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OP投下スレ
29
:
◆wKs3a28q6Q
:2012/05/13(日) 11:31:03 ID:Q/4nBtBM
「くそっ! くそっ!」
泣きじゃくる真美を引きずり、洋榎はソファの後ろへと避難する。
僅かな時間で、いくつもの命が奪われてしまった。
その内2つは、自分の愛する人のもの。
悔しさと悲しさで、どうにかなってしまいそうだった。
「うう……かえで姉、勝てそうですか……?」
「勝つとは思うけど……でもちょっとヤバいかも……何か全然決まらないし……」
ソファの端から顔を出し、風香と史伽が戦闘経過を見守る。
素人の2人に、じわじわと楓が押していることなど分からない。
むしろ圧勝する所しか見たことがない2人には、楓が異常に苦戦しているように見えた。
「こっちに注意を向けさせれたら、その隙に倒せるかも……」
「はァ!? おいおい、まさか突っ込む気じゃないやろな」
風香の呟きに、思わず洋榎がツッコミを入れる。
素人目に見ても楓達の戦いは異次元であり、とてもではないが首を突っ込める代物などではなかった。
「だからって……黙って見ているなんて出来るわけないじゃないかっ!」
風香の耳に届くのは、双子の姉妹を失った真美の泣き声。
自分が史伽を失ったら、どれほど辛いだろうか。
楓をこのまま死なせたら、どれほど辛い想いをするか。
「どうせ後悔するなら、立ち向かって後悔したい……!」
そう言うと、風香はソファを飛び出した。
テーブルを通り過ぎる際、お菓子用のフォークを手に取る。
殺傷力などたかが知れてるが、手ぶらでいくよりマシだろうという判断だ。
「ボクらも行くよッ!」
「ああっ! 待ってよぉ!」
風香と史伽にしたら、単なる囮のつもりだった。
注意を引いて、楓に決定打をもたらす、ただそれだけのつもりだった。
彼女達が不幸だったのは、亜美が燃え上がる瞬間を見ていないことだった。
亜美の消火活動に夢中で、恭子の死を見ていなかったことだった。
一番最後に呼び出されたため、摩訶不思議をあまり経験しなかったということもある。
そして何より、魔法があるという宣言時、ここにいなかったことだ。
30
:
◆wKs3a28q6Q
:2012/05/13(日) 11:32:41 ID:Q/4nBtBM
「来るなッ! 風香! 史伽ッ!」
風香達の常識では、焼死させるには何らかの武器と動作がいるものである。
その前に楓が有効打を入れ、攻撃されずに済む公算の高いものである。
「――――――え?」
だがしかし、現実は――否。ファンタジーは非情である。
少女の炎は見つめるだけで発生する類のものだ。
風香と史伽への攻撃を完全に防げるような有効打を入れる余裕、とてもではないが存在しない。
「か……」
本当なら、風香か史伽を犠牲に、ここで少女を倒すのが正解だろう。
そうすれば、少なくとも1人は助かる。
だがしかし、楓にはそれができなかった。
妹同然の2人を前に、体が自然と動いてしまった。
「かえで姉ェェーーーーーーーーー!!」
単純なこと。
少女と風香・史伽の間に割り込めば、一回は死を防げる。
パワーやスピードが高水準で求められる『有効打を叩きこむ』という動作と違い、スピードだけで達成できる目標だ。
割って入ることくらい、楓にはなんてことない。
少女の炎は、楓にとってなんてことないとは、とてもではないが言えなかったけど。
「すま、ない……2人とも……麻帆良に、帰、して……」
楓の背中は、炭と化していた。
ボロボロと忍装束が崩れ落ち、同時に背中の皮膚までもが崩壊していく。
そして、楓の意識も、急速に落ちていった。
「……嫌な仕事だ。無関係な旧世界人を直接虐殺するなんてのは」
楓の死により、拮抗は崩れ去る。
没キャラの鳩尾には、少女の拳がめり込んでいた。
崩れ去る没キャラの首に、手刀が叩き込まれる。
文字通り刀のような鋭い一撃で、没キャラの頭部は体と離れ離れとなった。
「ましてや……他の部屋に見せしめとしてもっていくため、五体をバラさねばならないというのだ」
楓と没キャラ亡き今、少女についてこられる人間はいない。
強い人物が固まりすぎないように、ドラフトできちんと分けた成果があったというものだ。
ナビゲーターを倒せたとしても大切な人を守り抜けないだろうメンツでグループは固めてあるため、
他の部屋にこの惨状を見せつければそう易々と反乱は起きまい。
「この部屋が、みせしめでよかったよ」
声を発することもなく、風香の首がねじ切られる。
お姉ちゃん、と叫ぼうとした時には、史伽の首は宙を舞っていた。
「おかげで一番嫌な仕事が、私の担当で済んだ。
……栞達に、この任務は重すぎる」
言いながら、少女はソファへと歩みを進める。
残る獲物は3人。
いずれも、ソファの裏に隠れている連中だ。
31
:
◆wKs3a28q6Q
:2012/05/13(日) 11:33:54 ID:Q/4nBtBM
(アカン。アカンて。死ぬ。死んでまう……!)
ソファの裏にいる洋榎は、今にも泣き出しそうだった。
怖かった。辛かった。悲しかった。
何が何だかわからなくて、とにかく泣いて全てに当たり散らしたかった。
「嫌……嫌ァ……助けてぇ……」
床に触れていた掌に、液体が付着する。
付着というより、水没と言った方がいいか。
そのくらい派手に、掌は液体に浸かっていた。
視線を移すと、水たまりの中心で、いちごが震え上がっていた。
「こんなんっ……こんなん考慮しとらんよぉ……」
客観的に見て、いちごの姿は無様だろう。
情けないだろう。カッコ悪いだろう。
しかし洋榎にはいちごをとやかく言う資格なんてないように思われた。
きっとさっきまでの自分も、こんな風に怯えるだけだったのだろうから。
(ああっ! クソッ! わぁっとるわ!)
自分の役目は、何だったか。
いちごのように怯えるだけの人間を、
真美のように嘆き悲しみに暮れている人間を、
救い、笑わせ、笑顔にし、前を向かせる。
それが、自分の仕事なんじゃなかったのか。
洋榎はヤケにも近い吹っ切れ方をする。
そしてポケットに入れていたままのWiiリモコンを握り、言った。
「自分ら。前向き。とりあえず、考えるのは無事に生き延びてからにしよ」
真美はまだすんすんと泣いているが、いちごの方は顔を上げた。
まだその目は恐怖に濁っている。
「時間稼いだる。フーカ達と大して変わらんやろうけど、その間にどーにかして、こっから逃げぇ」
無茶を言っていることはわかっている。
けれども生き延びるには、もうそれしか可能性が残ってないのだ。
「でも……」
「諦めんな。没キャラのような運動神経もないし、楓のようにマホーも使えん。
でもな、だからって考えることを放棄したら、そこでしまいや」
虐殺っぷりの演出か、少女は余裕たっぷりに歩いてきている。
まだ、カッコつけて自分を奮いたたせるだけの時間はある。
「凡人はな、考えることで怪物だって食えるもんやで。
――思考停止したら、そこでホンマの凡人や」
「…………」
「だから考えて、生き延び。んで、笑え。折角かわええんやから」
無理矢理に、笑顔を作る。
いびつじゃなく、ちゃんと笑えていただろうか。
それだけが、洋榎の最後の気がかりだった。
「ほんじゃな。あ、でも高校麻雀界のアイドルの座は、譲ったわけと違うからな!」
そうとだけ告げ、ソファを飛び出す。
肉体的にはどこにでもいる女子高生。
掲げる武器はWiiリモコン。
勝てる見込みのない戦い。
「うらああああああああああ!!」
稼げる見込みのない時間。
逃がせるわけのない仲間。
それでも洋榎は立ち向かう。
ほんの僅かな時間に、意地とプライトを見せて。
せめて自分が生きた証を、モニターを見る人々に刻みつけたくて。
この抵抗に賭けた想いが、モニターを見る誰かに伝染すると願って。
32
:
◆wKs3a28q6Q
:2012/05/13(日) 11:35:19 ID:Q/4nBtBM
☆ ★ ☆ ★ ☆
「手間取らせおって……」
少女――焔は、部屋に戻るなりベッドへとダイブした。
どっと疲れた。
旧世界人を虐殺し、殺し合わせる非道行為に打って出たのだ。
疲れないわけがない。
(大丈夫、やれる――――)
今までと、方針が少々異なっているが、目的さえ見失わねば、大のための小さな犠牲と考えられる。
誰もが笑える世界のための、小さな犠牲と割り切れる。
「……何にせよ、賽は投げられた」
ばらした死体を各部屋に配布して、嘘ではないと強調した。
あとは皆が上手く参加者をテレポーテーションさせているだろう。
自分の仕事は、少し休んだら雑務と監視を行うくらいだ。
「バトル・ロワイアル、開幕だ」
後戻りが出来ないことを噛み締めるためにつぶやいて、ベッドから飛び起きると、仲間の様子を見に行こうと荷物を置いて早々に部屋を後にした。
【愛宕洋榎@咲-saki- 死亡】
【佐々野いちご@咲-saki- 死亡】
【末原恭子@咲-saki- 死亡】
【双海亜美@THE IDOLM@STER 死亡】
【双海真美@THE IDOLM@STER 死亡】
【上重漫@咲-saki- 死亡】
【没キャラ@キルミーベイベー 死亡】
【長瀬楓@魔法先生ネギま! 死亡】
【鳴滝風香@魔法先生ネギま! 死亡】
【鳴滝史伽@魔法先生ネギま! 死亡】
【バトル・ロワイアル 開幕】
33
:
◆wKs3a28q6Q
:2012/05/13(日) 11:37:30 ID:Q/4nBtBM
以上で投下終了です。
>>25-26
の本題部分だけでよかったんじゃねーのと我ながら思うし、OPとしては読み返しやすく単純な方が秀逸だろうなとわかっちゃいるものの、
「書きたいものを好き放題に書く」というのを全員が出来るロワになったらええなぁと思い、本当に好き放題やってみました。
一応ギャグ削ったりで軽量化出来るだけしたつもりではあるんですよ、うん。
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