰ 〉: : : : : : : : : : : : : : : : : :
| | ! ! V（ﾉ {: : : : : : : : : : : : : : : : : : やられたなぁ……。
{ { ＼ / ／j j: : : : : : : : : : : : : : : : : :
. ＼ ヽ ＞､ ／ ./ ./{: : : : : : : : : : : : : : : : : :
. ヽ ／.ｒ､)`ｰｒ-‐' ./: :| : : : : : : : : : : : : : : : : :
{ { ｨ ィヽ /: .: :｀､: : : : : : : : : : : : : : : :
〉 ヽヽｰ} .／: : : : : :ヽ : : : : : : : : : : : : : :
V ヽ | ／: : : : : : : : : ＼: : : : : : : : : : : : :
V ヽ _／: : : : : : : : : : : : : ＼ : : : : : : : : : :
V !ヽ￣￣ヽ : : : : : : : : : :.＼: : : : : : : : :
／ ＿＿ _ |: : : : : . ＼: : : : : : : : : : :＼ : : : : : : :
／ ﾉ: : : : : ／ : : : : : : : : : : : :. :＼: : : : :
／ ／: : : : ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼: : :
／ ／: : : :.／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
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|「他人事みたいに言うねぇ」
|「他人事だろ？」
|
| 徹夜で現場の隠匿後、シャワーを浴びてすぐのエダ。
| バスタオル一枚のしどけない姿だが、それを指摘する者もない。
|
| テレビのある談話室には、ヨランダとアリカ、そして刹那がいた。
| アリカは昨日の一件を、『十字軍』の蛮行を未然に止めたことも含めて報告済み。
|
| エダとヨランダは一般人に被害が出てから止めればよかったのにとか思ったが、口に出さない程度の分別はある。
|
|「だが事実、備府やらない夫はやっていないのだろう？」
|「だが、闇社会の存在をほのめかしてやがる。どうやって収拾を付けるつもりやら」
|
| ビールを煽るエダ。
|
|「そのくせ、悪魔関連には一切言及しやがらねえ。
| …………分かるか？ やられたんだよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
／'´￣ __｀ヽ __ ＿
〃 ／.:.:.:.::｀´.:.:.:.＼:.:｀ヽ―ｧ
|! /:/.:.l:.ヽ:.:＼:.:.:.:!:.:ヽ:.:.:.ヽ:ヽ
l /:l:{:.:.:l＼ﾄ､:.:.ヽ:.:|:.:.:.l:.-‐ハく
{:.ﾑト-` '⌒｀丶l､!:.:.:.|:.:/.:.:.:ﾄ､〉
ヽlr;=､ r;=､ ノ j:.:.:/.:.:.__:./!〈:〉、
l lj {j /／/.:/r､V ハ:〉
/! ' ､､ '´ 'l:.f l-'/ ∨〈〉
|/ヽ ＿ U ,ヽ!ｨく 〈:〉〈:〉 どゆこと？
,r‐ｧ‐_-＼ﾞｰ' ／ ,ﾊ_ 〈:〉 〈:〉
//´/´／ﾉ__＞‐＜＿ ／ /:!ｰ―'-､':〉
〈 ' / /´: /: : | ／ヽ /: :| : : : : : ヽ、
ヽ ヽ :/-一!:::|::::::ヽ/＼: ! : : , -‐-､!
,.-‐i _,.⊥:|: ／::::l:::::::::!: : : :〉: ／ : : : : j
!ｰ-｀ﾆ´┐ l／＿::::|::::::__|: : /:r' : : : : : : /
|: : : : : : :l !ヽ￣ヾl_/,r‐'!: //: :／ : : : /
!: : : : : : L_!: :｀ﾄ､_|::::::, ┘'/／: : : : : /
l : : : : : : : |: : : !_ T´: : :／／´: : : /
j: : : : : : : : !-‐'l:ヽ｀|｀T/／ : : : : : /
/: : : : : : : : j : : |: :} l lﾉ' : : : : : : :/:!
ヽ: : : : : : : :/---': :! | /: :／: : : : :,'__|
＼: : : : ﾊ――‐' /／ : : : : : / !
｀ｰ'´ 〉 /': : : : : : : :/---ヽ
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|「やらない夫は悪魔も魔法も存在しない体で話したろう。
| すでに目撃者が多数出ているにも関わらずだ。
|
| この動画はそういう少数の噂話を全部叩き潰したんだよ。
| ある意味『血族』と『教会』はやらない夫に借りができたと言えんのさ」
|
| ヨランダが葉巻の頭をカットしながら笑う。
|
|「しかもこの野郎、それを理解してやがる。
| 言ってたろ？ 『木を隠すなら森』」
|
| そして、悪魔を隠すなら陰謀の中という訳だ。
|
|「だが、代わりに『生贄』を求めている」
|「それで『こっち』を牽制してんのさ。今頃『上』じゃあ責任のなすりつけ合いでてんやわんやだろーよ」
|
|「エダちゃん、おっぱい出てる」
|「めんどくせーなー」
|
| 『生贄』は恐らくはドジを踏んだ合衆国軍が引くことになるだろう。
| シロッコは恐るべき手際で証拠隠滅を手配した。
|
| モーリアンビルには、もはや悪魔やサイボーグの肉片の一つも転がっていない。
| そして『十字軍』も想定外の動きをした。
|
| 昨日のうちに、『ガンダムを名乗る二人組から市民を守ろうとして負傷した』と言い出したのだ。
| 単細胞のオズとは思えない狡猾さである。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ'
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ | でもさ、困っちゃうよね。
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ ／ ∨ 丿
iタ }〈 l丶 { _／ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「何がだ？」
|「だってやらない夫さん、らしくないよ」
|
| アリカはふうとため息を一つ。
| ネウロがいるからと任せておいたのに、頼りにならないオジサンだ。|
|
|「やらない夫さんはこういう事しないよ」
|「実際したじゃねーか」
|「そうじゃなくて」
|
| アリカは少し考え、頭をひねり、唸り、眉間にかわいいシワを作った。
| 珍しく頭を使うアリカに、三人が知恵熱の心配を仕出した頃、ようやく拳を打つ。
|
|「やらない夫さんは、こういう事を考えても実行はしないんだよ。
| だって翠星石さんややる夫兄ぃに嫌われるでしょ」
|
| それがどれだけ的を射た指摘であっても、この場では理解されなかった。
| やらない夫の精神状態、あるいは思想が危険な方向に振り切れている。
|
「まったく、おじさんも頼りにならないんだから。あたしががんばらないと」
|
| 今の状態で気が付いているのは夢宮アリカただ一人で。
| そしてアリカはそれを理由に命を落とす運命にあった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､ / |/ ／ ／ -=＜ _
/ ∨ ／ ＼
l＼! ／ ￣ヽ. ＿＼
∨ヽ / ／ -― ＼
∨ /| | ／ ＼
∨ ヽ| | ／/ ＼＿＼
l ト ､ l / ／ ＿ ＼
l ! ヽ _ , - ＼ |
i! ｀ ´ ´ ´ } ／ トリ
{ヽ i ∨
∧.r＼ ヽ ／,､ Y |
l ヽfｫ､{ / _, ＿ -‐ 'Z ﾐ// / } ﾊﾉ
／.} ｀ ｀ ヽ - ‐ﾋ て不ﾇｯ 〉-' } /
/. : ∧ / ｀ ¨¨´ /ノ／!´ 巧妙だな。
/. : : : ∧ / _ ｲ从ﾄヽ これは素か、それとも計算か？
/. : : : : : ∧〈 / ｝: }: |
/. : : : : : : : ∧ ､ / ,,ｨ｝ 〉. :.|
{: : : : : : : : :{: ∧ ヽ , ' ,,ｨﾁﾆ /. : :.|ヽ
|: : : : : : : : :|:ムﾑ , ' _,,ｨﾁﾆニ／. : : :.l: :|
|: : : : : : : : :|:{ﾆ/ .＞ - r＜ﾆﾆ彡三ニ=.' : : : : : : :/. :.ヽ
∨. : : :／._:.!:ﾄ.| {rﾆﾆ=-.':´:.: : : : : : : :: : : /. : : :∧
} : ／ト//.:ｲ. ト､ |: : : : : : : : : : : : : : : : ／. : : : : :∧
{.:/ : ヽX. ム ヽ_,＞､_.ﾉ. : : : : : : : : : :_:_:.-‐. . /. : : : : : :.∧
|/. : : /ヽ）{ア . _＿／. : : : : : : : :´ : : : : : : : /. : : : : : : : : :.}
|: : : /. : : ＼{ {ﾆﾆ{: : /ヽ . : : : : : : : : : : : /. : : : : : : : : : : ｝
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|「両方だな。計算された内容とアドリブの演出でやってる」
|
| 帰って風呂に入り、朝まで寝ていた慎二は早朝に叩き起こされた。
| 目がさめた時に布団の隣で『万魔』が寝ていたのには驚いたが、同時に少し安心した。
|
| やらない夫の動画をヘビロテしながら『弓兵』と朝食を作る。
| というか、寝て起きたら大事件が終わっていた。
|
|「我々は動けなかった」
|
| モーリアンビルへの乱入は、『弓兵』とルイズの二人で止めた。
| 彼らが動く理由も利益もなかった。
|
| それどころか、未だに日本に潜伏していることを知られてしまう。
| 不利益しかないのが実情だった。
|
| それでもとモーリアンビルと『血族』本部、間桐屋敷に飛ばした使い魔の内、前者二つは全滅した。
|
| 水銀燈の無差別攻撃と、キオの超高精度探査に見つかって潰されたのである。
|
|「問題は次だろうな」
|「ああ、一週間も待つものか」
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,. -‐=＝=‐-‐-
, : :´: : : : : : : : : : : : : : : ｀ヽ
-‐': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :' ,
／: : : : : : : : : : : : : : : : : ＼: : : 丶: : :ハ
. /: : : : : : : :,′: : : : ＼: : : ヽ: ヽ: : :ﾊ: : : :丶
/: : : : : : :i : l: : : : : : :: :ﾄ､: : : ｀: :',: : : ', : : : : ,
. {: : : : : : : ﾊ: ',: : : : : : : :} ＼: : :从: : : l : : : : l
. 八: : |: ､＿ l ﾊヽ: : : : : :ﾉ, -‐弋:厂i: : : |丶: : : ',
ヽ::ｉ:: :: :, ｀廾ト＼: : : i ＿_,､丿: : ,': ﾊ: : : :ｌ で、もしも人間に戻れなかったらどうするのよ。
. ﾉﾙ': 八≠=ｚ､ }: :丿''爪⌒,`从:: : :ｌ: : : ', : :ﾍ
∨ゝ｀ 圦ﾊ ﾉ'´ 匕:刈 /: : : ,: : : :ヽ: : :＼
}: :ﾊ Ｖ:ﾘ `¨¨´./:: : : ,′: : : : ＼: : ｀ヽ
. 从 : ', ' ,′: : /: : : : : : : : :ヽ: : : ',
／: }: : : ﾄ. -､ /: : : : i: : : : : : : : : : :',: : : l
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|「末代まで祟ってやる……まずは慎二が現役の間はせいぜいこき使ってやるさ。
| その後は奴の子供を死なない程度に酷使してやる。飽きたら孫だな」
|
|「それ、守護霊とかそういうものなんじゃ……？」
|「凛黙って」
|
| 朝食前のリビング、女三人姦しく。
| 凛もルイズも、当然『万魔』も動画を見ていたが、今の興味はもっぱら人の恋路にあった。
|
| なにしろ、あの状況で離脱した『万魔』がしおらしくなって戻ってきたのだ。
| 気にならないほうがおかしいというもの。
|
| なお、なんの収穫も得られなかった凛たちとは違い、『万魔』の単独行には皮肉にもいくつかの収穫があった。
|
|「地下の『レギオン』からも『大食らい』からも間桐の臭いはしなかった。
| 間桐臓硯は勢力の回復をできていないと見ていいだろう」
|
| 先日『万魔』に屋敷を襲撃され、家族だけではなく地下の貯蓄も、工房も破壊されていた。
| 以降の間桐屋敷には最低限の結界と設備しかない。
|
| 臓硯は『バーサーカー』の整備を、その手狭な設備で行っていた。
| 他の場所に魔力を貯蓄する余裕は無さそうだ。
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ハ:､:::::::::ヽ:::::〈::::::::ヽ:::::::::::::ﾄ､
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>::::ヾ{〈::::ヽ＞:;ﾉヾ::::/-ヾ:::}::::::「 無能な女ども、
f┴､:::::}_ヾ;/厂 _, {ﾊ{ ヽ/::〈:::::ﾉ この僕が手に入れた
ﾉ_へr个ヾ_､ ￣ 「!:::::::::( 最新情報を聞きたければ
/ -‐У l^ｰ∨ 八ｲ:::ﾉ｀ 這いつくばって足をなめろ。
八 ﾏ､: | ＼ -‐' ／ /ヾ{､
_ヽ l / ヽ _イ＿∠- ﾄ､
/ﾚハ !{ ィ=─- ｲ|:|::| ,.｡* ヘ _
∧|o〉､ /l / ///-‐ 〜 _
∧;;＼ 7!′ /// ／ヽ
/ ＼;; ＼」 /// / ',
./:| `ｰ/ /// /. ',
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ヽ-=≦ | |:|::| ／.:/ ＼: :､: ∨
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|「朝食だ。配膳を頼む」
|
| お盆に乗った五人前の朝食。
| 炊きたてご飯のお櫃、豆腐と大根葉の味噌汁、鮭の塩焼き、おひたしと漬物。
|
| 慎二の発言は黙殺。
| そも慎二自身が言ってみただけ。
|
|「『血族』は昨日のどさくさで志摩子様が帰還、フリット・アスノは屈伏した。
| それに伴う臨時再編成で、じいさんは窓際だ。コウモリのツケが回ってきた訳だが」
|「嬉しくないわね」
|
| 臓硯が忙しく働かねばならないならば隙もできるだろう。
| だが暇ではそうも行くまい。
|
|「志摩子様の復権にはキオが関わってる」
|「『血族』に協力を申し込むか？」
|「なにの？」
|
| 凛たちの目的は間桐桜の奪還と人間に戻すこと。
| 未だに居場所は不明。人間に戻す方法は『ネクロノミコン』に書いてあるという。
|
| 現在『教会』が保管しているとされる『ネクロノミコン』。
| 『十二の封印像』の悪魔の一柱『蛇身』はその破壊が目的だ。
|
| キオは『蛇身』と懇意で、彼女のために『ネクロノミコン』を手に入れたい。
| 慎二たちは『蛇身』が焼き捨てる前に中身を確認したいのだ。
|
|「『血族』の出方次第になるわね」
|
| 動きたくとも動けない。
| 待ち、耐え忍び、そして鍛える。
|
| それが彼らに必要なことだった。
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: : ∠_|::::::::::::::::|/__,,-"＼ .＼`'',< i 〉| |ｲ/ ,
｀ て_ |:::__ :::::: | _,,＿ ` -'" ﾉﾉ |',::/|ﾉ| /
. '' 丁γr､ヽ::::| .／ｿ:| ` `' ',|/彡.|／
. ヾ ゝﾒjク:::::|<_i':::ノ .、 | "
. | ＼`ー".::::| ￣ ' ./
. | ヽ ＼::::! ﾊ 〉/ 分かりやすい挑発ね。
. | |` ーゝ ヽヽ ／| ネオナチ野郎だなんて。
. | ! ヽノ^ﾞ | |ﾄ ＼＿＿,,.| |
. | |ヽ /ゝ | ヽ.＼ ヽ __./ |ヘ
. ヽヽノ L ＼ヽ ヽ / ト,ヽ＼
／ イ ハ ヽ. ＼＼/ .| ', .ﾉ
/ /::::: ｀ー､ ｀ー ､ヽ ﾍ /
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|「これって合衆国を名指しですよね。平気なんですか？」
|「平気ではないわね」
|
| やんねえ香の家で、動画を確認した不人気は嘆息した。
| 青ざめるロラン、やらない夫の宣戦布告におののいている。
|
|「つーか、これ、芝公園に人が集まっちゃったらどうすンだ？」
|「テロリスト予備軍としてやらない夫ごと皆殺しでしょう」
|
|「え」「え」
|
| 不人気は考える。
| やらない夫はたぶんそれを望まない。
|
| つまり、『一週間後に動く』と宣言することで目線を操作、その前に動く気なのだろう。
| ここまでは、慎二や『弓兵』と同じ思考。
|
|「次の狙いは品川大聖堂で、恐らく動くのは数日以内でしょうね。
| できればそれに便乗したいのだけれど」
|
|「なんでそうなるんだ？」
|「私も夢を見せたいからよ」
|
| 頭に疑問符が飛び回るやんねえ香。
| 不人気はこんな時に がいればと考え込んだ。
|
| 誰だ？ 早く思い出さなくては。
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-‐ニ二ニ＝= ＜
-::::::::::::::::::つ＿ ＼ ヾ ＼
-‐::⌒::::::::ラ::::ﾗ::::::::イ ヽ:: ＼ ヽ
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/::::::::::::!:::::::,' ／;Ｘ::::::::::::::::::ｨiﾟ;_ﾉ/ :: 人 | i ｌ |
/::::::::::::::}:::::::Y:::::／彳ﾟiｌ:}::::::::::ゝ‐ ::::::::::::|｀ .ｌ__. | | 前に仰っていた『夢の塔』の関係ですか？
y-:::::::::::::::ノ:::::::::::／ .|::ゞ´/::::::::::::::::::::::::::::::::} i i:::: .| |
／ {:::::::::::::::::::::::::::／ .|:::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::/ ,' {::)::} | |
／ i::::::::::::/´ |::::::::::r‐ｭ:::::::::::::::::::::{ .i! ﾄ .′ | .)
／ ヽ::／ }} ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::}八 .i! | | ./
／ ￣ / { ヽ::::::::::::::::::::::::::::::＜:::} | { {
／ ヽﾊヽ::::::::::::::::::＜:::::::::/ ,' { 乂
／ }｀-‐t≦::::::::r‐‐f /{ | {
／ ,' /￣H::::::::::::{ .i/ ＼ 人
／‐---‐‐ ⌒` 7 {/ｌ 〃 {::::::::::/ . ハ∧
／} / / {::::::::::／ ｀＞‐-
,′ ! / ,′ ()ﾊ:::::::/ ／ へﾆ＿
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|「色々考えたり調べたりしたのだけれど……塔の天辺にあるのは、恐らく前と同じね」
|「『ビスケットハンマー』ですか？」
|
| 地球を砂糖菓子みたいに粉々に粉砕できる、巨大なハンマー。
| この世界の集合的無意識が作り出した『滅びの形』。
|
| 発作的な怒りが滅ぼす世界。
|
|「塔が集合的無意識で作られているのならば、そのはずよ。
| そして、それを渡してはいけない相手がいるわ」
|
|「『破滅願望者』どもか？ でもアイツら……」
|「ええ、彼らは違うわ。私が恐れているのは『制御できない者』の手に渡ること」
|
| 言い方を変えると、『制御できる者』が存在すると不人気は考えている。
|
|「もしかして真紅さんは、お嬢さんならと……？」
|「そうね、ペルソナ使いならと考えているけれど。中でもやんねえ香には期待しているわ」
|
| 顔を見合わせるやんねえ香とロラン。
| 世界を壊す力を制御だなんて。
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＿＿≧::::＼ ト、ﾄ、
≦:::::::::::::::::::::::｀::::ﾍ|:)
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, ' ::::::l::l´:::::::::::::::::::｀l｀l:::::::::::＼
ヽﾙ::::|::|:ﾉ__ﾒメ､__ヽ:|::|:::::::::ト､|
ﾚ:|:（●） （● ）|::|)::::::ﾘ できねーよ。
|::|i ＿ u|::|::::::| いや、普通にムリだって。
|::|:ゝ. ノ|::|::::::|
|::|::::::i＿＿i::::::|::|:::::::しi
r､ r､ , リ-´/ﾊ:::ハﾍ-リ---<
ヽヾ 三 |:l1レﾞ/ ./ /:/ /.ﾍ ヾ .}:i
＼>ヽ .|｀ ｝ < ./ /:/ / .》 .｀, .|::}
ﾍ ソ / ﾍ{ .{:::{ {／ } |::}
/´ /.ゝ { {:::{ { ノ .|::}
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|「でも、蘇芳だって《滅ぼすもの》を制御したのでしょう？
| 二人分の『戦う力』を持っていて、《ストレンジ・カメレオン》に選ばれた貴女こそが最適だわ」
|
| だが、そのためには夢の塔を登らねばならぬ。
| そしてその為には。
|
|「だからやらない夫の夢を盗んで、夢の塔の解像度を上げなければならないわ」
|「穏やかではないですよ」
|
| たしなめられ、天使のように微笑む不人気。
|
|「穏便に接触できれば最高なのだけれど。
| 最悪の場合のために備えて……ねえ」
|
| ふと自分も、そしてやんねえ香とロランも聞き流していたことに気がついて口を押さえる。
| 今さっき、なんと言った？
|
|「誰が《滅ぼすもの》を制御したですって……？」
|「？」
|
| 近づいた。思い出しつつある。
| まな板はそのまな板そのものな胸に手を当てて決意を新たにする。
|
| 思い出せ。思い出せ。
| この先のためには、彼／彼女の助けが要る。
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/: : : : : : : : : :＞､: : : ヽ
, -': : :／: : : : : :＞'"` ''´ ヽ
￣ゞ: : ／: : : ／_ l
l: : ": : -‐: : : ; l
,l:./: : : : : : /'; - ､＿ ,. ィ 作戦は失敗したが損失はゼロ。
'-､"/,-ヽ'ヽ/ ィ_'／ .lｴ'l ドロは全部ヤーボのクソデブが被ってくれるし、
l: ヽヽ,'; ; ヽl むしろプラスかも知んねえなぁ。
,l: : ヽ'_', ､ ‐ 'l
l: : : / ヽ ― ﾆ/ l
＝ ￣ ＼ ヽ. l
;― ､ ヽ＿ `ｰ― -' -､
― _ ヽ l ` ､ //ヽ￣ヽ ＼
― _` ヽl. l ` l ､ ＼ ヽ ＼
／ , ` ` ､ l l ヽ ヽl ゝ､ l
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|「我々は『次』の準備だな」
|
| 部下が『ガンダムを名乗る二人組』にボコボコにされてる間に逃げ出した弟を、オズマは褒めこそすれ叱責しない。
| 『十字軍』は有象無象のゴロツキの集まりだ。指揮官の仕事は戦うことではなく生き残ることである。
|
| その点で、オズは暴力色の脳みそのクソ野郎どもをよくぞまとめ上げているし、
| 危険な状況でもキチンと生還する。百点満点だった。
|
| もちろん、仕事に楽しみは必要だ。
| オズが仕事の傍らでレイプや殺人に興じていてもオズマは黙認していた。
|
| オズマ自身も、ストレスが溜まったら屈強な男を見繕って誘拐し、
| 拷問と誘惑で尊厳を破壊し尽くして元の生活に戻してやるのを楽しみにしている。
|
|「扇動か、ラクな仕事だぜ」
|「……？」
|
| これから一週間、『十字軍』は息を潜めて時を待つ。
| やらない夫を集会で破滅させるために、悪い噂をまき、武器を売りまくる。
|
| 弟は、こういう仕事は嫌いだったのではなかったか？
|
|「ジョースターっつったか？ あのガキに丸投げすりゃあいいンだろ？」
|
| オズマの不審を読み取ったかのように、しかし言い訳臭さは僅かもなく。
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∨ヽ
＼ ＼
＼ ＼_ ..-‐::､
/:_: : : : : : :ヽ ジョニィ・ジョースターね。
}ﾊ ヽ: : : : : :ﾊ 一昨日、襲撃を受けたらしいけれど。
{ ｨｬ V´〉: : : !､
< ヽ: : l: :| ＼
rﾊ´_.ィ /: : :ﾄﾐ:､ ＼
, ＜ ￣｀ﾝ: : / : }/: : : :}´了ヽ ＼
/ ｀ヽ{ : ∠ニ_{: : : ﾑへ≧=ミ 、 ＼ r ､
ゝ､ 彡 >´::_}{_:: :ゝ:/´ﾙ}二ﾆ=≠=ヽ ｀ー' ノ
/ / {__} ´:: :: ｀}{´:／ｲ r ´ ﾄ ﾉ ヾてミ,:´ﾘ
_ ゝ`T!´ {:: :: :: ::.rく／::ヽ. Yヽ ､ヽ｡ｰイ r'_ﾉ 人ヾ ､
,. ´ ﾑく i! ゝ:: :ノ/乂:: :: ハｰ} X } {.ﾉ ． ´ヽ Y ヾ ､
/ x≦=} }ミ､ﾙ- ´{:: :: /´.:: :: :: :: ::} <_∠ﾆﾆﾝ_. イ ヽ / ヾﾍ
`i´ へ ｀ヽ ! :/:: :: :: :: :: ::./ 〈ィYリ { ｿｰ' `
ヽ / ＼ L ﾚ:: :: ; :: :: :: :´∨{｀Yi´ ヽ ／
` ｀ ＜ / ヽ_}:: :: ::} :: :: :: :: ::.ヽ { { >／
｀ ＜ / .|:: :: :: :: :: :: :: :: :: ﾊヽゝ彡´
, -ﾄ､_} }_:: :: :: :: :: :: ::／:: ::＼
｀¨ヽ､_ノ ::｀ヽ:: :: :: ::´ :: :: :: :: :ヽ
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|「マジかよ〜」
|「クスリ関係で嗅ぎ回っている学生らしいわ」
|「学生？」
|
| 何かとてもいい事が思いついたようだ。
| オズは目をキラキラさせて少年のように笑った。
|
| いくつになっても輝きを失わない弟が、オズマの自慢である。
|
|「じゃあ、暇な間はジョースターの護衛をしてやるよ」
|「いいわね、きっと喜ぶわ」
|
| 日本のハイスクールガールはレベルが高い。
|
|「一日二人までにしておきなさい」
|「ええ?」
|「仕方ないわね、三人までよ」
|「さっすが?、姉貴は話がわかるッ」
|
| 犯して殺す人数である。
| オズマはジョニィに命令し、笑顔でオズを送り出した。
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| しかし、なんだろうか。
| 言葉にできない不安がその胸の中で形もなく漂う。
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｀レﾍ／ヽ ／/V
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〈`ー‐ミ ､ヽ /ミ ､＜ヽ /⌒Y＾Y｀i ｀i |/ /｀OｰO‐ ´､/（二ミ ､ ./
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/ 人 ､彡' 」 /ﾟ ﾟ/ ｀ ll ´ :: ｲ´_二ｲヽ ﾉﾉ { { ムイ ヽ ） } さぁて、刹那。
'ー‐≦ ＞く{ﾉY｡ ｡/ :: :: :: ／／:: ::ヽ ﾏﾑ" /⌒＾Y ヽヽ > ´
`ｰ ´ ノ｀T:: :: :: ／／:: :: :: ::∧ ﾏﾑ ＼__＞ ´ リベンジマッチと行こうじゃねえか。
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| オズは……いや、人間の脳を食ってようやく自我を取り戻した怪物。
| 『大食らい』あるいは『頭欠』だったものは舌なめずりした。
|
| 相棒を殺して『賢者の石』を見に宿した悪魔殺し。
| 『法務官・隠れしウラヴラスク』を所持する夢世界の黒幕。
|
| 最強の三枚のDISKの一枚『アンダーワールド』を戴いたニャルラトホテプの下僕。
| できる夫や『母』と共謀し『品川大聖堂大天使召喚』を歪めた張本人。
|
| ペルソナ使いと同調する《滅ぼすもの》を暴走させた悪党。
| 十年前のバス事故の仕掛け人。
|
| そして、品川大聖堂で不人気たちと戦い、死んだはずの男。
|
| アリー・アル・サーシェス。
|
| それがオズの振りをする存在の、元々の名前だった。
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☆ 次回予告！
もう少しだけ。
もう少しだけ。
もう少しだけでいいから。
それは、純粋でありながらどこまでも傲慢な願い。
強過ぎるがゆえの渇望。
同時に、強過ぎる者への歪んだ妬み。
戦争を望んだ男が、舞台を下りる時が来た。
もはやその名は地に落ちた。
であるなら。
いっそ。
次回、最終幕四十八話『もう少しマシな戦争』
果てに見るのは破滅か死か。 .． ´￣￣￣｀ヽ
／ , ´￣｀ゝ､ ／
｀レﾍ／ヽ ／/V
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-=ﾆ二＞ ´ヽてン.ﾍ ` _, ;ﾝT＞ ´ ＞＝＝ ヽ , =ミ ､/ | /
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/ 人 ､彡' 」 /ﾟ ﾟ/ ｀ ll ´ :: ｲ´_二ｲヽ ﾉﾉ { { ムイ ヽ ） } さぁて、刹那。
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`ｰ ´ ノ｀T:: :: :: ／／:: :: :: ::∧ ﾏﾑ ＼__＞ ´ リベンジマッチと行こうじゃねえか。
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| オズは……いや、人間の脳を食ってようやく自我を取り戻した怪物。
| 『大食らい』あるいは『頭欠』だったものは舌なめずりした。
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| 相棒を殺して『賢者の石』を見に宿した悪魔殺し。
| 『法務官・隠れしウラヴラスク』を所持する夢世界の黒幕。
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| 最強の三枚のDISKの一枚『アンダーワールド』を戴いたニャルラトホテプの下僕。
| できる夫や『母』と共謀し『品川大聖堂大天使召喚』を歪めた張本人。
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| ペルソナ使いと同調する《滅ぼすもの》を暴走させた悪党。
| 十年前のバス事故の仕掛け人。
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| そして、品川大聖堂で不人気たちと戦い、死んだはずの男。
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| アリー・アル・サーシェス。
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| それがオズの振りをする存在の、元々の名前だった。
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社会戦能力持つとやっぱ面倒だなコイツ
乙
もう少しだけっていうから……ｗ＜最後
-==-
--==ﾆﾆﾆﾆﾆﾆュ、
ィﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ
jﾆ= ´￣￣￣￣￣￣｀マ、
／ ヽ
／ Vー、
, ィ V ヽ
／ / V ノ
( / ＿＿＿＿ V
ゝ/--―＝＝ﾆﾆﾆﾆ――――ﾆﾆﾆﾆﾆ＝＝ヾ
／´￣￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
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「｀ヽ: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : : : : :
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| あれだけのことをした。
|
| つまり、モーリアンビル襲撃のドサクサに紛れてスカイツリーを占拠、
| 民間人を殺しまくってテロリストとして名乗りを上げようとした。
|
| という計画を呂布の狂人な直感で防がれ、見送りに行ったせいで首魁が露呈したにも関わらず。
| ヤーボ大佐は階級章も取り上げられず、見張りもなく、士官用の私室でアイスクリームを抱え込んでいた。
|
| パーティサイズの箱に直で特大スプーンを突っ込んで食べる。
| 口の周りはアイスでベタベタ。ふと、ドアがノックされる。
|
|「…………大佐、お呼びですか」
|「よく来たなジャジャマル、入れ」
|
| 恐る恐るドアを開けるボサボサ頭のアメリカン忍者。
| アドリームで拾われた孤児、最後の『野良犬』。
|
| ヤーボが手塩にかけた特殊部隊は、ジャギ班との暗闘の末に全員死んだ。
| いや、ここに一人残る通信兵ジャジャマルと、行方不明のティムを除いて。
|
|「私の望む戦争が何なのか、お前は説明できるか？」
|「『もう少しマシな戦争』ですか？」
|
| いつになく穏やかなヤーボに、ジャジャマルは恐る恐る答える。
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,: : : ´￣￣´
／: : : : : ; ´
／: : : : : :／
ー- /: : : : : :／ -―― ミ
＞ 、__{: : : : : :/´: : : : : : : ー: : ミ: 、
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼ : ＼
/; :-― ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼: :＼
／: : : : ／: : : ／⌒ヽ: : : : : :「ヽ: : : : ヾ、: : : :ヽ : ）
／: ／ : : : / ＼: : : :{ ＼: : : : :ヾ＼ : :∨ 俺は……その……。
. （ /: : ; イ/ ＼: :_」 「三 : : : ∨∧ヾ: 実はよくわかって無いんですが。
/: : / //{ ｀Π ´￣了 「 }三」ーュ:Y、ヾry、
/: : / //ハ じ 心′｝ニ≠、三ニ ｀Yヽ
!: :/ {/人八‐======＝ニス/ マ 「 ヾ三ニ、 ｀Y)
{:/ V ＞＜三三＞ァ´ヽ ｀~ヽ V三７ァソ
＼ ＞´ ＞≠’ ノ ー-- ゝへ７⌒´
ァ￣ ｒ ´ イ三ニ=-＿-=ニ三T
⌒了/ .＜三三＞ ´ ｀ヾ三ニ
＜ ＞＝ ´ ＼]
, ＜＞´
, ＜＞´
＜_／
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| そう、ジャジャマルには分からない。
| 本当は戦争なんてしたくない。戦いなんてまっぴら御免。
|
| 誰かを殺すのも、誰かが死ぬのも見たくない。
|
|「ろくな訓練も受けてないガキや、クスリ漬けのバカや
| 金がほしいだけの貧民を騙して並べて死なせるだけなのは……」
|
|「中々に辛辣だな。だが私もそれは同意できる」
|
| ヤーボは空になったアイスの箱を投げ捨てる。豪華な絨毯に溶けたアイスのシミがついた。
|
|「訓練された兵士が、技術の粋と命と誇りを競い合う。
| かつてケネディや特殊部隊創立者アーロン・バンクスが描いた理想。
|
| それが私の求めていた戦い。『もう少しマシな戦争』。
| それに気付いたのは先程だがな」
|
| 冷凍庫から新しいアイスの箱を二つ取り出し、片方を差し出す。
| ジャジャマルは辞退した。カロリーが気になる。
|
|「ストロベリーは嫌いか？ バニラもあるぞ」
|
| 結局両方を開けて交互に頬張るヤーボ。
| 口の周りはカラフルなアイスまみれ。
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＿＿_
ﾉﾆﾆﾆﾆ＞ー-- .
,ィﾆｧ'´ i { ヽ 夢から醒めた気分だ。
ｨﾆ／ 川 ー-､ ＼ 憑物が落ちたでもいい。
ｊ/ Yヽ
/ ／￣ ´￣｀ V 例の『品川大聖堂の夢』以降、私は目的を見失っていた。
_/ ´￣｀ ､ , j!
( } ､＿ ＿ ィ 。・ ＿ ｣{ …………もう、気付いても遅いがな。
{! ﾟ ・ ￣￣__. . -:-:≦: : : : :｀ヽ
/＞ー＝≦ニニア: :＜: : : : : : :ヽ: : : :＼
三､＿ ｨ{:/: : : :ヽ: : :＼ア:／o: : : : : : : : : : :＼: : : ヽ
ﾏ三三三!: : : : : : :￣｀:Y´: : : : : : ＿＿:ィ: : : : :V: : : :>
ｒ⌒ヽ三ｰｊ: : : : : : : : : : : ヽ: : : : : ヽ: : : : : V: : : : Y´: : :{
ﾑ 〈: : : ー:-:-:-:-:-}:-:-:-:-: : }: : : : : 〉: : : : V´￣ヽ
ﾑ 7: : : : : : : : : : : j: : : : : : : : :￣:￣: : : : : :ﾍ '.
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|「大佐……」
|「勝ち負けではない、善悪も要らん。
| ただ、ただ強者と競い合い殺し合えれば良かったのだ。
|
| それに気付くのが遅すぎた。
| ああ……クソっ」
|
| 青筋を浮かべ、箱を一つ握りつぶすヤーボ。
| すぐにいつものポヤポヤした顔になり、指についたアイスを舐めとる。
|
|「せっかくだから呂布のジジイともっと愉しめば良かったのだ。
| 作戦なんぞに気を取られていないで、殺されても構わんから……だが」
|
| ヤーボは、ため息をついた。
| そう、後悔先に立たず。
|
|「もう遅い、リベンジもできん。備府やらない夫の動画は見たな？」
|「え、あ、はい」
|
|「奴の言う生贄……いや、『そいつら』は我々、合衆国特殊部隊だ。
| あとは日本の大臣一人と議員数名。
|
| それが品川大聖堂とモーリアンビルに潜んでいた『本当のテロリスト』を
| 独断と火力をもって殺そうとした連中と、圧力をかけられ逆らえなかった奴らだ」
|
| そして、歯止めの効かなくなった暴力装置はやらない夫の殺害に向かう。
| それがヤーボ大差の末路となるのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
,,ｪﾆﾆﾆﾆﾆﾆｭ､
rﾆﾆﾆﾆア フｰ＝ﾆｭ､
ｒーｙ´} j/´￣ /ｲノ ヽ ジャジャマル、
L_ヽ ＼. / ― ― ｒ⌒) 本日を持って『野良犬』通信兵の任を解く。
｀ヽ Yヘ__ / ｀ ´ _ ｲ{ ついでに除隊だ。
＼/: : : : ヽ{ ￣￣ ハ
ｊ!: : : : : ｀ヾ＝ー――――＝＝≦⌒ヽ
Ｌ_: :|: : : : ＼ マ＝ｧ'´:_r≦￣: : : r: : : : ＼_
￣7: : ┐: :｀: :ー≠ｒ: : :＞ー‐┴―┐: : :}
/ : : /: : : /: : : ＞ ´ ﾆﾆﾆﾆァ レ⌒ヽ
/: : -' : : :/: : : K＿ﾆﾆﾆﾆﾆァ´ ノ 〉
; : : : : : ┬: : : :∨ ∧ rー´ ／
; : : : : -:┬:=: : : :∨＿＿＿＿ィ ｒ‐’
{: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :^ イ
Ｌ:_:_:_:_:_:/ヽ: : : _:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_｣
V: : : :＿}＿L: : : : : : : : :/:_:_:_:_:_/
V: : : : : ヾ: {: : : : : : : : :{:_:_:_:_:_/
V: : : : : : :７￣￣ヽ: : : : : : : /
V: : : : : / ヽ : : : : /
マﾆﾆﾆ{ }ﾆﾆﾆ７
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└――' └――’
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|「え」
|「私に隠れてコソコソやっているな」
|「あ、いや、それは……」
|「国籍変更と退職金と年金は申請してある、そいつらの所へ行け」
|
| ジャジャマルは青ざめた。
| 震える手をヤーボに伸ばす。
|
|「俺は、俺は……嫌です大佐！ ティムはどうするんですか！」
|「ティムは……残念だったよ。
| グリーンベレーでいちばん大事なことはな、生きることだ。サバイバルだ」
|
| 息子のような弟子への想いは断ち切って。
| もう一つの小さな手を、ヤーボが握る。娘のような、弟子。
|
|「生き残れ、最後で最強の『野良犬』。
| 一番の役立たずに見えたお前が、最後まで生き残った。
|
| お前が死なない限り『野良犬』は滅びない。女に戻れ、サバイバルしろ。この東京を」
|
| ジャジャマルは食い下がれなかった。
| 静かに涙をボロボロこぼした。
|
| ヤーボはアイスを机に置いて、優しく少女を抱きしめた。
| 二人の涙が乾くまで。
|
| アイスが溶けるのも構わずに。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ヽ
,/ ／ ヽ ヽ
/ ./ ／ | ヽ ヽ
// ./ / l ヽ i
. i / /./ ／i .ｌ i l
| i i / ／ / /l ｌ |
. | | l/ ／ / / |.| | |
| | / ー- ､／ / ./ l l .| l
ｌ .! i _ ／_`ヽ /./ l .|i i | |i
. i |l .| ヽ戈ゥ,ミ ./／ '''ーl､|.i. | ! .|l
i l.l l / ー―'／ '`ヽ i iヾ､ .| .| | l
. li .i |/ﾊ ／ i ´弋ｚ､ヽ＼.| | |l i
| i ﾊ ./ ＼ﾆヾヽl l l l ｌ では、素体の身元は確認していなかったのですね
ヽ ﾊ. ヾ| ` / | |
>i ＼ ､ | / .| |
/´ | ＼ ` ー-- | ./ | |
/ | i |.＼ ,, - | /ヽ .| .|
. i .| .| | //|` -､'' l / ヽヽ、 i i
l | | |// | i´|＿,,,,-l / / ヽ､ヽ i i
| | | |l .i .| ／!/ ｌ / / ＞-､ i i
| l li | .| |.／i i | l | /／ ／ ` ､ i i
| .|| i | i|/ i i | l .| /´ ／
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|「ああ、ギルバートが病院を経営していただろう？
| 彼からの提供である以上、それ以上詳しく聞くのは憚られてね」
|
| 合衆国軍駐屯地にある別の部屋では、パプテマス・シロッコと鷹野三四がモーリアンビルの件で話をしていた。
| より正確には、龍田と石田の今後について。
|
| ギルバート・デュランダルは『結社』の幹部であったが、実は『教会』のスパイだった男。
| シロッコの盟友であり、死後その研究は引き継がれていた。
|
| デュランダルの経営していた『新宿衛生病院』はいわく多い。
| そして、リタイアした兵士を『カトルカール』に提供したように、脳死体を提供してきただけだというのがシロッコの返答である。
|
| 身元については盟友を信頼していた。
| わざわざ調べて不和を招く必要はないだろうという言葉は真摯に響いた。
|
|（パプテマス様は本当に口が上手い）
|
| 三四は、同席している三人目の人物を横目で見た。
|
|（しかし、女以外にはどう響くのかしら？）
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}ヽ ／}
.; ∧ ／ /
ｊ ∧__ ﾄ､_,ィ ,ｨ ／ /
, '´ ￣￣ ＞ ､{ .|| ｉY} { ／ /
.′ ヽ┴ }!/ / /
､ ｀ｉ __ / /
Y´ ｀ヽ、 / . /
___ ト､ ,ｨ===- ､＼ / /
'´ﾆﾆ厶 ハ `くﾆ○ﾆﾆﾆﾆ､} / / 『結社』撃滅作戦デハ、カナリノ犠牲者ガ出マシタ。
ﾆﾆﾆﾆﾆﾑ ／ ∨ ∧-=ﾆﾆﾆﾆ .ｉ／￣./ / 生存シテイル検体ノ確認ヲオ願イイタシマス。
ﾆ ／￣ﾏム ／ ∨ ∧ ｀ ---┘、 / / `
／ }ﾆﾑ、_ ／ ∨ ∧ .`./ / }
／_／ ∨ ∧ ／￣/ / /
.. ／￣ ∨ ∧ { {:::::/ /、／
..／ ∨ ∧ ､`/ / }
{ ∨ ∧ ./ / }
∨ .∨ / ./ ｉ
. ∨ ∨. / /
＞ ､＼ / / /
＞ 、__ -‐ ´ ￣￣￣￣￣ ./ /￣ ／
＞、＿＿＿＿＿＿＿＿./ ∧‐／
＼ ./ /ニ {
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|「確認させよう。身元が分かり次第そちらに返還することも約束する。
| ランブラー・シャンブラー……いや、龍田だったか？
|
| その彼女の処遇はお任せしていいのかな？」
|「はい」
|
| シロッコの言葉は人間の魂を揺さぶり惑わす。
| 『1/fゆらぎ』と呼ばれる波長が発生しているのだ。そしてシロッコのそれは特に女性に効く。
|
| かく言う三四も、シロッコを利用しようと近付いたものの既に籠絡されていた。
| 内通者兼協力者として石田と龍田を提供したのはそも、他でもない三四である。
|
| 『人が人のままで神を殺す』三四の計画は、『カトルカール』という形で試行錯誤中。
| 今回の会合も茶番であった。
|
|（しかし……『1/fゆらぎ』ね）
|
| 『血族』はそれをある種の異能、遺伝しない超能力タイプの異能であると認識していた。
| 少なくとも、シロッコに籠絡された人間は、より強力な『ゆらぎ』を前にすると正気に戻る。
|
| そう、志摩子や最近のやる夫。動画におけるやらない夫のような。
| 三四は目的と合致するから未だにシロッコに協力しているが……他の女たちはどう思っているのだろうか。
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, --──‐ ､
／＼ ヽ jj 川 ｀ヽ、
／ __ ヽ」」从ﾉﾉ＿ ＼
／ ／ , --────ニﾆヽ }
/ /／ ｀ヽV
（ l/ ヽ
/ r'⌒ヾ川/"⌒ヽ !
/ / 〃{{ ヽ | ただ、残念ながら
| i / ! ヽ | 切除した生体部位は残っていない。
| | | r┤ニﾆ｡､、! / _,,｡ニﾆ ﾚ1 |
| | | {ヽ! ｀￣ | ´ ￣ lJj } そもそも壊死した部分を取り外して
| | | ヾ」 j rｲ j 機械を繋いだのだからね。
ヽ! l ヽ _`.. ｨ / // /
＼l ﾄ､ `ニ´ /ﾄ､//／
`ー-ｲ} ＼ ／/ﾉ〒´
ﾄ､ヽ__ ｀￣´ , '´ |
＿＿＿＿＿.. --一1| `ｰ､｀ヽ ／ ｎ |⌒` ー--------く｀ヾト､_
, イ〈7厶__ 小 { ヽ､| | レｲ /|｝ ___＞⊥L}＼
／ / /--- ､｀丶､ ヽ ＼コ | |ﾌﾉ ／/ , '"´_ --一ﾍ ヽ ヽ
/ / / ｀丶､＼ ＼___〕 | |___／ ／, '"´ ヽ | !
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| つまり、龍田の鼻から上と両腕はもう元に戻らない。
| 一部破損した脳に機械を繋いでいるため、ブラックジャックでも連れてこなければ頭部の換装は不可能だろう。
|
|「龍田の仕様書と改造技術を提供してくださいます？」
|「冗談はよしたまえ、極秘資料だぞ」
|
| もちろん悪い冗談だ。
| 三四は試作から現行、今後の改造計画までの資料をもらっている。
|
|「『生マレツキ四肢ノナイ者』ヲ探シテイルト聞キマシタガ」
|「そんな都合のいい人物が簡単に見つかるとは思えんがね」
|「私ガソウデス」
|
| 心から驚くシロッコ。問いかけるように三四とロビンを見比べる。
| めったに見ることのできない動揺したシロッコを存分に楽しんだ後、三四は口を開いた。
|
|「ロビンは日本の神『ヒルコ』の呪いめいた祝福を受けて生まれて来ました。
| 生まれつき全身の骨が無く、機械の外骨格を動かしています」
|
| 何故前もって教えなかった？ そう問いかけるシロッコの視線を微笑みでかわす。
| だって教えたらその表情が拝めなかったでしょう？
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／ . . : : : : : :＞---─--- ＜ミ_ }
/ . : : : : _＞''¨´＜ ￣￣￣ ¨¨'''一-≧ ノ
/: : : : ＞''¨＜´: : : : . ヽ } ｀ヽ
{: : : /彡´: : : : : : : : : : : : : : ｀＞. ､ } ﾉ .,ﾍ
ー/: : : : : : : : : : : : ア´￣ /: : :辷＿ノイ¨¨ヽ/ .',
/: : : : : : : : : : :.／ /: :／ ', |
/: : : : : : : : : :.／ l :/ l |
/: : : : : : : : : イ |:l ' ',
/: : : : : :ｨ⌒ヽ:.:.7 ﾘ {. ',
/: : : : : : | {ミ:. ';:/ ー─-､ __,;イ从 i
./: : : : : : : { イ ﾘ ｀ヽ弋テ≧ｰ-ｲ rそえ ｲ | 私の研究に協力していただけると？
/: : : : : : : : :ヽ. Y / l
,ｲ: : : : : : : : : : :弋__ | / j
.|: : : : : : : : : : : : :/ | |. / /
.|: : : : : : : : : : : :.八.∧ ' ＞' / /
从: : : : : : : : : : 人 ヽ,ｨヽ ー──一ｧ ∠ /
_X: : : : : : : : : : : : ／ミヽ＼ ｀ー─一 ./ー彡 /
＜´ 弋: : : : : : : ＞'´ ヾヽ＼ ¨¨ /辷ｰ彡 /
｀ー一く ＼. ＿＿__人辷ﾆ-＜
ヽ i|i {
＼ i|i. ﾉ
＞ ､ i|i ／
｀¨＞小＜
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|「技術ト情報ノ提供ヲ約束シテイタダケルノナラ」
|「安いものだ」
|
| 興奮を隠しきれずにシロッコは頷いた。
| どうせ三四に渡してある資料を送り直すだけである。
|
| ロビンと握手を交わしながら、内心でほくそ笑む。
| こちらには利益ばかり、逆に『血族』は何も得られない。
|
| 奪われたランブラー・シャンブラーは、今日にでも死ぬだろう。
| 『血族』が、心の底まではシロッコに心酔しない奇妙な鷹野三四が得るものは何もない。
|
| 生体の死とともに自壊する機械システムに落胆すればよいのだ。
|
| だがシロッコは最高の素体を得た。
| レイ・ザ・バレルとこのロビンで、シロッコは最強の軍隊を作り上げよう。
|
| そう、備府やらない夫の公開処刑日となる、日曜日までの一週間で！
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| シロッコは天才的科学者で、メカニックで、外科医である。
| しかし体は一つしかないので、諦めて多くの物事は凡人の助手どもに任せている。
|
| もちろんシロッコ本人がやらねばならぬ作業も多い。
| ロビンの為の新しいシステム構築と、それを組み込んだ機体の設計など最たるものだ。
|
| シロッコは現在抱えていた案件を助手に投げるか、あるいはすぐに終わらせる必要があった。
| 『ウミヘビ』を改良した多機能義手。
|
| 魔力を収束したビーム兵器。
| 『教会』日本支部から接収した『聖遺物』……。
|
| いや、最後のものはシロッコ自身でやらねばなるまい。
|
| シロッコは作業台に横たわる少年を一瞥した。
| 美しく、人の目を惹き付ける少年だった。
|
| 左目と左腕を喪失しても、その美しさが損なわれていない。
|
| ティム・ローレンス。
|
| ヤーボ大佐の一番弟子。
| ジャギ達との戦いで生死不明となった少年兵。
|
| 恐ろしく強靭な肉体と、戦いの才能、ヤーボ大佐直伝の技術。
| 次世代サイボーグ兵士の先駆けとして強力なの個体に仕立て上げようとしていたが……もう興味はない。
|
|「立て」
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＿
´￣ ミ 、
/ ヽ
/ j」=-―― ７⌒ヾ ヽ Y⌒
⌒>' / ｒｪｪ=＝＝{{ ｨﾄ、! ﾄ､
/ {!__´...-――--≧彡 /! :. ＼
人´ ｀ ｀ミﾆｊ{ i あうーあ。
/ ﾑ ｒ‐ ､ ミｲ! |
/ ｊ ト ､ ｀￣ｊ{ ／ｊ |! |
|! | }≧ｒーｧｭィ// |! i
/ i! ! 7｀ー≠⌒ヽ! j! 八
/ / ! ! / }!川 ヽ
.: / ﾊ ｊ!/ i i ﾘ {
ｊ / ハ!/ }! i八 |
川 / ＶＬ /! | ヽ} i!
/ ﾘ八 / {/)｢´ / | j! { i
/ } ﾊ / ヾ{ ｲ ﾄイ{､ ! ｛
/{! 人 ｀ヽ ｊ ﾏﾆリ ﾊ 川
/:_/｀ー＝-- 彡 }ﾆト､ ヽ{
/: /: : : : : : : : :ヾﾑ }ﾆ{ ﾘ
/: : : : : :_L: : : : : : ﾑ }ﾆ{´
/: : : : イ/⌒}ﾆヽ: : : ﾑ |ﾆﾑ
〈: : : : : :/ ﾆﾆ: : : : : ﾑｊﾆﾆミヽ.
｀T＝ｒ′ ﾆﾆ: : : : ィ／ヾ}〉｀ｿ
| | ﾆﾆ｀T イ
ﾆﾆ ﾆﾆ ﾄ､ ｣
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| 命令を聞き、立ち上がるティム。
| その直後、ドアがノックされる。約束の時間より少し早いがまあよかろう。
|
|「入りたまえ」
|「ヤーボ大佐だ……ティム！！？」
|
| 両開きのドアを両方開けないと入れない巨体が、驚愕に震える。
| 作業台横に立ち、半開きの口からヨダレをボタボタ垂らす虚ろな少年に駆け寄るか駆け寄るまいか逡巡。
|
|「肉体は可能な限り補修したが、脳は不可能だった。
| 見ての通り自我はない。
|
| 『異端審問官』が、踏み込んだセックスカルトで御神体扱いされているのを回収したのが三日前だ。
| 君は作戦で忙しかったんじゃあないかな？」
|
| 聞きたいこと、言いたいことをすべて先回りされ、ヤーボ大佐は青筋を浮かべて黙り込む。
|
|「……なぜ機械と繋いだ？」
|「もったいないからだ。彼のように優秀な戦士を再利用できる機会があるなら、逃す手はあるまい？」
|
|「貴様」
|「やめておけ」
|
| ティムをモノ扱いされ、怒気を漲らせて掴みかかろうとしたヤーボ。
| その視線が部屋の隅、フライドチキンのバーレルを抱え込む男に向いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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-==-
--==ﾆﾆﾆﾆﾆﾆュ、
ィﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ
jﾆ= ´￣￣￣￣￣￣｀マ、
／ ヽ
／ Vー、
, ィ V ヽ ヤザンか……。
／ / V ノ 上司は選んだほうがいいぞ。
( / ＿＿＿＿ V
ゝ/--―＝＝ﾆﾆﾆﾆ――――ﾆﾆﾆﾆﾆ＝＝ヾ
／´￣￣: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、
／: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :、: : : : :
/: : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : '､: : : : : :
/: : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :i: : : : : :
「｀ヽ: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : : : : :
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|「正当な評価をしてくれるなら外道でも構わんかな」
|「私はお前のそういう正直な評価が嫌いではないよ」
|
| モーリアンビル攻防の翌日である。
| ヤザンはヴィヴィアンから受けた傷が治りきっていない。
|
| 片腕片足はギプスが巻かれていた。
| それでも、生半な相手ではない。
|
| ここで戦ったら二対一……いや。
| ティムも含めたら三対一か。
|
| まあいいや、ブッ殺す。
|
| ヤーボは決断と同時にシロッコへ踏み込んだ。
| 人間に命中すれば粉微塵になる右ストレート。単純なパワーではヤザンにも劣らない。
|
| だが、圧倒的質量。そして巨大に似合わぬ敏捷さ。
| このヤーボ。殴り合いならヤザンを上回る。
|
|「チッ」
|
| チキンの骨を噛み砕きながら飛びかかるヤザン、だが間に合わない。
| ヤーボの拳はシロッコの頭部を卵みたいにグチャグチャに……。
|
|「あー」
|
| それまでの緩慢な動きから一転、ティムロボが割り込んだ。
| ヤーボの一撃を受けた多機能義手がひび割れる。
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ー-- ＿／￣｀ヽ
´￣ ミ
／ 、
／ ＼ ヽ
＼ ＼
´7⌒ヽ、 ＼ 、
／ {! ＼ ﾑ ＼
／ ｨ八 ＿ 彡｀ー ﾑ ＼
´ ,ｨ／´ ゝー== ≦ ￣ﾑ
,ｨ／ -― ＿＿ ﾑ
ｨ／ ´ ´￣￣ ﾑ ', うー。
／, ィ ´ :. ',
／／ ＿＿ :. ',
∠ｨﾑ / 、ｒ｀ ﾑ ',
Vﾑ ￣ ヽ） o イム ',
V ＼ ＼、 ＿_ｒ’ハ ﾑ
V ≧ｒ。 ＿＿ ）}- 、=-――Vﾑ
V ヽ マア へ/ Vﾑ
V ＼ ァ 「_ィ/ Vﾑ
V ( V´ / Vﾑ
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| 義眼に魔力が集中、針の細さまで収束した魔力ビームが発射。
| 水鉄砲と同じ原理、魔力流のカッターがヤーボの胴体を両断！
|
|「痛ってえ」
|
| しない！ 軍服と皮膚を切り裂いて血が飛沫いたが、脂肪で止まった。
| ビームが脂肪を貫通できない！
|
| しかし、ヤーボの背後の壁を、廊下を、運悪く通った合衆国兵を、その向こうの窓ガラスを、中庭を通って壁を、
| 額に入った大統領の写真を、並べられた勲章をビームは両断。甚大な被害。
|
|「バカヤロー！ 室内でビーム打たせんな！」
|
| 目を狙って殴りかかるヤザン。普段の彼はそんな事をしない。
| 命中すれば相手は吹き飛ぶ。狙いなど必要ないのだ。相手がヤーボ大佐でなければ。
|
| 普通の相手なら頭部は吹き飛び麻婆豆腐めいた飛散物が壁を彩る。
| だがヤーボ大佐には青タン止まり。コマのように回転する巨体。ボーリング玉みたいな大きさの裏拳を受けたギプスが爆散。
|
| 骨折した部位を殴られてさすがのヤザンも悶絶する。
|
|「待て、私は命じていない！」
|「なに？」「ンだとッ！？」
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⌒ヽ ´ ミ 、＿
ｙ´ ＿ ヽ ｀
／ ｙ ⌒ヾ´T ＼
/ ／ {ﾄ __ﾉｊ} } ヽ ’
／⌒／ ／ ＞≦=ﾍ i! たいしゃ?。
ｆ ´ ／ :. i! .
⌒ｊ人イ ｀ ＼{ :.
| ¨ヽ ｒ＿ っ } ﾄ､
i }!＼ | { ,,ｨ { V
≧= ! ｢⌒「彡} i i! V､
i! V{ } ヽ i i! j! i | ヾ≧ｭ／
|! ! V{ 八 { | ﾄ ﾊ {､ { V//ﾍ
ﾊ j! ﾊ V{ } ） | ! j i! {ﾊ { ヾ//ﾍ=┐
川介 { ', V ｊ / ! |/ | {ハ ハ i }////Y＿
ﾘ |ﾄ iハ V {（ | ! ヽ{ ヽ川 { {/=ｭ//Y´ ｒ ー､
| ', ! ヽ V ヽ | L_」 ﾘ ヾ/リ/ﾍ （⌒ ヽ
| ',{ ＼{じ´ i ト=彡{ 彡ヾ０´ ゝ ﾉ
ｊ ﾟ o i | イｒｧ///{ ＿ イ ｲ/人 ／⌒ヽ＿彡’
o ｣ { じ///{! {!//と>
ｒ ´ i ! )//ｲ ｨ ｀ヾ トｒｒミ{ｭ､
＞ ⌒＼ } ト Ｖ//＿{{ }/L_ｲoニ､
ィニニｙ ヘ}／}! ヽ_ﾉ/人⌒ヽ-=ﾆﾆﾑ_」⌒{トニニニ､
ニニr´ ﾉ ｒィ､///] ﾏニニﾑ {! ｊトニニ､
:. ;. ヾ≧｀¨ }/ノ ニ＝－i ヾノ ｀Yニﾆ
ニニ ｀ミ=≠ :. :. ニニ
ニニ :. :. ニニ
: :. ﾏニニﾑ ニニ
ニニ ﾏニニﾑ ニニ
}ニニ ﾉニニニ ニニニニー
´＝ー┘ └―――’ ｀ー＝ニニニニ
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| ティムの貫手でヤーボの脇腹、脂肪に突き刺さる。
| 信じられないものを見る顔のシロッコ。
|
|「先程までは廃人だったのだぞ！」
|「うあ〜」
|
| 腹に手が刺さったまま、動きを止めるヤーボ。
| 『もう少しマシな戦争』への未練は断ち切った。
|
| だが、だが。
| もしも彼が……ティムが生きていてくれるのであれば。
|
|「ティム……私がわかるか？」
|「あー」
|
| ダメっぽい返事。ひび割れた床に唾液が垂れる。
|
|「ヤーボ、仮説があるのだが」
|「…………聞かせてもらおう」
|
| ヤザンが肩をすくめ、床に落ちたチキンを拾って齧り付く。
|
|「彼は殺気に反応したのでは？ 戦場でなら、強敵を前にすれば目覚める可能性がある」
|「…………」
|
| へろへろとしゃがみ込むティム。
| 腹に刺さったままの手を抜くと、液体みたいに床に寝転んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,,ｪﾆﾆﾆﾆﾆﾆｭ､
rﾆﾆﾆﾆア フｰ＝ﾆｭ､
ｒーｙ´} j/´￣ /ｲノ ヽ
L_ヽ ＼. {｀/ ― ― Y ) 暴れたことを謝罪しよう。
｀ヽ Yヘ__ / ｀ ´ V{ 残された時間は少ないが、私は何をすればいい？
＼/: : : : ヽ{ ￣￣￣ ハ
ｊ!: : : : : ｀ヾ＝ー――――＝＝≦⌒ヽ
Ｌ_: :|: : : : ＼ マ＝ｧ'´:_r≦￣: : : r: : : : ＼_
￣7: : ┐: :｀: :ー≠ｒ: : :＞ー‐┴―┐: : :}
/ : : /: : : /: : : ＞ ´ ﾆﾆﾆﾆァ レ⌒ヽ
/: : -' : : :/: : : K＿ﾆﾆﾆﾆﾆァ´ ノ 〉
; : : : : : ┬: : : :∨ ∧ rー´ ／
; : : : : -:┬:=: : : :∨＿＿＿＿ィ ｒ‐’
{: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :^ イ
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|「話が早いな」
|
| 内心でほくそ笑むシロッコ。
| 驚かされる事ばかりなのは業腹だが、思わぬ収穫が続く。
|
| 運命という風が、私に向いているのだ。
|
|「君も改造を受け、ティムと同調したまえ。表向きの君はどうせ死ぬことになる。
| だが生きて、ティムと並んで戦場を駆けるがいい。戦場で生き抜く内に、ティムの脳は目覚めていく」
|
| ヤーボはため息を付き、被っていたベレー帽を脱いだ。
|
|「『バトルフィールドでのサバイバル』か。私とティムらしい末路だな……」
|
| こうして、シロッコは恐るべき改造人間を配下にした。
| 『聖遺物』と、合衆国軍から接収した戦術核とを装備した聖柱。
|
| その名を核天使『リトルボーイ』と『ファットマン』。
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☆ 次回予告！
迫る終局、破滅の確信。
秒読み数える己が末路。
生まれてこの方私を滅し。
奉公してきたこの体。
夢や望みは抱くことなく。
大事なものも何処にもなく。
死して屍拾う者なし。
そのはずだった。
次回、最終幕四十九話『ロストスキル』
果てに見るのは破滅か死か。
シロッコの思惑通りにはいくまいが、じゃあどうなるやら
しかし、シロッコ面倒な相手さんね
ああ、ちびとふとっちょ・・・
rへ
ｒ7´ ｀ヽ､-,. ─-､ ,.へ_､
ｒ7 ｧ'"＞'-─｀-＜ ヽ!_
r7' >'´::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ. ﾊ へ
,くi ヽ/:::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Y i_{ ／／〉
ヽ.／!/::/::::::/:::/:::::i:::::ﾊ:::i:::::::;::',」 ／／〉〈〉 金返せオラーッ！
/:7 ,':::i::::::/:ﾊ,ゝ､ﾊ/ !:ハ::::i::iヽ. ／／〈〉〈〉
くｋ__!::::::L:ﾊ/〈 !_ｿ｀ ｫ'r7!/!」 ! ／／ 〈〉 〈〉
|::ﾊ:::::::}__.| " _____└' i__{ヽ､! _,,. -/⌒ヽ／／ 〈〉 〈〉
ﾉ:::!ﾊﾍ::|::::iヽ､ ( ｀i ,.ｲ:::|,.-'"´ l l i しゝ' 〈〉 〈〉
/:::::ﾊ::::!::ﾊ::::!;:イ＞ｰｒ＜ﾊ:|::/! | lY__ノ´
i:::/:::::!::::::rｨ';:|´ |／､ /」|:/ !- ヽヽゝ'i
ﾚ'i::::::!;:へ､ヽ!／ムヽ､_/_i ｨ,ﾍ､ Y /
ヽ/⌒i､._ Y:::::/ i」::::::::::!-/ﾚ' ｀ヽ. i/
! iﾉi 7:::く__ﾊ|:::::::::::Yiﾊ| ｀'ー-'
/iヽ-ｲ| .i::::::::::ﾊ:::::::::::::ﾊ!
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|「貸してないんですけどーっ！？」
|
| 午後六時、仕事を終えて帰宅の途に着こうとしたタイミング。
| 『血族』の新『四天王』である、『九鬼』の黄泉の執務室。
|
| 遠慮なく、そして外聞の悪い怒声と共に蹴破ったのは誰であろう博麗霊夢。
| 退院したのが今日の午後らしいので、この後お祝いにスシでも食べようかと思っていた矢先である。
|
| ジャギの失踪後、というよりも霊夢がオズに前歯や骨を折られて入院してこちら、随分親しくなった二人。
| 歳も近いし、性格も考え方も近い。
|
| ロストスキルという共通の知己の存在も、二人の仲を密接にしていた。
|
|「あ、これお祝い。おめでとヨミっち。
| まさかいきなり『四天王』とは志摩子様も思い切ったよね。
|
| でも、カミナさんとヨミっちはここんトコ頑張ってたし、あたしは大賛成。マジ英断」
|
| 背負っていた風呂敷を下ろす。
| カステラの詰め合わせ、紅白饅頭、花束、桐箱に入ったお茶などを机に並べる霊夢。
|
|「え、ありがとう」
|「お祝いとかどうすればいいか分かんないから、あたしの好きなものばっかでごめんね。
| マンガとかは読む暇無さそうだから外したんよ、仕事が一息ついたら貸すね」
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_,. -‐'": : : : : : : :｀丶､
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
／: : : : : : : : : : : : : : ' ,: : : : : : : : ﾊ
/: : : : : : :i: : : : : : : : : : : ',: : : : : : : : ﾊ
/: : : : : : : :ll: : :ﾄ､: : : : : : : ',: : : : : : : : :ﾊ
//: /: : : ::l: ::}ﾊ: :ヽ＼: : : : : ::',: : : : : : ',: : ﾊ
l/l: ::l: : : : ｲ: / ＼: ', ｀ヽ、: : l: : : : : : :l: : : ﾊ
/ l: :l: : : / l:/ ､ヾ＿＿≧､l: : : : : : :ﾄ､: : :ﾊ
i: :∨/__,ｲ'' ,.---､ヾi: : : : : :}ﾍヽ:ﾄ､l
∨∧! ／二ヽ 'ｨ7Pヾ¨ヽ',: : : : :j //::l
〉: ヾ',< {Pﾊ ゞ､__ﾉ / .}: : : :///:ｌ::l 霊夢、それとか高いんじゃ……？
i: : : lﾊヽゞ=' ￣´ ./: : : ト-':/}/
',: ﾄ; :lﾊ j /／: ｲ: //
ヾlヽ', ヽ、 ｀ヽ / ／ﾚｨト､
! ヾ 7ヽ、 ヽ ／-‐'" l///ヽ
〈＿＿7ﾞﾊ､_,.. ' {＼///｀ヽ
_,.-彳_,.／ 丿 ／::∨｀ヽ､<¨ヽ｀ヽ､
／_,. ≦-､__／ _, ／: : : : :∨///ヽ: :0＼ ＼
_,. '" ＼ ｀ヽ _,.-'／.: : : : : :／∨////＼: : :＼:＼
_／ ヽ. ＼ | .／: : : : : :／ .∨/////＼: : :＼:＼
/〈 〉,.ｲ l-f´｀i: : : : :／ ∨//////＼: : :＼:＼
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|「お金は使うためにあんのよ。
| 使わずに貯めてちゃ本末転倒でしょ？」
|
| 《けちんぼ》と《守銭奴》でcp稼いでる女の発言ではない。
| 前歯の無い笑顔を見せる霊夢に、黄泉は困惑を隠せない。
|
|「先代と志摩子様が開放されて、医療班の質が一気に上がったよね。
| キオくんのあれ、聞いた？」
|
|「人間ＭＲＩ？」
|「胃が荒れてるって言われちゃった。恥ずかしー」
|
| キオが提唱した超能力を利用した治療補助の一環である。
| 骨折の状態や内臓のちょっとした異常まで、三秒足らずでサーチするのだ。
|
|「あー、圧倒されてた。霊夢、退院おめでとう。この後、ヒマ？ スシでも食べない？」
|
| 黄泉の言葉に、霊夢はくすぐったそうに頷いた。
| 黄泉のお祝いばかり頭にあって、自分のことを忘れていた顔。
|
|「ありがとヨミっち。ご相伴に預かります」
|「ルカさんも呼ぶ？ あいにくキルはまだ仕事なんだけど」
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r'T"´｀ヽ､ ,. -rｧ
r'7:./:.:.:.:.:.:.＼ ／.:.:.:.i:.!,」
r'7:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ.,,___ ,.:':.:.:.:.:.:.:.:.! (
「/:./:.:.:.:.:ヽ､:.:.:.:.:.:.:.:ヽ-ヽ.,/:.:.:／:.:.:l:.「 !
r'ﾝ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞''"´￣::｀ヽ｀＞'､:.:.:.:.:.:.!ｺ
L!:.:.i.:.:.:.:.,.::'´::::::::::::::::::::::::::::::::｀:::::'"´｀ヽ!」､
!ﾍ:.:.:.:.／::::::::;:':::::::/:::::::;':::::;:::::::!::::::::;::::::::::Y
/ヽ!ヽ/:/::::::::/:::::_/___:/:::::/!:::::;'::::::;ﾊ:::::::::::',>
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/:::/:.:.:!_ﾚ､;___L_/i´ !┘ i｀ ﾚ' .ﾚ'rｧr'､!::::!::::|
,':rｲ:.:.:.:.:!;'::::|::::::| ﾍ. '､_,ﾉ !' ! !7r'ヽ!
.,:'::ヽﾍ､___!:::rﾄ､:;_;!. `'ｰ , `´ノi/!:.:.:',
/::::::/`ｰ^ｰ';::`i｀ーi '"'" _ ,., ﾚ^ヾｺ
,':::::::;':::::::::::::::ﾊr!____,ﾄ.､ '´┘ ,ﾊi あー、残念。
.i::::::::i::::::::::::::,':::i`rｰ‐i':::::｀i. ､., _,. イ_,ﾑ! つーか、この所キルに会えてないんだけど？
!::::/!:::::::::;:ｲ::::::::|:::::::|r'イ｀ヽ､ ｀"T"´i:::::;|:::::::|
V ';:::::/:::!::::rく|:::::::| ヽ ＞rｨ'^ヽ､:::::!:::::;'
V '､::ﾚ'´ヽ';::::::ﾄ､.,_____,.イムヽ >:|:::/
r7 ヽ;::!:.:.:.:.:.:.:./ / ハｰﾍﾊ､|/
i´`' ｰ--‐='i':.:.:.:.:.:.:/ ,' i ';.:.:.Y´i
/` ー -- '|:.:.:.:.:.くヽ､.,___,,.ｨヽ;.:!-'ｧ､
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|「寂しい？」
|「ヨミっちから言ってやって。定期検診サボんなって」
|
| 病室でも、霊夢は『ロストスキル』の検診を行っていた。
| 霊夢は彼の主治医だ。
|
| 義手の様子を見て、適合率を確認し、魔術や薬物による補助の副作用が無いかを確認する。
|
|「退院したし、キオくん呼んで精密検査と調整もしたいのよね。
| ここんとこ出来てなかったし」
|
|「うん……伝えとく」
|
| 歯切れが悪く答える黄泉。
| 霊夢は彼女の異変に気付かない。携帯を取り出してルカに電話をかけていた。
|
|「ルカ、夕飯食べない？ ヨミっちがお寿司奢ってくれるって。
| うん、うん大丈夫よ。あ、おっけー聞いてみる。
|
| ……ヨミっち、外のお店？」
|「もちろん、ルカさん呼ぶんだから違うよ。この私自ら腕を振るうわ」
|「『四天王』御自ら！」
|「やめて恥ずかしい」
|
| 二人はローティーンの少女らしくはしゃぎながら、荷物をまとめて帰途についた。
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, -――- 、
／―-､ ＼ l >､
／ｰｧー-､_ヽ l ノへヽ
/／ / ￣ ｌ|
|／ ヽ l|
|／ /」 ヽ / 〈
l/＾V ｰ==､ ＿, ､_∠,/
〈ﾍ } ￣・> 〈-･ |
ヽい、 ￣ | ,| ……何かあったか？
>-| 、,〉 /
／| ﾊr‐､ ＿｀_ ∧
_／/' | ∨ { ´ニ_／ ∧、_
_, -‐'´ / | 〉 ヽ-‐ '´ ／ / ＼￣ － ､
_/ ヽ | ／| ／ ―― ､ ＼
／ / ／ﾍ.ヽ /／ ＼ /＾＼
.／ ￣￣〈 〉ﾉ ／ ＼ / ヽ
＼/￣￣｀＼ イ/ ／ / i|
＼ ／￣｀＼ 〉/ ／ / |
ヽ / ＼ ノ/／ / |
| r―/ ｝/ r―― ￣｢ / |
| | / / | ∟ ＿_ ｏ _｣ / /
| lﾌ’ / | | ｌｉ「￣ |｜ /〉
／ / | | l | ! | |
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|「霊夢が心配してたわよ。定期検診してないそうね」
|「…………」
|
| 翌朝、疲れたサラリーマンの面をして現れた『ロストスキル』に、黄泉は責めるように尋ねる。
|
|「精密検査を受けなさい」
|「必要ない」
|「命令だ。お前は明らかに疲弊している」
|「必要ない」
|
| 突然、威厳を放ち命令する黄泉。
| だが梨の礫、黄泉はムッと唇を突き出す。
|
|「『血族』からの命令は、あなたには簡単なものばかり。
| なのに、なぜ毎日遅いの？ 何をしているの？」
|
| 子供のように拗ねた口調、泣き落としのための演技ではなく黄泉のナマの感情。
| 互いにそれを知っている。
|
|「シャギの痕跡を探している」
|「…………」
|
| 行方不明、生死不明のジャギ。
| 死んでいない理由が思いつかない。
|
| 彼がわざわざ身を隠すのはおかしい、行動不能だったとしても出てこないのもおかしい。
|
| 何者かに襲われ殺されたか、あるいは囚われの身なのか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.: "´ .､｀/'f゛､_
,r'´ ノr´ﾉr´ノ ｿ､
／ ./'> f-二ニニ_ヽ厶〃ノソヽ
j｢／ } 廴＿ 。 ｀ヽ, :} ﾆ=-ｲ ､
! ／/|￣ ￣ ニニ=- ヾ =-彡.
|::ﾚ' .| r-､ _ ｀ヽ =- ∧
. |!' .f} : | | .f ! f⌒l f- |
!, | i! !|.: | i! | | ! ,､ ! ,ｲ !
!ﾍ /| | .!|.! .! |! ! | j .| ＼ .::|、＼ | ､ , ､
! ﾍ / .! i! .!| .l .|_ j | ,′! .}:＼ .＼ ﾄ､ / |/ |
| ﾍ , |ヽ! .!ゝ′ ---..､ ｀ヽ_ ノ;;;;;;;＼ ｀ﾄ.、. / | .|
! ﾍ / ヽ i{:::.:::::::::::::::::::::::::::::::::;: ;;;;/ 心 ヽ / .| .|
i ､ ,.! . ﾍ_/ {ヾ-ﾉヽ-､:::::::::::::::::::::::;::::,/ / i!:::. }!_ / | .|
| ＼ _ ／ ´ 亅 .{ニﾆ＝==-､｣'| | }､:: . . . : :ノ / / i! ∧:::ノ' ) / .! .|
| ＼ﾞ￣ ー― ´＼ ￣￣.:::::::.､ .! ::.,: : : :: / | ,イ゛ _ｲ / | .|
| ＼ , ､ ヽ, ::::::::::,、∧ ::::,: : : :..:::: :::::::::: :.／ ／..::{－､_,...＿＿ /., .| .|
/! ﾉ ｀´_ ＜/!} .::::::/ }:. :::. .::; ::::::; .f f:...:::::::/::::// ￣ ,´/ﾍ .!__.|
./ .ヽ _ , ＜..:::::::.／ ,≧ｿ::. ﾉ:::. ::::.. ..:; :::::; .::| |:::::::::;´:::// / /ﾍ } ｀ヽ
/ ○ ／／.:::::::／ / .,｀ー ＿ _/_ ＿i{::...:::::} ζ:::::;:::::// f_ッ / /ﾍ---´ .,ｨ′
≧ ‐ _ ○／／.:::::::::〃 ./､ ､〃ﾞ゛｀ ￣ | ;:: ::::::::;:/ / /ﾍ ヽ}
≧ -.／／.:::::::::::::〃 ./ ､/ i} |::::::::::/ / /ﾍ f_ッ|
ー´..::::::::::::::::'ﾞ / fz,, ､/ | !:::::::/ / ./ﾍ .|
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| だが、殺さずに生かしておく理由とはなんだろうか。
|
| 『血族』の、親しい者の多くがすでにジャギの生存を諦めていた。
| 絶望していないのは、決して彼の話を口にしない霊夢と……。
|
|「霊夢の処置も、義手の調子も悪くない」
|「でも、調子悪い」
|
| 黄泉の心配。
| 今まで本人には告げたことのない想い。
|
| 血縁だけで長になった自分と、実力なら長になれたはずの乳兄弟への。
|
|「霊夢には言うな」
|「あの子が自分を責めるから？」
|
|「そうだ」
|「このままキルに何かあっても、絶対自分を責める子よ」
|
| 友人の性格は、分かっていた。
| 明るく快活で責任感が強い。実年齢の幼さに比べ、強過ぎる嫌いがあるほどに。
|
|「私の体を蝕むのは、腕の傷と同時期の呪いだ」
|「……『歌舞伎町事件』の？」
|「いかにも」
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l /＼ / ／ ＼ / /
l l ﾍ. ＼ l / / / |/ l
l |' ＼ ヽ / ／ ／ _＿ , イ ヽ
＼ 、 l ＼ l l _／-‐'彡 てソ / l /
ヽ ト､≧:ｘ._ヽ〈 〈 lイ´ ／ ／ l /‐
ｌ ヽ ゝ-ヾ} 'lミ三＞―----‐'´ / l
l 二三彡ﾊ l 丶、 / l ＿_ あの時の呪詛が暴れている。
＼ ／ | l:::. / l
＼ | l:::::::::.. l
l | l:::::::::::::. /
ヽ | ﾚ 丶:::::::. l /
ヽ 〈＿__, - ′ ＿＿ 〉 /
＼ -――--- ‐ '´ / /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「気付いたのは『弓兵』と戦った時だ。限界が早すぎた。
| それからどんどん悪くなっている」
|
| 『歌舞伎町事件』は『ロストスキル』と……いや、当時は最強のニンジャ『キル・オール』だったが。
| とにかく彼がジャギとルカと初めて共闘した事件だ。
|
| ニャルラトホテプの用意した強力な『人間もどき』と『落とし子』によって『血族』の主力と『武僧』が壊滅した。
|
| 曹操華琳の要請でニャルラトホテプを探っていた『キル・オール』。
| 兄の再起不能を聞いて『結社』から『血族』に戻ってきたジャギ。
|
| そしてシロッコの指揮下で戦うも壊滅して人間もどきの苗床にされかけていたルカ。
|
| 共闘と言っても初対面だった。
| 味方の死体が山と積み重なる中、自分を守るので手一杯だった。
|
| だが、ルカが近くで死にかけていた魔王マーラと融合して作った好機が。
| それまで隠れていた『キル・オール』が相打ち覚悟で放った一撃が。
|
| そして、自分自身重傷なのに、そんな二人を抱えて帰り、命を救ってくれたジャギが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/.:.:.:::::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.＼
/.:.::::::/::/ '､::::|｀ヽ、:::::::::: ',:::::::::::::.:.:.ヽ
,ﾞ::/:::/ {:′ ヽ|_, -‐＼::ヽ::|::::::::::::::::::.:. ',
j:::{::: | {lノ ' ,.ﾆｺ..,_}::|::::::::::::::::::::.:. ',
,:::ﾊ::::レ'ﾞ__ 、 ﾞ {ﾟ' ﾘ 从:::::::::::::::::::::::. '､
. /ｲ:::::Ｖ ,ｲ'ﾟﾊ ﾞ'‐'′ }::::}:::::::::::::::::::.:.ﾄ､
´ |::::::::: 〈弋`ﾉ ; u ﾘ/:::::::::::::::::::::.:}
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',::{::::::::::.', [__ヽ ,ﾞ:::::/.::::::::八/
ヽ'､:::.＼`::... /::::ｲ..::::／
＼|ヽヽ::::::ｌ .._ . イ／:/|／ 奈落の落とし子の死に際の呪詛か。
. ヽ＼|: ゛´ |/
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|「とどめを刺したのが私である以上、ルカとジャギは受けていないだろう。
| 自分で確認した限り、かなり致命的だ。内臓の老化が激しい。来年の年賀状は喪中で用意しておけ」
|「……変わったね」
|
| 黄泉は悲しそうに、だが同時にいくつもの複雑な感情を吐き出した。
|
|「冗談だ」
|「冗談を言うとこだよ」
|
| ジャギとルカと霊夢が、『ロストスキル』という新しい名が。
| 最強であらねばならぬニンジャをヒトに変えた。
|
| 笑い、冗談を言い、人を思いやれるようにした。
| 黄泉にはできなかったこと。
|
|「私がジャギにできることは、その消息を探ることだ。
| 死んでいるならそれでも構わん。見つけてやることか必要だ」
|
|「誰に？」
|「霊夢に」
|
| 黄泉は絶句した。
| 生まれてはじめての友。快活で守銭奴で、いつでも前向きな少女。
|
| だがふとした拍子に差す影に気付いていたし、それがジャギだとは分かっていたが。
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_ -―‐- ,
, ィ ´―- z'´￣｀ v｀ヽ、
/, - ､ / / ｀ｰ､!
l/ ´ } l ／ -=､┐ l|
l} { / ' / ｔｯ､＼ , l!
jﾑ } l 二｀ { ､__ l}
／ ｀} / / lﾄ V´
/ / -」｀ /
/ l ＼ l -―=､｀ ／
_,/ l l l ｀ ／ 私は戦場で命を落とす。
／´＼＼ l ヽ 、 / それを霊夢が背負う必要はない。
＿,／ ヽ ＼ l ヽ ＿_ 」
＼ ＼ ＼ //
ヽ＼ ヽ ＼/、
l ＼ l /::::l
ヽ. ヽ ヽ./:::::::}
l | l＼::∧
l l ｌ |'::::ﾍ
＼ ヽ.|:::::::ﾍ
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|「ジャギはあの直前に、霊夢を殴ったんだよ？」
|「霊夢は聡い。ジャギが行方不明になった時点で気付かないはずはない」
|
| 距離を取るためにわざと乱暴に接したのだと。
| それが霊夢のプライドを傷つけているだろうし、信じてしまった己を恥じていることは間違いない。
|
|「そのために……あの子のために残された時間を使うの？」
|
| 不意に、涙がこぼれた。
| 黄泉は袖で目元を拭いながら言ってはいけない言葉を続ける。
|
|「わたしのためじゃなくて」
|「そうだ」
|
| そして、深い断絶と拒絶が待ち受ける。
| 奈落のような底なしの地割れ。突然開いて黄泉の心を無慈悲に飲み込む。
|
|「この命を、ジャギとの友情に使う」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,ト--ミ､、_:::::::::::::::::｀:"'':―┼――――l
/ミミ三三ﾐ'ー‐-- ､、＿:::::::|:::::::::::::::::::::::j
{ミミミ三三、 ､ｰ=､`'┴―――fミ',
,..､ﾐﾐミミミ三ｼ . . . . `―' l ii l (ヲ lミil
//う{ﾐﾐミミf'" _,,.,,_:.:.:.:.. _j_ .:.:.:. lﾐﾘ
l V }ﾐﾐミミ ',ｨでiﾝﾐ、:.:.､__, -,ｨも=､',l:l′
'i l ,ﾉヾミミ' ´￣｀ﾞ`ラ .:. 三 f"´￣｀' lj
ヽヽへ}ミﾐ ｀二ﾆノ ,、 jl ',` ―''" ,l!
ヽ二ﾉミ' ,ィ'" ﾄ、 ,! 画像も貼らずにスレ立てとな！
, -fｿ!'ミ ／ `^ヽ,＿ノi ,'
,/（/ {i,ﾐ' ／ _,,...,＿,,..,、l /
/ ヽ lN, ／ ,ィiTTTTTト, ,} ,/
, -―/ ヽ ', ヽ { ,/⌒'ｰ'‐'‐'‐',ﾘ l /
/ / ヽ'、 ヽ l {,ゝ､‐r‐'ﾝ-i/ ,/ ,ｲ丶､、
"i {、 ヽヽ丶 丶 ヾ<Zェｪｪｼ' ﾉ ,i'lヽ、 ｀ヾー-- ､
l, ＼ ヽヽ 丶、 ｀ ｀ ‐ -- ‐'"/ノ ,l ＼ ＼ ヽ
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| 突然、樫製の義足が入り口を蹴破った。
| 気配を感じなかった。殺気もなかった。
|
|「アイエ狂人！？」
|
| カミワザ級のニンジャ二人の不意をついてここに蘆屋道満麻呂が登場する。彼は気が狂っていた。
| できる夫の行方不明とやらない夫のテロリスト認定後、狂気に陥った元『四天王』の突然のエントリー！
|
| 彼の車椅子を押しているやけに体格のいい黒子が頭を下げ、礼儀正しくドアをしめる。
|
|「このわからず屋！！ まずはそのうらぶれたサラリマンから女子に姿を変え、
| 愁嘆場を一見百合色にするでおじゃる！
|
| 霊夢、黄泉、貴様の百合百合三角関係に読者は悶絶！ 間に挟まるジャギ殺すべし慈悲はないと納得の展開！」
|
|「アイエ狂人！？」
|「なるほど……？」
|
| うらぶれたサラリマンから、黒髪の女子高生に姿を変える『ロストスキル』。
| 言うとおりにする彼に、黄泉が無言で裏手ツッコミ。
|
|「こうするとどうなるのです、麻呂殿」
|「やらない夫が悪いでおじゃる、全部やらない夫が悪いでおじゃる！
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／,::/ ..,;/ , ,; ..:::,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ｲ;;,,;;;;l;;;;;/ ＼.:::;;;;;;;;ｌ.......,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ
/ / ７ /,;/ ,., ,;;; ;; ,;;;;;;ﾉ7;;;;;;;;;;;;;〃/;;;;;;;／j;;;/ } ,;;;;;;;;!....,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾄ
/ j;; /,;;' ,;;;; ,;;;; ;;;;;;;.:;;/ /;;;;;;;;;;／ ノｲi／ i;/ ﾉｲ;;;;iﾊﾉ!,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l!
,' ,;;//;;;,,,:;;;;;;;;;;;;,,;;;;;/;/ /;;;;;;;／ ／麻呂/ / / !..l:il! !;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i!
,' / ,;;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;//_/;;;／ ／ / / / l...i:il_j;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i!
ノ i''j;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i7≧ﾆﾆニデzz-,,､ ,ノ ,..-..zｚ=ヌ７ﾆﾆﾆﾆ≦,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'!
{ !;;;;;;;;;;;;;;ﾊ:;;;;;i _＿ /＿__ ｀刈ll /.:.彳 ＿＿{_＿__.....:.:.7;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; i
, ￣ 丶､1;;;;;;;;;;;从;;;;;;{ -≦＿丈刃ｿ_ヾ.....ﾘ ,'.:.:.:.{_´ 丈ﾒｿ＿≧=/,;;;;从;;;;;;;;;;;;;;;,' '＿＿
/ や ＼;;;;从示,;;;! ￣￣ .........ﾉ :.:.:.:.:........￣￣ ヽ......../...7;ﾊﾐ..};;;;;;;;;／ ｀ヽ
ら さ ヾ;;;;; 廴;;! ￣ |:.:.:.:.:.... ........,ｨﾊ...j../;;;／ 人
, な i;;;;;ﾊ ｊ ヾ !.:.:.:.:.. .../.l.ｆ....../.;/ ／┬＼
, い あ !/';;;;;､ :.:.:.:... ...... l:し../..: 十
夫 l/ ;;;;;;ﾍ,,,,ﾉ､ i.:..... .......,.....ｨ' ,' ￣￣
l を ｜ ヾ;;; ;;;;;从 ヾ.:.:ﾉ ......./7lil/ i 立 「ﾌ
| 〃川{ ∧ ......../il!..i!....l 口｜ゝ
| フﾞ | ! / | ﾍ ､ ＿_ ＿ー _＿ ＿ , ........./..il...j.....l
ｌ i ヾ､ ￣｀-...二...-´￣ ......_.:ｲ.....゛........l や
| ッ | |＿ _ | ＶＩ＼ ....... ...... ......._::::7.......ヽ￣ ら
| ／ , Ｖ::::: ､ ￣ ......_:::::::7..............＼ な
| 殺 ・ 厂 , ヘ:::: ＼ ...._::::::::::7................７:l .い
l ・ ! , `､＼:::::＼ ...._::::::::::.::7.................７..l 夫
i そ ・ | , 丶 ＼:::::::ﾞ:ー::‐::::::::::::::∠..................７...l
| 共 | , ＼ ＼::::::::::::::::::::::∠......................7.....i ┼ ､ヽ″
i う l , ‐ ､ , ＼ ヽ_..:::::::::∠..........................7.......､ ﾉ､ ﾉ
! ： に !_ 〃 ! ＿ , ヾ_ .::∠ ............................7..........､ ＿＿
丶 ！！ ,7_〃 ∠/ _ ＼ _〉z〈 .....................7.............､ L]-[ｺ
､ /ｌ' .／ /／ ＼ /､ ）} { > ................7.................､ ﾉ Ｌヽヽ
＼ ＿＿ イ ..∠_ ／ ／ｌ＼ / /Ｉ} {Ｉ} > ...........7 ........ヽ , ､
イ ...:::l _＞ _ ／/l/l∠＼/ ∧{Ｉ} {Ｉ} > ........7 ........＼ { }
＼ | `ｰ≠ﾍ ＞_l/l/l「◎/ ∧､Ｉ} {Ｉ} {Ｉ} > .../ ..........､ ∨
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|「アイエ狂人！？」
|「狂人結構死ぬよりマシ！ 麻呂絵！ できる夫！ 石田！ 龍田！ みんな麻呂より先に死んだ！」
|
| 石田と龍田が生還したことを、麻呂は知らない様子。
| いや、狂気の麻呂には理解しきれないだけかもしれない。
|
|「この臆病者めが」
|「……なんですって？」
|
| 突然テンションが下がる麻呂からの罵倒。
| なお掴みかかったのは罵倒された『ロストスキル』ではやく黄泉の方。素早く動いた黒子が狼藉を阻む。
|
|「病床で身動きも取れず、他人に迷惑をかけながら無様に生きるのが怖いか！
| 周りの者たちに同情されるだけの毎日から逃げたいか！？」
|
| 言葉を失う『ロストスキル』。
| 違う。と、即答できない。
|
| 己の存在意義を失うのが怖い。
| 腕を失った時、戦士としての能力のすべてを失ったと絶望した。
|
| あんな思いは。
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,....､ ＿＿__ ﾘ (ﾐ､ヾL;:__;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
/ ヽ..._／二二二ト､ r‐ュ /_,, ｀´ .: r=｀､` '' ‐r―--＝=〈
／ ｒ┴┴‐┼──‐弋三三マヽ / ﾄｭﾐy ｀~´ ,ノ::::::::::::::::::::ﾉ それで、またその娘を悲しませるのか。
j ￣＞──┴─ ､:.:.:.|─‐９|<7|l ,' ｀`ラ, ,ｨｴ二丶、^ヾﾐ:::::::::::::ｨﾍ 残された者の想いを考えたことはあるか。
f' ７´ ´¨｀ヽ｀ヽヽ:::::::__ヽ|}}─ j|^:|Yl ! ,.. / .: 'ヾﾋi≧ｧﾐ ,}::::::::::ノｸﾉ
j ､l::;′ Y:::::l:::l::::{ ヾ!|!ｭ:.:.:l|:::V ﾞl,/ (;' ,rぅ､、 ,':::::r'"(.イ
l l:::| ||:::::|:::|::ﾊ ＼_:.:.:ﾄ､::ﾄ＿_,,.ｨ'l ﾍ`ﾆ"´ ヽ _,. ,':::ｸ>-ﾍ-ゝ､、
l ｀ヽヽ ＿_ノ/.::/::/:::::/ヽ ￣ヽr‐'´ /l'! lﾄﾐ三=ァｨ` ,:" , ,ﾙｲ /:.:.:.::/ ﾘ ｀`t､ー-
' ／ マ＝∠∠∠∠ -'" ∨ {i,ヽ丶-‐ '"ノ ,/,／:::://:.:.:.:.:/ / ヽ:::
' ﾊ::::｢ -r ､ ∨ ヾ.丶.,＿_,, -‐'" ／ﾉ:.:._／／ }::
} ﾊ::::∨ ヽ ヽ、 ゝﾐミ三ニ＝≦,,ムﾆ彡'" ノ::
/ ヽ:::ヽ ヽ ＼'"::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::丶､＿＿,,r ''":::::::
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|「今すぐここで二人で思いの丈と溢れる青い性を迸らせるでおじゃる！」
|「アイエ狂人！？」
|
| 途中までいいことを言っていた気がするが。
| やらしい笑顔で愛用のカメラを構える麻呂に黄泉がドン引き。
|
|「…………麻呂殿は、ジャギを見つけなくて良いと？」
|「無駄足でおじゃる！ できる夫はどこでおじゃ！」
|
| 泡を吹いて叫び喚く麻呂。黒子が鎮静剤を投与する。泡を吹き、舌を垂らしたまま動かなくなる麻呂。
| 『ロストスキル』は少し考えた末に頷いた。
|
|「黄泉」
|「一応言っておくと、寝たきりになろうと腕が落ちようと、私はキルを見捨てないからね。
| むしろ主従じゃなくなってせいせいするかも」
|
| 誰にも言わない、秘めた不安が彼にもあるのかも。
| 黄泉は愛する人の手を握った。
|
|「あと、本当に死にそうなら情けを頂戴。私にあなたの子供を残して」
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!::l ﾚ´|::::::::::l|/!:::／.ﾒ;::l|::::i|:::::::::::::::,､::::::::::::::::::::o::::::!
. ﾊ::ヾ./!:::::::::lr‐tﾐ_｀ﾒi;/l|:::/!:;ﾑ;__:://!::::::::::::::::::::::::::::!
i l::::::ヽ|::::i:::::!｀ーﾟ'｀ヽ｀ !/ |_ﾑ斗/.ヽl::::::::::::::::::::::::::::!
l l::::::::::l:::r',::::! ´ｨ--｡､ |:::::::::::::::::::::::::::l
ﾚ:::::::::｡!::ﾍヽ::! "" ´`'ｰﾟ'｀l::::::::::::::::::::::::::::!
/::::::::::::::',:::ﾍ N , "" /!.:::::::::::::::::::::::::::!
{:::::::r､::::::::〉;:::iヽ ‐_- ／.:::::::::::o｡::::::::::::::::l よ、黄泉それは……。
＿r'{ヽ:::::Y::::::/ |::::l ｀ゝ. ＿ _ .. - '´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
￣ .: l::::.ヽニソヽ!ﾄ:ﾊ /ヽ‐;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
.::i l:::::. ＼ ヽ| iﾊ ´ ｀i|:::::::::i:::::::::::::::::::::::::i:::::l|l:|
:::::! .ﾊ:: ::. ヽ ﾄ| ', ﾉ!::::::::l|::::::::::::::::::::::ｲ!:l:il:!!|
:::. ::::i :.ﾊ: :::. ヽ lヽ !-､ ,-―/ ||::i:::::ll::::::::::::::::::::::il､!|.|:||:!
:::: :::i : : i:. :: ヽ ヽ / ||:/!:::||::::::::::::::::::::::||l|i::ﾄ||:l
::::: :i i i l:::..: ﾊ ﾊ. / ,!ｨ l::::||::::::::::::::::::i:::|||l|!i:.i!:l
:::::i ! / ', !:::: : ﾊ ﾊ / /l:.! |::::!l::::::::::::::::::l:i:||j||ﾉﾉ!:!
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|「一部始終をZIPで頼むでおじゃるよ」
|「ちなみに、私が欲しいのは最強のニンジャだからじゃないからね」
|「黄泉……」
|「削除されました。この後の展開を読みたい輩はワッフルワッフルと書き込むでおじゃる」
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| なお、実際ワッフルワッフルされても、未成年同士の濃密な百合とか作者が死ぬので勘弁してください。
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|「しかし濃密なエロ支援絵を貼ってくれた場合は別でおじゃる！
| >>1が全力でエロＡＡにしてくれるでおじゃ！」
|
| アイエエ…狂人！
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ﾄ､]∨ー─'しUﾊ
ノ二二ニニﾆr‐ﾐ しﾍ
{ニニニニニﾆ〉 ＼＼
{二ニニ/⌒∨ ´＼ .}ﾉ
人ﾆﾆ厂{ ( マ7｀}_ 師父が迷惑をかけたようだな。
/ /∨ 〈 閉じ込めても並の錠前や結界では無意味でね。
／⌒＼ { __.r┘ 見張りを置くほどの事でもないし難儀している。
_ﾉ＿＿ ＼＼ __ﾉ } }
／／ / /｀＞ .＼＼＿ﾉ ノﾉ
___, イ ／ / / / ＼}
/ / /／ ./ / / ／＼
/ /, / / / ／, ===≧x
./ / { / / / ／／ ヽ ｜ | ＼
l { { ./ / /.///＼ | ｜ | |∧
l { { ,' ,' {// {ヽ | ｜ | ｜ | }
l { { { { { { {/| | ｜ | ｜ | ﾉ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「吉影、夕飯はまだでおじゃるか？」
|「一昨日与えただろう。
|
| 昨日発足した『緊急事態対策班』の頭はケンシロウだ。
| 『血族』全力でのジャギ捜索が始まるぞ」
|
| 志摩子の腹心を集めて作られた『緊急事態対策班』。
| ケンシロウ、キオ、呂布、石田、『狂死』、先代巫女、馬岱。そして蒼星石という面々。
|
|「やらない夫はいいのか？」
|「調査班総長代行殿は自分の策に絶対の自信があるようでね」
|
| 『九鬼』と『グレン団』が属することになった調査班。
| 初代総長にと志摩子様が指名したのは……ジャギであった。
|
| ジャギ不在の今は代行を起き、ジャギが帰還すれば彼女は副長。
| 叶わなければ総長に就任するという予定である。
|
|「と言うことで『九鬼』にジャギ捜索の依頼だ」
|「承りました……が」
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〈∧////////∧ ‐ ´ ￣ ├７///|///| 私は体調不良故に一度精密検査を受けるので、
／//////////∧ _,.. _ ///l///|///| 参加は後日にいたします。
／ 〈//////|///ｌ//＼ ´° ｲ///|///|///|
￣￣/777777///＞ ､ ／ |///|///|//ﾊ|
//////////////∧ ｀ -‐ ´ l|///|///|//l/|
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／／////////／￣∨ ヽ |/////////l//|
／／／／////／ ＼zz＼ //////∧//|//||
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／／／／∠∠￣￣＼ ＼ /////// ￣￣￣l|｀ヽ
／／／／／三ﾆ＼ ＼ ＼／／／／|＿_ / |l
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|「好きにすればいい。代行殿も文句はあるまい」
|
| その名を口にするとき、『狂死』はいつも以上に皮肉っぽい。
| モーリアンビルの惨敗や、立場を隠して『血族』をほしいままにした責任を取ると言い首を差し出した彼女に、志摩子が与えた罰こそ代行の仕事だからだ。
|
| 見事成し遂げ、汚名を返上せよ。
|
| そうして最初に行うのが、やらない夫との接触。
| 彼女はそのために何箇所もの掲示板に以下の伝言を張り出した。
|
| 『あなたが僕の姉に愛の告白をした場所で待つ。
| その日の二週間と半日前に』
|
| これにやらない夫が気付くかは、運次第である。
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☆ 次回予告！
社会を守り、全体を守るために個を殺す。
ダークロウヒーロー、蒼星石。
人を守り、多くを救うためならば手段は選ばぬ。
ライトカオスヒーロー、やらない夫。
対峙する二人、互いに譲れぬ信念。
そこには正義なんてない。
そんな言葉で飾るつもりは、毛頭ない。
妥協できず、許容できぬ。
二人を繋ぐ可能性の名は。
次回、最終幕五十話『やる夫』
果てに見るのは破滅か死か。
来るのか、主人公
ヒーホーヒーローはカナブンになるか？それともやる夫？（目反らし
ﾐ)爻;|:::::::::::: |´'┐ | |,，'"~~"'㍉-‐┛ .|: : | :|´"'￢ ,､ｘXヾ;::ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;爻爻狄
爻;ﾐ |:::::::::::: |爻ｘｿいｿいぃ ノ´: : : : .:.:.:;';';'｀;, 口 ／⌒Y⌒ヽ |::::::::: | ;'ヾ;:ﾐ:ヾ;:ﾐ:ヾﾐ:爻爻狄狄
…ー|:::::::::::: |爻ミいｿいﾐ;ﾐ;}.,.,.,{: : : .:.:.:;';';';';';';'; ﾐ __,xX|: ｜ :|┴-=ﾆＬ＿ ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐ;ﾐﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;ﾞ;爻爻爻狄
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| ほんの一年前まで、毎日四人で歩いていた通学路。
| くだらないおしゃべりをして笑い、ケンカして、雨の日も風の日も。
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| 大抵やる夫と翠星石が言い争いになり、蒼星石かやらない夫がたしなめた。
| 最後の一年は、辛い時間でもあったけれど。
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| 四人の三年間が詰まった通学路。
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| 十二月の午後八時はとっぷり日も落ちていて。
| 見慣れたはずの風景がひどく他人行儀に見えた。
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| この一年で所々の家が改築され。
| 家賃が3980円と噂されていたボロアパートは更地になっていた。
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| 蒼星石は感慨と悲しみと、そして期待と緊張で胸を締め付けられていた。
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| 無性に、やる夫に隣りにいてほしかった。
| 手を握りたかった。
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| そうしたらきっと……勇気が湧いて来るだろうに。
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. : :_:´:￣:￣:ミ: : ､
, : :´: : /: :ヽ､:ｰ:､: : : :｀ヽ＼
, :': ; ィ : : ′: : :';:＼ '; ヽ: : : : : ヽ
/ ; :´: : : : : :,: : : : j: : :ﾊ}: : : ､: : :ﾄ: : ､
' /: : ;! : : : : { : : !: : : : j Yﾊ: : : :j:!: : : :.
j/: : : :!: : : : : i!: : : : : : ﾘ _ｊ:_､!: j: |: : : : : ､
': : : : :'; : : : : : ､: :斗:T7´￣! V川:､: : : : : .
|: : !: :､:ヽ:_:_:＼:ﾊ: :i: ﾘ´zxｫ:ﾄ ﾚヾ!ﾊ: : : : : : ､
!: : |: : V:´{: : : ヾ_ヽj´弋ｔソ:! ｒｆ }: :,: : : :i: : !
': : ﾊ: : ﾄ､:ry休ー‐ヽ :j ｲ_ﾉ: : '; : : !: :j
': : :ヽ: ヾzゞ‐' :i' /｢: :j: : : i: : j!: :{
ヽ: : : ミｰｧ ヽ :l ′: :/ : : j: i八: ﾊ
｀T:T￣ゝ. -= ﾟ´ :ﾚ ∨: : : :': :|: : ､: :ヽ.
ｊ: ﾊ: : :ﾘ个: .-,＿ ,ｲ: /: : : /､:_|: : : ＼: :｀:ｰ:､
/:/: j: :/: :j: :｣_}. ヽ. ,' : : / ￣ ｀ ､ミ､: : :ヽ
/:/: /: /: /／ _.｣ ヽ! : / ＿＿)､: : :.
/: { /: /-‐´ j´ ﾊ / イ´_ ｚ＝f: : : }
,': : j/: / ├- -‐ハ:{ イ ／ニニニニ}: j
{: :/!: / ! / ﾘ! ｲ´ ／ニニニニニｊ:/
∨: :∧､ | / /ｲ: イ イニニニニニニｊ/
,': {/个､ヽ ! / /:_人:／ニニニニニニニ,ｲ
{: fニニﾍ. ＼ i / ｲ:´_ィ ヽ.ニニニニニニニ7 !
人:{､j／ﾆヾz､≧{. _ノ彡´j:／ニニヽ.ニニニニニﾆ' |
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| 『緊急事態対策班』として最初の仕事はやらない夫との接触だった。
| 班にはケンシロウを筆頭に『狂死』や先代巫女、呂布に石田とまあ早い話が主力勢ぞろい。
|
| 蒼星石は班長となったケンシロウの指示を受けて班員に伝達するのが主な仕事。
| 『参謀』をしていた頃から連絡役をしてもらっていた『螺旋王』のメイドは蒼星石の直属の部下扱い。
|
| 早い話が、これまで非公認で勝手にやっていた作業が仕事になった次第である。
| この半月の『参謀』働きが認められたと言えばそうなのだが、下地を作ったのはジャギで、
| 現場で働いていたのは『グレン団』と『九鬼』だ。
|
| 正直後ろめたさが先に立つ。
|
| 『緊急事態対策班』は今現在、ジャギの痕跡とやらない夫を追っている。
| ジャギの生死、そして誰に消されたのかが問題だ。
|
| せめて下手人だけでも見つけたかった。
|
| ジャギが消えてからずっと、蒼星石とケンシロウは仕事の間にジャギを探してきた。
| だが、足取りは途切れたまま。あんなに目立つ外見なのに目撃者もいない。
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i.::::::/.::::〃ﾊ:::|:::::::::::, _::」|::|:::::::l l:!
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l/:／ /-‐ 〈tfｼﾉ::!::!′
K ,.ィﾃﾃ'ヽ `´1://
::::', V弋ｿノ ､ l::::|
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::::ﾄ､ヽ､ _ ,.ｲ::::ﾊ! 死んだとは思いたくないけれど……。
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.: .:. :. ／ ヽ_ソ.::::::::::::::::::::.ヽ
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| 殺されていないと考えるほうが難しい。
| だけれど、死を見る能力でその最期も確認できない。
|
| 今までは公私混同に感じて躊躇していたが、今では大手を振って人数を投入できる。
|
| せめて、手がかりだけでも見つかれば……。
|
| もの思いにふけりながら、蒼星石は午後八時の住宅街をゆっくりと歩く。
| そこは、蒼星石の家から高校に向かう通学路。
|
| やらない夫が翠星石に愛を伝え、やる夫が失恋した場所。
| 約二年前のクリスマス直前。今でも鮮明に思い出せる。
|
|「おう、遅かったな」
|
| 街灯の下に、コートの男が立っていた。
| 深めにかぶった帽子で人相を隠す努力をするも、隠しきれないその白長さ。
|
|「待たせたか、悪いね」
|
| 備府やらない夫が、そこにいた。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼ 約束の時間ぴったりだ。
（ ●）（ ●） | オレが早く来すぎた。
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ それにしても、
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ 一年前はここを四人で歩いてたんだぜ。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／ 不思議なもんだろ。
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「僕も同じことを考えていたよ……顔を合わせるのは一ヶ月ぶりくらいかな？」
|「『結社』撃滅作戦依頼だからな、二ヶ月弱かな」
|
|「何年も会ってなかったような気分だよ」
|「オレもだ」
|
| 作者もです。
| 確認してみたら『結社』撃滅作戦が2016年末……四年半前である。
|
|「痩せたな」
|「やらない夫ほどじゃない」
|「全くだろ、飯食ってるのか？」
|「食事はしてるし、運動してないからむしろ太りそうなんだけどね」
|
| 不思議なほど朗らかに笑い合えた。
| 互いの立場は理解しているのに。
|
|「四人か？」
|「五人だね、人払いの結界使いが一人、あと四人は護衛のニンジャ。君の顔見知りはいない」
|
|「変な気を使うなよ」
|「気を使ってるという姿勢を見せることが君への牽制になるのさ」
|「確かに」
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／￣￣＼
rヽ ／ ノ ＼ ＼
i ! | （●）（●） | ちなみにこっちは一人だ。
r;r‐r/ |. | （__人__） | 逃げやすいからな。
〈_L (｀ヽ .} | ｀ ⌒´ ﾉ
l｀ （ ｀`/ . | }
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
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|「ZIP術もあるしね」
|
| 麻呂直伝の高速同時召喚術。
| ニャンコ先生、墨目、ねずみ男。並の戦闘班より厄介な契約悪魔。
|
|「そういえば。『スケアクロウ』って？」
|「ヒゲ槍を手足代わりに伸ばすとクモかカカシみたいだろ？ 怪人『スケアクロウ』のできあがりだ」
|
|「……僕は、案山子になりきれなかったな」
|「ん？」
|
| 寂しそうに笑う蒼星石。
| 案山子。鳥害から畑を守る守護者。カラスを追い払うもの。
|
|「君とやる夫が、この道に来るのを防げなかった。
| 君たちには一般人でいて欲しかった」
|
| 笑う。やらない夫は笑みを消した。
| 戦う者として、平和を享受する友人を大切にしたい気持ちはよくわかる。
|
|「矛盾だろ？」
|「まあね」
|
| 来てほしくない、でも来てくれて嬉しい。
| 理性と感情のアンビバレンス。
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く ,．-────-､､､/
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|,' |::|::|:|/:/rﾃﾃﾐ _7込ｼ /.:://:::l
| |::|::|:|::::,弋zソ . ﾞﾞ´ 7'´￣￣`ヽ
ヽﾄﾄ|.:::ﾊ '_ _ /:', ﾉ
｀`|.:;'l::::ヽ､ ..ｲ::::ﾉ ,...--..､ヽ __ノ⌒ヽ
l/ |.:.:::/l:::＞ｰ ＜__/´ ／.:::::::::::.:.＼ ﾉ
|.::/.::レ'´￣`7l/ /.::::.:.::::::::::::i::::.:.＼ 〈_
|/ （__ ,..ｨ介ﾄ､!.::::.:.:.:.::::::::::l:::::::.:.:.＼ ｀ヽ
l::.:) 7/l l」 !.::: .:.:.:.::::::::::l::::::i:::::::.:.ヽ ノ
（ |:l l:|_/.:: .:.:.:.:.::::::::l::::::l:::::::::.:. V
ﾄ.､ |:| |:ﾘ.::: .:.:.:.:.:.:.::::::l::::::l::::::::.:.:.:.＼
/i 〉､ /.::: .:.:.:.:.:.:.:.::::::|:::::|::::::::::::::::.:.:.
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| 思えば、一連の事件のはじめからずっとそうだった。
|
| 危険に足を突っ込むな。
| 来てくれて嬉しい。
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| 危ないから逃げろ。
| 戻ってきたことに胸が熱くなる。
|
| 二人とも、思い浮かぶ顔は同じ。
| それが互いに分かるものだから、目配せしあって共犯者の笑み。
|
| 弱虫の臆病者ののくせに、変なところで頑固で負けず嫌い。
|
| だが今は。
|
|「ホントはな」
|「うん？」
|
| やらない夫が自嘲的に嗤う。
|
|「頭に藁の詰まったバカで役立たずのカカシ野郎ってつもりだった」
|「……オズの魔法使いの？」
|
|「でも、あのカカシは自分で能無しだと思ってるだけの知恵物で、不死身で、旅の仲間を身を挺して守るヒーローなんだよ」
|「…………」
|
| 君にピッタリじゃないか。
|
|「翠星石に呼ばれたのに、応えられなかったオレには過ぎた名前だろ？」
|「どうだろうね」
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.///////才´ -──┴─ 、
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､/／ ／///＞─………─ 〈
＼.／//／:.:.、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.:ヽ
／//／:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.／:.:.:.:.:.:＼.:.:.
. /////:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.､:.Ｘ 笊ト:.、:.:.:.:.､{
ー‐く:.:.:.:.:l__＼:.:.:＼ 仗ｚｼ |:.:.:＼{
|ﾄ:.:.:.:{ィ笊 ￣ Иl:.:､!｀
|l ヽ:バzﾒ ､ /:.:l:.:.:|＼
乂 }:.:..､ , ´ ｲ{:.:.l:.:.:| }
乂:.:.≧=- =彡、ト､V/
,に.／::::::::＼( Y¨¨`X≧z._
に/:::::::::{::::::::に、廴_/＼_ハ::}
V:::::::::::::::、:::::に、 ！ｌ .0《 ＼
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| あの夢、『品川大聖堂の夢』を蒼星石は見た。
|
| しかし、蒼星石は何もできなかった。
| 声も発せられなかった。
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| 助けを求める翠星石に応えられなかった。
| 世界を守り散りゆく《ブギーポップ》を救えなかった。
|
| 間に合わなかったのは、蒼星石も同じこと。
|
|「そういえば、星さんだけれど」
|「ん？」
|「ようやく『邪悪帝国』に合流したよ」
|
| 数日前、ケンシロウ班に紛れ込ませた趙雲子龍星を『邪悪帝国』に届けた。
| モーリアンビル攻防の裏、『新宿駅地下迷宮』攻略の真の目的だ。
|
| 兵隊に限りはなくとも将のいない『邪悪帝国』に、歴戦の将である星を届ける。
| そのついでに『糖分同盟』も『邪悪帝国』に接触。
|
| 蒼星石はこれを秘密裏に行い、志摩子が戻った今もまだ報告の機会を逸していた。
|
|「悪いな、翠星石も喜んでくれるよ」
|
| 星が必要だから生きてくれと説得した手前、『糖分同盟』に匿い続けてもらうのも限界があった。
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ヽﾆニニ: '"´: : : !:. : : : : : : : i: : : : :｀ヽ : : : : ヽ
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, : : : : : : .!: : : :ﾊ : :!: : '; : : : ＼ : : : : : '; : : ヽ : !
|: : : : : : :ｉ: : :./.ハ:.ヽ: : ヽ : :___lヽ.: : : : !: :ｉ : :|!:.|
| : : : : : / : :/ _,.ヽ ﾄ、 .l＼: : ヽ ＼￣「: |: : l !:|
'; : ; : :./: : /￣ ヾ:.＼ヽ. > ｧ｜: l: :/ ﾘ
Ｖ : :/: ;.ｲ ｀` ､＿,, 〉! ./;/
l:／イ: ､ヽ ゞ==" ￣ //ノ: :!:ヽ ついでにケンの事も謝らせてくれ。
. |∧: ' : :ﾍ.` i ,.ｲ ´: :|.｜:.:.＼
,.ﾍ : : : : ヽ、 ｰ - .／| |/!: :ﾊ |:.:.:.／
-､／. ヽ: : : :ｌ ｌ ＞ｔ- .,,＿,. イ:. ）! | / .ﾚ:／
ヽ､⌒l ＼: : | : . . ＞ｧｔ＜ヾヽ （ ﾄ'´:.:,.ｲ
＜´ﾍ.`ｰｔ ヽ:| ／／ //ﾄ､ヽ! | ）!.）.ｲ:. |
:.:.:じｒ.l :.ヽ ヾ ー'/ | | ー' .（ .ﾄ､:.:.:.: |
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|「ん？」
|「ケンなら君を殺さずに捕らえられると思ってたんだけどね」
|
| だがケンシロウはやらない夫を殺そうとした。
| 彼の命を捧げて、暴れる『教会』勢力を抑制しようとした。
|
|「オレを殺して事をおさめる考え方は納得できた。動画でも言ったろう？」
|「次はないようにしろって？ まず前提が違う。僕は君を殺す気がなかった」
|
| だが、刺客を送った。
| ケンシロウという凄腕の。
|
|「ケンに殺されると体が弾けて吹き飛ぶ。
| 血痕とかは残るけれど、肉体はニンジャみたいに爆発四散する」
|
| 経絡秘孔を突き、体内の気功を乱れさせ、本人の体内魔力を暴走させて爆破する。
| やらない夫はケンシロウとジャギの戦いで、その一端を見たことがあった。
|
|「つまりケンが君を『殺した』と言い切れば、君は死んだことになる」
|「……たしかに」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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∨ニニニニニニニニニニニニニニニ-/
. ∨＞ '"´ ￣￣￣ ｰ-=ﾆ二_′
＿__＿_} { _＿__
＼三二ニ≡＝＝==ー---－―=＝≡ニ二三三三:/
＼三三三三三三三三三三三三三三三三三／
7: : :/. : :/. : {:∨∧: : : : : ｀ヾ: : :ヽ: :ヽハ才
,: i : :{:: ::/. : :∧:∨∧: : : : : : .∨: : :': : i: :{
{: |: : }: /_才/:ハ:.∨∧: : : :斗弌: : : : : : ::!
j八: :{/彡,:ｲ云ｰ: :乂ハ=彳ハ: {ﾊ: :/ ,: : :!
从: 乂ハ ｀｀ヾ '" }ﾘ }'. / : : ; だがちょっと正直に過ぎたケンは
∨: : 爻_ゞ＝=- r==＝彡彳.: ::.′ 君を殺さないふりをする事が思い付かず、
. ∨: : 八 イ. : : : .'
. ∨: {: :≫. _'_ 乂: ,.: :/ 責任感から本気で殺しに行っちゃった訳だ。
∨从ハﾊ＞ . -‐ミ.. . .イﾊ.: :/: /
. 乂{ . ィf -‐:._}ヽ( .ｲ乂::.′
rfー--‐ " ィ{ .二二}=ミ｀ ＜从(___
/:ﾌ { ／／:. -‐ ｦ ＼ } }
. /. :｝ i} { i{才:ﾊ fﾊ＼___ﾉi} ′ﾊ
.. /. : 乙{ ゞ=ミf } j〈 ヾ==彡 ′｛∧
.ﾞ. : : フi} /乙′⌒Y{ }i:{ ′乙 ∧
,.: : : : :廴ﾊ ./ {__ 乂气{i:{ .ﾞ⌒(: : :.∧
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「説明不足で殺されたのか……簡便願うだろ」
|「メンゴ」
|「生きてるし気にすんな」
|
| ノリは軽いが正直な話蒼星石はこの事を大分気に病んでいた。
|
|「本当に、やる夫も蒼星石も気を遣い過ぎだろ。翠星石を見習え……
| つーか、気にしすぎて刺客を送らないのもどうかと思う」
|
|「気付いてたのかい」
|「お前が本気で動いてたら確保されていただろ？」
|「やらない夫が外で撹乱してくれていると動きやすくてね」
|
| フリットや臓硯から隠れて、『ケンシロウの参謀』として動いていたのだ。
| あまり目立つことはできなかった。
|
|「今回もオレを殺しに来たのか？」
|「いや、志摩子さんは最初そのつもりだったけれど……僕の案を聞いて考えを変えた」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__） 聞かせてもらうだろ。
. | ﾉ
| ∩ ノ ⊃
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「君は『敵』をあぶり出す英雄になってもらう。
| 『国際テロリストやらない夫』の正体ＩＣＰＯだかＦＢＩだかの潜入捜査官だ。
| 『敵』の正体を暴くためにテロリストとして指名手配された」
|
|「それ、全米が泣くハリウッドの新作で、全世界同時公開ながらすでに全米ＮＯ１なんだろ？ オレは詳しいんだ」
|
| 荒唐無稽だ。
| だが、すでにマスコミも人々もやらない夫にヒーロー性を見出している。
|
| 実は嘘つきの悪党とか、悲劇の主人公よりも、
| こういう頭を使わないスカッとした筋書きの方が喜ばれそうなのは理解できた。
|
|「ふむ、『血族』をクビになったら脚本家でも目指そうかな」
|「エグいのばかり書きそうだろ」
|
| 善良で心優しい、このスレの作者みたいな女の子には想像もできないようなことを書きそうである。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.. -―- ..､＿
,.::'´::.::.:::／::.::.::.::.::｀ヽ､
／:::/::.::.:;:'::.::.::.::.:}::.::.:､::.:::ヽ
/::.:::/::.::.:/::.::.::.:::/ﾊ::.::.::ヽ::.:::｀、
,'::ヽ⊥_:_厶彡'::://l::|::.::.::.::';::.::､ヽ
|::.::.:｢:::┬=ﾆ＞く l∧ヽ､::.::.:l::.::.:Ｖｌ
l|:::/ |::.:::l:|｢えﾒﾐ､ |ﾄ Ｖ:_::.::.::|::.::.:::l:|
ﾉ|:人｣::.:::|:l ゞﾐﾝ |ｌ ヽ:｀ヽ|:ｌ::.::;:l:|
´ j从:::|:::|:ﾄゝ 丶 芯刈:/::|::/〃
_rﾍ＿}人:l::l 丶 _′｀‐'/:/::l::|ｰ'′ だが、その後の展開次第では
/７rぅ ､廴_ヽﾄ＼ ＞=彳:::|::| やはり備府やらない夫には消えてもらうかもしれないな。
rう:.:ヽrﾍヽく ｀ﾒこて´Ｖ{ |::l::|/
７:.:.:.;.:.く_ｎｌ〈 /,ﾆ{}ﾍ f弌ｋ ﾉ/;ﾘ
/ :.:.::|:.:.:. r┤ ) // | lﾄ､＼ {X）″
. /:.:.:.:.:.|:.:.:.:.｀)|〈 // | |圦∨〉（ ＼
/:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:込八 ＼| l引 ∨ └r::∨
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|「君には『柴崎やってられない夫』とか、そういう名前を名乗ってもらうことになるかもね」
|「……『柴崎』？」
|
| 困惑と、期待がやらない夫によぎる。
|
|「僕の愚姉に婿入りすることを条件にすれば、やらない夫は釣れるだろ？
|
| 『品川大聖堂の夢』以降意識の戻らない翠星石は、キオくんとフリット氏、志摩子さんで鋭意治療中だ」
|
| 回復不可能と思われた状態から龍田を、その前に石田も復帰させた実績がある。
| 超能力の医療分野は未発達だが前途は広い。
|
| すぐにはできなくとも、いずれ翠星石も目を覚ますはずだ。
|
|「その時、行き遅れた姉を貰ってくれ」
|「『血族』的には難しいんじゃないのか？」
|
|「君の実力で結果を出して黙らせればいい。
| まあ、黙らせる必要がないようにやる夫と僕で裏工作を……」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ヽ､.＼
| （●）（●） .|
! （__人__） | ………………やる夫？
, っ ｀⌒´ |
/ ミ） /
./ ノゝ /
i ﾚ'´ ヽ
| |／| | |
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|「うん？ ああ、言い忘れていたね。
| やる夫は僕が匿っていた。元気だよ」
|
| やらない夫が訝しげに首を傾げる。
|
|「品川大聖堂で封印されてたそうだな」
|「……よく知っているね。僕とやる夫とアリカは『大天使召喚儀式』を止めようとして失敗し、封印された」
|
| 頷き、先を促すやらない夫。
| 突然緊張感の増したやらない夫に動揺しつつも、蒼星石は続ける。
|
|「封印を誰よりも早く抜けたやる夫が僕を助け、とりあえずその日の内に二人で逃げた。
| ……残念ながら半月後に戻った時にはアリカは開放されていた。探しているが行方不明だ」
|
| 蒼星石が臍を噛む。アリカは、蒼星石がこの道に引きずり込んだ。
| 彼女が無事でいればいいのだけれど。
|
| 『武僧』や『異端審問官』が彼女を交渉材料にして来ない時点で、『教会』側に捕らえられていないと思いたい。
|
|「やる夫が先、蒼星石が後だな？」
|「え？」
|
| 蒼星石の感傷を打ち破るように、やらない夫が硬い声で詰問した。
| 蒼星石には意味がわからない。やらない夫が何を言っているのか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,,..イ |
l _,,,...イ´ | |
ヽ、ヽ ＿_,,..-t''"´:::::::::::| l |
| ヽ:::::::::::::ノ / .|
ヽ、 ￣ ／ |
｀ |
|
.:::::...｀` ‐┴----_以ヘ‐-､ | 蒼星石を助けたのがやる夫なんだな？
:::::::::::::::::::::::::::::::::;/ｲ ´..:::::::::.ヽ、 .|
::::i;_;:_:::;_:::;, ィ'¨´::::::i:::;ｿ :::::::..＼ |
,r'-‐‐::'::::::::::::::::::::::::;ｙ' .::::... ｀¨`' ､. |
:::::::::::::::::::::::;:／ ..::::::::::::::￣｀ヾ､_ ｀'ｰ- .|
. ..:::::::::::::::::::;ィ'´ ..:::::::::::::::::::::::::::::::::::...`丶、 .＼_`マ
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≧´ .....::::::::::::::::::::::::_;;;､ﾉ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
i:::::::::::::::::::::;ィ¨´:_:_:i'::::::｀ゝ‐---ｭ､;::::::::::::::::::::::::::::::::
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|「……そうだけど」
|
| 頷く蒼星石に、やらない夫は警戒心も露わに周囲を見回した。
| それまでの和やかさから一変、蒼星石には訳がわからない。
|
|「それは、本当にやる夫か？」
|
| 厳しい目つきのやらない夫、蒼星石は狼狽した。
| 何を言っているんだ？ なんだって言うんだ？ 本当？ 本当ってなんだ？
|
| 無意識に胸元をいじる、ブラウスのボタン。なにか物足りない。
|
|「残念だが蒼星石、今のお前は信用できない」
|「なっ」
|
| 絶句する蒼星石に、やらない夫は躊躇なく背を向けた。
|
|「事件から一週間後、オレはちひろさんにやる夫の居場所を尋ねた」
|「…………」
|
| 千川ちひろ。『十二の封印像』の一柱『傾国』。
| 財産と引き換えに情報や物品を用意してくれる謎の神格。
|
|「品川大聖堂で封印中だとよ」
|
| 足元が崩れる、信じていたものが幻だったような虚無感に、蒼星石は震えた。
| 何もかもが欺瞞であるかのような孤独に視野が狭まる、恐怖に歯が鳴る。
|
| 寒い。怖い。
|
| 胸元をまさぐり、気がついた。
| やる夫に貰った魔除けは、どこにやった？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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絶頂とは、転落のはじまりであり。
どん底とは、成功の前触れである。
愛と全てを得た男。
腕と仲間を失った男。
一度は交わりかけた二つの定めは。
だが横をすり抜け傍を向く。
一人は星を見て。もう一人は泥を見る。
次回、最終幕五十一話『愛よさらば』
果てに見るのは破滅か死か。
にゃる即出にゃる夫君
乙
,....-ｒ::ｒ‐:::-...
〃.:::::l:::|:::::::::::::::ヽ
ｉi::::::::::l:::Ｌ.:::::::::.、:::.
ｊｊ, -‐'::ｰ', ＝ミ::.＼',
/〃⌒i}::::{､＿:::)::}:::.＼
;:::i{ゝイ::Y^Y::::::::/.::::::::::.ヽ
;::::::.〈:::://l l ｌ＼/.:::::::::::::::::.ヽ ＿__
::::::::::∨=-‐=＝7ヽ::::::::::::::::::::〉 {::::::::.＼
ｉ|:::::::::::.＼/////.:::::::>=＝ミ:/ ＼:::::::::.＼
乂::::::::::::::.∨///.:／／￣／⌒＞‐- ＞...::￣::｀丶、
｀¨¨フ７７７.:://.::,=ミ/.:::::／.::::::::::::i{::::::::::::::::::＿:::}
_ . イ:::::/:/:/.:://.::::{::::::.＼/.::::::::::::::::/ヽ.二ﾆ≠::::::/
/ //.:::/:/:/.:://.:::::/＼::::::.｀ァｧ‐-＜::::i{:::::::::::::｀:::く
. / //.:::/:/:/.:://.:::::/.:::::/＼::::::::::::::::::::::::::ヾｰ-::::::::::::::i
/ //.:::/:/:/.:://.:::::/.:::::/.:::::::}ｰ--:、:::::::::::::::::`￢:::::::::::|
＼//.:::/:/:/.:://.:::::/:::::斗=＝:{:::::::::::}:::::::::::::::: ＿__フ.:::::|
/l/.:::厶::-‐=＝≡i|ﾞ::::::::|:::::::::::ヽ::::::::::::::::::::: i（:::::::::::::::::::|
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| 『モーリアンビル攻防戦』から二日。
| ロビンがシロッコと会った翌日。
|
| 未だ体調の戻らぬ龍田は、鷹野三四の実験室に寝かされていた。
| 一見元のままの皮膚の下にも複数のチタン板が仕込まれ、臓器も強度の高いものに差し替えられている。
|
| 結果体重は激増。
|
| 片方500kgある腕を外しても、乙女の口から言うには憚られる重さであった。
| その両腕は外され、部屋の隅に。だが頭部ヘルメットは外れぬまま。
|
| 龍田の頭部上半分は頭蓋骨を切開され、脳や神経に直接機械を接続されていた。
|
| ヘルメットはデザイン趣味は悪いが、性能はピカイチだった。
| 無線、リアルタイムデータでの戦場俯瞰、各種センサー。
|
| 口や胃腸は残っているので食事は可能だった。
| しかし、ここ一ヶ月はゼリー型の栄養剤でエネルギーを補給していたために、
| おかゆからスタートせねばならぬ程に胃が弱っていた。
|
| ベッドの上に横たわり、ヘルメットの都合で満足に寝返りも打てない龍田。
| 洗脳を抜けた影響か、それとも別の理由か。全身から脂汗を流し悶絶。彼女の症状には波があった。
|
| 軽くて発疹、高熱、嘔吐、激痛。
| 重い場合は昏睡、うわごと、ひきつけ。
|
| 横に座り、懸命に看護する石田にも疲労が見えた。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, ｨ≦三三三ﾆﾆヽ､
ィ三三三三三三三三三 ､
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/三三三三三三三三三三三|三≧
ｨ三三三三三ニﾆ三三三三三|三三ﾍ
|l三三ﾆ＞三三ﾆ''＼ﾆ＞ミﾆ三l三三ハ トイレの世話まで任せちゃうなんて
ﾊ､／ニ=､l´ ＼| ヽ | Ｙｿ三三ｿ 恥ずかしいわ。
/三|､Ｙﾍ ヽ l _l＿ﾒ＿ﾉ/ｘ≦彡
i三三＼ ＼＞― ´￣ ｨ/i､/ヽ三ｲ
ヽ､三 /､`≦ｚ _ ,ｚ≦ミ l/ |三ﾍ､
｀ ヽl i＞ ≧≦＜ ｉlﾘ ヽ三三ヽ
,|､: : i: : : : i: : ': :/: ＼ 〉三/
, ﾍ: : `:ｰ:＝:ﾆ:彡く: : :/ ヽ､l三ﾆゝ -‐=ﾆ
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|「コーホー」
|「……もうっ」
|
| 状態が落ち着いているように見えても激痛と倦怠感に襲われているはず。
| それでも軽口を叩く龍田を前にして、看護する側がへこたれてはいられない。
|
| 病ではない。だが強力な病気や何らかの拒絶反応に見えた。
| 三四がシロッコより仕入れた資料によれば、『カトルカール』は定期的に特定の薬物を接種しているという。
|
| それを注射しても症状は緩和しない。
| であれば、原因は別か。
|
|「うふ、うふふふふ……やっぱり、罰なのかしら……」
|
| 怪物になった。意識も選択もなく、肉体を利用されただけではある。
| だが龍田は、怪物だった。ほとんど夢現だがいくつかのシーンは脳裏に刻まれていた。
|
| 無辜の一般人を殺した。命乞いを無視して頭を潰した。
| 一人や二人ではない。正確な数はわからない。
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／ ヽ＿＿_〈 - _
／::::::::::::::::::::::::: ＼ - _
／:::::::／ヾ:::::::::::::::::::::＞ 〉
／::::::::::/ ｀￣|:::::::::::::::::::＞.,＿__/
／ｲ::::::::::/⌒ |::/:::::::::::::::::::‘,
. ／ ./:::::::::抖笊 ￣j/ヽ :::::::::::::::::‘,
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. /:::::∧ 乂ツ'/::/::::: |::::| |:::::::‘,
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{／￣￣ ≧=- ／:::／:::::／彡 ,/／ }:: ｌ
/:: ／＿／ ／≧x, }::/
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| もう、元の人間には戻れない。
| すべての罪は消えない。
|
| 機械の体で生きていく以外に道はない。
| その身に背負いきれぬ罪の重みに軋みながら。
|
| 愛する人と共にある幸福は、すぐに罪悪感という地獄へと反転する。
| 幸せになれた、あるいは幸せだった人々を殺しておいて、己だけ幸せで良い訳がない。
|
| 天龍の不在も、彼女の絶望に拍車をかけていた。
| 龍田はダメなのだ。誰かを甘やかしていないと。
|
| 依存相手を失い、死ぬ理由はあっても生きる理由はない。
| それが今の龍田。その身を苛む症状は、彼女の絶望を具現化したかのように禍々しい。
|
|「…………」
|「いっちゃうの？」
|
| そんな龍田を置いて、石田は立ち上がった。
| 仕事がある。人々を守るために。
|
| 龍田は自分にできなかった仕事を行える恋人が誇らしく、羨ましかった。
| だが同時に、ひどく寂しくもあった。
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〃 , -‐‐- ､ ﾊ ｺﾎｰ
|i i !! i iﾊ
|i _ｌ｣L =-‐ __ヽrﾍ、 ｺﾎｰ
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// ∧ --ﾍ乂/
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/厶 -‐=≦､_ `く ｨ凧
｀,ﾆ=‐ ､ ｀ _≧=‐'
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／ ,ィ´ ｢ ｢｀ヽ‐､｀ヽ.
/ /i ﾄ､ l ! ヽ.ヽ ',
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/ /＼i l lヽ!__,ノ^| l_l |
ム /ハ＿__l__j_, イｌ |
├'∨ﾊ i_j＿j＿j＿j_! ! Ｌ.. -‐'77´￣ ｀二二ﾌ
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|「うん、いいこでまってる」
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| 微笑み。
| 腕を失っているため、自分から触れることも手を伸ばすことも叶わない。
|
| 言葉ですがり付けば、石田は待ってくれるだろう。
| だが、困らせたいわけでもない。
|
|「キスしてって言ったら、こまるかしら？」
|「…………」
|
| 石田は酸素吸引装置も兼ねたヘルメットを外し、爛れてケロイドになった素顔を晒した。
| 半分溶けて剥き出しの歯。爛れた唇を龍田の土気色でひび割れた唇にあてる。
|
|「すきよ」
|「……」
|
| 龍田は微笑み、珍しく静かに、安らかな眠りについた。
| すべての苦痛が終わりを告げたかのように。
|
| それが、彼女の肉体が完全に敗北した証だと、気付くはずもなく。
|
| そう、二人とも知らないのだ。
| シロッコの指揮下を離れた『カトルカール』は、遠隔操作で自壊するように毒薬を仕込まれている。
|
| 本来ならば内臓が溶け、体が内側から腐り、一時間足らずで死に至る。
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ﾊ.l l 彡'//////////,ｌ/
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| 荷物をまとめ、丁寧に掃除をした藤木源之助。
| 生き残った『カトルカール』は彼を不思議そうに見つめている。
|
| ここは『新宿衛生病院』地下の、『カトルカール』調整室。
| 『モーリアンビル攻防戦』で瀕死の重傷を負ったアゲハチョウことアメテュストの生体部品が、医療ポッドに浮いている。
|
| あどけなさの残る顔立ち。しかしその右目は空洞で、斜めに走る深い傷跡が目を引く。
| グラマラスな胸部と滑らかな腹部までは本人のもの。
|
| しかし右腕と両脚はなく、背中は開き複数の生命維持ケーブルが繋がっていた。
|
|「彼女に宜しく伝えてくれ」
|「イジメないで、イジメないで（げんのすけ、行っちゃうのぉ？）」
|
| 医療ポッドの脇に座り込む爆弾蜂ことトパスが顔をあげる。『カトルカール』は通所の言語を発音できない。
| 代わりに彼らの中だけで通用する内線で、会話をしていた。
|
| 源之助はインカムでそれを聞いていた。怪物じみた外見と動きに比べ、平時は皆至って普通の人間だった。
|
| 機械の体の、食事の味気なさを、セックスできない肉体を、
| 酒も麻薬も分解してしまうことを、文句を垂らしながら下品な冗句と訓練の疲労で押し潰す。
|
| セックス関連の卑猥な話題は朴念仁の源之助には難しかったが、そういう連中は嫌いではなかった。
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ゝ:::ﾙ´≧s。
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{ l:＼ ｘ ヽ:::ﾑ ／y
ヾゝｲ ゝ=､:ﾏﾑ ／彡
. ∨ﾊ ﾍ::ﾏ}y, y .／//
. ∨ﾊ ∨!:::} ｆ ／ イ r≦//// いくよいくよ！
ヽ:::ヽ ｧ /}{::::| __。斗======､___ i! .／彡////////////' いくよいくよ！
＼:＼ //／ﾆ|:::::| 。r≦}: : : : : : : : : : : : :≧s。 .////////////////／イ´
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＼:≧s。 y=､ゝ-::≧s, il:::/ニニﾆﾆ∧: : : /二_: : : : :＞､ 〕!///////////////彡´≦彡
y､ r==- ＞､::::::≧s､ ゝ､ヽ､ニヽ:::::::/ニニﾆ／: :ﾊ : /,ｲ￣｀ ＜/: : :} 〕}/////////////s≦彡イ
ﾏﾑ､ ｀ー===--- 。､:::ヽ{:､＼::＼ }::::/ニﾆﾆ/ﾆメ: : :ﾍ': : ::ヽ===ｲ∨: :〕＞､ 〕 ≧s。/////////≦///≦彡
｀ ＜≧=--､ ﾏ:::ﾊ::ﾍﾆﾏ:::::::::{ニﾆﾆﾘ／: : : ﾍ´ヽ: : : }: : : : : }: : | /------≧s。//////＞ ´彡
ゞ≧｀ー､:ﾊ ゝ=::ヽ}､:::ゝ:::::::::/ニﾆﾆ/ニ}: : : : : : ﾊ: : :}: : : : : |: : ! ./------.／---.≧s。＞ ´
｀ ＜≧ﾏﾑ､_。ｒ≦≧ゝ≧s。:::::::{ニニ.ｿニ/: : : : : : : }/／ヽ: : : ﾉ===､/----- ,ｲ--------- ≧s。
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／:ヾ}ニ .｀´// ／--／--------/ ＼yrｯソシ∨---.ヽ----------- /....∨ /
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| もちろんホーニーやダッキーのように露骨が過ぎる上に 戦闘時も悪ふざけされるのにはいい顔ができなかった。
|
| いい顔はできなかったが、その二人が命を落とした後になっては、笑ってやれば良かったとも思う。
| いやそも、源之助は考える。笑うという動作そのものが困難なのだが。
|
| 生き残ったのは『カトルカール』初期組はホッパーとリッキー。
| 同じく攻性ウィルスを流し込まれて生死の境をさまようブッティ。
|
| 二期からはアメテュストとトパス。そしてマルティン。
|
| 五人……いや、六人が死んだ。
|
| 『結社』にいた時分から汚れ仕事も仲間の死も当たり前だった。
| 別になんの感慨もないはずだった。
|
| はずであるが、藤木源之助は深く揺り動いていた。
| 無垢ではないが愚かで激しい少年少女が、『破滅願望者』を名乗る純真な魂が。
|
| 源之助の心に。
| 明かりをともした。
|
| 明かりは、源之助の隠していたものを照らした。
| 心の影に押し込んだシャドウ。抑圧された源之助自身。
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. /|
. /i::| ____ ___
. | i::| | || l || |
. | i::| ､||/ ||/ 探シマシタ。
. | i::| ﾄ､ |￣￣ | ,.ｲ ハジメマシテ、藤木源之助サン。
. | i::| ｜ ＼＿__| | ＿_／ ｜
. | i::| |_,／ ＼__／￣￣＼/´ ＼__| 新入リノ、ロビンデス。
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. | i::| / /＼／ ＼＼---‐' ＼／＼＼__
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｛三し{_／ /￣}二二{ ﾉニ〔￣〉 ＼|＿ｌ|／
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. ￣￣| | | |
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| ドアが開き、見たことないほど機械化された人物が丁寧に挨拶した。
| 接客ロボットを思わせる滑らかな動き。
|
|「イジメないで、イジメないで（一昨日のひとだ）」
|「ソウデス、オ世話ニナリマシタ。オ礼ガ遅レテ申シ訳アリマセン」
|
| 内気なトパスが怯えない。『モーリアンビル攻防戦』で共闘した『血族』であろう。
| 『カトルカール』の無線通話システムにすでに参加可能の様子。
|
|「丁寧な挨拶を頂き申し訳ないが、手前はお暇を頂く所」
|「オヤ……」
|
| 面食らった様子のロビンに礼を返す。
| 未練を断ち切るように、彼の脇をすり抜けようとする源之助。
|
|「オ待チクダサイ」
|「なにか」
|
| 立ちふさがるロビンを、源之助は見下ろした。
|
|「『血族』四天王ノ黄泉様カラ伝言デス」
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|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : :.:.:.:.:│ｨ'で「う`ヽ、 ﾄ::.)ﾟ} ﾉ│:.:.:|.:.:.:|
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.|.:l弋::.) ﾘ 弋ソノ |:.:.:.:|.:.:.:|
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : .:.:.:.:.:ｌ´`ー'' : |:.:.:.:|.:.:.:|
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| : !:.:.: |￣ 『九鬼』に空席があるが、
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| / ,':.:.:.:.| 頼れる虎眼剣士はおらぬものか。
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : : :.:.:.:.:.| /厂￣
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : ...:.:.:.:.ト.| --一' ′ ／.:.{ おらぬのならば、
|:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.| ヽ､ ／..:.:.:.:i ワシと歳が近く信用できる
|:.:.:.:.:.:.:.:.| .::l.:.:.:.:.: | ＞ ､ イ....: :.:.:.:.| 相談役でもよいのだがな。
ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:l:.l .:.:.:.| Τ´.:.:|.:.:.l.:.:.:.:.|
ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:| | .:.:.:.| ∧.:.:.:.:l.:.:.:|.:.:.:.:|
/:.:.:.:.:.:.:./|:.:.:| |.:.:.:.:.| { ＼.:.l.:.:.:|.:.:.:.:|
. / .:.:.:.:. 〃 |:.:.:| |:.:.:.:.:| i ＼.:. ｌ.:.:.:.:|
/.:.:.:.:. ／ ＼| |.:.:.:.:.| { ＼.:.:.:.:|
. /.:.:.:.:／ ＼::..|＼ ', ＼ノ＼
/.:.:.／ ヽl ＼ } 〃＼
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|「……それがしには関わり合いのない事柄故」
|「戦闘デ腕ヲ失ッタ『キルオール』様モ、藤木サンナラ同様ノ『気功型義手』ヲ……」
|「くどい……トパス」
|
| アメテュストの医療ポッドの横で、座り込んでいたトパスを呼び、源之助はロビンを押しのけた。
| 『九鬼』、源之助の古巣。
|
| 恩師も仲間も兄弟子も想い人も皆死んだ。もはや帰る場所はない。
| ロビンと源之助を交互に見比べながら、ついてくるトパス。ロビンはついてこない。
|
| 源之助は他の三人のいる談話室に足を向けた。
| 中からは笑い声。死を意識する兵士たちのバカ騒ぎ。
|
|「皆、構わぬか？」
|（パンツ上げろ）（その前に出しちまいそうだ）（早すぎんぞ）
|
| 無線で下品な冗談が飛び交う、源之助は無理に笑おうとし、頬を引きつらせた。
|
|「俺はここを出ていく。やらねばならぬことがある」
|（女か）（女か）（べっぴんか？）（げんのすけ彼女いるの？）
|（つーか辞めるの早いな）（早漏）（そーろーってなぁに？）
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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く川三三三≡ヽ彡ｼ
, - 彡=≡ 三彡彡彡｀ <
, ' 彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｼｼl , '⌒
／ﾉﾉl〈〈从川シシ彡彡彡彡シシl_ノ
,'｀〈ミﾐﾐﾐl|l|//彡 '´:::）:::::｀彡彡シｼｼｿﾄ､
ﾐミﾞﾞﾞlﾞﾞ" / :::::::::=彡彡彡ｼ_ｼl ヽ､_
/:ﾐ ヽ、 l ::::::::::::::::::::::彡/r.ヽ| .
! l ｀ !._ｚ‐'´;::::::::::::::〉/i : }| なんとでも呼べば良い。
ヽ....__ 、..,zｨ て刀´::::／::!! ）ｿ/ﾉ 俺は貴様らを犬のように使い潰すシロッコへの愛想が尽きた。
∧fてﾊ.､ :::::｀ゝ' ´:::::::/:::::::::::／,ｲﾄ､ 奴から貰う腕などいらぬ。
l ヽ‐ '´:l ::::.. ::::::::::::::::::y'´:::F 、
l '、 } ::::: :: :::::::::::::::::l::::::::∧ !
｀ ＼ ゝ-:'´ ::::::::::::;:::::::::/:::ヽ
＼ ←-..→ ::::::／:: ::!:::::::ヽ
＼｀´ .:／ :: :::::::::::::＼-､
ゝ-- イ:: : ::::::::::::::／ ＼
l : .:::::::／ ＼
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| 根本から失われた左腕。
| 視線が集まる。『カトルカール』は知っていた。
|
| 右腕一本で、無改造で、藤木源之助がどこまで戦えるかを知っていた。
| だが同時に、機械化され、怪物にされていなければ自分たちの存在価値がないことも理解していた。
|
| 行こうと思えばどこへでも行ける源之助と、どん詰まりの『カトルカール』。
|
|（さっさと行けよ早漏野郎、二度と帰って来んじゃねぇぞ）
|「いいや、俺はここに帰る」
|
| だから羨望を、理不尽な怒りを隠しての罵倒だったのに。
| 源之助は思わぬ言葉を返してきた。
|
|「俺は守らねばならん女がいる。
| その手を取る方法は簡単だ。刀を手放せば良い」
|
| 腕が一本しかなくとも、あるいは一本しかないからこそ。
| 二兎を追えない。目的を一つに絞る。
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＿＿ ／ ｀マﾆﾆﾆ７ス}
「｢ﾆﾆﾆ ､ ､ :. マ／イﾘ
| |ﾆﾆ i! |! ﾊ i! } :. K､ｊ/
ﾏﾆ ｊ! jﾄ＿{ ヽ__｝! ﾊ ! }ハ
７ ハ／ -―--＼} !__}}
/ ｊ |! ／⌒ z=㍉x | |ﾆﾆｭ
}/ }! ｊ 〆㍉､ 爆｡ ﾘ : !ﾆﾆ{
| ハ {! 爆ｊ ､ ｀¨ﾟ ! ﾘﾆﾆ i
| |ﾊ{ ｊ /ﾆﾆ !
| | ハ＼ / /ﾆﾆ i!
| ! ﾑ ｒ_｡ / /ﾆﾆ 川
:. V }≧。.. .. ィ ／/ ／ﾘ ｊ （……じゃあ、わたしたちは？）
:. V ハ 个 ー=ﾟ T ｊ／､イ／ /／
＼ﾊ＿}ミ､ ＿｣ ィ ´ ´
´￣￣ ｀ー｢ ミ｢ 」⌒＞＝ー―､
/ { V ,ィ〒KヽY ハ
/ ヽ ｀ｰノ i！ヾ７ / ヽ
／ ｊ ／￣￣ ミ ､ / ＼
／ /￣ｊ/ { ｛ {
} ／ / ｙ´￣ ヽｒ､／ヽ／{｣ﾄ､
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|「その女の手を借りる。その時、もう一人頼れる者もいる。」
|
| 源之助の手は一本しかなくとも、二人足せば五本になる。
| トパズが自分の機械の手を見た。ホッパーは鉤爪でしかない己の手を見て嗤う。
|
|「ここは、俺にとって思いの外居心地が良かった。だから最後に貴様らに頼む」
|
| 源之助が頭を下げた。
| むやみに堅苦しくて、プライドの高いこの男が頭を下げるのを、『カトルカール』たちは初めて見た。
|
|「死ぬな、生きよ。俺が迎えに来るまで」
|（むずかしいよ）（無理だって）（だがまあ）（やれるだけはやってみるさ）
|
| 困ったようなトパズと、ゲラゲラと笑い飛ばす他の三人。
| 源之助はトパズの頭を撫で、ホッパーの肩を叩き、他の二人と握手をした。
|
|「『血族』のロビン、聞いていたな？ 俺がここに戻るまで、彼らを死なすことまかりならぬ」
|（心シマショウ）
|
| 通信を通しての苦笑に、源之助は唇を歪めた。
| 今は、脳噛ネウロの思惑に乗ってやる。
|
| そして医者だ。
| 島津由乃の為だけではない。
|
| こいつらを、安全にシロッコの元から逃がすためには。
| 腕の立つ医者がおらねばならぬ。でなければ、今頃は腐って死んでいるはずのあいつのように……。
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/ハ ／ } イ ／ }
/ {/ } ／ ムｲ
}｀Y ィ_ ィ |
/ 八 xー`ｰ` " " Z、 :|
{ / / { j7
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＜.〈 ィﾆﾆミ ､--v ィﾆﾆミ ､ 「 /
[{:::(◯)::}::}⌒V:{:(◯)::}]ﾆﾆゝ､く これじゃな。
{＾ゝ ＿彡/ ゝ ＿彡 }/:ﾍ}｀¨ 仕様書には無い部品。
Vﾊ ｛､__,_， 〃) /
∨} ／ ｀ヽ / ! イ
八 { -‐_＾`_‐- } / } }ヽ.／⌒ヽ
/ j ヽ、, ,人 ､､ __ .ノ 从ﾉ_./ ﾉ
{ ｀ヽノ〕 ／ ｀¨¨¨¨／ { {､＿
＿厂{ L.. { { . -‐/´￣￣￣｀ヽ ｀ヽ
r‐ ¨¨ ー┐ 八__ノｰ廴_ノ { -―- ､ ﾊ }￣￣≧=- ､
／ゝ {¨¨ /{__./ヽ／ ﾉ / }-‐ ' .， ´ ヽ
／ 〕 ＼ {i:i:i/ / ／ { " ¨¨¨¨` / | ／
｀Y / 廴 ∧ ∨ / { { ＿_ | 〃 }
| .′ ｀ヽ / }/ / / 〉´ ｀ ﾊ′ ﾆ=- .
| { ーz / / / :} ､__,ノ{､ / :} ﾆ=- /
_人 ､ 〔 / .′.′ ﾉ 厂 ゝ`ｰz ｲ} ＼ ＼
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|「遠隔操作かタイムリミットで注射される仕組みじゃ。中身は見たことのない毒であったようだが……」
|
| ゴーグルで視野を隠したフリットが、機械の内部を精査する。
|
|「悪魔系の生物毒だよ、精製して毒性を高めてる。よほどの魔力耐性があっても飲んだら危ないね」
|
|「内臓の状態は？」
|「悪い……けど」
|
| 口ごもるのはキオ。機械に詳しいフリットとは逆に、人体ではキオが一日の長がある。
|
|「報告は簡潔にじゃ」
|「ごめんじいちゃん、肝臓の毒性が強すぎて、透視してても目にしみるんだ」
|「どれ……むぐっ」
|
| のけぞるフリットを、不安そうに見ていた石田が支える。
| 意識を失って一時間、龍田のバイタルは急激に悪化していた。
|
| 志摩子と先代の治癒魔術により何とか持ちこたえているのが現状。
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:.:.:.:.:.:.:/:l:.:.:.:.:!:.:.:l:.:.:|:.:l|:.:.:|+|-|-+/､/_/_/:.:./:.//
:.:.:.:.//:.:|:.:/:.:l:.:.:|:.:.:l|ヽl:.:.:l巛!:ゝ:.:/_/／/／:／
:.:.:.:./:.:.:l:.:.l:.:.|:.:.:.l:.:.:l! ゞヾ ! y'´ /::!ゞﾘ／／
:.:.:/:.:.:./:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:.l| ヽ ヽ、i:/ イ '´
:.:/:.:.:./:.:.:.|:.:|:.:.:.:l:.:|l| ｀` !
/:.:.:./:.:.:.:.:|:.:l:.:.:.:∨ヽ ヽ、 肝臓を中心に毒の浄化を行いますか？
:.:.〃:.:.:.:.:.|:.:.:､:.:.:.ヽ、ﾄ、 , - '´
／:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.ﾄ､:.:.:.:.:!:| ､フ´
:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:l:|＼:.:.:.ヽ、 /
:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:l:.l /:>、:.:.ヽ`r-ｧﾘ
:.:.:.:.:.ノ/:.:.:.:.:./:ﾉ／ ）:.:.:.:）:l l.::(
‐_'´＿, -‐＜´/ /:.:.:.ノi:.:l l:.:ヽ、
｀! ノ:.:.／ノノ ヽ:.:ヽ
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|「いや、待って志摩子さん」
|
| しばしば、魔法による治療があれば医者はいらぬと思われがちだがそれは大いに誤りである。
| 正しい治療、適切な処置。
|
| その有無で治療の効率と予後の回復状況がまるで変わってくる。
| そして、体内をたやすくスキャンできる超能力者の存在は、キオがフリットに語った以上の結果をもたらした。
|
|「龍田さん本人が肝臓で作り出す毒が、龍田さんを殺そうとする毒と戦ってる。白血球みたいに……」
|
| それは、他ならぬ毒使い故の器官。
| 龍田本人の持つ毒が、外から来た毒を中和しようと戦っていた。龍田の不調の原因はそれである。
|
| 本来ならば苦しむだけ苦しんであっさりと死んでいたはずの龍田が苦悶しながらもいまだに生きながらえる理由。
|
|「どういたします？」
|「志摩子さんからじゃあ毒の区別はつかないでしょう？ なら龍田さんの魔力を強化お願いします」
|「お任せください」
|
| 神道の結界は本来は絶対的な『穢れ』の除去……『祓い』である。
| だが、それでは龍田本来の毒も祓ってしまいかねない。
|
| ならば、龍田の免疫力を高めるかのように。
| 龍田自身の毒と戦う力を高めることができうるならば……！
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／二二二二＞: :'´￣/^ｰ─ﾐ､
／／ ／: : :/: : : :./: : : : : ＼＼
／'´ ／: : : :/: : /: /: : : : : : : :.＼＼
／. /: : : : : /: : : : /: : : : : : : : : : : : : ヽ
. i /: : : : : /i: : : : : : : :/ヽ: : : : : : : : : : '
. {､ /: : : : : /亅: : : : : : /j i: : : : : : :.i: : : '
/:i: : : : :/ i∧: : : : :/ i ＿}ﾊ: :.:.i: : :|: : : i
/i: |i: : : :l ≧z､∨: :./z≦__,__ i: : :|:.|: : : : :|
i从: : : |弋f心､ヽ/ / ﾄ'zｿﾉ│:./: i: : i: :.:| せっかく生きて戻れたのだ。
|: :|: :从 ￣ , "￣. 亅/: /: : :|､: | こんな所で死んでくれるなよ！
|: :|､: : ::. ヽ 'ｸi: :/: : : :i:ヽ|
∧:j─vｰ＼ v' ) ／/:ｲ: : : : :|:.ﾉ|
/: :〈＿人__/:＞ ' , ﾄ＜⌒⌒'ﾌ: |
/: : : : i∮∮i: : fゝ｀ ´＿＿,ノ¨;八￣￣:i:.:|
/: : : __人∮:ﾉ'⌒i三三三三三ノｰ‐i_r─<､i＿
/: :／ｦゞ-'^'f´/ /≧≡==≡≦| /ゝ'⌒'´ヽ ＼
. /:／ /: : : : :././ /.三三三三三 |. / i: : : : : : : i ,
/:/. j: : :__,ノ_/ 三三三三三三 {./ ヽ: : :ヽ: :/.. |.
. /: ; レ'rｰ＜＿＿__∧v──'´￣ヽ.. ヽ: : :∨ ;.
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|「顔は難しいけど、腕は新しいのを用意したからね。感謝の気持は現金でよろしく」
|「コーホー」
|
| ロストスキルの運用データを利用した、新型気功義手。
| 藤木源之助にも用意されていたそれを示しながら、霊夢も治療に参加中。
|
| かくして、『カトルカール』の毒は完璧に解析され、除去される。
| 新たな四肢同様に、失われた顔や容貌のための仮面も開発されつつあった。
|
| 自分の求めるものが、まさか『血族』に揃っているなど藤木源之助は思いもよらず。
| たが、遠回りこそが結果的に源之助を救うことになる。
|
| それほどまでに。
|
| 今の『血族』は危険であった。
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東京守護が、『血族』の目的。
そのために手段は問わぬ。
邪悪も、外道も、汚濁も飲み込む覚悟がある。
その象徴こそ、正体を悪魔と目される魔人、間桐臓硯その人であり。
そしてもう一つ。
この街を守るために差し出された邪悪の盃を。
飲み干す覚悟は、お前にあるか？
次回、最終幕五十二話『博麗先代』
果てに見るのは破滅か死か。
清濁併せ呑むの行きつく果てやいかに
, : ' : : : : ヽ､＿
／: : : : :/: :ヽヽ: ＼＼
/: :/: : : /: : : :i: : i: : :ヽ ＼:.、
': : ': : /: |: : : i:.|: : |: : : :ヽ ＼＼
': : i: : :|ｨ大__ﾉレ‐从__: : :.|. ヽ＼
i: : レr f示ﾐ ,ﾉ f示.ｱ: ﾄ､i ﾉ:.ﾉ
|: : i:∧ ゞ'┘ ､ ｀¨´'.: :ヽ '"´
': : |: :∧ 人: : :i 本当にこの店なのか？
i: :|: : : :{｀r:... ^,ィ:´: : i: :/
}: :.＼__ヽ|ｰ─: |＿: },/:＼
, --- 、/ヽ厂￣ヽ::::::::::::::::::::::＼￣＼ヽ
／／〉に二}┬ ､:.＼_,__}:.::::::::::::::::ヽ'´::::::::::｀::＜￣￣＼
r─ ' 〈／. ＼ ＼＿＿}::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::｀:. 〈＼
. ＼ _ i´| | /::::::::::::::::::::: i::::::::::::::::::::::.i. ∨
ヽ , ⌒ ヽ }:j i: i | ;':::::::::::::::::::::::::|､::::::::::::::::::ﾉ. ノ
ノ ヽ, ィ´: : :､＼i::::::::::::::::::::::::'´:｀:::ｰ:r‐ '... ／
／ ＼: : : : :ヽ i:::ｰ─:::::´:::::::::::::::::::{. ⌒＼､
／ i ＼: : : : :＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::､. ｀ ｰ､
ヽ に二} 〈＼: : : ∧:::::::::::::::::::::::::::::::i. ヽ
/〉 人￣＞‐ﾐ:ノ i:::::::::::::::::::/:::::::::|..__に} ＼
〈/ ／ У ヽ＼:.:＼}::::::::::::::::{i::::::::::ﾊ<Lヽ 〈＼. i
に二} に二} ／.... ﾄ､＼ヾi .ト ､≧:.:i⌒ﾐr‐v⌒i: ｱ ヽ ＼.＼〉.... i |
〉 ／￣￣￣ ｰ'´ >＼}､jゝ' /:.:.:.:Y:.:_,人人:.:{ｲ-ノ 人 ヽ 〈ヽ } |
ノ. / ｀ ﾉ:.:.:.:.:.｀/:.:.:∧:.:.Y:.K,ィ ,.ｲ ､. ヽ〉 ､
′, :::'´:.:.ハ:.:.:.:ノ:.:.:,ﾉ:.i:i:.:.{:.:.:ヽ'「´ } r┐ '
＿＿＿_ ノ'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.V:.:.:.:／:.:.八:.:ヽ:.:.:.＼_ i }:.:.i |
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|「我が魂の宿敵（友）アンデルセンの行きつけである。間違いはない」
|
| 蒼星石とやらない夫の決裂の翌朝、『緊急事態対策班』の四名はモーニングを食べに喫茶店に来ていた。
| 薄暗い店内には挽きたてのコーヒーや焼き立てパンの香ばしさ、バターの芳醇さなどの心地よい香りが漂っている。
|
| なお、店名は『甘味処 ニュクス』。
|
|「モーニングを四つ、飲み物は全てブレンド」
|「はーい」
|
|「勝手に決めるな『狂死』」
|「我は構わん」「呂布殿がそうおっしゃるなら……」
|
| メニューを確認もせずに注文する『狂死』。食事にはあまり興味のない顔。
| そもそも彼は、元々食事など栄養補給に過ぎないと豪語していた。何でもいいと。
|
| 先代は嘆息し、腕を組んだ。昨日の龍田治療の疲労が抜けていない。
| 約一ヶ月軟禁されていたせいで体が鈍っている。食事は美味しかったせいで体重も増えた。
|
| 無視できない量の脂肪が主に胸に増えたせいで肩こりがひどい。
|
|「せっかく呂布殿が帰国されたのに、ロビンは何を考えておるのやら」
|
| 神道系であるロビンや石田は、先代の後輩だ。ついつい口うるさくなる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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∨ ∧ / / // / /
∨ ∧｀丶､ / ／,.ｨﾊ // ,' /
∨ ∧ ｀ヽ , ／ ／ 弋ソ // O .l ,'
∨ ∧ .l ﾍ／ ／ /ヽ, il // _＿_＿ l l
∨ .∧ l l. ,.ィ´ ./ ﾊ､ l!/∧ O l l なに、
∨ ／＼/ l／ ／..／ l ／∨∧ _＿＿ l l! 『可愛い子には旅をさせよ』だ。
∨ ／ ./l ,.へ '｀´ .／ ./.l .∨∧ O l! l
l / 〆l‐〈 l ､,.ｨヽ, / .l ∨∧ _＿＿.l l 見聞を広めるのも必要であろう。
∨ l } ! .l ／lゝｪｿ / l ∨∧ O l ﾄ､
l ﾙヽリィ ､l／三i} ,.ｲ l ∨∧ ─ﾊ ,' ＼
＼ ／ 〉三≡≧,.，-‐'' ∨∧ ,ｨヽ
`､ ,' 三三＜_ ∨ ｀'.〈 ＼
＼ l/´ _＿≧, l＞ ., ｀'ー ∨ ＼
` ￣`ヽヽ.l ｀l＞ ., ∨ ／
ヽ l､ l ｀.>､ ｀>'´
ヽ､ヘ ｨ' l ヽｰ､ /
`ー─‐一´｀ｰｿ / l
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| 『狂死』が薄く笑う。
| 旅、見聞。その程度で済めばよいのだが。
|
| ロビンが出向した先は『カトルカール』。
| 悪名高いシロッコの、中でも特別に悪名高い汚れ仕事の専門家集団だ。
|
| 奴らの邪悪さに比べれば『血族』はおままごと。
| 『狂死』やのけもの達ですら唾棄するほどの連中である。
|
|「水死、あるいは客死とは即ち魂の再生よ。
| ヒルコの祝福を受けているロビンは地獄を見ることで恵比寿になるやもしれん」
|
| もちろん、ならない可能性のほうが高いが。
| とにかく呂布はその辺りにこだわりが無い様子。
|
|「ジャギめもそうであらん事を祈るばかりよ」
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＿, --zｧ─ｧ‐=ｚ,_
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,ｨｆ/ ﾊ:::} ,ｨノ / __,ｨｆ'⌒フ＾i
. /}::|l/{ ﾉﾉ/レ--く::::ノ ／ ∧
/＼{lレ''"´ ﾉ___／r‐==ニ{
i { }ーｧ:;ノｒ==一7
. } ,ｨjﾊ ＼｢__,ﾉ,／￣{
ﾋx､ ノ ,ｨｆｧ'⌒ヽ ＼_/ ,ｲ｢} | ……ジャギは、案外無事かもしれん。
. ｀rぅ rｔ:::ﾗ フ / ノ ﾘ,/
. ｢´} ヽ￣｀ :' ｌ _,ノ
∨ / 厂i ト､
. ‘ー⌒ ,′ l リ＼
こ⌒ｰ ／ / ＼ヽ
__. -=≦八 イ ′ ∧ ＼
. / ー＜ ／ / l |＞ｘ､＿＿
. , | ＞─＜ / │ l ＼
. / /| ∧（oo） } / ,|. l
/ / l| ／ /ト冊{'＾ｉ / / | l
＿＿＼ i / ／ /＿_| l|_／ / |＼ l
. ￣│ / /ニニ| , │ ＼_｣
. | i | ﾄ-ｲ|＼ ＼ | ＼ ,′
. | l l （ｂｄ)| ￣￣ ,′ 〉 /
. │ | }冊{ | / / / /
l | |l〉)X(〈l| / ./ /／
. l | , | ﾄｰｲ│／⌒} / / /
ｌ │ / | （b d）.| / / ./ ／| ＿／
. l | / │ }冊{ │ / / / ,ﾉ /
ｌ |' |)〉)X(〈(| / , / / /
. l ! l ﾄ--ｲ l / / /.ｌ /
. l | | （ｂ ｄ）.| _,/ / / ′l /
ｌ | | }I冊I{│ l / / i ___∧
ｌ │ l＼ ／! | / ／ /／ /
|＼ | |)〉）X（〈(| │ ′ ／{ー--- ∧
| | |／ ＼| |│ ∧＼ / '，
. ,ﾉ / | | | { { ‘，
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「何を根拠に？」
|
| 『狂死』は気休めや憶測でものを言う男ではない。
| 先代はドキリとしながらも尋ねた。
|
| ……先代には、とある秘密がある。
|
| それは、つい先日『血族』に戻った『狂死』や呂布では知り得ぬこと。
| 軟禁されていた志摩子様を開放するために、身動きが取れないながらももがき得たもの。
|
| ジャギが行方不明になったと聞いたとき、先代はまず自分と同じかもしれないと考えた。
| 志摩子様開放戦線の、メンバーも規模も全く不明のそのチームの一員として闇に潜ったのではないのか？
|
| 同様に。
|
|「麻呂殿の黒子の正体はご存知か？」
|「えっ」
|
| 考えていたことを見透かされた気分になり、先代は思わず声を上げた。
| 狂気に陥った蘆屋道満麻呂。彼もまた開放戦線の一員なのかもと勝手に思っていた。
|
|「あれは魂がまるでない木偶人形、顔を覗いたが麻呂の使い魔であったぞ？」
|「む……私の勘違いか」
|
| 『狂死』にはできない確認をサクッと済ましてある呂布。その直截的な性格を先代は羨んだ。
| これくらいシンプルに生きていきたいが、中々それが難しい。
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| ヽ i | ,ｨ宍ﾐ｀´ ﾍ_ソ}/:.:.:.:|'.i::i
| . i∧ﾄ｀ゞ‐' .､ ' {ww ﾚ':::! 最初は蒼星石だったらしいな。
| ヽ:.:.:', __ /:::::::ﾊ:::::',
ヽ ./〉ﾄ;.:.:＼ ゝ ' .,ｲ::::/ﾘ::ヾ:::',
/ 〈/ .i { wwi｀r ､__／__|::/::::::::ヾ::::',
| ﾉ〉 / i::::::リ￣￣￣ ﾘ＞r‐r‐‐､:',
| r､｀ / } 从ﾘヾ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i:.:.| ＼
i. 〈ノ / ﾉ |ヾ､:.::.｀ｰ──‐'´:.:.:｀ヽ､. ＼'⌒iヽ､
人 ／}､ / |;;;;;;|:.:.:.:.:.:.::.｀i´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀r､ ヾ:ﾉ ヽ
.〈,イﾄ-'´ .i::ヽ .i i;;;;;;i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;ヽ .//〉 ',
^ ﾉ;ｲ∧.i /;;;;;;;}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i;;;;i/ ヽ′ ＼
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ヾ::ii:レ' 二二 -──── ､__i∧ ＞'´ i
从ヘｒ':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| 〉 |
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| 狂気の麻呂にかこつけて、車椅子を押して『血族』の内部情報を集めていたのだ。
| それを見咎めたのはケンシロウただ一人。
|
| 彼と接触し、その後は『螺旋王』のメイドたちを使ったり使わなかったり。
| 黒子のいなくなった狂気の麻呂は、なんと式神を召喚。
|
| 狂っていてもその召喚術に衰えはなく、筋肉隆々の鬼神に車椅子を押させ、運ばせ、隠れて、ワープ。
| 神出鬼没の存在になってしまっていた。
|
|「麻呂がジャギを匿うとして、何故であろう」
|「さてね、私にはどうにもあの狸爺が狂ったとは思えなくてね」
|
| 『狂死』の言い分は、心情的に理解できた。
| 先代も最初は信じられなかったし、だからこそ『同志』なのではと疑った。
|
|「陰陽師は狂いやすいのではあるまいか？」
|「呂布殿、それは……」
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,ｨｆ⌒厂（ jハ
/ ｆ' j } r' ｊ∧
i j! ,ﾉ ﾉ 《 jｆ }≦￣￣≧=‐- __ シックス殿の様に？
ﾄ〔{ {| l{ }ﾚ〔{ | ＼／ ≧=‐-
{N{＼{ ﾊ__／ リノヽ＼ ＼＿＿ / ＼
｢∨ ｀ 丁 ´Ｙ〈) | '｡ ＼ ￣￣ / ／´ ￣ ＼
乂{＼ ノ __,ノ r_ノ| ゜ ＼ } ′ |
rｔ_ぅ f ｆrt_ヵ | | i | { , |
}ヽ // ,ﾉ │ | ＼i ／ ヽ|
ヽ ＿ ／‐ｧ⌒ヽ | / ＿ l ＼/ ＼
＼ー／| ∧__／ ＼l / ,∠、 | 〈__ ＿ ___}
厂「 | |X(| , | //'⌒ヽ＼ | }／/ ＼
乂 L__ | |⌒| / | | {:::::::::ﾄ､）} l 乂/ ,ノ⌒
｀i＼ ＼ |）X|o | | VWく ﾉ }ノ /／ ＿_/ ,ﾉ
｀ミ} |ｏｏ| / | | ＼ ） 〈 ／ 八＿/＿
ｌ| | 巴| o | / ノ｀￣｀ヽ } / | / 「ヽ }
l| l）X(|＼ !{ | // |人 レ' ,ノ
j |(ooj|＼ヽ.l| ＼l | ,ノ⌒（￣厂￣}
人 │巴 | ＼| {_|__（⌒ヽ ＼＿___ﾉ
ノ＼ |))X((| /∧ ＼|ヽ ﾉ￣￣￣}
/ l(0 0）l／＼∧ ＼＼＿＿__,ﾉ
/ / | {笆}！ / {( ∨ /＼＿__ﾉ
/ / |》）X《∧ j￣∨ / / |
/ ∧ﾄ--个 〉 / ∨ / |
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|「然り。特にシックスや麻呂の様に多くの悪魔を使役すると負担が多いのではあるまいか」
|「それは少しばかり否定し難いな」
|
| 複数の悪魔と契約を結ぶのは危険が伴う。
| コスト的な問題も当然あるが、それ以上に悪魔と思考を共有するため脳の負担が大きい。
|
| 多くの悪魔使いは、悪魔との感覚共有をオフにして命令による自律機動状態にする。
| やらない夫のように未召喚状態でも感覚を共有する方が稀である。
|
|「あの徘徊老人、今頃どうしておるものやら」
|「呂布殿に徘徊老人扱いはされたくないと思いますな」
|
|「何を言うか、我は我が魂の命ずるがままに足を進めておるだけよ！」
|「せめて定期連絡を入れてください……」
|
| 呂布の場合は徘徊というか放浪である。
| 彼としては、夢宮が死んだと聞いておっとり刀で帰ってきたつもりなのだ。
|
| つまり、四か月かかっていた。
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! ,
/', ヽ l ,
l,∧ ｀l i,
.∨A _＿＿ i lﾍ
∨ム ヽ ￣ ｀ヽ lヽ. ' l!∧
. ∨ ﾍ＞-‐- ∨ ヾ､! ヽ. / li/∧
∨ ヽ､ ∨ l ヽ. ﾉ li l,
／ ヽ. ヽ､ ＼ l i ﾉ , .il l,
＞ ，_ﾍ､ ゝ､ヽ､ ｀>ｭｪｪi､ ﾍ ノ ,' !l l,
/ ／ >､ ゝ､ヽィ´ ヽ. ノ / ,'ｿ l,
, ' ／ ∨ ＼､ _ __ '!. / ', ｱi. i'
/ ／ Ⅳ.､ ヽ ￣∨｀! ゝヽ〈 .i ﾋ ,'
／ Ⅵ≧ﾆﾆヽ ｀'´oﾍ ﾍ 〈､ ヽ/j ro /
´. ∨ ｀! l.Π r”ｬ､._ ＼ 《 lﾘ､ j / i r'
二二ﾆｭ ∨ l..l l i∨，;';';';';';､ゝヘ'´ ｀´iィｱ/ シックスは案外そこら辺で野垂れ死んでおるやもしれんぞ？
l i ∨ .l l l .l ﾍ＼;';';';';';'`ｰ=ヘｨ!ィ i l'
l Oi ∨ .l l l .l ﾍｨ'´/ ､,;';';';';'／.ｨiﾍi l!
二二二二二ヘ l l ゝl, /ﾍ ∧ヽ/ ,'ｲ/i ; l!
l l l 〉ｰ＝i､ /.､ ' ｀ｰﾍ/i .! y'‐- ，
l l l ' , i _ヽ / ヽy二二/ l! l__lj _ ヽ
l l l i 'i ≧r' ｀ｭ≦二二二≧､'´ ﾌ, ∨
＿＿l＿＿_r' l l ヽ.i ､％ﾙ'´｡ ＿＿＿ﾍ ﾉく ∨
＿＿＠l j 〉'‐ - .ﾍ ＞-‐へﾟｲｰ,〉 >ﾍ i
￣l l´, / // ￣ ヾ｀ヽ､ﾉ＿＿ﾉﾘ￣,/，-く.
l l 〉ー＝─く ＞ｭ､ ｀ー＝＝=ｨ'￣/､ l
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|「洒落になりません」
|「そうか？ 似合いの末路だと思うが」
|「だからこそ洒落にならんと言っている」
|
| 下手に能力と行動力に溢れた狂人は始末におけない。
| シックスはあの『結社』撃滅作戦の日から行方不明だ。
|
| あの日以降、彼の老人がやる夫らと行動を共にしていた事は誰も知らない。
| 腹心であるジェニュインにすら伝えていなかった。
|
| お陰で完全に消息不明。
|
| フリットに『元老院』を追われ、隠居を命じられた直後からであり、
| 行動が不審すぎて残されたシックス麾下の陰陽師らは冷や飯食いを余儀なくされてきた。
|
| 結果、シックスの子飼いであった『五本指』はやらない夫に挑み病院送り。
| キュウべぇの庇護下にあるヴァイジャヤ以外は。
|
|「野垂れ死にか……私はやらない夫くんこそそうなるのではないかと思っていた」
|
| 先代の正直な感想。
| 『緊急事態対策班』は、一昨日のやらない夫の配信に対処せねばならなかった。
|
| 蒼星石の決裂は、すでに伝わっていた。
| 件の蒼星石は見るも哀れなほどに狼狽し、一睡もできなかった様子で震えていた。
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, -─x: :' 二二二: ヽ､
／: : : : : : : :' :.⌒ヽ､ ｀ヽ: ＼
, :'´: : : : : : : : : : : : : : : : ＼ ヽ､{
/: : :/ : : : / : : : : : : : ハ: : : :＼
/: : :/ : : : /: : : : : : : : ,j: :i: :ヽ: : ､＼
, : : : :/: : : :./: : : :.i: : : :ノ:|: :レr|: : : :＼＼
/: : : :/: : : : : : : : : : z≦彡j: ﾊｿ l: :i、: :i ヽ{
/: : : :/: :|:.:.i: i: : : : :弐ﾍソノi:/ ヽi: :| ＼j ｀
,: :/: : :/: : l: : l: |: : : : :､:.i:. ' _,'/: :ヽ、
／: : : : :/ : : l: : l::从: : : : : ヽ ´,.ヘ i＼{
. ／:／: : ／: :/: |: : |: ﾚクヽ､: : : ヽク'⌒ヽ､｀ （大事な友人を死なせなければならないのだからな。
／:／: : ／: : :/: : |: : |: i/ i ヽ- ' ､ヽ:.:.:.:.:.＼ 辛かろう）
／／/: : : : : : : /: : :.|: : |: | ' ＼:.:.:.:.:.:.＼
__／／ /: : : : : : :./: : : : : : :|: | ; :; , ==‐＼:.:.:.:.:.:.＼
. ／: ／ ／: : : : : : : /: : : : : : : :|: |､ { ﾉ ／' ｀ヽ<⌒ヽ＼
. ／:.／ ／: : : : : : : : /: : : : /: : :.:.|: ﾄ､ ﾘ. i:/ i:.:iヽ:::ヽ＼
/:／ . ／: : ／: : : : : /: : : : /: : : : :.|: {_jヽヽ ∥. ﾊ|| i:::::|:.ﾉ
. }/ . ／: : ／: : : : : : /: : : : /: : : : : : |:∧:.:.:｀ヽ､.|| ﾞヽ ;' || .l::::ﾉ/
／: : ／: : : : : : : /: : : : /: : : : : : : : | ﾄ､:.:.:.:.:ヽ{. i /i ｀iﾚ'イ/
. ′:／: : : : : : : : /: : : : /: : : : : : : : : ﾘ .i i:.:.:.:.:.:.:.r＼}. ﾚ'ﾊ:.:./
/: : : : : : : : : : : :/: : : : /: : : : : : : : : : i| ﾊ:.:.:.:.:.:.:.| ヽ＼＿＿i/:/:./
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. /: : : : : : : : : : : /: : : : /: : : : : : : : : : : :.i彡 rへ＼:.:.レ:| ﾉ::|_|}
ｲ: : : : : : : : : : : /: : : : /: : : : : : : : : : : : :′ 人:.:.:.:.三三i.... /i<{´
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｀ヽ: : : : : : /: : : : /: : : : : : :/: : : : : ://:.:.:／:.:/:./:/:.i:/´| ヽ:.:.＼
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, '´ ／ ｦﾍ:.:.:.ヽ
／ ／ 彡' '､:.:.:i
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| この店に来る直前、先代は腕力で蒼星石を寝かしつけた。
| 頸動脈をキュッと締めたのである。
|
|「プランＢは抹殺であったか？」
|「『芝公園』までの三日間でな。昨晩のうちに処理すれば楽だったろうに」
|
| 言うは易し、行うは難し。
|
| やらない夫は脳噛ネウロの弟子で、『セイバー』だ。チートにチートを重ねた武器の力で、ケンシロウすら退けた。
| その上、『十二の封印像』の悪魔を最低二柱従えている。
|
| シロッコご自慢の『カトルカール』は半数を彼に殺された。
| 『聖処女』ジャンヌも数回に渡って相対し、部下を失うばかりという。
|
| 倒すとなれば、全力で潰さねばならない。
| たとえば、この場にいる全員で攻めるとか。
|
|「はーい、モーニング四つ」
|
| 若いウェイトレスがトレーからコーヒーを配った。
| 続いてレタスとリンゴのサラダ。淀みない動き。
|
|「……お前」
|
| 不意に『狂死』がその手を掴んだ。不審な動きは少しもなかった。
| だが、だからこそ。
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|:::::::::::::::.| ＼::ヽ｀ 丶､:::::::::: ＼:::::::::::: ｌ. ＼
|::::::::::::::::| ＼＼ __＞ ､:: |::::::::::: |::. ｒ＼
|:::::::::::ﾄ:::| ー '", ――ヽ |:::::::::: |::::::. |｀´
/:::::::::: |＼ﾚ / ｨ'て厂ヾ┤ :::::: |:::::::. l |
/ハ:::::::::ﾚ'"≧､ 弋辷.ﾘ/| ::::::: |:::::::::. ∥:|
＼:::: ﾍ彳うヽ '"´ ｲ::::: : |:::::::::: ｲﾊ/ 中学生がアルバイトをするなと？
. ＼:::ﾍ!代.い ﾘ|:::: ::: /|::::::::::: .:: ./| ケチケチするな『狂死』殿。
}::::::ﾍ ‐'´| / |:: ,イ / !::::::::::..::...:/
. |:::::::::' ヽ、 | ／ ﾚ ヽ:ﾄ,:::::ﾊ/
ﾄ:::::::::ヽ ,ｨ ﾚ' ヽ〈:::ｊ |
. ヽﾄ､::::＼ -‐'"´ ／ V
ヽ＼{ 丶､ ／ 〈
｀丶 _ イ ヽ＿＿＿
. " ヽ -‐ '"´ ＼
. } ／ ＿＿_」
ｒ―| ／ , -‐ '"´ ＼
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| その段になって、ようやく先代と呂布が異変に気づいた。
| このウェイトレス……馬岱の存在に気付いている！
|
| そしてその口調で気が付く。
| 黄泉……！ 『九鬼』の首領たる新『四天王』。
|
|「馬岱殿の隠形も素晴らしいが、お主の変装も称賛に値するぞ。
| 正体を明かしてなお、ただの小娘にしか思えぬ……！」
|
| 呂布の言葉に、黄泉……この姿の時は『糖分同盟』の神楽と名乗る少女は照れた様子で頭を掻いた。
|
|「そんなに褒められるとサービスするしかありませんよねッ」
|（やらない夫はこの店の常連だ。そして秘密結社『糖分同盟』の一員でもある）
|
| 笑顔を見せながら、忍術による指向性会話。
|
|（『糖分同盟』参加者の一人がモーリアンビルで死んだ。
| 彼らは侮れない悪魔の集まりだ。これまでは日和見だったが、今はやらない夫支持に傾いている）
|
| 完全に情報収集中である。
| 彼女自身も『糖分同盟』の一員だ。だが。
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. / :|: : : : : : : :|: : : ／ ／ ヽ: :./: : : : : :.|: : ｌ: :| ＼ゝ
. /:/:|: : : : : : : :|: : / ,. -―‐､ '"二ニﾆ､ ∨: : : : : : :|: : |: :|
.,'イ:.:|: : : : : : : :ﾄ､:{ ﾁﾃ示て㍉ ﾁｲ示て)＼ j: : : : : : : :|: : |: :|
|:.:.|: : : : :.:. :.:| V く/ {:::ﾊJｲ}｀ ｆ::ﾊJ:リ 〉>: : : : : : : :|: : |: :|
|: :.|: : : : : : : | ヽ弋辷ノ 弋辷ノ, /: : : : : : : :.l: :/: :.| （だがやらない夫との接触はない。
. ｌ: :ﾄ、: : : : : :＼ ｀`゛¨´ ｀¨"´ /ｲ: : : : : : :./ ｲ: :/ 私はしばらくここに潜入する）
ｌ: :ｌ:ヽ: : : : : ＼＼ ／'/: : : : : :.:./∠レ'
弋ﾄ: :|: : : : : : :ヽ-ゝ l /: : : : : : ://:::::::T‐ｒ-､
イ 入|へ、ﾐ: : : : ＼ /: : : : :イｲ/::::::::: | |::::|ヽ
／ |::::| ｆ:::::::ヽ＼: ﾄ ...､＼ ／:／ ／::/::::::::::::::: | |::::| |
|::::| |:::::::::::::::::＼:::::::ヽ､ ´｀ ス7:／:::::::::::::::::::::::::::ｌ ｌ::::l
ｌ::::| |:::::::::::::::::::::::::::::::::::＞ ､ ／/ｲ::::::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
ヽ |::::| |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 丶 ､ , '" { |:::::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
＼:ヽヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼ ｀ ‐ '´ ／/|:::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 黄泉は『血族』の『四天王』になったのだ。
| そして、ロストスキルの治療もある。
|
| 『結社』と違い、人質ではないのだが……これまで多くの人質を取り、
| 殺生与奪の権をぶら下げて尊厳を踏みにじってきた。
|
| その過去から、黄泉は逃れられない。
|
| 自分を重用してくれる志摩子に報いたい気持ちも強いが、それ以上に強迫観念的に恐れている。
| 自分がしくじったら、キルの首が飛ぶ。
|
|「ごゆっくりどうぞ！」
|（揉め事は起こしてくれるなよ）
|
| 『血族』達に走った緊張感は、即座に弛緩した。
| 警戒心を露わにしていても逆効果だ。
|
| 『緊急事態対策班』の中でも、この四人は歴戦の雄である。何事も無かったかのようにコーヒーやサラダに手を付ける。
|
|「……気付いていたか？」
|「いや、全く」
|「アンデルセンめ……知っていて紹介しおったのか？」
|「耄碌していないかを試したのでは？」
|
| 『狂死』の言葉に小柄な老人はコーヒーカップをテーブルに置いて立ち上がる。
|
|「殴り込んでくる」
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__,. -ﾆ¨＜⌒ヽ--､
. _,.＜＞'"´i￣ ｀丶ヽ ｿﾄ､
／二ニゝ ﾉ_,,..、 Y'¨入
/>-ﾆフヽ::〉.''"二_｀丶 !、 ﾊ
i'"´,,.ｚェヲ' ｨﾃﾗ ｀ヽ ﾉ¨ﾞヽ
.. l./´ヽ'´ .ﾉ丶 ｀¨￣/´ ﾊﾇヽ_ｊ せめてコーヒーを飲んでからにしてはどうです？
ｊ ｒ｀丶¨ l. ''"´ / 〉｀ i
{ i´ら ､ l ヽ' l 豆はありきたりな品だが、
. ヽｒ- ｿ!. ', ,∠_｀＾ヽ ,' 淹れた奴の腕が恐ろしく良い
.l ｌ ' ､_ ￣´./
「¨ミ>､ ヽ、 ⌒i /
/¨丶､ ＼ 丶 _._ ,'
/ ＞ ､ ＼. ＜,. -‐'"
,' ｀丶 ヽ/
;.ィ"´ ￣｀ ＞ ､ ＼∧ト､
／ ／ ', ＼ ヽi:ｒ‐!
. ,.' ｀¨´￣ ', ＼丶::ﾍ、
/ _,.. ⊥ ..,,_ヽ ＼::＼
,' ,. zヲ'"´ ￣｀ﾞ丶､:＼
; ／.／ ﾊ:::ﾞ､
.i /／/ ,. ''"´￣￣ ﾞ'' ｰ- .､. ';:::i
/ ／ 丶､!::i
,' / ﾞハ
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|「え、『狂死』お前食事には興味がないのでは？」
|「誰がそんな事を言った？ 栄養補給のためになら豚の餌でも食うが、
| 上等の品にはそれなりの敬意を払っているつもりだぞ？」
|
| サラダは甘みと酸味のバランスに優れたドレッシングとチーズによる味付け。
| リンゴとレタスがメインだが、キュウリ、アボカド、玉ねぎの薄切り、ミニトマトと野菜の種類も豊富。
|
| 分量もちょっと物足りない程度。
| そこに黄泉が溢れる笑顔でメインを持ってくる。
|
| 四枚切りの分厚いトーストでは大ぶりのバターが今まさに融解のダンスを踊る。
| 同じ皿で半熟の目玉焼きと厚切りベーコン、ソーセージというミックスグリルが湯気を立てる。
|
| これだけで絶対に美味しいのであるが、残念ながらここは甘味処『ニュクス』である。
| ここからが本番だ。
|
| 黄泉が置いた丸皿、内側が四分割されたそこにはそれぞれ
| ホイップクリーム、つぶあん、バニラアイス、メイプルシロップのカップが乗っていた。
|
|「ううっ」
|
| 先代は呻いた。溢れんばかりの糖質の暴力。
| どれも食パンとの相性は乗せる前から抜群。
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. /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::: ｉ::::::::::::::::: /:::::; V::|;:::::ﾊ:::.一
/.:.:.:.:.:::|:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::/ |::/ ﾊ:| '/:: ｉ::::.
.. ' :.:.:.:::::::|:::::::::::::::::::::|::::::::::／ ﾉ'′ l| . '/:|::::i
. :.:.:.:::::::::::|:::::::::::::::::::::|:::::::ム-─- .斗- }/:::::|
. i:.:.::::::::::::l:|:::::::::::::::::::|::::/ -- ､ / ‐ ∧::v′
. |:.ｲｌ:::::Ｙ从::::::::::::::::::|Ｖ ___::::::::|
. |:::|::::::::|. '/::::::::::::::i:| x≠''''ミ､ ≠⌒~::::::::| コーヒーと食パンのおかわりは
从|::::::∧. '/::::::::::::l:| ｉ:/:::: 無料になっております。
. 八:::::::. ＼_'/,::::::::从 〉 __ノ',:::/
. ヽ:::Ｎ |l::::〕ﾄ､:::::｢｀ ,. ′}/
. ){ リl/Ⅵ . ヽ| ￣ .イ
／}l. _ 〕ト _ . :i〔､
{: : : : :＞- . . ＿￣{ . .: :/
」.: : : : : : : : : : : : : : : : :〈
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|「ではコーヒーを頂こう」
|
| 『狂死』が食パンにホイップクリームを載せ、上からメイプルシロップを降り注ぐ。
| 天上の光のような金色の輝き。甘く軽い天女の羽衣もかくや。
|
|「二枚は軽いな。せっかくなので一枚目はこのままで頂く！ 食パンの代わりを二枚頼む」
|
| 老人のくせに健啖家である。一人で四分の三斤も食べるつもりだ。
| 齧りついた食パンのザクッとした歯ごたえ、内側は綿雲のようにフワフワ。舌でとろける炭水化物。
|
|「ここにいるぞ」
|
| 馬岱はパンに餡を塗りたくり、アイスとメイプルシロップを振りかける。
| そしてホイップクリームを無慈悲にコーヒーに浮かべた。ウインナーコーヒーも有りか、先代は唸った。
|
|「せっかくだからバスト三桁を目指してみては？」
|「すでに120あるのだ……」
|
| 冗談交じりだった黄泉がドン引きの視線を胸に向ける。メロンどころかスイカサイズ。
| しかし、先代は腹を括った。どうせ脂肪は全部おっぱいに行く。
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(:::::::::::::::::::::::::::: / ｀⌒Y:.∨ﾆ〉:.: .: : : :.Ｙ ﾉ ﾉ
｀⌒)::::::::::::::/ / ): :∨ﾆ〉: : : : :.ﾉ＼／ ／
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. // Y:::::′ | | ﾉ : |ニ|: : : :.( ＼ ＼ |
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. // / / | | | | ｀Ｙ: |ニ|:.（⌒l´| i}＼ |
〈/ / | l＼ ｜ / | /| ﾉ: :|ニ| : ｀Ｙ|｜ i}／ |
′/ | |＿＼|_＼ / __|_/_}/_ | /(:. .:/ﾆ/:.: .:.ﾉ:|｜ |
: / 八 '"´ | ,. ｬ==ﾐ ＼从,ﾊ/ j斗ｬ=ミ、 l`/|ｌ| ):ﾉr<ヽノ´l: :|｜ |
i / l＼ |〃l::::r(_ {::::r(_ 狄 |ｌ|(〈くf包}〉 〈:.:.|｜ |
| 〈 〉 ＼{＼{` V^ツ V＾ツ ﾉｌ|｀Y辷iノ ｀´｜ |
| ＼｢l / ﾊ ´´´ ｀｀` / /| | | |
| |/ /込、 ′ / /´| | | | おはよう神楽。
. ｜ / / ）介__ -_‐ ／二二/ /ﾆ､| | | | 水とトーストを頼むのだわ。
| ｉ / / （／ﾆﾆﾆ=- _ ／二ニﾆ/ /ﾆニ| |、 | |
| i / /、／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆノうぅ=|二ニニ/ /二ﾆ=| |_＼ | |
| ｉ/ / |二二二二ア｛ f包ﾘ )〉ﾆﾆﾆ/ /二二 人 ﾏ/ | |
| / /| |二二二アﾆﾆ)ﾐ辷彡'ﾆﾆﾆ/ /二二二二〉 〉 | |
__ |/ / |＼ |二二ア二二ﾆﾆﾆ7ﾆﾆニ〈 〈二二二 ／ ／:ヽ | |
＼ ￣ 二ﾆ=‐-ミl二ア二二ﾆﾆﾆﾆ7ﾆﾆﾆﾆﾆ＼＼ニ／ ／:.: : : : :. ｜ |
|＼_ ＼二ニニニﾆﾆ7＼ﾆﾆ＼￣￣￣ ／: : : : : : : :.i | |
| ７: :‐-ミ ∨二二二ア二ﾆ＼ﾆﾆ＼＿__ ￣_二ニ=‐- ミ | |
｜ / : : : :／＼ ∨ニﾆアニ二二ﾆ＼ﾆﾆﾆﾆﾆ7 : : ／ ／ | |
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| 客が来店、神楽と呼ばれた黄泉が満面の笑顔で接客に向かう。
| 『緊急事態対策班』の四人は糖質の暴力を貪りながら、静かにその客に注意を向ける。
|
|「やらない夫は来た？」
|「来ていませんね」
|
|「でしょうね……どうにかフン捕まえてやりたいのだけれど」
|「それができれば警察も苦労してませんよ」
|
| などと言いながら、警察はやらない夫を放置しているのを皆知っていた。
| 特につい先日まで警察の客将だった『狂死』など、
| 阿部がやらない夫の場所を把握していて何もしなかったのを見ていた。
|
|「私の勘では、やらない夫は今日中にここに来るはずなのだけれど」
|「何故です？」
|
| 素人の勘の話だ。『血族』の四人が興味を失う中で、不人気は黄泉と話し続ける。
|
|「今晩か明日に、やらない夫は行くはずよ。
| その前に夢の専門家の話を聞きに来るのが常道ではなくって？」
|
| だから、この話に驚嘆したのは黄泉ひとり。
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_,. -‐'": : : : : : : :｀丶､
／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
／: : : : : : : : : : : : : : ' ,: : : : : : : : ﾊ
/: : : : : : :i: : : : : : : : : : : ',: : : : : : : : ﾊ
/: : : : : : : :ll: : :ﾄ､: : : : : : : ',: : : : : : : : :ﾊ
//: /: : : ::l: ::}ﾊ: :ヽ＼: : : : : ::',: : : : : : ',: : ﾊ
l/l: ::l: : : : ｲ: / ＼: ', ｀ヽ、: : l: : : : : : :l: : : ﾊ
/ l: :l: : : / l:/ ､ヾ＿＿≧､l: : : : : : :ﾄ､: : :ﾊ
i: :∨/__,ｲ'' ,.---､ヾi: : : : : :}ﾍヽ:ﾄ､l
∨∧! ／二ヽ 'ｨ7Pヾ¨ヽ',: : : : :j //::l
〉: ヾ',< {Pﾊ ゞ､__ﾉ / .}: : : :///:ｌ::l 行くって……何処へ？
i: : : lﾊヽゞ=' ￣´ ./: : : ト-':/}/
',: ﾄ; :lﾊ j /／: ｲ: //
ヾlヽ', ヽ、 ｀ヽ / ／ﾚｨト､
! ヾ 7ヽ、 ヽ ／-‐'" l///ヽ
〈＿＿7ﾞﾊ､_,.. ' {＼///｀ヽ
_,.-彳_,.／ 丿 ／::∨｀ヽ､<¨ヽ｀ヽ､
／_,. ≦-､__／ _, ／: : : : :∨///ヽ: :0＼ ＼
_,. '" ＼ ｀ヽ _,.-'／.: : : : : :／∨////＼: : :＼:＼
_／ ヽ. ＼ | .／: : : : : :／ .∨/////＼: : :＼:＼
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|「品川大聖堂」
|
| 確信を持って紅マグロ。
| 黄泉は感覚を『血族』の四人に向けた。
|
| 彼らの意識はタイミングよく入店したＬと太公望に向いている。
|
|「その話……後で詳しく聞かせて。
| それまで朝ごはんでも食べててください。奢るから」
|「なら紅茶を付けてちょうだい」
|
| 一瞬で買収し、黄泉はその情報を自分の胸にしまい込んだ。
| そして、『緊急事態対策班』の四人には伝えなかった。
|
| しくじる訳にはいかない。
| キルのためにも。自分のためにも。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
クリーミーなコーヒーみたいなマーブル模様。
重金属の雲、降り注ぐ雷霆、瞳を持つガス惑星。
蚊取り線香を思い出すうずまき。
純白の衣、女神の名を冠する終末装置、誰にも見えない遊星。
さようなら。
さようなら世界。宇宙はいつでも突然で残酷。
太陽を中心とした渦はおしまい。
これから別の恒星を回るボルテクス。
アマラの果て、アマランサスすら枯れる頃。
迎えに来るわ。星人のおともだち。
次回、最終幕五十三話『十二番目の惑星』
果てに見るのは破滅か死か。
エレナママでも来そうな予告だ
胸囲の格差社会
/ﾆヽ
r‐┴v'⌒ヽ、 _ ＿＿＿ __
,ゝ=彳:.:.:.:.;ィﾆ孑'´:.:._:_:_:_:_:.:.:.:.:.:.:｀丶､
/// （:.:.r=くﾆ∠:.:.:_:_:_:_.:.:.:.:rﾍ:_/＾ー'⌒ヽ
{ ﾚ1l|{_:.:{廻jｿ:.:-‐rﾍ:_ﾉ冫ｰ＾ヽ、 丿
_＿ ／j | |ｌ (_|三l :.:rケメ､//l ｌ| !｀Ｙ! 「
, '´￣, -‐ ／!八 l三厂ハ 朮Ｙヽｌ 八 、｀ヽ、 r′
〈 （ ∠二￣ _／厂:ヽ }ﾆl ,ｲ ｜｀´ ﾉ川ハ ｀ヽハ,ノ
｀ヽ、 〈￣￣,..:'´ .:.:.:.:〈ヲ//| ノ､ _ ぶj乂リ｝j从ノ
｛:.:ヽ ｀r＜_:_:.:.:.:.r;==彳ﾆ廴 _｀_ .ィ;‐ｭ ｀＜＿｀丶､､ ＿
〉:.:ﾉ 厶-‐ﾍヽ:〈└ -ﾍ、〈) lr‐く 乍}_＿二￣ミヽ､)）_＿￣ ｀丶、
（／/⌒Ｙ:.:.:.:.:} }:.:｀￣｀ヽＹ::┘:.:.:｀Ｙ-‐勹^ヽこ二ｰ-く ￣∧｀ヽ ヽ＼
／ ,.ｲ_:_:__L二彡′.:f⌒ヽ､|:.:.:.:.:｀┌':.:.:.:.:）:.:.:.〉 jう＞'′ |l | ヽ } 丶ヽ
/ { {_ﾉr冖7弋´:.:.:.:.:.ノ:.:.:.:./:' .:.:.:.:.:丿/⌒´:｀ｰ':‐:'´￣｀ヽr‐r:ﾍ/-‐'′ ﾉ丿
｀ヽ＞:┴く 了⌒:＾´.:ヽ:.:.:′:.:.:.;∠:_八ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.‐-:.′）⌒ﾝr1ｧ_彡'
.:'´:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ}:_:_:.:.:.:.:.:.:.:.＼:_;.イヽ､ ＿ﾉ 厂＞:､_:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:く__YＹj┘
:.:.:.:.:.:.:.:.:.::/⌒.:.:.:｀.: :. .:.:.:､:.〈:｀ヽ､〉 ＞‐:―:-: 、｀ー‐'⌒Ｖ人_￣
ヽ:.:.:.:.:.:／:.;.:.:.:.:.:.:.:. .:.:..:.:.:.｀ヽ:. 丿:｀:ｰ:-:-:.:.:.:.:.:.:.｀:.:く:￣｀ヽ＿ ｀丶､ ＿_
/ハ:.:./:.: /:.:.:.:.:.:｀丶､:._:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣:｀丶､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,｀Ｙ´:.:.r个ｘ ＝‐- ｀丶、
＼ ∨:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.: 丶、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:｀:ｰ:-:.:､:_:_:.:.:.:.:.:.:Ｖ {（｀ー ヘー - ､＼
ヽ 乂 _:_:.:!:.:.:.:._＿＿_＼.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.､.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.Y^ヽ、 ＼ rﾍ 丶
ﾊー:-ﾆ_￣ -―‐-､｀丶､:.:.:.厶-―- ､:.:.:.:.ｌ:.:.:.:.:.:.∠-‐う::.::.: | ｰく＿_ 丶 ヽ ＼ ＼
（ ヽ､_:_:_:｀￣＞'´￣了ヽ ∨⌒じ廴_/ ﾝ‐'ー―个ｘ__ﾉ::.::.::_ﾉr'二二、ヽ、 ） ） ! |
＼ rｰ┤:.:（:.:.:.:.,:.:'´:.:.:/:＼ヽ､ィ＾アLん'＾丶､几ﾊﾉ ｀,二-┘r‐- ､ 、ヽ ＜＿ノ 丿
＼ ヽ!::rく｀丶､:_/:.:.:.:.:.;' ;:ィＴ丶 ﾚ'′ 冫rﾍ ノ、 ､ ＼ / ｀丶､｀丶､ ｀丶ヽ ＼ー‐ '′
＼丶 ∨ ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.{/:.ﾉ/ ,イ｀ヽ、／しﾀ、__ 〉、ヽ_r七ニ＝x｀ヽ､ハ＿〉 丶､｀ー=彳
_ _＞ｰ匕 ヽ､:.:.:.:.:.:.:.:.厂才:ｉ ヽ､／ /＾ｰ'⌒{（＾´ ＞‐r＝'′｀ヽ､ _厂｀丶､ ＿＞'′
＿彡イ ｀てィ ｀ｰ― '´∨〈 :| /,′ / 丶=キ‐r┘
/ / , '´∠二、r仁￣｀ﾌ:└fO}^ヽ､/ ﾉ} ヽ＼
く !/ / ´ ￣） ／ ｝!⌒ﾊ::.::｀「ヽ､/ ｛（ l }
丶{し′ r‐' 厶ヽ ノ人ノ∧::.:::| ﾄｰ- ､ ヽ､_＿ノノ
｀￣￣〉r=ミ ＜ ｰ人 rﾍ丶､ > ｀￣´
｛ { ｀ヽ ＼〈::.::.:｀ｰ!｀⌒´
ヽ＝==仆 } ヽ､_:ノこヽ
廴ノ八（_＿ ）ﾚ',二ヽ、
｀￣ ｀ー＝＝=彡'´ 廴)）
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| 人間は食い溜めできない生物だと聞いたことがあるが、根性が足りないだけなのではないか。
|
| そんなことを考えながら、不人気は金糸細工のような巻毛を黒ゴムで後ろに束ね、朝食に取り掛かった。
| ここは引き続き甘味処『ニュクス』。神楽の奢りで有りついたモーニングセットを、感謝と共に流し込む。
|
| 普段頼んでいるトーストと、このモーニングセットではお値段が桁違い。
| それもそのはずのボリューム、おかわりも自由。
|
| 赤身は普段から生活費を削りに削って生きている。
| 二十代半ばには見えない発育不良の肉体は、低カロリーで活動できるエコな燃費が自慢だが、
| やはり時にはしっかり食べないと体が持たない。
|
| レッツエンジョイ炭水化物。
| 合計四枚、丸々一斤分の食パンをペロリと平らげながら。
|
| 不人気は昨晩の訪問者を思い出していた。
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/ ヽ _l -‐'´ ｀ヽ ｀ ､ ヽ
.l f´ l ヽ '､
.ﾄ､l _ , - ｀ ヽ __ '､ まったく、勝手におっ死んじまいやがって……。
ﾄ､ __ -‐' _ ､_-ｧ '､ 〈 ｀i '､ 商売上がったりだぜ。
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l. !;;;/ !ｲ 〈 l､ '､
＼ ｀;.;.;.;.; , / 〉. l冫 ゛､
lヽ´￣￣ / .／'､ 〉｀i 〈
｀i`､ : __／ ／ /r' / ,ﾍ し,
Ly`;'''''´ rﾍ ／l/ l __l /､､ Z
/rﾍ' ＼ l L/ /l l / ./ ｀ ､､＼Σ
l ` ､ヽ 〉 l rﾍ. l l l l /‐-===-‐'｀ ､
ヽ 〈_冫 /o０.l ｀{ l. l/
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 珍しく会社のデスクに詰めていた赤身に声をかけたのは、同僚の聖丈二だった。
|
| 『月刊 妖』編集部は雑然としており、誰の机も食べ物のゴミと資料で混沌としていた。
| 赤身のデスクは食べカスやカップ麺のゴミが無いだけマシな方なのだが、
| 山積みの本や書類で万里の長城が築かれている。
|
| 丈二は薄汚れたボストンバッグを乱暴に置いた。舞い上がる砂埃とカビ臭い悪臭に、不人気が眉をひそめる。
|
|「なんでここに置くのかしら？」
|「やる、デュランダルと『ミロク派』関係の資料さ。
| 奴が死んで教団は解散、息子さんはミッション系お坊ちゃん大学で官僚目指すとよ」
|
|「あら、子持ちだったの？」
|「一人息子だ。奥さんとは別れていて記録もきれいに抹消してやがった。
| 存在を知ったのは死後だぜ？ しかもそっちをいくら探っても何も出てこねえときた」
|
| 丈二は『結社』幹部ギルバート・デュランダルを追っていた。
| 通信端末大手企業の社長でありながらカルト教祖。オカルト紙だけではなく週刊誌すら垂涎のネタであろう。
|
| だがデュランダルは暗殺された。
| 華琳の呪詛で弱りきった所を『四ツ目』の銃で射殺されたのだ。
|
| 公式には病死となっているし、死の直前のやつれ方も尋常ではなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/' | ｌ|_ l::::::', ﾊﾉヽlゝ.:ｫｔ￢ﾐ ヽ'ｨｫ!ｲ こんなもの貰っても困るのだけれど……？
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| チベット仏教への傾倒、マニ車を改造したアマラ車という神具、世界の生まれ変わり、などなど。
|
|「世界はいずれ生まれ変わる。そん時には東京は卵みたいに丸くなるんだというお話だよ。
| まあ、実際にはその『ボルテクス界』とやらは来てないんだがね」
|
|「ボルテクス……？」
|
| 職人の生涯の一品めいた、芸術的な縦ロールをねじりながら、美の化身たるマグロは不信そうに呟く。
|
|「卵なの？ 渦なの？」
|「カルトの言うことなんて知るかよ」
|
| にべもなく切り捨てながらも、二人は渦について思考を巡らせていた。
| 渦巻き、あるいは螺旋は自然界の作り出した芸術的幾何学模様である。
|
| そして同時に自然科学の、魔術的神秘の解明に深く関わる。
| オウム貝、台風、ヒマワリの種、猛禽の狩り、銀河、ピラミッド、DNA……。
|
| 自然界の様々な基本構造に根ざすシステム。黄金螺旋。
| それはつまり物理法則のゴールデンルール。
|
| であると同時に、ポリタン紅はもう一つの存在を、知っていた。
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「＼{! ヽﾊ Y´ | ＿_
八 }.ｒｪミ､ヾ{ ,ｪャj ﾉ /､ Xｊ
＼〉｀c心､ ｨぅ少八 { ﾍノ
∧｀¨ﾟ ＿ ¨´ｲ: : ヽ , ク´
{! ≧ｒ―≦ i}＿: : ｀:ー:-≦彡'
,, -＝ｧ-ｙ'´￣ヽ ＼
, ´ / ハ {!＼ ＼
／ ／ | / ' |! ヽ ＼
／ / ! / ヽ i! ､ ＼
′ / ﾚ′ ｀ﾄ､ 、 ＼
, / ,ｲ {! ヽ '. ＼
,' / / ｊ! }! ハ :. ＼
! ′ ,' {! ｢i j! ハ :. ＼
! i : ﾊ }{ ﾘ : i ヽ
| | ! ∧ }! |! i !
| ! | ∧ }! j! | i ヽ.
| ! | ﾊ__.人__ﾉ ! ! ',
| i i ハ
', i ! ﾊ :. i｀ ー-- ＿＿.ゝ
､ ! : ヽ :. l
＼', ト､ 个 ､ :. ｊ
ヾ､ ', ≧。. ! ＼ ≧ｭ｡､_{
｀ト ､ ', ≧｡..{ ＼ !
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| 《ストレンジ・カメレオン》。
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| そいつは世界のルールであり、『滅ぼすもの』という外敵から世界を守る白血球。
| 奴は世界の敵と戦い排除する『主人公』を『渦』と呼んだ。
|
| すなわち、すなわち、因果の特異点もまた渦の形をしているのだ。
|
| これに関して、夢宮アリカの祖先である衛府の兄弟がそれぞれの奥義に
| 『螺旋』と『因果』と名付けたことは無関係でない。
|
| 格闘技でも螺旋の動きが重要なのは想像に易かろう。合気や柔道にのみならず。
| 型の完成形は必ず美しい弧を描く。
|
| 呼吸を極めた剣士の到達点、『透明な世界』では、人体を駆け巡る骨と筋肉の流れが美しい螺旋を描くのが見て取れる。
| 同様に彼らの呼気は真円を成す波紋を作るが、その闘気は周囲の大気に渦を作ることでも知られていた。
|
| 北斗拳士でも最強たるラオウに、螺王の字が当てられているのもむべもなし。
|
| フリット・アスノは耳の奥の螺旋状器官を『エックスラウンド器官』と呼び、
| その幾何学的精度が超能力強度に比例することを発表していた。
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| 黄金螺旋はピラミッドの建築にも応用されている。
| 俗に言う『ピラミッドパワー』も突き詰めれば螺旋なのだ。
|
| 他にもミステリーサークルや銀河系など、例を上げれば枚挙にいとまがない。
| だが、ここは怪しいオカルト雑誌『月刊 妖』編集部。
|
|「ちなみに『パナウェイブ』の資料はどこかしら？」
|「かなり奥の方じゃねえかな」
|
| 『パナウェイブ研究所』は某大手家電会社とは無関係の終末カルトである。
| 彼らはトーマス・ベアデンが提唱したベクトルを持たない仮説的な電磁波、『スカラー電磁波』の危険性を訴えていた。
|
| 白装束と蚊取り線香めいた『渦巻き』の護符で『スカラー電磁波』を軽減できるとしており、
| 共産ゲリラが電柱や家電に仕込んだ『人口スカラー電磁波発生装置』に備えていた。
|
| 曰く、『人口スカラー電磁波』を共振させて発生した『超電磁結界』は範囲内の電化製品を破壊し、
| 生物を灼き殺すのだとか。
|
| なお、そのような事実はなく、『スカラー電磁波』も実在しない。
|
| ESPによって感知される未来視過去視透視千里眼は全て、第六感の五次元的ベクトル移動で説明される。
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| その他にも『パナウェイブ研究所』は護摩川に現れたゴマフアザラシのゴマちゃんを保護したり。
| テレビに出演して『影の惑星ニビル』の危険性を説いたりもした。
|
| デュランダルの『ミロク派』どの類似点は終末カルトで渦巻きだけ。
| つまり、丈二にはただの空振り、どうでもいい存在だった。
|
| だが、我らがバネ髪ボンネットには意味が違う。
| 『影の惑星ニビル』。それは天啓であった。
|
| ニビルは人類宇宙人起源説を唱えるトンデモ系自称学者ゼカリア・シッチンの狂気と偏向的翻訳の産物である。
| 大きく傾いた楕円軌道で、3600年ごとに地球に近付き、文明を破壊する滅びの星。
|
| 前世紀末、恐怖の大王アンゴルモアを始めとした終末思想は小惑星衝突型の世界滅亡を乱造した。
| オカルティストたる不人気と丈二にとっては釈迦に説法であるが、それらにはなんの根拠もなかった。
|
| NASAを始めに、世界中の天文台が否定した。もちろん、カルトにとっては否定も燃料。
| 世界中が秘密にしている陰謀だと騒ぎ立てる材料だった。
|
| だが、『観測できないからといって、本当に存在しない』などと断言していいのか？
|
| もちろん良い。
| というか、目に見えるものを信じなくて何を信じればいいのだ？
|
| 赤身自身分かっている。分かっているのだ。
| 普通に考えて『ニビル』は存在しないし、地球に衝突なんてするはずがない。
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| だが、不人気は夢の世界を知っている。
|
| 人々の夢の中に、普遍的無意識に横たわる塔を確信している。
| その先に木星。太陽系最大の惑星の威容。
|
| 巨大な重力の網を張り、絶対真空を飛び回る遊星どもから地球を守る存在。
| その夢が、木星の異変を意味するのならば？
|
| 不人気は考える。
| 木星の網を通って、地球に衝突する星が出てくるのかもしれない。
|
| これは妄想の一種だと、彼女自身理解していた。
| だが『ニビル』は本当に来るかもしれない。
|
| 世界を滅ぼす破壊の化身、この世界を『滅ぼすもの』。
| 砂糖菓子を割るみたいに、あっさりと地球を粉々にする金槌。
|
| 『ビスケットハンマー』が、見えない人々にも納得できるような形にするために。
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| 『ニビル』が観測できない理由は、後付でいくらでもなんとでもなろう。
|
| 『本当に陰謀だった』『無用な混乱を避けるため』『ダークマターを纏った惑星』なんてのはどうだろうか。
| シッチンによれば、『ニビル』にはシュメールの古代神が住んでおり、文明を与えてくれるのだという。
|
| 宇宙人を文明の祖とする学説はままあるが、外宇宙から様々な要因……。
| アミノ酸やタンパク質を運んでくる彗星的な存在は、地球生命の祖と呼んでも差し支えはないかもしれない。
|
| ふと、何か引っ掛かった。
|
| 不人気は自分の手帳を猛烈な勢いでめくり出す。
| 過去に調べていた何かと、『ニビル』関連の何かが相似している？
|
| 宇宙人？ 陰謀論？ 見えない……？
|
| 不意に、その手が止まる。
| 無造作に挟んであった写真を、震える手で摘まみ、まじまじと見た。
|
| どこかのベンチで、座ったままうたた寝するやる夫。こんな写真、撮った記憶がない。
| わざわざ現像までしてある、なんだ？ いや……不人気は怒涛の様に脳に流れ込む情報に顔をしかめた。
|
|「なんだ？ やけに白い奴だな。ヒトガタ＝ニンゲンか？」
|
| 丈二のひやかしが、決定打だった。
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_,ィつ⌒つヽ、
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. ヽ:.:.:.:.:.:.:ミﾐﾐ,':.:.てﾉ / / | ヽ ヽ ' .:.:.:.:.:.:.:ヽ
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／彡三（:.:.:.:.:.:.:.ミﾐﾐ:.:てﾉ! | | | ｌ | ',i ', lヽハ:.:.:.:.:.:ﾉ
ヽ／｀7／｀ヽ:.:.:.:ミﾐﾐ:.:ノ l l ｌ ｌ ｌ ｉ ｉ ｉヽ/ | | ', ',l ',ヽ ',:.:.:.（
/ノ （:.:.:.:.:ﾐﾐﾐ（ | | |_| | ｌ ｌ | ｌ 川 ｌ ｌ il l| ｌ l ヽ .,:.:.:.ﾉ',
/ /）:.:.:.:.ﾐﾐ:.:） lｉ ｉ| |ｉiTl,,l,,ﾐl､l l l ｌ iｌ,,l,,-l‐ l ｌ ｌ l ｌ:.:（ |
/ /（:.:.:.:.: ﾐﾐrぇｭ､ l从ｲ::;;;;v从ﾉヽ从ｲ:;;;;v､l l/l | ｌ ｌ ;:.:.:.:）l …………蘇芳が撮ったやる夫よ。
. / / ｀ヽ: : :Kゝィﾊ ヽ辷ソ 辷ソ 从ハl l l ,:／ | あの子、こんな顔していたのね。
/ / ＼赱乏ｿ＼＼ ＼ ､ / ヽ从ノl/ l |
. / / ｀ﾐﾐΛ ＼＼ ＼ _ _ ｲヽ ＼ ＼,l |
/ / ｀ﾐΛ ヽ ＼＼ ＼ __'＿＿___ ヽ ヽ |
. / / ｀ﾐﾐヽ ヽ ヽ ＼ ヽ´////////ー ､ ＼ ＼|
/ / ,ィ´///＼ ヽ ヽ ＼l////////､ ＼ ヽ ヽ､_ ＿
. / / /:.:.:.:.〉////＼ ヽ ＼ ＼/////:.:.:｀ヽ l｀ー―‐'ーミーヽヽ
/ / /:.:.:.:.////////二ニ=- ヽ ｀ー――-ミ:.＼| | ヽ ｀ｰ=ﾐ ､
. / / ／:.:.:.:.///////,〈 二二ニﾆ=‐- ） ）: ヽ ｜ ）） ） ）
/ / ＿_／:.:.:.:.: /////////,ヽｰ=ﾆニ二二ニﾆ=‐‐=彡':.:.:.:.:.:ヽl 彡' 彡'
. / / _, ‐=彡:.:. /:. ｀ヽ〈//////////////ｌ＞‐=ﾆﾆ二￣.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ー―'―――‐'ミ
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| 思い出した。蘇芳。蘇芳パヴリチェンコ。
| そしてやる夫。顔も思い出せなくなっていた友人。
|
| 不人気は襲い来る悪寒に肩を抱いた。蘇芳を忘れていたのは分かる。
| 彼女は、彼女に憑いた『滅ぼすもの』は《アトカタモナイノ国》。記憶を消し去り相手の生きる目的を奪う力を持つ。
|
| 蘇芳自身を、誰も彼もが忘れているのはその能力故であろう。だが、やる夫は……？
| なんでやる夫の存在までが曖昧になっていた？
|
| 紅マグロの脳内でいくつかの点が繋がる。理由も合理的な解釈も無視して、結果だけが算出される。
| 彼女はいつも、自分自身の脳みそに振り回されていた。
| 確信はあっても理由が説明できないから、理由のために動いてきた。
|
| だから今回も、品川大聖堂の後に姿を消した蘇芳が、身を守るために誰の記憶からも消えたことと。
| やる夫はそれに関係していて、蘇芳の余波で存在が曖昧になっていることを確信した。
|
| もしかしたら『ニビル』も、『記憶に残りにくい』天体なのかもしれない。
| 曖昧にしか見えないから、見たことを忘れてしまうのかもしれない。
|
| そんな風に考えながら、不人気はその後しばらく丈二の資料と格闘した。
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/.:.:.:.:.:::|:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::/ |::/ ﾊ:| '/:: ｉ::::.
.. ' :.:.:.:::::::|:::::::::::::::::::::|::::::::::／ ﾉ'′ l| . '/:|::::i
. :.:.:.:::::::::::|:::::::::::::::::::::|:::::::ム-─- .斗- }/:::::|
. i:.:.::::::::::::l:|:::::::::::::::::::|::::/ -- ､ / ‐ ∧::v′
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从|::::::∧. '/::::::::::::l:| ｉ:/::::
. 八:::::::. ＼_'/,::::::::从 〉 __ノ',:::/
. ヽ:::Ｎ |l::::〕ﾄ､:::::｢｀ ,. ′}/ はい、お待たせ。
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| モーニングの時間が終わった午前十時。
| 私服に着替えて出てきた神楽と連れ立って外へ。
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| 不人気は彼女の行動を訝しんだ。『糖分同盟』に聞かれたくない？
|
|「聞かれたくないのは他の人たち。お店は色んな人が出入りするから」
|「そうね、それに私の予想が当たっていたらどうせ『ニュクス』に来るのだし」
|
| やらない夫は夢関係の手を打つはずだ。
| ならば夢の専門家たる何者かに教えを授かりたいはず。それはニュクスたるロリカードか、あるいはＬか……。
|
|「なんで今日なの？」
|「明日が満月だからよ」
|「……？」
|
| 満月。東京大停電に『歌舞伎町事件』と、ここ数ヶ月の満月の晩はニャルラトホテプによる怪異に晒されてきた。
| 先月は、『品川大聖堂の夢』。
|
| 何かをするなら絶好の機会ではあるまいか？
|
|「誰が見てもチャンスなタイミングで、やらない夫が動くなんてありえないのだわ」
|
| だが、絶対的な確信を持って赤頭は言う。
|
|「やらない夫はうまく意識を日曜日に誘導したでしょう？」
|「でも『満月に警戒した』人は、『日曜の前に動く可能性』に気がついてしまう……？」
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ー ,彡 〈: : :' ::::::::::::', : :( | | | ヽ i ﾊ::::::} ｉ ∨ i:i / / / ならば満月の後は無い。
/ /ヽiヽ:ヽ:::::::::ヽ: : ゝ i -‐ ´ i ﾘ ¨´ i ヽ i::i / / / 今晩がチャンス。
/ /i::i 〈: : :＼::::::::ヽ ) ´ ,イ´::〈｀ヽ ､ i＼ ＼ i::i/ / /
／ / リ ｉ::ｉ´(: : :＼::::::ヽ)＼不ト:::::ソ , /´, ＼ ＼i::i / /
/ ヽ i::| ゝ人ﾉ⌒∨:ヽ ヽ ¨ ´ ´ ／ ゝ､ ￣￣￣i
/ ∨:/ ゝ‐-､: : :.i |i i＞ ＿ イ､-‐ 二 ＞´ 彡'
／ ｀ ヽ: i i| }､ ￣ ￣γ/､〉iヽ＿＿／／ ／ゝ-=
ゝ⌒ヽ ／: i i| i ｀‐‐ ´､ 弋＿ｿ､ 〈／ ／ヽ-‐ ´
／ヽ､ノヽ: : :〈_〈: ／i ' | ゝ´ ∧ ＼ / ／ ´
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ヽ: : : : :ゝ⌒-´: : : : : :/彡-‐二 -‐ ＞-‐´ i:ゝ‐': : ､ ／´ ＞ ´: :〈
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|「でも、高度な儀式の再現を満月でもないのに……？」
|「なんらかの方法を、やらない夫は持っているのでしょうね」
|
| 見えない手札がブラフである可能性を、不人気は考慮しなかった。
| むしろ絶対的な信頼を寄せているようだった。
|
|「そんな……」
|
| だが黄泉は簡単にうなずけない。
| オカルトのプロでも異能の素人である赤提灯は、自分の周りがどれほど異常か理解していない。
|
| この美神は、ペルソナ使いと『滅ぼすもの』という不安定性突然変異が判断基準だ。
| 想像の外から奇襲に馴れている分、異能世界の常識にはまるで疎い。法則があることすら考慮にない。
|
| ……いや、そんな不人気だからこそ、この結論にたどり着いたのか。
| 黄泉は内心舌を巻く、ビギナーズラックと言うには素人技ではなさすぎる。
|
| 魔術的には、中途半端に終わった儀式の再現なんて、最初からやり直すよりも面倒くさいのに。
| その余波を利用しようという考え自体が異端であるのに。
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| でも嘘みたいな事でも、やらない夫なら叶えそうだった。
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i´￣｀＼ __
メ、 ∨´ ｀
く⌒ ＼ ヽ. i __ _ 「｀ヽ
ノ 、 ＼ ＞ ´ ＼ jト-'⌒i _ _
〈 ⌒ ＼ .／ ｀）ー く´ Xv-｀ヽ
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｀Y´7 i l l. |l | l l l / __.| ! 〉＼ｰ'ﾉ
ヒj ｌｌ l l __.ｌl ｌ l.-l‐ｌｌ.儿j´__ﾉ ﾉ-.〈 i | 「l
/ム八 「「ム八 ノ ﾉ ムﾉ r'´ /.ｲ ノ ｌ | | l
// ヒ入 {{「必! ｲ必!ﾌ｀ﾚ1以ﾘイ ii l | | |
// .// / ∧"" . "" ///人ソ.| l l | | |
それで神楽、 // // / /. ＼ ー __ ///´ ｌ | l l | | l
あなたはこの後どうするの？ 〈/ // / /「￣￣ ＞-//´.///￣ ｌ .ｌ | l l |ﾉﾉ
// / / ! /｀Y´i l /// l l | l l |´
// / /ｌ |Ｌ.__人 必ﾒ´./// ∧ l_| l l |
// / /.∧ ∨´ ／il|. i i {_ _.イi .∧ | l l |
//__/_/ノ__ 〉 〉／ ｌ!儿.人`ｰ} ノ |/ ∧ .| l l |
//| }二二 彡'´/ i! ___ノ メ´ ∧/ ∧j__.l l |
//.∧__`ーｫｧ'´ / j| { 二 彡く ト、 ＼j_ l |
, ' // ／くく `ー＜j＿r=＜く V i __/ l |
／ ／/／´￣￣ ｀＼ jlﾘ 二ノ_ノ⌒「 l l
＿ __＿ __∠ ／／八 r'´｀Y´￣￣￣￣ ｀Yくj´ ___｀l i i
/´ __ 二 二 く く _＿∧ ＿ __ ﾉ｀ヽﾉ } ﾄ、＼｀＼ /∧
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|「え？」
|
| ドキリとした。
| 最高級サファイアよりも透明で鋭い視線。
|
| 言葉を失う黄泉、どう？ 私は、この話を『血族』の耳から隠して……。
| 自分が誰の味方なのか、あるいは誰を敵に回すのか。決めねばならぬと理解した。
|
| つまり、この情報を元に今晩どう行動を起こすのか。
|
|「なんて顔をしているの、馬鹿な子」
|
| いつの間にか温かいミルクティーを買ってきた赤身、それを握らせながら頬をふくらませる。
|
|「子供は子供らしく、自分のいちばん大事なものだけギュッと掴んで離さないでいなさい。
| それ以外は大人がなんとかするのだから」
|
| 異能もない、武力もない、黄泉が指を振ればその瞬間死ぬような一般人。
| そのはずなのに、その言葉は何よりも力強く響いて。
|
|「うん」
|「いいこね」
|
| 頭を撫でる手の暖かさに、神楽は目を細め。
| 心のなかで繰り返し謝罪した。
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☆ 次回予告！
運命のときは近い。
次元の壁を超えて来たビジター。
炎の大悪魔。赤き王。排斥された者たちのドラゴン。
滅びの星の名を冠する怪人。
地下を統べる悪魔。死者の王。新たなる災厄。
彼らと手を組むということは。
少女のために生贄を捧げるということ。
次回、最終幕五十四話『しんでくれる？』
果てに見るのは破滅か死か。
螺旋と言えば螺旋王
猛禽の狩り？
上昇する際に旋回しながら上がるみたいなお話？
>>394
その通りです。
／／ ヽ＼
,. --:i:/―‐-- ､ ヾl
＿,. '´:::::::,.-|!:::::::::::::::::::::＼ l|
__|,.ｲl::::::::::,.ｲ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ |
／ /|:::l:ヽ／ ヽ::::ﾄ､::l､::＼:::::､:::::::',
/ !::!:::∨ ―-､ヾ! ヽ! ＼::ヽ:::!:::::::!
ﾚ::フ|::|ヽ:| ,r==ﾐ、 ヽ:!::|:::::::|
／´￣ } ',:!:__l /f:r心 /,二|/::|::/
/ __ ／ Y^ヽ＼{弋zソ f心 l:::::l/
| 丁::ﾉ ＼__ |lﾍ::::::::__ , 弋ﾝ/／
／￣´} ／⌒Y´ ヽﾘ l| f´ ｀ ｰｫ :::::/|ヽ、
/ __／/ ! ＼! ヽ、 ﾉ ／ ﾘ |! テーマパークに来たみたーい。
丁|:|| / ＼ ,.へ._`､ｰ--‐ '´ } テンション上がるなぁ〜！
j,ﾉﾉj ! ／-‐ﾆヽ}_! ヽ_／_!_,. -‐､
/´ / | / | -‐'､ | | ﾄ､_}／,.-ヽ
ヽィi´| | |,.--'､ ｶ,ﾉ l＿ﾉ/ ! Y,.-- |
|ﾚ´| | |_/⌒ヽ |､l ＿L_| ,.ゝｲ ﾉ
f´ ,! ! !,ゝ.__,人 ﾉ ￣ ＿ } / ／
|_,.ｲ ,| ,. '´ ｀ﾝ'､｀ー '´ }ﾉ!ﾆﾆﾆ|
|:::l／ !／ ／::｀i⌒i二ヽ_ノ | |
／ ／| ／`ァ::７Ｔ:ヽ:_ノ ヽ | !
,. ‐く ／ ! ／ /:::/ |:::::| ヽ ヽ! ！
〈 ＼ ゝ- '´ /:::/ !:::::! ﾍ ', |
,. -‐＼ ヽ. /__/ l_:_:| ﾊ ＼___,ﾉ
{ ヽ Y´￣｀ヽ ,.ゝ-､
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| ごうごうと流れる汚水。閉鎖空間の暗闇。粘膜に突き刺さる悪臭。全身を分厚く覆う防護服。
| 五感の半分以上を奪われての行軍。
|
| アリカはこの地下下水道を躊躇なく進む。
| 目指す場所はなんとなくしかない。ただ、進む。
|
| 東京の地下に蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下道。
| 下水道と、地下鉄と、共同溝用の空間の無茶苦茶なコラージュ。
|
| 元々は曹操華琳のテリトリー。屍鬼と罠を張り巡らされた未踏のダンジョン。
| それを強靭な肉体と人海戦術で侵略したのが『万魔』の下僕ども。
|
| だがその『万魔』も『邪悪帝国』に敗北して姿を消した。
| 華琳と『邪悪帝国』は『結社』撃滅作戦以降『新宿駅地下迷宮』で息を潜めている。
|
| つまり、この下水道は安全安心なのだ。
|
| アリカはひとり、暗闇を歩く。明かりはない。しかしその足取りに迷いはない。
| まるで見えているかのように。
|
| アリカはこれを『蛇身』イナミとの修行の成果だと思っていた。
| 事実それもある。だが同時に彼女には資質があった。
|
| 今の目的はせっかく伸びつつある『感覚』をより鋭敏にすること。
| そしてもう一つ。
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｀! ノ:.:.／ノノ ヽ:.:ヽ
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| ごうごうと流れる汚水。閉鎖空間の暗闇。粘膜に突き刺さる悪臭。全身を分厚く覆う防護服。
| 五感の半分以上を奪われての行軍。
|
| 『血族』大首領、藤堂志摩子はこの地下下水道を躊躇いながら進む。
| 目指す場所は決まっていた。地獄だ。
|
| 志摩子には先導する者がひとり、付き従うものがひとり。
| 大型の懐中電灯を片手に、言葉少なく案内する『やる夫』。
|
| そして、危なげのない足取りで背中を守る、間桐臓硯。
|
| この『交渉』を設定したのはやる夫だ。
| そしてそのやる夫と繋がっていたのが、臓硯。
|
| 志摩子がフリットに監禁されている間から、二人の蜜月は始まっていたという。
| やる夫は背後から手を回し、臓硯と結託。フリットに都合の悪い情報を堰き止めていた。
|
| つまり、蒼星石は間接的ながら臓硯に守られていたのである。
|
| 志摩子は臓硯を表立った仕事から下ろした。それはこの『交渉』を成功させるためである。
| やる夫は蒼星石の副官として非常に頼りになる男だが、悪魔との交渉では臓硯には勝るまい。
|
| 絶対に失敗できないため、海千山千の怪人を頼ることにしたのだ。
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│ l ト-｀ｰ-､/: l: :ノ イ : : | l
│ 〉 rｆ::ｊぅ､｀ : : l: ｨｆ::jﾌ: ヽ |
│/ｒ: ´￣:／:/ ', ヽ￣: : :ﾊ.!
V: :!: : : :': : : 、: :〉: }: : : : : :lｊ___
,.─' : : : : : : : : ,-___-､: : : : : /: :ハ
. 〈 : ｢ヽ: l : : : : : ｒ‐'--' フ : : : ,': }）: / この先です。
＼ー:人: : : : : ｀ー :‐' : : : :ﾊ_:_;/
＿＿／￣:::::＼: : : : : : : : : : :／/
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| 『やる夫』に促されてたどり着いたのは、家具の置かれた小部屋のような空間だった。
|
| 古びたデスク、ワタのはみ出たソファ、足の折れたベッドなどの粗大ごみか家具か分類曖昧な品が置かれている。
| デスクでは身ぎれいな男が書類業務をこなしており、ソファには大振りなトカゲがふんぞり返っていた。
|
|「ようこそ、『血族』の方。お初にお目にかかるッス」
|
| どこか気だるげ、飄々とした口調、長い黒髪の男が、立ち上がる。
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|「悪魔の姿と人間変身、どちらがより礼儀知らずか判別つけ難いので人間の姿で失礼するッス。
| 正体を隠すためではなく、攻撃の意図はないとアピールするための変身ッス」
|
| どこから電気を引いているのか、電気ケトルの中身をヒビの入ったティーポットに注ぐ。
| 五人分の紅茶を慣れた手付きで注ぐ、地下下水道には不釣り合いなダージリンの爽やかな香りが広がった。
|
|「応接テーブルもねーしwwwどうせ飲まないんだから無駄なことはやめとけっていうwwwww」
|「警戒されて当然だけれど、自分はもてなした。それでいいんス」
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| 野次を飛ばすトカゲ。目にも鮮やかな緑色、小型犬よりちょっと小さい程度のサイズ。
| ロン毛の男はトカゲを摘んで床に放り、座るように促した。
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＿| |＿ （悪魔の姿が下）
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ト ., ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__,.ｨ ′
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` ＜ { { { (0) } ヽ ＼ ＼ / // ￣} ′
ト ., ` ,__ヽ二ﾉ__{ ＼ ＼ ＼//___／＿′
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|「でっていうwwwwwwww」
|「その緑色はでっていう。魔王 ベリアルの強行偵察型代行分体ッス」
|
|「どうもご丁寧に、不束かながらも『血族』当代首領を務めさせて頂いている、藤堂志摩子と申します」
|「『血族』『元老』の間桐臓硯じゃ」
|
| 挨拶を交わし合いながらも、互いの目つきが鋭くなるのを感じる。
|
| ネビロスにベリアル。かなり高位の悪魔だ。最悪『血族』総出での対決を必要とする。
| 夢宮やラオウ、麻呂のいない現在の『血族』には荷が重い相手である。
|
| 慄然とするのは志摩子だけではない、ネビロスとでっていうも冷や汗をかいていた。
|
| 首領に『元老』、もっと段階を踏んでくるかと思ったらいきなりトップと来た。
| 対処を間違えば殲滅されておしまいだ。慎重な対応を求められる。
|
|「いきなりトップとかwwwwwやる夫、ファブリーズとケーキwwwいや、その前にちゃんとした椅子を買ってこいっていうwww」
|「もう遅いでしょう。しかし、互いに協力できると考えたから会わせたのです」
|
| 『やる夫』が優しい声で微笑む。
| 茫洋としたネビロス、胡散臭そうなでっていう。頷く臓硯。
|
|「彼の言う通りです。敵意がないことを示すために、しかし内密の話であるがために、自分でお訪ねしたのです。
| しかし私自身は制約の多い身、代行として臓硯にあなた方との交渉をして頂こうとお連れしました」
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＞''"´ '' ､
＞" " 、
／ ヽ
／ ',
i ｀"'' 、 i
',:＼ li ＼ l
',: :｀"' ー--....、 li ｀Y
',: : : : : : : r-､i ＞=- ＿ﾍ i
' ,:: : : : : :i r、 ''"´ ｨftタ .{
ヽ: : : : :＼ i く V わしは表向きは『窓際』よ。
＞''ﾍ＞"ﾍ"ﾍ''" ﾍ: : /: ', ヽ ／ -- " 陰謀に使う時間はいくらでもある。
＞"////.V:::::::ﾍ ﾍ ﾍ:/: : .ﾍ Yfﾆﾆﾆ{
.. ／////////V::::::::ﾍ ﾍ V: : : : : :＞、 i
／///////////V::::::::ﾍ ﾍ .i: : : : ／ ｀＞=- '
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|「陰謀www」
|「我々の目的は聞いていますか？」
|「さわり程度は」
|
| でっていうが『やる夫』を見る。
| 彼は器用に肩をすくめた。
|
|「オレ様は近似しているが時間軸的に若干ずれた世界線から来たっていうwwwww」
|「未来から来たとでも？」
|「でっていうwwwwwwww」
|
| 飲み込みが早い臓硯に草を生え散らかすでっていう。
| 正直ウザい。
|
|「その世界線のベリアルは自分の代行分体に片道切符を持たせて数撃ちゃ当たる作戦で次元移動をさせまくってるッス」
|「野良犬にも劣るボディww」
|
| 名前の割に、事実でっていうには魔力を感じない。
| 喋れる、低燃費。そして知識を持つ。能力としては現在のキュウべぇに近似している。
|
| 志摩子は内心の警戒レベルを上げた。
|
|「この世界はwww宇宙からの隕石とかwww核戦争とかでwwwww滅びるっていう」
|「文明は崩壊するも、人類は細々と生き延びるッス。ただし、悪魔が跋扈する世界で」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ノ Ｙ ヽ
(ヽ /（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ /)
(((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼ ( i))) そこでwwwww
／∠_| ,-） （-，|＿ゝ ＼ オレ様のボスはwww
( ＿＿ l ヽ＿＿ノ ,＿＿ ） 死んだ女の子の体を玩具にしてるっていうwwww
＼ |r┬-| ／´
| | | | |
| | | | |
`ー'´
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|「でっていうwwwでっていうwwwwww」
|「露悪趣味な奴でね、もう少しだけ話を聞いていただけませんか？」
|
| 不愉快な話題を、腹をよじって笑い転げながら続けるでっていう。
| やる夫が仲裁に入り、志摩子は鷹揚に頷いた。
|
|「その世界線の自分も一枚噛んでるらしいッスが……早い話が自分らはその子に情が移りまして」
|
| 困ったようにはにかむネビロス。
| 話が思わぬ方向に転がった。
|
|「でっていうwwwでででっていうwwwwww」
|
| 他人事みたいに大草原のでっていう。
| 不信そうな臓硯とは裏腹に、志摩子は二匹が嘘をついていないのを見抜いて困惑していた。
|
|「自分の世界では死んだその子を、別の世界線で助けたい……そういうあれっス」
|「貴様はどう関わる？ その世界線のネビロスとは別人なのじゃろう？」
|
| 臓硯の問い、ネビロスは頷いた。
| 肉体を伴う次元間移動など簡単なものではない。
|
| 上次元存在であるニャルラトホテプの介入が特殊なのだ。
| でっていうも、宝くじのような確率で到達した奇跡的存在である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀,,
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
:::::::::::::::::::::::::丶::／│:::::::::::::::│
:::::::::::::::::::::::::::/ ＼│:::::::::∧ │
::::::::::::::::::::::::/⌒ .│:::::/ ││ でっていうはネビロスの記憶を
::::::::::::::::::::/又!勹 ﾉ:::::/⌒│.ﾉ 内包して来ているッス。
::::::::::::::::/ ￣ /::::/ Τﾌ │
:::::::::::::/ /::ﾉ 丶/::::│ 自分にしか見えない、記憶の欠片。
:::::::∧ ﾚ 丶＿＞::::ｿ それを見せられたんスよ。
:::::ヘ 、 ／:::::│
:::│ ＼ ￣￣ ／:::::::::./
::丨＼ ゝ /:::::∧::│
::/:::::::::＼ /＼ ノ:::::::/ │/
/::::::::::://::/::::::::::::::::::/ 丶
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| 少女との優しい記憶。
| この世界で魔王ルシファー観光用分体の従者をしていたネビロスは、それを見せられた。
|
| 別世界線の出来事ながら、『自分の記憶』である、悪魔すら心揺さぶられるものであった。
|
|「それからはでっていうに協力してるッス」
|「具体的には？」
|「『絶対防御結界』術式の準備と魔力収集だっていうwww」
|
| 志摩子と臓硯の視線が鋭くなる。
| 『絶対防御結界』。それこそが志摩子たちの目的である。
|
| 原作、真・女神転生Ⅰで魔王ベリアルを覆っていた全属性無効バリア。
| 万能相性すら防ぐ能力の再現。
|
| 無論、莫大な魔力を必要とするその能力を短時間でも維持は困難。
| ネビロスは地下の悪魔を集めに集め、強力な集合体を作っている。
|
| 電池として利用するために。
|
| だが、それでは足りない。
| 圧倒的に足りない。
|
| 少女一人を破滅の瞬間から守るだけではだめなのだ。
| 彼女に人生を全うさせるためには、刹那の無敵では意味がない。
|
|「『血族』や『教会』に目を付けられないように、
| 地下の思念体や野良悪魔を集めるだけでは、大した魔力にゃならないッスね」
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´ ｀
／ ＼
／ :.
,ノ､ ,′ '.
| ＼ / ヽ
| .′ ,,.. ''" /
| , -‐ '" ,..::::::::/
_:, ':, | ,.:::' ,. ,.:':.:.:.:.:/
∨ ＼ :::..':,│ ,:':,:' ／ ,::.:.:.:.:.:/ 人間の生贄や、
〈 ｀丶::::..:::::／ __, !.:.:.:.:./´'. 高精度の魔力炉の生成などはせんのか？
{:ミ＼ 〉::f ''"´ ヽ.:./ 7/
_У ゝ=` ､∧ r＼__,,,.. -rrrｧ::'’'' /
／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
＿__／/:.:.:/: }:, r‐r‐< / | :、 ／/:.:.:l: :＼
／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
／: : : :.:.: : i:.:.:.' : . : l＼ ｀ ー======イ / ｨ: . |:.:.:.:!:.:.: : : :＼
´: : : : : :.:.: : :! :.:.l : . : .! lヽ´￣￣｀ヽ イ´ /: .│: : l.:.:.: : : : : :＼
: : : : : :: : : : :! : :.!: . : . l l:.:.:.｀ー― '":.:.:.:./../: . :.:| : : :l :.:: : : : : : : :＼
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|「無www駄wwwなwww敵を作るだけwwwwwっていう」
|
| でっていうは冷静だ。手段を選ばない悪辣さはあるが、無用な争いを避ける傾向にあった。
|
|「そういうのは最後の手段だっていう」
|「最悪の場合、人間を集めて瞬間的な魔力に変換するしかないッスね」
|
| 草を生やさず言い放つでっていう、事も無げにネビロス。
| どうせ破滅で死ぬ人間、すでに準備は始めているのだろう。
|
|「つーかwww凡人百人集めてもwwww雀のなみだっていうwwwっうぇっうぇwww」
|「リスクに合ってないッス」
|「リスク？」
|
| 意地悪に尋ねる臓硯、
|
|「戦闘で消耗するリスクッス。自分内政型なんで」
|
| 誰にも見えない場所で唇を皮肉に歪める『やる夫』。
| 彼は悪魔状態のネビロスの魔力を知っている。
|
| この地下に凝っていた悪意と死霊を根こそぎ魔力に変換したのだ。
| 『万魔』のような防御性能や『蛇身』のような卓越した技はないが、
| 魔力総量では『十二の封印像』のどの悪魔よりも上であった。
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_ - ―― 、
イ.::::::: -――-＼
／ /.::::／ ヽ ＼
/ __〈::::ノ { { ヽ. } | :lハ
/<_ 小、> | ＼ｰヽ ＼ ﾉｌﾉィﾉ |
/ <／|_｣ | ｆ＝ミヽ ィ７| /
./ | ヽ 、 || || ﾚ'ィカ
./ 人 ＼_＞ r‐ ￢ィ''〔 ﾉノ
/ ≧==≧＼ ＼ | ／{ 7 く__つ
/ ∠三三三三＞ー一'´:.:.:.:..＼＞┤
./ / ≧三三了.:.:.:.:.:.:.:.:.:._,,､＜＼| |
/ / /三三三∧:.:.:.:.:.:.:>ﾍ {仡}:ｌ:.:.:.〉ﾉ
; / 厶ィ⌒ヾ三ﾆ＞=イ:.:.:.:.ヽ |:|:.:.{
| / / }彡ﾍシ}:.:.:.:.:.:.:.:.∨.:ﾄ､:.:.＼
| l | / ＿,,.∠斗―／-―:.:.:.:.:.:.:.:〈 ＼:.:.:}ヽ、
ヽ |／..:.:.:.:.:.:.:_ -‐'´.:.:／..:.:.:.:.:.:.:.∧ﾍ ト-'_rく
／..:.:.:.:.:.:.:.／..:.:.:.:.:.:.:.〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/><ｌ:.l ヽく_r勹
ー――／..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧:.:.:.:.:.:.:/＞く|:.:ｌ ヽ丨
／..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ヽ:.:.:.:./＼／|:.:.ｌ | |
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| なお、自由闊達に遊び、美味しいものをたくさん食べて、よく寝ていたお陰で無茶苦茶な魔力を誇った奴もいたが。
| 『やる夫』が知る『死鳥』は逃亡した瞬間だけなので悪しからず。
|
|「…………」
|「志摩子様の執り成しがあれば、上杉謙信様との協調も可能なのでは？」
|
| 『やる夫』の進言。
| 上杉謙信の強大な結界を、破滅の瞬間に『絶対防御結界』で複合装甲化するのだ。
|
| 論理的には可能。今現在も『血族』の神道仏教陰陽道と、『教会』系列の複合型の結界が張られている。
| 志摩子の芸術的なまでの魔力操作の為せる技である。
|
| おそらく、『絶対防御結界』との兼ね合いも可能だろう。
| だが、問題が二つある。
|
|「あなた方と協力するには条件が二つあります」
|「でwwwっwwwてwwwいwwwうwww」
|
|「一つ目、件の少女の身元を明らかにすること」
|「人質という訳か」
|
| 当然とばかりに臓硯。
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イ ミイ ヽ
／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
/ / / ／ /ｊ ! ',
! ′/ ｨ ／/{ .
| ! ﾘ / | ／ ィノ!∧ ｊ |
iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j| 確実に保護をするためです。
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ!
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､ 二つ目は、お二方に『血族』の管理下に
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ 入っていただくこと。
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
ハﾆム､ニｊニニ≧≠ニﾆ!≧ｙ´イ7 /ニニニニニニニニ| }
/ ﾊニﾆ Vニニニニニﾆ7≠（(_⌒ヽ {ニニニニニニニﾆﾆ|! ﾘ
{ / |ニﾘ /ニニニニニﾆ ｒｌヽ ヾ!ニニニニニニニニ|‐´
ヾ |ﾆ7 /ニニニニニニ′ {Ｌﾑｊ/ !ﾏニニﾆﾆﾑニニニﾆ|
. ｊ/ /ニニニニニニ7 ｀ｰ个､__ノ ｊニニニﾑﾆ7ニニニ､
ｨ } 个ァニニニニニ７| ﾑﾆ ヽ＿ノｊニニﾆｊニ/ニニニ|! ＼
/（ ノ ｊ/ /ニニニニニニ!ﾑ ノニﾑ /ニニィニニニニニ|! ﾘ
{ ￣ /ニニニニニニニｊニニニニニニニ＞´￣ミヾニニｭ､ニ! （
｀ー ´|ニﾆア⌒￣￣~~｀ヽ￣￣≧｢ニニニニニニニニニニヾ|､ ーｲ
V´ィ }! }ニニニニニニニニニニニｊ ￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「あの子を確実に守ってもらえるならどちらも構わないッス」
|「軽wwwwww」
|
| 迷う素振りすら見せないネビロス。
| だが、これはでっていう側から見れば願ってもない申し出だった。
|
| 人質でも構いやしない、そもそも彼らは二人しかいない上に、ネビロスは暇がない。
| その上でっていうは犬にも劣るザコ悪魔と来た。
|
| 懸念材料が無くなる上に、身を護る必要性も無くなる。
| 渡りに船とはこの事であろう。
|
|「その条件として、こちらは『絶対防御結界』を提供すると」
|「にしても、不足の魔力はどうするっていうwww」
|
| 肩をすくめるでっていう、『やる夫』がネビロスの机から書類を手に取る。
|
|「試算表ならこっちッス」
|
| ネビロスが差し出したのは、いくつもの数字の書かれた紙。
| 『絶対防御結界』の必要魔力試算表である。
|
| 範囲は『一平米』『キロ平米』『東京全土』とあり、それごとに『一瞬』『一分』『十分』『一時間』とある。
| 『一平米』を『一瞬』なら大した魔力ではない。
|
| 蒼星石でも可能だ。十秒も維持できずに魔力切れを起こしそうだが。
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-ｭｆ´￣ ｀ヽｰ､
／ ヾｭ､ ＼ヽ
. -ｰ＜ ヾ＼__ ） ＼
／: :-:､: :ヽ 〉: :ヽ {:ヽ
/: :ｲ三ﾆｊ: : :j __ ／: ; : ハ : :ヽ ＼
{: : ﾘ´rシ: : :ヾ /: ヽ／:_;_:´: : : :i |: : :} ハ
i: : : : {: : : : : | |´j:!: ; : :r: ＼ヽ_:｢＿ｊ: : :| }!
ヽ: :_; : : : : : :| | 7／:､:ｚヽ: :ﾊ __｣: : : : : ! |!
j｀7 : : : : : :j |/ : : ゞ!他ﾄﾐ､| |: : : : : : :| ｣|
/:/: : : : :／／: : : :: ﾍ､_´ ﾘ!| |: :ィ: : : └=ー７
ノ:/: : : ／／: : : : : : : : zｭ:_;入L!:j): : ィ_＿: ://
＿ィ!: : ト-:' ／: : : : : : : : : : : :￣: : ､｀: : j r┘｢７／
|｢|: : : :ﾊ /: : : : : : : : : : : : : : /: : : XｭK､:￣ソ
ﾑ ﾏ: : : :∨: : : : : : : : : : : : r: : : ⌒八｀¨ゝ:／
jﾆ! ﾏ: : : ﾑ: : : : : : ｭ ヽー､:｀_:_:_:_/: : ~y´
/ニ ､: : : :ﾑ: : : : : :ﾑ ヾ{└- ､: : ィア
イ|ニニヽ＼: : :､: : : : : : :ヽ＿ﾆ: イ この魔力を賄うのは至難の業だな。
人|ﾏニニ＼ヽ: :7ゝ_: : : :-: : :ィ彡ﾆL
イﾆﾆ| ﾏニニﾆ≧ｭ＞ニ≧＝彡ニｊヾニーｭ､
／ニﾆﾆム ﾏニニニニニニニアニ{ Y_ﾉニニニ≧ｭ ＿
／ニニニニニ マニニ! ｊ| /イ !ニニニニニニニニ≧＝
／ニニニニニニニｭ＼ﾆ| ﾘ/ニゝﾉニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニニ ヾー ＿__ｊ/_ イニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニニ＞､｀}=ｒ―イｒニニニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニ」 |ニ] j | }ニニニニニニニニニニニニニニ
ニニニニニニニニ]__[ニ7 / zｲ {ニニニニニニニニニニニニニニ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「そちらが求める東京全土をベースにして、最低でも十分は欲しいッスよね。
| 確実を期するなら一時間」
|
| 品川大聖堂の『大天使召喚儀式』に使った魔力を流用したとしても、『キロ平米／十分』も保たなかろう。
| これほどの魔力をどこから用意するべきやら。
|
|「ワシの貯蔵庫は『万魔』に焼かれてしまったからのう」
|
| 残っていたからと言って差し出すとは言わない顔で、臓硯が残念そうに顎をしゃくる。
|
|「『血族』の魔力炉を利用するにも限界がありますし」
|「……魔力に変えてもいいような連中はwww？」
|
| 誰かを殺して食えばよい。
| でっていうの笑みに志摩子が凍りつく。
|
| そんな相手、そんな相手……。
|
|「東京を守る尊い犠牲ッス」
|「物は言いようwwwwwっていう」
|
| 志摩子は青ざめ、しかし血が滲むほどに唇を引き絞った。
| フリットに監禁されて自分は変わった。
|
| 優しさと、穏当な関係だけでは東京は守れない。
|
|「『邪悪帝国』でしょう。彼らは低位悪魔を生み出す高位の存在を奉っています。
| それごと奪えば……」
|
| 雪だるまを大量生産し続ける魔王 キングフロストの存在である。
| だが、それでも全く足りはしないだろう。肩を震わせる志摩子を、『やる夫』が嗤う。
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´ ￣｀ヽ
／ ＿＿￣￣＼
/ ￣￣￣＼ ヽ
/ ======ミ、 ＼‘，
ﾊ | ／:| ＼ ヽi
//} |∨: : :| ＿＿ , ＼ | ,ィ 翠星石を使いましょう。
{ V/: : : : : :￣ : : ／ ￣:} ヽ/／ / 目覚める見込みがないのですし。
〈 〈_:/＼ : : : : ／: : : /: :j /// /
|:ﾄ､〈: /∧:ﾉ: :.:}|＿＿{: / ___ ∠// /＿__,ノ
癶ぅ{ しr┴＿ -一ｧ':厶＿_／:＿:_ :}／￣／/
∨/:ﾉ｀＾￣ｨ'_迂歹 : : ／: : : : く: }/:./ ／／
∨＼: : : :l: : : : : : ／: : : : :__ｆ_:ノ :/＿_／
〈: : : : :. :.{: : : : : { | : : : : 人＿;／}＿＿___
／/ト==‐‐ ノ: : : :./│: : : /: : : / ////////＼‐ｘ
／///,}ー'三ヽ: : : :./ ＼:ノ:.: : :/ //{//////// ヽ∧
｡o≦ //////ト----': : : / イ : : ／////|/////////∧/ﾟ｡
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| その言葉が与えた衝撃の大きさは、でっていうもネビロスも理解できまい。
| 志摩子は顔色を無くし、震えながら頭を振った。
|
| 『やる夫』と臓硯はそんな彼女をじっと見つめる。
| 二人の中で、それはすでに決まっていたことであるかのように。
|
|「………………仕方、ありませんね」
|「やる夫、どういうことだっていうwww」
|
| 決まりだった。
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,､ ‐＝= ､
,. --´‐-- ､ ｀ヽ､
／ /:.:.:.:.:.:.:.:._:_:_:ﾉ＼ ヾ､
r/:.:./:.:.:.:.:.:.:￣:.:.:.:.: . ｰヽ }:}
ﾊ:.:∧:.:l:.:.:.ヽ.:.:.:.:.ト､ヽ:.:. l _ ﾝ
〈.|:.:} ､ヾﾍ:.:.:.ヽ丶､＼_}:.:. |´
〈 ﾊ:.! ,ﾞ≧ｫ､_, ､_ ｨ.ﾆ､ |:.: l
X（ﾊ〈 ﾋﾘﾊ 'ﾋ'ﾂ 〉リ）___
,.イ:.〉_∧ r==ﾞ==ヽ イ`ヽ ヽ
/ ／⌒|人 { | /ｧ‐､ ! ええ！！？
／ | l:l＞ヽ _＿ ノイ| { ヽ
／ ...:} l:| ＼ !ノl:|__!_:.. ＼
_／ ／´二} ￣￣ l:|r‐ ヽ ＼
/ -─---‐ ´ ﾆｿ |:|二 ゝ ､.. ___ ヽ
/ ＿_ ノ´|:| . |:|ｰ‐､_ ヽ }
＼_.. -‐ " ∧ ヽ l:| .ノ:.:.. |:| / ｀丶､ _」
∨ │l | ´ l:| / ￣
◇ |`!:|ー------ !:|!
lﾊ _ﾉ |:| ; !:|.|_
/ヾ_|:| ﾞ _!:|ﾑ〉
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| 下水道のパイプを通して聞こえた声、パイプに頭を貼り付けて盗み聞きしていたアリカは思わず声を出し口を押さえた。
|
| いま、なんて言った？
| 声がくぐもっているせいで、誰の声なのか聞き分けづらい。
|
| ただ、志摩子の声だけは理解できた。
| そして、今『やる夫』と呼ばれた誰かが翠星石について解説しだすも……あからさまにそれがやる夫ではないのも。
|
| 『血族』はどうなってるの？
| 本気で翠星石さんを生贄にするつもりなの？
|
| やる夫？ やる夫兄いは『向こう側』ではないの？
| そこにいる男は何者なの？
|
| アリカは息を潜め、気配を消して来た道を戻る。
| 品川大聖堂への地下通路を探す目的は達成していた。
|
| 考えをまとめなければ。
|
| ……それがうまく行かないことはアリカ自身理解しているが。
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―――それは、雨上がりに見た幻。
全てが変わるかもしれない。
そう認めた彼らが見たのは、自分らを置き去りにした時代。
取り残された無人島。誰も顧みない。迎えは無い。
雨は止まない。太陽とは和解できない。虹なんてどこにもない。
怪物となる剣を手にし、救世主へと至る男。
君の顔は忘れてしまった。周りに合わせて笑う孤独。他に道なんてない。
怪物になる鎧を失い、普通の女の子に成り果てた少女。
胸に消えぬ灯火。巻き込まぬために選んだ孤高。戦士として生きる覚悟。
殺し合う二人の英雄。
生き残るのは一人だけ。
次回、最終幕五十五話『やらない夫とアリカ』
果てに見るのは、破滅か死か。
やる夫の事知ってれば翠星石えお犠牲にする方法なんて取らんと
知って無いメンバーばかりで会談してたんじゃなあ（明後日の方を見ながら
『血族』は現状足手纏い？
俺たちのやる夫は妖怪よりも色白だって評判だったからこいつはニセモノやな
やる夫は神父だがひろしネタを言うアリカも実はサーシェスの変装である(真顔)
やる夫さんはすっかりと健康的に日焼けしてしまったようだ
血族が危なすぎるから藤木は寄り付かないで正解とモノローグにあったけど、そういうことか
日焼けして別人･･･「そんな、声まで変わって」
見て見ぬふりしてるのが何人いるやら（多分いないっぽい）
乙
でっていうはにゃるって分かってて言ってないのかな？
>>414
ナオミヨォ。
>>417
それは蒼というか、中の人なのでは、
>>418
分かってないです。『やる夫』をやる夫だと思い込んでいます。
十
内
┌∧∧┐ 十
｢| |||| ｢| 人
｢| |||| ｢| ／○＼
< 三三 > ￣|人|￣
｢| 品 ｢| ／∩＼
｢| 川 ｢| ／ || || ＼
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. 立ｌ |￣￣￣￣￣￣立立立||┬=====┬|立立立 |￣￣| |立
|＿l_|＿＿＿＿＿＿圧｢;厂｢;l 〕田｜田〔 ｢;厂｢;圧||＿＿|_|＿|
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|; ; ; ; ; ; ; ; |田 | 田|; ;|｜｜l 〕田｜田〔 |｜｜| ; ; |田 | 田|
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|; ; ; ; ; ; ; ; |田 | 田|; ;|; 凵; l 〕田｜田〔 |; 凵; | ; ; |田 | 田| ; ;|
|; ; ; ; ; ; ; ; |田 | 田|; ;|; ; ; ; l 〕田｜田〔 |; ; ; ; | ; ; |田 | 田| ; ;|
|; ; ; ; ; ; ; ; |田 | 田|; ;|; 鼡; l 〕田｜田〔 |; 鼡; | ; ; |田 | 田| ; ;|
|; ; ; ; ; ; ; ; |ｧ'ニﾆﾏ|; ;|; 臣; l 〕田｜田〔 |; 臣; | ; ; |ｧ'ニﾆﾏ|; ; |
|^V^]ニニ[｢ｒ ― t |; ;|仁仁|ZZZZZZZＺ|仁仁|仁 ｢ｒ ― t |仁|
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刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃|￣￣￣￣￣￣￣￣￣|刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃
刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃
刃刃刃刃刃刃刃刃刃刃|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|刃刃刃刃刃刃刃刃刃
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| 木曜の夜。満月に一歩届かぬ十四夜。
| 夜陰に紛れ、警備された品川大聖堂に忍び込む複数の影。
|
| 彼らを見咎める者はなし。
| 何しろ警備の担当は『十字軍』。
|
| 彼らは持ち場を守らず持ち込んだ酒と攫ってきた女に夢中であった。
| 前日の録画を垂れ流す監視カメラの映像にも気付く訳がなく。
|
| 侵入者たちは用意した合鍵で粛々と進んでいた。
|
|「ダルには感謝しかないだろ」
|
| 監視カメラの細工も合鍵も、『異端審問官』のダルの手際である。
| そして、目指す地下への行き方も、彼に教わっていた。
|
| 侵入者、世紀のテロリスト備府やらない夫を筆頭に十人。
| 先頭をやらない夫、側に侍る天竜とシグ。
|
| 殿を四ツ目、その間に六人のペルソナ使い。ちなみに鹿島は留守番だ。
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､丶` ｀´: : : : ￣｀`ヽ､
／.: : : : : : : : : : : : : : :. :. :. :.＼
／ : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
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/.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :. :::,
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. ;: /|: : : : :∧__|_＼: : : : |、.: :. :.|: : |: : : : ヽ ＼
|/ .|: : : : :|'´ヽ〉 ＼: : { ＼.:..:.|＼|: : : : : :|￣｀
{ |: : : : :| ＼〉 ＼| |.:./.: : :.'
人.: .:.＼墨墨墨 墨墨墨': /: : :./
＼.:.:.ﾊ､､、 ､､∠ ｲ: : :./
＼人 ｲ.: :.イ …………ゴクリ。
_Y'＼〉〕ぅ=─‐─=ｾ'升.､〈.:..:.〉
. __ __r‐(: :(_;ノ ／ / : : : : :|人_:.｀Y
. /∨ __ヽ〈_;〈__;厂 ／ ／匚r‐_､_ 〈 .::::} 乂_｀Y
. | 〈∨:_:_ﾑ〉 ＞''~ / ,i衢厂' ＼} :::::〉 (:.｀Y
. ∧ 〈∨ .＞''~ /: ::/ .{; ヽ: ＼: :{ /: :.}
. ∧ 〈∨ : ::_／ ＼: :} :} { :.:ﾉ
∧_人: :: :: :: :_{ : :Ⅳ 〉 {ﾆ{}ﾆ}
｀ｰ''⌒X''~ｉ:ｉ＼ : ::} ＼＿,/ ノ.:.ﾉ
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| 『夢世界』の支配者であった少女、窓付き。
| 戦闘能力は皆無、だがやらない夫の目的には不可欠な存在。
|
| 彼女を鼓舞するように手を繋ぐ白雪ひめ。
| 窓付きの友人、広域殲滅型と融合装着型のペルソナを使い分けるオールラウンダー。
|
| 二人を守るように歩く陰険メガネ、雨宮夕日。
| 自己強化と範囲妨害を得意とする参謀にして騎士。
|
| 超然と進む糸川はやぶさ。
| やらない子たちのチームは別行動。幸せな夢を見せる『滅ぼすもの』の使い手。
|
| こんな時までメイド服の十六夜咲夜。
| 『指向性』を支配する『滅ぼすもの』使いであり、アトリーム亡命者。アトリーム組も別行動。
|
| 最後に、ヘラヘラ笑いの球磨川禊。
| 『なかったこと』にするペルソナ使い。もう一人の参謀役。
|
| 彼らの仕事は地下に。
| 『大天使の夢』を模倣するために集められたチーム。
|
| コンクリート打ちっぱなしの螺旋階段を下りる、下りる。
| 壁の破壊痕に、何があったのかも見当も付かぬまま、やる夫たちが辿り着けなかった地下大広間へ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ -＝＝= ､、
／' r二_'―- ..＿＿ あ、やらない夫さん。
／' _ ゝ、_￣ ｀ - ﾆ_Ｙ⌒ヽ 待ってたよ。
〃 ／ ｀r_ｰ､ _,ゝ､ ヽ＿＿＿＿
〃 / / / ﾄ､ヽｰﾆ_ｰ .__/ ヽ ｀¨ ‐- _
（( // | | ハヽ､ ヽ｀＞‐ヽ .从_r ￣ ＼
｀ｰ || | ヽ!-‐ ｀ ￣ ´ . -V_ ! _∠_ 丶
ヽ V ﾄゝ､ ´ 心ﾉヽ/ ¨ﾉ >､＿ /
|Ｙ rひ) ┴‐'´/_∠_ ／_| .べ丶 /
＿＿」 ,,ヽ' ヽ ＿_ 〃'´ ￣￣／／ ｀ ‐- /
_-=-´_二ﾆ=! ﾏ´ l ∧ ／／ /
〃 〃 ヽ V / ｜ ＼_/／ /
´ ヽ ＼ ｰ ' ／￣ヽ ） ／
_､ ＿ 丶、／ ﾉ >' ／
ゝ ゝ-､ ＿ ／ ヽ_ ィ _ - ｲ ,.ｲ
￣｀丶､ゝ- ､＿／ ヾ _∠-ｵヽ< // ／{ ヽ
｀' ーｙ' _ ゝ'´ 〃一' / i ／ Y |
_（ ／ 〃 / l ／ 〉ﾍ
_ -‐ ´ r'⌒'/ 〃 / ｜ ／ ヽ,ｲ
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| 奇しくも、できる夫が命を落としたその場所で。
| 仁王立ちに立ちふさがる一人の少女。
|
| 夢宮アリカ。
|
|「ようアリカ、なんだバレてたか？」
|「みんな何で分かんないのかな？ やらない夫さんなら満月前に動くよね」
|
| 久々の再会、自然な挨拶。当事者同士に緊張感はない。
|
|「止めに来た。そんなことしてる暇はないでしょ」
|「やめられない。オレは救世主にならにゃならんだろ」
|
| 単刀直入に、一切の駆け引きなく決裂。
| 腕を組んでガイナ立ちの女子高生から放たれる、尋常ではない闘気。
|
|「『蒼天の青玉』はどうした？」
|「壊れちゃった。今のあたしはフツウの女の子だよ」
|
| 普通の女の子は鳥肌立つほどの威圧感は出せない。
| やらない夫の前に出る天竜とシグ。
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∧ __//{:::::::::::::::::::::::::::: ＼| ／
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. / ∧ V∧/'，:::::::::::＼:::::::::::::::::'，
{にｉ厶_/::::::＼､::::::::::::::::'，::::::::::::::'，
夊ziり/:::::::::{:::/＼:::::::::::::'，:::::::::::: ｌ
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/⌒＼ / V::::::'代茫ｱ^＼::::ﾉ_}::::/::::|
x冖ミ、 > _j:＼::::::> _{￣i}:/|:::::八 押し通らせてもらうぜ。
／_ｱ=く l／ ⌒},／＼::＼ __ ノ〃リ／ヽ
/ﾆ┬= ､_}＼_ -=ﾆﾆ| {＼ﾉ- __／＼ﾆﾆ=/
{ﾆ┬- ､_}//ﾉﾆﾆﾆ= | 、 〈∧／＼ﾉﾆ=/
V厂≧=' ／ﾆﾆﾆ=‐ | ／}｀ ､ﾆ=ミ=７
〃 / イ|二ニﾆﾆ= |／Ⅵ{__ }〉ﾆ=‐Y
〈^'， / !ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆⅥ ＼＼ { ［|ﾆﾆ= }
. ∨〉,〃 ∧ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆ Ⅵ ､＼/ハﾆﾆ/'，
v/ ,-=ﾆニ７=‐|ﾆﾆﾆⅥ ＼/ixi}ﾆ7=‐/!
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|「シグ、夢宮さんの孫だ、全力でやるぞ！」
|「うん」
|
| 抜刀、突撃。目が合う、睨み合う。
| その瞬間に眼帯に仕込んだ閃光を放つ、一瞬でも相手の視界を潰せれば僥倖！
|
| 光るタイミングの打ち合わせはしていない。
| だが完璧なタイミングでシグの毒雲。
|
| 非致死性だが粘膜を焼く、吸い込んだらただでは済まない催涙ガス。
|
|「なにっ」
|
| 一瞬の隙を突いて斬りかかろうとした天竜がたたらを踏む。
| 顔面に飛んできた右ストレートを紙一重で回避。
|
| 後ろでは、まだ足が治りきっていないシグが顔を守ろうとして尻もちを付いた。
|
| 他の全員が、何が起きたのか分からない顔。
| まさかアリカの飛ばした殺気だけで、攻撃を受けたと勘違いをしただなんて。
|
| ドンッ。
|
| 異様に広い大広間に破壊音が吸い込まれる。地震のような揺れ。
| アリカの震脚。蜘蛛の巣状のひび割れができる。
|
| 螺旋階段の破壊痕がなんなのか、誰もが気付いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿ ＿＿_,.--_ｧ'ー '´
,., ＝= ､､ ,. ‐:.:´:.:.:.:.:.:.:.:｀:.＜￣
／´ ＼／:.:.:.:,:.‐,:.:‐:.:.:.:.:.:.:.:.:.iヽ
/:.:ヽ.:.:/／_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:j:.:ヽ
_rーv__‐ァ'ﾆﾆ/:;:ー:.ヽﾚー:.:.:.ー:.--:.:.＿:._:⊥ _-
_,r__ァ'ニ '´￣ {/:./:.::.:.:.:.:.:.:.:.:ー:.､:._:―:.‐＝エ_:./ 志摩子さんは、
ﾆ '´ /,ｨ|:l!:.:.:.ﾄ: :.ﾄ-- .:_:＼￣ji丁:.7 ヽ 翠星石さんを生贄にして
ﾍ{ﾉハ:.::| ｀ｰヽ 丶￣_ヽ ﾚ=i/ ::. なんかすごい結界を張ろうとしてる。
,. _.-―ヽ‐-ヽ|、 ,ｨ∠..、､. :./_:: :.:
／´ ／'ヽfT:ぅﾄｰ イﾊ:z:ｿ ' /ﾟへ､::￣..
-‐ '／ ￣ヽ｀´ j ￣ /l!ヽ､ 丶
/ /へ、 r== ､ ／ //:./'￣丶 丶、
／ l/:ハ＞ ｀ニ _ '_, ｧ' /:/′ ヽ
／ l:./ ヽ. ´ ／ /:/! ＼
／ ／ 7/′ ￣￣ // ! ＼
,. ´ ／ j i // { ー ,､ ＼
／ ／ | | // i ／ 丶､ ｀ヽ､_
／ ／ l l // ７ ｀ 丶､ ｀ヽ
- ､／ _. ‐ ´ l ﾄ // / ＼
,. ‐ ´ l |、 ''ヽ. i i / ｀丶､ _
ｨ´ l | 丶､_ // /
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| 天竜の眼前３センチ。
|
| 寸止めした拳、拳圧で髪がなびく。
| 腰が砕けた。膝からくずおれ、ペタンと尻餅。
|
|「それは必要なくなる。オレが弥勒菩薩の『末法少女』になるからな」
|
| やらない夫の両手が伸びたような錯覚。
| ヒゲ槍が追加の腕のように。
|
| だが、彼を守るように夕日が駆ける。
| その後ろから咲夜がベクトル操作、加速。
|
| 水の中にいるかのように、全身に重りがまとわりつくかのように。
| 鈍化するアリカ。加速した夕日と、バネ脚のやらない夫が同時に接敵。
|
|「邪魔をしないでくれ！」
|「ならまずは話をしようよ！ 他に道が」
|「道なんてないだろ！」
|
| アリカの双眸が火を吹く、憤怒の炎。
| 四ツ目が舌打ち、球磨川は唖然。
|
| 夕日とやらない夫が消えた。
| 正確には、二人同時にいなされて、運動エネルギーを倍加されて投げ飛ばされた。
|
| 大広間の闇の向こうまでひとっ飛び。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヾ／ 丶 ＿,r一f_ノ
,.---- ､ / / / ＼ブー'^¨´
. / ｀`丶､/ / / ヽ
/ ! | ! ! | ＼ ﾊ
. / ! ! ﾊ l| l､ ! 、 ヽ ',
{ ,.-l l._| ヽ!ヽ| ＼ |､ ＼ ﾊ | わからず屋！
〈ヽ ＿/／,ﾍ ,.fヽ| ,.≧､、 ＼! ￣ l/ |.| !
∧＿_／／／Ｘ´,.イ､| { {ｋリト､ ,.≦､ﾘ! ∧
==＝〈 ／／／／: :〃 |ヽl ｀¨´ ィ´{kリ 〉| ／.:/_ ,.ィ７_
_,. -‐ :':´／／: / : ＿|!⌒ヽﾊ、 , ｀¨´ノイ.:.:.:/ ＼ァ￢､＿＿＿＿_,. -- ､＿ _／ /'/
: : : : :／／: : : :|: : 〉 Ｌ.__Yl::::ヽ、 ,r＝=ｫ ,.ｲ.:.:/.:.:./ ／ ` ヽ /
.＼:く.>': : : : : : : : : ￣,.イ ljヽ:::::＼{_ _,ﾘ ,.ィ:.:/.:./.:., ' ,. ´ ,__/､＿_,⊃
=､､ヽ: : : : : : : : : : : く Ｌ.ノ ` ＜`_ｰ一:':´:.:／／／,. ´ _,. - ――――――--'´
＼ﾘ､ 二二二二二二!／ ￣￣／￣ ´／＿_,. -‐'' ´
::::::＼: : : : : : rァ''´／.:ヽ._ ＿__ _,. '´￣
::::::／: : : : ／ヾ.:.:/.:.:.:./.:.:|｀＜.＿__,＞ィマ´
／: : : : ／ ∨.:.:.:.:.|:.:.:ﾍ:＿ヽ:|:.|:.:|:.:.:∨
: : : : ／ ｀ Ｔ￢'￣｀＿｀ヾl|:.:.!:.:.ﾉ
: : ／ ヽ ／´ ｀`|!__」´
／ ∧! |
{::::＼ !
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| 叫びながら二歩下がるアリカ、不屈のガッツで立ち上がった天竜の切り上げを回避。
|
|「『隼』！！」
|「『パーティーハズカム』ダンガンマシンガン！」
|
| 機関銃を乱射しながら突進する戦闘機、ひめがまとった融合装着型のペルソナが、エネルギー弾を乱射。
| どちらも狙いをろくにつけない。その分、流れ弾が恐ろしい。
|
| 床に伏せる天竜、対してアリカは仁王立ち。
| 特定の弾丸を狙って避け、突然側面に猛ダッシュ。
|
|「チッ！」
|「そんなの当たったら死ぬよ！」
|
| どの弾丸も当たれば死ぬ。だがアリカにはかすりもしない。
| 密かに側面に回っていた四ツ目に肉薄、その銃を蹴り上げ……いや、当たらない。
|
| 悪魔的な目の良さでアリカの動きを唯一追えている四ツ目、肘鉄をアリカの膝に。
| だが運動エネルギー量に圧倒的な差、普通の女の子はあざを作りたたらを踏み、悪魔人間は吹き飛んで転がった。
|
| 膝立ちになりながら外れた肩を入れる悪魔人間。普通とはなんぞや。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,,
ll'' ﾞﾞ''､
ｨ ／ ヽ
,,'' ''/ ヽ
ﾐ u ｌ !
､_＿ ! j i, ,, ''´',
ヾ､o ｀ヽ }/ ''''’ {}
／｀ﾞミミｰ==ゝ__ノ / '
//////｀ヽ､-ー /, ´ ﾉ
ヽ,////////ﾞ==､ ィ /
＼////////}/ |lﾞo｀ヽ /
｀ｰ//∧ヽ､_ｌ /
｀ ｀ｰ' ヾ//∧ ／ 銃弾より速いやつに銃弾を当てろって？
―､ 〉////ﾉ クソ！ 夢宮め、とんだバケモノになりやがったな！
｀ ､｀ヽ / }/彡
__ ヽ ） ,, ｲ
} ／-'
/ ／
ﾞｰ イ
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| 気配を隠して移動する四ツ目、アリカは追えない、プロペラを回転させながら突進する戦闘機が追わせない。
|
|「あんた達もあんた達だ！ 何しようとしてるか分かってるの！？」
|
| 回転するプロペラを左ジャブで破壊、プロペラを、素手で、破壊。
| 続く右ストレートで戦闘機の船首をぶち抜いて吹き飛ばす。
|
| いや、ここで球磨川のペルソナが介入、空中で錐揉みしながらも破壊を『なかった事』にされた戦闘機が再突撃。
| 側面に回ったひめの弾丸との十字砲火。
|
|「ボスを守る！ 東京を守るために！」
|「本気で言って……！？」
|
| 火線をくぐり抜けて接敵する天竜、アリカの足に粘着質の毒が出現。完全に捉えた！
| 横薙ぎの一撃、しかしやんぬるかな！ 膝と肘での白刃取り。
|
| からの左ジャブが天竜の顔面にクリーンヒット。
| 鼻血をばらまきながらも、しかし天竜は剣を手放さない。
|
|「『そのまままとめて蜂の巣にしちまおうぜ』『どうせ僕が治せるからね』」
|「あ、ふーん」
|
| 括弧を付けた球磨川、アリカはその言葉を聞き逃さない。
|
|「あ、ばかっ」
|「『おいおい』『僕は自分の死すらなかった事にでき……キュぅッ」
|
| あっという間に走り寄り、ラリアートで首を刈られた球磨川。
| 意識が飛ぶ、なかった事に、気道が締められる、意識が飛ぶ、なかった事に。
|
| 球磨川を盾にされて射撃ができなくなるひめとはやぶさ。
| 意識が飛ぶ。なかった事に。意識が飛ぶ。なかった事に。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／.f⌒i__) (ハ ﾊ「 て!.::::＼
／厂 ﾄ、 j j /⌒j / 厂）.: ＼
. '.::.: ) ﾒ ヌ ´ ￣￣ ｀ マ ⌒ くr‐ｭ.:: ヽ
. /.::ﾒ⌒Y／´ : r‐ 、 .:: ::: :::: :｀X ) く .:: ::::＼
.' ..( 人 .:::| .:: :::::＼ .:::＼ (メ) ::::::「⌒
ｌ .::「｀Y :ｌ .:::ｌ .:::| .: .::: ::: :::::＼.:::::＼. く:::::人
| /j:::/ . | .:::| .:::ﾄ､.:＼ . ::: :: ::: ::::＼ .:::ヽ.ハ.::::ハ
. ﾉ::/::/ . ::| .:::| .:::|. ＼::j＼ . :::_:::: ::: :: ヽ.::::}:!::i::::{ }
}ｲ:/ .::: |「 ≧xj )j .X´≧≠＼:: ヽ从人:::＼
人!' .:i:::::|{ |r'ij::k. .ィr' ij:::「 }}:::＼ ::::::ヽ.＼⌒
／ l .: |:::从 ゞ='' ゞ =='' |i .:::::l） ::ﾙ' .::::＼
| .: !:::::人 . 从 ::::|ル' i:::::l⌒)
人 .::l::X .:ハ . ｲ/∧人 .:::: |::: |
)::从:::＼::〕ト . ⌒ . ＜.:::j⌒{::::く.:::::斗イ⌒ 球磨川！
____Ⅵﾄ、:::〉.::::::::≧＝≦ヲ´.::::::: 人::::::)人ﾉ.人
／ 从::Ⅵ l::ﾘル' 〉─rく .::::)::::＼へ
. ' )＼:::ﾙ:く ＼ ／ /::::! )´ } :::::: Y ⌒}
/ ( Y:::メ ∨ ./::::::|( r'⌒.「」__ メ、
. { ) |:从ﾙ⌒i./∧ {::::::::| ｀)＼メ.::::＼. i
. 从 ( |「 虫 イ /「ハ .|::::::::| }ﾉ /从:::::::::Ⅵ
人 ＼ j .斗j: ::入 .ﾚ' /:::∧ j:::::: 从 / ＼:::::jﾘ
片≠r≦´ｊ.ﾒ.::::::::::::⌒ij:::/::∧ |:::::::::::::V /⌒i!
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| 咲夜の指向性変更、球磨川の体を能力で奪い返そうとするも、
| アリカの熊よりパワフルなチョークスリーパーは剥がれない。メキリ、慌てて能力を解除する咲夜。
|
| 頸椎骨折。なかった事に。意識が飛ぶ。なかった事に。
|
|「話し合いをする気は？ やらない夫さんを止める気があるのは？」
|
| 意識が……なか、意識、な、い……しき……………。
| 壊れた人形のようにグニャリとした球磨川を、アリカは優しく床に下ろした。
|
|「この東京に、アトリームと同じ轍は踏ませません」
|「ぼすなら、うまくやれるよ」
|
| アリカは頭を掻きむしった。もう、面倒くさい！
|
|「わかった、もう怒った！」
|
| 右手を振り、顔面を狙撃した四ツ目の弾丸を払いのける。
| 避けた『ならば』頭があった位置を通り過ぎる三発の弾丸はすべて無視。
|
|「全員ぶっ飛ばす。話はその後にしよう！」
|「それは……」
|
| そこに真打ちの登場。
| 車輪で加速しながら戻ってきた男。
|
|「ちと困るだろ！」
|「やらない夫さん！」
|
| コンクリの床を砂利に変える九節鞭の打撃、軽く潜り抜けるアリカ。
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{: : : : : j |:ﾊ: : : : :/ {: !ヽ: : :ハ: : : : : :i: : : : : : : : : : : : : : : :
'; : : : :人 |l '; : : :i ー!:|､_ ＼:l '; : : : : |i: : : : : : : : : : : : : : : :
ハ: :Y }ﾊ | ヽ: : | ヾ｀ヾ､ヽ. '; : : : ! !: : : |: : : : : : j: : : : :
{: : : : :l ｌ: ;', ! ＼! ｀ヽ､ ヽ: : ! l: :ﾄ: j: : : : : /|: : : /:
Y : : : j | ﾊ', ＿＿＿ !ﾊ ＼! ヽ! ｀|: : : :/: j: : /: :
〉 : : ﾉ l:j l:', /／￣￣＞ｭ､｀ヽヾ＼ ｀ !: : /: : l: :/: : :
j: : : : i j/ |:} i/ ,ィ´ゝｧ' ヽ､ﾊ Y}ｊ ｌ : / : : j /: : : :
{: : : : ﾚ/ !| /::｀'／ { ｊ}､ヾ_／ | /: : : ://: : : : :
ﾉ : : // |! ヽ_ゞ' ´ ヾ __ -ｊ/: : : : : : : : : : :
l : : : j´ / , イ´: : j: : : : : : : : : ; : : : /l
,j: : : / / イ＼ j: : イ: : : : : : : :／j: : :/ j
フ: : : :j ＿ __ ｌ /／ ｊ: : : : : :／ ﾉ: :/ / 蒼星石さんは分かんないけど、
': : : :ノ 、{_ ヽ ＼ i l| ﾊ /: : : :／ /／ / 今の『血族』にいるなら絶対危険だよ！
: : /´ ｀ヽ､_ヽｭ , -――' ﾊ! イ_: ／ ノ
: ﾉ ｀ ー― ｀ー' ｀ ｰ' ﾘ|! ￣ｌ
´ l / ｌ }
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|「知ってる、こないだ会ったしな」
|「ならなんで！」
|「危険だから距離を置いた」
|
| 高速召喚された墨目の苛烈な連続攻撃、そこに参加する天竜のコンビネーション。
| 武器を鉤爪に変え、周囲を跳び回りながら撹乱するやらない夫。
| 避けきれないタイミングで飛来する四ツ目の弾丸。
|
| 徐々に押されるアリカ、多勢に無勢、だが分かって来た。判っていた。
| アリカは選んでここに立つ。命を賭しても、やらない夫を止めるために。
|
| 今ここにいない、やる夫の代わりに。
|
|「やらない夫さんのばかぁ！」
|「知ってる」
|
| 上空から、ニャンコ先生の雷撃。
| アリカは避けない。代わりに、墨目の腹に強烈な一撃、天竜に裏拳、そして震脚。
|
| 大広間を揺るがす爆音、今までで最大級の踏み込み。
| 避けきれない、当たれば死ぬ。やらない夫は冷静に分析した。
|
| 『エクスカリバー』の斥力も、もう遅い。
| ブレーキの無い新幹線を思わせる殴打。オーバーキル甚だしい。
|
|「やる夫兄いの、偽物がいるんだよ」
|「…………想像はついてただろ」
|
| その打撃が、眼前で止まった。
| 完全な寸止め。
|
| ……………だけれど。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ
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ゝ_ _/ .. ＞..、 l
`''''''‐" _ __ ﾆ:＿丶 1
/ 、 ＾''''ー ､__ ゝ │
/ . ｌ 丿 l'"! 、 、 '''-ｰ-､ ´ ^ｰ-..､ .
| 」 | | || ! ! ｌ │ ' ,ｒ _..,, ｆ.
`、 '、 ゝ ﾉ / l ..′ ,´ | l│l .ｉ
｀- － ﾞ‐'′ --" ,ﾍ ∪ ﾉ l.
´ /
/ ｀） う、うう……。
f 丿 ヽ/
入 ＿＿＿ -' ,′ アリカ…………。
（ V ｖ "‐＿ -'′
''-二ﾆ -= `'`ソ /
´ ‐‐;ｭ ｀' ､ノ /...
ニ ′ 丿
!.
!.
丶.._ /
｀ﾞ ‐--- ＿＿＿＿-''
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|「みんな困ってる、やらない夫さんを助けてくれるって言ってた入即おじさんも、やらない夫さんを助けてくれないし」
|「師父が……？」
|
| ネウロには『エクスカリバー』を頂いた。
| 十分に助けられている、やらない夫はそう感じていた。
|
| だが、アリカの考えは違う。
|
|「まだ……間に合うよ、戻る道を探してよ……」
|「…………」
|
| 道なんてない。もうやらない夫には選択肢はない。
| やるしかない、そう決めた。救世主として、東京を救う。
|
| 蒼星石との決裂と、そして今。もう、どうやっても戻れなくなった。
| アリカとの別れが決意をさらに強くした。引き下がれない。
|
|「お願い……」
|「アリカ……」
|
| 天竜が何かを叫んでいる、咲夜が気絶した球磨川を往復ビンタ。
| だが、やらない夫にはアリカしか見えない。
|
| その胸を、首を刺し貫いた己のヒゲ槍しか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |/ / / / _＿_7 / / / 〈〈 / / // V../三三三三三三三三三三三三三三三
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ｰｧ‐.:⌒＞‐､-...._
／/:.:/:..:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:｀:丶、
{/{ｲ:/{:.:.l:..:.ヽ:..:.l:.:.:.:.:.-､:..:＼
ハ{‐＼ト､:..:i.ヽ＼:..:..:..＼ヽ:ヽ このまま行ったら、
i ヽ ヽ ヽﾄ.:.i:..:.ヽ:..:..:..:..:.:ヽヽ やらない夫さんまで……
__ノ _/ }ハ|ヽ:.ﾄl..:..:..:＿:.:L:ト、
{ ￣｀ﾟ,.o --ﾉｧﾉ=}:.ハ..:..:..:..:..／j:┴､
〉 ／´ ／´ ｡７/ｧ:..:_.:.‐:..ノ.∧ヽ‐､ー.､
ドヽ/′ /' ﾟ v/'ィ:..:..:..:.／:／ ｀ﾄ､｀ーヽー_､_
`i l , ´ ｱ:..:..:..:..／ ｀ｰ｀‐､ー_ｧ=ヽ｀く ｰ=､-
ヽ. ＿ ´ ｲv' ´ ｡ ￣｀ヽ-
｀ヽ { o
i _ .＞―- 、 ﾟ
ノ -‐ァ'‐,.ｧ'´ 丶、
/ ' ／／/ ＼
／ブ'／ / ｀丶、
／／／ i ｀丶、
／／／ { -― ｀丶、
／ /.:./ ヽ. / ￣ ¨ - _ ｀ヽ､_
/ l.:.:l 丶 .＿_. イ - _ ￣
{! |:.:.! / ¨ - 、
ヽ l:.:l / ｀丶、
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|「死んじゃうよ」
|
| アリカの最期の言葉はかすれて、誰の耳にも届かなかった。
| 急激に光を失うその瞳、ヒゲ槍を伝いやらない夫の体をしとどに濡らす赤い血潮。
|
| やらない夫は、自分の心がたった今完全に死んでしまったのではと考えた。
| いや、人間らしい情なんて、救世主には必要あるまい。もう、要らないのだ。
|
| だって、えこひいきしちゃ、まずいだろ？
|
|「スマン、戻れない」
|
| やらない夫はアリカの遺体を静かに横たえ、瞑目した。
| もはや光の無いまぶたを閉じ、目元に溜まった涙を拭う。
|
| 戻る道。それはあったのかもしれない。
| アリカの説得に耳を傾けていれば、あるいは。
|
| しかし、やらない夫は頑固でわからず屋で。
| そして何よりも久々に会ったアリカを信じていなかった。
|
| やらない夫たちを皆殺しにできうる力を持ちながら、誰も傷つけなかったアリカ。
| その命を奪った罪は重い。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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{ '､: : ＜＞､ ＞:.:.:.:.:} /
〃､ ＼: : : : :.:.:.:.:.:.:.／ /
/､` ／丁:::ｧ、 ￣￣￣￣ / 折れるか？
Y ￣⌒'ヽ ヽ ,.-‐r::.x、_,. {
{ 二 ､, -‐┴-'､ヽ ﾆ |¨:.:.、
, ‘-‐'^ヽ._) ｰ‐ j:.:.:.:..＼
∧ ￣ 八:.:.:.:.:.:.＼
/. : ＼ ,〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,′ {:ﾐx、 _..x<:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y
｛ ＼:::三ﾆｧ=‐r-----‐=彡'′ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「いや……」
|
| やらない夫は返り血を拭わずに立ち上がった。
| そして振り返らず仲間たちの元へ足を進める。
|
|「アリカには悪いが」
|
| もう、戻らない。
| 夢を通して人々に語りかけ、やらない夫は弥勒菩薩の『末法少女』になる。
|
| 信仰と魔力は、この夢で集め切る。
| そして聖地はこの品川大聖堂。
|
| 刻は満ちた。
|
| 今宵は新たな救世主誕生の佳き日となるのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |/ / / / _＿_7 / / / 〈〈 / / // V../三三三三三三三三三三三三三三三
|ニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
☆ 次回予告！
ここにもう一つの死が訪れる。
全ての欺瞞に気付いた女。
愛する人の嘘を信じきれぬ女。
信じたい。信じたい。
だが芽生えた疑念は根深く蔓延る。
彼を信じる証拠を探して。
疑いばかりが増えていく。
愚かで、哀しい女の末路。
信じた自分が馬鹿だった。
次回、最終幕五十六話『蒼星石、その末路』
果てに見るのは破滅か死か。
強かったな、アリカ……
シロッコ、間桐のじっちゃんと厄介な相手が残ってるのに、水銀燈、アリカ、蒼星石とメイン級のキャラが退場していくのか
さらばアリカ
なんていったらいいのかわかんねえ
./:::::i:::::l::::::::::::|::::::::::::::::;l;:::::::::::::::::::::::::::::::､;;:::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
./:/::::|::::::;ﾍ;;;:::::ﾍ;;;;::::::::::::;|;;:::::::::::::;::::::::::::::::l;;;;;::::::::::::::;:::::::::::;;l
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| 馬鹿みたいだ。
|
| 左腕が燃えるように痛い。肘の当たりで千切れて、その先が皮膚と肉の一部でぶら下がっているだけだからだ。
| 逆に、腹のあたりはひどく冷たい。
|
| 飛散した内臓と一緒に、大量の血液が流れ出たせいだろうか。
| ……致命傷だ。蒼星石は己の状態を冷静に分析する。
|
| 即死しなかったのが不思議なくらいだ。
|
|「馬鹿みたいだ」
|
| 今度は、口にしながらも胸元をまさぐる。
| 本の三ヶ月前なのに、ずっと昔のことのよう。
|
|「あんな事がさ」
|
| 宝石のプレゼント、他人から渡されたものだけれど。
| それでも。
|
| 手づから首にかけてもらえたことに、あんなにも心ときめかせたなんて。
| そして、最期の思考がそんな記憶だなんて。
|
| 馬鹿みたいだ……。
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( /: : : : : : : :/: : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
|: : : : : : : : |: :／|: : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : : : :|
|: : : : : |:〃ﾄく |: : : : : : :/| ￣＼ : : : : : : : : : : : ヽ
│: : :ﾏ l:^X ヽ. |: : : : : :/ :|: : : |: : : : : : : : : : : : : : |
＼ : |: |:/ | | ﾊ : : : / |: : :∧: : : : : : : : : : : : :│
ΥＶ’ ヽ ノ _|: : :/=ミヽ: / : : : : : : : : : : : : :
|:/ ー ⌒∨ |: :/｀７ ﾊ. |: : : : : : : :|: : : /
|:.、 ' | |:/ / 刈 |: : : : : : : :|: : /
＿＿ ノ|:∧ ト _ ＼ ヽ_ノ }i| / : : : : : : : l／
〃: : : : : : |: : : .、Ｖ＿ ) ＿ノ__＼ : : : : : : : : / うー、ああ……うふ。
＼ : : : : /: : : : :＼ {j , /: : : : : ／|／ うふふふ。
／:＼: :〈: : : _ -=ﾆ≧=r─‐┬＜ /: : : : イ : /
Υ : : : ﾉ: : :)ﾆﾆニ.ｲ 丿 ﾊ.:／: : : : : /: :/
|: : :イ : ／ﾆﾆ／ |＿______,／／: : : : : : :/: :/
___ノ: ／ 〃ﾆﾆ／ ／: : : : : : : : : : : : : : : :イ: : :′
7: :Ｙ |: |ﾆ/ィﾆ人: : : : : : : :／ﾆﾆ| : : : : : : : |
./ : : | 「:.l.ｲﾆﾆﾆニ＼: : : : /ﾆﾆニ1: : : : : : : :|
|: : : :| ／:.:｢＼ :.:.:.:.:.:.: ハ: : : |￣￣|∧: : : : : :.从
Ｖ(:.人:.:.:.:.:.| ￣￣ |: : : l 人:.|: : : : : : : : ＼
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| 時間は遡りその日の朝。
| 蒼星石とやらない夫が決裂した翌日であり、先代たちが『甘味処ニュクス』でモーニングと対決していた頃。
|
| 蒼星石は『血族』経営の病院に面会に来ていた。
| その患者とは顔見知りで、ひどい状態なのは知っていた。
|
| だが、見舞いに来るのは初めてだった。正直言ってあまり会いたい相手ではないからだ。
| 何よりも、『やる夫』は足繁く通っていた。
|
| 蒼星石は自分の嫉妬を自覚していた。
| その患者はやる夫の恋人。気が狂っていたとしても、側にいるのは自分でも。
|
| やる夫の恋人はこの女。
| だから蒼星石はその患者に会えずにここまで来た。
|
| …………だが。
|
| 蒼星石は慄然としながら面会の手続きをする。
| 鷹野三四は勤勉だ。そして公平でもある。
|
| 面会者については詳しく記録が残っている。
| しかも表向きと、裏向きの。
|
| 『緊急事態対策班』の名前を使い、すべての面会記録を確認した蒼星石は嘆息した。
| 想像した通りだった。結果は、思ったとおりであると同時に信じたくないものだった。
|
| 患者『高良みゆき』。面会の回数はここに収容されてから一度だけ。
| それまで発現していた異能は、その日を境に消滅。同時に精神が崩壊、完全に発狂していた。
|
| それまでのような不安定さはなく、常に微笑み。
| しかし、食事はおろかトイレすら自力では不可能。
|
| 点滴で生きながらえ、垂れ流しの排泄物は職員がおむつを定時交換していた。
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{三三三三三三三三三三}
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{三三三三三三三三三三三三}
{三三三三三三三三三三三三}
. /／ : :: : : : : : : :＼: :＼: : :ヽ
//. :/: :八 {: : : :＼: :＼: :ヽ: :ﾊ
ノ/: :/: :/ ＼＼: : : :＼ : :ー '.: ::
. / : :{ｉ 〃 =‐- ＼＼-‐=ミメ、 ﾊ,′ 面会者、『入即やる夫』。
. {乂八从´{ﾟ::ﾘ｀ ´{ﾟ:::ﾘ仆ﾘﾉ八
ﾄミ、＼ ! 川八 : :ゝ- …………うん。
|八 ＼ 爻 ‐_‐ ｲ 从､ ＼ ヽ
＼ ＼＞ - イ .ﾉ乂 ﾊヽﾉ)ノ
Vヾ| ＿∠￣｀`ｰrry='‐ｭ､
_,.〃⌒只厂`ヽヽ ,fj(.:.:.:.:.:.:.ヽ
ﾉfj:く,.ｨｲ介:ﾄ､ _ノ:ﾉ ,fj(::::::::::.:.:.:.:.',
/.)fj`ｰ//jXIi:| `¨´ ,fj(: :::::::::::::.:.:.:.ﾄ､
/.:)fj //jⅩ.i:| ,fj(.::: ::::::::::::::::::l::.＼
/.:.)fj //j Ⅹ i:|_,,__,ノﾉﾉ.:.:: :::::::::::.:.ノヽ:::::.＼
/.:.:)fj-‐孑fﾌ^ .ゞﾆ二ソ.,′.::: `y'´ ＼::::ﾉ
,.ｲ .:.::7.::::7三i ＞く:/ﾆl:.:.:.;′.:.:::_ノ^ヽ _ ＿ク､_
／./ .:.:/.:.:./l;;三|＞く/三`ｰ--7.::::::i.:.:::::::V´,r'"´￣ ｡＼
／.:::/ .:.:/.:._/ ﾉﾆ三ヽ_/.:三三孑{.:::::::::!.:.:.::::::V ,r ､ ｡ヽ､
＼:ナ7⌒´ ,:仁ﾆ三三三三三三ヽ::::::i.::::/⌒ヽ / /┐ ｡〉〉
`y′ /'⌒ヾ三/￣|三/ ￣｀ヽ!:::::ﾚ'´ _レﾍ_/l ﾄ､￣〃
／ /.:.:.:.:::::lﾆ/.:.:.:.:lﾆ/.:.::.:.:.:. ',厂 ／ | l |ヽ〃
〈 /.:.:.:.:.::::: .:.:::::::::::::::::::::::::::::::. ', (_, -─-､. し' 1 l/
/`ｰ-‐ｲ.:.:.:.:::::::::::. .:.:.:::::::::::::::::::::::::::. l ＼し'ノ
. / /.:.:.:.:::::::::::::::.､ .:.:.:.::::::::::::::::::::::. |
/ /.:.:.:.::::::::::::::::::.:.ヽ .:.:.::::::::::::::::::::: |
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| 蒼星石の知る『やる夫』は、二日と開けずにみゆきの見舞いに行っていた。
| だが、『最初の見舞い』の日はどうだった？
|
| 蒼星石の覚えている限り、やる夫が真夜中に見舞いに行ったことなんてない。
| さて、蒼星石に何も告げずに見舞いに行ったのは、この際どうでもいい。言いにくい理由があったと理解できる。
|
| だが、そこで何があった？ なぜみゆきの容態は悪化した？
| その後、なぜ見舞いと嘘をついていた？ 代わりにどこに行っていた？
|
| 勝手に携帯電話の履歴を確認しているかのような後ろめたさと罪悪感。
| それと同時に、生まれた疑念が際限なく膨れ上がる。
|
| やらない夫は。昨晩会ったやらない夫は何と言っていた？
|
| 「それは、本当にやる夫か？」「品川大聖堂で封印中だとよ」
|
| 調べれば調べるほどに、蒼星石の中でその言葉がこだまする。
| 『やる夫』は、本当にやる夫なのか？
|
|「ありがとう、参考になったよ」
|
| 管理者に礼を言い、蒼星石は車を出した。
| 通い慣れた道、複雑な思いを抱きながら。何度も。
|
| そして、今日に限れば今までで最も封雑な感情を抱きつつも。
| 入即貸本へ。より正確には、誰もいない入即貸本跡地へ。
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／ ￣￣｀ - ､
／ｰ､ ヽ
, ヽ､＿ ﾊ
ﾉ ',
/ }
{ / ヽ ＿ !
ヽ｀ー〈 } イ´ ヽ ｊィ
＞､ ー' （ , イ⌒ヽ' | |
< ７ヽー-ァー-ヾ/ .ﾊi..|
ｒ='ﾍ ／ヽ!:::{ <´ ハo i |
∨l∧ ノ / 7::｀-> ／ ｊ /...|
∨l∧ _/ ｊ / /:;':::〈-イ 〈 ..| |
｛l三三三三{イ )ﾍ}-' / ｊ /:::;:r´ ! ...| !
}三三三三)]） ⌒)ﾍ ノ /:::::;/ } ..| !
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| 蒼星石は、カウンターに陣取るやる夫の姿を思い出す。
| いや、うまく思い出せなくて苦笑した。
|
| そも、蒼星石は入即貸本の常連ではない。
| おぼろげに思い出すのは部屋でダラダラするやる夫の姿……。
|
|「……おぼろげ？」
|
| やる夫と蒼星石の一年近い交流、それがおぼろげ？
| あれからほんの数ヶ月なのに、記憶に霧がかかったかのように曖昧だ。顔なら毎日見ているのに。
|
| 警察に封鎖された入即貸本、ほんの殆どは押収されて、ガランとした空の棚が並んでいる。
| 破壊された棚や本は端にまとめられ、染み付いた血痕は取り切れなくとも、掃除は済んでいた。
|
| 蒼星石は息を付き、外に回り階段を登る。
| キーケースから合鍵を出す。胸に去来する苦い記憶。馬鹿な自分。
|
|
| 鍵を開けると、そこにあるのは淀んだ空気。
| 誰も帰る人間のいない、寂れた家の埃の臭い。
|
| 少なくとも、ここ数日は『やる夫』は家に帰っていた。
| あの自宅大好きインドア派男が、こんな状態の家を放置するはずがない。
|
| だが蒼星石は施錠して、念の為に隣家に向かう。
| これまた合鍵、こちらは仕事ついでに作らせたもの。同様に、いややる夫の家以上に放置された夢宮邸。
|
| こちらの掃除からしていた訳ではない。
| 蒼星石はもはや、庇い立てすらできなくなっていた。
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./:.:.:.:i:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:ハ:.:.| _ ,, -匕ヾゞ,:.:.:.:.:.::.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:/
i:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:ﾉ:.i:.:.レ='´ ＞ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:/
|:.:ﾊ:.:.|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.i:.|:.:.:ﾚ' ,, - ィ彡行てi:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.{
ヽい:.:|:.:.:.:.:._＿:.:|ﾉ:.:.ﾉ イi {廴::::::..ｱ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:ﾊ あれは……誰だ？
i ,､ヾ:.:.:.:.:≧=､/ 弋及ン }:.:.:.:.:.:.:.::/:.:.:.:.ハi
ヾ ＼:.:.:.:.:.:.:心 ) |:.:.:.:.:.:.:人:.:.:./
ヽ ＞＼:.:.:i/ u |:.:.:.:.:.:.ハヾ:.:ゝ
｀´|:.ト､ヽ .|:.:.:.::/ ＞∧､_
|:.ハヽゝ､ - ､ ∧:./ / / ＼-=r-,､
ﾚ ＼:.:.| ＞､ ／ 廴＿／ ／ .// てヽ )-､
ハ.i/::::{ ｀ ´ ヽ ∧＿＿ // ん:::::::::V
>:::::{ { [￣＼V ー─ﾍヽ .// {':::::::::::::::::ヽ
/::::::/ il ＞､ ∧ヽ＿＿// .// }'´::::::::::::::::::::::＼
/::::::::{ || ゝ/ ヽー─''´ // ノ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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| 背筋に流れるベタつく汗。
| あれは、蒼星石を含めて誰もが『やる夫』と呼ぶ男は……誰だ？
|
| 突然の寒気に襲われ、肩を抱き逃げ出すように車に戻る。
| 誰かに見られることを恐れるかのように素早く発車、向かう先は……自宅。
|
| 現在蒼星石の家には『螺旋王』のホムンクルスたちが住んでいる。
| 彼女らの詰め所兼、休憩所として。そして謹慎されているはずの蒼星石への面会を断る役を頼んでいた。
|
|「おかえりなさいませ。予定にはありませんがいかが致しましたか？」
|「あ、いやその……」
|
| 口ごもる蒼星石。
| 彼女らは蒼星石の密偵であると同時に手足だ。
|
| 30人ほどの動型メイドが、距離関係なく情報を共有できる。
| 盗み聞きもハッキングもされない、そしてホムンクルスであるが故に拷問も意味をなさない最強の情報媒体……なのだが。
|
| 蒼星石は軽率な己を悔やんだ。
| 『やる夫』もまた彼女らを利用する。
|
| 蒼星石が自宅に突然帰ったことも、きっと伝わる。
| 『やる夫』に不審を抱かせてはいけない。蒼星石は苦く笑った。
|
|「やらない夫の事でね、少し翠星石の部屋を調べようと思い立ってね。
| プライバシーがあるから僕だけで調べるよ」
|
|「わかりました」
|
| あまり上手な言い訳ではない。
| だが、及第点だろう。
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く ,．-────-､､､/
＼ ,．.:´.::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ､
`y'´.:.::::::::;ﾊ::::::::::::::::､＼::::::::::::.:＼
／.:.:::;:::::::/.:ﾄﾄ､:::::::::､::ヽ::ヽ:::i::::|:|:::|
/.:::::;::l:l.::::/:ハ::! ＼::‐ﾄ‐ﾄ-::|Vi::::|:|:::|
,':/ :::l::l:l:.:/;/-‐';| ｀,.ｨr==ァﾘ':::;::;:::l ……。
|,' |::|::|:|/:/rﾃﾃﾐ _7込ｼ /.:://:::l
| |::|::|:|::::,弋zソ . ﾞﾞ´ 7'´￣￣`ヽ
ヽﾄﾄ|.:::ﾊ '_ _ /:', ﾉ
｀`|.:;'l::::ヽ､ ..ｲ::::ﾉ ,...--..､ヽ __ノ⌒ヽ
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|.::/.::レ'´￣`7l/ /.::::.:.::::::::::::i::::.:.＼ 〈_
|/ （__ ,..ｨ介ﾄ､!.::::.:.:.:.::::::::::l:::::::.:.:.＼ ｀ヽ
l::.:) 7/l l」 !.::: .:.:.:.::::::::::l::::::i:::::::.:.ヽ ノ
（ |:l l:|_/.:: .:.:.:.:.::::::::l::::::l:::::::::.:. V
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| 翠星石の部屋に入る。『ロード・エルリック』の事件に際し、一度は破壊された翠星石の部屋。
| ミストによって粉砕された家具やカーテンは買いなおされ、叩き落された鉢植えは修復されていた。
|
| あけっぴろげで正直な翠星石は、内向的で陰鬱とした蒼星石とは真逆だ。
| とはいえ、秘密のない人間なんていない。
|
| だが、蒼星石は姉の私物に手を出せなかった。
| 当たり前だろう。やらない夫の居場所の手掛かり？ あるはずがない。
|
| 二人だけの秘密の場所？ あるいは思い出の場所？
| そんなの翠星石本人の口から全部聞いている。
|
| 最も秘密の場所があったとしても、そんな場所にやらない夫がいるだろうか。
|
| 彼には少なくとも天竜とシグという協力者がいる。
| 三人以上で隠れられる場所がなければ意味がない。
|
| 蒼星石は静かに部屋を出た。
| 何をしているんだ僕は、馬鹿馬鹿しい。
|
| 自室に移動し、必要な物を揃える。
| いや、もうほとんど『血族』の詰め所に住み込んでいるのだから、下着や生理用品なども不要であった。
|
| なぜわざわざ家に戻ったのか。己の弱さが原因だ。迷っている、疑っている、困惑している。
|
| だから、無意味に迷走している。なんて馬鹿な。
| 蒼星石は奇麗に掃除された部屋をぐるりと歩いた。
|
| ここに必要なものはなにもない。なにもない。
| なにもないはずだが、何かが引っかかる。
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|::.::.::.::.::.Ⅳ:_:_/:/_＿_ ヽ::.::.:ヾ: ＼::＜ ヽ::.::|::.::.|::.::!::iハ!
∨::.::.::.::/::.::/:/_＿___ ＼ ＼ｨzﾃ≠ア.|::.::.|::./:/ !
∨::.::./::.::/:r=f芹示ミ ヽ { rｹﾘ_ 从: |/:/
八::/:::イ八 弋:::zリ ゞ=く /:::/:/ｲ
/ ｝ﾊ::.::.ヽ::.＼´￣゛ i / ｲ::.:::ﾊ!
｛ い::.::.:::＼::＼"" ﾉ::.::::八 ……そうだ。
i::ﾄ::.::.::.ハー -__ ' ,.ｲ∧: / アメジストの魔除け。
|ﾉ ヽ::.::.:::|＞.．_ ..ｲ ./ Ⅴ
/⌒ﾊ: : |＞'¨| ≧ ーイ ＼
/ｺ .∧: ! ∧ ／ ＞.． __
/廴 ./ Ⅴ ./／Yﾍ イ 7/´ ∧ｧ
／:rｿ ./ ／ ﾉ〉〈 ＼ .// 入 (
／::/:::Y / { {／/ | |〉､ ｝ ./ フ':::::::ヽ）
/::::::/:::｛｀ ,′ レイ| | |__ノ ,ﾍ __{:::::::::::::∧
〈::::::/::::::r' ! .l l | |/ i r'::::::::::: : ∧
∨:::::::::｝ .| .l l | | j､_ L:::::::::::::::: ∧
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| ニャルラトホテプの魅了対策として、華琳が用意していた魔除け。
| 彼女のいたずらごころによりやる夫の手を通して蒼星石に送られたペンダント。
|
| 負のエネルギーを正方向に正し、邪悪を退けるアメジスト。
| 恋愛に関しても同様に、暴走しがちな恋心の手綱を取る愛の守護者。
|
| 調和、安定、霊感を高める。
| 宝石の中でも、特別な価値を持つパワーストーン。
|
| それを、肌見放さず持っていたはずの魔除けを。
| 蒼星石はどこでなくした？
|
| まさか、家に置いてあるはずは……。
| 心当たり、貴重品を入れた引き出し、タンスの中、見られたら恥ずかしいアレやナニの保管場所。
|
| やはり見つからない。きっと家に忘れたわけではない。
| というか、寝るときですら外さないのだ。忘れるものではない。
|
| 心当たりはない。
| だが、可能性として一番高いのは……品川大聖堂。
|
| あの封印と、解除の直後。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/: :/ﾆ{ }ﾆ＼: : ヽ
. /: ｢二ﾆ｀ニニニニニニニニニニﾆ´ﾆﾆハ : : :.
.′:|ニ｢二二二二二二二二二二二ﾆ}ﾆﾆﾆ} : : :
.: :.:「|／二二二二二二二二二二二二＼ﾆ=|］: : i
,:.: :.:|_V二二二二_／「: : /|: :ト 二二二二ﾆＹﾘﾉ: : |
ノイ: : :〈∨:.:.:.ｉ: : :ｌ.:.:|l |: :/ ,:.:.八: } ㍉: ｰ| : : :|
|:!: : : Y: : /|: : :|:.:.|l |: ′}/ |:./ ミ: :||: : : |
. 从ﾊ/＾|l: ;'八｢仄: ト八:l / j/￣￣｀ }:__ﾘ : : :|
/ ｛ r八{,y'不万芋ﾐ､ヽ y'不万芋ﾐ ,' r: Ｙ: : :| 蒼星石様。
人{::( ヽ{{弋::::ツ 弋::::ツ j｢ . :} 八: :.| 探しものはこちらですか？
i＼ . ー 一 , ,ﾝ／.: :.: :.|
|:!: ｀: :. .:i /.イ: .: :.: : :i:|
. 从: : :.人 , |: |{ : i : : :从
/ ヽ : |:个 -‐- イ : 八/|: : / ヽ
Ⅵ/:.:.:/ ＞ ＜ j/|:/' |: /
/ ,:.:／ _ {__ ｀¨¨´ }′ }/
{_ﾉ:厶イ 「＾ヽ /:.:‘，
}:.:.:.:// | ∧ ／:.:.:.:.‘，
/:.:.:.// ,ノ／／ 、 ´:.:.:.:.:.／:.ヽ
. /:.:.:.// ／／:.:.:.:.｀¨¨¨´:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.／ ＼
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|「……え？」
|「高価そうなものがゴミ箱に入っていたので、確認をしようと保管しておりました」
|
| メイドが差し出したのはジップバッグに入ったネックレス。
| 間違いない、蒼星石の魔除けだ。
|
|「ゴミ箱に……？」
|「はい、私どもがお邪魔をした時にはすでに」
|
| つまり、品川大聖堂の直後だ。
| なぜ捨てた？ 偶然か？ なにかの間違い？ いや、ありえない。
|
| 魔除けの存在を忘れるなんて、ありえないはずだ。
| 何らかの洗脳や操作でも受けていない限りは。
|
|「ありがとう、大切なものなんだ」
|「いえ、報告もせず申し訳ありません」
|
| 深々と頭を下げるメイドに、蒼星石は頭を振る。
|
|「いや、気にしないでほしい。僕も今日まで探さなかった」
|
| 蒼星石はおずおずと魔除けを受け取り、己の首にかけた。
| やる夫にかけてもらったときのことを思い出し、胸に甘い痛みが走った。
|
| ああ……やる夫に会いたい。
| 本物の、やる夫に。
|
| その願いは叶わず、蒼星石は命散らすその運命。
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| 誰にも何も告げずに、蒼星石が『やる夫』との対決を選んだのは慢心や焦りのせいではない。
| 彼女の中にある心の弱さ、未だに『やる夫』を信じたいという気持ちが原因であった。
|
|「君に話したいことがある……君は、誰だ？」
|
| 蒼星石は夕方、仕事のために顔を合わせた『やる夫』に尋ねた。
| ネビロス及びでっていうとの会見から戻り、シャワーを浴びてきた直後の『やる夫』は、胡乱に蒼星石を一瞥する。
|
|「どういう意味で言っている？」
|「言葉通りの意味だよ」
|
| 冗談ではないと気付いたのか、『やる夫』が居住まいを正す。
|
|「私が『やる夫』だ」
|「違うね、君はやる夫じゃあない」
|
| 薄く笑う『やる夫』。
| 己の額に手を当て、なめらかに滑らせる。
|
| すると、なんたる奇術か。頭部から飛び出てきたDiskがその手に収まっていた。
|
|「このDiskの中身は我々が持つ極めて一般的なスキルだ。
| 『クヌム』……語源は知らないがそう呼ばれている。
|
| 私のように肉体を構築して介入しているタイプには無用のものだが、
| 多くのプレイヤーは『クヌム』を使い現地人の体と記憶を奪い成り代わるのだ」
|
| 『やる夫』はそう言ってDiskを再び頭部にインサートした。
| 蒼星石がその意味を理解するまで一瞬。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿_r─-- ､
. ／ /:! 厂｢＼
. { { ﾉ : | l ＼
. Λ＼ ＿{: : :| ヽ
} : } ｢: : : : :＼ V⌒
... /: : | | : : ＿: : :＼ {: :f: i
. | | ｰ‐ｧ/: : :. :. :.＼ ∨{ :{ 今回は私にも体があるからな、
. |―┘ : : ￣//'⌒__,: :､: : } j :ヽ) 名前と立場だけ奪った。
. |___: : : : : : ﾚ: :,ｨ忻ｆ: : :.∨ /: :∨
. ┐|: : : : : :': : :.'冖'＾: : : :{ {: : : ﾟ｡ 本来ならば世界介入後には行えないのだがね。
. ニニﾌ ｨヽ: : : : : : : : : : :∨ : :.;小､ 今回は特別さ。
. ｘｔぅﾉ ハr‐ : : : : : : : : ＼∨│:‘,
.... '冖^: :＼{__: : :j: : ,ィ: : : } ﾊ: : :.
. 乂＼＿: : : : : ￣___／ }: : :│/: :} : ∧
￣＼ ＼: : : ご´__／ : : : :|/: :/: / Λ
. ／ ／|￣ ＼: : : : : : : : : : ;ﾉ: : : :/ / ＼
.. ／ │(} {＞ :＿: :イ: : :|￣ } ｊ}＼___
. { } ＼_ : : : ;'⌒i: : :|│ （） / ≧=-
. |＼(} }]: : 人__ﾉ: : :|_ﾚ'⌒ヽ /
. ＼__{厂: : :. :.}ﾗ': : : : .;'⌒i ｊ/
. ＼ : : : :云: : :. : { ﾉ
. /: : : : rく厂/
/ｰ┬ ノ^┘/
. ＿__ / ／ //
＼ //￣＼ / ／ ! { |
＼.// ＿} /／ | │|
. ´ /´ _ｊ/⌒ヽ | │|
. ＼ i rｆ/ /￣ | ｌ| |│
＼ | ｆz{ l |＼ │{
. ﾉ} l ´ | |＿__| ＼ ＼＿＿＿
. (（___,ﾉ ｊ ￣ | ＼ ￣￣￣￣＼
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|「あの大聖堂に偶然いたペルソナ使いの能力を使うことで、
| 元々の『やる夫』についての記憶を曖昧にできたからな」
|
| 蒼星石には知る由もないが、蘇芳・パヴリチェンコの『滅ぼすもの』《アトカタモナイノ国》である。
| 対象への記憶を抹消する能力は非常に危険で、過去暴走した際には刹那の中のガンダムを消し去った。
|
| 現在、蘇芳本人が誰からも忘れられている。
|
|「だから今、私が『やる夫』だ。つい昨日までは蒼星石、君も私をやる夫だと思っていただろう？
| ずっと冗談を投げ、皮肉を言い、甘えて居たくせに今更何を言う？」
|
| 羞恥で蒼星石の顔に血が上る。
| やる夫だと思い込み、ずっとやる夫の様に接してきた。
|
| 際どいジョーク、からかい混じりの挑発、食べ物のシェア、泣き言、甘え。
| この一ヶ月の全ては、やる夫ではなくこいつ相手に行ってきたということか。
|
|「やはりその魔除けが原因で気付いたか、捨てさせたはずなのだがな」
|
| 無意識に胸元の魔除けを弄っていた蒼星石を見咎める。
| 『螺旋王』のメイドたちが見つけてくれなければ、本物のやる夫から貰った魔除けも捨てられていたのか。
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j三三三三三三三三三＼
,. - = ＝＝＝＝＝＝==- ..、三ヽ
／三三三三三三三三三三三 ヽ三 ヽ
r'三: _, -―r ー -､- ､.___三三三三 ＼三 v
ヽ ｨ'´::::ﾊ ::::::::::::::::::＼ ::::::::::｀ .､三三三 ＼/
. /:| :::::| l'ヽ::::＼ :::::::::ヽ!::::::::::::::＼三三三 ヽ ニャルラトホテプ！！
/ ::ﾊ! ::|!| ｰヽ_‐_＼:::::::ﾘ :::::::::::::::::::ヽ三三三}
' :::l::::ﾊ,:| ヽ ｲj;! /`‐-ゝj :::::::::::::::::::::::::ヽ 三 '
l ::ﾊ::::从乂 ﾚ′ /:/:::::::::::::'::::::::::::l／
| ' i:::r ' /ｲ/:::::::::::/:::::::::::ﾉ _ . _ _
ヽ ヽ:, __ ':::::/ｨ::::::::::::,. ' //￣ Y'
ヽ V_ヽ ./ ::://ヽ _. t‐ｫ,-､ //ヽ
ﾉ＼ / :::,j/ ,.ｲﾊ ' ⌒ヽﾉ-､_ // ＼
/／ヽヽ __ ノ, .イ ノ｢/::::::::::::::::::lヽj_ﾌ__ //^ ヽ
ヽ ::::| _j_ ﾉ､｢/i ':::::::::::::::: ∧ﾉ ,//_ ､ /
ヽ| rﾉ.ｨl.､V/ /:::::::::::::::::::! !::::＼. // 丶 '
//`l||ﾚ/ /::::::::::::::::::::::::ヽj:::::＼＼// ⌒ヽ '
ノヾ / |/ /., -‐- ､::::::::::::::::::::::::::::＼＼. /
,/:::::::` ｲ! // ヽ::::::::::::::::::::::::::lヾ＼ヽー ､/
／ノ:::::::::::/_,.ィ | ＼:::::::::::::::::_::ト､l_:j ﾉ ./
／／ /::::::::/ｲ / ﾉ | | `ー イヽ ノ´ / ' ⌒
丶ー'､ :::::::::://`/／ V 三ノ ﾆﾆゝ'￣´ヽ /
V ノゝ:::::::`:::/ |!〆三三三＼__ /ヾ
,/／ `ー､/ |三三三|ヽ/:::::::::ヽ,
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|「私は、『やる夫』だ」
|
| 腕を捕まれ、壁に押し付けられる。
| 恐るべき怪力、万力のような握力。
|
| 身をよじっても逃げられそうにない、蒼星石は怒りと情けなさに歯ぎしりをした。
| 何でこんなやつをやる夫だと思っていた！
|
|「困るな蒼星石、ここで私の正体を明らかにされては。
| 私は東京を守らねばならないんだよ、私自身のためにね」
|
|「ふざけるな！ 何を今更！」
|「全くふざけている！ 何故この私が！」
|
| 叫ぶ蒼星石の顎を掴み、ニャルラトホテプは泡を飛ばして激昂した。
| 顎と手首の骨が軋む、そのまま骨をへし折られそうな勢い。
|
|「貴様ら下等生物を利用してでも、なんとか生き残らねばならないだとッ！？
| 冗談ではない！ 二ヶ月前の貴様攻撃でどれだけ損害が出たと思っている！」
|
|「うぐっ」
|
| みしみしと鳴る骨、激痛に涙が浮かぶ。
| こんな奴怖くもないのに、体が恐怖で怯えて竦む。
|
|「思い起こせば蒼星石い、貴様には随分な目に合わされてきたぞ！
| むかっ腹が立ってきた！ プライドを傷つけるだけでは私の気が済まん！」
|
| 顎を押さえつけていた手が、蒼星石のブラウスを乱暴に引き千切った。
| ボタンが弾け飛び、質素な下着が露わになる。
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:.:.:.／:.:.:./:.:/// }:.:.:.:ﾑ./ /￣ ヾ:.:.:.:|:.:.:.| .l
:.:/:.:.:.:.:/-:.:/- /:.:.:/ / .ム- -､}::ﾊ:.|:.:.:.| |
/:.:.:.:.:/ / / /:.::ノ／ ｨ彡＝-.i::.:.:.:i:.:.:}. |
:.:.:.:.:/ﾚﾆ＝=-､／ ´ "" .ハ:/:.:/ ﾉ や、やめ……！
:.:.:.:.:ﾊ￣゛゛´'' ゜ /:.:/:.:.:i
:.:.:i:.:.:.:.:.ヽ､ ヽ ノ:.:/ハ/
:.:.ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:.＼ -ー 彡:.// /
}￣てミ廴vr´ヾ､ ｀ イﾕ/ レ
／￣￣￣＼ iヽ ＞ -イーフ レ-､_,､
:::::::i:::::::V::::::::ヽ{ i}＞ ⌒＼_≦ニニﾐ て及
:::::::l:::::::::ヾ:::::::::} l] V´￣ 不ミ､ ヽ }５
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「嬉しいだろう蒼星石、『やる夫』が貴様を抱くのだ！
| 泣いて喜べ！ ずっとこうして欲しかったのだろう？」
|
| のしかかるニャルラトホテプ、歪んだ復讐心と、八つ当たりめいた当て付け。
| 蒼星石が歯を鳴らして拒んでも、力の差は歴然。
|
|「嫌、助け……ッ」
|「泣いて許しを請うのなら、貴様に一つの選択肢をやろう」
|
| 指の跡が付くほどに乳房をねじり上げながら、ニャルラトホテプが残忍に嗤う。
|
|「翠星石を生贄に差し出すと誓え、そうすればお前は……」
|「犯すなら犯せ！ いくらでも殺すがいい！！」
|
| 愚かなりニャルラトホテプ。
| 逆鱗に触れられ繊維に火が付いた蒼星石は、振りほどこうと腕に力を入れてすぐに弛緩した。
|
| 筋肉の収縮を利用し、右手だけでも自由になる。
| 蒼星石は僅かな躊躇いもなくその指をニャルラトホテプの眼球に突き刺した。
|
|「ハサザマノヒメ！ 僕の全てを―――」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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,,, -== - 、 ｒ-==､
,ィ//////////ヽ!////,｀ｰ､
////////､/////l/////}/∧ 「貴女に捧げるッ！」
|//////∧ヾ/,,ﾍ/l/////!//ﾊ
|///Nヾ､ゝ ｨ'_ｼﾉ/j/////〉//ヘ､
ﾄ,//Tゞ>:::ﾞ:;::::::::':l/ｌ/////ﾄ/////ヽ_
. l ',//ヾ;:::::::__:::;;ィ/|/////|i ヽ////ﾉ=' __
l ∨//｀≧=='///ｌ//////l＼ ヽ=='rゞ''´ヾ､
l ヾ//{///,ィ､}{oヽ////∧/ﾊ|i:lヽゝ i|!
l ヽ>' ヽo∧////l///|´ il| i|!
l 人 ,,ィ='o//ﾉ///|l///| ,!| i|!
l //ﾉ｀´/////／/////l///|l|, i|__丿
l∨ｌ////／////////ﾉ///ﾄ=ｨ|=､ヾ,、
{∧//ヾ//////////｀-=､!;;;;;|i,__ﾉﾉ/ヘ、
. i//}///ヘ///////､ !|::::|liヾ/////へr,--==
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| 全身を呪詛の塊に変え、自爆覚悟の特攻を打ち込むより早く。
|
|「このアバズレの腐れ女がァー！」
|
| ニャルラトホテプは蒼星石を振り払っていた。
| どす黒く刺激臭のするコールタールみたいな血液が糸を引く。
|
|「がっ」
|
| 反対の壁に叩きつけられ、即座に叩きつけられる熱衝撃波。
| 脇腹と左肺、そして左腕の大部分がえぐり取られ、蒼星石は人形みたいに転がった。
|
|「クソッ、クソッ！ 最後の最後まで癪に障る！」
|
| ニャルラトホテプは蒼星石の顔面に蹴りを入れ、荒い息で罵倒する。
|
|「冥土の土産に教えてやる……翠星石は生贄として死ぬだろう！|
| 志摩子がそう決めていたぞ、貴様への相談もなくな！」
|
| 蒼星石を傷つけるためだけの捨て台詞。
| しかし当の蒼星石が死にかけで茫洋としていることに気付き、ニャルラトホテプは舌を打った。
|
| もはや、何を言っても届くまい。
| 傷ついた目を押さえながら、もう生きている者のいない部屋を後にするニャルラトホテプ。
|
| いや、彼こそが『やる夫』である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
救いとは奈落を見る崖なり、死のかげの谷なり。
行く先には墓の勝利が待ち受ける。
救いという名の愚か者よ！
おまえはその名の為に
病を担ぎ、痛みを負い、果てぬあざけりを受ける。
怖れるか、患いを？
怖れるか、辱めを？
救いという名の愚か者よ！
おまえはその名の為に
友の背きに打たれ、幾度も否まれ、暗い敗北に包まれるであろう。
怖れるか、欺きを？
怖れるか、災いを？
次回、最終幕五十七話『魔丞』
果てから至るは破滅の化身。
〇 戦意に火が付いた
初期メンバーの脱落が続く
こんなんどーすんの感がやばい、どうなるんやこれは
運命破壊マシーンはどこまでさかのぼって破壊できるのやら
乙
ニャル公てめぇ･･･
, ――-､
／ .:＼
/ ＿＿ .::| ,.-､
∨ ヽ ....:::/ _,.､／:∠＿
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'-´一'´`ー- ､、:::::::::::::::::::::::::::::::｀丶:ヾ}｝::::::::::::::::::::: |:::::::::::::::::::::::::::/:'ｼ':／::::::::::::::::::::::::::::::::,. ‐ '´
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| 何もかもが、つつがなく終わった。
|
| 糸川はやぶさの《花園の子守歌 続き》。
| 望む夢を見せる代わりにその存在を融解し吸収する『滅ぼすもの』。
|
| 十六夜咲夜の《フライミー・トゥザムーン・イザナワース》。
| 意思の、あるいはエネルギーの指向性を操作する『滅ぼすもの』。
|
| 球磨川禊の『オールフィクション』。
| 知覚できる現象を無かったことにできるペルソナ。
|
| 夢を、東京中に向けて発信し、そこで発生する全ての反動を球磨川が『無かったこと』にする。
|
|「『やれやれ』『そんな都合よく行くものかよ』」
|
| 球磨川はこの作戦に否定的だった。彼はやらない夫を信用していない。
| 朝霧アサギ程ではないが、リア充とか主人公とか、そういった存在に対する嫌悪感を隠さない球磨川である。
|
| やらない夫に対して懐疑的で、この作戦が失敗する方に入院中の花京院の魂を賭けてもいいくらいの勢いだった。
| そして、球磨川は勝てなかった。
|
| やらない夫は東京中の夢の中で演説をぶち立てた。
|
|「全ての陰謀を明らかにする！ 誰も脅かされない世界を作れ！
| 目を背けていた事実を直視する時が来た！」
|
|「「マッポーカリプス！ マッポーカリプス・ナウ！」」
|
| やらない夫に感化された人々が唱和する。
| アポカリプスあるいは黙示録とは、最後の審判と世界の終末の事ではない。
|
| 救世主の復活、神の国の到来、剥がされる覆い、信仰者の勝利こそがその真価だ。
|
| そして末法。釈迦入滅のちに訪れる、真の信仰が失われた世界。
| 釈迦の教えは都合よく解釈され、僧は戒律を守らず、邪悪と争いに歯止めが効かない。
|
| そんな世界を、衆生を救済するのが未来仏、未然形の仏陀。
| 即ち、弥勒菩薩。
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/ ! ,,:::::::::ヽ ヽ .| ! / ,..::::::::::::::ヽ i . !
,' |,.::::;;;;:::::::::::ﾍ, ! .| ! f /:::::へ::::::::::::ヽ ! マッポーカリプス！
i! !::/ﾍ zx ;:::} ,,! | ｊ .| !:::/ _ z- i＾i:} | マッポーカリプス・ナウ！！
| _! { r- 、 /ｩ:! / ---ﾍ / ! ,,,: : : : : : :≧、{::::ﾄ´｀_,.-、 /:f .|
...::≦::::::::::≧...ｲう ! ! r! ヽ-‐う , : : ,,,,-x; : : : : : ヽ:込ヽ__ イ .! ,.:::::::::::::::::::::::::≧、
::::::::::::ヾ!:::::::::::::Ｙへ,i! | / ） .ｲ: :/ ｀ヽ: :γ~γ´_ ｀i |/::::::::::::,::::::::::::::::::::::::ﾍ
:::!:::j斗'-‐‐-ｘ::::::i ! .| i! { ! / ｀ヽ ,.__ ! i{ ﾉ´ ヽ ! .{::::::::ム!{ヾ::::::::::::::::::::::::::!
:::ﾚ '⌒` j! }.! | ! | / i! '⌒ ,_ / γ'´_｀ヽ .ｊ ｲ;;;;;/ ,,,,,,,, ヾ:::::::::::::::::::::|
!´,z- r , 、 ,.ｲ!. | | ﾄ,,ヽ ' ｀ヽ,i' }' ´ ヽ /,.::≦::::::::::::::::::::≧ 、 __ヾ::::::::j
:.. ／ ） ﾉ/ .! | ﾄ∧ / ） .! i `ゝ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:从
ヽ、 ヽ - ,ｲ/ ,,,,,,.............!- 、 ! 込、ゝ- '′ ,ィ } ,ｨ':::::::::::!::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
` i '",::≦::::::::::::::::/:;:::::::｀ヽ ､ ヽ｀ｰ‐ ,i'",__ / /::::::::!:::::/ﾍ:!ヾ::廴｀`ヾ::::z::::::::::::::::::::::::::::
_,,..-‐''"≦::::::::::::::::::::::i!/:::ｲ::::::::::::::::::≧:、 ~~~´ ./ /:::::::::::!::/ ,ｲﾚ'´ ｀`ヾ:::::::::::::::
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/::::::::::::::::::j斗''"/ ｊ !| ﾏ:::::::::::i!::::::::::::::::::ﾍ ノ f, !:::::::|::::/ .zfﾚ'"~ i
./::::::::::::::::::ム-‐ｚｚﾐ、 ,! ヾ:::::::ﾊ:i:::ﾊ:::::::::::∧ ／j .} !::::i!:::!::i ,.ｨｚ=＝= 彳 ）
::::::::::::::::／ У,,, ﾘ !:::::::::::::::! ／ ~!:/!::::Ⅳ ~ /
:::::::::::::i' ,.ｨzzzzﾐ、 `ヾｘ Ⅵ::::::::::::! !:::::::∧ .z=＝ﾐ ヽ,. -‐'" `ヽ、 「
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 本来否定的に見える二つの言葉のカバン語。
| 結果生まれたのは末法の終わり。
|
| 予言された救世主、正法の世の到来、剥がされる覆い、信仰者の勝利。
| それは一ヶ月前、大天使レミエルが予言した破滅とは真逆。
|
| いや、実はレミエルの予言があってこそのマッポーカリプス。
| 当たり前の日常を生きてきた人々に、罪を突き付け皆殺しを宣言した大天使。
|
| それから一ヶ月。
| レミエルの夢は常人では記憶できない類のものではあった。
|
| しかし人々の心の奥、無意識野には深く深く刻まれていた。
| 東京では前世紀末を優に超える厭世感が漂い、滅びを甘受する風潮が高まっていた。
|
| 魔術やオカルト、妖怪や都市伝説が活発化していたし。
| 自殺、行方不明、発狂、凶悪事件、不可解な出来事も多発した。
|
| 誰もが何も変わらぬ日常を送りながらも焦燥感に苛まれた。
| いつ来るのか、もう来るのか、まだ来ないのか。世界の終わりは。
|
| 諦念が。虚無感を、犯罪行為を、狂気を呼んだ。衆生は膿んでいた。
| 目を背けていたもの。いつか来るもの。
|
| 人間の命は必ず終わる。誰もがいつか死ぬ。
| 何かを残すこともできない、存在には等しく価値がない、もうすぐ滅びる。なすすべもなく。
|
| 全ての物品に価値がなくなり、虚飾は暴かれた。
| 人々の意識は改変された。しかし、どれほど悔い改めても許しは無い。
|
| 大衆は死を想った。
|
| 訳もわからず突然に訪れる死神を恐れた。方法も何も分からないが、近いうちに必ず来ることを誰もが信じていた。
|
| そのうち、不思議な人々も現れた。
| どうせ死ぬからと好き勝手に暴れる人々と同程度の人数が。
|
| どうせ死ぬからと他人に優しく穏やかに、友愛と誠実さを見せたのだ。
|
| 残り僅かな人生、善の心地よさを知る人々が、最期はせめて誰かの感謝を胸に、笑いながら逝くためにと。
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／￣￣＼
／ _ノ .ヽ、＼
| （●）（●） .|
. | （__人__） | この善性に目を背けていいものか。
∧ .| ｀ ⌒´ ﾉ この優しさが労りが、お前たちの中にもあるのを思い出せ。
／＼ヽヽ }
,r―''''''ヽ, ヽ ﾉヾ、
,r‐' ,､;-‐''''""''ヾ､､, く l
/ .／ r''"ヽ, ＼, l｀ヽ､
j l ,. / ' l ヽ､ ﾄ, ヽ
,.Lj∠､'´ , i, / ｀ヾ､｀'ヽゝ
l, ／ 二'''" ,;､, ｀''ｰﾞ--､
/ﾞヽ-ｯ-‐'´ .／｀ト-:rイ｢´ ﾞl;:｀''ト-､,＿ ノ'i,
／ ／ ,;∠∠,ノ´ ｲ l l, ├''| |､,／ l |
..／ﾉ .／ ／､, ,､' ./ / .l |:::::l,. | ﾞヽ､!_,,､L,
ヽ---ﾂ ∧ ￣￣ / | |:::::::| | r'"/ l,
/ ./ .ト､,_ / | |:::::::|. ! l'´! / |
./､ ./ l, ｀￣ ./ |.|::::::::l |. !. l, l l
.l､,.ノ l, ;' .j |:::::::::!
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「最悪の罪人でも、ただ一度の優しさから機会は与えられる。
| これが最後のチャンスだ。救われるんだ。
|
| 救世主に縋るんじゃない、自分を救われるに足る人物にしろ。
| 善をなせ、善となれ。自分で自分を救うんだ！」
|
| やらない夫が拳を振り上げる。
| 他社を蹴落とすことで一縷の望みを、蜘蛛の糸を断ち切ったカンダタを忘れるな。
|
| 追い詰められた人間が見せる善性の輝きを見せる時だ！
| 感涙、歓声、これ以上ないほどの絶対的正しさ。
|
| 突然訪れた想定外の救世主に民衆は熱狂。
| 翌朝から、人々は進んで善行を成していく。
|
| あっという間に集まった信仰。
| 品川大聖堂地下に貯蓄されていた魔力＋『エクスカリバー』の魔力＋夢で集めた魔力。
|
| 不足は無かった。
| かくして備府やらない夫は〈善―スクリタ―〉のコトワリを啓いた。
|
| 守護神格は弥勒菩薩。
| その性質は『善行を成すものを救う』。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, _ |｀i＼二二二二ヘ: : : : : : : :, ' ; : : : : ; ' ﾄ､, : : : : : : : : ;
: , _ / ヽ, /: :|/ l|;｀ヘ､ヘ､ ＼: : : : ; , : : : : ; |: :}: : : : : : : ;
: : , l⌒ ／/ ／ヽ / } /: : : ∨ /:|: : : : :＼::＼ ＼: ; , : : : : ; , : |: :}: : : : : ;
: : : : , ＼/ / / ﾄ､ l´ヽ| }‐.' : : : : :}'∠＿: : : : : ＼::＼ ＼, : : : ; , : : : :| :l: : ; '
: : : : : :; {: :ヽ─-...., / } .}／￣￣}￣￣￣＼ :{ }: : : : : : : :}: :／: : : : : : : :
: : : : : : ;l | : : : : : : : ﾇ| /'~: : . . . . . . . . . . . . . ＼ .{ : : : : : : :}二_: : : : : : : : : , : わたしは 未来仏 ミロクボサツ
: : : : : : :|ヽ.|: : : : : : : : : | {: : : : : :ｌ: : : : : : : : : : : : : :＼ }: : : : : : :/ ; : : : : : : : : : : : すての罪業、すべての邪心
: : :: , ---': : : : : : : : : : 弋 }: : : :|: : ﾄ､: :ヽ: : : : :＼＿, : : ＼/て＿ _／ー' ; : : : : : : : : : : .;すべての悪徳を許しl: : ;
: : ::´￣ｽ-､＿ : : :＞ "￣X‐': : : : :|: :/__＞､:＼弍三ﾏ: : :＼:∧ ヽ ￣フ ; : : : : : : : : ;
＼ : : : : : ; 斗 ´ /!: : : :| /ﾔ ￣ _＿_ ｀ﾄ: : : : i:∧ ヽ く￣ ; : : : : : : : ; , : /そして、救いを与えましょう。
＼＼: : ::＜＿_:. . : / .|: : : :Y ,ｨ.::下 ﾄ'.::|＼}: : : : ト∧ ￣ﾌ. ; : : : : : : : : :_／:永遠に……。
二__ ~へ.:_: ; ＼ ／ /: ﾍ:: :∨_ヒソ , ー' |｀{_: : {＼_＼_／ ; : : : : : _,. ＜: :
ヘ､ ｀ｰ- 匕＿..ノ: : :∧:: :＼ /_/: :￣:￣: :ー──── 二: : _,. - ´, :_:: - ´,. ´
<777777777Z九￣＼: : /: ::＼: :ﾍ ｀ ´ ／: : : : : : : : : : : :＞､＿_..二--‐´, -‐‐ ' ´_,. - ´ __／
／7///////////＼＼γ＼: /: : : ＼:ｽ .‐ .. イ:: :::ﾄ､: : : : : : : : : : : : : : :￣＜二＝-‐‐ '__´ _,.. -_´／
/////////;｣ｪ⊥ﾆﾍﾆて＼ ::べー-Ｚ＞-ﾄﾞ二二ﾕ._:_ﾄ､|. ＼: : : : : : : : : : :／｀ヽ: : : : ＞ ￣ |=}‐-- ..z. -‐_´-‐ ´
///⊂二二 _ ; ＜. ∨ :::} .} ＼ / ｀´￣｀ ー- __／ _ﾍ イ. /=}-‐ ' ´ ﾞヘ､_￣｀ヽ､__ ／
////=:／._ : ,' て＿彑 :レ; } ＼____,-､_/ l | /=} ￣ ｀ヽ､／／
//=:／／/ ,､ /´ﾍ辻=.／ :::ﾉ } 0 0 | | 0 0 / ´￣￣ / _/=/､ ／∠-‐
/=/／=./ // //==//=／ イフ {::. ／￣ ＼ ヽ __ ＿, / ﾄ"´: : ｀:ー──── ´: :＿,..-‐
∠´==={_/ | l_/=== ／, ＜´//l__ / ,イ . . ｿ､ |￣ ／｀}／ ﾌ ＼: : : : : : : :‐＝二二＿＿＿
＼====└'/////////////==|/l / ﾍ .: : /. ｿ＼ | ─ ノ. ＼: : : : : : :＼─────
＿;'ス//////////////////==/: :ヽ／ ｀ ﾍﾞ / 子､ . ﾉ ＿,.／ ＼_＼:::::二二＿＿
＿.:＼/////////////=/￣'- ´ }: :|| ﾍ ./ | .＼／￣＼＜ -'￣ ヽ. __ ＼＿_ __ ￣
＼__￣￣￣￣}｣｣｣｣_/ : ／ /: :/|:. ∨ ,' , -─- .._ ｀ヽ. ｀ヽ} ＼‐ ´￣ﾌ ＿ ,.>＜ ＼
＿ -‐￣｀ ー────‐- ､./／ / / ／ ∠＿＿> ､ ＜ヽ ＼ '-‐' .／ ∧
｀ ‐ｧ' /￣／￣￣￣￣｀ ー- ＿＞- ､__＞｀ ｀ｰ-＝.＿ｭ_＿,.... ﾉ
￣￣＼ ／ |´ 'ー‐〒-- ､ <二二,´ ＼
ヤ |/ ￣ ﾌ ＼ て￣￣ ＼ ＼
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| 未来仏・弥勒菩薩。
|
| やらない夫が背負った神はあまりにも強大であった。
| 弥勒菩薩の『許し』は首都圏に広がり、『心を入れ替え善行をなした者』に与えられた。
|
| それは即ち目で見えるほどの魔力の光輝。
| 善なるものは一見すれば見分けが付くようになってしまった。
|
| そもそも、善とはなんぞや。
|
| 善とは、よいこと、正しいこと。
| 道理、道徳、倫理的に肯定される事柄。
|
| そして、より良くすることであり、うまく進むことでもある。
|
| 善の字は言と羊からなる。
| 語り合う言葉と、生贄こそが善の本質。
|
| そう、言葉。
| 人々を正しく導くのに必要なものは暴力ではない、言葉だった。
|
| 武器よさらば！
| 人々の手は武器を握り他社を叩くためではなく、差し伸べ繋ぐためにある。
|
| 武器よさらば！
| 人々は、争いのない『許し』を受けた世界に喝采した。
|
| 救世主やらない夫！ 救世主やらない夫！
| 万歳！ 万歳！ 平和よ許しよ永遠なれ！！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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-‐…‐-
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/ イ / | | | ｜ ＼
/ / ｜ ｜ | | ＼⌒
／彡} ﾉ ﾉ | |＼ ＼⌒ う、うう、ううううぅぅぅ……。
ﾉ／ | ｜ ／ ﾉ人 八 ＼{
j__ﾉ}／ j／ ﾉ＼ ＼ 貴方が誠に救世主ならば、私は、私は……！
＿／／￣￣/ ノ{ ﾉ＼{￣
＿＿ ／ / // ―＜＿＿＿／ニ＼＿
. ／ / ＿/ ￣￣＼ ﾉニjニニニ＼
/ {／ ＼ ＿＿＞――‐＜ニﾆjニニニﾆﾆ＼
{ ノ＼ ノ二二二二二二二二二jニニニニニﾆ∨
/⌒＼／ 厂/￣￣二二二二二＼ニニﾆﾆ{ニニニニニニ }
{ {＿＿／ √二二二二二二二二＼二二{ニニニニ√ニ√＿
{ ＼ }＿√ニニニニニニニニニﾆ.|ニニ{ニニニﾆ√ニ√ ／
. ＼ ∨ ＼ニニニ／￣￣￣￣＼|ニニ{ニニﾆﾆ√ニ√ ＼
￣{￣ ￣＼ }――く＿/＼ ＼ニ{ニニニ√ニ/ ／￣
＼＿＿_ ／＞ー― ＼ ￣＼/＼|￣￣ニニニﾆ厂 ＼|
{ ／ ￣＼ ￣＼／￣＼＿_{ ／ニ} )＼
＼＿＿／＼ ＿／⌒ ￣ >'⌒ ＼ ＼ ／二二}／(＿ノ }
{二二二二＼＿＿／＼＿_／＼ }二二二}＿_ ﾉ
厂￣￣￣ |￣＼ニニニニニニニ厂＼二二ﾉ ∠／}
/ / }¨¨¨¨¨¨¨¨¨＼ /ﾆﾆﾆ厂￣ ／
/ / / 〈ﾆﾆﾆΛ ＜
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 驚くべきことに、『血族』『教会』全体の中で、やらない夫を『救世主』と最初に認めたのは『聖処女』ジャンヌ・ダルクであった。
|
| 彼女は悔い改め『許し』を得た。
| そこには『教会』の『異端審問官』が異教徒に屈しただけではなく、
| 仏教徒でない者も『許し』を受けられるという弥勒菩薩の懐の広さも見えた。
|
| これまで邪教徒狩りと称して無辜の民を拷問にかけ火刑に処してきた外道を受け入れたことは、
| やらない夫にとって大きな不利益となった。
|
| ジャンヌには敵が多すぎたし、『聖処女』の裏切りで『教会』は引き下がれなくなった。
| 『教会』のすべてがやらない夫を目の敵にしたし、ジャンヌの悪行は全て暴露されて被害者や遺族が立ち上がった。
|
| やらない夫への対処を決めかねていた『血族』は、これを機会に完全に敵対。
| それまでは『危機』が去るまでは同盟を結ぶという話も出ていたのに、だ。
|
| だが、『血族』は『教会』には逆らえない。
| ジャンヌの裏切りに絶望した狂気のジル・ド・レェや『十字軍』だけが『教会』ではないのだ。
|
| 世界規模の巨大な組織相手に、極東の下部組織では相手にならない。
| なにより、やらない夫と弥勒菩薩の存在は、世界を変えた。
|
| 神や悪魔、魔法や異能の存在を全世界に知らしめていた。
| それが、『血族』的には最も許せなかった。
|
| やらない夫による「許し』が全世界を包むとしても、それは許されることではなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,. -'",: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
, '´: :／: : : : : :',:丶 : : : : : : : : 丶､ : : : : : : ヽ
,.:': : : /: : : : : : : : :}:.: :ヽ: ､ : : : : : : : ＼: : : : : : :ヽ 悪魔への認知がゲートパワーを増加させる。
/: : : : :i : : : : : : : : ::|:､::: : ＼｀ヽ､:.: : : : : ヽ: : : : : : :',
/,: :/: : :!: : :: :l: : : :! :l : ヽ:::::. :ヽ: : ＼:::. : : : :',:. : : : : :i やらない夫さんの行いは、
!:| .:!: :: :|: :. :: :!: : :::!,.ﾍ､::::.＼:::. :ヽ:.:.,--､::. : : ',:: : : : : | さらなる混乱を呼ぶだけの悪手としか思えません……ッ。
!:!.::|.: :: :l:.:::.|:.::! :!.::| ｀ﾞー-ヽ､: ヾ,､'´ ヽ: : ::!::: : : : :!
ヾ:::!:::::::::i､:::',:::',､',::',_,,.. ヽ:ヽ , ﾉ:: : :l:::: : : : ! せめて、蒼星石がいてくれたら……。
',:ヽ::::::',ヽ_',ヾrヾヽ ',: |'' /::: : .l::::: : : /
`''ヽ::::ヾ ヽ _,,ノ ,! l-'::: : :.:!::::: : :/
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| 蒼星石の遺体は、ニャルラトホテプによって隠匿された。
| 彼女の最後の足取りは高良みゆきの見舞いであり、直後に様態が急変して絶命したみゆきとの関係も不明瞭なまま。
|
| 蒼星石がいたら、やらない夫との間の折衝役を買って出てくれただろうに、
| だが、居ないものは頼れない。
|
| そして……その後のやらない夫は、刺客に一切の容赦がなかった。
|
| 志摩子は知らぬことであったが、アリカ殺害後のやらない夫は、彼自身が思っていた通りに心のどこかで死んでいた。
| 敵は殺す。『許し』がなければ殺す。
|
| やらない子とジャンヌという二人の女が、その体現者なった。
|
| 『血族』は『緊急事態対策班』を。
| シロッコは『カトルカール』を。
|
| やらない夫討伐として送りつけた。
| 油断も慢心も無かった。
|
| ケンシロウは死んだ。
| 『狂死』も死んだ。先代も、石田も。
|
| 同行した杏子班も全滅した。
| 杏子が死んだ以上キュウべぇも魔力水面とを失い消滅。ヴァイジャヤも横島も死んだ。
|
| 『カトルカール』も全滅した。治療中だったアゲハチョウを除き、ロビンも命を散らした。
|
| その後にやらない夫の身代わりになって鹿島が暗殺された。
| 暗殺者、黄泉もまた死んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ -‐= ﾆニ イ´(ヽ ／／ ／／
,／二二二二/ , イ´＿＿ ｨ―- ／／ ,,_／／_
iﾆﾆﾆﾆ=､テﾆﾆ/二＞ｔ― ､ヽ / i l, ｊ 〈ﾐ/,､ 'i やらない夫さん！！
＼へン´二ー=ﾍ/／､ , ィ､ノ//,| ｀ ／／ .l ／ソ
￣ イ´三三≦ﾐ///／l |/／i≧＞‐- ／／ニ-l／／ あなたは！ あなたはァ！！
ﾆﾆﾆﾆ7/￣ヽ三ﾆ' /ィ: :＼/: : l |/ l i ` ｲ i` ／ヽ
￣ ーi ,ﾏ: :`,: :':_:_: : ヽｲil l///l ,l ＼ l ヽ.ﾉ i
,-,|､-‐i‐ｌ: : : : ／ ヽ＼: i: :ｌ ∨/＞ー=ﾆニ＿ |
ｒ―､―,､/ / ∨:ヽ: イ=ー'=二4: : :.i ∨＞､ `ヽ≧ｚﾆ二 |!.＿
ヽﾆﾆ`ーl／ ／: : : : ＼ , ､ i: Ｙ: i l/:／: : ＼＞､ ＼ /＼ー l
／／:l / /: ー､ : : : : ＼ `i: : ／: : : : : : : :＼ ヽ ﾍヽ Ｙ 'ﾊ
| i:／: ＼ /: : : : :ヽ: ､: :ヽ:.:', ', /: : : : : : : : -‐': : :ﾍ ∧ヽ // ｉ/
／: : : : : : l: : : : : : : : : ＞ﾃ/ . ゝ＼: : ／: : : : : : : : :ﾍ ∨∧∨/ /
ｲ : : : : : : : /: : : : : : : : l´; ／ --ｚ ≦ 彡ヽ〈: : : : : :_: イ: : : :ﾍ i//i///
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//: : : l: : : ／: : : : : : :/=ﾆ三三三三ﾆ彡" l/ハ:ｰ:‐:':": : : : : : ,l i/ l
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｀＼メ ｲ ／ ＼i//////ﾊ
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/ / ヽﾆ//// ﾍ
/ / ＼ヽ///ハ
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| 彼らの死を知り、病室から飛び出した二人。
| 龍田とアゲハチョウはいい所まで行った。
|
| 天竜が邪魔をしなければ、一矢報いる事も可能だったに違いない。
| だが届かなかった。
|
| アゲハチョウが身を挺して守り、復讐鬼とかした龍田は逃げ延びた。
|
| 『緊急事態対策班』や『カトルカール』との連戦で、やらない夫側の戦力も激減していた。
| 戦闘訓練をしていないベルソナ使いの大半はリタイアしていた。
|
| 早い段階で前線に立ち、己の能力を過信していた球磨川やタカオ。
| 他にも咲夜、ひめ、夕日が命を落としていた。
|
| 花京院やはやぶさ、当麻は視力喪失などの重傷により再起不能。
| 敵味方が次々と散る終わらない復讐のの連鎖。
|
| 不屈の狂気で、兵力を失いながらも日夜攻撃をやめないジル・ド・レェを殺し。
| 一人生き残っていた『緊急事態対策班』の呂布を殺し。
|
| 代わりに今度は天竜を失い。
|
| 今度はやらない夫側から攻撃して。
|
| 新宿衛生病院でシロッコを、レイを、そしてさらなる改造を受けた龍田殺して。
| ミストと、四ツ目と、ジャジャマルが死んだ。
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: : : : : : : : : :jI斗: : : ://////////////////////////////}_,,.. -─-ミ ／ j-ﾆ_j(⌒Ｙ
: : : : : : : :／: : : : :..:.j{/////////////////////////////‐=≦ ￣￣/ }j-ﾆ_j-‐ }
: : : : : : :/: : : :. :.／:.j{////_｣｣_jI斗─‐＜//////////////,} __j{ j-ﾆ_jにく(
: : : : : :/: : : : : /: : /'{ィｉ〔j{ / 〉!: /: :／|r‐=ミ///////////∧ ＿ア＼/ j-ﾆ_jー／ 残念ですね、やらない夫くん。
: : : : :/: : : : : /: : / {: :/込乂 !/:／: : |乂i/^ヽ-‐=＝≠=‐ミ'∧ __ア /j-ﾆ_j／
: : : :/: : : : : /: ／ ∨: : : ヽ_|": :. :. :.| /:/:／:../: : :|/∧_ｱ ／ j-ﾆ_j､、 私は、『セイバー殺しのセイバー』。
: : :/: : : : : :'／ ＼: : /^|:..: : .:.Ν ‐=彡仞7／: /:..:|¨¨ｱ ／ /''"~ _ﾉ_ 力に溺れ、
: :/: :{: : : :./ {≧s｡,, 〉: : : :.|＿ 〈: :. :./:. :..|7f ノ ''"~_ ノ 人類の脅威と化したセイバーを狩るもの。
:/: : :{: : : :{ {_=_=_/／〉: : |=_=_=ミｈ､ ／}:.／:. :. :.|/乂__/ ／〉
: : : :.{〉: : :{ jI斗━─_=_=.〉: ∨_=_=_=_=}ィｉ}:.}〉: : : : |///∥ 〈
: : : :.{∧: :{ ,ｨ_=_=_=_=_=_jI斗‐.〉: ∨_=_=_=///}/∧:..:. :.|///j{ _､+''"ｏ｡. いまやあなたは私の敵です。
: : : :.{/∧:{ .／=_=_=_=_=／//////＼:〉〕iト-=∨////!: : :/+'"~j{ ／_-_-_-_-_-≧s｡,,
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 謎のヒロインＸも死んだ。
| 弥勒菩薩の加護を受けたやらない夫は、彼女の敵ではなかった。
|
| だが、その戦いでやらない子とシグを失った。
| 別行動していたジャンヌとダルもまた、ヤザンによって命を落とした。
|
| 委員長も、マーガレットも、そして合流した藤木とさやかと由乃も。
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』に惨殺された。
|
| 復讐の刃を振るい、ヤザンと核天使どもを惨殺している隙に。
| 『十字軍』にやらない夫の信奉者が、非戦闘員が襲撃された。
|
| 男は拷問を受けておもちゃみたいに殺され、女は犯され殺された。
| その中にはリタイアしたペルソナ使いたちも含まれていて。
|
| やらない夫の周りにには、もう、もう……。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ‐……‐ ..、
／::::/ｉ:::::::{::::::＼::::::＼
/:::::::/ :|:::::::l＼:::::::＼三三≧
i:::::::/ ヽ::::::＼__く::::::ヽ::::.
,:{::::::i ー‐ﾐ ￣´ｨt=ｵＸ:{:::::::.、
/::ﾍ::::{.「死 ´死 八::::､:::::::ヽ
/:::::人:::》、 丶 i}:::::＼:::::::＼ 貴様にはもう誰もいない。
.':::::/:::::込、 ＿ /`ーｲ:ﾄ::::::::{ ￣￣ 主人公よ、絶望の末に死ぬがいい。
{:::/l::／{::::::≧ ´ ノi:i:i:i:i:i:i:i7＼::〉
V !' 》＜＾⌒ ｨ ´￣｀ヾ/∧
くi:i:i人r一' lﾊ 、 ∨∧
//ｲ7厶-=====ｵ｡V ∨∧
〃/ﾒ´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:∧ ‘， ∨∧
///'i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧ ‘， ∨∧ ＿＿＿
//八i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ﾊ.｡‘， ∨∧i:i:i:i:i:i:i:i:＼
/// Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ∧ 》 ∨∧¨¨ヽi:i:i:i:廴
/// }i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ{ ＼| ∨∧ ∨i:i:i:i}
/// .ﾉi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ハ ! ∨∧ }i:i:i:i:|
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/// }＿ イo￣ l| 》 》====…ヾ/∧i:i:i∠
＼///＿ 厶イ。|! l| 斗匕ﾍ ヽi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i》
.イi:i:i:i:i:i:／{! |! o .斗匕 // ＼.}i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iく
/i:i:i:i:i:i:i:i:}／{! 斗≦.=====// {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
》i:i:i:i:i:i:i:i:} ／─ｬ== …── ≧ｭ． 戈i:i:i:i{￣ ｀⌒ヾi:iﾉ
戈'⌒ヾi:ｉ:｝／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧ｭ．__}≧ｵ } Ⅵ
rＥ{ {＿_ﾞｵi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:{ |//∧ } リ
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| そうして誰もいなくなった。
|
| やらない夫は『十字軍』を殲滅した。
| 街を戦場にしてまで襲い来るムスカと自衛隊も駆逐した。
|
| 血まみれの救世主、復讐の悪鬼にしか見えないやらない夫。
| 敵は殺し、殺し尽くした。
|
| 『血族』と『教会』の残る勢力への対処を考えながら。
| ニャンコ先生たち仲魔の他に相談相手のいなくなったやらない夫は。
|
| この期に及んで、全てが間違いだったと気が付いた。
| ああ、何ということだろう。
|
| 『許し』を受けた人々は『許し』を受けていない人々を攻撃していた。
| 『許し』を受けられないということは、善行を行わないということ。
|
| それを言葉で、あるいはどんどんとエスカレートして物理で。
| 『許し』というのは、免罪符だった。
|
| 自分たちを正義の代弁者にし、悪を叩く都合のいい印だった。
| 弾圧が起きていた。差別が、争いが、謂れのない理不尽な暴力の嵐が。
|
| そしてその原因は、他でもないやらない夫。
| 彼がもたらしたのは『救い』ではない。
|
| 新たな争いに過ぎなかった。
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圭乂_: : : : : : : : : : : : : : ＞: :´￣ ／ .l: : : : : : : : : : : : : : :｀''＜ ＼__ｘｲ ｀¨ﾏ''マ¨´_ : : : : : : : : : :
ﾐ圭圭圭圭 =――ｧ ´ : : : : : : / .{: : : : : : : : : : : : : : :_＞''"｀∨:.:|| V :｀ ､: :￣: :¨: :=‐-_
圭圭圭圭,,.. -‐≦〆: : : : : : : : :ヽ＿ノ ｌ : : :!: : : : : ﾄ; : i＜_:＼＞气ｱ || ＿＿V:＿:＞ '' ´￣￣
￣: : : : : : ＞ ´:／: : : : : : : : : : : ∧ l : :∧: : : :._|ﾊ:.:|::::::: 癶以'´ lV:∨:.|匕￣／ ´￣￣￣｀
. . . .＞ ´: : :.／:／ : : : : : : : : _ : : : ＼／l: : : ∧:／: |:::ヽ!::::::::::: ﾚl: : : :| ） /
: : : : : : : :.∠ イ: : : : : : :_ . イ: : : : :/ﾘ .|ﾊ : : : ＼: :|:::::::::::::::｀ ,/ .|: : ﾊ| ） | わたしは 破壊神 ミロクボサツ
: : : : : : : : : : ノ _ ｡ｓ≦: : :/: : :/／/ l＼＼: lヽl＼ __,,..彳 ／!:./ ／ ） |、 すての記憶、すべての存在
: : : : : : : : : ￣: :.＞ ´＞／: ／l/: / 丿ﾘ lヽＮﾊ: ≦=ｚ-- ┬ _´,,,..|/ ﾉ ノ |｀､ ／ すべての次元を消し
: : : : : : _ ｡ｓ≦:＞ ´∠ イ: 〃: :{ /ヽ(/,/:./:./: :.:∧:.|´ =-‐7,､,､ .ﾄﾐノ 0 ! ／
-‐ ¨: : : :＞ ´: : : : _ ＜/:〃 : : 乂(: :.:/,/:./_厶＜´∧| ､ ＾＾^乂)__0 |/ ∧ / 乂 そして、わたしも消えよう
: : : : :＞ ´ : : : _ ＜圭 /〃 : ／: : :.:／＞' ,ハ 0 0 .( `^ｿ ∧{ ＼ 永遠に……ッ！！
＞.:´: : : :_ ＜.圭圭.／〃: ／:.: :.:／／ / ' ',. ( / ＿全s｡＿＿_
'¨＞ ⌒' ‐-= ..,,＿':.:〃:／: : :.／∠-――-ﾐ ./ ,/ ', (ヽ、| ／ i| ｀Y
´ ＿＿＿__ ノ〃／: : :.／ ( ／く 厶-‐z ‐-ﾐi{ ! ( └! .／ | 乂＿,,..
／圭／ /: :／イ:.: : :.:／圭モ≧‐〆 `＜_乂_,/ /__) ノ＾＾乂 |/ ﾘ_ ﾆ=-―‐
..／＞'´＞‐ミ／: : : : : :／圭圭圭/∠､,､ ,､,､,vvv^^＾＾`ーｧ≦＾＾＾＾＾ハL,,＿＞''´
,'＞ ''´ ｀'' ＜_´.圭圭圭./: : : /.: :＾＾㌻＾ ／: : /: :/: : : l.:ハ 乂
＿＿_,,.. イ／l圭圭/: : : /: : :.／ ／: : : :./: :/: : : :.ｌ: : :| /≧ｓ｡.,＿＿,,..
_,.｡ｓ≦: :｡s≦圭 ／ /圭／: :.:／:＞'´ __／: : : : :.:/: :/: : : : :.! : : ! 厶イヽ/ヽ/ヽ/ヽ
ﾊ、 ﾔ´ __ 斗＜ /-‐´'' ¨ ￣´ ,./ヾ＼:_:_:_:_:_:_:_:r‐-ミ ＿__,ﾉ ´`´`´`´`´`
.√ ヾ¨ヽ´ ＿＿＿ ￣￣ｱ r―＜ .／/ ヾ＼__ ∧ ｀ ＜
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´ ＿,,. ｡ｓ≦ _｡ｓ≦＼ _ ＜ ＼// _ ＼ ｀ ＜ /
｡s≦ } ∧`＜ミミ＼≦圭 ＿＿_ ＿__ // ＼ ￣￣￣
￣´ ﾉ ∧ ` ＜i>、 /' / /圭八 ｀''＜ ~ ,.斗＼
＿＿_,,,...｡s≦￣¨l＼=‐-∧ ∧∨' / / 圭__, `､ ＼ ´ ≧ｓ｡ _
モ＞ ´＼.圭.r―┘、＼モ∧ ∧∨ / / i|＿_,| __ `､ ＼＿＿＿＿ ／ ｀≧ｓ｡.,＿__
圭＼_ ＜圭,!-=. _ヽ,/ 圭∧ ∧∨ / ﾂ / | ｀ヾ､ ＼三三三| ´ ＞'' ´
圭li|＼モ圭〈iﾊ ¨ ‐=_/∧ ∧∨ ￣￣ .∧ `､ ＼＿／ ／
圭li| ＼.圭.Vﾊ V ∧ ∧∨,圭圭圭∧ `､ ヽ _ /
圭li| ＼ Ｖi〉‐- _ V ＞ _ ∧∨ .／i| | l',. V､ ¨ '' ‐-==-‐ ''¨￣
==人 ＼｀¨ ‐- 二 ｣.圭圭圭.＞ ∧,〉 | | | |ﾊ V`､
￣＼＼ |圭圭圭圭圭圭圭|￣|.圭圭圭.|／／モ| ﾊ ＼≧ｓ｡ _
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| 暴走するやらない夫を止められる者はもうどこにも居なかった。
|
| 『血族』は既に間桐臓硯のもので、彼はやらない夫などという危険物には興味がなかった。
|
| 臓硯は自分が左遷され、無力化したという噂を流し、誘い出した『弓兵』や遠坂凛を殺害。
| 慎二を監禁して『万魔』を支配。
|
| 『万魔』、桜、そして強化改造した雁夜を使い、邪魔なフリットやキオ、『グレン団』を排除した。
| 志摩子は翠星石共々、でっていうに生贄として提供された。
|
| ニャルラトホテプと臓硯は、結界で破滅を生き残る。
| 破滅＝クトゥグアへの対策は完璧、彼らは高をくくっていた。
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| ここではない地球の話をしましょう。
| 滅びて消えた。そんな地球の話をしましょう。
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| 『地球標本展覧会』。今宵皆様にお見せするのは救われた世界。
| 衆愚を救済する未来仏によって永遠の『許し』を与えられた極地。
|
| ヒトの純真を信じた愚かな男の、嘆きと苦悶の到達点。
| 彼の最大の過ちは、自分が狂人であると最後まで気が付いていなかった一点に集約されましょう。
|
| ああ、もちろん。
| ここまで見学して来た皆様に、わたくし如きがあれこれ言うのも無粋。
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| では、如何にしてこの地球が剥きたてトマトみたいにピッカピカなったか、その顛末だけを見学いたしましょう。
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{＼ | ｀`ト ., ｀| ヽ .∧∧ ／|
} ＼ ､ }, | У }／/
{ ＼ ﾄ､ Ν |_／ /
. ＿ {ゞ ＼-､ ＼ | } | /
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＼ ｀' ／ ／ ／｀ヽ ﾍ ,ｨヽ' {／ /
＿∨ ヽ＼,／ ／ ／ / ／/} '/{ l ＼ /
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／ , /＼o_ ; ゞ ' ノｲ从/＼ ﾄ､
／ イ }/ /.}迅 i / ノ }/ /＼
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ＡＡ 天草四郎
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| そういえばご存知ですか？
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| 江戸時代初期に発生した宗教戦争。
| 長崎から持ち込まれた『ネクロノミコン』を巡る争い。
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| 魔導書を焚かんと挑む『蛇身』と柳生十兵衛の交流。
| 魔導書を利用して世界に救いをもたらそうとした天草四郎と『怪魚』による饗宴。
|
| そして、魔導書を得て隠匿した間桐臓硯と、その実験台にされた『万魔』。
|
| こう考えるとなんともまあ。
|
| 実際に弥勒菩薩を召喚せしめながら。
| しかし、周囲からよってたかって否定され。
|
| その上、理想の世界はまやかしで。
| 信じた衆愚には裏切られ。
|
| 天草四郎がもし弥勒菩薩を呼び出せたとしても、結果はきっと変わらなかったのでしょう。
|
| 力あるものは新参者によるパワーバランスのゆらぎを恐れ。
| 力なきものは他人を蹴落とし嘲笑う瞬間を見逃さない。
|
| やらない夫は全てに絶望致しました。
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マにﾆ=ﾐ､:::::::::::::::::},}///77=i l-=777,n'＞´:::::::::::::::::::::/´｀!´j /-､
｀ヾ:::::::::`:..＝=ミ::!|/Zｨ⌒⌒ﾞヽ,n'ﾞ::::::::::::::::::::::::::::::::;､i ﾉ ' ,.' /
＼::::::::::::::::::::`ヽ{ ＿_ 〃::::::::::::::::::::::::::::::i^i ! ／
＼::::::::::::::::::::::ヽ´ ゞ:::::::::::::::::::::::::::_;;;:=＝ﾐ／`j ／
＼:::::::::::::::::::::〉>=<::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::し ﾞ ´
＼:::::::::::::::/r'ﾞﾞヽ`i::::::::::::::＞;ｲ:::::::::＞''´
｀ﾞﾞヾ:::i`ｰ}| | i{ﾉ-－''´ ,.ｲ:::＞''´ . ＿＿
ﾍ::､ /,' ! { ,..ィ＞''´ .／::::::. ＼
ﾍ::'-－'::::v:´／ /::::::ヽ;;: ＼
{:!￣´ ｝シ （:::::（::::冫 | ああ……。
｀ヽ i´ （:人;;;） . |
j ＼ r‐-;::::::. . | 人間の、いない地球は気持ちがいいものだろ。
/,ィ=ゝ )::..._ （三））:::::.. . |
,.:':し 'ﾞ´⌒¨ﾞﾞ''` >::::ﾉ:::::::::. /
/／ /::: / ヽ;::::::::: /
´ /::::/ ⌒ヾ:::::::::::.〈
（;;;;__ゝ:;;:::::＼／:::::）
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| 人類許すまじ。
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| やらない夫は（許し』を受けても受けても、何度でも罪を犯す。
| あるいは『許し』があるのだからと積極的に罪を犯す人類に絶望いたしました。
|
| そしてまずは、地下で生贄に捧げられていた翠星石と志摩子の死体を奪い取り。
| その力を存分に吸い上げて日本中の人類を消しました。
|
| 弥勒菩薩の力は大きく、手は長く、慈悲の心は誰よりも深い。
| だからといってやらない夫の慈悲は無限ではない。
|
| 彼は罪深き人々を地球上から全て消し去り。
| そして、最後には己自身を消したのです。この地球を救いで満たすそのために。
|
| かくして一番目の十壊は信仰の戒めを壊（やぶ）りて現れた。
|
| 『滅ぼす者』：《テングサの歌》。
| 本体名：備府やらない夫
|
| 破滅の果実、ここに結ばれり。
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☆ 次回予告！
果てに見るのは破滅か死か。
『地球標本展覧会』であったか
派手に逝ったのぅ
壮絶の一言やな
やらない夫どん！
ネオミロクデスやらない夫
どこからの分岐なんだろう
//
_＿__〈｛ ／｀／｀Ｙ
´ ‐‐ミ＼| ／ ｜ -‐―‐‐- _
／／ ,/ ＼{ ´ ___｀丶 ／ ＼
／ | ｉ ／ //⌒＼ ＼′ _____|
／ ｰ=彡| i ／ ′ ＼{／ ~⌒＼
ー=彡 ／ /ハ Y ／ ￤ ／⌒Y '.≧=-
／ ／⌒ ／ / | | ( {｛ ^⌒ヽ |＼___
′ ,／／ ｱ/ .′ / 丿 乂 )＼＼:} ＼ 丿 <⌒
＼__{rf⌒７ ／|｜ ／ ∧／ ／ ＼/ 丿 ＼
＼(⌒ア´ |∧ :|/ ´￣／)／| ／‐-／| ′ ,／ ＼ ＼
／ )＼| 个トミ／ |′ ∨ |｀∧ :/ :| ､ |＼ |
／ ,∧ V^｝ 个云トミ/ '. / | ＼, ｜ﾉ )/
/∧| / ,ﾊ ' ' ゞ ┘/ ∨八 ｝,人 |∧|' ／
{｛ :| ′ゝ ' ´´ｰ=彡 ﾘ／ : Χ( '. 丿 ,ﾉ
/ |/ . : : : : :≧s｡` 一 イ //. : ／. : .＼ '.
. . :┌‐ミ -‐,ｧ-Tニニニ|/｛＼: : : : : : : : : .
／ / . : ／ (~ __ ___ ┌'⌒´ ＞-ミ: : : : : .
／ /. :／ / ) ∧__┌'⌒ 'ﾞ `､: : : : .＼
／ . : : : ′ ,/｝ 0 o⌒ﾟ ,ﾘ⌒ | `､: :＼ : .＼
. -‐ . : :／{ ┌'ﾞ∨ ﾟ ０ | / Y : :丶: : .＼
-‐=ﾆ ／´ ┌‐‐ / 厂 廴 ∨ | i : : : ＼ : .＼
´ ／／ / 八 / ﾞ 厂) / 廴, / ; | | : : : : : ＼: .
. ／ ／／ / ／ /⌒'┤ { 厂 ( .:ｌ __厂 廴,_ ／ .′ / | |＼: .＼: : .
.,／ ／／ ,/ /__,厶イ^个ーくＶ ⌒廴.::::厂 ／ / :| | |: : . ＼: .
. ／／ ／/ ／ . :￤ / : : ; ハ ∨´ （⌒＼__ ___, -‐‐-| |／|:＼＼ ＼
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／／ ／ （＼ / / /⌒'┬'⌒´「 ￤ '⌒ｰ┬‐ミ : : : : ｀ | |: |｛＼＼ ＼
／／ ／／__ ＼__￣ ＼‐‐く⌒~＞'ﾞ⌒ :| ／,〉 ___| ＼_＿_,.| |八 :_:_＞＼
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| やらない夫による世界の滅び。
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| これがこの世界の運命である。
| やらない夫は主人公ではなく、言うなれば世界の敵。
|
| だが、人々が彼の危険に気付く直前まで。
| 彼はずっと人類の味方のつもりだった。
|
|
| 蒼星石は、何も成し遂げられずにニャルラトホテプに殺される運命。
| アリカは、やらない夫を止められずに命を散らす運命。
|
| 運命。
|
| 運命運命。
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| 運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命
運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命運命…………
． __,..--,､
x ´ /｀"´｀iヽ.
｀ヽ ､ j { oﾞ;.:.:!
ヽ､ノ､ x ハ _/.:.:.:.!
ﾉ ＼ /＼｀´ ゞ-;.:.l
） ,. '⌒ﾞ r-ゞ/-, ７´ {;,/|
ヽ/ ヽ彡 ´ //:::j _l
Ｘ _f /f:::::/ i:.:/
Ｘ ゞﾉ. / !;;ﾉ,.:':./
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{ミヽ,＞‐｀'′ ,.-::／/_,ﾉ ,
}ニヾ_ ＿_r="/」'-'" Ｘ
ゝ=-'"￣ "￣ /
x ／
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| それは抗えぬ世界の流れ。
| 小魚一匹跳ねた所で、何も起きない、何も変わらない。
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| 人間ごときに、運命を変える力などない。
| それがもし、未来予知能力者だったとしても。あるいは、高位の悪魔だったとしても。
|
| 運命には勝てない。
|
| 絶対に。
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| …………所で、賢明なる読者諸君は覚えておられるであろうか。
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＿
/ ﾆＹﾆヽ 〈巛ヽ
/ （ ﾟ )( ﾟ ）ヽ 〈⊃ }
／::::::⌒｀´⌒::::＼| /
| ,-）＿＿＿（-，| ／
ヽ＿ |-┬-| ／ /
(⌒) `ー'´ /
/ _/ ノ
ゝ__ノ /￣ヽ
| | |
| A / ⌒ ヽ
｜ | ヽ､＿ ﾉ
∨ |（ （
/ ） ＼ ）
l / ）ノ
し__ソ
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ili ili
､ﾊ/|,,､
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| 一人の少女の運命を変えるために、万死の旅の末にこの次元に辿り着いた矮小な悪魔がいた。
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| そいつは、未来から至ったその怪物は。
| 世界の滅びに対抗できる男女の可能性を口にした。
|
| 『胸に七つの傷がある男』
| 『女神の娘』
|
| 世界が滅びる原因も、方法も。
| 曖昧すぎて分からぬように。
|
| 世界を守る鍵となる人物も。
| 曖昧すぎて確信が持てない。
|
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| だが、一つだけ言える。
|
|
| 滅びの運命を打ち砕く可能性。
| それを持つ者こそ『女神の娘』。
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ｌ:::::::::::::::::::ヽ!:::::::::::::ヽ ゞ=-' j:::!
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iｒー‐＿ﾆ二ヾ､:::::::::::::::}ｰ::..._ ｀ { i ' |:::::::|
ｊ /´ ￣ﾊヽヽ::::::::::::! r‐｀ーｒ ､-- ! i |:::::::|
/ / ', ﾄ !::::::::::l ／ｰ､ ヽ ｀ヽ､! ﾍ::::::|
/ / ! トi:::::::::j ヽ Tヽ､ <＼ ｀ｰ ヽ::|
!ノ ::! !::::::/ ,-ｲ j >_ゝ-≧- i:|
／ ....:::j::: j::::X ｊ / /ヽ-ｒイ｀ｰ ｌ|
／ ......::::::_r':.. /:Ｘ ﾍ_ｊ´ ／ｲ , イヾ{ ｒ, ｊ
-' ......::::::::::／´ ´ ヾ,ゝーｒ'´::ﾊ レ'､ ﾊ
／: : <,ｲ´ !: r' ﾍ ＼jハ
::::::::::: ／: : : : . j/ｌ iﾉ ｊ '､ >'
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／｀ｰ-ミ=: : : : : : : : : : : :ノ/::::／ ｀r'
／: : : : : :__｀≧＝==－-‐' !/{イ /
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| その名を。『スーパー運命破壊マシーン』
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, - ー - ー- 、 ,-､
, イ:::::::::::::::::::::::::::::::::r--､ｒ' }
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ ノ
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i:::::::::::i:::::::／ !::::::::::::::/l:::::::::::::::::::::ﾊ
{::::::-十≠ ',:::::―十|―::::i:::::i:::::::ヽ
!::::::ィT/‐┬ ヽT T弋‐､::|><ト､:::::',
l:::::::l !' l !ヽi }､::l><| ｊ::::::!
∧:::ﾊ｀ー‐' ｀ー―' }::::::!-'::::::::',
ヽゝ､ヽ ／＼ ｊ::::/:::::::::::::::',
!::::｀ﾞ､＿ ￣￣ ＿__/::::/:::::::::::::::::::ヽ
l:::::::i ￣￣Ｔ￣ /::::/::::::::::::::::::::::::::ヽ
';::::| 人 /::::/i::::::::::::::::::::::::::::::::＼
';:::| / } /_ノ l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
ヽ! / /:! j |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
⊂/ /:::! ⊂/ !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
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| あ？ 性別？？
| 世界線が違うんだから、誤差だよ誤差。
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ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1616917432/448-n
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／￣￣￣＼ iヽ ＞ -イーフ レ-､_,､
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|「嬉しいだろう蒼星石、『やる夫』が貴様を抱くのだ！
| 泣いて喜べ！ ずっとこうして欲しかったのだろう？」
|
| 時を少し巻き戻す。
| 夕刻、蒼星石が陣取るコンピュータルーム。
|
| 正体を表しのしかかるニャルラトホテプ、歪んだ復讐心と、八つ当たりめいた当て付け。
| 衣服を破られた蒼星石が歯を鳴らして拒んでも、力の差は歴然。
|
|「嫌、助け……ッ」
|「泣いて許しを請うのなら、貴様に一つの選択肢をやろう」
|
| 指の跡が付くほどに乳房をねじり上げながら、ニャルラトホテプが残忍に嗤う。
|
|「翠星石を生贄に差し出すと誓え、そうすればお前は……」
|「犯すなら犯せ！ いくらでも殺すがいい！！」
|
| 愚かなりニャルラトホテプ。
| 逆鱗に触れられ繊維に火が付いた蒼星石は、振りほどこうと腕に力を入れてすぐに弛緩した。
|
| 筋肉の収縮を利用し、右手だけでも自由になる。
| 蒼星石は僅かな躊躇いもなくその指をニャルラトホテプの眼球に突き刺した。
|
|「ハサザマノヒメ！ 僕の全てを貴女に―――ッ！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ // / ト--ミ､、_::::::::::｀:"'':―┼――――l // /
/ // /| ト--ミ､、_:::::::::::::｀:"'':―┼――――l / /
/ ／ | ト--ミ､、_:::::::::::::::｀:"'':―┼――――l
`'ｰ-‐''" ヽ､_ .,ト--ミ､、_:::::::::::::::::｀:"'':―┼――――l
/ /ミミ三三ﾐ'ー‐-- ､、＿:::::::|:::::::::::::::::::::::j
か っ .画 | .{ミミミ三三、 ､ｰ=､`'┴―――fミ', //
ァ て 像. | ﾐﾐミミミ三ｼ . . . . `―'ノ l ii l (ヲ lミil
| 約 .も ヽ!ﾐﾐミミf'" _,,.,,_:.:.:.:,. _j_ .:.:.:. lﾐﾘ /
| 束 貼 >!ﾐﾐＯ 。',ｨでiﾝﾐ、:.:.､__, -,ｨも=､',l:l′
| し ら /,ヾミミ' o ,,゜,￣｀ﾞ`ラ .:. 三 f"´￣゜o Ｏ
| た ず |.へ}ミﾐ ｀二ﾆノ ,、 jl ',` ―''" ,l!
| じ に |二ﾉミ' u ,ィ'" ﾄ、 ,!
ッ .ゃ .ス |fｿ!'ミ ／ `^ヽ,＿ノi " ,' /
! ! な レ ',{i,ﾐ' ／ _,,...,＿,,..,、l /. /
い は ヽN, ／ ,ィiTTTTTト, ,} ,/ // / /
で 立 .／. / ,/⌒'ｰ'‐'‐'‐',ﾘ l /. /
す て /'、ヽ .l {,ゝ､‐r‐'ﾝ-i/ ,/ , ｲレ､、/ /
な 〈 ヽ丶 丶 ヾくZェｪｪｼ' ﾉ ,i'lヽ、 ｀ヾー--､_
い '⌒ヽ´ヽ 丶、 ｀ ｀ ‐ -- ‐'".,/ノ,l ＼ ＼ ヽ
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| 突然、車椅子がドアを粉砕して乱入！
|
| パラアスリートの如き発達した両腕で、ドリフトしながら急ブレーキ。
| 狂気の陰陽師、蘆屋道満麻呂！！
|
|「なんだとッ！？」
|「ま、麻呂！？」
|
| 振り向いた拍子に指が引き抜かれる。
| 皮膚を灼く化学物質めいた痛み、ケミカルな刺激臭と、コールタールの如き粘性の液体が糸を引く。
|
|「ようやく尻尾を出したでおじゃるかニャルラトホテプ！ 鍵もかけずに暴行とは、注意力が無さすぎなのでは！？」
|
| 立ち上がり突進する麻呂、周囲で虫の羽音みたいな音が鳴る。
| 空間を引き裂くzip音、高速同時召喚術『zip術』！！
|
|「狂人め！」
|「誰のせいでおじゃるかぁ！！」
|
| 抜き放たれた脇差しの一撃、ブロックしたニャルラトホテプの左腕から黒い血が飛沫く。
| 同時に麻呂の式神たちによる魔術攻撃、火炎弾が、雷撃が殺到。
|
| 周囲への被害を考慮しない乱射。吹き飛ぶコンピュータ。焼けこげる資料。
| 麻呂を振り払い逃げるニャルラトホテプ、そこに立ち塞がる巨漢の黒子、目にも留まらぬ高速の貫手三連。
|
|「なにイ」
|
| 一瞬遅れて内側から爆発するニャルラトホテプ。
| 両脚と心臓が破裂！ どす黒い体液が天井に張り付く
|
| それを見で、蒼星石は不覚にも涙が溢れた。
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! ,. -‐── ────┴ ─‐┐
', ,. '´ /
> ´ /
く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
>'´ .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: ./ハ: :.l: :!: : : : : :l
i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ii|l|ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ_.|=l||/Vl :l: : : l : ;′ あの馬鹿……馬鹿……！
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ. |.ｿ/ /Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : : : : | | / /l||、: :/ どれだけ心配したと思ってるんだ……ッ！
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|.. ´ ヾ／ ,l:/
}ヽ仆ヽ: : : :lN ／: :l
／￣￣｀`ヽ､::| |: : : :l
／ | ﾉ ヽ.:.|
,ん子こ`ヽ |￣￣￣￣|、l./
,ん'´: : : : `ヽヽ |。 l ﾊ'
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|「まったくですね」
|
| いつの間にか現れた小柄な黒子が、蒼星石を抱き上げる。
| 両手ともに木製の細い腕、されど常人の三倍の脚力と腕力で蒼星石と高速避難。
|
|「そういう君はいつからだ？」
|「昨日気づいて、今朝協力を頼まれた……ある人物の監視兼護衛をな」
|
| つまり、朝から見張られていたのか。
| 蒼星石は苦笑した。廊下には、もう一台の車椅子。そこに優しく座らせられる。
|
|「大丈夫だ、自分で……」
|「しっかり掴まっとけ！！」
|
| 飛び出してきた巨漢の黒子が車椅子を押して窓に突撃。
| ここは三階だがお構いなし。
|
| その間に小柄な黒子が煙玉をばら撒く。
|
|「麻呂は！？」
|「ありゃ、本人そっくりの式神だよ！」
|
| 窓を突き破り飛び降りる三人。
| 軽やかに着地する小柄な黒子、『ロストスキル』。
|
| 蒼星石を車椅子ごと抱えて豪快に着地する巨漢の黒子、ジャギ。
| またの名を『胸に七つの傷を持つ男』。
|
|「逃げるでおじゃ！」
|
| 乱暴に寄せてきたボックス車、運転席には白塗りの老人、麻呂。
| その目は血走りもせず不規則に動いてもいない、正気のそれ。
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,,､-ｰ ―- ､,
,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ',
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l ズラかるぞ蒼星石、
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ | ったく無茶しやがって！
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ |
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr }
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
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|「君にだけは言われたくない」
|「まったくですね」
|
| 冷たくうなずくロストスキル。
| 大急ぎで乗り込む三人、急発進。
|
|「どこに！？」
|
| 聞きたいことは山ほどあるが、最初に蒼星石が聞いたのはそれだった。
|
|「品川大聖堂でおじゃる」
|「今朝、黄泉が手に入れた情報によると、やらない夫＝サンが満月直前に行動を起こす可能性が実際高い」
|
| 情報源が某まな板以下の不人気だとは知る由もないが。
|
|「僕としたことが……確かにやらない夫ならそうする」」
|
| 革新を持った言葉に、ロストスキルが安堵の息。
| 信じきれない情報源なのだ。しかたない。
|
|「現場には黄泉がいる、行くぞ」
|
| 彼らは知らない。己の運命がすでに途切れていることを。
| 三人は蒼星石死後にニャルラトホテプを襲撃し、命を落とす運命にあった。
|
| だが……その運命は、すでに破壊されている。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1616917432/427-n
{: : : : : j |:ﾊ: : : : :/ {: !ヽ: : :ハ: : : : : :i: : : : : : : : : : : : : : : :
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ハ: :Y }ﾊ | ヽ: : | ヾ｀ヾ､ヽ. '; : : : ! !: : : |: : : : : : j: : : : :
{: : : : :l ｌ: ;', ! ＼! ｀ヽ､ ヽ: : ! l: :ﾄ: j: : : : : /|: : : /:
Y : : : j | ﾊ', ＿＿＿ !ﾊ ＼! ヽ! ｀|: : : :/: j: : /: :
〉 : : ﾉ l:j l:', /／￣￣＞ｭ､｀ヽヾ＼ ｀ !: : /: : l: :/: : :
j: : : : i j/ |:} i/ ,ィ´ゝｧ' ヽ､ﾊ Y}ｊ ｌ : / : : j /: : : :
{: : : : ﾚ/ !| /::｀'／ { ｊ}､ヾ_／ | /: : : ://: : : : :
ﾉ : : // |! ヽ_ゞ' ´ ヾ __ -ｊ/: : : : : : : : : : :
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,j: : : / / イ＼ j: : イ: : : : : : : :／j: : :/ j
フ: : : :j ＿ __ ｌ /／ ｊ: : : : : :／ ﾉ: :/ / 蒼星石さんは分かんないけど、
': : : :ノ 、{_ ヽ ＼ i l| ﾊ /: : : :／ /／ / 今の『血族』にいるなら絶対危険だよ！
: : /´ ｀ヽ､_ヽｭ , -――' ﾊ! イ_: ／ ノ
: ﾉ ｀ ー― ｀ー' ｀ ｰ' ﾘ|! ￣ｌ
´ l / ｌ }
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|「知ってる、こないだ会ったしな」
|「ならなんで！」
|「危険だから距離を置いた」
|
| 一方こちら、件のやらない夫とそれを止めに来たアリカ。
| 多勢に無勢ながら、獅子奮迅で八面六臂。
|
| 墨目の苛烈な連続攻撃、そこに参加する天竜のコンビネーション。
| 武器を鉤爪に変え、跳び回りながら撹乱するやらない夫。
| 避けきれないタイミングで飛来する四ツ目の弾丸。
|
| 徐々に押されるアリカ、堪らず叫ぶ。魂の慟哭。
|
|「やらない夫さんのばかぁ！」
|「知ってる」
|
| 上空から、ニャンコ先生の雷撃。
| アリカは避けない。代わりに、墨目の腹に強烈な一撃、天竜に裏拳、そして震脚。
|
| 大広間を揺るがす爆音、今までで最大級の踏み込み。
| 避けきれない、当たれば死ぬ。やらない夫は冷静に分析した。
|
| 『エクスカリバー』の斥力も、もう遅い。
| ブレーキの無い新幹線を思わせる殴打。オーバーキル甚だしい。
|
|「やる夫兄いの、偽物がいるんだよ」
|「…………想像はついてただろ」
|
| その打撃が、眼前で止まった。
| 完全な寸止め。
|
| ……………だが、相打ち狙いのやらない夫は止まれない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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t〈'___}｀´`ｰ-=ﾐ }）ヾ=-'
j!....7 r ﾉｲ" ノ
j!....;_ ＿ゞ=彡≦-―━━━―- ．._
,ィj!...,′｀ｉ: : :||: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :':,
|_ろ..!>‐ '}: : :||: :．- ……‐- ミ: :V:'／: : : :i
/ﾆ7,ﾑ ,ｨ: :／ .:::::::::::::::::::::::::::::.ヽ:!/: : : : : ;
ゝr'_.．-V_/.:.::::::::::::::::::::::::...:.:::. ;i:.. ヽ: : : : : ;
j!....′ ′.:::::::::::::::::::::::::::::::::/'|:!i::.i'.: : : : ;
. jﾞ...′ :::::::::::::::::::::::::_::::::::::/、ﾘ !:.l '. : : .;
j!...! i::::::::::::::::::::::::|T'ヾく､／ /:.;:.:.! : :,′
}!.ﾟi ﾉ::::::::::（i::::::::::ｌ ヾ′゛ ty/.::::ｌ : ;
/({!_ハ _.::::::::::::::::::!::::::::::ゝ 〉'7::::ﾊ: ; ドーモ、皆様。
＿＿ヾ三ノ-¨.::::::::::::::::::/}!::::::i′ ､_ _ ﾊ:/: :/ 元『血族』の新『四天王』
:::::::::::::l:::!|:::::::ィ:::::::::::::::/ノヽ:::ﾄヽ. ｀′ｲ/: : /
:::::::::::::l:::!|´／.::::::::::::::/′ i:::| `ﾘ,､ _ ／::;′:/ 『九鬼』頭目、甲賀氷雨黄泉です。
::::／ l:::!|´.:::::::::::::::::∧ l:::!ノ' |: :{::::／､: :′
:（＿ l:::!|:::::::::::::::::::/: :':､ ﾉ::/ Ⅵ::{: : :l|:.{
::::::::::: l:::!|::::::::::::::／: : : :.ヽ::/ ＿, ﾄ:.､:_〃:ヽ
>::::::::::l:::!|´￣,ィ:＼､: : : :〃＜.＿＿!: :〃)!: : :ﾟ:、
::::::::::: l:::!| / : : : :＼､:/': : : : : : : : : :ー-_､:,､: :':. _
:::;::::::: l:::!| !: : : : : : :.＼､: : : : : :_ ．=＝ : :)介≦ﾆ!
/ヽ:::: l:::!| ｉ: : : : : : : : : .￣￣: : : : : : : : 〃!ﾊ/ヽ
}:/ l:::!| }:::＞: : : :∠: :ｉ : : : : : : : : : : /' :ｉ|:.} }!
ノ' l:::!| r＞: : : ／ ｀ヽ:､: : : : : : : : : : : : :ｌ|:ﾊ
´ l:::!| 「: : : : ; ゜ __ ヽ:＞: : _ :ィ: : : : : l|: :|
. l:::!/ : : : :/ /::::.｀ヽ: : : : : : : : : : : l|: :|
／: : : :, ´ ,r‐く―、::::}: : : : : : : : : :〃: ﾑ
_У: : : / /.:: : : : : i: :ヽ::.、: : : : : : :{{: : :.ﾊ
/ヽ: : : :/ /: : : : : : : ＼: : : : : : : : : 〃:／: :{
＼:ヽ-｛ {: : : : : : : : : /:＞- : z．:ﾉﾑｲ: :ｉ : |
/ ￣}´ V: : : : : :／′: ::::.ｰ.::::／: /: : l : ヽ
_ノ,ｨj＾U ＼: :／.::/: : : :ヽ:::／: : : : : : :!: : :.}
｀´ l::!| く⌒ヽ : : : : ／: : : : : : : : i!: : /
l::!| ‘,圭≧=－､: : : : : : : : :/j: :/
l::!| ヽ | ヽ:＿＿_:/- ｧ-=､ｫ
l::!| 、 | |ﾐﾆ＝‐= /｀ヾV/
. l::!| ヽ } !｀＝ 二/ ／, {
. l::!| } ､ ,｛ l / /＼` ゝ
!:!| ! } } , ′ {_ﾊ!!｀´
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| 『時間を止める忍者』。
|
| いかなる原理か魔術か幻覚か、あるいは異能かからくりか。
| 黄泉はこの場の全員が金縛りにあったかのように動けない中を悠々と歩く。
|
| 音すら止まった世界。響くのは黄泉の声だけ。
| これこそが若干十歳で忍者の首領に納まった超忍者。誰も動けない、そのからくりも分からない。
|
| 当たり前だ。
| そう簡単に見抜けるような忍術ではない。
|
| 更に言うなら、見抜いた程度で破れるほどちゃちな術ではない。
| 破れないからこその黄泉なのだ。
|
|「ホント、マジでなんなの？ ふざけてんの？ せっかく『四天王』になれたのよ？
| クソみたいな汚れ仕事とはオサラバして、捨て石前提の作戦もなくなって。 のはずなのに、三日天下もいいトコよ。
|
| バカみたい、バカみたい、バカみたい……バッカみたい」
|
| グチグチと独り言を呟きながら、黄泉はやらない夫とアリカの間に割って入る。
|
|「でもまあいいわ。『九鬼』も忍者もどうだっていい。帰ったら孕むまで子種を注いでもらう約束だから。
| キル夫がせっかくその気になったんだから。他の全部は、些事よ些事」
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{//////////////ﾊ ,
{///////////////｝} , -─- ､
. '//////////////∧', /::/::/::::::ﾊ:ヽ
V/////////////∧', /::/{:/｣Ｌﾊ}:}:::}
Ｖ/////////////∧', /.:::l::|｣ , 从|
＼////////////,ハ', //⌒ヾ､ ⊃ィ::｣ よっこいしょ。
. ヽ'///////////ハ', //: : : :}ﾊ 厂:ﾘ
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| 黄泉がやらない夫の横っ面を蹴り飛ばす。
| 必殺の反撃はアリカの首を腹を胸を貫かず。
|
| 時間が動き出す。アリカの寸止めが大気の壁を殴り爆音が響き突風が吹き荒れる。
|
|「何じゃお主！！」「聞いてなかったのかお？」
|「聞こえてたけど、なんで！！？「『血族』『四天王』！？」
|「いや元って……」「何で、あたしを助けて」
|
| 大混乱の大広間。殺し合いの雰囲気はもうなくなっていた。
| その真ん中で、注目の的の黄泉は……いない。
|
| 気がつくと、通路の入り口、階段のあたりに瞬間移動。
| そして、彼女が肩を貸して立ち上がらせたのは。
|
|「え？」「え？」「誰？」「何？」
|
| 困惑するペルソナ使いたち。
| だが、それ以上に。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, ｎ ／￣￣＼ .ｎ
/ / ｊ.´_ノ ヽ、u'l lヽ、
. /,ｲ / （○）（○） .ｌ i i i
〈 .ｒ {u （__人__） .i. } } 〉 やる夫……？
. ', ｉ. ', ｀ ⌒´ / /
i l. ,' ./
ヽ､_.ｲ、. 人 ﾉ
. ヽ 〈_ノ ﾉ
. | .／
. | . |
.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ'
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ | あ、やる夫兄い。
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ ／ ∨ 丿
iタ }〈 l丶 { _／ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
, -－- ､
, イ ＿|! ヽ
/ ,ｨﾊ ｀ヽ ヽ
{ ,ｲ_/ tヽ ｀ノ
Yｲｼ ｲ ヽ
入即さん、なんで死にそうなんですか？ ハ ｡ ! ｊ ﾊ
_{ ヽ イ リ ｊ ｌ
, ィ ´ i从|｀ヽ /ｲ ノ !
ｊ //ﾊ＼ _ >イ／ｌ !
/ ///ﾊ ヾ////ｊ |､
ｲー､ ///´~｀ｰ＜/////ﾊ!ﾊ
ノー､ ｲ// ヽ ｀ー＝ヾ! ｌ
_7 ﾊ' !/ﾊ ヽ
ｲ /_oｊ//! ｀ヽ ＼ ｀ー ｊ
/ー ヽ/ ｌ彡/ﾊ ミヽ ､ _イ
/ / ﾚﾊ/ハ / ＼ Y ｊ´
＿_
.／ノヽ＼
;／（○）（○ 一ヶ月も封印されてりゃあ、
.:| ヽ (_人_)|; 普通の人間は干からびんだお……。
:＼ |. ⌒ /;
/ く､´
;| ＼＼_
;|ミ |`ー＝っ
☆ 次回予告
たとえ誰が止めようと、やらない夫の決意は変わらない。
押し通そうとする男。
すがるヒロイン（やる夫）。
そこに現る新たな闖入者たち。
真実に至る魔女。
運命を乗り越えた巫女。
そして、もうひとり。
次回、最終幕五十九話『スーパー運命破壊マシーン』
果てに見るのは破滅か死か。
やってやれ、やってやれ！
しまらねえなあ、ホントw
はるか昔に干からびてた奴が安価の積み重ねで翠より蒼のほうが好きじゃね？ってなったの思い出した
乙
やる夫お前ｗｗｗｗお前･･･
ヒロイン見参
そして生きておったかジャギぃ
やる夫さん、どうやって封印から抜け出したん？
タイミング的にプッチが死んでやる夫を認識できるようになった、とか？
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ どっこいしょっと。
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | ……で、喧嘩の原因はなんだお？
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 立ってられないので壁によりかかり、座り込んだやる夫が尋ねた。
| 緊迫感は完全に失われた。困惑するペルソナ使いたち。
|
|「聞いてよやる夫兄い、やらない夫さんたらヒドイんだよ！」
|「ひでーのはいつものこっだお。何が酷い？」
|
| 時間を気にして苛立つ天竜、床に座り込み、不思議そうにやる夫を見るシグ。
|
|「世界を救うために自分が死ぬ気なの！ 何とか言ってあげてよ！」
|「翠星石はどーすんだお？」
|
| プンプンと効果音を立ててアリカがやらない夫を指差す。
| やらない夫あるあるだ。やる夫は全く動じない。
|
|「翠星石さんは生贄にされそうなのに、助けにも行かないみたい」
|「そりゃ、やらない夫が死ねば助かるからじゃねーのかお？」
|
| 少し離れた場所でタバコに火を付け時間をつぶす四ツ目。
| 一方、やらない夫への理解度が高すぎて気持ち悪いと、ペルソナ使いたちがドン引き。
|
|「そうだ。そもそも翠星石は植物状態らしいだろ」
|「お前が死ねば、目覚めさせるし生贄にもされないって？ 見積もりが甘い、試算し直す事を勧めるお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ 他に道がない。
| ,.<))／´二⊃
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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| 言い捨てるやらない夫。
| やる夫は自分を治療中のニャンコ先生を無造作に掴んだ。
|
|「なんだおアレ」
|「え」「ちょっと」
|
| デブネコの顔面を力任せに引っ張るやる夫。
| とは言え衰弱したその手では思うように伸ばせない。
|
|「あ？ てめーやらない夫監視装置じゃなかったのかお？ なんで殺してねーんだお？？」
|「え？」「え？」「や、やる夫兄い……？」
|
| 突然の暴言に理解を示すのは当のやらない夫ただ一人。
| アリカですら当惑、ニャンコ先生本人は瞳孔を広げる。
|
|「……アレは、やらない夫ではないと？」
|「あそこまで思い詰める前に道を示してやれってんだお。ありゃ進んでんじゃねーお」
|
| うつむいたやらない夫の表情に痛みが走る。それが傷ついた子供みたいに見えて、天竜はまごついた。
| だが、アリカがごく自然にやらない夫の背中を叩く。
|
| 感謝を込めて苦笑するやらない夫。その関係に、なぜか天竜は痛みを覚えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼ ありゃ、倒れてないだけ。
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | ホントは立ってらんねー位しんどいのに
＼ ｀ ⌒´ ,／ やせ我慢してるだけだお。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「それは……」
|「言い訳はいい、やらない夫。やる夫が寝てる間に何があった？ 三行で」
|
| あまりにも辛辣なやる夫の物言い。
| そろそろ我慢ができなくなったのかペルソナ使いの一人が口を開く。
|
|「後からしゃしゃり出てきてその言い草はなんだ？ あんたは何様だ？」
|「そーだそーだ！」「…………」
|
| 不満たらたらの夕日と、彼の後ろからひめ。
| やる夫を知るはやぶさは顎に手を当て考え込む。
|
|「品川大聖堂の夢のせいで翠星石は昏倒、オレは事件の犯人扱いで指名手配。
| 逃げ回りながら生き残る道を模索、弥勒菩薩の末法少女になることにする。
| 品川大聖堂の夢を模倣することで魔力と信仰を収集することにした」
|
| ジャンヌも『カトルカール』も鹿島もモーリアンビルもすっ飛ばし、三行でまとめるやらない夫。
| 要点だけをまとめた完璧な三行。これにはやる夫もニッコリ。
|
|「端折り過ぎて訳わかんねーお……すまんがkwsk」
|「それより真紅さんの憶測が完璧すぎて困るんですけどー」
|
| 少しだけ距離を置いていた黄泉がため息をつく。
| ちなみに、夕日の文句は華麗にスルー。やらない夫との関係はやる夫が誰より圧倒的に長い。
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|:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.」.:.: ﾉ{ :.:.」 ﾉ |.:lｨiで丁了l.::.:.:|.:.:.:ﾄ､!
|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : :.:.:.:.:│ｨ'で「う`ヽ、 ﾄ::.)ﾟ} ﾉ│:.:.:|.:.:.:|
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|:.:.:.:.:.:.:.:.|: : ...:.:.:.:.ト.| --一' ′ ／.:.{ 『血族』と『教会』の行動に補足があったら私からするから。
|:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.| ヽ､ ／..:.:.:.:i
|:.:.:.:.:.:.:.:.| .::l.:.:.:.:.: | ＞ ､ イ....: :.:.:.:.|
ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:l:.l .:.:.:.| Τ´.:.:|.:.:.l.:.:.:.:.|
ｌ:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:| | .:.:.:.| ∧.:.:.:.:l.:.:.:|.:.:.:.:|
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/.:.:.:.:. ／ ＼| |.:.:.:.:.| { ＼.:.:.:.:|
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|「そーいや黄泉さんはどういう立場なの？」
|
| この場にある勢力は、やらない夫の仲間と、止める立場のアリカ。そして突然降って湧いたやる夫の三つ。
| では黄泉は？ やらない夫を殺しに来た訳ではなく、止めに来たようでもない。
|
|「仲間と合流するまでは様子見」
|
| その様子見で、何もかもを失う運命が黄泉にはあった。もう無いが。
|
|「やる夫、品川大聖堂の夢は知ってるか？」
|「見てたお、つーか、介入したお」
|
| 全員の顔が驚きに歪む。
| ここにいる面子で品川大聖堂の夢を詳しく見たのはアリカとひめ、窓付きくらいなのだ。
|
|「やらない夫さんが来なくて？」「《ブギーポップ》が介入して……」
|「翠星石さんが何かを呼ぶ前に夢が崩れたよね」
|
| そう、人間性を投げ捨ててでもアマテラスに頼ろうとした翠星石。
| だがその瞬間に品川大聖堂の夢は唐突に途切れたのだ。
|
|「それ、崩したのがやる夫だお。呼ばれる前に潰したつもりだったけど」
|
| 結局やる夫しか呼べなかった翠星石が、昏睡状態に陥るなんて想定の外だ。
| 崩し方が悪かったのか、すでにアマテラスにリンクしてしまっていたのか。
|
| やる夫では想像もつかない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ 品川大聖堂の夢はともかく、
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ 大量殺人の犯人にされたのが
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{ 俺とミストとやらない夫だ。
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
<´o ' , ' , ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
｀）0 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
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|「個別に逃げる中で、色々あった」
|「いろいろ」
|「色々だ」
|
| 『教会』の殺し屋に狙われたり、自衛隊のハニトラにかけられたり、
| 『異端審問官』に逆恨みされたり、ケンシロウに殺されかけたり。
|
|「ちなみに『夢』の直前に師父から『エクスカリバー』を貰って正式なセイバーになっただろ」
|「あのクソ親父……いや、余計とは言い切れないかお」
|
| 『エクスカリバー』のお陰でやらない夫が生き残れたのならば。
| しかし長年の確執もある、やる夫は素直に感謝できなかった。
|
|「ケンシロウさんに殺されかけたり、死んだと思ってた石田と龍田が生きてたりしたぞ」
|
|「え、石田さん助からなかったのかお……」
|「いや、元気にしてるだろ」
|
| やる夫が『血族』と袂を分かったのは『結社』撃滅作戦。
| 死にかけの石田が運び込まれて来た所である。
|
|「自衛隊のスパイを丸め込んだり、『教会』の殺し屋を撃退した。
| 『血族』からは冥さんと天竜たちが刺客として送られてきてなあ」
|
| やる夫よりもアリカに敵愾心を向ける天竜と、座り込んだシグ。
| やる夫は深く尋ねない。冥と、ロビンはどうした？
|
|「天竜を人質にする作戦を取った冥さんは殺した。ロビンは『血族』だ」
|「今は『教会』のシロッコに協力してるわよ」
|
| 黄泉が口を挟む、四ツ目が大きく舌打ち。
| ペルソナ使いたちもそれぞれ不愉快に顔をしかめ、天竜とシグは呆然。
|
|「誰だお？」
|「『歌舞伎町事件』で手下が全滅した『武僧』だよ」
|「夢宮、いい紹介だ」
|
| シロッコが大嫌いな四ツ目がサムズアップ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
／￣￣＼
／ _ノ ヽ､.＼
| （●）（●） |
| （__人／,〉.| 四ツ目さんともミストさんとも因縁があって、
{ ´フ´ ./._ } 負傷兵を洗脳サイボーグにしてる奴だ。
ヽ .／,二ニソ}
_ヽ/ ,-― ､}ﾉ
／:;:{' ノｰﾍJ:;:;ヽ
／:;:;:;:;:;| _,イ{:;::;:;:;:;l:;:;}
/:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＿/:;:;:;::;:;i:;/＼
{:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;〈:;:;:;:;:＼
ﾍ:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:＼:;／ヘ、
￣￣7:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l;:;::;ゝ、`ｰj
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l:;:;:;:;:;:＼~
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|ヾ:;:;:;／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| やらない夫の言葉からあふれる不快感に、やる夫は大体察した。
|
|「そのシロッコが、『モーリアンＣ．Ｏ．』本社ビルを襲撃した」
|「は？ ……いや、悪魔が経営してるからかお？」
|
| 狼狽を理性で抑え込むやる夫。
| 口を開くやらない夫を、黄泉が手で制した。
|
|「それもあるけど、シロッコはサイボーグ兵士の機械部品を『モーリアンＣ．Ｏ．』に発注してたのよ。
| 用済みになったから本社は処分して、技術屋は吸収するつもりよ」
|
| このあたり、流石はニンジャ。情報通である。
| シロッコの行動に不審を感じた志摩子が調べさせた結果でもあるのだが。
|
| 対してやる夫は、心ここにあらずの表情。さもありなん。
| 『モーリアンＣ．Ｏ．』の社長は水銀燈と、同じくモーリアンの分霊たちだ。
|
| そしてヴィヴィアン。やる夫にとっては親戚のおばさんのような存在……。
| 二人の、他にも何人もいる顔見知りの安否は……？
|
|「『死鳥』と経営陣に食い込んでた悪魔は全員死亡よ」
|『あぁ……すまねぇお」
|
| 目元を押さえるやる夫、死んだ。死んだか。
| やる夫が封印されている間に、何もできずに、死んでいたか。
|
| 今更、彼女らの死の夢を見ても無意味だ。
| やる夫は切り替えるように自分に強く言い聞かせた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
.,／,-､ ＼ ちなみに、
／ ﾉ:/ ﾉfヽ.. ＼ オレは現場に行ったが
| /:/ /...| | | 『武僧』のヤザンって奴に
l ﾚ ./..ノ .,''´} i ボコボコにされまくってただろ。
l ' ´ .〃 / |
ヽ. . 〈 .ﾉ 周りは戦争みたいで、
＼.,_ ._ﾉ / 隠しようがないくらい人が死んだ。
/ / ヽ
./ / |
i .／ . |
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|「ふーん、そんで？」
|「間に合っていたら、オレが強かっ……」
|「いや、違ーお。なあ黄泉さん、なんでシロッコはそんな派手にやったんだお？」
|
| 問われ、しかし黄泉は肩をすくめた。
|
|「念の為言っておくと、あんたの想像以上に派手にやったわよ。
| 『モーリアンＣ．Ｏ．』の従業員は異能、悪魔、一般人関係なく皆殺し、周辺は焦土化」
|
|「マジでなんでそんな」
|「そこら辺尻尾を掴ませない奴なのよ」
|
| モーリアンビル攻防戦の後も、シロッコは誰より上手く立ち回った。
| すべての責任を生贄となるヤーボ大佐に押し付けて、自分は火消しに専念。
|
| しかも一部の責任を認めることで大きな責任問題を回避。
| お陰で『血族』との連携も途切れていない。
|
|「すいません、シロッコはアトリームの再来……内戦の泥沼での実験や兵器の試用をしたいという話なのでは？」
|「ミストとジャジャマルの情報だな。『品川大聖堂の夢』の影響もあるだろうが」
|
| 挙手して発言する咲夜、アトリーム組には前提条件ともいえる話。
| ミストと四ツ目の私怨が混じっている可能性もあるが、米軍所属のジャジャマルのお陰で信頼性は高い。
|
|「少なくともシロッコとやらが、どーにかしないといけない相手なのは分かったお」
|
| うなずくやる夫。彼は現在の東京で『教会』勢力がどれほど気ままに暴虐を尽くしているかを知らない。
| 他の一同は、慣れすぎていてそれを指摘できない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | その後、ネットに動画バラまいた。
（__人__） | ..／} モーリアンビルのこともオレのせいになりそうだったからな。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ 『犯行声明』って奴だ。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「ななな、なにをしおるか！！」
|
| 無言で耳を引っ張るやる夫に、ニャンコ先生が暴れて抗議。
|
|「やらない夫がキレ散らかしてんじゃねーかお。
| ブレーキ付いて無いの分かってんだから放置すんじゃねーお」
|
|「あー、確かに冷静になると……」
|「陰謀論で見えない敵を作り、悪魔関係の噂を鎮火したことを考えると最善手だったと思うけど」
|
| 思わぬ方向、黄泉からのフォロー。
| だからこそ、蒼星石はやらない夫の配信に乗ろうとした。
|
| 悪魔や異能を隠匿し、平和を維持する方向を模索していた。
| それを拒絶したのは、やらない夫だ。
|
|「蒼星石から協力要請が来たのを断ったか、今思うと正解だが間違ってたかもしれないだろ」
|「お？」
|
|「オレの演説を利用して、世界的陰謀をどうこうみたいな話だ。『血族』に『やる夫』がいるっつうから厄すぎて拒否した」
|
| 顎をしゃくり、額に冷や汗を浮かべるやらない夫。
|
|「アリカにも叱られたが……」
|「いや、怒るよ。だって危険だから距離を置くなんて『やらない夫さんじゃない』もん！」
|
| 冷や汗を拭うやらない夫とニャンコ先生。
| 二人揃って、冷静さを欠いていた。
|
|「『血族』とも事を構えて、蒼星石を救出しないとな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ . . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
/ . . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
,′. : : : : : : : : : : : 〃: : : : : : : : : : : : : : : : : : ',
. ′. : : : : : : : i: : : : ″ ﾘ| : : : { : : :│ｉ : : : : : : '
. ｉ : : : : : : l : : :|: : : : | | |i | : : : | : : : | :i : : : : : : : i
ｉ : : : : : :│| : |: : : : | | |i | : : :│;. : :| :| : : : : : ! : !
! : : : : : .::|'Ｔ j｢¨ : :│l ｉｉ | : : : ｢:|: : :|`l : : : : : | : |
,′ﾞ| : : : .::|_j厶..,｣_､┘{ ｉ;└ｰ _｣..L..,｣_、: : : : : | : |
. /: ｲ│: : : :小 ん心` ´仏ｨﾊ 丿 : : : :│: |
ノ ﾉ:│: : : : { ,ゞﾋ:::::ﾘ ゞ::::;ﾉ､ |: : : : : | :│ いやいや、それには及ばない。
く__ﾉ| : .; : : ', ´￣ ￣｀ ,′ : : : | :│ ここで謝れば良い。
| : :| : : '､ i / : ,ﾞ : : | :│
| : :| : : ﾄ､〉 ｀ 厶 ｲ: : : : | :│
￣| : : i ﾍ、 r‐- -‐‐ｧ ｲ｣ : : : : | :│
| : : i: : |丶、 `ｰ--‐' ／│| : : : : | :│
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. イ : : : : | | ', ｀ ｰ ´ .| ! : : : :│丶、
, イ{ |: : : : : | | } ,ﾘ : :│: :| `ﾄ､
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{ ::::::: ', '､ 卜、 . -─/ . /.::::::.ヽ
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} ::::::::ヽ:::::..＼ ＼ Ｖ / / ､ ／／..:::::/.::::::::::::::::{
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|「え？」「え？」「え？」
|
| いつの間にか、黄泉が二人になっていた。
| 片方の黄泉が、仰々しくオジギする。
|
|「ドーモ、皆さん。『ロストスキル』です」
|
| アイサツからコンマ三秒。彼女、いや彼は唯一の侵入口である螺旋階段を指さした。
| 巨漢の黒子とコートの女が降りてきていた。
|
| 黒子は白塗りで烏帽子を冠った筋肉質の老人をおんぶしており、女はどこか落ち着かない様子であった。
|
|「ンだよ、夢宮までいるじゃねーか」
|「アリカ……無事だったんだ、やらない夫の所に？」
|
| 黒子、ジャギが背中の麻呂を下ろす。
| 対して蒼星石は胸をなでおろしていた。目元を拭う。涙腺が緩くなったか？
|
|「ううん、エダちゃん所にお世話になってた」
|「蒼星石昨日はすまん。意地になってた」
|
| 割り込むようにやらない夫が頭を下げる。蒼星石は瞬きし、苦笑して手を振った。
|
|「いや、あれがなきゃ僕はいつまでもニャルラトホテプをやる夫だと思いこんでたし」
|「麻呂も誰がニャルラトホテプか分からずに狂人の振りが振りではなくなる所だったでおじゃる」
|
| からからと笑う麻呂を、それに付き合わされて死んだふりをしていたジャギが小突く。
|
|「ニャルはやる夫の顔と名前と立場を概念的に奪ってたみたいでさ。疑問を挟んで顔を剥がしたんだけど」
|「あ、だからやる夫が戻ってこれたのかお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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r─────-､､
| .:.:.::::.`ヽ,
|_＿＿＿.:.::.:.:.::::::::::::::/
＿ﾉ__＿＿＿ ￣｀`丶､/
r'´ _ ＿_ _ ￣｀`丶〈_
ヽ,． .:.:.:.::::::::::::::::､::::ー- ､ ＼
/.:,.::::::ﾊ:::::ヽ::.ヽ::.＼.::ヽ:::.＼／
/::/.::::::|:::ﾄ､:::::仁ﾆーミ:::|:::::::::|
|.::|.:.::|_ﾉノ´`ヽ｀ ◯ `1::|::::::l::|
|.::|:::::K´ ◯ |//::/:/
ヽﾄ､::::ﾍ /::/:/
｀`1:ヘ r─っ , ｲ::/,ｲ ………………え？
|/|.:::＞r‐r＜ |/ｲ´
|.::/^l/l:/＿／⌒ヽ
|/ , ィ´y'´ ,r=ヘ
// /介1 ,fj.:.:.:.:::.＼
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|「久しぶりだお」
|「え？ え？ 偽物？」
|
| 見るも哀れなほどに狼狽する蒼星石。
| 先程、やる夫の偽物に乱暴されかけていたのだ。混乱も詮無きこと。
|
|「確かめるかお？」
|「…………1981年の映画『殺人猿ターザン』の主演女優は」
|「ボー・デレク」
|「『今夜はビート・イット』のパロディ『今夜はイート・イット』を歌ったのは」
|「アル・ヤンコビック」
|「どうしよう……本物だ」
|
| ボロボロと大粒の涙を流しながら呟く蒼星石、その背中をジャギが優しく押す。
| 蒼星石は弾かれたように駆け寄り、やる夫を強く抱きしめた。やる夫の柔らかさ、やる夫の匂い。
|
| ああ、今までどうして騙されていたのだろう。
| 蒼星石の全身の細胞が狂おしいほどに歓喜する、記憶がどれだけ改竄されても間違いない。これがやる夫だ。
|
|「え、えええ……どうしたんだおっ」
|
| 抱き返して良いものかとオタオタするやる夫。蒼星石はお構いなしに首ったけにしがみつく。
|
|「やけに感動的じゃねーか、俺が生きてた時はそこまでじゃ無かった癖によ」
|「やる夫がニャルラトホテプで麻呂が正気だったんだ。君の生存はオマケだよ」
|
| 手の甲で涙を拭きながら憎まれ口を叩く蒼星石。
| 鼻をすすりながら立ち上がる。
|
|「で、今の状況は？」
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／================ ＼-----==----- ヽ
)====================＼---- ==----（(
(============ ￣￣ " ＜---==----))
))======== ／ ＼--==--((v/
(======== | | )--==--))V/
）=======l ｌ | | | | ｌ (---==-(( V/
(＿======l | | | | | | | )--==--) l 神楽の電話で来たけれど。
ﾉ=====l | | | | | | |(-- ==-（ | 本当にみんないるし、
´￣)==八 ｌ＿ｌ＿ｌ ｌ＿ｌ＿ｌ | )-(薔))ﾉ ｜ しかもなんでこんな和んでるの？
了⌒ｌ ヽl r芹ﾐ 、ノﾉﾉr芹ﾐｌ ﾉ ﾉ==/｜ |
| | l ∧ "りﾉ りﾉ l l==/ | | ここ不法侵入中ではないの？
| | l /∧ ' l l=/ .| |
| | | | ＿ － ｲ::l l/ | |
| | Ｌ |{:::::::::≧ ＿ ≦::::::ﾉ二ｌ､＿ | |
|(￣￣ )):::(:::::((薔)):::))´_＿＿_ ノ | |
| 了､≦(::::::::≧ ===≦::.＼≦ ＼ | |
| ((＿_／))::::／.::l==ﾉ､:::)(￣￣ﾉ--丶| l
l ﾉ----(（／ .::::::|ﾚl::::::.＼≧之ノ----＼､ |
＿／-----／.:::::::::::/- |::::::::::::.＼----------＼
（ ---＼--／.::::::::::::::/--｜::::::::::::::::.＼-----／---＼
） ----)-＼::::::::::: /---｜:::::::::∧::::::: ))---------- )
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「おー、不人気おひさ。やる夫なんて居心地良すぎてここに二ヶ月も居座ってたお」
|「自虐すんな」
|
| 品川大聖堂に侵入しあぐねて正面突破を相談していた不人気とやんねえ香、ロランの超美形コンビ＋１の参戦である。
|
|「『かくかくシカジカまるまるウマウマ』って、ばっちゃが言ってた！
| 所でやる夫兄い、まるまるって美味しいの？」
|「そのウマウマじゃねーし、合流した途端ＩＱ下がんのやめるお」
|
| ここに集まったメンバー。
| やる夫、やらない夫、蒼星石、アリカの四人。
|
| 『血族』から麻呂とジャギ、ロストスキルと黄泉。
| やらない夫の仲間として天竜とシグ。四ツ目。
|
| そしてペルソナ使いが六人。球磨川、雨宮、咲夜、ひめ、窓付き、はやぶさ。
| 不人気とロラン、やんねえ香。
|
| ここに居ない仲間。
| ミストとアトリーム亡命者。
| 上条当麻と元『破滅願望者』。
| やらない子と愉快な仲間。
| そしてダル。オマケの鹿島。
|
| 『血族』内部は微妙なところ、ケンシロウ、ルカ、霊夢あたりは手伝ってくれるかもしれない。
| 『教会』からはエダもヨランダも、アンデルセンやジェリド、カクリコンは中立だろう。
|
| 刹那は頼めば来るだろう。 は未だ行方不明。
| 『糖分同盟』はやる気満々。『邪悪帝国』と華琳、星は二ヶ月の放置でどうしているのやら。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′ 我々の目的は？
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 蒼星石の問い。
|
|「東京を滅びから守る」
|「あと戦争したい人たちを殴ってでも止める」
|「ニャルラトホテプをぶち転がすでおじゃる」
|
| 順にやらない夫、アリカ、麻呂の返答。
| やる夫が黄泉を見る。ロストスキルがジャギと行動しているのはまだ分かる。
|
| だがアンタは？
|
|「あたしはキル夫が好き！」
|
| 臆面もなく言い放つ、そっくり同じ姿のロストスキルが油が切れたようにギクシャクする。
|
|「好きな人のためよ。だから今はあたしが『キル＝オールの両腕』」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ . : : : : : : : : : : : : : :{ : : : ｌ :│: : : : : : : : : : :ヽ: : : : : ヽ
/. : : : : : : : : :/{ : { : : : i : : : | :│: : : : : : : : : : : : ﾞ, : : : : : ',
. ′: /: : : :丨 ,' ; : ', : : ｉﾞ. : ::| :│ : | : : : : : : : : : : ' : : : : : .'
l : : ｉ : : :/:│:| ': : ﾞ. : : :い- | ::Ｔ :_｣ : : : : : : : : : : .| : : : : : |
. | : : | : : |l : | :| ﾞ､ : ヽ: ｣ l _｣ｺ孑ｧ | : : : : : : : : : : :| : : : : : |
. | : :│: :｣| -| :| ＼／／ﾌ｢;;心]ﾉ | : : : : : : : : : : :| : : : : : |
. | } :│ : |l:_｣L｣ ゞ:::｡ノ、 | : : : : : : : : : : :| : : : : : |
ｌ:ﾊ └ﾞ‐弋´ﾄrう. ¨´ | : : : : : : : : : : :| : : : : : | ちなみに早く終わらせて
. ﾘ l : : : ∧ 弋;ン , | : : : : : : : : : : :l::. : : : : | キル夫と子作り楽しみたいから、
. 〃 ｌ:ﾊ : : : , ′ ′ ﾘ :│: : : : : : : .::::. : : : : | サクサク進めて。
}| ｌ: : : ' 丶 / :│: : : : : : .:::::::: : : : : |
ﾘ |: : : :ﾊ _,. -‐=j 厶 -┤: : : : .: .:::::::::. : : : : |
|: : : | : 、 ∨ ,′ | : : : : : .:::::::::::. : : : : |
|: : : |: : :＼ ヽ__,ノ ｲ : : : : .::::::::::::::. : : : : l
L -┤: : : : 丶、 ` ／ | : : : : |:::::::::::::::: : : .::. l
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| : : : : : ｉ::::ｌ:::::: | ｌ : .:::/ .|::::::::::::::::::.:.::::::.. l
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|「えぇ……」
|「まあ、まずはリーダーを決めようぜ」
|
| 頬を染める黄泉を無視してジャギが話を進める。
| 鉄仮面の巨漢は自分の鋼のような胸板を親指で叩く。
|
|「テメェら、俺の名を言ってみろ」
|「ジャギ」「北斗ジャギ」「ジャギさん」
|「違ェ！！」
|
| 唾を飛ばして怒り狂うジャギ。
|
|「『北斗の屑星』！ 『血族の裏切り者』！ 『のけもの』！
| 俺様以上に、リーダーに相応しくない奴ァ他にいるかァッ！？」
|
|「ジャギさんなら任せられるお」「常識的に考えて」「問題なし」|
|「落ち着けテメェら！」
|
| とは言え、ジャギがリーダーというのは利点ばかりではない。
|
|「僕は反対だ。嬉々として前線に立ち、半端な実力故に怪我をしそうな奴にリーダーは任せられない。
| ロストスキル＝サンは体調に不安があり、巡音ルカも不在だ」
|
| まともに反論する蒼星石。もちろん自分でやる気はない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／￣￣＼
／ _ノ .ヽ、＼
| （●）（●） |
. | （__人__） .| オレもパス。
| ｀ ⌒´ ﾉ
. r─一'´￣`＜ヽ }
. `ー‐ｧ , ) , -'~⌒ヽ、
ノ {. ,ﾍ ,l. ゝ、_ .'ヽ).
. ／, ､ _ /. | . ', . .. .ヽ、
（／ / // / / ...| ...|＼..＼＼ ＼_)
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|「責任感で暴走しちまう奴は最初から問題外だお」
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| 辛辣なやる夫に、そんなやらない夫に付いてきた天竜やはやぶさが不満顔。
|
|「やる夫兄いは？」
|「やる夫はジャギ、蒼星石、麻呂と並ぶ参謀チームだお」
|
| アリカは頭を捻った。
| そうすると、誰になる？
|
|「四ツ目さんかミストさん？」
|「ミストはやめとけ、それに俺は私怨で動いてるただのステークホルダーだ」
|
| 苦笑いをする四ツ目、本人は単独行動を好む一匹狼のつもりらしいが、
| 実は気配りできる緩衝材タイプなのをアリカは知っていた。
|
| 麻呂も、興味なさそうに大あくび。
| そういえば、さっき参謀だって言われてた。
|
|「え？ 誰もいないよ？」
|「そうかな？ ここに至るまで道を誤らずに」「命懸けで仲間の過ちを止めようとして」
|
|「不屈の意志と覚悟で、最後まで対話を諦めず」「誰よりも公平な視線で物事を俯瞰できて」
|「正しさと自分を盲信せずに、仲間を頼る」「最高のリーダーがいるじゃねェか」
|
| 蒼星石、黄泉、やらない夫、不人気、麻呂、ジャギの言葉。アリカは小首を傾げた。
|
|「異論なし」「同じく」「あー。俺も」「ぼくも」
|
| 四ツ目が、ロストスキルが。天竜とシグまで諸手を挙げて賛成。
|
|「じゃあ、頼んだおアリカ。お前ならできる」
|「………………………へ？」
|
| そういう事になった。
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☆ 次回予告！
救いとは奈落を見る崖なり、死のかげの谷なり。
行く先には墓の勝利が待ち受ける。
救いという名の愚か者よ！
おまえはその名の為に
病を担ぎ、痛みを負い、果てぬあざけりを受ける。
怖れるか、患いを？
怖れるか、辱めを？
救いという名の愚か者よ！
おまえはその名の為に
友の背きに打たれ、幾度も否まれ、暗い敗北に包まれるであろう。
怖れるか、欺きを？
怖れるか、災いを？
人ならば恐れようとも、だが神なれば恐るるに足らず。
次回、最終幕六十話『人ならざる神ならばこその』
果てに見るのは破滅か死か。
次回は弥勒菩薩を降ろすからです。
あ、マドカ菩薩様降ろすの？
いややらない夫が暴走してないなら降ろして問題ないのか
久しぶりにやる夫見た
運命破壊マシーンモードは舞台裏で概念状態になってる時しか流石に不可能か
キャラクターとしての行動でそれをやろうにも、やるための下位の化身達はもうみんないなくなってしまったしな
ニャルのせいだったか、恐るべし
このゆるい空気がずいぶん久々な感じ
/ﾆヽ
r‐┴v'⌒ヽ、 _ ＿＿＿ __
,ゝ=彳:.:.:.:.;ィﾆ孑'´:.:._:_:_:_:_:.:.:.:.:.:.:｀丶､
/// （:.:.r=くﾆ∠:.:.:_:_:_:_.:.:.:.:rﾍ:_/＾ー'⌒ヽ
{ ﾚ1l|{_:.:{廻jｿ:.:-‐rﾍ:_ﾉ冫ｰ＾ヽ、 丿
_＿ ／j | |ｌ (_|三l :.:rケメ､//l ｌ| !｀Ｙ! 「
, '´￣, -‐ ／!八 l三厂ハ 朮Ｙヽｌ 八 、｀ヽ、 r′ 哀れなるかな。
〈 （ ∠二￣ _／厂:ヽ }ﾆl ,ｲ ｜｀´ ﾉ川ハ ｀ヽハ,ノ
｀ヽ、 〈￣￣,..:'´ .:.:.:.:〈ヲ//| ノ､ _ ぶj乂リ｝j从ノ
｛:.:ヽ ｀r＜_:_:.:.:.:.r;==彳ﾆ廴 _｀_ .ィ;‐ｭ ｀＜＿｀丶､､ ＿
〉:.:ﾉ 厶-‐ﾍヽ:〈└ -ﾍ、〈) lr‐く 乍}_＿二￣ミヽ､)）_＿￣ ｀丶、
（／/⌒Ｙ:.:.:.:.:} }:.:｀￣｀ヽＹ::┘:.:.:｀Ｙ-‐勹^ヽこ二ｰ-く ￣∧｀ヽ ヽ＼
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ヽ 乂 _:_:.:!:.:.:.:._＿＿_＼.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.､.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.Y^ヽ、 ＼ rﾍ 丶
ﾊー:-ﾆ_￣ -―‐-､｀丶､:.:.:.厶-―- ､:.:.:.:.ｌ:.:.:.:.:.:.∠-‐う::.::.: | ｰく＿_ 丶 ヽ ＼ ＼
（ ヽ､_:_:_:｀￣＞'´￣了ヽ ∨⌒じ廴_/ ﾝ‐'ー―个ｘ__ﾉ::.::.::_ﾉr'二二、ヽ、 ） ） ! |
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＼ ヽ!::rく｀丶､:_/:.:.:.:.:.;' ;:ィＴ丶 ﾚ'′ 冫rﾍ ノ、 ､ ＼ / ｀丶､｀丶､ ｀丶ヽ ＼ー‐ '′
＼丶 ∨ ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.{/:.ﾉ/ ,イ｀ヽ、／しﾀ、__ 〉、ヽ_r七ニ＝x｀ヽ､ハ＿〉 丶､｀ー=彳
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く !/ / ´ ￣） ／ ｝!⌒ﾊ::.::｀「ヽ､/ ｛（ l }
丶{し′ r‐' 厶ヽ ノ人ノ∧::.:::| ﾄｰ- ､ ヽ､_＿ノノ
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| 人々が見た夢。
| 備府やらない夫による救世の夢ではない。
|
| 瓦礫の山、一ヶ月前の品川大聖堂のそのままの廃墟。
| そこに佇む一人の女。
|
| 大天使 レミエルが滅びのラッパを吹き鳴らす破滅の化身としての天使なら。
| 女は天界から零れ落ちた美を形にしたかのような、優雅なる喜びと慈悲の天使。
|
|「私は、大天使 レミエル」
|
| 美しさの集合体は、その美にふさわしい名を騙る。
| 吹きすさぶ風に、黄金律を描く巻毛が揺れる。
|
| 伏せた瞳は完成されたどんな宝石よりも輝いて。
| 長い睫毛は光輝そのものよりも眩い。
|
|「哀れなるかな」
|
| 強い風の中でも、その麗しい声はどこまでも届く。
| 鳥の羽ばたきのような囁きなのに、誰にも邪魔されない。
|
| 『見る者』の心に直接響く。
|
|「過去、アブラハムは偉大なる我らが『主』に嘆願した」
|
| 創世記の中で、ソド ムとゴ モラの街は罪の見せしめに滅ぼされる。
| だがその前に、滅びの予言を受けた男が声を上げたのだ。
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: : :.)////八: : :. /////(_: : : . : : | |i| i 斗Ｆミ: :| lﾉ
...｢(//////Λ: : :. V/////. : : ＼: : 斗 : : |,从く㌃ｈ : : 乢j
.｜.≧=―っΛ: : : : :.V/(＿.: : : :., 斗r七: : ＼＼＼＼_:丿^℃(:::) |｜＼＼ この度の、少女翠星石のように。
.｜ / (//Λ厂＼ ///)＼: : ＼＼ 斗r忽＼〉'⌒ ゞ..__乂 |: : ＼＼
/ : : |l ｛ 〈_＿_,ﾉ: :＼ ＼: :＼ くｘ ℃(:::) : |: : :. ＼＼
. / . : : |l ｛. ＼ : : ＼: : ￣＼ ゞ..___乂 、 八: : :. :. :.
/ : : : : |l ｛. ＼: : :.＼.: : . ＼ /ニﾆ: : : : :. :.／〉
: : : : 八 ＼. ` : : ):: : :. :. ' ’ 二ﾆ二: : : : | /／〉
:..: : : :. :./ ＼/ ＞:: : :. : 二ﾆﾆニ|: : : : :. ﾉ' ／〉
.: : : : :./. く : : : :: ≧==ミ ､ ／ﾆﾆ〈乂_＿|＿彡' ｲ
.: : : :./. 〈＼ノ: :ﾉ: : : . 厂二二ﾆ｀ﾇ丁´ﾆ二二〉ﾆ=-- ／ ﾉ
.: : :./ 厂￣＼ ／￣〉 `く: : : : /__主主彡ﾍ厂＼ﾆニ二乂______＿彡' ／＼/⌒7
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| 『見る者』たちの中に、怒涛のように記憶が蘇る。
| 大天使レミエルの滅びの予言に、真っ向から立ち向かった一人の少女。
|
| 翠星石。
|
| 突然の破滅はおかしい。慈悲はないのか、話し合う事はできないのか。
| そう叫び、嘆願し。そして……どうなった？
|
|「アブラハムは『主』に懇願した。
| 『ソドムとゴ モラを滅ぼすために、五十人の正しい心ある者が死ぬやもしれぬ』」
|
| その五十人のために、滅びを取りやめてはくれないかと。
|
|「偉大にして慈悲深い『主』は当然応えた。
| 『正しき者が五十人あるならば、滅びは取り止めよう』」
|
| そうとも。
| 『主』の御心はどこまでも広く、慈悲は際限なく深い。
| 翠星石もそこにすがった、人ならざるが故の、無限の慈悲を。
|
|「しかしアブラハムは不安になった。よもや五十人もいないやもしれぬ」
|
| 微笑む『レミエル』。
| 大輪の薔薇が咲いた瞬間のような、目に焼き付けたことを喜ばずにいられない笑み。
|
|「アブラハムは不遜にも『主』に言った。
| 『五十人どころか四十五人しかいないやもしれませぬ』」
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:.. =―:从//人:.:.(⌒ ,' 斗‐ 「 | | iトﾐ |ﾘ:.:.:.:.:.:.:.Yヾ=≠
:.:.:.. ..:圦//{:.:.ン ／ , | | ,i ﾊ从 i| |{:.:.:.:.:.:.:.:.iゞﾄﾞ》｡ されど偉大なる我らが『主』はそれを許した。
∨:.:.＿ ..ﾉ:∧/{:（/／ 厶斗z弍_ ィi| ﾑz__ Ⅵ i| | | ､:.:.:__:.:人 iヾ》｡ 『よい、四十五人いたならば滅びは取りやめよう』
Y:.:.:. ..:.:./.:.:ﾊ{V ｨrf七亢が㍉ ルﾙｲf芯が刈 ｉ| | ﾊ| ):.:.:.:.:Y ＼ﾘ ヾ》｡
:.:.:.:.:／ ..:.:.:∨ ,, イ从 t辷必 tこ必 ﾊ| ﾊﾙ:.:.}:.:.:r⌒ﾝ ＼ ヾ》｡
. ∧:.:.:.:.:... .:.:.:.:.ィ刋 ﾘﾄ "¨ , ¨" , jⅣ:.:.:.:.:.:.兀:ﾝ(ﾊ ､} i ﾏ》｡
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入:.:.:.:.:.:. / //.≧ｰミ ＿ ｰ -‐ ｲ_{＿ ∨ ∧ V/,
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ｲ ＼ ゝ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}ト 二ﾆ=-竺=ー≦二=ー=＜_ ＼.＿__＼ ＼ ｰ=ミ〈 :.:.:.:.:＼
＜ }| ＞＼:.:.:.:.:.:.:.:.:入 ｰ=ﾆｲ二ﾆ=‐ 二二ﾆｰ ﾆ=ｰ_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ ＼ ヽ 人:.:.:.:.:.:
:.:.:.八 f―= ≧ __:.:.:.:.:个ｰ=ﾆィ 二 二ﾆ=‐ 二二ﾆ=ー _ ﾆ=ｰ_:.:.:.:.:.:.. ミ ､ 从＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.
:.:.:.:.:.:＞ [ ￣ミ:.:.:!.:.:.:.:.:.:ｌ二二 二二＼二二二二＞-=/:.:.:.:.:.:.:.:.:)i Y.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.
:.:.:.' :.:.:.:厂二ﾆ=- 二ア.;.:.:i:.:.:.:.ｌ二二ﾆ 二二_＼二二二仄ン:.:.:.:.:.:.＿ノ } :.:.:.. ＼:.:.:.:.:.:.:
:.: ／:.:.:.:え （ "⌒＞ソ.:.i!:.:.i:.:.:.:.ｌ二二ﾆ‐ 二二ﾄ:.:.＼二ン:.:.:.:.:.:厂二ﾆ=ｰｱ }:.:.:.:. ＼:.:.:.:
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| この先、このやり取りが七度に渡り繰り返される。
| 都合八度の嘆願。
|
| 誰もが薄笑いを浮かべる。当たり前だ。
|
|「その言葉を聞いても、『主』の慈愛は揺るぎない。
| 『よい、十人いたならば滅びは取りやめよう』
|
| アブラハムは安堵した。十人の正しい者があれば、『主』はその苛烈さを振るう必要はない。
| 無限の慈悲と優しさに満ちた『主』が心痛める事もあるまい、と」
|
| 立ち止まる女。
| 見上げる夜空、北斗七星に背を向けて、遠く南の地平線。
|
|「そしてソドムとゴ モラの街は滅びた」
|
| 薄笑いを浮かべた『見る者』たちが二つに分かれる。
|
| 落語じみた状況からの破滅に驚くものたちと。
| 結論を知った上の茶番に嗤うものども。
|
|「いまは、まさにその時である。
| お前たちのアブラハム……翠星石は傲慢にも我らが偉大なる『主』に疑問を投げかけた。
|
| 限りない慈悲の限界を語った。滅びの予言に愚かしくも反論した」
|
| 『見る者』たちの中に、居住まいを正すものがいるだろうか？
| こんな夢の妄言に、何か感じ取りやしただろうか。
|
|「アブラハムにならい、この街に住む千と四百万の民の中の40%が正しきものならば。
| 滅びは取り止めになるであろう」
|
| 衝撃が走る。約半数、五百六十万人である。
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(ヽ、００ ∩
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,, -‐- ＼ | |／⌒ヽ
（ ⊂ニニ / ／⌒) ） (ヽ、００ ∩
｀ｰ――'′ し∪ （ノ ⊂ニ、ﾆ⊃ ⊂ ⊃
／￣ー―‐ 、 ,, -‐- ＼ | |／⌒ヽ 〇 〇
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:::::::::::::::/ u て;/7 /::::::::::::::::::;ｧ､､:::「ｪ ヽ::〉 __
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:::::::::::j u ､ ´_}ヽ.|::::::iｵ/u ﾆi < iヽｧ/:::::r----J .r:´二ﾆヽ
::::::::::i （二７´_.L., ､ハ 〉 _ _ﾏ/ﾝ::::r ' ;tr /;j i::/r-､r-| r一ー､
::::::::::|、 .r ' c ／､:.:.:ヽ ヽ ｰ」: : : : ii ヽu.___､/ ＿ん' ｀´ム.' |:::r―┤
:::::::::／￣ ´」ｰ／:.:.:.:.＼:.:.＼＼__j: : : : : ヽ ヽフ｀ヽ´ | | ヽ'ｰン､ _/ﾊu.'_' |
i:i i:::i:iヽi ´ !':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.',:.:i: : : : : : : :「=| : : : |: ! ７!｀:´|< ７ﾏ.ヽー'
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| 不可能な数字に、誰も彼もが不可能とい言葉を思い浮かべる。
| もしも自分が居住まいをただし、心を入れ替えたとしても。
|
| 『見るもの』たちの胸の中に、それぞれが厭う人物が浮かぶ。
| きっとあいつは。あいつも、あいつも……。
|
| そうやって理由を並べ立て、その果てに思うのは。
| 自分一人がどれほど心を入れ替えても、無駄なのではないかという絶望感。
|
| 己の非を棚上げにして、他人のせいにして勝手に諦める。
| みんなどうせと顔のない大衆に迎合するふりをして、自分が動かない言い訳にする。
|
| いわば対岸の火事、もしもここを乗り越えても、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
| そんな自分勝手な個人の集まりが、東京を滅ぼすと。
|
| 聖書の時代から繰り返し警告されてきたというのに。
|
| ああ。
|
| ヒトは、やはり。
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ヽ / / |ヽ アブラハムにならうならば、
:::::｀ヽ､ ! 丶＿ / / 10%までまからないのか？
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|「それを言うべき翠星石の姿はない。そして貴様は推参ぞ、名を名乗れ」
|
| 鋭い視線、ダイヤすら切り削る圧縮水流のように鋭利な眼差し。
| レミエルのそれを平然と受け止めて、一人の男が瓦礫の果てから現れる。
|
| えっちらおっちら歩き、乗り越え、道なき道を進み来る。
| 彼自身の人生のように。
|
|「備府やらない夫。『本当に呼んでくれたんだな』」
|
| 彼の目は虚空を、『見るもの』たちと目を合わせる。
| 大半のものは彼を忘れていただろう。彼が動画の最初に、『呼べ』と言っていたのを、今更ながらに思い出す。
|
|「なぜここにいる？」
|「あんたの言う異教徒ながら、あんたの神にものを頼んだ女は、あれから意識が戻らないらしい」
|
| 答えではない。だが、誰もがその女とは誰なのか分かる。
| 翠星石。アブラハムの代わりにレミエルに直談判したただのヒト。
|
|「オレは代理だ。あいつの代理」
|「誰がそれを認めた？」
|
| レミエルの周囲で紫電がスパーク。風が渦を巻き瓦礫が転がる。
| 身を守らず、目も閉じず、やらない夫は真っ向からそれに立ち向かう。
|
|「人々だ！！」
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| 轟雷。
|
| 伝説上の仙人、その中でも最強の破壊力を持つと言われる申公豹の雷公鞭もかくやの一撃。
| 直撃した瓦礫の山がクレーターに変わる。
|
| だが、やらない夫だけは消し飛ばない。
| 嵐のような風に晒されながらも、レミエルから目をそらさない。
|
|「オレの声を聞き、オレの動画を見て、オレに賛同する人々よ！」
|
| 嵐に負けぬように叫ぶやらない夫。
| さらなる電撃の嵐が次々にやらない夫を襲う。
|
| しかし、何事もないような顔で、やらない夫は叫び続ける。
|
|「悔い改めるなんてわかるか！！ 具体性がないことなんてできるもんか！
| だから動け！ 自分の心の中の正しさを信じろ！」
|
| 直撃。
|
|「困っている人を見捨てるな！ 身勝手に過ごしたら手遅れになるぞ！」
|
| 直撃。直撃。
|
|「自分を甘やかすな！ 人のせいにするな！ いつも通りの明日が来るなんて甘い夢だ！」
|
| 直撃。直撃。直撃。
|
|「ひとに優しくしろ！ ほんの少しだけ気を使え！ ただ口を開けて待つのは終わりだ！」
|
| さらなる電撃。
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／￣￣: : : : : : : : : . . .
／ __,ノ '⌒ヽ: : : : : : :
｜ (⌒ ) (⌒ ).i でもな、
｜ （___人__） i 正しさは誰かを叩くための
| ﾉ 剣じゃない。
__ | |
_. } } r 、 ＿＿ ∧､ : : :. .
iハi i { '､ ／. . . . . .｀ -.. _,. イﾄ､ ヽ､, ____,__ ノ
} }-､i、 ゝ ヽ ／ . : : : : : : : : : : : : : :.ヽ ＼、 ___〈: : :: : : : :. . .
.ヽ/ .ﾊ,_￣{、 ｀､ / : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ ｨ´:::.: : : : : : :
i ﾘ ) ｉ ヽ, i､、____ ／. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ,√〉:.;〈 r .ヽ＿,.
ヽ,} {-､ ﾆ-、 ヾヽ .: :｀ﾆ=-- 、＿ ／ . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .∧}::::::',} : : : : : .`､ : : : : . .
｀ -､_ ﾉ｀} } : : : : : : : : : : : : ｀ﾆ=-､＜ . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.∧:::::::', : : : : : : .ヽ : : :
｀ ＜､__ﾉﾉ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ : : : : : : : : : :＞、: : : : : : : : : : : : : : : : ∧:::::',: : : : : : : : }
｀ﾆ彡" : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＞< : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .∧:::', : : : : : : :.r
¨ｰ=ﾆ二､_ : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＞ ´ V : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :Λ::} : : : : : : :.}
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| 灰になって崩れるやらない夫。
| その顔は、苦痛に歪みながらも微笑んで。
|
|「『剣に生きる者は剣に死ぬ』んだ……」
|
| やらない夫だった灰の柱が風に吹かれて崩壊する。
| それを無感動に見つめて、レミエルは静かに唇を開く。
|
|「貴様らは己の犯してきた罪に追いつかれるだけの罪人に過ぎない。
| だが、今の男の献身をもって、最後の機会を与えよう」
|
| 南の空を見上げるレミエル。翻る巻毛の美しさ。
その視線の先にあるもの。それは。
|
|「あと二週間を猶予とする。心を入れ替え正しくあれ。
| 40%の一人となれ。正しき階梯へと至る礎となれ。
|
| 我らが偉大なる『主』の御心は無限である。
| たとえ罪深くとも、悔い改めた正しきものへは相応の態度を示すであろう」
|
| 南の空。それは、『見るもの』たちの中でも見えるものが違った。
| 半数以上には何も見えず、残りの半分は上天に浮かぶ木星に気がついた。
|
| そして、そこに至る異形の塔を見たものたちがいて。
|
| ほんの一握りだけが、その先に浮かぶ絶望を……。
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ヽl.l.l.l.l.l}∧_}人..／ィr‐r‐ヽ!|[[| _ |三三三三三三三
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| いや、誰もが見た。
|
| 一撃で地球を砂糖菓子みたいに粉々にする、絶対的破壊兵器。
|
|
|
|
| ビスケットハンマーを！
|
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／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ はい、カット。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
／ ＼
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| 「本当に良かったの？ こう見えて私、異能やら魔術やらととことん相性が悪いのだけれど」
|
| 三十分でやる夫と蒼星石が書き上げた台本を、見事に演じきった不人気が嘆息。
| 彼女の動きを背景イメージに合わせ、窓付きが夢を作り、はやぶさが夢を見せ、咲夜が東京中に生送信。
|
|「完璧だったぞ」
|
| はやぶさによって眠らされていたやらない夫がむくりと起きる。
| 自然体のやらない夫を送信するために、やらない夫の夢を利用したのだ。
|
| 時刻は未明、丁度日付けの変わる頃。
|
| 彼らが最初に打った手は、やらない夫を『末法少女』にすることではない。
| 『ビスケットハンマー』と『遊星ニビル』に対抗するための準備だ。
|
|「ゆ、夢の塔と……ハンマーの、イメージで……ペルソナ使いの、みんな、には……通じたと、思う」
|
| おどおどと、たどたどしく窓付き。
| これから二週間、窓付きは夜の度に夢世界を開く。
|
| ペルソナ使いたちに夢の塔を攻略させ、降り注ぐ破滅の一打を防ぐために。
| 彼女に相応しい隠れ家はない。マンションの自室に戻るのも危険だ。
|
| ペルソナ使いたちの家を転々とすることとなる。
| 負担は大きいが、最初に夢世界を開き混乱を起こした贖罪になるのならと、窓付き本入の覚悟は決まっていた。
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/ { ＼ ／ / /ヽ
ヽ ヽ ヾｰ 、__ _,. -‐ ' / ／ /
＼ ＼ ＼ ｀ ｰ-- 、＿＿＿,. -ｰ '" _／ .／ /
＼ ｀ヽ、 ヽ、 ,. - ' ／ /
＼ ｀ ｰ-｀_ｰ-- 、＿ ＿,.＿-ｰ '_ ,. - '´ /ヽ、
!ヽ, ￣｀ ｰ---￣-￣-─ ' "´ ／ ヽ､
| ｀ - 、 ,. ヾ、 |
| ,. - 、! ｀ - 、__ _,. -ｰ' ´ ＼＼ !
ｿ ヾ ｀ヾ ' ｰ--丶￣ヾ｀' - ､. ／ ヽヽ |
/ ﾄ ｌ ＼ ＼ ｀'ﾌ,ｨ7´7￣￣ ヽ!
/ !ヽ ￣ヾ￣ ' ─- ､＼ ＼ ｲ:ﾝ, !、ヽ '
/ / ＼ ヽｨ'〒.'.:ﾃヽ ｀ ｰ-ゝ ｀´ ｌ ヾ｀ヽ、
／ ｀ヽ／ ∧、 ＼＼ ＼:.:'''.:ﾉ ヽ / ＼ ｀
_,. r' ヽ ／‐-ヽ、 ＼＼ ｀ﾞ＼"´ ／
ヽ ! ∠ ｀ ｰ-ヾ､＼ ヾ、 r_‐',ｲ、|-､. よし、各自撤収開始だ。
ヽ t'"ヽ ＞´￣ ｀ヽ ｀ｰ＼ ヽ -- ｰ' ヾ､ﾉ ヽ、
ヽ ノ / ´ ! r ヽ ヽ-r─-- ､_.ヽ｀ｿ ＼
、 /ヽ - '"ﾉﾞ _ ,. -‐' ! | ＼ ＼戈､｀- ､ ｀ヽ､__ ＼_
ヽ '" ／ ／ ,> ヽ ! | ｀ ヾヽ､｀ヽ、 ＼ ｌ ヽ ヾ､
´ _,. -" ヽ ヽ ヽ｀ヽ、 | | >、 ＼_ﾉ !<、
／ } ヽ ヽ、ヽﾉ ! ｀7｀ヽ、 ／ -'
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| なんだかんだで品川大聖堂は敵地である。
| 今後に備えて撤収する必要があった。
|
| やらない夫たちはそれぞれの隠れ家へ。
| 黄泉とロストスキルは何食わぬ顔で『血族』本部へ帰還する。
|
| ニャルラトホテプと敵対した関係で、麻呂や蒼星石がどう扱われるのか調べる必要もあった。
|
| 不人気はロランとやんねえ香の家に匿われる。
| 『血族』も『教会』もこの紅芋タルトをノーマークだ。
|
| すぐに見つかる心配はない。カラクリが、嘘が見破られる心配は。
| ……鷹野三四次第である。
|
| アリカも普通に暴力教会に戻る予定。
|
| さて問題は、麻呂とジャギ。やる夫と蒼星石である。
| 選択肢は二つあった。
|
| 一つ、やらない夫の所に押しかけて、彼らと面通しをしておく。
| 一つ、金さえ払えばいくらでも隠れ家を用意してくれそうなエダにお願いする。
|
| 彼らの選択は？
| もちろん両方である。
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,ｘ=＝＝＝=､ ＿＿
〃 ,. -一'´ ｀＼
〃 ./ l ｀ヽ ヽr---‐､-､ じゃあ戻り次第エダちゃんと
{{. /./ / / ! | | '￣/ ﾉ /__ せっちゃんとヨランダさんに話をしとくね。
| l l | Ｎ＼ _,L. |./ ｀Y--〈
| |ｰ|､-|＼| Ｘ´ ハ |{ 「 ,ゝ- ､ 使える隠れ家の手配も頼んどくから。
__厂八_Ｎｨﾃ抃、 ｨﾁ坏, ﾊ｀Y´ ＼
厂_/´:,r‐{ ﾍ. Vｔﾘ Vtﾘ| // :｀Y ＼
:/厂 / 厂:ヽﾑ:::::::: ' ::::::ノｨく ::廴 | ＼
ﾚ' ﾚ' | ヽ、 ｰ‐' ／ :| | ＼ | ＼
. /l￣／⌒＼￣! l￣ ≧ｰ-- '´ﾑ、ﾉ 厂__/￣｀ヽ :＼ / ヽ
ﾚ' |＼ ヽ ／{ ＼_／ }＼＿|/ ／jー-}＿__ 〈 ｉ
/| |: ＼ /7´ |＼,.ｲ ﾄ､／| ! ! ／ ／ ／ l ＼ |
ﾚ' / f ｆ 丶人ﾞｰ'人_ノ | |´ ｀７ | ＼. |
/| { ー― | | ∧ {__〈 〉__} ∧ l｜￣￣/ __/
ﾚ' ／＼___ | | 廴＼ V ／ _」 ! ! r一′ ＿＿,.ィ ´
/／ 厂 ｜! ｀'J _」L_ し'´ | | ￣}_,. -‐ ´
／ 〈 | | ｀l「 :| | /
/ ／⌒丶ﾊ.____ Y､ ＼ | | 丁
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|「やっぱりやる夫も付いて行くかお？」
|「そうして」
|
| 蒼星石、ジャギ、麻呂はやらない夫の隠れ家に。
| やる夫はアリカと暴力教会に行くことになった。
|
| ……のであるが。
|
|「……おい、四ツ目よォ」
|
| いざ移動の段階になって殿を詰めていた四ツ目の動きが鈍い。
| 気がそぞろというか、ぼんやりする姿など普段では見られないのに。
|
| はっと気づいて顔を上げ、震える手でタバコをくわえられず、取り落とした。
|
|「……薬が切れてどれくらいだい？」
|「気にするな、どうせ長く保たん」
|
| 蒼星石とジャギがよってたかって身体検査。
| やらない夫たちの中では、誰一人知らなかった事実。
|
| 四ツ目もミストも、『血族』を離れては長く生きられない。
|
|「……それは、その、実験体って奴だからか？」
|「そうだ。言ってなかったか？」
|
| いかつい顔は青ざめ、大義そうに落ちたタバコを拾う。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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__,,__ ,
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ﾞi '}
,{::::::::......:::::::ｌ1 『結社』の連中にあまり上品じゃない悪魔を混ぜられてな。
ｿ,,ィーｒ-､/
ｒ'､ '､ ; ,' 〉
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| タバコを取り上げる蒼星石から、目にも留まらぬ速さで取り返す。
| 悪魔人間の超感覚と強化身体。
|
|「二ヶ月前までは志摩子に見てもらっていたが、その頃からガタがあった。
| なに、シロッコを殺すまでは意地でも動くさ」
|
| タバコに火を点ける、紫煙を吸い込む。
| 内蔵とかそういう問題ではない、蒼星石もジャギも止められない。
|
|「医者か、鷹野さんに見せてもなんとかならないのか？」
|
| 食い下がるやらない夫。
| 当の四ツ目が嗤って首を振る。
|
|「報いだよ、備府。俺は貴様らみたいに真っ当じゃない。顔も知らない人間を山程殺してはした金を貰う人種だ。
| 『正しいもの』とやらの列にゃ下手をしても並べん。こちらから願い下げだ」
|
| 悪党には悪党の矜持があるのだと、四ツ目は胸を張る。
|
|「貴様らを利用してレヴリアスを取り戻す。ついでにシロッコにも報いを与えられりゃあ万々歳だ」
|
| 順序について、指摘しない程度の慎みが彼らにもあった。
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:.:.:|:.:/ ヽ:.:.ﾄ､::.:.:.:.:.:! ｀丶::.:.＼ ｀ヽ::.:.:.:.:.:.:.lヽ:.:.:.:.:.:
:.:.|/ ヽ:.l ヽ::.:.:.:.l ｀ヽ:＼ ＼::.:.:.:.:l ﾊ:.:.:.:.:
トﾍﾄ ＼ ＼:.:ヽ ｀ ＼ ＼:.:.:|j::::!:.:.:.:
l ﾄｨﾍ￣ ｀ ＝､- ､ ＼:ヽ , z‐ﾃ￣ ヽ|ｲ::|:.:.:.:
ヽ´小 ＿.≧ヽ::＼ 丶＼ ／;∠-＿＿ j１:|.:.:.:/
. ＼ヽ. l{ 丁7::ﾃ.ミーヽ _ ィZイ,.イ::ｧ-ｲ ﾘ l::l.:.:/ あたしは、その気持ちが
ｰ､ 丶ヽ辷ソ ヽ /´ヽ:辷ノノ (ｱj:.:ﾊヽ 「正しいもの』だと思うよ。
,ｨﾊ ￣￣ ￣￣ //／ !}
ィ ７´/ |. ヽ 〈| ｲイｰ- _ ﾘ
' i ! | ＼ ／ / | | ,ｲ｀
| ! l 丶､ -‐ __‐- , イ / ! | |
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|「…………クソくらえ」
|
| 四ツ目が、ジャギと蒼星石を振り払った。目つきも足取りもしっかりしている。
| アリカは先程の戦闘で、精彩に欠けると感じていた。
|
| コンビネーションのせいではないかと思っていたが、そうではなかったのだ。
|
| 正しさ、ヒーロー、正義、善き行い。
| アリカは、それが何なのか明言できない。
|
| だから、分からないなら分からないなりの示し方をするしかない。
|
| 彼女は、特定の神を信じている訳ではない。
| 多くの信仰者のように『神が見守っているから』を理由に自分を律してはいない。
|
| だがアリカには、他に類を見ないほど無敵の『信仰の盾』があった。
| それをなんと呼ぶか、彼女自身も理解していた。
|
| うまく言葉にはできないけれど。
| ばっちゃに胸を張れる、自慢の孫で居たいなとか、そういう気持ち。
|
| そのアリカの気持ちに照らし合わせれば。
| 残されたあまり長くない時間を友達のために使いたいという考え方は、正しいものでしかあり得なかった。
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☆ 次回予告！
明かりの消えた真夜中の街。
舗道に軽い音を立て、ひとりで君はまだ踊ってる。
夢の終わりを信じないまま。
数々の滅びの運命。
解きほぐせない、絡まったまま。だったはずなのに。
お前の時間は終わったよ。
お前の望みは叶わないよ。
どんなに寂しくとも。
暗がりで足がすくんでも。
深い夜の闇の底で。
夢の終わりに絶望なさい。
次回、最終幕六十一話『ひとりでお帰り』
果てから至るは破滅の化身。
やっぱダイの大冒険は名作！＞正義ってなんだ？
夢を見たいたいけな青少年の性癖がゆがんじゃ〜う
レミエルを演じてる時だけ普段のアレがストップするの草
……それをこのスレ、この作品群ではダディと呼んでいるけど
乙
神秘キャンセラーなのにどうやったんだろ……？
マグロ以上に天使役にふさわしい美貌の持ち主がいなかったのも大きいというか（ロランも比肩するが、別口の仕事がある）
今回だと本人は現実世界で台本通りに演じてるだけ
それを元に窓付きが夢を作ってるので赤身自身は夢の中にいない、という理屈だと思う
ああ、そういう状況だったんだ、理解できた
ありがとう
うへへ、分かりにくい描写ですいません。
そして分かりやすい解説ありがとうございます。
＿__
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| ここではない地球の話をしましょう。
| 滅びて消えた。そんな地球の話をしましょう。
|
| 『地球標本展覧会』。今宵皆様にお見せするのは最強の勇者。
| 全人類最強、無敵で不死身。弱点はない。誰にも負けない。
|
| ヒトの代表としてどれほどのひねくれ者でも認めざるを得ない者。
| 向かうところ敵なし、右に出る者もなし。
|
| 孤独に震える弱さもなく。
| 間に合わない事もない。
|
| そんな存在を殺してみせたが、成り代わることのできなかった。
| 永遠の二番手の悲嘆と慟哭。
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| では、その狂しい愛の半生を見学……なんですかやる夫さん？
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.. |:::::::γ⌒^Ｙ⌒ヽ :.| ／⌒ ⌒＼
.. |:::::::::/ ._ノ ヽ ..| （● ） （● ） ＼ ちょっと黙ってるお。
|:::::::〉 （ ○） （○）| ／ （__人__） ＼
. （@ ::::⌒（__人__）⌒) | ｀⌒´ |
| u |r┬-| | ＼ ,. -'"´´￣｀ヽ
＼ `ー'´ ／ ／ （＿＿＿ |
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､. ／ |
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| 日付変わらぬ、早朝。
| 十二月の丑三つ時はとても寒い。
|
| コートの前を合わせて震えながら、やる夫は自動販売機の前に立った。
| エダとヨランダに状況を説明し、アリカを布団に放り込み、やる夫はひとりエナジードリンクを買いに教会を出た。
|
| 護衛はいない。
| 警戒心も皆無。
|
| 誰かがやる夫の命を狙うならば、この時こそが最高の機会だった。
|
| ……だが、誰が狙う？
| そもそもやる夫が『存在している』ことに誰が気付いている？
|
| ニャルラトホテプの『存在を奪う能力』は未だに有効だ。
| やる夫を知るものはやる夫をやる夫と認識できるだろう。
|
| だが、他でもないやる夫本人ですら、未だに自分の存在があやふやであった。
|
|「……早いうちに来てくれて助かったお。
| 今のうちにお前さんを『処置』しとかねーと、この後は立て込んでっからお」
|
| やる夫は親指で自販機を指差す。
|
|「何を飲むお？」
|
| なお、偉そうだがやる夫は無一文だったのでエダに借りてきた金だ。
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ ノ ヽ ::::::） ﾙﾘﾉ
ﾘ::::::( （ ー） (●::（
. ﾊ::::ﾊ ,, r‐ｧ ﾘ）)〉
） ) ）、 ｎｌ^l^l （ やる夫さんの生き血っていうのはどうアフロ？
（,（.( ' ﾍ 「 ﾉ:::））
ノ/）` ヾ ヽ く ､
,' ﾉ Ｙ ヽ ＼
l: （ ...... .ヽ､＿）
.ヾ. .. :::::::: ::::: .ノ
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|「脂質多くてまずそうだお」
|
| 暗がりから足を踏み出す中肉中背で断崖絶壁の女。
| チカチカと点滅する街灯の下に進み出る。
|
| とりあえず自分の分のエナジードリンクを買い、プルタブを押すやる夫。
| 続いてコーラを、一本二本。
|
|「炭酸ダメな奴はいるかお？」
|「…………」
|
| 憮然とするやらない子。いつから尾行がバレていた？
|
|「いませんよ」
|「はやぶさっ」
|
| やらない子の後ろから、グラマラスな高身長さん、人形のように整い、人形のように無表情で。
|
|「糸川さんは夜からご苦労様だお」
|「…………」
|
| はやぶさがペルソナを使い追跡してきた事までお見通しときた。
| やらない子は静かに息を吐いた。
|
| 彼女の知るやる夫は兄の太鼓持ちで、鈍重で鈍感な塵芥だった。
| なのになんだ？ 威圧感は皆無なのに、漲る気配は得体が知れない。
|
|「『クトゥグア』『ビスケットハンマー』『ニビル』『第四の万魔』
| 『第二次関東大震災』『木星の無力化』『人類補完計画』『哀しみのからくり人形楽団』『テングサの歌』……そして」
|
| 半数以上。意味不明の単語を並べ立てるやる夫。
| その視線がやらない子とはやぶさから外れる。振り返り背後へ。
|
|「『ひとりでお帰り』」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼. /∧ ＼
／ ∨/∧ ＼
. / ＼ー -- . ___ ∨ ∧ ＼
i iﾄ、 、 ＼/´ _ ∧ ∨⌒ヽ ＞==''
| . | __＼ ＼ ＼ ,.イ i.Yﾊ ∨ ﾘ ＼´
| l !´ _ ＼j｀ヽ.《 |r'' |.| l l ∨ ＼
| l |＼《´ｌト、 以ﾘ | l l | ノ｀ヽ ルハ …………？
| l | ハ |ir'} """ ﾉ｀ヽ／ レﾍ
| l ﾄ、.八"" ' ヾ｀V {
| l |ハ}≧＞ . c X _／´ ｀ヽ フ
| l | ソ´ ノ ーく´ ////⌒Vハ く
人 l ハく く Y´//.l { } |.|ハノハ
Y ＞ メ レﾍノ // | 乂_ノ ﾊ!
ﾚ'フヌ= 〒〒// 乂 ノｲ
／/ / i i i / ! |ﾉ {
. r=/／ ./ i i i / ,' ,'i |
|i { ｌ ｌ / / / l !
|ｌ | ｌ ﾚ' / / .| !
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〈/|ｌ ｌ ﾚ' / / // ' ＼＼_ ﾄvヘノY´
|l ﾚ' ./ / // ' ＼ ＼ ）Y´
ﾘ ./ / / //＼ ○ ＼ ￣ ￣ ｀＞ 、
r== / / / / // ＼＼ ー ｀ヽ
￣/ / .ト、 / / //_ _ .∠＼＼ [二二二二]
/トvﾍハノ V｀ヽj＼// ＿＿___＼＼ ○
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| 背後に忍び寄っていた、背の低い少女と、モデル体型のスレンダーＪｋ。
| 朝霧アサギと霧野タカオ。やらない子チーム総勢四名。
|
| なお、彼女らの戦術指導者である貞山青葉は不在だ。こんな深夜に呼び出すのも気が引けるし。
|
| ……だが、青葉を呼び出さなかったのは彼女らの致命的なミスの一つであろう。
| 目的を達成するに当たり、冷静で俯瞰的な視野は不可欠だった。
|
|「やる夫の『席』を奪いに来たのかお？」
|「話が早いでアフロ」
|
| 答えたのはやらない子。しかしやる夫の視線はアサギに向いたまま。
| やらない子がポケットから碁石を取り出す。彼我の距離は10メートルもない。
|
| それが、やらない子たちの二つ目のミス。
| 話をできる距離まで近付いたこと。
|
| やらない子たち四人に最適な戦法は飽和爆撃の奇襲である。
| 中距離戦を得意とするのはやらない子一人だけで、他の三人は遠距離爆撃こそが真骨頂。
|
| 周辺の被害なんて目をつぶり、砲撃爆撃雨あられで敵ごと焦土化するべきなのだ。
| しかし、この度は安易に近付きすぎた。
|
| 確実に殺すためとは言え。
| やらない子たちは戦術を誤った。
|
| だが、そんなミスは些細と笑える、第三のミスが最も致命的。
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
/ﾙ/:::::ﾘγ::..:::::..:..ﾍ、: : : : ::ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ（::. ::.ﾉ ノ ヽ､ヾ:::::（ ﾙﾉﾘ
ヽ:::( （●） （●） ):::::ﾉ( お命頂戴するでアフロ。
ﾘ（i r‐- iｨ）)｀）
（（ﾊ:.ゝ ヽ ﾉ ﾉいﾉ:（ﾘ
,..ノj/ ｌﾍ_ /／ 丿lﾉ卜.､∩
_ ,､r‐" ､/ｌ("!´ っ..l ｌ |: ′｀'' | |-,／)
r-r;''´ `､／´ |ｌぅ夕 1ヽ..-.,,_ 丿}ノ /ノ)
(,_{ﾊ_ ,, ''-‐1 ‐／ ﾞ'〈/⊂ﾆ '" ニ⊃
ﾍ ノ′ `'=>'''"´
ﾉ ／
/′ /′
／′ │
__....'´ﾌ ､_ ....ｲ､＿
│ `ゝ〈 亅 冖't"ﾍ ／ 7
/ /｀ﾞ''''‐=-－′ |!
＼＿....、 ..-┘
"'、 ゝ-＿..-､ _..-丿
ﾞ､ !ﾍ '''´ ｌ
ﾍ 1 ﾍ '、
ﾍ ￤ ヽ |
ヽ 1 ヽ|´ ..ｶ
'、 │ ' ﾍﾞ''' ﾝﾍ、
│ '、 ｝ ''´ ノ}
│ '、 ゞ ‐－}
'、 ヽ ヽ－
│ 1
」......-'、
ｌ''ゝ-r‐'┤
│ '''''' ヽ
｝ │
ヾ ｀ヽ
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|「マジかお」
|
| マジだった。
| 少なくともやらない子はマジだった。
|
| 肉親でありながら心から、異性として熱愛する兄やらない夫の心を奪う男。
| 翠星石が一番なら二番手の憎いやつ、入即やる夫。
|
| せっかくいなくなってチャンスが巡ってきたと言うのに、のこのこ帰ってきやがった。
| やらない子は他の三人に「実力を測るため」と説明した。
|
| だが実際にはドサクサに紛れて亡き者にしようと企んでいたのだ。
|
|「サシの殴り合いでも惨敗確定のやる夫に四人がかりとか……プライドはねーのかお！？」
|「ないでアフロ」「ない」
|
| 即答するやらない子とアサギ。
| だがはやぶさとタカオは違う模様。
|
|「確かに、アタシ抜けるわ」
|「私も失礼致します」
|
| たったの一言で戦力が半減。冷や汗を垂らすやらない子。
|
|「まあ、別に四人同時に相手をしてくれてもいいんだお？
| タイプの違う美人さん四人にボコられるなんて……我々の業界ではご褒美です」
|
| キリッとするやる夫。彼の話術にタカオとはやぶさのやる気は完全になくなっていた。
| やらない子自身も、殺意を振り絞らねばいけなくなっていた。
|
| だが、一人だけ。
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厂レ ´ 厶
＿|＿ _／
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{//////////ヽ
｀Ｔ「＼ /////∧
__ .ｨ | | ヽ./////}
／:::::::::Ｚｌ ! ＼///
／::::::::::.､:::::!.l }/ｲ
/::::::/::::､Xヽ:l ｌ ／
{:::::厶､::{ メ.ｌ:|.′ ./ ドーモ、主人公サン。
:::::仁ﾄ ＼ｴ|:|| .′ 貴様がこの世界の歪みの原因だ。
Ｖ| '＿ ｨ7〈 /
lﾄ７7ヽ//// ′ 慈悲はない。ハイクを読め。
///く//ｨ′ !77
У/::::::::ｌ| ﾚ'
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|「さっきの夢で『チャンネル』が開いたって所かお？」
|
| 明確で直接的で、他に選択肢はないほどに、覆せない殺意を向けられ。
| しかしやる夫は涼しい顔。
|
|「……アフロ？」
|「今年中に発生する『世界の終わり』が十個あるお」
|
| やらない子の疑問にやる夫が淡々と応える。
| 先程やる夫が数え上げたものがそれであり、かの偉大なる『モーセの十戒』にならい、ここではそれを『十壊』と呼称しよう。
|
| 唯一神を主とせよ。
| 偶像を崇拝するな。
| 神の名を妄りに唱えるな。
| 安息日を守れ。
| 父母を敬え。
| 殺すな。
| 犯すな。
| 盗むな。
| 嘘を付くな。
| 他人の物を欲しがるな。
|
| その十番目。嫉妬の戒めを壊りて現る破滅の化身。
|
|「そいつは『滅ぼすもの』。名を《ひとりでお帰り》」
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|.::/⌒Ｙ⌒ヽ:::::::::::.|
| ノ ＼ ｉ:::::::| やる夫さんホントに冷たい、
|（─） （─ ） 〈::::::| 封印状態で暇だろうから
(⌒（__人__）⌒:::: @） コレクションを見せてあげた仲じゃあないですか。
| |r┬-| u |
＼ `ー'´ ／
,-- ゝーー ___／ /ゝ--、
ｲ / |.!､ _____ ／ ノ | i
| i |,／(__）ヽ／ | l
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|「世界レベルの『死』を無理くり見せるとか、やる夫じゃなけりゃ狂ってたお。二度とすんな」
|
| 『やる夫の中の入即貸本』に、いつの間にか居座っていた男。
| 『千の化身』の一柱で、破滅世界収集家。同時に、やる夫たちが住む次元の『本来の』管理者だと名乗る存在。
|
| 『本来の』。一時的にできる夫に権限を貸与していたという。
|
| 封印されながら、こいつのせいでやる夫は世界の終わりを夢に見続けていた。
| その目は、その脳は、すでにどっぷりと死に浸かっている。
|
| 漬け物で言うなら浅漬けや一夜漬けのレベルではない。
| 二ヶ月漬けて発酵しているぬか漬けやキムチみたいなものだった。
|
| しかしそのおかげで、やる夫は迫りくる危機についてある程度の知識があった。
| とは言え、『十壊』の内一つはやる夫の手の届かぬ場所で動いていて。
|
| もう一つはすでに片が付いていた。
|
| 一番目。信仰の戒めを壊りて現れた『テングサの歌』。
| これはアリカの死の運命が破壊され、やらない夫が戻る道を選んだことで消滅した。
|
| 五番目。祖先の戒めを壊りて現れた『木星の無力化』。
| こちらは木星に向かった泉教授と新城直衛がなんとかしてくれるはずである。
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i:::::::/ ヽ::::::＼__く::::::ヽ::::.
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/::ﾍ::::{.「死 ´死 八::::､:::::::ヽ
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.':::::/:::::込、 ＿ /`ーｲ:ﾄ::::::::{ ￣￣
{:::/l::／{::::::≧ ´ ノi:i:i:i:i:i:i:i7＼::〉
V !' 》＜＾⌒ ｨ ´￣｀ヾ/∧
くi:i:i人r一' lﾊ 、 ∨∧
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〃/ﾒ´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:∧ ‘， ∨∧
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//八i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ﾊ.｡‘， ∨∧i:i:i:i:i:i:i:i:＼
/// Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ∧ 》 ∨∧¨¨ヽi:i:i:i:廴
/// }i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ{ ＼| ∨∧ ∨i:i:i:i}
/// .ﾉi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ハ ! ∨∧ }i:i:i:i:|
/// ___}i:i:i:i:i:i:i:i＞ ´￣ ヽ. |: ∨∧_ノi:i:i:ｉﾘ
/// }＿ イo￣ l| 》 》====…ヾ/∧i:i:i∠
＼///＿ 厶イ。|! l| 斗匕ﾍ ヽi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i》
.イi:i:i:i:i:i:／{! |! o .斗匕 // ＼.}i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iく
/i:i:i:i:i:i:i:i:}／{! 斗≦.=====// {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
》i:i:i:i:i:i:i:i:} ／─ｬ== …── ≧ｭ． 戈i:i:i:i{￣ ｀⌒ヾi:iﾉ
戈'⌒ヾi:ｉ:｝／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧ｭ．__}≧ｵ } Ⅵ
rＥ{ {＿_ﾞｵi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:{ |//∧ } リ
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| 問題は、ここで発症し、最悪のタイミングでやる夫を殺すもの。
| 朝霧アサギの《ひとりでお帰り》。
|
| やる夫は知らぬことではあるが、別世界線のやらない夫を密かに追い詰めたのもアサギであった。
| やらない夫を殺すために仲間を見殺しにし、敵に情報を流し、大衆を扇動して地獄を拡散した。
|
| 同様に、この後アサギを放置すると周到かつ入念に周囲を操作し、『主人公の破滅』を企てる。
| そのなりふり構わぬ邪悪さと執念深さはアサギ元来の直情径行とはかけ離れたものであり、
| それ故に犯人として特定され難い。
|
| そしてアサギは、『主人公』＝やる夫を確実に始末できるタイミングまで動かない。
| やる夫が単独行動を取るのが、次はいつになることやら。
|
| そう、今こそが絶好。
| アサギにとってもやる夫にとっても。
|
| 最初で最後のチャンスに他ならぬ。
|
|「能力はかなり薄いお。常識や現実感、疑念を曖昧にして、周囲の人物にちょっとだけ囁きかけること。
| 囁かれた側はそれが自分の思考だと思い込む。
|
| もちろん、色んな理由で囁きの内容は無視されるお。今みたいに。
| そして採用されることもあるお、今みたいに」
|
| 動揺するやらない子。同様にはやぶさとタカオ。
| しかし、アサギ一人が冷徹なまま。
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く ７: : : : : : : : : : :/: : l : : : : : : ∨ 」
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く .ｲ|: : :|// : Χ ′/ ／ ＼:|: :|: |:＼ /
V: : |: : :|__／＿_∨: : ﾊ／_＿_＿|: :l;ハ; : Υ
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|: : |: : :|≧===/: :/ -====彡！./|: : :| ええと、その。
|: : |: : :| /: :/ 丶 u |: :|ｲ .|: : :|
|: : |: : :|__彡: ／ ＿＿_ |: :|==ミ : | つまり今のアタシたちの思考は……？
|: : |: : :|父ト | ＼． .イ |: :ﾄ :i:i:i:Ⅵ
,小│ : |' ≧=ー =彡i7 |: :ト`寸i:ﾊ
/: : /|: : :| ¨¨¨ / :|: :| V'！＼
./: : / :|: : :| ＼{ / |: :| | | |
/: : ｲ !: : :! ,ハ l |: :| | |_,.|
./:／ /| : 小. ﾟ l |: :| | /:i:ｉ|
|: :/{三三三}≧=ｰ =Ε三|: :|三}:i:i:i:|
／ ｲ:/ .| | トi:i:i:i:i:i:ｉ:１ .|: :| |i:ｉ:イ|
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|「お姉さんが『細かい事を無視してとりあえずやる夫を殺そうかな』と思っているなら。
| やらない子ちゃんが『やる夫を殺して、友達も口封じしちゃおう』とか。
|
| 糸川さんは良心の呵責なく、やる夫が殺されるのを静観する気なら。
| そいつは《ひとりでお帰り》の攻撃だお」
|
|「「「………………」」」
|
| 押し黙る女子高生たち。
| 自分の思考とやる夫のどちらを信じるか迷うかのように。
|
| そして、渦中のアサギはペルソナである二丁拳銃を構えたまま微動だにせず。
| ここで無闇に攻撃するのは躊躇われる。だが、言葉では仲間たちを動かせない。
|
| 誰かに口火を切らせれば後は野となれ山となれなのだが……やる夫の舌鉾が許さない。
|
|「ちなみに、やる夫は攻撃手段を持たないからそいつを殺せない。
| 一方的に不利な状況だお。あんたら四人に殺意があれば抵抗できねーお」
|
| エナジードリンクを口に運びながら、やる夫の口先はよく回る。
| 内心は冷や汗もの。何しろ、やる夫は『滅ぼすもの』には対処できても女子高生には太刀打ちできない。
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, ⌒ﾊ ﾊ⌒ 、
j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒ Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
Yyﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ ノ ヽ ::::::） ﾙﾘﾉ
ﾘ::::::( （ ●） (●::（ やる夫さんを信じるとして、
. ﾊ::::ﾊ ,, r‐ｧr‐- ､) あたしたちはどうしたらいいでアフロ？
） ) ）、 ￣ﾉﾉ入 ＼
（,（.( ' ﾍ ｀i_,ノ{_ / 二ﾕ.
ノ/）:{ﾍ ＼.／ lﾉ（(V｡ ＼
∧: :ト-ゝ＼/ ＼ノイ: 人 。 ＼
| ｀` l ＼ ｝＾{｜ｲく ＼ ＼
| | ヽ V /ー‐|- ＼ ！
〈 卜､ ∨ /:l | ＼ /
Y ｉ:::::＼ }／:::::ー::ｲ ￣
| l ＼{ |
| | ｏ |
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| しめた。やる夫は心中で喝采を上げる。
| 容赦なくやる夫を殺すのならやらない子だった。だが、一番頭が回るのもやらない子だ。
|
| 彼女がやる夫の味方をすれば形勢は傾く。
|
|「『プリ・ニー』！！」
|「待つでアフロ」
|
| 雪崩のように召喚される爆発する人形ども。
| そこにマシンガンのように指弾で撃ち出された碁石が襲いかかる。
|
|「逃がしちゃだめだお！」
|「それって！」
|
| 衝撃を受けて爆発・誘爆するペンギン人形共。
| 召喚者であるアサギが巻き込まれるのを防ぐために、咄嗟に前に出たタカオ。
|
| 展開される防御結界、それを尻目に身を翻すアサギ。
| 獅子身中の虫でなくなれば脅威度は減る、だが不屈の暗殺者になるのは確実。
|
| 逃げながらも、召喚をやめないアサギ。四方八方からの爆発に巻き込まれるタカオ、身動き取れず。
| その心中に渦巻く疑念と混乱、アサギに捨て石にされた？ 裏切られた？
|
| 防御力を信頼されたから？ それとも。
| ここで爆死しても構わなかった……？
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- ￣￣ ￣｀ ー ､
, ィ´ i ヽ
イ, ,ｲ! ﾉ
,' ＿ ＿{_ｊ＿ ／
{ ヽ､ , ィ´ ｀ヾ
ヽ ｀ヾｲ ヽ '、 ヽ
｀ー/ ﾊ ヾ＼ ', ﾊ
/ ｌ ｊ ', ｀ィT7iヽ ',
,' ｊ≠- ヽ xﾁて7 ', ',
! ,ィzﾃ､ ´ ヾ-' | ｌ ',
ｌ ヾ ゞ-' ! ｌ ｌ
', ﾊ ｀ ! ! !
ﾊ ヽ ｒ ｡つ | ｊ ! 『隼』！
ヽ ＼､＿ ｲ ｲ ﾊ
＿ｒヾ=ｭﾊ ヽ ! / ｌ ',
,'´ ｀ヽ//ﾊ ﾊ＼ ｊ/ ! ﾊ
/ Y//ハ ', ＼__ ノヽ
,' ﾊ///ﾉ ヽ ',／ ﾊ ＼ ',
/ ////r' ヽ ﾊ } ゝ=彡ﾍ } ﾊ ｌ
/ ｌ////{ }/ ｊ////////ヽ_ノl ｊ ',ｊ
,' ｌ////!ゝ,＿ﾉ///////////////l ｲ
' ,'////＞=＝＝=､////////////ｊ／/
７ー､ ｊ//イ ￣｀ヾ=三三三三/ｌ
/ ｀Y/// ヽ ｀ヾ＼
7ー- ､ ｊ///＼ ｀ ヽ
/ T/// ::::.. }
. / /// ::::... ﾉ
/ ///!| ｲ ヽイ/'' ー＝―-
/ミ/ﾊ! ゝ-' -―イ ／
ノ////ｿ! ｊ ＿, イ!
／ ｀ー=＝ｊ / / ｌ
.／ / / { ',
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|「糸川さん」
|
| 戦闘機を呼び出そうとしたはやぶさをやる夫が止める。
| 深夜、閑静な住宅街、突然の爆音。
|
| 周囲の家々の明かりが次々に灯る。
|
|「音の出るものは極力出さないで、走って追うお」
|「ですが」
|「ここがどこなのか、知らないのかお？」
|
| やらない子たちの犯した第三のミス。
| 最も致命的で、度し難く、愚かしい。無知ゆえとはいえ途方も無い。
|
| やる夫は携帯電話を取り出し、弄んだ。
| そして値踏みするようにやらない子を見つめる。
|
|「四人でアイツを止める……でいいかお？」
|「はい」
|
| 即決するはやぶさ、その視線の先には無傷のタカオ。
|
|「策はあるんでしょうね」
|「やる夫が右手で触れれば『滅ぼすもの』を剥がせるお」
|
| 半信半疑のタカオ。そんなの聞いたことがない。
| こないだは散々苦労を……いや、やる夫がタッチするのも苦労しそう。
|
|「了解、霧野タカオ。指揮下に入るわ」
|「殺すのは保留、そういうのはやめるってお兄ちゃんと約束してたの思い出したでアフロ」
|
| そんなことをしたら今度こそ兄弟の縁を切られて地獄行きだ。
| やらない子には到底耐え難い。
|
|「んじゃあ手早く、あと数レス以内で終わらせるお」
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i!/////厶ﾍ∨∧ __ ｀￣丁/ //三≧==
l/!//// ＼//》 イ バ`ヽ ! /ﾃ77777 丶
|l1// 《 .ィハ ｛:::::::l l.イ/ |∨//ｉ//八 はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ。
|!{///ﾊ! l::::} ,,,,,,, "" つΧ{ .）//l///ハ
|ｌ|///i と '" |//lｲ///|/// | う、ううう……ぅぅ。
|/V//∨ ＿＿ し' |//|////|/// ￤
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Ⅳ!/////〕ト ＿＿ ノ:|//l///从/ノ7∧
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)＼ド ///厶」￣ 」_厂 _!//:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
__.イヾノ /V ＿_r:i:i!/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
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| アサギ本人は混乱のるつぼにいた。
|
| 《ひとりでお帰り》は『滅ぼすもの』の中でもかなり異質だ。
| その能力自体が世界を滅ぼした訳でもないし、憑依者の自我も奪わない。
|
| ただ、思考にノイズを入れるだけ。
| アサギはいつもどおりに主人公を殺そうと思っただけの単純な行動。
|
| 今逃げているのも状況が理解できぬがゆえのパニックに過ぎない。
| 寄生虫がその繁殖のために寄生主を操作するように、無意識下で操作されているだけの哀れなアサギ。
|
| 人通りのある方向を目指して走り……すぐに身を翻した。
|
|「どこの組のカチコミだァーッッッ！！」
|
| ムキムキの上半身に弾帯をたすき掛けにした半裸の尼僧が雄叫びを上げる。
| その手にあるのは船につけるような巨大な機関銃。
|
| 続くのは全身甲冑にハルバードの怪人、危険なマークのボンペを背負った小男、エトセトラエトセトラ。
| 夢世界のベルソナやシャドウどもより危険な匂いがプンプンした。アイツラは何者だ！？
|
| 教会の鐘楼に威圧的なサーチライトが点灯、アクション映画の悪の要塞さながら。
| というか、そのもの。アサギもやらない子も当然知らないが、闇の社会に生きるものなら誰でも知っている。
|
| 『暴力教会に手を出すな』
| 『結社』の下っ端ですら知っている、ヤクザもチンピラもみんな知っている、それを知らないのは致命的だから。
|
|「本当にあっちから来た……」
|
| 背後に怯えながら走るアサギは、曲がり角で豊満なバストに衝突した。
| その後ろで、呆然とタカオ。
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／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 仕舞いだお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 正面衝突するも、真後ろのはやぶさの胸に支えられ転ばなかったやる夫。
| その右手、白くぷよぷよした無毛の芋虫めいた腕に、無数のドス黒いひび割れが走る。
|
| 死に触れすぎた、『モーンプレイド』を掴んだ、天沼矛を握った。そんな右手。
|
|「なにそれ」
|「モンちゃんを媒体にした上次元介入だお」
|
| その手がアサギに触れる、劇的な事は何も起きない。
| ただ、悲鳴すらあげずに失神しただけ。白目を剥き意識を失うアサギをタカオが支える。
|
|「…………終わりでアフロ？」
|「終わりだお」
|
| 右目から垂れた血を拭い、やる夫が事も無げに立ち上がる。
| この次元の管理者、つまりこの『私』。できる夫くんに続きこのスレを書き続けるもの、通称見学会いく夫。
|
| その私への報酬、稼働中の『滅ぼすもの』の凍結標本。むっちゃレアもの！
| 封印から解かれたばかりのやる夫の肉体には過度な負荷である。
|
| しかし、それでもやる夫はやってのけた。
|
|「あー、痛え。でもこれで貸し借りなしだお」
|
| いかにも。
|
| やらない夫がアリカを殺す寸前。
| ニャルラトホテプが蒼星石を殺す寸前。
|
| 最高のタイミングで運命破壊ができたのは他でもない管理者権限によるであった。
| だが、この後はこうも行くまい。
|
| 十壊は残り七つ。
| それらは、自力で止めてもらう。もう手助けはしない。
|
| なぜって？
| 別に地球が壊れても、『私』のコレクションが増えるだけですからね！ それはそれで！
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☆ 次回予告！
目まぐるしく変わる世界。
そろそろ総集編でまとめないと何が何だか。
だが、それは読者と作者だけではない。
作中人物すら世界の速さについて行けない。
迫る時間。
突然の第二の夢。
破滅の確信。
その時、どう動くべきか。
慌てず、着実に、人事をつくすのみであろうよ。
次回、最終幕六十二話『緊急事態対策班』
果てに見るのは破滅か死か。
お前だったのか
現役稼働中の化身がいてくれて嬉しいよ
乙
見学会の展覧会とはこれイカに
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| 『第二の夢』の翌朝。
| 不思議な気持ちで目覚めた人々は、己を顧みた。
|
| そして改めようと考えた者がほんの一握りいたかもしれず。
| その中のさらに僅かな人間が、実際に行動したかもしれない。
|
| 『第二の夢』は、確かに人々の心に残った。
| だが、それでも人々は行動を改めるだろうか？
|
| 答えは否である。
|
| 人間は、そんな簡単に変われやしない。
| 他人に対して厳しい目を持つかもしれないが、自分自身を甘やかすことはやめられないのだ。
|
| しかし、大衆が愚かで弱くとも、邪悪で卑劣であったとしても。
| 『血族』には関係ない。
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| それを分かった上で、報われるとかそんな事利害になく。
| たた、人々の平穏と存続のために命を賭す。
|
| それが『血族』である。
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| 会議室には十六の席があった。
|
| 上座に大首領藤堂志摩子。その右隣に『狂死』。左隣にキオ・アスノ。
| 『狂死』から右回りに『緊急事態対策班』が並ぶ。
|
| 先代巫女、呂布トールギス奉先、北斗ケンシロウ。
| 二つ空席、ジャギと蒼星石の席。
|
| キオから左回りにフリット・アスノ。石田ゴレムス、上杉謙信、
| 佐倉杏子と肩の伊集院九兵衛太、『九鬼』の黄泉、『グレン団』のカミナ。
|
| そして『先生』こと鷹野三四と、空席に挟まれて『やる夫』である。
|
| すでに会議は進み、『第二の夢』の分析は終わっていた。
| 三四が小さく頷き、『やる夫』を横目に口を開く。
|
|「どのような介入があったのか、『大天使召喚儀式』の本来の目的に近い夢でした。
| 『第二の夢』がやらない夫君の『仕込み』である可能性は極めて高いと思われますが、決定打がありません」
|
| いや、鷹野三四には確信があった。当たり前だ。不人気だ。
| あの美という概念を凝縮したような女を見間違えるはずがない。
|
| だが、この場で入即貸本の常連は三四ひとり。
| そして彼女は、あの赤福が『糖分同盟』に顔を出していることを知らない。
|
| 不人気との知己が自分とやる夫の二人だけだと思った上で、
| 『やる夫』が発言しないのを訝しがりながら言わないでいた。
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ヽ::_::::::::::_:::: -‐ '' ¨ ￣ ',
/ ￣ / ／ , ﾊ ヽ. ! ',
,' ,' / ,ｲ / ', `i !
. ll i ./ / ／/ / ヽ. l l l
lll !/ / ／ / / ヽ､! ! l
lll !.7￣ﾆ≠-､ //_ -__――_-l l l .l
lll l l i ''又辷ｧ 〃 ´'¨弋辷ァl l l. l
lll ! l ! ./ ￣ / `ー－1 .l ! l 夢の中でのやらない夫君の消滅が演出なのか
lll l !ｌ ハ l l l l l それとも翠星石同様に昏睡状態にあるかを
lｌl l l/ l ', ! ｌ l. ｌ ,' 取り急ぎ確認しなければなりません。
lｌl .l l l l_ヽ、 ` ､＿__ l l l ,'
ll ! l l／ ｀`ヽ 、 ￣ , ｲ .l ! .∧
. ll l ,, -''´ , ￣ l l l lヽ､ ／ .l l .l ,':::::ヽ、
_.! -''´ /-‐ ｨl l l l｀l ｀T´`ー:1 ! ! ,'::::::::::::
￣:/ ノ ''´し'ﾉﾉ /):::/O｀ヽ ::l l l ,'::::::::::::::
:::::{ _,, - '' :::::｀Y:::::::i: : : : :}:::l l ! ,'::::::::::::::::
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|「方法は？」
|「まずはやらない夫本人を探すべきだな。黄泉、カミナ、頼めるか？」
|
| 人探しならニンジャと人海戦術。
| 『九鬼』と『グレン団』はこれでやらない夫、蒼星石、ジャギの三人を探すことになる。
|
|「三日後の『集会』までに見つけないといけませんね」
|「警察にも応援を要請しましょう」
|
| もしもやらない夫が行動不能になっていたなら、先日のユーチューブでの呼びかけ当日も出てはこれまい。
| ならば、集まった人々を襲う『教会』の計画は意味をなさない。
|
| やらない夫かが現れずに人々が失望する方が今後の展開的には喜ばしい。
|
|「このまま消えられると陰謀論が加熱せんか？」
|「そこはメディアを操作して、馬鹿馬鹿しいほどに煽ればよい」
|
| 呂布の懸念をフリットが一笑に付す。
| やらない夫が消息を立った場合、暗殺されたと騒がれるのは目に見えていた。
|
| ならば、最初からそれに合わせた陰謀論をバラ撒いて、演出過剰に騒ぎ立てる。
| メディアが騒げば騒ぐほど、大衆は本質を忘れていくだろう。
|
| それこそ願ってもない展開だ。
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／V }＼
/＼ ＼ ノ / ﾟ｡
/_＿}ﾄ､ ｀¨¨´ ∧ノl
| } 》 《 { }
/ヽノ≧《__j ｌ__》ィ∨}
}ﾄ､} 弋iZﾌ 弋iZﾌ// 問題は失踪した蒼星石だな。
弋_ｌﾄ､ |ｲ 昨日の今日だ。
∧ ヽ ､_/ {/ やらない夫と合流したと見てまず間違いないが。
//∧ } -＝- ∧
//)::::::＼ ￣ .／:/::＼
／{ {:::::():::::::｀＞rf´:::::::{::::／｀＞ _
, ＜´::::::＼＼::::::::::{{￣￣}:::::／:::／::::＼:｀ヽ
, ＜´::::::::::::::::::::: ＼＼::人＿__ﾉイ:: ／:::::::::::::::}:::::}
, ＜´二 ニニニニニニﾆ＞ ,:::::::::::::::／:::::::::::::::::::::|:::::|
{:::::::::＼}_{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞一'⌒ヽ::::::::::::::::: |:::::|
|:::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ヽ }:::/ヽ_::::::|／
|:::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: } l ! ﾚ' く:::::〉
|::::::::::::::::::::::::::}:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉﾉ } ／ﾚ'::::|
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| 志摩子と先代、ケンシロウが沈鬱に顔色を曇らせる。
| 突然の心変わり、男の所へ逃げ込む。
|
| 蒼星石を知るものには想像できない。
| いや、蒼星石とやる夫とやらない夫の関係を知るものにはと言うべきか。
|
| 蒼星石に何があったのだ？
| やる夫ではなく、なぜ蒼星石が？
|
| そうとも、どう考えてもやらない夫の所に駆け込むのはやる夫であるはずなのに。
| なのにこの男は『まるで別人みたいに』興味がなさそうなのである。
|
|「想像だけで判断するべきではない。だが、今の蒼星石は『血族』の敵だと考えるべきだな」
|「対話をおざなりにする人じゃないと思うんだけどな」
|
| 彼らの中にニャルラトホテプが入り込んでいるなんて、想像もできないからいくら考えても答えは出ない。
| 蒼星石とやらない夫の話はこれでおしまいだった。
|
| 探し出して、確認する。
|
|「あの木星とハンマーはどう解釈する？」
|「神罰のイメージとしての『鉄槌』を視覚化しただけにしては……」
|
| 空に浮かぶ巨大なハンマー。
| この世界における普遍的無意識が作り出した破壊の象徴である。
|
| 『この方法なら世界はなすすべなく壊れる』という概念の集合体なのだが、『血族』がこれを認識したのはこれがはじめて。
| 対処と反応に困るのも致し方なし。
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ 『木星』と関係するのであれば
／ 八 ｲ 丶. / あれは世紀末に流行した
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼ 『小惑星激突』のメタファーなのかもしれないね。
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ）
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|「木星には新城直衛と泉親子がいるのだろう？」
|「木星は異世界も同然だし、どうにもね……」
|
| まだ秘密の情報であるが、NASAによると木星の重力網に綻びが出ているという。
| これは、太陽系の盾として地球を小惑星や彗星から守ってきた壁がなくなるということである。
|
| 理由は不明。だが、神話と同期した世界から見ると瞭然。
| 木星の主神ユピテル＝ゼウスが古の契約に従い妻を求めているのだという。
|
| これに対処するために、女神ダヌの娘、もうひとりの『女神の娘』泉こなたとその仲間が木星に飛んでいる。
|
| こなた達への援護は、正直『血族』には難しい。
| だが、でっていうの予言した破滅こそが、この鉄槌なのではないかと志摩子は考える。
|
| ……そう、志摩子はでっていうとの取引を秘密にしていた。
| 医療班には翠星石の治療を急がせながらも、彼女を生贄にする覚悟は決めていた。
|
|「大天使レミエルの言動から考えて、小惑星衝突のような地球規模の破壊を行うとは考えにくいと思います」
|「東京の破滅程度の彗星かもしれませんがね」
|
|「結界の強化を考えるべきでしょうか」
|「もしも本当に小惑星が降ってくるなら核弾頭でも用意するべきであろう」
|
| 上杉謙信と呂布の言葉。
| 迫りくる破滅が特定できるのならば、どれほど楽であろうか。
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,. -‐_ ニﾆニ￢‐-r‐-､
／ , '´, -‐_ ニフ 7 ﾆヽ ＼
／ ／ ／ ／ ／／´/ ヽ ＼ ＼
. / / / / / / / / }i＼ ヽ ヽ
/ / / / / / / / ハ ＼ ',
ｌ ! l l l l l / ,ｲﾊﾍk ヽ l
. │ ｌ {ｉ│ l l ｲ /l ,.ｲ ﾘ ヽ}} | l |
. │ ｌ ﾘ-l‐ﾊ‐辻ト/ / ナ士ｪ‐-{{/ﾚ-! |
{ ハ lィ¨｢ス下l/ノ'´ イ「スTヾ}Y/｀} |
Ｙ ﾄ､{ ､ ド り ' ､ド り , }}〉ﾉ/ |
} ｌ lヽ｀￣´ ｉ ｀￣´ ﾊ／!l |
| l ﾊ l! /´}} l l | 市民を守るために、いくつかの手段を講じたいと思います。
. j l l ヽ _＿ ,.ｲ ﾘ/ l { その一環として……ケンシロウ。
. ,ｲ { l {＼ ｰ ／ ﾉ ｛{' { ﾊ
/´ﾉ ,ﾊ ヽ ! i ｌヽ、 ／! { { ﾊ{ ヽ!､＼
｛ / / ヽ V ノ_| ｀´ |_ﾊ ヽ/ !l / ヽ ヽ
. / / ∧、 `< j ﾘ冫 {､ !l { ﾉ }
{ 〈 〈_,.} ! ハ ハ ヽ ｿﾉ､{ / ノ
ヽ ＞ ´ ハ / L__ __」 ヽ. Ｙ{ ` ＜{
_,, イ 「 / j/ l ｀ ´ ｌ ＼ ヽ） 7 r-､_
,r'´.:.:.:.:ヽヽ. / ,ィ′ l l ） / / /.:.:.:.:.｀ヽ
|.:.:.:.:.:,:.:.:.:＼＼{ノ ﾊ | | ／ / ／／.:.:.:,:.:.:.:.:.|
!.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:＼{ {､} ！ 亅 （ ( ／／.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:!
|.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:.:.:ヽ ヽｰ-- ､_ヽ /_,. -‐‐ヽ `＜.:.:.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:.:|
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|「はい」
|「『新宿駅大迷宮』の奪取をお願いします」
|
| 想定外の指示、どよめく一同。
| だが、当のケンシロウは落ち着いた様子。
|
|「あそこを核シェルター代わりに使うと？」
|「少なくない市民を避難させる事が可能でしょう」
|
| 全容が見えず、それどころか危険な迷宮を積極的に使おうという志摩子の判断。
| フリットに監禁されてから、志摩子は果断になった。
|
| 周囲に気を遣い過ぎて優柔不断の気があった志摩子。
| 一皮剥けたと考えるべきか、あるいは警戒するべきか。
|
| 各々で考えは違うが頼もしくなったのは確かなこと。
|
|「『邪悪帝国』はどうします？」
|「現在放置されている東京の地下道の見回りを頼むのはいかがでしょうか」
|
| 『血族』と契約して悪魔の温床を叩く尖兵になってもらう。
|
| 彼らを使い潰す……いや、より正確にはネビロスとでっていうへの生贄に捧げようというのだ。
| 志摩子は内心を顔に出さない。既に地獄に落ちる覚悟はできている。
|
| だが、そんな志摩子にも懸念はある……。
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イ ミイ ヽ
／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
/ / / ／ /ｊ ! ',
! ′/ ｨ ／/{ .
| ! ﾘ / | ／ ィノ!∧ ｊ |
iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j| （蒼星石、蒼星石……せめて貴女が一緒なら
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ! この道のりも少しは楽になったのでしょうに）
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
ハﾆム､ニｊニニ≧≠ニﾆ!≧ｙ´イ7 /ニニニニニニニニ| }
/ ﾊニﾆ Vニニニニニﾆ7≠（(_⌒ヽ {ニニニニニニニﾆﾆ|! ﾘ
{ / |ニﾘ /ニニニニニﾆ ｒｌヽ ヾ!ニニニニニニニニ|‐´
ヾ |ﾆ7 /ニニニニニニ′ {Ｌﾑｊ/ !ﾏニニﾆﾆﾑニニニﾆ|
. ｊ/ /ニニニニニニ7 ｀ｰ个､__ノ ｊニニニﾑﾆ7ニニニ､
ｨ } 个ァニニニニニ７| ﾑﾆ ヽ＿ノｊニニﾆｊニ/ニニニ|! ＼
/（ ノ ｊ/ /ニニニニニニ!ﾑ ノニﾑ /ニニィニニニニニ|! ﾘ
{ ￣ /ニニニニニニニｊニニニニニニニ＞´￣ミヾニニｭ､ニ! （
｀ー ´|ニﾆア⌒￣￣~~｀ヽ￣￣≧｢ニニニニニニニニニニヾ|､ ーｲ
V´ィ }! }ニニニニニニニニニニニｊ ￣
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| だが、それは叶わぬ運命。
|
| どんな道を進もうとも、蒼星石は姉を生贄にすることを決して認めない。
| これはどんなに運命を捻じ曲げても変らない。
|
| 志摩子と蒼星石が手を取って進むとしたら、翠星石を犠牲にしない道だけであろう。
|
|（ああ、もしも……もしも蒼星石が）
|
| 翠星石を生贄にすることを知り、それが理由で姿を消したのだとしたら。
| いつか突然現れて、志摩子を糾弾するのだとしたら。
|
| 恐怖に震える志摩子の手を、机の下でキオが握った。
| 震えが止まる、寒さが消える。温かい手。縋り付きたくなるほどに優しい手。
|
|「レミエルは二週間を猶予としました。時間は一秒も無駄にはできません。
| ……黄泉さん、カミナさん。申し訳ありませんがジャギおよびアリカの捜索は一時凍結致します」
|
| 生死不明の行方不明者よりも、無駄な戦いを減らすための時間がほしい。
| やらない夫を、そして恐らく彼と合流した蒼星石が最優先だ。
|
| なお、麻呂の失踪にはこの時点で誰も気がついていない。
|
|「キオは私と共に翠星石の治療を行います」
|「ワシはどうする？」
|
| キオと組んで人間ＭＲＩを続けていたフリットである。ついでに言うなら先代も治療チームだ。
|
|「フリットはトールマンと接触してください。呂布の言うことにも一理あります」
|「……核を使うと？ いや、まずは日本に核が持ち込まれているかの確認じゃな。任せよ」
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／: : //i: : : :i: : : : : : : :’
／:i:i: :/:/_j: i: : l､: : : :ヽ: : : ',
／ /: l:l: l:/....l: :ト､ハ:.i:i: : :i: : : i
/... i:l:l从仆....iヽﾐ. j仆i:i: |: : ::l
/ {从 杙ﾘ x抖恣{ 从ﾊ: : ′
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/ |: ﾊ ／i: : :.| 私は新宿駅だな？
，: : ＼ ｀こヽ ／i: :.|::::: :|
/: : :l: : : :r ==≦.... |: :.|: : :.|
/: :＿j__rァ|ﾆﾆﾆﾆ≦ム_l: : : |
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／: : :i ／´:.:ﾊﾆﾆiﾆz≦二二/:.:.:.:､; ，
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|「はい。ケンシロウをリーダーに『緊急事態対策班』の『狂死』、先代、呂布、『やる夫』。
| そして杏子班と石田と『ストームトルーパー』でお願いします」
|
| 剣呑なメンバーだ。
| ただの斥候とか、交渉ではない。威力偵察だ。最悪戦闘になって殲滅もやむなしという総戦力だ。
|
|「外交は志摩子とアスノだけか。臓硯は使わんのか？」
|「ここで使うと増長するのでは……？」
|
| 現在、間桐臓硯は表向き自宅謹慎の上にすべての魔力炉を接収されている。
| コウモリのようにあちこち飛び回り美味しいとこ取りを続けた結果だ。誰も同情しない。
|
| ……だが、だからこそ。
| 志摩子のもう一つの腕として、地下で静かに蠢くにはもってこいなのだ。
|
| 臓硯謹慎が偽りだと知るのは志摩子と『やる夫』だけ。
| 本当は蒼星石にも伝えるはずだったが、彼女はその前に失踪した。それが幸運だったと、志摩子はうまく喜べない。
|
|「ｺｰﾎｰ」
|「『先生』、龍田さんの復帰はいつになりそうですですか？」
|
| 石田の発言をキオが翻訳、隣りにいても聞き分けられない小声だが、超能力は偉大だ。
|
|「『カトルカール』装備のままでいいなら明日までにはバイタルが安定するわ。
| ヒト型の義手は用意したけど、訓練時間が足りないからゴーサインは出せないかな」
|
| ジャギがロストスキルを利用して試験を重ねてきた義手だ。
| 魔力、あるいはチャクラか気のコントロールで生身のように動く。
|
|「三日後、やらない夫の集会までは休ませてください。
| そこが最初の決戦になります……おそらく、『教会』との」
|
| 志摩子の言葉に、異を唱える者はいなかった。
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l .l:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:l:.:.:, ' ::::::::::: ., :::::::::::::::':.ll .l:.:.l:.:.:.:.:.:.:.l.ll.,'.,'l: やる夫くん。
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| 解散、それぞれチームに分かれるその僅かな時間に、三四は『やる夫』に耳打ちした。
| 二人はやる夫が『血族』に参加するより前からの知己だ。しばしば距離感が近いこともある。
|
| だから誰も見咎めない、耳をそばだてない。
| やる夫の友人というか、恋人に極めて近いはずの蒼星石が失踪。
|
| おそらくやらない夫の元に走ったのだ。
| 三四は蒼星石とも付き合いが長い、なにか思う所もあるのだろう。
|
| そんな風にそれぞれが納得し、自分の仕事に意識を向けた。
|
|「真紅ちゃんの事だけど」
|「何か？」
|
| それだけで通じるつもりだった三四は狼狽した。『やる夫』は『第二の夢』を見たと言っていた。
| なのに、ではなぜ……？
|
| あの絶対美を、人智を超えた奇跡の存在感を、誰が見間違えることがあるだろうか。
| いやまあ、水銀燈みたいな類似品の存在を三四は知っているが、あの赤貝は人間だ。
|
| 骨の髄まで魔力の欠片も才能もない、ごく普通の人間なのだ。
| それを、やる夫は……？
|
|「夢に……」
|「夢？ ……夢がどうしたんだ？」
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::::::::／⌒ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::: | |::::::: |.|:::::::::| |:::| |::::||::::::ﾊ:::::::::::::::::::::: |
:::: 〃-＼ ＼ イ:::::::::::::::::::::|| |‐|::::::::L|::::::::| |: | |:仏::::::|イ::::::::::::::::::::::|
::::〈 ＼ |:::::::::::::::::::: |L|‐|::::::_ﾄ-!::::::「 | | !.|弍_::」_ｚ::::::::::::::::|::::| ﾆｵ
::::∧ | ! .} |:::::::::::::::::::: |ﾏ￢ﾓﾃｒ-ミ￣ || /ｨセﾅ７ ｊ:::::::::::::: |::::| 鳰に頼んで監視カメラの映像を解析させて頂戴。
::::::::∧ ＼_.ヽ |::::::::::::::::::::::| ゝ弋辷ｿ | / 弋ﾝ / /:::::|::::::::ﾊ:::j 私は蒼星石の関係ありそうな場所に部下を送り込むから。
:::::::仆ﾍ ヽ |::::::::::::::::::::::| ｀"'￢ ゛¨¨ /:::::∥::::::||Ⅵ
:::::::|| ||ｌi｀‐┐ |::::::::::::::::::::∥ { /::::::: ||:::::::|| | 警察とのやり取りは頼めるかしら？
:::::::＼||:|ｌｊ::::| |:::::::::::::::::::: !| | /:::::::::::|L:::: |
:::::::::: ||:::||:::::! |::::::::::::::::::: |.| ノ ':::::::::::::| ￣
:::::::::::||:: ||:::,' |::::::::::::::::::::| | ｀'´ ／:::::::::::::::|
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| 自らの職務に忠実に、『血族』の情報収集を行っていた黄泉は、
| カミナと今後の動きを詰めながら『やる夫』と三四の会話を聞いていた。
| 一般的ニンジャの聴覚は人間の三倍である。
|
| だがニンジャの首領である黄泉は、実際一里先に落ちた針の音を聞き取れる。
| それどころかパーティ会場で複数の会話を同時進行で理解できる『ショトクタイシ・ジツ』も修めていた。
|
|「任せろ、他には？」
|「新宿駅を本格的に攻めるなら兵隊が必要になる。主力は温存な」
|
| 黄泉が話を続ける傍ら、三四と『やる夫』のやり取りも続く。
| 三四が困った、あるいは怯えた目を『やる夫』に向けている。
|
|「いいえ、真紅ちゃんならあの夢をどう分析するかなってだけよ」
|「…………そうだな」
|
| 話が終わる。三四は不人気のことを口にするのをやめた。
| 『やる夫』が不信な目を三四に向ける。危険な兆候か。
|
|「蒼星石が考えなしに動くとは思えないわ。あなたにもすぐ連絡があるんじゃないかしら？」
|「そう願っているよ」
|
| 二人の会話から確定した情報。
| 『やる夫』はやる夫の記憶を持つわけではない。
|
| そして、三四は『やる夫』に疑念を抱いた。
| 彼女が『やる夫』に処分されるより前に接触しなければ。黄泉は静かにそう決めた。
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/´/ // ,ｒ‐ｧ'´Ｖ ／ ./:∧
/ /:! /:/ /:/ __ノ ＿_ﾉ/ ',
/! ｆ:l /:/ |::{ ／ _/:ｒ一' ,.ィ!
l::V::{/::/ ／j::| /:レ‐く:::/ __／,／|
l'＾∨:::l / /;. '"´ ! } ／ /_ノ __l
|: : :＼/／ l j´-イ/ ∠ノ!
.l:ﾍ: : :l:::l ,⊥く__／/__/,ィ ﾊ＼
V:＼ﾉ:::l i ／:;: ‐ﾐ､ }´ｰ/ /lリ |
', ﾄ､:.､ v'‐:':_∠_二, /_ノ ）,ﾉ_/
' ﾋｸ} <弋ｿ／ l ﾄ､__,ノl ケンシロウ、あまり思い詰めてくれるなよ。
. ', ﾊ ヽ ￣ .! | /
∨ l ! /
. ヽ-=' ／ /
こ二 ｰ ／__／ /
Ｖ , イ ｀ヽ、 │
|｀ｰ＜ 〈ﾄﾟ_ﾟｨ::::| !
＼ ヽlー':／| /
ヽ /ニ/ | /
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| 『緊急事態対策班』長、北斗ケンシロウ。
| その肩を気軽に叩いてから、『狂死』はカミナに歩み寄る。
|
|「先に私から、未だに警察にいるネウロとアセムの事を追求しておく。カミナくんは素直に頼むといい」
|
| 腹を割って話したほうが、阿部さんは協力してくれるはずだ。
| 面倒な裏のやり取りや腹芸は得意な奴がやれば良い。
|
| 二人を見ながらケンシロウは拳を握る。
| 絶え間ない無力感と失望が、炎のように自らを包むのを感じていた。
|
| ラオウ、トキ、ジャギ……三人の兄を失って手に入れた『四天王』の椅子。
| 本当は、少しも欲しくないもの。過剰な期待と実力に見合わない評価によるもの。
|
| 失われた家族、失われた蒼星石。
| 本当は、何よりも大切なもの。すべて砂のように指の間から零れ落ちた。
|
| どれだけ大きな手のひらでも、ほんの僅かも掴めない。
|
| 大きく溜め息。どこで歯車が歪んだのか。
| いつからか、かけ違ったままの感情。
|
| アリカやカミナの様に、まっすぐな心で生きたい。
| なのに、ケンシロウの心は抑圧されて酷く縮こまったまま。
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 本当は、やらない夫を殺すつもりだった。
| 蒼星石の言葉の意味も理解していた。
|
| だが、彼女と誰よりも近いやる夫とやらない夫が邪魔だった。
| やる夫を殺せないならば、せめてと。
|
| 八つ当たりのような感情で、本気の殺意で襲いかかった。
| だが、結果はご覧の通り。
|
| ケンシロウは考える。それは、己の心の弱さが原因だ。
| もはや迷わぬ。言い訳もせぬ。
|
| 蒼星石が、もしも本当にやらない夫のところにいるのなら……。
| 実力で奪え返そう。
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| やらない夫を、殺して。
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| おお、愛で空が落ちてくる。
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| さまよう心が熱く燃える。
| 全てを溶かし、無惨に飛び散る為に。
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| 愛を求めて明日を見失われた。
| 微笑みは忘れられ、闇は憤怒で切り裂かれる。
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| ……誰も気付かぬままに生まれた破滅の兆し。
| 呼称の戒めを壊りてそれが東京に表れる刻は、近い。
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☆ 次回予告！
恐怖に震える学園に、一人の男が帰還する……！
生徒会の恐怖政治。
密告を推奨するやり口。
理不尽な暴力。
連れてかれたら戻らない生徒。
廃校舎の片隅で、悲鳴と嬌声が止むことなし。
立ち上がる生徒。
見せしめの醜態。
目をそらす教師たち。
誰も被害者にはなりたくない。
なんという卑劣。
なんという邪悪。
閉ざされた学園に、血路を拓く男がひとり。
次回、最終幕六十三話『学園血風録』
果てに見るのは破滅か死か。
狂死はよく見てるな
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|:::￣::::::￣:::｢`ｰ' のばら？ のばらって言った？
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| 学校に異変が起きたのはやらない夫の犯行声明から三日後、つまり『第二の夢』の前日からであった。
|
| やらない夫の声明＝『モーリアンビル襲撃』である。
| わお、あれから作中では四日しか経ってないの？ 作者すら驚きだ。
|
| とにかくあの当日、襲撃を受けたジョニィ・ジョースターは護衛を雇った。
| あの日、新宿駅の地下でガンダムに襲撃されて命からがら逃げ出した男、『十字軍』のオズである。
|
|「報復は必要だよなァ、まさかやられっぱなしなンてあり得ねェだろ」
|「だがねオズ、犯人が分からない」
|
| この学校の生徒で、ベルソナ使いであることだけ。
| ジョニィはペルソナ使いという異能者の存在は知っていたが、誰なのかは把握していない。
|
| どれだけ怒り狂っていても、相手がいなければ拳を振り下ろす先もない。
|
|「クク……へただなあジョニィイ。へたっぴさ……..！ 欲望の解放のさせ方がへた….！
| ジョニィが本当に欲しいのは……こっち」
|
| オズが顎をしゃくると出てきたのは、筋骨隆々の『十字軍』に捕まえられた男女。
| ごく一般的な生徒にしか見えない、恐怖と涙で顔はぐちゃぐちゃ。猿轡と手錠で拘束されている
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､ ＿ ＿_
ﾄ､_＞ ´: : : : : :＞ 、
〉: : : : : : : : : : : : : _:.
､ｰ イ: : : : : : : : :＞ ⌒´ ヽ
｀7: : : : : : : :イ '.
{: : : : : : : : : } } こっちの男を….ボッコボコにしてさ……
,.イ: : : : : : : ﾉ ー-_､ x≦ その後で目の前で女を犯りたい……！
￣｀V⌒ヽ : { ヾ赱ィ {ﾔ|
}ヽ て }ﾉ ヽ }
|: : >ーﾍ _＿＿´! だろ….？
＿＿|: :ﾊ ヽ ｀ ¨¨´ '
´ ニニミ｀ヽ ＞ .. ＿_.}
´ ｀ヽ Vー- ミ // ｀ヽ
二≧ｘ ､ } } ｀ヽ ﾐ､ヽ'＾ヽ ＼
｀ ＜≧x.ﾄ､ } } ヽ ＼ﾑ _ ､
ヽ｀＜≧xr――＜:: :｀ヽ .}
三≧ｘ ､ ＼ r┬｀ ＜:: :: ::ヽ:: :: ＼/
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|「ソイツは………………最高だな！」
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| 言い訳は何でも良かった。
| 『教会』の、シロッコとオズがバックについたジョニィには、誰も刃向かえない。
|
| ジョニィは『テロリストやらない夫に協力する反教育的勢力』が学内に潜んでいるとし、疑いがあれば捕えた。
| 捕まった男はサンドバッグ、女は輪姦。
|
| 最初に捕まった男女は、昼休みに立入禁止の屋上でお弁当を広げていただけのカップルだ。
| その日の内に他に三名が捕縛された。
|
|「生徒諸君、昨晩は『よい夢』を見れたかい？ 今日からこの学園は僕が取り締まる。
|
| 各々が『正しき行い』を考えて生活するんだ。
| 我々に取り締まられたらどう言う事になるのか、ようく見て考えるといいよ」
|
| 翌朝、つまり『第二の夢』の翌日。
| ジョニィは全校集会で取り締まった男女を見世物にした。
|
| 顔を腫らし、まだ生々しく血を流し、黒黄のナイロンロープで縄打たれた男女。
| 全校生徒が、そして教員たちも恐怖にすくんだ。
|
|「反社会的な、例えば例のやらない夫を礼賛するような連中。
| 他にも風紀を著しく乱す輩がいたら、ぜひ連絡してくれ、もちろん匿名性は守るとも！」
|
| 密告の推奨！
|
|「僕らと共に風紀を守る仲間も募集中だ。君たちの『正しい行い』を待っているぜ！」
|
| ジョニィの部下たちは、全員が覆面で顔を隠していた。
| これは正体を知られずに参加できるという言い訳と同時に、『十字軍』が紛れ込めるというメリットもある。
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, ' ｒ─ュ. i:::::::! ┌‐-ｭ ｧ ＼
／ T i ｌ └‐┘ l i T ´ ヽ!´ ＼
. ,ｲ,ゝ ,. -ﾊ ', i. -─‐-V ,' / ﾊ ﾊ
/ ／ィ／ ＼｀ ー一 ´ ／｀ヽ ＼ ﾌ ､',
i , ' ∠ --へ ｀ ¨¨¨ ﾌ´ニ ‐‐=＼ ヽ. i
Ｖ ／:::::: ＿¨:ヽ ´,.ﾆﾆ..,,_ ﾞﾄ､', <l
/./ｌ:::::､弋i歹 ゝ::i ,弋汐._ﾝ｀ ! ヽ l
/｀i i:::::. ｀¨ ￣.:::::/ i ｀¨ ｉ l ｌ _,､l お楽しみと同時の撒き餌だけじゃあ足りないね。
i,. l ｉ|::::::: :::::::/ , ｰ,、', l l l > .l ここ数日休んでいる生徒を引っ張り出さないとな。
. l,ゝ/i::::::::::.. . _::_:::ヽ! -- ..,,_ l l i
{. i ｉ:::::::／ ‐- ー‐-,- ..,,_ ＞ ､ _.. ⊥、l !
ヽ. ヽﾊ / ‐-､ - .._'_ 〃＼ <丶、 ノ l i.l
';:::/ / _ 〃 ¨7ヽ <＼-'／l i i // ＜)ヽ
/,./ '´ ヽ｀丶、 ' V｀ ー' / / リ＾¨ ｰ' l
ｒ'./ '" 〃＼ｰi ,ﾍ ./ ／ﾚ/＼ ./
/lヽ＼ ヽ─┴- , ヽ＼ ヽ. ', /／ / ＼-‐"
/ ＼ 丶 i::::＼ <＼ ｰ‐'／ /＼
. / ＼ ﾉ:::::::::｀ ｰ'::::/::.. / ＼
' ⌒ヽ ,ﾊ:/ : .::::::／::::::::: ,. ' 丶
/ /l＼ i ,. イ:::::::::::::::::. ／ ＼
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|「流石ジョニィ、頭いいな。だが、学外だと警察沙汰にされちゃ困る。
| まずは登校勧告して無視したらにしようぜ」
|
| オズとジョニィは恐ろしく相性が良かった。互いの悪知恵がさらにお互いを加速させた。
| もしもここにオズの姉オズマがいれば、ジョニィの太鼓持ちみたいな事をするオズに不審を抱いたかもしれない。
|
| だがここに彼女はいない。
|
|「それにしても、何かしらのヒントがほしいね。誰か詳しい奴は居ないもんだろうか」
|
|「クロトワって教師は行方不明になった理事長の太鼓持ちだったンだろ？ 締め上げようぜ」
|
| そんな訳で、ジョニィの太鼓持ちをしていたクロトワは凄惨な拷問にかけられた。
| だが、彼は何も吐かなかった。何も知らないの一点張りで、拷問する側が疲れるほどだ。
|
| そもそも『十字軍』は『異端審問官』と違い、ただただ治安を悪化させるためだけのチンピラ集団だ。
| 弱者をいたぶるのは得意だし、嘘の情報を歌わせるのも得意だ。
|
| だが、情報収集にはまるで向いていない。
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〈 V人＿_,ノ ﾉ＿＿☆ ☆ ☆ 〉
|//＼＿＿／ u ＼＼ ☆ / ＿＿__
|/＼＿_{ {（､＿__ノ￣ ＼＼☆ 〉/⌒ヽ 〉
＼ {_ﾓｔ} ノ芹苅 u ＼＼ ☆ 人＿_ノ ∧＿___／￣￣￣￣￣＼ うげぇ、もういい。
{ / ｀¨¨´ u |＼｀＞ .＿＿}＿＿,/ ∧三ノ＼二二二ﾆヽ / そこまで見たくない。
∨/ } |V/＼ ＿___／ 厂 //ニニニニﾉ /
＼ __ u } | ∨ ＼＿＿____ ／ /二二ニ=イ /
∧ | ＼ ===イ. ／ /⌒＼
∧ニ-==ミ ﾉ| | ＼＿＿＿ ＿＿／ ∧
{ｰ─一 イニ| | / ＼＿_／´ ∧
乂＿＿_,,. ＜ﾆﾆﾆﾆ| / / ／ ＿＿＿＿＿＿＿ ∧
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} ／} ／ ／ ﾉ
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| 淡々と爪を剥がれ、針を刺され、ペンチで順繰りに歯を抜かれ……そんな本物の拷問は、ジョニィもゴメンだった。
| オズは肩をすくめて終わりにした。そもそも、クロトワの拷問なんて無意味な遊びだ。
|
| ……何故ならオズは。いや、オズの形をしたアリー・アル・サーシェスは。
| ペルソナ使い達を『夢世界』で殺し合わせた黒幕であり、当然ながら全員の顔と名前と能力を理解していた。
|
| そして、他でもないジョニィに、二基の『法務官』を与えたのもサーシェスである。
| それによりジョニィはペルソナ使いに対して絶対的に有利な『捕食』と『貫通』の能力を有していた。
|
| 『タスク』とジョニィが呼ぶ爪の弾丸は、ペルソナによるどんな防御も容易く貫通し、癒せない。
| ジョニィが先日の襲撃を生き延びたのは、その能力のおかげである。
|
| ……しかし、与えられた力を、彼は己のものと錯覚していた。
| 愚かにも増長し、自分を無敵と誤解した。帝王の様に振る舞った。
|
| 愚かなりジョニィ・ジョースター。
|
| その喉首を掻き切るだけなら、ナイフ一本で事足りるというのに。
| どんな不幸も自分を避ける、己は不死身、永遠の絶頂！
|
| そんなもの、ただの錯覚に過ぎないというのに。
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|「というか、その、欠席者多いね」
|「陰キャは陰キャらしく息を潜めて嵐がすぎるのを待つべきでは……？」
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| そのクラス、早い話がクラスまるごと『夢世界』を探索するペルソナ使いの一年○組。
| 『破滅願望者』五名と協力者四名、アドリーム亡命組三名、チームやらない子四名。
|
| そしてやんねえ香、ロラン、刹那もいなくて欠席者十九人。
| その他、モブ同然のペルソナ使い八名！ そっちは全員出席。
|
| そのモブの一人に、チームやらない子の戦術顧問として束の間のハーレム気分を味わっていた貞山青葉が居る。
| 青葉は胸をなで下ろしていた、タカオ達が欠席で良かった。あいつらは何をしでかすか分かったものではないからだ。
|
| …………昨晩、世界を滅ぼしかけていたとかも当然知らない。
|
|「変な正義感で下手な動きをするべきじゃない。僕らは、その……」
|
| 青葉は三人の友人とつるんでいた。四人でモテない陰キャグループだ。
| まあ、いま尻すぼみに窘めたの橘飛鳥は彼女有りのイケメンなのだけれど。
|
|「でも……ヒーローになるチャンスだ」
|
| そう熱っぽく語るのは早瀬浩一。
| 目の奥に揺れる炎はどこまでも狂信的。
|
|「やめておくべきだ」
|「彼女がいる色男は違うよな」
|
| 浩一の皮肉に飛鳥は一瞬言葉を詰まらせ、そして絞り出すように頷いた。
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,' .! .;! .:/ l.:::;' l:::::::;.. .;!:::|.',::l
,' :,' .;l: :. .::/ .,':::,'. ';:::.|.ﾞ;:. :. .l.!;;'; |::|‐､ そうだよ、僕にはキャミィがいる。
/;/:. .:;ﾞ!: ,!: .::/ ,':;/__,,,.ヾl- l::. !:::..::l.|,' ./l;| ヽ、 僕がしくじったら、キャミィが酷い目に合わされるんだ。
//!:::.. ,' .:,'､|::../|::. .: .:;:' ;:/_,,...,,＿! |::.l!::::// r' l! `''
l'ﾞ ﾞ､:::. l､. :.. .::;' ._l:::ﾄ､',::::::::. .:::,',／/,ｨ､ノ::::| ゝ |:/.|::/ / ! だから……。
|. ﾞ､::::|. ﾞ､;､. ./､,r'l:l､ﾉヾ;::::::::..:::/｀`/ ､`'-‐'ﾞ／ lﾞ .l/ |‐'!
! ﾞ'､:!.:::ヽヾﾞ ',` l`'‐' `､:!､:..:,' ｀￣´ ´ ,' l / ／
. / ﾞ'､:::::::::::::::::ﾞ､ ｀'''" ヽlヾ,ﾞ / / / ／
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ヽ:::::::::::::::::::::::::l. ` ､ ､_ _,,. -‐‐- ／'" ／ ／::::::::::
'､:::::::::::::::::::::::＼ ｀ヽ. ￣ ／ ,' ／:::::::::::::::
. ＼:::::::::::::::::::::::::ヽ.、 ＼ ／ / ／::::::::::::::::::::
l:::::::::::::::::::::::::::::::＼ ヽ､.,＿,,／ ＼ / ／:::::::::::::::::::::::::
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| 視線をそらす飛鳥。同じく青葉と、もうひとりの友人アーダン。
| アーダンは夢世界の戦いの中で恋人ができていた。
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| 青葉？ タカオもはやぶさもやらない子も青葉のことなど眼中にないのでただの自意識過剰である。
| だが安心してほしい。アサギは青葉から臭う主人公の気配にいずれ殺そうと思っているはずだ。
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|「どいつもこいつも……」
|
| 机を蹴っ飛ばし、一人立ち上がる浩一。
| だがタイミング悪く担任教師が入ってきた。
|
|「みんな、休みも多いし今日は学級閉鎖にします。早く帰ってください」
|
| 青褪めた新任教師マリナ・イスマイール。
| 若くて美人だが、最近は心労でやつれ気味、髪にも艶がない。
|
|「それと……誰かクロトワ先生を見ませんでしたか？」
|「いいえ、来てませんけど」
|「そう……」
|
| 副担任であるクロトワ、彼が虜囚として拷問を受けていることはまだ発表されていない。
|
|「危険だから、早く帰ってくださいね」
|
| 落ち着かなく視線を走らせながらそれだけ言うと、マリナは早足で教室を後にした。
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/ /´:::....､￣ ￣ ｀ ｀ヽ、.
. /:::::::／ ヽ｀ ｰ-... ＿
/::::::::'イ , ヽ. ＼::､ー'´
/:::::::::::::'´i| ,､ }｀ヽ、ヽ＼
. /::::::::::::::::::::{ ,:'::::: ー‐''´ヽﾉ:::::::::::ヽi::::＼
/::::::::::::::::::::::::ヽ'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ.__
. /:::::::::::::::::::::::{:::::::::::::::::::::::::::::::::::,':::::::::::::::::::ヽト一'⌒
/::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::!::::::::::::::::ﾐ=‐
. ,':::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::/:::/::::i:::::::::::八::ゝ
. {::::::::::::::::::::人:::::i:::::::::::::!:::::::::::::/:::/:::::,'::::::::::::::::!｀
Y::::::::::::::,ﾍ＞乂ﾉヽ、::!::::::::::/ﾘ从<ｲ:::::::::::::ﾄ､! マリナセンセも言ってたし、帰れよ。
}::::::::::::::ﾄ､Y瓦ﾄ｀ﾐト}}乂::::/ィ(ｿ) ﾉ从::::::::::{ 俺は残るぜ。
,'､ﾄ､iヽ､ゝ｀ﾆﾆ´ ヽ′ﾞｰ‐' ｲ::::::::::::乂__
八:.:.:.:.:.:｀ト.､ i /＼ﾄ､从 ヽ､,ｒ','⌒ヽｰ
/ ＼::.:.:/:::::i _ 〉ゝ /::.:.:.:.＞:.:... ＞"´￣
／ ﾉヽ: ｀Yヽ:::ﾉ ､. __ _ ´ ／ . . :. :.＞ｆﾆ二￣＿
／: : :/: : :i { 二´ ..イ´:::::::::::::/´￣￣ヽ、 : ::..｀ヽ、
.:. : : : : iﾊ . ヾTﾄ､ ／__ｘ'´￣ｒ'´￣｀ ー― .::＼: : : :.:.:＼
: : : : . : : :j i ｒ‐‐一≠´ゝ--'⌒｀ニ´｀ ヽ＿＿__ヽ、
. : : : :' : ｀こ´.....イ¨｀ヽ ー:::::::､ ...:＜:.:.:.:.:.:イ／
. / ｜ ＼ ＿i..二ﾉ ,.＜´:.:.:.:.:., '´￣
ヽ (´＿＿__、＿＿..ィ´￣ ＞イ
／ ￣ ｀ヽ i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::＼ イ::::i !
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|「だが、浩一……」
|「早瀬ッ！」
|
| 突然、隣のクラスの生徒が飛び込んできた。
| このクラスの生徒数の少なさと、集まる視線に一瞬怯む、だがすぐに目的を思い出して叫んだ。
|
|「矢島が連れてかれた！」
|
|
|
| ……矢島は浩一の幼馴染である。
|
| 彼は爽やかで、運動もできて、人気者で、そして……正義漢だ。
| 浩一がいじめられていたのを見咎めたように、ジョニィの蛮行に正当な抗議をしたのだろう。
|
|「矢島ぁッ！」
|
| 血相を変えて飛び出す浩一。
| 友人たちは金縛りにあったかのように動けない。
|
| 飛び出して、何をする？ 何ができる？
| 酷い目に合わされるだけなんじゃ無いのか。
|
| 残された生徒たちは気まずく互いに視線を避けた。
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/: ∧／: : : : : : : :_:_;:-'"-‐‐ ､
k ./: : ::/: : : : : : : : : : : : : : : : : :--≧ｰ─-- ､＿_
l:∨: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :_,.-'"
l: i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :＜＿__ ,.-― ＿,. -‐―'"
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.i//: : :,ｨ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : _,. -‐'"￣ __,.-‐ '"￣
. /: : ﾒ, l: : : : : : : : /＼: : : : : : : : :＝ニ´_,. -‐'"￣
ｲl: : <rⅥ: : : : : : / _,.=ヽ、: l＼l｀＞＝´
l: :ｲl･ ∨＼: : : j≦≠==＞‐'"￣/ /
ﾚ' l ｰ-'' ＼/≠´_,.='" / ./
//l/l／ {::::i i l
{ く__ i､::li ＼ ＼ ＿
〈_ ヾ´ 〉ﾊ ヽ､__>､ ,. -‐'"_,.￣´
. ｀ヽ、 ヽ_〉 ＿＿／ァ-'"<＿≦二＿,. -──'"￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀¨ー----､＿
ヽ=ニヽ く＿ソ_ﾉ-'-_'ブ ＼＼三三三三三i__==≦三ム
ヽ7 _,.-=ニ､_,.=ヽ、 l三ヽ､三三三三三三三三三ヽ、 __
＿ __｀フf´ 〔: : : : : : :〕､ l三三ヽ三三三三三三ﾆl三三ll≧-仏＼＿＿
三三三三<三三i ｀ヽ: : : 〈 ｀丶l三三三ヽ三三三三三ﾆl三三ﾘ三//三三三三≧ー､
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|「ひっ、痛いッ、や……やめ、ごめんなさい……！」
|
| 岩みたいなパンチの一撃で鼻が折れ、涙と鼻血を垂れ流しながら浩一は土下座した。
| 引っ立てられる友人を止めようとして、問答無用で殴られたのだ。
|
| 遠巻きに見る一般生徒、誰も助けようとはしない。
| 浩一は悔しさと恥ずかしさで涙が出た。だがそれ以上に暴力への恐怖が強い。
|
| これ以上痛いのは嫌だった。
|
|「おい、そいつは関係ないだ……うげぇ」
|「やじ……ッ、ひい」
|
| 腹を殴られ吐瀉する友人に顔を上げる友人、だが、目の前に突きつけられた警棒に意気地が萎える。
| 情けなさで涙が止まらない、目の奥がツンとする。ペルソナで立ち向かうことも思いつかない。
|
| そんな折。
|
|「学校は暴力を振るう所ではござらぬ」
|
| 突然現れた男。真冬なのにコートも着ない薄着、ひらひらとなびく左袖。
| 遅刻への罪悪感も、最近続いた無断欠席への興味もなし。
|
|「なんだァてめえ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿＿ , 彡三l
く川三三三≡ヽ彡ｼ
, - 彡=≡ 三彡彡彡｀ <
, ' 彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｼｼl , '⌒
／ﾉﾉl〈〈从川シシ彡彡彡彡シシl_ノ
,'｀〈ミﾐﾐﾐl|l|//彡 '´:::）:::::｀彡彡シｼｼｿﾄ､
ﾐミﾞﾞﾞlﾞﾞ" / :::::::::=彡彡彡ｼ_ｼl ヽ､_
/:ﾐ ヽ、 l ::::::::::::::::::::::彡/r.ヽ| .
! l ｀ !._ｚ‐'´;::::::::::::::〉/i : }| どこの野良犬だ？
ヽ....__ 、..,zｨ て刀´::::／::!! ）ｿ/ﾉ
∧fてﾊ.､ :::::｀ゝ' ´:::::::/:::::::::::／,ｲﾄ､
l ヽ‐ '´:l ::::.. ::::::::::::::::::y'´:::F 、
l '、 } ::::: :: :::::::::::::::::l::::::::∧ !
｀ ＼ ゝ-:'´ ::::::::::::;:::::::::/:::ヽ
＼ ←-..→ ::::::／:: ::!:::::::ヽ
＼｀´ .:／ :: :::::::::::::＼-､
ゝ-- イ:: : ::::::::::::::／ ＼
l : .:::::::／ ＼
, - ／/|:: : .:／ ／ ￣￣｀ ー
／ ／ / ! : :: ／ ／
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| 警棒を振りかぶった覆面男、無造作に打ち払われて意識不明。残り二人。
| 片方は無口な巨漢、浩一を殴った張本人。
|
| 源之助は肩を怒らせる巨漢の覆面の顎を、裏拳で軽く叩く。
| 一撃、膝からくずおれる巨漢。怯える最後の一人、源之助に睨まれて失禁。
|
|「まさにあの男の言うとおりだな……『剣に生きるものは』」
|
| 剣によって死ぬ。理不尽な暴力を、より理不尽な破壊が駆逐したに過ぎない。
| 源之助は倒れた巨漢の覆面を剥ぐ、砕けた顎、白目を剥いた見知らぬ大人。
|
| そもそも、日本人ですらない白人男性。『十字軍』である。
|
|「拭け」
|
| ざわつく生徒のただ中で、源之助は懐から取り出した手拭いを浩一に差し出した。
| 震える手で受け取り、鼻血を押さえる。
|
|「俺はいずれ『剣で死ぬ』。だが、お前もそうある必要はない。よくぞ堪えた、早瀬浩一……俺には真似できん」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,／.:.:.:.:}／Ｖ´￣.:.:.:√.:.:.:.|::::::::::::::.:.:.:::.:.:.:.:.:.:ヽ
,／ｨ:i :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.N::::::::::::::::.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ
|:ｌ.:.:.:.:.:./:L..__ﾊ/:::ﾊ.:.:.:.:|::::::::ﾊ::/iﾊ:.:.!.:.:.:.:.:.:.:.:.
,:.:ｌ :.:.:.:.::! r‐z=ミ｀ヽ}∧:.ｉ/ｌ/七弍 W'l:.:.:.:/Wi::.
/ｨ:ｉ :.∧::| Ｌ込夕 N ' [rク) } |.:.:/:::::::!:ｌﾄ､
ｊ:. :ｉ{ ィ:l { ￣￣¨ }}: イ::::::!:ﾘ
,}:八 N :| }} 从 ﾉ:::::ﾊ′ 違う、俺は……。
j/ ､:.:ヽ ij ′ /／:::ﾊ/
ヽ:::. r─ 、 /:ﾊ/V
}/ヽ ¨ニ¨ .ｲ/ 、_＿
.／/:ｉ:ｉ:ﾊ＼ ／,:i:i:i:i| …=ミ
_ ． -‐=／／i:i:i:ｉ:{::. ､ __ . ィ /i:i:i:i:i:l
／i:i:i:i:i:i:i:ヽ::. //i:i:i:i:i:i:i|
ヽi:i¨¨ミ:､i:i:i:. , ':ィ=＜八
/ :i:i:i／!＼i:i. ／,:i:i:i| ｀ :＼
./ }／ | 〈ヽ} ／く:i:i:i:i:i!
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|「破壊には訓練が必要だ。心のな」
|「…………」
|
| 言葉足らずな源之助。だが、彼が浩一を励まそうとしているのはなんとなく理解できた。
|
|「矢島は……」
|「アーダンが保健室に連れて行ったよ」
|
| バツが悪そうに声をかけてきたのは飛鳥。
| 浩一が殴られている間も、足が竦んで助けに出れなかったのだ。
|
|「ならばお前らは早く下校しろ」
|「藤木はどうするんだよ」
|「俺は俺を救わねばならん」
|
| 生徒会室を、ジョニィ・ジョースターを目指すのだ。
| この暴力の乱痴気騒ぎを終わらせるために。
|
|「でも武器もないのに」
|「野良犬相手に表道具は用いぬ」
|
| それに……源之助はその先を口にするのを憚られた。
| この手は誰かを助けるのに取っておかねばならん。
|
|「ナイスな、展開だよ」
|「なんだと？」
|
| 鼻血を拭い、しかし曲った鼻と涙で腫れた目をして浩一は嘯いた。
|
|「お前だけに、いい思いはさせないぜ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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rﾆﾆヽ_＿__ _＿_r= ﾆ /
＞ 、＼＼ ｀ヽ__/ ／ ／
/ ヽ、＼} r ＝ / ／
,' }:::＼ ヽ / ,<
l -‐‐::::::::} l l /::::',
l ／, ―‐ 、ノ ll/￣ヽ',
l l:::/ ＼ ,' }
V l:l ヽ ｌ ,'
',:ヽ; l l /
l::::::＼ ｌ l /
ヽ:::::{ ＼______.l l＿/l ドーモ、ガンダムです。
_＿__}::::::＼ l ,' ,' //｀ ヽ
_ ＜/ l＼‐一]二l lﾆ[/ } ヽ、
/ l l l―― r￣´ ／ ＼
l f ﾆニニ ＞__ｌ} /_＿_＿／ /二二 ヽ
l____ / >－ / ヽ / > 、
l / / / ＼＿/ ／ ',
Ⅵl / / /l l ／::ヽ
Vl / / / l__ l l:::::::::::l
〉￣ ヽ__ ／ ￣￣＼ ,'l l ｀ ￣￣ ´ l::::::::::l
l ヽ＿____ヽ_＿＿_／＼ / l l―― 、 l:::::::/l
V=', l三l／＼ ＼_＿__,/_/ ',ヽ ＼ ｀￣ ヽ
l:::::', l三ｌｌ ＼_＿__／ / ;ｰ｀ヽ ＼ ',
/:::::::', l三ll l / У ＼ ',
./l::::::::::} l三ll l__,'_＿＿＿__ ／ ＼ ヽ l
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「アイエエ！ なんで新宿地下の怪人がこんなところにいるんだ！！？
| ストーカーか！ オズさんのストーカーか何かか！！？」
|
| こちら、裏門前。
|
| 逃げ出そうとする生徒を待ち構えていた『十字軍』は、突然エントリーしたガンダムに半狂乱。
| この男、運がいいのか悪いのか。
|
| 四日前の新宿駅地下でダブルガンダムにボコボコにされたひとりである。
| 即座に戦意喪失し、持ち場を放棄して逃走……の前にふと正気に返った。
|
|「おい、このあとはやられたふりして寝てるから、一発殴ってくれ」
|「だったらなんで封鎖してるかと、何が起きてるかを教えてよ。ついでにあたしの仲間にならない？」
|
| 心揺れたのは一瞬。だが、裏切り者に容赦はない。『教会』の手は世界規模。
| ついでに、腐っても『十字軍』なのだ。これまでやった蛮行を知られてもヤバい。
|
|「ジョニィ・ジョースターとオズさんが手を組んで敵をあぶり出している」
|「一般生徒も巻き込んで？」
|「ファックし放題でアブハチトラ……へぶっ」
|
| 要望通りの右ストレートで顔面を粉砕されて男は昏倒。
| ガンダムはぎこちなくベルトのスイッチを操作、電話をつなげる。
|
|「もしもし蒼星石さん、大変大変！ 学校が『十字軍』に占領されちゃってるよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＞―:::::::::::::::::::::::V::<
／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
ゝ---‐彡'´:::::::::／::;::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
￣／／:::::::／::／l:::::l::|:::ヽ::::::::ヽ::::::ﾊ
ー＝ﾆ:ィ::/::l:／::／::::/:::::l:::＼::ヽヽ::::l::::::::l
. /::;l:／-イ:l､:::::::::::/l::/l:∧::::}::::|::::::､＼
l::/'l:::::::::::トl_ヽ:::::///ｚl左∨:::::l:::::::::::‐≧-
l:{ ゝ::::::::{代ｆｊﾍ:{/´ 弋ﾁ, }::::ﾒテ:≦≠- 何をしている？
`ゝ ヽ::l:::≧= }｀ ￣ ノｨ/´::l/
ｊ/ヽlﾍ 丶 彳!:/
´ l´ ヽ、' ⌒ ／ノｨk1
／＞‐ 彡 ´￣ 〉
{:.:￣￣ .:.:.:.:.:└-､_
＿／＞:.:.:.:.:..:.:_:.:-‐:.:.:. ´.:└┐
__/.:./ ./:. :.:.:.:￣:.:.:.-‐ .:. _ -‐'＾｀ア ヽ
. /l/.:. 人:. .:.:.:.:. _､-‐ / ∧
{/ .: / ＼＿__ -‐ ´ ∧
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l.: .:.:. | , ﾟ ヽ| l 〈
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 三人の覆面男。羽交い締めにされた女教師、ブラウスが引き裂かれ、豊かな乳房が恐怖と寒さに震えている。
|
|「仲間に入りてえのか？」
|「その服はマリナ・イスマイールの一張羅だ！」
|
| 明らかにずれた激昂、遅刻を詫びるために担任教師を探していた刹那。
| 蛮行を止めようとして、逆に毒牙にかかりかけていたマリナ。
|
|「駄目よ、刹那！」
|「トランザム！」
|
| 刹那の叫び、三倍早くなるわけでもなければ粒子化するわけでもない。
| ペルソナも使わぬ、それでも一瞬の攻防、マリナを羽交い締めにしている一人を残して二人が吹き飛ぶ。
|
| 見違えるような動き、空手と剣道と軍隊格闘術の応用。
| 『普通の女の子』と組手をしながら仕上げたもの、ペルソナに頼り切りにしない戦い方。
|
| へたり込む最後の一人。
| 服を整えながらマリナが刹那から彼を庇う。
|
|「どけ、マリナ・イスマイール」
|「どきません……彼はもう戦意を喪失しています」
|
| 両手を広げて立ちふさがる。やぶけた服から溢れる乳房から目をそらし、刹那は脱いだ上着をマリナに差し出した。
|
|「お前が無事ならそれでいい」
|「ありがとう、刹那……それで」
|
| マリナは頬を染め、刹那の上着で肌を隠しながら震える覆面男に向き直る。
|
|「クロトワ先生はどこですか？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿／￣＼
＿／￣￣￣ ､ ＼
／￣￣￣￣ }ﾊ }＿＿＿
. | }ﾘノﾘﾉ -====― ＼
. ﾉ ＿＿＿ ﾘノ´ =ミ、＼ ＼
／ r/⌒ /} } ﾊj}ノﾉ ￣＼ } ヽ
. ／ ｌ| r┘ﾊ/川ﾚ ￣＼
{＿ ﾘ___,ﾉ{ '⌒j } ＼
}__ ﾉ ｲﾍ {_ ｢{ ) }
. )し/ﾚﾄ 寸 リ/ / | l | ｌ | ｌ /
// / | ＼} j｢ { ﾊ i{ ｌ| ｌ| | l | l | ｌ /
＼/ k芯{ r―＜ { { { i{ ｌ| ｌ| /
/ _／／⌒￣__¨ =‐-＜__|＿{_ l { | l } l /
. / ｢-{ ノ ＼ 芯ｩx、 ￣￣〉〉 ヾ リ |
. ′弋_}＿}´ ヽ乂込ぅｰ /ｲ{ |
. ⌒ヽ j/人＼ {
. ＼_ } ﾉ＾ ／￣￣＼ jリ l ふん、マヌケめやらない夫。
. / ) ＼/__r'⌒jヽ ﾉ // /
{ ヘ＿ ﾉ__／／ | /∧/
ト ＿＿ ／ (＿＿__／ // /
＿＿_| ≧ﾆ=ｰ-----＜￣￣￣￣￣} // /
.. ／ニニ三| ／ / / / .
三三三三ﾉ／ { ／ /
ﾆニニニ／ ／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
ﾆニﾆ／ ／ ＼
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ジョニィ・ジョースターの手下として辛酸を舐めているディオは、ポケットの中のナイフを弄んだ。
|
| いつのことだったか、これを持っているのをやらない夫に窘められたことがある。
| ナイフを使うことで、ディオの人生まで壊す必要はないと。
|
| …………だが。
| 今はどうだ？
|
|「このナイフ一本で、何人の人生を守れると思う？
| このディオにとって、取るに足らない他人共の人生など道端のタンカスほどの価値もない事ではあるが……」
|
| 貴様にはそうではあるまい。
|
| ディオは覆面の下で不機嫌に鼻を鳴らした。
| 怯える一般生徒をひと睨みで黙らせて、悲鳴の漏れる生徒会室へ。
|
| 下品な笑い声と苦痛のうめき、涙ながらの懇願のコーラス。反吐が出る。
| ディオはノックして入室、中の惨状に眉をしかめながら進み出た。
|
|「ジョースターさん、報告したいことがっ」
|
| 早足で駆け寄りながらナイフを抜く。
| 何が起きているか理解せぬまま振り向くジョニィに、ディオは体ごとぶつかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
復讐の刻、来たり！
憎い憎いあの男。
妻の仇。妹の仇。己自身の仇。
その凋落に手を叩き、復讐者たちは死体蹴りにと身を乗り出す。
おお、だが、彼らはまだ気付いていない。
誰が狩るもので、誰が狩られるものなのか。
次回、最終幕六十四話『狩人と罠』
果てに見るのは破滅か死か。
見事なり、テッポダマ・ジツ
治安が終わっている。世はまさに世紀末
おお乱世乱世
虎眼流的には しっかと抉れィ！と声が聞こえそうだな
乙
殺ったか！？(故意犯)
まあ絶対殺すタスクといえど極論で言えば拳銃と変わらんのなら不意打ちだよね・・・
ガード不能、治癒不能でも別に自動迎撃してくれるわけでもなけりゃ防御能力があるわけでもなさそうなんで
′/ ｌ ! ￤ ＼
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| 、￤ ｢￣l 冂 ﾄ､ 「冂 ｢￣「 | | l 『『血族』に動き有り。
| ﾄﾐ＿｣ =＝=ﾐ|_| , =＝ヨミ| | | やらない夫、蒼星石の重点捜索。
| l ; 〈 '､弋'丿 弋'丿/| | | 両者の安否確認も含む。
| l ｌ ', ｀ー , ー ´ | | |
│/ | ', ' | | | 本日中に『新宿駅大迷宮』に威力偵察。
|' | ', 〈 | | | 『緊急事態対策班』やる夫含むほぼ全員投入。』
| ─┐', _＿＿__, |＿ | |
| | ｌ＼ 丶ー￢′ ／ | ｌ l
| | | l ＼ ヽｰ ／ | l l
| | | | ヽ , ´ l l !
| | | | ｀T´ /l ! ＿/＼ ',
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| | | | ／ ／ l ／/ | l ヽ
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| 黄泉からの通信は最低限の事だけが書かれた紙片であった。
| 折り紙の『鶴』の形をして届く『オリガミメール・ジツ』目的の人間以外が触れると灰になり復元不可能。
|
| 電波でのやり取りは危険なのでと、黄泉が秘術を解禁したのである。
| 情報収集にとアリカと刹那を登校させた直後にこれである。
|
| 受け取った蒼星石は一瞬躊躇い、しかしアリカは呼び戻さないことにした。
|
|「ニャルラトホテプを含む面子であるなら、下手に説得できても危険があるでおじゃる」
|「突然戦闘になった場合の被害が想像つかない」
|
| それはニャルラトホテプの正体を暴露した場合も同じだ。
| 排除したいのはニャルラトホテプただ一人。犠牲は極力出したくない。
|
|「『緊急事態対策班』てのは？」
|「ケンを班長にした特殊部隊だよ。呂布、先代、『狂死』に石田と『ストームトルーパー』」
|
| ジャギが舌を巻く、今の『血族』の総戦力か。
|
|「ちなみに副長にして『情報班』長がジャギ。代行が蒼星石だったでおじゃる」
|「なんで居ない奴が役職持ちなんだよ……」
|
| 困惑するジャギ、彼ほど外からの評価と自己評価にズレのある男も珍しかろう。
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／ ,. ﾊ ＼
／ //ｲ ,/∧ﾊ/∧ ﾊ ＼
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///////バ////! ∨//| ∨ﾊ_∨////;!
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i///////´＿W{ ﾘ / ﾔ!ィ示¨ヽ､ﾘ∨// !
/!////ﾊ{／ ,.-､｀ヽz== x{ ､弋ﾞﾉ＿, \ W斗;|
ｲ///{ ｲ_ 弋ﾞﾉ' ﾟ!:; 乂_￣ ノ | ∧! 時間稼ぎが必要なら、
}'//ﾊ!乂￣ ´ _／.::: ￣￣ !j ﾘ 糸川か十六夜に頼みますか？
jﾊ}八.! ￣ ' ｀ ,′/
′ﾊ /_ノ
ゝﾍ ＿_ //!
}/ ､ ´￣ ｀ ｲ//
}//＼. ／:.:|'/
j∧ﾊ ＞ イ:.:.:.: ;/!
}! } ≧≦ :.:.: ,′
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|「いや、ニャルラトホテプが君らの『夢世界』にどれだけ関わっていたか分からない」
|
| 『夢世界』の主犯格アリー・アル・サーシェスが品川大聖堂で
| 『人間もどき』と『堕天使召喚儀式』を執り行なったことまでは調べがついている。
|
| サーシェスとニャルラトホテプの関係性までは不明だが、ペルソナの情報を持っていないとは限らない。
|
|「ペルソナ無効能力……『法務官』だったかお？ 野郎チートだからそれくらい付けてきてもおかしかねーお」
|「ジョニィ・ジョースターにもそれでやられたんだろ？ ペルソナは初見殺しだが、過信しないほうがいいな」
|
| その初見殺しを連戦撃破しまくったやらない夫が言うと説得力が違う。
|
|「ちなみに、呂布とケンシロウはパワーで異能を突破するタイプだから、よほどの相手でないとねじ伏せられるでおじゃる」
|「先代の浄化や解呪もあるから、魔力の絶対量で負けてると能力の展開もままならないかもね」
|
| こう聞くと、ペルソナ使いは大したことないように聞こえる。
| だが違う、並の相手ならどうにでもなる。
|
| だが、『緊急事態対策班』は格が違う。『血族』でも最高峰の連中なのだ。
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＿＿＿_
／ ＼ とりあえず、
／ ─ ─＼ 糸川さんと十六夜さんのあわせ技で、
／ （●） （●） ＼ 同じところをぐるぐる回らせるのはありだと思うお。
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／ 見つかったら死ぬと思って逃げ腰で。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「危険すぎるのが難点なんだよね……」
|「死ぬより捕まる方が恐ろしいでおじゃる」
|「俺ァ逃げたと思いきや『狂死』に爆弾つけられてて巣で一網打尽が怖いぜ」
|
| だが、『邪悪帝国』の雪だるまたちをむざむざ生贄にはさせられない。
| 何らかの方法で足止めはしなければならない。
|
|「そういえばルカは『緊急事態対策班』じゃねーのか？」
|「彼女は『グレン団』と悪魔狩りをしているね」
|「じゃあ仕方ねェな」
|
| 彼女に声をかけないのかと、誰もジャギには尋ねない。
| 巡音ルカはミストや四ツ目以上に、『血族』の治療が必要だ。
|
| ルカの治療には霊夢が不可欠で。そして、ジャギは霊夢もこの茨道に呼び込みたくないと考えている。
|
|「オレと蒼星石は出歩かないほうが良さそうだな。麻呂さん、雪だるまたちを頼めるか？」
|「ペルソナとやらと麻呂の式神の共演という訳でごじゃるか……」
|「やらない夫、麻呂は足が悪い」「撤退戦には不向きだよ」「じゃあ、ペルソナ使いに任せるか」
|
|「やる夫はでっていうとナシ付けとくお」
|「ンじゃあオレ様が護衛をしてやる、光栄に思うンだなァ？」
|
|「天竜とシグも連れて行け、あの二人は探索に向いてるし勘もいい」
|「助かるお」
|
| 雨宮はペルソナ使いを手配、やらない夫と蒼星石は留守番だ。
| ちなみに不人気は普段どおりに外で情報収集。鹿島はミニスカメイド服でお茶の給仕だ。
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{ニニﾆ=-……-=ミニﾆ心
. ア'´- ､ ＼ ＿｀ｧ''⌒`'く
/ / ヽ ` ､ ヽ ノ! ヽ
,' ', ∨.ﾊ ', ∨
|. | ', ＞‐',. V ﾊ } ∨
| | ﾄ､. '´ｧ _ヽ l/ ﾊ / ﾊ',
| ／⌒ ', ｨツ | } Y. }/ l i!
| ヽ|´_ヽ＼-` ::::::ﾚ'} }リ. j ' i!
|ﾊ . ｨ炒､ } } . // ' i!
}从乂:: _ ノ .l .从// {. ∥ どこかでセクシー展開が必要なら呼んでくださいね！
',八./) ,ｲ /= {ﾊ ∨〃)Y もう、それしか。
,､､_}_ // }＞＜ /｣｣｣｣｣ ヽ-''ノ 私には残されてないんですよぉ〜。
/ / } }/} { ,ｨ::i:iゝ{｣｣｣｣｣｣ゝ― ､ 人
/V__ノノ./公ｲ:::::∨ ｣｣｣｣｣｣｣｣｣ ノ′
/{ { ノ ‐…ミｱ∨ ㍉ ',
/:i:i{ , ''´ } ﾊ.ﾏ. !
(:i:iア´ } { ﾏ ',
／ {{ ,' ﾊ ﾏ ', ,､､､､
. ｧ'/ {{ 八 ヘﾏ ＞＜ノ:i:i:i:i:i:廴
. /∥ ﾏ ,ｲ´ ',ﾏ ｧi:i:iア⌒ﾏ:i:i:ﾑ
{ {{ ﾞ㍉ ,､イ. ',ﾏ く:i:i:,' ｣」」 ﾏ:i:ｿ
, ﾏ ㍉＜. ∧`=《:i{ ､ 寸
. ゝ`㍉ ≠}} ヽ{ ゝ‐ヾ', ,i} }ﾑ.', ヽ＼
≧=-〈／. {{ ==ミ ＿`'＜ ／/./=} }､ｌ {ヽ_〉 ﾁﾗｯ
∧(){{ ,ィ:i:i:i:i:i:i:i:i／::::::{/::::::U:::`'ミ
∧ {{ ,ィ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/:::::::::::/:::::::::::::::::::/｀ヽ ﾁﾗｯ
ﾍ{{ ,ィ:i:i:i:i:i:i:i:i:＞'"::＞―――＜::::/:::::::::::ヽ
ﾍ /:i:i:i:i:i:i／／::／ ~~~''＜ヽ ア''＜:::::::::ヽ
〈:i:i:i:i:i／／::／ ｀ヽ/ `寸::ヽ
}:i:／／::／. '. ヾ::〉
ヽ／::::/ } ∨
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/:::::::/ /:} }!
/::::::/ ./ / 几
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| そんなことはない。自衛隊と渡りを付ける場合は必要となるだろう。
| そして、鹿島が本当は実力者なのではという疑惑は晴れていない。
|
|「そうだ、やる夫。高良みゆきの事だけど……」
|「お？」
|
| ふと思い出したかのような口ぶりで、さり気なさを極力装って蒼星石。
| しかし、声の上ずりは隠しきれていない。
|
|「心神喪失状態で『血族』の病院に入院している。その……鷹野三四の監視下で」
|「それならコスプレ趣味の餌食になってないかだけが心配だお」
|
| 茶化すような言い方に、蒼星石が顔色を変える。
|
|「それだけかい？」
|「それだけだお。『血族』の、しかも鷹野の保護下なら、やる夫にできることは何もねぇお」
|
| 冷たい、無関心とも言える返答。
| 蒼星石はやる夫の襟首を掴む。
|
|「痛えお」
|「本気で言っているのか？ 心神喪失だぞ。幼児退行して見てられない有様なんだぞ？」
|
| 蒼星石は自分がなんでこんなに怒っているのか分からなかった。
| やる夫と高良みゆきが恋人であるという事実を考える度に胸が痛むというのに。
|
| このまま二人の関係が解消してくれたら、手放しで喜べるというのに。
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j三三三三三三三三三＼
,. - = ＝＝＝＝＝＝==- ..、三ヽ
／三三三三三三三三三三三 ヽ三 ヽ
r'三: _, -―r ー -､- ､.___三三三三 ＼三 v
ヽ ｨ'´::::ﾊ ::::::::::::::::::＼ ::::::::::｀ .､三三三 ＼/ そんなに薄情とは思わなかった。
. /:| :::::| l'ヽ::::＼ :::::::::ヽ!::::::::::::::＼三三三 ヽ 見損なったよ。
/ ::ﾊ! ::|!| ｰヽ_‐_＼:::::::ﾘ :::::::::::::::::::ヽ三三三}
' :::l::::ﾊ,:| ヽ ｲj;! /`‐-ゝj :::::::::::::::::::::::::ヽ 三 '
l ::ﾊ::::从乂 ﾚ′ /:/:::::::::::::'::::::::::::l／
| ' i:::r ' /ｲ/:::::::::::/:::::::::::ﾉ _ . _ _
ヽ ヽ:, __ ':::::/ｨ::::::::::::,. ' //￣ Y'
ヽ V_ヽ ./ ::://ヽ _. t‐ｫ,-､ //ヽ
ﾉ＼ / :::,j/ ,.ｲﾊ ' ⌒ヽﾉ-､_ // ＼
/／ヽヽ __ ノ, .イ ノ｢/::::::::::::::::::lヽj_ﾌ__ //^ ヽ
ヽ ::::| _j_ ﾉ､｢/i ':::::::::::::::: ∧ﾉ ,//_ ､ /
ヽ| rﾉ.ｨl.､V/ /:::::::::::::::::::! !::::＼. // 丶 '
//`l||ﾚ/ /::::::::::::::::::::::::ヽj:::::＼＼// ⌒ヽ '
ノヾ / |/ /., -‐- ､::::::::::::::::::::::::::::＼＼. /
,/:::::::` ｲ! // ヽ::::::::::::::::::::::::::lヾ＼ヽー ､/
／ノ:::::::::::/_,.ィ | ＼:::::::::::::::::_::ト､l_:j ﾉ ./
／／ /::::::::/ｲ / ﾉ | | `ー イヽ ノ´ / ' ⌒
丶ー'､ :::::::::://`/／ V 三ノ ﾆﾆゝ'￣´ヽ /
V ノゝ:::::::`:::/ |!〆三三三＼__ /ヾ
,/／ `ー､/ |三三三|ヽ/:::::::::ヽ,
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|「…………」
|
| やる夫は蒼星石の手を乱暴に振り払った。
| 周囲の視線が突き刺さる。すわ痴話喧嘩か？
|
|「てめえにやる夫と高良の何が分かんだお？」
|「それは！」
|「やる夫には分からねえんだお」
|
| 思わぬ言葉に蒼星石は二の句が継げない。
| なんだって？
|
|「高良はやる夫にとって、入即貸本における日常を構成する一人だお。
| それはつまり、あっち側の人間だって話だお」
|
| まあ、どう考えても高良みゆきは日常世界の住人だ。
| 一歩踏み込んでいる不人気やらと違い、完全にただの普通人なのだ。
|
|「恋とか愛とかは、付き合えば分かるかもとは思ったが、結局分からねえお。
| でも、なんだかんだでやる夫も考えた。
|
| やる夫は高良の求める恋人でいられる気がしねえし。
| やる夫は高良に日常側から踏み込まない存在でいて欲しいんだお」
|
|「それはエゴだよ」
|「だが、正しい物の見方だぜ。憶えがあんだろ？」
|
| ジャギの言葉に蒼星石はぐうの音も出ない。
| 代わりに全力の怒りを込めて睨みつける。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼ 高良とは決着をつけるお。
／ （●） （●） ＼ あいつを日常に戻してやる。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ 何があったのか知らねえけど、
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ 十中八九はやる夫が原因だお。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 具体的には水銀燈が原因であるが、その経緯は本人たちしか知らぬこと。
|
|「残りの世界滅亡にメドが付いたら、やる夫は残りの人生を高良に使うお」
|「……だから今は考えないって？」
|
| やる夫は頷いた。
| 恋人として望むことをして、何とか軽い傷で済むように別れる。それだけだと思っていたのは確かだが。
|
|「あ、せっかくだから蒼星石。高良が治ったらやる夫とお付き合いしてくれお」
|「あー何？ 運転手がご所望？」
|「いや、結婚を前提にお付き合いを」
|
|
|
|「…………は？」
|
|
|
| 一瞬遅れてどよめく一同。
| 学生たちから黄色い悲鳴が上がる。
|
| 思考停止した蒼星石が即倒しかけるのをジャギが支えた。
|
|「お付き合いはしたけどやっぱり蒼星石が好きだから、ごめん別れてほしい。これで行くお！」
|「……………なんだ、そういう話か」
|
| 安心して持ち直す蒼星石。心臓はバクバク、変な汗が全身から溢れ出る。
|
|「じゃあ忘れんなお。『血族』戻れるのか怪しいけど、もしも戻れて反対されたら攫って行くからよろしく頼むお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／: : : /: : :.|: : : : : : : : : : : : : : : : : :.',: : : : : : : :ヽ
/: : : : :/ : : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : : :',: : : : : : : : :ﾍ
/: : : : :,′: : : :i: : : : : : : ､: : : : : : :.∨: : i: : : : : : : : :.ハ
′: : : :.j: : : : :.ハ: :.i､: : : :∨: : : : : : ∨: :|: : : : : : : : : : |
i: : : : : : |: : /:./ i: : | ヽ: : : iヽ: : : : : :.∨:.|: : : : : : : : : : |
|: : : : : : i: :/:/ u !: :i ヽ: :ﾊ_,＼＜´: ∨!: : : : : : : ; : :.|
i: : : : ￣`7フ---､',:::', ヽ≦, `ヽ､: : :V: : : : : : :/: i :i
',: :i',: : : /:/ --､ ∨', ヽ:∧zzzz≧t､ﾍ: : : : /: /:/
ﾍ:|.∨/;ｲ_!'､Ⅵ示ヽV:i 〃ヽⅦ汀7∨i:ヾ: : /: :/./
ヾ ヽ:i､! | .i 乂z;ﾝ､/ヾ,//// (`ヽ､ソ | i:.,': : : :7: /ｲ
ヾ| .i l､ , ' y'r-,///// r､ヽ ヽﾉ7/: : : :/i/ ！？ ！？？
', ` / .〃／ ､ ＼ ヽ 〃': : :./__,-t
ﾍ .', -､_,.､ 7 |: : / i ｷ
_,iti___ }- _ _,. { ,-y!: /_ 7´/::∧
∨ ヽ-! ヽ7_i-､ ヽ￣ ノi´V |:/７ } ７::ハ
7 {´ ／_,.-=f:7 7 .!'〈 j (¨:::::::::',
/! ヽ j<:≠／∧:ヽｷ ﾍ__ ∧ ７::::::::::::,
/::i ／ | ヽ≠/ ∨ヾi j ﾊ /:::::::::::::::ﾍ
/::::i ﾊ j /::/ 7 ∨ヾ 7__ ハ_,)::::::::::::::::::ﾍ
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！::::::::: ------=ミ::::::::::}
‘:: ／ ﾄ､＼＼＼^Y＼::/ 恋の気配を感じる……！
| |＼{ｨｯ7⌒ ＼＼ 〉 慎二、私になにか言うことはないか？
八{ｯ ´ ＼≠=--------==ミ
∧｀ __ ／_ノ⌒Yﾆ=-､--=ミ｀丶 Y
イ/´￣｀丶／/:::::::::::::＼ И 从￣｀丶
＿_／:::|｛::::::::::::::::[__]:::::::::::::::::::::＼ l/ ＼
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l从::::::::::::＼::::::::::::::ﾟ'*｡ﾟ'*｡:::::＼>― ､::::::::::::::::::::::::::ﾟ'*｡￣￣￣
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人 ＼j:::::::::::|:::::::::::::::::::|:::::::/＿_彡' ＼＼ ｀Y::::::::::::::::::::::::::::::::: ’＋，
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|「近い」
|
| 一方こちら、久しぶりの遠坂一行。
| 東田からの連絡で『血族』の内情は流れてくる。
|
| 彼らにとって『第二の夢』はさほど関係のある事柄ではない。
| まあ、東京が滅ぶのに巻き込まれるのは勘弁願いたいので可能なことはするつもりではあるのだが。
|
|「私はそろそろ帰っていいかしら？」
|「正直ねルイズ」
|「こんな極東で死にたくないもの」
|
| 皮肉交じりのやり取り、しかし、それ以上は進展しない。
| ルイズは本気で逃げるつもりはないし、凛は逃げるのを咎めない。互いにそれを理解した上でのジョークなのだ。
|
|「あの夢の天使の言うことを聞くのは癪だが、我々は間桐臓硯を殺害しない。奴を無力化する工夫は用意できた。
| 最高なのは『ネクロノミコン』にあるとされる人間に戻す方法が複数回施行可能な事だな」
|
| 『弓兵』の言葉に凛が頷く。化粧が濃い。
| だが、それ以上でもそれ以上に濃い疲労は隠しきれていない。
|
| 間桐臓硯攻略、強いては彼の傀儡である間桐桜攻略は、同型である『万魔』の協力で可能となっていた。
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| :〉 ∠ ﾐ r'´_ヽヽ￣ だが…………あまり気が乗らんな。
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|「なによ、尻込みしてるの？」
|「かもしれんな、一度は敗北して命からがら逃げた相手だ」
|
| 十六年前、凛と『弓兵』もとい夢宮士郎と彼の妻レナ、そして間桐雁夜の四人は間桐臓硯に刃向かった。
| 間桐の家に養子に出された凛の妹、桜が臓硯に虐待されていたのを奪還しようとしたのである。
|
| しかし、悪魔化して暴れる桜により、士郎は瀕死の重傷を負い、その妻は死亡。
| 凛は士郎を連れて国外逃亡……。
|
| 懸命な回復処置で一命はとりとめた士郎であるが、体毛は白髪化。記憶も失っていた。
| 凛は彼に尽くし、そして結ばれた。子供も産まれた。今年で十二歳になる。
|
| しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
| ふとした事で士郎が失われた記憶を取り戻してしまったのだ。
|
| 彼は今現在の幸せな生活を、死んだ妻レナと、残してきた母。
| そして未だに間桐臓硯の束縛下にある桜への裏切りと断じた。
|
| 夢宮士郎は妻子を捨て、名前を捨て、一人の復讐者として間桐臓硯を殺すべく単身日本へと……。
|
| 向かえなかった。
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_ ― 、
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l.:.:.:.:.:.:/'''''ヽ.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ_.:.:.:.ﾊ
l.:.:.:.:.:.l l.:.:.:.l.、.:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾘ
,.:.:.:.:.:.:l l./l.l__ヽ l.:.lヽ.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:..ﾄ,
.ｲ.:.:.:.:.{___ ｌ斗 r:.ァ}ヽ} ヽ/´ ｀.:.:.:./l' 君、まさか一人で勝てるつもりかね？
{.l.:.:ﾄ,ヽ代ｿ /.:.:.l
ヽ{ヾﾍ / __/.:.:.:.{
∧ヽ , ヽ.:.:.:.ヽ
ヽ_ -― ´ ／ .i},.:.:.:.:_ゝ
ヽ ,;,;,,,,,,,,,,／ _ ―ミﾐﾐﾘ
ヾ,;,;,;／_ -´ |
∧.／ _ -.:.:´.:.＞x
／ヽ/ ヽ _ .-.:´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＞ｘ
／.:/ﾆ-=-ﾆﾆﾆ /: : : : : : : : :／: : : : : : : :＞=- ＿
_ 。s＜: : : /ヽﾆ〔=〕ﾆ=-/: : : : : : : : /: : : : : : : : : : ＞: ´: : : : ヽ
/: : : : : : : :./ // l l ./: : : : : : : : ,: : : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : ',
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| 遠坂の義理の父に諭され、離縁はしたが戦友としての関係は変わらず。
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| なにより桜を取り戻し臓硯をぶっ飛ばすという目的は一致しているので、
| 士郎……いや、『弓兵』は凛と時を待ち続けた。
|
| 今回の帰国は、夢宮の婆が死んだためと、凛の師である諸葛孔明の要請があってである。
| だが、二人の最大の目的は桜と臓硯であった。
|
| 『弓兵』は元『血族』である。
| 臓硯への報復活動は『血族』との完全な敵対になりかねない。
|
| そのため二人は暗殺の機会を伺ってきた。
|
|「でもね士郎、今なら行けるわ。
| 『血族』内部で孤立した臓硯のクソジジイををぶん殴り、その悪行をに晒す。
|
| 桜を開放してついでに『血族』に協力。
| 東京守護の功労者になって凱旋する最初で最後のチャンスなのよ」
|
| 汚名返上、失地回復。
| 耳に心地よい言葉が危機感を狂わす。
|
| チャンスとは……犯した失敗の事には触れずに成功だけを言い募る手段である。
| 甘く微笑む誘惑の果実、失敗の毒はその時まで隠して嗤う。
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......::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::ヽ
〈:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ
>;;:::::::::::::::ヽ:::::ヾ::::::|ﾐ::::::::::::::::::::ヽ､
.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ） やるぞ『弓兵』。
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l 僕もそろそろこのあばら家にうんざりしてきた頃だ。
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
| ＼ ＼
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| ｲ }
f＼ ﾉ ﾍ }
{ ＼ｲｨ´￣ ﾍ }
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|「それに爺さんは過程だ。
| 『ネクロノミコン』も手に入れなきゃならないし、東京も救う気なんだろ？ 贅沢すぎて目が回りそうだ」
|
|「過程か……そうだな、その程度の執着で居たほうが合理的だ」
|
| 慎二の隣に座る『万魔』が呟く。
それで終わりにできれば、どれほど楽になるだろう。
|
| しかし、これは危険な思考だった。
|
| 敵の矮小化、過小評価。勝利の街道に転がる石の名前。
| これに気付かず、あるいは見えていてもつまずく者は少なくない。
|
|「……よし、ならば決行は三日後だ。『やらない夫の集会』の当日に動く」
|
| 『第二の夢』の中でやらない夫は砂に消えた。しかし『血族』も『教会』も、三日後の芝公園は看過できまい。
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ｰ-ｭ....ー-....＿_
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ア::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
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ｊｲ:::/!_lﾆ! V T___ヾｷ::::::::::::l
/:::|ﾊ V ´ V ７ ヾ´ Y:j キオ、慎二から連絡が……。
}ハ! ､ ﾚｲ/ ああ、志摩子様。
_ ノl:::{
｀ ､ ￣ イ ド｀
≧ｌ´_ ィ´ !､
{＞ｒイ￣ｊ ｲ ｀
ｒ ´ ヾ⌒ ｰ/／ ﾉ ＼
ﾊ } }
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|「どうぞ続けてください。慎二は無事なのですね？」
|「……はい、遠坂と行動を共にしているそうです」
|
| 大首領であり、清廉潔白のひとであり、術数謀略とは最も無縁な人。藤堂志摩子。
| 東田が慎二の状況をペラペラと喋ってしまったことを誰が咎められよう。
|
| 疑り深い『弓兵』や凛ならともかく、慎二ならば志摩子に話したとしても文句は言うまい。
| 彼女はそれほどまでに信頼されていた。その人柄を。
|
|「『ネクロノミコン』獲得のために彼らに手伝えることはないかと」
|「うーん、『教会』というか、トールマンの考えはいまいち分からないからなあ」
|
| 更迭されたトールマン弟に代わり、合衆国の全権大使として在日合衆国軍を掌握したトールマン兄。
| しかし、彼の腹心であるヤーボ大佐は動いても、トールマン本人の動きは見えない。
|
| 『ネクロノミコン』はトールマン弟が保有していたが、トールマン兄から貰い受ける方法は無いものか。
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. : :_:´:￣:￣:ミ: : ､
, : :´: : /: :ヽ､:ｰ:､: : : :｀ヽ＼
, :': ; ィ : : ′: : :';:＼ '; ヽ: : : : : ヽ
/ ; :´: : : : : :,: : : : j: : :ﾊ}: : : ､: : :ﾄ: : ､
' /: : ;! : : : : { : : !: : : : j Yﾊ: : : :j:!: : : :.
j/: : : :!: : : : : i!: : : : : : ﾘ _ｊ:_､!: j: |: : : : : ､
': : : : :'; : : : : : ､: :斗:T7´￣! V川:､: : : : : .
|: : !: :､:ヽ:_:_:＼:ﾊ: :i: ﾘ´zxｫ:ﾄ ﾚヾ!ﾊ: : : : : : ､
!: : |: : V:´{: : : ヾ_ヽj´弋ｔソ:! ｒｆ }: :,: : : :i: : !
': : ﾊ: : ﾄ､:ry休ー‐ヽ :j ｲ_ﾉ: : '; : : !: :j
': : :ヽ: ヾzゞ‐' :i' /｢: :j: : : i: : j!: :{
ヽ: : : ミｰｧ ヽ :l ′: :/ : : j: i八: ﾊ 昨晩の夢。
｀T:T￣ゝ. -= ﾟ´ :ﾚ ∨: : : :': :|: : ､: :ヽ.
ｊ: ﾊ: : :ﾘ个: .-,＿ ,ｲ: /: : : /､:_|: : : ＼: :｀:ｰ:､
/:/: j: :/: :j: :｣_}. ヽ. ,' : : / ￣ ｀ ､ミ､: : :ヽ ……大天使レミエルのいう東京の破壊を防ぐことで、
/:/: /: /: /／ _.｣ ヽ! : / ＿＿)､: : :. 彼らを納得させることができれば。
/: { /: /-‐´ j´ ﾊ / イ´_ ｚ＝f: : : }
,': : j/: / ├- -‐ハ:{ イ ／ニニニニ}: j
{: :/!: / ! / ﾘ! ｲ´ ／ニニニニニｊ:/
∨: :∧､ | / /ｲ: イ イニニニニニニｊ/
,': {/个､ヽ ! / /:_人:／ニニニニニニニ,ｲ
{: fニニﾍ. ＼ i / ｲ:´_ィ ヽ.ニニニニニニニ7 !
人:{､j／ﾆヾz､≧{. _ノ彡´j:／ニニヽ.ニニニニニﾆ' |
ｒ－ ⌒＞＝－ヾニニニ=-ｧ´ｵ､-＝{:ニニニニﾄ:ニニニニ７ i
ィ＝ ニ二＞ー― ´￣｀ マ_ア､_八 ｢ ﾏニ八.ニニニニｊ|:ニニニﾆ{ !
/ { ｀ー ' ニ二 ｀ーｧ ￣ｊヾｭ＼ }ニニ｀ニニニニﾘニニﾆﾆL＿ｊ
{ 八 ／ｒ-=－￣ ノ ﾘ ｊニヾ{ニニニニニニ/ニニニニ
个= ≧－'イニヾ′ニ≧＝ｒ ァ´ ｨ´ /ニニニニ≧=ｭニフニニニニｊ
ゞ≧=－彡ニニ≧ｭ､ニニL＿ｲ ／ニニニニニニニニ｀ヾニニニｲ
｀ヾニニニニニニニニ八ニニニニニニニニニニニニ＼ニニﾘ
}＼ニニニニニニニニゞ=ーニニニニニニニニニニニ､ニ7
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｀ヾニニニ＝ ￣￣￣￣ ￣￣￣￣ヾニニニニニニ７
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| 協力は惜しまないだろうと言う東田に、志摩子はいくつかの考えを述べてその場は終わった。
| 志摩子はその後一人執務室に戻り、私用の携帯電話をダイヤルする。
|
|「臓硯、遠坂から接触がありました。恐らく近いうちに襲撃があります」
|『ならば、芝公園に合わせてでしょうな……彼らの対処はいかがいたします？』
|
|「お任せいたします。今は余計なことにかかずらっている場合ではありません。
| こちらから手勢は出せませんが、問題はありませんね」
|
|『くくく。まあ、奴ら程度ならば」
|
| 暗い虚に響くような笑い声。志摩子はこれが好きになれない。
|
|「それと、東田のような内通者が他に居ないかを探ってください」
|『おやおや、無力な老人にどうしろと』
|
|「虫は減らされても、まだ他にも手足はあるのでしょう？」
|『老骨に鞭打てとは志摩子様も人が悪い』
|「頼みます」
|
| 電話を切り、志摩子は僅かに目を伏せた。東京を守る。そのためには。
| そのためには多少の犠牲には目をつぶる他ないだろう。
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『モーリアンビル襲撃戦』の裏で届けられた趙雲 子龍 星の合流から四日。
『新宿駅大迷宮』はカナリアン、華琳様ファンクラブ、メンマ組の三つに分かれ、混沌を極めていた……。
さあ、戦争を始めようか。
勝利の法則は決まった!
……いや、ここに『血族』来ちゃって大丈夫なの？
次回、最終幕六十五話『鼎立』
果てに見るのは破滅か死か。
何かの存在忘れてるような気がするが
まあ、思い出せないなら大した事じゃないな（目反らし
大首領様、おいたわしや
乙
ラブコメの波動ゥー！
,、 .,'{ ./|
{ヽ',.', { |/ }
', ｀,ｨ'´｀ー<_,,-‐／´￣ ｀ヽ、 ._,,
/´ﾞヾ＼ミﾐ> }::/ ::/:/ / :＼ .//-ｧ
＿.._ ﾞヾ＼:::::ヾｧ'´ﾞ/:::/:/::/:/:/:j:::}:}::::V／,ｨZ_
/＿,,, ｀ヾ=-ﾍ;::::}::::::;' :;'ｧ-x、{/j///j;'::}}:}｀ヽ／
｀ーーヽ;ヽ;ヾt{;;ﾘミ::||:{ .tiﾎｧxヽ '///j j;{:|ヾ__＞、 冬こそアイス。
,-=--- ,,,,';::',::',.{::/ヾ:{ﾊ| ヾ;ｼ ｀ _,,,ヽj;;':::／´ﾞ｀ 冬でもアイス。
't;;: ＼:::::';::.-'.V, |{' .i;ｼﾞｿy<::｀／´ﾞﾞ｀ヽ,
｀ヾヾ:',｀ﾞ´ .(ヾヽ ヽ、 ' .｀ ,'´ /´..::／´ﾞ｀´ 暖房の効いた部屋でコタツに入って
.ﾞ.';::} ''|＼ ｀ ノゝ {;:::／｀‐,=-, テレビを垂れ流しながらアイスを食べるのが最強よ。
.V ／´ヾヽ{,￣￣ヽ__,,／ ｀ーァ;／ｿ
_,,,--<、 ＼＼ {´V',ヾ,,,___ /ｧﾞ／ つまりこの新春商戦を生き抜くにはアイスこそが至高！
},().)O ｀ヽ,.＼ }ヽ ＼//{ヾ、} } ＼ .'´
.{'ﾞ｀´ﾞヽ, .Y }' '-ヘ,,.} ',',ヾ＼}i .',＿
<、 ＼ ト/ ﾞ ',', ﾞ´ ﾞ＼／／',
./ ｀ヽ、__',,,ィﾞ i .......:::::::::......ヽ .',/7ﾟ〈i
/ / ';:::i:__::::::::::::::::::::::::／';:::::::}´´_{
./ ／ V/ﾞヾニ=-;:::::://´ヾ;::::j|'´ .',
/ / ', (∧;;;;;;;)_ヽ_ﾉ':}'i| .',
..< ｀ヽ ', ｀ }i{ ｀´{ ',
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 『新宿駅大迷宮』の会議室は燃えていた。
|
| 物理的にではない。
| 『邪悪帝国』の表の顔、アイスクリームショップ『ヒーホーブラザーズ』の来年の経営戦略会議がである。
|
|「断じてノーかしら！ 『ヒーホーブラザーズ』ほアイスとシチューが二本柱！
| 寒いときにホッとするホットなシチューこそが顧客のニーズなのかしら！」
|
|「温かい食べ物で体の芯を暖めるのは極めて正しい。だが毎年同じでは顧客も飽きてしまう。
| 目新しさは常に顧客の心を誘うもの。ラーメンだ。騙されたと思ってラーメン戦略を打ち出そう」
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| 保守派の金糸雀。
| すこしひねって曹操華琳。
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| そして、今までになかった一歩を踏み出すべしと語る趙雲 子龍 星。
| 三人の主張はそれぞれに正当性があった。
|
| 華琳の戦略は、人手が溢れてきた『邪悪帝国』の雪だるまどもをデリバリーに使う。
| 生きた冷蔵庫を利用することでキンキンに冷えたアイスクリームをお届け可能になる。
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| これを冬場に試行して、成功したならば来る夏場のかき入れ時にもデリバリーしようという未来を見据えた戦略だ。
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／ ノ ∧｀ヽ ｀ヾ` r'ﾝヾﾆ､
/ ＞' `＜_ <ﾞv 〉vi、
/ / /／ ＼ ｀ヽ、ﾄﾍ三{薔}〉
{ ｌ f'´ ､,r=ｭﾐｭ､ 二{〉、ヾﾂ）
', !{ -{liｸｯ }｀ ｨ,r=､,ヾ〉,>}'
,f´｀ヾ, _ゝ‐'‐ rfｲ`, }/>ゝ 今更来季の戦略なんて変更できないかしら！
_,ｨ=＝ｷﾆヽﾄ ! ｀ヾ´ﾄ{ すでに新作のシチュー皿と蓋は発注済！
´ r―ミｪ､_ -=ｭ ﾊ'
_ノミｭ ｀ヾゝ、 ｀>ｲﾍ}、 二兎を追う者は一兎をも得ず！
/｀ヾミｭ ｪ-､ ミ[二ミｪ､__ ,r'´ ￣｀ヽ
{ _」、 ｀ヾー彡｀爪￣＞‐〈｀7 ｀ヾミ､ ',
ゝ、 ,ｨ'´ ｀ヽ > ||_＞彡'´_]ヾ､ ＼_ゝ､r'
＼ ヾﾐ、 __}｀~´ <／､ヾﾆ´ ＼ 〉
｀ヽ」｀ー､/ ／ｌ/ || ｀ヾｭミｪ､＿,ｲﾋ'´ヽ、
／ || ｀ヾ〉 || | ﾉ
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| こちら、新春の戦略変更は遅すぎるし、目玉を増やすことにも異議がある金糸雀。
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| 他の二人の案件に文句はない、しかし新春は近すぎる。あと半月だ。
| せめて春のキャンペーンとかなら提出できるから諦めろの姿勢。
|
| だが、華琳も星も冬の戦略を推すばかり。
| この寒い中で春の事なんて考えられるかという話。
|
|「例のかぼちゃ型で干支デザインのシチュー皿は羊柄で大変よい。
| しかしバケットをディップするために丼に似た形なのは確認済みだ。
|
| シチューで余った牛骨スープのラーメンならば食べやすさなども問題ない」
|「ラーメンは激戦区すぎて下手に手を出すと火傷しかねないかしらー！」
|
| ひたすらにラーメン推しの星。
| もちろん大好きなメンマをどっさり入れた自分好みのラーメンを作らせようという算段だ。
|
| だが、ミスタードーナツがミスターヤムチャをしたように、ラーメンを作り売るまでは不可能ではない。
| というか、『ヒーホープラザーズ』は店内飲食可能だが食事がシチューとスープ、パンとパイに偏っている。
|
| ここでテコ入れをするのは悪くないのではと、金糸雀の心の中で囁く声もある。
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V＾ヽ レ ￢て二ト､／ ,ｲ |
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r-ゝ y' / /／ f _j /ヽ ヽ ヽ レｲ/
＞ { 〈イ! r‐‐v- ､_ｰ' ! | ￣
`ー ､ ヽﾍ ヽ､ _ > | /
＼_ ＞､ ￣ ,ｨ ヽ ヒホ！ 報告！
厶ィ ￢ `ー─----く ゝノ
Ｏ / |／| ∧ ト、＼
{ Ｏ L/ ヽ_| !~「Ｏ
＼ Ｏ Ｏｲ `￢
ヽ ┬┬ ７´ ヽJ`ｰ′
, - ､ こ二} こﾆア
{ ヽ _」 L_jフ⌒ヽ
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|「忙しいから後にするかしら！」
|「ヒホッ」
|
| 慌てて飛び込んできた雪だるまを一喝。
| 飛び上がり、直立不動で待機する雪だるまをそのままに、金糸雀は声を荒らげて数字を指差す。
|
|「いいかしら！？ 今は冒険をする暇はないかしら！
| 『教会』対策に悪魔を全部表の店に出さなくなって二ヶ月、業績は横ばい、むしろ下がり気味！
|
| 今まで安く済ましてた人件費がかさんでる上に食い扶持も増えててアップアップ！
| この先生 きのこれるかの瀬戸際なのかしら！！」
|
| 『品川大聖堂の夢』と、その直後に連絡の取れなくなったやる夫たち。
| 彼らが全滅したと判断した華琳の行動は早かった。
|
| 『邪悪帝国』の主な収入源である『ヒーホーブラザーズ』から雪だるまとかぼちゃを撤退。
| 悪魔無関係なクリーン企業として活動させた。
|
| 各所から吹き上がる不満をみっちゃん（社長）が黙らせ、金糸雀と悪魔たちは『新宿駅大迷宮』探索に勤しんだ。
| ゲートパワーが上昇した結果、ダンジョンには下位悪魔が出没。
|
| それはつまり狩れば狩るほどおいしい。無駄な探索ではなく有意義な狩り！
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,r＜´ ｀＞ｭ､
／ ,r'ｺﾆﾕ､_,r=､｀ヽ、
ヾ´｀ ＜、‐ - 」ヾ'´ _r-､__ヾ]、 ﾍ
,'＼ ＞､_>_{、 〉薔>､> ,己. }
,' ,へ、 _ ｀ヽ､>'´,]fﾍ_,､r､ヾｿ ,'
{ i' ｀ヾミ、-ヽ'Zﾆ､_ />' ハ
ゞ{ ＼ 、 _＞＜＿ｭ､ﾄ<彡-､ ', 華琳は朝鮮戦争経験してるんだから、
ヾ}ﾐ{ヾ､ ｀` ＞ｔｭ=､, ｀´f､) , } /
,-=＝=‐ｭ､ﾍゞ' ゞﾆﾊ,r-､´ヾノノ クリスマスには帰れるとか
｀ｰ ／￣', 〈 `,=＜´＿,＞'<ﾉ 馬鹿なこと言うのはやめるかしら！
ゝ、 ,rｪゝ､ ヾｭ-‐' _＞‐-､ ／}
ｌ ｀' <´ ｒ`ｰ'ヾ>'´ ｀ヾ､ ＼
ゝ、 ミｆゝｒ‐' ﾄ､_ ､ヽ
｀ｰ-=＝ゞ{ / } ｀ヾﾊ
∨ / , i 〉
} ﾚ' ノ |/
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| クリスマスには帰れそうだから来年辺りから悪魔の利用を考える華琳。
| その予想は直感が下地にある。つまり、信用できない。
|
|「いやいや、二週間後ってまさにクリスマスだが？」
|
| ちなみに悪魔は夢を見ない。
| 死人も夢を見ない。
|
| つまりこの場で『第二の夢』を見たのは星だけである。
|
|「三日後の『やらない夫の集会』がどうなるかだ。合衆国軍による虐殺にこの秘蔵のメンマを賭けよう」
|「私も合衆国軍による虐殺にカシオミニを賭けるわ」
|「カナは入院中の花京院の魂を賭けるかしら」
|
| 彼らの意見は一致していた。
|
| 『モーリアンビル襲撃』の戦火を拡大させたツケを、『教会』は取らねばならない。
| そこでやらない夫が言い出した『生贄』を用意して、民衆を納得させよう。
|
| そう、エシュロンとか使ってそうな合衆国の陰謀団『CIA』の出番である。
| やらない夫の集会を襲う者たちを別の合衆国軍が制圧。
| 犠牲者を出しながらも陰謀の所在を明らかにして万事解決というストーリーだ。
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__「￣ ￣`＜￣＼
| r冖 ＼ ヽ
|/ } ￣￣( )＼
/ -─‐- ＼ ヒホ。
/ ／ ∩ ∩ヾ} 賭けにならないホー。
/ / ∪ ∪
Y / ─‐ｖ─‐ｖ‐ｧ|i
| ｉ ＼ / 八
_八_O__人 ー─ '∠ ﾉ
ｰｧ=/ ／￣｀ヽ─=≦ ／￣｀ヽ
＿＿＿/__ムイ ヽ ∨ ＼/しﾍ l !＿＿＿＿
ーﾍ__ 人_ﾉ￣￣￣ ｰ' ｰ'
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|「あなたが反対の天秤に全賭けしてイッパツ当てれば、大穴で大儲け間違いなしよ」
|「ヒホッ、大儲け間違いなし！」
|
| 『当てれば』大儲けである。雪だるまは騙されやすいのが欠点だ。
| だがこの雪だるま、なかなかに知能派であった。
|
| なにしろ、伝令として選ばれる程である。
| 彼は一瞬目先の大儲けに目が眩んだが、すぐに本来の業務を思い出した。
|
|「あ、報告があったホー」
|「なにかしらー」
|「『血族』が攻めてきたから対処を決めてほしいホ」
|
| 顔を見合わせる姦しトリオ。
| できもしないイベントの話などしている場合ではない。
|
|「私と星は隠れて様子を見るわ。金糸雀」
|「合点承知かしら。まずは大人の対応で交渉よ」
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,ノヽY"("r"iiit;;;t､ 从ヽ｀）'"ヽ
､ ,r("' "､､､ "''"t;;;ヽ匁､､ｰ､､)）〉;;;;;;;;三彡"
_ｿ"从 了ミミi ,,｀ヽ､;;;;ヽ､､､､ｰヽ;;､''''-､ノt,,,,,
it（ （;;ﾉ （;;;;|､t シヽ;;;;ヽ､､）､ ヽ;;;;;;;jjj'|ii､"""ノ
､,,t,｀ﾚ 从ii|ヽ､ｰ''"iii､ヽ;;;;;ﾘ|;;;;从i ､､､从､､t;;;;ヽ'ｰ､ヽ
メ''""/;;;;;从,,､､ ､ i;i||j;;;;r"t;;;（ ｿ､t;;;;ヽ |;;;;;tヽミ ､）,
､ゝｲ |;;;;ij|从;;;;ヽ|;;i |､",,,,iiii､,,,,､i､ｿi t;;;;|ヽ;;;;;ヽ､ ヽ''''"
t､,女 t（ツ||i;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ﾂ;;;i､､､i;､~'-､;;;;;､)）
､､ノ（iﾂM;;;;|;;;;;;;;;;;;ii;;;;|i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､;;;;;;;|;;;i |;;;t'ヽ三彡
// り";;;;;;;;;;;;;iヽ;;;;;;;;tiii;;;;;;;;i|;||;;;;ii;;;;itｿ;;;;ﾘ;;;;"ヽ;;;;;ir'"
ヽﾂｷ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ人､､､ﾐ;;;;;;;;tヽ､;;ヽ二ﾘ;-､t;;;;;;;ﾚ;;;;|''"
ｰ7;;i|､;;;;;;r､ﾐr'";;;;;;;;;;;;;;;~~' ﾘヽ|i";;;;;;;;;;;;;;;シi;;;;;;､i|） 蒼星石はいるか？
ﾘ;;;;||t;;;;〈 ﾐ 彡=ﾓ丐ｧ､r;;; "ﾘ､zﾓﾁﾃzｰ' ﾘ;;;;ii|j
（;;|;;;ヽ､;;;;i ｀~ '''' "::: |~::''-￣ｰ ﾘ; ｲ
ﾌ;;;;;ヽ;;;i, "" | ,'r';;;i
,r''ヽ ｀（;;;;;;;;i~t ,,,,, j ,, /"彡|､
. ii i t;|;;;;;i ::t ヽ:::｀" / {{ヽt ヽ ,,, ､ --ｰ '
. i ﾘ 't;;;;i :ヽ ,,､-_~-,, /:: j ﾉ ;;ﾘ''ヽ､ ,, ､- '' "~:::::::::::::::::::::
i '"| r'~ヽ, ヽ､i ::ヽ "''ニﾆ" ,':: y" "ﾉﾉ ﾌンゝ'":::::::::::::::::::::::::"""""
ﾘ i ,,/ i''''""￣￣￣＞'''"~t |i ::ヽ, ''~~~""" /:::::､-'" ,r"／zr'":::::::::::::::::"""" "
_,/ :::::"i" / '-､ノ,,,,,,､ﾆ､ ,､-'";;;r''"::::入 ii;;::::::::ヽ, /::: '" , ,r､" /"／""t ｰ⌒) ""''
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|「？ いないかしら」
|
| 長い通路、攻め手側に隠れる場所はない。
| 対して、『邪悪帝国』は隠れ潜む遮蔽の多い通路の端にバリケードを構築済み。
|
| 交渉役の金糸雀一人がバリケードの外。同様にケンシロウが単身前に。
|
|「ご要件はそれだけかしら？」
|「いや、今のはただの確認だ。やらない夫もいないな？」
|
|「いないかしら。カナたちは非力で臆病だから、お尋ね者を匿うリスクは冒せないわ」
|
| このやり取りは四日前にもあった。
| ケンシロウが蒼星石の依頼で趙雲 子龍 星を護送した際にだ。
|
|「……剣呑ね。本格的に討伐かしら？」
|
| 金糸雀がケンシロウから離れた位置で並ぶ『血族』の『緊急事態対策班』の面々を見回した。
|
|「まだ違う」
|「……まだ、ね」
|
| 皮肉に笑う金糸雀。だが、彼女は『邪悪帝国』一の頭脳派。
| その程度では交渉の態度を崩しはしない。
|
|「要求は？ 『大迷宮』の明け渡しかしら？」
|「そこまで高圧的な態度を取るつもりはない」
|
| ケンシロウの言葉を鼻で笑う金糸雀。
| 後ろに並ぶ奴らを見ろ。『血族』でも生え抜きの猛者だ。面構えが違う。
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| l i___》: : : : : : : : 《; -ｧ :l l
│ l ト-｀ｰ-､/: l: :ノ イ : : | l
│ 〉 rｆ::ｊぅ､｀ : : l: ｨｆ::jﾌ: ヽ |
│/ｒ: ´￣:／:/ ', ヽ￣: : :ﾊ.!
V: :!: : : :': : : 、: :〉: }: : : : : :lｊ___
,.─' : : : : : : : : ,-___-､: : : : : /: :ハ 『二ヶ月前の契約』を履行しに来た。
. 〈 : ｢ヽ: l : : : : : ｒ‐'--' フ : : : ,': }）: /
＼ー:人: : : : : ｀ー :‐' : : : :ﾊ_:_;/ これではダメかね？
＿＿／￣:::::＼: : : : : : : : : : :／/
. ｘ＜: :￣￣: : :／: : : /: : l:::::丶-: ─:::-ｧ':／
,....:::-:─<ヽ: : : : : : : : : : : : :／ : : :l:::::::::::｀ー:一:／
／:::::::::＼:::::::ヽ＼: : : : : :l:_: ／ : : : : :l : : :_:_: : : : /: :＼
／::::::::::::::::::::ヽ::::::::Vﾊ: : : : : : : : : : : : : :l ／ : : ￣:７ヽ : : :＼
. /:::::::::::::::::::::::::::::::':;:::::V |: : : :,.―---─ァ' ー:─:‐ｘ:' : : :＼＿:_＼＿
;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::';:::::'_|＿/ ヽ ｆ´: : : : : : :/ : :＼ :く ＼ : :）:＼＼
!:::::::::::::::::::::::::／::::::::i:::::::::::/ ,ﾉ: : : :＿ : : : : : : ﾉヽ --ク´ : ／／:＼
∨:::::::::::::::／:::／:::/ヽ:::::/ ／: :￣: : : :}＼ : : ´:ｆ⌒ヽ‐'ﾆニ´ィ: ::/l:::::ヽ
. Ｖ:::::::／::::／:::／:::::::／ 〈: : : : : : : : / : : ＼: : ＼__ﾉ）＼::::/:／:/:::::::::|
∧:／:::::::／:::/::::::／ _ﾉ: : ー:―:ｧ:､ : : : ﾉ＼ｰ一' ヽ/:::::/:::::::::::l
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| 後ろの列から悠々と歩き、ケンシロウの隣に進み出る男。
| 金糸雀は、そして後ろに隠れて様子を見る華琳は瞬きした。
|
| やる夫？ やる夫じゃあないか。
|
|「ああ、蒼星石が生きていたんだし、あなたも生きててもおかしくはないかしら。
| ……でも、ご無沙汰なのではなくて？」
|
|「それは謝ろう。『血族』と表立って協力できたのは四日前からでね」
|
| それまでは迂闊に連絡も取れなかったと？ そんな不信感は『やる夫』の声に柔らかく溶けていく。
|
|「『血族』は『邪悪帝国』と協定を結ぶ。
| 悪魔退治と帝都守護を依頼して、結果に応じて報酬も出す」
|
|「いまさらかしら」
|「奪われていた実権を志摩子が取り戻して四日だ。早いほうだとは思うがね」
|
| 唸る金糸雀。『やる夫』の言うことは全面的に信じられる。
| 彼の声は優しく、どんな疑念も挟む余地がない。この交渉は決まったようなものであった。
|
| であったが、金糸雀は腕を組んでむくれて見せた。
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, -､ , -――- ､
! ', く￣｀'ー ､ ,rz:ｙェｭヽ
ヽ. ヽ __ /.:ト ､ ー-{｛ rｬｚ_}｝ハ
ヽ ＼ /´ ｝ / '} 丶､ ヽ,:ｸｰ'ヽ.〉 li
ｒ‐ヽ. ヽﾉ / l.: / ＞‐ゝ〃ヽl ｌ|
r | {:. , 九、 l: /- ､ ' ,ｨfﾒ､ ＼ l :!
. ｢', ＼＿｝l ﾉ }' ＼ ヽ!:y=､ ﾍ:りj ､Y´Vl
l ヽ＿〕 ＿ ｲ _〕＼´l＼ _ﾊ:り 、 ´xXx fヽjﾉ 唯々諾々と要求を受け入れたら、
｀ ー 'ｔ--イ __j´ ／ _} ＼ //⌒ヾ _, -'´） ,ｒｰ｣ 『邪悪帝国』一の頭脳の名が泣くかしら。
ﾌ⌒K´ ' ヽ、｜ ヽ、__.／￣ ｀ヽｰ ､ﾆ´ r '´￣￣¨ヽ
厶ィ ｌ ＼ ／ | ､ ヽ ｀丶 - V ｣ト-イ_V´ . 二 _ ｣、
/ ﾊ. 丶､{＿ ｣ ｀ ヽ ／ _}｡ Yﾞ-―‥ﾁ:〉
└ 'ｲ. ﾍ ／ ｲ /‐ｔ― ヽ､, ｲﾉ l:ﾄ､ , -_｣{
/ , l 'ｰｫ / / ＼＿_ , f´￣｀ﾌ|｣ 匕.-'‐i|
´} '´＼ / { ／ / ≦三} ｡ Ｋ≧ｲ!
¨´ｹ ハ フ | ／ / └＝' ､ /ハ l
{.ノ} し'ｲj' / ／｀ヽ }'´ :|
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|「本来の報酬と、安全の他に何か欲しいものが？」
|「あるわ」
|
| 金糸雀はいたずらっぽく笑い、後ろ髪ひかれながら目線を『やる夫』からケンシロウに向ける。
| 決定権があるのはこっち。正しい判断。
|
|「諸事情により、『邪悪帝国』は『結社』の幹部級の人物を匿っていたかしら。
| 彼女とは協定を結び、アドバイザーとして働いてもらっているわ」
|
| ここでケンシロウが思い浮かべるのは当然、星である。
| 四日前に『邪悪帝国』に護送した。それは『血族』内部でも一部のものしか知らない。
|
| ならばここで彼女を公にし、表立って動いてもらおうという……形だけの交渉。
| の訳がない。相手は『邪悪帝国』一の知性なのだから。
|
|「『血族』の協力者として、無辜の民草に危害を加えないのであれば喜んで迎え入れよう」
|「それでいいかしら？」
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／ヽ＿___／ ｀ ､| ノ二ﾆ=＝――､
/ ＼／ ., :/ :/ ＼彡'=ﾆ二二二／__入
＼ ､ :// :/ . :/ .::/ :/ , ヽ￣￣ ＞:／ ＼
＼V/ ' : / /: : / .::/ : / /:.| :| :| V ／:／＿＿＿＿_ノ
. rr―‐‐/､/:.:./,.:.:.|: ::/|: /i . :/|:! .:/l/:| :/:. / ∨:／／
人＼__:/_:/: : |:| : :|: 7卞j-ヽﾊ:|:!: .:.:/ /_ﾉ/_}:/_!_: :| l/／＼ ＿_
／ :＼＼__| : /|:| : :.V斗テ≧ｭ.从: :/ /え/ﾆ/_∧:./: /: }'＼ ｀ ｰ‐ｧ彡＝ミ
＼_＼_:. ＼_:| /-|:ﾄ､ : ﾄ{ う弋)} ｀ ∨ '入乃)久､/: /: / ｀ フ／ ＿_ { いいわよ。
r' ＿＞―‐ﾍ{‐ハ! ＼ﾚ! ｀￣ j ｰゞ=ｿ //:. ,:ｲ: / ／ /＿＿_ﾉ
r―'ﾊ{ ヽ＞ﾍ彡ミ､ r─┐ ノｲ:.／/.:/ / ／
. ＼ ヽ ＼＜＿,人 ! _／ソノ∠ / ／｀ー――┐ 遊び相手も少ない穴蔵には
. ＼ ＼ _＿,ﾉノ ＼ ヽ ノ ／彡'＿,> ) ＼ ＞'´￣ 八 飽き飽きしていた所だもの。
ー‐ヽ､＿_, ＜＿＜＿__, ＞､ ‐ . イ´ ＼__ ﾉ ／ ＿＿＿＿_ﾉ
￣￣￣ /ｰ〒――{ ー―'‐´ ／／´
ノ 〃Yヾ､ 〉､ ／´
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／ / /ﾉ| |厂 { 丶
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|「げぇっ、華琳！！」
|「あら、呂布じゃない。アンタまだ生きてたの？」
|
| 戦前から生きてきた幽鬼である華琳、当然呂布とも長い付き合いである。
| もちろん、敵として。
|
|「反対だ！ あの毒婦ほ殺せるときに殺せと俺の魂も叫んでいる！」
|「もう死んでるからそう騒がないでよ……やる夫」
|
| 華琳は妖艶にしなを作り呂布にウインクを飛ばしつつ、目的の人物に声をかける。
| それが偽物だとは考えもしないままに。
|
|「シックスは？」
|「あれから姿を見ていない。恐らくは……」
|
| ニャルラトホテプはシックスがどこでどうなっていたか、どんな関係だったのか何も知らない。
| 故に曖昧に誤魔化した。死を匂わせた。それで事は足りた。
|
|「ふぅん……蒼星石はどうしたの？」
|「もう一人、アリカのことも私には一つの考えがある」
|
| 聞く全員の居住まいを正せさせる。『やる夫』の声はそれだけの力を有していた。
| 蒼星石について、彼の推測を聞くのは誰もが初めてだった。
|
|「『品川大聖堂の夢』以降、何者かの悪意がこの東京を蝕んている……そうは思わないか？
| この街を守ろうとする者たちを嘲笑い、邪魔をする存在の気配を感じる。気の所為でなければだが」
|
| 陰謀論！
| 誰もが鼻にもかけない突然の言いがかりを、しかし『やる夫』はクソ真面目に語る。
|
| そして彼の神妙で心に染みる言葉に、雪だるまやかぼちゃまでも聞き入っていた。
| 疑い深い『狂死』や、何事にも口を挟む華琳も、ただ黙って頷いている。
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ｘ≦ ≧ｘ
／ ／⌒ヽ ＼
〃 } ヽ
/ {{ ', ',
.′ ; ､ } }
, ＼ ﾄ､ } }
>=ミ 〈 : ＼ } }
{ } : : : ＼ヽ : :.＼ ,ノ ニャルラトホテプの介入を、
-=ミ } : :} : : : ヽ.〉 : : :≧=-=≦／:}.′ 私は疑っている。
___/ : : : : V .} :ノ_: : : // : : : : : : : : }.:〈〈 {
／i:i:i:{ 「㍉ }_ __} ＼ `ヽ_>〉 : :ﾊ.. : : : ｲ ://ノ｝ もしもアリカも蒼星石も、
／i:i:i:ｉ:ｉ人 :` 〈 : : :} } : : : :≧ｘ＼ : ..)i} : : : {i|丿{rv′ 二人揃って同じ場所にいるのであれば……
／i:i:i:i:i:i:i:{ : :`ｰ=､ : : } } : : 弋''迹ﾊ_>x.ｿ : /_xfr㌻Y
.／i:i:r=-‐ｧi:ｉ{ : : : : : }..:..:乂_: : : : :＂ :ｘ≦′ : :{｀ﾆ=-.′ 『私の姿をしたニャルラトホテプ』が、
./i:i:i:i:i:ゝ''”i:i:i:i:i， : : :.{ : : : : ｝} : : : : : :''” : : : :..:;{ﾆ=- ハ 二人を支配しているのではあるまいか？
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:， : : ＼..:.:ノ } : : : : : : : : : : : : ::},ﾉ=.,′i:',
i:i:i:i:i:i:i:i:ir''⌒/i:i:i:i＼..: . ＼ .{ : : : : : : : :.:⌒ｰ='′./i:i:i:i:i:＼
i:i:i:i:i:i:i:i:iゝイi:i:i:i:i:i:i:i:i＼ : : : :＼〉 : : : :_,,..,,,_-=‐_,ｨ .'′i:i:i:i:i:i:i:ｉヽ
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／^{i:i:i:i:i≧ｘ : :..:＼ : : : :ヽ_￣”ノ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:}
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:(__／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧=-→､ : : : : :..::,ｲi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:}
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:{ {{ ｀¨“ニ彡i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/
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|「ニャルラトホテプは、三ヶ月前にあんた達が放逐したのではなかったの？」
|「放逐したというか、倒しきれずに逃げられたと言うべきか」
|
| 華琳の問に、当事者である星が進み出た。
| 自分で言い出したことだが、ニャルラトホテプは苦い思いであった。
|
| やる夫と蒼星石と、そして『モーンブレイド』に一泡吹かされて本体が傷ついた。
| 慌てて逃げた所を『C-MOON』の奴に助けられたのだ。
|
| 皮肉っぽく嘲笑する奴の顔を思い出すとムカッ腹が立ってくる。
| ……だが、奴は『上の世界』の存在だ。ニャルラトホテプは考える。
|
| まずは生き延びる。そして必ずこの世界から逃げ出して見せる。
| どんな手を使っても、この世界のゴミクズみたいな人類全てを使い潰してでも。
|
|「品川大聖堂では、『大天使召喚』と並行して何か邪悪な儀式を行っていた。
| 当事者が全滅している以上は確かなことは言えないが……人間もどきもあそこにいた」
|
| 誰もが顔を見合わせる。
| 知らない情報、今まで何故黙っていたのか、誰も問い詰めない。
|
| 『やる夫』を信頼している以上、彼には彼の考えがあり、そしていま明かしてくれたことにこそ喜びがあった。
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ｘ≦二￣ ￣＞ 、
／ ｀ヽ.__ ＼
. /＼＼＿＿ （ : ＼ ∧
/ ｿ´/: : 〉 〉: : :.∨ ∧
. / /: :- ｀V ｢ : : : : ‘ー─---ハ
/ ／ : : __ ＼〈: : : : : : : : : ____「 │
/⌒ヽ 〈: : : : :代ﾋぅ､:＼ｊ: :,ﾉ: :r‐'_厂∟./
. ｌ :ﾉ:ヽ:＼ヽ: : : ｀ﾞ冖^ : : : : : r┴ー‐ｖ'´/
! { ﾉ :i : :Vl : : : : : : : : :-:ｧ:ｨｆﾋぅ､⌒/./
＼ヽ l: : :｝| : : : : : : ｉ´: : /ｉ ｀ﾞ冖 : :У 道中の怪現象も、
ｉｰ'l: : :l !: : : :___‐:ヽ_ノノ: : : : :／ 人間もどきの異能だったのではないかな？
|: : | : ｊ l: : :ｉ ｀ヽ_ｰ､ ｉ : ,ｨニ´:⌒ﾊ
|: :│//:: : :≧､ ￣ﾉ: // :/:ノﾘ:/
|: :人 ヽ: : : : : :｀¨¨ _:/ ﾚく＿／
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| ペルソナ使いによる足止めは、もちろん一蹴されていた。
| 何があったのか描写すらなく敗走していた。
|
| 相手が悪すぎたとも言える。
| その場に石田かキオがいたら逃げることもできずに捕縛されていた事を考えると、幸運だったと言うべきか。
|
| とにかく、『滅ぼすもの』級のペルソナ使いによる概念操作攻撃も、
| 国内最高峰の異能者集団相手には足止めもできないことが判明した。
|
| これは以前やらない子がヤザンに一蹴されたのと同様の事態である。
|
| ただ、ジャンヌがはやぶさの『揺りかごの子守唄』の術中に嵌まったように。
| 暴走してリミッターの無い『滅ぼすもの』ならばあるいは……。
|
| 無い物ねだりをしても意味はない。
|
|「呂布殿、曹操には屍鬼を使わぬように約束してもらえばいいだろう」
|「む、まあ、それなら我慢しても良い」
|
| 『狂死』の執り成し、しかしそれでは華琳の旨味がなくなってしまう。
|
|「地下の地図と二ヶ月前までの配置図を提供できるわ。それと、下僕が使えないのならば部下を呼ぶだけよ。
| 集められる数は少なくとも、実力は保証するわ」
|
| 華琳の親衛隊、若く美しい女戦士たちだ。
| 今は命令を受けて身を隠しているはずである。いつのまにかAAも増えたし。
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／::::::/::::::::::::::::::::::::::::':::::::::::::::::::::',
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/::::::/::::::::i:::::::::::::::::::::::/:::／ {::::::::::::::::::',
..:;ｨ::::::i::::::::::{:::::l::::::::::;:イ／-―!:::::::::::::::::::',
.／ /::::::::ｌ::::::::┼＋::::::/::/ ィ笄７ﾌ:::::::::::::::::::', …………戦力として期待させてもらう。
ｉ::::::::::ｌ::::::::匁圦:::/∨ `¨ }::::::::::::::::::::::
|ﾊ:::::::l::::ﾄ:::|. }'〈 /i::::::: ｨ::::::::::: 今は猫の手も借りたいほどだ。
i! ';::::::l:: | ヾ ＿ , /::／ }::::::::::::.
l ,';:::::Ⅵ 人 ｀ イ: : : /::::::::::::l:::.
.／:::';::ハ!: : /＞... _ _..ｨ′ {＼::::::::::::i::::
.／:::::::::匕匸{ク､:::ｘ≦三三＞勺､人 ＼/}:ハ::i
／:::::::::::::／:::::::: 7≦三三三7⌒'マァヾ＼ ＼ }/
／::::::::::::::::/:::::::::::::/´}三三三,〃 ::::::::::::Y’ ヽ. ＼､
..::::::::::::::::, ７ ::::::::::::/ /三三 //:::::::::::::::: i. У -ヽヽ ＿
/::::::::::::::::/ /:::::::::::::/ /三三三{/:::::::::::ヽ￣ヽ r ´ ／ } ＼,／／
./::::::::::::::::/ .!:::::::::／r=━…・・・・i::::::::::／: ＼ .{ .／ , ∨ ./: :/
ノ::::::::::_＿/＿__|:::／／:/7 : : : : : : :｜::／.: : : : :.＼ヽ .／ ∨: :/
:::::::::/ : : : : : : : |´／ : /_i : : : : :／ : |:/ : : : : : : : : :ヽ_く イ .ヽ/
::::／￣￣￣￣／ /7: : : : : : : : ／: : ': : : : : : : : : : : rヽ.´ .!`ｰ __,ゝ､
:く /: : /_i : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :l_} :＼ヽ ／ ＼
:::::＼ .{: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/フ´
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|「そういえばやる夫、君と『偽物』を見分ける方法はあるか？」
|
| ケンシロウが傍らの男に問う。
| 斜め後ろに立たせても、何の警戒心もない。そんな位置に立てるのは兄弟と蒼星石ぐらいのはずなのに。
|
|「ひと目で違いが分かるようにしよう。
| そうだな、これからは常に、今のように黒ずくめの服でいよう」
|
| 言いながらニャルラトホテプは、本当にやる夫が存在する可能性は極めて低いとも考えていた。
|
| 二ヶ月もの間、存在を奪われていた男がどうなるだろう。
| 他人から認識されないほどに影が薄くなるはずだ。
|
| 自分が誰なのかも曖昧になるだろう。
| 記憶も混濁し、最悪人語を話すことも困難になるだろう。
|
| もしかしたら、ヒトの形を保ってすらいないかもしれない。
|
| ニャルラトホテプは残酷な想像にサディスティックな愉悦を覚えた。
| 憎んでも憎み足りないやる夫と蒼星石。奴らに地獄を見せてやる！
|
| それが逆恨みも甚だしいと、指摘できるものはどこにもいない。
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☆ 次回予告！
二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。
一人は泥を見た。
一人は星を見た。
ジョニィ・ジョースターとディオ・ブランドーの因縁に決着を。
不倶戴天なる二人の男がそれぞれの星を掴むときが来た。
泥の中から掴みだした輝けるもの。
届かぬ天に手を伸ばしそれでも掴んだもの。
次回、最終幕六十六話『ガラクタの星』
果てに見るのは破滅か死か。
にゃる夫君は黒饅頭か
やる夫かどうかを確認するときは瞳を見つめればいい、気分悪くなるほうが本物だゾ
この饅頭は出来損ないだ、食べられないよ
にゃるつおい
/( j { i { ＼ / // // ／／ _ -=ﾆミ、＼
冂冂 ＼{ i V :}{ :{ { :{/／／ -=ﾆ/＼⌒ヽヽ ＼
. /ヽ ＿L｣L｣＼ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ＼ ＼ ／ヽ
/ / | | ＿＿＼＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_＞ ＼/ ／ ／;
. / / .| | |＿ /___)ゝ 、 ー=ミ ＼丶,／ ／ /
/ / | | | |[/(⌒ :} }`^^⌒￣｀`ヽﾉ )ﾊヽ ／ ／､ 〈
. / / .| | |_|／__ノ ィﾐVノ . : : ／,ﾊ : :i iＬ／､＼ ＼ }
/ / | | ( (て ,ハﾍ ＼ : : ( (〈 〈 （ V 乂 ＼＼ハ
l_,/ .| | _)ﾉ ⌒ゝ_} :{＼ﾑ{ j :／ ﾉノ厶斗≧彡 ー=ミ ヽﾊ｛
|__j ￣ { ｉ| ゝ弋ｿ} 厶斗ｬ≦二￣ヽ「ヽ ＿⌒＼ :} } ｝
( （ Ｖ| ／/ ヽ＜ 弋ソフ / },_ } ) } ｝ フンッ、マヌケめ！
＼ 、＿＿＿___ _ _ _ ^| ／ _ : .⌒ヽ¨´ {__/ノ / /:} ／
ー―――‐‐‐ ‐ | ｀¨¨´ : : . ´ ／ / /／
＿_ /, ｀⌒＼ : : /７'´/ _ __{ _＿__） )
＿＿＞､__ __＿,／//, こヽ ／ / ‐ ‐‐‐――一
. ／￣￣￣ / / /, : _ イ:: :{ /／__／
／ ／⌒＼__{ { :{/ゝ:. __ -=ニ=-‐￢冖 ￣}匚
＼ j{ ｀ヽヽ/⌒＼＼＿_,／ ,、＜ﾆ=￣ └――- 、
／￣￣^ヽノﾉ ｰ=ミ} { /⌒ﾊ、 ,､＜ﾆ= : : . ＼
／∠ ..,,＿___ノ人( ,ﾊ＼／ ／ﾆ= : : . ＼
/ _____／ Χ⌒ヽヽ } :}／ﾆ= : : . /________
. /⌒／{ { Χ } :} ,ノ ,ノﾆ= : : . ´￣￣￣｀ヽ ､＿___
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| 机に乗せた女に腰を振っていたジョニィ、その脇腹にナイフを突き立てる。
| 刃は横向き、肋骨に阻まれにくいと聞いていた。
|
| ディオはナイフの訓練をしてきた。
| だが実際にナイフを使うのは初めてだった。
|
| 研ぎ澄ました鋭利な刃が肉を貫く、ディオは柄に左手を添えナイフをねじった。
| そのまま体重をかけて下に切り進む。ジョニィが助からないように。
|
|「お前……何してッッ！」
|
| 振り向いたジョニィの慌てふためく顔は見ものだった。
| ディオは覆面越しに笑みで返した。いつかこうしてやろうとずっと思っていた。
|
|「う、うゲェ！！？」
|
| 激痛に身をよじりつつ、ジョニィはディオに掴みかかる。
| その爪が……不穏に回転。何が起こっているのか確認する暇もなく、射出。
|
| ジョニィの指から発射された五発の爪弾は、ディオの喉、額、右肺を貫通、生徒会室の壁を突き破り隣室に消えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ー-------ミヽ { { ／ ／ ＿／
. ＼ ＿＿ ｀ヽV´ ∠ __ ； n ∠二
＼__二二ﾐ､ ﾆ=─ ，ﾉ｝ l;V7 ／二三
￣＼ヾ＼ j;;;;し'’・ l;;;;} ／
. ﾊl | く;;／； ﾉM{ ／
＿_ｊ⊥{_ ／ -=彡'
二´ ＿__ ＼ivｆハ l! ＼ ,ｨ:! =-‐ ´￣ ≧=‐
ミ ｰ= ｧ'⌒ヽ ミﾐｿ'"__ }l lﾄ､___,ｘ＜:::::| ／三彡
｀ー' .／⌒ﾐヽ| （圭｝Y:::＿;::≧ヘ::ト＜__三彡 '⌒ヽ
. / ／三二| };;;ﾊ/:/};Ｕ;／! i;V;;;;／Yﾆ=─,ｨ⌒ヽ （……む）
{ l{/ （/´l l;／:/ ,ｨｆﾘ ﾉ };/ }ミ三彡
∨ | 〈__ノ / ィ^´;;、 /;;| {⌒ﾐ≦ ） /
｀¨〕人{ ノ;;;;;;;;;;{ /;;;;;l ｰ´￣r‐'
￣, ｀ヾ;;;{⌒j;し;;;ﾉ〉;;l |
/ ＼,,/;;;;ｆ⌒j;;;ﾊ |
弋 ⌒ﾘ }ト､};ﾘ l;;! ,′
,ｨ ｀ヽ 人;;;;;{ l;l /
. /ﾉ } ./ﾊ _）一ｧ' ヽ;;} l;! / ／
/ヽ./ ／ ィ；;;;;（__／ i;;| l! , ′ ／
. /{ヽ. ∧ ／ ／ノ｝ ‘ーｧ'" l;;ヽ ヽ. ／ ／ ／
/ノ }/ .／ ／ ,ノ l;;;;;| ／ ／ ／￣l
. / ./／ ／ヽ ／ .八 ）;;;У| ／ ／ /
／ ／ ／ ｀¨¨7´;;ﾉ／ ／ ／
. ／￣ｊ￣￣ｊ＼ し' / ／＼ ／ ／
ﾉー―く {＼ ； / ／ ／
. ／ ｀¨￣
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| 相討ちか。
|
| ディオは自嘲した。このディオが、こんな結末を迎えるとは。
| 野心は誰よりも強かった。野望は誰にも負けなかった。
|
| だが、掴みかけた星は、ジョニィによって永遠に失われた。
| 乗馬界の若きプリンス。そんな栄光も一度はあった。
|
| 才能にあぐらをかき、他人を見下すジョニィを下したときの爽快感が思い出される。
|
|（ああ、失われる……命が失われる……）
|
| 走馬灯、貧民窟での暮らし、ジョースターさんの厳格な指導。
| 乗馬、才能を開花、絶頂と……没落。
|
|（ジョニィ、オレと貴様はふたりでひとりだったのかもしれんな……。ふふ、奇妙な友情すら感じるぞ）
|
| 失われる命。泥の中でもがいた男。その末路。
| 肥溜めみたいな泥沼で、しかし彼は見つけた。
|
|（そしてさらばだ、やらない夫。
| 貴様は偽物でガラクタだったのかもしれん……だが）
|
| 急激に熱を失う胸に灯る温かいものを、ディオは最期にギュッと掴んだ。
|
|（ガラクタでも、俺には星だった）
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､ ＿ ＿_
ﾄ､_＞ ´: : : : : :＞ 、
〉: : : : : : : : : : : : : _:.
､ｰ イ: : : : : : : : :＞ ⌒´ ヽ
｀7: : : : : : : :イ '.
{: : : : : : : : : } }
,.イ: : : : : : : ﾉ ー-_､ x≦
￣｀V⌒ヽ : { ヾ赱ィ {ﾔ| あ〜あ、
}ヽ て }ﾉ ヽ } 殺しちまったら尋問できねえじゃん。
|: : >ーﾍ _＿＿´!
＿＿|: :ﾊ ヽ ｀ ¨¨´ '
´ ニニミ｀ヽ ＞ .. ＿_.}
´ ｀ヽ Vー- ミ // ｀ヽ
二≧ｘ ､ } } ｀ヽ ﾐ､ヽ'＾ヽ ＼
｀ ＜≧x.ﾄ､ } } ヽ ＼ﾑ _ ､
ヽ｀＜≧xr――＜:: :｀ヽ .}
三≧ｘ ､ ＼ r┬｀ ＜:: :: ::ヽ:: :: ＼/
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| 即死した襲撃者を蹴飛ばし、ジョニィ同様に下半身丸出しのオズ。
| 下半身どころか千切れた腸や他の臓器まで丸出しのジョニィは、紫色の顔で必死に傷口を押さえている。
|
| 内圧で飛び出してくる臓物をどうにかしようとしているのだが、その顔は出血性のショックで真っ青だ。
|
|「お、オズ！ あんた『教会』だろ？ 治癒の奇跡とかないのかよ！？」
|「残念ながら俺はそういうの専門外でね、殺すの専門さ」
|
| 突然の惨劇に、犯されていた女子生徒二人が悲鳴を上げる。
| 騒々しい絶叫に、オズは眉をひそめ、面倒くさそうに首を折って永遠に黙らせた。
|
|「暴君は向いてなかったなお坊ちゃん。
| まさか最初の暗殺者に殺られちまうとは拍子抜けもいいとこだぜ」
|
| 縋り付くジョニィの手を踏みつけながらオズは笑う。
|
|「い、いいから、なんでもいい、なんても、いいから！」
|「別にお前さんを助ける義務はないんだぜ？
| ん……いや、お前がむざむざ死んしまったらあの怖い姉ちゃんに怒られるかもなぁ」
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}ﾊ ヽ: : : : : :ﾊ
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< ヽ: : l: :| ＼
rﾊ´_.ィ /: : :ﾄﾐ:､ ＼
, ＜ ￣｀ﾝ: : / : }/: : : :}´了ヽ ＼
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ゝ､ 彡 >´::_}{_:: :ゝ:/´ﾙ}二ﾆ=≠=ヽ ｀ー' ノ
/ / {__} ´:: :: ｀}{´:／ｲ r ´ ﾄ ﾉ ヾてミ,:´ﾘ
_ ゝ`T!´ {:: :: :: ::.rく／::ヽ. Yヽ ､ヽ｡ｰイ r'_ﾉ 人ヾ ､
,. ´ ﾑく i! ゝ:: :ノ/乂:: :: ハｰ} X } {.ﾉ ． ´ヽ Y ヾ ､
/ x≦=} }ミ､ﾙ- ´{:: :: /´.:: :: :: :: ::} <_∠ﾆﾆﾝ_. イ ヽ / ヾﾍ
`i´ へ ｀ヽ ! :/:: :: :: :: :: ::./ 〈ィYリ { ｿｰ' `
ヽ / ＼ L ﾚ:: :: ; :: :: :: :´∨{｀Yi´ ヽ ／
` ｀ ＜ / ヽ_}:: :: ::} :: :: :: :: ::.ヽ { { >／
｀ ＜ / .|:: :: :: :: :: :: :: :: :: ﾊヽゝ彡´
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｀¨ヽ､_ノ ::｀ヽ:: :: :: ::´ :: :: :: :: :ヽ
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｀ヽム く r― ､}, - ､ん´ i! !
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| オズは……いや、オズの顔をしたアリー・アル・サーシェスは『十字軍』のもうひとりの司令官を思い浮かべた。
| オズマ、オズの姉。弟がいつの間にか別の存在に取って代わっても気が付かない間抜けな女。
|
| アリーはオズの顔が用無しになったら、最後にオズマを犯してやろうと画策していた。
| 弟に力尽くでレイプされたら、あの気の強そうな女はどんな顔をするだろうか。
|
| それとも、自ら腰を振って悦ぶだろうか？
|
| なんにせよ、途中で自分の正体を明かしてやるのだ。
| 絶望するか、狂乱するか。それも楽しみで仕方ない。
|
|「なんとしても助かりたいか？」
|「た、頼む……何でもする！」
|
| 縋り付くジョニィ、オズはそれを邪険に払いながら、鼻で笑う。
|
|「よし、じゃあお前の身体は生かしておいてやるよ」
|
| こうして、ジョニィ・ジョースターは短い人生を終えた。
| その最後、ほんの僅かな絶頂の時間。彼が掴んだと信じた星はガラクタに過ぎなかった。
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/／／:::::::::::::::::::､:::::::::::::::､ヽ::ヽヽ
///:/:::::::/::::::_/＿_li＿:､::､::ヽヽ::.Vi
/7 (/__;::/-‐'´/ __,. L.._｀l‐ヽ=ヽVVli
| ! .l ..ィ!f:::7!::{「:::::::ﾄ!|::::i::l.l:ﾍ!:‐､ l |:||
ﾚ|ｒ|「::::::|:|:::{|:::|!li:::::::|.||､::|:::|::::|:::i::|.ﾄ|Y
V|::l l::::::_:i_:|__:|_,i:::::::l､ムﾑ:l-l:|!::|:l.|::ﾚ
V!ﾍl::::|ﾃrt:ｎﾐヾ!::::/'ノ'ｲ:でﾘj:ﾉ:ﾘ:::|'
i||!:ﾍ圦､V:Z ノ ゞ='ィシ::::::|
||!:::::ﾄゝ | ｲ::::::::| 拷問なんて……
ﾞ|!:::::ﾍ . } /!|:::l::| ジョースターさんは何を考えているのかしら。
|!::::||'ﾍ __ , ' |.|::| |
|､::l|| ＼ ´ﾆ｀ ｨヽ .| ﾚ| |
| V|| /|｀ ､ ／ .トi:V ' ,.|
|.､ || ∧｀ ‐ ､｀,´‐ ´ !:| ,.ｲ:||
|!::l l! {;ﾉ! V V::::l:::||
.!!:::!.|ァ’/' | |:::::|:::||ﾞ ‐ ...__
, -‐ ´|!|:::|.| _l. -―r‐ r‐- _ !::::|::::|| ｀ ‐､
/ .!||::::l.l´ -‐L...ト､ ｀!|:::|:::::|| ｒ l
| l | l||::::ﾍ. ／/ | |ヽ | |::|!::::||i / |
| ﾍ |.ﾍﾍ:::::ゝｲ / .! ＼.ﾉ､|::||::::|| ! / |
.! ﾍ ! ﾍイ´/ / | ! ヽ | ｀ヽ:j| | .! / |
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| 自分が暴行されかけた恐怖よりも、拷問への嫌悪感が勝るらしい。
| 教えられた体育倉庫に足を向けながらマリナ・イスマイールは口元を押さえた。
|
| 彼女は運悪く『夢世界』に巻き込まれた一般人である。
| ペルソナを抑制し、ルールを与える『法務官』の媒介にされただけで、魔術や異能の才能は皆無だ。
|
| 現実世界でも『法務官 シェオルドレッド』を発現できるものの、
| 元来争いを好まない性格のマリナにはその力を使うことは困難だ。
|
| 同様に『法務官 ジン＝ギタクシアス』を持ち、魔術師でもあるクロトワに事態の収拾を頼もうと考えるのも頷ける。
|
| 刹那は彼女に付き添いながら、周辺を警戒していた。
| 嫌な予感がした。ジョニィに『教会』の息がかかっている事はエダから聞いていた。
|
| しかし、なんだこの状況は。
|
| 『教会』の誰が、こんな混乱と無法を求めているというのだ？
| どこか知らないところで決定的な歪みがある。刹那は確信していた。
|
| その歪みの中心は誰だ？
| ジョニィ・ジョースターか？ あるいは別の……？
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, -‐‐:::=‐-､
, -‐- 、 /::::::;:ﾆ-――- .._
/',ニ=-::`!:::::'´::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
{､(､ _／:::::／::::::::::::::::::::::::::ｒ::::::::::::::::::::::::::::::::::､::::＼
ゞｰ::::::::::´::::::／::::::::::::::::::::::::::､:::::::::::::::::::::::､::::＼:::::＼
ﾍ:::::::::::::::::/: /::／::／:::::::|::ヽ:＼:::::::::::::ヽ:::＼::::ヽ:::::::＼＿_,.)
,ゝ;:::::::::/:/::/::::/:::::/::: /::::::::＼＼::ｉ::::::::i::!::::ヽ::::いヽｰ一 ´
小::::ハl::/::::/::／|::::!:::::::::::::::ヽ::ヽ:ヽ::l::!::::::::;::::'. ﾞ;l
{いﾍ (i:;:::::小i＼|:::ﾊ::::::::;::::::::ﾊ::l:::::i::!:ｉ::::::::i::::::, !
｀__)::ﾊ!|::::{《 ｆう心{､ヽ::::i:::::厶ｊ/:::::ｊ:ハ::::::::!､:::::､
,ｒ‐ｆ ｛小:iﾊ:::ト ゞﾆ ｀ ｿ::ｨ刋＾》:::/:::::ハ::::ｉ ｀‐-`=-
_ﾉ } いｊ:ﾊヽ! ｰ彳ゞ' イ／::∠ !::;' マリナ・イスマイール。
, ´ ゝ { 乂 ﾍ'､ 、ノ ,.ｲ::／ ヽi/ そのドアは開けるな。
,.x＜ ／ ぃ ‘ ‘､ ヽ＼ -－- イ /个 ﾉ>―┐
. / ／ ‘､､ ‘ ‘､ >､_ イ { | ！ ／ ⌒ーｖ‐ 、
. / ⌒ ､ ヽヽ i ＼ ＼_」_／ ∧ ! ／ ﾉ ／￣L__＿
/ i 丶 ‘ {､ ` - 、 ／ / / ∧ ／／ ／ ／ }
// l } い 、 ￣ / レ 丿 -― ／ ' / ／ ／⌒^ユ_
〃 l ヽ ｊ {､ ＼ー‐一 / /￣ 二 -‐ / / ﾚ ／ ／
/ l ‘ /} } ヽ ＼ ／ 厶_／ V { ! / ｨﾞ /
. / l V ] {､ ￣ ／ ／ , ’ ＿__ ］ ｊ / !―‐i‐- 、
.／ ! /‐| ! ｀TニT´ ,ｨ ＿_／i ,_／ ｀ヽ ! ﾉ , / ＼
￣｀ ー‐ ､ ! / | ｉ l ! / 「 i ぃ └ﾍ レ ﾝ , ヘ
-､ ｰ､_ ヽ、 ､/―‐! | ｉ_, l´! ! ! ！〉 ⌒∠ _ ／,
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| 体育倉庫からは濃密な血臭が漂っていた。
| その周辺だけ気温が低く、空気すら青白く見えた。
|
| 紙のように白い顔のマリナの肩を掴み、刹那は引き戸を開ける。
| 中は血反吐の沼であった。
|
|「うぅ……っ」
|
| 鉄骨の梁にぶら下げられた、クロトワだったもの。
| 全裸で、歯はなく、眼に光もない。
|
| ねじれた両腕、爪のない指は丁寧に全て折られている。
| 腹から下は十文字に割かれ、傷一つない内臓がぶら下がっている。
|
| だが、傷はなくともその活動は停止していた。
| 死因は出血だろう。夥しい血液で周辺は赤黒く塗られている。
|
|「入るなマリナ・イスマイール……素人の手際ではないな」
|「……分かるのですか？」
|
| マリナの問に刹那は頷いた。
| 彼はアリーに師事して悪魔狩りの技術を伝授されていた。
|
| その過程で、『尋問』もまた。
| そしてそのやり口は、アリー・アル・サーシェスが教えたものに酷似していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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(､＿＿＿＿ ヽ 、
ｒ ＼＿__ : : : ｀ ﾐ､ヽ
{、 _, . : "´: : : : : : : : : :､ ) ）__
ゝ二,´-‐: : : -―: : : : : : : : : : : ‐-ﾐ､
／: : ; : :´: ､ ､: : :、＼: : : : : : : :｀ヾ、
. ／: : ／:/: :ﾄ､:lヽiー-ミ: :ヽ _ : : : : : : : ＼＿_,
. ､＿_／: ／/:／! !｜ｊ:l/.ィ^ ｝:7￢＝-､: : : : :‐=ﾆﾞｯ 想像よりも状況が悪いぞ。
￣￣ｱ://ｨi l: ｌ ｌ: l/i仏ﾘﾉｰ=' ｨ ﾉ)ｿｊ }: : ､ヽ:‐=;´
. /:/: : ハ: ､､ヽ!ﾉ＾ ´ 〃 ｊ／/´ｒ' ノ: : : }ヽi⌒` マリナ・イスマイール。
{/{ : ∧: ヽ: ≫=- { { 「｀ぃ : : } 警察に通報をしろ。
{ ｛: :′', : i : >､ ' __, ﾉ ノ小 ﾄ{＿
. ヽ{ , : :､ ＼ ｆ'´,. ／ _ノ'ン＾Ｖ ヽ ＿
ｊ: : へ: : >､ ／ ／ / }一ｆ⌒ゝ―- ､
ｰ´'´ }:ハ ヽ__ - 、 ／ ／ ,: 丿 , , ´ ヽ
ノ' へ( , / / / / ｛ 、 ‘，
小､ ヽ/ 〃 / / ！ ＼ ぃ､
/八 ｰ ´ ／/ ' / 〉 ＼ ‘，｀ ー‐-､
ｒ'ﾞ{｛ ＞‐=二 ／ / / } ーﾍ }
{ }」 ｛ｰ=ﾆ二´ / / ｛ 、 ＼＼ ‘，
∨ { {､＿／ / ´ 丶ヽ 丶ヽ. }
/ ｛ {､ ／ ＼ ｀ヽ、 ｀ く
,′ } }､ ｰ ／｀､ ニ=-＼ ヽ
, ﾉ { ｔ ￢ﾌ´ ､ ＼ 丶
{ } ‘， ヽ ヽ ＼ 、 ＼
_ノ｝ ハ ‘， ｀､ ､ヽ、 丶 ヽ､
／ / / ‘, ｛ ｡ ヽ ＼丶 } ＼
丿 〈 ’ ｛ { `､ i ヽ‘, ヽ
〈｀ヽ ハ ﾘ ｛ ’， ヽ l ｀{ ､
￣＼ , { ｛ }､ ゝ ｡ `､ / ’、 ヽ
`ー‐〜'′ } ｛ ‘ ハ , ヽ `､
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|「……イスマイール先生ですよ」
|「努力する」
|
| 嘔吐感をなんとか我慢して、マリナは携帯電話を取り出した。
| 警察に電話……でも、なんと説明する？
|
| 生徒が突然暴君になって、人が殺された？
| 学校側が責任を取らされる？ 誰が？ 私には通報の権利があるの？
|
|「マリナ・イスマイール！」
|「え……ええと……」
|
| まごつくマリナを、突然刹那が押し倒した。
|
|「えっ」
|「おおっと、勘のいい奴だ」
|
| 覆面姿の三人組がゆらゆらと現れる。
| 赤くなったり青くなったり忙しいマリナは、先程まで自分の頭があった位置に大型のナイフが突き刺さっているのに気付く。
|
| 殺すつもりで攻撃された。
|
|「口封じか」
|「持ち場を離れてた俺らが悪かったよ」
|
| 覆面の一人が次のナイフを出す。
| 別の一人は特殊警棒を伸ばし、もう一人は懐に入れたまま。
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/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｉ:::::::ﾍ /:::::::::::::::::::::::::::::::ｉ おい、女は殺すなよ。
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｉ:::::::::ﾍ ./:::::::::::__::::::::::::::::::::ｉ オズさんに取られる前に俺らで楽しもうぜ。
／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｲ:::::::::::::ｉ ./:::::::::/ .ﾏ::::::::,‐､::ｉ
＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::>::::○ｉ /:::::::::::{ ﾉ::::::::{ .]::ｉ
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|「そうだな」「いいねえ」
|
| 異口同音に賛同しながら、二人がかりで刹那を襲う。
| ナイフ投擲、一本に見えたのに実は三本！ 特殊警棒の覆面も隙のない動き。
|
|「動くな！」
|
| 三人目、マリナを殺すなと言った覆面が拳銃をマリナに向けた。
| 身を固くするマリナ、だが刹那は違う。
|
|「ガンダァム！！」
|
| 融合装着型のペルソナが一瞬で発動、七本の剣を持った鋼の天使に変身。
| 右手でナイフを切り払い、左手の刃を拳銃男に投げつける。右腕に命中、骨を断つ。
|
|「ぎゃっ！ ガンダムファック！！ おかあさーん！！」
|「こいつ、異能者かよ！」「オズさんを呼べ！」
|
| 装甲を叩く特殊警棒、大した怪我ではない。抜き打ちの一撃。両手の剣で踊るように連打。
|
|「ひっ」「うああぁ、いてえよぉ！」
|
| 片腕を肉と皮膚でぶら下げた拳銃男が泣きわめく、特殊警棒を寸断してその持ち手を斬り伏せる。
|
| 尻尾を巻いて逃げながら電話をかけるナイフの覆面。
| 刹那はマリナを抱きかかえて反対方向に走った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r‐､:::::::::n､::::::_:::::::::ﾉ:::::;:ィ´::::::::（:::::::::_＿_;ト､
:::::::::::::::::::::/:::::::::）::::ヽ ヽ;_;八;__{::::::／::::;ﾉ:::::::i:::::::__;レ'´__ ☆ヽ
: ::::::::::::::::/⌒し'::::::::::::） ,ィ /､_:/_:::::／￣＿ _/:::7 ﾊ_/|
､＿＿;ノ ヽ--:::く / |（___（::::ﾌ' ☆ |Ｌ7У:::::ｊ __ ☆ ∨|
::::::::::::/ ／／:::｀::￣ |__ ヽ (_::ｆ ☆ | ｌ{__|:::::｢ ト.{ }/
::::::::::/ ／／::::／＼::＼ ） __ヽ弋ｿ／／ﾞヽ ＼--､ノ / ﾘ ここがペルソナ使いのハウスだな！
::::::::/ / /::::::/ ＼／|（::::::）:::/／ 二＼ ＼_三彡ﾍ☆ /
::::::/ l /:::::/ / ｌ ﾊ＿ｽl｀/| ｆo ､!ﾉ ,.へ ∨、
_,ノ─ ､::::::ヽl:::::/ , '´￣| l ＼__V/| / ´'￣ ｨ´ ﾟ ｿ/ ∧
. ｀ー‐l:::/／ V ＼__, //| .｡ ,. ､/ ´￣´//}:::l ∧
|/ ＼＿,ノ |/∧ _ 、 ﾉ ,.ｲ/__l_::|___|
{ / ＜＿_,ノl / ∧ {j｀‐ ==' ／ﾚﾘ /／
∨ ／ |∧| ヽ｀ ｰ‐ '／-─‐-＜｀ヽ
＼＿＿__＞ ´ l{ ｀＿__ ￣／三三三三ミ＼|＿＿ノ￣｀ヽ
. ￣￣＼ ,.ィ´￣ ／,. -､ ｀ヽ＼＼ ＼ ／〉
, ＜ /／（(⌒｀ヾ |￣ |＿＿| 〉
_ ｘ＜ ヽ ／ ＼、＿)） | / /-一'
ｆ´ /、 / ｀ ￣ ´ / /￣￣
ヽ _／￣｀ヽ.＿__| / / /
｀￣￣￣ 乂＿__／ / |_／
） l |
/ _,ノ ﾉ ﾉ
/ ／ {/|
r─/ ／､_,ノ,ﾉ
/￣￣／ ヽ.＿ ／ ／イ
｀ーィ´ ／__／
（ ヽ.___／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 覆面男を多数連れて、モブペルソナ使いたちの残る教室に飛び込んだジョニィ。
| その目は白濁し、瞳は焦点が合わずに常に不規則に動いていた。
|
| 口角泡を飛ばすジョニィの異様さに、ペルソナ使いたちは怯えた目を向けた。
|
|「んっん〜〜？ 数が少ないな。残りの連中はどこだ？ 隠すとためにならんぞ」
|「と、突然なんだ無礼だな！ 我々はなにもやって……へぶっ！？」
|
| 食ってかかったデブ（ファニー・バレンタインくん）の顔面に金属バットが叩きつけられる。
| 悲鳴、唖然、覆面たちがファニーに角材、木刀、鉄パイプ、バット食らわせ黙らせた。
|
|「よ〜し、女子生徒はくれてやる！ 好きにしろっ」
|「さっすが〜、オズさん……じゃないけど話が分かる！」
|
| 覆面たちが意気揚々と男子生徒を殴打し、女子生徒に襲いかかる。
| その姿をジョニィはよだれを垂らしながら見ていた。
|
| 彼の隣に立つ腹心らしき覆面は、彫像のように微動だにせず付き従う。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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￣￣￣￣ ＞
. ／／) ☆ （ ＼/} ／
. []く:::::[]＿ ☆ ﾉ ,ノ/| /:::::
. /[{,ﾉ::::[{ ＼ﾉ /::::/
{人ｰ‐ク＼☆ ＼☆ ＼ } /' /
. {ﾄ､￣___,ノヽ ＼ ＼_｢ /
. } } ヽ_ _´ ＼ ☆ ＿ﾉ ､ / / あ〜〜〜？
∨ ,ﾉ{＼＿＿＿} ﾄ､ / / ンだよ、マリナ・イスマイールは別のところか。
. ヽ-' ＼l{ } | l{＿_ノ /＿/ /
ﾄ--o ／ lNｌ ｌ|＼＿／イ / /^￣￣
. ‘┬{j ィｉ〔 | l|八 lﾄ､＿,ノ／￣￣＿
ｰ ´＼ l/ ∨j ／ ／ ｀
／ ／＼ ／／ ／￣￣￣￣￣ﾐ
/ ( /＼__／／ ／＼ ＼ ｀
ﾄ､＿＼ ￣￣／ ／ ＼ ＼__ ___
/ / ＼＼__／ ／/ /⌒厂ヽ'⌒
. | { ＼__／/ / ／{☆( ☆
＼ } / / / ＼ ☆ ／
}乂 / / / ヽ___/
∨ ＼＿___l_ l＿＿__/ ／ ー―
∨￣￣￣￣￣￣ ヽ ／ ___________
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| ブツブツと呟くジョニィ……いや、ジョニィだったもの。
| オズ＝アリーに遠隔操作される端末。
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|「ぺ、ペルソナ！」
|「はいダメー！」
|
| 抵抗する女子生徒が出したペルソナを、ジョニィの爪弾で破壊。
| フィードバックでのたうつ彼女にジョニィは奇妙にギクシャクした動きで近づいた。
|
|「コイツに例のクスリ飲ませろ。三錠な！」
|「え？ 壊れちまいますよ？」
|「壊すンだよ！ キメッキメでヤりまくって、最期にいい夢見せてやんな！」
|「ひひっ、確かに壊すのもいいですね！」
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| 覆面が服の内側をがさこそやり、ジップバッグに入った錠剤を取り出した。
| 学園内で流通する麻薬、中でも高純度のもの。
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,ｨ
ノ厶-≦ィz＿ノ;!＿ _,
ヽｰ-､ー─-‐ ￣∠
_ - ￣｀ ＿'‐_､
≦ﾆ _ ＼＞ヽ
∠_ ､ ＼ｰ ､＼＼ヽ ､ ｀ヽ ＼
_/, ､ ト､ ヽ＼ ヽ､ ＼＼､∨＼ }ヽﾄ､ﾄ､ヽ
7 ! }ヽヽ. ! ヽj.Ni | ＼} ｰヽ ヾ} ｿ j ヽ ヾ
i ,! j! .! | | Ⅵ.| ﾘ }ﾘ ∨
{/ ハ { { | ! }ﾘ ＼ ∨
} / | {ﾄ､､ {＼ﾘ ヽ ′ ＼ , -､
{ハ{∨{ ＼{ .} _ - ￣ / ／ -､ヽ. | 何している！
ヾ ヽヾ{ | {, ／ _ - ア ′ ＜._ | | |
r‐ ‐-､ x_,.ｨ' り_／ ゝ､ j | | |
ヽ-‐ｔｯ-ヽ -二_￣ l ノ ／ﾉ/ L＿_
}｀￣´'j ￣￣ | _ノ .ﾉ::::::::ヽ＼
| ／/ 丿 / - " ∨::／／ {
八 { ＿_ ／ / l .r-‐_ ﾆ - " ∨
＼ ヾzf::::ｰ::;｀ _ -'ﾊ ! .:::::| | ∨_
ﾊヽ _｀-‐ ￣＿_ ﾉ::! .| ,:::::::| | ∨＼__r──
|.∧ ｀ヽ-‐:::ｱ ﾉﾉ | /::::::::! ! 〉 ! ′|
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_ -─‐-,､ ノj! |::::∧ ､ ￣￣ ─ ′ / ｲ::::|::::::::l ! / / /
＞ /／ / j .!:::::::::ヽ} ,/／::::::::|:::::::::i ! / / /
'" // ./ /! .!:::::::::::::ゝ ＿,...-......-≦::::/:::::::::!::ﾍ::∧ ∨ ／／ ./
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| | ! | /::::::/"＜{｀ヾﾊ .:斗_ ﾆ‐ ¨ ∨∧ ／／ /
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| 巨体によるタックルで、覆面は頭をロッカーに強かに打ち付けた。
| 勇敢なクラスメイトの帰還に、蹂躙されていた男女がにわかに目を輝かせる。
|
|「お前の思う通りのことだよ」
「ぐああぁあ！！？」
|
| ジョニィの指先から発射された爪弾が、大男のふとももを貫通。
|
|「この能力、なかなか悪くないな。暗殺に向いてる」
|「うぐううぅぅぅ！！」
|
| トマトのように真っ赤になりながら掴みかかる大男、その腹にさらなる爪弾。
| 痛みにのたうつ彼を踏みつけ、ジョニィは先程の女生徒の髪を掴んだ。
|
|「お前の女か？」
|「うぐぐぐぐ」
|
| 唇を食い破りながら痛みに耐える大男の前で、ジョニィは女生徒の腹を殴打。
| 朝食を嘔吐する様子にゲラゲラ笑いながら投げ捨てる。
|
| その視線はギョロギョロと不規則。
| だが、廊下側を見ているのは明らか。
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,／.:.:.:.:}／Ｖ´￣.:.:.:√.:.:.:.|::::::::::::::.:.:.:::.:.:.:.:.:.:ヽ
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|:ｌ.:.:.:.:.:./:L..__ﾊ/:::ﾊ.:.:.:.:|::::::::ﾊ::/iﾊ:.:.!.:.:.:.:.:.:.:.:.
,:.:ｌ :.:.:.:.::! r‐z=ミ｀ヽ}∧:.ｉ/ｌ/七弍 W'l:.:.:.:/Wi::.
/ｨ:ｉ :.∧::| Ｌ込夕 N ' [rク) } |.:.:/:::::::!:ｌﾄ､
ｊ:. :ｉ{ ィ:l { ￣￣¨ }}: イ::::::!:ﾘ
,}:八 N :| }} 从 ﾉ:::::ﾊ′ うう……アーダン……！
j/ ､:.:ヽ ij ′ /／:::ﾊ/
ヽ:::. r─ 、 /:ﾊ/V
}/ヽ ¨ニ¨ .ｲ/ 、_＿
.／/:ｉ:ｉ:ﾊ＼ ／,:i:i:i:i| …=ミ
_ ． -‐=／／i:i:i:ｉ:{::. ､ __ . ィ /i:i:i:i:i:l
／i:i:i:i:i:i:i:ヽ::. //i:i:i:i:i:i:i|
ヽi:i¨¨ミ:､i:i:i:. , ':ィ=＜八
/ :i:i:i／!＼i:i. ／,:i:i:i| ｀ :＼
./ }／ | 〈ヽ} ／く:i:i:i:i:i!
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| 青ざめ、腰が引けた浩一と友人二人。
| 彼らをかばうように、中身のない袖がひらりと揺れた。
|
|「ないすな展開でござる」
|「ふ、藤木……」
|「使い方が違ったか？」
|
| ゆるりとした足取りで、修羅の巷と化した教室にエントリー。
|
|「なんだテメエ！」
|
| 木刀を振り下ろす覆面。無造作に素手で受け止め、足払い。
| グルンと回転して頭から床を突き破る覆面。その喉を乱入者は踏み潰した。
|
| ……『九鬼』『ペルソナ使い』『破滅願望者』『カトルカール』『セイバー』……。
| 己が何なのか、その男は一瞬だけ考えた。
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, " {圭ア´／.:::::::: /ヽ .:::::::::::/..: : : : : : :i ヾ圭i}｀ヽ
. / V彡i ー=≧s｡.＿,.:::::::.､__,,..｡s≦=一' V/L_ ｀ー ‐ '"´
┌ {Ξiｰ<¨ _丐i 〕｀ヽ:::::〈 ィ〔_丐i ¨>ｰ /ｼﾞﾊ }_
ﾉiハΞ' ,.:::::::￣ .:::::::〉:{:::::} ゝｰ‐ ￣‐‐.: ﾊ{ // ￣ ｀ヽ
/ ∨ハ! ヽ.:::::::::::::::〈 }:::::} 〉:::::: : : : :./ j{ j ﾉ/ } 藤木源之助。
. ′ V ハ :.＼: : : : :Ⅵ:::::} ,′ : : : : : i ｲ ..У 彼らの級友だ。
. 乂 /ヽ_∧ .:.` ､: :└､_r┘ : : : : : : : /<ﾞ´｀` .
. { 、:.:.:.:.: : ､＿儿＿_; : : : : : / ヽ ヽ
乂 _ ﾉh､.:.:.:.: : ｰ￣ 一' : : : : :ｲ! ` ､ ﾉ
／ {ヽ}ﾄ､.:.:.:.:.｀¨¨ﾌ: : : ／ : !| ｰ "ヽ
＿|: : V/}h､. _＿ イ: : : : !|＿_ )
( ／xｉ∧: : V/∧ :::::::::: /ｉ : : : / /xi＼
／xiｘiｘ ∧: : V/∧:::::／:/: : : / /ixｉｘixi＼
,.ｨi{ｘｉｘｉｘiｘｉｘ ∧: : V/ :::::::: /: : : / /xixiｘｉｘｉｘ个s｡. _
_＿___,,.､｡s≦ｉ:i:i:ixｉｘiｘiｘiｘiｘi ∧: : ＼:::::::/: : : / /ixｉｘiｘiｘiｘiｘi∧i:i:i:i:i:≧s｡..._
i:i:i:i:ｉ:ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉxｉｘiｘiｘiｘiｘiｘ∧: : : ｀¨´ : : / /xiｘiｘiｘiｘiｘiｘ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
ｉ:ｉ:ｉ:ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ixiｘiｘiｘiｘiｘiｘiｘ ＼ : : : : ／ /xiｘiｘiｘiｘiｘｉｘ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ixiｘiｘiｘiｘiｘｉｘｉｘｉｘ ＼:／ ／xiｘiｘiｘiｘiｘiｘi/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
ｉ:ｉ:ｉ:i:ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉxiｘiｘiｘiｘiｘiｘiｘiｘiｘく. _／xｉｘｉｘiｘiｘiｘiｘiｘ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
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|「そうかい」
|
| ノーモーションからの爪弾。源之助はそれをたやすく打ち払った。
| 唖然とするジョニィ＝アリー。今、何をした？ ペルソナ使いじゃあないのか？
|
|「ふ、藤木くんが銃弾を止めた！」
|「橘。アーダンの止血だ」
|「え？ あ！」
|
| 飛鳥がペルソナを出してアーダンに駆け寄る。
| 治癒能力のある彼のペルソナは、これから大活躍間違いなし。
|
|「……お前、九鬼の？」
|「そういう貴様こそ何者だ？ ジョニィ・ジョースターは？」
|
| 木刀片手に無造作ににじり寄る源之助。自然な仕草で木刀を担ぐ。
| おお、それこそは虎眼流の必勝型なり。虎眼剣士が刀を担いだら注意せよ。
|
|「やっこさん死んだよ、俺が殺した」
|「傀儡師め」
|
| 睨み合うジョニィ＝アリーと源之助。木刀の間合いには僅かに遠い。
| そして、直線的に発射される爪丸と、弧を描く木刀。
|
| どちらが早いかなど、比べるべくもあるまい？
|
|「ペルソナ」
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＿ｒ ┬┬ ｭ＿_
／⌒ﾏ. | | ﾏ ヽ
r―ィ ィ ｊ___ | | i| i＿ ゝ-┐
{i 人 ｊ ｲ / | | i| ｊ ｊ / i!
ﾏ ヽ ヘ |! | | i|ﾉ 人 ノｊ
マ }≧＝｣ | | L=≦ ノ
＼八 | ! ィ
／ヽ [｢｢ト､ H ,ィ｢｢｢] ´ ﾉ
ゝ、八>ﾄ|ノTTTヾソ个≠
イ77 ｀7 _Ψ_ 弋 ￣ﾄ＼
_＿┌┐ ヾ彡≠イﾐ＼こ／彡＞＝彡 ┌┐ ＿_
人 ￣￣＼_ｒ｢｢ﾏヽ_＿｣≧ｭ､三｡o≦Lノﾏ｢｢Lh、／￣￣ 人
/ ヽ ＼＿＼＼_ﾏ ー=‐ ﾏ、ｨ ／ ヘ ／ }
{ ＼ 〈 ＼ヽﾑ ミヽ＿_イ ｊ／／ ｊ ／ ｊ
ヽ. ＼ 人 ヽ､ヽ ／／ ／｀ヽイ 人
ｒ ゝ Y ＼ }ｰ＼ ／-{ ／ 人 ／ ＼
{ト、＼ ＞､ / ﾉ 人＿人 八 ／ 〉 ／ ノ
＼ ＼ 八 ヽ / ／ }ー{{ ヽ イ ／}
／＼ } _ノミ､ ＞}‐{＜､ ＼ } 彡イヽ
ト､ ＼ 人_/ ｒ‐ミ Y/ | ! 〉｛´ｒ=ﾐヽｲ人 --≠´ ｲ
{ ＼ ｀ { ､{! {ﾄ_彡 ｊト､ i ! ／八{ﾄ_リ ｊ } ／ /
! ＼ ＼ ヽ__ ノ、 ヽ ¨ / 人＿ 彡 ／ ／ /
＼ ミｰ= /{ ＼ ﾏ ヽ 人__人 / ﾏ ／ ﾄ} ´ ィ´
ｒ}ト / ＞ 八 ｒ' ｒ､ ! ,ｨ Ｙ 八 ＜ ヽ / ト､
人 人 |＿二二≧ ｀ ´ ≦二二＿| 人 ﾊ
/ ） ）--―{八. ┌个┐ 八}―--（ ヽ }┐
ｒ┤ ミ ィ´ レィ´￣「 .≧｀⌒´≦ Tー―-」 } Y⌒ﾐ } |
}/ {⌒ﾘ ／ﾉ ィヽ }. ┌┐┌┐ j ／ヽ { 八＿ﾉ Y
ｊ/ ゝ≠ イ ｲ/ }}. ｀ｰ┤││├‐´ {{ 〉ヽ ヽ ィ {
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| 藤木の背後に、鎧武者が現れる。
| ジョニィ＝アリーはほくそ笑んだ。所詮こいつもペルソナ使いか。
|
| ジョニィの体には『法務官』が入っている。
| ペルソナによるいかなる攻撃も効果も用をなさない。
|
| 逆に、ペルソナでは爪弾を防げない。
| この男がペルソナを使うならば、この勝負はもらった。
|
|「『星屑』」
|
| 対して、藤木源之助は、そのペルソナは星を掴んだ。
| 片腕を失い、同時に失われた秘剣の模倣。ガラクタの星。
|
| こんなに簡単なことだったのか。
|
| …………そして星が流れた。
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☆ 次回予告！
暗黒の地下迷宮を進む二人の男。
いずれも死したと扱われる身。
闇の底に待ち受ける二匹の悪魔。
いずれも類稀なる奇妙な怪物。
それは運命を変える邂逅か。
それとも抗えぬ流れの一部か。
胸に七つの傷を持つ男と女神の娘。
いま、ここにて世界の命運を担う。
次回、最終幕六十七話『ウィルス対策ソフト』
果てに見るのは破滅か死か。
乗馬のライバルだったのか……
鉄球使いがいれば違う道もあっただろうに
ペルソナは挟むだけ
めでたいね！
三:::ノ ）::::::: 三:::
三/ ヽー::::: 三::::::
::::::ヽ⌒ー ､:::::三 ):::::::. 三:::::::
::::::} ::三ヽ ..::::: ::.. ヽ::::::. 三::::::::
ヽ:::::: ( 三::::) :::::.... ::.... ):::::}ヽ:::::: 三::::::::::
ー､:::::⌒ヽ.⌒j 三::/ ..:: ::::.. :: ⌒ ):::::::::.. 三:::::::::::
ーｧ {:::::: :::::::ヽ 三 ...:: ::..::: ..:: :: {:::ノ）:::::: 三::::::::::::
ヽ＿ノ:::::: :::::::三 ..:::: :::.. ::::::..:: :: {::::: 三::::::::::::::
三 ::::::: ..::::: r、 ＿ ノ:::::::. 三:::::::::::::::
三::.. ..:: -⌒::ヽ:::::::.. 三:::::::::::::::::
三::::: ノ:::::::::: 三::::::::::::::::::::
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
三 ::::::::::::::::三:::::::::::::::::::::::::
三 :::::::::::::三::::::::::::::::::::::::::
- 、::::::: 三 :::::::::::三:::::::::::::::::::::::::::::
)⌒ヽ:::::::. 三 ｒ=ｭ, :::::::::::三::::::::::::::::::::::::::::::::
ー⌒ヽ、:::::: 三 .,-ｭ. ｛｀7/ :::::::::三::::::::::::::::::::::::::::::::::
⌒):::::: 三 ..:ｊ卅ﾘヾｒ､ ｒ'ﾆﾆ :::::::三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
(-:::三 .:::/｀ヽ_ ｀マニﾆﾆﾆ :::::三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ー、 :::三 .::::{ﾊ {ｒ' ｀}ﾆﾆ7' :::三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
⌒ー ｒー :三 :::_ﾉ人ヽ{華} jﾆﾆﾑ. ::三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
三 .:r7 ハ￣i7 └!ﾆﾆ} 三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
三 .:ｲ/ ﾊ ハ ﾆﾆ{. 三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
三 ｊ/ Ｖハ ﾆﾆ. 三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ノＶ Ｖﾊ ニ 三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
＿ｒー ―＝ ´ 7｣､ 「 ﾆﾆ 三:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ｒー’ ミ 、 ｊ ヾｰ、 Ｙ ｒ┘（ ￣￣￣￣
ー-ー―┐ ヽ } 人ｒ―´￣ ｀￣
ゝ=ｙ ヽ /／
/＿ﾉー―＝彡
投下します。
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′ 丶
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| ∧ -──＼| | }
／| / ￣'. .' 丶 | │
| ./ - ′ ′- ＼ il丶 / あくまのけはいはないよ。
| / | 芋う ､ / 芋兀う 丶 ! )/
| ∧│弋ｿ ` 弋ソ ＼|ノ
∨ |│ ′ ／
ｌ/ ＞ ､ _ - ＿──-≦ー─,
／r.: : : --─≧￣ |ニニ;／
` ､￣￣ ｀l |二／丶
＼ | |／:. :. :. `､
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|「よし、行くぜ」
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| 悪臭漂う地下下水道を、四人の男女が進んでいた。
| 先頭、頭がつっかえるのでやり辛そうにかがみながら、しかもおんぶしつつ歩くのは北斗ジャギ。
|
| 懐中電灯をくくりつけたショットガンを手に前方をクリアしつつ進む。
|
| その背中に括り付けられたシグ。
| 得意の使い魔で周辺を警戒、斥候も兼任。
|
| 真ん中に、恐る恐る歩くやる夫。
| 華琳によるとテストラップやゾンビで満載のはずの通路。
|
| 『万魔』の下僕によりほとんど排斥されているはずだが、それでも危険がないわけではない。
|
| そんなやる夫を胡散臭そうに見るのは、殿の天龍。
| 眼帯につけられたサーチライトで暗闇を照らす。
|
| やらない夫について歩くうちに、天龍は地下戦闘のエキスパートになっていた。
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／Ⅵ ﾊ＼
i |:|＞. :::::[ｱヽ::..ﾐ / :i＼}
l .ｱ゜::::::::::,.:::::::::::.:::::ヽ l |
!__/:::／:::::::′:::::::::::.:::::::V ￢
[／:::::/::::､/{::::::::::::::::::}::::::.V-' _ ─ ､
´7:::／i{:::::劣ミ､::::::::::::/::::::::.k⌒ 斗fｾ ｀ 斗fｾ
ノィ::::::圦:::{ﾋツ ＼N' }::/:::八｀ 斗fｾ ｀
ﾉ,:::´::i:::N" , └ﾉｲ／::::.＼斗fｾ ｀
/ｨ::jﾊ:::ﾄ. (＾-_ｧ ノ':::iﾊ/'⌒｀
_ ＿ 斗fｾ ｀ ,ﾉ:: vjﾉ;r}` -s≦:i::::八_
, f'＾i(` -,xL |｀ _.. , ⌒r､::k(⌒ / ｿ '- ミ⌒ 雑魚の処理はオレに任せろ。
[＼>'~｀「-'} }}.:|!斗fｾ ｀ / / N .}｀ ,く |: v/
r ' ｀ `´ _../:::::[L..」 ;' _/ .斗／＼」､_/_-ｎ､」 , ﾔ'' +..
L ..｡s≦＼:::::::／:> _ ‘'r〈ﾊ,／.._ t_┬ ミ_「ﾔ ヽ ﾔ｀ ｀,
寸_／ `{ ｀YマvV ￣/ r_┬_｀:::::::::＼=V/ ﾔヽ :
＼ /─ j{ニﾆ{: . / /└斗-｀::::::::::/＾7}─_ 'ﾆ}; :;
. i::/─-j{ニﾆ込: ´: : :.√ﾆ`「 ￣〕iト L_/ `ﾔ‐ マ､,-'
└ ─-j{ニニﾆ介 - =jニニ|iト.. _ _ ..:i＼ |‐- }∧
√ニニニi|_} |ニニ! . : :!ﾆ|::ｿ‐- 'ニ}
√ニニﾆﾆ|圦＿|ニニ| ＿ ＿_..i{_公.. _ /ニ7
√ニニﾆ-ｉ|ニ]_ ＼／'´ /＿[ _人ニニニ=-'
√:ニニﾆ-i|ニ]ﾆ＼/〕iト _/:ニニ:ニ-Xニニ〔
√ニニニ-i|斗}､i-=ニ}ニニ}ニニ}ニ=-＼ニ∧
√ニニニ-i| /ﾆ＼〕iト -= }ニ=- -=ﾆﾆﾊ＼_∧
「￣￣￣￣| /ﾆ/ﾆ=-_ -ニ:}ニ=- :／ニ- ﾔ-ヽ´＼
| ./ﾆ/ニ=-/=- j{_ -=ﾆi!ニニﾆ ﾔニ〉 >
└─── 〈ﾆ/ニニ/ﾆﾆ=-j「ニﾆﾆ:|iニニﾆ-ﾔ ' ／
;〕iト .. _'/ニニ/:}ニニﾆ:|iニニ＞''i ..
′ ─' ┘-─ '' " √
/乂 / 八 _ ... . :::}
/::::::::::≧=- - , {￣::::::::::::::::::::j
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 超高剛性級のおっぱいを除き、魔力も技術も身体能力もコンパクトに収まった天龍。
| 彼女は元麻呂道場のおちこぼれ……ではない。
|
| 再会し、その麻呂本人が太鼓判を押すほどに成長した継続戦闘特化である。
|
| 戦闘での消耗が少なく、常に周囲への警戒を怠らず、少ない休息でスタミナが回復する。
| 今まで目立って来なかったが、やらない夫のサバイバルを影から支えた縁の下の力持ち。
|
| 純粋な戦闘能力ではジャギには歯が立たないが、探索と警戒能力は歴然の差であった。
|
|「俺様の班は速攻一発勝負だったんだ?」
|「はいはい、おじいちゃんご飯は昨日食べたお」
|
| 別に文句があるわけではない。
| ジャギも、この中学生たちの力量に感服していた。
|
|「どうどう……つぎのまがりかど、右にさんひき」
|「よっしゃ」
|
| 肩を叩いて乗騎をたしなめながら、シグが発見した低位悪魔を報告。
| 狭い通路である。やる夫のもちもちな丸肉とジャギの傷だらけの巨体をおっぱいで押しのけて天龍が先頭へ。
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|「ジャギさんもまだ若いお」
|
| 天龍を直視しないようにしながらやる夫。
| 天龍に対してだけは必ず視線をそらし、顔を背けるやる夫に、天龍は最初こそ憤慨した。
|
| でも仕方ないよね、神話的弱点なの。
|
| 顔を挟み、鼻がくっつく程に近付いた所、やる夫が白目をむいて震えだした事で天龍も納得。
|
| 以降は適切な距離を置いている。
|
|「援護は？」
|「いらなさそう」
|
| 後方への警戒を怠らず、やる夫たちは天龍を追いかける。
| 必要以上の速度は出さない。
|
|「ところでやる夫よぉ」
|「やる夫の、クソ野郎プレイは堂に入っていたかお？」
|
| ジャギの問い、蒼星石への告白の件だ。
| しかし、やる夫の回答は不十分だったらしく、ジャギは頭を振る。
|
|「やっぱフリかよ、さてはお前『も』か？」
|「そりゃあ、あのヒトデナシが温存してたんだから、まあ。使用制限はあるお」
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼ あーあ、もう。
／ ＼ アイツ本当に馬鹿だお……。
| ＼ ,＿ |
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／ 空手形でぬか喜びしやがって。
( ＼ ／ ＿ノ | | いつか悪いやつにコロッと騙されるんじゃねえか、心配でしかたねーお。
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「悪い男……そりゃお前だろ」
|「あ……返す言葉もねーお」
|
|「後で殴らせろよ」
|「アイツの分までボコボコにしてくれお」
|「？？ なんのはなし？」
|
| ジャギの背中で首を傾げるシグ。
| やる夫もジャギも答えない。
|
| 自分の死が近いと知り、考えることは同じだ。
| ジャギは大きく舌を打った。
|
|「で、やる夫よぉ。お前それ他の奴には？」
|「言えない言えない。ジャギさんだけだお」
|
| やらない夫にも、アリカにも、もちろん蒼星石にも。
| 死を見る能力を温存すれば生き長らえることは可能だろう。
|
| 普通の人間に戻ればいいのだ。
| 命が惜しくばそうすればいい。
|
| …………いまさら？
| それこそ、みゆきにも蒼星石にも顔向けできない。
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／ヽ,_ . -:‐- 、
__ ./: : : :Λ´: : : : : : :＼
,. .-‐: ´: : '′: : : : Λ: : : : : : : : :`:. 、
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／: : : : : : : : : : : : : : : : !: : : : : {: :l: : 、: : : : : : : :`:. 、
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|: : : : : :/: : : : :-‐:'ｱ´: : ,'.:/ l V: : : : l:l ',: : l: : : : : : ',: : : :Λ: :.',
l: : : : :/: : :/: : : : /: : : /:./ ,′ !: : : :l,' ,: :lヽ: : : : : :l: : : : ﾍ: :.l
l: : : :,′: /: : : :./: : : /:, ' / .}: : :./ _l:.l V: : : : :.l: : : : :l、::!
. ',: : ,: : :./: : : :./: : :〃"´ _/ /: :./ ｘZ云:/、 V: : : : lV: : : l ',:.l
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| そうとも、全部終わって残った命はみゆきのために使わねば。
| まだ誰にも明かしていないが、やる夫の精神はすでに破綻している自覚がある。
|
| 死を見すぎた。
| 死に近づきすぎた。
|
| 原因は封印の間の『地球標本展覧会』ループか。
| それともレミエルを拾ったからか。
|
| あるいは死を見る能力の耐用期間が過ぎたのかは定かではない。
| ずっとふわふわ現実感が無く、感情は平坦で痛みも喜びもない。
|
| みゆきの話を聞いたとき、本当に心が動かなかった。
| その事に衝撃を受けることもできず、それでもやる夫は、だからこそやる夫は……。
|
| だから今のうちに、蒼星石にはやる夫を見限っておいて欲しいのだ。いっそ嫌ってほしいのだ。
|
|「死の穢れをどっかに押し付けられりゃあいいんだろうけど。そう簡単には行かねーお」
|「あ？ 全部終わったら志摩子に土下座して頼み込もうぜ。ありゃあイザナミすら退けた菊理媛の転生者だ」
|
| そううまく行くとは思えない。
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. -――イ ＼
,. ＜´ / ＼
＿_, ＜ 八 ｉ ﾄ ヽ ＼ _ ,
＞ 、 _ , , ｉ 厂ﾍ | | ＼ '｀ ー'
￣￣イ . イ iV / 左示| | 左ん、 '
／ ／ |. | 下ｲ:::ﾟ::::ﾘ从乂下:ﾟ:::l ｉ ｉ i
／ __,.．' ´ | .ｉ | | ゞ:::ﾂ ゞ:::ﾂ | | |
´ ￣ 从 ﾄ､ ｜ | | ｉ i
＼| ＼| ｜、 ｲ /V あ。
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乂＜ ￣￣ 了了７
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く ｿ j/,ｨ Vﾍ
入. ／| /,ｨ | ﾊ、ﾍ
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| シグが振り向く、身を伏せるやる夫をジャギが軽快に乗り越える。
| 背後から、いつの間にか接近してきた影。
|
| 全身に包帯、その上にスーツ姿。片手のステッキを軽快に振るい、シグの使い魔を正確に潰す。
|
|「この先は通行止めだ。今すぐ帰るなら道を譲るがいかがするね？」
|
| 全身から溢れる死の瘴気。高位悪魔。遭遇戦で戦うには厄介に過ぎる。
|
|「で、でっていうに会いに来たお」
|「……？」
|
| 片目を隠した包帯男に、ブルプル震えて挙動不審にやる夫が叫ぶ。
| 彼をかばうように、ジャギの両手が奇妙な弧を描く。太極拳のように緩やかに、しかし残像を残す幻惑の手付き。
|
|「……来客？ というか、その……なんだ？ どういうことだ？」
|
| 困惑する包帯男。攻撃的な気配はない。
|
|「いいだろう。奥へ進め。ヤツの見解も聞きたい」
|「テメエに背中を預けろって？」
|
| ジャギの挑発。相手のプライドを刺激する言い方。背後からの攻撃への牽制。
|
|「この堕天使 ネビロス。貴様ら程度を殺すのに騙し討ちは要らんつもりだ」
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. /ﾆＹﾆヽ
/（。)(. ﾟ）ヽ
／::::⌒｀´⌒::::＼ うはwwwwwwww
| ,-）ﾄｪｪｪｪｲ（-、|
| l .|-┬-| l | まさかのwwwやる夫www
＼ `ー-'´υ／
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|「おひさ、本物のやる夫だお」
|「後からwww出てきてwwwワシがwww本物じゃwwwとかwwwwww」
|
| 机をバンバンしながら草を生え散らかすでっていう。
| ネビロスはゆっくりと彼の隣に移動した。
|
|「どう思う？」
|「ありえねぇっていう。こんな嘘くさくて胡散臭い話www信頼できる要素がどこにもねえっていうwwwでっていうwwwww」
|
| 不安そうな中学生たち、しかし予想できた反応だ。
| やる夫はジャギの腕を叩いた。
|
|「信用してもらうために紹介するお、この人は」
|「必要ない。お前はやる夫だ」
|
| 突然、草を生やすのをやめるでっていう。
| 机から飛び降りて、器用に肩をすくめながらやる夫に近寄る。
|
|「抵抗なく話を信用できるやる夫？ こちらの言うことに疑いの眼差しを向けないやる夫？
| 信頼性のある、死ななさそうなやる夫？ でっていうwwwwwwwwwwwwww」
|
| 意外な展開にジャギや天竜が呆然とする。シグはいつもどおりぼんやり気味。
|
|「なんでそんなにあっさり信用すんだお？ 信じらんねー、猜疑心の塊みたいな性格しているくせに、裏があるのかお？」
|「なwwww？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＿ _
_r厂 仁二￣＼
r' rン ,r'￣￣ ￢
〃 // ／ ／￣￣｀ヽ
// / / ;:′ ／ _ｒニ二二L_ なるほど、な。
|｜ | { / ／ ＿／ ＼ 確かにやる夫だ。
| | Ⅳ > ∠ -‐'￣￣＿二≧ミrﾍ
トrjＶ 「／ _,.＜ ` く/厶ﾉY′ だが私はでっていうより疑い深い。
〈〈}iV | ,ｨｉf・j}ｌ} ﾄ､ヽ､ ＼ ,上ｎ
｀ ∨ ∧ ∠ _ドrﾆ彡'//＼_＞‐'´ |
/ / Yr─≧ニ二￣_＿_ ＿__r７｢
/ / Ｌ.＿nn＿_ __ r‐ 工 ┘ {l1ﾍ ＿ ＿／⌒
/./ /＾い !ｌ!ｌ ∠ ┴'´ _,ﾚ〉 ＼＿￣￣￣ ￣{こ}_＞
// ｝〔「込l｣l｣＿＿＿ __,. - ' /,ﾊヽ ＼ ￣￣ ￣￣
〃 / ヾ｀ . ｀￢-- ....＿二イ// } } ＼
{ﾊ / ド､ヽ＿＿_ ＿,.-彡' //ぃ ｀ーｧ
l! i ／| ｌミー─--￣-一'¨キ // | ヽ ／
| l／ / lミ三 ＿ﾚ' く￣ | ヽ ∠ -─1
／ /| ドミ_ー─ 二 r‐ " ヽ ! ヽ |
／ ／ | l＼ ￣／ | ヽ| i |
∠ ／ | l ｀ く | ! | |
_／廴ﾉ／ | l ＼ ｜ | | !
/ ／ | ｌ ＼| | | /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「つーかやる夫、片目の人に弱いんで人間変身してもらえませんかお」
|「私が人間変身できると？」
|
| やる夫はうなずいた。当たり前のように。
|
|「そうしなきゃ誰かわかんねーお」
|「……私を知っていると？」
|
| これにはでっていうも苦笑い。
| 対してジャギは腑に落ちた様子。
|
|「あンた、やる夫を知ってるから、出会った時すぐ警戒解いたンだろ？」
|「む……」
|
| 図星を刺されるネビロス。
|
|「…………では、私が誰なのか当てたら信用しよう」
|「え、ムリムリムリムリカタツムリだお。
| ヒントくれヒント。うちか『ニュクス』かどっちだお？」
|
| 限定的な二択、やる夫の交友範囲で、悪魔がいそうな場所をチョイス。
| だがネビロスは首を振る。
|
|「答えられんな」
|「ズバリ、紳士！」
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__,, r=ェｪ､
ヾ彡≦彡ヽ
|三三≦'i
-==＝ニ｀￣¨¨¨,二ニェｪ､､,,,,,＿ ,'ミ三ﾐri彡i
´￣￣￣´ ￣ﾞ¨'''''==ｪ､,, ,'ミﾊｪｃi ﾋ彡i …………なぜだ？
.＿,,＞×＜こ＝=r|｀ヽl .∨ ﾚ'/ﾑヽ
, ;r ','r ''¨´ .｀ﾞ¨''7 ﾄ､_ | '.´,ィ ﾍ
_,, ::r'' ´,r''¨´ 入 ∨i,r=-<´_ハ ヾ¨i
__r'' ´＿／´ .／／∨<´,r=>ニ|r'.i i| r-ﾒ
￣￣ ／´｀iヽ.､∨∨ .l'H:､!i .｀ヽ、
ﾍ､o_j ヽ <ﾍ l.| '!.l .!
＼ ヾ.`i l＼l l .|
＼Z_ >i l !｡ .∨
.＼ .! .i /:|
｀ﾄ､ / ﾟ V|
〉｀''ー-,ィ ｡ V|i
＿,,,,,,,､､､､､､i ,,,r .| , V|i
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|「うちと『糖分同盟』の両方に所属しているのは紳士だけだからだお。
| で、そこはかとなく抜けてるので紳士。ＬＬＬさんはもっとしっかりしてるお！」
|
|「でっていうwwwでってwwwでってwwwでっていうwwwwwwwww」
|
| 大爆笑のでっていう。ネビロスは憮然としながら人間変身。
|
|「いや……自分も大概抜けてるッスよ……」
|「げえっ、ミスったお……！」
|
| だが、間違いも含めて回答に満足いただけたようだ。
| ＬＬＬことローライズ・ロンリー・ロン毛。紳士の従者。
|
|「そうすっとwwwあっちの『血族』にいんのはwww」
|「ニャル公だお」
|「wwwwwwwww」
|
| ため息を付きながら、ティーポットにペットボトルの水を注ぐＬＬＬ。
| 魔術で湯を沸かしているのか、香り豊かな熱い紅茶がカップに注がれる。
|
|「でも、『彼』も東京を守るのに懸命に見えたッスよ？」
|「奴も死にたくねーからだお」
|
| 勧められる紅茶と椅子。やる夫とジャギ、シグは躊躇なく座る。一瞬たじろいだものの、天竜も座った。
|
|「要件は？」
|「おめーらのやり方じゃ失敗すっから、こっちを手伝えお」
|
| 一方的な物言いに、でっていうはむしろ好意的に目を細めた。
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／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | さっき言いかけたけど、
＼ ｀ ⌒´ ,／ 『胸に七つの傷を持つ男』と
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ 『女神の娘』を揃えたお。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「概要は聞いたが、正直に言って俺じゃあねぇンじゃあねェか？」
|「やる夫が信じるジャギさんは信じなくていい。蒼星石が信じるジャギさんを信じるお！」
|「えぇ……」
|
| だが、まあ、蒼星石の名前を出されるとジャギは弱い。
| 多分ケンシロウとか霊夢の次くらいに弱い。
|
|「「女神の娘』はwww？ まさかwwwそっちのヤンチャリカかっていうwww」
|「え？」
|
| 視線が集まり、砂糖のない熱々の紅茶をふうふうしていた天龍が瞬きする。
| 『女神の娘』？ 何の話だ？
|
|「やる夫だお。ケルトの未来視能力女神、死を夢に見る三女神の一柱。それがやる夫の母親らしいお」
|
| ケルトの運命の三女神『バイヴ・カハ』。
| その長女がモーリアンである。
|
| で、あれがやる夫の叔母ってことは。
| やる夫の母親は残り二柱、マッハかネヴァンのどっちかだ。
|
| その二女神は……神々の戦争の最中に魔王バロールが放った必殺の悪龍クロウ・クルワッハに惨殺されている。
|
| クロウ・クルワッハ。
| 塚と三日月を象徴とする鏖殺のドラゴン。
|
| 皆殺しの荒野で次の戦争を夢に眠る黒い龍。
| 『やる夫の中の入即貸本』にいる『荒野の黒龍』そのものだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/ﾆＹﾆヽ
(ヽ /（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ /)
(((i )／ ::::⌒｀´⌒::::＼ ( i))) でっていうｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
／∠_| ,-）＿＿＿（-，|＿ゝ ＼
( ＿＿＿､ |-┬-| ,＿＿ ） その死を見る能力でwww
| `ー'´ /´ 東京のwww破壊をwww
| / 防げるってwwwwww？
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「簡単に言えば」
|「でもでっていうのやり方じゃ駄目なんスか？」
|
| やる夫は頷いた。小さく息を付き、そいつらの名を読み上げる。
|
|「これから東京を襲う『十壊』は残り七つ。
| 『ニビル』『クトゥグア』『ビスケットハンマー』
|
| 『哀しみからくり人形楽団』『第四の万魔』『第二次関東大震災』『人類補完計画』
| 順を追ってわかりやすい方から説明するお」
|
| やる夫の言葉にＬＬＬが困った顔をする。
| 並べられた一つに、彼はひどく関係が深い。
|
|「パターンは二つ、ヤバいやつが暴れんのと災害だお」
|「ねえ、あっちにいる虫を見てていい？」
|
| 突然挙手するシグ、天龍が頭を下げて彼を部屋の隅でもぞもぞ動く不快害虫の所まで引っぱって行った。
|
|「でっていうの結界じゃあ、どれも防げねえお」
|「なぜだ？」
|
| シグの退席を華麗にスルーのやる夫。
| 草を生やさないでっていう。完全な否定に少なからず苛ついている。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
／ ヽ､_ ＼ 『ニビル』『ビスケットハンマー』は地球規模の災害。
／（● ） （● ） ＼ 暴れる連中には期間限定の結界は無意味。
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼
| ｌ^l^lｎー'´ | 一見防げそうな『クトゥグア』だけど……。
＼ヽ L ／ あれって早い話が、
ゝ ﾉ ニャルによる不正介入を焼くためのウィルスソフトだお。
／ /
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|「でっていうwww」
|「お前さんの結界、『別次元からの不正介入』そのものじゃね？」
|「でっていうwwwwwwwwwwwwwwwwww」
|
| 草を生やすしかない。ぐうの音も出ない。
| でっていうの『絶対防御結界」では、『クトゥグア』の炎を防げない。
|
|「だからこの世界の『普遍的無意識』による破滅願望の集合体である『ビスケットハンマー』をぶつけるお」
|「何度聞いても上手くいくとは思えねえんだが」
|
| この話は、既に仲間内で共有済である。
| 『十壊』を全て潰す。そのための手順。
|
|「『ビスケットハンマー』は『夢の塔』を登りつめりゃあ支配できるお。
| その手筈は進めてる……はず」
|
| 『第二の夢』はそのための布石だ。
| あとは窓付きとペルソナ使いたちに頑張ってもらう他ない。
|
|「同様に天災である小惑星『ニビル』の衝突も、木星とこっちの援護でなんとかなるはずだお」
|
| 言いながらやる夫の内心には不安が付き纏う。
| だってそうだろう？ はやぶさも、不人気も、ニビルによって死ぬ運命だ。
|
| ずっとずっと昔の『新月の幻死』が、今になって牙を剥く。
| 何か追加の一手が欲しい。宇宙空間で戦える何かなんて、想像もつかないが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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i::::::::::::::::::::::::::::::::::／｀ヽ l:::::::::::::::/＞､:::::::::::::l
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. l:::::::::::::::::::::::::::/ ､‐‐┰ｧ l::::::::/ ､‐┰ｧ l::::::::::l
/:::::::::::::::::::::::::::ｉ ー‐ l::::::/ i ー l::::::::::l
/:::::::::::::::::::::::::::::l l::::/ l l::::::::::::l 『第二次関東大震災』ってのも
. /:::::::::::::::::::::::::::ﾄ､! /／ l l::::::::::::::l 災害系ッスか？
/:::／i:::::::::::::::::::::ヽ ＿＿! /::::::::::ｉヽ!
. /／ |::::::::::::::::::::::∧ /:::::::::::::l
´ l::::::::::::::::::::::::::へ ／::::::::::::::::l
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|「いや、それは個人だお」
|「個人www？」
|
| でっていうでなくても草が生えるだろう。
| 大地震を起こす、個人？
|
|「『そういう能力』の奴が、なす術なくなった時にやる最後っ屁だお」
|「はた迷惑極まりねえな」
|「全くだお」
|
| それが誰なのか、詳しい事まではやる夫にも分からない。
| 破滅のイメージが強大すぎて、ヒトの識別が困難なのだ。
|
|「『哀しみのからくり人形楽団』と『第四の万魔』には心当たりがあるお」
|「シロッコと臓硯だな」
|「正確には、それぞれの関係シャックス……んで、前者を叩き潰すのがこの人の運命だお」
|
| ジャギ。『胸に七つの傷を持つ男』。
| 『哀しみのからくり人形楽団』の中心となる核天使『ファットマン』と相打ちになる定めの男。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ニニニニニニニニニニニニニヽ
’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ| ンン〜？
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ| まぁ、グリーンベレーどもとは因縁あるからなァ。
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ|
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ
｀7 V//} ∨////厶イ==ﾐ iニニニ| |∧
⌒i￣ ＿＿￣￣´ 》//∧ lヽﾆﾆﾆl| |/∧
ﾄ ∨ .//| ﾄ. {7∧ ∨///i| ∨＼ニゝ ＿＿ | ∧
|∧ ∨//| |∧ ∨∧ ∨//l| ｉ}///777{厂三{ | /∧
|/∧ }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l| ﾘ }////|∧三≧| ∧.=
| ∧ ､|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i| 三
| /∧ ≧彡. 》====≦/// l i '//三| ∧三| 三
＼ | ∧イ三／三》 ∨//// j ｌ //三 i| /∧ .乂＿_ノ三
/∧.| /∧.／三 ィ/∧∨/// / '//三三| //∧三三三三
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| パプテマス・シロッコの作り出したサイボーグ兵団は、何処かのタイミングで彼の手を離れる。
| 暴走した怪物たちは、やがてその怒りと哀しみで世界を焼き尽くす。
|
| 核の炎で。
|
| なお、『第四の万魔』が臓硯の関係者なのは間違いあるまい。
| 『万魔』、臓硯、そして桜という三名の他に、新たに同様の悪魔化させられた人物。
|
| あるいは、三番が他にいて、間桐桜が『第四』である可能性。
| 妹系ラスボス、あるある。世界を虚数で満たしてしまおう。なんてこともあり得る。
|
| だが。
|
|「『人類補完計画』に関してはてんで分かんねーんだお。『血族』関係ってこと以外」
|「『血族』www厄ネタばっかwwwwww」
|
| 実際笑えない。
|
|「つー訳で。『血族』関係を切り崩すために手伝って欲しいお」
|「それはいいッスけど……さっき軽く流した『ニビル』。本当に大丈夫ッスか？」
|
| と、ＬＬＬが不安そうに口を挟んだ。
| そこは、やる夫も不安のある所だ。あの紅芋の命を奪えるほどの存在。
|
|「古代の『ベル王』争乱で殺しきれずに追放された『冥王ニ・ベル』。マジで来たら神々でも殺せない災厄の化身ッス」
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☆ 次回予告！
ジョニィ・ジョースターの星。
ディオ・ブランドーの星。
藤木源之助の星。
でも星は遠くて君は小さい。
ヒーローに憧れて。
ヒーローになれなくて。
それでも願い続けたその先で、少年が得るものと、失うもの。
それは。
次回、最終幕六十八話『ガラスの巨人』
果てに見るのは破滅か死か。
改めて列挙されると笑うしかねえな
七つの破滅とか魔界都市かよ東京は
世界防衛パズルはっじまっるよ〜
【やばい奴】第二次関東大震災：誰かの最後っ屁 哀しみのからくり人形楽団：シロッコの部下の離反と暴走 第四の万魔：ゾウゲンの関係者の誰か 人類補完計画：血族の関係者
全く正体が見えてないのが大震災。正体を掴まないと対処しようがないのが補完計画か
そらあの赤レッドも生物だから普通に物理や病気や寿命で死ぬし
モータルなのにイモータルの感覚になっちまう
乙
ベルの王なつかしす
_(
ミ ＼
三_ ミ x,_ ／⌒ヽ
￣アｧｱｧミシV ク／
／／／／入>入九
／／ ／ ／ 入人 『星屑』
／／ l ／ , ｨ ヽ
／// （ ／ , ｨ彡 _ﾘリリli
《 /( ／ , ｨ彡 V f^YVﾘ ﾘし ' （
Y' ／ ﾉ`Y彡 彳K(_lj ＼入__, ,,ノ , - －
. ＼ ／,/ :::::':: / `Yﾁ し/ li l ＼, _,, ／ :::: ::
Y ｊk勺"::::（:. ::ヽ! "`＼ li_ ﾉ li ``'"丁￣ ~ ヽ::
／`ヽ,' " ::::.. :: ゝ= 、＝= _li_ -－ ￣ ) ::::::..
,ｲ....::::::::l::.. _ :::::::.. ﾉ____ll li ⌒`＼ -－7 :::::::: - っ
/::l :::: !- '７__,,ｨｺ ::::: ' ⌒`＼ li _,,_ ｧr` ﾂ ﾊ ' :::
.l : ヽ ,::ｨ 'Tf ヽ , `i, ,／⌒ヽ,__ jjli li ￣ ／ ／ し ﾉ ::::
ﾄ :::-l li `< ￣＞ ￣`li y ' ／ ___,,,,, :::::':::::::
l :::: l i Y''" _,ゝ _,,ヽ , r '" －--－－入___::::::
.h :: l /' － - ｨ li r'" ,_ i _, ｧ ／ｲ⌒ ￣
.lY '" __ﾘ ⌒ ＼j , ` ,_ ` ,_ r - ..::::: /
）.l ' ⌒ ﾊ ,_ l ヽ ` ヽ - ,i ,_ ..:::::: /
il .l ﾉ1 / , )) _l ` ,i_ ,_ - ...::/
il _li ィ( i:: ::i j ll,:::::::::..... ﾉ , ,__ ..:::::::／
,ィ_ﾜ仆 , i ,_i_,,,__i l /li ` r－:::::::......::::::,:,,::ノ l:: ` －r '"
_______________________________/ｭr--┐込 `-- 、y- ,li_`i_____T______i________:::__,,,,,, / li
二二二二二二二二二二ﾆll l l .lﾕ l (￣ﾉ、_ _ヽ癶癶癶癶癶癶癶癶ll ll
⌒"⌒""⌒⌒""⌒⌒""⌒'ll l l <> l￣丁-ll Y LハハハハハﾊﾊﾊﾊﾊlF .ll
-- - ------- - -- --rrｭ!L__リ/7/ / / l l-'-'-'-'-'-'-'-'-'-'--=＝!
`寸 (コ .// / l l l
` == ' '`--1,__ ｲ,_／_／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| それは、藤木源之助の掴んだ星。
| 星になれないガラクタの屑。
|
| 亡き虎眼先生は、今の源之助を見たらなんと言うだろう。
| くだらん異能に頼り、剣を汚した源之助に唾を吐くだろうと、源之助は心中で苦く笑った。
|
| その笑みが、顔にも出て。
| 目前の敵が目をギョロギョロさせながら怪訝に眉をひそめる。
|
| 虎眼流の秘剣『流れ星』。
| 盲目となりながら、さらなる進化を遂げさせた宿敵、伊良湖清玄が脳裏をよぎる。
|
| 地面あるいは足指を使う事で、『流れ星』を両手で振るう必殺の剣。
| 『無明逆流れ』の必殺の鬼気。
|
| 奴により倒れた同門たちが思い返される。
| そして、伊良湖を討ったと同時に自刃した想い人、八重の美しい顔も。
|
| これが、走馬灯か。
| 源之助は静かに納得した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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|i:i ＼. . . . . . . . . . .／. . . . . ‘《*》， . . ｉ|i:i:i: . . . . . . . . . . . . . . . . . /:ｉ:i:|____／i:i:i:i:i:i:ﾉ __..∠.._
i|i:i . . ＼ . . . . . ／_. . . . . . . . ‘《*》，. . i|i:i:i: . . . . . . . . . . _._. . . . /i:ｉ:ｉ:i|㌻＾. . . i:／x'＾ﾆ＾''^＾:.:.:.:.:. : . .
.ｉ|i:i: . . . ∨. . ./ 《*》，. . . . . . . .‘《*》，. ｉ|i:i:i. . . . . . . . ／: : :}i. . /i:i:i:i:人______／x'＾＾ ☆: :'i,
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. .ｉ|i:i: . . . . .〈. . . . .‘《*》，. . . . . .,《*》’.|: ､|i:i:i__. .／: : : : ／ . /_／ 〉/-┘ ,. / z‐===;ｧ ☆ i{!
. . i|i:i:＼_._. ∧. . . . .‘《*会=‐‐=*／. . .| ｎｉ|i{ ＼ ; ;／_:_. ./ /∧ 斥= i{!_j ; ; ;_;汽 : .,乂__
. . .ｉ|i:i:i . . . . ∧. . . . . . .‐---‐. . . . . ∠ i:八〉-‐_‐_三_三_‐_‐_‐冖冖 / }ｱ.＾沁,乂____/ 〉 ☆ ☆__/
. . . i|i:i:i: . . ..′.〉. . . . |＼_._._. . . . . . . . ._ -. :i:ｉ:.＼ } ／. .- _- _,ノ:.;′ 介=‐-‐〈 _ｱﾞ
. . . .ｉ|i:i:i: . . . . . ∧. .__|:i:i:i:i:i/. . . . . . ._- . . . 八__人___...⊥..（_. . . .ｱ^.-_-_/ ,:' . : :弌 ＼ ☆ _,,:ｱﾞ タスク！
. . . . i|i:i:i:. . . . . /∧.＼iＣ:i:i:＼. . . ._- . . . . /〉i｛ ._ - ‐三‐ - _ -_ ｈ{___,, ＾¨＾ ｝ｉh |i㌻ ,x爻
. . . . .ｉ|i:ｉ:ｉ . . . . . . /〉. .|／￣. . . _-. ._._._. . {/ _‐介ト _ 〈／ -_ -_＼､>. ／火じi'＾ ﾉﾉ＾....
. . . . . i|i:i:i: . . . . .///i㌻^~ ｰ- - .,,___,,. _- 〕iﾆ - _ -_ -_￣~＾ﾆ=‐く <_／ x爻............x
. . . . . .ｉ|i:ｉ:ｉ . . . . //i抓 - _- _- ＼- _ -_ -_ ＼ : : ＼>'＾ﾞ.............x爻
. . . . . . . ._. . .-=ﾆ. . . . 〕iﾆ=‐-- ､ -,. '^~￣- ￣ } -_ - - : : : . : : . .＼_,x爻'＾
._. .-=ﾆ: : : : : : : : : : -=ﾆi:i:i:辷‐ 介=‐ - - __ _ _ __ }i_____ - - - : : :＼＼ : , ＼)
: : : : : : : :_: : -=ﾆ㌻て㌃ニ . -／.火____.- -＜￣-￣{ ; ＼: : : : :- : - - -=ミﾒ､. .＼ ; . アﾞ
. . . .-=ﾆ㌻ﾆ辷=‐---‐=会= - ----‐=- ⌒>- .乂________,,. }i: : : :-: :- -: : : : :＼>、. . ｱﾞ
._._._;㌻7/////////////「|i : - . . .-_ -_>､ }八乂___ア＾. . _-. .- -. . . : : : : }i 厂｢
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 源之助が動いたと同時に、すでに発射準備の整っていた爪弾が五発。
| 隻腕の剣士の胴体、重要な臓器を抉りながら貫通するはずだった。
|
| だが、音より早い神速の横薙ぎが、ジョニィ＝アリーに行動する暇を与えず。
| ジョニィと協調するかのように突然動いた覆面、その攻撃も関係なし。
|
| 『流れ星』は、左手で剣先を掴み、離した際に発生するエネルギーで神速を生み出す技だ。
| それまで押し留められた力が一時に働く。『無明逆流れ』も同じ原理である。
|
| つまり、隻腕の源之助には不可能。
| 失われた奥義だった。
|
| だが……おお、剣は彼を見捨てていなかった。
| 源之助の背後に立つ鎧武者。その手は空いていた。
|
| 担いだ木刀の切っ先をペルソナが掴むことて、源之助は新たな魔剣を生み出したのである。
|
| 『星屑』。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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/ // ' ＞≦ -―
/ { { / ヽ ｀ ＜ ／/ /
/ ∨/― l ＜/ {
＼＼/ j ／/ {{ﾐ
{ ミ/ / /／, ＜￣}/ /
∨ﾐ / // ｨ j／ /
ﾏﾐ ='' f ￣／ j
../ ヽﾐ ¨¨ i 外道め。
.i ﾏi ,,,,, i
i ヽ =-”ィ ヾ¨j ヽ i
i } ､ f ゝ-' .i
i マ´ l r
l ∧ ｀―' ヽ-､ ＿
l ＼ , ／
l ヽ f ￣
l i ｀ ､
l i ｀ ､ ノ
､ ヽ =--= ∨
ヽ .l lヽ
＼ j l }i
./ l i
イ l
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ジョニィの頭部は天井に衝突し、ボールのように床にバウンドした。
| 上半身と下半身が泣き別れした覆面は、どす黒い血の花を教室に咲かす。
|
| ペルソナを、剣技の補助に使うだけだなんて、誰が想像できようか。
| あまりにも高速で首を狩られたためか、あるいは別の理由でか、金魚みたいに口をパクパクさせるジョニィ。
|
| もう一人、惨殺された覆面を見てほうぼうから悲鳴が上がる。
| なにしろ、尋常の人間ではない。
|
| 首から上のない二人の女を、首で繋げた異形の蜘蛛。
| 骨が伸びて硬質化した鎌状の両手両脚。死体を繋ぎ合わせたモンスター。
|
| ジョニィに暴行され、アリー・アル・サーシェスに殺害された哀れな女生徒たちの成れの果てである。
| 酸鼻極まる光景に悲鳴のフルコーラス。好き勝手暴力を行使していた他の覆面たちの腰も引ける。
|
|「藤木！」
|
| へし折れた木刀を捨て、まだ動く女の死体の心臓を潰そうと向かった源之助。
| その背中を守るように少年が飛び出した。
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/ ,ｲ ∧ /ｲ 弋;ﾘヽﾐｰ ∨ /ｰｲ弋;ﾘ｀ヽ∨ |＼
|/│/、∨ ヽ_ _, 〃 ∨ ､_ _,/ | ∧ !
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／＿/＼_ ｣ │ヽ /__／/＼', …………ナイスな展開だな。
l / ∧ ‐┘ / / ∨
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∨、 │ ヽ ／ /∨
／/ ＼l ヽ _ ´ / ＼
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| 頭部を失いながらも爪弾を発射したジョニィ。
| 源之助を庇いその一撃を、受けた早瀬浩一は血を吐いた。
|
| 爪弾は肺を貫通、激痛で目の前が真っ赤になる。
| 呼吸ができない、音もうまく聞こえやしない。
|
|「早瀬！」「浩一っ」
|
| 仲間たちの悲鳴を聞きながら、早瀬浩一の意識は深淵へと落ちていく。
| これは彼の望んだこと。身の程知らずな英雄願望、その結果。
|
| 応急処置しかできない橘飛鳥の『エタニティエイト』では救いきれない命。
|
|
|
| …………早瀬浩一は一命を取り留める。
| だが、その意識は戻らぬままになる。
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| それが世界の命運を握ることになろうとは、誰が知ろうか。
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､ ＿ ＿_
ﾄ､_＞ ´: : : : : :＞ 、
〉: : : : : : : : : : : : : _:.
､ｰ イ: : : : : : : : :＞ ⌒´ ヽ
｀7: : : : : : : :イ '.
{: : : : : : : : : } }
,.イ: : : : : : : ﾉ ー-_､ x≦
￣｀V⌒ヽ : { ヾ赱ィ {ﾔ| チッ、やっぱマグロ食ってるような奴は駄目だな。
}ヽ て }ﾉ ヽ }
|: : >ーﾍ _＿＿´! （日本人への差別発現）
＿＿|: :ﾊ ヽ ｀ ¨¨´ '
´ ニニミ｀ヽ ＞ .. ＿_.}
´ ｀ヽ Vー- ミ // ｀ヽ
二≧ｘ ､ } } ｀ヽ ﾐ､ヽ'＾ヽ ＼
｀ ＜≧x.ﾄ､ } } ヽ ＼ﾑ _ ､
ヽ｀＜≧xr――＜:: :｀ヽ .}
三≧ｘ ､ ＼ r┬｀ ＜:: :: ::ヽ:: :: ＼/
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| ジョニィとの接続が途切れ、オズは舌打ちした。
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| オズの形をしたアリー・アル・サーシェス。
| その目的は混乱と戦争である。
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| そういう世界で生きてきて、そういう世界が当たり前で。
| だからパブリックエネミーになることに一切の抵抗がない。他の生き方を知らないとも言えた。
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| ニャルラトホテプと遭遇し、彼から力を借りたのも己の意思。
| 『夢世界』の黒幕になり、『ビスケットハンマー』で地球を砕くのも当たり前。
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| 誰かが憎いとか、許せないとか、そういうものでは無い。
| アリー・アル・サーシェスは、世界を壊せるなら壊してみたいだけなのだ。
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| 彼が今、その身に宿す能力は以下の通り。
| 『悪魔狩り』の同僚だったキンブリーから奪った『賢者の石』。
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| ニャルラトホテプから戴いた『地のDISK』『アンダーグラウンド』。
| そして『夢世界』の介入者として得た『法務官 隠れしウラヴラスク』。
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| 最後に、クロトワを殺して奪取した『法務官 ジン＝ギタクシアス』。
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| ジョニィと女生徒を改造して傀儡として操ったのはまさに最後の能力である。
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／ , ´￣｀ゝ､ ／
｀レﾍ／ヽ ／/V
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／:_:_:_: : :ヽ _ｒ､r､r､――｀Y＾Y_ﾊ＿＿_
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＿__f从ﾙ､」ｪ､ ≦ ﾚﾊ}――＿＿二二二二( )ﾆィ}＝=､/ ＜二＞
-=ﾆ二＞ ´ヽてン.ﾍ ` _, ;ﾝT＞ ´ ＞＝＝ ヽ , =ミ ､/ | /
／｀ヽ ヽ ＜ ／`ﾄ､´_ ｲィ´/ , ´, ´＞==＜ﾊ ﾉ ヽj | /
, ＜ 〉´ー‐f⌒ヽ 〕＿{ { ムｲ ./ / 丁_丁ヽ}､ r／ / |'
〈`ー‐ミ ､ヽ /ミ ､＜ヽ /⌒Y＾Y｀i ｀i |/ /｀OｰO‐ ´､/（二ミ ､ ./
.〉 } ﾄ､ ｲ｀Y >‐ ｧ__}{__ :: ::| ! ! ﾄ/ | | .| | ノ{/∧ ヽ∨
/ 人 ､彡' 」 /ﾟ ﾟ/ ｀ ll ´ :: ｲ´_二ｲヽ ﾉﾉ { { ムイ ヽ ） }
'ー‐≦ ＞く{ﾉY｡ ｡/ :: :: :: ／／:: ::ヽ ﾏﾑ" /⌒＾Y ヽヽ > ´ だが面倒だぜ。
`ｰ ´ ノ｀T:: :: :: ／／:: :: :: ::∧ ﾏﾑ ＼__＞ ´ 体がもう一つあったらなァ。
|:: ::., ' , ':: :: :: :: :: :: ∧ 7´
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/::/ /:: :: :: :: :Vﾊ:: :: ／
r'_::(+):: :: :: :: :: ::Vﾊ::/
,ｲ{_/｀ヽ＿:: ｨ:: :: ::.Vﾊ
/:: :: ｀ヽ/ /ミ}}:ﾊ _::_〉 ﾑ､_ﾊ
/:: :: :: :: :: ｀ヽﾝムﾉ _ rf＾ﾝ
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| そのもう一つの体は源之助によって破壊されてしまった。
| そして、ジョニィの肉体に貸したままの二つの『法務官』を回収しなければ。
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| アリーは『第二の夢』が示唆したものを、極めて正確に理解していた。
| 塔を攻略し、『ビスケットハンマー』を手に入れるチャンスである。
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| ならば、ペルソナ使いに対して無敵の能力である『法務官』で挑む他はない。
| 可能ならば、五色の『法務官』全てを揃えて。
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| ……アリーの目的は、つまりは最後の『法務官』を持つマリナ・イスマイール。
| 今現在刹那と行動している。
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| その刹那にリベンジする機会も同時にやってきた訳で、アリーはナイスな展開に笑いが止まらない。
| これも日頃の行いの良さに違いない。
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| 『隠れしウラヴラスク』により、絶対的な不可視を纏う。
| どんな異能にも感知されない、匂いも気配も熱も消える。
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| 刹那へのリベンジで、遊ぶつもりはなかった。
| まずは確実にマリナ・イスマイールを殺害する。
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| その後は刹那だ。無力さを噛み締めながら死ぬといい。
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. ヽＮ';.:.:＼:ハィ不示ヽ/´/'/´/_＿_j'＿_j.:.:.:.:.:./.:.:.:jﾄ,Ｙ.:.:.:|.: |
∨ゝ;.:.:.｀ハ｀乂rj ｉ / ´ んｲr'jｿ .:.:.: / .:.:.:ハﾉ :.:.:|.: l 刹那、どこに行くんですか。
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. /:/.:.:.:.:./.:/.:ハ / ／.:/.:.:.:/.:.:.::/.:.:./.:.:.:.:.:|.:.∧
/:/.:.:.:.:./.:/.:/ ハ ヽ . ／.:／.:.:／.:.:.:./!.:.,.'.:.:/ .:.:.!:.:.:∧
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|「生徒会室だ。ジョニィ・ジョースターに談判する」
|
| マリナをお姫様抱っこしたまま、刹那は走る。
| ペルソナを使って覆面男どもと交戦してからしばらく走った。追ってくる気配はない。
|
| 階段の踊り場で、刹那はマリナを下ろした。どちらの通路も同時に目が届くからだ。
|
|「その前に警察に連絡を入れる。クロトワ殺害の主犯は『オズ』。
| あの覆面共がどういう連中かは分からないが、一般生徒ではあるまい」
|
| 携帯電話を取り出し、少し迷う。
| 通常の警察に連絡するか、先にエダに連絡するか。
|
|「あ、せっちゃん」
|
| そんな時、階下から呼びかける声。
| 階段を登ってくる女生徒、三編みがぴょいぴょい揺れる。
|
|「探したよ」
|「どうした？」
|
| 電話を畳む刹那、女生徒はマリナを見咎める。
| 正確には、彼女の乱れた服装を。
|
|「ナニしてんの？ やらしーんだ」
|「今はそんな……」
|
| マリナが青ざめた口を開くと同時に、その女生徒が跳ねた。
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ヾ／ 丶 ＿,r一f_ノ
,.---- ､ / / / ＼ブー'^¨´
. / ｀`丶､/ / / ヽ
/ ! | ! ! | ＼ ﾊ
. / ! ! ﾊ l| l､ ! 、 ヽ ',
{ ,.-l l._| ヽ!ヽ| ＼ |､ ＼ ﾊ | よいしょー！
〈ヽ ＿/／,ﾍ ,.fヽ| ,.≧､、 ＼! ￣ l/ |.| !
∧＿_／／／Ｘ´,.イ､| { {ｋリト､ ,.≦､ﾘ! ∧
==＝〈 ／／／／: :〃 |ヽl ｀¨´ ィ´{kリ 〉| ／.:/_ ,.ィ７_
_,. -‐ :':´／／: / : ＿|!⌒ヽﾊ、 , ｀¨´ノイ.:.:.:/ ＼ァ￢､＿＿＿＿_,. -- ､＿ _／ /'/
: : : : :／／: : : :|: : 〉 Ｌ.__Yl::::ヽ、 ,r＝=ｫ ,.ｲ.:.:/.:.:./ ／ ` ヽ /
.＼:く.>': : : : : : : : : ￣,.イ ljヽ:::::＼{_ _,ﾘ ,.ィ:.:/.:./.:., ' ,. ´ ,__/､＿_,⊃
=､､ヽ: : : : : : : : : : : く Ｌ.ノ ` ＜`_ｰ一:':´:.:／／／,. ´ _,. - ――――――--'´
＼ﾘ､ 二二二二二二!／ ￣￣／￣ ´／＿_,. -‐'' ´
::::::＼: : : : : : rァ''´／.:ヽ._ ＿__ _,. '´￣
::::::／: : : : ／ヾ.:.:/.:.:.:./.:.:|｀＜.＿__,＞ィマ´
／: : : : ／ ∨.:.:.:.:.|:.:.:ﾍ:＿ヽ:|:.|:.:|:.:.:∨
: : : : ／ ｀ Ｔ￢'￣｀＿｀ヾl|:.:.!:.:.ﾉ
: : ／ ヽ ／´ ｀`|!__」´
／ ∧! |
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| 階段下に身を投げる。気が狂った！
| いや、何ということだ。彼女は空中に肘鉄を打ち込んで、更に目にも留まらぬ乱打。
|
| 反動で元の位置まで戻って身構えた。
|
|「アリカ……？」
|「なんかいるね、透明な悪魔かな」
|
| 『ソイツ』は派手に吹き飛んで階段下のリノリウムに叩きつけられた。
| 防御も受け身も一切できなかった。油断していた、早すぎた。
|
| いや、そもそも……なんで気がついた？
| 絶対透明、どんな異能でも発見できない、警察犬の前を堂々と歩いてもなんの心配もないほどの隠密性。
|
| どうやって位置を気取られた？
|
|「何か……いるのか？」
|「うーん、いなくなったかな？」
|
| 『ソイツ』。アリー・アル・サーシェスは安堵の笑みを漏らした。
| なんだ、少し距離を取れば分からなくなるのか。危ねー、なんだこの女は。
|
| ペルソナ使いのクラスにはいなかったぞ？ 他にも異能者が……しかもこんな無茶苦茶な奴がいるのか？
|
|「学校が悪い奴に封鎖されてるよ。一応警察には電話した」
|「それは助かる。なら俺は」
|「ん？ 電話しないで」
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, ニ
. -‐ｧ , -‐ ＿ ､ ､
'´ ／ ／ ／ ﾍ 、 ＼ 丶 ＼＿＿ . -
ー＝二 ／ ／ ／ l ｉ＼ ､ ヽ ＼ ー一 ´
. ／ , ／ // ｛ l､ ｌ.ｨ＾丶､丶､ ヽ丶 { ､ ＼ ー=＝ﾆ
/ , / / ィ l i } | Y ｊ_x≦、 ミ ､i ! 〉､ ､ー- _
. /〃 ! ' /!｜ {//ｊｨ´ｒ::ｆ'卩 }`丶 ! ﾑ ヽ＞― ー=ﾆ ￣
/´/ ,!′ﾊ|l ､丶 Y〃 Vｊﾝ^ 〃 〃＾) } ､＿ -‐… __
. / ／ l /! |ぃヽ i､ヽ '´ ノ ／ / / ｒ 丿ﾉ三二ニ≠ '´ なんだと？
/ / | バ｜ ン ＼`＼ ー ´ イ ／l / -一 ／≧＝ ´
! ′ ､{ ヾ '､ _ // ｊ ‘ ｒ=彡´
｛ } i 丶 ＿___ l｛ { ｰ=彡' ／
‘､ ‘、 ! }ハ｀こ￣ ぃ 〃 ／
￣ ` ﾉﾍ{ `､ ＼ 丿 ／
／ `ーﾍ , ´／ ／
_ゝ x≦ ､／ 〃 ＿／
__,ｒ彡ｒ ｨ ／ ／ ／ , ≦￣
∠ｒ‐ ≪ ￣三乙 ／ ／
ｒ=＝ミ ］三三三＿＿ ≦
＿」 ≫ｘ ≪三三三三二
⌒ヽ￣《 ` =＝==､
＼＿＿＿ ミ､
￣￣￣｀ 三ミ､
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|「まだね」
|
| 階段が倒壊した。
| それがこの少女の震脚のせいだと、その場にいた誰も理解できなかった。
|
| 離れた場所にいた他の生徒や教師は、地震だと考えた。
| 学校中が震えた。振り抜いた拳。完璧なカウンター。
|
| 飛び掛かるアリーの顔面を直撃、頭部が胴体にめり込み、空気の抜けたビニール人形みたいに不格好な形に。
| 有無を言わせぬ必殺の打撃。必ず殺すの言葉通り、即死するアリー・アル・サーシェス。
|
| 透明のまま腕や足が引きちぎれ、肉片をばらまきながら床にヒビを入れてバウンド、壁を突き破り天井に突き刺さる。
|
|「倒した。学校を占拠してるのは『教会』の『十字軍』だよ。
| 蒼星石さんたちとエダちゃんには連絡済み。対処を頼んでる」
|
| 見えない怪物を当たり前のようにぶっ飛ばすアリカに、呆然とする刹那とマリナ。
|
|「例の訓練の成果か」
|「うん、だってあそこだけ『ポッカリ何もなかった』でしょ？ 丸見えだった」
|
| 図らずも、『弓兵』と同じことを言うアリカ。
| イナミの目隠し訓練で得た能力。勝てる気がしない。刹那は愕然とする。
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.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ' 悪魔もウロウロしてるなんてね。
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ | 天使だったかもしれないけど。
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ ／ ∨ 丿
iタ }〈 l丶 { _／ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
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|「なんにせよ、まずは生徒会室だ。ジョニィ・ジョースターを締め上げる」
|「先生は？」
|
|「一緒に行きます」
|「分かった。行こう」
|
| 急ぎ足で走り去る三人。
| 彼らは当然ながら『見えない敵』の生死を確認しなかった。
|
| 確認するまでもなくバラバラになって死んでいた。
| 屍鬼や特殊な悪魔でも再起不能な破壊っぷりだった。
|
| ……だが。
|
|「…………マジかよ、何で分かった……？
| つーか、バラバラじゃねーか……まだ、オズで居たかったん……だがな……」
|
| 『賢者の石』による再生能力と不死性。
| 品川大聖堂で頭部を破損した際も、同じ能力で復活した。
|
| あの時は、『アンダーグラウンド』の能力で死んだために再生に時間がかかったが……。
|
|「クソっ……何者なんだあのメスガキ……！ だが、まあ……」
|
| 透明で、頭と腕だけしかない体を引きずりながら。
| アリーはある場所を目指す。
|
|「どうせすぐに死ぬ！ ザマぁ見やがれ！」
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/ ',__,,-"ﾐﾐl| l| //彡彡彡彡彡彡彡、
', ／ミﾐﾐﾐﾐﾐﾐl|/''" / 彡彡彡'.
＼/ミミﾐﾐ''ﾞﾞ / 彡彡彡',---､ シロッコ殿？
lミﾐﾞﾞ ヽ、 | _,,,==- ﾐﾐﾐﾐ:',_________,--- 藤木源之助にござる。
,--- |彡 ｀ --- ､_,,=='_,,,--､, ',ミミl_____
/ l彡'. __,,,, :::::::/´匕ﾉ " 彡/-、 ＼ ジョニィ・ジョースターが屍鬼化しており、
'彡.,=＝_,,,-､ﾞヽ ::::::::'‐''::::: ', l´ヽl 学内では暴動が起きている。
',:| /´匕丿'::::| :::: /;;ヽ| /
/ .',:: ﾞ‐‐'" l､_/::::: ./ > l |____ 治安維持と怪我人の救護を
.（ ', l_ヽ ' / |丿 l 至急お願い申しあげる。
〉､', ﾞ- / l-''"----'
./ ヽヽ ,-´￣￣` /',::|＼
| ヽ ', ﾞ :::::::::::::: / ',| ＼____,
| `ヽ ／ |ヽ___,
＼ ｀ヽ､_ ,,,,:::::::::／ ',-、
/ ',｀ ‐‐‐ // ｀ヽ、
./ ', // ｀ﾞヽ、
（ ___', ｀ﾞ''' .// ｀ヽ、
∧ヽ ::::::: // ヽ_____
/ ', ＼ // ￣￣
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 柄にもなく焦った声で、藤木源之助は電話を鳴らした。
| 相手はパプテマス・シロッコ。コネクションの無い源之助が掴もうともがく藁。
|
| ジョニィ＝アリーの爪弾は強力だった。
| 直撃を受けたアーダンと早瀬浩一は瀕死の重傷。
|
| もともとタフなアーダンはともかく、浩一は生死の境にあった。
|
| それもこれも、源之助の慢心が原因である。
|
| ジョニィの死体が操られているのは明らかで、彼が屍鬼の類であるなら、首を刎ねたぐらいで止まるとは思えない。
| であるのに、源之助は異形の女生徒融合体に気を取られジョニィへの注意を怠った。
|
|『私を信用できぬと出て行ったと思ったらら、ものの数日でそれか？』
|「恥を忍んでお願い申し上げる」
|
| 受話器の向こうで嫌味な笑い声が響く。
| 鼠をいたぶる猫のように、シロッコは源之助をいたぶる気だろう。
|
|「……シロッコ殿？」
|『そのジョニィ・ジョースターから、その学校内に広域悪魔汚染の連絡が入っている。
| 既にチームを編成し、派遣しているとも……広域殲滅タイプのね』
|
| 何を言われたのか、源之助は一瞬理解できなかった。
| 広域殲滅？ まさか、殺すつもりなのか？ この学校中の人間を？
|
|「チーム……まさか彼らを……？」
|『ん？ ああ、あの死にぞこないの寄せ集めは居残りだ』
|
| 源之助は少なからず安堵した。
| 『カトルカール』を切らずに済む。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,イ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :＿: : : ｀''≪ﾆヽ:ヽ: : :',: :}:ﾍ
.:.:.:.:.:.:. : ,イ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :｀ヾ: : : : ｀≪ﾆヽ: : i / : :',
.:.:.:.:.:,イ: : : : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : :＞─､: ヽ: : : : : :寸ﾆヽ: : : : }
:. ／／: : : :／: : : : : : : : : ＿彡=-''" ,イィ:_:_: ヽ: : : :寸ﾑ: :./
ｲ／ : : : ,ｲ : : :/´￣｀Y: : ／´ /'´ ,ィ´イ: :)ﾉ: : : : :寸〉
: :/ : : ,ｲ : : : / /／ﾉ/:ｱ′ -､_ | /／ ゝー=≦: : :ﾍ
:/: : :/: : : : :/ l ノ/:/ ヽ､ﾐ､ |' ヾ: : :|
: : :/ : : : /: { ', /:/ "''､.ヾり＼ ! ﾊ: /
: // : : :/ : :ﾍ ﾉ l:/ ｀'' ヽ.ヽ、 ,': :/＼
//: :/:./ : : : :ゝ |' , ＿＿_ /: ,ｲ:.:.:.:.＼
:/: :,':./: : /: :/ / 赱う㍉｀ヽ/,ｲ:.:.:.:.:.:.:. : ', 『ではさらばだ藤木源之助。
: : :l: ｌ|: : ｌ: : { |! l ｀¨'' '´ｲ: !:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. l 仕えるべき相手を見誤ったな』
|: :|: :||: : |: :ﾊヽ |', ､. , _ | ／: : |:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
从|: :||: : ',: {ﾆヽヽﾏ', ｀ヽ、 ヽ≧‐ ,イ: : ///.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : :|
ﾍ､:',',: : |ゞﾆﾆヽヽﾑ _ ｀''‐ ,イ: : : : ///:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |
l ﾍﾆゞ､乂ﾆﾆﾆﾆニ'､. ,イヽ､: : ,ｲ///.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : |
.|. ﾍﾆﾆﾆﾆニア⌒>ﾆ＼ , イ_ ` ヽｲ:ｲｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
', ﾍﾆﾆﾆﾆﾆ〉 ゞﾆﾆニ/＼＿ イ'´≠ ヾ ヽｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. |
', .ﾍﾆﾆニｱ /ヽ ｀¨//ニ/ ,ィ⌒ ヾ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
', ﾍﾆﾆﾆ{ ',ﾆﾆｱ//､ﾞノイ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : |
', ﾍﾆﾆゝ ゞｱ//ﾆﾆ{ ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／
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|「まさに。一度でも貴様を君主と仰いだ俺が恥ずかしいぞ」
|
| 電話が切れる。源之助は携帯電話を壊れるほどに握りしめた。
| 広域殲滅タイプ？ 航空爆撃か毒ガスでも散布するつもりか？
|
| 浩一の容体の問題もある。
| 切るだけでは守れない、源之助は臍を噛んだ。
|
|「あ、えと、さ。他に誰か助けてくれそうな知り合いは……？」
|
| 変な愛想笑いを浮かべて尋ねる貞山青葉。
| 源之助は頭を振った。黄泉からの誘いを断ったのが悔やまれた。
|
| せめて連絡先を交換していれば。
| なにしろシロッコに支給されたこの携帯電話には、シロッコと『カトルカール』のアドレスしか……。
|
|「それだ、すまぬ。冷静さを欠いていた」
|「ウヒヒ、いいって事ですよ」
|
| 距離感がつかめず、引きつった笑みを浮かべる青葉。
| 源之助は電話をかける。相手はトパズ・ボムビー。爆弾蜂だ。
|
| 彼女を通じてロビンに、そして『血族』に救助を頼めるなら……！
|
| ちなみに、やらない子に戦術指導をしていた貞山青葉であるが。
| 彼はやらない子やタカオがやらない夫と接触していることを知らされていない。村八分である。
|
| なけなしの男らしさを発揮して、彼女らに泣き付かなかったことを、責めないであげていただきたい。
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/ ヽ
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,／" ゞ_,.;:"`~`ヾ, ~`;:::,._ `;,.
/ ,.r-・”~~ ヾ ~~=-;;:... i
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/ ,.ｒii ヾ ~`;::,,i
/ i,i ii _,,,,:=-- .ヾ:: ヾ_
,/ i;i ,,i _,,.;'ゝ.-.-;;' ヾ:::::.... ヾ
.r yii, =;,.. -;" ,"~/'-'"ﾆ;'" .ヾ ,.:"^;. ヾ ジョニィ・ジョースターは所詮捨て石……。
l :': ::::i.∠.,(ﾂﾍ " . i: i r i : : i 予定より少し早いが、運用試験と洒落込もうかな。
.l ::: ::::::l ' .,i .i::i.iﾍ i :::.::: |
,l :::: :::::::::;, .:;" , .i:i ,i ..:::::::::::: |
l :::::: ::::::::'. ` __.,, .i! /.::::::::::::::::::::::|
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` ,,,,,::::::::::::::::::::::::ヽ .::::/ ,j:::::ノ
~`=-;,:::::::.___;;i,m;,:::_::;.;:`_;,,/ _-=＝;""l ""
i＼ _,...;;:::"" l
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／ ,i.,_ ］［_}β ___ゞ ~~~~~~~~~~
,／ i.,_ .］［_}β __,.-=ゞ"-"~~~~
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| 恐るべきことに、『広域殲滅タイプの派遣』はその場の出任せであった。
| パプテマス・シロッコはそんなものを派遣していない。
|
| 彼は藤木源之助を利用してパニックの種を蒔いたのだ。
| 逃げ場はない。助かる方法も簡単ではない。だが、源之助一人なら切り抜けられよう。
|
| 残酷な選択肢を突きつけ、シロッコはほくそ笑む。
| 彼が派遣したのは学園を封鎖する手勢。つまり、アリカが遭遇した『十字軍』と協調する合衆国軍兵士である。
|
| 表向きには負傷者と暴動、生徒の錯乱から毒ガステロと判断。封鎖。
| その封鎖をなぜ合衆国軍が行うのか？
|
| 『やらない夫の集会』の為の前フリである。
|
| 合衆国大使ヌケドナルド・トールマン。
|
| 『やらない夫の集会』を襲撃し、民間人を虐殺する『世界の治安を裏から守っているつもりの連中』の筆頭。
| 本人が聞いたら憤死間違い無しの冤罪を着せるための、分かりやすい伏線だ。
|
| ……だが、それだけの為ではない。
| ジョニィの要請通りに、危険分子は殲滅してみせよう。
|
| さあ、試運転だ。
|
| パプテマス・シロッコは二徹明けの異様なテンションで高笑いした。
| 力を見せろ、『リトルボーイ』と『ファットマン』！！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
ﾍﾞﾙ
『王』。
詳しくは『やる夫が東京封鎖に巻き込まれたようです』というスレがありましてね。
え？？ もう十年も前なの？？？
うっそだ〜、そんなに経っている訳ないでしょ。
そしたらこのスレも十年選手ってことになるよ？
……マジでか。
次回、最終幕六十九話『冥王ニビル（AAゼオライマー）』
果てに見るのは破滅か死か。
乙
シロッコ、計算高いように見せてその場の勢いに任せて生きる男
＿__
/: : : ﾊ
, ー ￣￣ ｀ ､ /: : : : : :l!
イ ､ ＼ Y: : : : : : : {＿, ィ
／ ､ ヽ V: : : : : : :j￣￣ミ ､
ｒ－-- ､ ｲ / j |! ', : ﾊ v´￣: j:/ ≧ 。
ﾘ: : : : : : Y , ′ i! ﾊ＞‐'＝= 亠- i Y: : : :ﾘ }
|!: : : : : : :i l ! _ｊ L -‐' ｒ ,zｪ=ﾆvx,i !: : :/＿ ァｭ､_ /
V: : : : : : | i v´／￣´ ｲ ' ｨ秘y.ｱ! ﾄ: :ｲ-ーミｫ イ ミヾノ
Yｒ‐-､: : ! 7 ,x=ﾆz､ ー 宀'^´~｀ｊｲ ｊ ｌ: :ﾄ≧ア ／
ゝ: : : :ヾ､ ﾊ ,Y iｲ沙=' ﾚﾘ: : :|!ヽ￣｀ー=ニ＿__ ﾍﾞﾙ
／ ｀≧＝ﾊ ､ ヽﾍ ｰﾟ´ ｀ _ イｊ ｊ/!: : :li ﾊ ｀ヽ 『王』
ｲ -‐ ￣￣｀|ｲヽ＼{ ィ ´ ノ /7|: : : :|!: ゝ。._＿＿＿ ｊ
〈 |ﾊ ﾊ ﾟー‐ ´ , / !: : : : :i: : : Y_ ィ彡 )ソ
Y彡´⌒＿ ｌ: :ゝ._-ﾍ -‐´ ｲノ ｌ: : : : : i!: :トz- ﾆ＿ｲ__
ー'ア´ ｀) ｊ|: : : : :lT: ≧ 。__ イ ｌ |: ; --､:レ'V_ ﾉ
ｒ≦=-､＝ミ＜ｌ: : : : :i: : : : i ヾY ー’ !、_´ ーｧ=彡 ´
Vミ ｀!: : : : :|!: : : :l 〉, } ー-- ＿_ | ／
}ｚ=≠ー-vミ､!: ;､_:_:_:! : : ｊ／ i! ﾉ ｀__＞。
｀ヾ ＿ ＜´ フ´ ﾘ / ,ィ´ _＞' ￣ヽ
￣｀ヽ ﾉ ' 人 イフ′ ／ ／ ／´⌒￣{
）イ7´ / ｀ ／ ／ ／ ／ ﾊ
／ { / ｲ , イ ／ ィ´ ＿ ⌒ｌ
ﾉ´ ﾄ. _ ィ / ／ zイ , ＜ミヾｊｨ´ |!
/ } ﾊ / ／ ,, ィ彡' ＜ ヾ ｊ !
人 ｀ミ=ｭ､! /ィ’≦彡 -― ´ ﾟ; ｌ !
/ イ ｀ーｧイVォzァﾟ´￣ ﾊ ｊ '.
ｲ , ﾟ イ ﾍﾉ ﾊ . ヽ i i
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| 古代アッシリアの神々の支配者。
| あるいは、唯一神によって貶められた王たる神々が冠する称号。
|
| ﾍﾞﾙ・ｲｱﾙ ﾃｨﾝｶｰ・ﾍﾞﾙ ﾍﾞﾙ・ﾀﾞﾝﾃﾞｨ
| 『赤の王』 『夢の王』 『運命の女王』……。
|
| 彼らは真なる王として唯一神に復讐する日を夢に見る。
| 『王』の力を集めれば、それができると信じて疑わぬ。
|
| そこには蠱毒のごとき過酷な喰らい合いがあった。
| この世界では過去、幾度となく『王』の代理戦争が行われてきたとされる。
|
| 無論それは遥かなるカルパの彼方の事ではあるが。
|
|「で、その『王』の中でも特にヤバいのが『冥王ニ・ベル』ッス」
|「他人の空似じゃァねーのか？」
|
| ジャギの楽天的な質問に、ネビロスあるいはローライズ・ロンリー・ロン毛は頭を振った。
| 彼とでっていうは、実はこの戦いに関わりが深い。
|
|「でっていうwwwでででっていうwwwwww」
|
| でっていうの本体こそが他でもない『赤の王』だとか、ネビロスはその協力者だったとか。
| どこかで聞いたような話だナァー。
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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. l:::::::::::::::::::::::::::/ ､‐‐┰ｧ l::::::::/ ､‐┰ｧ l::::::::::l ここだけの話、ネビロスは。
/:::::::::::::::::::::::::::ｉ ー‐ l::::::/ i ー l::::::::::l あとナベリウスっていう犬も、
/:::::::::::::::::::::::::::::l l::::/ l l::::::::::::l 『ニビル』を貶めた姿ッス。
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/:::／i:::::::::::::::::::::ヽ ＿＿! /::::::::::ｉヽ!
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| イシュタルがアシュタロトになったとか。
| 世界中の信仰をなぎ倒して全部悪魔扱いにして回った『教会』の蛮行の名残である。
|
|「…………ヤバいかお？」
|「ガチな『ニビル』なら木星の重力網じゃ捕まえられないッス。
| 奴は小惑星というか、『小惑星型悪魔』なので。『小惑星が衝突して地球がヤバい』という信仰そのものッス」
|
| 古くは世紀末に流行した『恐怖の大王』。
| もっと古くするなら恐竜を絶滅させた隕石の衝突。
|
| あるいは、地脈変動を巻き起こし、アトランティスを海に沈めた原因。
|
|「石油採掘業者集めて核爆弾で破壊するか？」
|「アルマゲドンwww」
|
| ジャギの冗談はともかく、やる夫は冷や汗を垂らしながら考え込んだ。
| 『ビスケットハンマー』なら、『ニビル』にも対抗できるだろう。
|
| しかしそうすると、『クトゥグア』がフリーになる。
| 『クトゥグア』は生きた炎、あるいは第四形態。プラズマ生命体である。
|
| 大気中でプラズマが発生したらどうなるの？
| 核爆発並みの熱量が存在するって事を鑑みれば大惨事は一目瞭然である。
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ｊしｲ
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ﾉ'⌒ヾ: : : : : 丶
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ｊしｲ '⌒｀) ／: : : : : : : : :Y´: : : /{ ｊしｲ
ノ: :.:廴.ィ /{_//': : : :ノ : : : : :ﾉし{: :.:{/ ノ: :.:廴.ィ /{
/ : : : : : : :そ ノ /: : :／⌒ヽ : : ﾊ: :ﾉ: : :し イ / : : : : : : :そ }/
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| ノ´:⌒ヽｰ-ミ: : :ﾉし: :.ｊし' : : : :ｊ -ミ: : : : :.､:.:}: : : : : :ﾉ| ノ´:⌒ヽｰ-ミ: : :ﾉし: :.し イ
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ノ /: : :／⌒ヽ : : ﾊ: :ﾉ: :}: {: : : :j: : : : : :./: :ﾉ}: ｀ヽ: :.:／ノ /: : :／⌒ヽ : : ﾊ: :ﾉ: : :し イ
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ノし': : : : /: : : : :/: :/: : { : : : /: :し':八 .ノしｲ: : : : }: :ノし': : : : /: : : : :/: :/: : { : : : /: :し':八 .ノしｲ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| やる夫はいつか見た夢を思いだす。
|
| 親しい人々が、突然の炎に気が付く暇もなく死ぬ。
| アレが『クトゥグア』だ。絶対に避けねばならない。
|
| だが、同じ時期に別の夢も見ている。
| 宇宙を埋め尽くす『影の物質』。『シ』の軍勢。立ち向かうのはたったの二柱。
|
| 友好的ニャルラトホテプである『月光蝶』と『月に吠えるもの』。
| そして後者がロラン・セアックであり、彼が水際で『敵』を食い止めて若い命を散らす夢。
|
|「『ニビル』ってのは『影の物質』とか虚数とかそっち系かお？」
|「そうッス。『影の惑星』であり、物質化したダークマターで大気のようにくるまれてるッス」
|
| ダークマターってなに？ やる夫はその質問を飲み込んだ。たぶん理解できまい。
| なお、分かりやすく説明すると『光で観測できない謎の物質』だ。
|
| 現代科学で解明できず、『観測』もできない。
| つまり、それが虚数でも悪魔由来でもあるいは全く分類できない存在であっても『おかしくはない』のである！
|
|「うーん」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ＿ ＼ ＼ `ー―――＝彡'´ ￣ ヽ ／
ﾚ'´,. ＜￣＼___,.イ＼ ＿＿＿ ＿ 「￣
ﾚ1 ＼､_ L_ ,.二､ﾆ=＝=ﾆ、 ヽ |
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八ヽ､ } ,ハ::::::::::::::::::j/´| └―‐┘ ｀ヽ厂
ヽ_＼ヽj/`└- ､_'::::/ ! - ､ ＼
八 ヽ ｀{ .,' }＞ ､,. '´ ヽ
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Ｖ /∠ ,. <
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〉 ／ > /イ :| V乂! ､
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,.ﾑ く ／ ／／_／ ＿ 八 Vﾊ /
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(＿ ／ ＞ ´ ＼＼＼ ヽ.／
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| ロランを犠牲にすれば、『ニビル』を止められる。そういう運命だ。
| だがきっと、不人気やペルソナ使いたちの屍を積む必要もある。
|
| 二ヶ月に渡る封印の中で、やる夫はありとあらゆる可能性を、その先の死を見せられた。
| おかげでアサギと『ひとりでお帰り』を止められたわけだが……。
|
| 正直、『ニビル』によって滅ぼされた未来は見た記憶がない。
| もしかしてヌルいのかと思っていたが……そうではない？
|
| 屍の山によって止められるだけ？
|
|「『ニビル』を止めるんならwww手を貸せるかもしれねえwwwwwwっていう」
|「眉唾だお」「まあ聞けよ」
|
| 大変ウザい緑トカゲの発言を、ジャギは大人の余裕で受け入れる。
|
|「宇宙空間にwww耐えられるレベルのwww高位悪魔を打ち出せばwwwwwwwww」
|「あン……？ ナニ言ってやがンだこのトカゲ。フザケてンのか？」
|
| 掌をくるりと返してその巨大な手ででっていうを握るジャギ。
| そんな悪魔がどこにいて、どうやって協力を……。
|
|「宇宙に、打ち出す……？ いやいや」
|
| ある可能性をやる夫は打ち消した。
| それはただの希望的観測ってやつだろうよ。
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＿＿
,.: "´ .､｀/'f゛､_
,r'´ ノr´ﾉr´ノ ｿ､
／ ./'> f-二ニニ_ヽ厶〃ノソヽ
j｢／ } 廴＿ 。 ｀ヽ, :} ﾆ=-ｲ ､ そもそもどんな悪魔なら宇宙に行ける？
! ／/|￣ ￣ ニニ=- ヾ =-彡. 宇宙に行く方法も探さにゃならンが、
|::ﾚ' .| r-､ _ ｀ヽ =- ∧ 送り損は簡便だぜ。
. |!' .f} : | | .f ! f⌒l f- |
!, | i! !|.: | i! | | ! ,､ ! ,ｲ !
!ﾍ /| | .!|.! .! |! ! | j .| ＼ .::|、＼ | ､ , ､
! ﾍ / .! i! .!| .l .|_ j | ,′! .}:＼ .＼ ﾄ､ / |/ |
| ﾍ , |ヽ! .!ゝ′ ---..､ ｀ヽ_ ノ;;;;;;;＼ ｀ﾄ.、. / | .|
! ﾍ / ヽ i{:::.:::::::::::::::::::::::::::::::::;: ;;;;/ 心 ヽ / .| .|
i ､ ,.! . ﾍ_/ {ヾ-ﾉヽ-､:::::::::::::::::::::::;::::,/ / i!:::. }!_ / | .|
| ＼ _ ／ ´ 亅 .{ニﾆ＝==-､｣'| | }､:: . . . : :ノ / / i! ∧:::ノ' ) / .! .|
| ＼ﾞ￣ ー― ´＼ ￣￣.:::::::.､ .! ::.,: : : :: / | ,イ゛ _ｲ / | .|
| ＼ , ､ ヽ, ::::::::::,、∧ ::::,: : : :..:::: :::::::::: :.／ ／..::{－､_,...＿＿ /., .| .|
/! ﾉ ｀´_ ＜/!} .::::::/ }:. :::. .::; ::::::; .f f:...:::::::/::::// ￣ ,´/ﾍ .!__.|
./ .ヽ _ , ＜..:::::::.／ ,≧ｿ::. ﾉ:::. ::::.. ..:; :::::; .::| |:::::::::;´:::// / /ﾍ } ｀ヽ
/ ○ ／／.:::::::／ / .,｀ー ＿ _/_ ＿i{::...:::::} ζ:::::;:::::// f_ッ / /ﾍ---´ .,ｨ′
≧ ‐ _ ○／／.:::::::::〃 ./､ ､〃ﾞ゛｀ ￣ | ;:: ::::::::;:/ / /ﾍ ヽ}
≧ -.／／.:::::::::::::〃 ./ ､/ i} |::::::::::/ / /ﾍ f_ッ|
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|「雪だるま軍団は？」
|「悪魔の物質化に必要な魔力がwww宇宙空間では激薄だっていうwwwwww
| ヒトよりwww耐えられるwwwwwwでもwwwwww普通に死ぬっていうwwwうぇwwwうぇwww」
|
| 宇宙に派遣できそうな高位悪魔。
| やる夫はとりあえず目の前でお茶のおかわりを入れるロン毛を見た。
|
|「十分な魔力供給があれば行けるッス。
| それこそ、『絶対防御結界』を併用すりゃあ想像よりも戦えるはずッスよ」
|
|「無重力戦闘なんてwww未経験www」
|「え、お前も行くのかお？」
|
|「でででっていうwwwwwwwww）
|
| 宇宙に行くだけなら、はやぶさのペルソナで可能だろう。
| 恐らく、ロランも同様の方法で宇宙を目指す。
|
|「おう、やる夫。お前が考えてることを当ててやろうか？」
|
| ジャギが鉄仮面の下でくぐもった笑いを上げる。
| やる夫は頷いた。同じことを考えているのなら、悪くないってことだ。
|
|「『封印像』の悪魔共を探して頼み込む。『蛇身』『万魔』『傾国』……そして、『凶獣』と『貪獣』」
|「ジャギさんと同じ考えで安心したお。やらない夫を中心に悪魔チームを派遣するお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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:::::::::::::::::::::::::::/ ＼│:::::::::∧ │
::::::::::::::::::::::::/⌒ .│:::::/ ││
::::::::::::::::::::/又!勹 ﾉ:::::/⌒│.ﾉ
::::::::::::::::/ ￣ /::::/ Τﾌ │
:::::::::::::/ /::ﾉ 丶/::::│ やらない夫さんを？
:::::::∧ ﾚ 丶＿＞::::ｿ 無謀ッスよ。
:::::ヘ ／:::::│
:::│ ＼ ￣￣ ／:::::::::./
::丨＼ ゝ /:::::∧::│
::/:::::::::＼ /＼ ノ:::::::/ │/
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|「ところがどっこい、野郎は『セイバー』。『局地重力制御』とかいう意味不明な能力のある武器を持ってやがるお」
|「マジで信じらンねーが、人間のままで宇宙戦闘できそうなンだよ」
|「でっていう」
|
| 手持ちの手札だけでなんとかなりそうで、やる夫は安心した。
| いや、『万魔』はともかく『傾国』と『蛇身』に協力を要請するのは難しそうだが。
|
| ならせめて誠と水銀燈さんがいれば……。
|
|「よし、ちょっと一回持って帰って相談してくるお」
|「でっていうwww」
|
|「ちな『第四の万魔』『哀しみのからくり人形楽団』の分岐点は三日後だお」
|「『やらない夫の集会』だ。知ってるか？」
|
| ジャギの言葉にでっていうは器用に肩をすくめる。
| 地下下水道にユーチューブを見る機材などある訳がない。
|
| この幻死から逆算して、やる夫たちは当日に『集会』を襲撃するのはシロッコのサイボーグだと目星をつけていた。
| 恐らく、捨て石にされたことが世界を壊す切っ掛けになるのだろうと。
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. -―― .
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ﾊゝ-､_)(_, - く ﾊ
,ゝﾍ' 二!ｌｌﾞ二 ﾞ,r/|＼
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| 同時に、『弓兵』たちの間桐屋敷襲撃も同日であろう。
| 臓硯に何が起きるかは定かでないが、彼に劇的な変化を起こしそうなのは孫の反乱なのではなかろうか。
|
|「でっていうたちはwwwどうするwwwっていうwww？」
|「今まで通りに動いて、『血族』と接触してろ。変に探るな」
|
| 変な動きをして警戒されては厄介だ。
| でっていうたちは納得し頷いた。
|
|「そーいやwwwどこで、俺様たちのことwww調べてきたっていうwww？」
|「ん？ 昨日の昼に偶然地下にいて、小耳に挟んだ仲間がいたんだお」
|
|「でっていうwwwwww」
|
| そんな都合のいい話……あったんだから仕方ない。
| だが、彼らは気付いていない。その『都合のいい話』が自分らだけで終わらない可能性を。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ′ { Vﾊ '，
/ / }]=-‐￢宀冖=‐- Vﾊ '，
/ / ]=‐￢ : : : : : : : : : : : : : Vﾊ／￣￣￣ '，
. / / ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :〈>､／￣￣￣ ，
/ 、∨: : : : : : : : : : : '， : : : : : : : : : : Tヘ、 }
＼У: : : : : : : : : : : : : '，: : : : : : : : : : :＼ ヽ ＿ ′
〃: : : { : : : : : : : : : : : '， : : ＼ : : : : : : :＼＿_ .ィ
{: : : : : ＼: : : : : : : : : : :ﾄ､ : : : }＼ : : } : : : : : : : :
{: : : : : /ｰ＼: : : : : : : : :!＿.､: :}___ ヽ/: : : : : : : : |
〈: : : :∧＿ ＼l＼ : : : 「///V//| | }: : : : :／: : :,
. 〈 : /:.狄¨灯う ､: : |//////_| | }: : :／: : : :/ なあシグ、なんでさっきから虫を潰してんだ？
V|: : : l 夊り ＼}二二「＞く厶イ : : : :./、
'，:从 ヽ ￣￣ ＼}: :/: :/ : / : ＼
､: :＼ /: : : / : / ￣￣
＼: : >. ー‐‐ ’ ./: : ／}／_ --=ミ
}＼: : 〕=／⌒＼=≦ 厶イ-=≦ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼
}/}ノ^`く_ -‐ ヽ ﾏ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ'，
x==(_ -‐ '，_ノ }ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=ｉ
/ﾆﾆ=(_ -‐ }__ ,‐=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ!
{ﾆﾆﾆ={ ｰ 、 Ⅵ /ﾆﾆ|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=|
{ﾆﾆﾆﾆ≧= ヘ ＼／ﾆﾆﾆ!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=!
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 難しい話が始まると同時に、部屋の隅や出入り口あたりをウロウロし始めたシグ。
|
| 虫と見れば見境なく観察するはずの彼が、今日に限っては奇妙な動きをしていた。
| そこいらに溜まる虫を観察し、その中から特定の虫を選んでは親指の腹で丹念に潰す。
|
| 普段の彼からすると想像もできない。
| 指をどす黒い粘液と内蔵でどろどろにしながらも、しかしシグは止まらない。
|
|「うん、もうすこし。てらして」
|「……？ もう、いねえよな？」|
|「ねんのため」
|
| 答えはなくとも、律儀にサーチライトで虫溜まりを照らす天龍。
| 年頃の女の子らしく、押し潰した虫には渋い顔。
|
|「で、なんでだ？」
|「天龍、ぼくもようじゅつつかいなんだよ」
|
| シグの言葉で、天龍は察した。
| 妖術、間桐臓硯の魔術。虫を使っ呪法……！
|
|「いたのか……ッ」
|「ううん、むしさんにわるいことしちゃった」
|
| 聞き耳を立てる使い魔の可能性を、この場でシグだけが警戒していた。
| 臓硯の蟲ならば……魔力も少なく、見抜くのは困難である。
|
| そのためシグは涙を呑んで虫を潰したのだが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＞''"´ '' ､
＞" " 、
／ ヽ
／ ',
i ｀"'' 、 i
',:＼ li ＼ l
',: :｀"' ー--....、 li ｀Y
',: : : : : : : r-､i ＞=- ＿ﾍ i
' ,:: : : : : :i r、 ''"´ ｨftタ .{ まあ、
ヽ: : : : :＼ i く V 貴様のような
＞''ﾍ＞"ﾍ"ﾍ''" ﾍ: : /: ', ヽ ／ -- " 未熟者に見抜かれるほど
＞"////.V:::::::ﾍ ﾍ ﾍ:/: : .ﾍ Yfﾆﾆﾆ{ 儂は耄碌しておらんということじゃな。
.. ／////////V::::::::ﾍ ﾍ V: : : : : :＞、 i
／///////////V::::::::ﾍ ﾍ .i: : : : ／ ｀＞=- '
／//////////////V::::::::ﾍ ﾍ ﾍ: ／ﾍ
.../////////////////V::::::::ﾍ ﾍ ﾍ V/ﾍ
///////////////////V::::::::ﾍ ﾍ } }..//ﾍ
////////////////////V::::::::ﾍ ﾍ .} }.///ﾍ
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| 排水溝の中に潜ませた蟲で盗み聞きしながら、間桐臓硯はほくそ笑む。
|
| とは言え、シグはよくやった。
| 確信はなくとも設置していた蟲の八割を潰したのだ。
|
| 残りは二匹。
| シグがご丁寧にも、手の届かない排水口に毒ガスを流し込んでくれた成果である。
|
| そして、『十壊』と『第四の万魔』の話を耳にしつつも、間桐臓硯は動かない。
| それくらい、想定の範囲内だ。
|
| やる夫がニャルラトホテプ？
| もしや気付いていないとでも思っていたのか？
|
| 志摩子が監禁されている間に、臓硯は『やる夫』が何者なのか見抜いていた。
| その上で接触し、彼を陰ながらに援助してきた。
|
| ……しかし、それにしても。と臓硯は思う。
| 『やる夫』がニャルラトホテプで何が問題あるのだろうか。
|
| 彼は己の命を守るため、つまりは東京の守護に懸命だ。
| 能力も優秀、反対派もその魅了能力で手懐けて、今までなし得なかった『血族』の一致団結を可能にしたのだ。
|
| 臓硯には不満がない。表向きの権力も、酒池肉林でもほしいままにさせればいい。
| 臓硯は臓硯で好きにやるのだから。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ﾍヽ ﾉ ｀ー-- .ヽ /／ ´ イ
!ヽト､ 〈 ｀〉〈 ,..ィ´ }/;i＼
｀ヽ､ヽ ＼_＿＿＿__ /ハ入／≡ﾞ'′'ﾍ;i;i;i;i;i丶 奴のおかげで新宿駅は
;i;i|::ﾞ､ヽ ´, ＼三,ゝ'"ﾌヽ ' /ー-､´ ﾉ;i;i;i;i;i;i;i;ヽ 穏便に終わってしまったようじゃしのう。
;i;i|:::::::.ﾍ / "／ ´／ Y | ､ ヽ ,ｲ;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i＼
;i;i|::::::::::::ﾄ. ヽ ,ｲ｀ ｌ | ﾉ ｀ｰ┐/ !;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i丶
;i;i|::::::::::::| i ヽ ／､ ￣｀ヽ-', /, | ﾚ´;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i
;i;i|::::::::::::| |＞ ､! ! ‐- ,. -－ 二ヽ ／::|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i
;i;i|::::::::::::| | ヽ ＞ヽ. '´ ‐ ´ / i::::::|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 生贄の不足の懸念はない。
| むしろ兵力の増加にほくそ笑む。
|
| いずれ『教会』を叩き出して、東京は『血族』の天下になる。
| その為には華琳と星は思わぬ拾い物であった。
|
| やる夫の語る『十壊』も、しばし彼らを泳がせることで潰し合って貰えば良い。
| 最悪ニャルラトホテプもやる夫たちに討たせればよいのだ。
|
| だが、最後に勝つのは間桐臓硯だ。
|
| 臓硯には弱点がない。無敵の不死性と強力な妖術があった。
| 肉体的戦闘能力も、隠しているだけで低くはない。
|
| 明確に臓硯を狙う敵は、今の所夢宮の小僧と遠坂の馬鹿娘ぐらいのもの。
| とはいえ、臓硯は二人を過小評価しない。必ずや、こちらを仕留める工夫を凝らしてくるはずだ。
|
| 臓硯は意地悪く嗤いながら、報復者どもの来訪を待つ。
| 仕込みは上々、あとは結果を御覧じろ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／三;ヽ､´ ヽ三三三､二二二＼
|三三三ｌ ヽ三三三＼二二二＼
／´!三三三ヽ ヽ三三三三＼;二二ヽ
／: : : : ヽ三三三ヽ ＼三三三三三ｰ ､_）
i: : : : : :ｨ ヽ;三三三＼ ＼三三三三三/
ｌ: :,.: : / |: :i ＼三三三三､ ｀ ー 三,イ
. | ｌ l: :/: :| ﾄiヽ ＼三三三三＼_ ｌ|
! ､ l ｿｌ;| |;|＼､､＼;三三三三｀ﾞヽ--ｯﾌ′
. | ! 「 !| ｀i;:;:ｯ､｀ｰ-＝､三三三三:シ
ﾞ i ｀ﾞ'''‐/::. :. : : : :.￣￣￣「
ｌヽ ／ﾉ: :＿＿:: : : : : :: ::/ 学園を『教会』が封鎖した。
｀ー―､///::.::.::.::.:｀ヽ ノ/
ム}ｒ'￣iｯﾚﾉｨi::.::.::.::.:..:..::├'ノ 表向きは『細菌兵器、あるいはガス兵器を使用された恐れ』。
ム{/ ,.-―ｦ ノ!!::.::.::.::.::.::.::.:ｌ 耐ガス装備をした合衆国軍が配備されている。
ム┘/ ×_/ /::.::.::,::.::.::.＞､::〉
ム} （／ / /::./::.:;;ヽ／:;:;ｼヽ＼ 配備を命じたのはパプテマス・シロッコ。
(ﾆ} 彡 ﾂ _,-―:::＿_;:;/:;:;:;:;:;:;:;フ::.::.､
＿/ﾞｰ､_ L_{ i,. "ｰ-､ :;:;:ｬﾞi ｀ ｰ≦- 」
ﾆ三ｌミ ┼ ｀ｰ"ｫ､＞､:;:;:;:;:;:／ | 「
三三､ ﾐ 三三三三 ヽ:;:ﾉ {ミ､ |
三三三ヾ 三三三;／二.-―´ ミヾ ｌ
三三三三三ヾ /,. ´ ヽ、 ﾞ i
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|『アリカは？』
|「そのアリカからも連絡があった。暴君に制圧されてるそうだ」
|
| でっていうと会合中のジャギとやる夫に蒼星石は電話をしていた。
| 二人の持つ電話はダルの用意した特別性。
|
| しかし、長時間使用は電波傍受の危険がある。
| 手軽には使えない。
|
|「悪魔出現の可能性有りで『血族』に通報した」
|『マジかよ』
|「エダ経由だから問題ない。問題は……」
|
| シロッコだ。
| 奴には『モーリアンビル襲撃』の前科もある。
|
| ここで再び、あるいは今度こそ、隠蔽できないレベルの戦闘行動を行う気なのかもしれない。
| 『やらない夫の集会』の前に、ここから戦端を開くつもりなのかもしれない。
|
|「『カトルカール』、あるいは別のサイボーグ兵が送り込まれているだろう」
|
| もしくは、蒼星石も想像できないような行動を取るやもしれない。
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. ∨＞ '"´ ￣￣￣ ｰ-=ﾆ二_′
＿__＿_} { _＿__
＼三二ニ≡＝＝==ー---－―=＝≡ニ二三三三:/
＼三三三三三三三三三三三三三三三三三／
7: : :/. : :/. : {:∨∧: : : : : ｀ヾ: : :ヽ: :ヽハ才
,: i : :{:: ::/. : :∧:∨∧: : : : : : .∨: : :': : i: :{
{: |: : }: /_才/:ハ:.∨∧: : : :斗弌: : : : : : ::!
j八: :{/彡,:ｲ云ｰ: :乂ハ=彳ハ: {ﾊ: :/ ,: : :!
从: 乂ハ ｀｀ヾ '" }ﾘ }'. / : : ; 正直言って、
∨: : 爻_ゞ＝=- r==＝彡彳.: ::.′ 僕は『モーリアンビル』で
. ∨: : 八 イ. : : : .' 奴に一杯食わされた。
. ∨: {: :≫. _'_ 乂: ,.: :/
∨从ハﾊ＞ . -‐ミ.. . .イﾊ.: :/: / 惨敗した。
. 乂{ . ィf -‐:._}ヽ( .ｲ乂::.′
rfー--‐ " ィ{ .二二}=ミ｀ ＜从(___
/:ﾌ { ／／:. -‐ ｦ ＼ } }
. /. :｝ i} { i{才:ﾊ fﾊ＼___ﾉi} ′ﾊ
.. /. : 乙{ ゞ=ミf } j〈 ヾ==彡 ′｛∧
.ﾞ. : : フi} /乙′⌒Y{ }i:{ ′乙 ∧
,.: : : : :廴ﾊ ./ {__ 乂气{i:{ .ﾞ⌒(: : :.∧
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| その敗北が今の流れを生んだ。
| しかし、奴の好き勝手にはさせられない。
|
|「やる夫、ジャギ。そして天竜とシグ。
| 学園に行ってくれ、深く静かに。奴に目にものを見せるために」
|
|『リベンジマッチ上等だぜ』『了解したお』
|「侵入ルートはやる夫に任せる。ただし、シャワーは浴びてからにしてくれ」
|
| 下水の臭いをプンプンさせていたら隠密行動も難しい。
| 蒼星石はペルソナ使いたちに三人分の制服を用意させた。
|
| ジャギの分は諦めである。鉄仮面の学生なんて居るはずがない。
|
| やる夫たちに同行する隠密に優れたペルソナ使いも選定。
| 同時に、自主的ノーパンミニスカでお茶くみをする鹿島を呼び止める。
|
|「君に頼みがある」
|「はい。その……私、女の子とは初めてなので上手くできないかもしれませんが……」
|「自衛隊の五島ムスカに匿名のタレコミを入れたい」
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／ ＼＼
/ // ヽ 〉
｛乂__ノ/ ﾉ/
乂＿ノ ／
／
-― ￣￣＼ ／
＿ ＿／ `＜＿
／ ／ ￣ ／ ＼
∥ / ／ ／⌒ ／ ｝ ヽ ヽ ヽ
jl / / ／ / ／ ﾊ Yい 、 Y
｛乂＿／ / / / / / } l l::. 、
＞'"／ ; / / / ﾉ / } }:} l
/ / l / / ∥ / / } ; l j/ l l
/ / ／! / j l / / ; / j / } }
{ /l l j / /l { / / / ＿/{＿ l / ! j
/ / l l/l / ＿/ l /// /￣ /人 ￣l/ 八
{ / Yl { ￣从{￣ ヽ /{ { / j_,,,xｬ云ﾐｼ,l__ / l ､ ……計器に反応なし。
l //(__ノ l ﾊ { { ,,x斧ミx、 l 人／彡戈::j!:::ﾉ)厂 l/ l ＼ マジでただのテロかもしれねッス。
{｛ {{人 l⌒ヽ乂:j!:)､{ ＼..:::. `=''ﾞ / ＼ j l人 ＼
`ｰ／ l ヽ{ ＼＿,`''ﾞ .::{ ｰ-‐彡 / ﾊ ﾉ ＼ ＼
｛ / / l ＼ヽ ／ /}/ } ヽ ヽ
いj / /{ l ﾄ、 =- / / ／ / )ﾉ ノ
Ⅵ l l ハ { ﾉ ﾉト､ ｰ ＿_{ {／l { / ／ ／ ／
ヽ { { }人 l-―-＜￣￣ ￣{＼ ﾄ､＿ / { 彡'"
＼乂ﾉ/:::＼⌒＼:::::＼::＼ ｝ ﾊ { /〉 乂/ ／
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`ｰ彡ノ:::::::::l::::::::::::::::}:::::::::::ヽ::::::＼ ミ} ｽl＼
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| 学園側の月極駐車場に陣取ったハイテクトレーラー。
| 『グレン団』の走り鳰の電子要塞、走る前線基地だ。
|
| ゲートパワー計測装置により、周辺の悪魔汚染度を的確に計測できるすごいやつ。
| 蒼星石が組んだ悪魔出現予報もこの電子要塞の中にある。
|
| 『血族』の東京守護を効率化した、牙なき無辜の民の守護神なのだ。
|
| が、今この学園内部の暴虐には無関心。
| それもそのはず、学内ではどれほどの魔術儀式を行っても外部には汚染が漏れぬように結界が張られている。
|
| そう、他ならぬ伊藤誠の手によって。
|
|「情報源は『暴力教会』なのでしょう？ ガセネタとは思えないわ」
|「でも、どうすんの？ 今日はキルもいないし」
|
| 同乗する二人の女。肉襞色の髪の尼僧と、巫女服の小学生。
|
|「普通に壁を飛び越えるわ」
|「普通に、ね」
|
| ため息をつき、小学生巫女は肩をすくめた。
|
|「不審者として通報されないことを祈るわ」
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☆ 次回予告！
そいつは突然現れた。
まんまるバディにつぶらな瞳。
ステキな模様が今日も眩しい。
あれは何？ 竹林明細？ サングラス？
いや！ ただの模様だ！
胴体に比べて小さな手足。
ちょっこり乗ったベレー帽。
アイツはアイツはアイツは誰だ？
聞いて驚けそいつのその名は！
次回、最終幕七十話『パンダルマン』
果てに見るのは破滅か死か。
じじいの元気な死夢スレ
爺の見通しの甘さよ……でも、不死性で見えなくなるよなあ
（猟犬と同種のアレ、残ってたような）
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＿ ー-- ､. |l|li
_ ―´: : : : : : : : j |l|l|
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（＿＿,,--― ´ ｀てヽ.|l|l|
ゝｰ´ィ⌒ヽ ,': ｀:ヽ 丶ヾ.l|
､ゝ, ､_i､_彡 { : : : , ' ｰ' ヽ : : : :ヽ ｀<|l|
ミｼ: ヽ_ゞ:;:;:;:;ｲ ｀ｰ ' ,-、 丶 __ノ 彡|
ヽ: : そ:;:;:;:;:;!,ィ_ ´ー｀ 、,,ィ-'ｲ､
､: : ｀ｰ;:;:;:;:;:;:;:;｀ﾞｰ､-､_ー-,,_ ィ''´;:;:;:;:;:;:;:;:'ィ
ヽ: : :ィ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;;ィｰ;:_;:;:;:;:;:ゞ
丶: : : : ｀ﾞー彡''-ーiｯ-ィ;/: : : : : :´-､_､-''
}｀ ﾄｰゞ､: : : : : _ -､´|
j i ´ヾ-'ー ´ ヽ|
/＿＿ i ＿_,, ＿',
ヾ,ｨ､＿_ｌ､ ￣￣,｀iー'―‐ i´￣ i＿ヽ
}: : :ヾ,, | ｀ー―' ｌ―,― ´l ＿」-'' ﾞｲ
j: : : : :´ィ_,￣￣ ´ i ￣￣ ゞ: : : : ',
/: : : : : : : : '-, ! ､-'': : : : : ヽ
/: : : : : : :_;_;_彡- ー=＝==－ -ミ,_: : : : : : : :',
j: : : ; - ´ ｀ - 、: : : ',
´´´~ ﾞ｀｀｀｀
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| ジョニィ・ジョースターの宣言からこちら、授業どころではない学内。
| 逃げ出そうとする生徒は捕らえられ、暴徒と化した者共の餌食に。
|
| いつの間にか学園は封鎖され、蟻の子一匹も出入りできない様相に。
| 生徒たちは怯え、教室に立てこもって震えていた。
|
| それ故に。
|
| その異様な風体の存在に最初に遭遇したのは教員だった。
|
|「な、なんだこれは」
|
| パンダだった。
|
| 体長２メートルの直立したパンダ。いや、本当にパンダなのか？
| 横幅も２メートルあるし、何故か軍服を着ている。
|
| のっしのっしと歩く姿は軽快だが、足音がしないのは異様。
| その上、一体どれほどの重量なのやら、リノリウムの床が沈んでへこむ。
|
|「いや、悪魔だな！？」
|
| 教員は、この学園に一掴みいる伊藤誠の部下。魔術師だった。
| もちろんジョニィ・ジョースターの背後に『教会』がいるのを知って日和見を決め込んでいた程度の実力なのだが。
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| 教員が何かしらの魔術を使おうとした瞬間、その上半身が吹き飛んだ。
| パンダ。パンダはクマ科である。
|
| 笹しか食わない極めて温厚な生物であるのだが、残念ながらその肉体はクマ。
| 腕の一振りで紅葉おろしの出来上がりだ。
|
| パンダは上半身を喪失した教員をつぶらな……いや、目は眠そうに細められて見ていない。
| つまらなさそうに腕から滴る血液を振り払い、のっそりのっそりと歩みを進めた。
|
| その随分とファンシーな見た目と違い、そいつからは虚無的な気配が漂う。
| 疲労、諦念、虚脱感。
|
| あくびをし、尻を掻き、ポケットを弄って。パンダはのそのそとやる気なく進む。
|
| 次に遭遇したのは……一年生の男女と女教師であった。
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／ |l __ {:.} _f_ﾉ
／ __,r‐'.:.:.:｀ヾ⌒丶f:ﾉ
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/ //:/.:ﾊ.:.:.!＼l＼|__ヽ:|＼:.:.|:.:.:l:.:|',
i |:|:.ﾄ､:|-ヽ| ´,r==､｀ ヽ|:.:.:|:.:!ﾊ おっきいパンダだ！！
| |:.!:|´ ,r=､ fﾊ ヽ }:.:./:/:/|
＼ ヽN / fﾊ ﾋﾘ /,.ｨ=rく/l
ﾊ. ﾋﾘ , , ´// .ﾉ }/
,.-‐{‐! , , ､ /l:| └/
/ /ハ{ r‐┐ ! ヾ／ ,、
{ |:| ＼ ﾞｰ' ,.ｲヽ /: :ヽ
ヽ ヾ=- ｀ 、 ,. '´ |=彳: ／:￣｀
＿＿｀_丁´ l／／: : : : : :
/ : : : : /: ﾊ ／: : l: : : : : : : :
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| 女子高生なら当然のこと、老若男女に大人気のパンダである。
| 無警戒に駆け寄るアリカに、同行していたマリナが青ざめる。
|
| マリナと刹那は、『夢世界』という悪夢みたいな場所をさまよった経験がある。
| そこには、見た目だけはかわいい怪物などザラであった。
|
|「こんにちは！ お話は通じますか？」
|
| だが、無造作に近付きながらもアリカは冷静だった。
| 友好的に右手を差し出す。微笑んで話しかける。
|
| 話の通じる相手ならばそれも悪くない手だろう。
| 話の、通じる相手ならば。
|
|「せっちゃん、先生を連れて逃げて！」
|
| パンダは奇襲しなかった。
| ただ『話し合いに応じる気はない』とばかりにアリカの手を無視し、殺意をもって対応した。
|
| アリカが手を引っ込めるよりも早く、パンダの左手に掴まれる。圧倒的重量差と握力差。
| アリカの左腕が霞む。目にも留まらぬジャブを五発、右目周囲に叩き込む。
|
| だがふんわりした獣毛ともっちりした脂肪が、その打撃をすべて打ち消す！
| 右腕を支点にした、プロレス技めいた回し蹴りがクリーンヒット。
| コンクリートを粉砕し、電柱をなぎ倒す一撃がまるで効いていない。
|
|「聖詠刹那、戦闘に介入する」
|「だめっ」
|
| ペルソナを纏い斬りかかる刹那、パンダが左腕を振り回し、アリカを盾に取る。
| 躊躇する刹那、腕にしがみつくアリカ、瞬間、パンダの右腕が大きく振られた。
|
| 技も速度もない大ぶりの一撃、のはずが、刹那は防御できず、粒子化による回避も間に合わず。
| ゴムボールみたいに吹き飛んで壁にめり込む、ペルソナの防御がなければ即死だった。
|
|「せっ、刹那！」
|
| 一瞬遅れて振り向くマリナ・イスマイール、よろめきながら立ち上がる刹那を支える。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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! i ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼ ＼
i |: : : /: /: /: :!: :!: :!: : : :ヽ: ､: : : : : ヽ / ＼
i | : 〃: :!:！: :!: :!: :|: : : : : !: :ヽ: : : : : ヽ/ ',
| l :〃: :i!: :|: : |: :ｌ : ﾄ､: : ! :l: : : !: : : : : : ヽ }
| !/ : r介:.|､: :!; :ヽ:|_,ヽ l: :! : : ﾄ: : : : : : : ! /
| !: : :|:| { :| ヽ{ ＼: ＼ |ﾊム: :/_ヽ:: : :!: : ! ./
| !: : ﾊ{ ゝ!-‐=､、 ￣｀' ﾉ ∨ ｀| : /: : :| ./
| ! : l/ r仞か ´ -_二.ヽ /イ : : ｲ /
| | : | いじり ｆィかi Ｙ i: : // /
| ﾄ､:{ ‐'＝´ 弋ﾑｼ ﾉ／: :ｲ/ /
! |: ヽゝ / ｀"／.;ィ´〃 /
! ﾄ､､ :} ´￣ ∧ ´ / ………っく！
! ト|: Y r‐ ┐ lｊ ∧ ', /
! l: !:.:ト､ ｀￣ ／ l :l /
.i ﾊ:!:八 丶 _ ´ /:/ /
i ﾄｆ: :| ｀ ー‐／ ／´ /
.i | ! : ＼ ／ヽヽ ./
.! /ハ: : : ! / ヽヽ /
.! ！ j // ト､:ﾍ､ / ｌ l / /
! ∨ // ! ! : ヽ ｌ l ! /
！ / ／へム ヽ ＼: :l l l !./
i /＿_／／ 〈ﾊＹ ＼ ｀ |: :ヽ. ｌ l Y
!_／ _／ / //｀ ｉ＼＼ ヽ: : l , -_に二ﾍ
〈 _／〃 / / ｉ ＼＼_ Ｙヽ ／／ 〈ﾊ〉､ ＼＿
!／ /' ｉ ! ｀ ｰ-| : Ｙ- ' ｀丶＼ ヽ }
! / | ヽ: :ﾄ､ヽ ヽ ｿ
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| 変則腕ひしぎ十字固めを無視され、アリカは腕ごと壁に叩きつけられた。
| だが、一瞬の緩み、右腕を引き抜く。
|
| 掴まれた部分が赤紫色のあざになっている。
| アリカは背中をさすりながら距離を取る。
|
| 背中には負傷した刹那とマリナ、マリナが『法務官』を起動して、刹那をお姫様抱っこ。
| それを確認してアリカは小さく息を吸った。
|
|「ドーモ！ 夢宮アリカです！！」
|
| さっき殴られた目の周りを掻きながら、アイサツを返さないパンダ。
| アリカは小首を傾げた。彼女には確信があった。このパンダ、無視してるだけで理解をしている。
|
| アリカは首を鳴らした。さっき背中を叩きつけられて、制服は穴だらけ。
| 木片が数本刺さり、血が滲んでいた。
|
| だが、かすり傷だ。
|
| 踏み込む、パンダは動かない。
| こいつはやる気もないしつまらない。本気も出す気がないと来ている。
|
| ならば説得してお帰りいただかなくては。アリカはそう考えた。
| ……なにしろ、アンデルセンさんやエミヤさん並の相手だ。
|
| 勝てるビジョンが全く見えない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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／ﾉ-‐'´ __ ,._-_ァ=ﾆﾆﾝ'-‐'´｀ ｰ一'´
,.ｲ ,rﾆﾒ'´_,. -_ァ'-‐'´
// _,rﾆﾌ´,rﾆ´-‐'´
|:| ,. ---- ､ ／/／ﾉ'´
|:| ／: : : : : : : : ｀ヽフ´:/'´
ヾ/: : : : : : : : : : : : :/:lヽ' __
,r'一'⌒`丶ｰ ､:_／: /:j: l r'´ !_,. -,
/: : :!:､:＼: :､:＼:｀ヽ:/:/: :,! ／', |j _l -―- ､＿＿＿
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└‐､ !l! ヾ､/ / {_ ｀ヽ,.-‐Tl´/⌒`丶／:::::::::::::::::::
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| 震脚、廊下が陥没して蜘蛛の巣状のひびが広がる。
| 爆弾のような衝撃波で、窓が吹き飛び壁が軋んだ。地震のような余波。
|
| 渾身の一撃、右正拳。全身のバネを完璧に利用できた、見事なまでに型通り。
| パンダが左手で受け止める、軍服が破れ飛ぶ。獣毛が逆立ち、脂肪が震えた。
|
| よろめくパンダ、しかし外傷はなし。
|
|「……………………グフフ」
|「お話を……できませんか」
|
| 力を見せて、対話のステージに立とうと言う試み、完全に失敗。
| これまでのやる気のなさが嘘みたいに、パンダの口が耳まで裂ける邪悪な笑い。
|
| 可視化できるほどの、泥のように粘質の殺気が渦を巻く。アリカは下腹部からこみ上げる尿意に震えた。
| 全身の産毛が総毛立つ、脂汗が溢れる、口の中がカラカラだ。怖い。
|
| 『蒼天の青玉』があればなあ。
| アリカは失われた己の武器を想った。
|
| 恐怖も痛みも快楽に変えてくれるなら、怯えてすくむこともないのに。
| 本能的なアッパー、パンダの右腕を打撃で逸らす。打ち上げなければ頭がなくなっていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
｀ >:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r-ｰ' ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ;´
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| 爪にかすった頭皮が前髪と一緒に宙を舞う。
| 額の骨が削れた気がする。
|
| 目前でパンダが横回転。まるで重さを感じさせない動き。突然の後ろ回し蹴り。
| アリカは地を蹴り、直撃を避けて跳んだ。壁を突き破る、無人の理科室の実験器具と机を薙ぎ倒してストップ。
|
| 壁に開いた穴から、パンダの顔が覗く。体が大きすぎて入れないのだ。
| 刹那とマリナは逃げ延びたか？ もう少し時間を稼ぎたい。焦る気持ちを懸命に落ち着ける。
|
|「ふー、『男も女もクールであるべき。沸騰したお湯は蒸発するだけだ』ってばっちゃが言ってた」
|
| 空手の型。クールだ。落ち着け。
| このパンダが何者で、何が目的かは後でいい。とりあえず生き延びろ。クールに。
|
|「ＫＯＯＬに！」
|「グフフ」
|
| アリカは右手を眼前に掲げる。
|
|「変身！ ＫＯＯＬ！ ＫＯＯＬＫＯＯＬＫＯＯＬ！！」
|「…………！」
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, ＜ ／
, ＜ /
"ー､ ./r-､
∨ ヽ ﾍ＿＿
∨ >─ ､ ヽ
ﾊ / 丶 ∧
ｌ Ⅵ }__ム}
', Ⅵ＿_,, -く::::r､ﾊｌ KOOOOOOL！！！
ゝィﾏ､ /ヽゝｌ::ｌｌ
ヽ } }-､/::::::/｀ヽｌｌ
ゝﾏ≦＞' ,r＝ニヽ､ r＝ニ＝r-､
r ､ ／ ﾍ|─､＿ノ |:ﾑ
, イ￣// .ｌ＿＿ }::::ｌ
, ィ／ ,-─､ﾆ二￣￣￣ヽ|:::::::::::ヽ ﾏ:::ｌ
／ / , ‐<＿／ ￣ヽr─‐､::::::::::＼＼ ゝ!
ﾊイ/ ／ ／ |ﾆ| ｌ |::| ヽ::::::::::∧ ヽｌ
| ／ヽ／ |ﾆ| l .|::| ∨:::::::∧ ﾑ
ｌ//::::::ヽ |ﾆ,r=､ニ二二ヽ＼ l∨:::::::∧ ﾑ
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fて ＿_∧:::ヽ ヽ-'::::::ヽ-'￣ヽﾉ::::::::::::::::::::ｌ }:::::::::::／｀ヽ
ヽ／::ヽヽヽヽ::>イ￣￣:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ .ｌ:::::::::ﾑ ｌ
| }:::::::::::::ヽ／ |,r-＝＝ヽ_ｆ{r─ ､ ＝＝ｆ｀ヽ ｌ:::::::::::ﾑ ｌ
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| 舞蹴百式『兜』。高速戦闘に耐えられる強化外骨格。
|
|「クロックアップ！」
|
| 『蒼天の青玉』と違い、痛みの軽減や折れた骨のカバー、精神高揚などはない。
| ごく普通の強化服。
|
| 加速装置もない。でも。
|
|「『あるのは勇気だけだ』って」
|
| 空気を蹴る。音の壁を足場にして加速。理科室のすべてが破壊、散乱。
| 真正面からパンダに猪突、いや。
|
|「ほげぇ?」
|
| 床を蹴って急ブレーキ、天井に衝突。
| だが、理科室を横一文字に横切った赤光を避けるには他に手はなかった。
|
| これまで、巨大なパンダにばかり目が行って気が付かなかった。
| 上半身ハダカでメカニカルなバイザーの少年がそこにいた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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⌒ヽ
__ ｖ´
´￣ ￣￣￣ 、
＼
＼
ー―――― ＿
ィﾆァ＝ー、 ヽ
＿＿＿＿＿ﾑﾆ/ ヽ ヽ
-――――-{ {／ ｊ}
ヽ ヽ /ｊ ',
―＝＝＝ァ= ≧＿ニﾆ彡 ﾊ ',
´￣￣￣￣￣｀ミｭ､ /ﾆ
｀ ミｭ､ /ﾆﾆ ほげぇ〜〜。
ｒ ⌒ ヽ 川 ﾆ
フ／⌒~ ｨ{ | ﾆ
/ （ o ﾟ イﾆ ! ﾆ
( ノ ／ﾆﾆﾆ i ﾆ
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| 一瞬遅れて爆発。
|
| 理科室が吹き飛ぶ、当然巻き込まれるアリカ。
| なにあれ、サイクロップス？ ラピュタのロボット？
|
| ビルをなぎ倒した遠坂凛の火線魔術を思い出させるビーム兵器。
|
| 上の階が崩落、幸運にも無人の美術室。絵画と石膏像が破れ砕け燃え上がる。
| 火事を危惧する暇はない。瓦礫を足場に少年が飛びかかる。
|
| パンダが粘度の高い泥沼の殺意なら、少年は強硬度の針。鋭く強固な必殺の意志。
| 殺すこと意外になんの思考もないかのような……。
|
|「ほげぇ?」
|
| 少年の左腕はつるりとした金属製だ。金属の光沢を持ちながら、しかし動きは滑らかすぎて生身にしか見えない。
| それが伸びた。指が三条のワイヤーになってアリカを貫かんとする。
|
| 迂闊に受けてはいけない。
| アリカはその腕をやらない夫のヒゲ槍のようなものと判断した。
|
| 衝突も爆発も、強化服のおかげで痛手ではない。瓦礫を蹴り空中で姿勢変更、ワイヤーを避ける。
| 機械みたいな奴だ。アリカはそこまで考えてゾッとした。人間が、殺意以外を持たないなんてあり得るの？
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(⌒ヽ
{⌒ヽ ヽ
ヽ ヽ＿}
／ ヽ ヽ ト__
〈 ＼ ￣ / l
＼ ＼/ l
=ﾆ;:;:;:;:;:;:; ＼ /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
三;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼ 〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
‐=＝;:;:;:;:;:;:;:;: '´ ＼ ＼` ,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
ﾆ三;:;:;:;:;:;:;:' ＼ 〉 ' ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
＿ ≦三二＝＝─フ ￣￣二丶 ￣ __ ＿ ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
／ ／ '´ //三≠ ￣￣ ￣￣ 〈 ヽ／＼￣￣￣￣￣￣￣￣￣
ｉ 三── //三/ Ξ ＼ ヽ
| 二二二ﾐヽ| |三 ≠ r‐' ∧ l
| 三￣Ξ＝i| |三 ≡= ＼ { `ｰ'
乂 三三 ﾍﾍ乂 ヾ `ｰ'
＿ 三＝─- ﾍ人≧ ＿＿＿ ＿＿＿＿＿＿＿＿＼＼＿＿＿＿＿＿
三＝───≧─三二二ラ' ￣￣￣￣￣￣,:':;:;:;:;:;＼＼;:;:;:;:;:;≧￣￣￣
=三三三三;:;:;:;:;:;:'､ ,.,.;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＼;;:;:;:;:ニ─
ニ三;:;:;:;:;:;:;:;:;:` ,, ,,, ;:;:ﾞ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＼Ξ=‐
＝ﾆ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＼
三 ,:,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;:三二＼＼
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| 突然、巻き起こる砂煙の向こうから大型のケースレス弾が飛来。
| 少年が打ち払う。その間にアリカは崩落を免れた美術準備室に着地。
|
| 狙撃？ しかも爆発と土煙の中の少年を狙い撃ち？
| 不可能、あるいは偶然にしか思えない。
|
| だが、もう一発。
| 腰から生えた尻尾めいたケーブルで防ぐ少年。なにそれ、アリカは少年に感じた倍以上の恐怖に震えた。
|
| 人間業じゃない！
|
|
|
|
| もちろん違う。
|
| 体育館の屋根の上でライフルを構えた白いドレスの女。
| ペルソナだ。
|
| アトリーム亡命者にして十六夜咲夜の主人、マーガレット・バートンのペルソナ。
| 『マドラックス』。凄腕の傭兵として勝手に思考・行動する自動操縦独立型。
|
| 仲間たちを潜入させるために雨宮が選んだ同行者である。
|
| ……そのマドラックスは二発の狙撃の後、ライフルを投げ捨てて屋根からダイブ。
| 木を伝って中庭へ、そのまま渡り廊下を全力疾走、身を隠す。
|
| 直後に、体育館の屋根が超重量でひしゃげた。
| 周囲を睥睨するパンダから隠れ、息を殺すマドラックス。
|
| どれほどの凄腕でも、あのパンダは格が違う。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,ｘ=＝＝＝=､ ＿＿
〃 ,. -一'´ ｀＼
〃 ./ l ｀ヽ ヽr---‐､-､
{{. /./ / / ! | | '￣/ ﾉ /__
| l l | Ｎ＼ _,L. |./ ｀Y--〈 今気がついたんだけど。
| |ｰ|､-|＼| Ｘ´ ハ |{ 「 ,ゝ- ､ 機械なら逆に怖くないよね。
__厂八_Ｎｨﾃ抃、 ｨﾁ坏, ﾊ｀Y´ ＼
厂_/´:,r‐{ ﾍ. Vｔﾘ Vtﾘ| // :｀Y ＼
:/厂 / 厂:ヽﾑ:::::::: ' ::::::ノｨく ::廴 | ＼
ﾚ' ﾚ' | ヽ、 ｰ‐' ／ :| | ＼ | ＼
. /l￣／⌒＼￣! l￣ ≧ｰ-- '´ﾑ、ﾉ 厂__/￣｀ヽ :＼ / ヽ
ﾚ' |＼ ヽ ／{ ＼_／ }＼＿|/ ／jー-}＿__ 〈 ｉ
/| |: ＼ /7´ |＼,.ｲ ﾄ､／| ! ! ／ ／ ／ l ＼ |
ﾚ' / f ｆ 丶人ﾞｰ'人_ノ | |´ ｀７ | ＼. |
/| { ー― | | ∧ {__〈 〉__} ∧ l｜￣￣/ __/
ﾚ' ／＼___ | | 廴＼ V ／ _」 ! ! r一′ ＿＿,.ィ ´
/／ 厂 ｜! ｀'J _」L_ し'´ | | ￣}_,. -‐ ´
／ 〈 | | ｀l「 :| | /
/ ／⌒丶ﾊ.____ Y､ ＼ | | 丁
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 美術準備室の床を蹴る。衝撃で崩落。だがアリカはすでに空中にあった。
| まっすぐ行って右ストレートを金属の左腕が受ける。必殺の拳が容易く止まる。
|
|「自信なくすなぁ！」
|
| 言いながらも、アリカは口ほどにはがっかりしていない。
| 少年がアリカの拳を掴もうとした瞬間、アリカは空中を踏んだ。
|
| 音の壁を踏みしめ、土煙を吹き飛ばしながらアリカはダンスするみたいにステップ。
| 一瞬で少年の後ろに回り込んで延髄斬り、黒焦げの理科室に突っ込む少年、床を突き破り一階の茶室に。
|
| すぐに立ち直る少年、しかし、その殺気は正直過ぎる。
| アリカは体育館のパンダを警戒しながら自由落下からのかかと落とし。
|
| 空中のアリカを切り払うようなビーム。その直前に、かかとを落として空気を叩き落下を止める。
| 空を切るビーム、バク転から壁を蹴り砕きフライングクロスチョップ。
|
|「ぐぇっ」
|
| 直撃、よろめく少年。
| パンダに比べてなんとも御しやすい相手。周辺被害の大きさを除けば。
|
| 畳に倒れ込む少年、すぐにむっくり起き上がる。
| その口からとめどなく流れる唾液。フラフラと立ち上がる。人形のように。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿
´￣ ミ 、
/ ヽ
/ j」=-―― ７⌒ヾ ヽ Y⌒
⌒>' / ｒｪｪ=＝＝{{ ｨﾄ、! ﾄ､
/ {!__´...-――--≧彡 /! :. ＼
人´ ｀ ｀ミﾆｊ{ i
/ ﾑ ｒ‐ ､ ミｲ! |
/ ｊ ト ､ ｀￣ｊ{ ／ｊ |! | はにゃーん。
|! | }≧ｒーｧｭィ// |! i
/ i! ! 7｀ー≠⌒ヽ! j! 八
/ / ! ! / }!川 ヽ
.: / ﾊ ｊ!/ i i ﾘ {
ｊ / ハ!/ }! i八 |
川 / ＶＬ /! | ヽ} i!
/ ﾘ八 / {/)｢´ / | j! { i
/ } ﾊ / ヾ{ ｲ ﾄイ{､ ! ｛
/{! 人 ｀ヽ ｊ ﾏﾆリ ﾊ 川
/:_/｀ー＝-- 彡 }ﾆト､ ヽ{
/: /: : : : : : : : :ヾﾑ }ﾆ{ ﾘ
/: : : : : :_L: : : : : : ﾑ }ﾆ{´
/: : : : イ/⌒}ﾆヽ: : : ﾑ |ﾆﾑ
〈: : : : : :/ ﾆﾆ: : : : : ﾑｊﾆﾆミヽ.
｀T＝ｒ′ ﾆﾆ: : : : ィ／ヾ}〉｀ｿ
| | ﾆﾆ｀T イ
ﾆﾆ ﾆﾆ ﾄ､ ｣
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| 飛び退るアリカ、ギアが上がった！
| 飛びかかる少年の生身にしか見えない右手が装甲ごとアリカのふくらはぎの肉を削ぐ。
|
| 避け切れなかった！
| 少年の左腕がプロペラになる。周辺を切り刻みながら直進、あれに巻き込まれたらミックスジュースにされそうだ。
|
| 足の痛みに顔をしかめつつ、アリカはプロペラの中心部を殴りつける。
| だが、読まれていた。瞬間ドリルに変じた左腕、火花を散らして押し負ける拳。
|
| 下がる、追いすがる少年。狙撃のフォローはもう来ない。
| 読み間違えた。危機感を覚えるアリカ、こっちのも遥かに格上みたい。
|
| 下がる、もう壁だ。背中を向けたら即死だろう。
| 覚悟を決め、アリカは身構えた。襲い来る少年、そのタイミングで拳を振るう。
|
| 踏み込む、爆発的衝撃で畳が割れる。
| 抉られたふくらはぎから激しく出血、知ったことか。
|
| 震脚、右ストレート。腕の長さではアリカが勝る。
| だが目前でドリルになった左腕が猛烈な伸び。
|
| 胸を反らす、ドリルが胸部倉庫をガリガリと削って抉る。
| ほぼ同時にインパクト。少年の顔面に渾身の直撃、骨が砕けた感触。
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/ノ´ ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._:＞､ー｀┴￣'-ー‐ ^ー｀-r_- ､
,.ィ'´ ,. -‐ｧ'7:.:￣:｀ヽ:.;.:-‐:.:/__:⊥ -- 、 ｀ ｰ'r 、
lノ ,.／ /:..::.:ィ:.:￣:｀:.:.:.:.:.:.:.:._:.:.:.￣:ヽ￣ ｀ｰ､
/ﾉ {（ |:.:.ｨ:/:.:.l:l:..:.＼:_:.:.ｰ:､＿＜_￣ {j_
rｧ'´ ｀ ! !{:ﾊ:..:N｀ヽ､:.ヽ｀ヽ､ヽ}/ j_,ヽ
ｨ' ７´ r_{┴_ミ{ _, ｀ヽ!_-‐ヽ7
'′ ,／ﾍヽf7:ぅﾄ ｀ィ:ｫjゝﾊヽ
//-― ﾊ ￣ i ￣ /ｧ‐-l! …………おっぱい、
l! l ヽト ｃ ､ ／/ ヽ なくて良いこともあるもんだ。
| ヽﾄ｀ ー ７／ }
i l l ￣ / /
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| 装甲だけでなく、その下の制服、皮膚、肉、鎖骨の一部まで削り取られながらも勝利。
|
| 壁にめり込んだ少年。アリカは頬を伝う汗を拭おうとして、ヘルメットを思い出した。
| ベルトのワンタッチボタンで『教会』製の治癒の護符を使用。ふくらはぎと胸、頭の応急処置。
|
| ドリルに押し負けた時にへし折れた薬指が熱い。
| 今のストレートで完全にべきべきだ。
|
|「もう起きてこないでよ……」
|
| 無理っぽいと思いながらアリカは懇願。
| さらにギアが上がって来たら、もう手も足も出ないだろう。
|
|「ん……んァ」
|
| だが、願い虚しく頭を上げる少年。
| ボタボタ垂れる鼻血、班開きの口の中の歯……へし折れた歯が蠢いて形が整う。
|
| 左手と同じだ。アリカは直感した。
| この子は、全身の骨や歯があの変幻自在の金属なのだ。
|
|「あー、たいしゃ？」
|
| 言葉っぽいものを話しだした、殺気が霧散する。いや、アリカはステップして肩からドアを粉砕。
| 転がりながら距離を取る。
|
| 殺気の質が変わった。涙とおしっこが滲むのを我慢。
| 真冬の空気のように、広がっていて、でも確実に相手を滅ぼそうと狙っている。
|
| もう機械的じゃない！ 孤独と不安、勝ち目もない。逃げられない。
| 刹那とマリナは無事だろうか。せめて二人だけでも……。
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} : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
ヽ /⌒ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
} / ∨ : : : : :., ⌒ヽ : : : : : : : :/
） / γ v : : ／ l : : : : : : /
. く}ﾊr‐:..､ { 〃ｰ一' l : : : : : /
￣￣:二ﾆ =‐- { l「｀ヾﾍ l: : : : :/
:::::::::::::::::::::::::::::八ﾘ 弋 ﾄﾐ:､ { 〃 ｘ ─- ､l: :ハ/ そこまでだ
:::::::::::::::::::::::::::::::ハ|'⌒ﾞｰ｀´ >j {{r匕-tｧ_ﾁ￣ ﾚ/ /＿ ブリキ野郎！
::::::::::::::::::::::::::::/::::::l / / ｀ ｰ─一 /ｲノ|:::::::::::::ミ::...
:::::::::::::::::::::::::/f 7:::: / /斤::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::://j/::::∧ ゝ ' /::::::::::::|::::::::::::::::::::::
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| 銃声と怒声、同時に体が軽くなる。
| 守護の結界だ。防御の力だ。いつもの、蒼星石のそれとは少し違うけれど。
|
|「そこのアンタ、逃げていいぜ。ソイツぁ身内の不始末だ。あとは任せろ」
|「格好の付け過ぎだぞ、ジェリド」
|「言うがなカクリコン、冗談の一つも言わなきゃやってられんよ」
|
| 聞き慣れた声。アリカを誰だか理解はしていないけれど、なのにヒーローみたいに現れた。
| 戦闘用にチューンされた神父服、二丁拳銃、腰には刀。
|
| 並び立つ二人の男。滲む涙と同時に、不安と恐怖が流れて消えるのを実感。
| 拳を握る。まだやれる。
|
| 身構えながら、不意にアリカは気が付いた。
| あたし、この二人と肩を並べられる位にはなれてるかな？
|
|「おい！」
|「ありがと、でも、きっとコイツはあたしを見逃さない」
|
| 凄むジェリド、笑みが溢れる。とりあえず正体を明かさなきゃ。
|
|「援護お願い、前は任せて。ばっちゃの名にかけて、通さない」
|「お前……？」「了解だ」
|
| 驚くジェリドと、即座に対応するカクリコン。
| 二人が身構えると同時に、少年が跳んだ。
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☆ 次回予告！
あれ？ アリカの戦闘シーンだけで一話分になっちゃったの？
まだパンダルマンの正体も明らかになってないよ？？？
しかし、過ぎたことを悔やんでも仕方があるまい。
私は未来に生きる女！！
しかしその男は、作者とは違う意見のようだった。
次回、最終幕七十一話『痛くなければ』
果てに見るのは破滅か死か。
パンダ大佐見た目は愛らしい
やはりパンダは素晴らしいな
アリカ凛々しい
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＞彡 ....:: : : : : : : : : : ::.....
／ ＞一≦:: : : : : : : : : : : : : : : : : ...
／ イ＜￣ : :_:＞ー弋: : : : : : : : : : : : : : ..
（ 〆´ ._ イ::::: .::ヽ: : : : : : : : : : : : : : ..
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___彡 辷ミ/ ..:::::／_ イ:::::::::::::::::::j: : :.＞-､: : : : : : : :.
/ 从 ..::／ィてﾉ′::::::::::::::/: : /イ ﾊ: : : : : : : :.
ー─--イ / .::::::: ...::::::::::;ｲ.: : :| ㍉. 从: : : : : : :. 君の父君の理想は
ヽ､ ＿＿彡＜ ,,///⌒≧) ..::::::: ...::::::::::／/.: : :│イﾉ /: : : : : : : : : :. 私の理想でもある。
＿＿_彡 ,,ｨ//// 〉ｲr／::::::::::::......:::::::::::／:::/ : : : : ﾚ ´.ノ: : : : : : : : : : ::.
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| ギルバート・デュランダルは生前、『人々の役割』について考えていた。
|
| 言い方を変えるとそれは運命。
| 定められた存在価値。
|
| 人間、誰もが思い悩む『己が存在する理由』。
| そこに明確な答えを定めるのがデュランダルの理想だった。
|
| 彼はそれを、『未然形の共産主義』と呼んでいた。
| 人間による支配がもたらす未完成で歪な共産主義ではない。
|
| 神による支配。絶対に間違えない、完全な共産主義。
|
| それを行えるものこそ未然形の神＝弥勒菩薩＝主であるとした。
| この時点で、『結社』からも『教会』からも異端視されかねない。
|
| だが、デュランダルは親友であり盟友であるシロッコにはこの考えを伝えていた。
| シロッコは一つだけ否定した。
|
| 彼はセルンにおける研究で『神の存在証明』を済ましていた。完璧なる主の存在は、少なくとも存在した。
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/＼＿＿_／ヽ
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| ,,ﾉ(､_, )ヽ､,, .::::|
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＼ ｀ﾆﾆ´ .:::::／ +
,,.....イ.ヽヽ、ﾆ__ ーーノﾞ-､.
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＞ ヽ. ハ | |｜
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| 今現在存在するかどうかは別問題として。
| 少なくとも、宇宙誕生時点では神は実在したのである。
|
| 故にシロッコとデュランダルは、『神の再来』を悲願とした。
| そしてデュランダルは『弥勒菩薩』への未練が捨てきれず、やらない夫へと希望を持ち。
|
| シロッコは神の再来が成らずとも、上に等しい、間違えない存在が居れば良いと考えた。
|
| それが機械。シロッコが求める機械神。
| からくり仕掛けの支配者だ。
|
| もちろんシロッコがそれを組み上げる。
| 神の父、最も偉大な存在として歴史に名を刻む。
|
| その第一歩として、シロッコはヒトと機械の融合を試していて。
| そしてこの少年、レイ・ザ・バレルこそが、彼こそが…………。
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__,. --- ､
／´/ ｀`丶､
, ' ＼
/ ヽ ヽヽ
! ! ∧ ﾄ､ ヽヽ ヽヾ:､
l ,ｲ/ ', | ヽ ヽヽ ヽ',｀ヽ
| !ト|!､ ヽ! ,.ゝ､ ', ', !',|
| !トｧr｀` ヽ'"ｨｩｧヽ ! ! | !l
l l l |l￣´ ｀￣´ﾘ ! } ﾄ | | !!
! ヽヾミ､ ! /ノ ｲ l ヽ ! !! （シロッコの理想と
〉 ヽヽ､ -_- テ／ ,! / ヽ ﾘ ギルの理想にはズレがあると思われる）
i ヽ!＼ ／}ヾ､´ / ヽ
| | ヾｰ ｀T´,ｲ ,!_ﾄ､イ´ ! ヾ:､
,. -‐ '´! ヽ､|!ニ=-_／ ｀Y / } } ﾄ､ド､
,. -‐'´ ,､ヽ __二´ノ }ｲ,.イ / ,ｲ/ !|
.rく ,. -‐ ' ´ ! ヾヾ=- ヽ /／_,.ィノ∠〃｀`ﾘ､
.! ヽ r'´ ,.! / ヽ / ´ '´ '´ ヽ / }
.', ヽ ／ ヽ / ヽ/ ＿ } /
. ヽ,.ｨ | ヽ! く ヾ! , ‐ ' ´ l 〃 !r‐!
| // ヽ ヽ | i _,. --､! / l ! |
ﾚ/ ト､ | | ! |'"´ ＿,,,....! / ／ ヽｿ
|´ r-､ヽ＼ | ! '"´ ヽ /／ ヽ
| __ヽ｀ヽ } ! | |' /
! 丶ニヽ ｀! ヽ ! __,. -‐ 'ドｰ‐--､! !
! ⊂ﾆﾆ｀,. ゝｧ―｀‐'"´ ! _r'＿__ |
| ,. ‐ '´ / {_,.イ´__ ＼＼ !
. ! / / ／ ', ', ｀丶､ /
! / / ／ _,,...ノ ', /
ヽ.＿_,,../ _/.. -=ニ_´ ',- ... ＿_/
'ーr '"´//ヽ､_ ! ｀フ''' ー―-ヽ
/ ヾ:､ ｀￣´ !
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| レイはそれを理解した上で、それでもシロッコに協力していた。
| デュランダルは髪の器となるデザインチャイルドを作っていて、レイはそれだった。
|
| 作られた子供。
| 生まれついての天才。
|
| 神に成る可能性。
| 故に、シロッコの愚昧さが透けて見えていた。
|
|（神は、神だ。ヒトとは一線を画する。悪魔とすら違う。『絶対なるもの』だ）
|
| そしてそれは、この混沌とした世界では存在していられない。
| 『絶対』が許される単純さは、恐竜より前に滅びて消えた。
|
| 神は存在したかもしれない。
| 今もどこかにあるかもしれない。
|
| だけれど、この世界には存在していられない。
| 間違えることができないものが、この矛盾と渾沌には耐えられるはずがない。
|
|（ああ、来い……四月よ）
|
| 父ギルバート・デュランダルが憂いた四月。心地よい長い眠りから目覚めよと呼ぶ声。
|
|（甘い夢に終焉をもたらし、現実の痛みを知らしめる存在よ）
|
| それはきっと、神ではない。
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（＿＿,,--― ´ ｀てヽ.|l|l|
ゝｰ´ィ⌒ヽ ,': ｀:ヽ 丶ヾ.l|
､ゝ, ､_i､_彡 { : : : , ' ｰ' ヽ : : : :ヽ ｀<|l|
ミｼ: ヽ_ゞ:;:;:;:;ｲ ｀ｰ ' ,-、 丶 __ノ 彡| （夢のようだな）
ヽ: : そ:;:;:;:;:;!,ィ_ ´ー｀ 、,,ィ-'ｲ､
､: : ｀ｰ;:;:;:;:;:;:;:;｀ﾞｰ､-､_ー-,,_ ィ''´;:;:;:;:;:;:;:;:'ィ
ヽ: : :ィ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;;ィｰ;:_;:;:;:;:;:ゞ
丶: : : : ｀ﾞー彡''-ーiｯ-ィ;/: : : : : :´-､_､-''
}｀ ﾄｰゞ､: : : : : _ -､´|
j i ´ヾ-'ー ´ ヽ|
/＿＿ i ＿_,, ＿',
ヾ,ｨ､＿_ｌ､ ￣￣,｀iー'―‐ i´￣ i＿ヽ
}: : :ヾ,, | ｀ー―' ｌ―,― ´l ＿」-'' ﾞｲ
j: : : : :´ィ_,￣￣ ´ i ￣￣ ゞ: : : : ',
/: : : : : : : : '-, ! ､-'': : : : : ヽ
/: : : : : : :_;_;_彡- ー=＝==－ -ミ,_: : : : : : : :',
j: : : ; - ´ ｀ - 、: : : ',
´´´~ ﾞ｀｀｀｀
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| 体育館の屋上をへこましながら歩きつつ、そのパンダは考える。
|
|（素敵な夢ではない、だが、悪夢でもない。
| ただただ現実感が薄い。何もかもが馬鹿馬鹿しい）
|
| どうしてこんな風になってしまったのか。
| そんなもの、己の失態が招いた自業自得だ。
|
|（足りないものが何なのかは、私にも分かる）
|
| それは痛みだ。
| 彼はすべての苦痛を失った。
|
| 体の傷にも、心の傷にも、まるで傍観者のように他人事でいられる。
| それはとても幸せなことのようで、だが同時にその幸せすら感じられなくなっていた。
|
|（あの少女ならば、ティムに思い出させてくれるだろうか）
|
| かつて息子のように愛していた。
| 今は赤の他人よりも遠い誰か。
|
| 考え、顔を上げる。
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,ｨｉ｢＜//＞ ミｔ､
／/＞￣￣￣ ＞＜ ＼ヽ
//／ 〉ミｔ､ ヽ
. /／ ＼ - ﾏ{ T℡ﾟ，
// ＼ イ ＿__ ﾏ } }} ﾟ，
{/ ゝ }从伐笏} :∨ⅱ
i { ﾟ. ／ 二_---′ i }¨¨7
. ﾏ ∨ 夊芳 ヽ 从/ }¨ ﾟ あなた、ナニかしら？
. { l l: ∨ゝ% , - /} /} ﾟ
/ ＼ ＼ ≧ ｲ}／/ }
|γ ‐=〈 ￣ 7----,ｨｉ｢ ヽﾏ { l ヽ ＼
. ／ ／ｌ/ ‐= 二ﾆzzzzゝ斗ｔ允孑ゝ ＼ r＜
‐=≦ :r ℡---〈: / /777ム斗匕孑＜≠≧o｡、ゝ--≪≧o｡
/ //777777ヽ / ゝゝ斗匕孑====ゝ／二二二ゝ≧o｡ ＜
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.----〈_lγ⌒ ヽヽ////}、 | |////////////∧ } ∨///////,'} ＼
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／,ｨi㌃¨¨ミ ／{{/ ‘ ゝl///////////////:/ ////////:/ ﾟ。
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. ゝ/ /////////ミｔ､ ﾑ斗777≧o｡、/////ノ ℡ZZZZ＞ ´ / ﾟ
. 〈 ＼//////////ヘ 〈777＼///////77777 {{////〈 / / }
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. ﾟ 。 ＼///// ＞,ｨi㌃<7 ------ ¨¨ ゝzzzzzz≧､ :/ } /
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. ／ ヽ {// } { / ＞'"´ ‐=≦¨ゝ‐=≦¨¨≦≧o｡ ＼ /
. ／ :／ ／ゝ/ { i＞'"´ ‐=ﾆ777////77777＞＜ ≧o｡、 ／
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／ ／ {/////////:／ ヽ}/////// ‐=//＼
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| 体育館のへりに、肉襞色の髪をなびかかせて女が立っていた。
|
| 胸元の開いた尼僧服。スキニーワンピースのように、体のラインを余さず伝える。
| 豊満な双丘、砂時計型の肉体。しなやかな筋肉。
|
| 桜色から薄紫、朱色の混じった不思議な色合いの頭髪が、風とは無関係にゆらゆら揺れる。
|
|「天使？」
|「そういう貴様は悪魔だな？」
|
| 女から発せられる過剰な色気、男も女も獣慾の虜になりかねない魔力の放射。
|
|「私は『核天使 リトルボーイ』」
|「最低な名前ね、まさかあっちで暴れてるのは『ファットマン』とか言うの？」
|「いかにも」
|
| 女が不快感に眉をひそめる。
| その嫌悪感に満ちた侮蔑の眼差しは、男をイケない気持ちにさせる類のものである。
|
|「……信じらんない、あなたを放ってはおけない」
|「悪魔としてか？」
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＞ ´ ｀ ＜ミ｀ ＜
,ィ´ .i i | ﾊ ＼＼ ヽ
／/ ﾄ. ,! /./__i !ヾヽ. ',
〃 / , |_'._ /ｲ_/___.| / ト } ,
/ ,: i i. ´|__ヽ. { ´_伝ﾘ》' i .}＞! ,
i ,{ i 《.炒＼! / /巡! i いいえ、この街を守る一人として。
ヽ! ヽﾄ､ .i ___ __彡.イ !音| i!
{ }八. ｀ ´ , / / ｀Y´ i!
V´￣ ＼､ ／ /／!. /.:|: '
i ヽi¨´＝==:!/ /! |. ∧ ,.ヘ
| }i==ミ:○/／ i |. ∧ _/ ,ｨ ｀ｰ､
! / !/ r--ミ=-.r--ｫ ∧ / i }/ ,: i
rｰ''´￣｀''ヽ ,' ﾉ!乂二ﾆﾆ彡イ｀ ＜. ∧ ゝ Y´ヾ／ {
||: :|: : : : : : :{//三三三三ﾆヽヽ.､ﾆ＼. ∧ ,| ゞイ
||: :!: : : : : : ;!三三三三三三i!} } }三ﾆ＼ ∧./| |｀ヽ
ヾ￣￣｀ヽﾊ三三三三三三,///三三ﾆi} / :| | .}､
/ ,′ ,/ﾆヽ三三三三三///三三ﾆ./,ノ | | ﾘ
/ , ,!三三≧===---::///三三彡' | | |
／ .,′ ,ﾆ,..-..､三三三ﾆ///フ=-≦.､ | | |
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／ /｀''ｰ--:/''ｰﾊ:_:_:_: : :{: : r''´:｀ｰ､: : : : : : : i: '., | i! !
/ / /｀￣ }: : : : : ｀: :{: : : : : ',_: : : : : : |: :ﾊ. !. | |
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| どれほど汚濁に汚れても、堕落したと後ろ指を指されても。
| この女は高潔だった。猥雑な淫らさを身に宿しているのにも関わらず。
|
|「ならば私も、貴様を放ってはおけんな」
|「天使として？」
|
| 儀式のように女は尋ねる。
| リトルボーイは頭を振る、その動作までが一連の流れだと言わんばかりに。
|
|「いいや、あそこで戦うティム・ローレンスの師として。彼と部下の仇を討つために」
|「……ティム・ローレンスッ？」
|
| 動揺する女、未だ晴れぬ土煙を一瞥。
| その一瞬で、リトルボーイは距離を詰めていた。
|
|「ジャジャマルから報告を受けているぞ、『堕ちた武僧』巡音ルカ」
|「ぐ、グリーンベレーの！？」
|
| 巨体の踏み込み、体育館の天井がすり鉢型に凹む、強烈な打撃をルカは防ぎきれずに直撃。
| いや、いつの間にか一帯に張られていた毛髪の結界がリトルボーイに絡みつき威力を減算。
|
| 内蔵が破裂して背骨がへし折れる程度で済む。悪魔人間でなければ致命傷。
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : / いかにも。
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ 私が人間だった時の名は
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ ウィリアム・ヤーボ。
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ', 貴様らに敗北した『野良犬』部隊の指揮官だ。
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
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´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
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| 毛髪が生き物のように絡みつき、コルセットのように胴体を固定。
| ルカは口から血の糸を流しながらも二丁拳銃で応戦。その血の赤さすら扇情的。
|
| 『教会』最強の殺し屋集団、『武僧』の『ガン＝カタ』。
| 一つ一つの動作が祈りと直結し、戦闘行動が礼拝となる。
|
| 徹底的に無駄を削ぎ落としたその戦闘術は、人知を超えた怪物との交戦を可能とする。
|
| しかし、聖別された銀の弾丸では天使を傷つけることは叶わない。
| 細められた眼に集中した弾丸は、リトルボーイを目前に不可視の力場で停止する。
|
| ルカは舌打ちしながら銃撃を停止、拳銃を刀に持ち替える暇はなし、効かない銃を握ったまま格闘戦へ。
|
| バールの先端のように尖った鈎爪による大ぶりの打撃、ルカは横回転しながらリトルボーイの懐に飛び込む。
| 途中で左の引き金を引く、発砲。打ち出されたエネルギーを回転力に余さず回しての肘打ち。
|
| 『ピストルカラテ』と呼ばれる『ガン＝カタ』の派生格闘術。リトルボーイの喉を狙う。
| だが、首周りの大量の脂肪が打撃を吸収、続く股間部分への膝も脂肪と獣毛の鎧に阻まれる。
|
| ベアハッグの態勢に持ち込もうとするリトルボーイ、ルカの髪が誘うように様に蠢きながら迎撃。
| 刃のように薄く硬質化した頭髪、自動車すら寸断する斬撃も、獣毛を散らすに留まる。
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r' / .::: :: :i ＼ヽ:::＼ '|>!.ヾX
l i ::i::.. l ::i::lヽ ヽ::ヽ:::i:.. ll:‐―
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l .:i: :l ::| ヽ ',ヽ :|::l／ ｀ _,,,..-:,:: | :::l | .l;;;;;
| .:l ::| ::l--- L_':, i ::l'l.| ,..z=- ''::´ヽ!:l .:::| l. |;;;;;
l :::| ::l :| ＼.ヽ ::| l./,'´ﾚ<)::!!:::::::i:! .::l , .| l;;;;;
| :::|l ::l l |=,＝＝ =z、,ヽ: :l | .'<,,... -‐'/ .::/ l :l .|;;;;
l i::l l '; ::';.', .ll.! ﾚ-,:ii:::::'; ｀ヽ',./ , , / .:/./!/!.ヽ;; 大きいだけじゃなくて
| .l | '; ':, ヽ':,.!ヾ.ヾ_... - ' /.ｲ/／/::::l丶- すっごく硬いのね……！
.l.||l iヽヽ. ヽヽ , , ! ‐'ﾞ /／ / ::::;'|::
| l | ＼＼丶ヽ _ .. ィ '/./ .:::/:l:::
l l .l ヽ::l丶 ::＞.. .._ ｀´ ,.ｨ'// .::::/::i:';::
| .|l. ! :::;|ヾニ==<二>｀ '' ‐- ィ´ /'/ .:::/::::|::ヽ:..
l ':,!:ヽ ::i'＞ '''''' ＜ r..ニ-/ニ, /ニ../ .::::/::l:::::l:::',丶
// |ヽ.,＼!ヽ ＞!::::::/´ｊ .i.l:::::／ .::::/,_,. -_,_'::;:::
/' .l ::/ ＞---<''´-‐/::::::人_ ノ':::/ .:::／/.／´ ｀ヽ、
／ /:::L../ .i'´ ｀>ニ三=-=>',..L.＝/ .::/:::/' __＼
／ ／:::::ヽ ヽ<＿ 二＝_ニ-‐―-/ .::/:/:/ r ﾆヽLr,. l
／ ／ ./:::::::::::::::::＞--_..＝ニ 'ヽ 丶-::i .:/::i:l:;' | l l.| _'-, l
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| 期待と悦びと媚が混ざりあったように聞こえるが、本人にそのつもりは無い。
| むしろ、毛髪の一部が高速で寄り合い拳（）を作って突き上げる。
|
| 無意味に卑猥な形をした打撃を顎に喰らい、リトルボーイはたたらを踏んだ。
| ルカはピストルを乱射、弾丸が尽きるまで加速して投げ捨てながらの後ろ回し蹴り、リトルボーイの目を狙う。
|
| 無論、毛皮が無いのだ、狙われるのは当り前。
| 受け止めるリトルボーイ。ルカの加速をそのまま利用して回転、体育館に叩きつける。
|
| 天井を貫通して、板張りの床も突き破るルカ。
| 木片と鉄骨に刺し貫かれながらもがく。
|
| そこに高空ダブルストンピング！ リトルボーイの巨体が飛びかかる。
| 毛髪の盾、花弁に似た菱形。いや、盾ではなく口のように開く。
|
| 食虫植物のように、縦に裂けた割れ目。蜜のような甘い芳香、糸を引く消化液。
| 回転する多層の牙が食らいつく、人間だったらあまりの刺激に一発昇天ミンチ肉だ。
|
|「グフフ」
|
| だがリトルボーイは笑った。純白の毛並みに血が飛び散る。
| 無傷ではない、そのことが嬉しいかのように。
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／ﾏ
／i:i:i', ﾏ
／i:i:i:i:i:i:iv ﾏ
, 'i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iV,ﾏ
~"''〜､、 , 'i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ﾊ .\
i:i:i:i:i:i:i:i:iﾐh､ /i_,LﾕﾆﾆﾕL,_i:i:i:ﾊ .\
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i_､‐''゛:::::::::::::::::::::::::::＞ ミ!
i:i:i:i:i:i:i:i:／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::｀丶、
i:i:i:i:i:i:,.':::::::::::::::::::l＼:::::::::::::::::::l、::::::::::::::::＼
i:i:i:i:i/::::::::::::~"''〜､、ﾏ:::::::::::::::!ヽ::,＞'"::::v:＼
i:i:i:i,'::::::::::!:::::::::::::| ,z=≧v::::::i!:i≦.,V::::::::::ﾑ ヾ:､
Xi:if::::::::::::!:::::::::::jf ん心ヾ:/ｊif 沁ヽv::::::::::ﾙ 高いからね、ルカ！
ﾐ_`!:::::::::::::V:::::::::lゝ弋沙' ､ ゞソ j\_,.ィ’
i:i:i:iい:::::::::::ゞ''＜ｌ , -- ､ ',i:i:iV
i:i:i:i:Vv:::::::::::ﾍi:>ム,,, /::::::::::::} ﾉ ''''" フ
＜i:i:i:i:＼:::::::く.r'"〜v.` ー ′, イ`T"￣V /ミs、
__ ~''≦{ ＞ミ;_V::::::ﾑｘ｀¨ T斥 ≦ﾏ::ﾊ:::::::::V / ﾆミ Y
＞〜-ゝ マ .V:::::::ﾑ `.く Y ',.)z''\::::::::! .(ゞ’ ./
γ ''＜f V .V::::::N ヽ.l ', \ l:::::::::l ﾉ. _/
_い ＼ヽ.V:::l i! ,.z=＜ l { .l:::ﾉ!i! x''r’ /
r ｱ /.7.x_ ﾑ!i:i}::ﾒ ,.イ:/~ ｰrヘ.x.} " .`ァｿ ! ./
ﾍ! .'.ﾙ ji:i:l/~i:i:i:i/,......,_ ヾ ＼ 〃 ｢l .l ./v
,' .r く ヾ_,ｨ、i:i:i:i:i:i:i:iゞ.!i:i:i:iヽ _ノ.) .l｣ .l / .!
..,' .! ヾ j Vi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i~i:/~ V .l′ l
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|「お代は生きて帰れたらね！」
|
| 地上で結界を張り待機していた霊夢。
| その卓越した治癒魔術で、ルカの外傷は消えていた。
|
| 巨大な球状の髪でリトルボーイを挟み込み捻じりあげる。
| 一見すると餅のように柔らかそうな双丘だが、実際は巨大なプレス機だ。
|
| 脱出するリトルボーイ、だが足に食いついた牙が咥え込んで離さない。
| ルカの髪が脚のような触手を伸ばし、リトルボーイの腰に絡みつく。
|
|「先っぽだけじゃなくて、もっと奥までちょうだいな！」
|
| 肉を食い破る牙。足先を食い千切ろうと万力みたいに締め上げながら鉛筆削りのように回転。
| より深みまで引きずり込もうとしごき上げる。
|
|「いいだろう、くれてやる売女め！」
|「霊夢！」
|
| リトルボーイの双眸が開かれ、どす黒い破滅の気配を撒き散らす。
| ルカの警告に霊夢が即時防御、同時に漆黒の雷撃が放たれる。
|
|「『テラー』」
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ヾ,i".;;;;;;;;;;;;; ;;＞''''''ｰﾆﾆ｀-“' / ,． , i .` ヽ ゝ ...ｌ . ゝ ﾞ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:
..---―;;;;./ ,.;;;;;;;;;;;;;;;;;.....;: ./ .,《 .l .,! .j : '､ .ｌ .′ ;;;;;;;'､ ﾞゝ-'ﾞ'-､iｨ==ﾆ∴
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｀''ｰ､.,,ﾞﾞ''―-'''";;;./ . ,i}ﾞ .|;:;! |;;;;;;;;; .ｌ ヽ;;;;..＼ ｀ｰ. ､;;;;;;_,､.. -ｰ'"
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.． ''=ｯr ... ./ ／,,_,ﾆﾄ ﾚﾞ l;;;;;;;;;;;;;; .ｌ ..ｌ.;:;. ...＿.｀''､. ｀''-､''''';;";'";″ 『ソード』！！
...;;;´ﾞ'″;;;;;~''ｰ.． .／ /.____,ﾞ;;'lﾞ " /.i_---ー.ﾞ ｌ｀ﾞ.='ﾞ´.‐ｰ_＼ .l:;:;;._,;．‐
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|「ぎゃっ！！？」
|「流石は悪魔、よく効く！」
|
| 神聖なる死の嵐。迸る闇の稲妻の斬撃。それが三発、いや四発。
| 光と闇が合わさり最強に見えるとか言っている暇はない。
|
| 防御が間に合ったにもかかわらず、霊夢はドアを突き破り外まで吹き飛び。
| ルカに至っては人形の消し炭になっていた。
|
|「…………グフフ」
|
| 大技の消耗か息の荒いリトルボーイ。
| 左足は膝から下が食い千切られ、右足は穴だらけだ。
|
| 地響きを立てて座り込み、その鉤爪で足を撫でる。
|
|「バケモノめ」
|「……どっち…………が……」
|
| 焼死体にしか見えないルカが、炭化した指で掴みかかる。
| だが、体の大半を消失していてバランスが取れない。
|
|「貴様にトドメを刺す前に、私と同じ痛みを味あわせてやろう」
|「…………？」
|
| 治癒の魔術で生まれたての赤ちゃんみたいなぷよぷよの足を生やしたリトルボーイ。
| ヨタヨタと立ち上がりルカを見下ろす。
|
|「あの少女を、博麗霊夢を先に殺す」
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ﾊ ／:;／:;／
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/:;´:;:／:;:／:;:;: -‐''"´ やめ……おねが……ッ。
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| リトルボーイは懇願するルカの腕を無慈悲に踏み割った。
| 無感情に見下ろし、背を向けてヨタヨタと歩く。
|
| 不思議と、焦るような感情がリトルボーイの中に浮かんでいた。
| さっきから、ルカと交戦中もずっとだ。
|
| 物足りない、悲しい、つまらない、虚しい。何か足りない、それが何なのか思い出せない。
| 足を切り落とされても痛みはない、なんとも感じない事が悲しくすらある。
|
| 感情的で表情豊かなルカが羨ましい。
| リトルボーイにはもう何もないのに。
|
| …………だから。
|
| ルカに痛みを与えて、その痛みを観察すれば。
| 自分も痛みを思い出せるのではあるまいか？
|
| そんな風にふと脳裏をよぎる想像を。
| リトルボーイはすぐに忘れた。
|
| くだらない、何もかもどうでも良い。
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/ // ' ＞≦ -―
/ { { / ヽ ｀ ＜ ／/ /
/ ∨/― l ＜/ {
＼＼/ j ／/ {{ﾐ
{ ミ/ / /／, ＜￣}/ /
∨ﾐ / // ｨ j／ /
ﾏﾐ ='' f ￣／ j
../ ヽﾐ ¨¨ i 痛くなければ覚えないと。
.i ﾏi ,,,,, i 失うことで、ようやく……俺はっ。
i ヽ =-”ィ ヾ¨j ヽ i
i } ､ f ゝ-' .i
i マ´ l r
l ∧ ｀―' ヽ-､ ＿
l ＼ , ／
l ヽ f ￣
l i ｀ ､
l i ｀ ､ ノ
､ ヽ =--= ∨
ヽ .l lヽ
＼ j l }i
./ l i
イ l
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|「落ち着け藤木、まだアーダンも浩一も、他の連中も死んでない。
| それにさっきの話だが、正直信憑性が低いんじゃあないか？」
|
| 焦る源之助とは逆に、逆境になればなるほど落ち着きを見せる貞山青葉。
| 藤木たちは、ジョニィの死体を教室に残して移動していた。
|
| ペルソナを使えば重症者の運搬も不可能ではない。
|
|「なんだと？」
|「この学園を焦土化、あるいは目撃者を皆殺しにするとして、手段は？」
|
| 考え込む源之助。シロッコならやりかねない。だが、方法は限られる。
| 航空爆撃？ ガスか細菌兵器？ どうやっても目立つ、巻き添えも多かろう。隠蔽は不可能だ。
|
|「恐らく『敵』はガスか細菌テロを理由に学園を閉鎖している。
| 空気感染で致死性の細菌兵器だとか言いながら、バリケードの外から銃撃される可能性が高い」
|
|「では、早瀬たちを助けるには？」
|「まずは外で活動を始めたお友達に祈れ」
|
| ロビンは友人でもなんでもないが、源之助は黙っていた。
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l l!=ﾆ斗ﾘ ＿,..-=ﾆ三三ﾆ>
〉､ __ﾞｰ-‐_゛ ... -=≡三三三三三ニX彡
三三二ニニ二三三三三三三ニ／Ⅳ双
三三三二二三三三三三ニ＞´ ツ彡
三三三二ニ三三ニk夕ラ´ ` ゞミ
＝===＝-―i ' ´￣ﾞー‐'" .／
] i ﾐ ｀ ｰ--－ ´
. l l ゝ ／ そして、俺もペルソナを使った。
| | ゝ /
. i.l __ i
ﾞ､‐ ´ r i
､ ＿＿_＿ ,ィヽ ｌ
､ ` ― - =' ` l
､ ﾉ
､ ｨ´ ＿
｀、 _..::‐´_ -=ニ
ヽ、 , ィ ´ _ ＜三三三
￣￣! _ ＜三三三三三
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|「貴様の？」
|「ああ、有る事無い事適当な誰かに吹き込んで、物事を無茶苦茶にするしか能のない奴だ」
|
| ひどい言い草だが、実際混乱と虚報を撒き散らして人心を惑わし、扇動するだけの有害な自立型ペルソナだ。
| 学外でマスコミを呼んだりＳＭＳで拡散したり炎上したりしてくれる頼りになる奴だ。
|
|「あとはクロトワ先生を探そう。あの人は『法務官』持ちの上に魔術師だ。治癒魔術の使い手もいるかもしれない」
|
| そのクロトワが既に死んでいるなど、彼らは想像もしていない。
| とにかく助けを求めて目指す先は職員室だ。
|
| 途中で出会う覆面は、藤木が処理して行くつもりだ。
|
| ふと源之助は、中庭を歩く金髪の少年に気が付いた。
| あんなに目立つ男だが、この学内で見た覚えはない。
|
| 輝きと力強さを宿した瞳が源之助に向く。目があった瞬間、痺れるような感覚が全身に走った。
|
|「全員伏せろ！！」
|「撃ち方はじめ」
|
| 少年、レイ・ザ・バレルの指示に、三匹の犬型自走戦車に設置された機関銃が火を吹いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
会いたかった。会いたかった。
ずっとお前に。
激しい怒りに拳を握り。
その顔面に叩きつけ。
苦痛を与え、悲鳴をあげさせ。
謝罪の声を拒絶して。
尊厳を踏みにじり。
その上で。
お前に言いたいことがある。
次回最終幕七十二話『再開と逃亡』
果てに見るのは破滅か死か。
ティムがファットマンでヤーボがリトルボーイ
どう考えても逆だよシロッコ！ｗ
乙
髪の器……カツラの事か
>>748 また……髪の話してる
>>758 SMS？ SNSの誤字かな
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ゝ ,! || || : ::.! ゛ : : : :
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│: : ﾞ‐ .!!. .:||==========|| : :｀ﾞﾞﾞﾞ"''''''''ｿ''''''ﾞ‐''''"ﾞﾞ"
,i' : :|'i . .|| || : : |: ,､
ｰ-rトr= |-- ト-ｯ- .. ||==========||ﾞ :.......,,,,＿__.ｌ＿,l_＿＿,,,__
: : : ::|:i| ."′.|| || ｜ |.,.": .:lﾞ: .゛
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| 暗い地下道を、七人の男女が進む。
| 学園地下にある、元防空壕だか共同溝計画跡地だか、なんにせよ七不思議に数えられる地下ダンジョンである。
|
| 道を間違えると命が危ないとか何とか、行方不明が毎年出るとか何とか。
|
| 先頭は天竜のサーチライト、ジャギと背中のシグが並び、二列目にやる夫と白雪ひめ。
| 最後尾を球磨川禊と花京院典明か詰める。
|
| どんなダメージも『なかったこと』にできる球磨川は、ペルソナ使いきっての治癒能力者であり、同時に初見殺しのワイルドカード。
| 長射程で潜みながら行動できる花京院は、斥候にうってつけだ。
|
|「ねえねえ、入即さん。さっきの話なんだけど」
|「お？ あー、はじめまして。ごめんなさい。お名前聞いてもいいですかお？」
|
| 読者以上にペルソナ使いたちのメンバーと能力を把握できていないやる夫だ。
| ひめはやる夫とちょっと距離を取っている。やる夫には馴れたことだ。
|
| 潰れた顔、魚みたいな目玉、突き出した唇と無きに等しい鼻。
| 体毛は異様に薄く、ずんぐりむっくりで手足は短い、全身ぶよぶよ。女子から嫌われるのは日常である。
|
|「白雪です。ペルソナは広範囲のやる気を無くす」
|「ご丁寧にどうも。そんで、どの話ですかお？」
|「蒼星石さんへの話、アレ本気？」
|
| 嫌悪感、猜疑心、素直に感情を表に出す少女。アリカと同じ年頃。
| やる夫は溢れ出しそうな罪悪感を押し殺して、でき得る限りやらしく笑った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ⌒ ⌒ ＼ もちろんだお！
／ -=・=- -=・=- ＼
| （__人__） | 良かったら高良と別れたあと、
＼ |++++|」_ｷﾗｯ／ やる夫を慰めてくれねーかお？
`ー''´ l
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「…………サイテー」
|
| 嫌悪感丸出しで吐き捨てるように言うひめ。もう口を利いてはくれないだろう。
| なんてまともな感性だ。やる夫は安心した。
|
| しかしな、とやる夫は思う。
| 昔々誠に仕込まれた『女の子を転がす方法』を思いだす。
|
| 当時はやる夫が嫌悪感丸出しにしていた。
| 今では逆だ。自嘲の笑みが溢れる。
|
| しかし……その……やる夫は本気で困っていた。
| 誠は言っていた。
|
| 『木に比べてバカそうな女の子に使え。あるいは、すでにメロメロの相手にな』
|
| 誠死ね、いや今はどこにいるのだろう。生きているはずだ。
| とりあえず、会ったら一発殴らないと。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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__ ／二ﾆヽ }
} ＼__ ／二二二ﾆ,__L
} ｰ {二≧s｡ _ ／二二ニニニi }
L __{二ニニﾆ≧s｡jI斗‐=＝=‐- _二二|ーL
} _二二二ﾆアﾟ.::.::.::.::.::.::.:_ -‐ ､ ｀,ｰ '＜ }
} ｰ‐ﾆ二二ｱﾟ.::.::.::.::.::.: ´.::.::.::.::.::∨.::.::.::.::.`' ､
L __ -二/.::.::.::.::.::.／.::.::.::.::.::.::.::.::.:i}, .::.::.::.::.::.::.＼
､ ＼7.::.::.::.::.::,.::.::.::.::.::.::.::.::.::.,.::.::.:ﾟ, .::.::.::.::..::.::.::.`､
＼ ｰ .:i{.::.::.:: / .::.::.::.::.::.::.::.::./.::.::.::.:ﾟ,.::.::.::.::.`､.:.::.::.`,
ヽｉl l{.::.:: /.:,.::.::.::.::.:: ,.:.::./.::.::.::i.::.:}`､.::`, :.:.`,:.::.ﾟ,.::.,
i|l八.::.,ﾟ.:/.::.::.::.::.::/.:.::.'i.:ｉ.::i__|i.: } `,斗f七}.:.:.:}l.:i}
l|l.::.::ヾ.::ﾟ:.::.::.::.::./.:.::.::iTΓ|::｣Lﾉ }:｣｣ilＬ｝___}l´ うぐぐぐぐ
l|l.::.::.ｌi.:ｌ{.::.::.::. /ilL:.::.｣jI斗ャ 圻ﾘ }ニ∨
l|l.::.::.ｌi.:l「｀Ｙ⌒Y^ﾌ圻hﾉ狄 沙 ,ﾟニﾆi__ ぐぐ……ルカ……！
l|l.:i.::八{`ヾｰ‐‐' ｉ ~^^´ , {ｉﾆﾆﾉヽ｝
l|l.:l.::.::人「(}ニニ{ u 从´{__ノ
l|l.:l.::.::.::.::ソ^Y＾Yヽ, r つ , ＾ﾟVi´:.::.∨
l|l人.::.::.::.⌒l{i⌒⌒､ うぅs｡ イしﾞ il|:.::.::. ∨
. 八{「＼.::.::.:「{|.::.::.::.::.＼‐- _jﾌ爪]′)' il|.::.::.::.::}i
______ ≫' |八:.::.::.::.::.::.＼ /'ﾞ⌒ { ､ '<⌒ ､￣~"''＜
i ｀`'´､ ⌒i＼.::.::.::.::{「 {.. . . .人 ~"''＼ ”''＜
. ｌ| ＼ ⌒[＼ .::.{i {＼. . . .｣≧s｡.,_ ＼ ,___ ”''＜
. ｌ| ＼ i}丶｛ー'ﾞﾆﾆY~. .＼ニヽ{{≧s｡., ＼＼＼ `寸
ハ, ｌ| , i}ﾆ‐ ‐ﾆ|i. . . . .＼ﾆ∨ {{≧s｡ヽ ＼＼ ∨
. /二} ｌ|／ ∨ i} __小 . . . . . .＼}＼ ﾟ, ＼`, ￣_
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| 霊夢は素早く己を治癒した。しかし、体が痺れて思うように動かない。
|
| 痛みに耐え、うめきながら、霊夢は這いずった。
| 逃げるのではない、体育館へ。
|
| おそらく自分よりも重篤な、仲間を癒やすそのために。
|
|「うぐぐ……」
|「グフフ」
|
| 這いつくばる霊夢の巫女服の襟を、鈎爪が引っ掛けて持ち上げる。
| 軍服を着た巨大なパンダ。リトルボーイ。
|
|「パイナップルは好きか？ 私はチョコレートが好きだったはずだが、この姿になってからは体が受け付けなくてね」
|
| ポケットから取り出した、濃緑の鉄塊。
| 霊夢の霞む目でも、それがフルーツには見えなかった。どう見ても手榴弾である。
|
|「…………え？」
|「グフフ」
|
| 凄まじい力で、口に手榴弾をねじ込まれる。
| 何をされようとしているのか気付いて、霊夢は抵抗した。涙が出た、うまく体が動かない。
|
|（嘘！？ やだ！ ルカ！ ルカはどうしたの！？）
|
| 悲鳴も挙げられない、助けは来ない。
|
|（お願い、誰か、誰か！！ ルカを助けて……お願い！）
|
| その願いは叶わない。
|
|（助けて…………ジャギ）
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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⌒ヽ
__ ｖ´
´￣ ￣￣￣ 、
＼
＼
ー―――― ＿
ィﾆァ＝ー、 ヽ
＿＿＿＿＿ﾑﾆ/ ヽ ヽ
-――――-{ {／ ｊ}
ヽ ヽ /ｊ ',
―＝＝＝ァ= ≧＿ニﾆ彡 ﾊ ',
´￣￣￣￣￣｀ミｭ､ /ﾆ
｀ ミｭ､ /ﾆﾆ
ｒ ⌒ ヽ 川 ﾆ
フ／⌒~ ｨ{ | ﾆ
/ （ o ﾟ イﾆ ! ﾆ
( ノ ／ﾆﾆﾆ i ﾆ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 瓦礫と遮蔽を縦横無尽に駆け回る『武僧』二人。
| 黒を基調とした改造神父服、二丁拳銃。日本刀。
|
| 『武僧』のスタンダード装備、悪魔相手では心ともなく見える軽装。
| だが、まるで互いの場所が見えているかのようなコンビネーション。交互の攻撃、常に少年の死角から。
|
| 少年、この場にいる者たちは知らないがその名を核天使 ファットマン。
| その知性は失われたが技術と経験は残存、グリーンベレー直伝の戦争の申し子。
|
| それが翻弄されていた。
| アリカの超パワーやスピードでは対処しきれなかったのに、
| ジェリドとカクリコンは火力もスピードも劣りながらも圧倒していた。
|
|（…………すごい！）
|
| 正面に立ち、ファットマンとドッグファイトのアリカ。
| 嵐のような猛攻、左手の流動金属義手だけではない。
|
| 右手、足、頭突き、コードを束ねた尻尾など、全身を利用、フェイントや小技も織り交ぜるようになったファットマン。
| 対するアリカ、ボクサーみたいにステップを刻み撹乱。
|
| チーム線のやり口。アリカが前衛ですべての攻撃を集中させる。
| 必殺のパワーはすでに見せつけている、隙を見せないファットマン。
|
| だが、『武僧』二人がアリカへの警戒の陥穽を突いて攻撃。
| あるいは、アリカへの強打を逸らす、遅延させる、打たせない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ..:: ＼
./ ＼
〈 ⌒ヽ ＼
＼ } |
ハ ﾐ,､ Ｌ jI斗-ﾐ |
, ,,,ヾ Y :／ ', |
! ! ＞,_ﾉノ 、 !
＼ ｜{/{/ ＼ !
} | ′′ / _､+''"~￣ | , -､ 〈
＼!γ＾＼ ′イ莎ア | ,′ ! !
ヽ <莎 ! ｀ ￣｀ '' | | ).｜ |
', /! | | / } しかし……硬いな！
', └ - ''''!イ ハ
、 ィニ三ｱ 人,､,､ﾉ|
、 ー‐ ／＿＿__.|___
┌‐＼ ／/、、―――∧
ハ:::::: ＼＿＿／ ! !:､ ､:::[=*=*]::',
/ :}.!:::::::::::::::| ＿__| {::∧∨::::::::::::::∧
//:::}.!:::::γ⌒／////| |:::::::＼＼_,,.､丶´＼
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| ジェリドが愚痴るのも仕方ない。
| 見た目は半裸の少年だが、異様に高い魔力の障壁。
|
| そして左腕と同じ材質の強化骨格が、ファットマンの不死身めいたタフネスを実現させていた。
|
|「底も見えん」
|
| 体力も底なし。その上治癒魔法まで使い出した。
| つい先程、アリカのジャブで体勢を崩したファットマンの足にジェリドが火線を集中した。
|
| 足首をもぎ取り、ファットマンはよだれを垂らして受け身も取らずに無様に転倒。
| だがその直後、魔力を放出して足が生えた。
|
| 今ではもうどちらが再生した足なのか判別つかないほどである。
|
| それから、ジェリドとカクリコンは狙いを胴体に絞っている。
| 悪魔の内蔵状態は不明だが、破壊の難しい骨よりかはダメージになりやすいだろうという判断。
|
| しかし、蜂の巣になりながらもファットマンはどこ吹く風。
| 衝撃はあっても一切の痛痒もない様子だ。
|
|「んんあ！？」
|
| そのファットマンが、突如跳んだ。
| 崩壊した美術室を飛び越え、屋根の向こうへ。
|
| 逃げた？ 警戒を解かずに、しかし一区切りついて息を吐くアリカ。
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.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ'
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ |
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ ／ ∨ 丿 なんだったんだろう。
iタ }〈 l丶 { _／ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「知らずに戦ってたのかよ」
|「うん」
|
| 素直なアリカ、ジェリドは皮肉も言えずに黙り込んだ。
|
|「俺たちは『暴力教会』からの要請で来た。学内に高位悪魔出現、目撃者多数。
| 最近テロという名目で封鎖済み。内部を『洗浄』せよ、だ」
|
| 弾倉を排出し、ノールックで交換しながらカクリコン。
| アリカが見てきたものとは違う気がする。だが、アリカからのお願いにエダが応えてくれたのは確かだ。
|
|「ジョニィとオズって二人が、学内の敵を探すために普通の生徒も巻き込んでひどいことしてるって聞いたよ？」
|「誰にだ」「裏口にいた『十字軍』のひと」
|
| 彼がどうなったのか、ジェリドもカクリコンも想像に易い。
|
|「高位悪魔がいたのは事実だったな」
|「しかし、手応えがおかしかったぞ？」
|
|「そりゃあな、俺たちのやり方じゃあ野郎には効くまいよ」
|
| 不意に、高所から声。
| 警戒は続けていた、だがアリカは愚かジェリドもカクリコンもその存在に声をかけられるまで気が付いていなかった。
|
| いつからそこにいたのか、崩れた屋上の縁に立つ、神父服の男。
| 枯れ草色の髪と髭のせいで、中年か老人か判別つけ難い。
|
| 『銃剣』『天使の塵』『首切り判事』。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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､-≦_ー‐ -=ﾆ`ー､ヾ,ヽヽﾄ､ヾﾖヽ'i Y,r‐'‐ｲ
〉三_‐_´＿ `ミ､_ヽ`ミﾄ､ﾄ_ﾐ;;W_ヽi ﾘ∠'-三!,
彡ﾗ'_´-_‐' -‐三ミｰ_-ミﾐr' `"┴ミﾐﾐ≦
〃彡-_ ,-__ヽ≡_－ヾミ{_ ﾄ＼､!
ﾑ,∠／-,-',,.-, |彡_／~~≡＿ |ﾊ!ヾ'
}三三{ ／) ﾄ'､'､ `ｰ‐-'_､ , !
. f三三ﾑ !r'( ヽヽ､ ､ r-､ミヾi|!|,-|
f三シ´ } y'/ ＼｀ヽ,ヾ|!､ !ヽﾐﾘｿ|Z! ありゃ天使だ。
ﾉ彡ﾞ ヽｯ';:;;:､ ＼ ｀ヾ≧ｷ};=＝iﾘ クソが、シロッコめ。
:ﾞ /;:;:;;〃_,,､_ ｀ヽ{_ノ'-' !
ヽ, i /;:;:;=､´,=ﾄ､ﾞ_ ,.-､. i やっちまいやがった。
ヽヽ,i' i',彡;:;, ﾞﾄy_`,ｰ-..､ ﾄ､,.＿ 〉 誰かに異物を埋め込んで。
ヽヽ, ＼ﾚ: .:, ｀'ヽ'､'w,_ ｀ヽ､〉"
､ ヽヽ, ｀に;;::; ､ ｀ヽ_~)'r'´ 俺ができなかったことを
ヽ ヽヽ ヾrシ ヾ_-ｧ‐' やっちまったんだ。
ヽ ヽヽ ヾfｼﾉ, , 〃/
ヽ ヽ＼_,..-ヾｶｿﾉｿｼﾉ｀ヽ､
ヽ､_ソ／）､ ｀＼´ ｀ヽ
ヽミ_-' / ﾉ＼ ＼ |
ヽ ￣ ´ ＼ ＼.
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| 犬歯を剥き出しに、溢れる怒りを隠そうともせず。
| アレクサンド・アンデルセン。最強の『武僧』。
|
|「俺に気付いて逃げやがった」
|「なら安心だね」
|
| ホッとするアリカ、肩の力が抜ける。
| ヘルメットの内側が汗まみれだ。脱ごうと手を伸ばしたところでアンデルセンが静止。
|
|「動くな、殺すぞ」
|「え？」
|
| 瀑布のように叩きつけられる本物の殺意、アリカは身動きが取れなくなった。
| さっきのパンダとどっちが怖い？ うん、アンデルセンだ。間違いない。
|
|「ジェリド、カクリコン。交戦許可は出ていないぞ。なぜ銃を抜いた」
|「校舎を破壊して暴れてる奴がいたんで、現地協力者と取り押さえようとしたんですがね」
|
|「それで味方に銃を向けたのか？」
|「…………みかた？」
|
| 憮然と口をへの字に曲げるジェリド、頭を掻くカクリコン。
| アリカはようやく、アンデルセンの言っていた意味に気がついた。
|
|「あの子もパンダも、『教会』のヒトなの！？」
|「動くな、異教徒。俺は貴様と喋っていない。貴様と会話する理由もない。殺す理由ならいくらでもあるがな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ／ ' ´ `ｰ'´￣ ｀丶､､
{ , '／ ／ ＼ヽ､
ヽ // , ´ / ヽ ＼
lﾊ / /ﾊ | ｀丶 ', ヽ
|∧ ハ l ! ', |ヽ ヽ ゝヽ - ＿ﾊ ',
l!´ﾍ､ ヽ| ＼ l ＼'､ヽ l ─-- 1 ノ|ﾑ
| ,..㍉ ヾ､ 丶ﾞ, |! |´ |/
__{} { f.:cぃ､, _,,._､z=‐┼ト| l 彡ﾊ
, ' ´ ´! ､ﾞﾆ´ `''"ﾌf､tJ~ヽ ｊﾉ│ ! ／/:::〉
/ / ﾍz r ゞン ﾉ ｊﾉ /__ ノ|::/ アンデルセンさんは
/ { ､＿ z_｀ ー , ' /ニｿ:| ﾊ あいつらの味方をするの！！？
! ／ ﾑ | ハ ／ ／ﾊ／l:ﾉ {:::}
｀ / ヽ V ', ｰ '´-‐ ｱ､_／ |! ∧ ∨
／{ |＼ヽ } ,..イ /ハ }} |:::} |ヽ
／ .:: || ＼ｰ' ＿,.. ‐ ´‐'´／ 八 / ';/│:::〉
.. ‐ "´ .:::::::... || l__三ー ''_´ - ´ ／ _,ノ＼,､ﾄ､ヽ/
..::::::::::::::l.. || ::ヽ＼´ ／ ／ ＼ ハ
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|「黙れ、殺されたくなければ居ないもののようにしていろ。
| いいかジェリド、カクリコン。俺たちの目的は確認だ。
|
| シロッコの独断でこないだのビルみたいな事が無いように。
| 『教会』最強の殺し屋様御一行で、『何もない』ことを確認しに来た訳だ」
|
| アリカに視線を向けず、アンデルセンは続ける。
|
|「学内に結界は張った。悪魔はまだ見ていない。
| いいか貴様ら、シロッコの手下と共同で、俺たちは一刻も早く『何もない』ことを証明する」
|
| ここでようやく、アリカは気が付いた。
| そうか、いけないのだ。
|
| アリカはここにいてはいけない。
| 数日前に『十字軍』とケンカした『ガンダム』は、シロッコたちの口実になっちゃうのだ。
|
| だからアンデルセンは口を挟ませない。
| 徹底的に居ないもののように、気付かないフリをしてくれている。
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／'´￣ __｀ヽ __ ＿
〃 ／.:.:.:.::｀´.:.:.:.＼:.:｀ヽ―ｧ
|! /:/.:.l:.ヽ:.:＼:.:.:.:!:.:ヽ:.:.:.ヽ:ヽ
l /:l:{:.:.:l＼ﾄ､:.:.ヽ:.:|:.:.:.l:.-‐ハく
{:.ﾑト-` '⌒｀丶l､!:.:.:.|:.:/.:.:.:ﾄ､〉
ヽlr;=､ r;=､ ノ j:.:.:/.:.:.__:./!〈:〉、
l lj {j /／/.:/r､V ハ:〉
/! ' ､､ '´ 'l:.f l-'/ ∨〈〉
|/ヽ ＿ U ,ヽ!ｨく 〈:〉〈:〉
,r‐ｧ‐_-＼ﾞｰ' ／ ,ﾊ_ 〈:〉 〈:〉 あの、この学校は異能者のクラスがあるんだけど……。
//´/´／ﾉ__＞‐＜＿ ／ /:!ｰ―'-､':〉
〈 ' / /´: /: : | ／ヽ /: :| : : : : : ヽ、
ヽ ヽ :/-一!:::|::::::ヽ/＼: ! : : , -‐-､!
,.-‐i _,.⊥:|: ／::::l:::::::::!: : : :〉: ／ : : : : j
!ｰ-｀ﾆ´┐ l／＿::::|::::::__|: : /:r' : : : : : : /
|: : : : : : :l !ヽ￣ヾl_/,r‐'!: //: :／ : : : /
!: : : : : : L_!: :｀ﾄ､_|::::::, ┘'/／: : : : : /
l : : : : : : : |: : : !_ T´: : :／／´: : : /
j: : : : : : : : !-‐'l:ヽ｀|｀T/／ : : : : : /
/: : : : : : : : j : : |: :} l lﾉ' : : : : : : :/:!
ヽ: : : : : : : :/---': :! | /: :／: : : : :,'__|
＼: : : : ﾊ――‐' /／ : : : : : / !
｀ｰ'´ 〉 /': : : : : : : :/---ヽ
/`ー―/: : : : : : : :, ' : : : : : ヽ
/__: : : :/: : : : : ,r､, ': : : :,. -‐''´ヽ、
/ _｀／＿: : : / ,.ﾍ--‐'´ ,. -ｧy′
/‐／／メ､__｀`' /-､＿,. -''´: : ヽ'
, ――-く／ ／-┴‐'‐---=ﾆ､ヽ￣｀i¨ヽ
/ ｀/´ ヽ: :r'´: : :l
/ | ヽ Ll: : : :,ハ_
l l ヽ ヽ:/ : : !ﾄ､
l ', ', lﾊ: : :j:l: :ヽ
! ', | |: /: :ﾄ､i´
l ヽ | /:ﾊ : : : 〉
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|「いいかジェリド、カクリコン。俺たちは拷問狂いの『異端審問官』や
| クソッタレの『十字軍』じゃねえ。神罰代行者、神の敵の敵、『武僧』だ。
|
| 狙いは高位悪魔に絞れ。低位の悪魔は結界で排除できる。それ以外は無視だ。分かったな」
|
| アリカはそれ以上の言葉を必要としなかった。
| まずは隣のジェリドに抱きついて頭突きをし、続いてヘルメットを外してカクリコンにハグ、ほっぺにキスをした。
|
|「あのパンダと男の子から逃げ隠れするよ。アンデルセンさんありがとう！」
|「聞こえん聞こえん、ああ、最後にひとつ。もう交戦するな。あの天使どもは俺より強い」
|
| その言葉に、アリカたちは困惑した。
| 少なくともファットマンは、御しやすい相手だった。
|
|「アレが寝ていて助かったな」
|「寝てた……？」
|
| まあ、そんな雰囲気はたしかにあったが。
| アリカはパンダの方を思い出して恐怖に震えた。あっちも、やる気がなくてあの強さだった。
|
| 本気なら……この学校ごと更地にされていたかもしれない。
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──
; ／ ＼／／
/一ﾉ八､＿_ u ∨
!ぅ､ ぅ:、＼ ミ彡ﾐ
ﾉじﾘ ﾋｃﾘ lミ彡
{ ¨ z_ `U ,ミﾐ うぐぐ、し、死ぬ……。
; '､ ‘=' し /ﾐ 大天使の混沌・悪特攻技なんて直撃したら、
／ > ＿__／／ 食いしばりがなければ即死だったよ……。
′/ ｀ヽ.／
/ / ／
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| 一回や二回イッた程度ではまだまだご立派臨戦態勢。
| 魔王マーラは精力絶倫……もとい、恐ろしいまでにしぶとい。
|
| それでも、リトルボーイの電撃は致命的だった。
| 魔力が足りない、圧倒的に足りない。
|
| とりあえず、ルカの肉体の修復に全力を尽くす、黒焦げで穴だらけの改造尼僧服は仕方ない。
| マーラの本体である性器化した毛髪については後回し、まずは皮膚と粘膜を回復だ。
|
|「うう……もう、仕方ないよね？ 死ぬよりいいよね？
| 処女膜なんて後で何度でも再生してあげるから、許してねルカ……」
|
| 意識のないルカの体を操作し、這いずって逃げる。這いずるとパイズリは似ている。マーラは元気が出た。
|
|「うう、オチ○ンボ……オチ○ンボ欲しいのぉ……。
| 私のオマ○ンコ、もうぐちょぐちょなのよぉ。
|
| 体が熱いぃ、もう我慢できないの……
| 誰でもいいから、たくましいオチ○ンチンをぶちこんでェ……。
|
| 受け入れ準備万端の子宮に、種付けザーメ○ン注ぎこんでよぉ……」
|
| 行進歌の代わりに卑猥なおねだりを垂れ流しながら、マーラは進む。
| 実際、男が必要だった。若くて精力と魔力、そして強い意志の持ち主の方がより良い。
|
| そいつに襲いかかって、死なない程度にしぼりとる。
| 相手には普通のヒト相手ではもう満足できなくなるほどの快楽を与え。
|
| マーラは上質の魔力を膣内にどっぷり頂戴してツヤツヤになる。
| 正にWin-Win！
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/ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
} : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
ヽ /⌒ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : }
} / ∨ : : : : :., ⌒ヽ : : : : : : : :/
） / γ v : : ／ l : : : : : : /
. く}ﾊr‐:..､ { 〃ｰ一' l : : : : : / …………クソ。
￣￣:二ﾆ =‐- { l「｀ヾﾍ l: : : : :/
:::::::::::::::::::::::::::::八ﾘ 弋 ﾄﾐ:､ { 〃 ｘ ─- ､l: :ハ/
:::::::::::::::::::::::::::::::ハ|'⌒ﾞｰ｀´ >j {{r匕-tｧ_ﾁ￣ ﾚ/ /＿ 本当にいやがった。
::::::::::::::::::::::::::::/::::::l / / ｀ ｰ─一 /ｲノ|:::::::::::::ミ::... 高位悪魔だ。
:::::::::::::::::::::::::/f 7:::: / /斤::::|::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::://j/::::∧ ゝ ' /::::::::::::|:::::::::::::::::::::: どうかしてやがる。
:::::::::::::::::::/::レ::::::::::| ， ` ー＝= ｲ:::::::∧::l:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::ｌl:::::::::／ ヽ∧ ´｀ ／/:::::::::/0 }:l:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::|l:::／／::l |ｱ ゝ ＿_ イ.:.:/:::::::::〈0 /::l:::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::|ﾚ／::::::::ｌ |.:.:./.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.i.:./⌒V::::::::∨::/:::::::::::::::::::::::
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| 濃厚で性欲をそそる男性の臭いに顔を上げると、マーラを見下ろす改造神父服の若い男。
|
| そいつは苦しそうに歯噛みしながら、二丁拳銃を抜いて慎重に構えた。
| ヤバい。マーラは慄然とした。『武僧』だ。
|
|「まあ待って、お願い待って、えっちな事でも何でもするから殺さないで」
|「ルカ……いや。お前は、もうルカじゃあない」
|
| 決意に満ちた表情で引き金に指をかける男。
| しまった。なんだって？ こいつ巡音ルカの知り合いか！
|
| マーラは狼狽しながらぷっくり桜色から使い込んだどどめ色のマーブル脳細胞をフル回転。
|
|「に、肉便所にしてもいいから！ 一生！」
|「死ね」
|
| マーラの必死の叫びは男の決意を確実にした。
| 正確に眉間を狙う銃口。駄目だ。無理だ。
|
| どうしよう。
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| [＼／--| |ｰ{=|....../....|.... ＼...... ＼ 、
| [／----| |ｰ{=|.../.......|....... ＼...... ＼＼
／Ｖﾊ-----| |ｰ{=|/..........|........... .......... ｀:、
. ,:'..........Vﾊ二二| |ｰ{=|..........................i...... ........ ｀、
/........./...}ー┐| r┘｛=|..........................|...........j、..|ｉ... .. ,
.′.........../＼／￣￣￣|[..............l........ {ｉ........._}_....|ｉ...｜... ′
.′...../....'.......|l |[...............l.........{|:,ｘ:'":}＼..|ｉ.. | ..j..{
: ..../......i .....i|ｌ ／￣￣|[................l......ｨ{´}ハ/ _-)ﾊ.. |....|.{
i ..... ........|ｉ.....l|匚／｢冂｢{∧..............{＼..( _,.ｨ?て }.j|..,ﾊ{
|.......,:.......ｌ|.....l.....i...|_|」_]l_{/∧............', ヽ≪´弋ヒ, }(乂＿
:....,′......|.....l.....l .|／⌒`l../∧.､.......｀:、 ﾟ ヽヽヽ /
. Ｖ.............|:....| ...|..|,/⌒ヽ|......./V＼.......＼__ ′
. ｝ ...........|i:...| ...l..|] (⌒）lﾊ..i.............＼...く⌒ _ ｝ ありがとう、ジェリド。
. ,′..l.........|i...l ....'i|、 冖 .ノ|.|:...............{＾｀` ｰ '￢〉
/ ......j......i....|i..:........Vｰ―一|.|::...............:､ ｛ …………すきよ。
,:' ........j{......|i:....)､.｀､....ﾏ=ｧ―j.ﾊ::...............｀、 |
.../...../ﾊ......|i:::....)､.｀、..V厶、}.{｀､::..............〔` ,≧==―一'′
/...jv'^~＾^~´＾^＾~＼＼＼ ^'}.{､_:､::.............∨:::.{
'~´ ｀'ｰ-､＼ }.:、｀'}::..............｀､::｀:、
: . ＼＼｀:、}:.＼.............',､::`:、
: . . . . . . . . . . ＼:.ｰ＼＼＼.........', ~}::.:、
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|「！！？」（！！？）
|
| 男の銃口が揺れる、マーラも予想外の動きに狼狽する。
| 巡音ルカ、いつ目覚めた！？
|
| しかもそんな、殺してくれみたいなこと言っちゃダメでしょ！
| 殺されちゃう、殺されちゃう！
|
| 目の前の男は鋼の意志の持ち主だ。
| マーラが全力で放つ性的魅力ビームは完全に遮断されている。何コイツ、不能かよ！
|
| もうダメだ……マーラは絶望し、性的魅力ビームの照射もやめた。
| そして聖別された弾丸が、頭蓋骨を砕き、ルカの脳に寄生したマーラの本体を打ち砕く。
|
| 目を閉じて、その瞬間を今か今かと待ち続けたが…………一向にその時はやってこない。
|
| マーラが恐る恐る目を開けてみると、すでに男の姿はなかった。
| 代わりに、『教会』製の傷薬アンプルがそっと置かれていた。
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、ヽ, .、
､ .＼ ＼ ＼＼
. ＼ .＼ ヽ, ＼＼ ヽ
.＼ ﾞ‐ .＼ ` .＼ ヽ ヽ
＼ ＼ ` ヽ ｌ.ヽ
-、＼ ヽ ｌ.ヽ
＼. ＼ ＼ ｌ .ｌ
＼ .＼ ｀'､ ｌ .ｌ,
.＼ ＼ ｌ ｌ
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＼, ＼ ! ｌ,
｀'-、 ＼ ! !
｀-、 ﾞ'-、 ! .ｌ
＼, ｀'-､ │ !
＼、 ｀'‐..、 / |
｀'-、 ｀ﾞ'ｰ．＿_ ／ l
＼ !
｀'-､ │
｀'-､ ,!
｀'-..、 /
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| リトルボーイが巨大な鈎爪で、器用に手榴弾のピンを抜こうとした瞬間、どこからか飛来した手斧がその右手に突き刺さった。
|
| 取り落とされ、無様に転がる霊夢、それでも必死に手榴弾を吐き出す。
| 捕まった挙げ句に頭をふっ飛ばされて爆死なんて、そんなみっともない真似はしたくない。
|
|「ドーモ、パンダさん。『バックルームボウイ』です』
|
| 太極拳めいたゆっくりした動きで、右に左に揺れながら歩く黒子がエントリー。
| 聞いたことのない名前のニンジャだ、ロストスキルでもなさそう。
|
| 霊夢は霞む目で黒子を見つめた。
|
|「……寝てろ馬鹿、テメエは俺が守る」
|「…………うん」
|
| 知らない相手のはずなのに、びっくりするほど安心して意識を失う霊夢。
| リトルボーイはその頭を踏み潰そうとして、軸足にショットガンの一撃。
|
|「…………」
|
| よろめくリトルボーイ、滑るような奇妙な動きで接近する黒子。
| 交差する二者の腕。
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,､＿＿
ヾ､ヽ' ヽ i::::::::::::::/i
｀ヽ,,｀ヽ､、 .j::::::::::::::ii::i パイナップルは好きか？
＼ i:::::::::ﾞ‐-､＿＿ .i:::::::::::::i i:::i
i::::::::::::::::::::::::::::::::｀i:::::::::::::i i::ヽ､ ぁあ？
￣＼:::::ヽ:::::::::::::::i:::::::::::::i:::::::::::＼
｀ヽ::::ヽ::::::::i::::::::::::i::::::::::::::::ヽ
ヽ:::::::::i::::::::::::i:::::::::::i::::::ヽ
ヽ:::::ﾞ──''::::::::::ii::::::::ヽ
i::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::::ヽ
i｀‐-------/ i:::::::::::::i
iヽ､__:::::::::::::＿i i,,,-‐‐''´
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| 黒子が蹴り上げた手榴弾、空中でピンを抜きながら軌道変更。
| ゆるいカーブを描きながら顔面に衝突する手榴弾を、リトルボーイは呆然と見つめていた。
|
| こちらの攻撃は指二本で抑えられ、逆に指が突き刺さった手首あたりの様子がおかしい。
| 沸騰するかのようにボコボコと膨らみ、獣毛と脂肪の防御関係なく内側から爆発。
|
| 同時に顔面の手榴弾が炸裂。
| たたらを踏むリトルボーイ、霊夢を抱きかかえて距離を取る黒子。
|
| リトルボーイは骨の露出した右手首と黒子を交互に見た。
| 傷口が懸命に危険信号を発している。この攻撃は、この傷は危険だ！
|
|「ふむ、大使館でケンシロウが見せた技と同じだな。武器を使う北斗拳士、ジャギだな」
|「大使館てえ事はテメエ、ウィリアム・ヤーボだな？」
|「ほう……よく当てたな」
|
| シルエット以外、ヤーボ大佐時代との共通点は無きに等しい。
| だが黒子……ジャギは馬鹿にするように鼻を鳴らした。
|
|「テメエの頭はマヌケか？ 見た目は変わってもご丁寧にグリーンベレーをかふったまンまだぜ！」
|「…………？」
|
| リトルボーイは、今まで気がついていなかったかの様に頭にちょこんと乗ったベレー帽を摘んだ。
| そして不思議なものでも見るように観察し、再び頭に乗せる。
|
|「そうか……私は、まだグリーンベレーなのだな」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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☆ 次回予告！
因果の渦に、引き寄せ晴れるのように、学園に集まる戦士たち。
撹拌される力と心。
神に捧げられた男。
神をも超えた力を得た男。
それはつまり、己を失った男と。
力以外の何もない男でもある。
そうして何もかもが無慈悲に。
運命という波に飲まれて消える。
はずがあるか？
次回、最終幕七十三話『貴様の思い通りになると思うな」
果てに見るのは破滅か死か。
ルカさん、天性の男殺し
マーラさんはもうちょっと男心を研究して？
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| | | | | [○○高等学校]
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| ジョニィ・ジョースターの君臨はすでに過去。
| 学園内は『教会』の犬どもとペルソナ使い、そして第三勢力による乱戦の様相を見せていた。
|
| 地下通路に潜むやる夫と仲間たち。
| 広げた地図をシグと花京院が覗き込む。
|
|「ジャギの野郎、勝手しやがって」
|
| 頭から湯気を出して怒る天龍。
| ジャギはシグの報告を聞いた瞬間に飛び出してしまっていた。
|
| 『博麗霊夢と巡音ルカが体育館でへんなパンダとたたかってる、不利そう』
| シグの報告は簡潔だった。ジャギは即座に『野暮用だ』と言い残して飛び出して行った。
|
| 誰も止める暇もなく、いや、やる夫は止める暇があったが止めなかった。
| 仲間想いのあの男の事だ。自分が死んだ身の上だなんて頭から消えているのだろう。
|
|「夢宮さんはみつからないよ、特別教室棟に神父服のひとがいるね」
|「中庭に陣取った……その……」
|
| 口ごもる花京院。自分の目が信用できないのだ。あまりにも馬鹿げていて。
|
|「機関銃を背負ったロボット犬の部隊がいます」
|「超能力か脳波で操作してんだお……レヴリアス奪われたし、小型化したのかも」
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ゝ=======乂__ノ ^ Vﾄ=う/(__}ィi〔ﾊi:ｉ:ｉ:∨, {^∨ィi〔ﾊ=ミ
｀`〜､_/}⌒ ノ..斗≦∨i:i∨, 辷∨ ∧ ＼__
〈_＞ゝ宀{ﾆﾆ/ ∨､丶 〕iト. ,∨ ∧ }＼
√/ / ゝハ_..斗≦｀`〜､、√¨'Ⅵ⌒Ⅵ,ィi〔} /
フ冖__／⌒ ∨__}｀`〜､厂 ^∨ V,乂__〉 ∨ /
／{_／ / )〕iト..,__/ ,乂__ハ ∨ ∧,∨
. ／__／ , ィi〔__／ ∨ ∧ Ⅵ,∧_}
_／ ,／{ / /_/___ 〉 ∧ ^) ハ
,､丶`ﾏ／ ,､丶` ゝ‐=≦ ∨ ∧ {______}
／ )／ }_／ ∨/⌒ヽゝ=彡
. √＿√=ミ/ /{ r=ミｔ,
ゝ====≦' { | /,
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〕iト.{:.:.:.:.}_,}
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|「バンダはジャギに任せて……中庭の連中が邪魔だお」
|「『白雪のペルソナは機械相手じゃ役立たずだ』『花京院一人じゃ嫌がらせしかできないぜ』」
|
|「ちょっとクマー、変身すればわたしも強いんですけどー？」
|「相手を統率の取れた小隊だと考えると、単独で行っても危険だお」
|
| タカオや咲夜のように、異様な防御力場があるなら話は違うのだが。
|
|「俺も出れるぜ？」
|「きかいならまかせとけ」
|
| こうやって並ぶと、天龍とシグのなんと頼りになることか。
| 『カトルカール』戦を乗り越えて来て、サイボーグや機関銃の相手に経験のある天龍。
|
| そして同様に、対機械の腐食性毒ガスの工夫をつけているシグ。
| 遮蔽のある場所を見つけて、上手く攻めれば……。
|
|「連中、渡り廊下を攻撃し始めましたね。生徒が通り掛かったみたいだ」
|「好機だお」「『チャンスだぜ』」
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｜ / /`! ﾄ, ｌ !
. ! ｌ / ｌ ｌ ヽ ｜ !
! ｌ ｌｌ ｌ '､ ! ', ヽ ､ ｌ !
ｌ ｌ ｌ l ! ! ヽ '､ ヽ ', ､ ! ｌ ｌ ｌ
ｌ ! !｜ ｌ_!｜ '､ ', ＼ ｌ ヽ ｌ ｌ ｌ ｌ !
. ｌ ｌ !｜ !_! !＝- ､ ヽ ', ヾ ト, ｌ ! ｌ ｌ ｌ !
! ｌ ｌ｜ ! l!{_,.テミヾヽ ヽヽｒ＝彳ｒｌ ｌﾃｌｌ ｌ ｌ ｌｌ !
ｌ ｜ '､ヾヾ｀''＝＝'‐ ヽ'､ ‐ゞ=! ｌ=! ｌ ｌ ! ｌｌ｜ 撃ち方はじめッ。
ｊ ｜ ﾄ,ｌ'､'､ ｀ヽ ! ｌ ｌ ｌ ｌ ! ｌｌ｜
/ ', ｌ ヾヾ'､ .:::::::ｌ ､ ノ ﾉﾉ/ / ｌ ｌ ｌ ｌ
. / / ', ｌ! ﾄ, ヾ'､ :::::::' `＝ノ/ /ｲ ! / /!｜'､
ノ イ / ! ｌ ', `ｒ ､ ' ヾニ,ノヽ/ / / / ｌ ヽ
／ / ィ´ ｌ ｌ ヽ ト､｀ヽ､ -―＝―- ﾄｒ'´,.ｲ' / / / ｌ '､
// / / ｌ ', ｌ ヾ ｀ヽ､ヽ､ ― ,.-'"ト､ニ_ノ 〃/ ｌ ヽ
ｌーｌ /ｌ｜ ヾヽ ＼ TT` ｒｒ‐ｒ'´/T ｀ヽ､_,.∠'シ ｌ
. ｌ ! ヽ＼ ヽ ＼ ヽ､ ヾ ヽ,| | | / /ｨ ／
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| 天使のような容貌で、軍服のような白い衣装。
| 背徳的な美を漂わせる性別不詳の存在。
|
| 『ドラグーンシステム』のホスト、レイ『ザ・バレル』。
|
| レヴリアスを小型化、量産化した犬型自走戦車を展開。
| 校舎同士を繋げる渡り廊下を通ろうとした生徒を問答無用で攻撃。
|
| 相手は一般生徒だ。普通人の可能性もある。
| だけれど、この状況でウロつける精神の持ち主ならば、異能者あるいは覚醒直前に間違いない。
|
| 慌てて伏せる生徒たち。粉砕されるトタン屋根、突如現る巨大な石の塊。
| 石でできた巨大蛇、あるいは地虫。ファンタジーならばワームと呼べばいいかもしれない。
|
| 横倒しになり、生徒を守る形で遮蔽になる石蛇。誰かのペルソナ。
| 話には聞いていたが、こんな分類不能の怪物が存在するのか。レイは感嘆しながら脳波で指示。
|
|「シルバーバレット、装填！」
|
| 自走戦車に声を出して指示を出す。
| 本来は不要な行動、わざとだ。
|
|「てぇッ！」
|
| 自走戦車に二基ずつ装備されたミサイル発射筒、合計六門が火を吹いた。
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/ / /! | ヽ
/ // / ｌ ｌ ヽ '､
/ / / 〃/／ !｜ ｌ, ｌ !', !
ｌ ,ｨ ! ｌｨ＜_ ! ｌ ハ ! ｜ ｌヽ !
! （ｌ ! ｌ ｌ |ｒ=テミ､ ｌ ｌ/ ｌ ｌ ｌ ! ｌ ! |
ｌ ｌ ｌ ｌ l!ｌ ヾビ｀ヾヽ ｌ/ _,ｌ ｌ ｌ ｌ ｌ! ! ｌ
/ ｌ ｌ,!ｌ ﾊ! ｀ ′ｲﾃｌ ll ｌ｜/ｌ ll !ｌ
. / ｜ｌ ﾄヽ ', ::::::: ､ ｀ﾞｌ ll｜! / / .ﾘ
. ／／ ｜ ! ! ヾ'､ ﾘｊ! !// （…………来る）
／ / ｌ' ,! ｌヽ､ ____ -''´､ｲ/ /´
/ ,ィ ｌ ｌ ﾊ ! ヽ'ト-ヽ､ ､｀"´ｨ´､ﾉｨ´
ｌ { ヽ ヽ',ｌ '､ ', ヽ'、 ｒ､ ヽ､__,ｨ ´ !｜
. ｀`ヽヽ､ヾ',! ヽ'､ ヾ｀ ｒ ///､ ヽ ﾄ,'､
＼ ＼｀ヾヽ､ ヾヽ ヾﾞ //ハ ',ヽヽヾ',ヾ'､
＼ ＼ ｀ヾﾄ､ ﾄ,ヽ､ヾ-ｒｒ'｀ ヾ､ｒ､ヽヽヽ､
ヽ >､ `} ヽ ｀` !｀ヽ ヽ｀ ヾ､ｒ'､
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| 石蛇にミサイルが直撃する直前、飛び出す男が一人。
|
|「うむっ」
|
| 担いだサバイバルナイフの一振り、ミサイルを一基両断。
| 風になびく左袖、隻腕の男。藤木源之助。
|
| シロッコから聞いていた、『カトルカール』時代の戦闘データも読んでいた。
| コードネーム『フリント・アロー』。
|
| 鍛え抜いたサムライは、機械化歩兵よりも強いという証左。
| 当時シロッコの配下で、彼に勝るのはヤザン・ゲーブルだけだった。
|
| 故に危険視され、対策済だ。
|
|「ペルソナ」
|「なにッ」
|
| 疾駆する源之助、しかし中庭の地肌には触れず、呼び出した己のペルソナを足場に。
| 真正面から発射される機関銃の弾丸、身をひねって回避。
|
| 着地と同時に一匹を両断。
|
|「地雷を読んでいた！？」
|「足を奪うのは常道だ」
|
| だからといって、学校内に地雷原を作るなんて想像できる奴がいるのか？
| いる。常在戦場の男。戦場から帰れない男、藤木源之助には当然の気構え。
|
| 源之助を警戒し、設置していたはずの地雷が、逆に己を縛る檻になってしまった。
| レイは青ざめる、だが、まだだ。
|
| 源之助は、『カトルカール』の頃より弱い。
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／ ..:::::: ､｀ヽ、
／::: ..::::::;:'´ ,. , , . ＼ヽ＼
/::::::::..:::::::::;: .:/ /l! |!. ::. ヾ､､ヽ.
,'::::::::/:,::::::; .:/ /ﾚﾄ､,' l:.:::::. :. ヽ､､ '､
l::::::/:,'::::::;' .:/ ,'.// V＼l:;:::::. :;:. l l
,'::::/:::l::::::;' .:.:/ // / ﾃ￣n､ヽ!,:::.:l!;:. ', ﾘ
/／/⌒!::': .:::/'//:／ `ヽ､'J! ヽ|::::l l:::.. /,'
／/:::::l し､）:::::/ /〃 ｀ `l::!__l:::: //
/Wヽヽ.{ '､:/ ´ l'rn/|: /'
/ ﾚ::〉､_) ヾ､ l/ 藤木くん！
r'V | ,.r＝=､､ r'´ ' 上だ！
/ ＼｀ヽ､ /⌒ヽ::::ﾂ／
/ ＼ ｀ヽ､ l |://
/ ｀ヽ､ ヽ. ｀''ｰ-'〃
/ ＼＞､ r'´
＿,,r一'´ //´ ｀''ｰ-'
//
/ ＼
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| 軽機関銃をぶら下げた強行偵察ドローン。
| それとは別に、駐車場方面から轟音。大型戦車の発進。
|
| ナイフを構えるレイ、源之助は構えもしない。
| 尋常な立ち会いならば彼我の差は圧倒的、しかし、今は戦場だ。
|
|「榴弾用意！」
|「！！」
|
| 源之助の判断は早かった。
| 真っ直ぐにレイを目指して直進。
|
| 榴弾によって級友が全滅するのを防ぎたいならば、最速でレイの首を取るのが正しい。
|
| そう、ミサイルから生徒たちを庇った石蛇は、ダメージが大きく半壊状態。
| ここで榴弾が炸裂した場合、渡り廊下のトタン屋根を粉砕しながら生徒たちに降り注ぐ破片の雨からどうやって身を護る？
|
| 機関銃の掃射、回避しきれずに足の吹き飛ぶ源之助。
| 投擲されたナイフ、なんとか防ぐ、腕が痺れる。
|
| いつの間にか拾われていた石が、脇腹に突き刺さる。
| ただの投石が強化された肉体と魔力の壁を突き破り肋骨をへし折る、声が出ない。なんという威力。
|
|「逃げよ！！」
|
| 痛みに耐え、喘ぎながらもレイは笑った。
| 空中と地上の十字砲火が源之助を蜂の巣に変える、脳波で命令、榴弾発射！
|
| あのペルソナ使いどもを殲滅しろ！
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,.-''"￣￣ ｀'' ‐- ､
／ ｀丶､
/ ヽ
/ ',
. / , , ｌ
. { _,./ ｌ! ﾊ ｌ, ｜
! /´7 ,ﾊｌｒ‐ｆ! ! , !
', ヽｌ ! ゞ!ﾊ/ノﾘ
! ! 7 ! ,ゝ
ﾉ / ｌ ｌｌ -ｧ' …………？
,.' / 'ｌ ｌ｀､ ｊ
´ ! ｌ! ﾄ> Ｔ´
ヽ ﾍ {::! '､
_,,..ィ _, /｀`ヽ､ｌﾄ, !ｌ ､ゞ､
´-:::::､´'´:::::::::_,.＞ｌ ｌ ﾄｌ ヽ ｀ゝ
:::::::::::::＼:::::::::{ >!ﾘ::::!｀ヾ´
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::::::::::::::::::::::::':;:::ｌ ヽ:::::::::ヾ ',
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| 反応なし。
|
| 戦車の轟音も停止、何が起きた？
| レイは強行偵察ドローンを飛ばしながら、別の位置に待機させた戦車隊を発進させる。
|
| こちらは反応あり。
| 犬型三匹とレヴリアスに戦車砲を積んだようなカニ型一台。
|
| ドローンのカメラを通してレイが見たのは、壊滅した小隊。緑色の魔力弾によって、粉砕される飛行ドローン。
| 伏兵？ どこから来た？ いや、レイは焦る気持ちを抑えて走った。
|
| 藤木源之助を討ち取り、己の有用性を見せつけただけで十分だ。
| その背中に……親指の先程度の小石が突き刺さる。レイは転倒した、地雷原のない安全通路で助かった。
|
|「どこへ行く？」
|
| 傷一つ無い藤木源之助、本人も何が起きたか分からない顔。
| いや、レイよりも早く現状を把握した。
|
| 彼は『破滅願望者』の協力者だった。
| 『仲間』の能力くらい把握している。
|
|「『やっちまえ藤木』」
|
| 石蛇の損傷も消えている。学生服の男が一人、薄笑いを浮かべて上階廊下から見下ろしていた。
| ペルソナ使いの能力など知らぬ、だがレイにも分かった。
|
| コイツは危険だ！
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,ｲ洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲iﾊ
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j{洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲洲 ⌒
｢圭圭{ { ):::::::l｀¨¨ヾ¨¨´: : : : : : : :/}圭圭}｀ ― '"´
|圭圭｝ 乂::::::::i::::::::::::::`:..､_: : : : : : i {圭圭i}
_ _j圭圭{ ﾉ:｀ヽ:|:::::::::::::::::::./ : ￣｀ヽl〈圭圭i}
, " {圭ア´／.:::::::: /ヽ .:::::::::::/..: : : : : : :i ヾ圭i}｀ヽ
. / V彡i ー=≧s｡.＿,.:::::::.､__,,..｡s≦=一' V/L_ ｀ー ‐ '"´
┌ {Ξiｰ<¨ _丐i 〕｀ヽ:::::〈 ィ〔_丐i ¨>ｰ /ｼﾞﾊ }_
ﾉiハΞ' ,.:::::::￣ .:::::::〉:{:::::} ゝｰ‐ ￣‐‐.: ﾊ{ // ￣ ｀ヽ
/ ∨ハ! ヽ.:::::::::::::::〈 }:::::} 〉:::::: : : : :./ j{ j ﾉ/ } 球磨川、感謝する。
. ′ V ハ :.＼: : : : :Ⅵ:::::} ,′ : : : : : i ｲ ..У
. 乂 /ヽ_∧ .:.` ､: :└､_r┘ : : : : : : : /<ﾞ´｀` .
. { 、:.:.:.:.: : ､＿儿＿_; : : : : : / ヽ ヽ
乂 _ ﾉh､.:.:.:.: : ｰ￣ 一' : : : : :ｲ! ` ､ ﾉ
／ {ヽ}ﾄ､.:.:.:.:.｀¨¨ﾌ: : : ／ : !| ｰ "ヽ
＿|: : V/}h､. _＿ イ: : : : !|＿_ )
( ／xｉ∧: : V/∧ :::::::::: /ｉ : : : / /xi＼
／xiｘiｘ ∧: : V/∧:::::／:/: : : / /ixｉｘixi＼
,.ｨi{ｘｉｘｉｘiｘｉｘ ∧: : V/ :::::::: /: : : / /xixiｘｉｘｉｘ个s｡. _
_＿___,,.､｡s≦ｉ:i:i:ixｉｘiｘiｘiｘiｘi ∧: : ＼:::::::/: : : / /ixｉｘiｘiｘiｘiｘi∧i:i:i:i:i:≧s｡..._
i:i:i:i:ｉ:ｉ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ｉxｉｘiｘiｘiｘiｘiｘ∧: : : ｀¨´ : : / /xiｘiｘiｘiｘiｘiｘ/i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
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| だが源之助は未だ徒手空拳！
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| 犬型二匹に足止めをさせながら、レイは治癒の護符を使用。
| 背骨に食い込んだ小石が転がり出て、折れた骨は修復。
|
| 脇目も振らずに走る。
| こちらに向かわせた戦車隊との合流を……。
|
| 通常、戦車は上からの攻撃に弱いのはご存知だろうか？
| これは早い話が、敵の砲弾が直撃してもなんとかなるように設計された正面装甲に比べれば脆弱程度の意味である。
|
| 空から降ってきた女子高生に蹴破られるという意味ではない。
|
|「しまった。せっちゃん、マリナ先生！」
|
| 一踏みで自走戦車をスクラップにした女子高生は、随行の犬型による機銃掃射を身軽に避けつつ逃走。
| そのまま空気を踏んで、災害のようにどこかへ遁走。
|
| なんだこの学校は……レイは泣きそうになった。
|
|「ギル……！ ギル……助けてギル！」
|
| 泣き言を呟きながら、拳銃を抜いて背後に射撃。
| 恐るべき腕前、抜き打ちで背後の藤木を正確に射抜く。
|
| もちろん容易く回避、しながら源之助は裏拳で犬型戦車を粉砕破壊。
|
| 逃げ切れない！ そう思った瞬間に、屋上から飛んできた影がレイと源之助の間に着地。
|
|「はにゃ〜ん」
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／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
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|「グフフ、貴様とは相性が悪いな」
|
| ゆらゆらと揺れながら掌底と秘孔突きで攻撃するジャギ。
| その奇妙な歩法故か、リトルボーイの攻撃を紙一重で避けている。
|
| だが、すでに全身血塗れ、鋭い鈎爪はかするだけで軽々と肉を引き裂く。
| 対するリトルボーイは一見無傷。
|
| しかし、破壊されるたびに治療しているだけに過ぎない。
| リトルボーイの毛皮と脂肪はジャギと相性が悪い。
|
| 魔力を純粋なパワーに変換するアリカやヤザンのようなタイプや、
| 研ぎ澄ました技を操る源之助や『武僧』が相手ならば、リトルボーイは無敵に近い。
|
| しかし、相手の内部魔力を短絡させて爆破する北斗神拳は最悪だ。
|
| 自慢の脂肪も毛皮も、ダメージ源にしかならない。
|
|「そういえば、ヤザンが貴様を殺したと聞いていたが？」
|「あン？ ケンシロウを奇襲するために鍛えた《□狸寝入りⅢ》が無けりゃ即死だったぜ？」
|
| まだケンシロウと殺し合うつもりだった頃、死んだふりからの奇襲作戦のためにマスターした技である。
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（＿＿,,--― ´ ｀てヽ.|l|l|
ゝｰ´ィ⌒ヽ ,': ｀:ヽ 丶ヾ.l|
､ゝ, ､_i､_彡 { : : : , ' ｰ' ヽ : : : :ヽ ｀<|l| …………。
ミｼ: ヽ_ゞ:;:;:;:;ｲ ｀ｰ ' ,-、 丶 __ノ 彡|
ヽ: : そ:;:;:;:;:;!,ィ_ ´ー｀ 、,,ィ-'ｲ､
､: : ｀ｰ;:;:;:;:;:;:;:;｀ﾞｰ､-､_ー-,,_ ィ''´;:;:;:;:;:;:;:;:'ィ
ヽ: : :ィ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_;;ィｰ;:_;:;:;:;:;:ゞ
丶: : : : ｀ﾞー彡''-ーiｯ-ィ;/: : : : : :´-､_､-''
}｀ ﾄｰゞ､: : : : : _ -､´|
j i ´ヾ-'ー ´ ヽ|
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ヾ,ｨ､＿_ｌ､ ￣￣,｀iー'―‐ i´￣ i＿ヽ
}: : :ヾ,, | ｀ー―' ｌ―,― ´l ＿」-'' ﾞｲ
j: : : : :´ィ_,￣￣ ´ i ￣￣ ゞ: : : : ',
/: : : : : : : : '-, ! ､-'': : : : : ヽ
/: : : : : : :_;_;_彡- ー=＝==－ -ミ,_: : : : : : : :',
j: : : ; - ´ ｀ - 、: : : ',
´´´~ ﾞ｀｀｀｀
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| ヤザンがぬかるとは思えない。
| いや、内臓破裂でグチャグチャの、トレーラー事故みたいな死体をマンホールに投げ込んだと聞く。
|
| どれほどの死んだふりなのか。
| あるいはジャギがルカ同様に不死身の悪魔なのか、リトルボーイには判別付かない。
|
|「…………あ！ 俺を殺したのはシロッコの野郎だったって事か！」
|「知らなかったのか？」
|
| 憮然とするリトルボーイと、地団駄を踏むジャギ。
| 想定外の情報提供。
|
|「気配なく忍び寄っていきなりドカン（物理）だぜェ？ 危うく異世界転生すン所だった」
|
| 談笑しながらも、二人の間には殺戮の嵐が吹き荒れる。
| どちらの攻撃も常人が挟まれば致命的、即ミンチ間違い無しの攻防。
|
|「そういやテメエ、そのパンダはなんだ？ イメチェンか？」
|「天使化の過程で外皮を交換する必要があってな。機械よりも毛皮を選んだらこうなった」
|
|「シロッコの趣味かよ」
|「娘の趣味だな」
|
| ジャジャマル。アトリームで拾った孤児の少女。
| 自分とティムが天使に成って、彼女を独り遺してしまったことへの悔恨も、リトルボーイの中では薄い。
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’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ|
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ|
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ|
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ …………しかし、解せねェ。
｀7 V//} ∨////厶イ==ﾐ iニニニ| |∧
⌒i￣ ＿＿￣￣´ 》//∧ lヽﾆﾆﾆl| |/∧
ﾄ ∨ .//| ﾄ. {7∧ ∨///i| ∨＼ニゝ ＿＿ | ∧
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|/∧ }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l| ﾘ }////|∧三≧| ∧.=
| ∧ ､|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i| 三
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|「何がだ？」
|
| ジャギの右がリトルボーイの頬を掠める、爆発する顔面、黄色い脂肪と輝く骨格が露わになる。
| 同時に、その右腕を鈎爪がこそぐ、分厚い二の腕が熱せられた発泡スチロールみたいに容易く抉れ、血が迸った。
|
|「あンた、世界を滅ぼすほど世界に興味ねーよなァー？」
|「……？」
|
| 首をかしげるリトルボーイ、首というか、胴体ごとかしぐ。
|
|「私が世界を？ 馬鹿馬鹿しいな。私が欲しかったのは対等なる相手との闘争、鍛え上げた能力の発露。
| その為に世界を壊すと脅す可能性はあっても……私自身が世界を壊す理由がない」
|
| リトルボーイは気付いていない、自分がめったにないほど饒舌になっている事実に。
| リトルボーイは気付いていない、ヤーボ大佐だった頃の切望に、今も身を焦がしている事実に。
|
|「何故そんなことを？」
|「なンでもねェよ！」
|
| 血液による目潰し。古典的ながら有効な手段。
| 一歩下がるリトルボーイ、元々達人だった男、視界が悪くても隙はない。
|
|「グフフ」
|「その余裕もそこまでだぜ……俺の勝ちだ」
|「…………なんだと？」
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,.ｨ佳州州ｌｉⅥｌⅦ州Ⅶ州州l}ｌｉ､
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＿ ｨﾘ'州州!川.!州}lｉⅥ州}l}Ⅶ州ｉｌ}ｌ}l! li i,Ⅶ{li!
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/.州ｲ州l州Ⅶ州l、ヽ .ﾒ_`'__l}_l.Ⅶ州l州州|州i
,' 州lﾘ州Ⅶ}、Ⅵ{l|､.､_/ｲrZﾊ,ヾlｉ}ﾘ}州l州州州
. l|}!.|!Ⅷ}》}lﾊ.≧ｘ 行/ﾘ ﾘ}! l州l州州州 『なんだ？
. |l} .l} }ﾘ州}l,ﾉl 必 ゞ‐′ .lﾘ'lⅣⅦ､} } あのガキ、どっから来た？』
. l}! Ⅵﾊ}l}Ⅶ}弋ﾘ.} ﾘ' l! ∠メｲ{
'} ﾉ{ ⅣⅦ｀ ヽ 〃 /ｰイ州l}
', ` ヽlハ <⌒ヽ / ./: lⅦ､}!
＼ ! ＼ ヽ-'′ ｲ Ⅵ`-､
／￣`, ／ _ ｘ≪´ _ｨｚﾍ、
/ ー‐'-､}‐'ﾌｘ≪ ,ｘｚ≦////ハ、
| ､＿__.|.// .ｘ≦彡/////ｨ彡≦/＞､_
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| 校舎二階に伏せて、中庭の攻防を見守るやる夫と球磨川。
| 突然源之助の前に着地した少年に困惑、いや、やる夫はそいつに見覚えがあった。
|
| 記憶の彼方、闇の向こう、『死の夢』の向こう側。
|
|「『ファットマン』……！？」
|「『おいおい、マジかよ』『あのガリガリ君が？』」
|
| 肋が浮くほどやせ細った少年、目を覆うバイザー、腰には謎のケーブル、左手は金属義手。
| やる夫の知るファットマンには、三対の翼が生えていた。
|
| だが、狂人の足取りでよだれを垂れ流す顔は間違いない。
|
|「あれが『核天使 ファットマン』だお」
|「『…………』『やる夫さん、ファットマンって核なのかい？』」
|
| 薄笑いを、いや、引き攣った笑みを浮かべて球磨川、やる夫は頷いた。
|
|「リトルボーイとファットマンの二人がいるらしいお」
|「『本当に？』」
|
| 尋ねる球磨川の目は、黒々とした暗黒の洞穴。
| だが、そこにはありもしない疑念を差し込んで場を混乱させる意図は無い。
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x≦洲州洲州州州洲州州＞、
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ｲ州洲州州洲州ｲ| !W /ーｷｷ州ｲｷ州州洲州州ﾊ
洲州洲州州洲州 V ｷｷ州! ｷ州洲州洲州ﾊ
从州州州从州州' '、＿ 、 ｷ Y州州州州从
从洲州州州州 ＜ｲ::::::ﾃ>、 从从从从ハ
从从洲/⌒寸州 廴:::::/ ｀ 二, 从从从从リ
从州ｲゝ 寸|! i {:::::ﾊi /从ﾚ州/リ
州/| ＼ 寸 ,;| ヽｿ ｸ从/ 州 j! 『やる夫さん』
州ﾘ＞＿ 、 ｿ /从f /ﾚ' / 『アレの名前がマンハッタン計画から取られてるんなら』
从州| へ、 ヽー―、 不V ／ / 『もう一人』『もう一人居るかもしれないぜ』
从ﾚ' ::＼ ￣￣´ ﾑ
＿＿＿j ::::＼ ＿＿ ,x ´了
j ｀ー――=⊆＿＿｀´⊥ {
ト―――z＿＿ ヽ＝-ー 寸
/三三三三三三＞＝、 /＿＿_ |
_厂三三三三三三三三三 ｛＿＿ |
＜三三三三三三三三三三三 f＿＿ |
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|「マンハッタン計画？」
|「『太平洋戦争時の合衆国における原子爆弾開発計画さ』
| 『ヒロシマ・ナガサキの落とされた二発だけでなく、もう一発の爆弾があった』」
|
| 初耳である。というか、やる夫も含めて参謀グループは『リトルボーイとファットマン』の来歴くらいは知っていても、
| 詳細な知識がなかった。
| 有名な二発の原子爆弾、人類をはじめて核の脅威に晒した悪夢の名を持つ二柱の天使。
|
| その程度の認識だった。
|
|「『名もなき第三の天使』『もしくはパンプキンかトリニティ』
| 『東京に落とされるはずだった三発目を冠した天使がいるんじゃないかな』」
|
|「球磨川さん。有益な情報助かるお」
|「『ヤダなあやる夫さん』『禊ちゃんって呼んでよ』」
|
| 冗談はともかく、第三の核天使の存在はやる夫にも想像できた。
| やる夫が昔夢に見たファットマンは、絶望の衝動で己の心臓である核爆弾を起動しようとしていた。
|
| 衝動的破滅が、『哀しみのからくり人形楽団』などというグループ名を名乗るとは思えない。
|
| ならば、シロッコの近くにもう一人いるはずだ。
| 世界を滅ぼすほどの哀しみを胸に抱く何者かが。
|
| それは、例えば……力を求める飢えた魂。
| 人の限界を越えようと望むもの。
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＿ ∧ ,,-'／ .|| ヽ
＼／ | |｀''､ | | |
| ￣｀ | | | |
＜ﾆﾆ! (ﾆ＞ |｀'´ |
ヽ_─ ,,-´ |｀ .|
|_/ iヽ /| | | |
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///|ヽ＼ | |!二二二 | | ／. | | |
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ヽ'!_| ヽ / / | ｀'''''''''''´ |ヽ ヽ .| | |
（--） ヽ_|_,,,､､ .| .| .| | | | | |
＼ !j,,-‐jj | _ |_ ,----､_.|__ | | | | |
─'´｀'-＿|＜__| | |. ○ .| |＿＞|＿,,,‐´ ∠￣'''-､
＼ |｀'''''''''´| ／＼ヽﾑ--‐（/三| |
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_,,,-- ! ヽﾆﾆﾆﾆﾆ／ ||｀'''─,,,,,､''''''''' | | ﾉ |
=ﾆ,,,,,,,,,,,,j ＼｀ｰ-‐´ ／ !!,,,--‐‐ '''' |ﾆﾆ,,丿
ヽ,__ ｀|○|´ ,==、 / | |
／ ﾉ ｀ ´ !! ＼ |/
／,,,-´ ｀-┬─‐｀'' - ＿
￣ ／￣ヽ＼/｀─＿
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,- ||＿ ＼ ヽ／|
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｀ - || ￣'''''''─',,,,,,,,,,!＿!__ノ
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く川三三三≡ヽ彡ｼ
, - 彡=≡ 三彡彡彡｀ <
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／ﾉﾉl〈〈从川シシ彡彡彡彡シシl_ノ
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ﾐミﾞﾞﾞlﾞﾞ" / :::::::::=彡彡彡ｼ_ｼl ヽ､_
/:ﾐ ヽ、 l ::::::::::::::::::::::彡/r.ヽ|
! l ｀ !._ｚ‐'´;::::::::::::::〉/i : }|
ヽ....__ 、..,zｨ て刀´::::／::!! ）ｿ/ﾉ
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l ヽ‐ '´:l ::::.. ::::::::::::::::::y'´:::F 、
l '、 } ::::: :: :::::::::::::::::l::::::::∧ !
｀ ＼ ゝ-:'´ ::::::::::::;:::::::::/:::ヽ
＼ ←-..→ ::::::／:: ::!:::::::ヽ
＼｀´ .:／ :: :::::::::::::＼-､
ゝ-- イ:: : ::::::::::::::／ ＼
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|「ほげぇ〜〜」
|
| 次の瞬間、どこからか弾丸が飛来。
| ファットマンの左こめかみにヒット。完璧なヘッドショット、人間なら頭がトマトみたいに砕けて飛び散っていただろう。
|
| だがファットマンは、ぶん殴られた程度の衝撃、顔が右下を向く。
| ビーム発射、源之助とペルソナ使いを撫で斬りにして、
| やる夫と球磨川が潜む校舎を吹き飛ばすはずの火線は地面に吸い込まれた。
|
| マドラックスの余りにも的確なフォロー、球磨川が口笛を吹く。
| 爆発する地面、地雷が誘爆。すでに被害範囲の外にいるレイ、巻き込まれるファットマンと源之助。
|
| 表面を炙られながらも気にも留めないファットマン、同様に黒焦げの源之助が裏拳で顎を強打。
| メキリと、嫌な音を立てて粉砕される源之助の骨、球磨川が、火傷ごとなかったことに。
|
| 襲いかかるファットマン、有刺鉄線のように分割しながら伸びる左手。
| 複雑怪奇な動きをすり抜けて、鼻面に膝。脳天に肘。
|
| どちらもほぼ無意味、痩せぎすのファットマンをよろめかせる以上の効果はない。
|
| 飛び退り距離を取る源之助、急いで移動を始めたペルソナ使いたち。
| …………その時である。
|
| 校内放送が始まったのは。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | 校内で暴れてる連中。
（__人__） | ..／} この学校を封鎖している連中。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ そしてそれを指示した存在よ。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／ クソくらえ、オレはここだ。
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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| やる夫とジャギが頼まれたのは陽動。本命はやらない夫。
| 放送室をジャックしての校内放送。
|
|「どうせまたテロとかガスとか細菌兵器とか言ってるんだろ？ ワンパターンな連中だな。
| 封鎖してる合衆国軍の皆さん、利用されてるぞ。あんたたちが守るべき者を脅かす奴らに」
|「おなじ内容を英語で喋っている」
|
| やらない夫の言葉に続く女の声、完璧なイントネーションの英語。
|
|「紹介しよう、放送部じゃないけど放送機材と英語に詳しい現地協力者の青葉さんだ」
|「どもー」
|
| 貞山青葉のペルソナである。
| 彼の期待以上の無茶苦茶、いつの間にかやらない夫を手伝って動画を自分のチャンネルに生放送していた。
|
|「学内に潜伏していたのを見つけたのは良かったが、その後が最悪だな。
| つまり『オレの敵』は『合衆国軍を動員できる権力がある』ってことだろ？」
|「同じ内容を英語で喋っている」
| 放送を耳にして、レイが唖然となる。リトルボーイが憮然とする。
| ジェリドとカクリコンは口笛を吹き、アンデルセンが低く笑った。
|
| ここからはやらない夫の独壇場だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
ピラミッドは語らぬ。
全ては過去、沈黙のベールの下。
霧よりも深く、冷たい土の下、何もかもが曖昧。
歴史をつくるのが勝者であるなら、不要な事実は敗者と共に消えてゆくのみ。
稚拙な暴君による破滅的な悪政。
その果てにあった運命的な死。
もはやすべてが土の下。
勝者が利用する土台。
戦争のための口火、なし崩しの着火点。
になど、させるものか。
怒りに燃える怪物が吠える。
許すな！ 許すな！
より深い闇を持て、何もかもを曖昧にする怪物が。
次回、最終幕七十四話『鵺』
果てに見るのは破滅か死か。
良いお年を
よいお年を
やらない夫プレゼンツのゆく年くる年
あけましておめでとうございます
きゃー、ない夫さーん！！
あけましておめでとうございます。
今年は寅年。いえーい、年女！ 母娘で！
つまりこのスレももうすぐ１２年目。今年の目標は完結です。
三三ミｘ ヽ＼ ﾊ ', ', i i i i// .// ./ ./ .／￣￣
ニﾆニﾆﾐ ヽ＼＼ ﾊ ', ',.i i i // // ／／／／二ニー-
ﾆ三ﾆ三三ミx ＼＼ﾊ',.',i. i i// //／／／／三三三ﾐx
三 三,'´ir--､ ヽヽヽ ヽﾊ.',i i//i ／／／ ＞＜￣三 ニﾆ
二 ∨ iii＼ii＼ ＼ヽ ヽﾊ',i i／／ x≦彡≠アヾ､
ニ∨i} iii ＼ii＼ ヽヾ /}ﾊ／ .／ii／ /ii/ﾐｘ ヽ＼
ﾆ∨ ﾊ ヾ､ ｀≦＼___/}i/ﾊ ／ii／ /ii/ヽ ヽ ヽ ヽ
i∨ミx ミz 三三ﾆﾆﾆ≠ -=＝=くx====彡' {ﾊ ヽ ヽ ヽ＼
_{ ヽﾐzzzzzzzz彡 ﾐ _ ________ ,ﾐzzzzzz彡} ﾊ ヽ ﾊ ﾊ ヽ
∧ ／ ,ﾍ ゞ＝≠イ ￣￣ /_/＞､ ﾊ .ﾊ .i ﾊ
i ∧ / .／/ .＞､____________ｘ≦７ // ｀＞､ ハi ∧
三∧ /:::/／f ./| /| Y Y / // // ｀＞､ /
ニﾆ∧ { ::´:::::::ﾚ ﾚ':: |/|/:i/|// // ｀＞､
ﾊ }:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ // ∧
ﾊ Y´i/´i:::::::::::::::::::::::::/ // ∧
ﾊ ∨ }:::/i∧/´i/}/ // ∧
ヽ ゝｘ' /...} | .i_/ // ∧
｀ゝ二二ﾆ二ニ彡′ ∧
イメージＡＡ
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| ぬえ。
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| 猿のかんばせ、狸の神体、虎の四肢にて尾は蛇の妖怪。
| 深夜、トラツグミのようにヒョウヒョウと不気味に鳴き、不吉、凶兆として恐れられたとされる。
|
| 一説では雷獣とされ、暗雲を伴い闇夜に現れる。
| 千年以上も得体のしれぬ物怪と恐れられ、現代でも掴み所がなく得体のしれぬモノを表す語として使用されている。
|
| …………得体のしれない。
|
| そいつ自身は姿形がはっきりしていた。
| 性格も性質も見抜かれていた。
|
| であるのにも関わらず、一挙手一投足から目を離せない。
| 大渦か蟻地獄みたいな存在だ。
|
| そして何よりも、そいつの言葉は奇妙だった。幼く稚拙でなのに力強い。
| 心に訴えかける勢いがあり、ヒトを狂奔させる熱があった。
|
| そして、何もかもを有耶無耶に、闇夜に塗りつぶしてしまう。
| その放送が始まった瞬間、パプテマス・シロッコは敗北を悟った。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） | 校内で暴れてる連中。
（__人__） | ..／} この学校を封鎖している連中。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ そしてそれを指示した存在よ。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／ クソくらえ、オレはここだ。
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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| やらない夫の二度目の放送が生中継で全国中継されたのは、ひとえに貞山青葉のペルソナの仕業だった。
| ぶっつけ本番、編集もできない、台本もカンペもなし。
|
| シロッコが仕掛けていた高度な電波妨害は、この瞬間も裏で必死にダルが防いでいる。
| 他の電波はいまだ通じぬのに、おかげでこの放送だけは筒抜けだった。
|
|『どうせまたテロとかガスとか細菌兵器とか言ってるんだろ？ ワンパターンな連中だな。
| 封鎖してる合衆国軍の皆さん、利用されてるぞ。あんたたちが守るべき者を脅かす奴らに』
|『おなじ内容を英語で喋っている』
|
| 学園を封鎖している合衆国軍には二種類いた。
| なにも知らされずに配置された本物の合衆国軍と、そして『教会』関係者と。
|
| 前者はやらない夫の言葉に困惑を露わにした。
| 利用？ 馬鹿な、どこの誰に？
|
| 後者はそれどころか恐怖すら見せた。
| 茶番だ、茶番なのに、巻き込まれて舞台装置にされちまう！
|
|『学内に潜伏していたのを見つけたのは良かったが、その後が最悪だな。
| つまり『オレの敵』は『合衆国軍を動員できる権力がある』ってことだろ？』
|『同じ内容を英語で喋っている』
|
| やらない夫の『推測』。いもしないはずの『敵』の輪郭を描く。
| この恐ろしさは、それがひどくもっともらしく聞こえること。
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. ／ ＿_
__{_L _／´￣｀ヽ
／´:::: __:＞‐-､ _....〈＼へr ､
/::::／{´ ／´ ￣::::::::く＼＼＼＼
,:::::::::/´/:::::／::::／::::::::＼〉´} ヽ
. {//:::{ /:::::/::::::/:::::::::::}::::::{ / } 『不謹慎だが、面白いだろ。
／/:::::|':::::/|:::::::{:::::::/::/::::::::＼ /＼ 妄想か陰謀論でしかないはずの
. ､＿／:::::{::::::{:::://::::::::{::／‐-.|::::::::}::}ヽー ､ ＼ 『敵』が本当に動いてるんだぜ？
￣ /:::/::|:/::{::::::::::|ｨf示ﾐ､|:::::://_ }::}::::|＼ ＼
. /:::/|:|:|'::/|::::::::::::V少' ｀!:::/炒}〉::ｉ::}:{ ＼ ＼
{::::i ﾉ:!∧ｉ:::ヽヽ:ヽ /／〉｀¨//::∧ ＿＼ ＼ オレに『異端』のレッテルを貼るだけじゃなく、
{::::! /ヽ:::}ﾍ:::|::| ＼ r―‐ｯ ／:::{´￣/:::/{ ＼ ＼ これ以上の発言を許さないために。
. ヽ{ }ﾉ ヽ:::}:|＼ ヽ- ' ／:::::}＼ {::::{ { { }
}/リノ| ‐ ´'::ﾉ_ノ .{::::{＿ヽ _ヽ -‐ ´ それだけのために
／〈´ /:::::::::} ',:::＼// どんだけの人を傷付けるつもりだふざけんな』
/ﾏ ﾑ ┌-､/::::::::/ i / ￣|::┬'
ヽ ﾏ ﾑ´| /::::::::/ } |::::ﾍ （と、英語で通訳している）
〉_＼ﾑ! {::::::／ ／ |／´
|ﾆ|＼｀ｰ､|／_／ ',
|ﾆ| ￣{三}_ ｉ
‘， | ヽ＼ ゝ、
‘， | ヽ } / ｀ ‐...._
/! ! ├' ／ }::::}::｀::...
/ | |__,. -┘ ／ ./::::/::::::::::::｀ヽ
/ ｀ ────‐ ´ ／::／:::::::::::::::::::::::..
/ / ＼＿＿,. -::::::／:::::／:::::::::::::::::::::::.
/ / {＿__:::::-‐ ´::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::
__＿＿＿/ / /::｀::‐-､:::::::::::::: /:::::::::::::::::::::::::::::::::.
r┴─‐ ./ ／:::::::::::::::::｀ヽ:___:/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
ヾ二二二_ /´ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
/ ／ ｀ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::/:::; -――- _::::::::::::::::::ｉ
｀ ∧::::::::::::::::::::::::::::＜| ｀ヽ:::::::::::',
/ ｀ ､::::::::::::::::::::::::|. | /ヽ:::::::::ヽ
/ヽ ￣￣/￣ | ＿ /￣｀ｰ‐ ´
/ﾆﾆ｀ ‐---‐/ .|ﾆﾆﾆﾆﾆヽ､/
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ |二ﾆﾆﾆﾆﾆ'
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ .!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ'
,/ﾆ＼ﾆﾆﾆﾆ=' |ﾆﾆﾆﾆﾆ=
／ﾆﾆﾆﾆ｀￣／ |ﾆﾆﾆﾆﾆ｛
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ |ヽﾆﾆﾆ/ !
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ' |二‐-ﾆﾆ|
. /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ' |二二ﾆﾆ|
/ﾆﾆﾆﾆﾆ/ |ﾆﾆﾆﾆﾆ.|
. /ﾆﾆﾆﾆ=/ |二二ﾆﾆ|
/ﾆﾆﾆﾆ / |ﾆﾆﾆﾆﾆ|
/ﾆﾆﾆﾆ./ |ﾆﾆﾆﾆ=|
/ﾆﾆﾆﾆ/ |ﾆﾆﾆ==|
（絵面のむさくるしさを防ぐための青葉さん）
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| 激しい怒り、爆発的憤怒のその中に潜む警告。
| 『異端審問官』。
|
| 悪魔と異能の存在を覆い隠すために殺人と拷問を厭わない異常者ども。
| ここでこれ以上無茶をすると、貴様らも『異端審問官』の的になりかねないぞ？
|
| しかし、本当に恐ろしい。
| やらない夫の『敵』の存在……いや、存在しないことが。
|
| やらない夫の言うとおり、完膚無きまでの陰謀論と妄想の産物。
| 架空の敵、空想上の敵。であるはずなのに、誰よりもやらない夫がそれを知るはずなのに。
|
| 一片の狂気も偽りもなく、やらない夫は『敵』を信じ切っているかのように語るのだ。
|
|『だが、どれだけもっともらしくしても嘘は嘘だ。綻びが出るだろ』
|『英語の通訳』
|
| 自分に直撃する特大ブーメランを完全に無視。
| 致命的命中を気にせずやらない夫は平然と続ける。
|
|『みんな、思うだろ？ なんで警察も自衛隊も飛び越えて合衆国軍が動いてるんだ？
| ここはどこだ？ 日本だろう？ なのに何故だ。テロだから？
|
| 日本にだってテロ対策の部署があるだろ。科学兵器も細菌兵器も対策してるだろ？
| なのになぜ、合衆国軍が動いてるんだ？』
|『翻訳翻訳』
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿_ /j ィ
_,, --―´: : : ヽ _ -{ ´'＿
, - ´ ￣￣: : : ; - ー- ､: : : ｌ r'ヾ-,､ィ､_,, ィ: :´: : :jー‐'
／: : : : : : : : : : : / }ー'､'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:{: : : : : : /
/: : : : : : : : : : : : ; ゝ__ -ー- ' <:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｲ､: : : : /
{: : : : : : : : : , -‐´__ --―- ､ ｒ':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ: : ／
｀ｰ､: : ; - ´ ／: : : : : : : : : } ヾ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r'｀ヾ グフフ。嫌な所に気付く奴だな。
７ /: : : : : : : : : : : ﾉ 彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;〈 ヽ
, ィ７ 丶＿: : : :＿, -´ｒｲ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ ヽ
{ / ,-､ ￣ ､_ｒ'´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;､'ﾞ ',
､ ヽ_!/: : i ィ }｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r,-´ﾞ ',
ゞ､ヽ |!: : : ! ｀ヽー, _ﾉｰ｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_ミ __ -- ヾ
｀ー-､｀ー―--l: : : : l ｀イ'':;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ゝ _ ,, -- ´: : : : : :彡
ヽ: : : : :､丶__ノｒ''｀-'｀:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_､! _ ィ´: : : : : : : : : : : : : ;''
丶: : _ﾉ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_､ー ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : /
｀ >:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;r-ｰ' ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ;´
´ｿ＿;;:;:;:;:;:;:;:;_;-､{｀ , ィ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : :,､ﾞ
ヽ｀ﾞ｀ヾ ,, ィ´: : : : : : : : : : : : : : :ー-- __／
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|「だろ？」
|
| 互いに警戒を解かぬまま、しかし耳はやらない夫の放送に。
| ジャギとリトルボーイの戦いは終結していた。
|
| 少なくともリトルボーイは有能な将兵で、引きどころを心得ていた。
| 己の執着一つで、何もかもが台無しになりかねない事も理解していた。
|
| 故に、深追いはしない。
| もう少し時間をかければジャギを倒せる。そして霊夢とルカも殺せるだろう。
|
| だが、その執着は致命的になりかねない。故にリトルボーイは躊躇いなく撤退する。
| 己が、執着している事実に気が付かぬまま。
|
| ジャギはリトルボーイが撤退の気配を見せている事に安堵していた。
| 勝ち目は無かった、相性の問題で時間稼ぎができただけだ。
|
| ジリジリと後退し、なんだかのんびりとした寝顔の霊夢の前に、ポケットから出した封筒を放る。
| なけなしの十万円だ。
|
| ジャギもまたヴェールの下、鉄仮面のさらに下の表情が和らいでいる事実に気付いていない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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./////,'//., .＿＿ /////.v////,
,.:.‐:.¨|////∧//,: : : :⌒/////／ヽ///|
／: : : :_.l//// ,. ＼:i: : : : : ヽ/∠＼ 丶//!
/': : ／〈_:.'ー':/: :/: : : :}: :} : : : : ,＼: : ', ￣
/ {:./: : 〈_{: : : /: :.': : : :/}: :}ヽ: : : :},. -: : :＼
{ {:.{: : : :{ {、: ': : : !,. -‐‐‐ ､ ヽ. ｨ'}: : ',: : }⌒｀
{:.{､ : : ，',ヽ{: : : {: :/:ﾉｲ }ノ,ｨｆ㍉}: : }
ゞ=ィ: : ', ヽ}: : : '_ノｨｆ示｀ヽ 弋} ': :{'
}: ://: 'ノｲ: :、:.ゝ弋ｿ ' {: : :＼
ノィ':.{: : :ヽ{: :{＼: ＼ r､ , /: : ヽ⌒
ゝゝノ ＼〉､ ﾍ､: ≧ ゝ'‐‐ ´/〉: :}ヽ}
,. --≧‐｀ ≧‐ r‐ </ )ノ ﾉ 『つまり、合衆国軍と日本政府には
／: : : ／ ヽ/{二 } 圧力をかけられるが、
／: : : : / } .},ｒ /
／: : : : : / } l￣(つ＼ 自衛隊と警察には圧力を
´― - = / 〈／ ! ＿__〉 かけられないんじゃないのか？
/ / |',⌒ ',
/ |＼＿＿_}. ',
r'' ! : : : : : : | !', '
/´{ |ｰ―┬ ' } ゝ } しかも日本政府っつっても全体じゃない。
， イ' ヽｌ ｌ .'ヽ､ ___/ 高官に内通者が紛れ込んでるくらいだろ』
， ‘ / ' ｌ ／'
. γ ⌒ヾ , . -´.―― .-. . _ __' ｌ ´ / 『Exciteさん！ ありがとう！』
.ｲ }:::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀＼ ／´ { ｌヽ {
.ゝ = "::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ,／.! ,' ｀
／:/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::' / │ '
. /:::::{::::::::::::::::::::::::::::::_ -―‐- _::::::::}' / .! ，
'::::::::，::::::::::::::::::::::／ ＼ }./ .!＿＿!
{:::::::::::::,:::::::::::::::／ ヽ |￣ 〇 〉
r‐- _:､:::::／ 、.ﾍ＿＿／
' ヽｒ- ､ ∨ {
ヽ. ｀ヽ、 ∧ !
｀ヽ ＼ ∠ﾆﾍ , '.,
､ ﾉヽ､ _,. イ=ﾆﾆﾆﾍ } .}
寸=‐‐=ﾆﾆニ 寸ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ}ﾉ､}
寸ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ寸=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧
寸=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ寸==ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ∧
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| そんな事可能な人物は限られる。
| 少なくとも、大臣かそれに準ずる権力が必要になるだろう。
|
| 二回の大停電で下落方向にあった内閣支持率は、これでとどめを刺される。
| 来年に控えた合衆国大統領選も波乱の幕開け間違いなしだ。
|
|『この事から、『敵』は世界の有力者かその周辺に手を回しているが、
| 完璧ではなく、しかし同時にどこに潜んでいるかもわからないということになる。
|
| まるで冷戦のスパイゲームだな。エシュロンとか使ってるんじゃあないのか？
| だが、一枚岩で統率された組織でもない。
|
| だってそうだろう？ 山程情報をくれた間抜けがいるんだぜ？』
|『下品でブラックらジョークを交えての翻訳』
|
| シロッコが怒りに満ちた目を画面に向ける。近くのソファでケバブを齧っていたヤザンが目を細める。
| 激高して物に八つ当たりするとシロッコが見れそうなまたとない機会。
|
| なにしろ、名指しで間抜け呼ばわりされたのだ。やらない夫ごときに。
|
| ジョニィ・ジョースターの暴走の後始末と、新型三人の運用実験。
| そして戦端を開くという一石三鳥を狙っていたはずなのに。
|
| なし崩しの内戦を始めるはずが、何もかもがやらない夫の手の内で曖昧にされた。
| 彼のストーリーにさも当然の様な顔で組み込まれていた。まるでシロッコの行動を読んでいたかのように。
|
| それがいたく、シロッコのプライドを傷つけていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, '"~´ ｀`ヽ､｀`ヽ､
／ ＿＿＿＿_｝｝:::::::）
／ , '"´￣￣￣￣ ￣｀`ヽ、
/ ／ :::::::＼
{ ／ , --､ |::. .:::::::::::ヽ
／ ／ r屮⌒ヽ::::::::::}
/ ＿_.. -‐'´ 〃{{ |::::::::::j
/ /^Ｙ | - ､ u ! | u |::::::::/
/ 〈 Y1 || zｕ‐ミ､__j _,. -‐/:::::/ 備府やらない夫……。
/ / ヽ )| ﾘ ￣ {ゞ┴'/:::r'′
/ 〃 ﾄ| ト-!{ | u /::::| 得体のしれない奴だ。
| | {{ | ト1 i ' ‐' /::::::|
| | !! Vヽ ＼ -=＝' /:::::::{{
ヽ | !! ∧＼ ヽ､ ´ 〃:::::::::||
, --rメ77───一ゝ┴一1ﾊ ＼｀Y--`ー----' ト- ::::::|
／ 〈 ヽﾄ､ | l二二二フ /〉 ｀` ──---rrく^ｽ
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|「日本だと『ヌエ』とか言うらしいぜ」
|「気色の悪い音だな、よく似合っている」
|
| シロッコの怒りは収まっていた。
| だがヤザンはそんな上司を興味深く観察する。
|
| 怒りは収まったかもしれぬ。
| だが、別の感情の方はどうだろうか。
|
| 何を考えているのかも分からない、得体のしれぬ？
| ヤザンは笑いだしたくなった。
|
| シロッコよ、お前は他所でどんな陰口を叩かれているのかも知らんのか。
| 『教会』の中ではシロッコこそ得たいのしれない怪物だと囁かれているというのに。
|
| 幾多の怪物を生み出した父にして、曖昧模糊で掴み所のない怪物。
| テュポンと。
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_ ＼ _
⌒＼＿_) ＼＿)j-=､
-=ニ_ ヽ _ -=ニニ=-＜＿_jI斗 ' ⌒＼
／ _ｊ ¨ ¨￣￣ ＼ `マｋ､＿__ ､ ∨
/ _ ７´ i| ＼／⌒「≧x ＼ }!
. / ￣⌒ア | 厂 、 ､ 〈 V{ Ｙ
/ , | :|＼./ ＼_ ∧ ∨∧ {」 _) _,ﾉ
/ j| :| 「¨ -=ニ」_ ∨∧ 「￣ _,√
j{ 八 |／ ＼＿ ￣¨ ー―――――― ¨￣￣｀ヽ
.′ :ト､∨ ∧ ,.ｨｆ芋ミ､s｡、 ｜ 『集会は予定通りに行う。
{ :| ∨ 、＼ ﾊr'ハ 》| ≧=― r――======―― ﾉ 『敵』の襲撃があるかもしれない。
. 八 Vx芋ﾐ (`ー Vソ ﾉｲ /| _jI斗¨´ _, イ´
jｋ 圦 Vｿ ／ / { _jIア¨{ i{ _, イ´ でもまあ、オレはともかく一般人は、
⌒ーi ゞ- ＿_ ⌒7 ∧ ∨´ / i{ ＼, イ´ 自衛隊や警察が守ってくれるだろ？』
| }i｡ ﾏ ｜ j/斗 ､{: :〈 ＼__,／ 『を、通訳していまーす』
_ ノ| 〕s｡._ `ー‐ '_..イ: :/| ｜: :∨ _.ィ´
(_ ￣ニﾆ ／: :/ :| ｜: :｜ √/ _ 斗ｒ‐┬┬=ﾐ､
__〈 / : : / ﾉ .! : : ∨: / jI斗 ¨￣￣＼}
_j: : Ｖ/: : _/.／ | : : : | /／ 〉
＼: : { 厂／ ＼＿/ |
_j＼}／ / |
_／⌒}／ア ∧ / |
￣ ｱ{ _j ∨ / ｜
/ ７＼ 、 ∨､ |
. / { ｀ ＜_ ＼. ∨＼ |
＿＿_ア⌒f≧s｡.,__,/ /＼＿ ＼＼ ∨ ＼ .|
└――; :i| ￣¨¨≧=--∧ ￣¨¨⌒ ＼ ∨ 〉 |
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| やらない夫の牽制、虐殺への警戒。
| 警察と自衛隊の威信をかけろという圧力。
|
|『まさか合衆国軍が襲ってきたりはしやいよな？ この期におよんで」
|『フニャチンが、やれるもんならオレをファックしてみろ！ と英語で叫ぶ』
|
| 合衆国軍ではない、さらなる生贄を要求するやらない夫。
| これでは手出しが難しい。
|
| つまり、シロッコはやらない夫を殺すために戦争を始めるか、あるいは。
|
|『おっと、思ったより長いしちまったな。じゃあオレは次の潜伏場所に行く。
| オレ一人を殺すために空爆とか毒ガスはやめろよ？ バチが当たるぜ」
|『ファックミーイフユーキャン！ グッパイ！！』
|
| ノリノリでファックサイン。
| でも最後まで顔を見せない青葉。
|
| やらない夫も彼女がまさかペルソナとは知らず。
| 伸びをするやらない夫。
|
|「ドミネ・クォ・ヴァディス」
|
| カメラを下ろしながら、冗談めかして尋ねる青葉。
| やらない夫は苦笑して頭を振る。
|
|「オレは主でも救世主でも聖人でも殉教者でもない。どこにも行けない。ここではないどこかへなんて連れていけない。
| 少しでも善い行いを、わずかでも正しくあろうと、間違いに怯えながら手探りで進むだけさ」
|
| ドミネクォ・ヴァディス。ラテン語で『主よ、どこへ行かれるのですか』。
| やらない夫は笑って頭を振った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●） それはともかく地下だ。
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ 地下を通って学園を脱出する。
| ,.<))／´二⊃ その後は凍死しないように橋の下にでも潜むさ。
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉 それと、ありがとう。
''"::l:::::::/ __人〉 助かった。芝公園で会おう。
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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|「は〜い」
|
| 握手を交わし、やらない夫は放送室の天井を外して潜り込んだ。
| 笑って見送る青葉。
|
| 面白い人だ。誰が聖人でも救世主でもないだって？
| 傷だらけで輝いて、背負える限りの罪を背負って磔刑を受け入れる。
|
| やらない夫は彼のゴルゴダ、芝公園への道を進む。
|
|「…………あちゃー」
|
| やらない夫は気付いていた。だが青葉は知らずに尋ねた。
| 『ドミネ・クォ・ヴァディス』は、最後の晩餐で口にされる。
|
| すでにナザレのイエスは裏切りと磔の運命を受け入れていた。
|
| やらない夫は盲目の百人隊長に刺殺される。
| 民衆は彼を罵り、石を投げるだろう。
|
| それが、彼の運命。
|
|「音声入ったままだった」
|
| おでこを叩く青葉。彼女は少しも悪びれずに、今度こそ電源をオフにした。
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'三三>‐＜三三三三二ﾆ＞ ´
ゝ-‐i _ ノ〉! ￣ _,＜
､ ､ｰ ´ﾉ ＿ ... -=ﾆ>'川彡
＜二ニ＝ニ二三三三三ﾆ＞彡从ク
〈三三三三三三三三三 ＜ 彡从
` =ニ三二ﾆ=-‐ <之} ' ﾍ彡 くっくくっ！！
ヽヌ ! ! ｀ ｰ - ´ u ゞ やりやがった……！
i`´l ｌ _._ /
i ! ! - i. ＼ /:: | あのクソアマ、やり腐りやがった……っ！！
ヽ｀ｰ⌒ ゝ ｀ヽ i:: ,.'
_ ,'￣￣￣￣ ヽ /
＜/ i´￣￣￣ ' ∨＼ヘ .ノ ∧/
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| ちなみにあちらはペルソナこちらが本体。
| 本当は自らの手で騒乱を起こしたい願望バリバリの貞山青葉くんである。
|
| しかして、実はここの戦闘は続いていた。
| レイは逃走、代わりのファットマンと源之助の白兵戦。
|
| 圧倒的不利ながら、徒手空拳で挑む源之助。
| 対するファットマンは不規則に動く有刺鉄線の鞭を振り回し、コンクリートも鉄骨も引裂いていく破壊の嵐。
|
| 時々飛んでくるフォローの狙撃、命中はするがダメージはない。
| そして、意識がなく暴れるだけのファットマンには牽制も無意味。
|
| 嵐に巻き込まれまいと逃げ出そうとしたペルソナ使いたちのだったが、ファットマンのあまりの破壊力に身動きできなくなっていた。
|
|「はにゃーん」
|
| せめて刀の一本もあれば違ったろうか。いや、刀程度でファットマンの流体金属を突破できるはずがない。
| 生徒たちを巻き込まぬ方向に懸命に誘導しながら攻撃する源之助。
|
| 勝てるとは思っていない。
| しかし、球磨川の『なかったこと』にする能力がある限り、死ぬこともない。
|
| だがそこに、飛来する影が一つ。
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⌒ヽ
__ ｖ´
´￣ ￣￣￣ 、
＼
＼
ー―――― ＿
ィﾆァ＝ー、 ヽ
＿＿＿＿＿ﾑﾆ/ ヽ ヽ
-――――-{ {／ ｊ}
ヽ ヽ /ｊ ',
―＝＝＝ァ= ≧＿ニﾆ彡 ﾊ ',
´￣￣￣￣￣｀ミｭ､ /ﾆ た、たいしゃ〜〜。
｀ ミｭ､ /ﾆﾆ
ｒ ⌒ ヽ 川 ﾆ
フ／⌒~ ｨ{ | ﾆ
/ （ o ﾟ イﾆ ! ﾆ
( ノ ／ﾆﾆﾆ i ﾆ
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| 芝生はほじくり返され、形あったものは破壊し尽くされ、無事なものは何一つない中庭。
| そこに落ちてきたボールのような体型のパンダ。ファットマンの動きが止まる。
|
|「遊びは仕舞いだファットマン。久々の鼠狩りと行くぞ」
|
| 言いながら、何かを拾うリトルボーイ。
| 小石、爪の間に器用に挟んだそれを、校舎に向けて弾く。二発。
|
| 二階から覗いていたやる夫と球磨川の頭が吹き飛ぶ、振り向きざまの回し蹴り。
| その姿に唖然とした源之助の土手っ腹を一撃。内臓と背骨がぺしゃんこになりながら吹き飛ぶ。
|
| リトルボーイはつまらなさそうに、殺した三人を顧みもせず去った。
|
|「『何だあれ』」「リトルボーイだお」
|
| 即死すらなかったことにできる球磨川のペルソナ。
| おかげでやる夫も源之助も何とか生存。
|
|「よし、撤退するお。敵は陽動に乗った」
|「『青葉がいなかったらどうするつもりだったんだ？』」
|「狙撃手の本体の子が翻訳する予定だったお」
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''"´ニニニニニニニﾆニﾆニニﾆニﾆニニ/
ニニニニニニニニニニニﾆ_ニニニニﾆ/
ﾆニニニニニ_,.. - ''': ´￣ : : : : : : : : : : : ＼
ヽﾆニニ: '"´: : : !:. : : : : : : : i: : : : :｀ヽ : : : : ヽ
>'´: : : : : : : : .|: : l : : i: : : '; : : : : : : ヽ.: : : : ﾍ
, : : : : : : .!: : : :ﾊ : :!: : '; : : : ＼ : : : : : '; : : ヽ : !
|: : : : : : :ｉ: : :./.ハ:.ヽ: : ヽ : :___lヽ.: : : : !: :ｉ : :|!:.|
| : : : : : / : :/ _,.ヽ ﾄ、 .l＼: : ヽ ＼￣「: |: : l !:|
'; : ; : :./: : /￣ ヾ:.＼ヽ. > ｧ｜: l: :/ ﾘ やれやれだ。
Ｖ : :/: ;.ｲ ｀` ､＿,, 〉! ./;/
l:／イ: ､ヽ ゞ==" ￣ //ノ: :!:ヽ
. |∧: ' : :ﾍ.` i ,.ｲ ´: :|.｜:.:.＼
,.ﾍ : : : : ヽ、 ｰ - .／| |/!: :ﾊ |:.:.:.／
-､／. ヽ: : : :ｌ ｌ ＞ｔ- .,,＿,. イ:. ）! | / .ﾚ:／
ヽ､⌒l ＼: : | : . . ＞ｧｔ＜ヾヽ （ ﾄ'´:.:,.ｲ
＜´ﾍ.`ｰｔ ヽ:| ／／ //ﾄ､ヽ! | ）!.）.ｲ:. |
:.:.:じｒ.l :.ヽ ヾ ー'/ | | ー' .（ .ﾄ､:.:.:.: |
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|「勝って兜の尾を締めるでおじゃる」
|「勝ってないですよ」
|
| 状況終了。アリカ連絡成功。やる夫班、やらない夫班の撤退開始。
|
| 最低限の情報の書かれたオリガミメールを畳み、蒼星石は嘆息した。
| パプテマス・シロッコ。天才と呼ばれる男に一矢は報いることができただろうか。
|
| モーリアンビルでの苦い敗北、今回はリベンジマッチだ。
|
| やる夫とやらない夫を学園に侵入させ、やる夫班が陽動している間にやらない夫が放送。
| すべての状況を『やらない夫のせい』にまとめ上げて嘘の逃げ場所を提示。
|
| 想像以上に上手く行った。幸運だったとしか思えない。
|
|「本番は芝公園です」
|「そこも通過点でおじゃろう」
|
| 麻呂の憮然とした物言いに、蒼星石は微笑んだ。
|
|「なんでおじゃるか？」
|「いつもはチームの皆に釘を差すのは僕でしてね、そうやって引き締めてもらえると本当に心強いです」
|
|「持ち上げても貴様の両親の初デートの話くらいしか出ないでおじゃ！」
|「え？ なにそれ聞きたい」
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i三三ニﾆ'￣｀ﾞﾞ''''' ー- ､;:;:;:;:;:;:-一'" ﾐﾆ三i
i三三ﾆ三 ＿ ￣ r==､ 'ヾ､ミi
_,i三三ﾆ三ゞ ﾆ三ｼ i ゞ"´ !ﾐ;iヽ
i"ﾞヾ彡彡ｧ"´ i ﾉ __ ,,,...､_,,. iﾐ| |
{ {｀ヾ彡;ｼ′ , _ --‐- ､丿 ｨ''"ノ（oﾂヽ'' |ﾘﾉ
'､(､ヾ彡ﾘ ｨ'でo)'ヽ､ : ';:. 'ー-‐'"″ |ﾘ ……それはともかく
',ヽヾ､彡 ゝ｀ﾞﾞ'''''"´ﾂ .､ i::.｀ヽ､,,,,ノ |i| 入即とはどうするでおじゃる？
ヽ丶ヾﾘ, ｀ ､,,,,,,ノ .: i:::. ﾘi
ゝ､,ヾﾘ , .:: '､::. ﾘ
ヾi, /､ _ ,,' , /
ヾ, / ´｀｀ｰ''´ ､ ,' /
ヾ, ' : : ', , /､
ヽ､ , --‐‐一''ー─'''' ' /./::::ヽ.
i"i ヽ ,r' _,,,, ゝ--‐‐''´ｰ'" ﾉﾉ::::::::::ヽー-､
ﾉ, |', ヽ､ ｀ ; ; ; ; : : : ' ／::::::::::::::::::＼_｀ヽ.
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|「あれは、僕が欲しかった言葉だよ」
|「引き締めよと申したのは蒼星石でおじゃろう」
|
| 蒼星石は儚げに笑った。
| 一本取られた。亀の甲より年の功といった所か。
|
|「封印のせいか、別の影響か、やる夫は以前のやる夫じゃない。
| 目を見ればわかるよ、あの臆病者が何も怖がっていないんだ」
|
| 渦を巻く感情、後悔、哀切、苦悶、諦念。
|
|「あいつがどうなるのか、どういうつもりかは知らないけど。一瞬夢を見れた。だからこの話はおしまいさ。
| やる夫は高良さんの為に命を使う。その先なんてない」
|
|「死後は如何に？」
|「知らないよ、ケルトの地獄でも行くんじゃない？」
|
| 伊耶那美命が黄泉醜女の巫女である蒼星石だ。死後は黄泉兵として使役できる。
| だが、それを蒼星石は望まない。その先なんてない。
|
|「この話はおしまいでおじゃるか」
|「そうですよ」
|
| 砕けた口調もおしまい。師弟に戻り、心の扉も音を立てて錠が落ちた。
| 麻呂は『血族』であるが恋愛には寛大だ。
|
| 妻とは見合いであったが、結婚後に恋をした。蒼星石の両親の愛も見てきた。
|
|
| だから少しくらい、親友の娘の恋路を応援してもいいだろうか。
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トﾍﾄ ＼ ＼:.:ヽ ｀ ＼ ＼:.:.:|j::::!:.:.:.:
l ﾄｨﾍ￣ ｀ ＝､- ､ ＼:ヽ , z‐ﾃ￣ ヽ|ｲ::|:.:.:.:
ヽ´小 ＿.≧ヽ::＼ 丶＼ ／;∠-＿＿ j１:|.:.:.:/ ……ここにはだれもいないようだ。
. ＼ヽ. l{ 丁7::ﾃ.ミーヽ _ ィZイ,.イ::ｧ-ｲ ﾘ l::l.:.:/
ｰ､ 丶ヽ辷ソ ヽ /´ヽ:辷ノノ (ｱj:.:ﾊヽ
,ｨﾊ ￣￣ ￣￣ //／ !}
ィ ７´/ |. ヽ 〈| ｲイｰ- _ ﾘ
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| 破壊と血痕の残る生徒会室。死体は無く、刹那たちもいない。
| 諦めて踵を返すアリカ、ディオの死体が無いことに、彼女は疑問を抱けない。
|
| やらない夫の放送が終わり、アリカも撤退しなければならない。
| 刹那の無事は確認したかったが、そうもいかなさそう。
|
| 盗聴を警戒して電話を使えない。
| 誰かと合流しなければ、それとも、地下に向かったやらない夫を助けに行くべきか。
|
|「夢宮さん？」
|
| 物腰柔らかな声に振り向くと、メロンの筋みたいな人型が天井にはりついていた。
| 見覚えのあるペルソナ。味方だ。
|
|「ええと、花京院さん？」
|「はい、伝言です。『そのまま生徒に紛れて下校するお』」
|「はーい」
|
| ふと窓の外を見ると、見慣れた校舎の無惨に破壊された姿が目に映った。
| 何度も言われてきた、『戦争』や『焦土化』という言葉が不意に現実感を伴って去来し、アリカはブルリと震えた。
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☆ 次回予告！
やらない夫追跡のために派遣された『血族』の追手。
彼の無事を安堵しつつも、その命を狙うアンビバレンツ。
再開する少年と少年。
父と子。
師と弟子。
天使と悪魔。
いや、そこまで一話では無理じゃないか？
次回、最終幕七十五話『地下道の邂逅』
果てに見るのは破滅か死か。
青葉さんナイス放送事故でした
Google翻訳でないあたり、時代を感じる
>>807 狸の神体かぁ、拝んでおこう
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|「大丈夫ですよ、僕は一人じゃないんですから」
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| やらない夫の放送が始まると、『血族』本部には衝撃と安堵が走った。
| 昨晩の『第二の夢』で消滅したやらない夫、彼の生存が確認された。
|
| それどころか元気ハツラツに演説を打ち、『教会』を挑発し、人々を納得させる陰謀論で現実を塗り替えた。
| キオ・アスノが動いたのは、彼の放送が電波に乗った瞬間。
|
| 即座に行動を始めたが、他に動けるのは杏子班だけ。
| 『緊急事態対策班』は新宿駅の制圧中で、『グレン団』の主力も東京の各地に散っていた。
|
|「現地で巡音さんたちと合流しよう」
|「ンなヒマあるといいけどなぁ！」
|
| 移動用のボックス車、トランクの『バーサーカー』は起動時間の問題がある。
| ハンドルを握るヴァイジャヤ、その隣に横島。後部座席で文句を言いながら飴を齧る杏子の隣にキオが座る。
|
|「目的は？」
|「保護と説得で行きましょう」
|「いいゼ」
|
| キュウべぇの問に、端的に答えるキオ。
| やらない夫。世紀のテロリストと化した男。すべての罪をボロ布みたいに被せられたスケアクロウ。
|
| なのに、それすら利用して平穏を守ろうと奔走する男。
|
|「なあキオ」
|「龍田さんは元気ですよ、少し痩せましたが、一週間以内に復帰できそうな程です」
|
| できれば休んでいてほしいのですが、と。キオは寂しそうに微笑む。
| 尋ねた横島は安堵の吐息。
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′':::::::::/ヽ:::::::::＼ヘ､:::::::::::＼::::＼:::::::::::i::::::::::::::::!
|::::l:::::::::′ ＼:::::::ヽ, ＞=ﾆ＜｀ヽi:::::::::/::::::::::::::::!
V i:::::::ﾄ=ｰ ｭ, `'ｰ一` 仏.き 7 ,}:::::/i::::ｨ:::::::::::l
ヽ!:::::{ ,.rｪｫ, '弋少 ' /／ ﾚ'´｀ヽ,ﾍ{ しかし、翠星石さんは相変わらずです。
＼{ : 心ﾘ “¨ ′ .ｨヽ l::::ﾄ､
iゝ` ” , ノ ﾉ:::::::::ヽ, 僕の力不足なのですけれど、
i ヽ ｀ ィ’ ノ:::::::::::::::::ﾑ まるで心がどこにもに無いみたいで……。
. ､ー‐- . r=≦:::::::::::::::::::::::ﾘ
ヽ ￣ /{::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
〉､ i.,:::::::::::::::::::::::::ノ
i:::::＞ ､ _,. ,.｡ィ ∨ . ヘ∧／
ヽ,:::::::::::::￣ i ,. ≦ ∨ｭ,
∨ヽ r.イハ /ハ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦ﾊ j r’.ﾉ ∧ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦’ /／ ヽ,ィ ィ’ ∧／ ≧ｭ
ｨ仁 / / / ´ ﾑ
/j / / / ／ ',
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|「気に病む必要はないよキオ・アスノ。キミはよくやっている。
| 柴崎翠星石は身に余る神を身に降ろそうとした。その後遺症であるならば魔術的な治療と並行しなければならない」
|
|「それより、こないだみたいな『奇跡』が必要なんじゃねぇの？」
|「奇跡じゃない、愛だろ愛」
|
| 石田と龍田のことを茶化すヴァイジャヤ、乗る横島。
| 暗くなるキオにわざと明るく冗談めかしているのが見え見え。
|
|「そうかもしれませんね。ならばやっぱり、やらない夫さんは保護しないと」
|
| 真に受けるキオ。いや、最初からそのつもり。
| 目覚めぬ翠星石のために、やらない夫に呼びかけてもらいたいのだ。
|
|「蒼星石サンもいるといいな」
|「いたら一石二鳥だよ」
|
| 恋人と妹。あとは仲間がいれば完璧か。
| 複数の呼び声を超能力で直接脳に届ければあるいは。
|
|「…………」
|
| 楽観的に話す少年少女に、だがキュウべぇは沈黙する。
| 否定的要素はいくらでも並べ立てられる。だが口を噤む事で希望を見せられるならば。
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__,. --- ､
／´/ ｀`丶､
, ' ＼
/ ヽ ヽヽ
! ! ∧ ﾄ､ ヽヽ ヽヾ:､
l ,ｲ/ ', | ヽ ヽヽ ヽ',｀ヽ
| !ト|!､ ヽ! ,.ゝ､ ', ', !',|
| !トｧr｀` ヽ'"ｨｩｧヽ ! ! | !l
l l l |l￣´ ｀￣´ﾘ ! } ﾄ | | !!
! ヽヾミ､ ! /ノ ｲ l ヽ ! !!
〉 ヽヽ､ -_- テ／ ,! / ヽ ﾘ
i ヽ!＼ ／}ヾ､´ / ヽ 東京の地下はどうなっているんだ？
| | ヾｰ ｀T´,ｲ ,!_ﾄ､イ´ ! ヾ:､
,. -‐ '´! ヽ､|!ニ=-_／ ｀Y / } } ﾄ､ド､
,. -‐'´ ,､ヽ __二´ノ }ｲ,.イ / ,ｲ/ !|
.rく ,. -‐ ' ´ ! ヾヾ=- ヽ /／_,.ィノ∠〃｀`ﾘ､
.! ヽ r'´ ,.! / ヽ / ´ '´ '´ ヽ / }
.', ヽ ／ ヽ / ヽ/ ＿ } /
. ヽ,.ｨ | ヽ! く ヾ! , ‐ ' ´ l 〃 !r‐!
| // ヽ ヽ | i _,. --､! / l ! |
ﾚ/ ト､ | | ! |'"´ ＿,,,....! / ／ ヽｿ
|´ r-､ヽ＼ | ! '"´ ヽ /／ ヽ
| __ヽ｀ヽ } ! | |' /
! 丶ニヽ ｀! ヽ ! __,. -‐ 'ドｰ‐--､! !
! ⊂ﾆﾆ｀,. ゝｧ―｀‐'"´ ! _r'＿__ |
| ,. ‐ '´ / {_,.イ´__ ＼＼ !
. ! / / ／ ', ', ｀丶､ /
! / / ／ _,,...ノ ', /
ヽ.＿_,,../ _/.. -=ニ_´ ',- ... ＿_/
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| うろつく屍鬼を機銃でなぎ払わせながら、レイ・ザ・バレルは斥候用小型ドローンと視覚を共有。
| 十台以上のドローンを同時に操作。恐るべき能力、いなや脳力である。
|
| 旧校舎にある倉庫から地下にいけると聞いて、集まった二柱と一人。
| ボール型のパンダ『リトルボーイ』よだれ製造機『ファットマン』そしてレイ。
|
| 無闇に探索するのもバカらしい。レイのドローンによる捜索隊を編成、地下をマッピングしている。
|
|「地下なら、我々はあのまま撤退するべきだったかな」
|「ほげぇー」
|
| 縦横２メートルという巨体の『リトルボーイ』。教室の出入りすらドアを外さねばならぬ始末。
| 放心状態のファットマンも、迷子になってそのまま行方不明になりそうな雰囲気がある。
|
|「見つからない。本当に地下にいるのか？ ハメられた可能性は？」
|「大いにあるな」
|
| 割り込んできた第三者に、二柱が胡乱に振り向く。
| 相手は気配を隠さなかった。レイも二柱も気付いていた。
|
|「なんだ海賊、殺されに来たか？」
|「その声はヤーボ大佐か？ イメチェンしたな」
|
| 黒いコートに海の臭いのする男、真冬なのに浅黒く焼けた肌、潮焼けした髪と髭。
|
|「知り合いか『リトルボーイ』」
|「『キャプテンアッシュ』。テロ勢力に加担する武装船団の船長の一人だ」
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--イ } _＿ _, ノi
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、＿ { ＼ { ／ _, /、
ヽ ヽ _ゝ--=i -=＜ ﾌ
_Y / i} ＼ l=- _ ＜_ _
ゝ_＼ _／ l lヽ}＼ Yl ﾆﾆ=- _ / 海賊は廃業した。
/ ／/.l l l l /ｨｯﾌ l lﾆﾆﾆﾆム 今は警察の特別顧問さ。
l , ｨ / l l ﾄ 、 ｀ / ｨ l lﾆﾆﾆﾆﾆﾆi/ ＼
V / / l l _.{ l/ l / lﾆﾆﾆﾆﾆ／ ＼ |＼
l/l ヽ_＼ ヽ ＿ l / /ﾆﾆﾆ ／ ヽ
_ｨl ﾄ、 ﾄ .、' - 从{ /ﾆﾆ／ _ィ= 、 l
_ -==ﾆﾆ=へlﾆ )ﾊ ＞ -イ; ;/ﾆﾆﾆ| ／/////ヽ l
＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆV/; ; ; ; ; ／＼ﾆﾆ.{ l ////////ﾊ l
` -=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=- _; ; _／ﾆﾆﾆ ＼ム l/////////il l
/ lﾆﾆﾆﾆlﾆﾆl/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／il l/////////∧l
, ／ﾆﾆﾆﾆ i／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ_ イﾆﾆム V//////////ヽ
l／ﾆﾆﾆﾆ ／ﾆﾆ＞-=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ﾑ ＼/////////∧
ゝ` Yﾆ ／=-イﾆﾆﾆﾆﾆ[ ]ﾆﾆﾆﾆ 、 ＼////////∧
l /l／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ= __ ヽ/////////
ヽY |ﾆﾆﾆﾆ三三三三ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ >＼///////
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|「聞いたか？ 利益のためなら信念も犬に食わせるそうだ」
|「もちろんだ。ちょうど『野良犬』もいるしな」
|
| 『野良犬』は『リトルボーイ』がヤーボ大佐だった頃に率いていたグリーンベレーの部隊名だ。
|
|「警察の犬と犬同士仲良くやろうぜ」
|「……なんの用だ？」
|
| あからさまに不仲、確実に敵として因縁のある『リトルボーイ』と『アッシュ』。
| 話が進まないし、作戦の邪魔になると考えてレイが口を挟む。
|
|「俺は警察の用意した協力者さ。もちろんキサマらがこれ以上無茶をしないための監視員でもある」
|
| 『無茶』。作戦上起きた仕方のない交戦だ。レイは苛立つが『リトルボーイ』はグフフと笑う。
|
|「意見の相違だな。政府の支援物資を積んだ船をお前らが襲ったときと同じだ」
|「完全なテロリストだったのか。外道め」
|
| ゴミを見るレイの眼差しにアッシュは肩をすくめた。弁明は無い。
|
|「敵を殲滅するためならば、目の前の犠牲を容認する貴様らのやり方には反吐が出る」
|「大局で判断できず、未来の屍を積み続けるやり方はごめんでな」
|
| 殺気立ったやり取り、探索の邪魔だ。
| と、アッシュが何かに気づいたかのようにレイを覗き込んだ。
|
|「君、どこかで見たことがあるな」
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｜ / /`! ﾄ, ｌ !
. ! ｌ / ｌ ｌ ヽ ｜ !
! ｌ ｌｌ ｌ '､ ! ', ヽ ､ ｌ !
ｌ ｌ ｌ l ! ! ヽ '､ ヽ ', ､ ! ｌ ｌ ｌ
ｌ ! !｜ ｌ_!｜ '､ ', ＼ ｌ ヽ ｌ ｌ ｌ ｌ !
. ｌ ｌ !｜ !_! !＝- ､ ヽ ', ヾ ト, ｌ ! ｌ ｌ ｌ !
! ｌ ｌ｜ ! l!{_,.テミヾヽ ヽヽｒ＝彳ｒｌ ｌﾃｌｌ ｌ ｌ ｌｌ ! 探索の邪魔です。
ｌ ｜ '､ヾヾ｀''＝＝'‐ ヽ'､ ‐ゞ=! ｌ=! ｌ ｌ ! ｌｌ｜
ｊ ｜ ﾄ,ｌ'､'､ ｀ヽ ! ｌ ｌ ｌ ｌ ! ｌｌ｜
/ ', ｌ ヾヾ'､ .:::::::ｌ ､ ノ ﾉﾉ/ / ｌ ｌ ｌ ｌ
. / / ', ｌ! ﾄ, ヾ'､ :::::::' `＝ノ/ /ｲ ! / /!｜'､
ノ イ / ! ｌ ', `ｒ ､ ' ヾニ,ノヽ/ / / / ｌ ヽ
／ / ィ´ ｌ ｌ ヽ ト､｀ヽ､ -―＝―- ﾄｒ'´,.ｲ' / / / ｌ '､
// / / ｌ ', ｌ ヾ ｀ヽ､ヽ､ ― ,.-'"ト､ニ_ノ 〃/ ｌ ヽ
ｌーｌ /ｌ｜ ヾヽ ＼ TT` ｒｒ‐ｒ'´/T ｀ヽ､_,.∠'シ ｌ
. ｌ ! ヽ＼ ヽ ＼ ヽ､ ヾ ヽ,| | | / /ｨ ／
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|「探索？ ……そうか、デュランダルくんだ。『エックスラウンド研究所』の初期メンバーに居た」
|「……！」
|
| 遠い過去を掘り当てられ、困惑するレイ。
| 誰だこの男は、知り合いとは思えない。どこで見られた？
|
|「私はアセム・アスノだよ。フリットの息子でキオの父親。大きくなったなデュランダルくん。
| なるほど、『教会』側で活躍しているのか」
|
|「…………」
|
| レイは苛立ちを抑えきれずにアッシュ……いや、アセムを睨んだ。
| 超能力は、レイに望んだ力を与えてはくれなかった。
|
| その脳を利用する方法としての踏み台にはなったけれど、それ以上のものではなかった。
| 返事をしないレイに、アセムは肩をすくめた。
|
|「学内の処理は自衛隊と警察が合同で行う。君等が壊したあれこれの見聞もな。すぐに『血族』も……」
|「何だ！？」
|
| アセムが話す最中に、レイが狼狽した声を上げた。
|
|「落ち着け。やられたか？ 簡潔にまとめろ」
|「……ドローンの一基が行動不能。電気系統に異常なし。ただし動けない。見えないなにかに捕まったような……」
|
| 歴戦の将兵らしく冷静な態度の『リトルボーイ』に、レイは冷や汗を拭って説明。
| カメラは正常に動いている。なのに、どうしてだ……？
|
|「いるな」「やらない夫か？」「分からんが、何かいる」
|
| 現場へ急行……しようとして、レイは『リトルボーイ』を見た。
| 巨大パンダは脂肪たっぷりの腹鼓を一つ打ち、レイは諦めて単独で地下へ赴いた。
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l l i ,'::::::::::::::::::::::::,ｨ!:::::::::::i:::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::ﾑ
l l i. !::::::::::::::::::::::/ l:::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::' ,::::､:::::::::::::::::::::ｌ
l l i i:::::::i::::::::::::/ i:::::::::::::i ヽ.::::::::::::::::',::::ﾍ:::::::::::i:::::::l
l l i }:::::::l:::::::::/ ',:::::::::::ﾑ ＼::::::::::::.:::::l::::::::::i::::::::l ラジコンヘリコプターみたいだけど。
l l iﾍ::::_ ﾍ:::::i=＝=-ｭ＼:::::::ﾊ .≧,:::::::ﾄ,i l:::::.ｲ::i:::::ﾘ カメラとマシンガンが付いてる。
l l i }i',｀Yﾍ/ x‐==ミ､ `＜::::＼,.x==ミヽVl:::://ﾊlﾘ'
. l l_＿_＿j /iﾊﾍｷ 〈〃,_ﾉ::ﾊ ﾞ. `＜ﾍｨ,_ﾉ:ﾊ 》ｲ/ﾍ.i ハ, 危ないなぁ。
〉 ∧￣￣/::.ﾍヽ:ﾑ V//ｿ ~' V/ｿﾉ ∧ /:::ハ
. ／／ ー─(:::::::::::ヽ､', ¨" ﾞ"" / ハ:::::::ハ
. / /￣二二二ヽﾄ,:::::::::∧ ､ , /ィ’ i!:::::ﾘリ
/ / lﾆr───‐ヽ,.｡・ヘ _＿＿＿ // `'・ｬ,ノ ￣￣￣ ア
/ ./ _＿＿＼ ∧ i＞ . ∨ / ，＜ ﾘ ／ ／＿
i |￣￣ ／iﾍ ∧ l ＞ .￣￣.， ≦ リ / /ヽ.
l | ,/ i! Ⅵ ∧ ∨ ヘ. ￣ .ィ’ ﾘ / / ,' ヽ,
l | ,/ i Ⅵ ∧ i 厂L 斤! i / / / ム
l | / ﾑ Ⅵニニニ∧j .ィ’ oﾊ ﾉ ＼ ﾘ ./ / ./ ﾑ
l | ＿jー _ ﾍﾍ, Ⅵニニニ∧'1 'y' ﾄ､ノ' /二二二二/ /／ ﾑ
l |' ,.｡ '’ ヽ丶.Ⅵニニニ∧l / l /二二二二/ /ｲ ､ﾊ
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| こちら、外部から地下へ侵入し、キオの超能力で生物の気配を感知しながら移動していた杏子班。
| キオはこの学校の中等部に所属していた。
|
| 校舎の位置も隔てられ、中等部には被害がない。もちろん中等部から高等部への一般通路は閉鎖されている。
|
| しかして、蛇の道は蛇である。
| どこの学校にも秘密の抜け道があり、一部の生徒が綿々と受け継いでいる。
|
| やる夫もやらない夫もその通路を知っていたし、キオは同級生から聞いたことがあった。
| 迷路のような地下通路の正しい道筋。それをキオは逆順に辿っていたのだ。
|
|「やらない夫じゃァねえのかよ」
|「うーん、こんな高価そうな道具を使えるとは思えないよね。『教会』かな？」
|
| 超能力の見えない手でとっ捕まえて、しげしげと調べるキオ。
| このスレは2014年なので、ドローンは一般的ではない。
|
|「攻撃されたら破壊しよう」
|
| キオは、横島が自分をどんな目で見ているのか気付いていない。
| 超能力で内部機械を解析し、機銃のケーブルを把握した上で、電流が流れた瞬間に捩じ切るつもりのキオ。
|
| 彼の見えている世界は他と違いすぎる。
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/ / /! | ヽ
/ // / ｌ ｌ ヽ '､
/ / / 〃/／ !｜ ｌ, ｌ !', !
ｌ ,ｨ ! ｌｨ＜_ ! ｌ ハ ! ｜ ｌヽ !
! （ｌ ! ｌ ｌ |ｒ=テミ､ ｌ ｌ/ ｌ ｌ ｌ ! ｌ ! |
ｌ ｌ ｌ ｌ l!ｌ ヾビ｀ヾヽ ｌ/ _,ｌ ｌ ｌ ｌ ｌ! ! ｌ
/ ｌ ｌ,!ｌ ﾊ! ｀ ′ｲﾃｌ ll ｌ｜/ｌ ll !ｌ
. / ｜ｌ ﾄヽ ', ::::::: ､ ｀ﾞｌ ll｜! / / .ﾘ
. ／／ ｜ ! ! ヾ'､ ﾘｊ! !//
／ / ｌ' ,! ｌヽ､ ____ -''´､ｲ/ /´ ……『血族』だったか。
/ ,ィ ｌ ｌ ﾊ ! ヽ'ト-ヽ､ ､｀"´ｨ´､ﾉｨ´
ｌ { ヽ ヽ',ｌ '､ ', ヽ'、 ｒ､ ヽ､__,ｨ ´ !｜
. ｀`ヽヽ､ヾ',! ヽ'､ ヾ｀ ｒ ///､ ヽ ﾄ,'､
＼ ＼｀ヾヽ､ ヾヽ ヾﾞ //ハ ',ヽヽヾ',ヾ'､
＼ ＼ ｀ヾﾄ､ ﾄ,ヽ､ヾ-ｒｒ'｀ ヾ､ｒ､ヽヽヽ､
ヽ >､ `} ヽ ｀` !｀ヽ ヽ｀ ヾ､ｒ'､
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| 犬型ドローンを護衛に地下通路へと侵入したレイは、小さく嘆息した。
| どうやら別通路から侵入した『血族』のチームに拿捕された様子。
|
| やらない夫ではない。勇み足か。
| とは言え、ドローンに集音マイクは付いていてもスピーカはない。
|
| 遭遇した『血族』と情報交換するならばやはり会いに行く必要があった。
|
|「複数のロボット犬を同時使役できるのか。有能だな」
|「おためごかしを言うために付いてきたのか？」
|「まさか」
|
| 犬型ドローンの装備した電灯で足元を照らしながら走るレイ。
| 全力疾走に近い速さにも関わらず、息も切らさず追走するアセム。
|
|「本音だよ。戦闘能力しか能のない連中より、君の方が多面的に優秀だ。
| 味方ならば最高に心強く、敵ならば真っ先に倒さねばならない」
|
| つまり？ 睨みつけるレイに、アセムは歯を見せて笑う。
| いい大人のくせに、子供のような顔で。
|
|「俺は超能力者としては落ちこぼれでね。それでも一流に勝つために様々な技術を学び試行錯誤を繰り返してきた」
|
| 突然の自分語り、いや、レイは困惑した。フリットの息子が落ちこぼれ？
|
|「よく見て、よく考えるんだね。君なら一流どころか超一流にも食い付ける」
|「どうやって？」
|
| 苛立ちを抑え切れず、レイは尋ねた。
| 口でいうほど簡単ではない。それで済むなら苦労はない。
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/ ヽ／ /
, ' ,／ /
／ / ＼ ／
/ ' ,.＞'¨ ”¨ヾｰ一, ＼
l ,.＞'’ ィ'´ h ヽ,
∧ ,.＞'’ ヽ. ム
r､＜>'’ ／ , ,' ＼
／ヽ､ , ' ／ / ､ i `ヽ｡.,_
/ .ｨ一 7 / , ／ /ﾑ ', i ／
,.ィi ／ i ,' ,' / , ' i! i , ! イ／
,.｡ｨ仁ハ i三ﾐi / / / , ' _ / ﾘ ,/ ,ﾘ ／i
／三三三三三ﾊ i l ,' / ,ノ＞'’/,ィ' / ,/ ＜￣三ハ 『観察』と『選択』だ。
<三三三三三三三i ﾊ, / / "'心ﾘ ﾉ7 i' ,/ ￣ アilム
`＜三三三三三ﾑ i ', i 人 l ` ¨” / / / ,.｡-‐'’三三ﾑ
`＜三三ヘ `ｰ` .j i ／ `丶 ＜’.ｲ / ＞三三三三ﾑ
`＜三二ﾆアi /ヽ./ ＿｀´＿ i ¨ ,/ﾍｰ一 '’三三三三三ソ
`＜℡ｭｬ ハ ゝ _＿ ノ ,ｲ / へ三三三＞' ”
`寸ﾑ il ､ ＼ ｰｧ- ／ ﾊ i'＞‐一'＞'"’
,.イ三Ⅵ ゝ､≧亠"≦ ﾑ lﾆ＞'’
.ｨ仁三三∧ 丶＞'’ .ｲl !ム
.ｨ仁三三三ﾆム '’ ノ彡ﾚ三℡ｭ,
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|「君は手数や射程で勝るだろう。その優位性を保て。姿を晒すな。
| 狙撃、散発的な奇襲、飽和攻撃。突撃あるいは要撃」
|
| レイは無関心を装いながら臍を噛む。
| 藤木源之助からの無様な逃走は、姿を晒した事が原因だというのか。
|
|「手勢に限界はあるだろうが、機械なら代わりがきく。だが君が死んだらおしまいだ。
| 最悪勝ち目がないなら嫌がらせに徹して退却も悪くない。そして散発的な攻撃で相手の精神と睡眠時間を削るんだ」
|
|「その戦法は、顔を知られていない場合に限るのではないか？」
|「『追うを攻めるは易し』さ。君自身が狙われるなら、君を囮に敵を罠にかければいい」
|
| レイは、気がつけば足を止めてアセムの話に耳を傾けていることに気が付いた。
| 自分は、複数のドローンを同時に利用する能力を使いこなせているはずだった。
|
| なのに、この男はみなまで聞かずに適切な助言をポンポンと投げてくる。
| 目から鱗が落ち、レイはアセム・アスノという男への評価を訂正した。
|
| こいつは確かに、ヤーボ大佐と敵対して生き残れるだけの能力を有する男なのだ。
| 本人曰く『落ちこぼれ』に過ぎなくとも。
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_ ,..-－―- ､
,.-''´ ｀ ＼
. , ' ヽ
/ , ',
. ,' ﾊ ｌ ､ ',
ｌ ! / ', ﾄ､ ､ !
| | ｌ / ヽヽ ヽ ',｜ ! ｜
| | ! ｌ/‐＝‐:､'､'､ｒ;:弍 ', ! ｌ|
| | ｌ ',ｌＴテﾄ､｀` ヽ', ｧｳ|｜｜ ｌ !
ｌ | ', ヾ',￣´ ￣ｌ ｌ ｌ ｌ ! 本当にテロリストだったのか？
| | ', ｌ｀` ::::: ' _ノ〃 ｊ ｌ |
| ', ﾞｒ､'､ ' ､,ブ / / ｌ
! ', '､'､` -‐__‐ ､ ､ﾆ7 / |
. ! | ｌ 、 トド ､ ＞､ﾆィ´ ｌ
ｌ ,' ｌ ヾ､'､｀‐`- ｒィ-‐''"| / l
// ヽト､',｀`ｆ< | | |ｆ{ / // !
/ ! ｒｔ` ｀ ､ヾ｜| |ﾚ'-'-ク/ / ｌ
-''"｀'､ ､ ＼ ヽ､!,|_!-'-=' 〃 ,ｨ ノ-'-､
` - ｚ― ` / ヽ-＝' -‐'´ ´ ｀''－ ､
‐;-‐'"￣ ｌ / ヽ / －､ ｀',
｀''－-ゝ_ / '､ / ｀''－ ､ /|
..,,,_ ｀丶i ', / { / !
｀丶､ / | ｀'＿,,,,,,,......_ ｌ / ｌ
! / | {´ ! ｌ/ ', ,.ｨｌ,
} / ! ｌ,,,,...-―― ! ｌ' ヽ ヾl!
┐ ', ,ｨ ｌ,,,,,,......-―'' / ヽ｀ｌ
..ｌ / ハ /（ { ヽｌ
7 /´ ヽヾ7 ｌ ｌ
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|「ん？ ああ、支援物資の件か。事実だよ。本物のテロリストに横流しされた物資を奪い取って分配したのさ」
|
| 恥ずかしそうにアセムは頭を掻く。
| 間違った事はしていない。ただ、全部を語った訳でもない。
|
|「大佐はカンカンだったよ。あの人はその物資で釣りをしていたのだからね。
| テロリストと繋がってる官僚を見つけ出そうとしていた」
|
| 暗い地下道、頼りない電灯の件明かり。二人と二台の足音が不気味に反響する。
|
|「でも俺は目の前で餓死する子供を見捨てられなかった。
| だが、大佐の言うとおりに汚職官僚を見つけられればその先の、もっと多くの犠牲を抑えられたんだろう」
|
| 結果から言えばアセムは過ち、ヤーボ大佐が正しかったのだろう。
| アセムの口調は明るくて軽いが、表情は地下の闇よりなお暗い。
|
|「その後は喧嘩別れさ。まさか再会したら古巣は全滅、ヤーボ大佐はパンダになってるとは思いもしなかったが」
|「古巣？」
|「俺も元『野良犬』なのさ」
|
| 思い返すと、『リトルボーイ』は饒舌だった。アセムとは敵対もしたが旧知だと考えると納得も行く。
|
|「アセムさん、あんたに夢はあるのか？」
|「無いね」
|
| 唐突な問であるがアセムは即答した。
|
|「いい年して夢見がちな父親の目を醒ますために、ここまでやってきた。俺は夢を見ない」
|
| 『四月』だ。レイは心が打ち震えるのを感じた。
| 冬の夢にまどろむ愚者に現実を突きつける存在、アセムはそれなのだ。
|
|「まあ、俺のやりたかった事は息子に取られちまったがね」
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_ ｡ -‐ ‐ｭ,
,.｡ '":::::::::::::::::::::::::::::`丶
.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
.ｨ:::::::::::::::‐- ｡.ヽ,::::::::::::::',::::::::::::::ﾍ
/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i! じゃあ、
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ この近くにやらない夫さんはいない様子なのですね。
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ,
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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|「そうなる。少なくとも我々が探査した地点にはいない」
|「道を逸れるとすぐにゾンビとかが出るンだろ……？」
|
| 青葉が『地下』と放送した時点で地下通路を目指したキオたちが遭遇しなかった。
| というか、キオの超知覚に引っかからなかった。
|
|「『青葉』を名乗る女子生徒は？」
|「そもそもそんな姓名の女子生徒は居ない。男子なら居るが」
|
| レイとキオたちの合流と情報交換はスムーズだった。
| 横島とキュゥべえがレイと顔見知りだったせいもあるが、互いにビジネスライクに対応していた。
|
| キオは物言いたげに父親を見るが、アセムは目を背けていた。それ以上の追求もなかった。
|
|「あの放送室が中継地点だった可能性は？」
|「無い、しかし録画の可能性はある」
|
| 警察に属するダリダ・ローラッハ・チャンドラ二世は情報戦のスペシャリストである。
| ノイマンの相棒と言えば、そのサポート能力の高さが想像できよう。
|
|「ンだよ、無駄足かァ」
|
| キャンディを噛み砕く杏子、しかし横島は頭を振る。
|
|「なあレイ、今回の騒動は本当にやらない夫さんを捕まえるためのものだったのか？」
|「……」
|
| 当然の疑問、『教会』はあの学園で何をしていたのか。
| やらない夫が曖昧模糊にしたけれど、本当にそうなのか。
|
|「お前には借りがある。無理して答えなくていいぜ。じゃあ、何か手助けできることは？」
|「……なんだと？」
|
| 『教会』と『血族』ではなく、個人的なレイと横島忠夫として。
| そこにあるのは誠実さだけで、レイは困惑した。
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＼:.:.:.:.:.:｀ヽ
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／:.:.:.:.:.:.:|/-=ﾆ＼:.:.:|=／⌒ヽ|:.:.:.:}:.＼ よかったらメシでも行こう。
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.|／⌒ヽ ＼| /ヽ :.:.::/:.厂 ついでに『教会』の女の子紹介してよ。
￣￣/:.:､:.:.:|′ /ヽ __ ! ｲ＾Y
|::/i＾ヽ| __ , , ) ; 巨乳のシスターとか。
|/..| ,ヽ _＿ ｀ -‐ ヲ /／
人___､ 辷_,,.. -‐ ´ ,.:'＼
∠个:... イハ厂
__＿从/ | ｀¨¨ |========┐
|「￣ ,| ｀| .0 ||
|| 0 .′ | -=≦_ _＿＿____
_,. -‐ _」L,,,,, /‐- -‐ | 7/ ¶ ＼
. ／. ¶ |}￣￣ /‐- ..,,___,,... -‐, // :|} }.. ＼
/ { .:|} |} / V ′_＿_|}____ / ＼
. / ',.____|}＿..|} ./ ∨ {| /.′ .＼
. , 仁二_∧ ￣￣ :|} / ∨:| ｏ / ; ＼
／ } ｏ :|} .′ }.:| ｀ T T ´ |__
／ }＼___／|} i | | | | :| ＼
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| こっちが本音である。だが、純粋培養のレイは気付かない。
| 初めて接した純粋な善意と友情的な何かに戸惑うばかりだ。
|
|「横島……」「あンなァ」
|「しょ、食事くらいなら構わない。だが懐柔されて何かを漏らすなどと思うな。それに手助けは不要だ」
|「何かあるんだな？」
|
| レイの後ろでアセムが眉を上げた。キオが横島を見る。
| 杏子とヴァイジャヤは彼の酔狂には慣れたもの、気にも止めない。
|
|「…………」
|「言うだけ言い給えレイ・ザ・バレル。この横島忠夫は大バカだが、頼りにはなる男だ」
|「伊集院さん」
|
| キュゥべえはデュランダルの病院に入院していた。彼とは知己であり、秘匿されていたレイとも交流があった。
|
|「…………」
|
| 答えようと口を開き、しかしレイは何を言おうとしたのか分からずに狼狽した。
| 父のこと、シロッコとの齟齬のこと、夢のこと、ロビンのこと、源之助のこと。
|
| 言いたいこと、助けてほしいことは無数にある。しかしそれを言語化できる能力がレイには欠けていた。
|
|「もしキミがギルバート・デュランダルの遺志を継ぐ気ならば、少し立ち止まって考えてみたまえ」
|「親の引いたレールを走るなとか、そういう無責任な事をいう気か？」
|「まさか」
|
| アセムが噛み付いたことに、他ならぬレイも、そしてキオも驚いた。
| 二人ともアセムはそれを言う側だと思っていたのだ。
|
|「それが本当にギルバート・デュランダルの遺志なのかを考えて見てほしいだけさ」
|「……？」
|
| ただ一人、アセムを除いてキュゥべえの言葉の意味が理解できなかった。
| 慄然とするアセム。まさか、まさかね。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,. -'"´￣｀ヽ､
／::...::::::::::::::::::::::::`ヽ、
i´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞヽ､
,!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::ヽ
{ヽ.,＿,ノ::::::::::::::;::::::::::::::::::::::::::::;ｲ'!i:;i;::;::| f.ln
,.-'''"￣｀`ー`ー:::::::::::;:':::::/;:;ｲ;::::::::::;::::::::/|;|!::::: ::ﾊ, 'i lヽ._
/:::::::::::: ...:ヽ=;::ッ:'":::::;ｲ::!:;:i::i::;::::ﾄ;::::/ |;'|::::::;:/::::ヽ、 i:､ | i i !
!'::::::::::::::::::::::::::::;r'" :::::::::::::i:::!::::|'!:|::!::!:|,;､:!--;ﾉ::ノ/;::::::;iヾ､ ヽ,＼! ' `i
,ｲ:､＿,）::::::::::::::::::::::;i:: :: : :: ::::::::::::;ｲ､:i:::::'!:l!:i,｀ﾞﾞ´ｲi'::::::::iヽ:;::} l ' |
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.{;! ヽ::::::::::::::::::::::::;!:::::::::::: :::|::::ｉ ＼ヾ､ヾ `ァ''ヾ. ヽ'iヽ::|､ ', !
' !、::::::::::::::;:‐´ヽ､;:::::::ヾ!;:| !.ｲ,!`ｰ‐|:::i::::ヾ;‐-!:| '! l |_
r''ﾆ;:-‐'´ ヽ;:::::::i､!, /／l ヾ､ i;､:: :::;ヽ、`ヽ ,r'',|. |.'ヽ
,.ゞ‐'" 'i:::::;:iヾ､_!' ＼ /!,ヾ;:::::::::::'`;ｲ /く'､|__ _,|.）ﾉ
／ |::::i;::i | ヽi＼' ヽ;:: :::ﾉ `ｰ-､ ｀! ヽ 二.イ. |
. （､,_ ;. j:::ﾉ|::! | | ＼／ﾉ::ノ ＼ | ｀´ !. |
ヽ ＼ ゞ=ｧ'´ ﾉ′ !, |､ `''ﾂノ"|------‐'"ヽ,| ｜.|
| `'''''''' ─--- ／ / ! | i | /、 /| ｜ !
| ＼｀`'''''ー-､._ ヽ | 'l | | ! ｀丶、 !,l | |
/､__,,.. -‐''" ＼ ヽ ', ! ヽ| | | ｀ヽ､ i, | /
| ＼ ヽ ', 'i 'i | | `ヽ、 ,!/
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/ ／ ヽ ヽ ',| ', | !
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| ギルバート・デュランダル。
| 静謐な世界を求めた『結社』幹部。『ミロク派』。
|
| 未然形の神の到来と完全なる統治を夢見た『教会』のスパイ。シロッコの盟友。
|
| 彼は夢半ばに斃れた。
| 『結社』撃滅作戦で華琳に呪われ、ボロボロの内蔵で死に瀕していた所を暗殺された。
|
| 下手人は、四ツ目。
| ということになっている。少なくともデュランダルを撃ったのは彼の銃だった。
|
| であるが、すでにテロリスト認定をされていた四ツ目はその後行方不明。
| 真相は闇の中である。
|
| ここまで、警察の資料からアセムは知っていた。そしてキュゥべえも同じだろう。
| だが。だけれど。
| その先を言うのを、アセムは躊躇った。それは呪いだ。レイの人生を暗礁にぶつけるつもりか。
|
|「キミもだアセム・アスノ。下らない意地を張っていないで『血族』に戻り給え。
| フリットはキオに打ち負かされ、キミの目標はもう無い」
|
| 父親の呪いから解き放たれるべきだとでも？ 余計なお世話だ。
| アセムは肩をすくめた。確かに少なからずの意地もある。だが、彼自身の考えもある。
|
|「大局を見るのは苦手でね、目の前のことを何とかしないと、戻るに戻れないんだよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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| 険を含んだ物言いに、アセムは喉に異物が詰まったかのように呻いた。
| キュゥべえがガラス玉のような目を光らせる。
|
|「違う。アセム・アスノとはさっき会ったばかりだ」
|「なら、と……父さん。『血族』に戻ってよ」
|
| 父を父と呼ぶのを躊躇いながら、キオは懇願した。
|
|「東京が不穏なのはわかってるでしょ？ でも、それだけじゃない。『血族』もどこかおかしいと思うんだ」
|「……言うじゃないかキオ・アスノ。具体的には？」
|
| 応えたのはキュゥべえ。『血族』がおかしいと聞いて黙っていられないのか。
| 表情を変えずに小首をかしげる。
|
|「やらない夫さんに全部の責任を被せて、それで他のことをなあなあにして。本当にそれでなんとかなるの？」
|「なンねェだろ」
|
| そっぽを向いて杏子が呟く。
| 『血族』全体が、何やら得たいのしれない流れに支配されている気がする。
|
| それはキオだけではなく杏子も感じていた。何もかもが誰かの意思に従っているかのようにスムーズに動いてしまう。
| それが誰の意思なのかまでは分からないが。
|
|「なる訳ないじゃないか」
|
| 故にキュゥべえの返答は衝撃的だった。
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ﾄ､‐- ､ , - ―.ォ
|: ＼ ＼ ／ ／: : :.| 今の『血族』は明らかに前までと違う。
l: : : ヽ ｀ ￣￣ ´ /: : : : /
': : ／ ＼: : / どこで歯車がかけ違ったのかは分からないけれど
У , ｀く ロージェノムの死か、シックスの失踪か。
/ / ﾍ ヽ はたまたフリットの独裁か志摩子さまの復権か。
/ / γ::o, γ::o, ﾊ ヽ
,､ / i ヽ::ノ ヽ::ノ .i ﾍ‐- ､__
ヽ＼, ､ ､ _ , / ﾍイ/,＞ ,
ヾ_｣ /＼. ｀´｀ ´ ／ﾍ ／イ ＞､
／ ヾ,.､ λ ｀ー‐ｧ---- r一 ' 入／" i＼ ＼
＿＿ ／ ｀>く}ﾍ / ﾍ ／厶へ ＼＿＿ ヽ
, -‐" ＝ ／ ｀´ i | ／ ＼ ＝二ァ
￣フ二__二, _・ ／ j l' ｀ｰ-｀､_三――" ’
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, -､ / / ､| | , ├‐- ､ |
（{ ./ | ﾍ ｜.i / | ｀ 丿
ヾｰ--‐' ´ ,＞ '￣￣| ﾊ l.｜ ｛ .j ／
｀ｰ- ＿＿＿ ＞ ' ヽ i | | ﾉ 人 ／
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| ボタンをかけ間違えたままでいるような居心地の悪さ。
| 杏子班の全員がそれに覚えがあった。
|
| フリットが『血族』の指揮を取り始めた時には、すでにあったような気がする。
| いや、あの時はまだだったろうか。
|
|「なら、父さん……」
|「いやキオ、悪いがそれなら一層に『血族』には戻れない」
|
| 頭を振るアセム、キオの顔全体に浮かぶ失望。レイは無言でそれを観察。
|
|「伊集院様、俺は外から『血族』を見ます」
|「大局を見るのは苦手なんじゃあなかったのかい？」
|
| 揚げ足取りではなく本気で心配するものだから始末に悪い。アセムは言葉をつまらせた。
|
|「内部から分からなくとも、外部からは見えることもあります」
|「一理あるね」
|
| 彼らの会話を聞きながら、言葉にできないいくつもの想いをレイは飲み下した。
| 何事も無いかのように振る舞えるし、表情にも変化がない。
|
| キュゥべえの言葉、アセムの言葉を胸中で繰り返す。
| そして、結局なんの功績もなかったこの日の己に失望した。
|
| ここでレイが泣きつけたならば、彼の運命もまた違ったものになっていただろう。
| おお、六番目。殺傷の戒めを壊りて現れた『哀しみのからくり人形楽団』。
|
| レイ・ザ・バレルがそこに至るまで、あと一週間。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
迫る『やらない夫の集会』！
『弓兵』たちによる間桐邸の襲撃！
その後現れるっぽい四つ目の『十壊』！
（『テングサの歌』やらない夫
『ひとりでお帰り』アサギ
木星の問題、で三つ）
そんな中、結局役立つのか役立たないのか微妙な位置の男がいらんコトして足を引っ張る。
おいおい。
そんなことしてる場合じゃないだろ！
次回、最終幕七十六話『ごめん、人違いでした』
果てに見るのは破滅か死か。
四つ目……四ツ目だな！
ﾄ VVVVVVVVﾉ＼
＼ ＼
ヽ 変装 ＼ ｺｿｺｿ
⌒≧x ／＾^＼/ ＼ ＼
彡 〆 _ノ ヽ_ ∨
〃 ﾊ （ ●） （●）Y:ｉ|
ｲ 从§ （__人__） |从
乂ｲ§. ｀⌒´ |
＼/⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒)
／| / / / (⌒)| / / /
／ | (⌒) ヽ /
/ l | / / ） /
| ーゝ / / ／
ヽ ＿＿＿＿／ / ／
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| 『学園封鎖』の翌朝。
|
| 翌日に控えた『やらない夫の集会』に備えての会議をすっぽかして、やる夫はとある病院にいた。
| カツラと服で変装して、関係者のフリをしてコソコソと進む。
|
| やる夫は……封印以降存在感が『薄い』。
| おかげで誰にも見咎められることなく目的の場所にたどり着いた。
|
| ドアに強化ガラスがはめ込まれた、小部屋。
| 手狭な畳敷きの部屋、布団と、剥き出しの和式便所、固定されたちゃぶ台。
|
| まるで独房だ。
|
| 牢獄と違うのだとしたら、部屋の端に置かれたおもちゃ箱か。
| やる夫はこの部屋の患者が心神喪失だと聞いていた。幼児退行でもしているのか。
|
| やる夫は暗澹たる気持ちで、患者を探した。
| 強化ガラスの嵌められた小窓は小さく、中の様子は一望できない。
|
| へばりつくようにして覗き込んでいる最中、不意に背中に柔らかな重みが加わり、耳元に息を吹きかけられた。
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／ ─ ─＼
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| （__人__） |、
r―ｎ|l＼ ｀ ⌒´ ,／ ヽ
＼＼＼.` ー‐ ' .// l ヽ
. ＼ | | ｶﾞﾁｬﾝ
. ＼ ＿ ＿_ | .＿ |
／, ／＿ ヽ/、 ヽ＿|
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＼. ||.｜ < ＿__）_(＿)_ >
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|「つーかまーえた」
|
| 甘い囁きと同時に、やる夫の両手にジョークグッズみたいな手錠がはめられた。
| 鎖の部分に御札が貼ってある。なにコレ、怖い。
|
|「ゲェーッ、変態コスプレ看護婦！！？」
|「ハァイやる夫くん。今日は看守ルックよ。
| 軍服要素のあるＳＭな女王さまが看守として認識されてるのってある意味異様よね」
|
| 先の戦争で日本の同盟国だった国の軍服をアレンジしたボディコン。
| かなり目の荒い網タイツにハイヒール、首やベルトに鉤十字とか逆十字のシルバーアクセをジャラジャラ下げて、
| 軍帽に眼帯という姿の鷹野三四がそこに居た。
|
|「支援絵描きたくならない？ なった？ もし支援絵描いてくれたら、あなたの望みを叶えてあげても構わないわよ」
|
| 短鞭を肩に担ぎ、ヒールでやる夫を踏みつける。
| やる夫は悲鳴を飲み込んだ、騒ぐのはやばい。いや、すでに不審者として見つかってるのだが。
|
|「今は『緊急事態対策班』の会議のはずでしょ？ こんな所で油売ってていいの？
| それとも自分が『血族』の要人扱いだってことを忘れちゃった？」
|「なにそれ怖い」
|
| 真っ赤な口紅がやる夫の首筋にキスマークを付ける。
| 長手袋を付けた左手がやる夫の下半身をまさぐった。
|
|「んん？？？」
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/ /: / / ' ヽ
/ ,: : , ./ / | ' ﾊ
, l: : l / /ｊ .l! ' ﾊ
, .l: : l :, , ´/ ./ l l .l l
l : l: : l :, ／ / / l i l | l
l : |: : l:/ ／ ./ / l l! l l l
ｌ : : |: : |:l ＿ ィ二＼ / ／＿.. l ﾄ. l l !
l : : |: : l!‐ ´__／─- / , ' , ＿｀ ＼ l l l l l
| : : l: : | _ィ三三≠ヽ /／ ,ィ≠三､ ヽヽ.l l .l
l : : : l: : r l／ 7ィ::::ﾄ7 ／ l:_ィ::ト}＼ヽY , l
l : : : l: : ｀ ﾄ -弋二ｼ'" 戈ﾆ:ｼ_ / X / l これは……。
l : : : l: : 、 / У !
l : : : : l: : l i ,ｲ /: l まるで反応なし？
l : : : : l: : l } ﾊ:/: : l 若さだけが取り柄の錬金術カブトガニは
. l : : : : ﾊ: : ｌ ＿__＿ / l': : : | l どこイッちゃったのかしら？？
l : : : :l: :l: : ト _ ゝ─ ′ ／: |: : : l! |
l : : : : l: : l: : ､ - _ _ ´: : : :|: : : |l |
l : : : : !: : :l: : l - _ ‐ ´ : : : : : : !: : : l l: !
| : : : : :l: : : :l: : l‐- _ ￣１- ､: : : : : : : :|: : : l l l
| : : : : :|: : : : l: : l ｀ -,､ j｢¨´ｌ: : : : : : :/|: : : .l l: l
l : : : : :!: : : :_ﾑ: : l ムl--{l '、、: : : l .l: : : l .|:l
| : : : : | ／ ﾊ: : . l / ｢ lヽ ヽ ｀丶l |: : : l .|:!
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| ズボン越しにデリケートゾーンを愛撫され、やる夫はすでにパニック状態だ。
| 金縛りを受けたかのように硬直するやる夫本体とは裏腹に、分身部位は全く硬直していない。
|
|「最近の『やる夫』くん相手だと不思議とからかう気になれなかったのよね。
| でも『今の』やる夫くん相手ならいくらでもその気になるというか。
|
| 前々からキワドい服にはやらしー目をしてたでしょ？ こっそり大きくしてたのも見てたのよ。
| それを見て『うへうへ、私もまだ捨てたモンじゃないわね』とか思ってたし。
|
| 蒼星石ちゃんともみゆきちゃんともうまく行かなきゃ童貞貰ってあげようかなとか。
| あ、上手く行ってほしいのよ？ そしたらエッチな服たくさん貸してあげるからプレイに役立ててね」
|
|「ごめんちょっと情報量多いお！」
|「なんか違うのよね、元から体臭も薄いけど今はそれ以上に薄っぺらというか、味も見ておこう」
|「あっあっあ」
|
| いつの間にかジッパーを下げて直接かつ激しくねっとりイジられていた。
| やる夫は抵抗もままならずあられもない声を上げるばかり。
|
|「うう……やる夫の《サルディアの巨像》は死の見すぎで《ゲドン》《冬の宝珠》《宿命》状態なんだお」
|「ええー、《通電式キー》はないのー？ えいっえいっ《賦活》《賦活》」
|「らめぇ、高良が見てるぅ」
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r-‐‐= : "´: :￣￣￣: :` : .、
/`ｰ─=＝ﾍ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
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j/. : : : : : /: ﾊ : : : : : : : : : |: : : : : : ＼: : : : .＼
/. : : : : : : : : | | :l: : : : : : : :｜⌒ヽ : : : .＼: : : : ヽ
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〃 : : : / : : : /: :| j:∧: : : : : |/ _二._ |＼: : : : :ヽ`=‐ !
〃 : : : :Y: : : : : |: :|ｘ＝ ＼: : : { "「:::::::㍉､: :ヽ : : : }: : :｜ うぁ……？
Y : : : : : j|: : : : : ﾄ〃:::::::', ＼__ゝ{:::（）:::ﾊ}: : :ﾄﾐ: : 八: :｜
｛: : : : : :从 {: : : :Vﾍ::（）::} ヽ:::::ﾉ l : : |ﾉ.∨ ＼{
、: : : :f{ ﾍl＼: : `､＼:::ﾉ ｲ: : :|: : :{
ヽ: : :| `ﾄ､_ゝ r ﾍ 从 : |: : ﾊ
＼{ 八 `ｰij ,.ｨ'ﾘﾉ : ﾄ{ ＿
｀ｱT＝=ｧ‐‐=≦Tｉ7/. : /三三三ヽ
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| いつの間にか小窓から、ハイライトのない目をしたみゆきが覗いていた。
| トレードマークのメガネもロングヘアもない。
|
| 男の子みたいなショートカットで、落ち着かない目をキョロキョロさせていた。
|
|「洗うのが手間だから髪は切っちゃったわ」
|「高良……」
|
| やる夫は垂れたよだれを手の甲で擦るみゆきの姿に憐憫を感じなかった。
| 見ず知らずの誰かみたいに、他人事で、遠い存在に見えた。
|
| それが、ひどく悲しいことのはずなのになんともなくて、やる夫は胸に虚無が満ちるのを感じた。
|
|「……うーん、しかし本当に来るとは」
|「………お？」
|
| 体を離し、口を拭いながらしまむらコーデのやる夫を仁王立ちで見下ろす三四。
| エッグい下着を見せつけながら、鞭を片手でやらしくねぶる。
|
|「しかも明らかに黒ずくめじゃないわよね。『血族』の符号だとあなたはニャルラトホテプということになるわ」
|「…………げ」
|
| やる夫は青ざめた。鷹野三四がやる夫を『やる夫』と思い込んでくれている可能性に賭けていた。
| しかし容易く、三四はやる夫を見抜いていた。
|
|「その手錠は並大抵の魔力なら封じるわ。無理やり外したら『狂死』くんの魔力でドカン。
| ……さ、尋問で済むか拷問になるかは選ばせてあげるわ。
|
| あなたを恨んでいる人たちが来るまではね」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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i 八 ハ 辷ミ、｀丶、ヾヽ i! ハ ハ i l ヽ ＼ ＼ ヾ ､辷彡 ヽ
| ヽ いi i! ＼ヾ:､ ｀ミニ＝- ｲ / i i ! | !_,..．ゝ､辷ﾆヽ､ヽ ＼ ＼
| i ヾ:ヾ､ ＼ `ｰ-､ーｧｽ=- ｨ ﾊ/ _jﾑ-‐!ﾘ’ Ⅵ!.:.:,ｧiﾍく `ｰ=ミ
| |ヽ ＼ヾ ､ヽ ヽ ヾﾊ ﾉ / _,..イ´" ´ , ,._, iﾚｲ_ ｲ圦 ｀ヾ､
. 八 i! i＼ 、 ヾ ヽヾ:＼ ﾊ l | ,ｲ ィ" _.．‐_ﾆｨ禾ミ |!::! {!kj} ｀
/ ） ,′ｲ ゝ ＼、ヽ `ｰ≦． jﾉ " ,イ彡ィ弍乏ﾉν い､i|lｬハ
.:.:./ / / ! ハ ）ヾムィ'"´ ,ｨてﾆ=孑く`｀ Ⅷ:`".:.:∧ 街はやらない夫の話題一色ね。
.:/ / / / / _,＞’´ __ ､ ´´ }!.:.:.:.:.:.:.:∧
:′ ,′,′! ∧ｲ´ _.．-‐_,.ﾆミ:､ 八.:.:.:.:.:.:.:.∧ 経済的には
i ｲ j / ﾊ __..．-=才彡ｿ,. /:::Ni:.:.;≧ミ:∧ 日本も合衆国も株価が下落、
ｲ ﾘ∧ゝﾊ’ ∧イィ"_辷斗ィ''" /::::;ﾑ'": : : : :ヾ:ﾍ ドルもストップ安なのに何故か円は高騰。
ﾊ （くﾍ＼ ∧ ´ ヾ:. , ′;ｲ: : : : : : : : :.ﾊ:ヽ
ヾ:ゞ延≧､ヽ ∧ :' ∠才": : : : : : : : : : : :ﾍ┴-:.､_
ヾ:.:､ ゞ辷ﾘ:､ヽ ∧ _ .．: ´ ／: : : : : : : ;ｨ=-: : : : : :ヾ:i.:.:.:.:.:.:
＼＼`ﾚ’ ヽ＼ 辷ｭ､ _ ..ィ:ヽ´ " 〃: : : r==≠彳´: : : : : : : : :.`v:.:.:.:.
`ｰ=ミヽ ＼＼ ＼.:≧=- ．. _／: : : : : :＼_＿ ／__: : :／ィフ厂´: : : : : : : : : : : : ヽ.:.:.:
＼ ＼＼:ハ ヽ ＼.:.:.:.:.:./: : : : : : : : : : :ヽ: ri厂ミＹｭ:._才: : : : : : : : : : : : : : : : ;べ:､:
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| 秋葉原にあるメイドカフェ、入口は閉められ、ここ数日閉店状態。
| なにしろやらない夫のアジトになっているのだ。一般の客は入れられない。
|
|「若者の多くは怖いもの見たさで『集会』に参加するつもりみたいよ。当日は黒山の人だかりになるかもしれないわね。
| それと、一般の人は『第二の夢』の記憶が無いはずなのだけれど、面白い噂があるのだわ」
|「噂？」
|
| やる夫を抜かした参謀連中が頭を突き合わせている。
| 具体的には蒼星石、麻呂、不人気、ダル、四ツ目、雨宮夕日。
|
| ジャギは昨晩、『リトルボーイ』戦の負傷で療養中。黄泉は『血族』の会議に参加している。
| その他にやらない夫とアリカ、鹿島が朝食を準備中だ。
|
|「『やらない夫は死んで復活した』」
|
| 復活。それは救世主の証明である。
| 一度死して、後に蘇る。洋の東西を問わず『階梯を登る』伝説として伝えられる。
|
| 例えば、救世主ナザレのイエス。
| 例えば、廃棄物から福の神に成るヒルコ。
| 例えば、神性と王権を獲得するオシリス。
|
|「やらない夫はそれらに並ぶと？」
|「奇跡を起こしたファンタジーな存在だともてはやす連中が居るのは確かよ」
|「危険でおじゃるな」
|
| それは、やらない夫への『信仰」が生まれてしまう可能性を意味する。
| 個人を対象とした救世主カルトなど碌なものではない。
|
| 最悪勝手に教義を作り出して死ぬまで暴れる狂信者の群れになりかねない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ゝ _ _...L ヽ ヽ ）
（ __ ´ ` ） | | _ｲ:ヽ
「 / 「 __ | | (::､::. ＼
ゝ _ / / V´___) | | ）ヾ＼ ヽ
'/ .′ | （ _ | | イヾ::: ヽ:.ヽ |
// ! | 「.:.:.:..:)ヽ.._ _j レ' （ ハ: |: :| |
ｲ ! . ..:.:.:.（ __ ,| ＿ | ､＿__ .） |::|::. |: :| |
∥| |: | / /. ィ :/ ) ､γ, －､Y _.) |::|::. |: :| |
i! | |: │ ,ィ 升j/_j/ | |ゝし { { fひj j √.:.: |::| | |: :| | ついでに、
i! N. | ､ 从ヾ/ j/勿fぅ/ | | |ゝゝr_少':.: .:.:.:..:: |::| | |: :| | 『善行』についての考察も進んでいるのだわ。
ヽﾄ ..._ ゝﾄ-ゝ ゝ' | | |:.:./ /:.:／::.:., 人| | ~~ |
. | | | / /／ ／ . ' │ !
/ , ｲ |' /-‐ｧィ' ／ │ !
ヽ / | | / ,'イ_＿_ | i
/ ＼ ､っ / | |,/ - ‐ ¨ / | i!
'/ | :＼ i!＿_.| |´ _.. ー > | i!
i| |:::::::|＞‐┤ | |＼ . ´ ＼ | i!
i|＿|::／ | │ ! ＼ . | i!
「 r| │ ! / /! ＼ i!
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|「考察？」
|
| 理由は不明だが机に倒れ込みそうなほどにヘロヘロな夕日が口を開いた。
| 明らかに疲弊していて、喋ることにも気力を振り絞っている。
|
|「『善行』『良い行い』とは何か。それをやらない夫ファン……いいえ、信者は行動指針にするみたいよ」
|「危険度が上がりやがったな」「正義の名の下でリンチが行われそうだね」
|
| 正義をかさに着た連中にありがちなことだ。
| 正義は誰かを殴るための道具ではないというのに。
|
|「その調子だとやらない夫関連の噂はわざわざ流す必要がなさそうだな」
|
| 不人気が小さくうなずく。
| 彼女は町の情報収集と同時に、噂を流すのが主な仕事だ。
|
| なお、ネット上の噂話はダルが担当している。
|
|「ネット上だとやらない夫救世主伝説は加熱してるお。
| ただ、都民とそれ以外で熱量の差がありすぎて、ドン引きされてる感がたけーお」
|
| 『品川大聖堂の夢』も『第二の夢』も都民限定（含む町田市）だ。
| 記憶には残らなくとも無意識には刻まれているのだろう。その差は大きい。
|
|「それよりもジャンヌ様が態度を決めかねていらっしゃる」
|
| 急に厳格な態度を取るダル。『異端審問官』の顔。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, -‐ ￣￣ ‐- ､
／ rn ヽ
/ }ｲ i
| .=-‐斧‐-､. | , ジャンヌ様は東京そのものを焼き滅ぼすか、
ﾄ､_|､_.レ-＜二-‐――-二ﾑi__ノ|＿,
≧: : : : : :ﾄ{fﾓﾃ")厂frﾓﾃ")}': : :´≦､ それとも『第二の夢』の言うとおりに
-=彡,: : : : ﾐ辷￣￣ .i￣￣フ; : : : :ヽ=ｨ 様子を見るかで考えあぐねていらっしゃる。
'´|ｲ/: :ﾄゝ ｀i '´ﾉｨ: : ﾇ'≦
'リ7､ -‐ 彳ヾ`｀ シロッコの暴走にも憤懣やる方ない様で、
_/ ｀ ‐- __＿_, ＜´ ∨ 本国への報告も検討しておられる。
,=イ´ ゝ､ 〉ヽ､
ｨ＜ ｀ヽ､二‐- ､＿＿＿, -‐'´_ノ´ `ヽ､
-‐'´ ｀ゝ――――‐'"´ ｀ ‐-
／ ＼
/ ､ ヽ､
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| 本国とはつまり、『教会』の本場（正確にはその一つである）バチカン市国である。
|
|「私は機を伺い、今一度ジャンヌ様に諫言申し上げるつもりだ」
|「ダルさんに危険は？」
|
|「やるしかあるまい」
|「忠義者あっぱれでおじゃるが、命懸けで行うものでもあるまい」
|
| 到底聞き入れられぬと理解した上で麻呂。
| 星のときと同じだ。ダルは主人の怒りを買い手打ちにされることも厭わない。
|
|「黄泉から報告があったが、『邪悪帝国』と華琳、星は『血族』と協力関係を結んだ。
| 正直、華琳以外への寝返り工作は難しい」
|
|「何故だ？」
|「『邪悪帝国』には提供できる報酬がない。彼らは見た目と裏腹にしたたかで合理的だ」
|
| 『血族』との提携の約束があればこその密約で始まった関係だ。
| それが、『結社』撃滅作戦のどさくさでまとめて攻撃されかねないから互助的に身を寄せていただけの事。
|
|「趙雲は？」
|「一度は死ぬつもりだった女でおじゃるよ。しかしヤツは義に厚い。一宿一飯の恩義に報いぬ理由がない」
|
| 星と麻呂は半月ほどの短い期間だが友誼を結び同じ敵に立ち向かった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{ そのニャルラトホテプが『血族』側にいると知ったら？
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
<´o ' , ' , ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
｀）0 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
/-'-－'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ｰ-､
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| 四ツ目がポケットからタバコを取り出し口にくわえた。
| さっと灰皿を差し出す鹿島、しかし四ツ目は手で制した。喫煙者は彼だけなので、火はつけないのだ。
|
|「星さんはな……」「星殿はのぅ……」
|
| 趙雲子龍星がニャルラトホテプに怨恨あるのは確かだろう。
| しかしやらない夫と麻呂は言葉を濁す。
|
|「あの人は煮干出汁の家系ラーメンみたいにアッサリサッパリしているからな……」
|「その比喩だと華琳はこってり背脂創作豚骨ラーメンかな？」
|
| 粘着質で恨みを忘れないタイプ。
| 華琳ならばニャルラトホテプの情報を流せば適切なタイミングでの寝返りをしてくれるだろう。
|
|「そういえば、『糖分同盟』に宇宙戦の打診をしたが……
| ロリカードさんにお願いすれば星さんを揺るがせるかもしれないだろ」
|
|「なんで……いや、まあ、しばらく『ニュクス』に匿われてたけどさ」
|「多分わがまま言って毎日ラーメン作らせてただろ」
|「ありえるでおじゃる」
|
| 見てきたように語るやらない夫と、頷く麻呂。
| 仕込み中のロリカードと会議中の星が同時にくしゃみ。
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_ -──- _
／ ､、､｀ ､
／ // i |ヾlヽ､､}//＼ ヽ
//| / !∧/!" ∨!∨/////∧
//// |ﾊ'/|ｨ_二_ヽ∨///// i
///f''"二_{ Wf´芯 ' } バ/////! 最後に、僕らですね。
ﾊ//ﾊ'"苡ﾉ ｀ ー‐" ヾf 〉}'ﾘ
Wゝ-‐ ヽ ｕ ﾆ // ちょっと、しんどいんで、すいませんが。
圦 , -=ニヽ ｲ≦/
ヽ.u ﾏr_‐ﾆ-' /;::L'/_
＼ _ - ¨￣ ¨ - _
_ - ¨ｕ -‐_、 }
_ - ¨ _ ‐ ¨|ハ` ｰｫ┬､-､./
_ - _ t "´ ,..; !￣:ヽ`〈_>､ﾉ¨´
, "´ . . : . : . .＜: : ヾ ヽ ;: ﾊ : : : ソ
/ . . : . : . .＜i: : :/: : ｨ､:{_ ヽ ! !: : : : :ﾔ=: ._
/ ＜: : :､: :!: /:／: : }:|、｀` 、└‐! : /ヽ:∨: : ｀: .､
〈 _ - "!:|: : : : : :!: |:i/: : : : : :| ＼ ＿;!:/: : :ヽ}: : : : : : :＼
ヽ _ /:,! : : : : : !:i: ! : : : : ､:乂ヽ ¨¨_ -/:∧: : : : : : : : : : : : :ﾊ
￣ヾ;i;=-/:/: : : : : : : i!: :､: : : : |: : :! ∨∧ : : : : : : : : : : /:∧
ﾔi;/:/ : : : : : : : λ: :ヽ : : |: :/;:;. ∨∧: : : : : : : : : / : :∧
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| 机に突っ伏していた雨宮夕日が震える腕で体を起こす。
|
|「風邪でもひいちゃった？」
|「いえ、これから説明します。まず順番に」
|
| 『学校封鎖』の終わり、源之助たちに接触したやる夫たちのチームは、怪我人を治療しつつ現状を説明した。
| こころよく協力を申し出てくれたのは半数。残りは直前の戦闘の恐怖で戦意を失っていた。
|
|「まず、『夢の塔』攻略チームは合計二十一名。意識不明の早瀬浩一と島津由乃の姿はありませんでした。
|
| 『学校封鎖』時にジョニィ＝アリーの爪弾から源之助を庇い負傷し、未だ意識を取り戻さない早瀬浩一。
| 持病から集中治療室で治療中の島津由乃。本来ならどちらも『滅ぼすもの』を宿す強力な戦力だ。
|
| そして、二十一名の詳細は以下の通り。
| 不人気の協力者たるやんねえ香、ロラン、刹那。
| チームやらない子のやらない子、はやぶさ、タカオにアサギ。
|
| アトリーム亡命組の長門（弟）、マーガレット・咲夜主従。
| 元『破滅願望者』の上条、球磨川、夕日、美樹さやか。
|
| そして花京院と白雪ひめ。
| 最後に昨日協力を約束した源之助と、アーダン、橘あすか、貞山青葉、浅黄みかん。
|
| なお本編で名前初登場のみかんは、レイの銃撃から味方を守り続けた岩の大蛇の本体である。
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人＿ ノ
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＿):::..(. :::＼ |＼∧ ,..: ´: : : : : : : ｀:. 、 /: : ／ : :∠
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＼:::::::＼＿V: :/:／: :（_: : : : : : : : : : :): ::)斗-く: :_／
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|「《ストレンジカメレオン》によれば、夢の塔は百階層、昨日一日で十六階まで踏破しました」
|「クトゥグアが来るのはクリスマスだろ？ いいペースだな」
|
| クリスマスまでに夢の塔を踏破し、『ビスケットハンマー』を手中に収めねばクトゥグアを迎撃できない。
| そして今が十三日、あと十二日しかない。しかないが、一日九階登れば間に合う計算だ。
|
|「いや、微妙です。塔には人々の夢から生まれた怪物がうろついていて、上の方ほど強い。
| 現に十階で一度全滅しました」
|「え」
|
|「デスペナは激しい疲弊だけです。そうでなくとも探索すると疲労します。
| ペルソナを利用した際の消耗も異常に大きい。さらに、夢での疲労は現実にも影響を及ぼします。
| 徹夜で穴掘りした翌朝みたいな気分です」
|
| 徹夜で穴掘りなんて誰も経験したことがないが、疲れ果てるのは想像できた。
|
|「窓付きのおかげで僕らは『チーム』として扱われ、エントランスからエレベータで次の階にいけます。
| 最初の階で半数を送り込み失敗したので、三人七グループで攻略していた所、十階で突然敵が強くなりました」
|
| 三人……戦力分配次第ではあっさり負けそうだ。
| そして、その調子だと今のうちに稼いでおかねば後半間に合わなくなりそうだった。
|
|「そういえば、今朝はロランが寝坊していたわ」
|「バートンさんのメイドもだ、学校がねえからだらけてんのかと思ったぜ」
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. ＿厂￣￣| ｎ ｢￣ﾉ /＼＿
／}＼ }＞"／~￣￣~^''＜ﾉ 〉
. ／ ﾉ 、 }/ ／ /´ ＼ ＼＼｢＼
/ 厂＼_)/ / / | ＼＼厂}
__)＼ / / | ｜ ∨}
｜{_ ＿,/ / ／ / |＼ ｜ 〈
| _)＿/ ＿／/／ / 厂~^' ｜ |
｜ / ⌒}／ ''"~￣/｜ /ｨｆ竿ミ | ｜
｜ ⌒７ ｜/抖扞芋ﾐ |: /}/{;;ﾂﾉ ,ﾉ/｜ ハ
| /／⌒| | |,,V;;ﾂﾉ ﾉ/ ￣" Ｖ |｜八
. ∨ ／ 八 | | ＼ ヽ } ﾉﾉ/
ﾉ／ ＼ 八 |⌒ 人 ィ / うう……
. |｜ |〈 〈 ＼ ﾄ u └ ＇／ Λ|人 いわれのない侮辱を受けている気が……。
. |八 |Λ ∨ 〉 ≧=- __／〈 ∨ 〉
_)／}人〈 ∨ 〉￣￣| {＼ {⌒只⌒}
┌＜{⌒只⌒}/ _|＿_ ＼ ∨ 人∨
┌―＜ニニ∨Λ ∨＼ l | >┴―＜｣
|Λ ＿)＼ニニ| | | {_f7 ＼
〈／∨＼ Ｖニ|人 |＼ ＼ └〈 ＼
| {__／∨ﾆニ＼厂::| l ＼ Υ ＿ |
| ＼__/Λニニﾆ| :::＼ ＼/|〉:::::＼_ﾉ
Ｌ Λニニ| :::::: |ﾆ- _ |Λ:::::::∨
∨ ＼|ニニ| :::::: |二ニ- _|二|::::＼〉
| ＼「ニﾆﾆ| :::::: |二二二二 |::::::::::＼
| ＼ニﾆ| :::::: |二二二二 |:::::::::::::::}
｜ ｜ニ|:∩:::|二二二二 |::::::ノ厂
人 ＞―┘ニ|::|::::::|二二二二二Τ/
￣|￣￣ ｜ニ|::|::::::|二二二二二//
.,, ＿ ,,. 'ﾟ∨ﾆ|::|::::::|二二二二／|
Λ 〈|二|ノ⌒ 二二二二二|
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＼ //Λ | ＿＿＿＿＿／＾
. {＿／ﾆﾆﾆΛ ｜ ＿／ 〉
／ﾆﾆﾆﾆ/ Λ | Λ
／ﾆﾆﾆﾆﾆ/ Λ Λ
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|「『本当はミニゲーム的なのを雑談スレでやろうかと思ってた』ってばっちゃも言ってた」
|「ころすけか（作者の労力的に）」
|
|「さて、問題は二点です。まずは明日の『集会』に出せる手数が減ること」
|「塔攻略を今日は控えてもらうか？」
|
|「そうすると攻略が間に合わない危険がある。できれば攻略も続けたい」
|「必要最低限の人数を割いて貰えると嬉しいでおじゃる」
|
| 雨宮がメガネを光らせて頷いた。
|
|「すでに今朝相談済です。警備の配置と能力から考えて、やらない子さんのチームと、
| アトリーム亡命組、そして球磨川を合わせた八人が適役でしょう」
|
| 各々、それぞれの能力を確認。
| 致命的な結果をなかったことにする球磨川は『集会』において最も大事な役がある。
|
|「白雪さんも借りれると助かるな」
|「ひめですか？」
|「群衆の暴徒化を防ぐならメイドとはやぶさで十分では？」
|「広域のやる気パワーを奪えれば、武力衝突を防げる」
|
| これで九人。攻略班を削り過ぎか？
| しかし『集会』は東京を戦争状態に陥らせる危険がある。
|
| いや、シロッコはそうするべく仕掛けてくる。蒼星石は確信していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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斗-- ─ ─-＜
. ＞ ´ ｀丶, -＜
／ ＼. ＼
＞‐/ ／ 丶 ＼
. ／ i / | | ヽ. ヽ ∨
/ |: / l | ｌ | | :ｌ :ｉ | :| . ',
. / . l/ ,′| | | | | :| :| | :| :ｌ |
| | .| | ｌ :| | | |.‐ｌ‐ﾄ､ー| | :| :| |
| | .| |.-|‐l人 | | 八j ＼j | :| :| |
人 | | i 八j ＼ .|ﾉ 斗劣斥7 j 八 } |
. ヽ i 八 ',斗ｬ劣= ＼j ゞぅツ j / / .ﾉ 八
. ∨ 八. ＼ヽVcツ :::::::::ム' / ／ /!ヽ＼
| ｉ ヽ, ＼ ::::::: 丶 / /〃 ／ |￣ ｀ ヽ
| i ./ ゝ , ｲ / / / | |
. / i } 人 个 ､ ｀ イ/ / / ｌ 八 ij |
./ ,′ ﾉ_ ,,´ヾ ヽ ',＞ ´ iｌ ( i | ( ヽ、 |＼___
. ／ / イ´. | ﾊ l.､:::: ::::::.八 ＼ } ) ( /`ー‐､｀ヽ
〃 ／ / ﾉ._ノ_ﾉ | .: .＼ ＼ﾉ ( ) l＼ ) ﾉ
,' l v'´ _＿__ノ ヽ i 人 ( !ヽ ) ( (_
i/ 〃 ! u ( (__, .:/ ι ._ノ 人( ＼ } i|人( ｀⌒
{ ( :{ l .＞ー'..ｃ .::f ,-‐.`ー＜ )八l
.＼ 乂 ∧ :j 。 ヽ:::::,ﾚ'" . . . ..| . l l. l
＞ｰ─' i / y'´. . i|. . ..i!. .| l l
. l. l f´. . ヽ ﾘ. . .j . ｌ ｌ. ｌ
. | l r'´. . . . . ｀ﾊ, . . . / !. l
i ! ..「. . . ,,_,.､ . . . . . . f ﾟ | ｜
| ﾍ､:::::／| ﾚ「 ::＼ri. . . . l ｛. ト､
! ::7´ ! ﾉ :::/. . ｀|. . . l ﾉ, | ＼
l / ﾚ' ::::/l . . ｀ー､」 ` | ＼
l .l u ::::/ .li. . . . . . .l. l ι ヽ
ヽ :::/ | i . . . |. . .| | ヽ
ヽ､ .::／l. . i. l. . . | . . | | , ヽ
`ー '/ .|. . l . li. . |. . . ｌ. u ｌ ／ l
l .|. . l.. . li. .l.. . . l l ／ |
| ヽ:|. . |. . . li.l. . . ...| l::／ u l
| ::|. . !. . . lil.. . . ....| |::: l
| |. . |. . . . |. . . . . | ι l::: j
| |. . l.. . . . l. . . . . | .|::: /
| |. . ﾊ . . . |. . . . . | |:: f
（殺伐さの足りないスレのために意味もなく脱がされる鹿島の図）
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「もう一つの問題は？」
|
| 蒼星石の問いかけに、夕日が大儀そうにうなずく。
| 『集会』の人手不足はすぐに想像がついた。では、もう一つは？
|
|「『夢の塔』を攻略しているのは僕らだけではありません。
| 上層、少なくとも十階層は上に明確に塔を登る存在があります」
|
| 寝耳に水であった。
| 一同が顔を見合わせる。不人気が、鹿島のいれた紅茶に口を付ける。
|
| ただそれだけの動作が絵になる不思議。
|
|「やんねえ香から報告を受けているけれども、私達には心当たりがないのだわ。
| 『夢世界』の関係者はクラスメイトと五人の『法務官』なのだけれど……」
|
| 生徒たちは意識不明の二人を除き、全員の存在を確認済み。
| 対して、前の『夢世界』でゲームマスターの補佐役だった、五人の『法務官』は一人を除き死亡している
|
| そう、戦闘を忌避して攻略に参加していない、『囁くものシェオルドレッド』のマリナ・イスマイール以外は。
| 窓付きの両親も、アリー・アル・サーシェスも、そして昨日殺害されたクロトワも。
|
|「味方かもしれないと考えるのは楽観的すぎるでおじゃる」
|「つまり？」
|「ニャルラトホテプか、死んだはずの『法務官』のどちらかの可能性が高いでおじゃるな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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:::::::::::::::/::::::::::::::::!:.l::i:.:.:.:.:`ｙ: : : : : l: : l|: :.:.: |: 痛みの少ない方法にしてあげるけれど。
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|「優しくしてくださいお……っつうか、やる夫がマジニャルだったら危険だからこういうのはやめるお！
| 普通に殺されるか籠絡されちまうお！」
|
|「じゃあ証明をしてちょうだい。はい、ほんもーの！ ほんもーの！ やる夫くんのイイコト見てみてみたい！」
|「悪魔の証明！」
|
| 手拍子しながら煽る三四、やる夫は胸の奥で何かがのたうつのを感じた。
| でもそれが何なのかはわからない。目を凝らしても消えてしまう幻のように。
|
|「それで？ あたしの分のダッツは？」
|
| 拗ねたように唇を尖らせる三四、やる夫は瞬きした。ダッツ？ ハーゲンダッツって言った？
|
|「『邪悪帝国』のアイスの方が美味いお。つーか、二ヶ月も前のダッツなんて残ってねーお」
|「アレは『アイスの絆』が上がるからだめよ」
|
| 『ヒーホーブラザーズ』のアイスは食べすぎると雪だるまになってしまうという都市伝説がある。
| いや、店内の絵本にもそんな説明があった。
|
| 食べすぎて雪だるまになったアイス職人が店のマスコットだという設定だ。
|
|「なんでみゆきちゃんのお見舞いに来たの？ 口封じ？」
|「心神喪失って聞いたから……」
|
| 心配になった。いや、『自分なら心配して見に行くだろうな』と考えた。
| 今のやる夫には、みゆきは興味のない赤の他人だ。
|
| より正確には、何もかもが興味のない他人事だった。
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. ヽ l l ヾ:.:.:./ ;; | l ::::::::::::::::::::::::::ll:::::::::::::::: みゆきちゃんを見てどう思った？
ヽヽヽ ∨ ｀ ﾉ l ::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::
ヽヽヽ ヽ ヽ l :::::::::::::::::::::::::/:ﾍ:::::::::::::
ヾ ､ ＼ ヽ , ､ l ::::::::::::::::/::::::/::::ﾍ::::::::::::
＼ ヽ| :.:.ヽ =二二 シ l ::::::::::::::::/:::::::/::::::::ﾍ::::::::::
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|「え？ なんとかしてあげたいと思ったお」
|「…………キミ、入即やる夫くんだよね」
|
| やる夫は背筋が凍りついた気がした。
| 鷹野三四は、とっくにやる夫をやる夫だと判断しているのかもしれない。
|
| だが、その上でやる夫の異常に気付いたのだ。
| おそらく、やらない夫も蒼星石もアリカも気が付いていない状況を。
|
|「一個一個の反応は私の知るやる夫くんなのだけど、おかげでチグハグになっているのよ。
| 私とのメタなおふざけよりも、シビアなみゆきちゃんの状況を重視するのがやる夫くんでしょう。
|
| そしてきっと、やる夫くんならば自分が拷問にかけられるような状況でも、
| みゆきちゃんの心配をしてみゆきちゃんがどうしてああなったのかを聞くわ。違う？」
|
|「高良に何があったんだお？」
|「あなた、鉄でできてるんじゃない？」
|
| おふざけを継続しながらも、三四は氷のように辛辣だった。
| やる夫は深くため息をついた。
|
| 三四との付き合いは十年以上、最初の頃は鬼気迫る表情で入即貸本の本に齧りついていた。
|
| それが、いつの頃からか喋るようになった。
| 気がついたらバカ話も猥談も謎の噂話もメタなネタもやるようになっていた。
|
| 十年以上。積み重ねの果てに。
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／￣￣￣＼ 品川大聖堂地下に、
／ ─ ─ ＼ つい最近まで封印されてて存在があやふやなんだお。
／ （〇） （〇） ＼
| （__人__） | やる夫が本当にやる夫本人なのか。
＼ ｀ ⌒´ ／ 逆に聞きてえくらいだお。
／ ＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 虚無の瞳でやる夫は答えた。
| 三四は悲しそうにその目を見つめ、胸の谷間から小さな鍵を取り出した。
|
|「行きなさい、やる夫くん。もうここに来てはダメ」
|「鷹野……」
|
| 手錠が外される、開放され、やる夫は赤くあざの付いた手首をさすった。
|
|「あなたがやる夫くんで、『血族』にいるのがニャルラトホテプだとしても、私には関係がないわ。
| 悪魔を調べ尽くす、神を殺す。それだけが私の目的。その為ならなんでもする」
|
| マッドな科学者だというだけではない。何かしらの信念を感じ取ってやる夫は押し黙った。
| 鷹野三四は説得には応じまい。
|
|「みゆきちゃんは必ず守る。私の目の黒いうちはね。
| それに、キオくんが植物状態の翠星石ちゃんに呼びかけているのは知ってる？
|
| 超能力で精神を繋げることで脳死状態からでも連れ戻せるかもしれないの。
| 成功したらみゆきちゃんにも応用できるわ」
|
| 植物状態の。イメージでは理解しているが、やる夫は少なからずのショックを受けた。
| そして、自分がショックを受けたという事実に驚いた。
|
|「やる夫は……」
|「静かに帰りなさい。ニャルラトホテプがあなたとみゆきちゃんに目を付けないように」
|
| それ以上の言葉を口に出せず、やる夫はノロノロと立ち上がりスゴスゴと帰るしかない。
| 言いようのない脱力と無力感に苛まれながら。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_ て
／ ＼ そ
／ ─ ─＼ …………待てお。
／ （●） （〇） ＼ 精神を繋げる？
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 立ち去ろうとしてやる夫は一つの可能性に思い至った。
|
|「鷹野！」
|「きゃん！？」
|
| 振り向いて三四の両肩を掴む、やる夫の思わぬ反応に対処できず、押し倒す形。
|
|「『人間の精神を繋げあわせてクラウドを作る』『ザンヤルマ』『ここではないどこか、楽園まで』
| 『強制ゲシュタルト』『集団の意識を収束することで世界の破滅に対処する超意識を作り出す』『魂のタペストリ』
| 『ヒトはわかり合えない』『楽園の子守唄』『連鎖的拒絶反応』『融解と消滅』」
|「あん、らめぇ……攻守逆転もいいわよね！」
|
| 受け入れ可能な三四に、口角泡を飛ばし意味不明な言葉を並べるやる夫。
| すぐに異変に気付き三四は瞬き。
|
|「やる夫くん？」
|「『人類補完計画』！ 『人類補完計画』！ 『人類補完計画』だお！！！」
|
| 叫びながら三四を抱きしめるやる夫。
|
|「サンキュー鷹野愛してるお！ 『人類補完計画』はキオによる翠星石への治療が起点だお！
| 『血族』の計画が狂って、それを別の何かに応用しようとして失敗する！ それだお！」
|
| 狂気じみた……いや、やる夫の狂気そのもののに触れて、三四は怯えた目を向けた。
|
|「やる夫くん……本当にどうしちゃったの」
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☆ 次回予告！
そして来る次なる死地。
危険と不穏と剣呑が混ざり合い、混沌のマーブル。
逃れ得ぬ破滅の爆心地。
幕を上げるのは幻惑のカーニバル。
投げかけられる悲鳴と銃声。
高まる重圧、凶暴な獣性。
請求される超高度の期待値。
可能かだって？ もちろん出来る。
今から始まるその集会。
備府やらない夫の槍舞台。
次回、最終幕七十七話『やらない夫の集会』
果てに見るのは破滅か死か。
そういえば、人類補完計画みたいな一つになるモチーフってどのあたりまで遡れるのだろうと、ふと気になった
幼年期の終わりのオーバーマインドへの合流より前あるかしら、神話とか？
人類補完計画はケンシロウ絡みかと思ったけど、ケンシロウは大震災の方なのかな？
死後の魂は全に還り、また一に分かれて生まれる的な論理だと、輪廻転生的な死生観において一般的ではないかと。
あるいは地母神への胎内回帰的な考えですかねー。
社会を構築する『人間』という存在を俯瞰して言い換えただけな感覚もあるなぁ
乙
死が見えるというのはこういう事やなあ。外から見たら狂人
全知全能の唯一神を頂くと結局世界のすべては神と合一って解釈もあるわいな
人の魂は神から零れ落ちた一滴な方向に行くと
方向性間違えるとデビルマンになっちゃうんだよなあ（目反らし
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ヽ ゝヽ丶丶＼ ＼ 丶 ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 丶 ヽ ヾ ゞ 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶＼
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼＼ ＼. 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶. .、 ヽ
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼丶丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶／,,;;;;／ ,,,...
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ ゝヽ丶ヽ ゝヽ 、ゞ ヾ丶 ゝ／,,,;;;／ 册册
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 ヽ ヾ ゞ＼ヽ ゝヽ丶丶 、／___／ _,. 册册
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 丶丶ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼／ ／| _,.-r'| | 册册
ヾ丶＼ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ＼ヽ ＼ ＼丶 ヽ／ ／ ,..| | | | | | 册册
ヽ 、ヾ ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ ＼ ヽ＼＼丶ヽ/'~T.,.／|川 j_l,.r-'¨ 卅卅i_,.
ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼ ＼ヾ丶 丶丶丶 /,.T¨il i l l l川__,,... -‐ ￢¨
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. ,l:lj|川_'¨三.ノ____,,,,,.....................
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| 早朝まで続いた雨は日の出前には止んでいた。
| 師走の半ば、季節はめっきり冬である。
|
| とはいえ、年内の東京に雪など降らない。
| 雨は寒気を呼ばず昼間の暖かさを閉じ込めて、その朝の冷え込みはそこそことなった。
|
| 日の出以降は雲も少なく温かい日差しが降り注ぐ。
|
| 北風は冷たいが平年を大幅に越える暖かさになった。
| 少しばかり寒いが、我慢できないほどでもない。集会日和と言うことだ。
|
| やらない夫は東京で二つの夢を見た人々だけでなく、県外や外国の人間にも注目されていた。
| 『12月14日 午前10時 芝公園』というだけのやらない夫の宣言。
|
| 具体的にどこに現れるのかは不明であるため、
| 複数の局のテレビクルーと思われる人員が落ち着かない目つきで早い時間からうろついている。
| そこには日本人だけではない、外国のテレビ局のロゴも散見された。
|
| やらない夫をカメラに捉えようと画策するのはなにもテレビだけではない。
| 多くの人々が携帯電話やデジカメを取り出して構えていた。
|
| 年代的に今だスマートフォンは普及されておらず、彼らが手にするのはガラケーばかりである。
|
| 日の昇った午前八時、芝公園はすでに人で溢れていた。
| 人々はこれから始まる『何か』に期待していた。
|
| 日常がすっかり変わってしまうかもしれない。
| やらない夫は遠いどこかに連れて行ってくれるかもしれない。
|
| そんな妄想をして、身勝手に待っていた。
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. /￣¨Ｙ ヽ ＿ /¨¨∨ | .}ヽ. /＼__ﾉ /'¨} i{ | {＿人___ﾉ ﾉ
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. }__}. | | { ﾉ ) /}v|ヽ人.＼|. |＼_／ .|: | |{/￣￣ヽ /八リり.ノ ＼ { .∧ ∧
. ＿＿/} |＿＿| |/￣ ∨ヽ. ! |: | |｛ ￣|}.__|＿.}」 .|: | |'. ＼ ト､{ | | ｜ / | | }
. | |′ .}ﾉ/ / } L|:_|..ﾉ | | || { }: |. / ＼＿_∧ | | | / :| | |
| | | f: |/} }＿| | | | | | || /} | }: |/ |:| / :| | | :{ :| | |
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| | } |: | ニニﾆ}_.」 に}つ /__{...| { | | ｜＼_________从.{＿＿＿_____:| .| :j :| | |
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. └─|＿つ⊃ とつ 匕 └‐┴‐┘ | | | {. | .| :{}二|＿ |ﾆ|
| |＿＿＿| 人＿＿＿＿__} .| / }{_| | ｜
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 午前九時、集合時間の一時間前。
| どこのテキ屋か、屋台が並び始める。
|
| たこ焼きやフランクフルトなどのホットスナックや、温かい飲み物。
| 温かい日とはいえ、人々の多くが屋台に押し寄せた。
|
| 気分はお祭り騒ぎだった。
| 期待ばかりが盛り上がり、妙な熱気を放っていた。
|
| だが、その明るい和やかさはそこまでだった。
|
| 午前九時半、物々しい雰囲気の人々が芝公園を包囲する。
| ヘルメットをかぶり、カーキ色の制服を身に纏った彼らは、一体どこの何者なのか。
|
| 駐車禁止のエリアでも構わずに車を停め、緊張感に満ちた男たち。
| 明らかに訓練された動き。
|
| 無駄口を叩くこともなく、無線で連絡を取り合い適切に配備。
| 少し離れた位置にある装甲トレーラー車の中で、色素の薄い目の男が薄く笑う。
|
| 五島ムスカ。陸上自衛隊である。
|
| 物々しく、なおかつ目立つように配備された自衛隊。
| 彼らは一般人を威圧した。その威圧すら目的だった。
|
| テロリストとして指名手配される男の呼びかけに答えた人々に、その行為の異常性を見せつけるための威圧だった。
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, '´ ￣￣ ` ､
i r-ｰ-┬-‐､i
| |,,＿ ＿,{|
Ｎ| "ﾟ'` {"ﾟ｀lﾘ
ﾄ.i ,__''_ !
／i/ l＼ ー .ｲ|､
,.､- ￣/ | ｌ ￣ / | |` ┬-､
/ ヽ. / ト-` ､ノ- | l l ヽ.
/ ∨ l |! | ｀> | i
/ |｀二^> ｌ. | | ＜＿_,| |
＿| |.|-< ＼ i / ,イ_＿__!／ ＼
.| {.| ` - ､ ,.---ｧ^! | |￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣l
＿_{ ＿__|└―ｰ／ ￣´ |ヽ |＿__ﾉ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_|
｝／ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'ﾞ l |
＿_fﾞ/／￣￣ ＿ -' |＿＿＿＿＿ ,. - ￣ ＼＿＿__|
| | - ￣ ／ | _ |￣￣￣￣ ／ ＼ ￣|
＿__`＼ ＿＿ ／ ＿l -￣ l＿＿_ ／ , / ヽi＿__.|
￣￣￣ | _ 二 =〒 ￣ ｝￣ ／ l | !￣￣|
＿＿＿＿＿__l -ヾ￣ l／ l| |＿＿_|
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| だが、自衛隊の影に隠れるように潜む者たちがいる。
|
| 群衆の中に紛れ込み、まるで普通の野次馬みたいなアホ面を下げて。
| あるいは興味の無いようなフリをして。
|
| 私服警官たちである。
| 彼らは備府やらない夫を確保するべく身構えている。現れたら逮捕する。それが彼らの仕事だ。
|
| ……さて、表向きの組織はその二つ。
|
| だが、その他にもいくつかの影。
|
| 『血族』『教会』『異端審問官』『武僧』……。
| 闇の世界の住人たちも、やらない夫の登場を手ぐすね引いて待ちわびていた。
|
|
|「本当にやらない夫が来たらどうする？」
|
|
| ふと、誰かが口にした。
| カメラに収める、録画する。それだけか？
|
| 警察や自衛隊はやらない夫を捕まえようとするだろう。
| では、それ以外の群衆は？ 人々は？
|
| 具体的にやらない夫に何かを求めてきたのか？
| 何かをしに来たのか？
|
| この場に居合わせてしまった以上、主体性のない野次馬でいられるのか。
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| やらない夫が捕縛され、縄をかけられて連行されるのをただ見ているだけなのか。
| それはつまり、『そいつらの側』に付くことだ。
|
| では、逆にやらない夫が捕らえられるのを阻止するべきか。
| それはつまり、『やらない夫の側』に付くことだ。
|
| やらない夫が悪と、敵と叫ぶ陰謀論上の存在。
| それらに従い生贄の羊が屠殺されるのを冷笑的に見ればいい。
|
| 今までどおりの平和な平穏がお前たちを待っているだろう。
| だが、次の生贄はお前かもしれないが。
|
| あるいは警察が『国際テロリスト』と発表する男の手助けをして、犯罪者の烙印を押されてもいい。
|
| それがやらない夫の用意したここではないどこか。新しい世界。
| そこに至ればもはやお前に平穏は訪れない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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r（ ,、_ /
ゞ, ｒｒ〜ヅ´ ﾐ ,'.
ﾌﾊ _ ﾐ {.
. ｜_.. -'_"-'´＼ r'⌒ヽ { やらない夫に会ったら何か聞きたいか？
ﾞi`'''Tjフ } ﾐトｰ } ｌ
,' ,.‐'" { {い) / ﾉ_
,' ゞﾞ ｆ ｸｧ ―`‐- 、.._,､-'´
〈.､,.. ,.‐'´ `' 、｀`丶､
)__.. -ｧ ／
Y´_ ./ ＼ ＼＼
ﾞiﾞ { ＼ ＼＼
丶、,､イ ＼ ＼＼
{ ＼ ＼＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| つなぎの男が屋台でリンゴ飴を売る男に声をかける。
|
|「特にないな」
|「俺はこう聞くね、『ドミネクォ・ヴァディス』」
|
| 冗談めかして言う男、店員は笑う。
|
|「ここがやらない夫のゴルゴダだって？」
|「違うのか？」
|「違いない」
|
| 二人は笑う。
|
|「やらない夫は答えるだろうよ。オレは救世主じゃない。ただの扇動者だ。
| 本当は未踏の荒野を目指したいんだが、実はどこにも行けなくたっていい。
|
| 欲張っても二本の足でしか立てない。慌てても歩幅分しか進めない。
| 結局は諦め悪く足掻いてちょっとずつでも進むしかないんだ」
|
| 店員はリンゴ飴を差出し、小銭を受け取った。
| なで上げた髪は、妙な質感と違和感がある。
|
|「まだどこかに行くつもりか？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__） ここはまだ途中なんだ。
. | ﾉ 頂上なんてないんだ。
| ∩ ノ ⊃
／ .／ ＿ノ そう信じているからな。
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
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|「……そうか、いい男になったな」
|「元からだろ？」
|
| 店員は微笑み、エプロンを外した。
| 屈伸し、大きく伸びをして屋台を後にする。
|
| 誰も彼に注目しない。
| つなぎの男を除いて。
|
| しかし彼はりんご飴片手に元のベンチにどっかり座った。
| このあとの流れを目に焼き付けるために。
|
| その間に店員は、かつらをかなぐり捨て、防寒の上着を脱ぎ捨てた。
| 動きやすい服装になった禿頭の店員、クリスマスのイベントのために設置された野外ステージに近づいていく。
|
| 誰も、見咎めなかった。
| 気が付いても、ポカンとしたまま素通しだった。
|
| 私服警察の一人が金切り声を上げる。
| 自衛隊たちが一斉に警戒態勢を取る。
|
| その中で店員は、何故か電源の入っていたマイクを引っ掴んで叫ぶ。
|
|「『全員警戒態勢を取れ！ 近くの自衛隊を頼れ！
| 車が突っ込んできたり、毒ガスが撒かれたり、オレが狙撃されてもパニックを起こすな！
|
| オレを見ろ！ そして生きて帰れ！ それがお前たちのやるべきことだ！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,, -‐ ､
/' ヽ
／￣￣＼ ./ i
／ ._ノ ヽ､＼ / ...........i
| （●）（●） | / ..:::::::::::::::|
| （__人__） | / ..::::::::::::::::::l
.| ｀ ⌒´ .} ./ ..::::::::::::::::::::! 冷静さを失うな！
| }/ .::::::::::::::::::::/ 恐怖に負けて暴力に逃げるな！
ヽ ./ .:::::::::::::::::::/
.ヽ . .／ .:::::::::::::::::::/ 『奴ら』がいるならばそうやって暴徒化したあんたたちを
,. ‐'"´ `'‐,r''"~ .:::::::::::::::::／ オレの考えに賛同するかもしれない人々を
..:.／,. -‐‐- ､ l′ ..:::::::::::::／| 血祭りに上げたくてウズウズしているはずだ！
:,' ／ !.:::::::／:i..:..l
r ､ / !::::::::::: i..:..i
l .......`:i i !:::::::::: ﾞ､:.i
! ::::::::::/ i i:::::::::: ヽ:i
.! ::::::::/ i .....i::::::::::: ヽ
.ヽ ::::::| `､ `､ .....::::::::::::l:::::::::::: `,
/ ＼:::l. `､ ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: /'''ー─----､
`ヽ `､ .::::＼:::::::::::::::|::::::::: /,, ,. ‐;''
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| ハウリングするマイク。午前9時57分。
| 備府やらない夫の登場。
|
| 驚愕する人々。本当に来た！
| そして、その中でほくそ笑む男がひとり。
|
|（馬鹿なやつだ）
|
| パニックを、混乱を巻き起こすにはどうしたらいいだろうか。
| パニックの種は不安と恐怖と無理解である。
|
| 何が起きているのか、この後どうなるのか。
| 何もわからない状態でさらなる恐怖を与えることで、群衆は容易く暴徒になる。
|
| やらない夫の叫びは冷静で、人々に落ち着いて行動することを説いていた。
| 彼の声はよく通り聞きやすく心にスッと入り込むが、いかんせん群衆は状況が把握できずにまごまごするばかり。
|
| であるならば、あとはいつも通りだ。
| 男は爆竹を密かに点火、乾いた破裂音が芝公園の広場に響き渡る。
|
|「こどもが撃たれた！！」
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/ ¨ __ _
-/.ｘ≦ｧ'~７i:i:/|i:i:7i:; _
イi: ／ /i:i:/ ;|i:i:i |;i Ⅶi:i:r _
i:i ﾞ' /i:i:/ |i:i:i |;i Ⅵ:ﾊ ∨ﾊ ¨ _
/ /i:i:/ ;|i:i:! |;! Vi:ﾊ. ∨ﾊ ＼ヾ - _
/i:i:/ |i:i:! |;! Vi:ﾊ. ∨ﾊ ヽi:i＞≡≡7 .ｧ _
, /:i:i/ ;|i:i: !ｉ :Vi:ﾊ. ∨ﾊ,＞'''´ヾﾊ // ./ 、
≧/;／,,_＿ |i:i: !i Vi:ﾊ.._ V〃 ◎ ﾞ,! 〃 ,:/ ∨ ∨
￣|i' ｀ﾞ＜ミ,￣ Ⅶ__ｉ!＿__ x'i:イ¨`ヽ.V=- _＿／´／/ ｉ ∨ ∨
il ◎ ｀ ＜,〉';i ! ＼ /' Vl `Ⅶ――＜￣￣/ .l, ∨ ∨
ヾ i!＿__ ,,. ＜/ . ', i!_ ` `:}i!ﾞ ＼, ￣｀7 | ヽ, ∨ …………ぐぐ。
―.|―‐.ｧ'´ ./ / i! ｀ 、 },' ＼ ./ | ＼ ∨ なにを…………して、いる？
／ﾞ / /ﾞ i! ｀ ､ /＼/ .| ` |
ヽ,／ ./ / ,i!,＿＿_ ｀ ､ / _,,／￣| |
＼ / /ﾞ ／~.i! ￣ `'＼ /´￣ ＼ | |
＼′ /／ .l ＼ ｀ | |
――--.＼ / _, -.... _＿ ＼ | |
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|「むぐ！ むぐぐ！！」
|
| ロングコートにフードの人影が、暴動を扇動せんと画策した男の口を塞いでいた。
| 毛糸の手袋越しの指は針金のように細く冷たいが、その膂力は人並み外れていた。
|
|「ふぅーむ……その顔、見たことがございますぞ？ シロッコ殿の部下ではございませんか？」
|「…………ジル、詳しく……聞け」
|「おお、おおジャンヌぅ！ お任せください！！」
|
| 魚のようにでぱった金壺眼の怪人が、滑る手で男の口を抑えた。
| 『異端審問官』！ 『異端審問官』が何故！！？
|
| 何が起きておるのか、このあと自分がどうなるのか。
| とりあえず大丈夫ではなくなることだけは確実で、男は恐慌をきたした。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●） 愛する人を思い出せ、愛するものを思い出せ！
｜ （__人__） それがあんたたちの守るべきものだ！
| |r┬| .}
| | | | } オレを見ろ！
,..-'ヽ ｀ﾆﾆ } 破滅と喪失を恐れろ！
./::"::::`ヽ､.,＿＿ __ノ ﾞ
/::i::::::::::::"'弋'!ｰ',イ>|'_ノ´｀ｰ -,,＿ _ あんたたちの愛するものを失わないように！
. }:::ﾞ|::::::::::::::::::::~ﾞ:_戈;f" 、 ｲ/ `i
/:::::::!;:::::::::::::::::::/',r.ﾃ ＼xｰ.ｫ､__ノ
::::::::::::ヾ!:::::::::::::l .l r' ` ､_冫y"
:::::::::::::::::＼o:::::l .ﾄ、 ヽ,＿ﾉ"ｰ'
:::::::::::::::::{::::{＼代 l>ｰ､,_ノ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| やらない夫がステージに這い上がりマイクに叫ぶ。
| 野外ステージはクリスマス用、今日は使用目的がなく、スタッフもいない。
|
| 誰も止めない、周囲に人もいない。
| 狙撃でも、爆殺でも、他のなんでもいい。
|
| やらない夫を殺害するには最高の立地。
| 誰も道連れにせずに殺されるには、最高の立地。
|
|「狙撃に適した地点は！」「すでに人を回しています」
|
| 駐車場に停められた警察の支援車両。
| その中で現場指揮を任されたナタル・バジルールが管制官に指示を出す。
|
|「ダリダ！ そろそろ来るぞ。気合を入れろ」
|「任せてください、やらない夫側にできたんですから！」
|
| 自衛隊に群衆の護衛を任せながら、警察は小回りの効く配置で臨機応変に動いていた。
| 彼らにとって一番警戒するべきは……やらない夫や、扇動者以上に。
|
|『おもちろぉおおーい！ おもちろぉおおーい！』
|「来ました！ 電波汚染！！」
|
| コーディネーター級ハッカー、ダリダ・ローラッハ・チャンドラ二世が不敵な笑みを浮かべる。
| 『モーリアンビル攻防』でも『学園封鎖』でも発生した電波妨害。
|
| 『学園封鎖』においてはしかしやらない夫はそれを突破して放送を垂れ流した。
| スーパーハカー・ダルによる陰ながらの尽力だ。
|
| この電波妨害に阻まれては、連携など望めない。
| 扇動者も、暴動も、やらない夫も止められなくなる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ / / / / / } / Y ヽ ヽ ヽ
/ / / / / / ; / l ﾞ; Y ､
j l / / ; j j / / } l l l l l キタキタキター！
l l / / ; l { / / / j ∧ l ／ ﾄl l 電波汚染ッス！！
j l / / / l / / / ∨ ／ } ｜l }
∥ l/ ノ / ｜ ／ / / / l／l l l l l ﾄ、
／/ / ／/ / / l ／／ ／ / / / ／l ,,,xz斥 j j} l ; ＼
／ / ／ ／ / / /l ／／ ／ / /l / ／ ,,x芹 ∥ j ∥ l / ＼
／ /／ イ {／ ／/ ／ ｜＿__/ ／ ／ ／// / ,;爻::::ﾉ /l/ / // / ＼
／ ｲ ／ イ ／ ／ l /￣／ｰ----＜_,,,// 癶;;ﾟ／ メ`/ / ／ / } ヽ
／ /八 ￣￣ ﾞ、 イい -‐气宀ir====云=ミz ／ `~'~ ／ ／ l / / ｝
./ ｛ ＼ ﾞ､ ヽ ＼ l/＼ ＼:::::ﾟ:::ノ ／ l:.. ／ ／ / / ／ ／
｛ 八 ＼ Y ＼ ＼ `'''冖''''" }ﾉ ￣ / ／ / ／/ ﾉ} ／
＼ ＼ i `ト....＿三ﾆ= __ノ ／ ／ ／/／:::/／ｰj/ ＿＿
＼ ＼ ヽ l } l l `ト `ー-=xz-x〜ｽノ ／ ／::l/／ l:::{/:::／::::::::::｛::::::::::::::::
`〜､ ＼＿ Y j / l l ＼ `ト 、 ￣￣ ／ /:::::::l/:::l l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
＼ヽ l＼ } j / ノj l ＼ ｰ- ＿／{八 /::::::::::{::::::l l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
)ﾉ l::::::＼ ﾉﾉ／ ／:::::jﾉ ＼ / | ﾄ {:::::::::::::::::::l l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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| 別の駐車場に停められた『血族』の指揮車両。
| 華琳の部下で『グレン団』所属の走り鳰がエナドレ咥えて鬼気迫る。
|
| こちらは警察とは少し目的が違う。
| というのも、この電波妨害は『カトルカール』のブッティ・スケアクロウによる妨害工作だ。
|
| 単純な電波妨害ではない。
| 味方の電波だけより分けて妨害する。
|
| 自分たちは電波を使い放題で、敵は盲目。
| 最悪の攻撃である。
|
| そして、この場で妨害工作に及ぶということは。
|
|「霊夢！ 巡音の調子は！？」
|「ダメ、動けない！ ルカをなんとかしてくれんならお金出してもいいわ！」
|「霊夢が金を払うレベルか……」
|
| 指揮官車内にいたカミナが嘆息する。
| 『カトルカール』が動いて、もしもこの芝公園をも地獄に変える気なのならば、阻止しなければならない。
|
| その為の戦力として、ルカは必要なのだが……。
| 『学園封鎖』で何があったのか、精神的落ち込みが強すぎて干からびた梅干しみたいになっているのだ。
|
| 昔の同僚に、マーラ様が薄い本みたいな命乞いをしたせいである。
|
|「出るぜ『グレン団』！ 行儀よく行くぞお前ら！」
|
| コワモテのヤンキーどもが、危険とパニックに怯えずに人々の安全のために動く。
| マスコミは嫌がりそうたが、絵面的には最高だろう？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＿＿
／ . ＼
／._ノ三ﾆヽ、＼ オレはここだ！
| （⑪）（⑪） .｜ オレはここだ！
. | （__人__）.. |「ｒｰ＿＿ヽヽ
| ｀ ⌒ | .＼ ＼┌ｰｚ＿_ ┐７ 暴動も戦争も憎み合いもいらない！
. ヽ , ィ==‐､/ /￣￣乙/ ／ オレだけを狙え！
ヽ ﾉ⌒) ∨/ ／￣￣／| オレだけを殺せ！
/ (_￣__／￣`く.＿ __∠ -┘｣
| /〃 ＼ '" ＼ -┘ そしてそれを最後にしろ！
| ./¨＼ ＼,_ ｀`ヾ}
. 人''" ＼ ､__ ｀ ､_/ ﾉﾉ
〈 " ＼ __.ヽ ヾ､._,)'´
／,ﾊ. ヽ. ､__｀ン{ 〃
く / ∧ !､_ ｀'_,／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| マイクが異音を放って停止、だが負けない音量で叫ぶやらない夫。
| おっとり刀で駆けつける警察官、やらない夫は己の額をコツコツ叩く。
|
| 狙撃への挑発……であるが、正直言って狙撃は勘弁してほしかった。
|
| ……やらない夫は死なねばならない。
| この集会で『敵』に殺されなければならない。
|
| 『血族』が、蒼星石が書いたシナリオをそのまま使う。
| あとは志摩子とフリットがなんとかしてくれるだろう。
|
| 問題は死に方と、死体の処理。
| 誰もがやらない夫の死を確信しなければ意味がない。絶対死んだと、ショッキングな死に方が最高だ。
|
| 死亡を確認されて、だが死体は回収したい。可能なら死体のない爆殺とかが最高だ。
| そのために、球磨川禊が待機しているのだ。
|
| やらない夫は殺されて、球磨川がなかったことにする。
| 『血族』も『教会』も、そして一般人もそれで煙に巻く！
|
| やらない夫は叫びながら警察から逃げる。
| 人のいない方向を探して走る。
|
| 巻き添えで誰かを殺さないように。
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| 空中のドローンでそんなやらない夫を見下ろしながら、レイ・ザ・バレルは自らも作戦のために動く。
|
| ここでの殺戮、ここでの破壊は後々のために必要な布石だ。頼める相手は君たちしかいない。
| パプテマス・シロッコにそんな風に頭を下げられては、胸に抱いた疑念など掻き消えてしまう。
|
| 何よりレイは実績が必要だった。
| あの新入り、ロビンにはけして負けられなかった。
|
| 一昨日、『学園封鎖』から帰還したレイたちをシロッコは労った。
| 叱責はなかった。作戦はあからさまに失敗したというのに。
|
| レイは簡単なミーティングのあと、シロッコに頭を下げた。
| 謝罪した。自らの失敗を恥じた。
|
| その上で、彼は懇願した。天使核はもう一つあるはずだった。
| それを自分に移植してくれ、自分も天使にしてくれ。
|
| いずれ来る完成された世界のためにも、デウス・エクス・マキナとしてヒトを越えた存在になりたいのだ。と。
|
| シロッコは困ったように微笑んだ。そしてレイの頭を撫でた。父親のように。
| 言いようのない不快感と、安堵感。矛盾に苛まれながらレイは我慢した。そんな彼にシロッコは囁く。
|
|「『やらない夫の集会』を、予定通りに叩き潰す。君と、ロビンで。
| その成果で、どちらがより天使に相応しいかを判断しようと思っている」
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／ ヽ
／ Vー、
, ィ V ヽ
／ / V ノ
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| レイは機械で作ったニ偽ヤーボを動かしながらロビンとやらない夫の様子を見る。
| ロビンはやらない夫を始末しなければならない。シロッコの信頼を得るために。
|
| 『生贄』は当初の予定通りに合衆国軍だ。
| ヤーボ大佐と、彼の指揮下にあった部隊がこれから芝公園を血に染める。
|
| 日本史に、そして合衆国史に残る大惨事になるだろう。
| 二カ国の権威は失墜する。そして代わりに台頭するべきは……？ 共産圏である。
|
| 前日から潜ませていた合衆国兵士に指示を出す。
| これから彼らは、無辜の市民を無意味に殺す。疑問はあるだろう。だが命令だ。
|
| そして、訓練された兵隊は、疑問や己の正義よりも命令にこそ従うのだ。
| ……すぐに、突撃銃の軽快な発射音のオーケストラがはじまった。
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| レイが合衆国兵を動かすと同時に、ロビンは『カトルカール』に指示を出す。
| 二台の支援車両。二人の達人ハッカー。こちらの電波汚染は押されていた。
|
| ならばどう対処する？
|
| 簡単だ。爆弾蜂が静かに、支援車両の下に爆雷を投げ込む。
| 警察も、『血族』も知らぬ相手ではないだろう。しかしロビンは躊躇わない。
|
| 機械よりも冷酷に、支援車両を吹き飛ばす。
| 突然の地鳴りと爆音に、群衆はパニック。止めようと叫ぶやらない夫。
|
| ロビンは狙撃ポイントのライフルに接続した。
| スマートリンクで引き金を引く必要はない。撃つと決めたら、遠隔操作で撃てる。
|
| やらない夫が移動するだろう位置に合わせられた銃口。同じように設置されたいくつもの銃の一つ。
|
| 警察の人員が駆けつけるより早く、静かに、静謐に満ちた心で発射。
|
| 命中すれば、やらない夫の頭は柘榴のように割れるだろう。
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-=ミ、
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≦圭l圭圭圭圭l圭≧､ ヽ
ｰ=ミ≦}l州州ﾘ州i州州Ⅵ州州州li､
ｨ≧州州ｉⅣ州}i!州ｗli|lⅥ州i}州l}l}li
〃/州州州从Ⅶl}lﾄ､ﾄ､Ⅵ从i}州州州!
,州}州州ｨﾘ ヽ∨l ｨ ＿. Ⅵi}州州|
,ｌⅣ!州州}､.ｨ=ﾐ. ／云ﾐヽ.l}州i州从 『ん？』
ｉⅣ.:!/|州ｌ| l! 示 弋:ソﾉ,州/li}ﾊVﾐ､ 『誰かと思えばディオじゃないか』
ｉl' ｌ| |ilﾊlﾊ`弋ｿ'ｉ `´ ./!i/ﾉ‐.イ 『姿が見えないから心配して……』
|! ヽﾘ ｌﾘハ、 ヽ 〃ｲ州ト{
′ｿl､ ヽ￣l .ｲ l}|ヽ|
. 丶. ` ′／ _.〉―‐,
_ｨ≦＞-イ'´￣ ＿__,{、
',＿ | r≦ﾆ三三彡'/≧=‐, ,、
ﾉ三| | |三三彡'/////ｨ'二三≧
_,ｨ≦ﾐi三!､.| ィ三彡'//////ﾊ'三三三l|
r≦三///////,r‐､'////////,l/li/二三三三!
|,Ⅵ/////////,ゝｚ'//////////l|iﾐﾆ三三三{、
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,ｲli/,∨////////////////////,ﾊ.Vliヾﾆ三彡l|
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|「え？」
|
| やらない夫を望遠鏡で確認しながら、ふらりと現れた仲間に心にも無い軽口を叩こうとして。
| それが球磨川禊の最期であった。
|
| ディオ・ブランドーの、いや。ディオの姿をした怪人が鮮やかに抜き払ったナイフが頸動脈を切断。
| ぱっくり割れた首から鮮血を噴水のように吹き出しながら、球磨川禊は死亡した。
|
|「ディオ？ へえ、コイツぁそういう名前なのかい」
|「貴様！」「球磨川くん！？」
|
| 見知った顔ゆえ警戒心が薄れていた。
| それにしたって、そいつはあまりにも鮮やか、そして隙がなかった。
|
「『アナザワース』！！」
|「無駄無駄ァ！」
|
| 十六夜咲夜は能力でディオを止めようとした。
| しかしディオは嗤いながら彼女の懐に入り込み、ヘソの当たりにナイフを突き立てる。
|
| マーガレット・バートンがトカレフを構え、撃つ。咲夜に当たるかもという恐怖は無い。
|
| だが、ディオは銃弾を物ともしなかった。体に穴が空くだけで、血も出ない。
| 咲夜の内臓を引き裂き撒き散らしながら、ディオはナイフを投擲。
|
| 氷のように冷たいマーガレットの心も、ただ一人の友であるメイドの無惨に気を取られた。
| それが、致命的。ナイフはマーガレットの左目から脳まで達した。
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／ ﾄー- '! l ｀ー7 ｀ヽ
ム ∨ | ＿＿/! / ／＜
｀/｀ヽ _≧≦ ≧= ＜ ｀ヽ
,ヘ_/ У ＞ ソ}＼
! ≧ ｲ ＞。シ }
. -＝{ ＿_ｆ .l ｀ヽﾊ!ゝ , -
/ .ﾔハ ./ |! ｀ヽ ＼ ／ ｀ヽ. ＿
. / У ﾊ ＼ 、 ＞ 、 ヾ ム
'ｲ ∧ ﾉ ﾔ. ＼ ＼ ＼_} ﾑ
. ! イ ﾊ lV ＼ .∧ .ﾄ､ 朴､ ＜ ｀ヽ
. |/ / { l! ﾔ ≧=-x＼| ＼! ｀'z=＝＜＿ .｀ヽ ー-､}
ム-=ﾔ ∨ ﾔ代:;:ゞ u ﾄr:::ﾘっ{ ∨` ｿ ﾑ ノ お……お嬢、様……？
. -=≦∨ l ∧ﾟ￣ ￣ !i!入 ゝｲ､ ｌ ＿ ＞ ´＿
ﾑ ＼入 ∧u l .*;”/::::{ Υ 入 | / _ -=≦
-"j .|::{ メ＼ ,∴ '＿'＿ _, .::,：;ｲ:::::::＞ Ｙ ゝ ｌ/´ _ イ
l::::マ ｼ l ＞ `ー--iｊ ' イ /:::::::::∨ }_-=≦!-= ¨
∨ |:::::L_ゝY ヽ . -≧-≦＼_/:::::::::::::::｀ ｰ イ_〉､ー
ﾏ ,!:::::::::::∨ __}:_:_:_: ハ: : : ﾑ::::::::::::::::::／ / ﾊ｀ ー --＜￣
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. ,/./. ,ﾉ/ /圭圭Ⅳ :::,:: |″ ::::::::_..ﾞ,i'ﾝ"ﾞ― - = ≦ l j:::::::::l ｲ.,
,ｨ彰i彡'ﾞi/'"圭圭圭込才Ⅳ = ≦..ﾞ,-/'".-,..ﾞ、 / ｆ:ﾞ;;/!".刈
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭| ,iｌ!ﾝ''／...-彡..ﾞ- ｀ヽ.. __..- _ｨ刈圭圭Ⅳ../..ﾞ
圭圭圭圭圭圭圭圭圭Ⅳ. |/‐才ンｨ幺ﾞ‐'ﾞ＿.圭圭彡''彡丞'"゛:::::::::::_／....
圭圭圭圭圭圭圭圭圭込ｨ幺,iﾃｱ´圭圭圭圭 :::: ｰ'"゛- ―:::::::::::::＜...._,,..ｨ
圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭 ｨ幺圭圭
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| 腹圧で飛び出す千切れた内臓を押さえながら、激痛に顔を歪ませつつ、昨夜が呻いた。
| 顔色は真っ青、激痛と出血で体はガタガタ震えていた。
|
| ディオはマーガレットの顔面を踏みにじり、ナイフを引き抜く。
|
|「ペルソナで時間を引き伸ばしてンのか十六夜咲夜。ところがぎっちょん、このナイフぁ『エリシュ・ノーン』を使っててな。
| ペルソナの防御は効かないし、ペルソナじゃあ治せねェ。
|
| 球磨川は終わりだ。無かったことにはできねえ。我慢しても痛ェだけだぜ？」
|
| 『エリシュ・ノーン』。五つの『法務官』の一つ。
| 咲夜には知る由もないがジョニィ・ジョースターの爪弾に付与されていた効果である。
|
|「う、ぐぐ……みそぎ……」
|
| 絶望で歯を鳴らす咲夜、球磨川禊は応えない。いつもみたいに蘇らない。
| 死すら『なかったこと』にできるはずの球磨川のペルソナも、この男の前では無意味であった。
|
| 激痛にのたうつ咲夜を残し、ディオの姿をした怪人は嗤いながら去っていく。
| さらなる死と破壊をもたらすために。
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☆ 次回予告！
Ｑ．球磨川がいなくなると、これまでみたいに気軽に殺せなくなるのでは？
Ａ．それ以上に、アイツがいると危機感がなくなるので、ようやく消えてくれて安心しています。
Ｑ．え？ マジで死ぬの？
Ａ．死をなかったことにしても即死する状況でどうやれば生き残れるっていうんです？
それはともかく、『やらない夫の集会』を出汁に自分らの目的を遂げるべく蠢く者たちの姿あり。
次回、最終幕七十八話『夢宮邸襲撃』
果てに見るのは破滅か死か。
焼野原ァ！
削れるだけ削った後の造形を見出すのと何もなくなることへの悦び、どちらが大きくなるんだろう
乙
グッバイクマー、君は有能すぎたんだ
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼丶丶、 丶＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. 丶
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼ヽ丶丶 ＼ ＼ ＼ ヾ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ヽ ゝヽ丶丶＼ ＼ 丶 ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 丶 ヽ ヾ ゞ 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶＼
＼ 丶 ヾ 丶ｖ ＼ ヽ ＼＼ ＼. 丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶. .、 ヽ
ヾ丶＼ 、＼ヽ 、丶＼ ＼丶丶 丶丶 ＼丶 ヽ ＼ ＼丶／,,;;;;／ ,,,...
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶＼ ゝヽ丶ヽ ゝヽ 、ゞ ヾ丶 ゝ／,,,;;;／ 册册
ヽ ＼ 丶＼丶ヽ＼ 丶 ヽ ヾ ゞ＼ヽ ゝヽ丶丶 、／___／ _,. 册册
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 丶丶ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼／ ／| _,.-r'| | 册册
ヾ丶＼ 丶 ヽ丶 丶 ＼ヾ ＼ヽ ＼ ＼丶 ヽ／ ／ ,..| | | | | | 册册
ヽ 、ヾ ＼ 丶 ヾ丶＼ ＼ ＼ ヽ＼＼丶ヽ/'~T.,.／|川 j_l,.r-'¨ 卅卅i_,.
ヽ ＼ ＼丶 ヽ ＼ ＼ヾ丶 丶丶丶 /,.T¨il i l l l川__,,... -‐ ￢¨
＼ 丶 ＼ ヾ 丶丶＼、 ヽ ＼ ＼. ,l:lj|川_'¨三.ノ____,,,,,.....................
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．;．;"．;．;";"．;．;"．．;．;";．;．,: ;．;"． 三三 ' -f, .i田l| |目田|
．;．;"．;．;"．;．;"．;． ,:. ;;: ;．;"．;．;"．;．;"．二二二' -|.,_.j| |l.l.l l.l.|
"．; ;"．;．;" "．;．．; ．;"．;．．;"．;．;"． -------------' - .,_ j! ﾆ二|
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| 時をしばし遡り、『やらない夫の集会』の当日、未明。
| 草木も眠る丑三つ時に、東京都郊外の日本屋敷に忍び寄る影があった。
|
| 降り注ぐ冷たい雨と吹き荒ぶ寒風は、彼らの存在を隠す格好の隠れ蓑。
| いやそも、普通人であれば彼らの存在に気付くことはまずありえないのだが。
|
| 明かりの消えた邸宅、表札は削られて、外から見たら空き家である。
| しかし、張り巡らされた結界の内側は魔力と電気で適切に保持されていた。
|
| 侵入者避けと番犬の両方を兼ねた結界に、彼らはスルリと侵入する。
| 黒ずくめ、影の如き小柄な三名。揃って雨に濡れているが、滴る雨粒以外に痕跡は残さない。
|
| 先頭の人物がハンドサインで残り二人に指示、別行動で目標を探す。
| 殺すべきが三人。生け捕りが二人。
|
| 先頭の影は雨に濡れた外套を脱ぎ捨てた。その下も黒ずくめ。
| ドクロを模した仮面、曲がった背中大股で堂々と、しかし足音なく歩く。
|
| 不意に、彼の通りかかった横の障子が勢いよく開いた。
| 煌々と明かりのついた応接間。
|
| 上座に座る若い女と、その横に侍るもう一人。
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{:::: {:::.ヽ::.ﾍ ﾞｰ-'′/.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾘ.:.:.:.:.:.:.: ﾘ ドーモ、カースドアーム＝サン。
. ＼ﾊ:::.:. ＼ ,′ /.:.:.:.:.:.:.:.:.从.:.:.:.:.:/.:,′ はじめまして、黄泉です。
、::八 丶 ノｲ.:.:.:.:.:.::ｲ:::::::.:.:.:/.:/
＼ ヽ _ /.:.:.:／.::ﾉ::::::.:.;ノ:ノ
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|「ロストスキルです」
|「これはこれは丁寧に。ドーモ、ヒサメ＝サン。キル・オール＝サン。カースドアームです」
|
| カースドアーム。そう呼ばれた影は僅かな狼狽も見せずにしめやかに挨拶を返す。
| 名前を間違えているのもわざと、どちらも過去の名である。
|
|「詳しいな」
|「それはお互い様でしょう。この呪腕のハサン。アイサツ前から名を呼ばれる程の者ではございませぬ故」
|「謙遜だな」
|
| 黄泉が、その女子中学生姿には似合わぬ邪悪さでクツクツ笑う。
|
|「戦後間もない頃から出没する『血族』のニンジャ。名前と顔を捨てたハサン。
| 貴様ほど長命のニンジャは早々おるまい」
|
|「おやおや、なにか勘違いをしておいででは？」
|「いいや、間違いはない。
| 前黄泉が目の上のたんこぶとばかりに包囲殲滅したが、ただ一人、頭目の首だけは取れなかった」
|
| カースドアーム。改め呪腕のハサンが押し黙る。
| 黄泉の言が正しければ、この背中の曲がった小男は、シックスやキュウべぇ同様の七十越えの老人ということになる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. :.:.:.:::::::::::|:::::::::::::::::::::|:::::::ム-─- .斗- }/:::::|
. i:.:.::::::::::::l:|:::::::::::::::::::|::::/ -- ､ / ‐ ∧::v′
. |:.ｲｌ:::::Ｙ从::::::::::::::::::|Ｖ ___::::::::| そのワザマエ、ここで殺すには惜しい。
. |:::|::::::::|. '/::::::::::::::i:| x≠''''ミ､ ≠⌒~::::::::| 頭を垂れて我が軍門に下れば
从|::::::∧. '/::::::::::::l:| ｉ:/:::: 『九鬼』の一席をもって迎え入れよう。
. 八:::::::. ＼_'/,::::::::从 〉 __ノ',:::/
. ヽ:::Ｎ |l::::〕ﾄ､:::::｢｀ ,. ′}/
. ){ リl/Ⅵ . ヽ| ￣ .イ
／}l. _ 〕ト _ . :i〔､
{: : : : :＞- . . ＿￣{ . .: :/
」.: : : : : : : : : : : : : : : : :〈
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|「断れば？」
|「安心せよ、殺しはせぬ。私の情報をどこまで流したかを吐いてもらわねばならぬ」
|
| 愉快な話を聞いたかのように、呪腕が笑う。
| 夢宮邸、『弓兵』と遠坂凛の邸宅。
|
| ここを攻め、そして黄泉がいることに驚かなかった以上は、呪腕はすでに黄泉の背信を知っていたことになる。
|
| 確信が持てなかったとしても、それがどこまで伝わっているのか。
| 場合によっては黄泉は『血族』に戻れなくなる。
|
|「できますかな？」
|「できぬとでも？」
|
|「二対一程度で勝てるつもりでございましょうか」
|「二対一？」
|
| 黄泉は不思議そうに小首を傾げ、隣に侍るロストスキルと微笑み合った。
| 二人の間に流れる和やかで華やいだ雰囲気に、呪腕は警戒心を強めた。
|
|「百二対一の間違いでは？」
|
| 微笑みながら立ち上がる黄泉、
|
|「ドーモ、ハンドレッドフェイス＝サン。サイレンサー＝サン。黄泉です」
|「ロストスキルです」
|
| アイサツに対し、返答を行わないのはタイヘンシツレイにあたる。
| 呪腕の横から一人が、そして黄泉らの背後のふすまを開き、もう一人が現れて頭を下げる。
|
|「ドーモ、百貌のハサンです」「静謐のハサンです」
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／ ￣ ヽ
, --― マﾐ , -= ＼
,＞ ´ ヽ ヾゝ -- ､ ＼
／ ､ ∨ i| ヽ
ﾄ |＼. ヽ ∨-ｖ !! ',
| r''´ ヽ _!: :} 八 ',
| ﾊ{_,ｨ! ヾ⌒}: :i.´:', ヽ ,
|ノ } ﾏ: : : : !: : ヽ ＼
｀ヽヌ: : : ,ｲ: :／⌒ヽ ＼
｀ー 'r≦ｲ!: : : : :', , ', 屋敷はもぬけの殻。
ムイ: :!: : : : ﾊ , , 奴らはどこへ消えたか。
r,.ｨ/{: : : ,..イ: : : ': :! ', !
,.r＜///{: : /: : !: : : : :.! ,. i 尋問させていただく。
／/／////,:∨: : : };-=≦:} ', i
////: :.{ヾ///,ﾊ: : : :}-‐=彡! , |
_ _,ｰ.､ V//: ,: 乂:_ヽｲ//ヽ: :∧´ : : ! i
〈〈〈 r ｰ .､ .ゞｰ': : : : : :.＼///V ,: : : :.! i
ヾ:_‐≦: : :＞.､ {:/ : : :ヽ.: : : ヽ//. ',: : : } !
/ノﾚ//: ＼!: : : : : : : : : : :/ }: : :.! | |
｀ ゞｿ ､: : :!: i : :_} : : : : :〈 ; : : ', i! | |
ヽ:|: :i: : _}: : : : : : ', i!: : : ',. | !
!: :!.: :_}: : : : : : : V. |: : : :', ! i!
ﾄ: : : : /: :_:_:_:_:_: :V. != 彡i! !
!:ヽ:_:/ﾆ三三三三Ｖ V.:≦{ / , !
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|「できるかな？」
|「無論よ」
|
| 呪腕の脇で百貌が身構えると同時に、部屋中のあちこちから新たな影が現れる。
| 体格も性別も様々な、しかし一様に黒装束に髑髏の仮面。その数九十九。
|
|「おお、この数の多重影分身とは恐れ入る。しかし、魔力の消費も多かろう。
| それとも一芸特化か？ まさかこの黄泉相手に雑兵を並べてなんとなるとでも？」
|
| 答えようとして、百貌は。そして呪腕ともう一人、静謐も気が付いた。
| 体が動かない。舌すら指先すら。金縛りにあったかのように。
|
| 今代の黄泉は時を止めるニンジャだと聞いたことがある。
| その卓越した技で、年齢一桁ながら黄泉の座を奪った天才だと。
|
|「私の部下に、朽木白哉という男がいてな。ああ、有名であろう？ 『千本桜』だ。剣撃の衝撃のみを分身させる。
| 千にも万にも。広域殲滅タイプと言うやつだ。射程内の生物はサシミどころかネギトロよ」
|
| 笑いながらゆっくりと、動けない百貌に近づく黄泉。
| その手に現れる、一枚のスリケン。
|
|「私も貴様同様一芸特化でね。この『時を止める』ジツ以外は才能がない。
| 白哉の真似事をしてみても、せいぜい百分裂が良いところよ」
|
| 手品のように、スリケンが増える。
| 両手に五枚ずつ、合計十枚。
|
|「これで擬似『千本桜』と洒落込むが、この程度で死んでくれるなよ？」
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| 投擲と同時に、金縛りが解けた。
| 時が動き出す。いや、正確には時間が止まっていた訳ではないのだろう。
|
| しかし種も分からぬ、対処もできぬ。
| 三人のハサンは全力で己の身を守る他なかった。
|
| 呪腕は身長よりも長い異様な右腕を伸ばした。蛇のように動くその腕で己だけでなく隣の百貌も守る。
| その百貌は見るからに疲弊していた。無数の分身が次々破壊され、消耗が大きい。
|
| 黄泉を挟んで反対の位置に立つ静謐は、スリケンの雨霰を対処しきれずに血煙になった。
| 恐るべき死の乱舞が終わるまで数秒。戦いの趨勢は決していた。
|
| この間、ロストスキルは正座したまま微動だにしない。
|
| 応接間は血と破壊で見る影もない。
| 百貌の分身は全滅、その百貌本人も無数の傷を負い虫の息。
|
| 唯一余力を残した呪腕が呻く。
|
|「よもや……我らが鎧袖一触とは……！」
|「演技派だな」
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,x≦ 〆入 二つ了 ／＿＿
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-‐───‐-: : . .,,__,,..／丿 ／ ｙ″ ＼j ｀”
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У: : : : : : : : : : .、: : : : : : : ＼`､: : : : ゞ､: : :≧=- ヾ 〈
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j: : /|: : : : : : :／i: : jΥ: : : | ;､: : : ∧ 介: : : : : : : フ : .、 ＼
| : i: |: : : : : :/ j|:/ jﾊ:.j: :r 淫ﾄ: : : : i/=И: γ~´ : .、 丶
}: j: :.!ﾍ: :jｲ人 j/ j/i: |`¨ }: : : : :i三三У : .、 ＼
;Νﾍj: :Ｎ: : : : ゞx式 j/ j: :/: : ! 丿 ､
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| 百貌の分身に守られ致命傷を避け、死んだフリをしていた静謐がバネじかけのように飛び上がる。
|
|「だが貴様の弟子は我慢が足りん」
|「ンアー！？」
|
| 黄泉がいつの間にか手にしていた刀で、静謐の顔面を顎から脳天まで叩き割る。
| いや、鞘ごとの打撃！ 顎の骨を砕かれて、静謐は口に含んでいた血液を吹き出す。
|
| その血液が致死性の毒であることは調べがついていた。
| あらゆる毒への耐性のある黄泉とはいえ、ここで侮っていては命がいくつあっても足りはしない。
|
| こちらも朽木兄妹、妹ルキアのジツ『袖の白雪』の模倣。
| 一瞬で凍りついた毒の血飛沫。一滴たりとも黄泉には届かず。
|
|「イヤー！」「イヤー！」「グワー！」
|
| 完全勝利の瞬間の気の緩み。あるいは、ありもしない隙を突こうとした呪腕の右腕が、肘から断たれた。
| それまで介入せずに侍っていたロストスキルのイアイである。
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/|: : : : : : : :|: : : : : ／'"￣//｀ ヽ| ￣＼: : :.:.:／: : : ::|: : : : ﾄ＼
. / :|: : : : : : : :|: : : ／ ／ ヽ: :./: : : : : :.|: : ｌ: :| ＼ゝ
. /:/:|: : : : : : : :|: : / ,. -―‐､ '"二ニﾆ､ ∨: : : : : : :|: : |: :|
.,'イ:.:|: : : : : : : :ﾄ､:{ ﾁﾃ示て㍉ ﾁｲ示て)＼ j: : : : : : : :|: : |: :| 貴様らの敗因は明確。
|:.:.|: : : : :.:. :.:| V く/ {:::ﾊJｲ}｀ ｆ::ﾊJ:リ 〉>: : : : : : : :|: : |: :|
|: :.|: : : : : : : | ヽ弋辷ノ 弋辷ノ, /: : : : : : : :.l: :/: :.| こちらは貴様らの能力を調べ上げ、
. ｌ: :ﾄ、: : : : : :＼ ｀`゛¨´ ｀¨"´ /ｲ: : : : : : :./ ｲ: :/ 対策に対策を重ねた。
ｌ: :ｌ:ヽ: : : : : ＼＼ ／'/: : : : : :.:./∠レ'
弋ﾄ: :|: : : : : : :ヽ-ゝ l /: : : : : : ://:::::::T‐ｒ-､ 奥義に奥義を重ねて確実な勝機を掴んだのだ。
イ 入|へ、ﾐ: : : : ＼ /: : : : :イｲ/::::::::: | |::::|ヽ 我々には敵を知る時間があり、
／ |::::| ｆ:::::::ヽ＼: ﾄ ...､＼ ／:／ ／::/::::::::::::::: | |::::| | 貴様らは敵が『弓兵』だと考えていた。
|::::| |:::::::::::::::::＼:::::::ヽ､ ´｀ ス7:／:::::::::::::::::::::::::::ｌ ｌ::::l
ｌ::::| |:::::::::::::::::::::::::::::::::::＞ ､ ／/ｲ::::::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
ヽ |::::| |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 丶 ､ , '" { |:::::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
＼:ヽヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼ ｀ ‐ '´ ／/|:::::::::::::::::::::::::::: / /::::/
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| 組み伏せられ、喉に刃を当てられた呪腕。
| 顎を砕かれ、失神した静謐。
|
| 傷だらけで衰弱しながらも、しかし闘志を燃やす百貌。
|
|「貴様らにはインタビューをせねばならない。正直に話した者『以外の二人』の命を保証しよう」
|
|「黄泉＝サンの背任は証拠が不足していた故……怪しい相手の一人程度に報告をしておりました」
|「呪腕の！！」
|
| 諦めたか、腕を断たれた苦痛に嗄れながらも呪腕が答える。
| 怒り狂う百貌を、残った手で制しながら。
|
|「他に怪しいのは？」
|「蘆屋道満麻呂、『狂死』、『先生』、佐倉杏子班の横島忠夫」
|
| 順当な面々、黄泉とロストスキルは頷く。
|
|「襲撃を今宵に選んだのは？」
|「志摩子様が事務員から得た情報を元に……」
|
| 東田だ。黄泉とロストスキルは顔を見合わせる。そして、その情報は信頼性が高い。
|
|「あちらにも待ち伏せがあるな」
|
| そのとおりであった。
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. |八:::::|/ イ灯¨ｱ从/ 彡|:::::::::|:::::::::::|／::::::|
＼｝ j夕 ´ .: : : ::::::::|:::::::::::|:::::::::: |
ノ .: : / ::::::::::::::::::::|::::::::::::| 待ち伏せがあるわ。
ヽ .: : /::::::::/:::::::::::::::::::::::::::|
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ハ . : : : :/::::::::/::::::::::::/ :::: |:::::::::: |
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| 間桐屋敷に向かう車の後部座席で、水晶玉と使い魔による索敵をしていた凛が異変に気付いた。
|
| 状況は、さらに遡る。
| 夢宮邸を発見したロストスキルが『弓兵』に接触したのが『学園封鎖』当日の夕刻。
|
| 間桐屋敷襲撃の情報が漏洩していることを説明。
| 前日深夜に行動開始。
|
| その際、援軍が三名。
| 『弓兵』、凛、慎二、ルイズ、『万魔』の五人を車に押し込めて、定員八名という計算。
|
|「『緊急事態対策班』でしょう。石田班か、『狂死』当たりでは？」
|「正解よ蒼星石」
|
| ハンドルを握るのは蒼星石、助手席にやる夫。
| 三列シートに押し込められたアラフォー女子二人の間で、アリカが不思議そうに水晶玉を覗いている。
|
| ちなみにもう一列は『万魔』慎二『弓兵』だ。
|
|「あの派手な鉾は呂布ね。あのジジイ、まだ現役なの？」
|「二人だけか？」
|「いいえ、向こうのいろいろデッカいのは間違いなく博麗。三人よ」
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∨ ヽ
∨ , z 7 ＼
| r ､, ' ト ､ ＼￣
| } _ ﾐ. rﾍ ﾄ､}
ﾚ__ -‐ ￣ 〔 〉}
ヽ ｀ヽ ‐' ー‐ ' r' /个 国内最高峰の前衛にサマナー。
`r１ r-く 1 その上優秀な巫女のサポート付きか。
ヽL ﾉ |乂
＼‐ ＝ ' ／ 从
ヽ ＿ / ト､＿__
r‐‐fﾆ} r‐‐=ﾆ二ﾖ-': :l
,r‐―― . . . : : ヽﾆr──┐ﾖr‐‐'. : : : : :ト-_
／ | |: : : : : : : : :.:.〈二| 1ﾆ1_:_: : : : : ノ. : : : : :≧-
/. : : | |: : : : : : { i }: 八├─‐_┴f: : : : : : : : : : : : : : : :_:_: ≧=､
/. : : : | |/. : :(三※ミﾆム｀´∠ニ{ i }: : : : : : : : : : :／. : : : : : : :∧
/. : : : : ﾚ. : : : : : 川ﾆﾆﾆﾆ=-ﾆﾆ彡※三): : : : : :／. . : : : : : : : : : :l
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r ' . : : : :.{: : : : : : ／ﾆﾆ/ /ﾆﾆﾆニ{: : : : : : : : :./. : : : : : : : : : : : : : :.∨
／. . : : : : : {: : : : ／ニニ/ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾑ: : : : : : : :/. :／. : : : : : : : : : : : /
/. : : : : : : ヽ: {: :.／ﾆﾆ= ' ｀マﾆﾆﾆﾆﾆﾑ: : : : : /／. : : : : : : : : : : : : :/
/. : : : : : : : : : :レ== '´ -====-ｭ `マﾆﾆニﾑ: :.:／ . : : : : : : : : : : : : : :./
./. : : :_: :＿ : : : :|ﾆﾆｱムﾆﾆ/ﾆﾆﾆム _`マﾆ へく : : : : : : : : : : : : : :/.:／
/. ／ ）ト:Ｅﾆ{ {ﾆﾆﾆ{ﾆﾆﾆﾆニ} }ﾆ∠ ､ ＼ : : : : : : : : : : : /ノ
./ /__ . . ＜メ､ . : : ＼ﾆニ{ﾆﾆニ＞-/_ -､ ＼くヽ : : : : : : : :／
ﾉ: /l 「￣ : : : : : : : .＼ : : : ＼ﾆ{ニ／_ / ＿ ＼く_ヽ´ : : : : : :／
../. : {_Lト､ : : : : : : : : : : .＼. : : :.＼ : : : : : ＼__ ＼く_ヽ : : : : : : :／
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|「ルイズ、頼んだわよ」
|「無理言わないで、呂布よ呂布」
|
| 狭い車内で首を振るルイズ、彼女の契約している悪魔は極めて強力だ。
| 特に鎧に封じられた悪魔『三日月』はアリカでは手も足も出ない怪物。
|
| そのルイズで、無理なのか。
|
|「呂布さんは『弓兵』さんより強いの？」
|「言ってくれるなアリンコ……俺が知る奴は十五年ほど前だが、上手くやってもトントンだ。
|
| そも、呂布は武力に特化し過ぎていて、寿命でバランス取られているはずの怪物だ。
| 対集団戦なら夢宮以上、人間相手ならアンデルセン以上だ」
|
| 数に任せてはいけない相手。
| そして、アンデルセンより強い？
|
|「大天使と比べると？」
|「大天使？ いや、分からんが……最高位の悪魔相手でも遅れは取らないだろう」
|
| つまり、『三日月』だけでは荷の重い相手。
|
|「じゃあ、あたしと蒼星石さんとやる夫兄いで足止めするよ」
|「話を聞いていたか？」
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_ -ｧ_'´_￣＿｀ヽ、
〃´ ｀ ´￣￣｀''-`'､､
／/ ｨ i ､ 、＼ ヽ ＼､
／_イ | { { ヽ_ ＼ ヽ､ | ヽ,
/レ' ! ﾐ ＼{＼ヽ｀-ヾ├} i｜ !}
/ノ /iミ ‐ _ニ,‐｀ ´心ﾄ} ! ! ﾘ うん。
/ﾉ //,ｲヽﾍ辷l , ﾞ-' 〃ハ ´
/ﾉ /ｲ l||｀ヽ _ ﾞ_, 〃}| ヽ
/ﾉ ＿/ﾉ !{ヾ、 ﾄ ､ ´ .／ ,ﾘ _⊥、 『弓兵』さんたちは間桐臓硯と対決したい。
/ﾉ r'⌒ヽ｀ヾゝ､_／｀ヽ､｀_´ノヽ /￣ ' ヽ 『血族』の三人はそれを止めたい。
/ﾉ ﾊ | ＿ ヾﾄ、 ,ｲ_ﾄ､ ﾊ _-― ､ノ
/ﾉ ｲヾ} ／ヽ)_,-う |! ﾄ／＝＝ヽ/ｲ|｀￣'' ┴┐ なら、あたしたちが気を引いて、
/ﾉ ハ /⌒ヽ ／ｨ || ト｀丶r＾ｭ／ｨ l!_ / その上で時間を稼げはいいんだよね。
/ﾉ ./ﾉ Ｙ ヾ ｀つ/|| ｀ーゝ,Ｕ_r‐' || ｀ヽ､/|
/ﾉ /ﾉ | } { !＾|| |ﾄへ_ノ !
〃 /ﾉ | ! ｀´＾'|| ||/ |
〃 /ﾉ .| ´ ﾊ || ﾉ |l !
ノﾘ 〃 | / ヽ || ´ ｀ |l !
｀` {l ! / ,へんｖ|| |ﾄ､＿_ !
ﾉl! | / 〈 l人）l| |ト_ ,ｲ ｜
｀´ / / {,イ| /|l ||ヾ-{ |
/ / ／〃ヽ_| || || ヽ＼ ヽ
/ / ／ // l !! || ＼ゝ }
! /∠、 // ｜ || || ヽﾉ-
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| 簡単そうに言ってのける。
| しかし、行うは難しだ。
|
|「いや、足止めだけなら僕ら三人が有効です」
|「蒼星石が言うなら勝算があるようだな」
|
|「ええ〜」「日頃の行いだよアリンコ」
|「で、何を企んでる？」「人聞き悪いね」
|
| 慎二に促され、蒼星石が口を開く。
| その慎二を車に乗せて夜の街を目的地まで走る、九月の戦いを思い出す。
|
| あの時は『傾国』が乗っていて、『万魔』も『弓兵』も凛も敵だった。
| その後、ルイズにも高速道路上で襲われたか。
|
|「やる夫が（いらない危険を冒しがらも）手に入れた情報によると、
| 僕とアリカはやる夫の姿をしたニャルラトホテプに籠絡されていることになっています。
|
| この（黄泉が手に入れていたのと同じだから無意味な）情報から考えて、
| 僕らとやる夫が現れて友好的に接した場合、無碍にはされないでしょう」
|
| 行間の棘がやる夫に刺さる。
| 言いたいことは分かる。鷹野三四から開放され、余すところなく報告したやる夫は蒼星石から思い切り叱られた。
|
| 他の参謀達からは小言で済むぐらいコッテリと。
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八:::{＼__{／:::::_／.:::::::} ::/}:/::/::/::/
}>}:::::{/:::::／{::::::::::::/''''乂{:く_人:{
〈:/ﾄ､/:::::/:l{└┬┐＼ r':ィ{:::: {
乂_{＼_{_八ト､{､/:::: / ｨ瓜ｧ＼} 問答無用で攻撃される危険は？
-‐=ﾆ二八 ｀V{､文亡lT＼_｢ ^^^八{
/＼ ＼_{ } / ＼
.{ ﾟ， ＼ ＿,_／/ ｀`ヽ､_
.{: ﾟ， { __＼＞‐' ＜}〈// / ＼
.{ ﾟ， { _,r‐'" ＼ヽ〉 .;′ }
{ ﾟ，: ∨ { _／⌒ヽ }i {＼_ :;′ .人
{ ﾟ， /{: ＼ ./／ ＿}八〉 / ＼ :;′ / }
{ ∨∧ ｀¨{ / {ｌ{ ∨ ,′:.:/＼/ .／ {
｜ { :/＼ {｜{｜ _{|{ {_/ :/: ＼/__ 八
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|「…………」
|
| そもそも相手が『狂死』という時点で有り得る。
| 話しかけに行く前に仕掛け爆弾でドカンとか想像に易い。
|
| だけれど、話の通じないDARK悪魔ではないのだ。
| たぶん。
|
|「戦闘になったらルイズさんに頼みますお、こっちは逃げの姿勢で行きます」
|「呂布は馬（バ）イクなのよ？」
|「完全に逃げることができたら囮の意味がありませんお」
|
| 『緊急事態対策班』を間桐の屋敷から遠ざけられれば御の字という考え。
|
|「やる夫と同じ考えで安心した。交渉で撹乱して、戦闘になったら引き付ける」
|「だお」
|
| 場合によっては。と、蒼星石は考える。最悪の場合は、ルイズだけでも逃がすつもりだ。
|
|「……オーケー。ただし、無茶は無しよ。こんな所で死んだら無駄死にもいいところだもの」
|「はーい、借りてた強化服も無いし、無茶はしません」
|
| 元気に頷くアリカ、ガンダム（）はファットマンとの交戦で破損していた。ただいま修理中である。
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ヾﾆニヽ.,...:::´::::::::::::::::::ヽ:::::::::｀:.. _＿
.:::..ゞﾆﾆ/:::::;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ﾆﾆﾆ≧､
/:,x≦ニ/::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽﾆ＞
.':ー-ｘﾆ/:/:::::::;::::::::::::::::::::::::::::Y::::::::::::::::::::::｀ﾏ､ﾊ
.::::::::::::i::｀:/:;:::::/:::::::;::::::::::::::::::::::'::::::::::::::::::::::::::Y／!
'::::;:::::::l:::/:/:::/:::::::/::;:::::::/::::::::_::_::::::::::､:::ヽ:::､::､::::l
|::::l::::::::l/'::!::/!::::::/::/:::::/::::::/ Y:::::::::l::::::l:::::l::!::::l
j!::::l::::::::l:::::l/,l::-/一ｌ－ｌ::-/､ !::;::::::l::::::l:::::l::l::::j
.:jl:::::l:::::/ ヽﾞ !/z＝ミx l:::ﾊ:! !/ー/:､:/::::j:::l::::l!
,:/:l:::::l::::{ ' 〈 ｲ !､ti::! ヾ! /,ｘｪ=ミ!ﾊ::/::/:ヽ:l
/ j:l:､::ﾍ:::ヽ ､ ゞ:シ jri::/ ｼ /´:l/::::ﾊ::ﾄ､
/ ,:::l:ﾍ:::ﾍ:::::ゝ-. ｀´ ゞ' /::/::::::::/! l:! .i
,′ ;::::ll::ﾍ:::ﾍ:::::::Yﾊ i /::/::::::::::ハ l! , あなた、
/ /::::::l:::::ﾍ:::ﾍ::::::lノlヽ _ ′ ｲ;::':::::::／::| .Y j 『蒼天の青玉』はどうしたの？
/ /::::::_:l:. -.ヽ:::ヽ:::l: ゝ ＼ ` ￣-' .イ:::/::x＜ヽ＝=〈.ヽノ
/ /:::::/: : i: : : :i::::::ヽ:!: : :＼_ ヽ _ ＜: :/::/／.': : : : :ヽ::l ｀´ヽ
/ ﾒ:::::/: : : :ヽ､: l:::::::::::Y: : : : :￣: : : : : :./:::/ :/: : : : : : : :i:l :.
il ノ::::::,: : : : : : :ヾﾄ::::::::::::!:､: : : : : : : : : :/::::/ /: : : : : : : : : l:! ｀:,
ｌ:/:::::／! : : : : : l: : l::i::::::::::l: :ゝ-:': : : : :./:::::::{:/: : : : : : : : : : :!:､ ,
/::／::::::l: : : : : : ヽ/::l:::::／ο/jο:／::::{::::::::::l': : : : : : : : : : : :!::::､ :.
{:/::l:::::::::l: : : : : :ノ::::::／ : :ヾ, x-'/: : : : ヾ:::::::l: : : : : : : : : : : :j:::::::､ i
!::::ﾍ::::::::!: : : ／:::イ: : : : : : } !:./ : : : : : : >::: l : : : : : : : : : : /l::::::::::､ .丿
,:::::::ﾊ::::l: : :{::::/:::{ : : : : : : j !/: : : : : : ー彡ｊ! : : : : : : : : : /:::l::::::::::::Y/
）::/ j:ノ!: : ゝ:l:::: l!: : : : : : :V: : : : : : : : : : : i: : : : : : : : : :/:l::::l:::::::::::::lj
'"´ ´ .!: : : :＼ﾍ: : : : : : :j : : : : : : : : : : : l: : : : : : : : :/::::l:::::!::::::::::ﾊ!
Y: : : : : ｀ヽ : : : : 乂:.: : : : : : : : : :l : : : : : : : /::::::j:::::l:::::／ !
ｌ: : : : : : : :.＼: : : : : : : : : : : : : /:l: : : : : : : /::::::/::::/::/ ′
fﾆ=.ｌ: : : : : : : : : l:ヽ: : : : : : : : : : ノ: l.: : : : : : :ハ:ノ }:ノ乂!
, -一-）ﾆ!: : : : : : : : :lヽ: : : : : : : : : ´: : :l: : : : : : /: :j ´
ｘ≦ﾏ （ニｌ:l : : : : : : : :!: :ヽ: : : : : : :_: :-‐l: : : : : : ': :.:{
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|「壊れちゃいました」
|「…………？」
|
| 凛と『弓兵』が目配せする、ただならぬ気配。
|
|「念の為に聞いておくけれど、誰かに騙されてない？ アレは『あの』レナ・セイヤーズのために作られた特別製よ」
|「ばっちゃのじゃないの？」
|
| 己が使っていた武器への無知に、凛は目眩がしたようだ。『弓兵』が苦笑する。
|
|「性能がいいからな、それに弟子の形見でもある」
|「じゃあ、『蒼天の青玉』は二人分の形見なんだ……所で、レナさんはいわくつきなの？」
|
| 尋ねられ、凛が目を泳がせる。
| 元夫の前の妻の話だ。あまり好意的に話せる気がしない。しかし『弓兵』は凛以上に話しづらいだろう。
|
| 凛は覚悟を決めた。
|
|「アイツはね、『壊し屋』っていう不名誉な異名を持ってたのよ。
| 使った武器や道具を破壊してしまう、力加減ができない。それで苦労をしていたわ。
|
| カレシを抱きしめてアバラを粉砕しちゃったりとかね」
|「へ、へえー」「アリカみたいな人だね」
|
| かく言うアリカもやる夫に抱きついてアバラをへし折った経験がある。
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,.．..._'ニニニ''::::..．
／,．'´ ` ヽ､｀ヽ
,..:'::／___{彡''´::￣｀ヽ ヽ:::ヽ
./.':´:￣::::::`:::::::::::::::::::::::::＼ ヾﾊ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀..ー- イﾊ
{廴ノ/::::::::::::::rz､.ｨ:::::::::::::::::::､::::::::::::::::-＝' ミ:i､
フ:::,ｨ::::::::::::/｀¨¨j::::ﾄ､::::::､::::::ミ:､:_:::::::::-＝:､:::ヽ
{:::/!:::/::::i:::{ ヽ::::＼:::::＼::::::::::￣::≧:::ヾハ:i
. V八:i:::::::ﾄ:{!_＿＿ ＼::ヽ＞;;≧＞z､::ヾー､:ﾐ:::i
,/::::::::Y､::从￣__￣ ` ヾ ´￣__￣￣ヾソ::ヽ::::l
,.'::::/: 八ヾ .《了Y不ﾐ ｨﾃ杯下》 .,' /:::::::::l
,'::: /:::::::::ヽヽ 弋zｿ i 弋zｿ /,ﾉ:::::::::::ヽ
/:::::;':::::::::::::::＞､ ￣ j! ￣ ./く::::::ヽ::::::::',
,．＜::::/::::::::::／ ∧ ./ ＞､:::::ヾ::八
,.':::::::::::::ノ:::::::::::::＼ .＼ ｀ｰ=－' .／ __／:::::::＼:::',
{::::::::::::::::／:::::::::/::::::＼} //∧＞.. ...＜从＼/:::ヽ::::::::::::::::::::ヽ､
{::::::::::::::::::::::::: ノ:::::::::／／ノ ＼ ￣ ／ V ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::＼
i､_>:::::イ::::::::::::／::: ／／:/ ＼ ___／ V__ ヽ::::＼::::::::::::::::::::::::ヽ
｀ｰ Y:::::::::::::::/;;z..ｨ＜: : : ! ､_ || __ ノ i: : ＞.､.V::::::ヽ:::::::::::::::::::::::）
（::＞ ''´V: : : : : : : : i ／＼ ,j: : : : : :＞..．:::}:::::::::::::::::::く
V: : : : : : ::∧ ／::::::::::::＼ ∧: : : : : : : :V
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|「魔力量が人並み外れてたのよ、レナの出力に道具の方が耐えきれなかった。
| その上、美人で料理上手で、面倒見も良くて……嫌なヤツだったわ」
|
|「遠坂さんはレナさんが大好きだったんだ」
|「誰があんな……！」
|
| アリカの的外れな指摘に憤懣遣る方無いとばかりに湯気を立てる凛。
| しかし、すぐにその意気は消沈した。
|
|「そうね……ライバルとして認めていたわ。アイツなら……なんてね」
|「うん」
|
| 『弓兵』……当時は夢宮士郎だった男を桜と凛、そしてレナで取り合った。
| 勝者はレナで、そこには『血族』としての政治的意味が存在した。
|
| 四人の意思は介在しなかった、だから諦めた。諦められた。
| しかし……と、凛は考える。
|
| 間桐臓硯と戦い記憶を失った士郎は、凛を選んだ。凛だけを愛した。
| それは純然たる事実であるが、誇れることではまるでない。
|
| 桜も、レナもいない場所で、自分だけしかいない場所で選ばれた。
|
| 選択肢がある状態で、それでも士郎は自分を選んでくれただろうか？
| だから凛は、全てが終わったらもう一度選ばせるつもりだった。
|
| 救い上げた桜と、自分と、そしてあるいは……。
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,. "／ ｀ヽ- ､ ﾉ
/Z / ｀ ヽ ´
.i r┬‐┐.. ﾊﾘ
{/＼_/´:: :: .─-_.. /|
V:: :: :.ﾊ: :: :: :: :: f'´|ヽ
/ﾊ:: ::.〈 〉:: :: :: ::ハ ﾊ !
{ } ＼:l {_:_:_:／ ／
〉{ ,⊥ﾊ--T"
/｀＼へ! 〉-'＝〈 /=-､＼ _ .. -‐r ､
|: . `!/ﾊ ハ ｨ 〃 （: . }
⊃:_:_.〈 | ﾐﾍ ヽ/ r彡::/ﾆ 厂Jr┘
「 .ハ ＾ /ﾊ＾ / {:.:.T ﾍ
ヽ -＝{ } ヽ/ . :/-─rJ: . |_ノ
｛´ 〉{ ハ ;|__:_:_{: .. |
Y´{. } ヽ } l|_て: .: |
|: ハ /ヽ l|:.:.|: .: |
「￣{ ﾉ. : : : . l ﾉ. . |/ヽ:. . |
/ / } : : : : :ハ .ﾆ〈 /: .. |
／ー'|〈 .: : ヽ/ /| 〉: . |
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| 物思いに耽る凛を横目に、アリカはポケットの中が急に重くなった錯覚に胸を痛めた。
| ガンダム（）の修理を頼んだ際、無造作に置かれていた『蒼天の青玉』を持ってきてしまっていた。
|
| 壊れているとは聞いていたけれど、お守りとして欲しかった。
| ばっちゃに守ってほしかった。
|
| ……そのはずが、『蒼天の青玉』はそれだけのものではないと知ってしまった。
| レナ・セイヤーズ。『蒼天の青玉』は祖母だけではない、母の形見でもある。
|
| 同時に、マイケルの愛娘の形見でもあるのだ。
|
| アリカはしばし瞑目し、何事もないフリをした。
| 過去の記憶に囚われていた凛はそれに気付きもしない。
|
|「なんにせよ、『蒼天の青玉』はあのレナの莫大な魔力を受け止める安全弁よ。
| そう簡単に壊れるはずがないわ」
|
| ならば、とアリカは考える。
| レナから溢れた莫大な魔力が、破壊衝動が、『蒼天の青玉』の魔力の根源なのだとしたら。
|
| アリカはそれを使い尽くしてしまったのかもしれない。無尽蔵だと思いこんで、後先考えずに。
| 後悔と悲しみ、それと同時に、アリカはちょっと違うことを祈った。
|
| あのお腹の奥が熱くなって、何でもいいから破壊したい／されたい衝動が。
| お母さん由来だったらちょっと嫌だなあ。
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／三三三三．-――‐-ｬ=､三三ﾆ｀ヽﾆﾆ＼
, ′三ﾆ孑'"´: :,ｘ': : : : : :./: : :ヾ`丶三三＼ﾆﾆヽ
/三ﾆ／´: : : ／: : ;ィ ;ｨ: ;ｲ.:/:.; : : : : : ＼三三＼ニﾍ
/三ｲ".: : :.x∠ ;.:イ ,:イ／ /;ｲ: i!: : : : : : : :.ヾ三ニﾍ三.!
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j/ !: : :ｲ: :!: . ` 廴ﾉ ` イﾍﾉ/: : :/: }Y では、ご武運を。
_ |: : ∧:i}.: . ／!′: /: /|:!
く >――ｧ:、 |: ;ｲ;ﾍ:ハ: . ∠: :ｲ: :イ: / ﾘ
ノ≦､¨ｽ≦ﾉ |:/ "|:’:/:. : . .イ) /:./／/:./
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|「お互いにな」
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| 真桐屋敷から少し離れた場所で凛、『弓兵』、慎二に『万魔』を降ろす。
| そしてやる夫たちは『血族』と対決せねばならない。
|
| やる夫は少しだけ。本当は物凄く複雑だった。
| 間桐臓硯を排除する。ニャルラトホテプを排除する。
|
| それはいくつもの個人的な感情が絡み合い、ほどけずに千切れそうに緊迫しているから発生した目的だ。
|
| しかし、この東京を守るために本当に必要なのか。そう考えると答えは否である。
| 臓硯もニャルラトホテプも、いまは世界を守るために尽力している。
|
| 敵対せずに手を取り合うのが合理的なのではなかろうか。
| そこまで考え、やる夫は悲しみすら湧かない己の心を呪った。
|
| そうやってシンプルに割り切れたら、どんなに幸せなのだろう。
| アリカはともかくやる夫も蒼星石もやらない夫も、己が正しいなんてちっとも思っていない。
|
| それでもこのまま進むしかないのだ。
| 他の選択肢なんてないのだ。
|
| そして進んだ先に、果てを見ることなろうとも。
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☆ 次回予告！
紳士の時間は終わりだ。
爆音。
銃声。
悲鳴。
今目の前にある軍靴の音。
やらない夫の集会に投入される最後の怪物。
おぞましき抗磁圧の怪物たち。
火を吹く二種のレールガン。
火蓋は切って落とされた。
次回、最終幕七十九話『とある『教会』の超電磁……？ え？ レールガンってそっち？』
果てに見るのは破滅か死か。
インデックスさんは教会でしたね
正直に話したもの「以外の二人」の命を保障しよう、とか
インタビュー上手すぎて感心したわ
臓硯が何やってくるのか、楽しみ
,': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:ﾊ
ｌ : : : : : : : r ､: : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:,
| : : : : : : : :i! ＼:＿＿: : ＿:.:.:.:.:ノ┐
l : : : : : : : i! /: : : : .:.:.:.:.:.:.Y´ i!
! : : : : : :ﾉ !: : : : :.:.:.:.:.:.:.:| ｊ!
V: : : : :/ l: : : : :.:.:.:.:.:.:.:j j
ヽ : / ヽ: : : :.:.:.:.:.:ノ
ヽl x! ｀ー― ' i
l! ｀ｒ┬ｒ ､ ! （狙撃じゃ！）
', ｀ヽ! ヽ ,ィ T ｰ､ｲｊ!
ヽ ミ ｀ヾ ｲ ┴‐' ´ ﾉ
｀r ､_ ､_X__, 彡 '
＼ T ー‐‐ ´
｀ '
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|「おうよ！」
|
| 飛来する弾丸を飛び込み前転で回避。
| 空気を切る音と共に芝生に弾丸が突き刺さる。
|
| そこかしこで爆音、銃声、そして人間の悲鳴が鳴り響く。
| やらない夫は焦ったように周囲を見回した。
|
|「ヤバいな」
|
| やらない夫は、この『集会』に集まった人々に責任を感じている。彼らを呼び寄せたのはやらない夫だ。
| だが、ニャンコ先生の意見は違う。ここに集まった愚か者共は、自分の意志で死地に踏み込んだ。
|
| やらない夫の放送を聞いて、芝公園に危険がないと思うのは愚か者だけであろう。
| 命を狙われる男を見学に行く、なんともまあ素敵なショーだ。めったに見れない見世物だ。
|
| 見物料はタダ。しかし無料より高いものはない。命の危険が付きまとう。社会的危険も当然ある。
| それでも見に来た。
|
| ならば、己の身は己で守るべきであろう。
| 行動への責任を問われるべきだ。
|
| 好奇心は猫を殺す。ヒトもまた然り。
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圭圭ﾋﾇｱ ﾄ． / :;;:;/ . ／ ,;::::/ ,.ｲ
圭彡'＼＼. { ﾍ. / :;;:;/ ／ ,;::::::/ｰ-=:;., ／ /
Ⅶ ヾへ、 i! ∨ ;;:;/. ／ ,;:::::::/ヽ､ 》 ／. /
Ⅴ ＼.,＼},,./ ::;;;;ヾ／ ..,;::::::::/ヾ ／ ,,.｡／. /
f~´｡∥ ''' ,;::::::::::/ゞ、／'´￣,／, ∧ 避ケマシタカ……。
.,_ｔ＿_ｙ ,;:::::::::::/:::;／'::;;.'' { / }! シカシ、マダデス！
＼厂 ,;:::::;;_::::/:;〃::::;; ｡。 ｀ー=･~ i!
ｔ=;;.,＿ ,;:::::::〃＾ｰ-ム:;;::;; . }
{色℡ﾇヾ，;;;;:{{＿＿＿,,..二ﾆ=‐ . ' _,...;j
ﾆﾆニニ二ヾ､.、ゞ砒●Ⅶ_;;;∥::::/;:::: ヽ:;::::', 〃⌒ｱ^ヽ、
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＼ ヾ､.、 {;:::::. ;::::::ﾉ {
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| 次の射撃、三発。どれも命中する弾ではない。
| だが、やらない夫を警戒させるに足る位置への狙撃。
|
| ロビンはやらない夫を殺すつもりだ。
| シロッコに頼まれたのもある、だがロビン自身も信じていた。
|
| やらない夫を殺害することでこの馬鹿騒ぎに終止符を打てる。
| 彼は虚像に現実味を与える天才だ。恐るべき扇動者だ。東京の平和のために、死んでもらわねばならない。
|
| ……盲目の百人隊長は、盲目故にナザレのイエスの威光に目が眩むことなく刺し貫いた。
| ではロビンは？ 躊躇なくやらない夫を殺せるのか？
|
| …………殺さねばならない。できるだけ素早く。
| やらない夫を止めるのが早いほど、民間人の被害は減る。
|
| ロビンにも周囲で巻き起こる爆音や銃声への恐怖がある。
|
| 本当にこんなことで東京を守れるのかという疑問もある。
| だがやらねばならない。やるしかない。
|
| ロビンの同僚として同行している『カトルカール』が、威嚇もせずに民間人を虐殺していることも。
| 爆弾を設置して無差別に殺傷していることもロビンは知っている。
|
| だからこそ、早くやらない夫を殺さなければ。
| その異様な論理展開に、ロビンは疑問を抱かない。
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￣i! ｊ「￣ ＿/ /＿ ＼＞ ´ ＜＿＿
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￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ィフ￣!! /￣ ７ /￣__／ ≦＝―― ＿＿＿
＿ ィ´ 彡´／ j! ≠ ＿/ /＿／ ≦＝――＞ ￣￣￣￣ ﾌ￣￣
――――― ｢ﾆ=ｰ ー＝ﾆｭ､ ≦ーﾆﾆ ノ ７ ／￣ ≦＝＝――＞ ／￣￣
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￣￣￣￣ / ; :. {7 ｊ! ミ ､ ヽ） ｲ / 〉ｰｧ≦＝＝―: : :＞ ニニ＝＝―――
/ : i :. ヽ⌒! ＼ ＼ ＿/ /ﾆﾆ: : : : : : : : ＞ ニニ＝―――
￣￣￣ ,' i. i! ﾄ､ ､ i. ､ﾏﾒ ﾏﾆ､ ﾏ７ ｨー､＿＼: : ＞ ...――＝―――― }ﾄ､
＿＿＿ ｊ ト┴､ {＿ ﾊ j! ﾑ ﾆ ､ ﾏニｭ､ﾏ ＞≠＞=＝ ー､―― ､: : j! _＿＿ニ二ﾏ ≦＝
￣￣￣ | ﾊXXﾑ__/XXX | ﾆﾆﾆハ iﾄ､＿＞ｧ ｒ==ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ: :ﾏ: : : : ヽ: : : : :ﾏ ､ ﾘ ≦＝＝―
――― ｊﾊ XXノ{ヽXXXX! ﾆﾆﾆ ヾﾊ } ヾﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ: : : }!: :rｭ: :}: }:rｭ: }￣ ｧー―――' ´――――――――
￣￣￣ ′ヾ､￣｀ ｀―¨ | ﾘﾆ≠ ﾘ＿ｒ マﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ､: :リ: : : :ノ_ノ__≠＿ｙ' ￣￣￣￣￣￣￣￣
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| ブンブン飛び回りながら、トパス・ボムビーは爆弾を設置していた。
| ロビンの狙撃地点、同じ銃は二度も使えないため、今度は囮として利用する。
|
| 不用意に近付いた人間を爆破する。原始的なワイヤートラップと見せかけて、動感センサー。
| ライフルごと周辺を焼き尽くす。証拠隠滅も兼ねた一撃。
|
| 不幸な警察官が、狙撃手を探して到着、目ざとくもワイヤートラップに気付くも、その気の緩みから不用意に移動。
| センサーに気付かず爆発、轟音が破片と猛火をばら撒き、警察官二名が即死、一名が重傷。
|
| 生き残った一人が破片と火傷の激痛に朦朧としながらも無線機に怒鳴る。
| しかしやんぬるかな。警察と『血族』の支援車両はすでにトパズに爆破されていた。
|
| 汚染電波の復活。無線機は不愉快なノイズでガリガリと応え、警察官は最後の力を振り絞って怒鳴っていた。
| しかし声は同僚に届かない、離れた場所で爆音。次の被害者。
|
| トパズはミツバチのハネでブンブン飛び回り、次のライフルへ。
| 下半身の蜂の巣型爆弾庫から次の爆弾を設置しようとして、固まる。
|
| 不用意だった。ライフルに触った瞬間理解した。それまで何ともなかったのにライフルは夕暮れみたいに真っ黄色。
|
| そこら中でブンブン言ってる、空まで黄色い。
| 接触型、しかも手を話すと同時に起爆するタイプ。ライフル本体には爆薬は仕掛けられていない。
| しかし、不用意にライフルに近付いた誰かさんを殺すためのトラップだ。
|
| トパズは自分がその『不用意な誰かさん』にされたことに愕然とした。
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＿＿ ／ ｀マﾆﾆﾆ７ス}
「｢ﾆﾆﾆ ､ ､ :. マ／イﾘ
| |ﾆﾆ i! |! ﾊ i! } :. K､ｊ/
ﾏﾆ ｊ! jﾄ＿{ ヽ__｝! ﾊ ! }ハ
７ ハ／ -―--＼} !__}}
/ ｊ |! ／⌒ z=㍉x | |ﾆﾆｭ
}/ }! ｊ 〆㍉､ 爆｡ ﾘ : !ﾆﾆ{
| ハ {! 爆ｊ ､ ｀¨ﾟ ! ﾘﾆﾆ i ………………。
| |ﾊ{ ｊ /ﾆﾆ !
| | ハ＼ / /ﾆﾆ i!
| ! ﾑ ｒ_｡ / /ﾆﾆ 川
:. V }≧。.. .. ィ ／/ ／ﾘ ｊ
:. V ハ 个 ー=ﾟ T ｊ／､イ／ /／
＼ﾊ＿}ミ､ ＿｣ ィ ´ ´
´￣￣ ｀ー｢ ミ｢ 」⌒＞＝ー―､
/ { V ,ィ〒KヽY ハ
/ ヽ ｀ｰノ i！ヾ７ / ヽ
／ ｊ ／￣￣ ミ ､ / ＼
／ /￣ｊ/ { ｛ {
} ／ / ｙ´￣ ヽｒ､／ヽ／{｣ﾄ､
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| 外から見れば思考停止の愕然状態。だがトパズ本人の脳は高速で回転。
| 誰が？ 不明。
| いつ？ 不明。
| 目的は？ これは明白。
|
|（ライフルに爆弾が設置されてるよぉ）
|（テメエの仕業だろ？）（アッチもコッチも大爆発だぜぇ？）
|
|（ち、違うよぉ）
|（皆様、お静かになさって。トパズ以外のトラップがあるのですね？）
|
|（発射したロビンくんへのご奉仕の前に、誰かに寝盗られちまったって？）
|（お、静、か、に！！）
|
| アメシストの執り成しに、他の『カトルカール』が下品なジョークを飛ばす。
| 新人であるトパズとアメシストは彼らみたいに悪ふざけと下品なジョークで狂気を抑制するほど擦れてはいない。
|
|（四ツ目サン カモ知レマセン。爆弾の プロフェッショナル デス)
|
| そのロビンからの無線通信、トパズはむず痒く恥ずかしくなった。
| そして、その感情が自分が罠に引っかかった恥辱故と思い込んだ。
|
|（触ったあと放したら爆発するよぅ。他にも何か仕掛けられてるかも)
|（未使用のライフルにも罠があるかもしれませんね)
|
|（ロビンよぉ、かわい子ちゃんから目を離すなよ)
|（残念ナガラ 一ツシカ ナイモノデ)
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､ ,
|;ヽ / |
._ |;, |彡三ﾐ| ,;| ,.,
/ミﾉ i＼,--､|;, |三三| ,;|,--／/
| .:'､ /:::: /l;, ｀'''''''´,;/ヽ: ヽ ブッティサン、
＼.::;ヽ!ヽ, .:i i;,_＿__,;| ｀!;;. ,;| ライフル経由デ ハッキング攻撃ノ危険ガアリマス。
｀ｰ-＾-:;;;;;<二|| Ｏ ||二>l;;;;イ､_ , 、
￣ゝ;;;;|`- -'|;;;;;∠＼;;;;;（彡 ライフルのラインハ全テ破棄ヲオ願イシマス。
,,,＞! ヽニニ／||＜_ ￣
-=ニ...:::ii::＼ー' ／ !!;::...
￣>┐,;!Oi;,┌ ､'￣
∠ イ_‐┬‐｀ヽ、＿ゝ
ヽ<￣ｰ, ､
.~ﾞ‐<ノ｝
, -,--,--,--,--,--,--λ｝
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|（おもちろぉおおーい！ おもちろぉおおーい！）
|
| 『カトルカール』の情報官ブッティ・スケアクロウは完全なる狂気の縁にいた。
| 言葉を理解し行動はできるが、意思疎通は不可能に近い。
|
|（トパズサン、援軍ハ？）
|（…………ブンブン言ってるけど、ゆっくりやればそんなに黄色くないかも）
|
|（罠にかかっているのですか？）
|（一人でやらないと巻き添えになるから）
|（どうしてそれを早く言わないのです！！）
|
| プリプリ怒りながら、アメシストがトパズの元へ文字通り飛んでくる。
| 彼女の片腕は巨大な機関銃だ、来てくれたからって何かできる訳でもない。
|
|（アメシストサン、トパズサンヲ任セマス。
| 狙撃デキナイナラ我々ハ接近戦デ ボ……やらない夫サンを討チマス）
|（遅え）（焦らすもんだからこっちは準備万端の大股開きだぜ！）
|
| 突撃する『カトルカール』。即席司令官のロビンへの反感は少なくない。
| しかしトパズもアメシストも、彼の紳士的な態度には好感を抱いていた。
|
| 第一世代の生き残りであるホッパーとリッキー。ブッチャー。
| 第二世代の戦車男ことグロスフス・ティーゲル。そして第三世代からトパズとアメシスト。
|
| そこにロビンと第二世代二名、第三世代一名、第四世代が二名加わった十二名が今の『カトルカール』だ。
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＿ ∧ ,,-'／ .|| ヽ
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＜ﾆﾆ! (ﾆ＞ |｀'´ |
ヽ_─ ,,-´ |｀ .|
|_/ iヽ /| | | |
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_|_| .| | /ﾆﾆﾆﾆヽ| |. | | !
///|ヽ＼ | |!二二二 | | ／. | | |
||_|__j ＼＼, ｰ-,､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |,,-‐‐／/ | | |
ヽ'!_| ヽ / / | ｀'''''''''''´ |ヽ ヽ .| | |
（--） ヽ_|_,,,､､ .| .| .| | | | | |
＼ !j,,-‐jj | _ |_ ,----､_.|__ | | | | | …………。
─'´｀'-＿|＜__| | |. ○ .| |＿＞|＿,,,‐´ ∠￣'''-､
＼ |｀'''''''''´| ／＼ヽﾑ--‐（/三| |
＜/i｀! | ｀￣￣ | |´ヽ＞ ||__ >三 | |
_,,,-- ! ヽﾆﾆﾆﾆﾆ／ ||｀'''─,,,,,､''''''''' | | ﾉ |
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ヽ,__ ｀|○|´ ,==、 / | |
／ ﾉ ｀ ´ !! ＼ |/
／,,,-´ ｀-┬─‐｀'' - ＿
￣ ／￣ヽ＼/｀─＿
.|| ＼ ｀─'＿/｀ヽ
,- ||＿ ＼ ヽ／|
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｀ - || ￣'''''''─',,,,,,,,,,!＿!__ノ
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| 今後の増員はない、これが最後の十二人。
| シロッコはロビンに期待をしていると言っていた。
|
| やらない夫を殺して、戦いを終わらせる。
| そのためには、今の暴虐は目をつむるしかない。
|
| 汚染電波の影響で、すべての電子機器に影響が出ている。
| 正確な挙動は不可能、電波のやり取りだけではなく録画や静止画も撮れない。
|
| 今の状況で記録として危険なのは、アナログカメラのみ。
|
| やらない夫ほ周辺で逃げ惑う人々や、追いかける警官の中に、それらしいものを持つ者はいない。
| 打って出る、速攻で終わらせる。
|
| その判断は、遅きに失していた。
|
|「よう、元気そうだな」
|「カッコいい……！」
|
| 物音を立てずに身を潜めていたにも関わらず、その二人は正確に、元戦友を探り当てていた。
|
|「天龍様のお通りだ、オラァ！」
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,r'"´￣￣￣｀＼
/ ヽ
!, -‐''´￣￣｀¨`ー,ﾊ
「 _,,．-──‐- ､ ﾊ
,ﾚ'"´_＿,．-‐rｪｭ,-､「 ｀ヽ
i! / ( ﾞｰ',j） ,lゝ‐＝'ﾊ ,!
i!（! ￣ ＿___ jﾄ､_,ｲ 陰謀だ！
ヽﾊ /r=＝=､ヽ //_＞‐-､､
`ヾ､! i /二ソ_ノ ﾌ,ィﾆゝ￣｀ヽ これは我が国に対する政府そのものの！！
,ｲΛヽ｀二´,ｲ／￣￣ヾ二二ヽ
,イ/ !ヽ ,ィ´ i/ ／´￣￣ヽ￣ヽ l
「j i ! ,l/ }ｲ 〔自衛隊 〕 ｀!
ﾘ ＼ l/ _」 ! !
rｪｪ‐-､ ＿＿ ＿rｧｧ､ﾄﾀ､ ／＞ー'i !ヾ/l￣｀`ー-､, i|
,r'´ヽヽ＿」 ｀ヽ｀ヽl/ j ,/ i/i! b ! ,ｲl
Q)二 ）i ! ,! ,! / ｀`ー─l/ /i! ヽ ＿ , -‐|,ｲﾚ!
ヽ _,ﾉ_ﾉﾉ￣￣|￣|ー＝､// ! / ,! ! /´ !
＞≠＝〈二!ーﾚ'⌒ヽ/ ヽ＿＿,ィ´ 」 ＼ ! ,ｲ !
/r'二 ￣｀`Tヾ￣｀ヽ､＿,．-ー-､ﾚｸ^ヽ `ー '´! !
! (二´ ｀`ヾ|ミj l ヽ ｀ヽ / !
L(二´ ｀`,ｲミ,i! ! ﾞi ,! / ,!
(＿, ＿_,,ﾊミｿ j ,ﾘ ,' ,/ ｀!
｀ヾ､＿,ｲ / / /
｀Y´￣￣ ￣｀¨`ー---‐' ,,ｲ､__
!_, r-‐ー=＝＝＝=＝ﾊ￣｀ヽV二|
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 訳のわからないことを言いながら、犬型自走戦車と応戦する自衛隊員。
| レイ・ザ・バレルは飛行ドローンと犬型戦車で逃げ惑う人々を射殺していた。
|
| この虐殺に意味はないだろう。
| だが、価値はあった。
|
| 彼らが死ぬことで、やらない夫の言う『敵』とやらが実体化する。
| レイの命令で走る偽ヤーボ、強烈なドロップキックで自衛隊の装甲車を粉砕。
|
| そこに用意されていた強力な火器を見繕う。
| 笑える話だ、自衛隊もやる気だったみたいだな。
|
| 両手に構えたサブマシンガンをフルオートで乱射。樹木が削れ、建物に弾痕が残りら犠牲者が血煙となる。
|
|「おのれ日本政府！ 憂国の志士たる我々をここで皆殺しにするつもりだな！」
|「逃げるな！ 戦え！ ここに武器がある！！」
|
| 自衛隊員が興奮気味に騒ぎながら、一般人にサブマシンガンを与える。
| いきなり渡されて目を白黒させるメガネの太っちょ、使えるはずもない。本物の銃器。
|
| 悲鳴を上げて投げ捨てる太っちょ。
| それを、射殺する自衛隊員。無茶苦茶だ。
|
|「非国民が！ 戦わざるもの生きるべからず！」
|
| 不愉快だ。
| レイがその自衛官にドローンを差し向けようとした瞬間、走ってきた男の丸太のようなラリアットが炸裂していた。
|
| 歯と鼻血を撒き散らし白目を剥いて倒れる自衛官。乱入者が興奮して叫ぶ。
|
|「やっぱダメじゃねえか！ 五島ムスカぁ！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ ｨｨｲ ヽ: : ＼
,′ ｨｨﾉﾉｲ'ﾞ´ : . ｀.: : :ﾞ,
! ｨｨイ''ﾞﾞﾞ´ : : ';: : :!
! i /'ﾞﾞﾞﾞ´ : : i.:. .i
ﾞ. i./ . : i.: .:!
ﾞ, i! ; : : : :i.:〃
V⌒ヾi ´ ´_＞==_‐ｨ'′ }r= ＜⌒ｲ∧
{ い `丶{; _ ｴ.ﾝ: :} ⌒〈: ｴﾕ: : ｲ /
ヽい ｀ー‐一 ' 「ー一 ' ﾚ′
`ｰﾍ ._ :〉 / ふふ、この状況を利用させてもらう。
ﾐﾊ ､ ,′
i ﾞ. ￣ _二_¨´ ′ この後に戦闘の熱気冷めやらぬままに
l ', / 議事堂を武力制圧するぞ……！
」 ﾞ､ /ﾊ
. イ ｀ｰ --- ー──一' イ 〉､
. ´.::::i ｀ ､ ￣￣｀V´ ,. イi::::::＼
,. イ.:::::::::::::l ｀ フ~~^^ヽ ノ !:::::::::.＼ ー─ ..
.:.:.::::::l::::::::::::::::l` ー＝＝ フ ハ ＼ !:::::::::::::::＼:::::::::::::::::..`ー
.:::::::::::l::::::::::::::::l ／ / 〉 ＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::.:...
.:::::::::::l::::::::::::::::l ／ / / ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| なんてクーデターを企んでいるに違いない。
| 現れたのは２メートルもある大男、ライダーズジャケットにフルフェイスヘルメットで筋骨隆々。
|
|「それよりヤーボ大佐よォ、パンダはどうした！！？」
|
| パンダ？ レイは耳を疑った。
| ヤーボ大佐がリトルボーイだと知っている？ この男はどこの誰だ？
|
| 該当する人物が思いつかない。
| そもそも、リトルボーイの正体を知っているのはごく一部だけのはずでは？
|
|『ＧＦＦ』
|
| 電子音声で再現された不気味な笑い声、偽ヤーボは削岩機みたいな一撃を男に放った。
| ゆらゆらと、酔っぱらいのような動きで攻撃を避ける男、人差し指と中指の二本で攻撃をきれいに捌く。
|
|「……なんだ？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿
＿＿ ＿ ,,ィﾆﾆﾆ＼
, ´￣ ￣／: :＞ﾆﾆﾆァｒ ｒ＝ー- _
／ ／: ィﾆﾆ＞ ´ ヽ
ノ ／ : : ﾑ７´ ヽ
,,- ´ ィ｀ヽ/: :/: : :ﾏ ｀ ー-､ Vヽ
ｊ! ィ´ ｀ヾ: : :/ ／￣ ', } ＧＦＦ！
ｊ! } ＞{ ＿_ ´￣｀ -=＝‐
{ ｒｰｙ’ （ i! ´ ｀ ､ , -=＝‐ ヽ
｀ー､＿＿_ノ ゝﾍ ｰｖｪｪｪｪァ´ }
/:＼: ≧ｭ。＿ -=＝‐ ﾉ
/: : :ミ: ﾊﾆﾆ＝´ ニ＝―
/: : :-=＝‐
-=＝‐ 三ニ＝―
-=＝‐ 三二＝‐
-=＝‐ 三二＝‐: : : : {
三二＝‐: : : : : : : : : : : : i
-=＝‐ : : : :ヽ: : : : : : : : : : : : : : :{
三二＝‐: : : : : : : : {: : : : : : : : : : : : ::／
-=＝‐ 三二＝‐ ア´: : : : : : : : : : : : :ト:_:_:_:_:_:_:_:_:_ィ:_:_ ヽ
-=＝‐ -=＝‐ }: : : : : : : : : : : : ／: : : : : : : : : : : : : : : : :}
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 丸々と肥った偽ヤーボ、その中身はヤーボの脂肪を偽装するために強化プラスチックとシリコンと鉄の多重装甲である。
| 指は稼働しない、しかし手足を振り回して飛んだり跳ねたりするだけで住宅地を更地にできるモンスターマシンだ。
|
| 動き回る鉄球と思ってくれればわかり易かろう。
| 当然、機械なので気脈はない。
|
| フルフェイスの大男にとって、それは不利に働いた。
| 弾き飛ばされへし折れた中指を気合（と気による治療）で戻し、大男は身構える。
|
|「見た目はヤーボだが……こいつ！？」
|『ＧＦＦ！』
|
| 偽ヤーボによる、高層ビル破壊用の鉄球めいたタックル。
| 衝突すれば人間など爆発四散するそれを、大男は既のところで回避、転がって避け、手斧を投げる。
|
| 硬質の音と共に弾かれる手斧。
| リトルボーイ本人が見たら何と言うだろうか、先日苦戦を強いられた相手が、自分の醜悪な偽物に押されているのだ。
|
|「そうかよ……！ じゃあコレならどうだァ？」
|
| 突撃する大男、背中に隠していたソードオフ・ショットガンが偽ヤーボの眼前で火を吹いた。
| 散弾に顔を抉られながらも、張り付いた笑みのままで偽ヤーボは遅滞なく殴打。
|
| 肋骨のへし折れる音と共に、大男が人形みたいに吹き飛ぶ。内臓破裂も有り得る。
| というか、原型を留めているのがおかしい打撃、なのに大男は咳き込みながらもすぐに立ち上がる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,,､-ｰ ―- ､,
,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ',
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ |
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ | クソが……。
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr } オイ霊m……ああもうクソがッッ！！
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
|;;;;;;. ', ,,''ｰx三＝､-＼' ::::|ll| |;|.l |;;| l: |;;;/ / ./;;/ / /ﾌ::: ::イ:::/ /::,'
＿,,;;;:;:;:;,,,_彡"´￣ ヽ:ヽヽlﾚl |;|.l |;;| l |;;;/ / /;;/ / /// /〉 :::/ ::/ /::: ,'
:::::,､- ,'"V .N'''"/-ｰ-､"ﾞ } l|::|ヽ: ', |;|.l |;| l |;;/ / /;/ / /// // :: /::::/ /| /::::: ,'
:::／´ ,,､ﾉ _/::l :/ｰ '''''''ﾞ .::| ::ﾉ:/::ﾘ:::ヽ:ﾞj;|.l |;j l |;/./ /;/ /,///:/;/ /::: / ./::| /:::::: ,'
/ ／ノ',／:::::::| { .::j-彡"::ノ::l|:: l'':::ヽ|:ヽ;|;| l /;/ ,／/::／/／|ｲl|::/ /::::| /:::::::::,'
j／ :::', ...::::| ::' ､,,,,,,,,,､-'===彡'"::/::: ',::::::::::'ｰ-､ﾞ::::::ﾞ''::∠／;;ｨ'": //;;|ﾉ ./::::: | /:::::::::/ ／/
:::.........Y ..:::::l ,,;;;| :: :::::::::::|~ヽ:::"／"" 三ﾐ ',::::::::}}::::::::::~''ｰ'''"´::::::::ヒノ:/ノ /::::::: | /::::::::::/ ／:::/
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| 何やら罵倒しながら、ヘルメットの隙間から溢れた血を拭う。
| レイはこの男は危険だと判断した。ドローンを呼び寄せる、偽ヤーボを倒される前に射殺する。
|
|「……もう遅いぜラジコン野郎」
|
| だが、大男が挑発的に笑う。
|
|「そのヤーボもどきはもう役立たずだぜ！」
|『ＧＦＦ』
|
| ドローンを近づけて、レイは大男の言葉の意味に気がついた。
| 偽ヤーボの顔面は右半分が散弾で醜く抉れていた。
|
| 張り付いた笑みはそのままに、割れたプラスチック、溶けたシリコン、その奥の鉄の骨格まで露出していた。
| 補修が必要だ。レイは舌打ちした。そのためには、まずこの大男を倒さねばなるまい。
|
| ドローンによる斉射を、驚くほど機敏に避ける大男、そこに肉薄する偽ヤーボ。
| 腕でガードするも、激しい打撃に肉が爆ぜる。吹き飛び、受け身も取れずに転がる大男。
|
| 止めの射撃をしようとしたドローンが、突然爆発。
| 空中にいた三機が、立て続けに破壊。
|
|「アニキこりゃ、どういう状況かな」
|「知るかよ！」
|
| 現れたのは、このクソ寒いのに上半身裸の傾奇者。
|
|「あのデブを止める、残りは後で考えりゃいい！」
|
| 『グレン団』のカミナ。
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。ｒ≦≧s
／> ´￣ヽﾆ.}
,ｲ／ }ﾆ|
. ,'/ /ﾆ/
{,' ,ｲﾆ/ ＿ カリカリガリガリ！
| ./ﾆ./ 。ｒ≦￣￣＞/=/ カリカリガリガリ！
/ﾆ/ 。ｒ≦.:.:＞ﾍ ´.:.:.,ｲ=./
/ﾆ/ _, -- ､‐ヽ.:.:ヽ>´.:.:.:.:}／ /=.{
/ﾆ/ .,ｲ(::::::::,ｲ､ ﾔ.:.:.}.:.:.:.:,ｲ 〉 ｉ￣￣.:／
,ｲニ} { ｀￣--.´ｉ ',.:.|.:.:./ ,ｲ ./.:.:.:.:／
. /ﾆニｉ_ ﾏイ/;;;/ｉ ｉ ,' ヽ / ／ .／￣／ヽ/__。=､
/ニニニ≧====ｉ;;;(ゝ---ｲ .,ｲ／ > ´====' ｉ.:.:.:.:.:.:Y､
｀＜_ニニニニﾆﾆゝ;)ニニ /.,ｲ ／ニニニニニゝ__ｉ､＿ ノヽ ≧=-
｀ ミ==､ニニニニ＞/ 〆ニニニニニニニニニ／＿ ＼＼ ｀≧ｓ。
ゝ､ﾆ／/./ / イゝニニニニﾆ',ゝ､ニニニニ＞=--､ヽ ヽ ｀ヽ＿＿
// ,ｲ .}ニニニニ〆 ｀￣￣￣ ｀ ＜ ＼ ヽ ヽ
. //./ .ｉニニニニニ≧s。_ ｀ ＜ ヽ ＼
,ｲヽ/ {ニニ＞========ﾆﾆ} .ヽ ｉ---'
{ ノ≧s ｀ ´ ／ﾆノ } } ｉ
yゝ-ｲ／ {´ﾆ <､ ,' .〉}
/ ./ / ｀ ＜==-≧､ .{ /ｉ
ｉ ,' ! ヽ }
. | | {
| ヽ ', ノ,'
', ゝ≧==≦>イ
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| 芝生を削る爆音、迫りくる『カトルカール』に、やらない夫は笑った。
| コイツらなら死体がなくなるまで……いや、無理か。
|
| 何度目の交戦か、この広い場所ではノミ脚は脅威度が低く、逆にバレリーナの遊撃には注意が必要だ。
| 轟音と共に突撃してくる戦車男、やらない夫は初遭遇。
|
| それに追走する二つの飛行物体。なんだ？ やらない夫は困惑した。どうやって飛んでる？
| 巨大な筒に可愛く横座りしているのと、変形途中の戦闘機トランスフォーマーみたいな奴！
|
| どちらもエンジンはついているが、やけになめらかな飛行。
| 抗磁圧によるいわゆるイオノクラフトなのだが、やらない夫には理解不能。
|
| 六体一、抵抗をして殺してしまう可能性。やらない夫は覚悟した。
| 戦って戦って、それで死ぬとするか。
|
| その手始めに。
|
|「ニャンコ先生！ 墨目！」
|
| 『カトルカール』が出てきたということは、『教会』側で録画対策済だということ。
| そして殺されるつもりでいるとしても、全力で抗わねば説得力が生まれない。
|
| 頼みの綱の球磨川の死を知らぬまま、やらない夫は破滅の街道を駆け抜ける。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,, -‐ ､
/' ヽ
／￣￣＼ ./ i
／ ._ノ ヽ､＼ / ...........i
| （●）（●） | / ..:::::::::::::::|
| （__人__） | / ..::::::::::::::::::l 想像しろ！
.| ｀ ⌒´ .} ./ ..::::::::::::::::::::!
| }/ .::::::::::::::::::::/ この無意味な憎しみも争いもない世界を！
ヽ ./ .:::::::::::::::::::/ 殺し合わなくていい、平和な世界を！
.ヽ . .／ .:::::::::::::::::::/
,. ‐'"´ `'‐,r''"~ .:::::::::::::::::／
..:.／,. -‐‐- ､ l′ ..:::::::::::::／|
:,' ／ !.:::::::／:i..:..l
r ､ / !::::::::::: i..:..i
l .......`:i i !:::::::::: ﾞ､:.i
! ::::::::::/ i i:::::::::: ヽ:i
.! ::::::::/ i .....i::::::::::: ヽ
.ヽ ::::::| `､ `､ .....::::::::::::l:::::::::::: `,
/ ＼:::l. `､ ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: /'''ー─----､
`ヽ `､ .::::＼:::::::::::::::|::::::::: /,, ,. ‐;''
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| やらない夫の茶番に、『カトルカール』は付き合わない。
| そんなものがどこにある？ そして。
|
|「しゃぶってやるぜ！ しゃぶってやるぜ！」
|「ま、苦しみのない世界がオレなんざを相手にゃあしないだろうがね！」
|
| スピードスケートの速度で走るバレリーナの疾走、彼女に背を向けることを躊躇わないやらない夫。
| 伸ばしたヒゲ槍が空中を打ち据える。粉砕音。
|
| 周囲に溶け込む外装の『カトルカール』が、続く乱打に耐え切れず倒れる。
| 科学的な透明は、オーラ視覚を有するやらない夫には無価値だった。
|
| 二体の電磁浮遊者の内、大筒乗りが空中で静止、その３メートル以上ある大砲をやらない夫に向けた。
| 射線と同時に飛び退くやらない夫、かん高い射撃音と同時に弾丸が地面に突き刺さり芝生を爆破した。
|
| ねえ、秒速5キロなんだって。超電磁砲の初速。
| しかし、マッハ15だろうがなんだろうが、取り回しの悪い大筒を振り回している時点で当てにくい。
|
| 当てにくいが、あの弾丸が命中したら人間はこっぱみじんこだ。
| そうやらない夫が判断するまで一瞬、嫌な予感に襲われ『エクスカリバー』で張った防御ごと吹っ飛ぶ。
|
| 弾丸も危険だが、周囲にばらまく衝撃波も危険極まる。
| 透明カトルカールが巻き添え、芝生は、鋤でならされたかのように撹拌。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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。ｒ≦::::::::::::ヽ==､
／::/:::::::。ｒ≦/:::::::ﾊ
。ｒ====､.ｒ≦ ../::ヽ:::::::}
,ｲ___ ＞‐ ､ )ヽ /:::::::ﾊ::,ｲｉ
/...､.....',.........ｉ｀＜} ,':::::::::::/::::{ しゃぶってやるぜ！
{彳 从仆､ｉヽｉ.....'ｉ ,':ﾍ::::::/::::: ｉ しゃぶってやるぜ！
。ｒ≦>‐=≦...ｨ=ﾐ ィ=ﾐ廾彳'/:::::::ヽ{:::::::::ｉ
／ //::::::::ヾ!...ゞ'/ .ゞｲ {'...ｉ/::::::::::::rﾐ=､:,'
,ｲ 。 .,ｲ/＞ ´, ﾏ夂.｀,,,,,,,,,。/.ﾊj::::::::::::/ }::::::≧s。
/ ／ﾆﾚニ／ ﾏｘ汽VWV,'/.,ｲ｀ー ´‐='､::::::::::::::ﾑ
{ヽ==ｲニニﾙ' }ﾏ.'''ｉ´￣/,ｲ !==｀ ＜/::::::}
ﾏニﾆ＞ ´ !::ﾍ..| ,ｲ .ｉニﾆﾆ} ﾏ::::::ｉ
｀ー ´ {::::::::! ﾏニﾆﾑ ﾏ:::::}
ｉ:´:｀} ﾏニﾆﾑ ﾏ::::ヽ__
',::::::ｉ ｀ー ´ ﾏノ:::::≧
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 衝撃波から逃れていたバレリーナがやらない夫を狙う、高速移動と牙だけが武器。
| 危険度？ 当然高い。というかわざと危険度を低く見積もらせる存在。
|
| 墨目が迎撃、飛行する二体にニャンコ先生が電撃を飛ばす。
| 戦闘機が前に出る、電撃がその表面で曲がった。バリアだ！ 目を輝かせるやらない夫。
|
|「バカモンが！ ただの魔力障壁じゃ！」
|
| エンジンを吹かし高速で錐揉み突撃する戦闘機、スイカバーが刺さるのはシロッコの専売特許だ。
| 回避するやらない夫。高速体当たりと強力な魔力障壁で何でもぶっ飛ばす。
|
| 見た目は最新鋭の戦闘機ながら戦闘法は原始的。
|
|「喉が喉が喉が渇く渇く渇く！」
|
| 戦車男の機関銃が轟音を立てて斉射、まるで回転ノコギリ。というか、回転ノコギリと合体している謎機関銃。
| ふよふよと漂いながら銃口をゆらゆら動かす中空の大筒、気になる。
|
| 簡単に当たらないが恐ろしく強力な主砲を見せつけることで、注意を引き続ける嫌がらせ。
| 飛んだり跳ねたり転がったりして泥だらけで逃げ回るやらない夫。
|
| 銃撃と錐揉み突撃の陥穽に潜んていたバレリーナの咬合。左腕でブロック、ヒゲ槍の装甲ごと肉を食い千切られる。
| スイッチして鉤爪を眼球に突き入れようとするノミ脚。
|
| 慌てて避けた、そこに。
|
| 狙い澄ましたレールガン！
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| 爆音爆音爆音！！
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| 空気中に張られた無数の念動障壁が貫かれた。
| だが、十二人分の障壁全ては砕けない。空中で止まる楕円形の弾丸。
|
|「うおぉんうおおおぉん！ なーんてね！！」
|
| 毒々しいが蜜のように甘い声、エンジンを吹かし爆音と共に現れた巨腕の怪人が、空中の大筒を殴打。
| 右ストレートの一撃で、アルミ缶みたいにひしゃげる大筒。
| 横座りの本体は落ち……ない、片腕が大筒と一体化していた。
|
|「ｺｰﾎｰ」
|「石田さん！ 龍田さん！」
|
| 左フックで大筒をスクラップに変えた龍田が、巨腕の重量に見合わぬ身軽さで空中に『着地』。
|
|「天龍ちゃんが迷惑かけてなーい？」
|
| 声だけは天真爛漫に笑いながら、毒々しい魔力で障壁を浸食。戦闘機を叩き落として龍田。
| そこに機銃掃射、石田の念動障壁が恋人を優しく守る。
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ｉﾆi _ -=ニ二ﾆﾍ
,,ｨー＝- ､､ ｌ ｌﾆi /ニ二二ニニｲ_
〈: : :`ヽ､: : ＼＼ ＿_ ｌ ｌ ｌ 〈二三彡ik二メ/､ ,ｒ ;
＼: : : : ヽ: : ヽヽﾍ _.ィﾆ二二ﾆﾍ ｌ ｌ ｌ ＼ﾍ l_／ソ彡く――/ /―/ 7 でも、その天龍ちゃんが
＼: : : : ヽ: :ヽヽ;ﾍ ､ .二二il― i__ l￣ヽニ〈‐_ン, ｨ〈´ニﾆ/ /ニ/ /ニヽ 居なくて助かったわぁ。
＼: : : ヽﾍ: ヽ: ヽ 〈( , 二二l二二二ﾍ ,l ｲ､ィ／i: ﾍ二二ｰ'二/ /ﾆﾆ/
＼: : ､:ヽ: ﾑﾍiヽ( ニニl二二ニ／: : : / ＝: : : :ﾍ二二二二二二/
/⌒`＼ヾ: : ヽﾐ: : i 三三三l三三三i/: : -‐ォーﾐ: :ﾍ＞‐ニ￣ ＿ lミi
ヽ: : : : : :`: : :/ミ: : l 三三三l三三三ﾒ´ ' ﾐイi |ニ| |ニ| lニi
ヾ: : : : : : : : ､: : : l 二二二l三三ﾆ'; //ニl (⌒) (⌒) ｉ三i …………だって。
＼: : : : : :ﾊ: : l 二二二l三三/:; , ｨ/ニ三l 二 二 lニi
｀ヽ＼ニ彡ニ‐ﾍ ＼i‐lﾍ/ ﾑ, ー/: i三l――ｚｚｚ ＿_/ﾆ/_
ヽ ヽヽ∨ゝ-‐=ニ三彡ﾍニi／'二二二二二二i､
＼ ヽ/: : : : :／: : : : : :.∨l-――､､―,ヽ二二ﾆﾐ
ゝ/: : : : : : : : : : :＞' /／: : : : : : : : : : ＼二ﾆ i
ﾒ: -―― ﾃ ｔ'´_ ィ: :/: : :,: : : : :i : : : : ; : : : i''
/ / ﾍ: : : : l: : : l: : : : :/: : : : /: : : : :i
/ / ヽ: : : :l: : /: : : : /: : : : /: : : /: l
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|「天龍ちゃんと殴り合いたくないじゃなぁい？」
|
| 爆音を立てて龍田の腕のエンジンが火を吹く。
| 握りしめた鉄の拳、その手の甲に生えた刃、猛毒の気配。
|
| エンジンを吹かして、自分自身がロケットになるロケットパンチ。
|
|「やらない夫さんは、確保させてもらうわよぉ〜」
|
| のんびり間延びした声、だが動きは豪速で剣呑。
| 諌山冥を血煙に変えた拳がやらない夫を狙う、間に撒かれる墨目の死の瘴気。
|
| だが石田の柏手、黄泉路の気配が祓われ霧散。
| 確保というか殺す気なのでは？ 疑問を差し込む暇もない。レールガン並の破壊力が空気を叩き割り猛進。
|
| ただしこちらは列車砲。
| 走馬灯が過る脳裏を振り払い、やらない夫は必死に回避。
|
| これで死ぬわけには行かないだろ。
| 龍田の精神的外傷的に考えて！
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☆ 次回予告！
地下迷宮に挑む復讐者。
え？ ダンジョン探索？ すんの？
そんな面倒なことするわけ無い。
（書いてるのは）年末だしね、討ち入りじゃ討ち入りじゃ！
外道働きになんの報いもないなんて。
お天道様が許しても。
ばっちゃとあたしが許さない！
次回、最終幕八十話『暗黒の深部』
果てに見るのは破滅か死か。
あ〜、しっちゃかめっちゃかだよ！
えーっと、だれがどういう立場で戦ってるんだぁ（お目目ぐるぐる
咲夜、球磨川、マーガレット ディオにより殺害
天龍、シグ ロビンと交戦
ジャギ 偽ヤーボと交戦
警察
やらない夫の確保と暴徒鎮圧
自衛隊
扇動
『血族』
カミナとシモン 偽ヤーボと交戦
龍田と石田 やらない夫を確保するためカトルカールと交戦
『異端審問官』
ジャンヌ 暴徒鎮圧中
シロッコ配下
ロビン 天龍シグと交戦
爆弾蜂 罠を仕掛けている最中に逆に罠にかかる
他のカトルカール やらない夫を攻撃
レイ 偽ヤーボを操っている
合衆国軍 一般人を攻撃
ディオ（アリー・アル・サーシェス
球磨川たちを殺害後不明
今のところこんな感じかな。
次から最初と最後に貼りますわ。
実に大混戦、何人生き残れることやら
解説見ても草生えるくらいの混戦具合
.∨A _＿＿ i lﾍ
∨ム ヽ ￣ ｀ヽ lヽ. ' l!∧
. ∨ ﾍ＞-‐- ∨ ヾ､! ヽ. / li/∧
∨ ヽ､ ∨ l ヽ. ﾉ li l,
／ ヽ. ヽ､ ＼ l i ﾉ , .il l,
＞ ，_ﾍ､ ゝ､ヽ､ ｀>ｭｪｪi､ ﾍ ノ ,' !l l,
/ ／ >､ ゝ､ヽィ´ ヽ. ノ / ,'ｿ l,
, ' ／ ∨ ＼､ _ __ '!. / ', ｱi. i'
/ ／ Ⅳ.､ ヽ ￣∨｀! ゝヽ〈 .i ﾋ ,'
／ Ⅵ≧ﾆﾆヽ ｀'´oﾍ ﾍ 〈､ ヽ/j ro /
´. ∨ ｀! l.Π r”ｬ､._ ＼ 《 lﾘ､ j / i r'
二二ﾆｭ ∨ l..l l i∨，;';';';';';､ゝヘ'´ ｀´iィｱ/ む……むむ。
l i ∨ .l l l .l ﾍ＼;';';';';';'`ｰ=ヘｨ!ィ i l' 感じる、感じるぞ。
l Oi ∨ .l l l .l ﾍｨ'´/ ､,;';';';';'／.ｨiﾍi l!
二二二二二ヘ l l ゝl, /ﾍ ∧ヽ/ ,'ｲ/i ; l! 我が魂を震わす好敵手の気配がある。
l l l 〉ｰ＝i､ /.､ ' ｀ｰﾍ/i .! y'‐- ，
l l l ' , i _ヽ / ヽy二二/ l! l__lj _ ヽ
l l l i 'i ≧r' ｀ｭ≦二二二≧､'´ ﾌ, ∨
＿＿l＿＿_r' l l ヽ.i ､％ﾙ'´｡ ＿＿＿ﾍ ﾉく ∨
＿＿＠l j 〉'‐ - .ﾍ ＞-‐へﾟｲｰ,〉 >ﾍ i
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l l 〉ー＝─く ＞ｭ､ ｀ー＝＝=ｨ'￣/､ l
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| 深夜の間桐屋敷、玄関。
| ザアザアと降る冷たい雨。雨脚は強く、傘がなければ分厚いコートもすぐにぐっしょり濡れてしまうだろうほど。
|
| 閉ざされた頑丈な門扉。九月の惨劇の後、手入れもされず荒れたままの日本庭園。
| 住む人間が居なくなり、誰も手入れをしないため半分廃墟のような家屋。
|
| 住む人間。
|
| 寒々とした玄関の土間に石油ストーブを置き、車座に暖を取る三人はそれについて少しだけ考える。
| 間桐臓硯が人間なのか否か。
|
| ……人間であると信じたい。
| この場における紅一点、卓越した肉体美を誇る巫女、博麗先代は考える。
|
| この東京を守るための組織である『血族』の『元老院』に、人間でないものが紛れ込んでいるなどと……。
| 信じたくはない。
|
| ……どちらでもよい。
| 『血族』の元『四天王』でありながら、一度死に他人の肉体に魂だけがこびりついた死にぞこないの『狂死』は考える。
|
| そもそも己も分類するなら人間ではない。
| 悪霊死霊の類なのだ、他人がどうであれ志を同じくするならば文句はない。
|
| ……怪物である。
| 老いてなお盛ん。問答無用の武力百。そのくせ寿命も長いし忠義も高い。呂布奉先は断言する。
|
| 初めてあった時すでに人知を超えた老人だったのだ。
| 悪魔の類で間違いあるまい。
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__,. -ﾆ¨＜⌒ヽ--､
. _,.＜＞'"´i￣ ｀丶ヽ ｿﾄ､
／二ニゝ ﾉ_,,..、 Y'¨入
/>-ﾆフヽ::〉.''"二_｀丶 !、 ﾊ
i'"´,,.ｚェヲ' ｨﾃﾗ ｀ヽ ﾉ¨ﾞヽ
.. l./´ヽ'´ .ﾉ丶 ｀¨￣/´ ﾊﾇヽ_ｊ
ｊ ｒ｀丶¨ l. ''"´ / 〉｀ i
{ i´ら ､ l ヽ' l
. ヽｒ- ｿ!. ', ,∠_｀＾ヽ ,' ……貴様の好敵手になれるような怪物が、
.l ｌ ' ､_ ￣´./ 何匹もいるとは思えん。
「¨ミ>､ ヽ、 ⌒i / 下手を打ったな、間桐臓硯。
/¨丶､ ＼ 丶 _._ ,'
/ ＞ ､ ＼. ＜,. -‐'"
,' ｀丶 ヽ/
;.ィ"´ ￣｀ ＞ ､ ＼∧ト､
／ ／ ', ＼ ヽi:ｒ‐!
. ,.' ｀¨´￣ ', ＼丶::ﾍ、
/ _,.. ⊥ ..,,_ヽ ＼::＼
,' ,. zヲ'"´ ￣｀ﾞ丶､:＼
; ／.／ ﾊ:::ﾞ､
.i /／/ ,. ''"´￣￣ ﾞ'' ｰ- .､. ';:::i
/ ／ 丶､!::i
,' / ﾞハ
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| 三人は、間桐臓硯の護衛だ。
| 『結社』諸葛亮孔明派の残党として間桐臓硯の暗殺し、東京を混乱に陥れようと企む遠坂一党を除かねばならん。
|
| 色々思うところはあるが、行動が読めない厄介な勢力に可能なら退去いただきたいのは本音である。
|
| 間桐臓硯が少ない手勢を暗殺に向かわせたのを、三人は知っていた。
| 話せば分かり合えるかもしれない。先代はそんな風に甘く考える。
|
| だけれど、臓硯と遠坂の遺恨はあまりにも深く、恨みの色は濃い。
| 両者納得行く結果に導くだけの労力は、今の『血族』には欠如していた。
|
| 故に暗殺と、失敗したときのために護衛である。
| しかし呂布と『狂死』は、暗殺など成功するはずはないと考えていた。
|
| あの、夢宮士郎を暗殺？
| どれほどの手練を必要とするのだ？
|
| 彼らの知る士郎は十五年以上前だ。
| だが、その時点で士郎は既に『血族』屈指の戦士であった。
|
| 今現在で言うならばケンシロウ……いや、ケンシロウの方がまだ可愛いかもしれない。
| 夢宮のババア譲りの戦闘センスと、不死と噂されるほどのタフネス。
|
| 当時でも既に卓越していた戦闘技術に、長年の経験が乗ったとして……。
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/:i: : : : :/ i∧: : : : :/ i ＿}ﾊ: :.:.i: : :|: : : i
/i: |i: : : :l ≧z､∨: :./z≦__,__ i: : :|:.|: : : : :|
i从: : : |弋f心､ヽ/ / ﾄ'zｿﾉ│:./: i: : i: :.:|
|: :|: :从 ￣ , "￣. 亅/: /: : :|､: | 先輩だけならともかく、
|: :|､: : ::. ヽ 'ｸi: :/: : : :i:ヽ| 遠坂の魔女もいるのだろう？
∧:j─vｰ＼ ､ｰ_,ｧ.. ／/:ｲ: : : : :|:.ﾉ|
/: :〈＿人__/:＞ , ﾄ＜⌒⌒'ﾌ: |
/: : : : i∮∮i: : fゝ｀ ´＿＿,ノ¨;八￣￣:i:.:|
/: : : __人∮:ﾉ'⌒i三三三三三ノｰ‐i_r─<､i＿
/: :／ｦゞ-'^'f´/ /≧≡==≡≦| /ゝ'⌒'´ヽ ＼
. /:／ /: : : : :././ /.三三三三三 |. / i: : : : : : : i ,
/:/. j: : :__,ノ_/ 三三三三三三 {./ ヽ: : :ヽ: :/.. |. ＿ノ}
. /: ; レ'rｰ＜＿＿__∧v──'´￣ヽ.. ヽ: : :∨ ;. ／ ,‐＜´i
＿＿_/__/.／／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ＼: } / ., '´ i⌒ヽ.∨
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| ケンシロウとの違いは女性人気の点でもあった。
| 夢宮士郎は、冗談みたいに女にモテた。
|
| 色恋に疎い本人は蚊帳の外で、そのハートを射止めんと水面下で骨肉の争いが演じられたという。
| 具体的には、各派閥の該当女性が当時のトップ陣に掛け合い、なんやかんやで『血族』分裂の危機と言われたほどである。
|
| 『傾国の美姫』ならぬ『紅顔の美少年』。外部組織も介入して戦争寸前になり、
| ブチ切れた夢宮が家族ぐるみの付き合いをしている幼なじみを婚約者だったとこじつけた程だ。
|
| 本人同士も憎からぬ仲だった上に、その婚約者がぐうの音も出ないほどの怪物だったため、それ以上は拗れなかった。
|
| ……怪物。
|
| レナ・セイヤーズを思い出すとき、博麗先代は他の言葉が浮かばない。
| 夢宮士郎は未完成の達人だった。だが、レナは無限に成長し、いずれは世界をも飲み込みかねない巨大なモンスターだ。
|
| それが不慮の事故で死ぬなどと、未だに信じられない。
| ……そして、あのレナと鎬を削った超人こそが。
|
| 他でもない、遠坂凛。
| あの二人が組んでいるならば、それこそ暗殺など夢のまた夢。
|
| 黄泉とロストスキルを差し向けたとしても、まあまず難しかろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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| _,,.. ..,,_
| , ＜´ ｀＞ 、
| ／-― ≧ニ=- 、＼ ＼
| / ／´ ＼ヽ / ノヘ
| / , / | ｀¨´ |l
| ; ／ 〈 ﾉ |l
| |／ ﾉ , - ､ |l
| | ｨ’ ／ ＼ l 〈
| レく | ､＿ ＼ _ | ノﾍ/
| 〃へ ヾ ､ o ￣`ヽ｀ ｨ≦ ｨ /
| { } | ￣￣彡 |°-' |
| 、 ヽ ＼ ! |｀ /
| ＼ｰ' | | ｌ | ／ …………。
| _ﾉノ`ｰ/ ∟、 _ﾉ /
| 厂` ＜ ｛ ＿＿ _ /
| ノ ｀丶l＼ ´ ＿＿ ｀ /
| ｀ﾌ冖￢ｰ-､ ＼ `丶、 {
| ／ ー―- ＼ ＼ ＼ 〉
|/ ――――- 、丶 丶 _ ト-----‐'
| ＼ｰ- ｀二丶
| ＼ ￣`＼
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| 遠坂邸で間桐臓硯の刺客を待ち受けるロストスキルが、敗北の記憶にぐっと言葉を飲み込んだ。
| まあ、仕方ないよ。相手が悪い。
|
| それはともかく、間桐屋敷のやけに頑丈な正門の前に車が止まった。
| 現在、午前二時。どんな客でも夜襲にしても、非常識な時間だ。
|
| 土砂降りの雨の中、何者かが門を開ける。
| 巨大な木製の正門、正規の侵入方法は、端にある小扉を開場して閂を外すこと。
|
| 恐るべき手練が、魔術的な妨害を突破したか。
| あるいは。
|
| 車が玄関の近くまで接近。土砂降りでも隠しきれぬエンジン音。
| 三人の『緊急事態対策班』員は立ち上がった。
|
| この不遜な侵入者に目に物を見せてやらねばなるまい。
|
|「夜分遅く申し訳ありません」
|
| 声、そしてノック。
| 玄関のガラス戸に映るシルエットは小さい。小柄な呂布と同じくらいか。
|
|「こんな時間に非常識とは思いますが、何分こちらはお尋ね者。失礼はご容赦ください」
|
| その声、若い女の。芯を持った、意志の強さすら感じる鋼鉄の声。
| 先代は、そいつが何者か理解した。だが、理由が分からない。
|
| そいつのことは探していた、そっちから訪ねてくるとは想定外だ。
| それと同時に、なぜこのタイミングなのだ？ なぜ間桐屋敷なのだ？
|
| 疑問は尽きない。
| 先代は問答無用で先制攻撃を仕掛けそうな『狂死』を手で制した。
|
|「お前は……」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:| 柴崎蒼星石です。
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./ 先代ですか？
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′ ということは『緊急事態対策班』が配備されている？
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 誰何より早く、そいつは答えた。
| この頭の回転は間違いない。鍵のかかっていない玄関の引き戸を勢いよく先代が開ける。
|
|「お邪魔します。この寒さでこの雨には閉口しますね」
|「傘があんまり役に立たないもんね」
|
|「ええと、お邪魔しますお……」
|「やっと開いたの？ 寒いから早く入れなさいよ！」
|
| わらわらと、なし崩しで和やかに侵入する四人の男女。
| あからさまに敵意剥き出しなのは最後の女だけで、他の三人は警戒心すら見えない。
|
|「ええと、ご高名はかねがね。はじめましてやる夫ですお」
|「……は？」「ほう」「え？ だが、しかし！？」
|
| 三番目に入ってきた腰の低い男が、ずぶ濡れのレインコートのフードを外して頭を下げた。
| レインコートの下はラクダ色のジャケット。明らかに黒ずくめではない。
|
|「蒼星石、アリカ。そいつから離れろ！」
|
| 即断柏手、簡易結界を張る先代。方天戟を引き寄せる呂布。だが、『狂死』は腕組みして成り行きを見守る構え。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, z======= ､
／-､ﾆﾆヽｰ'⌒ヽ ハ
/／ヽ{ﾆ/⌒i⌒ｰ┐＼ｉ
{ rｧﾗ ﾋｿﾑiﾘ}l｀ヽ (. }
_ノ ｀´ / /イ人 { } /
ヽ_ / / ＼{／
フ / ＿_{ 『それ』で悪魔の証明を脱したつもりか？
｀T ／ , ＜´─┴┐
/[[_fソ]二ﾕ､ ー─}／ ＿＿＿} 魅了を『使わない』ことは
_ノノ {ー ､ } ／ ＜´ | ＼ 『使えない』証明にはならんぞ？
[))ﾚ'´ ´(ノ{＿_/／＜´ ｜ ∧
∠／ ｀ヽ | l|
, ' ∨ | lﾄ､
/ }l | ll i
{／ / , ｌl }
／ / / / /
__, ---､ ／ / / / /
_∠エエヽー／ |イ / /__j
_{ ___／ , -} , ' / ﾉ
〈 ／ // / 〈ー ／ , イﾉ´
} / / / ﾉ ／ ／／
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|「ですよね！」
|「無闇に元気あるわね……」
|
| 『狂死』の指摘に出鼻を挫かれる先代と呂布。
| 悪魔の証明。存在しないことの証明。默然のやる夫が、ニャルラトホテプではないという証明。
|
|「お久しぶりです。あとはじめまして。夢宮アリカです」
|「俺は呂布奉先。呂敏の祖父と言えば通りが良いか？」
|
|「あ、ミストさんを助けた人！」
|「うむ、そんなこともしたな」
|
| 先代の戦慄をよそに、アリカと呂布が和やかに挨拶。
| いや、和やかなのは外面だけ、裏表ないアリカはともかく呂布はアリカの実力を見極めたくてウズウズしている。
|
|「…………ルイズよ」
|「『狂死』だ」「博麗先代。失礼だがどこの組織の者だ？」
|
| 不機嫌さに拍車がかかるルイズ。
| ヨーロッパならば彼女を知らないのはモグリであろう。しかしここは極東、その雷鳴は届いていない。
|
| そしてこれは、蒼星石が既に指摘していた。ルイズの名を知らない場合、彼女と『弓兵』たちの関係も知らない事になる。
| 『結社』撃滅作戦の報告書にルイズの名前はあるが、先代も『狂死』も読んでいない。
|
| つまり今は。
|
|「我々は間桐慎二の友人として、この東京を来る破滅とニャルラトホテプの手から守るために、
| 間桐臓硯氏に助力を願いに参りました」
|
| 『弓兵』とは無関係で、押し通す。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/:::::::::::::::::::::::::::ゝ､
......::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::ヽ
〈:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ
>;;:::::::::::::::ヽ:::::ヾ::::::|ﾐ::::::::::::::::::::ヽ､
.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ） あいつらでも囮程度の役には立つのか。
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l まあ、どれだけ時間を稼げるのかは見ものだけどな。
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
| ＼ ＼
| ＼
| ｲ }
f＼ ﾉ ﾍ }
{ ＼ｲｨ´￣ ﾍ }
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|「言われるまでもない、速攻で決めるぞ」
|「ええ、準備は万端よ」
|「お前ら話を聞いていたのか？」
|
| 慎二の軽口に噛み合わない返事を返す『弓兵』と凛。
| 最後尾の『万魔』が頭を振る。
|
|「合理的とは言えないな、奴らは捨て石にするべきだ」
|「優秀な僕の踏み台になって死ぬんだ。奴らも浮かばれるさ」
|
|「だから、それが合理的ではないと言っている」
|「え？ だからなんなんだよ！」
|
| 『弓兵』も凛も『万魔』も、慎二語には精通していた。
|
| 最初の言葉は『彼らが倒れる前に助けに戻ろう』。
| 二回目は『最悪僕一人でも戻る』だ。
|
|「バカ慎二、アンタを戦力としては期待してないけど、アンタが説得しなきゃ間桐臓硯は殺すわよ」
|「……分かってる」
|
| 『弓兵』も凛も、間桐臓硯及び間桐桜対策はバッチリだ。不死身の怪物を殺す術は用意してある。
| あとはそこに至るまでの罠と、慎二による説得だけが問題だ。
|
| 慎二が説得できなければ、間桐臓硯は殺す。
| しかし、説得に成功すれば恨みは飲み込む。そういう話でまとまっていた。
|
| 間桐屋敷へと繋がる地下通路、屍鬼も存在しない完全な脱出口。
| 同時に、地下工房へ直通する道。いくつもある通路の中で、慎二が知るのは一つだけ。
|
| そして、辿り着く工房は三ヶ月前に『万魔』に破壊されている、秘匿された真の工房の場所は慎二も知らない。
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ﾄ / ヽ _
| ∨ ｀ ヽ、
| , ヽ、
| ,r' ´ | -=ﾆ
|' ／ ヽ、 ヽ、
l ,/_., ＼／ ヽ ＼
l / У / l l .__ ＼
/ ﾞﾞ´ 〉 // ＼￣
／ ﾄ / |
ヽ rｰ ' ト、| さて、卒業試験だ。
、__ l ﾐ |ヽ'
、 ｀ ／ ﾐ ∧|
l , ﾐ. ∧|
、 , ＿＿ ﾞﾞﾞY
, =‐' ﾆﾆﾆｺ//////////∧|
/: : : : : : : : : :/.///////////∧、
-‐‐‐‐‐‐-- 、 _ ｌ_:_:_:_:_:_:_:_: : :|//////////////ト
: : : : : : : : : : : :｀: : : ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : ::.|.ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|: :.|
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.|.////∧ .////|: : :ヽ
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : |/////∧ /////|: : : : :ヽ、
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|「おい、こんな時に何を言って……」
|
| この二ヶ月、『弓兵』に師事して魔力の扱い方を鍛えた『万魔』。
| 消耗を抑えた低出力戦闘の技術、隠密、精密操作。
|
| いずれも高位悪魔には不要な小手先の技、魔力が足りぬなら人を食って補充しすれば良い。
| のだが、人食いをやめて二ヶ月。『万魔』は魔力総量的には全盛期の一割にも満たない。
|
| しかし。
|
|「なんとまあ陳腐な隠蔽だ。馬鹿にしているのか？」
|「この工房が動いていた頃はもう少しマシだったのだがね」
|
| いとも容易く地下への隠し扉を見つける『万魔』。部屋の隅にある床板に触れる。
| その『陳腐な隠蔽』を見抜けずに撤退を余儀なくされたのが二ヶ月前。
|
| 『万魔』が嘲笑する相手は過去の自分自身なのであろう。
|
|「魔術的な罠はアラームくらいか、無力化した」
|「頻繁に利用する場所ならば致命的罠の可能性は低い。だが」
|
|「アラームの消滅を感知された可能性があるな」
|「免許皆伝だ」
|
| 床板を開く、はしごの設置された縦穴、底は見えない。マンホールほどの広さ。
| 地の底から漂う、すえた異臭。
|
| 『弓兵』ははしごを使わず飛び降りた。
| 慌てて追う凛、慎二も続く、最後尾は変わらずに『万魔』が詰める。
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／:::::::::::::::::::::::｀ヽ、
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ﾞ |:: :ｌ: :|:::|::::|:::|::::::::|:::|_弋∨||_|,､|_ﾊ
ﾞ |:: :|: :|:::|XT∧:: ::|l/イ不ヽ!::::| |
ﾞ |:::::|:::ヽ:l´,不､＼i 弋:::ﾉ |ﾞ:::|,-､! ようこそ、先輩。
. |::::::|::::::ﾞ|(弋:::) ､ ,|::|:::::|::|
. |:::::::|:::::::|ゝ ´ ､_ｧ ./:|::|:::::|::|
.. |: ::|::|:::::::|::::ヽ、＿＿_ イ: :|::|:::::|::|
|||::|:::|:: :::|:::ｌ::!::::::::| .∧-|/!::/l/
|!|::|::::|::::::|!:ｌ／￣ﾍ_ ._/ l/ ＼
. ヾ!ヽlヽ::|/| ∧ ／ ./.:.ﾍ
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| :.:.∨ / ｡ ∨ / :.:.:.:.:|
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|.:.:.:.:.:∨ .:.:.::.:.:.:.∨ .:.:.:.:.:.:.:|
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| 縦穴の深さは20メートル程度だった。
| 少し手間取るもすぐに追いつく。しかして、『弓兵』はその先で硬直していた。
|
| 血走った双眸はかっと開かれ、開いた口は塞がらず浅黒い顔に脂汗が流れる。
| 縦穴の先は横穴で、道は狭いが通るのに苦労するほどでもない。
|
| 横穴も奥行きが10メートル程度と短く、出口の先は広い空間がある様子だった。
|
| その空間から、夕日のように赤い光が横穴に差し込んでいた。
| そして出口に立ち塞がる小柄な影を前に、『弓兵』は身動き取れずにいた。
|
| 質素なワンピース、ショートカット、あどけない顔立ち。垂れ目がちで、儚げ。
| 背後から差し込む赤光を背負い、全身血まみれのようにも見える、少女。
|
|「あら、姉さんに、お兄様。それと……ご先祖様もいらしたのですね」
|「さく……！？」
|
| 在りし日の、幼い頃の間桐桜。
| 遠坂桜だった頃の桜。遠い日の記憶と寸分違わぬ姿で、はにかんだように笑う。
|
| その胸に、赤い華が咲いた。
|
|「よく見ろマヌケ！ そいつは爺さんの肉袋だ！ 桜はもっと……」
|
| 呪詛の弾丸が命中した部分から、熱せられた発泡スチロールのようにドロリと溶ける幼桜。
| 服も体も一緒くた、内側には薄桃色の肉が詰まっているだけの使い魔。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿,..-::ﾆ〜:::､__
／:::::::::メ:::::::::::::::＼＼
ノ::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::ヾ{
{:::::::::/:y:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
}::/:|:{:::::||::::::::::::〈::::::〈:::::::::r'
イ:::ﾉ:{:::::ﾘ:::::::::::::::ゝ::::}::;:ｨﾍ
ヾ:::::;::::::::::::::::::::::::､::::/}│ 桜は、もっと……
∨:::ﾉ::;::::::::}::::〉:;ソ 厂
):〈::::{:::::::〈::::;メ / 諦めきったみたいな、
7^^ヾﾆ=-ヾ_7‐′ ムカつく顔で笑うはずだろ。
_ r‐'-=ニニニﾆﾆ{
／¨￣ -=ニニニニニ=- _
／ _-=ニニニニニニニニニ=-､
./ / _-=ニニニニニニニニニﾆﾆ=-
| .:/ _-=ニニニニニニニニニニﾆﾆ=-l
ハ.:::l _-=ニニニニニニニニニニニﾆﾆ=-!
/ ヾ:|_ -=ニニニニニニニニ∨ニニニニニ=-|
./ ＼.::!-=ニニニニニニニニニ∨ニニニニﾆ=-〉
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|「ああ……そう、だな」
|
| 脂汗を拭う『弓兵』。渇ききった喉を生唾で潤す。
| 慎二の隣で凛がへたり込む。そんな三人を見比べて、『万魔』が不服そうに目を細める。
|
|「桜のカタチをしたものは、僕とお前で全部どうにかする。あんた達は爺さんを頼む」
|「誰がだって？」
|「お前しかいないだろうが、ターニャ」
|
| 『万魔』が満足そうに頷いた。
| だが、最前列の『弓兵』が振り向きもせずに手で制する。
|
|「もう、問題ない」
|「信頼していいのか？」
|「ええ、失望させないわよ」
|
| 答えたのは凛。経験か、年の功か、あるいは覚悟を決めたのか。
| 凛はギラつく目付きで赤光の先を睨めつけた。
|
| そこに間桐臓硯がいるのは確実で、既に侵入者には気付いていて。
| その上で、この悪趣味な歓迎を寄越したのだ。
|
| 進む四人。
| 赤光の広い空間は、想像よりも遥かに広い地下空洞であった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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´ ｀
／ ＼
／ :.
,ノ､ ,′ '.
| ＼ / ヽ
| .′ ,,.. ''" /
| , -‐ '" ,..::::::::/
_:, ':, | ,.:::' ,. ,.:':.:.:.:.:/
∨ ＼ :::..':,│ ,:':,:' ／ ,::.:.:.:.:.:/
〈 ｀丶::::..:::::／ __, !.:.:.:.:./´'. ふむ、呂布も『狂死』も案外頼りにならんのう。
{:ミ＼ 〉::f ''"´ ヽ.:./ 7/ 『血族』の質も落ちたものよ。
_У ゝ=` ､∧ r＼__,,,.. -rrrｧ::'’'' /
／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
＿__／/:.:.:/: }:, r‐r‐< / | :、 ／/:.:.:l: :＼
／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
／: : : :.:.: : i:.:.:.' : . : l＼ ｀ ー======イ / ｨ: . |:.:.:.:!:.:.: : : :＼
´: : : : : :.:.: : :! :.:.l : . : .! lヽ´￣￣｀ヽ イ´ /: .│: : l.:.:.: : : : : :＼
: : : : : :: : : : :! : :.!: . : . l l:.:.:.｀ー― '":.:.:.:./../: . :.:| : : :l :.:: : : : : : : :＼
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|「爺さんには言われたくはないと思うね」
|
| まるで巨人の体内。なめらかな壁の広々とした空間。
| 横幅と奥行きは50メートル以上、運動場のような広さ。
|
| 高さも10メートルは軽い。地面を掘ったらすぐにたどり着くという事だ。
|
|「なぜじゃ？」
|「他でもない間桐の質が年々落ちていただろ」
|
| 壁面は血管のような管が網目状に走り、脈動しながら赤黒く光る。
| 間桐臓硯は広場の真ん中あたりに立っており、その奥側は窪んでいて、どうなっているか分からない。
|
| ただ、より強い赤光が溢れているのは確か。
|
|「カカカ、言ってくれる。しかし、馬鹿な子ほどかわいいというもの。どれほど愚鈍で無能でも、な」
|
| 呵々大笑する臓硯、愚鈍で無能という評価を真正面から叩きつけられるも、慎二は唇を歪めただけ。
|
|「その愚鈍で無能な子孫から、偉大で有能な爺さんにお願いがある」
|「クリスマスのプレゼントか？」
|「そうだ」
|
| 鷹揚に頷く臓硯、慎二の後ろには様々な感情が渦巻き、表情を失った三人。
|
|「桜を僕にくれ」
|「それはならんな」
|「なぜ？」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＿＿＿＿
´￣／ ＜
. ／. ´ ＼ ＜
. ／
. ／ } }} ∨
/ ヽ |
{ / -― 、 / ＼ / }
| { ｀¨ ＼ , ／ ＼
| へ ＼＿＼＿＼ } ／／ ﾉ
{. / ハ ＞[二二>≧-⌒ｧr≦- ﾃ二/
＼ } ! ﾍ/ ￣´ 冫 | {￢￢´ { 何故？ 何故と言うたか？
＼ （ヽ/ / ￣ / | | 、_ j
＿ｧ≦7 ＼二> ｧr‐ ヽ ! { __ / 慎二よ、お前儂が丹精込めて作った玩具を壊してしまう気であろう？
7/{///／ / } { { ヽ ----￣--ｲ } |/
//{///{ { { { ∨二二二二二/ 形あるものはいずれ壊れる。
//|///| | { ＼ 丶‐------ ’ ｲ であるが、壊すために与えるには高価すぎる玩具でのう。
//|///|∨ | }} 心 ／//＼
//|///|. ∨ } ＞ }__j＿jイ//{//＿心
//|///| ∨ } ／ 〃 } |///}///「//ム
//|///|. ∨ .} 〃 / l///l////////,
//|///| ∨ } 〃 / }///}////////ﾊ
//|///|. ∨ゝ 〃 / l///|/////////|
//|///| ∨＼ .／ ／ }///l////∥///}
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「落ち着け、くだらない挑発だ」
|
| 陽炎立つ程の怒気を漲らせる凛と『弓兵』、『万魔』が小声で釘を刺す。
|
|「くれぬのなら、勝手に持っていく」
|「それはやんちゃが過ぎるというもの」
|
| 慎二が額に手をやり頭を振った。深い、深いため息。
|
|「では言い方を変えるぞ爺さん。桜をよこせ、そうすれば後ろの三人は危害を加えない」
|「おねだりの次は脅迫か？ 返事は変わらん」
|
| 臓硯は、手にした杖で地面をコツコツと突いた。
| そして愉快そうに唇を曲げる。見るものを不安にさせる笑み。
|
|「もしや、本当に桜やそやつを人間に戻せるなどという妄言を信じておるのか？
| 骨の髄どころか、肉体のパーツの余すところまで虫に置き換えてあるのじゃぞ？
|
| どちらも精神に異常を来たしたいわば成れの果て。ガワだけで、肉も心もまるで別物。
| テセウスの船も真っ青、コヤンスカヤもニッコリの完全別個体。
|
| それを？ 人間に？ ちゃんちゃらおかしくてへそで茶が沸くというものよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／::＼,.へ._
r‐:::::::::::_:::/::_::::::::ヽ
ノ::::::::／:::::::}/:::ヾ::＼＼
l:::::::/:::{::::{ヾﾞ厶}:::::::::::::!:::|
/ｲ::〈:::::ﾊ::::〉 く:::ﾊ:::::/:l::ゝ
}:|:::):⌒ヾ ｰｿ-);ﾉ::ﾊ^
∨:{ ｰ＝' ==-´}/|ｿ 爺さんも知らないことがあるんだな。
乂'､ l /.ｲ こちとら『傾国』を利用してまで用意した手段だ。
};込 ､─‐ｧ ｲ;ﾙ
乂l＼￣ ／!/` 可能か不可能かであれば、まさに可能なんだよ。
_「¨'''' 千 '''¨ |
_ - 丈 _|:|:L - ¨〜- _
,-‐ ¨ |:|:L_ ￣ヽ
/ |:|:| | '，
/ | |:|:| | l
./ :l |:|:| ＿＿＿ ./ ﾊ
」 ::! |:|:| └──┘ ./_ - '! ＿＿
{ ￣￣ :', |:|:| |:. ∨ ／{ィ＞' ､＿＼_
/ ー-:', .|:|:| |:.:.:.. ∨ _／ l! !| ヽ _ヽｰ┘
./ ﾊ |:|:| ∧:.:.:.:.. ∨ ／/ .l!.:'，ﾍ ´ ,､＼＿
/ ／/ l |:|:| :| ∧ヾ:.:.:.. ,-／ ..:.:.:.:.＼＼ﾍ r､ヽ＼ｰ--'
./ ／ / l: ＼|:|:| .:.:| .∧:. /./ ー─:.;.｡*'" ∧ ､＼＼ﾞ⊃
/ ／ .l:.:.. |:|:ト- .:.:.:.| ヽ:.:.:.:.! ..:.:.:.-‐ァ'´ `┘ `′
{ -─≠┐ _,ﾊ:.:.:.. |:|:| ..:.:.:.:/ ＼:.:.:.:.:.:.:.／
∧ ヽ | :.＼:.:.:... |:|:| ..:.:.:.:, 〈 ヽ:.:／
.∧ ＼ ∨:､ ヾ:.:＼｀ - 」:!:!_ - .:／ /
＼ ＼/ ヽ ＼:. |:|:| ..:／ ハ
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|「ほう、『傾国』。それでその手段というのは確認したのか？
| 結果は？ 人間には戻れました。戻れましたがその反動ですぐに老化して腐り落ちて死ぬ。
|
| マネーがあれば再び人生をやり直すことも可能でしたが、聞かれませんでしたよね？
| などという事にはならぬと断言できるのか？」
|
| 慎二は返す言葉を持たなかった。
| 人間として尊厳のある死を与えておしまい。という選択肢は削った。
|
| だが発狂や人体破損の可能性を否定できる材料はどこにもなかった。
|
|「それでも、貴様の人形遊びに付き合い続けるよりもマシというものだ」
|
| 否定は、慎二の後ろからだった。
| 手が白くなるほど握りしめ、煮えたぎる怒りを宥めすかしながらも。
|
| 名前を失った男が静かに断言する。
|
|「元より、我々は桜の魂の安寧のために貴様に復讐の刃を向ける心積もりでここにある！
| 我らが友、間桐慎二の執り成しなければ問答無用と知れ！」
|
| それは、宣戦布告に等しかった。元より共に天を頂けぬ因縁。
| 鬼気を迸らせる臓硯、両者に挟まれた慎二が叫ぶ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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:::ノ:::::::}::::::::::::::::::::::::::::::::〈::::::::::::)::::::､::＼
:::::::::: /::::::::::::::::::::::;:､:::::::::}:::::::::〈≧､:::::::::ヽ
:::::::::∧:::::::::::::::〈∨//〉:::ﾊ::::::::::「ヾ}:ヾ:::::::l
::::ﾚ':::::::::::::::::くヾ∨/〈:::/ ､ヾ::::::| |::::|::::|:|
::::::::: - ､::::::::ﾉ 〉,､∨::l ∨∨:l !::::|::::|:|
:::／r:￢ ∨く／/ﾊ〉:::/ ∨l;/ 八:ﾊ:::ﾄ乂
:::| ､|:.:.∧ ! 〈/ }／ｲ"￣ﾊ /:::::;! ｿ
:::l ヾ/ ヽ ﾂ /／/
:八 } У 〈
':::::＞ ∨ 爺さん！
／ / ヽ
| ／､＼ ／
､ .∧ ／| ＼L ｨ
-＼ ∧ ＼」
---＼ ＞､ ヽ
-----＼. ＼ /´
------/ ー'
-----/＼
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|「カカカ！ もはや言葉は尽くしたであろう！」
|
| ぐらり。地面が揺れた。
| 臓硯の背後、そこがただのへこみどころか大穴であったことが判明。
|
| そこから巨大な手が伸びる。
| 手のひらだけで1メートル近い。常人の6〜7倍。
|
|「う、ううう、うううう………センパイ、センパイ、タスケ……センパイ」
|
| 『それ』が軋んだ声を上げた。
| 汚れた包帯と、全身に縫合痕。縫い目は所々が腐り、泡立つ胆汁と奇妙な虫を溢している。
|
| 全長、10メートルを越す巨人。光を映さぬ底なし沼の瞳。半開きの口腔は虚穴のよう。
| そこからあふれる慈悲を乞う、あるいは助けを求めるうわ言のような呪詛。
|
|「やれるものなら試すといい！ 『これ』が桜じゃ！ これが人間に戻れる？ 心得違いも甚だしいわい！
| 『バーサーカー』などここから溢れた虫を固めただけの人形！ 余興のおまけに過ぎぬと知れ！」
|
|「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイ
| タイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタ
| イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイ
| タイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイ」
|
| 縫合痕を掻きむしる桜……いや、それを桜と呼んで良いのか否か。
| 顔も姿も慎二が知る、あるいは『弓兵』と凛が知る十七年前の桜のそれ。
|
| しかし、大きさが。そして知性の片鱗も感じられぬ動きが、彼らの理解を否認していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ ／ヽ ／: : : : : : : : : : : : : :￣｀ : :、
〉 八 } ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
／ / ヘ ノ ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
ィ ヽ ／ ／: : : : :／: : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾄ: : : : : :ヽ
＼/ , : : : : : : /: : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : j: : : : : : : :.
/ /: : : : : : /: : ／: : : : : :/ : : : : : : : : : /￣￣￣￣入
＿ ノ /: : : : : : /: : /: : : : : : :/ : /: : : : : : : /＿＿＿＿/ 介
/i: : : : : : /: : /: : : :| : :ｲ : :/ : : : : : ／ ＼ ヽ / ハ
/: !: : : |: :/: : /: : : : i: / !: :/: : : : :／ ｀ヽ ＼ V
/: 川: : :|: j: :/八: : : :i/ /: //: : ／´￣ ＼ ＼ |
. : : :八: : {ﾊ从 ヽ从{ ＞ ´ ノ 7￣｀ヾ }:＼! イタイイタイイタイイタイイタイイタイ
/: : : : j: : :i| ／ / r 人 j: : :| イタイイタイイタイイタイイタイイタイ
/ : : : : |: : : } ／ / ヽ､ / }ト /: : : | イタイイタイイタイイタイイタイイタイ
. :＿＿:_:ｊ: : : :i ／／ . ―､ ¨ﾞ ｀⌒ ｨ､⌒ｊ: | イタイイタイイタイイタイイタイイタイ
|: : : :V / ,ｲ ヽ _ソ ｲ: :!
|: : : : ∨ {ｨ ﾊ / ／: !: :レ´ センパイ
|: : : : : ﾄ ﾏ､＿＿ﾉﾉ ..ｪ┬彡≧ｭ:|: : : : : :
|: : : : : i ＼ ﾟ ー― ´ ／ / jニニニニｭ: : : : キ モ チ イ イ
＼ : : : : : :ﾊ ヽ _。 ≦ /ニニニニニニ
＼ / |: : : : :i ミ ≧＝ニ二 / ／ニニニニニﾆ/
＼{ !: : : : ﾄ ヽ ／／ニニニニニニ人
｝ |: : : : :! ＼ ミー ＝彡 ／ニニニニニニﾆ’ ＼
i !: : : : ﾄ ｀ー――― }￣￣￣￣ ミ 、イ
｀ヽ､ i |: : : : j ＼ ｲニﾆ 〉 {
|:ﾄ、≧、i|: : : :/ 彡ニニ} / ＼
|:} ー i!: : :/＿＿ ＼ / ＼
|: V l : / ￣￣￣￣￣ ― ＼ ＿ ノ
ﾉ: 八 |: { ＞――＝ 、 ミ 、ヽ
: : / ｀ミー}: :!＿＿＿＿＿＿＞ー ´ ヽ ＼
: /ヽ j:ｲヽ＿＿＿＿ { ノ＿＿ ノ
/ ＼ ノ八 ≧＝――≦{ }≧ｭ。＿ }
＼ ＼ ￣￣￣ 八 | {｀ ー―
｀ ＿＿ 彡 ／ {! | {
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| 下水の排水溝めいた口腔から、滝のように流れる胆汁と虫虫虫！
| 髪を振り乱し巨大な手を振り上げて、恐怖に竦んで動けない慎二を叩き潰そうとする桜。サイズに似合わず動きは機敏。
|
| 飛び出す『弓兵』。宝石を撒き、術の準備をする凛。
|
|「三対二ではバランスが悪いのう」
|
| 慎二は頭数に含めぬ。臓硯にとって、彼は脅威でも何でもない。
| かわいい孫でなければ、道端の石よりも価値のない塵芥に過ぎないのだ。
|
| 飛び込んだ『弓兵』が慎二を抱えて回避。
| その間に、がら空きの凛の頭上から襲いかかる影。漂白されたように白い肌と髪の怪人。
|
| 皮膚の内側を蠢く何か。腕を食い破って飛び出る巨大なムカデと地虫、線虫の束。
| それを一束に掴んで引き千切る『万魔』。
|
|「雁夜さん……！？」
|
| 背中から伸びた糸で天井にぶら下がる怪人は、果たして間桐雁夜の顔をしていた。
| しかしその眼窩と口腔から無数の蝿が飛び立った。
|
|「紹介しよう。いずれ儂の新たな肉体になり、桜を娶る予定の男。間桐雁夜じゃ。
| 昔よりも色男ななったと思わんか？」
|
| こらえ切らず、慎二が嘔吐した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告！
想像してごらん。容易いことだ。
天国なんてない。あるのは地獄だけ。
死の先には何も無く、今ここにある地獄だけ。
想像してごらん。容易いことだ。
殺す理由はない。死ぬ理由もない。
ただ生きているだけでそれらはあるのだから。
悲観主義者の戯言に聞こえるだろう？
だが、そう思っているのは一人ではない。
いつか誰もが同じ思想に至り、そして世界は一つになる。
次回、最終幕八十一話『イマジン』
果てに見るのは破滅か死か。
キングプロテアちゃんはかわいいなぁ！
怪奇バグじーさん、テンション爆上げ全開マックスやな
／￣ヽ
ｒ― 、 ー― / _ 」ー― 、
＿{ _ ) ´￣ ｀ー」 ￣L ＼
／ ｒ┘Lノ ヽ_ｒ ┘｀ヽ ＼
/ 人_ 「 ヽ { ／ ヽ チクタクスーパー説明ターイム！
八 / ７ / / ﾄ、 ヽ. ＼／ヽ i i
/ { ＼_/ /| { 、 Ｌｊ-┼-}､ } } ヽ ＼ ﾉ } わたし、夢川ゆい！
{ ヽ 八 i { 」＞ ヽﾉ）ノｊﾉ ノ_ノ ノ ｊ i { 人 ごはんが大好きな小学六年生！
八 V ヽﾄ メ_フ ､_ ￣ ゝﾃ=ｋ､rイｰ、 八 人_/ }
人 ) ﾄ|ﾊ _ｧﾃめ､ ｒゅわ｢｀）{ ﾘ （ ｒ） 聞いて聞いて！
人 ヽノ ﾉ | い ﾏ.か 心少 ｒ人}ノ ＼ ｀Y(＿ﾉ) 私の住む街に新しくプリパラが
_ ( )_ノ ／ .八＼＼ゞ-ﾟ ｀＿_ 人ｿ ＼ ｀ ｰ´ できることになったの！ ユメ感激！
( ー彡' ／ / 入 ::。 ヽ_ｿ , ィ J) ＼ ＼
／￣￣ ｀ ー―彡 (し ＼ ≧c｡ ,｡≦ {! ＼ ＼ ｀ー 、 でもでも、アイドルが少なくて
{ ｒーァ ― ￣ ＿ノ 「ヽ「 > ｊ┤ ヽｰ 、 ＼ ヽ プリパラがなくなっちゃいそうなの！
ヽ/ ／ ／ / ／「￣{ / / ７⌒ ＼ ＼ '. }
ｲ ）′ ／ / ／ ｀7ｰ/ /⌒7 ´/⌒} ／ ＼ ヽ . j そんなこと、ユメ許さない！
{ヽｰｲ / / （└i＿ ｀7 / ヽ-ｧ⌒ トｙ-、 _ｒ ヽ }i . / やる気！ 元気！ 寝起き……ユメカワ！
￣ { /{ 、 { 八_ｒ､__/ / 「 /Ｙニ ＼ __ｒ＼ 八 !(
＼ ( 乂 } ＼＿_ / ノ /７八介＼__ノ彡ヽ ｀ ﾉノ＿ﾉイ ／ } ｊ ヽ_ｨ} がんばってプリパラを
＼ミーﾒ､ / / ／ ﾑィ⌒ﾊ ( 八ﾍ ,イｒｰ' ∨ / ｊ 人＿ノ ユメ盛り上げちゃうんだからね！！
￣､＿） { i / /〉i |☆ｊ | ､〉 L__ィｒ'☆o V ┼＝彡'
＼＿人 /｣ j | ｊ | ィ 个☆ ８､ V、＿ノ それはそれとして、
> i ／) ｲ |☆ｊ | ｺ | OooO ＼ ヽ 以下は『や『やらない夫の集会』の現状だよ。
/ ヽ／｀Tレニニｭ､ r―‐┬┘ ＼ ＼ '.
LニニニニニニニL. ＜＼ みんなユメがんばってるね！
◎現状
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
鳴り響く銃声と爆発で民衆はパニック？
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
カトルカール、石田龍田と交戦
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンと交戦
・ジャギ
偽ヤーボと交戦
・その他
ペルソナ使いからはやらない子、はやぶさ、アサギ、タカオ、白雪ひめが参加。
その他は現状不明
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
様子見
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中に爆破された？
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたい
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦
・龍田と石田
やらない夫を確保するためカトルカールと交戦
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ロビン
天龍シグと交戦
・爆弾蜂
罠を仕掛けている最中に逆に罠にかかる
・他のカトルカール
やらない夫を攻撃、石田龍田と交戦
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
偽ヤーボを操っている
・合衆国軍
一般人を攻撃
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちを殺害した
_ _
r──┐ / | r──┐ / | r──┐ / | // //
￣| |￣ /」 | ￣| |￣ /」 | ￣| |￣ /」 | 〃 〃
|_| // l_| |_| // l_| |_| // l_| ｏ ｏ
. .. .:::, ´￣￣｀ヽ
.:.::,′/´ ￣￣｀ヽ _ ＿
. ..:.:.::{r _-‐‐‐_‐- ､}c . . .: .::::/´.:::::::::::::ヽ
/」:.:iﾐiｼ',r;;;, ,r;;;ｼ'´ . .: ::::::::___ﾉ:‐:r=＝＝=}
「「( )ﾆｺ.ﾉﾉU_ﾉ ｰ' } .: .: .: .::::: r‐r‐〈::ﾉ ,r;ｯ r;! 「｀ヽ 〃_ヽ 「｀ヽ 〃_ヽ 「｀ヽ 〃_ヽ 「| 「|
く Y´｀7´｀ヽ:::ﾊ｀ｰrｭﾆ''/__ __ .: .::.ノ_ノ( )/´ 〉 ｰ',ﾊ | [ ) | | | | | | [ ) | | | | | | [ ) | | | | |. l l l l
ヽ{ ,ハ r==V^ｰ ｀ ﾆ´に_｀ヽ .. .: .: /::::::Y´イ:＜三_｀ｴｰrｭﾆｿ L _ノ ヽ‐_ﾉ. L _ノ ヽ‐_ﾉ L _ノ ヽ‐_ﾉ c c
＿V } ___}L.:::.:.:::.:} }l | |: } .: : ::.::/.:::::::///, ﾆﾆﾆﾆミﾐヽ｀ﾆ´ .:
/´￣｀|:L__|:.:｀¨:¨´i |:L」」.ﾘ . :. :＼::///: :/´ ￣ ｀ヽ:::: い .: ., .: ;'
＼ ___ﾉ.に_}: : : : : :り::::::ﾉﾉ .: .: .: .::://＼( ',:.}::::::い ;: .:,. .: .;'
i: :ﾉ__ﾉ: : : : :. / ｀Ｔ´ . .. . . :. :.:.:{ {ミﾐヽ＼ ｀ヽ:::}‐} :. ;:. .: ; ′
′: : : : : : : ./::::::::| ,: .: .: .:::::::/´ﾄ､ヽ:::::::.ヽ ｀丶､ ｀、 :;,, .:; ' ,: ′
ﾉ . : : : : : : :, ' ., '′ . . . .: .: .:/ ,} ヽ＼:::::::＼ ｀丶､ ｀ 、: . ,,:;' , '′
´ ￣ ｀丶､: : : : /';. , '′ . . .:. :.:// ﾉ＼ /｀ｰｰ.:.:.:.:ヽ､ ｀ヽ､ ｀、 ;: .: .: . .:
.: ;'' ..;;;;;;; c´ ｀丶 .: .: .:..( ( { ﾉ: : : : : /ハ :::＞...､､ _ ＿ //´￣:::::::ミﾐヽ__＿＿＿', ;:, ,,、、、、、,,, .: .:
｀ ー‐ -----'-' , '´ ,:′ . . .: .::::`ｰｲ=＜: : : : :,.ｲハV/::::::::::::＞＝＜ TT二二{二{二ZﾆﾆZﾆﾆ;;. ｀,,,,,
: : : : :iにﾆﾆ,. ´ ,. ,.:;ﾞﾞﾞ',.. .′｀.. 、 .. .:.://´￣｀X´:〈〈: : ハ: :/´ 二二 二 ﾉﾉ::::ヽ.:_ヽ:._ヽ:._:::ヽ::_ ,;' .:' .:｀ﾞﾞﾞﾞ'''''"" .:
. : : : :l{ / /: : :', ｀ . . . ..:.::i //^ヽ: :V ハV;:;:;:;;.／／ ／ﾆﾆﾆﾆノノ¨¨¨´ ￣ , : ′. :. ';, .: . .:
: . :.l{ / /: : : : i .: .:...:::::{ ( (: : : :V^ヽ//;;;;:;:;;／ ／´￣￣ ￣ .: '. :; 、
: : :i / /: : : : : | .: .:.:::::レ'´ 二二｀ヽ;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;;;;;:;. . : .: . . :.,
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 想像できるだろうか？
|
| 戦争も憎しみもなく。
| 宗教も苦悶もない世界。
|
| レイ・ザ・バレルは想像する。
| それが、デュランダルの理想。
|
| 一つの完全な統治の下、人々は満たされ、心安らかに生きる。
| 孤独に怯える夜は無くなる。誰もに明確な存在意義を与えるのだ。
|
| それが、どれほどに幸せなことであろうか。
| 想像できるだろうか？
|
| だから、レイ・ザ・バレルは創造する。
| 悲しみも苦しみもない世界。
|
| 理想の世界。
| ここではないどこかにあるはずの、痛みのない世界。
|
| そこで優しい歌を、人々のために歌うのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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,ｨ7
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／￣￣＼
／＼ ／ ＼
. | （●）（●） │ ま、苦しみのない世界が
. /| （__人__） .| オレなんざを相手にゃしないだろうがね！
/ ,| ｀ ⌒´ |
. ィ´ /''ヽ ﾉ
(⌒) ｲi一‐ヽ、 /
7 .K.`ｰ--→―― ）
ヽ/ ヾ--‐―‐ /
. / /
/ /
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| レイの夢想を打ち破ったのは、やらない夫に向けた指向性マイクだった。
| 『カトルカール』に囲まれながら、余裕でうそぶくその姿。
|
| レイは、彼に聞いてみたかった。
| ならばと。ならば人間の存在価値は？ 生きる意味は？ 理想的な世界はどこにある？
|
| 集会前に広まった言葉、やらない夫に聞きたいことは？
| レイには山ほどあった。しかし、聞ける状況ではなかった。
|
| では、やらない夫はどう答えるか？
| 記憶力に自信のある読者、あるいは熱心に読み直している奇矯な読者ならば覚えがあるだろう。
|
| 彼はニャルラトホテプに籠絡された『異端審問官』の『医者』シレーヌにこう叫んだ。
| 人間に意味などない。
|
| 生きる意味を見出すのは自分自身であり、
| それは『己が愛する存在』と『己を愛してくれる存在』から成るのだ。と。
|
| だからきっと、今のやらない夫にそんな質問をぶつけたら呆れ果てるだろう。
| さっきから叫んでいるではないか。
|
| 自分の大事なものを手放すな、奪われるな。こうならないようにあれと。
| 想像をしろ。世界中から忌み嫌われ、石を投げられ、ゴルゴダに登る他のない道行きを。
|
| 想像しろ。救いはない。助けは来ない。だからその道の果て、破滅と死を見せつける。
| 優しい世界などない。抵抗しろ、身を守れ。愛するもののために。愛してくれる誰かのために。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／／ ,.‐''" ｀ヽ､
/ / ／ ＼
/ / / ､ 、 ヽ
/ {＿ノ ,ﾍ ヽ ヽヽヽ
ｌ ｌ ｌ / '､ ﾄ､ ､ヽ ､ ! ', ',
ｌ !｜ｌ / ヽヾヽヽ ヽ ､ ､ ｌ '､'､!
', ｒ<__!ｌ ｌ , ｌ ヽ'､ ヾ',ヽ ', ヽ ﾄ､ｌ ｌ
ｒ'‐''ﾍ`!｜ ｜ ｌ--――‐ヾ､_,ヾ !ﾒ,! ! ｌ ﾞi ! 四月よ。四月よ。
ｌ __ ﾞ! ! '、 ｌ≧ﾗテｆﾐ::::::::::::::ｌ|ｆﾗｌ｜ ｌ ﾘ 早く来てくれ。
ｌｦﾉ ｜ '､ , ﾞ､'､::ゞ=''"::::::::::::__､l￣! ｌｌ ｜ l!
ヾ_ｆ ｜ ', ', ';｀ﾞ::::::::::::::＿ノ ヾ､ィ/ ｌ ｌ / この馬鹿げた悪夢を終わらせてくれ。
ト､ ! ヽ ヽヾ´￣￣ ノ´ｲ/ ｌｆ′ 夢も希望も理想も全て、春の喜びとやらで無理矢理に。
| ｀ヾ｜ ｌヽ ヽ '､ _,,,... - / ﾉ ! ハ
ｊ/ ｜ !｜ ｀ヾ`;ﾞー ‐ /-'‐ｲ /､ '､
, ' ! ! 'ｆﾆ=-､`_´'' －;- 彳 / / ヽヽ
, ' ヽヾ,ヽ ｀''┐Ｔ ｆ"´ ! ノ／ ｀ヽ､
// ヾヽ',ﾐヽ｜ ! | ｆｲ !｀ヾ､ ､ ヽ ヾ'､＿,ノ
__,. -‐''{ ﾊ ｌ ', ヾ｀ `ﾞｆ ｌ ｜! /ｊ ／ ﾞヽ ! ', ﾄ, ｌ￣´''ー ..,,_
ｆ´ ｀ ヽ ヾ, ヽ ﾞーｧﾞヽ､ｌ｜ｌ_,. '´ ｊ/ ! ｊ } ｀ ヽ
! _＞ ､ヾ'､ ヽ ''フ ﾌｆ､ ´-ﾉ ノ'´_ !
ｌ ', / ￣｀''－ ｆ´ / ', / ´￣ ｀ヽ ｌ
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| 呟きながら、レイは別の視点に目を向ける。
| 顔面を損傷し、内側の機械部品が露出した偽ヤーボ。
|
| 彼を挟むように相対するフルフェイスの怪人と、『グレン団』の二人。
| この寒いのに上半身裸で、太陽を模した入れ墨を見せびらかすサングラスの男と、その影に隠れる小柄な少年。
|
| サングラスは『グレン団』団長のカミナ。
| いまや『血族』の『四天王』にまでなった不良少年。
|
| 少年がシモンという名前なのは資料を見て知っていたが、特別な記載はなくレイは無視をした。
|
|「おうおうおうおう！ こちとら天下の往来よ！
| 昼も昼から大立ち回りたァ穏やかとは言えねえなァ！」
|
| 大太刀を鞘に納めながら見得を切るカミナ、その剣撃で空中の攻撃ドローンを破壊したのだ。
| しかし、上空の監視ドローンまでは気付いていないか、あるいは手が届かないのか。
|
|「テロか暴徒か愉快犯、右か左はたまた別か。
| どこのどいつか知らねェが、素人さんに手出しすンのはいけねェな！」
|『ＧＦＦ』
|
| 偽ヤーボの裏拳、神速の抜刀が疑似脂肪を切り裂いて、機械骨格に食い込み止まる。
| へし折れる大太刀、吹き飛ぶカミナ。案外軽い。立ち木に衝突して頭を打つ。内蔵も潰れておかしくない衝撃だ。
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.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ ` ー―― '／.:.:.:.:.／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ ＼.:.:
/!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./／⌒ー―― イ´.:.:.:.:.;ｨ'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ ヽ
│.:.:.:.:./⌒V´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／._/.:.:.:.／/.:.:, ｲ.:.:.:.:.:.:.:.:.:j.:.:.:.:./ : ∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ
│.:.:.:/ ﾍ/.:.:／.:.:.:.:.:／＞/.:.:／: /.:／:/.:.:.:.:.:.:.:.,イ.:.:.:./ｨ≦ ∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ
∧.:.:.{ ｰ/／|.:.:.:.:.／／ /／ヾ､/ｨ': : /.:.:.:.:.:.:／:/.:.／ｲ⌒ヽ :∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
: : ヽ.:ヽ{ ' ヽ |.:.:.:/ __{_ /ｲ (;j}≧._/.:.:.:.:.／ z/., 仞 }: :ﾊ.:.:.:.:/＼.:.:|＿ アニキ！
: : : :￣≧ー┴≠:': : / /.:.:.:／: : :/イ / ﾑ∧.:./: : :ヽ;|: : そいつ機械だ！ 話は通じないよ！
|: : : : : : : : : : : : : : : :代､ _/.:.／: : : : : ヽ 彡/ : : ∨: : : : : : : :
| : : : : : : : : : : : : : : : |: : : 三三三j／: : : : : : : : : 三三三 : }: : : : : : : : : : ／:
ヽ: : : : : : : : : : : : : : / > /: : : : : : : : ／: : :
: : ＼: : : : : : : : : : :,小､ ／: /: : : : : : /: : : : :
: : ヽ: : : : : : : : / : : : ＼ ⊂ﾆ＝＝ー‐- , イ: : /: : : : : ／: : : : : :
: : : : : : : : :/ : : : : : : :＞.､ ＜ : : : : / : : : ／: : : : : : :
: : : : : {: : : : : : : : : : : : ≧ ､ , ィ: : : : : : ヽ: :／: : :／: : : : : : : :
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|「知ってらァッ！！」
|
| 猛然と突撃するシモン、頭から血を流しながらも元気ハツラツのカミナが飛び上がる。
| その間に、ヘルメットの巨漢もよろよろと立ち上がっていた。
|
| ヘルメットの隙間から流血、両腕の肉が爆ぜ、
| 普通ならば激痛で動けないか悲鳴を上げてのたうつしか出来ないはずの重傷。
|
| よたよたと、酔っぱらいみたいな足取りだが偽ヤーボに近づくヘルメット男。
|
|「危ない！ 下がってて！」
|
| 警告しながら、ヤーボの横薙ぎを避けるシモン。驚くほど身軽。
| その拳が偽ヤーボのみぞおちに一撃。
|
| しかし残念、そこには内臓はないし、やわな拳は疑似脂肪でぽよんと弾かれた。
|
|「硬い……！」
|「どけシモン！！」
|
| 折れた刀を投げつけるカミナ、偽ヤーボが払い除けようとすると同時に飛び蹴り。
| 投げた武器に追い付くという無茶苦茶、血の糸を残像に纏わせながら、柄を蹴って刀を加速。
|
| 払いのけようとした左手に根本まで突き刺さる元大太刀。
| それを起点にとんぼ返りのカミナだが、偽ヤーボが追いかける。機械に痛覚はない。右フックでカミナを肉塊に。
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,,､-ｰ ―- ､,
,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ',
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ |
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ |
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr } させるかよッ。
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
|;;;;;;. ', ,,''ｰx三＝､-＼' ::::|ll| |;|.l |;;| l: |;;;/ / ./;;/ / /ﾌ::: ::イ:::/ /::,'
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/ ／ノ',／:::::::| { .::j-彡"::ノ::l|:: l'':::ヽ|:ヽ;|;| l /;/ ,／/::／/／|ｲl|::/ /::::| /:::::::::,'
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| 背後から、偽ヤーボのあんよにヘルメット男がローキック。恐るべき威力、見事なフォロー。
|
| よたつく偽ヤーボの腕をかいくぐり、シモンが肉薄。
| カエル跳びの掌底で左手に刺さった柄を打つ。
|
| 無駄なことを。人間なら激痛に悶ただろう。だが機械に痛覚はない。
| 偽ヤーボはそのまま転倒、体重数トンの鉄塊だ。そのボディプレスは人間をせんべいに変える。
|
|「『ラガン』！」
|
| だが、異様なことが発生。
| 突き刺さった刀ば爆散、偽ヤーボの左腕も、肩までが内側から爆発。
|
| どんな異能か超能力か。慄然とするレイを尻目に。
|
|「よくやったシモン！」
|「ンだよ！ やる様になりやがったな！ オイ！」
|
| 二人の漢の称賛。飛び退くシモン、片腕でバランス悪く立ち上がろうとする偽ヤーボ。
| しかし飛んできたカミナがギロチンめいたかかと落としで、偽ヤーボは芝生にキス。
|
| その間に、ヘルメット男が両腕から血を迸らせながらの強烈な瓦割り。片足に痛烈なダメージ。
| 偽ヤーボを救出するか？ レイは逡巡し、しかしすぐにアセムの教えを思い出した。
|
| ここであれに執着しても、損害が増えるだけ。
| 偽ヤーボをもっと多くの人間に目撃させたかったが……仕方あるまい。
|
| レイは諦め、自爆命令を出した。
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＿ ∧ ,,-'／ .|| ヽ
＼／ | |｀''､ | | |
| ￣｀ | | | |
＜ﾆﾆ! (ﾆ＞ |｀'´ |
ヽ_─ ,,-´ |｀ .|
|_/ iヽ /| | | |
| | | .| | ,| | | |
_|_| .| | /ﾆﾆﾆﾆヽ| |. | | !
///|ヽ＼ | |!二二二 | | ／. | | |
||_|__j ＼＼, ｰ-,､| |ﾆﾆﾆﾆﾆ| |,,-‐‐／/ | | |
ヽ'!_| ヽ / / | ｀'''''''''''´ |ヽ ヽ .| | | ドイテクダサイ。
（--） ヽ_|_,,,､､ .| .| .| | | | | | アナタ達ヲ殺シタクハナイ。
＼ !j,,-‐jj | _ |_ ,----､_.|__ | | | | |
─'´｀'-＿|＜__| | |. ○ .| |＿＞|＿,,,‐´ ∠￣'''-､
＼ |｀'''''''''´| ／＼ヽﾑ--‐（/三| |
＜/i｀! | ｀￣￣ | |´ヽ＞ ||__ >三 | |
_,,,-- ! ヽﾆﾆﾆﾆﾆ／ ||｀'''─,,,,,､''''''''' | | ﾉ |
=ﾆ,,,,,,,,,,,,j ＼｀ｰ-‐´ ／ !!,,,--‐‐ '''' |ﾆﾆ,,丿
ヽ,__ ｀|○|´ ,==、 / | |
／ ﾉ ｀ ´ !! ＼ |/
／,,,-´ ｀-┬─‐｀'' - ＿
￣ ／￣ヽ＼/｀─＿
.|| ＼ ｀─'＿/｀ヽ
,- ||＿ ＼ ヽ／|
＜ <＝|＿￣￣''''''フ,,,＿＿_ﾉ__ |
｀ - || ￣'''''''─',,,,,,,,,,!＿!__ノ
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| 棘のついた頭部、だんびら担いだ左手と、巨大な鉄球状の右手。
| 下腹部からは尻尾、先端にクロスボウ。
|
| ＡＡの都合で存在しないが、昆虫のような六本脚。
| 前までに比べて、外装が仰々しくなり、尻尾と脚が増えただけ。
|
| ロビンの変化をそう判断するのは容易かろう。
|
|「俺が怖いか！」
|
| 雄叫びを上げて躍り掛る天龍、振り下ろされた刀を、ロビンがだんびらで受け止める。
| 重装備になり体積も増え、鈍重に見えるロビン。だがその動作は以前より鋭い。
|
|「怖イデス」
|
| バイブ音を立てて振動するだんびら、刀の破損を防ぐために距離を置く天龍。
| クロスボウの追撃の前に、脆弱な脚部めがけてシグの毒霧。しかし、足が多くて妨害しきれない。
|
| クロスボウから矢が射出。身をひねり、直撃を防ぐ天龍。
| 背負ったランドセルが火を吹く、脚の二本が合わさりタイヤを形成。カトルカールの一輪車男の模倣。
|
| 突き出された鉄球がぐにゃりと変化、翼。あるいはヘラジカの角の様に。
| 赤熱する枝角による轢殺！ 今度はトナカイ女ーの模倣。
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＿
／´ ノ
_， -――-ｲ _∠＿
／´ ￣ ｀ヽ
/ ､ _＿ノ
. /ｨ !
l ∧ ,ｲ＜ ＼ . i_ /
| Vtｯ∨ ≧≦、 | Y
ﾚヘ 辷ツ.ヘ_|r'
∧ｰ只―イ六 あぶない！
＼＞ ! ./ 〉
. ∧ ＿_,.ｲ| V _/ .ｲ丁 ,.ｨ
〈 ', ヽ_ﾉ |.| | /Υ｜ ト､＿,／ |
. ', ＼_ _入_| | |. | | ﾊ ∠＿
｀・､_ ￣ ￣ノ|｜｜./ | 六≧ ／ )
￣￣｀ｿY＿乂＿上下､￣￣フ ／
∧ｲ 〉￣〉 r ＼￣丁／
/ .ﾄり_くイ)_,ｲ、 / /
. /ｰ-ヘ/-く | ＼入_テ
/ |＼/ ｜ (／ |
＼＿／ ﾄ---- ﾍ
/ーｲ ｜ ＼_
/ |. ﾉ /
ﾄ---ｲ ＼_ ＿,ィ
`ー‐' ￣」＿_L
| |
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/ ﾍ
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| ロビンの本気を嗅ぎ取ったのか、足止め用ではなく本気の呪詛を集中するシグ。
| 刀を犠牲にして身を護る天龍、シグを一瞥。ロビンへの殺すつもりの攻撃への躊躇。
|
|「アナタ ハ甘イ」
|「ロビンッてめえ！」
|
| 退きながらめったに使わぬ砲撃で牽制する天龍。枝角が盾に、六本足がバネに変形。
| 跳ねるロビン、その胸部が開放。ゴロゴロと手榴弾がこぼれ落ちる。
|
| ロビンが入る前に死んだカトルカールたち。
| ゴキブリ、軟体男、フラミンゴらの集合と模倣。
|
| 空中で爆発する手榴弾。あたりを包むピンク色のスモーク。毒に強いシグにガスは効かない。
|
|「なめンな！」
|「マサカ」
|
| 眼帯を赤外線モードに変えて回り込む天龍、ロビンは尻尾で迎撃。
|
|「きゃっ？ ぱぁあああぁっ！？」
|
| 尻尾の先から伸びた八本のワイヤーが油でぬめりながら天龍に絡みつく。
| 妙に可愛らしい悲鳴であったが、実際には高圧電流で感電しわからせられた声。
|
| 常人なら三回死ねる電流を流され、天龍は腰が抜けてへたり込む。
| エロ担当なら失禁していただろうに残念だ。
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＿＿＿ ,ｨ{
＿＿_/ / 〈 ｣ヽ
｀ マ / / ＼
/ ＼ 〈 / >
〈 / ＞ /＿ 人
＼//⌒） / У ＼
>ミ人/__＿/ ￣￣
/ ７ /{
,〈 ./ / |
r-〈_７ / | ィ７
/{ УｙＹ￣￣ト、 ｨ{ / レ＜⌒ヽ イ／
メノ/_人 {＞/ {7 { ヽ ＞ ´ ／
７ Ｙ ￣ ７ {__/ ｀ー ´ ／
〉>' { ＿_/ }＼＿ …………。
´ ヽ＼７ｨ＝、 ／] ＼ ヽ.
｀Y/ Oヽ. 人／ゝ 彡 ｒ┐ ＿
{≧=＝レ┴┤ _ﾉｰ/ ＼ ／７
＿＿＞ー＜ニニﾑ ノ￣＼ ／ﾆ⌒Y
｀マ/ﾑ ｛ ﾏニニ＞ｒ―彡 ＼{ ｙｰ､ Ｖ
」ｭニ､ ｀ー― アﾆ人 ／／ 〉彡′
ィ＿_｣}７ /ニニニニ/ ＼ ｢ ／＿｣
_＿ ｡ｃーィ ＼ニニィ⌒}ニﾌ￣￣ ﾉ／（
＼<ィ＜￣￣! ｀ ｰ＜ヽ. ｢ ／￣／ ／´
7人 ＞ 」 }ｰY ／ ／ /
{L＿＞、入 ﾉ ﾌ .／ー ´ /
＼{｀ーｒー彡 ´ .／ ／
￣￣￣ ／ 彡 ´
￣￣￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| この電撃ワイヤーも、カトルカールの模倣。
| ロビンは、天龍を優しく開放してシグに肉薄。
|
|「私ハ最強ノ カトルカールダ ソウデス」
|「あっあっ」
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| スモークから飛び出してきた鉄球。重機のような怪腕になってシグを握りしめる。
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|「パプテマス・シロッコ ハ全テ自分デ考エタカノヨウニ自慢シテマシタガ、コレ」
|「うう……ロビン！ 天龍は……！？」
|
| 恐ろしい握力、龍田の模倣。
| 締め上げられながら、シグは赤い顔で相棒の安否を尋ねる。
|
|「気絶サセマシタ」
|「そっか」
|
| 安心して意識を手放すシグ。ロビンは彼を優しく抱え直し、人に見つからないように茂みに優しく横たえた。
| スモークが晴れる。行かなければ。殺さなければ。
|
|「結局、寄せ集めの、模倣に……過ぎない……ってか？」
|「ソレドコロカ、ボスノ猿真似デスヨネ」
|
| 青い顔で吐瀉物を拭いながら立ちはだかる天龍。彼女の不屈の戦意は、いつでもロビンに眩しく映ってきた。
|
|「あー」
|「デスガ、私ニ自信ト能力ヲ与エテクレタノハ確カデス」
|
| ロビンは天龍の脇を通り過ぎた。彼女は動かない。動けないのだ。
| 立ち上がって立ちふさがって、そこで気を失っていた。
|
| なんて素晴らしい戦士なのだろう。
| ロビンは改めて元戦友を褒め称えた。
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ﾏ､ ムニニﾆ人ニイ /｀７77==‐ リ ｀マ/////////ヽ.
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| 魔力と抗磁圧によるイオノクラフト、戦闘機怪人の突撃。超能力に弾かれて思うように近づけない。
| 防御は石田任せの龍田が、やらない夫に肉薄。致命的なフック、必死に避ける。
|
|「あらあら〜、女子中学生のハグはお嫌〜〜？」
|「プレスの間違いだろ！？」
|
| 上空のニャンコ先生の電撃、石田に阻まれる。
| 疾風の速度で駆けてきた墨目。鉈と長巻、尻尾のナイフによる怒涛の連撃。
|
| 石田は？ カトルカールの増援を迎撃。
| 薄い切り傷を負いながら、巨腕と槍でガードする龍田。その間に距離を取るやらない夫。
|
| ノミ脚。バレリーナ。戦車男。ほか二人に囲まれた石田。
| 四肢の代わりに蛇腹状にうねる鉄のムカデが生えた少女と、龍田をスマートにしたような鉄腕。
|
| 鉄腕が正面突撃、何かを仕込んだ両手。回り込んで射撃する戦車男。
| 中距離で揺らめきながら様子を見るムカデ女。飛びかかるノミ脚とバレリーナ。
|
| 離れた位置に配置していた『ストーム・トルーパー』が前進。アサルトライフルでカトルカールに応戦。
| 石田本人も獅子奮迅。防御には定評のある男、全身の装甲を傷つけられながらも致命傷は喰らわない。
|
|「石田さんをフォローに行かなくて良いのですか？」
|「失望されたくないからぁ」
|
| どぅるん、と爆音を立てて龍田の両肩エンジンに火が入る。
| 死の瘴気を撒いて牽制する墨目。それでなんとかなる相手ではない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
／/ ￣｀ヽ ｺｰﾎｰ
/_ ,' ',
j___Y´二 =‐-､l ｺｰﾎｰ
i!〔 _〕〔__,,]ヽ ∧ r‐‐､‐-y---､
l 〈 仝､-／ ∨.∧ ＿＿＿ ｋ‐ ' ‐-ゝ-=≡
└/,皿､〉彡-=ゝ-‐´ ／´￣ヽ __＿r‐≡二'' ‐ ､ ) l
ィ’--イ/ / ／´￣｀'' ‐- ､,, -/´ ` ,-- ,,_ ｀ミヽ ﾉ
r''´ / / / /__.／ , ´ l! ゝミ ｀ヽ ノ
/ / /ィ´￣ l ､ ヽ ＞- ,,__ノ
l!-‐─''´ / ∨ ｀¨''y､,, ＼ ／
j!r──l/ ∨＿,// ￣¨''‐-----'＼／
l l. l! / l |
l ! l! / .l !
l !＿＿l! / ｌ .l
／l!----､ } l .!
／ l!＿＿| ｀￣￣￣￣ ７ l l
／ / ￣￣￣￣￣ l ｌl
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 墨目の足が突然掴まれ、体制を崩した。遠距離からのフォースグリップ。気付いた時にはもう遅い。
| 致命傷の確信、墨目は小型の鼠に変身。防御力を犠牲に的を小さくして直撃を避ける。
|
| どうせ当たれば終わりなのだ。
| 芝生を抉り土を掘りながら突進する龍田、賭けには勝った。衝撃波で傷を負いながらも逃げ延びた墨目。
|
|「あらぁ〜」
|「喰らっとけい！」
|
| 振り返った龍田に、巨大な雷撃が降り注ぐ。石田が防御する暇のない今がチャンス
| 直撃する雷撃、膝を付く龍田。けほけほ咳き込みながらすぐに立ち上がる。
|
| 追撃をするべき。なのだが、空中でフリーのニャンコ先生は格好の的。
| 錐揉みしながら突進してくる戦闘機との追いかけっこが始まってしまう。
|
| 把握しきれない乱戦、やらない夫は必死に距離を取る。
| 進む先、木立の影から進み出る小柄な女。
|
|「お兄ちゃん、こっちアフロ！」
|「やらない子！」
|
| 引っ張り込まれると同時に、女子高生に囲まれもみくちゃにされるやらない夫。
| 禿頭を隠すロングヘアのウィッグ、セーラー服にスカート。ズボンを脱がされてその下のダサいジャージが露わに。
|
|「こんなデカい女子高生がいるか？」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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, ´￣￣ ミ ､
／ i! ＼
／ i|! ヽ
/ |l|
/ , -≠' ￣⌒jヽ }
/ ／ ／ ／ / ＼ ,ｨ7ト .
ヽ ／ / / / ﾊ'´/ ｀ ..
У / / / / / V-､ ｀ ..
､＿／ / / / ｲ / ハ ＼ ｊ
/ / / /／ｊメ､ｲ' / ｊ : ヽー' /
/ / / 汗Tぅ､/川ｰ､ / ! / /
′ 人 └' ｀ 仗ﾕｲ ｊ ./ /
/ ,' { ~/ ﾘ/イ＼ ′
ｊ / ｊ | ∨ｊ /｀ヽ ヽ／ タカオも170越えです。
ノ / ｲ ｊ ! ｀ー｡ ／ / / ヽ 〉 並べば分かりません。
/ 八 {ヽ{ イ{ミ/ / V´
／ / / ハ ﾉ＿≧ｒ イ （ / 人 ／
＿／ イ/ / ７7ヽ ヽ ヾ､ /
ノ ｀⌒ / ｊ { ///人 ', V
ｒ－´ }7 ノ / ハ＼＿ ノ~￣///＼ ヽ
／ }// ／ /ｊ/ ｀ヽ/////////ヽ､ ト{｀
／ }/}イ /ノ V/////////////}ヽ
／ }//ｊ {´ }////////////／ヽ＼
}//从八 ｲ//////////／ヽ ヽ
}//////ヽ..＿＿彡'//////////／
ｲ}////////_三ニ＝―ｧ――彡 ',
／ i}///／￣７ / / }
／ i}// / ／ ; /j
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| 乱戦を放置して逃げるやらない夫。侍るチームやらない子。
| 彼らに倒される方法も考えたが、一応は目的地があった。
|
| やはり跡形もなく死ぬには爆殺がよい。
| 準備してある位置まで逃げねばならない。
|
|「やらない夫さん、球磨川と連絡が取れない」
|「妨害電波か、厄介だろ」
|
| 球磨川、咲夜、マーガレットの死を彼女らは知らない。
| 支援車両爆破がなければ解かれていただろう電波汚染も、解除される気配がない。
|
| その点で、やらない夫たちは一歩も二歩も劣っている。
| 事前の打ち合わせ通り、作戦通りに進むように願うしかない。
|
|「ひめちゃんは？」
|「麻呂さんを押して自衛隊の鎮圧しに行ったよ」
|
| 周辺一帯のやる気を奪う白雪ひめのペルソナは、暴徒鎮圧には最適だ。
| 望む夢を見せる『滅ぼすもの』を有するはやぶさも同様だが、こちらは異能者相手にも有効なので温存だ。
|
| なにしろあの『聖処女』ジャンヌ・ダルクすら術中にはめたことがあるのだ。
|
|「カトルカールは撒けたでアフロ？」
|「監視カメラのハッキングやドローンで見張られてるかもだろ、変装で時間を稼げれば……」
|
| 人目をはばかり進む五人。その進む先に、木に寄りかかってフランクフルトを齧る男。
| 浅黒い肌、野獣のような目つき、周囲に散乱した割り箸やプラケース。焼きそばやたこ焼き、お好み焼きの包装。
|
|「あンだァ？ サボれねェじゃねェか」
|「あ、アフロ……！」
|
| やらない子が顔色を失う。
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〃 j/ ／
＼｛ /〃
｀ヾ
. -=ﾐ j/／
...._ ＼ヽ ／ ∨ /'′
/ ｀ヽ＼,、 / V
. / ＼ / ∨
/ ’， ′ V
,′ ヽ.....ノ ∨
｛ /｀ヽ
‘， / , レう｝
‘， ﾍ、 / / , ─=イ {_,ノﾘ
ハ i〃 ＼ ﾚ′/ ‘ ／ |忻ﾊ 丿 似合ってない変装だな。
｛し｝ ! ＼_＿＿＿ __ｊ jﾉ /ミ＝彡′ lﾉ/ /／
Ⅵ乢、 ｀ヽ ＿‘｀彡ヘﾂ ヾ j/ // まあいいか、テメエに一つ聞きたかったんだがな。
＼∨ ^Ｙ ｀¨¨¨¨¨´ ｊ ｜ ｝ ｲ_彡'
｀`≧＼_ハｊ / ｛ しｸ ＼ /小、
⌒¨¨¨｀ヾ小 ＼ └-､j__/ ,ヽ ハ ヽ
|∧ } ,.,_＿＿ --一／ ｉ | ＼
|/∧ ｀ ー―‐=彡 ′j ヽ
|///＼ 癶辷彡' / /
∨/// ＼ / /
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| フランクフルトの串を弄びながら、木陰で惨状を見物していた男が問いかける。
| アサギがペルソナジュウを構え、タカオが無敵のクラインフィールドで味方を守る。
|
| 既に気圧されながら、やらない子はポケットの碁石を弄る。
| この男には、一度ぶん殴られた経験があるのだ。
|
|「『武僧』のヤザン……！」
|「おためごかしのキレイゴトばっかり叫んでて、恥ずかしくならンのか？」
|
| クラインフィールドは無敵の障壁である。衝突した運動エネルギーを位相の違う空間に逃してしまう。
| ただし、一度に大量のダメージを受けた場合はフィールドが飽和して障壁が失われる。
|
| それこそ、地下駐車場での大爆発みたいな大惨事でもなければそうそう……。
|
|「ぎゃっ！？」
|「礼儀知らずのガキだな」
|
| アサギの右腕に、フランクフルトの串が刺さった。
| 投擲した串が、クラインフィールドを一瞬で飽和、破壊、貫通せしめたのである。
|
| 銃を取り落とすアサギ、庇う位置に立ちながら、やらない夫は脂汗が背中を伝うのを感じた。
|
|「心からの気持ちでね、言葉にできて嬉しいくらいだ」
|「つまらん奴、反吐が出るぜ」
|
| ヤザンは構えすらしない。やらない夫は『モーリアンビル襲撃戦』で、骨折したヤザンにボコボコにされていた。
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|:::::::::≧―≦::::::::::::|
|:::::::＞:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i≧。
|／:i:i:i:i:∧:i:i:i:i:i:i:iﾄ:i:i:i:i:i＼
':i:i:i:i:i:i/⌒:i:i:i:i:i:i:i⌒:i:i:i:i:i:iヽ
/:i:i:i:iｒ/￣ヽ￣￣/￣ヽ￣ヽ:i:
':|:i:i:i:| ん ハ ん .ハ |:i|
|:|:i:i:i:| ヒニ寸 .ヒニ寸 .|:i|
|:|:i:i:i:| ｀ ´｀ｿ .｀ ´｀ｿ .|:i| とか言いながら、
/＾|:i:i:i:| （_人_） .|:i| アンタもそういうの嫌いじゃないんだろ？
.｛....|:i:i:i:| |:i|
' |:i:i:i:| |:i|
i:i:|:i:i:i:| |:i|
i:i:|:i:i:i:| ,:i:i、
:i:i｝:i:i:i｝＼ ＿＿ -≦：,:i:i|ﾑ
／＾|:i:i:i:｝―＼ ／ ＿＿|:i:i ,
´ /￣￣ヽ ＿＿ｒ<￣ ＼ __ヽ |
| しししｒ ⌒ヽ ヽ ﾉ
人 ― __）ｰ ｨ
／:i:i:i:i:|￣￣￣／￣|l―――――....|
＼／|:i: ／ |ヽ ヽ |
（やらない夫 じょそうのすがた）
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|「汚れた場所にしか住めンもンでね」
|「お兄ちゃん逃げて！」
|
| 四人のベルソナが発動。
| タカオの艦載砲が、アサギの爆発するペルソナが、はやぶさもの機銃掃射が。
|
| 明らかに対人戦ではオーバーキルの過剰火力。
| しかし、躊躇するやらない夫。彼女らを見捨てて逃げるのか？
|
|「アフロ！」
|
| やらない子のチョップが炸裂。妹の本気を理解したやらない夫、忸怩たる思いで背を向ける。
| ヤザンには勝てる気がしない。ここも逃げるしかない。足止めを任せて。
|
|「タカオさん、フィールドを前方に！」
|「散開したほうがよくない！？」
|「各個撃破されるだろ！」
|
| 手の痛みを堪えながら、アサギがペルソナを山程召喚。
| 歩く地雷をガンガン進ませる。その間も掃射は止まらず。なんにせよ早く離れなければ誰かに気付かれそう。
|
|「逃がすと思うか？」
|「思わないだろ！」
|
| 弾丸と砲撃の雨あられの中を悠々と歩いてくるヤザン、人間離れし過ぎている。命中弾を素手で弾いているのだ。
| いや、ペルソナの攻撃はいうなれば魔力で作り出した疑似質量だ。圧倒的な魔力障壁の前には無意味ということか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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r‐‐､
| ＼＿
／ﾍ ＿ |
/ /,- |／ﾍ | 〈
＼/ /ハ ハ ヽ. ヽ
＼/ / |ヽ| |ノ ｌ |／
. 二/ / ⌒､ ,´￣ ∠二 |
／ / ＼. |
／ | / .| ヽ という訳で、へへっ。
＼ |. / | | スミマセンね旦那！
／ ￣￣ヽ 〈 ＿＿＿ノ´￣ | |
{ | Ｌ.Ｌ.ｌ／￣ ヽ / /
／ }ゝ ／ | / ／
／ | ／
／ ＿|
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| 高速召喚されたやらない夫の最終兵器、ねずみ男がケツをまくる。
| 爆発的放屁、空気が黄色くなる。やらない夫たちはクラインフィールドで無事、ではヤザンは？
|
|「く、臭っせ！！ ぐほゲホッ！ 何だこりゃ！ グェえ！！」
|
| 尻尾を巻いて逃げる。今がチャンス。
| 建物の影から手招きする男の影、見覚えのある金髪。
|
|「待って、やらない子は？」
|「なに？」
|
| 逃げていたのは四人、やらない夫、はやぶさ、アサギを支えるタカオ。
| やらない子は？ ヤザンの所に残ったのだ。足止めのために。やらない夫は慄然とする。
|
|「いいから早く来いマヌケ！」
|
| 手招きするディオ。ここ数日連絡がなかったが、無事で何より。
| やらない夫はやらない子のことを考え、唇を噛んだ。死ぬな。死ぬな。
|
| その間に、タカオがアサギの腕を見る。竹串が手のひらから10センチ近く突き刺さっている。
| 致命的な傷ではないが、激痛で走るのもままならない。
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, ィ ´ ￣｀ ヽ
', ｨ､ ｀ヽ
', {ハ＿＿ ,ｨ ヽ
/´￣｀ ´ ￣｀ ｰ ｲ ｊ /
/ ﾄ ｀ヽ/
,' ,ｲ ,' ,イ | ＼ ﾊ
; ,' ｌ i| i .ｌ | ｌ ヽ､ ', ｌ
ｌ ｌ＝!ﾄl｣､! | ｌ ,=＝ヽ i !
| ｌｨTcﾞx､ ´ ´xｒ｀ｭ､} ｌ ,'
| ﾄゞ‐' ｀ ' ゞｼ ｲ | ,' 皮膚を溶かして
i ﾊ ､ u ! | ｌ 串を抜き
| i トゝ ' ｲ ! ! 傷を塞ぎましょう。
ｊ ', {ヽ － ― , ｲｊ ｌ ﾊ
,' ｌ ヽ', iヽ , イｌ ﾘ ｊ ヽ
/ | ト､!ｲ{ ｀ ト / ,ｲ ｌ ', ゝ
,' ; |／｀ ', ／ / ／ｊ , ｊ ',ヽ
! ｲ ｊ | ヽ ／ ｰ' > /ｊ ﾊ ', __＼
｣ /ｊ ｲ ! /｀｡ヽ / /ハ ヽ! ヽゝ
イ´ ﾊ!ｌ/ ﾘヽ＿/ゞ､_:;ｿヽ ノ ｌ '、 ヽ
/ ｊ / ヽ ｀´ |l ', ＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「楽にしてやった方が早いんじゃあないか？」
|
| 皮肉っぽく言うディオ。そこまで来て、ようやくやらない夫は彼を見た。
|
|「離れろ！」
|「おっ？」
|
| やらない夫は、オーラで他者を判断できる。
| そして、爽やかな黄金の風を纏っていたはずのディオが、ドブ川よりもドス黒い漆黒のオーラを放つはずはない。
|
| 脚部のヒゲ槍をノミ脚状にして飛びかかるやらない夫。
| 魔法のようにナイフを取り出すディオ。仲間を守るために無敵の盾を張るタカオ。
|
| ナイフが、豆腐を切るようにスルリと抵抗なく。
| クラインフィールドを無視してタカオの端正な顔を両断した。
|
|「お前！！！」
|
| 秀でた額から、形のいい眉、涼やかな目、鼻を裂いて口を割り、下顎までを深々と。
| 何が起こったのか理解できず、大きく目を見開いたまま血を迸らせるタカオ。
|
|「イヤアアアアア！！？」
|
| らしくない悲鳴を上げるはやぶさを突き飛ばし、アサギが盾に。
| 首を引き裂かれるアサギ。映画みたいに派手に血が吹く。
|
|「あああああ！」
|
| 雄叫びを上げるやらない夫、ナイフの血を払いながら向き合うディオ。いや。
|
|「ディオをどうした！！？」
|「やっこさん死んだよ」
|
| アリー・アル・サーシェス。
|
|「俺が殺した」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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☆ 次回予告
そこは間桐臓硯のはらわた。
怪物の胃袋、いわば魔人の固有結界。
立ち向かう勇者は三人。
迎え撃つ下僕は二匹。
そしてただ一人。
立ち向かう力もなく。
選択する勇気もなく。
おもねるにはプライドが邪魔をして。
覚悟を決める時間もない。
弱者が一人。
次回、最終幕八十二話『最下層民』
果てに見るのは破滅か死か。
_＿＿＿＿＿__
／ ,. ￣｀ヽ
/ !､´ヘミ＼ ｨイ ＼ﾍ＼
/ ､ﾞ､ッ´ ヽ ＼ ＼ ﾍ＼
{ ,.ミ | ヽ ヽヽ、}ﾍ ＼
{. ､ﾐﾞ. ﾞ ,...__＿ , ヽ ヽﾞl}l l} l}
/‐r,､ﾞ} ミ≡≡＝ r==x＝ミ l ヾ
. /rﾍ | }. ｛/////!｝. {/////｝. |
. ﾍ し .| }. (/////ﾉ j/////ﾉlﾞ |
ﾍ ヾ | }., ￣￣´ ￣￣¨´... | いく夫くぅん。
＼ル.}.. / ´ヽ.,.. |/ 君のスレでしょ？ 好きにさせてていいの？
.. !|イヽ、 ‐--' ,.ヘ ヾ-‐''"/
x=ﾆ三'l| | ＼, ／‐ --＼ ／
．＜ﾆ三三三ﾞｉ＼ ｀´.｀－-ｰ ' ´｀ /
,.<三三三三三三＼＼ ￣ ／... /
. /三三三三三三三三＼＼,、, 、,、,／.三 /!
. ｉ:三三三三三三三三三.＼ﾞｉ. ﾍ{三／∧ ＼
. }:三三三三三三三三三三.ﾍ!､ ∧＜二＼
/:三三三三三三三三三三 ＞．..,_ ／ ＼
／
| えー？
＜ 別に破滅しない世界に興味ありませんし。
| 早く失敗して滅びねーかなぁー。
＼
, イ＞＜
／ ＞＜ , へ
イ/ / i/i / ｀´i ｀ヽ
／／i／i／／ .,、 ! ＞､
,イ／i／i／／ ／ ／ヾ:ﾊ: :.ﾊ ハ
} / ／ ／／ ／ ／ ∨}! }
/ / / / i／! / ニニﾆ=- i: }i ! i
/ / / / / i / /i / !: !.! ! !
i / / / /i/!/ /／, 八 ゞヽ !:ﾘ i! i i!
i i i / / i-‐=ニ´ ｀二ﾆ=‐-=!ﾘ i
i!i i .i ir=======x, -- イ========ｧ !
i/i!iﾊi i!/////////¨¨¨V/////////= /iﾊ i あーあ、スネちゃった。
i/ Ⅵ!V/////ノ i ,' .∨////// ﾘ |:/ i }: :ﾘ ,
! ｀¨¨¨¨´,'. ! i i ¨¨¨¨¨¨ ´ { ., 'ﾘ / ,ｲ それにしてもアイツ、キャラ違いすぎない？
!ヽ i! ! ! ! ,､ ノ /:/ .,イ/ …………あ、現状は以下の通りさ。
!i ､ r‐ ! ! ‐x ,イ,' ゞ' /／／
', ﾏｘ, イヽ＿i_／=-､ イ７/ !, ＜／
＞-= _____＞'´）-==------＜:.:.＞=ﾆﾆｘ:.:.:.:.:.:＞===イ: :／
. / ,=-ﾆ.__＞'´==､ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:. ∠ !__!___!___!ヽ: : : : : : : :／
/ ,ｲ .,ｲ ／ ｀￣￣ く ヾ_!__!___!___!__!_／￣.／ .!三}
,=､ i { i ﾊ ゝ ー‐ -=ｲ ,イ _ノニﾊ
｀ヽ__ } .! ,ｲﾆ }ー=ニ..＿＿__／,x＜ニニ ∧
¨ヽ ｀ヽ. ／ ,' _/ﾆﾆﾆ}ﾆ! r=ニニニニニニハ
｀ーｘ_ノ¨/ ', fﾆ /ﾆ, '}ニﾚ' ./ﾆﾊ ../ニﾆﾆﾆﾆ ／ ＼
ヽ__ } i ∨ }ﾆﾆイニiニ } /ニﾆ∨ /ﾆﾆニ／ニニﾆ＞､
￣ヽｲ ﾘ {ニニニ }ニi!. , 'ニニニV ./ﾆ,イニニニニニﾆ＞､
ﾉ ./ iニニニﾆ｀ﾆi! ,ｲニニニニ∨／ニニニニニニニニ ＞､
◎現状（八十一話終了時）
カトルカールの電波汚染で電子機器と電波の使用不可
鳴り響く銃声と爆発で民衆はパニック？
やらない夫の仲間
目的：やらない夫を死んだと世間に見せる
・やらない夫
カトルカール、石田龍田と交戦。ニャンコ先生と墨目にまかせて逃亡
女装、ヤザンに遭遇後、ディオに遭遇
・咲夜、球磨川、マーガレット
ディオ（アリー）により殺害
・天龍、シグ
ロビンに敗北
・ジャギ
偽ヤーボと交戦、自爆される
・やらない子
ヤザンを足止め
・はやぶさ
やらない夫と同行
・アサギ、タカオ
やらない夫と同行中、ディオに攻撃される
・その他
白雪ひめが参加。
その他は現状不明
警察
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・阿部さん
様子見
・ナタル、ノイマン、ダリダ
電波汚染に対抗中に爆破された？
陸上自衛隊ムスカ配下
目的：扇動、これをきっかけにクーデターを起こしたい
『血族』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
・カミナとシモン
ジャギと共同で偽ヤーボと交戦、自爆される
・龍田と石田
カルカールと交戦、やらない夫を取り逃がす
『異端審問官』
目的：やらない夫の確保と暴徒鎮圧
シロッコ配下
目的：日本を内戦状態にしたい
・ヤザン
ねずみ男の放屁をくらい、やらない子に足止めされる
・ロビン
天龍シグを下した
・爆弾蜂
罠を仕掛けている最中に逆に罠にかかる
・他のカトルカール
石田龍田と交戦、やらない夫を取り逃がす
透明、大砲がリタイア
・レイ・ザ・バレル
ドローン視野で連絡係
偽ヤーボを自爆させる
・合衆国軍
一般人を攻撃
ディオ（アリー・アル・サーシェス
目的：不明
球磨川たちを殺害した
アサギとタカオに致命傷を与えた
あーもうめちゃくちゃだよ
天龍ちゃんもエロ担当でしょっ
ずいぶん遠くまで来たよ 乙
サーシェスが厄介よのぅ
/:/ : /: : : : : : : : : : : :ﾔ : : ヾr‐く￣￣￣ ｀ヽ
/:/ : /: : : :√: : : : :: : : l{＞ { ﾏ ､ /
: :l : :i{: : : : l : : : : : ｧ‐=j{ .斗 ヽ ＼- _ !
|: l: : i{: : i{: l : : :i{: :从: /∠.＿{ ＼ ヽ ￣
ﾔ : : ﾔ : ﾔ:Ⅳ: :i{ / /ｲ=ﾃﾐx ﾐ:ﾑ ＼',
ヾ:＼:＼:ヽ{ ＼i{' " L 」 }⌒', _ -'ﾞ
]:`:ﾊ ／ ／, ￣ ) ノヽ/ ヽ アーアアー。
|: : ﾊ ／ /: :´', ',＼ヽ
l: : : :ﾞ〈 {⌒う ィ: : : : :', ', ｀ヾ '､ アアアー。
ｉ: : : :}! :＞ ., ＜ ｢: : i{ : : :∧ ∨ }! ＼
l: : : :}! : : : / ￣ |: : i{: : : : : ヽ ヽ }! }! イイーアー。
j／!:/: /ｰ'辷ニ=ニ 彡ⅱ:` 彡'冖 ､ ＼ヽ}! /
/ }!: :/ ｀ヽ ／￣ ゞィ ::::::::::’ V ＼'
i /: / l ､::::::::::}! ヽ ヽ
_ - l／: / :. , /__ -― v' }! ､
_ - ~ ／: : / ＼＿＿_ :./ _ - ⌒ ヽ ＼ ヽ
〈 /: : : :i ｢￣ ￣￣ 7 ―- ､ ＼
ヽ ／ 从: : { l ＿＿＿ /＿＿_ '/: :ヽ ヽ
{／ ` l! ﾍ￣ 人 ￣ / /_ - ヽ / ´
＼_ l! `, ´ ﾑ＿＿ / 〉/,
7: :- ! ', ￣￣￣ / ./. . .- : : :~: :∧
_/ : : :ﾑ , ＿＿＿/￣￣ ./√: : : : : : : : :∧
7: : /: : !￣ ｀′ / ' !: : : :i{: : : : : : :∧
7 : /: : : l ',‐ ―./ ― - ,ﾞ ヽ: : :i{ : : : : : : :∧
7: /:_ - ―- _ }! ＿/_､丶` - _ 彡ﾍ: : : : : : : ', : : :ﾍ
/､丶` _ ｀ヽ ／ ~ - _ V: : : : : : ', : : : ヽ
／ ､丶` ‐- i{ }!､丶 ⌒7 ､ - _: : : : : :', : : : :
. ／｀ヽ ／' ､ ', l! 7 / ＼ ／: : : : : :, : : : :
.ィi〔 : : : : ﾏ∠ _ ヽ′ l/ / ´ ＼ / Ⅵ: : : : : ', : : :
ィi〔: : : : : : :_ - ~ ⌒〈__ ', l!＿ /_ -=＝ニ -'ﾞ ', : : : : : ', : :
／: : : : : :_ - ｀ヽ ﾍ | _ - ＿＿ ｀ ′: : : : :', : :
彡／ : : : _ - ＼ ヽ _ - ,＿ ⌒ ヽ !: : : :＼: ', :
{: : : ::／＼ ヽ ヽ _ - ｀ヽ ’, ﾑ: : : : : ＼ :
. '⌒／ ヽ ’, _ - ’ ⅰ /: : : : ヽ: : :`
／‐ - ､ ’ } ／ ＿ }! ⅰ ／ ⌒ 'ｰ= ､: :
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| 譫言、あるいは歌声のように、口から胆汁と虫をボトボトと垂らしながらそいつは虚空を見つめた。
|
| 間桐屋敷の地下空洞は今や修羅の巷であった。
| 腐った縫合痕から胆汁を溢す巨大な間桐桜。その足元で不敵に嗤う間桐臓硯。
| そして、天井からぶら下がり全身に生えた虫を伸ばす間桐雁夜。
|
| 対するは、最前列に立ちこころなしか青ざめた『弓兵』。
| その脇で吐瀉し地肌を汚す間桐慎二。
|
| 最後尾で術の準備をする遠坂凛、そして彼女を守る位置に立つ『万魔』。
|
| ここでの戦いは激しいものになるだろう。
| しかし、周囲への心配はいらない。非常に強力な結界が、この空間を一種の異界に変えていた。
|
| 地上の呂布ややる夫が、この空間の戦いから何かを感知するのは難しい。
| つまり、後顧の憂いは無いと言うことであった。
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＿
ィ;ヘ:::::´:jト､ミ::::､
,ィ:::::´::::::::＼/:l::::::＼::::
ｒ:j::::::::ハ:::::::ト:;ィ!:::ヽ::::＼::､
ｊ/::::::/:::::}:::::ﾉ~´ |::::ｲ:::::::;ｲ〈
/::::::人::メ::::( {:〈,{::ﾊ:/:ﾊ::ヽ_
ト:::（:::::｢ト-y' :::::､)斗ﾁj:r-:::Y 爺さん……
从ﾊ个}ﾉTエ´:::::::::┴'-从 ｊ:リ 雁夜おじさんを……！
｀⌒ヾ{ﾊ u ｀ ｒｲ::{
｢￣､￣｀ヽﾑ ,,ィ＝ぅ ノ人:ﾊーｧ ､
| ヽ ﾄ≧'ーｒｒ-≠ イ ｊ
} Y ヽ ﾏ{ 彡 / /
ﾊ ｊ｢ ー ｣ﾑ ﾊ {
/ 7 川 V ヽ
/ ｊ{ | i ! } ､
′ ハ ｌ | ! ハ !
ミ､/ } ! iｊ {! Ｖ
{ イ／⌒ーｫ | ｌト イ ≠⌒ヾ |
―┤ ア´⌒ヽ――┴┴ ｆ￣｀マ ｊ―――
L j! ￣] [ニ ヾ _ノ
￣ヽ ﾑ ニｲ ト＿ ｊ /! ／´
｀⌒ー- ´ ｀ー-'‐^￣
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|「見てのとおりじゃな。元より寿命であったからのお、中身を作り変えておいた」
|
| 口元を拭う慎二。その目に揺れるいくつかの感情。
| どれほど外道でも、酷薄でも、信じたかったのだろう。間桐臓硯の家族愛を。
|
| それが……たった三人の肉親の一人を、こんな、こんな……
|
|「お、ごぼっ、ごぼぼっ……」
|
| 不快な水音、雁夜の眼窩から赤黒い泥水がこぼれる。
| 続いて飛び立つ蝿の群れ。『万魔』が毒霧で払い落とす。
|
| 心に吹き荒れる感情の強さに、動くことのできない慎二の襟首を、『弓兵』が引っ掴んで壁に投げた。
| 直前までいた場所に、一メートル近い巨大な手のひらが振り下ろされる。
|
| 桜も雁夜も、動きから知性が感じられない。
| 完全な怪物だった。
|
| 手の内側を潜り抜けて、『弓兵』は覚悟を決めた。
| 治せる。そんな希望に縋るのはやめだ。
|
| 桜の尊厳を守るために。拍車の付いたブーツで地を蹴り走る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／ ＼
／ :.
,ノ､ ,′ '.
| ＼ / ヽ
| .′ ,,.. ''" /
| , -‐ '" ,..::::::::/
_:, ':, | ,.:::' ,. ,.:':.:.:.:.:/
∨ ＼ :::..':,│ ,:':,:' ／ ,::.:.:.:.:.:/
〈 ｀丶::::..:::::／ __, !.:.:.:.:./´'.
{:ミ＼ 〉::f ''"´ ヽ.:./ 7/ おおっ、殺る気か！
_У ゝ=` ､∧ r＼__,,,.. -rrrｧ::'’'' / 流石は夢宮の小倅、情け無用よな！
／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
＿__／/:.:.:/: }:, r‐r‐< / | :、 ／/:.:.:l: :＼
／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
／: : : :.:.: : i:.:.:.' : . : l＼ ｀ ー======イ / ｨ: . |:.:.:.:!:.:.: : : :＼
´: : : : : :.:.: : :! :.:.l : . : .! lヽ´￣￣｀ヽ イ´ /: .│: : l.:.:.: : : : : :＼
: : : : : :: : : : :! : :.!: . : . l l:.:.:.｀ー― '":.:.:.:./../: . :.:| : : :l :.:: : : : : : : :＼
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| 自分のことを棚に上げる臓硯、迫る『弓兵』に怯みもしない。
| ここは間桐臓硯の結界。腹の中。戦いになどなる訳が無い。
|
| 桜の腕からこぼれる胆汁が、沸騰し泡立ちながら『弓兵』を狙う。
| 同時に、なにもない地面から突然伸びた肉色の鞭。その数十以上。
|
| 間桐臓硯は無策で待ち構えるほど無謀ではない。
| 負けるつもりが無いからこそ、ここで待ち構えていたのである。
|
| 胆汁を退魔防弾コートで払い除けながら、『弓兵』は抜き払った刀で肉鞭を切り払う。
| その間疾走に遅滞なし。後方で同じように襲われる凛にも注意を向けず。
|
| 何故って？ そこには頼りになる弟子がいるだろう？
|
| 宝石をばら撒き、術式を展開する凛。その護衛に立つプラチナの髪の『万魔』。
| 美しい髪をブチブチと引き抜いて投げる。
|
| 古くは西遊記、斉天大聖孫悟空と同様に、体毛から分身を作り出したのだ。
| 獰猛な甲虫が群れをなして肉鞭を食いちぎる。
|
| 次々生える肉鞭。しかし食い破る方が早い。いや、肉鞭の動きが鈍いのか。
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／...::::::::::｀ヽ―:..､／:::::::::＼
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／..::::::::::::::{／:::::::::::／::::::::::::ｊ／..:::::::{／::::}: /∧ 八
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{::::{:::::::::{／{:::::::::::::::::::::ﾄ､:::::: {￣ ＼::::::::::::::}゛ ｀Yﾉ:::}:::::::}::〉
{::::{:::::::/::::::{＼::::::::::::}:::}｀∨:∧ ＿〈:::::::::／ { .ﾉ ／ :／.:{
}::/::::/{:／{／ ＼ ／::/ _/:::イ'¨¨¨''＼::( } ∨::／:〈::∧
/人:/:::::::::／￣乂{::::::{ ＼{ ｛｝ 〉｀）リ ノィ{::::::::}:::/〉
{:{:::::{:::: ／{:／∧ ＼: ＼ ｀ー―=彡 :{ぅ{ﾉ::::/:}‐'"
乂:::::＼{::: { り ￣ 乂}:／}/
＼:::::{:::::＼＼〉 }′ 僕を甘く見るな！
〉::::::::::::::＼_ , ―‐ ､ }
/::::::::::::::::::::{八 {／＼ :/ /
!::/}:::::::::::{::〈 ＼ ＼ ＼::/
{/厶{:::／＼〉 { 、 ￣
八:{＿ ｜ ::..... /
/ ｀`ヽ､、 :::＞ ＿/
＿:{ ｀`ヽ､、／
――ー＜＿___:{ ｀ヽ、
〈＼ /
＼ .∨-｀ヽ、 /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| この空間は間桐の異界。つまり、慎二にとっても有利な空間だ。
| 臓硯が小手先で操作する肉鞭なら、慎二が抑制できる。
|
| 凛は彼らの要だ。邪魔はさせない。
| 躍りかかる雁夜を、『万魔』が迎撃。虫の群れや魔術ではなく肉薄。最小限の魔力で最大の結果を出す方法。
|
| その間に、『弓兵』は臓硯に到達していた。
| 一撃目。冷徹と憤怒の同居した『弓兵』の視線と、愉快そうに嘲笑う臓硯の視線が交差する。
|
| それは一瞬。地面から飛び出した板が二人を別つ。
| その板には、怯えた目をした幼い間桐桜の似姿が。
|
| もはや躊躇はない。両断、そのまま臓硯にも斬りかかる。
| 驚愕の臓硯、最後の最後で甘さが捨てきれぬと踏んでいたのに。
|
| 嵐のような連撃を、凌ぐ、凌ぐ、凌ぐ。
|
| 槍のように伸びて『弓兵』を狙う肉鞭、慎二が支配。逆に臓硯に絡みつく。
| 『弓兵』の双刀を凌ぐ、凌ぐ。杖が折れる。凌ぐ、凌ぐ、左腕が肘から切り飛ばされる。
|
| 愉快そうに笑う臓硯、傷口から血が出ない。
| 代わりに、蝿の群れが放出。
|
|「疾ッ！」
|
| 対する『弓兵』、腰の麻袋を開く。
| 飛び出す危険色の弾丸、黄色と黒は危険の印。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＼-_-＼
＼.-_＼
＼_-＼
＿ ヾ-_＼
≦-_-_￣-_二ニ=- ､＿_γ´;／;;;;;;;;;;;;;;≧x
￣￣ 匸-_-_-_-_ﾆｰ=三三7;;;;;;Y;;￣;ヾノ_;;」=-─- 、
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ｨ=< 乂 {;;;;;;ヽ;;;;;;/ ,.-､ ∵ ,才二二ヽ、
{::{ヾ::＼ ｀二ﾆ乂;;;;;;;;;;;{ ./:< _ﾍ ﾉｨ:「＼＞､ヾ>、
l:::| ＼:＼::::::厂ヾ;;;;;;∧ {:::::У/^ｰ^ヾ:ﾉ }ﾊ∧. ヾ>、
.}::|＼＿｀ｰ-≧メｲ::>､;;;∧ ヾ/:/ .}] j∧ ヾ>、
}::l::::＿:::三=-─f:T¨¨:::>弋__/:/ _ ＿// }∧. ヾ〉
〉;/:r─---‐=≦∨､／ /:;<´ У/／ ｲ::{
/:/{::jヾ:::::::::::彡/<∧::ヽ /:/ ￣ｰ" jﾊ}
/://::ﾊｰ--::≦/ ∨ﾍ、j:/
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| スズメバチ砲！ 『宝貝 蜈蜂袋』より射出された殺人蜂が、蝿の群れに食らい付く。
| 同時に作り出したナイフの束が、臓硯を狙い撃ち。頭部に二本を含めた八本が突き刺さる。
|
| …………が。
|
| 臓硯は気にも止めない、『弓兵』も当然と受け入れる。
| 間桐臓硯は四百年を生きた超越者だ。『万魔』と同型とはいえ年季が違う。
|
| 『万魔』は人間体のダメージを看過できない。引きずられてしまう。
| 足を落とされれば転ぶし、目を潰されれば視界を失う。
|
| 脳にあたる器官は頭部にあるし、肉体的な感覚も忘れていない。
|
| だが、間桐臓硯は違う様子だ。
| 肉体が虫の集合体だ。一部が失われた、傷ついた程度では何でもない。
|
| 完全に無視して動ける、むしろ、ダメージを受けた振りをする程に狡猾だ。
| 『弓兵』の攻撃は、いつの間にか完全に防がれるようになっていた。
|
| 押している、押し切れる。そう錯覚させるために、臓硯はわざと傷ついたのである。
|
|「センパイセンパイセンパイ」
|
| 誘い込まれた。もう逃げられない。
| 巨大な桜が倒れ込む。巨体による圧殺。5メートルの圧巻バスト。
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
ｯｫ､ ,ｨ三三三三三ﾐ､
ミ毛､＿_,ｨ|三三三三三三ﾐｬ､
八ﾑ___彡{三三三三三三三ﾐ〉
,ｨｿﾆヽ､i､ ／｀ﾞﾞヾミミ三三三ミｼ
,'´ -‐‐-､＼_ ,' i.ｲ i/,!i､ ｀ヾﾐ三ｼ
,ｲ-'´｀＞-ﾗ‐‐「|ﾍ_| |ｲﾋﾒ乂込 ﾄ､|
/ .'´ 〈 ＼' .i ', } ｀^ﾙ／｀ヽ
＞´｀≧､ ﾍﾄ ',‐- ,ｨ'!/ …………こいつか？
,ｨ-'´￣｀ヽ､ｷヽ､ iﾍ ヽ 'く´ ｀､ ,
/:::::::-‐-､:::::|_ｷ-ゝ}::::＼､ ﾍ＼ ｀､-‐'ﾑ_
/ﾆ=‐-::::::::::::::!-j } j:::::::i::｀∨ヽ｀ヽ-ﾆ=-
_,ｨ-'´ヽ､＼:::::／-'´ノ ノ }:::::::::',::::'., 〉
,ｲ=/´｀ヽ､:::::／､￣__,ｨ'´ ノ:::::::::::::',:::::'.,ｷ､
/ ,ｲ´＼ ヽｯ｀) }､_＿＿／:::::::::::::::::ﾉ:::::ﾉ::::|､
ｷ ,' ､ ＼｀)'(/´ .i::::::::::::::ﾍ::::____::::イ_ イ::::::::::∨
ｷ｀ヽｿ'´ / |::::::::::::::::::::::::::i´:/ ｷ:::::ﾉ:::｀､
｀ゝ-‐'´ ,'::::::::::::::::::::::,-i::/ ﾍ:::::::::::::｀､
,ｨ--‐イ:::::::::::,-‐=='´i::ゝ､ ＼:::::::::__〉┐
/ ,-ｲ＿＿,ｨ--‐t‐ｫイ´∨ 〉'´ ヽ､
/ ﾄ､＿＿＿_,--┴!┴'￣∨ {_ ｀i
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 一方の『万魔』。蜘蛛のようにぶら下がる雁夜と交戦。
| 不安定に揺れながら、線虫や回虫を振り回す雁夜。背中が割れて、大きさと種類がまちまち無数の脚が生える。
|
| 見る者の不快感を煽る雁夜とは対象的に、『万魔』は完全に人型のまま。
| 氷のように無表情、ジャンブして空中の雁夜に打撃。
|
| 掴みかかる雁夜、その足や腕を次々に防ぎ、そのまま引き抜く『万魔』。
| 魔力総量ではわからないが、魔力操作技術の差が明白。
|
| 面白いように毟られる雁夜、空中で回し蹴りを喰らい、壁に激突。
| 黄色く粘質の体液が糸を引く。
|
| 『万魔』ほ容易い相手にも油断せずに身構えた。
| やる夫から『第四の万魔』の話は聞いていた。こいつならば、世界を滅ぼせるパワーを隠しているということになる。
|
| 『万魔』は逡巡した。今が叩き時に見える。早いうちに叩き潰すべきか？
| だが、機が満ちていない。何事もタイミングが重要だ。
|
| とりあえず畳み掛ける。
| その程度で倒せる訳が無いが。
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| 体長10メートル。つまり人間の約6.5倍。
| そうすると体積は二乗、42.25倍ということになる。
|
| 仮に桜の体重が50kgだったとしよう。ああもちろん、この数字にはどこからのなんの圧力もない。
| とにかく肉と骨でできていたとして、桜の体重は約2トン。その揺れる胸だけで150jg。
|
| それが勢いをつけて倒れ込んできたのだ。
| 常人なら無事では済むまい……無論、『弓兵』は常人の範疇に含まれないが。
|
|「『ロー・アイアス』ッッ！！」
|
| 一体いくつのマジックアイテムを隠し持つのか、『弓兵』が繰り出した障壁は桜の巨体を押し留めた。
| 駄々っ子のように拳を叩きつける、口や目、縫合痕からこぼれる胆汁が障壁を焼く。
|
|「クハッ！ アレを止めるか！」
|「間桐臓硯ッ！」
|
| 『弓兵』の意識が上に向いた途端に、逆襲に入る臓硯。
| いつの間にか生えた左手、全身に刺さったナイフを投げ返す。
|
| 防弾マントのガード。だが視界を遮った一瞬で臓硯が肉薄。
| 邪悪な黒紫の瘴気を発する抜き手。
|
| 防ぎきれないタイミング、だが『弓兵』のブーツで拍車が火を吹いた。
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__ ， ←‐‐‐ﾄ､} ＼ﾆﾆ=‐‐=ﾆ〕iト．
_ rｭｭ､__ ， ←‐‐‐‐‐‐‐ ヽ { >‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐＼
_r',ｨf芋ミ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐V { ／ ＿__ 〈‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
_ ‐=_⌒ヽ＞-=ｲ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ｲ{'＾｀ｰ ´￣ ¨¨¨>=‐‐ V‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
/ ´￣弋ﾆ_）_ }}‐‐‐‐‐‐==≦ ￣￣￣¨¨＼ / ヽ __ }ヽ}‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
／ ／ﾆ=‐ ¨ ＞ﾉ´￣¨ {fｫ､ ′_ ｡z≦ v⌒}ﾚ‐}‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
. ／‐ ¨ } ｀ ¨ ゞ''’ _ノ}'‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
。 ゜ ∨ /: :/‐‐/‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
／ 『風火輪』！ ｀ _ ／::::/‐‐ '‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
／ ＼_｀ ｲ=‐ : ＼_/‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
／ {乂}: ヽ ____〉: :/‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
/ ゝ='ヘ: : : : : : : ＼‐‐‐}､‐‐‐‐‐‐＼‐‐‐‐
′ / ＼: : ヽ: : : 丶‐=‐‐‐‐‐‐‐‐ ＼‐‐‐
-= ¨¨¨￣ ¨}⌒ヽ: : : ､乂＿＿ ‐=〉､
{ ／ ∧: : : ＞=--: : : : /: : : : : : : :
_／:i:/}: : ｀ト-: : : : ／: :/: : : : :
＿彡7i:i:i:i{/ヽ: :_}_: : : イ: : : : : :／: : :
／‐‐‐‐/:i:i:i:i:{:: : : : }: : : : : : イ: : /: : : : :
／------{i:i:i:i:i/ト．: ﾉ: : :: : : : : : : : _ ｡z≦
，←‐‐‐‐‐‐‐∧i:i:i:{ 〕iト．/_ _ ｡z≦i:i:i:i:i:i:i:
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| 突然のロケット噴射、ジェットで加速された膝が、臓硯の顎を穿つ。
| 瞬間、その全身に赤い火花が飛び爆発四散。後に残るのはビクビクとけいれんする肉塊ばかり。
|
| そのまま空中に飛び上がった『弓兵』。
| 障壁にヒビを入れた桜を一瞥、障壁解除。
|
| 顔面から倒れて鼻をぶつける桜の後頭部に、無情にもかかと落とし。
| 地響き、クモの巣状に広がるひび割れ、地面に埋没する顔面。
|
|「猿芝居と下らん手抜きをやめろ」
|「それはお互い様ではないかのう？」
|
| あちこちの地面からキノコのように生えてくる肉柱。
| それらが全て間桐臓硯の形を作る。その数十と六。
|
| 身震いする桜、その頭部は頑強であった。
|
|「いつまで人形の相手をさせるつもりだ？」
|「人形とはいえ、実力は先程見せた通りじゃぞ？」
|
| 臓硯達がそれぞれ違う動きを始めた。
| 半分が『弓兵』を狙い突撃突撃突撃、呪詛の乱射斉射、肉食昆虫の群れ、大型昆虫召喚、高威力呪詛の詠唱開始！
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∨二二二二＞ { ＼二二|
∨二二ﾆ／ ／ ∧ l ＼ ＼二,
∨二ﾆ/ / / ／ ', :| / ＼ ∨〉
∨ﾆ/ / 厶イ ｜ /! | | ＼ ',
{_/ |: / ―― 、 l /｜ ::| | トミ=- |
,．'´ :|/ ┬―==ミx, ﾉ 八 :|＿|＼ | |
,．'´ . :/l ｛ / ハ ｢ ＼{＼{ヽ ∨ / /
,．'´ . : :/{ | 乂ツ /⌒丶 ∨ / /
￣￣´ . : ／', | / ハ ＼, / /-<
,．'´ . .. . : :／ 八| / 乂ツ ノ/ /´ ｝
. . : : : : . : :／ | } / /ﾉ / しまった！
. : : : : : : : . . : :，'’ ＿_从 ／ /__／ 凛！！
: : : : : : : : . : : : ::，'’ ／ .:.:.:.:.沁. r― 、 ＿.,．'´ /: : |
: : : : : : : : : : ::，'_. ┌‐┘.:.:.:.:.:.:.:〈沁. ￣｀´,．'´ /: : : |
: : : : : : :.:／:，'’ ＼ |.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. l.:./＼ ,．'´ . : :／: : : : |
: : : : : ／´/ ／⌒L__ .:.:.:.:.:.:.:.:.: |/＼__> '´ . . : : ::／^Y: : : :人
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| 残りの半分が雁夜と連携、『万魔』に射撃、妨害、肉薄、撹乱。
| そして最後に、術式の集中で無防備な遠坂凛へ四人。
|
| 守りきれない。防ぎきれない。
| 呪詛の大槌が、ぶどう弾が遠坂の魔女に炸裂する。いかな天才魔女でも致命的。
|
|「とでも思った？」
|「甘く見るなって……！」
|
| 勝利を確信し、一番弟子に会心の笑みを向ける魔女。
|
| 全ての臓硯が、雁夜が、同時に振り向く。
| それまで全く注意を向けていなかった少年へ。
|
| 吐瀉し、放り投げられ、うずくまったままで肉鞭を防いでいた。
| 立ち上がるだけの気力か暇がないのだと、いや、そんな興味すら向けていなかった。
|
| まさか地面に、何かを押し込んでいたなんて、想像もしていなかった。
|
|「何度も言わせるなよな！！」
|
| 間桐慎二が、地面に押し込んでいた物体を勢いよく引き抜く。
| 石製の釘めいた物体、細く尖った二等辺三角形。
|
| いわゆる、楔形。
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､ヽ` / .＼ ｀~^ '' ‐- _ / /
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| 突然、空間がまばゆい光に包まれた。
| 太陽が出現したかのような熱と光。
|
|「があぁああぁぁぁ！！？」
|「うごぉおぉおおお！！」
|「イタイイタイイタイイタイイタイイタイッッ」
|
| 断末魔のような悲鳴を上げる臓硯達と雁夜。身を縮める桜。全身が泡立って沸騰。炭化。
| だが、『弓兵』と凛、慎二には痛痒なし。悪魔のみを浄化する苛烈な光。
|
| 無論、『万魔』もその対象である。
| しかし、タイミングを知っていた。何が起こるか分かっていた。
|
| 雁夜を盾に影を作り、ダメージを最小限に抑える。
|
| 何が起きたのか、何をされたのか。臓硯には理解できない。
| 神話級のマジックアイテムを惜しげもなく消費した可能性。復讐に狂った『弓兵』たちならありえる。
|
| だが、それを、あの愚かさだけが取り柄の愚図で役立たずな慎二に？
|
| そしてこの強烈な拒絶の光。神道的祓いの絶対的な清浄化。天津神系列の気配。相性も悪い。
| どこでこんな……臓硯は、類似した報告をきちんと読んでいなかった自分の不覚に気付けもしない。
|
| 九月、深夜の新宿を陽光で満たし、ニャルラトホテプの追放に一役買った。
| 天照大御神。天岩戸の楔。
|
| 姉からこっそり借り受けた蒼星石の仕業である！
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／＼ _,.．-'ヽ、
／, -‐''_＞ｭ＜__,,.. ．-+‐ー‐ー---┐
／, ' '""~__ ｀`丶､ ,ｲ
∠イ'´""￣: : ￣""'''‐-..,,_ ヽ / |
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l : : !: : .,' : : : : : : , : : ./i: : : : : : : : : :l |／ ; ; ,ｲ
.l: : : : : :i : : : : : : ,ｨ: : / .l ﾄ、 : : : : : : l; ; ; ; ;/:.l
l: : : : : :l: : : : : : / l: :/ _,l」ﾆ+-: : / : : |; ; ./: : |
.|: : : : : :l| __,」ノ | / '´ ヾ_,,ヾ．、_,': :l; ;/: : : :|
|: : : : :‐|'´__ｭ/ .l/ r'´i´;;;;;l 〉: : /イ: : : : .l
.i : : i: :./~rl;;;;i` / .' .ﾔﾆｿ ': :／※i: : : : : l え……
ヾlヽ: :ヽ .!.kri ｀´/ .イ i: : : : : ::l それ、借り物なんですけど。
ﾄ: :ヽ: : `ｰ′ ""u /イ ! ※.i: : : : : : l 使い潰しちゃったですか？？
|::ヾ、ヽﾄ ゝ ` ／ ィ'i i: : : : : : .ｌ
!: :i ヽ、 ＿ , -'"トi※ i: : : : : : : l （ドン引き）
.l: : i ※ .i: :｀:ｰ- ,,`_´,, - ' ／ i i、: : : : : : l
l: : .i i r‐- ．..,r'´ / ／ .／i .※i〉7´￣`､_.l
l : : i ※ iノ:.:.::.r'/ .!__／ ∠＿i .i ＞.:.:.:.:.:.｀i
l : : i i:.:.:.:.:「/ __.|.|' .i※ i ７:.:.:.:.:.:.i´
/: : : :i ※i:.:.:.:「/ ／.ィl ﾄ、 i .i／:.:.:.:.:.:.:.:l
/: : : : i i:.:.:「/'´,イ i | | > i ※.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..ﾄ、
／ : : : : i ※ i:.「/ i 〈/./ト| |/ i i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
く: : : : : : :,i i「/ ヾ /i |>|/ .i ※ .i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..l
ノ: : : : :__ノi ※.iく / / lく| / i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`
i´.`ヾ : : ＼ i i ＼ i l |く| , -'/ ※ i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
ヾ: : ヽ: : : : :i ※ i |ヾ|+-+-|＿, -" /-‐ i''i"~:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
ヽ: : : : : :r'´ ＿_,,..i く|:.:.|＞＜|:.:.∨∨:.:.:.:.:./ .|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
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| 翠星石も草葉の陰で喜んでいてくれるだろう。
| 大丈夫大丈夫、貸してくれた『螺旋王』も死んでるし！
|
| なお、蒼星石が天岩戸の楔をかっぱらったのはつい一週間前。
| 『やる夫』と対決する前に用意していたのである。
|
| それを、惜しげもなく使い潰した。
| 光が収まると、地下空間の様相は一変していた。
|
| 臓硯の姿はなく、焼け焦げた雁夜はのたうち回り、桜はうずくまってダンゴムシのポーズ。
| 赤黒く、うっすら発光していた壁や地面は全てカビっぽい洞窟の、ごく普通のそれに変化していた。
|
| しかし、桜が這い出てきた奥の窪み。
| そこからの赤光は衰えつつも未だ絶えず。
|
| そこに何があるのか。
| 直接確認していなくともこの場の誰もが理解していた。
|
| うごめく泥沼、蟲のプール。
| あるいは、それこそが間桐臓硯の本体であると。
|
|「ターニャ！」
|
| 慎二が『万魔』に魔力を供給、先程の光で焼け爛れた肉体を補修。
| そのまま雁夜の止めに動く。
|
| そして。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿,.イ/
/::::ヽ|////ｨ:::::::≠:...、 さあ……刮目なさい。
＿/:::::::::::|x≦:::::::::::/{:::::::::≧:.､ー=ァ 真打ちの登場よ！！
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イ//{:::::::::::::::|:::::::::|::|ﾄ､{. ヾ. ｀}::::::::V}.､
￣￣i|:::::::::::::::|::;ﾍ:::l::|芯ﾃ、 -八:/:::}|::::
i|:::::::::::::::|〈 .从ヾ. ¨ 乞//:::::八::::::::::､::≧ヽ
八::::::::::八:≧､ _ ' /ｲ::::/:::〃:::::::::》:::::::::}ヽ≧=-:.. ／⌒`ー―＝ ､＿
／:::::ヽ::::::::::::ヽ::} ＼ ¨ .ｲ:）ゝ（_::（＼＿ﾉ{_ﾉ}:::ﾉ .)::::::,.ィー} ｒー'⌒￣
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| 遠坂の魔女。天才の名をほしいがままにする魔術の申し子。
| 彼女の周囲を、二つの国宝級の宝石が衛星のように回る。
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| 一つはブラックダイヤモンド。
| 象徴するのは『永遠の強さ』。モース硬度10に偽りなし。
|
| 不屈、不抜こそがダイヤモンド。最強にして金剛力。
| 中でもブラックダイヤモンドは高い魔除けの性能を誇る。
|
| 凛は、その四桁カラットのブラックダイヤモンドを『イシュタル』と呼んだ。
|
| 一つは琥珀。
| 古くは人魚の涙などとも呼ばれた結晶体。
|
| 厳密には宝石どころか石ですらない。太古の樹液が年月を経て硬化したもの。
| 水に浮き、静電気を帯びる性質から船乗りに愛され、幸運を引き寄せるとして珍重された。
|
| そして現代では、太古の種子や昆虫をそのままの形で保存するDNAの揺り籠として知られている。
| 何千何万の朝と昼を越えて、記憶を封じる贈り物。
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| 太古の花の種子が封じられた琥珀を、凛は『エレシュキガル』と呼んだ。
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乂__ノ””ヽ:.:.､__:.:.:.:.／:.:.:.:.:.／i{ノ!:./!/从:! ﾉ从Ⅳ:.:!
＼ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.ノ弋ﾄ 代ﾘヾ{ <ツﾉ从ﾘ
〕iト ----＞<zzzﾀ ∧ 〉 /}~!
ﾄ, ／ ､ ､ } ＼ ､ ァ ィ(! !ﾉ （イシュタルのイメージ）
∧∨ｸ ∧ / } ヽ}〉〉/ 〕!≦ ／~~〕ｈ､
〈ｲ ヽ)h､ノ./ , ' ノ 〈/{=ミヽ〉 _'＼/////ﾐh､
ィ(_,.｡ *''ﾏ〈 .／}! ／}／フ__r-ゝイノYⅥ ｀〜､、//)h､__
// __ノｙ 〉〉 .,ｲ /乂, 'ΞΞ'´イ ／}ﾉ〉ﾉ∨}リ ~''＜///} 〕iト
､ヽ≦＞ ~ｲ/, ' {_/／ !､￢==≦＿／≦=-イ´ ゝ=--≧ｲ
ヽ｡s≦ゝ'´.´ ／ / _{ノ''＜__{＼}!／乂 ヽ
ィi〔＞''~ , ' , ' , {／／ ノゝ='､‐-ミ )h､ }
Υ/ ﾉｲ ィi〔 , ィ(≦／‐-､'´ ｀`〜､、∨
}/ ア´ ィ( {/ //イ''＜￣]!／/ ｀ヽ
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ノ { { ／i i{ Ⅵ!､ {
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| 二柱とも、古代シュメールの女神の名である。
| 命名基準は『なんとなく』。であるが、魔術においてひらめきは馬鹿にできない。そこには縁があるのだ。
|
| 天空と美の化身、金星の女神、神聖娼婦の元締め、星界を征くもの『イシュタル』。
| 主神の娘で愛と美の関係でトラブルメーカーのトリックスター。
|
| 対して、冥界の女神『エレシュキガル』。こちらの知名度は正直低い。
|
| しかし、凛は気にしなかった。なんとなくピタリと当てはまった。
| 色のイメージは逆に見えるが、良いのだ。
|
| 万色を含む黒こそ『イシュタル』で、失われた過去を抱きしめる黄金こそ『エレシュキガル』に相応しい。
|
| …………そう。
|
| 『エレシュキガル』がきらめく、波紋のように黄金の光が広がる。
| 広がった先から、光届かぬ暗い地面に清楚で飾り気のない花が咲いた。
|
| 間桐の穴蔵を、花畑が埋め尽くす。
| ミントも真っ青の超絶的な繁殖力、間桐の結界を上書きする封印の花。
|
| 調整に調整を重ねて作られたこの花は、『万魔』ことターニャ以外の悪魔には障害となる。
| もはや、この空間の支配権は遠坂凛が握っていた。
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Ⅶ/｢￣ ＼ ハ ￣二ﾆ==-- _,, -=ﾆ⌒ ＼ ＼
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八 ＼_jﾉ｝ ィ偐孤 }ﾊ〈⌒ ,ﾊ}＼ ≫=- ,,＿__ ＼ }――--
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⌒ｱ／＼ ﾊ f菰 〃 /Ｘ ,.≫ -=⌒ﾆ|＿__ ＼
〃 〕Iト ゞく ,ｲ(／_ -=ﾆ⌒ﾆ=ﾆ=ﾆ| ￣二ﾆ=-- ＼
｛ 八 - ′ ／{／／-ﾆ-ﾆ=ﾆ=ﾆ=ﾆ=|
＼ )ﾄ ﾍ / /／⌒マﾆ-ﾆ-ﾆ=ﾆ=| ＼
≫┐=-- ｀抓// }/ /'’-ﾆ-ﾆ-＼ﾆ-ﾆ-ﾆ=| ﾊ
＼ 八_/⌒V-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-∨ﾆ-ﾆ-.| ――--=ﾆ二,,,＿＿＿ | .ﾊ
＼＿＿_l/八(]_/-ﾆ-ﾆ／⌒＼-∨ﾆ-ニ| | / ＼
_／〈／∨i-＼-〈(-ﾆ-ﾆ-j√Vﾆ-ﾆ| ―-- ,,_＿ |/
／ア＾^ﾒ<_ | |ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ〃ニL,__以 ＼ ￣￣＼ 〈￣￣￣＼
/／::::::::::::)八 | |-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ=んﾆ=ﾆ〔 ＼ ＼ ＼ ｀､ ＼
ｘ仏:::::::::::::::::}/∧ ∨ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ=ﾆ∧_＼ ＼ ｀､ ＼ ｀
/´:/ }込:::::::::::〃/::八 ﾏ(＿/-ﾆ-ﾆ-ﾆ-〈{/ﾆ｝_| }/＼ ﾊ} ＼ |
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Ⅴﾟ∥ﾒxメく:::::::::::)√}ﾊ| 〔-ﾆ-ﾆ-／-ﾆ-ﾆ-/=ﾆi|
八:|i/⌒L/ﾒメxく::::: Vﾒ┌―=≪ﾆ-ﾆ-ニ〈(ﾆ=八
/∧¶|:::::::::::::::⌒L/ﾒメx 八ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ＼/ﾆ=＼ （エレシュキガルのイメージ）
|/∧¶:::::::::::::::::::::::::⌒L/ﾍ 〔ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-.|=ﾆ=ﾆ-._
////}ﾘ:::::::::::::::::::::::::::＼{_ i 〔ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-|=ﾆ=ﾆ-∧
////Ⅵ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉 Ⅵﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ-ﾆ/⌒＼ﾆ-ﾆ＼__
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| そして燃え上がる黒い炎。
| 万色を含むプリズムの輝き、万能相性メギドラオンの如く。
|
| 蟲のプールの真上に浮かんだ黒い炎が、ミラーボールのように煌めきながら落下。
| 決して通常の方法では消えぬ聖火さながら、蟲のプールに燃え広がる。
|
|「げぎゃああああぁぁぁッッッ！！？」
|
| 耳を覆わんばかりの悲鳴が轟く。
| まさか本体であり貯蔵庫であり、そして無敵の魔力吸収能力を持つはずの蟲プールが燃やされるとは。
|
| 間桐臓硯は凛と『弓兵』を警戒していた。
| とくに遠坂凛だ。奴は何をしてくるのか分からない。
|
| 故に、細心の注意を払い、護衛の『万魔』を引き付けてから、奇襲によって排除するつもりだった。
| 慎二が居なければ、それは成功していた。
|
| 臓硯の計算違いは孫を甘く見過ぎたことに尽きる。
| 慎二にあと、ほんの少しでも注意を向けていたならばあるいは……。
|
| 燃え盛る本体。悲鳴を上げながら、臓硯は己の不運と天を呪った。
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′: : : : : : : : : : : : : : : : : : :／ ＿ 〈ー ､
|: : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : :／{ヽミ､二＿＿ ノ ノ´￣￣ミ 、＿
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|: : : : : : : : : : : : :j!: : : i! 彡ﾍ ＼ヽ ＿＿彡ヘ ＼ ⌒ヽ＿ノ
i: : : : i: : {: : : : j: ﾊ: : : ｊ｢ { ＼ _〉: : : : ＼ ＼ Vァ
ﾘ: : : :ﾄ: : ＼: : ﾊL川:ｽ､ ン＼／´ : : : : : : :＼ ｀ｰァ
八ﾊ: :{ ヾi＼ヘ{ }ﾍ鬱八 /＼: : : : : : ＞ ´￣￣￣￣ヽ⌒ うぅー。
ﾏヽﾍ | i〉 ´￣¨ﾞ / ﾊ;:;:／ }
ヽ: :＼ﾄ ／ / ／ ＿＿＿＿＿ ｀ヽ うううううー。
}: : : :}＼￣ﾟ . ィ ミ､V´ ィ´ ミ､{ ／ ヽ/＼
|: : : :｢= ≧彡≠｢￣Y ィ´彡ー ＝ミy{ ／∧ ／: : : ＼
|: : : : !＿ﾍ＿_イ ∨＜」＿二ニニ－ミ＜ ｣ V: : : : : : : : ＼
|: : : : [＿ ﾐ} ｨ{ ／￣ ヘ} V: : : : : : : ／￣｀ヽ
|: : : ﾊ{＼_]!＿／ｊ ＿＿＿＿＿ } V: : : : ／ }
人 : ｛ ＼＿＿／{／￣ﾍ 〈⌒ }＞ ∧
ヘ{ }ト彡{ ヾミ＿ﾍ ＿} ＞ ノ: : :
[ニ}ー -V ｀ ーﾍ ィ { ￣｢ー7 ｡＜: : : : :
ヽ_{レイノ V´ ハ { ト､ ｡ ＜ : : : : : : : :
ヾトﾐ{ ／ ヽ V＿＿ス´: : : : : : : : : : : : : : :
ﾊ ﾄ､ V 人: : : : : : : : : : : : : :
ノ ＼ X V´ソ／｀ーミ ＿＿: : : : : :
У￣｀ミ / ヽ V （ ￣￣￣ヽ
／ ＼人 Vヾーｪ--＿ ﾉ
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| 黒焦げの桜、身震いして顔を上げる。
| その目には虚無。怒りも悲しみもない。
|
| しかし、明確な殺意だけは読み取れた。
| 苦痛に対して対価を払わせようという強い意志。
|
|「下がれ慎二！ 本気が来るぞ！」
|
| 『弓兵』の警告。彼は過去に一度、桜に殺されかけていた。
| 正面切っての戦いではない、奇襲だった。
|
| だが、大勢を立て直す暇もなく惨敗した。逃げられたのは奇跡だった。
| そしてその時の桜は。
|
| ヒトのカタチをしていなかった。
|
|
| …………ここまでは、前哨戦だ。
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☆ 次回予告！
デマゴーグ。
それは流言飛語を操る大衆扇動者。
ありもしない不安を煽り。
居もしない敵を見つける。
見えないものに形を与え。
聞こえぬ何かに声を与える。
そうして作った陰謀論で。
大衆の弱さに付け込む。
おお、扇動者よ。グレイト・ディクテーターよ。
そうして貴様は、罪も無き大衆に与えるのか。
戦争という、餌を。
次回、最終幕八十三話『デマゴーグ』
果てに見るのは破滅か死か。
新スレです。埋まったらこっちに行ってね。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1645581805/
シンジがんばった
なかなか強力な殺虫剤でしたね（ｽｯﾄﾎﾞｹ