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雑談・感想スレ
237
:
今日にさよなら、明日におはよう。
◆1GiZbsHFZI
:2013/03/26(火) 16:37:47
「まったくだよ。でもチャットが行きたいと聞かなくてな……。
一人で行けと言ったんだが、なんでもジイニでは12才以下は同伴が要るらしいんだ。
で、どうせ遊ぶならリッド達も誘うとメルディとチャットが言い出した」
「でもちゃんと公平にするよう多数決にしたじゃないですか」
「多数決!」海賊の茶々に学士が裏返った声を張り上げた。「多数決だって!?」
何が公平なもんかと眉間に皺を寄せると、学士は続けた。
「あれを多数決と言おうもんなら戦争が起きるね。いいかチャット、ああいう結果が分かりきってるのは“数の暴力”と言うんだ。
当然の様に僕が負ける。まったくもって始末が悪い茶番だ」
肩を竦ませ学士が悪態を吐く横で、けれども海賊はにかりと笑った。
「いいじゃないですか。キールさんもなんだかんだで皆さんと会いたがってましたよね?」
「……ほぉ〜?」
「なぁにキール、私達にそんなに会いたかったの?」
「そうだよぅ。キールが素直じゃないな!」
「ば、ばばっ、馬鹿を言えっ。だだ誰がお前らなんかにああああ会いたいもんかっ」
嫌らしい笑みを浮かべた青年達を尻目に、学士は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ、咳払いを一つ。
「ごほん。ま、まぁそれは置いといてだ。
ティンシアからジイニへ、サイグローグという人物からあるアーケードゲームが輸出されたそうなんだ。それが目当てだよ。
世界で初だから見たいそうだ。サーバーという新技術を使った珍しいシステムらしくてな、プログラムが気になるんだと」
へぇ、と少女が呟くと、隣の海賊が銀色のフォークをくるくると回しながら口を開いた。
「そのアーケードゲームの開発元はアークシステムワークスと言うのですが、ぱっと出の企業で誰も知らないっていうのも気になるんです。
信じられますか? ティンシアから輸出されたくせに、街の裏の顔でもあるフォッグさんやアイラさんも知らなかったんですよ!?
一体誰が資金援助して、誰があそこまで高度なものを完成させたのか……下手をすれば軍事用にも使えるとの噂ですし」
ぐんじよう、と少女は繰り返す。それが本当ならぞっとしない話だ。
「どうでもいいけどよ、あぁけぇど……なんだって?」
青年が皿の上のオムレツをかっさらいながら尋ねる。学士はやれやれとかぶりを振った。
「ふん。“アーケードゲーム”だ。世界を旅した癖にそんな事も知らないのか?
この程度セレスティアでは常識だぞ。雷晶霊に謝れ」
「お前はいちいち嫌味な奴だなぁ……ゲームくらい知ってら。ウィスみたいなもんだろ?」
238
:
今日にさよなら、明日におはよう。
◆1GiZbsHFZI
:2013/03/26(火) 16:42:14
覚束ない動きで肉を切り分けながら青年が言ったが、学士は呆れた表情で黙り込む。
確かにウィスはゲームだが、カードゲームであってアーケードゲームではない。
「……。聞いたかメルディ。こいつジイニのカジノに行った事があるくせに、ゲームのなんたるかを何も理解してないぞ」
「メルディもダンスしか覚えてないよ?」
「俺はインドアな遊びは苦手なんだよ」
青年がナイフを片手に肩を竦ませた。学士はふぅと息を吐いて箸を置くと、ナプキンで丁寧に口を拭き水を飲んだ。
その動作が何を意味するのか青年は理解すると、逃げるように隣の少女へ視線を配る。
「おいおい、こりゃぁまた始まるぜファラ」
「知らない。リッドが悪いんだもん」
「勘弁してくれよ……」
しかし少女はどこ吹く風。すまし顏でソディを自分の料理へ振りかける。
「いいかリッド。アーケードゲームというのはだな、雷晶霊の力を地晶霊を利用して制作された基盤に流す事で起きる反応を利用した、業務用ゲーム機器の事だ。
そもそもここで言う“ゲーム機器”という単語が何かというのを一から説明すると、セレスティアの文化と歴史に言及しなければならなくなる」
「いや、もういいからメシ食おうぜ……」
「いいや駄目だ。そう言って逃げるのはお前の十八番だからな。空腹など後で満たせばいいだろう?
……そうだな、先ずはお前にも理解できる様にティンシアを中心にして起きた産業革命と、ジイニがその特異な文化を守る為に独自に築いた交易ルートについて話そう。
そもそも何故ティンシアが職人の街と呼ばれ栄えているかだが、これは意外にも歴史は新しく、自由軍シルエシカ発足の際に多額のーーー……」
「ワイール! ゲームゲーム! みんなでやったらきっと楽しい!」
「きっとそうでしょうね!」
「気分乗らねぇなぁ……」
「大丈夫! イケるイケる!」
胸元のペットを抱きながら晶霊技師の少女がハミングすると、それに合わせて胸元で小動物、クィッキーも踊り出す。
青い毛並みが震えると海賊の少女は泣き出して、青年はそれを好機と海賊の皿からオムレツを盗んだ。
話を聞け、と怒る学士に行儀の悪い青年を怒る少女。夜のラシュアンに響く歌い声と泣き声と、罵声と食器の音。
宴はいつまでも続いて、夢のような時間が流れてゆく。窓の外には満点の星、台所からはシチューの匂い。
遠く森から梟が鳴いた。少し冷たい風が吹いて、暖炉の炎はぱちりと揺れる。
桃色のリボンが揺れて、遠く遠く、笑い声がこだまする。
それでいい。それが青年の守りたかった景色なのだから。
239
:
今日にさよなら、明日におはよう。
◆1GiZbsHFZI
:2013/03/26(火) 16:46:25
何処にだって行けそうだった。何だって出来そうだった。そこには全てがあった。
18歳の俺達には世界は広すぎて、けれど世界の何もかもを知ってしまった。
ーーーそう思っていた。
そしてそれは作られたものなのだと彼女は言った。でもそれが真実だろうがそうでなかろうが、何も変わらない。
目の前の笑顔は、空は、風は、光は……嘘じゃないから。
俺達は此処で生きて、生きて、生き続ける。明日は誰にも分からない。未来は誰にも見えやしない。だから、生きてゆく。
あの地平線の向こうには、何がある? 海の底は? 宇宙の向こうは? 答えはきっと、セイファートにだって分からない。
俺達は世界を知った気になっていただけで、まだ何も知らないちっぽけな人だった。
地に足を立て、息を吸ってーーーーーーーーー俺達はこの世界を歩いてゆく。
【リッド・ハーシェル 生還】
240
:
今日にさよなら、明日におはよう。
◆1GiZbsHFZI
:2013/03/26(火) 16:48:33
やたら長くて真面目な内容になってしまいましたが、これにて投下終了です。
241
:
安価でゲームする名無しさん
:2013/03/26(火) 17:51:40
投下乙です。
242
:
安価でゲームする名無しさん
:2013/03/26(火) 22:01:42
うおおおおお、投下乙!
エターニア世界が作られたものだとわかっても、リッドは前を向く。世界が好きだから。
そしてメルディがニッコリしてるぅー! なんかアーケードゲームも登場してるし!
少なからず影響をもたらしてるみたいで、なんともすげえわ
何がすごいってキールの理論がそれっぽいのがすげえwwww
243
:
安価でゲームする名無しさん
:2013/03/27(水) 11:12:36
おおおお、投下乙です!
キールの話なげえよwww
サイグロさん、何やってんの!
モーメントどころかアーケードゲーム自体が歴史に存在刻まれてる―!?
けど何よりも、リッドがいいなー。
地の文とか一人称のとことかすごくリッドらしいし
リボンとかメルディのとこに触れてもらえてて嬉しかった
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