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育む力と私の夢と

1ヨーク:2020/07/11(土) 09:20:08
「ど、どうしよう……」
高校生、冬野優希は困惑していた。
自宅のトイレにこもる彼女が手にしているのは妊娠検査薬。
はっきりと陽性の結果が出てしまっているそれを見て、どうするべきかとなっていたのだ。
優希には、昔からずっと考えていたことがあったのだ。
(大家族のお母さんになりたいとは思うけど……まさか、今来るなんて)
彼女の夢。
それこそ、幼い頃からの大まかでぼんやりとした夢だ。
それは「大家族の母親になって幸せに暮らす」というもの。
いつか妊娠はしただろうが、流石に今は予想外。
とつぜん、急に来てしまった。
しばらく黙り込み、考えて。
決意して、口に出した。

「産む。まだなにもできないお腹の赤ちゃんの選択権を奪うなんて、できないよ……」
少子化対策のため、学生が妊娠した場合でも充分に支援を受けられるようになった昨今。
心配するようなことはないだろう。
それを信じて、優希は決めたのだった。

この決意が、優希の長い長い道のりの第一歩となるのであった。
自分の体に秘められた、新しい命を育む力の事など、まだ知る由もなく……。

─────────────────────
主人公プロフィール

冬野優希 女 高校生(スタート時)

身長 175cm
体重 標準的
特筆事項
妊娠時、胎児が過剰に成長し超巨大児になるほか、必ず多胎妊娠になる。
また、多胎妊娠に対する体の適応性や耐久性もずば抜けている。 


主人公、冬野優希が自らの体質にも負けず、妊娠出産を繰り返す話になります。
優希は超巨大児、しかも多胎児しか妊娠できないという体質で、しかも母体要因での流産早産は起こさない「妊娠に特化した」とも言えるような体質の持ち主です。
しかしその代償として、大きく育った胎児を包む羊膜や支える子宮口は極めて頑丈で、出産時には弊害となります。
また、胎児が大きくなりすぎるため子宮も伸び方が強く、帝王切開はできなくなります。

グランドルール
・優希や胎児の死亡はNG
・出産にかかる日数は要相談

20名無しさん:2020/09/23(水) 20:54:46
「わあ…広い」

結婚後の生活の為に物件を探す、という事で優希と春輝はアパートを探していた。
優希も春輝も両親に挨拶して、概ね了解を得て(優希の父は不機嫌そうだったが)。
三つ子を妊娠したということで全面的に優希の親も春輝の親もサポートすると宣言してくれたので、両家がサポートしやすい場所のアパートを探している最中。
優希はとあるアパートが気に入っていた。

「子供部屋にちょうどいい部屋もあるし、俺たちの部屋もある。成長するまではここもいいかもな」

春輝もそこが気に入ったらしい。
一階にあるそこは二階より移動が楽と判断し、一旦2人はキープして内覧を終えた。

「来年の今頃はもう5人家族かぁ」
その夜優希はそう呟きながらお腹を撫でていた。
楽しみな反面、無事に育てられるかは少し不安な優希は、不安を隠すようにお腹をゆっくり撫でるのだった。

21ヨーク:2020/09/23(水) 21:33:24
そして、それからというものの。
優希のお腹はどんどん大きくなっていった。
三つ子の妊娠となれば、普通でも7ヶ月目には臨月と大差ないと言われるほどにはなるそうだが、優希の場合はというと。
普通の妊娠よりも一人一人がさらに大きいというのだから、それはもう大変だった。
早めに私服用のマタニティドレスを買ってはいたが、それでもどこまで使えるやら。
当然、制服にも無理が出てくるので、学校にも連絡して私服登校の許可を貰わないといけない。
「大変なことになってきた、かな……」
やることの山積ぶりを前に、優希は苦笑いしつつも、どこかうれしそうではあったのだった。

22名無しさん:2020/09/24(木) 09:47:56
「うーん…でも、まさかね…いや、でもこの増加は…」

7ヶ月目に入ってからの健診。女医さんがそう呟きながらエコー写真やカルテを見て呟いた。

「えっと、何か問題が…」

女医さんの言葉を聞いて不安そうな優希に、女医さんは厳しい顔を少し緩める。
そして、「これはまだ確定してるわけじゃないけれど」と前置きしてから話を続けた。

「あなたの体重の増加スピードを見ると、巨大児の3つ子と考えても早すぎるように思えるの。
 羊水過多って場合と…ひょっとしたら4つ子の可能性もあるかもしれないわ。
 エコー写真を見ても今は3人しか見えないし、あくまでも可能性の話なんだけれどね」

その話を聞いて、優希は不安の色を強くする。

「大丈夫。私も病院スタッフも、全力でサポートするから心配しないで」

女医さんはそう話をしながら笑みを浮かべ、優希もぎこちないながらも笑みを浮かべるのだった。

23ヨーク:2020/09/24(木) 10:40:49
「どっちかわからないけど……つまり、お腹はまだまだ大きくなるってことだよね……」
帰り道、検診で言われたことを思い返しながら呟く優希。
今でももう、ふつうの臨月以上には大きなお腹を見ながら、やはり気にしてしまう。
今のところ原因はわからないと言うが、どうしても不安にはなるもの。
しかし。
「……赤ちゃんの健康は大丈夫って先生も言ってたし……うん、うん」
少し立ち止まって考えて、しばらくしてから歩き出し。
「みんな、ママのお腹で目一杯大きくなって産まれてきてね。あなた達が無事に生まれるのが一番だから」
優しく、お腹に語りかけたのだった。

24名無しさん:2020/09/24(木) 13:26:47
『目一杯大きくなって産まれてきてね』なんて言葉に刺激されたのか、
 8ヶ月を迎える頃には優希のお腹はかなりの大きさになっていた。
 流石に毎日の通学も厳しくなり、家から授業を受ける…いわゆる遠隔授業に切り替えていた。
 春輝と生活するために探していたときにキープした部屋を少し前倒しして契約して、
 優希はそこから授業を受けているという事になる。

「ただいま。ご飯作るのも大変かなって、お惣菜かってきたよ」

 遠隔授業を終えて休んでいた優希は、春輝の声で目を覚まし、自分がいつのまにか寝ていた事と今日は金曜日という事に気づいた。
 地元での就職に関する手続きと、出産に向けたサポート。
 そして新婚生活のシュミレートとして春輝は毎週末に来る様になっていた。

「そういえばもうしばらくしたら優希も卒業式だけど、式には出るのか?」
「卒業式には出たいかなあ。出産の時期と重なるかもしれないから、出れるかはわからないけど」
 夕食を食べながら2人はそんな会話をする。

 優希の卒業、春輝との新生活、そして出産。
 期待と不安を持ちながら、優希は幸せな時間を過ごしていた。

25ヨーク:2020/09/24(木) 13:59:13
「先生、どうですか……?」
「そうねぇ、今の調子なら問題ない、って言い切れるけど……辛くはない?」
そして翌日。
遠隔授業でも学生は学生と言うことか、土曜日に検診を入れるようにしていた優希。
早速、卒業式への出席が出来るかどうかを女医さんに質問した。
返事はこの通りで、健康でさえあればということらしい。
「まあ、さすがに重くはなってきてますけど……こう、お腹が張ったりとか、血が出たとかはないですね……」
「あなた、本当に凄いわね……そんなに健康きわまりない三つ子の妊婦さん、初めてよ」
「えへへ、ありがとうございます……体の丈夫さは取り柄なんで」
その後もいろいろと答えつつ、いつものような診断に移る。
一人一人の推定体重に大きさ、多胎妊娠なので子宮頸管の様子まで診られて。
その上でなお、優希は順調この上ないという太鼓判を押されて帰路に就くのだった。
110cmを超えた、特大のお腹を抱えて。

26名無しさん:2020/09/24(木) 23:57:41
帰ってきて夕食を済ませた後、入浴に移った優希。
「もう少しで卒業か…そうしたらいよいよハルくんと…うふふ」
と嬉しそうに呟きながら、ボディスポンジで身体をていねいに洗う。
ところがお腹を洗う途中、優希は一度手を止めた。
「んっ……随分と出てきてるわね……」
それは、日に日に大きくなるお腹の中心にあるおへそ。
特大なだけに腹圧ももの凄くかかっており、洗う際は気をつけないといけないだろう。
「んんっ、くっ……ふぅっ、ここだけは洗うとき大変ね。これがもっと大きなお腹になったらどうなるんだか」
幸いお腹の皮膚の方は意外にも伸びが良すぎるのか、妊娠線は1つも出来ていない。
出べそになっている点を除けばとてもキレイなお腹だと言える。

入浴後、優希は特大サイズのマタニティパンツを履く。が、ここもちょっと気になってきた点が。
「ふぅ…そろそろピチピチになってきたかも…」
当然、このお腹だ。大きくなってきたせいか、パンツが段々と上がらなくなってきた。
念のためお腹をスッポリと覆えるやつを何着か買ってはいたが、今ではおへそがしまえるまでしかいかなくなっている。
いつお腹が入らなくなってもおかしくない状態のようだ。

27名無しさん:2020/09/25(金) 00:25:13
なんとか体を休める為にベッドの近くにあるカレンダーを眺める。
少し先の日付に臨月突入、その数日後に卒業式。
そして予定日卒業式の少しあと。
予定日を迎えた時点で出産していなければ陣痛促進剤を使ってお迎えする予定で、
卒業式の2日ぐらいから入院の予定を立てていた。

「大分大きくなったね。まだ3人しか見えないらしいし、それにしては大きすぎるらしいし。
 ひょっとしたら4人目もいるのかな?だったらかなりかくれんぼが上手ね」

そう呟きながらベッドに横たわりながらお腹を撫でた。

「卒業式には出たいから、それまでお腹で我慢してくれるといいなぁ。
あ、これ卒業式で出産しそうになるフラグだ。今のはなし。出たいときに出てきてね」

半分冗談のつもりだったフラグのせいか。はたまた出たいときに出てね、の言葉に赤ちゃんが感化されたのか。

卒業式前7日ほど前から出産の兆候が現れ始めるとは、いまの優希には知る由もなかった。

28ヨーク:2020/09/25(金) 06:55:04
「まさか、ここまで大きくなるなんて……」
妊娠9ヶ月目に入っても、大きな三つ子を抱えたお腹の成長は留まるところを知らなかった。
まだ生まれるまで間はあるというのに、120cmを超えてしまったのだ。
お臍はもう立派な出臍となり、まるで押しボタンのよう。
とにかく、ここまでなると不便しかない。
少しからだを動かすだけで当たってしまうし、何より重い。
「ふぅ……」
しかし、今の優希にはその不便さも、重さも、どこか愛おしく感じられた。
母性と呼ぶべきか、ついつい笑みがこぼれている。
(大丈夫……私が、ちゃんとあなた達を産んであげるからね……)

そんな優希の元に友人たちからの連絡があり、年相応の反応に戻るのはすぐのことであった。

29名無しさん:2020/09/25(金) 14:09:30
「もうすぐ卒業、かぁ」
会話を終えてベッドに横たわりながら優希はふとカレンダーを見た。

1日1日xが増え、ついてない場所の少し先の予定欄に「ハルくんとの新生活の開始!」「臨月突入…!」「卒業式!!!」「出産予定日!(一番遅れた場合)」の並び。

さっきの連絡は『卒業式に出れるの?』って質問がメインで、『予定は未定だけど、気持ちとしては出たい』と優希は答えた。
もちろん優希も陣痛が起きていれば病院に行くつもりではいるが、愛着がある母校やサポートしてくれた先生にはきちんとお別れがしたい。
遠隔授業を受けているうちにそんな気持ちが増えたからだ。

「前にも話したけど、卒業式が終わるまではできるだけお腹にいて欲しいなあ」

妊娠前からはかなり変化したお腹を撫でながら優希はそう呟いた。

30ヨーク:2020/09/25(金) 15:14:32
思えば、激動の一言だった。
妊娠の発覚、おまけに三つ子。
自分の体質についてと、ハル君からのプロポーズ。
そして、今。
(ちょっと早かったけど、まさか高校卒業でお母さんになるなんてなぁ……)
優希は、時間の流れる速度に感慨深さを覚えた。
きっと、これからはもっと忙しくなるだろうけど、うれしいこともたくさんあるはず。
なんだか急にそう思えて、また優希はひとりで微笑んだ。

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三つ子を産んで以降について、次の妊娠はどうしてみたいとかありますでしょうか?

31名無しさん:2020/09/25(金) 15:48:41
「とうとう来ちゃったなあ」
カレンダーを見ながら優希はそう呟く。
積み重ねたxの数がとうとう「臨月突入…!」の前の日になっていた。
多胎妊娠の場合早産になりやすいというのが定説だから、本当に自分の身体が規格外に感じる。
本当に3人だけなのかというほど大きく前に出たお腹は、動くにはかなりつらいようだ。

「俺が全力でサポートするから、心配するなって。な?」

少し前から新生活を始めた春輝にお腹を撫でられながら、優希は嬉しそうな笑みを浮かべた。
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三つ子を産んでからはまだ考えていません…が、三つ子の出産に関しては卒業式の時に陣痛が来ている、あるいは三つ子出産をしてから後産だと思っていたら、
様子がおかしくもう一度確認したら4人目のエコーが見えた…なんて少しファンタジーかもしれないですがどうかなと

32ヨーク:2020/09/25(金) 16:03:16
ちょうど、前の検診でとんでもないことも言われた。
3kgどころか4kgも超え、一人あたり5kgはあるとさえ。
そんなのがお腹に三人はいってるのだから、規格外と言うほかない。
(こんなお腹になったのも何かの縁、ってやつなのかも……)
不思議と、その状態を心地よく思っている自分に、これまた不思議と納得している優希であった……。

そして臨月になったことを伝えたためか、皐月とクリスが遊びに来てくれることになったのは、それからすぐであった。

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なるほど、もう一人いた、というのは面白いかもですね……。
個人的には次からが本番というか、より大きな胎児を妊娠して本格的に苦しむような流れにしていきたいかな、とも思っています。

33名無しさん:2020/09/25(金) 19:07:23
「いやー、遠隔授業で見てでもデカいと思ったけど…間近で見たら尚更迫力があるなあ」

クリスがそう呟きながらまじまじ眺める。

『臨月おめでとう&もうすぐ赤ちゃんたちの誕生日feat.卒業式』…と、もはや英語や日本語として合っているかは分からないが、
とにかくいろいろ記念日が重なりそうという事で皐月とクリスが時間を合わせて優希と春輝が住むアパートに遊びに来ていた。

「旦那さんもイケメンだねぇ。果報者だね!このこの〜」
「でへへ…そうかなぁ?」

皐月の言葉に満更でもない笑みを浮かべる優希。

「もうすぐ卒業式だけど、優希はどうするの?」
「まだ出たいって気持ちはあるかな。お腹の居心地がいいのか、まだ出産の兆候がないし。
この前の臨月に入って最初の検診で病院の先生には伝えたんだけど、お腹が張る頻度は明らかに増えてる…かな?
でも、なんか『痛いー』ってわけでもないし」
「そっかー。久しぶりの学校、楽しみでしょ?」
「うん、すっごく楽しみだなぁ」

そんな会話をしながら、時間はいつのまにか過ごしていく。
少しずつ、出産に向けて身体が準備を始めているとも知らず…

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次回以降の出産だと、今回担当した女医さんと優希が同時期に妊娠して出産日が同じになってしまう…とか、
三つ子だと思っていたけれど実は四つ子だった子供が成長して優希と同時期に妊娠して(イメージとしては気付かれなかった4人目)、
子供の出産を優希がサポートしている時に自分も出産してしまう…あたりでしょうか(他の作品と重なりがちですけど)

34ヨーク:2020/09/25(金) 19:25:44
「こんな感じで元気だし……まあ、行けたら行きたいなって……あっ」
そんな他愛もない会話をしている最中、優希は不意に声をあげた。
「優希?」
「どうしたの?」
状況が状況なので不安そうな顔になる友人二人をよそに、当の優希は落ち着いて返した。
「大丈夫大丈夫、結構張ってきてるだけ。触ってみる?」
「触ってみる?って……それこそ大丈夫なの?」
「うん、生まれる前の下準備みたいなものだから張って当然なんだって」
当事者故か、学んだことも忘れていないようであった。

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難産で多胎妊娠を確実にしてしまう体質、という優希の設定を踏まえて、女医さんや友人に普通の妊娠出産をさせるというのは対比になって良さそうですよね。
母娘同時妊娠は自分もやりたいところなので、最後にとっておきたいところです。

35名無しさん:2020/09/25(金) 20:43:31
「うっわー…すっごくカチカチ。本当に痛くないの?」
「うん、痛いって感じじゃないけど。辛いっちゃ辛い…のかな?」
「ふーん…ね、私たちも妊娠して臨月になったらこんな感じのかなあ」
「うーん、どうなのかなぁ?3人もいるし、赤ちゃんも大きいらしいし、ここまで大きくならないかも」
「ってゆーか、まず赤ちゃんができるかだよねー。今のところ優希みたいに相手もいないしさー。こう見えて処女だしね」
「そう言ってるうちにさ、意外とデキちゃったりするんだよ。この子たちがそうだったしね。」
「あーそれすごくリアル!『経験者は語る』…ってやつ?」

…とまあ、ちょっとした下ネタっぽい話が弾んでいるうちに少しずつ時間はすぎていて。
それからしばらく会話をしているうちに窓から見える景色が暗くなっていたことに気づいた3人は、
『出来ることなら卒業式で会えたらいいね』なんて感じに無理やり話を終わらせて、クリスと皐月は自分の家へと戻るのだった。


────────────────────────

少し会話をフラグっぽい感じにしてみました。
流れとしては女医さんとの対比→クリスと皐月との対比→末娘との出産…という流れでしょうか?

36ヨーク:2020/09/25(金) 21:15:36
「疲れた……けど、やっぱり生で会えると違うな……」
久しぶりの友人との語らいを終え、優希はとても満足した気持ちになった。
「それに、この調子なら卒業式も大丈夫そうだし……あとちょっとだけ、生まれるの待ってね」
そんな風にお腹に語りかけ、そのうち眠くなってきてしまった優希はそのまま寝てしまうのだった……。

それからしばらく、出産が近づいていることを証明するかのようにお腹の張る回数や時間は日に日に増えていった。
だんだんそれも慣れっこになり、優希もその日を心待ちにして。
来週には卒業式、というある日になって、とうとうその日は来たのだった……。

────────────────

ですね、とりあえずはその流れで行きましょう。

37名無しさん:2020/09/25(金) 22:08:31
「あれ…なんだろこれ。シートになんか付いてる」
あれからさらに「卒業式!!!」の日まで7日、というところで、優希はおりものシートに少し濃い目のシミがあることに気づいた。
「いわゆるこれが『おしるし』…ってやつかな?麻里亜さんに聞いてみよう」
麻里亜さん…優希の担当の女医さんで、下の名前を最近教えてもらった彼女に連絡をする。
「…はい、おしるしっぽいのを見つけて。…そうですね、痛みとかはなくて。…そうですか、はい。えっと、卒業式は…はい、はい。わかりました。
 変わったことが起きたらまた連絡します。…それもいいですね。よろしくお願いします。」

一通り会話を終え、優希はスマホの通話を終えた。
麻里亜さんの話を纏めると、
『おしるしだと思うけれど、優希さんの子宮は特別だから出産までは時間がかかる』
『同じように破水も陣痛も直ぐには始まらない』
『卒業式の日までは産まれないだろうが、卒業式の途中にいきみたくなったり破水する可能性もあるから医者としては勧められない。けれども優希さんの意思は尊重する』
『違和感があればすぐに連絡してね』

…という感じだった。

「そっかー…やっぱりそろそろかぁ。卒業式、行けるかなあ。行きたいけど…行けるかなぁ…」

悩んだ優希はとりあえず春輝に相談しようと決めるのだった。

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というわけで、女医さんと呼んでいた彼女に下の名前をつけてみました。

38ヨーク:2020/09/25(金) 22:47:21
「んー……どうしよう、ほんと、どうしようかな……どうしよう……」
口から出たのは全く中身のない発言であるが、産婦人科医である麻里亜さんから「おしるしが来てしまった以上出席を勧められない」と言われた優希は本格的に悩んでいた。
学生として経験できることは一度きりだが、今はそのワガママを言っていられる身体でないこともわかっている。
どちらも譲れないほどに大事だからこそ、決めかねるほど悩んでしまっているのだ。
「むむむむむ……」
とはいえ、一人で悩んで解決するほどなら、優希は最初から悩まないタイプだ。
なら、やることは一つしか無い。
おしるしが来た、という報告ついでに、ハル君に電話をかけることにしたのだった。

39名無しさん:2020/09/26(土) 00:17:30
「うん、おしるしがあってね。そう、本当に最初の最初の。で、卒業式までは出産は起きないだろうけど、辛くなるから参加は勧められない。けど、私の意思は尊重するって。
本当にどうしようか迷ってて…うん、え、そうなの?…じゃあ、お願い出来れば…あと、そのあたりで特例とか出来ないかって学校に…そうそう、そういう感じで。
…お願いね、じゃあ」

ハル君、春輝に電話した優希は改めて今の会話を整理する。
『ハル君は、卒業式の日はなんとしてでも休んでくれる。会社の制度を使う。』
『全力でサポートをすることを約束する。出来るだけの時間つきそう。』
『陣痛が始まっていたとしても学校に出産が近いことだけを知らせて、席を少し離してハル君がすぐ横に座り付き添えるように学校に掛け合う』

とまあ、大体そんな内容に落ち着いた。

優希は少しソワソワしながら、陣痛が式の時に起きて欲しくないと願うのだった。

40ヨーク:2020/09/26(土) 10:39:16
「どっちにしてももう少し……頑張らなきゃ、私」
電話を終え、改めて出産が近いことを確認する優希。
いつもの何倍もまじめな表情からは、その緊張具合もはっきりわかるほどだろう。
いくらハル君が隣にいてくれるといっても、産むのは自分だ。
優希は、自分に何度もそう言い聞かせていた。

それから三日が過ぎたが、お腹はいつものように張るだけで陣痛につながるようなことはなかった。
とはいえ、いつ何時急にお産が始まるかなんて誰にもわからない。
優希は、その中でいつも通りを心がけているのだった。

41名無しさん:2020/09/26(土) 15:02:27
「ずいぶんとのんびり屋さんだね、貴方たち。そんなにお腹の居心地がいいのかなあ?」
優希がそう呟きながらお腹を撫でる。
おしるしが来て、お腹の張りの回数も増えたけど、明らかに痛い…という感じはしない。
破水もしないし詳しく確認していないけど子宮口の開きも鈍いのかな、という優希は考えていた。

「本当にこの身体には驚かされるなぁ…っと、着信音だ。もしもし」

お腹を撫でながらぼうっと過ごしているとスマホの着信がきていた。

「もしもしクリス?…え、皐月もいるの?久しぶり。…卒業式?そうだなあ、出たいんだけど…っあ、ちょっと待って」

優希はスマホを耳から外してお腹を撫で深呼吸をする。
その手つきはいつもより少し念入りに見えた。

「…おまたせ。…あ、今の大丈夫かって?ちょっとなんていうか…ふくらはぎをつった時みたいな痛みがちょっとだけお腹にあってさ。
…うん、おしるし?ってのはあった。痛いって感じたのは初めてだなぁ
…あ、卒業式のことね?大丈夫かは分からないけど、行きたいとは思うし様子見しようかなって
うん、うん、じゃ、卒業式か出産終わったらまた会おうね!ばいばーい」

そう会話して電話を切る。
内容的には、『卒業式は出れそう?』『間が空いたけどなんかあった?』『それって陣痛きてるの?』『卒業式本当に出れそう?無理はしないでよ?』…みたいな質問で、
それに優希は丁寧に答えていたのだ。

電話を切って、優希は呟く。

「さっきの痛み、いよいよ本格的に始まるのかなあ」

不安そうなその言葉がどうやら当たりのようで、
これまでスクスクと赤ちゃんを育てていた子宮が
「もうこれ以上育てるのは大変」と悲鳴を上げるが如く
収縮を強めたサインのようだった。

──優希の初産は、いよいよ終わりを迎えようとしていた──

42ヨーク:2020/09/26(土) 16:10:58
そこから、特に変わったことはなく時間が過ぎていく。
さっきの張りもそれっきり……と思ったら。
「あ、また来た……」
さっきよりはちょっとだけ痛く、長く。
「ふぅーっ……これ、ホントかもなあ……」
壁により掛かるようにしてやり過ごしながら、ちょっとため息。
流石に様子が変わってきたからか、優希も表情がどんどん真剣になっていくのだった。

43名無しさん:2020/09/26(土) 17:40:35
「1時間に6回くらい痛いのと楽なのが繰り返したら陣痛…なんだっけ。
なら、まだ先っぽいし、これからもっと痛くなりそう」

優希はそう呟きながらお腹を撫でた。

「痛いって感じはそんなに多くないけど…なんかこう、ずっとお腹が張ってる感じがするなぁ。違和感があるというか」

独り言を呟いて落ち着こうとするのか、気を紛らわそうとするのか。
優希はお腹を撫でながら呟きを止めない。

「大丈夫。あなたたちは無事に産んであげるから。本当に出来ればでいいから、あなたたちは卒業式まではお腹にいて欲しいな」

一通り呟いたあとゆっくりとカレンダーの位置に行き×をつける。
そしてゆっくり寝室へと向かい、休める時に休もうと春輝が仕事から帰ってくる前に身体を横たえて目を閉じるのだった。

44ヨーク:2020/09/26(土) 18:30:08
横になって目を閉じた、までは良かったが、やっぱり何もかも初めてのことだ。
当然ともいいにくいけど、緊張して寝られるはずはなかった。
「あ……おかえり、ハル君」
「ただいま。どうかな、お腹の方は」
「まだすごく痛い、って感じじゃないけど張ってくる回数はだいぶ増えてきてるかな……緊張してきた」
全く嘘じゃないから、素直に緊張を吐露する優希。
ハルくんはやっぱり、わからないなりにも優しく使用してしてくれる。
今の優希にとっては、それが嬉しかったのだった……。

45名無しさん:2020/09/26(土) 20:41:07
「ハル君…行っちゃったなぁ」

玄関までなんとか歩いて、会社に行くのを見送ったあとドアの鍵を閉めて優希は不安そうに独り言を話す。

夜中に痛みが来るたびに背中を撫でたり、不安を聞いたりしてくれていた春輝は、会社に行ってしまった。

『明日から俺も産休を取る予定だからそれを早めようか』という言葉に、『まだ生まれそうにないから大丈夫』と答え、
話し合いで『午前は挨拶やサポートのお願いその他いろいろするために会社に行って午後からは産休を早める』と2人で決めて。
後ろ髪を引かれるように何度も何度も振り返る春輝を優希は見送ったのだった。

「午後までは1人かあ…っあ、そろそろきそうかも…」

お腹を撫でつつ玄関から部屋に行こうとした優希は、そう話して壁に手をついた。

「っっ、ふぅーっ…やっぱり、来た…ふぅーっ…」

手のひらで体重を支えるようにしつつ、痛みをやり過ごせる姿勢がないか探るように身体を動かす優希。

「なんと、なく…痛くなるきっかけとか、前兆とか、タイミング…みたいなの、分かってきたかも」

出来るだけ冷静になろうとしてか呟きをやめない優希。

「1時間に1回か…多い時は2回…きてる、かな」

優希の言葉が言うように、最初に痛いと感じた辺りは不定期だったのが、
今は1時間に1回か2回感じるようになっていた。
痛みも最初に来た時よりは強く、長くなった…と、優希の体感ではそう感じている。

「そっか、本当にいよいよなんだ」

痛みをやり過ごして、そう呟いた優希は身体を動かすのが億劫なのかゆっくりゆっくりと玄関を後にするのだった。

46ヨーク:2020/09/26(土) 21:03:49
「あー……ドキドキしてきた……」
ソファーに体を預けて、天を仰ぐ優希。
まだまだ先だろうが、確実に進んでいるような気がしている。
「持ってかなきゃいけないやつは玄関のスーツケースに入れてあるし……あとなにか要ったっけ……?」
緊張をほぐすためか、ますます口数が増えていく。
「大丈夫、大丈夫……ここまでお腹に居てもらえたんだし多分行ける……うん、行ける……」
言い終わって深呼吸。
お腹に手を置くと、胎動がはっきり感じられた。
「うん、もうちょっと、もうちょっと待っててね……」

47名無しさん:2020/09/26(土) 22:13:37
「いよいよ…ふぅーーっ…ふぅーーっ、明日、かぁ…」

いよいよ明日が卒業式というところまで来て、優希は痛みに耐えながらそう話した。

あれから痛みの回数は1時間に3回、4回、5回と徐々に増え、
強さも明らかに最初に比べだら強く長くなっている。

「このこもよく頑張ってるよな。生まれたいだろうに、お母さんの予定に合わせようとしてる」

春輝も産休を取得し、あれからずっと腰の痛むところを優しく押す、とかいきみのがしにテニスボールを使う…みたいな感じでサポートをしていた。

「なあ、今どんな感じなんだ、優希の身体」

「そうだな…ふぅーっ…ふぅ。あ、例えて言うなら、『頑張って育ててたけどもう赤ちゃん出させてあげたいよ』って子宮と、『早くお母さんに会いたい』って赤ちゃんが協力して私を攻撃してる…みたいな」
「ははは、よくわからないけど辛いんだな」

「まあね。もういきみたさがずっとずっと続いてるし…あっ、ちょ、すごいのきそうっ…!」

春輝はこくりとうなずくと、テニスボールを使いながら優希のいきみのがしをサポートするのだった。

48ヨーク:2020/09/26(土) 22:33:11
「んんっっぁあああああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ……お、落ち着いてきた、かな……っ」
いちどドカンと大きなのが来て、それからしばらく膠着状態が続いて、ようやく一息。
ハルくんは律儀にもストップウォッチで時間を測ってくれてるみたいで、時計を確認。
「結構長くなってきてるな……思ったより早く産まれたりしてな」
「あはは、だったらそのほうがいいかも……これが何度も来るの、正直ちょっとしんどいな……」
こんな会話をしていても、まだまだ序の口。
当然、子どもたちはまだもう少しお腹に居たいようだった……。

49名無しさん:2020/09/27(日) 16:45:07
「とうとう卒業式の朝まで破水しなかったな…お腹のこいつらが親孝行なのか、お前の子宮が凄いのか」

卒業式の日の朝、春輝はそう呆れるように呟く。
あれから定期的な痛みが優希を襲い、春輝もサポートをしていたが、
朝までとうとう破水は起きなかった。

「これが最後のタイミングだと思うから、一応聞くが…卒業式、欠席する連絡をするならそろそろだぞ」
「ふーっ、一応って、ふぅーっ…言うくらいなんだ、からぁッ…ふぅーっ…分かってる、でしょぉぉ…」

春輝の問いに、苦しそうな声で優希は話す。

「全く…一度こうと決めたら本当に曲げないよな、お前」
「ふーっ…ふぅーっ……それ、褒めて、る?」
「呆れてるのと、褒めてるのと、あと…惚れてる?」
「あは、は…ふぅ、ふうぅ。でも、そうだな…お別れの挨拶したら、ちょっと式の方は考えるかも」
「まぁ、それでも出たいだろうからなぁ。でも、破水したら流石に病院に行くからな。
 入院用の荷物を詰めたキャリーバッグ、車に入れてくる。
 それから、服とか着替えて車で学校に行こうか」

春輝はそう言うと優希の側から離れる。
少しの時間だろうが、優希は不安が増すだろうと考えながら痛みが収まりつつあるお腹を撫でていた。

50ヨーク:2020/09/27(日) 17:19:59
当然といえば当然だが、心配なのはお互い様、ということだろう。
そんなに長く優希をまたせることもなく、ハルくんはすぐに戻ってきてくれた。
「ふぅ〜〜〜〜んんんぁっっっ………これ、保つかなぁ……っ……出たい、けど」
「明らかに危ない、とかじゃなければ俺はお前の意思を尊重するよ」
「ありがと……じゃあ、行こう……っ」

こうして、なんとか卒業式参加を目指し車に乗り込んだ優希。
まあ、言うまでもなくここからもまた、大変な道のりである。
なんたって、移動中にも容赦なくお産は進んでいくし、どんどんいきみたくなってくる。
それでも、まだ優希は耐えていた……。

51名無しさん:2020/09/27(日) 17:38:13
「…着いたけど、これからどうする」

学校の駐車場に車を止め、春輝は優希に語りかける。

「そうだなぁ…クリスちゃんと皐月ちゃんに挨拶して、担任の先生に挨拶したら…あとは体育館で式を待つ、かな。
流石にいろいろ歩き回るの、キツそうぅぅぁあっ…ふぅぅ、ふぅぅ」
春輝の言葉に最初は普通に答えていたが、陣痛が来たからだろう。
苦しそうに少し叫んで、眉間にシワを寄せながら息を整える。

「OK。教室に行って、職員室、体育館って感じだな。陣痛のタイミングをみて、一つづつゆっくり行こうか」

春輝はそう優希に言って、優希が呼吸を整えるのを待ち始めた。

52ヨーク:2020/09/27(日) 18:04:58
「みんな、久しぶり……ったた……」
なんとか呼吸を整えて、懐かしい教室に脚を踏み入れた優希。
皐月やクリスは当然のこと、それ以外にもたくさんのクラスメートが暖かく出迎えてくれた。
即座に数名が椅子を用意してくれたので、ありがたくそれに座ることにした。

そこからは、本当に久しぶりの歓談。
遠隔授業と実際にその場で会うのとでは、やはりいろいろと違うのだ。
特に、皐月とクリスを除けばこの大きなお腹を見るのも初めて。
陣痛こそ来てしまっているものの、優希は久しぶりに学生として皆と話していた。

53名無しさん:2020/09/27(日) 22:45:19
「ちょっと、私たちが話すから席開けてほしいな」

会話をして、痛みが来たら「大丈夫」と答えて。
クラスメイトと話すのも辛くなり始めた頃、皐月とクリスが席に来てくれた。
仲がいいと知ってるクラスメイトは、「ごめんね、お腹珍しくて話が長くなりがちでさ」と2人の席を開けて他のクラスメイトたちと話に行く。

「側から見てたけど、凄い辛そうだよね。陣痛きついんじゃない?」
「ふーっッ、ふーっッ…まぁ、ねぇ。でも、皐月ちゃんとクリスちゃんにはきちんと高校生活のお別れはしときたいなって」
「嬉しいんだけどねぇ。なんていうかこれからも友達だしさあ。そんな厳密にお別れしたいかなあ?」
「それが優希らしいってやつだよねえ。友達をやめられない理由なんだよ。
あ、最悪、異変が起きて式から退出するときは私たちも手伝ってあげるね」
「ふぅーっ、ふぅーっ…そんな、2人に悪いよ」
「気にしない気にしない。優希は用事を済ませたら自分のことと赤ちゃんの事だけ考えなよ」

とまあ、いろいろ会話が長引いて。

「ふぅ、…あ、お花摘みに行きたくなっちゃった。あと、担任の先生に挨拶しなきゃ」
「そう?旦那さんは…あそこか。おーい、旦那さーん!優希が教室から出るみたいよ」

と言う風に会話を終え、優希はトイレを経由して職員室に向かうのだった。

54ヨーク:2020/09/27(日) 23:48:51
陣痛はますます長く強くなり、職員室までの廊下がまるで無限回廊のよう。
なので、優希は意を決してハル君に伝えた。
「先生には挨拶するけど……これ、卒業式までは保たないかも、っ……!」
言い切って、廊下の壁に手を突いて一休み。
正直、自分の身体なのだからそこは優希が一番分かっている。
(出たいけど……式に出たら、順番待ってる間に産んじゃうよこれ……)
さっきトイレに寄ったのも、お花摘みとは言ったけど当然違う。
便意の方を感じたから、というのが大きいし、それが便意じゃないことも何となく気がついた。
優希は、自然といきみはじめていたのだった。

55名無しさん:2020/09/28(月) 08:54:32
「如月先生、お久しぶり、です。…ふぅ、ご挨拶しに来ました。」

なんとか職員室に辿り着き、優希は入り口から話しかけた。
幸い、担任の如月詩織先生は入り口に一番近い場所にいたので、
優希には幸運かも知れなかった。

「久しぶりね、優希さん。…身体、辛そうね。式に出たいって前からは話していたけど。」
「そう、ですね。ふぅ、ふぅ、流石に式には出られそうにないかな、と。詩織先生に挨拶したら、病院に行こうかな、なんて」
「そうねえ、それがいいわ。式はあくまで形式的なものだしね。
仲がいい人とお別れの挨拶が出来たなら、別に式には出なくていいと思うの。
旦那さんに受け取ってもらうとか、退院してからもらうとかいろいろ出来ると思うわ。」

笑みを浮かべる詩織先生に、優希は苦しそうながら笑みを浮かべる。

それから少し話をして、優希は詩織先生に声をかける。

「じゃあ…ふぅ、ふぅ。そろそろ、病院に行こうと思います。」
「頑張ってね。出産に向けたラストスパートよ。また、いつか会いましょう」

詩織先生が差し出した手を握り握手して、病院に行くために立ち上がった瞬間だった。
パシャパシャと言う音がして、液体が椅子や床を濡らす。

(えっ、これ…破水!?)
優希がそう思ってから数秒後、今までとはくらべものにならないほどの痛みといきみたさが優希を襲う。
思わず詩織先生の机に手を置き、強くお腹に力を入れてしまう。

優希の考えた通り今まで赤ちゃんを守っていた強靭な羊膜が破れ、破水が起きてしまった。
ここから優希の出産は、一気に進展を迎えることになる…

56ヨーク:2020/09/28(月) 10:18:21
「あっダメ出てきそう!!!」

そう言ってしまったのも束の間、優希はなりふり構わずいきみはじめた。
そうすぐに産まれてしまうものでもないけど、赤ちゃんが大きい分いきみたさも強かったからだ。
すぐに教職員たちが救急車を呼んでくれたりはしているけど、優希自身はここから動けそうにない。
詩織先生の机にしがみつく形で、出産せざるを得なくなってしまった。

(ちょっと考え……甘かったかも……こんなの、我慢なんて出来ないよ!!)

───────────────────────

気が早いですが、次の出産についてはより難産にしたいと考えています。

57名無しさん:2020/09/28(月) 12:06:12
「東風さん!東風優希さん、大丈夫ですか!?」

それから少し時間を置いて、救急隊員が駆けつけ声かけをした。
そうか、春輝の苗字だ…なんて優希には考える余裕もない。

「大丈夫じゃ、うぅぅぅん!ないです!うぅぅぅん!もう、1人目っ、産まれちゃ…あぁぁぁぁ!」

激しいいきみたさに合わせて、冷静になれず何度もいきみを加え叫ぶ優希。

「確か優希さんは健診では3つ子でしたね。すみません、確認します!……もう、1人目の頭に触れてしまいますね…
このままの搬送は危険なので、1人目を産んだ後、病院に運びます!」

救急隊員が触診してそう優希に伝えた声に、唸りながら汗だくの顔をこくこくと動かす優希。

職員室に、張り詰めた空気が漂い始めていた。

58ヨーク:2020/09/28(月) 12:32:49
「んぅうううううううーーーーーーっ!!!」

一人目をここで産んで、といわれたのもあるだろうか。
優希は、自分の感覚に従ってどんどんいきんだ。

(なんか……まん丸いのがきてる………赤ちゃんの頭、だ……!)

いきむたび、自然と脚が広がっていく。
ゆっくりとしゃがみ込むような体勢になる。
もう、いきむのを止めることなんて出来ない。

「あっ来たっ、出る、出る出る出る出るぅぅううううぁぁぁぁぁ!!」

59名無しさん:2020/09/28(月) 14:29:06
優希の一際大きい叫び。それと共に、赤ちゃんの頭が一気に現れた。

「はぁ、ふぅ、はぁ、ふぅ…」

頭が出たあとはいきんではいけない。そのセオリーに合わせるが如く優希は短く呼吸を繰り返す。
しゃがんでいた体制だからか、赤ちゃんは重力の力を借りて進んでいく。
そして、ついに。

「赤ちゃん、産まれましたよ!」

赤ちゃんの頭を支えていた救急隊員がそう優希に声をかけ、同時に「おぎゃあ」と赤ちゃんが声を上げる。

(これが、まだあと2人は続くの…)

かなりの疲労感に苛まれ、優希は地面にへたり込む。
だが、職員室に響く拍手と、救急隊員に赤ちゃんを抱かせてもらう、いわゆるカンガルーケアで優希は覚悟を決める。
そして、救急隊員に支えられながら優希はストレッチャーに乗ったのだった。

「救急車は揺れるので、安全のために2人目は病院までいきみのがしをしてもらいます。
着いてからは優希さんの様子を見て、そのまま救急車内で産むか病院の分娩室に運ぶか判断します。
よろしいですか。」
「はい…赤ちゃんの、ためですもんね…」

救急隊員の言葉にそう答える優希。
少しだけ、無理矢理学校に来たことを後悔していた。

60ヨーク:2020/09/28(月) 14:52:14
様子が様子だったので、皐月やクリスを始めとしたクラスメートの何人かが心配して近寄ってくる。
今は流石に間ということで落ち着いているので、優希は謝ることに決めた。

「やっぱりちょっと我慢しすぎてたみたい……ごめんね、最後の最後に迷惑かけちゃって」
「いいのいいの。しっかし、大きな子が入ってたんだね……」
皐月の言う通り、比較的安産なれど三つ子の一人目は想定通りに大きな子だった。

「はぁ、はぁ……っ、まだ、こんなのが二人いるから……頑張ってくるね……」

そして、優希は救急車へと載せられた。
ここからが更に大変なのは、言うまでもない……。

61名無しさん:2020/09/28(月) 15:23:14
「ああァァァ、もう無理ィィィ!いきませてェェェ!!!」
「あと少し、あと少しで着きますから、我慢してください!」

優希の叫びに救急隊員が答える。
救急車の移動中、あと少し…と言うところで陣痛が訪れた。
それまでは1人目を生んだからか少し痛みが弱くなっていたが、ようやく準備出来たと宣言するが如く子宮が収縮を強める。
なんとかいきみを逃してきた優希も、堪らず叫んだのだった。

「着きましたよ!分娩室まで我慢できますか!?」
「無理ィィィ!ここで産むゥゥゥ!ぅぅぅうううん!」

救急隊員の声かけに、優希が再び叫ぶ。
そして、顔を赤らめながらいきみ始めた。

「…麻里亜医師を呼んでください!2人目はここで産ませます!
産ませたあと、3人目を分娩室で!」

分娩室まで我慢はさせられない。そう判断したのか、病院スタッフに話しかける救急隊員。
慌ただしく病院スタッフも動き、1分もしないうちに麻里亜医師が白衣で走ってきたのだった。

62ヨーク:2020/09/28(月) 15:41:52
「もう、だからあんまりお薦めはできないって……なんて言ってる余裕なさそうね」

麻里亜さんは少しため息をつくと、真剣な顔で優希の足元へと向かった。
初産とは思えないほどスムーズではあるのか、二人目も順調に生まれようとしているようだ。

「出てきてるわね……優希さん、その調子よ」

優希もその言葉を聞いてはいるが、返事する余裕はない。
もう、ひたすらに陣痛に合わせていきむ。
それを繰り返すのが精一杯の状態で、他のことはできなかった。

63名無しさん:2020/09/28(月) 16:10:03
「もう少しで、頭が出るわよ。頑張って。…優希さん、いえ。お母さん…」

ひたすらいきむ優希が、お母さん、と言う言葉に反応していきみを強める。

「よし!!頭が出たわよ!…やっぱり、大きめよねぇ」

麻里亜が感嘆する。2人目も、それなりに大きい胎児のようだ。

「もういきまなくていいと思うわ。…そう、そう。上手いわねえ。流石1人産んだだけあるわ。」

麻里亜の言葉に励まされ、呼吸を整える優希。そして。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「おめでとう…元気な男の子よ」

2人目の赤ちゃんも無事に生まれ、カンガルーケアをしたあと病院スタッフに渡される。

「もう少しよ、優希さん。最後の一踏ん張りね」

2人産んでかなり疲れている優希だが、頷いてストレッチャーで分娩室に運ばれる。

だが、そのお腹は、あと残り1人にしてはかなり迫り出していた…

64ヨーク:2020/09/28(月) 16:17:40
分娩台になんとか乗せてもらったところで、一息。
麻里亜さんが、そこで突然切り出した。

「ねえ、優希さん。ちょっとお腹触らせてもらっていいかしら?」
「えっ……?」
「気になることがあるのよ」

本当に突然なので優希も戸惑ったが、麻里亜さんは本職の産婦人科医だ。
状況も状況だし、黙ってうなずくことにした。

(やっぱり、3人目も下がってきていたとしてもちょっと大きすぎるわ……これじゃ、まるで二人いるみたいな……)

触る前から、麻里亜はその疑念を捨てられなかった。

65名無しさん:2020/09/28(月) 17:37:35
「やっぱり…優希さん、ちょっとエコーでも確認するわね」
麻里亜がそう優希に話しかけ、エコーの機械の用意をスタッフにお願いする。
優希は、その間不安そうな顔をしていた。

「ねえ、優希さん。落ち着いて聞いてね。今確認したエコーには、2つ赤ちゃんの影があるわ」
「えっ…それ、まさか…」
「そう。3つ子じゃなくて、4つ子。これは予想なんだけど、3人が騎士みたいに周りを固めていたから1人映らなかったみたい。
2人生まれて、周りが居なくなってようやく確認出来た…ってこと」

麻里亜は厳しい顔でそう話す。そして少し顔を緩めて言葉を続ける。

「これだけ大事に守られてたんだから、きっと女の子…お姫様よね。
もう一踏ん張り…いえ二踏ん張りかしら?無事に産んであげましょうね、お母さん」

66ヨーク:2020/09/28(月) 17:50:00
「もしかしたら、相当甘えん坊ののんびりさんかもっっ……!!」

少し余裕ができたのか、微笑んでからいきむ優希。
麻里亜を始め数名がしっかり様子を見ていてくれている、というのも安心に影響している。
さらにいえば、流石に二人も大きな赤ちゃんが通ったことで産道も広がっているからだろう。
いきむたび、しっかりと進んでいるのが優希自身にも、そして周りから見てもはっきりとわかるほどだった。

「良かった、3人目も頭から出てきてるわ……この子は羊膜が別みたいだけど」

3人目の頭を確認したが、どうも破水せず出てきてしまっているようだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

これで初産が四つ子となりましたが、次はどうしましょうか?
自分としては初産の結果、子宮が伸びやすくなるなどして一人ひとりの大きさがさらに大きくなり、難産としてもここからが本番と考えています。

67名無しさん:2020/09/28(月) 18:14:41
「最後の赤ちゃんを産む体力を残すため、鎧をつけたまま産まれようとする騎士、かしらね。もっと上手い例えがあると思うけど。
このまま産んでかまわないわ。私たちがすぐに処置するから」

専門用語的に言うなら幸帽児だろうか。麻里亜はそれを見てそう優希に語りかける。
優希も頷きいきみを続ける。前の2人よりもスムーズに、赤ちゃんが現れる。
麻里亜たちがすぐに処置をし、産声を上げた。

「さぁ、本当に最後よ、優希さん。4人目、頑張りましょう」

麻里亜の言葉に、疲労困憊の優希は弱々しく頷く。
そして、少し引いた痛みが、再び強くなるのを深呼吸して待つのだった。




そうですね…2回目は3つ子だけど1人は逆子…とか、最後は全員逆子になる…とかですかね。
逆子でなくても少なくとも正常な配置ではないみたいな

68ヨーク:2020/09/28(月) 18:25:09
(しんどい……けど、幸せかも)

口には出さずとも、心の中で優希はそんなことを思った。
とても辛いが、今でもう言いようもなく幸せだと。
だからだろうか。
もう疲れ切っているのに、不思議と頑張れそうな気がしている。

「来たっ………んんんんんんんんーーーーーー!!」

陣痛にあわせて強く息むと、最後の一人……またしても幸帽児の赤ちゃんの頭が、ちらりと見え始めた。

───────────────

他にもやりたいことがあるので、次は一人目が逆子だが自然分娩せざるを得なくなり、最後は全員胎位異常というかたちにしたいかな、と考えています。
人数は今回4,次回3,次々回4でいきます?

69名無しさん:2020/09/28(月) 19:58:08
「本当に…この赤ちゃんはお母さん思いだし、大切にされたのね。もう少し、もう少しだから頑張ってね、優希さん」

麻里亜がそう優希に語りかける。
優希は、その言葉に無言で頷きいきみを加える。

「…出たわよ!お疲れ様、優希さん!あとは私たちに任せて」

4人目の幸帽児が産まれた瞬間、麻里亜がそう話して処置をする。
産声を聞きながら、優希は気を失うように眠るのだった。


こうして優希は3男1女の母親になった。
産後の肥立ちもすこぶる良好で、麻里亜が驚いて「論文を書きたいくらいよ」と冗談半分で話すほど。
それからしばらくは4つ子の世話でてんてこまい。

優希が次の妊娠に気付くのは、もっと先の話となる…

───────────────────────

そうですね、それでいいかなと。

70ヨーク:2020/09/28(月) 20:46:04
二度目の妊娠のきっかけは、かわいい盛りの四つ子たちの言葉だった。
まず、長男の朔(さく)と次男の恵(けい)がきょうだいを欲しがり、三男の辰(しん)がそれに乗っかるかたちで声が大きくなったのだった。
唯一、長女の卯月(うづき)だけはまだ末っ子でいたいのか、同調したがらない感じであった。
それに普通なら、四人もいれば十分と思うだろうけども、優希の場合は少し違った。

(やっぱり……大家族のママ……なりたいなぁ)

現実味がないと分かっていても、やはり気になってしまう自分の夢。
優希の心の中にそれがくすぶり続けていたところに、ある生活の変化が火をつけてしまった。
ハル君の勤務先はかなり大きな医療関係の会社なのだけど、昇進でかなりお金に余裕がでたこと。
そして、たまたま会話の中で優希のことが出たときに、話題になったからだという。

「その……優希、会社が検診費用とか持つって言ってるんだ……そこでさ、妊娠中の体の様子を検査したいって話で……子供たちも大きくなってきたから、おまえの気持ちも尊重したいけどさ……その、俺、どうしようかって……こんな言い方も何だけど……」

71名無しさん:2020/09/28(月) 21:19:46
「うん。ハル君の役に立つなら、構わないよ。それに、朔も恵も辰もきょうだいがほしいってさ。
卯月だけはちょっとゴネてるけど」
「ははは、卯月は一番甘えたがりだからなぁ。赤ちゃんが出来たら、少しは変わるかも。
わかった。上司には伝えておくから。」
「私も、そう言う話があるって私から麻里亜さんに伝えておくね。
あと、子供たちへの愛情がおざなりにならないよう気をつけないとなあ」

そんな会話をして翌日。
久しぶりに、麻里亜医師の病院へと予約を入れるのだった。

72ヨーク:2020/09/28(月) 21:34:03
「なるほど、ね……もう四人もいるけど、あなた自身は大丈夫なの?」
「はい、体調崩したりはしてませんし……それに、昔から大家族のおかあさんが目標だったんですよ。だから、もしまた妊娠出来るなら嬉しいなって」
「はっきり言わせてもらうわね……妊娠そのものは全く問題ないとは思うけど、前よりももっと重いお産になるかもしれないわ」

麻里亞が説明するには、こうだった。
まず、体は健康そのもの、妊娠にも問題ないどころか適しているということ。
次に、体質は相変わらずであり、巨大児の多胎妊娠は避けられそうにないこと。
そして、子宮などの変化を見るに、朔たちよりもずっと大きな子を妊娠するだろう、ということだった。

73名無しさん:2020/09/28(月) 21:47:45
「そうね…でも、私もあなたの体には興味があるわ。ひょっとしたら、不妊治療につながるかもしれない。
共同研究させてもらえるなら、私も全力をかけてサポートするわ」

そう話す麻里亜に、「少し考えさせてください」と伝える。

数日ほど悩んだが、結局大家族は作りたいと考え、
春輝と同僚、優希と麻里亜が話す機会がしばらく後に設けられることになった。

この時の話し合いが、優希と麻里亜の将来を大きく変えていくことになる……

74ヨーク:2020/09/28(月) 22:10:10
「なるほど、そちらのやりたいことはわかりました。でも、これだけだと情報が足りないと思いません?」

ハル君とその同僚、嶋野 兼多、そして優希と麻里亜を交えたその場で、計画を聞いてそう切り出したのは麻里亜だった。
優希の次の妊娠のデータをとる、ということで大筋がまとまっていた場で、である。
普通なら話の腰を折るような騒ぎであるが、何分現役産科医の発言である。
皆が即座に注目し、意見を聞くこととなった。

「実は普通の妊娠も、ものすごく個人差が大きいんです。だから、優希さんの身体の情報を参考にするとしても、その基準になる値がある程度必要になるわけです」
「つまり、他の女性の妊娠出産と比較するデータがもっと必要……ということですよね?」
「少なくとも後数人は。なので、私も協力しようかと」

75名無しさん:2020/09/28(月) 23:16:21
「ちょっと待ってください、麻里亜さん。麻里亜さんは失礼ですがご結婚は…」
「お恥ずかしい話ですが、この年まで仕事一筋なので恋人すら居ませんでした。
最悪、民間の精子バンク的なものを使おうかと」

嶋野の言葉に麻里亜がそう話す。

「それは倫理的にどうかと…」
「では…そうですね、嶋野さんにドナーになっていただこうかしら」
「えェェェっ!?」
「ご不満ですか?」
「いや、ご不満というか…むしろ嬉しいと言うか、いや何言わせるんですか。」
「ならいいではないですか。ビジネスパートナーとしてで終わるかもしれませんし、
初めて恋をするかもしれないですし、既婚者になるかも…うふふ」

そこからも嶋野と麻里亜の会話が続く中、優希に春輝が耳打ちする。

「なぁ…麻里亜さんてあんなキャラだったか?」
「なんか、年下をからかうって感じはしないはず…そっちこそ…嶋野さんはあんなキャラなの?」
「普段は真面目なんだけど…たまにボケたりツッコミいれたり。
ムードメーカーなところもある。でも、あれって…なあ」
「『夫婦漫才』…みたいだね」

そう言う会話をしてクスクスわらう優希と春輝。

堅苦しい雰囲気が柔らかくなったころ、話はまとまった。

嶋野がドナーで麻里亜が妊娠する。私生活にも少し関わり、嶋野お腹の子供の父親になるか、シングルマザーで育てるか確認していく。
優希は複数のサンプルが必要という話から思いついた、皐月とクリスが研究に参加できないかを聞く。

その他、麻里亜の知り合いで参加できる人がいるか、万が一いたらお願いできないか聞く。

そこまで話した後、次で状況を確認して、何回かの話し合いの後研究開始と予定されたのだった。

76名無しさん:2020/09/28(月) 23:24:30
けど2回目の妊娠前に優希の身体の中で、最初の妊娠前と比べ特に大きく変わった点がいくつかある。
まずは胸だ。Cはあったのだが今ではEかFのどちらか、よは巨乳と言える大きさに成長していた。
次にお腹。あれだけ超特大だったからか皮膚が引き伸ばされすぎて、服を着てても少し太めとぽっちゃり気味に。
運動に支障は特に無かったが、周りに肉がついて前のパンツに下っ腹が乗っかった気がしていた。
その中心にあるおへそは、引き延ばされていくうちにあまりの腹圧と僅かな刺激でよく擦れたことで瘢痕が少しずつできていたのか、
横からではお腹の肉で分からないが、近くで見ると前よりも大きくなって出べそらしくなっている。
微量な刺激がおへそから直接下の子宮に何度も伝わってただろうし、卒業式が終わる前に産んだのもそのせいかもしれなかった。

77ヨーク:2020/09/28(月) 23:38:57
さらにいえば、皮膚が引き伸ばされているのだからその下にある腹筋にも同じような負荷がかかっているわけで、その影響も無視できない。
まだ知る由もないが、この影響で優希のお腹には日本人離れ、いや外国人でさえ殆どないような、きわめて太く濃い正中線が出ることになってしまうのでもあった。

それはさておき、ダメ元で参加者を募ろうと思っていた優希は、皐月とクリスからの返事に驚くこととなった。
卒業後それぞれの人生を歩み無事に結婚した二人、そのどちらもがちょうど子供のことについて考えていたというのだ。
生活に問題はないものの、やはり検診費用を出してくれるというのは大きく感じたらしい。
それだけでなく、「なんか役に立てるなら喜んで」との言葉まで出した二人に、優希は深く感謝するのだった。

78名無しさん:2020/09/29(火) 09:48:19
「やー、優希久しぶり!卒業式以来かな?あの時は大変だったね」
「本当本当。あれから式の前までクラスのみんなが優希のことずっと気にしててさあ。
あの日までのこと、私たちが知ってる範囲で教えて!なんてことも言われたんだよ」
「あ、あはは…迷惑かけたみたいだね…」

皐月とクリスが了承して、「ついでに近況を話すのに一度会おうか」という流れになって、
優希の家に訪れてすぐに、そんな会話の流れになった。

「…でさぁ。旦那もそろそろ子供が欲しいって言ってきてねえ」
「私の方も。でも、私たちも2人暮らしだと大丈夫だけどそこまでお金に余裕があるってわけでもないし。
で、仕事続けながらそのうちデキればいいかなんて考えてて」
「なるほど、それで『検診費用が出るなら助かる』かあ」
「そゆことー」

ここまでの話しの流れを優希は整理する。
皐月もクリスも、高校卒業してすぐに就職。
職場恋愛をして結婚して、ようやく生活も安定してきた。
そんな中、2人の旦那さんがそろそろ子供が欲しいと言いだした…ようだ。
子供が増えると出費も増えがちだから、検診費用持ちは助かるという感じ。

「分かった。じゃあ、これから少しの間よろしくね」

この後も研究に向けた話し合いは複数回行われ、
優希と皐月とクリス、そして麻里亜の妊娠、出産が記録される段取りが少しずつ進むのだった。

79ヨーク:2020/09/29(火) 11:42:16
それからもうしばらくして。
なんと、人工授精とかそういったものを麻里亞以外は使わず、示し合わせたように全員が同じタイミングで妊娠。
そしてこれまた当然のように、優希のエコー写真には影が三つ写り込んでいた。
ここから二度目の妊婦生活が始まる。優希は前以上に心穏やかにそのときを迎えることになったのだった。

妊娠判明後すぐに、優希とほか3人には決定的な違いが現れた。
悪阻が、あまりにも軽いのである。

80名無しさん:2020/09/29(火) 12:29:58
「ねぇ、優希。本当につわり、軽いの?」

研究が始まってから、学生時代のように3人が優希の家に集まるようになったある日曜日。
少し青い顔でクリスがそう話しかける。

「うん。前もそうだったけど、気持ち悪い…とか、吐いちゃう…とかはあまりない。
強いて言えば眠い…かな?」
「優希の体質なのかな?明日、診察だっけ。その辺り麻里亜、先生、に、も…ご、ごめん、ちょっとトイレ借りるね」
「わ、私も…シンク借りる…」

そう話すクリスがトイレに、皐月がシンクに向かう。
クリスは蓋を開け便座まで上げる余裕もなさそうに吐くような仕草をし始め、
皐月もシンクの蛇口を開けずっと気持ち悪そうに顔を伏せる。

『2人はだいぶキツそうだな』なんて考えながら、優希はうとうとし始めた。



「そうねぇ。それだけつわりが軽いのは、やはり体質としか言えないわ」

翌日の月曜日、午前中に診察を予約していた優希は麻里亜の病院に訪れていた。

「私だって、いま平気そうに、話してるけど、すごく、気持ちわる…ごめん、見苦しいところみせるわね」

検診でいろいろデータを取って、麻里亜と優希は情報交換の会話をしていたのだが、
急に麻里亜が言い澱み始め近くに置いてあるビニールを被せたゴミ箱を手繰り寄せる

「げぇぇぇ…はぁ、はぁ、はぁ…うぷっ…げぇぇぇっ……」

そのままそこに嘔吐し始め、しばらく苦しそうにしていた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ。とまあ…私もつわりは酷いのよ。
診察も、今は優希さんとクリスさんと皐月さん。それと、他のスタッフに手伝ってもらって私の様子を確認する…
つまり4人しか見てないの。それほど支障が出るくらい辛いのよ…」

前よりも青く見える麻里亜医師の言葉で、やはり自分の身体がある意味異常と感じた。

「でも、この子のドナー…つまり嶋野さんね。彼はプライベートでも凄く私のことを気遣ってくれるの。
だから助かるし、あの人なら結婚するのもいいなんて考えちゃうのよね」

そんな惚気のような会話もしたあと、診察は無事に終わるのだった。

81ヨーク:2020/09/29(火) 12:54:21
(軽い重いの差はあるにしても……私、恵まれてるんだなあ)

検診の帰り道、ふとそんなことを考える優希。
意識せずとも、手が自然とお腹の方にいく。
まだ胎動なんかも感じられるわけではないが、その奥には三人、確かにいるのだ。
足を止めてちょっと空を見て、少しだけ風を感じて。

(……こんな恵まれたお腹の中にいるから、立派に育ってね。私も、ハル君も、君たちのお兄ちゃんお姉ちゃんも待ってるから)

82名無しさん:2020/09/29(火) 14:07:57
優希のつわりは軽いが、他の3人はまだまだピークを迎えていなかったらしい。
それからしばらくクリスと皐月と会う機会は作れなかった。
2人曰く、「つわり、マジ無理。マジムリ1000%」「外に出るのもしんどくて、歴史ドラマ的にいうと籠城させられてる」…と、つわりのピークが訪れているようだ。

「そうねぇ…私も、正直仕事を投げ出したいくらい。みんなのサポートがあって、ようやく出来てるのよ」

診察の時に会う麻里亜も、日に日にやつれていく。
「よっぽどのことがあるなら、点滴使わなきゃ」と自嘲するほどに、つわりが重いようだ。


「本当、私の身体って規格外というか。つわりっぽいつわりが起きること、これから先もあるのかなあ」

診察が終わり、待合室のソファーに身を預け。
つわりがなく健康に食事できているうえ、三つ子が育ち始めたからか、他の3人より膨らんだお腹を撫でながら、そんな事を思わず独り言で話す。

クリスと皐月、麻里亜のつわりが収まるのは、まだ少し先の話だった。

83ヨーク:2020/09/29(火) 14:25:37
そして、みなの悪阻が収まる頃となると……。

「んー……ちょっとこれ、私のお腹大きすぎない……?」

朔たち四人を妊娠していた時の同時期よりお腹が大きく感じて仕方がない。
さらにいえば、今回はほぼ確実に三つ子なのに、である。
一人分スペースが空いたからのびのびと大きくなれている、なんて言えば聞こえはいいが、もっと大きくなるとなればどれくらいなものか。
流石に優希も、少し不安を感じるのであった。

84名無しさん:2020/09/29(火) 15:03:20
「そうねぇ。明らかに大きい。流石は優希さんの身体って感じ」

麻里亜も感嘆するように優希に話す。

「母体と胎児に効率よく栄養を分配するとでも表現するのかしら。
優希さんの健康を安定できる栄養素だけを優希さんに供給して、残りを胎児に渡す…という仮説が挙げられるわ。
それに加えて、膜が強靭になりやすく、子宮口の軟化は緩やか、子宮も伸びやすい…
前は幸帽児だったから良かったけど、今まで述べた条件からいうと遷延分娩の可能性だってあるわねえ」

まくしたてるように呟く麻里亜。専門的な知識は優希はそこまで持たないが、
難産になりやすいということだけは理解できた。

「あ、ごめんなさい。心配にさせたかしら。
私もスタッフも全力でサポートするから、無事に産めるわよ。
あなたが心配していたら、お腹の赤ちゃんまで心配が伝わるわよ」

厳しい顔を緩め、麻里亜は優希に諭すように笑顔で話すのだった。

85ヨーク:2020/09/29(火) 15:41:37
「まあ、朔たちの時も陣痛始まってから産まれるまでだいぶかかりましたし……もっと掛かるかも、っていうのは覚悟してますね」
「そう……そう思えるからこそ、そういう体になったのかもしれないわね」
「それに、双子以上って早く産まれたり、小さく産まれたりすることが多いって聞きましたから……心配ないくらい育って産まれてくれるなら、私が辛いぶんには別にいいかな、って……」

優希のそんな言葉に、麻里亜は感心したように言った。

「本当に大したものね……私も、できる限り支えてあげなくちゃ……」

かくしてある程度時間は過ぎていき、データも徐々に揃い始める。
当事者ということで優希も当然データを見せてもらえたのだが、まさに千差万別といえる感じであった。

86名無しさん:2020/09/29(火) 16:53:42
「やっぱり、私の身体って改めて凄いですね」

優希が麻里亜に見せてもらったデータの一つをみてそう麻里亜に話す。

『現時点における予定日時点での成長予測(単位:g、下2桁切り捨て)』とかかれた表にある数字。
全国平均やクリス、皐月、麻里亜の欄に並ぶのは2800や3000、多くても3200くらいだろうか。
そんな中、優希に並ぶのは4000や5000、最大で5500、一番小さい数字でも3800…という明らかに異質な数字。

「そうね、私たちは下ブレの方を注意しないといけないと思うけど…
優希さんの場合、上ブレを気をつけなきゃ。
児頭骨盤不均衡…わかりやすくいうなら、赤ちゃんの頭が骨盤より大きくて通らない…ってやつね。
今の時点でいうなら、おそらく大丈夫だと思うけど…ねえ」

麻里亜の言葉に、優希はますます不安を強める。
そんな優希を励ますように、胎児がもぞもぞと胎動し始めた。

87ヨーク:2020/09/29(火) 17:19:52
「その……頭が通らない場合、ですよね……やっぱり」

胎動に少し安堵しながら、不安そうに問う優希。
その不安は当然と言えよう。

「あなたの場合は……うん、骨盤次第としか言えないわね……」

その疑問に答えながら、優希の妊娠前のレントゲン写真や骨格のイラストを用意する麻里亜。
まず、優希の骨盤は体格から見てもかなり余裕があり、普通の胎児の大きさなら文字通りの「安産形」と言えること。
その上で、胎児の大きさがかなり大きいこと。
そうなると、恥骨結合の伸びや骨盤のそれぞれの骨のつなぎ目の緩みに期待するしかない、ということを説明するのだった。

「もっと言っちゃうと、仮にそれらが理想的に働いたとしても……その分赤ちゃんが大きくなるわ。ギリギリのお産は避けられないわね」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

優希に関してはこの予想よりさらに大きくなる、という方向で行きたいのですが、どうでしょうか?

88名無しさん:2020/09/29(火) 18:07:59
「あえて不吉な表現をするけど、現時点での数値でなら多少難産でも母子ともに健康な出産は余裕。
これは上ブレを含めてね。…これって本当にすごいことよ。
ただ、予測を遥かに超えるなら…断言は出来ないわよねぇ…」

「そう、ですか。」

「まぁ、あんまり気にしすぎないことね。
少なくとも、今のデータなら安産と言わないまでも、物凄い難産ということはないわね。
不安にしてるより、朔ちゃんたちと話したりしていたら、胎教にもいいと思うわ」

そう会話をしめて、今回の検診は終わるのだった。
────────────────────────

そうですね…今の数字は予測なのでそれを超えるのは普通にありですね。
ただ、最後?のを含めるとある程度セーブすべきなのかな…とも思います。
その分最後は…みたいな

89ヨーク:2020/09/29(火) 18:17:41
「どうなるかなぁ……でも、せっかく私のお腹に来てくれたんだし、生んであげないと」

やはりこう、はっきりと情報を示されると優希も警戒してしまうところがあるのだろう。
朔たちも無事に産めたとはいえ、辛かったのは事実だ。
それを超えるくらいとなると、想像がつかない。
もしかしたら、前より不安かもしれないと思いながら、優希は帰宅した。
と、早速。

「ママ、おかえり!」

そんな卯月の一声のあと、子どもたちが玄関に出迎えに来てくれたのだった。
────────────────────────

最後はいっそのこと、思い切りはっちゃけて9〜10kgもいいかな、と考えているので初産の5kg台と間を取りたいところなんですよね、具体的に言うと7〜8kgとか。

90名無しさん:2020/09/29(火) 18:52:09
「ママー。おいしゃさんのせんせい、なんて?」

卯月の質問に、優希は少し考えて伝える。

「えっと…赤ちゃんたち凄く元気なんだって。
元気すぎて、かなり大きくなっちゃう…かも」

「へー!あかちゃんたち、げんきなんだ!おーい、おねえちゃんだよー!はやくでておいでー!」
「あはは…そんなに早く出てこないよ?お腹が居心地よくて、ずっとずっと居るかもってさ」
「えー…そうなの?つまんない!はやくきてほしいなー…」

そんな卯月との会話でようやく笑みを浮かべる優希。
最初の頃は不満そうな卯月も、今ではお姉ちゃんの自覚が増えてきたのか心待ちにしていた。

(楽しみにしている卯月のためにも、無事に産んであげないとねえ…)

優希は改めて決意を固めながら、優希のお腹を撫でながら話しかけている卯月の頭を撫でるのだった。

────────────────────────


そうですね…では、一番小さい子が予想の最大、5.5kg、残りが6.8kgと7.6kg…みたいな感じですかね。
一番小さい子が予想の最大という展開であれば他はもう少し大きくてもいいのかなと

91ヨーク:2020/09/29(火) 19:04:03
朔、恵、辰の三人もそれに続いて集まってきて、いろいろと話してくる。

「あかちゃんげんきだった?」
「ママ大丈夫?」
「しんどくない?」

まだ幼いのは確かだが、彼らなりにお兄ちゃんらしくいようと思っているようだった。
その様子に優希は笑顔になる。
一人一人の言葉に優しく答えて、今はまだ出来るからと夕食の準備を始めるのだった。

そうして、優希のお腹は前以上のスピードで大きくなっていく。
まだ7ヶ月にもなっていないのに、その大きさはふつうの妊婦さんの臨月を超え、麻里亞や皐月、クリスたちとは比べものにならないほどだった。

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

合計19.9kgとなりますので、いっそあと100gだけ増やして合計20kgジャストにするというのはどうですかね?

92名無しさん:2020/09/29(火) 20:11:36
「いやぁ、高校の時はこんなもんなのかなぁ…って思ったんだけど、本当にすごかったんだね」

クリスがまだそれほど目立たない自分のお腹を撫でながら優希に声かける。
つわりが終わって、安定期になって初めての「ママ友会」。
クリスも皐月も、ようやく服の上からでも膨らんで来たかな?とわかるくらいなので、
明らかに妊婦さんとわかる優希を見て改めて驚きの顔を見せる。

「でもさ、臨月のころはこれくらいなのかな?って目安になるからいいのかな?
優希はこれから辛いだろうけど」
「まあ、ねえ。前の時もそうだし、慣れてるって感じかな」
「いやー『母は強し』ってやつかなあ。よろしくお願いしますよ、『先輩』」

そんな会話を進めながら、楽しい時間を過ごす3人だった。


────────────────────────

では真ん中の子を6.8→6.9…ですかね?

93名無しさん:2020/09/29(火) 20:15:11
7ヶ月目に入ると当然身体にも様々な問題が起こる。
「ん?あれ、また閉まらなくなってきたか…」
まず妊娠したことで更に大きくなった胸。意外と緩やかではあったが時々ブラのサイズが合わなくなるので、その都度買い換えなきゃならないのだ。
しかし胸以上に問題だったのがやっぱお腹の方。
「んっ、くっ……ぷはっ、もう入らなくなったわね…」
ウエストは120cmを超え、特大のマタニティパンツでさえもおへそがしまえなくなっていた。
お腹が更に大きくなったことで正中線はあまりにも太く濃くなって、おへそもかなり大きく飛び出していた。
それのおかげで、普通にしてても服が当たってお腹の先端が感じてしまうのだ。
「う……んっ………」
常にお腹の先に違和感が来ているのを感じる優希は、服の上からも分かる大きなおへそを見つめていた。
「これも私と赤ちゃんとの繋がりが強く出ているのかな?」

検診の日、麻里亜にも今の自分のお腹について話した。
「確かに普通の妊婦よりも大きいね。あなたのおへそ、妊娠に特化しただけのことはあるわね。私は好きよ」
「あ、ありがとうございます…そんな風に褒めてもらえるなんて」
優希は少し、嬉しそうな顔をしていた。

────────────────────────
妊娠特化ですのでこのような勲章みたいなのをつけてもよいと思います

94ヨーク:2020/09/29(火) 20:40:35
お臍もだし、他もそうだ。
流石に前以上のペースで大きくなってきているとなると、ついに出てしまった。

「うわぁ……ついに出たか……」

鏡を見ながらぼやく優希。
姿見に映る自身のお腹に、赤い線がいくつか。
むしろ、前回の妊娠で出なかったのが奇跡とさえ言える……妊娠線であった。
無論、今の時点で120cmを超える優希のお腹の妊娠線が、この程度で済むはずがないのではあるが……。
初産が10代故、まだ若い優希としては割り切っていても複雑な気分になる。

「ああ……こりゃもう二度とビキニとか着れないなぁ……」

95名無しさん:2020/09/30(水) 15:07:06
そうして軽く落ち込んではいるものの、なってしまったものはどうしようもない。
悩み過ぎも良くなければ、諦めが肝心という言葉もある。
なるようにしかならない、と自分を納得させるしか無いようだった。

その翌週、たまたま皐月やクリスと一緒に食事をする機会があったのだが……。

「うわあ、前にもましてすごいことになっちゃってるね、優希のお腹」
「こんなになってる人、写真でもあんまり見たこと無いよ」

二人が口を揃えて言うほどには、なかなか強烈な事になっている。
なにせ、正中線がますます濃くなったどころか、お臍の周りにまで色素沈着を起こしてしまっている。
そしてそのお臍も、もう押しボタンの如く立派に飛び出ているからであった。

96名無しさん:2020/11/26(木) 18:34:36
少なくとも、日本人でこんなお腹はめったに居ないだろう。
大きさもあって、とにかく目立つのは間違いない。

「いやー、ちょっと悩んでてね……こんなお腹なのに、そろそろ入る服も無くなりそうだし……」
「あー、それは大変だ……」

皐月がうんうんと頷く。
彼女も妊娠してからというもの、加速度的にバストサイズが上がっていて服がどんどん合わなくなっているというのだった。

97名無しさん:2021/01/19(火) 20:40:48
「分かる分かる〜。普段履いてるズボンとかもきつくなっちゃうよな」
そう言うクリスもズボンのファスナーが上がらなくなってきたので、ヘアゴムを使ってうまく止めていた。
「兎に角優希のお腹ってものすごく大きいから、もう服からはみ出てきちゃってたりして…」
「そうよね…もうとっくにお腹がデニムに乗っかってるし、普通の服だともうお腹の部分がめくれ上がるから大きめの服で覆うようにしているんだけどね…あはは……」
実は下から見るとほんの少し下腹がはみ出てて、完全には隠しきれていないことを、優希はまだ気が付いていなかった。
いや、あれだけ大きなお腹で見えないのか、誰も僅かにはみ出てるなんて思っていなかった。

98ヨーク:2021/01/20(水) 00:10:11
「今この感じじゃ、もっと大きくなるだろうしおなか丸出しかなぁ……まだ七ヶ月だよ?」
「だねえ……私たちも小さくないけど、さすがに優希ほどじゃないし」
「うんうん、私だったら動けなくなっちゃいそう」
120cmともなれば、双子でも臨月のおなか、しかも大きい方だ。
まだ七ヶ月でこうなっているのだから、優希のお腹はまだ、成長中。
クリスや皐月がそんなことをいうのも無理はないだろうし、実際その通りなのだろう。
まだ恥ずかしさや悩むところは多いけど、優希の中にもぼんやりとした考えが浮かんでいた。
(どうがんばってもこのお腹と付き合うしかないし、気にしない方がいいのかな……?)

99名無しさん:2021/01/20(水) 22:41:43
友人との談笑を終えて帰宅の途につく優希。
ふと思って、ちょっと検索をかけてみる。
それは、海外の妊婦さんたち。
そもそも日本より平均的にお腹の大きい人の写真が多いなと思ったのが、そもそものきっかけだった。
いざ見てみたら、本当に大きなお腹を丸出しにしている妊婦さんの姿がチラホラと。
「……いい、のかな」
なんとなくだけど、悩むこともないような、そんな気がし始めていた……。

100名無しさん:2021/01/21(木) 17:40:53
けど、このペースでいけばやがてお腹がしまえなくなるということは何となく目に見えていたようだろうか。
優希は優希のやり方でお腹を晒すようにしようと思った。
それは今きているビッグサイズの服のまま(一応同じサイズは何着かある)で1日を過ごし続け、段々とお腹が出てくるのを待つということ。
こうすることで、お腹が更に大きくなったなと実感できると思ったからだ。
数日後・・・

「やっぱり・・・お腹しまえなくなったな」
鏡を見ても下腹が出ていることが分かるようになった。服の裾も引っ張ったってダメ。
そういう結果だから、優希のお腹はいずれ丸出しに近くなる。
こればかりはもう仕方ないと、優希は更にお腹が大きくなるのを待ち、そのまま8ヶ月目に入りだした。

101ヨーク:2021/01/21(木) 18:25:18
「128cm、かぁ……」
いよいよおへそが半分ほど見えてしまうお腹を抱えながら、優希はぼんやりつぶやいた。
ある種諦めがついてからというもの、ますます三つ子ちゃんの成長が加速したように感じられた。
その話題は麻里亞からもされたところであり、かなり大きかった朔たち4人よりも更に大きいかも、と言われていたりする。
「……いや、産める、大丈夫、頑張れ私、できる」
ちょっと不安になりながら、軽くお腹を撫でるのだった。

102名無しさん:2021/01/22(金) 00:17:56
丁度おへそに当たるか当たらないかのところに裾があるのか、動く度にしょっちゅう擦れてしまっていたが、
これも育む力の強さと思って優希は先端で感じながらも必死にこらえる。
「んっ……んんっ……」
「ママ、おへそ大丈夫?」
「うん…私は大丈夫よ。赤ちゃんの為ならこんなのだって頑張れるから……あっ……」
周りの子供達が優希の飛び出たおへそを押し始めたのだ。完全に押しボタンと思われているようだ。
けど優希は身体をよじらせながらもあえて子供達を止めようとしなかった。
前にハルくんが優希のおへそを見て、ボタンを押したくなるのは「押せ」と誘っているからとちょっとしたうんちくを教えてくれたからだ。
言われてみれば、ボタンをつい押したくなる心理は赤ちゃんのころからあるようで、「アフォーダンス」というものが影響しているそう。
だとすれば子供達の成長にもある程度は必要なのかと思ったのだろう。
優希は子供達がこんなに楽しく優希と遊んでいるのを見て、
「(幸せ……)」
とぼぉーっと感じたのだ。腹圧で出たおへそを押されて別の意味で感じてもいたが。
みんなが満足したときにはお腹の快感で結構疲れていた。
けど、それだけ子供達の気がおへそから胎内に注入されたような気がして、何だかお腹がポカポカだった。
「(ありがとう皆……三つ子ちゃんを育む力を与えてくれて)」
何とも根拠が無さそうに思えるが、おへそを弄られた分だけ更に大きなお腹になるような気がしてきた。

次の日の検診のこと……
「あれ、いつもより何だか元気が有り余ってるような顔してますね。何かありました?」
「実はですね……」
優希は麻里亜に昨日子供達がしたことを話した。
「……なるへそ、そのおかげでしばらくの間体調が良くなったと、おへそだけに」
「もうどうなってるのか私さっぱり……」
「…ん?ちょっと待ってください。それってもしや…神闕(しんけつ)のことじゃないかしら?」
「し、神闕……って何ですか?」

────────────────────────
アフォーダンス:環境の様々な要素が人間や動物などに働きかけ、そのフィードバックにより動作や感情が生まれること。

神闕:東洋医学における、任脈に属する第八番目の経穴のこと。そこを温めることで、冷えによる胃腸不良の改善・血流促進・免疫機能向上などの効果がある。別名「天南穴」。

103ヨーク:2021/01/22(金) 14:58:26
「わかりやすく言うとツボの一つね。東洋医学的におへそ周りってすごく大事なツボが多くて、神闕もその一つ」
「へぇ……」
「それで、適度な刺激は身体の全体的な調子、とくに冷えによく効くとされているの」
そこまで言われて、優希は思い至った。
昨日のあの不思議な感覚の正体に。
「あ、じゃあ昨日のって」
「そういうこと。妊婦さんに冷えは大敵だから、ほどほどに刺激するのもいいかもしれないわね。なにせ、そんなお腹だし」
その後もしばらく検診は続き、今一番都合がいいということで「入浴時に5分ほどおへそ周りをマッサージしてみる」ということになったのであった。

104名無しさん:2021/02/03(水) 21:43:13
それからというもの、毎日かかさず入浴時におへそを刺激していた優希。
結果、体調は以前よりよくなったような気がしていた。
なんというか、身体がポカポカしてくるような気がするのだ。
それがあると、なんとなく元気がわいてくる。
そしてその効果は、当然ながら優希本人だけでなく、今まさにへその緒でつながっている三つ子ちゃんにも及び……。

「まさか、こうなるとは……」
わずか二週間で、優希のおなかをさらに大きくしていたのだった。

105名無しさん:2021/02/06(土) 18:42:29
当然子供達によって剥き出しのおへそをポチポチ押されていた日は通常よりもマッサージ時間を短くしていた。
それでもここまで成長していたのだから驚きである。
更に言うと、急激に大きくなる時期は大体8ヶ月から9ヶ月ぐらいで、臨月以降はそんなに変わらなくなるそう。
よって今からあと6週間は更に成長することを覚悟しなければならないのだ。
「もっと大きくなるのかぁ…」
無論、今も優希のお腹は大きくなり、それに合わせておへそは引き伸ばされて、神闕の経穴と言うべき穴も大きく開いていく。
丸で、もっと気を注入してほしいと誘っているかのようだ。

そうそう、言い忘れていたが通常定期検診は7ヶ月〜9ヶ月の間は2週間に1回、それ以降は週1回の受診を受ける必要がある。
よって今は8ヶ月から2週間後なので、その週も受けなければならないのだ、何せこんなお腹であるから。

「よしよし、更に大きくなったようね。順調順調」
お腹周りを測りながら麻里亜はそう話す。
エコー検査に於いても特に異常なく成長しているのが分かる。
「赤ちゃん達も随分と元気そうですね。やっぱツボの効果に偽りは無いわね」
「あはは…むしろ効きすぎだとは思いますが……」
「あ、そうそう。忘れてるかもしれないけど私も妊娠してから随分と大きくなったのよ。ほらっ」
優希の検診を全て終えた麻里亜は調子良さげに服を捲ってお腹を見せた。
「うわぁ本当ですね」
「私もおへそ出てきたけど……やっぱ優希さんのには適わないわね。流石妊娠特化」
と言いつつ優希の大きなおへそを指でなぞる。
「ま…麻里亜さん……んっ」
「どこまで成長するのかしらね……」
更に麻里亜は指でおへそを摘まんでクリクリする。
「あっ……あのぉ……」
「あ、ごめんごめん、つい…。何度も優希さんのお腹を調べているうちに…その……私あなたのおへそ…本当に好きになっちゃった」
「え?へぇ!?そ…それってどういう……」
突然の告白に優希は動揺し始める。

106名無しさん:2021/02/06(土) 18:47:10
「元々おへそはね、お母さんと赤ちゃんが繋がる大切な器官だったということは知っているかな?」
「い、一応…」
「でね、意外にもおへそはあらかじめ皮を余分に蓄えていてね、それはものすごく重要な役割を果たすのよ」
麻里亜は詳しく優希に説明を続ける。
「妊娠すると体全体の皮が広がって大きくなる子宮を必死で覆うよね?けど優希さんみたいな多胎だと皮も破れそうになってしまう。その時、おへその中の皮が内側から現れて、破裂しないよう最後のひと踏ん張りをしているというわけ。備えあれば…っていうことね」
「そ、そうでしたか…初めて知りました……」
「優希さんは一度多胎妊娠していたから既に中の皮が伸びきっていたようだし、産後の修復でおへその皮膚が増えて更に伸びやすくなっていたかもしれないわね。妊娠特化の優希さんが2回目の多胎妊娠して以降、更に大きくなるお腹の皮に引き伸ばされて、激しい色素沈着を起こしながらも必死に踏ん張っているおへそを見ていたら……うふふ、応援したくなっちゃってと言うのかな」
それで麻里亜は優希のおへそに惚れてしまったのだろう。
「あ、そうだわ。折角だから……こうしてあげるねっ」
麻里亜がそう言うと、突然優希のおへそと自分のおへそをピッタリとくっつけたのだ。
「(なななななな、何ですか…!?)」
お腹の先端が感じながら優希は声も出ずにドキドキしながら顔を染める。
女同士、それも妊婦のおへそ同士でやるという、何とも珍しいへそ百合プレイである。
「少しの間、私の気とあなたの気を行き来させてあげるね」
すると優希のお腹の子達がそれに反応して活発に動き出した。麻里亜のお腹の子も同様にだ。
いつもよりもドクン、ドクンと大きなお腹の中で鼓動が激しく波打っているのを感じていた。
「何この感じは……私のお腹が……」
「不思議でしょ?ただの穴ではなくエネルギーの出入り口だってことを。だからこうして妊婦のおへそ同士を繋げたらどんな感じになるかなってね……」
何となく、お互いの気が入り交じってきているのが分かる気がしてきた。
「(流石優希さんの育む力ね…私も気持ち良くなってきたわ……だから優希さんも私と一つになってお腹の赤ちゃん達を元気に育てるのよ)」
「(うぅ…私と麻里亜さんが私のお腹の中で混ざって……キュンキュンする……。頭の中おかしくなってきちゃう……)」

「…それじゃあ、最後にフタをしなくちゃ…なっ」
と、麻里亜はトドメに優希のおへそに「チュッ」とキスをした。
「!!」
「おしまいっ。とても医師に有るまじき行為で申し訳なかったけど…これにて今日の検診は……あら?」
今のキスが効きすぎたのか、優希は赤い顔をしながら動かなくなってしまったようだ。
「あ、あの……おーい」
「はっ!あ、ありがとうございましたっ!それじゃ失礼しますっ!」
優希はあまりにも恥ずかしい顔をし、そのまま帰っていった。
「優希さん……1回だけで十分とは言え、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
その日の夜、優希は未だに身体が火照って顔を赤くしており、頭がぼぉーっとしていた。
麻里亜にされた感覚が、まだおへそにも、そのすぐ下の子宮にも残っているのだ。
優希はしばらく自分のおへそを触りながら独りよがりをしていた。麻里亜のことを思いながら。
「麻里亜……さん……」
その感覚が忘れられないまま、この日は終了した。
麻里亜のおへそから強引に注入された気が優希のと混ざって反応したような感じがし、育む力とお腹の胎児は更に大きくなっていく気がした。
と言ってもそんな根拠があるかは不明だし、その効果は麻里亜にも同じことが言えるのでお互い様である。
麻里亜もまた、優希の育む力をもらえた気分がして、幸せそうにお腹を撫でていた。
「(優希さんが頑張っているから、この子も立派に成長させなくちゃ…)」

107ヨーク:2021/02/06(土) 20:28:00
「なんてことがあってねぇ……」
その日の夜、子どもたちをしっかりと寝かしつけてから検診での顛末をハルくんに語る優希。
当然ながら、自身にとって衝撃的な経験だったようだ。
「そりゃ大変だったな……次から事前に言っといてほしいよな、そういうこと」
「ほんとね……でも、ちょっと言ってること分かるんだよね……なんかこう、熱がみなぎってくるっていうか」
「あの先生、東洋医学も詳しいもんなぁ……効果は実際あるんじゃないか?優希も前より元気そうだし」
ハルくんの他愛のないそんな発言。
しかし、優希はそれを聞いてしまったがために、どうしても気になってしまった。
(前より元気そう、か……)
妊娠中とはいえ、優希も一人の女性である。
当然、そういう欲もある。
でも、お腹の三つ子ちゃんを気にしていた。
でも、もしかしたら……。
そんなことが、気になり始めたのだった。

108名無しさん:2021/02/14(日) 09:19:28
(でもまあ、そんなこと今は言ってられないしね……)
そんな雑念を振り払う優希。
さすがにそういう欲があっても、今はそれより大事なことが山ほどあるのであった。

さて、そんなこんなで優希はまた皐月やクリスとお茶会をしていた。
さすがに優希ほどではないものの、二人ともずいぶん立派なお腹を抱えている。
どちらも、かなり順調な妊娠経過のようだった。
「それでさ、もうこの子ったら元気で元気で……よく動くから寝られないときもあるくらいだよ」
「やっぱり皐月もそんなかんじなんだ…よく優希はどう?」

109ヨーク:2021/05/15(土) 21:42:52
「え?私なんてもう大変なんてもんじゃないよ……前も4人だけど、今回も3人入りだし」
「だよねぇ……私じゃ想像がつかないよ」
そんな会話をしながら、お腹を撫でる優希。
多すぎるのも良くないが、適度な胎動は元気な証とも聞く。
3人分のそれを感じられるのは、やっぱり幸せなことだろうか?
「私にしか体験できないこと、か……」

110名無しさん:2021/08/02(月) 21:20:38
「そうね、私達が1人ずつなんだから、優希はその3倍も体感できる......って感じかな?多分」
自分ではよく分からないからとただ何となく言ってみたクリス。
「おいおい、3倍はちょっと流石に......」
「えーっとまぁ.........その......私もそんな感じなのかな......あはは」
と言いながら、優希は自分のお腹を軽くタップしている。
「「(本当にそう思っていたのか......)」」

111名無しさん:2021/08/02(月) 21:21:41
「兎に角、3人分動くから胎動も凄まじくって……それに今にもはちきれそうなほど膨れ上がっているのにこれからもっと膨らむ予感がしてさ……ふぅ……」
自分のお腹が心配になっているにも関わらず、優希は何だか嬉しそうな表情であった。
「ねぇ、お腹見せてもいい?」
「私も見てみたい」
「うん……いいよ」
優希はお腹を丸出しにしてクリスと皐月に見せた。

112名無しさん:2021/08/02(月) 21:35:52
「うわぁ……もうパンパンね。わっ、おへそが凄いことになってる」
「分かっちゃった?」
クリスが色素沈着を起こし大きくなった優希のおへそを見て少しびっくりする。
「前より1人少ないけど、優希のお腹って前よりも大きかったっけ?」
「2回目の妊娠で大分大きくなった後、何だかんだあって。子供達におへそを押されちゃった」
「どうしてそんなにおへそを押されたの?」
優希が恥ずかしげにささやいた。
「ボタンをつい押したくなる心理というのがあってね……で、おへそをポチポチ押されると……気持ちいいの」
皐月とクリスはゴクリと唾を飲み込んだ。
「でね、お腹の三つ子ちゃんが大きくなっちゃった最大の理由は……神闕というツボを刺激されたことかしら」
「しん……けつ…?」
優希は、麻里亜から聞いたそのツボのことを詳しく教えた。

「……ということなの」
「……へ〜…そんなツボがあったのか……へそだけにな」
「じゃあ、優希の3つ子ちゃんがここまで成長したのも……」
「そう、恥ずかしながら私のおへそは他の人と一味違ってたようで……神闕というツボの効果が出やすいと言うかな。気が出入りする穴が大きくて、ちょっとした刺激さえもすぐ胎内に取り込んでしまうって言うか…沢山気を溜め込むのだからお腹周りもどんどん大きくなってこんな感じに……」
確かに、見てるだけ如何にも吸い寄せられそうな経穴であり、今も3つ子を育もうともっと気を欲しがっているような状態である。
「うわぁ〜よく必死に踏ん張ってるね……」
「流石妊娠特化……。けど……私もツボを押してみたくなってきちゃた」
「実は私も……」
皐月とクリスのお願いを聞いた優希は意外にもすんなりと受け入れた。
何にせよ今日のお茶会は自分の家でやっているのだから、自分の子供以外誰かに見られる心配がないのだ。
「んっ……んんっ……」
指でマッサージしている皐月とクリスの気が優希のおへそに入り込み、胎内に注入されていく。
前に比べお腹が一段と大きくなっていたのか、経穴もより気が入り込みやすくなるように開いていた。
「(うっ…あっ…前よりもおへそが引き延ばされてて……気持ちいい…!赤ちゃんがぐんぐん成長していく気がする……)」

113名無しさん:2021/08/02(月) 21:39:36
「......っと、こんなものでいいかな......あれ?優希?」
あまりのツボの気持ちよさに身体がより温まり、優希はしばらくぼぉーっとしていた。
「............はっ!ご、ごめん...あまりにも気持ちよかったからつい......どうもありがとう、また少し育む力が強くなった気がします」
「やっぱ優希は妊娠に対しいつだって前向きだね〜」
「当然ですよ。けど私からもなにかお返ししたいな......あっ、そうだ!お腹出してほしいんだけど......」
「?」
優希に言われた皐月とクリスは服をまくってお腹を見せた。
「私からも気をおすそ分けっ!」
「ちょっ......」
「優希っ......」
と、今度は優希が皐月とクリスのおへそを同時にマッサージした。
やられっぱなしではいられなかったのだろうか、単に自分だけでなく他の者にも赤ちゃんを育んでほしかったのだろうか......。

「どう?ポカポカしてきたでしょ?」
「そうね......優希ほどじゃなかったけど...」
「あったまってきたと思うよ......その...ありがと」
こんだけやればもうみんな元気な赤ちゃんに育ってくれるはずだ。
やがてお茶会を終えた後。
「良かったら後で自分でもやってみてね...」
「うん、たまにだけどやってみる」
「麻里亜先生から聞いたとは言え教えてくれてありがとう。あ、優希、こんなお腹だからやりすぎて破裂なんてしないでね...」
「分かってますよ......けど私のお腹めちゃくちゃ頑丈だと思うから恐らく......兎に角、いつかまたお茶会やりましょう」
2人を見送った段階でこの日は終了、とても楽しい一日だったという。

114ヨーク:2021/08/03(火) 13:21:15
「疲れたぁ……」
楽しかったとはいえ、疲れるのは当然のこと。
最低限の家事も片付け、子どもたちを寝かしつけてから自分も横になる優希。
「これで、もっと大きくなったりしたらびっくりしちゃうよね……真里亞さんと、皐月と、クリスとで1.3倍とか……」
冗談めかしてクスクス笑い、お腹をひと撫で。
「お腹の大きさもだけど、君たちもどこまで大きくなるかな……お母さんのお腹、目一杯使っていいからね」
自分の辛さはわかっていても、それ以上に子供を気にする。
ある意味、それが優希にこの体をもたらしていると言えるかもしれなかった。

115名無しさん:2021/08/05(木) 17:44:17
そう、優希はどこまでも優しい。
特に、自分の周りにはなおさらだ。
(生まれてこなきゃ何も選べないんだから、そこは私が頑張って、この子達を元気に産んであげないと……それこそ、育てすぎても)
お腹が大きくて寝づらいからか、ついついいろんなことを考える。
とはいえ、妊娠は優希自身が望んだこと。
望んだ以上は弱気になんかなってられないな、と思って、寝ることにしたのだった。

そして次の検診日、またしても真里亞に驚かれることになる……。

116名無しさん:2021/08/06(金) 08:45:19
丁度妊娠9ヶ月目の検診日……
「うわぁ〜これは……」
「あははは……」
既に服をまくって丸出しにした優希のお腹は更に凄いことになっていた。
大きく重くなったお腹を、下腹のとこでズボンのベルトがギチギチと微かにいいながら必死に支えている。
「更にお腹が出っ張ってきてるわね。ふふ、おへそも大分突っ張っちゃって」
麻里亜は指で優希のおへそをちょんっと一突きした。
「ひゃんっ…」
おへそを突かれて、優希はお腹を小刻みに揺らした。
「うふふその反応も可愛いわね……おっといけない、すぐ測るからじっとしてくださいね」
麻里亜はなれた手つきで、慎重にお腹周りを測っていく。
「あ、この前の件はごめんなさいね。優希さんのおへそに見とれすぎちゃってつい……」
「いいんですよ…私のお腹の中で麻里亜さんの気と混ざったおかげで赤ちゃんが更に成長してくれましたから。こうなるならいっそ私のお腹がどこまで大きくなれるか挑戦してみます」
「その意気ですよ。私もできる限りサポートしてみせます!で、お腹周りは……うん、140cmね」
「ひゃ、140も!?」
「ツボをやった分だけ大きくなるスピードが速まったのかもしれないわね。お腹の膨張に合わせておへそも少し大きくなった気がしますよ」
「そうか…むしろこんなに成長できて幸せな限りですよ」
麻里亜の言葉に、優希は少し顔を赤くしながらも嬉しそうに答えた。
「それじゃあ、次はエコー検査ね」

117ヨーク:2021/08/06(金) 12:03:43
「うん、立派立派!流石優希さん、って感じね」
早速三つ子のうちの一人を見つけながら、真里亞が言う。
「140もあれば当然ですけど、そんなに」
「ええ、この調子だと生まれる頃には朔ちゃんたちより一人あたりは大きいかもしれないわよ」
「そんなに!?」
前産んだ四人より大きくなるかも、と言われれば流石に驚きを隠せない。
エコー検査を受けながら、優希はそんな素っ頓狂な声を上げてしまった。
「だから優希さんは凄い、って話ね……正にこういう妊娠をするための子宮というか」
「こういう、妊娠……」
おへそもしっかり飛び出し、太くて濃い正中線がお腹を縦断し、妊娠線だらけのこのお腹。
それでも、赤ちゃんをしっかり育てられているお腹だと真里亞は続けた。

118名無しさん:2021/08/08(日) 21:21:45
「そのぶん、あなた自身は辛いかもしれないけれど……」
「いえ、なんか、そう言われちゃうとちょっと嬉しくなるなって……大家族のお母さんになるのが夢だったんで、私」
一人、また一人と様子を確認しながら、そんな会話を続ける優希と真里亞。
ゆはまさに、いま偽らざる夢に近づいている。
そして真里亞も、それを応援したがっている。
「なんだか、私も負けてられない気分になってくるわね」
真里亞もそんなことをいい、くすりと笑う。
「だったら、お互い頑張っちゃいましょうよ。だめと言われるまでどころか、ほんとに駄目かもってくらいまで」

119名無しさん:2021/11/01(月) 17:03:13
「ほんとに駄目かも、って……」
優希の言葉に、冗談めかして笑う真里亞。
しかし、優希に冗談のつもりは一切ない。
「私はそのつもりですよ?だって、大家族の、もっと大家族のママになりたいんですもん」
そう、偽らざる本音。
もっと産みたい、育てたい。
優希の、まじりっ気のない、偽らざる本音がそれだった。


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