したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

雑談・SS投下スレッド

100名無しさん:2013/06/28(金) 23:44:58 ID:nSQCAZbMO
>>99
横からすまんけど読んだら興奮した

ありがとう、そしてありがとう

101夏菜子のなつ:2013/07/12(金) 00:58:21 ID:uikyZNPI0
お久しぶりです、「夏菜子のなつ」作者です。

例によって大規模規制に引っかかってしまって本スレに投下できないのですが
一年前に始めた夏祭りの話はなんとしても夏休み前に完結させたいので、
週末の三連休+αを利用して、ここにクライマックスの部分を落とそうかと思ってます。


それで、誰か篤志の方がいらっしゃいましたら、週末前ぐらいにそのことを本スレに
周知して頂けないでしょうか?

勝手なお願いですみませんが、どなたかよろしくお願いします。

102名無しさん:2013/07/12(金) 14:23:46 ID:IUKEyVqo0
規制くらってる人多いからなぁ
なかなか難しいかもね

103名無しさん:2013/07/13(土) 21:38:45 ID:OhCNGARg0
>>101
周知というほどのものじゃないけど、レスは転載してきたよ

104夏菜子のなつ:2013/07/13(土) 23:34:23 ID:/JBojVxg0
>>103
ありがとうございます。

早朝くらいになるかと思いますが、投下始められると思います。

ただ、間が悪くて、規制が「解除判断待ち」になったので、明日にも
解除されるかもしれません。そしたらすみませんでした。

105夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:26:46 ID:Qrzpsf8.0
待ち合わせの駐車場につくと、守谷は菜津子の乗るワンボックスに乗り込んで
「まあ、まだ時間あるから」

などといって、暗闇に紛れ込んで、菜津子の身体にそっと触れた。
「ちょっと、やめてよ」
最初は抵抗した菜津子だったが、「まだ時間がある」という言葉を真に受けたのと、
いろいろ骨を折ってくれた守谷になにか報いなければならないという言い訳が
頭のなかに浮かんだ。

「もう、しょうがない人ね……」
2人は、ワンボックスの後部座席で抱き合って、求め合った。

守谷は、菜津子を焦らした。これが2年ぶりの逢瀬であったが、40を超えてなお、
菜津子の美貌に衰えはなかった。

ノースリーブのクリーム色のサマーセーターは、Dカップの胸の形の良さを強調し、
夏菜子よりも凹凸のはっきりした曲線を描いていた。
きゅっ、とくびれた腰にはレザーの細いベルトがまかれていて、
黒を基調にした落ち着いた花がらのスカートはタイトにヒップのラインをなぞり、
ひざ上10センチのところから、すらりとしていてそれでいて肉付きの良い
綺麗な脚が伸びていた。
夏菜子のもつような若々しさ、瑞々しさこそ失われていたが、
カラダのパーツ一つ一つがかえって夏菜子には無い色香を放っていた。
菜津子は、2回抱いた夏菜子にやはりよく似ていた。

潤んだ瞳も、小さな鼻も、化粧で整えられたあごのなめらかな曲線も、
薄いようでいて、キスをすれば驚くほど感触の良い唇も、
改めて母と娘はそっくりだと思った。

十分に菜津子の体を撫で回し、焦らしたところで、守谷は、「もう時間だな」とわざとらしく言った。
そして、発情した菜津子に、今日の報酬に身体を要求し、菜津子に即答で承諾させると、

「それじゃ、いくぞ」車を出させた。案の定、わずかに渋滞につかまり、守谷の居酒屋に車を止めた時には、都合良く23時をまわるところであった。


遅くなったので、という理由で直接、守谷と菜津子は宴の会場である桐和院に向かい、
これもまたわざとらしく、「もう結構集まっているな」と仏堂の中を覗きこむと
「俺が話をつけてくるから、廊下で待っていろ」
と、菜津子を置いて仏堂へ入った。

106夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:30:18 ID:Qrzpsf8.0
あとのことは、先に描いたとおりである。
守谷の罠に嵌りこみ、駐車場で身体を許し、女の欲望に火をつけられてしまった菜津子が、
騙されたことをはっきりと知ったのは、仏堂で宴会が始まり、娘のものとは気づかないまでも、
喘ぎ声が廊下にまで響いてきた頃であった。様子がおかしいことに気づいて仏堂の中に入ると、
そこにはあられもない姿で二人の男に犯されている愛娘・夏菜子がいた。
しかも娘を後ろから犯しているのは、自分の協力者であるはずの、守谷であった。

ただ、立ち尽くして、伏し目がちに横目で娘が陵辱されているのを見ていることしか出来なかった。

「ママ、どうして、ここに?」
守谷が、菜津子のことを、仏堂にいる参加者全員に紹介すると、
夏菜子は観念したように起き上がって、母に尋ねた。

「……」
菜津子は、答える言葉がなかった。ただ立ち尽くしていただけの菜津子に、夏菜子を救いに来た、
などと言えるはずもなかった。困惑して、無言のままである。

「菜津子、こっちにくるんだ」
5つも年上で、学年でも4つ上の菜津子を、守谷は呼び捨てにした。二人の関係が容易に想像できる有様である。

「な、何?まさか、ここで・・・?」
守谷の視線は、菜津子に「脱げ」と命じている。そのことがよく分かっている菜津子であったが、
状況が状況であるだけに強い口調で拒否した。
「いやよ、あたしは・・・帰ります」
「待て!」
逃げ出そうとする菜津子を一喝して引き止めると、守谷は言葉で陵辱を始めた。

「見ただろう。救い出すつもりだったのかなにか知らないが、すっかり楽しんでいる夏菜子の姿を」
「わ、わかったわよ。だからもう邪魔しない。おじゃましました」
「そういうなよ。おまえだって、昔のように楽しめばいいだろう?
女として最後にここで一花咲かせていけばいいじゃないか」

守谷を除けば、この場にいる若者たちと菜津子は、親と子ほど年齢が離れている。
そして実の娘もいる。その中で、昔のように楽しむことなど、菜津子には考えられないことだった。
だが、実のところ、長いことオトコから離れていた、熟れきったオンナのカラダは、
ついさっき守谷によって覚醒させられ、頭のてっぺんから足の先まで、
とろけるように火照って仕方がない。加えて、動揺しきった心情のまま、
このままここを出ても向かう宛てがなかった。
7時間あまり運転しつづけた後の菜津子である。疲れもあっただろう。

107夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:33:10 ID:Qrzpsf8.0
「な、なにをいうの・・・」
本当に土壇場に追い詰められているのは、こんないけない遊びを、
厳しい母親に見つかってしまった夏菜子ではない。のこのことこんなところにまでやってきてしまった、
菜津子の方であった。

「なにも、恥ずかしがることはないだろう。こうなることは予想できたんじゃないか?
それとも、この夏菜子を連れて帰るか?」

「ちょっと、守谷!」
あまりのことに友梨が守谷の言葉を止める。これはやり過ぎだ。
この町内において、夏祭り中の「宴」、なかでも今日のような「罰当たり」とわざわざ銘打たれた
行事においては、大概の事は大目に見られよう。しかし、いくらもとはこの町の女であって、
「宴」に参加していたとはいえ、今は人妻で、しかもこの場に娘がいる大人の女性に服を脱ぎ、
若者たちと絡むように要求するなど、ありえないことだと思った。
大体、結婚して一度「宴」から足を洗った者は、二度と参加させず、
話題にもしないのが「宴」の暗黙のルールではないか。友梨はそう思って止めに入った。


「黙ってろ!」

不安げな眼で、半分脱げた下着を直して、菜津子に駆け寄ろうとした友梨を、守谷が一喝した。

「さあ菜津子、自分の思った通り行動しろよ。こんなトコロまで、何しにきたんだ?」
いつもより一段低い、ドスの利いた声で守谷が菜津子に問いかける。
菜津子は身を固くして立ち尽くすだけで、何も言わず、動こうともしない。
ただ、少し顔が赤らんでいうのが、素っ裸の夏菜子にもわかった。

「おい、何しにきたんだ!」
守谷が怒鳴るように質問を重ねた。仏堂に大きく響いた声で緊張が走る。
「夏菜子を……連れて帰るために……」

菜津子は、守谷からも夏菜子からも目をそらしたまま、小さな声で答えた。
「もう一つ、あるだろ?」
守谷は菜津子を容赦しない。
「もう一つ……って?」
夏菜子は直感的に反応した。母・菜津子がこの場にいる経緯がぴん、ときたのである。

その想像は、かなり正確であった。少なくとも、この場に現れることの代償として、
守谷にカラダを許すことを約束した、ということが思い浮かび、確信に変わっていった。
素っ裸で二人の男と激しく求め合った自分の姿を見ても、母たる菜津子が身動きひとつ取れないことが、
夏菜子のカンの正しさをはっきりと証明していた。

108夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:37:29 ID:Qrzpsf8.0
「夏菜子は、どうする?お母さんはああ言っているが、帰るか?」
「か、帰りません」
夏菜子の方は強い眼差しで即答した。

守谷はにんまりと笑って、
「だ、そうだ。せっかく連れ戻しに来ても本人がそう言うなら、俺にはどうにもならないな。
それじゃ……」
そこまで言うと守谷は裸のまま歩いて、菜津子に近づく。
さっきまで夏菜子の中で暴れまわっていた肉棒は乾くこともなくまだ元気なままである。
菜津子は、伏せた目線を今度は真下に向けた。

「約束だ。菜津子、わかってるよな?」

その場の誰もが息を呑んだ。とんでもないことが起きているのである。
他人事としてはおもしろいし、興奮を呼ぶ展開である。

「や、約束って、なによ……」
この期に及んで菜津子は目線を逸らしてしらばっくれようとする。

「夏菜子を連れ戻すことに協力したら……」
「やめて!だ、だからってここでなんて……」
菜津子はどんどん追い込まれてゆく。
守谷は、裸の若い男女20人の前で恥ずかしそうに目を伏せる菜津子を許さなかった。

「さあ、脱げよ」
「……」
下を向いたまま、なんて、卑怯な男だと菜津子はいまさらながら自分の軽率さを悔やんだ。
「自分で脱ぐか?それともここの若者たちに脱がされるか?選べ」

「そ、そんな……」
夏菜子はその光景を見ながら怒りに震えていた。怒りの対象は守谷ではない。母・菜津子だった。
いつから、なんの目的でこの北の街にいるのかは知らないが、
もはや守谷との密会目的でこの場所に迷い込んだことは間違いないように思われた。
過去のことであればまだ許す気持ちにもなれよう。しかし、現在進行形で母が目の前の男、
しかも自分が処女を捧げた相手と不倫を続けているなど、とても許せることではない。
自分がこんな場所で乱交に参加していることはそれ自体、自分を丹精込めて育てた母・菜津子に対しては
裏切りであり、顔を合わせることができないようなことである。
しかし、その後ろめたさを補ってはるかに余るほど、
母が、この場にいてしかも守谷に抱かれる「約束」を交わしていたという展開は許せないものであった。

「ほぉら、ぐずぐずするな。いつものように自分から積極的に求めてみろよ」
守谷は、今日一日、すべてが思惑通りに進んで、まったく自分に酔っていた。
それは、菜津子に憧れた少年時代から、都合のいい愛人に過ぎなかった若き日のこと、
その後菜津子が旦那について東京に引っ越したことで捨てたられたという事実、
報われたようで報われなかったずっと抱いていた恋心、
そしてその愛娘・夏菜子を思うままにした男の、飽きることのない欲望の行き着いた先である。

109夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:43:45 ID:Qrzpsf8.0
ほんの4日前に、強引にこの「宴」に引き込んで処女を悦んで自分に捧げた夏菜子と、
足掛け10年も自分との情事を重ねた菜津子は、ふたりとも最上級の美女であり、
夏菜子をその手に抱いた時から、どうしても菜津子のことが頭から消えなかった。
忘れかけていた恋心が蘇ってきた。菜津子と、娘の夏菜子を並んで犯してみたいと、
初めて思ったのは、つい昨日のことである。
そこへ、飛んで火に入る夏の虫のごとく菜津子が連絡をしてきた。

それは、柴崎家の女を3代に続けて陵辱し続けたこの町の男たちの欲望の行き着いた先でもあった。
年に一度、夏祭りの間だけ肌を合わせることは出来ても、所詮は手の届かぬ高嶺の花である。
また、守谷ももう40を前にしていくらなんでもこんな事をいつまでも続けるわけにもいかない。
ならば、せめて最後に、母と娘を……という暴挙がいったん思い浮かぶともう止らなかった。
どういうわけかすべてが上手く回っていた。
もう一歩である。あとから守谷自身後悔するかもしれないが、あとは突っ走るだけだった。

「だめ……こんなところで……こまります……」
「そうか、それじゃ俺は夏菜子と続けるが、いいか?」
「えっ?」
守谷の言葉は菜津子の羞恥心と、女の欲望と、
かすかに残る「夏菜子を守る」という名分を見事なところで妥協させる。
まず菜津子の熟れきったカラダを火照らせてから、この仏堂に用意周到に連れ込み、
若いころから菜津子が持っていた淫らな心を刺激し、最後に「娘の身代わり」という名分を与える。

それが罠とわかっていても、娘の前で醜態を晒すことになっても、そこは、
女としての菜津子の淫猥さをよく知り尽くした守谷が一枚も二枚も上手であった。

「……」
守谷は、下をむいて、左手で右の二の腕を掴んでそっぽを向いていた菜津子の顎に手をやって
くいっ、と回した。菜津子は抵抗もせずに、潤んだひとみと赤くなった顔で守谷と見つめ合った。

「分かりました……そのかわり、もう、夏菜子には手を出さないで……」
自分が服を脱いで、この場で守谷に抱かれることが、
いまさら娘・夏菜子を救うことになるということを本気で信じたわけではない。
ただ、言い訳を作って、若き日の「宴」の狂乱を再び味わいたくて、
何より自分よりも25歳若い娘・菜津子に女として負けたくなかった。
要するに菜津子もまた熱に浮かされていたのである。

「ああ、約束だからな」
守谷ははっきりと口にした。何より、夏菜子にとってショックな言葉であった。

「ママ……」
夏菜子は目の前で起きるあまりの出来事に、目を丸くするばかりであった。
「それじゃ、自分で脱げるな」

110夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:46:23 ID:Qrzpsf8.0
「……」
菜津子はこくりと頷いた。
母・菜津子が恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうにスカートのチャックを下ろす瞬間を
夏菜子は忘れることが出来ないだろう。

菜津子の淫乱さは、夏菜子の想像以上のものであった。

「お前ら、せいぜい20代の女としかヤッたことがないだろう。でも、女として成熟しきった熟女も、
いいもんだぞ。若い女にはない味わいがある。まずは誰から味わってみる?」
守谷が仏堂にいる男たちに声をかけた。

「宴」の参加者は10代後半から20代前半が主で、
守谷と友梨を除けば男も女も15歳から25歳に収まる若者ばかりであった。
しかも、かつては町内の若者たちを、夏祭りという機会を借りて、
「大人にする」ことが目的だった「宴」は、時代の流れとともに変質して、
今は町内会でのいわば「セックス・エリート」の集いになっていた。

町内の男子である程度の外見を持ち、秘密を守れると判断された男は中学3年生の夏祭りで「宴」に誘われる。今年の佑都もそうであるが、それより前の世代の雄一や北斗、和宏も同じで、
それをきっかけに経験豊かな町内の「お姉さん」の手で彼らは童貞を失い、
男としての経験を重ねていった。

女の子は高校3年生の年に初めて誘われる。もちろんある程度かわいい女の子でなければ呼ばれないので、
その歳になれば処女というわけではない子の割合も多い。
今年4人の女の子が初めて参加したが、処女としてこの「宴」に参加したのは、
今年の夏菜子で3年ぶりのことであった。

まだ17歳の和宏も、20歳の雄一や北斗も、女性経験はその歳にしてはかなり豊富であった。
そして、女の子たちも「宴」に参加したことでセックスに目覚める娘がかなり多く、
2年目、3年目、と続けて「宴」に参加するような女の子は、特に経験豊富であった。

そんな集まりに参加する男たちが、わざわざ好んで、40を超えたような女を抱くことはまずない。
少子化が進んだことで、同時にエリート化も進み、一人あたりの参加年数も自然と伸びてきた。
今年童貞を失った佑都はともかくとして、この場にいる男たちはかなりセックスに関しての経験は
豊富であったが、確かに菜津子のような美しい熟女を抱いた経験のある者は誰もいなかった。

「ちょっと、何いってんのよ!」
菜津子は声を張り上げた。そもそも守谷との間でかわされた「約束」は、守谷と寝ることである。

111夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:51:04 ID:Qrzpsf8.0
「不満か?」
「だって、話が違うじゃない!」

守谷はニヤリと笑った。

引っかかった……!守谷も菜津子も同じ事を思った。もちろん、菜津子の方は、「しまった」と思った。
「話が違う?どういうことだ?」

「……」
菜津子が、18歳になるまで育て上げた優秀で美しい娘・夏菜子の前で完全に陥落する瞬間が訪れる。

「どういうことだと聞いているんだ!」
「あなたと……約束ではあなたと寝るってことだったでしょ。
ここの男の子たちとなんて、話が違うじゃない……」

女としての恥じらいをなんとか最大限に見せようとしても、もう手遅れである。
あとは、守谷の用意したシナリオ、ほとんどお決まりのパターンに持ちこまれるだけだった。

「そうか、そうだったな。でも、難しいな。俺はこの宴の元締めとして、
今はここの女の子たちとセックスしないといけない。菜津子、お前だけ特別扱いするわけにはいかないんだ」

「そ、そんな……ここまで言わせて……」
夏菜子は、見たこともないほど顔を真赤にして信じられない言葉を次々に吐く母・菜津子の姿に、
怒りと対抗心をもやしていた。驚いたのは夏菜子だけではない。
静かにその動向を見守っていた真希や梨絵など、もともと夏菜子の同級生だった女の子たちにとって、
子どもの頃から誰よりも美しかった夏菜子の母・菜津子のとんでもない姿は信じられないものであったし、
その菜津子そっくりの、お嬢様そのものであった夏菜子の変貌ぶりも、改めて見ると衝撃的この上ない。

「そうよ!守谷さんはいま、あたしとしてたんだから、アンタはおとなしく見てなさいよ!」

夏菜子が怒鳴り立てた。母を「アンタ」呼ばわりしてことも、
そもそも母にこれほど反抗的な態度をとったのも、彼女にとって初めての事だった。
まだ裸にもならず、彼氏の和宏と抱き合っていただけの真希にとって、
いつの間にかとんでもない淫乱に成長してしまった夏菜子と、その夏菜子を産んだ菜津子の、
醜い争い、男の取り合いは滑稽でもあり、それでいて、どれだけ清楚でもどれだけ貞淑にみえても、
菜津子のカラダの奥底に潜んでいた夏菜子の淫らさがいよいよ抑えのきかない激しさで
吹き出した瞬間におもえた。

112夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:53:59 ID:Qrzpsf8.0
あの夏菜子が……信じたくはない。
だが、恥じらいを見せながらもどこかに男の子好きの本性を隠せなかった子どものころの夏菜子の姿が
脳裏に浮かぶ。幼い頃からの親友から見ても、その姿が、夏菜子の本来の姿であると思うことに、
不思議と違和感はなかった。

「夏菜子……?」
同じ言葉で、菜津子はカラダの真ん中、ココロの真ん中に大きな棘を刺されたように感じた。
母と娘、18年間かけて築きあげた関係が音を立てて崩れていく、
その強い流れに、菜津子は身を任せることしかできなかった。

「あとから来て何都合のいい事言ってんの?ってことなんだけど。もうおばさんなんだから帰りなさいよ」

「夏菜子、黙れ!」
今度は守谷が夏菜子を一喝した。

「で、でも……」

「なんだ、お前のその態度は?宴では菜津子はお前の大先輩だぞ。
言ったよな。お前の初めての相手だったこの俺の、初めての相手が、菜津子さんだったんだ。
その菜津子さんがこれほど今日の最初のあいてに俺を求めてるのに、それを断るのもどうかと思うんだが」

「……」
夏菜子は、返す言葉が見つからなかった。守谷がなにを言っているのかもわからなかったし、
自分が正しいのかどうかということについての確信もどういうわけか揺らいでいた。
そのくらい、守谷の一喝には力があった。

「いや、それはどうかな?夏菜ちゃんとはまだ途中じゃない。
もうちょっとちゃんとしてあげないとかわいそうじゃないの?」
そう言ったのは友梨だった。

友梨は、親子で修羅場に立たされた夏菜子と菜津子の親娘を、少し同情した眼で見ていた。
女の子たちは大体皆がそのような感情を持っていた。

「それじゃ、俺が御相手しますよ」
雄一が名乗りを上げた。

一方で男たちは、ほとんどが目の前の状況に興奮を隠せなかった。
「ちょ、ちょっと……」

雄一という男は、根っからのSであった。ベッドの上で女をネチネチといたぶることに関しては、
素人で右に出るものはほとんどいないだろう。Mっ気のある女を見定めて、
いやいやと言わせながら可愛がり、いたぶることに誰よりも長けていた。

菜津子にこの場で初めて手をつけるにはうってつけの相手であった。

113夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:57:06 ID:Qrzpsf8.0
「ちょ、ちょっと。雄一くん、やめな……あぁ……ん」
雄一は、さっきまで夏菜子にしゃぶらせていた逸物をそそり立たせたまま菜津子の目の前に立ち、
いきなり股間に手を這わせた。

「なんだ、もう湿ってるじゃないですか」
「い、いやぁ……それは……」

またしても、菜津子は墓穴を掘った。
さっき、駐車場で守谷に責め立てられた時に濡れたアソコからジュースが、
まだ下着とストッキングを湿らせていた。

「それは、なんだ?」
守谷がニヤニヤとしながら聞くと、
「あぁ……ん、なんでもない……あぁん」

菜津子は、ここにいたって反抗するのをやめた。ひとたび男の手が触れると、
女としての大切な何かが‐‐貞操観念や道徳が‐‐吹っ飛んでしまうのは、夏菜子と同じであった。

(な、なんなのよ、いったい……)
夏菜子は、さっきまで精一杯フェラしていた雄一が、股間のモノを大きくしたまま、
菜津子の股間に手を這わせたと思ったら、すぐに後ろに回って、
服の上から胸をまさぐり始めたその姿に、なんとも言えない想いを抱いた。
今まで自分が一生懸命フェラしていた相手を、「盗られた」と感じた。
自分の眼の前でとんでもない痴態を魅せつけてうれしそうに喘ぎ声を上げる母を許すことができない、
という想いと、自分のオトコを盗られたという悔しさ……そして何より、
今日この場での「罰当たり」とよばれる乱交では、度の女の子よりも目立って、
どの女の子よりもたくさんセックスしてやろうという、密かな目論見を、
眼の前で打ち砕かれていることが我慢ならなかった。
その場の皆の眼は、夏菜子ではなく、菜津子に注がれていたのである。

「夏菜ちゃん、こっちも相手してよ」
後ろから、裸の夏菜子をそっと抱きしめたのは、北斗であった。
「あ、あぁん……」

ぷっくりと膨れた乳房を優しく撫でられると、口元に笑みをたたえて、少し喘ぎ声を出した。
「あぁ……ひぃ」

雄一はもうその場に菜津子を押し倒し、左手でサマーセーターの下から手を忍ばせ、
ブラの間から乳首をいじり始めていた。そして、右手が、スカートの中に入っていった。

「んふ……」
北斗は夏菜子にキスをした。菜津子から目をそらさせようという、北斗なりの思いやりであった。
夏菜子もそれに乗った。

「夜は始まったばかりだ。ゆっくりやるか」
守谷は、菜津子も夏菜子も相手が埋まったのを見ると、友梨に手を出した。
「守谷……ちょっ……あぁん……」
「ほら、唯、お前もだ」
「はぁい……あぁん……」


女子の参加者が一人増えて、男たちは一人あたりの相手が増えた。
守谷は率先して菜津子・夏菜子親娘以外の同時に二人に手を出した。
それは、夏菜子から見ても、菜津子からみても、「裏切られた」と感じた瞬間だった。
総勢21人の「罰当たり」が再開された。

114夏菜子のなつ:2013/07/14(日) 09:58:21 ID:Qrzpsf8.0
とりあえずここまで。

2,3日中には完結させます。

115名無しさん:2013/07/14(日) 20:50:44 ID:QuRNXYfE0
乙乙!
ついに完結が来ると思うと楽しみだけど同時にさびしくもあるな…

116名無しさん:2013/07/15(月) 08:20:16 ID:Im.O6CK.0
乙でしたー
最初の投下からどれくらい経ったんだろう
なんか感慨深い

117名無しさん:2013/07/15(月) 14:56:50 ID:2UfLREfg0
> 母と娘、18年間かけて築きあげた関係が音を立てて崩れていく

なぜかこの一節に妙に興奮したわ

118名無しさん:2013/07/15(月) 23:24:20 ID:YrTGlIdg0
>>117
  `¨ − 、     __      _,. -‐' ¨´
      | `Tーて_,_` `ー<^ヽ
      |  !      `ヽ   ヽ ヽ
      r /      ヽ  ヽ  _Lj
 、    /´ \     \ \_j/ヽ
  ` ー   ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´   `¨´
           ̄ー┴'^´

119夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:05:56 ID:u5lac/cg0
夏祭りの6日めの夜、母娘ならんで男たちに犯された菜津子と夏菜子が、
ようやく男たちから解放され、まともに会話を交わすことができるようになったのは、
25時を過ぎた頃であった。

通称「罰当たり」と呼ばれる、年に一度の大乱交に突然現れた母・菜津子と、
わずか4日前に処女を失ったばかりの淫乱ギャル、夏菜子は、お互いの眼の前で
町内の若者たちに2人並んで散々弄ばれた。優等生の娘も、可愛い奥様で通っていた母親も、
もはやお互いへのイメージが完全に崩れ去っていた。

「ママ、お風呂があるから身体を洗いに行こう」
と、誘い出したのは夏菜子の方であった。

菜津子と夏菜子をいっぺんに犯すその「罰当たり」は、
菜津子の妖艶さとそれに対抗しようと張り切った夏菜子の元気さのおかげで、
思わぬほど激しい方向に向かった。

菜津子も、夏菜子も、多い時では3人4人をいっぺんに相手にした。
白濁した粘液で顔も髪も身体も汚されていた。
自分のものとも男のものともつかぬよだれや体液が次第に異臭を放ちつつあった。

「う、うん」
まるで、少女の頃、女子大生の頃に戻ったように、みなの前で乱れ、みなに犯された菜津子は、
娘に「ママ」と呼ばれると改めて心がきゅっ、と痛んだ。

合宿所としても使われる寺の大きな風呂には、誰もいなかった。
会話もなく、隣のカランに座って、ただ身体の汚れをボディソープで洗い落とし、髪をシャンプーした。

まるで、競うように「おちんちんおいしい」だの「奥まであたってきもちいい」だのと
恥ずかしい言葉を口にして乱れまくった淫乱な母娘も、
ひとたび行為が終わり、男から解放されると、現実に戻らなければならない。
母と娘にとって、それは深刻な時間であった。

「夏菜ちゃん、ちゃんと、東京に帰ってきてね」
無言のまま湯船に入った、気まずい母娘の沈黙を破ったのは、母・菜津子の方であった。
「……」
夏菜子はなにも答えない。苦虫を噛み潰したような表情を崩さない。
「つらい思いをしていないのが分かって、ママ安心したわ。
でも、ママも昔そうだったから、今楽しくても、ちゃんとお盆がおわったら東京に帰って、
普段の生活にもどって。それだけ約束して・・・」

菜津子の心からの願いであった。母は、言い訳できないことを知っていた。
だから謝らなかった。

だが、謝りもせずに理を解くこの発言が、夏菜子にとって、
都合のいい言い訳にしか聞こえなかったとしても仕方ないだろう。
「・・・どの口がそんなこと言ってるの?」
ようやく、搾りだした言葉であった。

120夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:10:50 ID:u5lac/cg0
「なんなのよ、ママは!突然現れて何しにきたかと思えば、
AV女優みたいにバカみたいに感じちゃって、どの口でそんなこと言えるのか聞いてるの!」
「……」

菜津子と夏菜子の関係は完全に変わってしまったのである。

母は、母なりに女としての自分と母としての自分のバランスを取りながら、
なんとか、娘をなんとか一人前の自立した女性へと育て上げようと、彼女なりに頑張ってきた。
その間、夏菜子には厳しい要求もしたし、たしかに、周りの女の子と比べて、
自由を制限した事も多々あった。しかし、それはすべて夏菜子の将来のことを思って、のことである。

夏菜子は、その母の要求によく応え、一流大学の推薦をとるところまで来た。

この母と娘の関係は、典型的な優等生と教育ママのそれであった。
娘の人生さえある程度上手く行けば、それなりにいい関係を築けるのが通常のことである。
多少、問題を抱えたとしても、時間が解決するし、それは、光子と菜津子の間でもそうであった。
だが、あまりに刺激的な体験をしてしまったこの母と娘に、その一般論が通じるであろうか。

その母娘の関係は、2人並んで激しく犯された夜、完全に変わってしまった。

「答えなさいよ、ママ!知ってるんだからね。ずっと守谷さんと浮気してたんでしょ。
そのくせしてあたしには門限5時とか、夕ごはんのあと9時まで勉強とか、ふざけてんじゃないの?」
「……夏菜ちゃん、聞いて……お願い……ママが悪かった。でも、あなたにはあなたの人生があるの。
それを、めちゃくちゃにしたりしないで。もう、ママ何も言わない。
夏休みが終わるまでいくら遊んでも構わない。だから、ちゃんと帰ってきてね」

「構わないってなに?あたしもパパもいない間に、どうせうちに男引っ張りこんでやりまくるんでしょ?
勝手にすればいいじゃない」
「夏菜ちゃん!」

必死に菜津子が訴えても、今の夏菜子が聞く耳を持つとは思えなかった。
どう謝っても許してもらえないことはわかっていた。

菜津子には夏菜子の気持ちが少しもわかっていなかったといっていいだろう。
夏菜子は、この期に及んでなお人生設計の話をする菜津子の利に聡いところが、
何よりも気に入らなかったのである。

「……みんなが待ってるからあたしはもう行く。今日はあたしは男の子全員とするの。ママはもう勝手にしたら?」
「……妊娠だけはしないように気をつけてね……」
「……」
もう、夏菜子は呆れて言葉も出なかった。
菜津子は、自分の前で、セックスしまくるとはっきり言い切った娘に対して言い返せない。
こんなに自分に激しく反抗する夏菜子を初めてみた。なにも咎めるようなことを言えなかった。

121夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:14:31 ID:u5lac/cg0
不機嫌なまま、湯船からあがり、体を拭いて、ピシャッと音を立てて戸を閉めて風呂場から出て行った。すっぴんでハダカのまま廊下を歩いて、仏堂で続行中の「罰当たり」へと帰っていった。

「あっ、夏菜子帰ってきた」
すっかり綺麗にメイクも落とした夏菜子を見ると、梨絵が安心したようにみんなにそう知らせた。

「ごめん、心配かけちゃったね」
「夏菜子、すっぴんだけど、大丈夫?」

「うん、ちょっと待っててね。二人で一緒に誰かをいじめよう」
夏菜子は裸のまままだ新しい、メイク道具を入れたキラキラの文字入りのポーチを持ってきて、
その場でギャルメイクを直し始めた。

「うん、手伝ってあげる」
「ありがと」

「あぁ、ちょっと、まってまってぇ」
同時に、誰かがかなこの胸をそっと揉んだ。
「だめだって……あぁん!」
メイクを直す暇もなく、夏菜子はすぐに新しいセックスへと導かれた。
男たちからすれば、夏菜子がギャルのメイクを直して、あくまでギャルであろうとすることなど
どうでもよかった。メイクなどしなくても、夏菜子は美少女である。風呂あがりの今を狙って、
思う存分味わい尽くそうというのが道理であった。

相手は、夏菜子が処女を失った日に一緒に童貞を失った、そして、
女の夏菜子の方から夜這いをかけて朝までセックスしたりもした、3つ年下の佑都であった。

「佑都、あたしも相手よ」
梨絵がそこに加わってきた。

「ねえ、梨絵……イク、ってきもちいいのかな?」
夏菜子は、唐突に梨絵に尋ねた。

「えっ、夏菜子、まだイッたことないの?」
夏菜子は少し恥ずかしそうに頷いた。梨絵の声は周りにも響いた。男たちもその声を聞いただろう。
夏菜子の耳には母・菜津子が男たちに激しく突かれながら「イクー!イクー!」と叫んでいた声が
まだ木霊していた。

122夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:16:39 ID:u5lac/cg0
「イってみたいの?」
「うん……」

処女を失ってから、夏菜子にとってセックスは気持ちのいいものではあっても、
「イッた」ことはなかった。まだ4日しかたってないから当たり前かもしれないが、
菜津子が「イクー!」とか「イかせて!」などと恥ずかしげもなく叫ぶのを聞いていたら、
嫉妬心がふつふつと湧いてきたのである。

「それじゃ、佑都、頑張らないとね」
「そうだよ、いまんとこ夏菜子と一番いっぱいしたの、佑都だからね」
「えー、プレッシャーだなぁ……」
夏菜子の「罰当たり」は、まだ始まったばかりであった。

菜津子は、夏菜子が戻っていったのを確認すると、
久しぶりにオトコを思い出したいやらしく熟しきったカラダを丁寧に拭いて、
もと着ていた服を着て、だれのものともつかぬ喘ぎ声を聞きながら、
仏堂の横の廊下を通って人知れず立ち去った。

遠い日の出来事であったはずの激しい情事に、菜津子のオンナの本能は強く、突き動かされた。

夏菜子がどうのこうのという以上に、本当のところ、この場をこのまま立ち去ってしまえば、
一生のうち二度とこれほどのことはできまい、と思うと、
若い男たちが望むなら気の済むまで犯されてみたかった。夏菜子がうらやましかった。

(私は病気かもしれない)
菜津子は後ろ髪を引かれる思いで、深夜の寺院街を一人歩いて、
車を止めてある守谷の居酒屋に向かった。結果的に守谷の罠にかかったとはいえ、
守谷に逆らえずひとときの快楽に溺れきったことの代償は大きかったと言わざるをえない。
これが、足掛け15年ちかくに及ぶ不倫の代償といってもいいかもしれない。

「菜津子さん、ちょっとまって」
菜津子を呼び止める人の声に気づいた時には、もう車の近くまで来ていた。
「あ、ど、どうも……」
友梨であった。

「お久しぶりです、あの、これ……」
友梨は、菜津子が脱ぎ捨てていった髪留のゴムと、クリップを手渡した。
「……わざわざ、ありがとう……」
夜道を若い女が一人で届けるほどのものではなかった。
話があって追いかけてきたのだと、すぐに悟った。

123夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:20:18 ID:u5lac/cg0
坂本友梨は28歳の美容師である。この前菜津子と会ったのはもう10年近くも前であろうか。
当時、若く、この町の華であった友梨は、菜津子にとって鼻持ちならない存在で、
二人の間には見えない高い大きな壁が存在していた

もちろん、守谷のことがあったからである。友梨と守谷はくっついたり離れたりの微妙な関係を
当時から今でも続けている。

「友梨ちゃん、あの獣にしっかり縄かけておきなさいよ」
吐き捨てるように菜津子が言った。
「ごめんなさい。私もまさかここまでのことが起きるとは思ってなくて。夏菜ちゃんのことも……」
「夏菜子のことは、もういいわ。夏休みにここによこした時点で、
ある程度は……覚悟しておくべきだった……あたしが甘かった。
友梨ちゃんにどうしようもないことくらいわかってるから」

「私、責任持って休みが終わったら夏菜ちゃんを東京に返しますから」
「……お願いしてもいいかしら。そういえば、美容師さんになったのよね」
「はい、頭も黒くして、ちゃんと元通りにして返します。だから……」
「大丈夫。あたしだってこの町の女だったんだから、おかしなことはしないわよ」
「お願いします……」

友梨の心配は、漠然としていた。菜津子が守谷や自分に報復を仕掛けてくるのではないかと疑った。
そのようなことはない、と菜津子ははっきり応えた。
あとは、菜津子に対して義理を果たすのは友梨の方だった。

「こちらこそ……夏菜子をお願いします」
菜津子は深々と頭を下げた。

菜津子は車の中に消えて、エンジンを入れると、
「送って行くわ。こんな田舎でも夜道は危ないから」
と、友梨を誘ったが、
「いいえ、すぐですから。それより、お元気で……」
やんわりと断った。

友梨の意地であった。
その夜、菜津子が守谷に協力を求めた時にかわされた約束、
つまり夏菜子を連れ帰ることに協力したら久しぶりのセックスでその協力に報いるという約束は、
「罰当たり」の中でもまだ果たされていなかった。友梨もそのことを知っていたし、
ひょっとしたら菜津子と守谷が、このあと別の場所で密会を持つかもしれないという不信があった。

その後、菜津子は街の外れまで車を走らせて、身体を休めながら守谷から連絡があるのを待った。
夏菜子に対しての申し訳ない思いと、大きな後悔を抱えながら、
もう二度と会えないかもしれないと思うと、守谷からの連絡を待ってしまう菜津子であった。

124夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:22:04 ID:u5lac/cg0
守谷が、菜津子のもとに向かったかどうかは本編の関知するところではない。

いずれにしても、菜津子は実家の柴崎家に顔を出すこともなく東京に帰り、
再び夏菜子と顔を合わせるのはまだ先のことである。ここまでこじれてしまった以上、
母と娘の間には冷却期間が必要だった。

朝まで腰が抜けるほどセックスをした夏菜子は他のみんなと一緒に、
寝ないまま最終日の夏祭りに参加した。
夏菜子がフェラやセックスで男たちを射精に導いた回数は述べ13回に及んだ。
夜の明ける頃には、その締め付けの厳しい女性器と激しい腰使いは「カナイカセ」と、
ねっとりとしつこい口技は「カナフェラ」との異名をとるようになった。
結局、さんざん快楽を貪っても、「イク」ことを経験することはなかった。

夏菜子がセックスで「イク」ことを覚えるのはもっと先のことである。
それで、夏祭りの毎後夜、催された「宴」は全て終わりである。

だが、この5日間で身につけた「カナフェラ」と「カナイカセ」が淫乱ギャルとして生まれ変わったばかりの
石田夏菜子の人生において、最強の武器となるのは、この後のことである。

125夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:24:17 ID:u5lac/cg0
それで全てである。一般的に見て、夏祭りはこともなく終わった。
観光客もいて、なにかと騒がしかった北の街も、すぐに静けさを取り戻した。

こうなると、普段東京で過ごしている夏菜子にとっては北の街は退屈である。
人々の活気は夏祭りに吸い取られてしまったようで、なにか街並みにも元気が無い。

夏菜子は違う。
「おばあちゃん、いってきまーす」
などと言い残して、今日も出かけていった。
日に日に、メイクは派手に、服は薄く、そして足の爪が水色になり、
手には派手なつけ爪をつけるようになっていた。

北の街にも、随分と減ってはきたものの若者はいる。若い男がいれば、
それだけで夏菜子のような美少女であれば遊び相手には事欠かない。

だが、夏祭りの間のようなわけにはいかない。
暑い夏の熱気に浮かされるように、男を求め、求められ、
狂ったようにセックスし続けた日々のようにはいかない。

どんなに服装を派手にして、薄く下品な格好に身を包んでも、
やはり夏祭りのような楽しさは蘇ってこなかった。
淫乱ギャルとしての自分に目覚めてしまった夏菜子の夏も終わろうとしていた。
淫乱ギャルとしてのそんな日々もいったん終りを迎えることになった。

8月17日の夜のことである。
柴崎の家に帰ってくると、友梨と祖母が待っていた。

夏菜子も、心の底ではわかっていた。
だが、成績優秀なお嬢様として抑えつけてきた自分の欲望を開放して過ごした日々が
あまりに楽しかったことと、東京に帰れば母・菜津子と顔を合わせることになるのが、
どうしても我慢がならなかった。

そのことは、夏菜子が梨絵にこぼした、母への不満が友梨の耳に入ることで、
どうやら菜津子の耳にも入ったようである。

この日、友梨は重要な任務を背負ってきた。いわば、「宴」の後始末である。
具体的には、夏菜子の金髪を、夏祭りのはじまる前の約束通り黒髪に戻し、
東京へと帰らせることである。もちろん、ギャルに染まり母親に反発を感じている夏菜子は

「東京には帰らない」
と駄々っ子にちかいことばを公然と口にしていた。

126夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:26:53 ID:u5lac/cg0
帰らないでどうするというのだろう。むろんそう聞かれれば答えはない。
要するに甘えた子どもの態度である。

だが、「宴」を預かる守谷や友梨にはそういった子どもをたしなめることも求められるのであった。
菜津子の娘である夏菜子を相手にして、守谷が出て来るわけにもいかないので、
友梨しかこの役割を担えるものはいなかった。

「夏菜ちゃん、夏休みは終わりだよ。さあ、こっちにおいで」
友梨の言葉に夏菜子は首を横に振った。

「それじゃあ、どうするつもりなの?」
夏菜子は、押し黙るだけである。予想された反応であったから、友梨は予定通りの行動をとる。
「これ、お母さんからお手紙。私から渡して欲しいって」

「手紙?」
友梨宛ての封書の中に、まだ開けていない封書が入っていて、
「夏菜子様」と確かに母の美しい楷書で書かれてあった。
夏菜子はペーパーナイフで封を開くと、静かにその中身を読み始めた。

「夏菜ちゃん

夏祭りが終わって10日ほどたちました。お元気でお過ごしのことと推察します。
私は、この18日からパパの在外研究の準備でボストンに行くことになりました。
夏菜ちゃんが大学受験であれば、ママが日本にいなければ夏菜ちゃんも受験勉強
どころではないかもしれませんが、進路が決まったときから在外研究の間はパパ
についていこうかと、考えていました。
だから、これは急に決めたことではありません。

故郷の空気を吸って、ずっとうるさく夏菜ちゃんをしつけてきたママがいなくても、
きっと夏菜ちゃんは残り半年間の高校生活を立派に、夏菜子らしく過ごしてくれる、
とママは信じています。」


手紙はごくごく短いものであった。謝罪もなければ、
あの日のことに何一つ触れてさえもいない。文面からママの気持ちを察しろと言わんばかりの、
傲慢な文章に、夏菜子の目には映った。

127夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:30:14 ID:u5lac/cg0
「ふん」
読み終わるなり、二枚目がないことを確認すると、夏菜子はその手紙をビリビリと破いた。
光子や友梨が見ている目の前で、である。

行間に込められた何倍にも及ぶ思い、母の深い後悔と口にすることすらはばかられる
心からの謝罪の言葉が夏菜子には見えなかった。見ないふりをしていたのかもしれない。

すこし忘れかけた怒りを何倍にも増幅させるような母の手紙であった。
何もかもが、身勝手なわがままにしか見えなかった。

「夏菜ちゃん!」
友梨が大きな声をあげて、その行動を止めようとした。

「何?この手紙。なにが言いたいのか全然わかんないよ。
ママがアメリカ行くっていうなら、あたしもここから帰らない。
おばあちゃん、知ってたの?ママがアメリカ行ったってこと。知っててあたしにも隠して、
それでどうするつもりだったの?」

「夏菜ちゃん、あなたが楽しい夏休みを過ごしたのは知ってる。でも、最初に約束したとおり、
夏休みが終わったら髪を元の色に戻すっていう約束でしょう」

友梨が持ちだしたのは、夏祭りの2日目、初めて夏菜子が髪を金髪にした日に、
元の通りちゃんと元通り黒くする、という約束であった。

「そ、それは……」
「ここは、夏菜ちゃんが生きる場所じゃない。夏菜ちゃんが大人になって、
柴崎の家をつぐようなことがあればまたここに戻ってくればいい。
でも、人にはそれぞれ今やるべきことがあるはず。
あたしは、この田舎の街に都会の流行を少しだけ持ち込んで、
今も勉強しながらこの街の女の子たちにおしゃれを広めてる。
夏菜ちゃんはこの街の女の子だけど、それでも今は東京の女子高生でしょ?
しかも3年生で、大学も決まってるんでしょ?」

「……」
夏菜子は、返す言葉がなかった。

「光子さん、ちょっと、外してもらえますか」
祖母・光子は娘・菜津子と孫である夏菜子の板挟みにあって、
また、夏菜子が突然こんな風になってしまったことへの自らの深い責任を感じてか、
ここのところ体調が思わしくなかった。

自らも「宴」に参加した経験をもち、
娘・菜津子と孫・夏菜子が町内の男たちに犯されるその集いに参加することを、
黙ってみていて止めようとしなかったという、重い責任が、光子を苦しめていた。

「おねがいします」
光子はハンカチを目に当てて、一言、友梨にその場を任せて、言われたとおりに奥に下がった。
一方、友梨には、祖母には手がつけられないほど、
僅かな時間で大きく曲がった夏菜子の性根に一撃を食らわす胆力があった。

128夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:31:50 ID:u5lac/cg0
「いいから、ちゃんと元の生活に帰りなさい。東京に帰るのよ。
この街はあなたの生きる場所ではないの。夏祭りが終われば、この街には秋が来る。
夏菜ちゃんだけじゃない。この街で生きる人間は残り、仕事をして、学校に通う。
唯も梨絵も、真希もみんなもう学校が始まる。みんなもう、もとの生活が始まっているし、
学生だって夏休みが終わる。当然のことでしょう」

「でも、あたし……あたしの勝手じゃないですか……」
友梨の迫力に夏菜子はそれ以上言い返すことが出来ない。
不自然に白く引き立てられた瞳に涙が溢れそうだった。

「あんなことがあったんだ。帰りにくいのはわかる。でも、これは夏菜ちゃんの人生なんだよ。
この街に残ったって、夏菜ちゃんの居場所はない。確かに、菜津子さんのやったことはひどい。
あなた達親子が今まで通りに戻ることはないかもしれない。
それでも、だからといって夏菜ちゃんの人生を、これしきの事でめちゃくちゃにしちゃいけない。
誰もそんなことは望んでないの」

「友梨さん……あたしは……今の、ギャルのあたしが好きなの。
ママを恨んでなんかいない。そうじゃなくて、ようやく、本当の自分を見つけたの。だから……」

「だったら!だったら高校を卒業して、大学に入って、自分で学費を稼いでそれからにしなさい。
あんた結局はお父さんの稼いだお金と柴崎家のお金で名門の私立女子高に通ってるんでしょ?
それは菜津子さんと夏菜ちゃんだけの問題じゃないでしょう」

「……」

129夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:33:56 ID:u5lac/cg0
言い返す言葉がない夏菜子に、友梨は最後の一太刀を浴びせる。
「あなたは、地味で、真面目な、黒髪の優等生に戻るの。夏休みにこの街で起きたことは全部忘れて、
おとなしいお嬢様の石田夏菜子に戻るのよ。少なくとも、そうじゃないとあなたの高校には通えない。
いろんな人に迷惑をかける前に、あなたの義務を、責任を果たしなさい!」

すべて正論であった。夏菜子が指定校推薦をとっている以上、
今更それを取り消すことなどできるはずもないし、母との仲がうまく言ってないことなど、
言い訳になるはずもない。そして、

「それが、夏祭りの『宴』に参加した女の子の義務なのよ。夏が終わったら、もとの生活に帰る。
わかるわね?」

「はい……」
日焼けしにくい夏菜子の白い肌と金髪は、その育ちの良さと生来の整った顔と相まって
まるで妖精のようである。

その清楚な顔を下品に飾ったギャルメークはひどく不釣り合いなものであったが、
それでも、18年間のお嬢様としての自分と違う、
「本当の自分」を見つけてしまった夏菜子にとっては辛いことに思えた。
しかし、正論に弱く、果たすべき義務や責任といった言葉に弱いのも、また彼女の育ちであった。

「それじゃ、今からお店に行きましょう。その頭じゃ、学校いけないでしょ」

「……うん……」
俯いたまま、夏菜子は少しだけ泣いた。いくら駄々をこねても、
東京に帰る以外の選択しがないことを、少女はよく知ってはいた。
それが、この夏の落とし所、であった。

友梨の眼に、2週間ちょっと前に、色を抜いて金色に染めた、
まっきんきんの金髪の根本から、もとの黒髪が生えてきているのが見えた。果たして、目の前の少女に、
ギャルメークと金髪を仕込んだことがこんな顛末を迎えるとは思ってもいなかった。

最初の約束通り、友梨は夏菜子の髪を元の黒に染め直した。
夏菜子の希望で、肩を越えて伸びていた髪を、ショートボブに切りそろえた。

黒髪の清楚なお嬢様、石田夏菜子は、この3週間の出来事が何事もなかったかのように元の姿に戻った。
ただ、髪型が少し変わっただけである。

130夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:37:16 ID:u5lac/cg0
そして、お盆が終わり、次の日、18日の午後には、帰京の時がやってきた。
夏菜子は、北の街に降り立った日と同じ、よく言えば清楚、悪く言えば地味そのものの水色のワンピースとカーディガンに身を包み、ほとんど素顔に近いナチュラルメイクで、新幹線に乗った。

となりには友梨がいた。
「夏菜ちゃん、いろいろとあったけど、後のことは北斗にも頼んでおいたから、なにか相談事があったら遠慮無く、連絡してね」

友梨はお盆明けに3日ほど美容室を休みにし、何かの講習会に出席するため、と称して仙台へと向かう。途中まで夏菜子と一緒であったが、先に降りる時が来た。
「はい。こちらこそ、いろいろとありがとうございます。あの……すみませんでした」
夏菜子はぺこりと頭を下げた。

すっかり、もとの石田夏菜子であった。

仙台の駅で友梨が降りると、いよいよ夏菜子の夏休みも終わりが見えてきた。東京についたら、
そこは現実しかない世界である。この夏あったことをなにもかも忘れて、
地味で真面目な女子高生に戻る。

夏菜子は、そのことに迷いがあるわけではない。
だが、心のどこかにつっかえが残っていることは否定出来ない。
母・菜津子とはあの日以来話していない。
夏菜子が東京の家に帰るのと、入れ替わるように母・菜津子はアメリカに夫婦で向かった。
母がアメリカから一旦戻るのは、9月の中旬になってからのことであるという。

「あっ……」
友梨の席に、売店で勝ったビールとつまみのビニール袋が残されていた。
わざと残していったのか、忘れたのかは分からないが、
それが、夏の名残であった。夏菜子は少しだけ周りの目を気にして、缶ビールの蓋に指を通した

131夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:40:33 ID:u5lac/cg0
「……にがいなぁ……何が美味しんだろう。こんなの」
エアコンが効いているとはいえ、室温で温められたビールは、苦い味しかしなかった。

口の中に、処女を失った日に初めて味わったビールの苦さがぷわーん、と広がった。
条件反射のように、「宴」での激しい夜のことが次々と思い浮かんできた。

「やっぱり、何が美味しいのかわかんないや……」
夏菜子は、ふた口めを飲み干すと、それ以上缶ビールに口をつけることはなかった。
すこしだけ、頭がふらふらとして、東京につくまで眠ってしまった。

こうして、東京駅に降り立った夏菜子は、山手線を渋谷で乗り換えて家路についた。

電車の中でも、もともと別世界に住んでいたギャルたちも何人も目にしたが、
不思議なもので、自分の仲間だとは思えなかった。

今見ると、夏休みなのにわざわざ制服を着崩して、
下品なメイクと派手なアクセやキラキラのバッグを持ち歩く、そんな本物のギャルに比べたら……
ギャルとしての自分など、しょせん、田舎ですごしたひと夏の間の、ギャルのまね事など、
この巨大な街に棲む、根っからのギャルたちの気合の入り方に比べれば、
どうということのない遊びでしかなかったことを思い知らされた。
渋谷の街にはギャルならば行きたくなる場所がいくらでもある。

だが、何も思うことはなかった。残暑の時期である。
東京はまだまだひどく暑い夕方であって、それは北の街の空気とは全く違う世界だった。
いつものように、ただ別の電車に乗り換えて、帰路についた。

狂乱と熱気に満ちた、高校最後の夏菜子の夏は終わり、ただ暑さだけがしばらく残っていた。
故郷の北の街で呼び覚まされた、夏菜子の「本性」が騒ぎ始めるのは、
2学期が始まってしばらくしてからのことである。

132夏菜子のなつ:2013/07/17(水) 19:44:28 ID:u5lac/cg0
「夏菜子のなつ」作者です。

最後はちょっとバタバタしましたが、「夏菜子のなつ」はこれで終わりです。
といっても、夏休みの部分が終わっただけで、続きはあります。
2ちゃんの規制によくかかるのでどういう方法で公開するかはちょっと考えますが、
必ず続けるので、どうぞお待ちください。

ということで、近いうちにまた。

133名無しさん:2013/07/17(水) 21:56:54 ID:wlZ.95DI0
乙乙乙!
過疎ってる時期でも貴方やわたぐもさんのSSで食いつないでいたのはいい思い出ですわ
それにしても結構意外なオチというかまとめかたで驚いたよ
続編があるなら期待して待ってます

134名無しさん:2013/07/18(木) 07:11:07 ID:AaLgln520
乙!続編にも期待

137名無しさん:2013/07/18(木) 22:18:56 ID:sJzfFeD20
なんか上手く読み込めない…
ログが破損してるとかあるけど何なんだろう

138名無しさん:2013/07/19(金) 02:25:20 ID:FS5BIZok0
こわれちゃったの?
なんかレス番飛んでるけど

139名無しさん:2013/07/19(金) 18:04:10 ID:UpCjavJU0
業者もしくは荒らしのレスを管理人さんが削除したんじゃないか

140名無しさん:2013/07/22(月) 18:32:53 ID:lk8Ga9js0
わざわざアンチも無駄なことをご苦労なことだな

141名無しさん:2013/08/11(日) 23:24:15 ID:V/vHfFo.0
コミケでらぶひなのなるがケバ化してる薄い本を見つけて大変満足した

142名無しさん:2013/08/12(月) 10:49:37 ID:jtPid4lc0
「夏菜子のなつ」作者さん
続き期待してます。

143名無しさん:2013/11/03(日) 09:41:48 ID:5ojysfnw0
本スレはずーっと変なのが粘着してるなあ
相手してる奴も何か話題があるならこっちで振ればいいのに

144名無しさん:2013/11/04(月) 17:45:11 ID:QtnQ4HL20
まあ今は別に優等生が堕落するシチュを話し合えるスレができてるからなあ
本スレに留まっているのはそれを知らん人と荒らしだけだろう

145名無しさん:2013/11/17(日) 20:14:35 ID:rsPsGDrU0
>>144
板名だけでも教えてください

146名無しさん:2014/02/22(土) 22:17:46 ID:0VlDr7qU0
規制されてるからこっちで例のゲームの感想を
・立ち絵がない
・エロシーンが三段階に分かれてはいるものの、徐々に落ちていくと言う感はあまりない
この2点が何より残念だった…というか、外見の変化はいいんだけど
ヒロイン達が本質的に元々ビッチだったんじゃね?というくらいに
あっさり堕ちていく感じだったので、期待していたほどは抜けなかったなあ
CGだけ見てストーリーを脳内妄想する分には十分使えるから値段分くらいは楽しめたけどね

204<削除>:<削除>
<削除>

205<削除>:<削除>
<削除>

209<削除>:<削除>
<削除>

248名無しさん:2015/03/18(水) 02:48:55 ID:Hi040cFs0
優等生じゃなくて本スレ4が堕ちてしまったけど次スレって何処かにあります?

249名無しさん:2015/03/18(水) 23:42:41 ID:gMMvxXoY0
多分次スレは立てられてないと思う
最後の方は荒らしがいついてて投稿できるふいんきでもなかったしなあ

250名無しさん:2015/03/19(木) 16:42:48 ID:4rWThr060
久しぶりにいったら大荒れだった
みんなどっかに移転していったのか…

254名無しさん:2015/04/30(木) 19:09:23 ID:X.O3gbcI0
代わりに落ち着いていて話せる場所がある
みたいなことをスレに書いてる人いたけど、どこのことだろう?

255名無しさん:2015/05/03(日) 00:18:41 ID:oUfB7jig0
どこかの地下スレかもなあ

259名無しさん:2015/06/11(木) 12:59:53 ID:y8XCN7aI0
ttp://uproda.2ch-library.com/8816368L0/lib881636.png

260名無しさん:2015/06/29(月) 01:56:33 ID:9DUxAHGg0
本スレが落ちてしまい、ずいぶんと経ってしまいましたね。
スレが堕ちてからは新ネタを各所で探してはいるんですが、なかなかみつけられません。

そこでこのジャンルの人口を増やすためにROM専だった自分が書いてみました。
まだ完結しておりませんが、一応堕ちるまではいったのでここに報告させていただきます。
乱文ですが、どうぞ読んでください。
ttp://novel18.syosetu.com/n0992ct/

スレ汚し失礼いたしました。

261名無しさん:2015/07/01(水) 02:35:57 ID:ux5YGZ620
>>260
乙!
知能低下に伴い口調も変わっていくところや
それまでの几帳面な性格で積み上げてきたものを一瞬で台無しにする様はすごく興奮したよ

262名無しさん:2015/07/02(木) 19:16:52 ID:o24y19x20
>>260
乙乙

263260:2015/07/02(木) 21:36:03 ID:M7tk8oTc0
ありがとうございます!
書き続けることが大切だと思いますので、週一でも月一でも投稿して行きたいです。

264名無しさん:2015/07/04(土) 00:30:20 ID:G2SdTV2Y0
無理せず自分のペースで楽しんで書いてくれ
自分が楽しくないんじゃ本末転倒だしね

265名無しさん:2015/07/06(月) 22:17:34 ID:q2CADrOs0
速攻保存した

266名無しさん:2015/07/30(木) 20:15:12 ID:SpgCJBJ60
「強制的に知能低下するスレ」で最近投下されたSSがなかなかよかったよ
>>260さんの小説が好きな人なら楽しめるんでないかな

268名無しさん:2016/04/05(火) 22:21:29 ID:iVsvJ1HA0
保守。

272名無しさん:2017/02/25(土) 00:24:44 ID:9XLP7CVw0
あまりにスレに元気がないので宣伝になってしまうのですが作品紹介させてください。

http://novel18.syosetu.com/n9795du/

真面目な子の堕落を題材に書きました。
拙作ではありますが、読んでいただいたら幸いです。

273名無しさん:2017/02/25(土) 19:19:44 ID:TrLThqes0
>>272
乙乙
実は既に渋の方で読ませて貰っていたぜ
堕ちる子に一切の責任がない理不尽さが個人的に凄く好きなんでとても興奮したよ

274名無しさん:2017/02/26(日) 19:59:57 ID:/bRpCjog0
>>273
ありがとうございます。

ニッチなジャンルなのでなかなか新作にたどり着けないですけど、その分私も少しだけでも書いていきたいと思います!

275名無しさん:2017/02/27(月) 16:32:05 ID:vef./EPI0
乙でしたー
最近pixivも色々検索してるけどおーくわーどさんは本当に貴重なギャル化物書いてくれるからうれしい
他だとブックマークに入れてるのはちゃんぱちさんの「写メ」くらいかなあ・・・

276名無しさん:2017/02/28(火) 22:58:27 ID:BW.qGgZY0
>>275

ありがとうございます。
励みになります。

ちゃんぱちさんはコンスタントに素晴らしい作品を提供してくれる貴重な作家さんですよね。
確か本スレに元々投稿されてましたよね。
またここも活気付くと嬉しいのですが......

277玄米茶:2020/05/09(土) 05:05:50 ID:rqT4Q1HM0
【 続 弥生 】

この作品は、わたぐも氏の作品の二次創作です。
主人公「弥生」が優等生から堕落していく作品の続編です。
薬物乱用が描かれているので、嫌悪されない方のみ読んでください。
描写に不快な思いをされる方もいらっしゃるかもしれませんので、
予めお詫びいたします。

278玄米茶:2020/05/09(土) 05:06:51 ID:rqT4Q1HM0
ホテルの一室。
その暗闇の中で、プロジェクターの光だけが明滅を繰り返しいる。
壁に投影されているのは成人式の様子。
今は新成人が壇上でスピーチをしている場面である。
“…私は先生や友達から優等生と呼ばれ、自分でもその自負を…”
男は弁舌に耳を傾けながら傍らの女を見た。
女の目は焦点を結ばず宙をさまよい、体には異様な汗をかいている。
「…ああ… もっろぉ、気持ちイイのぉ、もっろぉぉぉ…!」
女は男にせがんだ。
「この式典のときには涼し気な顔をしてたのがどうだ。
 腑抜けた情けないバカみたいな顔しやがって。」
「えへ… えへへへ… いい子らよ!わらひはイイ子!」
「いい子か。
 そうだな、高校時代は成績も上位だったらしいしな。
 じゃあ、その賢い頭で判断してみようか。
 これはいいもの?それとも悪いもの?」 
男はベッドの脇に置いてあった注射器を手に取った。
「えへへへ… らめ!らめ絶対!」
そう言いつつ、女は男に左腕の内側を差し出している。
「ふふふ。いい子だ。
 じゃあ、お代わりをあげようね。」
無防備に差し出された左腕の静脈。
そこに針が突き立てられ、シリンダーの中の液体が注ぎ込まれて行く。
「…ああ、入ってくりゅ… …えへへ…
 …えへへ… …ああ… …あああ… …アアッ…!」
疲れ切っているはずの女の体に力が沸き上がり、
女の腰が再び大きく前後にスライドし始めた。
「おお、いいぞ、いいぞ!」
「エへァァァ!エへァァァ!シアワセェェェ!」
男に跨り直して狂ったように腰を振る。
女の体はプロジェクターの光線上に陣取り、
必死に訴えかけている登壇者の映像が
汗だくの裸体の上で青白く歪められていた。

279玄米茶:2020/05/09(土) 05:07:19 ID:rqT4Q1HM0
成人式を控えた式典会場。
新成人たちが式典会場に近い広場で再会を喜び合っている。
その雑踏の中、幼馴染の徹と麻美の目が合った。
「よぉ!麻美じゃねぇか!」
「あ!徹だ!不良の徹!」
「おいおい、顔見るなり不良はないだろ!?」
「ごめんごめん!私の中では徹って、中学のときのイメージのまんまなんだよね。
 タバコ吸ったりバイク乗ったり。あと喧嘩もよくしてたっけ。」
「それだけじゃねぇぞ。万引き、カツアゲ、やり逃げ、それから…」
「うわっ!サイテー!そんなことまでしてたの!?」
「昔のこと昔のこと!今じゃ現場でしっかり働いてて、親方も信頼してくれてんだぜ!」
「へぇ〜!頑張ってんのね!」
「おうよ!で、麻美は今何してんだ?」
「私は学生やってる。二流の私大だから就活とか心配だけど。」
「大丈夫だって!俺なんか中卒だぜ!?」
「徹は腕っぷしも強いし要領もいいから問題ないんだよ〜 職人街道まっしぐら。ある意味エリート!」
「何言ってんだか!世間で言うエリートが、この会場には何人もいるだろうに!
 エリートと言えば、あの“弥生”はどうしてんだろうな?すっげえぇ頭のよかった弥生!」
「あの優等生の弥生ちゃんね!
 テストでは満点以外採ったことなかったうえに、
 すっごく真面目でみんなからも信頼されてて、クラス委員なんかもよくやってたっけ!」
「そうそう!俺なんかいっつも怒られてたんだよな。
 制服はちゃんと着ろ、踏み靴はするな、髪は黒くしろ、タバコは健康に悪いから辞めろ。
 おまけに、大人になってから困るから、今ちゃんと勉強しろとか、説教まで垂れられたんだぜ。」
「あはは。弥生ちゃんらしいや!
 曲がったこととか怠けるのとか、不真面目なことが大っ嫌いだったもんね。」
「あいつ、正義感強かったもんな。今はどうしてんだろうな?」
「そりゃ、何かは分かんないけど、活躍しまくってるに決まってるわよ!」
「ちげーねーや!」
二人は、弥生という優等生のことを思い出していた。
艶やかな黒髪。透き通るような白い肌。凛とした顔立ちとそこに溢れる知性と品性。
記憶の中のその姿を思い浮かべながら、二人は弥生の輝かしい現在を微塵も疑わなかった。

280玄米茶:2020/05/09(土) 05:07:38 ID:rqT4Q1HM0
成人式の式典まではまだ時間がある。
徹と麻美は連れ立って会場を歩いていた。
弥生に会いたい。弥生の今や高校時代を知る級友に会いたい。
二人はそんな思いを抱いていた。
「ねえ徹、あそこにいるの、涼子ちゃんじゃない?」
「あ、ホントだ。おーい、涼子〜」
「わっ、徹に麻美じゃん!中学卒業以来だね!」
「そうだよね久しぶり!涼子ちゃんは今何してるの?」
「私は医大でお医者さんになる勉強してるわ。」
「うわすげぇー!超エリートじゃねぇか!」
「そんなことないわよ〜」
「そういや涼子は私立の高校行ったんだよな!確か弥生と一緒の高校!」
「うん。弥生ちゃんと一緒の高校!でも弥生ちゃんは… ううん、何でもない。」
「なんだよ気になる言い方しやがって。弥生がどうした?」
「うん… 実はね、弥生ちゃん、高三の夏休み明けぐらいから学校に来なくなっちゃたの。」
「えっ!?なんでだよ!?」
「理由は私にもよく知らない。
 学校でもいろんな噂が流れたわ。重病、海外留学、受験勉強…
 でも、時間が経つにつれて、別の噂も流れた始めたの。」
「別の噂?」
「ええ。その噂では…」
涼子は小声でその噂を語った。
「なっ、なんだよそれ?あの弥生に限って、まさか…」
「涼子、それ信じてるの?まさか、そんな、ねぇ」
「やっぱ二人ともそう思う?私もこの噂は信じたくないの。だけど…」
「デマよ絶対に!面白おかしく言いたい人とか、妬んでた人の作り話よ!
 だってあのミラクル優等生の弥生が、そんな人間になってる訳ないもん!
 きっと受験に専念して家でガリ勉してたんだよ!」
「俺もそう思う!弥生がそんなやつになってる訳ねぇよ!」
「や、やっぱり?そうよね?そうだよね!」
三人は表情を和らげた。
けれども、涼子が二人に話していないこともあった。
噂の出所が目撃証言からであること。卒業アルバムに弥生の名前がないこと。
それは信じたい気持ちが働いたからだろうか。
涼子はただ、徹と麻美の顔を見ながら笑っていた。

281玄米茶:2020/05/09(土) 05:08:11 ID:rqT4Q1HM0
「お、徹に麻美、おひさ〜」
歩いていた徹と麻美に声を掛けたのは、煌びやかな振袖に身を包んだ黒髪の女子だった。
「葵?お前、あの葵!?」
「そだよ。」
「うっそぉ、あの葵ちゃんなの!?感じ変わってたから分かんなかったよ!」
「だよね〜 中学の頃は茶髪で肌も焼いてたもんね。」
二人の中での葵のイメージは、チャラい遊び人だった。
優等生の弥生とは正反対のイメージである。
「あのワルの葵が、何で今はそんな落ち着いたカッコしてんだ!?」
「しっつれいね、それ不良やってた徹に言われたくないな〜
 まあ、理由を言うとね、あたし、今は親父のやってる不動産屋で働いてんだよね。
 それでお客から受けのいいカッコしてるわけ。
 あ、なんかいい物件の話しとかあったら相談してよね。
 はいっ、これ名刺。ここに空メールでもいいから送っといてよね。」
「ははっ、商魂たくましいな。」
「まあね!
 ホントはさ、高校なんか行かずにすぐに働きたかったんだけどさぁ〜
 でも親父に言われたの。並みの高校ぐらいちゃんと出とけって。
 で、入れられた高校と、そこ卒業するための塾行って、今に至ってるってわけ。」
「お前、どうせ高校でも塾でも遊んでばっかだったんだろ。」
「そうよ〜 ツレとカラオケ行ったり、タバコ吹かしながら飲んで騒いだり、楽しかったなぁ〜」
「そのツレの雰囲気、当ててやる。茶髪でピアス付けてて、制服だらしなく着て。」
「そそ。そーいうのデフォルトォ〜」
「やっぱりな。俺らさっきまで、超優等生だった弥生のこと話してたんだけど。
 葵は予想通りというか、その真逆の高校生だったみたいだな。」
「真逆?あたしと弥生が?」
「だってそうだろ?
 葵はガングロ茶髪。カラオケ、酒、タバコの好きな、遊び人の高校生。
 弥生は美白に黒髪で、成績優秀なうえに正義感溢れる、優等生な高校生。正反対じゃねぇか。」
「ふふっ、ふふふっ!」
「何がおかしいんだよ。」
「べーつーにー」
葵は何がしかに思いを巡らせているようだった。
「あたし思うんだぁ〜
 大人や社会に認められたい、愛されたいっていう動機で、必死に優等生を演じてる子ってさぁ…
 別の方法でも認められたりお金稼げたりすること知っちゃったり、
 楽しいコト知っちゃって、努力なんかバカバカしいって思っちゃったりしたら、
 歯止めが効かなくなるの、はやいんじゃないかなぁ〜って。
 ほら、無菌状態で育てられた生き物って、雑菌に弱かったりするじゃん?」
「優等生の弥生よりも遊び人だった自分の方が、わきまえた人間だって言いたいのか?」
「べーつーにー
 ただ優等生も、案外脆いかもしれないよって言いたいだけ〜」
「でも弥生は違うだろ?だって弥生の優等生は演じてたんじゃなくて、天然だったからな。」
「ふふっ… ははっ!はははっ!」
葵はケタケタと笑った。
「弥生に会えるといいね。」
そう言い残すと、葵はどこかへと去って行った。

282玄米茶:2020/05/09(土) 05:08:35 ID:rqT4Q1HM0
開式の時間が迫る中、会場へ続く広場の入り口が一段と騒がしくなった。
「見ろよ麻美、ガラの悪そうなのが入ってきた。」
「うっわ〜!荒れる成人式のニュースで見る人たちだよあれ。やだな怖い〜」
「ホントに派手だな。金髪に金色の羽織袴を着た男もいりゃ、花魁みたいな女もいやがる。」
「あ、徹ったら、着物をはだけてる女の子の肩とか胸元とか見てるんでしょ。やらし〜」
「いいだろっ、目の保養目の保養!あっちだって見せるためにああしてるんだし。」
「もう!これだから男は…」
「酔っぱらってる奴もいるな。
 ほら、後ろの方にいるサングラス掛けてタバコ吹かしてるガングロの茶髪女。
 テンション高めで早口でしゃべりまくってるけど、呂律が回ってない。
 歩き方もフラフラしてるし。」
「ほんとだ。成人式に酔っぱらって来ちゃうのはどうかと思うなぁ〜
 おっと、近く通る。静かにしよっと… あれ?何か落としたわ。」
「まったくしょうがねぇな。」
徹は地面に落ちているものを拾った。
「あれ、何だこれ?お菓子の空箱かと思ったら、何か入ってる。粉薬?
 取り合えず届けてやった方がいいのかな。おーい!」
徹は茶髪の女に駆け寄りその箱を差し出した。
「これ、落としたぞ。」
「それ、どっどこで!?」
「たった今、お前さんが落としたんだよ。」
「やっ、ヤッダァ〜!私ったらこんなの落とした!?アハッ、アハハッ!ありがと!」
笑いながらも小震えする手で箱を受け取ると、女はすぐに小走りで行ってしまった。
「徹、いいことしたね〜 ん?どうしたの徹?」
「あいつなんか様子が変だったぜ。」
「変?」
「ああ。箱見るなり表情が固まって、取り繕ってたけど明らかに動揺してた。
 それから顔がやつれててさ、歯もビックリするくらい虫歯になったり抜けてたりしたよ。」
「何それやだぁ でも私も違和感感じたな〜
 どことなく表情がギラついてて不健康な感じがした。
 あと香水の匂いもきつくって。」
「体臭にコンプレックスでもあるのかな?
 体の臭い隠すために香水きつくす過ぎる人とかいるけど。
 あっ、見て見ろよ!さっきの女、なんか騒ぎを起こしてるぜ。」
「ホントだ!チャリティーやってる子に“偽善者”って叫んでる。
 何であんなこと言えるの?最低よね!」
「俺もそう思う。マジやめて欲しい。
 もし弥生がこの場に居合わせたら、正義感丸出しで諭してるとこだな。」
「確かに!弥生ちゃんだったら、あんなの許さないもんね!」
「それにしてもあの茶髪女、やばいな。酔ってるんじゃなくてラりってるのか?」
「変なこと言わないでよ!マジでヤク中に見えてきちゃうじゃん!」
「ごめんごめん。でもなんか、初めて見た気がしないんだよな、あいつ。」
「サングラス掛けてて目元が分からないから、いろいろ顔が結びついちゃうんじゃない?」
「やっぱデジャヴかなぁ」
「ねえ、式典の時間も近いし、そろそろ会場に行かない?」
「だな、行くか。」
二人は広場を出て会場に入った。

283玄米茶:2020/05/09(土) 05:08:55 ID:rqT4Q1HM0
成人式の開式の時間。
照明のやや落とされた会場に吹奏楽団のファンファーレが鳴り響き、成人式が始まった。
「皆さん、成人おめでとうございます。」
「ご成人おめでとう!」
「皆様が成人となられましたことを、心よりお喜び申し上げます。」
「成人おめでとうございます。」
祝辞や来賓の挨拶に続いて式辞が述べられ式は粛々と進行した。
しかし、堅苦しい話しが続いて徹は少々退屈気味だった。
「ふぅ…」
徹がため息を漏らして麻美に顔を向けると、麻美も苦笑して微笑んだ。
話しはなおも続いている。
「…皆さんは困難な時代を生きています。
 先の見えない時代、閉塞感の漂う時代であります。
 けれども、そんな時代だからこそ…」
その時である。
「あはははは!」
会場の一席から笑い声が上がった。さっきの花魁のような女である。
「…そんな時代だからこそ、若い皆さんは力強く…」
「うっせぇ!ざけんな!引っ込めぇ!」
「ちょっと君、静かに話しを聞きかないか。」
「はぁ!?いろんなツケを残しといて、今の若者に頑張れ!?
 お前が頑張れっての!ムカつくんだよ!!」
女はなおもまくし立てる。
会場は唖然となっていたが、女の元へ普段着の女子が走ってきた。
そして普段着の女子は、女の頭上に大きく手を振り上げる。
パシッ!!
「痛っ!なにすんのよ!」
「黙りなさい!」
その声は毅然としていた。
「あなたは今、この場所には相応しくない。場違いだわ!!」
「やめろこの偽善者!!おいっ離せ!!」
二人はもみ合いながら、緑と白の誘導灯が灯る後方扉へと移動すると、
外からの光に一瞬包まれて会場からその姿を消した。
ざわつく会場。
遠目に見ていた徹と麻美も顔を見合わせている。
しかしそれもすぐに落ち着くと、式典は何事もなかったかのように再開されたのだった。

284玄米茶:2020/05/09(土) 05:09:26 ID:rqT4Q1HM0
式典が終わり次のプログラムが始まった。
それは新成人が自らの主張を演壇で行うもので、
中学時代に生徒会をしていた者などに事前にその依頼がなされていた。
「私は今、医学を学んでいます。」
「僕は高校を卒業してすぐに市役所の職員になりました。」
「私は…、えへっ、実はもうお母さんやってます!」
それぞれの道を歩み始めた新成人たちが主張を展開する。
そして最後の登壇者がマイクの前に立ったとき、徹と麻美はアッと思った。
「おい、あれ、弥生じゃないか!」
「ホントだ!弥生ちゃんだ!」
黒髪に白い肌。凛とした顔立ち。それは中学の頃のイメージのままの弥生だった。
二人が凝視する中、私服姿の彼女は演壇に上がった。
そして深々と頭を下げた後に名前と出身中学が述べられ、彼女のスピーチは始まった。
「私の登壇は今日のプログラムには書かれていません。
 なぜなら私がここで話しをするのが適当かどうか、直前まで運営側で議論があったからです。
 けれども、私はこうして登壇することを許して頂きました。
 ありがとうございます。
 さて、私は自分で言うのもなんですが、真面目で成績優秀な生徒でした。
 受けるテストはいつも満点で、全国模試でも常に1位でした。
 校則をしっかりと守り、委員会活動なども積極的に取り組んでいました。
 私は先生や友達から優等生と呼ばれ、自分でもその自負を持っていました。
 真面目で成績優秀な優等生。
 …そう、高校3年のまでは。
 転機は春の模試でした。
 さっき言った満点の継続が、そこで途切れたのです。
 898点。満点の900点に1問足りない、898点。
 周囲には連続満点が途切れたのを惜しまれました。
 でも、当の私は、解放感の中にいました。
 自分でも意外な解放感。もう、満点じゃなくてもいいんだ。
 重圧から解放されて心がスッと軽くなりました。
 そしてその後私は、満点を死守するという極限的な目的が消えたせいで、
 後一歩の踏ん張りや努力ができなくなりました。海岸浸食のような少しずつの後退。
 それでもなお成績トップを走り続けられたことで、私はさらに緩みました。
 何も変わらない1位。
 これまでの勉強の蓄積がたくさんあるんだ。少し手を抜いてもどうってことないんだ。
 全然大丈夫。何も変わらないんだ。そう、何も変わらない。
 そんな時期に、私は世間で言う不良と遊ぶようになりました。
 切っ掛けは、彼らの輪の中に親友がいて、塾帰りにカラオケに誘われたことでした。
 粗野で低俗で頭が悪いと私が嫌悪していたその人たちは、関わるととても友好的でした。
 短時間のつもりが、朝までカラオケです。
 帰りが遅いのを心配する親からの何回もの着信とメールには、
 友達のうちに泊まるとメールしました。
 不正を憎んでいた私が、初めて嘘を受け入れたのがこの時です。
 そして今まで休んだことのなかった学校も次の日に初めて仮病で休み、
 彼らとの楽しいことに耽りました。
 未成年だけれど背伸びをしてのお酒やタバコ、性行為。
 そこで味わう、ルールから解放されて自由になる感覚。悪びれて自分が大きくなる気持ち。
 真面目一辺倒で生きてきた私に、それらは新鮮に映りました。
 今日一日くらい。今日一日くらい。私は勉強から遠ざかりました。」

285玄米茶:2020/05/09(土) 05:09:55 ID:rqT4Q1HM0
「そして、約一週間後の模擬試験。
 解けない、解けない、解けない。
 これでいいはずの答えに確信が持てません。
 知識を整理し直して再確認。でもまた迷いが出て再確認。
 さっさと次の問題へ行けばいいのに、書いた答えへの不安に囚われて進めず、
 解き直すうちに答えが二転三転し始めて、簡単なはずの問題で泥沼です。
 心の底にあった、勉強をサボった負い目と不安が、自分の回答を信じられなくしていました。
 これまで圧倒的な学力でのパワープレイしかしてこなかった私には、
 自信のない状態で回答したり、問題を取捨選択して時間配分したりするという、
 受験生にとって当たり前のスキルが欠落していました。
 私の目からは試験中にも拘らず口から嗚咽が漏らし、目から涙を溢れさせました。
 認めたくない、怠惰から低い点数に甘んじる、落ちこぼれた自分。
 当惑して、イライラして、タバコが欲しくなって、ついには途中で試験を放棄しました。
 そしてトイレでタバコです。
 自分は自信に満ちた状態でのパワープレイでしか得点できず、
 その状態を取り戻すには受験本番まであまりにも時間がないという絶望感。
 受験を半年後に控えた大事な時期での躓き。
 私は挫折に弱い人間でした。
 少しはなんとかしようと足掻きましたが、試験勉強と向き合うことがどんどん苦痛になり、
 私は勉強から遠ざかりました。
 後日に発表された模試の結果はやはり散々なものでした。
 塾に張り出された成績上位者の表のどこにも私の名前はありませんでした。
 傍から見ればそれは、この試験に限って体調不良でも起こしていたか、
 あるいは受験生にありがちなスランプによるものと見えたかもしれません。
 けれども惨敗の原因を知っている自分には、その結果は堕落した優等生の証明でした。
 ついこの前まではあそこにいたのに、そこはもう二度と戻れない、仰ぎ見る場所。
 塾の下位クラスにいる茶髪の友達たちは上位者の表に私がないのを確認すると、
 私に友好的な笑みを漏らしました。
 かつて私が嫌悪し見下していたものに、私自身が、なっている。
 心のどこかで感じる口惜しさ、そして不思議な解放感。
 優等生と言われていた私の新しい居場所は、こうして正式に、
 世間で不良とかチャラいとか言われる人たちの輪の中に決定しました。
 そもそも私は勉強そのものが好きな訳ではなかったのです。
 私にとって勉強は、周囲に認めてもらうための道具、プライドを満たすための道具、
 大人に義務を守るいい子をアピールするための道具だったのです。
 だから、彼らに居場所をもらい、悪びれて真面目な人間を見下してプライドを満たし、
 大人や社会への自己アピールを否定できてしまったとき、
 私には勉強する必要も、優等生である必要もなくなりました。
 心の痛みや違和感や誤魔化しを、どこかに感じつつ。
 優等生でなくなった私は、遊び人になって、楽しいことに耽りました。
 カラオケ、タバコ、お酒、そして、性行為。
 彼氏とのそれは、知らない人とのそれへと発展しました。
 万引きもやりました。スリルが楽しくて何度もやりました。
 迷惑を掛けたお店の人、本当に、本当に、ごめんなさい。
 それに、私は、私は…」

286玄米茶:2020/05/09(土) 05:10:15 ID:rqT4Q1HM0
弥生はスピーチの途中で言葉を詰まらせた。
「私は…」
その先を話すことへの弥生の重圧と躊躇いが、否応なしに語調から伝わる。
静まり返った会場。
その会場の片隅から、成人式実行委員会の女性スタッフの声が上がった。
「もういいよ!弥生さん!そこから先は話さなくていいよ!」
その声に弥生は聞き覚えがあった。
「…みず…き…ちゃん…?」
かつての弥生の後輩、水希である。
「弥生さん!みんな不快になるだけだから!それ話しても!
 もういいんだったら!もう話しまとめてよ!」
それは弥生に発言を思い留まらせようとする訴えだった。
しかし、会場からは別の声が上がった。
「頑張れ!大丈夫だから!それ話すためにそこへ上がったんだろ!?頑張れ!」
「頑張って〜!」
「頑張れ〜!」
パチ、パチ、パチ
会場のどこかから、ゆっくり手を打つ音がし始めた。
その拍手はすぐに周囲の客席へと伝播していく。
パチ、パチ、パチ
水希は背筋がゾクリとするのを感じて声を発した。
「弥生さんやめて!」
しかしその声は、急速に勢いを増す拍手の音に掻き消された。
パチ、パチ、パチパチパチパチパチ
ザァァァァァァァーーーーーーーーーー………
会場全体から沸き起こる拍手の波の音。
壇上できついライトの光に照らし出されている弥生は、
暗がりに潜む聴衆の多さを改めて感じるとともに、自分への意思を感じた。
「ありがとうございます。ありがとうございます、皆さん。」
弥生の決意を確認した聴衆は、納得して拍手を鳴りやませた。
静けさを取り戻した会場の中、弥生は再びゆっくりと口を開く。
「…私は、
 絶対に手を出してはいけないものにハマってしまい、
 それがなくては生きていけない、壊れた頭の人間になりました。」
水希はそれを聞くと手で顔を覆いその場にへたり込んだ。
手の内側からすすり泣く声が漏れている。
「…やよい…さん…」
水希の目の前で起きていることは、尊敬する人の公開処刑だった。

287玄米茶:2020/05/09(土) 05:10:36 ID:rqT4Q1HM0
そのときである。
「ねぇ!」
会場から声が上がった。
「絶対に手を出してはいけないものってなぁ〜にぃ〜?」
声の主は、いつの間にか会場内に戻っていたあの花魁のような茶髪の女だった。
「私バカからだからぁ〜 よく分かんないのぉ〜
 絶対に手を出してはいけないものってなぁ〜にぃ〜!?
 もっとバカの私にも分かるようにぃ〜 分かりやすくぅ〜 言って!?」
「いっ言われなくてもちゃんと…!」
「きゃは!それはめんごめんご!で、何なわけぇ!?」
「私がするようになったのは…」
「うんうん、優等生だった弥生ちゃんがするようになったのはぁ〜!?」
「ク…」
ペースを乱されたせいか、弥生は言葉を詰まらせた。
「く!?クで始まるの!?何だろう?なになに、なにかなぁ〜!?
 ほらほら早く早くぅ〜!」
「…ク…クス…リ…」
躊躇いの感じられる口惜しそうな声でやっと出た言葉に、
茶髪の女はなおも噛みついた。
「クスリ?クスリはだめなのぉ〜?
 風邪とかになったら使うしぃ〜? 別にいいじゃん!?
 あ!ひょっとしてヤバいクスリ!?
 分かんないなぁ〜!なんて言うおクスリィ〜!?はいっ!どうぞ!!」
再び弥生の発言の番である。
「…か…せ…ざい…」
「だからぁ〜 分かるよぉにぃ〜!さっきまでみたいにもっと大きな声でぇ〜!
 みんなにきちんと聞こえるよぉにぃ〜!はいっ!!どぉ〜ぞっ!!」
「弥生さん!もういいよ!もうっ…」
水希から悲痛な声が発せられる。
しかし弥生はもう一度、顔を紅潮させながらその言葉を口にした。
「…かく…せい…ざい…
 私が手を出した薬は… かく せい ざい です…」
会場に沈黙が流れた後、水希の泣き声が聞こえた。
そしてあの茶髪の女は、勝ち誇ったような笑い声を上げた。
「きゃは!ははははっ!ほぉ〜ら!やっぱり偽善者だ!
 なにをこの期に及んで優等生面してんの!?ばっかじゃない!?
 きゃはははははははは!」
茶髪の女は笑いながら通路を歩き、満足気にそのまま会場から出て行った。

288玄米茶:2020/05/09(土) 05:10:57 ID:rqT4Q1HM0
弥生はそれを見届けてスピーチを再開した。
「…今、言った通りです。
 私は覚醒剤の中毒者になりました。
 クスリを始めて手に入れる切っ掛けは、あの惨敗した模試でした。
 結果発表の1ヵ月後が怖くて気が滅入っているときに、気を遣ってくれたグループの友達が、
 これを飲めば気分がハイになって集中し続けることができるよと、小さな錠剤をくれました。
 私はそれが何かを察しつつ、好意で差し出されたそれを受け取りました。
 使うことはないだろうけどと思いながら。
 その後、私は以前のように頑張って机に向かいました。
 勉強のペースを取り戻そうとしたのです。
 でも、伸びてしまったゴムはなかなか元には戻りません。
 今日はもう十分頑張ったから。これ以上やっても頭に入らないから。
 今日は疲れてるから。明日からがんばればいいから。
 自分に言い訳ばかりして、机に座っただけで勉強しないまま寝てしまう日が続きました。
 そう、いつの間にか私にとって勉強は、億劫なものになっていました。
 その事実に気づいて私は焦りました。
 すぐ元に戻れると思っていたのに。こんな頑張れない自分なんて嫌。
 このままじゃ落ちこぼれてしまう。
 でも、前みたいに頑張れない。どうしよう。どうしよう。
 一方で、そんなに頑張らなくてもいい、楽な方へ流れたらいいという考えが
 私の中にべったりと育っていて、
 その心に負けそうで、私はより追い詰められました。
 そして錠剤のことが頭を過ぎることが多くなったのです。
 脳の覚醒を少しだけ手助けしてくれるもの。本当に必要なときは、使っていいもの。
 一度だけなら…
 怠け心との戦いに加えて、錠剤使用の誘惑との戦いが始まってしまいました。
 でも私はギリギリのところで踏みとどまっていたんです。
 錠剤を口元まで運びながらも、途中でふっと我に返って、それをしまい込む自分に安堵する。
 そんな夜の繰り返し。
 でもその繰り返しは、決してクスリを遠ざけて行くものではなく、
 むしろクスリへの期待と好奇心を塗りこめて行くプロセスでした。

289玄米茶:2020/05/09(土) 05:11:21 ID:rqT4Q1HM0
「そしてある夜、錠剤をくれた友達から電話がありました。
 遊ばなくなったけど元気か、勉強はがんばれてるか、
 そんな話を5分ほどしているうちに、渡した薬は役に立ったかと聞かれました。
 私が錠剤は飲んでいないと告げると、
 友達は、やっぱり弥生ちゃんは弥生ちゃんだねって言いました。優しい気さくな一言。
 でも私はその言葉に、疎外感と、善意を裏切ってしまったという思いを感じ、
 今すぐ錠剤を飲むと言いました。
 気が進まないなら無理しなくていいよと友達は言ってくれましたが、
 その優しさが逆に、私に錠剤をすぐ飲むと宣言させました。
 大事な大事な勉強のために。
 友達の善意に応えるために。
 限界域をとっくに超えていたクスリへの欲求が、言い訳を得て、
 そっと私の背中を押しました。
 一度だけ。今回限りの、この一度だけ。
 私は取り出した錠剤を口に含んでゴクリと飲みました。
 妙な達成感。もうこれでクスリを飲むの飲まないで迷わなくていい。
 でも頬にはなぜか涙が伝っていました。
 そしてクスリが効いてきました。
 言葉にできない全能の感覚。
 世界の全てがクリアに見えて美しく愉快に感じ取られました。
 気持ちが高揚してハイになりシアワセを感じました。
 電話の向こうの友達は言いました。君は今、スーパーマンなんだよと。
 言葉の通り強い自分への確信が溢れ出てきます。
 昂った気持ちの中、私は狂ったように机に向かいました。
 12時が過ぎ、2時が過ぎ、朝が過ぎても途切れない集中力が続きました。
 でもクスリが切れると酷い疲労感に襲われ、ぐったり死んだように眠りました。
 そして起きたとき。
 私は違法薬物の使用者に生まれ変わっていました。
 不正を嫌う優等生。それは過去のものになりつつありました。」

290玄米茶:2020/05/09(土) 05:11:44 ID:rqT4Q1HM0
「そして、模擬試験の結果発表の日が来ました。
 とても低い点を採ったことに加えて、私が学校や塾をずる休みしたことや、
 素行が悪いと言われる友達と交遊していることが親にバレました。
 当然、私はこっぴどく親に怒られました。
 逆恨み的な親への憎悪と、それ以上の自己嫌悪。
 辛かった。悔しかった。もうどうでもいいと思った。
 グループの友達の前で、使い込んだ問題集にライターで火をつけて勉強とサヨナラしました。
 同時にそれは、真面目に頑張って生きてきた、優等生の自分との決別でした。
 そして脳にこびりついてしまったクスリの感覚。
 勉強のカンフル剤にと思って、一度だけと思って使ったクスリにまた手が伸びました。
 もう一度だけ。あの感覚をもう一度だけ。
 私は刹那的な楽しさと快楽の底なし沼にのめり込んで行ったのです。
 付き合っていた彼氏から上質のクスリや新しいクスリを貰うようになり、
 センター試験の日も私はキメセクに明け暮れていました。
 受験勉強の追い込みで皆が必死になる秋。
 センター試験を皮切りに一般試験が始まって、皆が試験に人生を掛ける冬。
 そして、それぞれが自分の進路に歩みだす春。
 その間に私がやっていたことは、
 カラオケ、煙草、酒、パチンコ、セックス、売春、盗み、クスリでした。
 楽に稼いで、楽しいことに耽って、毎日ケタケタ笑っていました。
 つい去年まで、そんな生活を続けていたのです。」

291玄米茶:2020/05/09(土) 05:12:10 ID:rqT4Q1HM0
「でも去年、そんな日々に終わりが来ました。
 ある日、私のところに、スーツ姿の男性と女性がやって来たのです。
 二人は部屋に入ると早々にクスリを見つけ、私は逮捕されました。
 尿検査ももちろん陽性です。私は裁判を受け、有罪判決を受けました。
 懲役1年6ヵ月、執行猶予3年。
 そう、今の私は、裁判所から執行猶予を頂いてこの場に立っている身なのです。
 違法薬物に手を染めた犯罪者。
 こんな前科のある私ですが、取り組んでいることがあります。
 それは、薬物の恐ろしさを伝えること。
 そして、薬物依存による苦しみからの解放のため、募金活動をすることです。
 皆さん、薬物の濫用は絶対に行ってはいけません。
 たった1回の使用が、人生を狂わせ、多くの人を悲しませます。
 自分の人生を損なうだけでなく、大事な家族の人生や他人の人生も狂わせます。
 そして、薬物依存に苦しむ人を、どうか見捨てないでください。
 自業自得と切り捨てず、苦しむ人間に支援をお願いしたいのです。
 今日も私は会場の外の広場で募金に立っていました。
 そして多くの慈善の心を頂きました。ありがとうございます。
 どうか皆さんの優しさで、二十歳の優しさで、寛容さで、支援してください。
 お願いします。どうかお願いします。
 今日は、薬物の怖さと支援のお願いが言いたくて、
 そして今の私を晒すことで同い年の皆さんに何か訴え掛けることができるのではと思って、
 この場に登壇しました。
 晴れの日に、たくさんの不快なことを耳に入れたことをお許しください。
 最後に、お父さん、お母さん、ご迷惑を掛けた方々、本当にごめんなさい。
 社会にもっと貢献できるはずだった私、ごめんなさい。
 長々とお話ししましたが、これで終わりたいと思います。
 皆さん、ありがとうございました。」
弥生が深々と頭を下げる。
すると会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「がんばれ〜!」
「弥生ちゃん頑張って〜!」
会場の所々から励ます声があがり、弥生は何度も会場に頭を下げるのだった。

292玄米茶:2020/05/09(土) 05:12:28 ID:rqT4Q1HM0
成人式のプログラムが終わり、
会場前の広場は再び新成人達でごった返している。
その雑踏の中に、募金を呼び掛ける声が響いていた。
弥生である。
「募金をお願いします!」
その眼差しからは必死さが見て取れる。
「薬物中毒者を救うために、募金をお願いします!」
賛同した人々から硬貨やお札が募金箱に投じられていく。
「張れ弥生ちゃん!」
「弥生さんがんばって!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
何度も笑顔で頭を下げる弥生。
その様子を、徹と麻美は少し離れた場所から見ていた。
「いやぁびっくりしたよな、弥生の演説。」
「うん、びっくりした。まさかあんなことになってたなんて。」
「だよなぁ…
 あの、勉強ができて、真面目で、正義感の強かった弥生が、
 まさか不良になって、しかもヤク中にまでなってたなんてな。」
「ホントそう。でも立ち直ってたよね弥生ちゃん。
 やっぱ優等生のオーラみたいなのを感じたわ。」
「俺もそう思った。やっぱあいつすごいよ!
 皆への戒めと募金のために、ああやって自分の恥を晒したんだ。
 しかもあんな大群衆の前で。並みの人間じゃできねぇよな!」
「うんうん!やっぱり弥生ちゃんは優等生よ!」
「だよな!」
二人は弥生の姿に感心していた。

293玄米茶:2020/05/09(土) 05:12:46 ID:rqT4Q1HM0
そこへ葵が近寄ってきた。
「徹〜」
「お、葵じゃねーか。なんだよニヤニヤしやがって。」
「ふふっ 弥生が見られてよかったね。
 んでもって、徹の言ってたこと、外れてて残念だったね。
 あたしは遊び人、弥生は優等生、みたいに言ってたけどさぁ〜
 弥生は優等生どころか、遊び人も驚く遊び人、しかもヤク中の犯罪者になってたね〜」
「うっせぇよ。
 でも今の弥生は違うじゃねーか。俺は元の優等生の弥生を感じたぜ。」
「そうかなぁ〜 ま、商魂逞しいのは認めるけど。」
「はぁ?」
葵はスマホの画面を二人に見せた。
「これ、弥生の作ったホームページ。ヤク中の人のための募金のページ〜
 ほらほら、みんなから同情買うようなことこんなに一杯書いてさ。
 そして最後にヤク中の人のために、ここの口座に振り込めだってぇ〜
 ご親切にカードもOKらしいよ?
 あと、毎月定額の募金の登録方法まで書いてある周到さ。
 ほぉ〜んと、弥生はお金集めに必死だよね。」
「そんくらいにしとけよ?」
徹の静止もどこ吹く風、葵は話しを続けた。
「あの弥生、お金のためならどこまでのことするんだろう?
 ひょっとしたら、大口募金者には特別サービスとかもあったりしてぇ〜?」
葵は自分の胸元を少し開いて見せるような仕草をした。
「ちょっと!そういう冗談よくないよ葵。弥生ちゃん頑張ってるのに!」
「麻美の言う通りだぜっ」
「あはは!めんごめんごぉ〜
 でもそういうからには、たっぷり募金してあげてよね?
 徹は今がっつり儲けてるみたいだし。建設の現場、お金いいんでしょ?」
「どっからそんな情報を仕入れてくんだよおめーは…
 ま、たしかに貰えるもんはいいけどな。
 弥生には協力するさ。ポンと大金出してやらぁ」
「おお、さっすが。稼いでる男は違うねぇ太っ腹!」
葵は手を叩いた。
「じゃ、今後もせいぜい、弥生を支援してあげてぇ〜 あはは!」
そう言って葵は雑踏の中へと去って行く。
「なんだあいつ…」
二人はポカンと葵の背中を見つめていた。

294玄米茶:2020/05/09(土) 05:13:07 ID:rqT4Q1HM0
その間にも募金を呼び掛け続けている弥生。
そして、その弥生を遠まきに見ている夫婦の姿が映った。
「あ!あそこにいるのは弥生のオヤジさんとお袋さんだ。
 俺、挨拶してくるよ。」
徹は小走りで走り出し、麻美もそれに着いて行く。
「こんにちわ。お久しぶりです!」
「ああ、あなたは徹君、それに麻美さんも。
 お二人ともお元気そうね。」
「おばさんこそお変わりなくて。
 それにしても弥生さんの演説、すごかったです。俺感動しました!」
「ごめんなさいね、せっかくのみんなの成人式なのに、
 娘があんな暗い話しをしてしまって。本当に申し訳ないわ。」
「そんなことないですよ。聞けて良かったです!
 俺、弥生さんは立派だと思います!」
「あんな子のことを、そんな、立派だなんて…」
弥生の母は目頭を押さえた。
「弥生さん、今はどうしてるんですか?」
その問いには父が答えた。
「あの子は薬物患者の支援のボランティアをしているよ。
 たまにしか顔を見ないから詳しいことは分からないがね。」
「一緒に暮らしてないんですか?」
「ああ。 
 あの子は高校3年の夏から家に帰って来ることが少なくなってね。
 ある日、探すなと手紙を残して家を出て行ってしまった。
 探せばもっと距離を置かれてしまうかもしれない。
 そう思うと怖くて何もできなかったよ。
 でもメールにだけは気まぐれに返信してくれてね。
 変な噂を聞く度に心配してメールすると、大丈夫って返してくれた。
 やっと会えたのは、家出してから1年以上経って、逮捕された後だ。
 裁判後、保護観察になってまた私達と一緒に暮らしてくれると思ったんだが、
 一人暮らしが性に合ってしまったらしく、そのまま一人暮らしだよ。
 だから、月に2回の保護観察の面談の時にしか、今でも会わないんだ。
 保護観察の担当者は同居を強く勧めているが、
 あの子の好きなようにさせたいし、それに以前のように心配はしていない。
 悪い連中とは手を切って、全うに生活しているみたいだからね。
 捕まった後、あの子は何か変わった気がするんだよ。」

295玄米茶:2020/05/09(土) 05:13:27 ID:rqT4Q1HM0
父は遠くの弥生を見つめた後、やや俯いて口を開いた。
「私はあの子に期待し過ぎてしまった。
 それをあの子も感じ取って重荷だったんだろう。
 あの子は小さい頃から何をやらせてもすぐに上手くできてね、
 しかも、真面目で、正義感が強くて、テストはいつも満点。
 顔立ちも、親の私が言うのもなんだが悪くはない。
 だから、ついつい調子に乗って、大きな期待をしてしまったんだ。
 高校3年の夏、あの子が模試でひどい点数を取って帰ってきた。
 私はその時、あの子を怒鳴った。
 裏切られたという気持ち、親の見栄や体裁やエゴだけでね。
 今思えば父親として情けない。
 さっき言った通り、あの子はしばらくして、家を出て行ってしまったよ。
 部屋を見ると、お年玉やらお祝いやらを溜めていた通帳が一緒になくなっていた。
 そして、家出の後は、家に置いてあった金や高級品が度々なくなってね。
 私達の留守を見計らって、持ち出していたんだろう。
 金に困って家に帰って来るならいいが、
 盗みをしたり、良からぬ商売などしては大変だ。
 何より金のことであの子を困らせたくはない。
 親というのはバカでね、
 そんな娘に、月10万円の仕送りをしてやることにしたよ。
 月末にあの子の通帳に10万円。
 それは今でも続いている。
 金を入れてやると、ありがとうってメールをくれるんだが、
 うっかり月末に入れ忘れると無理しなくていいよなんて送って来るんだから、
 あの子もしっかりしているよ。
 普段は自分から連絡らしい連絡なんてして来ないのにね。
 そうそう、今日の成人式のことだって、出席するかさえ教えてくれなかった。
 もし来ているならせめて同じ会場にいてやりたいと、
 その気持ちだけで足を運んだんだ。
 まさかあの子の演説を聞くことになるだなんて、
 夢にも思わなかったよ。」
自嘲気味に語る弥生の父に徹は言った。
「弥生さんのこと、すごく大事に思ってるんですね。」
「ああ。ダメな父親にダメな娘だが、曲がりなりにも親子だからね。
 私の娘、そう、私の…娘…」
そう言うと顔を真っ赤にして目頭を押さえた。
「おじさん、もっと信用して大丈夫ですよ、娘さんのこと。
 今日の弥生さんがそれを証明していますよ。」
「そうだね。ありがとう、ありがとう…」
父は涙を拭いながら、遠くで募金活動に勤しむ弥生を見ながら何度も頷いた。

296玄米茶:2020/05/09(土) 05:13:49 ID:rqT4Q1HM0
そしてネオン街を歩きながら、弥生は徹の肩に頭を寄せて言った。
「ねえ…
 今の私達って、傍から見るとカップルに見えちゃったりするのかな。」
「おいおい酔ってるのか?」
「それもあるかもしれい。
 でもそれだけじゃないよ。
 実は私、中学の時、徹君にちょっと興味あったの。」
「え?ホントかよそれ。」
「うん。
 だから今こうして一緒にいられるのがすごく嬉しい。」
「おいおい参ったな。」
「せっかくだから誰もいないところで
 二人っきりで話がしたいな。」
「おう。」
「ありがとう。じゃあ着いてきて。」
「知ってる店でもあるのか?」
弥生は徹を連れてどんどん歩いた。
そして大きな通りを外れて細い路地に入り、弥生は足を止めた。
「おいおい、ここって…」
徹はポカンとしてしまった。
そこは、男女が肉体関係を欲して入るホテルだったからである。
「心配しないで。少し静かな場所を借りたいだけだから。ね?お願い。」
徹は弥生の懇願されてホテルの中へ入った。
部屋で徹が立ち尽くしていると、弥生が背中から抱き着いてきた。
「おっ、おい、弥生…?」
「私、徹君のこと好きだったの。
 いろんな不安なこと、忘れさせて欲しい。
 刹那的で身勝手なお願いだってことは分かってる。
 でも、だけど、今私は、徹君に抱かれたいの。お願い…」
徹の背中に押し付けられる弥生の柔らかい肉体の感触。
弥生の手は、徹の胸や腹、そしてその下にまで這いずり回っている。
若い徹は、もはや要求に抗い切れなかった。
「…弥生っ!」
「ああっ!徹君!」
激しい熱いキス。
そして二人はベッドの上で生まれたままの姿となり、
お互いを激しく貪った。
「ああっ!いいっ!ああっ!!」
「弥生!俺、俺もうイキそうだ!」
「いいよ徹君っ、出して!そのまま中に出してぇっ!」
徹は結ばれたまま精を放った。
その律動に合わせ、弥生もまた大きく体をのけ反らせていた。

297玄米茶:2020/05/09(土) 05:14:12 ID:rqT4Q1HM0
情事の後。
弥生は服を着ながら背中越しに徹に言った。
「徹君、すごくよかったよ。ありがとう。」
「ああ。」
「でも、やっぱりこういうの、まずかったよね。
 徹君は親方の娘さんとの結婚を控えてるのに。
 私のワガママで本当にごめんなさい。」
「気にすんなって。」
「うん。私と徹君だけの秘密。
 私と徹君が誰にも言いさえしなければ、それで済むんだもの。
 そう、私と徹君さえ誰にも言わなければ。」
弥生は少し俯いた。
「ねえ、徹君…
 少し言いにくいんだけど、私、今日は危険日だったの…」
「え…」
徹は息を呑んだ。
「子供できちゃったら…さすがにまずいでしょ?
 だから…だからね、
 もしもの時のために、堕ろすお金を私に預けて欲しいの。
 20万円くらいあれば大丈夫だと思う。
 避妊薬は体質が合わなくて飲めないから。
 だから… お願い。20万円私に預けて欲しい。」
「…分かった、なんとかするよ。」
「ありがとう。助かるわ。今、キャッシュカードとか持ってる?」
「一応ある。」
「よかった。
 じゃあ近くのコンビニへ行って、お金を降ろしてくれないかな。」
「おう。」
「それからお願いついでに言うんだけど…
 これからも継続的に募金してくれると助かる。
 そうね、毎月月末に。いい?」
「ああ。」
「徹君のそういう優しいとこ、好きだよ。ありがとう。」
二人はホテルを出てコンビニに寄った。
「これでいいか?」
徹はATMで降ろした20万円を弥生に手渡した。
「うん。ありがとう。
 これで、もしもの時でもなんとかなるわ。」
弥生はお札をしまい込むと、
徹に手を振って夜の街へと消えて行った。

298玄米茶:2020/05/09(土) 05:14:30 ID:rqT4Q1HM0
同夜。
シャッターを降ろした不動産屋の事務所の一室に
若い女二人の姿があった。
一人は携帯電話で話しをしている。
「…うんうん。うんうん。
 え?前に紹介したあの仕事のお金?ちゃんと振り込んであるでしょ?
 なに?もっと多くてもいいんじゃないかって?
 あたしはこれでバランス取れてると思ってるんだけど。
 うんうん。うんうん。
 うーん、あのさぁ〜
 こっちも割と汗かいてるんだよ?
 金を持ってて稼げそうなカモ、
 厳選してあんたに紹介してやってんだから。
 今あんたが稼げてるのって、
 あたしがお膳立てしてあげてるからだよね?
 こっちもリスク負いながら見えないとこでいろいろ動いてんだからさ。
 そこんとこ分かってくんない?
 うん。うんうん。
 分かってくれればいいの。
 はいはい。じゃーねー」
女は電話を切った。
もう一人の女はその仕草を見ながら小さく微笑む。
『商売熱心ね。
 昼は不動産の仲介、夜はさて、何を仲介してるのかしら?』
「さてね。
 言うなれば人材派遣ってとこ?」
女はそう言いながら煙草に火を点けた。

299玄米茶:2020/05/09(土) 05:14:55 ID:rqT4Q1HM0
「あ〜おいしい。仕事の後の一服は最高。」
『相変わらず煙草が好きね。』
「だって美味しいんだもん。あんたもいる?」
『私、煙草はやらないの。
 ところでその美味しいという快感は、
 どうやって生み出されているか知ってる?』
「さあ?」
『その快感はね、脳が感じているの。神経伝達物質、ドーパミンによってね。』
「ドーパミンねぇ」
『脳の神経細胞が“快感オン”の状態になると、
 その神経細胞の末端から、溜め込んでいたドーパミンが噴射されるわ。
 隣り合った神経細胞の先端に向けてね。
 その先端にはドーパミンをキャッチする受容体が無数にあって、
 キャッチが行われると、その神経細胞もまた快楽オンの状態になる。
 続けてその隣の神経細胞へもドーパミンの噴射がなされて…
 そんな、数珠つなぎの伝達で、脳は快感を得ている。
 でもその快感は永続しない。
 ドーパミンは、受容体にキャッチされたものも、
 そしてキャッチされずに神経細胞の間に漂ったドーパミンも、
 すぐに神経細胞に再吸収されて、快感オンから快感オフになる。
 神経細胞の末端に無数にあるドーパミンを再吸収する穴は
 トランスポーターと呼ばれているわ。』

300玄米茶:2020/05/09(土) 05:15:13 ID:rqT4Q1HM0
心に話す女にもう一人の女は煙草を吹かしながら聞いた。
「あのさ、ドーパミンが快感をくれるって言うけどさ、
 煙草を吸った時以外では、どんな時にドーパミンって出るわけ?」
『たくさんあるわよ。
 好きなことをしているとき、成功したとき、褒められたとき、
 やる気が出ているとき、美味しいものを食べたとき、
 恋愛しているとき、セックスしているとき、それから…」
「そんなに!?もう人間なんて、
 ドーパミンっていうご褒美をもらうために生きてるようなものね。
 ん?ということは?
 もしドーパミンを脳に溢れさせるクスリがあったら…
 いろいろしなくてもハッピーになれるってこと?」
『ある意味そうね。
 人間のなすことの多くがドーパミンによる快感のため。
 だとするなら、
 ドーパミンを出すクスリが人生の優先順位の1位になっても、
 何の不思議もないわ。
 モラルよりも、名誉や財産よりも、友達よりも、家族よりも。
 高邁な勉学や達成のための努力なんて、ゴミクズみたいに思えるかも。
 なぜならクスリが、
 それらを上回る幸福を与えてくれるんだから。』
「けはははは!」
聞いていた女はケタケタと笑った。
「なるほどね。
 あたし、知ってるかも。そういうクスリ、そういう連中!」
『でもそれは幸福の前借り。行く手にあるのは…
 そうそう、脳は一度覚えた強い快感を決して忘れはしない。
 覚えた快感を得る術を反復できないとストレスにすらなる。
 だから、また欲しくなるの。
 強烈な幸福を生むクスリならなおさらでしょうね。』
「あたしはニコチンで十分さ。」
女は口を大きく開けて、煙草の煙を吐いて見せた。

301玄米茶:2020/05/09(土) 05:15:36 ID:rqT4Q1HM0
プスリ

皮膚にステンレスの切っ先が突き刺さる。
人間を細菌などの感染から強固に防衛している皮膚。
その皮膚に容易に穴を開け、さらに皮下の奥へと沈み込んでいく。
先端は血管壁を破り、有害物に暴露されてはならない血管の中に顔を出した。

グググ…

シリンダーが押され、筒状の容器の内容液が針の先端から血流に乗る。
もはや回収できない。
放出された液体は血液に乗って心臓を経由し脳へと至った。
快の伝達物質であるドーパミン。
それは脳神経細胞抹消に存在する放出用の調整弁と回収用の調整弁、
すなわちトランスポーターと呼ばれる器官によって、
正常な噴射量が維持されている。
投与された物質の標的器官はまさにそれであり、
早々にそれらの器官の正常な動作は阻害された。
放出を担うトランスポーターはその調節機能を失い、
壊れた蛇口と化して、ドーパミンの異常な放出を始める。
回収を担うトランスポーターに至っては、
大きくこじ開けられてもはや回収の用をなさず、
逆にドーパミンを大量に漏洩させる放出口へと変貌する。
脳神経細胞の間隙に異常に噴射され、そして回収されずに充満するドーパミン。
受容体は通常の量を遥かに超えるドーパミンに暴露され、
脳神経細胞は途絶えることのない悲鳴のように快を連呼し続けた。
狂った量の快、狂った回数の快。
まるでオモチャのスイッチが、子供に壊れるまで押されるように。

… アア シアワセ …
… アア シアワセ …

人体の防衛機能、ホメオスタシス。
異常な量のドーパミンに対抗するため、脳神経細胞は受容体を減らす準備に入った。
同量のドーパミンの暴露を受けても、受容体が少なければ、異常な快は生じない。
しかしそれは、通常のドーパミンの噴射量ではもはや、
これまで得ていた通常の快が得られなくなることをも意味した。

常態的な倦怠。常態的な脱力。常態的な無気力。

そうなった時、逃れる術がひとつある。再投与。
もし今回と同程度の異常な快を欲すれば、今回以上の量の再投与。
もっと。もっと。もっと。

… アア シアワセ …

その人間は幸福の中にいた。

302玄米茶:2020/05/09(土) 20:31:47 ID:EaZDP6EA0
【追加 295と296の間に投下漏れがありましたので投下します】

それから数日後の夜。
バーで会話をする男女の姿があった。
徹と弥生である。
「メールをもらったときは驚いたよ。
 まさか俺と話しがしたいだなんて。」
「成人式でみんなと会っているうちに、徹君とも話しがしたいって思ったの。
 連絡先、友達にこそっと教えてもらっちゃった。」
「全然構わねぇさ。
 それにしてもすごかったぜ、成人式でのお前の演説。
 よく決意したよな、あんなこと話すの。」
「そう言ってもらえると嬉しい。
 でもみんなの晴れの成人式であんな暗いこと話してごめんなさい。」
「謝ることなんかねぇさ。
 どうしても伝えたかったんだろ?聞いてて伝わって来たぜ。」
「うん、ありがとう。
 私なんかのことより、徹君のこと聞きたいな。
 建設の現場で働いてるの?稼ぎもすごいとか。
「おうよ!仕事はキツイけど、他のやつよりいい稼ぎしてぜ。
 親分も俺のこと気に入ってくれてて。」
「へぇ〜そうなんだ!
 それで募金もたくさん振込んでくれたのね。
 すごい金額でびっくりしちゃった。ありがとう。」
「大したことねぇって。」
「これも噂で聞いたんだけど、結婚するの?」
「よく知ってんな。
 うちの親分に娘をもらってくれと言われてよ、
 トントン拍子に話しが進んじまってる。」
「すごいね、人生がどんどん先へ進んでる。」
二人は幾ばくか話しをして店を出た。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板