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ＡＡで学ぶ日本経営者列伝その２

8： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:20:55 ID:pJmjSYSU0

奥野は樹脂研究の第一人者であったが、彼は「頭の中が特許だらけ」といわれるほどの研究者であり、彼の力を借りることで、
通気性と防虫が両立した蚊帳を作れるのではないかと伊藤は考えたのである。


　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　 ／　　 　 ＼　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　 　 　 ＼　　　　　　奥野さん、今でもアフリカじゃ何千何万もの人がマラリアで死んでいるんだ。
　　　　 /　 　 　 　 　 ＼　　　i 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　　　　 ',
　　 　 /　　　　　 ＿_ 　 ヽ_ ソ　　　　　　ゞｰ''´　,ｨｆ ￣￣ ア　　　　',　　　　だけど、マラリアは防虫蚊帳さえあれば簡単に予防できる！　あんたの力を貸してくれ！
　　　 /　　　ヾ￣　,.‐-ﾐｰ<､　　　　　 　 　 i　,.ｨ´ ,　¨ヽ 　 ,　　　　　 ,
　　　　 　 　 　ﾊ 　{　i　}　 ヾ　　　　　　 　 ! '/　 {　i　 }　/
　　　 　 　 　 　ゞﾆ≧=´-　,　 　 　 　 　 　 ､ 　 -ゝ=＜.ｲ'
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　　　　　　　　　 ﾄ.､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.ィ ′　 　 　 }
　　　 ',　　　　　　ﾏ`ｧ-..,, _＿＿＿＿＿＿＿＿____ ,..ィ У　　　　　　/
　　 　 ヽ　 　 　 　 ゞノV^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ヾ.j/　 　 　 　 ／







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　　　　 　 　 　 ／　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　/　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ` ．
　 　 　 　 　 ,':　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 '.　　　　わかった！　あんたの研究に力を貸そう！　マラリア予防になる防虫蚊帳、俺が手を貸そうじゃないか！
　　　　　 　 |:　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 : : l
　 　　　　　 |i　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !　:|
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　　　　　　　|,ｨ壬≧ｭ.､　 .!| 　 :/　 　 _.ｲ斗'´　 　 :|
　　　　　　　l　　i弋とﾉ`ｘ-'､::./.:ｰ=ﾆえこﾉl!　　｀ｉ: |
　 　 　 　 　 ',　　` ｰ=.:イ.:: ゝ=:'､:...　`ｰ= ''"　 　 ||
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　　 　 　 　 　 i , '　　　　 　 .!|!　　　　　 　 ' .　　!
　　　　　 　 　 ｌl　　　　　　　人　　　　　　　 l　 ∧
　　　 　 　 　 ∧ゝ --――　　 ` ――--. ､'　/l　!､
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　　　　　 ／　　|　 ＼　　｀.￣￣￣ ´ 　 ／　/　 ,/　 　＼
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奥野も伊藤の志に共感し、マラリアへの挑戦を開始する。。
9： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:21:07 ID:pJmjSYSU0

二人の研究者の熱意により、様々な製品が誕生した。犬・猫のノミ防除用首輪、衣料用防虫シート、害虫を防ぐ工場の防虫網戸などである。
この防虫網戸は、伊藤が構想する防虫蚊帳に転用できることがわかった。

　　　　　　　 　 　 　 　　．―――― ,
　　　　　　　　　　 　 ／　　　 　 　 　　＼
　　　　　　　 　 　 　 |　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　 　 　 　 |　　　 　 　 　 　 　 |　　　　　　伊藤さん、この網戸ならどうにかなるんじゃないか？
　　　　　　　 　 　 　 |　 　 ゝ,＿,ノ ゝ,.__ﾉ|
　　　　　　　 　 　 　 |　　 　（● ） （● ）|
　　　　　　　　　　 　 }　　　（　　　人　　 ）
　　　　　　　　　　　_ﾉ ゝ　　 `ー ´　`ｰ´
　　　　　　　　　　ノ.:`.:,'　ヽ　　　´　｀ /
　　　　　　　．＜＼.:.:.:.:`　_ ゝ　,＿__, 'ヽ､
　　　 ,＿＜.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:/{（　　ノ　 ハ.:.:`ー､
　　／.:.:.:.:.:.:.:メ.:.:.:.:.:.:.:.＼/　ゝ　　 　＞.:.:────　､__,_,
　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｛　 ／ヽ 　　____＿＿＿　＼ヽ,､
　|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ;　` 、.:.:.:.:.:／ヽ.:.:.:.:ヽ´ __＼　　　 ﾍ　　 |　'.'.
　|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:／.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.:＞ ｀ヽ 　 ノ ｀{ 　i　 ii
　ゝ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:j￣.:.:.:.:.:.:.:ヾ　 ヽ / ./　.{.!
　　 ヽ＿.:＿:.:.:.:.:.:.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾞヽ　ﾍ ｲゝ_ij.|
　　　　ゝ.:,_ノ.::.:.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:` ´
　　　　　 ＼::.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´ｊ
　　　　　　　＼f.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ






　　 　 　 　 ＿＿__
　 　 　 　／　　 　 ＼
.　　 　／　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　いや、これじゃだめだ。確かに転用はできるけどこれだけじゃ蚊帳にするには難しい。
.　　／　／）　ノ ' 　ヽ､　＼
　　|　／ .ｲ '（ー）　（ー） u.|
.　　 /,'才.ﾐ)ﾄｪｪｪｪｪｪｪｲ）／
.　　 |　≧ｼ'ヽェｪｪｪェ／ ＼
　／＼　ヽ 　　　　　　　　　ヽ



理由としてはまず、通気性が悪いことであり、確かにこれで蚊は撃退できても、網の目が細かすぎるために通気性が悪くなる。

10： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:22:04 ID:pJmjSYSU0

だが、網戸の技術の転用は明らかに防虫蚊帳への実現に向けた第一歩である。伊藤はさらなる研究を重ねる。ハマダラカを確実に撃墜できる成分、
分量の研究。そして効果を確認するため、蚊の行動を追う実験が来る日も来る日も繰り返された。


　　　　　　　　　　　　 ,- ､　,-､　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,. ､
　　　 　 　 　 　 　 V　＼　 ヽ　　　　　 　 　 　 　 ／ノ }
　　　　　 　 　 　 　 V　 入 . ∧　 　 　 　 　 　 ／ '_... /-. ､
　　　　　　　 　 　 　 V / ∧　∧.　　　　　　 ／-‐'' ／／ /
　　　　　　　　　 　 　 Vヽ. ∧　 i.　　　　　／　_.. ／ '´..／
　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ.ヽ ∧　j. 　 　 ／ ￣..／ '´..／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ､ヽ.∧ .i　　／　,.　'´ .＞' ´
　　　　　　　　　　 ,､　　　|＼ヽﾊ.-‐く,.. '"＞'"´
　　　　 　 　 　 　 i i＼Y云 γ云ヽ　ﾊ／i／i⌒＼
　　　　　　　　　　i i　ゝゞﾂ　ゞ::_ツ.'/i iくi i'´i.ト,j　j＼
　　 　 　 　 　 　 i i.　 　 i iY:::/ゝﾆﾆ.i K_i i_..i.i.　ソ､　＼
　　　　　　　　　 i i.　　　i i.{:::;′　　 i i.i.i.i ト.i.i／.._..入_ノ
.　　　　　　　 　 i i 　 　 i i i ;'　　　　i i i.ｉ.i ｉ. i.i￣　￣
　　　　　　　 　 i i　　　 ｉ ｉ i;′　 　 .i i i.i i i　i.i
.　　　　　 　 　 i i.　 　 //. i!　　　　 i i i.i. i i　i.i
　　　　　　　　//　　 '"´　 !.　　　　 i i ヾ､ヾ､ !.!
　　 　 ,. - = '"´　　 　 　 　 　 　 　 ヾ:,　　　　ﾞヾ､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ




赤外線カメラを使って蚊帳への接触率を調べ、接触後の蚊を入れたケージに自分の手を差し込んで吸血行動を観察する。
さらに効果が確認できれば、蚊帳を洗濯して再び実験を繰り返す。染み出し効果を確認するためである。

11： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:22:40 ID:pJmjSYSU0

そうした研究を重ねていくうちに、伊藤はようやく通気性と防虫を両立させることに成功する。薬剤を分子単位で付着させ、
通気性を高める網目の大きさも、1ミリメートル単位で変えて蚊の通り抜けを追跡。その結果、通常の2倍の4ミリメートルにまで大きくできた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,へ彡'"　　　　 　 　 　 　 　 /
─二/　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i、._／／´　　　　　　　　　　　iし /
　 　.｀." '''l､_　__.,,,,　　　 　 　 　 　 　 /. ／ 　　　　　　　　　　　　　し ./
　　　　　 　 　'.‐､.'y..、　 　 　 　 　 ,ノ'´　　　　　　　　　　　　　　 レ ,i′
　　　　 　 　 　 　 　 ｀"− ..,,、 ,／゛　　　　　　　　　　　　　　　　/ ./
　　　　　　　　　　　　　　＿_／ﾞﾞ''ｰ ．_　　　　　　　　 ＿ 　 　　i"./
　 　 　 　 　 　 　 　 /`.'ン'゛　　　　　　 .`'- ..､．‐ヽ"`./ 　　 　 i/
　　　　　　　 ,　./ﾞ'''ﾞ ／　　　　 　 　 　 　 　 　 ｀''..-..,、ヽ,,　　 /
　 　 　 　 　 / " ,／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'''ﾞ=.._/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,i′
.､.　　　　　 / ,／　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,i/｀".-..,,　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 , |'"
.''.＼　　　.,iｼ"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　，|/　　　　 .´''ｰ､,,､,,＿＿＿　　　　　　　　　　　　　/ .フ''
　.ﾞ!ﾞ''ヽ_,,/゛　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|. /　　　　　　　　　｀''ｰ..,、／　　　　　　　　　　　　/ ／
　　　／ﾞ'-、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| /　　　　　　　　　　　　　 ｀'''ﾆ;;;.-＿＿　 　　　　 ／
　 ,./ 　　　.＼　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !リﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀''-..,,ﾞ'-..._＿_ ／
／　　　　　　 ｀'-､　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 i./　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｀''ｰ..、 {、
　　　　　　　　　　ﾞ'li､,　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 i′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／''-ﾐ＼.._..、
　　　　　　　　　　　ﾞ､ ＼　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　.｀'-..,.'-..,._
　　　　　　　　　　　 ‘ ヽ ｀'-、　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　 ｀''-､.
　　　　　　　　　　　　　 ヽ 　 `'-､　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　 ,_、
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'-､　ｉ ｌi!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ", ／
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ! /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,/ン゛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /./　｀''-､　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,ﾉ./
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,,l ｌ　　　　 .｀'-..、　　　　　　　　　 ／'"
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 i..lﾞ/　　　　　　　　ﾞ'!> ,,.　　　　　 ／
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　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,!″　　　　　　　　　　 ﾞ'' ｀'-__ﾞ''-､、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃　　　　　 　 　 　 　 　 ,／ ゛ ＼　.ﾐヘ､,、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　 　 　 　 　 ／　　　　 .ﾞV　.＼ .｀ﾆ-..,、



4ミリメートルであれば蚊は必ず糸に触れるため、仮に通過しても吸血できない状態になることが確認。こうして
長い年月をかけて作られた防虫蚊帳は誕生したのであった。

12： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:22:56 ID:pJmjSYSU0

完成したのは199４年であり、早速伊藤は自社の国際アグロ事業部の協力を得て、カンボジア、セネガルなどで現地テストを実施する。
すると、早速感染率が低下するなど、高い効果が実証された。


　　　　　　　　　　　　 ,- ､　,-､　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,. ､
　　　 　 　 　 　 　 V　＼　 ヽ　　　　　 　 　 　 　 ／ノ }
　　　　　 　 　 　 　 V　 入 . ∧　 　 　 　 　 　 ／ '_... /-. ､
　　　　　　　 　 　 　 V / ∧　∧.　　　　　　 ／-‐'' ／／ /　　　うわ！　あの網なに？　くぐったら全然血が吸えねえんだけど？
　　　　　　　　　 　 　 Vヽ. ∧　 i.　　　　　／　_.. ／ '´..／
　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ.ヽ ∧　j. 　 　 ／ ￣..／ '´..／　　　　しかも苦しいしきもち悪！
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ､ヽ.∧ .i　　／　,.　'´ .＞' ´
　　　　　　　　　　 ,､　　　|＼ヽﾊ.-‐く,.. '"＞'"´
　　　　 　 　 　 　 i i＼Y云 γ云ヽ　ﾊ／i／i⌒＼
　　　　　　　　　　i i　ゝゞﾂ　ゞ::_ツ.'/i iくi i'´i.ト,j　j＼
　　 　 　 　 　 　 i i.　 　 i iY:::/ゝﾆﾆ.i K_i i_..i.i.　ソ､　＼
　　　　　　　　　 i i.　　　i i.{:::;′　　 i i.i.i.i ト.i.i／.._..入_ノ
.　　　　　　　 　 i i 　 　 i i i ;'　　　　i i i.ｉ.i ｉ. i.i￣　￣
　　　　　　　 　 i i　　　 ｉ ｉ i;′　 　 .i i i.i i i　i.i
.　　　　　 　 　 i i.　 　 //. i!　　　　 i i i.i. i i　i.i
　　　　　　　　//　　 '"´　 !.　　　　 i i ヾ､ヾ､ !.!
　　 　 ,. - = '"´　　 　 　 　 　 　 　 ヾ:,　　　　ﾞヾ､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ



だが、この防虫蚊帳オリセットネットがこの時期日の目を浴びることはなかった。

13： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:23:25 ID:pJmjSYSU0

理由はまず、価格がワンセット三十ドルという高額な商品になってしまったからである。伊藤はあくまで余技としてこの研究を
開発していたため、会社の協力を得ておらず、自社の生産ラインではなく町工場のラインを使って製造していた。それ故に、
高値で販売することになってしまったのである。



　　　　　　 /＼＿＿／ヽ
　.　　　　／ノ　 ''''　＼;u.＼
..　　　　 |（●） ,､ 　（●)::::::|　　　いやあ、こんな高いのは売れませんよ。まだ募金してもらったほうがマシですね。
　　　 ／　　（__人__）　　　　＼
　　　 |　　　　｀ ⌒´ 　　u.　　|
　　　　＼　u.　　　　　　　　 　＼
　　　 ／´　　　　　　　　 　 　 　 ヽ
　　　　　【ある支援団体】








　 　　　＿＿＿_
　　　／　　 　 　＼ （ ;;;;(
　 ／ ＿ノ　　ヽ___ ＼) ;;;;）　　　　　防虫蚊帳？　んなもんうちで開発してたのかお？　そんなもんよりもっとすげえもん発明しろお。
／　 =⊂⊃=⊂⊃=　/;;／
|　　　　（__人__） 　 l;;,´|
/　　　 　 ∩ ノ)━・'／ 　
(　 ＼　／ ＿ノ´.|　 |
.＼　 " 　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／
　【住友化学経営陣】


また、あくまで余技であったことが裏目に出たため、住友化学の上層部もこの研究成果を正しく評価できるものがおらず、
社内での評価も低かった。かろうじて中国での生産ラインが成り立ったが、そこでも在庫の山になるほどの状況になっていたのである。

14： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:24:07 ID:pJmjSYSU0

そんな逆風の状況であったが、伊藤たちにとって潮目が変わる機会が訪れる。それは、WHOが98年に出した「マラリア防圧（ロールバック・マラリア）」キャンペーンである。
ユニセフ、世界銀行などとともに2010年までにマラリアによる死亡率を半減させるという大構想であった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　 -‐-　 ､
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,　´　　　　　　　｀ 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　　　　　　このままではマラリア患者は増える一方だお！　そこで我がWHOは
　　　　　,. -‐'ｆﾌﾌ 　 　 　 　 　 ７　　 　　　　　　　　　　 　 ｀､　　　　　　　なんとしてもマラリア対策に全力を注ぐことを宣言するお！
　　 　 / 　 ｒ‐´ ｒ‐､ 　 　 　 　 / 　 　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　ﾉ　 _/＿ 」　 .l　　　　　　|　　　ー‐-‐'　　 `ー‐-─ 　 　 !
　　 i　　 _ ＿　.） ,'　　　　　　 |　　　（ ー‐）　'"　（ ー‐ ）　　　!
　　 !　　　　　｀{ ﾉ　　　　　 　 ヽ　　 　 ,　 　 !　　　　　 　 　 /
　　 |　　ｰ ― ､}´;￣￣;｀ ｰ‐-/;:;＼　　ヽ＿人＿_,ノ｀ 　　／,.,.,.
　　 l　　 ,.-ｒ　/;:ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/:;/:;:;:;ヽ＿ ｀　ー 　 　 __, ｲ:;ヽ:;:;:;
　／i!　　　 〕〈:;:;:;:;:i:;:;:;:;:;:;:;:;:;/:;/:;:;:;:;:;!　　＼ _ｰ‐_,.／　　i:;::;:ヽ:;:;
´:;:;:!ヽ ＿∠);;',|:;:;:;!:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/:;:;:;:;:;:;ﾄ､　／!;;;;;;;;;;〉、　,,.ｲ:;:;:;:;:;:ヽ
:;:;:;:;:ゝ､_　 /;;;;ﾉヽ:;:;!:;:;:;:;:;:;:;:;:|:;:;:;:;:;:;:;ト.｀'　 ヾ--〈　 Ｖ　 !:;:;:;:;:;:;:;
:;:;:;:;:;O /｀:;´/;:;;:;:|:;:;l:;:;:;:;:;:;/└-､:;_:;」　　　　!;;;;;;;!　 　　 |ヾ､:;.-‐
:;:;:;:;O:;':;:;:;:;/:;:;:;:;:;l:;:;:!:;:;:;:;/:;:;:;,.-‐´:;:;:|　　　 |;;;;;;;;|　　 　 !:;:;＼_:;:
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/ ､:;_:;_:;:;:;:;:;:;:;/:;:;;:;:ヾ:;:;:;:;:;:;:!　　　!;;;;;;;;;!　　　/:;:;:;:;:;:;:;7







そこで、WHOは伊藤の発明したオリセットネットに着目。これがマラリアを予防できる最高の製品であることを認識した。

　

　 　 　 　 　 　 　 　 ,,..-――-..,,
　　　　　　 　 　 　 ／　 　 　 　 　 ＼
　　　 　 　 　 　 ／ 　 　 　 u 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　l　　　　これはなんてすごい製品なんだお。洗濯しても五年も使えて、しかも通気性と防虫性を両立させているお！
　　　　　 　 　 l 　 　 　 ｀≧x_　　 r≦　l
.　　　　　　　　|.　u　　　t'' Oj´　 ｨOﾂ　',　　　やっぱりメイドインジャパンは恐ろしいお！
.　　　　　 　 　 ',　 　 　 ｀¨¨´　　 ヽ　　 l
.　　　　 　 　 　 ヽ.　　　　 （＿ノ--'　　ﾉ
.　　 　 　 _　---‐| ＼､ ＿＿_´¨｀,..-＜
　　　　/´　 　　 l l　　＼　 　 |　r-ヽ　 ｀ヽ
.　　　/　　　　　 | ヽ　 　.>､ r'__..>＞　　　|
　 　 |　　 ヽ　　 .|＿ヽ.イ .〈Y´　i ｀''１ |　 |

15： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:24:28 ID:pJmjSYSU0

この時WHOはオリセットネットの再処理型に注目する。これは処理の度にアフリカの人たちを教育できるためである。


　　　　　　　　　　　　　　　　 　　／: ￣￣￣￣￣￣　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : :　　　　　　　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : : :　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　 ／: : : : : : : :.. 　　　　　　　　 　　　　　 ＼　　　　　　住友化学さん！　マラリア対策のために早速この製品を売ってくださいお！
　　　　　　　　　　　　　.l : : : : : : : : ＿ ノ゛,, ;、､､ '⌒ゝ､　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　　| : : : : : ::;;（　● ）::::ﾉヽ::::::（ ●　）;;:::　　 　|　　　　　　これほど効率のいい製品はありませんお！
　　　　　　　　　　　　　.l : : : : : : : ´"''",　　　 　 　"''"´　 　　　 　l
　　　　　　　　　　　　　 ＼: : : : : : . . （　　　 j　　　 ）　　　 U 　／
　　　　　　　　　　　　　　　＼: : : : : : :.｀ｰ-‐'´｀ｰ-‐'′　　　 ／
　　　　　　　　　　　　 　 _ノ＞'´小、　　　 `ー―'´,),.　/＼イ
　　　　 　 ＿,.二ﾆ-‐フ´ ／　／!|　＼　｀ ｰ --‐　, ｲl､ 丶、ト､__
　　,ｒ‐＜´　　　　 ／　　'　 /´　|ｊ　 　 ヽ、　　 __／　' ﾊl、 　 ヽ 　｀丶、　　 ／⌒〉
　ノﾊ 　 ＼ 　 ／　　　　／　　 jl|　 ,'　　ｊゝｨ厂　　 ′/ｌ∧　　　＼　 　 ＼/　　 /
∧丶ヽ　　 V　　 　 　 /　　　 /ﾘ　;　　 /⌒ｌ|　　　;　/ /　ﾍ　　　　ヽ　　 /　　 /、
l　l､ 、 } 　　ヽ　　 　 /　　 　 ﾊﾉノ　 ／　　∧　　,' / /　　 ﾊ　　　　 ＼丿　　 厂＼
、_}／ﾉレｰ‐-､＼　 / 、　 　 |/'´ ／ ﾝ=c'､{ヽl　 ' / /　　　　}、　　　　 レ- '⌒ヽ__　ヽ
´　／´{　　　　｀ヽV___､＞−-､ く　 /７个i/　ﾍ.0/ /　 　 　 ハ 　 　 ／　　 _,. イへ＼ ＼
　∧0 ﾉヽr─-､___）一´- ､／　） ∨ / / jｌ　　 ∨/=-、　　(⌒＞‐イ　　_∠´　/ｌ　/!　＼ ＼
　{. ﾊ |　 {、_　　 　 ＿_＿_) ／ ／　　　/ |　 　 /　 　 ＼ (⌒( 　 __｀二´-‐┬' ７/ｌ | 　 ハ　ヽ
　ヽ､ハ 　 ＼￣￣ - '´　／ｉ　/　　'　 /　'ｌ 　 /　　 　 　 ヽ＼ ￣ヽ、 　_, ／　/∧リ-− 　〉　〉
、　〈　｀＞‐-｀ニ＞─＜ 　 !/　　 　 /　　|　/　　　　　　　 ＼＼,＿ ￣ 丿_∠´　 厂丶　/　/





　 　　　 　　　 ＿＿＿_
　　　　　 　 ／＼　　／＼　_＿
.　　　　　.／.=⊂⊃=⊂⊃='(_）( ﾞヽ　　　　　　　え？　防虫蚊帳を売ってほしい？　んなもん在庫の山だし、叩き売りで売ってあげるお。
　　　　／　　 ⌒（__人__）⌒ |.(　 .',
　　　　|　　　　ｍj |┬‐|　　_|.( 　..ﾄ-a‐-a,
　　　　 ＼　 〈＿_ﾉー'´　_（_）(.__.ﾉ　 　　　 'a,,
　　　　　　 ノ 　 ﾉ 　 　　　　￣／　　 　　　 　"'a,
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _/「i＿＿「i　 .ﾉ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　Ｙ′
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 （＿＿＿＿___ﾉ


当初は放置されたオリセットネットであったが、2001年にWHOは正式にオリセットネットの使用を推奨。翌02年にはWHOから何と、イラク向けに20万張の注文が来た。

16： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:24:44 ID:pJmjSYSU0

　　　 　 　 　 ﾄ、
　　　　　　　 　 | ヽ　　/|
　　　　　　　 ﾄ､j. 　｀¨´ .i　　ﾄ､
　　　　　　　 |　　　　　　ヽ-'
　　　　　ﾄ､j｀
　 　 　 N.　　 ＿＿＿
.　　　　　　／ 　 　 　 ＼
　　　　　 / 　 　 　 　 　 ',　　　　　伊藤さん！　大変だ！　オリセットネットが、オリセットネットがWHOから正式に推奨されたぞ！
　　 　 　 |-､_j　ヽ._／｀　.l
　　 　 　 || | | | | | | | | | .|　　　　しかも二十万セットも注文が来たらしい！
　　 　 　 || | | | | | | | |　 |
　　 　 　 | 　(__人__)　u　|
..　　　　　',　 |::::::::::|　u　.|
　　　　　　',　|::::::::::|　　 ﾉ
　　　　　　,ヽ_￣￣_,,-''、
　　 　 　 /　| ヽ￣／.|　ヽ
　　　　 ./　 .|　/‐<　 |　　ヽ
.　 　 　 l　　 |/〉-〈 ヽ|　　 .l
.　 　 　 | 　 　 |　 .|　　　　 |





　　　　　　　　 　 - ─ ＝＝─ - ､
　　　 　 　 .／::::::::::::　 u　　　 　 　 ＼
　　　　　／ （　ο　）::::::::::::::::::::（ ο ） ＼　　　　　　え？　それは本当かい？　
.　　 　 /:::::::::::　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ
　　　 /::::::::::::: : ┌ェェェェェェェェ┐　　　ヽ
.　 　 |:::::::::::::::::::: |　　　　　 　 　 　 |　　 　 .i
　 　 丶　u:::::::: : |　　／(^o^)＼　　|　　 　 .|
.　　 　 ヽ::::::::::: : Lェェェェェェェェ._!　　　 /
　　 　 　 ＼:::::::::::　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　 イ　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　 ／　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i
　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !
　　./　　　　　 　,ｲ　　　　　 　 　 　 　 　 　 !


この結果に心血を注いできた伊藤と奥野は驚喜し、雄叫びをあげた。自分たちの研究が、多くの人命救助の役に立つことが証明されたのである。

17： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:25:08 ID:pJmjSYSU0

本来の研究や仕事からではなく、余技から出た研究成果とはいえ、自分のライフワークが認められた。この結果に喜ばないものなどいない。
伊藤は奥野らとともに静かに祝杯を挙げた。


　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　よかった！　これで多くの人たちがマラリアから救われるんだ。
　　　　　 ／　 　 　 　 　 /　　　　　　 ヽ　　　　　　　　/´　　　　　　ヽ ＼
　　　　／　　　　　　　　,'　 ｨ=＝=y､　　',　　　　　　　,'　 ｨ=＝=yとつ､',　＼　　　　　　研究は無駄じゃなかった。無駄じゃなかったんだ！
　　 ／　　　　　　　　　(;;;;;;;;;;）)　　　　　 }　　 　 　 　 {　　　　　 　 ヾj ｝ 　　＼
　／　　　　　　　　　 ／''､　　　　　　　 /　　/ / / /　.'、　　　 　 　 人　　　　 ＼
　|　　　　　　　　　　｛{ 　　/ / / /　　　　　　<　　　　　　　　　/ /（ じ.）　　　　　|
　|　　　　　　　　　　 ヽ 　/ / / / 　 　 　 　　　　　　　　　　　/ / /｀¨´　　 　 　 |
　|　　　　　　　　　　 人 トェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェイ　 　 　 　 ｜
　|　　　　　　　　　 （ ぃ,）＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／　　　　　 ／
　＼　　　　　　　　　｀¨´,人 ＼,ェェェェェェェェェェェェェェェェ,／　　　　　 ／
　　 ＼　　　　　　　 人（ ぃ,）　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　＼　　　　　（ん )｀¨´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　/　　　　　 ｀¨　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼

18： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:25:21 ID:pJmjSYSU0

そしてWHOからはさらに、タンザニアの蚊帳メーカー・AtoZ社への技術移転の要請が来た。オリセットネットを
現地生産することで、雇用と生活を確保することを構想したのである。

　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　, 　´ 　 　 　　 　＼
　　　 ／ 　 　 　 　 　 　　　ヽ　　　　　　住友化学さんには申し訳ないけど、是非お願いしたいんですお！　オリセットネットを現地生産できれば、
　　 ./ 　 -- ．.,_　　　　 　 ＿‘.　　　　　アフリカに住む人たちに雇用が生まれ、なおかつマラリア予防にもなりますお！
　　,' 　 　 ＿＿ 　　　　__´＿　‘.
　 ， 　　　￣￣ 　 　 　 ￣￣　 ‘.　　
　 {　∪ "'　 　 　 　 　 　 　　 ､､ }
　 ヽ 　　　　　　ゝ-‐ ｰ- '　 　 　'
　　 ＼ 　 　 　 　 　 　　　､ <＿
　　　　＞,7/1　　_　,r' ｀'rv////
　　　〈/////」 　　V　／　l///＼
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　　|,//////∨　ヽ_ヽ.{ {ヽﾄ　j′∨　ヽ __
　　|//////У　　 ヽヽ} } ヽ ｨ､　,ﾍ | ｀fヽ ヽ
　　|,∧_/z＜/〉 　_ lT　= ‐'ー　´ 　|　|　l　}
　　j_/_/＞　´ﾞ´　　| l　二 　　　　　|　| / ,r'
　　　￣ヽ 　　　　　ヽヽ.二　　 ． ^└ `´
　　　　　　＼　_＿　､ }.} ＞´



住友化学側はすぐにこれを承諾する。国際的なイメージアップもそうだが、それ以上に経営陣側がこの製品の良さを理解していなかったことが大きい。


　　　　 　 　　　＿＿＿_
　　　　 　　　／⌒　　⌒＼
　　　　　　／=⊂⊃=⊂⊃=＼　　。
　　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼　　　別にかまわんですお。どうせあんなのは暇な社員が作った商品ですからどうぞどうぞ。
　　　　 |　　　　　|r┬-|　　　　　|
　　　　 ＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／
　　　 　　r´､＿__∩∩＿_,　 /
　 　　　　＼＿_　´人 ｀　＿ﾉ
　　　　　　 ヽ 　￣　　￣ |
　　　　　　 ｜　　　　　　/
　 　　　　　　|　　　ｒ　　/
　　　　　　　 ヽ　　ヽ／
　　　　　　　　 >__ノ;:::.....

19： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:25:32 ID:pJmjSYSU0

だがアフリカでの生産が始まると、需要が急増。オリセットネットの有効性が、配布した村々で証明されたからだ。国連のミレニアム宣言、世界基金設立など、
貧困の要因「エイズ・結核・マラリア」の三大感染症を撲滅しようという動きが強まったことも需要拡大に拍車をかけた。

　　　　　 rfﾆ､ヽ
　　　　　 l｡ ｡ f9i
　　　　　 t≦_ﾉゝ､　　　　　　　　　　　　,,....,,,,__　　　　　　　　　　これはすばらしい！　マラリアを予防できる上に通気性も完璧だ！
　　　　　　｀フﾞ´,,:: -- ::､　　　　　　　,r''"''''''ヽ:::｀ヽ.
　　　　　 ,rﾆｭf::r-‐t::::::::ヽ　　　　　f´,,..、　r"::::::::::i　　　　　　　　　　　　　
　　　　　/,,,　Y.. -‐ ヾ::::::::l 　 　 　ノﾞ f･=　 7:::::::::::l.　　　　　　　　　　　うちの村でもこれを使いたい！
　　　 　 ﾑﾟﾞﾞ' く､'ﾟ`　 ﾞ'"):::l　　　　ヽ''　　　　ﾞ'⌒ﾘ:ﾉ　 ,:rﾆテ三ミゝ、
　　　　　l=,,;;:. l=､　 ..::" ,)ヽ、　　　j⌒　　　 ﾄ'"fノ　,r"彡彡三ﾐミ｀ヽ、
　　　 ／`ゝ-''^ヽ''"　 ,/: : : :＼　　ヽ、: : : '" ノ^i,　 ﾞゞ''"´　　 ﾞifrﾐソﾍ,
　 　 /rf´ i′　 ,f^ヽノ:,. - - 、 ヽ,,. -ﾃ）　,／　　｀ヽ:,i ,,.,...、　 ヾミく::::::l　　　
　　　ﾞ'ﾞ　 l　　　l: : j :f´: : : : : ヽ,/　　 '''"´　　,,.: - 　lｦ ｪ｡､　　 〉:,r-､::ﾘ
　　　　　 !　　 /: :ﾉ l: : : : : : : ノ,　　　　　　,:'"　　　/ ,, 、　　 '"fっ)ﾉ::l
　　　 　 /-‐-/: :/: l: : : : : : ,/ /　　　　　/ 　 　 　 `i- ､ヽ　　,.:ﾞ''" )'^`''ｰ- :、
. _,,..::-,テ　　 /`7: :（: : : : : //'´ミ)ゝ^)　〃　　　　 　i､ヲﾞi　.:" ,,.　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ﾞ
｀_,:ｨ''"　 _,r''"　f: : :ト---ヲ ﾄ､つノ,ノ　fﾉ　　　　 　 ﾉﾞi　　,,.:ｨ'"　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
-‐-‐'''フ"　　,.ﾉ,:::::」､,:r'"　 i _,,.:イ　　/　 　 　 ,r''";;;;;;｀ﾞﾞ" ヽ_,,ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
､..､く´＿,,∠"ｨ''"´ ／　　 　,ヽ　 ﾞ:､ /＼、 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;r-'"´｀i,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
´　 ,ﾍr:､-､=---／　　　 ,:ｲ　ヽ　　＼　 ｀ヽ〃_;;;;;;;;;;;;f´' 　 　 ll;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
ｰフ´ > ヽ`ｰ､／　　　 ／く _,,..ヽ　　　ヽ ,／　 ｀ﾞ''ーハ.　　 　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
／ ／　,,ゝヽ,　）　 ,.／　ｨ'"　　 ﾞt　　　 `'　　　　 ／^t;＼　　,,.ゝ;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;

20： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:26:55 ID:pJmjSYSU0

アフリカの多くが貧困なのは、情勢不安や民族紛争などが大きい。そして、初等教育などが未発達なのも、そうした貧困に拍車をかける最大の要因である。

　　　　　　,,､,､､,,,';i;'i,}､,､
　　　　　　 ヾ､'i,';||i !｝ 'i, ﾞ〃
　　　　　　　　ﾞ､';|i,!　　'i i"i,　　　　　　 ､__人_从_人__/し､_人＿入
　　　　　　　　 `､||i　|i　i　l|,　　　　　　､_）うちの国には
　　　　　　　　　 ',||i　}i |　;,〃,,　　　 　_）　ソマリ人しかいないけど、
　　　　　　　　　 .}.||||　| ! l-'~､ミ　　　　｀) ガンガン紛争するぜー！
　　　　　　　　 ,＜.}||| il／,‐'liヾ;;ミ　　　'´⌒V＾'^Y⌒V^V⌒W^Y⌒
　　　　　　　　.{/ﾞ'､}|||/／　 .i| };;;ミ
　　　　　　　　Y,;-　　 ｰ､　　.i|,];;彡
　　　　　　　　iil|||||liill||||||||li!=H;;;ﾐミ
　　　　　　　　{　 く；ｧｿ　 '';;,;'' ﾞ};;彡ﾐ
　　　　　　　　 ﾞi　[`'''~ヾ. ''~ ||^!,彡ミ　 　＿,,＿＿
　　　　　　　 　 ﾞi　}~~　｝ ';;:;li,　ﾞiミミミ=三＝-;;;;;;;;;''
,,,,-‐‐''''''}￣~フハ,“二ﾞ´ ,;／;;'_,;,7''~~,-''::;;;;;;;;;;;;;'',,=''
　;;;;;;;;''''/_　 / | | `ー-‐'´_,,,-',,r'~`ヽ';;:;;;;;;;, '';;;-'''
'''''　　,r'~ `V　ヽニニニ二､-'{ 十　）＿＿;;;;/

　　　　　　　　ソマリアのみなさん
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　　　このスレでは【やる夫がアフリカで奇跡を起こすようです】を応援しております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　　　　　　　州/川///／
　　　　　　　　　　　　 _^衫=ミｖ//厶
　　　　　　　　　　　 _彡ｸ/⌒ヾｰ彡ｲ、　
　　　 　 　 　 　 　 ｒ彡// 　 _　V／Ⅵ　　　　　　1＋１はええっと、何でもいい！　とにかく汚物は消毒だ！
　　　　　　　　　　 Ⅵ{^f=に三ﾆ=-ﾆ_ﾘ
　__xzzx_x=zzx＿/彡ﾍ_}　　 fi´j^ =ﾆ}}
/／⌒-┴===ﾆ三彡ｿ }}　　ｒ-ﾆ,　 /′
=ニ二_￣:::::::＼ ＼｀ヽ,　＼ 廴ﾝ　んｘ __
三ン―=ミｘ::::::::丶._＼ ＼__:〉‐=彡}　Ｖ::::::三ﾆ=-　_
／⌒ー―≧ｘ:::::::::( 米 V⌒＾ ‐=彡　爪__:::::::::::::::＼＼
r=＝―- ::=彡ヘニニﾆﾉ￣ 　 Ｔ 　１f廴米 ）:::::::::::::） ） __
廴三ｒ¬= ′.:.:.:.:.:.:}}　il|　　　　｝ 　 |トミ辷−__ =彡' /⌒ヾ
i:i:i:i:i:i}　　　 　 　 Ⅵ} ::il|　　 　 :｝ 　:||　 丁⌒> ´ {{　{{　彡ﾘ｝
i:i:i:i:i:{　 　 　 　 　 V} :o|　　　　ﾘ 　 || o :杉'　　　ヾ._　ｰ／ﾉ
i:i:i:i:八　　　　　 　 ｝} :o| 　 　 八 　 Ⅵ У {　　　 　 ￣_７
i:i:i:i:i:i:i:}　　　　x-=ニ=‐ﾆ_￣　　　ー V/ 　 ＼　　　　／
i:i:i:i:i:i:∧ 　 /／　　　　 ＼＼ 　 　 　 j′　ｒｧ=≧=彡{

21： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:27:16 ID:pJmjSYSU0

そして、もう一つの要因がマラリアやエイズなどをはじめとする難病である。エイズはともかく、マラリアやコレラなどはすでに先進国では
駆逐されており、また破傷風やペストなども、過去の病として位置づけられている。


　　　　　　　　　　　　　＿,,..........,,,,＿
　　　　　　 　 　　 ,.z.!ﾞ　||　 ||　 || 　||`,
　　　　　 　 　 　 ((~|| 　||　 || 　||　 ||　|
.　 　 　　　　 　 　l　||　 || 　||　 ||　 ||　|
　　　　　　　　　　|　||　 || 　||　 ||　 ||　|
　　　　　　　　　　|　||　 ||　 ||　 ||　 ||　|　　　　　　ちなみに破傷風菌と、ペスト菌は私が発見しました。
　　　　　　　　　　|'''｡'"´￣￣￣o￣￣ﾞ|
　　　　　　　　　　,''l.T:/´ ￣￣ `'"￣ ｀|
　　　　　　　 　　 l::| |/ 　　　　　　　　　|
　 　 　 　 　　 　 !::| | ／｀ヽ､,,_　　 _,.=ﾍ|
　　 　　 　　　　 !ヽ!j 　 ',´('7｀ 　 .{ ｴi｀ |
　　　　　　　　　| 9.lj　　　￣　　 　l￣　.!
　　　　　　　　　!`ｰｌｌ　　　　　　　_.j　　 |
　　　　 　 　　 ,'::::::::ｌ',.　　　〃_＿__ ',　,'
　　 　　　　 　,'::::::::/ ヽ　　 ''　 　 　 './l
.　 　 　 　 　 ゞ:／ヽ 　 ＼ 　 　 　／::ﾉ
　 　 　 　 __／ヽ 　 ヽ 　　 ｀ ''iﾘi" |ヾ
　　　　　　　　　【北里　柴三郎】
　　【北里大学創始者。日本における細菌学研究の父】

破傷風は菌が発見されるまでは不治の病として認識されていたが、北里柴三郎により、破傷風菌が発見された結果、血清療法を発明。治療法と予防対策が
確立し、破傷風による死傷者は激減。ペスト菌もまた、彼の手で発見され、黒死病とまでいわれたペストも過去の難病として位置づけられている。

22： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:27:39 ID:pJmjSYSU0

そんな偉業を成し遂げた北里柴三郎であったが、彼は当時主流であった脚気菌の存在を否定するなど、東大から総スカンをくらい、
不遇を買うことになる。ちなみに彼と共同でジフテリア菌を発見したベーリングがノーベル賞を獲得しているのだが、そんな世界レベルの
彼ですら、国内では異端児として扱われていた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|.ｌ　ｌ.ｌ　..! !　 ｌ.ｌ　　ｌ.ｌ　　　.ｌ.ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|.ｌ　ｌ.ｌ　..i i　 .ｌ ｌ　 .ｌ ｌ　　　.| i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.ｌ　.ｌ」.....ｌ ｌ--.ｌ.∟...ｌ ｌ　　 ..|..i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 冖" 　 ｏ　 　　　　　｀ﾞ''‐...| .i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　___＿＿,,___　　　　 _　｀|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|..‐''"´｀‐-‐′　 ｀"ﾞ''''ｮ.ｌ_!　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|′　　　　　　　　　　 .豸|::::ﾞ''ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／'ヽ..、　　..r≠"''ｰ-　斗r‐:ﾊ　　　　　脚気菌など存在しないというのに。それにこの扱いとは・・・・・私は日本のために
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.i .i´i刃|　　｀'Ｔ"i刃^′　!| r .iﾊ　　　　コッホ博士の誘いをも断って帰国してきたのだが・・・・・・
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.i .''=ニ.!　　　 ヾ二彳　...!ｌ..! .!ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ..　　 i　　　 　 ￣　 U .!ｌ_ 丿::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　iﾊ　　._ｰ-　　　 __　　　.,','人::::::::.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:ハ　.l!−‐‐―‐ll|　　 ./,'//::ヽ::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　乂人 ′丶‐　　 ′ ..ｸ.//::::::::ﾍ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::＼　　　　　 ,,r'´ //:::::::::::::::〉｀ｰ...._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _....-'''1::_..=== ^''|!i}''j=====.</::::::::::::∨　　　　｀''''‐-..＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　,,..-‐‐"´　　　ｌ〈〈......=ｦ７.i! |夂ﾆ=zｪ〉〉::::::::::∨　　　　　　　./　　`ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ,,／ ｌ　　　　　　 i::｀￣::::! ! 　　| ｉ　 / 厂::::::::::::/　　　　　　　 ,'　 .／　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　 ∧　| |　　　　　　 .!:::::::::::::| !、　 | ｉ / /::::::::::::::::/　　　　　　　　,'　∧　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　 ノ′　i.i　　　　　　 ..!:::::::::::::| |ヽ　 | !' /::::::::::::::::./　　　　　　　　 ,' /　　　　　　　ヽ、



北里は当時パスツールと並ぶ細菌学の権威である「ロベルト・コッホ」からも高く評価されており、自分の研究室に残ることを懇願されるが、
それでも当時未発達である日本の医療技術や細菌学研究の向上のために、日本へ帰国することを願っていた。

23： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:27:52 ID:pJmjSYSU0

そんな彼にとって、コッホと同じぐらいかそれ以上に人生における最大の恩人が現れる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ -──-=ﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　＿__　　　｀ ＜
　　　　　　　　　　　　　＞㍉　　　ム二二ﾆ　　　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　／　　　j　　　 ____｀ヾ二二.　　　　 V
　　　　　　 　 　 ／　　イ. /　　　＜⌒ ＼ 二二.　{　Y　',
　　　　　　　　　{　 （　へ 　 　 　 　 　○　Yﾆﾆ込ｨ　:}　jヽ, イヽ
　　　　　　　　　|　　 弋　　　　　　　　　 ∨辷ﾆﾆﾉ　ﾉｨ≦ﾆﾆﾆﾘ＼__人__人__人__人__人__人__人__人__人__／
　　　　　　　　 人　　　ヽ　　 　 　 　 　 　 j⌒　 }｀Vﾆﾆ＞'''レ′...._）　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 （_
　　　　　 　 ／　　>　 　 }　 .:i:i:i:i:i:i:. .　　　　　　 i　 ﾄ Oヽ 八　　　_）　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 （_
.　　　　　／ 　 ／　　　丿,;i:'´　-==ミ:i:i:.（　　 　 i 　|　 Y　／　　　_）　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 （_
　　　 ／　　／ 　 　 ／.i:i　,..く　　　ヽ ヾi:. ⌒　 　イ　　　(ヘ. 　　 _）　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 （_
-一　　　　　　 　 ／ .i:i ／ﾆﾆﾆｰ＜　｀寸ヾi:i..　 r ノ　　　 } /.　　 _）　　　　　　　　　　わ　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　　　　 :i:i: ム斗＜⌒ヽﾆﾆー< 　辷ﾆ㌘㍉　　ﾉ/ 　 　 _）　　　　　　　福　　し　　　 　 　 　 　 （_
　　　　　　|　　 　:i:i. /　　　　 　 　 ＼⌒ヽ｀''＜＿ノ} i:i／./　　 　 _）　　　　　　　沢　　が　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　 　.i:i:　{ﾆﾆﾆ＼ 　　　　　　 人ﾆﾆﾆﾆ/ .i:iﾑイ 　 　 　 _）　　　　　 　 諭　　慶　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　　.:i:i　 |⌒Yﾆﾆ＼　 　 　 　 　 ）ﾆﾆ/ .i:i.|　　　　　　　_）　　　　　　　吉　　應　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　 .:i:i　　|ミ j ｀ヾﾆ辷=ｰ--一=ﾆﾆﾆ/　.:i:i |.　　 　 　 　 _）　　　　　　　で　　義　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　.:i:i　　 ≧=ー j　 ）⌒>ｰく二ﾆﾆ=i　 :i:i　|.　　 　 　 　 _）　　　　　　　あ　 塾　　　　　　　　　　（_
　　　　　　|　.i:i 弋 　 ｀￣￣￣￣￣ ≧＜Y⌒{　:i:i │.　　　 　 　 _）　　　　　　　│　塾　　　　　　　　　 （_
　　　　　　|　.i:i　 　 ー--　　　　　　　　　　＼ ﾊ :i:i.│.　　　 　 　 _）　　　　　　　│　長　 　 　 　 　 　 　 （_
　　　　　　|　.i:i　　　　　　　 ≧=ー-=ミ　　 　 V ）ﾑ |.　　　　　 　 _）　　　　　　　る　　　　　 　 　 　 　 　 （_
　　　　　　|　.i:i　　　　　　　　　 　 　 　 ミﾆ=一 ' 　 ｀.　　　　　 　 _）　 　 　 　 　 !!!　　　　　 　 　 　 　 　 （_
　　　　　　|　.i:i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丿　　　　　　_）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（_
　　　　　 弋 .i:i　 　 　 ≧==──--　　　　　　　　／　　　　 　 　 _）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（_
　　　　　　　　｀¨''＜　　　　　　　 　 　 ｀ヽ　　　／｀ヽ.　　 　 　 　 _）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（_
　　　　　　　　　　　　　　　＜　　　 　　　ﾉ　 ／　　　　＼　　　 　 _）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（_
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＞ー----イ　　　　　　　 ＼　　 ／⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒＼


日本近代史における最大の教育者、福沢諭吉である。

24： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:28:26 ID:pJmjSYSU0

元々福沢は幕末期に多くの人材を育て上げた蘭方医である緒方洪庵の適塾にて学んでいた。彼の師である洪庵は生涯を
天然痘撲滅に費やしていた。彼はジェンナーの牛痘接種法を普及させ、日本における天然痘の撲滅に腐心する。


.／／/ :// , './／'／}　′: : ﾞヾ　ﾊ 小 ﾊ}/ﾘ　__
／　/ :// / // , ′:.:} ｉ ﾆ=‐-ミ ﾞ≪　}. } j/ :斗 }
　／／/ / / //＼ヽ//:.:_.:.:.: ｀ヽ＼:｀ヾ ｲイ / ;′
´／　/ / / //:=ミ // ＼:.＞x:.:.}､.:.＼:.: :}　/ /
/'　, '／, ' //､ﾞ＼/∧　　∨、:.＼:＼:.:ヽﾉ / /
:／ /／ , '/: :ﾞヽ//:___ヽ　　 .}:.:.:.: :＼:ヽ′,./
　 // ／./: ⌒://∧　 ｀ヽ　廴_＼:.:ヽ}// /　　　　疱瘡（天然痘）は体だけではなく、人の心すら蝕んでいく悪鬼羅刹がごとくの病である！
／.ィ´　/: :　 / ′;∧　ん ',　　}:.::}:.､ﾉ/ /
, / : : , ': : 　 ｉ {　: V∧ {リﾉ､_,丿:ﾉ:: }/ /　　　　　人々は感染をおそれ、患者を治療することすら拒み、これを見捨てていく！
,′／: : :.　　j:ﾘ　､ ヽ;_｀¨升^ ｰく.:.: j ,/
／: : : : :.　　;/　　:＼_;／　:.:.　 _」¨´ ｉ　　　　　　なんとしても疱瘡を退治せねばならん！
: : : : : : :　／　　 ,:,ﾂ　ｉ; 　 ;.;.:　ｉ　 / .|
: : : : : :／　, ,:,:,:イ　　八　 ;.;.:　| ./　ﾘ
: : : :／: :　.¨´　　 ;／-､:.:..:.:;.:　|/　./
: : : : :　　　 _:; ィ´（:__　 ヽ:.:;.;.　}　 /
: : : : :＞'"´j: :j: : }: 〉ミ､　':;.;.;　j　/
: : :／ ;-‐=‐-ミ_:.j:.{: {　｀'ｰ一'′′
:.:.:.:／:.、: : : : : :.}-一′
, :く:.:.:／:ﾆ=‐-ｧ´
: :.:.＞:.r:.．_／
／: : :.:}:.:.:.ﾊ
:.:. : : :ﾉ:. /:.:}
　【緒方洪庵】
　【適塾創始者】

25： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:28:57 ID:pJmjSYSU0

彼は牛痘への無知に対する風評被害にも負けず、無償でワクチンを普及させ、天然痘の治療に人生を費やし、彼は天然痘の予防に成功する。
そんな彼はこのような言葉を残している。

　1ヽ| │|　/ ,/.-' ／ 　　　　　　　　丶　,, -.　　丶_　　 　　　　　　　
'､ /ゞﾉ !　!/'"ﾞ' "　− _...r''　　　,.ｨ;, ／イvスヽ　　　 ﾞﾞ三 -､;-....,
〈ﾞ !_　　　⊥　 .r‐;"´_　　　..ｒ /￣ ,__フ´　 ,..t｀;　　.‐　｀ｰ､＼　　　　
: t1 丶　　 !. ' l'' ／´ ､ /l´　 　,..ｒ'''''´　− ＿t| ｀　　丶亠< ､ ｀　　　病者の費用少なからんことを思うべし。
ﾍﾊ..,, ﾆｰ ､}　」'´　rlfﾞ′　　/' ノ‐￣￣ﾇﾆ! _,, !|i!'´　　　 ,.r 1　゛　　
弋|　　_丶 1,　!l､lﾘ　　　_ ／ ....,　　　 ;.! t　　 |||　ー‐‐'′ 」 ｭ'
/土'ﾞﾞﾞ‐ーll＼ ,ﾞﾍ　　／」　( ◎)　　,ﾉﾜ　||　　|l.j　____,／''´ 　 |::.　　命を与うとも、その命を繋ぐの資を奪わば、また何の益かあらん！
..｀ヾゞﾊ-ヾnt ｌ_ ﾞY''' :　l;__............r;ﾆノ ┌　　 ffー...... -丶--ｎﾉ
│　│ 《φゞ.. ｀丁弋 ﾆ ｀−- 、　　'ﾍ:　　/ｿ　　　-‐‐'''' / _. ､　　
│　　|ゝ..丿l'ﾉｌ‐　!'_　 ｒ { ;ｰ-―-ｔ;"　　　/丿　　´　ｰ　ノ'ﾆ..-"
　　　 │,,,..ﾊ| 1｀　!　　'「 ｀l 1　　　 ﾞ1　　| ｨ＿＿___,..ｙ＿＿__　 /　
　　　　|!　- 「│　|　　　　,.j-..,,　　　丶.._ |.j　　　 ,／ l'′　　｀"ｊ
｛　　　　t、　　l　│　 ／　___,/　`''ｬ､　ヽ| !゛ ''ヾ{ 　　ﾞｰ..,,　　　l 　
│　　　　"ﾞｰ､j 　｀1_l´ ,／ﾉ′　　l′ > ､||＼　　│　　　　ﾞ''t､ﾉ
丶　　　　　　丶----ｬ'' ﾍ,r゛　　　　_ '　 /tｌ.　 ヽ　丶. 　　　　　│
　｀ｰ ､　　　　　　｀ゝ;l!っ--'" ,,,..ここﾆﾆ」lll）! ､　｀ｰ 　｀ .　　　　l´|、
　　　　｀ｰ、　　　　1|t　l !ｴエ..工ｴ!-‐--||/ﾞfｌ ＼　　 　　 ＼_,l'′ﾞ 、
　　　　　　ﾞl　　　　ﾉl│‖　_,,..-----―-ｒ'`'1 ﾞｰﾍ　││　／ ､　　l
　　　　　　　!　　　l!´│r~~ゝ.　 丶　　　　 `‐「　　ﾉ　|　ｌﾞゞ ＼ ﾍ
　　　　　　　|,..-'"　　　　 ﾞ│　!　ﾍ_　　丶　,,, |　] _／''´ .　,/　tj丶
　　　　　 l'ﾝ"　　　　　　　　ゝ !........ゝ､..,,_ ├'"''ﾞﾞ -＿_,..llゞ　 ./ﾞ「
　　　　　 ! !　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　ﾍ､｀''‐‐'"´


現代風に訳せば、患者に費用負担が大きければ、たとえ病が治っても生活が苦しくなり、命をつなぐことができなくなる。
彼は患者に対して常に真摯に接しており「ただただ自分をすてよ。そして人を救うことだけを考えよ」という言葉を
多くの塾生たちに説いていた。

26： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:29:21 ID:pJmjSYSU0

ちなみに、彼の塾での生活はかなり自由で闊達であり、また科学研究も率先しておこなっていた。若き日の福沢もアンモニアを製造するなど、
ただ書物を読みふけるだけではなく、こうした実学研究の日々を過ごしていた。元々、生まれつき合理的な性格であったことも大きいが、
それだけに、彼はかなり医学や科学分野に対してかなり理解を示していた。このあたりが、他の明治における教育者と毛色が違うといえる。


.　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 / 　 　 ,.ィｆ三ﾆヽ　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　 :.｛_,///ﾉ⌒ ｰ'　　　　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｲ三ミ ≧彡ヒ五ｿ.:.. 　 ｌ´ヽ '，　　　　　　　　　　　　おぬしほどの研究者が不遇を買うなど、これはおぬし一人の不名誉にあらず！
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 {{化孑　　　　ー　　　　 |r} |　ｉ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 〉　ゝ-=_^ン　　　　 〈. |二' ∧　　　　　　　　　　　日本全体の不名誉である！　このワシの目が黒いうちはお主を不遇な
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 (　 r―― ´ ￣ ',　　　　ｰ.:　 ﾍ　　　　　　　　　　　環境におくようなことはせん！
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ ｙ -‐‐-― 丶_'，　　　｜　 ﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|｜　三　　　　　‘，　　 :|　　幺
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|｜　}　　 　 　 　 :ﾊ　　.:| 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾊ｜　:.　　　 　 　 .:|｜／.:　　 ／;';';';'｀:.....
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ　/ 　 :..　　 　 　 .:.:l／　 　 ／;';';';';';';';';';';';'｀;'::::::::::::::...
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヘ丶　　　　　　..:.:／:/ 　 ／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　....:::´;';';'|　　ー―――　　..:/.: ／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
　　　　　　　　　　　.........::´;';';';';';';';'| 　 }:.　　 }!:.　　 .:.' ／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
　　　　........:::::::::;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';| 　 !:　　 {:.　 　 ／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
.:;';';';';´;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';':'| 　 　 　 :.　 ／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'
;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'.|　　　　　／;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'



　　　　　　　　　　　　　＿,,..........,,,,＿
　　　　　　 　 　　 ,.z.!ﾞ　||　 ||　 || 　||`,
　　　　　 　 　 　 ((~|| 　||　 || 　||　 ||　|
.　 　 　　　　 　 　l　||　 || 　||　 ||　 ||　|
　　　　　　　　　　|　||　 || 　||　 ||　 ||　|
　　　　　　　　　　|　||　 ||　 ||　 ||　 ||　|
　　　　　　　　　　|'''｡'"´￣￣￣o￣￣ﾞ|　　　　　　ありがとうございます福沢先生！
　　　　　　　　　　,''l.T:/´ ￣￣ `'"￣ ｀|
　　　　　　　 　　 l::| |/ 　　　　　　　　　|
　 　 　 　 　　 　 !::| | ／｀ヽ､,,_　　 _,.=ﾍ|
　　 　　 　　　　 !ヽ!j 　 ',´('7｀ 　 .{ ｴi｀ |
　　　　　　　　　| 9.lj　　　￣　　 　l￣　.!
　　　　　　　　　!`ｰｌｌ　　　　　　　_.j　　 |
　　　　 　 　　 ,'::::::::ｌ',.　　　〃_＿__ ',　,'
　　 　　　　 　,'::::::::/ ヽ　　 ''　 　 　 './l
.　 　 　 　 　 ゞ:／ヽ 　 ＼ 　 　 　／::ﾉ
　 　 　 　 __／ヽ 　 ヽ 　　 ｀ ''iﾘi" |ヾ

27： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:29:43 ID:pJmjSYSU0

こうして福沢の援助により、北里柴三郎は私立伝染病研究所を設立。さらに自費で私立北里研究所を設立させる。これが後の北里大学であり、
後に彼は慶應義塾大学医学部の初代医学部長を務めるが、これは恩人である福沢の援助に報いるためであった。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 f{　l　l　l　l　lヽ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ||　l　l　l　l　l |　　　　　　　　　　　　　. 　,′
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ||　l　l　l　l　l |　　　　　　　　　　　、　　 　 ,
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ﾄ､_|__|__|__|__|ｲ　　　　　　　　 　､ 　 　 ﾉ}　 　,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ ＿__ o ＿_ﾉ!　　　　　　　　 ‐-　　 / 〈　　 ´　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾑ::ﾚ ､_ ￣ _, ､|:!　　　　　　　　-　　　{ 　 !　　 ‐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　八: | ￣　 「￣ i:|　　　　　 　 　 -　　　Ｖ}ﾉ　　 -　　　　
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／|::::::i　/__ノ_、/:人　　　　　　　　,　　　＿L　　､
　　　　　　　　　　　　　　／￣　　 |::::::ト　＿,／::::|　 ￣ヽ　　　　　　　　 |　 :|　ﾞ　 　 　 　
　　　　　　　　　　　　 ／　　 |i　　 |::{(二ィ⌒ﾄニ)}　　　i　ヽ.　　　　　 　 |　 :|
　 　 　 　 　 　 　 　 < (ヽ 　 |l r､　|::::::{i ﾉ}　|{/::::| 　 　 |　　'.　　　　　　 |　 :|　 　 　 　 　
　　　　　　　　　　　／　　ヽ |　| |　 i:::::ﾍ}/　|{:::::::l　　　 | | 　 ' 　　　r─┴‐┴─､
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28： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:29:58 ID:pJmjSYSU0

話は戻るが、こうした経緯の元で、日本をはじめとする先進国では医学分野が発達し、なおかつ衛生環境も改善されている。
そのために伝染病が発生することは希であり、あってもそれが大多数の人々の命を失うことはない。

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29： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:30:56 ID:pJmjSYSU0

だがアフリカの多くはインフラ整備が遅れている上に、こうした医学における知識もない。故に、発症した場合知識がないため
適切な治療ができず、劣悪なインフラなために、瞬く間にそれが拡大していく。

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30： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:31:17 ID:pJmjSYSU0

病気に対する知識がない→適切な治療ができない→劣悪なインフラなためにすぐに広がっていく→最初に戻る。


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　　イ三二二ﾆﾆﾆゞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(　j〉　　　 」´￣￣｀`ー-､ヽ　　　　.,.:,..:.. 　　　.,.:,..:..
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　　... ,... 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,.:,..:.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　... ,... 　　　.,.:,..:..
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　　　　　　　　,ｲ､,r'⌒ヾ　　　　ヽ ヾ ｀`''ー- -､-‐''"´ヽ;;: :;:; ;:; :;:; 　;: 　.　　　　　　　　　　　.,.:,..:..
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　　　　　　 ヽ 「i''ー'"´　　 ,r-‐'ー''''"´￣
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　　　　　　　　　　　　　　　 イ三二二ﾆﾆﾆゞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(　j〉　　　 」´￣￣｀`ー-､ヽ　　　　.,.:,..:.. 　　　.,.:,..:..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ... ,...　　　　　　　　　　　　　　　｀`ｰ─'"´ ￣￣￣￣
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ 「i''ー'"´　　 ,r-‐'ー''''"´￣


という悪循環が起きるため、先進国ならすぐに適切な治療を受ければすぐに直る病気が、深刻な病になってしまうのである。

31： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:31:28 ID:pJmjSYSU0

また、そうした病気にかかれば当然ながら、働くことなどできない、その結果、貧困へとつながる。そしてまともな教育を受けさせることもできない。
そうした悪循環がマラリアをはじめとする病が連鎖していくのであった。



　ロロロロロロロ |::..　　　　　　　 ____i_　　　　　　 　 　 　 ____i_　　　　　 　 　 　 　 　 |::.
　ロロロロロロロ |:::::..　　　　 　 /;;;;/iヽ　　 　 　 　 　 ...::/;;;;/iヽ　　　　　　　　　　 　 |::.　l'l⌒i
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　ロロロロロロロ |:::::::::::::.::::........ :|F_F|=|:::::...........:::::::::::::::::::|F_F|=|::::....　　　　　 　 　 　 |::.　|:|ｪｪ|
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32： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:31:56 ID:pJmjSYSU0

話は戻るが、オリセットネットはそうした悲劇の鎖を断ち切る製品となり得る商品となっていった。そうなると、伊藤一人のライフワークとしていくわけにはいかない。
ようやくこの製品の意味を理解した住友化学上層部は全社的な体制を整えることを決意する。


　　　　　　　　　　　　　　　　 　＿＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　／＿_.）)ﾉヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 .|ミ.l　_　 ._ i.）　　　　　　　　　伊藤はワシが育てた。
　　　　　　　　　　　　　　 （＾'ﾐ/.´・ .〈・ ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　.しi 　　r､_） |
　　　　　　　　　　　,--ｰー　 |　 `ﾆﾆ' / ｰ-､_
　　　　　　　　　　/　　　／i/ ｀'`ｰ―i´　｜　`ｰ､_
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　　　　　　　　／　　Y　L　　|,) ∧ﾉ↑　　,>　ｨ　 　|
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　　　ﾚｰ-､_　/￣`__-､__,l　Ａec.|　| /　/(　　　　 |
　　fｸ´"''ﾉ_Ｖ　　　　`＼ﾉノavkj￣ﾚ ノ ﾉ　　　　 ﾉ
　 /　,､ i　 ＼　　　　　　＼_,ﾆｺ∠､,≦　　　　,イ








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ _ﾉ_ﾉ:^)　　　　　　　　オリセットネットはもはや伊藤君だけの話じゃないお！
　　　　　　　 ＿＿＿_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ _ﾉ_ﾉ_ノ ／）
　　　 　　 ／　　 　 　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ﾉ ﾉノ／／　　　　　　わが住友化学全体でやるべき商材だお！
　　　 　／　 ＼　　／　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ___/　 ______　ノ　
　　　／　 ==⊂⊃=⊂⊃= ＼　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _.. r（" 　`ｰ"　、 ﾉ　　　
　　　|　 　 　　（__人__）　 　　|　　　　　　　　　　　　　 _. -‐ '"´　　l　l-､　 　　ﾞ ノ
＿,- ＼　 　　　｀ ⌒´ 　　,／　 _　　　　　　 .　-‐ ' "´　　　　　　　l　ヽ`ー''"ｰ'"
　|　:　 ＼　　　　　　　 /ヽ' "´／｀ﾞ ｰｧ' "´　　‐'"´　　　　　　　　　ヽ､`ｰ ／ノ　　　
　ヽ　　　 ＼＿＿,.-ー'　|　　 /　　　/　　　　　　　　　　　　　　　 __.. -'-'"　　　　　　　　　　
　　|　　　 |　＼　　　/　|　　 l　　　/　　　　　　　　　　　 .　-‐ '"´

33： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:32:45 ID:pJmjSYSU0

こうして2005年には生産体制を大幅に拡大。タンザニアにあるAtoZ社との合弁でタンザニアに工場３カ所を新設させる。


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　|:　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　｜ :;|　壱:||:號　|...,　. 　　＿ 弐:||:號　|
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晶 . . .日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　｜:; |　　 :||: 　　| 　　(^|.|.|.|.|.|.|.||]__|__ｺ
晶晶 :., ,　 . 　　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　　 |.: .;|Π　:||: 　T　　 　[ﾛl]三,ｨ^i.i.i.i.i,,.-､.、
晶晶晶　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,晶　　　　゛υι"　 　 ﾞｪ==ﾆﾆﾆ二二lｺo=ii∴i｀ヽｭ
晶晶晶晶ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::;:;:;:::()]三］；〕::::::::000==爨:::::::::::::晶晶:::::::::::::::↑↑　　　　　"""""""""""""""
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ﾆ@ﾆ@ﾆ@.!　|_|:|_|＿_.| ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ/￣￣￣￣/!ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ
━━━━━┻┻ <ﾆ（（IIIIII（（|━━━━━━━━━━〔〓〓〓〓〕(コｺ━━━━━━━━━━
─────────────────────――（（─（（─────────────
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　ｷｭﾙｷｭﾙｷｭﾙｷｭﾙ…
───────────────────────────────────────

現在では中国やベトナムでも工場を新設させ、年間三千万セットもの生産が行われている。

34： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:33:02 ID:pJmjSYSU0

タンザニアでは3工場で3200人、周辺を含めると6000人の雇用を創出。感染が減ったことで農作業に従事できる人も増え、荒地が畑に変わる現象も起きている。
その結果、貧困対策と、初等教育も充実していくことになった。

　　　　 　　　 　　　∩＿
　　　　　　　　　 　〈〈〈　ヽ
　　　　　　　　　　〈⊃　　}　　　　　あの蚊帳のおかげでマラリアに感染しないから、安心して仕事もできるクマー！
　　 ∩＿＿＿∩　 |　　 |
　　 | ノ　　　　　 ヽ !　　 !　　　　　子供にもちゃんとした勉強を受けられるようにできるクマーよ！
　　/　　●　　　● |　　/
　 |　　　　( _●_)　 ミ／
　彡､　　　|∪|　　／
/　＿＿　 ヽノ　/
(＿＿＿）　　　/








　　　　　　　 /ﾆＹﾆヽ
　 　(ヽ　 　/（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ　　　　　　　　　　　マラリアを予防できる工場で働けるなんてうれしいっていう！　俺たちが作った商品が、多くの人たちを救えるなんて、
　　(((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼　　　　　　　　　すごいうれしいっていう！
　／∠_|　,-）＿＿＿（-，|＿＿＿
( ＿＿＿､　　|-┬-|　　　　,＿　　）
　　　　|　　　　`ー'´　　 /´　／／
　　　　|　 　 　 　 　 　 / 　 ( i)))
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ)

35： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:33:29 ID:pJmjSYSU0

こうして、伊藤の功績により住友化学には事業をさらに加速するため、07年4月にはベクターコントロール部を新設。08年10月には事業部に格上げした。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,　∠ﾆ　､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,,　イ　.∠ﾆﾆ= 　`　、
　　　　　　　　　　　　　　　　_　　　r''´ ∠ﾆﾆ= 　（≠Y` 、
　　　　　　　　 　 　 　 _　-　　　／　∠ﾆﾆ=　　　　¨”` 　＼
　　　　　　　　　　_　　　　　　　>　∠ﾆﾆ=　　　　　　　　 　/ト､
　　　　　　　_　-　　　　　 　X´ ∠ﾆﾆ=　　　　　　　　 　 .//_Vﾊ”''*x,,
　　　　_ 　-　　　　 　 　 ／　∠ﾆﾆ=　　　　　　　　　 　 //＜≫V 　 　、
爻爻爻爻xx、　x爻 　V 　∠ﾆﾆ=　　　　　　　　　　 　.//‐- V/∧　　∧
爻爻爻爻爻Y爻爻爻xx∠ﾆﾆ= 　 　 　 　 　 　 　 　 .//___ 　.V/∧　　∧
爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻ﾆ=　　　　 　 　 　 　 　 //　 ￣ ‐.V/∧　　∧
爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻 　,xx、　 　 　 　 　 　 //￣　‐-　_.V/∧　　∧
爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻　　爻爻x,爻　　　　　　.//―-　　__ 　.V/∧　　∧
爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻 　爻爻爻爻爻x、　 　//___　　　　￣　.V/∧　　∧
爻爻爻,,x'＾＾爻爻爻爻爻Y爻爻爻爻爻爻爻爻x､x爻爻x､ x爻x爻爻爻爻xx､
爻爻爻{　爻爻爻爻爻爻ﾊ爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻爻
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＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾＾三ﾆ=‐――　￣￣￣￣
==============================‐　　￣￣￣￣



この分野に対して参入してくる他の企業も多いが、ほとんどの企業では三年ほどしか持たず、オリセットネットは五年という耐久頻度を誇り、
他社の追従を許してはいない。

36： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:33:47 ID:pJmjSYSU0

現在伊藤高明は様々な講演やインタビューを受けており、一躍時の人として注目されている。彼はその中でこのようなことを発言している。

　　　.　　 　 　 　 ＿＿_
　　　.　 　 ／´￣　　 　 ￣｀＼
　　　　 .／　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　いま、年間に何千万セットも売れ、たくさんの命を救っている商品になっている
　　　　/　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　　　　マラリア感染予防蚊帳オリセットネットは「まぐれ」の商品です。
　　　./　　　 （ 一 ）　　　（ ー )　　l
　　　.|　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　私はそもそも「まぐれ」になるような製品ばかりを自由に開発してきました。
　　　..ヽ　　 　 r ェェェェェェy 　　/
　　　.　ヽ､　　 Lェェェェェェ/　 ／
　　　　 ／:::::::::|::＼ﾞ_>介 √!;:::::::＼
　　　. /:::::::::::::::＼:::ヽ };;{ |::/::::::::::::::ヽ
　　　/:::::::::::::::::::::::ヽ::ヾ::}〃:::::::::::i:::::::i






　　　　　　　　 　 - ─ ＝＝─ - ､
　　　 　 　 .／　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
. 　 　 　 ／　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
.　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　自由に開発できるものって、新開拓というか「なかったもの」なんです。
　　　 /　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　「それまでなかったもの」なら自由に開発できる。
.　 　 |　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |
　 　 丶 　 　 　 （　●　 ）　　 　 　 （ ●　）|　　　　　だからマラリア感染予防蚊帳オリセットネットの場合にも「人の命が助かるといいな」という思いと
.　　　...ヽ　　　　　 　　　　　　　　　　　　　/　　　　　同時に「いままでにないものを作れないかな」という遊び心が結果に結びついたんじゃないですかね。
　　 　 　 ＼ 　 　 fェェェェェェェェェェy／
　　　　　　 イ:::::|::::::＼ ﾞ_＞ 介　√ヾ::::::＼
　　　　 ／::::::::::::＼:::::::ヽ 　 }:::{　|::::/::::::::::::ヽ
　　　 ./:::::::::::::::::::::::＼:::::ヾ...i::::}　!:/:::::::::::::i::::i
　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::＼:::ヾ!::::}.〃:::::::::::::::!::::!

37： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:34:03 ID:pJmjSYSU0

ちなみに、オリセットネットの年間売り上げだが、年間百五十億もの売り上げを誇っている。これに対しても彼はこうつぶやいている。

.　　 　 　 　 ＿＿_
.　 　 ／´￣　　 　 ￣｀＼
　 .／　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　ちなみに化学会社における基準としては、だいたいの目安として
　/　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　「１００億円の売上があった商品は、新しい化合物を作ったのと同じぐらいの成果である」と考えられています。
./ 　 　 　 　 　 　 　 （　●）::::l
.|　　　　　　　　　　　　　　　　|
..ヽ　　　　　　 　 　 /ェェェェ/　　まさかここまでの商材になるとは思ってもみなかったですね。
　 ヽ､　　　 　 　 　 iェェェ／
　 ／::::::::::::::::::::|::＼ﾞ_>介./}
. /::::::::::::::::::::::::::＼:::ヽ };;{ |:!
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::ヾ::}::!






彼の発明したオリセットネットは「新しい化合物」を発見したのと同じくらいの成果であり、ちなみにアメリカTIME誌では2004年に、
このオリセットネットを「世界で一番クールな技術」と評価している。だが、それでも伊藤は至って謙虚であった。





.─ ＝＝─ - ､
.　 　 　 　 　 　 ＼
.　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　　　　あれは元々まぐれあたりの商材ですから。
　　　　　　　　　　　 ヽ
.　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ
..　　　　　 　 　 　 　 　 |　　　　はじめは「どうやったら売れる新商品ができるのか」を端緒に生まれたものなんです。
.　 　 　 　 （　　 ●）:::::::|
. 　　　　　　　　　　　　/
.　 　 　 　 　 fェェェ／
::::::::::::::::|::::::＼ﾞ＞介ヾ
.::::::::::::::::＼:::::::ヽ .}::{|/!
.:::::::::::::::::::::::＼::::ヾ!;}/::!
.:::::::::::::::::::::::::::::＼::ヾ;/:!
:::::::::::::::::::::::::::::::::::＼;>:i

社内でも散々な評価を受けただけに、彼は現在でもその姿勢を崩していない。
38： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:34:15 ID:pJmjSYSU0

それ以上に彼は今、オリセットネットのリサイクルの研究で頭がいっぱいだという。


　 　　　＿＿＿_
　　　／　　　　　＼
　 ／　 　　　　　　 ＼
／　　　　 (●）　（●）＼　　　　　　　オリセットネットは五年で寿命がきます。そうなると年間三千万セットですから五年後には、同じくらいの
|　　　　（ﾄｪｪｪｪｪｪｪｪｲ） |　　　　　　　廃棄物が生まれることになる。
.〉　　　　 ∩ノ ⊃　　／
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |　　　　　　　　　このリサイクルが今の私の研究ですよ。
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／





御年六十四歳の彼であるが、今でも彼は農学博士として研究の日々を行っている。

39： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:34:26 ID:pJmjSYSU0

この逸話で注目するべきことは一つ、研究や製品開発というものは、どうなるのか全く予想がつかない代物であるということである。
伊藤たちが心血を注いだこの商材も、当初は誰からも見放されれていた。しかし、最終的にはWHOをはじめとする医療機関が認め、
その需要が生まれ、大成功することになった。

　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　 ／　　 　 　＼
　 　　 ／　　　　　 　 　＼　　　　まさかここまで売れるとはねえ。
　　 ／　 （ー）　（ー） ／^ヽ
　　|　　（ﾄｪｪｪｪｪｪ（　/　　 〉|
　　＼　 ＼ェｪｪｪェ 〈 ／ ⌒^ヽ
―――――――― ＼ _ _ ＿ ）











だが、もし伊藤らが研究を途中で放り出していれば、オリセットネットは誕生せず、アフリカにおけるマラリア予防に歯止めをかけることは
不可能であっただろう。


　　　　　　　＿＿＿
　　　　　／　　 　　 ＼
　　　 ／（● ） （● ）　＼　　　　　　　
　　／ （ﾄｪｪｪｪｪｪｪｪｲ） 　 ＼
　　| 　ｌ^l^lｎｪｪｪェ／　　　　 |
　　＼ヽ 　 L　　　　　　　 ／
　　　　 ゝ 　ﾉ
　　　／ 　 /




仕事に見通しは必要だが、その見通しが立つかどうかは簡単にはわからないのである。ましてや、自分たちの研究成果が実用化されて
きちんとしたビジネスになるかどうかは、なかなか見通しを立てるのが難しい。

40： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:34:46 ID:pJmjSYSU0

だからこそ、経営者は常に技術開発と研究に追力する一方で、それを商材として売り出すための努力を怠ってはいけない。
特に製造業における技術開発は、製造業における要である。

,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,,;;/,,,;; /,,,;;/,,,;;/,,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,;;.//二二二ヽ,,,;;/,,,;;/,,;;.//二二二ヽ
　 /;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,//: 　: ;　:. 　,.,＼;/,,;;./,,//:　: ;　:. 　,.,
　 /,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/,,,;;/// ;＿＿＿＿__:;＼/,;;// ;＿＿＿＿_
　|;~~~~~~~~~~~~.ii~~~~~~~~~~~~~~~~.ii~~~~~~~~~~~~~~~~ii~~~~~~~~~~~｜ .;|　　 :||: 　　|;.;:| ~~｜ ;|　　 :||: 　　|
　|:　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　｜ :;|　壱:||:號　|...,　. 　　＿ 弐:||:號　|
　|;　　　　 　　　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　　 |.: .;|　　 :||:　 　| ;.; ＼ﾞ,./.ｨ=ヾｨ｡__/;=
晶 . . .日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　　日　ii　日　　日　｜:; |　　 :||: 　　| 　　(^|.|.|.|.|.|.|.||]__|__ｺ
晶晶 :., ,　 . 　　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　 　　 　 ii　　　　　　　 |.: .;|Π　:||: 　T　　 　[ﾛl]三,ｨ^i.i.i.i.i,,.-､.、
晶晶晶　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,晶　　　　゛υι"　 　 ﾞｪ==ﾆﾆﾆ二二lｺo=ii∴i｀ヽｭ
晶晶晶晶ゞ:::::::::::::::::::::::::::::::::;:;:;:::()]三］；〕::::::::000==爨:::::::::::::晶晶:::::::::::::::↑↑　　　　　"""""""""""""""
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ﾆ@ﾆ@ﾆ@.!　|_|:|_|＿_.| ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ/￣￣￣￣/!ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ@ﾆ
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41： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:35:04 ID:pJmjSYSU0

だがそれはさておき、一人の科学者のライフワークが多くの人命を救う製品を生み出し、貧困や格差をも断ち切るほどの規模にまで成長させた。

　　　　　　　　　　　＊　　＿＿＿＿＿__
　　　　／￣|　　+　　　／　　　　　　　 　ヽ　　　+
　　　 ｜　::｜　　　 ／⌒　 　　　　 ⌒ 　　＼
　　　 ｜　::｜x　　/ （ ●）　　　　（ ●）　　　|　 .人
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　| ＿＿_） 　::｜　.!　　　＼　　　 　 ／　　　/
　| ＿＿_） 　::｜＋ヽ　　　 ＼ｪｪｪ／　　　　/　　　　　十
　| ＿＿_） 　::｜ 　　.＞　　　　　　　　　　＼
　ヽ＿＿）＿／　　 /　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼





この逸話を聞くたびに、作者はこれを一研究者の努力だけではなく、経営者もその努力を理解することの重要性を認識させるべきだと
実感する。



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【番外編　ある科学者の奇跡】
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42：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 17:39:08 ID:HPsNmx320
乙でした
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1379176002/961
上記でトリップばれちゃってるんで、変えたほうがいいですよ

43： ◆n8xabVqZWc：2013/10/20(日) 17:41:05 ID:pJmjSYSU0
>>42
あ、トリップはもう変えましたので大丈夫です。
以後、トリップはこれにしますのでご了承ください。

44：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 18:22:13 ID:YGta5okA0
乙
なんかテレ東で蚊帳のことはやってたが
そんなドラマがあったのか

45：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 18:24:40 ID:2tOwcxJg0
乙です

46：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 18:51:04 ID:CACGul1w0
乙

地元、愛知県の人物ですがはじめて聞きましたな。
瓢箪から駒というのが多いというのも現実的にありそうな話。
企業の目、国家の目が大局に向いているというのが重要なの伺えます。


それにしてもやる夫板IIから安価以外でEXに移った作品はじめてみました。

47：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 18:56:13 ID:DwjvvGx60
乙でした
こうやって他のスレと知識のリンクが増えるのは、勉強になります

48：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 19:04:27 ID:9qIKnSTE0
乙ー
技術の評価は難しいけど、だからこそ政治がそれをバックアップしなければならないのにねえ

49：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 20:08:03 ID:4OMc41EU0
乙乙
最近はどこの企業も研究開発費抑えられてますよねぇ・・・

50：名無しのやる夫だお：2013/10/20(日) 22:39:56 ID:aR1f4lCM0
乙

小柴昌俊先生の言葉じゃあありませんが
不毛に見えても何らかの準備をしていれば、何か転機が訪れて日の目を見ることは珍しくありませんからねえ

51：名無しのやる夫だお：2013/10/21(月) 05:52:36 ID:pAMtj0jQ0
乙乙。シリーズ初の、ご存命の主人公かな？ｗ

52：名無しのやる夫だお：2013/10/21(月) 07:52:43 ID:YifS480M0
乙です
江戸時代に発明禁止令があったように、昔からお役人さん達は新規開拓が大嫌いですから困ったモンです

53：名無しのやる夫だお：2013/10/21(月) 11:47:08 ID:3pw/MZMA0
役人は今規定されてることするがだいたいの仕事だからなあ。増やされたり、全く知らないことが起きると思考停止しやすいのよ。

54：名無しのやる夫だお：2013/10/21(月) 21:00:32 ID:2X/AGJdA0
乙
日本ではマラリアが絶滅していたとは知らんかったわ
大戦中は戦争マラリアとかあったのになぁ

55： ◆n8xabVqZWc：2013/10/21(月) 22:20:11 ID:4D12c5KU0
ご愛読いただきありがとうございます。次回の投下日は来週の日曜日の16:00を予定しております。次回はこの方になりますので
よろしくお願いします。


.　　
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : :/　二二_ィ´/: ;ｨ : : : : : : /｀ｰ┬---､ゝ: : :',
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第九回　ミスターディーゼル】
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56： ◆n8xabVqZWc：2013/10/21(月) 22:23:24 ID:4D12c5KU0


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57：名無しのやる夫だお：2013/10/21(月) 23:07:11 ID:LStwHLz20
乙！

これは幸いにして日の目を見たけど
実際は消えていった発明が大多数なんだろうな。
58：名無しのやる夫だお：2013/10/22(火) 09:45:15 ID:JU1rfQMY0
画期的な蚊帳を作ったのに、当時の社内では蚊帳の外…

59：名無しのやる夫だお：2013/10/22(火) 13:25:44 ID:oKNP4nRo0
乙ー

しかし、過去の話をするとほぼ確実に福沢諭吉が出てくるのか。
この人居なかったらどうなってたんだろうなｗ

60：名無しのやる夫だお：2013/10/23(水) 17:24:46 ID:Q3Hl5ysQ0
あのなぁ、蓮舫を代表とする事業仕分けてのはなぁ、
研究所の、行政からカネをぶんどってきて中で配分する連中が、
適切な予算の獲得＆配分が出来ているのかを確認する行為なんだよ！
技術者は適切な研究費を任されているのか、変な飲食に使われていないか、
それには研究所の中の役人気質な連中が、きちんと研究の意義を理解しているかが問題なんだよ！
それなのに後ろの技術者連中が
「予算は適切に使われている！」
と怒るならまだしも、天下り役員の行為を隠しやがって…。
そんで世間もスレ主も、事業仕分けの本質が解ってねぇの。
二番じゃダメな理由を、あそこに出てきた担当者が言えるかが問題だったんだよ！

61：名無しのやる夫だお：2013/10/23(水) 17:32:35 ID:/zux8fik0
2番目じゃダメなんですか。

1番を目指してこそ男よ

62：名無しのやる夫だお：2013/10/23(水) 19:08:54 ID:UQ0XxiGs0
いやスパコンに関しては天下りやら無駄使いの問題じゃないじゃん
また二番目云々にかんしては政治家なら真の意図とやらもどうあれ
「そう取られる発言」自体が問題で責任負うべきだろう

まぁ実際のとこは真の意図もあんぽんたんだったとは思うが

63：名無しのやる夫だお：2013/10/24(木) 14:23:57 ID:M6Si6nLc0
>>60
こじつけご苦労さん

＞研究の意義を理解しているか
＞二番じゃダメな理由を、あそこに出てきた担当者が言えるかが問題だった
魔女裁判と同じで何言っても頭から全否定してたじゃん。
圧迫面接と同じで反論できなくなるまで追い込み「説明責任を果たしていない！」
「予算カット！」と勝利宣言したのが事業仕分けの本質でしょ。

↓これ興味あるな。
＞天下り役員の行為を隠しやがって…。

64：名無しのやる夫だお：2013/10/24(木) 21:02:15 ID:vbxj95Ao0
iPS細胞の山中教授が言っていた言葉
「本気で1番を目指さないと2番にも3番にもなれない。
死に物狂いの努力、生まれついての才能、
そして幸運に恵まれた者のみが1番を手にする。
それに僅かに及ばなかった者が2番、3番になる」ってさ。

ハナっから2番でいい、なんて論外なんだよねw
つくづく蓮舫はアホとしか言い様がない。
ていうか、こいつ確か「日本人が何を考えてるか分からない」
みたいなこと言ってなかったっけ？

65：名無しのやる夫だお：2013/10/25(金) 01:16:07 ID:yd7FDUzM0
学者の世界では二位はないからな

66：名無しのやる夫だお：2013/10/25(金) 14:25:10 ID:mjIGjQl.0
>>60
こんな所までご苦労さん。
うちの業界も仕分けられたが、本質的な問題を一切指摘せずに金使うなの結論で終わり、
改善する努力しようにも全く手を貸してくれなくて苦しい状態が続いているよ。

67：名無しのやる夫だお：2013/10/25(金) 15:19:08 ID:Nbzvnj1g0
>>64

遺伝子関連の研究開発は（特に細胞関連は）、リアル過労死するまで働か
ないと先を越される世界だそうで、寝る時間があるなら実験・風呂入る暇が
あるなら実験・食事する暇があるなら実験、ってな具合の超がつく競争を繰
り広げているそうだね。

68：名無しのやる夫だお：2013/10/25(金) 18:04:44 ID:qzeH3nc60
よそでやれよ

69： ◆n8xabVqZWc：2013/10/25(金) 21:49:27 ID:vdRErcu.0
すいません次回の投下ですが、来週の日曜日に延期いたします。
誠に申し訳ありません。

70：名無しのやる夫だお：2013/10/25(金) 23:09:49 ID:In3mjfJE0
了解ですよ。

71： ◆n8xabVqZWc：2013/11/01(金) 20:12:16 ID:/11zO.b.0
すいません、体調不良が続き、更新は来週以降にさせてください

72：名無しのやる夫だお：2013/11/01(金) 20:30:18 ID:7FnFRNkk0
了解しました、最近暑くなったり寒くなったりなんでお大事に

73：名無しのやる夫だお：2013/12/03(火) 20:50:40 ID:9LZnE9KE0
年内に生存報告はしてもらえないもんじゃろか

74：名無しのやる夫だお：2013/12/04(水) 01:55:43 ID:lXgkpjyQ0
その辺は体調不良の内容にも因るから仕方ない

75：名無しのやる夫だお：2014/01/20(月) 23:25:10 ID:QGaL96uA0
大丈夫かな？
復帰してほしいもんだ

76：名無しのやる夫だお：2014/03/18(火) 19:35:45 ID:o937RZ9Y0
a

77：◇1xuVLqH3kQ ◆gaTcOgTyCM：2014/09/13(土) 02:08:57 ID:l72cQa.M0
ええ、大変長らくお待たせしました。早速ですが第九回を
明日の十七時に投下します。

78：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 02:09:51 ID:l72cQa.M0
で、次回からこのトリップを使いますので、改めて、よろしくお願いします。

79：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/13(土) 02:16:43 ID:zaiTaLYw0
なん…だと…？
復活乙です

80：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/13(土) 02:23:22 ID:3Bg5HBTo0
まさか1年ぶりの復帰とは。期待してます。

81：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:02:22 ID:tSPrWWi20
では時間になりましたので投下致します。

82：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:02:39 ID:tSPrWWi20

場。それは企業にとっては最高の名誉ともいえる一つの行為である。自社の株を自由に売買できるように公開する。
もちろん、自由にどんな企業でもできることではない。上場にはいくつもの高いハードルがある。


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|::::::l二二二l二二二二l: |三:|lｌｌ"￣ｌ:l===||三三|三|=ｭ|=|= l￣￣￣l￣￣l＿＿_ii|lｺｺｺｺｺｺｌl|;:ﾛﾛﾛﾛﾛﾛｌ|:::|:==tTTTTTll==l;|::::::|:::ｌ|
|::::::|ｉiiiiiiiiiiiiiｉ|llllll|:::::|llllllｌ|:ｉ|三:|lｌ|+++|:l三:|_|三三|三|==|=|= |三三|￣￣￣|￣￣￣|ｌｺｺｺｺｺlｌ|;:ﾛﾛﾛﾛﾛﾛｌ|三三| | | | | |:l |─┐llili=ｭ
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83：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:03:00 ID:tSPrWWi20

たとえば、東証一部・二部の場合、株主数、流通株式、時価総額、事業継続年数、純資産の額、利益の額又は時価総額、
虚偽記載又は不適正意見等、株式事務代行機関の設置等々に関する規定が用意されている。これらをクリアして、初めて
上場できるのである。



　　　　　_＿_,,,,,＿_　　　　　　　　　　いやあ、きびすいな。これじゃ、上場なんておら達には難しいだ。
　 　〃/ /　/　　＼ヽ　
　　≪|__|　　( ・ ∠　|
　　　（d u　　⊂⊃　|)　　　＿,,,,,___
　　　__|　　: : : : : :　ヽ.,,∠,,,--(__)-ヽ、
　 ,,-＼ヽ└＜＞-'丿=|　/／- 、 -ヽi　　　　　　　一応、古くからやってるけど、ほかは全くクリアできねえだ。
　/　　 ＼￣￣/￣i　　|__|　|　 ・|・　| |
　|／(⌒ヽ／⌒)____|.　 （d　 ｀-　o-´ |
　 ﾞ|＼,￣ .／￣ .ノ　　　ヽ、　　 ３　ノ , つ
　 .|　　￣　　￣ |　　　　 /ﾞ＼￣/ヽ　/⊃）



もちろん、それに見合うだけのメリットも存在する。上場した場合、、資金調達やその多様化、社会的信用力と知名度の向上、
優秀な人材の確保、従業員の士気の向上及び社内管理体制の充実等、さまざまなメリットがある。圧倒的に知名度が高くなるために
優秀な人材が確保しやすくなり、銀行も財務状態を把握できるために融資がしやすくなる。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　 　　　　　　　　　　 　/　　　 M＼　　　　　　　　この株は当たりだな。
　　　　　　　＿＿＿　　　　　 　　|┬--＝＝＝＝
　　　　　／＿＿＿＿＼　 ／ ⌒ |_|　 　・ 　・|
　　 　 　|__| 　/　　　ヽ|／　　 ／(∂ 　 　　o | ヽ
　　　 　(∂　　　 ・　・ |　　 ／　 └,＼ └　 丿 |
　　　　　| 、　　　）⌒ 　） /　|　 |　/　| ￣￣ ／
　　 　 /└＼ 　 　∨／　| 　 |--|/|--|　　 ／
　 　　|　　　 　￣￣ |_|　　|ヽ-＼ ￣）/￣｀ヽ　　　　　　　　　　ああ、絶対値上がりするぜ。
　　　|　|─-|_＿　 　| |　／＼ (￣￣ヽ￣| 　|
　 ／|＼＼＿　 ⌒）⌒)　　 　￣￣|　 | 　|￣￣）
　　　|　 ￣ ／⌒|￣ ￣ ヽ　 　 ／|￣￣）￣￣
　 　　＼＿|__　　|─-| 　 |　 ／　　￣￣
　　　　　　／|　　|　　|￣￣）
　　 　　 　　 |￣￣）　￣￣
　　　　　　　 ￣￣

84：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:03:15 ID:tSPrWWi20

だが、同時に上場にはデメリットも存在する。それは、かつて堀江貴文氏がニッポン放送を買収を巡って争った、敵対的買収という行為である。
株式会社の場合、三十パーセントの株式を有した場合、株主は企業に対して独自の取締役を送り込むことができる。
上場にはそうした、乗っ取りという最大のメリットが存在する。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /´　　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　厶---　 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　,ｨ≦__ ´￣｀ヽ＼　　　　　　　うちの会社が、得たいのしれないもんのもんになってしもうた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　tｆ´　/__,　≧t､ 　 ＼>-
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　 　 ＿＿__｀¨{tﾃッ ｀ｰ,tﾃｯｖ┬v
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　,ｨ==≦､　､　　　｀}｀¨f^ヽ ｀ー宀│　　　　　わしらどうなるんじゃ。
　　　　　　　　　　　　　 ﾄ((ｨｰ'^＜/ ／　 　 ＼ヽ、　 ｊ;;　＾__`_　　;;;u j Y
.　　　　 　 ,　--- ､　 ,r'　　　　　 ∨ __,tｯｰ¬fっ=r-ﾍ　r'===ﾍｨ 　　'^'__
　　　 　 .ｲ廴__　　 ｰ≦f(乂从儿　ヽ!てテ　 てﾃYヽ　ヽ｀￣￣´;;u , ' /　　　　　　首だけはいやじゃのう。
　 　 　〃__,{　ヽ、　､（{ ≦ 　 ≧zヽ, } こ'⌒ヽ ¨´u |Y^ﾍヽ､___ _, イ／
　　　､｣:ｆtｯ,ヽ、 ﾊ　ﾐﾆ! /⌒ヽ　;;ﾄ┘{ ;ヽ弋iつ７´,'└〉_ﾉ^ｆ^ヽ､´／
　 　 ヾ_| 〈_、 |　 | 　 〈';;r===-ｲ 气,ハ　｀¨こ´u;;; _／ヽノ|　,ｧ=r- ､
　　 　 ｢! fﾆぇj　 j 　 入｀¨こ¨´ u　 ／ｆ≧ー一 '´　　,/ 厶八_ﾉ　　 ＼__
.　　 　 ヽ､　｀¨７　,イ／＞ｒr--ｒ≦´　 jｆ｀=--　　　　/　　　,ｒ-､
　　　　　　　　　　　　　【某企業の皆さん】
　


また、上場するということは、財務状況や労働状況などを、すべてクリアに公開しなければならない。逆に言えば、そうすることで
上場企業はすべてを丸裸にされ、よくわからない株主のために働かせられかねない。

85：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:04:07 ID:tSPrWWi20

ちなみにそうした非上場企業で有名なのが、サントリーホールディングスである。これは、サントリー自体が同族企業であることも大きいが、
ウイスキーなどをはじめとする長期の熟成を必要とする酒を製造しているため、株価の変動により短期的に成果を求められる上場企業の宿命から、
逃れることが大きい。

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　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |:.:.:.:.:.:.:.:.|
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　　　　　　　　 　 　 　 　 ﾉニニニ弋
　　　　　　　　　　 ,.ｨ:'/´suntorywhiteヽ‐､
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また、竹中工務店もそうだが、大半のこうした企業は皆、同族企業であることが多い。そうした株主の介入を嫌うことから、
あえて上場をせずにいたのである。

86：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:04:22 ID:tSPrWWi20

かつて出光興産もまた、上場をせずにいた。これは創業者である出光佐三がそうした得たいのしれない株主のために働くことがいやであったからである。
彼は大家族主義を掲げており、終戦時の苦境時でも社員を誰一人として首にせず、会社を建て直した。
もし上場していれば、リストラをしなければならない可能性もある。
それ故に、彼は株主というものを信用していなかった。




　　　　　　　/l, r ´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ..、
　　 　 　 　 {::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_; ＞
　　　　,..-─`:::::::::::::l　ヽ::::::::ヾ､::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
　　　/´／::::::::::::::::::l　　 ヾ 、::'､ヽ:::::::::::::::::::::::::::::ヽ、　　　　　　顔も知らない株主のためになんか働けるか！　俺は金儲けがしたいから
　　　 /::ィ:::::::::::::::::::{　　　ヽヽ:::'､ ヽ:::::::::::::::::::::::::::ヾ`　　　　　会社を興したんじゃない！　
.　　 / ´l:::::::::::::::::l､:l　　　　ヽ ヽ`、ヽ:::l､::::::::::::::::::､:ヽ、
　　/'　.l:::::::::::::::ll::!.l:l　　　 　 ヽ ヾ ､　'､!l:::::::::::::::::`､` ヽ　　　社会のために、　社員のために、出光興産を創った！　それを金儲けのためしか
　　　　l::ィ:::::::::::!l:!`ｷ- 、　　/ ヽ　`, - ﾘ.l:::::::::::::::::::丶　　　考えられない連中のためになんて働けるか！
　　 　 l/ l:::::::ll::l,.ｔ'´￣ ヽ`､"ヽ` '," '~ `ヽl:l､:::::::::､- ､ヽ
　　　 {　 lｵ､:l{!'{. 　(::) 　 　 ､　　　 (::)　　 !〉::::::::::`::.､
　　　　　　l l ;､ ` ｰ--‐'　　}　 　 `‐-- '´ /'´.〉, r '´
　　　　　　ヽ4ヽ　　　　 　 〈　 　 ーl‐ヾ´///:::丶
　　　　　　　`ヾ'、 　 　 _,,.........,,_　 　 　 t.ｨ､l￣｀`
　　　　　　　　　 ` ､　 ´　─‐‐ ｀`　 ,.イヾ
　　　　　　　　　　　 `t､､　　　　 ,.ィ"
　　 　 　 　 　 　 　 　 } ヽ｀~~ ´　.i
　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　　　 　 l
　　　　　　　　　　,...-ノ　　　　　　'､.､
　　　 　 ,......r::::':´::::i´　　 　 　 　 　 i:::`:-......,
　　 ,r ''「:::::::::::::::::::::{　　　 　 　 　 　 l:::::::::::::::::ヽ、
　



だが、その出光も時代の波には逆らえず、2006年には上場している。同族経営というくさびを解き放ち、同時により開かれた企業を
目指すために、出光興産はあえて上場という選択をとった。

87：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:04:37 ID:tSPrWWi20

今回は、出光佐三と同じく非上場企業を作り上げ、貧困と苦境と学歴のなさをバネにし、世界初の小型ディーゼルエンジンを
開発した、一人の経営者について語る。







　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　 　 　 ／: : : :／　　　 ﾉ　　 　 ヽ 　　 ＼: : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : : :／　　　 ／ ,-―‐-、 ＼　　　＼: : : :',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : : /（　　　／ ,イ : : : : : : ヽ、｀ヽ､＿ﾊ: : : ::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : :/　二二_ィ´/: ;ｨ : : : : : : /｀ｰ┬---､ゝ: : :',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠: : : :／レ: : : ::／￣l／/: : ／j::/￣￣|: : : : ::ヽ: : ::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::／: :/: : : : :/　,--- /::／ 　,リ ,--- j∧: : : : :l: : : ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　" |: : /: : : : :/ ,/　　 /イ　　 　 /　　　 ヽ ',:: :: ::|: : ﾄヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 　|: : l: :／ヽ|　{ 　　O　j　 　 　l　０ 　　 } }: /ヽl: ::j　゛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l: : l: l ´てｌ　ヽ、＿_ノ 　 　 　ヽ ＿_ ノ ,!/く　｝:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |: ∧{　ヽ l　　　　　　　 {　　　　　　　　/ノ　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚ'　V＼.　',　　　　､＿＿＿＿,　　　　/　／/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Vﾊ＼ 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ＜＿＿/７
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ ＼　　　　　　　　　／/V　　　/ /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾍ　 　 　 V ｀iヽ、＿＿　 イヽ |　 　　 / /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ 　 　　　　| 　 　 　 　 ｜　　　 　 / /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　 　 ﾉ　　 　 　 　 | 　 　 　 / /
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第九回　ミスターディーゼル】
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88：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:04:53 ID:tSPrWWi20

そんな状況であったために、彼は小学校を出てすぐに奉公に出されそうになる。彼自身は進学を希望していたが、それを許されないほどに彼の実家は
貧しかった。

　　
.　　 　 　 /.:::/　 ／　}:::::::::::::::::::::::::::::,、:＼　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　,'.:::::|｀''´　 ,ｨｒ´ﾍ:::::::|ヽ、:::::::| ＼::.Y'"'ヽヽ,:::::::::::::::::::::::
　　　　 ,'.::::::| ,ｨ''"´.:::|　　＼::|,.､ ＼::::},∠..ヽ ..、　 l:::::::::::::::::::::::　　　一応高等科まで進学はできたけど、その後はすぐ奉公か。
　　　　,'.:::::::|/.::::::::::::::ト､_＿_>! }ヽ',｀ヾi´　　 　 ヽ、!λ::::ﾊ:::ﾄ::::
　　　 ,'./|::::::::::::::::::ｌ:::::|／´￣ヽ　　　　| O　 　 　 } '´ ∨　｀' ﾍ　　　俺勉強嫌いじゃないのになあ。
　　　 {'　|::::::::::::::::::|ヽ:|　　　Ｏ ',　　 　｀、　　　　/　　　　ヽ　 ,'
　　　　　 ',:..ヽ:::::::::|　{　　 　 　 l　　　　 ｀　　　 ´　　　 　 　 /.:
.　 　 　 　 ',:::..＼:::ト、ヽ､ 　 　 .r'　　　 _＿__　　　 Ｊ 　 r-イ. :
.　　　 　 　 ',::::lヽヾ ﾍ　　　　　 ｀　,..　'´ ,イ　｀ヽ､　 　 /／.: : :
　 　 　 　 　 ',::|　ヽ:::::{ 　 　 　 ,∠ - '''´　　　 　 }　 ／. : : : : :
　　　　　　 　 'l　　 ＼ヽ　　　 i,イ　　　　　　　,...ﾉ／. : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　 ｀'｀ゝ､.__ゝ ー---─ '"´イ. : : : : : : : : :



明治31年1898年、彼が尋常小学校を卒業した年だが、まだまだこの時代の農村部は貧しく、進学率も中卒ならぬ小卒が主流であった。
義務教育は小学校六年間であり、それ以降は現在の高校進学と同じく受験になる。中学校卒業は今でいうところの高卒に近く、
高卒は大卒、大卒はそれこそ大学院卒に近い。
そのために、彼は高等小学校までしか進学できずにいた。

89：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:05:20 ID:tSPrWWi20
>>88の前
今回の主人公、山岡孫吉は今の滋賀県長浜市に生まれた。彼は7人兄弟の4男3女の6番目であり、大家族の中で生活していた。


.　　　　　 　 　 ／: : : :／　　　 ﾉ　　 　 ヽ 　　 ＼: : : : ヽ
　　　 　 　 　 /: : : :／　　　 ／ ,-―‐-、 ＼　　　＼: : : :',
　　　　　　　/: : : /（　　　／ ,イ : : : : : : ヽ、｀ヽ､＿ﾊ: : : ::',
　　　　　 ／: : : :/　二二_ィ´/: ;ｨ : : : : : : /｀ｰ┬---､ゝ: : :',　　　　　　俺はじいさんの孫だから孫吉とつけられたんだ。
　　　　∠: : : :／レ: : : ::／￣l／/: : ／j::/￣￣|: : : : ::ヽ: : ::',
　　　　　/::／: :/: : : : :/　,--- /::／ 　,リ ,--- j∧: : : : :l: : : ',
　　　　　" |: : /: : : : :/ ,/　　 /イ　　 　 /　　　 ヽ ',:: :: ::|: : ﾄヽ
.　　　 　 　|: : l: :／ヽ|　{ 　　O　j　 　 　l　０ 　　 } }: /ヽl: ::j　゛
　　　 　 　 l: : l: l ´てｌ　ヽ、＿_ノ 　 　 　ヽ ＿_ ノ ,!/く　｝:/
　　　　　　 |: ∧{　ヽ l　　　　　　　 {　　　　　　　　/ノ　ﾉ/
　　　　　　 ﾚ'　V＼.　',　　　　､＿＿＿＿,　　　　/　／/
　　　　　　　　　　　Vﾊ＼ 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ＜＿＿/７
　　　　　　　　　　／　 ヽ ＼　　　　　　　　　／/V　　　/ /
　　　 　 　 　 　 ﾍ　 　 　 V ｀iヽ、＿＿　 イヽ |　 　　 / /
　　　　　　　　 　 ﾍ 　 　　　　| 　 　 　 　 ｜　　　 　 / /
　　　　　　　　　　　＼　　 　 ﾉ　　 　 　 　 | 　 　 　 / /




そのため、幼少の頃から貧乏な生活を強いられており、非常に苦しい生活を送ることとなる。

90：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:05:35 ID:tSPrWWi20

高等科を卒業して、彼は二年間実家の手伝いをしていたが、次第に同級生達が奉公で故郷を出て行く光景を見ると、彼も次第に村を
出て行きたいという気持ちが強くなる。

　　　　　　　　　　／　　　＼ヽ. ＿＿＿＿ ノ .:.:.:.ﾊ
　　　 　 　 　 　 /　　　　　　ヽ､＿＿＿＿＿___.:.:.ﾊ
　 　 　 　 　 　 /　　　　　 ﾑ　{ヽ　　　　　　　　 `:.､:＼
　　　　　　　　 |　　　　　　|弋ﾊ__＼ 　 　 　 　 　 :.:.:.:.:.
　　　　　　　　 | /∨ 　 　 | ｲvﾊ-x 丶 　 　 　 　 :.:.:.:.:.　　　みんな村を出て奉公か。進学できず、村にこもっていても何にも変わらないしなあ。
　　　　　 　 　 'V　∨　ハﾊ│ヽ{ 　ヽ ＼　j　 　　:.:.:.:.:.
　　 　 　 　 　 　 　 ＼{　}ヽ ',0　 　　', 　ヽ{ヽ　ハ:.:.／　　　俺も外に出て行きたいなあ。
　　　　　　　　　　　　 _lノ 　 ヽ　　 　 }　　　 ∨　j/:.:.:.
　 　 　 　 　 　 　 　 く　.:.:.:.:.:.. ｀ ｰ―彡　　　　　.:.:.:.:.:.
　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　 　 　 　　　 ,　 ' ￣￣
　 　 　 　 　 　 　 　 　 {__ 　 　 　 　 　 u ／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 （｀こ⌒)　 　 ／　　　　　／.:
　　 　 　 　 　 　 ∧( ) ' ⌒ヽ　´　　／　　　　　.:./.:.:.:.:
　　　　　　　　　 {　（ ）　　.:.:.:',　 ／　　 　 　 .:.:./:.:.／:
　　　　　 　 　 　 ヽ_____ .:.xー┴'ー‐　　　　 .:.:.ｲ,.:.'.:.:.:.



そして彼は十五歳の頃に村を出ることを母親に告げ、母親に米一俵を受け取り、それを現金化した3円60銭を手に柳桑折1つを背負って村を出た。




　　　　 　 　 　／:::::/{＿ ,. イ　 ,.イ:::::::::::::::::::::＼　｀ヽ､　　 }､:::::∧
　　　　　　　 /::::::::/　　　_,.ｘ＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::＞ｘ_ 　 ￣ ∨::ﾍ:ヽ
　　　　　　 ./::::::::7　／::::::::::::/ |::::::∧::::::::::::::∧::::::|',:::::::::ー:､　V::∧ヾ
　　　　　　7:::::::::::| /:::::::::::::::/　 i:::7　∨:::::: /　∨::! V:::::::::::ハ　i::::::::',　　　　　母さんには一万円貯めることを約束した。絶対に俺は母さんのために
　　　　　　i:::::::::::::'´::::::::::::::/ -─:7＝ ∨:::/==- V{ __V::::::::::::::ヾ|:::::::::',　　　　これを果たすぞ！
　 　 　 　 ;::::::::::::{:::::::::::::::7　, -─=､　　V,′,. --- ､　V:::::::::::::::::::::::::ハ
　　　　　ｲ::::::::::::::V:::::,'!::7 /　　 ９　!　　　　 ７ ９　　ヽ∨::::::::::::::::::::::::::}
　　　／ー‐ |::::::::,.}::::,' |:| .{　　　　　i　　　 　 {　　　 　 } V ∨,､:::::::::::::::!
　　　　　　　|::::::{　Ⅵ, ヾ　 ､＿__.　'　　　　　 `　＿__ノ　　〃- {::::::::::::7
　　　　　　　|::::::|　( ハ　 　 　 　 　 　 i　　　　　　　 '〃　 ' 丁 }::ﾊ::::,'
　　　　　　　レハ:､｀ヽ ',　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,　- ' ,ｨ/　V
　　 　 　 　 　 　 V＞--',　　 　 　 　 ＿__　 　 　 　 　 ,'__,.イ／
　　 　 　 　 　 　 ／V:::::::ヽ　　　　　´──｀　　　　　,ｨ:::::::／､
　　　　　　　ｘ＜: : : :Ⅵヽ::::＞ ､　　　　　　　　　 , イ:::/Ⅳ: : :∧
　　　　　／: : : : : : : : }!: : ＼::::|: :＞　　　　　＜::::|:/}:,': : : : : : :∧
　　 　 厶-----z__: : : : : : : :ヾ{: : : : : ￣: : : : : : :.|: : : : : : : : : : :∧

91：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:05:59 ID:tSPrWWi20

早速大阪に出た彼は、長兄である長兄栄太郎を頼り、天満のメリヤス屋に奉公に入る。


.:.:.:.:.:.:.　　 　 　 　 　 　 r ､j/ｲ　　∠
.:.:.:.:.:.:. 　 　 　 　 　 　 ├‐　　　　　￣ =
.:.:.:.:.:.:.　　 　 　 　 　 　 |
.:.:.:.:.:.:.　　 　 　 　 　 　 |　　 　ｆ´￣
.:.:.:.:.:.:.:. 　 　 　 　 　 　 | 　 　 ||　 - ,ｨ
_.:.:.:.:.:.:.:.　　　　 　|∨　.ﾊ　　　||'　,ｨ仭Ⅳ　　　　　　　おまえもやっぱりこっちにきたか。
ｲ:.:.:.:.:.:.:.:. 　 　 　 |.:.∨　ﾊ　　 ||／ｰ ' ｽ.
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　　　 |:.:.::∨ ﾊ　_ノｲ　 - '
;/l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 　 |:.:.:.:.:∨ﾊ 　　:.:. 　 　 　 ﾄ.
　|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. |ｰ弌ｚ,Vﾊ　　　 　 　　　ｊﾊ
　|.:.:.:.:.:／⌒丶.:.,ｲ―― ､ヽ{.:.　　 　 　 , ｲ　|
　|.:.:／.:.:.:.:.　　＼.:. ＿＿}:.:.:.:.:. 　 　 ／／｡│
ｨ':}ｲ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　ヽｆ.:.:.:.≧:..､.:.:.:.:._／イ 　 ／
.:.{.:.:.:.' ￣￣￣ ヽノ:＼.:..＼.:.:.＞:.､` =xー´
:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 　 }￣ヽ＼.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.≧､




　　　　　　,ｲ　, イ　　 　 , イ ,ｲ　　　　　　　　 ヽ､　　　　 }　　ヽ、
　　　　　,ｲ　∧　　　, イ , イ　,､　　　　　 ,､　　　 , ￣￣ﾞヽ　　　 ヽ
　　　 .,ｲ 　 /　ﾞニﾆ - '"　　 / !　　　　　,' .',　　　!',　　　　　　ﾞ,ヽ、 ﾞ,
　　　/　　 ,' ,イ　　　　　 　 /　!　　　 　,'　　',　　 ! ',　　　,　　　!　　ヾ　　　　　　兄貴には申し訳ないけど、俺もいつまで村にくすぶってるつもりなんかないんだ。
　　 /　　　!'　　　　　　　 ,ｲ　　!　　　　/　　　', ., t- ',　　 !　 　 !　　　　　　　　　だからしばらく世話になるよ。
　 ./　　　　　　　　　　　,ｲ　 　 ! 　 ,　/　　 　 ,ｲ　!　 ',　　!　　　!　　　
　ｲ　,,　　　　　　　　/ / 、　　 .!　/,'/　　 　 /, ',　!、　', , - ､　　!
　,イ i!　　　/　　　 / /ー,-＞､/ / /　　ﾞーｲ!･i .', ! ﾞ,　 〉ｲヽ i　 !
　　　i!　　 ,'　i　　 ,' /ｲ.　 　 !･!/!　　　　　i　ﾞ"　　　i! / ､/ /､　!
　　　,' 　 ,ｲ　,!　 ./!'　!　　 　 ﾞ　.!　　　　　　　　　　" ,' ｲ ,ｲ、ヽ!ヽ
　　 .,' .／,' ,ｲ.!　,',. 　 ﾞ　　　　　 ,　　　　　　ﾞ ー '''　　i, イ　　ヽ、 ヽ ､
　　/イ　/ｲ　 i .,' ﾞ､　 　 ー‐ ''".　　 　i}　　　　　　　　! ./ ヽ、　 ヽ、　　＞ ､
　 ,ｲ,,,!　　 ﾞヽ、 ー ',　　　　　　　　　　　　　　　　　, ｲ ,　　　 ﾞヽ､　 ﾞヽ､　　　 ﾞ',
　"　　　　　 　/ﾞ ー-'､　 　 　 　 ,ー---_-,　 　 , ｲ　 ./　　　　　　ヾ,ヽ、 ﾞ'､　　 !
　　　 　 　 　 ,'　　　　 ﾞヽ、　 　 " ￣￣　　, イ /　　/　　　　　　　　 ﾞヽ,ヽ '､　　!
　　　　　　　 ,'　　　　　　　ヾ＞　､　　_　イ./ /　 　 /　　　　　　　　　　　ヾ、',　 !
　　　　　　　 i　　　　　　　 i　ヽ、　　　　　i ./　　　"　　　　　　　　　　　　　〉' ﾞゝﾞヽ
　　　　　　　 i　　　　　　　 ,!　　ヽ、　　 , -! !　　,　　　　　　　　　　　　　 ,ｲー, i

92：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:06:33 ID:tSPrWWi20

だが彼はメリヤス屋を三日で飛び出し、次に写真の台紙屋に1年半住み込み丁稚となったが病に罹り辞め、暫く長兄宅の2階で身体を休めていた。


　　　　　 / :　　　/　　　　　 ／ 　／　　　　　　　　 ＼　 　＼　　　　　　　　 l ヽ　 : : : : : :l
　　　 　 / :　　　/l　　　　／　 ／　　　　　　　　　　 　＼　　　｀' - .,,_　　　_ j　 l 　 : : : : : :l
　　　　/: :　　　/　ー　 '　　／　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　 l　 : : : : : ::l
　　　 / : :　: 　 i　 ,　-　‐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ‐-... ,,,, ... - ..,　　 l　 : : : : : :l　　　　はあ、どうもうまくいかない。体までこわすし。
　　　/ : : :::　　l／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ }　　: : : : :N
　　 /: : : :　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/!　　　　　　　　　　　　: : : : :l　　　　やっぱり村に残っていた方がよかったのかな？
　　/／!/ l　　　　　　　　　　 /!.　/|　　　　　　　　　　 /!.　　/､:|　　　　　　　　　　　　: : : : : l
　 　　　　|　　　　　　　　　　 i::|. /｀;|　　 /:|　　　　　　/:|　: /::::｀i.　 /|　　　　　　　　　: : : : : l
　　　　／ｲ　　　　　　　　 　.l::::|/::::::|　 /:::::}　　　　　/::::|　/:::::::::|　/::|　　/|　/!　　　　: : : : : :＼
　 　／　 彳　∧　x　､　　l .l:::::::::O:::::W:::::::::l　 M　 ./::::::| /O:::::::::V:::::|　/:::ｲ/-|/!　 　 : : : : : : : :＼
　／　　　　W : :i .i､V:|　　Ⅳ ::::::::::::　　}::::::::| /:ﾚ::| /',　::ﾚ::::::::::　　ﾉ:::::ﾚ::::::(ﾚ:::::::::l /l　: : : :　　 l : : :
<　　　　　　　　 V :ヽ::V:i .l:｀.､. ＿,,. =ﾃ::::　:ﾚ::　 ::ﾚ::::｀=-　＿　=´:::::::::::::､＿,/:／/: |/　　　　　 | : : :
/＼　　　　　　　　: : : ー:V :　゛〒''" :::　　 ::　　 :::::::　.i　゛￣ ゛:::::::　　:::::::::::::／: ﾚ　　　　　　　　.| : :
: : : :＼　　　　　　　　: : : : :i　　;'　　　　　　　　　　　　;.　　　 ;' ::　　／| ー : :　　　　　　　　　　　| : :
: : : : : :＼　　　　　　　　 : : : i　 ;　　　　　　 ゝ　　　　　　 　 ,　　／::::::}/:　　　　　　　　　　 ,.. - : : :
: : :　: : : ::＼　　　　　　　　　:|::＼;　　　　　　　　　　　　　　 ',. :':::::::::::::::i　　　　　　　　 ,,. ＜ : : : : : :
／　　　: : : :＼　　　　　　 　 |:::::::::丶　　　 ＝==-　　　 ,.-''::::::::::::　　 /　　　　　　,,.-　　　　　　 - ..,
　　　　　　　 : :＼　　　　　　 |　　　:::::｀　,,　　　　 ,,. -:::::::::::　　 　 　 /　　　　,,.-: : :





踏んだり蹴ったりの状況であったが、そんな彼に一つの転機が訪れる。

93：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:06:48 ID:tSPrWWi20

兄の家に居候していた頃、次第に体を回復した山岡は、少しは食費の足しになればと思って釣りに出かける。すると、そこで彼は大阪瓦斯（現在の大阪ガス）の
職員と出会う。

　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 ,ｲ
　　　　　　　　　 　＼　　　　 , - '"´￣i　　　　　　　ト、 　　　　 ﾚ' /　　 ,ィヽ
　　　　　　　　　　　　.>　　／　 _　　　ﾚﾍ　　　　 ﾄ､}　＼　　　　　/　　/ 　 }
　　　　　　 　 　 　 ／　 , ハ .＿>ヾ::、　　＼i＼　 i　　　 ＼　　　ｲ /⌒　　 |
　　　　　　　　　　　￣フ::::::::〉≧::::::::::ヽ、　　 　 ＼i　 ,--ｧ./＼ ,ﾑ .{　　i　　 i
　　　　　　　　　　　　 i∧::::i　〃￣ ＼::ﾏ　　　 　 ／::::::::＞::::::〉　　∨　 i　 ∧　　　　ほう、おまえなかなかおもしろいやつだな。だったらうちで働かないか？
　　　　　　　　　　　　　　i::::{ 　{{　　 ﾋﾊ≧ 　 , _≦≠￣㌧',:::/　　　.∨　 i　 ∧　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　/⌒､i　ヾ＝--　'　　　〉くひ　　,彳 ∨　　　　 ∨　L＿∧　　　うちも今は人手不足でよ。
　　　　　　　　　　　　　{ ＞ 　 　　　￣　　　 ヽ　三气　　 /‐､ 　　 　 ヽﾑ'{: : : : トィ‐､
　　　　　　　 　　 　 　 ', r‐ト{　 〃个ー 　 ^ ‐　　　　　　く｀　{　　 　　 i: :､: ､:.Ｙ⌒ヾ､/⌒ヽ
　　　　　　　　　　 ._≠"＼　　　∨L､　｀゛`''―--- ｧ　 /ﾊＹ⌒￣｀ヽ　 ｣: : ヽ: :|　　／⌒ヽ: :〉
　　 .ﾄ―――――--:::::::::::￣1　 ｈ　^ー'⌒ー-―' 　 / , ‐ト､＿. 　 ,∨ー-: : :.i　　i　　　 〉≧
　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､. ', Ｌ　 　　　　 ∨　 ∧_／::::::::::::ヽ-': :ヽ‐: : : : ー-Ｌ＿Ｙﾉ: :〈
　　　　 ＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ＼＼二ﾆェ―ｚ'　 ,ｲ:::::::::::::::::::::::::::}: : : : : : : : : .:＼.: .: .: .: .: .: :i
　　　　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::i 　 ＼ 　 - ￣ 　／ |:::::::::::::::::::::::::::i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :i
　　　　　　　 ＼::::::::::::::::::::::::::,‐1　 i 　 ー　--- '　　ﾄ､:::::::::::::::::::::::入: : : : : : : : : : : : : : : : : : /
　　　　　　　　　＞､:::::::::::::::∧　　　i　　　　　　　　 i　 ＼::::::::::::::::ヽ--ヽ､: : : : : : :_ , .: : : : :,人
　　　　　　　 ／::::::::＼::::::::::::∧　　　i　　　　　　 　/　　　〉:::::::::::::::::::::::::::::ーﾄ､-:.､,＿＞―'／ ＼
　　　　-r¬":::::::::::::::::::＼:::::::::::＼　　＼　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ー―― '



こうして彼は大阪瓦斯の工事人夫となり、ようやくまともな職を得ることができた。



.　　 　 　 /.:::/　 ／　}:::::::::::::::::::::::::::::,、:＼　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　,'.:::::|｀''´　 ,ｨｒ´ﾍ:::::::|ヽ、:::::::| ＼::.Y'"'ヽヽ,:::::::::::::::::::::::
　　　　 ,'.::::::| ,ｨ''"´.:::|　　＼::|,.､ ＼::::},∠..ヽ ..、　 l:::::::::::::::::::::::　　　　　　ありがとうございます！　早速働かせてください。
　　　　,'.:::::::|/.::::::::::::::ト､_＿_>! }ヽ',｀ヾi´　　 　 ヽ、!λ::::ﾊ:::ﾄ::::
　　　 ,'./|::::::::::::::::::ｌ:::::|／´￣ヽ　　　　| O　 　 　 } '´ ∨　｀' ﾍ
　　　 {'　|::::::::::::::::::|ヽ:|　　　Ｏ ',　　 　｀、　　　　/　　　　ヽ　 ,'
　　　　　 ',:..ヽ:::::::::|　{　　 　 　 l　　　　 ｀　　　 ´　　　 　 　 /.:
.　 　 　 　 ',:::..＼:::ト、ヽ､ 　 　 .r'　　　 _＿__　　　 Ｊ 　 r-イ. :
.　　　 　 　 ',::::lヽヾ ﾍ　　　　　 ｀　,..　'´ ,イ　｀ヽ､　 　 /／.: : :
　 　 　 　 　 ',::|　ヽ:::::{ 　 　 　 ,∠ - '''´　　　 　 }　 ／. : : : : :
　　　　　　 　 'l　　 ＼ヽ　　　 i,イ　　　　　　　,...ﾉ／. : : : : : : :
　　　　　　　　　　　　 ｀'｀ゝ､.__ゝ ー---─ '"´イ. : : : : : : : : :

94：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:07:12 ID:tSPrWWi20

当時の大阪では1905年明治３８年には市内でのガス供給が行われるなど、積極的なガス供給が行われていた。工事人夫とはいえ、
そんな大々的な開発を行う会社で働けるのである。山岡はそうした背景を元に一生懸命に働いた。

　　　　／:.:.:.:.:/　 ／:.:.:.:.:.:.:,ｨ:.:.:.:.／　/:.;ｨ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ　ヽ:.:.:､:＼
　　　 ':.:.:.:.:.:.:/ .／:.:.:.:.:.:.: /斗-≠＝ﾑ<　!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ　 }:.:.ﾊ ` ヽ
　　 ':.:.:.:.:.:.:./ /:.:.:.:.:.:.:.:.:./　 |／　　　　 ` !:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.|　.}:.:.:ﾊ
　/イ:.:.:.:.:../ /:.:.:.:.:.:.:.:.:./　　　　　　 　 　 l:.:.:.／l∠. l:ハ/:.:.:.:.ﾊ　　　　俺の工事で大阪でも自由にガスが使えるようになっていくんだ。
　　i:.:.::.:.:.:.l ム:.:.:.:.:.:ﾊ:.:l　　 _＿＿　ヽ 　 l:／　　　`､1:.ヽ:.:.:.:.:.:',
　 .l:.:.:.:.:.／r､ ヽ:.:.:/　Ｖ　彡三三三ミ　　　　　　 　. ,':.:.:.ヽ:.:.:.:.:.i
　 l:.:.:.:.:ﾉ　,ヒ ヽ Ｖ　　 　　 　　　　　 　 　 　 ｨ≡ｮ､.,':.:.:,ﾍ:i:.:ﾊ:.:.l
　.l:.:.:.:〈　（　｀(　　　　　 ＿　　 ```　　　　　 i　　 ,',':.:.:/:.:.:l/ ヽ:|
　l∧:.:.:.ヽ､`ｰ　　,, - '' ¨: : |　　 　 　 　 　 　 〉`　'.ﾊ:.∧:.:/
　　 ∨_:. -`ｰ '': : : : : : : : :l　　　　　　　　　　　```! V　|/
　 , ィ´: : : : : :_.. -‐ ''' ¨￣l 　 　 　「￣７　　　　　ﾉ
. f: : :_ ィ: : : :l 　 　 　 　 ./.　 　 　 ー '′　 　 ／
. l／　　l: : : :l　　　 　 　 i　　　　　　　　　 ,　 '
　!　　　 l: : : l 　 　 　 　 l　　　　､...__..､-
　ゝ　　　';.:.:.:',　　　　　　l　　　　 　/ 　`ー―――‐‐―ｧ
ノ, --‐二:.:.:__ヽ　　　　　l 　 　 　 / 　 　　　　　　　　／



当時のガスは今でいうところの「原子力」に近い。それまで燃料が薪や炭が主流であったのが、手間がかからないガスが主流となる。
幼少期から勉強熱心で、好奇心が強い山岡は次第にガスへの魅力を感じるようになり、ガス工事のプロフェッショナルとなっていった。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__,.　──-　 __
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , ィ, -‐ﾆ:::::::::::::＼ ＼
　　　　　　　　　　　　　　 　 _／::::/:::::::::／ !::::::::::::::ヽ...＼
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ７::::::::／}/‐.、|::::::／/Vﾍ..}:ト=-　　　
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i::::::::::|γ´ 9Y}／}∠__}:::ﾊ:ハ
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |::::::{ヾ L........'　 ､ ,'9 ヽ' }:::::}ﾘ　　　
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 }:/ ヽ　,､ 　 　 　 ヽ、/ｲ::::/
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ' |ﾍ,.イ:::::|　;´￣ i　 　 /ﾙ'
　　　　　　　　　　　　　　　 r≦ｒ:':´: :.| 廴__.ノ　　 从
　　　　　　　　　　　 γ::￣:＞ｘ{...: : : ト.、　 .　＜イ
　　　　　 　 　 　 　 /::::/: : : : : :.＼: :.|::::: /: : : ヽ､＿＿
　　　　　　　　　　r:'i::::7: : : : : : : : : ',ﾊ ､(:..＼: : : : : : ／
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95：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:07:28 ID:tSPrWWi20

熟練工となった山岡は、大阪瓦斯にゴム管を納めている会社に立ち寄った。そこでは表面がひび割れ大阪瓦斯から引き取りを断られたゴム管が大量にあり、
その会社は路頭に迷っていた。そこで、彼はこのガス管を売ってほしいと頼まれたのである。



　　　　 　 　 　 　 　 /⌒Ｙ⌒ヽ
　　　　　　　　　　　/（○) (○ヽ　　　　　　　　山岡さん、申し訳ないけどこのガス管表面がヒビ割れて使い物にならないからって、大阪瓦斯さんから
　　 　 　 　 　 　 ／::::⌒｀´⌒:::u＼　　　　　　引き取りを断れて困っているんだっていう。だけどふつうに使う分には支障がないから、どうにか
　　　　　　　　　 |　,-）　　　　 （-、|　　　　　　ならないかっていう？
　　　　　　　　　 | l　　ヽ＿＿ノ　l. |
　　 　 　 　 　 　 ＼/⌒)⌒)⌒) ／ 　 /⌒)⌒)⌒)
　　　　　　　　ノ￣ .|　/　/　/　　　(⌒) ./　/　/
　　　　　 ／´　　　 |　:::::::::::(⌒)　　ゝ　　::::::::::/
　　　　　|　　　　ｌ　 |　　　　　ノ　　/　　）　　/
　　　　　ヽ　　　 ヽ_ヽ　　　 /' 　　/　　　 ／
　　　　　　ヽ ＿＿　　 　 ／　　 /　　 ／






.　　　　　 　 　 ／: : : :／　　　 ﾉ　　 　 ヽ 　　 ＼: : : : ヽ
　　　 　 　 　 /: : : :／　　　 ／ ,-―‐-、 ＼　　　＼: : : :',　　　　　わかりました。仲間と一緒にゴム管を売ってきますよ。これくらいなら　
　　　　　　　/: : : /（　　　／ ,イ : : : : : : ヽ、｀ヽ､＿ﾊ: : : ::',　　　　十分に使える代物ですから。
　　　　　 ／: : : :/　二二_ィ´/: ;ｨ : : : : : : /｀ｰ┬---､ゝ: : :',
　　　　∠: : : :／レ: : : ::／￣l／/: : ／j::/￣￣|: : : : ::ヽ: : ::',
　　　　　/::／: :/: : : : :/　,--- /::／ 　,リ ,--- j∧: : : : :l: : : ',
　　　　　" |: : /: : : : :/ ,/　　 /イ　　 　 /　　　 ヽ ',:: :: ::|: : ﾄヽ
.　　　 　 　|: : l: :／ヽ|　{ 　　O　j　 　 　l　０ 　　 } }: /ヽl: ::j　゛
　　　 　 　 l: : l: l ´てｌ　ヽ、＿_ノ 　 　 　ヽ ＿_ ノ ,!/く　｝:/
　　　　　　 |: ∧{　ヽ l　　　　　　　 {　　　　　　　　/ノ　ﾉ/
　　　　　　 ﾚ'　V＼.　',　　　　､＿＿＿＿,　　　　/　／/
　　　　　　　　　　　Vﾊ＼ 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ＜＿＿/７
　　　　　　　　　　／　 ヽ ＼　　　　　　　　　／/V　　　/ /
　　　 　 　 　 　 ﾍ　 　 　 V ｀iヽ、＿＿　 イヽ |　 　　 / /
　　　　　　　　 　 ﾍ 　 　　　　| 　 　 　 　 ｜　　　 　 / /
　　　　　　　　　　　＼　　 　 ﾉ　　 　 　 　 | 　 　 　 / /


早速彼は仲間達と一緒にゴム管を販売した。ゴム管はヒビが入っていたが、使用するには一切の支障がなかったために結果的によく売れ終いには在庫全てを引き受けた。

96：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:07:45 ID:tSPrWWi20

この経験で、彼は将来一万円を貯めるならばこのやり方でないと無理であることを悟り、商売の道を選ぶことを決意する。



　　　　　　　　/:::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::＞:.....
　 　 　 　 　 /:::|:::::::::::::::::::::＼´￣￣¨弋::::::::::::::::::::::＞::.....
　　　　　　　{:::八::::弋:::::::::::::::ﾊ　　　　　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::　　　あんなゴム管を右から左にさばくだけでそこそこの金になった。だったら
　　　　 　 　 V{:::::ヽﾊ rﾐ￣￣｀/´￣ ｀ヽ　 ∨::::::::::::::::::::::::　　　ちゃんとした金を稼ぐなら、やっぱり商売の道を進むべきなんだろうな。
　　　　　　 　 弋::代:::.|　'.　　　　　 　 　 '.　 ）イヽ:::::::::::::::
　　 　 　 　 　 　 ｀ヾﾊ|　.|　　 |　　　　 　 }　　　　|::::>'⌒
　　　　　　　　　　　　 | 0j　　　 O　　　　ﾉ　　　　ﾚ'.／＞
　　　　　　　　　　　 ノ｀¨　　,;,　 ー─=ﾆ　　〃　　〈⌒ヽ
　　　　　　 　 　 　 弋　,,,　　　　ﾐ　　''′ﾞ'　　　　　 )__ノ__
　　　　　　 　 　 　 从　　　　　　　r─‐- 　-一≦三三三ﾐ
　　　　　　　　　ﾄ､　　丶 　r‐-､　├气ミ三三三三三三ﾆﾆ
　　　　　　　　　|　ヽ　　 ＼｀¨´ 　 |　　　　￣￣　 |三|
　　　　　　　　　|　 　｀ー彡＼　　　', 　 　 　 　 　 j三j
　　　　　　　 　 j　　　　　　　 ｀¨¨¨´V　　　　　　 {三{
　　　　　　　　 {　　　 　 　 　 　 　 　 V　　　　　　l三ミ辷
　　　　　　　　人　　　　　 　 　 　 　 人　　　　 ／ ｀ヾミ



　　　　　　,ｲ　, イ　　 　 , イ ,ｲ　　　　　　　　 ヽ､　　　　 }　　ヽ、
　　　　　,ｲ　∧　　　, イ , イ　,､　　　　　 ,､　　　 , ￣￣ﾞヽ　　　 ヽ
　　　 .,ｲ 　 /　ﾞニﾆ - '"　　 / !　　　　　,' .',　　　!',　　　　　　ﾞ,ヽ、 ﾞ,　　　　　よし！　俺はもう工事屋から足を洗って兄貴の家もでて商売人になるぞ！
　　　/　　 ,' ,イ　　　　　 　 /　!　　　 　,'　　',　　 ! ',　　　,　　　!　　ヾ
　　 /　　　!'　　　　　　　 ,ｲ　　!　　　　/　　　', ., t- ',　　 !　 　 !
　 ./　　　　　　　　　　　,ｲ　 　 ! 　 ,　/　　 　 ,ｲ　!　 ',　　!　　　!
　ｲ　,,　　　　　　　　/ / 、　　 .!　/,'/　　 　 /, ',　!、　', , - ､　　!
　,イ i!　　　/　　　 / /ー,-＞､/ / /　　ﾞーｲ!･i .', ! ﾞ,　 〉ｲヽ i　 !
　　　i!　　 ,'　i　　 ,' /ｲ.　 　 !･!/!　　　　　i　ﾞ"　　　i! / ､/ /､　!
　　　,' 　 ,ｲ　,!　 ./!'　!　　 　 ﾞ　.!　　　　　　　　　　" ,' ｲ ,ｲ、ヽ!ヽ
　　 .,' .／,' ,ｲ.!　,',. 　 ﾞ　　　　　 ,　　　　　　ﾞ ー '''　　i, イ　　ヽ、 ヽ ､
　　/イ　/ｲ　 i .,' ﾞ､　 　 ー‐ ''".　　 　i}　　　　　　　　! ./ ヽ、　 ヽ、　　＞ ､
　 ,ｲ,,,!　　 ﾞヽ、 ー ',　　　　　　　　　　　　　　　　　, ｲ ,　　　 ﾞヽ､　 ﾞヽ､　　　 ﾞ',
　"　　　　　 　/ﾞ ー-'､　 　 　 　 ,ー---_-,　 　 , ｲ　 ./　　　　　　ヾ,ヽ、 ﾞ'､　　 !
　　　 　 　 　 ,'　　　　 ﾞヽ、　 　 " ￣￣　　, イ /　　/　　　　　　　　 ﾞヽ,ヽ '､　　!
　　　　　　　 ,'　　　　　　　ヾ＞　､　　_　イ./ /　 　 /　　　　　　　　　　　ヾ、',　 !
　　　　　　　 i　　　　　　　 i　ヽ、　　　　　i ./　　　"　　　　　　　　　　　　　〉' ﾞゝﾞヽ
　　　　　　　 i　　　　　　　 ,!　　ヽ、　　 , -! !　　,　　　　　　　　　　　　　 ,ｲー, i

97：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:08:01 ID:tSPrWWi20

若干二十歳で独立し、偶にガス工事を請け負いつつゴム管ガス器具販売で独立し、1年で千円近く稼ぐ事が出来た。若年の商売人としては
かなりの成功人といえる。

　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿ヾ-､
　　　　　　　　　　ヾ､＿, -‐:::::::::::::::::::::::::::ヽ:::＼ヾ
　　　　　　　　　　　＼::::::::::::::::::::::::, ------::､::::::ヽ､
　　　　　　　　　　　 , ィ::::::::::＞'"¨7　　　　i, 　 ＼:::::＼
　　　　　　　　 　 ／:::::::::::／　　／::::,---､　ヽ,　　ﾊ',:::::',　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　/／::::::::/ヽ--_'＞'":::::::::::::::ヽ, ｀'ｰ-､.i::::::',　　　　　よし！　やっぱり稼ぐならこれしか道はないんだ！　
　　　　　　　　 　 /::::::::::´¨:::::::::::::y::::::::::::::::::/:::::＞-､.i::::::::',
　　　　　　　　,.=':::::::::::::::::::::/::／Z:::::::::::::／/::::::::::::i:::::::::::::iﾍ,　　　実家から妹も呼んで、ここに住まわせよう！
　 　 　 　 　 　 i::／/::::::::::::／ニ､|::::/〃　/／',::::/i::::::::::::::i
　　　　　 　 　 〃　i::::::::::::,' .i.　　9ヾ　　 -t''9´i/ヽ:::::;;;::::::i
　　　　　　　　　　 ﾉ:::::::i.=ﾊ ヽ--- '　　　　ヽ-- '_／ ｱ/ヾi,
　　　　　　　　　　 /:::::i:＼__',　　　　　, ､ 　 ',　＿＿＞､__
　　　　　　　　　 　￣7/',:::ﾍヽ　　　,　--　､ ヽ　　　　7: : ７
　　　　　　　　　　　 , --ﾍi---＞ .　　　　　 .ﾉ　　　.-': : :-.､
　　　　　　　　　　`' ＜,　　　　　　ﾍ＞- イ_,/　　　　　ﾍ: : :ﾍ
　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　::|　 　.|　　　　　　　　',: : :.',-'"￣￣ ７___
　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　／-'y-'".i　　　　　　　　 ﾍ: : :ﾍ　 　 ＿　　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　 -) /-､　　　　',　　　　　　　　　ﾍ: : :ﾍ ／: : :ヽ､　.＼
　　　　　　　　　　　　　,.イ,ノ./　　　　　　 ﾍ　　　　　　　, --': -､: : : : : :ノ　　　 ＞､＿
　　　　　　 　 　 　 　 7　　 /　　　　　　　　ﾍ　　　　, イ: : :/: : : : ----':､＿＿
　　　　　　　　　　　　i　　 /　　 　 　 　 　 　 ',　　 /: : : : ≠: ',: : : : : : : : :7--､ﾍ



彼は郷里から妹を呼び出し、また長兄も彼の商売を手伝うようになっていき、彼は順調に商売人としての道を歩み始めていった。

98：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:08:16 ID:tSPrWWi20

明治45年1912年25歳になる年に、大阪市北区茶屋町に70坪の土地を借り、工員も7~8人雇い『山岡発動機工作所』と言う修理工場を開いた。


　　　　　　　　　 ,....::´::::::::::::_.. -―- .._:::::::::::::＼
　　　 　 　 　 ／／::::::,. : '⌒ｉ　　　 f'⌒丶.::::::::::ヽ
　 　 　 　 ,∠.ｧ':::::::／: : : : :/　　　　':,: : : : ＼:::::::::.
　　　　　´ 　/:::::::/: : : : :／,..::::'⌒丶. ＼: : : : ヽ:::::::ヽ
　　　　　　　':::::::/ヽ-- ' ／::::i::::::::::::::::｀ヽ.ﾆ - ' ヽ:::::::':
　　　　　　 l::::::::l, -‐:::i´::::::ｲ::|:::::::::::::ﾄ:::::i::::::::＼　!:::::::､',　　　　　工事だけじゃいつまでも食っていけない。幸い、俺はガスエンジンの知識もあるから、
　　　　　　 !:::::::l::::::::::ﾊ::::/__l::ﾄ､::::::::::!_ヽ|＼::::::::ヾ:::::::l ヾ　　　　今後はガスエンジンで食っていこう。
　　　　　　,:::::::::ｌ:::::::/　ﾚ―- ､ ＼:::::|,ﾆ -‐ ､:::::::ｌ::::::::l
　　 　 　 /ﾊ::::::::､::::{　{　　 り } 　 ＼{ り　　}ヽ:::ﾄ､::i::l
　　　　　　　＼:::{ヾﾍ　` ｰ-　'　　 　 ` ｰ-　'　ﾊ!/:ハl
　　　　　　　　 ヽ丶.ﾊ "　　　　 ;′　 　 　 "/ ,/:/
　　　　　　　　　 Vヽ:::ヽ 　 　 　 　 　 　 　 /｀／
　　　　　　　　　　　 ン､＼ 　 ´　￣ ｀　 ／ｲ/ヽ.
　　　　　　　　　 ／　　 ヾﾄ丶 、 　　, イ､/ 　 　 ＼
　　　　　 　 ,.　´　　　　　;　 }　 ｀　´　 {　､　　　　　｀ヽ、
　　　　　　 `ー‐--､　 　 {_ノ　 　 　 　 ヽ､l　　 , -― ´
　　　　　　　　　　 _ ソ:､　l ',　　　　　 　 ,' l　 /､丶、
　　　　　　　_.　 ´／ 　 ヽl|ｰ',- ､　　_. -,'ｰl　/　 ＼｀　 ._
　　　　_

実は大阪瓦斯時代から彼はガスで動くガスエンジンにも携わっており、元々手先が器用で勉強好きな彼は
ガスエンジンについても精通するようになり、、ガスエンジンの修理や販売を手がけるようになっていった。

99：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:08:30 ID:tSPrWWi20

この頃、日本全体で水力発電用のダムが開発されており、水力発電が主流となっていった。それまではガス発電などが主流であったのだが、
動力源がタダ同然の水で十分なダムが注目されるようになり、次第に水力が日本の発電をまかなうようになっていった。


　　　　　　　,　──── ､
　　　　ゝ／ ＿＿＿＿＿__ヽ
　　　　 i　　| /　/⌒ ヽ/⌒ヽ　　　　　　　　僕が作った佐久ダムもそうだけど、やっぱり水が豊富な日本じゃ水力発電がベストだね。
　　　　 | ＿| ＿|　　　・|・　　|__
　　, ─i　､　 　 ヽ ＿_　o__ ﾉ　 ヽ
　　!　　`-､　　　　　　　　　　|　　!
　　＼　　　ヽ､　 　──┘ ノ　／
　　　 ＼　　　＼二二へ二ヽ／
　　　　　＼ |　　　　　　　　|
　　　　　　　|　　　　　　　　|
　

余談になるが、こうした電源開発を率先的に行っていったのが第一話で登場した浅野総一郎である。彼は積極的なインフラ整備や
こうしたダム開発を行っていった。

だが、その結果、ガスエンジンを取り扱う会社の大半がつぶれてしまい、路頭に迷うことになっていったのである。

100：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:08:44 ID:tSPrWWi20

だが山岡は、電気送電が無い所にはガスエンジンを、ガス会社自体が無い所には吸入式ガスエンジンを販売することで、
逆に商機を掴み、エンジンブローカーとしてのし上がっていくことが出来た。
当時の日本は送電網が行き届いておらず、ガスエンジン自体の需要があることを理解していたからであった。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__,.　──-　 __
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , ィ, -‐ﾆ:::::::::::::＼ ＼
　　　　　　　　　　　　　　 　 _／::::/:::::::::／ !::::::::::::::ヽ...＼
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ７::::::::／}/‐.、|::::::／/Vﾍ..}:ト=-
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i::::::::::|γ´ 9Y}／}∠__}:::ﾊ:ハ
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |::::::{ヾ L........'　 ､ ,'9 ヽ' }:::::}ﾘ
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 }:/ ヽ　,､ 　 　 　 ヽ、/ｲ::::/　　　　　　　　　　商売のやり方は無限大！　やりようなんていくらでもある！
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ' |ﾍ,.イ:::::|　;´￣ i　 　 /ﾙ'
　　　　　　　　　　　　　　　 r≦ｒ:':´: :.| 廴__.ノ　　 从
　　　　　　　　　　　 γ::￣:＞ｘ{...: : : ト.、　 .　＜イ
　　　　　 　 　 　 　 /::::/: : : : : :.＼: :.|::::: /: : : ヽ､＿＿
　　　　　　　　　　r:'i::::7: : : : : : : : : ',ﾊ ､(:..＼: : : : : : ／
　 　 　 　 　 　 __j二二: : : : : : : : : : i: } _, ､___Y: : :／
　　　　　 　 　 ﾉ/::/: : : : : : : : ＿: ＞'´　　＼ }:／:}
　　　　　　 ／::::／: : ＿__ ｘ＜/´　　 　 　 ＼ Y: 7
　　　　　/-- =≦::::::::::＿::::::::7　　　　 __　{.､.ﾉ-': |
　　　　./＜:-: : : ￣: : : : : |::::{‐‐-‐:7´7 .>ﾉ　.|: :..|
　　　　{: : : : : : : : : : : : : : :|:::::i:::::/:/　.}/　　　j: : :!
　　　　∨: : : : : : : : : : : : : V:::i::/:/￣￣　 --{: : :.|
　　　　　¬y------------‐':../────-!: : :.|
　　　　 　 /: : : : : : : : : : : : : : :/---､　　　 ,､!_ :...|
　　　 　 ./: : : : : : : : : : : : : : :/::r--ハ__　 /:.:.:.Y: |
　　　　 7: : : : : : : : : : : : : : :/￣-､　|:::::::::::T=-{: :.!

101：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:09:04 ID:tSPrWWi20

一万円どころか三十万円もの金を稼いだ山岡は、大正4年（1915年）28歳の時に結婚する。

　　　　　　　　　　　　　　＿　　　　　　　／′
　　　　　　　　　　　　 , ‐-ヽ:.} 　 　 　 /　l　　　＿
　　　　　　　　, -―　´　　-f ´￣｀ヽ./　　レ ´　 /
　 　 　 　 　 /,. -―ｧ　　　　 r__― ､|　　 j _　　 {
　　　　　　 // ｧ　´　　　　　　　 ｀ヽ､} ＜く .}　 /
　　　　　r　￣　　 ノ　 ..　　　　　　　 ＼　`´＜
　　　 　 |　　 　 / ヽ. .:..:　　 　 ＼..　 　 |　　　　｀ ー‐ｧ
　{{、　 _j　　　 .{　.:ハ:..:..:.　:/ ヽ　ヽ:..　. ト--､--‐＜_　　　　ふつつか者ですがよろしくお願いします。
　 ヽ二 ィ　.　.:.:.|,./‐弋:{:..:..:{z-‐-ミ:l:..:. :...ヽ┬--＝‐ ´
　　　 r' ｎ:....:..:..:{{/f_ﾃ.ﾄ`＼ドｧf示ﾐlﾊ:..:／´　l
　　　 ヽ{ ｰ､ｧ‐､ヾ_迅ﾘ　　 ｀　迅ﾘ リ/　/´二|
　　 ,.ｧ　　　ヽ-ﾐﾄー　　　 ,　　　 ー7ｲ　| { i⌒l
　　{.{　　　　ﾉ　 ハ　 　 ｰ一　 　 .ｲ‐1　V/r‐ |
　　 ヽー‐.:´ ＿　 }:＞i...　　　.ィ:´　　|-‐ ノ ,∠
　　　 ,フ7´　　　｀i _j¨廴`ﾆ´.斗ヽ.　 |￣ ／　　｀ヽ
　　 /:..:..{:　　 ､__ﾉﾉi⌒i o厂{ o{⌒il.ｰ|／{　 ⌒i　　}
　　 {:..:.. ヽ., -┬ ﾍ ｀¨r‐{f¨ }- ､¨ﾉ｀ ┬- ､ー '　ノ
　 　 ヽ:.__/　　ヽ　 丁 　 トイ　　l　　/　　 ヽ:.f´
　　 ,..-‐:1　 ヽ /　｜　　|　 |　　 l　〈　/　　|:. ー⌒i
　　{:..:..:..:|　　　{　　|　　｜　.|　　 |　 V　 　 ! 　 　 ﾉ
　　　　　　　【山岡（旧姓土肥）淑乃】



長男も生まれ、前途洋々の彼だったが、ここでとてつもない試練が彼に与えられることになる。

102：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:09:21 ID:tSPrWWi20

それは第一次世界大戦の終了である。開戦当初は好況の日本経済であったが、戦争終結と同時に
欧州の民間需要が復活したことで、一時的な物資不足からの需要がストップ。
当時の日本製品は欧米諸国とは比較にならないほど劣っていたために、この好景気は終了した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ィ!´￣｀`i''ー─- ､､､,,_
　　イ三二二ﾆﾆﾆゞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(　j〉　　　 」´￣￣｀`ー-､ヽ　　　　.,.:,..:.. 　　　.,.:,..:..
　　　　　　　　　　　　　　　... ,...　　　　　　　　　　　　　　　｀`ｰ─'"´ ￣￣￣￣
　　　　　　　　　,ィゞ　　　　　　　　　　.,.:,..:.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,.:,..:.. ... ,...
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　　　　　　　　,ｲ､,r'⌒ヾ　　　　ヽ ヾ ｀`''ー- -､-‐''"´ヽ;;: :;:; ;:; :;:; 　;: 　.　　　　　　　　　　　.,.:,..:..
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　　　　　　 ヽ 「i''ー'"´　　 ,r-‐'ー''''"´￣
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　　　　　　　　　　　　　　　 イ三二二ﾆﾆﾆゞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(　j〉　　　 」´￣￣｀`ー-､ヽ　　　　.,.:,..:.. 　　　.,.:,..:..
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｲ､,r'⌒ヾ　　　　ヽ ヾ ｀`''ー- -､-‐''"´ヽ;;: :;:; ;:; :;:; 　;: 　.　　　　　　　　　　　.,.:,..:..
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ 「i''ー'"´　　 ,r-‐'ー''''"´￣

103：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:09:42 ID:tSPrWWi20

そして山岡もまたこの好景気の終了からの不況に巻き込まれ、ガスエンジンの需要も激減。
いったん商売にけじめをつけて、彼は家族と共に実家に戻った。



　　　　　　　　　　　　 ヽ.::: .: :.／.:.:.::::.:.:.:::.:.:.:.:.:.:.:.:＼: :{　　 　 　 ヾ､.:::::.::.:｀ー―--ｧ
　　　　　　　　　　　 ､＿＼／.:.:.:.::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.::.:.:ヽ:＼ 　 　 　 }:ﾍ:::.:.:::.:.:::..:.:.:／
　, ;　　　　　　　　　　ヽ､≦ー― ､＿＿＿.:.::::.:.:.:::::::::::＼ ヽ､__ ,ノ: : :}.:.:.:::.:.:＜´ 　 ,,,;;
　　　　　　　 c=＝ｰ＾ 　,＞.:.:.::::/li 　 ＜こ＿ .:; イ.:.:.:.:.::.:＼ : : : : : : |.::::::.:.:.::;;;;＞'"
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　　 　 　 　 　　__　-一　 ＼.:fr'/{ﾐ ,彡／ ,／.:.:.::::／.:.::::ﾉ＿,,,:::-一宀 ´　　　　{
　 　 c=＝ ¨¨　　　　　　 ／^{ノ ilil/／　/⌒´￣￣￣`7´ /　　 　 / 　 　 　 　 ',
　　 　 　 ｃ　に≠==ー 厶-ｆ⌒il,／ 　 〃　　　　ｰ／, {　 {　　 　 i　　　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 `ーﾄ､　　 〃　　　{i　　　　　　 　 ﾍ. :丶ヽ: : :ヽ: : : : : : : : : : { :＼
　　 C °。　: . 　 ｒー-ﾍ にﾍ,{i　 　ヽ.i{　　 . . . . . : : : : ヽ、:＼: : : :＼: : : : : : : : ヽ. : :
　　　　 　 　 　 　 ,＞. : : ', ,〉ｨﾍ　 ヾミ{!. : : : : : : : : : : : : : :＼. :＼: : : 丶: : : : : : : : ＼
　　　　 　 . ｨー-く. : : : : く {^ヽ人　　 ﾍ≧ー‐rｰ宀7⌒ヽ. : : ヽ､__. : : : : :＼. : : : : : : :
　 　 　 ／ /: : : : : :｀ヽ、: :ﾄこ´　 ヾ　 　　 ¨＞く__ノ ＿,人___／,} } ¨¨¨"¬ｒ一=,,___ : :
　　　 /　,/: : : : : : : ／ ＼ﾍ､＿＿　　　　 　 彡彡 ´　_　ｰ≠' ' 丿.::∧.::::.:/⌒ヽ　　¨`
／こ7　 / : : : : : : / 　　　 ＼. : : : ´¨¨¬　　　　　, ＜ﾍｰ┬¬く´j;/ヽ＼;{　 　 }ｰ､
／ /　 / : : : : : : /　　　 　 　 ヽ、.. : : : :／　　　　{＼: . . . Ⅳ´　　 ,／　　　　　　　⌒

104：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:09:55 ID:tSPrWWi20

そして、再びエンジンブローカーに戻ったが、山岡は失意の中にあった。


　　　　　　　 ./ :;:;:;//　　　　　　　|　　　　　 |　　　　　　｀ 、ヽ:;:;ヽ
　　　　　 　 / :;:;:;.//　　　　　　 ノ　 ノ￣＼ ＼　　　　　　　ヽヽ:;:;ヽ
　　　　　　/ :;:;:;:;/ .|　　　　　／　／:;:;:;:;:;:;:; ＼ ＼　　　　　　 ） ヽ:;｀、
　　　　　　￣/:;/　丶＿＿ノ　ノ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼〜ーー一　　　|:;:;:;|
　　　　　 　/:;:;:;|　 ／へ―イ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;｀へ＿＿ノ⌒＼|:;:;:;ヽ
　　　　　 /／|:;:;酈:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;∧　　/|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;.|丶|　　　　　　　はあ・・・・・・・・
　　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|: ;:;:;/ |:;.　/　|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;∧|
　　　　　　 .′:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/|:;:;:;./|:;:;:;/　|:;:;/　　|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/＼
　　　　　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;./:;:;:;./___|:;./__|:;/　__|/＿_＿|:;:;:;/:;:;::;;:;/ ＼　.＼
　　　　　 ./／|:;:;:;:;:;:;:;/ |:;:;/　　 ∨U|/　　　＼　　U |:;:;/ /V /　　＼/
　　　　　　　　|:;:;:;:;:;（＼V　ﾐ＝＝彡　　　　　 ミ====∨ /__/　　　./
　　　　　　　　|/|///|＼|　　　　　　　　　　　　　　　　　/　/　　　/
　　　　　　　　　| ∨ |/|入　　　　　　　釻　　　　　　　/　/　　　./
　　　　　　　　　|/丶.|/∨ ヘ　 　　　　一 　　　　　イ 　./　　 . /
　　　　　　　　　　 ﾍ　　　∨へ、　　　　　　　　／ |　　/　　　 /
　　　　　　　　　　　 ﾍ　　　 　＼|ヽ ー一　＜　　 .| 　/　　　 /ー丶
　　　　　　　　　　　 /丶　　　 　　|　　　　　　　　 .|　/　　 ／　ーヽヽ
　　　　　　　　　　 ./　　ヽ　　 　ノ　　　　　 ／　　 |/　 ／　　　　　ヽ ヽ
　　　　　　　　　　/　　　　 、 /＼　　　　／　　　　|　　　　　　　　　　| |



　　　　　 i　:　　　　　　. : :　　　,ｨ　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　 　 　 　 ! : :　　　　. : : : :＿／ i　　　 ﾊ　: .　　　　　　　　　ヽ
　　　　 　 ! : : .　:/ : : : : : :／￣`ﾐ ､　　.ﾊ : : : .　　 : .　 :　　　 ヽ　　　　　　どうされたんですか旦那様？
　　ﾄ､＿ノ ,ｨ: : : :l.: : : : :／ ,ｲﾐ､､　ヽ`ヽ :ﾊ: : : : .　 : : :　 : : .
　　 `ー ''／: : : : !: : : /!　　i ﾉハヽ `､: . : l: : : : : . : : : :　 !: : .
　　　　　 `ヽ､: : :ﾊ: : :l.ﾉ　　!fう　〉　　 `ヽ:l: : : : : : : : : :　 !: : :　 ,
　　　 　　 　 　ヽL.ゝ､:!　　 l_ﾂ　　　　　　/ : : : : : : : : : :　l: ,,　"
　　　　　　　　 i´　 　 `　　´　　　 　 　／ : : : : : : : : : : : /´: 　!
　　　　 　 　 　 ヽ　　　　　　　 ヽー‐ ': : : : : : : : : : : ; - ' } : :　l
　　　　　 　 　 　 !、　　　　　　　 ` ー―フ: : : : , ＜' ´_ノ: : :　:i
　　　　　　　　　　 i`ｰ--　　 　 　 　 _.／: : : ／,､　／´ : : : : : ﾊ
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　 ` ー‐ '´／ l:`´: : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　 　　　 '　　l/: : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　　　　 ､_-‐ '_: ィ: : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　　ヽ､＿＿＿＿　　　　　 ￣　 .i: :,: : : : : : : ､: :
　　　　　　　　　　　　　、＿ノ: : : :ヽ.　　　　　 _...l :ハ: : : : : : :ヽ:

105：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:10:10 ID:tSPrWWi20

　　　　　　　　　 ,....::´::::::::::::_.. -―- .._:::::::::::::＼
　　　 　 　 　 ／／::::::,. : '⌒ｉ　　　 f'⌒丶.::::::::::ヽ
　 　 　 　 ,∠.ｧ':::::::／: : : : :/　　　　':,: : : : ＼:::::::::.
　　　　　´ 　/:::::::/: : : : :／,..::::'⌒丶. ＼: : : : ヽ:::::::ヽ　　　　　　　いや、またこうして商売を始められたのはいいんだけど、どうも・・・・・・
　　　　　　　':::::::/ヽ-- ' ／::::i::::::::::::::::｀ヽ.ﾆ - ' ヽ:::::::':　　　　　　やる気が出なくて。
　　　　　　 l::::::::l, -‐:::i´::::::ｲ::|:::::::::::::ﾄ:::::i::::::::＼　!:::::::､',
　　　　　　 !:::::::l::::::::::ﾊ::::/__l::ﾄ､::::::::::!_ヽ|＼::::::::ヾ:::::::l ヾ　　　　　前はエンジンが右から左に流れるだけで、うれしかったんだけどさ・・・・・・・・
　　　　　　,:::::::::ｌ:::::::/　ﾚ―- ､ ＼:::::|,ﾆ -‐ ､:::::::ｌ::::::::l
　　 　 　 /ﾊ::::::::､::::{　{　　 り } 　 ＼{ り　　}ヽ:::ﾄ､::i::l
　　　　　　　＼:::{ヾﾍ　` ｰ-　'　　 　 ` ｰ-　'　ﾊ!/:ハl
　　　　　　　　 ヽ丶.ﾊ "　　　　 ;′　 　 　 "/ ,/:/
　　　　　　　　　 Vヽ:::ヽ 　 　 　 　 　 　 　 /｀／
　　　　　　　　　　　 ン､＼ 　 ´　￣ ｀　 ／ｲ/ヽ.
　　　　　　　　　 ／　　 ヾﾄ丶 、 　　, イ､/ 　 　 ＼
　　　　　 　 ,.　´　　　　　;　 }　 ｀　´　 {　､　　　　　｀ヽ、
　　　　　　 `ー‐--､　 　 {_ノ　 　 　 　 ヽ､l　　 , -― ´
　　　　　　　　　　 _ ソ:､　l ',　　　　　 　 ,' l　 /､丶、
　　　　　　　_.　 ´／ 　 ヽl|ｰ',- ､　　_. -,'ｰl　/　 ＼｀　 ._
　　　　_　 ´,.　 '´　　 i　　ｌ|　 ':,　｀　　,:'　 l / /　　　丶　｀　､
　　　 /　



彼はブローカー業にすっかり嫌気がさしていたのである。いくら巨額な金額を一時期動かしていたとはいえ、
商品を右から左に流すだけの商売にすっかりやる気を失っていた。
好景気の中にあったことも大きいが、そうした金だけの商売を行うことに情熱をもてなくなったのである。

106：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:10:23 ID:tSPrWWi20

　　　　　　　 ./ :;:;:;//　　　　　　　|　　　　　 |　　　　　　｀ 、ヽ:;:;ヽ
　　　　　 　 / :;:;:;.//　　　　　　 ノ　 ノ￣＼ ＼　　　　　　　ヽヽ:;:;ヽ
　　　　　　/ :;:;:;:;/ .|　　　　　／　／:;:;:;:;:;:;:; ＼ ＼　　　　　　 ） ヽ:;｀、
　　　　　　￣/:;/　丶＿＿ノ　ノ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼〜ーー一　　　|:;:;:;|
　　　　　 　/:;:;:;|　 ／へ―イ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;｀へ＿＿ノ⌒＼|:;:;:;ヽ
　　　　　 /／|:;:;酈:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;∧　　/|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;.|丶|
　　　　　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|: ;:;:;/ |:;.　/　|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;∧|　　　　　　　　だけど、今更新しい商売に手を出すというのも気が引けるし、
　　　　　　 .′:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/|:;:;:;./|:;:;:;/　|:;:;/　　|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/＼　　　　　　　　淑乃や息子もいるしさ。
　　　　　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;./:;:;:;./___|:;./__|:;/　__|/＿_＿|:;:;:;/:;:;::;;:;/ ＼　.＼
　　　　　 ./／|:;:;:;:;:;:;:;/ |:;:;/　　 ∨U|/　　　＼　　U |:;:;/ /V /　　＼/　　　　　　　どうすればいいんだろ。
　　　　　　　　|:;:;:;:;:;（＼V　ﾐ＝＝彡　　　　　 ミ====∨ /__/　　　./
　　　　　　　　|/|///|＼|　　　　　　　　　　　　　　　　　/　/　　　/
　　　　　　　　　| ∨ |/|入　　　　　　　釻　　　　　　　/　/　　　./
　　　　　　　　　|/丶.|/∨ ヘ　 　　　　一 　　　　　イ 　./　　 . /
　　　　　　　　　　 ﾍ　　　∨へ、　　　　　　　　／ |　　/　　　 /
　　　　　　　　　　　 ﾍ　　　 　＼|ヽ ー一　＜　　 .| 　/　　　 /ー丶
　　　　　　　　　　　 /丶　　　 　　|　　　　　　　　 .|　/　　 ／　ーヽヽ
　　　　　　　　　　 ./　　ヽ　　 　ノ　　　　　 ／　　 |/　 ／　　　　　ヽ ヽ
　　　　　　　　　　/　　　　 、 /＼　　　　／　　　　|　　　　　　　　　　| |



　　　　 ／　　{ヽ.__ノ　　　　　　...::::::　 ..:::...::::::...　　　　　　 　 　 　 l
　 　 ／　　 　 `ーｧ'　　　　　.::―/―イ- ､{::::::::::...　　 　 :.ヽ　　 　 l
　　 {　　　　　　 / ..　　　　 .::::::::::ﾚ'´ /::／ ＼::::::::::..　　 .:::. |　　　　l
　　 '　　　　　　 { ::::.. 　 　 .:::::::::::/７_.へ　　　ヽ,:::::::::　 .::::::::l　 　 　 !
　　　',　　　 　 / ＼::::::....　::::::::::::{ トf　} ﾊ　　　}::::::::_:...:::::::::ﾉ.　　 　 |　　　　　　　私は旦那様のお仕事のことは分かりませんが、旦那様が
　　　　,　　 　 { ｰ ',.＼ _::::::::::::::::ﾊ込_ク　　　 /:::::;/:::＞:::´::::　.::.　 ヾ､＿ ﾉ}　　　好きでもない仕事をしている姿を見るのはイヤです。
　　　　 ヽ::.　　ヽ　ヾゝ　｀丶､:::::::::ヽ　　　　／ イ/:::/　jﾉ:::::: ..:::::i　　} ｰ‐ '′
　　　　　 l:::　　 ...｀ ーﾍ　　　 ｀　ー｀　　　　　 f/／}ノ::::::::::::::::::::ﾄ　/
　　　 　 /:::　 .:::::::::::::::::|ﾊ　　　　　　　 　 　 , 　｀¨∠ィ:::::::::::::::::ノ j/
､ ＿_.／::.....::: 　 　 　 ::|　ヽ　　　　 ｀　ー　　　　/-=' -―‐　´
ーｧ::::.......... :::　 ...　　..:::|　　ヽ、　　　　　　 　 ／　/
::´::　 　 . -- 、　　 　 /　　 　 ＼　　 _ .　＜　　　{　　　　　　　ﾄ,
　　 ／　 　 　 ＼ーく　　　　　　　7:´::　　　　::::. ::ヽ　 　 　 　 〃
.　 /　　　　 　 　 ＼ハ　　　　　　ヽ. ＿＿ .._　 :::　::｀ヽ. ＿／/
::::/　　　　　　　　　 ∨ヽｰ- ､　　　 　 } !　　 ｀ヽ::　...:::::ヾニﾆ、
::;′　　　　　　　　 ヽ} 　 ＼　 丶　／ ハ　 　 　 V:::　　　　 ::::ヽ

107：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:10:38 ID:tSPrWWi20

　　 / 　 }　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　　　 ＼ , - ､/: : : ヽ　ﾄ./
　　 l 　 ′　　　　　 　 　 　 :..　　　　　 ヽ　　　　　＼ ､ヽ: : : : }ノ/
　　 |　/ .:: 　 　 /　　..::ハ　 ::::::..　　　::..　ヽ　　..　　　　｀ ￣ ´／
　　 ﾚ' ..:::::　/　 |　 .::::/　 ヽノ:::::::::､_ ..::::::　ﾉ　 ヽ::..　　　 ヾｰ ´＼
　 ／.::::::::::.. | ..:::|.:-‐/　￣　ヽ::::::::::::::＞＜ヽ::..　}::::::..　　　/　　 　｀丶.　　　　　　　それに、私たちのことなら大丈夫です。旦那様は旦那様がしたいことをしてください。
　(:::::::::::::::::...l.:::ハ:::/‐　￣｀　l::::::::::::::|―-　 !:::::/::::::::::.. .／
　 ヽ::::::::::::::::∨　.イて_ﾊ　　ノ.イ:::::::/て__ハレ'::::::::::::::::( ヽ　　　　　　　　　　　　　私はそれについて行きますから。
　　/＼:::::::::: ヽ/　ﾄf、ノ}　　 ∠ 　'´ トf、ﾘ }　}:::::::::::::::::｀ハｰ----､---
　 /::::::{＼ ::::::: ＼とつソ　　　　　　　ヒ (つ　ﾉ:::::::: ｲ:::::/ _ﾊヽ　 　 ＼
　 |:::::::丶､ ｰ-. _:::＼ 　 　 　 　 i　　　　　 ／:::::／|::jイ:!':::__ﾊ ｀丶.　　｀
　 l:::::::::::　丶-ﾍ　￣´　　　　　 ′　　 　 'ー 7　　|::! ｌ::|'´　　〉　　 ｀　-
　/::::::::　　　　　＼　　　 　 ー ―　 　 　 ／ |　　 Llノ::ト‐　´　 __
:´:::::::::::..　　　:::::::::.. 丶、　　　　 　 　 .　´　　l‐:::::::´::::ﾉ|　　　'⌒ヽ＼
::::::::::::::::::..............:::::::., ┤ 丶､　　 . イ､::: 　 　 |＿..　 ´ ﾉ　 　 　 　 }:::::;
　　 ::::::　　　　::::::::/　 ｀ ｰ ､ ｀´ ／ ハ　　　 | 　 _　 ´::ヽ.　　 　 ノ::::::}
　　　　 　 　 　 ／ヽ､　　　 ｀￣　　　 7}::...::::::￣::::　 ..::::::::｀￣ ´:::::::::ﾉ






夫人の後押しと、そして香川県の丸亀でかつての仕事仲間が新しい仕事をしているということで、
山岡はブローカー業を廃業することを決意し、新しい商売を行うことを決めた。
108：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:10:56 ID:tSPrWWi20

後に彼はブローカー時代を振り返ってこのような発言を残している。





　 /:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ＼:ヽ、｀丶､:.:.:.:.:.:`丶ヽ, -､`ｰ----_..=‐ノ
. /:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',　＼ﾍ z≦=_､:.:.:.:.:.:.:/`ｰﾊ＼‐ '':.:.:.:.:.:.ﾆ=
/:.:.／l:.:.:,':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ',､_,ィヾ､弋心!｀丶、:l　 「 ´　}:.:.:.:.:.:.:.:,ゝ
:／　 l:.:.:i:.:∧:.:.:.:.:.:.:ト ､:.:.:.:. ',　' ､　`　.ノ 　　 ヾ!　<´ } ,':.:.:.:.:.／　　　　　　 ブローカー商売はもう御免だ。自分は汗を流さないでおいて
　　　l:.:.:.l/:.:.:',:.:.:.:.:.:lｰｧ心:.:.:.:',　　 ￣　 　　　　　　/ ' /:.:.:.:.:/　　　　　　　　口先だけで中間利潤をむさぼる商売は、いわば詐欺と同類だ。
　　　l:.:.:.:.:.:.:.: ',:.:.:.:.:l '､ `ｰ!｀ヽ',　　　　　 　　　　　r､ノ}:.:.:.:.:l
.　　　!:.:.:.:.:.:.:.:∧:.:.:.:ヽ ｀´ﾉ　　　　　　　　　 　 　　! 　.l:.:.:.:.:l
　　　 l:.:.:.:.:.:./ 　',:.:.:.:∧　ヽ､ -　　　　,　　　　　　,'　　ﾚ'ヽ､!
.　　　 ',:.:.:.:/ 　 　',:./　 '.　　 　　　 ／　 　 　 　 ,'　　　　　 ',　__
　 　 　 ',:./　　　　`　　　ヽ、 　 '' ´_　　　　　　/　　_.. - '' ￣　 l
　　　　　′　　　　　　　　　｀ヽ、　　　　　　_∠- '' 　 　 　 　 　 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　　　/{ 　　　　　 , -‐ '' ¨　ヽ_..、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ` - イ′}　 /　 ,　'　　_.. - '' ¨　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / ／　　／ ,, - ''　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ! ′ .／／　　　　　　　　　　　　　＼



よほどブローカー業に嫌気が指していたのかが伺える言葉である。

109：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:11:09 ID:tSPrWWi20

新しい事業を求め、山岡はガスエンジンを石油エンジンに改良し、籾すり臼用動力機として販売していた仲間の元を訪れ、
石油エンジンについて勉強し、特定の作業をエンジンによって行う仕事に興味を持つ。

　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿ヾ-､
　　　　　　　　　　ヾ､＿, -‐:::::::::::::::::::::::::::ヽ:::＼ヾ
　　　　　　　　　　　＼::::::::::::::::::::::::, ------::､::::::ヽ､
　　　　　　　　　　　 , ィ::::::::::＞'"¨7　　　　i, 　 ＼:::::＼
　　　　　　　　 　 ／:::::::::::／　　／::::,---､　ヽ,　　ﾊ',:::::',
　　　　　　　　　/／::::::::/ヽ--_'＞'":::::::::::::::ヽ, ｀'ｰ-､.i::::::',
　　　　　　　　 　 /::::::::::´¨:::::::::::::y::::::::::::::::::/:::::＞-､.i::::::::',　　　　　　これが石油エンジンか。昔はガスが主流だったのに、石油が動力源のエンジンが
　　　　　　　　,.=':::::::::::::::::::::/::／Z:::::::::::::／/::::::::::::i:::::::::::::iﾍ,　　　　　こんなに広まってるなんて。
　 　 　 　 　 　 i::／/::::::::::::／ニ､|::::/〃　/／',::::/i::::::::::::::i
　　　　　 　 　 〃　i::::::::::::,' .i.　　9ヾ　　 -t''9´i/ヽ:::::;;;::::::i
　　　　　　　　　　 ﾉ:::::::i.=ﾊ ヽ--- '　　　　ヽ-- '_／ ｱ/ヾi,
　　　　　　　　　　 /:::::i:＼__',　　　　　, ､ 　 ',　＿＿＞､__
　　　　　　　　　 　￣7/',:::ﾍヽ　　　,　--　､ ヽ　　　　7: : ７
　　　　　　　　　　　 , --ﾍi---＞ .　　　　　 .ﾉ　　　.-': : :-.､
　　　　　　　　　　`' ＜,　　　　　　ﾍ＞- イ_,/　　　　　ﾍ: : :ﾍ
　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　::|　 　.|　　　　　　　　',: : :.',-'"￣￣ ７___
　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　／-'y-'".i　　　　　　　　 ﾍ: : :ﾍ　 　 ＿　　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　 -) /-､　　　　',　　　　　　　　　ﾍ: : :ﾍ ／: : :ヽ､　.＼
　　　



特に彼が感心を抱いたのは「農業向けエンジン」である。

110：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:11:25 ID:tSPrWWi20


爻　　 _,,-‐ｔ‐''⌒ﾊ、　　　　　　　_,,,　-‐''三]
ｋ;;:､　(,,　ﾒ μ ,,´｀, -―一''''""~　_,, -‐／::::＼　　　　　　　 ／
､,＼;;:: 人人ｷ,,　 /　--一'''"~￣　　,／:::::['i']::::＼へ、　　／
ﾆヾ ＼鄴鄴 Y,／　　　　　　　　　／ii[]:::[_,!_]::[];､＼　Yy,,..
-‐''`　 `.、:,:／　　　　　　　　　／ii;[ i ]~~[_!_]~[l];:ヽ ＼＿
＿,,､＿,,,,／　　　　　　　　　,／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　>￣ヽ
ﾊﾊ从 ／-―====r-===三''　､-―――――――‐＜　木ﾎYyy
(⌒)ｲﾄ爻------(　tｲ-‐'´::::::::,＼＿＿,,,....､_＿＿,,,_____`」￥　Y
　T,::爻Ooﾄ[iiii]<,,. ､ ｷ[]　 i::::::::::::::::[]::::::::::::::[]=======|爻爻三三
ー-　　''ー＾　二,,　ー---┴, -‐へ-O-ー-〜〜-―へ`~~　　　　]、
　　　　　　　　　━
　〓　　　　　　　　　　　━〓　　　ー　----　､---―




元々生まれが農家であったことや、ほとんど手作業で朝から晩まで作業に明け暮れる両親や、
家族を見てきた彼にとって、少しでも農業に携わる苦労を軽減してやりたいという
そんな思いを抱くようになった。

111：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:11:36 ID:tSPrWWi20

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ー 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 -- ─ --.へ::: :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 乂⌒ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞ ::::::::＞ - ── - ＜::｀　 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　 ´:::::::::::／ 　 〉　　 　 〈　　 ＼::: ＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／ :／::::: ／＿ ／ __ ,ィ⌒ヽ＼　　 )∨:∧　　　　　　　　　よし！　なら俺が農業用のための、農民のためのエンジンを作ろう！
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 レ/ :::::::::ム __ ノ´ :::::::::::::::::/ハ　￣　 } ::::: V
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 / :::::::/ :::::::/ ::::::／:::::::::／::::/:::i::⌒ヽj ::::::: |　　　　　　　　何かを売るだけの仕事はもうウンザリだ！
　　　　　　　　　　　　　　 　 イ :::::::/:::::::::/:::／j:::|i:::::::/:::／l::::::i::::::li :::::::::::::ﾄ、
　　　　　　　　　　　　　　　　 } ::::: i :::::::: !/´≧ ､|i ::/レ'　/ ≦!:::::ﾙi ::::::::: |　　　　　　　　何かを作って、それで役に立つ上で、しっかりと利潤が出る仕事をするんだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚ'⌒|i::::::i:::{　{　　i:jﾙ' ー‐ r i:j　レ'j: ﾘ:::::i::::::|
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 从:::ﾙﾍ 人　_ _ .　　　　t _ _ _/ :::ル'!:ハ!
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／/:::::::＼ﾊ　　￣　　 i!　　 Ⅴ7777 ＜　　}
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早速、彼は羊の毛刈りに使う軽い石油エンジンを購入、たった12名の従業員でエンジンメーカーを設立する。

112：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:11:53 ID:tSPrWWi20

そして三ヶ月後、彼は日本初の農業用小型石油エンジンを開発し、大正11年（1922年）東京で行われた平和博覧会にて
動力籾すり・動力精米機・水揚げポンプを出品。山岡は『ヤンマー』と言う商標を付けた。
これが現代にまで続く「ヤンマー」の誕生である。

　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿＿
　　　　　　　　　　　　　　 ＿__＿rく＿＿__)￣￣＼＿_
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ⌒＞／ r──=彡:::::⌒::ヽ::{ 　＼
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　　　　 　 　 　 　 　 /:::::::::::::/　 ム-=ミ人::::::／ |／　} ::: ‘, |:::〈⌒
　　　　　 　 　 　 　 ,::::::::::{::::::|　/　　fﾌヽｌ::／　 ＿_／|::/}:::}/::::::'.
.　　　　　　　　　 　 {:::::::::∧:::|. {　　　　　}　　　ｲfﾌ￣Y　|:::::::::::}::}　　　　　　　トンボの親玉のように、俺たちはエンジン界の王者になる！
　　　　　　　　 　 　 〉:::::::: | V.　｀ー─　′ 　〉 | 　 　 }　|:::::::::/V
　　　 　 　 　 　 　 /::::/⌒i　　＿　　 　 　 　 　 ヽ　__ﾉ .ﾑｲ::/
　　　　　　　　　　ムｲ{ r‐K ／　|| 　 , ＜⌒ヽ　　　 　 /::/ﾚ′
　　　　　　　　　　　 从 ｰ／　／||　/　 　 ヽ:::}　　 　 /::/
　　 　 　 　 　 　 「￣￣ ＿／//||　{　 　 　 }/　　 　ハ(
　 　 　 　 ,　-─┴＜|　l//////||.　＼＿_／ 　　.／／
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113：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:12:06 ID:tSPrWWi20

今でも高いブランド力を持つヤンマーであるが、実は元々トンボという商標登録にしようとしたところ、
静岡の醤油機械会社から商標権侵害と訴えられた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　、＿__,.．-‐'''"￣￣｀`ヽ、
　　　　　 ー・、　　＞　　　　　　　　　　　 .ヽ、＿____丿
　　　　　　　　｀＞´　　　　　　　　　　　　ヽ /ヽ　'-'
　　　　　　　／ /　　　　 ,'　　　　　　 　　　｀ヽ |___
　　　　　　　￣/　　　　 ,'　　　　　　　　　　　ヽ<‐‐‐`
　　　　　　　　/　　　　　|　　　　|、　　　　　　　"'''・ ．＿
　　　　　　　　|　　　　　从 、　　|>・'´￣　|、　ヽ。「￣　　　　　　　くっそーもう使われてるのかよ。
　　　　　　・￣|　　∧.土弍|ヽ　´|ー‐ヾ　 .| ヽ、　|｀
　　　　　　　 /／| .|、 .|、 ｉ:ｊ　＼ |.ｉｊ＿,ヾ .|　　》ヽ|
　　　　　　　.'´　 `、ヽ_| .ー''　、ヽｌ　　 ｕヽ|　,、|
　　　　　　　　　　 .|/|　|、　　　　　　　　,．‐'´|`ｌ
　　　　　　　　　　　 ..ヽ| ｀ゝ．_―- _,.．'.|||　　.〉、
　　　　　　　　　　　　　|~｀`ヽ　 ￣|二彡.||ヽ /./‐ヽ、
　　　　　　　　　　　　　 ヽ|.| |　　, '.ー‐'''丿ヽ_/｀`ヽ、~ヽ、
　　　　　　　　　　　　 ／<ｿ| `-'　　　 .).|　　　　　　｀ヽ .~.|
　　　　　　　　　,−―'''´￣￣ヽ、　　.<,ｒ'　|　　　　.／/|　.|
　　　　　　　　　 ヽ、　 商　　　 .｀、　　|.|　 |　　　　　　 |　.|
　　　　　　　　　　 .|｀、標　　　　 ｀、　 |.|　.|　　　、　　 .|　.|
　　　　　　　　　　　} .}_登-,　　　 .｀、　||　.|　　　ヽ　　 ..|　.|
　　　　　　　　　　　{／録´　　＿＿ヽ、||　|　　　　|　　　|　|
　　　　　　　　　　　 |　'　/＾、|ノ　　　　`|　　　　 .〈　　　 |　|

114：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:12:19 ID:tSPrWWi20

トンボにしようとしたのは[「幼い頃、父の農作業を手伝い、今年は沢山トンボが飛んでいる。きっと豊作やで…」という
幼少期の思い出と、豊作になってほしいという思いからであった。
しかし、こればかりはどうしようも出来ず、山岡つながりとトンボの親玉であるヤンマから、ヤンマーとした。


　　　　　　　　　　／　　　＼ヽ. ＿＿＿＿ ノ .:.:.:.ﾊ
　　　 　 　 　 　 /　　　　　　ヽ､＿＿＿＿＿___.:.:.ﾊ
　 　 　 　 　 　 /　　　　　 ﾑ　{ヽ　　　　　　　　 `:.､:＼
　　　　　　　　 |　　　　　　|弋ﾊ__＼ 　 　 　 　 　 :.:.:.:.:.　　　　本当はトンボにしたかったんだよな。
　　　　　　　　 | /∨ 　 　 | ｲvﾊ-x 丶 　 　 　 　 :.:.:.:.:.
　　　　　 　 　 'V　∨　ハﾊ│ヽ{ 　ヽ ＼　j　 　　:.:.:.:.:.
　　 　 　 　 　 　 　 ＼{　}ヽ ',0　 　　', 　ヽ{ヽ　ハ:.:.／
　　　　　　　　　　　　 _lノ 　 ヽ　　 　 }　　　 ∨　j/:.:.:.
　 　 　 　 　 　 　 　 く　.:.:.:.:.:.. ｀ ｰ―彡　　　　　.:.:.:.:.:.
　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　 　 　 　　　 ,　 ' ￣￣
　 　 　 　 　 　 　 　 　 {__ 　 　 　 　 　 u ／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 （｀こ⌒)　 　 ／　　　　　／.:
　　 　 　 　 　 　 ∧( ) ' ⌒ヽ　´　　／　　　　　.:./.:.:.:.:
　　　　　　　　　 {　（ ）　　.:.:.:',　 ／　　 　 　 .:.:./:.:.／:
　　　　　 　 　 　 ヽ_____ .:.xー┴'ー‐　　　　 .:.:.ｲ,.:.'.:.:.:.

115：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:12:38 ID:tSPrWWi20

そして、籾すり用として故郷の阿閉や長浜駅前で実演を行い、大変な評判を得て、生産が販売に追いつかない程の盛況となった。
農業の次は漁業用のエンジンを開発。農業・漁業用エンジン共に頗る順調に売り上げをあげた。



　　　　　　 ／ /:::::/　 `ー‐'　／:::::::::::::::::::::l::::::ﾄー―l‐'´::＼ l|::::',
　　　 　　 ´　/:::::/ /`ー―‐':::/l::::::::::::::::::::∧:::|=､:::::::|:::::::::::::ヾ::::::',
　　　　　　　 l:::::/ｿ:::::::::::l::::::::/‐ﾍ::ト､:::::::::::|´ｌ::|　 ヽ:::ﾄ､:::::::::::/l:::::::',
　　　　　　　 |:::::/:l:::::::::::l::::::/　　 l l　＼::::::l .∨　　ヽl　',:::::::::l::l:::::::;ゝ　　　　
　　　　　　　 |::::|:::l:::::::::∧::/ 　 　 ｀ヽ　 ＼|　,.. ,,‐―-､_',:::::/､ｿ:::::|
　 r-､　　　　|:::/:∧::::::l､∨　,,.-―-､　　　　　´　　　　　 ',/ﾍ l::/ｿ
　(ヽ .＼　 　∨',::::::＼:l-､　/　　　　　　　　　　　　⊂⊃　l)　l l,'
　 ＼＼ ＼　 　 ',:::::/ /　 l⊂⊃　　　　　ヽ　　　 __ 　 　ol- ノl
　　　＼／＼　r‐ﾍ lヽヽ　l　　　　　　。　　＿__/,_丿　 ﾟ。,イ::/
　　　　|　　　ヽl　 |ﾚ´｀ヽ_.､　　 o　 --‐' ´ 　 。　 　 　／::/｀ヽ､＿
　　　　l　ハ　　>､ ヽ　　ヽ::ヽ　　　　　　　　　　　　.／:/∨　 　　 ￣｀ヽ
　 　 r' ` ￣｀ヽニﾉ､',　　　｀ﾚ､:＞:.....　　　　 　　＜l:ル'　 ／　　　　　／
　　 /　ヽ､_　　＼＼＼ヽ　　　`'´｀ヽ::l　｀　‐　´　　ｿ　　/　　　　　／
　　 l　　　　｀ヽ､. ＼＼＼　　　　/rl´　　　　　　　　ヽr/　　　　 ／ー-､_
　 　i'　´ ‐-､＿ｿ-/ ＼＼＼　　 l､l l　　　　　　　　　/l　 　 　／￣￣｀ヽ ＼
　　 ヽ　＿ 　 ノ　r'ー､.＼＼＼　l_l l ｀　ヽ　　 -― / ﾉ　 r‐'´　　　　　　 ＼ ヽ


だが、すべてが順調に進んでいたわけではない。

116：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:12:51 ID:tSPrWWi20

販売したエンジンが爆発事故を起こし、なおかつ東京支店長が勝手に大型トラックを購入。
関東大震災後の需要を見込んで高利貸しから金を借りて行ったために、
山岡はその対応に追われ、支店・本社・本宅まで競売にかけられてしまう。


　
　　　　　　　　　　　　　,,､､､､､､､､,,,,
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　　　　　　 　 j!;:;:;:;:;:;:{　　　　 ｀`''' ー---‐'''ﾞ´. :. : .ミ!
　　　　　　, ﾍji!;:;:;:;:;:;'ﾞ ',　　　　　　　　　　　　.:. ,:' ﾐj!ﾊ
　　 　 　 / ﾊ ﾞiﾄ､;:;;′　　　　　　｀ヽ　　　　 .: .:'　 ミ /　　　　　　安心しろ、命までは取らねえ。きっちり絞れるだけ絞ってやる。
　　　　　 ', ::;;ﾊj!;ﾐヽ､__,r'"´｀`ヾミﾐゝ;.;.;.:,ｨィ''"´ ､ ﾐ! ,!
　　　　　　', :;;;;ﾊﾐ!　 T. ｀`''ﾓt弐ﾐ}L___ k'ﾓﾃﾃ'''´〒 ﾉ
　　　　　　 ( い:ﾐ′　',　　 　 "~´7!⌒ﾄ､"ﾞﾞ´. :. :.,ﾘﾉ
　　　　　　　(ﾊJj!.　 　ヽ　 _ ＿ノ ′　L.:._ _＿ノ爪_
　　　　　　　/.::::::',　　　　　　　　,r　　.:.:.､ . :.: .: ,'.::::ヽ
　　　　　 ／.:::::::::::ﾄ､　 　 　 　　 `ｰ--‐'′. :. :,:'.:::::::::.ヽ
　　 　 ／.:.:.:::::::::::::l　ﾞ､　　　　　,　-‐- ､. :. :. :,ﾊ.::::::::::.:::.ヽ､
　　／.:.:.:.::::::::::::::,.ｲ　　ﾞ､　　　　｀`"""´. :. :,.ｲ　ﾊ::::::::::::::::::..＼
　ｲ.:.:.:::::::::::::::::::/./i　　　ﾄ､､､,,,　`ﾞﾞﾞﾞ¨´.: ,.ｨｲ'　 ハ::::::::::::::::::::::::.＼
　′.:.::::::::::::::::/./ﾆL 　 　 `ヾ州州州杉'ﾞ´　 ,ｲミﾐヽ:::::::::::;:;;:;;;;;;;;;;;
　.:.:.:::::::::::::::::/./,r'´ >､　 　 　`"ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ´　　,.ｲヽ`ヽVﾊ;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　.:.:.::::::::::::::〃ﾊ ／／ `>､,,_　　　　　　,. ｲヽ＼｀V: : : !;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　:.:::::::::::::::〃ハﾄ､　 ／　/　77'''ﾊﾊﾊ八ヽ＼ >'´. : : : :!;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;

117：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:13:08 ID:tSPrWWi20

人生二度目の苦境であったが、彼はなんとか会社を存続させることに成功する。
そして、この時個人商店から株式会社山岡発動機工作所へと移行した。



　　　　　　　　　　　　 ヽ.::: .: :.／.:.:.::::.:.:.:::.:.:.:.:.:.:.:.:＼: :{　　 　 　 ヾ､.:::::.::.:｀ー―--ｧ
　　　　　　　　　　　 ､＿＼／.:.:.:.::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.::.:.:ヽ:＼ 　 　 　 }:ﾍ:::.:.:::.:.:::..:.:.:／
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　　　　　　　 c=＝ｰ＾ 　,＞.:.:.::::/li 　 ＜こ＿ .:; イ.:.:.:.:.::.:＼ : : : : : : |.::::::.:.:.::;;;;＞'"
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　　 　 　 　 　　__　-一　 ＼.:fr'/{ﾐ ,彡／ ,／.:.:.::::／.:.::::ﾉ＿,,,:::-一宀 ´　　　　{
　 　 c=＝ ¨¨　　　　　　 ／^{ノ ilil/／　/⌒´￣￣￣`7´ /　　 　 / 　 　 　 　 ',
　　 　 　 ｃ　に≠==ー 厶-ｆ⌒il,／ 　 〃　　　　ｰ／, {　 {　　 　 i　　　 　 　 　 ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 `ーﾄ､　　 〃　　　{i　　　　　　 　 ﾍ. :丶ヽ: : :ヽ: : : : : : : : : : { :＼
　　 C °。　: . 　 ｒー-ﾍ にﾍ,{i　 　ヽ.i{　　 . . . . . : : : : ヽ、:＼: : : :＼: : : : : : : : ヽ. : :
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　　　　 　 . ｨー-く. : : : : く {^ヽ人　　 ﾍ≧ー‐rｰ宀7⌒ヽ. : : ヽ､__. : : : : :＼. : : : : : : :
　 　 　 ／ /: : : : : :｀ヽ、: :ﾄこ´　 ヾ　 　　 ¨＞く__ノ ＿,人___／,} } ¨¨¨"¬ｒ一=,,___ : :
　　　 /　,/: : : : : : : ／ ＼ﾍ､＿＿　　　　 　 彡彡 ´　_　ｰ≠' ' 丿.::∧.::::.:/⌒ヽ　　¨`
／こ7　 / : : : : : : / 　　　 ＼. : : : ´¨¨¬　　　　　, ＜ﾍｰ┬¬く´j;/ヽ＼;{　 　 }ｰ､
／ /　 / : : : : : : /　　　 　 　 ヽ、.. : : : :／　　　　{＼: . . . Ⅳ´　　 ,／　　　　　
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そして、あまりにも立て続けで不幸な事態に陥ったことから、彼は気分転換を兼ね欧米視察に出かけた。
そして、ドイツを訪れた際に彼は自分の後半生をすべて注ぐことになる発明品と出会う。

118：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:13:20 ID:tSPrWWi20

それはディーゼルエンジンである。単体の熱機関で最も効率に優れ、汎用性が高いという性質を持っている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,,,,,,,,,,,,,,,＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,, -‐=‐''´`ヽ、'''‐-､ ｀ ''''‐-､ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,, -‐''´　∠ `ヽ､ ￣'''''ｰﾆ‐- 二‐--､'''‐ﾆ ｰ- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,, -‐''´　　　／_｀ ヽ= ､　 ｀ ヽ ､　　 ` ヽ､｀‐ ､` ヽ ､｀ヽ｀ヽ ､
　　　　　　　　　　　　 ,, -‐''´　　　　　,,,,/ く　 ｀ ヽ ､_ ｀ ヽ ､ ､　｀ ヽ ､　 ｀ ヽ ､｀ヽ ､｀´,,-‐'''´｀ヽ､
　　　　　　　　　　　 ./￣'''''''ｰｰ‐,,‐'''´/ ､　` ヽ ､ 　　` ヽ ､　 ｀ ヽ ､　 `''''ｰ､／ ,,‐''´,,,‐'''´￣￣ ヽ　 ＿_
　　　　　　　　　　　 /　　　　　　/　./ ｀ ヽ｀ヽ､　 ｀ ヽ ､　　　｀ ヽ ､｀ ヽ､ ヽ ､ ／ ／　　　／ ￣ﾆﾆゝ'　　 ｀ヽ ､
　　　　　　　　　　　/　　　　　　/　//ﾆ‐ ､　｀ ヽﾆ ‐､　　` ヽ ､ /ヽ` ヽ､　 .／ ／　＼ゝ´‐'´´ ,,‐'´　　　　　　 ,,ﾆヽ、
　　　 　 　 　 　 　 /.　　　　　 / ./ `ヽヽゝ ｀''''‐ ､　ﾞﾞ‐-=- ､　　｀ ヽﾆ､/ /　／　　／／　,,‐'´　　　　　　　／　　　｀ヽ､
　　　　　　　　　　 /　　　　　 / .i'ﾆヽ､　｀ヽ､　　　 ｀ヽ､　　｀ヾ ヽ ､　　/　 //ヽ／／,,-''´　　　　　　　 ／　　　　　　　　｀ヽ ､
　　　　　　　　　　/　　　　　./　j __　`ヽヽ､　 ｀ヽ､　　　 ｀ヽ､　　｀ヽ　ヽ /　　ゝ/,‐'´　　　　　　　 ,／　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ､
　　 　 　 　 　 　 /　　　　　/　 ij　｀ヽ､　 ｀ ヽヽ､　｀ ヽ ､/ﾆヽ､ヽ,　/　/　　/／　　　　　　　　.／　　　　　　 _,,,- ､__∠j＿　　　　 `ヽ､
　　　　　　　　　 /　　　 　 /　 .i　ヽ ､　 ` ヽ､　 `ヽ､ヽ､　 ` ヽ､ / /　/　 ／　　　　　　　 .／　　　　　 　　 ＜二/､　　　　 `ヽ　,,　　／＼
　　　　　　　　　/　　　 　 /　　i｀ ヽ　 ヽ､　　　 ヽ､　`ヽ､'''-､　　/　/ く／　　　　　　 .／　　　　　　　　　　　 i／i ヽ ､_　　　__ヾ/／
ヽ､　　　　　 ／/　　　　 ./　　 j　　　｀ヽ､ ｀ヽ､　　 ` ヽ､　`ヽ､`ゝ /　/　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　 l//､//ヾ‐i二ﾆﾆj､`ヽヽ
　　｀＞ ､　/ i　i　　　　 /　　　ヽ　　　　　`ヽ、` ヽ､ i＼ `ヽ､　/ /　/　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　''´ヾi''''//ﾆ//ﾆﾆﾆヽヽ''i
,,‐'''´,,,‐-'/　i　i　　　　 /　　　　ヽﾞヽ､　　　　　`ヽ､　`ヽ､ﾆ‐//　/ ./　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞiiく //　　　/_　 i i
,,,‐'''´　 /　 i　i　　　　/　　　 ／　ヾヾ｀ヽ､　　　　　｀ヽ､　 ｀´/　/ /　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣　 ＼i/
/ 　　i´i　　i　i　　　 /　　　/　ｰｰｰ-ヾヾヾ｀ヽ､　　　　　｀ヽ､j　 j /　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　i　i　 .i　i　　 /　　／　　　　　　　 ｀ヾヾヾ`ヽ､　　　　　'i　i ,/　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　 .i　i　 .i　i　 /　 ／　　　　　　　　　　　 ヾヾヾヾヾヽ、　　i　i j　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　 j　j　 i　i / ／　　　　　　　　　　　　　　　l　｀ヾヾヾヾヽ､j　j/　　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　 j　j　.i l /'´　　　　　　　　　　　　　　　　 l／‐‐‐ﾞヾ､ヾヾヾi/　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　./
､　　i　i　j/i ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　／　　　　　＼i　　　　 〈　　　　　　　 く￣￣''''''''‐ ､＿ /
　＼i　i/／i　　＼　　　　　　　　　　　　／　　／　　　　 　　　　＼　　　　＼　　　　　　　＼　　　　　　´｀-‐‐／-,,- ､


当初は「オイル・エンジン」と呼ばれ、ガソリンエンジンなどに比べて発火点が低いことや、
ガソリンエンジンよりも頑丈に作る必要があり重くなる、また、常用最高回転数が低いことなどの
デメリットがあったが、次第に低速での回転効率がいいことや、大型の船舶や機関車などの
動力源としての利点があることが注目されていった

119：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:13:36 ID:tSPrWWi20


　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／⌒ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ノ_: :-- ､＼
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 __/人〉＝=入: ヽ　　　　だが
　　　　　　　　 　,.-､＿　　__／.､ヽYﾌ┬役ｧﾄ､:ﾉ　　　　我がドイツの
　　　　 　 　　_ノ : ∧ ',￣　 _,X_,ノ|　,._-_､、|ﾉ´　　　　　科学はは
　　 　 　 ,.ィ´: : : : : ∧ ',__／-､ 　 {! ｀⌒´ ﾉ!〉　　　　 ‐┼‐|┼　[王］　＿__,　　　　 　 /
.　　　, :´ : : : : : : : : : : 〉'＼ﾟ ･ ｡＼| ｀ ｰ‐:' l_lヽ　　 　 　 ∟.二　 イ卜　　　　イ イ イ ・
. 　 ,:': : : : : : : : : : ,.ィ´／: : ＼ l´_/____,. ＜　__ﾄ､
　 /: : : : : : : :,: :'": : /: : : : : : :｀ﾚo: :!　〔__／ |　。＼　　　　　できんことはないイイ
　 ＼: : : : : :/: : : : /¨＼: : : : :/: ヽ: |__／: : : :＼　･ ｀｡ｰ-､　　　　　ィ ー───── ッ！！
　　　＼: :／､: :/://＼ : 〉: :ノo: : : ,へ : : : : : ／＞--. ._／、
　　　　 ´￣｀¨´￣|: :/｀:|: / : : : : /＼　｀): : : : /: : : : : : : : ﾊ
　　　　 　 　 　 　 lＶ__:/:ｼo: : : : :ﾄ､:o:＼: : : : :i: : : : : : : : : : |
　　　　　　　 　 　 ヽ: : : i: : : : : : :l :｀¨:丁 : : : :l: : : : : ,:-:─:､|
　　　　　　　　　　　 ﾞ､: :{＼ : : : : ＼:_:_ｊ : : :-‐ﾍ: : : : : : : : :- ＼
　　　　　　　　　　　　ﾊ: i: : : : :＼ : : : : : : : :／ :ヽ : : : : ;. -─ : :＼
　　　　　　　　 　 　 〈: : :ヽ : :_: : :｀ヽ: : : : : : : : : : ＼: :_: : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　｀¨「::::/バ¨Tヽ／＿: : : _;＞'"¨´_}ﾆ二￣｀丶: : :ﾊ
　　　　　　 　 　 　 ＿／ヽ:L__ﾉ:l｣:::::::::::::::::::::::人　　_/: : : : : :｀ヽ 　 ＼: 〉
　　　　　　　　　／: : : : : /: : : |: :＼::::::＿＿/:´:￣ : : : : : : : : : : ＼　 ﾉ
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　　　　　　　∠＝'⌒¨´＼:/ : :l : : : : /　　　　',　V: : : : : : : : _;＞'"
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　　　　 ／: : : : : : : : : : : :| : : : :＼＿ : :｀ｰ ' : : : : : :i
　　　　　　　　【ルドルフ・ディーゼル博士】


山岡はドイツのライプツィヒで開催されているメッセにおいて開発者であるルドルフ・ディーゼル博士を技術者として抱える
ディーゼルエンジンメーカーマン社の映画を見て、このエンジンの魔力にとりつかれる。

120：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:13:50 ID:tSPrWWi20


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　　　　　　 　 　 　 　 　 ,.-ヽ:.:.:,ｲ　 ノ＞`ｰﾐ､＿ }ヽ:.:´￣:＞ _
　　　　　　／｀ヽ　　　 / ７:.:.:./-=ﾆ/ィ:.:.:.:ィ:/ヽ-へ}:.:.:.::./／:..:.ヽ　／´￣:ヽ
　 　 　 ／::..:..:..:..ヽ　　　/:.:.::/:.:.:.|＞､{イ　 l' ,斗ﾊ:.:.ﾄ＼/ｧ:..:..:..:.／:..:..:..:..:..:..:.i　　　　　　　　石油エンジンはもう古い！　これからはディーゼルの時代だ！
　　　 く:..:..::l:..:..:..:..:.ヽ　 ﾉ-イ::.; ﾍ|{i　 0ト' `ｲ0　 l}|/`ﾄ!く:..:..:..／:..:..:..:..:..:..:..:..:..l
　　　　 ＼:.:l:..:..:..:..:..:.ヽー‐:|:∧じ!` ｰ='　l〉 ` ｰ ''ｲﾌﾉ-､}::.:/:..:..:..:..:..:..:..:..:..::.::.:ヽ、　　　　　
　　　　　　ヽl:..:..:..:..:..:..:.＼:..|:／｀jﾍ''　 r=＝ﾍ　 ,,爪{￣／/:..:..:..:..:..:..:..:..:..::.:..:..:..:..:＼
　　　　　　　 l:..:i,,:..:..:..:..:..:.`く_:..:,,:ﾍ:ト.. 廴___jﾉ.イｨ^:.／::.::..:..:..:..;,.:i.;..':..:..:..:..:..:..:..＿＿ヽ
　　　　　　 　 V..''.:..;..:..:..:..:./r ミ-ヽ::{_:}` ｰ ´ {__!:.,ｲー‐_､:..:..:.i:..:..:..:._: -　¨￣
　　　　　　　　 V:..:..:..:..:..:.//,,:..:|｀´:ﾊlー､}　, -　|/:..:￣,:.ﾊV:..:..:..／
　　　　　　　　　ヽ::.::.::.:..〈 {:..r､_l_::.:}..:.〉　　 ,,　 j:..:..|:/:..:..:..}}:.ｧ',ィ
　　　　　　　　　　 ＼::.::.::>{t`_ﾆ､V:./　　 _..　＜＼ｰi:.__:/ﾉ-:':/
　　　　　　　　　　　　＼::.!.|`┬‐_vくィ:￣:..:..:..:..:.ヽ:∨-‐{ィ_ｰ'
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　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ∨:..:..'..:._:.-‐ ／::.￣￣:.`:く{
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽヽ.-. :_.z≦: : ＼::.＿:..:..:./
　　　　　　　　　　　　　　　　 廴 イ＿＿　＞ー┬-`ﾝ′
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ￣￣ ヽ.＿_/￣　ー‐ｧ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ト--,zrｰﾏﾕ＿＿　..ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 } ／　|　　　　｜　　j
　　　　　　　　　　　　　　　　 く/　／ ー┬― '¨¨￣ヽ


早速彼は日本に帰国し、ディーゼルエンジン開発に着手するも、それは苦難の道への第一歩であった。

121：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:14:02 ID:tSPrWWi20

実は既にディーゼルエンジンは大正時代から日本に入っていた。だがほとんどが大型船舶などに使用される
大型エンジンであり、小型エンジン自体はすべて失敗していたのである。



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＿／ ／　 　　　 　└‐┐　|　　|　　　　　　＼＿＿_＿＿／　　　　　　 ◇´￣｀◇
____／　　　　　　 　 _____|　｜＿|　　　　　　　｜　 　／　|　　　　 　 　 ロ 　○　 ロ　┌┐
　　　　　　　　　　/　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼／　 ／　　　 　 ┌┐◇､____,.◇'◇´￣｀◇
　　　 　 　 　 　 <　　　　,△△△△△△△△／　 ／＼△△ ◇´￣｀◇'└┘　ロ 　○　 ロ
　　　　　　, へ.　　>　く（:◎:二二二二二二二＼／　 ／二二ロ 　○ 　ロ 　 　　◇､_＿,.◇
＿_　　 r''´　　 `'´　　　　▽▽▽▽▽▽▽▽／ 　／＼▽▽ ◇､＿_,.◇　　　　　　└┘
　　|＿_||￣￣|　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼／ 　／　　　 　 └┘
　 　 　 l|二二|l　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／ 　／＼　　　　　　 　 　　 　 　 　 　 　 　 ＿
　 　 　 l|_ -''"|l　 　 　 |￣|ｺ　　　　 ◎ニニニ＼／ 　／ﾆﾆﾆ◎　 　 　 　 ／￣￣＼　　　|二|
　 　 　 l|￣￣|l　 　 　 |＿|ｺ　　　　　　　　　　／ 　／＼　　　 　 　　 　 |￣￣￣￣￣|　　|二|
―――l|￣／|l―――| 　|ｺ　　　　　　　　　　＼／ 　／　　　　 　 　 　 |／l ￣￣ l＼|⊂ll|二||ニﾆ
―――l|／＿|l―――|　 |ｺ　　　　　　　　　　／ 　／＼　　 　 　　　 　 |　 |＿_____l 　|　　|二|
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|　 　 　 　 | '~|l 　　 　 |＿|＜|＜|_<|__<|＿〈|＿_{|＿＿|}＿_|〉＿|>__|>_|＞|＞　　　　 　| 　|三三|
|　 　 　 　 l二|l　　　　／＼ 　 ￣＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿___／￣|　 　 　 　 　 | 　|三三| 　／￣
　　　　　　　 ´"''‐､／　　　 ＼　　　　 　 ＼＿＿＿＿＿＿／ |ニ|　 　 ||＼二二二／| 　|三三|　 |
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 > 回―──┐　|　　　|　　　／|ニ|￣￣||　|　　　　｜ |￣|三三|￣|
　 　 　 　 　　　　　　　　　　／　 └──―回　|　　　|　　　＼|ニ|＿＿||　|　　　　｜ |＿|三三|＿|
'"´￣￣~"''‐ . 　　　 　 　 <　　　　　　　　 　　　|　　　|　　　 　|ニ| 　 　||／二二二＼|　 |三三|　 |
　　　　 　　 　 ヽ　 　 　 　 ｀、　　　　 　 　　,／￣￣￣＼, 　　ｌニｌ＿____|＿＿＿__　　| 　|三三|　 |
＿__________ 　 　 ｀、 　 　　　 ',＿＿＿　／￣￣￣￣￣￣￣＼　|| |　| 　 | 　 |　| ||＿,| 　|三三| 　|
|　　 　 　 |　 　 　 ',　　　　　　　　　　|ﾆ〕ｌエｌニロ!ニｌロニロｺ:{ニ|| |　| 　 | 　 |　| ||,／| 　|三三| 　|
|　 　 　 　| 　 　 　 ! 　 　 　 　　 　　 |　＼＿＿＿＿＿＿＿／　||_|,_,|＿_|_＿|,_,|_||l　 |　　　　　　｜
|＿________,| 　 　 　 ! 　 　 　 　 　　　 |　　 　 ＼＿＿＿／　　　　 　 　 |／　|＿_＿l／|　　　　　　｜
　　　　　　 　 　 　,'　 　 　 　 厂￣￣　　　　 　 |　　　| 　 　 　 　 　 　 |　／|___＿_____|

当然ながら、まだまだ中小企業に過ぎない山岡発動機工作所に技術力はなく、試作品を作っても
すべて不完全燃焼により黒煙を吐きまくり、欠陥品ばかりができあがる日々が続く。

122：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:14:13 ID:tSPrWWi20

だが、それでも山岡はくじけず大型ディーゼルエンジンを開発していたメーカーから技術者を引き抜いてまで、
エンジン開発に情熱を注いでいた。



　　 　 　 　 　 　 ／| 　　_,.．-'''"　　　　ｰ- ．_
　　　　　　 　 .／　/,．'"　　　　　＿＿＿_　　~"'‐ ．
　　　　　　　　|　 ／　　_,.．-'''"__　　　　　　｀　､　　.｀　､
　　　　　 ,r'''´　　 　 .／／　　　　｀､　　　　　　.(｀　､　　.ヽ
　　　　 ./／　　　 ／／　　 　 　 　 l　　　　＿　.｀､　｀ ､ 　 ｀､
　　　　／　　　 ／ ./　　　　　　　 ./ 　 ／　　　｀､ ｀､　｀､　　｀､
　　　/　　　　 ,'　　.l　　　　　　 .／　／　　　　.ヽ ヽ　ヽ､_)､　 .｀、
　　./　　　　　l　　　｀ ー――‐'　／　　　　　　　ヽ ｀ー―、|　　｀、　　　　　　　　　ディーゼルエンジンは燃費がいいし、高いガソリンよりも安い、
....../　　 　 　 .|　　　　＿_,.．-'''"　　　　　　　　　　.ヽ　　　ヽｌ　　 ｀、　　　　　　　　軽油で動く。これを製品化すれば、それまでに無い、
　.,'　　　　 　 .|　　／ 　 　 　 ./ｌ　　∧　　　　 　 　 |､ 　 　 .ヽ . |ヽヽ　　　　　　　　いい商品が出来るはずなんだ！
....ｌ 　 　 　 .ｌヽ| ／　　　　 　 / .| 　.,'　ﾞ、　　　　∧ .| .ヽ 　 　 .ヽ|　ヽ|
　|　　　 　 .| . /　　　　　　 ./　 |　.,'　　ﾞ、　　　,'　ヽ| ／､　　.|ヽl|
　|　　　 　 .|_/.|　　 　 　 　 | 　 | .,'　　　ﾞ、　　/　 .／、 .ﾄ､　 | . .|
　|　　　　　　ヽ| 　 　 　 　 .|三ﾐ|/＝=ｚ、ﾞ、　/　イｌ 　|　|､｀ヽ| . .|
　|　　　　　,‐‐ |　 　 　 /ｌ　|　　　　.l_ｊ| 　 ｌ ./　　.|´　/ ,'...ヽ､|＼|
　|　　　 　 ｌ,--.|/ヽ　 ./　| .|　　 　 　ﾉ 　..|/　　　｀ｰ'　 lﾉ
　ヽ　　　 ./ーノヽ ヽ　|　 |/ 、＿,,．'　　　　　　　 ､　　 |
　　 ヽ、　ヽ　(　　ヽ.ヽ|　　　　　　　　　　　　　　　}
　　　　ヽｌ、ｌヽ二＿_　　　　　　 　 ,r――--- ､　　　 /
　　　　　　ヽヽ｀ヽヽ｀ヽ　　　 　　./｀ｰ――‐< |　　 ./ヽ＿
　　　　　　　｀、｀、　｀、　　　　　人.＿＿＿＿ｊ　　/　 　　＼　｀ヽ
　　　 　 　 　人 .｀、　｀、　　　　　 ｀ｰ――‐''´ ／　　　　　ヽｰ-　ヽ
　　　_,.．-'''"ノ ｀、ヽ、 .ヽ　　　　　ー‐,――‐ 　　　_,.．-'''"　　　　 ｀､
ｒ'''"_,.．-'''"　　_,人　 ヽ　｀、　　　　　/　丶/　　 ／　　　　　　　　　　｀、
|　/　　_,.．-'''"　　ヽ　　＼｀、　　　 /　　　|　　/
|/　　/　　　　　　　　＼　 .ヽヽ　　　ヽ　　..|　./

123：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:14:28 ID:tSPrWWi20

しかし、それほどの情熱を注ぎ込み、一年もの時間をかけても成功する兆しを見せなかったことから、
社員達も次第に弱気になっていった。


　　　 　 -=' 　 ／　　　　　　　　　　　　　 ＜_ 　　 :.:.:.ヽ
　　 　　　,ｲ　/　　　　　　　　　　　　　　　　　∨　 :.:.:.:.:.∨|
　　　　∠_　/　　　　　　　　　 彡　--　､　　　 ∨ :f⌒ヽ.イﾊ
　　　 　 ム '　　≡ミ　　　 　彡/　　　 　 ヽ　　 Ⅵ:〉　 　 　 l　　　　　　　　ごめん社長、また失敗しちゃったわ。
　 　 　 　 ﾚ!　　　　　　　　　　' 　 　 ,　―┘　　 ,ｲ　　　　　｀ヽ
　　　　　　 |　 , ― ､　　 　 　 {　　／　　　　　　 }＞-x　　rr‐ '
　　　　　　 l /　　　 ＼　　　　ヽ ' ___　　　　　 　 .:.:.:.:.:ヘ ﾉ:|
　　　　　 　 ','.￣示≧x}　　　　　　　 　 　 U　 , ―‐ｘ､_.:.:.:.}:/
　　　　　　　 ',ヽ_込ア　　　　　　　　　　 　 /　　　 　 ｀ ＜...
　　　　　　　　',・　　　　 /　　　　　　　　　 ′ 　 /⌒ヽ　.:.:.:.:｀:､＿＿＿＿
　　　　　　　　 ヽ　　　　ヽ　`　　　　　　　 |　 　 {　　　} .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
　　　　　　　　　丶　　　　　　　 　 　 　 　 |　　　v　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}
　　　　　　　 　 　 ', 　 　 　 ,　―― x'　　 |　　 　 ｰ ' .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
　　　　　　　　　 　 ', 　 __／　_ 　　' 　 　 .:l　　　　　 .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
　　　　　　　　＿＿_',　 　 ￣　　　　　　 .:.:.v　 　 /⌒ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
　 　 　 　 　 f.:.:.:.:.:.:.:ﾊ 　 　 　　　　　　.:.:.:.:.∨ 　 {　.:.:.:.}.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽｰ／
　　　　 　 　 ∨.:.:.:.:.:.∧　 　 　 　 　 .:.:.:.:.:.:.:.:∨　 v.:.:.:./.:.:.:.:.:.,:.:.-.:.――:.:.:.:.:.:.:
　　　　　 　　 ∨.:.:.:.:.:.:.ヽ　　 　 　 .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨　 ｰ '.:.:.:.,ｨ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:




　　　　　　_.. -‐／';.:.:.:.:.:.:.:.,ｨ:, イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ
　　　　　/:.:.:.／　　';.:il:.:／ ´　´ ￣＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　 ,':.:/〈 l　　l　ヽ'′　　　 　 　　 ｀ミ:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　,':.:,'　.ヽ!-ｧ､.　 ',　 　 　 　 　　　　ヾ:.:.:.:.:.:.:.|
　　　 /:.:,' .／／ /　　 i　　　　　＿＿_　　 ';.:.:/ ｀ヽ　　　　どうも上手くいきません。どうしても煙が出てしまうんです。
.　　 /:.:./´／ .／ /`i　l　　/z≦∠´￣｀`　 .V/´｀ .}
　　/:.:.:,' /　 ,ｲ／　/ .ﾑ　 ' ' ´z''マフ`　　　　 ﾌ //、
.　/:.:.:.:l/　 /./　 ,ｲ 　iｰ l　　｀` `ー ′　　　 .ﾚ' /:.:.:ヽ.
　{:.:.:.:.:l　　'`′ ハ　 l　 l　　　　　　　　　 　┌ベ、:.:.:.:ﾊ
.　';.:.:.:.l　　　　 ﾊ　　 {　〈　 _　　　　　　U　 /　　 lヽ:.:.:.:|
.　 ';.:.l:.!　　　　l　ヽ､_.ﾄ、 `＿__　　　　　 　/ 　 　 ﾚ |:.:./
.　　';.:N　 　 　 !　 　　 ヽ.　 ｰ　`　 　　 ／　 　 ／ /V
　 r‐X!　　　　 l　　　　　, ゝ、　　　,　 '　　　 ／　 /　 ヽ_
　/ 〈　　　　　ﾉ　　, ィ ´ ／:.:`Zヽ´　　　　／　　 ｆ ハ /　ト､

124：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:14:41 ID:tSPrWWi20

山岡自身もこれには参ったのか、開発を一時中断することにした。




.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{　　{　　　　　　　／／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.ヽ ＿＿ ノ.:.:.:ヽ､.:.:.ヽ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./　　 ` ー――　'／.:.:.:.:.／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ ＼.:.:　　　　　甘かった。俺みたいな百姓上がりが、世界でまだ誰も作っていない、
/!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./／⌒ー―― イ´.:.:.:.:.;ｨ'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ　 ヽ　　　　　小型ディーゼルエンジンなんて代物に手を出すからいけなかったんだ。
│.:.:.:.:./⌒V´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／._/.:.:.:.／/.:.:, ｲ.:.:.:.:.:.:.:.:.:j.:.:.:.:./::::∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ
│.:.:.:/　ﾍ/.:.:／.:.:.:.:.:／＞/.:.:／: /.:／:/.:.:.:.:.:.:.:.,イ.:.:.:./:::::::::∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ　　　　　　　
∧.:.:.{　ｰ/／|.:.:.:.:.／／　/／ヾ､/ｨ':::::/.:.:.:.:.:.:／:/.:.／:::::::::::::::∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
: : ヽ.:ヽ{ ' ヽ |.:.:.:/ __{_　/ｲ::::::::::::::::::::/.:.:.:.:.／::::/.／:::::::::::::::::::::ﾊ.:.:.:.:/＼.:.:|＿
: : : :￣≧ー┴≠:': : /::::::::::::::::::::::::::/.:.:.:／:::::::/イ:::::::::::::::::::::::ﾑ∧.:./: : :ヽ;|: :
|: : : : : : : : : : : : : : : ｲ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/.:.／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ : : ∨: : : : : : : :
| : : : : : : : : : : : : : : : |　　　　　　 j／　　　 　 　 　 　 　 　 }: : : : : : : : : : ／:
ヽ: : : : : : : : : : : : : : /　　　　　　　　　　　　>　 　 　 　 　 /: : : : : : : : ／: : :
: : ＼: : : : : : : : : : :,小､　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／: /: : : : : : /: : : : :
　 : : ヽ: : : : : : : : / : : : ＼　　 　 　 ,ｨ=――ｧ　 　.,　イ: : /: : : : : ／: : : : : :
　　: : :　 : : : : : :/ : : : : : : :＞.､　　　´￣￣´,　 ＜ : : : : / : : : ／: : : : : : :
　　　: : 　　: : : {: : : : : : : : : : : : ≧ ､ 　, ィ: : : : : : ヽ: :／: : :／: : : : : : : :

125：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:14:55 ID:tSPrWWi20

やけっぱちになったのか、無茶をさせたことに責任を感じたのか、山岡は社員達に一人二百円もの大金を渡した。
公務員初任給が七十五円の時代の二百円である。完全に彼の心は折れていた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾚ´:::::::::ｱ
　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ､{:::::::::::::,ｒ-― ヽ￣｀ヽ::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　 }:::::::::::::::/ 廴＿ノ, - 'ヽ {ヽ:::::::::::::::::{
　　　　　　　　　　　　　　　≧'::::::::::::::ﾍ}¬―　　　　 弋　ヽ::::::::::/　　　　　　　　開発は一度あきらめる。みんな、今までご苦労だった。この金で
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､::::::::::〃 }　/　ｒ=-二｀ヽ 　Ⅵ::::::::/　　　　　　　　　一度温泉に行って疲れを癒してきてくれ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　＞‐' i　l ,ｲ　 ￣-　 ,ヾ〉 .∧|:::::::ﾄﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　Z::{ ゝl'　ｊ/　　　　　　　　 //l }:::::/
　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､　｣::＼__　il　　　　　　　 　 }〃/::ﾄ!
　　　　　　　　　,-――ｚ」:.:ヽニヽ::::}､|l　　　　　　　　 //ﾗﾌ
　　　　　　　 ￣ー '⌒ヽ､.:.:.:.:.:.:.:＼≧} }　　　　　　 ／/／　 ＿__ﾉⅥ
　　　　　　　　　　　　　　∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Ll 　 　　 　 〈／ 　 ,- ':.:.:Z　　廴
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ∨:.:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　　　　　{...-／:.:.:.:.,ｲ ⌒ ´
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ∨:.:.:.:.:.:.:.｣　　　　　　　l:／:.:.:.:.／/
　　　　　　　　　　　　　　 　 ∨:.:.:.／　　〉　 　 〈 ／:.:.:.:.:.（__｢
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／i:.:.:/-―　､　, - ' 「:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼＿＿＿__
　　　　　　　　　　　　 ,-＝へ }:./　　　　　　　　i:.:.:.:./:.:.:.:.≦―――‐､｀ヽ
　　　　　　　　 , - '￣ ...-―　ｌ/　　　　i　　　　 |:.:.:/／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼ ヽ　　　　　　　　 , -― ､
　　　　　　　　l　ｒ‐'￣.:.:.:.:.:.:.:./　　　　 |　　　　 |:.:.:/:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}　 L　　　　　 　 /　　　　`ｰ-､_
　　　　　　　　} ｢:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　　　　　l　　　 　 |:.:.i:.:.:.:.:.:.:.l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./__/:.:｀ヽ.　　　　/
　　　　　　　　|　〉:.:.:.:.:i:.:.:.:./　　　　　　　　　　　l:.:.|:.＼:.:.:.:i.:.:.:.:.:./.:.:., - '　　￣｀ヽ}―へ/　 　 　 　　{
　　　　　　　 ⊥i:.:｀-､.:i:.:.:/　　　　　　　　　　　　i:.:l:.:.:.:ヾ.:.:|.:.:.:.:.「￣-――' ￣￣｀>} 　 }　　　　　　（

126：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:15:25 ID:tSPrWWi20

ところが従業員達は全く諦めてはいなかった。



　　　　　　　 　 /:.:/　 |:.:.:/　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ||　　　 　 ＼:.:.:.:.:|
　　 　 　 　 　 /:.:.,'　　|:.:／/　　　　　　　　　 　 　 　 |　 　 　 　 ＼:.:.:.:|
　　　　 　 　 ./:.:.,'　　 .|:.:.:/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:.:.:/
　　　　　 　 /:.:.:,'　　　.|:./　　-=三ミｪ　　　　 ﾉ　　 ｪ彡气ミｪ　　　|:./　　　　　　　待ってください！　僕らは休みなんていりませんよ！
　　　 　 　 ,':.:.:.,'　 /⌒|/　　 ＿＿夊入zl 　 〈　 z少ォﾒ＿＿_ . 　 |/⌒ヽ
　　　　 　 ｛:.:.:.l 　 |ｨ丶|　　 ｲ 　(::O::)ヽ .|　　弋　　 イ(::O::)　`, 　 | /⌒ |
　　　　　　 ';.:.:.|.　 |ー｀| 　　 ﾐ､ _＿_ ｫ　 .｝　　　　 　 ､ _＿__ ｨ　　.|/ヽ､/|
　　　　　 　 ';.:.:l　 .|へﾊ　　　 三二ニ　　　　　　　　 ミ三二彡 　 .|ヽー､l
　　　　 　 　 ';:.:l 　.|(〈　|　　　　　　　　　　 |　　　　　　 　 　 　 　 |　〉 / |
　　　　　　 　 ';:.| 　.ヽ＼|　　　　　　　 　 　 |ｨｯ　 　 　 　 　 　 　 .| -‐'' /
　　 　 　 　 　 ';:l . 　 ＼_|　　　　　　　　　　ヽ ｨ　　　　　　　　 　 |ー‐ '′
　 　 　 　 　 　 l:|　 　　　|　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　 　 l:|　 　　.ハ　　　　　　　＿＿＿＿＿ 　 　 　 　 ﾉ
　　　　 　 　 　 .l:|　　　 ／＼　　 　 　 ′　　　　　　 ヽ 　 　 ／
　　　 　 　 　 　 l:| 　.／:.:.:.:.:.:.ヽ　　　　　　　￣`　 　 　 　 ／|
　　　　　　 　 　 l| ／:.:.:.:.／(￣|＼　　　　　　　　　　 　 ／　 |｀ヽ
　　　　　　　 　 ／:.:.:.:.:.:.:|　 ヽ､|.　 ＼　　　　　 　 　 .／　　　|ｨ　 |
　　　　　　 　 .ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　ヽ.　　 ＼　　 　 　 ／　　┌‐''´.　 |

127：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:15:45 ID:tSPrWWi20



　　　　　　　　　　　　 ﾍ/:::::::::::::::::',丶:::::::/　/ｲ／:,＞ ´ｲ::::::∧
　　　　　 　 　　 　 ,':::::::::::::::ヘ ｀¨ﾍ　∨/　 '　´　　 ／:::::::::::::: ',
　　　　　　　　　　/:::::/::::::::＞　 　 　 ∨　　　　　　 ￣＜、::::::: ',
　　　　　　 　 　 /::::./:::ｲ´　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｀ミ::::::::l
　 　 　 　 　 　 /::::/ |::∨　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀::::::::::|
　　　　　　　　/:::::,'　.∨　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ::::::::i　　　　　　　確かに今はまだ失敗続きですが、完全に駄目だと決まったわけじゃない！
　　　　　　　　:::::/　　'ﾘ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 !::::::ﾋ、
　　　　　　　 i::::::　　.　',　´￣ﾍﾐ≧z　　　　　, ＜ﾏｧ￣｀　　 |/　Ａ　　　　　　世界最小のディーゼルエンジンが出来れば、必ず我が社が日本を、いや、
　　　.　 　 　 |::::{　　/ﾍ',　　´ マフ｀ﾍ　　　｀¨´/ マフ¨丶　 ´ ./ .ﾍ　　　　　世界の頂点に立てます！
　　　　　　 　 ',:::'　　l 人l　 ｀ー-‐　´　　　　　　｀ー　　´　　　´ﾌ　｝
　　　　　　　　 ',;　　 ﾍ　ﾍ　　　　　　　 ．　　　　　　　　　　　 /　/
　　　　　　　　　ﾍ　　　',　',　 　　　　　！　　　　　　　　　　,＿／
　　　　　　　　　 ','　　　.ヽ_',　　　　　　 ヽ　,　　　　　　　　/...´
　　　　　　　　　　',　　　　　',　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /:::::',
　　　　　　　　　　 ',　　　　　＼　　　 ,＿　　_　 、　　　 /::::::::7
　　　　　　　　　　　',　　　　　　＼　　　―-　　　　　 ／:::;／
　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　 ,.＞、　　 　 　 　 ／＜´ ﾘ
　　　　　　　　　　　　　｀　　　　 |｀ 、＼　　　　 ／　,-―´ |、
　　　　　　　　　　　　　　 　 ,＜::{ﾍ　｀llー―――＜||　　 ｲ{ }
　　　　　　　　　　　　　　＜´::::::;}　}.　||　.　 　 　 　 ||　　{ {　|
　　　　　　　　　　　　,＜´:::::::７ |∨　 ||.　　 　 　 　 ||　　l 丶|
　　　　　　　　　　　,.':::::::::::::, '／、　　|| 　 　　　　 　||　　丶-ﾍ｀　 、
　　　　　　　　　　 ,':::::::::::::7　　　ヽ 　||　　　　　　　 ||　レ ´　　　　 ｀　ーﾍ　　　、＿＿
　　　,―　　　´　 ,'::::::::::::::,'　　　　　　|Ｌ　　　　　　 」|　　　　　　　　　　/　　　　//////ｱ　、
∠　 |　　　　　　,':::::::::::::::,'　　　　　　||　　￣　￣ ¨　||　　　　　　　　　/　　　　///////　　　 /ヘ
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　　　|　　　 ／∧::::::::::::::|　　　　　　 ||　　　　　　　 　||　　　　　　　 .|　　 　 ///////　　　　/　　　l
　 　 |　 　 /:::/　|:::::::::::::;　　 　 　 　 ||　　　　　　　　 ||　　　　　　　 .|　　　///////　　　　/　　 　 ﾍ

128：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:16:18 ID:tSPrWWi20

　　　　　　　　　　　　　　,イ_ ,. -‐- ､ _
　　　　　　　　　　 _＿ _/ '´　　　　　　 `ﾆゝ
　　　　　　　　　　 ＞　　　　　　　　　　r､　`丶､
　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　 ,ﾍiヽ./＼l　ヘ!｀ヾ`
　　　　　　 　 /　　　　 　 　 /　　　　　　　　　　',
　 　 　 　 　 ,'　　　　　　　 /　　 　 　 　 　 　 　 l
.　　 　 　 　 l　　　lﾍ!　　 r' 　 　 　 　 　 　 　 　 l
　　　　　　　l　　　　　　i`　　　　_＿￣ﾐｬ.､ 　 　 l　　　　　　　　そりゃそうね。ディーゼルエンジンは大きいものに使われるって決まってるようなもの。
　　　　　　　l　　　 ,._　 l　　 　 /　　　ﾍ　　　 ,ィｬi
.　　　　　　　'ﾍ. r,´ゝヽﾍ.　　　ﾊ ﾃ℡､ l　　　　,ﾍ　　　　　　　　それを小さくても使えるものが出来たら、私たちがトップに立てるのは自明の理。
　　　　　　　　　i　r‐)　　　　　。ゝ､ﾞﾞ”y' 　 　 /ｿ,
　　　　　　　　　ヽ丶　　　　　　　　￣　　　　 ` '　　　　　　　　諦めるなんて、あまりにも早計だわ。
　　　　　　　　　 /l（C,.　　　　　　　　　　　,｀, /
　　　　　 　 　 　 'iﾊｲハ　　　　　 　 　 　 　 /
.　　　　　　　　　　　 ﾄ､　　　 　 　 _ _ =＝- (
.　　　　　 　 　 　 　 l　ﾞ丶.　　　　　　二r=ー'-､
　　　　　　　　　　　/ヽ.　　ﾞ丶丶. _　　/　＿　　',
　　　 ＿　 　 _,. r＜. . . ﾞ丶.　　` ‐-<ｰﾚノ─'ー 丶_
　　/. . . .￣　､. . . . . . . . . . ` ‐- .,_/`ｰ､ ', r-‐_　　l.
.　/. . . . . . . . . ｀ ｀'丶. . . . ､. . . . . . . _, 入 ｀i　.l　 　 ヽ
. /. . . . . . . .', . . . . . . . . . . . ｀. . . . .´.. . . l　 `‐i__ニ)　l
.l. . . . . . . . . .∨',. . . . . . . . . . . . . . . . . . . ',　　　ゝ､　 l
l!. . . . . . . . . . .∨. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ゝ､　　　　 l
ﾍ. . . . . . . . . . . ∨. . . . . . . . . . . . . . . r-´'ｰ,､ｬ_　　＿l_
　∨ . . . . . . . . . ﾍ. . . . . . . . . . . . . . . 〉 　 〈 〉', ￣　　 l
.　 ∨. . . . . . . . . .∧. . . . . . . . . . . . . . ' ⌒ﾞ`. ..i ﾆ二彡.l
　　 ヽ . . . . . . . . . ∧. . . . . . . . . . . . . . . . . . . .l 　 　 　 l

129：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:16:31 ID:tSPrWWi20

山岡の熱意は研究員達にも伝わっていた。彼らは金をもらって休むどころか、誰一人休暇を取らず自分たちの手で
世界初の小型ディーゼルエンジンの開発を作ろうと逆に山岡を励ました。

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　 　 　 　 |:.:.:.:.:.ｩ　 　　　　　 　 <:.:.:.:.:.|　　　　　　一年かかっても駄目ならば、二年かければいいだけです。僕らは諦めません絶対に！
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　 　 　 　 .|:.:.:.:|　　　　　　 　 　 　 |:.:.:.|　　　　　　だから、社長も信じてください！　世界一小型なディーゼルエンジンを作りましょう！
　　　　　.ﾊ|:.:.:.ｉ ヘﾐ≧ｪ 　 ｬ彡ｱﾍ |:.:ハ
　　　　　ｉﾍ|:.:.:.l　y‐tヶｫ　 ｨ‐ｔヶｫ　|/ヘ.ｉ
　　　 　 乂ﾍ:∧　`ー‐′　`ー‐′|_ノ /
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　 　 　 　 　 　 /　　　　　 ﾑ　{ヽ　　　　　　　　 `:.､:＼　　　　　お前ら・・・・・・・
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130：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:16:43 ID:tSPrWWi20

こうして逆に研究員達に励まされ、山岡の闘志に再び火がつく。

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　　　　　　　　　　　　　　　.／　　 ｌ　 /　／　-'''"　　　　　　　ヽ　　　　　 ＼ .＼
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　　　　　　　　　 /　／/／/　 ｀ｰ― ヽ　　　　 　 .|　 .|　　 ｀ヽ　　　.｀ｰ―――‐''´　 ..V　　　　.＼
　　　　　　　　 ./／／|/ ./　,rｰ-､＿＿ヽ　　　　　|　 .|　ヽ　ヽ　＼　　　　　　　　ノ｀ヽ |　　　＼｀ヽ　　　　　　やろう！　俺たちの手で作ろう！　俺たちの手で、
　　　　　　　　/／/　/　/.／　　　　　　 .|__　　　　|　 .|　　　　＼　｀ー――'' ´　　.|　.ヽ|　　　　ヽ　　　　　　俺たちの力で、ディーゼルエンジンを作るんだ！
　　　　　　　 .l/　 | ./　 |/／　　　　　　　|ﾉ￣｀ヽ､.|　 .|　　.＼　..＼　 ＼　ヽ　　ヽ | . 　 |　　　　 |
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　　　　　　　　　　/　　l/lヽ､|/|　／｀V.／　　　　　/./　　　 　ヽ　＼ 　.| 、　､　　　./＼　|　.....|
　　　　　　　　　 .|　　　 .|'´ﾉ､ /､　　　　｀ヽ､　　 /./　　　|.＼　ヽ ／＼|...＼ヽ　　./ヽヽヽ| 　 .|
　　　　　　　　　 .ｌ ./ヽ . | （　/　　｀ヽ、　　　｀ヽ ./＼　.....|　　＼| '´￣　　　.＼　 |/　/　 ∧　|
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　　　　　　　　　　　　　　..∨　　　　　　　　｀ヽ、　　｀ヽ、　　　|　　　　　　.ﾉ . |　　／,ｌ ./
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　　／￣二ニ=/　　　　　　　　　　　　　 ／　／／　ー――― 、　　 ／、　＼　　 ヽ、　　　　／― - 、
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　　／ ／　　　　　　　　　　　　 .／　／／　　　 .＼　　￣￣　　　./　　　　　.| /　　　.／　ヽ　　　　　　 |　　|
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そして、ついにその熱意が結果として表れることになった。

131：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:16:55 ID:tSPrWWi20

昭和八年12月23日。ついに世界初の小型ディーゼルエンジンの開発に成功。エンジンからは煙一つ出ず、
快調に動いていた。


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　　￣　　　　　　　こ{≧ｭ￣　　　　　 凸　　　└‐┘　　 　 　 イイ
　　　　　 　 　 　 　 　 `ー=＝ニニニニニニニニニニニニ彡"



こうして、日本はおろか、世界初となる小型ディーゼルエンジンが完成。山岡を筆頭に
従業員達の思いが結集したエンジンは順調な売り上げを出していく。

132：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:17:07 ID:tSPrWWi20

山岡はディーゼルエンジンの売り上げ拡大のために新工場建設を決意する。
彼は尼崎に二万坪の土地を購入しようとした。


　　　　　　　　　　　ー―――― - ．、
　　　　　　　　　　　　,＞　　　　　　　　｀ヽ、|ヽ
　　　　　　　　　,．'"´　　　　　　　　　　　　ヽ　ヽ,ｒー,
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　　　　　 .／　　　,ｒ''´ヽ　　　　 ／　　　 ｀ヽ、、　　　 .ヽ
　　 　 .／　　　／　　/　　　　 (　　　　　　　 ヽ＼　　　　ヽ
　 　 ／　　　 /　　／　　＿　　 ヽ、　　　　　　 )　ヽ　　　　ヽ
　　/　　　　./__.／　,ｒ'´　　　｀ヽ　 ｀　ー―‐'''´　　 .ヽ　　　　ヽ　　　　　　　このエンジンが普及すれば、過酷な農業や漁業がより楽になるんだ。
　./イ　　　 ｌ　　 .／　　　　　　　｀ヽ、＿　　　　　　　 |　　　　　ヽ
　　/　　　　|　／ .,'ｌ　　　　　　ヽ　　　、 ｀'''ー- 、 　 .|　　　　　|´ヾ　　　　生産拡大をするには今のままじゃ手狭過ぎる。
　./　　　　 .l,.'　 ./ |　 ｌ　　　　　ヽ、　 ヾz、　　　.ヽ　 | 　 　 　 .|
../　_,.．,' 　 | 　 ,'　.| ./ヽ　 　 .|ヽ .|.＼　 ><ヽ￣　　＼ｌ 　 　 　 .|
　　　／,/ ...|　 .|　>|/、　ヽ　　| .ヽ|　,イヽ| .ヽ＼　　ｌヽ|'´｀ヽ　ヽ|
　　 '´　ｌ.......| . ..|ヽヽ .ヾｚ、ヽ . |　 イソ　　　.,'　 .ヽ　|／ヽ　.l　　ｌ
　　　　..|／ .ヽ. |、ヽ＼　_ﾉ . ヽ|　 ヽ、＿__, ',-―-.ヽ|ヽ´｀ 丿＿ｌ_
　　　ヽ￣￣￣ヽｌ.ヽ　　　　　　　　　　　　　|ー-、 ｀ー―'''´　ｒ‐ |
　　　　｀、　　　 .ｌ/ |　　　'　　 　 　 　 　 　 |　　　￣￣~| _,.．＜｀ヽ
　　　　　ヽ　　　　　ヽ　　　､ｰ―'''´￣､) 　 .|　　　　　 ／　　　　ヽ　＼
　　　　　　 .＼　　　　｀　､　　￣￣￣　 , 　 |　　 　 ／　　　　　　 ｀､ . ＼
　　　　　　　 ,r＼　　　　　 ＞ ＿__　 ／　　.|　　 ／　　ｌ　　　　　　 ｀、 ...＼
　　 　 　 　 /　　 ＼　　　/　／　 ｌ'´　　　　.| .／　　　 .|　　　　　　　.｀、 　..＼
　　　 　 　./　 ｌ　　 ヽ　　　/、.....丿＿_,.．-'／/　　　　..|、　　　　　　　｀、 　 ...＼
　　　　　　ｌ　　|　　　 |　　/　｀ー '´ _,.．-'／./　　 　 　 | ヽ　　　　　　　｀、　　　..＼




しかし、その資金調達において百二十万円もの不足金が出たために、彼は資金調達のために
取引先の鹿島銀行に頼んでみるが、その鹿島から日本興業銀行（現在のみずほ銀行）を紹介される。

133：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:19:14 ID:tSPrWWi20

ｷﾒ〃〃l'ﾒ〃'"'ﾒ':〃　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　// ./;:/　 |::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ｷｷk'"ﾒ,,.ｲ〃k'"'ﾒ':　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 __/ 　 // ./;;/.,/' l|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
〃ﾒ,,.ｲ k'"ﾒ'ゞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /|/ 　 // /::/../;;;/..|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
ｷﾒ〃〃l'ﾒ〃'"'ﾒ':〃,,,,....　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　//./::/ /;;;/..,::'|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::||
ﾒ〃ﾒ,,ゞゞｷゞゞ k''"'ﾒ':ﾒ,.ｷｷ〃'　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　//./::/ /::/ .,'' : |::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
〃ﾒ,,.ｲ〃ｷｷk'"ｷｷ'ﾒ':〃'　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　 　.// /:/ /:/ ::, '::,' ::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ｷﾒ〃〃l'ﾒ〃'"'ﾒ':〃　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 / 　 . // // /:/　.':::,.'::　,:|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
〃ﾒ,,.ｲ k'"ﾒ'ゞ　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　..//.// / / ,.:":, " ／::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ﾒ〃ﾒ,,.ｲ〃ｷｷ k'"'ﾒ':ﾒ,.〃'　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　 //.// /:/ ,.:'::,,' ／:: ／|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
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〃ﾒ,,.ｲ〃ｷｷk'"'ﾒ':〃' 　 　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　/ｌ　 ://,/:/ ,'':,' .／:::／ .／::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
ｷﾒ〃ｋ"〃ｷﾒｷ,'"___ __　　　　　　　　　　　　　　　　 |.// 　 l///,,.'::, .／:::／ ／: ／|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
〃ﾒ,,.ｲ〃k'"'ﾒ':・・・・|::::|　　　　　　　　　　　　　　　　|://l　 .//,.''　／::／.／::::／　::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
〃ｷﾒｋ"〃ｷ :･・・・・|::::|　　　　　　　　　　　　　　　　|:// 　:l/' ,,'／／ ／:::／　 ／::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ｷﾒ〃〃l'ﾒ" ・・・・・・|::::|　　　　　　　　　　　　　　　　|//l.　::;　／／.／::／　／ ; ／|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
〃〃k'"ﾒ'・・・・・・・・|::::|　　　,,,.II　　 　 　 　 　 　 　 |//.　　／,"／::／　／ ;; ／　::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
〃ｷﾒゞ・・・・・・・・・・|::::|　〃ﾒﾒｷ::￣￣|＼　　　　 　 |//l:　 l,"／／　／ ;; ／　_,,.-''|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ゞゞ ｷ ゞ・・・・・・・・・|::::|　〃ﾒkゞゞゞ :: |＼| . 　 　 　 |//: 　／／ ／;;;;;／,,-''":l;;;;;;;; |::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|
ゞ〃;;ゞ;;;・・・・・・・・・|::::|〃ﾒ〃ｷゞゞﾒ:::::＼|,,,.....,,,.. ... ,|／l　l／ -'';;;;,.''"-''"::::: : |-''''"|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
〃〃ゞ　・・・・・・・・・ 彡ﾒ〃ゞ〃ゞゞゞゞ(〃ﾒﾒゞｷ;;;::;;|. '"　　l,,-''",,-'::::::::::|:|::::: |　　::|::::l::::::::::::::::l::l:::::::l::l::::::::::::::::l::::|


ここで日本興業銀行について解説する。興銀で知られる銀行だが、元々は国内資本の不足から
政府保証の下外国で債券を発行し、国内重工業への融資を行う、いわば「工業の中央銀行」として
設立された銀行である。

財閥系の三井や安田銀行などとは違い、政府よりの、いわば政府御用達の銀行であり、
堅い行風で知られていた。

134：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:19:32 ID:tSPrWWi20


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　　　　　　　　　　　| 　厂:::::::::::::::::::::::::::::::: |.／:::::::::::::::::: | / ::<|　　　　＼　 {
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ちなみにこの時期は取り付け騒ぎや、銀行が破綻するなど深刻な金融危機があり、
それを契機として様々な動乱が起きる悲惨な時代でもあった。

135：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:19:45 ID:tSPrWWi20

それだけに、最初は話がうますぎると、興銀神戸支店長は訝しげだったが、審査十日目でその態度が一変する。


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　　　　　|　　　　＼::::　　　　　 ─ ＿|||　 　 ||:::／　　 ヽ　　　　　　　　あなたの話に嘘が無い事がわかった。他行の手前120万円としておくが
　　　　　|　　/⌒l ━┳━━━━━━━━━━━━┓　　　　　　　必要なら300万円でも500万円でも融通する。
　　　　　| 　 |:i⌒|::|:::::|　　　:::illlllllllllllllll|━━| 　　::illllllllll|
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たった十日でこの時の支店長は最大五百万もの融資を行うことを約束する。
これは山岡側の熱意が伝わったこともあるが、それ以上に小型ディーゼルエンジンの
市場規模や山岡の事業の有望さを見抜いてのことである。

136：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:22:51 ID:tSPrWWi20

それだけに、最初は話がうますぎると、興銀神戸支店長は訝しげだったが、審査十日目でその態度が一変する。


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　　　　　|　　　　＼::::　　　　　 ─ ＿|||　 　 ||:::／　　 ヽ　　　　　　　　あなたの話に嘘が無い事がわかった。他行の手前120万円としておくが
　　　　　|　　/⌒l ━┳━━━━━━━━━━━━┓　　　　　　　必要なら300万円でも500万円でも融通する。
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たった十日でこの時の支店長は最大五百万もの融資を行うことを約束する。
これは山岡側の熱意が伝わったこともあるが、それ以上に小型ディーゼルエンジンの
市場規模や山岡の事業の有望さを見抜いてのことである。

137：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:23:37 ID:tSPrWWi20


だがこれで新工場建設のめどが立ったことから、早速山岡は尼崎に新工場を建設した。
これがヤンマー尼崎工場である。

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138：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:24:00 ID:tSPrWWi20

昭和12年（1937年）盧溝橋事件が勃発し日中戦争に突入から昭和16年（1941年）太平洋戦争へと続く戦乱の時代を歩んでいく。





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　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　☆　 '､
　　　　　　　　　　　　　l　　＿＿＿＿_-､|　　　　　＜　撃てぇーっ！
　　　　　　　　　　　　 l_, /'''　　　　　　＼ﾆ=ﾆ=-
　　　　　　　　　　　　/　l　　　　　　☆　 '､、
　　　　　　　　　　　/　l　　＿＿＿＿_-､|!
　　　　　　　　　　/　　l_,/'''　　　 肆　＼=ﾆ=-
　　　　　　　　　　/___/　l　　　　　　☆　 '､、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ズダダダダーーーンッ！！！
　　　　　　　　　　　/　l　　＿＿＿＿_-､|!,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　, '
　　　　　　　　　　/　　l_,/'''　　　 参　＼=ﾆ=-　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ｊ!,ｒｙ'/' ,　'
　　　　　　　　 _／/__/　l　　　　　　☆　 '､、＿|＿　　　.;,________＿＿＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　┌t ＼,ﾊ'ι'(´ｒ '､､
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139：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:24:12 ID:tSPrWWi20

ここで海軍管理工場の指定を受け、故郷長浜に新工場を建設し、ますます、ヤンマーの知名度は高まっていった。
主にヤンマーは上陸用挺を開発し、これらの船は「ヤンマー挺」と呼ばれていたほどである。

　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿_
　 　 　 　 　 　 　 　 ， ＜　.!＞ .、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＞　¨￣￣¨　＜
.　　　　　 　 ,≦三≧.＼.／.|｀ ＜ .X　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／ .| ＼.,≦三≧，
　　　　　　　{≦三≧} - ＼ |ヽ ／、 ∨　　　　　　　　　　　　　　　　　ｖ　,.r´＼／ | ＼|≦三≧}＿
　　　　　　　| ===== |／|　 |イヽ　ヽ　Ⅵ　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　{　 ／.＼ | ／|＿＿＿ﾍ__）
　　　　　=「」=======「」=二ｖ--}--}--}　　　　　　　　　　　　　　　　　!--------米.「　 ハ　　≧≦
.　　　　/! ¨¨.|| ￣ || ¨¨ !Ⅳ |＼ﾉ　 ' 　'　　　　　　　　　　　　　 　 　 人　ヽ ヽ／ .| !!|／　 ＼/仁ﾏﾍ
. 　 　 /, '---|ﾄ.--仆--ｲ__} .| 　ヽノ ノ　　「三三!￣￣￣￣￣￣!三三!＞..／、 ,ｲ!「 ￣￣￣￣￣¨ |
　　　 | 「＝＝＝＝」ﾆ⊃||　!||ｴｴｴｴｴｴｴ.|三三.|　 　 　 　 　 　 |三三|ｴｴｴｴｴ「 o|　　　 　 　 　 　 |
　　　 | 　 .|￣!　　γ¨ヽ !!　.|| ￣￣￣￣ |三三.|　 　 　 　 　 　 |三三|￣￣￣.!　 |＿「二ｌ　　γ¨ヽ|
　　　 |- 、!＿|＿__{ .!￣|||　!||　　　　　　 .|三三.|　 　 　 　 　 　 |三三|　　 　 ..|　 .!　 |　　　　 .ゝ-ｲ|
　　　 | （＿＿|!＿ ）.| __.!!! /ルー───..!三三.!＿＿＿＿＿___|三三!───|＿.|　 |　（二二|二二ﾊ
　 　 /!| | | 　 |　　 | |　 ||! '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　 !　　　　 ||　，≦}
　　 .{≦三三三!≧イ二7::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|-≒＜ 「三三三イヽ
　　　__!　　, イ三三三!/__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!_|三三≧＜　　　!　}
　 ／三三三三三三ミ! .| 三 |￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|三| |三三三三≧＜≧ｲ、
　≧三三三三三三三! .| 三 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .!三! !三三三三三三三≦
　　 　 　 　 　 　 　 　 L」 三」＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|三!_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【LCACにて代用】

140：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:24:26 ID:tSPrWWi20


　　　　　　　　　　,,-'　 _,,-''"　　　　　　"''- ,,_　 ￣"''-,,__　 ''--,,__
　　　　　　　　　　　,,-''"　　,, --''"ニ_―- _　　''-,,_　　　 ゞ　　　　"-
　　　　　　　　　 て　　　／ ,,-",-''i|　　￣|i''-､　　ヾ　　　{
　　　　　　　　 （"　　.／ 　 i　{;;;;;;;i|　　　 .|i;;;;;;）　,ノ　　　 ii
　　　　 ,,　　　　　　 （　　　 l,　`'-i|　　　　|i;;-'　　　　 ,,-'"　　　_,,-"
　　　　　"'-,,　　　　　`-,,,,-'--'':::￣:::::::''ニ;;-==,_____　'"　　_,,--''"
　　　　　　　 ￣"''-- _-'':::::"￣::::::::::::::::;;;;----;;;;;;;;::::`::"''::---,,_　　__,,-''"
　　　　　　　　._,,-'ニ-''ニ--''"￣.i|￣　　　|i-----,,￣`"''-;;::''-`-,,
　　　　　　,,-''::::二-''"　　　　 .--i|　　　　 .|i　　　　　　　　　 "- ;;:::`､
　　　　._,-"::::／　　　￣"''---　 i|　　　　　|i　　　　　　　　　　　　ヽ::::i
　　　 .（:::::{:（i(____　　　　　　　　 i|　　　　　.|i　　　　　　　　　　_,,-':/:::}
　　　　 `''-,_ヽ:::::''- ,,__,,,,　_______i|　　　　　 .|i--__,,----..--'''":::::ノ,,-'
　　　　　　　"--;;;;;;;;;;;;;;;;;""''--;;i|　　　　　　.|i二;;;;;::---;;;;;;;::--''"~
　　　　　　　　　　　　　 ￣￣"..i|　　　　 　　.|i
　　　　　　　　　　　　　　　　　.i|　　　　　　　 |i
　　　　　　　　　　　　　　　　　i|　　　　　　　　|i
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　　　　　　　　　　　　　　 i|　　　　　　ノ::::i:::トiヽ､_.|i
　　　　　　　　　　　_,,　　i|/"ヽ／:iヽ!::::::::ﾉ:::::Λ::::ヽ|i__n､ト､
　　　　　,,／^ヽ,-''":::i／::::::::／:::::|i／;;;;;;/::::;;;;ノ⌒ヽノ::::::::::::ヽ,_Λ
　　　　　;;;;;;:::::;;;;;;;;;;:::::;;;;;;;;:::/;;;;;;:::::::::;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::;;:;;;;:::ヽ


だが戦局が悪化し、本土もたびたびの空襲を受ける。当然ながら、ヤンマーもまた
空襲に遭い、尼崎工場と本社工場に大損害が出る。
本社工場の90％、尼崎工場の70％が焼失し、稼働できるのは長浜だけという状況に陥ったのである。

141：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:24:38 ID:tSPrWWi20

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　// |ﾄ､iﾉ(/　　　　| i 　|===
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　＼i}＼　//__.|i　　（／　　　| i 　|===
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iﾄ､　　　　　　　　_＿彡}=}　|　　　　　　　　　　　　　　　　　,'　　　　　―=（　　　 　 ,'　,ｒi―　　 　 　 　 ゜| i 　|===
　{i　　i_　 　_　　|　　　i}=}　|　　　　　　　　　　　　　　　　イi　　 　 ―‐=イ　　 　 千王三¨ 　 　 　 。゜/i| i 　|===
_　i__ ﾉ¨}_／ ﾄ､ i|　 _,ｨ=/　 |　　　　　　　　　　　‘，　　ﾟ'*。 　　　　　＿＿）r==ｧ　ﾉ⌒/　　　　　。゜///i| i 　|===
　　_}{-イ 　 i| l__|／イﾞ′　i|　　　　　 。゜＿＿ 　　__　‘，　　　＿＿二二￣￣　　　___ｱ　　　／////／| i 　|===
　　　 　_厂￣⌒¨　　 　 　 |　　　 　 ,r≦三≧=ｧ__　　　＿ﾆﾆ―￣　r‐ｉ　　　　　i､⌒¨込､／////／　 i| i 　|===
iト．　　　¨　_　　　　　　　i¨| ,r‐‐　　{三ﾆ少'-ｭ===ｱ　‐==＿　　　　 } {　/ 　 　 ﾄi 　　／乂f､_／ 　 　 i| i 　|===
　　〕iト．_/ｰ=､　_ 　 ｒi|ｭ､i} |/　　　　}≧==‐−-　　-=≡三　　i}　 　 } {　　　/　　__.ィ ／⌒／i|　　　　 i| i 　|===
　　　　⌒厂¨¨i￣　_|/|　 |:i|＿　　 /　　　‘，　i}￣￣-‐ﾆ￣ `　　，　￣　　　‘，}　 　 ‐千王/i|　　　　 i| i 　|===
ｘv､　／¨¨｀ヽﾉト．　 ﾟ *。|:i|　 |＼/|¨ーﾄ　　　　　　　　￣￣）　　　　　　　　　∴:.　　　,.=ミ|ii/i|　　　　 i| i　,.　￣
‘_‘}/　i　　　i}　　 〕iト．　ﾟ'*。..|_　｀|i　 i| |―‐､　　　　　　　　￣）￣￣　 　 ‘，　-=≡ ゞﾐ'ﾂ､/i|　　　　 i| iｲ}
-‐ｱ'　i|　　　i}　|≧=　　〕iト．} ||} |}:|i　 i| | 　 |　､　　 ':、 　　＿)}　　　　r‐､　　　ヾ//{'′　　 }¨ 　　 　 /　 ﾚi　|i
　ｲ___ i|　　　i}　|//| |　　 ||¨　i|_ 　ｉ|i　 i| | 　 |　i| 　　‘，　　　￣￣}　 /|ｭﾉ‐､　　 ＼/　　　　 }　　_　- {　 　 V从
/⌒ヽrｲ´￣ﾄ､ ｉ|//| |　　 ||　r‐iﾟ*。|i　 i| | 　 |rｭ|　 ':、 　　　　-=て　/ﾉ.:.:.ﾄ=f　r'ｿ /　　　__ 　}　 }　 ／}_____{///
} 　 /｀ヽ:.:.:.:.:..} i|//| |　　 |||i¨∨八ｉ}i　 i| |　/ﾉ斧=‐　 　　‘，　　／彡 |:.:.:.|__}/儿ﾉ{　 　 /:.:.}　}　 }　i}=､ i　 i///
＼/ 　 /Vﾚﾄﾉi i|//| | r‐‐‐/__{_ﾉ//}i　 i| | 　 |ヽ`ー ､　　　 　／）／ヽﾉ=={　r‐‐'　/⌒ヽii.:./ﾄ'　　}　i}　八 　＼/
　i}_　　{__.:.:{　 }i|//| | }==={/∧i//ii}i　 i| | 　 | {ｲ¨}_ﾉr‐‐‐i　　　　　　{　|i/__ﾉ_厂乂} 　 |ii.:.{　　　 }　i} 　 ｉ ＼　｀
/¨⌒ヽ/　＼___}‐ ､| | }==={_ﾉ少'´￣¨¨¨´￣ rｭ　　　}==={_　　^ﾞ~　　{　|i　　　 　 　 　 {i.:.:.} 　＿ }　_}少'´￣¨¨¨
＼ｭ__/{_＿／~ﾉ　/¨´丁¨¨¨´　　　r‐ｭ　　　　　　__宀≠¬　　　　 　 ｀''　　　　　 　 　 }:.:._} ,彳￣}}
`‐‐‐イ⌒‐=''´￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣`=冖宀冖≠う‐‐≠

昭和二十年八月十五日、日本は無条件降伏を受け、ここに太平洋戦争は終結する。
戦争とともに名をはせたヤンマーであったが、同時に戦争と共に大損害を受ける。

142：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:24:52 ID:tSPrWWi20

しかし、度重なる不況と苦境に立ち向かい、従業員と共に世界初の製品を作り上げた男は
この状況に対して全く絶望してはいなかった。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｬ-‐､
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾂ':;::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-‐-く
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ゝ-‐=‐-L_
　　　　　　　　　　　　　　　r'´　　　　　　｀i
　　　　　　　　　　　　　　　| ヽ　,J´ﾞし、 /i
　　　　　　　　　　　　　　　| /　 }=ｰ= { 〈、',
　　　　　　　　 　 　 　 　 ／　　 ｀ｰ'^　　|　〉
　　　　　,．-‐─ ' ´￣￣｀　　　　　　　　ﾚ′
　　_,x≦､_,x≦ミ　,ｨｫ　　　 　 　 　 　 　 |ヽ
_∠三三三三三≧'´　　　 　 　 　 　 　 .|　ヽ
　　　　　 ￣｀,三三≧x 　 　 ≧､　　 　 ﾉ 　 ﾍ
　　　　　　　　ﾍ三三三≧=彡ﾒ､＿,ｨｮ_′　　∧
　　　　　　　　　弋三三三三三三三＝≧'≧　 〉
　　　　　　　　　　　｀￣￣　　|　 「 .| ｀ヾ三三三≧
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ト-.}　|'⌒ｿ　｀￣￣´
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 .}　| =､|
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |三|　.|三1
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 }ニ|　 }　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　}　l、.ﾉ　 }
　　　　　　　　　...................　　ｲ　 |　f'ヽ !
　　　　　　　　　　:::::::::::::::::::::≧=='::::L＿)::...
　　　　　　　　　　　　　゛ﾞ::::::::::::::::::::::::::::::::::

143：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:25:04 ID:tSPrWWi20

既に六十歳を迎えていた彼だったが、ただちに事業復興に立ち上がった。





　.、　　.／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　　　　　../　　|　　 ヽ　　　　ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　 .ヽ×、:::::::::::::::::::::::::::::::::::.／　　　　ヽ　　../　　 .|　　、ヽ　　　　　＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`_,.．-／
　..／`､　"'''- ．._:::::::::::::／　　　　　　∧　 /　　　.|　　 | ヽ|ヽ、　　　　.＼::::::::::::::::::::,,.．-'''"／ｚ<
／:::::::::::, < /::.　　"'''-<.|_　　　　　　/　.` /、　　 .|　　 .|`、.|　 `、　　　　 ＼_,.．-''':::::,ｚ .'.／'-ｘ`"'ｘ._
:::::::::..／　 /＼::.／　　 .　"'''- ｘ.__../　　.V.|　　　 .|　　 .|　|.`/　 .ヽ_,.．-'''"´　ヽ|, ｚ'"::..／::`、　　￣￣　　俺はもはやエンジンを離れて生きる術を知らない！
::::／　　　.|::::／ヽ　./　 ｌヽ、　 .ヽ/~"' ｘ∧.|ヽ　　.|　　　| .`、|, ｚ'" ヽ　　　　 ,ｘ'.|ﾍ |／:::::::::::|
　　　　　 .|::/　　 .>、´>|　 ｀`ヽ、`ｘ､ヽ　ヽ.| ヽ、 .|　　　|　`、|.／/ ..ヽ　　　　　|／| ｌヽ、:::::::ヽ、　　　　　先がどうなろうと、生きるためには一日も早く事業を再開しなければならないんだ！
　　　　　 |./　　　|　＞<|　　　/＝=ｚ、 ＼ヾ|　.ヽ |　　　|／.ヽ|／￣X..ヽ　　..／.|　| .|　"'''- ．._＼
　　　　　.|/　　　 >、|　 |ヽ、.∧　　 ( uヽ、.||ヽ .〉>、　　|＝<U ）　　/　.ヽ／　　.∨ .|　　　　　 ￣￣
　＿__,ｚ'´|　　 ./　| ヽヽ.|　 X　.ヽ、＿`´ ..＞ｘ　,へ丶　 |、_`~　_／　..／.∧　　　|、 |`ヽ、
　　／　./　　/　　|　 |ヽ|　/./ー＝三三///／/l三lヽヽ |ミ三三彡'´ヽ ../　.〉、　.|ヽ.|　　ヽー――‐
　　　　/　.／　　　|　|　 |/ /、,ｘ彡 ／　　　 ///.へｘｘ、`　　ヽ　　　　`,〈`='| .ヽ、| .`|　　　｀`ヽ、
　　　./ .／　　　　 | .|　　|/ .`、　　.._,.．-'''"三彡::::::　 .｀`''ｘ ．、　　　./|ヽ　|　　ヽ|
　　 /／　ヽ、　　　| |　 ./|　　|,ｚ='´ /　　　　　'''`~´　　　　　　"'''-ｘ../ .|　ヽ.|　　　|　　　　 .／
　　　　　　　.ヽ、　|`´ ./ｚ=='´|ヽ、'´　　　　　　ヽ、,-　　 　、　　　　/｀`|ヽ、ヽ　　 .|　　　／
　　　　　　　　 ヽ .|　　'´　　　`　.ヽ、　　/`lー--―'´￣／`ヽ　　 ./　./　　.フ`　 ./　 .／
　　　　　　　　　　ヾ、:.　　 ヽ、 ヽ、 ヽ、ヽ ..~￣￣￣￣　ヽ`l )..／　./　　/　　　/　／
　　　　　　　　　　　 ＼::::::...　ヽ　 .ヽ　 ヽヽｚー―――＝／.／　／　 ／　　.／.／
　　　　　　　　　　　　 ..＼::::::::::..＼　＼　 ＼　-‐ .‐-　　...／　／　.／　.:::::／／

売れ残りの農業用エンジンの生産を開始し、売れ残った船舶用エンジンは映画館等の発電用として販売した。
そして、この頃旧海軍の優秀なディーゼルエンジン技術スタッフが入社し、苦難を逆境に変え、
山岡は会社再建へと突き進んでいったのである。

144：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:25:19 ID:tSPrWWi20

さらに敗戦からたった一年後、昭和二十一年に新型の小型船舶用ディーゼルエンジンを開発するなど
攻めの経営を続ける。特に山岡が手がけたのは発電用エンジンの販売である。





　　　 　 　 　 　 ／　　｀ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　．-―
　　　　,,．-―／　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　,ｒ''´
　　　 /　ー ' ､　　,．'"..　ヽ　l　　　　　　　　　　　　　　　　 .．-'''￣｀'''　　 ｰ- ． _
...　　/　　　　　ヽ/　　　　　l　ヽ　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　 　　　　　　 　 　 　 ｀ヽ
. 　 /　　　　　　 ヽ　　　　　lｨﾆ　ヽ　　　　-‐―､　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｀､
. ／　　　　,　 ⌒...ヽ　　,　'　　　ヽ ｀ヽ..　　､.....　l.　∠／／／ 　 　 /　　　　　　　　 　 ',
/　　　　ヽ　　　　　ヽ,..'.　　　　　 l　　',....　　ヽ　|　／. 　 /..　|.....　/　　 　 　 　 　 　 　 ',
l　　　　　.ヽ　　 ．-''" .ヽ　　　　 ﾉ.....　l,r_''´￣ヽl''´/ 　 /.　　l...　/|　　　　　　　　　　 　 ',
|　　､　　　　＼（ヽ､_,.．-'　　　ﾉ__ﾉ...ノ/　ヽ, -‐ ､ヽl/ｌ/ｌ'.....　,ｲ. /　|.　　 　 |　　　 　 　 　 ',　　　　　　　　こんな状況だからこそ、新しいものを作らなきゃいけない。
ヽ　　ヽ　　　 　 ｀　．＿_,.．-'''"ー　 /、_ノ（...　　). ヽｌ..ｌ 　 /_ l/_ヽ.|..　　　/　　 l　 　 　 　 ',
..ｌヽ　　 ＼　　ノ　｀ー''´　　　　　　ノ　　　　｀ー'　　 ｌヾ',.　l　 し' ヾ〉　 l､/ヽ.　 ,' 　 　 　 　 ',　　　　　　　守りに入ったらその時点で負けだ。
..|ヾ　ー '´ ￣.　　）‐ヽ、＿__,,.. ．´　　　　　　　　　　|ヽlヽ:ｌ ｀ー‐'　ヽ|. /z‐''|. /.　　　　l　ｌヾ|
..|　｀ヽ､_.　　　 ,イヽ　ノ‐ - ．（　　　　　　　 　 　 　 ﾉ/　　　 　 　 　 |/ｰ' ノ|/　/ｌ　　 /ヽ|
..ヽ　ヽ　　　　　|.l　　 .|｀ヽ､..　ヽz､　　　　　　　　　　/　｀､ 　 ＼　 ､, 　 　 / 　/./l..　/.ヽ
.　 ',　 ' ,　　　　ヾ...　　ヽ _..ヽ.　　 ヽ｀ヽ. 　 　 　 　 / ヽ　｀､　 ヽ＼ 　　　,ｲ 　/V. |. /　　 ヽ
. /. ',　　ヽ　　　　ヽ　　　ヽ　 ヽ　　 ヽ__）､　 　 　 /　　ヽ . ｀､__,.．r.､' ´/ l／､　　|/..　　　　ヽ
/　/',　　　ヽ　　　　ヽ　　 ヽ-､.ヽ　　 ヽ￣ヽ_.　イ/　　　 ヽ　　/　|. ヽ/　　　/.　　　　　 　 　 ヽ
　/.　',　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ.ヽ ',.　　 ',...　ヽ_.ノ､ヽ　　　 ヽ　l　　ヽ...',　　　ヽ　　　　　　　　　ﾉ
./　　 ',　　　　　　　　　　　　　ヽ', ',.　　 l　　 ',ヽ　ヽ.ヽ　　　ヽl.　 　 |　',.　　　 ヽ　 __,,. ．-‐''"
　　　　',　　　　　　　ヽ　 　 　 　 l. l.　　 |...　　',　ヽ　ヽヽー‐､　　.ノ |　 ', ,．-'''"',　　　ヽ＿
　　　　 ',　　　　　　　ﾉ.　　　　　ﾉ. l　　 ﾉ.　　　',.', ヽ　ヽ）ヽ　　　　　|...　',ヽヽ､　l　　　　　 .ヽ
　　　　　',､.　 ＿　．'.　　　　 ／...ノ　／..　　　　',.',　.ヽ　　ヽヽ　　　 |.　　', ヽ l....|　　　ノ⌒ヽ ヽ
　　　　　 ',　　　　 　 　 　 ／　／ ／　 /｀ｰ､　　',.',　　｀ｰ､ .ヽヽ　　 |.　　 ',　l.|　|　 ／　　ノ　ヽ ヽ
　　　　　　'-――- ．__.／　／ ／　　./　/./.　　 ',.',　　　　',　ヽヽ　 |.　 　 ',ﾉ | ﾉ／_,.．-―- ､　ヽ）
　　　　　　　　　　　 .／　／ ／.／. ／　/./...　　　',.',_..　　　',　 ヽヽ..|...　　/　 ヽ　 _,.．-―-　､ヽ/

145：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:25:30 ID:tSPrWWi20

敗戦によって焦土と化したわけだが、戦前における電力供給や、送電網に関しては現在に比べて
非常に劣っていた。そこで、山岡は電力不足、非常用の電源としてのエンジンの販売に注目したのである。




＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,，;';';';';';';';':::.、
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ヽ、 /. ∧ 《＿/　 //:::: ,' .∧　　　　　　　　　　　　l∧ ./;';';';'　　　　　　 　 ＿
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::|く_ _// i/.:/　 /／:∨ ./::/:/j　　　　　　　　　,;':':':; l∧　　 　＿_　　　　　 |:[:|　　　　　　 __,，＜≧=､
::|　.:// ./|/　_//＿,人.,'::/:/.∧＿　　 　 　 　 ゞiイ :!::!:＼　/:::j::::|　　 ._　.〈: :.〉　　　　　/ /￣　//￣＞ 、
/　/ム/_ 〉 /!/:＼　 /´/./:/ /＼/￣∧　　 　 木くﾉ::l:Y::|＞､_i.:::|　　//　_|: :|_　　 /￣￣ /＼//　 　/ 　＼
｀: .､__/,../.:/i》― -＼!.三ﾏ_./　 /　 /　:!=y≦三!／州/ ﾘ｀ヾ!:＞i､-//､　|: : : :|　/￣￣￣!＼_/　..,／￣＞-:､
.:。_ ,，＜　　　　,＞'’!: . 　＞―　､上,，≦!＿!_/ :;/:ﾘ｀ヾ!＿!こ ￣＞.､ :＞.､￣ ｀ヾ: .、,，≦三,，イ￣￣￣
／｀ヾ　，r＜＞'’￣＞ 、__: . : .　: .＞= ､三二＞-《;川ー＜三＞'ー＜＞― ＞､　＿　,、,、,、,、＿￣￣￣￣
_ ,.＞'’て￣　,，＜ ,，＜彡'￣　: . 　: . : . ＞ ､　,、,、,、,､,､,､　:.　:.　:.　:.　:.　:.　:.　:.　:../r≦三≧=.､ ＼＿＿
三≧=―　-､,，＜三≧∨!"''　; :. : . : . : . : . : . :　,r ー　≦　三　　≧= ､　:.　:.　:.　:.　｀ー ＝＝＜ ／　　 / ＼

146：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:26:36 ID:tSPrWWi20

ちなみに、このときヤンマーのエンジンは優秀であっても山岡の学歴の無さから「百姓家のエンジン」として
侮蔑されていた。

　　　　　　　　　し!　　　　　_　　-──　‐- 　　､　 , -─-､　-‐─_ﾉ
　　　　 小　　　 /／￣＞ ´ ￣　　　￣　　｀ヽ　 Y　 ,　 ´　　　　　）.　小 .え
　　戦　卒　　　 L_　／　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　　　　　　 ヽ　卒　 |
　　前　が　　　　/ '　　　　　　　　　　　　　　　　'　　　　　　　　　　 i　 !?　マ
　　ま 許　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 く　　　 ジ
　　で さ　　　 l　　　　　　　　　　 ,ｨ/!　　　　/　　 　/l/!,l　　 　 ／厶,
　　だ れ　　 i 　 ,.lrH‐|'|　　　　 /‐!-Lﾊ_　　l　　　 /-!'|/l 　 ／｀'ﾒ､_iヽ
　　よ る　　　l　 | |_|_|_|/|　　　 / /__!__ |/!ﾄi　　　i/-- ､ ﾚ!/ 　 /　,-- ﾚ､⌒Y⌒ヽ
　　ね の　 　_ゝ|/'/⌒ヽ ヽﾄ､|/　'/￣｀ヾ 、ヽﾄ､Ｎ'/⌒ヾ　　　　　 ,ｲ￣｀ヾ,ﾉ!
　　 l　は　　「　　l ′ 「1　　　　　　 /てヽ′|　|　|　 「L!　　　　　' i'ひ}　　　ﾘ
　　　　　　　 ヽ　 | ヽ__Ｕ,　　　　　 ､ヽ シノ ﾉ!　!　|ヽ_､ｿ,　　　　　 ヾシ _ノ　_ﾉ
-┐　　　　,√　　 !　　　　　　　　　　 ￣　　 ﾘ l 　 !　￣　　　　　　　￣　　 ７/
　 ﾚ'⌒ヽ/　!　　　 |　　　〈　　　　　　　_人__人ﾉ_　 i　　く　　　　　　　 　 　 //!
人_,､ノL_,iノ!　　/! ヽ　　 r─‐- ､　　 「　　　　　 Ｌ_ヽ　　 r─‐- ､　　 u　　ノ/
　　　　　　/　 /　lﾄ､ ＼　ヽ, -‐┤　 ﾉ　　キ　　　 了＼　 ヽ, -‐┤　　　　　/／
ハ　キ　　{　 /　　　ヽ,ﾄ､ヽ/!｀ｈﾉ　　）　　モ　　　　|/!　「ヽ, `ｰ ／）　　 _　‐'
ハ　ャ　　 ヽ/　　 r-､‐'　// / |-‐ く　　　 |　　　　 ＞ / / ｀'／／-‐､　　　　／
ハ　ハ　　　 ＞ ／＼＼// / /ヽ_　 !　　 イ　　　 （　 / / ／／　　/　`ｧ-‐ '
ハ　ハ　　　/　/!　　 ヽ　　　 レ'/　ﾉ　　　　　　　　＞　 ' ∠ 　-‐　￣ノヽ　　　/
　　　　　　 {　 i　l　　　 !　　　　/　 フ　　　　　　　/　　　　　-‐　/￣/〉 〈 ＼ /!

147：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:26:50 ID:tSPrWWi20

その評価を完全に覆したのが1953 年9月、東京大学宇宙線研究所、東京天文台の乗鞍岳コロ.ナ観測所の
自動発停式の自家発電用ディーゼルを製作した時である。




　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ‐─-､　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , -─‐- ,
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　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　.l　 　 l　i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 i l　l 　 　l.　',
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　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l　i_ !　! ｀ ｰ ，.,　　　　　,.，‐ ´ !　!.._i　l　l 　 　l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!._　.i　.!_i　　__ 　 i_!　i　_.!.　i　_ l　l 　 　l　　l
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_＿ . , 　| |　　　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!._　.i　.,r'=ﾆ二ﾆ=ヽ　!　_.!.　i 　_l　l 　 　l　　l 　 　 　 　 　 　 　 | |　 , .＿_
l 　 　 ｀ l l' r ､　　　　　　　　 l　　l　 　 l　l　i_ !　!._　.i,.ｨ ﾆ二三二ﾆ i.,i.　_.!　!._i　l　l 　 　l　　l 　 　　　　　　　, r 'l l ´　　　.l
|┬┬┬.ll┬┬ ，,　　　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!|二二二二二二二二二|!.　i.　_l　l 　 　l　　l 　 　 　　　,， ┬┬ll┬┬┬ |
|┬┬┬.ll..l　.l_l_i__｀ ー─┬. l　　l　 　 l　l._　.i　.!|二二二二二二二二二|!.　i.　_l　l　　　l　　l .┬─ー ´__i_Ll.　l..ll┬┬┬ |
|┬┬┬.ll.二_l_l_i_i !i riiiiiiiiii.r.,|　　l.oTo.l　l　i_ !　!.─┬‐┬──┬‐┬─.!　! _i　l　l.oTo.l　　.|,.r.iiiiiiiiiir i! i_i_LL二.ll.┬┬┬|
|┬┬┬.lllr ＝｀'ーｭ_ヾiiii〆i,.|　　l 　l　.l　l　i_ !oTo.:..ll　 .ll　　 　.ll 　.ll. ll..:.oTo! _i　l 　l.　l　　.l　|.,iﾍiiiiッ_ｭー'´＝rlll.┬┬┬|
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東大というブランドも相まって、それまでの「百姓のエンジン」の侮蔑を覆したのであった。

148：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:27:04 ID:tSPrWWi20

そして山岡は同年、2度目の訪欧視察の旅に出てドイツのマン社を訪問した。


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　　 　 　 　／:::::::::::::::::::::/ ::::::::::::::::::::::::::::::／|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　 }::::::::::::::::::::::::: ＼
　 　 　 　 ´￣７ :::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::/　 |:::::::::::::::::::, ｲ::::::::::::::::::::＼!:::::＼￣￣￣￣｀　　　　　　ドイツも日本と同じ敗戦国だが、どうなっているんだろうな？
　　　　　　　／::::::::::::::/::::::::::::::::::::,ｨ::::::∠_　 |::::::::::::::／　|:::::::::::::::::::::::::|:::i⌒ヾ
　　　　　 ／:::::::::::::::::/:::/::::::::::::::/ j／＿　｀ ｌ::::::::::/　＿_|::::∧:::::::::::::: |:::ｌ
　　 　 ／´￣￣7::::/／| :::::::::::/ ／7 心ヽ　|::::::::/ 　 ＿j／　Ｖ:::::::::::::l::::!
　　　　　　　　　ｌ::::′::::!::::::::::/　ヽ 弋夕〟 |:::::/;'　'´心ﾊ ヽ　|::::::::::::/:::::!
　　　　　　　　　|:::::::::::::|::::::::/ 　　　 ￣　　 j／ :ｌ 　ヽ｀¨´ ノ　|:::::::::::l::::::::!
　　　　　　　　　|::/|:::::::!:::::/ｌ 　 ,, 〟　　　　　　 |　　　￣　　/|:::::::::∧::::::ｌ
　　　　　　　＿_l/ .|/ヽ|:::/｀ｌ 　　　　　　　　　´/　　　　　　//!:::::::/　＼::!
　　　　　／＿__ ヽ‐-､.ｌ:/ ﾞ¨ヽ　　　　､＿　　　 　 　 　 　 /ｨ':|:::::/　　　｀i 　　 　 ＿_
　　　 　 | ｲ::::::::∨ﾍ 　.!′:::::::ｌ＼　　　 　 ￣ ¨ ‐ 、　 　 /＿.j／￣￣￣￣/´￣＿　＼
　　　 　 | ｌ::::::::::::∨ﾍ　|∧/＼!　 ＼　　　　￣　　　　 ／　　　　　　 　 　 /　/´::::::::ｌ　 /
　　　 　 | |::::::::::::::∨ﾍ　　　　 ｌ　　　＼　 　 　 　 　 ｨ′　　　　　　　　　/　/:::::::::::/　/
　　　　　〉〉:::::::::::::::∨ﾍ 　 　 ├-､＿　＼＿＿ _／_ｌ　　　　　　　　　　/　/:::::::::::/　/
　　　　 //:::::::::::::::::::∨ﾊ 　 　 |::::::::::::::￣＼　／￣:::| 　 　　　　　　　 /　/:::::::::::/　/
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そこで彼は、ある意味自分の恩師と言ってもいい人物の不遇を知る。

149：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:27:16 ID:tSPrWWi20

ディーゼルエンジンの父であるルドルフ・ディーゼル博士だが、実はその偉業に反して、彼は謎の死を遂げている。


　　　,.-─　…‐-､ _
　　　く　 ,.ｨ彡__　　 ＼￣¨　ー-　..__＿　　　　_,,.　-､
　　　　V ノ　　　＼　　＼　　　　　　　　￣￣　　　　_} 　　　え？　何その出オチ感？
.　 　 　 ＼　　_＿__＼　　＼　　　　　　　　　　 ,. ＜/　　
　　　　　　ヽ´oヽ 　 ｀＞‐--丶、 ＿　　　_,.イ＼ ／　　　
　 　 　 　 　 ＼>／　ﾄ､ｊﾉ＜二二.._＿￣　｀ヽ　 |　　　　
　　　　　　　　 |::::::::::/｀ヽ彡　　　-‐　 ￣二ﾆ =ヘ、　　　
　　 　 　 　 　 ;:::::::;:',ィフ=､ー-ｒ‐'　 彡'⌒ヽ__,.　　 ヽ
　　　　　　　 /:::／// , =ｧ''　　 ＼ﾆ/　/¨ヽi　 ｀ヽ 　 '.　
　　　　　 　 /／::l U ,ｆｭ/　 　 　 i ｀'　 ｉ'＾ｿ/｀ヽ　　 　 i　
..　　　　　　ﾚ／ ｀ヽ/ ｿ　　　　 /　　　　i_/＼　　　　　l　
　　　.　　　　　　　,'　 _i.,,_　　 　 　 　 　 l　　 丶、　　 i
　　　　　　　　　　i　　__} 　 　 　 　 　 　 !　 　 　｀ﾐ､Ｗ　
　　　 　 　 　 　 └‐´ｒ'　__　　　 　 U 　 |　　　　　　ヽ　
　 　 　 　 　 　 　 ,.-┴ｒ'_‐ﾉ　 　 　 　 　 l
　　　　　　　　　_⊥、　＼'　　　　　　 ／
.　　 　 　 　 　 {　　 ＼'　_}　　　 ,. ＜
.　　　 　 　 　 /＼　　 ＼＿,.ィ
　　　　　　　　＼　＼ ／ヽi. 人
.　　　　 　 　 　 ｆ＼ ﾉ丶､ﾉ
　　　　　　　　　ヽ　｀>‐く
　　　　 　 　 　 　 ｀ー─'


1914年。彼は渡航中に行方不明となり、ノルウェー沖で腐乱死体が発見されるも損傷があまりにひどく、
長男が持っていた遺品などから、ディーゼル博士であることを断定するも、あまりにも不振な点が多いことから、
未だにその死に関しては疑問が多く、陰謀論も存在するほどである。

だがそれ以上に山岡が愕然としたのは、彼の墓や記念碑すら存在しなかったことにある。

150：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:27:29 ID:tSPrWWi20

　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ',
...　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ',
.　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　',
.　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∧...|　　　　　　　　　　　 　 　 　 l
.　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　ヽ|　　　　　　　|、.　 　 　 　 　 |　　　　　　あの人がいたから、俺は世界に誇れる仕事が出来た。世界に誇れるだけの、
.　　　 |　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,　 　 /..　　|.　　 　 　 　 |.∨.　　 |...　　　|　　　　　製品を作って売ることが出来たんだ。
.　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ |.　 /.　 　 |　　 　 　 　 /~ ∨...　ﾄ、......　|
.　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　 /-.|..../＝＝'..|..　/|. 　 　 /ｒ=　∨ . |. ヽ.　　|　　　　　ディーゼル博士は俺の恩人、ならばその恩にはきちんと報いなきゃな。
. 　 　 |　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /.　 |../--ｒｚ、..|. /...|...　　/...し'..|..∨..|.　.ヽ......|
..　　　|　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / ／ l/　　し'..　|/.　 |　　/　　/. |.　ヽ|...　 .ヽ...|
　　　 |　　　　　　　　,ｒ‐、　 、　　 ./　ヽ　　　　　 　 　 　 |　/ｌー‐'..　|　　　　|ヽ. ヽ|
.....　　| ∧　　　　　 / ,ｒ‐ヽ/ ヽ　 ./　　　＼_,.．-'''"　　　　|/　.、...　　|.　　 　 |　ヽ. |
.　　　|/　ヽ　　　　.| /ヽ二ヽ.　|.../　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.....　|　∧　 /.　 ヾ|
　　　　　　 ヽ 　 　 |..　(　　(..　|/　　　　　　_　　　　　　　　　　 /..　　l../　|.../
　　　　　＿__.ヽ ＿_ヽ　 ヽ､　　　　_,.．-'''".../　　　 　 　 　 　 　 　 / |/......|/
　　　　　ヽ二二＿ ￣~""'''‐-‐''´_,.．-'''/ ./　　　　　　　　 _.　　　/
　　　　　　＼　　　 ￣｀｀'''ｰ-―''´　＿/.../　　　　　　''' ￣　 　　/　 ｀ヽ､..,,__＿＿＿＿
　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　,r'´ __　./　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　.￣.フ
　　　　　　　　　l　　　　　　　　/　/　 )/　　ヽ､.　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　|　　　 　 　 　 l......｀ｰ./　　　　 ｀　　ー――　　　　　　　　　　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　ゝ　　　＼　　　ー-､. l　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／
　　　　　　　　./　￣￣｀ヾ､　　　　　　＼　　　　　　|.....　ヽ　　　　　　　　　　　　 ／

そこで山岡はディーゼル博士のために顕彰のための準備を始めた。ちなみに
ドイツでは外国人による自国の発明家の記念顕彰は初めてのことである。
ドイツ、当時は分断されていた西ドイツにて、大きな反響を呼ぶことになった。

151：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:27:52 ID:tSPrWWi20

それどころか、逆に山岡が世界初となる小型ディーゼルエンジンを開発したことに対して喧伝され、山岡に対して
昭和30年（1955年）4月ドイツ人以外で初めてドイツ発明協会より金牌が贈られ、昭和31年（1956年）5月には
ミュンヘンのドイツ大博物館より名誉理事に推薦され、
昭和32年（1957年）4月にはドイツ政府より大十字功労勲章受章の名誉を受ける。






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ ,,,__ ,,,...,,_
　　　　　　　　　　　　　　　 , -, '´　 ／　　　　｀' .､
　　　　　　　　　　　　　ﾉ｀ヾヽi　 ／,. -=＝--￣､｀｀ヽ、
　　　　　　　　　　,.-,＝−-.、 !/／三_‐ヾ"ヾヽ、　　　ヽ
　　　　　　　　　　く　 , ,=-_､ヽr' _, -―｀-l　 i、 ヽ　　 　 ',
　　　　　　　　　　　Y,ｨ　i´　 ｀`´‐＝､- ､'!　l ヽ　ヽ　　　 l　　　　　　　ここに偉大なる日本人である「マゴキチ・ヤマオカ」に対して敬意を称する。
　　　　　　　　　　／/ /,'　　　　　　　｀/! l　ﾄ、 '､　i、　　 l
　　　　　　　　　 /./　i i､_　　　 　 　 〃!　! |ヾ､　!　iヽ　　 !　　　　　　
　　　　　　　　　 l/i　 l .lﾆ,､　　 __,._-ll=l､　', ! ヽ､ ',　',ヽ　　!
　　　　　　　　　 l　ヽ,ヽ!‐ﾞl　'､´､=､ｯll ヽ ./ !　 ﾄヽヽ. '､ ＼ ',
　　　　　　　　　 ヽ / , ﾍ./　　　　￣ヾ , ' /　 ,.ｲヾヽ.ヽ '､　｀',
　　　　　　　　 　 ,.'　 (　'､_　　　　　　/ ,/　 ,'l _ノ,ヾi ﾄ,ヽヽ、 ',
　　　　　　　　 　 l､_ , .）　 ',-　..__,　　'､ !、ノ .ヽi´　,ヽi.ヽヽ ヽ i、
　　　　　　　　　 く　i ,'i.　ヾﾍ''　　 ,-- ﾉ./ , '　 ﾉ''"´ ト| iヽ.l　 ｀ヽ
　　　　 , ,-,-‐,‐,‐,ヽ'､ヽヽ(　ヽ、_ ,ゝ.（,'l　i　 /!　　,　!ﾉ! l. ',lヽ　 ヾ､
　 　 ／.//.//,// 　.ゝ､ ´　　 ﾄi'"＿ヽﾘヽヽ1､ヽ-', ‐'/l .l　 ! ヽ　　 ヽ
.　 〃-／ '―' '　 　 ! ! ｀ヽ　,.ﾍ !'r_''_''i　´´｀,. ="-='.〃l !　.l　 l　　　l.ﾄ,
　 l l i´　　　　　　　 ヽ'､. ,.!/'､>' ,三=,.l　 ,ｨ´i´='彡7´ノ/　,i､　 !　　 / .l
.　 !.! !　　　　　　　　　i '/,'　///､＿ ,' -‐.l /-´'ノﾆ´'/,. _' ' .｀ヾ､　/ ./
　　i i i 　 r--――― ７ヽ!/〃 ー‐/ _,. _ﾉ,.＝´'´,.-',.- '　　　　　｀ヽ､!

152：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:28:06 ID:tSPrWWi20

そして、 昭和37年（1962年）にて、山岡は波乱の生涯を閉じる。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｬ-‐､
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾂ':;::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-‐-く　　　　　　　　あばよダチ公。
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ゝ-‐=‐-L_
　　　　　　　　　　　　　　　r'´　　　　　　｀i
　　　　　　　　　　　　　　　| ヽ　,J´ﾞし、 /i
　　　　　　　　　　　　　　　| /　 }=ｰ= { 〈、',
　　　　　　　　 　 　 　 　 ／　　 ｀ｰ'^　　|　〉
　　　　　,．-‐─ ' ´￣￣｀　　　　　　　　ﾚ′
　　_,x≦､_,x≦ミ　,ｨｫ　　　 　 　 　 　 　 |ヽ
_∠三三三三三≧'´　　　 　 　 　 　 　 .|　ヽ
　　　　　 ￣｀,三三≧x 　 　 ≧､　　 　 ﾉ 　 ﾍ
　　　　　　　　ﾍ三三三≧=彡ﾒ､＿,ｨｮ_′　　∧
　　　　　　　　　弋三三三三三三三＝≧'≧　 〉
　　　　　　　　　　　｀￣￣　　|　 「 .| ｀ヾ三三三≧
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ト-.}　|'⌒ｿ　｀￣￣´
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 .}　| =､|
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |三|　.|三1
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 }ニ|　 }　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　}　l、.ﾉ　 }
　　　　　　　　　...................　　ｲ　 |　f'ヽ !
　　　　　　　　　　:::::::::::::::::::::≧=='::::L＿)::...
　　　　　　　　　　　　　゛ﾞ::::::::::::::::::::::::::::::::::

享年七十四であった。

153：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:29:49 ID:tSPrWWi20

生前、山岡内燃機株式会社から、彼はヤンマーディーゼルに社名を変更する。そして、昭和34年（1959年）「ヤン坊マー坊天気予報」を
テレビで放映開始。ここにヤンマーというブランドは完全に確立した。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,, -‐'''''''''''''''''''''''''' - .._
　　　　　　　　　　 _..-..丶　　 _.. ‐´　　　　　　　　　　　　 丶
　　　　　　　　　／丶 ││ ／　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　 r冖_ ／"" 、 　r ..−'‐‐‐: ､　　　　　　　　　　　 ﾞ 、
　　　　　　　　l! < _ ゝ-− ｌｌ ／ ､-､　　　 　丶　　　　　　　　　　 ﾞ､
　　　　　　　　ﾍ ｀´　　 ,,: ナ ／ :ｉﾌ　　　__ 　　ﾞ ､　　　　　　　　　 '、
　　　　　　　　 │‐　 ‐ l丿　/　−　　 　 .┐　 / ﾞ'、　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　｛　　　r __ 　Ｙ' ､　　/’ lワ　　 、 │ ..、　　　　　　|
　　　　　　　　　 １　 │ｰへ ヽ、 ’-ゝ..ｒ 、　　 ゝ / 　 ′　　　　　ヽ　　　　　　　 _.. ..------ .. _
　 ,,.....-- .._　　 − _..-'、　　 ヽ"゛'''7"ｒ‐''ｌ　　, : ' 丶 ... 、　　　　 丶　　　　　 .. '''｀　　　　　　　　 ｀'''' ､
／ 　　　　 ヽ、 ﾞ 、　　 ＼　　l| ..ｯ''　 ~~" ,..ｒ'’　　　′ ^' ､　　 ／　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　 ﾞ' ､
′ -ヽ、　　　 、 弋　　 ,,..＞- 'ﾆ_　　_ ‐'´ ′　　　　､　 '''' '‐<　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶
、　　ﾍ ､　　　 、　 '､ ／　'‐----''' ￣　　 ヽ　 ,,,....‐‐ ｀'; ､ .. ノ　　　　 '',､ ' 　　　　　　　　　　　　　　　　　 ''、
､　　　1ヽ　　 │　 _ﾉ´ !..−'¬' 　′　　　　`' ' _;ﾉ' ｀ 　′ ´　　　　　,'ｿ" ....、｀''‐-...._　　　　　　　　　 、、 ､ ｌ
（　　　 I |_ 　 ,,ぃ ノ .. 　　ｒ''´　　　ゝ ,..--ｰ‐ "´　　　　　　　　　　　..メ _/ /ﾅ　　 ..-_　｀'''−ｰ- 、　　 l　 1　 !´ ｌ
?U_　　,' ′　rゝ '´ ーｰ-/　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　I/’ f　 ゞ　 _ｒ’,<〉　　 ｀ _／　　　 ||　 ’　' 丿‐'、
│‐‐-ﾉゝ　, _ﾞ冖　 　　ｰ- - ___　　　ﾍ、　　　　　　　　　　　 ..-、 /ｰ- `l!^ ､__ ′ )!、　　 _'´　　　　 丶 　　　　／
　'、　/ ' ／丿ゝ 、 ､　　　　　´ ヽ.._ 　^''‐‐ｰ ､ _　　　　　　 I 　│'、´ 丶 ＿ ﾆﾝ'' ｀ 、　 ./ .. ﾆ > ' ｰ ､..　　　 ┘
　 ﾞ'-〈/ 冫r _ /　ヽ ﾍ　　　　　　　 ｀ﾞｰ-､ . − ､｀ ､　　　　 冫 −-ゝ　　　　　 ′ -?U　 ｰﾝ ／'、　　　_―‐'´
　　　 `'' （ ｀ ‐　　__ '' ＿＿_......--''′　　 j ! - 、 　'、　　 丿　　　　｀ﾞぃ..､_＿__ ＿__......-／　　 ゝ_ -‐ 〕
　　　　　 ｀''’￣ 　´｀　　　　゛'-..、　　　 _ ムソ '′　!　　〈 ′ , 、　　 │　 ｀'二 ／　　 ﾞヽ、　　 ....-‐‐′　　 _ .. 　......、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀`ｰ― .. "ﾉ'´′　..'´　／　..／´゛ Ｔ 丿　　　 （ ､ − ‐ ､ﾍ ' 、 丶..、　　..−｀　.. 丶　 ＼、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀−−''゛　　 `‐'ゞ′　　　￣￣^`‐‐‐ヽ ′ -　’ 丶ヽ　　 `‐ _ 　_ '':- 'ヽ 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｒ ゝ､ 　ﾞ ゝ'''' _ _r --..―'' ｀ ｀.. ニ彡 ''ｉく ､,,r'′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈￣`' ゝ　　ﾞｌ ⊥ ｀ 　 `ﾞﾞ′　 ′ _､ ﾕﾆ-‐^
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │　　 lJ　　 |ヽ ｀ゝ　　　　_／ ／` ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　 l ｌ　 丶 │ │　 ..-'i-ｰ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ 　 1ｌ　 / 」 ,'..-??／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ ｀ I ! _ _..-¬-''´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ｰ 丶''"

154：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:30:13 ID:tSPrWWi20

彼は生前このような言葉を残している。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｨｧ　　,．　-　　―――――zｨァ
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／ /　／　　　　　　　　　,.．-'''"
　　　　　　　　　　　　　　　　/　 /／　　　　　　　　 ＜
　　　　　　　　　　　 　 　 　 {　　　　　　　　　　　　　　 ｀　 、
　　　　　　　　　　　　　,　―'　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀　、
　　　　 　 　 　 　 　 , '　　　　　　　　　　_,.．-　――ｚ　、..　　　｀ 、
　　　　　 　 　 　 　 ,'　　　　　　　　,　',　'´ 　ﾉ 　 ___　 ｢｀ヽ　　　　｀ ､
　　　　　　 　 　 　 ,'　　　　　　　, ' , '　 　 ／　／　　｀ヽ二ヽ　ヽ　　 ｀ ､
　　　　　　　 　 　 ,'　　　　　　 ,.'　　￣￣　 ／　　　　　　　｀ヽ　 ', 　　　＼
　　　　　　　　 　 ,'　　　　　　 ,''´￣￣￣￣　　　　　　　　　　 ヽ　',￣￣￣　　　俺に取り柄があるとすれば、ただエンジンが好きで好きでたまらず、
　　　　　　 　 　 ,'　　　 　 　 /　　　　　　 　 　 /|　　 　 　 　 　 ',　',　　　　　　　それに没頭できたことだ。
　 　 　 　 　 ,.．'　　　　 　 ／　　　　 　 ／ |　/. |. 　 ∧　　　 }＼l　l
　　　　　　ー―ｧ　　 　 ／.　　, 'l　　 ／　__| /,　|..　/彡V　　 }.　　 |
　　　　 　 　 ／_,.．　'"/／/／　|　 /￣し'>ｌ/　 '|　/ｿ / }　　/　 　 |
　　　　　　 /￣/,-､　　 { {‐-〉 V|. /｀ー‐'　　　　l /ー'' ∧　/ヽ　　 |
　　　 　 　 l　　 　 {ヽ.　 ヽヽ{ 　 |/　　　 　 　 　 l/ ヽ. /.l. V...　｀､ . |
　　　 　 　 |　　　　｀ヽヽ,r≧z､　　 　 　 　 　 　 　 ／/､.|/.　　　 ｀､|
　　　　　　ﾉ 　 　 　 　 ｀ヾヽ　 ヽ　　　､　　 　 　 , 　/.　＼
　　　　 ／ 　 　 　 　 　 　 ヾ｣ヽ...ヽ　　　ｰ―― ' ／..　＿_＼
　　　／　　　　　　　　　　　, -‐､ヽ　　､.　　　　／...　/,----, )
　　<ヽ　　　　　　　　　 ,．'　　,ｨ }ミﾐz､,l 　ー‐.　　　//　　 //
／　 ヽヽ 　 　 　 　 　 {　ｒ'''´　ｌ/三ミ./、.　　　　　//　　 //ヽ
　　／　ヽヽ 　 　 　 　 {　ｌ　　/三ミﾐ/ﾐ ､ヽ、　　 //　　 〈〈二 ヽ
.／...　／ ヽヽ　　　 　 / /　 /三ミﾐ/三ll|.　ﾉヽ...//.　　　 ヽヽ　ヽl
　　／　　　 ヽヽ.　　 / /　 / ｀ヾz／｀ヾﾉ '　　 〈〈　　　　　 ヽl 　 |

155：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:30:37 ID:tSPrWWi20

そして彼は自身の経験から来る、農民のためのエンジン作りという理念を忘れることは無かった。


　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,　'´/
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 , '　　ー―‐- ．..,,__
　　　　　　　　　　　　　＿__', ,ｲ　　　　　　　　　　　　~"'''‐- ．..,,_
　　　　　　　　　　　, '´　　　', ＼　 　 　 　 　 　 　 　 ＼￣￣￣
　　　　　　　　　　,.'..　　　　　',.....＼　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
.　　　　　　　 　 ,.'　　 　 　 　 ',　　 ＼　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　＿＿＿_ ノ.　　　 　 　 　 ',　　 ,. ＼''"ｌ.　　　　 ,.．'/.　　 ＼
　　　_ヽ＿_,,,.　　　 ＿　　 　 　 X／−ﾐ ン ､_,.．. '"　 /　　　 　 ＼
　　　ヽ　　　　　　/ミ} |/|....　／ｌ/ヽ{:j　 ｌヾﾌ　　　　　/.....　}｀ヽ　　 ヽ　　　
.　　　/　　　　　　| ｌ〈...　| ／.　　／ ｀ｰ '' /　　　,イ /　　　|　　＼..　|
　　　'´/_,.．-'''"￣｀ヽ　　　　 ／＿＿_　/_,.．'"ﾆ､|　｀､....　|..　　　＼|
￣￣￣　　/ 　,ｒ‐ 、_ ヽ　 　 　　rz.､　 ￣￣ヽ{:j }| ＿_ヽ　|
.　　 　 　 /..　/　 　 /~ﾉ 　 　 　 ﾄｰ､＼　　／ ヽ/|　 ,ｲ 　 l　　　　　　自分でものをつくって、誰はばかるところなく値段をつけ、
　　　　　/ 　/　 　 / / ヽ　　　　ヽ 　ヾ_.ゝ､　　∧|. /..l　 /　　　　　　 「この値段で嫌なら買ってくれなくても結構です」と言えるような、
　 　 　 /　 /　 　 / /､.....ヽ　 　 　 ｀ｰ‐'''´　 ／　 |/.　|. /　　　　　　　自信のある仕事がしたい。メーカーになろう。それも百姓生まれの俺にふさわしい、
.　　　 /　 /　 　 / /ミﾐz､　ヽ　　　　　 　 ／　　 　 　 ｌ/　　　　　　　　この農業用の石油エンジンメーカーに。こう決心した。
　　 ／..／　　　/ /三三ミﾐz　 　　　　 ／＞−- 、
　／..／...　　　/ /三三三ミﾐz/　 ＿／／＿__,イ }
.'　／.　 　 　 〈 〈三三三ミﾐﾐ/.　　　　/ /　　/ . /
.　　　　　　 　 ヽ ヽ三三ミﾐ./.　　 　 / /　　/ ／
　　 　 　 　 　 　 ＼＞三V/l|　　　 / /　　/ /
　　　　　　　　　　 /｀ヽ／ヽﾉ　 ＿/ /　　/ /
　　　　　　　　　　　　　　ヽ　〉､ヽヽ~. 　 / /


昭和35年（1960年） 滋賀県伊香郡高月町（現長浜市）に『大森農村精密工場』を開設し、
今もなお、ヤンマーは農業用製品開発に力を注いでいる。

156：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:31:03 ID:tSPrWWi20


　　　 　 　 　 ／　_　ﾆ　-　_‐　_　ﾆ　ﾆ-　_　ﾆ　ｰ　_-　‐　ﾆ　‐　　ﾆ__‐__-
.　　　　 　 ／_　-　ﾆ　‐　--､　ﾆ　‐　ﾆ　ﾆ　_-　ﾆ　ﾆ　-‐／￣￣ ／／￣￣
　　 　 　 /___／｀ i　ニ/　　 j}ｰｗｖｗｗｗｖﾊVﾊWﾊＶﾊWｧ'　　　 ／／　 ／￣
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そして晩年、彼が恩人として崇めていたディーゼル博士に対して少年期を過ごしたバイエルン州アウクスブルク市ビッテルバッハ公園に、
昭和32年（1957年）秋、ディーゼル博士生誕100年・ディーゼルエンジン開発60年を前に記念石庭苑を寄贈した。

157：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:31:17 ID:tSPrWWi20

決して順調満帆ではなく、常に苦境と不況が襲いかかったが、彼はその苦境にめげることなく、時にはその苦難に際して
諦めそうになるも、自らを支え、協力してくる人々と共にその苦難を乗り切り、世界初の商品を武器に、
日本は無論のこと、世界へと挑戦し続けていった。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠　　　弋刀ﾌ7ゎ｡、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／￣｀ヾｚ、　｀守从从尖ｚ,ｒ''''　、
　　　　　　　　　　　　　　　　.∠ｚ、.　　　ヾｚ、.　｀守从从ｚ、　　)￣. ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／￣｀ヾｚ、...　　ヾｚ、　 ｀守从ｚ}＜z,.　　　｜
　　　　 　 　 　 　 　 　 ∠ｚ、 　 　 ヾｚ、......　ヾｚ、....　｀ ＞''｀ヽ|ヽ、..ノ|
　 　 　 　 　 　 　 　 ／￣｀ヾｚ、...　　ヾｚ、..　　ヾｚ.＞''´.　　　　　 ￣.ヽ
　　　　　　　　　　.∠. 　 　 　 ヾｚ、　　 ヾｚ、 . ＜フ、　　　　　　　　　人＿_
　　　　　　　　 .／￣｀ヾz､ 　 　 ヾｚ、. 　 ヾｚ、.／／/,,ノ.../ｌ　　ヾ｀ヽ |　　ノ
　　　　　　　.∠　　　　　ヾz､.　　　ヾｚ、..　　／.　　/'´...|/...|从　 ヾ/　 　 ＼
　　　　　 .／.￣ヾz､..　　　ヾz.　　 　ヾｚ.　∠,,,,,,,　　　　 　 　 ヾ人|　　 ,ｒー‐'
.　　 　 ∠..　　　　ヾz、　 　 ヾｚ、　　_ヾ．-‐''　|. ,ｲ　　ﾇ...　　ﾄ､　　　　.{　... ｀､
......　／￣ヾｚ、.　　　ヾｚ　-‐　'''""~　　　　 　 /ノ |　 ,必ヽ..　|ｨッヽ　　 ｀ゝ.....r^ ､
　／__,,　　-‐　'''""~　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ人　l. ＼|　 ﾉ )/从/彡　|　　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 .|ヽ ヽ‐-､ ／､...　ﾉﾉ　ｿ　 ヾz､　　}､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾄ､.ノl.￣　　　　ﾐz､ 人}}L､　ヽ､　.ヾ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |ヽヽヽ ミz､　　　　,z彡､ヾ}　ヾ ヽ　|}　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　｀､｀ヽﾆニ二　　　ﾉノフ￣ヽ￣　　　　.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＿_|｀ヽ .ヽ､＿_＿__,,. ．-‐/　　　ヽ　　ヽー. 人_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__,r=ヽ/　　｀ヽ､　　　､＿＿_,〈､　　　　ヽ､_　ヽ　 　 ｀.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　フ__ノ(ヽ､　　ミ三彡　　　　 <(z,　　　　　　.｀ヽ}､ l　　_ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,r<´　ヽヽヽ .｀T ｰ-＜＿三三二ﾆ(,,,,　　　　　　　 l　.>'´.　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿／　　ヽ　　ヽ.ヽﾆL＿_.|＿＿_,.．-'''"　 .ヽ　　　　　　 |/　　.／　.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞z､　　　､＼　　＼ー-z．＿　．'´　　　　　＞､　　　　　＼／..　／　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／ヾ､　　　　~''‐- .＼　　 .／　　　　　/´　　　 "'''ヽ　　　＼／　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　 ..／　 ／／ノ,,,､　　　　＿＿＼　　　　　　　　 lヽ､　　　　　 　>､　　　ヽｰ-z．.|＿
　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／／:::::::::/.|ン￣　_,.．-'''"~~ヽ､　ヾ､ヾ､　 |｣｣｣｣ヽ　　　　　ヽヽ　　 ヽ ＿＿　ﾉ
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158：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:31:29 ID:tSPrWWi20

その信念と情熱は彼らが作り上げたエンジンと同じく、頑強であり、同時に力強く、
苦難や苦境をはねのけ、突き進んでいく。
今もなお、その精神は受け継がれ続けている。





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159：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:31:41 ID:tSPrWWi20

発明者よりも情熱的に生き、その恩人に恩を忘れることなく、その偉業を喧伝し、
その意義を証明したのは、一人の物作りが大好きで仕方ない、一人の男と
彼の情熱に共感した人々の力があってのことである。



..＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./　　　|　.|　　|、　　 ヽ　　|ヽ、　　　　　　　 ヽ、　　　　._,.．-'''"
ヽ、｀`＝=ｘ．.、　　 　　　　　　./ヽ　　/　|　　 |　|　　|ヾ、　　ヾ　..|　ヾ、　　　　　__,,.. ．-‐'''"´_,.．`'''"
`､　｀`'''- ．._ .￣~""'''　‐- ．./　 ヽ /ヽ　ヽ　 .| .|　　|　 `、　　`、|_____〉_,.．-'''"´　　 ..ヽ-'''"´ヽ、..｀ヽ
　.｀ヽ、　／　~""'''‐-．.,　　　｀`'''ー'ヽ、ヽ　ヽ　|.|　　|　　 `、　　 |／　　ヽ　　,ｚ=＝'´　ヽ　　　 ヽ`.／
　　　 ヽ/　　　　　　　　/ｘ＿_　　　　　＼　　　 |.|　　.|　　　ヽ、　 |＿_　　ヽ　　　　　　　.ヽ　　 .／、
　　　／.＼　　　　　　 /　///￣＞ｘ、　　＼　　||　　.|　　.／／ヽ |`、..｀ヽ、ヽ　　　　.ヽ、 ヽ／　　ヽ、
　　/　　　,|＼　　　　/　/〈　　　 .|_/:::::::)、`-ｘ._.||　　 |　彡|'´|　ハ|:| 　　　|ｌ　ヽ　　　 .|:..／ |ヽ　　l、
　./　.／| .|　 .＼　 ./　./　`、　　.|::::::::::::} `ｌヽ、　　　 .|　　'|　|`':::::::ﾉ　　 ./　　.ヽ　　／|　　 |ヽ、　.ヽヽ
../.／::::.|　.|　　　`ヽ、 /　　　ヽ、 .ヽ＝‐' ノ　 ::::>、　　|　　｀``ー‐'___ ,・'´　　　...〉'´　 .||　　..|、｀ヽ、
/'´/::::::.|　 |　　　. / .`>、　　　　￣￣￣　　:::::::::|,.ヽ　　|　　　　　　　　　　　 .／/∧　 .||　　 |::`ヽ、
　/::::::::::|　 |　　 ../　　/　〉　　　　　　　　......,ｚ＝'| .｀`ヽ、|　　　　　　　　　　.<　//|~｝、 |'　　 |:::::::::ヽ
./::::::::::::.|　 .|　　./　 .∧/　　　　　　_,.．-'''"　:::::::,　　　 `'"'''- ．._　　　　　　　X／ /　〉| /ヽ .|:::::::::::::ヽ
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::::::::::::::::::|　　/、:::::::::::::::| ./ ヽ　 ヽ、　　　　　　　 、　　　　　　　　　 .／　 /./:::::::::::::::`|:::::::::::::::::::::::::::::::::
ー―‐'´ ヽ /　 `ヽ、::.::::|/:::::::ヽ　　.ヽ、　　　　　　ヽ　　　　　　　 .／　　　||/:::::::::::::,ｚ==ｚ、_ｚ==＝＝=
　　　　　 ∨　　　　.ヽ::::::::::::::::::ヽ　　　.ヽ、　　　　　　　　　　　 ／　　　　/:::::::::::::::/

　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第九回　ミスターディーゼル】



【終わり】

160：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:31:52 ID:tSPrWWi20



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_..-ｪｒｔlllｯ=ｌ=4ｮｮ＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _..ullXj广｀ﾍ ヽ　　 "i:;:;:;:;:ｮ 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r'フ’丿.. ＼　/ l　　　　 i::;:;:;:;:;l'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ''’〃‐''广´　　｀,ｬｮｔｔｔｮｮｪ、ﾞl:;:;:;:;:;:;:;:l、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j−--... 、/（llllllllllllllllll）'、i::;:;:;:;:;:;:;ll'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l 'ﾆｴｴ./.　|　ﾞllllllllllllllllヽ　　":;:;:;:;:;ll'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|￣　　/─＼｀ﾞﾞﾞﾞﾞ"""　＼ 　lム"ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │　　 /!!!!!!!ワ　　　　　 ｨ'"t_|lﾞT'、|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:jll Y　 　..,,,,,,,, 、,,,,,,,　　　′ ﾞ'〈| }lｿ丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞl　|　　jiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiil∟　 、　　　{_:;:;|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞl、 _ jl广´｀　　　｀ﾞ`ｰ ヽ　　 !:;:;:;l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞlt 1'´　 n==lｔぃ　　　/ ﾉ　 ''l:;:;|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞl ゛ ''┘　　 ｀丶　　　　　　丿 '、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'ﾞl'、 _,,_..＿..＿__　　　 __〃 　 ﾞ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ　/::::::::::::::::::::::::＼]}Iilｔlillllﾆ_..uuuj
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 j｀｀ﾞﾞ−−""""""::::::::::::::::::::::::::::::L'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｮ:::::::::://|.|ｌ //ﾞlﾞl　　　::::::::::::::::::::::::::::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l┌┐//::::|.l:://::ﾞlﾞl,-----ーーーーt:::ﾛﾛﾛ--_____
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|└┘//::::ヽ∨/::::ﾞlﾞl　　:　::::::::／:　:::::::ヽ:::::::::::::::::::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ______ｪﾛﾛﾛj.::::::::::::::／::::::::::ヘ＼::::＼::::::::::::::　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
　　　　　　　　　　　　　　 ｮ l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::::::::::::＼＼::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回　AAで学ぶ経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第十回　ミスター日経連】】　　　　　　　　　　　　　　　　　
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161：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/13(土) 17:32:10 ID:tSPrWWi20
今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。

162：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/13(土) 19:05:01 ID:i9HYLBL60
乙ー

163：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/13(土) 22:04:41 ID:wLFU7CEg0
乙でした！

164：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 00:24:18 ID:XNsQFBq60
乙です

165：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 10:27:50 ID:UUTmT5HM0
乙
ヤンマーって「ヤンマ」だったのか

166：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:01:19 ID:y7x6N7.20
では時間になりましたので投下します。

167：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:02:15 ID:y7x6N7.20


経団連、正式には経済団体連合会とよばれる。「企業の価値創造力強化、日本と世界の経済の発展の促進」を目的とし
戦後の日本経済の発展に尽力している。

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168：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:02:27 ID:y7x6N7.20

その会長には財界を代表するだけの経営者が選出されている。

　　　　　　　　 ＿,､―― ､＿
　　　　　　 ／´　　　　　　　 `＼_
　　　　　／　　　　　　　　　　　　＼
　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　 `ヽ
　　　 /　　　　　　　　,　　　　　＿_　　 ＼
　 　｜　　　　　 ,＿ノ　　　　ニ―こ､　　 `l
　　　`l　 ,−､　　　　　　　￣―― ,ヽヽ―､|
-―／| /／）＼　　　　　　　　　　　| ）`― ､|
llllllllll|:|'( （/|　 ｜　　　　　 ,-==ﾐ,　　　／`/
llllllllll|::|'ヽ ν　 ＼　　　　 ヽ､ `'ﾌ　　/=､ノ　　　　　　　ちなみにワシは二代目じゃ。
llllllllll|:::|ノ入　　　 ヽ､　　＼_＞'´　　 |`'）'.　　　
lllllllllll|:::|ノ（　　　　 ノ　　　　 イ　 　 l､フ　　　
lllllllllll|::::|/ヽ　　　イ /　_,､-'´　`ヽ__,､ノ）　　.　　
llllllllllll|::::ヽ |`ヽ／｜| /―=､‐-､/_ |／´
lllllllllllll|::::::|　　）､　>､ |ヾ､_冫`フ/／
llllllllllllll|::::::| 　/　Y　､,―ミヽﾐ彳ノ
lllllllllllllll|:::::::|/ ＿ ヽ､　/　`―l´´
lllllllllllllllll|::::::|/::::::`|￣`――'´
lllllllllllllllll|:::::::|:::::::::/|
llllllllllllllllll|:::::::|:::::::|::|　
　　　　　【石坂　泰三】
　　　　　【ＩＨＩ・東芝会長】



財界総理と呼ばれた石坂泰三や、土光タービンと称された土光敏夫。世界最大の製鉄会社を設立し、
協調経営を唱えた稲山嘉寛など、日本を代表する経営者が就任している。

169：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:02:39 ID:y7x6N7.20

そして、経団連と統合されたのが今は無き日経連、日本経営者団体連盟である。
労働問題を大企業経営者の立場から議論・提言する目的で結成された組織であって健全な
労使関係の構築のために設立された。


　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　 ｀ヽ､　　　／ ＿＿＿_　　　　　＿＿　　　　/
　　　　　　　　　　　　　ﾄ､__／￣￣｀`ヽ`ー'´／　, ---､　 ｀`ー‐'´　　　 ＼　 /
　　　　　　　　　　　　　|　　　　 ,ｲ'⌒0ヽ`Y´ ／0　　 / ｀ヽ、　　　　.へ､_/ `7　　　　　　　私も日経連の会長を務めてたんですよ。
　　　　　　　　　　　　　｀ヽrｰr!ミヽ＿_ ヽ人_(_ノ二二干ﾐヾ||`ｰイ回├1||　 /
　　　　　　　　　　　　　　　|　| ﾄミ|"" 　(_　_,)　　¬　}三| | |　　|　　|　| |　/
　　　　　　　　　　　　　　　|　| ﾄミ|　/　ﾄ===＝1　!　 |三|_| | 　 |　　|　| | /
　　　　　　　　　　　　　　 └‐1トミ| 　　||　　　||　i 　 |彡| | | 　 |　　|__ﾙ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 !|ﾐﾐ|　l　||　　　||　l 　 |彡| | |　 └---ｲ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ||ミﾐ| 　 ||´Y⌒||　　　|彡|」 |　　//__／
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !|ﾐﾐ| 　 ||_│　||　　　|彡|j ﾉ　 //
　/￣￣＞──-　..__　　　　　 `＝=ｭ　||」j ___jj　 _r〒ｧナ二Ｚ　　　　 　 _　r一
　　　／ ／　　／　　／｀` ｰ　..__/ /　/｀`ーr‐'"´ 　 /}/　　　r＞---ｖ'´ /
　／　／ 　 ／　　／　　 ／ ／ // 丁　　　i　　　 ／ /　　　／　 ／/　 /
　　 /　　 /　　／　　 ／ ／ , イ/　 i　　　　　　／　 /＿rr'´　 ／　/　 /
＼/　　 /　　 /　 　 /　/　 （　　ヾ､」　　 　 ／⌒二二／ 　 ／　　/　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【三鬼　隆】
　　　　　　　　　　　　　　【八幡製鉄（現新日鐵住金)社長】

170：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:02:51 ID:y7x6N7.20

今回は経営者の立場から、日本の労使問題を取り仕切り、なおかつ自社の経営を両立させた
人物について語る。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_..-ｪｒｔlllｯ=ｌ=4ｮｮ＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _..ullXj广｀ﾍ ヽ　　 "i:;:;:;:;:ｮ 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r'フ’丿.. ＼　/ l　　　　 i::;:;:;:;:;l'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ''’〃‐''广´　　｀,ｬｮｔｔｔｮｮｪ、ﾞl:;:;:;:;:;:;:;:l、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j−--... 、/（llllllllllllllllll）'、i::;:;:;:;:;:;:;ll'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l 'ﾆｴｴ./.　|　ﾞllllllllllllllllヽ　　":;:;:;:;:;ll'、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|￣　　/─＼｀ﾞﾞﾞﾞﾞ"""　＼ 　lム"ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │　　 /!!!!!!!ワ　　　　　 ｨ'"t_|lﾞT'、|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:jll Y　 　..,,,,,,,, 、,,,,,,,　　　′ ﾞ'〈| }lｿ丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞl　|　　jiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiil∟　 、　　　{_:;:;|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞl、 _ jl广´｀　　　｀ﾞ`ｰ ヽ　　 !:;:;:;l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞlt 1'´　 n==lｔぃ　　　/ ﾉ　 ''l:;:;|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞl ゛ ''┘　　 ｀丶　　　　　　丿 '、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'ﾞl'、 _,,_..＿..＿__　　　 __〃 　 ﾞ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ　/::::::::::::::::::::::::＼]}Iilｔlillllﾆ_..uuuj
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第十回　ミスター日経連】　　　　　　　　　　　　　　　　　
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171：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:03:09 ID:y7x6N7.20

今回の主人公広、櫻田武は広島県福山市赤坂町に生まれる。

　　　　　　　　　／:ヽ:ヽ:::ヽ::::::::|:::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　 　 　 ／x--ー/−/ ヽ__,x<---ー- x:::ヽ
　　　　　　 /::::/　　 /　 /　/ 　 　 l　l　 ',　　|:::::',
　　　　　 <:::::::|　　/=___l＿|＿_ __. | ｜__ ',　 |:::::::',
　　　　　　|:::::/ 　 |ー- l--|　　ー-|- |-- |　 l::::::::l
　　　　　　|:::/　＿|＿＿__,　　　　　, ＿＿＿,,＼:::|　　　　
　　　　　 ｘ┤　=ヽーtｯ- ,_ ヽ　　 / _-ー-_≡= .Yヽ
　　　　 / ﾍ|　　´ 　｀￣´ /　ｌ　　ｌ:::: ｀￣´ミミﾐ;;;;|　ｌ　　　
　 　 　 l （(.|　　　　　　　 |　 | 　 |::::::　　　　ミミﾐ|) ;l
　 　 　 ヽヽ|＼　　　　 　 ｌ　 | 　 |:::::　　　　　ミミ|;;/
　　　　　 ヽ|　 ゝ　　　　　l　 |　 ｜::: 　 　 　 ミミ|/
　　　 　 　 .|　/　 　 　 ∠｀ヽl＿ lx´::＼ ＼　ミﾐ,|
　　 　 　 　 l　 　〈　／/////////////＼ l　　ﾐ|
　 　 　 　 　 ヽ 　 l ´￣￣￣￣￣￣￣￣｀l 　 ﾉ|
　　　　　　　　| ＼　　　　　======,　　　　/　/｜
　　　　　　 　 .l　 ::＼　　　　　　　　　　　　／　 ト.
　　　 　 　 /ヽ |　 ::::::＼　 　 　 　 　 　 ／:　 　| ;;|
　　　 　　/　　ヽ　　　:::::｀ー------−´::　　　/ ;;;|
　　　　 /　　　 ∧　　　　:::::::::::::::::::::::::::::　　　/　;;;;;;;ヽ

第六高等学校を経て1926年（大正15年）に東京帝国大学法学部を卒業するという
秀才であり、卒業後彼は日清紡績に入社する。

172：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:03:23 ID:y7x6N7.20

当時の日本において、世界に通用する産業は紡績業であった。特に絹の品質は当時から世界トップクラスであり、
紡績業は日本経済を牽引する花形であった。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿,,,,,,,,,,,,................,,,,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -‐'''´￣￣￣￣￣￣￣￣i ｒー-､=､
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　'´　　　　　　　　　　　　　　　 | |　　　＼ヾ￣￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　ｒ─-／ ,,,,,,＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__ﾉ jV´￣｀i .i ヾ､￣｀i }　　　　ちなみに、ウチの会社は自動織機の製造が原点なんです。
　　　　　　　_,,,　-‐─'"｀￣￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　 ト┴─'"┴く"ー-'く
　　　　,‐'''´　　　Οｌ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾌ　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　ﾋｦi　　　 .i
　　 /ﾜ: ;=､;　＿＿＿＿＿__　　 ,-=‐､: ,ｒ'''´￣｀ヽ,:　　　　, -‐､　ﾟi　　　　　　.i　　,ニi
　 ｒiノ::（ .,ﾉ　ｌ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾉ （（　　ノ:(（__　 　_,ノ::　 　　/二'''ｰ､ i　　　　　　 i　　ﾚ‐,}
　 |　　 ´　.ニニニニニニニニ　｀¨´　　￣￣´　　　　　/´ ｊ ｌヾ､ヾｊ　　　 　　 ｌ　　ｌ,ﾙ1
　 }`;ー─--┬──‐┬--────､ ､-──ｧ　　　　ｌ､｀ｿ .し',１:i　　　　__/　　ﾉl}.Ki
　ヾ,{（　.）::::::::|　　　　　|::::::::::::::::::（　 .）} └─''"　　　　 i .｀}（ ）´| ｌ::ｌ-‐_ニ-‐,'''''":::;ｉﾑｿ
　　ヽ_`ニニー―───────‐'　└─'"　　　　 ﾉ''",へ,ヽｊ ｊ::ｊ"´　　　 ヽ;;;;;;__¨ﾉ
　　　 　＼::`''ー'"￣フ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヾ::::::､:＼ﾞ--'ﾝノ::/
　　　　　　｀''''ー'''"´　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､;;;＿＿'''"ノ
　　　　　　　　　　　　【トヨタ自動車】





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　____＿,,,、、､､､､､､､､､､､､､,,,,,,,,,,,,,＿_＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　／ﾞ´￣￣￣￣７　 , -ｰｰｰｰ‐ｰ,┌ーーーー､｀､
　　　　　　　　　　　　　　 　／　　　　　 　　／／　　　　　　 　l l　　　　 　　 l ﾞ,
　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　 　／／__　　　　　 　 　 l l　　　　 　　│ﾞ,　　　　　　　　　あら奇遇ですね、ウチもなんですよ。
　　　　　　　　 　 _ , ､-´ｰｰｰｰｰｰｰｰ→´／ﾆ___）_________________l│__________,,,､」　l7
　　　　 _,､-‐･ﾞ´,=ﾆニ＞　　　,　- ｰ ﾞ ´　ｌ　　　　　 　 　 　 ___ l　　　　　　 　　　 │
　 　 /-,_________￣￣,´-､,･´　　　　　　 　ｌ　　　　　　　 　　｀ｰ´l 　　　　　　　　 　〔l
　　/（ノ　　,_______￣l,_,,ノ　 　,　----､　ﾛ.ｌ　　　　　　　　　　　　l　　 　　　/,ニニ､ l
　　ト　‐====,ｰｰ┘------,/･´_ﾆ_ﾞヽヽ,. ｌ　　　　　　　　　　　　l　　　　　ｌ / Vヾ,ヽｌ
　　ll二ll_____│￣l　l￣l　 /　 ,´ ∨｀, ﾞ, l│　　　　　　　　　　　ﾉ　　　　　ｌ l＞o＜l ﾘ
　 └-ｰ====ｰﾆﾆ､二二 _l　 l,＞()＜l ｌ ｌﾞｰｰｰｰｰｰ-_-__二二二二ニニ/　ﾞ､.∧ ,ﾉ/
　 　　　･､｀ー´ノ　￣￣　 ｉ　　､ ∧丿ﾉ ￣￣￣￣　　　　　　　　　　　　ヽ､,,｀二ノ
　　　　　　｀ﾞﾞﾞﾞ　　　　　 　 ｀･､　二､･´
　　　　　　　　　　　【スズキ自動車】

世界で一番最初に自動化されたのが紡績業であり、トヨタやスズキの源流が自動織機から来ていることを知れば、
紡績業、繊維業がどれだけ貢献したのかは自明の理である。

173：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:03:35 ID:y7x6N7.20

日清紡績（現在の日清紡ホールディングス）は福沢諭吉の婿養子である福澤桃介によって設立された。


　　　　　　　　　　 , / ,ィi　ノz＿ ..ィ ,
　　　　　　 　 (　/(人(:::γ::≦:::::::ノく
　　　　　　　　ｉ乂:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::≧-ノ)
　　　　　　 (し'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈
　　　　　　 ､_ﾌ:::::::rt:fｉ:::::「ヽ:l:「ヽ::「ヽ::::::::::::ソ)
　　 　 　 　 彡ﾍ::::| |八::::＞ﾐ入人:＼≧了:::く　　　　　　　　　東邦ガスや大同特殊鋼も俺が作ったんだよな。
　　 　 　 　 　 r<八_r=::::::::::::x≧ 三r=ミ':::≧::)
　　　　　 　 　 `≧7ゝ弋ｼ二ﾗ 　 ｀::|rう Y::::::::ゝ
　　　　　　　　　 У　　｀　 　 　 　 i:|ﾘﾉ ﾉ:::::ミ乂
　　　　　　 　 　 〈__　　　　　　　　 l:|_／::::::::ﾐ::Y丶
　　　　 　 　 　 　 ｉ'´_　　　　　　　 ヾﾐ从彡从ﾘ ､ ＼
　　　　　　　　 　 _',　...`　　　r‐‐　二二二二イﾄ ＼ ＼
　 __ 　 ．-＝ 二三ｉ .::　　　　l　f´//////////∧　j 　 ＼
r´　_　‐　 ￣　　三ゝ__　..x≦|　|////////////厶'_＿＿ ＼
ヽ <=　　　　　　 　 三ｉ ニⅣ |　|/////////＞///////////
　＼＼= 　 o＝o　 二|　Ξ'　|　|/////＜´／////////////
　　 ＼＼　　　....．≦_|　　　厶 入イ///／///////////////
　　　　　　　　　　　　【福澤桃介】
　【日清紡績創業者・電力開発を手がけたことから電力王とも呼ばれる】

174：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:03:46 ID:y7x6N7.20

そして日清紡績を好不況の波に左右されない、紡績業界屈指の優良企業に育て上げたのが宮島清次郎である。




　　　　　　　　　　　　 .:::／////////////////////////////＼:...:’
　　　　　　 　 　 ．.:::.:／////////////////////////////////＼:.:：
　　　　　　　　　...:...://///////////////////////////////////＼:....．　　 :
　　　　　　　　.:’:...:///////////////////////////////////////∧:.:.　　 .:
　　　　　　，.....::::../////////////////////////////////////////∧:::.　.::
　　 　 　 　 ,...:..:.///////////////////////////////////////////∧::::.:　　　　景気は常に上を向いているわけでも下を向いているわけでもない！
　　　　　　:.:：:..://///////////////////////////////////////////i|::::.
　　　　 　 .:::.:.:.:|///////////////////i／}///////////////////////|..:・:.　　　そんなものに右往左往してはいかんのだ！
　　　　　　.:::.:.:.:!/////////////////／　////////////////////////i|:...::
　　　　　　:.・:..:.|///////////////／　　/////////////////////////}:.:.’
　　　　 　 :.::::.:.:|///////////≫''"　　　//////////////////////////:.
　　　　　　 ’::..:.V￣｢il￣}￣　　　　　　〃/////////////////////////.:
　　　　　　　 :.:::.:i､　ゝ- '＿＿＿____,イ//////////////////////////:.:.
　　　　　　　　.::__ヾﾊ二ﾆ==----=彡//////////////////////////:...::・
　　　　　 　 ///∧∨/////////////////////////////////////::.:.
　　　　　　 {/////} ＼////////≫'"￣￣￣ヽ////////////////::..::’
　　　　　　 ∨///{　.:::.＼/////´ -‐__,,, -==ﾆﾆ//////////////}:::.::
　　　　　　　 ＼//＼__:..://///777///////////{77∨￣￣}////:.:’
　　　　　　　　　` ＜/////＞'"￣￣￣￣￣￣￣∨//＼__ﾉ///'
　　　　　　　　　　　　￣￣.::::’::.:::::::’：::::.:::.:.:.:::..・:...:.:＼////＞''"　　
　　　　　　　　　　　　　　　　【宮島清次郎】
　　　　　　　　　　　　　　　【日清紡績社長】

175：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:04:00 ID:y7x6N7.20

石橋をたたいても渡らないとまで称された堅実経営が特徴であったが、彼はそれ以上に従業員を大切にした。
労働基準法などもない1929年に、従業員の待遇改善と業界でいち早く深夜操業を廃止している。


　　　　　　　 ,.ゝ:::‐:::..､
　　　　　　∨:::ｉ､:::::::::::.i
　　　　　　/":::::ﾒ.､::::::ﾒ!
　　　 　 ∨:i::ﾄ､::::`::::::ﾒ
　　　　_.ノ::::i:::ヾ王王'　　　　　　　　　　　　　　,ゝ-‐――-----------､
　　,ゝ':::::ヽ､:ゝ---ｨ'′　　　　　　　　　　　 ,＞':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::）
　 /:::::::::::::::::::｀ヽ:::::ゝ､　　　　　　　　　　 ∨::::::::::::::::::ゝ､ー――――‐一'　　　　　　　　社員は会社の宝！　それを牛馬のように扱うようなことはできない！
　i:::::::::::::::::;i:::::;ゝメ､::::::｀ヽ..__＿.___.＿_,=∨::::::::::::::::::::::::::::`ﾞヾ､
　|:::::､:::::::ﾒi|::ﾒ ,ゞ'":｀ヽｰ'´::／　／::::::::,':/::::::::::::::::::::::::ｰ.､__ノ,ﾉ
　|::::::::ヽ､ｉ i|:i.ﾒ:::::::::,:'::::::::／,ゝ/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　.ｉ::::::::::::::ヾ､':::::::::::::::::::::/　乂i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::‐'
　 !::::::::::::::::::::ヽ.::::::::::::::::ｉ!　　 i!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丿
　 .!::::::::::;:ｨ-‐＝｀ヽ:＿_乂＿_∨＿＿＿;ゞ‐'´￣¨¨¨¨′
　 .!::::::::::´ヘ._　　　　 ゝ､:!:_,ゝ､:::::::ヽ:::ヽ
　　!::::::::::::::::::::｀＞:､_　　　　　 ∨:::::::ﾍ:::∨
　　|::::::::::::::::::::::::::::::::::｀¨¨¨ﾞ＞:.､i!::::::::::ﾍ:::｀ヽ､
　　ｉ:::::::::::::::::::､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ::::::::ﾒヽ.
　 ﾒ:::::::::::::::::::::メ｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::メメ´ヽ.
　ﾒ､ﾞヽ:::::::::::::::::::ﾍ　｀ヽ､::::::::::::::::::::::::::::::::::ｉ:'´:::::::::::::∨

176：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:04:16 ID:y7x6N7.20

こうした宮島の強いリーダーシップと、経営理念に櫻田は深く心服するようになった。




;:ゞ　/　　　　　　　　　　| 　　｀ ＜:>､　 /　 i　　　　　 i}　 　 　 　 i　　};:
ゞ　/　　　　,．.、　　　　{　　　 ヾ､ ｀>:>..、　　　　＿ /　_,,,,、_　　 ヾ　≧
ｲ　　　才'''¨^''･＜≧ミ;,,､_　　　/} i　{ .｀＜ヽ''/////////≧.､ﾞﾞ¨ヾ　　　　　　　　　なるほど、社員は会社の宝か。そして、景気に左右されず、
　＞''´ 　　　 ＿二ニニ、≧=''' ´／ヽ ヾｷ///////////////≧、　　　　　　　　　堅実たる経営こそが大事なのだな。
　＿＿　　＜¨_．厶ﾐ>-‐'　'　i }　　　　/　{//////////////////}二
　 彡　´ ､ 　　 　　　　／｀ 　 |　　　　 i　 ヾ/////////////////i ≦
　　´ 　　　｀ ｰ-─　''´　　　　i　　　　 .|　　.＼///////////////
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　 　 　 .i　　i　 ｀＜//////////,ｲ
　　　　　　　　　　　　　i　 　 　 　 　 　 }　　i　　　　｀ｰ----‐ヾヽ
　　　　　　　　　　　　　i　　　i　　　　　 |　　:i　　　　　　　　　　 ヾヽ
、　　　　　　　　　　　　i　　　}　　　　　 |　　 i　　　　　　　　　　　 ヾヽ
:.＼　　　　　　　　　 /　　　　i　　　　　　i　 　 ﾍ　　　　　　　　　　　ヾヽ
　　|　 　 　 　 　 　 {　　　　 ゝ　　　　　 }､　　　.V　　　　　　　　　 |’ ヾ
　　|　　　　　　　　 {　-‐　''´　 ｀¨ ‐ ¨´　　｀ ‐- .}　　　　　　　　　 |

177：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:04:30 ID:y7x6N7.20

また宮島も櫻田のことは大層気に入ったようであり、何かと彼に対して世話を焼くようになる。



　　　　　　　　　　　　.., ,　.;:.:．.;. _:: _ .　 .　　　.
　　　　　　　　　　::,::ｒ:::ｾ"夭 ::":::"ぅ::..､ ::: :．;; :..: :. .　　　　　　　　　　　,．..．
　　　　　．: ;:ｨ::"´:::　　　　　　　　..:::::::ﾞ心､；: :::‘:: ..　　　　　　　　　..::．:::：::’
　　　 :: ::,〃::::　　　　　　　　　　　:_; 　 .:::;ヾ;;:.：:.:．::.　　　　　　　 ‘ :::．:;:’
　　　 :.〃:::　　　　　　　　　;;:＞' ´/.::　　　 .::;ヾ.::::’::.　　　　　　　　 ．::；::．.
　　.:::〃::　　　 　 　 :::;＞''´　 　 /.:　　　　 　 ..::;ヾ,.::.　　　　　 　 　 i.::．；:
　　 :/::　　　　　.::;;∠´　　　　 ,,:′　　 　 　 　. ..:::ヾ;::．　　 　 　 　 {::..::;}　　　　　　あの櫻田という男、なかなかたいした男のようだな。
　 .::i::　　　 　 .::ｒベ;;:`Y　　 ／.::　　　　　　 　 　 .: .::ﾊ::..　　　　　　　}:ｒ'’
　::;{{::　　　　.::人:_;;; .:ﾉ　／.::　　　　　　　 　 　 　 ..:::::!::.　　　　　 .::,〃
　 .{{;::　　　.::〃　 ｀´ ／.::　　　　　　　　　 　 　 　 .::::}}.::　::.　　　 ,〃
　 .::!:　　　::/　 　 ／::　　　　　　　　　　　 　 　 　 .::::}}:.. .　 ::.　／/
　.:: :ﾚ;:　 .::/　 ／:::　　　　　　　　　　　　　　 　 .. :..::ｶﾞ:::.　;::〆::〃
　　:::.V;;::　:{／:::..　　　　　　　　　　　　　　　　　 ..::;ム-':´::.:::／
　　　.::Ｖ;:::..　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ..:: :: ,／
　　　　　ゞ:;;::....　　　　　　　　　　　　　　　 ..::: 　.::__:;:..イ::.
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　　　　　　　 　 `ﾞ'＜;:::: ::: ....　.. .... ..: :::;少'.::: .
　　　　　　　　　　　　｀ ": …:ｰ::…:''::＾::．　.:..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　' '

178：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:04:43 ID:y7x6N7.20

この二人の仲の良さを表すあるエピソードがある。宮島の功績に政府から殊勲されることが決まった。
だが、宮島は非常に不機嫌であった。

　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　...:::::::／三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::／三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::/ 三三 ,−' ´￣￣￣￣￣￣￣￣　`　 -　、三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::/ 三 ／　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　_　ヽ、;;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..:::::/三／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　`ヽ＜ ヽ- 冫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :::::::/ﾐ/　　 ,− 、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-ゝ'＞'´　　　　　　男が一生をかけてやった仕事に役人が偉そうに、一等だの二等だのと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::|ﾐ/　　 / .l 　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞−,―　　　　　　区別するような権利がどこにある！
　　 , -_　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::|/ 　　 |　|　 ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　 '　´三三
　　ヽ三＼　 　 /ﾐl　　　　　　　　　　　　 ::::::::|　　　 ﾍ _ノ　　　　　　　　　　　　　　　,,;´三三三三三三
　　　 ヽ三`,,,,,,,|三l　　　　　　　　　　　　 :::::::|　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 三三三三三三三三　　　　　　　バカにするな！
　　　 　 / 三三三 ＼　　　　　　　　　　　::::::|　　　　　　　　　　　　　　／三三三三三三三三三三三
　　　　 >三三三三三|　　　　　　　　　　 :::::::|　　　　　　　　　／ 三三三三三三三三三三三三三三
　　　　ﾍ三三三三三 ＼　　　　　　　　　 :::::::|＿＿　／三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　＼三,､三、三三＼　　　　　　　 .::::::| 三三三三三 , -――￣￣￣￣￣￣´´ `　- 　 、三三
　　　　　　　 　　　 ヘ 三三＼ 　　　　　　::::::|三三三三／　 　　　 |　　＿＿__lー―――‐'ー ＿ ` ヽ
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ三三ヽ、　　 　 :::::::| 三三 ／ヽ　　　　,　'^￣////////////////////////
　　　　　　　　　　　　　　 　 ` 、 三ヽ、....::::::::::| 三 /、 　 ヽ-' ´、/////////////////////////////
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 `....三`;;;;;;';;´ 三 ヽヽ／ヽ ＿ _|//////＿-――l￣￣￣￣|￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::ヽ 三三三三`´￣//////-― ヽ　　 　　 |　＿＿三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　:::::::::::::ヽ、三三三 //, ／　　　＿ヽ―‐ 三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::::ヽ三三ヽ　`ヽ／三三三三三三三三三三三三三

179：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:04:57 ID:y7x6N7.20

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __＿＿＿＿＿＿＿___
　　　　　　　　　　　　　　　　　ｘ≦三三三三三三三三三≧ｘ
　　　　　　　　　　　　　　 .::／三三三三三三三三三三三三ﾆ＼::.:.
　　　　　　　　　　　　　.:／三三三三三三三三三三三三三三三＼::.:，
　　　　　　　 　 　 　 ／三三三三三≫'"´斗=＝=ミ≪三三三三三∧::.:　　　　　　　　　　　　　櫻田！　いるか？
　　　　　　　　　 　 :/三三三ﾆ≫'"´ 　 ／: : : : : : : :＼ ｀ﾞヽ三三三ﾆ∧:.::.
　　　　_ﾄvVi　 　 .:/三三三／　 　 　 /: : :ミ: {:|i:}: :彡:ﾊ　 　 丶三三ﾆ∧::.’　　lvVi_ｨ
　　　　ヽ三{　　 .:/ﾆ三ﾆ〃　　 　 　 _{:_:_: 彡:.∨.: ミ:_:_:}_　 　 　 ＼三ﾆ∧:.　　.:}三/
　　 　 　 V∧　.::;i三ﾆﾆ/　 __.....-=≦三三三三三三三≧=-..._　　 ヽ三=i::.　.:∧∨
　　 　 　 .:V∧,..;:;i三ﾆ厶≦三三三三三三三三三三三三三三≧=ｘ}三i|::・:∧∨
　 　 　 　 ・V≧='ﾆ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ﾆi:;:∧∨.:;
　　　　　　　∨三三三≦三三三三三三三三三三三三三三三三≧三三三/;:;.
　　　　　 　 ::;∨三三三{--､__ト＜三三三三三三三三三三＞イ｣」ﾉ}三三=/:;
　 　 　 　 　 .:;:∨三三∧｀ヽ}:::`ー―ゝ＿＿_ﾉL＿＿_」＿___ノゝイ　./三三/::;'
　　　　　　　　・::∨三三∧￣}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::厂_ /三三/:・
　　　　　　　　　　｀ヽ三三∧￣ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_厂彡'三三/'::
　　　　　　　　　　　　＼三三＼｢￣｀ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::r-┴イ三三ﾆ/:::
　　　　　　　　　　　　　 ＼三三≧xｭ　｢￣ ｀Y´￣｀Y￣ イ三三三=／
　　　　　　　　　　　　　　　ヾ三三三三≧========≦三三三ﾆ／
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼=三三三三三三三三三三三／
　　　　　　　　　 　　　　 　 　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


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　　　　　　　　　　　 ,. -=三三≧ミﾐﾐ三≧ｘ
　 　 　 　 　 　 　 ィ三≧i´￣｀Ｘ^>ー一くヽ}　　　　はい、どうされたのですか会長？
　　　 　 　 　 　 　 }三≧{　〉　{　＼ー‐　} ﾊ 　 　
　　　 　 　 　 　 　 }三彡′, ‐＝=-'＼ ､二 }　　　
　　 　 　 　 　 　 /⌒Y´ ｰ Y´で)ヽ　ーi'⌒ヽ　 　
.　　　 　 　 　 　 いﾍ　　ﾆ　`ー '/　ｉ　 |、::::ｊ 　 　
　　 　 　 　 　 　 ヽ 〈　 ヽ.　　 　 　 |　 | ￣〉　　　
　　　　　　　　　 　 Y┐　 } 　 　 く__ーｧ 　 l
　　　　　 　 　 　 　 |::{　　　 　x≦三三ヽ　l
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　　　　　　　　　/ ｀ ｰ-≧ - 、　　 　 　 .ｨ、
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180：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:05:09 ID:y7x6N7.20

なんと宮島は櫻田に殊勲を断りにいけと命じたのである。

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　　　　　　　　ヾ∧:.＿:..:／//////////////////////{:....:’
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　　　　　　::.....:::.:////////////////////////////////i:..:::
　　　　　　 :::...:./////////////////////////////////{:.:’
　　　　　　,:..:.://///////////////////==ミ/////////∧::::::.
　　　　・:....:::.///////////////////// 　 　 ＼////////ﾊ:....:　　　　　　　　お前ちょっと言って、この話断ってこい！　私は殊勲をもらいたいからとか、
　　　　　　,.:|////////////////////|　　　　　 ∨//////∧.:’・　　　　　　肩書きがほしくて仕事をしているわけではないのだ！
　　　　 .:::’::i////////////////////{　　　 　 ／∨//////∧:...:’
　　 　 ﾞ'’::...:!///////////////////∧　　　 /　 /}////////i}:....:　　　　　ましてや偉そうに一等二等と区別するような奴らの殊勲など、何の価値もない！
　　　　　 :::.:|////////////////////∧　　 i 　 ｀ !////////l:::::’
　　　　　，:::i/////////<ﾄ､//////////＼　 ｀ﾞ¨¨ {////////’:....　　　　　　断ってこい！
　　　　　 .::.:∨////////77L｣ト､////////＼　　　i///////!:::'::...
　　　　　　.::.:∨////////////ヽ{｀>､///////777///////{:...::
　　　　　　　　∨//////////////L__>､///////////////!:..’
　　　　　　　 　 ＼//////////////∧ ∨/////////////’
　　　　　　　　　　 ＼//////////////L｣////////////':....:
　　　　　　　　　　　:..:￣:..:＜///////////////////＞':..:
　　　　　　　　　　　　　　　 　`＜////////////＞'":..:.:.，・
　　　　　　　　　　　　　　　　 .::::.:':./￣￣￣￣:..:::...::.

181：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:05:26 ID:y7x6N7.20

櫻田も納得して辞退の使者役となった。そして櫻田本人も後に殊勲を受ける機会に恵まれたが、
師匠といってもいい宮島にならい、断り続けた。

　　　　　　 ⌒ ､
　　　　　　　　　ヽ　　,,,,-----,,,,,,,＿
　　　　　 ,ー'""`ゞ/;＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,｀ヽ
　　　　　　　,r-'"''''''' '' ヽ'''''''''''''''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;,` ､
　　　　　 ,-''`ｰ､　　　／　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
　　　　,.'"　　　 ＼,／＿_ _　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;|　　　　　　　はは！　それもそうですな！
　　　　〉`ヽ　　､／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　'､;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ
　　　./´｀ ／　　､ヽ;;;;;;;;;;;;;;;/.,　 ｀`-､;;;;;;;;;;;;;;;;; ,`
　　　|　／ _,　　　　￣￣￣　｀`ヽ,　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`
　　　|　＼　､　　　　　　　　　　　`､　|;;;;;／⌒ヽ/
　　　|　,,iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii,,,　 ﾞヽ|;;/､'　` ）
　　　|　ｧ--------------‐'ヽ;;;,,　　`､ 〉 ） /|
　　　.| .l ｰ-‐-‐-‐-‐-‐-‐-‐､, |;;;　　　(＿／;;|
　　　 |　|;;;;;;;;;／:::::::::::::::::::::::::::::::l'　　　　l　　''''|
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　　　　 ヽ＿＿＿＿＿_,,,,--‐‐''-−−'''￣￣￣`i
　　　　　/Ｙヽ　　'/　　　　　　　　　　　　　　　　　`l
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尤も故郷福山市名誉市民は受けているが、素朴な市民の気持ちを大事にしたいという考えから
これは辞退しなかった。
宮島は櫻田を相当気に入ったのか、彼を若干四

182：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:05:39 ID:y7x6N7.20

宮島は他にも「感謝報恩」を座右の銘とし、清貧な生活態度を生涯貫いた。
それは、会長退任後、一切の退職金を受け取らないほどであった。

　´　-‐=＝ ニ　　　　　 ＼　　 }　／　＼
/　　　　　　 ､､=-=＝＝≠ミ ヽ / / __,∠⊥､
-‐　　ｘ≦三ﾐﾞ　　　　 〃〃´ヾ\⌒ヾぃ、ヾﾐドﾐX
　´／/　ｘ豸　　＿ 三|| fｆ　ニ } 　 　 ||ﾊ　 ヾ､ ',',
／　/／　 ﾊ　＿　＿_|| |ﾄ、二 {ﾆニ　|l　|　| |ヽ ｉ|
/　/　　／　}　　　 　 || ||ミYニ }ﾆ iニ||ﾆ|　| | || ||
/⌒ヽ /　＿_ 二＿＿|| ||　}}ﾍ ￣　厂|｢_｣　| | }} ||
/＾>､'} {´ ＝キ ﾍ弋・ﾃド!ミxﾉ__　ﾑrﾋ･7ﾌ|　| |,ﾘ jj　　　　　私は退職金がほしくて経営者になったわけではない！
　｛ { } { 　´　"''　｀二'|| || /｀　　 { ミ=||彳　|〃 ｛{
＼__｝} {　{　　　　　　 |! |!{　 　 　 l}　 ||　|　|{{|　 }}　　　　既に日清紡績には櫻田を筆頭に優秀なる経営陣がおる。
＼　 } ｷ 　 、　　/ 　 l! l! 〉　 　 　|　 ||__|　| }|　 ﾘ　　　　ならば、飛ぶ鳥後を濁さず、すっぱりと辞することとした。
　 |ヽ} キ 　 ヽ／　 　 ! |/ 　 　 　 |　 l!Y!　! ||
　 !　}　ｷ　　 ﾉ　＿　 ,!ｲ｀ヾミ＿／　､|__|　l　l|
/｜ }　　`ー''"´／　 ,.! !-‐…━= ､　|ヽl　|　||
//　|ﾍ　　　　 /　　'´ | |　　 ＿　　 ’{/ |　|　ﾘ
´　/ ,ハ_　　　{　　　　| |　“”从”“　∧/|　|　|
∠＿|　| ｀ヽ、 ゞ=､＿_|_|__／　 `ー'　ﾊ |　|　|
　　　|　l｀ヽ　＼　　　　l |　　　　　 　 {バ　 ､‘、
　　 人　＼ ＼ ｷ　　　 |,| ---'―ーｰﾍ　＼ 丶＼
　　　　＼ヽ＼ ＼⌒⌒´　　　 　 { 　 　ヽ　 ＼ ＼＼

183：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:05:52 ID:y7x6N7.20

そして工業倶楽部理事長時代、メンバーより洗面所でお湯が使えないと苦情が出た時、彼はこう返している。


.　　　 /´　　 _,.　-=ニ二 ＿　ミ　　丶,　　　 }　　／｝
　　　厶孑　 _,.　-=≦ア"＾⌒´｀＾≫ｘ　ヽ　 / _,.x≦ﾍ、
.　　厶孑　´　 　 -=}′　　　　 〃〃 ＾ヾ},.厶ﾍ寸＝=-　、
　　′　　　厶　／}/　 =-　‐-〃〃　 .,_　　 　 i! ',　}トミ{ﾊ　　　
　　　　 　 /　 _,ィ人　 ‐-　　､″″ミ=ｰ ｝_, -‐i!　!　l　｀}　',
　　　厶=く=彡'´　　}　　　 　 i!トi!ﾄﾍｰ　〈 ｰ ⌒i!　ｉ　l　 ,}　 }
　　/ ,r‐ミ豕′‐-ミ、 トミ,_　i!　i! ヽ}_⌒ミ=-}　i!　ｉ　　 小 ﾘ　　　　お湯が出ないならばそのまま水で手を洗え！　冬を越せないような老人など、
.　　 　 /ｱ ｊ:{　, -=キ 戈弌_ヮトミ,_ Ⅵ　 　 √ i!　ｉ　　,{ﾘ　{　　　　企業経営の厳しさには耐えられないから遠慮なく退いてくれ。
　　　　ゝ{ 7{　　　 介=- ｀¨ i!ｰｉ!牛-ﾍｰ　ｧ尤.ﾜ广!　 .小　 }
　　＼　ｰ7:{　 :{　　　　　　=i!ﾆi!ヲ'′ 　 {主=‐i!‐１　 {ﾘ　 ｛
　　　介ｖ伝　　　、 　 　 　 i!　i! 　 　 　 E三=i!　:i　 ｲ
.　　/ ﾘ　}　{ 　 　 Y／　 　 i!　i}:､　　 　 | ｦ　i!　 !　 :{　　 i
　　　/　/_ ｛　 　 ,:′　　　 i!　i{′ 　 　 |　　i!ヾ:ｉ　 :ｉ|　　 |
　　　　/冫 廴ﾆ=-‐　ア　　i! 个: .　　　人　 i!　ｉｌ　 ,|{
.　　　/ ﾍ、＿　　　／　 _,..⊥..∟ ﾞ≧K,　 　 i! :i l　.小
　　　　　介三ニY´ {　 ′　i!　i!　　　　 ヽ　 i! il l　{ﾘ
　　ー=彡'⌒ヾ/∧　 ､　 　 i!　i!=＝ミ､　　/ i!i l l　{
　　=爪　{　　　Y/ ゝｚ,._,_　 i!　i!,メ八,　,_, ／i!i l l　{


後に櫻田は「宮島そっくり」と称されることになるが、それだけこの二人は気があっていた。

184：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:06:06 ID:y7x6N7.20

櫻田が社長に就任した1945年。日本は終戦を迎える。そして、彼らを迎えたのはGHQと、
共産主義を本気で信じていた破壊的な労働団体である。


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　　./ 7
　 / /　 　　　　　　　　　　　　/ 7
ﾆ　　ﾆ二7　　　　　　　　　　/ /　　　　 　 　　 　 　 　　　/ 7
/　/ 　　　　　/二二二 ﾆﾆ　　ﾆ二7　　　　　　　　　　　/ /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
.../ 　　　　　　　　　　 ／／/ /　　　　　　/二二二 ﾆﾆ　　ﾆ二7　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＿／ ／
/ 　 　 　　　　　　　／／ ./ /　　　　　　　　　 　 ／／/ /　　　　　　, .　／ ￣ ￣￣ ￣ ￣￣￣
　　　　　　　　　 ／／　 / /　　　　　　　　　　／／　/ /　　　　　　　　　　￣ ￣ ￣￣ ￣￣ ￣／　／￣￣
　　　　　　　　／／　　/ /　　　　　　　　　／／　　/ /　　　　　　　　　　　　　　 　 　 .ﾆ 二二 ﾆ≡≡三三三
　　　　　　 ／／　　 ./ / ＿＿＿＿＿ _　／　　 ./ /　　　　　　　　　　　　　 ﾆ ≡ 二二 ≡三三三三三三三
　　　　　　　　　　　 / / .|.:.:に＿＿」」:::::::Y^^^`ヽ___　　　. :. :. :. :.: .: .:.|､　　＝ ﾆ 二三 ≡三 三三 三三三三
　　　　　　　　　　　　　　|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ノ　　　　 |┘. : .:. :. :. :. :. :. .p'ﾞ;;.:O . :ｑ .: ;:;ﾞ ,ﾞ,od .:'`;:; ,　ﾆ三三三三
　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣￣￣　く　　　 　 　| .: .:. :. :./」二」p'ﾞ;;.:O . :ｑ .: ;:;ﾞ ,ﾞ,o彡ﾐﾐヽ　＿＿.: ;: ;:; ;:;;:;:;;
. :. :. :. :.: .: .: .:. :. :. :. :.: .: .:. :. :. :. :. :.: .: .:.｀`ヽ　 ,､､ノヽo b .〔」ﾞ''' ''l〕.: :;:; p'ﾞ;;.:O ｑ .: .::.}-',ﾐﾐﾐ!「　-‐ ─ヽ; :; ;;;;;;
.../ l. :. :. :. :.: .: .:. :. :. :. :. :. :.: .O od .:'`;:; ,.: ;oV"´　　 1　　..」ゝ‐/:`ｰ-､　　　「￣ |　 L_ノｼｼ　 , - ─ ミﾐヽ;:;:;;
/ 　| p'ﾞ;;.:O od .:'`;:; ,.: ;oQ r;;;;;;;;;､p o ..:.,,､､､､',　　 　 1 .::.:.:::〈瓜ﾉ:::::::::',〈⌒〕二二ﾆ‐.:::::::::ﾉ　 - ─ ミﾐ _丿;:;;;
　　.|.　ム) p'ﾞ;;.:O od .:'`;:; ﾉｰ`ﾐﾐ!　　 彡',',',',',',;',　　　 l!.:.:::::::::::::::::.:...:: /ハ`ヽ-─-､.:::::::ノ.:.＼　　ﾉ　　　 ﾆ三
ﾚ彡ﾐ　|:::::l　　,;彡ミﾐヽ　　 },_, ｲ:::::::::ハ;;';';';'';';'';;;!　　　il!.:::::.:.:.:.:,r ‐く　ﾉ　ﾉ__/｡:::.:.　 　/. :; :; :;: ;V . :. :ィｲ三三
l彡彡_ﾉ.::ﾉﾐyｲ彡ミミﾐﾐ;:y.:.::::.:.::::::::::.:}‐､i;;:r ,;:;:;:;:;!　　　ll!;:;:;;:;:;;/jjjjjijijﾚ;:;:;;!　 i!　　　　/.: ;: ;: ;: ;:;ニ三 三 三三
ﾚ.:.:. ﾆ三三 〉彡ミﾐﾐﾐﾐﾉｨｲ彡 ミﾐヽ.〈　　ソ;:;;;;;:;:;|　　　llll!;:;;;:/jjlijiijijiﾘ;:;:;:;:;!　ﾘ　　,..イ. :; ; ;;;;; ﾆﾆ 三 三三三三
.:.:.:.:ﾆ三三ハ彡ミﾐﾐﾐ,'ｨｲ彡 ミﾐミﾐﾐ',ﾊ　　,r-─ﾉ　　　　ﾉ;:;:;ヾ州州ｼ;:;:;:;;ﾉ　 レ'´. :; :;:;;:;: ;;ﾆﾆ ニ 三 三三三三
.:.二三三/　 ヾ彡ﾐﾐﾐ{ｨｼﾞ jijijijijijijiiiji! ﾌ""´￣7　　　　/iijiijijijijjijijjijijijijiijｨイ; :; :; :;ﾆﾆ 二 三 三三 三三 三三
　iﾆ,r'"´　　　　ゞ;:;:;:;:;{jijijijijijijiiijijijijijl!　　 　 /　　　 .:;1ij1iji1ji1ji1ii1i1l1lj1i1j; :; :ﾆﾆ ニ三 三三 三三三三三
　|/　　　 ,. .: :;:;;:;;;;;;;;;;;;:{jj州州州州州　　　/　　　 .:;1jli1jkl1jlk1jil1j1kj1klj1li1jil1kj　ﾆ 三 三三 三三 三 三
　|　　.:ｨｲ.:;:;:;;:;:;:;;:;:;:;:;:;;:;{州州州州州!　　 /　　　 .:;jl1jil1;k1;1kk1||1||1||1|1||1|1|1|||||三三 三三 三三三三
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;

GHQにより戦前の凶悪な共産主義者達が釈放され、各地で企業を引っかき回していた。
それは労働者の権利を守るという、本来あるべき労働組合のあり方ではなく
徹底した政治闘争を行っていたのである。

185：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:06:26 ID:y7x6N7.20


余談になるが、この労働争議を無難にクリアしたのが、川崎製鉄社長西山弥太郎である。彼は本来あるべき労組と、
社員はもちろん、会社のことなど知ったことではない、破壊的で熱烈的な共産主義者を分離させた。

　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／:::;::::::::::::::::､:::::::::::::＼:::::::::::::::::::::}／:::::::::: /
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀ ＜::::::::::::::::::::::::::/::::::/::::::::::::::_ -V::::::::::::::}::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼:::::::::::::::::/:::::::,i::::::::::／ , '　Ⅵ::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::／　　　社員にいい給料やいい物を食わせてやりてえのは
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼:::::::::/{:::::/.|::::／　 /　　.!:::::／:::::::::}:::::__::::::＞'´　　　　　オラも真面目な労組と同じ気持ちだ。
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,.x＜:::::r{::::::::::ﾏ}'<:..､ /　 ,.ｨ:}∠ミﾚ::::::/:::::::::::::::::::≧=-z
　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::| {ト弋 {　 ＯﾄWiﾁ'Ｏ 　 } 厶イ .}:::::::::::::::::＞ '´　　　　だが、会社が潰れればおめえ達も路頭に迷うんだぞ！
　　　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::: 从　{:', _,.ﾆ== 　 i:. --=='　 /_/ /:::::::::::＜_
　　　　　　　　　　 　 　 　 ´￣￣￣フ=- :＼_',　　　　〈:::〉　　　　 ,'_彡':::::::::::_::::＝¬
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,.ｲ冫／z===ﾍ　　　 {_　」　　　 / ',=、:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　,./::, '　　　 / ／ｨ:ﾄ､　　¬　　　イ ::::i:　＼⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　/ {::7 　 /　/, ':/'´　 |:＞　 _,. ィ 　 　 ::|::::.　ﾟ ,--､
　　　　　　　　　　　 　 　 〃／Ⅵ　:/　 /:::::i ＼　 ! } 　 ／／ 　 　 : ::::::::.　V:::}┐
　　　　　　 　 　 　 ,.　-= '　　　 }!　′./::::::::|ヽ　ヽl　.／／::　　　　　　:::::::,.ｨ:::::|ム
.　　　　 　 　 　 ／　　 　 ﾉ　 　 ∨　 .i::::::::::ﾑ　 　 ｀ ∠　 __　　　　　 ,.xく:::::／　 ‘,┐
.　 　 　 　 　 ／　　　 ,　　⌒ ー_}　　 |:::::::::::::::＼　　　 ｀丶　｀ヽ_　イ::::＞'´　　 ／,.:',


この作戦により元々西山が社員思いであることを知る職工や、社員達の心を掴むことに成功。次第に破壊的な共産主義者達は
犯罪を起こすようになり、西山は弁護士と相談の上で彼らを全員懲戒解雇する。後に、千葉製鉄所の建設で安い給料でも、
当時僻地である千葉に異動することになる社員達の多くが、西山弥太郎に付いていったのはこのためである。

　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ト 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 V::::＼
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V::::::::＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 _　　--　　 　Ⅵ:::::::::ﾊ
　　　　　　 　 　 　 　 ＜::::::::::::::::::::::｀　､|:::::::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　＼:::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::|
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::〕iﾄ､　　　　　　　　　　みんな！　今が踏ん張り時だ！　今は苦しいがオラは絶対にみんなが
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ__　-　 ﾌ　　　ちゃんとした給料を貰えるような会社にするからな！
　　　　　　 　 　 　 　 　 ,.　-─‐::::::::::;::::::/::::::::::;:::::::::::::::::::::∠_＿
.　　　　　　　 　 　 　 ／:::::::::::::::::::::::::/:::ｲ:::::: ／V:::::::::::::::::::::::＞'´
　　　　 　 　 　 　 　 ｀　ー-　 _::::ﾊ:::|:K |::／ ,. /:::_::::::::::::::ー-z
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／::::::',ヽ {` tｯ､ij,:tｯ_厶イ::::＜ト､, -　、
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣/7: ｀,ﾊ ￣　,i ¬´ ,' ´Yヽ }::ﾚi´{￣｀　、
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 {/　 ,//:ﾄ､　ﾋﾆﾌ　ｲ 　 　 ///⌒ ー ﾍ }
　　　　　　　　　　　　　 　 　 〈　 /i::{　_ i＞- く /　　_／〈　 ｀ヽ ｀Y　 ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ /∧- ｀ヽr ' ´二.イ:::{　 i ﾍ ヽ　 ',　 |ヽ!
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 Vﾑ::::≧=---=≦::::::::::ﾊ { i　 ヽﾟ,　 　 j::{_ﾟ,

186：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:06:41 ID:y7x6N7.20

こうした労組の陰で、オルガナイザーとして機能していたのが日本共産党であり、
彼らは日本全国に火をつけ、暴力闘争を促し続けた。
無論、労働者の権利などどうでもよく、実際野坂参三などはコミンテルンのスパイであった。

　　　　　　 __,,,,,,,,,,,,,,_
　　　　　 ,,-‐''´;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀;‐ 、
　　　　 〃;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;心、
　　　 ,〃;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-‐''　 ヾヽ
　　　,!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;-‐''''　　　　　 ヾヽ　　　　　　　暴力？　違います、これは革命なのです。
　 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;（　　　　　　　　　 ヾ!
　　　ﾞi;;;;;;;;;;;;;;;;;ｿ　　　　　　 ,-‐''''´｀i
.　　　 i;;;;;;;;;;;;l　　r‐'''''￣｀i＾!　〜　 .l
. 　 　 r‐.v=====l　　〜 .ﾉ .ゝ、_,,,,ノヽ
　　 　 ! .ﾍヾ|　　 ヽ.,,,,. -''　　　）ヽ. 　|
　　 　 ヽゞﾍ　　　　 ノ　ゝ--‐'' _,　　ﾉ
　　　　　ヽ人　　　　 ---‐‐‐'''. ﾉ . /
　　　　　　　 ヽ,,_　　　 ｀ ‐--‐''　 /
　　　　　　　　　 ｀'''''‐.,,,,,,,_____,,,,ノ


現在でも日本共産党が公安警察からマークし続けられるのはこういう事情が背景にある。

187：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:06:54 ID:y7x6N7.20

こうした事態に対処するべく、櫻田は有志を集めて経営者による労働問題解決のための組織として
日本経営者労働団体連盟を結成する。




　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::- = ﾆ:::::::/　 　 ／ヽ::::::::::Y´
.　 　 　 /::::::::::,:'i⌒ヽ:::- ‐=.::::::::::/　　／' 　 　〉､ : i/
　　 　 /::::::::::/: : : : : :i::::::::: -= 彡 　 　 　 　 /　 }:/
.　 　 /::::::::::::{: : : : : :.:|:::／　　　_ -=ニ刈　.∧ '.〃ヽ　　　　　　暴れているのは一部の愚者とはいえ、これが続けば日本は逼塞する。
　　 /::::::::::::::::）: : : : :.:ﾚ'　　　　 =ミ 　_　|{ /　 } '/　 :
. 　/::::::::::::::::{: : : : : :,:'　　　　　 -‐z八_ｯ圦　　} ′　i　　　　　　そうなれば、待っているのは衰退と滅亡の道でしかない。
　/- ‐ = 彡伐 _: :　　　　',　　　　　 ＾'ｰ ⌒ヽ}/　　丿
./　 　 　 　 i　　 〉　　　　 }　　　　　　　/　　 }
≧ 　 　 　 ｜　,:'　　|　　,'　　　　　 　 /　 　;
三 ≧=-　　|　 ′　 |i　,:'　/　　_ rく 　 　 　{
　-=ﾆ 三≧=-{　　　|ｉ　　/　∠二三≧=‐- '
　 三三 ﾆ =‐- ＼:　|i 　 i／ ⌒ 　 ｰ}┘
　＼　 ＼二=‐-　 ＼i　　　　　　　 「
　　^＼　 ＼三ﾆ=-　:＼」 　 　 　 ,′





　 　 　 　 　 　 　 　　/:::::::::{:::::::::ヾ:::::::::/:::::::::::／::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　 　 　　　 　 ′:/´¨＼ｰ- ､::::::{:::::::／､￣￣｀ヽ::::::::::‐-:::i
　　　　　　　　　　　 |:::::′ 　　 ヽ/ ｀ー‐ ´ 　 }　　　　 {:::::::::‐-:::|
　　　　　　　　　　　 |::/　　　　　 {＼ 　 　 　 / 　 i　　 {::::::::‐-::::|　　　　　　すべての労組諸君が悪辣なる暴徒どもではない。彼らとしても、
　　　　　　　　　 　　/　　　　　 　 　 ＼　　　　　　｀　　ヽ::::::::::::::|　　　　　　会社が立ちゆかなくなれば、仕事無くなって困窮する。
　　　　　　 　 　 　 〈　 　‐- ､__ 　｀〉 {　＼ -‐＝‐- ､　　‘，:/'⌒ヽ
　　　　　　　　　　　{　 ミ　＝ｒｯ7`/ｰ=〉ｰ/ﾆﾆﾆﾆﾆニヽ 　 }::| /ヽ　}　　　　私は従業員をなんとしても守ってみせる。
　　　　　　　　 　 　 V　　`　-‐´ {ﾞ' 　ヾ　Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ}　　｀〈
　　　　　 　 　 　 　 ｛　　　 　 　 ,|　　　| 　ヽﾆﾆﾆﾆﾆノ､　 　 ｝ 　 ′
　　　　　　　　　　　　ヽ　 　 　 / |　　　|　ヽ､　　　　 /　＼ /　／
　　 　 　 　 　 　 　 　 | }　　　　|_|＿＿ｊ 　丿｀ 　 　 { 　　　iヽ{:ﾉ
　　　　　 　 　 　 　 　 |　 　 　 /三三三三三三ヽ　､　　　 }　|′
　　　　　 　 　 　 　 　 |　　 / 〈／￣ ‐---‐ ￣＼〉　〉 　　,　 |
　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　 ,　-───- ､　　　 　 _丿　:|
　　　　　　　　　　　　　 |＼　　　 　 /　　 ヽ　　　　　 イ / 　 :|＿_
　　　　　　　　　　　「￣ヽ＿＼　　　 　 　 　 　 　 ／ ／　 　 :|二ﾌ｀ヽ
　　　　　　　　　　　|　　 　//　｀ー── ──　 ´厂￣￣￣ ´　 　 　 }

188：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:07:10 ID:y7x6N7.20

そうする一方で、彼は社員に対して徹底した教育環境を整える。ちなみに女工への教育制度は
日清紡が一番最初に義務化しており、社員を大切にする気風を彼は終生忘れなかった。


　　　　　　　　　／:ヽ:ヽ:::ヽ::::::::|:::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　 　 　 ／x--ー/−/ ヽ__,x<---ー- x:::ヽ
　　　　　　 /::::/　　 /　 /　/ 　 　 l　l　 ',　　|:::::',
　　　　　 <:::::::|　　/=___l＿|＿_ __. | ｜__ ',　 |:::::::',
　　　　　　|:::::/ 　 |ー- l--|　　ー-|- |-- |　 l::::::::l
　　　　　　|:::/　＿|＿＿__,　　　　　, ＿＿＿,,＼:::|
　　　　　 ｘ┤　=ヽーtｯ- ,_ ヽ　　 / _-ー-_≡= .Yヽ　　　　社員は大事な仲間ではないか。彼らをないがしろにすることは、
　　　　 / ﾍ|　　´ 　｀￣´ /　ｌ　　ｌ:::: ｀￣´ミミﾐ;;;;|　ｌ　　　　会社をないがしろにするも同然だ。
　 　 　 l （(.|　　　　　　　 |　 | 　 |::::::　　　　ミミﾐ|) ;l
　 　 　 ヽヽ|＼　　　　 　 ｌ　 | 　 |:::::　　　　　ミミ|;;/
　　　　　 ヽ|　 ゝ　　　　　l　 |　 ｜::: 　 　 　 ミミ|/
　　　 　 　 .|　/　 　 　 ∠｀ヽl＿ lx´::＼ ＼　ミﾐ,|
　　 　 　 　 l　 　〈　／/////////////＼ l　　ﾐ|
　 　 　 　 　 ヽ 　 l ´￣￣￣￣￣￣￣￣｀l 　 ﾉ|
　　　　　　　　| ＼　　　　　======,　　　　/　/｜
　　　　　　 　 .l　 ::＼　　　　　　　　　　　　／　 ト.
　　　 　 　 /ヽ |　 ::::::＼　 　 　 　 　 　 ／:　 　| ;;|
　　　 　　/　　ヽ　　　:::::｀ー------−´::　　　/ ;;;|
　　　　 /　　　 ∧　　　　:::::::::::::::::::::::::::::　　　/　;;;;;;;ヽ

189：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:07:25 ID:y7x6N7.20

そして戦後日本における大争議となった、三井三池争議が起きる。第三回で三菱と熾烈な獲得闘争を繰り広げ、
三井のドル箱となった日本屈指の大炭坑である。GHQの民主化政策で労組が結成されたが、
三池炭坑の労組は経営陣との協調路線を歩んでいたのだが、ここに火をつけたオルガナイザーがいた。




がれきの山
戈／リ　　　戈＿＿＿_
∨!＿|三≧=三二戈!.::|戈_
／i￣＼　　　　　　 |＞! =＜≧=― ､＿＿＿＿
＼|二≧ﾄ、　　　　弍_人＿ﾉ: : : : : / / /￣:|戈_l弍＿
__人∧　　∨￣!　　　　　　　 　 　 　 　 　 ∧ノ≧-＜二＞,=ｧ
　＼!　＼_/￣!.|￣＼　　　　　　　 　 　 . : : ::|: : : : : : |:::ﾄ==_/
≦二￣i　i　.:戈≧≦￣＞､　　　　　　 . . ::::::|: : : : : : |:::|戈/
戈≧イ￣＼_!_人＿＞'　＼￣＼　　 ..: : ::::::::|: : : : : : |:::||/ｌ|
￣＼/￣　＿!全ｧ､　￣≧==-､_∧＿: : : :::::::|: : : : : : |:::|У|
＼　 ＼_./ // /￣￣＼｀ヽ!≧ｧ､＿＿＞､::::::|: : : : : : |:::|＿|
　∧＿_/./__ノ　 !￣＼∧.人_|￣》＞<￣∨＼三二≦三＼!＿＿
￣￣￣＼!　＼ノ￣￣￣|!＼　 ∧＿∧＿!/￣＞､ ＼.,、三三,､::::＼
　　　　　　＼　|　　　　 ./　　∨　 ／.> ＼｀ヽ　　||ーく .〉:i:i:i:i:i:i:＼＿!
＿＿_ 　 　 　＼　　　 / ＼ 　 ＼〈:::〈　　 ≧ﾉ　 ∧|￣￣!＼≧､:i:i|:i:|
　　　 ＞､　　　　＼.／　　 |＼ 　 ＼_＞―イ　　|／＼／>夕三∧戈!
　　／ 　 :＼　　　 /　　　.∧＿≧､＿＞〈￣＞､ﾘ　　　＞!夕＼三＼:＼
_／￣￣!＿_ ＞､./　　 　 l∨＼　　/｀ヽ,人＿_∧―＜_,.人.／＼三:∧:::＼
＼＿＿_.＞'´　　 ＼　 ,,,,人＿/￣〈 　 .|　 ＼＼ ＼＿_>／|　　　＼三＼::::＞､
／　 |　/　　　　 .......∨　　 　 ＞､ . ＼人　　 ＼＼::::::/　　 ＼　 ／＼三:＼!_∧
_ 　 人 ＼＿...::::::::::::.〈　　 　 　 　 ＞､|＼＼　　 ＼＼|:::::....　　＞――＼三;≧､＼

190：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:07:37 ID:y7x6N7.20

戦前から戦後にかけるマルクス主義研究の第一人者、向坂逸郎である。彼は戦時中治安維持法等で
抑圧されていた気持ちを払拭し、三池炭坑にて一大争議を起こすべく活動を開始する。


　　　　　　　　　　　　 　 ,､
　　　　　　　　　　　　 ／/
　　　　　　　　　　　／／／）
　　　　　　　　　 ／,.=ﾞ''"／　　　　　　　_,r'三￣｀ヽ､
　　　　　　　　　i f　,.r='"-‐'つ　　　　 /ﾍ/"￣ﾞ＼,ミ＼
　　　　　　　　 /　　　_,.-‐'ﾞ~　　　　　,! ､!r r｡-r　ﾐ　　 i　　　　　　　　諸君らはなぜ貧しいのか！　それは権力を持った資本家、強欲たる資本家が、
　　　　　　　　,i　　　 ,二ﾆｰ;　　　　　ﾄﾞﾂ ヽ￣　　fハ, il　　　　　　　不当なる形で諸君らから搾取を行っているからである。
　　　　　　　 ﾉ　　　 ilﾞ￣￣　　　　　 l ｰ-＿ﾞ　　　,､/ /
　　　　　　,ｲ｢ﾄ､　　,!,!　　　　　　　　　ﾞ! )二｣ﾞ　　,!i　Y
　　　　　/　iﾄヾヽ_/ｨ"＿＿＿.　　　　　ヽ.t　　_／,!　 i
　　　　r;　　!＼ヽi._jl/ﾞ_ﾌﾞ,ﾌヽヾｰtｰ:､__　,ﾄf-≦-=､＿,L
　　　 ∧l 　 ＼ﾞ7'ﾞ .j!/ / ／＼jr=ﾆ:ｰ-ﾞ┴､　ﾞﾐ三ヽi]l｢/l　　　　　　__＿__
　　 ./　i !　　　＼.// /./　 .／　　　＼　┌‐ヽミ≦‐十'"!　　　　r",.-､,　＼
　　/　　iﾞi　　 　 / ￣￣￣　　　　　　 i　.l ｯｰ-､＼_ミ｢彡ﾞ'ｰ=‐ (_.人　ヽ._　ヽ
　ノ　　　ヾ､　　/　　　　　　　　　　　　i!　!　＼_￣i　i l r‐へ.__　ゝ.　＼　　 /
/　　　　　　ﾞ''y'　　　　　　　　　　　 　 l　.i　 ､　l　 !.j .l l ｢,＞　（　 ＼　　 人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【向坂逸郎】
　　　　　　　　　　　　　　　　【元九州帝国大学教授】

191：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:07:50 ID:y7x6N7.20

この活動と、全国のあちこちで起きていた争議の流れに乗る形で、三池炭坑側でも労組と
経営陣との対立が悪化。元々炭坑自体、いわゆるタコ部屋であり、労働環境が
著しく悪かったことも相まって、彼らの闘争心に火がついてしまったのである。




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　　　　　　 ． こ　　 ． な　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ：　　ス
　　　二ﾆ　：　の 　 ：　ん　 -‐　　　　　　　　　　　　　　　二ﾆ 　 ：　　ゴ　　 -‐
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　　　　　　　　は　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ！
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192：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:08:02 ID:y7x6N7.20

そして1953年。三井鉱山は経営合理化のために希望退職を募った。しかし、希望退職者が会社が
あらかじめ系列の鉱山に割り当てた数に達しなかったため、3464人に退職を勧告し、それに従わない2700人を指名解雇した。
これに反発した炭鉱労働者と事務職員がともに反発し共闘。指名解雇に反対し、ストライキに突入する。



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　　　キャー！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ワー！
　　　　　　　　　　　ワー！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ウォー！
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／｀ー‐--‐‐―´＼ ／｀ー‐- 　／｀ー‐--‐‐―´＼　　 ／｀ー‐--‐‐―´　　　　　　／｀ー‐--‐‐―´＼　　　／｀ー‐--‐‐―´＼

193：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:08:18 ID:y7x6N7.20

三井側としても既に石炭から石油へとエネルギー転換のまっただ中であったため、
経営を立て直す方針であったのだが、ある意味労組達にキッカケを与えるような
そんな状況になったことから、三池炭坑は日本全体が注目するほどの規模にまで
ふくれあがってしまった。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..-‐'"//////"'‐-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　,,ィ/////////////////＞-,､
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ////////////////////////:＼
　　　　　　　　　　　　　　,-'〃､^ﾞﾞ¨¨¨¨¨｀ヾ////////////////;ヽ　　　　　　もはや三池は三井だけの問題ではない！　これは日本全体の問題である。
　　　　　　　　　　　　 ／ ./ j　ヽ　　　　　　ヾ////////////////i
　　　 　 　 　 　 　 　 i　 / /　 '"', ,- ､ 　 　 7///////////////７　　　　　　だが、三井側に問題が無いわけではないな。
　　 　 　 　 　 　 　 　 　i.〈 ‐- ∠i_　　 ,　　/////////////////;i
　　　　　　　　　　　　　　　〉`" fiLフ　'"　　｀ﾞ''ｰ-////////////,i
　　　　　　　　 　 　 　 　 /　　　｀'ｰ　　　　　　　　',///--､､////;i
　　　　　　 　 　 　 　 　 ,'　　　　　　　　　　　　　　|:/／　 i/////i
　 　 　 　 　 　 　 　 　 く　　　　　　　　　　　 　 　 ii i,　 ///////i
　　　　　　　　　　　　　　 フ,,,,　　　　　　　　／　　= ／//////'"i
　　　　　　　　　　　　　　 ヾjjjjjjjj､　　　　　 i　　　　i-'"///'" ==i
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 〈,,　 jjj､ ヽ,　　 i 　 　 .,'　　 ',, -', -‐'"|
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｊ　　 　 　 〉　 '　　__ノ ,--'"　　　　　 i
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 〈　　　　　　　 -‐'　'"　　　　　　, -‐'"　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ---'"ヽ,i＼　　　　　 , -‐'"　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ',　 ,-'"
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／|_,i-､


およそ113日間にわたるストライキに根を挙げた三井側は指名解雇を撤回、労働者側の勝利に終わった。
が、これは一つの妥協に過ぎなかったのである。

194：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:08:38 ID:y7x6N7.20

結果的に勝利したとはいえ、この勝利が労組側を弱体化させることになる。天下の三井鉱山に
勝ったことで増長した彼らは次第に傲慢となり、ある炭鉱労働者などは、事務職員をつるし上げるなど、
かつての連帯を自ら破壊するようになっていった。

＼　＼　　 ./lV/'/／l/l／l／／-,／／/丿　丿　V/ノ　／　.／　 ／フﾟﾄ､）　!
　.＼　　i/l/　/　Ｖ /l /l　/l　／/　　　 /／l　　/　　/　 　／ 　／
＼　　 .l ,､//ヽVV_,,_______l／ /,､／l ,　　 l//／l　　彡　／　 ／　.／
　　 vV/ /l　_,-'"-==iiiiii､"'--､,' / //ﾉl　　/ /／l 　ノ　　 ／　／
　 l'lvv/V_,-':::::: 　　　"lllll､　　　'-､''　//l//／　' //v　 ／　／　／
　l' ./'ヽ/":::::: 　ニﾆ;;;--lllll､　　　　"'''''''-､,,/'/,/,-//' 　.　／　／
　V/l /　　　　 ヽ､,,,,_(・)''llll､ 丶,　　　　　_ 'l ./　/ 'ノ　 ／　／　／
＼ l'/　　 .　　　　　　"''- ' " '-/, =､,,､iiillllll l'/,-/ _＞　 . ／　／　　∧∧∧∧∧∧∧∧∧
　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　 < (・) ,'i:::: 'l ∠　= 　 .／　／　　＜　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　_,, >　　　　　　　　　　　　　　 l"''-.' ::::::l-"/'"　　　　　　　　　＜　 ヘッ　こーなったら　＞
　／　　＼ ,､-----､,,_　　 ､--､　 l　　　 .l　丿　　　　　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　 ＞
<:::::::　　　.＼"ﾆ'''--､､''-.､_ "　--"　　　/／　 _,,､､--,　　　　　　＜　 矢でも鉄砲でも　　 ＞
;;;l.､::::::::　　　.＼ :::'ヽ,;;;;"''-､"''-､　　　 ／--''''"; ; ; ; ;/　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　 ＞
;;;;;>＼:::::::　　　.＼:::: l;;;;;;;;;;;;;;"'-､l　 ／; ; ; ; ; ; ; ; ; ; /　　　　　　 ＜　 持って来いって ! !　 ＞
;;;;ll＼ ＼:::::::　　　.＼ l;;;;;;;;;;;;;; ／.／; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; /　　 _,,､､---､＜　　　　　　　　　　　　　 ＞
;;;;l:::::ヽ　＼:::::::　　　.＼;;;;;;;;／.／; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; /,,､--",､-"; ; ;／　∨∨∨∨∨∨∨∨∨
;;l　 ::::ヽ　ヽヽ::::::::　　　＼/.／; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ／; ; ;／; ; ; ; ; /;
/　　:::::ヽ　ヽﾆヽ:::::::　　　＼; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;,､-"; ; ; ; /; ; ; ; ; ; /; ;
　　　::::::::＼　　　＼:::;;,､-､　＼; ; ; ; ; ; ; ;/; ; ; ; ; ; /; ; ; ; ; ; ;/; ; ;
　　　::::::::::::"'-､_　／;;;;;;;;;;;ヽ　 ＼; ; ; ;__/､----､/; ; ; ; ; ; ;/; ; ;
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　＿_　_,､.'"　　　ヽ;;;;;;;_,.-<_　l　　　　　　 _,､-"　　　　 ＼.l; ; ; ;



そして彼らは再びストを起こす。

195：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:08:51 ID:y7x6N7.20

だが、かつて炭鉱労働者達と鉄のスクラムを組んでいた事務職員達は誰一人として、このストライキに参加せず、
黙々と仕事を行っていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿　―x、
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,　 -‐=＝＝=ﾐﾒ､)ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : : : : : : :メ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　／: : : : ノ-‐ '´￣}ﾊx: : ﾉ
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 / : : : /´ u　　　 ノ'　} }: :〉　　　いやさ、なんで俺たちをバカにしているような連中と今更協調しなきゃいけないのよ。
　　　　　　　　　　　　　　 /: :l: : /　r==､ )　　x==､):/
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ: |: : |　 ＿_, 　　､ ＿ /(　　　勝手にやればいいんじゃね？　俺たち仕事で忙しいからさ。
　　　　　　　　　　　　　　　 レ=､jｕ ￣´_,　 l　￣ ∨
　　　　　　　　　　　　　　　〈　く　　　　　 ,　|〉　　｜
　　　　　　　　　　　　　　　 丶- |　　　　　　_　　_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ﾊ、　　r　イヘ( （
　　　　　　　　　　　　　　　　　_|　 ＼＿(´￣￣｀丶
　　　　　　　　　　　　　　_,ｘ:く l|　 ＼　　厂￣｀ヽ 　＼
　　　　　　　　　　　 _／ l| 　　 ：　　　　｛￣｀ヽ　　 　 |丶_
　　　　　　 ,　＜´￣　ーｌ|　 　 ‘．ー- ､〈￣｀ 　 　 　 ﾄ､ |l ￣｀＞ 、
　　　　　／　 　 　 　 　 ｌ|　　 　 ’，、　　￣ヽ　　　　/∧|l　　　　　ヽ
　 　 　 /　 　 　 　 　 　 ｌ| 　 　 　 ‘ ，ミ三三入 __／./ /}　　　　　　 ヽ
　

ストライキは長期化していくが、総評からのカンパ以外の収入を絶たれた組合員の生活は、次第に苦しくなっていった。
その結果、困窮に耐えかねた組合員にはストライキから離脱し第二組合を立てるほどであった。
そして、このストライキに終止符が打たれる。

196：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:09:03 ID:y7x6N7.20

三池労組の組合員・久保清が暴力団員に刺殺され、三池労組の組合員の約半分が三池新労に加わって、ストから離脱。
そして、貯炭場であるホッパーへの組合員立ち入り禁止の仮処分を福岡地裁が下すと、福岡県警はホッパーを占拠している
三池労組組合員を排除するため警官隊を差し向けるなど、闘争は激化の一途を辿る。
が、彼らの懐を益するものは何一つなく、炭労も総評も斡旋案受諾を決め、向坂も斡旋案を受諾するよう三池労組幹部を説得し、
ストライキを解除することで労組側は敗北した。




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提案された内容は解雇を取り消す代わりに、整理期間の終了を待って、指名解雇された労働者は自然に退職したものとみなすという
組合側に圧倒的に不利なものであった。

197：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:09:14 ID:y7x6N7.20

向坂は三池炭坑を聖戦であるとして宣伝するもの、結局誰一人として益する者がいなかったこともあり、
日本各地の労組の嵐も経営陣側との協調路線を歩んでいくことになる。
その代わり、彼自身は先鋭化した社会主義者となっていった。




　　　　　　　　　　　　　　　_,..----､_
　　　　　　　　　　　　　 ／ ,r￣＼!!;へ
　　　　　　　　　　　　 /〃/　　 ､　 ,　;i　　　　　　　　　　　　　　 プロレタリア独裁の下では政府に反対する言論表現の自由は絶対にない。
　　　　　　　　　　　　 i,__ i　‐=･ｧj,ir=･ﾞ)　　　　　　　　　　　　　　日本に社会主義政権が誕生すれば、非武装中立を見直す。
　　　　　　　　　　　　 lk i.l　　／',!ﾞi＼ i
　　　　　　　　　　　　 ﾞiヾ,.　　 ,..-ﾆ_　/
　　　　　　　　　　　　　Y ﾄ､　 ﾄ-:=┘i
　　　　　　　　　　　　　 l　! ＼＿＿j'.l
　　　　　　　　　　　　　 ｣-ゝr―‐==;十i　　　　　　_,r--――､
　　　　　　　　　　　　　.ﾄ､.j.!ﾚ'￣三! ＞ｰr‐r‐r‐＜　 _,.r<"｢　l__＿__
　　　　 ＿＿__,..r--r＝ヾヽj,r―'"≦＿_￣￣r―'"＼＼　＼r",.-､,　＼
　　　 ∧　　 ﾄ-'‐'"三へ＞ﾄ-‐'"~　　　 ﾞi　 / 　 　 　 ＼＼(_.人　ヽ._　ヽ
　　　 ﾚ'へ._ﾉi　｢　＼ ﾞl　//./",｢￣／　/　/　　　　　　　ヽ-ゝ.　＼　　 /
　　　 ﾚ'/／ .l　l　　　! ! i/./ ./　 /　　/　/　　　　　　　　 ,（　 ＼　　ノﾊ
　　　 ﾚ'/　　.!　!　　 i　ﾞ'!　￣　∠,　 /　 ヽ.＿　　　　　　　 ,ﾀｰ　　'",〈　!
　　　/ﾞ"　,r'"　.l‐=ﾆﾞ,｢l ! ｢￣!. ／.／　　 ｰ=='　　　　　　　.l.ﾄ､.　-‐'"/!.ﾄ,
　 ／　　 .ﾄ-　　ﾞー―┘!└‐'='-‐"　　　ヽ._/　　　､　　　　 ﾄﾐ､￣￣._ﾉﾉli＼



ちなみに、ソ連のチェコスロバキア侵攻やアフガン侵攻を支持し、なおかつ日本が占領されたら、
ワルシャワ条約機構に入るべしとまで言い切っている。
このような人の形をした鼻くそが、偉そうに息をしていたことに作者としては憤りを禁じ得ない。

198：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:09:30 ID:y7x6N7.20

櫻田はこうした労組問題に対して尽力し、日本の高度経済成長に対しての道を作り上げていった。




　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::- = ﾆ:::::::/　 　 ／ヽ::::::::::Y´
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　　 　 /::::::::::/: : : : : :i::::::::: -= 彡 　 　 　 　 /　 }:/
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　　 /::::::::::::::::）: : : : :.:ﾚ'　　　　 =ミ 　_　|{ /　 } '/　 :　　　　　我々は戦争に負けたが辛くも生き残った。ならば、生き残った者として、
. 　/::::::::::::::::{: : : : : :,:'　　　　　 -‐z八_ｯ圦　　} ′　i　　　　　相応の責任を果たしていかなければならない。
　/- ‐ = 彡伐 _: :　　　　',　　　　　 ＾'ｰ ⌒ヽ}/　　丿
./　 　 　 　 i　　 〉　　　　 }　　　　　　　/　　 }
≧ 　 　 　 ｜　,:'　　|　　,'　　　　　 　 /　 　;
三 ≧=-　　|　 ′　 |i　,:'　/　　_ rく 　 　 　{
　-=ﾆ 三≧=-{　　　|ｉ　　/　∠二三≧=‐- '
　 三三 ﾆ =‐- ＼:　|i 　 i／ ⌒ 　 ｰ}┘
　＼　 ＼二=‐-　 ＼i　　　　　　　 「
　　^＼　 ＼三ﾆ=-　:＼」 　 　 　 ,′


そして、この時代いわゆる「糸偏景気」と呼ばれ、日本繊維業が世界を舞台に大暴れする時代でもあった。

199：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:09:40 ID:y7x6N7.20

1952年（昭和27年） 島田工場の操業を開始、さらに1958年（昭和33年）徳島工場の操業を開始し、
繊維業は鰻登りの状況を見せていった。



　　　　　　 ⌒ ､
　　　　　　　　　ヽ　　,,,,-----,,,,,,,＿
　　　　　 ,ー'""`ゞ/;＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,｀ヽ
　　　　　　　,r-'"''''''' '' ヽ'''''''''''''''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;,` ､
　　　　　 ,-''`ｰ､　　　／　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
　　　　,.'"　　　 ＼,／＿_ _　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;|　　　　　　　　　やはり、景気が上向くのはいいことだよ。
　　　　〉`ヽ　　､／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　'､;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ
　　　./´｀ ／　　､ヽ;;;;;;;;;;;;;;;/.,　 ｀`-､;;;;;;;;;;;;;;;;; ,`
　　　|　／ _,　　　　￣￣￣　｀`ヽ,　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`
　　　|　＼　､　　　　　　　　　　　`､　|;;;;;／⌒ヽ/
　　　|　,,iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii,,,　 ﾞヽ|;;/､'　` ）
　　　|　ｧ--------------‐'ヽ;;;,,　　`､ 〉 ） /|
　　　.| .l ｰ-‐-‐-‐-‐-‐-‐-‐､, |;;;　　　(＿／;;|
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　　　 |　|;;;;;;;/:::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　 .l　　　 |
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　　　 `i　￣￣￣￣￣￣￣￣　　　,/　　　　　|
　　　　 |　　　-ｰ''‐-　　　　　　 ,,-''　　　　　　 |
　　　　 ヽ＿＿＿＿＿_,,,,--‐‐''-−−'''￣￣￣`i
　　　　　/Ｙヽ　　'/　　　　　　　　　　　　　　　　　`l
　　　　　| /| ｀l､ /　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ

200：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:09:53 ID:y7x6N7.20

日本の製造業の中で、世界を席巻したのは繊維業である。この時期、繊維商社から総合商社へと
転身する企業が多々あった。ニチメンやトーメン、丸紅などである。
そして、今や三井物産をも追い抜いた日本第二位の総合商社がこの時期も勢いに乗っていた。




　　　　　　　　　　,f"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞl:､
　　　　　　　　　 ,f"　　　　　　　　　　ﾋ,,__;:-'" ﾉ　〃　　　　　　　　　　小 ﾞl:､
　　　　　　　　　 { i /ﾉ　（　　　〃　　 ､_,,,二ﾌﾞ　　　　 }, , i　　　　　　　|小 .,}
　　　　　　　　　 i; y/　　 ゞ　　　　彡 ）,/,ィ',イ,/　　　ﾉ,ﾉ,|; i;　　　　　 :l | |l,i'
　　　　　　　　　　7　,;f 〃ゝミ三彡,ノ,;ｲf ﾞv' (/〃'彡'彡ｯ'ﾞいﾐ:､　:i　　　ﾍﾂ
　　　　　　　　　 ,{　;{　　,,　　_,;f"ー-ﾆ,,,__　　い'''"￣"__,;:=-‐'''''i; :|　ﾐ:、 :ﾄｧ　　　　　　　　逆境とは、先見性と機動力を試すチャンスである。
　　　　　　　　　..ﾞi､ {　 ,i',i'.,k"　-─ﾓ・ﾅ=ﾐヽﾐヾゝ::-=ﾆﾓ・ﾃ'ｰｧ''ｿ人　い　ﾞli
　　　　　　　　　　 `'ﾝ　{ ﾚl小　　　　￣　　　 ﾞ　`　　`　￣　"　￣ﾉ,ﾄ､ l i ,ﾉ
　　　　　　　　　　　 '{ :､V､ﾞ:|{ﾞi　　　　　　　　　l ::.　　　　　　　　 ,;{ｿﾉl ﾂ,ﾉ
　　　　　　　　　　　　ﾞi､l､ ﾞヽﾞiﾞl;　　　　　 　 　 l ::::..　　　　　　　,i'ｨ'" ﾑ'"
　　　　　　　　　　　　　`:ゝ､　ﾞﾐi　　　　　　　 ､　,,;::''　　　　　　/f'{ il（,
　　　　　　　　　　　　　　　,ｿﾉ ,∧　　　　...._____..____.....　　　　/〃) ）i
　　　　　　　　　　　　　　　（:i| :;i _lﾞ､　　　　　.,,,__,,,...　　　　 /|〃〃'"
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　　　　　　　　　　　　　　　　　,f　'､,, 　ﾞヽ、　　　　　_,,r''"_,,;-'二l''"
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　　　__,ｨ''''"￣ヽ　 　 　 　 　 ,} ,i`i　,r'二`''ｰ:､`Y",;='ﾆ二ﾐ、 f''"i　　　　　 .／￣ﾞ'''=;zL＿＿＿
￣￣　ﾞli　　　_,,,L---r‐r--f"ゝ{. ﾞナ'"　 `)　|　| .l| f"　　ｲ､_j.l^;＞-ﾆr:,,,∠,,,,,,__ 　　）
　　　　 'li_;;＜　　　　 i､ i､　ﾞヽ､ﾞヽ､,,,,＿_,,.ﾉ .l . | :| ﾞ-,,＿,,ﾆ=''"ノ￣　ﾌ,ﾉ─　 _,,>､　/
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. 彡| 彡|　　＼　　　 ﾞ''ｰ-ﾐ_ヽ　　　ﾞヽ ﾞヽ,r''",,='=､ヾ､,r' ,r'"_,,:ﾆ-ー"￣　　　_,,,r''"　 ト 1　 1
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【越後正一】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【伊藤忠商事社長】


中興の祖にして、丸紅を繊維業から撤退させ、繊維相場の神様と呼ばれた男。
越後正一率いる伊藤忠商事である。

201：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:10:19 ID:y7x6N7.20

大本営作戦参謀であった瀬島龍三氏をスカウトし、繊維商社から総合商社へと転換させ、
在任中に資本金6.5倍、人員2.7倍、売上高10倍、グループ会社数2.5倍にさせた。
後に破綻した安宅産業から新日鐵の指定問屋を継承するなど、徹底した攻めの
経営方針により、伊藤忠は飛躍的な発展を遂げる。




　　　　　　　 　 　 　 　 　,　　　　　 　 ,. 　 ､.ﾉ ; ;i }　; ヾ､,;彡 ,;;;;;;;;;,　ヽ,;ﾉ .ノ;　　ヽ
　　　 　 　 　 　 ,　　 　 (:' 　 　 　 　 (:' . ｰ;",　,,:; ,　;!　 ,;〃,　　'''　.,;;ﾉ .,;"''　　 ,;;,,ヽ
　　　　　　　　 (:'.　 ',　　)） 　 　 ',　　)）　, '　　　",,ﾉ , ,人〃;;'., /,' ;{':i {: ,;　 ;ゞ　'';;; }
.　　　　 　 ',　　)）..　}　 /(.　　　　}　 /(　{ ,;;'""ｰ"-‐'ｰ- _ヾ ', .;,,. "_.ヾ-‐ﾞ;ヽヾ;,　 ヾ
　　　　　 ,' }　 /(,'　ﾉし': :ヽ..　,'　ﾉし': :ヽ..}' ,'〃 ;'{/ﾞ '´ヱアゞﾞ､{´ '´'ヱアﾌ };;ｰ-;,. ヽ
　　　　 ,'　ﾉし': （(,ｲ: :　　:: :. （(,ｲ: :　　:: :V）　/,;::{ｉ　　　　　　 ｉ`　　　　　　ﾉノ:;ｊ;;;ヽ:}　　　我が覇道を阻む者無し。
　　',　.（(,ｲ: :....　ゝ: :　　　: :(ﾉゝ: :　　　: :(ﾉ} ,;'":{ 'ﾞ:.　　　 ,' 　 |　　 　 　 　 ｉ .: !::i 'ﾘ
　　 } 　.ゝ: :....... ヽ : :: : : :: : /ヽ: :: :　 : :: :/.　ヾ.';;ヽ :. 　(:ﾞ.　　´ ｀　　　　　 , .'/ 'ンﾞ
_'　ﾉしﾞヽ: :: :　 : :ﾞゝ;:; :;从;ノ.．ﾞゝ;:; :;从;ノ.　 　 },'　 ',　　)）　 ,.........　　　 　 ;;'.,;{'"
.(,ｲ: :　　ゝ;:; :;从;ノ.．　ﾞ..　 　ﾞ．　.!　　 .!　　　 .{, i | }i::､/(..　ﾞ――ﾞ 　 　 ｲ .:,;ﾞj
　: :　　　: :(ﾉ}..ﾞ． 　 ﾞ． ﾞ. 　 　ﾞ,　.!　　 .|　　　　 ,'{;{ﾉし': :ヽ　　￣　　 ／ .l,;}:j;ﾘ
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　ゝ;:;:;从;ノ.ﾞ丶.__}　　　　　 ..,,,,. 　 .,,,,,.. ﾞ!-､＿,. ゝ: :　　　: :(ﾉ}｀､,.´-‐''¨´-,|
　 　 　 ﾞ .､　　　　　 .::''　　　　　　　　　 ヽー‐ ヽ: :: :　 : :: :/ﾞ`i | i"'￣`､ヽ.!　　　　,.．‐----- ．........,,,,＿_
　　　　　 冫>､;:''　　　 　＿:::::::　　....:::::;;:'　 .:::::::::ゝ;:; :;从;ノ './l | | ﾞ-一,ヾ ,丶．＿{　　　　　 　 　 　 　 　 ￣ ヽ
　　　 　 / / /ヽ ー‐'''￣:::::::::::ー‐一''":::　 　., <　､ ＼ヽｰ‐'　l | l ﾞｰ‐ｧ.／　｀＞ .._ヽ．．......,,,,＿　　　　　　　　 }
　　　　/ /　,'　i.ヽ　　　　　 .:::::::::::::::::::::::::　,.ｨ､ヽ ヽ.`_-`､ヽ.／人＼., './_,．,.´．"´　 |　!　!　|　|　l￣¨¨''''''―‐- {
.　 　 / /　.,'　j,|l｀＼＿......._;;:::' `ｰ-―／'.|.! i.ヽ ヽ､ﾞ., ｀ヽ､.!'.;' ￣`,ﾞ.! .',． '　　,._　　/|　!　!　|　|　|　|　 !　|　.!　ｌ i
　　 / /　,.' .//ﾞ、､ヽ.`ｰ ．＿＿_,..．'´／l |{_,ｉ: }｀:'ﾞ::ﾞ:,ヽ　.ﾉｊ .! .:::::. | | ｉ　 　 　 } ｉ., './,! .|　| . !　!　!　!　.| . !　.l　.! !
　　{, .{　 {,.//!//ヽ＼ ｀ー-,＝=､; /´j,／.j 、`ﾞ:::::::::::::ﾞ:,ヽ‐'＾､ﾞ ｰ ".人ヽ､＿,.ノノ.／/,! .!　!　|　!　|　|　 !　|　 |　.! !
　　 し;／　j/l////ヘ._ｰ=-ﾞ'-'ﾞ_'_ゝ_,.．,イ,i ヽ::::::::::::::::::::ﾞ:,ヽ､._｀ー´　_ ｀ー―ｧ／///,｀'ﾞ､.,!._.ｊ　!　|　|　 !　|　 |　.! l
　　　/　 /,'!/l///////,`,'ー―‐''"///,{ l∧.ヽ::::::::::::::::::::ヽヽ ﾞ! 　.i'´ ｀ｰｧ '.／//,'＿ ,.、＿/,'`ﾞ,ｰ';-',!._,l　.|　 |　.! |
.　　 !　 /ト'|,'/＼//////////////,'／ .ｌ,'∧.ヽ::::::::::::::::::::::ヽヽ　 .|　.／／////,'{ 　i || i　 }'////,| ///,ﾞ"^ｰ"ｰ'-'
.　　 {_./ノ　＼//,ヽ,'/////////,'／/,|　.!'/∧ ヽ:::::::::::::::::::::::ヽヽ .ﾚ'／////////＼ヽ ' ／/////| ////////,l l!
　　　 　 　 　 i＼/////////,'／/,'／!　.!'//∧ ヽ::::::::::::::::::::::::ヽ.ヽ/////////////,ﾞ}{ﾞ'///////! ////////,'l l!
　　　 　 　 　 |/,!｀ｰ ..__///_"．'"///!　.!,'///∧ ヽ::::::::::::::::::::::::::ヽ.ヽ///////////i'　ﾞ!//////,' /////////,| l!

202：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:10:38 ID:y7x6N7.20

そうした中、櫻田は永野重雄らと共に財界四天王として、財界の中心人物として活躍する。

　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|　　　　　　　　　　ちなみにサクちゃんとは柔道仲間だ。
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ
　　　　　　　　　　　　　　【永野重雄】
　　　　　　　　　　　　【新日本製鐵会長】


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /三ミ　､　/'`X'ﾞ゛"'`ﾊ'ｲ=彡`,､
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i三三;　ﾉ　 ヽ､ﾍｰ-‐ ﾉ !　´"〉;/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ!ゞ´､‐=ﾍ.　　 ヽ∨_,　⌒ /./;/
　　　　　　　　 　__　　　　　　　　　　/〃〉ﾘ ‐=､,kzｪﾒ､_,冫l（ヽ､,=-､ /;/
　　　　　　　　 /　｀ｉ　　_＿二二二__ｉ匕'　､ '＾｀ ¨´ゝｲ" ＾ 〉尨圭ミﾊ;/_　　　　　　　　　シゲちゃんとはよく乱取りしたもんだよ。
　　　　,==-.､.丿_,=‐ﾆ￣=――― -=二ﾆ) 〉　　　　/ ,'　　ｉｌ俐}圭lﾉ !´,ｉ
　　 ／　　i　.｀ヾ圦　　　　　　　　　　　.;;i /　,.､ _　 〉,'　　//`ー‐〈 /,'､!
._／　　　 .｀_,　　 ｀∨―――――――ﾘ, ,∠;´;;;;ヾ､,,_　 ,' ｉ　 　 ,仆ﾉ/
　 =､＿_／＿〉ｧ､ノ.∨:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ｉ　　｀ヾ､;;;;;;;;￣;;;｀ヽ､ /.ﾉ／
'　　　　 ￣　　｀ヾ､ｰ∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./=､ﾞ　 ､___,､.｀¨"ー‐､;;ｉ' ,'/
,　 ＿＿＿＿　　　）二X二二 二二ノ:::::::ヾ､　　　 ﾞ¨¨ヽ､,　`ノｲ､
,　　　　　　　 ￣｀Y´　'´,ﾞ）二二二（:::〈〉/＼｀ｰ､_　ﾉ　　　∠ノ/::〉
!　　 ,,＿＿＿＿.ノ　 ,.''　￣:|￣￣￣ﾄ::::＼/:::://ﾞ!ー､ゝrf´::::::::/ｉ`､
｀ﾞ　'´　 　 　　　ﾉ　 /　　　　ｉ;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ､､:::::://::|.|;;;;;;//|.|:::::::::ﾊ;;;;;;;;｀ﾄ
　　　＿,ゝ―‐'"　 /　　　　　ｉ;;;;;;;;ゝ┐::::ヾ､//::::|.|;;;;//::|.| _／イ;;;;;;;;;;ﾄ､｀ヽ､
　　　_/　 　　　　/　　　　　　|;;;;;/::ｉ..|:::::::::.┌―=ﾆ//.::::|__／:::::ｉ;;;;;;;;;;;i　ヽ　 ｀ヽ､

203：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:10:57 ID:y7x6N7.20

ちなみに紡績業自体はレーヨンなどの合成繊維に押され、斜陽の道を歩んでいくのだが、
櫻田は紡績業を守り続ける。師匠宮島の経営を見てきた経験を生かし、日清紡績は
オイルショックの渦に巻き込まれても、配当を出し続けた。




　　　　　　, '7./ / 7’¨´　ﾟ;　　 |　　　 　 　 ｀}三三三三三三三≦_
　　 　 　 .' .,} L L;'∧　　　l　　 l　　　　　　　}三三三三三三三三{´
　　　　 /　/ l .十}- ﾟ:,‐ =-　=-　_＿　　,///|三三三三三三三ﾆ7
　　　　 i　｀ﾐ、　| l -=ﾟ:,　7´￣　　 　 -　///{三三三三三ニニﾆ7
　 　 　 l　 '.}.〉、l 〉 　 .｀}ﾄ、_＿___　　　　//,｀ﾐ.、三三三三ニニ7
　　　　 i　　〉_｀{iﾄ}、　 _{ 任三三三ミ:_./,　　　 ｀ﾐ佳'´￣ ｀寸ﾆ7　　　　　　先人達が長らく思いをかけてきた紡績業を簡単に捨てることは出来ない！
　　　　　　/　 .´ﾌ}=-≦=|三三三三三i|　　　　　 |f{/´、　　 }i7
　　　　　 ,' 　　.7}　 ´/´ .寸三三三ﾆⅣ　 　 、　 }ii ヽ .〉　　/l
　　　　　 {　　,}'　　　　　　 ｀寸三三ﾇﾍ..、　 /　　|i} く_ ノ ,.:'’{
　　　　　 ':.,//l.　　,彡´ .}ﾄ、　 ｀¨¨´　　　＼{　　　ﾐ{/　,.:'’三i{
　　　　　　'i" {　　　　 ,_ 　 ﾍ　　　　　　 ,.:7’｀ヽ.、　 .ノ｀ミ三A
　　　　　　 ',　〉=:.、≦,、、、 ｀　　　　　 {:'　　　　｀》’　　 寸三_
　　　　　　　'////lL川川川ﾄ.、　、　 　 i　　　　　.l{　　　　　_≧i:i:}
　　　　　 　 "}´￣ 　｀　-=寸心、 ｀ヽ　　　　　　　1　　 _ =i´ i:i:i:i ∧
　　　　　　　　l/´¨ ' :. 、　　 ｀マ:、　,j}　　　　　　,/_ .=i´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧
　　　　　　　　|　　　　　｀ﾐ:.　　　 / /　　　　　,.:'’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧
.　　　 　 　 　 l　 　 　 　 　 　 　 ' /　　 ,. :' ’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i∧
.　　　　　　 　 ﾟ:.　　　　　　　　　 /_,. ;' ’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ}ﾄ.、
　　　　　　　　　ﾟ'　・:._＿　 -=-≦i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ／ 寸i:i:i｀ﾐ:.、
　　　　　　　　_ 　-≦　　　/{ {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ／　　　　 ﾟ寸i:i:i:i:｀ﾐ:.、

204：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:11:07 ID:y7x6N7.20

財界人としての仕事と、経営者としての仕事を両立する一方で、櫻田は山下太郎の油田開発に協力していた。


. /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|　　ﾞi /　　/　＼　 ::ﾞi ﾞi
/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ﾞi　　ｿ　ヽ,,,,､　　 ｀i､ﾞi　i
|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／´'''-､　／'''´　　--　　 .,,,,,,,_＼　ﾍ /
|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/　ノヘﾞi　/　　　ソニニ　´　,,,,｀''ﾆ　く
|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:（　!　ソ i /　　　　　　　　　　　　　　｀ ＼　　　　　　　君の言うことは分かった。私も是非、協力させてもらおう！
|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ﾞi　ｿ　　　　　ﾍ　　　　　　　　　　　　　ﾞi､
　ﾞi;:;:;:;:;:;:;:;:;: ,ﾍ＼　　　　丿´´　　　　　　へ'-‐‐‐‐‐i
　 ﾞi;:;:;:;:;:;:;:;:/　ﾞi　　　　./　_,,-‐ ._...,,,,,iiiiii,,,,,,,,,,,,-‐i'''´
　　ﾞi;:;:;:;:;:ノ　　ﾍ　　　　　ﾉ　,,,,,iiiiiiiiiiiiテテテテﾐ
　　〉ソﾍ　　　　 |　　　　　|　　/‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐//
　/　　　　　　　 |　　　 　 |　　ｌ:::::::::::::::::::::::::://
-/,,,_　　　　　　 |　　　　i ﾍ　　|::::::::::::::::::::::/ /
::::::::::ﾞﾞﾞﾞﾞ‐‐-,,,,､＼　　　　ﾞi　　 |￣￣""￣ｌ |
::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞﾞﾞﾞ‐-､､　　　　 ￣￣￣￣ |
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼.................................j



山下のアラビア石油に出資し、なおかつ彼はアラビア石油の監査役を務める。




　＞≧≠ミﾐ/　　,ィ　 　 　 　 |::::::::{　vr　　　　　　_,ｬ　　　　　　　ありがとよ櫻田。この恩は絶対に忘れねえ。
.///彡≦ﾐf'’ ／::::!　　　y!　 ﾉ:::::::ﾉ　　 , x≦三彡'´
川//彡'7彳 /::::::::::、　　l{　f:::::::::/　　 f彡"´
リ川ﾘ'///ﾊ/::::::::::::::＼　 '　{::::::;/　　 ｲ
'八Ⅶ{v'ﾉⅣrへ:::::::::::::::ﾐ､_,　ゞ'
ノハﾘ///lK　　 ~`ぇ=≧≠ヽ
ｲﾉ　）///'八　ィ彡'⌒-一' ∧　　　　　　　ー―-　一　⌒ヽ
ー彡彡彡'川ヽ　　　　 　 ノ　｝　　　　　　　　　　　ｰ一 ミｿ
三三三≧彡彡ﾍ　　　　７　ん'⌒　 )　　 　 　 　 　 　 ／′
≧＝≡三彡彡爪　　　　　弋　　f;'　　　　-‐― -　／〃
ヲ彡'≦三三彡'川ヽ　　 　 　 ￣　　 ／,　¨´￣ｱ /　 / 　 　 ﾉ
巛彡"//////ノﾉﾙ'∧＼　ﾉ (⌒二彡 '　　　 ／　′ 　 　 ／
人ﾐv'///'ﾑイ/////'ハ　( (__八　　　_　　＜ 　 ﾉ　　　　/
彡ﾍ》≦彡'ノノ/////,人　 ヽλ_｀¨´ ＿ ,-‐　彡　　 　 /
三彡ﾘ彡イ'／///ﾑイ川≧x　　　￣

205：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:11:19 ID:y7x6N7.20

彼はさらに日本鋼管福山製鉄所の誘致に対して、池田勇人口添えを頼むなど、側面から尽力。
財界人として三面六臂の活躍を見せた。



　　　　　　　　　　　＿,.二＿
　　　　　　　　　 ／/^／／ Ξヽ.
　　　　　　　　　ｉ､;;;;__,ゝ―､三三ｉ
　　　　　　　　　ﾘ`＼,._,ゝ　ﾇ三Ξ　
　　　　　　　　　ﾒ;;,,,､｀r三ミyﾞil´ﾞｉ
　　　　　　　　　 !`´l^｀ゞΞﾒx.Pﾉ
　　　　　　　　　 ヽﾉ`'´ヽ　 ! `!ﾇl
　　　　　　　　　　入二｀ﾞ　／´,ｲｰ=._
　　　　　 ,.=≠‐/￣ゝ―≦ﾞ￣;;;;;;;;;／`ｰy､__
　　　 ｨ;;´;;;;;├|､ヽ;;;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ┐ｰ'´;;;;;;;;;｀ヽ
　　　|;;;;;;;;;;;;;;ｉ┤;;;;;;;;;;;;;ｌi;;;;;;;;;;;;;;;/ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　 .ﾉ;;;;;;;;､ヾi |;;;;;;;;;;;;;;;ｉl;;;;;;;;;;;;;;i　丿;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ
　　 ﾑ-‐-､;;;ヾ!;;;;;;;;;;;;;;;ｌｌ;;;;;;;;;;;;;ﾄy"-‐―-､;;;;;;丿
　　 }′:　　ヽ/;;;;;;;;;;;;;;;ﾊ;;;;;;;;;;;;;;/　　ﾉ　.　 ﾚ;′
　　ﾉ' .::.　ノ ﾉ;;;ー‐一';;;;;ー‐∨　./´　　 ﾉ;;;|
　 〈,　　ヽ､i/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ'"..ノ　　　∠;;;/
　 .ｿ　　　 ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／,　　　　〟／;;;;;;/　　　　,....
　 ｉ　 . 　 ､ .:!;;;;;;;;;;;;;／,ｲ´　　　〃ノ;;;;;;;;;/　　　／ﾄ-'i
　　!　,ゝ=/`i⌒};;／´　　　　／イ;;;;;;;;;;;/　　.／／`}　i
　 _r=ャ"i-┤〆､　 .　 ,x＜´;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ﾊ／／　　rﾞｰi
　ヾヽ_ゝ_ヽ.ﾉ´｀ヽヽ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i／!､Y　　 ／`iゝ'!
.f"＞ｰ'ﾞｰ'＿__ノ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|／ヽ､Y／／´`i .|
.ｉ_//､／ﾞ┬┬气=|冂|＝＝|冂|=「ｌ冂　 fﾞYﾟ／　　　|_」
. ﾞヽヽ_｝i:::l . |￣￣|ｌ ｌ|￣￣￣￣l|.i|__|／i! ´ﾙﾆﾆニ.ノ
　　ﾞﾒ}　|=l . |二二|| ||二二二二l|」|≠／!ﾉ_,'´
　 　ﾊ . i=l . |三三三三三三三三三个､ ｀´
. 　 丿 ﾉ=l . |三三三三三三三三三ﾆi　＼
　 　X_.ｰ┴┴j三三三三三三三三三.i＼　＼
. ／.厂三|冂|三三三三三三三三三=ﾊ.　＼　＼

206：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:11:35 ID:y7x6N7.20

「昭和40年不況」の嵐が吹き荒れた頃、財界人の間にこんな声が台頭した。


　　　 　　　　　　　　 /二二Yﾆヽ
　 　　　　　　　　　 /　　　（ ゜）(゜）ヽ
　　　　　　　　　 ／　　　::::⌒｀´⌒::::＼
　　　　　　　　　 |　,-）　　　　　　　　（-|　　　　　　われわれ経営者はしばらく財界活動を休止して、
　　　　　　　　 ,┤　i〈 ､＿＿＿＿_, 〉 /　　　　　　 すべからく自分の城（企業）を守ることに専念しようっていう。
　　　　　　　 /　 !　　ヽ＼+┼┼+/　/
　　　　　 __/　　 ヽ　　　　`ー‐‐'´　/　　　　　　　　会社が潰れたら財界活動もクソもないって
　　, -‐''"　i　　　　＼　　　　　　　人　　　
-''~　　　　　|　　　　＼`ー----‐'´!　iヽ､
　　　　　　　ヽ　　 　　 ＼　　　　 /　 i　 ｀ヽ､
　　　　　　　　＼　　　　　丶＿／　 　|　　　　＼
　　　　　　　　　ヽ　　　　 ／Ｏ ＼　　 |　　　　　 ＼




　　　　　　　__,　 -ー- 　､__
　　　　　　 (_,'　　　　　　　',_)
　　　　　　　l　●　　　●　l　　　　　　　　とんでもない。日本経済が危急存亡の淵に立っているいまこそ
　　　　　　　i　　(_ ● _) 　 i　　　　　　　　国家社会全体のために行動しなければならないクマー！
　　　　　　 ﾉ　　　　　　　　 ',　　　　　　　 城に引き揚げて立てこもるなんてエゴイズムもいいところだクマー！
　　　　　 /,,　-ー　､　　,　-‐ ､
　　　　 （　　　,　-‐　'"　　　　 ）
　　　　　 `;ー"　`　ー-　-ー;'"
　　　　　　l　　　　　　　　　　l
　　　　　　|　　　　　　　　　　|
　　　　　　i　　　　　　　　　　i
　　　　　　',　　　 　i!　　　　 ,'
　　　　　　 ',　　　　i! 　　　 ,'
　　　　　　　',　　　 i!　　　 ,'
　　　　　　　 ',　　　i!　　　,'
　　　　　　　(_⌒,,,,ノヽ,,,,⌒)

207：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:11:51 ID:y7x6N7.20

だがこの議論はすぐに終了した。

　　　　　　／;:;:;:;:;:;:;:;／;:;:;／;:;:;:;:／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;＼
　　　　　./;:;:;:;:;:;:;:;:;/;:;:;／;:;:;:;:／;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:-‐;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:＼
　　　　 /;:;:_;:;:;:;:;:;:;:|;:;:/;:;:;:;／;:;:;:;:;:;:;:;:;:／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／;:;:;:;:;:,
　　　　 };/,.x=ミ､;:;:l;:/;:;:;:;:-=ﾆ¨￣ ｀ヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／;:;:;:;:;:;:;:;:',
　　　　 }/' ＼,//｀^^^^ヾ!　　 ＿　　　ミ;:;:;:;:;:-‐';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;',　　　　　　　下らぬ。
　　　 .//　＼.|!　　　__ -ﾍ''´　　　　　　ミ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
　　　//　 _　 |!-ﾆ二＿＿ヽ　　￣`　　　ﾐ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／ヽ;:;:;:;:|
　　 /ヽミ､　-|=､　　　/　　|!　　_,..==ﾆ_,　}｀ヽ;:;:;:;:;:;/ ／} ';:;:;:;!
　　 |!　∨/_, イx==､ ヾ}/　 !,イ芹汽''刈/==､ ＼;:;:|　!lllll! ヽ;:;|
　　 |!　 ∨ゞ|!/≧}|　 ,ﾉr彡才' 弋し'' /-―ミヾ:::ヽ;|　!lll/　/;:;|
　　 　 　 |　 |!///|!　//''　ヽゞ`'''　¨´..　　 .....::}::::::ヾ}ゞ'　/;:;:;;|
　　 　 　 |　　V//|!　|!　　　''::::::::::::::::::::::::,.,.,::::/:::::　 }!＿/:;:;:;:;|
　　　　　 ':,. 　∨/|!　　　　　　　 ｀ヽ:::::::::::::／:::::/　 !:::/　};:;:;:|
　　　　 　 ヽ　　{/|!　 }= ､,:::}　　　　 ＼::::/::::::::/　　|::::!　 ヽ;;ﾄ､
　　　　　　　':, //ゝ､__,,.笊从ヽ＼　　 　':'::::::::/　　　!::　　　 }: : !
　　　 　 　 　 ',//爪从从从笊ﾊ::ヽ　　 }:::::∨　 | |!/　　　 /: : :ヽ
　　 　 　 　 　 ∨彡''""ﾞﾞﾞﾞﾞﾞ'''''刈从　 　 !::::{ 　 /／　　　 /: : : : :',
　　　 　 　 　 　 ', }!ィﾆﾆ=---=ヽ ヾ!　　|!::::::::/ｲ　　　　 /: : : : : : :
　　　　　 　 　 　 ∨/￣￣｀ヽ:::::}　 　.／::::／.:::　　　 ／: : : : : : : :
　　　　　　　　　　 }'　　　　　　'/　 ／::::／.::::::'　　 ／: : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 ゝ ＿　　　　　 　 ／.:::::::'　　 ／: : : : : : : : : : : : :
　　　　　　　　　　 　 　 ヽ￣￣￣:::::::::::::::' 　 ／: : : : : : : : : : : : : : :

それを聞いていた櫻田が、一刀両断に切り捨てたのである。

208：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:12:11 ID:y7x6N7.20



　　　　　　, '7./ / 7’¨´　ﾟ;　　 |　　　 　 　 ｀}三三三三三三三≦_
　　 　 　 .' .,} L L;'∧　　　l　　 l　　　　　　　}三三三三三三三三{´
　　　　 /　/ l .十}- ﾟ:,‐ =-　=-　_＿　　,///|三三三三三三三ﾆ7
　　　　 i　｀ﾐ、　| l -=ﾟ:,　7´￣　　 　 -　///{三三三三三ニニﾆ7
　 　 　 l　 '.}.〉、l 〉 　 .｀}ﾄ、_＿___　　　　//,｀ﾐ.、三三三三ニニ7
　　　　 i　　〉_｀{iﾄ}、　 _{ 任三三三ミ:_./,　　　 ｀ﾐ佳'´￣ ｀寸ﾆ7　　　　城はふだんから確り守り固めておくべきものだ。
　　　　　　/　 .´ﾌ}=-≦=|三三三三三i|　　　　　 |f{/´、　　 }i7　　　　　それを忘れているからこんな議論が出る。
　　　　　 ,' 　　.7}　 ´/´ .寸三三三ﾆⅣ　 　 、　 }ii ヽ .〉　　/l
　　　　　 {　　,}'　　　　　　 ｀寸三三ﾇﾍ..、　 /　　|i} く_ ノ ,.:'’{
　　　　　 ':.,//l.　　,彡´ .}ﾄ、　 ｀¨¨´　　　＼{　　　ﾐ{/　,.:'’三i{
　　　　　　'i" {　　　　 ,_ 　 ﾍ　　　　　　 ,.:7’｀ヽ.、　 .ノ｀ミ三A
　　　　　　 ',　〉=:.、≦,、、、 ｀　　　　　 {:'　　　　｀》’　　 寸三_
　　　　　　　'////lL川川川ﾄ.、　、　 　 i　　　　　.l{　　　　　_≧i:i:}
　　　　　 　 "}´￣ 　｀　-=寸心、 ｀ヽ　　　　　　　1　　 _ =i´ i:i:i:i ∧
　　　　　　　　l/´¨ ' :. 、　　 ｀マ:、　,j}　　　　　　,/_ .=i´i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧
　　　　　　　　|　　　　　｀ﾐ:.　　　 / /　　　　　,.:'’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:∧
.　　　 　 　 　 l　 　 　 　 　 　 　 ' /　　 ,. :' ’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i∧
.　　　　　　 　 ﾟ:.　　　　　　　　　 /_,. ;' ’i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ}ﾄ.、
　　　　　　　　　ﾟ'　・:._＿　 -=-≦i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ／ 寸i:i:i｀ﾐ:.、
　　　　　　　　_ 　-≦　　　/{ {i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:≧ﾟ／　　　　 ﾟ寸i:i:i:i:｀ﾐ:.、


財界人と経営者という二足のわらじを履き続け、それが矛盾することがなかった男の発言だけに、
同席していた財界人達は黙り込むしか出来なかった。

209：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:12:23 ID:y7x6N7.20

こんな逸話もある。八幡製鉄と富士製鉄との合併問題に関して、当時の日本政財界では賛成派と反対派に
真っ二つに分かれていたが、彼は賛成派であった。ただし、早急ではなくじっくりと時間をかけ、
両者の融和を前提とした合併を望んでいた。
しかし、積極派であった財界の大御所である松永は櫻田を罵倒した。


　　　　　　　　　 ＞'´　　　　　　　　　　　　　｀ﾞ＜
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　 　 　 　 　 /　　､_　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 /　 ミ/ ｀ﾞミ_　　　　　　　　　　 彡'ﾞ´ヽ 　　ﾐ､
　 　 　 　 〃.　 /　 　　 ｀ﾞー-=ニニ=-―'　　 　　ヾ彡　',　　　　　　　　この馬鹿者が！　八幡と富士は早急に合併するべきだ！
　　　　 　 i　ヾ/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　 　,}
　　　　 　 |.　 }ー--､　　 ＼ ヽ,;　　 丿／ 　　　　　 ヾ　　!
　 　 　 　 { 　 j　　　 ＼　 　ヾ !　　j'´ﾞ　　　__,,.. ．- {　彡}
　　　　　 〈　　ﾐ､　　　 ヾz､ :::...}　　{::.,　 ,z彡'´　 　 /彡 j
　 　 　 　 }　　　} 　／￣,マｚ､彡　 ｲkz彡k＝ーz　　}≦　!
　　　　　 /　 ≧,i 　ヽ､__ﾞ'_,＞＝zﾂヾ＝'､ ﾞ′__,ﾉ　　ﾉ. 　 ∨
　　　 　 /　 　 ｿ 　 　＿_ノ彡ｿji　 .i ヾz､￣　　　　 ヾ 　　 ∨
　　　 ,イ　　　 .{ 　ﾐ三ニ＝'ﾞ´ ｜ : |:::　≧三彡'´ 　 {　　　　∨
　__／　}　 　 　 } 　 　 　　　　　i　: |:::.. 　 　 　 　 　 }　　　 　 ',
/ ,/　　ﾙ　　　 ,ﾊ 　 ／｀ﾞー､ノ j　 .レー---､　　　 ∧　　　　　',
_/　　/｜　 　 　 ﾍ /　　,,,,,,,,,,,,,,｀,,,,´,,,,,,,,,,,,,,,,,,ヽ　　∧ 　 　 　 　 ',
　　 /　ﾉ　 ∧.　　∧´ﾞ'j ,ムｴｴｴｴｴｴｴｴｴゝ､ﾐ 　〃　∧　　　∧ｿ
ー=彡' {.　 |　l 　 从　　}ﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::/i|｀ﾞ　,ｲ|　/　l　　　l
　/　 　 |　 !　|　 !. ∧　 ヾ＼＿＿＿＿_/ ノ　 ∧| !/　　l　　 l
ｿ　 　 　l　j,　 !　|　　ﾄ､　､｀二二二二二´, 　 ﾉ　.} 　 　 .|　　}
　　　　　ヽ!　 .|　!　　}　＼　　　　 |　　　　 ／ 　 .i　　　　!　/
　　 　 　 　 　 j丿r＜_　　 ＼::.　 ´｀　　 ／　　　 _＞z　　ヾ
　　　　　　　　　 /　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　【松永安左ヱ門】

210：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:12:35 ID:y7x6N7.20

電力の鬼、式典嫌いであり、徹底した論客であった松永に対して櫻田は持論を曲げず、
逆に松永に対して真っ向から意見する。



;:ゞ　/　　　　　　　　　　| 　　｀ ＜:>､　 /　 i　　　　　 i}　 　 　 　 i　　};:
ゞ　/　　　　,．.、　　　　{　　　 ヾ､ ｀>:>..、　　　　＿ /　_,,,,、_　　 ヾ　≧
ｲ　　　才'''¨^''･＜≧ミ;,,､_　　　/} i　{ .｀＜ヽ''/////////≧.､ﾞﾞ¨ヾ
　＞''´ 　　　 ＿二ニニ、≧=''' ´／ヽ ヾｷ///////////////≧、　　　　　　　　　　八幡は官僚主義、富士は前垂れ商法と両社は性格が全く違う。
　＿＿　　＜¨_．厶ﾐ>-‐'　'　i }　　　　/　{//////////////////}二
　 彡　´ ､ 　　 　　　　／｀ 　 |　　　　 i　 ヾ/////////////////i ≦　　　　　　　合併して「やはり合併などしなければ」と言われるよりも、その前に
　　´ 　　　｀ ｰ-─　''´　　　　i　　　　 .|　　.＼///////////////　　　　　　　　　両社の融和に時間をかけてからでも遅くはないでしょう。
　　　　　　　　　　　　　 /　　　　 　 　 .i　　i　 ｀＜//////////,ｲ
　　　　　　　　　　　　　i　 　 　 　 　 　 }　　i　　　　｀ｰ----‐ヾヽ
　　　　　　　　　　　　　i　　　i　　　　　 |　　:i　　　　　　　　　　 ヾヽ
、　　　　　　　　　　　　i　　　}　　　　　 |　　 i　　　　　　　　　　　 ヾヽ
:.＼　　　　　　　　　 /　　　　i　　　　　　i　 　 ﾍ　　　　　　　　　　　ヾヽ
　　|　 　 　 　 　 　 {　　　　 ゝ　　　　　 }､　　　.V　　　　　　　　　 |’ ヾ
　　|　　　　　　　　 {　-‐　''´　 ｀¨ ‐ ¨´　　｀ ‐- .}　　　　　　　　　 |


相手が何者であっても自らの意見を述べ、正々堂々とした態度を崩さなかった。

211：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:12:58 ID:y7x6N7.20

彼の財界人としての姿勢は常に大局を見ていた。そして、彼は根っからの愛国者でもあり、
同時に再軍備・憲法改正論者でもあった。


　　　　　　　　　　　　　　 ,....-:::::´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:::::-..､
　　　　　 　 　 　 　 　 ,ｨ:':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　 /::ヾ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　 |:::::::_＼::__::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_;:--､::::::}
　　　　　　　　　　　 |::::::| 　 ＼〃ーヽ､ :::_:::::_.:::-ヽヽ´　　　|::::::|
　　　　　　　　　　　 |::::::| l　　{ ト､　　 〃 ＾＾　}!　 } |!　　　l l::::::|　　　　GDP１％枠など何の根拠もない数字ではないか。
　　　　　　　　　　　 |::::::| }　　　　 丶､ {　　　　|　/　j　　　l l::::::|
　　　　　　　　　 ／ヽ::::ﾉ '　　　　　 　 ＼　　/　/　　　　　｀＼::|　_　　　これでは日本は国家ではなく、半国家である。
　　　 　 　 　 　 !∧　V　ー―-､　　　 　 ＼　　　 　, ィー― ヽﾚ', ヽ
　　　　　　　　　|　 ヽ | ミ､丶ｬー､ｭ､__　_>　<＞イ三三三ﾆヽ | /　}!
　　　 　 　 　 　 ! _}　〉　彡ヘ ｀　__ノ'　< ⌒ ｀ {三三三三三}　(　　|
　　 　 　 　 　 　ヾ､ (　　　　　　 ´　　　|　　 |　ヾ=三三三ﾆｿ 　〉ﾉ/
　　　　　　　 　 　丶 } 　 ､　　　　　　}　|　　 |　l　　 ￣￣ヾx､　{//
　　　　　 　 　 　 　 ＼ 　 ヽ　　　　　|　|　　 |　|　　　　　 / ヾl ／
　　　　　 　 　 　 　 　 |　 　}　　　　 / ﾉ　　 ヽ　､　　　　 { 　 |´
　　　　　 　 　 　 　 　 |　　　　　 ,--｀=ヽ __∠='--､　　　　　 !
　　　　　　　　　　 　 ノ|　 　 /／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＼　　 |
　　　　　　　　　　／＜lヽ　ヾ/ ´⌒ ー――一 ' ⌒｀ヽ〉ﾉ　 ,ｲ｀ヽ.
　　　　　　　　 　 |　 ヽゝ､＼ ｀　　　 -―――-､　　　 Y ／/ソ　 |
　　　　　　　　　 ﾉ　　　　 ＞ヽ､_　　　　 ー　　　　 ＿_／＜　　　 |
　　　 　　 　 　 /　　　　　　　　　＞‐ 、　　　r=＜　　　　　　　　　|
　 　 　 　　 ＿∧ 　/＼　/￣|　/　∧ }￣￣||⌒! |　　　　　　　　ノヽ__
　　　∠⌒＼　∨　 ＼/ / 　 | /　/　| |￣￣|l 　| |　　　　　　 ／}　/ 　＼

212：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:13:11 ID:y7x6N7.20

ちなみに鉄鋼業界の暴れん坊にして、住友金属工業中興の祖である日向方斉もまた
同じ意見を唱えていた。




　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::／￣￣￣`､::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　 　 ./::／ヽ:::::::::::::／　　 /|　　　 ヽ:::::::::::::::::::::::::::/／|
　　　　　　　　　　　 　 　 　 .!::/ 　 |::::::::／.　　　/　ヽ 　 　.|:::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　|ｿ 　　|:::::/　　　　.//⌒　|.　　|:::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　クソッタレが！　自分の国も守れずなにが経済大国だ！
　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 　 l:::/　　 　 　_＿ 　 |.　　|::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　l.　　　∨. 　　　 ／ .__〉　.ゝ　ﾉ:::::::::::::::::::::::::::/＿　　　　どいつもこいつもバカばかりか？
　　　　　　　　　　　　　　　/.|＼　 ヽ | /. ／..ｒ'"l　　　　　ヽ:::/⌒ヽ::::::::::::::::／
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＼_ヽ、} !{／,.o'´／　　 　 　 　/ ） 　|:::::::::::／
　　　　　　　　　　　　　　　　＼.ヽ_ﾟ/ﾐ='ヽ─´.　　 　 |. 　　/ﾍｉ 　/:::::.／
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ', 　ﾉ　　　　　　 　 　 U　 /ゞﾉ　/:::／
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 .',　ヽィﾚ⌒＞　　　 　 　 (ヽ^.／￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',　　',￣￣´ヽ　　　　　 /￣　＼＿__＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　', 　 ', ./'7⌒ｌ 　 　 　 / 　 　 |ノ/////冫ニﾆ７7
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　ヽﾆ--'/　　　.／ 　＼／///////.|ニニ.| |
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼.ゝ-'´　　 ／ 　＿／/////////.|─ニ.| |
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／./＼______／ヽ二´/////////////ﾚ-二//
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／/////// ／＝/ｿ///////////////ｿ＝.//
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |//////// /===/ｿ///////////////ｿ==.//
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ/////./ /.==./ｿ///////////////ｿ==.//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉//////i!.￣i! |////////////////i!￣i!|
｀'t-､　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／///// ／￣￣￣＼///////////／　／
‐‐ﾚr',　　 　 　 　 　 　 　 　 ／///////.| ／￣￣＼, ｀''────''´ .／
＿〉./　　　　　　　　　　　　//////////./　　　 　 　 .／⌒ヽミﾐ＼
__ﾉ l、　　 　 　 　 　 　 　 ///////////.|　　　　 /⌒ヽ 　　　ヘノ ＼＿
_)　 |――-ﾍ＿＿＿＿＿|///////////ｌ　　　./|　　 ｌ　|　＼　｀＼ ヽヽ.＼
　／////////////////////////////ヽ　 イ .| 　 /　ヽ＿ |　　/.　〉 |　|￣ヽ
　　　　　　　　　　　　　　【ちなみに通産省と何度もやり合ってる反統制論者】

213：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:13:22 ID:y7x6N7.20

その一方で彼は亡国的な国粋主義者とは一線を引いていた。かの三島由紀夫らがロビー活動をしていた頃、
櫻田は彼に対して150万円を投げ銭した。

　
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ
　　　　　　　　　 　 　 　 /.::::::／~¨ヽ≧{:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 /.::::::::|　　　　Vﾑ >､::::::::::::::::::::::::::::＿:::::::::::::::.
　　　　　　　　　　　　　|::::::::::{　　 __／Vﾑ　 ヾ::::ム=＜　　 　 V:::::::::|
　　　　　　　　　　　　　|:::::::;ｲ　　 /　 ハム　　¨´　ヽ.　　　　　}::::::::::!
　　　　　　　 　 　 　 /´V:/ ヾ　 /　 /　 Vﾑ_ 　 ニ　キ ミ　　/.:::::::::′　　　　　君ね、私兵はいかんよ私兵は。
　　　　　　　　　　　/　 /:! 　 へ.　 /　 　 Vﾑ　　　　 |　　　　{:::::::::/
　　　　　　　　　 　 {　 {::′ｼ ゞ¨弋ぅx＿,､ Vﾑ ＿_＿|__　　　ﾊ:::::/_
　　　　　　　　　　　ヽ. |{　　　　　　 二彡' 　V////////≧x'　}:/ ハ
　　　　　　　　　　　　'､!′､　　　　　¨　　　　V//////////}ﾆ{;′　j
　　　　　　　　 　 　 　 |　　ヾ　　　　　　 　 　 ヾ/////////　 !ノ　/
　　　 　 　 　 　 　 　 」!　　 }〃´　　　 　 　 .′}｀ ＜///Xﾑ /　／
　　　　　　　　　　　 /∧ 　/　　　　 / 　 　 ′´　　　､¨´ィヾ′´
　　　　　　 　 　 　 .′:∧　　　　 　 >､　__/ _.}　　　　 Y　　/¨
　　　 　 　 　 　 　 |::::::{ ∧　r' x≪//介=介∧　　､ 　 |　 /ヽ
　 　 　 　 　 　 　 /.:::::::ヽ∧ {　　　 ￣¨ﾆ=‐-=ﾐ　　 ､ ′ｲ::::::}
　　　　　　　　＿/:::::::::::::::｀∧　　 .::::::'⌒ヽ::..　　 ｀　/／.::::::::::!
.．.:--‐=::ﾆ:::::::::::{ {::::::::::::::::::::::ヽ 　 　 　 　 　 　 　 ／.::::::::::::::::|

214：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:13:42 ID:y7x6N7.20

よほどこの時の態度が屈辱的だったのか、三島は財界人に対して徹底した不信感を持つ。
そして、後に三島事件を起こしたわけだが、結果的にそれが尻すぼみになったことを考えると、
櫻田は三島の程度の低さを完全に見抜いていたと言える。


　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／イフ,ｨ、Vﾍヽﾍ∠ﾆ＝_- _.-=ﾆ二｀＝＜__,
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／´／ィ: : :ヾ:":|ﾄ. '.ヾ､: : : Σ-=二≧ ｰ=ミヾく
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 // /: : ﾄ､: : :.||ﾊ '.ｨヽ: : : :丁≧三ﾆ≧z＞f ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 〃 r': : : ::)ヽ.ィ||∧ ∨!: : : : }三三三三三_ |　　　　　　ふん、所詮財界人などこの程度の連中か！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,′rヽ: :ｲ'´,､ <:|!: : ヾｌ: : : : :/三三三三三=ﾞ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　八､;;;ヾf:{:/:>yz＿:_:!: : : :/ヘﾞ三三三三三|
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ゞ=汽ﾐ{(;;;:≦ｫ=ｧ-ﾐ､: : : : :＼三ﾆ三三. |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 {;;;/: : "ヾ､ヾ=｀´≠’.:)ェ====/: ｨヽY三 |
　　　　　 _从　　　　　　　　　　　　　　 　 У: : : : : :!ﾐ＝f==r‐": : : : : :ﾐ: (:ヽ: :|三 j
　　　　／: :､:＼　　 　 　 　 　 _从　 　 ／:_,: : : : : : : : : :＼ !: : : ／: : : : : ）: :.ﾉ=-く _
　　　 {´: : : :∨:.＼　　　　 rく: :＼:ヽ　　｀ｰr;;:‐-: : : : : : : : :ヾ: :/: : : : : : ´: ／: : :／　＼
　　　 ∨:⌒>:}: : : ;.＼＿_从: :ヽノ:.; |　　　 };<:=‐-　_: : : : : : : /: : : : : /ー': : : ／　　　　＼
　　　＿ヽ-＜:_:_ノ: : : : :／: :ﾏ＝‐':/　　　 ,ﾞ: :ヽ｀ヽ.-yヽ: : : : : : : : : :/: : : : ／ 　 　 　 　 /ヽ
　 ／; :＜;ｰく: : : : :/: : : : : : : :｀: : :{　　／/: : : : :ﾞ: : :｀:~`’: : : : : : イ:/_: ＜　　　　　　　 //＼
　 !:/:r‐-､ヽ:ﾉ: : : ;': : : i: : : : : : : : :|　　∨/＞,．_: : : : : : :_:．≦;;;;．＜　"／　　　　　　 //
　　`､:ヽノ: ﾉ: : : :.{: : : :ヽ: : : : : : : :|　　　Y//////777＜;;;;;;．＜　　　　　　"/'　l ｌ!､　//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【三島由紀夫】

215：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:13:57 ID:y7x6N7.20

そして彼は他の企業が行っている多角的経営に関しては真っ向から批判し、
それを唱える者には青筋を立てて怒鳴っている。
それ故に、彼がトップであった時期、日清紡は多角経営を行っていない。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__ュ-一ーゞﾒﾝ⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　 　" ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　__　　 ヽ　　　　　馬鹿者が！　知りもしない商売に手を出して成功すると思っているのか！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 冫ｌ¨〝釤ヽ　　　　〟-‐ﾊ｀　〉 .¢
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ｌ .〉/　／ 　i＼／'､ 　 　 l　/ 　│
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　l ｌ ｌ. /　　〈 ‐-＿　l　　　l 〈ヾ　 ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ　 .ﾘ　 l､_　 .ﾊ￣　-┼´　　}　ｌ ヽ--､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l /〟彡ヽ.tъ､､.__/ _ -ｮ=ｱ　≦礀冖.l　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　ｌ 　　　ヽ .:::l　.ｲヽ::::;　　从从ι ﾂ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼ｌﾒ､ 　　　:::ｌ　 i .〈:;´　 -゛ヾﾒ´./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _　‐ ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｌ　i　　　.:::l 　 i ´､　 ､　lilili彳ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　＿　　　　　　　　　　　　　　_　‐ '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ }　　 ＞l‐-´＼　　ヾ卅.ﾇ‖ _ 　　　　　　　　 ゝ-'"'＼ .‖ ￣￣｀丁　　　　　 _　‐ '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ/／ : -‐‐-　_＼　ヾ.ｿ_　‐"l　　　　. 　ゝ "　r 　 ...;ゝ.‖ 　 　 　 l　　 _　‐ ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､ ┘〉" 　-==､;　　 ＞´　　　　.;;:::.,,.;;::::::/´ 　 　 l 　 /　､‖　　　　_ l.- ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　 .､＿/''"　　.}::ヽ､_　_ 　- ´　　　　　　 /:::;"､､-‐l　　　　　〉､ ｀‐´:‖　.ｒ ヾヽ　　　　　　　　　　　　　　　 _　 -‐
　　　　　　　　　　　　　､..::一⌒::::::/　ヽ　　l::::::::::::/ヾ　　　　　　　　::::://'.／´ 〈　 ＿〈 ⌒ゞ　-‐‖ .│ 　 l　　　　　　　　　　 _　-‐　´
　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::::/..:　 ヽ　　〉､_､ l　 ∨　　　　 .／//_/_/　...-ｲ￣　 　ｌ 　　　　.‖　.l　ｏ .厂　　　　 _　-‐　´
　　　　__.... -‐-､〃''　:::::::::::::::::::::/ 　_...-/　/ l 　 l 　　ヽ 　　 ／///ｌlililil_..ｨ´　ヽ 　　　l　　　　　‖　.ｌ　 .ノ　_　-‐　´
. _....../　　　/´ 　::::　　.〉::::::::::::::/／　 /　/⌒､ __l　 ／::l　／　//.ｿ lililil　│ 　│ 　　│ 　 _.メ ‖　 レ'´´T
..:::../　　 　 l＼ 　 ::　 /ゞ::::::::ﾂ　　　　＼ l　 「　　 　 　 レ 　/ﾂ∨ .lilili　 │ 　 ｌ　　　 ヽ､￣　　‖ 　　　　l
　./　　　　 }　 ヾ　 :∨　　ソ　　　　　　 ‖　 〉　　　 ／　　　 　 ヽ lilili　　l 　　l　＿.ツ 　 ｀ﾄ､__‖ 　　　　l
. 〈　　　　　{ 　　ヽ 　l 　　　　　　　　　　lil〟 　　 ／　　　　　　　ﾄ､li〈　 │＿ ﾄ､　　　　　＿　.‖　　　　 ｌ
　 ヽ　　　　 l　　　∨ 　　　　　　　　　　 ｿ　 　 ／ 　　　　　　　　ゝllil＼　ゝ＿　 ｀＞､／ : : ￣‖　　　　 l
.. ､＿ﾍ　　　 l　　　ヽ　　　　　　　　　　/. ... .／　　　　　　　　　　　lllililililヽ､　 ￣｀ヽ/: : : : : :／フフ￣￣
　　　　ゝ-‐‐-｀ェ､ 　l 　　　　　　　　 │　　　　　　　　　　　　 　　 llilililili　　｀‐'"／: : : 　.／／／
　　　　　　　　　　　｀┤ 　...　　　　　　ヾ 　　　　　　　　　　　　　　 ゞl|ililil:.二三--‐‐　∠／.／
　　　　　　　　　　　　 l;;;;;;;;;;;;.,.;　　　　　 .)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ--___二二 ／
.　　　　　　　　　　　　 l;;;;;;;;;;;;;;;;:,,　　　 〉　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /
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　　　　　　　　　　　　　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;::,　 l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l

216：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:14:10 ID:y7x6N7.20

そして1985年、彼は逝去する。享年81であった。


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　　￣＼　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＿__|_ノ´　 　 ／ ─ ､　／　|＼　 　 ＼ ＼
　　　 　 ＼.　　　　 　 　 　 _　ィ´　　　　　　 .／ ﾄ､　　 ／ ＼/　 }＼.　 　＼ ＼
　　　 　 　 ＼.　　　　　 　 {:::::.　 　 　 　 　／ 　 |:::{＼´　　 ノ　∨:.　ミｭ_､ 　＼ ＼
　　　　 　 　 .|　　　　　 　人:::::::::::.　　 　 ., 　 　 乂ミｭﾟー　__　 /　　　ミｭ_＼　　　 ヽ
　 　 　　　 　 |　　　　　／::. .＼:::::::::::. .　　:;.　　　　 ￣￣￣　 / _彡　 `ﾏ､ 　＼　＼ ‘，
　 　.　　　　..|　　 　／＼＼:. .　　　　　　　 :;;　　　::::::::::::::::::::::. ..　　 _/{ム.　 　 　＼＼}
　 　 　　　　..| 　 ／{_.　　＼＼　　　i　　　　 .,　' ､　:::::::::::::::::::::::::::...八∧! {_, 　 　 　 ＼!
　　 .　　　　..!.／　　 ＼　　 ヾ､　　 |　　　　　　　:::; :::::::::::::::::::::::::::::::::.} ､ 　 ＼　　　　 ﾑ_
　　 .　　　　 |　　　　 　 ;. 　 .:::::＼　!　　　　　　　 . .::::::::::::::::::::::::::::::::∧ ＼　　＼　　 　 |
　　 .　　　　 ＞　　 　 　 ;　 ;: :::::::::: |　　/　　}:;　 .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ　　　　　＼　　 !
　 　 　　　　 |　　　　　　　　　.:::::::: ::}__ノ　　_　 　 .::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　∨　　 　 ､ ヾ　.|
　　　　 　 　 .|　　　　　　　　 .:::::: ::::. :.　　　 j}　／ .::::::::::::::::::::::::::::::::;/￣￣｀ヽﾍ 　 ＼ﾐ,人
　　 　 　 　 ./＼　 　 __　　　 .::::::.:::::. :. 　 　 　 {　.::::::::::::::::::::::::::::::／ィ ￣｀ヽ　}　＼　 ヽ厂
　　　　　 　/:::::::.＼／ }`ｰ　＿＿　　　　　　. :.::::::::::::::::::::::::::::::::／ _)７ .: :: : :}:∧＼. ＼__＞
　　　　　 ./:::::::::_／ ／　　　　　　￣｀ヽ　　. .:::::::::::::::::::::::::::: イﾆ二...;:;::;;;;::::ィ´　}＿}¨´
　　　　　/ｰ一 ´ ／. :. 　 　 　 　 .: : ::::::.＼. .:::::::::::::: ＿ ≦´ー　＿＿ イ´＿彡
　　　　./￣¨¨ У　.::: .　　　　　　　.::::::::::.　＼＿ ィ{　　/::::::::::::::::::::::＞ ´
　＿_／　　 ∠二＿＿:::. 　..:::::::::::::::::::::::::::::.　 }　　 ;　 / ＿　-一 ´
　　　　　　　　　　　　　＼ .:::::::::::::::::::::::::::::::: : ..＼ /.／´

217：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:14:21 ID:y7x6N7.20

櫻田は社長という役職に対して生前このような言葉を残している。


　 　 　 　 　 　 　 　　/:::::::::{:::::::::ヾ:::::::::/:::::::::::／::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　 　 　　　 　 ′:/´¨＼ｰ- ､::::::{:::::::／､￣￣｀ヽ::::::::::‐-:::i
　　　　　　　　　　　 |:::::′ 　　 ヽ/ ｀ー‐ ´ 　 }　　　　 {:::::::::‐-:::|
　　　　　　　　　　　 |::/　　　　　 {＼ 　 　 　 / 　 i　　 {::::::::‐-::::|
　　　　　　　　　 　　/　　　　　 　 　 ＼　　　　　　｀　　ヽ::::::::::::::|　　　　　 自分がこの会社を繁栄させたなどと考える社長は思い上がりの最たるもの。
　　　　　　 　 　 　 〈　 　‐- ､__ 　｀〉 {　＼ -‐＝‐- ､　　‘，:/'⌒ヽ　　　　 預かりの精神のない社長は失格。会社というのは所詮預かりものなんだよ。
　　　　　　　　　　　{　 ミ　＝ｒｯ7`/ｰ=〉ｰ/ﾆﾆﾆﾆﾆニヽ 　 }::| /ヽ　}
　　　　　　　　 　 　 V　　`　-‐´ {ﾞ' 　ヾ　Vﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ}　　｀〈
　　　　　 　 　 　 　 ｛　　　 　 　 ,|　　　| 　ヽﾆﾆﾆﾆﾆノ､　 　 ｝ 　 ′
　　　　　　　　　　　　ヽ　 　 　 / |　　　|　ヽ､　　　　 /　＼ /　／
　　 　 　 　 　 　 　 　 | }　　　　|_|＿＿ｊ 　丿｀ 　 　 { 　　　iヽ{:ﾉ
　　　　　 　 　 　 　 　 |　 　 　 /三三三三三三ヽ　､　　　 }　|′
　　　　　 　 　 　 　 　 |　　 / 〈／￣ ‐---‐ ￣＼〉　〉 　　,　 |
　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　 ,　-───- ､　　　 　 _丿　:|
　　　　　　　　　　　　　 |＼　　　 　 /　　 ヽ　　　　　 イ / 　 :|＿_
　　　　　　　　　　　「￣ヽ＿＼　　　 　 　 　 　 　 ／ ／　 　 :|二ﾌ｀ヽ
　　　　　　　　　　　|　　 　//　｀ー── ──　 ´厂￣￣￣ ´　 　 　 }

218：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:14:34 ID:y7x6N7.20

　　　　　　　　　　　　　　 _..-ｪｒｔlllｯ=ｌ=4ｮｮ＿_
　　　　　　　　　　　　_..ullXj广｀ﾍ ヽ　　 "i:;:;:;:;:ｮ 、
　　　　　　　　　　,r'フ’丿.. ＼　/ l　　　　 i::;:;:;:;:;l'、
　　　　　　　　　''’〃‐''广´　　｀,ｬｮｔｔｔｮｮｪ、ﾞl:;:;:;:;:;:;:;:l、
　　　　　　　　　　 j−--... 、/（llllllllllllllllll）'、i::;:;:;:;:;:;:;ll'、
　　　　　　　　　　 l 'ﾆｴｴ./.　|　ﾞllllllllllllllllヽ　　":;:;:;:;:;ll'、　　　　　　もし自分以外の人間が社長になっていたらもっと会社は繁栄していたかもしれないとは
　　　　　　　　　　 |￣　　/─＼｀ﾞﾞﾞﾞﾞ"""　＼ 　lム"ヽ　　　　　　　考えないものだろうか。
　　　　　　　　　　│　　 /!!!!!!!ワ　　　　　 ｨ'"t_|lﾞT'、|
　　　　　　　　　 :jll Y　 　..,,,,,,,, 、,,,,,,,　　　′ ﾞ'〈| }lｿ丿
　　　　　　　　　　ﾞl　|　　jiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiil∟　 、　　　{_:;:;|
　　　　　　　　　　　ﾞl、 _ jl广´｀　　　｀ﾞ`ｰ ヽ　　 !:;:;:;l
　　　　　　　　　　　 ﾞlt 1'´　 n==lｔぃ　　　/ ﾉ　 ''l:;:;|
　　　　　　　　　　　　 ﾞl ゛ ''┘　　 ｀丶　　　　　　丿 '、
　　　　　　　　　　　　 'ﾞl'、 _,,_..＿..＿__　　　 __〃 　 ﾞ!
　　　　　　　　　　　　　ｌ　/::::::::::::::::::::::::＼]}Iilｔlillllﾆ_..uuuj
　　　　　　　　　　　　　j｀｀ﾞﾞ−−""""""::::::::::::::::::::::::::::::L'
　　　　　　　　　　　 _ｮ:::::::::://|.|ｌ //ﾞlﾞl　　　::::::::::::::::::::::::::::::l


ちなみに日清紡は後に多角経営を行い「せんいからメカトロニクスまで」というスローガンを掲げている。
多角経営はいけないという信念をもっていた彼であったが、それを絶対的な形で押しつけるような、
そんなことはしなかった。

　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　 _....‐::´:::::::::::::::::::::::::::::｀:‐.._
　　　　　　　　 　 ,:::__＿ノ___￣￣/｀ｰ-ｧ､､::::::::｀::::､
　　　　　　　　 彡:::::::::/　 　 ≧x､　__ /　　 ｀^ ヽｰﾐ､
　　　　　　　 ,':::::::::::::::}　　　￣ 　 ` ､｀ ｰ- ___　　j　|丶
　　　　　　　 }::::::::::::::ﾐ　　　 _＿___ 　 ＼ }　　￣｀　 |　　　　　　　自分が社長になったのは会社を取り仕切るためじゃない。
　　　　　　　,::::::::::::::/　 -‐'　二二ﾆ=‐､_＼　 {　 　　!　　　　　　 四年なり六年の間、会社をお預かりして業績を上げ、次の社長にバトンタッチするためだ。
　　　　　　　lノミ､::/　 _= _ｰ= ＝=｀ヽ 　 ,⌒ヽｲ==ﾆﾐ)
　　　　　　/／ヽ|:j　　 ／　 ｀ｰ　-‐'　　 {　　}三三ﾆ|
　　　　　 /(　　| /　　､　　　　　　　　　冫　 ﾄ､三三|
　　　 　 〈 ､　 ﾉ　　　　ヽ　　　　 __/ _　ゝ_　 ! ＼三|
　　　　　 ヽヽ__〉　　 　 /　ノ ,.=--ヽ_ -ｧ　￣) 　 　 !
　　　　　　 ＼＿　　　 　 /／::::::::::::::::::::｀:::ｰ'..._　　 ,
　　　　　　　/　　}　　 　 /／ヽ二ﾆ== ＿_:::::::::}　 /
　　　　　　 /　　 |　　 　 ﾚ　　 ｀＝ﾆﾆ二三{/::l/ /
　　　　　　,　　　 {　　　　　　　　 ＿＿_　￣　|! /
　　　　 __/＿＿_ ＞､　　　　　　　　 　 ￣　 / /
　　　／　　　　　 ￣｀ｰ―- ＿　　　　　　　　ノ
　 　/　　　　　　　　　　　　 　二ﾆ=-　＿__ /
.　 /　　　　　　　　　/＼ 　 /　　 /　 /　 / }-､

219：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:14:47 ID:y7x6N7.20


現在、日清紡ホールディングスはブレーキ事業で収益を出しており、新日本無線などの企業を買収、
2011年にはブレーキ摩擦材世界大手のＴＭＤ（ルクセンブルク）を約460億円で買収し、世界シェア首位に浮上した。


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:::: :::::: :,//////,|　　 ::::::::::::::::　,(::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j//　 Ｖ,
:::::::::::::j(///^V/|　　 :::::::::::::::: .j(::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/(　　 v；
::::::::::::j///　　Ⅶ　　 ::::::::::::::: .j(::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/(　　　v,
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:::::::::::I//I ┌┴―┬―――.ｊ(::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/( 　 　 Ⅱ
:::::::::::I//I　|　　　　|! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/(　　 　,II
:::::::::::I//I ｜　　　 |! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/Ｉ　　　 ,II
:::::::::::I//I ｜　　　 |! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/Ｉ　　　 ,II
:::::::::::I//I ｜　　　 |! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/Ｉ　　　 ｊ(’
:::::::::::I//I ｜　　　 |! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/Ｉ　　　,j(’
:::::::::::I//I ｜　　　 |! 　 　 　 I!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j/Ｉ　 　 ,j(’
:::::::::::Ⅶ/,　￣[三三三三三 I{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Ⅶ,　　 ,j(”
:::::::::::::Ⅶ/,　 ////}　　　　　 vI!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Ⅶ;　　,j(”
:::::::::::::::Ⅶ/, ,:///,　　　　　　 Ⅶ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/,　 ,j(”
:::::::::::::::::v乂ノ//”　　　　　 　 Ⅶ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨乂ﾉ/
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::::::::::::::::::::::`く//　　　　　　　　　Ⅶ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨/

220：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:15:07 ID:y7x6N7.20

今の時点から見れば、櫻田は古い経営者なのかもしれない。だが発展途上である日本の財界の中で、
彼は自分の仕事から決して逃げず、財界人と経営者の役割を両立させた。
彼は一生涯、自らの職務から逃げ出すようなことはしなかった。



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221：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:15:19 ID:y7x6N7.20

ちなみに櫻田は日経連の四代目会長であったが、その論客ぶりと意見の鋭さから、
彼は「ミスター日経連」と呼ばれた。
彼らの実力は一国の首相のクビすらすげ替えることが出来るほどの力を有していた。


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　　　＞ ．　 　．-＜´．-＜´　　　　　　　　　　　　　　ヽ:.:.‐-:.. . ヾ」／ ´　　　　　　｀　.
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222：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:15:33 ID:y7x6N7.20

そして現在、だが、日経連はその役割を終え経団連と統合し、日本経済団体連合会として再出発している。
多様化し、相応の経済力と規模を有した今では、彼らの役割はかつてに比べて低下していると言える。

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223：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:15:43 ID:y7x6N7.20

だが、このような時代からこそ、我々は偉大なる先人の活動を学んでいくべきではないかと思う。
過去を知らずして未来を見通すことは出来ない。


　　　　　 /三三三三三三三三,'ﾞ　`ソヾ､ミﾐｿi/　　　　　　　　|:;;;;;|:　|
　　　　 ./三三v'｀ヽ三三三三'　 ／´／　`yil|ｉ/, 　 　 　 　 　 |:;;;;;|:　|
　　　　/三三/'´`､ i三三≡"ﾞ ／　 /　 ､/' ﾞ〉（´ 　 　 　 　 　 |:;;;;;|:　|
　　　 ﾘ三三（ :;:;:;;i. ill/　　　ヽ　ー=x､　/､ｰﾊｉハ　 　 　 　 　 .|:;;;;;|:　|
　　　/三三 ﾉ.;:;／　ﾞ' ,　　　-ミ　ﾄ､､ﾞi!/　､/! i!　ﾍ　　　　　 　 |:;;;;;|:　|
　　./三三ilゝ,｀ﾞヽ　　 ﾍ　　　￣ﾞ､ゞ｀;;ﾞ'､__冫/'　　） 　 　 　 　 |:;;;;;|:　|
　 /´"`"'´ ,' ｀ｰ　 　 　 〉 ''　"　　｀´/｀､ｷ ノ'　　　　　　　　　 匕.⌒ﾞﾒ
∨ ﾞ　　　　i　 i　　 i　　i　　　　."　 /　　 i　　　　　　「二二二二二二二二二匁
　｀ヽ､　　 ,'　 !　　 ,　 ﾉ　,　　 　〆"　　 ﾊ　　　　　　　　 ノ｀メゝ'´￣￣ ￣｀i卞!
　　　 ｀ヽ､i　 !.　　　,'/　/_.ノｉ|ｉ|ｉ|ｉlｉl､＿__,!　　 　 　 　 ノ´　"　　　゛;'　_,/＿ノ/./
､　　　､　　｀ヽヽ､　i ｉ 〈厶'""`ゞﾉﾘi| 　 　 　 　 　 　 /　ﾞ 　 　 　 ／´　 '　!　il |
　｀ヽ､　＼､　　　｀ヽﾄ､ 　　　=　r'´｀　　　　　　　　 /　　　　　　 　 ,　"＿ﾉ　il |
　　ヾヽ､　 ｀､ 　　　ヾｉ､　　　　/　　　　　　　　　　 ｉ　　　　　　 　 ､／´, ﾞ!　 il |
ヽ､　　 ﾊ　　 X　　　　 ヾ〉=―'　　　　　　　　　　 ,ﾉ〟　　　 　 　 "_,.＝,./　 il |
.　　＼　 !､　　 ﾞ　　 ／/.:´ﾊ　　　　　　　 　 　 　 ! 　 　 　 　 　 ｀´　´ _,! 　 il |
､　　　ﾊ　､ヽ　　 .／.イ;:../､ !　　　　　　 　 　 　 /　　　　ヽ､　　　　‐=‐'　　 il |
ﾊ.　､　　ﾍ ｉ ＼／､ ｨY.:i' `〉　　　　　　　　　　　/　 　 　 　 .ヽ､＿_／i|　　　 il |
　ﾄ　　〃 酛　　ヽヽ｀＼ﾞ､ｉ| 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　　ﾞ`Yil:::::.:.;i|　　　 il |

一人の男が作り上げた組織は、その活動意義を失ったが、その理念までは失われてはいない。
その理念を忘れぬ者がいる限り、理念は引き継がれていく。

【終わり】

224：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 17:16:10 ID:y7x6N7.20
今回はここまでです。次回はこのお方を取り上げます。


ミ彡　 〉,,,,,　 ゞ|　.| |　| .||　 || |　 | .|　　|/　　,,,,,'''':::::''';;,,,,　 ''''彡 ≫ ／／~ﾍ 〉ミミ
ﾐ彡　《《''''''';;;;;;;;,,, ヽ!　Ⅳ|　|||/／|/ ,,,,,,,,,,'''''''':::::::;;;;;''''''　　　　　'''ミミ'ｲ~~　//ﾐミミミ
ﾐ彡　 `､''''';;;;;;;;;::''''''ヾ || || ||/.,,'''''''::::::::::;;;;;;;;;;''''''''＿_　　　　　　　 ミﾐ |~ヽ//ミミミミﾐ
彡　　ミ!　　　　''''''''''V⊥L巛ii;;;;;;;;;;;;;;''''''__==='￣~//　　　　　　　 ミ ）/ | |ゞミミミミ
彡　　ミヽ ヾ､_＿_,==ヾ》　《《≫''''''=､　`＝″　 彡　　　　　　　　　　ヽ // ヾミミミﾐ
彡　　 ミ|ﾐ　 '''￣~　彡Y　　/彡ミﾐ　￣―＝=彳　　　　　　　　　　 |　　/　 ヾミミﾐ
彡ﾐ　　ミ|ﾐ　　　　　　　|　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄー'彡　　|ミﾐ
彡ﾐ;　　ﾐ八　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|　　　彡　|ミ
彡彡::　 ﾐミヽ　　　　　　|　　　　 彡ﾐ``'':::､ ,,,, ,, ,,ｯミ彡　　　　　　.|　　　　彡/ﾐ
ミ彡'';　　'';ﾐミヽ　　ミゞｼ|　　　　　__/　　　　　 ,ｲ ~||》″　ﾐ　　　 |　　　　　 |ﾐ
ミ彡彡　　'ﾐミミ＼　ミ＼|　　　∠＿＿＿＿／　| ｲ||　　　ﾐ　　　|　　　　　 /
ﾐ彡彡ゞ　　ミミミミヽミヽ`t-t'　|　 |　 |　 |　 | ィ~У　　　ﾐ　　　 |　　　　 ／
彡彡彡';,　　ミミミミヾﾐ`<ゝY 个 个 个 个イ　У　　　 ﾐ　　　У　　　 /
ﾐ彡彡彡;;;,,　 ﾐミミミミヾﾐヽ┴┴.┴-┴.┴┴'~　,　　 ﾐ　　　／　　　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回　AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第十一回　ナニワ鋳鉄伝】　　　　　　　　　　　　　　　　　
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225：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 18:20:04 ID:E8PlWXLs0
乙でした。

連日の投下、本当にお疲れ様です！

226：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 18:45:25 ID:XwJnYZvM0
乙でした。

次は分厚くて重そうですねw

227：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 20:08:11 ID:UUTmT5HM0
乙

228：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/14(日) 22:29:59 ID:RIcQdbwI0
乙

＞このような人の形をした鼻くそが、偉そうに息をしていたことに作者としては憤りを禁じ得ない。
この作者さんがここまでこき下ろすって初めて見た

229：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/14(日) 23:26:32 ID:y7x6N7.20
>>228

作者です。三池もさんざん引っ張っておいて、誰一人得せず（労組側も）
三池争議を聖戦にして、なおかつ非武装中立を掲げておいて、
チェコスロバキアとアフガン侵攻は許容できるというエセ平和主義。

向坂は厚顔無恥の生きた典型というしかありません。

んで、普通に死んで法政大学に向坂逸郎記念国際交流会館が建設されているわけで。

ちなみに死んだのは今回の主人公櫻田武と同じ1985年です。

マジ「何普通に死んじゃってるの？」と思うのです。

230：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/15(月) 12:13:19 ID:AZ8RIlxo0
>>228
キャラでも人物でも悪者認定すると容赦なく批判や断罪をする人だよ、この作者さん
内蔵摘出とか

231：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/15(月) 14:04:50 ID:ff71OD960
読んだ、乙

三池炭鉱は初期やる夫スレであったなあ

232：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/15(月) 20:59:38 ID:csfGixec0
>>181
宮島は櫻田を相当気に入ったのか、彼を若干四

の続きを教えてください。
更新が再開されて嬉しいです。乙！

233：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2014/09/16(火) 18:01:08 ID:99H1eR4Y0
>>181訂正
櫻田も納得して辞退の使者役となった。そして櫻田本人も後に殊勲を受ける機会に恵まれたが、
師匠といってもいい宮島にならい、断り続けた。

　　　　　　 ⌒ ､
　　　　　　　　　ヽ　　,,,,-----,,,,,,,＿
　　　　　 ,ー'""`ゞ/;＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,｀ヽ
　　　　　　　,r-'"''''''' '' ヽ'''''''''''''''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;,` ､
　　　　　 ,-''`ｰ､　　　／　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
　　　　,.'"　　　 ＼,／＿_ _　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;|　　　　　　　はは！　それもそうですな！
　　　　〉`ヽ　　､／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　'､;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ
　　　./´｀ ／　　､ヽ;;;;;;;;;;;;;;;/.,　 ｀`-､;;;;;;;;;;;;;;;;; ,`
　　　|　／ _,　　　　￣￣￣　｀`ヽ,　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`
　　　|　＼　､　　　　　　　　　　　`､　|;;;;;／⌒ヽ/
　　　|　,,iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii,,,　 ﾞヽ|;;/､'　` ）
　　　|　ｧ--------------‐'ヽ;;;,,　　`､ 〉 ） /|
　　　.| .l ｰ-‐-‐-‐-‐-‐-‐-‐､, |;;;　　　(＿／;;|
　　　 |　|;;;;;;;;;／:::::::::::::::::::::::::::::::l'　　　　l　　''''|
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　　　　 |　　　-ｰ''‐-　　　　　　 ,,-''　　　　　　 |
　　　　 ヽ＿＿＿＿＿_,,,,--‐‐''-−−'''￣￣￣`i
　　　　　/Ｙヽ　　'/　　　　　　　　　　　　　　　　　`l
　　　　　| /| ｀l､ /　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ


尤も故郷福山市名誉市民は受けているが、素朴な市民の気持ちを大事にしたいという考えから
これは辞退しなかった。
宮島は櫻田を相当気に入ったのか、彼を若干四十一歳で日清紡績社長に選出した。

234：232です：2014/09/18(木) 10:54:49 ID:oq7JCu3Q0
>>233
ありがとうございます

235：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/09/30(火) 08:57:31 ID:0Lrrgw0k0
毎回勉強になるなぁ

236：専用ブラウザの使用を強く強く推奨だお：2014/10/11(土) 12:24:02 ID:NR/5ZxIM0
人の形

237：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:29:33 ID:OyK7KkQM0

日本の企業の歴史を見ていくと、創業当時からの事業だけを行ってきた企業は決して多くはない。
特に日本を代表するような大企業になればなるほど、多角的な経営を行っている。



　　　　　 　 　 ,　───　､
　　 　 　 ゝ／_＿_＿_＿_＿_＼
　　　　　 /　 | / / ⌒ ヽ ⌒ヽｌ
　　 　 　 l 　 |─|　　　‘|‘　　 |
　　　　　 Y⌒ 　 ` ー　　oー ヽ　　　　　　　僕が最初に手がけたのは水売りだし、セメントの販売（浅野セメント）や造船や鉄鋼(日本鋼管）まで
　　　　　 ヽ_　　 　 ＿＿＿ 　 ﾉ　　　　　　　事業を行ったんだよね。電力もやってるな。
　 　 　 　 　 ＼ 　 ＼ __ ／ ／
　　　　　　 　 ,-｀ ｰ── ＜
　　　　　　 ／ __ｌ／ｌ ,-､-く ヽ
　　　　　 /　 /／￣ ヽﾉﾉノ　 |
　　　　, ┴‐ ､ヽ　　＿＿ ／　|
　　　/　　　 / ￣ ｀＼　　　 　 |
　 　 |──|/　　 　 　 ＼‐──|
　 　 |　　 / ￣ ヽ/ 　 　 |　 　 ﾉ
　 　 |　　/　 　 / ＼＿ノ 　 ／



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 -'´￣￣￣ ﾞ '- ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.r´'　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.（ ,nヾ､＿､_､__､- 　　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 π　　　　　　　　 r　 .!　　　　　　　　　　僕も鉄道事業と共に不動産事業から宝塚、百貨店や
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （| ‐‐-､ 　,.-‐‐　 F-､j　　　　　　　　　　野球やホテルも手がけてる。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.!,r‐‐､＿＿,.ｒ‐‐､i ∂!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　il::::::::::::::::::::::::::::::::l.!- '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.(二ヽ､::／⌒⌒＼::,ノ二二)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 Y '|| （_ヮョヮ_〉＞　 　ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,´　　 i　 || >',〉llll〈/<　　〓〓.l　　',

238：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:29:45 ID:OyK7KkQM0

無論、長きにわたる事業を手がける大企業も存在するが、すべてが昔と同じことばかりを
手がける企業は存在しない。かの日清食品のカップヌードルが、未だに販売されているが、
その味は常に研究され、現代人の嗜好に合う味作りとなっている。

　　　　　 、 ､
　　　　　　＼ﾞ,ｰ ､＿
　　　　 　 ,ｨ⌒ｰ-- ._￣ー .,＿
　　　　 /"｀`ー- .,_. '＼ー-=..ﾉ
　　　　(　　''ー- ._ ｀＼ ＼ｿ＼
　　　　ﾉﾞ、ｰ,一--_｀`yノｰく 　 ＼
ー ' "´　ヽ　　　 ﾞ/￣　　　 ＼　 '.＼
　　　　　　'' ､_,／　　　　 　｡' ﾝ､゜　）ﾟ´
　　　　 ,..- イ　　　　　 　｀（(ﾟ .,゜＼゜ﾘ゜;
_ﾆ- ' ´　　　　　　 　 　 　 ゜ ,）　｡ｿ;｡
　　　＿＿＿_＿＿＿＿＿;ﾉ_,彡＿＿
　　　|------------------------:|
　　　|------------------------:|
. 　 　| !!!!!!!!!!！！！！！！!!!!!!!!!!!!:|
　　 　|　 　 　 /~O 7 .TT￣)　　　　 .|
　　　 |　　 　 （　　 | 　 ||O~　　　　　|
.　　　 |　　 　　ヽ-'丶-' |　　　　　　::|
　　 　 | 　 T　T O丶OTヽT T~丶　::|
　　　　| 　 |＼（　 （　　|　 |　|┤ 　.::|
　　　　|　 ┴　ヽ-'　ヽ┴'┴┴-' 　::|
.　 　　 |　　 （カップヌードル） 　..:::|
　 　　　|!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!|
　 　　　lニニニニニニニニニニニ

239：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:30:03 ID:OyK7KkQM0

今回は配管事業、建設機械、紡績機械、工作機械、農作機械、発動機などまで手がける
大企業の創業者について語る。




　　　　　　　　　　　　　　　　ミ彡　 〉,,,,,　 ゞ|　.| |　| .||　 || |　 | .|　　|/　　,,,,,'''':::::''';;,,,,　 ''''彡 ≫ ／／~ﾍ 〉ミミ
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ彡　《《''''''';;;;;;;;,,, ヽ!　Ⅳ|　|||/／|/ ,,,,,,,,,,'''''''':::::::;;;;;''''''　　　　　'''ミミ'ｲ~~　//ﾐミミミ
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ彡　 `､''''';;;;;;;;;::''''''ヾ || || ||/.,,'''''''::::::::::;;;;;;;;;;''''''''＿_　　　　　　　 ミﾐ |~ヽ//ミミミミﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡　　ミ!　　　　''''''''''V⊥L巛ii;;;;;;;;;;;;;;''''''__==='￣~//　　　　　　　 ミ ）/ | |ゞミミミミ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡　　ミヽ ヾ､_＿_,==ヾ》　《《≫''''''=､　`＝″　 彡　　　　　　　　　　ヽ // ヾミミミﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡　　 ミ|ﾐ　 '''￣~　彡Y　　/彡ミﾐ　￣―＝=彳　　　　　　　　　　 |　　/　 ヾミミﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡ﾐ　　ミ|ﾐ　　　　　　　|　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄー'彡　　|ミﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡ﾐ;　　ﾐ八　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|　　　彡　|ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　彡彡::　 ﾐミヽ　　　　　　|　　　　 彡ﾐ``'':::､ ,,,, ,, ,,ｯミ彡　　　　　　.|　　　　彡/ﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　ミ彡'';　　'';ﾐミヽ　　ミゞｼ|　　　　　__/　　　　　 ,ｲ ~||》″　ﾐ　　　 |　　　　　 |ﾐ
　　　　　　　　　　　　　　　　ミ彡彡　　'ﾐミミ＼　ミ＼|　　　∠＿＿＿＿／　| ｲ||　　　ﾐ　　　|　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ彡彡ゞ　　ミミミミヽミヽ`t-t'　|　 |　 |　 |　 | ィ~У　　　ﾐ　　　 |　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　彡彡彡';,　　ミミミミヾﾐ`<ゝY 个 个 个 个イ　У　　　 ﾐ　　　У　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ彡彡彡;;;,,　 ﾐミミミミヾﾐヽ┴┴.┴-┴.┴┴'~　,　　 ﾐ　　　／　　　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 【第十一回　ナニワ鋳鉄伝】　　　　　　　　　　　　　　　　　
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240：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:30:16 ID:OyK7KkQM0

今回の主人公、久保田権四郎は現在の広島県尾道市因島出身である。


　　　　　　　　　ヽﾄ _ゝﾄ__ﾄ,, __イ-ヾ─,
　　　　　　、＞｀ﾍi:::::::::___::≡_:ﾐ::::::＝二－-i_____
　　　 _ヽ_－｀::::::::三__::::ｸ／//ﾉミ,三ミ;;;;;ﾐ:::::::＜__
　 丶二｀:::::::::::彡ｴﾞ／:ﾉ/ll::ノ/i:ﾉ!:::ミ ｀l｀,ﾐ,:::::::, ,<ヽ
　　_==ﾗ　ヶ／!:::::ヶ／/ﾉi f//ﾉ,)::l!ﾉﾊl＼,:::::ヽ ヽ ﾄゝ　　　ちなみに俺の本姓は大出だ。
　　イ　彡／ヶｸ::/:::/ﾚ:::::i//:/ /::ﾘ.ll::i!!::::l ＼｀ヽ::iヾ
　 /イ/　´ ´´/ノ:::::::::::/l::::イﾊ´:/i:::ﾉlヘヽ:i, iwi ｀ ト
　　ノ／　　；； イ:::/l::/ .i/__}:/-/´ﾚl::ﾚ!!:ヽ::＼ i_＼i
　´ ´lイ /ﾉiﾉi:l,,::!_,:l i/;;;;l´彡 ´｀ヾﾉi://::::::ﾉl ／ﾍi,｀、
　　　/ノ!ﾉ,-;;;;;;ヽ、 ヽ　　r_i:ク=ゝ／i/:i:::/::/./ニヽiヽ
　　　　 l ﾍ-、　 _.!-.i ヽ,　　　　　　　 　!イﾉf__ﾉ ｀ }!
　　　　 ´ lﾉ!-￣ /.ハ　i　　　　　 i　 　.l;ﾉ/.)　厂イ
　　　　　　/i　　/ ヽ_ヽ,i　　　　 　.l　　　　　 　/:::lヽ　　　 .∧
　　　　　　　!　　i.!、 、,ﾉ　　　　　 l　　.　┌7´ ｀ﾍi　　　　/;;;i
　　　　　　　｀i　 ´｀－,　　　　　　　　　 　 !｀　　　 ＼/─彡:::!
　　　　　　　　｀i　/_´─￣ 二｀　　　　　 /　__／｀-´彡ﾍ彡彡ヽ
　　　　　　　_ /´i ヽ─ ´￣　　　　,∧　ノ／ヽ!:::::::!::／,,,,＜´::￣
　　　　　　__l::::::::｀i　　　　　 　　 ,/::::::ﾍ,.＼;;;_｀_　,-＜:::::::::::::::::::
　　　　 .ﾍi:::::::::::::::＼　 　　 _,ﾍヾ 彡::彡-　｀:;;;＜::::::::::::::::＿_::::::
　　　 ノ::iヽヽ:::::::::::::｀i7ﾍ-´:::::::ヽ 彡:::-─´´:::::__::／´￣　　 ｀ヽ
　　　＞::ﾍ｀.ヽ:::,ヘ-´;;:::::＼,::::ノ-;;;´::::::::::＞ ´
　-7´: ヽ::::iヽ,!/::彡 彡:: ＜::::::::::::::::::::／
　/:::::::: ｀!;;ﾉ´_彡 -:::´::::::::::::::::::::::::::::/
　:::::::::::::::｀-ﾍ　　:｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::::｀l

241：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:30:28 ID:OyK7KkQM0

貧しい農家の末子として生まれた彼は、学校へはあまり行かず瀬戸内海を通る蒸気船にあこがれていた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 lＶゝ,λ/ﾚ､lv､/l､v､
　　　　　　　　　　　　　　　　　_,vﾚ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::v､_
　　　　　　　　　　　　　　　　_ゝ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　Ｚ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;ゝ
　　　　　　　　　　　　　 　　_ゝ::::,;;;;;;;ゝ:::::::::::::::::::〈;;;;;;;;;::::::::::Ｚ
　　　　　　　　　　　　 　　　_ゝ;:;;l´゛'/::/|::/l::::∧::|""｀l;;;;;;;;;ゝ　　　　　　　いつかはあんなでっかい船を造れるだけの鍛冶屋になりてえな。
　　　　　　　　　　　　　　　_く;;;;;;|　 .ﾚ'　|/ .ﾚ′|/ 　　i;;;;;;;;;;ゝ
　　　　　　　　　　　 __.-rt´人;|',-‐----､_|　|､_.---―-､|;人
　　　　　 , ┬┬┬ ´il　il,　| `|｀￣｀`ヾ;;;;;ﾉ　|;;;_.=〒,ﾃﾃ~ r　ﾄ;-､_
　　　　／ """"´´´｀ﾘ　ﾚ∧_ | "`＝=-‐`　 ´ `===≠　 |_./;;::;;;;;;〉-v-､
　　　/ ゛　　　　　　 /　/./...:::::|=-‐　　　´八 　　　　　　|::::;;　 :/;;;／￣￣ ヽ__
　　./゛゛　　　　　　/ 〃λ;;::: :::| 　 　 　　 ⌒　　　 -==/:::;;　　::::/|||jiiiiiヽ____　 ヽ.
　　i""　　　〃　 /　/λ:::::､;;;;;λ=- 　 　 ､_ , 　　　　 /::::::　　;／￣￣ヽ_____ ＼__ゝ
　　|"　　　 / 　 ﾉ　 | | ゝ､:;;;;::::.::::＼ 　　, ---､　　　/::::::　　〈||||||||｀ヽ_______ ＼____＞
　 _| 　　／　　/ /|　j ﾄ､:::::::､;:::::::::::::＼　　゛" 　 　／:::::::::::::;;;八__o___________　／　___/
　八,,／ /"　/ //"/ .| ￣|￣ゝ,;;::::::::::: ＼　　　／:::::;;;;;;;;;_／;;;;;ﾄ--､,_____／￣￣゛〈
〈 　　 ／　　i　 / ./　/;;;;;;;;;|ﾟ 　 ゝ;;;;;::::::::::｀―´;;;;;;;;;___ノ;;;;;;;;;;;;∥　 7oiii|　iiii|||||||||||〉
ﾉ""／　 /i /　/　　　i;;;;;;;;;;;;|　　　　.＞----､---― ´;;;;;;;;;;;　 ∥　|￣｀|~￣￣￣゛ゝ
"／　　　／　　　"" /;;;;;;;;;;;;;;＼〔((/:::::::::::::::::::＞;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　 ∥ 7 oii|　iiii||||||||||||〉
　　　 ／　,;/ 　"　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;〔(((/￣￣￣"＞;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＜ﾆﾆゝ.|￣｀|~￣￣￣゛ゝ
／ ／　　,;/　　　 人;;;;;;;;;;;;;;;;〔((/￣￣￣"＞＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＜ﾆﾆ/＼7oi|　 iiii|||||||||||||〉
　/　　　/　　.::　/｀ゝ----［((〈￣￣￣"＞　　 ＼-------――〈　　ゝ__|~|￣￣￣￣゛ゝ
./　　　/　　　　/　　ヽ;;;;;;;;〔ﾆ/￣￣￣＞＼,,,,,,／》;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|　　　 7oiii|,,,,,,,,||||||||||||||〉


そして彼は早く出世して両親に楽をさせてあげたいと15の時、大阪へ出て鋳物屋に丁稚奉公の日々を送る。

242：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:30:39 ID:OyK7KkQM0

３年６カ月の奉公で鋳物師になった久保田は日給25銭の高級で「塩見鋳物所」に招かれる。

｀ヽ　／彡　　　　　　　　　　　　　 　 ／／/////////////////／／　　　ヾ　　　　　　　　　　)
＼　 ／ヾ　-　　―／／/ 　 　 　 ／／//////////////////,ｫ人7厶､　　　　　　　　　　 　 /
　　　 　 　 　 　 　 　 ／ 　 ＿,,／／////////////////kィjV洲从从从ヽ　　＼ 　 　 　 　 八
　　　　　　　　　 　 ´￣　 　 ／／///////////////// {/VV州从从从从!　　　 ヾ　　　　/　 ｀ー
　　　　　　　　　　　　　　 ／／/////////////////／ ゝゞﾞヾ从/从从从j!　 　 　 )ｰ　_　'　　　　　ヽ
　　　　　　　　 　 　 　 ／／/////////////////／／ ノj､(､州洲州爻彡ｲjj､　　　　 (　￣｀　　 ＼、
　　　　　　　　　r __,‐ '／/////////////////／／::::厂 l- ､从|__L､　彡ケ从l}　＼＿　　／(ヽ　／ )__　 ヽ
　　　　　　　　　| .|///＞――､//////////／／ﾆ}:::/ヽ,il ｀¨`/: ｰｱ　ﾚ'／ヽ_,/＼　　　　ヽ　 ＼｀　　　ー /
　　　　　　　　　ゝ｀´_,，-n‐r､ ､ヽﾑ/////／／_,／∨ト-ハ 　.j:::　 　 /∧ーイ _／ー-..　_　)　　 ー ｀ヽ　 '
　　　　　　　　　ヽ｀{　　_{¨i〈´ヽヽl-}i//// /ゝく､ヽ ∧厂ミ∧´―'┌匕_／ ／┌　　 　 : :::: ｰ┐　　　　　＼ー
　　　　　　　　　r-ｰヽ _|,ヽ／´ ＼ { /// /´ l　l} l! '　 V￣ﾄ､ ｰz‐/、 _/￣＿ノ ＞　-　i　＼　|　　　　ヽ　　ヾ
　　　　　　　　 i´二､ヽ{ ヽj　　　　 ゝ∠_/ }　i　i,ﾉ|　／∨: ｀¨7ｰ`ﾍ⌒　厂　＜　　　　 /　　 ＼、　　　　＼
　　　　　　　　〈 ﾆ.ヽ_)j ｀ヾ、　　／o.　｀ ＜f⌒　 ﾚ'　　l:::: 　/　／:|__／zー― -　　、/　　　 　.＼
　　　　　　　／　ヾ7 /iｰr-.._＞l{　　　　　　　丶　l::|　　ヾ::. {___l{_／ヽ_ノ｀丶　｡　＼:::＼　 　 　 ／!　　　　l
　　　　　 ／ヽ ／ヽム//　厂):::｀ヽ、　　　　　　　｀ﾃヘzx}:/_ /rー＜　｀｡ ､°丶,　 ヽ;::::ゝ _ ／彳
　　 　 ／ヽ ／　　　￣ ヽ'／' /　j::::＞.. 、　　　　/　 /＼ｰ-ﾍ人　 ｡ 丶､　　ヽ　 ヽ´ :::::}|/／"　　　　/　 |
　　 ／ヽ ／　　　　 　 　 .＼ ' ／/ ∧ヽ. ｀ヽ　　 {　./　 l ｀rく　ヽ＼　　　ヽ　　}　 廴zｰﾚ'　／)　　　　}　 l
.｢ヽ´ヾ／　　　 　 　 　 　 　 ヽ.／,ノ./)　　､ノヾｰ.l　|::　 { l |　|　l l　 )〉　　 }z≠｀'/´　　　　／
..＼}／　　　　　　　　　　　 /::::/ ＜ /(_／´ 　 ヽ ﾞ廴ゝ弋L|　|_ムﾍ厶_z≠　ー／　　　　　　ヽ　　　　　　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |:::::|　　　￣　　　　/´　　　　　└ｲ::＼＼　　｀ー r'　　　　　　　　/　/
　　　　　　　　　 　 　 　 　 }::::j　　___ z==、　∧_　　-――-/＼::::＼｀ ｰ　_,ノ　　　　　　　　⌒ヽ 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　／／_ z＞":´: : :ヽ ／ヽr-､　 　 ./ 　 /､::::::ヽ┐ 人　　　　　　　　　　　l 　 　 ./
　　　　 　 　 　 　 　 　 く／ /／: : : : : : : : :八 　 } /、　／z ／　　＞' ヘ´　 }　　　　　　　　ー ´　 　 ./
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　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＜/ー＜ //:::/　　　[ﾆﾆつ　　　 rｲ !|　　 ＿ ／/八__　　　　　　　　　／　　　／
　　　　　　 　 　 　 r＜　 //　　 　 !:!::/　　　　]__ l＞-}}ﾆﾆﾆﾆ]l}￣　　　＞ -＜＼　　　　　　　　　／／
　　　　　　__　＜ //　　 //　　　　 l.|::l　　　　(__ ィ＜｀∨ /　　ー'　＞ ´　　　::. ｀ ＼　　　　　　　／/　／
　　　　 √/　 　 l l　　　l {　　　　　|.|::l 　 　 　 |　l、 ヽ/./　　　　／　　　　　＿、　　＼　　　　／　/／
　厂/:::::::::|　　　 { {　　　ヾ　　　 ／ j::|　　　 　 |　l ヽ,/./　　　／　　　　　／￣｀｀丶:.　 ゝ　　ノ　)/　　　　ヾ

243：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:30:50 ID:OyK7KkQM0

利発で誠実、また器用で根気よく、節約して資金を貯め1890年、19歳の時、久保田は独立し、大阪市南区にて
「大出鋳物」という店を開く。秤の分胴などを製造していた。


　　　　　 　 ＞:::::::::::::::::::ｆ´　　　/:::: /／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽヽ::::::ヽ::ヽ
　　　　　　ｒ‐<::::::::::::::::::::i　　　 ,;::::ｲ '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 个:::::ヽ ヽ:::::!:::|
　　　　　　iﾄ　 ヽ::::::::::::::|　　　 l::://:::: イ:::::::::／i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ、::::::l∧:::::1　i:::lレ'
　　　　　　〉 ヾ　ヽ::::::::::|　　　 .|/ l:::/　!::::::/ V::::::::,イ:::::::/!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::|. !::::::::!　ヽ:::|　V
　　　　　　i!Y^ヽ　V:::::::|　　　　　 V　 .|::::/　 l:::::::/　|::::/. |:::::::::::::::::::::::::lヽ::::::i!∧:::::::|　..):::|
　　　　　　|::i　小　1::::::{　　　　 　 ! 　 |:::l　　|:::::/　 l::/　 |:::::::f!´l!:::::::/　|::::::l　 .i!::::::|　 i::/
　　　　　　i::　 ｆ::::ヽ!::::::i　　　　　　　　. V　　1::/　　l::!　　i:::::::il　|:::::/　　!:::::i　　|:::::/　 v
　　　　　　l、　l!　　!::n::ゝ　　　　　　　　|　　 .V　　 .V　　 ヽ:::l　 !::::l　　 |:::/　 　レ'　　　　 _
　　　　　　 `, -:::ヽｒV　`　_,,,.-ｲ＾`;;、　　　　 　　　　　　　　l:::|　 i:::/　　 ﾚ　　　　　　 ＿,ノ:::::`ー= 、_
　　　　 　 　 ヽ　 i!　|　　 ヾ::::::::::::::::::`ｰ;;.、＿＿＿　_　　　ゞ:::ヾ レソ　　 　＿＿_,,,ｒ'"::::::::::::::::::::::::::::／
　　　　　　　　 ＼.ｒ'^|　　　`ｰ::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＾ヾ、＿ ヾ::i! i::イ　_,,ｒ'":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｒ'"　　　　　　いらっしゃいませ！
　　　 　 　 　 　 ..i!::: |　　　　　 ゝ:::::::ｒ'`ー::::::::::_,,:::::::::::::::::::::7 il::〃i《ｒ'`´::::::::::::::::::::::::::::::::,.-='""7::/
　　　　　　　　 　 ﾍ_∧　　　　　ヾ`ｰ-:=::::＿_:::,::- ~ヽ::::::::ノノ::::"::::ヾ::::::::::::::∠'"￣´`ｰ'"　 　./::/
　　　　　　　　　　 　 i!、　　　　　ヽ`"''''++++'"´:::::`:::::::イ　ヽ'"""~`フ'"ゞ:::::::`ｰ 、＿＿_,,-='::ノ
　　　 　 　 　 　 　 　 | l　　　　　　 `ｰ::::::::::::::::::,,_::;=‐'"　　　 `　　 ´　　　ヾ{'"ヾ::::::::::::::::::::::::イ
　　　　　　　 　 　 　 .|个　　　　　　　　`''''''''''''''"　　　　　　　　　　　　　　　`　　￣`''''''''""´
　　　　　　　　　　　　|　.
　 　 　 　 　 　 　 　 .|　　;、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 、＿_,
　　　＿_＿_＿_ 　 　 !　　∧　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`ｰ'"
　／::::::::::::::::::::::::::::`ーl　　　　、
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　 ''"ﾍ　　　　　　　ﾍ'"´　　　　　　　　ヾ,,
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　 　　　　　　ｒ'"　　　　　　　<　　　　　　　　　〉　　　　　　　　,;='
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |　　　　　　、　　 ヾ、　　　　　　　＼　　 　　 　 ｨ　　　　　 　　,／
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l　　　　　　 ヽ　　　ヾ`ｰ;;、　　　　　 ヽ　＿_　ノ　　　　　　_,イ:/
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀;=- 、　　　　ヽ　　　ヾ:::::ト- 、＿＿＿＿＿＿＿＿,, -='フ:::/
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー 、　　丶　　　＼ヽiヽノ￣i、_　_」＿ _人_ イYノイ:::/
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣`ヾ ＼　　ヽ::ヾヽi￣i⌒l√ ↑￣7、 ﾉﾄ_,ﾉ::::∠,=-'"´

244：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:31:07 ID:OyK7KkQM0

だが彼の願いに反して、親孝行する前に両親が亡くなってしまう。その悲しさをもバネにし、
久保田は商売を続けた。



　　　　　　　　　　　　　　　, /|　, И
　　　　　　　　　　 ,ヽ　∧/　　/　　｀／|/L
　　　　　　　∧|＼|!　　! 　 !＿　///　　　　 !― ,
　　　　 ヽ「｀ヾ　　　_　 /｀ヽ,ヽ　ヽ⌒ヽ　　　　　　 7
　　　＿|!ヾ　　　 -/　 _|　ﾍ|　ﾉ勿ﾉ彡））彡_　　　　フ
　　　＼<_ -イ.／|　/!!!ヽ|　|/〃_ｭｪ77>ュ､　ヾミ　　 ￣フ
　　＜　 / /=| |≦ヽ(ﾞﾞ /　,ィＴｴ-三二￣ヾ｀ッ ミ　　>　＞　　　　　　親孝行、したい時には親は無しか・・・・・・・・・・
　 ＜<　| /ミ ヽ　　　(）ｷｷ､／z夂=＝＝ミ,,　　 ミ　　　　＞
　　＜<　_ __ ,≦ミﾐ）ﾉﾐ　｀　/X/　 ﾟ　　　父　　ミ　　　　 ＞
　　／　./彳=＝ ＿/~ﾐミミι　卅勿刎ﾃ,ミミ=≦ミ　　　　７
　　＼　|/　,ｭｪ=＝-|　　,､ヾ､　　　　　　　　　ヘミミ　　, -､
　　＜ ｷ　卉T""　/λ ’ 〉∠, 　　　　　　　　u　　ﾞミ //　|
　　 ＜ｷﾐ,彡　　　　>≡三＿＿　　＿＿､ヾ　　　 ヾ　人　ゝ
　　　　ｷ彡 　　　 _　-=￣　二_ ~~ >/7/"　　　　ヽヾ ﾝ ,　｝
　　　　,ｷ　　　　/　,-ﾍ-_二－ ﾆヽ ) /　　　　　　　 xノ 　ノ
　　　　! V　　 ﾐ巛V^￣　＿, -―´／　　　　 /丿　X　イA
　　　　ヽ　V　　　ヾ_／￣　　　　　　　　　U //　　册彡| ﾍ
　　　　　＼V し　 　　　=≡≦　　　　　　　　/　,,,尹 彡| /ﾍ
　　　　　　　V　　　　　　　　　　　　　　　,,xxX匆/　 彡|　/ﾍ
　　　　　　　　|i 》　　 　　ｘ《《匆ｘｘz,､ｘX刎/ 彡k　　彡|　 /ﾍ
　　　　　　　　!i>Kｚ_xXNﾐﾞ'　　　｀｀　　　_彡尹　　　彡| 　//ﾍ
　　　　　　　　ｷ　　f勿ﾆ_　　　　　　し　=　彡/　　　彡|　－￣￣
　　　　　　　　　k　　　キｲE≧≡=　　　　彡/　　　－￣
　　　　　　　　_ ｈミ　　キﾐ　　　　　　　　　－￣
　　　　　　￣　 |ｷミ　　 ｷミ　　＿　-―￣
　　　　　　　　　---―－￣￣

245：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:31:17 ID:OyK7KkQM0

ちなみにこの時代、ある病が蔓延していた。コレラである。


　　　　　　　　　　　　　￣ 二イ　 :,. -- ､ ＼ 　 ＼　＼　＼　｀　 ､ ヽ、 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　,.イ'　,. = |fﾍ!`ﾄ:＼. ｀ ｰ- ______ヽ__丶、　 ｀ - ﾆ= ､　＼　＿
　　　　　　　　　　　　　　 ／ /:／ ,/､ ||　}ﾄ,. |ヽ! ｰ- /:/´￣ ＼`:､￣￣丁丁￣￣丁:|
　　　　　　　　　　 　 　 ,.'　　ｉ/　 /＼ヽ!　.|ﾊ. ﾏ `ｰ/ /　　　　　ヽ:＼　く::::::＼. ｢￣::::::＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　 /　,'/｀ヽ, ヾ;､,.ﾚﾍ　V７ /　　　　 　 　 ＼＼ ＼:::::| |:::｢ ＼::::|
　　　　　　　　　　 　 /　　 /　/ !　/ ﾊr:'´:::::::/＼＼{　　__.. -‐　￣￣,＼＼ ヽ:!.|:::l、　 ヽ!
　　　　　 　 　 　 　 ,'　　　|　/! {　| :i {|r‐'::／:::::/,ヘ＼´　　　　 ＼_　 　 ＼＼　ヽ::＼
　　　　　 　 　 　 　 !.　 　 |　| | |.　',.ｉ. |ﾚく:::::::::/j仁. 二´＿_____ー-- ￣,ﾆ=ヘ,.＼ ＼:::`ｰ
　　 　 　 　 　 　 　 |.　　　|　| |｜　ヾ!.|ﾞ仁ﾆ=1'"〃,ｨ"￣Y!}》}i／ ￣￣ _厂{. rﾍ、＼ ヽ、
　　　　　　　　　　　 !　　　|　|. !..ﾄ､　 ヽ!{_￢!｛　'ﾘｲﾍ;___,ﾉ'　 'ー=､　　 ﾊヽ　 トく ＼: ＼
　 　 　 　 　 　 　 　 ',　 　 ',　l ヽﾄ､＼　＼Yﾄｭ'" ' ヾ≡彡'ﾒ､ 　 三＼　! `|　　　 　 ﾉ＼
　　　　　　　　　　　　ヽ　　 ヽ.{　ヾ ＼＼.　}ﾄ､　　　- = 彳,勿ァｧ ､￢ヽ,　! 　 　 / ,|iiiiiiii!
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヾ,　 ＼.＼`〈　ｔx,ヽ　　ｰ -　' ´彡 '^ﾌ`ヽ} ,'　　　/,ｲ {iiiiiiii!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ. 　 ＼`ｰﾄ､ﾞい }　　 -ｔ￢ｧ'´＿_/^Ｙ:1ｉ.　　 /｜! :',iiiiii!
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　 　 Y_ヾｿ　｀￣　`'_ ﾉ＼__ﾄ-'_ ｉ:|　　/　:| l　 ',iiii!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 　 ヾ, ､ 　__ /＾Y　`!__ﾉr‐く_ﾉｉ:| 　 1　 !　　 :',ii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y''く　 `i　|､_,ﾉrベ!_　｝ Y!　/ﾊ　　　　　}!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ﾊ___jﾆr'⌒ト､_}. `′ ﾊ_八_i〃 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 亡｢＼ `r:Ｊ　r〜',x'^⌒ヾＪ|　_, ｲ! ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽrﾍ┘, _,x:+く　　　 __,比ｨｲ ／／::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼.ﾒ＾　 　 　 ,　',∠=ｲ ／／::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i.　　　 ／／ lYﾄ,／／::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ -='-:'´ 　 lﾚ' ／..:::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 入:' ..:.:.::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l//ﾊ ..:.:.:::::::;::::::;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 〈//:|:} ..:.::／::／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 //:::|:|::／::／

感染したら、吐瀉物と下痢が続き、人体からあらゆる水分が流れ出し、骨と皮となって
最終的には死に至るこの病は、日本にて猛威を震っていた。

246：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:31:32 ID:OyK7KkQM0

経口輸液も抗生物質も無かった時代であるだけに、一度感染したら助かる確率は低い。
当時の日本は下水道が発達していなかったために、感染源である下水から上水に
菌が蔓延しやすい状況であった。そこで、近代水道事業が急がれていたのであった。




　　　　　　　　　　　r――=　t..テ¨” ヽ
　　　　　　　　　　　{＿_ 　 　 　 　 y='
　　　　　　　　　　　　　　 ＞　=‐＜
　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 }
　　　　　　　　　　　　　　 |ｰ----イ　　　　〃ヽ
　　　　　　　　 　 rf⌒i:ー'　　　　　ー――‐ '　i
　　　　　 .＞ 　 ￣}　 |l　　　　　　　 　 　 　 　 |
. 　 　 γ　　　　　 |　 |l　　　　　　　＿＿＿ 　 |
　　　 /　　 ,　‐==ﾍ　ﾉ'⌒¨　 ｰ＜　　　 　 { ｀ ﾘ
.　　 /　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ
　　/　　 /
　r'　 　 ‘
　ゝ　 ,_人



だが、そう簡単には上手くはいかなかった。

247：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:31:44 ID:OyK7KkQM0

まず、配管として使用される鋳鉄管の国産化出来なかった。当時の日本では水圧に耐えられるだけの、
鋳鉄管を製造するだけの技術が無かった。
出来てもすぐに破裂し、配管として耐えうるだけの代物が作れなかったのである。そのために、
鋳鉄管は海外から輸入されていた。







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248：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:31:57 ID:OyK7KkQM0

当時大阪で仕事をしていた鋳物師だった久保田は1893年。配管事業を手がけること決意する。



　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ,,.;, ...ii;;..,,.ヽ|ヽ|∨ﾉl∧　,, ,,,/;
　　　　　　　　　　　　　　;;; ;,.,. ヾヾ||:::i;;ヽiyﾘlll;;ii.;ヽli;,,/;;/ﾊ　/;,
　　　　　　　　　　 　 ヽ_,,ヽlllゞ"l;,,,ll〆ヾl;lll"::: ii;i;;i::/ﾊ:llﾊ;ii;;/ﾊ
　　　　　　　　　 　 ＿ミミヽllﾐ"';;;''lll i;;,ﾐ》lll l l>;;ゝl;,,ii,,ll;iii.ヽl/;;;;,/l /l/
　　　 　 　 　 　 ..ヽーヽllミミﾐﾐii;;; i;;;巛l lヽ∨lllllll/ﾊll;iii;ﾊ:ii; ヾl/ii;i|||li
　　　　 　 　 　 ＞=ｌｌ"ll;;,,,l,,ｿミミll》》iiii::ii:llll/"l/l lll;;,ヽﾊヾlll":::ヽl//llllﾚ'';"
　 　 　 　 　 　 .-;;ヽミllll;;ﾐﾐﾐll《<ﾐiiiii iii l;ヽii:::::iiii:::lllllllllll::i ii/ii::iii iiii lllll彡i/
　　　　　　 　 ..＿,,:ll;,,;;,ミiiﾐミlll;;; ヽlllll>》ll》llll::lll"i iii"lllﾊ,;iii;;;iii;iii,,i,ii;;iii"lll;;iﾚ;
　　　　　　　　　＼ii＼;;;,,,,,ヾヽllll; "### ;;iii;;ll; ヾ;;;;; ; ii　lllll i lll/ﾉl 'ii/l;ii/ﾉ"/
　　　　　　　　 ∠ｌｌｌミﾐllﾐ"ヽi;;..;.ヽlヽlllll;,　;;llllll ii 'illl;.;lll　;llll i lll ﾉl;;ﾉ /l/i..ﾉr/''"
　　　　　　　　　<;;;...ゝlﾐﾐﾐ,,;;;lll;;;...ﾐlllillillillゝ:ヾll;;lヽliili ll.,.ilill; ;ll ;lllll";;ii"//;iﾉ7
　　　　　　　　　巛ミ;;ヾllミﾐﾐiiﾐﾐﾐ;:"''"'''"/ll／iiiiiiiiヽll::iiヽiii ﾚ"llll'';;llll::ﾉii彡ﾐ
　　　　　　　　　」ﾐﾐミ巛ミiii;;;;::,::　　　 //i/／//;::;::i/iiiii:ii:::::lllll;;;iii::ヽ"'ﾐ彡
　　　　　　　　 丶ミ,;､ﾐミﾐﾐﾐﾐiiiﾐ>　　 / ||/ ./ii///iiハ,ヽii|ヽiiYiiii|,ヽゞ ﾍ
　　　　　　　　　<ミ|'ﾄヽ:::,,,ﾐﾐi:i:i; 　　　　|ﾚ　ｌ/ｌ |//|　 | |iil liil i .iiii　 ｌ|iYヽ　　　　　　　　鋳鉄管は絶対に儲かるし、何よりも外国産の鋳鉄管を使ってたら、
ヽ　　　　　　　　 .>.Kﾆヽヽﾐiiiﾐ 　　　　　i| 　ll　ﾘl　.l : | ll/ |ﾘ　 |i| .　|ｌｌ　　　　　　　　　ずっと外国産の鋳鉄管を使い続けることになる！
:::::ヽ　　　　　 　く l : rー).lミ 　　＜巛ミミ=::,l,,,,l i　　；j ii　ﾘ 　/ ﾚ,;;l|li>
::彡ヽ　　　　　 　'liiヽヽ-;.ﾉミ　　　　<　　””'''##ﾐミﾐ;;;; .ﾘ /彡彡》ゞ'';"　　　　　　　　　なら、俺が国産化してやる。
　::彡ヽ　　　　　 jiiiiii::.　く　:::　　　　"'::::.,,,,,,,,;;-- ヽ　ﾐ 　/r'''::6::'';i"i
::::　　　ヽ　　　　/;/ﾊ/'l,　l::::　　　　　　　　　　::　/　 : 　l' "''''''-''"l
　　／/iiillllliii:..:iiil/ 　　: ''"|:: ::...　　　　　　　　　　　　: 　| 　 　　　i
::／llii::iiiilliiiiiiii::ill/　　　::　 ::　　　　　　　　　　　　 　.::　 .|　　　　.:'
lllllliiii:::iiiiiillliiii::iil(　　　　　　:　　　　　　　　　　　 :::　::　　l　　　 /
llliiiii:::iiillllliiii::iiiillヽ:::　　　　　:　　　　　 　　　　　ヽ-、　 ,;.　　 .;''ヽ、,.;;-::,,､
lliiii:::iiiiiiillllll::iiiiiiiiillヽ::　 ::: 　　 :..,　 　　　　　　　　　 ."''''"　 ./'lli::::iiiiiヾiillii:::iiiiilliiii
lliii::::iiiiilllllllll::iiiiiiiiiill'l,　　 ::　　　:::＼　　　　 ー-r―--ーr'　/lllliii::iiiillllliii::iiilllliii:::il
llliii::::iiiiiiilllllll:::iiiiiiiiill:l::　　::　　　::::::ヽ.　　　　　 ""''''''''""　/lllllliii::iiiillllliii::iilllliiiii:::ii
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だが、学の無い丁稚上がりの彼にとって、この事業は苦難の連続であった。

249：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:32:09 ID:OyK7KkQM0

店の運営をしながら、独力で研究の日々を送るが、当時の日本の製鉄技術自体がそもそもお粗末であり、
国産化するに当たってのノウハウが全く確立していない。
いわば、道無き場所に道を造るようなものである。何度も資金面で危うさを見せるも久保田は決して
くじけることはなかった。



　 冫;;;;ノ;;/;;ゃ;;;i;;;1;;;;;(｀ヾ;;;レ;;;;l`いヽ;;kゞ;;;;;;7;;;フ;;;;;s_
　＜;;/;;イ;;;/ﾐl;;;∧;;ﾞ､;;ゞ、)ﾉ`ヾ;;! y',,,,};'`ﾍ};;;;;ゞ;;;;＞;;;<
　 <;;i;;/｀|;/〃ﾞl,;　}'`ヾ;;ゞ,,,i,-ｰ';;;;;ﾐ;r=ﾞ;;ヾミ`!;;;7;;;;ゝ;;;ト
　 /;;;;ト　` "',,,,ヾ}ヾi!川;;;;;;;;;;;∠二、　｀~"ミ";;;;ノ;;フ;;;ゝ
　 ゞ;;{こ`ゞ;;;;;;;;`;}`　ヾ`ーイ/´"''''''''ヾ　　ミ{;;;;;;Z;;;;;7;;<
　　ヾ;;ヘ'""`ｰ"ヾ}　 J ミ'　}_蠶_　　 ヾ:',U 外;;;;/´入)ト
　　 ゞヾ　, --‐ッﾉ｀ヾ　 しヾ ｀=ﾆニ彡　 　 ミ};;j 八`1
　　 ヾv ゞ;;;f'''".たｰ 、　ミJ　 u　　ヽ　　　ヾヽ' 〃　う
　　　ト'　i;;'　u |　　　　、ﾝ　　　　U　 l　 ﾞ､ﾞ､'､ ゞイ ノ
　　　ヽl　ｌ;;　　 !ぅ　ゃ、 〉　　　　　　　ﾞ､ﾞ､'､ヾ ふ /
.　　　　l　;;!　　 ゝ' ｰ ´　_　　　`ヽ　　　ﾞ､uﾞ､'､i　イ!
　　　　 ヾ;;　 , r _ｲﾆ〒ｰ'´￣ヽ　　　　　ﾞ､ﾞ､'､/`'i;　i
　　　　 　;;;、　l、　 __,､__,ｰｲﾉｰヾ　　ー ミﾞ､ﾞ､|　;;　 |
　　　　　 ヽ;;;　}イ´;;;;;;;;;、,イ´｀;;;;;!　　 ﾞ､ﾞ､'､ ;/　';;　 し
　　　　　　 ヽ;; i;;;;;;;ノ　　　 ,､ｲヾｲ　し ﾞ､ﾞ､'イ　ｊ メ　 ヽ
　　　　　　　 `;; !;;ムｰｯ'て´に_;;;/　　`メ;／　　;;,` 　 人、_ ,
　　　　　　　 ヽ;;ゝｰ'´￣二"　　 　 ヽ ／;;'　　 `;;'
　　　　　　　　 ゞ!　ヾ;;::;;:,イ　　　 　／;;;;;へ

250：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:32:24 ID:OyK7KkQM0

だが久保田はこの鋳鉄管を作るに当たって一つの仮説を立てた


　　　　　ヽ､　　　　　::.;,;;::.....　 ﾉ;;:;　'､::.:;;::;;;,;　 .!/: : : : : : /､: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::i: ::|;;ﾉ　!
　　　　　　.ヽ:::.::　　:;;:....:..:;;;,;r''ヽ;;ヽ、.＼;;,;;:;　 ".| ｌ'､ |.!. !'　ｌ: ::,､: ,/|: : /|: : : :/゛`l: :!::.i .i: : !::.:i ）　ﾉ＿
　 　 　 　 　 ＼:::..:.:.:;;:.:;;;::.:.::|;;;;:;.;;:;.｀＼;;;｀ヽ;;r 　|′' l!|/i､ .ヽ,!ﾉ／.|! lﾞ .!|:;;;;/,_,,,,,|/,V,! `‐ レ'ﾌ ./
　　　　　　　　 ＿,,,_　 , -ー-- 、,,-ー--､,, _,, -ｰ- ､.,'"-,,`‐;;:ヽ ;;; l"::://r--､,,--,';,:,:;;::;:.,i/ﾞ,!,,_/;;,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　,r'",-‐､`", '''"゛`ヽ｀ﾞ,''"~´´ヽ｀ﾞ,''""ﾞﾞヽ.ﾞ ）`,｀:::::;;;::ﾞ|　::ヾ;;;:;ミヽ､,,__,,ノ"　,i;;:;;; |;;|"　;'' 　　;　　　　　　確かに外国産のは水圧には耐えられるが、すぐに赤さびが出るな。
　　　　　＿/_/ -‐､/_/_,,-‐‐､/_/,,,-―､/ ./,‐ー､./ /　 ヽ,:;;;:;:::!　::　　;' 　 　､;;;;''"　／;''.::.:/ ,;'";;;　　,,
　　　 ,'＝=、　::r'＝=､　..::r＝=､,'ﾞ　　..::,, ‐'´:. 　.:/ /:, ､ 　!:::::::::l　:: 　 ;ﾞ　　　.;;;;'';;;;/;;;;;'' :::/　 ;; ";;''"`;　　　　　
　　　lﾞ:::::..　(;:;;lﾞ:::::.. .(;;;;:;:lﾞ:::::...... (;;:;:;; r＝=､:　..::/ /::.:!:.| 　.|::::::::!　::　　; 　 　,;;'':::./;;;;,''　::/　　`,,;;'　　,;　　　　　
　　 .i゛'''''"゛ '"l゛'''''''""`i''i゛''''''''""i`"l::;;;;,... |l　.;;;|''.!.::.:`" 　.|:::ヽ' 　 ::,_`　　　 l;''　　,"` .／　 　 .;';;;　 ;;:;
　　　|:::.::.:.:　::.:|::.:.:.::.::. ::|;|::.::.:.::. ::.:|;;;|:::.:..　:ﾞｒ'":::! ..l.:::.:..　　 |::::::`ｰ'"　　　　　､ 　　,;' ／,;"`,,　　;,;;　,;;';;
　　　.|::::.:.:.:　::.|:::.:.::.:::. ::|;|::.::.::.: ..::|;;;;|::.::.:　::|::.::.:::.::.|::..::.　　 |　^'--――=､^＞｀　 .／;;" 　　ヽ;,,,,_ 　 ,,r
　　　 !;;::_;;;,,.-'~!;;;::＿;;;,.!;!;;;;___;;;,,.!ヽ !;;;;＿;;!-､,::.::.:.|..::...　　ヽ 　　 --＝彡 |　,;''／::.:;;'　 ,..‐'″,"　`y'"
　　　　ヽ／`￣ヽ､;;__ノ::　ヽ､,,_ノ::.　 ヽ､,,ノﾞ;;::...）::.::!.::.::.::..　　＼　　　　　,;'..|,／ ::;;:;:;;;r'";;''"　　　,;'"
　　　 ／::.:.::.::.＼　ヾ- ､;;;;:__,,ノ- ､;;;;____ノ￣ "´::.:.::i::.:.::.::.:::　 　 `､〜--ｰ'' ヽr'"~￣,;'" ,'　　　 ,;'
　　／::.::.::.:..　　::.`y'::.:.::.:::.::'''ｰ -､::....::.::.::.::.::.:.:.:.:.:::.:.:.ヽ.::.::.::.:.::::　　　ヽ、::.:.:.:.:;;＼　　　　,;''　　　;;
　 .!::.:::.::..　　　:::.／- 、　　　　..::＼　::.::.::.:::.:.:.::::::.:.:.:.:..＼::.:.::.:::.:::　 .,､ i~l`ヽ、;;::.＼;;''　　;;,;;　　`;,,
　 lヽ:..　　　::..／　　　` 、　　..:..:.::::,!　::.::.::.:.:::.::.:::.:::.:.:.::.:::丶 ::..::.::::.:! |.| .!., 、＼　　＼;;';　 ;;,'';;,,　ヽ
　 ヽ,＼;;;__;r'"::.:.:.::.:.::.::.: ﾉ::.:..:::.::::.:._/::::.:.::.:.::::.::.:.::..:.:.:.:.::;;;__::.::.＼:.:::..`" /./.! l 　 .＼　 .＼;;,.,,;;`,,;;;;` ヽ
　　　`ヽ,_/::.:.::.:.::.::.:::r'"l_,,..-''''"`ﾝ-―――--.... --'''" .,,｀''ヽ＿ヽ;ノ /::.`"::　 　 .＼ 　ヽ　　``;;,
　　　　　 ` --─'"｀'''―--ｰ'''"＼;;;::.:. ｀ヽ;;;___;;;::-‐'´ .ノ `ヽ::.::.::.:/_/::.:...:.:::::　 　 　.＼ 　＼　;;;:;;;:;


それは、銑鉄の炭素含有量の調整である。

251：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:32:35 ID:OyK7KkQM0

銑鉄とは高炉などで鉄鉱石を溶かし、還元化させた純粋なる鉄である。炭素を多く含み、固いが非常に脆い。
故にそのまま使えるものではないが、製鉄を行う上でのベースマテリアルであり、この銑鉄を使うことで、
様々な鉄製品が出来る。


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　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ　　 !|　　　　　　　　　　／　 ,i　 ､＼　　　　＋.!′ 　 　 　 　 　 l lﾞ　　　 　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　!　│|　＋　 　<> 　 ／　　./＋, .ｌ　 ＼　　　　　　　 ＋　 　 　 ｌ !　　　　　　　　　/
l,　　　　　　　　 l!、　　　　<>.ｌ　'　!　　　　　　 .／　　　/ 　 .!　ｌ　　　＼　　　　　　　　　　　ｌ/　　　 　＋ 　 　 !　 .,i
..ｌ　　　　　　　　 ｌ,ヽ　　　　　 .ｌ　 .｝　　　　　／　　　 ./<>　.|　 .ｌ　　　　＼ 　 　 　 　 <>　 l/　　　 　 　 　 　 l　 /
L.!　　　　　　　　 ヽ.ｌ　　　　　 .!　.|　　　　./ 　　　　./ 　　　!　　ｌ,　　　　　 ＼ 　　　　　　 llﾞ　　　　　　　　　 ! ./
　ｌ|　　　　　　　　　 ｌ.!　　　　　 .!　!　 　 /＼ 　 　 　 l 、　　,!　　 "　　　　、 　 ｌ　　　　　　′　 　 　＊ 　 　 !./
　　　　　　　　　　　 ｌ　　　　　　.ｌ .!　＊.| 　　ヽ　　 i　 ＼　.l　　　　　　 ./ 　　　ｌ　　　　　　 　 　 　 　 　 　 //
　　　　 ,,　　　　　　　　　　　　　 l !　　│　　 .ヽ.　,!　　　 /　　　　　 ./ 　　　　│　　 　 　 　 　 　 　 　 　 l/　 　 /
　　　＋.ｌ'､　　　　　 　 　 　 　 　 || 　　!　　 .，　ヽ′　　./　＼　　 / 　　　　　　|　 　 ＋　 .!　　　　　　　　　 　 /
　　　　　ｌ, ｌ　　　　　<> 　 　 　 　 !　 .,!　　　!　＋.ｌ,　　 /　　　.＼ ゛　　　　　　　|　　　　　.il!　　　　　　　　　　　!
　　　　　 .ｌ l　　　　　　　　　　　　　　/ ＼　lﾞ　　　│　 ｌ　　 　 　 ｌ 　 　 　<> 　 |　　　　　!l　　　　　　　　　　　l
　　　　　　.ｌ,!　　　　　　　　　　　　　 l　　! lﾞ　　　　.|　/ 　 　 　 　 ｌ　　　　　　　 |　　　　 ｌ.|　　　　　　　　　　　|
　　　　　＊´　　　　　　　　　　　　　/　　.!′　　　　l /　　 　＋ 　 ｌ_　.､　　　　　!　　　　! !　　　　　　　　　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,!　　 l　　　　　 .ﾘ　　　　　　 / .! ｌ . ｌ.　　　　.|　　　　| !　　<>　　　　　　　 l ./
､　　　　　　　　　　　　　 　＊ 　 　 !　ｌ/ ′＊ 　 　 ｌ .;;　　　　　/　l .l.ｌ　 ｌ　　　　l　　　　|lﾞ　　　.,i|i　　　　　＊!/
.ヽ　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !　│　　　　　　 l　 .ｌ　　　　/　.l .,! .!　..ｌ　　　 !　　　 .ﾘ　　 ./ .!.ｌ
　 ヽ　　　＋　 <>　 　 　 'ﾄ、　　　lﾞ　　!　　　　　　 l　　 ｌ　　　/　│││　 ｌ　　 .li　　＋"　　/ 　!　!
　,i│　,,、　　　　　　　　　! ヽ.　　.l　　 .!　　　　　　l　　　.ｌ,　 /　　l　 |　 l　　.ｌ,　/│　　　　 / 　 .|．│
../ │　 ｌ｀'-､　　　　　　　,!ヽ .!　 .l　　　!　　　　 / lﾞ　　　 `　!　　.!　│　.!　　."/　 l.　　　 / 　 　.|.!　!
`　　!　 . ｌ　　｀'-､ 　 　 　 ｌ.'ﾄ |　 !　　　,!　　　 / 　| 　 <>　 　 　 |　　|　　l　　　　　 !　　./ 　　/　! !│
　　│　　.!　　　　｀'-、　　 ヽ |　.!　　　.|　　 ./＋ .| 　 　　 │　　!　　　　 .ｌ　 .!　　　l.　./ 　　./ 　! .Ｕ
ヽ　 .!　　　!'､　　　＋.|'､　　 .ヽ　!　　＋!　 /　._　 　ｌ　 　　│　　! 　 　　/ l.　!　　　 l. ./i　　./ 　 .|　.|′＊　 ／
　ヽ. |　　　.ｌ .ヽ　　　 .l ヽ、　　 .lﾞ　　　　| 　　/ル　　!　　　!　　.|　.!　　 .|　ｌ.l′ 　　　/ .!　./＋　 .|　 |　　.／　.／/
　　.ﾞｲ　　　 ｌ　 ヽ　　　!　ﾞﾐ､　　l　　　　 !　　/ .! l,　　.ｌ　　 !　　.,!　│　 .!　│　　　 /　.| / 　　　 .,!　.! .／　／ ./
　　　<>　　　ｌ.　 ヽ　　.l　 .ヽ.＼l 　　<> l　　ｌ　.!　!　　 ｌ　 .|　　 i　　.ｌ　 |　　.l　　　 ｌ　　|′　　　　,!　,ﾉ_..ｯ'"　 /
　　　　　　　 . ｌ　　ヽ　 |　　 ヽ .＼　　　,!　 l゛　!　.ｌ　＋.ｌ　,!　　 |　 ､ | .lﾞ　　 .!　＊ｌ　　/　　　　　._..-"／　　 ,i′
､　　　　　　 ＊ ｌ　　.ヽ .l　　　 ヽ　＼　 .l　 l　 .lﾞ　 .ｌ　　 ﾞ! 　　　.!　.!　.ｌl　　　 !　　!　 . !　　　　／　.／　　　./

252：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:32:47 ID:OyK7KkQM0

久保田が着目したのは、この銑鉄における炭素含有量の部分である。銑鉄が固く脆いのは、
炭素を多く含んでいるからに他ならない。この炭素を上手にコントロールすれば、
水圧に耐えられるだけの鋳鉄管ができるのではないかと考えた。



≪ ≪　　∧　　　　∧　　∧　　　　　∧　　　　　∧　　　　　≫　　≫　≪≪
　≫ ≫　　　　∧　 　∧　　　　∧　　　∧　　∧　　∧　∧　　　≫ ≫　≫≫
≪ ≪　　λ　 ﾍ　ヽ　　　 ∧　　　　　　　＝＿　　λ　　　　 ≫　≫　 ≪≪ ＿
　≪　ミヾ∠_　ゝ 〉》 》　　〉　　《 《　 ←-､　ヽ/,,,/,／彡　≫　 ≫　≫　 ≫≫　~ヾミ;;;
..≪ヾミ　　／ ｲ /|　.λ　∧　ﾄ､　ヽ＼ ヽ　＼ ＼　　　 彡　≫　 ≫　　≪≪;;彡ﾐ;;,,　ヾミ;;;
　　ヾﾐ　 /／/ / |　/ |　/　|　|　|　|　 ヾ ヽ　 ヾ |　　　　 彡　　≫　 ≫　≫≫'''';;ﾐ;彡　　ヾミ;;;　　　　　　　　銑鉄は鋳物じゃ良く使うからな。それに炭素が多いと
　　 ヾ|　|/　| /　|　|　|　|　 .|　|　|　|　　| .|　　 | |　　　　 彡 ≫　 ≫　≫ __《彡　　'';ﾐ彡ﾐｯ　 ヾミ　　　　　　鋳鉄しづらい。裂ける時だってある。
.,;ミ彡''|　　　| |　 | |　|　||　 ||　|　|　|　　| |　　//　,,,,　　　彡　 ≫ ≫　／　ヽ彡ﾐ　 ::;ﾐ彡彡　 ヾミ
ミ彡　 〉,,,,,　 ゞ|　.| |　| .||　 || |　 | .|　　|/　　,,,,,'''':::::''';;,,,,　 ''''彡 ≫ ／／~ﾍ 〉ミミ　 ::;;ﾐ彡彡　　ヾミ　　　　　だがよ、上手く使えば水圧に耐えられるモノが出来るんじゃねえか？
ﾐ彡　《《''''''';;;;;;;;,,, ヽ!　Ⅳ|　|||/／|/ ,,,,,,,,,,'''''''':::::::;;;;;''''''　　　　　'''ミミ'ｲ~~　//ﾐミミミ　::;;;ﾐ彡彡　　ヾミ
ﾐ彡　 `､''''';;;;;;;;;::''''''ヾ || || ||/.,,'''''''::::::::::;;;;;;;;;;''''''''＿_　　　　　　　 ミﾐ |~ヽ//ミミミミﾐ　::;;;ﾐ|彡ﾐ　　　ミ
彡　　ミ!　　　　''''''''''V⊥L巛ii;;;;;;;;;;;;;;''''''__==='￣~//　　　　　　　 ミ ）/ | |ゞミミミミ　 :;;ﾐﾐ|彡ﾐ　　 ミ
彡　　ミヽ ヾ､_＿_,==ヾ》　《《≫''''''=､　`＝″　 彡　　　　　　　　　　ヽ // ヾミミミﾐ　 :;;ミﾐ|彡ﾐ　　 ミ
彡　　 ミ|ﾐ　 '''￣~　彡Y　　/彡ミﾐ　￣―＝=彳　　　　　　　　　　 |　　/　 ヾミミﾐ　 :;ミミﾐ|彡ﾐ　　 ミ
彡ﾐ　　ミ|ﾐ　　　　　　　|　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄー'彡　　|ミﾐ　 :;ミミミ|彡ﾐ　　　ミ
彡ﾐ;　　ﾐ八　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.|　　　彡　|ミ　　:;ミミミ|彡ﾐ　　　ミ
彡彡::　 ﾐミヽ　　　　　　|　　　　 彡ﾐ``'':::､ ,,,, ,, ,,ｯミ彡　　　　　　.|　　　　彡/ﾐ　 :;ミミミﾐ|彡ﾐ　　 ミ
ミ彡'';　　'';ﾐミヽ　　ミゞｼ|　　　　　__/　　　　　 ,ｲ ~||》″　ﾐ　　　 |　　　　　 |ﾐ　　::ミミミｿ彡ﾐ　　 ミﾐ
ミ彡彡　　'ﾐミミ＼　ミ＼|　　　∠＿＿＿＿／　| ｲ||　　　ﾐ　　　|　　　　　 /　 ::;;ミミミｿ彡ﾐ　　 ミミ
ﾐ彡彡ゞ　　ミミミミヽミヽ`t-t'　|　 |　 |　 |　 | ィ~У　　　ﾐ　　　 |　　　　 ／　 :::;ミミミｼ彡ﾐ　　 ミミ
彡彡彡';,　　ミミミミヾﾐ`<ゝY 个 个 个 个イ　У　　　 ﾐ　　　У　　　 /　 :::::;;ミミミｿ彡ﾐ　　 ミﾐ
ﾐ彡彡彡;;;,,　 ﾐミミミミヾﾐヽ┴┴.┴-┴.┴┴'~　,　　 ﾐ　　　／　　　／　::::;;;ミミミｼ彡ミ　　 ミミ
ミ彡彡彡彡,,　 ''''ミミミミヽヽ=-----------===′　ﾐ　　／　 ＿／　　:::;;ミミミｿ彡ミ
..ミ彡彡彡彡ゞ,,,　　''';;;ﾐミミ＼_＿＿＿＿＿＿＿＿ｼ―←―‐′　 ...,,,,::;;;ミミｼ彡ミ
　ミミﾐ彡彡彡彡;;,,,　　 ''''ﾐミ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::'''''''　　　　　　..,,,,,;;;;;;ミミミｼ彡ミ
　　ミミミﾐ彡彡彡彡;;,,,,　　　　　　　　　　　　　　　.......,,,,,,,,;;;;;ミミミミミミｼミ彡ﾐ

253：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:33:24 ID:OyK7KkQM0
早速久保田は炭素、黒鉛と呼ばれるグラファイトと全体を構成するセメンタイトの調整を行い、
なおかつ鋳鉄に多い偏肉（不均一な肉厚）や鋳巣（空隙）を取り除くため、立込(たてこめ)丸吹法を開発する



　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,､ ||　　 ∥ll 　 ∥　　　　　　　　　　　　　xｼﾐﾐﾐﾐﾐﾐヽ　　　　　　　＿＿＿　　　　　　　　　／:::::::
　　　　　　　　　　　　　 _,,ｨ彡ヾi　l!　　 ll ∥　∥　 　 　 　 　 　 　 　 　 ﾐ;廷i｣ヾ無少ｨzｲ二二ﾆ二､::::::::::｀ヽ､　　　　　／:::::::::::::
　　　　　　　　　　_,,,z≠'ﾞ　　　 lll l!　　 ll .ll　 ∥　　　　　　　　　　　　　 ｵz､ `ヾﾄｧZ斗ｲl;;;;;ｨ;;";/;ヾ',三ゞ三ヽ:ヽ､__,ｨ:"::::::::::::::::::::
　　　　　　　_,,ｨ彡"　　　　　　 lll! l! 　.∥ll　 ∥　　　　　　　　　　　　　　 ~ L _ｨﾞ;j;;;/;/;ノ,r―;彡ﾐ;;;;;;ヾ三三ﾐ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　_,,,,,ｨ≠'"　　　　 　 ,ｨ!　　|lll ll　 ,∥ lﾚ彡　　　　　　　　　　　　　　　　 /;;/;;;;;;;∥;j-ﾅ二彡ヾ;;;;;;i､三三三ﾐゞミ::::::::彡三三ミ
　　　lllll 　 　 　 　 ,,ｨ彡ﾍil!　　llll レ≠ﾞ　"´　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 └iヾ;;;;/;;;;j´_;;;==j-ヘ;;;j;;;;;l三三三三三三三三三三
　　　lllll　　　 _,ｨ彡ﾞ　　　lll　　 lll　　　　　　,'　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｢ﾞ;;;l;;/;;;;;l"/_z=ﾆく;ヾ;;j;;ﾉ;;!三三三三三三三三三三
　　　llll　　,,ｨｱ'" 　 　 　 lll　　 lll　　　　　 ,　　　　　　　　　　　　　　　　　 く;;;;ノ;;;;ヾ;i;;≠三ミミｼ;;;;;;;;;j三三三三三三三三三三
　. 　 llllﾚｲ'"　　　　　　　lll!　　lll　　　　　 ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　);;;;';;丶;､;;;i;}三ミミﾐ/;;--/三三三三三三三三三三
　　　 `'"　　　　　　　 _,,ｨ》　　 !l　　　　　,　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 j;;;lヾ;;ヾ;;;;/人`ヾヾ/;;;;;;;j三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　_,,ｨ彡"　　 _,lll　　　 　 ,　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 }ﾆ{三ﾝ;;;;{'"`ヽ ヽ/;;;;;;-ん､三三三三三三三三三三
　　　　　　　　,ｨ≠"　　　,,ｨ彡'"　　　　 ,　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ﾌrゝヾ{=/　　　 ﾉ:.:.:.:,ノ:.:.:.`ヾ=ｭ､三三三三三三三三
　　　　　 ,ｨi彡ﾞ　　　 _,ｨ㌢ﾞ　 ／|　r､≠ﾞ》　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /_`　,' l=j 　 　 /-="-ｧゝ:.:.:.:.:.)三ﾐｯﾒ: ヾ三三三三三
　　　　　 lll　　　 _,≠"/ _／| |　l ∥　 〃　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 !三ミﾐｼ/　　　/,r､)z､彡彡`'ヾ三三ﾐ!,: : : ヾ三三三三
　　　　　 lll　 _,≠ﾞ　　i'　'i　|| ! j 〃　〃　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !三ミｼ/=シゝ/j ∠ノ;;;;;;;彡イ;;＼三三ﾐｬ: :/!三/`' 7三
　　　　　 llﾚ〃.　　 　i　　'i ll lﾚ ∥ 〃,　　　　　　　　　　　　　, イ'i　　　 /三ｼイ_,,r　,ノ-､ ∠ﾆ二;;;;;;;;;;-;'ﾞ;;!三彡ヾ､ﾝヾﾓ!　 l三
　　　　　 ﾚﾞ　　　　　i'　　 V　ﾞ ∥〃 .∥;:..,　　　　　　,,..::.;;ｨ'" .,,ﾉ-L,,ｨｬﾌi彡ｼlTi~i_l`i=- ､|/l`;;;;;ｰ;､;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ:ｨヽ)　ヾ彡ゞﾉ　　 ｀ﾞ
　　　　　　　　　　　 i　　　　　 ﾑノ _,ノ7 :: :: i ,,:::.. ,,,;:ｨ:'": :　,,/,ｨ⌒`ll/_´-イ´ヽゞ斗"`ｰ‐ﾞ!;;l;￣`;;;-;;;ｼ;;;´;;;ﾊ::)
　　 　 　 　 　 　 　 i　　　　　 ´　　l　/ : ::: |:::i,ゝ''"　_,,,;iill||//O ii (~ヽﾍ､ヽ>'";ヾ;;;;ヽ;;;;;;;;l;;;;l;;￣;;;二彡;/;ヾ 〈､ ,､　 　 　 /ﾌizｭ,
(　　　　　　　　　　 i　　 　 　 　 　 L/ l i - ' 　,，iilll|||||||||||l l, 　 ! o´ヽ"´;;ヽ;;;ヽ;;;ヽ;;;ヽノi;;`i;￣;;;ｨ'";;;;ヾ∠ゝ{`(ﾞヽ　　　j_/,　ヾ_ヽ
､，､　　　　　 　 　 i　　　　　　　　,;，ii:::::;;;;iiillll||||||||||||||||||||ヽ｀''''iiヽil:::ヽゞ-==三彡"´　　}';;;l;;／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽﾞ　l　　　{　く　　　)
　 了　　　　　　　 i　.....　.:: 　'　´:::;;;;iiilll|||||||||||||||||||||||lllll≠''"￣!ﾒ/:::::::ヽ　　　　 　 　 　 lｰ;lく;;;;;´;;;;;;;｀;;;;ヾ;;;`;ゝ,j　　/ ,,，) ノ"’
(ヽ{　　 　 　 　 　 i :;;: ::::::::::;;;;;iiillll|||||||||||||||llllll≠‐''":::..　.....　　...l:j､:::::::::::::ヽ　　　　　　　　＼;;;ヾ;;;;;;;/;;;;;/;;;;;;;;/;ノ　　ｰﾌ´　}､　　,

254：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:33:39 ID:OyK7KkQM0

その結果、久保田は回転式丸堅込鋳造法を発明し、1897年（明治二十六年）に初の国産鋳鉄管を開発する。
このとき、彼は二十七歳であった。


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255：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:33:54 ID:OyK7KkQM0

1900年(明治33年)には特許も取得し、久保田の発明した鋳鉄管は日本全国で使用されるようになり、
鋳鉄管はこれ以降、完全に国産化されるようになった。



　　　　　　　　　ヽﾄ _ゝﾄ__ﾄ,, __イ-ヾ─,
　　　　　　、＞｀ﾍi:::::::::___::≡_:ﾐ::::::＝二－-i_____
　　　 _ヽ_－｀::::::::三__::::ｸ／//ﾉミ,三ミ;;;;;ﾐ:::::::＜__
　 丶二｀:::::::::::彡ｴﾞ／:ﾉ/ll::ノ/i:ﾉ!:::ミ ｀l｀,ﾐ,:::::::, ,<ヽ
　　_==ﾗ　ヶ／!:::::ヶ／/ﾉi f//ﾉ,)::l!ﾉﾊl＼,:::::ヽ ヽ ﾄゝ
　　イ　彡／ヶｸ::/:::/ﾚ:::::i//:/ /::ﾘ.ll::i!!::::l ＼｀ヽ::iヾ
　 /イ/　´ ´´/ノ:::::::::::/l::::イﾊ´:/i:::ﾉlヘヽ:i, iwi ｀ ト　　　　　　　　これでみんな、安心して水が飲めるようになるな。
　　ノ／　　；； イ:::/l::/ .i/__}:/-/´ﾚl::ﾚ!!:ヽ::＼ i_＼i
　´ ´lイ /ﾉiﾉi:l,,::!_,:l i/;;;;l´彡 ´｀ヾﾉi://::::::ﾉl ／ﾍi,｀、
　　　/ノ!ﾉ,-;;;;;;ヽ、 ヽ　　r_i:ク=ゝ／i/:i:::/::/./ニヽiヽ
　　　　 l ﾍ-、　 _.!-.i ヽ,　　　　　　　 　!イﾉf__ﾉ ｀ }!
　　　　 ´ lﾉ!-￣ /.ハ　i　　　　　 i　 　.l;ﾉ/.)　厂イ
　　　　　　/i　　/ ヽ_ヽ,i　　　　 　.l　　　　　 　/:::lヽ　　　 .∧
　　　　　　　!　　i.!、 、,ﾉ　　　　　 l　　.　┌7´ ｀ﾍi　　　　/;;;i
　　　　　　　｀i　 ´｀－,　　　　　　　　　 　 !｀　　　 ＼/─彡:::!
　　　　　　　　｀i　/_´─￣ 二｀　　　　　 /　__／｀-´彡ﾍ彡彡ヽ
　　　　　　　_ /´i ヽ─ ´￣　　　　,∧　ノ／ヽ!:::::::!::／,,,,＜´::￣
　　　　　　__l::::::::｀i　　　　　 　　 ,/::::::ﾍ,.＼;;;_｀_　,-＜:::::::::::::::::::
　　　　 .ﾍi:::::::::::::::＼　 　　 _,ﾍヾ 彡::彡-　｀:;;;＜::::::::::::::::＿_::::::
　　　 ノ::iヽヽ:::::::::::::｀i7ﾍ-´:::::::ヽ 彡:::-─´´:::::__::／´￣　　 ｀ヽ
　　　＞::ﾍ｀.ヽ:::,ヘ-´;;:::::＼,::::ノ-;;;´::::::::::＞ ´
　-7´: ヽ::::iヽ,!/::彡 彡:: ＜::::::::::::::::::::／
　/:::::::: ｀!;;ﾉ´_彡 -:::´::::::::::::::::::::::::::::/
　:::::::::::::::｀-ﾍ　　:｀ヽ:::::::::::::::::::::::::::::｀l

後に「日本の水道管の歴史は、クボタの歴史である」とまで評されるほどであった。

256：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:34:05 ID:OyK7KkQM0

その後、久保田は鋳鉄を中心に鉄管・機械事業に進出していく。



.　　　　　 　 ⅳ从く)ヽ从_,)ヽ/厶彡,　 ,
　　　 　　ミト}:::::::::/(:::::::::::::::/(::::::::::仏ｲ　/ ,
　 　 　 ゞ:::::::::::ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::::::/(::::::仏ｲ
　　　ミト:::〉 ::::::: }i::::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::/(辷彡
　 　,ゝ::::/(::::::::ミト :::/:::::〉::::::::: ヾ:::::::::/彡仁}}く
　　≫::::､::::::ⅱ::::}::: ﾊ:::/(:::::::::::::::}ｉ::::仏彡仁}}≦
　 ｰ＝ミ::＼从:::j::::{:::{ :::::}:::::::ノ厶イ〃彡仁}}ニ》
　　 ,ゝミ冫:::〉::}ハ::冫ゞ :|:::::xぐくi}{ 　 ミ辷彡'ﾗ　　　　　　鉄を使ってりゃとりあえず何でも出来るぜ。後はそれが小さいかでかいかの違いだけだ。
　　 ≦ミ} i{/´ l|　|:i{::|　 }|::ハ::l}　}j　　ミ辷彡ﾗ
　　　 ﾐ了 { 　 i{　}八{　 ﾙ′jﾉ　ﾉ　　　勹ミ7＾ヽ
　 　 　 ﾐ伝云八　　Y 〃　　 7j｣怯竓　　ﾗん　 〉
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257：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:34:23 ID:OyK7KkQM0
特に機械事業は後にクボタの得意分野と成り得るコンバインやトラクターなどの農業機械開発に貢献する。



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258：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:34:35 ID:OyK7KkQM0

久保田は財を成した後、自分と同じく苦難な生活を送っている子供達の為に慈善事業を行っていた。


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　　　　　 　 　 　 　 　 }::ヽ
　　　　　　　　　　 ./iノ:::::::）ヾ､_,}`ヽ、
　　　　　　　　　,､/　＼:::/　 ヽ::ｌ　　:}:.,へ、 　 　 　　 _
　　　　　　　　_.ﾉ:::l　　 ヽ　　　`'　　 ''"_,.,.}._　　　　 /　}
{ヽ　　　　　 /　_,... `　　　　　　　 　 　　　　＼　　 /　/　　　　　　あ、くぼたのおじちゃんだ。
ヽ ＼　　　 .ﾌ''" ,　　　　　　　　　　　 ､　`ヽ　l.　 /　/
　＼. ＼　 /　／　　/　　 ,.ｲ　　 ﾄ､　　ﾄ､　　 ＼/　/
　　 ＼. ＼|　l　 　 ﾊ　　/　 !　　.} ヽ　 ! ヽ　　 ﾉ,. /
　　　　ト､　ﾚ|　　/　ヽ /　　ヽ　ﾉ　 ヽ l　　＼ ,l/ ﾉ
　　　　ヽ ＼.ヽ　l　　 ヽ　　　　`　　　　　　　|/　/
　　　　　ヽ　　|`´ -――-　　　　　"´￣￣_.|　/
　　　　　　＼　|≡　　　　　　　　　　　　-､ ~ﾚ′
　　　　　　　 ヽ|　　　　　　　　＿＿__,..イ　　|
　　　　　　　　 ヽ　　ヽv￣￣ 　　　　 ｿ　　.ﾉ
　　　　　　　　　 ＼　　＼　　　　　 ／　 ／
　　　　　　　　　　　`　- ､`ヽ----', ｨ '´
　　　　　　　　　　　　　　 | ` ‐-‐'　 |
　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　 .／　　　　　　　　　　　ヽ



　　　　　 　 　 　 　 ,､∧ﾊノ丶人/ヽ'lﾉi_
　　　　　　　　 ﾉlヽノ) /ヽ' 　 ） ノ 　i フ￣i_
　　　　　　iV!/ｌ .| ! ／!./ !,／-‐'ﾉ￣ﾉノ;ﾉ ノ_
　　　　　 l,|.i_ノ /',i/　ﾉ-'"ノ' ｌ 'ノフミノ）彡 （　　　　　　よう、お前ら元気にしているか。
　　　　iv'ﾉ '､ /　',／".／ . ノ, -‐ー'ヽ`＞ﾆ >
　　.i､ i､| / 　 Y./ヽ､, '", ;;彡'"二i'⌒ヽ"､二ﾆゝ
　 ､| ` ､ヽ`ミノﾆヽ/"　`ﾞｰ''彡三| lミ､.i_, ゝノﾉ>
　_iヽ‐-ヾ､,､　(,,`ヾ 　 　　　　ミ`　`　l`''ヽ　 `ゝ
　ヽ_`_､-,'`;;| `‐-`, '"　　　　　 　　 ヽﾉ"＞ヾ!` ＼,'"
　　ヾ;;__/ｌ,ヾ! i.　/,' .／l!　　　　　　　　ヽ　' ,　　　/:.:.:.:.:.:.
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　　　　! ＼.ヽ `:::､　 　　 　 　 　　 　　,'',　 .', ,ノ:.:.:.:.:／
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259：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:34:47 ID:OyK7KkQM0

なお、彼が生涯に得た特許は70件、実用新案は150余件にものぼる。
専門的な学問を学んだわけではないが、さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、
さまざまな技術や製品を作り出していった。




　　　　　　　　　ヽﾄ _ゝﾄ__ﾄ,, __イ-ヾ─,
　　　　　　、＞｀ﾍi:::::::::___::≡_:ﾐ::::::＝二－-i_____
　　　 _ヽ_－｀::::::::三__::::ｸ／//ﾉミ,三ミ;;;;;ﾐ:::::::＜__
　 丶二｀:::::::::::彡ｴﾞ／:ﾉ/ll::ノ/i:ﾉ!:::ミ ｀l｀,ﾐ,:::::::, ,<ヽ
　　_==ﾗ　ヶ／!:::::ヶ／/ﾉi f//ﾉ,)::l!ﾉﾊl＼,:::::ヽ ヽ ﾄゝ
　　イ　彡／ヶｸ::/:::/ﾚ:::::i//:/ /::ﾘ.ll::i!!::::l ＼｀ヽ::iヾ　　　俺は学はねえ。だからといって、考えることが苦手なわけじゃねえんだ。
　 /イ/　´ ´´/ノ:::::::::::/l::::イﾊ´:/i:::ﾉlヘヽ:i, iwi ｀ ト
　　ノ／　　；； イ:::/l::/ .i/__}:/-/´ﾚl::ﾚ!!:ヽ::＼ i_＼i
　´ ´lイ /ﾉiﾉi:l,,::!_,:l i/;;;;l´彡 ´｀ヾﾉi://::::::ﾉl ／ﾍi,｀、
　　　/ノ!ﾉ,-;;;;;;ヽ、 ヽ　　r_i:ク=ゝ／i/:i:::/::/./ニヽiヽ
　　　　 l ﾍ-、　 _.!-.i ヽ,　　　　　　　 　!イﾉf__ﾉ ｀ }!
　　　　 ´ lﾉ!-￣ /.ハ　i　　　　　 i　 　.l;ﾉ/.)　厂イ
　　　　　　/i　　/ ヽ_ヽ,i　　　　 　.l　　　　　 　/:::lヽ　　　 .∧
　　　　　　　!　　i.!、 、,ﾉ　　　　　 l　　.　┌7´ ｀ﾍi　　　　/;;;i
　　　　　　　｀i　 ´｀－,　　　　　　　　　 　 !｀　　　 ＼/─彡:::!
　　　　　　　　｀i　/_´─￣ 二｀　　　　　 /　__／｀-´彡ﾍ彡彡ヽ
　　　　　　　_ /´i ヽ─ ´￣　　　　,∧　ノ／ヽ!:::::::!::／,,,,＜´::￣
　　　　　　__l::::::::｀i　　　　　 　　 ,/::::::ﾍ,.＼;;;_｀_　,-＜:::::::::::::::::::
　　　　 .ﾍi:::::::::::::::＼　 　　 _,ﾍヾ 彡::彡-　｀:;;;＜::::::::::::::::＿_::::::
　　　 ノ::iヽヽ:::::::::::::｀i7ﾍ-´:::::::ヽ 彡:::-─´´:::::__::／´￣　　 ｀ヽ
　　　＞::ﾍ｀.ヽ:::,ヘ-´;;:::::＼,::::ノ-;;;´::::::::::＞ ´
　-7´: ヽ::::iヽ,!/::彡 彡:: ＜::::::::::::::::::::／
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260：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:34:59 ID:OyK7KkQM0

そして1959年。久保田は逝去する。享年８９であった。

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　　　Y:/::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::--=:::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!::::::::＼
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261：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:35:09 ID:OyK7KkQM0

その後の久保田鉄工所は1990年に社名を「クボタ」に変更。今では鋳鉄事業よりも機械事業が売り上げを占めている。

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262：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:35:19 ID:OyK7KkQM0

現在、クボタは日本における農業機械分野では、ヤンマーや井関を超える売り上げ首位を誇る。


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またアメリカを初めとする海外では絶大な人気を有しており、また売り上げではすでに国内を超えている。
小型で軽快に動く農業機械が国外では少ないことから、小型農機の分野では好調な数字を出している。

263：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:35:29 ID:OyK7KkQM0


元は小さな鋳物屋から、日本中で使われる水道管を作りだし、世界で畑を耕すトラクターを作る会社を作ったのは、
一人の貧農の小倅であった。

　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ,,.;, ...ii;;..,,.ヽ|ヽ|∨ﾉl∧　,, ,,,/;
　　　　　　　　　　　　　　;;; ;,.,. ヾヾ||:::i;;ヽiyﾘlll;;ii.;ヽli;,,/;;/ﾊ　/;,
　　　　　　　　　　 　 ヽ_,,ヽlllゞ"l;,,,ll〆ヾl;lll"::: ii;i;;i::/ﾊ:llﾊ;ii;;/ﾊ
　　　　　　　　　 　 ＿ミミヽllﾐ"';;;''lll i;;,ﾐ》lll l l>;;ゝl;,,ii,,ll;iii.ヽl/;;;;,/l /l/
　　　 　 　 　 　 ..ヽーヽllミミﾐﾐii;;; i;;;巛l lヽ∨lllllll/ﾊll;iii;ﾊ:ii; ヾl/ii;i|||li
　　　　 　 　 　 ＞=ｌｌ"ll;;,,,l,,ｿミミll》》iiii::ii:llll/"l/l lll;;,ヽﾊヾlll":::ヽl//llllﾚ'';"
　 　 　 　 　 　 .-;;ヽミllll;;ﾐﾐﾐll《<ﾐiiiii iii l;ヽii:::::iiii:::lllllllllll::i ii/ii::iii iiii lllll彡i/
　　　　　　 　 ..＿,,:ll;,,;;,ミiiﾐミlll;;; ヽlllll>》ll》llll::lll"i iii"lllﾊ,;iii;;;iii;iii,,i,ii;;iii"lll;;iﾚ;
　　　　　　　　　＼ii＼;;;,,,,,ヾヽllll; "### ;;iii;;ll; ヾ;;;;; ; ii　lllll i lll/ﾉl 'ii/l;ii/ﾉ"/
　　　　　　　　 ∠ｌｌｌミﾐllﾐ"ヽi;;..;.ヽlヽlllll;,　;;llllll ii 'illl;.;lll　;llll i lll ﾉl;;ﾉ /l/i..ﾉr/''"
　　　　　　　　　<;;;...ゝlﾐﾐﾐ,,;;;lll;;;...ﾐlllillillillゝ:ヾll;;lヽliili ll.,.ilill; ;ll ;lllll";;ii"//;iﾉ7
　　　　　　　　　巛ミ;;ヾllミﾐﾐiiﾐﾐﾐ;:"''"'''"/ll／iiiiiiiiヽll::iiヽiii ﾚ"llll'';;llll::ﾉii彡ﾐ
　　　　　　　　　」ﾐﾐミ巛ミiii;;;;::,::　　　 //i/／//;::;::i/iiiii:ii:::::lllll;;;iii::ヽ"'ﾐ彡
　　　　　　　　 丶ミ,;､ﾐミﾐﾐﾐﾐiiiﾐ>　　 / ||/ ./ii///iiハ,ヽii|ヽiiYiiii|,ヽゞ ﾍ
　　　　　　　　　<ミ|'ﾄヽ:::,,,ﾐﾐi:i:i; 　　　　|ﾚ　ｌ/ｌ |//|　 | |iil liil i .iiii　 ｌ|iYヽ
ヽ　　　　　　　　 .>.Kﾆヽヽﾐiiiﾐ 　　　　　i| 　ll　ﾘl　.l : | ll/ |ﾘ　 |i| .　|ｌｌ
:::::ヽ　　　　　 　く l : rー).lミ 　　＜巛ミミ=::,l,,,,l i　　；j ii　ﾘ 　/ ﾚ,;;l|li>
::彡ヽ　　　　　 　'liiヽヽ-;.ﾉミ　　　　<　　””'''##ﾐミﾐ;;;; .ﾘ /彡彡》ゞ'';"
　::彡ヽ　　　　　 jiiiiii::.　く　:::　　　　"'::::.,,,,,,,,;;-- ヽ　ﾐ 　/r'''::6::'';i"i
::::　　　ヽ　　　　/;/ﾊ/'l,　l::::　　　　　　　　　　::　/　 : 　l' "''''''-''"l
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lliiii:::iiiiiiillllll::iiiiiiiiillヽ::　 ::: 　　 :..,　 　　　　　　　　　 ."''''"　 ./'lli::::iiiiiヾiillii:::iiiiilliiii
lliii::::iiiiilllllllll::iiiiiiiiiill'l,　　 ::　　　:::＼　　　　 ー-r―--ーr'　/lllliii::iiiillllliii::iiilllliii:::il
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:::illlll::iiiiiiiiiiiilllllll::iiiiiiiiiiiiiillll:＼ 　　::::::　:.:.:.:::::::;;;;;;;;;;::.:.:.:' llliiiii::::iiiiillllllliiiii::llllliiiiiiiiii::::

この逸話を知るたびに、企業の価値とは何なのか、そして、企業のあり方とは何かを考えさせられる

【ナニワ鋳鉄伝　終わり】

264：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:35:47 ID:OyK7KkQM0
続けてもう一話投下します。

265：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:02 ID:OyK7KkQM0

企業城下町という言葉がある。特に製造業を営んでいる企業が、ある街に大規模な工場を造り、
その地域社会における経済を支え、その企業無しでは運営が成り立たないほどに密接な関係にある状態を指す。



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266：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:15 ID:OyK7KkQM0

有名なのは新日鐵住金君津製鉄所や、八幡製鉄所、JFEスチール千葉製鉄所などであろう。
特に千葉製鉄所の場合、それまで何もない場所であったが故に、一気に周辺が大規模工業地帯となった。



　　　　　　　　　　'､三三三三三三三ゝ-､
_　,,, __, -'"￣｀~""'’三三三三三三三三三ヽ
　_,,-_´,三三三三三三_三三_三三三三三三i
　　　　｀"' ､三三_三／/三ハ三三三i三三三i＿＿_
　　　　　 .i;;;｀;;､三i0'i　i,､ /´　 }三／_i/⌒i三三, -'"　　　　　おかげですぐに水島に製鉄所をつくるハメになったんだよな。
‐--――､-――i く i'-,｀==- -==ﾆi''´ i ９/三／
‐-､_,‐-,,-,,_｀ｰ三ゝ､i､ i'　 -i　 i-　 i　/-'"三〈,,__　　　　　
　　　ヽ;;;;i　｀ｰ ､　｀ ｰi ￣　 y ｀￣ ノイ￣"''￣｀
　　　　i;;;;;i　　　｀--.ノi ヽ　-―　, '" 　i
　　　　i;;;;;;;',　　　 i´ 　 　　ゝ-- "　　　i｀ｰ､-､
　　　 /;;;;;;;;;i　　　 iヽ　　　　　　　　　　　　 /　ヽ-―､
‐-,,_/;;;;;;;;;;;;;i　　　 i;;;;ゝ,,__＿＿＿＿＿, -'/
　　　"'- ､ /　　　 i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／
　　　　　　i　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／
　　　　　　 ゝi　　　 丶;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　 /;;;;
　　　　　　　　i　　　　ゝ;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　　/;;;;;

267：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:28 ID:OyK7KkQM0


山口県宇部市もまた、大規模なコンビナートや工場がひしめき合うかのように稼働しており、
瀬戸内工業地域を形成する工業都市として栄えている。


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268：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:36:38 ID:OyK7KkQM0

だが、元々この地域には寒村が広がっており、元々宇部市は市ではなく村であった。


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269：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:03 ID:OyK7KkQM0

今回の主人公、渡辺祐策は山口県宇部市にて生まれた。元々彼は渡辺姓ではなく、国吉家という名字帯刀を許された家に生まれる。

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　　　　　　　　 /.::/:.:;ハ:::::::.::.:.:.::.:::::::ノ７
　　　　　 　 　 !. :;. :.:!　j｀ ￣｀f´￣ゝ./:!
　　　　　 　 　 !:::;::.:::| ´　　　i |.i　　 {:::.j
　　 　 　 　 　 !.:;'.:::::|　　　　 ┴　　 j::::.!
　　　　　　　　j:;':.:::.::|‐=rｯ‐-､_,.rｯァ「::::|　　　正直、あまり裕福ではなかったがね。
　　　　　　　 /;'::.:::::.:!　 _,. -‐'i丶_　ﾉ.::::|
　　　　　 　 '^!:::.::::::.:|`´ 　 　_' 　 j/.::::;'|
　　　 　 　 　 |:;ﾉ::::::.:!ヘ 　 ´　｀／.::::/ﾘ
　 　 　 　 　 _」､:::::.::::!＼｀ - ｧく ﾚ'j;/
　　　　　　 / ＼ゞ｀`ﾞ｀: : ｀: 〈｀ヽ＼
　 　 　 　 /'´￣｀　 ‐- .:_ : . :＼ﾄ､ ＼
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　　　　 / 　 　 　 　 　 　 、　 ＼: i:ヽ.:!
　　　　,'　　　　　　　 　 　 ',　 　 ヽ.: :ﾘ
　　 　 i　　 . -───-　._ i　 !　　ヽ:.|
　　 　 | ／.: : . : . : . : . : . : .｀v′ 　 ヾ!
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　　　　!: : ／　　 　 丶　　 　 j!　　　 /|

270：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:16 ID:OyK7KkQM0

彼の祖父が起こした火事により、一家は無一文となり、そして明治維新後俸禄を失ったことから苦しい生活を余儀なくされた。


　._..-シ'′　,ﾉ.／　　　　　　 .,ν　 　 　 　 　 ,／゛ .／　　 ／ 　　._..-'"゛　_..-'″
../ . lﾞ　　 .,i''ﾚ′　　　　　　,ﾉ/ﾞ,，　　　　,..-'"　　／　 _..／　　 .,i',ﾞ＿z-‐'"　 メ し¨¨"￣￣￣゛て＿ﾆﾆ--‐''"￣￣￣
　／゛　.／　　　　　　　 ／ ,i〃ﾞ　 ,..-'"゛　　　.,/ン''"゛　　　　 .‘゛　　　　 . _ノ
'"　 ..i　|　　　　　　　 /　　'ﾘ′／　　　　　 : f'" 　 　 　 　 　 _,,　-ｰ'''"ﾞﾞ'”
　　〃./　　　　　　　/ 　 ./ . /　　　 　 　 　 　 　 　 ,,-._..-'"゛　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿
　/ し　　 　 　 　 〃/　　! ./ 　　　　　　　　 ,． ／し'"　　 　　　　 ＿z-ｰ¨¨¨⌒´　　　⊇ﾆﾆ二二二二
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　　　　　　〃　 / 　　 　　　　　.／ 　 　 　 　 _..i　/　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼ 　 : ﾞﾞ'㍉.　`'-､.
　　　　　./.!　　!　　　　　　　　/ ,,／　　　　ｒ'"〃　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀'―'''''^″　　 .｀''-..、
　　　　.i.l",!　 i′　　　　　　　i!''/　　　　 ./ 　l′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＿__
　　　 .,ill　|　 l　 /{　　 　 　 　 / 　　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　｀＼￣´
　　　./ﾘ　,! ./　 }/　　　 　 　 i! ._　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　 .i''i.! 　　.ｌlﾞ　　　　　　　　　 |, .!l.　 ,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ミ
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　││./ ｌ　　　,,　/゛│　　　　　　 ｀'廴　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 'ﾆｰ　,,_
　 .ｌ 　 l　.!　　 .ﾈ !　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀'-､ .｀''-､
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　　ヽi　.||　　　 l、.ｌ　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞ''-、
　　　|　 ″　　 ∥ .ｌ/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-..＿、　　　　　　　　　　　 ﾞ''-、
､　　│　　　 .､ .!|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀'､｀'-､　　　　 　 　 　 　 　 ゛
..ヽ、i,,ﾄ　　　 .ｶ, | ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼　ヽ,　.i
　 .ﾞ!//!　　　　l ｌ ! ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /{　　 　 　 　 }　　ﾞ'､|し
　　　ｌ ﾚl　　　 ｌ !ゝ　 .!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　!　　　　　ｌ.!ｲ 　　　　{
i　　　!､.ｌ　　　　ヽ　　 ㍉.〟　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / 　│　　　　,}|′　　　　}　　 　 　 |{
ヽ　　　㍉、　　　 ヽ.　　｀乂ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i}　　　/ 　　 ,!　　　 ./ ゛　　　　　ｲ 　 　 　ﾉ し
、.＼　　　丶　.'ト,　 ヽ　　 　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　_ //　 ／　　　/　　　　/ 　　　　　　.{　　 .i| ./ 　イ
. ｀-..｝　　　　　　ｌ＼　ヽ　 　 　 ｀'-..,_ 　 　 　 　 　 _,,〃 ._..-'"∠z-'"　 　 　 {　ィ　　/　　　　 　 　 ｲ　　/ﾚ　　　 }
〟　　　　 .}ヽ,　 .ヽ, ｀'-,ヽ　　　　　　 ´ﾞ¨¨¨¨¨´"ﾞﾞ´ ..┴'″　　 　　　　　　　 ｀゛/　 / 　 　 　 　 　 / _..-ﾞ　　　　 /リ
. ＼ 　　　　＼＼ 　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 {し¨´　　　　　　　　 ~゛　　　　　 　　{

271：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:27 ID:OyK7KkQM0

それでも彼は学問に打ち込んでおり、将来は教師になろうと努力していた。


　　　　　　　　 {　ﾊ|　, --ｪ,､ __,. -- ､ Vﾊ
　　　　　　　　 |/　:!ﾉゞ三"´_小二ﾞ｀ ヽ} |
　　　　　　　　 j :　:|　 /　　,. ┴ ､ ヽ　| :{　　　　何かを知り、何かが分かることは非常に楽しいことだよ。
　　　　　　　　 l : . :ト ′　ｆ'´￣｀j!　 V : :!
　　　　　　　　 |i: : :ﾊ　　　|:⌒ﾞ⌒|　 ｲ: : :l　　　
　　　　　　　　 |i: : i: :ﾄ､　 ゝ──' ,ｲ:|: : i:|
　　　　　　　　 |i: : i: :}　＼　　´　/ ﾊ:i: : i:|
　　　　　　　　 ゝ:| iハヽ 　｀￣ ´　{:.:.!: /ﾘ
　　　　　　 　 ノ⌒ﾊ:.:.'､ ヽ 　 　 　i､:.V- ､
　　　 　 _　 ´　　 l l|:.:.:.＼ ヽ　　　i'.:.:.l| l　｀ｰ ､
　 ,.　 '´　　　　　 ﾍ '､:.:.:.:.:＼ゝ_　/.:.:.:l| l　　 　 ｀　‐-.､





だが父親が亡くなり家督を継がなければならないことから、連れ戻されてしまう。





　　　　 /::::/|::::::／|::|　/￣｀`i}､`ー-ｙ┐
　　 　 /::://ﾚV ／l/　　U　　 !l,　｀¨´／
.　　　 N//::ﾊ／::::::|＿　　　 _ll, 　／|
.　　　 M/:/:::::::::::::/.戈ﾃｯ､　 _.　〈:::::!
.　　　 |::::::|::::::::::::::|　＿＿__7攵ｋﾉ::::|
.　　　 |::::::|::::::::::::i:|'´　 　 　,＼_ﾉ:::::::|　　　　　　　せっかく学問に励めると思ったのに。
.　　　 |::::::|:::::::::;::i:|　　‐-、　／:::::/:::!
.　　　 |:::::从:::::从:!　　 　 ／::::::::/i::/
.　　　 |／　 ヽi、 i＞ -ｒく:/:/:;i::/ i/
-―＜＼　　　 ﾍ　　 ,ﾑヽi/i/,i/　′
.　　　 ＼＼　　　＼_　 } ﾊ､
　　　　　 Vﾊ　　　　ヽ｜ ﾊ ＼_
　　　　　　∨ﾊ　　 　 `l　 ﾊ　　 ｀丶､
　　　　　　　Vハ　　　｜　 ﾊ 　 　 　 ＼
　　　　　　　 ∨ハ　　 |　　|ﾊ　　　､　　 ＼
　　　　　　　　 V ハ　 |　　|ｌﾊ　　　ヽ/ 　 /ヽ

272：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:39 ID:OyK7KkQM0

渡辺は必死に親族を説得し、岩国の東澤瀉の私塾にて再び学問の道を歩む。

　　　 　 　 　 　 　 , ‐ﾄ､―- ､
　　　 　 , -――∠-‐ゝ.＼ : :ﾄ-､_
　　　　 ゝ‐- ／!| !　　 ヽ/l: ﾄ､: ﾊ:＼
　　　　 ｌ ＼/,　⊥　　　　｜l　V　＼l
　　　　 N : ﾚ＿､　_ ィ丕ﾃl: ﾍ.　∧　l　　　　　家督を継がねばならないのは分かっています！　ですが、
　　　　 l ｌ: 〈ｒｒｔﾀV　￣￣ l: : :∨ :丶l　　　　　これからの時代、学を修めなければ生きていくことなどできません！
　　　　 l/: : ｌ ｒ‐/ ￣￣＼ｊ: : : : : : : :l
　　　　 ｌ:i: : ﾍl　｀ ＿__　　l: l : : : l: : :l
　　　　 ｌ:l: : :l:ﾍ　 ゞ-┘　 ! l: : : l:l: : :ヽ
　　　　 ｌ:ｌ: : ｌ: : ＼　 　 　 l l: : l l:l: :l: l l
　　　　 ｌ:l: : l:l: : lﾊ> --- ｲ:l: : l:l:l : !: ﾄl
　　　　 ｌ:ｌ; : l:l: : l:.ﾊ　　 _ﾉｨl: l:州:从:ﾉｙ‐-､＿
　　　　 リﾍ ﾘヽ/:.iﾉ! ／/　ｊ:/':.:.l':.:.:ｿ/　　　　 ￣　‥‐-　､_
　　　　　　 ﾞlニl:.:.:l／:.:.:.:.:.:ｌ':.:.:.:.:.:.://　　　　　　　　　　　 　 ＼
　　　　_ - ´//ｊ:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／/　　　　　　　　　　／
　 -‐ ´　　 { { l':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　/　　　　　　　　　／






　　　　　　l　　　　l　 ;;;;;;;;;,,,,,,,,,,,,,,;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,,,l　　　l
　　　　　　l　　　　l;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;　;;;;;;;l　　　l
　　　　　　l　　　　l　______________________________________　.}　　　l
　　　　　　l　　　　l-' _, ー-､_　　　　　　　 _, -一 ､_｀-i　　　l　　　　　　うーん、そこまで言うならば仕方ないのう。
　　　　　　l　　　　l ´ 　ニ二 _ ｀-) , |l| ､(-´ _ 二ニ　｀l　　　l
　　　　　　l　　　　l _　'¨ {ﾟ;;;::) ＞,　　　 ' ＜ {ﾟ;;;:) ¨｀ _ l　　　l
　　　　　　l　　　　l　'´ ｀¨￣_／　　 　　　 ヽ_￣¨´ ｀　l　　　l
　　　　　 /l　　　　l.　　｀￣´　　　　　 ',　　　｀￣´　　 l　　　l
.　　　　 / .l　　　　l　 　 　 　 　 l　　　　　i　　　　　U,'.l　　 i l,
　　　　/　 l.　　　　lヽ､　　 -一　｀一-　-'　ー-　　 ／l　　i　l',
　　　 / .::..:l i　　 i　l.　　　 l l　　　　　　　　　　 l　　 　.!　 ,i　l:.',
.　　 /:.:::::::::l l　　 l　l　　i.　l l l ,　-一-ー-- ､ 　i　l 　 i　 .i　,l::::',
　　/:::::::::／i l　　 l　l　　l　　l　｀ ー　－ 一 ´　 ,'　_ノi　 i i l､::::::',
_,／:::::／; ; ;l li　　 ', l｀ｰ-!　　　　　 ￣　　　　　i- ';;;;;;l　 i i l;;i:iヽ､ヽ
/::::／; ; ; ; ; ;l.l',　　 ',.l;;;;;;;;｀ｰ-',　　　　　　　i-;;;;';;;;;;;; ;ﾘ　i iﾘ;;i:i:i:i:i:i:i:i:i:iー-
／:i'; ; ; ; ; ; ; ll; ',　　 ',l; ;;;;;;;;;;;;;;｀ー----一´;;;;;;;;;; ; ; ;/l　i !l;i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ
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273：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:37:57 ID:OyK7KkQM0

その後、上宇部村戸長役場用掛、村議会議員、助役を務め、宇部村の行政へと関わっていった。


　　　　　 　 　 　 　 /⌒ヽ ､‐ ､: : : : ＼: : : ／: ￣｀ヽ/ﾍ: : : ＼
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　　　　　 　 　 　 /: : : ｌﾍ: : : :ヽ: : ヽ: :｀': : : :／ : : /　　 |:|: : : :
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　　　 　 　 　 /: : : : : : :',　　　　　　 　 ∥　　　 　 　 　 /: : : : :
　　　　　　　/: : : : : : : : i　　　　　　　ｌ ∥ ｌ 　 　 　 　 /: : : :/: :　　　実行の中にのみ学問がある。行動しなければ学問ではない。
　　　 　 　 /: : : : : : : : : i　　　　　　　 ー　　　　 　 ∠_,!: : /: : : :
　　　　　 /: : /: : : : : : :〈、＿　　 　 　 ｀´　　　,,, イ ］ノケ": : : : :　　私に学を身につけさせれてくれた人達の為にも頑張らねば。
　　　 　, ': : , ': : : : : : i⌒|''ll￣匚_＞ヽ、 　 ,r'　 ￣´　/: : : : : :
　　　／: :／: : : : : : : : ',　」 `￣　　　 ,,,ゝ-ﾍ_　　　　 ,': : : : : : : :
　,　´: :／: : : ::,': : : : : : :ゝ|　　　　 ／　　 j　　￣｀ヽ/: : : : : : : :
　／ , ': : : : : / : : : : : : : : ヽ　　　/　　 　丶　　　　/ : : , -.､: :
　｀彳: : : : : ,': : : : :: : : : : : : ::＼./　　 　, =＝､ 　 / , イ,　　 〉: :
　 / /: : : ハ: : : : : : : : : : : : : : : ヽ、 　 ヾ=＝',ｨ´￣ﾍ./　　./: : : :＿＿＿
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274：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:38:48 ID:OyK7KkQM0

だが、そんな渡辺に一つの転機が訪れる。


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　 ,'//:.:.:.:/ｲ:.:.:.:. !:.:.:{:.::.／ :.:.//　||` 　 　　|ﾑl ‐|!､:l :.:.:.:.:.: |:.:.:.:.: |:.: |
　 l　!:.:.:://:!:.|:. |:| .: |:.:. |: l!.:/=!=..|ﾄ.､ 　 　 || ,|:_:|!|:.|＼ :.:.:.:| :.:.:.:.:|:.: |　　え？　炭坑を掘るんですか
　 |! |:.::/ﾊ' !.:|:. |:l:.:: |:.:: ﾚ'∨ ':: ヽ|!ﾞ' 　　 　||,r!:=ﾄ|:.|　|:.:.,:. , .:.:.:.: |:.: |
　 ｀ |:./ | 丶!.:.:.ﾊヾ |.:.: |j　 ﾊ::::::ﾉ! 　　 　　ヾ ヽ!::Vヾl: /|:ﾉ :.:.:.:::;|:.. |
.　　 ﾚ'　　　 ＼| 'ヽ,'ヽﾄゝ　ヽ｀´,ﾉ 　 　 　 　　ﾊ:::::::ﾊ! Yl! |:.:.:.:.:. , :. |
　　　 　 　 ／　ヽ /.:::!　　　 ￣ 　　　 　　 　 ヽ_｀_ノ　 ´ /!:.:.:.::∧ .:|
　　　,. ..:':´ゝ　　　'ｲ:. |! 　 　 　 　 　′ 　　 　 　　 　　,ｲ:.l:.:.: ,'　ヽ,,'
,_.., '::::::::::::::_j, .-= .||:.:.:|ゝ､ 　 　 　 　__　 　　 　 　 U　, '　 '.:.:..:/　 　 ＼
｀ ￣￣ "´　.fヽ:.. |!:.::.|ﾍ!::ヽ 　 　　 ` ′ 　 　 　 ／:.ヽ,/:.:. /l 　 　_,ノヽ
　　　　 　 　 |: : ＼ヽ | ::.V,. ＼　　　　 　　 ,.. ｬ'! : : :.:./:.:.:.:.:,!'_`ー'',:::::::::＼
　　 　 　 　　|‐--､:`ｰ!--､__ヽ_` 　 ｰ‐　' ´　/::|.: : :.:/:.::.:.::::|! ﾄ､ ヾl' :::::::::: ＼
　　　　　 　ノ￣_｀V: : r ､ : : :`＝=‐-､__　　/!:: |: : :./ヽ__,.-ｲ,ﾉ::::ヽ ｀''ー`ー--ゝ
　　　　　／⌒ヽ : : : : ヽ ` ー─- ､ : : : ` ｰ──_:/ヽ.__, -.ｲ:::::::::::|
　　　 ／　　　　 ＼ : : : : `ー─ ､　＼: :/ ￣￣ ./: : : : : : :.,′:::::: |
　　／　　　　　　 　＼: : : : : : : : : :＼　 ／´￣::/: : : : : : ::/| :::::::: ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　【渡辺夫人】











　 ／,　 |　　ゝ′　　　 rｭ| |rｭ　　　i､　ノ　| !
／／ ヽ.!　　　　　　　　Ｌ!| |L!　　　　 |: :　| |
　′ 　 :|　　　 　 　 　 └─┘　　　 {j: : 　N
　 　 .　 |　　＿＿　　　　　　　　　　　V: :　 :|　　　　　　ああ決めたんだ。今や石炭こそが日本の将来を担う。
　　 : :　:!＜､￢ｔrﾑｰュ､　　 , ィ丕マ,､ 〉: 　｜
　　 : : . | 　`ー冖^ ´ 　 ｀¨´ ｀冖≠　ｌ': :　 ｜
　　 : : : |　　　　　＿___／ﾄ､　　　　　,!: : 　i: !
: : : : : : :|　　, '´￣　 　 　 l､｀ ｰ ､　 /: : :　i: |
: : : : : : :ﾄ､ /　　　　　　　/′　　 }./: : : :　|!:|

275：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:00 ID:OyK7KkQM0

すでに何回か描いてきたが、明治時代は大石炭時代といってもいいほど炭坑が日本各地で開かれていった。


　　　　　　　　 ／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｿ;:;:;:;:;:;:;:ゝ､
　　　　　　　〃;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:Yｲ|;:;:ﾍ;:;:ヽ:;:ヽ
　 　 　 　 ／;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾヽ;:;:;:ﾊ
　　　　　/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ
　　　　　ﾉｲ;:;:ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノﾉ ﾊﾍ ∧;:;:;:;:;:;:;:ヽ
　　　 　 ﾙノノ;:;:;:;:ノノ;:;:ノ彡'ｿ/ﾉ ヾミﾊ;:;:;:;:从ﾘ　　　　　　私が三池炭坑を落札したのもそこが理由さ。
　 　 　 /彡彡ﾆ彡ｲ彡ﾆﾆ"　　　＿_　ﾍ;:;:ﾊﾙ'
　　 　 　 ﾄ彡ｲ ｲ.l|　　￣｀　　　´fｫｯ｀ /ソ''
　　　　　 ヾ;;;;ヾ. ｿ　　　　 　 　 {　 　 ,'
　　　　　　 ﾙ;;;;ヽﾍ　　　　　 ｰ-'　　 ﾉ
　　　　　　 从;;;;;;;;;|　 　 ／￣￣￣｀ミ辷ﾆﾆﾍ
　　 　 　 　 >ﾊﾙj ヽ　 l´　　　　　　　　|　　i　｀ヽ､
　　　　　　 |＞ｰ--､.ヽﾍ 　 　 　 　 　 /ﾆﾆ≧.　　|
　　　 　 　 |.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ ゝﾐ､　　 　 　zﾍ､＿__. 　､　|
　　　　　／.:.:|φl.:.:.:.:ﾄY´￣｀Yﾆﾆ>ヾ::（　　　　､　|___
--一'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.　 　ﾊ　ﾍ 　 |.:l´￣　 ､　 ∨.:｀￣｀ヽ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.人 　 |::　 J　 j.:.:ヽ､ 　 　 　 }.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞ﾄ､___∠.:.:.:.:.:ﾍ､.　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ミヽ='.:.:.:.:.:.:.:
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:

工場や船の動力源として、石炭は現代の石油以上に活用されていたエネルギー源であった。

276：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:11 ID:OyK7KkQM0

花子とアンで有名になった石炭王伊藤伝右衛門や、筑豊御三家と呼ばれる麻生、貝島、安川などの
後の財閥となる企業がこぞって炭坑に関わっていたことを見ると、この時代における炭坑の価値がよく分かる。



　 /　　　　「´
　{　　　　　`ー──────- ､
　 ｀`ヽ.　　　　　　　　　　　　　　 ヽ＿__
　　　{　ヽ_,.-‐----- ､._　　　　 / ,.----ミ ､
　　　 ｀ ´　　　　　　　　　￣｀V /　　 /::|　,.イ
　　　　　　　　　　　　　　　 ／､⊥_　 |::::ﾚ':::::|　_,. -‐ｧ
　　　　　　　　　　　　　　 /　／_＞::`::::/::::::::|'´:::::::/
　　　　　　　　　　　　　　ヽ＜:::::::-=＝'::v::::::!/::/　`ー―‐z__
　　　　　　　　　　　　　　､-≧＝:::＞::::::::::::::::::::￣￣／／／
　　　　　　　 　 　 　 　 　 フ￣￣::7:::::::::::::::::::::::::::::::::＼<
　　　　　　　　　　　　　 ,〃::::::/:::://:|::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::｀Ｚ
　　　　　　　　　　　　　　_'ﾆイ:_:/:/|::|::!:::vﾍ:::::::::::::::::::､_ア´
　　　　　　　　　　　　　　　￣レ代ﾐ!:| |:::ﾄ、:::::::::::::::ﾄ､:ﾄ､
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 く ∧ ｀ j! |代ヾラ:ﾄ､:::::|' ヽ!`ー-､
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /`ーヽ `　ヽ「´ ヽﾚ!::ト! |　 ／　 ＼　　 　 _
　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 /.ハｰ- 　 ,.イ　ヽ!　/ /　　　　 ￣`＜　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　|　　＼ |｀ｰｧ'´⌒ヽ　／ /　　　　　 /　　　 ヽ　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 Y´　　　 ／V　 /　　 　 　 /　　　　　 }　 }
　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　　! |　/　 ／　　 　 {　　 　 ／　　　　 　 /　/
　　　　　　　　　　　　　　　 |　| 　 / /　 ﾄ､　　　　　ゝ　　　　　　　　　 /　 /
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |　|　 |. |　　ヽ. ー┐　 /　 /⌒ヽ　　　　／　 / ＼
　　　　　　　　　　　　　　　 ∧ |　|. |　　　　 ￣　　　　ﾊ　　　＼__／___／　　　＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　i　r' ﾉ　　　　　　 　　 /　|　　　　　　　　 ヽ　　　　 '.
　　　　　　　　　　　　　　 ,.ｲ　 | |　|＼　　　　　　　　　 「￣＼ 　 　 　 　 |　　　　 i
　　　　　 　 　 　 　 　 ／　|　 　 |　|　 `ー- ､_　　　　　!　　　ヽ　　　　　|　　　　 |
　　　　　　　　　　　／　　 |　　　 |　ﾄ､　　　　　　　　　　　 　 　 `ー┐　|　　　　 |
　　　　　　　　　　　ヽ　　 |　　　　ヽ | ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 /　 |　 　 　 !
　　　　　　　　　　　　|　　!　 　 　 i　|ヽ ヽ＼　　　　　　　　　　　　 /　　|　　 　,'
　　　　　　　　　　　　|　　　　　　 |　|:::::＼ ＼ ー-　 _　　　　　 　 /　　 | 　 　 i
　　　　　　　　　　　　| 　 　 　 　 　 |::ヽ:::::＞.､　　　　 ｀`ヽ _,. -‐' 　 　 !.　 　 |
　　　　　　　　　　　 /ヽ　　　　　 |　|:::::::::::::::::::::＞､ 　 　 　 |＼　　　　/　　　 !
　　　 　 　 　 　 　 /::::::＞.-､._　　!　!,. ----､::::::::::::＼　　　|::::∧　　/　　　　 '.
　　　　　　　　　　/:::::::::::::::::::::::｀＞..､!　　　　 ＼:::::::::::::＼／:::::::∧　i　 　 　 　 '.
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【伊藤伝右衛門】

277：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:21 ID:OyK7KkQM0

そうした炭坑ラッシュの熱に当てられたのか、渡辺も地元の炭坑を買い取り事業を始めようと心に決める。
このとき彼は二十五歳であった。


　　　　　　　　　　　　　　 ＿　 ,　--‐=ﾆニ￣ニﾆヽ
　　　　　　　　_　-‐‐ニ二::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＿
　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::-､:::::::::::::::::
　　 　 　 /::::::::_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　 i､::::::::::::::
　　　　 /::::::::::i.ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ 　 .|:i::::::::::::::
　　 　./:::::::::::::|　.ﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　 　 |i:::::::::::::::
　　　/::::::::::::::::i　　 ﾍ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: '　　 　|i:::::::::::::::
　 ／::::::::::::::/:::i　　　　｀￣￣￣｀Y´￣￣　　　　　i::::::::::::::::　　　　
／::::::::::::::::/:::::::i　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 /:::/::::::::::　　　　石炭は掘れば絶対に売れる！　宇部の為にも炭坑開発は必要だ！
:::::::::::::::::::/::::::::::i　　　　　　　　ll. ｜ ll 　 　 　 　 /:::/i:::i:::::::
::::::::::::::::/::::::::::/　　　　　　　 　 ====　　 .__ ﾆﾆ/:::/::i:::i:::::::
:::::::::::::/::::::::::/ヽ､＿＿＿＿　　　　　 _ﾆ ｲ::::ｱ /:::/::::i:::i:::::::
::::::::::/::::::::::/:ii　ﾍ ﾍ ﾋ ゞ､:::ｱ ＞ ､　/.＞-===/:::/i::::i:::i::::::::
:::::::/::::::::::/:::i:ヽ. ﾍ　ゝ‐--‐"　　>' ^ヽ､　　　///::i::::i:::i::::::::
::::/::::::::::/i:::::i::::::ヽﾍ　　　　 ＞'´ 　 i　　｀￣ノ//./::::/::/:::::::
:/::::::::::/:::i:::::i::::::::::`ﾍ　　Y´ 　 　 　 l　　　　 /　/:::/ﾆ､:::::::::
:::::::::::/::::::i:::::i::::::::::::::人　|　　　　　 ===､ ,==､ .〃'´　　Y:::::
::::::::/:::::::::i:::::i:::::::::::::::::::＞､　　 　 ゝﾆﾆﾉ/　　 Y /　　 V:::::::
:::::/::::::::::::i:::::i:::::::::::::::::::::::::| ＞､_／ヽ‐‐' i　　　.V　　 V--‐‐
::/::::::::::::::::i::::i:::::::::::::::::::::::::|/￣　l　　　ﾍ |　　,　 V .こ| 三三
/:::::::::::::::::::i:::i::::::::::::::::::::::::/l　　　ﾍ　 ,===＼ '─人__ﾉニニニ
:::::::::::::::::::::::i::i:::::::::::::::::::::/ﾑゝ､　==入_____ﾉ　`‐´､`‐ ､ r‐‐=ﾆ
::::::::::::::::::::::::ﾘ::::::::,,,- ﾆ´ ／／／‐/ |　Yﾍ ﾍ　______＞'
::::::::::::::::::,，-‐=ﾆ-‐ ,､／／／　 /　.l - ､ ﾍ／　＼　　｀ヽ､
:::::,,，- '´,, - '　／￣`／"ﾞﾞﾞﾞ＼ ／　 |　 　 ﾍ　　　＼　　　＼
''´　,, - ´　 .／　　／／　　 　./　 　 |　　　 ﾍ　　　　＼　　　＼
, ' ´　　　／　　／ ／　　　　 /　　　 |　　　　ﾍ　　　　　＼　　　＼

278：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:31 ID:OyK7KkQM0

だが、世の中そこまで甘くはない。堀田山炭鉱の開発に着手するも、四ヶ月で開発に失敗。
多額の借金を抱えてしまう。




　　 　 ト 、￣￣　 ― ミヽ /／ _　 -―　{、　　 ﾊ　　 　 　 　 l　　 l
　　　　|　 ＼￣　-＞‐‐ ￢ {￣　　　　 　 　 　 　 l　　　　　　｜ 　 l
　 　 　 ﾄ　　 ｀ ＜　　 　 　 !!　_　　　　　　　　　　 |　　　　　　｜ 　 l
　 　 　 | ヽ　　　 }　　　　｢j || L!　　　　　　　　　　 |　　　　　　｜　　l
　　　　 | |　＼　 ′　　　 r┘_ュ　　　　　　　　　　｜　　　　　　| 　 　l
　　　 　 ! l 　 ﾘ　　　　　　￣　　　　　　　　　　　＿_l　　　　l　　 l　　　l
　　　　　l　　/　　　　 　 {　　　　　　　_. -‐　￣｀ヽ　ﾊ　　　 l　　 l 　 　 !
　　 　 　 !　 {　　　　　　_ヽ.　　　　／′ 0＿_　ｨ彡'　 l　　　 l　　 l　　　 l
　　　　　 l　　＼i弋7￣ 0 _≫ー- 　￣￣￣￣　　　　 l　　　 |　　 |　　　 l
　　　　　｜　　　|　｀ミ=- ´　　/⌒ヽ ＿＿＿_　　　　 ∧　 　 !　　 l　 |　| l
　 　 　 　 l　　　｜　　　　　／..:|::::::::::｡::::u::::::::::｀ヽ　 / ul　　　|　 　 !　l　 ! ト
　　　　　 ｜　　ハ　　　／:::::::::/::::::::　　　　　 U　 ｰ′　}!　　　　 　 l　| ! ﾄ |
　　　 　 　 l　　　　＼ / u　 　 ヽ　　　　　＿　　 　 u　 ハ　　　　l　 |　!l! |
　　 　 　 　 l　　　　　ヽ　　　　　_ .. -_二 -―ヽ､　　　ｲ　 |　　　　|　 ! |lﾊ|
　 　 　 　 　 l　|　　　|　l＼　　ヽｰ　　 ／´￣￣|}　／ |　　|｜　　 l!　|/|! |
　　　 　 　 　 l　l　 　 l　l　|＼ 　 V´7＿＿ .　-j／　　l 　 ﾊ |　　　|! |! |!

279：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:41 ID:OyK7KkQM0



　　　　　,ｨ ´￣＞'"￣｀ =､ｰ ､
　　　　f´　　　　　　 　 　 .|　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |
　　　　|　　　　　　　　　　 |　 |　　　　　　　　　すまない、結局私は苦労ばかりをかけせてしまうようだ。
　　　 /　　　　　　　　　　 |　 .|
　 　 .|　　　　　　　　　 　 ,|l　l|
　　　.ﾚ|/|　 　 | 　　　　 /l| l| |
　　 　,/ﾚ| ./l ∧　 ,ｲ/ﾚ'ヽ| ﾘﾘ
, ｰ_'´＼=ﾚ'=ﾚ= レ'===ｧ-‐'^ヽ､
　 　ヽ､ ｀｀`ー――' ´　, -‐ｰ'´｀ｰ







　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　_,.... __
　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐' "´ヽ::::::y'´　　　 ﾐヽ､
　　　　　　　　　　 　 ／.:.:.:.:::::::::::::::'´::::::::::::::::::::::.::ヽ＼
　　　　　　　　　　　/.:.／.:.:／.:.:/.:.:::::ﾄ、:.ヽ:.ヽ:.ヽ.:.:ヽ:ヽ
　　　　 　 　 　 　 /／:.:.／.:.:/./:N:|ヽ!|il:.:ヽヽ:ヽ::ｌ:.::.::i::::',
　　　　　　　　　 ///:.:/:.:.:.:./:ｲ.::|ｌ|:f´￣|::Y:i::|!:.:!.|.:.:.:.|:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 ///.:./:/;ｲ:/:::ｌj;:ﾑH!　　ｨ:ｌl什ト､j:|.:.:.:.|::.:.:l　　　　　人間何事も好不調があります。お金のことなんて気にしないでください。
　　　　　　　　//!:!:././/::!:l:イ| ｣⊥ヽ 　 |ｌj抂ｪ｣|｀!..:.!:ﾄ、:.l
　 　 　 　 　 〃 |:|:i:.:.l:i:.:.|:.l:.:ﾚぅ⌒f　　　!´ﾋ'　 lヽ!.:.ｌ.:| ヽ:.l　　　　　食べていく分の畑もありますし、運が悪かったということで、やり直しましょう。
　　　　　　　 !　∥!|:.:i:l.i.:ﾄ:l.:iハ..::::j_　　 　 L::::ﾉ　|:.:|:.|　 ＼
　　　　　　　　　 l lヽ从ﾄ:! い、 ¨´　　 ,　　 　 　 |.:.l.:.|､,__　＼
　　　　　　　　 　 ! >ヘヽヽノ:ﾄ､　　　 －　　　／|.::|ｉ:.|;;i;;i｀ｰ‐ヘ
　　　　　　　　 　 /ヽ-‐7´/;;ｲ:::＞..,._　　　,.イ::::::|.::|l:ﾘ^介r､;;_j;;;;＼
　　　　　　　　 ／;;;／ノ;rくﾊ二__￣￣￣￣￣__ｺﾆミ{ノ:/ﾉ,ﾘ`´`'ーﾍ
　　 　 　 　 ／;;;;ィ"~＾ヽ`ﾐﾐ片__＂￣`'￣`'￣″|:..:｀Y彡'″
　　　 　 　 ´"´　　　　　＞'-ﾆ_ `'´￣`'￣`'￣`ﾟﾋ'ｰ-ト､
　　　　　　　　　　　 ／　　　　 弋ｰ--ｔ--ｧ-ｰ￢´｢lY 　 ヽ､
　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 ヽ::.::.:У::.::.;:-┤j !|　　 　 ＼
　　　　　　　　　/　　 ヽ　/　　　　 ヽ::/::.::./´ ｒ'⌒ヽヘ　 　 　 ヽ

280：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:39:51 ID:OyK7KkQM0

こうして農業に専念し、食べていくだけで精一杯な時期を過ごす。だが、この経験が後に渡辺を事業家として成長させ、
その飛躍のキッカケになるとは彼自身は無論のこと、周囲の人間も思ってはいなかった。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / '　.″　　,.ｲﾞ!　/ /　　　　　　　　|ヽ/ﾆニ|ヽニニニﾆヾニニニニニニﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 // ,.″　,.ｨ ,!　 ! / /　　 　 　 　 　 ,|.　;ヾ三|　V 二二二∧ニニニニニニ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　,.″　 l　l' |／,/ /　　　　　　　　 ,∧//　｀'l.　 ＼二二二∧ニニニニﾆﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / /7　　／! ,l 　 ,/ /　　　　　　　　 /三'/,,.　　',. 　 λ三二ニ∧ニニニニニ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /'., ｀　／　 '´　　/ /　　　　　　　　 /三i/〃　　 ゝ..ノ　',三二ﾆﾆ∧ニニニﾆﾆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 / .__ ／　　 　 　 / /　　　　 　 　 　 ｉﾆ三iヾ>.　　　　　　 V三三二ﾆ＼ニニﾆﾆ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＿/ ' l__l 　 　 　 　 / /　　　　　　　　　 ∨ﾆﾉ　　　 　 　 　 　 ＼三三ニニ＼ニニ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　r'／　　　　 　 　 / /　　　　　　　　　 　 V∧,. ｬ‐tｧ─ ､ 　 　 ＿ヾ,.-､二ニﾆ＞＝
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ,ィl.　 i　 __　　＿ ＿ ,/ /!　 　 　 　 　 　 　 　 ﾚく.　 ｀"''　'"　｀¨¨´　r "〃､V三三二ニ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　| , ﾘ_/ﾞ/　/ ,// ,// / .i　　　　 　 　 　 　 ／　　ゝ.,,＿　　　　　　/　 i　〉 〉!三三三ニ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 f´|　ｰ'' .'_/ﾞ¨/ ,// ,//_/　 |　　　　　　　　　　 ＼　　　　　 ＼　　　 /　 '　' ,／V:､三三三
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,!. !_;ﾉ 　 　 〈 ,// ,// 7　　 !　　 　 　 　 　 　 　 ,.｀ｰr=‐.､＿__ヽ__∠＿τニ..,,＿'/,＼三三
　　　　　　　　　　　　　　　 〈.| ;ﾘ!,　　　　 ｀.〈 // / 　 　 i　　　　　 　 　 　 ／ γ≦´_、/////////,＼: .: .: .: .:ヾ. .:＼三
　　　　　　　　　　　　　　　　じ´/ 〉　　 　 　 ﾞ/ /　　　　 i. __ 　 　 , -,､_,／_＞'　　　 　 ｀ '＜'///////＼.: .: .: .: .: .: .:＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　 /i. ｀1　　 　 　 ,/ /　　 　 　 .i'//,ー‐'////＞,.,　　　　　　　　 　 ＼///////＼.: .: .: .: .: .: .
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /',i,.　 l! ,.　　　 / /　　　 　 　 .l､///＼////////＞,.,　　　　　　　　 ＼///////＼.: .: .: .: .:
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /. ｲ 　 ,l! ,〉 　 / /|　 　 　 　 　 l ＼///｀'///////////＞,.,　　 　 　 　 ＼///////＼.: .: .: .
　　　　　　　　　　　　 　 /7' l.　 / /,ﾍ. ,/ /　!　　　　　 　 .|　　V///＼/////////////＞,.,.　　　　　＼//////∧.: .: .
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281：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:03 ID:OyK7KkQM0

事業に失敗し、貧困にあえいでいても、渡辺の家には常に誰かが相談に訪れていた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,::::::::::::≦ l::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:':::::::::::<ヽ、!::::!:::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::､ー‐　' ´
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 .::::::::::ﾑ´ ≦ヽ:::N:::::::::::::::::ﾄ::::::::::::::::::::::＼::::::::::ヽ、
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 r‐ -... __　　　.::::::::::::l　k‐t-ﾐ:::ﾄ､'::V::::::::::|‘,::::::::::::::::::::::::ヽ､:::::::::ヽ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀寸　 　 ｀＞-､::::::Ｎ. ヽ戈:::ﾝヽ｀ﾍV::::::::l　ⅵ:::::::::::‘,::::::ﾑ `寸:::厶
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀寸　　　ヽ,　 i!　　　 ￣　 ｉ!　ﾍV:::::::!zzⅵ:::::::::::‘,::::::ﾑ　 `寸ム
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｀寸　　≧ i!　　　　　　　　　.{V:::::l_:ンア:::::::::::ﾑﾏ::::l　　　寸ﾑ　　　　主上居る？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノヽ ＿_ ″　　　　　　　　　 V:::l￣ ‘, ﾏ::::::::::} ﾏ:::!　　　　ﾏ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '"´/::::::::∧　　　　　 r‐ - ､　　 Vl　　 /､::::::::::::,　ﾏ:l　　　 　 ヾ,
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／::ィｨ〃 ﾍ　　　　　｀ 丶.ｦ　 　 ' 　 /=-ヽ:::::::, 　 v
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 __ノ ﾍ　　 ､　　　　　　　　 　 　,. '　　___Ⅵﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　_,, ｘニニ!　　 ヽ　 丶、　　　　　　　＜` ｰ '´　　V
　　　　　　　　__　　--‐‐　' ´　　　`ニﾆ,　　　　｀ ､　ヽ __　ィ　´ /'′ Ⅴ
　　　 　 ,　'　　　　　　　　　　　　　 lニニ,　　　　　｀＞‐-r'
　　　／ 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀`‐-､!__ニ=ゝ　　　 　 　 ∧
　／　　　　　　　　　　　　　　　　　 |=｀`‐-､≧o､_____,ｨﾆﾑ､
/　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 l二二ニニ`ヽニニニニ ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|二二二二ニニニニニ!　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 j二二二二二二ニニニ!　　　 ヽ




　　 　 　 /:. :. ／:. :. :.:i:./:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ヽヽ.ヽ
.　　　　 /:. :./:. :. :. :. :.i/:. :. :. :.:i:. :. i:. :. :. :. :. '､:. :. :. :. :. :. :.'､:. :. :. :.ヽﾊ　ヽ
　　　　/:. :./:./:. :. :. :. |:.:i:. :. :i:.:iヽ:. ヽ:.､:. :. :. :ヽ:. :. :. :. :. :. :.:ヽ:. :. :. :ﾊ:ﾊ　 ヽ
　　　 ,':. :/:. :i:. :. :. _:. :|:.i:. :.‐‐--.､,:.:ﾍヽ:. :. :. :ﾊヽ:. :. :. :. :. :i:.:ﾊ:. :. :. :.iヽ:i　　ヽ　　　主上、実は相談したきことが……
　　　,':. /:. :.i:. :.／,-､ヽ:i:. :. :. |. ,ｨ=≧ト.､ヽ:.:.:.:,ｨ≦了:. :. :. :.iヽﾍ:. :. :. :i. ヽ
..　　,':./:. :. :.:／イ　 ノi:.i:. :. :i ｲ|r';;;;;::i 　 　 　 fr';;;:|.:r､:. :. :. iヽ .i:. :. :. :|
　　 i:.i:. :. :／'　　　/　 N:. :. :.ﾘ 乂;少 　 　 　 乂ソ V:.ﾍ:. :. :| i ＼:. :. :.|
.　　:.i:. ／.／／ 　 ヽ　 |:. :. :ﾊ　　　　　　　､　 　 　 i:. :.:N:. :| ヽ　 ヽ:. :|
　　 ／イ ／　ノ 　 ./￣|:. :. :.ト　　　　　　　　　　　/:. :. |.ヽﾘ.ゝヽ ヽヽﾘ
　　　' ´ ‐' ´イ ./／　　|:. :. :.iヽ　　　 　 ｀ `　　 ／.|:. :. |＼ヽヽト.ヽ､ヽ-＼
　　‐'　／　／／iゝ､ 　 |:. :. :.|.　＼　　　　　 ,.ィ 　 .|:. :. |　 ヽ､ 　 ヽ `ヽ ｀､＼
.　　..,､イ:."￣:. :.:ﾍ . ｀'‐|:. :. :.|'‐‐-､`　､__ イ/ヽ. 　 i:. :. |　_ノ 　ヽ　ヽ　 ＼ ＼
　 　 V:. :. :. :. :. :. .ﾍ.　　|:. :. :.|-､　　|‐‐‐‐‐| 　 | 　 i:. :. |'´ /　　　　`ゝ､,_ ヽ､,
　　　,ヽ-‐‐‐‐---､ﾍ..　|:. :. :.|　i　　|:::::::::::::|　　{ 　 |:. :. |.／　　 　 　 　 　 `‐‐

282：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:15 ID:OyK7KkQM0

渡辺はそんな彼らの話を懇切丁寧に聞き、ちゃんとした解決法を教え、親身になって相談をしていった。


＼　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　 ﾄ　　　￣￣￣＼　　　 ／￣￣￣　　　∧　＼
　｀＼　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　 / | ∧　　　　 　 　 ＼／　　　　　　　　 /　}　　 i
　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 // |　∧ー────‐┬────―‐/ 　 l　　 |
.　　　 　 ＼　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　 / 　 |　　}　　 　 　 　 　 }|　　 　 　 　 　 i　　 |　 ∨
.　　　 　 　 } 　 　 　 　 　 　 　 　 ／/　 　 　 人　ﾉ　　 　 　 　 　 }|　　　　　　　　　　 /　　 }　　　なるほど、確かにそれは問題だな。
　　　　　　/ 　 　 　 　 　 　 　 ／／　　/　　/│ ´　　　　 　 　 ｎ }| ｎ　　　　　　　　ｲ　　／|
　　 　 　 /|＼ 　 　 　 　 　 ／／　　　/　　// | 　 　 　 　 　 　 U_}|_U　　　 　 __／　　／ /,|
.　 　 　 //l//＼＿_______／／　　 ／/　　/// | /　　　　＼＿＿￣￣＿　-‐=　 ￣￣{　 //,{
　　　　/　 |////＼______／/ 　 ／//　　// ＿j/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　 　 ／￣ //　|
　　　　　 ////////＼__／　／　//　　// /ﾆﾉ´_,ｨｆ芥うぅｔｩx__　　　　　_ｚｧﾃ芹／　 　 ／　/}
.　　　　 ////////// }＿／　／　　／///}ﾉヽ ｢￣＼弋cツ__ノ＼＿,ノ＼乂／　 　 ／　／ /
　　　　/////////// l＼__／ 　 ／／ 　 人 l ﾉ}　 　 ´￣￣＿＿＿＿___／　　　／　／　 /
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283：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:26 ID:OyK7KkQM0

この経験から、渡辺は自分を頼ってくる人達の為に何かが出来ないかと真剣に考えるようになり、
具体的に「誰かの為になることをする」と志すようになった。




　　　＿ ｡r≦::::::::::::::::::､::::≧s｡:::::::::::::::::::≧s｡＿＿
　　　》:::::｀ヽ:::::::::::::::::::::::＼::::::::,.ヘ:::::::::､::::::::＼￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　金の切れ目が縁の切れ目というが、私のような敗北者をも頼ってくれる人がいる。
　　 /::＼::_.ノ＼::::::::::::::､:::: ヽ::ﾚi｝ i!:::::::: ＼:::::::≧s｡
.　 /:::::::::::`ｰｧ‐　ヽ_:::::::::＼:::::::::::ヾ}::::::ヽ ::::＼::､￣｀ヾ、　　　 　 ＿＿＿＿＿＿_　　　ならば、彼らの期待に少しでも応えなければならんな。
　<::::::::::::::.ィ　　／ i! ヽ.:::::::ヽ::::::::::::＼::::::::::::､::≧=‐　　＿ ｡r≦　　　|////////∧
　　ヽ.r≦ 》　 /ｬﾂﾉ／ ﾞ:,｀ヽ:!＼＿＿_ヽ:､7ヾ ヘ＿r'´　　　　　　 　 |////////≧s｡
　　　 ＼::::}　 i!=* '’　　　　　ﾞ:,/ /　 /　　　》’///　　 　 　 　 　 　 |///////
　　　　　ﾞ:,:L≪!　 　 　 _ 　　 / /　 /　　　 ;!///i!　 　 　 　 　 　 　 |//////
　　　　　　:,::::｀ヽ '´　 /,'´　 / /　 /　　 　 j!///j!　　　　　　　 　 　 V////!
　　　　　　 ﾞ:,::､:::::＼.　　　 / /　 /　 　 　 j!///j!　　　　　 　 　 　 　 V///!
　　　　　　 　 ｀ヽ:::::::≧s｡/ /　 / 　 　 　 j!///j! }　　　　　　　　 　 　 V//!
　　　　 　 　 　 　 ＼:::::::/ /　 /＼　　　 .j!///j!　!　　　　　　　 　 　 　 V ∧
　　　　　　　　　　 　 ｀'/ /　 /》,//!　　 .j!///j!　 i! 　 　 　 　 　 　 　 　 V ∧
　　　 　 　 　 　 　 　 / /　 /　》,/∧　 .j!////!　 .}　　　　　 　 　 　 　 　 ＼/＼
　　　　　 　 　 　 ｡r≦ヽ.　/､　 》,//＼.j!////i!　　:,　　　　　　　　　　　　　　￣￣
　　　　　　　　 / ー､ ｀:, ）'　 ）　》,////i!////i!　　 :, O
　　　　　　　r:〈　＿ 　i　 /'´　　 》,/// i!////i!　 　 ヽ
.　　　 　 　 ﾉ　＿　ヽ.」 ,:　　i　　 ㍉.//i!////i!　　　　 ＼
　　　　　　{　　＿ ﾞ:,ﾉ　 i! ､ ‘，　　　｀ヽ!////i!　　　　　　`*s｡
　　　　　　l　　｀ヽ　　　ﾉ//ﾄ､}　　　　　i!////i!　　　　　　　　 　 ≧s｡　＿＿＿
　　　　 　 i!　　　 }　.／ ` ､/∧　　O　 i!////i!　　　　　　　　　　　　　　j!
　　　　 　 i!　　　 rf´　　 　 ￣ :,　　　　}////i!　　　　　　　　　 　 　 　 j!　　／
　　　　 　 i!　　　 λ　　 　 　 　 :, 　 　 !////i!　　　　　　　 　 　 　 　 j!　／

284：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:37 ID:OyK7KkQM0
そして、村の名士であり、知識人であったことから渡辺は宇部達聰会の委員となり、再び炭坑へと携わることになる。

　　　　　　　　　　　　,､_,,,､_r-､_,､_
　　　　　　　 _,､-'`~＾:::::::::::::::::::::::::::~'`-,_
　　　　　_,r'"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::"'v、
　　 　 j''゛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`i
　 　 f’::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｝
　,.-ｆ~::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∫　　　　　　　　　　　　渡辺さん、あなたに宇部の炭坑を任せたい。
´　i!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;r－-::_:::::;:､::::::::::::::::::::::ﾘ
　｛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::r’　　　　i~　ヽ::::::::::::::::::;j
　{::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　 `,ﾆ,=_､! ,_=,1:::::::::::::;ｒ″
　 '!::::::::::::::::::::::::::::::::i!　ｰ´二　　 ヽﾆヽ::::::;i''”　 ,.､__,r‐-､
　　ﾞ';:::::::::::::::::::_,-ﾍ:i! 　 　 　 し､_,ﾑ　 Ｖ″ 　 jﾉ~~~~ヽ
ヽ、　ゞ;:::::::::::l´..:..:.l“ 　 　 　 ﾚ',ﾆ,ﾆ,｝　ヽ __,-､／⌒ヽ､
　 ｀丶､ゞ;::::::{..:..:..:..|　　　　　ﾄﾐ二￣）　 }└ｙ'＿,.='=‐､
　　 　 　 ｀`'┴-､..:|　　　　 ﾉ　　 ｀ﾌ}　 ﾊ /　　　-‐｀ﾆ=┐
　　 　 　 　 　 　 ｀ヽ､ ＿'´　　 ー'ノ‐く　ll! 　 　 　 ´
｀＞―--　.._　　　　　 ＞､｀`ー‐く､}!　 lヽ| 　 　 　 　 r=
´　　　　　 　 ｀¨－ .._ |〔　〕ト､.:.:.:.:｀ﾞ|.:.:.:|｜　 　 　 　 !_
　　　　　　　　　　　　｀ヽ＜l〔 〕ﾄ､.:.:.|.:.:.;Ｌ|　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ＜r=ヽ|.:/｛.:| 　 　 　 /





　　　　　　　　 　 　 　 ,. -‐=＝==－‐-
　　　　　　　　 ／´￣/::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::/　}:::::::::::::::::::::::::::::::::／}
　　 　 　 　 /::::::::::::::::::::r'.　└――┳丶__／　/::|
　　　　　 　{::::::::::::::::::::::{ 　 　 　 　 ┃　　　　/:::::|　　　　　私でいいならば喜んで。
　　　　　 　|::::::::::::::::::::::{ 　 　 　 ┗┃┛　　｛:::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{＿＿＿ 　 ━ .＿＿ ＼:::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::从 {::::::ﾂﾘ_入 　/l:::rｿﾉ／:::|
　　　　　　 |:::::::::::::::::::::ヾ´￣￣　　丕´￣￣/:::::::::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ヽ　r‐‐一'　} ヽ__　 }:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{i　/　　　　　`　　 ∨:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ゝ　　　ー 一'　 ／:::::::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{　 ＞.　 　 　 ／:::::::::::::::::::::|
.　　　　 　 从从从从从　 　　≧= 　 ﾒ从从从从ﾘ
　　　　　　　　／ヽ∧　 　 ヽ　 　/|ヽ＼
　　　 　　,.ィ升: : : ＼＼　　　　　i }　｝: :｀
　　　／´: :: : : : : : : : ＼＼.　　　　}　｝: : : : :＼

285：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:47 ID:OyK7KkQM0

元々宇部の炭坑は当時の領主だった福原氏が所有していたが、明治維新後、役人によって買い占められていた。
その後、福原良通が私財をなげうって宇部の炭坑を取り戻し、民間によってこの炭坑群を効率的に運用しようと
事業計画が進められていった。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿II_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿／／/::L
.　　　　　　,l!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i／／／ﾞ,.ｲ : |::!
　　　　　　艸!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 __./｀! .l: : || !　 |　:|::!
　l　.|　　._从ﾘ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 《 .:_!,ノ./.:／ .|　.:|　:|ii!_
_人 .!l　 |:|幵ト|l!、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 У ,.／ / ＿_!＿|三三|
ﾘ. ::!j:l　 |:|从| j从 .,　　,　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __ / ..://￣/￣ /:/＞―＜＼
|! . |l l人|:|:Yﾞ| |i :.|_|!、_||___,　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 _/／.:／/　 /￣ /.//￣!￣!//∧
:＼:!!:|,!_,|:l,ﾉ.:| |i :,|[|:ﾉ..:||/り、　　　　　　　　　＿＿　　　　　 __/／:.／ _/　 /￣ / :l/―/―:|三三!
::::::∨ lノ!;!;j_,' j|:/!＞!＜'ﾏ_/＿＿＿＿_ 　 /＞= y!≧=― ./..::/..::/./￣　.:/￣ /　 |　./:￣:/￣￣:|
::::::: ∨戈i,ﾉ:| 下 |￣l . ,..イ＞―┬―＜≧仄》_r::!:!戈/≧/..::/..::/./　./￣!￣｀ヾ、_| /|: : :∧三三:|
:::::::::::| rj/..| |　l:| |!_ ,!ぐ＞:! ＞=┼=＜三≧:ｘ!,:| :!:!..:/:!二!三!二!/ .!/　 /￣＞.､:| :| /|: : :|:∧:.三.:|
:::::::::::|_|:| . | |　:'| |!<:.!_ 、,夾≧=┴=≦三り_,/ :∨:∨L!＿!＿!＿!＿!＿/三三/l/:! :! .ﾞ|: : :|:|.∧三 |
:::::::::::|: ＼/::|　::|__,ノ:!>'´　　　　　　　　　 ｀ヾ、/ . /::..》-､..―┬..r=r= ＜i≧≦:!/| :|￣/＞＜三三!
:::::::::::|一:∧ ＼,ﾄ=y'´　　　 　 　 　 　 　 　 　 }　./! : /∧.＼　|;| |;|.l:|=＜:＼_/://| :| ./! |　　|:| ￣ !
:::::::::::|二二:ﾏソ　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀ー《∨,:|　./　./￣＼二! :|、__ |　!＼ |_| :|/ l! |　　|:l　／!
:::::::::::|一一: |r=r=r=-　　　 .-==r=r=r=r=r=r=≧廾./　./　 ,.イ　　￣＼./＼: : .＼..,!　|! |　　|:|/　::|
:::::::::::|二二: ト.､!ノ　　　　　　　　　￣｀ヾ,.!..,|　| |》.i/.　/ ._/　　　 　 　 /! ..:/￣￣ ト､.|! |＿.:|:|　　:|
:::::::::/一一: .! |.ﾄ.、　　　　　　　　　 　 　 ＼!　!,/./././.:/.:∧_/../　　 / .| . !　　 　 L/下! ||　￣￣:!
::::::/二二 ::/!｀ヽj,|i　　　　　　　　　 　 　 　 ｀ヾ!/././.:/!　!/　|/　 　 l＼|..::| 　 　 　 |　!:j≧≦三三
:::/一一 ::/:/:.　/ﾉ|　　　　　　　　　　　　　　　 《/./.:∧＼＼,.＞=r＜__!」_.,l :[] [] []:.l_人!/三三三
/二二..::/:/_,.イ| |ﾉ　　　　　　　　　　　　　　 　 ∨.:/!/＼「＞､_.:.:|_|_二二_| ._　_　_ .|:　∧＞――
＿ ,，イ ,〈,，イﾉ´ 　 　 　 　 　 　 　 　 i´｀i＿＿_∨ l｀Y´:|￣! ┼┼┼┼ ;| |:| |:| |:| |:　| :||
::|　|, ノ .|.:|＼/　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　 !――＜下下下 _|Y∨Y>,∧,.ｨﾞ| |:| |:| |:| |_.人:!!
￣　　　 ＼ ..|＼　　　　　 　 　 　 　 　 ｀ ´ 　 　 　 ＼:!...:|　,:!:三三:人l|∨| |:| |:| |:| |　＼|＞――

286：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:40:58 ID:OyK7KkQM0

そして、渡辺はそうした炭坑群の一つである沖の山炭鉱の頭取となる。



　　　　　　　　　x≦三三三三｀ヽ
　　　　　　,.ィ升三三三三三三三`ｰ　 ､
.　　　　 爪三三 ,､三三三三三三三三ハ
　　　　/三三モ/ |三三三三三三三三三＼
　　 　/三三モ/　ヽ三三三三三三三三三ハ
.　　 /三三三 }　 　｝三三三三三三ﾗ／}三三}
. 　 ,'三三三 /　 　 ￣`寸三三三ﾗ／　/三三}
　　i三三三./　　　　 　　 ﾚ´￣￣　　 ./三三t|
.　 爪三三/､　　 　 　 / / ,　　　　　　{三三モ!　　　　　　前回の失敗もある。今回は慎重に開発を続けよう。
　 {三三ﾚ,′|＼　　　７⊥/　　　　　　f三三モ|
　 |三三/[　八 トﾂ､　　 　　　＿＿＿{三三三|
　 |三t从t 　　￣　∧／￣＜tﾂ　ノ　ﾘ三三イ|
　 |三ｱ八　r- ――┴ ､　　　￣　　/三三三ﾘ
　 |三三∧　　　　　 ′　＼　　　　∧三三t〃
　 |三三三 ､　　　‐-　､　　　}　 ／ /三三从
　 |∧三三 ハ　　 `　　　　 　イ三三三三/
　 ﾉﾙ三三ﾘ　 ＼　 　 　,.ィ升三三三三,ノ
　　　}八三{　　　`ｰ 　　　/三三三三从
　 　 ｊハハt　 　 　 　 　 /三三三三彡'



だが、この炭坑開発も決して平坦ではなかった。

287：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:11 ID:OyK7KkQM0

最初の数年間はちっとも採掘出来ず、赤字を垂れ流す有様であり、閉山を検討されるほどであった。
また、お世辞にも宇部産の石炭は三池炭坑のように質がいいとは言えず、採算に乗るまでには
多くの時間がかかった。





＼　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　 ﾄ　　　￣￣￣＼　　　 ／￣￣￣　　　∧　＼
　｀＼　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　 / | ∧　　　　 　 　 ＼／　　　　　　　　 /　}　　 i
　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 // |　∧ー────‐┬────―‐/ 　 l　　 |
.　　　 　 ＼　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　 / 　 |　　}　　 　 　 　 　 }|　　 　 　 　 　 i　　 |　 ∨
.　　　 　 　 } 　 　 　 　 　 　 　 　 ／/　 　 　 人　ﾉ　　 　 　 　 　 }|　　　　　　　　　　 /　　 }
　　　　　　/ 　 　 　 　 　 　 　 ／／　　/　　/│ ´　　　　 　 　 ｎ }| ｎ　　　　　　　　ｲ　　／|　　　　私は一度失敗している。二度目の失敗など恐れてたまるか。
　　 　 　 /|＼ 　 　 　 　 　 ／／　　　/　　// | 　 　 　 　 　 　 U_}|_U　　　 　 __／　　／ /,|
.　 　 　 //l//＼＿_______／／　　 ／/　　/// | /　　　　＼＿＿￣￣＿　-‐=　 ￣￣{　 //,{
　　　　/　 |////＼______／/ 　 ／//　　// ＿j/　　　　　　　￣￣￣￣　　　　 　 ／￣ //　|
　　　　　 ////////＼__／　／　//　　// /ﾆﾉ´_,ｨｆ芥うぅｔｩx__　　　　　_ｚｧﾃ芹／　 　 ／　/}
.　　　　 ////////// }＿／　／　　／///}ﾉヽ ｢￣＼弋cツ__ノ＼＿,ノ＼乂／　 　 ／　／ /
　　　　/////////// l＼__／ 　 ／／ 　 人 l ﾉ}　 　 ´￣￣＿＿＿＿___／　　　／　／　 /
.　　　//////////// | 　 ヽ__／／ 　 ／　 ﾊ ヽ}　　＼＿＿＿＿______／＿＿／　　　__／
..　　///////////// |　　　 ＼　　／ ___,ノ　 ＼}　　　/￣￣￣￣ }　　 ／/　 　 ／　/ {
　／//////////////　　　 　 ｢￣￣l　/／　 ／＼__/　　　　　　 ﾉ　／　/　　／ / /　 |
'////////////////　 　 　 　 |　　　|＼＿／///,|ﾄ　　　　　 　 　 　 　 /　／　∨/／jﾉ
////////////// /　　　　　　 |　　　|　　//////,|　　　　　　 ´ ￣￣｀/／　　 / ∧
///////////////　　　　　 　│　　　　///////,|　　 ＼　　　　=== /　　　／jノ
//////////////　　　　　　　　　　 　 ////////,|　　　　ヽ　　　 　 l{　　／ ／////∧
/////////////　　　　　　　　l　　 　 |{////////|　　　　　 ＼＿＿_|_／　　///////∧
////////////　　　　　　 /　/　　　　||'///////∧　　 　 　 　 　 　 |　　　/////////∧＿
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288：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:25 ID:OyK7KkQM0

かろうじて炭坑の採算が取れるようになっていくも、渡辺の頭には一つの懸念があった。



　　　　　　　　　　　　 　 ＿　　 ＿
　　　　　　　　　　　　　/:::;;:｀ヽ'::::::::ヽ
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　　　　　　　　　　　　 ﾚﾘ'ﾚVﾚ川ル川
　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::|._
　　　　　　　　　_,. -‐.':´￣￣￣￣￣ :＼
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　　　　　　　 ./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
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　　　　　　 /::::::::::::＼.: :.| : : : : : : : : : : : : :|__／|
　 　 　 　 ヾ「~＼ :::::::＼| : : : : : : : : : : : : :|:::::::::〉
　　　　　　　|ノ　 ＼::::::::| : : : : : : : : : : : : :ﾄ-イ
　　　　　 ／　 　 　 ＼/_＿＿＿__Ａ＿＿|　｜
　　 　 　 |　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::::::| 　 　 |





　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／　　´￣￣￣ ｀丶､
　　　　　　　　　　　　　　　 . 　´　　　　　　――-　 _　　＼
　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　 ､　　‐-　、‐- ､ ｀ヽ　 ＼
　　　　　　　　　 　 　 　 ｌ　　 ∧ 、　　ヽ　　　. ＼: . .＼　＼__ ＼
　　　　 　 　 　 　 　 　 /　 . _|　ヽ:､: .　 i＼: .　: . .ヽ: : . ヽ‐-＼￣
　　　　　　　　　　　　　{　,　l‐iﾆﾆヽiヽ: : ヽ ＞_ｚ: : . ヽ: : .ヽ　　　　　　　　　主上どうしたんですか？
　　　　　　　ヽｚ‐- ､__ 'l: { : i: lk‐ｔ=ﾃﾍ,＼: :ﾔﾃkヽ: : : : ﾄ､: .ヽ
　　　　　　　　ゝ￣｀ヽ｀ヽ!: :ﾄ l　￣,,,,　　{ヽi￣　i:ヽ: : : ヽヽ : ',
　　　　　　　　　 ＼　 ≧ﾊi､ヽ.　 　 　 ＿_　　　 i: |人: : : i ヽ: i
　　　　　　　　　　　`　､_L　　　　　　/ニ`}　 　 ﾊ l　 ＼ﾄi.　ヽi
　　　　　　　　　　　　　 ｀i¨´:i＼　　 {　　ｿ　 ／「リ
　　　　　　　　　　　　　　ｊ : : i ､ ＼　｀ﾆ´ ／:lヽi
　　　　　　　　　　　　　 /ｲ i: ﾄ ヽ　＞ - ´ l从
　　　　　　　　　　　　　　 |/∨￣￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　　, ィ L　　　　 　 　 ﾄ､_
　　　　　　　　　　　_ - '´　|　　＼―――‐へ. ｀丶､
　　　　　／￣￣￣　　 - ､|　　　　　　　　　　 ＼＿_`ー―-､
　　　 ／　　 　 　 　 　 　 /￣￣￣｀　　　　´￣　　ヽ.　　　　＼

289：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:36 ID:OyK7KkQM0

::::::::::::::::::::::::::!Y∧ヽ'///jヽ!//ハ
::::::::::::::::::::::::ﾊ_ )　 小　 i　j!////,　　 　
::::::::::::::::::::::::!/}.:: : .山　　　|////i　　　　
::::::::::::::::::::::::!/j.:: : 　　　　 .i!////!　　 　
::::::::::::::::::::::::!/i<旡､／fテ>|:!///:|　　　　　　　いや、少し考えてしまったのだよ。今は石炭が取れているが、
::::::::::::::::::::::::!/i∧r7へ.__　/!!// ﾘ　　　　　　いつかこの石炭を掘り尽くしてしまった時のことをな。
:::::::::::::::::::::::::V!Vﾊ｀＿　｀'.:ﾘ///＼　　
::::::::::::::::::::::::::N厶ｲヽｰ´／.::/!/ﾆﾆ/≧=､
≧=-──＜ﾆﾆ/ﾆﾆ!´:､.:./ﾆﾆﾆ./ﾆﾆﾆﾆヽ
　　　　　　　　　|ﾆﾆ∧　./ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ　
　　　　　　　　　|ﾆﾆ .∧/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ー､　　　　　　　|ﾆﾆﾆ ./ﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
-‐=-.　　　　 　 |ﾆﾆﾆ/ﾆﾆ ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ー―j　　　　 　 |ﾆﾆ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
ｔ―ﾃ　　　 　 　 |ﾆ /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆi











　 ／,　 |　　ゝ′　　　 rｭ| |rｭ　　　i､　ノ　| !
／／ ヽ.!　　　　　　　　Ｌ!| |L!　　　　 |: :　| |
　′ 　 :|　　　 　 　 　 └─┘　　　 {j: : 　N　　　　　　石炭とて無限ではない。我々は豊富ではあるが、限りある石炭を掘って売っている。
　 　 .　 |　　＿＿　　　　　　　　　　　V: :　 :|　　　　　それで皆、生活をしているわけだが、もしコレが無くなってしまったらどうなるのだろうな。
　　 : :　:!＜､￢ｔrﾑｰュ､　　 , ィ丕マ,､ 〉: 　｜
　　 : : . | 　`ー冖^ ´ 　 ｀¨´ ｀冖≠　ｌ': :　 ｜
　　 : : : |　　　　　＿___／ﾄ､　　　　　,!: : 　i: !
: : : : : : :|　　, '´￣　 　 　 l､｀ ｰ ､　 /: : :　i: |
: : : : : : :ﾄ､ /　　　　　　　/′　　 }./: : : :　|!:|

290：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:47 ID:OyK7KkQM0

陽明学を学び、物事に無限など存在しないということを理解していた渡辺は次第に、
好調な炭坑事業にある危険性を見抜いていった。



　　　 　 　 　 　 　 , ‐ﾄ､―- ､
　　　 　 , -――∠-‐ゝ.＼ : :ﾄ-､_
　　　　 ゝ‐- ／!| !　　U ヽ/l: ﾄ､: ﾊ:＼
　　　　 ｌ ＼/,　⊥　　　　｜l　V　＼l
　　　　 N : ﾚ＿､　_ ィ丕ﾃl: ﾍ.　∧　l　　　今の生活は石炭ありきだが、石炭は無限に沸いて出てくるわけではない。
　　　　 l ｌ: 〈ｒｒｔﾀV　￣￣ l: : :∨ :丶l
　　　　 l/: : ｌ ｒ‐/ ￣￣＼ｊ: : : : : : : :l　　　いつか必ず石炭は掘り尽くしてしまう。
　　　　 ｌ:i: : ﾍl　｀ ＿__　　l: l : : : l: : :l
　　　　 ｌ:l: : :l:ﾍ　 ゞ-┘　 ! l: : : l:l: : :ヽ
　　　　 ｌ:ｌ: : ｌ: : ＼　 　 　 l l: : l l:l: :l: l l
　　　　 ｌ:l: : l:l: : lﾊ> --- ｲ:l: : l:l:l : !: ﾄl
　　　　 ｌ:ｌ; : l:l: : l:.ﾊ　　 _ﾉｨl: l:州:从:ﾉｙ‐-､＿
　　　　 リﾍ ﾘヽ/:.iﾉ! ／/　ｊ:/':.:.l':.:.:ｿ/　　　　 ￣　‥‐-　､_
　　　　　　 ﾞlニl:.:.:l／:.:.:.:.:.:ｌ':.:.:.:.:.:.://　　　　　　　　　　　 　 ＼
　　　　_ - ´//ｊ:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／/　　　　　　　　　　／
　 -‐ ´　　 { { l':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　/　　　　　　　　　／

291：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:41:58 ID:OyK7KkQM0

そこで渡辺が考えたのが、炭坑事業を活用した新事業の立ち上げである。



　　　　　　　　　x≦三三三三｀ヽ
　　　　　　,.ィ升三三三三三三三`ｰ　 ､
.　　　　 爪三三 ,､三三三三三三三三ハ
　　　　/三三モ/ |三三三三三三三三三＼
　　 　/三三モ/　ヽ三三三三三三三三三ハ
.　　 /三三三 }　 　｝三三三三三三ﾗ／}三三}
. 　 ,'三三三 /　 　 ￣`寸三三三ﾗ／　/三三}
　　i三三三./　　　　 　　 ﾚ´￣￣　　 ./三三t|　　埋蔵量に限りのある石炭を掘り尽くす前に、その富を無限の技術に転換しなければならない。
.　 爪三三/､　　 　 　 / / ,　　　　　　{三三モ!
　 {三三ﾚ,′|＼　　　７⊥/　　　　　　f三三モ|　　石炭はいつか尽きるが、技術は永遠にして不滅だ。
　 |三三/[　八 トﾂ､　　 　　　＿＿＿{三三三|
　 |三t从t 　　￣　∧／￣＜tﾂ　ノ　ﾘ三三イ|
　 |三ｱ八　r- ――┴ ､　　　￣　　/三三三ﾘ
　 |三三∧　　　　　 ′　＼　　　　∧三三t〃
　 |三三三 ､　　　‐-　､　　　}　 ／ /三三从
　 |∧三三 ハ　　 `　　　　 　イ三三三三/
　 ﾉﾙ三三ﾘ　 ＼　 　 　,.ィ升三三三三,ノ
　　　}八三{　　　`ｰ 　　　/三三三三从
　 　 ｊハハt　 　 　 　 　 /三三三三彡'

292：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:08 ID:OyK7KkQM0

そこでまず始めたのが炭坑で使う採掘用機械の製造と、その保守を行う部署を作り、
そして、お世辞にも質が良いとは言えない宇部産の石炭を使ったセメントや硫安の製造である。


　　　　　　　　, -‐─ ' ´￣｀ー '::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:｀ヽ＿＿
　　　　　　／＜::.::.::.::.::.::.:｀ヽ::.::.::.〃::.::.::.::＿z-‐'∧::.::.::.::｀ヽ
　　　　　/::.::.::.::.:｀'::.:ヽ､::.::.::.:.＼_彡´ -‐ , '.::.::.::/.::.i::.::.::.::.::.::.
　　　　 /::.::.::.|＼.:::ヘ-､_.:｀丶､.::.::.::.::／::.::／::/::.::.:|::.::.::.::.::.::.
.　 　　/::.::.::.::.|　 ヽ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::., '::.::.,イ::.:;:ﾉ　 　|::.::.::.::.::.::.
　 　/´::.::.::.::.::|　　 ＼::ー-,::.::.::.::.::.:＿, -‐'´　 　　 |::.::.::.::.::.::.
.　 /:.::.::.::.::./:.∧　　 　｀ー──､　/　　　 　　　　 |::.::∧::.::.:
　/::.::.::.::.::/::.::.::.|　　　　　　　　　| |　　　　　　　　.|::./::.::,'::.::.　　　よし、まずは採掘用の機械の製造とその手入れを我々で行おう。
/::.::.::.::.::.:/::.::.::.:|　　　　　　　 ┃.| |┃　 　 　 　　|::/.::.:/::.::.:.
::.::.::.::.::.:/::.::.::.:/　　　　　　　　､__| |ノ;　＿＿＿,,/::ﾊ.::.ﾊ::.::.::.　　　そして、石炭の灰や周囲にある灰を使ってセメントを作るぞ。
::.::.::.::.::/::.::.::.f´ヽ＿＿＿＿＿｀ー─' ｨ之テ斗 /.:ﾊ.:./::.::.::.::.
／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ 辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
::.::.::.::/::.::i.::.::.ヽ ∧ ￣｀ｰイ´　　／ヽ､_　　　 / /.l::.,'::.::.::.::.::.:.
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::.::.:,'::.::.::.|::.::.::.::.::.::｀∨　　／　　　　|,　　 ／/ /::.:/y-､::.::.::.::.
::., '::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼_/　　　　 ,===､　 ノ　ﾚ／　　 ',::.::.::.::.
,.'::.::.::.::.::.:|::.::.::.ﾊ::.::.l::.i::.:.＼. 　　　{＿_ノ/⌒''Y´ /　　∨::.::.::.::.
::.::.:/::.::.::ﾘ::.::.::i::.Y::.l.::i::.::.:.| ＼　ノヽニ_/l　　　', l.　　∨＝=
.::./.::.::./.::.ﾊ.::.l.::.:l.::.l.::.:r‐{|r─'",　　　 〈.i　　＿', f二〈三三二
.:.:i.::.::/.::./::ﾍ.从.:ﾊ:.:._/ i ∧　　 ヽ､　,--ヽ_ ー-入＿ﾉニ二二
.::.l.::.:l.::./::.从.::.::.__／ 〉 ./ ﾍ,　r==､ゝ､￣ﾉ ｀ー'"ヽ　　　r-=＝
.:.:l.:从ｲ.::.::.::＞' y-／ ／／/＞-‐´!　￣ﾍ　＼ _＿ﾍ_／
.:.:ﾊ.::.:_, イ´-＜／_／／／ ／ | 　,ﾄ-､_　∧／ ＼_　 ｀ヽ､
_, - ´,　'"Y´￣ヽ／ヽrー'"｀ヽ_」／　 .l　￣ヽ 　 　 ＼　　 ＼
=' ´_r-'”　 ,-‐'"´ .／ ／　　　/　 　　|　　 ∧ 　　 　 ＼_
＜´　 　／　 　 ／ ／　　　　/　　　　|　　　∧ 　　 　 　 ＼

これが後に宇部鉄工所、宇部セメント製造、宇部窒素工業となる。

293：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:19 ID:OyK7KkQM0

これらの事業を行いながら、渡辺は教育機関や上水道、港湾等の社会基盤を整備していった。
そして、恵まれない子供達のための慈善事業や、「宇部新川鉄工所」に「私立宇部徒弟学校」を設立し、
職業訓練学校を作り上げていく。




　　　　　　　　　,.ヘく:::::::::::ヽ::／:::─::､ :::::::::::::::,
　　　　　　　 _ /::::::::::ヽ.::::::／:::,ﾍ¨i ::::::ヽ::::::::::::i!
　　　　　　　ﾔ＼:ヘ:::::::｀´::≪::!　㍉:::::::: ﾞ:, :::::::::
　　　　　　　 ＼ ≧s｡_ r── i!　　!::::::::::::i::::::::::!
　　　　　　 　 |:::`i　　i |! i　　　`ｰ　!:::::::::: !::::::::::}　　　　また、これらの事業を通じて宇部村を発展させねばならない。
　　　　　　 　 |:::: }　　┷　　　　　　i!::::::::: l:::::::::::i!
　　　　　　 　 |::::ﾉ　　､　　/　　　＿!:::::::::::!::::::::: i!　　　　私を頼ってくれた宇部の人たちの為に出来ることをやらねば。
　　　　　　 　 | ::`ｰ､.ｪｯ､ノｰｬ ﾋりﾉ }::::::::: |:::::::::::i!
　　　　　　 　 |:::::::ヽ`ﾌ/｀ヽ. ＿　　 ,!::::::::::::::::::::::i!
　　　　　　 　 |:::::::::∧;!ゝ　　　　ヽ./ !:::::::::::::::::i:::i!
　　　　　　 　 |:::::::/::::`:,　＿_　 　 　 !:::!::::::::::::;!::ﾘ!
　　　　　　 　 |:::::::::::i:::i::ﾞ:, ｀ｰ　　 　ノ::ﾘ:::::ｲ::/_,:'i:!_
　　　　　　 　 |/｀ヽﾘ:::i!::::ゝ.＿　ｬ'" ﾚ　i!'´ﾚ/=ｭ､ ∧
　　　　　　　　　　　　　　 ｡r≦:i∧　 　.ｨ㌢::／／ !:i:＼
　　　　　　　 　 　 ｡r≦:i:i:i:i:〃i:ｉ:/}　ｨ㌢::／／/　i!:i:i:i:i:＼
　　　　　　 　 ／i:i:i:i:i:i:i:i:i:i://ｉ,＿.ｨ㌢::／／ :/　 /:i:i:i:i:i:i:i:i
　　　 　 　 ／:i:i:i:/i:i:i:i:i:, ‐一'’ノ::::::／／:ｉ:ｉ:/　 /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
　　　　　.ｲi:i:i:i:i:i:i:i:i:i:／　, -*´ :::／／:i:i:ｉ:ｉ/　 /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
　　　 ／∧:i:i:i:i:i:ｉ:／　／::::::::::::≫'’:i:i:i:i:ｉ:/ .／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
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　　　 ＼//／￣＼ｰ－;　 i!／:i:i:i:i:i:i:i:i//:iｨ㌻//////////
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　　.ｲi!　　　　）ゝ. ）*'’:i:i:i:i:i:ｉ≫'" /:i:i:i:i:i:ﾚ　　　　 ニ=-
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　!ｉ:i:i:i:!　／:i:i:i:i:i:i:i:Ｕｰｧ､＿＿＿.xi'"Ｕ/　 　 ノ ニ=-
　!:i:i:i:i:ﾚ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/──── i!r‐ '￣￣　ニ=-

294：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:29 ID:OyK7KkQM0

こうした地元の名士として活躍しながら、彼はついに国政へと参加。衆議院議員となり、立憲政友会山口支部初代支部長となる。



　　　　　 .　-‐…＝…‐-　.
　　　 ／ 　 -‐-=　　　 　 　 ＞┐
　　 /.: ／　　　__　｀ヽ　　'´　__　＼
　　 .::　　 　 /＼:::｀ヽ＿＿_.:::ｊ/＼ハ 　／|＿
　　|:::　 |.:　｜　　　　　L|」　 　 　 Ⅵ　　　／
　　|:::　 |::::　|　丿　＼　 　 　 　 　 |ｌ:l 　 　＼　　　私がまさか国会議員とはな。
　　|:: , ┤:: ├――‐=ﾐ､__, ‐‐――ﾘ:l　　 ￣
　　|::｛　|::::　ト-＜こ>ー'ﾆｰ'こ＞彳:.:ｌ
　　| l ヽ|::::　|　　　 __／　 ＼　　 ﾉ.::l l
　　|:从.:|::::　|＼_／　＿＿'　 ヽ彳 .::l l
　　|'　Ⅵ::l::ｘ‐=ミ u {　　ﾉ　　　 八::::l l
　 八　 Ⅵ:{　＼__ Ｙ ￣＿_ . イ:::ノｌ:::l l
　　　　　V^ヽ.＿ ノ＼//|＿ ｀Ｘ. ノイﾉ
　　　　 ∧　　　八 ∨（＿ ノ｀ヽ'＼ﾉ
　　 　 ∧:::.、　 O-Ｙ/-|-Oiﾄく　＼ ヽ

295：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:41 ID:OyK7KkQM0

大臣就任も要請されたが、彼は宇部、山口県の代表として国政に参加していたことから、
その要請を断った。



　　　　　　　　 　 　 　 ,. -‐=＝==－‐-
　　　　　　　　 ／´￣/::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::/　}:::::::::::::::::::::::::::::::::／}
　　 　 　 　 /::::::::::::::::::::r'.　└――┳丶__／　/::|　　　　
　　　　　 　{::::::::::::::::::::::{ 　 　 　 　 ┃　　　　/:::::|
　　　　　 　|::::::::::::::::::::::{ 　 　 　 ┗┃┛　　｛:::::::|　　私のような小才に大臣とは非常にありがたいことではあるが、
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{＿＿＿ 　 ━ .＿＿ ＼:::!　地方に大事業を抱えているので、残念ながらその要望には応えられません。
　　　　　　 |::::::::::::::::::::从 {::::::ﾂﾘ_入 　/l:::rｿﾉ／:::|
　　　　　　 |:::::::::::::::::::::ヾ´￣￣　　丕´￣￣/:::::::::!
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ヽ　r‐‐一'　} ヽ__　 }:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{i　/　　　　　`　　 ∨:::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{ゝ　　　ー 一'　 ／:::::::::::::::|
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::{　 ＞.　 　 　 ／:::::::::::::::::::::|
.　　　　 　 从从从从从　 　　≧= 　 ﾒ从从从从ﾘ
　　　　　　　　／ヽ∧　 　 ヽ　 　/|ヽ＼
　　　 　　,.ィ升: : : ＼＼　　　　　i }　｝: :｀ヽ
　　　／´: :: : : : : : : : ＼＼.　　　　}　｝: : : : :＼

296：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:42:51 ID:OyK7KkQM0

そして1921年（大正10年）にて、宇部村は正式に宇部市となる。なお、町制を経ずに市制施行し発足したケースは
非常に希なことである。




　　　　　　　　　＿_／.:;、::::.＼－-―=－.::::::::/ｉ::|
　　　　　　 　 .´.:::::::::::/ ∨::::::::＼｀.:::::: ／.:::::/ .l::|
　 　 　 　 　 ｲ::::::::::::/ 　 ├──┰―――″ l::|
　　　　　　　i:|::::::::::::|　　 ノ　　　|┃|　　　　 _ノ:::|
　　　　　 　 ｌ:|::::::::::::|　　　　　　 |┃| 　 　 　 l::::::|
　　　　　 　 |:|::::::::::::| 　　＿　 　 ┻　　　 　 ヽ::::|　　　もはや村ではない。宇部はついに市になったか。
　　　　　 　 |:|::::::::::::| ,ィ<て赱=､　　　,ｨｧzｫ､、〉::|
　　　　　 　 |:|::::::::::::|´ヽﾆﾆﾆ -へ._／ゝﾆﾆｲ |ﾞ::::|
　　　　　 　 |:|::::::::::::|　　　＿＿／ ｉ＼＿_　　|ﾟ::::|
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　　　　　 　 |:|::::::::::::| ヽ′　　 ､＿＿_　　　/.:::::::|
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　　　　　 　 |:|::::::::i:::|　 丶　　　ヽ__/　　,.::::::::ｉ:::|::!
　　　　　 　 Ⅵﾊ:::l:::|＿＿ ＼　　　　　ｲ:::/ｉ:::|:::|::!
　 　 　 　 　 ｝ﾆⅥ:::|三二≧、 ¨¨¨ ´ト､/ .l:/!/ﾚ
　 ／ヽ ___　ﾉ‐=ﾆ∨三二ﾆ= ＼　 　 |ニ!_ ′
. / -' ﾉ′ }_ヽ＼＼-=ﾆ二三二ﾍ 　 /三!|.＼
/　　{| 　 /ｰ'} ＼＼＼=ﾆ二三ﾆ=ヽ/=三!|..... ＼
|　　 ＼　|　 |... /ヽ､＼＼-=ﾆ三.ﾆ/-=三!|............＼
.＼　　 ｀ |　 |....|　 |..「ヽ、＼-=ﾆ / =ﾆ三!|................ ＼

297：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:01 ID:OyK7KkQM0

そして1934年〈昭和9年〉にて渡辺祐策は永眠。享年７０であった。


　　　　　　　　　　　　 　 ＿　　 ＿
　　　　　　　　　　　　　/:::;;:｀ヽ'::::::::ヽ
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　　　　　　　　　　　　 ﾚﾘ'ﾚVﾚ川ル川
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　　　　　　　　　_,. -‐.':´￣￣￣￣￣ :＼
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298：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:13 ID:OyK7KkQM0

晩年は病魔に伏せっていたが、松岡洋右や当時の県知事が見舞いに訪れるほどの名士になっていた。


_, . . . . . . . . . . . 　　　　　　　　　　　　 ''';ﾞi　　　　 　|　　　　i　　　　ヽ
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:::i'_r‐‐‐‐‐‐‐‐- ､､｀`ヽ::､:::::::::::::ヽ､　　　 |　　　　　　　　 ／´　　　｀ ヽ
::| ､￣￣￣フ´oｰ ､ ､　　 ｀ ヽ ::::::::::ヽ 　 |　　　　　　　／　　　　　　 　|
::|　ヽ､　　 (　 　　 冫ヽ;　　　　｀l::::::::::|___|　　　　　　／　　　 　 　 　 　|
::|　　　｀`ーゞ､___ノ＿丿　　　　　|:::::::::::::::｀ ｰ ､_　 r‐-　__　　　　　　　ﾉ
:::|　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::｀ヾ:::::::::::::::｀ヽ､　　　/　　　　　　惜しい方が亡くなられたな。
::::ヽ　　　　　　　　　　　　／　　 / /´￣~',~ 丶､:::::/￣｀ ｰ ､ _::::｀ヽ/
ヽ::::ヽ､------------‐'′　 ／ /　　　　',　　　 |,;r‐＝ﾆ､‐- ｀ｰ､_::::ヽ､
　ヽ､　｀ｰ ､ _　　　　　　　, r'´ ／　　　　　',　　　ヽｌ ﾞ~　　|ヽ､　 ／｀i::::::|
　　　｀ ー ､ _｀ ー──' ´ , r'´　　 　 　 　 ',　　　 |ヽ､_ ノ　 !　/＿_|:::::::l､
　　　　　　　 ￣￣￣￣￣ 　 　 　 　 　　 　;　　　 |､　　￣　　|:::::::::::::::::::::]
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,'　　　 :| ｀ｰ ､　 　 |─,ノ:;;r‐‐' 　　　　
　　　　　　　　　　　　　　 　 , r‐-　　　 　, '　　　　|　　　 ヽ　 |, r'´r'´
　　　　　　　　　　　 　 　 ,r'´　　　　　　　　,r‐‐‐-ヾﾆｰ----‐',r '´
　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　,r'´　　　　　 |　￣￣ﾌ~
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　　　　　　　　.,.,.,,.,;:;:;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ 　 ヽ　　　　　 ノ　 　 /
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299：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:29 ID:OyK7KkQM0

何より、市葬の際には市内の各会社、工場、商店が敬弔休業となり、会場となった神原公園には2万人を超える市民が集まったとされる。
村を市にした男は、多くの人々に慕われていた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 f,} ｲ　{　 r.､　　　　　　　ハﾟヽ
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_>　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ'　 {　　　./::::::::::::::::::::/　 __＞:.:.｀ー'￣＜ ヽ::::::
ヽ　　　 ＿⊥　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿_　　＞^＼　/:::::::::::::::::／　 ア:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ｧヽ::
　`ーイ／￣｀ヽ　　　r-､　　　　　　　　　　__r､　　　 , ＜:.:.:.:.:ヽ　＼:::::::7::::::::::::::::::/　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ハ　ヽ
　 　 く:::::::::::::::::‘.__　厂Yヒｧ-- ､　とア＼　ヽ___>x　./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}.　　ヽ/::::::::::::::::::/　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!
ー-､ハ:::::::::::::::::::V:.ヽ／:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ　> ⌒ヽ　　Y　ヽ!ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:./　　 _/::::::::::::::::::::ヽ　　Ⅵ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ
:.:.:.:.:.} /ヽ:::::::::::::::::V/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ::::::::::::}'´¨｀ヽ　ヽ ﾍ:.:.:.:,､ｲ＞＜::V::::::::::::::::::::く　　 ﾊヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
:.:.:.:./ .}:::::V::::::::::::::::V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ハ:::::::::/!:.:.:.:.::ﾊ　　>^⌒＞ ´￣￣へ::::::::::::::::::::ヽ　 }::}' ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./V　／
≠^ー'::::::::V:::::::::::::::::V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Y仁!＞==ｲ_＞ ´:::::::::ト-､:.:.:.:.:.:.:.:∧::::::::::::::::::::::`＜ﾆヽ　ヽ:.:.:.:.:.:./ｲ　／:::::
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300：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:39 ID:OyK7KkQM0

その後、渡辺が残した事業は1942年に俵田明によって統合され「宇部興産」として再出発する。


　　　　　　　　　 //l ./l |､　 | ハ　:＼| ＼N ヽﾄ＼ハ
　　　　　　　　　 N ｌ/ ,l｜ヽ　{:/l l : l: .ヽ: .l. l:　 ヽへﾊ
.　　　　　　　　　N　　ﾊl:l‐-ﾐ,,彡l l､ ﾄ､:　､:l: l: .　 ヽ　ﾊ
.　　　　　　　 　 l:|へ/l :l:l　　　　'l:l l:l=ヽ: l:　: : .　: l:､: ﾊ　　地域社会に有用な産業を次々に興す。故に、宇部興産だ。
　　　　　　　　　l:l: .　 l: |:l= ､　､,=l|ｨl|乏l: l: : l: : :　:l: :ｌ: !|
　　　　　　　　　l:l: :　:ヽト代ｔｿ　　l‐ﾘ￣ヽl､: l: l: . : l: :l: !|
　　　　　　　 　 l:l|: . l　:ﾊ:!　　}　　 　 　 　 l: l: l: . : ｌ: ｌ iﾘ
　　　　　　　 　 l:ｌl: : l: : l:ﾍ.　 ′　　　　　　l:ハ:l l : l: l |
　　　　　　　 　 l:ｌｌ: : l:| :l: :ヘ　 ｒ=＝,　　　 l',　l:ｌ:l : l/l/ﾆ}
　　　　　　　　,､ﾘ丶 ﾄﾄ: l､:l､ ＼｀￣　　　／　 l从:｜　 /l` ー――――
.　　　　　　　 { ､＼.`l　ﾍ!`lへl へ __　 彡 ´￣　 ﾍ:ｌ　 /　 ､
　　　 　 　 　 l　l　 ￣￣￣{　　ゝ-‐ ´　　　　 .:::::::ﾘ::::ｌ　　/￣￣￣￣￣
　　　　　　　　l　l,　　　　　 ゝ　　　　　　.:::::::::::::::::::-‐ ｌ 　 l
　　　　　　　　'l　l,　　　　　ｆ｀＞::､:::::::::::::::::::::-‐　.::::‐ l　　l
　　　　　　　　　　　　　　　【俵田明】
　　　　　　　　　　　【宇部興産初代社長】

301：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:43:51 ID:OyK7KkQM0

炭坑が斜陽化してしまった現代においても、宇部興産は今も宇部市を支える企業として君臨している。
特にセメント事業は三菱と共に「宇部三菱セメント」として国内シェア第二位の地位にある。


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: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ,ｨ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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三ﾐ、;;;;;;;;;;;;;; |.ヾミttttttttttt┼┼┼┼┼┼┼┼┼|王|┼┼┼／／　 ┌───────────
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302：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:01 ID:OyK7KkQM0

宇部興産の特徴の一つとして、宇部地区と伊佐地区に製造拠点が別れていることから、その両者をつなぐ為に
宇部興産が独自に持つ専用道路が存在する。31.94kmに及ぶ、日本一長い]私道として有名である。

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303：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:13 ID:OyK7KkQM0

そして今でも、宇部港には大規模な化学工場とそれを支える施設が稼働している。


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304：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 15:44:24 ID:OyK7KkQM0

元々は一寒村に過ぎなった村を、大規模工業地帯とし、今日に至るまでの発展に尽力してきたのは
ある男の「危機感」と「情熱」であった。
今も宇部には、そんな一人の企業家の魂がそこに生きる全ての人たちを見守っていると信じたい。


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／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ 辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
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.:.:l.:从ｲ.::.::.::＞' y-／ ／／/＞-‐´!　￣ﾍ　＼ _＿ﾍ_／
.:.:ﾊ.::.:_, イ´-＜／_／／／ ／ | 　,ﾄ-､_　∧／ ＼_　 ｀ヽ､
_, - ´,　'"Y´￣ヽ／ヽrー'"｀ヽ_」／　 .l　￣ヽ 　 　 ＼　　 ＼
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【終わり】

305：安価のやる夫だお：2016/08/10(水) 19:56:50 ID:lVuzIc2c0
約2年ぶりの投下乙でした！
宇部興産懐かしいなあ。宇部工場もその中の硫安工場も、
伊佐工場にも前職の時にちょっとだけ入ったことがあるし、
興産道路もちょっとだけなら走ったことあるかもだけど、
宇部興産の成り立ちは今日初めて知ったよ！

306：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/10(水) 23:40:11 ID:OyK7KkQM0
>>268の後

今回は、この寒村に過ぎなかった宇部村を、重化学工業地帯にし、今に至る発展に貢献した企業と
その創業者について語る。


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　　　　　　　　　　　　　　　　.　 /:.::.::.::.::./:.∧　　 　｀ー──､　/　　　 　　　　 |::.::∧::.::.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　/::.::.::.::.::/::.::.::.|　　　　　　　　　| |　　　　　　　　.|::./::.::,'::.::.
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　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::.::.::.:/::.::.::.:/　　　　　　　　､__| |ノ;　＿＿＿,,/::ﾊ.::.ﾊ::.::.::.
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　　　　　　　　　　　　　　　　／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ 辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
　　　　　　　　　　　　　　　　::.::.::.::/::.::i.::.::.ヽ ∧ ￣｀ｰイ´　　／ヽ､_　　　 / /.l::.,'::.::.::.::.::.:.
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第十二回
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　【村を市にした男】
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307：安価のやる夫だお：2016/08/15(月) 08:50:36 ID:p5Bjlbi60
投下乙でした。

308：安価のやる夫だお：2016/08/16(火) 19:25:13 ID:SQX.uF/s0
乙
よかれあしかれ、最近、宇部は人材をだしてるね
菅直人元首相も宇部出身で、父親が宇部興産の子会社の取締役
シン・ゴジラの庵野秀明監督も宇部出身

309：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/21(日) 00:38:05 ID:c4WovOMk0
唐突な一発ネタ



＿　　　 ,､-'t,,､-､＿／|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　　 ,,,,,,､-'"t　　　　　..:::::
）　￣￣　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､,,ni､rj､,,r､,　　　　　r' ~~~　　　　　｀'ｰ'|　.:::'' ..::::..'''::
　　の　歴　真　こ　了　　　　　　　　　　　　　　　　 （ﾚ'"　　　　　~''-,　　 i'~　 ト　作　最　　 |.::: ,ry'''i／）::
　　だ　史　の　の　 | 　　　　　　　　　　　　　　　 ,{''｀　,,, ,, ,,,,､ 从　 ｲ,　　|　　ヨ　る　強　　 |r'Y　ﾉ./ｰ,'　::
　 //　 は　強　ト　　|　　　　　　　　　　　　　　　 ﾐj,ﾐ､,iﾂ(Y､iirﾘイ''ノ､,}　 ﾉ　　タ　者　の　　|,ノ''ﾘ ﾉ ,,r ::'' ::
　・・ 　 始　者　ヨ　　|　　　　　　　　　　　　　　　 'i ﾐ' ::~'':'､iir''ｲ"''〉"ﾘ　　|　　//　の　自　　|{ ~j .ﾘ__ i　,,'~'i ::
　　　　 ま　の　タ　　〉　　　　　　　　　　　　　　　 i{,i| ;;､ti;(从ﾉ,_,'､''j,,ｲ　ノ　 ・・. 　名　動　　| ｰ',,"-ｰ't（　 ', ::
　　　　 る　　　 よ　　,>　　　　　　　　　　　　　 ,r/ヽ't｀""'ﾐ|~ﾐ''''''"ｲ)/ｰ-ヽ　　　　は　車　　 〉}　　,､ ''~　 / ::
　　　　　　　　　 り　/　　 ,, ､､､､,,､r-ｰ――r―';/'"i　|t " ､,j,/"　''/ｲヽ' ､;;;;i　　　　　　を　　 /'i／）ヽ'"　 r' ::
　　　　　　　　　 ＿（ ,､-'"::::::::::::::::~' ､''"""''ヽ|;;;;'i ,､'":ヽ　ｰ==-　,i':::ﾘ;;;;;）'ヽ,|　　　　　　　 ,､-'./ｰ,':::::　 ／ ::
　　　　　　　　＿)　 (;;;::::::::::　::::::::::::::::~'ｰ､三ｰヽ;;t　　::::::'､"､~ ／:: ::ﾘ|ii;;;|　,t|,､-'),､-―､／'ﾘ ﾉ ,,r:::　／ ::
~'''''i　　＿＿（　　　　,r'~'''''ｰ- ､､;;;;;;;::::::::::ヽ,三=::;ヽ　:::::　:'''''''":::''::: :::ﾘ;;;;ヽ"::ヽ　,ry'''i／） ~j .ﾘ__ i　,'~'i ::
　　|／　　　　　　　 iﾘ ::'"　　　 ::::: ::::,~ｰ､ ,､ｰ､　,i;;｀'､;;;;,､､､､ , -､　,ｰ､;;;;;;|ir ,r'Y　ﾉ./ｰ,''. ｰ',,"-ｰ't,i 　i ::
　　　　　　　, ｰ､ ,,､ｰ､:::　　　::r'''i　 /､,,,ﾉ/､,　ﾉ:::::,,､ ､;;r'~'i　/､,,,ﾉ/､, /~）ﾘ ,' ,ノ''ﾘ ﾉ ,,r~''"}　:::,､ ''~　/ ::
　　　r'''i　 /､,,,ﾉ/､,　ﾉ:::::,,､ ､:j ;;ｲ. /,,, //,　,r",､ '~　ノ;;j ;;ｲ./,,, //,　/,､/;/ i ｰ{ ~j .ﾘ__ i　,'~'i ／::::　r' ::　　r''ヽ
　　 j ;;ｲ. /,,, //,　,r",､ '~　ノ:i､,-tj r'''ﾚ::~'/,r'"､,､ '";;;;;j､-tj r'''ﾚ::~'/　/;ﾉ'=i -' ｰ',,"-ｰ't,i 　',､ ,､-'" r''ヽr''ヽ（ ヽ
　　 i､,-tj r'''ﾚ::~'/,r'"､,､ '"::::,〉ｰ'　ｰ'' 二,,,,,,'ｰﾘ ｰ（､,,,,iｰ'　ｰ'' 二,,,,,,（~ ヽ,,ﾉ ~''"}　　,､ ''~　/''";;; ,,ti''ヽr''ヽ,　ヽ
　　 ,〉ｰ'　ｰ'' 二,,,,,,'ｰﾘ　　:::::j ~'''''''""　 ,,,､-~ﾉ　　　　j ~''''''""　,,,､-ｲヽ ''||　　 ヽ ／　　 r'::::::, '（　. '､ ''t,, ', r ､',
　,r"j ~'''''''""　 ,,,､-~ヽ ::::::::/:::　　:::::~'''~　　 ヽ-("~,)/:::　　::::~''~　　t　／､（:､,,,,ｿ､､ ,､-"::,､ '"　 ヽｰ',〉-.〉　|.| .i
,､"'/:::　　:::::~'''~　　　ｱ~'Y'"~_,) ）,,;;;; ,,,;;;　　,',,,,､ｰ'"　　　t,,;;;; ,,;;;　,,､ '"'､;;;;｀''ｰｰ,､-'":::,,､ "_､,'''' ､ {ｰ ''ｰ t,,,,ii'ｰ|:
: 从;;;;;;;;,,,,,,,;;;; ,,,;;;　　,',,,,､､ｰ'"~'ｰ-- ｰｦ''''ヲｰ'i　::::~'ｰ-- ｰｦ''''ヲ'"　'､,,,,,,　,､-ｰ'"::::::,､'"　 (　 ' ､,,,､''~ ~'''''ｰ､　　:
:ヽミ;;｀'''ｰ--- ｰｦ''''",('''"（~'ｰ---ｰ''''"-'"从:::' ､;;;;;;r､;;;;;; ､-'"'ｰ ､~'''''',､ '":::::::::::,､ '"　　　 ｀'-､　　　~';;､　'' ﾘ::　:

310：安価のやる夫だお：2016/08/21(日) 10:30:02 ID:8weteasw0
トヨタですかｗ
トヨタは恨みを忘れない執念深いところがあるからなぁ・・・（川崎製鉄と三井銀行思い出しつつ）

311：安価のやる夫だお：2016/08/21(日) 10:30:26 ID:8weteasw0
おっと、銀行は住友銀行のほうだったｗ

312：安価のやる夫だお：2016/08/22(月) 04:43:42 ID:WTLd3Nto0
私共は機屋ですから……ってか。

アレは住友が悪いと思うぞ。
どの面下げて。

313：安価のやる夫だお：2016/08/22(月) 04:47:03 ID:WTLd3Nto0
違った、逆だった。
鍛冶屋だ。

314：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/29(月) 22:45:47 ID:WyypQR7s0




　　　　　　　　／三三三三三三三三三三＞
　　　　　　 ／三三三三三三三三三三三三三＞
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　　　　　 ／三≧任 ＞へ　i{　ｨ 　<⌒ヾ　　ミ:::::::::::斗'　　　 /　　／
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　　　　　 .Y /:::| ≧ミ｀￣ :i:i:|　　 ヽ二ﾆ彡　　 | へ　}''¨´　　　　　｀¨¨´￣｀
　　　　　　l 寸 !　　　￣ Y （　　__　　　　　　　　ﾍﾘ ﾉ
　　　　　　 VV:l 　 　 　 人r ､ r:､ }ヽ　　　　　 ﾚ ／__二ﾆ=ｰ'''¨´｀ヽ
　　　　　　　VVl　　　 /　　　__,　　　 '　　　　 ﾑ/　　　　 　 　 　 　 }
　　　　　　　 ｀¨|　　　} 　- 一ー-r ､　〉　　　从　　　　　　　　 　 乂
　　 　 　 　 　 込　　　　　　ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ　＼＼.　　/　　　　　　　 /´￣　　　＿彡
　　　　　　　 　 圦＼　　　　　　　　　＼＼.'＿...::〜=ﾆ辷彡　 彡　´￣辷
　　　　　　　　　|ヽヽ..＼　　 　 　 　 /少｀'''ﾆ|　　　　　｀￣ ¨´
　　　 　 　 　 イ|ﾆﾆ寸　辷=一=ﾆ爪彡ﾆﾆﾆム
　　　　　≦ﾆﾆﾆﾆ|l＼ﾆﾆ寸 .ｱﾆﾆ／ l|ﾆﾆﾆﾆﾆ}ー-
　　　　　ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ寸 ＼ﾆYﾆﾆ／ l／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=ー
　　 　 　 ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ寸l|.ﾆ|ﾆﾆ|l／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=ー
　 　 　 .ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|ｰ|ｰ.|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
　 　 　 .ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|　|　|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ

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以前勤めていた会社にて変わった経歴の上司に出会ったことがある。

315：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 13:59:12 ID:NHCS9ifk0


　　　　　　　　　　　　　　／三三三三三ヽ
　　　　　　　　　　　　 ／三三三(ψ)三三|
　　　　　　　　　　　　l三三三, 二二二 ､/　　　　 　 ﾓ
　　　　　　　　　　ﾓ　ヽ_/::::/　,二 ― _-､ヽ　　　ﾓ 　ｸﾞ
　　　　　　　　ﾓ　ｸﾞ 　 Y ヽ!　､_ー,　 l'ｰ |‐'　　　ｸﾞ　　 ﾓ
　　　　　　 　 ｸﾞ 　 ﾑ　 ヽ_,　 　 ／ _ j＼| ))　ﾑ　 　 　 ｸﾞ
　　　　　　　　　 　 ｸﾞ 　 |丶 　/ノ―‐(, /ﾉﾉ　ｸﾞ　ﾑ
　　　　　　　　　　　　　_|｀ヽ _ヽ＿⌒_／、　 　 　 ｸﾞ
　　　　　 ,　――――(ﾆ＼ﾆ=｀ヽ_,-=ﾆ|ﾆ｀ー､ ＿_
　　　　 /― ､ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ// lﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ヽ
.　　 　/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ//l　ｌﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!、
　　　/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ _// )_　!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ヽ
.　　/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ／//_,/ j_ iﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ !
..　/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆｌﾆﾆ／　//　/ / l､!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|
　 lﾆﾆﾆ､ﾆﾆﾆﾆﾆ./ﾆﾆ|｀iｰ ､_ / / // lﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!、
　 |ﾆﾆﾆﾆ｀ー､ﾆ/ﾆﾆ,｜　 /　,ｰ,ｰ/ ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆl
　 |ﾆﾆ, ―― 、)　／|､!　 '　 '　／｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾆﾆﾆﾆ, ―!、
　 |ﾆﾆﾆﾆ――／ﾆﾆﾆ＼＿_(｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡ﾟ｡､―― ､ _ﾆﾆﾆﾆヽ
　 |ﾆﾆﾆ／/／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/∨卍卍卍卍卍ー ､　 ＼＼ﾆﾆﾆ!、
　 |ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆ∨ 　　 　 　 　 　 )　 　 l　!ﾆﾆﾆl
　 ､ﾆﾆﾆ(ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ／ﾆﾆﾆﾆ＼_ ,―‐ ､＿_　'　 ／ ! /ﾆﾆﾆ.!
　　＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ'―‐ ､＿＿_　＿ //ﾆﾆﾆ./
　 　 　 ―――― '　　　　　　　　　　 　 ｀ ―‐―､_ ／ﾆﾆ ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ￣￣￣
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温厚で好々爺と言ってもいい方であったが、前職がなんとつい最近大型合併したとある製鉄会社。
私が居た会社では本部長として営業チームをまとめていた。

316：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 13:59:29 ID:NHCS9ifk0


　　　/ ;　　　　,　　 　 ! ＿_ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ｀ヽ
　　/　'　　　　,'　　　　ヽo､ヽ'lﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆl
　/　　　　　 ,'　　　　　　||ﾉl |ﾌ ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆl
　ー ､　 　 ,'　　 　 　 　 |＝＝＝＝＝＝＝＝＝､ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/
　　　|　　 ,' ,　　　 　 , -'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＠ミミミﾐﾐヽ
　　　|　　　　,'　　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＞_'-､´￣￣　ミミミ , -―　､ﾐﾐ|
　　　ー ､　　',　 /ﾆﾆﾆ,＞'i / ―　 、丶　　　　ﾐﾐﾐ/ /￣ヽ　!ミ!
　　 　 　 i　 ,' 　 ￣￣ 　 /　￣ij￣ Ｔ丶　 　 　 ﾐ　/　　　|　|ミ!
　　　 　　|　 ',　　　　　／　 ＼｀ー '　′　　　　　　 ―、 ﾉ /ミ|
　　　 　　|　　',　　　 i´　　　　　￣　　　　　　　　　 /:> ' ／ミﾐ!
　　　 　　| 　 , ' 　 　 ＼_ -　)＿　　　　　　　　　　 |/　/ミミﾐ/
　　 　 　_j　 ,' 　 　　 　 )　　 　 　 _　 　 　 　 　 　 |- '　ミミ/
　　 　 /　　,' 　 　 　＿_ヽ＿, -、　 ) 　 　 　 　 　 / /　 ﾐﾐﾉ! _
　　 　 ､ 　 ' , , , ,　'／￣ヽ　 ＼＼'　　　　　　 　 / /　　　ミ|ﾏ l
　 　 　 ＼　　　 ／ 　 　 / 　 　 ｀・　 　 　 ＿ノ　　　＿＿_／ﾆ|
　 　 　 　 ｀ー '　　 　 　 ＼　　　　　　 ―, -≦ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!ｰ､
　　　　　　　　　　　　 　 　 ,＼ _　,　＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆ!-､
　　　　　　　　　　　　　　 / /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆ!ﾆﾆヽ
　　　　　　　　/7　 /￣l / /ﾆﾆ!二二二!ﾆﾆﾆ＿ﾆﾆ一ﾆﾆ´ﾆﾆﾆﾆﾉﾆﾆﾆ.!
　　　　　 /￣￣/､_!、　! /ﾆﾆ<＿＿＿_|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
　　,　―――　 ､　 ﾉ_　ヽ￣!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／　　――――　､ﾆ|
　　｀ -―‐ ､＼　＼!　　　!　|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|ﾆ!
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無論リストラなどではない。役員まで務め、ある意味三顧の礼で請われる形で、天下ってきたような方である。
実際その人のチームは業績が凄まじいほどに高かった。

317：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 13:59:55 ID:NHCS9ifk0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿　_　__ ＿　r-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 {.ｒ､＼＼`㍉､｀＼i＼¨ミ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／Ⅵi＼＼＼　 ＼ .＼.Ⅵ `㍉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ｲ彡iiⅥﾑ ヽ　 ヽ　　＼ .＼}＼∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 }彡ﾆﾊⅦiﾑ　 ＼　＼ 　.ヽ .∨ Ⅵ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 {／,ｲ　`¨¨∧ .i　i　　 　 　 　.∨i}i　　　　本部長は確か富士製鉄に入社されたと聞きましたが？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y// 　 　 　.∨| |　|　|i　i　}　l!Ⅵ}
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 {i i,ｨzzzzミ､ .乂i}i 从乂八il　} i乂､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{｀Y ,ｨ==r=ｧﾐ､___,Yrィ尨ラ.}i}从{i ﾉﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 人 {（弋__`彡豸⌒}i}_`⌒".ﾉﾉ 　}／}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 `Y`ｰ====彳i⌒` ‐==‐'.,ィ　 iﾉノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ､＿,ィ　　. ,ｲ　 /ミ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 人　　`‐-=　zzz-≠彡′/{㍉ ヽ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 / 　.＼　　`ｰ‐‐‐　　　　／ﾉiﾄ､i}　}i:i:　Yヽ､
　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿_,.．-'／　　／i} ＞‐-　　--,.．イ.／ / ./ ./i:i:　 i　` ＼
　　　　　　　　　　　　 ／i}＿＿＿__／　　／.／}　　 /ゝﾍ　 　 .／　./ ./　i{i:i:　　i}乂　　`ｰミ､____
　　　　　　　　　　　／乂⌒/　　i／ 　 ／.／i∨ j　/}´⌒i}　　　　 ./ ./　　ヽ＿__///i`㍉____　　　〉､
　　　　　　　　　　/　//　 / , -'" 　 ／.／　 i/__.／i迄亥ｲ＼　 .／ ./　 　 　 　 i}/　i:i:／　　ヽ／⌒＼
　　　 　 　 　 　 /　//_,.．　　　　 　 ／}　　 {ii:　i／⌒㍉}彡' Уi:i:i:/　　　　　　 i}i:i:i:i:/　　　／　　　　∧


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ちょうどそのころ企業について興味を抱いていた若造だった自分は、思わず酒の席でそんなことを聞いてみた。

318：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 14:00:07 ID:NHCS9ifk0


　　　　　　　　　　　 　 ／三三三三三三三三三_(_＼.／_)三=＼
　　　　　　　　　　　 ／三三三三三三三三三=_( | l ♀ l ﾚ､三三＼
　　　 　 　 　 　 　 /三三三三三三三三三三I(丶＼_|_／ ﾉ_三三=->
　　　　　　　　 　 /三三三三三三三三三三三`ー－'｀ー―' 三三/
　　　　　 　 　 　 |三三三三_＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝/
　　　　　　　　　　＼三三,＠ ｀ー――､三三三三三三三三三三＼　
　 　 　 　 　 　 　 　 ＼／ ｀ヽ彡彡'　　＞-､_三三三三三三三三三＼
　　　　　　　　　　　 　 |　/ヽ V彡'　 ,彡'　＿＿ヾ 　 彡 ＿ ﾐ| 　|
　　　　　　　　　　　 　 |　|/ヽ　!〃　 　/＜＿(ｼ,　 　/＜(ｼ_>| 　l　　　　　　　お、よく知ってるね。最近じゃ若いのでそういうことを知ってるのは少ないからなあ。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼＼ ､)ヽ　　　 ｀ー　　　　　ｉ 　 ー ' | ./
　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ＼!|　　　　　　　　　　　ヽ、　　 |/
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＼_j　　　　　　　 , (_　-_'_ﾉ、 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　|　、＼　　　 ,　 ´　　　_,　　_　 /
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |＼　、 ＼　 ( 　 , -―――( ＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 }三＼＿　＿　　 　, ――､　＼ ＼,(＼
　 ＿＿＿＿＿＿_,.ｨｪ;ｱI三|三三三＼　 ＼　　　　　　 //　>＿｀-｀ー､
-'三三三三三三三三三三!三三三三＼＿｀_ー ――'_/／(＿＿＿_ ｀ヽ
三三三三三三三三三三三ヽ.三三三|￣＼三｀ヽ, -´／　　 (＿＿＿_)｀ヽ、
三三三三三三三三三三三三三三三＼＿＿l三|三l_＼＼／　　(＿＿_,)　|
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三＼＼　 　 　 　 /　!






　　　　　　　　　　　　　,. ＝i/∨i i iへ.,
　　　　　　　　　　　 ハ丶丶//∨i i i i i i へ
　　　　　　　　　　 ハ丶ヾ　'　'　∨i i i i i i i i i i ,
　　　　　　　　　 ﾊ ,.=ー=.,　　,.=-^ﾚi i i i i i i i i i
　　　　　　　　　├(　　　ノ二(　　　　'iｼi i i/i i i i　　　　いえいえ。しかし、富士は八幡に吸収された形になっていましたが、
　　　　　　　　　(　}　￣ く　_　丶＿　へﾚ/ﾊi i i |　　　　それで何か不都合は無かったんですか？
.　　　　　　　　　 v　,',.＿　　 丶　　　　　!.i'’ソ /
　　　　　　　　　　i　 i 彑彑彑彑彑 )　　, ノノ,/
　　　　　　　　　 人　,、册册册册’,　　/ﾃテ
.　　　　　　 　 　 ／'-,ヾ二　二￣　　ノ彡’ヾ.,_
　　　　　　　　／　　ヽ::......￣........-=三’　 /　　ト,_ _
　　　　　 　 ,:’　　　〃^i;::::_;: - '’　　　　 /　　｜ .{　{ヽ
　　　　,.・∨　　　　/i .i’ヽ、　　　　　 ／/.　 　 |　/”
　　　’ ∨　　　　 /ﾉ ル　,ゝ　　 　／.∨　　 　 |/
　　　∨　　　　　/レ'=o＝> 丶, 0/　 ,/　　　　 |

319：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 14:00:20 ID:NHCS9ifk0

　　　
　　　　　　　　　　　　 ! ＿_ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ｀ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽo､ヽ'lﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
　　　　　　 　 　 　 　 　 ||ﾉl |ﾌ ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆl
　　　　　 　 　 　 　 　 　|＝＝＝＝＝＝＝＝＝､ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/
　　　　　　　　　　　　, -'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＠ミミミﾐﾐヽ　　　　　無いよ。だって私は富士が八幡と合併する事を知ってて入社したんだから。
　　　　　　　　　　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＞_'-､´￣￣　ミミミ , -―　､ﾐﾐ|
　　　　　　　　　 /ﾆﾆﾆ,＞'i / ―　 、丶　　　　ﾐﾐﾐ/ /￣ヽ　!ミ!　　　　　
　　　　　　　　　 ￣￣　　/　￣ij￣ Ｔ丶　 　 　 ﾐ　/　　　|　|ミ!
　　　　　　　　 　 　 　 ／　 ＼｀ー '　′　　　　　　 ―、 ﾉ /ミ|
　　　　　　　 　 　 　 i´　　　　　￣　　　　　　　　　 /:> ' ／ミﾐ!
　　　　　　　　　　　　＼_ -　)＿ 　 　 　 　 　 　 　 |/　/ミミﾐ/
　　　　　　　　　　　　　 )　　　　　 _　　　　 　 　 　 |- '　ミミ/
　　　　　　　　　　　　　 ヽ＿, -、　 )　　　 　 　 　 / /　 ﾐﾐﾉ! _
　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 ＼＼'　　　 　 　 　 / /　　　ミ|ﾏ l
　　　　　　　　　　　　　　/ 　 　 ｀・　　　 　＿ノ　　　＿＿_／ﾆ|
　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　 ―, -≦ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!ｰ､
　　　　　　　　　　　　 　 　 ,＼ _　,　＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆ!-､
　　　　　　　　　　　　　　 / /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆ!ﾆﾆヽ
　　　　　　　　/7　 /￣l / /ﾆﾆ!二二二!ﾆﾆﾆ＿ﾆﾆ一ﾆﾆ´ﾆﾆﾆﾆﾉﾆﾆﾆ.!
　　　　　 /￣￣/､_!、　! /ﾆﾆ<＿＿＿_|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
　　,　―――　 ､　 ﾉ_　ヽ￣!ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／　　――――　､ﾆ|
　　｀ -―‐ ､＼　＼!　　　!　|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|ﾆ!

320：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 14:00:30 ID:NHCS9ifk0




――――― ､
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ　､
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ,､,|
―― ､二二二|_/_　　　それに私は私学出身だからさ、どのみちトップは無理なんだよ。
三三/ )　 ＿, |―‐'
三　,　!　 　 こ|　　 (　　　だけどできることはあるだろう。重要なのはそこさ。
三、i　|　　　　ヽ　 　),
三 ｀ｰ'　　　　ﾉ!＿ ζ
三＿_＼ 　　'/ ￣´
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆi'
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼
ﾆﾆﾆ´ ￣ ｀ヽﾆi
ﾆ./ﾆﾆﾆﾆﾆﾆjﾆ丶
_/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ i ﾆﾆi
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆ!
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ./ ﾆﾆﾆ.!
ﾆﾆﾆﾆﾆ / ﾆﾆﾆﾆi

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新○鐵が合併する時、結構な騒ぎになったがその方はあえて業界二位の富士に入社し
苦労しないで業界トップになる新日○に入社することを計画していたという。

321：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/08/30(火) 14:00:41 ID:NHCS9ifk0


　　 　 　 　 　 　 　 　 , ==､lr､ヽﾊﾊﾊ‐-､､
　　　　　　　　　　 ,ｨ'三三ﾐ.llililil,ﾍﾊﾊ ﾄ,liﾍﾊ‐､_
　　　　　　　　　 ,ｆ三三三ミllilililil l l l　l l l l l ﾊ ヽ、
　　　　　　　　 ,ｆ三彡´　　　　　 ∨ﾊﾊ.iﾊ l l l　l ﾊﾊ
　　　　　　　　l彡ｨ=-― ､ｖ--､,,,ｨ-l从l从lﾊ l ｌi .l ﾊlﾊ
　　　 　 　 　 ,l-ｲl、　　 ,ﾉ--､ll｡　　　　ヾl l l l.l,ﾘ.l 洲　　　　　（なるほど、業界トップで活躍する人というのはこういう思考をするのか）
　　　　　　　 l lイ'`ー=彳ﾉ　 ヾ,､_　　__ノﾙlﾘlﾙｲlﾙ州l
　　　　　　　 l､リ. ,　　　 `‐'ミ､ 　 ￣　´　`ヽﾘ_ﾉﾘ州ﾘ
　　　　　　 　 `l　 l ﾄ--､-,　,､_ `　 、､、　 Ｕ´ l,ミlﾉｲﾘ'
　　　　　　　　 l　　l Yﾆ'二ニ='‐｀｀ﾗ .!'　　 l ﾉｲｲﾘ/
　　　　　　　　 .l､　,. ､ゞｪｪｪｪｪｪｨリ'　　　 ./`-ｲ,'´
　　　 　 　 　 　 >、ヽ、ー----‐イ　　　,/彡ｲ〈、
　　　　　　　 ,.ｲイﾊ‐､ ` ､ ＿___,, ィ _,,イ彡イィﾄ ﾄ､
　　　 　 　 ,ｲｲ　　 ﾍ　`　‐----‐_彡'´　　 / 　 ,'　.l`i､__
　　　　 _,ｲ-‐-､　_,.イﾍ、　_,,　＜　　　　　/ ｲ// 　.l ﾄ､@ヽ、
　　 ,.イ//　　　)'´ l i'ミ､r,ミ､　　　　　,ﾉ ,/ｲ././　　l l　〉､__
.,ィl　 ,/,.'　 　 ,' ,! ｌ ,i!l´　`ヾ,il　　 .,,ｨ'´,ｲ . ./ / 　 . l.l ,' .l
.l l　/,.'　　　 ,' ,' l!,ﾘ..ﾉr‐,ヽ,ｲﾍ、 ,ｲ　〃,ｲ / /　 　 .l.ﾘ .ﾘ.,ｲ
ﾊｲ, '　 　 　 l /.ﾚl'l彡◎ミl}　 ﾍ, @,ｲ . ｲ / /　　 　.ｌl! /／
ｲ.'　 　　　　l.,'.　.Yl iノ.ﾉ.l､　 　 ,ヽ'　,.'　.,' ,　　　　　ｌｌ/ｲ　l
　　 　 　 　 ,'　./　　 .'//.l　　　　 ,ｲ　 ,' /　　　　　.ｌl'　ｌ ,l
_　　　　 　 ,' ./　　　 //l l 　 　 , ' 　 .,' /　 　 　 　 ｌｌ　l ,',.ｲ
ﾄﾐ=､______ .l./　　 　.,','={{lト‐_／=､ . /./ 　 　 　 　 .ｌl　l.l!　ｨ
,》＞=‐-ミ.〈　　　　l.l　 ,l,lｙ'´　　　l,.//　　　　 　 　 ｌl! l l,ｲ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
できる営業マンというか仕事人の本質を知るとき、こういう機転と目端が利くかどうかが重要なのだと
このときほど感じたことはない。

今までいろんな仕事をしてきたが、未だにこの時の事は鮮明に思い出せる。仕事で上手くいかないとき、
自分はこの人のそうした機転さを思い出す。

322：安価のやる夫だお：2016/08/30(火) 21:50:22 ID:RIblX3RA0
うーむ。
凄いとしかいい様がない。

323：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/07(水) 00:47:26 ID:jYVdYrU20
唐突な一発ネタ


　）　　|i　i'|ii | ｿ――-ｰ ''''''''t､t,,t:t ti-,㍑i |i:|,,t:t ti-,㍑i |i:t､t,,t:t ti-,㍑i |i:|
　ン,,　　 ﾘ ）ﾘﾉ/､､,,,,,t ､､;;;;;;;;;;ﾆ＝ｰ-､)）ﾉ　) ＝ｰ-､)）ﾉ　);;;ﾆ＝ｰ-､)）ﾉ　)
（iii　　　 ノ''z-ﾓｪﾃ''､'i ~i'';;rzﾆ'-''ニゝ''　ﾌ"/-''ニゝ''　ﾌ"/　 -''ニゝ''　ﾌ"/
ﾘ　　:::　ﾐi　'~~~~::::ノ| ,i''''"'""'''''' 　　　:::ﾒ, '''''' 　　　:::ﾒ, 　 '''''' 　　　:::ﾒ,
｀ｿ　:::　iii''t　　::::::::::::j,, "　"　　　　　::::::::ノ　　　　::::::::ノ　　　　　　::::::::ノ
tii　ﾘ （/　);;;　::::::::　､､_,,,､:)､;;　　 :::::::::｀'y;;　　 :::::::::｀'y　　;;　　 :::::::::｀'y
　 )　　（　 ﾘt"　:::::　,,,,;;'i､､;;"　　　"　　 （　　　"　　 （　　　　　"　　 （　この動き……捉えられまい…
／　　　;;;;　ｿ;t　　 ii",;;ﾖ<､:;;,,"'i!　　 ､|i ﾘ')　　　　 ､|i ﾘ')　　　　　 ､|i ﾘ')
,/"　　　ノ/ ii|ﾘ;;|!,,　ii ´;;;;;;;;;; 　~'ji　　,,iijj}|ﾉ'　　ji　　,,iijj}|ﾉ　　 'ji　　,,iijj}|ﾉ
　i|i|/|i　　::::　､|i|:::ヽ!!,iii "::（ ~'ｰ }} ii}|j､-''（ii　　}} ii}|j､-''（ii　　　}} ii}|j､-''（ii
ヽ(（i　　';;; iiii　）:::::ヽ!!,,　;;;;;;;;　　i}!i! '　;;;;:::::｀i　　i}!i! '　;;;;:::::｀i　　i}!i! '　;;;;:::::｀i
　､,,, ﾉ　　　i''"iﾘ:::::::::::ヽ!iiﾊii|ii!!|!i,r";;;;;;;;:::::::　 j 　 /";;;;;;;;:::::::　 j /";;;;;;;;:::::::　 j/
　 ,ゝ　　,,　 / ヽi､::::::::::　"""""";;;;　　:::::::　　/,,　　　　:::::::　　/,,　 　 :::::::　　/,,
　(ii　　 iiiiｿ ii　　）　:::::::　　::::::::::　　　:::::::::　 （|i　　　　:::::::::　 （|i　　　:::::::::　 （|i
　　　　　　　　　　　　【デンソー】

324：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/07(水) 00:47:36 ID:jYVdYrU20


　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,-´￣￣￣￣￣￣￣￣｀-､
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,-´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ｀-､
　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼.
　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ＼
　　　　　　　　 　 　 iﾞ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞi
　 　 　 　 　 　 　 .|:|{::::::|{::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}|::::::}|:|
　　　　　　　　 　 i:::| {:::| {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} |:::}. |:::i
　　 　 　 　 　 { |::::|　{;;| ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／ |;;}　|::::| }
　　　　　　　 　 {::::::|　　 　 ＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,---､;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　 　 　 |::::::}.
　 　 　 　 　 　 |＼;;l　　　 ________________ l　　 l ________________　　　l;;／|　　　　　　源流より優れた企業など存在しない！
　 　 　 　 　 　 |＼　　　　|　 　________　｀i　　 i´　________　　 |　　　　／|　
　 　 　 　 　 __|;;;;::｀i 　 　 |　＜　 ・ 　＞ | 　 | ＜ 　・　 ＞　| 　 　 i´::;;;;|__
　　　　　　｀ー､ ニ　　　　＼　 ￣￣_____}─-{____￣￣ 　 ／　　　 ニ,,―´
　 　 　 　 　 　 |::::::::＼ :　___ ￣￣￣＿　　　 ＿ ￣￣￣___　　:／:::::::|
　 　 　 　 　 　 |:::::::::::}. 　l::::l　 l~^l　 |::::|　　　|::::| 　l~^l 　|:::| 　 {:::::::::::|
　　　　 　 　 　 |:::::::::| 　 .|:::::|　.|::::|　.|:::::|　　|::::::|　.|::::|　.|:::::|　　 .|::::::::|
　　　　 　 　 　 |:::::::::| 　 .|:::::|.　|:::::|　|::::::|　 |:::::::| .|:::::|　|:::::::|.　　 |::::::::|
　　　　 　 　 　 |::|ヽ;;}　　|:::::::|. |::::::| |::::::::|　|:::::::| |::::::| |::::::::::|　 　{;;/|:::|
　　　　 　 　 　 |::|　　　　|::::::::::||:::::::||:::::::::| |::::::::||::::::::||:::::::::::|　　　　.|:::|
　　　　 　 　 　 ＼｀-,__,-´ ＼::::::::::::::::::::::::::||::::::::::::::::::::::::::／ ｀-,__,-´／
　　 　 　 　 　 　 ￣|￣　　|　＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　|　 　 |￣
　　　 　 　 　 　 ／ |　　　　|　　＼::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　| 　 　 | ＼
.　　　　　　　 ／　　|　　　　 |　　　＼:::::::::::::::::::::::／　　　|　　 　 |　　＼
　 　 　 　 ／　　 　 |　　　　　|　　　　￣￣￣￣　　 　 | 　 　 　 |　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【アイシン精機】



　 　 　 　 　 ミﾐゝミ 　ﾐミ＼ミミﾐ/　 気 　人　 久 　 |
　　　　 ⌒ミ　 yミミ ミミミミゝ≧|　　が　 間 　し 　 .|
　　 ､　⌒ヽ、,ｲミミミ ミミミミＺミ|　　す 　に 　ぶ　　|
　　 ミ、ﾄﾐｚ､弋ミミミﾐ r=≠::::::::::|　　る. 　あ 　り 　 .|
　　　ﾉ｝ヾミミ、ミミﾐ,r彡ノ＿::::::::|　　 ：　　っ　 に　 /
　　 //ミミミミﾐｚゝ{彡´/戉ノ.:::::::ヽ　　　　た 　　 ／
　　｛｛ミミﾐ r=≠　彳.:::::....　　　　.:::＼ 　,＿＿_／
　　　 )ルﾐz､´ r介j}　.::::::::::.. 　　　.::::..}ノ彡ミミ
　　　　弋ﾐゝミ、 ´ |　＿ )　　 　 　 .:::.|彡´-三
　　　　　 ￣ヽ≠、 ｀⌒ｔ'::::::＿　　　.:::.|彡　-三
　　　　　　　　 　 ＼　　 〃´￣　　.::::/　}:.　-三／
　　　 　 Ｏ　　　 　　＼ 　 '　ミ::.. .::::/ 　:|::.　 ／
　　 　 |　ヽ 　　　 　 　 ＼ 　 ﾐzｲ／　　 |::　/ 　ニ
　　 　 |　　　　 　 　 　 /⌒ヽ―<　　 　 j:: /　　三
　　　 　 イ 　 　 　 　 /　　 三/　ヽ　ゝ/ /　＿三
　　 　 ／厂 　 　 　 /　　 三/　／⌒彳/／￣￣´
　　　　　　：　　　 ／　　 三/／　 　 　/´r彡´
　　 イ　　 ：　,. -/　＿-三/　　 　 　 /　彡
　 ／厂　　／　〈／＿_＞ ﾄ､＿＿＿_|　≠
. 　 　 ： ／　　　／ 　-三/　 　 　 　 | 彡
.　　　／　　　／　　―三{　　　　　　 | 彡
　　　　　　　　　　　　【ジェイテクト】

325：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/07(水) 00:48:27 ID:jYVdYrU20
以上トヨタ御三家でした。最強の名を持つトヨタを擬人化するにはやはり、
最強の存在たる北斗の男達がふさわしい。

326：安価のやる夫だお：2016/09/09(金) 06:32:53 ID:pF14kG/U0
豊田の元祖、自動織機さんは・・・

327：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/10(土) 00:09:44 ID:hFUwpKuQ0
>>326


,r-'"" '''''''''' ""￣（//／彡／;;;;／彡''";;;;;ﾊl|l|;;;从从;;;;ヽ　从;;;;ヽ､;;ノ｀''''''"￣￣｀'''''"´（
　　　　　　　　　　ヽ;;;彡彡;;;ｲ／／;;;;;;;;;;;;;;;;| l|;;;;从ヽ从ヽ从从;;;;;r'　　　　　　　　　　　 了
　　　　　　　　　　　ヽ彡;/;;イ彡;;;r''/;;;;;;;;;;;;;||;|;;;;;从;;;ヽ:::ヽミ､ミ;;;;j　　　　　　　　　　　　 |
　　す　そ　二　　　 l;;//;;/ /;;;;ノノ;;;;从;;;;;;;;|l;;;;;;l;;;;t､;;;;ヽミミミｰ:〈　　　　俺　　 ト　　　|
　　る　の　度　　　 |ﾂ/;; /;;;;//;;;;l;;;;| /;;ｲ;;;;|ll;;;;ヽ;;ヽ从;;｀' ､ﾐﾐミ;|　　　　に　　 ヨ　　　j､,,,
　　な　名.　と　　 　}ﾘ;;;::/;;;;ﾚ/;;;;;;;;;;|.|;;;;l::l;;;;|ll;;;;;;ﾐ;;;;ヽ从;;;;ミミ､::ﾉ　　　　言　　 タ　　　|;;ノ
　　 ぁ　を　　　　　　|;;li/;;;;ﾉ/;;;;;;;;|l;;;||;;;;;l||;;::从;;;;;;ヽ;;ヽ从ミヽミ;;ヽ　　　　え　　 の 　 　|;;;ﾂ
　　//　口　　　　　　〉ﾚ从从､;;;;从;i;l||从ﾘﾘ::::ヽll､;;;ヽ;｀'ミ､~' ､ミﾐ{　　　　っ　　 文　　　〉彡
　 ・・　 に　　　　　 /;;;|;;;||从从ｫｬ､;;;;t|;;::从l:|､从从ヽヽ;;;;;从;;;~''-|　　　　//　　句　　 （彡
　　　　　　　　　　　|;||;;;;;lllﾊ"ミ;;ﾓ-;与､;;ﾘ人;t;;;;;;;;从从;;;;;;;;;;;､-ミ;;{　　　 ・・　　 は　　　　/
　　　　　　　　　　　};l|;;;;l|　　　　｀~"'";;{::ﾄ　彡;;;;/;r't==;;=zz､､彡'<　　　　　　　　　　　/＿
　　　　　　　　　　　'､l|;;;i|　:::::::::::::::::::::::ﾐ l　 :::彡""''｀""''''''"~´　 :::ヽ　　　　　　　　　　,|::／
'ｰ､　　　　 ,,､ -ｰ '⌒ヽ;;;l|　　:::::::::::::::::::i l　 ,' 　彡;;;;;;:::::::::::　　　 ::::/;;|　　　　　　　　_,r'彡彡
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　(シ ﾘﾉ::/;;;;:::::｀'ｰ ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;~ '' ｰ- -r '";;;;;;;;;／､:::::::　｀' ､::　　 :::::::|;; |;;| |l |::| |:: |　:::
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　　　　　　　　　　　　　　　　【豊田自動織機】

328：安価のやる夫だお：2016/09/10(土) 06:03:55 ID:6VHUbCU20
乙ですた。

なんという修羅ぞろいｗｗｗ

329：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:00:39 ID:nEj6ybXY0
では番外編投下します。

330：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:00:56 ID:nEj6ybXY0


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　i　　　l　　. : :::::::rf_ノヽ:::::::: : : ′ . : : : : : .　　　　　　　｀ ＜:::::::::::::::::..､...:::: : : : :　　 l　　 l
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　l　　 弋. 　 : :::::::::::::::::::::::: : :　　　　　{lﾆ▽ﾆl}　　　　　　　　 　 　 　 ヽ:::::: : : :　 　 i|.　　 l
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人間が思考をするにあたって、その主要素たり得るのが頭脳にあたる。

医学の発達と共に、脳の行動原理や仕組みは現在凄まじい勢いで進んでいる。

331：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:01:26 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　 ll　　　ll　　　l! l!」」__∠＿　　}}
　　　　　　　　　　　｀ヽ､_ｊｊ,.-;;‐'''''-__,.－‐ ､ｒ'⌒＞ｒ‐_ ､,.‐＝＝＝=;､
　　　　　　　　　　　 __／ ii‐ ､｀´ ‐ ､｀ﾞ ｒ‐'⌒_ ＞<´｀ヽ `ｒ-､　　　　ﾞヽ
　　　　　　　　　　／　　　ヽ_ ｙ－ｧ‐''⌒ ー　''` )ヽヽ　{　 ヽ ヽ　　 　 }}
　　　 　 　 　 　,∠⌒ ー‐　､ﾞ ヽ,－-　､｀ヽーく　 （　ヽ.｀　 ｊへヽ　　〃
　　　　　　　　/ {　　`－､＿ﾉ, -―-､　 ヽ __ヽ ヽ　ヽ　 } ｒ'｀ヽ } }　〃
　　　　　..＿_,ﾍ　－ｒ ､　 {　 ,ゝ- ､　 ゝー ､__丶､ ＼_　 `{　}　}　Y´
　　　　 {{　./　ｒ'　　{　 ー' _(__　　 ｀ - ､＿_　　ヽ ‐ ､　ヽ ｊ｜ ﾊ　!
　　　　　`'''1　 ｊ　 , ゝ __ /　　　ヽ　　　 ヽ＿　 ﾉ　　,-ｒノ´ノ　} ｌ. lヽ
　　　　　　/Y´　｛　　　ゝ-― ､ ｒ ⌒　　　　 ｀ｙ－'' ／　　}ィ´ }/:ﾉ::}
　　　　　 /､{　{　 ヽ{_ /　 ｒ　ーﾍｒ　 〈, －- へ __ノ　 , ｒ'´　}､/::／7
　　 　 　 {　ヽ ヽ　　 ,－く＿　,.-'―　 }　 ﾞヽ　 }＼_ ｒ　ﾉ、 //_;::::::/
　　　　　 '､ ､_て `　ｒ ､　　 ー　　,. - '　　 ﾉ￣ __ノ`ヾ__　}く-:::::イ
　　　　　　 ヽ_l　ー ﾍ　丶､＿,　 (　　,　 /　ｒ ｲ　 / /　//7＞イ´　/
　　　　　　　 `, - _ { `７ _　ノ　　　てー（ _ ﾉ　_,ィ　 ゞｒ''"´　 ノ　,ｲ
　　　　　　　　 ヽ､　ヽ（　　⌒ｒ－- フ　/　　　 ﾉ_,.-'´ ﾞ＝ ≠=‐''/
　　　　　　　　　　｀ 丶ヽ￣　 ー -- ィ _∠-‐''´　　　　 ／　 ,／
　　　　　　　　　　　　　｀ﾞ''ー‐ｆー;‐'''"~　　　　　　　　/　_／

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それまで脳髄の研究については、実物が死んだ頭脳しか扱うことができず、
生きた頭脳をリアルタイムで観察し、どの分野がどのように動いているのかを
明確に判別するだけの研究ができずにいた。

332：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:01:38 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　,.:' : '　　　　　　 ＿　　 ヾv,;, ヽ
.　　　　　　　　　　/. : :　　　_　ﾄﾐー- . .　　｀ヾ'　ﾉ '.　,
　　　　　　　　　 ,: : : :彡イ:::/ ﾑ::::::::::::::::≧z_}j　'_彡::ｲﾊ,
　　　　　　　　　,イ:::::::::::::::::,'　　￣r＜ミ:::::::::ﾘ!} }::::＞彡
　　　　　　　　 ,ﾞ:::rー-､::::::{　　ヾ　｀＝ﾟ=ﾐ彡⌒'.叱ﾊ {　　　　　ゲームなど馬鹿者のやるものだ。
　　　　　　　　,:::::::} ハ }::::::j　＞ー=彡´: :´ 　 '. ∨;ｲム
　　　　　 　　 i:::::/ }ｖﾑ:!:::::｀彡::::／´　　 ./　,z-　i　ミ:::}
　　　　 　 　,ｲ::::ﾑ　ゞ:{ } ::::::::::::/　　　 ／　´　￣ヽ　 ';ﾘ
　　　　　,.ｲ:{::ﾍ::::ハ.＿)_:_:_:_:_/　　　　　　＞≡=ミ　　{
.　　　　/.:ﾊ:＞/´/////////ﾊ　　,彡='ﾞ -―＝＝ﾐ　｜_
　　　＞/,´//////////////∧}､_　　＿　＿＿__　 ﾉj!///≧x
　　　{///////////////////,|　　　　　／.:::::::｀ヽ　 '//////∧
　　　|///////////////////,|　　　　　￣ﾉ:::::::::'. 　 !////／/,{
　　 //////////////////// |ﾄ､　　　　 /.:::::::::::::'.　j/＞'////ﾑ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　【森昭雄】
　　　　　　　　　　　【日本大学文理学部体育学科教授】
　　　　　　　　　　　　　　　【専門は運動生理学】
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それ故に、さまざまな迷信やインチキ学者の台頭を許してしまっていることがある。

特に森昭雄教授が提言したゲーム脳などは、そうした実学研究に基づいていない根も葉もないインチキと言い切っていい。

333：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:02:24 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　,.,,,rｰ '⌒'''〜v-‐''⌒"''''y,,..,,,__
　　　　　　 ,ｒ'"⌒、' 　.(,,,__,r'”　メ、 `< 　゛v''"`ヽ,
　　　　,／i.､,,,,...　ﾞ""　 '´Y;;　　　　　　 ''､　　l .″"'ヽ,
　　　./ .,,r'"（,　ヽ!r-‐ _.ﾉ、　`'' 　 　　丿 ,ゝ　_,,） "`ヽ、
　　r''⌒."　,/⌒`Yﾞ",　y'　ノ　　　,,ノ　 '＼r!..,,,..）　..),,) ,）
　 r'^::,丿;i'".ﾞ、;;::..|;;:;...`Y ::^" 　 　`ヽ　 ...,,r'"⌒　 .⌒, ヽ
　 ! i;;_⌒　　 ｀ヾ.'ﾞ`'' ::ﾐ|,,.`r-　ゝ.、　''v'　 `ヽ;/;:i,,r'"`;:丿
　.l/;:: ;: ゝ;;,...,,,ノ入;;:: : :|. / 　 ヽ;;::ノ! -!'"`..,,ﾉ`　`ヽ!::）;;;i
　（ﾌ '"!" "　 !;; : ;__,, ;:::|r'　 ゝ- 　 v'" ::　　 ゝｰ-- |ﾉ::;｝
　 l,,-r' ;;,l,_､;;::'"`Y　''彡ミ("`ヽ;;:;,__;ヽ,,ﾉi;; :;:ゝ';;:;:'ゝ||;;丿
　 `ヽ;;:;:;:ヽ,!;;:;.,,,,人,-r'"`ヽ;;;,,__,,;｀ 　ノノ;;;,,_,y';:;;;:;;ノノ
　　　 .`ヾ;_,,;;r-〜'''_"＼／ "＿`''''〜-; ; ;---r'"彡"
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脳の研究が急速に進んでいるのは、MRIやCTなどの医療機器が発達したことが大きな要因である。

この結果、実際人間がどのように脳を使っているのかが、リアルタイムで把握できるようになっている。

334：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:02:50 ID:nEj6ybXY0
今回は「脳の原理」を科学的側面に解析し、その過程にて全ての水産生物の未来を変えた
一人の科学者について語る。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__ 　 ,.=ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ノ⌒¨´::::::::::＼__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　):::r=-‐　＾__⌒´ゞ:::::::::::::〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾﾍ　　〃⌒ヾ　ﾐ:::::::::::〈
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　vぃ　 ,.=､__ヽ　 }:::::::::::::.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛ ﾋ}__{　 }_ﾋﾘ＿{,.=､:::::ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　‘ｰｸ　､_ﾉ‐'　 　 ,ら}::::{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{ゝ　 　 ,，　　 f ｲ/´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｰ　　　 　 /　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ﾚﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ` ┬=彡,.≠ﾆニ｝｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｢{￣｛ﾆﾆニア: : :/: : ｀￣￣￣￣｀ぃ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -圦,.斗=*ア: : : :/: : : : : : : : : : : : : } : :.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃:/*ﾆﾆﾆア: : : : :/: : : : : : : : : : : : : : {:. :.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __／/:/=*ﾆニ/: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : ': : :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　f{: : : /:/ニ*ﾆﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : :｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|} : : ': ｉﾆﾆ*ニ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : :｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|{: :厶 |ﾆ=*ﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : : :｜
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【番外編　愛ある科学の伝道者】
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335：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:03:04 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　　　／{/(,. -‐-zノ）
　 　 　 　 　 　 /{/{::::::'::::::::::::::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　 {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..
　　　　　　　/^::::／{ﾊト辷彡＾ヽ）＼::::::::ヾ
　　　　　　ノ:::／　　　　　　　　　 　 ヽ::::::::､
　　　　　｛:::::/　　 　 　 　 　 　 ___　　 ﾐ:::::::,　　　　　一応私は江戸っ子なんだ。尤も、大戦中は群馬に疎開していたがね。
　　　　　 (::::|　 x‐- ､　　　 ,∠⌒ヾ　　ﾐ::::::{
　　　　　　｝:|〃⌒≧ぃ,　 〃￣｀ヾ､　　 ',:::::}
　　　　　 ｛::::″〃_,.二ヾ_｣{　x=ミ､}}＝‐-kく{
　　　　 　 {::::}/{{､ 　ﾋﾘ 厂 ､　　　ﾉ゛　　 んﾊ
　 　 　 　 ,ゝﾐ　 ､｀¨´ノ } 　 ｀¨¨´　"´　 kぅ }
　　　　　 {　ハ 　｀¨´ 〈{　､　　　⌒　　　У/
　 　 　 　 ヽ 込.　　 　 　 　 -‐'’　 }　 /ｰ'
　　　　　　　 `ｰﾍ　 　 ￣ __　　 　丿 /|
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 {__
　　　　　　　　　　　 ヽ.　　　　　 ／ -=ニﾊ＿
　　　　　　　　　　　 　 ` r―=≦≠´￣ : : : : : ＼
　　　　 　 　 　 　 　 　_斗=ﾆア´ : : : : : : : : : : :_:＿、
　　 　 　 　 　 　 　 　 {　|ア´: : : : : :_: : : -=ﾆ: : : : :｀＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 }／: : ,.　-=ﾆ : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　 ／,. : ´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : .
　　　　　　　　　　 /／/: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.

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今回の主人公、松本元は東京都大田区に生まれる。

だが幼少期は太平洋戦争まっただ中であり、群馬県館林市に疎開していた。

336：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:03:17 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　　　　　　、, ,
　　　　　　　　　　　　　　 ＠
　　　　　　　　　　　　　　　}
　　　　　　　　　　 　 　 　 {
　　　　　　　__､-‐==ミ≠"´⌒＾ヽ
　　　 　 　 ´ｱ::::::::::::::__,.x==ミ::::::::Y＾ヽ
　　　　　　 厶:::::::::／ x=-　　 ＞┘Kぃ
　　　　　　　{::::::〃　 {{ γ⌒ヾi|i|i|li　 〉}
　 　 　 　 　 ゝ.,{ｘ=-　　ゝ.,_,ノ　　　　 ‘`マﾆ=-‐=ﾆﾆﾆﾆﾆ=一'⌒ヽ_
　　　　　-‐=ﾆﾆ{{　γ⌒ヽ　　　　　　　 }　}ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヽ
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終戦後は東京に戻り、東京教育大学付属高等学校に進学するが、二年生の時に結核にかかり
手術を受けるほど重い病床にあった。

337：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:03:34 ID:nEj6ybXY0

　　　 　 　 __ｎ__　　 　 　 __ｎ__　　　　　 __ｎ__
　　 　 Π└t r┘　　.Π└t r┘　　.Π└t r┘
　　　　| | { ｏ r､>＿　| | { ｏ r､>＿　| | { ｏ r､>＿
　　 　 ∪　ｰ┘└っ）∪　ｰ┘└っ）∪　ｰ┘└っ）


　 　 　 　 　 　 ⌒>‐'⌒ヾ＜⌒
　　　　　 　 　 　 {:::;､::::::_,､:::::}＾　　 _,.　-‐ 丶　　　　まあ昔なら結核で死んでいたんだろうけどね、
　　　　　　　 /⌒{::ﾉ_ノ ＼_Ｖ}Τ￣: : : :f: : : : 〉　　　私は運が良かったから助かったよ。
　　　　　　　　 /＾r{-○○ｰト-|: : : : :_/ : : : /
　　　　　　 ι　 人}_＿_ノﾌ}ﾉ　￣´_/ : : : /
　　　　　　　 ι　　 ﾏ''' ´ / 　 ／｀{ : /| /
　　　　　　　＿＿＿企=='ｔ┬<: : Ⅵ:/: j′
　　　　　 rく : : : : :/: |｀ﾆ´ﾆ| : ∨ : |: :/
　　　　／: : ｝}: : :/: : |*ﾆﾆ*|: : : ＼:∨
　　 ／.: : : :.リ: :厶／| *ﾆ* {`＜_⌒ {
　／: : : : :／}: : ／ : ﾉﾆ**ﾆﾍ: : ::|: : :}
.｛ : ⌒マ´　 | : |: : :/ﾆニ*ﾆﾆﾊ:: :|: : :{
　＼: : : ＼　| : | : ｛ﾆﾆﾆ†ﾆﾆﾆ}: :|: : : ヽ

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その後は東京大学物理学部に進学。磁性体についての研究を行っていた。

338：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:03:50 ID:nEj6ybXY0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ‐─-､　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , -─‐- ,
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /.i　　　i ',　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'.l　i　 　.!∧
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　.l　 　 l　i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 i l　l 　 　l.　',
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 1　 i　 　 l　ﾄ､　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,.ｲ l　l 　 　i 　 l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l 　 l　 　 l　l　｀' .､　　　　　　　　　　　　　　,.r ´!　 l　l　 　 l 　 l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　!.　 　i　l　i_ !　! 　 　 　 　 　 　 　 　 　 !　!.._i　l　i　 　 l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　i　 　 l　l._　.i　.! 　 　 　 　 　 　 　 　 　 !.　i.　_.l　l 　 　i　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l　i_ !　! 　 　 　 　 　 　 　 　 　 !　! _i　l　l 　 　l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.! 　 　 　 　 　 　 　 　 　 !.　i.　_.l　l 　 　l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!.,　　　　　　　　　　　　 ,.!.　i.　_.l　l 　 　l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l　i_ !　! ｀ ｰ ，.,　　　　　,.，‐ ´ !　!.._i　l　l 　 　l　　l
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!._　.i　.!_i　　__ 　 i_!　i　_.!.　i　_ l　l 　 　l　　l
.　　 ○｀Y´○　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l　i_ !　! l.,_.l 　 .!r'´! !｀'r ! 　l._,.l !　!_i.　l　l 　 　l　　l 　 　 　 　 　 　○｀Y´○
_＿ . , 　| |　　　 　 　 　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!._　.i　.,r'=ﾆ二ﾆ=ヽ　!　_.!.　i 　_l　l 　 　l　　l 　 　 　 　 　 　 　 | |　 , .＿_
l 　 　 ｀ l l' r ､　　　　　　　　 l　　l　 　 l　l　i_ !　!._　.i,.ｨ ﾆ二三二ﾆ i.,i.　_.!　!._i　l　l 　 　l　　l 　 　　　　　　　, r 'l l ´　　　.l
|┬┬┬.ll┬┬ ，,　　　 　 　 l　　l　 　 l　l._　.i　.!|二二二二二二二二二|!.　i.　_l　l 　 　l　　l 　 　 　　　,， ┬┬ll┬┬┬ |
|┬┬┬.ll..l　.l_l_i__｀ ー─┬. l　　l　 　 l　l._　.i　.!|二二二二二二二二二|!.　i.　_l　l　　　l　　l .┬─ー ´__i_Ll.　l..ll┬┬┬ |
|┬┬┬.ll.二_l_l_i_i !i riiiiiiiiii.r.,|　　l.oTo.l　l　i_ !　!.─┬‐┬──┬‐┬─.!　! _i　l　l.oTo.l　　.|,.r.iiiiiiiiiir i! i_i_LL二.ll.┬┬┬|
|┬┬┬.lllr ＝｀'ーｭ_ヾiiii〆i,.|　　l 　l　.l　l　i_ !oTo.:..ll　 .ll　　 　.ll 　.ll. ll..:.oTo! _i　l 　l.　l　　.l　|.,iﾍiiiiッ_ｭー'´＝rlll.┬┬┬|
!┴┴┴.ll　‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐‐‐ｪｪｪｪｪｪｪｭl.,..l　l　i_ !　l:.:::.:.ll　 .ll　　　 .ll 　.ll. ll.:::: :l　! _i　l　 l..,.lｭｪｪｪｪｪｪｪ‐‐‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ll.┴┴┴!
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.￣￣￣.ll　　　　　　　　　　 　 　 　 l ￣ ￣ ￣￣ ￣￣　　　　　　 ￣￣ ￣￣ ￣ ￣.l　　　　　　　　　　　　　　　ll.￣￣￣.
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その後、東大から電子産業研究所（現在の産業技術総合研究所）へと出向するが、
ここで松本は物質物理学から生物物理学の道へと足を踏み入れた。

339：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:04:11 ID:nEj6ybXY0

　　　　　　 /⌒ﾆ=-　 へ.,＿__
.　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀
　　　 r: :´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　 {:::::::::::::::::::ノ^ｰ'⌒`ﾐ::::::::::::
.　　　 〉:::::::／´　　　　　　`ｰ::::::　　　人間の脳はまだまだ未知の領域だらけです。
　　　〈:::::::/　　　　 _＿＿　｀ﾐ::::
　　 　 :::::{　　{{ _／ｘ≦￣　　 :::　　　ならばその仕組みを解明できれば、脳とは何かを
　 　 　 ヾr=_､ゞ f⌒ﾏﾘ__}＿＿｝　　知ることが出来るのではないでしょうか。
. 　 　 　 rVfぃ⌒ ､　厂´
　　　　　 入ｰ｝　　　　　' ′
　　　　　　 ／　 　 　 　 、
　　　 　 　 ｀ ﾏヽ　　 ／
　 　 　 　 　 　 ､`￣
.　 ／〉　　　　　　.　　　　　　／
／　/ Λ　 　 　 　 ､
　　　 　 〉　 　 　 　 ｀¨ﾏ´
　　 　 / Λ　　 　 　 ,.斗　 T二
/　　 　 / ∧　　 　 ｛ニL.　｣ﾆﾆ
　　 　 　 / ∧　　／}ﾆﾆﾆﾆﾆニ
＿___ 　 / / Λ: ´: /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
＿_,ノ　　/ /／ : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/
＿_　 　/ ／.: : .:/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ :
　　 ＼／/: : : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ : :
￣ >､__ヽ : : : /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ : : :
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
松本は脳型コンピュータの研究を行っており、その過程の中で「脳とは何か」を追求することに興味を持った。

そこで彼は人体の中でも未知の領域といってもいい、脳の研究に携わることになった。

340：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:04:24 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　 　 　 　 ／⌒¨¨⌒ヽ､＿
　　　　　　　　　,. ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ　_＿__
　　　-―-　 .,_ﾉ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}´　　　｀ヽ
／　　　　　 〃:::::::::厂`ｰ=ﾆ=〜⌒ヽ::::::::.
　 　 　 　 　{{:::::::::/　　 　 　 　 　 　 ）:::::{
　　　　　　　ﾉ::::::::ﾄ＼　　ｕ　　　　／ﾊ::::::}⌒ヽ
　　　 　 ／ヽ:::::::::| ＼＼　　,　 ／／　}::/　 　 X⌒ヽ
　　　 ／　　　}::::::|／￣ｎヽ儿〃ｎ￣ヽ::{ 　　（_ﾉ
　　　　　　　　,ｘｰ{　 　 l l　厂{　l l　　 }'＾
　　　　　　　 ｛ r个 .,_＿_,ノ　　､_＿_,.ｲ'う }
　　　　 　 　 　 ､｛　ｕ　u　 　 、　ｌ|ｌ|i },ノ/
　　　　　　　　 ` ｰ 　　u　　 jﾉ　　　 r‐
　　　　 　 　 　 　 ﾍ　　　　　　　　　,
　　　　　　　　　　 　 ＿＿＿＿＿_/
　　　　　　　　　　　　ﾄ￣￣￣￣ ｲ
　　 　 　 　 　 　 　__ﾉ　＞--＜　 {＿
　　　　　　　　　／{ﾆﾆﾆﾆ｢￣￣}ﾆﾆﾆ}＼
　　　　　　　_／: : l*ﾆﾆ=└‐―┘ニ*|: : ＼_
　　 　 -=ﾆ /: : : : | *ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=* |: : : : :ﾏﾆ=-
-=ﾆ : : : : :/: : : : : |ﾆ*ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=*ﾆ| : : : : : V : : : : ﾆ=-
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ところが松本らは大きな壁にぶち当たる。当時の技術では生きた人間の脳をリアルタイムに把握するのは
困難であり、全てが手探りの中で実験と研究を繰り返すしかなかったからである。

341：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:04:36 ID:nEj6ybXY0


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だが代わりになるモデル動物ならば存在した。現在もそうだが、脳の研究においてヤリイカが用いられている。

ヤリイカは巨大なシナプスと神経軸索を有しており、神経・情報伝達研究において非常に活用されている。

342：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:05:14 ID:nEj6ybXY0


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　　ヽ ヽ　　. ｉ　 ｌ　　,>　 <／ , '>　.l　 　 　 .￣フ"`'､:_　''''　,ノ　　　　　　　　 　 l　 ''''　ﾉ,,..,　/○
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　　　　　ノ_ノ　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼. |::::::::::: 。 　 　 _,.-ーx,, 　 　 _,,,__　: ::::::::::::○:|　|　　　　　　　　.／＼
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　 `"　 `"　 `"　 　　　　　ｉ　 ｉ　　 　 　 　 { 　 ::|　 　　　　| 　　　　　 　 　 　 　/　 　 , ｲ　　　 :|　　　　　　 |　　　　　　|
　○　 ○　 ○　 　　　　　 ＼＼ 　　　　　 .l 　 :|、 　 　 　 ヽ　　　　　　　　　／ 　 ／　ｌ　　 　 :|　　　　　／ 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣
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しかしヤリイカにはとんでもない欠点があった。それは、人工飼育が不可能であったことである。

そもそもイカ類は飼育が難しい上に、ヤリイカは特にそれが困難であった。

343：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:05:34 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　　　　 ,．-‐―――､
　　　　　　　　　　,=-‐――ゝ､彡三ミ､｀ヽミヽ､
　　　　　　　 ,=‐'´､.　U,, ,-‐u　ij : : : :｀､ミヽ､　｀ヽ､
　　　　　　　i'⌒ゝ'//∠,,,,,,,,ｲｫ､: : : : : : : ミ､　｀ヽ､　｀､
　　　　　　,ｨ乏≧=〟,ｲ,"=ミヽ｀ﾞヾ: : : : ,ｲミ､　　　｀､　',
　　　　　人 ､ ヽ　_,〉癶辻-ノ入ｬ､_: : :ミヾ､ヽ､　　　 ｀､i
　　　 　 〉.:'ﾄ::ヽ〉'´...｀ヽ､ ｀‐ﾍﾍﾍ　｀i　ミ､｀ヽ､　ヽ､ ｀､ ',　　　　　　　　イカ類の人工飼育なんて不可能ですよ！　あれだけは絶対、
　　　　 乂77777ヽ　:: .　ヽ　　　　　〉ミ,ｨ-､　　､　｀､　､｀､　 .,ｲ　　　　飼育出来る生き物ではありません！
　　　　　)LLLLLLヽ :: :　. |　　　／ '´ｪｭ､ }､　　　　｀ヽ､　y'´,i
　　　　 / ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;} .,'::　 ::￣￣　　ノノ://　　ゝ､＿＿.,ノ　./ｲ
　　 　 / ;;;;;;r‐‐-､;;i ,'::　　::　　　　r'ソノ./ミ､＿＿_,．イ　／　i
　　　./ ;;;;;/　, '　 /,'::　　 : ﾉ　 ,ﾍ__,=イ´ﾄミﾆ二＿＿.,ノ´ ,彡'
　　 ﾑ＿_(　　　 /,'::　　　(_r' / ミヾ､i i i｀ヽ､　　　　　 　.,／
　　LLLLYヽ乏ﾉ　　　　　　　}　入ヽ､ヽ､　ヽ｀t､二彡＜＿_,ｨ
　〈,t-､ヽ､_.,イ　　　　　 ．＜´　,'ミヽ､｀ヽミヽ､　ミヽ､｀ﾐﾆ彡'´
　 {ｿcﾞ｀ヽ=‐'´　 .．ｨ＜;;;　　　 ,'ミ､｀ヽ､ヽ､￣ヽ､　｀ミ､　ﾌ
　 ゞ､心　｀´,ｨ＜'´ .;;;　　　　　iミ､ミヽ､ヾ､ヽ､ヽ､ミ､_彡'´
　　　￣}￣´;;;　　.;;;;　,=-‐―'´　＼＿ゝ､　.≧=-‐'´
　　　　 .',　／￣￣￣　　　　　　　 ＼￣￣

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刷り込みの研究者で、近代動物行動学を確立させ、ノーベル医学生理学賞を受賞した
コンラート・ローレンツですら「不可能」と断言したほどである。

当時の技術ではヤリイカを生きたまま確保する手段が非常に乏しかった。

344：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:07:58 ID:nEj6ybXY0

　　　　　　　ﾉし-≠=彡'
　　　 （_r匕::::::::::::::::::≪⌒
　　　 ノ::::::::::::::::_,x=ﾐ‐く`
　　 f´:::::::::::::／ u Ｊ　　ヽ
　　,ﾉ:::::::::::::〈/, ｕ　〃⌒'ぃ　　　　　　　　　　　　　　　　　ヤリイカが確保出来ないと実験も研究も難しい。
　（:::::::::::::::::::::ヽi||ｌｉ||ｌｉ　u j}|
　 ｝:::::::::::::::::::::::}|ｌ||||lｌ|li　∩　　 　 　 　 　 　 ,　-=ﾆヽ　　　これでは誰も脳領域の研究に携わることが出来なくなる。
　 乂:::::::::::::: '⌒ヽ-‐=＝{ |{　　　　　　　　／／ﾆﾆﾆﾆ　　　
　　　ゝ,:::::::::{ 'て　Uu,≠∪ﾞ＼ 　 　 　 ／ﾆ/ﾆﾆﾆﾆニ}
　　　　 ﾍ:::::‘ｰt　u{f⌒　ｰt-‐'　　__／ﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆ=ﾆ7
　　　　　 ｀＾`坏 uJ ﾏ^＾¨´　 __〃=ﾆﾆﾆ/ ﾆﾆﾆﾆニ/
　　　　　　_}＼|　＼　Ｖ:厂∠ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ ﾆﾆｰ=ﾆア
　　　　　　｀'ﾏﾆﾆ=-＼〈_（ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ ﾆﾆﾆﾆア
　　　　　　⌒ﾏﾆﾆﾆニ｀¨´ >ﾆﾆﾆニ< ﾆﾆニ／
　　　　　　／ ｀ﾆﾆﾆﾆﾆニ´ﾆﾆﾆﾆ ／＼_／＼
　　　　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ﾍ, ^>-‐ ´　 ／ﾆﾆ=　＼　　　　　　 ／
　　　／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ〈 〈 〈　r、　　ﾉﾆﾆﾆﾆ７=　＼ 　 　 ／ﾆﾆ
　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニニく_`ぅＪ＼)｀ア´ﾆﾆニ∠ﾆﾆﾆﾆうｰ／ﾆﾆニ
／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／´＼ﾆニニア　-‐'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ=ニ／ﾆﾆﾆﾆニ
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／　　 　 ＼ニ(／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ
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実験に使うのは当然ながら生きていたヤリイカの神経軸索やシナプスである。

だが何度も言うが、ヤリイカを生かし続けるのは困難を極めており、
非常に高額でヤリイカを買わなければならないというジレンマに陥っていた。

345：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:09:51 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　　,.==､_
　　　　　　　 　 　 ,f´:::::::::::::｀ヽ
　　　　　　　　　　{:f^辷彡ぅ::::::}
　 　 　 　 　 　 　 ':{ヽ　, -‐{:::::'　　　（だが何故ヤリイカは飼育できないのだろう？）
　　 　 　 　 　 　 〔{（ ）（ ）-うｿ
　　　　 　 r ^⌒)　　 〈　　 ,ｲ　　　　　（他の魚やたこなどは飼育出来るのに、ヤリイカだけが出来ない）
　　　　　　 ⌒ｰ〜_込 ﾆ´ｲ人_　　　　
　　　　 　 r‐=　rっ⌒i[＿]ﾆ=〉厂ﾆ=-
　　　　　f｛: : : {_-〉茶|ﾆﾆニ/.:{ : : : : :_:_ヽ
　　　　　|∧: :├｢｛⊆ヽﾆﾆ/ : } : : ／⌒/
　　　　　|: ∧/{圦‘ｰ'　}ﾆ/ : : {: 〃 : : /
　　　　　|/_/: :｀ ｰｧ- ､Х}＼: }:/: : : : ′
　　　　　{/ : : : : /ﾆﾆ<／: : : Χ: : : : {
　　　　 /: : : : : : }|ﾆニ＼: : : : : }:ヾ: : }
　　　　｛ : : : : ,.ｲ |ﾆﾆニ|:＼ : : : : : : /
　 　 　 ゝ　イ : } :|ﾆﾆニ|: : {＼: : : :∧
　　　 　 　 /: : :{ :|ﾆﾆニ|: : }: : `^ ´: : :.
　　　　　　' : : : Ⅵﾆﾆニ| :/ : : : : : : : : 〉
　　　　　/: : : : : .i|ﾆﾆ二|/ : : : : : : : ／
　　　 　 ＼＿＿_｣ﾆﾆニL_＿＿__／
　　　　　　 |ﾆﾆﾆニ=∩ﾆﾆﾆﾆニ,
　　　　　　 |ﾆﾆﾆﾆニ| |ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ,
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こうしてヤリイカの確保を行っていく過程の中で、松本はヤリイカは何故飼育不可能であるかについて
興味を抱くようになる。

346：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:11:08 ID:nEj6ybXY0




　　　　　　　　　 ／⌒ｰ=ﾆ⌒｀`丶、
　　　　　　 　 _ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::ｒ　⌒Yノ ,
　　 　 　 　 {::::::::::::::::::::::::::::::::〉〃ヽ|　 -
　 　 　 　 　 }:::::::::::::::::::::::_:::/ γ　}!　丶　　　　ヤリイカと他の生物との違いはいったい何だろうか？
　　 　 　 　 {:::::::::::::::::::::/ﾊ‐-=斤A　　　　　
　 　 　 　 　 ｝:::::::::::::::八ぅ　　 `´V　　　　　　　他の魚介類ではこういったことはない。
　 　 　 　 　 {:::::::::::::::／ ヽ　　　　 >
　　　　 　 　 ゝ::,.≠´ 　 　 　 ( ィ′　　　　　　
　　　　　　 /ﾆ=- _　　　 ､ 　　/
　　　　　/￣｀`' ‐=ﾆ=- 」 ｀¨´
.　　　　/ : : : : : : : : ｀`' ┴-､






::::::厂￣￣＼::::::::::::::::/＾′　 ヽ::::|
::::::)　　　　　 ｀￣￣´　　　　　 Ⅵ
／　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾘ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / }　　　　　　呼吸が出来なければ人間は生きていくことは出来ない。人間だけではなく、
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /,ｲ　　　　　　肺呼吸を行う生物ならばこれは皆同じだ。
　　Z二　_￣｀`丶､　　 　 ,　}ﾚ'⊥
　 "´￣　 　 ｀` ｰ-≧ｘ､ノ　'ﾞ〃＾}}　　　　　逆に言えば、こうした彼らに適した環境ではないからこそヤリイカは飼育できないのでは？
　　　　　 　 ／,斗ァ/＾Y　 __｛{　 |:〉
＿＿＿＿/∠...U/ ′ }}≠⌒　 ﾉ′
￣￣￣￣`マ￣ヽ:{ 　 ″　 　 Ⅵ
　　　　　　　 ｀゛　 ‘､_/　　　　　＼
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　′
＼　　　　　　　　 〈　　-‐＝' /
　 ＼　　　　　　　 　　　 ¨　/

347：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:11:24 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　 　 /:::::::::::::::::::::::::::::彡≠ミ:::::::::::::::::::}
　　　 　 　 ＼　 　 {::::::::/⌒｀¨¨¨¨´　　　　）:::::::::::::（
　　　　　　 ＼＼　　}:::::ﾄ､　　　　　　　 　 _L;;;:::::::::::::}
　　　　　　　　＼　（:::::::ｉ､:＼　　　　　　／:::イ:::::::::::/　　　　　もしかしたらヤリイカを飼育するのは不可能ではないかもしれません。
　　 　 　 　 　 ＼＼ヽ:::| ≫=ﾐ:､　x=≠≪´　|::::::::::;　　　　　　
　 　 　 　 ‐- 　 　 　 Ⅵ{{ 弋刈_{{／ｲナ}}==}ｧ'＾V　　　　　　　私の仮説が正しければあるいは……
　　　　＿ ＿ _　　　　 '人｀ﾆ´ﾉ}弍｀ニ´ﾉ　　/j /
　　　 ― ― ‐　　　　　{ハ｀¨´ﾉ　 ｀¨¨´　U r'_/
　　　 　 　 　 -‐　 　 　 ､.,_　 ヽ　　　 　 　 ﾊ‐=、
　　　　　　　 　 ／　　　　　 　 ｰこ ヽ　　 /　｝ﾆ}_
　 　 　 　 　 ／／　/ / 　 ∧　　　　　 ／ ／ニ{ :＼
　 　 　 　 ／ 　 　 / /　　/ 个 .,,___,.ィ　／ﾆﾆニ}: : :.＼
　　　　　　　　　　　 -=ﾆ/: : :|ﾆトミニイﾆﾆﾆニ/ : : : : : }ﾆ=-
　　　　 　 　 -=ﾆ : : : : /: : : :|ﾆ|　　　 |ﾆﾆﾆﾆ/ : : : : : : |: : : : : : : : : : ﾆ=-
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松本はとりつかれたかのようにヤリイカの人工飼育について研究するようになった。

348：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:11:41 ID:nEj6ybXY0





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　　　　　　　　　　　　　|_　 :│　　　　　 ／　∨((_____))　　　((_____)) ∨. ＼　　　　　 |　 : _|
　　　　　　　　　　　　　　 ) :　)　　 　 ／│:　:|⊂⊃ 　 _______ 　 ⊂⊃l　:│.＼ 　 　 (　: (
　　　　　　　　　　　　　／ :／ 　 　 .⌒ア|　|八　　 ／　　 　 ＼　　 八|　|マ⌒　　　 ＼: ＼
　　　　　　　　　　　　 ( :　( 　 　 　 .／ :人八　　 （　　　　　　　）　　 八人: ＼　　　　　)　: )
　　　　　　　　　　　　　＼ :＼ 　 ／: ／: : :＼:>､ 　 ￣￣￣ し´ 　 .ｲ／: : :＼ :＼ 　 ／: ／






　　　　　　　　　,=､
　　　　　　_ノ⌒ﾆ=ﾐ､
　　　　γ::／ __ノ 廴ヽ
　 　 　｛::::{ γ⌒Y⌒ヾ　　　ああ、また失敗してしまった。
　　　 （:::::ﾐ〃､__,ﾉう__人
　 　 　 `'rく　 {｛　 __ }｝ }
　　　　　{て ､ } } ´⌒r ┴ｭ、
　　 　 　 ｀¨＾`トL.,__广´⊂ﾆ)
　　　　　　 　 fﾆﾆﾆ{　　　 rＪ
　 　 　 　 -=ﾆ｀ﾆﾆ人　　丿 ト
　　 　 f´ﾆﾆﾆﾆﾆﾆニﾉ__frし┴,ﾆヽ
　　　　|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ ﾆﾆ}{ﾆﾆ圦ﾆﾆ
　　　　|＼ﾆﾆﾏニ/ ﾆﾆﾆﾊﾆﾆニﾏニ
　　　　|ﾆ=＼=}=/ ﾆﾆﾆ7={ﾆﾆﾆﾆﾏﾆ

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松本は試行錯誤しながら、ある仮説を持ったままヤリイカの飼育について実験を続けた。
だがノーベル賞受賞者ですら不可能と断言した生物の飼育は困難を極めた。

349：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:11:53 ID:nEj6ybXY0



　　　　　,．-―――――‐‐ 、
　　　　 ／ /　　　 　 　 　 　 　 ＼
　　　／　/ 　 　 　 ＿＿＿＿＿　＼
　 .／　　l　　　　／::: : : : : : : : : : :: :: :｀ヽ
　/　　　 !　　 ／:!: : :/|: /|: : : /､: ヽﾄ､: : :ヽ
　ヽ 　 　ゝ:／!: : : ﾚ　 ﾚ　|:／　　∨ﾍ:ﾊ!ヽ/
　　`'---|: : :.!: : ､|　　ｰ‐'' ´ ｀'ｰ　　｝: :.ﾄ
　　ﾐ　ﾐ　ﾐ : :!: : : |　 z=≡　　　≡z.{: : :|　　　　ﾐ　ﾐ　ﾐ
　/⌒)⌒)⌒.ﾊ:_: :| とつ　＼＼＼ C ヽ: |　　　/⌒)⌒)⌒)
　|　/　/　/:弋:_: | ＼ヽ　＿＿,.　　　｝: :|(⌒)/　/ / /／
　|　:::::::::::(⌒): : :|＼　　/　　　1　 ／|: ::| ゝ　　:::::::::::/
　|　　　　　ノくf⌒Y ｀　{_　　_,ﾉイ:::| .|: ::| ./　　）　　/
　ヽ　　　　/　 ヽ　ﾍ,､　　_｢　|::!::::::｝ |: ::|/　　　　／　　　　 バ
　　|　　　　|　　 l||l　从人 l||l.!::|ｲ:::ヽ_./ l||l 从人 l||l　　バ　　ン
　　ヽ　　　 -一''''''"~~｀`'ー--､/:::::ｲ;　 -一'''''''ー-､　　　　ン
　　　ヽ ＿＿＿＿(⌒)(⌒)⌒)　):::/｝　 (⌒＿(⌒)⌒)⌒))


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だが苦節三年かけてついに松本はヤリイカの人工飼育に成功した。

350：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:12:05 ID:nEj6ybXY0



　　 　 　 　 　 　 __ 　 ,.=ミ
　　　　　　　　_ノ⌒¨´::::::::::＼__
　　　　　　γ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
　　　　　　｛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
　　　　　 　 ):::r=-‐　＾__⌒´ゞ:::::::::::::〉　　　生物が生きられないということは、単純にその環境が適していないということです。
　　　　　　　ヾﾍ　　〃⌒ヾ　ﾐ:::::::::::〈
　　　 　 　 　 vぃ　 ,.=､__ヽ　 }:::::::::::::.　　　ならば何故それが適していないのか、その仕組みを解明さえすればいいんですよ。
　　　 　 　 　 ｛ ﾋ}__{　 }_ﾋﾘ＿{,.=､:::::ﾉ
　　　　　 　 　‘ｰｸ　､_ﾉ‐'　 　 ,ら}::::{
　 　 　 　 　 　 {ゝ　 　 ,，　　 f ｲ/´
　　　　　　　　　 　ｰ　　　 　 /　|
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,ﾚﾍ
　　　　　　　　　　 ` ┬=彡,.≠ﾆニ｝｀ヽ、
　　　　　　　　　　　 ｢{￣｛ﾆﾆニア: : :/: : ｀￣￣￣￣｀ぃ
　　　　　　　　　　, -圦,.斗=*ア: : : :/: : : : : : : : : : : : : } : :.
　　　　　　　 　 〃:/*ﾆﾆﾆア: : : : :/: : : : : : : : : : : : : : {:. :.i
　　　 　 　 __／/:/=*ﾆニ/: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : ': : :|
　　　 　 f{: : : /:/ニ*ﾆﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : :｜
　　　　　|} : : ': ｉﾆﾆ*ニ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : :｜
　　　　　|{: :厶 |ﾆ=*ﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : : :｜

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松本は実験を重ねていく中で、何故ヤリイカは飼育できないのだろうかというシンプルな発想の元で
ヤリイカの生態について解明していった。

そこで松本が発見したのは、ヤリイカが行動するに適した水質についてである。

351：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:12:44 ID:nEj6ybXY0


__　　　　　　　　　_,,.. -─‐- .､.._　　　　　　　　　　＿|＿＿ﾉ
　ヽ　　 . 　　　 ´　 　 　 　 ＿＿｀丶_　　　　　　 /　　　　 .ヽ
　　}　　　／　　　　　 ,．　 ´: : : : : : : : :｀ 　 、　　､＿＿＿ノ
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._/　　 ＼　 　　.／ : : : : :/＼: : : : : ∧: :､ : : !⌒/　　　/
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　　　＼　　　'{.: :/ : / ∨,,.__｀　 ∨　__,　 /ヽ}/　　　/
　　　　　　　　∨ ｲ |:〃ﾞ￣`　　 　 '⌒ヾ{ : :j/　 　 /
　　　　　ヽ　　　ﾏ:j！ ´´´　　　 　 ´´´ ; : /　　　/
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　　　 　 　 ∧　　./:ﾊ. 　 ｛　　 　 ,′　人:ヽ.　 /
.　　　　　 / ∧　/:/　丶、　､＿ノ　 ／　 ＼`く＼
　　＿__／_厶／; '　　 ＼_}＞ーr＜ヽ　　 　 >:ー-=:ｰ‥ ﾆ二 : 丶、
／,-─ｧ ┬─:‐ﾍ　　　　.}|丶、 ﾍ.l l　l　/　/:　＼ : :＼　　　　｀ヽ: ＼ﾍ
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`^　 .|: : |　　/: :/　',　　 /　ヾ､　//　　{　/＼: :＼ 　＼ : : :＼　　　/_／
　　　|: : |　／／ 　∧　/ 　　`∨/　　 ∨　　 ＼: :＼.　￣＼ :＼、
　　 .ﾉ: :ﾉ　|: :|　　/: :ト′　　　　　 　 　 Ｙ　　 　 >; : >　　　<: : : : >
　　<: :<__　ヽヽ ./: :/'; 　　　　　　　　 　 } 　 　<: : <　　　　　＼／
　　ノ: : :/／: /<: :<　 ! 　 .:::::.:.　 　 .::::.:.;′　 　.ゝ └,
　　`ヽ;/.」: ∠　＼:ヽ,| =- 　 　 　 　　 〈　 　　　 ＼/
　　　　　＼_/.　　 ＼:}　_. 　 　 　 　 　 {
　　　　　 　 　 　　　ﾉ　　　 　 　 　 　 │
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヤリイカは体内からアンモニアを排出する。広い海ならば濃度はさほどではないが、閉鎖された
水槽のような環境ではアンモニアが蓄積していく。

ヤリイカが飼育出来ないのはこのアンモニアが原因であった。

352：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:13:09 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　 /⌒ﾆ=-　 へ.,＿__
.　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀
　　　 r: :´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　 {:::::::::::::::::::ノ^ｰ'⌒`ﾐ::::::::::::
.　　　 〉:::::::／´　　　　　　`ｰ::::::
　　　〈:::::::/　　　　 _＿＿　｀ﾐ::::　　　　　　ポイントはアンモニア濃度を検出不可能なレベルまで下げることと、
　　 　 :::::{　　{{ _／ｘ≦￣　　 :::　　　　　　ヤリイカを常に泳がせ続けることです。
　 　 　 ヾr=_､ゞ f⌒ﾏﾘ__}＿＿｝
. 　 　 　 rVfぃ⌒ ､　厂´　　　　　　　　　そうすればヤリイカを飼育出来るんですよ。
　　　　　 入ｰ｝　　　　　' ′
　　　　　　 ／　 　 　 　 、
　　　 　 　 ｀ ﾏヽ　　 ／
　 　 　 　 　 　 ､`￣
　　　　　　　　 　 .　　　　　　／
　　　　　　 　 　 　 ､
　　　　　　　　　　　 ｀¨ﾏ´
　　　　　　　　　　 　 ,.斗　 T二
　　 　 　 　 　 　 　 ｛ニL.　｣ﾆﾆ
　　　　　　　　　　／}ﾆﾆﾆﾆﾆニ
　　　 　 　 　 , : ´: /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
　　 　 　 . : /: : : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/
　 　 . : ´: :/: : : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ :
_,. : ´: : : :/: : : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ : :
: : : : : : :/: : : :/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ : : :

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この原因を突き止めた松本は早速大型の水槽と、
アンモニアを分解するバクテリアを投与することで「不可能」と呼ばれた
ヤリイカの飼育に成功した。

353：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:13:21 ID:nEj6ybXY0


　　　 　 　 __ｎ__　　 　 　 __ｎ__　　　　　 __ｎ__
　　 　 Π└t r┘　　.Π└t r┘　　.Π└t r┘
　　　　| | { ｏ r､>＿　| | { ｏ r､>＿　| | { ｏ r､>＿
　　 　 ∪　ｰ┘└っ）∪　ｰ┘└っ）∪　ｰ┘└っ）


　 　 　 　 　 　 ⌒>‐'⌒ヾ＜⌒
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　　　　　　　 /⌒{::ﾉ_ノ ＼_Ｖ}Τ￣: : : :f: : : : 〉　　　　　
　　　　　　　　 /＾r{-○○ｰト-|: : : : :_/ : : : /
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　　　　　　　 ι　　 ﾏ''' ´ / 　 ／｀{ : /| /
　　　　　　　＿＿＿企=='ｔ┬<: : Ⅵ:/: j′
　　　　　 rく : : : : :/: |｀ﾆ´ﾆ| : ∨ : |: :/
　　　　／: : ｝}: : :/: : |*ﾆﾆ*|: : : ＼:∨
　　 ／.: : : :.リ: :厶／| *ﾆ* {`＜_⌒ {
　／: : : : :／}: : ／ : ﾉﾆ**ﾆﾍ: : ::|: : :}
.｛ : ⌒マ´　 | : |: : :/ﾆニ*ﾆﾆﾊ:: :|: : :{
　＼: : : ＼　| : | : ｛ﾆﾆﾆ†ﾆﾆﾆ}: :|: : : ヽ
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こうしてヤリイカを大量に確保できる手段を得たことで、松本は本来の研究である
「脳の仕組み」についての研究に戻った。

354：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:13:35 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　　　　　　rt-r‐ｭ-ｭ､__
　　　　　　　　　　　　　,ヘ＜ .i i　'　/, r‐ﾞヽ､
　　　　　　　　　　　　 / /ミヾ､V/,,,ﾉﾉ,'彡〉 .λ
　　　　　　　　　　　 .〈ヽヽﾞ｀｀｀｀"""""´7　/,'!､　.,ｨ.,
　　　　　　　　　､ﾄ､_ノノノ　　　 u　　　 〈､__y=-'´彡´　　　馬鹿な、どうやってヤリイカを飼育しているんですか？
　　　　　　　　 ﾄミヽ-‐'´|ﾞﾞｬ､＿,　､_ｨ=孑ヽ､彡'´ 彡´
　　　　　　　　_',　｀‐-　 ｢代__ﾉﾄ＝廴_ﾉ'ﾐ j /ミﾆ彡7　　　
　　　　　　　　ﾍミﾆ＝　入´　ノﾄ-iっヽ､__/ﾉヽ-‐彡ｲ
　　　　　　　　　≧､彡'´　｀Y´‐≧≦‐'　 |i ヽ､＿,ｨ'´
　　　　　　　　　 　 ｀ヽ､彡' ゝｫ､　　　 ／|ミ＿ノ
　　　　　　　　　　 　 　 ｀ﾞゞ‐-| ｀ゝ-ｲ　,┴､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,イ´｀ヽ ;: 　 /'｀i　}｀ヽ､
　　　　　　　　 　 _＿_＞ｲ:::/ |'｀ゝ┐r' ／|　|::::::',｀=‐-､＿
　　　　　　,ｨ"´￣　　　 /::::|ノ＼＼__／／｀ﾞﾞ',:::::::',　　　　 ｀ゝ､
　　　 　 ,ｲ　　　　　　 /:::::i　　　ﾞ{: : : }, '´　　i::::::::',　　　　 /　 ',

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だが自ら不可能と断言したローレンツは当初これを信じなかった。

355：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:13:52 ID:nEj6ybXY0

/ ,'　j　　,ｨ彡'.／,ｨ―=､ ､＼　 ',　 　 　 }
　j　'　ノ´　／／　／三ミヽヾ､ ij　,ﾆﾐ､ |
｀￣彡'´./'´'´　／ミヽヾヾヾゝ〃彡ﾍ､　|
｀￣´　./ 　 r'´;　　　　　　　　　　　 |､ .}　　　 ,
､ 　 ／　 　.|::　　　　　　　　　　　　 }ﾐ} |　　 ,ｲ|
､￣　　　　.八,,､　　　 　 　U　　　 ,,jヾ､＼__ﾉj }　　　　　ドクトル松本、あいにくですがそう簡単に私は信じませんよ。
:{｀ヽt-ｨ'＜;; 　＞=､,,,,,　ヾ　〃 ,=彳}ミﾆ=彡'ｼ/
:{ ',　K |:::: 二彳.rｨ少ﾄミ､＿__ｨヌﾉ.ﾉ}ミ､_彡' /　　　　　　科学者は簡単に「不可能」を断言しない。
ｼﾍヽ｀ |::::　彡八ﾞ‐-彡'｀Y‐‐ｉﾑ彡'./､｀彡ノ/　
彡'ヘ_ ﾍ:::.　　　 ｀二彳__|:＿|､＿/｀`‐ ,彡'　　　　　　　ですから本当に飼育出来ているかどうか、この眼で確かめさせてもらいます。
,＞-' {　ヘ､＿,ｬ'´　　 ヽ､.＿jｲ/ミﾆ彡'
;;＼ .人　　　{　ﾄｪｪｪｪｪｪｪｪｲ/´ヽ-‐'
;;;;;;;;＼. ＼　　i {ﾍ　ヽ }:ﾐ::://
;;;;;;;;;;;;;;＼. ＼ ', ゝゝ-.':::ﾐ//
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼ ﾍ ', ヾｪｪｪｲｲ
ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍ个､_｀‐‐‐'/
　ヘ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍﾇ　｀‐―'
　　 ヘ;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍ ∨





　　　　　　　　　x=ﾐ-<⌒
　　　　　　⌒>':,､_::::::;､'┐
　　　　 　 ／{::{_ノ丶.,_}::}　　　　　　　　　　　は、はあ……どうぞ。
　　　　　　　 ｈ}○ｧ○ｈ′
　　　　　 　 人{　ヽ iiiir'､　　　　　　　　　
　　　　_,.　 -‐∧cっ//|: }‐--‐　　　､
　　　/: : : : : /: ﾊ壬t'=|: ∨ /: : : : : :}i
. 　 /: i : : : /: /*ﾆﾆ*=|: : ∨: : : : : :ハ
　 / : ﾍ: : : ＞!=*ニ*ﾆ|:_／: : : : : 〃: : .
. / : : : ﾍ: : |: :lﾆ*ﾆ*ニ|: :＼ : : : : {: : : : ヽ


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そこでローレンツは来日し、松本が本当にヤリイカを飼育しているのかを観察しつづけた。

356：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:14:07 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　　,=-‐―‐-=､　　　　}｀､
　　　　　　　　　　,・'´'´,ﾆ'´￣,ﾆ=｀ヽ､　ﾉ } |ｲ,ｲ
　　　　　　　　　r´/ r彡'　,ｨ'´彡ﾆミ_,ｿ´　 ﾉ,' ﾉ ,
　　　　　　　　　j ,'　j´ , ／ ´　,ｨ'´　 _,ｨ≦,' //ｲ ,　　　　　　　どうせ生かし込んでいるだけでしょう。ならばそれを暴いてみせます。
　　　　　　　　r' ,' ,','　/,' /　／/,ｨ彡三_ノ ,彡'/ｲ
　　　 　 　 　 入//'´'´""'´彡//ﾆヽ彡'´彡'彡'´＿＿
　　　　　　　//i　ij　　u　:: 　o〈´｀!!j彡_彡'´＞'´ |.　　￣｀ヽ､
　　　　　　　ﾘ　｀ヽ､,,　 ,,ｲ､'彡 i: : ､´｀~´ ／/　　i　　　　 /´ ＼
　　　　　　　｀ゝ 　　ヽｲ込ｼ__ノ ij　 〉､.／ ./　　 i 　　　　i　　　 ｀､
　　　　　　　　{　 ij 　 |-!っ,-‐､､　 /､/　 /　　　i　　　　,'　　　　　∨
　　　　　　　 　 　 　 └´｀ﾞ'´ﾓﾝ　 i_,ｲヘ/　,ｨ'"´　　　 ,'　　　 ::::::... ∨
　　　　　　　　　　ij　　 u ij　 ｀~ﾗ'´〈 |;;;/|　｀ヽ､ .,::　　i　　　　:::::::::　i
　　　＿_　 (｀ヽ､　　　　　　　　 {　 / |-{/　　 / ,':::　　i　　　　:::::::::.　',
　　__|_ ノ　 ｀tﾞ .i　　　　u　　　　｀､|　|;;;i　　 / ,':::　　 ,'　,ｨ　　:::::::::　　i
　 { -ｲ人_／　　｀i　　ij　　　　　　λ |;;;i　 ./ .,':::　　,;: .::/ : 　　:::::　　 |
　 ,ゝ'´7　,'ヽ､::::::::',　　　　ij　　　 〈､',.|;/　/:　i:::,'　,'::ぇ/　:　　　::　　 .:',
　 ヽ､ｲヽ,-､　｀⌒人t､　　　　　　 λ',ii　/::i　i::,'　,'::.〈　 ::　　　　　　 :::}
　　　⌒〈 ｲ ｀　_,ｲ　}.i ｀ヽ､　　　 r'´｀.',i/　　 i:,'　,'::　∨　:　　　　　　:: i
　　 　 　 ⌒￣ﾄ､　/ i　　　＼__,人ミヽi　　　i:,'　,'::　./　 :　　　　　　::　|
　　　　　　　　 ',ヽﾐノ　　　　　}{　　　ヾ',　　 ,'　,'::　/　　:　　　　　　.:: ,'

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ローレンツは一週間水槽を観察し、検証し続けていた。

357：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:14:22 ID:nEj6ybXY0


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　　　ｌ＿＿ ∨./: : :|ｉ : :l　　ヽ : !　 ′ '／|/　|　　　 |　 　|
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　　　　　|: : :l: : :| ` ー------─┬,.　" ＼: : : : : :ヽ￣＼ : :＼__ ￣|: : : : |
　　　 　 l: : : !: : :!: : : : :/　 ＼:＼ |:::|　　　 ＼: : : : : ＼　 〉: : : :/　　￣￣
　　　　　|: : : |: : :＼: :/　　　　＼::::/　　　　　 ヽ　　　　　 ＼: /
　　　　 ﾉ: : : :＼: : ::＼　　　　　　　　　　　　 　 |




　　　　　　　　　 ＿　 　 r―‐-ミ
　　　　　 ＿_,／　　/￣/　　　　廴
....　　　r┘／　 ,,／_,／　ー=≦「￣＼
.　　r‐〈　,.　 'ﾞ´　　　 ` =-　__,,,..　-‐=‘:、
　 　V　〉 　 　　U　　　　　=-　　　,,..　 -≧=‐-
　 　 ｀7　　　　　　　　〈　　　=-　‐=ﾆ二　　　　　　　　　　　　信じられない。本当に飼育出来ている。
　　　 {　（V）,,,...斗-‐　 〉 　u __=-/｀ヽ　ー=ﾆ二
　　　　　- 　 `ーr===≦＿__l 「 / }ん }　　　　　　　　　　　　　もしかしてこれは……
　　　　 レヘ ＿ {γﾊハ}=　　:| 　 ）ﾝ:ﾘ ／／
.　 　 　 んrYY ,人_ ノ ノ=. 　 ,′　　ノ
　　　　 乂__LL　ﾉ 〔＿＿__／　し ／／
　　　 　∧_／廴　-　 ノクヽ、 }ア　ｨ
　　 　 /　丶　ーr=≦Vハ/} l /　/
　 　 　 　 　 ＼u∨::::::（＿_} /　/
　　　　　　　　ハ｜/ ゝ--ﾘ/　/
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　　　　　　 　 　 ≧=‐-/　　/　　　/
　　　　　　　　 /　　　/　　/　　　/
.　　　　　　　 /　　　/　　/　　　/
　　　　　　　/　　　/　　/　　　/
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　　　　　　 ｝　　　　　|　　　/
　　　　　 / ｝ 　 　 　 l 　　/

358：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:16:12 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　　　　　　　rt-r‐ｭ-ｭ､__
　　　　　　　　　　　　　,ヘ＜ .i i　'　/, r‐ﾞヽ､
　　　　　　　　　　　　 / /ミヾ､V/,,,ﾉﾉ,'彡〉 .λ
　　　　　　　　　　　 .〈ヽヽﾞ｀｀｀｀"""""´7　/,'!､　.,ｨ.,　　　　　　ドクトル松本！
　　　　　　　　　､ﾄ､_ノノノ　　　 u　　　 〈､__y=-'´彡´
　　　　　　　　 ﾄミヽ-‐'´|ﾞﾞｬ､＿,　､_ｨ=孑ヽ､彡'´ 彡´
　　　　　　　　_',　｀‐-　 ｢代__ﾉﾄ＝廴_ﾉ'ﾐ j /ミﾆ彡7
　　　　　　　　ﾍミﾆ＝　入´　ノﾄ-iっヽ､__/ﾉヽ-‐彡ｲ
　　　　　　　　　≧､彡'´　｀Y´‐≧≦‐'　 |i ヽ､＿,ｨ'´
　　　　　　　　　 　 ｀ヽ､彡' ゝｫ､　　　 ／|ミ＿ノ
　　　　　　　　　　 　 　 ｀ﾞゞ‐-| ｀ゝ-ｲ　,┴､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,イ´｀ヽ ;: 　 /'｀i　}｀ヽ､
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　　　　　　,ｨ"´￣　　　 /::::|ノ＼＼__／／｀ﾞﾞ',:::::::',　　　　 ｀ゝ､
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　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾉv―=彡‐-ﾐ
　　　　　　　　　 　 x＜⌒ヾ ￢　　x==彡:::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　／　　　}　 }　 ト<´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　 ／　　と__ﾉし（_／　}⌒)^`辷,彡'＾´｀`丶､:::::::::`ヾ
　　　 　 　 ./　　　　　/:::::::::(__／ '´ 　　　　　　　　　　ﾐ:::::::::::::}
　　　　 　 /　　　　　/　　　 ／:/ ,. ',.ﾆﾆヽ　 ∠ﾆﾆ､ヽ ﾐ::::::::::::{
　　　　 ／　 　 　 ／　 　／1:::{ {／≠= ､　 x=≠ミ ＼｝}:::::::::::}　　　何でしょう？
／＼／　 ‘ｰ-‐'´_,.　-‐'　　 {:::{〃二ﾆヽ}}-{{∠ﾆ二}ﾄ､ ﾉ:::::::::/
ﾆニ=＼　　 　／　　　　　　　}::圦､__ﾋ}ノﾉ⌒ ､ﾋ}＿,ﾘ＼{:::::::::'
ﾆﾆﾆﾆﾆ＼,.イ 　 　 　 　 　 γヾ} `ｰ-‐'ﾉ　　`ｰ-‐''　　 j>‐く
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ>'　　　　　　　　 { fう　　　〈{　　　　　 " '　 ,.イ） }
ﾆﾆﾆニ=／　　　　　　　　　 丶.,_{　　　　　　　　　 ij　ん,ノ /
ﾆﾆニ／　　　　　　　　　 　 　 　 ',　　　｛｝　　 　 　 /ｰ-‐'’
ﾆ=／　　　　　　 　 　 (⌒ぅ､-‐　 ′ 　 ｰ　　　 　 ｲ
／　　　　 　 　 　 　 ‘ｰ^ー ' 　 　 i:.　　　　 　 ／｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_|个ｧｧｧｧ=彡'　 ﾄ､
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 f ┴―――――┴}

359：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:16:30 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿,ｨ‐⌒ﾄ‐--､＿__
　　　　　　　　　　　　　　＞'"´ゝ､　{ | }　／,ｨ´　.,＞､_　 　 　 　 　 ,ｲ
　　　　　　　　　　　　 ／ ‐-､｀ヽ､ヾ､i !//ﾉ／／∠-‐ﾗ＼　　　　 ノ |
　　　　　　　　　　 　./　／三ミﾞﾞﾞﾞヽ､,,　,,-=ﾆﾐ=ﾆﾍイ´ /入_ .,ｨ‐'´/ .} /}
　　　　　　　 　 　 .r´､〈彡´,-‐'´｀ ﾞ ミﾆ"´ ,,=＝･,,｀ヽ＿,ｨｰ´-'´ ﾉ　j/ .|　　　　　　私は今ここに奇跡を見ました！　不可能とされたヤリイカを
　　　　 　 ﾄ､　　　 }ヾヽ)'´'´,,;""⌒ヽ : : :,ｲﾞ　　　　ﾞヾ{ミ三彡-‐'‐'´ﾉ　ﾉ ,ｨ　　　　　ここまで元気に飼育出来るなんて、夢にも思わなかった！
　　　　　N､ ミー-┴'彡j',,;・"　 __　　.,-ｰ､´ ,ｨ-‐-､　 ﾞ!｀‐‐=ﾆ二￣_／イ |
　　 　 ﾄ､i､　　｀‐-‐ﾗ彡{"　 ,ｲ彡ミ､/ i⌒i∨{::ｲ~ｬ､ﾞv‐Kヽミヾ=ﾆ二　 　 /
　　 　 i　｀ヽ､二=彡'rヘレﾍ{;;;,廴ﾉﾉ.},ｨ-‐t､j､.辷彡ノﾐヽ} }三二ﾆ-―‐彳'´|
　　　 iヾ､　　｀‐-‐‐'{ {ﾞ〉'彡ヽ_二彡ｨｲ.ﾄ-ﾍiゝ､＿´"　 ｀.| |ミ､二＿＿‐'´ ノ
　　　 ﾄ､ヾミ＝=彡' .| i .|　／　,ｨ‐'´　{´,ｲﾄ､〉　-‐ミヽ､ .ﾉ人ヽ-‐'´　　￣ノ
　　　　 {ミ､二彡'´ 八｀ゝ､　／r-‐‐--‐ｰ‐ﾆ==ﾃﾗ' }　Yjﾉ　ミ三二ﾆ=彡ｲ
　　　　 .＼＿＿二彡ヽ　.ﾍ´　{ ヽ┴┴┴┴ｲ"7´ｨ┐|_}ミヾ､＿二彡 ／
　　　　大￣　 ﾗ-､彡'´＼__}　',(￣｀‐/⌒⌒⌒￣_,ノ .jヽ､ミﾆ__｀ヾ,ｲ‐ﾇ　 (⌒ヽ
　　　　　｀＞'´｀ヽｼr‐‐､　　ﾍ.　 ｀‐ﾗ-/　 X　ヽ"ヽ;／|ヾ　 .r‐､ﾆ入´　.＼ヽ´　＼
　　　　　/ﾞﾞヾ　ｨｿ"｀ヽ/./⌒Yヽ((　(＿__,/三ﾒ､__ノ ﾉﾉiｭ_＿{,-‐∨ﾆA　""ﾍ.|　⌒|
　 　 　 /　　 //ﾞﾞヾ　//...⌒//⌒i｀ヽ､ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ　_/::: .:::/--| ﾍ　　∨;;;∧　　|i　　 .|
　　　 ./　　 //　　 ｲ./　　/ .i　　}　::　｀￣￣ﾞﾞﾞ　 ::　 |　　∨ﾍ　　∨;;;;;|　　.i|　　 |
　　 ∨　　　ﾘ　　 .//　　./　j　　.}　:: 　 ;;;::::::;; 　 ::　 :|　　 {　 〉　　.);;;;;j　　 '｀　　}







　　　　　　　　　　　　　　 ,=＝‐'´￣｀ﾞヽ､　　　 　 　 ,ｨ
　　　　　　　　　　　　　　／,ｨ'´,彡'´⌒ミヾ､｀ヽ､.　 　/ |　 ,　　
　　　　　　　　　　　　 ,ｨ´／／　　　　　　　　　　入ノ .ﾉ／i　,　　　　　　
　　　　　　　　　　　　 〉""〃-イ彡'´イヽ､__,ｨ彡'´ノ ./´　/ノ|
　　　　 　 　 　 　 　 /⌒.::::::　 彡'´ ,　　　　　 ,ｨ彡'´ ,ｨ .´ノﾉ　　　　　　これで我々はより、具体的に水産生物の仕組みを理解することが出来る！
　　　　　　　　　　　/ﾞﾞﾞヾ;:::　　　｀ヾ彡､ﾆ三彡'´　,ｨ'´　／/i
　　　　　　　　　 　 irt‐､,=-‐⌒Ｏ＝彳r⌒∨彡'´　 ノ 彡'ﾉ,　　　　　　私も認めます！　あなたは不可能を可能にしたんですよ！
　　　　　　　　　　　}|) } ﾉ〓,　　 ﾉ:::.　 ))ヽ.}三彡'´　'´ノノ/
　　　　 r'´i　　 　 /｀7ゝ‐-=､_／ :::　　リ´/ミ=-‐'　／／ノ
　　　　 },. }　　　 辷つ　_,ｨ‐､.}; ;　　　 ゝｲミ､｀ヽ､__,ｨ'´／ﾍ
　　　　 |.　',. 　　　　ﾋｨﾆｨ'"´);: ;　　　 };.　｀ヽ､＿＿／　　 ∨
　　　　 ',ﾞﾞ　∨⌒).　　 　 　/　　 ', 　.ﾉ;;::.　 　／／　　,=＝=∨
　　.,ｨ‐‐ﾑ;;,. }''　{　　　　 ／　　　 }／..　;;　／ ,ｲ,ｨ´￣　 　 　 ∨
　　_|　Y_ﾉ=/ 　 |　　 　.(,ｲ　　 ／::::::　　.;/　/　/　　　 　 　 　 ∨
　 ,|.L＿_)'´　　 .〉　　　　.ゝ-彳´⌒｀ﾞヽ./　/　/　　　 　 　 　 　 ∨
　 |＼_,ｲ､　 　 /　　　　　　　　　 　 　 /　/　/.　　　 　 　 　 　 　∨
　 ＼/　　　　入　　　　　　　 　 　 　 }　/　/ 　 　 　 　 　 　 　 　 ∨

360：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:16:42 ID:nEj6ybXY0

　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ､_＿__r.、　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　 ､__ノ⌒::::::::::::::::ヽj) 　 　 　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　 r`::::::::::::::::::::::::::::::⌒ヽ　　 　 　 　 　
　　　　　　　　　　　　　／::::::ノ⌒`辷彡＾'==ﾐ:::::::､,　　 　 　 |　　　いやいや、大げさですよ。私はただ……
　　　　　　　　　　　 　 {:::::〃　　　　　　　　　ﾐ:::::（　　　　　｜
　　　　 　 　 　 　 　 　 }::::{ x=≠=　　 ｒ≠= ､ ﾐ:::::〉　　　　　　
　　　　　 　 　 　 　 　 （::::{''　x≠x､__x≠=ﾐ ` }ﾐ:ﾉ　　　　　　 〉
　　　　　　 　 　 　 　 　 Vﾚ'{x==､ }T{ x==､}㌧ﾐ:'　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　 { ﾊ　､___ノﾉ}　､__,ノ　kう}　　　　　 　 |
　　　　　　　　　　　 　 　 ､', 　 ,　ヾ{　　 ., 　 ﾘソ　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　 ′｛ ﾏﾆﾆﾆつ ｝ ′
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 ー　　 /　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 _}､　　　　　ｲ　　　　　　　　　　　　 ｀_つ　へ
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 f´ﾆ=≧==≦=ニ}、　　　　　　　　　⌒ｰ一'　　 ｀ ｰ――
　　　　　　　/＾! /＾!　　 / ）!､ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニﾉlト　.,　　　　　l＾ ,　l＾ , l＾ ,
　　　　　 　 |　|_|　|-‐ / / !! ｀ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ´*||╋|| ｀`ー-　|　|　|　| |　|
　　　 （＾ﾏ冖　| |　|　./ /=.||ﾆ*ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ*:||==||　　　　　|　|　|　| |　| ./ ）
　　　 ,ハ　'J　Lｌ　し'　｛互||ニ*ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ*=||互||　　　　　|　し'　 Ll　|/ /
.　　 / 　 ヽ　"´￣￣｀ }=／⌒).*ﾆﾆﾆニ*二||==||(⌒＼　 ｛　"´￣￣｀ /
　　/ 　 　 }　　 　 ／⌒´　／ﾆﾆ*ﾆﾆニ*ﾆﾆ||╋|| ｀丶　＼}＿　　　 　∧
　 ハ　　　{　　　 ｛　　　／||ﾆﾆニ*ﾆﾆ*ﾆﾆ=||==||　 　 ＼　　　 ヽ　　 } ∧
　 　 丶 　 ゝ.,　　　　ィl|互||ﾆﾆﾆﾆ*_*ﾆﾆﾆ=||互||　 　 　 ＼　　　　_,ノ/
　 |　 ＼ヽ.　r‐}＿＿ﾄ ||==||ﾆﾆﾆ＿「l＿ﾆニ||==||　 　 　 　r｀T＿__ﾄ //　 |
　 |　　　Ⅵi |ﾆﾆﾆﾆニ}||╋||ニ=└┐r ┘ニ||╋||　　　　　 |ﾆﾆﾆﾆニ}/　　|

361：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:16:55 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,=‐'⌒'｀ﾞ`ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r‐ｲミ､ ｀､/ ,' ／⌒i､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.,ｲ彡'⌒ヽ､i , ,' , ',=､‐ｲ､　　　,
　　　　　　　　　　　 　 　 ﾄ､　　/ ,ｨ彡ミ､ヾｉｉ//／,ｨtヽ｀､}　 ,イ,ｨ
　　　　　　　　　　　　　 i､| ｀ﾞ彡'彡´:: 　 　 　 　 　 ::',｀ﾞ‐'"´　 ,イ　　　　　　いいえ、断言します！　あなたの研究は間違いなく、
　　　　　　　　　　　　　 ﾄ､二ﾆ=r‐iﾞヽ､　 　 u　　　 ,ｨﾄ､彡'´ノ ノｲ　　　　　水産生物の未来を変える！
　　　　　　　　　　　　　 |ミヾﾆ,ｨ{ ',ﾄ-孑ｫ､ｨ　 i,ｨぇ孑イﾉミ三彡 'ﾉ
　　　　　　　　　　 ,=―‐ﾍミ三彡八"乂シﾉi=i'乂シﾉﾐ|'ミ､＿彡ｲ‐-､　　　この技術があれば、さらに多くの水産生物を飼育し
　　　　　　　　　 ,' i　　　 ｀ヽ彡'´,ｨﾍ_,=-‐ぇi jふ-､__/ミ二__ノノ　　 ｉ',　　養殖することだって不可能じゃない！
　　　　 　 　 　 /　i　　 　 　 ｀ﾞ`7'"´.ｉ { ﾄｪｪｪｪｪｲ.} 人＿彡'´　　　　i ',
　　 　 　 　 　 ,'　　',　　　　　　.i::::::|､｀ヽヾ;;;;;;;;;;;/.,ｲ.,'.:|:::::|　　　　　 ﾉ .i
　　　 　 　 　 ,'　　 i､　 　 　 　 |::::::|　｀ .＼ｬｪｪｨ/　,' .,|:::::|i　　　､　,'　 .i
　　　　　　　 .i　 　.i .',　　 　 　 i::::::|,=-'⌒〈ﾞ==´i⌒ヘi::::::|',　　　ヽ}　　 i
　　　　　　　 i　　　'　}　　　　　.|::::::i　　　｀,{;;;;;;;}ﾞ'´,ｨ'´|::::::i ',　　　}'i　　 |
　　　　　　　 |　　　　ﾉ,　 ,'　　 .i:::::::|彡'´ ´.|::::::|　'´　,j:::::::| .',　　 i. ',　　i
　　　　　　　 |　　　　/'､ノ 　 '7i:::::::,' ,ｨ 　 ~|::::::|　 ,イ;;',::::::',　',　.,､〉'　　.|　　　　_　 _
　　　　__　　 j､　 　./, 'i　 , ' ,' i:::::::i;;;;;;' 　.,ｨ|::::::|;;;;;;;;;;;;' ',::::::',　'., ',.|ヽ　 λ　 .rt(. '.,(. '.,
　　rv'´/ .,ｲﾌrｬ 　 ,'´λ;/ .,'.,'/:::::/;;;'　,,,;;;;;;|:ヽ::ｉ;;;;;;;;;'　 ',:::::::',.　', .iヽ､　 rt　.i ',｀i　'iヽ　'i
　 /〈. 〈 ./ / |　| 「|　,' {/　,',' i::::::i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::ｉ:::ｉ;;;;;;',,;;;;;'.',:::::::',　 '.,ｉ'´　, | .', .|　i,'　 |/　/!
　 ', .{.　',|　|_ﾉ　jﾉ.ﾉ ,ｨﾉ　 .,' ,'::::::,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i::::ii:::ｉ;;;;;;;;;;;;;;;;;',:::::::',　　i／ .人 ｀ｲ　i　 ,'　/.,!
　　∨: : : : : ' . '. /=､/ 　 ,'./:::::::i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::ｉ;;;;;;;;;;;;;;;;;',:::::::', 　 ｀､ﾂ´ ｀i. . . : : : :/./
　　 ｀ヽ､:::::::::::::::ﾉ　 ;i　　,' i:::::::::i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i:::::::::::ｉ;;;;;;;;;;;;;;;;;',:::::::',　　 .i ,' .,人 : : : : ;i,ｲ
　　　 ||;;｀ヾ-‐'/ 　 ;;|　 ,' .i::::::::::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i::::::::::::ｉ;;;;;;;;;;;;;;;;;',:::::::',　　 ｀､ |ヾ､;;;;;;イ;;|/i
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自ら検証したローレンツは、ヤリイカの人工飼育が不可能という自説を改め、
水産生物の未来を変える研究であると断言し、帰国していった。

362：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:17:07 ID:nEj6ybXY0


　　　　　　　　　　　 　 . :'⌒ ｰ=ミ
　　　　　　　　　　　　(::::::::::::::::__:::::＼
　　　　　　　　　 　 　 }:::f^`=''　 ｝:::::::}
　　　　　　　　　　　　 ヽ{´ヽ /^ ヽ:::::{　　　　元々私は脳の仕組みを理解したかっただけなんだけどね。
　　　　　　　　　　　　　rt〇ｧ○‐-jう}
　　　　 　 　 　 　 　 　 ､_ ヽ　_，　ン
　　　　　　　　　　　 ι　ﾍ ｀　　/ {
　　　　　　　　　　　　 　 r个ー个='┐
　　　　　　　　　 　 　 ／{ﾆ｀ニ´ﾆ*/`７=-
　　　　　　　　　　-=7: :/ﾆﾆﾆﾆ* /: :/: : : : : : :ﾆ=-_､
　　　　　　　/{: : : : :{: :｛*ﾆニ*ﾆ/: : { : : : : : : : : ／: }
　　 ∩　　 〈: }:｢￣})}: ,ﾆ｢￣})=/: : (＼: : : : :/／＼: {
　　fﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ)　｀ヽ: ｛': : : : :ヾ
　 く_うっ┐三三三三三三三と二´-　　　＼}_: : : : : : :.
　　 ゝ∠ﾉ : |: :i: :|: : |ﾆﾆ†ﾆﾆ|:ゝ-=ｧ=‐- ､　/./＼: : : : : :.
　　｜: : : : ::|､:|: :| :｜ﾆﾆﾆ =|: : : /: : : : : У/: : : :＼: : : : :.
　　 | : : : : : ﾊ}!: :| : lﾆﾆﾆﾆﾆ|: : :/: : : : : : У: : : : : : :`マ)ハ
　　ﾉ: : : : : : ﾉ:|/ |: :lﾆﾆﾆﾆﾆ| : / : : : : : : : Х: : : : : : : : : : : :.
　 ｛ : : : : : : : ｲ : |: |ﾆﾆﾆﾆﾆ|: /: : : : : : : : {　 ＼: : : : : : : : : :}
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そして松本らのチームは大量のヤリイカを確保できたことから、脳神経関連の研究にて
多くの功績を残すことに成功する。

363：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:17:18 ID:nEj6ybXY0


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　　　　　 (::::|　 x‐- ､　　　 ,∠⌒ヾ　　ﾐ::::::{　　　　　人間の脳は下手なコンピュータよりも計算が早い。
　　　　　　｝:|〃⌒≧ぃ,　 〃￣｀ヾ､　　 ',:::::}
　　　　　 ｛::::″〃_,.二ヾ_｣{　x=ミ､}}＝‐-kく{　　　　　だから脳型コンピュータの開発は、より高度な演算を実現できるはずさ。
　　　　 　 {::::}/{{､ 　ﾋﾘ 厂 ､　　　ﾉ゛　　 んﾊ
　 　 　 　 ,ゝﾐ　 ､｀¨´ノ } 　 ｀¨¨´　"´　 kぅ }
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　 　 　 　 ヽ 込.　　 　 　 　 -‐'’　 }　 /ｰ'
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　　 　 　 　 　 　 　 　 {　|ア´: : : : : :_: : : -=ﾆ: : : : :｀＼
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その後松本は脳の仕組み解明から、次第に脳型コンピュータへの研究に邁進する。

364：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:17:38 ID:nEj6ybXY0








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　　　　　　　　　 -=ﾆヽ　　　　ｰ_つ　　　　rf::::::::::::::::,. -‐'＾ヾ:::::::ﾊ
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　　／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆア´　　　　　　　　　 {:::::ゝ`′i|i|i|i＞‐､　 -}ﾊ}
　 ｛ﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ＜　　　 　 　 　 _,.∠ﾆヾ´　/ 　　　（　 ノ、　ﾉ
　　ﾏﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニＶ{　 　 ∧　　f⌒)
　　　`マﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=込.　 / 　,> ┘´
　　　　　｀　＜ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=会┴≦＜
　　　　　　　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ〃ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ=-　　　　　　 ／ﾆ
　　　　 　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=-　.,_／ﾆニ
　 　 　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ
　 　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ
　 ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=-―-=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ／
／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=‐ ''"´　　　　　　 　 　 ｰ-==-‐ ´


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だが2003年、肝炎にて松本は亡くなってしまう。享年62であった。

365：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:17:51 ID:nEj6ybXY0


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松本が生み出したヤリイカの人工飼育の成功は、海洋生物の陸上養殖に貢献している。

水槽内を循環させるように遊泳させ、排出物を沈殿させバクテリアを活用したアンモニア除去などは
トラフグなどの高級魚を陸上養殖する際に利用されている。

366：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:18:05 ID:nEj6ybXY0


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　l　　 弋. 　 : :::::::::::::::::::::::: : :　　　　　{lﾆ▽ﾆl}　　　　　　　　 　 　 　 ヽ:::::: : : :　 　 i|.　　 l
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そしてこの研究の過程の中で、人間の脳は複雑に機能しており、単体だけではなく
手足などの末端部も含めて相互的に機能していることが分かってきた。

367：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:18:16 ID:nEj6ybXY0



　　　　　　　　　　　　　　_,. -‐=ﾆ=-‐=ミ
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　　　　 　 {::::::::::::::::::::::::::ノ　 ∠／,.ﾆ刈　　　 _j
　　　　　　 y:::::::::/⌒Y=====斗云‐- }　　∠ﾆ〉　　　　　　脳を活性化させるのは愛です。
　 　 　 　 /ィ:::::::ｉ{ ⌒)　 ､　　､_{ﾋﾘノ ￢ｧ<⌒Y
　　 　 　 　 {:::::::八 （j　　' 　　　 ､__ノ　/ﾋ} ｿ '>　
　 　 　 　 　 ヽ:::::/`ｰ┐　　 　 　 　 　 {‘ｰ'{/
　 　 　 　 　 　 V　 　 | 　 　(＾,、　　-,ノ` r'
　　　　　 　 　 /　　　 |　　　　　丶 　 　 /
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.　　　　　/ﾆﾆﾆﾆﾆニ＝‐- 丶､　　/
　　　　_厶-‐==‐-=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆ`く¨´
-‐=ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=‐- ｰ-=ﾆ〉
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=‐-

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ちなみに松本が各地で講演する時、必ずこう口にしていたという。

368：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:18:30 ID:nEj6ybXY0


　　 　 　 　 　 　 __ 　 ,.=ミ
　　　　　　　　_ノ⌒¨´::::::::::＼__
　　　　　　γ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
　　　　　　｛:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
　　　　　 　 ):::r=-‐　＾__⌒´ゞ:::::::::::::〉
　　　　　　　ヾﾍ　　〃⌒ヾ　ﾐ:::::::::::〈　　　脳は情報処理のアルゴリズムを自動獲得する事を目的としています。
　　　 　 　 　 vぃ　 ,.=､__ヽ　 }:::::::::::::.
　　　 　 　 　 ｛ ﾋ}__{　 }_ﾋﾘ＿{,.=､:::::ﾉ　　　ですが、その脳を活性化させるのは愛があればこそなんですよ。
　　　　　 　 　‘ｰｸ　､_ﾉ‐'　 　 ,ら}::::{
　 　 　 　 　 　 {ゝ　 　 ,，　　 f ｲ/´
　　　　　　　　　 　ｰ　　　 　 /　|
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,ﾚﾍ
　　　　　　　　　　 ` ┬=彡,.≠ﾆニ｝｀ヽ、
　　　　　　　　　　　 ｢{￣｛ﾆﾆニア: : :/: : ｀￣￣￣￣｀ぃ
　　　　　　　　　　, -圦,.斗=*ア: : : :/: : : : : : : : : : : : : } : :.
　　　　　　　 　 〃:/*ﾆﾆﾆア: : : : :/: : : : : : : : : : : : : : {:. :.i
　　　 　 　 __／/:/=*ﾆニ/: : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : ': : :|
　　　 　 f{: : : /:/ニ*ﾆﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : :｜
　　　　　|} : : ': ｉﾆﾆ*ニ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : :｜
　　　　　|{: :厶 |ﾆ=*ﾆ7: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : /: : : : :｜

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そう呟きながら、彼は自ら見学者に対して自ら飼育しているヤリイカを振る舞ったという。

369：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/09/30(金) 23:18:41 ID:nEj6ybXY0


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　　　　 （ ｰ'　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,_
　　　　 r'　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:.
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　　 (:::::::::'　 　 ＿ 　｛､／,. -＜　　　ﾐ::::::::::::f
　　　ヽ::::{＿／＜`　 `〃 r=┬ｫr=‐-ミ:::xへ{
　　　　 ､::ﾏ /斗ｫヾ'⌒ ､　 ､_ﾋﾘ′ 　 }/ ｨう }
　　　　　 圦 ､ ﾋﾘ/｝　　 `ー '’　　　　 /⌒　}
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　　　 　 人 、　　 ＼　　　　　　ヽ　　　　／
　　　　　　　ﾍ　　　　　 　 -‐ ´　　　厂｢
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　 　 　 　 　 　 ニ|　　　_｣ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ--―┐
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　　　　　 ／: : 'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニア´ : : : : : : ＼
　　 　 ／: : : /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆア´ : : : : : : : : : :/＾ﾆ=‐-


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不可能に挑戦するのは誰にでも出来る。だが、不可能を可能にするのは容易なことではない。

こうした科学者の功績こそ、多くの人々に知られるべきであろうと作者は考える。


【番外編　愛ある科学の伝道者】　終わり。

370：安価のやる夫だお：2016/09/30(金) 23:23:09 ID:6wxkXs1Y0
乙ー

この人が言うと「愛」とは重く大きいねえ

371：安価のやる夫だお：2016/10/01(土) 00:08:05 ID:RH95YtQM0
乙でした。

AAもあってますねw

372：安価のやる夫だお：2016/10/01(土) 23:13:03 ID:w35W5.MI0
乙
本業以外でそんな成果を挙げちゃうとか・・・・・・

373：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/11/07(月) 18:58:30 ID:VMmFy1TE0
経営者列伝ですが、諸事情により当分無期限休止させて頂きます。

374：安価のやる夫だお：2016/11/07(月) 22:35:37 ID:pp18E19s0
それは残念です・・・
再開をお待ちしております。

375：安価のやる夫だお：2016/11/13(日) 22:08:34 ID:Rn6jBG2Q0
いつか再開してくれると嬉しいです

376：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2016/11/15(火) 23:55:38 ID:uTfROYb20
いろいろと書きたいネタに専念したいということもあり、AAで学ぶ日本経営者列伝ですが、
後二回で終了とさせて頂きます。

377：安価のやる夫だお：2016/11/16(水) 00:17:04 ID:doVRT6Yk0
楽しみ〜

378：安価のやる夫だお：2016/12/05(月) 13:12:41 ID:MvrBj3Ik0
保守

379：安価のやる夫だお：2016/12/09(金) 04:23:38 ID:1Q2qM0Ag0
保守

380：安価のやる夫だお：2016/12/13(火) 07:49:14 ID:VVeOlj/A0
保守

381：安価のやる夫だお：2017/01/25(水) 03:21:44 ID:49bq5L3k0
保守

382：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/01/31(火) 19:09:16 ID:fV.LE9uk0
明日２１時より投下致します。

383：安価のやる夫だお：2017/02/01(水) 00:54:06 ID:NDlGD95c0
お、来たね

384：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:00:20 ID:HgNCInOQ0

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三ﾐ、;;;;;;;;;;;;;; |.ヾミttttttttttt┼┼┼┼┼┼┼┼┼|王|┼┼┼／／　 ┌───────────
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高度経済成長と共に日本はそれまでの軽工業から、重化学工業が主流となりつつあった。

385：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:00:40 ID:HgNCInOQ0

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　　　　　 , - = ﾆゝ- ‐ = - ─‐‐' ´￣￣￣￣￣_,　 -　￣￣￣｀ー'‐-､_j_＿__j_ ノヽ、
　　　　／ ,　-､　　ｱ ─ ─ ─ ─ ─ ｱ ─ ‐ '´　　　　.... , - ､　　ｖ 　 ',　　　　=｡､　ヽ、
　　　/､　 - ' ´　　　　　　　　　　　　　 ヽ､_　　_ )　 ...:::::::/;;;;::::::ヽ　＿ 　',　　　　　!,r::､ i
　　/ .／￣|＝==============ｧ'´￣￣｀ヽ｀.....::::::::::::::://::::ヽ::::i　|　 ! 　!　　　　 ﾘ;:i::i ()
　 (ﾆ〈（::::::::!| |ｰ----r-----‐〈〈 .::::（::::::::::）| (ﾆﾆﾆﾆﾆ7,':::/ ヽ:i::::! i　 ｉ　 ｉ　　　　〃 ';:ﾘ/
　　ヽ<ヾ､_.ﾍ.ﾊ┬─┴─┐＿_L'､ :::ヽ::::ノﾉ (ﾆﾆﾆﾆ７/i:::!　_ !:i::::i/　,'　 ,'　　　 〃rq:ﾚ'
　　　 i｀ー二､.-| 2000GT.|-----｀ｰ──"　　　　／;::i::i /q i:i::/'　/　,.'＿ ,. -'ｲ;　 ;::!
　　　 .!::;::;::;:ｉ ｀└───┘三三ゝ----- - - ‐1":;::;::;:i::i し i::ﾚ　-' ＿ ,,..-r:‐":';:'､/::i
　　　　',::;::;::;',:::::::::::/￣￣￣￣￣　　　　　　　　 i::;::;::;::;:i:::'､_/::!￣￣　　 　 ヽ;;;;;;;'､;;ノ
　　　　 ヽ;;;;;;;'､;;;／　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ;;;;;;;;;;'､;;;;;;/


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造船や自動車など多くの工業製品が生産され、やがて造船も自動車も世界一になっていったのは
有名な話である。

386：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:00:57 ID:HgNCInOQ0

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だが発展していったのは自動車や造船、電気製品だけではない。そうした製品を作るのに欠かせない
化学事業もまた大きな発展を遂げた。

387：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:01:07 ID:HgNCInOQ0


今回は日本の化学工業発展に貢献し、類い希なる行動力と
あふれ出る知恵と情熱を持った経営者について語る。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !ﾊ::|::::i::l:|心､:ヽ::＼:ヽ_＼､＼:::ヽ:::|!::|:|i
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ､::!ﾊ弋心ヾ ` ヾｨ赱ﾊｊ |::/lj:::!ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ、　 　　　　　　 　ﾘｲ:|ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾘヽ　　_　｀´　_　 ／ｲ:::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／i"ﾄ:lﾞ ､ 　｀二´ .／:::::, |::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.::::::::::::::::::　ヽ､ _,.　':::::::::::::::::.＼
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　　　　　　　　　　　 | :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V-‐=仆七爪 / :::::::::::::::::::::: / . .: .:.:::::::::::: l
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　　　　　　　　　　　 | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::r‐-　、:::::::::::::::::::r‐r‐「｀ﾄ､ :::::::::.. | . .: .: .:.:::::::::::. ,ﾊ
　　　　　　　　　　　 | ::::::::::::::::::::::::::::::::::: ｀ヽ、 ｀ ｰ‐=≠'7　|　|　|　!:::::::::.. | . .: .:.:.:.:::::::::::::::. !
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第十三回　ドクタープレジデント】
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388：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:01:20 ID:HgNCInOQ0

今回の主人公八谷泰造は現在の広島県庄原市に生まれた。
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　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　　　　　　　　　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　　 //!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　 〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
　　　　　　　　　　 i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
　　　　　　　　　　 ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj　　　
　　　　　　　　　　 ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀　lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/
　　　　　　　　　　　!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀　　 　 　 　 !　 j川/　　　
　　　　　　　　　　　ヾﾄ辷N!　　　　　　‐ノ　　!:l/
　　　　　　　　　 　 　 Yｌ:ﾄ､　 　 ヾ＝＝r　　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　iN　＼.　　｀ ニ′／}'
　　　　　　　　　　　 　 丨　　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ￣´"''‐ 、 　 ｀¨´￤
　　　　　　　 ＿rく　　　　/癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　　/‐''"_, -ヘ｜　　　　　　｜
　 /「￣´　 ヽヽ ＼　ヽ/ 　 ´　 _,,厶ﾍ　　　　 　 ∧=､､
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　∥　＼ !　Ｖ´￣:::::/　　　　　　_,ノk>､｀Ｔ!::::::":::＼＿　　 ∥

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389：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:01:33 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／-=ﾆ ,ィ^V ゞヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;､彡‐フ/／ノノ∧へヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ィ7/／/〃ｨ7´_厶1＼Nゞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|/〃ﾚ /∨ /ﾚ'/ｲ,ﾘ ﾐ i ﾄｹ　　　口癖は「そうじゃけんのう」です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　|ｲ{{ jﾚｘ/_ｲ/,＿ },ﾊyjﾊ/ｿ　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 Nlﾚﾊ{ ,ノ　　　 　 　 j/ }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ﾊ j、　　! 　 __　　 ﾊＮ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 `|,ﾊ.　 、'´ ／　 八/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼ ￣ 　 ／ |ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _」　- ﾞ　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,､____ ,. -‐ﾍ,寸　　　　　　_} 厂` ｰ- 、
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　　　 　 　 　 　 　 　 　 r'^ 〈 : : /　 ｝　　　　　　＼_,／　　　　　　　　　 _」ﾝ . : : 八_
　　　 ／⌒ ｰ-　.._　　　_,≧ﾝﾞ／ ___｣　　　　　　　　　　　　　　　　　/／. : : : : : ＞'⌒´￣
　　,ノ. : : : : : : : : : `'＜.._￣￣￣　 ！　　　　　　　　　　　 　 　 　 /＿... : : : ／. : : : : : : : :
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　　}、: : : : .＼: : : : : : : : : : : : : : :｀ヽ: :}　　 　 ｀`　　 　 　 　 　 ﾑ._／. : : : : : : : : : : :／. :
　 ｛: :ヽ､: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|　　　　　　　　　　　　　 厂 : : : : : : : : : : : :／. : : :
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広島県三次中学（現三次高等学校）を卒業後、大阪高等工業学校に進学。明るい性格と
成績優秀なれども社交的なことから多くの学友達から慕われていたという。

390：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:01:44 ID:HgNCInOQ0


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　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　 　￣∨/ 　 　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
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　　　　./∧ 　　∨/i"´　_ ..-―――――――- ､|　　　仕送りだけじゃ食っていけませんからね。
　　　　　/∧ 　　∨斗f::ﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj
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　 　 　 　 　 /∧ 　　∨/N!　　　　 　 ‐ノ　　!:l/
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　　　 　 　 　 　 ./∧／ ∧.　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ∨//∧、 　 ｀¨´￤
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　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　 ∨‐''"_, -ヘ ./　　 　 ≫=､､
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　 |八 ＼　　 　 　＿_/　　　　　 ＿,）__　　　＿_／ 　 ``=､､
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高校卒業と同時に就職し、苦学しながらも大阪帝国大学に入学。そこで八谷は化学を専攻した。

391：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:01:57 ID:HgNCInOQ0


　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
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.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ　　　　なるほど、世の中にはこんな学問もあるんだね。
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!
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　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　 　 　 　 　 /ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、 　 ｒ ＝＝=ｧ　　　　./'　!:://
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　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

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特に八谷が夢中になったのはバナジウム触媒の研究である。

バナジウムは1924年に触媒作用が発見されて以来、様々な用途において触媒として利用されている。

392：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:02:27 ID:HgNCInOQ0
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バナジウムはプラスチック製造を行う上で欠かせない無水フタル酸を作る重要な触媒である。

八谷はこうした触媒や化学そのもに対して、情熱を注ぎ込むかのように研究を重ねた。

393：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:02:39 ID:HgNCInOQ0


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.|:::::::: l:::::::::::ﾚ::::::::/::l:::::/:l:::::':::／='弋z;ｿ/ ﾚ':／l::::l::::l　　　　　　　これからの時代は触媒、そして化学の時代だ。
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.|:::::::: l:::::::: l/んl:/:i:l/:::/:l::/　　　　　　　　　　ヽ,.://l　　　　　　触媒の研究は絶対、日本を発展させることが出来るぞ！
.ヽ:::::::l::::::l　 て l | lﾉl::/　l　　　　　　　　　　.:　ﾉ ./ ;
　　、:::::::::ヽ　ｰ　ヽ ﾚ'　　｀　　　　 　 　 　 　 　 |
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その後、八谷はヲサメ合成化学工業株式会社に就職。長屋の二階で研究生活を送りながら
会社を経営するという研究者と経営者の二足のわらじを履く活躍振りを見せていた。

394：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:02:53 ID:HgNCInOQ0

　　
　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　 　　 __....､--‐tｪ- ､.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ｯ7´/r⌒ヽヽ 　　＼　ﾞヽ、
　　　 　 　 　 　 　　　　　　　　　,.ｨ'´l　| i | 　i ｀Y ヽ　､ 　 ＼ 　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／7　 i　l {　i ｌ |　い　 ',. ',　　　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ,r'ｲ i　/|　 ',',　いi　 ', ',　 ',　i　　　ヾ 　 ﾞ､
　 　 　 　 　 　　　 　　　　///l |　i　',　 ',ﾄ　', l　 i　i', 　!　',. 　　ヽ',　N,
　　　　　　　　　　　　　　/ /　i ﾚi!　 ﾄ､ ヾヽ い　 !　',　　　i　　　 ',',　い 　　　 _､､.._
　 　 　 　 　 　 　 　　　 ,' l!　　い　　ｉ lヽ､＼ヽ＼ ',　l ',　　い　　　i 　! ﾞi _..‐'´:r'´　　　　　　俺は将棋だけじゃ食えないから働いてるだけだ。
　　　　　　　　　　　　　 i ﾘ!　　|ヽヽ　ﾄ !. ﾄ､_＼､＼i　l　}　　l!　　　 _!-‐'´　　 :::li
　　　　　　　 　 　　　　 l,'lﾊ　ｉ l', i丶､ｉﾊ　|＼辷_ヽ､|　i l　　 !　,r''´::　　　　　..:::::ゝ_
　 　 　 　 　 　　　　　　l! !| ヽi|ハ＼､ﾞい､if´`ｰ'ﾞﾝー!l り　 　 fヾヽ:　　　.....:::::::::::ミ:::
　　 　 　 　 　 　 　 　　|　 !　l lrtｯﾐ､ヽ辷!ゝ=- ' 　　|i! l }.　　 | :::ｰヾ=::::_:::::::r:::::::::::::
　　　 　 　 　 　 　　　　|i 八 i从､__ゝ｀ 　 　 　 　 　 ﾘ.i | !　　 | :::::} .::::::::::::r-､:::::::::::f
　　　　　　 　　　　　　　l!　l|ヽ `ｉ　 ﾉ 　 　 　 　　　　l! ',|.　i 　{=:::::t:::::::::::ﾘ　 /:::::::::i
　　 　 　 　 　　　　　　　i　 l! 　 ',　ヽ､ ‐ 　 　 　　　ﾉ　|i　 |　ﾊ :::::::::::::::::{　 f::::::::r'
...､j‐'´`'r-‐ヽ__..､　,....､_,r心 i! 　 i＼ ､ ＿___ 　 　 　 　 |.　 l　ﾘ', ::::...::::::::::|　i:::::::,'-‐‐
:::/　.::::/　.:::/　.::::ｼ .:::ﾘ　ふr:::.､_ .いヽ/:/:::/ﾝｰ 　 　 　ｌ　ｿ. /　',　::::ヾ_:::::ヽl:::::j
ｿ:::::::/>..::::/ .:::::::/.::::::/　_...ﾆｰぅ::ヽ心'=-<"´ 　　　..ｨ' ,ﾘ. '__´,..イﾉ::ｰ/　i::ﾆ::|｀~
::::::/"::::／:::::::／:::::／ヽ､...-　 ﾞ'ｰt_ﾄf廴ﾆ::` ｰr :''´　ノ ンri::::::::::o::i""　,l:::::::::l
::::::ｰ::::1::::::／::::::::::::::`ヽ､ヽ、　 _,,.-_ﾆ}i:::ﾝ'　 　',　　　´ _El:::::∂:::ｿ:::::::::::::::::::::',
ｰ-'ｰ､:::::::::::::::::::::::::::::,..r''ﾞjヽ､l',ン'i"）ｰ_|　　　　 }　　 ,fﾒ'ﾝ:::::8::::ン:::::::::::::::::::::::::',
　　　　ヽ､_:,::---‐'´ 　 /::::::::::::::::8ｉこ､､_　　　　 　,rﾝ'ン:::8 .: /:j.::::::::::::::::::::::::::::',
ヽ､_　　　 　 　 　 　　 /:::::::::::::::::8::::fｌ '　`ヽ　 ,rt'ｼ:´:::" ８ //::,' i::::::::::::::::::::::::::::::',
　　｀`'ｰ ､._　 　 　　 /:::::::::::::::::δ:::F!　　　｀fﾝ:::::::::'´∂ /::::::::j ﾚ""￣/:::::::::::::::::::',
　 　 　 　 　｀'ｰ ､_. /:::::::::::::::::::8:::::ゞ=､ 　 /ﾒ:::ﾝ'´ 8ﾟ ／::::::::::!i; 　 　/:::::::::::::::::::::::::',
　　 　 　 　　　　　ｿ::::iヽ::::::::::::8::::::::::::ヾ､fｿ:::::　σ::::::::::::''" /:: 　　/:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　`i::i|ヾ::::::::§:::::::::::::::{fﾘ::: ∂:::::::::i'"　／::::!......:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　|::l::::`:::::::8::::::::::::〈lﾚ:o::ﾟ:::::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【升田幸三】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【後の実力制第4代名人】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そんな八谷の会社には後に名人となる枡田幸三が働いていた。

当時は大阪と東京で棋士の待遇に大きな差があり、東京の将棋指しに負けない実力者であった枡田も
工場で働いていたのである。

395：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:03:20 ID:HgNCInOQ0

　　
　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　 　　 __....､--‐tｪ- ､.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ｯ7´/r⌒ヽヽ 　　＼　ﾞヽ、
　　　 　 　 　 　 　　　　　　　　　,.ｨ'´l　| i | 　i ｀Y ヽ　､ 　 ＼ 　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／7　 i　l {　i ｌ |　い　 ',. ',　　　ヽ　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ,r'ｲ i　/|　 ',',　いi　 ', ',　 ',　i　　　ヾ 　 ﾞ､
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　　　　　　　　　　　　　　/ /　i ﾚi!　 ﾄ､ ヾヽ い　 !　',　　　i　　　 ',',　い 　　　 _､､.._
　 　 　 　 　 　 　 　　　 ,' l!　　い　　ｉ lヽ､＼ヽ＼ ',　l ',　　い　　　i 　! ﾞi _..‐'´:r'´　　　　　　俺は将棋だけじゃ食えないから働いてるだけだ。
　　　　　　　　　　　　　 i ﾘ!　　|ヽヽ　ﾄ !. ﾄ､_＼､＼i　l　}　　l!　　　 _!-‐'´　　 :::li
　　　　　　　 　 　　　　 l,'lﾊ　ｉ l', i丶､ｉﾊ　|＼辷_ヽ､|　i l　　 !　,r''´::　　　　　..:::::ゝ_
　 　 　 　 　 　　　　　　l! !| ヽi|ハ＼､ﾞい､if´`ｰ'ﾞﾝー!l り　 　 fヾヽ:　　　.....:::::::::::ミ:::
　　 　 　 　 　 　 　 　　|　 !　l lrtｯﾐ､ヽ辷!ゝ=- ' 　　|i! l }.　　 | :::ｰヾ=::::_:::::::r:::::::::::::
　　　 　 　 　 　 　　　　|i 八 i从､__ゝ｀ 　 　 　 　 　 ﾘ.i | !　　 | :::::} .::::::::::::r-､:::::::::::f
　　　　　　 　　　　　　　l!　l|ヽ `ｉ　 ﾉ 　 　 　 　　　　l! ',|.　i 　{=:::::t:::::::::::ﾘ　 /:::::::::i
　　 　 　 　 　　　　　　　i　 l! 　 ',　ヽ､ ‐ 　 　 　　　ﾉ　|i　 |　ﾊ :::::::::::::::::{　 f::::::::r'
...､j‐'´`'r-‐ヽ__..､　,....､_,r心 i! 　 i＼ ､ ＿___ 　 　 　 　 |.　 l　ﾘ', ::::...::::::::::|　i:::::::,'-‐‐
:::/　.::::/　.:::/　.::::ｼ .:::ﾘ　ふr:::.､_ .いヽ/:/:::/ﾝｰ 　 　 　ｌ　ｿ. /　',　::::ヾ_:::::ヽl:::::j
ｿ:::::::/>..::::/ .:::::::/.::::::/　_...ﾆｰぅ::ヽ心'=-<"´ 　　　..ｨ' ,ﾘ. '__´,..イﾉ::ｰ/　i::ﾆ::|｀~
::::::/"::::／:::::::／:::::／ヽ､...-　 ﾞ'ｰt_ﾄf廴ﾆ::` ｰr :''´　ノ ンri::::::::::o::i""　,l:::::::::l
::::::ｰ::::1::::::／::::::::::::::`ヽ､ヽ、　 _,,.-_ﾆ}i:::ﾝ'　 　',　　　´ _El:::::∂:::ｿ:::::::::::::::::::::',
ｰ-'ｰ､:::::::::::::::::::::::::::::,..r''ﾞjヽ､l',ン'i"）ｰ_|　　　　 }　　 ,fﾒ'ﾝ:::::8::::ン:::::::::::::::::::::::::',
　　　　ヽ､_:,::---‐'´ 　 /::::::::::::::::8ｉこ､､_　　　　 　,rﾝ'ン:::8 .: /:j.::::::::::::::::::::::::::::',
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【升田幸三】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【後の実力制第4代名人】
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そんな八谷の会社には後に名人となる枡田幸三が働いていた。

当時は大阪と東京で棋士の待遇に大きな差があり、東京の将棋指しに負けない実力者であった枡田も
工場で働いていたのである。

396：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:03:41 ID:HgNCInOQ0

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;;;;ｿ　　　　　,　,ｿヾ彡"! ヾ/ l i　! l l"'ﾐ,,,、..　,,　.　　　";;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　,,　 　ｿ"'i ﾘi　|从 !l :　i!　N　ji　l i .ﾉ丿-ミ　　　　　　ﾐ;;;;;;;;;;;;;;;
　　　　ソl　 l"∥i l::ヾt:',　i　i::ヾli j !./　(::) /ヾﾒ,,　　　,,　ヾ;;;;;;;;;;;;　　　　チェスは相手を殺すだけだが、将棋は相手の駒すら味方に付けて戦う！
　　　　ﾘ li　il　li |t－tッ'、t:::l:::ﾘｿ::,f-=ェ= "::::i l|"iヾ　　　　ゞ;;;;;;;;;
　".　　ﾝ li　!l　i ヾ ﾐ ＝="ヽ::::ｖ,::::::::ｿ::::::ll::　 i l　!ヾj"ヾ　　　　ゞ;;　　　ましてや女子供を戦場に立たせるような代物の方が、遙かに野蛮じゃねーか！
　　　 ッ .li　il　 i,:::::::::::::::::::i　　ヽﾍﾉ 、 　il　 , l ! .i　 ll iゞ　　　,,
　　　 ll　 l! lli　i ..::::::::::::::::::!　　　゛'vﾍ、 -! v' .i l　l　 il l　ヾ
　　　 |　 !i il　iﾒ|.',:::::::::::::::::' 、 -　　　 '＾lr-ゞ l i il　 ll i　 ハ　　　"
　゛　 l!　 li j　 il llゝ:::::::::::::::::::　　　　　　|iヾ　 j i ll　 i! l　 ll　ゞ
　　　 .i　 ll i　 lii i|!iヽ:::::::::kﾆ二ﾆヽ､　　　 　 /l ! ll　 ll i　 il　ﾐ　　. ,,
　　　 ﾘi　|ij i　lj .ll !　iヽ,:::::::ヾニﾆン" 　　 ／ |i i丿i　i!ﾒ　!l　ヾ
　,, 　 人 j　l　ii　li j　jﾒ ＼:::::゛ｰ-　　　 ／　　i ﾘ∴| .ll　i　ii　ゞ　..
　　　　　t／￣／:::::／::::::￣、　　　 ,／　　　 乂∴i ｿ　 乂　彡
　　　　／:::::／:::::／:::::::／_i ゛ｰ-イ 　 　　　／∴∴jﾒ∴∴ヾ
　　 ／￣:／￣／￣::／∴.＼＿゛　　 　 ／∴∴∴∴∴∴ﾐ
　／::::::／::::／::::::／∴∴∴∴ ヾ　 |￣∴∴∴∴∴∴∴ｿ

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将棋禁止令を出したGHQに対して一歩も退かず、同時に将棋の美点を喧伝し、
一歩も退かない男であった升田も、八谷を大いに慕っていたという。

397：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:03:53 ID:HgNCInOQ0

こんなエピソードがある。ある日八谷は升田に向かってこういったという。
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　　/::::::::::::://::://::::::::/:::/::::::/::／::::丿:::::::::/::::ヽ
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../:::::丨::::::l::l::ﾚ'::/::::::::ｿ::::::::::/:::::::::::/::::::::/／::/::::∧
.|:::::::: l:::::::::::l::/::l:::::/::/::::/::::l:::::::::／:::::／:::/::/::::/:::ﾊ
.|:::::::: l:::::::::::ﾚ::::::::/::l:::::/:l:::::':::／='弋z;ｿ/ ﾚ':／l::::l::::l
.|:::::::: l::::::::::l::/ ﾚ':i:j:l:::/:::l:::l:/　｀　　¨　/　　、fz:/ : :l
.|:::::::: l:::::::: l/んl:/:i:l/:::/:l::/　　　　　　　　　　ヽ,.://l　　　　　　升田君、実は僕も今度は博士号を取ろうと思っているんだ。
.ヽ:::::::l::::::l　 て l | lﾉl::/　l　　　　　　　　　　.:　ﾉ ./ ;
　　、:::::::::ヽ　ｰ　ヽ ﾚ'　　｀　　　　 　 　 　 　 　 |
　　∨:::::::::::｀ー .　　　　　　　　 　　｀　ー　=='　|
　　l:::i:::::::::::ゝl::ゝ: :.　　　　　　　　　　　　 ｰ　　/
　　l:::::::::::::::l: l ｀　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　ﾚ'::::::::::/:/　　　　 ＼　　　　　　　　　　　 .
　　 ' VⅣ.l　　　　　、　　 ‐ . . .　　　　　　/
　 　 .'　　 |　　　　　　　　　　　: : : : :　ー'
　　　　 　 |　　　　　　　　　　　　　　|




　　　　　　　　　　 ,. r　'二ヾﾆ=-.､
　　　　　　　　 ／'´／　,r'⌒､ヾ.､ヽ＼
　 　 　 　 　,r'／／　 //,r' 　 ', ヽ＼､.ヽ
　 　 　 　,r'//ン/　/ /./　　 i }. ', ',ヾ ､ﾊ
　 　 　 / ,' ,' / /　///,'; 　　　,'　.i ! ﾊ丶 ',
　 　 　,' ,' 7,'　/ ./!/, '.,'　　　/ 　 l　i. ', , ∧　　　　　　　社長だったら楽勝でしょうな。
　 　　ﾊ ｉ l l　,'　　i,' ,' i　　,' / 　　!i/i　} ', ､i
　 　　il l l　| l!　　i　 /i　ｿ ./　　ﾉ /ハ i　l　i!
　 　　i | !| .i il　 i !/_ン,.r 'ﾉ　ン/r'ﾉ人 ﾘ il　li
　 　　! l l　ﾘ l　 l代てﾉヽ'ﾝ'"〃.,r'ひ~);;ｿｌ| i l}
　 　　| !i 　!.',i　il l　`＝' 　 　 ::　 ＝' ﾝｲil ｌ　i
　 　　l　!　 ',　', il ! 　 　 　 ..　:::. 　 　　ﾘﾉ !ﾘ }
　 　　i i 　', ヽ ',.N　　　　　､　ｼ　　　 /i　ﾝ　l!
　 　 　','　 ヾ,　ゝ､ﾄ､　　ｰｬ‐ｰｧ'´　, ',ノン/i ﾘ
　 　 　 ヾ､ ヽ＼_辷ﾆ＼ 　ヽ..心.,.ｲンノ／ノ
　 　 　 　 ヽ､ｰ ゞ「::r‐､__丶...ﾈ、＼ﾆﾝ,ｫ'"
　　　　　　　-`ーl::::;ヾ''＼~rT:､ヽ　ヽ‐{. l_
　　　　　　　　:::::::::`::- ＼ `ヽ<::::ヽ.　N　|::::ﾞj'''l
　　　　　　　　　　　　 ヽ:::::ヽ､　＼_j　 ヽ ',::::i:::l

398：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:04:09 ID:HgNCInOQ0


ﾍ　',:::ﾍ|:::::::::l:::ﾍ::ﾊ:::::＼|:::::::::::＼:::::::＼:::::::::::::::::::::/:|:::::::::/:::::::
　',　＼:ﾍ::::::|ヽ:::ﾍﾊヽ:::::｀ヽ_::::::::::＼:::::::＼::::::::::::/::::|::::::/:ﾍ:::::
　 ',　　ヽ',ヽ| ﾍ＼::::ﾍ ＼:::ﾍl｀ヽ:::::::l＼::::: l::::::: /｀ヽ|:::/::::::::ﾍ:　　　　　　だけど君は十四歳の時、故郷の広島を飛び出して、
＿_ヽ　./ﾍ .ﾊﾍ:l　＼:ﾍ.　＼ﾍ　 ｀ヽl::::::＼::＼::l＼::::|/:::ﾍ＼:::　　　　　　名人香車を引いて勝つまではと、お母さんにそう言ったそうじゃないか。
｀ヽ￣./　ハ:::',ﾍ..　　｀ヽ.　　＼　 　｀ｰ-l:::＼::＼:::＼　　 ',|ヽl
　 　 /.　 　 ＼ ﾊ　　　　　　 　 　 　 　 l:::::::..　　　　　　　　　　　　　　　君はウチで単なる食客として、その日暮らしをしているような小さな男じゃないと思うよ。
. 　 /　　　 　　 ｀ヽ　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::...
　 /　　　　　　　　 ﾍ　　　　　　　｀ヽ　　_／:::::::::..
. /　　　 　 　 　 ／'';;＼
　｀''ｰ-=,,,_ 　 ／　　 ';;;;;＼ 　　　 ＿＿_ ＿＿_
　　　　　　'／　　　　 ';;;|　.＼　　　 　 　 　 　 　 　 　 /
　　　, r ' ´　 　 　 　 　 |.　　 ＼　　｀￣￣´ 　 　 　 ｲ;;;
　　K　　　 　 　 　 　 　 | . 　 　 ＼　　　　 　 　 ／;;;;;;;;
　 　 ∨　　　　　　　　　 |　　 　 　 ＼　 　 　 ,イ''''''''
. 　 　 ∨　　　　　　　 　 |　　　　,r‐='｀ー― '｀ヽ
　 　 　 ∨　　　　　 　 　 |　　　/;;'ﾍ . /　/　/　/＼
　　　　　∨　　　　　　 　 |　　/　　 ∨ ./　/　/　　 ＼




　　　　　　 　 　 　　　　　　　,.-ｧxﾃこ'ｰ-.､
　　　　 　 　 　　　　　　　／7//　 }ヽ＼ ヽ｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　,r' / ,' j 　ﾉﾊ ヽ',ヾ ＼ヽヽ
　 　 　 　 　 　 　 　　/ //　i |　//! i　ヽｉ　iヽヽ､ '.,
　 　 　 　 　 　 　　 / /i7　/i l,ﾉ ハ Nヽ i　} i ',ヽ',. ',　　　　　そ、それは……
　 　 　 　　　　　　 ﾊ/リi　,' Nノ'ｏヾ､ゞ､`jﾒ ﾘl i } ',　i
　 　　　　　　　　　i i,' .{ |! i ｲﾄ`ｰ =' '　　､く.ﾟ'_)!ﾊ. i　l
　 　 　 　　　　　　{ i|　i　l !li 　　　　 　r　.!　 ´'.i|　!　|
　 　 　 　 　 　　　| l　 !　',i lU　　　　　＿_ 　 　　ﾘ j　 i
　 　 　 　 　　　　 !lN　　 ﾊ !　　　 /-ー'┤　　ｿ! ﾘ　 }
　　　　　　　　　　 liハ ! ',', N 　 　´￣-￣　 ,r'ｿ ﾝ i　l
　 　 　 　 　 　　　 ', ' ゝ,ヾ､_ヾ丶､　　　　／ィﾉ/jｉ l　ﾘ
　　　　　　　　　　　ヽ' ,＼ ゞ､`ｰ　::`:::ｰ:'::lン／ﾝrｲノ
　　　　　　　　　 ｪftｬ､ヾ=ｪ_ﾆ＝ーｭ　　::::l_-ン' ´'
　　　　　　　　 rえｼf＝‐＜::::::::::::::::'k　　;::fl:`i
　　　　　　　,､'ふ/　::::==､:j￣:):::::::::i:fl　/::ｿ:::}
　　　　, - '　　ｼ ..::::レ'''"￣::)~.:::::::::::K　!.fl:::::ﾟ:`ｰ..､._
　 　 /　　　　　i:〉-'...::::::,r‐''':ヽﾟo.::::ヾふﾝ::::｡ﾟ:::::::::::::::i::lｰ- ､.
　 　,'　　　　　　K_ ;r‐'´.:::::::ﾝヽ:::ﾟo:::::i}Ｑ::::｡:::::::::::::::::::ｉ::l. 　　ヽ
　　j　　　　　　　 ';`i､..:::;r'´.::::/:::::::::ﾟo::::ｆl::｡::::::::::::::::::::::!:::i 　　　',
　 /　　　　　　　　i::ゞ:`ヾ::::ｼ::::::::::::::::::ﾟol}｡:::::::::::::::::::::::::i:::l　　　　i

399：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:05:21 ID:HgNCInOQ0


　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
....　　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､::::::::::::::::i::!::l:l !
.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!　　　　だから君も早く名人になろうじゃないか。そして競争しよう。
.　　　　 　 　 !::､::::i　　　 　 ｌ　　　　　　　 　 　 |:::/lj/l:!ﾘ
　　　　　　　　ヾﾄ､:!　　　　　　　　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ　　　　　僕が博士号を取るよりも早く、君は名人になるんだ。
　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　 　 　 　 　 /ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、 　 ､　_＿ ＿ ,　　　 /'　!:://
　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　　　　 　 　 　 .／　　|/:/
　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このとき、升田幸三は八谷の一食客という立場に成り下がっていた。
升田を買っていただけに八谷は升田を焚きつけて名人にするために
あえて手厳しいことを口にした。

400：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:05:37 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　.ィ彳'フ从＼ヾ、、
　　　　　　　　　　／／　i　i　ヽヽヽヾ　 'ヽ.
　　　　　　　　　/　//　 . 　ii　 i　i　ヽ＼ 　'ヽ
　　　　　　　 　.'　/ ; i 　l　 li　 '.　 ｌ　 ',　ヽ　ハ
　　　　　　 　 /　/ i　i　!　　i!　　i 　 ! 　 '　ヾ 　 ヽ
　　　　　　　 7　7 ∥　!i　　ii 　 i 　 '. 　 i　　i　　 '.
　　　　 　 　 ' 　 i　l 　∥ 　!i　　l 　 '.　 l　　 l　i 　i
　　　　　 　i　i　!　 !　 i　i　i! 　　i 　 .!　 i　 ∥　i 　',　　　　そうだったな。母ちゃんの為にも俺は名人にならなきゃいけないんだ。
　　　 　　 │!　 l| i　 ｿ　i ﾝ　 　/i　 i 　　i　从　l　 !i
　　　　　　i　i　 |i 　乂　 / 　 /　ｿ　ﾉ 　ﾉ ﾉ ﾉ |　| 　 i'　　いつまでもこんなんじゃ、名人になりたくてもなれねえよ。
　　　　　 ∥ l　| |　　ﾉ　/　　/ﾘ /i　/ / ｿ　|| |ﾘ i 　 i!
　　　　　　!　i　| |　ノ／_＿_/_ｿノ |　ﾉ //ッ''ｿｊﾘ l 　 .li
　　　　　　i　i　| |　　|ヽ, 'ｰ'ヽ、　jﾉ /ノ─ "　 ﾘ |　　!i
　　　　　 　| !　|│　|i.　 ￣＂ °　　 　 　　 　j　| 　i ﾄ 、
　　　　　 イi i　│ 从　　　 　　　　　　　　 　 ﾘ.| i 　ｿｿ　 ヽ
　　　　／::::::',　t 　人 　 　 　　　、 丿　　　/|　| j　ﾘ/　　　ヽ
　　 ／　＼:::::',　ヽヾ,i＼　　　、,, ,,_,.ン'　　/:::| ∥　/　　 　 　 ;
　　　／＼◇:::::ヽ ヽ　!:::丶、 　`' ｰ "　 . ':::jﾉ:ソjノ 　 　　　　 i
　 ／＼ 　＼／＼◇人ゞ::::: ::丶、 　 ／:::::::::::::::::!　　　　　　　i
　　　　 ＼／＼ 　＼:::::::::::::::::::::::Ｔへ ::::::::::::::::::::::|　　　　　　　!
　　　　 ／'、 　＼ ／:。::::::::::::::::/＼〆"''ヾ:::::::::::|　　　　　 　 |
　　　　　　　' 、 ／:::::::ﾟ。::::::√＼ζn....ﾒ｡ヾ:::::::::|　　 　 　 　 i
　　　　　 　　 ／::::::::::::::ﾟo:::: ＼〆::;.....''''',,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ζ;:;::.;　:::

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その後枡田は八谷の家を飛び出し、将棋に専念。後に「新手一生」を掲げ、魅せる将棋を指し続け、
名人の中の名人とまで言われるほどの棋士となった。

401：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:05:49 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　　　　　　　　　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　　 //!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　 〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
　　　　　　　　　　 i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
　　　　　　　　　　 ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj　　　　悪いね升田君、僕の博士号の方が早かったみたいだ。
　　　　　　　　　　 ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀　lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/
　　　　　　　　　　　!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀　　 　 　 　 !　 j川/　　　
　　　　　　　　　　　ヾﾄ辷N!　　　　　　‐ノ　　!:l/
　　　　　　　　　 　 　 Yｌ:ﾄ､　 　 ヾ＝＝r　　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　iN　＼.　　｀ ニ′／}'
　　　　　　　　　　　 　 丨　　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ￣´"''‐ 、 　 ｀¨´￤
　　　　　　　 ＿rく　　　　/癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　　/‐''"_, -ヘ｜　　　　　　｜
　 /「￣´　 ヽヽ ＼　ヽ/ 　 ´　 _,,厶ﾍ　　　　 　 ∧=､､
　 |八 ＼　　 　 　＿_/　　　　　 ＿,）ヽ＿＿＿/ 　ヽ ``=､､
　∥　＼ !　Ｖ´￣:::::/　　　　　　_,ノk>､｀Ｔ!::::::":::＼＿　　 ∥
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八谷は1948年に「バナジウム触媒の工業的確立」の論文にて博士号を取得する。

後にこの博士号が経営者としての八谷の信用性を高めることになるが、
肝心の経営は厳しかった。

402：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:07:03 ID:HgNCInOQ0

!::::}､ヽ::､ヽ::､ヽ:｀ヽ
ﾘ!::!l::::!::::}::ﾞ,_､ヽ:ﾞ,::ヽ
::!::ﾉヽ::ljγi!ﾟヽﾞ,:,ﾍ::!ヽ
:::/_　ヽ!.::'‐!‐-'､:!::l,jﾍ!
i/:､ヽ : .:::::/　　jヽ! l!}l　ﾞ'
!l:: : ;.!, .:::/γ´/`'､ﾞ,|lﾞ
::l:::',ι　,　　　　　l :lヽ、 , ’ ,;.
､:!i　,!　 _,. -─f´1;: !､ ,.　　 :・,
:: ヽ ; ./_,. -r‐'￣!::: j　 　 ∧ ' .,
:::;,　 /´!:_,1l、:::l!|:::. l　　 ﾉ　ヽ_,:
:: ,＿l:γ__人,ヽ!l::)ー-‐'´
イ 　 ￣　　　ﾍ}! }　 潰 　 う
　　 な　 逝 　 ∨　 し 　 わ
　　 い　 き 　 　 　 た. 　｜
　　 ｜　 た　　　　　く . 　｜
　　 ｜　 く　　 　 　 な 　 ｜
　　 ｜ 　 　 　 　 　い 　.｜
　　 ｜　　　　　　 　 ! !　 .｜
　　 ｜　　　　　　 　 　 　 ｜
　　 ｜　　 　 ∧　　　　　 ｜
　　 ｜　　 　 l:::!　　　　　 ｜
　　 ｜　　　 {:::::l　　 　 　 ｜
　　　 　 　 　.l:::::}　　　　　 っ
──-､ _,-─ ､::j　,._　　　 ,.へ
:::::::::::::::::::::::::::::::::l／:::::｀'ヽ　{:::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Y':::::
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終戦後、GHQは関係化学物質の製造を禁止。だが八谷は社員をクビにしたくはなかった為、
畑で芋を植えて、その芋を使って芋アメを作るなどの手段で糊口を凌いでいた。

1949年にはヲサメ硫酸を「日本触媒化学工業株式会社」とするなど、本格的に触媒事業へと
専念することを決断するが、経営は依然として厳しいままであった。

403：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:07:19 ID:HgNCInOQ0



: : : ／: : : : : : : : : : : : : ＞ ´: : : :／; : :. :. :./::::::::::::::://::::/:|:::::::i::::::::::::::::::::::ﾘ::::}
:.／: : : : : : : : : : :.＞ ´　　/: : ／: /: : : : .:/::::::::::::::://:/ｲ_,.!:::::ﾘ:::::::::::::::::: / i::7
___ : : :斗:≦弋＝=zz≧=-:.／:. :./: : : :.／::::::::::::::; '::::/≦__ｉ:::/:|:::::::::::::::::/　,::′
: : : : : : |: :|　　＼　 弋_;fツ＾ヾ=/: : :／ . ::::::::::／ィ弋ｆツ　!:/: :ﾘ:::::::::::::/　//　　　　　製造業が研究投資を止めたら、どうやって製品を作るつもりなんだ！
: i: : : : :.i: :|　　　 ｀ ー---─　/: :／: :::::::::::／: :ー---=≦/ : /::::::::::::/　//
:.|V: : : :.lⅥ　　 　 　 　 　 　 /／／: :.＞ ´.: : 　 : : : : : : / : /:::::::::::; '∠.ｲ　　　　　　
:.| ∨: : :|ﾊ:!　　　　　　　　 ／／‐　´　　 i: : :　　　　: : : : : /::::::::／
:.ゝ-V: :.|　ﾍ、　　　　　　　　　　　　　 　 |: : : .　　. : : : : :厶ｲ／　_
: : :.|..∨ﾑ　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |: : : : . : : : : : : : /:/　　　 ＞ ．
ﾊ: :.!　iヾ:.i　　　　　　　　　　　　　　　　　{: : : : : : : : : : : ｲ:/　＼　　　　　＞ ．
.∧..i.....i　＼　　　　　　　 　 　 　 __　　　 j: : : : : : : : : , i:::/　　　 ＼　　　　　　 `
.... Ⅵ.....i　 ＼　　　　　　　　　　　　｀　 〃: : : : : : : , '....|::′､　　 　 ＼
........ﾍ.....i　 　 ＼　　　　　　　___,........＿＿: : : : : :., '........j/......∧　　　　 ＼
.................i　 　 　 ＼　　　　 　 ｀　ｰ─一 ´: : : ／∨...................∧　　　　　 ＼
..................i　 　 　 　 ＼　　　　　　￣:::::: : : :.／　　 i..................... ∧　　　　　　 ＼
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その一方で八谷は研究投資を削るようなことは一切しなかった。どれほど苦しい状況であっても
八谷は研究投資や技術開発に対して妥協することはなかった。

旧満鉄出身者達を引き抜いたり、研究室だけは大手並に充実させるなど八谷は研究投資を
非常に重要視していたのである。

404：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:07:29 ID:HgNCInOQ0



　　　　　　　　　　　　　　　 ＿_
　　　　　　　　　　　　　 ィ::　　　 ｀丶
_..　ー--〜ー一-ァ::´::::::::::.　　　　　 ヽ
::::::::::::::::::::::::::::＞:´:::::::::::::::::::::: ..　　　　 ‘.z､
::::::::::::::::::::::／:::::::::::::::rミ､　　::::::::.　　　　 V:＞､
::::::::::::::::／::::::::::::::::::::h;;＞ミ ､　　　　　　　ヽ:::::::＞'Z
::::::::: ／::::::::::::::::::::::::::｀ヽz::::::::｀ｰz､_　　　 　 V:::::::::::::＼,_
:::::/ｱ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ー::::¨´:::::::　　　　　V::::::::::::::::::::^｀ゞ、
:ｲV::::::::::i::::::::::::r≠::　,_:::::::::::::::::::::::::::　　　　　 l:::::::::::::::::::::::::::::::乂_　ｨ
::|::::＞=ﾐ|､:::::::弋:::....　¨　〉::::::::::::::::::::　　　　　 |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::^::{
::|;:.《 ● |:.ﾄ､::::::::｀:::::::::::/:::::::::::::::::::::::::　　　　　}!:::::::;ィi:::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::V八¨¨7:ﾘ:,ィ:::::／:::::::::::::::::::::::::::::/|::::　　 /::／ｱ::/:.ｲ:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
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だがそれでも、不況の波は待ったなしでありさすがの八谷もついに万策尽きた。

405：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:07:42 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　.ィ彳'フ从＼ヾ、、
　　　　　　　　　　／／　i　i　ヽヽヽヾ　 'ヽ.
　　　　　　　　　/　//　 . 　ii　 i　i　ヽ＼ 　'ヽ
　　　　　　　 　.'　/ ; i 　l　 li　 '.　 ｌ　 ',　ヽ　ハ
　　　　　　 　 /　/ i　i　!　　i!　　i 　 ! 　 '　ヾ 　 ヽ
　　　　　　　 7　7 ∥　!i　　ii 　 i 　 '. 　 i　　i　　 '.
　　　　 　 　 ' 　 i　l 　∥ 　!i　　l 　 '.　 l　　 l　i 　i
　　　　　 　i　i　!　 !　 i　i　i! 　　i 　 .!　 i　 ∥　i 　',　　　　　　　社長！　お元気ですかい！
　　　 　　 │!　 l| i　 ｿ　i ﾝ　 　/i　 i 　　i　从　l　 !i
　　　　　　i　i　 |i 　乂　 / 　 /　ｿ　ﾉ 　ﾉ ﾉ ﾉ |　| 　 i'
　　　　　 ∥ l　| |　　ﾉ　/　　/ﾘ /i　/ / ｿ　|| |ﾘ i 　 i!
　　　　　　!　i　| |　ノ／_＿_/_ｿノ |　ﾉ //ッ''ｿｊﾘ l 　 .li
　　　　　　i　i　| |　　|ヽ, 'ｰ'ヽ、　jﾉ /ノ─ "　 ﾘ |　　!i
　　　　　 　| !　|│　|i.　 ￣＂ °　　 　 　　 　j　| 　i ﾄ 、
　　　　　 イi i　│ 从　　　 　　　　　　　　 　 ﾘ.| i 　ｿｿ　 ヽ
　　　　／::::::',　t 　人 　 　 　　　、 丿　　　/|　| j　ﾘ/　　　ヽ
　　 ／　＼:::::',　ヽヾ,i＼　　　、,, ,,_,.ン'　　/:::| ∥　/　　 　 　 ;
　　　／＼◇:::::ヽ ヽ　!:::丶、 　`' ｰ "　 . ':::jﾉ:ソjノ 　 　　　　 i
　 ／＼ 　＼／＼◇人ゞ::::: ::丶、 　 ／:::::::::::::::::!　　　　　　　i
　　　　 ＼／＼ 　＼:::::::::::::::::::::::Ｔへ ::::::::::::::::::::::|　　　　　　　!
　　　　 ／'、 　＼ ／:。::::::::::::::::/＼〆"''ヾ:::::::::::|　　　　　 　 |
　　　　　　　' 、 ／:::::::ﾟ。::::::√＼ζn....ﾒ｡ヾ:::::::::|　　 　 　 　 i
　　　　　 　　 ／::::::::::::::ﾟo:::: ＼〆::;.....''''',,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　ζ;:;::.;　:::
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
だがそんな時、居候をしていた升田が八谷を訪れた。

406：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:07:55 ID:HgNCInOQ0


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.　　 　 //. :/::::::::::::ｉ :::::::::::::::::://:::::::::::::＼:＼::＼
　　　 //::::::ｌ:::::::/:/{ :::::/:::::::://:/::::!::::ｌ:::::::ﾄ:::::ヽ::::.
.　　　ｌ:l::::::/|:::::ﾊ/∧:V:::/:::/::::/::::/:::/::::::/::ﾍ::::l::::ﾊ　　　　　　升田君か、久しぶりだね。
.　 　 |:l:::::::::|:::::|::!::::∧:V:::/::::/::::/:::/::::::/|::::::|::::|::|.!|
.　 　 |:ｌ:: |: :|:::::l::|::/:::ﾍ::V::／／/:/ ::／:::|:: /!:: | l ||
　　　 ｌ::::l:::::ﾊ:::|∠:ィ７:::Y:／::イ::z≦ィ:::/::/::ﾊ/:ﾘ |!
.　　　 ｌ::|:::::小:Π:/l/-=彡１ /艾ｧﾃ｀ｼ_:ｨｆﾁ::/:/
　　　　V::ｌ: :!::l:|い小/|:ハl:|/　　｀´　 　 ｛ }ノ´
　　　　 Ⅵ: ｌ:::::｀爪|　　　　　　　　　　　　〈
　　　 　 }:!: |::|:::l::|　＼　 　 　 　 　 　 ‐ _ノ
　　　 　 ぃ::|::|:::l::|　　 丶　　　　__,　，／
　　　　　 |:∧l＼:{　　　　＼ 　 　 　 /
　　　　　 ｌ′丶　ヽ　　　　　ト､＿,ノ
　　 　 ／　　　　　　　　 　 ,′
.　 ／＼.＿＿＿＿　　 　 人_
／　　｀－――‐‐- ､｀ ‐ 、　 ＞､ｘ‐ ､
　　　 　 　 　 ＼ 　 　 ｀ヽ ヽ、　 | | 　 ＼
　　　　　　　　　 ＼　　　　＼ ` ┘!　 ＼ ＼





　　　　　　　　/,　 /i i',　i i　 ヽヽ`､ヽ 丶　 ',
　　　　　　　 /,'　 i　ﾚ '　i i ヽヽゞヽi　ヽﾘ i , i
　　　　　　　 ,', i　i i 《　ﾟ ヾﾘ　ヽi/　ﾟ　》 i ﾚ i i　　　　（アレ？　なんか社長の様子が変だな？）
　　　　　　 ,'　i　iヽ',　￣　　　　　 ￣　 i　ﾒ　i
　　　　　　 i　 i i　i　　　　　'　'　　　　　i　　　i
　　　　　　 i　 ',i 　i　U　　　/ﾆﾆヽ　　　 i　 i　 ',
　　　　　　 i　i　',　,`､　　 ヽ─　'　　 , '　,'　,' ｲ
　　　　　　 ', 丶 ',　', ＼　　 -　　　 ' ,'　,'　,'　,'
　　　　　　　 ',　ヽ ' ,　 i 丶､,,__,,, '　 i　 / /　/ｰ..､.- ....___
　　　　　 __､　ヽ ヽ从　ー丶　　 ／::::::j/:j/:::::::::::',　　　　 ヽ
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久しぶりに八谷と会う升田は持ち前の勘で、八谷の不調を感じとる。

407：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:08:06 ID:HgNCInOQ0


　　　　　
　　/::::::::::::://::://::::::::/:::/::::::/::／::::丿:::::::::/::::ヽ
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.|:::::::: l:::::::::::ﾚ::::::::/::l:::::/:l:::::':::／='弋z;ｿ/ ﾚ':／l::::l::::l
.|:::::::: l::::::::::l::/ ﾚ':i:j:l:::/:::l:::l:/　｀　　¨　/　　、fz:/ : :l　　　　　升田君、僕の将棋はどんなもんだい？
.|:::::::: l:::::::: l/んl:/:i:l/:::/:l::/　　　　　　　　　　ヽ,.://l
.ヽ:::::::l::::::l　 て l | lﾉl::/　l　　　　　　　　　　.:　ﾉ ./ ;
　　、:::::::::ヽ　ｰ　ヽ ﾚ'　　｀　　　　 　 　 　 　 　 |
　　∨:::::::::::｀ー .　　　　　　　　 　　｀　ー　=='　|
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.　　　,ｲｌ| i 　 　 ,　　;i 　 　 ､　 　 、 ､ヽ
　　 / l | l 　 　 l　　l l　 l　 l } 　 ;　ｉ　ヽヽ
　　,'　 l! !　　　l!　　l i　i　　リ　 }　ﾘ　i !ﾘ
　　l　　l　　　 i l　　l |　l　iソ　ﾉ ,ｒ'´l! l }ｿ　　　　　社長は勘が鋭くて、土蔵があったらそれすらぶち破るぐらい
　　| _..=､ｪ_____!_l＿_l |　! |!ィ弋~lﾅ　!ン'i　　　　　勢いがある将棋ですよ。
ﾞﾞﾞ￣　　　＼::ヾ::::::::::::＼　l!　　￣　　ﾞヽl
　　　　　　　l::::::ヽ::::::::::::ヽﾞi、　　　 ´ i´ |
ｪ-‐ ''''''‐ｪ-┘:::::::::::::::::::::､}ﾊ. 　　　)┤　l!　））
　　 l　|l　! l｀'ｰtｪ_:::_::::::::::ヽヾ.　　　/　i ﾘ
　　_!_弋ｪ-=ゞ､ヽ＼_|:::::::::入＼ー ' , ノﾉ
￣　　　　　　＼`::￣::ﾞ＝'｡.￣:ﾐニ≦､.._
　　　　　　　　　ヽ:::::::::::::::::::ﾟ:･:。::::::::::::ﾞi ｀' ー- ....___
　　　　　　 　 　　 l::::::::::::::::::::::::::::ﾟ:・:。:::ヽ、　 　 　　_ヽ,＿...-――
　 　 　　　　 　　　l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾟ::・＼---ｨ:´::::::ヽ
　　　　　　　　　　i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::f;.､、{:::::::::::::::＼
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元々将棋好きな八谷は升田と久しぶりに将棋を指していた。だが、八谷は将棋に集中しきれていなかった。

408：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:08:27 ID:HgNCInOQ0



.:.:＼.:.:.:`ヽ､:.:.:.:`ヽ､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＜.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:
.:.:.:..:｀ヽ、.:.:｀`ヽ､.:.:`ヽ､.:.:.:.:.:.:.:.:.＼.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:..:.:.:.:.:.:.｀＜.:..:.:.::＼.:.:
.:.:.:.:.:.:.:.:.＞--:､.:.:`ヽ､:..:`ヽ､.:.:.:.:...:.:＼.:.:.:.:.:.:.:＼ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＜..:.:.:.＼
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:二ﾆ=‐.:.:.:.:.:.:..:ﾍ.:.:.:.:.:.:.:／.￣￣￣￣￣￣￣￣
.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..::.:｀＜.:.:.:.:.:.:.:.＼.:.:.:.:.:.:ﾍ.:..:／
.:.:.:.:..＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀＜二二ﾆ=‐.:..:.:.:/
.:.:＼:.:.:.｀ヽ二ﾆ=.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..::∨.::.:ﾍ.:.:./
＼.:.:＼.:.:.:.:.:.＼　/　／ 　 ｝―　 ∨＼.:/　　　　　升田君、僕は富士製鉄の永野社長に会いたいと思っているんだ。
.:.:.:＼:.:｀ヽ..:.:.:.:.＼　弐ﾌ　ｿ　　　　 　 /
.:.:.:.:.:.＼.:.:.:二二ﾆ=‐.｀ヽ７　 　 　 　 /　　　　　　
.:.:.:.:.＼.:.:.:.:.:.:＼.:.:.｀ヽ　 /　　　　　　|
ヽ.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:..:｀ｰ─＼　　　 　 　 .|
　ﾞ'､.:.:.:.:.:.｀ｰ-─| 　　　 ｀　　　　 ／
　 . ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾘ.　　　　 　 　 　 ￣|
　　　 ＼｀''─ｰイ　　　　 　 　 　 　 |
　　 　　 ＼ 　 /　　　　　　　　　　　|
　　　　　　 ｀　|　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　 　 .l　　　 ´￣　　　　 　 |
　　 　 　 　 　 ｀'''ー-ｰ─ｰ、　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ 　 久 ‐＼
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｀―‐‐ヽﾉ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　＼　＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｀─､　　＼

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そうしてふと八谷は升田に対して、経営危機を打破する為に考えた方法を話し始めた。

それは、同郷である永野重雄に会うことで、支援を取り付けて貰うということであった。

409：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:08:42 ID:HgNCInOQ0


　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永野はこの時、日本製鉄から分社化した富士製鉄の社長であり、関西の平炉メーカーと共に
広畑製鉄所争奪戦を行い、傘下におさめることに成功する。

経済安定本部の第一副長官を務めた経験などから財界とも深いつながりがあり、
この時期尤も活躍していた経営者でもあった。

410：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:08:57 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　_＿__　 _,.-=＝－- ､
　　　　　...-‐＝三ﾆ≧弐ﾆミ´三ﾆ=-､
　　　／:,::::‐:'´／::::::,ｲ::::::∧:｀:､｀:､=:ﾐ､｀::.､
　 .::'::／::,:イ,ｲ:/::::::/ｉ|::::::':::: ヽ:::ヽ:::ヽ:::ヽ::::＼
. /:::/::::::'::::///:ｉ:ｉ:::': !|ｉ:::ｉ:::ｉ:ｉ::ｉ::＼:｀::､::＼:＼::::::､
/:::/::::/::::/,ｲ':::ｉ:l:::::::/!|:::|::ｌ ｌ::|:::､:::＼::＼:::ヽ::ヽ: 丶
:::/::::/ｉ::://::l::::l:!:::::/::ハ:|::!:|::ﾄ､:::＼:::',::､:丶::丶::､: ヽ
/::: /::l:::'/:ｉ::|:::l::::::;':::ｉ:::::l:|::::|::|小ﾄ､::ヾﾄ､:ヽ: ',:::ｉ､::ｉ::::ｉ
:::::/::::l::ｉ::::;斗､!::::,ｉ:::l::::::; |::::|:l/:::|､ ｀ ､!:::ｉ:: ｉ:ﾊ l::ｉ |ヽ!
::::'::::::l::l::::' r ､!: /:|::l::::/:l:|::::!!: /|!=≧､ヾl::::ｌ':::!|:::!:|:::|　　　　永野社長に会って、直談判して支援を貰おうと思っているんだよ。
:::::::::::|:|:ｉ::ｉ {　!:/:/l:l: /: ﾊ!:: Ⅵ:八　　 ヾ!::/ｉ::: |:::: !: !　　　
:::::::: ｉ|:|:|::l　y/:/:/l| ' / ｉ∧::l {′ ヾ=-ﾒ}ﾊ. |::::|: /}:/　　　　でないと会社が潰れてしまう。だけど、会ってしまえばこっちのものなんだが、
　::::::!|:!:|::|V/l/ '.　|::/ /'　ヾ!.　　 　 　 '　 ､::::!/::::'　　　　　家や会社じゃ簡単に門前払いされるだろうし、どうすればいいかと思ってね。
　 ::::::!:::|::ｌ::ｉ: '　 　 !'　　　　　 　 　 　 　 　 V,'／
　　 :::::::l:ｉｌ:l:' ｉ　　　　　　　 　 　 　 　 ,　　 ノ´
　　　:::::|| |!.　､　　　　　　　 　 　 　 　 r ´
　　 　 ::ll {.　　＼　 　 　 　 　 - ― ､‐'
　　　　 :!.　　　　 ヽ　　　　　 　 　 _ﾉ
　　　　　　　　　　　　､　 　 　 　 /
　 　 　 　 　 ､.　　 , -‐丶　　 _　′
　　　　　　 　 ＼イ ＼　　 ￣
　　　　　　　　　 ＼.　 ヽ

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永野は当時、財界における新進気鋭の経営者であり非常に名が知られている。
当時中小企業に過ぎない日本触媒化学工業の社長でしかない八谷から見れば、
雲上人といってもいい。

故に真正面から会いに行って、会えるような人物ではなかった。

411：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:09:14 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　.ィ彳'フ从＼ヾ、、
　　　　　　　　　　／／　i　i　ヽヽヽヾ　 'ヽ.
　　　　　　　　　/　//　 . 　ii　 i　i　ヽ＼ 　'ヽ
　　　　　　　 　.'　/ ; i 　l　 li　 '.　 ｌ　 ',　ヽ　ハ
　　　　　　 　 /　/ i　i　!　　i!　　i 　 ! 　 '　ヾ 　 ヽ
　　　　　　　 7　7 ∥　!i　　ii 　 i 　 '. 　 i　　i　　 '.
　　　　 　 　 ' 　 i　l 　∥ 　!i　　l 　 '.　 l　　 l　i 　i　　　　　　　　だったら社長、永野社長に会うなら汽車に乗ればいいんじゃね？
　　　　　 　i　i　!　 !　 i　i　i! 　　i 　 .!　 i　 ∥　i 　',　
　　　 　　 │!　 l| i　 ｿ　i ﾝ　 　/i　 i 　　i　从　l　 !i　　　　　　　汽車の中なら逃げられないぜ。
　　　　　　i　i　 |i 　乂　 / 　 /　ｿ　ﾉ 　ﾉ ﾉ ﾉ |　| 　 i'
　　　　　 ∥ l　| |　　ﾉ　/　　/ﾘ /i　/ / ｿ　|| |ﾘ i 　 i!
　　　　　　!　i　| |　ノ／_＿_/_ｿノ |　ﾉ //ッ''ｿｊﾘ l 　 .li
　　　　　　i　i　| |　　|ヽ, 'ｰ'ヽ、　jﾉ /ノ─ "　 ﾘ |　　!i
　　　　　 　| !　|│　|i.　 ￣＂ °　　 　 　　 　j　| 　i ﾄ 、
　　　　　 イi i　│ 从　　　 　　　　　　　　 　 ﾘ.| i 　ｿｿ　 ヽ
　　　　／::::::',　t 　人 　 　 　　　、 丿　　　/|　| j　ﾘ/　　　ヽ
　　 ／　＼:::::',　ヽヾ,i＼　　　、,, ,,_,.ン'　　/:::| ∥　/　　 　 　 ;
　　　／＼◇:::::ヽ ヽ　!:::丶、 　`' ｰ "　 . ':::jﾉ:ソjノ 　 　　　　 i
　 ／＼ 　＼／＼◇人ゞ::::: ::丶、 　 ／:::::::::::::::::!　　　　　　　i
　　　　 ＼／＼ 　＼:::::::::::::::::::::::Ｔへ ::::::::::::::::::::::|　　　　　　　!
　　　　 ／'、 　＼ ／:。::::::::::::::::/＼〆"''ヾ:::::::::::|　　　　　 　 |
　　　　　　　' 、 ／:::::::ﾟ。::::::√＼ζn....ﾒ｡ヾ:::::::::|　　 　 　 　 i
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そこで升田が即答したのは、逃げられない汽車の中で会えばいいというアイディアであった。

412：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:09:26 ID:HgNCInOQ0


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その言葉をキッカケに八谷の頭脳を電流が走る。

413：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:09:37 ID:HgNCInOQ0





ﾄ､:.:.:.:.:.:.:|!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.
:.:.ヽ:.:.:.:.八:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:.:.:＼:.＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'.:.:
:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.＼:.:ﾞト､:.:.:.:.:.:.:.:.:＼:＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.　　　（富士製鉄は東京の会社だが、広畑製鉄所は姫路にあるんだ）
:.､:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:|＼＼｀ー-ｘ:.:.:.:.:.＼＞､:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.ハ､:.:.:.:.:.:.:.:.l
:.:.＼:.:.:.:.:.:.ヽ:.|. _ヽ:丶壬三zz＞---ミ=ーrｚ:＿＿_:}:.ヽ:.:.:.:.:.:.:!　　　（永野社長が東京から来るなら、汽車に乗って広畑まで来るだろう）
:.:.:.:.:ヾ､:.:.:.:.:ヾｲ≠:＼ヽ ∀圭圭圭り　　,.}|彳 ,ｲﾊ:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:
:.:.:.:.:.:.ヾ＼:.:.:.:＼〃　ヽ!　ゞ＝＝≠　,z≠ ィ彡'　 }:.:.:.:.:|:',:.:.:.:.:　　　（その時に会えば……）
ヽ:.:.:.:.:.:',　 ＼:.:. ＼-==≒ﾆ三三三ア　 "´　　　 :|:.:.:.:.:|:.:',:.:.:.:
　 ＼:.:.:.',　　 ＼:.:.:.＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 |:.:.:.:,'|:.:.:'.:.:.
　　　＼:.＼　　 ｀ー--＼　　　　　　　　　　　　　 |:.:.:.' |:.:.:ハ
　　　　 ￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:.:/　|:./:.:.:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |/ 　 |/:.:.:.:


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永野はこの時広畑製鉄所を獲得しており、たびたび視察に訪れることが多かった。

その時を狙えば会えるのではないだろうかと八谷は考え始めた。

414：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:09:48 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,ィ王＞､
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 二二二二}＾ヽ'.:.:.:ﾊ.:>、 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
　　　 ―――ｆニヽ ｎ―――――――――,'fｭ　ﾍ从|.:.:.:.}―――――――――――――――――――
　　　 ＿＿＿.ヽ彡_ｊ L、 ＿＿＿＿＿＿＿ 〈　 　 .｀-|.:.:.ｿ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　￣＼　　Ｌ _　　　　　　　　　_.　〉　　 イ:／　 ＿_.
　　 　 二二二二二`く/: : :`ｰ‐z ＿, -ｒｆ: : : : ∧　　 ィ::∧´: :／}.二二二二二二二二二二 /〉二二二二二二
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　　　　　　　　　　　　　￣` ｰ-=ﾆ、: : : : : [ {:;'::::} |/ /: : : : : {: : : : : : : : : : :: : : :. : : : :: : }｢ノ　,＝.￣￣￣￣￣￣
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升田と将棋を指した後、八谷は魔法瓶と握り飯をもって姫路に向かった。
永野が乗っているであろう急行列車「筑紫」に乗り込み、直談判することを決意した。

415：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:10:01 ID:HgNCInOQ0


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　　　　　　　)ﾉ}ﾉ}i|ノ}/　　　　 　 　 　 　 }／

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乗り込んだ後八谷は一人座席で書類を読んでいる永野を見つけ、そのまま永野の席へと向かった。

416：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:10:13 ID:HgNCInOQ0


: : : ／: : : : : : : : : : : : : ＞ ´: : : :／; : :. :. :./::::::::::::::://::::/:|:::::::i::::::::::::::::::::::ﾘ::::}
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___ : : :斗:≦弋＝=zz≧=-:.／:. :./: : : :.／::::::::::::::; '::::/≦__ｉ:::/:|:::::::::::::::::/　,::′
: : : : : : |: :|　　＼　 弋_;fツ＾ヾ=/: : :／ . ::::::::::／ィ弋ｆツ　!:/: :ﾘ:::::::::::::/　//
: i: : : : :.i: :|　　　 ｀ ー---─　/: :／: :::::::::::／: :ー---=≦/ : /::::::::::::/　//　　　　　失礼ですが、永野社長でいらっしゃいますか？
:.|V: : : :.lⅥ　　 　 　 　 　 　 /／／: :.＞ ´.: : 　 : : : : : : / : /:::::::::::; '∠.ｲ
:.| ∨: : :|ﾊ:!　　　　　　　　 ／／‐　´　　 i: : :　　　　: : : : : /::::::::／
:.ゝ-V: :.|　ﾍ、　　　　　　　　　　　　　 　 |: : : .　　. : : : : :厶ｲ／　_
: : :.|..∨ﾑ　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |: : : : . : : : : : : : /:/　　　 ＞ ．
ﾊ: :.!　iヾ:.i　　　　　　　　　　　　　　　　　{: : : : : : : : : : : ｲ:/　＼　　　　　＞ ．
.∧..i.....i　＼　　　　　　　 　 　 　 __　　　 j: : : : : : : : : , i:::/　　　 ＼　　　　　　 `
.... Ⅵ.....i　 ＼　　　　　　　　　　　　｀　 〃: : : : : : : , '....|::′､　　 　 ＼
........ﾍ.....i　 　 ＼　　　　　　　___,........＿＿: : : : : :., '........j/......∧　　　　 ＼
.................i　 　 　 ＼　　　　 　 ｀　ｰ─一 ´: : : ／∨...................∧　　　　　 ＼
..................i　 　 　 　 ＼　　　　　　￣:::::: : : :.／　　 i..................... ∧　　　　　　 ＼







　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|　　　　　うむ、私が永野重雄だ。で、君は何者だ？
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
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ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
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417：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:10:51 ID:HgNCInOQ0



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　　　　　　|:::|::||::::丶::::::::丶i:::ゞ:::::ヽ::::::::::ヽ:ヽ::ヽ:::|:::::::i::　　　私は日本触媒化学工業の社長をやっております、八谷泰造といいます。
　　　　 　∥::|::|ヽ:::丶::::丶:丶:ヽ::ヘ::::::::::ヽ::::ゝ丶i::::::i:::
　　　　　　|:::::|::|:::|::::::::ヽ丶ヽ::::::ヽヽ::::ヘ,,:::::ヽ:::::i::i:::::|::　　　永野社長が経営される富士製鉄とは顧客の関係にあります。
　　　　 　 ∥:|ヽ::|ヽ|::::::丶丶ヽ::::::::ヽヘ,,,,:::::::::ヽ:::::i:::i:::
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さりげなく自分の紹介をしながら、八谷は「工学博士」の肩書きが入った名刺を渡した。

418：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:11:14 ID:HgNCInOQ0



　　　　　 |二＿　　＿―-､_ 　　|､ヽ＿,./ r''‐'´ヽ　ヽヽ　 |　 |
　　　　　 |　i二ﾆ―---､__, |　|　|￣─_ヽヽ､:::::ノミ-|　l　/　 |
　　　　　く二二ﾆ-‐''''''~´　 ＼ヽ｀'‐=,´　　＼/　＼ﾉ　　人） |
　　　　　|　　ノ ／　 ／二三´｀ヽヽ　l　/ヽヽ ヽ　/r‐´／/　|┐
　　　　 /‐'´,／　／く　＼--￣｀''‐＼ ヽく ｜|ノ､lノ,-'´／／　|　　　　　（工学博士か……それにこの男、広島生まれか？）
　　　　ヽ/＿／／/く　　　:ヽ弋;;;;ｯ-､ | |:::::-<::::-=ﾆ二//　 /´
　　　　 Y´　 .＼／ ﾉ　　　　　￣￣::::ﾉ/　ヽ　!弋シﾌ´/ r‐'　　　　　　それで私に何の用だ？
　　　　 | /｀i､　 .V/ ヽ　　　　　　::::::lノ　　__|　ヽ::　　 | /
　　　　 .l l　| ヽ　|　　　　　　　　　　:::::..／:::::￣ﾉ　　 //　　　　　　　　
　　　　　ヽヽヽ!　|　　　　　　　　　　　　＼::::::／　　 |/
　　　　　 |　vヽ　|　　　　　　　　　 _,. -''''ヽ-‐､　　 .|､ヽ
　　　　 ／.（ (>､_|　　　　　　　　 !-‐''~´ ｀~´＼!　 ./'ノ
　　　　 |/　｀-i´　|. 　　　　　　　　 '';;,,,,,,,,,,,,,,,;;''　　/|/　　　　　　　　　　　　　＿,,､
　　　　 |　　　|　　|. 　　　　　　　　　　"""""　　 / |　　　　　　　　　　ｒ'''ヽ''´ヽ　ヽ!-､
_,. --､　|｜｜|　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　　　　　　'､　｀''''''　 _ﾉ,.--｀--┬''ヽ,
　　　 ヽ|　川｜　　　　＼ 　　　　　　＿＿_　　 /　|　　　　　　　　　　　｀''''''''フヽ´　　　ヽ,,,,ヽ＿ﾉ＿＿,,
　　　|　||｜｜|　　　　　 ::::::＼　　／:::::::::::::::＼/　｜　　　　　　　　　　_,. -''´-､,.-‐‐''''''''´.／　ヽ　　ヽ　 ）
　　 /　| | 川｜　　　　　　　::::::｀'''‐------‐''´:　　|　　　　　　　　　/r‐'''''''´／ヽヽ_, イ´　　　　ﾉ　＿フ


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社長と博士号の肩書きが載っている名刺を眺めながら、永野は広島弁混じりで話す八谷に興味を持った。

419：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:11:29 ID:HgNCInOQ0


　..../ :::::::::::::l::::":::::::､:::: :ヽ.::::::::::::::::.:::::.::::::.:
　./ ::::::::::::::::|::::::::::::::ヽ:::::ヽ`:､::::::::::::::::::::::::::
　.!:::､::::.:::::::::.ｌ:.:::::::::::::::ヽ::＼:::ヽ.::::::::::..::::::. ..
　.:..: :::|,::: :: :、丶: ヽ: :: :ヽ :::'-::ヽ:::::::::..:::::..
　::::|:::::::y::::::::ヽ:::::ゝ:ヽ,::::::＼.::::ﾞ''.::ヽ::::::::::: .
　.:,:::.ｌ:::::lヽ::::::::、:":::::､: ､:::::::ﾞ'.ｌ'-、::.:ｌ:::::::::.: .　　　は、はい。今我が社は富士製鉄さんからナフタリンを買ってます。　
　..!:,::::ﾐ､:ﾞ!,ヽ::::: ｌ::::.＼ヽ,＼::..,.＼＼.ｌ::.::::: ...　　
　.! ｌ::.:::､::::ｌ从_:::::l::,,'.:/_､ﾆ,,__､i::|:､''"!:::::::, .　　　　我が社はナフタリンから無水フタール酸を生産していますが、
　:::.ゝ. !./ﾞ! :^lゝ＼|::l ゞ='ﾊ":`.,!`)l:'":::::":::/ ..　　無水フタール酸は重要な化学物質です。
　::ﾍ::: `''`:ゝ-:"::::::::ｿ":.､:´ ｀-'‐' ι,.|,i::i'::::/..
　. ::ﾐ ｀::::::::::::::::::::::::　　　　　　 　　ﾉ.|.l::::i./ ...
.　　ヽ''ｌ､:::::::::::::::::::　　 　　　　　 .i　.,l/::::|:,i"
　　　 .'ﾙ:::::::::::::::::ゝ_-　　　　　　 U,..ｌ,i|::l/:. .
.　 　 　 ヽ::::::::　　 　 　 　 　 　 ﾞ'/ゞ.从､.! ...
　　　　　. ヽ::::::`ヽ..二"''‐　　　 / ,iﾞ.::|"l/‐ .
　　　　　 ／ﾞ:､::: `―　　　　.／,,､/ .ﾞ|　! ......
　　　 ／ 　.ヽ: ＼　　　　_／ ／ l./ 　ﾞ
. , ／　　　　l ヽ .｀'― :(,ﾞ／ﾞ　 //

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やや緊張しながら八谷は持論を語り始めた。

420：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:11:42 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_
　　　　　 　　　, ‐ ´. .::::::::::::::::::::::::｀ ‐ 、
.　　　 　　　／/ . : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.、
　　　　　／. :/::::::::::::::::::::::::::::::::: i::::::::: : ＼::＼
.　　 　 //. :/::::::::::::ｉ :::::::::::::::::://:::::::::::::＼:＼::＼
　　　 //::::::ｌ:::::::/:/{ :::::/:::::::://:/::::!::::ｌ:::::::ﾄ:::::ヽ::::.
.　　　ｌ:l::::::/|:::::ﾊ/∧:V:::/:::/::::/::::/:::/::::::/::ﾍ::::l::::ﾊ　　　　無水フタール酸は塩化ビニールの可塑剤として必要不可欠。
.　 　 |:l:::::::::|:::::|::!::::∧:V:::/::::/::::/:::/::::::/|::::::|::::|::|.!|　　　　塩化ビニールは今、需要が急速に伸びています。
.　 　 |:ｌ:: |: :|:::::l::|::/:::ﾍ::V::／／/:/ ::／:::|:: /!:: | l ||
　　　 ｌ::::l:::::ﾊ:::|∠:ィ７:::Y:／::イ::z≦ィ:::/::/::ﾊ/:ﾘ |!　　　　我が社も需要に追いついていないぐらいです。
.　　　 ｌ::|:::::小:Π:/l/-=彡１ /艾ｧﾃ｀ｼ_:ｨｆﾁ::/:/
　　　　V::ｌ: :!::l:|い小/|:ハl:|/　　｀´　 　 ｛ }ノ´
　　　　 Ⅵ: ｌ:::::｀爪|　　　　　　　　　　　　〈
　　　 　 }:!: |::|:::l::|　＼　 　 　 　 　 　 ‐ _ノ
　　　 　 ぃ::|::|:::l::|　　 丶　　　　__,　，／
　　　　　 |:∧l＼:{　　　　＼ 　 　 　 /
　　　　　 ｌ′丶　ヽ　　　　　ト､＿,ノ
　　 　 ／　　　　　　　　 　 ,′
.　 ／＼.＿＿＿＿　　 　 人_
／　　｀－――‐‐- ､｀ ‐ 、　 ＞､ｘ‐ ､
　　　 　 　 　 ＼ 　 　 ｀ヽ ヽ、　 | | 　 ＼
　　　　　　　　　 ＼　　　　＼ ` ┘!　 ＼ ＼




　　　　　　　 /::::l:::l::､:::::､:::::ヽ::､::::::::::::＼:::＼::::::::ヽヽ::::::ヽ
　　　　　　 /:::!::::i:::!:::ヽ:::ヽ::::::ヽ::ヽ､::::::::::＼:::ヽ:::::::ヽヽ::::::',
　　　　 　 /:l::::!::::ヽ!::ヽ:::::::ヽ:::::::＼:::ヽ､::::::::ヽ:::ヽ::::::::!::i:::::::!
　　 　 　 ﾊ:::ｌ:::::、::::ヽ::::＼:::::＼:::::::＼:::｀ヽ、:::ヽ::ヽ:::::!:::!:::::ｌ　
..　　　　/:::::::l::::::!ヽ:ヽ::::､:::::ヽ:::､:＼::::: ＼::::::＼::::!::::ヽ:!:::i:::l:l　　　　日本の化学工業は今後絶対に発展していきます！
　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
....　　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､::::::::::::::::i::!::l:l !　　　　鉄鋼を初めとする重工業と、化学工業が日本の産業の担い手に、
.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ　　　　絶対になるはずです！　
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!　　　　
.　　　　 　 　 !::､::::i　　　 　 ｌ 　 　 　 　 　 　 u |:::/lj/l:!ﾘ
　　　　　　　　ヾﾄ､:!u 　 　 　 　 　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ
　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　　 　 　 ｕ　/ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、　 -､ｰ-- ､__　 　 　 /'　!:://
　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　　｀二¨´　　　 ／　　|/:/
　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
八谷はあえて「鉄鋼を初めとする重工業」という言葉を使った。無論これは製鉄会社を経営する
永野に対する配慮である。

421：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:11:55 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　| /　　　 　　ヽ　　　 ／　　　　／　l　 ＼
　　　　　　　 ,ｲ　　 l　　 ヽ　l　　／　　　 ／　　／　　 /
　　　　　　 / |　　　!,､　　 l　l /　　　　／　　　　　ノ　ﾚ‐i
　　　　　 /　 |　　/　　｀'-　　l|　　　 /_,.‐ヽ　　 ／　　　 |
　　　　　/　　|　/　　/ヽ／'''''‐､　　 |´　　 ヽ_／／ ヽ　　〉　　　　　　そこで貴様は一体この永野重雄に何を要求するというのだ？
　　　　　|　　　　|　　|ﾐ./　　＿ ｀!　 ﾚ　　　　l　　　_ ﾐ l　/
　　　　　_,.-‐ヽ　|　 /-l　　/_ﾐヽ,|　__,.-､　　 レ-‐´ |　l く
　　　　 ´￣＼｀''´　/三l　 |　r''''''-'''ヽ! |　　/三彡-ク　　）
　　　　　　ヽ　L＿/'/￣ヽ l―＼:::::ノ-/　/―フi'´/　　／
　　　　　　　|　r‐､　ト､,_　|/ ヽ'i ｀´l /　/　／／'|　l／
　　　　　　　ヽ| r-| ﾉ ､_ ､＼､ﾉ ﾚi l, / /_／＿,,.　|　l,
　　　　　　　 .lヽ 川　 ヽ弋;ｯ､｀ヽ! l:| l_,.ィ;;ﾌノ　 人　|
　　　　　　　　|. | |り､　 ｀"´￣ヽ!　|ヽ!￣｀´　　 | /ヽ|
　　　　　　　　|　y-| l,　　　　　　l　|　 l　　　　　|ﾉ ﾉﾉ
　　　　　　　 .|　,i､し!　　.　　　　l　.|　/.　　　　 | r'´
　　　　　　　 | 　| ｀´!　　　　　ヽ!___ﾚ　　　　　 .!.|
　　　　　　_,.-''i'´l　　l　　　､＿,.-ﾆ-､_,.-　　　/ .|ヽ-------､_
　　　　 ／／　|　ヽ　 ヽ　　　 r｀'''''"´,.　　　/　ﾉ| ｀''―――-､ヽ
　　　 / /　　　|　　＼　 ＼　　｀"T"´ 　　/　／ |--､_　　　　　＼ヽ
　　 / /　　　 /　　　　＼　＼　　　　　 ／／　　 |　　 ＼　　　　　 l.L
　 ／/　　　 /　　　　　　 ｀''‐ヽ､,,,,,,,,,,ノ‐'´　　　　l　　　　ヽ　　　　ヽ ＼_





ﾍ　',:::ﾍ|:::::::::l:::ﾍ::ﾊ:::::＼|:::::::::::＼:::::::＼:::::::::::::::::::::/:|:::::::::/:::::::
　',　＼:ﾍ::::::|ヽ:::ﾍﾊヽ:::::｀ヽ_::::::::::＼:::::::＼::::::::::::/::::|::::::/:ﾍ:::::
　 ',　　ヽ',ヽ| ﾍ＼::::ﾍ ＼:::ﾍl｀ヽ:::::::l＼::::: l::::::: /｀ヽ|:::/::::::::ﾍ:
＿_ヽ　./ﾍ .ﾊﾍ:l　＼:ﾍ.　＼ﾍ　 ｀ヽl::::::＼::＼::l＼::::|/:::ﾍ＼:::　　　　　富士製鉄さんに、我が社の株主になってほしいのです！
｀ヽ￣./　ハ:::',ﾍ..　　｀ヽ.　　＼　 　｀ｰ-l:::＼::＼:::＼　　 ',|ヽl
　 　 /.　 　 ＼ ﾊ　　　　　　 　 　 　 　 l:::::::..　　　　　　　　　　　　　我が社は海外資本は無論のこと、三菱や住友のような
. 　 /　　　 　　 ｀ヽ　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::...　　　　　　　　　　　財閥だけに重化学工業を任せるつもりはありません！
　 /　　　　　　　　 ﾍ　　　　　　　｀ヽ　　_／:::::::::..
. /　　　 　 　 　 ／'';;＼
　｀''ｰ-=,,,_ 　 ／　　 ';;;;;＼ 　　　 ＿＿_ ＿＿_
　　　　　　'／　　　　 ';;;|　.＼　　　 　 　 　 　 　 　 　 /
　　　, r ' ´　 　 　 　 　 |.　　 ＼　　｀￣￣´ 　 　 　 ｲ;;;
　　K　　　 　 　 　 　 　 | . 　 　 ＼　　　　 　 　 ／;;;;;;;;
　 　 ∨　　　　　　　　　 |　　 　 　 ＼　 　 　 ,イ''''''''
. 　 　 ∨　　　　　　　 　 |　　　　,r‐='｀ー― '｀ヽ
　 　 　 ∨　　　　　 　 　 |　　　/;;'ﾍ . /　/　/　/＼
　　　　　∨　　　　　　 　 |　　/　　 ∨ ./　/　/　　 ＼

422：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:12:09 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　 /::::l:::l::､:::::､:::::ヽ::､::::::::::::＼:::＼::::::::ヽヽ::::::ヽ
　　　　　　 /:::!::::i:::!:::ヽ:::ヽ::::::ヽ::ヽ､::::::::::＼:::ヽ:::::::ヽヽ::::::',
　　　　 　 /:l::::!::::ヽ!::ヽ:::::::ヽ:::::::＼:::ヽ､::::::::ヽ:::ヽ::::::::!::i:::::::!
　　 　 　 ﾊ:::ｌ:::::、::::ヽ::::＼:::::＼:::::::＼:::｀ヽ、:::ヽ::ヽ:::::!:::!:::::ｌ
..　　　　/:::::::l::::::!ヽ:ヽ::::､:::::ヽ:::､:＼::::: ＼::::::＼::::!::::ヽ:!:::i:::l:l　　　　　我が社はまだそこまでの力はありません！
　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
....　　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､::::::::::::::::i::!::l:l !　　　　ですが、無水フタール酸の生産には長年携わっており、
.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ　　　　　研究投資も行っています！
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!　　　　　後は設備を整えるだけなんです！
.　　　　 　 　 !::､::::i　　　 　 ｌ 　 　 　 　 　 　 u |:::/lj/l:!ﾘ
　　　　　　　　ヾﾄ､:!u 　 　 　 　 　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ
　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　　 　 　 ｕ　/ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、　 -､ｰ-- ､__　 　 　 /'　!:://
　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　　｀二¨´　　　 ／　　|/:/
　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実はすでに大阪ガスにも同じように出資の提案はしたが、けんもほろろに断られていた。

そして、ここで断られれば会社が倒産するのは確実であっただけに、八谷も必死だった。

423：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:12:22 ID:HgNCInOQ0


　　 　 　 　 __ノ＼＿_
　　　　-=/⌒ｰ　 ∨　}-､
　　　 ／⌒ヽ＼ }　}／｀ヽ＼‐┐
　　 /ｲ７７⌒Yニﾆ{　 ﾄ /　/-､}
　　　 / /:{ く {三ﾉﾉrｲ{ﾄ(ﾉ,ｲ }/
　　, '　/⌒ｰ/　　　ﾍむ7_ノノ　　　ちなみにいくら欲しい？
　//　/　　 {　　　　　__｛　　　　
⌒ヽ￣￣￣＼　　ｰ‐ｊ　　　　　
＼ 　＼:::::::::::::::＼__ﾌ
　 ＼　 ＼:::::::::::::{　　　　　　　　
　　　}　　 }::::::::::::＼-､
_＿__j　 　 ∨:::::::::::::＼＼-､
ｰヘﾉ´＞-､}::::::::::::::::::::}　}　ﾄ､
　　 ｀^ー─'--- ､::::::::}　}/ }　',
　 ／　　　　　　　 ≧'⌒ヽ￣}ﾉ
イ　　　　　　　　 ＼　　　　＼ ＼
　　　　　　　　　　　}　　 　 　 !　 }
　　　　　　 　 　 ／　 　 　 　 ﾄ､ {



　　　　　　　　　　　　　　 ＿,,,,,,,,＿、
　　　　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,;;;;;;;;ヽ
　　　　　　　　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　　　 　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.,';;;;;;;;;;;、;;;;;;;";;;;;;;;;;;'';;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
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　　　　/;;;;;;;;|;;;;;;;..;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;i､;;;;;;;;;丶;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;ヽ
　　 　 ;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;ヾ;;;;;;;;;|;;;;/;;;;;;;|;;;;;;;;;;;､;;;;;;;;;;;;;;|;;;ヽ;;;;;;;ヽ
　　　 ﾉ;;;;;;;;;;|;;;、;;;;;;;;;;;;;|;;;;;、;;;;;;;|:丶;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;|;;;;;;;;;;;;ヽ;;l
　　　/;;;;;;;|;;;;;,,;;;;;;;;;;|;;;|.::::::|;;;;丶;;|;､|;;､;;;;;;;;;;;;|;ヽ;;;;;;;;|;;;:::;;ヽ;l
　　　l;;;;;;|;;;;;;;;|;;;,;;l,;;;i;;;|;;;|;;;|;;;;;|;;;;;|;;;ヽ;;ヽ;;;;;;;|;;;;ヽ;;;;;;;|;;;;;;|;;;;;;ゝ　　　　我が社は資本金一千万ですので、ここは思い切って三千万ほど……
　　　l;;|;;;;|;.;ヽ;;;|; ;;;|;;;|;;|;;;| ;;| .;;|;;;;;|;;;;;|;;;;;;| ヽ;;;;;|;;ヽ;;;;;;|;;;;|;;;;;
　　　l;;|;;;;|,:::ヽ;;;ゝ:::ヽ;;|ヽ|::;;|:: .;;| ;;;|.;;;;| ;;;l::::::::ヽ;;|;;;;;;;;;;|;;;;|;;;l
　　　l;;;;|;;;;|;;ヽ::::::ﾃｒ‐z、;|:::::::::::;|::;;| ;;;| ;;l:::;;|:::::::::.ヽ;|;;;;ヽ;;|;;;|;,!
　　　ヽ,,,;|;;;|;;;ヽ::!_ゝ_ﾌヽ::::::;;;;:::|:::;|::::ハ__ﾌ　}〉､ ::::;;l;;;;;;;;;;|;;;|;l
　　　　l;;;;;;|;;|;;;l::::::｀￣"´:::::::::::::::　　`::＾￣""´ ::::::::::|;;/|;;;;|;
　　　 　.ヽ;;;|ヽ;ヽ:::::::::::::::::::::::　　　　　　　　　　　 l;;|;;;ﾉ
　　　　　ヽ;;;;;ヽヽ::::::::::::::::::::::　　　　　　　　　　　ﾉ;;;ll
　　　　　　ヽ;;;:::::::::::::::::::::::::::　　　　　　　　　　U　l;;/
　　　　　　　ヾ＼::::::::::::::::::::`　´　　　　　　　　　/;l;|
　　　　　　　 ヽ;;ヽ::::::::::::::::::::::　　　　　　　　／;;;;l;l
　　　　　　　　　 l;;;;ヽ::::::::ヽ￣￣ゝ　　　　／;;;ゝl
　　　　　　　　　 ...|;;ヽ;ヽ::::::￣￣　　　／‘":､!;
　　　　　　　　　 illﾞﾞ'|lﾞl　ヽ:::::￣　　／llllll!lﾞﾞ,l
　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣

424：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:12:48 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　＼ノ⌒　ミ'/＿＿＿＿,._,. -‐'／-､
　　　　　　　　　　 /_/　　.）ﾆ二二ﾆﾆ‐--,.-､- ､,_
￣￣￣＼　　　 ／　/ヽ//￣~ﾌ;;ﾌ三ミ／,､／￣￣￣
　ダ　　　　|　　 .ヽヽヽ ｀´　 .ノ／/三/ /／
　メ　　　 L._　　　）　ﾉ_,.,,,;'／,./ ＼=!//　　それでは完全に子会社になってしまうではないか。
　だ　　　┌´　　/＜（;;;i''_,ｨ''／　　　 |/　　
　　　　 ／　　　　｀ヽ／ ._!''´　　ﾉ　r'´|　　　三分の二は多すぎる。
＿＿／　　　　　 .／　　.|:::::.　　　.(´〉|　　　
　　　　　　　　 ∠,,,,,,,_　ﾉ　　　　　ヽ,ﾉ|　　　
　　　　　　　　 .｀''‐､ノ　　　　　　 ./　 |　　
　　　　　　　　　　r´‐-､　　　　　./　＜＿
　　　　　　　　　　l´｀~'''｀　 _,.,　 /　　　 //＼＿＿＿
　　　　　　　　　　.ﾌ"''''　 /　　｀ヽ､　　// /〉ﾉ / 川
　　　　　　　　　./　　　／　　　　＿｀'''''''┴-- ､,ﾉ_,.-
　　　　　　　　　し‐''フ´　　_,.-‐'´＿二--二ﾆ'／
　　　　　　　　　　｀ﾌ _,. =ﾆ‐''´￣　　　　　 ／






　　　　/::::i::::､:::ヽ､:::::＼:ヽ:＼::::::ヽ:::､::ヽ::､:',
　 　　/::i|::l::ﾄ､ヽ::､:::ヽ:､::::::＼::ヽ::::l::::ヽ::i:::i:::!
　　　/:/:!:::!:|::ヽ:＼ヽ::::､:＼::::ヽ:::ヽ!::::::i::|:::!::!
　　　!ﾊ::|::::i::l:|心､:ヽ::＼:ヽ_＼､＼:::ヽ:::|!::|:|i
　　　　i､:!:|:､N{､ﾋjヽゝ＼ヾｲ ﾋｊ　>､ヽi:､|!:|:l　　　そ、そうですよね。でしたら五分の二ほどで……
　　　　　ヽ:!::ﾄヽ￣　l! `　　｀￣´　|::l::|:|j:,!:!　　
　　　　　　ﾄ､::! u　　　　　　　　　ｊ |::/lj:::!ﾘ
　　　　　　　 ヾ、　 丶 -　　　　u　ﾘｲ:|ﾘ　　　
　　　　　　　　ﾘヽ　‐､ｰ- ､_　　 ／ｲ:::i
　　　　　　 rｰ'"ﾄ:lﾞ､ 　￣ 　 .／　 , |::!
　　　　　　/ ﾍ　ヾ　ヽ､ _,.　'　　 /　|:'

425：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:13:07 ID:HgNCInOQ0



　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |　　　（この永野重雄を相手に一人で増資の話をしてくるとは、この八谷という男、
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ　　　見かけと違ってなかなか腹が据わっているな）
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/　　　　
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ

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永野自身、富士製鋼という潰れかけた中小企業を経営していたことがあり、資金繰りが苦しく、
本気で夜逃げをしようとしたことがある。

それだけに八谷の気持ちが手に取るように分かった。

426：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:13:21 ID:HgNCInOQ0



　　　 _　 .、　　 ､　　　　　　　　　　　　　　　　　 、
　　 ./　 .､ ｀'､　　!　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ! /　 ! L !
　　　　　　　/　 .ﾉ　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |'　 /　 ./
　　　 ／　 i'　　､　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _, -∧ 'ヽ /´
　　.,ノ´　　ｺ　 .<‐‐ニ-- ､_ｯ 　　　　　, _,二‐''￣ .∨ .　l
　　　　 ／　 ＼ |─　ー-､　　｀'┐　／ -　￣＼、　ヽ .｀　　　　広畑は金にするべきだ。
　　　／　.／ﾞ/./ 弋辷ﾌ＼ ﾌ　　　　 l　'ﾞ､二シ┬｀　 l‐
　　 / 　 　　| .|ヽ二‐' ´　ノ　　　　　 !`'　｀ ￣゛　　　!
　 ´ ／　　 / / 　　　　 / 　　　　ヽ_,人　 　 　 　 　 !〃ヽ
　 　 !　　　ヽ !　　　　　　　　　　 　 !　 ヽ　　　　　 亅,!'ｉ ヽ
　　ヽ|　　　　l .!　　　　　　　　 ､i'´ .| .レ'　　　　　　 |'´ |　!
　 ､　「-､　　　'‐'l、　　　　　　　 ＼ !‐'　　　　　　l、.|　 | /
　　ヽ 　　＼　　　.!　　　　 　 　 　 　 　 -､　　　 .!　|　/ l
＼　!　ヽ　　＼、　　　　　　　　　　 　ー- ､ゝ 　 　_ | ´ /　　シャブ　シャブ
　＼_‐' ´　　　 .ﾄ、　　　　　 , 　_, --‐' . 二￣ ､ /| .Y´　　　　　チュバ　チュバ
＼　　 ｀‐､　　　 ヽ　　　 ｒ　' ,ｨ´　　 : ヽ、　`'く　| ｀''＼　　　　　　ペロン　ペロン　ペロン
　 ｀'-y-､_ゝ、　　 　　　　　 ､　 ｀ｰ、　　 ＼　　｀ ｰ ､￣' ､_
　　　　ヽ　 |　　　 ＼　　　　 / ￣' lL_　　　 ` ､　　 '､ ヽ　 ヽ
　　　　　|　 ヽ　　　　　　　　＼ ／+ ／　　　　 　　　　　 `　 ヽ
　　　　 , |　　ヽ､　　　　　　／''=| ./　 ｀＼　　_,, - ヽ　　　　　　､
　　　　/　＼　　 ｀'ｰ-､_　 ヽ　　　`　　-､ ￣ .ヽ_-イ-‐' 'ｉ　　　 ヽ
　　　 .|　　　＼　　　　　｀'｀丶､　 , ‐'´　 .／ヽ　　　 　／" .,!　　 ヽ
　　／ !　　　　＼　　　　　　　‐~ｰ　　／　　　 ､ 　｀　　 .／　　　　/
／　　 ヽ　　　　　＼　'､　 ／　　 ／　　　　／　　 : _, ‐'゛　　　　 /｀ゝ､
　　　　 ヽ　　　　　　ヽ ,ﾌ　 　／　　　 _,／-　　　／ _ ._, 　　　 ./、　　　｀ｰ-. ､
　　　　　.!　　　　　　/　　　　　　　 ／　　　　 ／ ￣　`　_lヽ、 .|　!
　　　　　 ヽ　　　　 / 　 /　　　 丶　　 _,-　.'／　　, r‐''´:;:;:;:;; ;; |　.!
　　　　　　 ヽ　　／　　　　　　/　　　　　　　 ゝ-‐' ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　.l
　　　　　　　　　　　　　　【白洲次郎】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それに永野は広畑製鉄所を巡り、白州次郎とやり合い、取れなかったら腹を切る覚悟で
争奪戦を行った経験を持つ。

427：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:13:35 ID:HgNCInOQ0


　　 ､＼　＼ ﾊ　l ｀ー､／/ {
　　　ト､l ﾄ､　| |＼∧　|　|　l
　＿ ヽ ＼ ヽl　＼|　ヽl　∨ ＼
　ヽ ＼|　 |　|ヽ　 |/!　|､　 ヽ　 〕　　　_
　　l 　 | ﾊヽ ヽ! / /ﾍ ＼　 |_r'　　　　 サクちゃんすまん！　サクちゃんの師匠である宮島清次郎翁に伝えてくれ！
　./　 //　} |　V　/／＼ﾄ､ ハ　　　　　
　　　,Ｎ　 l　!ノ‐'"ヽ 　 |:ヽl l ﾊ　　　　富士製鉄には広畑が必要なのだ！
　 ＼ｌ__＼ﾄｰ"　 l　 ｌ_　{:::｢ヽ!　',　　　　
　　ヽ--ｖ'　　 l　 ∨　｀}::ｊ　l V} |＼ 　
　　　　　ヽ　　＼. l⌒Ｖ:/ _,k' ∨l}:::＼
　　　　　　＼__ 　 l＼ﾉ:ﾚ'_ﾉﾉ　ﾊﾘ:::::::　
　　｀ト..､_　 　　＼l、 l::ｆﾂ／　 　 ',::::::　
.　　　｀ヽ::ﾆ_:‐::--､ﾋﾆｿ ﾍ　　　　 V:::　
.　　 ､/´/ ｒぇ__,＞ハ　V　}　/＾ヽ　',::　
　　　　　｀￣‐　　{　 ',　ヽヽ　,ｨ　　 i::　
　　　lヽ､　　　／　ヽ〈_､_,ﾉ ,//}l　　l::　
　　　ｰ{ｌ ＼ 　　U　　　　＿_ﾉ__ﾉ:!　 l:::
　　　::::＼　＼　　　'"ﾓ‐_／::_ノ　│:
　　　::::::::::＼　ヽ.　 　 ヽ__／　　 ﾉ::::
　　　ﾄ､:::::::::::丶、｀＞-　.__＿,.ィ::::::::
.　 　 !::::＼::::::::::::::￣￣::::::::::::::::::::／
　　　.l::::::::::｀:::::、::::::::::::::::::::_;:::::::´:::／
　　　 ＼::::::::::::::::￣￣￣:::::::::::::/´


　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　 _....‐::´:::::::::::::::::::::::::::::｀:‐.._
　　　　　　　　 　 ,:::__＿ノ___￣￣/｀ｰ-ｧ､､::::::::｀::::､
　　　　　　　　 彡:::::::::/　 　 ≧x､　__ /　　 ｀^ ヽｰﾐ､
　　　　　　　 ,':::::::::::::::}　　　￣ 　 ` ､｀ ｰ- ___　　j　|丶
　　　　　　　 }::::::::::::::ﾐ　　　 _＿___ 　 ＼ }　　￣｀　 |
　　　　　　　,::::::::::::::/　 -‐'　二二ﾆ=‐､_＼　 {　 　　!
　　　　　　　lノミ､::/　 _= _ｰ= ＝=｀ヽ 　 ,⌒ヽｲ==ﾆﾐ)　　　　　シゲちゃんの頼みならば仕方ないな。
　　　　　　/／ヽ|:j　　 ／　 ｀ｰ　-‐'　　 {　　}三三ﾆ|
　　　　　 /(　　| /　　､　　　　　　　　　冫　 ﾄ､三三|
　　　 　 〈 ､　 ﾉ　　　　ヽ　　　　 __/ _　ゝ_　 ! ＼三|
　　　　　 ヽヽ__〉　　 　 /　ノ ,.=--ヽ_ -ｧ　￣) 　 　 !
　　　　　　 ＼＿　　　 　 /／::::::::::::::::::::｀:::ｰ'..._　　 ,
　　　　　　　/　　}　　 　 /／ヽ二ﾆ== ＿_:::::::::}　 /
　　　　　　 /　　 |　　 　 ﾚ　　 ｀＝ﾆﾆ二三{/::l/ /
　　　　　　,　　　 {　　　　　　　　 ＿＿_　￣　|! /
　　　　 __/＿＿_ ＞､　　　　　　　　 　 ￣　 / /
　　　／　　　　　 ￣｀ｰ―- ＿　　　　　　　　ノ
　 　/　　　　　　　　　　　　 　二ﾆ=-　＿__ /
.　 /　　　　　　　　　/＼ 　 /　　 /　 /　 / }-､
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永野は親友である櫻田武の縁を使い、櫻田の師匠であり、吉田茂の友人である
宮島清次郎に広畑が欲しいことを伝えた。

428：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:13:52 ID:HgNCInOQ0


　　　　　 　 　 　 　 　 |::::::{　｜ヾⅩ　/___ Y ﾍ　　.i |::}
　　　　　　　　　　　　 ,L:::ﾊ　/　 |.ヾ＼-- 〃　}　 .l |:r､　　　　　　確かに今の日本にとって、外貨は必須でしょうが、
　　　　　　　 　 　 　 7.ﾊ}::/ - ､　　　ヾ＼/　 /_＿　Y ',　　　　　同時に産業を復活させ、発展させることも
　　　　　　　 　 　 　 { |::j,{　=-rtｯｘ、_,.ﾉ__{_x=＝=ミ .| ﾘ　　　　　重要であります。
　　 　 　 　 　 　 　 ハヾ{　　 ｀ヽ,,.ィ/:}　　{::::::::::::::::ﾘ !,′
　　　　 　 　 　 , ｬ≦/ﾍ _　ﾞ:､　 ﾞ .:,'!　!　　|｀ =-=ﾁ,ｲ':≧=-　　　永野君はそれが出来る男です。
　　　　　　ｘ＜: : : : :{{: : :.|　　l:　　 ,'　j　　.{:',　　 YⅥY¨Y_,､-=≧=-
　　　 , : ´　　　ｚ≦、' : 从　　　 r≦＞､_xく≧､ 　 从_｀´｀Y｀ ☆ﾉ:､＞:≧ｘ
　　／: : : :,イ _,､yLｿ .V: :.ﾍ　 //'´￣ 二二　 ヾ_}/: :|: : :｀ ＜　_ ｀´ﾊ-'　∨＼
_／: : :xく　ﾉｰ Y｀　 z＜,: : :冫 、.,　｀´　　　ヽ-r:': : : !: : : : : : : : : :｀ ＜ 　 }: :ハ
: : :／／☆　　 ＞'´: :.i: V: : ゝ、 ヽ　＿＿＿ ｲ: : : : 从: : : : : : : : : : : : : ヾj: : : :|
: く／☆　　／: : : : : :.l: : ∨: : 7 .／　 　 y =ﾐﾊ V:.//: : : : : : : : : : : : : : : :.|.: : : |
: : :＼　 .／: : : : : : : :.l: : : :＼7:/　 　 ／　　　Y∨:ｲ: : : : : : : : : : : : : : : : :.|.: : : |
: : : : : Y: : : : : : : : : :.7: : : : : :}' i　　'´　　　 ｨ⌒Y: : : : : : : : : : : : : : : : : : : l : : : |
: : : : : :ヽ: : : : : : : : /: : : : : :/　',' /　 ;　 ／　　.ﾘ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : : :.|




　　　　　　　 :　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:・:.
　　　　　　　 :.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:...:
　　　　　　　 :::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::
　　　　　　　 :..:　　 　 　 　 :...　.:　　 .::.　　:　　.:.　　　 .::::::’
　　　　　　　　i:.　　　　　　.::::..::::::......::::::......:::....::::.:..........::/|:.
　　　　　　　　i∧:....::...........::_:.::-―――――---:..:::::://L.:
　　　　　　　　ヾ∧:.＿:..:／//////////////////////{:....:’
　　　　　　:　　:..::i/////////////////////////////∧:....
　　　　　　::.....:::.:////////////////////////////////i:..:::
　　　　　　 :::...:./////////////////////////////////{:.:’　　　　　　　貴様ほどの男が認めるならばきっとそうなのだろう。
　　　　　　,:..:.://///////////////////==ミ/////////∧::::::.
　　　　・:....:::.///////////////////// 　 　 ＼////////ﾊ:....:　　　　　確かに私も安易な外貨獲得はおかしいと思っている。
　　　　　　,.:|////////////////////|　　　　　 ∨//////∧.:’・
　　　　 .:::’::i////////////////////{　　　 　 ／∨//////∧:...:’　　
　　 　 ﾞ'’::...:!///////////////////∧　　　 /　 /}////////i}:....:
　　　　　 :::.:|////////////////////∧　　 i 　 ｀ !////////l:::::’
　　　　　，:::i/////////<ﾄ､//////////＼　 ｀ﾞ¨¨ {////////’:....
　　　　　 .::.:∨////////77L｣ト､////////＼　　　i///////!:::'::...
　　　　　　.::.:∨////////////ヽ{｀>､///////777///////{:...::
　　　　　　　　∨//////////////L__>､///////////////!:..’
　　　　　　　 　 ＼//////////////∧ ∨/////////////’
　　　　　　　　　　 ＼//////////////L｣////////////':....:
　　　　　　　　　　　:..:￣:..:＜///////////////////＞':..:
　　　　　　　　　　　　　　　 　`＜////////////＞'":..:.:.，・
　　　　　　　　　　　　　　　　 .::::.:':./￣￣￣￣:..:::...::.

429：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:14:15 ID:HgNCInOQ0

　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　...:::::::／三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::／三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::/ 三三 ,－' ´￣￣￣￣￣￣￣￣　`　 -　、三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:::::/ 三 ／　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　_　ヽ、;;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..:::::/三／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　`ヽ＜ ヽ- 冫　　　経営者は常にどうすれば自社が発展するか、そして国家に対して
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 :::::::/ﾐ/　　 ,－ 、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-ゝ'＞'´　　　どこまで奉仕できるかを考えている。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::|ﾐ/　　 / .l 　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞－,―　　　
　　 , -_　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ::::::::|/ 　　 |　|　 ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　 '　´三三　　　安易に外貨が欲しいから、食料が欲しいからと広畑を売るのは
　　ヽ三＼　 　 /ﾐl　　　　　　　　　　　　 ::::::::|　　　 ﾍ _ノ　　　　　　　　　　　　　　　,,;´三三三三三三　　間違っているぞ！
　　　 ヽ三`,,,,,,,|三l　　　　　　　　　　　　 :::::::|　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 三三三三三三三三
　　　 　 / 三三三 ＼　　　　　　　　　　　::::::|　　　　　　　　　　　　　　／三三三三三三三三三三三
　　　　 >三三三三三|　　　　　　　　　　 :::::::|　　　　　　　　　／ 三三三三三三三三三三三三三三
　　　　ﾍ三三三三三 ＼　　　　　　　　　 :::::::|＿＿　／三三三三三三三三三三三三三三三三三三
　　　　　＼三,､三、三三＼　　　　　　　 .::::::| 三三三三三 , -――￣￣￣￣￣￣´´ `　- 　 、三三
　　　　　　　 　　　 ヘ 三三＼ 　　　　　　::::::|三三三三／　 　　　 |　　＿＿__lー―――‐'ー ＿ ` ヽ
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ三三ヽ、　　 　 :::::::| 三三 ／ヽ　　　　,　'^￣////////////////////////
　　　　　　　　　　　　　　 　 ` 、 三ヽ、....::::::::::| 三 /、 　 ヽ-' ´、/////////////////////////////
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 `....三`;;;;;;';;´ 三 ヽヽ／ヽ ＿ _|//////＿-――l￣￣￣￣|￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::ヽ 三三三三`´￣//////-― ヽ　　 　　 |　＿＿三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　:::::::::::::ヽ、三三三 //, ／　　　＿ヽ―‐ 三三三三三三三三三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::::ヽ三三ヽ　`ヽ／三三三三三三三三三三三三三

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
吉田茂の友人でもあり、経済顧問を行っていた宮島の発言もあり、また広畑を所有していた
昭和製鋼所も関西平炉メーカーに譲り渡すことを取り下げたことから、
広畑製鉄所は富士製鉄のモノとなった。

430：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:14:34 ID:HgNCInOQ0



,,_　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／／　　　,,,_ ｀ ｲ　,、 ヽ　_,,,,,,_丶、　,
.　｀¨'''ー--､,,,,,,____,,,,,,,__,,..,,,,_＿,,,,,,__ / .r'　　　ィ　　し 　 iﾐ｀l /　,,　　’､　¨´　　_,,／
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　! 　 ｒ'´/ /　｀''-''´　 '　　７''　 　',　-‐''´ _,,/〃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i 〈　　', /ｲ《i　　　　　　　　ﾉ　　　 ﾉ,,_　　_,,ノ /
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 〉人> .ｿ /ﾞﾍﾐ　 　 　 　 ／ 　　／´　.｀¨´､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ '7／_ﾉi |.《'弐ゞ　　 ∠´　 ／´　　 　 　,,ﾞ 廴ノ
　　　　　 　 　 　 ;　　　　　 　 ∠ｨ´／イ l.ﾊ l　ゞﾐ､ヾ　/ 　 イ´ 　 　 　 　 /,‐--ー'　　（この男は経営の苦しさを知っている。そして同時に自社の存続と発展の為に、
､　　　　　　　　　!　　　　 　 　 　 /´;| i;;;;/::::〉!:::::::::,　/〃ミ三二ニ彡ミﾆ　彡ｰ-‐ﾝ　　なりふり構わず行動できる）
.Y'-､ 　 　 　 　 /　　　　　　　　,ｨ'´;;;l/;:;/:::::|/::::／　|ﾙ'　　く｀弍ﾝ〃　　彳 `''''´　　　　
/　　`'''ｰ-､_　 /　　　_,,,,, -ィ'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;i::::::::::::r'　 　 　 　 　 ﾞ''不ﾆ'ﾞ　　r'_,,,,,,-ィ'7
　　　　　　　`Y　_-ｲ;;-ﾆ=､;;;;_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l::::r‐, ﾄ､,,,_　　　　　　　　::::　 ﾚ'´ ,,ﾉ ／　　　　（それを知るこの永野がこの男と会社を見捨てることが出来るか！）
　　　　　　 ／_,,ﾚ'''ﾆ-‐へ,,___＞-‐-- ､:|〈 ヽ、- ､　　　　　　　::::　　/ ‐'´_／　 ／
　　　　　 ζ´ r''¨´ （', ,へ､,_　　｀ヽ ＼＼ヽ、ﾞ＝=､,　　　　 ..:: 　 ／ｰ'7¨´　 ζ
　　　　 /::::＞'_,,-‐‐ー''''''´ 　` 　 _, >､_>、＼ヽ,__ 　 　 　 　 ,,　'´　／ ／　　/
　　　 ,<;;-‐´　　（　　　　　　　／;;;:::::.;'　　｀¨''-ゝ_,,　 _=＜,´_,,,- ´/ ／　／/
.　　　;ｰ--t-‐¨''''''T'⌒¨''ヽ､/　　　｀ﾞヾ　 　 　 　 ｀<;;;;;;;;;;;;;:::::::／／/／／;;i
　　 /;;;;::::::;;::::::;;:::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;（　　　　　　ﾞ,,...　　　　 　｀ヽ;;::::::／／ｲ´ｲ ／;;;;;!
　　/:::::::::::;:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　　 　,--ﾞ::::::''⌒ヾ,,　　　ヽ'イ／ノ／∠へ;;ﾉ
.　/:::::::::::;;::;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ､　〈r'i　r'⌒ヽ ゞ:::.:.:.. 　 ∨;;|／イ　　　ﾊ
. /::::::::;':::::;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::;;;;;>､: ﾚ ::!　　 ﾉ　' :::.:.:.:..　　ヽ/　　　 　　 i
.i;;;;;;;;;::::::::::;;:;:;:;:;;;;;:;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　｀¨´　'::::: :.:　　　　　|　　　　　　i
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それだけに永野は八谷の気持ちと置かれている状況を理解できた。

そして同時に永野は一人決断した。

431：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:14:48 ID:HgNCInOQ0


　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|　　　……一千万だ。それならば私の裁量でどうにかなる。
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ

432：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:15:01 ID:HgNCInOQ0



　 　 　 　 , '::: /!:::/::::::::::{:::::::::::::::::::: /::::::ﾊ::::ﾑヽ;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　/::::::/::{:::|::::::::::::l::::::::::::::::::::,'l::: /　V:::ﾑ ∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
.　 　 　 ′::/:::/V{:{:::::::::::',:::::::::::::::::l_|::7ｆ斗￢::::', ∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
.　　　　l:::: ,'::::,'::::ヽ:V::::::::::',::::::::::::: lﾁ::|　 ＿- V:',　ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ',
.　　 　 |:::::|:::::|:::::::ﾊ::Ⅵ::::::::',::::::::::::l　',|/´　, - 、:ﾄ､　｀Y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,　　　え？
.　　 　 |:::: l:::::l::::::{_,}:トヽ、::::ﾄ､:::::: {　/_　 ﾏ== ’ '´　　l::/V :::::::::::::::::::::::::::::::;:::::::::::::::::::l
.　　　　l::/::',::::',::::ｉ　, =ミ ＼:', ＼:::',　　　　 　 　 　 　 |,′l::|:: ﾊ::::::::::::::::::: /::::::::::::::::::::|
　 　 　 |:!|::{∨ﾑ::|./　(以ﾉ　＼　 ヾ、 　 　 　 　 　 　 }　 :ﾘ|:::l｜|!:::::::::::::/　∨:::::::::::: l
　 　 　 |i l::| |VNヾ` ´／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::;　l:}l:::::::::::/　　 } :::::::::::::;
.　　　　ゝ ',! |:::::::|　　 ',　　 r　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,:/　j' |::::::::/)　 }　!::::::::::: ,'
.　　　　 　 ヽVﾄ､|　 　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　Ｕ 　 　 /　 　 !::: /　_／　j:::::::::: ,'
　　 　 　 　 　 {　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;::::/Y´　 ／:::::::::: ,′
.　　 　 　 　 　 ヽ ',　 　　___,. -ニ=-　_　　　　　　　 　 　 　 　 ,'／　__,／:::::::::::::::/ー-　＿
.　　　　 　 　 　 　 ',　　 ｛ゝ-’:::::::;: ---ゝ　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,:7::::::::::::;:＞≦　　　　　}
　　　 　 　 　 　 　 ‘,　　 )-=￢　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:{　 ＜　　　　　　　　　,'
　　　　 　 　 　 　 　 ’,　　　　,.::=￢　　 　 　 　 　 　 　 ,. -=ﾆ二　　　　　　　　　　　_,.　{
　　 　 　 　 　 　 　 　 ’,　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　　　　,. -=　　　 l
.　　　　　　　 　 　 　 　 ’,　　　　　　　 　 　 　 　 ／　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ’,　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　＿,.　 --|
　　　　　　　　　　　　　　　 ’,　　 　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　 ,.　=≦≧=-　_　　j
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永野の口から出た金額に、八谷は思わず驚いてしまった。

433：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:15:15 ID:HgNCInOQ0

　　　　|　　　 ／￣ヽ _　　ゝ､ V !　　/ ￣　　　　　　＿ ＿ ／ ｲ　ﾉ
　　　 ├ -､./　　　　　 ／　＼У　 {　 　　　　rｰ 彡　 i　　　／ /
　　　 / ヽ .ﾉ　　,,;;;;; ／　　　　`ｰ　　ヽ　　 ,;;;｛彡" 　ノ r=≠ ＜
　　,;/　／　　／≧/　　　 ,;;;ヾ　　　　;;;i　　　 i! i　｛　彡!　,,,;;;;ノ
　,,;/　（　　　i＼/,/　　 ,;;人 _Y⌒廴 _ _i;;,,, ＿　 V/彡.// r＝;;/
,;;;/　　 `ヽ　;!　i　ヽ　　;;{三jﾐ:i　　　　　 ）彡=)）　　Y彡／）,,;ノ
　! _ __,,　 ﾊ j　 !ii 》.＼　 V三 ＼_____,_<三 ／　　／￣　｛　　 ﾉ　　　八谷社長、貴様の覚悟とその持論、感服させてもらったぞ。
　　 ／ﾉ　　ii　 .}Y　 ,,,,） /;;,, ;;　..,,,..,;;::;;...／,_＿／_＿ z＜ rイ＜
　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;l人i!　 / 人≧;;｝　ノ;;;; ,,￣,,;;_zz彡{ミツ　 ｛ゝ　　　　　富士製鉄が日本の重工業を牽引するならば、化学工業は
　　<;;;;;;;;;;;;;;;;;（( ﾉj ／ヽ`ｰ'ﾐi;,,,i,i,＜_-zz≠三ニ　 Уｲ/ /}　　　　　　八谷、貴様が牽引しろ！
　/　＼;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;|　 　.￣'´ﾉ⌒　ii:::ミ. `┴'´／　/ ソ　人
　　　　ヾ;;;;;;;;;;;/i;;;|......:::::　 /::..　　 ::::::::￣.￣　 ..:/ノ　..ｲ　/
　　　　　 );;;;;/　!;;|:::::　　 / :::....... .:::::　　　　　"./)）<　 j! .i!
　　　　　i;;;;/:::::::i;;|'　 ､_　ヽ::.._,,;;;　　 _　　　　 /⌒i!　　i! .ﾘ
　　　　　／:::::::::::::}　　 ヽ;,,,,,,,_..　　,,　 `　 　 /　 /il　 / /:::
　　　 ／::::::::::::::::ハ　 `;;,,,,,￣` =-''"　　　　ｲ .／::::|iV /::::::
⌒V/::::::::::::::::::::/:::::i　 　/　''''''"´　　　 ＜...イ:::::::::::|! /:::::::::
　//::::::::::::::::::::/::::: ヽ　:::....　　　 ...:'::´::イ:::::::::::::::::::::ﾚ::::::::::/
.／::::::::::::::::::::/::::::::::::::::`:::.＿ イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i!:::::::ノ:::
:::::::::::::::`ヽ::: {::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　 /:::::::





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _＿/　￣ヽ.__
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 __∠　/／〉　 /）ﾉ‐┐　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　l /　 ヽ　{ 　 {／─<Ｔヽ　　　　　　　　
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／/／/＾＼ｒヘ,へ,__　|_|　ト､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |／ｌ ／{､_ {┴ ､_ノ､ﾉ ﾉﾐ}ヽl　}､　　　　　　日本触媒化学工業には、この永野重雄と富士製鉄が
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾚ'|}／小V､._i　　 /ィ_フ,l |　/ l　　　　　責任を持って出資してやろう！
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ〈　 }｀ｰｔ:ﾃミヽ 斤ｔﾃﾗｊﾉ /　 l　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｒ┴ﾄ､　＾￣i　|-、￣　 l/＾!／　　　　　励め！
　　　　　　　　　　　　　　　　　 lﾍ、|　　　　ヽヽ'　　、│ｆ/　　　　　　　
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ〈 l. 　 　 ー ==イ 　 !ｲ|
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |｀ｰ! 　 　 ヽ--‐'　　 !　|
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　│|　＼　　　_,. .,_　／l l,l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | l　 　 丶<　　_У　 l.リ､　　　　　　ノﾌ!
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／l |_,..-─.:::::￣::::.‐-.､|:::::l ＼___ 　　/、/　 __
　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ／´l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::＼ ＼￣/､ /￣　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 /　 /／:/::::::::::::::::::::::::::::::::::::_L::::::::::ヽ　 /　 i　＼
　　　　　　　　　　　　 ,.イ　　{:::_:::::--─:::::‐-:::::::::;::'´:::::::::::::::::::|　ﾉ -┴‐┬--,-ｒ‐ヮ
　　　,.ィ´ ￣￣￣￣　　　 　 ヽ::::::::::::::::::::::::::::::｀:::::::::::::::::::::::::::::|//´　ー'二￣二二ワ
　／　/　　　　　/⌒　､　　　　∧::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::/ ／　　'´＿L --一'
./　　/　　　　／//⌒　 ＼⌒ヽヘ:::::::＿__:::::::::::::|:::::::::::::::::::::/　　／　 /　　＼
　　 /　　　／／´￣　　　　ヽ::::|::::「:|　　　ヽ／｀丶、__＿／　／　　 /　　　　 ）

434：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:15:27 ID:HgNCInOQ0



ﾟ　|i　 　 |　+ﾚ´/／ｊ､`'-|トミ､ヽﾍ',ヽヽ ヽﾍ.ﾍ|! 　|
o｡!　 　 |!o/ｲﾊｿ/,!ﾑ＼|ﾄﾐ'-､ヽ,ｊlヽt ヽtt､ﾊ |　*　 ﾟ |
　 ｡*ﾟ　 l ｊハt ﾍ jj=_＼.lト＼ﾍ,,_ﾐ|ミ !ハヽ`y.|o　 ﾟ。・ ﾟ　　ありがとうございます！　精進させて頂きます！
　＊oﾟ　|!l.l |ト､',.k'_０_ヾlﾋミ､イ_０_ﾝ`ｊ､｝ｌ|ヾ;.+　　　＊|
｡ | ・　　oﾊ l|.ﾄヾ:ｔ ｀´　jr 、､　 ｀´ ｲﾊ∧ハ',*ﾟ・　＋ﾟ ||
　|o 　　|・ﾍハﾄ､ヾ　　 '`､'`_'　　　 　ﾊ|∨ﾘ　 | 　ﾟ　　 |
＊ ﾟ　　ｌ|　ﾔヾtヽ γ_,.二二..ヽ.　　 jjﾘ;|,',!　　o.＋ | ・
　|l　+ ﾟo　　',!tﾐ　　'､v‐､... ‐v7　　 !',ｲﾘﾉ　 　○・ |oﾟ
　o○　| 　　　|',ﾊ　　ぃｰ-rｸﾌ　　 ./ｊﾊj　　　　*。
・|　＋ ﾟ o　　　|'､:ヽ　｀'ｰ-‐'" 　 ,ｨi/ j. ,!　　Ｏ。　|!
　Ｏ。　| 　　 　 |.ヾ ＼　 ￣　 ,.ｲ:/　,ハ!　　　　　　。
　o＋　|!*｡　　 ﾚl', t､::`::--イ::::/　　l>y､.　　　＊
　|・ 　 | ﾟ・ イ´j `'-ﾍ.　｀~´　:/_,.．'´　t::`'-､_　 |　・
　　
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
出せて三百万ほどだろうと思っていただけに、八谷は感動していた。

この出資をキッカケに、取引先はもちろん、銀行にも大きな信用を得られる。

日本触媒化学工業が本当に日本の重化学工業を牽引出来る可能性に、
八谷は大きな手応えを感じていた。

435：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:15:45 ID:HgNCInOQ0

　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/　　　　　　　しかし、この私に会おうなどどうやって思いついたんだ？
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/　　　　　　
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）
　! >ﾆ<:|　　　　　 0､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
その後二人は八谷が持参したほうじ茶と白米のおにぎりで昼食を取った。

その中で八谷の取った行動に、永野はふと疑問を抱いた。

436：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:15:58 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　　　　　　　　　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　　 //!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　 〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
　　　　　　　　　　 i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
　　　　　　　　　　 ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj　　　　実は升田君に知恵を貰ったんですよ。
　　　　　　　　　　 ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀　lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/
　　　　　　　　　　　!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀　　 　 　 　 !　 j川/　　　
　　　　　　　　　　　ヾﾄ辷N!　　　　　　‐ノ　　!:l/
　　　　　　　　　 　 　 Yｌ:ﾄ､　 　 ヾ＝＝r　　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　iN　＼.　　｀ ニ′／}'
　　　　　　　　　　　 　 丨　　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ￣´"''‐ 、 　 ｀¨´￤
　　　　　　　 ＿rく　　　　/癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　　/‐''"_, -ヘ｜　　　　　　｜
　 /「￣´　 ヽヽ ＼　ヽ/ 　 ´　 _,,厶ﾍ　　　　 　 ∧=､､
　 |八 ＼　　 　 　＿_/　　　　　 ＿,）ヽ＿＿＿/ 　ヽ ``=､､
　∥　＼ !　Ｖ´￣:::::/　　　　　　_,ノk>､｀Ｔ!::::::":::＼＿　　 ∥



　　　　　　　　|　
　　ｰ=‐-'⌒＼l　
　　　　 ｀ヽ　　|　
　　　ﾊ　　 |　ﾉ　
　　__l ﾊ　　}｀ヽ　　/
　　-､＼＼ﾉ　 ）　　　 ＿　　　＿__ｒ┘
　　_,ﾉ　 > |　 /'⌒⌒〔　　｀Y´ｿ　l _ゝ
　　　　/　 |　{　　|/ /｀ｰ‐ヘﾉ/,.‐/} 〉
　　 　 ヽ-┴─､│/　,.-､　 |／‐Ｈﾉ!　　　　升田？　もしかしてあの升田幸三か？
　　＼　 　 　 　 ＼!-くｒ、} ノ／‐-ハ!
　　-->ｰ─-､ {⌒´⌒i.）./／.:L__| ﾊ.',
　　-‐＼ー‐ァへ、　,ノｌ { _/::ﾉ,　ヽ! l }
　　　／￣ ｆ:＼__ ソ ｆ__,》ィｔﾗﾉ　　 リ,ﾊ
　 　 | ｒ'⌒i｀ヽ‐ｔぅ､〉ヽ::ﾉ'¨´ J　/ lﾊ､ |
　　 └-￣ﾊ　｀￣::/i　i　 }　　　　 Vヽ.}
　　　　　 ｀)ﾊ､ 　　ヽ!　l_/　　　　　ｊ　ﾘヽ
　　　 　 　 ヽﾍ　　　弋ﾌ_／ﾌ}　　/　/::
.　　　 　 　 　 ﾊ　　 ﾄ- ─'／　 / ／::::
　　　　　 　／／＼. ヽ二´ィ´ /／::::::::＼
　　　 　 ／／::::::|:::::ヽ. 〈　　_/´:::::::::::::::::
　　　_ /／:::::::／:!::::::::｀￣::::::::::::::::::::::__;;::
　 ￣//::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::／￣::::::::::

437：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:16:13 ID:HgNCInOQ0

　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
....　　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､::::::::::::::::i::!::l:l !
.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ　　　　　升田君は昔、僕の家で下宿していたんですよ。
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!
.　　　　 　 　 !::､::::i　　　 　 ｌ　　　　　　　 　 　 |:::/lj/l:!ﾘ
　　　　　　　　ヾﾄ､:!　　　　　　　　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ
　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　 　 　 　 　 /ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、 　 ､　_＿ ＿ ,　　　 /'　!:://
　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　　　　 　 　 　 .／　　|/:/
　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/,ｨ　ｨ / |ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 i､ノ　|/　∨ﾚ'　| |ヽ_r-v､_
　　　　　　　　　　　　　　　,､___|　　/　 /／　 / |　/／,.-､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　| /ヽ､-/　　/ ∧/ ノ ／　/ゝ､｀'　　　　　そいつはなかなか愉快だ！　あの升田の知恵とは……
　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ／　　/ /　∨　ﾉ　 /　　|　　　　　　奴は絶対に名人になるぞ！
.　　　　　 　　　　　　　　　/　 i　　　/ /　 ノ ／ ／ /|_ノヽ
　　　　　＿　　　　　　　 r'　　 ヽ　 / |　 /　 _,.-ﾍ　i /,.‐､(
　　　　/　 ｀／｀ヽ､__　　 ＼　　ヽ　｀ ｀_,.-''´　　,ﾍ　　| r､| |
　　　 (＝ r'__　／　　＼＿_,,,,━┓‐''´ 　 　 　 /ハヽ_!|）| !ヽ
　　_,ハ､__| ~~ | ヽ r'´'´　 ヽ　 _,┃|　　　　　_ノ_,ｨ　　　ﾉr|､｀'ｰ
‐i´:!　　　 _｀ﾆヽ､ノ　r'ヽ、‐'''´┃ヾ､_( ((_,.-r‐(;;)'　　　 ﾄ-ﾍ￣
:::l:::ヾ-､_r'　　　｀'''i‐ﾍ ヾ.ヽ・．┃：ゞで>,ゞ　￣　　　　　|: ,.::ﾍ
ヾヾ::＼　ヽ　　　　! 　＼,ノ：．┃・ヽ┃:l |　　 /　 ﾍ　　 ﾚ::;-'´
:::＼｀'-､;＞-､ 　 _,.-'"´　　 　 　 　 ヽ ヽ! レ　 ,.ｲ　　 /:/
:''-､,,ノ´　　　 ￣　　　　　　　　　　　 ヽ こ-‐彡ﾉ　 /:_;:!-‐'´
''フ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾｰ'T"´　/／
'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､＿ノ/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
互いに愉快な気持ちになりながら、八谷は永野との面談を終えた。

そして永野はこの後も何度か八谷の面倒を見た。

438：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:16:28 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　　 ...　 -──‐-　..
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.　　　 　 　 　 .':.:/／.:.: ／..::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:⌒ヽ
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　　　　　 　 /.:/.:.:／.:.:/.:.:.:／⌒）.:.:.:.:.:.:ﾉ.:.:.:.:八.:.:.:.:.:.
.　　　　 　 /{.:. ／/.: /.:.:.:/ 　／.:.:.:.:.／.:.:.:. /.:.:!:.:.:. }:.:.
　　　　　 /.:.У.:.:.{.:.:.{.{.:./ ∠___彡イ.:.:.:.:.:.:/,,}.:.|:.:.:.:.}.:.:.
　　　　　 {.:.:{.:.:／{:.:.:{:{/　　　　 　 ,}／}／⌒}.:.|:.:.:.:.}.:.:}　　　　　これはこれはよくいらっしゃいました。
　 　　　 八.:.Y.:.:ﾉ{.:.:.N　x==ミ　　　　　　　　}.:.|:.:.:.:.}:.ﾘ
...　　　　{:.:.:V{イﾚ{.:.:.{　〃〃 　 　 　 ,x=ミ、从|.:.:.:ﾉ.:.{
　　　　 从.:.乂.:.:.:{:.:.:{　 　 　 　 　 　 〃〃　八.:.:.{.:.从
　　 　 　{.:＼.:.＼八.:{　　　　 　　　’　　　／}.:.:.／⌒ヾ
　 　 　 八:.:.:.＼.:.Ｙ.:.圦 　 {￣ ｀ヽ　　　/ 　 }: /
　　　　　｛＼:.:.: ヽ}.:.:. 心、 ゝ-- ′　／ 　　}/
　　　　 　 ＼.:.:..:.:.}.:.:.:} 　 ＞-　 r 　´
　　　　 ／⌒＼.:.:⌒ソ＿　　　　{＼___／⌒＼
..　　　/................|＼.:.:}ﾉﾆ)＼_＿人　＼..＼　ィﾊ
　　　 |................ | 《三≧≦てｲ///「￣}....../ / 小
　 　　|.......,,..... └ノ三ﾆﾉ⌒ヽ乂// 　 }.. / ' 　 l| !
. 　 　 V........｀ヾ..＾⌒＼.:.:.:.:.:. }＼/}　 八{ 　 　 l| !
　　　　∨........... ＼.........＼{＼{..... ＼∧...{ 　 　 l| ﾄ､
.　 　 　 ∨................「せつ丁........./....／＼　　i| |..∧
.　　　　　∨.....＼ └‐─‐‐┴‐＜..／.......... ＼,ﾉ ｊ....∧
　　　　　　∨........＼....................... ／............... ／ヽ/..... ∧
.　　　　　　 ∨...........＞ｰ-....__／............... ／|＼/............∧
　　　　　　　 ∨.........../...... ／............... ／......∨..................∧
.　　　　　　 　 ∨........{........................ ／..............∨....................}
.　　　　 　 　 　 ＼..........................／......................}....................ﾉ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永野が八谷をどこまで気に入っていたのかが理解できるエピソードがある。

年始に八谷は永野に挨拶する為に上京した。その時、永野重雄本人ではなく
せつ夫人が八谷の応対をした。

439：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:16:41 ID:HgNCInOQ0

　　/::::::::::::://::://::::::::/:::/::::::/::／::::丿:::::::::/::::ヽ
　./::::::/:::::∥::/:::::/::::/::/:::::::/:::::::::/::/::::::::/:::／::ﾊ
../:::::丨::::::l::l::ﾚ'::/::::::::ｿ::::::::::/:::::::::::/::::::::/／::/::::∧
.|:::::::: l:::::::::::l::/::l:::::/::/::::/::::l:::::::::／:::::／:::/::/::::/:::ﾊ　　　　　　私、日本触媒化学工業の……
.|:::::::: l:::::::::::ﾚ::::::::/::l:::::/:l:::::':::／='弋z;ｿ/ ﾚ':／l::::l::::l
.|:::::::: l::::::::::l::/ ﾚ':i:j:l:::/:::l:::l:/　｀　　¨　/　　、fz:/ : :l
.|:::::::: l:::::::: l/んl:/:i:l/:::/:l::/　　　　　　　　　　ヽ,.://l
.ヽ:::::::l::::::l　 て l | lﾉl::/　l　　　　　　　　　　.:　ﾉ ./ ;
　　、:::::::::ヽ　ｰ　ヽ ﾚ'　　｀　　　　 　 　 　 　 　 |
　　∨:::::::::::｀ー .　　　　　　　　 　　｀　ー　=='　|
　　l:::i:::::::::::ゝl::ゝ: :.　　　　　　　　　　　　 ｰ　　/
　　l:::::::::::::::l: l ｀　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　ﾚ'::::::::::/:/　　　　 ＼　　　　　　　　　　　 .
　　 ' VⅣ.l　　　　　、　　 ‐ . . .　　　　　　/
　 　 .'　　 |　　　　　　　　　　　: : : : :　ー'
　　　　 　 |　　　　　　　　　　　　　　|





　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　,　　,　　 　 　 　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / 　 / 　 .′　 l　　　　　　 Y
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 / ／.′　 l　 　 ｊハl　|　 | 　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　 У　ｊl　 ／|　 　/￢l　l 　ｊ　　|　　まあ、ヤタガイさんですか。
　 　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　{ ﾉイ -‐|／l/　　ル|　l八　|
　　　　　　　　　　　　　　 　 {　八| ィ==　　 　 ==ミ |　l　 ＼
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　У 从　ﾆﾆ　， 　 ﾆﾆ　ｊｌﾉ|l　 厂`
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｊ　　八　　　　　　　　　_ﾉ|　/
　　　　　　　　　　　　　　 　 {　 / 込、　 （ 　ア　 　´八/
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 八　/　У　　　　　 イ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 У　/ }___ノ〕i爪　 乂＿___
　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　 /＿_// 八＿__／..V｀ヽ
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 八 У..... /ｲ ｊ ｊ } /........∠.......
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 乢乢]... { ｊ　 　ｊ/.......く............ｊ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｊ乢ハ∠L{　　人.. ∠.............ｊ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |..| 　 }_____V∠二〈/...............ｊ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |..ｊ/У二二V...........∨/......../
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |／/............./∨..........∨/.../
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｊ.. /........... /... ∨........ У./
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 {................./..../..∨.........../...{
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼____／..../..... ∨....／.....{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/...............｛..o..o...................{
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /.................入...........................＼
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 〈...............∠二＼.....................∠〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
八谷はこのとき夫人に名刺を渡したが、名前を言い切る前に、夫人は何の迷いも無く
ヤタガイと読んだ。

440：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:17:04 ID:HgNCInOQ0

　..../ :::::::::::::l::::":::::::､:::: :ヽ.::::::::::::::::.:::::.::::::.:
　./ ::::::::::::::::|::::::::::::::ヽ:::::ヽ`:､::::::::::::::::::::::::::
　.!:::､::::.:::::::::.ｌ:.:::::::::::::::ヽ::＼:::ヽ.::::::::::..::::::. ..
　.:..: :::|,::: :: :、丶: ヽ: :: :ヽ :::'-::ヽ:::::::::..:::::..
　::::|:::::::y::::::::ヽ:::::ゝ:ヽ,::::::＼.::::ﾞ''.::ヽ::::::::::: .
　.:,:::.ｌ:::::lヽ::::::::、:":::::､: ､:::::::ﾞ'.ｌ'-、::.:ｌ:::::::::.: .　　　　え？　どうして僕の名を？
　..!:,::::ﾐ､:ﾞ!,ヽ::::: ｌ::::.＼ヽ,＼::..,.＼＼.ｌ::.::::: ...
　.! ｌ::.:::､::::ｌ从_:::::l::,,'.:/_､ﾆ,,__､i::|:､''"!:::::::, .
　:::.ゝ. !./ﾞ! :^lゝ＼|::l ゞ='ﾊ":`.,!`)l:'":::::":::/ ..
　::ﾍ::: `''`:ゝ-:"::::::::ｿ":.､:´ ｀-'‐' ι,.|,i::i'::::/..
　. ::ﾐ ｀::::::::::::::::::::::::　　　　　　 　　ﾉ.|.l::::i./ ...
.　　ヽ''ｌ､:::::::::::::::::::　　 　　　　　 .i　.,l/::::|:,i"
　　　 .'ﾙ:::::::::::::::::ゝ_-　　　　　　 U,..ｌ,i|::l/:. .
.　 　 　 ヽ::::::::　　 　 　 　 　 　 ﾞ'/ゞ.从､.! ...
　　　　　. ヽ::::::`ヽ..二"''‐　　　 / ,iﾞ.::|"l/‐ .
　　　　　 ／ﾞ:､::: `―　　　　.／,,､/ .ﾞ|　! ......
　　　 ／ 　.ヽ: ＼　　　　_／ ／ l./ 　ﾞ
. , ／　　　　l ヽ .｀'― :(,ﾞ／ﾞ　 //



　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿_
　　　　　　　　,, -‐'´:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.`ヽ、
　　　　　 　／:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.＼
　　　 　 ／／:. :. _／￣￣￣￣￣ﾞﾞー-‐'⌒`ヽ、k
　　 　 /:. :. :. :.／:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :＼
　　　/:. :. :. :./:. :. :/ :. :. :. :. :. :. :._,,. : :. :. :.　;; :. :. :. :.＼
　 　 |:. |. :. :/, :. :./:. :. :.／:. :. :／:. :. :. :. :.| :. |k :. 、:. :. ﾊ
　　 〈:. |:. ://:. :./:. :.／:. :. :.／:. :. :. :. :. :.ri:. :.| ﾊ:. :|: ､:. : ｋ　　　　　　　それはもう主人が常に八谷さんのことを話してますからね。
　　　|:. :V/:. :. /:. :/. :. :_.／:. :. :. :. :. :. :./|:. /　ﾊ:. :|:. | ､:. ヽ、
.　　　|:./ﾉ:|. :. |:. /:. :_ナ-..,,__ :.／:. :. ／ﾉ:./　　 ﾊ: |:. |:. ヽ_: ＼　　　　日本の化学産業を背負って立つ人と聞いてますよ。
　　　 X ゝt:. :|:./:..//:. : _,,.-‐^ｰ､_ -'　/:/ __ノ　　リ:. |:. :.ﾊ ｀ｰヽ
　　 /: （ _ |:. |/:./ λｰ┬--=ﾆ_´_`　/ノニ　　　　|:. /:. :. : }
　　〈:. :.ﾞｈ |:. :./ ムハ　|　　 　 Tヽ/´イ￣￣'|~7 |:./:. :. :. :.|
　　 |:. : :.ヽ_V　　 :::::::ヽｔっ＿_.ﾉ/::::::::::ik_っ　ﾉ/ /:./:. :. :. :. |
　　 ﾊ:. :. :. :. ﾊ_　　　::::::::ー-‐´::::::::::::::::-`ニ:::::〈ノ|:. :. :. :../
　　　 ＼:. :. :. :. ~ﾞ`ヽ、　　　　　　 　'　　　　　　|:. :|:. :. :./
　　　(て＼:. :. :. :. :.ｰ､ヽ、　＼　　　　　　　 　 Λ:.｜:../
　　　　` ノ＞ー--､:. :.k :.ヽ.　 ＼_,,.-''´　　 _ノ 　)/|:./
　　　　/　　　　　　 ヽ-.:. :. 入_　　＿_,,..-‐へヽ､_　!'
.　　　/　　　　　　 、 ﾊ:.ヽ:〈　 |￣ヽヽ　k　　　　 |　　　　に
　 　/.　　　　　　　 ヽ　|:. :. :）　`／ぇ､ヽ. ||　 |　/ |　　や
.　　 　　　　　　　　　ヽ hへん'´ー<　ヽ|　||　|/　 |
.　　
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永野は夫人を初めとする家族に対しても、八谷について語っていた。八谷自身が餅や鯛の浜焼きなどを
送ってくれることもあり、永野の家族も八谷に対しては親しみを持っていた。

441：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:17:26 ID:HgNCInOQ0


　　　　 :::::::l:!:|‐ ﾍ:ヽ::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　 :::::::ﾘ:j　　ヽ:ヽ::::::::::::!::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::j｝
　　　　 ::!:::|:/　　　 !::|ｌ:::|::::::::!:::::::ヽ::::::::::ヽ::::::::::::::::::`:ー:::::::(､＿ノ
　　　　 ::!:::|'　　　　 ｌ:| !:l:!:::::::ﾄ､:::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::ヽヽ
　　　　 ::|:::|=､－-､. l:! !|:::!:::::::l＿､:::::::::ヽ:::::::::::::ヽ::::::::ﾄ::!:::::::ｌ!:}）
　　　　 :::!::|二二ミヽｌ| ﾘヽト､::::!二二ヽ:::::ヽ:::::ヽ::::ヽ:::|::}!:::::::{ﾘ　　　　戦後の日本経済を担うのは民間企業だ。
　　　　 ::::ﾄ｢ ゝ--ヘ. |/─‐||＼ト ゝ-- 'フヽ〉:::::!::ト{l:|!:::::::ﾉ!:!　　　
　　　　 ヽ:!　　　 －' |｢|￣｀|ﾄ､ ー‐　　　 ノ |ﾍ::j:ﾄ /ﾘ:::::::j ｊﾉ　　　　特に製造業の復活は必須だよ。
　　　　 └ヽ───┘!　　└─────┘ｊｲﾉ/ :::::i::::{
　　　　　　　　　　　　 |　　　　 　 　 　 　 　 　 ﾘ´｢|!::::l}:ﾉ`
　　　　 ハ　　　　　 　|　　　　　 　 　 　 　 　 /　 !| ヽ:ﾄし
　　　　 ヽﾊ　　　　　　ゝ::::ｒ '　　　　 　 　 　 / 　 ｊ:| 　 ヽ、
　　　　 _／ﾊ 　　､＿ _ __ ＿　　 ＿, 　 　 , '　　 ,'::|　　　ｌ｀丶、
　　　　　 /::::ﾄ､　　 ｀ ー─一 ￣´　 　 ／:::: 　〃:::|　　　 ｌ
　　　　　 !:::: |　ヽ 　 ` ー── '´ 　 ／:::::::　 //::::::|　　　　ｌ
　　　　 _/:::::::|　　ヽ　　　　　　 　 ／::::::::::::　//:::::::::|　　　　 ｌ
　　　　 :::::::::: |　 　 ヽ　　 　 　 ／:::::::::::::::　//::::::::::::|　　　 　 ｌ
　　　　 ::::::::::::|　　　　 ￣￣￣:::::::::::::::::::　//::::::::::::::::|　　　　　ｌ
　　　　 :::::::::::::|　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::　 //::::::::::::::::::::|　　　　　ｌ
　　　　　　　　　　　　【小林中】
　　　　　　　　　【日本開発銀行総裁】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
さらに八谷は自社の発展の為に日本開発銀行に日参していた。

日本開発銀行は戦後日本の復興を目的とし、民間企業の設備投資などを
円滑に行うことを目的に設立された。

初代総裁は永野重雄と同じく、後に財界四天王と呼ばれた小林中である。

442：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:17:41 ID:HgNCInOQ0


　　　　　 　 　 　 　 　 _. :-:.:――.:イ
　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣三二ニ彡
. 　 　 　 　 r=＝≦__＿＿ノ⌒ー＝ニ二:.:.:.:.:｀ヽ、
　　　　　　_j: :「:.:「:「￣／／／￣￣:.:￢:.:──:.:.:.:.彡
. 　 　 　 〈:.i「:.|:.:.j:.j!.:./:./／:.:.:ｲ´￣￣｀ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
　 　 　 　 〉!∨ /:/:彡へ 彡イ￣三二ニ＝:.:.:.:.:.:.｀ヽ!
　　　　　く｀ヽ∨/／￣｀ヽ 彡≠ミ:.:｀Y⌒ヽ:.:.:.:.:.:.:.:ミ=ｰ
　　　　　　｀ヾⅣ　 　 ／_＿　　　 ＼:.:ミく i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≦､ 　　　ｷﾘｯ
　　 　 　 　 　 ',ヾ､／イ才´　　 　 　 Ⅵ _ｿ｀ヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ミ　　　　　　開銀は政府御用達の金融機関ということになりますが、
　　　　　　　　 1　　｀｀＼､、　　　　　　　i　　　ヾミ辷彡ｲ、　　　　　だからといって、私は政党その他を初めとする方々に対して
.　　 　 　 　 　 ｀ヾi　　　　　　 　 　 　 　 !:..　　　　　///ﾍ　　　　　　融資を引き受けるつもりはありません。
　　　　　　　 　 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:　　 　 ///,　 ヽ､、
　　　　　　　　　　　ー､ ＿__　 　 　 　 /:.:.:.: 　 　 ////　　 |!　＼　　それでもよろしければ引き受けます。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 `二 　｀　　　　′:.:.　　　////, 　 　|!
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 ／:.:.. 　 　　 /////,　 　 |!
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ､_ ／　 ヽ:.:.　　　/////,: 　 　 |!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.i!|: 　 //////　　 　 |!
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 / .:.:i!| : ://////,　 　 　 |!
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　.:./i!|: ///////,　 　 　 |!
　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　 :/ :i!|////////,　 　 　 |!




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __＿＿＿＿＿＿＿___
　　　　　　　　　　　　　　　　　ｘ≦三三三三三三三三三≧ｘ
　　　　　　　　　　　　　　 .::／三三三三三三三三三三三三ﾆ＼::.:.
　　　　　　　　　　　　　.:／三三三三三三三三三三三三三三三＼::.:，
　　　　　　　 　 　 　 ／三三三三三≫'"´斗=＝=ミ≪三三三三三∧::.:
　　　　　　　　　 　 :/三三三ﾆ≫'"´ 　 ／: : : : : : : :＼ ｀ﾞヽ三三三ﾆ∧:.::.　　　　　　　素晴らしい。貴様のような男がまだいたのだな。
　　　　_ﾄvVi　 　 .:/三三三／　 　 　 /: : :ミ: {:|i:}: :彡:ﾊ　 　 丶三三ﾆ∧::.’　　lvVi_ｨ
　　　　ヽ三{　　 .:/ﾆ三ﾆ〃　　 　 　 _{:_:_: 彡:.∨.: ミ:_:_:}_　 　 　 ＼三ﾆ∧:.　　.:}三/
　　 　 　 V∧　.::;i三ﾆﾆ/　 __.....-=≦三三三三三三三≧=-..._　　 ヽ三=i::.　.:∧∨
　　 　 　 .:V∧,..;:;i三ﾆ厶≦三三三三三三三三三三三三三三≧=ｘ}三i|::・:∧∨
　 　 　 　 ・V≧='ﾆ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ﾆi:;:∧∨.:;
　　　　　　　∨三三三≦三三三三三三三三三三三三三三三三≧三三三/;:;.
　　　　　 　 ::;∨三三三{--､__ト＜三三三三三三三三三三＞イ｣」ﾉ}三三=/:;
　 　 　 　 　 .:;:∨三三∧｀ヽ}:::`ー―ゝ＿＿_ﾉL＿＿_」＿___ノゝイ　./三三/::;'
　　　　　　　　・::∨三三∧￣}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::厂_ /三三/:・
　　　　　　　　　　｀ヽ三三∧￣ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_厂彡'三三/'::
　　　　　　　　　　　　＼三三＼｢￣｀ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::r-┴イ三三ﾆ/:::
　　　　　　　　　　　　　 ＼三三≧xｭ　｢￣ ｀Y´￣｀Y￣ イ三三三=／
　　　　　　　　　　　　　　　ヾ三三三三≧========≦三三三ﾆ／
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼=三三三三三三三三三三三／
　　　　　　　　　 　　　　 　 　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
総裁に就任するにあたり小林はこのような条件を出した。推薦人である宮島は無論のこと、
吉田茂首相も小林を信用するようになったほどである。

443：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:21:32 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　| /　　　 　　ヽ　　　 ／　　　　／　l　 ＼
　　　　　　　 ,ｲ　　 l　　 ヽ　l　　／　　　 ／　　／　　 /
　　　　　　 / |　　　!,､　　 l　l /　　　　／　　　　　ノ　ﾚ‐i
　　　　　 /　 |　　/　　｀'-　　l|　　　 /_,.‐ヽ　　 ／　　　 |
　　　　　/　　|　/　　/ヽ／'''''‐､　　 |´　　 ヽ_／／ ヽ　　〉
　　　　　|　　　　|　　|ﾐ./　　＿ ｀!　 ﾚ　　　　l　　　_ ﾐ l　/
　　　　　_,.-‐ヽ　|　 /-l　　/_ﾐヽ,|　__,.-､　　 レ-‐´ |　l く　　　　　実は私もコバチューさん（小林中）から融資してもらおうと思っている。
　　　　 ´￣＼｀''´　/三l　 |　r''''''-'''ヽ! |　　/三彡-ク　　）
　　　　　　ヽ　L＿/'/￣ヽ l―＼:::::ノ-/　/―フi'´/　　／　　　　開銀は政府が出資しているし、基幹産業には惜しみなく融資してくれる上に
　　　　　　　|　r‐､　ト､,_　|/ ヽ'i ｀´l /　/　／／'|　l／　　　　　金利も安い。
　　　　　　　ヽ| r-| ﾉ ､_ ､＼､ﾉ ﾚi l, / /_／＿,,.　|　l,
　　　　　　　 .lヽ 川　 ヽ弋;ｯ､｀ヽ! l:| l_,.ィ;;ﾌノ　 人　|　　　　　　貴様も融資してもらったらどうだ？
　　　　　　　　|. | |り､　 ｀"´￣ヽ!　|ヽ!￣｀´　　 | /ヽ|
　　　　　　　　|　y-| l,　　　　　　l　|　 l　　　　　|ﾉ ﾉﾉ
　　　　　　　 .|　,i､し!　　.　　　　l　.|　/.　　　　 | r'´
　　　　　　　 | 　| ｀´!　　　　　ヽ!___ﾚ　　　　　 .!.|
　　　　　　_,.-''i'´l　　l　　　､＿,.-ﾆ-､_,.-　　　/ .|ヽ-------､_
　　　　 ／／　|　ヽ　 ヽ　　　 r｀'''''"´,.　　　/　ﾉ| ｀''―――-､ヽ
　　　 / /　　　|　　＼　 ＼　　｀"T"´ 　　/　／ |--､_　　　　　＼ヽ
　　 / /　　　 /　　　　＼　＼　　　　　 ／／　　 |　　 ＼　　　　　 l.L
　 ／/　　　 /　　　　　　 ｀''‐ヽ､,,,,,,,,,,ノ‐'´　　　　l　　　　ヽ　　　　ヽ ＼_




　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　　　　　　　　　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　　 //!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　 〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
　　　　　　　　　　 i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
　　　　　　　　　　 ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj　　　　　金利が安いのは魅力的ですね。
　　　　　　　　　　 ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀　lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/
　　　　　　　　　　　!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀　　 　 　 　 !　 j川/　　　
　　　　　　　　　　　ヾﾄ辷N!　　　　　　‐ノ　　!:l/
　　　　　　　　　 　 　 Yｌ:ﾄ､　 　 ヾ＝＝r　　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　iN　＼.　　｀ ニ′／}'
　　　　　　　　　　　 　 丨　　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ￣´"''‐ 、 　 ｀¨´￤
　　　　　　　 ＿rく　　　　/癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　　/‐''"_, -ヘ｜　　　　　　｜
　 /「￣´　 ヽヽ ＼　ヽ/ 　 ´　 _,,厶ﾍ　　　　 　 ∧=､､
　 |八 ＼　　 　 　＿_/　　　　　 ＿,）ヽ＿＿＿/ 　ヽ ``=､､
　∥　＼ !　Ｖ´￣:::::/　　　　　　_,ノk>､｀Ｔ!::::::":::＼＿　　 ∥
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永野は総裁の小林や構想者である池田勇人とは友人であったことから、
開銀の内容を詳しく知っていた。そこで八谷にも開銀からの融資をアドバイスしたのである。

444：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:21:51 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　/ｌ.　 　i´　`i　　　　　　　　　　 ,　ｌ
　　　　　　　　　　　　 ＜　＞　.|　　 |　　　　　　　r,ｼ,..:':レ'l　　私が理事の中山です。
　　　　　　　　　　　　　　V　　 |　　 .| 　 　 　 　 /::::':::::::::::',　　
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　　 .ｌ　　　　　　i::::ニ_:::::::､:::',
　　　 __　　　　　　　　　　　 　 |　 　 !　　　　　,r':::､::_:ミ:::ヽ､::ヽ、
　　 /　＼　　　 　 　 　 　 ､､　i　　　|　　　　 /:::i:::::::::＼:::::::::ヽ::::`- ＿__　 ＿_.-
　　 ヽ　　＼　　　　 ___　i´　 ｀1　　 .l　　　　,ﾘ:::!::::lﾞ_､::::::､::::::::::ヾ::::::::ヾ ｌ /
.　　　 ＼.　 ＼.　　/　 ｀'ｌ:　　 iー－ |＿　 __!_l:::::',lﾞi oヽ＼ i`o､::::::::::::ヾ '
.　　　 　 ＼ 　丶､ヾi 　 .i.',.　　',__...　l　 `'´、 ﾉ::::::i `'''´　　 `''''"ﾞi::::::ﾊ-､
　　　　　　 ヽ. 　 　 i 　　ﾞ'; 　 　i　　 !、　　 ヽ !ハ::､　　´ `　　 ,从::l ﾞ 　l
　　　　　　　ヾ　　　ヽ　　 ヽ. 　 i ／ ヽ`ｰ‐-＝--―=._‐＝‐ ,ｨ'１!ﾘヾ 　 l
　　　　　　　　ヽ　　　ヽ　　'　'''ｿ　　　　　　 　 　 　 　 ｀iｪ‐ﾆ'ノ　　〃　|i
　　　　　　　　　 i.　　　 `'''": '´ 　　　 　　_,.-ｯｰ-――‐'ー''"　　 jt.　 　l
　　　　　　　 　　 i　　　　　_､_＿　　,.-‐'´r-'i '　　　　　　　　 , ' /　i　　 l
　　　　　　　　　　｀`ー-''''´ヽ､＿ニ‐'''´~ 　 i　　　 _　　　　, '　/　 ｱ-‐ .ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 く_,.-‐'´　　　　　 ／　／￣ , !
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　 / ｀`　　　'　　　　l!　／　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【中山素平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【日本開発銀行理事】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
八谷は開銀に向かうと、理事であり、コバチューの右腕であった中山素平と融資の相談をした。

445：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:22:06 ID:HgNCInOQ0


ニ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::-=ニン':::::::,'::'::::::::::::::::::::::i
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_､/:::::::::::::.:::::i:::::::::i　　　　　　　ﾁｮｺｳﾏｰ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::_ｪZ_,ﾘﾞi::::::::::/i::::::i:::::::ｉ!　 . ‐､
"::::::::::::::::::::::::::/tﾆ::::::::´::,ﾆ-‐'i　し'j　/::ﾝ:::ィｊl:::::::!:!i::i　i´　,: .ﾝ"j､､
:::::::::::::／:::::ン::ヽ!:::,::::::;:,'.　　　ヽ= '／´／Lｿ,':::::::り:ｉ ﾉ　 i/　 /　 ,}､　　　　　　　話は永野さんから聞いています。
""ヽ‐-､:/_/ﾝ'7／i:::://　　　　　 　　　　 i　,'::::::,' 'ｿ /┐,'　,i{､ ,r'　,_'ヽ　　　　
､、　 ヾ､ ヾ. 　!´ .l::://　　　　　 　　　,. _,:' /:ﾊ::i ,rｰY'7-､yゝ'ｨ'ヽ ヽ　 ヽ.　　　　八谷さんは自分の親友だから面倒を見て欲しいって。
　ヽ　　 ﾞ:､ ﾞ,; 　 　l::iヽ. 　 　 　　　,:' 　,: ／:/　ﾘ `ｰ//ゝ:' `ヽ､､ｨ:ヽヽ=' i
　　ヽ. 　　'､ i',.　　!:l　 `::.､ 　　‐'"｀ﾞ¨´ヘ､|! 　　　//　　　　　　｀i　ﾞ'　　i
　　　ヽ　　ヽ.i ﾞ　　ﾘ　　:::::ヽ､　 　 , '´F＝＝＝＝ﾞ＝ｦ 　　　　　i 　　　.i
　 　 　`, 　. ヽ!ヽ　　..::'''''':,',' ｀`'' ",r‐;fテ''j~￣￣￣ ,'　　　　　　i　　　　i
　　　　 ﾞ,　 i　 i　ヾｪ､_,ン ,' ;　_,:r'´　　　'´-,　　　　/ 　 　　　 　.i　　　　.i
　　　　　i　 i　,'　ヽ､___,ン　.ir'~´　　　　　 ﾆ;―― '　　　　　　　.i　 　　　i







　　　　　　　 /::::l:::l::､:::::､:::::ヽ::､::::::::::::＼:::＼::::::::ヽヽ::::::ヽ
　　　　　　 /:::!::::i:::!:::ヽ:::ヽ::::::ヽ::ヽ､::::::::::＼:::ヽ:::::::ヽヽ::::::',
　　　　 　 /:l::::!::::ヽ!::ヽ:::::::ヽ:::::::＼:::ヽ､::::::::ヽ:::ヽ::::::::!::i:::::::!
　　 　 　 ﾊ:::ｌ:::::、::::ヽ::::＼:::::＼:::::::＼:::｀ヽ、:::ヽ::ヽ:::::!:::!:::::ｌ
..　　　　/:::::::l::::::!ヽ:ヽ::::､:::::ヽ:::､:＼::::: ＼::::::＼::::!::::ヽ:!:::i:::l:l　　　本当ですか？
　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::::ヽ!:::::::}!::::l::li|
....　　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､::::::::::::::::i::!::l:l !　　　　
.　　　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ
　　 　 　 !ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　　　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!
.　　　　 　 　 !::､::::i　　　 　 ｌ 　 　 　 　 　 　 u |:::/lj/l:!ﾘ
　　　　　　　　ヾﾄ､:!u 　 　 　 　 　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ
　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　　 　 　 ｕ　/ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、　 -､ｰ-- ､__　 　 　 /'　!:://
　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　　｀二¨´　　　 ／　　|/:/
　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

446：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:22:45 ID:HgNCInOQ0


　　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::､:::::::::::::::::::::::::ヽ ゞ、 ＼::::::::::::::::::::::::::::::::／
　　　 i::::::::::::::::::::::::::::::li__‐-､ﾍ::::ヽ::::iヽ::::::::::レﾍ´,､_ヽ:::::::::::::::::::::::/　　
　　　｛::::::::::::::::::::::::::::::,ﾊ　(;;;;｀ｭヽ::iヽ::::!ヽ::::i|´バ｛;;;;;;,ヽ ::::::::::::::/　　　
　　　 i::::::::::::::::::::::::::::i ヽ､ ｀‐-ｲ　＼ヽ:!　＼:i ll　! ヽ=-人::::::::::i 　 　　　ええ。それに私は元々開銀ではなく興銀出身でしてね。
　　　　i:::::::::::::::::::::::::ヽ　゛'''''"　　　 ヽ l!　　 ヽ ､_,,,,,,,ノ　　i::::::::l　　 　
　　　　　i::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　　　　i　　　i　゛''''"　　　l:::::::l　 　 　　八谷さんのように製造業の方々とはよくおつきあいしていました。
　　　　　　>::::::::::::::::::iヽ　＼　,　　　　　　　　　　　　　　　 i:::li:::l　　　
　　　　／　　ヽ:::::::::::ヽ　　　 ｛　　　　　　　　　　　　　　　 i::/i＜.　 　　これからの日本は八谷さんのように技術を武器にして戦う経営者と
　　／　　　　　l:::::::::::::ヽ　　　 ＼　　,-‐　　　　　　　　　　ﾘ i::::::ヽ　　　それを駆使して戦う会社が必要不可欠です。
　/　　　　　　　 lヽ::::iヽ::ヽ　　　　ヽ　　　　　　　　 '　　　 !　 /丿::i
　|　　　　　　　　l　ヽ::i ヽヽ　<　､　　　　　　　　　　　　　　 //ノl::::ヽ
　|　　ヽ　　　　　l　 ヽi　ヽ｀､　ｱ｀"‐,-､,__　　　　　　　　　 /::　 l:/l::∧､
　|　　　ヽ　　　　　　 ﾘ　　　 V　　　 Y⌒￣｀丶　　　　 ／::　　l:l　l::l::ヽi｀,>‐､___,,,-‐´
　|　　　　ヽ　　　l　 i　 　　／　　　　 |-‐　　　　　　 ／::　　　　ﾘ　l:l　　ﾚ　　　／
　!　＼　　　ヽ　 l　　i ,／~　　　　　 /:.　　　　　 ,／:::　　　　　　　 ｿ ／　　／,　´／
　｀‐-､_ゝ-‐´￣￣￣　　　　　　　ノ::::ゝ、,　-‐´:::　　　　　　　　　／　　／　　／
　　　　　　　　　　　　　【日本興業銀行副頭取を務めていた】
　



, -－－ ､＿　　／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
　　　　　　　 ￣´"''－､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　､＿＿_,, - － ､＿ヽ‐ ､:::::::::::::::::／ｌ::::::/::::::::ハ::::::::::::ヽ
　|　|　　　　　ー＿,､-「!＼＼＼:::::,∠、/::::/::::::::/-､i::/::::!:::ﾄ､
　ｌ　｢＼_　　￣｀＼:::::::||￣＼＼）/ Ｏ 〉／/:::/:/ Ｏ 〉!:::::ﾄ::{　　　　　この場で融資の確約は業務上出来ません。ですが小林総裁にも話をした上で
　 !｜　　｀￣＞‐､ ＼::|| 　 /ﾞ7ｉ/`＝'/　/／ 〈 `＝ﾞ |:ｌ::::|!ヾ、　　　　何とかやれるだけの事はやってみます。
　　 |二ｰ'"￣　∠＞ ､)|Ｌ..ヽ（_|,　　　　　　　　}!　　 ｊ::!:i::|
　　｜　＼＼　　　 j:ﾊ:::ﾊl￣ || |　　　　 　 ＾　′　 ハ{::N ＼　　　　　是非、日本の重化学工業の未来の為に頑張ってください。
　 　 !　　　　＼　 /ﾍ.ｊ/　|　　||｜　 　 _,_,､---､　/|　ﾄゝ　　 ＼
　　　|　　　　　＼　　ヽ　｜　 || |＼　　　－‐'　, '　l　!　　　　　 }ﾞi
＿＿ｊ_＼　　　　 ＼　　＼.|＿_||｣ 　 ＼＿＿／ 　/ /　　 　 　 ﾉ |
　　　　 /　 　 　 　 ＼　　 ＼　　　　　　 ／/　／／　　　　　　　ｊ
　　　, ｜　ｌ　　　　　　　　　　ヽ､_　 　 　 　 ／／　　　　/　/　〃
　　 /　|　　l ヽ　　　　　　　　　　 ´"''－‐''"　　　　　　 /　/　/ l
　 /　 ｜ 　 ｌ　〉　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 / 　 //　ｌ
　/　　 |　　　/　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　//　//　/ｌ
〈_,.　　 | 　 V‐､　　＼　　　　　　　　　　　　　／／ ／-‐'　／ ｌ
　　　　 〉 　 〉　＼{、　＼　　　　　　　　　　　／　くｒ　　／　　 〉
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歳も近く、互いに経営に対しては私心無い人物であった為に二人は意気投合し、
中山の力もあり、日本触媒化学工業はさらなる増資を受け、1951年。
日本触媒化学工業は株式の上場に成功する。

447：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:23:05 ID:HgNCInOQ0


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::::::::／／ ///:::/::::::::::::::/:::::::::／::::::::::::::::／::j:::::::::::::::／|::::|/:::::::|:::::::::::　　　ダウ・ケミカルがなんだ！　デュポンがなんだ！
::／／　 ///:::/:::::::::::::/::::::／::/::::::::::::／::/::j::::::::::／　 j::::!｡ｓ≦::::::::::::
.／　　 ///::/:::::::::::／:::／/／:::::::::／::::::/::/::::／,,｡s≦|:::j __,,,,j:::::::::::::　　外資にロイヤリティを払う金があるなら、研究投資して
. 　 　 ////:::::::::／:::ﾆ=‐/:::::::::::／::::::::::/::/jI斗ｬ=＝7ｱ"}￣}7ﾞ:::::::::::::　　国産化に力を入れるべきなんだ！
≧=-/／::::::::／ﾆ=‐　／/::::::／::::::::::;ｨf /弋(乂ツﾉﾉノ　′∥:://::::::::
　　／::::::::ﾆ=‐ 　　／:::/:::／:::::::::::／　/`` ‐---‐ '"　/ ／7:://::::::::::
.／:::::ﾆ=‐　　　／:::::::/／:::::::｡s≦ｚｘ /＿＿＿＿,,,斗ｔ彡久://::::／:::
-=ﾆ|///|　／:::::::::::／/　￣￣￣　}/　　　　　　 　}/　　　 /:::／　/:::
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その後八谷はエチレンプラントの国産化に向けて、さらなる投資と人員強化を行う。

448：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:23:16 ID:HgNCInOQ0


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三三三三| |!:::::::::::::::: :: : : :　　　・ 　 　 : :: : o: : : :: :: :: ::::::::i| |三三三三
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三三三三| |!　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i| |三三三三

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
エチレンオキシドは主に、ポリエステル繊維や塗料、セロファンの原料である
エチレングリコールを作るには欠かせない触媒である。
さらに石油化学において、エチレンの存在は必要不可欠である。

449：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:23:32 ID:HgNCInOQ0

: : : ／: : : : : : : : : : : : : ＞ ´: : : :／; : :. :. :./::::::::::::::://::::/:|:::::::i::::::::::::::::::::::ﾘ::::}
:.／: : : : : : : : : : :.＞ ´　　/: : ／: /: : : : .:/::::::::::::::://:/ｲ_,.!:::::ﾘ:::::::::::::::::: / i::7
___ : : :斗:≦弋＝=zz≧=-:.／:. :./: : : :.／::::::::::::::; '::::/≦__ｉ:::/:|:::::::::::::::::/　,::′
: : : : : : |: :|　　＼　 弋_;fツ＾ヾ=/: : :／ . ::::::::::／ィ弋ｆツ　!:/: :ﾘ:::::::::::::/　//
: i: : : : :.i: :|　　　 ｀ ー---─　/: :／: :::::::::::／: :ー---=≦/ : /::::::::::::/　//　　　欧米のものだからいいと決めてかかるのは良くない！
:.|V: : : :.lⅥ　　 　 　 　 　 　 /／／: :.＞ ´.: : 　 : : : : : : / : /:::::::::::; '∠.ｲ
:.| ∨: : :|ﾊ:!　　　　　　　　 ／／‐　´　　 i: : :　　　　: : : : : /::::::::／　　　　　　　僕らだって同じ人間だ。なら技術研究すればきっと勝てるはずだ！
:.ゝ-V: :.|　ﾍ、　　　　　　　　　　　　　 　 |: : : .　　. : : : : :厶ｲ／　_
: : :.|..∨ﾑ　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |: : : : . : : : : : : : /:/　　　 ＞ ．
ﾊ: :.!　iヾ:.i　　　　　　　　　　　　　　　　　{: : : : : : : : : : : ｲ:/　＼　　　　　＞ ．
.∧..i.....i　＼　　　　　　　 　 　 　 __　　　 j: : : : : : : : : , i:::/　　　 ＼　　　　　　 `
.... Ⅵ.....i　 ＼　　　　　　　　　　　　｀　 〃: : : : : : : , '....|::′､　　 　 ＼
........ﾍ.....i　 　 ＼　　　　　　　___,........＿＿: : : : : :., '........j/......∧　　　　 ＼
.................i　 　 　 ＼　　　　 　 ｀　ｰ─一 ´: : : ／∨...................∧　　　　　 ＼
..................i　 　 　 　 ＼　　　　　　￣:::::: : : :.／　　 i..................... ∧　　　　　　 ＼

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
八谷は大阪吹田本社工場にてエチレンオキシドのパイロットプラントを建設し、
同時に公開してみせた。

当時国内では三菱、三井、住友の財閥系が外資からの技術導入で
プラントを建設する計画を立てている中で、八谷はあえて国産にこだわっていた。

450：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:23:42 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／：：：：：／：：／――：：＞、_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／：：：：／/：：∠―￣：：／：／：：＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　イ：：：：／：/：／：：：／"フ：／：：：：：：:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　/|：：／：：/：/：/：／：：：/：/：：：：：：：：ｿ：:λ
　　　　　　　　　　　　　　　//:/：/：：/:λ：/：/：：：λ/：：：：／／：／：：丿：|
　　　　　　　　　　　　　　ζﾚ：：|：：/:/：|:/：：：：／//：：／//：：/：／：/：：：|
　　　　　　　　　　　　　　|：|：：/：：：/：:|:|：：|：/：：/∠z_ ///,／／／：：：：:|
　　　　　　　　　　　　　 |：：|/：|：：：|/：∥：|：/：//"-d_`y／ ／／ ┤：|：：|　　　　財閥系だけが日本企業じゃないんだ！
　　　　　　　　　　　　　|：：|：：|：/：|：：：|／|:| |/　　　　_／"　／|c-y|：/：：|
　　　　　　　　　　　　　||::：|：イ/：/：：/|　 ||　|　　　　　　　　　　〉~^|/：|：|　　　　僕ら非財閥系だからこそ出来ることがあるはずだよ！
　　　　　　　　　　　　　||：：：{ ||：y：：/|　　 |　　　　　　　 ／　 /　　ﾉ|/：|
　　　　　　　　　　　　　||：：：| |　|：/|：|　　　　　　 　　　　　　 ′　　|//
　　　　　　　　　　　　　 |：：:λ__|:/ | |　　　　　　　~`ー---w ,,,_,　　 //
　　　　　　　　　　　　　　|/：：|　ﾚヽ |　　　　　　　　　､___　_,　　　　//
　　　　　　　　　　　　　　||：：:|　i　ヘ　　　　　　　　　　　~~　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　| |：：|　　　　＼　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　|：：|　　　　　 ＼　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　 |：|　　　　　　　 へ,,　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ|　　　|　　　　　　　 ﾞ~^-┬^
　　　　　　　　　　　　　　　∧＿　　 |　　　　　　　　　 ト、
　　　　　　　　　　　　　　/：：|　　￣~~^―-,,,　 ,,s-― ^^~ '|＼
　　　　　　　　　　　　／：：：:|　　　　　　　/__∨＼　　　　　|：：＼
　　　　　　　　　　／：：：：：：:|　　　　　　/：：：：：：λ　　　　|：：：：：|-__
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1959年、八谷は神奈川県川崎市にて計画されていたコンビナート計画に参加を決意。

非財閥系の日本石油グループと提携することで、国産技術を武器にし、
中核となる工場建設を決断する。

451：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:23:54 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　,ノ} ﾄ､
.　　　　　,ィ7´ j/ j!| ＼＿_
..　　　／ /{　 / /八　　　 }＿
.　　 /　 //　/　l{　 j!　　 人￣＼__
　　/　　l〈　 l{　 ＼/　　 ／j )　l! ,ﾉ}
　 　 ,ｨ　　ヽ　＼／　 ／ ／/　ﾉ　く
. 　 / }　／＼＿{　 |　|／＼／⌒ヽ廴
　　　( │∧ /￣＼j　}／＼}_ノ}　 l{　}　　　　構わんやれ！
　　'⌒Ｕ l==|　 |lr=ｖく⌒}　/彡{　,ﾉ／
　　几＿_|ﾄ､}＿{（　　 ）/// ﾗ'ﾌ/ィ{
　　V⌒ﾉlﾄ､廴_,ﾉ　Y　/厶イ{（（ﾉ }ﾉ
.　　{ 「}ﾚ'｀ト_ｔ示 x_}__ｆ斥ﾃｧ ∧∨
.　 人乂|　　　￣ノi　∧￣　 ﾊ(}ﾉ
　 { ｌ ｀({|　　　 ´　　 {　　　 ∧}}　　／￣￣＼
　　　 /│　 　 　 ヽ-'　　　厶--=彡'´￣＼　ｌﾄ､
　　　|＼＼ 　　ｰ‐==　ｧ　/{―-く　　　　　 ∨{
　　 │　＼＼　 ´¨丁｀　/,ﾉ　　　＼＿＿__,ﾉ　）
　　　jヽ　　￣＼＿＿／ｲ ＼　　　 }　　　/　/
　　 /　　　　　　　　　 　 ヽ　 ）　__,ﾉ　　 /　/
　　￣￣￣￣￣＼　　　　 ／／　　　　/　/
　　＼＿＿＿＿　 ＼＿／／ 　 　 　 /　 ′
. 　 　 ＼　　　　　｀ヽ＿__/　　　　　　′　i
.　　　＼ ＼　＿＿　　{　　　　　　　/　　ｌ |
　　　 　 ） ／ /￣｀ヽ　 　 　 　 　 /　 　 l |
　-ｰ‐=ﾆ　{　 l{　　　 }＼　　　 　 /　　　 j |
　　　　　 ,ﾉ　 乂＿_,ﾉ ,人＿__　│　　　/
　　　 　 (　　 　 　 ＼　　　 / ＼|　 　 /
　　　　ノ　ヽ　　 　 　 ＼___{__ 　 ＼　/
.　　　/　　 　 ＼　 　 /　　　 ｀ヽ__,ﾉ
　　　)　　　　　　＼_/＿＿_ﾉ__,ﾉ|
　　,人　　＼　　　　j!　 }　　 　 /
　　　　＼　　＼＿ノ_／　　　 └─=ミ＿＿

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当時の日本触媒化学工業の資本金は四億八千万。工場建設費は十億円という資本金の二倍を超える
大規模な設備投資であったが、このチャンスを手助けしたのも永野重雄であった。

452：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:24:17 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　　　　　 /ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　ヽ
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　　　　　　　　 | |　　　 ヽ　　|　　　|　 /　　　　　/ヽ/　　＼ヽ、　　　　　八谷泰造はこの永野重雄が推薦している！　それが不服だというのか！
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　　　　へ !_　ヽ｀''‐- ,,,,,,/_,-ﾆ''´'´::::））ﾆ-‐'´ヽ､ _,,　|　| '‐'´'i
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永野は日本石油化学の社長に自ら電話をかけ、八谷を大いに推薦したほどである。

453：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:24:33 ID:HgNCInOQ0


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こうして1959年。日本触媒化学工業は川崎工場を開設する。

454：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:24:45 ID:HgNCInOQ0



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さらに1960年には、兵庫県姫路市にて川崎工場を超える規模の姫路工場を開設する。

八谷は積極的な設備投資を行うことで、日本触媒化学工業を大いに発展させることに成功した。

455：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:24:57 ID:HgNCInOQ0



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その後は化学工業協会会長、関西経済連合会常任理事などの要職を勤めながらも、
糖尿病を患い、激務から体調を崩し、八谷は1970年にて社長室にて倒れ、そのまま亡くなる。

享年63であった。

456：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:25:07 ID:HgNCInOQ0



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その後は化学工業協会会長、関西経済連合会常任理事などの要職を勤めながらも、
糖尿病を患い、激務から体調を崩し、八谷は1970年にて社長室にて倒れ、そのまま亡くなる。

享年63であった。

457：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:25:23 ID:HgNCInOQ0


　　　　　　　　　 ／;;;;;;|;;;;;;;、;;;;__;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　駄
　　　 　早 　 ／;;;|;;;;;;;;|;;;;;iヽ;;;;;''''ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; こ
　な　 　　　/;;;;;;;;;;;;;|;ヽ;;;;;;ヽ丶;;;;;;;;ヽ,,;;;;;;ヽ;;;;;;;;; 　　目
　　　 　く　/、;;;;;;;;;|;;|;;;ﾍ;;;;;ヽ;;ヽ;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;ヽ.;;;;; い
　ん 　 　 /;;;;ゝ;;;;;;;;|;;ﾊ;;i;;ヽ;;;ヾ;;＼;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;ヽ;;; 　 だ
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　と　 　/|;;;|;;;;丶;;∥ヽ;;ヽ;;;;＼;;;ヽ,;;;ヽ;;;;;;;;;ヽ;;; ゝ・
　　 　　i;i;;;;;;ﾊ;;i;;;;ヽ|;;;丶;;ヽ;;;;;;;＼;'ヽ;;;;ヽ;;;;;iヽ;;;;; ・
　か 　|;;;i;;;;;;∥;;;;;;;ヽi;ゝ;;;;;;;ヽ;;;;;;;;ヾ;;,,;;;;;;ヽ;;;;i;;;;i; ・
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　し 　 ii;;;;;ヽ;;ヽ、;;ヽヽ;;;;;;;ヽゞ;へ,,...;.;;＼;;;;ヽii;;;;||;;;;;
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　な 　 丶ゝ i´i　y'、,,ヽ;;ヽ'' 丶/て　''iヽ,,、;;｀ヽ;;;;;;;;
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　い　　　i＼;;ヽ　..:.:.:.:.:.:.:. ｀｀　 　　 　　　 ﾚi;;ﾉ;;;ﾊ;;|;;
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八谷はとにかく国産化にこだわっていた。外資系企業に莫大なパテント料を払うくらいならば、
その金を使うことで自社での研究投資を行えばいいという持論を崩さなかった。

そのことから役員達と対立することも多かったという。

458：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:25:41 ID:HgNCInOQ0

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:.:.:.:.:.:.:',:.:.l:.:./:.:./斗- ｀}/　}/　`'＜/　　　　　　　こういう時だからこそ人に投資するべきだよ。
､:.:.:.:.:.:.:.､:l:/:∠ー' ノ /　　 　 　 　 ` ,
:.:＼:.:.:.:.:.メｲ￣￣　　　　　　　　　　/　　　　　　立派な工場だけじゃなく、それを稼働させる人間があってこそ意味があるんだ。
:.:.:.:.:＼:.:.:.{＼　　　　　　　　　　 - /.l
:.:.:.:.:.:.:'.＼{　　　　　　　　　　　　　　l
:.:＼:.:.:.:'.　＼　　　　　　　　　　_ ｲ　l
〕ﾄ､:.＼:.:'.　　　　　　　　 　 ∠　ノ,　l
　　＼'.＼'.　　　　　　　　　　 　 ´　 l
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:.:.:.'、　　　-　　.. _　　　　　　 　 　 ノ
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また不景気にもかかわらず満鉄出身者や、有望な新卒採用者を採用することも惜しまなかった。

そのために会社が苦しむことになっても、八谷は持ち前のバイタリティでそれをはね除けてきた。

459：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:25:54 ID:HgNCInOQ0


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現在日本触媒ではアクリル酸と高吸水性樹脂が経営の柱となっている。

世界のアクリル酸製造能力の55%のシェアを持つほど、日本触媒は成長した。

460：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:26:05 ID:HgNCInOQ0



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zz彡ｲl竺竺竺竺竺竺竺竺|TTTTTTT¨|　|-| jI斗ｬﾔて二二二]zｧイ||￣|¨||丁 |　|　||　::|]=l|　|-l|l 　 :|　| |---|／,.ィ´　::|＼
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二二二二二二二二二二二 ||二二二二二二二二二二|_」L !!zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz廴l_|　|ｌ| | |　 |　| |zzz／／七⊃─‐‐
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
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さらに高吸水性樹脂の世界シェアは25%であり、紙おむつを生産する上で欠かせない、
高吸水性樹脂は日本触媒無くして存在し得ないほどである。

エチレンからアクリル酸、そして高吸水性樹脂という武器を得て、日本触媒は今も世界シェアトップを維持している。

461：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:26:22 ID:HgNCInOQ0



　　　　 i1　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,..-‐‐-､.　　　　　　　　　ヽｰ‐‐'´　　ヽ
　　　　 l !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ｲﾘ　i lヾ.ヽ、　　　　　　　　ヽ　　　　　ヽ.　　　　　博士号は便利だよ。みんなこれで信用してくれるからね。
　　 　 /l l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ｿ/ﾉ/ｊソﾉ ヽiヽ!　　　　　　　　　ヽ　　　　　ヽ
　　 _ｒ'ヽ!ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !l/iｧ　 ﾌ /,.ｲｒi li l　　　　　　　　　　ヽ　　　　　ヽ　　　
　 ,ｨヽヽｿ l　　　　　　　　　　　　　　　　　　!ﾊl ｒ‐､　 ´ ,ｨﾉ:/ﾉ　　　　　　　　　　　〉　　　　　ヽ.
　　ヽ.'´ 　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　ヽｰ'　 ノ ﾉﾊ/l!　　,.ｒ‐-､_,､__,,..--‐' i＼　　 　 　ｊ
　　　ヽ_,,.='ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｀ｴﾆ´-‐ｨ'｀ヽ‐ｲ　ソ/ /　　　　　　N ヽ　　 ／
　　　 〈　 　 ヽ　　　　　　　　　　　　　_____,,.-‐ｨ'!´/ヽ／　　／　　/　/　　　　　　　　_,.-‐'"
　　　　ヽ　 　 ヽ　　　　　　　　　　 ／i 　 　 /／:/　/　　／i 　　/／　　_,,.--‐‐‐''"´
　　 　 　ヽ　 　 ヽ　　　　　　　 _,ｨ'　/　　 ,.ｲ':::::/　/　 ／　 l　　i/ 　 ／
　 　 　 　 ヽ 　ﾆ=ヽ､,ﾍ--‐‐ｲ´〃 / 　 ／::::::::/　 i ／　　　 ヽ　　／
　　　　　　　ヽ　／/　　　／　/　/　　/::::::::／　　 !　　　　　　ヽ./
　　　　　　　　ヽ.　　 　 　 ___＿/　　 /__／/　　　 l　　　　　　　i
　　　　　　　　　｀ﾞ--‐‐'ﾞ´　　 /　　/　 　 /　　　　ヽ　　　　　　ｿ　　 __,,.--､
　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　 /　　 ノ　､　　　　 ＼　　　　　{-＜_ 　　　 ヽ、
　　　　　　　　　　 _,.-ｒ┬‐,ｲ　　/i　　 i　　-ヽ、 　 　 　!、　、　　　 ヽ. 　 　　　｀￣ﾞｰ‐--､
ヘ　　　　　　　／　　　　　　　 /　!　 -l‐=ﾆ二≡ヽ、　　 〉　 ヽ　　　　 ｀ｰ=＝‐‐､　 　　 　 >
:::::＼　 　　 ／　　__,,..--‐‐''"（_　＿__/___≧_ヽ､　ｰ､ヽ / ｀＼　｀ゝ'"　　　　　　　　　 　　/´
:::::::::::＼_／__,,.=ﾆ'＿__,,.-‐､　f=＝''￣´｀ ‐‐-=-､ヽ__ヾｿ　　　ヽ /　　　　　　 　 　 　　　/
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自ら博士号を取り、研究投資を惜しむことなく、八谷は積極的な投資と開発に貢献してきた。

そして、その博士号こそが八谷の情熱を支え、そしてその信用を作り上げていったと言える。

462：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:26:36 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　 _,.........―＝≧=..､__
　　　　　　　　　　　...ィ7'´:彡刈／ヽ乂ﾐ:ｰ.ﾐｰ.､_
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　　　　|:::!:'l::!:':/:|:l/:/,イ!!〃':::::::／!/:/:::!::::!:':::!:l::!::::l!::::l!
　　　　|:::::::l:!':l::ﾊ:l才:;ィ:!//:::::;ｲｉ::::/;ｲ::小:::ﾊ::l::lﾘ::ｉ:!l:::ll
　　　　|:ｉ::ｉ::!l::!://!/ｨ:! !〃::／::ハ//// ｉ:::/:::!:l::!:::;':,:l:l:!!
　　　　|:l:::!:!l::!':/弋ト､./'／',::::!.ィ弋:フ７;ｲ::::!//!//.}:ｉ::!
　　　　!ﾊ:::!:!:!;'　｀ ￣／ 　 ヾ!　－－´/ ;:::ｲ::!//.､j:l::!'
　　　　　ｉﾄ::!:::l　　　　　!　　　　　　　　 /'´:/:/´〉.ﾉ:l:!
　　　　　|| l:ﾄﾊ　　　　　　　　　　　　　 　 // ´才ｉ::!'
.　　　　　! ヾ!ハ　　 　 ｀　´　 　 　 　 　 /'｀T´l:l::!ﾘ
　　　　　　　ヽ　 ､　 ‐-　　_＿ _　　　　 '　　l:.:!!.l
　　　　　　　　　　ヽ　　､＿　　 　 　 ／　　　Ⅵ:!ｰｧ－､
　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　 ／　　　　　 才´　　　＼
　　　　　　　 　 　 　 ｉヽ. 　 　 ィ　 　 　 　 ．‘　　　　　　　＼
　　　 　 　 　 　 　 　 !: : ￣　　　　　 . イ　 　 　 　 　 　 　 /ー‐､_
　　　　　　　 　 ．-‐､_',: : :　　　　　: ｉ '⌒ヽ.　　　 　 　 　 /　　　　｀ー､_
　　　　　 　 ／　　 　 ヾ.: : :　　　 .:　l l:.:.:.:.:.入　　　　 　 /　　　 才´　　 ｀ｰ､
　　 　 　 ／　　　　　　 ｉ､: : : . . : :　 ! !:.:.／ ｉ　｀ｰ､　　 /　_.才´　　 .. -‐－-ﾐ､
　　 　 ／　　　　　　 ／l ヽ: : : : :　 //　'　／ /　/　ヽ/　//.／　／ 　 　 　 　 ヽ
　　 ／ _才⌒ヽ　　 /: : }　}: : :　　ノ/　 ／　 '　　 /　　　!//　／　　　　　　　 　 ｉ
　／:.:.´:.:.:.:.:.:.:.:::!　　l: : : : : . . . ／　 /　　 　 /　　l 　 　 //／　　　　 -‐　　　 　 !
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::)　 !: : : : : : : ｉ　　　!　　　 /　　　!　　 //´ 　 　 ／　　　 　 　 　 !
:., -― ´｀ｰ､_::::ゝ 　 !: : : : : : :ｉ 　 　.!　＿＿＿　　　　〃　　　／　　 　 　 　 　 　 l

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八谷泰造、彼はまさしく研究する経営者「ドクタープレジデント」であった。

【ドクタープレジデント　終わり】

463：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:27:24 ID:HgNCInOQ0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／.: :: :: :: :: :: :: :: ｨ:: :: ｨ:: 〃:: ≧x
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.: :: :: :: ::／.: :::／/:: :/ !::┃:: :: :: :: :: >､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 xく:: :: :: :: ::／.: :::／＼ﾟ:／　 W∨:: :: :: :: :: >､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　-=彡':: ::7:: :: ::/:: :::／ x=ﾟ ≧x 　 ﾔ　V:: ::|＼:: :: :::>､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／.: ::,′:: :/:::／　/ 〃　　　＼　!　 V:: !　 ヽ:V∧::X
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／ィ:: :: {:: :: ::{::/　　 i　　 　 　 ・　i`ｰ　 ∨!＿ _,ﾟ,iV∧ヾX
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ´/:: :: :: ::!:: :: ::/　　　乂　 　 　 　 ,ﾟ 　 　 /． 　 ヽﾔV::ﾟ,　＼
　　　　　　　　　　　　　　　 ノ::_xく笊V:.:./　 　 　 〃ｰ- .　. ノ　　 　 i 　 　 　 ｉ 》V::i
　　　　　　　　 　 　 　 -=彡'´┃ｉ　/r∨!　　　　　　　　 　 　 　 　 _ 乂　　　 ,ﾟ/iX:.:!
　　　　　　　　　　　　　　　　 八 ﾟｘ=￢V　　　　　　　　 ＿＿　　　 `　 ｀ー彡《 !ハ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＿,ｨ　　　　　　　／二二｀=≧ｘ_　　　ヾヽ }ヾ
　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_/ ヽ　　　　　　【二二二二｀Y/　　　　　/
　　　　　　　　　　 x≦: ､ _: : : : : : : |: :＼　　　　　　 ｀ｰ‐＜三三/　　　　　/
　　　　　　　　 xく: : : : : : ハ: : :.: : : |:.: :.: ＼＞　　　　　　　　　　　 　 　 ／
　　　　　　_xく: : : : : : : : : :ハ: :.: : : :|:.: :.: :.: :＼　　 ＞┐＿＿＿＿　 ＜
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : i: : : : ハ: : : : : : : ＼ノ: :＼ｰ┐r'´ ト｀ｰx
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : |:.: :.: : :└─x＿_ x=∨＼r━ﾟ┷tﾔ: : ヽ: ＼
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : |: : : : : :＜￣:.: :.: : : : ∨∧: : : : :7ﾟ,:.: :.: :＼: ＼
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : :∧: : /: : : : ＼: : : : : : : :ヽ　ヽ: : 7ハ＼＞'´: : : :ヽ、
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : :┃/:.: : : : : : :＼: : : : : : : :ﾏﾊ/∧　|: : ＼: : : : : :|ハ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【次回予告】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　【最終回　消失からの創生者】
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464：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/01(水) 21:28:12 ID:HgNCInOQ0
AAで学ぶ経営者列伝は次回をもって終了致します。来週を目処に投下を考えております。

次回もよろしくお願い致します。

465：安価のやる夫だお：2017/02/01(水) 21:31:20 ID:2WwLre.I0
久々に面白かった。
投下中は続きが気になって全然レスできない。

466：安価のやる夫だお：2017/02/01(水) 21:39:26 ID:MN3.TNRU0
乙ー

467：安価のやる夫だお：2017/02/01(水) 22:04:18 ID:.t9I6GeI0
乙　日本にも面白いひとはけっこういるなぁ

468：安価のやる夫だお：2017/02/01(水) 22:46:38 ID:sVU.tMnQ0
乙でした。

469：安価のやる夫だお：2017/02/02(木) 00:55:29 ID:vqFyN7Ls0
乙
最終回か
面白かっただけに残念だな

470：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/02(木) 01:03:38 ID:WwsEGs1A0

財界四天王で忘れていた人。


　　　　　　 rァ､,. :-―-ﾕ､,＿ミ、
　　　　　'シ'",r‐'''"^` ,r;''";;;;;;;;;ヾ"⌒ヽ、
　　　　／ ／ ,r-　 __/;;;r=‐-､三ﾐX;;;;ﾚ'^''ヽ.
　　 ／ ／ ／,..,,ｒ''"/／r;;;ァ''＝=､/;/ミﾆヾい
　ィ=ァ",r'",r",ﾉ ,ィ　,r';;／_,ノ（　 //｀''ｰ､ヽヽト、　　　　　　我が輩を忘れるとはどういうことだ！
　'"フ´r'"／イ ／/,ノ;;;へ､_r'⌒` 〃ﾄ;　_,ｨiﾐl! !;;ll
　,ﾍ〃r彡ｱ/ｲ,ﾉr';;／,,:=＝ミ、 /ゝ';;;;;;/　l;;;）l;洲
　/_,ゝ'´/ ,/,クｲ;;;;;/,f'´　● ヾ; ﾉ　 〉;r''ヽ;;l;;l jl川
　　　 //／ｲ'/;;;/｀ト、　　 ,ノ;;,　　|　● ）l;H!ヾj　
　　 /,>く!　 /;;;/､ , `'＝=,;;;::' " 　 ト::=:イ;l川　　
　イ´　 ,人,/;;/ノ丶　　　　　　　　」　　 l;;!;;;l　　　
　 lr''"´　ト''<　'⌒'　 , rァr-i-､,..,_＿　 /_|;;|__
　￤　 　 l／ ､　　_／'^''´:`'ﾞレ'ﾚ':ｲア,ﾉ'l　／
　 ヽ＿＿,,,....ﾉ＼ ´｀ヽYﾌ,イ,ィ!_ｨ,ノ／　 ゝ'
　／　/l_,ノ　　　 ｀ヽ、 ｀ヽ､'＿,ノ／
　　　f┘　　　　　 　 ｀ﾞ:-:､,,＿,,ノ
　　　　　　　　　　【水野成夫】
　　　　　　【フジテレビジョン社長】
野球、将棋、オーケストラが大好き。文学青年で共産党員だった経験アリ。

なお本人も柔道に熱中するわ、枡田幸三の大ファンだった。

471：安価のやる夫だお：2017/02/02(木) 23:05:18 ID:9G9YHtHU0
バイプレイヤーとして升田幸三がいい味出してましたね、昔気質の棋士らしい読みの良さといいますか・・・
この人も、「名人に香車を引いて勝つ」という棋界でたった一人の偉業をやってるんですよね
（昔は一部のタイトル戦で『3戦勝ち越したら先手番で香落ち（ハンデをつける）になる』というルールがあった）

472：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/09(木) 14:48:52 ID:/CJX1gMc0
明日２１時より最終回投下致します。

473：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 00:07:12 ID:3dzkFaEA0
訂正、明日の22時に投下致します。

474：安価のやる夫だお：2017/02/10(金) 17:49:19 ID:yB5EYITk0
金曜か土曜か、それが問題だ・・・

475：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 21:26:23 ID:7U.ZU7lM0
サーセン、今日の２２時です。

476：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:00:56 ID:7U.ZU7lM0



　　{iiiiiiiii}　　　　　　　　　　　　　　 [[[⌒]]]_＿_
, ─┴┴────────‐┬─┴┴┴‐┴──── ､
| f￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀:i　|　　　　　　　　　　　　　　　|
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| |.　　い:::::ヽ ＿_ノ/　　 　 　 |　|　　　　　　　　　　　　　　　|
| |　　　＼:::::'マ=∠　　　　　　|　|　　　　　　　　　　　　　　　|
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イーストマン・コダックという会社がある。かつてオリンピックのメインスポンサーを務め、
ハリウッドを初めとする映画業界において、フィルム会社としては世界一の規模を誇っていた。

477：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:01:11 ID:7U.ZU7lM0

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　　　　　　　　　　　|＜￣ ::::::::: ＼　 | :::::: |/::::::::::::::￣＼: : : : |
　　　　 　 　 　 ｀＞|／:::::::::::::::::::::::＼| :::::: | :::::::::::::::::::: 〈|＼: : |　　　∠二<　　 厂＞
　　　 　 　 ,ﾍ／　　|＿:::::::::::::::::::::::::::::::: ／|> :::::::::::::::::::: |／＼|　　　　　　　 　 ﾚ'
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　　　　　　　　　　　| 　＼:::::::::::::::::::::::::::::::: i∠_::::::::l7:::::: |く:::::: |　　　　／∟_
　　　　　　　　　　　| 　厂:::::::::::::::::::::::::::::::: |.／:::::::::::::::::: | / ::<|　　　　＼　 {
　　　　　　　　　　　l／.:::::::::::::::::l7:::::::::::::::〈|::::::::::::::::::: ＜|':::::::: | 　 ＜l 　 ＼j　 　 　 ＿＿_
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＿_＿＿__＿＿_＿_|＿＼＿∧＿＿_∠＿|ノ∟_::へ:_／|＿∠|　<l　　　 　 ＼　　　 ／
／ ￣ ＼／ ￣ ＼_|／￣￣＼／￣￣＼ |／￣::￣￣ :|￣￣|　　　　　 　 　 }　 ／
:::::::::::::::::::::::::::::::::::／| ＞:::::::::::::::::::::::::::::::<　|＼ :::::::::::: ／|　 　 |　　 　 　 　 　 |／
:::::::::::::::::::::::::::: ／　 |∟::::::::::::::::::_:::::::::::::::_>|／ ::::::::::::: > |　 　 |　　∠{　　　　　　　　　　＿＿_
::::l7:::::::::::::::::::::: ＞　|／::::::::::::∠ノ::::::::::: ＼|:::::::::::::::::::::!　|∠　 |　　　　　　　 ,{ 　 　 　 /　　／
::::::::::::::::::::::::::: :: >　 |＼::::::::::::::::::::::::::::::::＿_|＿＿＿_.::＞|　 　 |　　　　　　　 ||　　　　/　／
::::::::::::::::::::::::::／　　 | _/::::::::::::::::::::::::／　　　　　　 ／:::::､|　 　 |　　　　　　　 |{　　 　 }／
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だが、2012年にニューヨーク証券所から上場廃止。同年に連邦倒産法第11章を受け、
倒産してしまった（現在は再上場している）

478：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:01:23 ID:7U.ZU7lM0


今回の経営者は、そんなコダックとは対照的な運命をたどった、ある企業を立て直した経営者について語る。


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　　　　　　　　　　　　　　　　-=彡':: ::7:: :: ::/:: :::／ x=ﾟ ≧x 　 ﾔ　V:: ::|＼:: :: :::>､
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　　　　　　　　　　　　　　　 ノ::_xく笊V:.:./　 　 　 〃ｰ- .　. ノ　　 　 i 　 　 　 ｉ 》V::i
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　　　　　　　　　　　　　　　　 八 ﾟｘ=￢V　　　　　　　　 ＿＿　　　 `　 ｀ー彡《 !ハ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＿,ｨ　　　　　　　／二二｀=≧ｘ_　　　ヾヽ }ヾ
　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_/ ヽ　　　　　　【二二二二｀Y/　　　　　/
　　　　　　　　　　 x≦: ､ _: : : : : : : |: :＼　　　　　　 ｀ｰ‐＜三三/　　　　　/
　　　　　　　　 xく: : : : : : ハ: : :.: : : |:.: :.: ＼＞　　　　　　　　　　　 　 　 ／
　　　　　　_xく: : : : : : : : : :ハ: :.: : : :|:.: :.: :.: :＼　　 ＞┐＿＿＿＿　 ＜
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : i: : : : ハ: : : : : : : ＼ノ: :＼ｰ┐r'´ ト｀ｰx
　　　　　　: : : : : : : : : : : : : : |:.: :.: : :└─x＿_ x=∨＼r━ﾟ┷tﾔ: : ヽ: ＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【AAで学ぶ日本経営者列伝】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　【最終回　消失からの創生者】
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479：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:01:36 ID:7U.ZU7lM0



　　　　　　 -=一｀｀￣｀ヽヽ､
　　　　 　 ,ゝ"´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;=-､
　　　　／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/!:;∧.:;:;,､:;:;:;:＼　　　　　　　　こう見えても九州男児です。
　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/'i:/　|:;:;:|''i;:|:;ヽヾ
　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/⌒'　 ﾙ|/⌒1i:;:ｌ｀`
　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;从　 ・ ﾉ 　ヽ､・ ,.''Y
　　　レ:;:;:;r‐Ｙ　 ゛￣　　　　 　"　l　　　 　_＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
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今回の主人公である古森重隆は1939年（昭和14年）に長崎にて生まれた。

480：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:01:50 ID:7U.ZU7lM0

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その後は東京大学経済学部に進学する。

学生時代はアメリカンフットボールに熱中しており、アメフトを通じて古森は戦う闘志を学んだという。

481：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:02:35 ID:7U.ZU7lM0


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大学卒業後は、写真フィルムトップシェアを誇る富士フイルムに入社。
営業畑において活躍していた。

482：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:02:48 ID:7U.ZU7lM0


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元々富士フイルムはダイセル（当時は日本セルロイド工業）の写真部門が独立して生まれた会社である。
1962年には英国ゼロックス社と合弁し、富士ゼロックスを立ち上げ、アメリカのコダック社と双璧をなす
フィルム会社であった。

483：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:05:11 ID:7U.ZU7lM0



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フィルム事業というのは商売において、多くの利益を生み出せる商材を取り扱っている。

まずカメラで写真を撮る場合、フィルムが無ければ写真は撮れないのでフィルムが売れる。

484：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:05:38 ID:7U.ZU7lM0


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さらにそのフィルムを現像する為の設備、あるいは現像液なども一緒に売れば、
一石二鳥も三鳥にもなってしまう。

非常に利が厚い商売であり、証拠や保全の為に写真を使うことが当たり前である以上、
絶対に無くならない商売と見られていた。

485：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:05:59 ID:7U.ZU7lM0



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さらにそのフィルムを現像する為の設備、あるいは現像液なども一緒に売れば、
一石二鳥も三鳥にもなってしまう。

非常に利が厚い商売であり、証拠や保全の為に写真を使うことが当たり前である以上、
絶対に無くならない商売と見られていた。

486：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:06:28 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　入　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 し　　ﾉ: ＼
　　　　　 　 个:..　　　　　　　　 '⌒'　　　　　　　　. .イ : . : . ヽ
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　 　 .′:､ⅱ: . : . : . : . : . :}: . : .∨lilil∨ : . :∧: . : . : . : . : . : ./: . : .!
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だが、古森は全盛期といってもいい1980年代の頃からフィルム事業に対する危機感を抱いていた。

古森だけが特別というわけではなく、実は1975年にコダック社があるカメラを発明していた。

487：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:06:39 ID:7U.ZU7lM0



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それはフィルムを使って写真を撮るのではなく、データとして画像を保存することが出来るという
画期的な商材。

デジタルカメラが誕生していたからである。

488：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:06:51 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　|三| | | | | | ゝ ヽ、　 　ノ　 ﾉ .三三｜
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この時期のデジタルカメラの画質はお世辞にも良いとは言えず、そして値段も高価であった為に
ほとんど注目されることは無かったが、すでにこの時点からフィルムではなく、データとして保存するという
技術がすでに確立していた。

489：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:07:03 ID:7U.ZU7lM0


　 　 　　／: : : : : : : : :/: : :／j: :.j{:..: : : : 八: : : : : :.:{: : : : : : : ＼: : : : : : : : : :、 : : : : :
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　　　/: : : : :.:./: : : :..ﾟ :./　　 |:./　 }: : : : |　　　＼: :.:.,.斗―: : : : : : : ､: : : : : :.:.:., : : : :
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　　: : : :.:.:／1: : :.:/ |:{ 　 ― リ¨　 ﾟ｡: : :｛　　　 ／　 　 ヾ＼ ､　ー＜:.ﾟ｡: : : :.:.:.|:.:.:.:.:.:　　　　ウチもデジタルカメラ造ってるし、医療用の画像診断で使える
　 ｌ: : :.／　 /: :.:.:.{　リ´　 　 　 ヽ 　丶:.:.:.　　 /　　　　　　　　丶 　 　 ∨: : :.:.:j＼:.:.:.　　　デジタル画像システムもある。
　 |:.: 　 　 ∧:.:.:.ハ│　　　　　　 l　　 ＼l　　 ｌ 　　　　　　 　 　 l　　 　 ∨:.:.:.: ｛　`ｰ
　 |/　　　 |:.:ﾟ,:.:,′｝|　　　　　　　|　　　　　　│　　　 　 　 　 　 |　　　　　:.:.:/ ノ　　　　　　もしかしたら、このままじゃフィルムが売れなくなるんじゃないかな。
　　　　　　|: ∧{　 い　 　 　 c　 ′　　　　　　、　 c　　　　　　 ′　　 　 |:./ '⌒¨¨
　　　　　　}/　　　_｝ ＼ ＿＿ .ノ　　　　　　　　＼　　　 　 　 ノ　し　　　 j/＿___ イ{
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　　　　　　　　　⌒' .:':':':.:.:.:.　　　　 ’　　　　　　　　　.:.:.:.:.':':':.:.:.:.:.　 　 　 /: :.ﾉｲ. : . :
　　　　　　　　　 　 入:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　　　 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　 ｲ: : : : .|. : . :
　　　　　　　　　 ／: .个:.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. : : : : : : . ｌ. : . :
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コダックが造ったデジタルカメラは一般向けではなく、国内メーカーで一番最初にデジタルカメラを造り
販売したのは富士フイルムであった。

そしてCRシステムなど画像診断が出来るシステム開発などにも携わっており、
これから先に訪れる「画像のデジタル化」に対して古森は強い危機感を持つようになった。

490：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:08:14 ID:7U.ZU7lM0


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すでに取締役として経営に携わるようになった時でも、この発言が上層部に取り入れられたこともなく、
富士フイルムとしては、一つのフィルムで何度も利益が出せるという、どうやっても儲かる商売に対して
ほとんど危機感を持たなかったとされる。

491：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:08:26 ID:7U.ZU7lM0

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そして２０００年（平成十二年）において、古森は富士フイルムの社長に就任するが、
古森が社長になったとき、富士フイルムは一つの危機に直面していた。

492：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:08:45 ID:7U.ZU7lM0


　 　.＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿,-----.＿＿
　　│　└─┘　　　　　　　　　　　　 　 　 .￣￣￣　　 │
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理由としては、デジタルカメラの性能が上がり、写真を気軽で簡単に、そして綺麗に写せた上で
フィルム不要という時代に突入していたからである。

特にウインドウズ95が発売され、急速にIT化が進んでいくにつれて、その勢いは顕著になり
写真はフィルムではなくデータとして保存される代物なっていた。

493：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:08:56 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　 　 ,イ　　＿＿
　　　　　　　 -=─､/:/‐: : : : :≦-　_
　　　　　　　, -'": : : : : : : : : : : : : : : : .ｰ-. _
　　　　_, -'": : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＜
　　　-=彳: : : : ": : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＞　　　　　　　こうなりゃ仕方ない。僕らも負けないでデジカメを作って売ろうじゃないか。
　　　　 /: : : : : : ｌ: : : : : l: : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　 厶: : : : :／l: ﾄ､: : :ﾄ､: : :l: : : : : : : : : : : : ＼
　　　　|: l: : ／ u ∨ ＼: `, ＼l＼ : ヽ: : l: : : : : : :＼
　　　　|八:/　-─　　　ゝ_ヽ　 　　＼l: : lﾏｰ､: : :／
　　　　　 Y ──　　　　 ＿＿＿　　 l:/)‐ ノ三
　　　　　 l ""　　　　, 　 　 　 　 　 　 r‐＜ ､
　　　　　　>､　　　　　　　　　　　""ノ: : : : : :｀丶、
　　　　 ／:l: :<ゝ〈7ｰｯ‐‐､ヘ__　 イ /: : : : : ／: : : .､
　　　／: : :l:r─:从　′　ﾉ／: : : : /: : : : ／: : : : : :_ヽ
　 ／: : l: :/:l: : : l／7┬／: :＼￣: : : : : /: : : : : : : : :⌒l
／: : : : : /: l: : : l////V : : : ／ : : : : : /: : : : : : : : : : :〈


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富士フイルムでもデジタルカメラの生産を行っていた為、まだこの時点では破綻というレベルではなく、
危険という状態であったと言えるが、時代はさらに富士フイルムを追い込んでいった。

494：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:09:10 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　 ＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　 /○　 i三三三i　 ○ヽ
　　　　　　 　 〃二二二二二二二 , |
　　　　　　　　|| ||　　 　 　 　 　 ||　| |
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　　　　　　　 || ||　　　　 　 　 　 ||　| |
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　　　　 　 　 ゝ.二二二二二二..´__ﾉﾉ
　　 　 　 　 {　{　　　　{　 {　　　　i⌒ヽ
　　　　　 　 ゝ.ゝ---- ゝ-ゝ----.ゝ__|
　　　　　　 /　(___), --;--､　 (___) |lﾖ| __
　 　 　 　 / (___) /‐（￣）-}　(___) .l　|(＿)__
.　　　 　 /(ニニ)ゝ　二. ノ(ニニ)./ /‐（　 ）)
　　　　 / (__1__） (__2__） (__3__）./ /:::/　￣
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
携帯電話にデジタルカメラの機能が付いた、カメラ付きケータイが1998年に発売。
その後、シャープとJ-PHONE（現ソフトバンク）にて取った写真をメールに添付出来る
写メールが大流行。

これにより、ますますフイルム事業そのものが危うくなっていった上に、
コンパクトデジタルカメラそのものが携帯電話市場へと流れるようになる。

495：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:09:22 ID:7U.ZU7lM0


　　　 ／: : :/: : : : : : : }: : : : :／　｛: : : |: : : : : : : : |　、: : : : : : : : : : : : : : : : :､: ＼
-==彡/: : :/: : : : : : : :.}: : ／ 　 　‘.: : :|: : : : : : : : |　 ＼: : : :{: : : : : : : : : : : : :｡: : ＼
　　　/: : :/ : : : : : : ／} /　　　　　 ∨ |＼: : : : : : | 　　 丶: :ﾄ､: : : : : : : : : : : ‘｡: : : ヽ
　　 .′: :′: : : : :./　 j/　　　　__,,ノ Ⅵ 　丶 : : ゞ|..,,__ 　 ‘｡:ヽ ､: : : : : : : : : : : :｡: :ト
.　 /: : : :ｉ : : : : : /.　-－ 　 ¨⌒ヽ 　 リ 　 　 ＼: :|　／｀¨¨ ＼}ｰ＼--. 、: : : : :│: ‘｡　　　社長になってから２〜３年で市場が〜10％減。
　/: : : : :|: : :／/　　　　　　　　　 :,　　　　　　　　ヾ′ 　 　 　 　 　 ＼:.}｀: : :|: : |: : : :　　　その後20〜30％減になるなんて。
ノ: : :ィ :.:|: : :.:ｨ　　　　　　　__　　　ｉ　　　　　　　　ｉ　　　 __　　　　　　　i､:.:.:.:.|: : |: : : :
:.:.／/:.:.:.|:.／ |　　 　　 　 (rう）　　}　　　 　 　 　 {　　　(rう）　 　 　 　 | ヾ:.:.}: :ﾉ:.:.: :　　　これじゃ会社が潰れちゃうじゃないか。
´　 ／∨/　　 、　　　　　　　　　 /　　　　　　　　:.　　　　　　　　　 　 ﾉ　 ∨:/⌒ヽ :
　 /　＼}′　　γうo 　　　　　Ｏ　　　　　， 　　　 Ｏ　　　　　 ｏγう、　　 ∨⌒ヽ ':
　.′ 　 !　u　　ゝノ‐′￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　　 ゝィ_)　 u　:
.ｨ{　　 /{ 　　　/::|::l:.:.:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　:.:.:.:.:.:.:.l::|::い 　 　 !
　， 　 リ　　　　:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　　　}
　 ＼ 　 ｝　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ‐ ´　/
　　　＼_}　　　　　　　　　　　　　　-----------　　　　　　　　　　　　　 　 ,___ ／
　　　　ﾉ小　　　　　　　　　　　(＿＿＿＿＿＿＿＿_)　　　　　　　　　　　 /:.:.:八＼

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この時の事を古森はこのように語っている。

496：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:12:22 ID:7U.ZU7lM0



　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　__,,,....　　--―－--　..,,
　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 ´:　:　:　:　:　:　ヽ　:　:　:　:｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　／ :　:　:　:　:　:　:　:　:　: ‘.　:　:　:　:　:
　　　　　　　　 　 　 ィ 　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　‘. :　:　:　:　:　　　　製鉄会社が鉄を作っても鉄を売れない、自動車会社が
　　　　　　 ○ ofア/　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: ’:　:　:　:　:　　　　自動車を作っても売れない。
　　　 　 。　　 /:.:./　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　 ｉ:　:　:　:　:
　　　　　　 /{/:.:.:/:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: |:　:　:　:　:　　　　僕らのおかれている状況はこんな感じで完全八方ふさがりじゃないか！
　　　　　　ﾊ:′:.:,..:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:│: :　:　:　:
　　　　　 /　∨:.:| 　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: .′:　:　:　:
　　　 　 /　　ｆ:.:.:|:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: : : : /: : : : : : ／
.　 　 　 ′　 i:.:.:.|:　:　:　:　:　:　:　:,ィ⌒ヽ: : : : : : :/: : : : : : :{_:_:
　　 　 /　 　 l:.:.:.|:　:　: :,. ----／{::::::;，-ﾊ:_:_:_:,ノ、: :,，-=彳::::
. 　 　 ′　 　ﾟ, :.:|:　:　::/:　: ／:　{i:∨:::::::::::::::::::｀ヽ:ー{::::::::::::::::::
　　 / 　　 　 ∧:.} :　: /:　:　:　:　:.＼iﾄ､_:_:_:_:_:,:イi｝:､入ー‐=彡
.　 〈　　　　.......∧∨:　:　:　:　:　:　: :_＼:i:i:i:i:i:i:≫'’　　　｀¨¨¨´
　　 ’,　.................入∨:_:_:_:_:_:_;＞　´　　 ￣￣

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この時点での富士フイルムにおけるフィルム関連事業は、全社の売り上げの6割、
利益の3分の2を占めるコア事業であり、間違いなく、このまま何もしなければ
富士フイルムは倒産してしまう。

実際、このデジタル化の波において、取り舵を間違えたコダックは倒産の道を歩む事になった。

497：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:12:39 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　__,,,....　　--―－--　..,,
　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 ´:　:　:　:　:　:　ヽ　:　:　:　:｀ヽ　　　ピタッ
　　　　　　　　　　　　　／ :　:　:　:　:　:　:　:　:　: ‘.　:　:　:　:　:
　　　　　　　　 　 　 ィ 　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　‘. :　:　:　:　:
　　　　　　　　　fア/　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: ’:　:　:　:　:
　　　 　 　　 /:.:./　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　 ｉ:　:　:　:　:
　　　　　　 /{/:.:.:/:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: |:　:　:　:　:　　………
　　　　　　ﾊ:′:.:,..:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:│: :　:　:　:
　　　　　 /　∨:.:| 　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　:　: .′:　:　:　:
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.　 　 　 ′　 i:.:.:.|:　:　:　:　:　:　:　:,ィ⌒ヽ: : : : : : :/: : : : : : :{_:_:
　　 　 /　 　 l:.:.:.|:　:　: :,. ----／{::::::;，-ﾊ:_:_:_:,ノ、: :,，-=彳::::
. 　 　 ′　 　ﾟ, :.:|:　:　::/:　: ／:　{i:∨:::::::::::::::::::｀ヽ:ー{::::::::::::::::::
　　 / 　　 　 ∧:.} :　: /:　:　:　:　:.＼iﾄ､_:_:_:_:_:,:イi｝:､入ー‐=彡
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　　 ’,　.................入∨:_:_:_:_:_:_;＞　´　　 ￣￣


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だが、この状況に対して何もしないでただ絶望するほど、古森は臆病者でも無ければ、
単なる悲観論者ではなかった。

八方ふさがりになる中で、活路を見いだすための道を考え始めた。

498：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:12:52 ID:7U.ZU7lM0


　　　 /　　　　　}　　　　　{ ､　　ヽ　　＼　　　　　ヽ　　　 ≦　　／
　　 /　,　　　　ハ　､　 　.∧ ｀　､ ヽ ＜/＼＜　　 ∧ ＿＿＿ミ､
　 ./　./　 ﾑ　/　 ﾏ { ､　　∧　　　＞マ￣＼　 ＼　 V　ヽ ﾏf￣
　/　 /　 .,' i　i　　 ヽ､ ＼　 ∧　／　　　9　　.',　　ﾏヽi ､　 .ハ　　　　　　僕らの会社はまだ終わっちゃいない。
./／ i ',　,' .ﾊ i　　　　＼　｀ .､ ﾏ´　　　　　　　 i　　 }　ム '/　 ≧ ､
'　　 i　', i / .ﾏ7¨ =- ､　　　　　 {　　　　　　　 /　　　 '　 /ﾑ　　　　　　　きっとまだ、やれることがあるはずだ。
　　　i　},.i |　 }　　 　 9ヽ　　　　 ＼ 　 　 　 イ　　　　j￣ |ヽi
　　　.i i ﾊ.{＼.',　　　　　 i　　　　　 ｀　　 ´ヽヽヽ　　 / ,　j､
　　　.ﾏ/ ヽ　ヽ ､　　　　ﾉ　　　　　　 ＿　　　　　　./ ｲ i/　　≧o｡
　　　 ﾏ　　　　i. ｀ ―　´　ヽ　　,　／　　＼　　　.／　.i　　　　 　 ,　-=ミ ､
　　　　　　　 ノ ',　　　　　　　ｬ´　　　　　　}　 ／　　 i　　　　 ／　　　　　 ＼
　　　　　　　　　 .＼　　　　　　ﾏ　　　　　ィ／　　　　i　　　　/　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　｀ = ァ―― ≧マ´　/､　＿＿ノ　　　 /　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　 　 　 　 　 ／／　 ilﾉ　　ミ.ヽ/　　マ=- ､　　　　.'　　　　　 　 　 　 　 　 ,
　　　　　　　　　　　 /　＼ .ノi　l　　/ /　　　　　／　　　　,'
　　　　　　　　　　 /　　 イ　i ／ﾏ' ./　　　　 ／　　　　　 ,'
　　　　　 　 　 　 / .}　}　　 .i　 }' i/　　　 ／　　　　　 .',　,'
　　　　　　　　　/　 i .ハ　　l　 ./　　 ／￣￣￣ l　　　 V ＼
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そこで古森は富士フイルムにある全ての技術の棚卸を行うことを宣言。

社内にある、あらゆる技術を活用し、フイルム事業に変わるコア事業の創生と
既存事業の活用に全力を注いだ。

499：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:13:06 ID:7U.ZU7lM0


　 　 　　／: : : : : : : : :/: : :／j: :.j{:..: : : : 八: : : : : :.:{: : : : : : : ＼: : : : : : : : : :、 : : : : :
　　 　 .:′: : : :/ : : : /: :,: ′: : :ハ:..: : : :|　 ＼: : : :.ト : : : : : : : : ＼: : : : : : : :.:, : : : : :
　　　/: : : : :.:./: : : :..ﾟ :./　　 |:./　 }: : : : |　　　＼: :.:.,.斗―: : : : : : : ､: : : : : :.:.:., : : : :
.　　/: : : :.:.:.:.,: : : :.:.:|:./-- .,,_|:.! 　 l: : : : |　 ー‐=七ﾄ:.:＼ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.｡: : : : :.:.:.|:.:.:... :
　　: : : :.:.:／1: : :.:/ |:{ 　 ― リ¨　 ﾟ｡: : :｛　　　 ／　 　 ヾ＼ ､　ー＜:.ﾟ｡: : : :.:.:.|:.:.:.:.:.:　　　　　そういえば写真フィルムはコラーゲンを使うな。
　 ｌ: : :.／　 /: :.:.:.{　リ´　 　 　 ヽ 　丶:.:.:.　　 /　　　　　　　　丶 　 　 ∨: : :.:.:j＼:.:.:.
　 |:.: 　 　 ∧:.:.:.ハ│　　　　　　 l　　 ＼l　　 ｌ 　　　　　　 　 　 l　　 　 ∨:.:.:.: ｛　`ｰ　　　　　コラーゲンって確か美容関連でよく使ってるよね。
　 |/　　　 |:.:ﾟ,:.:,′｝|　　　　　　　|　　　　　　│　　　 　 　 　 　 |　　　　　:.:.:/ ノ
　　　　　　|: ∧{　 い　 　 　 c　 ′　　　　　　、　 c　　　　　　 ′　　 　 |:./ '⌒¨¨
　　　　　　}/　　　_｝ ＼ ＿＿ .ノ　　　　　　　　＼　　　 　 　 ノ　し　　　 j/＿___ イ{
　　　　　　　　　 /｛:.:.ｏ:.　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣ .:.:ｏ.:　　 　　 //: :}:.:/: .ﾘ
　　　　　　　　　⌒' .:':':':.:.:.:.　　　　 ’　　　　　　　　　.:.:.:.:.':':':.:.:.:.:.　 　 　 /: :.ﾉｲ. : . :
　　　　　　　　　 　 入:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　　　 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　 ｲ: : : : .|. : . :
　　　　　　　　　 ／: .个:.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. : : : : : : . ｌ. : . :
　　　　　 　 　 ｲ: . : . : : : :＞　　　 　 ｰ==　 ニゝ　　　　　　　　 ィ: : : : : : . : ..:′: . :
.　　　　 　 ／: .|: . : . : :.／: : : : ≧o｡　　　　　　　　　　 ..｡o≦／: : : : : . : . : / : . : . :

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その中で注目されたのが、富士フイルムにおいて蓄積された技術であるコラーゲンの活用であった。

実は、写真フィルムというのはコラーゲンで作られており、写真フィルムはコラーゲンが
いくつもの層をもって形成されている。

コラーゲンを活用する技術はフィルムを活用する技術と同じ原理であった。

500：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:15:58 ID:7U.ZU7lM0



　　_,,,,,...,,,,,_
　 i´　（___） ｀i
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そして写真の色あせを防止する為の技術も、肌の保湿に応用することが出来ることが分かってきた。

501：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:16:13 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　_-==ニニ二二二ニニ==-_
　　 　 丨__ ￣￣.￣.::::::.￣:.￣￣´::｣
.　 　 　 ｀こ三三三三三三三三ラ´
　　　　　ﾉﾉ　 　.........................　 　 ヽ
.　　 　 //, .:´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:..:゛:.、',
　　 　 i i.:.:.`.:.:.:.:.:.:.:.:.‐-‐.:.:..:.:.:.:.:.:´..: i
　　 　 i i |`　‐-　:.:._.:.:.:.:.:_:.:　-‐　´| i
　　 　 ｌ.i::|　　　　　　　　　 　 　 　 | |
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　　　　.ヽヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.: /
　 　 　 　 ｀tー-　.:._＿___ .::-一ァ''´
　　　　　　　｀¨　 …―…　 ¨”´
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そこで生まれたのが富士フイルムが2006年に発売した「アスタリフト」である。

大手化粧品メーカーが席巻する中で、賛否両論であったが大々的な宣伝を行い、
現在では売り上げ百億円を超える大ヒット商材となっている。

502：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:16:28 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　} 　:.:.} 　}　＿＿＿　　　　　　〉:.:. ヽ
__ -=＝=- __ 　　　　　　　　　 　 　 ＼ :.:.}／ 　　　　 　 ｀　　 、 /　　 ｲ
ﾆ=-‐…‐=ﾆミﾄ､　　　　　　　　　 　 　 　´　　　　　　　　 　 　 Υ　／ {
┼┼┼┼┼┼ ＼　　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　 {　{:.:　 |
┼┼┼┼┼┼┼､＼　　　　　 　 　 ′　　　　　　　　　　　　　　 ゝ／　　　　僕らが売るのは写真だけじゃない！
┼┼┼┼┼┼┼‐ヽ ＼　　　　　　ｉ　　　　　　　　　　　　　　　　 }
ゞ ┼┼┼┼┼┼―｝}ヽ.＼　 　 　 | ､　　　　　 　　 　 　 　 　 　 ′　　　　やれることは全部やろう！　その上で生き残ろうじゃないか！
　｀ ー==========彡ー‐＿ｰ┬r‐ﾉ /＼ 　　 　 　 　 　 　 　 　 /
　　　 ｀¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨´￣　　　｀ヽ./:.:.{　 ‘＼　　　　　_,.　イ　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　八:.:.: 　ー ′　 ┬ ´’ 　 } 　 j⌒ヽ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　γ'⌒ヽ 　ー―=彡　/ 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ヽ{_/__|　｝　　　:.:.:.:.:,.ｨ　 　 　 　 ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　ｰ'-----　 ´　＿_,,,... 　-┴ﾐ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ′　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｲ　　　　　　　　　　 　 　 　 | 　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　 ／　ゝ　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾉ／｛ノ｀ヽ

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同年「富士写真フィルム」であった社名を「富士フイルム」に変更。

写真に囚われない、自社技術を全て行かした上での事業計画に力を注ぐことを決意する。

503：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:17:46 ID:7U.ZU7lM0

　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おそらくここからⅩ線がでる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　 　 　／
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　l∠
　　　　　　　　　「￣　 　 　　‐――――――┐　　　　ﾌﾟﾗ板でできた透明BOX
　 　　'⌒ 　　　│　　　 　　　 　 　 　 　 　 r‐┼――　　顔のおきばがない
　 　 　マ　検　│　 　 　 　　＿＿＿＿∥│__|　＿
　 　 　ン　査　│　　 　 　　 　 　 │ 　∥↓|/7Yﾍヽヽ〆、
　 　 　モ　装　│上からせまって│ 　▽ 　|//ハ_||川⌒ﾘ　　　首をひねって顔は横向きに。
　 　 　グ　置 　| 　 くるﾌﾟﾗ板 　　 | X-ｒａｙ. |^'　iゝﾘr八〃　　　　│（ かなりｷﾂｲ ）
　　　　ラ　部　│　　 　 　 ＼　　　Ｌ＿＿＿ﾄ ^ .ﾟイ川 （(　く――┘
　　　　フ　分　│ 　　　　　　∠! ＿＿＿＿　 ﾉ　（ﾘl从
　 　 　 ィ 　 　 │ 　 　 　 　　 　 ￣￣￣￣／ |　l l
　 　 　 l　　　　│　　　　　　'二二´彡　 ・( 　 │ l |　　 ←─　つい胸を突き出したくなるが、
　 　　 ー　　 　 |　　　　　７l　　　――――＼ l　| {　　　　　　 胸をはると肋骨もはり出すため
　　　　　　　　　L. 　 　　/ 　 　 　━━━━ 　Ｙ ハ 　 　 　 　 体勢に無理が生じる
　　　　　　 　 　 　 　 　/ 　 　 　 　 ↑ 　 　 　 }| |　ヽ
　　 　　　　　　　　　　/　　　　 　　鉛板　　　　ｌ| |　　}
技師のおねーさんの手が 　　　 　 　 　 　 　 ｌ| | 　/
前方から胸をわしづかみ、 　　　　　　　　　　|じ　/
引き伸ばす　　　　 　 　 　 　 　　　 　 　 　 　 |　 /　　 ←─　ひざをまげるよう指示されたが
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 |　　 　 　 　 曲げる余裕なし
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｌ　|
　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　∥ l
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　 　　　　|l　|
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　 　　　　|l　{
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　 　　 　'丿人
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　 　 r＜＼__ノ　　←─　足は肩幅にひらいておく
　 　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　￣

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化粧品事業と共に富士フイルムが目指したのは医療事業領域の拡大である。

ちなみに1981年、富士フイルムは世界で初めてX線写真のデジタル画像化に成功している。

当時から医療関連における画像関連において、富士フイルムは世界トップクラスの技術を有していた。

504：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:18:21 ID:7U.ZU7lM0


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今や当たり前のように使われるCTなどの画像診断において、富士フイルムは世界トップクラスの技術とシェアを持っている。

この強みを生かし、今後成長していくであろう医療関連事業に対して莫大な投資を行うことを決断した。

505：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:18:36 ID:7U.ZU7lM0

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　　　レ:;:;:;r‐Ｙ　 ゛￣　　　　 　"　l　　　 　_＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
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そうした医療関連事業の買収を行っていた中で2008年。富士フイルムはある企業を傘下に入れた。

そして、この会社の参入は当初失敗と見られていた。

506：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:20:38 ID:7U.ZU7lM0



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その会社はインフルエンザの治療薬の開発を行っていた。

ファビピラビルと名付けられたその薬はウイルスの細胞内での遺伝子複製を防ぐことで増殖を防ぐという
画期的な効能を持っているが、同時に動物実験で胎児に対する催奇形性の可能性が指摘されたことから
全く注目されることが無かった。

507：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:20:50 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　　　　　　　ヽ　　 ヽ.{　ヾ ＼＼.　}ﾄ､　　　- = 彳,勿ァｧ ､￢ヽ,　! 　 　 / ,|iiiiiiii!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ. 　 ＼`ｰﾄ､ﾞい }　　 -ｔ￢ｧ'´＿_/^Ｙ:1ｉ.　　 /｜! :',iiiiii!
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しかし2014年。西アフリカを中心に人食いウイルスと呼ばれるエボラウイルスが大流行する。

あまりの事態にWHOは「「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。

一万人を超える死亡者を出し、エボラが猛威を振るっていた。

508：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:21:01 ID:7U.ZU7lM0


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だがこの事態の中で注目されたのが、ファビピラビルであった。

インフルエンザ同様に細胞内での遺伝子複製を防ぐことから
初期段階であれば効果があることが確認されたからである。

509：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:21:59 ID:7U.ZU7lM0


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この企業こそが富山化学工業であり、同時にファビピラビルは一般的にアビガンと呼ばれている。

それまで全く治療が出来ないエボラウイルスに対して、ほぼ唯一といってもいい治療薬の存在は
世界中に広まっている。

510：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:22:20 ID:7U.ZU7lM0



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古森はさらに複合機関連事業の拡大を目指した。そこで行ったのが
富士ゼロックスの完全連結子会社化である。

元々富士ゼロックスは富士フイルムとイギリスのランク・ゼロックス社との合弁会社であった。

511：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:22:34 ID:7U.ZU7lM0



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｀ ー‐込.三丕三三丕三三丕三三丕三三丕三.沙-─ '
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富士ゼロックス自体、販売している複合機は世界トップクラスの性能を有しているが、
最大の特徴は文書管理システムである。

この技術により、それまでの紙媒体をスムーズに電子化し、保存管理することが出来る。

512：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:22:49 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　 -=一｀｀￣｀ヽヽ､
　　　　 　 ,ゝ"´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;=-､
　　　　／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/!:;∧.:;:;,､:;:;:;:＼　　　　　　コピー機を一台売るんじゃなくて、コピー機を含めたサービスが、
　　　/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/'i:/　|:;:;:|''i;:|:;ヽヾ　　　　　僕らの強みになるんだよ。
　　 /:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/⌒'　 ﾙ|/⌒1i:;:ｌ｀`
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　　　レ:;:;:;r‐Ｙ　 ゛￣　　　　 　"　l　　　 　_＿＿＿＿＿＿＿＿＿_
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2001年には富士ゼロックスの持ち株を75%にし、2006年には富士フイルムホールディングスとなったことから
富士ゼロックスの立ち位置はより重要視されており、現在でも複合機のシェアはキャノンやリコーに続く
国内シェア第三位の地位にある。

513：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:23:02 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｚｭ＿_,ｘｭ＿
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　　　　　　　　 　 ｨfて_,ノ) ノ^¨￣　　　　　　　　　　　　　 ｀''…‐-=彡
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　　　　　 　 　 　 】‐--‐ｧ.:.:: : 　 　 ﾚ'´-‐-　 　　ﾐ. ， ＼ 　　　　　 :ｉ　　|
　　　　　　　　 　 】‐-‐〈:.:.:.:. : :,ｘ≦-…‐-ミ 　｀　､　’. 　ﾞ:，__ 　 　 :l. .　|
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　　　　　　　　 　 ¶　l l　 :::/./ 　, 　　_ﾆ_　、｀ヽ ﾞ:、 ‘， ’　l (__ 厂) ｌ: : ::|
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　 　 　 　 　 　 　 i|　l｜ :{！　{　！　　 　 　 　 　 ′ j　 ':.:.:.: :　　　|: : /二ﾆ=-
　　　　　　　　　　！ | l　 ', ',　‘　 ﾞ、　　 　 ﾉ　, 　 }　ﾉノ::.:.:.: : 　 　 l: :/三二ﾆ=-
　　　　　　　　　　 ‘ﾐ辷__ ,i、 、ゝ,　` --　´　 ' 　 ,' /':::.:.:.: :.　　 　 ﾉ '三二ﾆ=‐
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　､　≧=--=≦　　 ／三二ﾆﾆ== ―= ﾆﾆ=‐
　　　　　　　　　　　　　　　 ‐=- .　　ﾆ二ﾆ 　 _,.ｲ三二ﾆ=‐　 ￣￣
　　　　　　　　　　　 　 　　‐=ﾆ二≧=‐-‐=≦三二ﾆ=‐
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ‐=ﾆ二三三二ﾆ=‐

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そして2008年。パナソニックより世界初のデジタルミラーレス一眼レフルミックスDMC-G1が発売された。

従来の一眼レフと違い、ミラーレスはその名の通りミラーを廃止していることから、内部構造を簡略化し、
同時に軽量コンパクト化が可能である。

514：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:24:33 ID:7U.ZU7lM0


　 　 　　／: : : : : : : : :/: : :／j: :.j{:..: : : : 八: : : : : :.:{: : : : : : : ＼: : : : : : : : : :、 : : : : :
　　 　 .:′: : : :/ : : : /: :,: ′: : :ハ:..: : : :|　 ＼: : : :.ト : : : : : : : : ＼: : : : : : : :.:, : : : : :
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　　: : : :.:.:／1: : :.:/ |:{ 　 ― リ¨　 ﾟ｡: : :｛　　　 ／　 　 ヾ＼ ､　ー＜:.ﾟ｡: : : :.:.:.|:.:.:.:.:.:　　　　　キヤノンやニコンのシェアを普通のやり方で崩すのは無理だけど、
　 ｌ: : :.／　 /: :.:.:.{　リ´　 　 　 ヽ 　丶:.:.:.　　 /　　　　　　　　丶 　 　 ∨: : :.:.:j＼:.:.:.　　　　　このミラーレス一眼レフなら不可能じゃないかもしれないね。
　 |:.: 　 　 ∧:.:.:.ハ│　　　　　　 l　　 ＼l　　 ｌ 　　　　　　 　 　 l　　 　 ∨:.:.:.: ｛　`ｰ
　 |/　　　 |:.:ﾟ,:.:,′｝|　　　　　　　|　　　　　　│　　　 　 　 　 　 |　　　　　:.:.:/ ノ
　　　　　　|: ∧{　 い　 　 　 c　 ′　　　　　　、　 c　　　　　　 ′　　 　 |:./ '⌒¨¨
　　　　　　}/　　　_｝ ＼ ＿＿ .ノ　　　　　　　　＼　　　 　 　 ノ　し　　　 j/＿___ イ{
　　　　　　　　　 /｛:.:.ｏ:.　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣ .:.:ｏ.:　　 　　 //: :}:.:/: .ﾘ
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　　　　　　　　　 　 入:.:.:.:　　　　　　　　　　　　　　　 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:　　　 ｲ: : : : .|. : . :
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そこで富士フイルムもミラーレス一眼レフに参入。世界シェアでそれぞれ一位二位を独占している
キヤノンとニコンの牙城を崩す為にも、高級ミラーレス一眼レフの製造に着手する。

515：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:24:56 ID:7U.ZU7lM0


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ここまで古森のやってきたことだが、実はコダックも同じようなことを行っている。それでも、
コダックは破産し、富士フイルムは生き残りが出来たのは大きな相違点があった。

516：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:25:10 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,r‐ ､
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　　　　　　　　　　　,:r''"´彡ｱ=＝l　　　　　　l三三彡ｼ"^｀ヾミヽ、
　　　　　　　　　 ,ｨ"シｨ'彡'"r≦ﾆ!　　　　　　l三彡'"　　　　 ヽミﾐヽ
　　　　　　　　,r'´彡彡イ,=''""~´l　 　 　　 　 !　　　　　　　　　いヾ｀ヽ　　　　　　銀塩フィルムが無くなるわけないデース！
　　　　　　　ノﾘ'´,rｼ ﾉ,r'´　　　 ,l　　　　　　　l　　　　　　　　　 ﾞt,いヽ:ヽ
　　　　　 ,f´ムィﾂ=‐''"　　 _,,,:.:.:l　 　 　 　 　 l　 ,.,.,_　　　　 　　 ヾミﾐlYl　　　　それに投資もしてマース！
　　　　　ﾉﾘfrシ'"_,,ｪ=三＝=､:.:.ﾘ　 _,_ ;l;lﾘ __　ﾋ'":.:.:.:.:.:.:,二ニミｰ-､ヾﾘl h　　　
　　　　/N/' ,ィ7,:r'´ (_・ﾉ　｀丶/ ,ィ;;;;;l l;;, f;;;;ヽ.ヽ,r ''"´　　(_･_)｀ヽﾐi,　Vlﾄ、
　　　 ,{ﾘツ /,Z/　, :-=＝三ﾆ/ /;{__};;l lﾄ l;;f^_}ヽY_,,.z =＝=ｭ､、 . :ヾt, ﾞil い　
　　　f川ﾘ/ //ｲ''"　　　　 　 { （;;;_;;;;ノ,､,､ヾ:;;;;;;ﾉ ）`''ｰ　　　　 ｀ﾞヽ､:;ゞ, ltiリ
　　　ljｿﾘ　,ﾉ'´　　　　　　　,,.ゝ-､　　 ''ﾞ ﾞ''　　 _,人ﾐ､、　　　　　　　｀ヾ{､∨{　
　　　l,ｊﾉ　　　　　　　　 ,,ィ::: ''"^ ヾ.土卅土ナ´　　 ｀`'　　　　　　　　 ヾﾐtﾘ}　
　　　!'′　　　　　　　　　　　　, - ､｀,ﾞ;;ｰ-_''_,, -‐､　　　　　　　　　　　　｀ヾl!
　　　l　　　　 ,rェ''　　　　 , :'":┬- :､｀二´, ィ:―rミ｀丶､　　　　ｚｭ､、　　　ﾞil
　　　l,　 　 f´　　　 _,, ィ"ニj､_ﾉー┴―'^'―'ー 'ヽ_ノゝ＞-z三テ;;ｲﾄ,　　　 l
　　　 l　　 トﾐﾆ二Z,r‐ア-r―v‐''‐ｙ'"~`l'"^`Y^ヽr'^ヽ,.ユ二ﾌ,r''" //' 　 　 ,!
　　　 'i,　　 ﾄぃ　　 ｀~ﾞﾞﾞ` '―'^'―'^'―┴─┴─'＝''"~´￣´　　 〃　　　 /
　　　　l,　　 ヾヽ　　｀丶､,,_　　　　　　　　　　　　　　　　,, ノ　　　 /　　　 ﾉ
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一言で言うと、コダックが倒産した最大の理由はフイルム事業が継続すると信じていたことに尽きる。

通常の銀塩フイルムが駆逐されるとは思っていなかったということと、一応他分野において
相応の投資を行っていたこともそれに拍車をかけた。

517：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:25:23 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　/ｨﾘ/Z,rァ,ィｮシノノﾊ/,ﾉ 　 　 　 !ltぃ､ w､ ヽ
　　　　　　　!〃/,rシｧ‐''ﾆ斗彡彡'′　　　　 いヾト、ﾐミ l
　　　　　　　l'ｿ/イZ=彡'ｱ_彡''"　　　　　　　　ﾞt,ヾXヽヽﾐl
　　　　　　　l '´,Zr'zェ≦;､,,,_　　　　　　　　　　 ヽヽﾄ､ｔﾐ l!
　　　　　　　{ﾊﾘ　ｷ　 （_・,ﾉ`ﾐ'　　　,.:‐-ｪ,,＿＿_,,,Nﾐ!ゞヽｌ
　　　　　　　tjV　´^''ー―''　　　　 /;;;::イﾞて･ﾌ^'‐ｧ ヾﾐミl
　　　　　　　 l, l　　　　　　　　　　 /;;::::::｀` ‐-‐''^´:.:.lﾘjリ
　　　　　　　 ヽj,　　　　　　　　　 /:::::::　　　　 .:.:.:.:.:.l/7/　 ボクの会社、世界一のフイルム会社ね。
　　　　　　　,. -ゝ、　　　　　　　 /:::,;:'　　　　.:.:.:.:.:.:/ｨ'′
　　　　　　/　 .:.:.:.ヽ　　　　r'^'　/:::-､　　　 .:.:.:.:.:./'´　　　 デジカメなんて所詮オモチャデース！
　　　　　 i′:.:.:.:.:.:.:.ﾞ!　,,、　ヽ　　　 ノ　　 .:.:.:.:.:／　　　　　
.　　　 　 l!　:.:.:.:.:.:.:.:.:l　ヾヾﾆ:ヽ_ .イ..,,＿ .:.:.:.:／　　　　　　
　　　　　l　 :.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ、 ｀丶､`'―--彡'´.:／
　　　　　l,　 :.:.:.:.:.:.:./l iﾄ、　 ､;;,,｀,,￣,,´ :／ーr‐- ､
　　　　,イ!.:.:.:.:.:.:.:.:/　ltl ＼　｀ﾞﾞ ''' "´／:.:.:.:.:.l:::::::::::＼
　,.-'",..､:::l:.｀'＝":.l 　 い　` ー-‐ ''".:.:.:.:.:.:.:.:l::::::::::::::::｀丶､
':´::／　ヽ.l:.:.:.:.:.:.:,ﾊ　　l,　　　　.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ﾘ::::::::::::::::::::::::::｀ﾞヽ､
::,ノ　　 　l!:.:.:.:.-ｼ' ヽ　 l,　　 .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀丶、
'´,;　　　.:.lゞz彡´:.:. 丶、　　t;;; ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀丶
　,!　　 .:.:.l彡''":.:.:.:.:.}:.ﾞ:.｀ヽ､};; ﾂ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　ﾘ　　:.:.:.j:.:.:.:.,,:-‐'^ﾐミ:.:　 ｀ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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コダックは写真フィルムにこだわり続けた。自ら生み出したデジタルカメラに対しても
冷ややかであり、これがやがてフイルム事業そのものを消滅させかねない事実を
認めることが出来なかったのである。

518：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:26:29 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 fノ,r彡 彡 ,ｨｼ　　　 |ll ヽ　川 jﾙ l l　 ll l l ﾉﾊいli爪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉｨ=≡＝ ''' "　 　 　 V! ヾ Yｿﾉlll /ｲ　从！ l l幵 l ll
　　　(~｀ﾞ` ' ' ‐ - : ; , ,_　　　　　　　　　　　　 (zｪ;;,,,,ィ i,　　　　　　　 ヽ､ﾞi,　ﾘﾊl ﾘﾊ　彳l l,　y升卅１
　　　　｀丶 ､　　　　　 ｀ﾞ ` ' ‐ --::　; ,, ＿＿,,.jゝ､_oぅ」ト、,,、　　　　　ヽﾐ!/ｨ' K戈　 ll　H　tトvkjｲ}
　　　　　　　 ｀ 丶 ､、　　　　　　　　　　　　　 　 =三;;;;;;;;;;;;;;≧ﾐ､　　 　　∨ﾘ ﾉハヽ tﾐミ ヾVﾂﾉ,州　　　僕らの強みは写真フィルムデース！
　　　　　　　　　　　　｀ 丶 、　　　　　　　　　　　　　｀ ~ ヾ;;;ヽ､ `'oｪ;;;,,,　 ゞヽミﾐヾヽ 癶 卞ｌrfリ刈　
　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ 丶 ､　　　　　 ､.,,＿,,,,,,、　　 ヾﾐミ'＝=≦;;;,,　｀ヽ ﾐ ミ `ﾘ川l l l ﾘｿﾒﾘ　　これ無くしてコダックは存在シマセーン！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ 丶､,.,,_　　　｀ヾ;'　　　　　｀`　｀''ミ;;;'''　　リ-､ｿ ﾍミゞﾐミ ｨ勿　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r',､~`:ｰぅ .イ　　　　　　　　　　　　　 /'⌒}）》洲)）ﾊｱ/llﾘ　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ﾉ/ヽﾞ丶、　　　　　　　　　　　　　　　 /,rｿl/ﾘ/ﾑｲ孑彡,ﾉ　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,（_ ｀丶｀ヽ.＼、 ､,,、　　　　　　　　　 ／ｨ;ｼ/彡シｨ彡ﾃ／
,,,,,,＿＿＿　　　　　　　　　 _ , -‐ ''ﾌ^::;ヽ､、 ｀丶ヾﾆヾミ､　　　　　　　 ／　'",ム三三彡:'ﾞ´
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ ~ ￣￣￣ ~ ´:.:.:.:.:.:.:（　　｀`'':: ;;;;ｭ､ ｀丶`ｰｧﾘ〉　　　　　 /'ー '' "7テ-‐ 'Tヾ
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼　　　　　　　　　ﾆ彡''　　　　_,ノ　　　 ／:,:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.＼
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ ' ―--―一 ''テ""ヲ^~´￣　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.｀ヽ、

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さらにコダックが読み間違えたのは、自らの強みであった。コダックは写真フィルムを作ることを
最大の強みであると勘違いしており、そこから生まれるであろう派生技術などには
恐ろしいほどに鈍感であった。

519：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:26:54 ID:7U.ZU7lM0



　　|／::::/:::::::::::::／＞く 　 八 ::::::::ﾄ､:::::::::::::::::::::＼
　 厶 :::/| :::::::／／　⌒＼__ノ＼::::|　＼|＼:::::::::::::::.
.　 /:::::::::|::::::/|/{　　 　 a　｢　　 ァ|￢＜⌒'::::::::: ∨　　フイルム事業だけが僕らの強みじゃない！　やれることは何でもやって、
　/ ::: ／|::::;　 　 、　　　 丿 　 〃 a　　 ∨|::::::::|::|　　その上で生き残りをかけるんだ！
　::::イ| 〈∨|　　´´　ー‐''ﾞ　　 　 ､　　　　ﾉ∧::::八|
　⌒l人__　　　　ｕ　　　 　 　 l　 ー‐''ﾞ　{　|/
　　 ∨|:::八　　　　　　　　　__　　　　　｀｀
　￣￣∨く｀>　　 　 　 〔　　ノ　 　 　 　 人
　　 　 / 　 ＼　＞　 ..,,__　 　 　 　 　 イ
　＼.∨　　 　 ＼　　　/├―ｧ_=≦　∨＼
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このあたり、超音波診断機やCTなどの画像診断を初めとする医療関連事業や複合機、デジタルカメラなど
すでにいくつかの領域を有していた富士フイルムとは些か異なっている。

520：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:29:11 ID:7U.ZU7lM0


　 　 　　／: : : : : : : : :/: : :／j: :.j{:..: : : : 八: : : : : :.:{: : : : : : : ＼: : : : : : : : : :、 : : : : :
　　 　 .:′: : : :/ : : : /: :,: ′: : :ハ:..: : : :|　 ＼: : : :.ト : : : : : : : : ＼: : : : : : : :.:, : : : : :
　　　/: : : : :.:./: : : :..ﾟ :./　　 |:./　 }: : : : |　　　＼: :.:.,.斗―: : : : : : : ､: : : : : :.:.:., : : : :
.　　/: : : :.:.:.:.,: : : :.:.:|:./-- .,,_|:.! 　 l: : : : |　 ー‐=七ﾄ:.:＼ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.｡: : : : :.:.:.|:.:.:... :
　　: : : :.:.:／1: : :.:/ |:{ 　 ― リ¨　 ﾟ｡: : :｛　　　 ／　 　 ヾ＼ ､　ー＜:.ﾟ｡: : : :.:.:.|:.:.:.:.:.:　　このままじゃ確実に富士フイルムは倒産しちゃうよ！
　 ｌ: : :.／　 /: :.:.:.{　リ´　 　 　 ヽ 　丶:.:.:.　　 /　　　　　　　　丶 　 　 ∨: : :.:.:j＼:.:.:.
　 |:.: 　 　 ∧:.:.:.ハ│　　　　　　 l　　 ＼l　　 ｌ 　　　　　　 　 　 l　　 　 ∨:.:.:.: ｛　`ｰ
　 |/　　　 |:.:ﾟ,:.:,′｝|　　　　　　　|　　　　　　│　　　 　 　 　 　 |　　　　　:.:.:/ ノ
　　　　　　|: ∧{　 い　 　 　 c　 ′　　　　　　、　 c　　　　　　 ′　　 　 |:./ '⌒¨¨
　　　　　　}/　　　_｝ ＼ ＿＿ .ノ　　　　　　　　＼　　　 　 　 ノ　し　　　 j/＿___ イ{
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　　　　　　　　　 ／: .个:.. 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. : : : : : : . ｌ. : . :
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そして両者の運命を分けたのはひとえに、危機感である。富士フイルムは社長である古森自身が
経営危機に陥る可能性を自覚していた。

その上で溜め込んでいた内部保留を惜しみなく研究費や事業買収や投資に使うことで、
事業の棚卸しと強化を行うことに成功している。

521：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:29:43 ID:7U.ZU7lM0


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さらに富士フイルムでは液晶ディスプレイに使用される偏光層保護フィルムにおいて、
世界シェア8割を有している。

化粧品や医療関連、ドキュメント事業などと共に、これらの事業は富士フイルムの中核を成している。

522：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:30:01 ID:7U.ZU7lM0


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;;;,,';;くヽヾt_,,..,、｀ヾ::.　 l!　 l :::.　 ﾞ':;,,｀ヾE=ﾌ ,,,;;;,,　　　{i ll l ﾉﾘjゞヽミヽ　　　
ヾ;;;,,ヾヽヽ＼jlヽ　ヽ　　ﾞl　 l ::::...　 '';;,,,　,, ヾﾐt=-ミ､、ヽ.ll l川ﾄ､ﾐヽV lﾄ、　 　　　
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ヾ;;;,＼;;;;,＼ヽ;;;ヽ〉 /=＝ 〉　lﾄ､:l;;;;ヽ　ヾ;'　　　　｀`^''¨` ﾞi〉ﾘ入リﾉ,ｲ! l ハ　
./ヾ;;;,,＼;;;; ＼vﾍ＼　　 /　 tﾚ｡｡ｰ'" _,ﾉ;　　　　　　　　　ﾘﾂﾊj /仏ｦ l 介!　
′l ,>､;, ＼;;;;,ヾヽ.ヽ＼./　 r'^ﾋﾅﾃ"´ ﾍ;,　　　　　　　　 ｲﾘ/!ﾘ/〃ｨ!,llｵﾄll　
_ノノ　＼;;, ＼;;;;＼ヽ>;;＼　ヽ､__ ,,..、　　　　　　　　　　　jｿ,lﾘ/"二Yﾘﾉﾉ,l′
~´＿,,ノ ＼;;;,＼;;;;;＼ヾ;;;ヽ,r'^ｰ=r''ヾヽ、　　_,、 　　　　　　ﾘﾂ/´ ﾞl lｼノ/ 　
　　　　　　＼;;;,,＼;;, ＼>ﾍ＼　　｀ﾞ`''ﾐ≧=‐''ﾁ）　　　　　　　,ﾉ ^)//ｲ,;/　　
ー―--,r＝t‐ヾ;;;;＼　 ヾヽヽヾ:::::;;;,,,,, 　　　　　　　　　　　ム／,:ｲfﾂ!　　　
　　 　 {　　 》　jﾄ､;;;;＼　＼＼>＼'''"　　　　　　　　　　　､__,: ィ7.ﾚ'/ﾘ
　　　 /`―'^―'' ｀(ヾ;;＼;;;,,ヾ､ヾ;;>､　　　　　　　　　 ／　 ∨ﾘ/ '″　　　　
　 　 /　 ''""　　　 lﾄ､;＼;＼;r'"⌒t-:ヾー―－ｧ--‐イ　　　 l,ﾂ　　　　　　　
　 　 {　 　 　　　　/　＼;ヽrシ^t-ﾍ:;＼＼:.:.:.:. '´ ,;:'′　　　　l,　　　　　　　
　　 ﾊ　 　　　　 /　　　 V^)､;;;;, ＼::＼＼＼　 ,;::'′　　　　　 ト、
　　　　　　　　／　　　,r';;〈､:.＼;;;;;,,`ｰ';;;;;ゝ､ヾ:;;''　　　　　　　　 ＼
''"´　　~｀`''r'´　　　　ヾ､::ゝヽ:_:);;;;r'>.,:-‐-:;ゝ;ヽ.へ、　　　　　　　 ＼
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　　　　 ｀~ 'l　　　　_,,:ィ'ﾌ;;ヾ;;;＼ﾄ;;l;:;i´r''";;〔;:;:;:/＼;;`'> ;'　　　　　　　　　｀丶、
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かつて富士フイルムはコダックという巨人を追い越す為に創られた。

だが、その巨人ですら生き残れない世界の中で、自らが生み出してきた
技術を捨てる事無く応用することで時代を生き残る道を選んだ。

523：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:32:00 ID:7U.ZU7lM0

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富士フイルムだけではなく、多くの企業が新しい技術が生まれていく中で自らの本業が失われていく。
だが、それでも企業は存続していかなくてはならない。

524：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:32:21 ID:7U.ZU7lM0


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失うだけではなく、過去から積み重ねてきた技術を新しい製品に生かし、新しい事業を生み出すこと。
これが富士フイルム、そしてその富士フイルムの第二の創業に携わった古森重隆の答えである。

525：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:32:32 ID:7U.ZU7lM0



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　　 /　,　　　　ハ　､　 　.∧ ｀　､ ヽ ＜/＼＜　　 ∧ ＿＿＿ミ､
　 ./　./　 ﾑ　/　 ﾏ { ､　　∧　　　＞マ￣＼　 ＼　 V　ヽ ﾏf￣
　/　 /　 .,' i　i　　 ヽ､ ＼　 ∧　／　　　9　　.',　　ﾏヽi ､　 .ハ
./／ i ',　,' .ﾊ i　　　　＼　｀ .､ ﾏ´　　　　　　　 i　　 }　ム '/　 ≧ ､
'　　 i　', i / .ﾏ7¨ =- ､　　　　　 {　　　　　　　 /　　　 '　 /ﾑ
　　　i　},.i |　 }　　 　 9ヽ　　　　 ＼ 　 　 　 イ　　　　j￣ |ヽi
　　　.i i ﾊ.{＼.',　　　　　 i　　　　　 ｀　　 ´ヽヽヽ　　 / ,　j､
　　　.ﾏ/ ヽ　ヽ ､　　　　ﾉ　　　　　　 ＿　　　　　　./ ｲ i/　　≧o｡
　　　 ﾏ　　　　i. ｀ ―　´　ヽ　　,　／　　＼　　　.／　.i　　　　 　 ,　-=ミ ､
　　　　　　　 ノ ',　　　　　　　ｬ´　　　　　　}　 ／　　 i　　　　 ／　　　　　 ＼
　　　　　　　　　 .＼　　　　　　ﾏ　　　　　ィ／　　　　i　　　　/　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　｀ = ァ―― ≧マ´　/､　＿＿ノ　　　 /　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　 　 　 　 　 ／／　 ilﾉ　　ミ.ヽ/　　マ=- ､　　　　.'　　　　　 　 　 　 　 　 ,
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　　　　　　　　　　 /　　 イ　i ／ﾏ' ./　　　　 ／　　　　　 ,'
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　　　　　　　　　/　 i .ハ　　l　 ./　　 ／￣￣￣ l　　　 V ＼

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全てが失われかねない経営の中で、生き残りに成功することは決して容易なことではない。

526：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:32:44 ID:7U.ZU7lM0



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　　　　 　＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 ソ

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その偉業はこれまで取り上げてきた経営者達に何ら劣らない。

たとえば、ある男は水売りから財閥を起こし、京浜工業地帯を作り上げた。

527：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:32:56 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　 θ）　　　l
　　　　　 r､　 　　　 i　　　　　　　 「ﾞ '　　　　j
　　　　 （｀　｀ii‐‐､--､　　　　　＿ヽ ,　　 ,,ノ
　　　　　「　　||　　ヽ／l￣￣￣＿,.:-｀''￣　ヽ
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　　　　　　　　　 ﾚ／_,.-‐''´´〓〓　イ　　ヽ　　 l
　　　　　　　　　ｲ‐''´　　　　 万万　l[￣　 ||　　l
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　　　|ヽ_.',　　　ﾞ‐--　　　　　　　　　　　＿,..ｨ　　　　　,'
　　　レ| .i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　──'
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ある男は世界初のターミナルデパートを作り、そしてマイホームローン事業を手がけ、
日本の住宅事情を一変させた。

528：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:33:07 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　ﾚ'　 , -‐ 　ﾊﾊ　ﾄ､　':. ｜-‐　_,.=ｧﾃ从:.　（_､￣｀　　'.
　　　　　|　 // /／　 ｜lｉ ﾄ､,(］ |.ｨ=彡'／ﾙ'‐-ﾊﾄ､ヽヽ　　　　＞―=ｧ‐―--
　　　　　|/// /　　　 | l 川ﾄ､ｿ ﾙ'.:://(　 行㍉ヽ ﾉﾊ_;ﾊ　　_/　　ｒ‐'　　￣
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　　　　　|/　　　　　　| ﾄ､::::V人ゞ ﾘ　 　 　 　 　 _､〉/:イ　　 ＼ﾆ{ ヽ＼
　　　　　'　　 　 　 　 | |',ﾊ::::）ﾉﾉﾌ′ 　 　 ＿_ ､_ ´/人ゝ　　　 ｀ヽヽ＼＼
　　　　 ,　　　　 　 　 | |'i 川'((.:/　　　 　 ´　￢｀ /　　　　　　　　 ＼ ｰ==ﾐヽ
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　　　　 |　　　　　　　,'　//　　　　 //lﾄ.＼＿ ..ｨ＿　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　 |　　　　　　 ,　//l＼ー-=//　|　＼_|_,ﾍ　∧ｰ‐≠ﾆﾌ￣￣￣　ﾌ77ｱ广
　　　　 |　　　 　 　 l　l/ |ヽ ＼ //､__,l｀ヽ　　 ﾉ}/ ハｰ-=ﾆ、　　 　 ／ // /／
　　　　 | 　 　 　 　 l　; /|　 ＼{{　 ｰ-=二ﾆ=-く'_/＿}ｰ-､ 　ヽ＿／ /// /'
　　　　 |　　　　　 　 /,　|　　　ヽ　　　＼＼　　爪　　　　 ＼ {　 |　/// /
　　　　｜　　　　　l //　|i　　　　',　　　　　 ＼{ l,ハ　　　 　 ';i　 |'/// /
.　 　 　 l　　　　　///　 ||　　　　 ',　 l　　　 　 ＼ヽ}　　　　　ﾊ　|'// / 　 　 ／
　　　 　 .　　　　//ｲ i　l||　　　 　 ヽ. l　　　　 　 　 |￣￣￣｢' | l|i/ /　　 ／
　　 　 　 ',　　 ／ 八ﾊ ｌ||　　　　　　 ＼　　　　　　 |　 　 　 |　| l|　　　／
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ある男は若年ながらも自ら世界を見聞し、貿易こそが日本の生きる道であることを確信し
総合商社を作り上げた。

529：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:34:35 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　,　--　-　　＿
　　 _　 ´　　　　　　 　 　 ｀ !
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　　　　',　　　i　　　　　　 　!　　　　　　　｀i.人_ ' 　 　　.　r'´
　　　　 i　　 :i,､　　　 　 　 i　　　　　 　 　 |/´|　　/´ ､>ﾌ
.　　　　 ｣ノ´/./.､　　　　　!　　　　　　　　/　 .＼. ' ､_//
　　　　/ r/´/´/:i.　　　　 !　　　　　　, '/,'ｰ<´￣ >.-<＿
　　　 /／ / ./ ./　　　　 .!　 　 _, -∠,/ﾉ'-i'´'､,.<　 ./　　　￣ニ-.､
　　　 ! '.　,　´,r'￣￣￣ .｀, - ´　 , '´i'./ ./ ／　o'､´　　　 ／　　　.ヽ
.　　　 ヽ 　 　 .!　　　　　/ ./　　　!　i/　 !/.　　 ／　　　 i　　　　　　!
　　　　∧　　 .ﾉi､ 　 　 /　! 　　　 ! .l 　 /　　／-‐‐--　.|　　　　　　｀!　　　　　　　　　　　　　　　　　,-、
　　　　!!｀ｰ--',ﾉ !　　 /　 i　　　　 ! |　/　／　　　　　　　!　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　 　 ／ .ﾉ
　　　　!｀　ｰ ´　 i　./　　 i　　　　 .! |./／　　　　　　　 　 i.　　　　 　 　 ヽ　　　　　　　　　　　　／　./ ._　　,..､,＿
.　　　　!　　 　 　 !'´　　　!　　　　　!/'´　　　　　　　　　　 ヽ、　　　　　　 ヽ,　　　　　　　__　.／　　｀/ ./ｙ'　／__-｀
　　　　 !　　　　　.!　　　　!　　　　　!,-, 　 　 　 　 　 　 　 　 /､　　　　　　´￣　　　￣´／,-'　　 　./　i/　./￣　 二ヽ
.　　　　 !　　　　　!、　　　|　　　 　 !｀'　　　　　　　 　 　 　 /　ヽ　　　　　　　　　　　　 i /　　　 ノ/　/　/-‐ ￣
　　　　　!　　　　　 i　　／|　　　　 !　　　　　　　　　 　 　 /　　　＼　　　　　　　　　 　 ! !　　　　　 _;､,/
.　　　　　!、　　　　　／　.l　　　　 ! _　　　　　　　　 　 　 i　　　　　.＼＿　　　　　　　　ヽ｀､ﾆﾌ￣
　　　　　　', 　　　 /　　　i　　　　 !i' ;　　 　 　 　 　 　 　 i　　　　　　　　　￣　　　―--　_＞'´
　　　　　　　ー　´　　　　!　 　 　 !　　 　 　 　 　 　 　 　 |
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ある男は日本屈指のビジネス街を作り上げ、個人商会を一つの組織へと逆転させ、
日本一の企業グループ形成に尽力した。

530：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:34:48 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　i､　ノ,.'‐'´,.-'ﾆ'-‐ 'ッ
.　　　　　　　　　　　　 　 N .!' / ,　, -;=‐‐‐＜
　　　　　　　　　　　　　　 !_,,. '_‐,ヽ_'´r''_,ﾆﾆ'' ｀ｰ,.-
　　　　　　　　　　　　　　ノ,ﾆ-,._,｀ｰi｀.i´ヽｰ-.､く
　　　　　　　　　　　 _　/.i,='三_-' .ノヽ!ﾉ,!､ヽヽ.､ヽ
　　　　　　　　,.-r‐r',ﾉ'っ'ヾ三='‐'ヽノ'i;ﾄﾞ' '､i,ヽヾ｀
　　　　　　　 ,1,.!..iﾝ' //.　　'ｰi'_,,,..　　ﾉ　　'_ゝN｀
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　　　　　　 ,iｰ'　 ,ｨ'　　　　　　　'"i´ ,ゝ、／'./.,.'.,.'´r',｀'"''''ー.､
　　　　　　io'iー‐ 'i　　　　 　 ,ｨ7/.｀!　,ｲ /././ /./, '　　 　 　 .',
　　　　　　l　l　　 .l　　　　 ,.//〃 .,' ,.'/././././././　　　　　　　i
　　　　　 /｀7 ''''　 ヽ　　ノ////　 !/.,'./././././ ,'　　　　　　 　 !
　　　　　 !　　　　　.i r'´ /i,'.,'/　 ./ /.,' ,' ,' ,' ,'./　　　　　　　　,'
　　　　　 ',　　　　　iﾉ-.､i.i.i.i.i　 ./,'.,' ,' ,' ,' ,' ,!'　　　　　　　　, '
　　　　　　i　　　　 i';　　l !l.l !　,'.,'.,' ,' ,' ,' ,'.,ﾍ,_　　　 　 　 ,.'
　　　　　　|　　　　 ,'　　.!',',','i ,' ,'.,' ,' ,' ,' i r'ｰ'‐｀=､､　　 ./
　　　　　　';　　　　　　_,,.!i｣,!r'ｰ'‐ｰ'‐' ''"｀i;　　　　｀ヾ'､ノ
　　　　　　 ヽ,＿_ , ‐'´./　/　　　　　　　　　　　　　 ,./
　　
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ある男はCSR（企業の社会的責任）を正面から受け止め、公害の改善に尽力し、
同時に公害対策の中から多くの事業を生み出していった。

531：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:35:00 ID:7U.ZU7lM0


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_,.ィ´:::::::::::::::::;rｰ-ミ　|　 　 ,、　　　　,｛:/＝=ﾐ.Y´｀Y::::::::::::::::::::::::::｀＞
-ｭ=ニェ::::::::;ﾊ/ヾ.',　ﾔ　　ｌtｌ　　　ﾞ≦=＝= 　 ｊ ｵ |:::::::::::::;＞‐'"´
　　 ,.イ:::::::::ﾍ. ｛,.ぇ',. ﾍ.____｀_　　 、 -‐''　　　j ｌﾉ,ｲ::::::ｪ≦＿,
　 ムｭ､_:::::::::::ヘ.___ﾔ　'"´　 　 　 〉　　　　　.j¨´::::::::;＞'"´
　　　 　 ｀ﾞ ＜::::::::::::ヽ、　　　 ﾞー-一　 　 ,.ｲ::＞'"´
　　　　　　 　 ﾞＺ_::::::::::|＞.､_　　 ¨¨　　 ／ .|"
　　　　　　　 　 ,.天弓|　ﾍ、ヘ. _＿ ／ ./　ﾔ＞=ﾐ､、
　　　 　 　 　 /了´ .水＝､ヽ､ 　 　 　./ ,. _,Kニミぇﾏ、
　　　　　　　 {.∧／.ｵ ／ '"〉'"Yヽｒ'"^ ¨Fミ､ ＼ ﾞYﾍﾏ,
　 　 　 　 _,.-|.| ∨ .| ﾔ　　.|　　　 ﾄ､　　 | ﾉ　　.|　|　|,L.__
　 　　,.ィ",.-人l 〈　 |.个　./ 　 　 │〉　　 .i　　小. |_ﾉｰ--ミァ===
‐/¨¨{''" _,.,ｭ=弋卞ミ火 ', ヾ.| ､ 　 ﾚ　　　 |.　 / ,に二二二ｱ三三
　　　ﾍ彡"　　 ,ﾏ　　 ヽ.｀¨ﾍﾄ､ﾍ　ﾔ 　 /,.仏孑',.ｨ二二≧ぇ ﾔぇ､
　　　　ﾍ.,.-''"~　ヽ、　　 ＼. 　｀¨ﾞテ〒"~ / / /三三三三ﾔ ﾔミ

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鉄一筋に生きた男は、戦後初の銑鋼一貫製鉄所を建てることで、戦後の日本の重工業を牽引した。

532：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:35:11 ID:7U.ZU7lM0



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彳ﾌ/　　／／　　　./　/　 .!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〉 　/ /　　　　　　､弋ﾉ　　 !
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　　 ,ィヽ､　　　 ﾔ　ﾊ 　 i 　 i　　　 7⌒ｲ i __,|＼　　　　　 /　 /′
　　ヽ　　 ＼ 　 .ﾔ　.ﾊ　.|　　i,イテ-イ:.:./://///７ヽ,､__ イ〃/
,-- ､ ＼　　 ＼　', 　 ﾍ .!　　i--'"i:.:.:.:.7///////　7//////ー-､
､　　 ＞ ＼　　 ＼!　　 ヾ　　i,:.:.:.:.',:.:.:.i///////!_///////)ノ:.:.:.:.ﾍ
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　　　 ＞､　　　＼　　　　　　　　ﾍ:.:.:.ヾi//////i¨!--'／:.:.／:.:.:.:.:.:.ノ:.:.:.:.:.:ﾍ
　　　 　 　 ＼_　　　　　　　　　　､ヽ=--- ､//:::i ,i://:.:.／:.:.:., イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉﾊ
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再建不可能と呼ばれた銀行を再生させ、同時に「銀行を普通のサービス業」とすることを目指した男。

533：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:35:23 ID:7U.ZU7lM0



　　　　　（　　　　〉三彡ミミ刈//ﾉｲ{{//川ﾍミ川|彡ヲ刈三ヾｰ'
　　　　　　>ｬｯv彡三彡ミﾐゞゞ{{{ﾍ{≧ミﾐ刈}〃川彡彡}!}三≧≠⌒
　　　　　 {!　 >ﾐミ三三≧ミミ＞ミﾐミﾐ川川彡彡彡三彡≦三ミミ≧xｲ_,r
　　　　 _　`y∧／彡≧ミﾐ/　　　　　゛ヾﾘ〃´　　　　"ｼ≦ミ≦三≧ミ<
　　　／,≧x＝>ミ三三彡゛　　　　　　　　　　　　　　　　"彡ミ≧彡三ミト-
　　　 ,ム三ﾐX三三≧ｲ 　 _, -=一'{　　 　 　.r＝-　､　　 }三ﾂ彡彳´ ゛ﾐ､
　　　{;'´￣7>ミ三彡彡! ,r'´￣ ヽﾐﾐ ､ 　l 　　川√ ゛>ヽ　ｿ三≦ミﾐ､　　ゞ､_ノ
　　　,!＿,〃,f彡三彡彳 ヽ､ﾆ二 _ヾﾐﾐｯ | r彡"_ 二ﾆ ヶ　 ﾚ⌒)ミミミゝ
　　,f"ヽ＿//〃ｧ7ﾊ 八　　 ＞-　ｨﾊＹ ､l　Y ≦　-イ　　　},ﾉ/三ミｼ彡≠､
{､_ム彡"ﾍ//彡"三ﾊ_ﾉ ゝ、　　　 _ノ　 l l　 ヽ、　　　　 ノf_/三ミﾐﾂ
,x三ミ=-=彡≦三彡f　{　　）ヽ ／ 　 ,　　　、　 ＼　,r´　イﾊミﾐⅦ!{　　　　_ﾉ
　　 ,r≧三彡7/彡ｦ 　 ゝ {　 〉　　　 ゝ--<　　　　ハ　 ,ノ　 Vﾙミﾘゞ＝≦､
　_,ﾙ′　 //彳彡ｲ　　　 ∧.（　　 ノ二 ｰ' 二ヽ 　 {ノ ノ 　 　 ﾄミ三≠≦ミﾐｯ'⌒
　　　　 ,ｲ/彡ｲ川i!　　　　　ヽ入￣`ー.￣.一'￣ / ／　　　　 ドミ三三ミﾐ≦､
　　　 ノ ﾙ1{　ﾘ彡!　　　　　　 ヾ 　 ,r' ￣ `ヽ　 〃 　 　 　 　 |ミ三ミﾐ≦､__ ヾ!
　　 　_,ム斗イ　 八 　 .,ｒ'⌒ヽ／　｛　　　　　} / ＼γY⌒ヽ .厂`ヾー-＜⌒ヽ
　.／///////　/　 ヽ.(´ 　 　　｀) ゝ ー　 一 7　 　（ 　 　ﾉ ）ﾍ　　 〉/////＞
<///////// ノ　　　ﾊゝ,＿__,ノ´ 　 　 　 　 　　　　ゝ、＿ノ 　ゝ ./////////∧

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オイルメジャーと対峙しても、一歩も引くことはなく自ら中東に赴き、山師扱いされても
日の丸油田を獲得してきた男。

534：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:35:35 ID:7U.ZU7lM0

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ヽ、｀`＝=ｘ．.、　　 　　　　　　./ヽ　　/　|　　 |　|　　|ヾ、　　ヾ　..|　ヾ、　　　　　__,,.. ．-‐'''"´_,.．`'''"
`､　｀`'''- ．._ .￣~""'''　‐- ．./　 ヽ /ヽ　ヽ　 .| .|　　|　 `、　　`、|_____〉_,.．-'''"´　　 ..ヽ-'''"´ヽ、..｀ヽ
　.｀ヽ、　／　~""'''‐-．.,　　　｀`'''ー'ヽ、ヽ　ヽ　|.|　　|　　 `、　　 |／　　ヽ　　,ｚ=＝'´　ヽ　　　 ヽ`.／
　　　 ヽ/　　　　　　　　/ｘ＿_　　　　　＼　　　 |.|　　.|　　　ヽ、　 |＿_　　ヽ　　　　　　　.ヽ　　 .／、
　　　／.＼　　　　　　 /　///￣＞ｘ、　　＼　　||　　.|　　.／／ヽ |`、..｀ヽ、ヽ　　　　.ヽ、 ヽ／　　ヽ、
　　/　　　,|＼　　　　/　/〈　　　 .|_/:::::::)、`-ｘ._.||　　 |　彡|'´|　ハ|:| 　　　|ｌ　ヽ　　　 .|:..／ |ヽ　　l、
　./　.／| .|　 .＼　 ./　./　`、　　.|::::::::::::} `ｌヽ、　　　 .|　　'|　|`':::::::ﾉ　　 ./　　.ヽ　　／|　　 |ヽ、　.ヽヽ
../.／::::.|　.|　　　`ヽ、 /　　　ヽ、 .ヽ＝‐' ノ　 ::::>、　　|　　｀``ー‐'___ ,・'´　　　...〉'´　 .||　　..|、｀ヽ、
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　/::::::::::|　 |　　 ../　　/　〉　　　　　　　　......,ｚ＝'| .｀`ヽ、|　　　　　　　　　　.<　//|~｝、 |'　　 |:::::::::ヽ
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百姓屋のエンジンとバカにされても、自らの技術を信じ、世界屈指のディーゼルメーカーにした男。

535：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:35:47 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　　　　　　　　|:::::::;ｲ　　 /　 ハム　　¨´　ヽ.　　　　　}::::::::::!
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　　　　　　　　　　　/　 /:! 　 へ.　 /　 　 Vﾑ　　　　 |　　　　{:::::::::/
　　　　　　　　　 　 {　 {::′ｼ ゞ¨弋ぅx＿,､ Vﾑ ＿_＿|__　　　ﾊ:::::/_
　　　　　　　　　　　ヽ. |{　　　　　　 二彡' 　V////////≧x'　}:/ ハ
　　　　　　　　　　　　'､!′､　　　　　¨　　　　V//////////}ﾆ{;′　j
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　　　　　　　　　　　 /∧ 　/　　　　 / 　 　 ′´　　　､¨´ィヾ′´
　　　　　　 　 　 　 .′:∧　　　　 　 >､　__/ _.}　　　　 Y　　/¨
　　　 　 　 　 　 　 |::::::{ ∧　r' x≪//介=介∧　　､ 　 |　 /ヽ
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　　　　　　　　＿/:::::::::::::::｀∧　　 .::::::'⌒ヽ::..　　 ｀　/／.::::::::::!
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財界のトップとして労働争議の解決に携わり、ミスター日経連と言われた男。

536：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:36:00 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　〉 ヾ　ヽ::::::::::|　　　 .|/ l:::/　!::::::/ V::::::::,イ:::::::/!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::|. !::::::::!　ヽ:::|　V
　　　　　　i!Y^ヽ　V:::::::|　　　　　 V　 .|::::/　 l:::::::/　|::::/. |:::::::::::::::::::::::::lヽ::::::i!∧:::::::|　..):::|
　　　　　　|::i　小　1::::::{　　　　 　 ! 　 |:::l　　|:::::/　 l::/　 |:::::::f!´l!:::::::/　|::::::l　 .i!::::::|　 i::/
　　　　　　i::　 ｆ::::ヽ!::::::i　　　　　　　　. V　　1::/　　l::!　　i:::::::il　|:::::/　　!:::::i　　|:::::/　 v
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　　　　　　 `, -:::ヽｒV　`　_,,,.-ｲ＾`;;、　　　　 　　　　　　　　l:::|　 i:::/　　 ﾚ　　　　　　 ＿,ノ:::::`ー= 、_
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日本初の鋳鉄管の国産化に成功し、日本屈指の産業機械メーカーを作り上げた男。

537：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:36:10 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　, -‐─ ' ´￣｀ー '::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:｀ヽ＿＿
　　　　　　／＜::.::.::.::.::.::.:｀ヽ::.::.::.〃::.::.::.::＿z-‐'∧::.::.::.::｀ヽ
　　　　　/::.::.::.::.:｀'::.:ヽ､::.::.::.:.＼_彡´ -‐ , '.::.::.::/.::.i::.::.::.::.::.::.
　　　　 /::.::.::.|＼.:::ヘ-､_.:｀丶､.::.::.::.::／::.::／::/::.::.:|::.::.::.::.::.::.
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　 　/´::.::.::.::.::|　　 ＼::ー-,::.::.::.::.::.:＿, -‐'´　 　　 |::.::.::.::.::.::.
.　 /:.::.::.::.::./:.∧　　 　｀ー──､　/　　　 　　　　 |::.::∧::.::.:
　/::.::.::.::.::/::.::.::.|　　　　　　　　　| |　　　　　　　　.|::./::.::,'::.::.
/::.::.::.::.::.:/::.::.::.:|　　　　　　　 ┃.| |┃　 　 　 　　|::/.::.:/::.::.:.
::.::.::.::.::.:/::.::.::.:/　　　　　　　　､__| |ノ;　＿＿＿,,/::ﾊ.::.ﾊ::.::.::.
::.::.::.::.::/::.::.::.f´ヽ＿＿＿＿＿｀ー─' ｨ之テ斗 /.:ﾊ.:./::.::.::.::.
／::.::.:/::.:./::.|　ﾍ＼弋忙云了＞､_ノ 辷ニニン /|::.:,'::.::.::.::.::.
::.::.::.::/::.::i.::.::.ヽ ∧ ￣｀ｰイ´　　／ヽ､_　　　 / /.l::.,'::.::.::.::.::.:.
::.::.::./::.::.:l::.::.::.::.＼ヽ　 　　　_／ 　 |　　￣｀十､/::.,'::.::.::.::.::.::.
::.::.:,'::.::.::.|::.::.::.::.::.::｀∨　　／　　　　|,　　 ／/ /::.:/y-､::.::.::.::.
::., '::.::.::.::.|::.::.::.::.::.::.::.:＼_/　　　　 ,===､　 ノ　ﾚ／　　 ',::.::.::.::.
,.'::.::.::.::.::.:|::.::.::.ﾊ::.::.l::.i::.:.＼. 　　　{＿_ノ/⌒''Y´ /　　∨::.::.::.::.
::.::.:/::.::.::ﾘ::.::.::i::.Y::.l.::i::.::.:.| ＼　ノヽニ_/l　　　', l.　　∨＝=
.::./.::.::./.::.ﾊ.::.l.::.:l.::.l.::.:r‐{|r─'",　　　 〈.i　　＿', f二〈三三二
.:.:i.::.::/.::./::ﾍ.从.:ﾊ:.:._/ i ∧　　 ヽ､　,--ヽ_ ー-入＿ﾉニ二二
.::.l.::.:l.::./::.从.::.::.__／ 〉 ./ ﾍ,　r==､ゝ､￣ﾉ ｀ー'"ヽ　　　r-=＝
.:.:l.:从ｲ.::.::.::＞' y-／ ／／/＞-‐´!　￣ﾍ　＼ _＿ﾍ_／
.:.:ﾊ.::.:_, イ´-＜／_／／／ ／ | 　,ﾄ-､_　∧／ ＼_　 ｀ヽ､
_, - ´,　'"Y´￣ヽ／ヽrー'"｀ヽ_」／　 .l　￣ヽ 　 　 ＼　　 ＼
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＜´　 　／　 　 ／ ／　　　　/　　　　|　　　∧ 　　 　 　 ＼
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
限りある炭坑業から、技術を活用した産業へと経営をシフトし、
寒村を大規模工業都市にした男。

538：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:36:23 ID:7U.ZU7lM0


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　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 V::::Vﾊ:::::::{　 　 ´　　ヽ 厶'
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ∨:人_V:::ﾄ､　　　　　/　!
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∨:ﾉヾ、 ト .　　　' /
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _,.　- ミト　_::::::::::::::7＝´
　　　　　　　　　　　　　　　,ｘ＜: : : :　　 ＼　≧=-┴ﾍ
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　　　　　　　　 　 　 　 ,.ｲ: : : :-: ､:.＼　　　　‘ ,　 ./ヽﾟ,:ヽ、
　　　 　 　 　 　 　 _／: : : : : : ＼:＼-＼　　 　 }､/　　∧::}
.　　　　　　　 　 r‐ '⌒ヽ---- ミ::≧=- 　 　 ／ ‘ ,　　 ∧ヽ
　　　　　　/￣｀　､ｰ-､　‘ ,〕iト､ ＼　　r:. ／/　　 ‘ ,　　∧:‘，
.　　　　　/　 ,ﾒ､　 ＼ハ 　‘ ,ヽ:ﾍ　ヽ　!:/: : :＼　 　 ‘ ,　 ∧:‘，
　　　　, =一'-- ヽ 　 ＼!　　‘,　　',　.V/ : : : : : ＼　　 ‘ , ,ハ::‘，
.　　　/　　 __　　 ゝ-　_,　ー　‘ ,　 ＼.〉.: :. : : : : : :＼　　‘ ,　i::::‘,
　　 /___ノ／￣｀　　 　 　 , : '⌒ヾ、　｛: : : : : : : : : : : ＼　 ‘,｜:::::i
　　　　／　　 /　　　,.ィ〃　　　　　〕iト　, : : : : : : :　: : :∧　‘,j:::::: |
.　　／　 ,.　- ､_ 　 ´　　｀　、　　 　 　 　 ＼: : : : : :　: : :∧　‘!::::::!
.　く_,.　'´　　　｀ ＜￣￣≧===--z=个ｘ　　 ＼: : : : .　　:.∧　|:::::l
　　　　　　　　　　　｀ ＜二=- Ｖ: : : : : : :ゝ-- '　: : : : .　　 ∧ﾘ:::/
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外資や財閥系に頼らず、研究投資と技術開発で苦境を乗り切り、化学産業の発展に
尽力した男。

539：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:36:38 ID:7U.ZU7lM0


　　　　　　　　　　　　　　　　／.: :: :: :: :: :: :: :: ｨ:: :: ｨ:: 〃:: ≧x
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　　　　　　　　 　 　 　 xく:: :: :: :: ::／.: :::／＼ﾟ:／　 W∨:: :: :: :: :: >､＼
　　　　　　　　　　-=彡':: ::7:: :: ::/:: :::／ x=ﾟ ≧x 　 ﾔ　V:: ::|＼:: :: :::>､
　　　　　　　　 　 　 ／.: ::,′:: :/:::／　/ 〃　　　＼　!　 V:: !　 ヽ:V∧::X
　　 　 　 　 　 　 ／ィ:: :: {:: :: ::{::/　　 i　　 　 　 ・　i`ｰ　 ∨!＿ _,ﾟ,iV∧ヾX
　　　 　 　 　 　 ´/:: :: :: ::!:: :: ::/　　　乂　 　 　 　 ,ﾟ 　 　 /． 　 ヽﾔV::ﾟ,　＼
　　　　　　　　　 ノ::_xく笊V:.:./　 　 　 〃ｰ- .　. ノ　　 　 i 　 　 　 ｉ 》V::i
　　 　 　 　 -=彡'´┃ｉ　/r∨!　　　　　　　　 　 　 　 　 _ 乂　　　 ,ﾟ/iX:.:!
　　　　　　　　　　 八 ﾟｘ=￢V　　　　　　　　 ＿＿　　　 `　 ｀ー彡《 !ハ|
　　　　　　　　　　　　＼＿,ｨ　　　　　　　／二二｀=≧ｘ_　　　ヾヽ }ヾ
　　　　　　　　＿＿＿＿_/ ヽ　　　　　　【二二二二｀Y/　　　　　/
　　　　 x≦: ､ _: : : : : : : |: :＼　　　　　　 ｀ｰ‐＜三三/　　　　　/
　　 xく: : : : : : ハ: : :.: : : |:.: :.: ＼＞　　　　　　　　　　　 　 　 ／
_xく: : : : : : : : : :ハ: :.: : : :|:.: :.: :.: :＼　　 ＞┐＿＿＿＿　 ＜
: : : : : : : : : : : : : : i: : : : ハ: : : : : : : ＼ノ: :＼ｰ┐r'´ ト｀ｰx
: : : : : : : : : : : : : : |:.: :.: : :└─x＿_ x=∨＼r━ﾟ┷tﾔ: : ヽ: ＼
: : : : : : : : : : : : : : |: : : : : :＜￣:.: :.: : : : ∨∧: : : : :7ﾟ,:.: :.: :＼: ＼
: : : : : : : : : : : : : :∧: : /: : : : ＼: : : : : : : :ヽ　ヽ: : 7ハ＼＞'´: : : :ヽ、
: : : : : : : : : : : : : : :┃/:.: : : : : : :＼: : : : : : : :ﾏﾊ/∧　|: : ＼: : : : : :|ハ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そして、消失の危機から第二の創業を成し遂げた男。

彼らの系譜が途絶えぬ限り、日本経済は決して破綻する事はないと信じる。

【AAで学ぶ日本経営者列伝】

【終わり】

540：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/10(金) 22:37:19 ID:7U.ZU7lM0
今回でついに完結です。今までありがとうございました。

541：安価のやる夫だお：2017/02/10(金) 22:46:01 ID:AvonmNmM0
乙！

542：安価のやる夫だお：2017/02/10(金) 22:54:32 ID:g4PVL4rA0
完走乙！


こういう話はもう少し見てみたい気もするが
作者の勉強量やモチベーションとの兼ね合いもあるか。

気が向いたら番外編でも書いてくれると個人的にはうれしい。

543：安価のやる夫だお：2017/02/10(金) 23:02:48 ID:Z49kzjtY0
面白かったし勉強になった

544：ヤン・ヒューリック ◆1xuVLqH3kQ：2017/02/11(土) 00:26:10 ID:AAvN3f4U0

たびたび中断する超不定期連載スレを拝聴して頂きありがとうございます。

死んだ人を評価するのは簡単ですが、生きている人、今いる人を評価するのは
ものすごい難しいことではないのか、そう思ったからこそ最終回は、
存命中の人物で偉大な功績を掲げた人物をやろうと心に決めてました。

まだまだやりたい人も多かったのですが、ハーメルンで連載している奴や
カクヨムでリメイクを考えている作品もあるので、経営者列伝は
今回で終了致します。

皆様、本当にありがとうございました。

545：安価のやる夫だお：2017/02/11(土) 00:43:50 ID:ZJsDrzbs0
乙ですねん
経済情報関係の仕事やってるけど、仕事で見かけるような今の巨人たちも、かつてはアリであったり、瀕死の老人だったのだなあ

546：安価のやる夫だお：2017/02/11(土) 01:48:57 ID:DEMBrIjc0
乙でした。完結おめでとうございます。

547：安価のやる夫だお：2017/02/11(土) 07:15:49 ID:tMOkrur60
乙でした。
簡潔おめでとうございます。

548：安価のやる夫だお：2017/02/11(土) 17:18:37 ID:99F7zb860
乙でした。
自分は技術屋なんで経営者のことを知る機会なんてあまりなかったんですが、
経営者のことを面白く読ませてもらえて楽しかったです。
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